企業会計審議会総会・第8回会計部会議事録

 

1.日時:令和3年11月16日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 9階 金融庁共用会議室3

  

【徳賀会長】
 それでは、定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会・第8回会計部会を開催いたします。
皆様には、御多忙の中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。総会は、定員13名中11名の方に出席していただいておりますので、定足数7名を充足しております。会計部会は、定員22名中17名に御出席いただいておりますので、定足数12名を満たしており、したがって、総会、会計部会ともに成立していることをまず報告いたします。

 本日の会議でございますが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、企業会計審議会議事規則第1条第2項にのっとり、オンライン会議にて開催とさせていただいております。
 なお、議事録はこれまでどおり作成し、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 後ほど、監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書を黄川田副大臣にお渡しする予定でございまして、副大臣に御出席いただいております。意見書をお渡しする際にはカメラ撮影をする予定でございますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 オンライン開催に関して、2点、注意事項がございます。まず、御発言をされない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただき、御発言されるときにはマイクをミュート解除にして発言していただき、発言が終わられましたらまたミュートにしていただくということでお願いいたします。また、支障のない範囲で構いませんが、会議中はお顔が拝見できるように、カメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。第2点として、発言を希望されるときですが、チャット機能を使って、全員宛てに発言希望である旨とお名前をともに入れていただき、お送りください。お名前については協会名などの組織名でも結構です。それをこちらで確認させていただいた上で、会長から指名させていただきたいと思います。なお、御発言に際しては、念のため、御自身のお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければと思います。
 それでは、まず、会議の公開についてお諮りしたいと思います。企業会計審議会議事規則第4条第1項にのっとり、本日の会議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

                     (「異議なし」の声あり)
【徳賀会長】

ありがとうございます。御了解いただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継とさせていただきます。

 まず、議事に入ります前に、委員の異動がございますので、事務局からお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 
企業開示課長の廣川でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、本年2月に、関根愛子委員、八田進二委員、林田英治委員が、また、6月には、中川順子委員、野崎邦夫委員が、さらに10月に井村和夫臨時委員が、それぞれ退任されております。なお、林田委員は引き続き臨時委員に御就任されております。また、2月20日付及び6月30日付で新たに6名の委員が、さらに10月29日付で1名の臨時委員が御就任されておりますので、順次御紹介をさせていただきます。
 まず、金子裕子委員です。

【金子委員】
 金子裕子と申します。私は公認会計士で、監査法人に30年ほど勤務しておりました。現在は早稲田大学大学院で監査論を教えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 次に、田代桂子委員です。

【田代委員】
 おはようございます。大和証券グループ本社の田代と申します。私は初めて企業会計審議会に参加させていただきますが、ディスクロージャーワーキング・グループのほうにも参加させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 次に、林隆敏委員です。

【林委員】
 関西学院大学の林隆敏です。どうぞよろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 次に、堀江正之委員です。

【堀江委員】
 堀江でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 次に、松岡直美委員です。

【松岡委員】
 松岡です。ソニーに勤めております。よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 ありがとうございました。
 また、本日は御欠席ではありますけれども、石原秀威委員、冨田珠代臨時委員が御就任されておられます。
 なお、事務局につきましては、お手元の配席図をもって御紹介に代えさせていただきます。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まずは、監査に関する品質管理基準の改訂に係る監査部会での審議の状況について、堀江部会長から御説明をお願いいたします。

【堀江委員】
 監査部会長の堀江でございます。私から、監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書(案)の主な内容につきまして御説明させていただきます。資料は、1-1から1-3を御参照ください。
 まず、審議の経過について御説明いたします。昨年11月の総会におきまして、監査に関する品質管理について監査部会で審議することとされたことを踏まえ、本年2月より5回にわたりまして監査部会で審議を行い、監査に関する品質管理基準の改訂(案)を取りまとめました。本年6月に公開草案を公表し、意見募集に寄せられたコメントを踏まえまして現状の案としております。
 続きまして、意見書の具体的な内容につきまして、ポイントとなるところを御説明させていただきます。
 第1は、ガバナンス及びリーダーシップについてでございます。監査事務所において品質管理システムの基礎となる環境を確立するためには、最高責任者が組織的に監査の質を確保するという意識を持ち、品質管理体制の構築に向けてリーダーシップを発揮することが重要となります。今回の改訂では、監査事務所に対し、健全な組織風土の醸成、最高責任者等の品質に関する説明責任を含む責任の明確化、監査事務所において最高責任者等が果たすべき主導的役割等に関する品質目標を設定することを求めることといたしました。
 第2は、リスク・アプローチに基づく品質管理システムの導入であります。現行の品質管理基準では、監査事務所に対し、あらかじめ定められた一定の品質管理の方針及び手続の整備を求めてきました。これに対し、今回の改訂では、監査事務所自らが、品質管理システムの項目ごとに達成すべき品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害し得るリスクを識別して評価を行い、評価したリスクに対処するための方針または手続を定め、これを実施するという、リスク・アプローチに基づく品質管理システムを導入することといたしました。これによりまして、監査事務所が、経済社会の変化に応じ、主体的にリスクを管理することで、質の高い品質管理を可能とすることとしております。
 第3のポイントは、スケーラビリティの強調であります。リスク・アプローチに基づきます品質管理システムは、当該監査事務所が実施する業務の内容や監査事務所の状況によって変化し得るものであります。上場会社等の監査を行う監査事務所につきましては、監査業務の公益性に鑑み、充実した品質管理システムの整備及び運用が求められます。
 第4は、品質管理システムのモニタリング及び改善プロセスの重要性であります。リスク・アプローチに基づく品質管理が適切に行われるためには、品質管理システムの整備及び運用の状況に関する状況を適時に把握し、識別した不備に適切に対処するモニタリング及び改善プロセスが重要となります。今回の改訂では、監査事務所が、監査事務所自身によるモニタリング、改善活動の実施、監査事務所の外部からの検査等から得られた発見事項の評価を行うことを明確化いたしました。その際、監査事務所が不備を識別した場合には、不備の重大性及び影響を及ぼす範囲を評価し、適切な改善につながるよう、根本原因を分析し、改善活動を実施することも求めることといたしました。品質管理システムの不断の改善のためには、積極的に不備を識別することが求められます。
 第5は、品質管理システムの評価の導入であります。今回の改訂では、監査事務所の品質管理システムに関する最高責任者に対し、少なくとも年に一度、品質管理システムを評価することを求めることといたしました。こうした評価や評価の理由を含む品質管理システムの状況等につきましては、監査報告の利用者が監査事務所の監査品質を適切に評価できるよう、各監査事務所において公表することが望ましいことから、今後、関係法令や実務の指針において所要の整備が行われることが適当であると考えております。
 最後に、改訂品質管理基準の実施時期につきましては、原則、令和5年7月1日以降に開始する事業年度または会計期間に係る財務諸表の監査から実施することとしておりますが、早期適用も可能としております。また、公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所におきましては、原則から1年遅れで実施することができることとしております。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 ただいま御説明がありました監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書(案)につきまして、説明の内容のとおり取りまとめることとしてよろしいでしょうか。

                    (「異議なし」の声あり)

【徳賀会長】
 ありがとうございます。それでは、ただいま企業会計審議会として取りまとめました意見書を黄川田副大臣にお渡しいたします。カメラ撮影のほう、よろしくお願いいたします。

                    (意見書手交・写真撮影)

【徳賀会長】
 それでは、引き続き、黄川田副大臣より一言御挨拶をいただければと存じます。

【黄川田副大臣】
 皆様、改めまして、おはようございます。金融担当の内閣府副大臣を務めております黄川田仁志でございます。
 ただいま徳賀会長から、監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書を頂戴いたしました。委員の皆様方におかれましては、長期にわたり精力的に御審議いただきまして、誠にありがとうございました。
 監査事務所による財務諸表の監査は、企業等の財務諸表の信頼性を担保し、資本市場の参加者等の保護を図り、それによって国民経済の健全な発展に寄与する重要な役割を担っています。今回改訂された監査に関する品質管理基準は、監査事務所に監査業務の質を合理的に確保することを求めるものであり、監査基準と一体として適用される重要な基準と考えております。今回の改訂により、監査事務所が、経済社会の変化に応じ、主体的にリスクを管理し、質の高い品質管理を実現していくことを期待しております。
 加えまして、本日の企業会計審議会では、この後、会計基準を巡る動向、会計監査の在り方に関する懇談会の論点整理等についても御議論いただく予定と伺っております。本日の議論も踏まえながら、引き続き、会計基準の品質向上や監査の信頼性確保に向けて取組みを進めてまいりたいと考えております。
 委員の皆様方におかれましては、今後とも幅広く活発な御審議を賜りますようお願いを申し上げまして、私からの御挨拶とさせていただきます。
 皆様、本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございます。

【徳賀会長】
 どうもありがとうございました。
 黄川田副大臣におかれましては、公務の御都合により、ここで御退席いただきます。また、カメラ撮影もここまでとさせていただきます。

【黄川田副大臣】
 どうもありがとうございました。
                     (黄川田副大臣退席)

【徳賀会長】
 それでは、次の議事に入ります。最近の会計監査・会計基準を巡る主な動向に関して、まず、会計監査の在り方に関する懇談会、次に、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおけるサステナビリティ報告に関する検討状況、さらに、会計基準を巡る変遷と最近の状況について、事務局から御説明いただきたいと思います。

