企業会計審議会総会・第9回会計部会議事録

 

1.日時:令和4年9月29日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第1特別会議室

 
【徳賀会長】
 それでは、定刻を少し過ぎましたが、ただいまより企業会計審議会総会・第9回会計部会合同会合を開催いたします。皆様には、御多忙の中御参集をいただき、誠にありがとうございます。
 本日の総会は、委員14名中12名、会計部会のほうは23名中18名の御参加が予定されておりまして、どちらも定員を満たしておりますことをお伝えいたします。
 本日の会議でございますが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、企業会計審議会議事規則第1条第2項にのっとり、オンライン会議にて開催させていただいております。
 それではまず、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則第4条第1項にのっとり、本日の会議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。異議ございませんか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【徳賀会長】
 異議ないようですので、本日の会議の模様は、ウェブ上でライブ中継させていただきます。また、議事録はこれまでどおり作成し、金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定ですので、御了承いただきますようお願い申し上げます。
 さて、本日は、鈴木政務官においでいただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。御挨拶の際には、カメラ撮影を行う予定でございますので、よろしくお願いします。それでは、鈴木政務官、よろしくお願いいたします。
 
【鈴木政務官】
 ただいま徳賀会長から御紹介いただきました、金融庁担当の大臣政務官の鈴木英敬でございます。
 本日はお忙しい中、委員の皆様には御参加を賜りまして、心から感謝を申し上げたいと思います。企業会計審議会総会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 政府は、新しい資本主義により持続的成長を促すとともに、その成果を家計に還元することを実現していく上で、我が国金融資本市場の機能を高めていくことに注力をしております。今回の企業会計審議会総会で御議論いただく内部統制報告制度は、ディスクロージャーの適正性を確保するものであり、金融資本市場に対する内外の信頼性を高めていく上で欠かすことができません。さらに、企業における内部統制の取組は、企業活動が有効に機能し、経済社会システムが円滑に回っていくための根幹であり、その実効性を向上していくことが期待されております。
 本日の企業会計審議会では、会計監査や会計基準を巡る主な動向についても御議論いただく予定と伺っております。このような内部統制や会計監査等の制度インフラについては、我が国金融資本市場や経済の健全な発展を促していくために、不断に整備を進めていくことが重要であると考えております。
 最後になりましたが、委員の皆様方におかれましては、本日も幅広く活発な御審議を賜りますようお願い申し上げまして、私からの御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 
【徳賀会長】
 鈴木政務官、ありがとうございました。
 カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
 まず、オンライン会議に関して、2点ほどお願いがございます。御発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にして、御発言されるときにはマイクをオンにしてミュート解除で御発言いただき、御発言が終わられたら、またミュートにしていただくということでお願いいたします。また、支障のない範囲で構いませんが、会議中は、お顔が拝見できるように、カメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。
 第2点目として、御発言を希望されるときですが、チャット機能を使って、全員宛てに発言希望である旨とお名前を共に入れてお送りください。お名前につきましては、協会名などの組織名でも結構でございますので、御入力をお願いいたします。それをこちらで確認させていただいた上で、私から指名をさせていただきたいと思います。なお、記録を取ります関係上、御発言に際しては、念のために御自身のお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければ助かります。
 議事に入ります前に、お知らせがございます。皆様御承知のとおり、昨年11月に小賀坂敦臨時委員が御逝去されました。ここに小賀坂氏の御逝去を悼み、また、故人の御功績をたたえ、改めて心より御冥福をお祈り申し上げたいと思います。
 次に、委員の異動がございますので、事務局からお願いいたします。
 
【廣川企業開示課長】
 ありがとうございます。金融庁企業開示課長の廣川でございます。よろしくお願い申し上げます。
 まず、本年9月で石原秀威委員が御退任され、佐々木啓吾委員が御就任されておりますので、御紹介をさせていただきます。
 続いて、同月に川西安喜臨時委員が御就任されておりますが、本日は御欠席をされておりまして、代理として、同じ企業会計基準委員会の委員の中條恵美委員に御出席をいただいております。よろしくお願い申し上げます。
 事務局については、お手元の配席図をもって御紹介に代えさせていただきたく存じます。よろしくお願いいたします。
 私からは以上でございます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。まず、内部統制を巡る動向について事務局から説明いただいた後に、御質問、御意見をお伺いしたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】
 徳賀会長、ありがとうございます。金融庁開示業務室長の齊藤でございます。それでは、内部統制に関して、特に内部統制報告制度を巡る動向についての説明をさせていただきたいと存じます。お手元の資料1に沿って御説明をさせていただきます。
 おめくりいただきまして、1ページでございますけれども、こちら今回の説明の概略でございます。我が国の内部統制報告制度については、財務報告の信頼性を確保するため、アメリカの企業改革法やCOSOの内部統制フレームワークを参考に、金融商品取引法の改正によって2008年に導入されているところでございます。
 その後、環境変化もございまして、新たな課題が出てきてございます。まず、制度導入以来十数年が経過しておりますが、これまで企業の経営管理・ガバナンスの向上に一定の効果があったものの、近年実効性に懸念があるというような御指摘がございます。また、国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論も進展しているところでございます。
 これらを踏まえまして、内部統制の実効性向上に向けた議論を進めるべきではないかという、このような御意見をいただいているところでございます。例えば有識者の方々から様々な提言がなされておりますし、また、会計監査の在り方に関する懇談会、または今事務年度の金融行政方針においては、内部統制の整備・運用状況について分析を行った上で、国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論の進展も踏まえながら、内部統制の実効性向上に向けた議論を進めるべきとされております。
 このようなことを受けまして、内部統制の実効性向上に向けて、本日の企業会計審議会総会における御議論を踏まえまして、内部統制報告制度について、基準または実施基準などの改正を含めて、企業会計審議会内部統制部会で審議いただきたいと考えております。以上の点をこの後のページで御説明申し上げます。
 次のページ2でございますけれども、こちらは内部統制報告制度導入の背景・経緯になっております。アメリカでは、2002年に企業改革法の制定で義務づけられておりますし、また、その後、日本では2006年に金融商品取引法で義務づけされているところでございます。この制度の導入の背景としては、2000年代のディスクロージャーを巡る不適切事例がございますけれども、こちらを受けて、財務報告に関する企業の内部統制が有効に機能していなかったのではないかという、このような懸念が背景にございました。日本においては金融商品取引法で導入され、それに伴って基準や実施基準またはQ&Aを公表したり、または日本公認会計士協会から実務指針が公表されたりという形で制度の枠組みが整備されてきておるところでございます。
 次に、3ページに参ります。こちらは国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論の進展についてでございます。まずリスクマネジメントの部分でございますけれども、こちらは、1990年代ぐらいまでは、いわゆる伝統的なリスクマネジメントの観点から、リスクの主にマイナス面についていかに回避・抑制するかに重点が置かれてきておりました。その後、90年代以降に、現代的なリスクマネジメントの観点から、リスクをプラス・マイナスの両面から総合的に捉えていかに管理するかに重点を置いた議論が、バーゼル委員会などで展開されてきております。
 また、アメリカ、イギリスにおいても同様の傾向、動向が見られております。アメリカについては、内部統制に関する国際的なフレームワークを策定しますトレッドウェイ委員会支援組織委員会、いわゆるCOSOは、2004年に全社的リスクマネジメントの統合的フレームワークにおいて、戦略と目標設定の中にリスク選好とリスク許容度を位置づけております。また、内部統制の統合的フレームワークについても改訂しておりまして、内部統制の構成要素についての基本概念を表す原則や着眼点を明示したり、ガバナンス、テクノロジー、不正防止に関する点も強調されたりしております。
 イギリスでは、コーポレートガバナンスの議論の中で、ハンペル委員会の報告書において、コーポレートガバナンスの重要性はアカウンタビリティのみならず、企業の繁栄に貢献することであるという攻めの視点が明記されておりますし、ターンバル・ガイダンスなどにおいては、取締役会におけるリスクベースのアプローチなどについて記載されているところでございます。
 続きまして、4ページに参ります。こちらは外国における内部統制報告制度の状況でございます。アメリカにおける制度導入後、日本のほかにも、韓国、カナダ、中国などで制度が導入されております。各国では制度導入後、状況に応じてそれぞれ制度が更新されてきているところでございます。一方、欧州では、財務報告に関する内部統制報告制度という特定の制度というよりも、ガバナンス・コードなどで内部統制全般を規律する傾向があるというふうに認識しているところでございます。
 最後に、5ページ目になります。内部統制報告書の提出状況の推移を示させていただいております。こちら、開示すべき重要な不備が内部統制についてございまして、内部統制は「有効でない」とした者の推移を棒グラフにしております。下の濃い青色の部分は、当初提出された内部統制報告書において「有効でない」としている者数、その上に積み上がっている薄い青色のものは、訂正内部統制報告書の提出によって、当初「有効」であったものを後日「有効でない」というように評価を改めたケースとなっております。これらの数字についての留意点でございますけれども、特に近年の数字についてですが、今後追加での訂正内部統制報告書の提出、いわゆる過年度修正によってそれぞれの年の数字が積み上がってくると、このような者数が増加してくるという可能性がございます。特に直近の数字を見るときには、この点について留意が必要かと考えております。
 この棒グラフを見ますと、まず、内部統制について開示すべき重要な不備が存在すると開示したケースが、全体として引き続き一定数見られるところでございます。また、さらに、当初「有効」と評価した一方で、後日不適切な会計処理が発覚して、訂正有価証券報告書の提出を契機として「有効でない」と訂正されるケースも大きな割合を占める年度が見受けられるところでもございます。
 私からの説明は、簡単でありましたが、国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論の進展や、または最後のスライドの御説明にもありますけれども、内部統制を巡る整備の状況などについてお話しさせていただきました。これらの点や、または環境変化の速さを踏まえまして、スピード感を持って、例えば内部統制報告制度についての基準・実施基準などの改正を含めて、企業会計審議会内部統制部会で御審議いただきたいと考えております。
 私からは以上でございます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。それでは、事務局の説明につきまして、御質問、御意見等をいただければと思います。チャット機能を使って、発言希望である旨を送っていただければと思います。
 なお、御質問の回答につきましては、数名の委員から御質問を頂戴した後に、まとめて事務局等から御回答させていただきます。御意見につきましては、原則としてこちらで御意見として承り、次回以降の議論の参考にさせていただきます。もちろん御質問、御意見について私の分類が間違っておりましたら御指摘いただきたいと思います。よろしくお願いします。
 水口委員、よろしくお願いします。
 
