企業会計審議会総会議事録

1.日時:令和6年3月12日(火曜日)10時30分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第1特別会議室

【徳賀会長】
 皆様おはようございます。会長の徳賀でございます。定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会を開催いたします。皆様には御多忙の中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、事情により、別室より会議の進行をさせていただきます。
 まず、本日の総会の定数14名中、定足数が過半数となっておりまして、12名の御出席をいただいておりますので、会議は成立しております。
 なお、本日の会議でございますが、企業会計審議会議事規則第1条第2項に則り、オンライン開催とさせていただきます。
 それではまず、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則第4条第1項に則り、本日の会議について、公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

【徳賀会長】
 ありがとうございます。異議がないようですので、本日の会議の模様は、ウェブ上でライブ中継させていただきます。
 なお、議事録はこれまでどおり作成し、金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 また、本日は、神田政務官に御出席いただいております。後ほど、「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂に係る意見書」を神田政務官にお渡しする予定でございますが、その際にはカメラ撮影を行う予定でございます。
 それでは、事務局よりオンライン会議の開催に当たっての留意事項をお知らせいたします。

【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。事務局の企業開示課開示業務室長の齊藤でございます。
 オンライン開催に関して、2点注意事項がございます。
 まず、御発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。御発言されるときには、マイクをオンにして、ミュート解除で御発言していただき、御発言が終わられましたら、またミュートにしていただくということでお願いいたします。また、支障のない範囲で構いませんが、会議中は、お顔が見られるように、カメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。
 第2点目として、発言を御希望される際ですが、チャット機能を使って、全員宛てに発言希望である旨とお名前をともに入れてお送りください。お名前については、協会名などの組織名でも結構ですので、御入力ください。それをこちらで御確認させていただいた上で、会長から指名させていただきたいと存じます。
 なお、御発言に際しては、念のため、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言いただければと思います。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。まずは、四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂等に係る監査部会での審議の状況について、堀江部会長から御説明をお願いいたします。