【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございます。
 それでは、まず初めに、会計監査の在り方に関する懇談会についての説明をさせていただきたいと存じます。お手元の資料2-1に沿って簡単に説明をさせていただきます。
 おめくりいただきまして1ページでございますけれども、会計監査を巡る動向と信頼性確保に向けた取組みということで、この会計監査に関する在り方懇談会でございますけれども、今回は2回目でございまして、前回は2015年、大手上場企業の不正会計事案がございまして、こういったこと、あるいは海外の動向等も受けて議論が行われ、2016年3月に前回は提言が取りまとめられたということでございます。上の右側でございますけれども、その後、2016年の提言を踏まえまして、監査法人のガバナンス・コードの策定ですとかローテーション制度に関する調査報告を2回ほど行ったり、「監査上の主要な検討事項(KAM)」の導入がされたり、あるいは情報提供の充実に関する懇談会が開催されて報告書が取りまとめられるといった取組みが進んでまいりました。
 一方で、中ほどですけれども、会計監査を巡る環境変化と新たな課題ということで5つほど掲げさせていただいておりますが、上場会社監査の担い手の拡大、会計監査の品質管理の高度化、海外における監査の在り方の見直しに向けた動向、それから公認会計士の働き方の多様化、さらにはAIをはじめとする監査の技術革新の進展といったようなことがございました。こうした環境変化と、それから新たな課題を踏まえまして、今回は本年9月から11月にかけて会計監査の在り方に関する懇談会が開催されまして、そちらで取りまとめられた論点整理が11月12日付で公表されてございます。
 具体的には、大きく内容として3つの柱から成ってございまして、一番下に書いてございます会計監査の信頼性確保(上場会社の監査の規律等)が1つ目。また、2つ目として、公認会計士の能力発揮・能力向上。3つ目として、高品質な会計監査を実施するための環境整備等といった内容になってございます。
 具体的には、次の2ページでございますけれども、1つ目の柱であります会計監査の信頼性確保、一番上のところでございますが、こちらにつきましては、環境変化及び課題認識としては、企業活動が複雑化し、上場会社の多様性が広がる中で、中小監査事務所を含めた上場会社の監査の担い手の裾野が拡大しているといったような事実がございます。こうした中で、監査基準、品質管理基準の改訂や、あるいは国際的にも倫理規程の改訂がなされるといった中で、会計監査の品質管理の高度化がますます求められるようになってきている状況でございます。また、海外においては、不正会計事案も受けまして監査の在り方の見直しに向けた動きが進んでいるといったような状況でございます。こうした中で、右側の対応の方向性でございますけれども、1つは、自ら監査品質の向上に取り組む中小監査事務所等に対する支援の充実を検討する必要があるとされております。また、2つ目といたしましては、上場会社の監査に高い規律を求める法律に基づく制度的枠組みの検討をする必要があり、その際には監査法人のガバナンス・コードの受入れの促進をすべきであるとされております。また、「第三者の眼」によるチェック機能の発揮ということで、日本公認会計士協会による深度ある品質管理レビューの実施の徹底や、公認会計士・監査審査会による検査範囲の見直しをする必要があるといった内容になってございます。
 また、2つ目の柱、公認会計士の能力発揮・能力向上につきましては、公認会計士の働き方の多様化、具体的には、例えば女性活躍の進展あるいは企業等でお勤めの組織内会計士の増加、こういったような働き方の多様化がございまして、そうしたことを踏まえて対応の方向性といたしましては、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限について見直しを検討する必要があり、また、組織内会計士向けの指導・支援を広げるための方策の検討や研修プログラムの充実等について検討すべきであるとされてございます。公認会計士の能力発揮・能力向上の2つ目ですけれども、環境変化といたしましては、監査基準の高度化、それからAIをはじめとする監査技術革新の進展ということを認識した上で、それを踏まえた対応の方向性としては、右側ですけれども、継続的専門研修(CPE)、それから実務補習・業務補助等の充実をする必要があるということ。また、括弧書きのところですけれども、公認会計士試験制度の在り方については、中長期的な目線で継続的に検討を行う必要があるとされてございます。それから、2つ目の四角のところ、企業の不正を見抜く力を養うために、監査事務所と企業の人材交流等による公認会計士の現場感覚の養成が望ましいとされてございます。また、3つ目の四角、CPEの受講義務を適切に履行しない者に対して厳格に対応することが求められるとされてございます。
 大きく3つ目の柱、一番下、高品質な会計監査を実施するための環境整備等でございます。企業の会計監査に関するガバナンスの強化というのが求められる中で、コーポレートガバナンス・コードに基づく企業の取組みというのも進展してきており、本年の6月にはコード自体も改訂されているといった状況がございます。そうした中で、これを踏まえた対応の方向性といたしましては、右側にありますとおり、監査役等や内部監査部門とのコミュニケーション・連携の強化を図っていき、また、内部統制の整備・運用状況の分析をした上で実効性に向けた議論を行っていく必要があるとされたところでございます。
 駆け足でございますけれども、会計監査の在り方に関する懇談会の論点整理の概要を御説明申し上げました。
続けて、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおける検討状況でございます。お手元の資料でいきますと資料3になります。
 こちらの資料、おめくりいただきまして、まず1ページですけれども、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの検討の背景と諮問事項をまず御説明させていただきます。これまでにも、経済社会情勢の変化を踏まえまして、投資家の投資判断と建設的な対話に資する企業情報開示の在り方をこのディスクロージャーワーキング・グループでは継続的に検討を行ってまいりました。今回は、中ほどですけれども、検討の背景にあるところ、近年、企業を取り巻く経済社会情勢の変化というのがございまして、具体的には、企業経営におけるサステナビリティの重視、また、コロナ後の企業の変革に向けたコーポレートガバナンスの議論の進展といったものがございました。こうしたことを踏まえまして、本年の6月25日に金融審議会で諮問をいただいております。具体的には、その下のところに書いてございますけれども、企業と投資家との間の建設的な対話に資する企業情報開示の在り方について幅広く検討を行うこととされてございます。
 これも受けまして、ディスクロージャーワーキング・グループを本年の9月から開始しております。2ページを御覧ください。まず、ディスクロージャーワーキング・グループでは、第1回の会議のときに、今後議論すべき事項について洗い出し、優先順位づけの御議論をいただきました。それをまとめたものがこちらの2ページでございます。ここに掲げられていますとおり、項目としては、サステナビリティ、コーポレートガバナンス、その他の個別課題ということでございますけれども、とりわけ気候変動対応等のサステナビリティに関する開示についての議論は優先順位が高いという御意見を多数いただいたところでございます。こうしたことも踏まえまして、サステナビリティの開示に関しては、10月に2回、ディスクロージャーワーキング・グループで御議論をいただいてきたところでございます。なお、そこの下の留意点にもございますけれども、この気候変動対応等につきましては、国際的な議論の進展も今後予想されるということでございますので、年明けに再度議論することが考えられるとされてございます。
 次に、3ページにまいります。こちらは御参考ということで、2021年10月8日の岸田総理大臣の所信表明演説でございますけれども、下のほうでございますが、企業が長期的な視点に立って経営を行うことが重要ですというふうにされた上で、非財務情報開示の充実、こちらがサステナビリティの開示の充実も含まれることでございますけれども、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進めますとされております。
 4ページにまいります。このサステナビリティ開示を巡る動きというのは国際的にも加速してございまして、来年の夏にはIFRS財団――国際会計基準を策定している財団ですけれども、こちらのほうでサステナビリティ開示についても基準の最終化をしていこうということで、11月3日ですけれども、このサステナビリティ開示基準を策定する新たなボード、枠組みとしてISSB(国際サステナビリティ基準審議会)というものが設置されるということが公表されてございます。そこのタイムラインを見ていただきますと、2022年の第1四半期には気候変動に関する基準の公開草案が公表される予定、さらに、早ければ来年6月にも基準の最終化が図られると、こういうスケジュール感で国際的に動きがあるということが見込まれてございます。
 5ページにまいります。今申し上げましたISSBでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、11月3日に、国際サステナビリティ基準審議会と日本語では仮に訳しておりますが、こちらの設置が公表されているということでございます。そちらの左下にありますように、このIFRS財団というのはもともとその中にありますIASB(国際会計基準審議会)において国際会計基準の策定を行っており、このIASBとは別に新たなISSBというボードをつくるということでございます。当面は気候関連情報を扱い、将来的にはほかのサステナビリティ情報にも取り組んでいくとされてございます。それから、一番右側のISSBの戦略的方向性についてでございますが、1つ目の四角、投資家の判断に重要な情報(企業価値)にフォーカスしていくということが掲げられております。それから一番右下のところ、ビルディングブロックアプローチということで、ISSB自体がベースとなるサステナビリティ報告基準を策定しその上で、各国が政策の優先順位に基づいて、より広範な要求事項、特定の開示の要求事項を追加するということが想定されるということでございます。
 6ページにまいりまして、この11月3日の発表内容でございますけれども、大きく1つ目の四角の中の3つ目にあるように、ISSBは、気候変動基準を策定するためのプロトタイプ(基準の原型)というものも併せてこの11月3日に公表しており、それから、大きく2つ目の四角ですけれども、拠点について、米州、欧州、アジア太平洋地域において複数の拠点を持つとして、議長のオフィスはドイツのフランクフルトに設置するとされております。3つ目のチェックのところですけれども、アジア太平洋の拠点として、北京と東京の提案についてさらに議論を継続するとされてございます。また、一番下、大きく四角で3つ目ですけれども、今後のステップとして、ISSB議長・副議長、これはまだ任命されておりませんが、これが任命され次第、それ以外のメンバーの募集も早期に開始するとされてございます。
 こうした国際的なコンテクストの中で、ディスクロージャーワーキング・グループにおいては、サステナビリティの開示の在り方についての議論を行ってまいりました。7ページを御覧ください。
 まず、サステナビリティの開示の在り方について、法定開示であります有価証券報告書において、この図の左のほうでございますけれども、サステナビリティに関する考え方、取組みというものを書いていただくような記載欄を設けて開示をしていくということについての御意見が多くございました。その中で、当初の開示項目についてでございますけれども、サステナビリティ開示については、「ガバナンス」と「リスク管理」の開示を求め、「戦略」と「指標・目標」については企業にとって重要だということで、重要性がある場合には開示を求めて、企業が重要性を踏まえて判断するといった考え方はどうかということがございました。他方で、このサステナビリティについては経営戦略にも深く関わるということで、御意見としては、経営方針等の中で既存の「経営方針」という記載欄の中で開示をするという考え方もあるのではないかという御意見もございました。そうした中で、「経営方針」や「事業等のリスク」といった記載項目との関係については引き続き整理を行っていくということになってまいります。
 また、記載事項について、先ほどもありました国際的な基準というものについて、これについても御意見をいただいたところでございます。具体的には、国際的な基準作り、ISSBの活動に日本としてもコミットしていくべきであるという御意見、また、国際基準策定の意見発信や、我が国においてサステナビリティ開示の個別項目の検討を担っていくという、組織あるいはその体制整備というものをやっていくということが重要であるという御意見をいただいたところでございます。
 そうした中で、次の8ページでございますけれども、本年の10月28日にFASF(財務会計基準機構)の定款変更が公表されておりまして、その中で、これまでの会計基準に加えて、サステナビリティ報告基準についても調査研究・開発を行っていくということと、それから国際的な基準の開発への貢献を行っていくということが、目的及び事業において記されているということでございます。
 9ページ、10ページは、ディスクロージャーワーキング・グループ第2回・第3回会議でいただいた御意見のまとめでございます。お時間のあるときに御覧いただければと存じます。
 それでは、続きまして、資料4の御説明をさせていただきます。会計基準を巡る変遷と最近の状況でございます。
 1ページを御覧いただきまして、会計基準を巡る変遷といたしましては、2007年以降の出来事ということで、まず、2007年には、ASBJ(企業会計基準委員会)とIASBとの間で「東京合意」が公表されて、会計基準を国際会計基準にコンバージェンスさせる方針というのが示されてございました。また、その後、企業会計基準審議会におきましても、2009年に連結財務諸表先行の形によるIFRSの任意適用開始の方針が取りまとめられました。それから、2013年ですけれども、「国際会計基準への対応のあり方に関する当面の方針」というのを公表いただきまして、この中では、IFRSの強制適用の是非については当面判断を見送り、まずは任意適用企業の積上げを図ること、そして、次に日本が考えるあるべきIFRSについて対外的に意見発信をすること等が重要とされたところでございます。また、2014年以降でございますけれども、政府の成長戦略や行政方針において任意適用企業の拡大促進、日本基準の高品質化、IFRSに関する国際的な意見発信、国際的な会計人材の育成ということが重要な論点となってございます。
 このうち、任意適用企業の拡大促進について御紹介をさせていただきます。なお、今申し上げました日本基準の高品質化、国際的な意見発信についてはASBJから、また、国際会計人材の育成についてはFASFから御説明をしていただきます。この2ページに戻りまして、IFRSの任意適用企業の推移でございますけれども、本年の10月末時点で256社、全上場企業の時価総額に占める割合は44.6%ということになってございます。
 3ページ目、4ページ目は、個別の企業名について参考までに掲載をいたしております。
 また、5ページ目、6ページ目は、成長戦略フォローアップあるいは金融庁の行政方針の内容でございますけれども、こちらにおいてもIFRSの任意適用企業の拡大について記載をされてございます。
 駆け足でしたけれども、私からは以上でございます。

