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金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」(第1回) 議事録
日時:
令和7年7月31日(木曜)10時00分~12時00分場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用
【森下座長】
それでは、定刻になりましたので、ただいまより、暗号資産制度に関するワーキング・グループの第1回会合を開催いたします。
皆様、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。私は、当ワーキング・グループの座長を務めさせていただきます上智大学の森下です。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、当ワーキング・グループについて御説明したいと思います。当ワーキング・グループは、資料1にありますとおり、本年6月25日に開催されました金融審議会総会・金融分科会合同会合におきまして、国内外の投資家において暗号資産が投資対象と位置づけられる状況が生じていることを踏まえ、利用者保護とイノベーション促進の双方に配意しつつ、暗号資産を巡る制度のあり方について検討を行うことという大臣からの諮問を受けて設置されたものです。また、当ワーキング・グループの座長につきましては、神作金融審議会長の御指名で、私が務めさせていただくことになりました。皆様から御意見をいただきつつ、幅広い観点から議論を進めてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、会議の運営と議事の公開、そして議事録の取扱いについて、まず、お諮りをさせていただきたいと思います。会議は、本日のようにオンライン会議を併用した開催とさせていただき、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただきたいと思います。また、会議資料は公表するとともに、議事録につきましても、皆様に御確認をいただきました後、発言者の氏名を記載した形で、後日、金融庁のウェブサイトに掲載をさせていただきたいと考えております。
以上のような取扱いとすることにつきまして、御了解いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【森下座長】
ありがとうございます。
それでは次に、事務局よりメンバーの皆様の御紹介をお願いいたします。
【齊藤市場課長】
ありがとうございます。企画市場局市場課長の齊藤でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
このたび、当ワーキング・グループの委員に御就任いただいた方々を御紹介させていただければと思います。資料2にメンバー名簿がございます。メンバー名簿順に御紹介させていただきます。
有吉尚哉様でございます。
伊藤亜紀様でございます。
岩下直行様でございます。
小川恵子様でございます。
加藤貴仁様でございます。
河村賢治様でございます。
河野康子様は、本日はオンラインで御参加いただいております。
永沢裕美子様も、本日はオンラインで御参加いただいております。
松井智予様も、本日はオンラインで御参加いただいております。
松尾健一様でございます。
松尾真一郎様でございますが、本日はオンラインで御参加いただいております。
また、本日は御欠席されていらっしゃいますけれども、大槻奈那様、佐古和恵様にも委員をお引受けいただいております。
オブザーバー及び事務局につきましては、時間の都合もございますので、メンバー名簿及びお手元の配席図をもちまして御紹介に代えさせていただきます。
以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、メディア関係者の方々はここで御退席をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
それでは、議事に移ります。
初めに、日本暗号資産ビジネス協会より暗号資産取引市場の現状について御発表いただきます。
続けて、事務局より現行の暗号資産制度について御説明をいただきます。
その後、日本暗号資産等取引業協会より暗号資産交換業の自主規制について御発表していただき、最後に、事務局より暗号資産を巡る制度のあり方等の検証を行ったディスカッション・ペーパーの概要と、その意見募集の結果について御説明をいただきます。
その後、メンバーの皆様に御討議をいただくという流れで進めさせていただきます。
それでは、日本暗号資産ビジネス協会様より御発表をお願いいたします。
【日本暗号資産ビジネス協会(白石副会長)】
日本暗号資産ビジネス協会副会長の白石でございます。よろしくお願いいたします。
お手元にございます暗号資産取引市場の現状についてという資料をおめくりください。
当協会は、暗号資産交換業をはじめ、Web3領域に関わる様々な事業者や専門家が会員として参加しております。近年では、大企業であるとか通信キャリアの皆様に参加いただいておりまして、Web3領域の広がりというところを実感しているところでございます。現在は150社程度に加入いただいておりまして、業界最大規模の団体として、制度整備の提言や普及啓蒙活動等を行っております。
本日は、暗号資産取引の現状について御報告させていただきますので、本審議会における議論の一助となれば幸いでございます。また、暗号資産というテーマがこうして金融審議会で取り上げていただくということが、この業界が大きく変わってきていることの証左であるというふうに私ども思っております。本日よろしくお願いいたします。
暗号資産の特性についてというスライドでございます。
初めに、暗号資産と有価証券の性質の違いというところについて、簡単に補足させてください。御承知おきかとは思いますが、暗号資産というのは、基本的に基盤としてブロックチェーン上で駆動するというものになっております。そのため、発行の仕組みであるとか用途、また、取引の形態において、有価証券とは本質的に異なる特徴というのを有しております。特に、発行や流通の形態において、技術的な性質の異なるものが混在しているという点が有価証券とは大きく異なる点でございまして、暗号資産の法的な分類を考えるに当たっては留意が必要な点であるというふうに理解しております。
暗号資産取引の特性の移動についてです。先ほど申し上げたような技術的な差異というところが、新しい取引の形態であるとか、また、後ほど御説明させていただきますが、資金調達のモデルというのも可能にしております。暗号資産というのは、前提として24時間365日取引可能でございまして、国や特定の市場に依存することなく様々なプラットフォームや、また、P2Pの取引というのが可能になっております。
このような、世界中の様々な場所での取引が可能であるということを背景に、市場規模というのは非常に成長しておりまして、グローバルにおける暗号資産市場の時価総額というのは、2023年は131兆円程度でございましたが、25年には400兆を超える規模にまで成長しております。この内訳として、詳細は後述させていただきますが、投機的な取引だけではなくて、機関投資家を含めた長期的なアセットクラスとしての側面というのが伸びているということが言えます。
こちら、国内の年間取引金額になっております。2022年が10兆円で、2024年が20兆円というところで、この2年間で倍程度には成長はしておるものの、グローバルの成長の推移と比較すると小さいものになっております。この伸び率が小さいということは、相対的に、グローバルのプレゼンスというのが、国内産業も成長しているものの落ちていっているということが言えると思っております。
この後、個人投資家、また機関投資家のバックグラウンドみたいなものを御説明させていただきますが、その前に、暗号資産取引市場がなぜこれだけ急速に広がっているのか、受け入れられているのかという背景について、少し触れさせてください。
米国のFINRAの調査、またVISAの調査によると、暗号資産が若年層であるとか投資の初心者、初めて投資をする方が暗号資産で始めるというようなケースというのが、特に米国では顕著になっているというデータがございます。この背景として、主に、特にデジタルネイティブの世代においては、ネット上の動画、またSNSといったものが情報ソースとして主立ったものであって、紙の媒体であるとか、ほかのメディアになかなか触れる機会がないというような生活様式を取っている世代が多いと。そういう世代からすると、暗号資産というのはインターネット上の相性が非常によい金融資産になっておりますので、投資へのハードルというのを下げているというのが要因として言えるのではないかと考えております。このネット上の動画であるとかSNSというのを情報の主体としているというのは、特定の国によった様式ではなく、どちらかというと世代で切っていけるような動きであると考えておりまして、我が国においても同様の傾向は言えるかと思っております。
日本における資産口座というところですが、2025年1月末時点で、日本国内の暗号資産交換業の口座数というのは1,213万口座、また、利用者の預かり資産というのは5兆円を超えているという規模に伸長しております。
世代別のところですが、2023年の調査では、30代、40代の利用者が中心となっております。これは、比較的資金に余裕が出てきている働き盛り世代というのが資産形成の一部として暗号資産を購入するというようなことが言われてきたわけですが、2024年のメルコイン社の調査によると、30代、40代に偏重しているのではなく、20代、また50代以上、全年齢の層に対して幅広く口座が開設されて投資が行われているというようなデータがございます。24年以降というのは、特にメルコイン社が事業を開始されて以降、口座数というのが急速に伸びているときで、今までの暗号資産交換業とまた異なって、大手事業者がどんどん参入してきたことによって、暗号資産取引がより身近で安心安全なものとしてイメージが改善されていっているというようなことが言えるのではないかと考えております。
個人と法人の取引の比較でございます。法人は個人と比較すると相対的に運用額というのが大きい額であって、資産取引というのが資産運用の一部として組入れられているというような実態が分かると思います。
投資家の年収になります。2022年の日本暗号資産ビジネス協会の調査ですが、暗号資産取引をいただいている方の7割というのが700万円未満のいわゆる中間層の方々で、長期保有意向というのが86%以上というデータがございます。これは、暗号資産取引が一部の富裕層であるとか、また、短期売買目的で行われている、売買されているということではなくて、多くの方というのは、長期的な資産形成の一部として暗号資産を保有しているというようなことが言えるのではないかと考えております。
ここまでが個人の投資家の方についてのデータでございます。ここからは機関投資家についてです。機関投資家については、企業と政府、金融機関に分けて説明いたします。
まず、これは企業ですが、2024年以降、ここの資料にございますMetaplanet社のように、ビットコインを準備資産としてバランスシートに組み入れる企業というのが増えてきております。このような企業の株価というのが、ビットコインの価格の上昇と連動して株価自体が上がっていくというようなケースが散見されております。こういった企業によって、暗号資産価格というのが、間接的にではございますが、株式市場に影響を与えているというような構造が既に生まれていると言えると思っています。
次は政府です。御承知おきかと思いますが、トランプ政権以降、米国はビットコインを州の準備資産として保有するというような動きが検討され進んでおります。従前は、政府による暗号資産の大量保有というのは、いわゆる捜査に伴う押収等で、保有を目的としているというよりは押収した結果保有しているというようなケースがほとんどだったと思います。今回の動きは、政治的判断によって能動的に純資産として保有するという意思決定をしている点が大きく異なるかと思っております。例えば、テキサス州では、実験的にではありますが、州予算から実際にビットコインを購入するということが既に開始されております。
金融機関による保有です。米国の現物ETF市場というのは1,000億ドル規模に成長しております。その4割が機関投資家によって保有されております。これはもともとSECによるETF承認をはじめとした制度整備というのが、機関投資家の安心感を生んで資金が流入してきているということが言えると思います。また、暗号資産の現物を直接取引するのではなくて、伝統的な金融商品の形式を取ることで、既存の金融機関が参入しやすいといった側面もあると考えております。
最後、トークンを活用した企業の資金調達について御説明させていただきます。現在は、我が国においてもIEOやSTOなど、トークンを用いた資金調達が法的な整備がなされた上で実施されておりまして、信頼性を確保しつつ、多様な企業の資金ニーズというのに応えていると思っております。
トークンによる資金調達というのが、株式による資金調達と目的が必ずしも同じではないというところについて触れさせてください。株式は通常、資金調達をする際に、資本を出資した株主の方と、サービスの利用者、ユーザーが分かれているというケースが一般的だと思っております。他方、トークンによる資金調達のモデルでは、利用者と保有者というのは通常一致しています。また、開発者であるとか、マーケティング担当であるとか、ステークホルダー全体が保有者であり、プロジェクトの運営者であるというような状態が一般的です。その結果、プロジェクトの成長に貢献していくと、結果的に自分が保有しているトークンも値段が上がっていくということで、コミュニティ自身が成長させることでトークンの価格も上がっていくというところにおいて、コミュニティ主導でプロジェクトを成長させていくというようなところを目的としてトークンを発行するというケースが一般的でございます。ですので、資金調達の側面だけではないというところに、暗号資産による資金調達、トークンの発行というものの目的があるというところを補足させていただきます。
このようなトークンエコノミーの形成というのを目的として、日本においても様々な企業がトークンによる資金調達を既に行っております。これは、2021年のハッシュパレット社が国内を1号案件として実施されたものですが、一番下のジャパンオープンチェーンが2024年、これが最新の案件になっています。ここまでというのが、日本で実施されたIEO案件全体になっております。
私からの報告は以上となります。
世界各国が制度面において議論を重ねている中で、暗号資産の受入れを模索しているというふうに感じております。我が国も、国際的な競争力を維持しつつ、投資家保護とイノベーションを両立させる必要があると考えております。有価証券と異なる暗号資産の性質というのを踏まえた上で、あるべき規制の形を議論いただきますようお願いいたします。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、続いて事務局より御説明をお願いいたします。