【水口委員】
 ありがとうございます。水口です。
 財務報告に関わる内部統制が有効に機能していなかった事例が散見するのは御説明いただいたとおりで理解いたしております。また、個々のリスクのマイナス面のみを捉えて、損失とか危険をいかに回避するかといったことに重点を置いている企業が、足元でも存在しているのではないかと思っております。不正リスク対応の観点、また、企業の持続性を下支えする観点からも、ガバナンスの重要性を踏まえながら、事業を行う上で想定されるリスクについて、様々なデータを一元的に活用して、複眼的・統合的に捉えるPDCAサイクルを伴う実効性のある強固なリスクマネジメントの枠組みは非常に重要だと考えております。
 事業を行う際には必ず事業リスクを取ることになります。統合的なリスクマネジメントの枠組みの中で、敢えて好んで取るリスク、つまり、リスク選好とリスク許容度を明確化して、企業のパーパスと整合的なハイレベルな長期目標を視野に入れた戦略、企業の財務的・人的資源の配分の在り方などにも注目しているところです。こうした総合的・統合的な強固なリスクマネジメントの枠組み及びその運用状況に関する企業開示などは、事業環境が非連続に変化する中で、監視及び管理体制の十分性を検証しつつ、会計上の見積りの在り方などが不適切な企業開示につながる余地も意識しながら、将来にわたる企業価値、また、社会的価値が実現される蓋然性を判断する際にも非常に有用だと考えております。
 こういった観点から、財務諸表の利用者といたしましては、統合的・総合的なリスクマネジメントの枠組み及びPDCAの実施に関する企業開示にも大いに関心があるところです。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。
 続きまして、松井臨時委員、お願いいたします。
 
【松井臨時委員】
 松井と申します。よろしくお願いいたします。
 今回この審議についてのご提案については非常に賛成でございますけれども、「実効性を上げるために」という言葉が入っている中で、この実効性というのが何を問題としているのかということを今少し考えていただければと思います。最後のスライドが示しているとおり、日本における内部統制というのは形骸化、報告書の形骸化とか、経営者による無効化を含めたコンプラのレベルで問題が生じている可能性を示唆しているわけですが、他方で、途中に出てきた国際的なCOSO-ERMというのは、これは経営マターとしての効率性を考えたリスクマネジメントをどうするのかという潮流であって、2つ、二兎を追うということではあるかと思いますけれども、相反する部分もあります。実効性というのがコンプラの水準を上げつつ、かつリスクマネジメントもうまく生かせるべきであるということから、日本にとってフィージビリティがあるような制度が望ましく、審議に際してはこの点に気をつけなければいけないであろうと感じております。ぜひ頑張っていただければと思います。
 特に最近の議論では、内部監査を担う人たちをどういう形で育成するのか、それから、そういった人たちがどうやって報告を上げるのかといったような実務レベルでの詳細な検討がかなり進んでいるようでありますので、積極的に取り入れていただければ、非常に日本の監査もよくなるのではないか、内部統制もよくなるのではないかと期待しております。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 御意見、御質問ありがとうございました。御質問の部分に関しましては、後ほど対応させていただきます。
 続きまして、金子委員、お願いいたします。
 
【金子委員】
 ありがとうございます。金子でございます。
 内部統制報告制度は、企業の中における内部統制に関する意識を高めたり、あるいは企業の中やグループ内に内部統制を浸透させたりするという意味で一定の機能を果たしてきたのではないかとは考えております。しかし時間がたつことによって幾つかの問題が見えてきたと思いますので、今回検討されるということについては非常に賛成です。
 それでは、私が感じている課題を幾つか申し上げたいと思います。まず1点目としては、内部統制に関する理解というのが、例えば経営者、担当者、監査人の中では、どうしても定例的な業務プロセスのチェック、あるいはそれの形式を整えるというような小さな業務という理解になってしまっている、誤解になっているところもあるように思います。リスクマネジメントを支える、経営にとっての非常に重要な一部であるということを再度確認できるような基準にする必要があるのではないかと思っております。
 それから、2点目は、経営者が記載する内部統制報告書についてです。この記載内容は、現状は、特に問題がない場合、重要な不備がない場合には、どこの会社の報告書を見ても、大体、表紙と合わせて2枚、書いてある内容はほぼ同じという定型的なものになっています。ただ、企業にとってのリスクはそれぞれ違うはずですので、それぞれどこにリスクがあって、それに対する内部統制はどこが重要であり、それゆえにどういう内部統制を構築したのかというようなところをもっと説明することによって、内部統制のポイントが分かってくるのではないかと思います。
 有価証券報告書においては、非財務情報においてリスク情報の開示が非常に充実してきている中で、こうしたリスクと内部統制との関係が分かりにくいというのは残念に思いますし、内部統制報告書だけは記載が定型的になっているというのも残念に思います。これらへの対応として開示の充実を図るというのも大事なポイントではないかなと思います。
 それから、金商法と会社法との関係や、非財務情報との関係でいいますと、会社法と金商法で内部統制について開示を求めている範囲が違っています。金商法においても、利用者の方々が企業のリスク等を考えるに当たっては、非財務情報と財務情報を総合的に見て判断されるということではないかと思いますので、非財務情報が適正に作成される内部統制というのも重要なものではないかと思いますので、こうした点も検討する価値があるのではないかと思っております。
 それから、3点目は、監査についてです。現状は、経営者が作成した内部統制の適正性を監査するということになっておりますので、内部統制に重要な不備があっても、適正に記載されていれば適正の監査意見が出るというところは利用者にとっては分かりにくいのではないかと考えます。それからさらに、内部統制の評価範囲等について、経営者と監査人で見解の相違等がある場合にあっても、質的な違い、質的な判断というところにはかなり主観的な判断も入りますので、評価の見直しを促すというのは隔靴掻痒というところもあるかと思います。経営者が評価するということは非常に重要であり、その結果を利用するということも十分あり得ますけれども、やはり監査人自身が自ら評価範囲を決めて有効性を評価するということも非常に意義があるのではないかと考えておりますので、こうした点も含めて検討課題に乗せていただけるとありがたいなと思っております。
 以上でございます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見として承りました。
 続きまして、谷口臨時委員、お願いいたします。
 
【谷口臨時委員】
 谷口でございます。ありがとうございます。
 制度を作ってから時間も経ちましたし、新しい方向で動き出すというのは当然だと思いますが、そうであればこそ、やはり重要性、効率性や有効性といったところにフォーカスをしていくことは非常に重要であると思っています。
 我々のような企業側、作成者の立場からすると、経験上、2つの重要なエリアがあるのではないかと思います。一つはマネジメントコリュージョン、経営者不正です。これは過剰な業績連動報酬などといった株式インセンティブみたいなものが背景に有り、昨今の重要な不正というのはこのエリアに起因する事例が多いと思います。また、最近の日本企業によるM&Aの増加トレンドを反映した、海外子会社での統制の不全です。これはM&Aの数も増えましたけれども、やはり日本人の駐在員も随分減っていまして、なかなか現地のスタッフに対してこういったリクワイアメントをちゃんと周知徹底するのが難しくなっている。こういった2つの分野が結構重要ではないかなと思ったりします。
 昨今、企業の経理部の人員も非常に採用が難しくなったりしているため、スタッフの数、リソースをそろえるのが難しい状況になっています。ということで、よりフォーカスした形で、有効性・実効性を重視する形で効果的に制度を変えていくのは、大事な論点かなと思っております。
 以上でございます。
 
【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 続きまして、川村委員、お願いいたします。
 
【川村(雄)委員】
 川村でございます。ありがとうございます。御説明大変参考になりました。まず、意見、感想めいたものと質問をさせていただきたいと思います。
 意見としては、やはり十数年日本でもこの内部統制という仕組みが導入され、かなり各企業も手慣れてきたというか、体制も整備されてきたという評価は一定の程度していいと思うのですが、ただ、現実問題として、なかなか具体的に、現場あるいは経営のほうでどのようにこれを評価し、作業していき、そして次に繋げるのかという動き、別の言い方をすると、経営全体としてのPDCAというのが十分馴染んでいるかどうかという点についてやや疑問が残る点と、もう一点は、今後グローバルな新しい動きを受けつつ、どのように展開していくのかという課題が残っているという点を感じております。そういう意味で、当審議会におけるこの議論は大変意義が深いと思います。
 その中で、さらに突っ込んで申しますと、私はただいまの谷口委員の御指摘は大変刺さるものがありました。私も複数の企業に絡んでこのような仕事もしておりますけれども、やはり現場というか特に海外が、コロナ後ということもあって、非常に苦労しております。微に入り細を穿った対応をしているつもりでも漏れてしまう。特に途上国等においては、なかなか日本の本部と現地とのギャップがあるというのは事実であります。ある意味で不可避というか、避けられないようなものがあるのも事実なので、この辺もよく考えていかなければいけないのではないかと。
 まして、今後、本日の後半のアジェンダにありますけれども、特に非財務情報の開示がどんどん拡大し、また深化、深掘りされていく中で、この問題というのは大きくなるのではないか。特に各企業とも、例えばガバナンス委員会とか、コンプライアンス委員会とか、リスクマネジメント委員会だとか、トップも参加する委員会もあり、かつ財務・経理・総務部門で特化して担当している担当者あるいは兼任の担当者もおりますけれども、スタッフ数は圧倒的に足りないと思いますし、どうしても漏れが出てきてしまう部分はあって、言わば内部統制の理念と、現場でどう対応していくかというところのギャップをどのように埋めていくかというのが大変大きな課題だと認識しております。
 その上で質問をさせていただきたいのですが、本日の資料の5ページにあります内部統制報告書の不備の点について、かなり長い、十数年にわたっても大体五、六十から100ぐらいが毎年、ならしていけば、あまり増えもしないし、減ってもいない、一定数ある。もちろんアイテムは全部違うと思いますが、なぜ毎年この程度が発生してしまうのかという共通の理由は何かあるのでしょうかということが質問の一つです。
 もう一つの質問は、このような状況が発生する原因として、ガバナンス体制による違いというのはあるものなのか、つまり、いわゆる監査役会設置会社と監査等委員会設置会社と委員会設置会社、このような体制の違いによって内部統制の結果についても差が出てくるものなのかどうかという点について、もしデータなり参考資料等ございましたら、お教えいただければと思います。
 以上です。ありがとうございます。
 