【徳賀会長】
 御説明ありがとうございました。
 御質問、御意見につきましては、次の2つの御報告の後にまとめてお受けしたいと思います。
 では、次に、ASBJより、ASBJの活動状況について御報告をいただきます。本日は小賀坂委員が御欠席でございますので、代理としてASBJの川西副委員長から御報告いただきます。よろしくお願いいたします。

【小賀坂臨時委員代理(川西)】
 ASBJの副委員長をしております川西と申します。本日はよろしくお願いいたします。本日はASBJの活動について御報告をさせていただきたいと思います。
 まず、私どもの活動の方針ですけれども、4枚目のスライドを御覧下さい。基本方針としましては、我が国の上場企業で用いられている会計基準の質の向上を図るということで、日本基準を高品質にするということと、我が国の制度で認められております国際的な会計基準の質を高めるべく意見発信を行うということが柱になっているということでございます。
 具体的な日本基準の開発の内容ですけれども、6枚目のスライドを御覧下さい。まず、新型コロナウイルス感染症への対応でございますけれども、昨年、議事概要を公表しておりまして、本年2月にその議事概要を更新させていただいているというところでございます。
 それから、国際的に整合性のあるものとするための具体的な取組みを幾つか御紹介します。まず、7枚目のスライドを御覧下さい。収益認識に関しましては、本年3月に適用指針を改正しておりまして、ガイダンスを公表しておりますけれども、これをもちまして基準開発は一区切りということで、本年4月から適用ということになっているということでございます。
 それから、次のスライド、金融資産の時価算定につきましては、これも6月に適用指針を改正しておりまして、投資信託の時価に関する定めを追加しております。こちらにつきましては、本基準のほうは今年の4月からですけれども、追加した部分につきましては来年から適用という形になっているということでございます。これも基準開発は一区切りしたというふうに理解をしております。
 進行中のものにつきましては、9枚目のスライドを御覧下さい。まず、金融商品の減損、いわゆる貸倒引当金の会計処理ということになりますけれども、これにつきましては、8月に6つのステップで基準開発(公開草案)まで行うということを決定しておりまして、進めているところでございます。それから、リースにつきましても作業を行っておりまして、簡素で利便性の高い基準の開発を目指すということで基準開発を進めているところでございます。
 10枚目のスライド、その他の会計基準の開発ということですけれども、前回の御報告から2本、実務対応報告を公表しておりまして、いずれも法律ですとか税制の改正に対応したものということでございます。それから、基準開発で今進行中のものとしましては、金利指標改革に関連するものがありまして、昨年公表した実務対応報告のフォローアップということで、公表から1年後に再確認する作業を現在行っているというところでございます。
 続きまして、国際的な意見発信ですけれども、まず、概況ということですが、12枚目のスライドですけれども、IASBにおきまして主要なプロジェクトというのは一段落しておりまして、現在は表示・開示に関するプロジェクトに注力しているというような状況でございます。7月に議長が交代になりまして、Andreas Barckowさんに替わったということで、そこが大きな変化になっているということでございます。また、IASBとしましては、アジェンダ・コンサルテーションという、どういったプロジェクトを取り上げるのかといったことについて意見を求めるということが手続き的に求められていますけれども、この情報要請が3月に公表されておりまして、ASBJからもコメントを提出しているというところでございます。
 これより、関係者の関心の高いプロジェクトについて少し御紹介したいと思います。13枚目のスライドがのれんの関係ということになります。こちらにつきまして、最新のプロジェクト計画では、こののれんの事後の会計処理と企業結合後の業績の開示というものをセットで考えるということになっておりまして、現在の予定では、開示の議論を先に行ってから事後の会計処理を進めるという形になっているということでございます。
 それから、次のスライド、基本財務諸表プロジェクト、いわゆる損益計算書の表示のプロジェクトですけれども、こちらも議論が進んでおりまして、主な暫定合意としましては、営業利益というものを会計基準に定義するけれども、それは残余、つまり財務とか投資の損益を除いたものというような形で定義をするといったことが決まっているということと、公開草案では持分法投資損益を分けるといったことが提案されておりましたけれども、これは再審議において取り下げるといったことが決まっているということがあります。ただいま御紹介しましたのれんにしましても、基本財務諸表プロジェクトにしましても、ASBJとしましては、会計基準アドバイザリー・フォーラム――ASAFと呼んでおりますけれども、こちらにおける意見発信ですとか、IASBとの意見交換を継続して行っているというところでございます。
 簡単ですけれども、私からの説明は以上です。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 続きまして、林田委員から、国際会計人材の育成の取組みについて御報告をいただきます。よろしくお願いいたします。

【林田臨時委員】
 FASFの理事長をしております林田でございます。当財団の目的の一つが国際会計人材の育成ということですので、この取組みについて簡単に御報告をさせていただきます。
 2ページ目ですけれども、人材ネットワークというのを構築していまして、徐々に人が増えてきて、今、足元では1,300名弱、1,298名というのが2021年9月末の登録人員でございます。
 具体的にどのようなことを行っているかというのが3ページでございますけれども、この1年間、コロナがありまして、なかなか研修会等々が開催できないという問題がありましたが、基本的には、登録者全員を対象としたシンポジウムや、テーマを特定して少人数を対象とした定例会を行っておりまして、この1年間では、シンポジウムのほうは、今年の3月に国際的な会計基準の開発に関する我が国からの意見発信が今どうなっているか、それからどういう課題があるかというのを、金融庁から古澤局長以下海外からもIASBの鈴木理事等にも参加していただいて、活発な議論を行いました。
 あと、4ページ目ですけれども、人材開発の支援プログラムとして、2012年から支援プログラムを開始して、今、6期目に入っております。このプログラムを通じて、色々な役職に、その後、各セクターで就いて、会計基準設定に関連する活動で活躍されているというところでございます。具体的にIFRS-ACのメンバーが2人等々記載しておりますけれども、こういう分野で活躍をしていただいております。本年3月から第6期をやっておりますけれども、今までASBJの委員長・副委員長による講義や、外部の講師に講義をいただいてやっておりますが、今、中心にやってきましたのが概念フレームワークです。これを5回実施して、残り3回となっております。それともう一つ、やはり国際会計人材ということで、英語によるディスカッショントレーニングをやってみようと思っていまして、これはまだ実施しておりませんけれども、残り4回でトライしていきたいと考えております。
 簡単でございますけれども、以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 なお、資料5、会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示内容の分析でございますが、本資料につきましては配付をもって説明に代えさせていただきたいと思います。
 それでは、これまでの事務局の説明と、川西副委員長、それから林田委員からの御報告につきまして、御質問、御意見等をいただければと思います。なお、御質問の回答につきましては、数名の委員から御質問、御意見を頂戴した後に、まとめて事務局あるいは川西副委員長あるいは林田委員から回答をお願いいたします。
 それでは、水口委員、よろしくお願いします。