【堀江監査部会長】
 監査部会長の堀江でございます。私から、「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂及び品質管理基準の改訂に係る意見書(案)」の主な内容につきまして、御説明させていただきます。資料は、1-1から1-5を御用意させていただいておりますので、適宜御参照ください。
 まず、審議の背景や経緯から御説明いたします。
 資料1-1「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂に係る意見書(案)」前文の冒頭に記載があります。金融商品取引法に基づく四半期報告制度につきましては、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告を踏まえ、金融商品取引法に基づく第1及び第3四半期の開示義務を廃止して、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化するため、昨年5月に金融庁において、金融商品取引法の改正案を取りまとめ、国会に提出し、同年11月に金融商品取引法等の一部を改正する法律が成立いたしました。これに伴いまして、関係法令において、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューなどに関する所要の規定の整備を行うこととなりました。
 こうした中、昨年4月の企業会計審議会総会におきまして、四半期開示の見直しに伴います監査人のレビューに係る必要な対応について、監査部会で審議することとされたことを踏まえ、昨年9月より2回にわたり監査部会で審議を行いました。
 年度の監査人が行う中間財務諸表その他の期中財務諸表に対するレビューにつきましては、言うまでもなく、種々異なる需要が想定されるところであります。
 現行の「四半期レビュー基準」では、一般目的の四半期財務諸表に対して適正性に関する結論表明のみが規定されておりますが、一般目的の期中財務諸表を対象とした適正性に関する結論表明だけでなく、準拠性に関する結論を表明することもあり得ます。このほか、特別目的の期中財務諸表に対する結論の表明も想定しておく必要があります。
 こうしたことから、監査部会としましては、現行の四半期レビュー基準について、改正後の金融商品取引法における中間財務諸表に対するレビューに加えて、一本化後の四半期決算短信におけるレビューも含め、年度の監査人が行う期中レビューの全てに共通する基準とする方向で改訂の検討を進めることといたしました。
 さらに審議の結果、現行の品質管理基準の一部の改訂を行うこととし、資料1-1と併せまして、資料1-2のとおり「監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書(案)」の取りまとめも行いました。
 なお、これら2つの意見書(案)を御承認いただくに際し、御参考に供するため、資料1-3、1-4及び1-5を御用意させていただいております。
 監査部会では、2つの意見書(案)につきまして、昨年12月から本年1月にかけて意見募集を行いました。資料1-3が、寄せられました御意見と、それに対する監査部会としての考え方でして、これに基づきまして現状の案としております。
 早速、改訂の主な内容の御説明に入ります。「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂」に関するポイントから御説明をさせていただきます。現行「四半期レビュー基準」の「期中レビュー基準」への具体的な改訂箇所につきましては、資料1-4として新旧対照表を用意しておりますので、詳細につきましては、後程、御確認いただければ幸いです。
 まず、期中レビュー基準への改訂の基本方針といたしましては、先ほども簡単に触れさせていただきましたとおり、現行の「四半期レビュー基準」の枠組みを生かしつつ、期中財務諸表の種類ですとか、結論の表明形式を異にするレビューを含めて、年度の監査人が行う期中レビューの全てに共通する内容としたことです。そこで、基準の名称も、「四半期レビュー基準」から「期中レビュー基準」に改めることにしました。
 続きまして、期中レビュー基準案のポイントにつきまして御説明いたします。当該基準は、「第一 期中レビューの目的」、「第二 実施基準」、「第三 報告基準」という構成になっておりますので、それに従ってみてまいります。
 第一、期中レビューの目的に関して、第1のポイントとして指摘すべきは、一般目的の期中財務諸表に加え、特別目的の期中財務諸表についても取り扱っていることです。改正後の金融商品取引法上の中間財務諸表は、一般目的の期中財務諸表として位置づけられるところでありますが、一本化後の四半期決算短信に含まれる四半期財務諸表等も、あくまでも一般目的の期中財務諸表として整理されるものと承知しております。これらとは別に、特別目的の期中財務諸表に対するレビューも想定されるところですので、その点も「第一 期中レビューの目的」に追記することにいたしました。
 第2のポイントは、適正性と準拠性という結論表明の区別に関することです。改訂後の「期中レビュー基準」では、一般目的の期中財務諸表と特別目的の期中財務諸表のそれぞれについて、適正性に関する結論の表明と準拠性に関する結論の表明とがあり得ることを踏まえつつも、現行の「四半期レビュー基準」の趣旨を踏まえ、改正後の金融商品取引法上の中間財務諸表に対するレビューのような、一般目的の期中財務諸表を対象にした適正性に関する結論の表明を基本とし、監査基準の枠組みとの整合性にも十分に配意しました。
 なお、この適正性と準拠性につきましては、監査部会におきまして、その違いの分かりにくさが指摘されましたので、意見書(案)前文で簡潔に両者の違いに言及することとし、「第一 期中レビューの目的」の記述では、ひとまず一般目的の期中財務諸表を対象にした適正性に関する結論の表明を基本とし、その上で、一般目的の期中財務諸表又は特別目的の期中財務諸表を対象とした準拠性に関する結論の表明が可能であるという建付けにしました。
 続きまして、「第二 実施基準」の改訂ポイントに関しましては、期中レビューの実施に当たって、準拠性に関する結論の表明であっても、適正性に関する結論の表明の場合と同様に、期中レビュー手続を実施し、結論の表明の基礎となる証拠を得なければならないことから、「第二 実施基準」が当然に適用されることに留意が必要であり、このことは、監査部会の議論でも意見がありました継続企業の前提に関する手続についても、同様であることを明確にしています。また、監査人は、特別目的の期中財務諸表に対してレビューを行うに当たり、特別の利用目的に適合した会計の基準が受入れ可能であるかどうかについて、十分な検討を行わなければならないことも明記いたしました。
 最後に、「第三 報告基準」では、結論の表明に際して誤解が生じないように、あえて、特別目的の期中財務諸表に対して、適正性に関する結論を表明する場合や、監査人が準拠性に関する結論を表明する場合を付記いたしました。なお、報告基準の規定内容は、適正性に関する結論の表明が基本となっておりますことから、準拠性に関する結論の表明の扱いが問題となりますが、別途、準拠性に関する報告基準を改めて規定するのではなく、適正性に関する結論の表明を前提としている報告基準に準じることとしました。
 なお、「不正リスク対応基準」との関係につきましては、基準案の前文において、期中レビューは、年度監査と同様の合理的保証を得ることを目的としているものではないことから、不正リスク対応基準は期中レビューには適用されないことを明確にしています。
 また、ここまで御説明いたしました期中レビュー基準への改訂における審議を踏まえ、「監査に関する品質管理基準」の「第十六」準用規定についての改訂を行いました。これは、資料1-5に記載のとおり、期中レビューについて品質管理基準が準用されるように改めることにしたもので、改訂箇所はこの1箇所です。
 適用時期についてですが、「期中レビュー基準」及び「改訂品質管理基準」は、令和6年4月1日以降開始する期中財務諸表に係る会計期間の期中財務諸表に対するレビューから適用されることになります。
 最後になりますが、本基準を実務に適用するに当たって必要となる実務指針につきましては、日本公認会計士協会において、適用までの極めて厳しい時間的な制約がある中、適切な手続の下で作成が進められていると聞いております。関係者とも協議の上、ぜひ円滑な実施に向けた対応を重ねてお願いいたします。本基準や実務指針が、監査人によるレビューの円滑な実施はもとより、開示情報の信頼性の確保につながっていくことを期待しています。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 御説明ありがとうございました。ただいま御説明がございました「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂等に関する意見書(案)」につきまして、説明の内容のとおり、取りまとめることとしてよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

【徳賀会長】
 ありがとうございます。
 それでは、意見書の交付を行いたいと思います。ただいま企業会計審議会として取りまとめました意見書を、私の代理として、会場におられる堀江部会長から、神田政務官にお渡しいただきます。神田政務官、堀江部会長、後ろに御移動をお願いいたします。カメラ撮影の方は、よろしくお願いいたします。
 それでは、このたび、「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂等に関する意見書」を取りまとめましたので、よろしくお願いいたします。
 