【徳賀会長】
 御意見、御質問ありがとうございました。
 では、これまでにいただいた御質問に対して、事務局より回答をお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。開示業務室長の齊藤でございます。今、先生方から色々な御意見を頂きました。どうもありがとうございます。いずれも事務局として重要な点だと思っておりますので、頂いた御意見を参考にして、議論を深めていきたいとに考えております。
 頂いた御質問は2点と考えております。まず、松井委員からいただいた、実効性についてのお話でございます。何があれば実効的だと言えるのかというところでございますけれども、まさに委員からも御指摘いただきました、形骸化しているのではないかというところはございますし、実効性を上げるというところの視点はあろうかと思います。おっしゃっていただいたコンプライアンス、または経営としてのガバナンスを上げていくというところはございます。形骸化という点でよくご指摘いただきますのが、今、内部統制報告制度で内部統制を評価する中で重要視されているのが、やはりリスクベースでやるということ。各会社様それぞれ、事業が一様ではない、リスクの所在も一様ではないというところですので、それぞれしっかり各社様のリスクに応じて、内部統制を評価していただいて、それで何か足りないところがあればしっかりと内部統制を構築していくというところがあろうかと思います。
 そういった中で、制度導入後十数年たってきていて、本当に毎年毎年、そのような環境変化や事業変化を捉えてリスクベースで内部統制評価ができているのかというところ、そこで実効性が維持されているのか、または向上しているのかという御指摘をいただいているところですので、ぜひ内部統制報告制度の審議の中では、この制度を実行するに当たってのコスト、また効率性も考えながら、リスクベースというのをどのように後押しできるのかというところを考えていく必要があるかと考えております。
 それから、川村委員からいただきました、開示すべき重要な不備の事案が積み上がっているということで、どういった要因が共通としてあるのかというようなお話をいただきました。それから、谷口委員からもお話しいただきましたけれども、やはり経営層による不正、これがいわゆる内部統制の無効化などにつながっていくわけですけれども、開示の不正事案とかそういうものを見ておりますと、やはりそのような要因で起きているというところは引き続き一定数見られているのかなというところはあろうかと思います。もちろんそうではなくて、現場のほうで会計処理についての知見が足りていなかっただとか、またはオペレーションのミスであったとか、そういうところはあろうかと思いますけれども、やはり共通なところとしては、そういう内部統制の無効化というところは一つの点としてあろうかと思います。
 その点で申し上げますと、川村委員からの2つ目の御質問に繋がってくると思いますが、ガバナンス体制によって何か変化が出てくるのかというところはございますけれども、やはりガバナンス体制によって、内部統制の無効化といったものが防げる体制になっているのかどうかとか、そういう点もあろうかと思いますので、この点もやはり内部統制報告制度を考えていく上に当たって、内部統制の実効性の向上という点にいかにつなげていけるかという点で、ここのガバナンスはどうあるべきか、内部統制の無効化にどう対応できるのかというところは併せて考えていくべき論点だと考えております。
 
【徳賀会長】
 御回答ありがとうございました。
 では続いて、御意見、御質問を受けたいと思います。岡田委員、よろしくお願いします。
 
【岡田委員】
 今日は御説明ありがとうございました。まず内部統制報告書と報告制度ですけれども、長い間時間が経ったので色々な改善点はあるとは思いますが、だいぶ定着してきたと思いますので、今後、実効性の向上に向けた検討を内部統制部会ですることに賛成です。
 私も長い間、企業で、それから、監査役として内部統制を見てきた立場から申し上げますと、内部統制というのは人のためにやるものではない。もちろんステークホルダーのためでもあるのですけれども、経営者自らのためにやるという意識が必要だと思います。日本の場合、経営者の関心が薄いのではないか。例えば重要な不備があるというと経営者もこれは大変だとなりますが、ほとんどの内部統制の社内の報告は、「特に問題ございません」というふうに終わっているのではないでしょうか。
 そういう意味では、5ページにあるような、社外に重要な不備があると開示するのはかなり大きな問題だと思いますけれども、社内で問題が全くないことは恐らくないと思いますので、軽微な不備も含めどう改善するのか、ある程度重要性のある不備があったら、必ず経営者には報告して、改善の動向、改善のフォローアップ、これをきちんと報告するような体制が社内で必要だと思います。
 その意味で、この不備が開示されているというケースを聞きまして、こんなにあったのかと思ったのですけれども、質問としては、この不備を公表している会社というのが、毎年毎年同じ重要な不備が報告されているようなケースもあるのか、改善はしながら毎年入れ替わり立ち替わり重要な不備が出てくるのか。それから、開示すべき重要な不備が存在するとしたけれども、実は最初は不備がないと言っていたのに、事後的に訂正してきたと。これは恐らく会計不正とか不祥事があった会社が多いのではないかと思いますけれども、まず事実確認をさせていただきたいと思います。
 と申しますのは、先ほど経営者にこそ関心を持ってもらいたいというようなことを申し上げましたけれども、私の印象では、上場会社、特にプライムに上場しているような会社の内部統制報告書は、ほとんど紋切り型的なものですけれども、ある程度充実した人数を置いて、内部監査もしっかりやって、大体できていると思っていいのではないかと思います。
 ただ、中小企業の場合は、最近の不祥事を見ましても、内部統制報告書作成のベースとなる3点セットと言われるような、職務記述書、フローチャート,リスクコントロールマトリックスを作成しているのか大変不安に思います。さらに不祥事を起こした会社の多くの会社では、いわゆるトップマネジメントによる内部統制の無視というのが見られます。従って、必ずしも今の制度だけでは、内部統制報告書の不備がないと提出した場合でも、不正が起きないという保証はないとは言えません。
 ですから、コーポレートガバナンス・コードの領域になるかもしれませんが、取締役会がちゃんと機能しているかとか、あるいは監査役等が機能しているかというようなことも内部統制の実効性を高めるためには必要なのではないかという気がいたします。
 そういう意味で今後引き続き検討することは賛成ですけれども、今までのボイラープレート化した報告書について、さらに詳しく出せとか、より細かい監査が必要だという方向ではなく、省力化するところは省力化しながら、ポイントを絞った検討が必要なのではないのかなという感じがいたします。
 私から以上です。ありがとうございました。
 
【徳賀会長】
 御意見、御質問ありがとうございました。御質問には後ほど対応させていただきます。
 続きまして、小倉臨時委員、お願いいたします。
 
【小倉臨時委員】
 日本公認会計士協会、小倉でございます。
 企業においては、コロナ禍を契機に企業情報を作成するプロセスについて電子化を進めておりまして、さらに、ビジネス全体についてもデジタルトランスフォーメーションを進展させていると理解しております。DX化の進展によりまして企業の内部統制の充実強化も進んでおり、そのような状況を踏まえて基準等について改正すべき点があるか否かの検討を行うことには賛成をいたします。
 一方で、会計監査の動向として、監査報告書におけるKAMの開示をはじめ、ここ数年で大きな制度改正が複数あります。本年度は重要な虚偽表示リスクの識別と評価に関する監査基準の改定が行われ、監査従事者は所要の研修を受けて、現在実務対応を行っているところです。さらに、監査に関する品質管理基準の改訂や倫理規則の改正など、高品質な監査を遂行するための新基準の適用が予定されています。加えて、今後、グループ監査についても大幅な改正が予定されています。監査の現場においてはまず、これらの国際的な基準と同等性を保つための制度改正対応が最優先課題であると考えており、内部統制基準等改正の検討に当たっては、優先課題やリソースの制約を踏まえつつ、拙速にならないように時間軸も十分考慮いただきたいと申し上げます。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見として承りました。
 続きまして、林委員、お願いいたします。
 
【林委員】
 ありがとうございます。関西学院大学の林です。御説明ありがとうございました。
 時間のこともありますので、手短に申し上げますが、まずは、制度導入からの時間の経過や環境変化等々に応じて、内部統制部会で基準等の改正に向けた議論を行うことに賛成いたします。私の意見は、先ほどの事務局から松井委員へのご回答や今の小倉委員の御意見にかなり関係しますので、ポイントだけ申し上げます。
 まず1点は、内部統制というのは最終的に企業自治の問題ですので、企業の実情は様々ですが、その実情・状況に応じた柔軟な体制整備が可能な基準にすべきだろうと、こういうふうに考えております。昨年、本審議会で承認されました「監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書」でも、監査事務所の状況に応じてリスクを識別して主体的に対応する、いわゆるリスクベースの考え方が導入されました。今回の財務報告に係る内部統制についての見直しでも、同じような考え方、アプローチが有効であろうと考えています。
 それから、先ほどのご発言にもありましたDXで随分と企業の状況が変わっていますので、現時点では非常に重要な論点だろうと思っています。
 最後に、今回の議論は、最終的には制度設計の問題ですので、もちろんコストベネフィットの比較考量というのは重要ですけれども、コスト負担面が強調され過ぎないように、どちらかというと、いかに有効性・実効性を高めるかというところに重点を置いて議論を進めていただきたいと考えています。
 以上です。ありがとうございました。
 