【横山信用制度参事官】
信用制度参事官を務めております横山と申します。よろしくお願いします。
私から、資料4に基づきまして、現行の制度の経緯や概要を御説明いたします。
まず、3ページを御覧ください。暗号資産の取引については、御案内のように、現在、資金決済法で規律が置かれているわけですけれども、資金決済制度の対応といたしましては、歴史的にはもともと商品券取締法ですとか前払式証票規制法といった法律による規律が存在してきたところであり、その後のIT技術の進展を踏まえ、2010年施行の資金決済に関する法律によって前払式支払手段及び資金移動業が創設されたということでございます。資金決済法制定後も、送金決済サービスの分野では急速かつ著しい進展が見られたということで、特に2020年以降は資金移動業の柔構造化、暗号資産交換業の規制強化、電子決済手段等取引業の創設といった対応を行ってまいりました。
次の4ページで、特に暗号資産に関する制度整備の経緯について御説明をいたします。まず、2014年にビットコインの取引所業務を行っていたマウントゴックス社が破産しました。それから、翌年のG7エルマウ・サミット首脳宣言では、仮想通貨及びその他の新たな支払い手段の適切な規制を含め、全ての金融の中での透明性拡大を確保するためにさらなる行動を取るということとされました。同年のFATFガイダンスにおいては、各国が仮想通貨と法定通貨を交換する交換所に対し、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認義務等のマネーロンダリング・テロ資金供与規制を課すべきという旨が示されておるところでございます。
これらを受けまして、我が国においては、当時の呼称である仮想通貨交換業者に登録制を導入して、利用者保護の観点から最低資本金、顧客に対する情報提供、顧客財産と業者財産の分別管理等の一定の制度的枠組みを整備したほか、口座開設時における本人確認を義務づけるといった対応を行ったわけでございます。
その後も、顧客の暗号資産の流出事件が発生し、また、暗号資産を用いた証拠金取引やICOなど、新たな取引が登場するといった環境変化を踏まえて、資金決済法・金商法等を改正しまして、利用者資産の原則オフラインでの管理の義務づけ、セキュリティトークンの発行による資金調達を行う場合や暗号資産デリバティブ取引については、金商法の規制を適用するといった対応を行ってきたところです。
その後も所要の改正を行っておりまして、本年6月に成立した改正資金決済法では、暗号資産交換業者等に対する資産の国内保有命令の導入、暗号資産等取引に係る仲介業の創設、信託型ステーブルコインの裏づけ資産の管理・運用の柔軟化といった対応を行っております。
御参考までに、次のページに改正資金決済法の概要をつけておりますけれども、説明は割愛をさせていただきます。
それから、7ページ目に移っていただきまして、暗号資産に関する現行法制の概要について説明いたします。暗号資産は、資金決済法第2条第14項で定義をされておりまして、ここのボックスに記載されている4点の性質を有する財産的価値とされております。
まず、1つ目の性質としましては、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができるものである必要があるということでございます。そのため、このボックスの下の米印にありますように、例えば決済手段としての使用が禁止されていることが明示され、かつ最小取引単位当たりの価格が1,000円以上または発行数量100万個以下のものは、基本的にこの要件を満たさないということでございます。
このほか、不特定の者を相手方として購入・売却を行うことができるもの、電子的方法により記録をされ、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの、本邦通貨・外国通貨、通貨建資産、電子決済手段やセキュリティトークン等の金商法において有価証券として扱われるトークンではないものというものが、現行法における暗号資産の定義ということでございます。
それから、8ページ目でございますが、暗号資産に関する業規制としては、暗号資産交換業に関する規制と、本年成立した改正資金決済法により新たに創設をされる電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に関する規制がございます。
要点をかいつまんで御説明をいたします。左側の暗号資産交換業の対象行為については、暗号資産の売買や他の暗号資産との交換、それらの行為の媒介・取次ぎ・代理、さらにそれらの行為に関して行う利用者の金銭の管理、それから他人のために行う暗号資産の管理、いわゆるカストディ業務がございます。
財務要件としては、資本金1,000万円以上であること、純資産が負の値でないことが求められております。
利用者資産の管理に関しては、利用者から預託を受けた暗号資産については、原則としてコールドウォレットで分別管理をし、金銭については、信託会社等に信託することによって分別管理を行うこととなっております。
また、利用者保護措置として、利用者への情報提供・説明義務や虚偽表示の禁止等が定められております。
最後のAML/CFTのところですが、暗号資産交換業者が犯収法上の特定事業者であるため、取引時確認や疑わしい取引の届出、暗号資産交換業者に対して暗号資産の移転時に送付人、受取人の情報を通知すること等の義務を求めております。
右側が電子決済手段・暗号資産サービス仲介業ですが、暗号資産に関しては、暗号資産取引の媒介のみが対象行為となっております。仲介業については、利用者資産の預託を受けることが禁止されていることから財務要件は課されておりません。
利用者保護措置については、交換業と同様、利用者への情報提供・説明義務が課され、また、所属制を採用していることから、利用者に損害が生じたときには、所属先の暗号資産交換業者等が損害賠償責任を負うということになっております。
最後のAML/CFTについても、所属先の暗号資産交換業者等において対応するということになっております。
私からは以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、続いて日本暗号資産等取引業協会より御発表をお願いいたします。
【日本暗号資産等取引業協会(小田会長)】
ただいま紹介いただきました一般社団法人日本暗号資産等取引業協会会長の小田でございます。我々、暗号資産、ステーブルコインの認定自主規制団体として、マネーロンダリング対策の強化並びにハッキング対策含めたセキュリティの強化、この2つを最重要事項とし、取組を進めてまいりました。暗号資産市場、マーケットが大きくなり、日本国内暗号資産口座数も1,200万口座を超える中、暗号資産に求められる社会的役割も変化をしていると認識をしております。ぜひ、本審議会におきまして、多角的な観点から討議をいたただき、暗号資産が日本に対しどのような形で貢献できるのか、お話をいただければ幸いでございます。
当協会よりは、事務局長より自主規制の概要につきまして説明をさせていただきます。小山さん、よろしくお願いします。
【日本暗号資産等取引業協会(小山事務局長)】
日本暗号資産取引業協会の小山と申します。弊会の自主規制活動の概要につきまして、資料に基づき御説明を申し上げます。
まず、資料の2ページ目でございます。協会の概要です。記載のとおり、2018年の10月に、当時の仮想通貨交換業に係る認定資金決済事業者協会の認定をいただきまして、2020年4月には認定金融商品取引業協会の認定、さらに昨年の10月には、電子決済手段等取引業に係る認定資金決済事業者協会の認定をいただいているところでございます。6月末現在では、一種会員32社、二種会員6社、協会の事務職員は、常勤理事を含め31名の体制ということになっております。
次のページに協会の業務を記載しております。おおむね他の自主規制団体と同様の業務を展開しております。
続きまして、4ページでは、1点、私どもの会員種別について補足説明をさせていただきたいと思います。まず、登録を受けた暗号資産交換業者、暗号資産等関連デリバティブ取引業者、電子決済手段等取引業者等ですが、これが一種会員ということになってございます。また、これらの登録に向けた活動をなさっている事業会社さんについては二種会員という形で入会をいただくことが可能で、登録のための検討段階から自主規制規則にのっとった業務運営態勢整備をお願いしたいというようなことでございます。なお、三種会員と申し上げますのは、いわゆる賛助会員的な立場で、我々の活動に御賛同いただける方を受け入れられることになっています。今は三種会員につきましてはいらっしゃらないというところでございます。
5ページには、協会の機構を記載してございます。事務局内に、この後説明を申し上げますが、モニタリングを担当する監督指導部、会員の監査を担当する監査部、市場の統計でありますとか暗号資産審査確認を行う調査部、こういったところが自主規制活動の主な担い手ということでございます。
右肩のほうに、自主規制委員会以下4つの委員会を設置しております。これらは、自主規制規則の見直しでありますとか業界の底上げに資するような指針の策定、こういったものを検討する場でございまして、会員を交え議論し、理事会に規則の見直しや施策等を提言するということになっております。特に専門分野的な知識を要するセキュリティ委員会につきましては、外部からも専門家の方に御参加いただいております。
次のページは会員数の推移でございます。21年度末までは、入会の数が退会会員数を上回っておりまして、40社というとこまでまいりましたけども、22年度にありましたFTX事件の後から、逆に退会の会員数が増える傾向になっております。今では40社を割り込んでいるというような状況でございますけども、昨年秋ぐらいから、電子決済手段等の取引業に係る認定取得以降というふうに申し上げたほうがいいかもしれませんが、入会の申込みとか、入会に向けた相談というものも受けさせていただいておりますので、またちょっと傾向としても、会員の増加が期待できるというような状況かと考えております。
次に、自主規制活動の概要について説明に移らせていただきます。7ページが、自主規制規則の種類を記載しております。
次のページで、私ども多様な業務を行う会員様に入っていただいていますので、それぞれの業務ごとにどのような規則数が適用されるかという図を簡単に説明させていただいております。
9ページは先ほどの説明と、自主規制活動の担当部署を説明しておりますが、これは後ほど細かい説明をさせていただきます。
それでは、自主規制規則を使って、我々がどういう活動しているかということを具体的に説明させていただきます。10ページは、まず、会員に対する監査でございます。22年度以降の監査実績及び25年度の監査の計画、被会員数を中心に記載させていただいているというところでございます。22年以降、会員のビジネスモデルとか、現状は業界としての注力課題でありますマネロンや、システムリスク、こういったところを中心にしまして、利用者保護を加えて、3つを重点分野ということで監査を実施してきております。なお、後ほど不公正取引の防止体制についても御説明しますが、2022年度、2023年度には、会員の取引先審査体制についても監査を行っておりました。
続きまして、11ページです。協会の自主規制規則に基づく会員からの報告を求めております。多くは月次でございますけれども、そういったものを11ページ、12ページに記載しております。
次に、13ページです。会員からの報告で判明した事実に基づきまして、まず、自主規制規則に準拠していない可能性があるものについては確認を行い、その結果、指導が必要であれば行っております。例えば、暗号資産交換業者を対象に、財務健全性指数という自己資本比率規制のようなものを行っておりますけども、120%という基準値を割り込めば、原因でありますとか、改善に向けた方針、計画などを伺って履行していただくということでございます。最後に苦情案件についても御説明申し上げますけども、苦情の内容を見まして、会員に調査を行うことがあります。例えば受注管理の状況につきましては、苦情が相次ぎました例がありまして、臨時監査なども行ってまいりました。
続きまして、私どもは各会員の取り扱う暗号資産の審査につきまして、確認を行っております。これは、他の自主規制団体と比べてユニークな点かと思いますので、ページを割いて御説明を申し上げたいと思います。まず、会員が新たな暗号資産の取扱いを行う場合には、取扱い開始前に金融庁に届出が必要という建付けになっております。協会の自主規制規則では、取扱い開始前と取扱い期間中、それぞれ会員に、会員の内部に設置した担当部署による審査を行うことをお願いしております。協会のほうでは、取扱い開始時の会員の審査内容について十分性を確認した上で、確認結果を会員及び金融庁のほうに伝えるということになっております。確認結果、問題が認められなければ、その後、内閣府令に基づく届出に進んでいただくというようなことで、間に入ってチェックを行っております。
会員の審査体制が一定水準以上十分であると認められる場合につきましては、我々の、先ほど申し上げた取扱い開始時の審査内容の確認を省略させていただいて、取扱い開始後のモニタリングに重点を移した制度、グリーンリスト制度とCASC制度という、この2つを設けております。これの対応が可能な会員につきましては、期間中、取扱い開始後のモニタリングを協会のほうで四半期ごとにお願いして、私どものほうで会員におけるモニタリング内容を確認しております。
特にIEO案件、資金調達を伴う案件につきましては、今のルールに加えて確認を行っておりますので、これについても御説明を申し上げたいと思います。対象としましては、新規に発行される暗号資産を販売して資金調達を行うということ自体が、暗号資産交換業に該当するということになりましたので、現状では、暗号資産交換業者が自ら暗号資産を発行・販売する場合、及び新規に発行された暗号資産に関して暗号資産交換業者が販売の受託を行う場合、この2つのパターンにつきましては、協会の自主規則を設けております。審査のポイントとしましては、暗号資産自体の審査は、当然ながら新規の暗号資産と同様に行いますが、資金調達の背景にありますプロジェクトの適法性でありますとか実現可能性、収支見込み、こういったものを確認させていただく、あるいは販売価格、これは価格の決定方式も含めまして妥当性を検証させていただく。その他、顧客向けの開示内容、モニタリングの体制などもチェックさせていただいております。
