企業会計審議会総会議事録

 

1.日時:令和5年4月7日(金曜日)13時00分~14時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第1特別会議室

【徳賀会長】
 定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会を開催いたします。皆様には、御多忙の中、御参集いただき、誠にありがとうございます。
 総会の委員13名中12名が出席されており、定足数の7名を超えておりますので、会議は成立しております。田代委員が14時から出席の予定と聞いております。
 本日の会議は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、企業会計審議会議事規則第1条第2項にのっとり、オンライン会議にて開催とさせていただいております。
 それではまず、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則第4条第1項にのっとり、本日の会議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。異議ございませんか。
 
(「異議なし」の声あり)

【徳賀会長】
 異議はないようですので、本日の会議の模様は、ウェブでライブ中継させていただきます。
 なお、議事録はこれまでどおり作成し、金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 また、本日は、鈴木大臣に御出席いただく予定ですが、現在、衆議院本会議に出席されておりますので、終了次第、お越しいただく予定となっております。鈴木大臣がお越しいただいたタイミングで、「内部統制基準・実施基準の改訂に関する意見書」を鈴木大臣にお渡しし、その際にカメラ撮影を行う予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局よりオンライン会議の開催に当たっての留意事項をお知らせいたします。また、委員の異動もございましたので、併せてよろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 ありがとうございます。金融庁企業開示課長の廣川でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、オンライン開催に関しまして、2点、注意事項がございます。1点目としては、御発言をされない間は、恐縮でございますが、ミュートの設定にしていただきますようお願い申し上げます。また、御発言をされるときにはマイクをオンにしてミュート解除で御発言していただき、御発言が終わられましたら、またミュートにしていただくということでお願い申し上げます。また、支障のない範囲で構いませんけれども、会議中は、お顔が見られるように、カメラ設定をオンにしていただけますと幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 2点目といたしましては、御発言を希望されるときですけれども、チャット機能を使っていただきまして、全員宛てに発言希望である旨とお名前を入れてお送りください。お名前につきましては、協会名などの組織名でも結構ですので、御入力いただけますと幸いです。それをこちらで確認させていただいた上で、会長から御指名させていただきたいと存じます。
 なお、御発言に際しましては、念のため、御自身のお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただけたらと存じます。
 続きまして、委員の御異動について報告申し上げます。
 昨年12月に、橋本尚委員が、また、本年2月に岡田譲治委員、川村雄介委員、水口啓子委員、住田清芽委員がそれぞれ御退任をされていらっしゃいます。
 なお、2月20日付で新たに4名の委員が御就任されていらっしゃいますので、順次御紹介をさせていただきます。あいうえお順でございます。
 井口譲二委員でいらっしゃいます。

【井口委員】
 よろしくお願いします。

【廣川企業開示課長】
 引頭麻実委員でいらっしゃいます。

【引頭委員】
 引頭でございます。よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 小倉加奈子委員でいらっしゃいます。

【小倉委員】
 小倉です。よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 米山正樹委員でいらっしゃいます。

【米山委員】
 米山と申します。よろしくお願いいたします。
【廣川企業開示課長】

 ありがとうございました。
 なお、事務局につきましては、お手元の配席図をもって紹介に代えさせていただきます。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 審議委員の皆様、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。まずは、内部統制基準・実施基準の改訂に係る内部統制部会での審議の状況について、堀江部会長から御説明をお願いいたします。

【堀江内部統制部会長】
 内部統制部会長の堀江でございます。「内部統制基準・実施基準の改訂に関する意見書(案)」の主な内容につきまして、御説明させていただきます。
 資料は、1-1から1-5までとなっております。まず審議の経過について御説明いたします。昨年9月の総会におきまして、内部統制の実効性向上に向けて、内部統制部会で審議することとされたことを踏まえ、昨年10月より3回にわたり内部統制部会で審議を行いました。これらの審議を踏まえ、内部統制部会として、資料1-1のとおり、意見書(案)の取りまとめを行いました。
 部会の審議の過程では、委員から、中長期的に検討すべき課題についても多くの意見が出されましたことから、意見書(案)前文に、中長期的な課題として問題提起させていただきました。また、内部統制部会では、本年1月にかけて意見募集を行いました。その結果、34の団体、個人から190件のコメントがありました。改訂案の内容におおむね賛同いただける意見が大宗でしたが、一部所要の修正を行い、現状の案としております。
 なお、寄せられましたコメントと、それに対する部会としての考え方につきましては、資料1-2のとおりでございます。
 続きまして、意見書の主な内容について、第1に、内部統制の基本的枠組み、第2に、財務報告に係る内部統制の評価及び報告、そして、第3に、財務報告に係る内部統制の監査に分けて、ポイントのみ御説明させていただきます。
 内部統制の基本的枠組みでございますけれども、まず、サステナビリティ等の非財務情報に係る開示の進展等を踏まえ、内部統制の目的の一つである「財務報告の信頼性」を「報告の信頼性」とすることといたしました。また、内部統制の基本的要素としての「ITへの対応」では、ITの委託業務に係る統制の重要性が増していること、昨今のサイバーリスクの高まり等を踏まえた情報システムに係るセキュリティの確保が重要であることを記載いたしました。
 さらに、内部統制に関係を有する者の役割と責任について、監査役等に関しては、内部監査人や外部監査人との連携の重要性を記載したほか、内部監査人に関しても熟達した専門的能力と専門職としての正当な注意をもって職責を全うすることや、取締役会及び監査役等への報告経路も確保することの重要性を記載いたしました。
 このほか、内部統制は、ガバナンス及び全組織的なリスク管理と一体的に整備及び運用されることの重要性を明らかにし、これらの体制整備の考え方として、いわゆる3線モデルを例示いたしました。
 次に、財務報告に係る内部統制の評価及び報告に関しましては、まずもって、経営者による内部統制の評価について、その範囲を決定するに当たって、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮すべきことを強調するため、評価範囲の検討における留意事項を明確にいたしました。具体的には、評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスを選定する際には、リスクに基づく評価範囲の決定を徹底すべく、選定に際して、利用される指標について、従来より例示されておりました「売上高等のおおむね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」を機械的に適用すべきではないということを記載しております。
 なお、これらの例示の取扱いにつきましては、今後、当審議会で検討を行うこととしております。
 また、内部統制の報告につきましては、評価範囲とすべき重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合の決定に係る判断事由の記載を求めることなど、内部統制報告書において記載すべき事項を明示するとともに、付記事項として、前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合における当該開示すべき重要な不備に対する是正状況を記載することといたしました。
 このほか、内部統制報告書の訂正時の対応として、事後的に内部統制の有効性の評価が訂正される際には、具体的な訂正の経緯や理由等が十分開示されることの重要性を明らかにいたしました。
 続きまして、財務報告に係る内部統制の監査については、監査人が、経営者による内部統制の評価範囲の妥当性を検討するに当たり、財務諸表監査の実施過程において入手している監査証拠も必要に応じて活用することを明確にし、また、経営者との評価範囲に関する協議は、経営者による評価の計画段階に限定されることなく、状況変化があった場合や、新たな事実を発見した場合についても実施することが適切であることを明確にいたしました。
なお、適用時期につきましては、令和6年4月1日以降開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用することとしております。
 最後になりますが、今回の改訂では、実務の過度な負担とならないように留意しながら、財務報告に関する内部統制の実効性の向上が図られるよう、意見書の取りまとめ作業を進めてまいりました。今般の改訂をきっかけとして、内部統制に関する実務がよりよいものとなり、内部統制報告制度の実効性が高まっていくことを期待しております。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 御説明ありがとうございました。
 ただいま御説明がありました「内部統制基準・実施基準の改訂に関する意見書(案)」につきまして、説明の内容のとおり、取りまとめることとしてよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