(意見書手交)
 
【齊藤開示業務室長】
 ありがとうございます。それでは御着席ください。

【徳賀会長】
 それでは、神田政務官より一言御挨拶をお願いいたします。

【神田政務官】
 内閣府大臣政務官の神田潤一でございます。
 最初に、1月に発生した令和6年能登半島地震により亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。震災発生後、金融庁では、被災地域の預金者や事業者等の金融取引に支障が生じないよう、また、震災の影響を受けた事業者の資金繰りに重大な支障が生じないよう対策を講じてまいりました。政府として、被災された方々が一日でも早く日常生活に戻ることができるよう、引き続き全力で取り組んでまいる所存でございます。
 改めまして、企業会計審議会総会の開催に当たりまして、一言御挨拶をさせていただきます。
 ただいま、徳賀会長の代理として堀江部会長から、「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂等に係る意見書」を頂きました。委員の皆様方におかれましては、来月からの円滑な実施に向けて、関係するレビュー基準を整備するため、精力的に御審議をいただきまして、ありがとうございました。
 本日の企業会計審議会では、この後、開示・会計・監査を巡る最近の動向についても御議論いただく予定と伺っております。この分野に関連して、2月19日に開催した金融審議会では、サステナビリティ開示や保証のあり方の検討について諮問されました。国際的には、幅広いテーマについての基準の開発が進められております。これらについて、本日、金融庁より御説明をさせていただく予定です。
 岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の下、資産運用立国を実現していくためには、企業情報が適時適切に開示されるとともに、我が国の金融・資本市場に対する内外の投資家の信頼性を確保することが必要不可欠です。このため、我が国の会計・監査等の制度インフラについて、企業会計審議会で御議論をいただきながら、不断に整備を進めていくことが重要であると考えております。
 委員の皆様方におかれましては、今後とも、幅広く活発な御審議を賜りますようお願い申し上げまして、私からの御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。神田政務官におかれましては、公務の御都合により、途中で退席されるということでございます。
 カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
 続いて、次の議事に入ります。「開示・会計・監査を巡る最近の主な動向」に関して、まずは事務局から御説明いただき、御質問、御意見をお伺いしたいと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【野崎企業開示課長】
 企業開示課長の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。資料2に基づきまして、御説明させていただければと思います。
 まず、1ページ目、目次でございますけども、本日、4項目ございます。まず1つ目、先ほど政務官からも御発言がございましたサステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討に関してでございます。2つ目が国際会計基準への対応、3つ目が会計基準を巡る国際的な動向、最後が国際監査基準等における主な改訂についてでございます。
 3ページ目に進んでいただきまして、まず、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループの設置に関してでございます。こちらは、2023年3月期から、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が開始されております。他方で、個別具体的な基準がない状況でございます。今後、具体的な基準に準拠して開示が行われることで、比較可能性を高め、投資家に有用な情報が提供されることが重要と考えられます。
 我が国のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)におきましては、昨年6月に最終化しました国際基準(ISSB基準)を踏まえて、日本における具体的なサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)を開発いただいているところでございまして、今月に公開草案が公表されるという予定でございます。
 SSBJ基準の適用対象につきましては、グローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業、すなわちプライム上場企業ないしはその一部から始めるということが考えられる中、公開草案の公表に際しまして、具体的な適用対象や適用時期を検討していくということで公開草案に対する適切な議論が行われるほか、企業等において基準の適用に向けた準備が進むと考えてございます。
 投資家からは、サステナビリティ情報の信頼性確保を望む声もございまして、国際的にも、サステナビリティ情報に対する保証のあり方について議論が進んでおります。日本におきましても、サステナビリティ開示基準や保証制度を導入するには、法改正を視野に入れた検討が必要であり、議論を始めていくことが重要でございます。
 こうした中で、2月19日に金融審議会において、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループを新規に設置して、有識者による議論を開始すべく諮問がなされたというところでございます。
 4ページ目に進んでいただきまして、こちらは欧米の状況でございますけども、欧州では2024年度から順次サステナビリティ情報の開示を開始する、欧州域外にも2028年度から適用を開始されることが予定されてございます。
 米国におきましても、先週、SEC規則が最終化されまして、こちらも2025年以降、サステナビリティ開示の制度導入が順次進められるということが予定されてございます。
 5ページ目に進んでいただきまして、こちらは、2022年の12月27日のディスクロージャーWGの報告の抜粋でございますけども、一番下の段落を御覧いただきますと、企業によって社会全体へのインパクトが異なることや、様々な業態があること、企業負担の観点、先ほど申し上げたように、欧米では企業規模に応じた段階的な適用が示されているということを踏まえますと、日本におきましても、最終的に全ての有価証券報告書提出企業が必要なサステナビリティ情報を開示するということを目標とする、今後円滑な導入の方策を検討していくことが考えられるとなってございまして、まさにこれから円滑な導入の方策についての検討を本格的に始めていきたいと考えてございます。
 7ページ目では、国際会計基準への対応でございます。こちらは、昨年の4月7日に開催されました、企業会計審議会総会での御審議を踏まえまして、昨年6月に第10回会計部会を開催しておりまして、6つの項目について審議をしていただいてございます。
 9ページ目に進んでいただきまして、実際にこの項目についての主な御意見が記載されております。まず、IFRSへの対応のあり方でございますけども、こちら1つ目の黒丸にございますように、プライム市場に上場している企業でIFRSを導入していない理由や実態を明らかにすべきという御意見があったことに対しまして、IFRS任意適用の方針を維持して、将来的にも強制適用すべきではないというような御意見もございました。
 2つ目のIFRS任意適用企業の拡大促進に関しましては、IFRS適用のメリットと負担を再度確認することが必要。さらには、3つ目の丸では、上場企業全体にIFRSに対する理解を深めてもらい、移行するときの心理的なものも含めたハードルを下げることが任意適用拡大への対応になるのではないかといった御意見がございました。
 3つ目のIFRSに関する国際的な意見発信では、2つ目の黒丸において、特にのれんに係るtoo little,too late問題への対応としまして、減損テストの効率性と実効性を上げるような提言をして、実を取るというアプローチも必要ではないかという御意見がございました。
 10ページ目に進んでいただきまして、日本基準の高品質化でございます。こちらも特にのれんに関する議論が行われたところ、日本基準において、のれんの償却・非償却の選択適用を認めるべきとの意見もあるところでございますけれども、これを認めるということは、一種の利益操作を認めることにもつながるので、利用者の立場からすると到底受け入れられないというような御意見がございました。仮に、のれんの非償却によって情報の有用性が高まると期待されるとしても、非償却は毎年の減損テストとセットであって、会社にとっての体制整備とコストが大きくかかるというような御指摘もございました。
 また、会計基準のコンバージェンスに当たりましては、我が国の基本的な考え方を踏まえて、IFRSや米国基準の必要な部分を取り込めばよいといった御意見に対しまして、日本基準とIFRSの差を極力小さくしていくことが重要という御意見もございました。
 最後でございますけど、国際会計人材の育成につきましては、2つ目の丸にございますように、会計とサステナビリティ開示のコネクティビティがより一段と求められているというような状況になってきてございますので、サステナビリティ開示人材の育成も必要になるというような御意見もいただいたところでございます。
 私からは以上でございます。