【水口委員】
 ありがとうございます。水口です。御説明ありがとうございました。
 まず、監査についてですけれども、充実した監査に関する品質管理基準の改訂を実現していただきまして大変感謝しております。また、在り方懇での議論では、監査部会での議論でも示された視点も含め、様々な論点を取りまとめていただき、大変感謝しております。こうした論点を踏まえて、実効性のある諸施策が採られることに期待しております。
 では、サステナビリティ報告関連で3つの意見を申し上げます。
 1点目は、サステナビリティ報告基準の開発への貢献についての意見です。グローバルに様々な展開がある中で、サステナブルな社会への移行に資する資金の流れを実現するために、グローバルなサステナビリティ報告基準の開発の検討段階から貢献することが肝要であると考えております。こうした観点から、FASFが会計基準に加えてサステナビリティ報告基準の調査研究・開発、国際的なサステナビリティ報告基準の開発への貢献などを定款に入れる変更をしたことに注目しております。FASFが、我が国におけるディスクロージャーの諸制度の健全な発展と資本市場の健全性の確保に向けて、サステナビリティ報告基準の開発に関わる組織をもってグローバルな基準の開発段階から貢献することを視野に入れて活動することに、大いに期待しております。
 2点目は、有価証券報告書におけるTCFDに関する開示についての意見です。企業間で足元でも様々なTCFD開示が見受けられる中で、脱炭素化に向けた開示促進のグローバルなモメンタムがあることを念頭に置いて、まずは、足元は有価証券報告書において「ガバナンス」、「リスク管理」に関する開示を義務づけることに加え、「戦略」、「指標と目標」に関する開示については、各社にとっての重要性に応じた開示を求めるという段階にあると位置づけることは妥当であると思います。その際に、TCFD開示の有価証券報告書の全体像の中での位置づけや他の記載との関連性が見えるようにすることを期待します。気候変動というものは事業機会、リスクを企業にもたらすものとの認識を踏まえて「経営方針」や「事業等リスク」の中に大きく関係している、織り込まれる性格のものとも思いますので、「経営方針」や「事業等リスク」などとの関連性が分かるような開示が有用であると考えます。その上で、次なるさらなるステップとして、既にプロトタイプが公表されたりしておりますが、将来の諸シナリオを勘案しつつ、ISSBなどのグローバルなど動向も視野に入れて、段階的なTCFD開示の充実を図ることが妥当であると考えます。
 3点目、最後となりますが、サステナビリティ開示の充実への期待についての意見です。例えば、企業の脱炭素化への移行過程にも注目するトランジション・ファイナンスに関する基本指針が策定・運用されていますが、特定企業の特性を勘案したトランジションに関連する開示等、開示の充実が図れる方向性にあることを歓迎しております。EUなどが先行的に推進してきた二元的なタクソノミーと異なるアプローチをもって、トランジションに注目するファイナンスなどがグローバルにしっかり受け入れられた上で、発展することも視野に入れつつ、企業の脱炭素化に向けた方針、目標、目標の進捗状況なども含めたサステナビリティ関連開示の透明性の確保などにも期待しております。
 以上です。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。
 続きまして、小倉委員、よろしくお願いします。

【小倉臨時委員】
 日本公認会計士協会副会長の小倉です。私からは、監査の関係と会計の関係と、大きく2つ発言させていただきます。
 まず、会計監査の在り方に関する懇談会論点整理の公表を踏まえまして、昨日、日本公認会計士協会、手塚会長が声明を公表しました。当協会では、示された論点についての具体的な施策や取組みの検討を進め、会計監査の品質向上、資本市場の信頼性の維持・向上に貢献していく所存です。
 前回2016年の在り方懇の課題にございましたものですけれども、監査上の主要な検討事項の開示について少し述べさせていただきます。
 「監査上の主要な検討事項」は2021年3月期から強制適用されておりますが、当協会では、青山学院大学大学院、蟹江教授をリーダーとする分析チームに研究を委託し、取りまとめていただいた「『監査上の主要な検討事項』の強制適用初年度(2021年3月期)事例分析レポート」を10月に公表しました。分析は2021年6月30日までに有価証券報告書を提出した2,342社を対象とされ、これらの会社の監査報告書に記載されたKAMは、連単合わせて5,404個、連結財務諸表では1社当たり最大5個、最小が0個、平均個数1.3個となりました。監査上の対応の記載については、おおむね平易かつ丁寧な記載であったとのコメントをいただいております。今後も、KAMの記載を有意義なものとするために取り組んでまいりたいと考えております。
 また、「その他の記載内容に関連する監査人の責任」に関する監査基準が2022年3月期から強制適用となります。会員の実務に資するため、その他の記載内容に関する監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項を10月に公表しました。年度末に向けて、引き続き適切な対応が図られるように、会員の支援を行っていきたいと考えます。
 もう1点、会計基準の適用に関してです。先ほどもASBJの川西副委員長から御説明がありましたが、収益認識会計基準が2021年4月から適用開始されています。当協会ではこれまで、会員向けに研修を行うとともに、基本的な論点について図表や設例を用いて解説するQ&Aを公表したほか、業種別の切り口でポイントを絞って解説した追補版も公表しています。このほか、当協会の会員向け相談窓口には、収益認識会計基準に関連して中小監査事務所を中心に昨年から30件ほどの質問が寄せられ、回答を行っております。これまでのところ、収益認識会計基準は円滑に適用されており、重要な問題は生じていないと認識をしています。
 なお、期末においては開示項目が大幅に増加することになりますため、参考情報として、表示、注記に関する基本的な論点を解説するQ&Aシリーズを公表する予定であり、収益認識会計基準の円滑な導入に今後も取り組んでいきたいと考えております。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。
 続きまして、松井委員、よろしくお願いいたします。

【松井臨時委員】
 よろしくお願いいたします。私からは、会計監査の在り方に関する意見を1点と、サステナビリティに関する意見を1点、差し上げたいと思います。
 まず、懇談会報告書の4ページの部分、中小企業の会計法人の支援に関する部分でございます。品質基準を維持するための活動で、公認会計士の業務時間等が増えますと、それによって監査活動から生じる収益性という部分は圧迫されるという関係にあるかと思います。これに応じて監査の単価の上昇が追いつかないということであれば、公認会計士という職業の魅力が下がることで成り手が減っていく効果があるかもしれません。AIなどによりこの効率化を図って、事務作業の短縮・維持により全体として時間増を調整するということを考えますと、設備投資の資金の調達を考えなければならず、これができない中小の事務所は劣後的な地位に置かれるという関係に立つ可能性がございます。
 現在、大規模監査法人のマンパワー不足により中小監査法人による監査が増加していることを前提に考えるならば、報告書の4ページにあるように、デジタライゼーションに関する規模の小さい法人の設備投資の援助はぜひ必要なアジェンダになるのではないかと思いますし、さらに、市場へのアプローチとして難しい問題もたくさん含みますけれども、中小企業の規模が妥当なのか、監査報酬は妥当なのか、そういったことについてもヒアリングをし、監査活動を維持できるような環境というのがどのようなものなのかについても、踏み込んで考える必要もあるかもしれません。困難な問題ではあると思いますが、ぜひきちんとした検討をお願いいたしたいと思います。
 2つ目に、サステナビリティ開示に関してでございます。これは国によって取組み度合いが非常に違っているものではないかと感じます。一部の国では、先行して、例えば企業活動のバックとなる融資行動につき、タクソノミーと自己資本比率規制などによって銀行の貸付け行動を調整したり、あるいはデューデリジェンス立法などにより会社の事業活動自体を規律したりというようなことをした上で、これと、それをやったかという開示を表裏の可能性につくっているような例も見られます。日本は、日本独自の国の政策としてSDGsについての優先課題を決定しております。開示において、日本の優先課題と国際動向の最大公約数であるところのTCFD開示を先行させるというのは妥当な判断ではないかと思いますけれども、今後の会計基準の出来方ということを考えていきますと、今対象となっていないアジェンダがビルディングブロックアプローチの中でどの程度強く開示規制されていくことになるのかということが、非常に重要な問題になってくるかと思います。将来、日本が実施できるような開示基準となっていくように、きちんとした国際的な交渉や調整ということが重要になってくるかと思いますので、この点、ぜひお願いしたいと思っております。
 それから、資料3の7ページにあるとおり、「ガバナンス」、「リスク管理」、「戦略」、それから「指標と目標」といったような項目については、もう既に9ページの意見にも出ておりましたが、やはり項目別に異なるアプローチが出てくるだろうと思います。アジェンダごとに、ガバナンスやリスク管理などにつきどの程度詳細な記述ができるのかといったようなことは恐らく異なっているでしょうし、それに応じて、単独のアジェンダごとに戦略等についての記述ができるのか、全体としての目標の中に含めた形でしか書けないのかといったようなことも変わってくると思います。実務でのアジェンダの進み具合も考慮した上で、「経営方針」や「リスク」の記載場所に関してプラクティス(事例)を積上げて検討していくという方向性がよいのではないかと考えております。
 私の意見は以上です。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。
 続きまして、橋本委員、よろしくお願いいたします。

【橋本委員】
 青山学院大学の橋本です。
 令和版の在り方懇の論点整理が、先ほど御説明ございましたように11月12日に公表されまして、内部統制報告制度について、近年は実効性に懸念があるとの指摘がございました。また、「内部統制報告制度の在り方について、まずは内部統制の整備・運用状況について分析を行った上で、国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論の進展も踏まえながら、必要に応じて、内部統制の実効性向上に向けた議論を進めることが必要である」との対応の方向性が示されました。私は、内部統制部会長も拝命しておりますので、今回、ほかの色々な検討事項が示されたわけですけれども、この内部統制報告制度については、まずは課題分析などから進めていきたいと思っておりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 その上で質問は、この会計部会のほうで、先ほどISSBの設置の動きについて御説明いただきましたけれども、大分急ピッチで作業が進んでいるようですので、日本としての準備状況について、なかなか水面下の動きで説明できない部分もあるかと思いますけれども、半年後ぐらいにはかなり具体的に公開草案等も出てくるようなスケジュールですが、対応状況について分かる範囲で教えていただきたいと思います。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 それでは、林委員、よろしくお願いします。