スライドの3点目に、情報提供のことについても御説明をさせていただいております。販売時及び販売終了から一定期間の間に、投資家の動向に与える事態の発生に向けまして情報開示を求めています。また、四半期ごとに一定の情報開示をお願いしております。自主規制規則上は、会員が交換業者でございますので、会員に対して情報提供を求めておりまして、会員のほうでは、受託販売契約等の中で発行者と情報提供、開示について取り決めていただくということでございまして、提供される情報については、発行者が作成し会員が公式ホームページ等で顧客向けの情報提供を行うというようなことになっております。販売時の開示項目としましては、規則上発行体の情報、販売される暗号資産の数量と販売価格、資金調達の使途、プロジェクトの内容というようなことをお願いしております。販売終了後の定期開示内容は、発行体法人の概要・役員情報・発行体業績・株主・トークンの価格情報でありますとかプロジェクトの進捗状況というようなことをお願いしております。
次のページに移っていただきまして、これは、私どもの暗号資産審査の、先ほど申し上げた確認の完了件数を年度ごとに記載したものでございます。
続きまして、次のページで、不公正取引の防止の取組について御説明を申し上げたいと思います。2019年6月の金融商品取引法の一部改正に伴いまして、暗号資産取引についても不公正取引防止が求められるということになりました。これに向けまして、会員におきまして、まずは仮装売買、見せ玉を抽出し分析ができる程度の社内の体制を築いていただくということを目標にしまして、会員の取引審査部署の方を交えて勉強会、実際に法施行後の月次の実績報告を求めるというようなことをやっておりました。先ほど監査のところでも申し上げましたけれども、2022年と23年につきましては、取引所を運営する会員につきまして、実際の取引データに基づきまして監査も行いました。
次のページが、これは会員のほうから、会員のお客様に対して売買審査を行って、疑いがあれば注意喚起、ないしはそれが直していただけない場合は警告、解約ということが進んでまいりますけども、それの実績報告を受けておりますので、それを月次で集計したものでございます。今は全ての会員、取引所を運営する全ての会員におきまして、取引抽出、注意喚起の実績があるという状況でございまして、これからも取組が必要な分野ではございますけども、会員において一定の水準の態勢整備ができつつあるかという認識でおります。
次のページは、協会のほうに寄せられる苦情でございます。特定できる会員に対するものと、会員以外に対するものに分けて、件数を示しております。会員に対する苦情につきましては、会員のほうに還元しまして、会員から顧客向けの説明をお願いするようなことをやっております。会員以外のものにつきましては、無登録業者に関する情報や、2021年ぐらいから投資詐欺が疑われる事案とかに関する情報も寄せられております。無登録業者だというようなことを私どものほうで確認した上で、該当するようなおそれがあれば、金融庁のほうにも情報提供をさせていただけるような状況でございます。
自主規制活動の説明は以上のとおりでございますけれども、私どものほうで、事業計画上も、マネロンや金融犯罪対応、セキュリティ対応、こういったことを重点的な分野として施策物ということにしております。その内容、概要を表に書かせていただいております。特に、昨年の5月に発生しました流出事案、これに対しまして、今年の6月に、会員の実態調査も含めて分析をした結果を踏まえまして改善策を公表しておりますので、今これを的確に履行していくというようなことが、足元の課題かと認識しております。
駆け足でございましたが、私どものほうから説明は以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは続いて、事務局より御説明をお願いいたします。
【齊藤市場課長】
それでは、お手元の資料6に沿って御説明させていただければと思います。
金融庁において本年4月に公表いたしました暗号資産に関連する制度のあり方等の検証、いわゆるディスカッション・ペーパーの概要と、それに対して寄せられた御意見の概要について御説明させていただければと思います。
3ページからはディスカッション・ペーパーの概要でございます。
まず、このスライドですけれども、暗号資産取引の動向、現状認識について整理しているものでございます。3つございます。
まず、①としまして、暗号資産の投資対象化が進行しているということでございます。先ほど来、御説明もありましたけれども、暗号資産の投資対象化が進展しており、少なからぬ内外の投資家において暗号資産が投資対象と位置づけられる状況が生じているのではないかということで、口座開設数について見ますと、国内の暗号資産交換業者におきまして、1,200万口座を超えております。これは、既にFX取引の口座開設数を超えているような状況でございます。また、利用者預託金残高については5兆円以上に達しております。また、金融庁で行っているアンケート調査の結果でございますけれども、投資経験者にどのような投資商品に投資しているのかというアンケートをしている中で、暗号資産の保有割合については約7.3%に上っておりまして、FX取引でありますとか社債などよりも保有率が高い状況になっているということでございます。また、米国では、ビットコイン現物ETFに投資する機関投資家、これは長期投資家の年金基金なども含めてでございますけれども、こうした投資家による投資がかなり増えているという状況でございます。
2つ目でございますけれども、暗号資産の位置づけでございますとかその取引に関する見方の整理でございます。Web3の健全な発展は我が国が抱える社会問題の解決、生産性の向上にとって重要ではないかということ。ブロックチェーン技術を基盤とする暗号資産取引の拡大は、デジタルエコノミーの進展につながり得るのではないかということでございます。米印で書いているところでございますけれども、暗号資産につきまして、大きく分けますと、(ⅰ)の基盤となるブロックチェーン・ネットワークにおいて広く流通している、ビットコインとかイーサといったものと、(ⅱ)その流通を前提として特定のプロジェクト等の目的のために発行されるものがあろうかと思っております。(ⅱ)の形態の暗号資産については、この取引が活性化することによってプロジェクト等を通じたイノベーションの促進に寄与するのではないか。また、(ⅰ)の暗号資産につきましても、(ⅱ)の暗号資産の発行・流通の基盤を担うものでありますし、その流動性の高さの観点から暗号資産間や法定通貨との交換等において重要な役割を果たしているのではないかというふうに整理しております。
続いて、暗号資産取引についてということでございますけれども、ボラティリティは相当程度高いものの、適切な投資環境整備を図るということで、オルタナティブ投資の一部として、あくまでリスク判断力・負担能力のある投資家によるということでございますけれども、分散投資の対象にもなり得るのではないかということを指摘させていただいております。
③としまして、投資対象としての認識が広がっている反面でございますけれども、詐欺的なものも増えているということでございます。金融庁に寄せられている暗号資産等に関する苦情相談についても、継続的に月300件以上寄せられている状況でございます。また、暗号資産取引に関する投資セミナーですとかオンラインサロンといったものも広がっております。中には、金銭を詐取するような違法な行為が疑われるものも生じているところでございます。こういった現状認識等を整理させていただいております。
次のスライドはこうした現状認識等を踏まえました環境整備の必要性についてでございます。今後、暗号資産取引市場が健全に発展するためには、さらなる利用者保護が図られて、国民から広く信頼が得られることが不可欠ではないかということでございます。一方で、規制を過重なものにしてしまいますと、かえって利用者や事業者の海外流出を招いてしまって、結果的に我が国の競争力を削いでしまう、あるいは利用者保護にもとるようなことになってしまいかねないということにも留意する必要があります。また、諸外国の規制動向も踏まえた検討が必要であるということで、利用者保護とイノベーションの促進のバランス、これが重要ではないかと指摘させていただいております。
その上で、喫緊の課題として、下でございますが、4点ほど整理しております。
まず、①でございます。情報開示・提供の充実ということでございます。ホワイトペーパーの記載内容が不明確であったり、記載内容と実際のコードに差があったりするといった指摘もあります。現状の自主規制でございますけれども、先ほど日本暗号資産等取引業協会からございましたように、交換業者に対する規制となっておりまして、発行者に対する直接の規制ではないということで、正確な情報開示・提供がなされていないおそれがあるという状況になっております。
②といたしまして、利用者保護・無登録業者への対応ということでございます。無登録で暗号資産投資への勧誘を行う者が現れているということのほか、詐欺的な勧誘も多数生じているということでございます。
③でございますけれども、現行で規制対象となっていない投資助言や投資運用行為への対応でございます。投資セミナーのようなものやオンラインサロンといったものが出現しており、こういった行為への対応も必要ではないかということでございます。その下に書いておりますけれども、政府広報オンラインでありますとか、東京都消費生活総合センター等においても注意喚起が行われている状況でございます。
そして、④でございますけれども、取引の公正性等の確保ということでございます。IOSCO等でインサイダー取引も含めた詐欺・市場乱用犯罪への対応強化等が勧告されている状況でございます。また、欧州や韓国などでも、インサイダー取引も含めた法制化の動きがある状況でございます。こうしたことへの対応も必要ではないかということでございます。
欄外の※1でございますけれども、暗号資産のリスクとして、ハッキング等の流出リスクがあると承知しております。こういったものにつきましては、規制で一定の整備がなされているところではございます。実務面での取組が期待されるということを指摘させていただいているところでございます。
ただいま申し上げた諸課題について対応していくことを考える上で、伝統的に金商法が対処してきた問題と親和性があり、金商法の仕組み、エンフォースメントを活用することも選択肢の1つではないかと指摘させていただいております。その上で、暗号資産の性質、実態面にも着目し、下記の2分類に区別して検討することが考えられるのではないか。いずれにしても、具体的な規制の見直しに当たっては、暗号資産が株式等の典型的な有価証券とは異なる性質を有するということも踏まえながら、適切なフレームワークを検討する必要ということを指摘させていただいております。
類型を2つに分けるということでございますが、類型①といたしまして、資金調達・事業活動型、これは資金調達の手段として発行されて、その調達資金がプロジェクト・イベント・コミュニティ活動等に利用されるものでございます。類型②が、それ以外の暗号資産ということでございます。
右側の、実態面に着目した規制見直しの必要性といたしまして、類型①につきましては、調達資金の利用目的等々について、情報の非対称性を解消する必要性が高いのではないか。類型②の暗号資産につきましても、ビットコイン等は流通量が多いということで、適切な環境整備を図っていく必要がある。また、ミームコインなどのコインにつきましても、詐欺な勧誘等による利用者被害も生じているということも踏まえまして、広く規制対象として利用者保護を図る必要性が高いのではないかと指摘させていただいております。
下の部分の留意点でございます。1つ目のティックでございますが、暗号資産は分散化が進展することもあるということで、類型①から類型②へ移行し得ることも念頭に置いて整理を行う必要があると思われます。また、現行資金決済法上の暗号資産に該当しない、いわゆるNFT、Non Fungible Tokenでございますけれども、こちらについては、利用の実態面に着目いたしますと、何らかの財・サービスが提供されるものが多く、またNFTの性質は様々であるということで、一律に金融法制の対象とすることには慎重な検討を要するのではないか。規制見直しの対象は、まずは、資金決済法上の暗号資産の範囲を前提に検討を進めることが考えられるのではないかと指摘させていただいております。また、ステーブルコインにつきましては、法定通貨の価値と連動した価格で発行されるということでございますので、投資対象として取引されるということは想定しにくいため、規制見直しの対象とする必要性は乏しいのではないかとさせていただいております。
次のページから各論でございます。
まず、情報開示・提供規制のあり方についてでございます。類型①の暗号資産につきましては、情報を最も正確に開示・提供できる者は、当該暗号資産の発行により資金調達する者であるため、こうした者に対しまして、投資者との情報の非対称性を解消するための規制を設けることが考えられるのではないかとさせていただいております。一方で、全ての暗号資産の発行を一律に規制するということではなくて、多数の一般投資家に対し勧誘が行われる暗号資産の発行等について規制することが考えられるのではないかと指摘させていただいております。
留意点の2つ目のティックでございますけれども、そうした開示・提供される内容の正確性の担保につきまして、監査法人による監査やコード監査等については、現実的ではないといった指摘もあります。交換業者や自主規制機関により一定の確認を行うことも選択肢として考えられるかと指摘させていただいております。
一方で、類型②の暗号資産については、特定の発行者を観念できないものも多く、発行者に情報開示・提供を義務づけることは馴染みにくいのではないかと考えられます。当該暗号資産を取り扱う交換業者に対しまして、現行と同様でございますけれども、一定の説明義務、情報提供、こうしたことを求めていくことが考えられるかと指摘させていただいております。
次のページが、業規制のあり方についてでございます。現行の資金決済法令に基づく規制につきましても、自主規制も含めれば、全体として見ると、金商法令に基づく規制とおおむね同様の規制体系が整理されているものと考えております。一方で、暗号資産に係る自主規制の中には、金商法では法令レベルのものもあるということでございますので、利用者保護を図る観点からこうした点をどう考えていくのかということを指摘させていただいております。また、無登録業者による違法な勧誘を抑止するため、より実効的かつ厳格な規制の枠組みが必要ではないかと指摘させていただいております。
参考で記載している点ですが、資金決済法上、無登録で交換業を行った場合には3年以下の懲役となっております。金商法では5年以下の懲役となっていることに加え、無登録で金商業を行う旨の表示や勧誘をする、こういった行為自体につきましても、1年以下の懲役となっております。また、金商法に基づき、金商業者につきましては、証券取引等監視委員会の検査の対象となります。また、無登録金商業者につきましては、裁判所の緊急差止命令の申立ても可能となっているところでございます。
次の黒丸でございますけれども、暗号資産を投資対象とする投資運用行為でありますとか投資助言行為についても規制対象とすることが適当ではないかといった指摘をさせていただいております。留意点でございますけれども、金商法では、業務の内容に応じた参入規制等の緩和類型や顧客の属性に応じた行為規制の緩和類型が設けられております。規制の見直しを検討するに当たっては、こうした規制の柔構造化も重要ではないかと考えているところでございます。