【徳賀会長】
 ありがとうございます。
 それでは、先ほどお伝えしたとおり、企業会計審議会として取りまとめました意見書を、鈴木大臣にお渡しする予定でございますが、国会審議が長引かれていることから、お見えになられ次第のお渡しとさせていただきたいと思います。
 続いて、次の議事に入ります。「開示・会計監査を巡る国内外の動向」に関して、まずは事務局から説明いただいた後、御質問、御意見をお伺いしたいと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。開示業務室長の齊藤でございます。
 それでは、「開示・会計監査を巡る国内外の動向」について、お手元の資料2に沿って御説明させていただきます。
 おめくりいただきまして、御説明事項は目次にある5つのトピックでございまして、四半期開示の見直し、サステナビリティ開示、改正公認会計士法、監査証明府令改正、国際監査基準の主な改訂となっております。
まず初めに、四半期開示の見直しでして、ページ番号3でございます。四半期開示の見直しについては、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループで、昨年12月に議論が取りまとめられております。資料の左下に取りまとまった内容がございまして、まず四半期開示については、1つ目の矢羽根にありますとおり、四半期決算短信を一律義務づけ、今後、適時開示の充実の状況等を見ながら、任意化について継続的に検討することとなります。
監査人によるレビューにつきましては、3つ目の矢羽根でございますけれども、任意としますけれども、会計の不正等が起こった場合には一定期間義務づけということになります。半期の報告書についてでございます。5つ目の矢羽根にありますけれども、上場企業には、現行の第2四半期報告書と同程度の記載内容と監査人のレビューを求めることとしまして、提出期限は決算後45日以内となり、非上場企業も上場企業と同じ枠組みを選択可能となります。
 次の4ページ目でございますが、こちらが提出法案の概要になりまして、資料は、金融商品取引法等の一部を改正する法律全体についてのものでございますけれども、四半期開示の見直しは一部になっております。この資料の右上の赤字囲いの部分となっておりまして、先ほどのディスクロージャーワーキング・グループの報告の内容も反映されているというところでございます。
 この四半期開示の見直しについてですけれども、監査人のレビューに係る必要な対応に関しては、ぜひ今後、監査部会において御審議いただきたいと考えている次第でございます。
次に、サステナビリティ開示についてでございます。ページ番号6でございます。サステナビリティ会議についても、金融審議会、ディスクロージャーワーキング・グループで、こちらは昨年6月になりますが、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の「記載欄」の新設について提言しております。将来的には、日本のサステナビリティ基準委員会が検討した具体的開示内容を有価証券報告書のサステナビリティ情報の「記載欄」に取り込むということが検討事項でございます。
 次のページ番号7でございます。こちらは関係内閣府令の概要となっております。有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄を新設するほか、人的資本・多様性やコーポレートガバナンスに関する開示の拡充を行い、本年の3月期から適用すべく、府令は、本年の1月31日に公布しているところでございます。こちらのサステナビリティの開示については、日本企業の創意工夫によって、事例が積み上がってきております。
 次のページ番号8になりますけれども、公表の事例です。開示の事例については、黒ポツの一番最後にありますように、好事例集を金融庁が本年1月に公表しております。企業の皆様にはぜひ参考にしていただきたいと考えているところでございます。
 次、ページ番号9でございますが、こちらは、我が国におけるサステナビリティ開示のロードマップでございます。開示、保証、または人材育成等々、こちらについて国際的な議論も踏まえながら、引き続き継続的に検討していくということでございます。
 続きまして、昨年の公認会計士法改正に伴う政府令の改正についてでございます。ページ番号11になります。こちら、改正の政府令、本年1月25日に公布して、4月1日に施行しておりますけれども、主なポイントとしては、特に上場会社の監査に関する登録制の導入を法改正で行っておりますけれども、こちらについて、政府令において、資料の中ほどの3ポツにございますが、ここで上場会社の監査を行う監査法人の業務管理体制の整備について記載しております。
 こちらは、内容としては2つ目の丸にございますとおり、監査法人のガバナンス・コードに沿って業務を行う体制をもとめているところでございます。これに伴って、監査法人のガバナンス・コードの内容が、上場会社の監査を行う中小監査法人などにもなじみ、監査法人の規模、特性等に応じた実効性のある内容となるよう見直されております。
 コード改訂の主なポイントをページ番号12にまとめております。この監査法人のガバナンス・コード自体は5つの原則で構成されておりまして、この資料の中に5つ、青い囲みがございます。これが各原則と対応しております。この中小監査法人による受入れになじむ工夫でございますけれども、特に青囲みで申し上げますと、2つ目と3つ目、これは経営機能と、それから、監督・評価機能になりますが、こちらについて、監査法人の組織の中で、委員会などの機関を設置しない、そういう場合でも、例えば独立第三者の方を活用するとか、そういうことで、この経営機能や監督評価機能を適切に発揮していただくべきとしております。
 また、コードの改訂の主なポイントとして、最後の青囲みのところの原則、こちら、開示の充実を促すというところでございますけれども、こちらについては、例えば、海外ネットワークに参画する意義や、またはリスク、そういうものの開示を充実すべきとしております。
続きまして、資料番号14番が財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の改正の御報告になります。報酬関連の情報の開示でございまして、こちらについては、国際的な議論、または日本公認会計士協会における取組を踏まえて、監査報告書の記載事項として、被監査会社等からの報酬に関する事項を追加するために、監査証明府令を改正しております。本年4月1日に施行しております。
 最後に、資料番号16にございます国際監査・保証基準審議会における現時点の主な国際監査基準などの開発、改訂の状況となります。このページにございますとおり、基準に関するプロジェクト、様々ございます。例えば、社会的影響度の高い事業体(PIE)監査、または複雑でない企業の監査、それから、監査証拠、サステナビリティに関する補償、それから、不正対応、ゴーイング・コンサーンなど、様々なプロジェクトが今、動いているところでございます。今後も必要に応じて、これら議論の状況は御報告させていただきたいと思います。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 御説明ありがとうございました。
 それでは、事務局の説明につきまして、御質問、御意見等をいただければと思います。チャット機能を使って、発言希望である旨を送っていただきたいと思います。
 なお、御質問の御回答については、数名の委員から御質問を頂戴した後に、まとめて事務局等から御回答させていただきます。よろしくお願いいたします。
 よろしいですか。井口委員、よろしくお願いいたします。