【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 次に、堀江委員、お願いいたします。
 
【堀江委員】
 堀江でございます。ご説明ありがとうございます。手短に2点申し上げたいと思います。
 まず、内部統制報告制度につきましては、これから部会でいろいろな議論がなされるかと思いますが、これまで形骸化対応といった言葉が出てきましたが、これに基づいて個別的な課題を潰していくということはもちろん大切ですけれども、根本的に何が問題かということに一度立ち返っていただいて、よりよいシステムへの改定という前向きの視点を持った議論をお願いできれば幸いです。
 それから2点目、これまで訂正報告の問題が度々出てまいりましたが、これにつきまして、法令改正等の関係もありちょっと自信がないのですけれども、訂正は一度で済ませるようにして、過年度に遡った訂正をやめる。これはダイレクトレポーティングを採用するかどうかということとも関連してきますけれども、内部統制報告書の訂正は財務諸表の訂正とは意味が違うのではないかと思います。また、過年度に遡った訂正というのは、あまりにも形式的な措置のようにも思います。そこで訂正事案がなぜ起こったかということを踏まえて、内部統制のどこをどう直すのかという将来に向けた訂正という考え方ができないかどうかも含めて御検討いただければと思います。
 以上でございます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見として承ります。
 続きまして、青臨時委員からお願いいたします。
 
【青臨時委員】
 恐れ入ります。東証、青でございます。手短に申し上げさせていただきます。
 まず、内部統制部会をつくることで御検討いただくということについては大変賛成させていただきます。
 私どもも、個別の事案を多々見る機会がございますけれども、やはりできている会社とできていない会社の差が大きいというのが実感としてございます。不正会計の状況などを見ますと、問題がありそうなポイントがチェックの対象外になっていたり、内部統制の有効性が無効化されてしまっていたりということも非常に多く、見ていないポイントで問題が起きているということが不正の事案ではかなり見受けられるという感じがするところでございます。
 そうなってしまいますと、手間がかかる割には効果がないということになってしまいますので、その点をよく考えていただけるとよいのかなと思います。必要なコストはしっかりかけるということは必要でございますけれども、そのときに効率性も十分に考慮した仕組みを構築するといった観点もぜひ御検討いただきたいと考える次第でございます。そのときのポイントになりますのが、内部統制の性格や目的がどういうところにあるのか、そこに応じて重点の置き方やメリハリを検討していくというのが一つの大事なことではないかなと思います。
 それから、もう1点としては、経営者の意識について、現状では、法令で決められているので提出しなくてはならないから内部統制をするんだと、そういった感覚が、一部の経営者だとは思いますけれども、不正をする会社にはあるように感じられますので、やはり個々の経営者が内部統制は大事だということをしっかり意識していただいて取り組んでいただくというようなところも重要なポイントであることを意識して、御検討のほうを今後ぜひお願いできればと思う次第でございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【徳賀会長】
 御意見を承りました。ありがとうございました。
 熊谷臨時委員から御意見いただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【熊谷臨時委員】
 ありがとうございます。熊谷でございます。皆様から随分意見が出ていまして、私自身も、内部統制の基準の在り方について実効性を高める方向で検討するということに賛成でございます。
 先ほどの岡田委員からの御質問とも絡みますが、5ページ目のグラフ、これはちょっと解釈が難しい部分もあるかなと思います。例年、提出者の大体2%弱から3%、多い年で3%ぐらい不備があるということになります。これを小さいと見るか、大きいと見るか。他の委員の皆様からいろいろ御指摘がありましたとおり、もし形骸化しているということであるとしますと、ここに毎年見つかっているのが氷山の一角なのかどうかというのはすごく気になっております。
 具体的には、この濃い青、開示すべき重要な不備があり内部統制が「有効でない」と最初からそういう評価が出ている、あるいは訂正報告書の提出で「有効」から「有効でない」という会社とした者数を累計で計算しましたらば、上の段の訂正報告があったというのが784件、それから、下の濃いほうが461件、合計で1,245ケースあったということであります。恐らくこの中で重複といいますか、過年度修正もありますので、同じ会社が現れてくるケースもあろうかと思いますけれども、毎年毎年にすると100社行くか行かないかぐらいの数字であっても、こうやって並べてみると、数百社ぐらい、こういう不備があったのかなというふうにも見えます。まず、そういう理解でいいのかどうか。
 仮にそういう理解であるとしますと、4,000社弱ぐらいの上場企業のうちで、これまで累計で数百社にも及ぶ不備のケースがあったということですと、やはり個々の会社の問題というよりも制度として何か問題があるのかもしれないなと思っております。ですので、そういう理解といいますか、ここで重複等を消して数百社ぐらいが過去において内部統制の不備があったというそういう理解でいいのかどうかというのを一つ確認させていただきたい。
 また、意見として、形骸化の御指摘がたくさんありますが、これは質問にも関わりますが、内部統制の好事例というのは国内外で見つけることができるのかどうか。内部統制報告書だけ見ておりますと、非常に定型的ですのでなかなか分からないのですが、仮にそういう事例がある、御当局、あるいは監査人・監査役、学識経験者の方々から御紹介いただけるのであれば、そういう事例についても研究して、なぜそのような会社がうまくいっているのかというような視点も必要なのではないかと思いました。
 以上でございます。どうもありがとうございます。
 
【徳賀会長】
 御意見、御質問ありがとうございました。御質問につきましては、これまでの御質問と一緒に事務局よりこれから回答してもらおうと思います。
 それでは、これまでの御質問に対して、事務局より回答をお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。開示業務室長の齊藤でございます。
 まさしく今、熊谷委員から御指摘いただきました好事例のところについては、こちらについても検討していきたいと思っております。
 それから、岡田委員と熊谷委員から御質問がございました、最後のスライドの数字でございますけれども、御指摘のとおり、複数回同じ会社様でこちらのほうに数字が出てきているところはございます。これは実際ネットで何社なのかというところは手元に数字がございませんので、また検証してまいりたいと思います。
 それで、これは氷山の一角なのかどうなのかと、これは制度上の何か課題もあるのではないかというお話ございましたけれども、まさに、委員の皆様からおっしゃっていただいた形骸化のところで、そういうような結果として、ちゃんとリスクベースで内部統制を見ることができていない、例えばこの事例の中では、当初の内部統制報告の中で「有効」だと言っていたけれども、後から訂正をしてきたケースの中には、もともとの内部統制評価の範囲から外れたところから不備が見受けられているとかいったところもございます。そうすると、最初の内部統制の評価のところがしっかりリスクに応じたものでできていなかったのではないかというようなところもございますので、こういうリスクベースの内部統制評価というところを後押しするというところが今回の一つの見直しの重要なポイントだと我々としても考えております。
 御意見ありがとうございます。こちら、頂きましたものをしっかりと考えて、議論を進めさせていければと思っております。
 
【徳賀会長】
 御質問いただいた皆様、ただいま事務局より回答をいたしましたが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、鈴木政務官は、この後公務がおありということですので、ここで御退席されます。御出席ありがとうございました。
 
【鈴木政務官】
 ありがとうございました。
 
【徳賀会長】
 それでは、これまでの議論を踏まえ、橋本内部統制部会長に御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【橋本内部統制部会長】
 橋本でございます。コーポレートガバナンス・コードに基づく取組みが進展する一方で、我が国の内部統制報告制度については、2008年に導入されて以来十数年が経過し、これまで企業の経営管理・ガバナンスの向上に一定の効果はあったものの、近年は実効性に懸念があるとの指摘が見られるところであります。
 本日の皆様の御意見や検討課題をお伺いして、内外の内部統制報告制度を巡る状況はCOSOの内部統制の統合的フレームワークが2013年に最新化され、2017年には全社的リスクマネジメント、ERMのフレームワークもリニューアルされ、ガバナンスとの連携などが重視されるようになり、また、テクノロジーの進展やデジタルトランスフォーメーションの推進が内部統制に影響を及ぼしております。デジタルを活用したオペレーションが導入されるなど世の中が大きく変わっているところであります。
 こうした現状に鑑み、内部統制の実効性を向上させるため、内部統制報告制度について、基準や実施基準の改訂を視野に議論を進めるよいタイミングであると認識しております。私といたしましては、実態に即した対応を行うべきことを基本に、証拠に基づく政策立案、EBPMなどにも配慮しながら、これから取り組んでまいりたいと思っています。
 以上でございます。
 
【徳賀会長】
 橋本部会長、ありがとうございました。
 それでは、本日御審議いただきました内部統制を巡る動向につきまして、今後、内部統制部会において御審議いただくこととしてはどうかと考えておりますが、そのようにさせていただくことでよろしいでしょうか。御異議ございませんか。
 
(「異議なし」の声あり)
【徳賀会長】
 ありがとうございます。それでは、そのように取り進めさせていただきます。なお、内部統制部会に所属する委員等につきましては、企業会計審議会令第6条第2項において、会長が指名することとされておりますので、後日事務局を通じて御連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。
 さて、それでは、次の議題に入りたいと思います。会計監査・会計基準を巡る主な動向に関して、まず「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告の概要」、「改正公認会計士法の概要」及び「会計基準を巡る変遷と最近の動向」について、事務局から説明いただきたいと思います。続けて、企業会計基準委員会の活動状況について、川西臨時委員の代理で出席していただいている企業会計基準委員会の中條委員から、最後に、国際会計人材の育成の取組について、林田臨時委員から、それぞれ御報告をいただいた後に、まとめて御質問、御意見をお伺いしたいと思います。
 なお、資料5「会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示内容の分析」につきましては、配付をもって説明に代えさせていただきたいと思います。
 それではまず、事務局から御説明お願いいたします。
 