また、一番下のティックでございますけれども、いわゆるノンカストディアル・ウォレットに基づく分散型取引所での取引について、現状はごく一部の状況ではあると思っておりますけれども、将来的に拡大する可能性もあります。将来の実務の進展に留意する必要があると指摘させていただいております。
次のページは市場開設規制のあり方についてでございます。金商法では、適切な価格形成や業務運営の公正性・中立性を確保する観点から、取引プラットフォームに対する市場開設規制、いわゆる取引所の規制でありますとかPTSの規制、こういったものが課されているところでございます。一方、暗号資産の取引につきましても、顧客同士の注文のマッチング、いわゆる板取引を行っているような業者も存在するところでございます。そうしたことを踏まえた検討の方向性でございます。
暗号資産につきましては、多くの暗号資産について同一の銘柄が海外の取引所も含めた多数の取引所で取引されている現状も踏まえれば、個々の取引上の価格形成機能は限定的とも考えられます。また、当該特定の取引所、交換業者が倒産した場合でも、顧客にとって取引を行う場所はほかにも確保されておりますし、また、ピア・ツー・ピアでも取引できるというのも暗号資産取引の特性ではないかと思っております。こうした点を踏まえますと、当然マッチングの場を提供する以上は、適切な取引管理やシステム整備が必要ではあるものの、現時点では金融商品取引市場に係る免許制といったものや、金商業者に係るPTS規制のような厳格な市場開設規制を課す必要性は低いと考えられるのではないかと指摘させていただいております。
次のページはインサイダー取引への対応についてでございます。暗号資産に係る不公正取引につきましては、既に金商法におきまして一般的な不正行為の禁止規制でありますとか、相場操縦規制等が設けられておりますけれども、インサイダー取引については、直接の規制対象とする規制は設けられていないところでございます。こちらにつきまして、先ほど申し上げたようなIOSCOの勧告、欧州や韓国の法制化の動き、こういった点も踏まえまして、よりインサイダー取引について抑止力を高めていくための対応が必要ではないかということを指摘させていただいております。ただし、下に案Aから案Cとして書かせていただいておりますけれども、様々な課題があり、規制や市場監視体制の在り方についてさらに検討を深める必要があると指摘させていただいております。
案Aは、上場有価証券、株式等のインサイダー取引と同様に、形式犯的な規制を入れるやり方。案Bは、EUや韓国と同じような抽象的・実質犯的な規制を導入するといったもの。案Cは、アメリカと同様な不正行為一般の禁止規定を活用していくと、こういったやり方が考えられるのではないかという指摘をさせていただいております。
こうしたディスカッション・ペーパーを公表させていただいておりまして、これに対してのパブリックコメントが多数寄せられております。
11ページを御覧いただければと思います。4月10日から5月10日まで意見募集を1か月程度行いました。40個人・団体から御意見を提出いただいたところでございます。現状認識ですとか環境整備の必要性、規制見直しの大きな方向性については、概ね賛同いただける内容だったと理解しておりますけれども、多々いろいろな御意見をいただいております。その概要について御説明させていただければと思います。
まず、暗号資産の位置づけについてでございますけれども、暗号資産をオルタナティブ投資の一部として分散投資の対象となり得ると、こういった位置付けにすることについては賛同の意見があった一方で、価値の裏づけとなる資産がないことなどから反対といった御意見もございました。また、環境整備の必要性でございますけれども、環境整備の必要性を認める意見が多く寄せられたところでございます。その下の利用者保護とイノベーションの促進のバランスですけれども、こうしたバランスを取っていく、そうした環境整備を行うことについて賛同の意見が多く寄せられております。
次のページは暗号資産を規制する法律についてでございます。こちらは、デジタル資産に係る総合的な法制度などの新しい法律の整備についても検討すべきといった御意見もございました。一方で、できるだけ早期に、現状の課題に対応する観点から金商法の改正により手当てをすることに賛同する御意見もございました。そして、仮に金商法で規制する場合でございますが、暗号資産は有価証券とは異なる性質を持つため、有価証券とは別の金融商品として位置づけるべきという意見が多く見られたところでございます。また、金商法で規制することとなったとしても、送金決済の利活用を損なうことがないように考慮すべきといった御意見もございました。暗号資産の分類分けについてでございますけれども、類型①の類型②に区分することについては、賛同の御意見も寄せられる一方で懸念の声も寄せられています。具体的には、類型①という分類は規制目的との関係で簡明であるため妥当だと思うといった御意見もあった一方で、こうした区分について明確な基準を示してほしい、あるいは類型①から②に移行する場合の判断基準を示してほしい。また、資金調達の手段として発行されるか否かというのは判断が難しいのではないか、グローバルスタンダードに合わせてほしいと、そういった御意見もあったところでございます。
次のページは規制見直しをする対象についてでございます。暗号資産を金商法の中に位置づけることについて賛成の意見がございました。一方で、決済手段性のある暗号資産については、引き続き資金決済法で規制するべきではないかといった御意見もございました。また、現在資金決済法の規制対象ではないNFTを規制見直しの対象に含めないことについては、賛成の意見がございました。一方で、利用者保護の観点からは早期に検討を開始するべきだといった御意見もございました。情報提供・開示のあり方についてでございますけれども、類型①の暗号資産の情報提供につきましては、発行体に直接情報提供を義務づける方向性について賛同の意見が多く寄せられております。その上で、いわゆるプロ私慕でありますとか少人数私慕といったものを認める柔軟な制度設計としてほしいといった御意見、また、継続開示義務は不要であるものの、投資判断に大きな影響を及ぼす可能性のある事項については、適時開示義務を課すというよいのではないかといった御意見もございました。類型②の暗号資産の情報提供でございますけれども、暗号資産交換業者に情報提供義務を課すという方向に賛同の御意見がございました。また、類型①にかかる情報提供規制の潜脱を防ぐ必要があるといった御意見もあったところでございます。
次のページも引き続き、情報提供・開示規制のあり方についてでございます。その内容については、リスク説明に重点を置いてほしいといった御意見や、自主規制機関が標準的なフォーマットを作成すべきではないかといった御意見もありました。業規制の在り方についてでございますけれども、無登録業者への対応の強化でありますとか、投資運用行為、アドバイス行為を規制対象とすることについては、多くの賛同の御意見がありました。規制の内容としましては、兼業規制や自己資本規制比率については、暗号資産交換業の特性等も踏まえて慎重に検討をしてほしいという御意見、またステーキングサービスなども規制の対象とすべきではないかという御意見もございました。そして、昨今の事案を踏まえた暗号資産を悪用した犯罪への対策やセキュリティ規制の強化を希望する御意見もございました。また、DEXにつきましては、将来の実務の進展を注視するという方針に賛同の声が寄せられているところでございます。
次のページは市場開設規制のあり方についてでございます。市場開設規制を課す必要性が低いということについては、賛同の意見が多く寄せられました。インサイダー取引規制への対応につきましては、一般の投資家が公平に暗号資産取引に参加できるよう、インサイダー取引への対応が必要だという方向性について賛同が寄せられました。そして、規制対応として考えられる選択肢については、予見可能性等の観点から、形式犯的な規制を導入すべきという御意見もある一方、暗号資産の実態、特性を踏まえると、抽象的・実質犯的規制を導入すべきといった御意見もございました。エンフォースメントにつきましては、その強化について賛同の声が多くございまして、当局における監視体制を強化すべきといった御意見がございました。また、暗号資産交換業者や自主規制機関における監視体制の強化が過度な負担にならないように配慮してほしいといった声もあったところでございます。
今後の進め方につきましては、業界と十分な調整を行ってほしいといった御意見や、過度な規制による事業者の海外流出に留意すべきといった御意見がございました。また、投資家保護の観点からの意見もしっかり聞いてほしいといった声も寄せられております。
経過措置につきまして、暗号資産を規制する法律が金商法へ変わる場合、現行の暗号資産交換業者のライセンスでありますとか、本年6月に成立した電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者のライセンスにつきまして、十分な移行期間を設けることや、ライセンスの移管等について検討を配慮してほしいといった御意見がございました。
最後でございますが、参考として18ページ目に関連する閣議決定を載せております。新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版でございますが、この中で暗号資産取引につきまして、最後のパラグラフでございますけれども、「暗号資産を国民の資産形成に資する金融商品として業法において位置づけるとともに、投資家保護のための制度を整備する法案の早期国会提出を図」ると、こういった閣議決定がなされているところでございます。
私より説明は以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表、御説明を踏まえて委員の皆様に御協議をいただきたいと思います。なお、本日は、初回の会合でございますので、御発表、御説明をいただいた内容以外も含めて、幅広い観点から御意見を頂戴したいと思っております。また、御質問がありましたら、併せて御発言をいただければと思います。発言を希望される際には、対面で参加されている方におかれましては机上の名札を縦にしていただき、オンラインで参加されている方におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てに発言がある旨を御入力いただければ、それを確認いたしまして、私のほうから指名をさせていただきます。なお、御発言の順番に関しましては、前後する可能性がございますので、あらかじめ御了承いただきますようお願いいたします。また、時間も限られておりますので、お一人当たり4、5分程度を上限に御発言をいただきますと幸いです。
それでは、オンライン参加の松井委員が途中退席と伺っておりますので、最初に、松井委員より、御準備ができておりましたら御発言をいただければと思います。松井委員、いかがでしょうか。
【松井委員】
ありがとうございます。東京大学の松井でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございました。
諮問文にあるとおり、暗号資産については、事実として機関投資家におけるアセットクラスとしての資産形成、あるいは個人の分散投資の一環としてこれを購入する層が事実として定着しているという実態があります。暗号資産を最初に法制度上位置づけたことによって大きく取引に弾みがついたという経緯があり、資産形成における主要な投資先としてここに集中投資してしまうような投資家が出てくるというハレーションについて警戒感があるということは承知しておりますが、すでに定着している層にとって制度上必要な手当てを行わないということは、かえってデメリットが大きいと考えますので、今回のこの諮問に関して、必要な手当てをするということについて賛成、ぜひ進めていただきたいと考えております。
心配されている詐欺的な取引については、暗号資産自体というよりは、暗号資産交換業者等を名のる無登録業者、あるいは暗号資産をスキームに組み込んだとする詐欺的投資話が問題となっている側面が大きいのではないかと思いますので、今回のこの改正における手当として、エンフォースメントについて留意をするということも一方として重要な課題と思っております。
また、日本の取引の国際的なプレゼンスが落ちているということの御指摘がございましたけれども、法制化による日本の市場の急拡大が市場を急激に引っ張る地位に立つ危険が緩和されているという点では安心材料かもしれないと思いながら伺っておりました。
暗号資産については、業者規制及び決済の保護という視点から、今まで金融庁で規制の整備を行ってきているというふうに承知しております。今回の諮問に対しては、その資産の中身や取引の大きなイベントについて、利用者に必要な範囲で伝え、取引上の不正を監督するという観点から、金商法上の規制を含め必要な手当てをするということが考えられます。具体的には、資料でお示しいただいたとおり、情報開示、業規制、市場開設規制及びインサイダーもしくは一般的な不正行為に関する取引規制が考えられると思います。開示については、資料6の5ページにある類型化を手掛かりとすることが考えられます。暗号資産の使われ方として、発行者を認識できるタイプの資産とできないタイプの決済手段という考え方が、資金調達の最初の発行の時点では実態に沿ったものではないかと考えており、規制をかける先として考える出発点として適切だと考えております。この点、既に報告の中にありましたとおり、ICOのように、発行者が発行するというタイプのトークンから移行したIEOや、あるいはIDOの中に、暗号資産の性質上、流通段階において特定の者に責任を負わせることが経時的に難しくなっていく資産もあり得るという御指摘があったかと思いますので、実際の規制のかけ方を考える際に、この点をどのように考えながらつくっていくと効果的かについて、お知恵をいただきながらつくるということが重要かと思いました。
次に、業規制について、新しいアセットクラスであるということから、特に必要性が高いという事情があるかと思い、必要な法制化を進めるとともに、エンフォースメントを強く確保する必要があると思います。投資サロンやオンラインセミナーについては、暗号資産以外についても問題となっている可能性があるため、この機会に、少し広めの枠組みで規制するという可能性についても議論をすることが考えられると個人的には思っております。また、市場開設規制について、資産保護が実効的であれば、顧客は暗号資産を市場を超えて持ち運ぶこと自体可能であるということは、そのとおりかと思います。一方で、数が多く、脆弱な業者も一定程度存在しますので、資産の安全性が継続的に確保できるような運用になっているかという、運用面の制度ということが重要かと思いました。業者、交換業者、いずれも監査によって直接、間接にチェックしていくという制度の実情について御報告をいただいたところかと思いますけれども、実効性がある監督を引き続きお願いしていくということかと思います。