【井口委員】
 御指名ありがとうございます。初めとなりますが、意見をさせていただければと思います。ありがとうございます。
 まず、御説明ありがとうございました。事務局資料の目次に5つの論点を出していただいているんですが、最初の2つは、ディスクロージャーワーキング・グループで私も議論させていただきましたので、多くの意見はないのですが、資料の9ページの開示のロードマップのところで、IAASBとIESBAと保証基準の策定のところで少しだけ発言させていただければと思っています。この資料にも御記載がありますように、大体2025年前後にサステナビリティ情報の保証基準の最終化が予想されておりまして、欧米各国でも保証の適用の検討が進むという中、今、即ではないと思いますが、どういった体制で日本の中で議論していくかということも視野に入れていく必要があるのではないかと思っております。
 続きまして、目次の3つ目の論点の公認会計士法の改正についてコメントさせていただきます。これは私も委員をさせていただきましたので、既に発言させていただいていることですが、改めて発言させていただければと思います。
 ここの資料の御記載にありますように、機関投資家としては、上場会社の監査品質は優先的に確保してほしいと思っておりますし、今後、政府の施策によって、一段と一般投資家の資金が上場企業に投資されるということを考えますと、上場会社の監査品質の確保というのはより重要になってくると思っております。
 この点、11ページにありますように、登録制を導入するとともに、社員の最低人数を含め、一定以上の品質管理体制を求める方向性には賛同しております。また、監査法人のガバナンス・コードを通じて、一段の組織的な品質管理水準の向上を求める方策として、中小監査法人に対してコードを適用するということも、あと、コードを改訂し、中小監査法人にも適用可能なものにするということにも賛同しております。
 特にコードの中では、資料の12ページで言いますと、上のほうから3つ目の四角にあります、まさに今回、御改訂された中小監査法人用のために改訂されました監督評価機能というところは、一般企業のガバナンスに通じることもあって投資家として重要と考えております。
 一方、コードの適用状況を開示している監査法人の透明性報告書を見ますと、大手と準大手監査法人は、ホームページで容易に取得できて、その取組内容も明確ですが、それ以下の規模になりますと、どこに開示されているか分からないというケースもありますし、また、その内容においても、例えば原則2の指針では、品質管理体制を設置していますということだけ記載があったりと、情報開示において大変課題が残る状況と理解しております。
 この点、12ページの下の括弧にご記載のあります「透明性確保」というのは重要と思っております。コード改訂を機に、日本公認会計士協会が御指導されると理解しておりますが、開示の充実と促進が急がれると考えています。こういった開示があって、初めて、機関投資家をはじめとしたステークホルダーの関与も可能となって、ちょうど資料の一番下にもありますが、コードを通じたPDCA、そして、組織的な監査品質の向上というのも可能になると思います。これはガバナンス・コードが、機関投資家の監視により機能するとか、あるいはスチュワードシップ・コードにおいてアセットオーナーの監視が重要になるということと同じと思っておりまして、一段の情報開示はコードを通じた監査品質向上にプロセスにとって非常に重要と思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。
 続きまして、金子委員、よろしくお願いします。

【金子委員】
 ありがとうございます。私からは、2点、意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず1点目は、四半期開示の見直しに関してです。今回の改正により、第2四半期は半期報告書になりますけれども、御説明内容からは3つのパターンが想定されます。1つ目は、上場会社について、従来の第2四半期同様、連結財務諸表のみで45日以内の提出。2つ目は、上場金融機関について、連結・個別の財務諸表を含み60日以内の提出。3つ目の非上場会社については、上場会社と同様の対応も選択可能ですが、従来どおりの形も認められると読めます。
 そうしますと、提出期限について、45日、60日、3か月以内という3つのパターン、それから、注記や開示等を含む会計基準や作成基準については、四半期と中間財務諸表の併存、それから、財務諸表が連結のみか、連結と個別を含むのか、さらに、監査に関連してはレビューなのか、従来どおりの中間監査が残るのか。幾つかのパターンが考えられますので、作成者、利用者、監査人の間に理解の相違がないように、分かりやすい整備をお願いしたいと思っております。
 それから、2点目は、先ほど井口さんが触れられた改正公認会計士法に関してです。ここ数年、上場企業の監査人の交代、特に大手法人から中小法人への変更が多く見られ、交代理由として監査報酬の高さを挙げている会社が多くあります。今回の改正におきまして、監査品質向上のために、監査事務所の基盤強化が重要であるということで、日本公認会計士協会の登録を法律で義務づけたということは非常に意義があると思っております。上場会社を監査する監査事務所は、監査品質の向上のためにガバナンス・コードの受入れや、情報開示についてしっかりと対応していかなければならないと思っております。
 なお、最後にも御説明ありましたが、監査基準の改訂も頻繁に行われているとともに、大きな改正も行われています。こうした環境下でさらに品質を向上していくためには一定のコストが必要になってくるということも十分に理解していくべきではないかなと考えております。
 以上です。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 続きまして、引頭委員、よろしくお願いいたします。

【引頭委員】
 ありがとうございます。引頭でございます。2点、コメントさせていただきます。
 1点目は、先ほど金子委員もコメントされていました四半期開示についてです。今回のディスクロージャーワーキング・グループの御検討によって、第1四半期、第3四半期については、取引所の適時開示資料という位置づけで、四半期決算短信のみが開示されるということになりました。
 この資料の3ページに書いてあるように、そこにはレビューというのがついていないわけで、今のところ、会計不正が起こった企業のみ、一定期間、義務づけられる、ということになっていると理解しております。他方で企業の中には、不正をやっていなかったとしても、投資家に対して、より確からしい財務情報を提供したいという御希望があるかもしれません。
 このためには、義務づけられていなかったとしても、短信のレビューをしたいという、そういうお考えもあるかもしれません。その場合、レビューした短信とレビューしていない短信というものが共存する形になりますが、それが分かるような開示というのも必要になっていくのではないかと思われます。企業あるいは投資家の考えも含めて、特に開示というところでお考えいただければと強く思っております。
 2点目でございます。サステナビリティに関する開示についてです。今回、有価証券報告書の府令改正が行われ、法定開示におけるサステナビリティ開示が一歩進んだということは大変喜ばしいことだと思っております。先ほど御紹介ありましたように、金融庁が毎年、取りまとめをされています有価証券報告書の好事例集、ここでは様々な企業が当該分野の開示の充実に取り組んでいるということがよく分かる資料となっております。
 その中をよくよく見てみると、様々な企業が考えておられる数字が開示されており、多くの企業がきちんと取り組まれていると理解しているんですが、ただ、一方で、その数字の前提であるとか、算出根拠、算出方法、こうしたものが明示されていないものも中にはございます。今後、サステナビリティに関する開示というのは、さらに改善され、磨きがかかっていく、そういうような方向にあると考えております。そのためにも、ぜひ数字の前提であるとか算出方法、こういうものについてはできるだけ開示を充実させていくような方向で進んだほうがよいのではないかと思いました。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。こちらも御意見として承ります。
 続きまして、佐々木委員、よろしくお願いいたします。

【佐々木委員】
 御指名ありがとうございます。佐々木でございます。私からは1点のみコメントさせていただければと思います。四半期開示の見直しに関してでございます。
 ディスクロージャーワーキング・グループで検討されてきましたけれども、この見直しは、企業開示の効率化が本来の趣旨であると認識してございます。今後、四半期決算短信の具体的な開示事項の検討が東京証券取引所を中心に進められるということになりますが、ややもすれば、追加的な開示要求事項を幾つか盛り込んでいくということで、本来の簡素化、効率化という趣旨が損なわれることが懸念されるところでございます。こういったことがないように、今後留意が必要かと思ってございます。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 続きまして、小倉委員、よろしくお願いいたします。

【小倉委員】
 小倉でございます。私からも2点、発言させていただきます。
 1点目は、四半期開示の見直しについてです。金商法改正案が公表されておりまして、上場会社は、半期報告書を提出することとされましたが、開示府令の改正案が公表されていませんので、半期報告書の経理の状況に含まれる財務諸表の名称が明らかではありません。財務諸表の名称は、財務報告の枠組み、すなわち財務諸表の作成基準を想起できる名称としていただきたいと考えております。
 特に非上場会社は45日、または3か月以内の提出期日を選択できることになりますけれども、財務諸表の作成基準が異なりますので、利用者が混乱しないようにすべきと考えております。ディスクロージャーワーキング・グループの議論を踏まえますと、上場会社の半期の財務諸表の作成基準は、中間連結財務諸表作成基準によるのではなく、現行の四半期財務諸表に関する会計基準と同等の内容になるものと理解しております。財務諸表の作成基準のメンテナンスも早期に行っていただいて、企業が新制度の準備を整えられるようにしていただきたいと考えております。
 また、財務諸表のレビューの基準については、今後、監査部会で検討が行われると承知しておりますが、特に四半期レビューに関する実務指針において、継続企業の前提に関する監査人の評価手続は非常に複雑でありますので、今回の改正を契機に、一般にも分かりやすい考え方としてはいかがと考えております。
 2点目は、国際監査基準における主な改訂についてです。ドイツのワイヤーカードの監査に関係して、監査人に新規業務停止など厳しい処分が下されているところです。国際監査基準では、240不正への対応、570継続企業の改訂が議論されており、監査手続の一層の強化や監査報告書における開示などが議論されております。この点については、引き続き注視していく必要があると考えております。
 私からは以上でございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。承りました。
 続きまして、弥永委員、よろしくお願いいたします。