【林委員】
 関西学院大学の林です。資料の御説明ありがとうございました。まず、会計監査の在り方に関する懇談会の論点整理につきましては、会計監査の信頼性確保、それから公認会計士の能力発揮・能力向上を中心に整理いただいている論点及び提言内容等に賛同いたします。短期間での精力的な御議論に敬意を表し、感謝申し上げたいと思います。
 その上で、日本公認会計士協会の上場会社監査事務所登録制度、それから同じく協会の品質管理レビュー制度、それに金融庁の公認会計士・監査審査会による検査、こういうものが取り上げられております。また、それ以外にも金融庁として様々な関与をなされていると思いますが、これらが全体として最大限の効果を発揮するという観点から、いかなる制度設計が望ましいか、言い換えると、どのような規制の在り方が望ましいかというのを検討することが、現時点では自主規制機関である協会にとっても、監督官庁である金融庁にとっても重要課題であると考えています。また、大学に所属する教員の立場からは、今回の論点整理では中長期の課題として取り上げられていますが、公認会計士試験制度の見直しも、議論の柱の1つである公認会計士の能力向上という論点の根幹に位置づけられる重要課題と認識しておりますので、議論が開始されることを願っております。
 それから、もう1点、高品質な会計監査を実施するための環境整備というのがその他の論点として示されています。ここでは企業側の対応として、ガバナンスと内部統制の強化というのが言及されています。それも含めて、目標とする高品質な会計監査の実現には、監査人である公認会計士だけではなく、監査を受ける企業、それから、財務情報を利用する利害関係者、それに監督官庁などの関係者の様々な努力が必要と考えますので、ぜひ広く環境整備という観点からの議論というのも進めていただければと思います。
 続きまして、サステナビリティ情報について少し意見を申し上げたいと思います。サステナビリティ情報、特に気候変動情報の開示につきましては、御説明いただきましたとおり、国際的に見ましても議論が急速に進んでおりまして、日本においても喫緊の課題であると考えます。そのため、本審議会で議論の頭出しが行われたということを歓迎します。気候変動への対応自体が重要な政策課題となっておりますので、その解決や政策目標の達成のために、企業情報開示を通じて貢献できることがあると思いますので、引き続き調査検討をしていただければと思います。
 それから、私の専門分野から見ますと、サステナビリティ情報の保証が重要な課題となってくるかと思います。御案内のとおり、EUではサステナビリティ情報に対して、財務諸表の監査人による限定的保証業務の受審を義務づけ、3年後には、それを合理的な保証に切り替えることも検討すると、こういう提案がなされております。もちろん、必ずしもこれに完全に歩調を合わせて制度改正をするという必要はありませんけれども、今後の国際動向を注視しながら、どういう対応をするか検討することになりますから、その際、保証の対象となる情報は何か、情報の何を保証するか、誰が保証するか、どのように保証するか、それから法定の制度とするのか、任意とするのかということを検討しなければなりません。
 例えば、先ほど御紹介ありましたように、有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載区分、記載欄を設けるということになりますと、現行の監査基準の下では、「その他の記載内容」への対応ということがまさに求められますけれども、これは保証業務ではありませんので、現行のままの対応として、保証業務の受審は任意とするか、それとも何らかの保証業務の受審を法定するかということも近い将来、検討することになると思っています。
 それから、最後になりますけれども、これに関連して、企業会計審議会は平成16年に「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書」を公表しております。文字どおり、保証業務の概念フレームワークですが、この意見書の公表以降、既に相当の年月が経過しておりますし、この間に保証業務に関する基準や制度の進展、あるいは国際基準の改廃なども見られますので、この機会に、保証業務意見書の改訂も視野に入れて議論を進めるべきではないかと考えております。
 私からの意見は以上です。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。ここで一旦、これまでの御質問、御意見につきまして、対応をお願いしたいと思います。事務局に対する質問は、ISSBに関する橋本委員からの質問、1件でございまして、それ以外は事務局の説明に対する御意見と拝察いたしました。
 まず、橋本委員の御質問に対して、事務局からお答えいただけますでしょうか。

【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございます。橋本委員から御質問いただきましたことにつきまして、私から可能な範囲で、まず説明させていただきたく存じます。
 サステナビリティ開示に関しまして、国際的に基準策定の動きが急ピッチで進んでいるという認識でございますけれども、そうした中で、我が国としても、これは官民を挙げて積極的に参画していこうという方向性になってございます。例えば、政府のほうでは、本年の6月18日に閣議決定をされました成長戦略の実行計画ですとか、あるいは成長戦略フォローアップ、こちらにおいても国際基準の策定に日本として戦略的に、また、積極的に参画していくといったことが謳われてございます。
 こうした流れの中で、これまでにも本年8月末、官民の協議会の場であります、IFRS対応方針協議会というのがございまして、経済界、それから公認会計士協会、取引所、それからASBJ、FASF等と、あと関連する役所、アナリスト協会、こういったところが参加をしている協議会におきまして意見集約をしまして、本年の8月31日にIFRS財団に対して、日本からも資金拠出を行う、それから、人的、技術的な貢献も行っていくこと、さらにはIFRS財団にアジア・オセアニアオフィスというのが既にございますけれども、その活用を、サステナビリティ基準開発においても行っていくということについて、意見を調整の上、提案という形で出させていただいております。
 そうした流れの中で、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループでも御議論をいただきましたし、先ほども御紹介させていただいたように、FASFのほうで定款変更をいただきました。また、そうした足元までの進捗も踏まえて、今後、来るべき国際的な動き、具体的には来年早々には気候変動に関する基準の公開草案が出てくるということが想定されますので、きちんと官民連携して、また、広く国内の意見を集約して、日本からきちんと意見発信をしていくといったことを、体制整備も急ピッチで進めながらやっていくことが重要かと考えてございます。
 何分、足元の動きが速くて、かつ、全く新しい点ですから、会計基準とは全く異なる分野で、新しい動きに対して対応していくということですので、取組みを状況に合わせて順次行っていくというのは、なかなか関係の方々に見えにくいところはあるかもしれませんけれども、今後も私ども役所としても、積極的にいろいろな形で情報発信をしながら、関係者の力を合わせて取り組んでいければと考えてございます。

【橋本委員】
 ありがとうございました。オールジャパンで取り組んでいただきたいと思います。

【徳賀会長】
 ありがとうございます。
 それでは、次に、岡田委員、御意見、御質問等よろしくお願いいたします。

【岡田委員】
 岡田です。よろしくお願いします。
 グローバルな投資を見据えた状況の中で、日本の株式市場を含め、市場規模の見直しが行われ監査に関する品質管理基準が国際基準と整合を取る形でまとまりました。さらに、会計監査の在り方に関する懇談会において、在り方の方向性が示されました。こうした意味で、大変意味のあるものですので、お取りまとめいただきありがとうございます。
 私からは2点申し上げます。まず、1点目は会計処理に関してです。日本では、IFRSの強制適用はしておらず、任意適用にとどまっています。私の認識では、そもそも強制適用に至らなかった大きな原因は、のれんの償却と、それから上場株の売却益のいわゆる包括利益という2つの問題があったと思います。それを踏まえまして、JMISという日本独自の会計基準をつくられたと認識しておりますが、先ほどの話を伺うと、のれんについては、IASBでもかなり積極的に議論されていて、日本の意見発信が反映されるのではないかという印象を持ちましたので、これについてのもう少し詳しい状況を教えていただきたいのと、上場株の資本取引については、コーポレートガバナンス・コードの進展に伴って、持ち合い株の解消が相当程度進み、これは大問題として取り上げられるべきものでもなくなってきたのかなという印象がありますが、それについての現状も教えていただきたいと思います。
 また、それを踏まえて、例えば、のれんの償却がかなり日本の意見が取り入れられる形でIASBの基準になったとしたら、今後、IFRSの強制適用というのは視野に入るのでしょうか。あるいは、強制適用というのは全上場会社には無理にしても、少なくともプライム市場に上場する会社への強制適用はすべきではないかと思いますが、その点についての御意見を伺いたいというのが、1点目でございます。
 2点目は、国際的な会計人材というお話がありました。会計処理に関するIFRSを勉強する、あるいは日本の発信力を高めるといった取組みが順調に進捗しているということは大変よく分かりました。一方で、今度は、いわゆるサステナビリティに関する人材、これは会計人材と言っていいのかどうかよく分かりませんけれども、今後、IFRS財団の中にISSBが創設された際には、先ほど官民を挙げて取り組まれるという心強いお言葉をいただきましたが、ISSBへの人材派遣、例えばボードメンバーに日本から派遣するというのは非常に大事なことだと思います。また、今後、ESGの非財務情報を理解した上で、会計監査の一部として、保証まではいかないにしても監査の一環として取り上げていくとすれば、この人材の育成は喫緊の課題だと私は思います。これをどのように育成していくのか、方針を立てて推進していくのは誰なのか。それから、具体的には、飛躍かもしれませんが、国家資格を考えるのか、あるいは会計試験に取り入れるのかと、そういうことをどのように考えていくべきかということを、金融庁の方にお伺いしたいのと、もう一つは、先ほどASBJの会計基準に関するお話がありましたけども、これについてどのように国際的な人材育成を行っていくかというお考えも伺いたいと思います。
 私からは以上です。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。続きまして、日税連の神津委員の代理で御出席いただいております、足達委員、よろしくお願いします。

【神津臨時委員代理(足達)】
 日本税理士会連合会、神津会長代理の副会長の足達でございます。
 サステナビリティの基準設定に関しまして、要望を1点だけお話しさせていただきたいと思います。サステナビリティが大変重要である旨は日本税理士会連合会も認識をいたしており、それが会計分野の俎上に乗ったことについても大変評価しているところでございます。ここで要望でございますけれども、あくまでも中小企業におきましては、会計基準の対応について、過度な負担とならないようにご配慮いただきたいと思います。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 続きまして、挽委員、よろしくお願いいたします。