最後に、不公正取引について、何が不公正なのかということが難しいと思っております。技術的なハードフォークなど、特定の暗号資産に特有の技術的な価格変動要因については、その情報と取引による利益の関係というのは追いかけやすいと思います。他方で、例えば通常の通貨について考えますと、為替が大きく変動し得る国際合意が妥結したというような情報を使って為替取引をするというのは、従来、通貨という大きな制度ではマーケットに影響を与えないという整理なのか、インサイダーと考えていないと思います。他方で、暗号資産については、流通を禁止するというある国の法制度が例えば内々で決まったという情報があったとして、これを使って特定の投資家が行動した場合、これは暗号資産の種類によっては市場に大きな影響を与え得るかもしれませんけども、しかし、暗号資産そのものと紐づく事実ではないため、これを現在の発想ではそのまま重要事実というふうに呼ぶことが難しく、また、それを知っている人というものについても、暗号資産発行者や管理者とは関係がないかもしれず、内部者とすることも難しいかもしれません。
したがって、1つとしては、暗号資産の価格に影響を与える情報の発生場所がランダムである場合には、その情報を持っている人は構造的な内部者とは呼べないというふうに考えるということがあり、そうだとすると、悪質なものというのはある程度具体化できるのだと思います。他方で、実態を見たときに、そのように切り捨てるのではなく情報の悪質な使われ方には一定のパターンがあって、これを規制するほうが有効だということであれば、それはもしかすると案Bや案Cのような抽象的規定もしくは特出しのガイドラインのような形から入っていくというほうが、効果が上がるということはあるかもしれないと思っているところであります。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。今、対面で5人の委員の方に札を挙げていただいていまして、またオンラインで3人の委員の方に御発言の御希望を伝えていただいております。有吉委員から順番に御発言をいただき、その後、オンラインで松尾真一郎委員、河野委員、永沢委員という形で御発言をいただければと思います。4、5分程度ということでお願いいたします。有吉委員、お願いします。
【有吉委員】
有吉でございます。今日は、御説明どうもありがとうございました。
まず、全体的な議論の進め方につきましては、本日の参考資料にもございますディスカッション・ペーパーの内容に沿って進めていくという方向に賛成するところでございます。ただ、ディスカッション・ペーパー策定の前段階の勉強会に私も参加して議論に加わらせていただいておりましたが、具体的な制度設計は、今、松井委員からも様々な御指摘がありましたとおり、非常に難しい論点が山盛りだという印象がございますので、今後具体的な制度を議論していく中で、検討を深めていければと思っております。
その上で、本日は二つの団体の方からのヒアリングということでございましたので、実態的なところとして海外の状況について2点、日本暗号資産等取引業協会の体制面について2点、御質問させていただきたいと思います。
まず、海外の状況について、これは主に日本暗号資産ビジネス協会から御回答いただけることがあればお願いしたいと思いますが、海外においてIEOあるいはICOということで、資金調達がどの程度行われているのか、その規模感について、また、IEOによる資金調達を、どういう企業がどういう狙いで行っているのかについて、教えていただければと思います。場合によっては、次回以降、資料のような形で出していただくのでも結構だと思いますし、とりあえずざっくりしたところでお話しいただけることがあればお聞かせいただきたいというのが1つ目の質問になります。
それから2つ目の質問は、今度は逆に、今日の御説明資料の中でも、海外の機関投資家であるとか通常の企業が、暗号資産、その中でもビットコインに対して投資を行っている事例が増えているというお話があったわけでございます。こういった投資が何を目的にしているのかということでありまして、機関投資家であるとか企業の投資ということで、博打を行おうとしているわけではなく、何らかのキャピタルゲインを得ることを意図しているのだろうと思うわけでありますが、どういう狙いというか、なぜ価格が上がるのだろうという見通しで、機関投資家や企業がビットコインに投資を行っているのか。情報であったり、あるいはどういうふうに協会のほうでお考えになっているのかということについてコメントいただきたいというのが2つ目の質問になります。
それから、日本暗号資産等取引業協会の体制との関係で、本日、モニタリングや監査のやり方について現状を御説明いただき、大変参考になったわけでありますが、モニタリングにしても監査にしても、お伺いしている限りでは、会員の体制面についての監査やヒアリングを行っているということであったと理解しております。先般の勉強会の際にも似たようなことを御質問させていただいたことがございましたが、今後、不公正な暗号資産取引が行われていないかどうか、個別取引について日本暗号資産等取引業協会のほうで取引状況のモニタリングを行うというようなことが技術的にあり得るのか、また、人的、体制的なフィージビリティーとして現実的な選択肢になり得るのかどうかということについて、お考えを伺いたいというのが御質問になります。
それから、これはむしろ金融庁ないしオブザーバーで御参加いただいている日本証券業協会の方にもし伺えるのであればお聞きしたいと思いますが、日本暗号資産等取引業協会の資料の中で、事務局職員の方が31名、モニタリングの御担当の方が監督指導部ということで6名、それから監査部に3名と、こういった体制面の数字をお示しいただいておりますが、この人的リソースの規模感を比較して理解したいと思います。そういった意味で、例えばということで、同じ自主規制機関であられる日本証券業協会において、職員数がどの程度で、モニタリングの担当の方が何名程度いて、監査を担当している方が何名程度いるのかという数字を教えていただければと思います。
私からは以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。最初の2点の海外の状況については、日本暗号資産ビジネス協会にお話をいただき、その後、1点、日本暗号資産等取引業協会に御発言をいただき、最後にオブザーバーで御参加いただいていると思いますので、可能であれば日本証券業協会から規模感について御説明いただけますでしょうか。では、お願いします。
【日本暗号資産ビジネス協会(河合リーガルアドバイザー)】
日本暗号資産ビジネス協会のリーガルアドバイザーの河合でございます。
まず、海外の状況、IDO、ICO、それからIEOの状況から御説明申し上げます。
まず、具体的な数字を現在持ち合わせておりませんので、調べられる範囲で次回お答えしたいと存じます。ただ、少し特徴的なところを申し上げますと、日本とは、資金調達といいますか、IEOの使い方というのは大分海外で異なっておりまして、現在、非常に多いパターンというのは、むしろプロジェクトの開発者は、少人数、プロの投資家、ベンチャーキャピタル等から資金を初めに調達する、そこは私募の形ですが、これを海外において行う。そういうときには、いわゆるSAFTというような、事後的にトークンを発行するという形で、それを目的として資金調達をするという形をまず取った上で、一定規模のプロジェクトに成長した段階で海外の大手取引所にトークンを上場させてもらう申請をして、そこで追加の売出しをする、あるいはそのまま取引をしてもらうという形を取ることが多いというふうに理解しております。
もう少し小さなプロジェクトで、そういうプロセスを取ることが難しい場合には、DEX、分散型取引所を利用しています。分散型取引所というのは、今オートメイテッド・マーケットメーカーという仕組みを取っておりまして、トークンのプールを自ら作って、例えば自分が発行する新たなトークンと、イーサとかステーブルコイン、テザーとかUSDCのようなメジャーなものを入れて、そこで交換する場所を自ら用意してあげる。そうすると、自動的にトークンの交換が行われていくので、そういう形で市場に流通させていくというような方法を取ることもございます。日本型のIEOというものをいきなり行う、日本の場合はいきなり行うという場合がありますけれども、そういうパターンは割と少数で、ICOについては、詐欺的なプロジェクトについては今でもICOという形を取る、いきなり一般大衆に対して売り出すということをしている例はあると思いますけれども、例えばアメリカでもそれが有価証券の規制に当たるのではないか、開示義務違反等に当たるのではないかという議論もありましたので、ICOプロジェクトというものは、ちゃんとしたプロジェクトではあまり行わないのが現状ではないかと思います。これが1点目でございます。
2点目、機関投資家の動向でございます。機関投資家の動向として、先ほど白石副会長のほうから申し上げました2つのパターン、いわゆるETFに投資するようなパターンと、一般の上場企業が、ビットコイントレジャリー会社のような形で言われますが、大量に保有していくという形があります。これは、アメリカで先に流行って日本に最近増えてきている事例ですけれども、端的に言うと投資会社であって、むしろビットコインを一定量保有して、一部は短期で売買しながら長期保有で値上がり益を期待するというものです。実業をもともとしていた会社が多いのですけれども、完全に投資会社として運用されているのではないかと思います。ただ、実態として少し懸念をしているのは、例えば、保有しているビットコインの時価に比べて、株式の時価総額が極端に膨れ上がるという事例が散見される状態にはなっておりまして、例えばビットコインの保有している価値の3倍、4倍ほどの時価総額に株式のほうで評価されてしまうと、個人投資家の方が多いので、そちらのほうが購入が容易なのかもしれませんけれども、そちら側で過剰な期待が生まれている現状もありますので、この動向については、今後、バブルなのかというところも見ていかなければいけないのかなというふうには思っております。
以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、続きまして、お願いします。
【日本暗号資産等取引業協会(小山事務局長)】
勉強会でも、これまでの市場監視のところの検討経緯の話もさせていただきましたが、2019年の上期ぐらいに、我々の会員から取引データを協会のほうに集めて、それをもって協会のほうでも不公正取引の監視をやるというのは、アイデアとしてはありました。ただ、結局頓挫したというか、実現が難しいかということで、会員の体制を整備するのを第1優先順位に上げたわけです。当時は、やはり取引データを集めて我々に提供していただけるようなサービスを提供している業者がいらっしゃらなかったので、我々独自のデータフォーマットやシステムを構築する必要があって、これは相当な割高になるだろうということで、ほかにも優先すべきことがあるということで変えました。
今後の検討が必要だと思いますけれども、やはり我々が会員からデータをいただいて、それをチェックしていくという機能を求めていくかというと、今でも実現までに相当なコスト、時間がかかるのではないかと思っております。それに代えて、例えばベンチマークになる指標みたいなものを私どもの中で持たないといけないと思いますけれども、大きく相場が下落したようなときに、各会員がどういう対応をしたか、利用者にちゃんと情報提供しているか、受注管理、注文をどういうふうに受けているかといったことを聞いていくなど、もう少し現実的な対応ができるかというのは今後検討の選択肢になってくるかと思っております。
いずれにしても、今は会員のほうで個々に取引所を運営しているというような状況ですので、それらを見て、相場急落のときに適切な利用者に情報提供し、必要な受注管理を行っていくということがちゃんとやっていけるかどうかを我々のほうでも見て、質問などをして、内容を確認していくという機能は、いずれにしても備えていくべきかと思っております。人手は今の体制よりも増強しなければいけないと思いますけれども、中長期的なものと、それよりはコンパクトでできるものと、両面で今後考えていきたいというようなことを、今、考えているところでございます。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、日本証券業協会さん、お願いできますでしょうか。
【日本証券業協会】
日本証券業協会です。私は、大和証券の川島と申します。日本証券業協会からオブザーバーとして参加しております。
御質問の件ですけれども、概算の人数ですが、職員が360名、モニタリングをしている者が10名、監査に関わっている者が50名でございます。
以上です。
【森下座長】
どうもありがとうございました。それでは次に、伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】
ありがとうございます。弁護士の伊藤と申します。
私からは、総論を簡単に一言申し上げた上で、各論2点コメント、それから1点だけ質問をさせていただきたいと思います。
総論は一言だけです。暗号資産の規制を資金決済法から金商法に規定し直そうという大きな枠組みについては賛同いたします。規制法というのは、目的と手段が合っていることが非常に重要で、暗号資産は当初期待された決済手段ではなく、今は主に投資の対象となっているという現状を踏まえると、金商法の中で規制していくのが、目的に照らして妥当であると考えております。規制の中身につきましては、多数の論点がありますので、今後議論を深めていければと思っています。
次に、各論、2点です。
1点目は、私は資金決済を専門としておりますので、その立場から申し上げたいと思います。今回、暗号資産を金商法に規定し直す場合に、従来期待されていた決済機能をどのように捉えるかというのは1つ確認しておく必要があると思っています。事務局資料によりますと、いわゆるステーブルコイン(電子決済手段)は、資金決済法に残る方向と理解いたしました。他方で、暗号資産については、現状、ビットコインなどが通常の決済利用もなされているケースが実際にあるように聞いておりまして、検討の前提として、その規模感であるとか今後のニーズ、トレンドみたいなものはご確認いただいて検討していきたいと思っている次第です。
金商法に移ったからといって決済利用が特に制限されるわけではないのに、なぜこのようなことを申し上げているかといいますと、ディスカッション・ペーパーにもありますとおり、ブロックチェーン技術は、低コストかつ迅速な送金が可能であったり、改ざんが非常に困難なシステムであったり、スマートコントラクトも可能になるようなことで、決済インフラとしての可能性が非常にあるものだと理解しております。そこで、金商法に移ることには、先ほど申し上げたとおり賛成なのですが、こうした決済インフラの可能性というのは残したいというか、閉ざさないような形での法制度を希望いたします。これが1点目です。