【弥永委員】
 弥永でございます。ありがとうございます。私も2点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
 第1点目としては、四半期決算短信についてレビューを任意で行う場合に、現在の四半期レビュー基準と同じような形での意見表明ができるのかということが気になるところであります。それは決算短信については、必ずしも、現在の四半期財務諸表と同じ注記がなされているわけではなく、そして、どのような内容にするかは証券取引所がお決めになるということですので、任意のレビューに対応できるものとする必要性があると考えております。
 同時に、スライドにも示されているように、会計不正等が起こった場合には、一定期間義務づける方針が打ち出されているわけです。けれども、現在のところ、四半期レビューには不正リスク対応基準は適用されない、中間監査については適用されるというわけです。しかし、このような不正が起きたような場合についてレビューを強制するのであれば、そういう場合に不正リスク対応基準が適用されないというのは首尾一貫しないのではないかと思われます。もちろん、適用されるとすることはレビューと相容れないのだという御意見もあろうかとは思いますけれども、しかし、レビューを要求する目的と整合しないことになるのではないかという点が若干気になっているところです。たしかに、このように考えると、何本もレビュー基準が存在するということになりかねず、それは問題かもしれません。しかし、一定の企業についてはレビューを受け入れることを義務づけるという制度を入れることとの整合性というのはやはり考えなければならないのではないかということを感じております。
 2点目は、小倉委員も指摘されていましたけれども、国際監査基準の改訂の方向の中で、継続企業の前提という問題が検討されていることに関連いたします。我が国における継続企業の前提に関する会計基準上の取扱い、あるいは開示における取扱いは、これはあくまでも私の印象ですけれども、経営者による評価という部分について着目するならば、諸先進国に比べると若干劣っているのではないか、不十分なのではないかと、開示内容を拝見して感じることがございます。したがって、国際監査基準の改訂が確定してから着手するのではなく、その前に経営者によるゴーイング・コンサーンの評価について、やはり何らかの手がかりになるような会計基準等、あるいは開示の基準についても、ちょっと先取りして、我が国でも検討する必要があるのではないかということを感じております。
 以上です。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。
 続きまして、林委員、よろしくお願いいたします。

【林委員】
 ありがとうございます。3点申し上げたいと考えていたのですが、ほとんどこれまでの委員の意見の中に含まれていますので、簡潔に申し上げます。
 まず1点目は四半期開示についてです。適用される会計基準、あるいは、それによって変わる開示内容等の制度の建付けによって議論することが変わってきますので、まずはそこをきちんとして、その後で監査部会において四半期レビュー基準について議論することになるかと思いますが、その際、中間監査基準についても併せて議論してはどうかと考えております。
 先ほど弥永委員がおっしゃられましたが、不正リスク対応基準との関係をどうするかも含めて、単に四半期レビューのことだけではなく、関連して議論すべき重要な論点があると考えております。
 1点目は以上です。
 2点目は、ゴーイング・コンサーンについてです。基本的に弥永委員がおっしゃったとおりで、国際的な開示および監査についての基準の見直しの動向を見ていますと、やはり日本については開示をもう少し手当てしたほうがいいんじゃないかと考えております。
 3点目は、今までどなたもおっしゃられていませんが、スライド9のロードマップに示されている第三者保証について、担い手をどうするか、あるいは保証基準や、保証の範囲・水準等の議論がありますが、この第三者保証の基準については、私個人としましては企業会計審議会が引き受けて議論すべきことではないかと考えております。タイムスケジュール的には少し先のことかもしれませんけれども、その辺りを念頭において御検討いただければと考えております。
 以上です。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございます。承りました。
 続きまして、堀江委員から御意見あるようで、よろしくお願いいたします。

【堀江委員】
 徳賀会長、ありがとうございます。まず大きな1番目の四半期開示制度の見直しに関する法案の概要について、1点、御質問させていただければと思います。
 資料3ページ目の上から3つ目の矢羽根ですが、この点、先ほど引頭委員、弥永委員も触れられましたが、それに関連いたしまして、「監査人によるレビューについては、任意とするが、会計不正等が起こった場合には一定期間義務付け」と、この「会計不正等」の「等」ですけれども、例えば内部統制の開示すべき重要な不備があった場合まで含めて考えておられるかどうか。この点について確認させていただければと思います。
 以下、コメントと要望でございますけれども、大きな2番目のサステナビリティ開示に関する内閣府令の改正に関し、情報の開示につきましては、できる限り各企業が独自性を出せるような運用が望ましいと考えております。
なお、開示情報の信頼性保証ということでございますけれども、今般の内部統制基準の改訂に際しましても、中長期的とはいえ、重要な課題として整理されましたところ、保証の前提として、情報開示に関する内部統制について十分に留意する必要があると考えますので、これからの運用につきまして御配慮いただければと考えております。
それから、大きな3番目は、改正公認会計士法に伴う政府令の改正です。政府令の今後の運用に関しまして、中小監査法人にも十分な理解が得られるよう、日本公認会計士協会等、関係機関とも連携しながら進めていただければと考えております。
 最後となりますが、大きな4番目、監査証明府令の改正ですが、最近、監査報告書も長文化して、その性質も大きく変わってきているようです。今般の報酬関連情報の開示もそうですけれども、監査報告書の読者に当該記載を通じて何を伝えようとしているのかということについて、監査報告書の作成者側が十分に腹落ちしていることが大切ではないかと考えます。今後、日本公認会計士協会の実務指針等を含めて、この点、御配慮いただければ幸いです。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございます。御意見は承りました。また、質問につきましては、まだ御発言いただいていない委員の方もいらっしゃいますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。承知しました。
 では、委員の皆様から、主に御意見を頂戴したと理解しております。もちろん堀江委員からの質問も含めて、事務局から御回答、コメントがございますでしょうか。よろしくお願いします。