【倉持国際会計調整室長】
 国際会計調整室長の倉持と申します。それでは、会計基準を巡る国際的な動向に関して御説明させていただきます。
 先ほどもお話しがございましたのれんは、日本で国際会計基準の検討を行う上で非常に重要な論点でありまして、こののれんに関して国際的に動きがございました。日本の金融庁、そして米国のSEC、こういった各国の証券規制当局の国際機関であるIOSCOという団体がありますが、IOSCOは2023年12月に報告書を公表し、現行のIFRSの実務におけるのれんの減損のみアプローチに関連して、のれんの減損が過少で適時に行われず、のれんの残高が過大に積み上がっている問題、いわゆるtoo little, too late問題について懸念を示し、こういった状況が起こる場合には、貸借対照表が企業の財政状態を適正に表示しない、そして、投資家に対する情報提供の観点から問題であるといった指摘を行いました。too little, too late問題は、まさに日本の市場関係者の皆さんが問題意識として持たれているところであり、これが国際的な場でも議論になっております。
 この報告書は、12ページに記載のとおり、それぞれの市場関係者に対して様々な対応を求める内容となっております。
 そして、13ページの下部に記載しましたが、国際会計基準を設定しております国際会計基準審議会(IASB)に対しても、のれんの減損テスト、そして開示を改善するに当たり、このtoo little, too late問題への対応を求める記載がなされているという状況です。
 IASB側の動きですが、IASBから近日中にのれんに関する公開草案が公表される見込みです。これは、償却を再導入するという話ではございませんが、のれんの減損、そして、開示に関して改善をもたらすことを目的とした公開草案となる見込みです。そして、その中では、企業結合後の業績報告といったところに関してより開示を充実させる提案がなされる予定です。
 のれんの会計処理と業績報告は密接に関わり合う問題ですけれども、のれんの償却を行った場合に、日本国内では、償却費の計上が営業利益を押し下げることに対して、特にスタートアップの企業においては、業績すなわち営業利益が悪く見えてしまうのではないかという御意見があると承知しております。こういった点に関連して、IASBでは、もう一つ新しい基準開発を行っておりまして、その中で、企業が使っているKPIを財務報告との関連を明確にさせながらクローズアップしていく、そのような業績報告の改善に関する基準の最終化を行う予定となっております。
 このような基準を踏まえ、今後、企業によって多様な業績指標を用いた業績報告が幅広く行われる可能性もございます。のれんに加えて、この業績報告、いずれも日本の実務にも大きく影響をもたらす可能性がありますので、今後も注視していきたいと考えております。
 私からは以上です。