2点目は、暗号資産の2つの類型についてです。事務局資料で挙げていただいた2つの類型に分けることや、この分類でよいのかといった点については、今後の議論で考えをまとめていきたいと思っております。その前提として、この2つの類型は、金融商品としての性質が非常に異なるものなのではないか、それを踏まえた上で検討をしていかなければいけないのではないかと考えています。どういうことかといいますと、まず、類型①、資金調達・事業活動型というのは、プロジェクトの内容を明らかにして資金を募って、投資家がその成長を期待し投資するという意味で、同じではないですが、株式であるとかファンドというような金融商品と、役割としては似たようなものと分類できて、それを新しい技術をもって発展させていこうというものだと捉えています。そのため、類型①については、既存の資金調達を目的とした金融商品の規制を踏まえた上で、市場としての信頼を高めながら、プロジェクトの成長を支える資金が集まる市場ができるような制度設計が必要だと考えています。
一方で、類型②、非資金調達・非事業活動型というのは、何らかの事業の成長を期待してお金が集まるものではなく、そして、収益を生む不動産であるとか、現物の裏づけ資産があるわけでもないけれども、実態として投資対象として巨額の投資が行われているという点で、従来、金商法が扱ってきた金融商品とは一線を画す異質なものなのではないかと思っています。そのため、類型②の暗号資産の市場をどう位置づけていくのかということは、さらにこの点を踏まえて議論を深めたいという印象を受けました。といいますのも、本日、事業者の方々の発表の中で、ごく一般の方々、個人の方の多くが、この類型②の暗号資産に投資をしていて、裾野が広がっていますというお話があったかと思います。これに対して、ディスカッション・ペーパーや、事務局の資料では、「オルタナティブ投資の一部としてリスク判断力、負担能力のある投資家による資産形成のための分散投資対象にもなり得る」という記載になっておりまして、位置づけとして「オルタナティブ投資」というのがキーワードとして出てきます。数年前から資産運用立国という政府方針があるかと思いますが、この政府方針や、類型②の、先ほど申しました暗号資産の特色という現状を見たときに、オルタナティブ投資の1つと位置づけるという考え方は、私は非常に深くうなずけるものだと考えております。ただ一方で、広く一般の方々にも裾野が広がっていて資金が集まっているというような状況を踏まえて、どのような市場として位置づけていくのかというのは、今後しっかり考えていくポイントかと思っています。
ではどういうふうにしていこうかというところですけれども、類型②の暗号資産については、投資環境の整備をするに当たっては、今申し上げた位置づけ、国民一般に広く売り出すような市場を想定しているのか、それとも機関投資家やいわゆる特定投資家のような方々を対象とした市場を見ていくのかを分けて、いわゆる柔構造化という考え方がありますけれども、それぞれの場面に応じた規制というのを検討していくべきではないかと考えています。
最後に、これに加えまして、やはりオルタナティブ投資の1つという位置づけというのは、これは金商法の内容として、オルタナティブ投資と位置づける制度のようなものはあまり想定されないのかもしれませんが、閣議決定にもオルタナティブ投資という文言があったかと思いますので、政策としてある以上は、何らかの形で、それが一般の方々にも理解が浸透していくようなことを考えていきたいと個人的には思っております。
コメント、以上です。
御質問を簡単に申し上げます。日本暗号資産等取引業協会に対してですけれども、資料5の19ページ、不公正取引についての審査の体制について、有吉委員と同じような質問をしようとしておったのですが、御回答いただきましたので、1点だけ、この数値の見方といいますか、受け止め方を教えていただきたいと思います。19ページ、不公正取引②で、会員や利用者に対して行った不公正取引の注意喚起の件数ということで挙げていただいているこの数字というのは、多いと見ていらっしゃるのか、それとも、今の段階では会員が上げてくるものとしてはこんなものだろうというふうに考えていらっしゃるのかといった見方を教えていただきたいです。また、金融庁もこの数値のレベル感といいますか、どのような位置づけで見ていらっしゃるのかというのを、可能であれば教えていただければと思います。
私からは以上です。
【森下座長】
それでは、可能な範囲でお願いできますでしょうか。
【日本暗号資産等取引業協会(小山事務局長)】
多いかどうかというのは、取引所を運営されている会員が全て抽出され、注意喚起等が行われているかどうかという確認、本日の資料は全体を集計してしまっていますが、会員ごとに見て、それが行き渡っているかどうかというのを重要視しておりました。結果としては、各会員において相応には抽出されているなとは思っております。
【森下座長】
ありがとうございました。金融庁さんはいかがですか。
【齊藤市場課長】
多いか少ないかという受け止めでございますけども、ある程度数字が出ているということでございまして、結局、実際にこうした見せ玉であるとか仮装売買というものがどの程度行われていて、それがどの程度抽出されて注意喚起できているのか、その結果によって、どの程度、その後の抑止につながっているのかといった全体を見る必要があるかと思っておりますので、数字だけ見ても、なかなかそこは分からないと思います。そういった点は、今後よく踏まえていく必要があるかと思っています。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、岩下委員、お願いします。
【岩下委員】
ありがとうございます。京都大学の岩下でございます。
私は今回の審議会に際しまして、暗号資産の規制について改めて考えてみたわけですけれど、そこで必ず思い出すのは、2018年1月のコインチェック事件です。当時関係された方々がこの場にも多数ご列席されていると思いますけれども、あのときに580億円のNEMという暗号資産が盗難されました。私も含めて多くの人たちが、NEMのブロックチェーン上で、盗まれた暗号資産がどこにあるかは明確に確認できました。当然、規制当局も捜査当局も全てを認識していました。しかし、何もできなかった。我々は、ただひたすらそれらの資産がロンダリングされ、ビットコインに変えられ、闇に消えていくのを見守るしかありませんでした。その後も、Zaif、QUOINE、そして昨年にはDMMビットコインと、流出事件は止みません。しかも、それらの盗まれた資金が戻ってきたという事実もありませんし、ロンダリングされて消えてしまうということも変わりません。何より犯罪の首謀者は誰1人として逮捕されていないのです。
今日いろいろ御説明あった機関投資家あるいは若者向けのきれいな投資、大きな値上がり益、暗号資産の抱えている良い面の裏側に、実は深い闇があることは、我々がそういう事件のたびに、あるいはそれ以外の事象でも繰り返して認識するところであります。事故が起きたときに、当局が手の打ちようがないという深刻な欠陥のある仕組みであるということを、我々は深く認識した上で、この暗号資産についてどう取り組むか考えなければいけません。
我々は、暗号資産交換業者と顧客の間の、かなりクリーンな、まさに交換業者が頑張ってクリーンにしている領域だけを見てしまうわけですが、実際には交換業者だけでビジネスができるわけではありません。交換業者は、結局その裏にある世界中の暗号資産関係のプロの投資家が参加している、あるいは不正な取引を行う者たちが匿名で参加しているオンチェーン取引をせざるを得ないわけでありまして、こういう二階層が存在する市場であることを正しく理解した上で、これをどう規制すべきかを考えていくべきだと思います。
先ほどから、業界の方々の御説明を聞いてきて、ああ、そうだなと思ったのですが、暗号資産というのは、法律上の定義は別として、実質的にはブロックチェーンという技術によって区分されています。ブロックチェーンを利用するものが暗号資産であるという定義の仕方を多くのところでされるわけですが、これは、金融取引の区分としては、実は非常に不自然なことだと私は思います。例えば、銀行預金というものがあります。かつては通帳と判子で取引されていました。それがATMからカードで現金を引き出すようになり、今ではインターネットで取引されている。けれども、いずれも銀行預金であり、銀行法で規制されています。技術は関係ないのです。株式も、株券があった時代と証券保管振替機構が登録している時代とで、金商法は変わっていません。技術ではなくて、誰がどういう権利義務を持っているかというのが問題なはずです。
ところが、暗号資産だけは技術に着目した別枠の規制になります。なぜでしょうか。このような区分が必要なのは、実は暗号資産が何も表章していないからです。銀行預金は銀行の負債、株式は会社の持分権を表章します。暗号資産はそれらと違い、誰かの負債でも会社の持分権ではない。何だか分からないものです。だからこそ、規制のしようがなかったというのが出発点でした。
2017年の資金決済法の改正は、2015年のFATFガイダンスを踏まえて、当時主張されていた、仮想通貨は決済・送金に使えるという説明を基に設計されました。もちろん実態は投機対象であることは当時からも知られていましたけれども、一応、そういうストーリーで規制を始めたわけです。なぜならば、その本質が何であるかということを、例えば法律の条文上に明記することが事実上できなかったからです。多分その問題は引き続き、今後の定義規定等にもはねてくる話です。ブロックチェーンではない技術に変わったときに、それは暗号資産なのか。暗号資産というのはブロックチェーンという入れ物のことであって、中身は何なのかということについての議論というのは、多分今後も延々と続くでしょうし、多分答えは出ないと思います。
暗号資産の価値の源泉、なぜ値上がりするのかという議論が先ほどからありました。一応、私はこの分野の研究に長く携わっており、2008年のサトシ・ナカモト論文を更に遡ること十数年前から、アノニマス・イーキャッシュの研究をしていますので、そこに立ち戻って考えてみましょう。そもそもサトシ・ナカモトと称する人物が書いた論文には、暗号資産という言葉もブロックチェーンという言葉も一切出てこないのであって、彼は、「デジタルキャッシュ」という言葉を使っています。つまり、電子現金、匿名送金のためのツールを作りたかったわけです。それ自体は、一種の政治的な主張に基づくものでした。ただ、それが流布して広く使われてしまうと、社会秩序を揺るがす問題になります。例えばランサムウエアは、暗号資産がなければ成立しません。また、フィッシング詐欺の結果、盗まれた資金が、日本の国内から暗号資産に変えられて匿名化されて送られる、これも、実に日常的に起こっている話であります。暗号資産が悪用される事例というのは枚挙にいとまがないので、本質的にクリーンなものにはなり得ないのです。それでも値上がりする資産である限り、投資家は買うでしょう。そうした不正に、投資家は関係ありませんから。だからこそ、業界や投資家の希望をどうかなえるかという議論ではなく、社会全体の安全を守る視点が必要です。
よく投資家保護とイノベーションの両立と言われますけれども、この整理には私はあまり納得していません。投資家保護は一般的にもちろん必要ですが、果たして暗号資産投資家が当局による保護を求めているかは疑問です。一応、情報技術と金融実務の経験を踏まえて申し上げますが、暗号資産やWeb3と言われるものについて、値上がり益を得る以上のイノベーションが発生することは極めて疑わしいと私は考えています。ただ、それでは規制しなくていいのかというと、放置すればさらに状況は悪化するので、被害を限定し、問題が起きたときに手綱を残す規制は不可欠だと思います。もちろん、2018年以降、業界が健全化に努めて、規制当局も改善策を積み上げてきたので、暗号資産が、少なくとも、かつてよりはベターオフで改善しているということを否定はしませんが、しかし、完全にクリーンにするということも、これまた無理な話です。したがって、伝統的金融と分散的金融がコミングルしないような仕組み、きちんと分離してリスクを波及させない仕組みをつくるべきです。そして、投資家の信頼、社会全体の安寧を守るということを目的と掲げるべきだと私は考えています。
このワーキング・グループでは、実態、現実に根差した建設的な議論が進むことを期待したいと思います。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。今、11時46分という時間になっております。永沢委員が12時に御退出予定と伺っていますので、先に永沢委員に御発言をいただきたいと思います。
【永沢委員】
御配慮に感謝いたします。私は、良質な金融商品を育てる会という市民グループを主宰しております永沢でございます。
冒頭で事務局から御説明がありましたFATF会合の頃、まだ仮想通貨と呼ばれていたときのワーキンググループの審議に個人投資家側の委員として参加させていただいておりました。
事務局から論点を提示いただきましたが、本日は初回ですし、私どもはディスカッション・ペーパーに関する意見を提出させていただきましたので、その意見書に記載させていたいた思いも含め、総論的なお話をさせていただきます。
私は、良質な金融商品を育てる会のほかに、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会という、会員数としては最大規模の消費者団体にも所属して活動しております。その団体では週末電話相談を受けておりますが、そのご相談の中には、事務局からSNSを通じた投資詐欺的な相談が多いというお話がありましたが、特に暗号資産に関する相談が増えていると実感しております。また、活動をともにしているメンバーとも話しているのですが、最近のテレビのコマーシャルは、以前はFX取引でしたが、最近では、暗号資産のコマーシャルを目にすることが増えてきております。暗号資産についてよく知らないのに、何だかよさそうということで取引に参加するような個人も増えてきているのではないかと懸念しているところです。最近オンラインカジノが話題になっておりますが、それと同視すると暗号資産の関係者には叱られるかもしれませんが、ギャンブルと同じ感覚で取引に参加している人も増えてきているのではないでしょうか。SNSの影の部分とも言えるのかもしれません。
そのようなことを日頃から感じておりましたので、4月に金融庁からディスカッション・ペーパーが公開されましたときに、私どもも意見書を出させていただきました。ディスカッション・ペーパーを拝読して一番驚きましたのは、暗号資産の取引経験者の比率が、社債やFX取引よりも高く、7%にも達しているということでした。また、先ほどの日本暗号資産ビジネス協会からの御説明も、詳細に御説明いただき大変勉強になり、ありがたかったのですが、これにも大変驚愕いたしました。若い世代の、私から見ますとそれほど収入が多くない方々が暗号資産を買っているということですが、この現象をもって、暗号資産が資産形成の手段として位置づけられているとか、利用されているというように説明されますと、それはちょっとどうかなと思いました。大変驚いたというのが正直な感想でございました。ここまで取引が広く一般に広がってしまったという実態については、ある意味で、この数年、金融当局には厳しい言い方になりますが、もっと早くに対策を講じるべきだったのではないかと思っております。