【挽委員】
 ありがとうございます。一橋大学の挽です。2点ほどございます。
 1つは資料3に関連します。FASFの定款変更をしていただけてありがたいと思うんですけれども、本日の御報告だと増えた部分、サステナビリティ報告基準に関しての御説明がなく、ASBJとIFRSのことだけでした。難しいのかもしれませんけれども、サステナビリティ開示基準対応を行う組織の次に、定款の変更に関する資料がございました。サステナビリティ開示基準対応を行う組織、官民を挙げてという御説明もあったんですけれども、複数責任は無責任という考え方も取れますので、もう少し世界の変わっていくスピードに合わせて、スピード感を持っていただけたらというのが第1点目でございます。
 第2点目は、ディスクロージャーワーキング・グループが有価証券報告書という法定開示の中に、気候変動を入れることを提言されたことはよかったと思うんですけれども、有価証券報告書については、既に相当な分量がありまして、例えば、財務諸表に限っても注記を読むだけでも手いっぱいのところに、どのような形で読み手に注目されるような、埋もれないような書き方ができるのかというのがポイントだと思うのです。
 そうしますと、ディスクロージャーする側の企業の誠実性というのも大事ですけれども、情報量が多ければいいというわけではないわけで、開示される情報の質とか信頼性、比較可能性、比較可能性というのは時系列で比較できるのかと、それからクロスセクションで比較できるのかといったことが大事になってきます。法定開示で入れて、あとは企業の自主性任せということだと、本当に企業の側の誠実性頼みになってしまって、それだけで大丈夫なのかという不安もあります。以上、2点御意見申し上げました。ありがとうございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。続きまして、大瀧委員、よろしくお願いいたします。

【大瀧臨時委員】
 SMBC日興証券の大瀧です。御説明どうもありがとうございました。
日本における会計基準に関しましては、複数の会計基準が並存しており、投資家がその基準差を対応せざるを得ない状況が続いています。しかし、かつてのようにグローバルで統一するような動きもない中、日本の会計基準は、これまでと同様に、欧米の会計基準をそのまま受け入れるのではなく、日本基準として高品質となるよう適切に議論し、取り入れていくことが必要であると考えます。
 また、IFRS任意適用企業の時価総額は4割を超える状況となり、今後もIFRS任意適用の拡大促進を進めながらも、我が国の考え方をグローバルに受け入れられるように努力する必要があること、そして、日本企業全体として比較分析できるよう、情報開示の比較可能性を高める必要があると考えております。
  グローバルへの意見発信につきましては、のれん償却に関して少しずつ日本の考え方が受け入れられているような動きも見られますし、また、今後は金融商品のノンリサイクリングも議論になると思われます。私も先週、CMACに参加して日本の投資家として意見発信しましたが、基準開発・改正の早い段階から積極的にアピールする必要があるように思います。
 一方、IFRS任意適用会社が増える中で、投資家の中には日本企業間における財務諸表開示の比較可能性の低下を懸念する声も聞かれます。具体的な例として、営業利益の表示があります。日本基準では営業利益の表示を求めていますが、IFRSでは表示する義務がありません。さらにIFRS任意適用企業が増加する中で、独自の定義に基づく利益名で決算説明を行う会社も増えてまいりました。IFRSでは現在議論されているものの、日本基準とは異なる内容の営業利益となる可能性があります。今後のIFRSの改正動向にもよりますが、複数の会計基準が並存する中で、日本企業間において、営業利益での比較ができるようにするなど、日本企業間の比較可能性向上のための施策が必要ではないかと考えております。
 このような比較可能性の議論は財務情報だけではなく非財務情報にも通じるものがあると考えております。昨今の記述情報の拡充は大いに歓迎しておりますが、投資家にとっては比較可能性も分析上、重要な要素です。現在の有価証券報告書で求めているように、重要な定量情報はひな形等による開示により、比較可能性を担保することも必要であると考えております。有価証券報告書の記述情報の拡充を進めつつ、法定開示文書であることを前提に投資家保護の観点から、リスク情報を含む重要な情報が漏れなく開示され、かつ一定の比較可能性も担保されるような情報開示になることを期待しております。
今後の日本の会計基準及び開示制度の議論に当たっては、これまで培ってきた日本の良い部分をしっかりと残しつつ、その上で国内の事情を踏まえ、海外の良いところを積極的に取り入れていく必要があると考えております。
 最後になりますが、監査部会で議論された監査上の主要な検討事項、KAMとも結びつく点でもございますが、有価証券報告書の有用性を高めるために、株主総会前に提出されることが重要であると考えております。制度上可能になっておりますが、現在、20数社と少ない状況に鑑み、総会前提出会社が増えるような施策が必要ではないかと考えております。
 私からは以上となります。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。続きまして、住田委員、よろしくお願いします。

【住田委員】
 ありがとうございます。会計監査の在り方懇の論点整理、それからディスクロージャーワーキング・グループの検討状況の説明、ありがとうございました。
 在り方懇は上場会社の監査の観点から、それからディスクロージャーワーキングのほうはサステナビリティ情報の開示中心に議論を進められているということと思います。ちょうど今、上場企業の開示制度全般を見直すよいタイミングではないかと思いますので、その観点から概括的な意見になりますけど、2つほど意見を述べさせていただきます。
 まず、1点目ですが、サステナビリティ情報、特に気候変動の財務インパクトに関する情報開示についてです。気候変動は言うまでもないですが、地球規模で取り組まなければならない、しかも時間的猶予があまり残されていない深刻な課題と認識しています。したがって、日本においても上場企業が年次報告書において、サステナビリティ情報、特に気候変動の財務インパクトを適切に開示できる制度設計を早急に整えていく必要があると思っております。急ピッチで進む国際サステナビリティ基準が来年半ばほどにも公表される予定ということで、日本においても、FASFの下にサステナビリティ報告基準の開発を担う主体をつくる準備は進められていることと思いますが、日本の上場企業が法定開示の枠組みの中で、どのような開示を行っていくことが求められていくのかということについては、できるだけ早く方向性を明確にしていくことが必要と思います。
 その際、グローバルに展開する上場会社は、国際基準に基づく開示と同等なものを、海外に遅れることなく開示していけるように制度を設計していくことが重要ではないかと思います。同時に、情報の質を担保するという観点から、監査人による保証業務を行えるような体制づくり、基準づくり、人材の確保なども同時に進めていくべきと思います。サステナビリティに関しては、時間軸と法定開示による開示を進めることが重要なポイントと考えております。
 それから2点目ですけれども、サステナビリティ情報に代表されるように、財務諸表以外の情報の重要性が、上場企業の開示において、格段に増しているという状況を踏まえまして、上場企業の開示制度全般の見直しをすべきではないかと思います。開示制度は、これまで一貫して新たな開示を積み重ねる方向で制度改正が進められてきましたけれども、金商法、会社法、上場規則に基づく開示の3つの開示要請の中で役割が重複しているものもあると思います。サステナビリティ情報の開示負担の大きさを考えますと、既存の開示のうち重複感のあるものを整理していくことは不可欠ではないかと思います。在り方懇のその他の論点で頭出しされていますけれども、有価証券報告書と会社法の事業報告等の一元化を、まず実現すべきではないかと思います。改正会社法により、金商法の開示と事業報告の一元化の道筋は示されておりますけれども、法令レベルで一元化を求めていきませんと、なかなか選択する会社も少ないというのが現状ではないかと思います。会社の作成負担の軽減にもつながりますし、金商法の開示における監査役等の役割の明確化にもつながるのではないかと思っております。
 それから、四半期短信と金商法の四半期報告書の重複も検討していくべきだと思います。今後、ディスクロージャーワーキングで議論されていくものと思いますけれども、例えば、1Qと3Qは添付書類の見直しを含めて短信のみとして、2Qは金商法に基づいて中間監査を廃止してレビュー報告に一本化する、その上で四半期報告の提出を求めるというような抜本的な見直しも可能ではないかと思います。いずれにしても、スクラップ&ビルドの考えに基づいて、情報開示の必要性を再点検して、バランスの取れた開示制度の設計に議論をつなげていただければと考えております。
 以上です。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。それでは、これまでの御質問、御意見につきまして、対応をお願いしたいと思います。
 御質問は、岡田委員からのIFRSに関するもの1件で、残りは御意見として承りました。御質問は前半のもので、のれんをめぐる議論およびIFRSの強制適用に対する金融庁の姿勢についての御質問と拝察いたしました。まず、前半ののれんについて、ASBJの川西副委員長、御説明いただけますでしょうか。

【小賀坂臨時委員代理(川西)】
 承知いたしました。
 のれんの国際的な議論に関しましては意見が割れているということは皆さんも御案内のとおりですけれども、大きく3つに割れておりまして、償却すべきだという方と、償却すべきでないという方と、状況によってどちらでもよいという方で、大きく3分の1ずつに割れているという形になっております。
 その中で、2つ大きな要因がありまして、1つは、米国会計基準を作っているFASBの議論で、のれんの償却の再導入をすべきだという意見が支配的だということで、IASBとFASBで違う基準があってはいけないのではないかという考え方から、償却をしたほうがよいのではないかという考え方が出ているというのが、まず1つあります。
 それから、もう一つは真ん中にいるどちらでもよいという方々から、先ほど御紹介しました、開示の充実がされれば償却を再導入してもいいという考え方の方が出てきたということで、IASBとしては、その意見を踏まえて、パッケージで考えれば、再導入ということも検討できるのではないかということで、検討が進んでいるということです。
我々は一貫して償却すべきだということを言っておりますけれども、今はどちらかというと、真ん中のグループの方々をどう説得するのかという形で議論が進んでいると理解しているところでございます。
 私からの説明は以上です。

【徳賀会長】
 御説明ありがとうございました。それでは、岡田委員、今の御説明でよろしいでしょうか。

【岡田委員】
 分かりました。時間軸的には、近い将来に解決すると考えればよろしいのでしょうか。それとも、まだまだ議論は果てしなく続くと考えてよろしいのでしょうか。

