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金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」(第2回) 議事録
日時:
令和7年9月2日(火曜)10時00分~12時00分場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用
【森下座長】
それでは、定刻になりましたので、ただいまより暗号資産制度に関するワーキング・グループの第2回会合を開催いたします。
皆様、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
それでは、メディア関係の方はここで御退席をお願いいたします。
それでは早速ですが、議事に移ります。初めに、日本暗号資産等取引業協会、日本暗号資産ビジネス協会より、前回委員の方からいただいた御質問等に関して御回答いただければと思います。
続いて、暗号資産はグローバルに取引されますところ、他法域での暗号資産法制の動向も重要であると考えられるため、事務局より米国の暗号資産関連法案の動向について御説明をいただきます。なお、欧州の暗号資産法制であるMiCAの概要につきましては、次回以降に取り上げる予定です。
その後、日本ブロックチェーン協会より、暗号資産に係る規制の見直しへの要望について御発表いただき、最後に、事務局より、暗号資産に係る規制の見直しについて、その総論と情報提供規制等の各論点の概要について御説明をいただきます。
その後、メンバーの皆様に御討議をいただくという流れで進めさせていただきたいと思います。
それでは早速ですが、日本暗号資産等取引業協会、日本暗号資産ビジネス協会より御発表をお願いいたします。
【日本暗号資産等取引業協会】
それでは、先に日本暗号資産等取引業協会から説明させていただきます。当協会から3つの点に関しまして御説明申し上げたいと考えております。
まず、第1点目。3ページ目、顧客の適合性確認に関して説明させていただきます。日本暗号資産等取引業協会におきましては、顧客の適合性確認を会員企業に求めております。3ページ右下の表が分かりやすいかと思いますが、利用者の年齢、経験、資産、所得、利用目的、これらによってそれぞれ一定のリスクウエートを設けております。4ページ目、口座開設時だけでなく、取引時において適正なモニタリングを行っており、顧客の適合性確認をしています。
5ページ目、下に表がございます。こちらは前回、日本暗号資産ビジネス協会からも発表、掲示があった表です。実際に、個人の暗号資産投資家の80%以上が10万円未満、90%以上が50万円未満の投資という取引状況になっておりますので、一定の顧客の適合性確認がされていることの、これが証左になるのではないかと考えております。
6ページ目、こちらは直近6年間の暗号資産審査の確認状況です。日本では、暗号資産を国内の暗号資産交換業者が扱う際、一件一件、それぞれまず会員企業、暗号資産交換業業者が一定の暗号資産審査を行いまして、その審査プロセスが問題ないかという点を暗号資産等取引業協会が確認しております。
7ページ目、暗号資産審査は取り扱いを認める場合でも一定の付帯条件を設定する場合がございます。今、日本で105銘柄が上場しておりますが、うち50銘柄に付帯条件を設定しています。付帯条件とは、一定の注意をすべき点のことです。また、この付帯条件等に関しましては、協会のホームページでも公表しておりますので、会員の方に限定せず一般の方も内容が見えるという状況となっております。
8ページ目、暗号資産の決済手段としての利用状況です。こちらも過去7年分の利用状況の推移を書いております。こちら見ていただくと、決済手段としての利用が増えているというわけではないものの、一定の需要があるということが確認いただけるかと思っております。暗号資産にはいろいろな面がありますので、資金決済の方法としても現に使われている側面があるということ、これを御説明させていただければと存じます。
当協会からは以上とさせていただきます。
【森下座長】
ありがとうございました。では引き続き、お願いします。
【日本暗号資産ビジネス協会】
日本暗号資産ビジネス協会の白石より、前回御照会いただきましたトークンを用いたプライマリー市場についてと、暗号資産決済の現状について、簡潔に御報告いたします。
グローバルのトークンによる資金調達についてです。グローバルにおけるトークン資金調達というのはこの数年で大きく変化を見せております。従来は、例えばBinanceのLaunchpadに代表されるように、取引所によるIEOが主要な手法でございました。このIEOというのは、取引所の審査を経るため、投資家にとっては信頼性が高く取引ができるという面がある一方で、発行体にとっては参加条件が厳しく、上場したくてもできないというような発行体もあるというところがございました。
こうした背景もあり、最近ではより上場が容易な分散型金融、すなわち、DeFiを活用したような資金調達に一部の資金調達市場はシフトしているという動きが強まっております。具体的には、ダッチオークションとか、LBPという時間経過で価格を下げていくような販売方法といった仕組みを用いて、需給に応じて価格を調整しながら段階的に配布していくというような手法の取引が広まってきております。
このように、IEOのような中央集権的に投資家保護を図りながらトークン審査を行うプライマリーの市場と、誰でも参加できる一方で信頼性が低く、比較的リスクが高いDeFi型の市場という両方が存在しておりまして、発行体が目的や資金調達したい規模によって手法を選択しているというのがグローバルの市場の動きでございます。
一方で日本では、QTMという方式によって固定価格で調達価格を決めていくというような手法が基本でございますので、こういった点ではグローバル市場とはまた異なる部分はございます。
主なプライマリー販売の方法について、今御説明させていただいたものをまとめさせていただきました。こちらに記載があるのは代表的な例でして、VCによる調達や、IEO、また、先ほど御説明したDEXの上場といったものを記載しております。
4ページ、5ページは、前回の再掲資料ですので、御説明は割愛させていただきます。
6ページです。暗号資産決済について御報告させていただきます。暗号資産決済は、加盟店がどのような形態で受け取るのかによって大きく3つに分かれると考えております。暗号資産をそのまま受け取る暗号資産受取型、決済事業者等が換金をして法定通貨で受け取る法定通貨受取型、また、ステーブルコインで加盟店が受け取るステーブルコイン受取型という3つが大きく類型として考えられます。この出口のインターフェースというのは、法定通貨受取型の場合は、従来のカード等の既存の決済システムと同様のものでございまして、ユーザーが何で払うのかというファンディングソースの部分、ここの部分に法定通貨だけではなくて暗号資産等が組み込まれているものが出てきているというのが新しい点でございます。
日本国内における事例として個社のメルカリの例を御紹介させていただきます。メルカリにおいては、2024年からビットコインを利用した決済サービスを始めておりまして、既に累計で約120万件、利用者でいうと約63万人の方がビットコインによる決済を体験されております。実際は、ユーザーはビットコインを使っての支払いを能動的に選択していますが、最終的にメルカリとしては、資金移動の残高として法定通貨で精算をするというような形態になっておりますので、ユーザーがビットコインで払うということを強く意識しているというよりは、シームレスなユーザー体験の中でビットコイン決済を活用されているというようなUXになっています。
ビックカメラや家電量販店をはじめ、旅行や不動産、また、ギフトカードというような幅広い業態で暗号資産決済の導入事例はございます。ただ、類型としてはほとんどが法定通貨受取型でございまして、加盟店は円やドル、法定通貨で売り上げを受け取るというのが主流でございますので、暗号資産による価格変動リスクを加盟店が直接負うというような決済の方法ではないというところを申し添えさせていただきます。
海外における導入事例です。海外においても、例えばスターバックスやマイクロソフトのような大手企業においても暗号資産決済は導入されております。代表的な決済事業者、P2Pの例でいうと、BitPayの場合は月間で3.4万回以上の決済が行われています。
グローバルにおける形態としても法定通貨受取型が主流でございまして、特に海外の場合は、クレジットカードやデビットカードを出口のインターフェースとして使っているというケースが主になっております。大手の暗号資産交換業者はVISAやマスターのブランドを乗せた自社のクレジットカードやデビットカードを発行しています。また、暗号資産をチャージしてVISAやマスターのネットワークで決済するというようなものがサービスとして増えています。ユーザー体験としては、従来のクレジットカードを用いた決済とは変わらない一方で、資金源として暗号資産を活用できるようになっているというのが新しい点だと思っております。
私どもからの説明は以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、続いて事務局より御説明をお願いします。
【今泉暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官】
暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官の今泉でございます。お手元の資料3に基づきまして、米国暗号資産関連法案の動向につき御紹介させていただきます。
1ページ目、米国では、①CLARITY法案という暗号資産、デジタル資産関連の法案、それから②GENIUS法案というステーブルコインに関する法案、そして③Anti-CBDC法案というCBDCに関する法案の3つの法案につきまして、7月14日の週をCrypto Weekと銘打ちまして、合わせて審議が行われました。こちらの3法案につきましては、7月17日に下院において全て可決されておりますが、今回後ほど御紹介するCLARITY法案も含めまして、GENIUS法案を除いた2法案は、今後、上院で審議をされることになっております。賛否も様々ございますので、これから御紹介する内容でそのまま成立するのかどうか、そもそも法案が成立するのかどうか、その辺りは現状では特段決まっていないと理解しております。
その前提でございますけれども、2ページは、下院で成立した時点のCLARITY法案の概要です。こちらは議会のホームページに載っております要約をベースにまとめたものでございます。
こちらではSEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)のデジタル商品に関する監督権限を明確化し、デジタル商品に対する包括的な規制の枠組みの構築を図るものとされております。ここで言うデジタル商品とは、ブロックチェーンの利用と本質的に結びついた価値を持つデジタル資産のこととしておりまして、証券やデリバティブ、そしてステーブルコインについてはその対象外であるということが書かれております。
SECについては、発行市場における暗号資産取引に関して、資金調達に関するSECの登録要件についての免除の枠組みが導入され、代わりにSECの権限を一定程度維持するものとして届出等の枠組みが導入される形となっております。また、CFTCについては、デジタル商品及びその関連する仲介業者の規制に関して中心的役割を担うものと位置づけられており各種規制が盛り込まれると、こういった内容となっております。
このCLARITY ACTの中では、ブロックチェーンが成熟しているか否で規制の内容に違いが設けられており、成熟したブロックチェーンの定義づけについて触れられております。具体的には、関連するデジタル商品とともに、共通の支配下にある個人または集団のいずれにも支配されていないブロックチェーンシステムという形で定義されております。そして、この内容につきましては、デジタル商品の発行体、あるいはその関連者、関係者も含まれておりますけれども、こうした者がSECに対して、ブロックチェーンの成熟度を証明し、認証を受けるという形になっております。
具体的なメルクマールとしましては、真ん中の※印にありますけれども、①ブロックチェーンの透明性ということで、具体的にはソースコードがオープンであるといったこと、また、②ガバナンスということで、特定の主体が20%以上の議決権を持たないこと、そして③所有の分散ということで、発行者などの一定の者が総発行量の20%以上を有しないこと、こうした要件などから判断されるということとなっております。
そして、SECが所管する部分でございますけれども、成熟したブロックチェーンまたは成熟を意図する、成熟を目指すブロックチェーン上のデジタル商品を対象とする投資契約の募集については、一般に求められる証券の発行開示規制の適用を免除するということとなっております。ただし、冒頭申し上げましたように免除を利用する発行体は、SECに届出をするということになっております。その特定の条件としては、その下にございますけれども、1年間で5,000万ドル以下の販売額にするといった制限や、いずれの発行者も発行済数量の10%以上を保有しないこと、その他まだ成熟していないものについては4年以内に成熟することを意図しているといったことなど、様々ございます。そういったことに加えまして、成熟度に関する報告・開示義務など、成熟しているもの・成熟途上であるもの、それぞれに応じたSECに対する届出とか開示、こうした要件を満たすことが必要とされております。
