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金融審議会「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」(第1回) 議事録
日時:
令和7年9月5日(金曜)13時00分~15時00分場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用
地域金融力の強化に関するワーキング・グループ(第1回)
【家森座長】
それでは、定刻になりましたので、ただいまより、地域金融力の強化に関するワーキング・グループの第1回会合を開催いたします。皆様御多忙のところお集まり頂き、誠にありがとうございます。
私は、当ワーキング・グループの座長を務めさせて頂きます神戸大学の家森です。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、当ワーキング・グループについて御説明をいたします。当ワーキング・グループは、資料1にありますとおり、本年6月25日に開催されました金融審議会総会・金融分科会合同会合におきまして、地域における趨勢的な人口減少その他の環境変化の中で、地域金融機関等が地域経済に貢献する役割を十分に発揮できるように、地域金融力の強化に必要な方策について検討を行うことという、大臣からの諮問がなされたことを受けて設置されたものでございます。皆様からの御意見を頂きつつ、幅広い観点から議論を進めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしく御協力をお願いいたします。
次に、会議の運営と議事の公開、そして議事録の取扱いについてお諮りさせて頂きたいと思います。会議は、本日のように、オンライン会議を併用した開催とさせて頂き、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂きたいと思います。また、議事録は、発言者の氏名を記載し作成の上、後日、金融庁のウェブサイトに掲載をさせて頂きたいと考えております。
以上のような取扱いとさせて頂きたいのですけれども、皆様方、御了解頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【家森座長】
ありがとうございます。
それでは次に、事務局よりメンバーの皆様の紹介をお願いいたします。
【横山信用制度参事官】
信用制度参事官の横山です。よろしくお願いいたします。
このたび当ワーキング・グループの委員に御就任頂いた方々を御紹介させて頂きます。資料2のメンバー名簿の順に御紹介させて頂きます。
大庫直樹様です。本日はオンラインでの御参加でございます。
翁百合様です。
小倉義明様です。
神作裕之様です。
河野康子様です。
西原里江様です。
野崎浩成様です。
原恵美様です。本日はオンラインでの御参加でございます。
松井智予様です。
松本憲治様です。
山本眞弓様です。
オブザーバーにつきましては、時間の都合もございますので、メンバー名簿をもって御紹介に代えさせて頂きます。
すみません、音声の関係で、もう一度読み上げをさせて頂きます。大庫直樹様でございます。本日はオンラインでの御参加でございます。
【家森座長】
ありがとうございました。
ここでメディア関係者の方々は御退席をお願いいたします。
(報道関係者退室)
【家森座長】
それでは、議事に移ります。本日は、初めに、事務局より、「地域金融機関による地域活性化の取組と経営環境の変化」について御説明をいたします。続いて、京都大学の森先生より、「人口減少下での日本の地域の将来のすがた」について御発表頂きます。その後、全体について、まとめまして委員の皆様より御意見や御質問を頂くという流れで進めさせて頂きます。
それでは、まずは事務局より御説明をお願いいたします。
【小野銀行第二課長】
銀行第二課長の小野と申します。よろしくお願いいたします。事務局より、地域金融機関による地域活性化の取組と経営環境の変化について御説明させて頂きます。
2ページから、まず、地域活性化の取組です。
3ページを御覧ください。地域金融機関による地域活性化の取組を後押しするため、業務範囲規制を緩和してまいりました。2016年から銀行業高度化等会社について、認可を得れば5%超の出資が可能となっております。さらに2021年には、一定の銀行業高度化等会社につきまして認可基準を緩和し、50%までの出資を認可不要としています。この一定の銀行業高度化等会社には、スライドの右下に列挙されている地域商社、IT・デジタル、人材育成などがあります。現在、数多くの50超の銀行業高度化等会社が設立されており、後で取組事例を幾つか御紹介させて頂きますが、各地で地域活性化に取り組んでおります。