【小賀坂臨時委員代理(川西)】
 私から回答いたします。そこは予測ができないというところでございます。FASBがIASBの議論を待っているところもありますが、どれぐらい待てるのかということもあると思います。予測はできないですけども、ただ、通常のプロセスを通しましても数年かかることは間違いありませんので、来年から変わるとかいう話ではないと理解しています。

【岡田委員】
 ありがとうございました。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。では、次に、IFRSの強制適用に対する現在の姿勢につきまして、事務局から御説明いただけますか。

【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございます。
 岡田委員からは、のれんについてお話をいただいた流れの中で、強制適用が視野に入るかどうかという御質問をいただいたものと思います。一般的に考えてみますと、財務諸表を作成する作成者、企業側の観点からすると、今、例えば日本基準で作成している場合には、のれん、その他の主要な項目において日本基準とIFRSが収れんしている、非常に近いものになっているということであればあるほどに、日本基準から国際会計基準への移行というのは、よりやりやすいということに一般的には、ほかの条件が変わらなければということですけれども、言えるという面はあろうかと思います。
 その上で、のれんの基準の動向がどうなっていくのかとか、会計基準で言えば、日本の会計基準も今は金融商品会計とかリース会計とかいろいろ御議論をASBJのほうでいただいていると思いますけれども、それ以外にも様々な基準上の検討事項というのはあるかと思いますし、また、本日、お示しをさせていただきましたように、実際問題として、適用がどれぐらい進んできているのかといったこと、適用の在り方をめぐっては様々な要素を考慮していくといったことになっていくのかと思います。
 その上で、まさに基準適用の在り方については、今ちょうど資料でもお示しをさせていただいております、私どもの資料4の1ページにもありますけども、この年表を見ても、これまで企業会計審議会において、まさに委員の皆様方の御意見をいただきながら、日本なりのやり方というのを考えてきたという歴史であろうかと思います。私どもが何か勝手にレールを引いてものを申し上げるということよりは、幅広くまさに御意見を頂戴しながら考えていく、そういう話かと私自身は認識しております。プライムに限ってはどうかといったことも含めて、大変貴重な御意見を本日頂戴したと考えております。ありがとうございます。

【岡田委員】
 ありがとうございました。

【徳賀会長】
 では、再び委員の皆様より御質問、御意見を頂戴したいと思います。谷口委員、よろしくお願いします。

【谷口臨時委員】
 リクルートホールディングスの谷口でございます。ありがとうございました。
 2点ほどございまして、1点目は監査の在り方でございますけども、この中で監査品質というところで、AIの導入という話がありますが、これは実際、我々グループの監査を受ける立場として、デジタルオーディットの恩恵というのは多々、今、感じています。デジタルオーディットというのは監査品質の問題ももちろん非常にプラスになる話だと思いますし、特に今までサンプリングに依拠した形のものが、全件調査みたいに割と簡単にできるようになってくるとか、そういった話もあります。あと、会計士の方のリソースの問題という意味では、大きくこれは改善するような作用があると理解しております。
 それと、作成者側の立場からしてもデジタルオーディット、本当にうまくいけば負担が少なくなるということで大歓迎をしているところなんですが、グループの監査を受ける中でも、海外に比べて日本はなかなかベネフィットが難しいかなという感じがしています。根本的な原因はペーパーレスの問題かと思っています。いろいろな法令の問題、税務申告の問題等もありますけども、紙というものがある、これがデジタルオーディットの適用を非常に妨げている要素じゃないかと思っています。そういう中で、紙からペーパーレスというところのアクションをぜひサポートしていただけるように御検討いただけるとありがたいと思っています。
 2点目は、サステナビリティの問題ですが、これは本当に時間軸として、あと半年以内に基準ができるという中で、この辺の国際的なルールセッティングというのは、最初が本当に肝心だと痛感しております。これからの半年間、どういう関わり方をするのか、多分これはISSBにどう関わるかと、どういう人を送るかとか、その辺が多分ポイントになるのかと思いますが、これはともすると、今、世の中の国際世論が非常に、特に環境の問題に関しては過大な要求を、特に開示とか基準という意味ではするような流れになっている中で、我が国として、これは多様な意見を、リプレゼントするというのは非常に重要だと思っています。もちろんこれは利用者、財務諸表の利用者、レポート利用者だけではなく、作成者の視点も大事だと思いますし、監査をする立場の方も非常に大事だと思いますし、そういった多様なステークホルダーがリプレゼンテーションを持つ形で、我が国として何をやっていきたいか、どういう意見発信をしていきたいかということを踏まえながら、ISSBに関与していくというところが大事ではないかと思っております。
 以上2点、意見でございました。よろしくお願いいたします。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。続きまして、熊谷委員、よろしくお願いします。

【熊谷臨時委員】
 みずほ証券、アナリスト協会の熊谷です。よろしくお願いいたします。
 私のほうからは、大きく2点ございます。皆さんサステナビリティに関する御意見が多いようですけれども、これについては、ディスクロージャーワーキング・グループのほうで意見を述べさせていただいていますので、ほかの論点についてお話しさせていただきたいと思っております。
 まず、第1点は、JMISについて、先ほど岡田委員のほうから、のれんの償却についてお話がございましたけれども、JMISについては、私も開発に関わらせていただきましたけれども、正直に言いまして、歴史的な使命を終えたのではないかと考えてございます。まさにのれんの償却ですとか、ノンリサイクリングということに関しまして、日本から強い意見発信ができたと思います。実際、のれんについては今、御説明もございましたように、どうなるか分かりませんけれども、償却ということも検討されて、十分IASBに対して、日本の意見発信ができたんじゃないかと思います。
 JMISは、我が国企業が任意適用できる会計基準の1つとして位置づけられています。しかし、結果として、JMISの採用企業がいまだにありません。また、ASBJの中に、IFRSのエンドースメントに関する作業部会という専門部会が残っております。JMISの維持には、そういうASBJのリソースを一定使っていかなくてはなりません。そうした諸々を考えますと、JMISの歴史的役割を鑑みまして、一定の成果というか、かなり大きな成果があったことは間違いないけれど、今後のJMISの取扱いを、廃止ということも含めて、企業会計審議会で検討していくことが、必要になってくるんじゃないか、そういう時期に来ているのではないかと考えております。それが第1点でございます。
 それから第2点目に関しましては、もう少し概括的なことで、先ほど住田委員からの御発言とも、重複する部分があろうかと思うんですけれども、まず、近年、KAMの導入とか非財務情報、サステナビリティ情報の開示の充実ということで、これは財務諸表利用者として大変歓迎しております。我が国の資本市場の質ですとか競争力を保つ上で必要な改革だと考えております。ただ、これは今日の議論のコンテクストで考えますと、全て監査人の皆さんの負担を増やす方向にある改革じゃないかと思っております。その上で、さらに上場企業の監査手続きが増加している、あるいは、監査人をめぐる規制ですとかKAMなどの要求事項の増加によって、個々の監査人の業務量ですとか必要とされる監査時間というのは増えているんじゃないかと拝察しております。
 この点について、具体的にどの程度の負担が増えているかというご説明はありませんでしたが、業務時間ですとか、あるいは、それに伴う経済的処遇というのは本当に改善されているんだろうかということを考えますと、やや心もとないというところがあるんじゃないかと思います。お話を聞いている限りは悪化しているんじゃないかと考えております。
 そうしますと、職業的会計士の人数確保というのは今後、ますます困難になって、結果として資本市場全体としてみた場合、監査品質が低下するということもあり得るのではないかと利用者としては懸念しておるところであります。そうした事態に対応するためにデジタル投資ということが言われておりますけれども、今、谷口委員からもございましたとおり、それは非常に効果的ということはあるんですが、松井委員も御指摘されたかと思うんですが、中小の法人で、こういったデジタル投資というのができるんだろうかということを考えたとき、心もとないと思いますし、監査品質の維持・向上というのは一筋縄ではいかないのかと思っております。
 これらの問題を、監査制度の枠内で解決するのは相当難しいんじゃないかと感じております。住田委員の御指摘とも重なりますけれども、資本市場を支える周辺制度全体の見直し、例えば開示制度で有価証券報告書と事業報告の一体的開示、さらには一本化、それから、四半期の開示の見直しですとか、株主総会の開催時期なども含めて、全体的な見直しを行っていく時期が来ているんじゃないかと考えております。そうした資本市場関連制度の包括的な見直しの全体最適を目指していく中で、監査品質のみならず、それから国際競争力の確保も目指していくべきなんじゃないかと思います。
 そうした場合に、こうなっていきますと企業会計審議会だけの議論ではなくて、金融審議会のテーマとも重なってきてしまいまして、恐らく審議会横断的な検討をせざるを得なくなってくると思います。現状ですと、やや縦割り的なところがありますので、そういう審議会横断的なテーマをどうやって検討していくのか、そういったところの課題も分析していっていただく必要があるんじゃないかと考えております。
 私からは以上です。どうもありがとうございました。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。続きまして、青委員、よろしくお願いいたします。