続いて、CFTCの所管に関わる部分でございます。こちらではデジタル商品取引所とは現行の暗号資産取引の大半を占める中央集権型プラットフォーム等とされておりますけれども、これら及びデジタル商品のブローカーやディーラーにCFTCへの登録を義務づけるということになっております。そして、取引所が遵守すべき、顧客資産の分別管理、自己勘定取引の禁止、取引監視、記録の保持・報告、利益相反の最小化といった根本となるような原則を規定しております。また、ブローカーやディーラーに対しても、顧客資産の分別管理をはじめとする規定が制定されることとなっております。
また、取引所につきましては、成熟したブロックチェーンあるいは成熟を目指すブロックチェーン、こういったデジタル商品を取引対象とするというふうになっておりまして、これらのものについては継続的な報告条件を遵守することを前提とするとしております。CFTCが申請から20日で認証を行い、不承認とする場合にはその分析を公表するということが書かれております。
それ以外の事項といたしましては、最後ですけれども、DeFi、分散型金融の活動については、これは証券取引法及び商品取引所法いずれにおいても登録・遵守要件の対象外であるとされておりますけれども、反詐欺・反相場操縦の対応という意味では、SEC、CFTCの権限は担保されるという形になっております。また、取引所及びブローカー、ディーラーに対しては銀行秘密法が適用されるということで、マネー・ローンダリング対策については規制が適用されるということも書かれております。
具体的な内容につきましては、今後、下位のルールメイクがSEC、CFTCそれぞれでなされると思われますし、また、両者の権限に関するコンフリクトについては両者間で協議をしていくということにもなっておりますので、今後こうした動きについて、議会での審議も含めて金融庁としても注視してまいりたいと思っております。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは続いて、日本ブロックチェーン協会より御発表をお願いします。
【日本ブロックチェーン協会】
一般社団法人日本ブロックチェーン協会の代表理事、加納でございます。本日は暗号資産を巡る制度のあり方について当協会としての意見を御説明させていただく機会を賜り、誠にありがとうございます。本日の御説明では、暗号資産に関する現行の法制度の課題、そして今後の制度設計にあたり考慮すべき論点を整理し、特にトークンの分類基準に焦点を当ててお話しさせていただきます。限られた時間ではございますが、建設的な議論につながれば幸いです。どうぞよろしくお願いします。
早速ですが、資料の2ページ目です。過去の金融審議会の議論ですけれども、1,200万口座を超え、預かり資産5兆円というところで議論されているところでございます。
3ページ目です。まず日本ブロックチェーン協会としては、暗号資産の主たる適用法令を金商法に見直すことについて賛成いたします。大きく2つの理念がありまして、日本経済・産業の発展、暗号資産市場の信頼性向上のために金商法が妥当だと考えています。また、昨今、ETFを検討されているといううわさもありまして、暗号資産市場の発展についてグローバル市場での競争力を向上させたいということです。また、過去の事件によって個人向けのレバレッジが大きく下げられて今は2倍ですけれども、暗号資産のボラティリティーは直近下がっておりまして、過去と比べると大分下がっている状態なので、レバレッジを今の2倍から5~10倍へ緩和していただきたいというところです。なお、法人のほうは、ボラティリティーを加味してレバレッジを決めているので、現状で既にもう10倍を超えているようなレバレッジが適用されております。
他方で利用者保護の強化というところで、無登録業者、主に海外ですけれども、そういった業者から利用者を保護していただきたいと考えています。また、インサイダー規制、これはクジラと呼ばれているような大口保有者が、ある意味インサイダー的な情報を手に入れて先に売ってしまうということや、先に取引をしてしまうということを実際に規制していただきたいと考えております。また、特に今回大きな論点になると思いますが、資金調達型トークンの情報開示についてです。あくまでも、資金調達型と資金調達しないトークンを分類しまして、資金調達型と判断されたものに対してはしっかりと、発行体及びそれに準ずる方々の行動を情報開示していただきたいということを意見として御提案させていただきます。
4ページ目です。理念としましては、今後、暗号資産に詳しくない、より多くの消費者が恐らく暗号資産投資に参入すると想定されます。その前提で、利用者保護のため発行体、交換業者による詐欺的行為及び潜脱行為を防止することが肝要であると考えております。実際に法律をつくると、また、日本暗号資産等取引業協会のほうでルールをつくっても、潜脱行為というか、事業者は事業を極力伸ばそうとしますから、それが一部の事業者だけに認められたようなルールではなくて、日本の居住者を対象とする業を提供する全ての方、事業者に対しては一定のルールが適用されることを望んでおります。
5ページ目です。詐欺・潜脱行為の具体例としてどういったものがあるかということを説明させていただきます。ブロックチェーンを使いながら資金調達をして何かしらサービスを提供しようとしているような会社をプロジェクトと呼んでいます。不透明な資金使途ということで、例えば資金調達をして、それを自身の豪邸に投資をしてしまったり、ブランド品を購入してしまったりする。これが直接事業に関係ない資金使途ではないかと考えられております。また、例えばトークンによる高額な役員報酬ということで、ある発行体が、10兆円以上のトークンを発行して、数兆円の役員報酬を個人に支払うような状態とになっていることがありますので、これが開示されて、適正かどうか投資家が判断できるような状況をつくるということも非常に重要だと考えております。
左下がトークン供給量の恣意的な変更です。例えばトークンをビットコインのようにゆっくりと発行していくタイプではなくて、発行体が恣意的に発行できるタイプで、例えば全量発行して、それをロックアップして、ロックアップを解除するような形で市場に流動性を増すという目的で資金調達をする。発行体が市場に売ることによって間接的に資金調達をする、セカンダリーで資金調達をするというのは、実質上プライマリーで発行するのと同じような経済行為ですから、これも規制の対象にすべきであると考えております。
右上が、資金調達後の会社売却です。日本の場合、例えば子会社がトークン発行によって資金調達をします。これは売上げになり、純資産が増えます。そうすると、その株価が上がり、その株を売ることによって親会社はお金をもうけることができる。実質的な子会社に対する管理監督義務を負わず、サービス提供義務を負わない形で資金が手に入ります。これは株式の場合は成立しません。株式の場合はダイリューション、希薄化しますので、子会社が株式を発行して資金調達をすると純資産が増える一方で、親会社の一株あたりの持分もそれに応じて減少するため、結果として、持分に対応する株式の価値は変わらずこういったことができませんが、トークンの場合はダイリューションがないので、こういったことができてしまいます。これが許容されると、子会社でトークンを発行して親会社が会社ごと売り抜けるということを繰り返すことによって、永遠に資金調達ができてしまいます。
右下です。LPというのは、Liquidity Providerと呼ばれているようなマーケットメーカーです。クリプト市場に対して注文を繰り返して流動性を供給する、これ自体は認められた行為だと思いますが、発行体が直接エンドユーザーに販売すると、IEO規制や、昔はICO規制と呼んでいた規制に抵触します。そのため、取引所やLiquidity Providerに売ってから間接的に販売することによって、規制を逃れるというか潜脱行為のようなことができてしまいます。特に例えば市場で100で売られているものを取引所に70で卸すと、発行体は70が手に入り、取引所も30もうかるといった、インセンティブプログラムと呼ばれているような手法によって潜脱行為ができてしまうので、LPや販売所、取引所、交換業者を介した場合も、実質的な資金調達であれば情報開示義務が必要ではないかと考えております。
6ページ目です。繰り返しになりますが、ある特定の発行体や特定の財団だけが認められているルールのようなものがあるような気がしていますけれども、ルールはやはり一定で、規制は全ての業者に公平に適用してほしいと考えています。ある会社ができるのであれば、ほかの会社もできるべきで、できないのであれば、みんな同じようにできないといったような規制が公平性のために必要です。不公正な、そして不透明なルールというのは、公正な競争を妨げ、イノベーションの健全な発展を阻むと思っています。
7ページ目です。これは金融審の資料から抜粋しているので詳細は割愛いたしますが、やはり類型①と類型②の境目がどこであるのか。過去に長い間議論を続けてきましたが、これが非常に重要で、結局、類型①に当たるものが開示規制の対象になるとすると、類型①と類型②の境目がどこにあるのかを見極め、ルールを適切につくってあげることが大事だと思います。発行体があるのかないのか、これは非常に難しい哲学的な問題ですが、どこかで線を引く必要があると考えております。
8ページ目です。これが我々日本ブロックチェーン協会から一番お伝えしたい提案です。金融庁の案である、「資金調達の手段として発行され、その調達資金がプロジェクト・イベント・コミュニティ活動等に利用されるもの」といったものを、より具現化したものが我々の案です。「発行」というと、株式の発行というのは発行と同時に売却、アロケーションして資金調達をするところまで発行と呼んでおり、これと区別するために「生成等」という言葉を使っています。トークンの新規発行や、エスクローを解除することは生成に当たらないため、生成等の「等」というところで読ませていただいて、実質的に資金調達をしているものを「生成等」と定義します。
例えば議決権の51%以上を持っている方。ここでいう議決権はブロックチェーンにおけるシステムの変更権限であったり、トークン生成の議決権であったりするもので、これは必ずしも1トークン1票とは限らず、例えばある特定のトークンでは32のトークンの単位を1つの議決権とすることもあります。また、ブロックチェーンによっては、トークン生成に必要な数が67%だったり80%だったり、もしくは51%以下だったりするので括弧書きの51%としていますが、あくまでもトークン生成に必要な数の議決権を持っている方。
または、オフチェーンの場合です。我々はブロックチェーン以外の世界で意思決定されることをオフチェーンと呼んでいて、取締役会や契約等で実質的に支配をして投票を拘束するような状態の発行主体、グループ会社、関連会社、SPC、財団、創業者グループ等がアクションとして売却をする場合。これはプライマリーで発行して売却します。
当然今回カバーされますが、実はこのプライマリー発行というのはもう近年は減っています。先ほど日本暗号資産等取引業協会の資料にもありましたが、やはりセカンダリーのほうが有利ですから、潜脱行為とは言いませんけれども、規制を免れますので、わざわざプライマリーで発行しません。セカンダリーで発行して、金庫株のような状態をつくります。我々は金庫暗号資産と呼んでいますけれども、一旦発行体が保有している状態のものを何らかの形で市場に吐き出すことによって資金調達をする、これにはエスクローの解除も含まれますが、こういった行動を取ったときに情報開示をしていただきたいと考えています。関係者の情報やインセンティブプログラムがあるのであれば、それを開示していただきたい。こういった資金の使途や、調達の手法を透明化することが肝腎かと考えています。
9ページ目です。「特定の者」の範囲としまして、単なる会社法の関連会社や、連結子会社などの範囲を超えて特定の者だとして定義しないと、実質的に潜脱行為ができてしまいます。例えば株式会社の場合は、株を第三者に譲渡しても、その第三者と共謀して投票行為をするといったことが可能です。トークンの場合はそれがもっと簡単にできてしまうので、もしかすると発行会社に所属するような社員の方も含めて、より特定の者らの範囲を大きくとって判定すべきではないかと考えております。やはり中央集権的な影響力が大きい主体というのは意思決定が簡単にできますので、そういったものはよりプライベートチェーンというか、パブリックチェーンではなくて、共同して何かしら発行の意思決定をしていると考えるのがよいかと思っています。
10ページ目です。形式的にはオンチェーンで、ブロックチェーン上で分散を強調していても、一部というほど少なくないんですけれども、割と多くのプロジェクトはオフチェーンで意思決定をしています。実は会社として判断する、財団として判断をするけれども、オンチェーンのバリデータは分散している形です。ただし、このバリデータを決める権限はオフチェーンでやっているので、実質上、オンチェーンの人たちは議決権が拘束されているような状態をつくられています。例えばそのバリデータがオフチェーンの世界の意にそぐわない場合は、バリデータの任命を解任されてしまいます。そのため、やはり総合的に判断する必要があると考えておりまして、51%以上の議決権を保有する場合だけではなくて、オフチェーンでの実質的な支配度も評価する必要があるのではないかと考えております。
11ページです。売却のタイミングですけれども、先ほど申し上げたとおりで、プライマリーでの発行はIEOやICOの規制の中であまり発行体にとってもメリットがないため、やはりセカンダリーの規制をしっかりと評価に入れて規制していく必要があるのではないかと考えております。