【廣川企業開示課長】
 ありがとうございます。企業開示課長の廣川でございます。残りの時間が押しておりまして、簡単に説明を3つほどさせていただきます。
 まず、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告概要ということで、昨年9月から9回にわたりまして御議論をいただきました。特に経済社会情勢の変化の中でも、例えばサステナビリティの重視とか、コーポレートガバナンスの議論の進展とかを中心に御議論をいただいたということでございます。
 議論をしている最中に、国際的に、特にサステナビリティについて動きがございました。次の2ページでございます。サステナビリティの開示基準を策定する団体として新しく昨年2021年11月3日に、IFRS財団の下に、会計基準設定主体とは別に、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設置が公表され、活動を始めたということでございました。
 こちらについては、日本からも積極的に関与、貢献していこうということでございます。もともとIFRS財団には東京にアジア・オセアニアオフィスというのがあり、こちらをISSBの拠点としても活用していただくことを働きかけて、これが決定しているということでございます。
 活動としては、気候変動の開示基準等についてISSBが今年の3月末に意見募集をして、日本からも当然意見発信をしていくということになってきたわけです。そうした過程で日本側でも、この図の右側ですけれども、財務会計基準機構の下にサステナビリティ基準委員会が新しく設置をされて、7月末に意見発信をしております。
 こうした動向を横目に見ながら、ディスクロージャーワーキング・グループでも議論をしてまいりました。最終的には、3ページでございますけれども、今年6月13日に、報告書を取りまとめ、公表ということに至ったということでございます。
 先ほど申し上げましたサステナビリティについて、有価証券報告書に記載欄を新設し、その記載欄の中で、相当程度自由度がある形で、企業の創意工夫ができるような形の開示を行っていただくということを想定しております。ただ、個別の項目としては、人的資本については人材育成方針、社内環境整備方針を記載項目に追加、また従業員の状況で、多様性に関しては、男女間賃金格差、女性管理職比率、男性育児休業取得比率、これらにつきましては記載項目に明示的に追加するということでございます。
 また、先ほど少し申し上げましたコーポレートガバナンスにつきましては、取締役会等々の活動状況の記載欄に追加といったような方向性いただいております。
 また、もう一つ大きな話として、四半期開示の見直しといったテーマも議論をしてまいりました。これにつきましては、金融商品取引法の四半期開示義務のうち第1・第3四半期を廃止して、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化という方向性は示されておりますけれども、一本化の具体化に向けた課題ということで、四半期決算短信の義務づけの在り方、それから四半期決算短信の開示内容、虚偽記載に対するエンフォースメント、監査法人によるレビュー等々については、検討を継続ということでございます。明日、金融審議会の総会がございますけれども、それを皮切りに、またディスクロージャーワーキング・グループで秋以降、継続的に検討していくことになる、このように考えてございます。
 残りのスライドは、4ページではサステナビリティの開示の概観ということで、もう少し詳しく資料をつけております。お時間あるときに御覧いただけたらと思います。また、5ページ、それから6ページ辺りは、先ほど申し上げました四半期開示等々について残された検討課題が何であったかというのをつけているものでございます。
 次の資料に移ります。次は「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律の概要」ということで、こちらつきましては、金融審議会公認会計士制度部会で、昨年の秋から冬にかけて御議論をいただきました。結果を取りまとめた上で、金融庁から、政府として内閣提出法案ということで、公認会計士法等の一部を改正する法律案を今年の通常国会に提出させていただき、審議が行われて5月11日に成立をしている。衆議院でも参議院でも全会一致で可決をされたということでございました。5月18日に公布をされているものでございます。
 こちらは大きく2つのテーマがございまして、1つは会計監査の信頼性確保、そして、もう一つは、公認会計士の能力発揮・能力向上というテーマでございます。
 前者につきましては、上場会社の監査をする監査事務所について法律上の登録制度を導入するといったような内容でございます。背景的には近年、左上の折れ線グラフですけれども、上場会社の監査の担い手が、上場会社数で見たときに、近年、大手監査法人から監査を受けている上場会社の数が減っており、他方で、中小、準大手の監査事務所から監査を受けている先が増えているということで、監査の担い手が拡大する中にあっても、監査事務所が一定の品質できちんと確保していただくという観点から、制度的な枠組みを設けたというものでございます。
 また、その他所要の公認会計士・監査審査会に対して金融庁から権限委任している範囲の見直しというのも行ってございます。
 公認会計士の能力発揮・能力向上につきましては、幾つかありますけれども、代表的なものを今日は1つだけ御紹介をさせていただきますと、右枠のところですが、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限の見直しということで、改正前は、監査法人の独立性確保のために、監査法人の社員のパートナーは、配偶者が役員等を務める会社に対しては、そのパートナーが監査に関与するか否かは関わらず、監査法人全体として監査業務の提供が制限されていたということで、国際的にもかなり厳しい基準になっていたところ、グローバルスタンダードに合わせるという側面もありまして、あるいは、女性活躍推進という観点から、監査に実際に関与する社員等の方のみ対象を限定した制限に見直すといったような内容を盛り込んでいたところでございます。
 残りの2枚は、今のものがもう少し詳しくついておりますが、時間の関係で割愛をさせていただきます。
 最後に私のほうから御説明申し上げますのは、資料4でございまして、会計基準をめぐる変遷と最近の状況でございます。企業会計審議会総会におきまして、毎回つけさせていただいておりますけれども、おめくりいただきまして、1ページでございます。これまで、私どもは長年にわたりまして、会計基準の高度化、品質の向上と、それから、一番下のところを見ていただきますように、国際会計基準IFRSの任意適用の下の拡大の促進といったところに取り組んでまいりました。また、IFRS推進に対しては、国際的にしっかり意見発信をしていく、それから、国際的な会計人材の育成をしていこうと、こういったところをASBJや財務会計基準機構とともに取り組んできたというところでございます。
 2ページに、国際会計基準の任意適用の状況で、少しずつ増えてきておりまして、今のところ267社、採用することを決めた会社も含めてということですけれども、そういった状況でございます。
 以下の3ページ、4ページは、具体的な会社名がついております。さらに、これがプライム等々の市場区分ごとにどうか産業別にどうかということでいきますと、今日は御説明申し上げませんけれども、資料5、東京証券取引所に用意していただいた資料がありますので、こちらのほうをまたお時間あるときに御覧いただけたらと存じます。
 私どもの今後の取組でございます。5ページに参りまして、今申し上げたような方針というのは、ごく簡潔ですけれども、今年6月に閣議決定された新しい資本主義の実行計画・フォローアップにおきましても明記されているということでございます。また、それを受けまして、6ページにおきまして、それは金融庁の2022事務年度金融行政方針においても、もう少し詳しく書かせていただいております。
 今回、少し新しい話としては、7ページです。保険会社に関して、同じ金融行政方針の中で新しい話を書いてございます。具体的には、保険会社のモニタリングに関する中で、金融庁の事務年度、毎年7月から1年間ですけれども、作業計画として国際会計基準の任意適用に関する必要な法令の整備を進める旨を書いているものでございます。
 現状、保険会社につきまして、金融商品取引法ではなくて保険業法です。こちらの保険業法上の連結業務報告書等というのがあるのですけれども、そこの中に財務諸表がついておりまして、それについては日本基準のみが会計基準として使用可能となっているということでございます。有価証券報告書上は、国際会計基準の任意適用が可能ですけれども、この保険業法がこうであるということもありまして、結局、日本基準も当然つくらなきゃいけないというのが今の状況でございます。
 従前より保険業界から、保険業法上も国際会計基準の任意適用が可能となるようにという要望をいただいていたこともあり、今般、検討していこうという内容でございます。
 駆け足でございましたけれども、私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 次に、中條企業会計基準委員会委員より、企業会計基準委員会の活動状況について御報告をお願いいたします。
 