【青臨時委員】
 どうもありがとうございます。東京証券取引所の青でございます。
 私のほうからは、監査の在り方の関係とサステナビリティの関係で2点、意見を言わせていただければと思います。
 まず、監査の在り方の関係でございますけれども、まず最近、準大手ですとか中小の監査法人が上場会社の監査をするという事例が増えてきておりまして、それ自体につきまして、健全な競争になるということであれば、それを前提に物事を考えていくという方向感で適当かと思う次第でございますけれども、中小監査法人におきましても、高い監査品質の確保が重要だと考えております。
 それで、先ほどからも御指摘がございますように、中小の経営体力というものがございますので、そこについての一定の支援等は的確に行っていくことを目指していくということは重要なことだと考えますけれども、上場会社が投資対象になっているということを考えますと、そこだけではなくて品質管理をしっかりと体制整備をして整えていただくということに関しましては、中小だろうと、大手だろうと、最終的には同じレベル感、もちろん合理的な差異というものはあるかもしれませんけれども、目指すべきものは同レベルのものを目指していくという方向感は、まず基本的に大事なところかと思ってございます。そういう意味で、ガバナンス・コードに関しましても、できる限り中小も対象に取り込めるように全体を見直していった上で考えていくということが重要なことではないかと思われます。
 それから、あとは監査品質ということで考えますと、不正会計を行ってしまった上場会社があった場合に、監査人の交代ということがよく生じるわけでございますけれども、その時に、大手から中小の監査人に監査人が切り替わっていくというケースも結構ございます。この点は変わった後の監査の品質もしっかりしていないと、日本全体としての監査に対する信頼感、あるいは財務諸表に対する信頼感は下がっていくということになるかと思っておりますので、とりわけそういった不正会計が行われた直後であるという状況であれば、リスク・アプローチの使い方ですとか、どこまで深い監査をするのかといった点もしっかりと考えていくことが重要で、そのためには監査人だけでなくて、監査人を選択するときの監査役等の役割、あるいは、日本公認会計士協会のレビュー等も通じて、そういうところについて関与していくことがより重要ではないかと考える次第であります。
 それから、サステナビリティの関係に関しましては、御紹介いただきましたように、開示を充実させていく方向感というのは非常に重要なことだと思ってございます。その上で、どちらで開示をするかということに関してですけれども、現状、有価証券報告書につきましては、MD&Aなどの定性的な情報も、できるだけ取り込むことで有用性を高めていくという方向感で動いているところかと思いますので、そこは首尾一貫した形でサステナビリティに関しましても、重要なことはしっかりと有価証券報告書に取り込むということをまずやった上で、任意のところで充実した情報を提供していくということを目指していくというように、この体系に関しての首尾一貫した考え方でしっかりと進めていっていただければと思う次第でございます。
 私は以上でございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。続きまして、弥永委員、よろしくお願いいたします。

【弥永委員】
 ありがとうございます。弥永でございます。3点、申し上げたいと思います。
 第1点は、中小監査事務所のプレゼンスが最近高まっているわけですけれども、在り方懇でも指摘されているように、中小監査事務所についての品質を第三者の目でチェックすることをこれまで以上に考えていかなければいけない。公認会計士・監査審査会などの検査、あるいは、日本公認会計士協会の品質管理レビューは、これまで、どうしても大手の監査法人を重点的に行っており、これは合理的ではあると思うのです。しかしながら、現状に鑑みると、ある一定の期間内には中小監査事務所もきちんと対象になって、一定の深度のある検査等が行われるような仕組みが必要なのではないかと考えております。
 第2点、第3点は、いずれもサステナビリティ開示との関係でございますが、第2点は、サステナビリティ開示は、監査人のその他の記載内容についての一定の監査における手続との関係でも、非常に影響を与えることになると思われるわけです。その意味で、監査人にとっての手間が増えていくだろうと予想されます。そのような状況の下で、資源や期間的な制約の下で、監査人がその他の記載内容についてのチェックを十分に行っていけるのかという問題があるのではないかと思われます。そこで、この点も検討していく必要があるのではないかと考えております。
 第3点は、住田委員が御指摘になられていたことと重複いたします。会社法の下でも、サステナビリティ開示は、一定の会社については結構重要な意味を持っているわけで、いずれは、ある程度取り入れていただくことが必要なのではないかと思われるところです。そこで、事業報告と有価証券報告書の一体開示というものを進めていくために何かできることはないのかということは、企業会計審議会、あるいは、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ、そういったところで話題とか検討対象になると思うのですけれども、包括的に検討していく必要があるのではないかと感じております。
 以上です。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。それでは、金子委員、よろしくお願いいたします。

【金子委員】
 ありがとうございます。早稲田大学の金子です。私のほうからは、会計監査の在り方に関する懇談会で出ております議論を中心に、コメントを3つさせていただきます。
 1点目は、上場会社の監査に高い規律を求める観点からです。最近は上場会社の数が増えており、上場会社の規模売上高は数十兆円から数百億円程度など、100倍以上のひらきがあります。また、企業の複雑性や、国際化の度合いなどについても違いがあり様々な上場企業が登場しているという状況があります。そういう中で、中小法人の役割というのが出てきていると思います。ただ、大手法人は人材、ノウハウ、それからIT投資等についてリソースが一般的に高いのに対して、中小はなかなか十分ではないところもあろうかと思いますが、特定分野に特化するような形で、しっかりとした品質を確保していくことが必要だと思っております。規模が小さいからといって、そこに甘えず、監査人として努力を続けていくことは非常に重要なことであると思います。
 2点目ですけれども、人材の教育や優秀な人材の確保が、監査品質を高めること、さらに、昨今、非常に急速に進展している、サステナビリティに関する基準への国際的な貢献、その後の保証を考えますと、非常に重要であると考えます。懇談会の中では、企業との人材交流などによって、現場感覚を養成してほしいという御要望が出されているようですけれども、様々な委員会等の御意見を拝見しますと、不正調査等に関わって不正を見抜く力をつけてほしい、海外シフトしている企業の実態を分かるためにも海外のビジネスの理解、海外での意見発信のための英語力や海外経験の必要性、さらには、労働市場や金融や技術の変化に関する理解もしてほしい。また、ITやAIについての理解もしてほしいと、非常に幅広い高度な要求が会計士に突きつけられているのではないかと思います。
 皆さんから大きな期待をされているということは非常にありがたいことと思いますけれども、一方で、企業内会計士の方の御意見では、監査法人はゆとりがないので、戻りたい気持ちにならないという御意見が監査部会でも出ておりました。能力高く、かつ社会変化に対応できる人材をどのように確保していくのかが大きな課題だと思います。また会計士自身の能力アップとともに、会計士以外の方もうまく活用して、監査をマネージできる会計士を育てていくことも重要だと思いますので、試験制度については、理解力とか説明能力等の基礎的能力をしっかりと、確認できるような制度になると良いと思っております。さらに、人材教育IT投資を支える財政的基盤を監査法人がしっかりと持っていくことも重要だと思っております。
 監査品質については、国際的なレベルを確保することが必要ですけれども、一方で、監査報酬のレベルが国際レベルに達しているかについては、研究者の方のリサーチでも必ずしも十分ではないのではないかとい言われております。中小法人に限らず、大手法人にとっても監査報酬をどのように確保していくのかというのは重要な問題であり、社会全体としてしっかりと支えていく必要があると思っております。
 それから、3点目は、先ほど住田委員や熊谷委員から御発言のありましたように、有価証券報告書等における開示では、新しい項目が追加され、情報量が増えているとともに、パッチワーク的な印象を受けるところもございます。作成者、利用者、そして監査人の負担を減らし、活用しやすい制度設計が重要と考えます。特に、会社法の監査報告書日が短時間にやってまいりますので、監査時間の確保が課題になっております。その他の記載内容の吟味の観点からも、十分な時間が確保できる形での会社法と金商法の一体開示や制度改正についても、ぜひ御検討いただきたいと考えております。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。
 以上、5人の委員から御意見を頂戴しました。林田委員から一言発言をという希望が出ておりますので、林田委員、よろしくお願いいたします。

【林田臨時委員】
 お話ありがとうございます。今日、様々な方からサステナビリティレポートに関しての御意見とか心配事をいただきました。日本で今、どう対応しているか、これは世界的な動きが非常に早いというのは皆さん御指摘のとおりで、日本でこれにどう対応していくかというのは、先ほど廣川課長から御説明いただいたとおりなんですけども、私どもFASFの下に組織をつくって対応していくということで、非常に責任が重大だということは感じております。
 この場をお借りして一つお願いなんですけども、サステナビリティレポーティングの基準づくり等々をやっていくにはそれなりの体制が必要でありまして、財務的な問題もさることながら、やはり人です。それと情報、これを広く皆さんからは支援をいただいてやっていくことが、これは成功のために不可欠だと思いますので、この場をお借りして、人的支援、それから、また情報の支援等をよろしくお願いして、私からの発言を終わります。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 どうもありがとうございました。
 以上でチャットに入りました御発言希望による御質問、御意見等は出そろったと思います。ほかに御発言希望等ございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、本日、多数の御意見を頂戴いたしましたが、金融庁から何かコメントございますでしょうか。

【古澤企画市場局長】
 徳賀会長ありがとうございます。企画市場局長の古澤です。一言御礼を申し上げたいと存じます。
 本日の総会は、「品質管理基準の改訂」の取りまとめの御報告ということで開催したわけですが、幅広い課題について、多岐にわたる御意見ありがとうございました。個々の御意見に一つ一つお答えできませんが、我々としての「全体観」、これらの課題の受止めについて、簡単に御紹介できればと思います。
 「資本市場」という目線からみると、コロナ後を見据えた市場の在り方に加え、大きな課題として、1つは、今回取り上げられましたサステナビリティへの対応、もう一つは御指摘のあったAIも含めたデジタル化への対応を、市場制度としてどう進めていくのか、さらにそれを支えていく人材の育成を、どう進めていくか、こういう大きな挑戦が我々の前にあるということかと思います。
 その点、「監査」については、在り方懇で御議論いただいて論点を整理し、方向性を出した課題、それから例えば内部統制や試験制度のように、これから引き続き検討する課題を整理させていただいたわけです。「開示」については、例えば、一体開示や林田理事長からも御指摘のあった、「サステナビリティ」が大きな宿題になっているということかと思います。
 「会計」については、IFRSの任意適用や日本基準の高品質化が進んできている中で、JMISや将来の強制適用の問題をどう考えるかといった点を次の課題として御指摘いただいたということかと思います。今後とも引き続き、企業会計審議会の皆様にも、それぞれの議論の進捗を御報告し、御意見を伺いながら、一歩一歩前に進めていきたいと考えております。
 どうもありがとうございました。
 
【徳賀会長】

 どうもありがとうございました。
 本日は、様々な立場から多数の貴重な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございます。今回いただいた御意見を踏まえて、次回以降の議論の参考にさせていただきたいと思います。
 それでは、本日の議事を終了させていただきます。本日はお忙しいところ御参集をいただきまして、ありがとうございました。これにて閉会いたします。
 



 

以上

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企画市場局企業開示課

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)(内線3691、2999)

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