12ページです。情報開示の項目としましては、暗号資産交換業者は、やはりなかなか情報を得られないと言いますか、インターネットに開示されているような情報を基に評価をしております。情報を基本情報と追加情報に分けまして、例えばホワイトペーパーや、コンセンサスアルゴリズムの仕様がどうなっているか、コードがどうなっているかといった基本情報は、公開されているので調べる必要があります。
類型①に該当する場合は、それだけではなく、追加情報を確認すべきです。例えば、主要株主がどうなっているのかや出資者情報、また、財務諸表、これは非常に重要で、監査済みであることを推奨とします。やはり不適切な資金の使途がないように財務諸表を確認して、しっかりと消費者、投資家に対して説明する義務があるのではないかと考えております。特にLPとの取引や、インセンティブプログラムといった市場の公正さをゆがめるようなものもしっかり開示していただく必要があるのではないかと思います。
役職員にトークンを付与することもあります。これはストックオプションの場合は目論見書に書く必要があります。個人であったとしても東京都港区とか住所の途中まで名前と開示されるのが今のストックオプション制度ですけれども、これと同等に誰がどれほど持っているかを開示すべきだと考えています。なお、こういったルールが個別の交換業者で実施されると、会社によってルールが変わってきますので、日本暗号資産等取引業協会等で審査項目をルール化していただきたいと考えております。
最後のページです。日本ブロックチェーン協会の意見のまとめとしまして、金商法に移行することに賛成をします。全ての発行体・交換業者・利用者に共通のルールを適用することをお願いしたいと考えております。3ポツ目、実質的な生成等の意思決定権を持つ特定の者らがトークンを売却し資金調達をする場合には、情報開示を義務化していただきたいと考えております。
私からは以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは続いて、事務局より御説明をお願いします。
【齊藤市場課長】
市場課長の齊藤でございます。お手元の資料5に沿って説明させていただきます。
目次として、まず総論を御説明し、その後、各論に入っていくという流れでございます。
2ページです。暗号資産投資をめぐる喫緊の課題と対応についてでございます。下の表にまとめておりますとおり、暗号資産の投資対象化が進展している状況にございます。暗号資産投資を巡る喫緊の課題は、伝統的に金商法が対処してきた問題と親和性があるため、金商法の仕組みやエンフォースメントを活用して対応することが適当ではないかとさせていただいております。
暗号資産の投資対象化の進展の状況についてでございます。先ほど来ございますように、国内の暗号資産交換業者における口座開設数は延べ1,200万口座を超えており、利用者預託金残高は5兆円以上に達するという状況でございます。国内のアンケート調査によりますと、投資経験者の暗号資産保有者割合は約7.3%ということで、FXや社債等よりも保有率が高くなっている状況でございます。一方で、暗号資産へ投資を行っている個人の投資家像につきましては、暗号資産保有者の約7割が年収700万円未満の中間所得層となっています。また、個人口座の預かり資産額、これは暗号資産交換業者への預かり資産額ですけれども、80%以上が10万円未満と、小口の取引が中心になっているということ。また、86%の利用者は長期的な値上がりを期待した取引を行っているというアンケートもあるということでございます。
その下の暗号資産投資をめぐる喫緊の課題でございます。5つの項目として掲げさせていただいております。情報開示・提供の充実、利用者保護・無登録業者への対応、投資運用等に係る不適切行為への対応、価格形成・取引の公正性の確保、セキュリティの確保ということでございます。
3ページです。こうした課題につきましては、金商法が対処してきた問題との親和性があるのではないかということでございます。金商法は、有価証券の発行者と投資者との情報の非対称性を解消するため、有価証券の募集・売出し等について、発行者等に対する開示規制を設けております。また、有価証券等の売買の媒介・取次ぎ等や投資運用、投資アドバイスについて業規制の対象とするほか、市場開設規制・不公正取引規制を設けており、公正で透明な市場の確保、投資者保護を図っております。また、エンフォースメントについては、刑事罰等の対象とするほか、自主規制機関等による監査等や、金融庁・証券取引等監視委員会による監督・検査等が行われるともに、無登録業者に対する緊急差止命令といったものが設けられているところでございます。
次のページです。金融庁の金融サービス利用者相談室における暗号資産等に関する相談等の受付状況等でございます。足下、月平均300件以上の暗号資産に関連する相談が継続的に寄せられております。そして、その大半は、詐欺的な暗号資産投資の勧誘や取引等に係るものとなっております。
その下の参考として、相談の一例を書かせていただいております。SNSを用いた勧誘を受けて暗号資産に投資をしたが、出金できないトラブルに巻き込まれている。インターネットのセミナー等で勧められて暗号資産を購入したが、いまだに上場が実現しない。出会い系サイト等のSNSをきっかけに勧誘を受け、紹介をされた事業者で取引を行ったところ、出金できないといったもの、あるいは金銭等の支払いを求められたといったもの。フェイク動画等を使った詐欺的なもの。また、暗号資産取引に関する詐欺に遭い、資金を失ったため、弁護士に相談したところ、調査会社を紹介され、高額な調査費用を請求されたと、こういったものもあるということでございます。こうした相談の内容を見ますと、暗号資産が投資対象として見られていることに起因したものとなっており、証券等の投資商品に関する相談内容に近いものがあるものと考えております。
次のページです。金商法の規制対象についての考え方等の整合性の論点でございます。金商法は、投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な利用者保護法制の構築をその理念としております。暗号資産取引の多くが価格変動によるリターンを期待した投資であることは、金商法制定時に議論されていた金商法の規制対象とすべき投資性の考え方とも整合的ではないかとしております。下の抜粋は、金商法制定時の金融審における整理でございます。御参照いただければと思います。
次のページです。暗号資産を金商法の規制対象とするとして、その金商法における位置づけをどうするかとの論点でございます。下の表を御覧ください。現行の金商法では、既に暗号資産はデリバティブ取引の原資産として金融商品に位置づけられておりまして、暗号資産についてのデリバティブ取引は、金商法上の業規制の対象となっております。
また、不公正取引規制につきましては、インサイダー取引については規制がございませんが、デリバティブ取引に加えて、暗号資産(現物)についても金商法で規制しております。
暗号資産について不公正取引規制以外も金商法の規制対象とする場合には、3つ目の四角に記載のように、暗号資産は、金商法上の有価証券とは性質が異なるため、有価証券とは別のものとして金商法に位置づけることが適当ではないかとしております。つまり、金商法上の有価証券は、全て法的に保護された権利を表章すること(権利性)及び事業等の遂行により生じた収益の配当や財産の分配などを伴うこと(収益分配性)を満たすものとなっております。これに対して暗号資産は、基本的には何らかの法的な権利を表章するものではなく、また、収益の配当や残有財産の分配等は行われないといったものでございまして、その性質が本質的に異なっているのではないかと考えております。
7ページ目は、御参考までに、金商法上の有価証券を整理したものでございます。
8ページです。暗号資産を金商法の規制対象とする場合に、資金決済法における暗号資産の取扱いをどうするかといった論点についてです。下の表にように、金商法と資金決済法を見比べますと、金商法に基づく金融商品取引業に関する規制内容は、資金決済法に基づく暗号資産交換業に関する規制に相当する規制がおおむね整備されている状況にあります。
暗号資産を金商法の規制対象とする場合に、こうした資金決済法の規定を存置しますと、二重規制となり、規制の複雑化あるいは事業者の負担が生じるおそれがあるため、基本的に金商法のみで規制することが適当ではないかとしております。
なお、現状、資金決済法で規制されている暗号資産が投資目的で多く取引されておりますように、金商法で規制することとしたとしても、決済目的での利用が制限されるものではないと考えております。決済目的の利用者にとっても、金商法で利用者保護のための規制やエンフォースメントが強化されることによって、より安心して取引を行うための環境整備となるのではないかと考えられます。
9ページです。金商法で規制対象とする暗号資産の範囲をどうするかという論点です。資金決済法では暗号資産を、点線囲みで書いている性質を有する財産的価値と定義しております。つまり、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる。不特定の者を相手方として購入・売却を行うことができる。電子的方法により記録され、電子情報処理組織を用いて移転することができる。本邦通貨等やステーブルコイン、金商法において有価証券として扱われるセキュリティトークンではない。こうした性質を有しております。
真ん中の四角です。金融庁で公表させていただきましたディスカッション・ペーパーでは、規制見直しの対象について次のように記載しております。資金決済法上の暗号資産に該当しない、いわゆるNFTにつきまして、これはNFTと言われるもの全てということではなくて、暗号資産に該当しないものということですけれども、その利用の実態面に着目しますと、何らかの財・サービスが提供されるものが多く、性質は様々であるということで、一律の金融法制の対象とすることには慎重な検討を要するのではないか。また、ステーブルコインは、法定通貨の価値と連動するものでありまして、投資対象として取引されることは現時点において想定しにくいため、規制見直しの対象とする必要性は乏しいのではないかとしております。
一番下の四角です。規制見直しの対象とする暗号資産の範囲につきましては、現行の資金決済法上の暗号資産を前提に検討を進めることが適当ではないかとさせていただいております。
10ページ目は、御参考として、NFTの活用状況についてです。投資商品とは少し異なる利用のされ方が多くされているものと考えております。
次のページから各論に入ります。12ページは、情報提供規制に関するもので、ディスカッション・ペーパーの概要の抜粋でございます。このディスカッション・ペーパーでは、暗号資産の性質に応じた規制とする観点や取引等の実態面にも着目して、2つの分類に区別して検討することが考えられるかとしております。類型①につきましては、資金調達の手段として発行されて、その調達資金が事業活動に利用されるもの、類型②につきましては、それ以外のもの、そういった形で分けているところでございます。
13ページです。こちらもディスカッション・ペーパーの概要でございます。情報開示・提供規制のあり方につきまして、類型①の暗号資産につきましては、情報提供すべき内容として、暗号資産に関する情報や、暗号資産の関係者の情報、プロジェクトに関する情報、リスクに関する情報などが考えられるかとしております。こうした情報を最も正確に開示・提供できる者につきましては、当該暗号資産の発行により資金調達をする者であるため、当該者に対して投資家との情報の非対称性を解消するための規制を設けることが考えられるのではないかとしております。また、類型②の暗号資産につきましては、その暗号資産を取り扱う交換業者に対して、暗号資産に関する情報や価格変動に重要な影響を与える可能性のある情報の提供を求めることが考えられるかとしております。
14ページです。情報提供規制の基本的な方向性についてです。資金調達を行い、事業活動を行う発行者が存在する暗号資産につきましては、発行者と投資者間の情報の非対称性を解消する観点から、発行者が資金調達を行うに際して情報提供を行う義務を設けることが適当ではないか。一方で、発行者が存在する暗号資産であっても、発行者の資金調達を伴わず暗号資産交換業者が独自に取り扱う場合や、特定の発行者がいない、または想定しにくい暗号資産を暗号資産交換業者が取り扱う場合につきましては、暗号資産交換業者に対して投資家に情報提供を行う義務を課すことが適当ではないかとしております。
そして、これらの基本的な考え方の下で規制の詳細を検討していく上では、おのおのの暗号資産について、発行者が存在し、または想定されるか否かが重要になってくるものと考えております。その点につきまして、例えば中央集権的な権能、これは暗号資産の生成やプログラムの変更等について独自の判断で実施できる権限などですが、そうした権限を有している者を発行者と位置づけることなどが考えられるのではないかということで、どのような点に着目して発行者の有無を判断することが考えられるかとしております。
その他、ディスカッション・ペーパーでは、分散化の進行によりまして暗号資産の性質が類型①から類型②へ移行し得ることも念頭に置く必要。情報提供の内容の正確性の担保につきましては、現時点において監査法人による監査等を義務づけるということは現実的ではなく、暗号資産交換業者や自主規制機関により一定の確認を行うことも選択肢。また、暗号資産交換業者による情報提供については公開情報に頼らざるを得ないといったことや、同じ暗号資産を扱う交換業者が多数あり得ること等を考慮する必要といった指摘をしております。それら以外を含めまして、どのような点に留意する必要があるかとさせていただいております。