4ページです。地域金融機関による事業者支援です。足元では、コロナ禍からの正常化が進み、物価上昇や人手不足など事業者の経営課題が多様化しております。このため、資金繰り支援にとどまらず、付加価値の高い金融支援を提供することがますます重要になっております。2024年4月、金融庁は監督指針を改正し、地域金融機関に対して、経営改善や事業再生支援への本格的な取組、プッシュ型で早め早めの対応、コンサルティング機能の強化を求めております。
5ページです。M&A支援です。円滑な事業承継や企業の成長手段として、M&Aの重要性が増しております。このため、2024年10月に監督指針の改正を行い、地域金融機関に対してM&A支援に積極的に取り組むよう促し、人材育成や体制整備を求めています。これら監督指針の改正を通じた取組が、人口減少による需要減少や物価高騰、人手不足、後継者不足などの課題に直面している地方経済の下支えにつながると考えております。
6ページです。事業性融資です。不動産担保や経営者保証によらない事業性融資を後押しするための制度、企業価値担保権を創設しておりまして、2026年5月の施行を目指して環境整備を進めております。
7ページです。地域金融機関による地方創生の取組事例です。地域金融機関が設立した地域商社が伝統工芸品を用いた内装品受注を支援している例、子会社を設立し、自治体等と連携してオンデマンド型交通を提供している例、取引先企業の技術力を評価し、ビジネス機会の創出や補助金採択などの伴走支援をしている例、地元の工芸品製造の工程管理にクラウドシステムを導入するなど地域のデジタル・DX化支援をしている例、PPP/PFIの手法を活用し、官民が連携してまちづくりプロジェクトを推進している例など、様々な取組が各地で生まれております。
8ページです。事業再生支援に関するデータです。左から、地域銀行による再生支援先の数、真ん中の中小企業活性化協議会の活用実績、右側の企業再生ファンドへの出資実績、いずれも伸びております。
9ページです。経営者保証ガイドラインの活用実績です。新規融資件数に占める無保証融資の割合は伸び続け、半分以上に達しています。地域の事業者による前向きな経営につながり、地方の活性化に資するものと考えています。
10ページです。2025年8月末に金融庁から公表した金融行政方針の抜粋です。今御説明させて頂いた地域活性化のための地域金融力を発揮していくため、政策を総動員していく旨を記載しております。
11ページから、地域金融機関を取り巻く環境変化です。
12ページを御覧ください。地域の人口動態です。左のグラフですが、オレンジの地方の人口減少の加速は深刻です。この後、森先生からプレゼンを頂きますが、実態はより深刻と考えております。右のグラフですが、企業数も趨勢的に減少しており、地域社会を支える担い手の不足、地域産業の縮小への対応が地域金融機関にとって喫緊の課題です。
13ページです。地域銀行の経営状況です。左のグラフの青い棒グラフは地銀のコア業務純益です。低金利下で低下傾向が続いていましたが、足元、下げ止まり、上昇の兆しが見られます。真ん中ですが、金利環境の変化により、貸出金利も上昇の兆しが見られます。右のグラフですが、地域銀行の自己資本比率は基準を十分上回っており、全体としては損失吸収力も十分と考えております。
14ページです。同様のデータについて信金・信組で見たものです。コア業務純益は2017年以降増加が続いており、貸出金利も上昇の兆しがあり、自己資本比率も全体的に見て十分です。
15ページです。左の表は地域金融機関の環境整備のための施策です。独禁法の特例は青森・みちのく、八十二・長野の合併等で適用されています。2030年11月までの時限措置です。金融機能強化法による資金交付制度は、合併等に際して必要となる費用について、上限30億円の交付が可能です。御覧のとおり多くの地銀等が利用しています。なお、この交付金の申請期限は2026年3月までと迫っております。業務範囲や出資規制の見直しは冒頭触れましたが、デジタル化や地方創生などの多くの高度化等会社が地銀や信金によって設立されております。
右側、地域金融機関数の推移です。枠囲みに1990年3月末に1,000程度あった地域金融機関の数が、平成金融危機を経て大分減り、現在、半分程度になっています。しかしながら、上の折れ線グラフで分かるように、ここ20年間は減り方がかなり鈍化しています。なお、地銀につきましては、この間、20行程度が持株会社形態による経営統合をしており、効果の出ているところもございますので、表面上の数よりは再編・集約が進んでいることに留意が必要です。
16ページです。そうした中、人口減少を背景として、地域金融機関の預金量は停滞しつつあります。グラフは、左が地域銀行、右が協金で、青い棒グラフが個人預金量の増加した銀行・協金数、青い棒グラフが減少している銀行・協金数です。個人預金量が減少している銀行や協金が増加しております。特に協金は、足元で個人預金量が減少している機関数が、預金量が増加している機関数を上回ってきております。このように二極化の兆候が見られます。