【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございます。まず明確に御質問いただきました四半期開示の関係で、堀江先生から御質問いただきました。四半期開示の資料3、今、投影されています。この矢羽根の3つ目の「監査人によるレビューについては、任意とするが、会計不正等が起こった場合には一定期間義務付け」と書いているところでございます。これについて回答させていただきます。
 これはディスクロージャーワーキング・グループの報告本体では、もう少し細かく、この「等」の部分も含めて書いてございます。ワーキング・グループの報告自体は昨年12月27日に出た報告でございます。こちらの中では、ここの矢羽根の箇所は、まず対象となる書類について、取引所規則に基づく四半期決算短信のことを書いてございます。取引所規則に基づくものですから、厳密なことを、細かいことを申し上げますと、ここの部分については、今、国会に提出している法案の中には、記述は何らございません。その上で、取引所規則に基づく四半期決算短信について、先ほど申し上げましたディスクロージャーワーキング・グループの12月27日の報告におきましては、読み上げさせていただきますけれども、「例えば会計不正が起こった場合(これに伴い、法定開示書類の提出が遅延した場合を含む)や、企業の内部統制の不備が判明した場合、信頼性確保の観点から取引所規則により、一定期間、監査人によるレビューを義務づけることが考えられる」と、このように報告に書いてございます。堀江先生の御質問、まさに内部統制のところ、御関心だと思いますけれども、そこは、ワーキングの報告の中には入っているという考え方でございますが、具体的には、いずれにいたしましても、取引所規則に基づくものでございますので、取引所のほうで今後検討いただくことになろうかと存じます。
 質問に対しては以上でございます。
 その上で、先生方の御意見に何か意見するのは、事務方として大変僣越なので、それほど幾つかあるわけではありませんけれども、林先生からお話をいただいたサステナビリティの保証に関して、どこの場で御議論いただくのがいいのかというところ、これは非常に悩ましいといいますか、難しい論点かと思います。実はこのお話、同じ論点を金融審議会の昨年12月のディスクロージャーワーキング・グループのときにも、実は委員の方から御質問いただきまして、結論的なことを何か申し上げているわけではないですけれども、私どもは、企業会計審議会、それから、一方で、ディスクロージャーワーキング・グループがあります金融審議会と、それぞれ法令上の定めがございまして、企業会計審議会は、金融庁組織令という政令の中に定めがあって、何を御議論いただくかというのがそこに書いてある。具体的には、企業会計審議会は、企業会計の基準及び監査基準の設定、原価計算の統一その他企業会計制度の整備改善について調査審議し、その結果を内閣総理大臣、金融庁長官、または関係各行政機関に対して報告し、又は建議するというふうに、少し限定的に書かれておりまして、ここの政令との関係をどのように考えるか。
 一方で、金融審議会というのは金融庁設置法という法律に根拠がありまして、こちらのほうは内閣総理大臣、長官又は財務大臣の諮問に応じて国内金融に関する制度等の改善に関する事項その他の国内金融等に関する重要事項を調査審議すること。ほか、幾つか金融審議会の役割はあるのですけれども、ちょっと包括的に書かれているというところがありまして、その辺り、法令との関係を、今後、金融庁のほうでも検討させていただきたいと存じます。ありがとうございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 堀江委員、林委員、また、他の委員も結構ですが、ただいまの事務局の説明につきまして、さらに御意見等ございますか。よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、ほかに発言希望ございませんか。
 それでは、本日、御審議いただきました開示会計監査を巡る国内外の動向のうち、四半期開示の見直しに伴う監査人のレビューに係る必要な対応につきましては、今後、監査部会において御審議いただくことにしてはどうかと考えております。そのようにさせていただくことでよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

【徳賀会長】
 異議ないようですので、そのように取り進めさせていただきます。
 続きまして、次の議事に入ります。「国際会計基準への対応」について、まずは事務局から説明いただいた後、御質問、御意見をお伺いしたいと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 ありがとうございます。度々恐縮です。企業開示課長、廣川でございます。
 それでは、今、投影もさせていただいております資料3、事務局資料「国際会計基準への対応」ということで、こちらに沿って簡単に御説明させていただきます。
 おめくりいただきまして、1ページでございます。「会計基準を巡る変遷」ということで、少し2007年まで遡りまして、この15年強の出来事を振り返ってみたいと思います。
まず2007年ですけれども、日本の会計基準設定主体であります企業会計基準委員会(ASBJ)と、それから、国際的な基準設定主体でありますIASBが東京合意というものを締結いたしまして、日本の会計基準を国際会計基準にコンバージェンスさせる方針というのを示され、これに基づいて、日本の会計基準設定というのは、行われてきたということでございます。
 そうした中で、2009年ですけども、企業会計審議会におきまして、我が国における国際会計基準の取扱い(中間報告)というものが出されて、ここで将来的なIFRSの強制適用も視野に入れながら、IFRSの任意適用を開始するということがございました。
 なお、その際には、一つ飛びますが、米国会計基準の使用期限の設定というのも行われております。その上で、2011年ですけれども、こちらのほうで金融担当大臣談話というのが出されて、この中で少し方針変更ということで、2つございますけれども、当面、IFRSの強制適用はないということ、それから、米国会計基準の使用期限の撤廃をするということでございますので、米国会計基準、今に至るまで使用はされてございます。
 その上で、2013年、本企業会計審議会で、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」ということで、4つほど項目ございますけれども、方針が取りまとめられたということでございます。具体的には、IFRS強制適用の是非については、いまだ判断すべき状況になく、IFRS任意適用企業の積み上げが重要というのが1つ目。それから、2つ目に、任意適用要件の緩和をいたしました。それから、3つ目で、修正国際基準(JMIS)の導入ということでございますけど、これが行われる。4つ目として、単体開示の簡素化(開示負担の軽減)というのが図られたということでございます。
 それ以降、2014年ですけれども、基本的には、ここの、例えば政府の成長戦略、あるいは金融庁の行政方針、こういったところで、方針が4つほど掲げられて以降、10年近くたちますけれども、この方針で来ているということでございます。
 一つは、IFRS任意適用企業の拡大の促進、2つ目は日本基準の高品質化、3つ目がIFRSに関する国際的な意見発信、4つ目が国際的な会計人材の育成ということでございます。
 説明は途中でございますけれども。

【徳賀会長】
 すみません。審議の途中ではございますが、鈴木大臣がそろそろ御到着されますので、一旦審議を中断いたします。意見書を鈴木大臣にお渡しした後、審議を再開したいと思います。よろしくお願いします。

(鈴木大臣入室)

【徳賀会長】
 それでは、鈴木大臣にお越しいただきましたので、企業会計審議会として取りまとめました内部統制基準・実施基準の改訂に関する意見書を鈴木大臣にお渡しいたします。
 では、鈴木大臣、後ろのほうに御移動いただけますか。カメラ撮影の方はよろしくお願いいたします。
 このたび、「内部統制基準・実施基準の改訂に関する意見書」を取りまとめましたので、よろしくお取り扱いください。

(意見書手交)

【鈴木大臣】
 どうも御苦労さまでございました。ありがとうございます。

【徳賀会長】
 それでは、引き続き、鈴木大臣より一言御挨拶をいただきたいと思います。

【鈴木大臣】
 金融担当大臣の鈴木俊一です。国会日程が長引きまして、遅参いたしまして、大変失礼いたしました。ただいま徳賀会長から「内部統制基準・実施基準の改訂に関する意見書」を頂戴いたしました。
 御存じのとおり、内部統制報告制度は、ディスクロージャーの適正性を確保するものであり、金融・資本市場に対する内外の信頼性を高めていく上で欠かすことができません。さらに、企業における内部統制の取組は、企業活動が有効に機能し、経済社会システムが円滑に回っていくための根幹となるものであります。今回の改訂は、実務の過度な負担とならないよう留意しながら、財務報告に関する内部統制の実効性の向上が図られるよう、意見書を取りまとめていただきました。
 委員の皆様方におかれましては、精力的に御審議を賜り、誠にありがとうございます。重ねて御礼申し上げます。
 また、本日の企業会計審議会では、「開示・監査を巡る動向」や「国際会計基準への対応」について御議論いただくと伺っております。このような開示・会計監査等の制度インフラの整備については、我が国金融・資本市場や経済の健全な発展のための礎として、新しい資本主義による持続的な成長と家計への分配を支えていく重要な取組であると、そのように考えております。
 最後になりましたが、委員の皆様方におかれましては、本日も引き続き、幅広く活発な御審議を賜りますよう、お願いを申し上げまして、私からの挨拶とさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 鈴木大臣におかれましては、公務の御都合により、ここで御退席いただきます。カメラ撮影はここまでとさせていただきます。