15ページは、現行の資金決済法と金商法の開示規制に関する比較でございます。御参照いただければと思います。
16ページは、御参考までに時価総額上位5位の暗号資産の概要を整理しております。
17ページは、国内でIEOされた暗号資産の資金調達額上位3銘柄の概要をまとめておりますので、御参照いただければと思います。
次のページから業規制についてです。19ページを御覧ください。業規制のあり方についてのディスカッション・ペーパーの記載でございます。検討の方向性といたしまして、現行法上、自主規制に委ねているものの中には、金商法では法令レベルのものがあるということで、そうしたことについて検討が必要ではないか。また、無登録業者による違法な勧誘を抑止するために、より実効的かつ厳格な規制の枠組みが必要ではないか。暗号資産を投資対象とする投資運用行為や投資助言行為について規制対象とすることが適当ではないかといった記載をしております。
20ページは業規制の基本的な方向性についてです。現行の金商法では、セキュリティトークンについて、その流通性の高さ等に鑑みまして、1項有価証券に相当するものと位置づけ、その売買等を業として行う場合には第一種金商業の対象にしております。暗号資産につきましても、セキュリティトークンと同等の流通性があり、また、現在、暗号資産交換業者の多くが兼営している(店頭)暗号資産デリバティブ取引については第一種金商業の対象としていることを踏まえますと、暗号資産を金商法の規制対象とする場合には、基本的に第一種金商業に相当する規制を課すことが適当ではないかとしております。
その上で、暗号資産に係る現行法上、金商法では法令レベルで定められている規制が、日本暗号資産等取引業協会の自主規制で義務づけられているものもあり、自主規制と法令との適切な組合せに留意しつつも、公正な取引と利用者保護を図る観点から、普遍性の高い規制については法令レベルに引き上げることを検討すべきではないかとしております。
一方、資金決済法におきましては、暗号資産の不正流出リスクが高い特性等を踏まえた安全管理措置等に関する特別の規制が設けられております。こうした規制につきましては、金商法の規制対象とする場合においても、引き続き同様の規定を整備していく必要があるのではないかとしております。
また、暗号資産の価格変動の大きさ等を踏まえたリスク説明や顧客適合性等に関する取組みや、不正流出リスクに関する取組み等については、現行法でも一定の体制整備が義務付けられ、実務における創意工夫が行われているところでございますけれども、そうした点以外も含めて、投資者保護を図る観点から留意すべきことはあるかとさせていただいております。
21ページは、暗号資産交換業と金商業の主な規制の比較です。御参照いただければと思います。
最後に、市場開設規制についてです。23ページは、市場開設規制のあり方についてのディスカッション・ペーパーの記載でございます。
24ページです。市場開設規制の基本的な方向性についてです。金商法におきましては、有価証券またはデリバティブ取引に関する市場開設規制が設けられております。金商法の規制対象である暗号資産デリバティブ取引については、一部の業者では顧客同士の注文のマッチング(板取引)を行っている業者もありますけれども、金融商品市場とまでは評価される状況にないと考えられるため、金融商品取引所の免許を求めていない状況にございます。
暗号資産(現物)取引につきましては、資金決済法上、市場開設規制はございませんが、暗号資産交換業者の中には、板取引、いわゆる取引所を運営している交換業者も存在しているところでございます。
暗号資産について金商法の規制対象とする場合に、現行の暗号資産の取引所につきまして、市場開設規制の対象とするか否かが論点となります。この点、個々の暗号資産取引所の価格形成機能、これは現行の暗号資産交換業者の取引所でございますけれども、その価格形成機能につきましては、暗号資産の性質上、同一銘柄が海外取引所も含めた多様な取引の場で取引できるなど、個々の取引所の価格形成機能は限定的なものであると考えられるのではないか。多数の当事者を相手方とする集団的な取引の場を提供する以上は、適切な取引管理やシステム整備は必要でありますけれども、金融商品取引所に係る免許制に基づく規制や、金融商品取引業者に係る認可PTSの規制のような厳格な市場開設規制を課す必要性は低いのではないかとしております。
一方で、既存の金融商品取引所が暗号資産を上場することについては、暗号資産交換業者と同様の方式をとる場合には、金融商品取引所がハッキング等による顧客資産流出リスクを負うことになるのではないかということでございます。この場合、市場規模によっては巨額のリスクを金融商品取引所が負うことになりかねず、有価証券またはデリバティブ取引市場の運営に重大な影響が生じかねないため、現時点におきましては金融商品取引所による暗号資産の上場を可能とすることは慎重であるべきと考えられるがどうかとしております。
最後のページは、金商法の市場開設規制についての参考資料でございます。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表、御説明を踏まえて、委員の皆様に御討議をいただきたいと思います。予定の時間が残り約60分ということで時間も限られておりますので、お一人当たり4、5分程度で御発言をいただければと思います。
議論の内容は多岐にわたりますけれども、これまでのプレゼンの内容への御質問のほか、資料5において「何々ではないか」としている点などを中心に、特に重要とお考えの点、あるいは慎重に検討すべきとお考えの点、あるいは深掘りすべき点などについて、要点を絞って御発言をいただきますと幸いです。
御発言を希望される際には、対面で参加されている方におかれましては、机上の名札を縦にしていただき、オンラインで参加されている方におかれましては、オンライン会議システムのチャット上で全員宛てに発言がある旨を御入力いただければと思います。それを確認した上で私が指名させていただきます。なお、発言の順番に関しては前後する可能性がありますので、あらかじめ御了承いただきますようお願いいたします。
前回、大幅に時間を超過しました。委員の皆様におかれましては、お話しになられたいことがいろいろあると思いますけれども、要点を絞って、特に前のほうの方がたくさん時間を使って、後のほうの方に御無理をお願いするということのないように進行に御協力をいただけますと幸いです。
それでは、松尾委員からオンラインで御発言の希望をいただいていますので、松尾委員、お願いします。
【松尾(真)委員】
ありがとうございます。松尾真一郎でございます。まず、本日のコメントの前提を先に申し上げます。情報開示の充実度は、国民の健全な資産形成に資するか否かの重要な判断基準ですので、民間側は、金融庁や証券取引等監視委員会が求める情報を適切に提供できる体制を担保する義務を負うこと、これが大前提かと思います。
コメントは3つあります。第1に、資料3についてです。私自身はワシントンD.C.で技術と規制の議論に関わっていますので、当地の肌感を踏まえて申し上げますと、CLARITY ACTの成熟に関する議論がCLARITY、つまり明確性が実務に落ち切っておらず、関係者が頭を抱えているというのが実際のこちらでの現状です。さらに、CLARITY ACT自体、年内あるいは来年、議会を通過しない可能性が少なからずあるということで、現在のCLARITY ACTのみをベンチマークに据えるべきではなく、必要な参照はしつつも、過度に依存しないことが重要です。
第2に、資料5のサイバー攻撃に関する不正流出リスクに関する取組等についてです。第1回で岩下委員からも御指摘がございましたが、現時点では十分とは言い難い状況です。これまでの個社の創意工夫を否定するものではございませんが、エコシステム全体としてこれまでの取組では不足していることは明確でございます。金融庁の新しい規制の中で新しい枠組みが必要だと思います。本件は、追って議論する機会をぜひ設けていただきたいと思っております。
第3に、情報提供規制について申し上げます。全体として類型①、類型②ともに情報提供規制はかかると認識しておりますが、類型①、類型②の境界あるいは提供されるべき情報というのは常に変化し、高度化することを原則とすべきです。ディスカッション・ペーパーでは、類型①から②への移行の可能性は考慮されていますが、例えばビットコインでフォークが起きたときに、フォークした両方の暗号資産の分類は再審査が必要になるだろうと思いますが、類型②から類型①に再分類されるケースが存在するのに考慮されておらず、検討が尽くされていない論点が残っております。このようにダイナミックに毎日変化する環境の中で、資料5の14ページに記載されたような固定的枠組みというのは機能しないのではないかと危惧しております。
その上で情報提供規制は、類型①にも類型②にもかかる横断的な規制であるほうが望ましいです。手法にスペクトラムがあったとしても、情報提供可能な能力と利益相反を排除した独立性・中立性を備えた単独あるいは複数によるコンソーシアムのような情報提供主体を定義し、金商法の枠組みの中でその情報提供主体を正しく位置づけることが着地可能な解だと考えます。ここで重要なのは、発行者や暗号資産交換業者とは別に、適時適切な情報開示と中立という原則を制度として実装するため、独立・中立なしたいを制度上に創設し明確にするという点です。14ページが私のコメントのメインの対象になりますが、検討のロジックと順番を改めて見直せないかということを提案したいと思っています。
必要な検討の順序は以下のとおりです。まず、金融庁及び証券取引等監視委員会が、規制監督上必要な情報の項目を定義すること。ここでは中立性・独立性が大原則であり、これらの公的な機関の下、利益相反を完全に排除した環境で行われることが原則です。
2つ目に、その情報はどのような主体なら提供可能か。暗号資産交換業者単独では提供不可能と思われる項目も多くあろうと想定されるため、単独の事業者などだけではなく、どのようなグループやコンソーシアムが情報提供主体になり得るかの特定を行います。
3つ目に、情報提供主体が独立性、中立性、利益相反の不存在を保ったまま、また、情報提供能力を保ったまま、持続的な体制を維持できるかの検討を行います。
4つ目に、複数の異なる主体がコンソーシアムを組むことで、単体よりも技術的に効果的となり、金融庁や証券取引等監視委員会の期待に応えられるようになります。持続性の観点では、目的は異なりますが、良い例としては信用情報におけるCICのような組織がありますが、そのような建て付けの組織を設けることで担保可能と考えます。ブロックチェーン上でクジラと呼ばれるような大口の取引主体や、ほかにも不公正取引の兆候があるエンティティについての情報照会というのは、近い性質を有すると考えております。
5つ目に、これらの詳細は、流動的な状況を勘案すると、法律に書き込むのではなく、内閣府令、監督指針、ガイドラインなどで定めることが適当です。こういったことを踏まえると、法案に書かれる枠組みとしては、現在の類型①を詳細に規定することにこだわって議論を複雑化させる必要はありません。発行者の観念についても、規制上の定義を詳細にする必要はなくなります。なぜなら、情報提供規制上の差異がなくなるためです。分類ということであれば、情報提供体制の適格性に応じて分類するということであれば、論理的に閉じた明確な分類になります。
また、14ページにある、現時点において監査法人による監査等は現実的でないという表現について、私は異論があります。監査法人に依頼するのは技術的な話ではなく、独立性と中立性の観点で、必須の要件です。むしろ監査法人のようなところが今後のRegtechのイノベーションも踏まえて技術的能力を高める、あるいは日本のRegtech企業と連携して情報提供主体の中立性のアンカーにならないと、この情報提供規制の議論が論理的に閉じません。開示内容の正確性の担保は、独立性と中立性を有する客観的な第三者によって確認されるべきです。自主規制機関・団体については、その運営体制上、情報提供における利益相反の懸念がないかの確認が必要です。これらのアプローチは、Regtechを含む新たなイノベーションを促進し、Regtechの国内自給率と国益向上に大きく寄与し、Regtechを含むイノベーションの促進と利用者保護の両立に資する思想になります。
なお、成熟の定義、あるいは起こってはいけないこと、その発生を防ぐために必要な情報提供については、BGINにおいてこの秋から辞書、データベースを整備するという議論を開始します。この議論を行う総会は10月15日から17日にワシントンD.C.で行われるのですけれども、これはグローバルかつ国際的な標準化の議論であり、BGINの標準はISO標準にもなり得るということから、事務局並びに本ワーキング・グループの委員各位には少なくとも遠隔での参加をぜひお願いしたいと思っています。
最後に、提案です。情報提供規制の制度設計においては、必要情報の定義、情報提供主体の要件、運用ガバナンスを具体化し、詳細は内閣府令、監督指針、ガイドラインで詰めるというスキームを検討してはいかがでしょうか。併せて事務局には、規制監督上必要と考える情報提供項目の素案のリストアップを今後のワーキング・グループのどこかでしていただけると幸いです。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは続きまして、永沢委員、その後、加藤委員、岩下委員、小川委員、有吉委員、伊藤委員、大槻委員、松井委員、松尾委員という形で御発言をいただきたいと思います。それでは、永沢委員、お願いいたします。
【永沢委員】