【川西臨時委員代理(中條)】
 ありがとうございます。企業会計基準委員会の中條と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、企業会計基準委員会の活動について御説明させていただきます。まず、4ページをお願いいたします。企業会計委員会では、中期運営方針を8月に公表しております。こちらは委員の任期に応じて3年に1度更新されており、基本方針としては、これまでの考え方を踏襲しつつ、今回、経営環境の変化に対応して一部内容を見直しております。
 続きまして、6ページをお願いいたします。こちらから日本の会計基準の開発状況について御説明いたします。まず、リースについては、現在、基準開発を行っておりますが、IFRS16号の定めを全て取り入れるのではなく、主要な定めのみを取り入れることで、簡素で利便性が高く、また、IFRS任意適用企業がIFRS16号の定めを個別財務諸表においても用いることができるよう、基本的に修正が不要となることを目指しております。現在、個別の論点について議論をしております。
 続きまして、次のページお願いいたします。金融資産の減損についても、予想信用損失モデルに基づく金融資産の減損について、会計基準の開発を行っております。こちらのスライドにありますように、6つのステップに分けて基準開発をすることを決定しております。
 次のページお願いいたします。ステップ1の検討の結果として、まず、IFRSと米国会計基準のどちらのモデルを選択するかについて検討を行った上で、IFRSのモデルを基礎に検討を進めていくことでおおむね合意が得られておりますので、現在、ステップ2以降を検討しているところでございます。
 続きまして、9ページをお願いいたします。こちらは電子記録移転有価証券表示権利等、いわゆるセキュリティートークンの会計処理につきまして、8月に実務対応報告を公表しております。また、ICOに関しましても3月に論点整理を公表しており、いただいたコメントを踏まえて、現在、今後の対応を検討しております。
 10ページをお願いいたします。税効果会計につきましては、3月に公開草案を公表しておりますが、今回の改正は、実務上懸念のあった論点に対する限定的な範囲での改正となっており、現在、いただいたコメントを踏まえて基準を最終化する予定でおります。
 以上が国内の基準の開発でございます。
 続きまして、国際的な意見発信について御説明いたします。12ページをお願いいたします。こちらにつきまして、まず、IASBが今後の活動をまとめた第3次アジェンダ協議に関するフィードバック・ステートメントを公表しておりますが、本日は、そのうちのれんについて御説明をさせていただきます。
 13ページお願いいたします。のれんにつきましては、IASBがディスカッションペーパーを公表して、その後、審議を行っております。その中では、企業結合に関する開示とのれんの事後の会計処理について検討が行われております。IASBは今年の第4四半期に、のれんの事後の会計処理についての決定と、今後、プロジェクトをリサーチフェーズから基準設定フェーズに移行させるかどうかについて決定を行う予定でおります。
 また、次のページ、14ページをお願いいたします。FASBの状況です。FASBにおきましても、のれんの償却を再導入する方向で審議が行われておりましたが、6月のボード会議でプロジェクトの方向性を議論して、このプロジェクトの優先順位を下げ、テクニカルアジェンダから除くという暫定決定を行っております。以上がのれんに関する御説明です。
 続きまして、15ページをお願いいたします。基本財務諸表として、IASBが財務諸表の全般的な表示・開示に関する公開草案を公表しております。現在、その審議の後に暫定決定が行われております。16ページをお願いいたします。こちらに記載されておりますように、暫定決定したものが意図したとおりに機能するかどうかということで、10月から11月にかけて限定的なアウトリーチを行うことが計画されており、日本においても、このアウトリーチに参加する予定でございます。
 最後になりますが、18ページをお願いいたします。先ほど御紹介がございましたとおり、財務会計基準機構の下に、企業会計基準委員会の姉妹組織としてサステナビリティ基準委員会が設置されております。今後、IASBとISSBの連携方法を参考に、ASBJとSSBJの連携方法を検討する予定でございます。
 簡単ではございますが、私の説明は以上でございます。ありがとうございます。
 
【徳賀会長】
 御報告ありがとうございました。
 続きまして、林田臨時委員より、国際会計人材の育成の取組について御報告をお願いいたします。
 
【林田臨時委員】
 ありがとうございます。財務会計基準機構の林田でございます。国際会計人材育成の取組に関して、簡単に御説明いたします。
 今、国際会計人材ネットワークの登録者は、2ページ目の表にありますように、約1,300名に達しております。最近は何をやったかというのがその次のページでございまして、これは今年の3月に、サステナビリティに関する開示の在り方を考えるというテーマで、このような方に御出席いただいて、パネルディスカッションを含めてやっております。この今年のプログラムじゃないですけれども、過去数年やってきたことを通じて、その次のページにありますけれども、いろいろ国際会議のメンバーだとか国際機関への派遣とか、国際人材というのは着実に育ってきているかと私どもは思っております。
 最後のページですが、現在、第7期の開講に向けて準備を進めております。外部講師を招聘し、今年は英語によるディスカッション等もトレーニングに入れて、国際会議で発信できる人材を育成していきたいというふうに考えております。
 簡単ですが、以上でございます。
 
【徳賀会長】
 御報告ありがとうございました。
 それでは、これまでの事務局の説明と中條企業会計基準委員会委員、林田臨時委員からの御報告につきまして、御質問、御意見等いただければと思います。御質問、御意見のある方は、チャット機能を使って発言希望である旨を送っていただきたいと思います。
 先ほどの御説明、御報告ともに多岐にわたっておりまして、多くの皆様から御意見、御質問いただきたいと考えておりますので、できるだけ皆様簡潔にお願いしたいと思います。御質問の回答につきましては、1人ずつ取り上げるわけではなくて、数名の委員から御質問を頂戴した後に、後ほど、まとめて事務局及び先ほどの報告をいただいたお二人から御回答させていただきたいというふうに思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。早速、水口委員から発言の希望がございましたので、よろしくお願いします。
 
【水口委員】
 どうもありがとうございます。水口です。3つほど意見があります。
 1つ目の意見は、会計監査の信頼性確保に向けた方策についてです。幅広い投資家が存在する上場企業を被監査先として持つ監査法人については、大手監査法人と中小監査法人との間の監査品質の水準の差を許容すべきではないと考えている旨は、監査部会でもお伝えしてきたところです。
 その中で、中小監査事務所が監査品質に関する課題などに取り組む際に、監査事務所が方向感を持って着実に準備を進めやすくなるように、公認会計士協会も既に様々な形で御尽力いただいていると考えておりますので、引き続きの御対応を期待しております。
 それから、上場会社等の監査に関して、従来より高い規律をもたらすような登録制による実効性の高い適格性の確認とか、監査法人のガバナンス・コードに基づく組織運営や、情報開示の充実などによる適切な業務管理体制の整備に資する施策が取られることも歓迎します。開示を通じた様々なステークホルダーによる監視がもたらす規律にも期待しているところです。開示内容については創意工夫する余地があると考えておりますので、御検討のほどよろしくお願いいたします。
 それから、2つ目の意見は、公認会計士・監査審査会のモニタリングの機能強化についてです。審査会が監査法人等の業務運営に加えて虚偽証明等の検証も行えることで、審査会を通じて第三者による監査事務所の監査品質のチェック機能向上が図られることに意義があると思っております。審査会によるチェック機能の実効性を高めるために、十分な人的資源が確保されることを期待しております。
 最後になりますが、3点目、気候関連情報の開示及びサステナビリティ基準委員会の設立についての意見です。アジアを含めた世界がパリ協定の整合的な形でネットゼロ社会へ移行することを可能とするためには、企業のガバナンス、戦略、リスク管理に加えて、移行計画や指標や目標の達成状況が的確に掌握できるような投融資判断に資する、信頼に値する企業開示は非常に重要だと考えております。有用な気候関連の企業開示の充実に大いに期待しております。
 それぞれの法域で想定されるトランジション・パスウェイは異なり得るところだと考えております。例えば、グローバルな投融資機関の視点を踏まえて、ネットゼロに向けたアジアを含めたグローバルな投融資ポートフォリオの変革を視野に入れべく、特定法域の特性を加味するとともに、複数の法域で相互利用が可能なような開示とか移行金融に関わるメソトロジーの在り方にも注目しているところです。
 このような観点から、我が国を含めたアジアからの意見発信の意義は大きいと考えております。サステナビリティ基準委員会の活動に大いに期待しております。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 御意見承ります。ありがとうございました。
 続きまして、大瀧臨時委員、よろしくお願いします。
 
【大瀧臨時委員】
 どうもありがとうございます。大瀧です。
 IFRS任意適用の促進につきまして、保険会社への対応など、必要に応じた制度的対応を図っていくことは大切だと考えております。その一方で、制度開始から10年以上経過する中で、任意適用会社数の増加も緩やかになってきており、任意適用の拡大だけに焦点を当てるステージから、次のステージを見据えていく時期ではないかと考えております。
 私はIFRS任意適用を望む企業をサポートしながら、広く個人を含む日本の投資家の理解可能性を高めることに焦点を当てた情報開示を進める必要があると考えております。具体的には、日本基準のよいところをIFRS任意適用会社、米国基準適用会社に取り入れる。すなわち、カーブインと申しますか、日本企業間で比較を行いやすいよう、持続的な利益指標である営業利益を追加的に表示する、B/Sの開示項目を増やすなど、日本基準以外の会計基準を適用する会社の財務情報の開示改善を進めることを提案いたします。これは金融リテラシーの向上やNISAといった施策の目的である国民の投資促進に広くつながるものと考えております。
 IFRS任意適用は、日本企業のグローバル化や日本の株式市場に外国人投資家を呼び込むといった効果が一般的に認められますけれども、その一方で、日本の個人を含む投資家にとっては、会計基準差や開示様式のばらつきにより日本企業間の比較可能性が低下しているという負の側面もあると思っています。また、プロの投資家でない方が、原文が英語であるIFRSについて、会計基準差を踏まえながら理解することは難しいといったこともあるかと思います。広く分かりやすい情報開示が国民の投資への後押しにつながると考えております。
 なお、会計基準差を解消する方法として、IFRSの強制適用という選択肢もあるかもしれませんが、私は仮に対象会社を絞ったとしても行うべきではないと考えております。会計基準は会計慣行でありながらもルールとしての側面が強く、ルールの主権を国として放棄すべきではないと考えます。IFRS、米国基準がコンバージェンスを意識しながらも、それぞれが異なる基準開発を進めている現状においては、日本もこれまでどおり任意適用を続けながら、我が国の基本的な考え方を踏まえた国内基準の開発とグローバルへの意見発信を続けていくべきだと考えます。
 次に、四半期開示の見直しについて簡単にコメントいたします。最も重要なことは、財務情報の開示後退がないように配慮していただきたいということです。サステナビリティ報告といった非財務情報の拡充が進んでおりますが、非財務情報は財務情報と相互補完関係にありますが、代替するものではありません。第1四半期・第3四半期については、決算短信を上場会社に義務づけるとともに、添付書類になっております財務諸表の同時開示をすること、そして、虚偽表示に対する規制当局のエンフォースメントを担保することが必要であると考えます。
 また、第2四半期については、非上場有価証券報告書提出会社のバランス等も踏まえれば、非上場会社よりも社会的に影響が大きい上場会社は、中間監査報告書を添付した半期報告書を提出すべきだと考えております。
 また、EDINETにおける電子財務データに関しましても、任意の会社だけですとデータベースの有用性が著しく低下しますので、四半期財務データについても現状維持をすべきだと考えます。
 最後になりますが、こうしたことから、四半期会計基準や四半期財規といった基準等に関しても、そのまま維持していただきたいと考えております。
 どうもありがとうございました。
 