【齊藤開示業務室長】
 開示業務室長の齊藤でございます。最後に私からは、国際監査基準等における主な改訂について、引き続き資料2の15ページ目から御説明させていただきます。
 国際監査・保証基準審議会における国際監査基準等の主な改訂・開発として、こちらのページに5つお示しさせていただいております。1つ目はサステナビリティ保証のための包括的な基準の開発、2つ目は上場企業監査固有の要求事項について、社会的影響度の高い事業体(PIE)の監査に適用するかどうかの検討がございます。3つ目は継続企業の前提の関係、4つ目は不正対応の関係、5つ目はテクノロジーの進展などの環境変化を踏まえたものがございます。
 このうち、継続企業の前提と不正対応について、それぞれポイントを御説明申し上げます。
 16ページの継続企業の前提について、この改訂は、近年の世界各地で生じた企業の破綻などによって、継続企業の前提に対する関心が高まっていることを踏まえたものでございます。主な改訂内容としては、まず、継続企業の前提の評価期間の起算日について、現行の期末日から財務諸表の承認日へ見直すこと。また、継続企業の前提に関する監査の透明性向上の観点から、監査報告書における記載について、下の表右側に、文字が青で強調されておりますけれども、例えば重要な疑義のある上場企業のケースでは、監査人が経営者の評価をどのように検討したか、このような説明を記載するというような見直しの議論がございます。
 最後に17ページ目では、不正対応についてです。この関係で議論されている基準の主な改訂内容としては、まず、監査において識別された不正又は不正の疑いへの対応に関する規定の新設があります。2つ目として、不正リスクへの監査上の対応に関する監査報告書における透明性向上のため、監査上の主要な検討事項、KAMといいますけれども、こちらの記載が求められる企業については、不正に関するKAMを記載するという点がございます。さらに、財務諸表監査における不正に関する監査人の役割や責任の明確化、このような改訂の議論がございます。
 私からの御説明は以上でございますけども、特に継続企業の前提や不正に関する国際監査基準の改訂を踏まえた対応については、今後、監査部会において御審議いただきたいと考えている次第でございます。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 御説明ありがとうございました。それでは、事務局の説明につきまして、御質問、御意見等をいただければと思います。チャット機能を使って「発言希望」と御記入ください。なお、御質問の回答につきましては、数名の委員から御質問を頂戴した後に、まとめて事務局等から御回答させていただきます。
 御意見に関しましては、事務局より、直ちに回答すべきと考えられる場合には回答してもらい、そうでない場合には、引き取って検討してもらうということにしたいと思います。
 それでは、小倉委員よろしくお願いします。

【小倉委員】
 小倉でございます。御説明ありがとうございました。何点か、意見、コメントを述べさせていただきたいと思います。
 まず1点目、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討についてですが、日本におけるサステナビリティ開示基準が本年3月に公表されるということで、監査人や作成者等の関係者は、公開草案を十分に理解する必要があると認識をしております。日本企業は3月決算企業が多く、繁忙期になりますけれども、コメント提出のための機会が提供されることを期待しております。
 また、SSBJ基準の適用対象について、グローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業群ということで、東証プライム上場企業又はその一部から始めるとのことであり、全上場企業に一度に適用するという考え方を採用しないということは、円滑な制度対応やコスト・ベネフィットという観点でも妥当な進め方と考えております。
 次に、国際会計基準への対応等ですけれども、倉持室長から少し言及がございましたが、IASBの基本財務諸表プロジェクトに関しては、2024年の第2四半期に公表されて、2027年1月1日以降開始事業年度から遡及適用されることが決定されております。本基準の要求事項に含まれる段階利益の開示については、公開草案の当時から日本の多くの利害関係者が反対していたと承知をしていますが、意見は完全には反映されなかったと承知しております。国際基準の適用においてはそのようなことがあり得るということも改めて認識し、切り替えて、適用に向けた準備を進めていく必要があると考えております。
 また、のれんについてもIASBが企業結合の業績についての開示情報に関するIFRS3号の改正公開草案を本年3月に公表するとのことですが、これもIFRS任意適用企業は新たな開示が要求されることになりますので、公開草案の内容に注視する必要があります。日本として可能であれば、ワンボイスでコメントを出していく必要があると考えております。
 最後に、国際監査基準等の主な改訂についてです。国際監査基準の改訂ではISA570と240の改正が特に気になるところです。ゴーイング・コンサーンの評価期間の起算日を期末日から財務諸表の承認日に変更する提案がされており、特に我が国の財務諸表の公表承認日をいつとするのかの実務に議論があるところと承知をしております。また国際的にも、ゴーイング・コンサーン評価のタイムラインについてはIAASBへのコメントが出ているようで、今後、審議会で議論されると承知をしており、確認が必要になると理解しております。
 また、240の不正に関するKAMの記載の要求ということが議論されておりますが、KAMについても、我が国では強制適用から3年以上経過しまして、開示のボイラープレート化ということが見られております。240について、新しい基準で有用な情報が開示されるのかについては、よく見ていく必要があると考えております。
 私からは以上でございます。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。
 続きまして、引頭委員お願いします。