17ページです。二極化の続きです。預金量と経費率の相関のグラフを見てください。負の相関関係があり、預金量の少ない地域銀行ほど経費率が高くなる関係が見られます。預金量と株価の相関ですが、預金量が多い地域銀行ほど足元で株価が上昇していることが分かります。
18ページです。非競争分野のコスト上昇です。左上は、システム関連経費に占めるセキュリティ関連経費の割合です。地銀、第二地銀、信金は、特にセキュリティ対策への投資が相対的に小さく、セキュリティ対策にまで手が回っていないことがうかがえます。右の「疑わしい取引」の届出件数は年々増えており、セキュリティ対策に加え、マネロン対策の必要性も増しております。セキュリティ人材につきましては、自前の組織だけで対応できる地域金融機関は僅かです。非競争分野の共通コストは今後も上昇し続けることが予想されますが、いかに必要なコストを確保するか、一部の地域金融機関にとっては大変厳しい状況かと思われます。
19ページです。これも2025年8月末に公表した金融行政方針の抜粋です。地域のための取組に注力するため、今触れたセキュリティ・マネロン対策にとどまらず、リスク管理や内部監査、システムなどの共同化により費用の抑制ができないか議論が必要です。また、金融機能強化法の資本参加制度や資金交付制度の期限延長・拡充について検討が必要と考えております。
20ページです。最後ですが、この後、森先生からプレゼンを頂きますが、その上で御議論頂きたい事項です。よろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。
【家森座長】
どうもありがとうございました。ウェブ参加の方々に音声等に問題が起こっているようでございますが、申し訳ございません。
続きまして、森先生より御説明をお願いいたしたいと思います。森先生、よろしいでしょうか。
【森教授】
森です。それでは、御報告いたします。京都大学経済研究所・経済産業研究所の森知也です。よろしくお願いします。「人口減少下での日本の地域・都市の将来のすがた」ということでお話しします。
2ページです。まず、国が持つべき視点ということで、まず50年、100年先の都市・地域というのを見るということが非常に重要だと思うんですが、よく省庁で話すと、20年先を見せてくれとすごく言われるんですけれども、特に都市というのは一度出来たら簡単にはなくならないので、慣性が働きますので、20年ぐらいだと、もうこれからすぐに、もう50年たったらなくなってしまうようなところも残ってしまうんですね。ですから、将来の拠点性を見抜けない。ですので、まず一旦遠く飛ばして、50年、100年先に飛ばして、その上でバックワードに重要な都市・地域を選んでいくということが非常に重要だと思います。
特に今、ものすごい勢いで人口が減っていまして、地域のトリアージ、都市のトリアージを考えなきゃいけないと考えています。将来的には、先ほどのプレゼンでもそうですし、国の政策でもそうなんですけれども、縮小ということは明示的に出してないわけですね。ですけど、地域経済は確実に縮小していくんです。ですから、どういうふうに縮小していくのかということを具体的に想定して、縮小した先に向かってソフトランディングしていく。そのためにどうしていくのかというのは、政策的には非常に重要だと思います。
3ページです。今、人口減少下で関連性の高い政策が3つあると思っています。1つは地方創生、2つ目は、交通インフラ整備、高速交通網の整備、そして3つ目は高層化を伴う都心再開発です。地方創生というのは、2.0になって特に、総花的で選択しない地方創生が進められている。交通インフラ整備のほうは、これはもう高度成長期以降、一全総から続くものですけれども、地方と東京をつなげて一極集中を是正しよう、地方を活性化しようという方針で今まで来て、これからもその方針で続いていっているものです。3つ目は、2002年の建物の高さ規制・容積率規制の緩和から始まったもので、これは都心の再開発、特に大都市、地方都市でも行われていますけれども、これのことを言っています。これはコンパクト化、東京を含めてですけれども地方拠点の高度化、国際競争力の強化ということだと理解しています。
この3つなんですけれども、基本的には地方を維持していこうという方針で進められていると思いますが、これもやはりもともと想定していた形とはかなり大きく違う結果になってくると思いますので、そこら辺のことも想定して地域金融、地方金融の在り方を考えていくことが大事だと思っています。
4ページです。必要なのは選択と集中だと考えています。総花的に多数の地域を維持するというのは非常に困難で、このまま各地でインフラを整備していっても、住む人がいなくなってゴーストタウン化していく。そうではなくて、持続可能な都市をシステマチックに予測して、その持続可能な都市・地域を中心に地域経済を再編して集約していくということが必要になってくると思います。これが地方創生に関してです。