【徳賀会長】
 御意見承ります。ありがとうございました。
 続きまして、岡田委員、よろしくお願いいたします。
 
【岡田委員】
 ありがとうございます。岡田です。私から2点について意見と質問です。
 まず1つは、四半期報告書ですけれども、私としては、第1四半期・第3四半期の公表を短信に一本化するということをぜひ進めていただきたいと思います。それに当たって、ここに虚偽記載に対するエンフォースメントとありますが、具体的に虚偽記載というのは何を言うのかというところが質問であります。
 不正があれば虚偽かもしれないですが、記載誤りと昔は呼んでいたちょっとした間違い、あるいは期ずれをしたものも虚偽表示と呼ばれていて、これについて全て訂正報告を求めるというようなことになりますと、監査人のレビューを待たなければ何もできなくなってしまう。私としては、その程度の過誤、誤りであれば、公表の即時性を重視すべきだと思います。その後で重要な数字の誤りがあれば、レビュー後に開示する。ですから、レビュー前であっても短信は出していいというふうに思っております。
 それから、2つ目は、先ほど会計基準についてASBJの方からお話がありましたけれども、のれんについて、IFRSと大きな違いになっているのがのれんだと思いますが、私は以前、のれんについては、解決すれば大体IFRSの強制適用が可能になると考えていたんですけれども、ちょっと雲行きが怪しくなってきたと感じました。この辺り、米国が後退した背景と、それから、これからの議論になると思いますけれども、IASBの議論の、見通しを教えていただきたいと思います。
 実はまだ私がトラスティをやっていた頃に、当時のIASBの議長が、彼ものれんについて、償却をしないことについて非常に危惧しているという発言がありました。なぜかというと、償却をしないことによって、減損なしでのれんの残高が相当増えている。ひどい場合には、自己資本を上回っている場合もあるというような話をしていて、償却しないという答えが正しいのかどうか分からないというコメントでしたけれども、真剣に議論する必要があるということを言っていました。もう3年前のことですから、今は情勢が変わっているかもしれませんが、この辺りの現状を教えていただきたいと思います。
 私からは以上であります。
 
【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。御質問に関しましては、後ほど中條委員から御回答をお願いいたします。
 続きまして、冨田臨時委員、よろしくお願いいたします。
 
【冨田臨時委員】
 ありがとうございます。連合の冨田でございます。私からはディスクロージャーワーキング・グループの報告に関しまして、今後の検討課題として1点要望を申し上げたいと思います。
 今回、非財務情報開示の充実の中でサステナビリティが新設をされましたが、残念ながら、私どもが申し上げておりました人権については、追加の項目とはなりませんでした。昨今の国際情勢における企業行動などを踏まえますと、サプライチェーンも含めた人権の尊重に対して企業がどのような姿勢を示すのかということは、企業価値を向上させるためにも大変必要なことだと考えますので、引き続きの御検討をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
 
【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 続きまして、川村委員、よろしくお願いいたします。
 
【川村(雄)委員】
 ありがとうございます。簡単に申し上げます。
 まず、ディスクロージャーワーキング・グループについて、非財務情報開示の方向であります。そのとおりだと思うのですが、詳細が多岐にわたってくるほど、利用者、特に投資家サイド、機関投資家等のプロ集団は十分対応できると思うのですけれども、個人の投資家はますます詳細過ぎて分からない、あるいは、極論すると、見られないディスクロージャーみたいになってしまうと非常に問題なので、これは技術的にはいろいろ難しい点があると思います。ぜひ分かりやすいというか、特に比較可能な開示の工夫をぜひしていただきたいなというのが1点目であります。
 2点目は、四半期開示について、エンフォースメントが非常に重要だと思います。これがないと何のためかということが分からなくなってしまうところもあるのですが、ただ、これはまさに岡田委員御指摘のとおり、要するに、うっかり凡ミスみたいな話から、かなり故意のある、悪性の強いものまでいろいろな段階があると思うので、これの程度のノッチをつけるということが工夫していただきたいなと思う点が2点目です。
 それともう一つは、会計基準のところで非常に気になるのが、のれんについての動向であります。特に、いわゆる経済のソフト化というか、あるいはインタンジブルアセットが名目上増えていくような状況が増してきますと、実は、経営としてはもう破綻しているのに、フィクションとしての財務上の資産が積み上がっていって、周りから見て分からないみたいなことは大変リスキーであります。この辺の議論については、十分現状というか、今後も踏まえた日本としての主張をしていただきたいなと考えております。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 続きまして、松井臨時委員、お願いいたします。
 
【松井臨時委員】
 松井でございます。私もディスクロージャーワーキング・グループに関して1点申し上げたいと思います。
 今回、人的資本及び多様性等に関して、具体的な記載項目が増えたということについて、ESGにかかる会社のガバナンスという観点から非常に高く評価できることではないかというふうに考えております。課題に応じて書くということになっている戦略であるとか目標指標の点に強制項目があるということで、具体的に何を書くのかということについては実務で戸惑いがあるというふうにも聞いておりますけれども、その中で定型化して制度化したということについては、よかったのではないかというふうに思っております。
 この定型化ということについて、このタイプのESGに関する事項については、記載の自由度が高いと比較可能性、一覧性という点から下がってくるという効果があるということから、先ほど冨田委員がおっしゃられていた人権についての開示ということについては、私も開示が望ましいというふうに思います。ただ、人権保護の取り組みは自社での実施事項のほか取引先の調査なども含んでいて、何をどのような形で開示をするのかということについては、任意開示から定型化するにあたりかなりいろいろ課題も残っているのではないかというふうには理解しております。
 そういった点について、それぞれ開示をする項目を、今後も迅速に動向をくみ上げて制度化をするということについて、引き続き取り組んでいただけると非常に望ましいのではないかというふうに感じております。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 御意見承ります。ありがとうございました。
 次は小倉委員、よろしくお願いいたします。
 
【小倉臨時委員】
 会計士協会の小倉です。会計基準をめぐる変遷と最近の状況について、若干コメントをさせていただきます。
 まず、IFRSの任意適用に関して、中堅・中小監査法人が監査をしている会社数というのが本年の9月末現在で46社となりまして、昨年11月の企業会計審議会から7社増加をしております。会計士協会としても、引き続き研修会の開催などを通じてサポートを行っていきたいと考えています。
 日本基準に関しては、収益認識に関する会計基準が2022年の3月期から強制適用となっておりまして、国際基準とほぼ同様の基準が適用されるとともに、開示情報も大変充実することとなりました。KAMで取り上げられている件数も増加をしております。
 金融庁の有価証券報告書の審査においても、重点テーマとして取り上げていただいておりますので、今後、好事例や改善すべき事例の理解を通じて、会計基準が適切に適用されていくものと期待をしておりまして、監査人としても適切に対応していきたいと考えています。また、現在、リース会計基準や金融商品の減損に関する会計基準がASBJで開発中ですので、基準の策定が円滑に進むように、協会としても引き続き御協力をしてまいりたいと存じます。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 続きまして、堀江委員からよろしくお願いいたします。
 
【堀江委員】
 御指名ありがとうございます。堀江でございます。保証という観点から、サステナビリティ、四半期報告、それから公認会計士法改正における上場会社監査について、ごく簡単にコメントを申し述べたいと思います。
 まず、サステナビリティでございますが、全体的な意見としては、ディスクロージャーワーキング・グループで示されました有価証券報告書における独立区分開示、これは当面の措置としてとても意義のあるものだと思います。問題は、この法定開示を前提とした場合の保証の在り方でございます。気候変動などのサステナビリティの財務諸表への影響については、当然のごとく財務諸表監査の枠の中での対応ということになるかと思います。また、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の独立区分については、当面は恐らく、その他の記載内容の通読、検討といった対応にとどめるのが現実的ではないかというふうに思います。将来的には、サステナビリティ情報の法定開示を前提とした保証の在り方についての包括的な検討が必要になってくるかと思いますが、当面は現行の監査基準の枠内での対応で行けるのではないかという感想を持っております。
 またサステナビリティ情報の任意開示につきましても、もちろん信頼性の担保というのは必要なものでありますが、それに先立ってまずは、開示基準の整備と開示に係る内部統制の整備が先決ではないかというふうに思います。とりわけ情報開示に係る内部統制についての議論は、これまでほとんど行われていないように思いますので、このあたりの議論を先行させるのが重要ではないかというふうに考えております。
 それから、先ほど林田委員からも御発言がありましたように、情報開示を行う側、保証を行う側ともに、専門人材の育成は喫緊の課題だと思います。
 次に、四半期報告につきましては、速報性の確保と事務負担の軽減という観点で、ご提案の見直しには基本的に賛成でございます。ただ、保証という観点から、半期報告が復活したときに、中間監査は我が国独自の制度ということに加え、保証の水準が年度監査とレビューの間といったように非常に分かりにくい。それから、有用性意見という名称の是非。こういったところも含めると、中間監査基準の再検討も含め、情報の信頼性をどのように担保するかについての多面的な議論が必要になるのかなと思います。
 また、本質からちょっと外れてしまいますが、エンフォースメントとの関係で出てきた臨時報告書を使うというアイデアですが、「臨時」というのは国語辞典を引きますと、定時ではなくその時々の状況に応じて行うことと書いてありますので、ちょっと変な感じがいたしました。
 最後に、公認会計士法における上場会社の監査に関連して、水口委員からも御発言ございましたとおり、先般の品質管理基準の改定における議論でも、上場会社を担当する監査事務所に対しては一段高い規律を求めるべきという意見が多く出された経緯がございます。
 そこで、上場会社監査事務所登録制度の厳格な運用と併せて、いわゆる監査法人のガバナンス・コードの見直しがこれから行われる可能性があるかと思います。上場会社の監査を行っている監査事務所とそうでない監査事務所との間で、現行コードの「指針」の記述方法を工夫するなどして差をつける必要があると思うのですが、私は一番大事なことは、形式的な準拠主義が先行して、中小の監査法人に余計な事務負担ばかりしか残らなかったと、こういうことにならないような運用上の工夫なり配慮が併せて必要ではないかと思います。
 以上、コメントを申し述べさせていただきました。
 