発言の機会をいただき、ありがとうございます。まず事務局資料につきまして、意見を述べたいと思います。総論の部分ですが、資料5の7ページまでは賛成いたします。前回もお話ししましたように、現状、適切な規制の枠組みが出来ていない状況であるということは、どなたも異論がないと思います。見直しが必要であり、金商法を適用することについて賛成いたします。金商法が制定される以前の2000年から2005年に、投資サービス法の制定を目指して議論していた頃から、市民グループの活動を始めておりますが、事務局資料にも紹介されているように、当時、まさにこうした場面が想定されていたと記憶しております。したがって、暗号資産へと拡大して金商法を適用していくということは、まさに当時からの想定の範囲であったと私は考えます。ぜひここは進めていただきたいと思います。
次に、総論の中で8ページのところでございますが、私は、ここは反対とまでは申しませんが、態度保留にさせていただきたいと思っております。暗号資産への投資勧誘に対して金商法の規制を課すことは是非とも進めるべきと考えていますが、では、資金決済法を外していいのかどうかについては、私は判断がつきかねるというのが今のスタンスです。というのも、本日、事業者団体からも、暗号資産が実際に決済で使われているというお話がありました。何よりも資金決済法で仮想通貨に対する規制が用意された当時の背景もあります。また、金融庁において資金決済法を所管されている部署と、金商法を所管されている部署が異なるのではないかとも思います。金商法に移ってしまって何か漏れることがあるのではないかということが気になっており、その点を確認させていただきたいという意味で態度保留ということにさせていただきたいと思います。
続きまして、本日は各論的に情報開示や業規制について事務局のほうからいくつかのご提案が出ておりますが、12ページ以下のところについても基本的には賛成です。特に、日本ブロックチェーン協会様から情報開示についてお話をいただきましたが、私はそのお話にはなるほどと思いました。今回の金融庁の提案によれば、類型を2つに分けて規制を考えるということですが、類型①については、市場に提供される情報が限られていますし、アナリストのような専門家がいない市場ですので、普通に一般国民に開かれていいのかどうか、疑問に思います。直近で、日本証券業協会と金融庁が、スタートアップ企業への成長資金の供給の拡大という観点から、未公開株をめぐる勧誘規制の在り方の見直しをされつつありますが、スタートアップ企業の負担を軽減のために、投資家保護のための情報開示を軽減するという点で、必ずしも同一ではないものの、同じような領域の話かなと思って聞いておりました。
類型②につきましては、本日、クジラと呼ばれるような大口保有者の存在について言及がありました。証券取引におけるインサイダーとは異なりますが、クジラと呼ばれる大口保有者の存在に関する情報は市場に開示されるべき情報だと思います。
最後に、資料5の24ページの最後のところですが、暗号資産の上場については、私は慎重であるべきという金融庁のスタンスを支持いたします。繰り返しますけれども、暗号資産は、広く国民に開いていい取引とは言えないと思っています。上場というのは一般に広く公開することになりますので、私は暗号資産の上場には反対という意見を出させていただきます。
雑駁ですけれども、以上になります。ありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。それでは、加藤委員、お願いします。
【加藤委員】
加藤でございます。私からは3点意見、関連して質問もさせていただきます。
最初に、暗号資産の金商法における位置づけについて、特に決済手段としての暗号資産の利用について意見を述べます。資料5の8ページに掲げられておりますとおり、暗号資産に関する規制の根拠が資金決済法から金商法に変わっても、当事者が決済手段として暗号資産を利用することが制約されるわけではないと私も考えます。過去、MMFやMRFなどの投資信託受益権を決済に利用できないかといった試みが理論的にはなされたと記憶しています。ただ、その上で、永沢委員がおっしゃいましたとおり、決済手段に何か特有の規制というものがあるのかということはやはり一度考える必要はあるのかもしれません。
すぐに思い浮かびますのは、犯収法に基づく規制です。現在のトラベルルールの適用範囲を考えますと、仮に暗号資産に関する規制の根拠が資金決済法から金商法に変わっても、現在の暗号資産交換業者にかけられているトラベルルールの適用範囲は変わらないということが前提なのだろうと理解しております。
2番目は、情報提供規制についてです。資料5の13ページで指摘されていますように、取引当事者間に情報の非対称性が存在する場合は、それを解消する手段として情報提供・開示規制を設けることが選択肢となり得ます。
類型①については、情報の非対称性が問題となる当事者間を設定しやすいため、現在の金商法第2章の開示規制がなじみやすいと言えます。一方、類型②については、現在の金商法第2章の開示規制の主な名宛人である発行者に相当する存在を確定しにくいという問題があります。しかし、情報の非対称性の問題が存在しないというわけではない点には留意が必要であるかと思います。
分散化という要素は、先ほど松尾委員の御発言でもありましたが、CLARITY ACTでも重視されています。ただ、分散化の進展と情報の非対称性の問題の関係は、分散化が進展すれば情報の非対称性の問題が緩和されるあるいはなくなるといった単純な関係ではないのだろうと思います。むしろ情報の非対称性の問題の現れ方が変わるため、投資判断にとって重要な情報の内容が変わるということに意味があるのだろうと思います。
その関係で1点、資料4について質問があります。8ページ以下で、類型①と類型②の区別について御丁寧に御説明いただき、ありがとうございました。私の理解ですと、資料4の8ページ以下というのは、いわゆるネイティブトークンを念頭に置いて、その中で類型①に該当するものがどういったものなのかということを検討されているのかと思っております。
一方、資料5の17ページで紹介されておりますとおり、過去、ERC20などに依拠したトークンについても暗号資産として、資金調達に対して情報提供規制・開示規制がかけられておりました。そうしますと、実務の皆さんの感覚としては、ERC20であるとか、さらにそれが発展した仕様に従って発行されるトークンについては、類型①として位置づけても特に支障がないという考えでいいのかということについて興味がありましたので、ぜひお考えを聞かせていただければと思います。
もう一点、情報提供規制について、これも松尾委員の発言とほぼ重なるのですけれども、類型①と類型②が今回の制度整備におけるどの部分に影響があるのかということは、やはり考えておく必要があるかと思いました。
つまり、資金調達をするときの情報開示規制の内容についてだけ意味がある区別なのか、それとも、例えば、現行法の有価証券ですと、第一項有価証券、第二項有価証券というものは業規制にも影響が出てくるわけで、そういった類型①と類型②が規制の全体構造の中でどういった部分に影響すべきなのかということも考えながら制度設計を議論していく必要があるかと思いました。
また、五月雨式で恐縮ですが、資料4の5ページに様々な詐欺・潜脱行為の具体例を挙げていただきまして、その対応として情報開示規制というものにも一定の意味があるのではないかという御提言をいただきました。これは私もそのとおりだと思います。
ただ、この中で、情報開示規制で対応する際には、資金調達の段階での情報開示規制というよりもむしろ、その後の継続的な情報開示規制によって対応したほうが望ましいような詐欺的行為や欺瞞的行為などもあるかと思います。そのため、情報提供規制や開示規制を考える際には、いわゆる継続開示のほうも考えていく必要があるかと思いました。
最後に、業規制のあり方についてです。資料5の20ページで御提案されていますとおり、普遍性の高い規制については法令レベルに引き上げることを検討すべきであると私も考えます。21ページで御紹介いただいております資金決済法に基づく規制というものは、暗号資産の投資対象化が少なくとも現在よりも進展する前に基づくものであり、資金決済法ではうまく対応できないところを自主規制機関に対応していただいていたという側面があると考えるからです。
こういった観点からは、自主規制機関の負担を合理的な範囲に軽減した上で、可能な限り法令レベルに引き上げた上で、改めて自主規制機関と金融庁なり証券取引等監視委員会などと、役割分担を考えていく必要があるかと思います。
次に、資料5の19ページで、今回の御提案というものは、現在の暗号資産交換業者が暗号資産市場において非常に重要な役割を果たしていることを前提としての御提案であるとされています。これは私もそのとおりだと思います。
ただ、本日の実務の皆様の御報告の中では、例えば、資料2の2ページや資料4の8ページで御紹介があったとおり、いわゆるIEOというようなものよりもむしろ、DEXなどを利用した資金調達も増えているという非常に重要な情報提供がありました。そうすると、これはもう既に、将来の実務の進展というよりは、既に進展しているということかと思いますので、この問題にも対応できるような枠組みが必要という気がしました。
長くなって大変恐縮ですが、最後に、資料5の23ページで、暗号資産交換業者が仮に倒産した場合でも、取引の場所はほかに存在するというようなことが書かれております。これはそのとおりだと思います。ただ、現行法の暗号資産交換業者が破綻した場合の取扱いについては、それほど明確になっていないのではないかという気がしております。
例えば、暗号資産交換業者が破綻した場合の口座移管の話や、資産の返還手続の話、さらに言うと、簡単に口座移管と申し上げましても、先ほどの松尾委員の御発言でも少し触れられましたけれども、ハードフォークが行われた場合に、新しく生み出された暗号資産を暗号資産交換業者が取り扱うことは簡単ではないということは既に周知の事実かと思います。つまり、新しい暗号資産、これまで取り扱ったことない暗号資産を別の暗号資産交換業者が簡単に取り扱うことができるわけではないということです。このような問題があると思いますので、破綻した場合の問題ということも現在の暗号資産交換業者に関する規制で十分に対応できているのかということも改めて考えてみる必要があると思います。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。1点御質問がありましたので、簡潔に御回答をお願いできますでしょうか。
【日本ブロックチェーン協会】
日本ブロックチェーン協会の加納です。
御質問のERC20が今回対象かというと、対象になります。特に我々の概念はネイティブトークンかERC20かというのを限定していませんので、ERC20の中での議決権51%と読み替えていただければと思います。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。よろしいですか。
それでは、次に、岩下委員、お願いします。
【岩下委員】
ありがとうございます。今日の新聞にも載っておりましたが、金商法で規制するというのが規定路線であるという前提でお話をさせていただきます。
ビットコインやイーサリアムといったよく知られた暗号資産を規制するのが金商法か資金決済法かで、そんなに変わるように私には見えません。もちろん規制の内容は違いますが、規制当局の実際の対応にはそれほど大きな差はないと私は考えています。ビットコインやイーサリアムの取引について、金商法に移行すれば当局が新たにできるようになることはあまりないと思いますので、これは「決めの問題」に過ぎないと思います。
ただ、今日のお話の中でもIEOの話が出ましたが、この領域には影響があるように思います。昔はICOと呼ばれていました。私は世界的にICOが急拡大した2017年頃から、ICOの様々な事例をかなり詳しく調べておりまして、ホワイトペーパーも随分たくさん読みました。その後もトレースしていますが、大体プロジェクトの七、八割は消えています。
今日たまたま、日本暗号資産ビジネス協会がお示しくださった資料2の5ページに、トークンを活用した企業の資金調達という資料があります。前回に引き続いて再び掲載されたもので、前回はあまり触れないでおこうと思いましたが、今回はさすがに触れなくてはいけないと思いました。今ここに、上からPLTから始まってJOCまで十幾つのトークンが並んでいるわけです。これらのトークンの現在の価格がどうなっているかご存じでしょうか。コモディティ価格と連動したものを除くと、公募価格を上回っているものは1個もありません。ひどいものはマイナス90%、95%と値下がりし、ほぼ無価値になっているのです。
さて、我々はこういうものをこれから金商法の世界に取り込もうと言うのです。業界が主要な事例であるとして挙げた全てが公募価格を下回っているものを、一般国民に資産形成に資する投資対象として勧めていくというのは、私から見ると、正気の沙汰とは思えません。もちろん、日本のマザーズやIPOの市場で公募価格を下回るということはざらにあることですが、中には儲かるものがあるから市場が成立するわけです。ところが、こちらは全滅なのです。
ただ、私が聞くところでは、暗号資産投資家の方々は別にそれを嫌がってはいないのだそうです。なぜかというと、売出しからセカンダリーマーケットに移る時点で、一時的に相場が上がるのです。上がったところで売り抜ければ、その人だけは大きく儲けることができる。こういう仕組みがあったからこそ、ICOは成立しました。IEOも同じです。これは舞台がDEXで行われるようになっても、同じことです。