2つ目の高速交通網の整備。これは今でも地方と東京を結ぶと地方が活性化されると考えられがちですけれども、多くの場合、逆だと思うんです。これはストロー効果といいますけれども、要するに、大都市と小都市をくっつけることによって、小都市が吸い取られるということが起こってきます。これは今までもそうだったんですけれども、今後、総人口、国の人口が減っていく局面ではさらにその傾向が強くなると思われます。
特に人口減少が進むと、地方間あるいは地方と東京の間の輸送というのは、新幹線にしても航空機にしても基本的にマス輸送なんです。これらはマス輸送の需要規模が重要になるわけですけれども、これがなくなっていくということなので、まず、例えば新幹線にしても航空機にしても、今の運行頻度は恐らく最大で、これより下がることがあっても上がることはない。
どういうことが起こるかというと、人口のスケールが減っていくと、技術はどんどんよくなっていって、輸送技術はよくなっていくんですけれども、スケールが得られないので、結局人流のコストというのはどんどん高くなっていくことが起こると思うんですね。そうすると、さらに一極集中が進む。要するに、今まで地方の拠点都市であった福岡とか仙台とか、大阪も含めて、そういった都市の規模を支えているものというのは、今となっては東京へのアクセスが非常に重要だと思うんですけれども、それが今後失われていくという過程に入っていくと思います。
そうすると、では、どこに人は立地するか、企業は立地するかというと、東京だと思うんです。もともと大きかったところに行く。そうすることによって移動する必要がなくなるわけです。一方で物流とか通信というのは、人も不要になってきますので、どんどんよくなっていく。そうすると、東京から全部運べばいいだろうと、そういう形になって、今までよりも一層東京一極集中というのは進んでいくと思うんですね。ですから、例えば今でも中央リニアを造ったり、整備新幹線の拡張をしたりということが進められていくわけですけれども、恐らくもっと適切なのは、拡張ではなく、既存のシステムを集約・高度化していくという方法だと考えています。
5ページです。3つ目の高層化を伴う都心の再開発です。これも今、都心ではものすごく地価も上がっていっているわけですけれども、これもやはり大きなコストとして未来に残っていくと考えています。これから人口減少が進む、それだけでなくて、交通と通信に関しては引き続き便利になっていくと思われます。そうすると何が起こるかというと、集積のメリットを得るためには、今までほど密にぎちぎちにくっついて集積する必要がなくなってくるんですね。
そうすると、何が起こるかというと郊外化が起こるわけです。人口分布が平たくなっていく。そうすると、高層ビルを建ててまで集積する理由はなくなってくるんです。早晩、余ってくるはずです。必要なのは高層化でなくて低層化である。集積するにしても、30階に住むのと31階に住むのは、これは直線距離は近いわけですけれども、コミュニケーションはあんまり取れないわけで、高層化してまで集積するというのは人口が大幅に拡大している局面ではそれもありなんですけれども、これからそうではないだろうと。
それと、今までは危ないところにもどんどん人が住んでいたんですけれども、人口減少してくると、その必要もなくなってくるんですね。ですので、適切なゾーニングをして、安全なところに住むということが可能になってくる。これも今行われてないことなんですけれども、そういった方向で展開していくというのが重要になってくる。あとは、交通網です。これも拡張するのではなくて集約して、例えば自動運転などへ適応していくということが重要になってきます。
6ページです。今までおおよそ結論的なことを言ってきたんですけれども、これから戻って中身を具体的にお話ししていきます。これは社人研の日本の人口の将来推計です。これは中位、低位、高位とありまして、これはそれぞれシナリオによって出生率と死亡率が違うわけですけれども、中位推計というのは2023年にこれが発表された当時は一番最もらしいとされてきたもので、2020年の出生率・死亡率に従っている。御存じのとおり、もう出生率は大幅に下がっておりまして、当時悲観的な設定シナリオだった低位推計のほうがより現実的になっています。これは出生率1.13だったんですけれども、2024年の出生率はもう1.15まで下がっておりまして、こちらのほうが現実的どころかまだそれでも楽観的なぐらいなんです。
なぜ楽観的かというと、この社人研の推計というのは出生率は固定なんです。ですけれども、この出生率がどんどん下がっている。ですので、これすらも実現できない。この下でいくと、2020年からの50年後、2070年になると3分の2ぐらいになるんですけれども、恐らくもう半分ぐらいになる可能性も出てくるということなんです。その勢いで人口が減っていくということを想定しないといけないと思います。
7ページです。これは出生率の2000年以降の変化ですけれども、2015年をピークに加速的に減っています。これも戻る見込みも兆しも全く見えない。これはどんどん下がっていく。