【鈴木大臣】
 どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

(鈴木大臣退室)

【徳賀会長】
 それでは、再開したいと思います。

【廣川企業開示課長】
 それでは、説明の続きをさせていただきます。今、1ページの下のところで、2014年以降ということで、繰り返しになりますけれども、IFRS任意適用企業の拡大を促進する。日本基準については高品質化に取り組む。そして、IFRSに関しては、日本から国際的な意見発信をしていく。加えて、国際的な会計人材の育成をしていくという4つの柱で取組を行ってまいりました。
 具体的には、次の2ページに参りますけれども、今申し上げた4つ、順番に振り返ってみたいと思います。
 1つ目のIFRS任意適用企業の拡大促進ということで、我が国におけるIFRS任意適用企業拡大に関しまして、主な施策ということで取り組んでまいりましたのは、例えば、上から行きますけれども、JPX日経インデックス400の導入、それから、会計基準の選択に関しての基本的な考え方というのを開示、この2つ、取引所ですね。
それから金融庁におきましては、IFRS適用レポートの公表をするですとか、それから、IFRSに基づく連結財務諸表等の開示例の公表、それから、銀行法施行規則等の改正と保険業法施行規則等の改正というのは、割と近年ですけれども、これらの規制2業種においてもIFRSが使えるようにということで手当てをしてまいったということでございます。
 それから、大きく2つ目のIFRSに関する国際的な意見発信ということでいきますと、特に企業会計基準委員会(ASBJ)から、「のれん」及び「リサイクリング」に関しての意見発信を継続的にこの10年も行ってきておられるということで、その際には、ここにありますように、例えば海外の基準設定主体と連携するとか、それから、リサーチ・ペーパーを出す。それから、先ほども申し上げましたけども、JMISですけれども、そういったものを公表する中で、日本の考え方を、例えば「のれん」ですとか、その他の包括利益のリサイクリングの修正ですとか、こういった日本の考え方を埋め込んでいくという形での意見発信をJMISを通じて、こういったこともやってきたり、あとは、飛びますけれども、一番下ですけど、直近、2020年では、IASB公表のディスカッション・ペーパーに対して、のれんの償却の再導入を求めるコメントレターを、ASBJに加えて、その他の団体も含めてコメントレターを出すということで、取組を行ってきているというところでございます。
 3つ目、日本基準の高品質化のところは、日本基準を国際的に整合した会計基準とするために、例えば2018年3月には、収益認識に関する会計基準を策定したほか、中期運営方針においては、金融商品、リース、保険契約に係る取組をしていくということを公表しているといったような状況。これもASBJでございます。
それから、その他、経済環境の変化に対応した取組として、暗号資産に関する会計基準等の策定も2018年にはございました。
 最後、国際的な会計人材の育成ということで、財務会計基準機構における国際会計人材育成に係る施策としては、ちょっと遡りますけれども2012年から、会計人材開発支援プログラムを実施していますということと、国際会計人材ネットワークというのは、2017年4月から構築して取組をされているということでございます。
 次のページに参りまして、こうした中で、3ページですけれども、我が国におけるIFRS任意適用企業の拡大の推移ということでございます。また、前回から少しアップデートされておりまして、直近でIFRSを適用している企業と、適用予定である旨の適用時期を明示した上でお示ししている会社と合わせて、上場、非上場合わせてですけれども、直近では2023年3月末時点で273社といったような数字になってございます。
 その上で4ページでございます。我が国における国際会計基準への対応のあり方ということで、本日、この後、御議論いただくわけですけれども、そこにつながる御説明をさせていただきたいと存じます。
 上のほうですけれども、今も少し申し上げましたが、我が国における国際会計基準を巡る環境変化ということでいきますと、先ほど御説明申し上げました2013年の当面の方針を公表して以降、IFRSの任意適用の企業数、あるいはその全上場企業の時価総額に占める割合は増加してまいりました。直近では、先ほど件数を273件と申し上げましたけれども、時価総額でいきますと、全上場企業の約45%がIFRS適用会社ということになります。
 ただ、増えてきてはいますけれども、直近において、伸びについては鈍化傾向が見られるというのが確認できるところかと存じます。それに加えて、足元の国際的な会計基準に関する議論の変化ということで申し上げますと、のれんに関して、企業会計基準委員会におかれましては、JMISやリサーチ・ペーパー等を用いて積極的に意見発信を行ってきたものの、のれんの会計処理については、米国の財務会計基準審議会(FASB)及び国際会計基準審議会(IASB)において、我が国の会計基準と収れんしない方向で暫定的な決定がなされているというのが昨年の動きだったかと存じます。
 具体的には、小さく書いてありますけれども、昨年の6月にFASBは、のれんに関するプロジェクトについて優先順位を下げ、基準開発から除外することを暫定決定。また、同年の11月にIASBにおいては、のれんの会計処理について非償却(減損のみ)を継続することを暫定決定しているというところ、皆様御存じのところかと存じます。
 こうした中で、我が国における国際会計基準への対応のあり方をどう考えるかということでございます。今回、3つほど提起させていただいております。
 1つ目、2013年、企業会計審議会が当面の方針を公表して以降、約10年が経過しており、我が国における任意適用企業の拡大及び国際的な動向、のれんの動向等の変化を踏まえて、当面の方針を引き続き継続すべきであるかどうかについて、どのように考えるか。
 2つ目、このほか、IFRSの任意適用の拡大促進及び我が国としての意見発信の強化等に資する取組として、国際会計人材の育成、のれんの会計処理、概念フレームワークの開発等についてどのように考えるのか。
 3つ目ですけども、上記のほか、国際会計基準への対応のあり方について検討すべき点はないかということで、3つ示させていただきました。
 事務局からは以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 それでは、事務局の説明につきまして、御質問、御意見等いただければと思います。先ほどと同様に、チャット機能を使って発言希望である旨を送ってください。
 なお、御質問の回答につきましては、数名の委員から御質問を頂戴した後に、まとめて事務局から回答させていただきます。よろしくお願いします。
 それでは、小倉委員、よろしくお願いします。

【小倉委員】
 小倉です。国際会計基準については、グローバルに事業展開する企業において、在外子会社の管理を行う上で、財務諸表の作成基準の統一ができるというメリットがあります。一方、注記の分量が非常に多いことから利用者にとって情報過多になりがちというデメリットが挙げられています。
 一方、日本基準については、近年、注記について開示目的に照らして重要なものの開示を求めるという方針が採用されていますので、情報開示のコストと情報の有用性の確保のバランスを取っていると考えます。今後も財務諸表本表の作成基準において、国際会計基準と差異を少なくする取組を行うことによって、国際会計基準と同様の利点、すなわち、親子間のメジャーの統一が可能となりますので、経営者が管理しやすくなると考えます。そのような点から、強制適用という形ではなく、企業の経営者もメリットを感じる中で選択していくという方向性が考えられるのではないかと思っております。
 ただいま申し上げたように、日本基準と国際会計基準については、コンバージェンスが引き続き進められていますけれども、金融商品会計やのれんの会計処理が残されている大きな差異になっております。金融商品会計では、昨今のシリコンバレーバンクやクレディスイスなどのイベントの発生を踏まえまして、会計基準や開示について改めて分析や評価を行う必要があると考えています。
 特に銀行については、預金保険で保護されていない預金の残高や預金の属性といった情報も投資家にとっては重要ということを改めて認識したところです。のれんの会計処理については、償却について御説明がありましたとおり、国際的な議論を経ても取り入れられていないということから、日本のモデルを再検討してもよいのではないかと考えております。特に、割引前キャッシュフローで減損の認識の要否を判定する日本基準の現行モデルに関しては、実務負荷の軽減という観点からは便益がありますけれども、リスクフリーレートが上昇しているような現状の経済環境の場合には、結果として評価が甘くなってしまうという可能性が懸念事項としてあると考えております。
 以上を踏まえまして、国際会計基準への対応は、企業会計審議会の会計部会においても議論していただき、いろいろな立場の方のいろいろな御意見を聞いていただいた上で、今後の方向性について検討していっていただきたいと考えます。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。御意見承りました。
 続きまして、米山委員、お願いいたします。