ミームコインというものがありまして、事務局の資料の中でもあまりよろしくないものとして取り上げられています。しかし、実質的にみんな本質は同じなのです。事業が何かあって、株式に類似した資金調達だと言いますけれども、実際には価格を維持できる仕組みはないので、結局、一時的な値上がりのときに利益を狙うというのが本質です。
ただ、私はこれをあまり批判する気はありません。そういうものだと思っています。これは何に似ているかというと、2021年にゲームストップ事件がありましたが、あのときの議論と非常に似ているような気がします。この種の取引をやっている人たちは、ネット上のSNSなどで集まって、ネタで投資を行うわけです。そして、そのときのノリでわーっと資金が集まり、それに応じて相場が変動します。その変動した相場によって利益を抜ける人は抜く。しかしながら、本質はないですから、いずれ消えてしまいます。
通常の真面目な金融のほかに、そういう、分散金融という表現が正しいかどうかよく分かりませんが、不思議な投資家たちの世界が併存しているわけです。その世界の人たちを金商法の枠に取り込む規制を真面目に議論すること自体、私は違和感を感じます。昔から「ネタにマジレス」などという言葉がありますが、本人たちがネタでノリでやっていることに、しかつめらしい顔をして、これは投資家保護だ、これは適時開示だと言って、いかほどの意味があるのだろうかという疑問があります。
以前からお話をしていることですけれども、暗号資産の規制を考えるにはその本質をよく理解しないといけないと思います。我々は、暗号資産を金商法の規制に入れれば、それを飼い慣らすことができて、いずれは伝統的有価証券や伝統的金融のように制御可能になると錯覚しがちです。けれども、本質的にそれは無理だと私は思います。米国や欧州における規制の動きを見ても、ある程度目に見える範囲は規制しようとしていますが、DeFiやDEXといった世界は放置せざるを得ない、という割り切りがあるようです。我々も、できることは実はあまりないのだと思うのです。
その意味では、伝統的金融とは異なるものとして突き放す対応が必要なのではないかと思います。ましてや、規制当局が関与して、これは良いブロックチェーン、成熟したブロックチェーンで、安心・安全なので、皆さんこれに投資してください、といった方向に進むのは極めてリスクが高いので、やらないほうがいいと思います。
IEOは公営ギャンブルのように、全体としては損失が常態化する仕組みなのですが、一獲千金を狙って投資したいと思う人はいるでしょう。ただ、それはさらなる別の詐欺被害につながりやすい。真っ当な人たちがそういう投機に立ち入らないようにするための隔離対策を取るということが必要なのではないかと考えます。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、小川委員、お願いします。
【小川委員】
御丁寧な御説明、どうもありがとうございました。本日は暗号資産の現物が金商法の規制対象となり得るか、また、有価証券との非類似性について、それに関する情報開示について、少しコメントさせていただければと思います。
本日のテーマ、暗号資産の多くが投資リターンを期待した投資であり、金商法制定時に議論されていた金商法の規制対象とすべき投資性の考えとも非常に整合しているという点、これは一定程度賛同いたします。
ステーブルコインが割安な手数料で即時決済性を有する決済手段として期待されているのに対し、暗号資産は多くの投資家がキャピタルゲイン、すなわち金銭的収益への期待、これをもって投資しているという実態から、そのような整理は一定妥当と考えています。
一方、先ほど御説明がありましたとおり、各種資金源としての決済手段としての機能、資金調達機能など多様な機能について、今後さらに拡大していくと考えています。規制の整備や資金決済法など、他の規制との関係を含めて、横断的に明確にいかに整理していくかが、非常に重要と考えており、今後、議論が必要かと考えています。
金商法対象規制に当たっての有価証券との非類似性の考察についてですが、ビットコインを含む暗号資産は、先ほど御説明がありましたとおり、権利性、収益分配性よりむしろキャピタルゲインを中心とし、発行体、経営結果に基づく配当や利息、それから償還請求権など、こういったところとは大きく異なると考えています。
特に裏づけ資産について、法定通貨を裏づけとするステーブルコインや、金や不動産などコモディティを裏づけとする資産担保型暗号資産、また、スマート・コントラクト等の暗号資産担保型暗号資産、こういったものとビットコイン、イーサリアムは大きく異なり、希少性やネットワークの信頼性を価値の根源とする、従来にはない極めて特殊性を有するものと考えています。
よって、資料5の6ページにございましたように、有価証券とは別の規制対象として金商法に位置づけるということが妥当という意見、これは賛同します。一方で、有価証券とは別にどのような枠組みを設けるのかといった点において特殊性の見極め、理解が必須です。
各種暗号資産の異なる機能、これが何なのかといったところを明確に識別し、その社会に与える重要性、インパクトを十分理解した上で、各種規制、それと開示の十分性について、国としても説明責任を果たしていくということは極めて重要かと考えます。
本日御紹介がありました米国事例のように、一定のリスクアプローチに基づくマチュリティーモデル、こういったところも一定有効かと考えています。ただ、今回、類型①、類型②の区分を設ける制度設計が今後、非常に変化の早いこういったビジネスにおいて実際に機能し得るのかという継続性について、ケイパビリティーについては、また重ねた議論というのは少し必要かと思っています。
最後に、開示についてです。先ほど、非常に特殊性があるということ、また、投資家も従来の株等の投資家とはまた違うといったところもお話がありましたけれども、リスクを明確に識別して、一定リスクをテイクする、そういったモデルに対して適切な意思決定ができるような適時・適正な開示制度、これは極めて議論に値すると考えています。
その中で、開示の十分性、適時性、それから開示の適正性、これをいかに担保していくかという、この3点が重要と考えています。
十分性については、先ほどの各種機能のリスクに応じた発行形態、ブロックチェーンやスマート・コントラクト等技術基盤、発行総量やマイニング、ステーキング発行上限など、供給スケジュール、発行体の情報やガバナンス体制、資金使途、役員報酬、財務情報等々、もしくは、外部のセキュリティ監査の有無、もしくは、コードオープンソースの状況やハッキング対策といったところ、こういったものも幅広く、また大口な保有者がいるといったところも流動性の観点からは極めて重要だと思っています。また、各種ボーダレスに動くということも考えますと、各国各種法規制の動向から受ける影響に関するリスクなども開示上、十分整備していく必要があると考えています。
次に、情報の適正性、十分性について先ほど日本ブロックチェーン協会から御説明がありましたが、実質支配者に関する開示について、非常に興味深くお聞きしていました。過去、連結財務諸表における連結範囲に関する制度設計の議論において、実質支配力の定義については重要な議論がありました。この点、今後極めて注視する点と考えています。
次に、開示の適時性についてですが、暗号資産については、非常に早いスピードで値が動き、ボラティリティーも大きい。投資家の適切な判断に資する開示の適時性に関するルール、これも極めて重要になってくると思っています。
最後に、開示の適切性に関して、開示の信頼性を担保することが今後ますます重要になってくると考えています。先ほど委員の方からもお話がありましたけれども、審査実施主体の独立性、客観性、それから、審査確認手続きの十分性、有効性、適正性といったところ、また、その審査主体自身のガバナンス体制、こういったものをしっかり担保する枠組みが重要かと考えています。
以上になります。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、有吉委員、お願いします。
【有吉委員】
有吉でございます。各団体の皆様と事務局の皆様からの御説明、大変ありがとうございました。
私からは、資料5の事務局説明資料につきまして、コメントすべきと思いますところを順次申し上げさせていただきます。前提として、資料5で、方向性が事務局から示されている内容につきましては基本的に賛成します。
まず、6ページにありますとおり、暗号資産について有価証券とは別の規制対象として金商法に位置づけるという考え方には賛同いたします。暗号資産投資を普及促進していくべきかどうか、これは非常に難しい問題だと思いますが、現実に暗号資産が投資商品として取引をされている実態を踏まえますと、やはり金商法において規制対象にするという発想が適切であると考えます。
ただ、御説明がありましたとおり有価証券とは別の概念にすべきということにも賛同しますが、その際、金や外貨、トレーディングカードなど、世の中にはほかにも価格変動によるリターンを期待して取引されるものは様々存在しているわけでありますので、その中で暗号資産についてだけ金商法によって規制するということを正当化するための理由はしっかり整理しておく必要があると思います。
実態として広く取引されている、投資対象として取引されている、流動性が高い、あるいは取引がしやすい、こういったようなことが正当化要素になり得るかと思いますが、引き続き議論していくべき項目だと思います。
次に、情報提供の規制についてです。14ページで御説明されておりますとおり、暗号資産の分類をどうするか、あるいは、誰を発行者と位置づけるかというのは非常に難しい問題だと感じております。
その中で発行者の位置づけにつきましては、情報を誰が持っているかということに加えて、正しい情報を出す責任を誰に負わせるかという観点を考えますと、事務局説明資料で御説明されているような権能という点にだけ着目するのではなく、実質的に誰が資金調達をしているのかという観点についても取り込んで考えていく必要があるのではないかと思います。
その際、関連する論点としまして、先ほど日本ブロックチェーン協会から非常に詳しい御説明がありましたとおり、形式的にはセカンダリー取引であったとしても、関係者による売出し的な取引については、適切な形で、かつ適切な人から情報提供がなされることが必須だと思いますので、その点も含めて、プライマリーというのか、セカンダリーというのか、それらの中間的な取引を含めた情報提供のあり方を考えていく必要があると思います。
次に、販売に関連する業規制のあり方についてです。先ほど加藤委員からお話がありましたとおり、業規制との関係でも、発行者概念というものがどう影響するかということを十分頭に置いて検討していく必要があると思います。
その際、ここはこういった考え方でよいか事務局にも確認したいところでございますが、既存の暗号資産交換業規制の枠組みと同じように、「発行者」が自己募集的に暗号資産を発行して販売するといった行為についても基本的に業規制の対象にした上で、他の業者に販売を委ねる場合には、「発行者」の行為は業規制の対象にしない。こういう従来の暗号資産交換業規制での発行者による販売と同じような枠組みを金商法に移行することを想定しているかということを確認させていただきたいと思います。
その上で、資料の20ページで御指摘されておりますとおり、暗号資産の販売について、第二種ではなくて第一種金融商品取引業相当の規制を適用すべきであるという考え方に賛同いたします。流通性が高いこともそうだと思いますし、一般投資家を中心に既に千何百万口座という口座が開設されて取引されている状況を見ますと、これは第一種の対象にすべき状況であると思います。
ただ、既に現行法の下でも、暗号資産の証拠金取引は第一種金融商品取引業の対象でございますので、類似の課題は生じているのだと認識しておりますが、第一種金融商品取引業の規制の中で兼業規制については慎重に検討する必要があるのではないかと思います。
暗号資産を投資商品と位置づけたとしても、主にデジタル空間での決済の手段であるという性質に変わりはないわけでございまして、そういった暗号資産を取り扱う業者は、従来の証券会社とはまた違う形でビジネスの展開を既にされていたり、これから御検討されていたりするということが往々にして考えられます。そういった中で、従来型の兼業規制、証券会社を念頭に置いたような兼業規制がイノベーションの促進を著しく阻害するということにならないよう、制度設計を図る必要があると思います。
また、業者に対する行為規制との関係につきましては、前回の御説明、質疑の中で、日本暗号資産等取引業協会の人員体制が日本証券業協会と比べて10分の1程度であるというお話があったと理解をしております。自主規制機関ではあるものの、人的なリソースは非常に限定的な状況であることを踏まえますと、技術的な事項や、既に取り組まれている新規取扱い暗号資産の一次的な審査など、こういった業務を引き続き日本暗号資産等取引業協会に委ねることはあり得るとしても、業者の不適切な行為については、やはり当局においてしっかり指導・処分ができるよう、法令で定めていくことが必須であると考えます。
私からは以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】
弁護士の伊藤でございます。
まずは、各協会の皆様、資金決済の利用実態について本日詳細を御教示いただき、ありがとうございました。思ったより利用されているのだという印象を受けまして、前回申し上げましたとおり、決済インフラの可能性というのにも配慮いただいた制度設計を模索できればと思っております。
その上で、本日の議論は、暗号資産を決済手段としての位置づけから金融商品として新たに位置づけ直すにあたって、深掘りするべき論点を洗い出す場だと私は理解いたしました。資料5を踏まえ、ポイントを絞って2点コメントさせていただき、2点目に関連して1点御質問させていただきます。