また、本日の何人かのご発言を聞いておりますと、これだけ広く普及し浸透している実態があるのだから、存在意義が正当化されるのだというような御主張もあるようにも聞こえまして、本当にそうですかと私としては申し上げたいと思っております。
暗号資産は、資産価値に株式のような裏づけはないと教わっております。ある意味、価値があると思って取引に参加する人がいるから価値があることになっているのではないでしょうか。暗号資産は、一部には企業活動に活用されるものもあるようですが、どこまでリアルな経済活動や企業活動の支援につながっているのかという実態もよく見えません。そういう中で、暗号資産を正当な金融商品として位置づけるのはどうなのだろうというのが正直な感想でございます。
ほかの委員の先生からも御発言がありましたように、国が国民の安定的な資産形成を支援する制度の整備を進める中で、若い世代に暗号資産取引への参加が増えていることについて、国は、政府はどう考えているのだろうかと、正直ながら、私は大変懸念しております。安定的な資産形成のための制度整備のための金融経済教育の推進にも関わらせていただいておりますけれども、暗号資産が金融資産として位置づけられ、これが仮にでも広く一般の人にも投資対象として開かれるとするならば、これまで金融経済教育を推進してきた人たちは相当混乱するのではないかと思っております。
このワーキング・グループでは、事務局から様々な論点を御提示いただいており、私はかなりの論点について答えを持っておりませんけれども、1つだけ申し上げることとしては、安定的な資産形成を優先すべき一般の家庭は、暗号資産への投資に参加すべきではないと思っておりますが、過剰に参加してしまうことがないように、規制の整備を進めていくことが急務だと思っております。繰り返し、暗号資産を成長させるべきという立場には与しない立場ですが、仮に健全な成長をということであるならば、取引に不適合な人を参加させない仕組みをつくることであろうと思っております。足元の詐欺的な勧誘の急増に対して何らかの手を打つことはもちろん急務ですけれども、取引に適合しない個人を参加させないよう、勧誘行為に対してルールを整備していくことが必要であると思っております。
もう1点、機関投資家が暗号投資をオルタナティブ投資の手段と位置づけ、分散投資の1つの手段として注目されているというお話も、このディスカッション・ペーパーから知ることができました。少なくとも受託者責任を負っている資金の運用に限っては、投資家のお金は実験材料ではございませんので、慎重に受託者責任を全うできる範囲で対応いただくことを希望しております。米国でやっているからというのは、正当化する理由になるとは思っておりません。よそに遅れるなということが理由になると思っておりませんので、推進される方々からは今後の審議の中で合理的な正当化理由をお聞きすることができたらと思っております。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。今、11時50分を回っておりまして、6人の委員の方から御発言をいただいていない状況です。多少延長させていただきつつ、御発言いただく皆様、コンパクトに御協力をお願いできればと思っております。小川委員、お願いします。
【小川委員】
ありがとうございます。公認会計士の小川でございます。本日は、御丁寧な御説明感謝いたします。
暗号資産については、諸外国の動き、また先ほどお話がありましたビジネスの実態を鑑みますと、今、我が国としても、喫緊に議論すべき重要な課題と認識しております。暗号資産は、先ほどお話がありましたとおり、特にデジタルネイティブな若い世代に非常に手軽な投資手段として既に拡散をしています。20%の分離課税等々といった話になりますと、流通量に大幅に拍車がかかると想定しています。一方で、先ほども議論がありましたが、有価証券と暗号資産が本質的に異なる部分については、経済実態、担い手等、多く存在することも認識する必要があります。
したがいまして、そういった状況の中で、金融基盤の安全性を担保するために、どこまで何を実現していくのかという点について、しっかりした議論が必要だと考えています。
私のほうから本日は、2点お話ししたく思います。今回のテーマの中で、例えば2つの区分を設けて、おのおの対応案を検討するといった案があります。それぞれ経済実態が異なる点から、一定のリスクアプローチで対応を分けていくといった点は、一定の評価をしております。一方で、非常に流動的かつ変化が速いビジネス実態がございますので、こういった形式区分といったものが、ビジネス上どこまでフィージビリティーがあるのかといった点は、運用手法含めて重ねて議論をしていく必要があると考えています。
また、今回の議論の中で非常に重要になっていくと考えておりますのは、やはりシステム上のリスクについてです。どこまで制度上制御し、安全性を担保する仕組みを設けていくのかといったところが非常に重要になってくると考えています。さらには、関連するオペレーション上の欠陥から生じ得る暗号資産の流出事故、また、サイバーセキュリティ、マネロン、不正といった各種リスクの顕在化は、想定される流通量の増加に伴い、今後さらに金融基盤そのものの信頼性自身を損ないかねない、大きな影響をもたらし得ると考えています。悪意を持った第三者というのはその手法を日々進化させ高度化させている点も、十分理解する必要があります。
したがって、持続的に高度化し対応することを担保する仕組みについて引き続き議論していくことは必須と考えています。デジタル化の急速な進展に伴い、私共の監査の世界におけるシステム監査の方向性も、ITGC、いわゆるITジェネラルコントロールの重要性が増しております。そこでは、担い手自身のITガバナンス、各種管理体制の有効性、十分性が問われます。多重に複雑化するシステムにおいて、外部システムが一部組み込まれるケースも多く存在します。担い手である被監査企業自身の統制では十分ではなく、こうしたサードパーティーリスクについて、例えば、SOCレポートという第三者評価の実施を求めるケースも増えています。より複雑化する実態に即して、監査手続き自身が、適正かつ十分なのかという観点について、さらに監督機関がチェックする、といった多重なチェック体制が整備され、社会的な信頼性を担保する枠組みになっています。
これに限らず、今後インサイダーの議論といったことになってきますと、当然市場の監視機能といったところも重ねもって議論が必要と考えています。
システム及びオペレーション上の統制について、どのレベルまでルール化すべきか。また、これらを整備運用する担い手自身のガバナンス体制についてどこまで求めるのか。さらに、当該審査機関自身のガバナンスの有効性、適正性、十分性等チェックする体制をどこまでもとめるのか。こうした総合的な枠組みの議論をとおして、社会的信頼性に対する説明責任について考えていきたく思います。
委員の皆様の極めて重要な御意見含めて、今後、議論を重ねていけたらと思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
【森下座長】
ありがとうございました。加藤委員、お願いします。
【加藤委員】
加藤でございます。本日は御説明ありがとうございました。
私からは、3点意見を述べたいと思います。
1点目は、今回、制度整備のあり方を検討する際には、暗号資産や暗号資産取引の特徴を考慮していく必要性があるということです。これは、本日の御説明では資料3で御示唆されていたことかと思います。資料3では、非常に丁寧に暗号資産や暗号資産取引の特徴を御説明いただきました。そこでも言及はされていましたが、もう少し強調してもいいかと思った点としては、まず、暗号資産の特徴としてプログラムコードが非常に重要であること、が挙げられます。また、暗号資産取引の特徴として、P2P取引が可能になっていることも重要であると思います。ただし、実態としては、暗号資産交換業者を含むバーチャルアセットサービスプロバイダーなどの仲介機関を介して、様々な人が暗号資産のポジションを取っている場合のほうが多いという点も、忘れてはならないと考えます。これは、岩下委員がおっしゃった二重構造も、暗号資産や暗号資産取引の特徴であるということを示します。
こういった二重構造を前提として、これまでは、暗号資産交換業者の規制を通じて間接的に暗号資産の世界に働きかけを行ってきたのであろうと思います。一方、資金決済法の枠組みの中には暗号資産の発行者に関する規制が欠けておりましたので、この点を解決するという点で、暗号資産に関する規制を金商法の枠組みに入れるという方向性には一定の意義が認められるのではないかと思っております。その一方、暗号資産交換業者の暗号資産市場における重要性も変わりません。ですから、暗号資産の発行者に関する規制が整備されたとしても、暗号資産交換業者は暗号資産市場の健全化のために重要な役割を果たすことを期待されているということを忘れてはならないと思います。
2点目は、暗号資産の分類の話です。これは、資料6の5ページ、及び伊藤委員、岩下委員の問題意識と共通する部分があるかと思います。暗号資産の定義、これは日本法上の、資金決済法における定義ですけれども、技術的及び電子的に流通可能なものは全て暗号資産であると定義した上で、電子決済手段であるとか、通貨建て資産であるとか、別の規制の対象になっているものを除いていくという構造になっています。これは非常に特殊な構造であると思います。そうであるがゆえに、非常に多種多様なものがその中には入ってきます。そのため、暗号資産に関する問題を考える際には、どういった暗号資産であったり、どういった使われ方をしている暗号資産であるかを念頭に置くかによって、問題意識であったり規制のあり方が変わってくるのだろうと思います。
資料6の5ページで挙げられている類型①は、暗号資産を発行する目的が資金調達であるのであれば、資金調達に関する規制は資金決済法では不十分な部分があるので、それを補っていこうという発想に基づくものであると思います。これは、私は非常に望ましいことではないかと思います。ただ、有価証券の世界では、プライマリーの市場とセカンダリーの市場がありますが、暗号資産のセカンダリーの市場について、どういった規制が望ましいのかは、それほど研究が蓄積されているわけではないという印象を持っています。例えば、アメリカでは、プライマリーの市場において暗号資産を発行して資金調達をすることがインベストメントコントラクトに該当するのかについて一定の研究の蓄積があり、規制のエンフォースメントの実例もあります。これに対して、仮に暗号資産の発行がプライマリーの市場において証券規制の適用がされる取引であるとされた場合に、流通市場においてどういった規制が望ましいかについては、あまり具体的な議論はされていないのではないかと思います。この点が、類型②の暗号資産に関する規制を考える際に非常に重要になると思っております。
もう一点、暗号資産の分類については、同じく資料6の5ページのミームコインの扱いについて、気になる点があります。このミームコインについては、資料3で挙げられている、資料3の2-1、誰でも生成することが可能であるということや、あと資料3の4-1、インターネットとの親和性が高いということによって、ミームコインというものが非常に生まれやすくなっているのだろうと思います。ただ、ミームコインと同じく、ミームストックというものもあります。ミームストックの存在は、資料3の4-1で挙げられているようなことが、言わば暗号資産以外の金融商品一般にも、実は問題を投げかけているということを示しているだろうと思います。
ミームストックについては、様々な問題はありますけれども、上場審査はありますし、会社法による規律もあります。一方、ミームコインについては、上場審査に相当するものがあるのか議論が分かれるでしょうし、会社法に相当する仕組み、法はありません。そのためミームコインを、例えば金融商品取引法の中でどのように考えていく必要があるのかというのは、個人的には非常に気になっております。
漠然とした考えにすぎませんが、現在の暗号資産交換業の規制の特徴としては、個別銘柄の登録制があります。この個別銘柄の登録制を見直すべきかとミームコインの話は関連するのではないかと思います。
ちょっと長くなってしまいましたが、最後、松井委員がおっしゃった、何が不公正かという話についても意見を述べます。何か不公正かという話については、実は伝統的な有価証券の世界でも争いがあると思います。例えば、インサイダー取引規制は不公正取引規制の一種と位置付けることができますが、アメリカやEU、日本では、規制の対象範囲が異なります。さらに、有価証券と商品取引では、そもそもインサイダー取引規制の存否に差異があります。商品取引については、インサイダー取引規制は日本法には存在しませんが、実態として商品取引は投資対象になっています。
さらに、今、暗号資産の取引を実際にしている人たちと、これからしようかと思っている人たちにとっては、何が不公正なのかという考え方が大きく異なる可能性があります。そうすると、インサイダー取引規制を含む不公正取引規制の問題を考える際には、そもそも何が不公正なのかということ自体が、制度設計をする際に争いになり得る点なのだということを意識する必要があると思います。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、松尾真一郎委員、お願いします。
【松尾(真)委員】
松尾でございます。
今回は第1回ということで、今後の検討において必要となるような提言を4ついたします。
1つ目は、持続性です。今回、法改正の検討に当たり、暗号資産を用いた金融のようなものができるといったときに、それが日本あるいは世界の経済活動を100年、200年と持続的に安心して使われる強固な礎になるような制度にしなければいけないということです。日本の近代金融業というのは150年ほどの歴史があって、それまでの間、その時代、時代に要請される規制と監督のあり方を通じて、政府と事業者が適切な対話を続けて、持続的なビジネスモデルをつくってきました。
今回の暗号資産の規制議論においても、過去のそういった歴史にならい、暗号資産に基づく、金融の金だけではなくて融も含めて、ビジネスモデル、持続性も含めて議論できるということの立てつけをつくることが重要だと思います。その観点で、本日の事業者からのプレゼンテーションには、恐らく時間の制約でこの視点が少なかったように見えますけれども、今後そういう協力のあり方、責任の分担のあり方ということも含めて、ワーキング・グループで詰めていくことが非常に重要だと思います。特に、それぞれの規制、監督の実際のアクションとそのアクションの担い手をクリアにするという出発点で議論しないと、実効性のある規制監督というのはできません。
2点目が、私の専門であるセキュリティです。先般のディスカッション・ペーパー、本日の事務局資料では、必ずしもセキュリティというのは主要な論点ではなかったというふうに見ています。ただし、金商法の議論の俎上に乗るには、利用者にとって十分なセキュリティ体制が取られることは大前提でスタートポイントです。これがないと始まらないと思います。