【引頭委員】
 御指名ありがとうございます。御説明ありがとうございました。全部で4点ございます。
 まず1点目は、国際会計基準への対応及びのれんについてです。too little, too late問題に対して、IOSCOをはじめ世界の様々なところが対応しようと動き出したことは大変うれしく思っております。様々な報道によりますと、欧米では、のれんの残高が純資産を超えている企業の比率が1割以上既に存在していると言われております。そのように考えますと、今後、資本市場の状況が大きく変わってきたときに、ショックを受ける可能性があるということも否定できないと見られます。
 加えて、のれんの構成要素の中に、ヘッドルームと呼ばれる未認識のもの、つまり減損テストの対象外のものというのがあり、これには自己創設のれんなども入ってくるとされているわけですけれども、のれん自体の構造問題についても指摘されていると理解しております。
 日本といたしましては、これまで理論的にのれんの償却を主張してきたと理解しておりますので、ぜひ実際のデータをきちんと取得し、それを基に、合理的な基準になるよう意見発信をしていただきたいと思っています。そうした見地から、JMISという4つ目の日本基準、日本で一般に公正妥当と認められる会計処理の基準というのがありますけれども、これにつきましては、意見発信の大きなツールとして重要な役割を果たしていくのではないかと思います。
 2点目になりますが、先ほど倉持室長からの御説明で、今後、業績報告においては多様なアプローチ、やり方を認める可能性があるというお話がありました。これについては、私は大変賛成しております。ただし、やはり実際の財務諸表と大きく異なってしまうといいますか、そこからどう計算しても出ないような数字が報告基準になってしまうと、それは問題であると思いますので、先ほど御説明いただいたように、財務諸表との結びつきについて、ぜひ透明性を担保しつつ、進めていただきたいと思います。
 3点目になります。先ほど小倉委員からも少しお話がありました、ISA570の継続企業の改訂についてです。資料2の16ページ目にありますが、ここで見ていて一番気になるのは、ゴーイング・コンサーンの評価期間の起算日を現行の期末日から財務諸表の承認日にすることです。今言われているのは経営者確認書の日付となっているようですが、それは、企業とその担当の監査法人は分かるかもしれませんが、一般の財務諸表利用者にとっては一体いつがその日だったのか、というのは分からなくなってしまいます。実際、経営者確認書の日付は同じ3月期決算であっても企業によってばらつきがあるというのも実態だと思います。そう考えますと、利用者から見てもはっきりと起算日が分かるような手当てについて、強くお願いしたいと思います。
 最後、4点目になります。これは本日の最後の議題というよりも、既に決議された期中レビュー基準に関してです。今回、第1・第3四半期のレビューの取扱いというのが制度として大きく変わっていくと理解しています。その中で、新たな期中レビュー基準が実務を含めて支障なく進んでいるかどうかについて、金融庁におかれましては、モニタリングをぜひ進めていただきたいと思います。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 続きまして、林委員お願いいたします。

【林委員】
 ありがとうございます。林です。御説明どうもありがとうございました。2点意見を述べさせていただきます。
 まず1点目ですけれども、サステナビリティ情報の保証についても今後金商法に基づく新しい制度設計がなされるかと思いますが、保証につきましては、誰が担当するか、何を保証するか、それからどのように保証するかというようなことが問題になってくるかと思います。特に、どのようにということでは保証業務基準が重要になってくると思います。少し先走った意見かもしれませんけれども、ぜひこの議論は本審議会の監査部会で行いたい、そうするのが適切だろうと考えています。
 理由はいろいろありますが、まず1つ目は、情報の保証は、歴史的に見ても財務諸表監査から発展しています。実務も基準もそのように理解できます。また、国際的に見ても、既にISSA5000が公表されていますが、国際監査・保証基準審議会、IAASBが基準設定に精力的に取り組んでいます。それから、現在の実務においても複数の保証業務基準が用いられていますけれども、やはりIAASBが公表している基準というのが中心になっているということもございます。さらに、監査部会も過去に財務情報等の保証業務の概念的枠組みというものを公表しており、監査・保証についての議論の蓄積がありますので、基準設定については監査部会で議論することが適切と考えております。
 2つ目は、国際監査基準についてですが、ゴーイング・コンサーン、継続企業の前提についてのタイムラインが重要という御意見がお二人からございましたが、私も、実務上そこは重要だろうと賛同いたします。それからもう一つ、これも小倉委員のほうからKAMのボイラープレート化ということで、注意が必要という御発言がありました。これもそのとおりだと思いますし、今日御報告がありましたIOSCOの報告書でも、のれんに対する監査の透明性はKAMを通じて達成すべきということがございまして、やはり国際的にもKAMの機能といいますのか、役立ちというところには期待が大きいと思いますので、そこについてはしっかり議論をする必要があると考えております。
 私からは以上です。どうもありがとうございました。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 続きまして、井口委員お願いいたします。