1点目は、資料5の9ページ、法規制の適用対象範囲の話です。規制見直しの対象を現行資金決済法上の暗号資産の範囲とすることについては、私も異論はございません。ただ、現行資金決済法上の暗号資産の定義は、決済手段であることを前提として、他の決済手段と区別するような意味合いも踏まえた定義になっておりまして、金融商品として取り扱う場合には、ほかにも考慮すべき要素があるように思います。
具体的には、例えば、資料5の13ページに記載されているとおり、情報提供規制との関係では発行者の有無や資金調達・事業活動の有無が暗号資産の性質として重要な要素になってきますが、これは現行の暗号資産の定義では考慮されていない要素です。また、有価証券と区別する性質として、6ページの中ほどに記載されている、権利性の有無や収益分配性の有無といったことも、現在の定義上は考慮されていないけれども重要な要素ではないかと考えています。
例えば、実際に発行者がいて事業活動を行う暗号資産については、それを権利、収益分配とは言わないまでも、投資のインセンティブとして事業活動に関連した付加価値的なものを提供するケースもあろうかと思っています。現在の暗号資産の定義や規制の内容からすると、金商法の有価証券に該当しない限り、これはいかようにも設計し得るという前提になっています。
現在の暗号資産の定義を変えるべきとまでは言いませんが、定義規定というのは、規制の対象範囲を画して、その対象の性質やリスクを分析した上で、それに合った内容の法規制を当てはめるという意味で非常に重要だと思っております。そのため、仮に現行の資金決済法の暗号資産の定義を用いて金融商品としての位置づけをし直すということであれば、先ほど申し上げた6ページの要素や、13ページ記載の発行者の有無といった要素については、保護すべき対象があるのかどうか、保護すべきような権利や付加価値のようなものがあるのかどうか、規制すべきところがあるのかどうか、規制すべきところがあるのであれば、どのような形で反映していくのかというのは、今後も議論の必要があるのではないかと思っています。以上が1点目です。
2点目は、もう一度13ページを見ていただきまして、情報の非対称性の解消のアプローチについてです。ここについては、他の委員の皆さんがおっしゃっていたことと同種の意見ではありますが、それぞれ説明義務・情報提供義務というのを強化していく方向性自体には異論はございません。ただ、その上で、そうした場合に、投資家が投資判断を行うに当たって、客観的で信頼ができる情報が継続的に提供されるのかどうかという点について議論を深めていかなければいけないと思っています。
この点、冒頭で松尾委員がおっしゃった御意見が大変勉強になりましたが、日本の他の金融市場を見たところ、例えば上場株式であれば、証券取引所が一定の条件を満たしたものについて注意喚起をする制度があり、債券市場であれば、格付会社などが信用リスクを評価するといったような形で、専門性を有する第三者、「独立性」「中立性」というような用語を松尾委員は使っていらっしゃいましたけれども、第三者的な主体が日頃から継続的に情報収集をして、分析をして、それを機動的に提供していくことで市場の信頼が確立されていっているのだと思っています。
翻って、暗号資産を金融商品として位置づけるときに、どういった仕組みを構築できるのか、すべきなのかというところをもう少し考えていければと思っています。要素としては、例えばセキュリティ面の評価、それから、資料3にありました成熟度の評価など、何らかの要素を踏まえた客観的な指標が立てられるのかどうか、その場合、誰の分析、誰の評価であれば市場の信頼を得られるかといったことは、今後の議論の対象だと思っています。
これに関連しまして1点、どなたかもし御存じであればお伺いしたいのですが、国内あるいは海外において、格付機関のような何か第三者が暗号資産を評価するような仕組みというのはあるのかないのか、あるとしたらどのようなものなのかを、不勉強で恐縮ですが、教えていただけますとありがたいです。
以上でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。今の最後の点については、もしよろしければ、どなたか。確立した例えば格付制度ですとか、あるいは第三者評価機関のようなものが存在して、ある程度信頼感を持って活動しているというようなことは御存じでしょうか。
【松尾(真)委員】
松尾でございます。よろしいでしょうか。
【森下座長】
お願いします。
【松尾(真)委員】
まさにそこが焦点でして、暗号資産そのものは、ビットコインであるとかの格付をされているところ、あるいは、ホワイトペーパーを見て評価されているところは過去ございますが、一方で、今回論点になるようなある種の客観性やピアレビューも含めた、中立性も含めた基準そのものがまず議論されていないので、どういう基準において格付をするのかということも、すぐに答えは出ないかもしれませんけれども、そういう視点をまず持つことが理由で、そこまでグローバルに見て、あるいは国際的に見て中立です、これがある種の物差しになっていますというのは、今のところないと認識しております。
【森下座長】
ありがとうございました。よろしいですか。どうぞ。
【日本暗号資産等取引業協会】
日本暗号資産等取引業協会でございます。
今、松尾委員がおっしゃったとおり、全く同じ認識でございます。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、松井委員が12時に御退室されるということですので、松井委員、先に。
【松井委員】
ありがとうございます。それでは、よろしくお願いいたします。ここで、日本ブロックチェーン協会の議論を参考にしながら、資料5の14ページ及び24ページについて意見を述べたいと思います。
実は冒頭に御発言があった松尾委員とかなりかぶった意見ではないかと個人的には思っておりますが、今回、14ページの類型①というのは、資金調達を行い事業活動を行う発行者という定義と、暗号資産の生成やプログラム変更等について独自の判断で実施できる者である発行者という定義の2種類を含んでいるという書きぶりになっていると考えました。
しかし、開示については、今申し上げた類型①の後半のほうについては、既に流通しているものを暗号資産交換業者が取り扱うこととした場合には、暗号資産交換業者が開示をすればよいという整理になっているということでございます。
日本ブロックチェーン協会の発表によって、特にこの分散が足りていないコインについて、コントローラーが全体の配分を変えるようなことがあったとしても、そういった点について現状、セカンダリーで暗号資産交換業者自身がそういった情報を説明できるような体制にはなっていないと理解しました。
資金調達者と仲介者や資金管理者の中立性に係る情報というのは、例えばREITやソーシャルボンドなど、様々な資金調達でどのように扱うか共通に問題となっているのではないかと思いますが、暗号資産においては、発行者や有力な保有者、あるいは広く分布に係る情報というのは、こういった中立性の観点から重要なものではないでしょうか。
そうだとすると、実際にこういった情報を提供できる主体がいない、資金調達者もいないし、暗号資産交換業者もそういった情報を管理できない、しにくいという事実があるとしても、もう少し何か設計について考える余地がないかと感じたところであります。
また、コントローラーがいなくなった後、類型②の状況になった後について、アメリカでは発行開示の免除がなされるという議論が今進んでいるわけですが、暗号資産を買う人との対面的な問題として、なお何かしら提供できる情報というのがある可能性というのはあるかと思っております。
この点、先ほどの分布に関する情報というのは、ここで一度全て手が離れてしまうのだとすると、分散が進んだ後、再度集中が起きるということについてどう対処するのかというのは気になっておりました。実際どのような場合があるのかと思っておりましたが、先ほど松尾委員が御指摘されましたように、発行後に戻るというイベントというのはあり得るということではないかと感じましたので、類型②から発行者がいる状況に戻るという場合にモニタリングを再開できるとかいうことについてどう対処するか、これも考える必要があると思っております。
それから、20ページ、24ページにつきまして、個々の暗号資産交換業者についても、既に御指摘があったように、業規制としての兼業規制、取引所としての資産を預かっている場合の保護や、あるいは、コインの発行者・顧客との独立性などは確保している必要があると感じました。
今まで既存の取引所や業者の規制のやり方と同じであるかどうかはともかくとして、主要株主や兼業あるいは業務範囲といった点についての規制、あるいは業務管理体制のチェックということが必要な場合というのがあるのであろうと感じております。
監査について、どういうコインを扱っているのかという点についての監査は難しいという論点がありましたけれども、扱っているコインと業者の関係という点については検証ができるかもしれないと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、次に、大槻委員、お願いします。
【大槻委員】
ありがとうございました。初回に欠席しましたので、少し戻ってしまうことも冒頭一言だけ申し上げた上で、今日の各論のところで御意見を申し上げたいと思っていますが。
まず、私がなぜここにいるかということについてですが、「資産運用に関するタスクフォース」に以前参加させていただいておりましたことと、暗号資産について、金融市場の観点から、比較的黎明期から見ていたほうであるという立場でお話をさせていただきたいと思います。
そして、自分の意見を言う前に、前述の格付についてですが、実は、その一環でトライをするチームに数年前にいたことがあるのですが、正直、すごく難しかったです。それは開示が限定的で普通であれば外から見えないことが多かったということで、それに何らかのことがプラスアルファで加えられるのであれば、あり得る選択肢だと私も思っています。ただ、それを公的なところがやるとか協会がやるというのがまた別の観点で難しいかと思いますし、信用格付の会社にいた者としては、本当はデファクト的に民間のところから発生してくるという方が、比較的妥当な形の対応ができるのではないかと感じています。
そこで、全体観として私の考えるところとしては、やや大きな話になってしまいますが、第1に、法改正については国際性をもって議論すべきである。それから、第2点目として、柔軟性を持った法体制にすべきである。そして、第3点目に、どんな市場にしていきたいかということ。これを改めて、このワーキングの議論を踏まえた上で、しっかりと方向性を示した上で、ゆえにこういう法改正になるのですという形を示していくのがよろしいのかと思った次第です。
もちろん、今までも金融審等で議論しているとは了解していますが、今日の議論だけでも様々な論点が出てきたので、それも整理した上で、どういう市場をつくるためにこういう法制にするのであるということを改めて明確にするのがよいのではないかと思った次第です。
各論についてということでお話ししたいと思います。
1点目。国際的な視点と先ほども申し上げましたが、それに、松尾委員からも冒頭ありました。国際的に連携をしないと、株式等ほかの市場に比べても、圧倒的に国際性が高く、壁が低いので、日本だけでこうした緻密な形の法体制をつくったとしても、それによって市場のパワーというかモメンタムが他国に行ってしまうようなことであれば本末転倒ではないかと思いますし、様々な潜脱行為等も含めて国際的に捉えるべきということで、今の連携状況について、別途教えていただければと思っております。それが1点目でございます。
それから、2点目ですけれども、総論から情報提供の部分までについてでございます。金商法に取り込むということについて、全く異論はなく、賛成したいと思います。暗号資産については、投機的で実体がないという声もあるかと思います。それについての御懸念も様々な形で提示されており、そこについても一定程度同意しますが、そもそも投資というものは、必ずしも実体経済と密接に関わる必要があるのかということについて疑問でございまして、個人的には、為替が投機対象になって市場に実体経済が振り回されるほうが、むしろ市場としては望ましくないかもしれないと思います。これは金商法とは別のレイヤーの議論かもしれませんが、そういった意味で、投資の対象としての暗号資産ということがある程度デファクトになっているこの状態においては、御提案のとおり、金商法に取り込んでいくということに賛同します。
ただ、既存の法制度との対象について、資料5の8ページ目、21ページ目に記載していただいていますが、それとの整合性と今後のあり方については、これから深掘りをぜひお願いしたいと思っています。
それから、その一環として情報開示についてということで、区分について、これはアメリカ型もありますし、それから、今回の類型①、類型②については、実務者の方々からもいろいろな意見があると今日も理解したところでございますので、もう少しここについては改めて整理をしていただければと思っています。また、最初のほうにも申し上げましたように、これからエボルビングな業界でありますので、将来の数年後の見直しができるようなより柔軟な体制と、それから法体系と、見直しの仕組みをしっかりと枠組みの中に入れておいてほしいと思っております。
それから、第3点に、投資家保護の観点でございます。ここのところはやはり肝だと思っていまして、情報開示、それから報道、教育ということ、全てのレベルをエンハンスしていくことが必要で、前回もお話があったと聞いていますけれども、詐欺被害の元凶の1つとなっているというのも、結局、市場に不確実な情報が入り交じっていることが要因の一つだと思っております。