今回の規制監督においてセキュリティ確保のための官民の体制がどのようにあるべきかということを十分に議論する必要があります。既存金融は、勘定系がバックエンドにあるということが多いため、こういうセキュリティ上の攻撃界面というのはある程度わかっていて限定されていますが、一方でブロックチェーンを利用した金融システムというのは、勘定系のような主要な処理システムが、場合によっては利用者の端末までむき出しになっています。むき出しになっているからこそ、イノベーションの芽があるということになっているわけですけれども、ここがまさにイノベーションと利用者保護のトレードオフの交差点でもあって、こういう新しいアーキテクチャに基づいた金融システムセキュリティ確保のために、既存システムのセキュリティ確保の枠組みから、一歩も二歩も踏み込んだ高度な仕組みが必要になります。これは、金融庁が持つセキュリティに関する監督機能の強化の必要性につながるかもしれませんし、民間事業者との連携のあり方、民間事業者に課される取組の定義が新たに必要ということになると思います。
3番目は、イノベーティブな暗号資産特有の状況への対応です。事務局資料にもありますように、暗号資産に対する規制監督、様々な論点、悩みの原因は、規制の対象の主体が特定できない、あるいは流動的であるということです。そのために、これまでの考え方は使えないということになります。そうしている間に、新しいプロトコルと課題が毎日出てきていて、ある種、モグラたたきになってしまい、金融庁の職員も疲弊するし、事業者側も規制の明確性が得られないという状況がずっと続いていると思います。つまりは、ある意味、限定列挙の方式におのずと限界がある。改めて規制の目標である利用者保護、金融犯罪の防止と金融安定に立ち返った上で規制の目標とは何か。何が保たれていれば、金融庁と日本国民にとって安心な状況であり、民間事業者にとっても持続的なビジネスモデルが描ける状況になるか。そういう目標の合意を起点にするということが大事です。
このワーキング・グループの主なターゲットは、特に我が国の利用者保護と金融犯罪の防止がメインのスコープだと思われますが、特に事務局資料ではインサイダー取引に力点が置かれていたように見えますけれども、先ほどもありましたように、現在、暗号資産の世界で起きていることを考えますと、インサイダー取引より広範な概念として、不公正取引、イリシットアクティビティーズ(Illicit Activities)ということを考えなければいけません。BGINという組織では、一昨年からこの議論を行っておりますので、その考えも含めて連携できるといいと思っています。
また、開示規制についても、そのあり方について、誰が何を開示するのか。本当に適切な開示とは何で、それは本当にできるのかという論点が出てきます。それであれば、暗号資産の状況にふさわしい新しい情報開示のあり方を議論すべきです。例えば、金融庁や証券取引等監視委員会が規制の目標の達成に必要な開示すべき情報のスペックを提示して、そのスペックを満たす情報提供のあり方をコンソーシアム、複数の人たちが協力して、企画競争入札でやっているように民間に競わせて公募する。こういうことが、暗号資産自体の利用者保護とイノベーションのバランスを取るという仕組みの1つですし、RegTech、SupTechと呼ばれる分野で、日本企業が今のところ目立たない中、日本のイノベーション強化、規制監督における国内自給率の強化ということにつながるはずです。
最後に、4点目として、この世界でガラパゴスにならないということがとても重要で、日本国内外の規制当局の議論ともフィットして、そういう状態に陥らないようにするということが重要です。例えば、類型①、②の分類の話では、これから米国連邦議会の上院でも審議されるCLARITY法案でも大きな論点でありますけれども、BGINのような場所も通じながら諸外国に劣らない状況をつくることが肝要です。
その際、日本における分類判定の主体や分類のプロセス、分類の監督のあり方や主体が国際的に見ても正統性を持つ方法である必要があります。そのためには、暗号資産に関するビジネスに際して、利益相反が起きる体制であってはいけませんし、高度な中立性が求められます。米国においては、そういうことが重視されています。また、最初に述べたように、誰がどのように責任分担を行うかを考えながら、国際的に見ても競争力のあるエコシステムをつくることが重要です。
最後に、事業者団体のプレゼンテーションでも、米国の現政権の状況が引用されていましたが、仮に3年半後に米国で民主党への政権交代が起きたときには逆転現象が起きる可能性があるということも念頭に置かなければいけません。米国でも日本でも、政権交代に大きく左右されるような金融システムであってはいけません。より長期的、本質的な規制監督にすることが原則として必要となると思います。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。河野委員、お願いします。
【河野委員】
河野でございます。本日、初回ですので、暗号資産の全体観について十分な知識も経験もございませんが、議論に参加するに当たって立場と現在の認識について、簡単に申し上げたいと思います。
先ほど御説明をいただいたとおり、暗号資産取引事業に対しては既に幾つかの規制が整備されつつありますけれども、今後デジタル社会の進展に伴い、国民生活に少なからず影響を及ぼす暗号資産について、今回、集中的な審議が始まることに、一般消費者としては、ある種の安堵感を抱いています。
このような感想を持ったのは、15年ほど前に出現した法定ではないデジタル通貨が、ウェブという言葉どおりに、いつの間にか世界中に網の目を張り巡らせて日常生活に入り込んでいく事例を多く目にしております。国民生活センターや都道府県の消費生活相談窓口などでの事例からは、トラブルを抱えている消費者の多くは、儲かるというキーワードに誘われて暗号資産に近づいています。ネット検索をすると、アプリをダウンロードすれば、あたかも簡単に暗号資産を購入できますという丁寧な実装案内が掲載されています。加えて、暗号資産のメリットとして、手数料が安い。銀行を通さずにスピード送金ができる。少額から、また、いつでも投資ができる。将来性があるなどの誘い文句が踊っていますし、デメリットとして法律による規制という、それはデメリットなのかという記述も目にしました。
Web3の技術の特性や投資による資産形成などに対する専門的知識が乏しい一般消費者としては不安を拭えないところですが、諮問文に記載されているとおり、規制と促進のバランスを取って、新しい技術が社会の役に立つような状況に持っていくことが、このワーキングの役割だと認識しています。
ディスカッション・ペーパーで提示された各課題に対して、本日、委員の皆様から多様な御意見があり、このワーキングの結論が収束するのかどうか、改めて心配にもなりましたけれども、若年層でもスマホで簡単に手に入れることができる暗号資産が、金融サービスの領域において、利用者に大きな負荷をかけることなく信頼できる制度となるように、私自身も情報収集を重ねて精一杯努力して議論に参加したいと考えております。
私からの発言は以上です。ありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。松尾委員、お願いします。
【松尾(健)委員】
端的に申します。金商法を研究している人間からしますと、今回の資料を見て申し上げたいところ、1点申し上げます。
暗号資産の分類ですけれども、類型①と類型②に分類することについては、規制の構築をしていく上で大変重要な視点だと思います。類型①については、暗号資産を広く売り出す際に、売出しの価格の公正性を担保する仕組みを構築することが最低限必要になるとともに、調達した資金の使途についてモニタリングをするといった仕組みも必要かと思います。②の類型については、業者規制といいますか業規制、勧誘規制も含めてですけれども、そういったものを実効性ある形で構築する、これが非常に重要なことになるのではないかと考えております。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。河村委員、お願いします。
【河村委員】
ありがとうございます。本当はたくさんあるのですけれども、せっかくの機会ですので、御報告いただいた内容のところで、思ったことだけお話ししていければと思います。
まず、資料3の暗号資産取引所の現状についてというところに、日本暗号資産ビジネス協会のものに関しては、先ほどもお話があったところと関連するんですけれども、7ページの投資教育というところが、誰がどういう形でどのようにやっているのかというのが非常に気になっています。国民の資産形成を健全な形で進めていく上で、こういう分野の投資教育のあり方というのも大変重要な課題になるのではないかと思っています。
それから、同じく資料3の13ページのところ、株式市場にも影響を及ぼすBTCトレジャリー企業の動向のところで、株式市場にバブルを生んでいるという表現がありますけれども、これが当該企業の株価だけの話なのか、株式市場全体に影響を与える話なのかというところに関しては、ビットコインのマーケットと株式市場の相互関連というところで非常に重要な課題になってくるかと思っています。
それから、17ページで、株式による資金調達とトークンエコノミーの目的の違いというところですが、コミュニティを支えていくような方もおられると思いますけれども、そうではない人たちというのも結構おられるかと思いましたので、その辺りについてデータで分かるようなものがあるとよいかと思いました。
それから、18ページ、最後のところの一番下の小さいところで、「貨幣数量説(フィッシャーの交換方程式)」というところがありますけれども、この辺り、トークンの理論価格モデルの話には少し興味があるところですけれども、果たしてトークンエコノミーの経済的価値の見積りというものが適切に行われているかどうかというところが気になっています。
それから次に、資料5の日本暗号資産等取引業協会のところに関しては、14ページからの暗号資産の審査確認のところで、取引業協会のほうが、会員からの審査内容を受け取ってどれぐらい異議を述べているのか、あるいは付帯条件であるとか付言をされているのかが非常に知りたいと思いました。
それから、資料6に関しては、1点だけですけれども、先ほど少しお話が出てきました諸外国の規制動向には私も関心を持っているところです。上院でどうなるか分かりませんけれども、CLARITY法案を見ていますと、今日のディスカッション・ペーパーの整理で類型①、類型②ですとか、その移行をどうするかですとか、継続開示をどうするかですとか、どういう情報開示をするかですとか、暗号資産の取引所というか、デジタル商品取引所の規制のあり方ですとか、あるいは公務員等による非公開情報の利用の話ですとか、その辺りについて様々な面白い規制があるかと思っているところですので、それが成立するかどうかはともかくとして、そういうものも参考にしながら議論を進めていくとよいのではないかと思った次第です。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。前のほうで、幾つか御質問がありましたけれども、また機会がありましたら、次回以降で少しお話をお伺いするということでいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、委員の皆様からは一通り御発言をいただきました。今回、オブザーバーの皆様にも御参加をいただいておりますが、オブザーバーの皆様で御発言を希望される方はいらっしゃいますでしょうか。もしおられましたら、1団体当たり2分以内厳守ということで御発言をいただければと思います。それでは、国際銀行協会さん、お願いします。
【国際銀行協会】
国際銀行協会で資産運用部会を担当しております水野と申します。これから申し上げることは、この次のステップでの話になるかと思いますが、もう既に御案内のように、暗号資産を組み入れた運用商品、要は運用会社が受託したような形でETFというものが存在しています。その観点から申し上げますと、やはり国民の中長期の資産形成に役立てるように、私ども国際銀行協会としても今後の環境整備、それから情報の提供という面で、ぜひ皆様と歩んでいきたいと思っております。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、日本証券業協会さん、お願いします。
【日本証券業協会】
大和証券の川島です。日本証券業協会として参加しております。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
端的に申し上げます。暗号資産を資産形成に資するオルタナティブ投資の対象として位置づけるためには、それにふさわしい規制のあり方等についての検討が重要であると考えております。本協会としましても、これまで金融商品取引業に携わってきた知見を生かしまして、こうした議論に協力してまいりたいと存じます。
以上でございます。ありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、信託協会さん、お願いします。
【信託協会】
信託協会です。発言の機会をいただき、ありがとうございます。
本日の議論から少し外れるかと思いますけれども、信託協会としましては、ディスカッション・ペーパーに寄せられた意見の中にも含まれておりましたが、暗号資産ETFにおいて受託者の立場を担っております。暗号資産が金融商品として制度上確立されるために必要な法令、規制等が行われることを前提に、暗号資産ETFについても投資家の選択する商品スキームにバリエーションを持たせて広がっていくことが重要だと考えております。例えば組成方法としては、受益証券発行信託型と投資信託型、また、対象とする信託財産としては、暗号資産現物と暗号資産関連デリバティブといったように複数考え得るものでありますが、いずれの選択肢も狭めずに、受託者の立場として、本ワーキングの御議論を参考に丁寧に検討してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。時間が延長してしまいまして、申し訳ございませんでした。
これで、本日の討議を終了いたします。活発な御議論、幅広い観点から御議論いただきまして、ありがとうございました。本日いただきました説明や御意見を踏まえ、今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
また、次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日事務局より御案内させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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