【徳賀会長】
 御意見として承りました。ありがとうございます。
 それでは、一旦切りまして、先ほど岡田委員から、また川村委員からも言及がございましたが、のれんの会計処理に関して、中條委員から御説明をお願いできますでしょうか。
 
【川西臨時委員代理(中條)】
 ありがとうございます。
 まず、FASBの状況でございますが、今回、テクニカルアジェンダから除く暫定決定を行った背景としましては、償却プラス減損については妥当であるという意見はありつつも、償却年数の決定について恣意的になるというような意見や、IASBの議論をモニタリングしながら並行した議論を望む意見など意見が分かれており、今回取下げとなっております。
 もう一点、御質問がございましたIASBの状況ですが、こちらは、第4四半期にのれんの事後の会計処理について決定が行われるということで、現段階でどのような方向性になるかということについては、まだ明確には分かっておりません。明日、IASBとFASBが共同で会議を行う予定であり、また、本日夜に、ASAFという会議体の中で、英国エンドースメント審議会が現在取りまとめているのれんに関する報告書が取り上げられる予定で、この中では代替的なモデルを検討すべきといった意見も聞かれております。引き続き、ASBJといたしましては、のれんの償却の必要について国際的な意見発信を行うことを予定しております。
 以上でございます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。岡田委員、よろしいでしょうか。
 
【岡田委員】
 ありがとうございました。
 
【徳賀会長】 
 また、これまでの御質問、御意見について、事務局から回答やコメントございますか。ございませんか。
 
【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございます。2点ほど申し上げます。
 まず、1点目のサステナビリティの開示についてです。人権というお話を冨田委員からお話をいただき、ほか皆さんからも御関心をいただいているところかと思います。
 サステナビリティについて何を開示するのかというのは、グローバルにも非常に難しい問題であり、かつ、各企業もこれまでに任意の統合報告書の中でいろいろ苦労をしながら取り組まれてきていると存じます。実際に、人権、特にサプライチェーンの人権についてかなり真剣にお考えになられて、これまで積極的に統合報告書などで開示をされているような日本のグローバル企業があるということも、私どももよい開示例として認識をしているところではございます。
 その上で、気候変動のところまでは割とコンセンサスがあるのですが、その後、何を開示していったらいいのかというところは、まだグローバルにもコンセンサスが十分にできてないところではございます。そうした中で、ISSB、サステナビリティの基準をつくる国際的な会議体で、今年後半にも、アジェンダコンサルテーションということで、次の開示基準のテーマとして何を取り上げるべきかということをグローバルに問いかけようというような予定もございます。今々の段階では、それが具体的に何なるのかということは必ずしも予見することは難しいですけれども、ISSBの会議の中でスタッフが用意した幾つか考えられるリストの中に人権も入っておりました。また、例えば、日本で関心の高い人的資本とか、あるいは、国際的には生物多様性、自然資本といったようなそういったテーマも掲げられて、それをグローバルに今後議論していくことになるのかと思います。
 ただ、その上でそれを待たずして、私ども、今回は全ての記載欄は自由記載ですけれども、その中でサステナビリティの開示項目として何が大事かというのは、まず、各企業におかれて重要性、マテリアリティに応じて御検討いただく、テーマを選ぶところからぜひ有価証券報告書提出会社の皆様に考えていただきたいというふうに思っているところでございます。
 それから、堀江先生からもお話のありましたサステナビリティの保証の話でございます。こちらにつきまして、ディスクロージャーワーキング・グループの中で議論が多少ございまして、現時点では、サステナビリティの開示基準がまだ国際的にも議論途上であること、また、サステナビリティの保証基準というのも、国際監査・保証基準審議会(IAASB)で、こちらにおいて議論をちょうど行い始めたぐらいの状況でございます。
 現時点においては、ワーキング・グループの報告書におきましては、こうした前提となる開示基準の策定や国内外の動向を踏まえた上で、中期的に重要な課題として検討を進めていく必要があると、ここは検討課題だときちっと認識をしているところでございます。私ども金融庁としてもそれを受け止めて、今後、対応を考えていきたいと存じます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 それでは、引き続き、御意見、御質問を受けたいと思います。林委員、よろしくお願いします。
 
【林委員】
 林です。ありがとうございます。つい先ほどの堀江委員の御意見と重複するのですけれども、簡潔に申し上げます。
 上場会社監査に関する登録制の導入に関して、監査法人のガバナンス・コードの受入れということが想定されている点についての意見ですけれども、今回のこの登録制導入の背景には、上場会社監査の担い手の裾野の拡大に向けて、中小規模監査事務所による監査のさらなる充実強化というのが念頭にあるかと思います。監査事務所のローテーションとの関連も含めて、諸外国でも同様の考え方、議論がなされていると理解しておりまして、我が国にとってもこの点は必要な議論、課題認識と理解しています。
 その際ですが、最近よく言われるいわゆるスケーラビリティの観点から、監査事務所の規模や特性に応じて監査法人のガバナンス・コードの見直しということを行う必要があるのかもしれません。あるいは、コード自身は大きな原則を示しておりますので、審査会による検査において対応状況を検査・確認するということになるのかもしれませんけれども、いずれにしましても、コードの理念あるいは要求水準というものを低下させることなく、中小規模監査事務所による監査の充実・強化というものが実現できるように御留意していただければと考えております。
 以上です。ありがとうございます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見として承ります。
 続きまして、佐々木委員、よろしくお願いします。
 
【佐々木委員】
 御指名ありがとうございます。
 有価証券報告書の作成者の立場としての意見でございますけれども、サステナビリティの関連、非常に話題になっておりまして、これから、私どもとしてもかなり頑張って開示を充実していかなければいけないという覚悟でおります。
 ただ、今の議論からいきますと、かなりの負担になるのですけれども、御承知のとおり、日本の上場企業というのは3,000社以上ございまして、いろいろな規模の会社、サステナビリティの開示についても、既に進んでいる会社、そうでない会社、いろいろございますので、この辺りのところは十分に考慮していかないといけないのかなというふうに思ってございます。
 そういった中で、人材育成が非常に大事だというようなことでございますけれども、そうはいっても限りがございます。本日の前半のところにあった内部統制でございますとか、あるいは、四半期報告、こちらは決算短信に一本化されるというという方向で非常にありがたいことなんですけれども、これらの既存制度についても、効率化という観点からも、議論や検討が必要ではないかというふうに思っているところでございます。
 以上でございます。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見として承りました。
 続きまして、挽委員、よろしくお願いいたします。
 
【挽委員】
 御指名ありがとうございます。
 サステナビリティについては賛成ですし、四半期開示の効率化についても賛成ですけれども、資料だけ見させていただくとちょっと不安がありました。廣川企業開示課長の御発言を聞いて少し安心したところです。
 私が一番申し上げたいのは、利用者のニーズを踏まえて制度設計の目的を明らかにしていくべきであり、明確な目的の下での効率化ということになると思うのです。多分、ディスクロージャーワーキング・グループ報告の「おわりに」読むとそのことが分かるのですけれども、効率化、効率化ということを言われてしまうと、そもそも、特に四半期の報告書と決算短信の目的は何だったのかということ、御発言でもありましたように、公表の即時性という視点があります。その一方で、即時性を重視して、開示される情報の質がどうなんだということもあると思います。
 いずれにしても、制度設計に当たっては、目的の達成に向けて、その制度が意図せざる悪影響を及ぼすことがないようにしていただきたいなと考えております。
 以上です。
 
【徳賀会長】
 ありがとうございます。御意見として承ります。
 よろしいですか。以上、特に御質問はございませんでしたが、多くの貴重な御意見を賜りました。これまでの御意見につきまして、事務局からコメント等はございますでしょうか。
 
【廣川企業開示課長】
 追加でいただいた御意見について、幾つかお話をさせていただきたいと思います。
 林委員からお話をいただいた監査法人のガバナンス・コードの見直しについて、私がこの公認会計士法の説明をする中で、この話を飛ばして御説明してしまって申し訳ございませんでした。ガバナンス・コードの理念とか今回の上場会社監査事務所登録制度を導入するに当たって、上場会社を監査される全ての監査事務所にコード自体は受け入れていただくということを考えていること、こういった趣旨に照らしまして、実質的なところでその趣旨が実現できるように検討を進めてまいりたいと思っております。今後、金融庁で、秋頃、10月頃になろうかと思いますが、有識者検討会というのも再開しまして、改訂に向けた検討を行っていきたいと考えてございます。
 それから、サステナビリティの開示の話、四半期の開示の話、いずれも、佐々木委員、挽委員おっしゃられたように、一方で、それぞれに制度の目的があって、また、現在の環境の下でその制度趣旨、目的というのをいかに実現しつつ、他方で、開示事項がトータルとしては増えていっているという現実もある中で、どのように効率化を図りながら、最終的には、開示制度は開示書類の利用者であります投資家等々の方々、資本市場の参加者の方々のためにあるものでございます。そうした目的というのを忘れずに、よりよい制度になるよう、今後、ディスクロージャーワーキング・グループもさらに議論を進めてまいりますので、私ども事務局としてもしっかりと尽力をして取り組んでまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
 
【徳賀会長】
 どうもありがとうございました。
 ほかに御発言ございませんか。よろしいですか。
 本日、様々な立場からそれぞれ貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。今回いただいた御意見を踏まえ、次回以降の議論の参考にさせていただきたいと思います。
 それでは、本日の議事を終了させていただきます。本日はお忙しいところ、御参集いただきありがとうございました。これにて閉会いたします。

 

以上

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金融庁Tel 03-3506-6000(代表)(内線3691、2999)

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