【井口委員】
 よろしくお願いします。まず、御説明ありがとうございました。簡単に2点だけコメントさせていただければと思っております。
 1点目は、昨年の会計部会でも申し上げたことになりますが、御説明いただいたところの国際会計基準の対応のところとなります。国際会計基準の課題というのは、日本の資本市場の強化という観点でも非常に重要と考えておりますので、引き続き、グローバル投資家が投資対象とする市場と位置づけられておりますプライム市場において、国際会計基準適用の拡大の施策について御検討いただければと思っております。
 2点目は、国際的な動向で取り上げられておりますIOSCOののれんに関する報告書についてとなります。IASBでは一応暫定決定されておりますので、のれんの償却の検討というのはもうされないのかもしれませんが、投資家にとっては、報告書で指摘されておりますtoo little,too lateという課題は残っておると思っております。この課題に対処する方向性として、資料2において示していただいておりますが、報告書では、開示の拡充、ガバナンス、会計監査という3つのアプローチが掲載されておりますが、のれんの償却ほど直接的なものではないにしても、投資家が突然ののれんの減損で損失を被らない一定の施策とは考えております。
 1点目の開示の拡充につきましては、国際的な意見発信を通じて、IASBにさらなる依頼をすることは重要と思います。2点目のガバナンス、3点目の会計監査は、林委員もおっしゃっておりましたが、ガバナンス・コードとか、あるいは監査基準などで一定程度こういった内容というのは織り込まれていると認識しております。ただ、現状のプラクティスが十分かどうかということを確認することも重要ではないかと思っております。こういった取組というのは、国際会計基準の適用企業だけではなくて、日本の会計基準の採用企業にも有用になると考えておりますので、ぜひ御検討いただければと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 続きまして、佐々木委員お願いいたします。

【佐々木委員】
 佐々木でございます。私から4点ほどお話をさせていただければと思います。
 まず1つ目が、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関することでございます。新しくワーキング・グループが設置されるとのことですけれども、これらの開示あるいは保証につきましては、国内の制度化の議論がこれから進むと思いますけれども、その際に、企業の実務負担と開示情報の有用性、この2つのバランスを十分に考慮していただければと期待をしてございます。これは、サステナビリティ情報だけに係ることではございませんけども、財務情報に関してもそうですが、企業側のリソースというのは有限でございますので、開示の充実という面だけではなくて、開示の効率化ということも十分議論をしていただければと思います。例えばですけども、既存の開示では、個別財務諸表に関する開示などは、まだ効率化の余地があるのではないかと思います。
 2つ目でございますけれども、何人かの委員がおっしゃられた、のれんのtoo little,too late問題でございます。のれんの償却ということにつきましては、現段階ではなかなかその方向には行かないと思いますけれども、今後もこの問題というのは残るかと思いますので、日本としては、継続的に粘り強く発信していくべきだと思ってございます。
 3点目は、国際監査基準に関することでございます。ISA570なり240なりという、継続企業あるいは不正ということに関してでございますけれども、問題となるような事例、実質的に何か新しい手続が必要となるような事例というのは、恐らく限定的ではないかと思います。一部の事例に手当てするというふうなことで、全ての企業が過度な手続をしなければならないとなりますと、非常に効率的ではないということでございますので、この点、十分留意をしていただければと思います。
 最後でございますけれども、これは、期中レビューに関することで、ちょっとお願いがございます。1つが、レビューでございますけれども、第1四半期あるいは第3四半期の決算短信のレビューでございますけれども、こちらは、このレビューするかどうかという判断は企業側にあることが原則としてなってございます。ただ、一部不安の声がございまして、レビューが推奨されるというふうな働きかけがあるやに聞いてございまして、実質的な義務づけになるようなことになっては困るという、そのような意見が出てきていますので、この場でちょっとコメントをさせていただきました。
 それからもう一つでございますけれども、ASBJの四半期会計基準の告示指定解除というものが議論されているかと思いますけれども、これにつきましては、経団連からも意見書を出してございますけれども、指定解除は慎重に行うべきだと思ってございます。この解除によりまして、実務上の混乱を懸念する声がやはり出てきているというふうなことです。ただ、解除がどうしても避けられないという場合であっても、実務的な問題が起きないように、丁寧な説明が必要かと思いますし、場合によっては、金融庁から、関係者に何がしかの発信をするということが非常に重要ではないかなと思ってございます。
 私からは以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 続きまして、金子委員お願いいたします。