【米山委員】
 ありがとうございます。今、投影していただいているスライド、下のほうの「対応のあり方」というところで、かなり雑駁にいろいろなことが語られていますが、時間の関係上、1点だけ、主として1つ目の白丸に関連して発言させていただきます。
 遡ること10年、当面の方針を定めたときのことを思い起こしますが、当時としては、ああいう形での対応というのは決して悪くないものだったと考えております。ただし1点だけ申し上げるなら、「どのような事態が生じたとき、何を根拠としてIFRS受け入れのあり方をどのように判断するのか」という点についての詰めの議論を欠いていたことは、後から考えてみると問題だったと思っています。言葉は悪いですけども、だらだらと任意適用が続いてしまって、いつ決着が図られるのかが企業アナリスト、あるいは会計士の皆様に見えない、いわば予見可能性を欠いているのは望ましくないことだと思っています。
 ですので、すぐに当面の方針を継続するかどうかについての結論は出せませんけれども、その結論についてのコンセンサスを得るための基礎的な作業として、これまでの任意適用を通じて何が生じたのかの事実関係をきちんと整理し、何が論点であって、どのような方向性があり得て、かつ、どのような事項を尊重すると、どのような選択肢が望ましいこととなるのかに落とし込まれるのかといった類いの議論、言い換えれば、「将来が可視化される」という言い方が分かりやすいでしょうか、具体的なイメージが醸成されるように、審議会で議論を進めていく必要があるのではないかと思っている次第です。
 私からは以上です。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございます。承りました。
 続きまして、井口委員、よろしくお願いいたします。

【井口委員】
 御発言の機会いただき、ありがとうございます。では、資料のちょうど4ページの対応のあり方の論点に従ってコメントさせていただきます。
 私の観点というのは、機関投資家ですので、国際会計基準の課題というのは、日本の資本市場の強化という観点ともつながると思いますので、そういった観点で発言させていただければと思っています。
最初の論点の当面の方針の取扱いですが、当面の方針の公表以降、資本市場における財務報告に大きな影響を与えた事項は幾つかあると思っておりますが、特に機関投資家等の観点から見ると、スチュワードシップ・コードとガバナンス・コードの導入というのが大きかったのではないかと思っています。
 企業と国内外の機関投資家の対話が促進されまして、この対話の準備として、ファンダメンタルズ分析の重要性が増し、会計情報などの財務情報、あるいはサステナビリティ情報を含む、財務情報の重要性が一段高まったと思っているからです。現状、この国内外の機関投資家の株式保有比率はもう50%を超えておりまして、今後の政策保有株の解消を考えますと、一段とこの保有が増えて影響力を増すと考えております。ですので、こういった国内外の機関投資家に有用な情報を届けるという観点が、日本の資本市場強化の観点で欠かせないと考えております。
翻って、会計情報において機関投資家にとって有用な情報というのは、国内企業間だけではなくて、海外企業も含めての比較可能性が非常に重要な論点になっていくのではないかと思っています。
 会計情報については、理論的に言えば、のれんの議論を含めて、国際会計基準と日本基準のどちらが高品質かということについては多くの議論と思いますが、どちらの基準がより比較可能性を提供できる国際パスポートかといえば、答えは、前回の当面の方針以降、この10年間でより明確になってきているのではないかと思っております。
私は、日本市場強化の観点では、国際会計基準の適用の拡大というのを一段と後押しする施策が不可欠と思っております。そういう意味では、東証の市場構造改革で、プライム市場が設置されたという意味は重要と考えております。プライム市場は、投資化との建設的な対話を中心に据えて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場と位置づけられておりますが、この市場に手を挙げた企業は、自ら投資家との対話にコミットするということを表明したことになりますので、有用な情報を提供する責務があると思っているからです。したがって、プライム市場上場企業に国際会計基準を適用するということは妥当と思っております。
 ただ、企業が自ら考えていくという当面の方針の精神を踏まえるとすると、プライム市場上場企業には国際会計基準を適用するという規定を、まずは、ソフトローであるガバナンス・コードに入れて、一段の適用の拡大を図るという方策もあるのではないかと思っております。また、副次的ではありますが、こういった一段の適用拡大の施策があって、初めて国際会計基準等に対する日本の意見発信力も高めることにつながるのではないかと思っております。
 2点目ですが、国際会計人材の育成というのは重要と思っております。実は私自身も財務会計基準機構様の会計人材開発支援プログラムの第1期生でして、自らの体験を振り返ってもこのプログラムが大変有効であると思っております。
 ただ、一方で、先ほど廣川課長からこの審議会の範囲ではないというお言葉もあったんですが、会計とサステナビリティのコネクティヴィティがより一段と求められるという中では、サステナビリティ開示人材の育成も急務と考えております。
 2点目のもう一つの論点の概念フレームワークの策定につきましては、国際的な意見発信において自らの考えを明確にするという点でよい点もあると思いますが、もう一つの観点もあると思っています。御存じのように、ISSBが設置されて、サステナビリティ開示基準の策定というのが行われておりますが、この基準は、IASBの概念フレームワークの考え方を基盤と置いております。これは御存じのことかと思います。日本のサステナビリティ開示基準もまだ議論をこれからするというところではありますが、基本的にはISSBの基準に基づき策定されると予想されますので、IASBの概念フレームワークにあります、例えば一般目的財務報告など、今まで日本の会計基準になかった概念というのが多く入ってくると予想されます。こういった新しく入ってくる概念を整理する必要がある場合において、財務情報とサステナビリティ情報で構成される財務報告全体の考え方を示すフレームワークの策定を行うことは、企業と投資家にとっても重要でないかと思っております。
 最後の3点目の、その他の検討すべき事項ですが、私は、日本の資本市場強化の観点から意見を申し上げてきましたが、当面の対応以降、事務局から御説明がありましたように、多くの事象が生じていると認識しておりますので、様々な角度からの検討が必要と思っております。
 小倉委員がおっしゃったように、会計部会を開催し、関係者の皆様からの御意見をいただく機会を設置するということを私からも御提案させていただきたく思っております。
 長くなりまして、申し訳ありませんが、以上でございます。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 ありがとうございます。御意見として承りました。
 続きまして、佐々木委員、よろしくお願いいたします。