それと同時に、今回の法の見直しが、2017年のときのように法改正がお墨つきのような形で理解をされていくというのはよろしくないと思いますので、情報、教育のところについて検討を深めると同時に、その辺りの情報のあり方をしっかりと議論していくべきではないかと思っております。
そして、そこにも関連しますが、投資家自身のリスク選好度について、適合性の原則の義務化というのは、投資家自身の自分のリスク選好度の再認識の機会にもなりますので、これについては徹底していただければと思っています。
最後に、業規制について、方向性については基本的には賛成でございます。先ほど何人かの委員の方からも意見がございましたけれども、自主規制のところについては、マンパワーの件等々も含めて、よりレイヤーを上げていくような、法のほうに飲み込んでいくような形というのが適切なのではないかと思います。
それと、金商法のほうの自己資本規制比率についてということも、取引所については考え得る1つの安全性を担保するということで重要かと思いますし、それと、もう少し市場が成熟してからの話になるかもしれませんが、一定程度の利用者保護という意味では、預金保険の制度ですとか、日本証券業協会でも一定の補償制度がありますので、そういった、投資家が情報の非対称性から逃れられなかったような損失に対する補償制度についても、将来の課題として議論してもいいかと思っております。
それらも全て含めた上で、どのような市場にしていきたいのか、様々なステークホルダーのニーズも踏まえた上での議論をしていければと思っています。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、オンラインで、松尾健一委員、お願いします。
【松尾(健)委員】
松尾健一でございます。ありがとうございます。
まず、私から情報開示規制について1つ申し上げます。こちらは投資家との情報格差を解消するということが目的として挙げられていますが、暗号資産については、価値について何か情報を開示したからといって、正しい価値にたどり着きやすくなるということはあまりないのではないでしょうか。むしろ、ここでの情報開示、情報格差の解消の目的というのは、今日の日本ブロックチェーン協会の御報告が非常に参考になりましたが、詐欺的な行為、不公正な取引を予防する、そういったものを抑止するというところに重点を置いたほうがよいのではないかと感じました。
その意味では、1つの詐欺的な類型としては、調達した資金を目的外に使用しているというような行為があるということですので、これについては、調達した資金を使う権限のある者に継続して使途の状況を開示させて、モニタリングするということが重要かと思います。
もう一つは、一般の投資家とは異なる利害関係を持っている人が暗号資産を発行なり売出しする場合です。その場合、広い意味の一般投資家との利益相反の問題があるのではないかということが示されていたかと思います。こちらもそういった利益相反に伴う不公正な取引の抑止という観点から、発行する者、売出しを行う者に特に開示すべき利害関係がある場合には、それを開示させていくということが重要ではないかと思います。これについては、発行のみならず、証券で言うところの売出しに当たるような場合についても、少なくとも暗号資産の分散度が低い間は、何かしら情報開示義務を課すべきではないかと感じました。
それから、少しずれますけれども、発行価格・売出し価格の公正性を担保するというところでは、海外の例を見ますと、ダッチオークション方式ですとか様々な価格の決定方法が模索されているというところであるのに対し、日本の場合は、相場操縦規制等がやや障害になって、この点の柔軟な方法の開発が難しいというような御意見も出ていたかと思いますので、その辺りについては、ガイドライン等を整備して、柔軟な方法の発見というか、作成の妨げにならないようにしていただきたいという点が1つです。
最後に、業規制ですけれども、こちらは有吉委員がおっしゃったとおりでして、第一種金商業と同等の業規制を課していくということで賛成ですけれども、自主規制と法令レベルでの公的なエンフォースメントの役割分担を考える際に、自主規制機関が日本証券業協会と比べると非常に脆弱であるというところからしますと、公的なエンフォースメントで補完すべき範囲がかなり広くなるのでは、広くすべきであるという有吉委員の御意見に強く賛同いたします。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
予定の時間を超過しておりますけれども、あとまだ何人か御発言いただいていない委員がいらっしゃいますので、若干延長させていただければと思います。
それでは、オンラインから、河野委員、お願いいたします。
【河野委員】
日本消費者協会の河野でございます。御説明ありがとうございました。
専門的知識が十分にあるわけではございませんので、金商法での規制を前提とする各論点についての判断は容易ではないのですが、国として暗号資産やWeb3を成長戦略の中に位置づけ、法律や税制の見直しを進めるのであれば、そうした政策の基盤として、まずは利用者保護に注力すべきだと思っております。関連していくつか見解を申し上げたいと思います。
まず、金融庁から先週末、令和8年度税制改正要望の中で、暗号資産取引に係る課税の見直しを要望項目の一つとするという報道がございました。税率改善が望めるとなると、投資熱は高まるはずです。
資料5の4ページの金融サービス利用者相談室に寄せられている暗号資産に関連する月平均300件以上の相談の大半は、詐欺的な暗号資産投資の勧誘や取引等に係るものとなっていることから、特に個人投資家のデジタル資産についての金融リテラシーの不足や市場の不安定さを補完することに力点を置いた制度を整えることで、混沌の中でトラブルに陥っている現状の改善となることを期待しております。
次に、6ページの、有価証券とは別の規制対象として金商法に位置づけることが適当ではないかには賛同いたします。実態とすると、デジタルデータである暗号資産の特性に応じた効果的な規制の方法を考えていただきたく、今後、説明義務や適合性判断などの規制が課せられるとしても、どの場面で誰がその責務を負うのか、また、税務当局への報告義務の体制はどうつくられるかなど、ルールを整理する際には、実効性と効力を考慮した対策としていただきたいと思っております。
3点目として、事務局からお示しいただいた情報開示・提供規制、それから業規制については、提案の方向性に納得感がございます。現時点で、分類方法ですとか、発行者の確定などについての議論はあるにしても、暗号資産の価値を支える信用を社会的にどう醸成していくか、事業者の皆さんの性善説だけに頼らないような一定の強制力を持った整理が必要だと思っています。
最後に、そうした事情を考えると、金融庁においては、デジタルデータによる資産管理に資するIT分野に知見のある人材の確保や専門的な担当部署が現在あるのか、もしその辺りに不足があるとすると、その設置を早期に検討していただくのもいいのではないかと思ったところです。
私からは以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、河村委員、お願いします。
【河村委員】
ありがとうございます。河村でございます。
1つだけ、資料5の14ページに関連するところになります。金商法の中に入れるといったときに、もちろん投資者保護の視点というのは大切になるわけですけれども、私はやはり、金商法が他の消費者保護法と違うのは、市場メカニズムを通じて公正な価格形成を確保する市場法であるというところであり、これが大切なのだと思っています。
その意味でいうと、有価証券と暗号資産の違いや、あるいは類型①と類型②の違いといったものがあって、それに応じた規制をかけていくとしても、基礎理論としては、何か共通の考え方のようなものがあっていいのではないかと思っています。
その観点からいうと、私は、価格形成力あるいは価値の源泉を支配する力を持っている者が情報開示等をすべきであると思います。例えば株式であれば、それを生み出す株式会社というものがまさに価値の源泉になっているわけでありまして、その株式会社の仕組みは会社法の中で規律されており、上場会社になれば、適時開示や大量保有報告などの規制がかかる中で、株式市場の公正な価格形成というものが確保されているのだろうと思っています。
他方で、暗号資産というのは、それを生み出す仕組み自体を含めて、非常に自由につくることができるわけですから、非常に充実した開示が一層求められていくのだろうと思っています。
暗号資産の価値といった場合には、暗号資産の機能や数量、それからもしプロジェクトと紐づけられているのであれば、そのプロジェクトというものが重要になってくるわけです。そうすると、そういうものが誰か特定の者によって左右されているのであれば、まさにその者が価格形成力、価値の源泉を支配する力を持っているわけですから、その者に情報提供させるということが必要になってくるのだろうと思いますし、仮に機能や数量といったものがきちんとコードによって規律されているのだということになれば、そのコードそれ自体が暗号資産の価値の源泉、仕組みになっていくわけですから、それをきちんと監査して、公開しているものになっているかどうかが大切になっていくのだろうと思っています。
そういう意味で、いろいろと違いがあるとはいえ、価格形成力あるいは価値の源泉を支配する力を持っている者にきちんと規制をかけていくということが大切になっていくと思っています。公正な価格形成の確保という点でいうと、今日お話があったような大口保有者や、あるいはその関係者の取引規制なども重要になってくると考えています。この点に関しては、どうなるか分かりませんが、CLARITY法案を含めた海外の法制というのも参考になる部分があるのではないかと思っております。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
それでは、佐古委員、お願いします。
【佐古委員】
ありがとうございます。私も1回目欠席しましたので、自己紹介を兼ねて。私は暗号技術や認証技術、特にベリファイアビリティ(検証可能にする技術)について研究をしております。
本日は、資料1と2で実情の情報を教えていただいてありがとうございました。感想ですけれども、驚いたことが2つありました。
1つは、資料1の5ページです。暗号資産投資家の8割以上が口座における預かり資産額が10万円未満だということです。ということは、先ほど岩下委員もおっしゃったように、ちょっとスマホの中にお金を入れてかっこいい暗号資産を持ってみようかなというような若い人たちも多く含まれているのではないかと思うと、今回の資料にある暗号資産の投資対象化の進展ということが、本当にそうなのだろうかというところに少し疑問を持っております。
もう一つ驚いたことが、同じく資料1の6ページで、暗号資産が400件近くあるということです。私は授業でビットコインの仕組みを教えているのですけれども、イーサリアムもPoSになって複雑な仕組みになっているところ、この400件の暗号資産は一体どのようなセキュリティメカニズムで、どう信頼できる仕組みで動いているのだろうかということを皆さんが理解して暗号資産を見ているのかという点が不安になりました。
驚いたことの3つ目が、今日ここに来る前ですけれども、地下鉄に乗ったら、暗号資産を買うならここでという広告が大きく出ていまして、これからこの議論をするのだけれどと思いながら、ちょっと複雑な気分で見てまいりました。
ビットコインやイーサリアムなどは本当にメカニズムとしても面白いので、生き残ってほしいと個人的には思っておりますが、ほかの三百幾つもあるものも暗号資産であって、金融庁が投資対象に資するものだというような誤ったメッセージを送ってしまった結果、広告を見て新しい暗号資産をやってみようと思う若者が増えないことを祈って、今後の議論に参加していきたいと思います。
以上です。
【森下座長】
ありがとうございました。
これで委員の皆様から一通り御意見をいただいたかと思います。もう時間が超過をしておりますが、オブザーバーの方から何かございましたら、御発言いただく時間を設けさせていただきたいと思います。超過もしていますので、1団体2分以内ということでお願いしたいと思いますが、御発言を希望される団体はいらっしゃいますか。それでは、お願いします。
【日本暗号資産等取引業協会】
1点だけ、委員から質問いただきました資料1の6ページ目、暗号資産審査確認件数388件と書いてありますが、別の会員からの同じ銘柄を含んでおりまして、今の段階、日本で上場している銘柄は全部で105銘柄となっております。
この点、私のほうから補足させていただきます。
【森下座長】
ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ほかに御発言もないようですので、ここで討議を終了いたしたいと思います。活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。また、時間につきましても御協力いただきまして、ありがとうございました。
本日いただきました御説明や御意見を踏まえ、今後、さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
また、次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
―― 了 ――
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