【金子委員】
 ありがとうございます。金子です。3点意見を述べさせていただきます。
 まず1点目は、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方です。これにつきましては、財務情報と同様に、国際レベルの開示と保証を行っていくことが非常に重要であると考えます。その中で、保証の担い手についての検討もこれから進められると思いますが、一定の品質が保てること、特に被保証先からの独立性が確保できることが重要になります。また、品質に関する継続的なモニタリング体制や財務情報の開示とサステナビリティ情報の開示の連携が取れることも重要と考えられますので、こうした点を考慮して制度の検討を進めていただきたいと思います。
 また、基準の検討につきましては、先ほどの林委員の御意見に賛成で、監査部会で実施することが適当ではないかと思っております。
 2点目は、国際会計基準への対応です。日本基準を高品質化していくためには、やはりIFRSへの意見発信を続けていくことはとても大事だと思います。さらに、同時に日本基準とIFRSの整合性を取っていくことも重要だと思います。また、IFRSを採用したいと考えている、あるいは採用しているけれども負担が大きいと感じている企業の声もかなり聞いておりますので、制度的な対応も有益であろうと思います。
 こうした観点では、10年前にIFRSへの対応が議論されたときには、個別財務諸表についてもIFRSの任意適用を認めるということが真剣に議論されておりました。個別財務諸表へのIFRSの適用については、配当可能利益への問題が指摘されますけれども、現在においても、配当可能利益の計算においては、会計上の利益から一定ののれんの金額の控除や、自己株式の取得に関する調整などが入っております。少し前に配当可能利益の計算を誤った会社が数社出てきて話題になりましたけれども、これは現段階でも多くの調整が入っているということを物語っています。我が国においてIFRSは公正な会計慣行の一つと認められているわけですので、配当可能利益等の問題は、必要な調整を入れるということで解決できるのではないかと思います。
 もう一つの懸念は、税との関係ですので、ここを明確に整理していければよいのではないかと思っております。こうしたことによって個別財務諸表と連結財務諸表が連続していないという問題も解決できると考えます。
 最後に、国際監査基準への対応です。企業の財務諸表が国際的に信頼されるためには、監査も国際レベルであることが求められます。日本独自の制度というのは理解され難いことから、国際基準との整合を図っていくことが重要であると思いますので、改訂の検討を行っていくことに賛成です。
 その中で、監査基準の改訂は何度も行われていますけども、部分的な改訂になっているために、今回、四半期レビューに関するコメントの中でも見受けられましたが、例えば準拠性に関するレビューの結論が表明される場合があるということが追加された一方で、手続は適正表示を前提としているように読めてしまい、読みにくいことが指摘されております。この機会に全体の見直しを実施した方が良いのではないでしょうか。
 それから不正に関しましては、我が国独自の上場企業だけに適用される不正リスク対応基準がありますけれども、この基準は、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況があるときの手続を明確化したというもので、追加の手続等を定めているわけではありません。したがって、今回の基準改訂に合わせて一本化していく形で整備していただきたいと思っております。
 以上です。

【徳賀会長】
 ありがとうございます。
 それでは、米山委員お願いいたします。

【米山委員】
 時間を与えてくださりまして、ありがとうございます。短く1点のみコメントさせていただきたいと思います。サステナビリティ情報の開示についてです。
 従来、会計基準の場合ですと、市場での実務が先行して、その中から会計基準を支えている基礎概念に照らして、どのような方法を標準化していくかということが、多くの場合語られてきたように思います。一方で、サステナビリティに関する情報につきましては、そういった従来の会計情報に関する議論と違いまして、まだ十分な実務の蓄積がない中で、比較可能性を担保しながら実務を促すという趣旨で、基準が開発されていくことと存じております。そうであれば、企業の裁量を過度に制約することなく、ベストプラクティスを巡る企業のある種の競争を促すような基準開発を進めていただくことを願っております。もちろん、そういった趣旨は、その必要性は十分把握しておられると思いますけれども、念のため、この点を強調させていただいた次第です。
 私からは以上です。

【徳賀会長】
 御意見ありがとうございました。
 まだ御意見のない委員がいらっしゃいますが、御意見なしということでよろしいでしょうか。

【田代委員】
 すいません、田代です。手を挙げておらず申し訳ございません。

【徳賀会長】
 よろしくお願いします。

【田代委員】
 1つだけ、保証のところで、これからの検討事項が多いと思いますけれども、足元だけを見ますと、現在保証業務を実施しているという観点からすると、欧州は会計事務所が実施していることが多いのに対し、日本ではそのほかのコンサルとかを使って実施しているところが多いと聞きます。そのような事情から、コネクティビティの件も含めますと、会計事務所以外のコンサル業者がやっている場合、どのように品質の担保をするかという面も含めまして、これからの検討課題だと思いますが、せっかくサステナビリティの開示をしても、それが投資家から、保証の質が確保されないがために、その開示を信用できないみたいなことになると本当にもったいないことになると思いますので、保証の部分についても同時進行的に進んでいくと良いなという感想でございます。ぜひそこを意識してやっていければと思います。
 以上でございます。

【徳賀会長】
 ありがとうございました。
 まだ若干時間がありますので、ほかの委員の方、いかがでしょうか。御意見ございませんか。
 多数の御意見ありがとうございました。それでは、先ほど複数の委員からも御指摘がございましたが、本日御審議いただいた開示・会計・監査を巡る最近の主な動向のうち、特に、継続企業の前提や不正に関する国際監査基準の改訂を踏まえた対応につきましては、今後、監査部会において御審議いただくことにしてはどうかと考えております。そのようにさせていただくことでよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【徳賀会長】
 ありがとうございます。御異議ないようですので、そのように取り進めさせていただきます。
 本日は、委員それぞれのお立場から多数の貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。今回いただいた御意見を踏まえ、次回以降の議論の参考にさせていただきたいと思います。
 それでは、若干定刻よりも早めに終了することになりますが、本日の議事を終了させていただきます。
 お忙しいところ御参集いただきまして、ありがとうございました。これにて閉会いたします。ありがとうございました。

 

以上

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企画市場局企業開示課(内線3691、2999)

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