【佐々木委員】
 ありがとうございます。佐々木でございます。私からは、最初の当面の方針に関してコメントさせていただきたいと思います。IFRSの任意適用の姿勢というものは今後も引き続き堅持すべきだと思ってございますし、日本基準についても堅持すべきだと思ってございます。
 会計基準の選択は、本来、各社の経営判断の結果でございますので、現時点でIFRSを適用していない会社には、その必要性がないというケースが多いかと思います。また、IFRSには、比較可能性等、いいところはたくさんありますけれども、一方で、様々な課題があると思います。のれんにつきましては、非常に残念な結果となりましたけれども、増え続けております、のれん残高への対応という意味では、本質的な解決にはまだ至っていないと思いますので、償却再導入という考え方につきましては、今後も粘り強く発信していくべきかと思ってございます。
 また、基本財務諸表プロジェクトの関連では、持分法投資損益が営業損益の外という形で、整理される方向となってございまして、こちらも非常に残念に思っている会社が多いと聞いてございます。IFRSはもともと原則主義ということで、企業実態に応じた開示ができるということでございましたので、そういった意味で、こういった形で変わっていくことは今後、任意適用の積み上げということにも影響するんじゃないかという懸念を持ってございます。また、会社によりましては、こういった考え方が日本企業にも何か影響が出ないのかと心配しているような会社もございます。
 一方で、日本基準のほうですけれども、今までの御発言の中にもいいところがあるという話がございましたけれども、日本基準については、今後も高品質化を目指していくということですが、国際的な調和の観点だけではなくて、やはり日本の実務慣行も踏まえた基準づくりが必要かと思ってございます。例えば国際基準、IASBに偏ったことにならないように注意が必要かと思います。のれんに関しては日本だけが償却するということでございますので、ある意味、特異と受け止められるかもしれないので、そうはならないような工夫が必要かと思ってございます。
 長くなりましたが、私からは以上でございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございます。承りました。
 続きまして、引頭委員、よろしくお願いいたします。

【引頭委員】
 ありがとうございます。引頭でございます。1点、長くなるかもしれませんが、コメントを申し上げさせていただきたいと思います。
 日本基準とIFRSとのコンバージェンスは着実に進んできたと思います。現時点での最大の違いというのは、先ほど小倉委員から御指摘ありましたが、のれんの償却の取扱い、そして、金融商品と理解しております。前者ののれんの償却については、先ほど事務局から御説明ありましたように、FASB、IASBともに、22年に日本とは異なる処理をしていくという決断がなされて、その結果、日本としてどうするかを考える時期に来たということになるかと思います。
 ここで、私もずっと企業結合会計に携わってきた者として申し上げさせていただきますと、のれんの償却が必要と考える理由には幾つかありますが、そのうちの根底にあるものの一つには、経済が低迷したとき、あるいは金融市場が低迷したときに、のれんが一気に減損されるということが起きますと、先ほど申し上げた金融市場の混乱と経済の低迷と、そして、減損というものがトリプルで同時に起こってしまう。こうした激変を緩和させるというものもあると考えております。
 皆様御案内のとおり、昨年3月からFRBが利上げを行うまで、コロナ禍の前にちょっと利上げしたときがありましたけれども、リーマンショック以降、基本的には世界的に大幅な金融緩和状態が続いてきております。株価も、大きな意味では、世界的に上昇基調にありました。こうなりますと、今、バランスシートに載っているのれんというのも大きく蓄積された状況になっているとみられます。今後、利上げが継続されたり、あるいは少し経済が厳しくなるだろうという予想がされているわけですけれども、そうした状況のなかで、のれんが今後どんなふうになっていくのか。このことについて世界の投資家がどういうふうに考えるのかということも。我々としては今後見ていく必要があるのではないかと思います。
 簡単に言いますと、経済の調子がいいときには、投資家も経営者にとっても、のれんを償却しないほうがよりベネフィットを受けられる一方で、一旦、逆回転していきますと、その反作用が大きく出る可能性があるということになります。そういうふうに考えますと、拙速に結論を出さず、もう少し状況を見極めた上で考えていく必要があるのではないかと思っております。
 最後になりますが、先ほど申し上げたように、これから多少、経済は後退期に入ってくるのではないかと思われますが、こうしたときにこそ、会計基準の品質というものが問われていきますし、また、それをブラッシュアップしていくタイミングになると思いますので、そういう観点も持って、今後取り組んでいくべきではないかと思いました。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございます。御意見として承ります。
 続きまして、挽委員、よろしくお願いいたします。

【挽委員】
 ありがとうございます。今、引頭委員がおっしゃったことに賛同いたしております。また、任意適用をした日本企業、昔、金融庁がリポートを出していただきましたが、経営管理の高度化ということが第1の導入目的に挙がっておりました。やはり企業にとっての経営者がコストベネフィットを考えて、複数の会計基準のなかから選択して採用するという、これまでの方針というのは決して間違っていなかったと思います。むしろ、IFRSの任意適用は国際的に見ても希有なやり方であり、高く評価しております。
 また、任意適用について、銀行法、保険業法等の改正に加えて、先ほど井口委員がおっしゃったように、日本市場の強化ということに向けて、プライム市場に向けて、導入を促していく、経営者が必ずしもコストベネフィットのうちのベネフィットを完璧に認識できているとも限らないと思いますので、その辺は金融庁の腕の見せどころかなという感じもいたしております。
 それから、これまで続けてこられた高度国際会計人材につきまして、引き続きお願いしていきたいと考えておりますが、高度と言うからには、何回もここでも申し上げているんですけれども、まず裾野を広げなければならないということを強く認識していただきたい。また、サステナビリティという話になると、財務会計とか監査の世界が、これまでやってきたのかと言われると、裾野を広げるという意味でも人材の母体について考える必要があるのではないかと考えております。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございます。承りました。
 続きまして、堀江委員、よろしくお願いいたします。

【堀江委員】
 徳賀会長、ありがとうございます。専門的な内容につきましては、エビデンスに基づいて会計部会で御議論いただきたいと思いますので、大局的といいますか、距離を置いたところから見たときのコメントを2つほど述べさせていただきたいと思います。
 1つ目ですけれども、会計・開示の基準よりも監査・保証の基準の議論が先行するような場面があるように見受けられることもありますので、これまで以上に会計基準の国際化ですとか、収れんについての十分な議論をぜひ積み重ねていただきたいと考えております。
 国際化を視野に入れた、我が国におけます企業会計のより一層の進展ということを考えた場合に、会計基準と監査・保証基準をセットにした議論もあってもいいのかなと考えております。
 2つ目でございますけれども、海外進出を視野に入れている企業などは、積極的にIFRSを導入していく必要があると考えております。ただ、今回、金融庁の資料でもお示しいただきましたとおり、我が国の企業におけますIFRSの導入はどうも踊り場に差しかかっているようにも見えますので、より一層の原因分析を進めていただくことはもとより、小倉委員からもございましたけれども、こういう国際基準を導入することのメリットですね。これをより分かりやすく伝えていくということも大切ではないかと考えております。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございます。御意見として承ります。
 ほかに皆様から御発言ございませんでしょうか。よろしいですか。
 委員の皆様から多様な御意見頂戴いたしましたが、事務局から何かリジョイン等ございますか。

【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございます。また、僣越ながら、先生方の御意見に何か意見申し上げることは基本的にはないですけれども、今回、金融庁に対する叱咤激励もいただきました。また、国際会計基準の議論については、しっかりと議論をというお話もいただきましたので、事務局としては、貴重な御意見を受け止めさせていただいて、真剣にどういうふうに進めていくのか考えてまいりたいと思います。ありがとうございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 本日、御審議いただきました国際会計基準への対応につきまして、複数の委員から会計部会における審議を求める発言がございましたので、私といたしましては、今後、会計部会において意見交換をする機会を用意してはどうかと考えております。そのようにさせていただくことでよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

【徳賀会長】
 ありがとうございます。御異議がないようですので、そのように取り進めさせていただきます。
 よろしいですかね。はい。本日は、様々な立場からそれぞれ貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。今回いただいた御意見を踏まえ、次回以降の議論の参考にさせていただきたいと思います。
 予定より若干早いようですが、これで本日の議事を終了させていただきます。
 本日はお忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。ありがとうございました。

 

以上

お問い合わせ先

企画市場局企業開示課

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)(内線3691、2999)

サイトマップ

ページの先頭に戻る