8ページです。足元の人口減少を見ると、2024年1年間で日本に住む日本人は90万人減っています。移民を含めても55万人減っています。要するに、毎年1個の県がなくなっていく勢いで日本の人口が減っている。このままずっと進むと、150年ぐらいしたら日本に住む日本人はいなくなって、250年ほどしたら日本に住む人は誰もいなくなるというぐらいの勢いで人口減少しています。なので、人口減少自体も非常にこれをどう捉えていくのかというのは重要な問題なんですけれども、当然これによって地域も大幅に変化していきます。
9ページです。では、移民を入れればという話が出てきますが、これももうあまり使えないと思います。これは世界的に人口減少している。これは国連が去年発表した出生率の推計なんですけれども、ブルーのグラフが世界の出生率です。これは2050年時点で既に人口置換水準2.1を割る。一番出生率が高いアフリカでも、2090年に人口置換水準を割るという結果になっていまして、今後移民による人口代替というのも見込めない。非常に深刻な状況です。
10ページです。私たちは人口集積としての都市に注目するんですね。具体的には、人口密度が1平方キロ当たり1,000人以上の連続的な地域で総人口が1万人以上というものを都市と呼んでいるんです。人口が集まって住んでいる固まりを都市というふうに定義しています。
11ページです。こういう見方をすると何がいいかというと、秩序が現れてきます。これは都市人口分布と呼ばれるものですけれども、都市の人口と人口に関する順位を対数軸でプロットするとこのように直線になるんです。こういう関係が成り立つことをべき乗則が成り立つといいます。これを使っていくわけですけれども、要するに、都市人口分布というのはこんなふうになっていますので、都市の大小が変化するというパターン、変化のパターンというのは非常に制約されてくるんです。
12ページです。例えば過去50年どういう変化が起こったかというと、これは青が今、オレンジが50年前なんですけれども、要するに、これは時計回りに回転しているわけです。実際これ、べき乗則がどの時点でもおよそ成り立っているんですけれども、そうすると何が違うかというと、切片が変わるか、傾きが変わるかのどちらかなんです。切片は人口が変われば変わります。そのほかのパラメーターが変わると、この分布の傾きが変わってきます。実際、過去に起こったことは、この都市人口分布が時計回りに回ったことです。
これはどういうことを意味しているかというと、横軸は人口順位なので、東京、大阪、名古屋とあるわけです。もともと大きかった都市がより大きくなって、もともと小さかった都市がより小さくなっているということが起こっています。要するに、べき乗則が成り立っている下では、この場合だったら、より大都市のほうにより極化した集中が起こっています。その逆に反時計回りだったら、小都市に向かって分散が起こったという、その二択なんです。過去50年というのは大都市に向かって極化が、集中が起こったということです。非常にパターンがシンプルになってくるわけです。
13ページです。このべき乗則というのがおよそ成り立つという前提で、それを予測モデルに取り入れて、社人研の人口予測も所与にして将来にプロジェクションするということをしています。そうすると、これは全国の都市人口分布なんですけれども、一番上が実際の実績、2020年の実績です。残りの3つは将来、50年先、100年先、150年先となっています。このフィットさせた直線を見るとよく分からないですけれども、一番左の東京、大阪辺りを見て頂くと、特に東京への極化が、東京に対する一極集中が大幅に進んでいるということが分かります。また、都市の数がどんどん減っているというのが分かると思います。
こんなふうにして予測していきます。これは全国の都市人口分布ですが、これ実は入れ子になっておりまして、全国は東京中心の一つの地域システムになっているんですけれども、例えば九州辺りだと福岡中心のミニチュア版があるんです。だから、その辺の九州地域の都市人口分布を見ると、これと同じべき乗則になっているわけです。入れ子になっているという構造があります。ですので、サイズと配置の関係というのはそれほど自由度がないんです。
14ページです。これからの都市の盛衰の要因として考えられる重要なものとして、3つあると考えています。1つ目は当然、人口減少です。これによって分布の接点が下がっていきます。2つ目は、これは過去の50年もそうなんですけれども、物流・通信費用の減少であるということです。過去50年はこれに人流も加わって、輸送費全体、それから通信費用の減少が大きかった。3つ目は、これは人流費用の増大。先ほど申し上げた話です。こういった想定の下で次の50年、100年後に何が起こるのかということを予測しています。
16ページです。これは都市の人口規模が10万人以上のものがどこにありますかという図です。左側が実績で2020年です。10万以上の都市というのは割と全国満遍なく広がっていて、83都市あります。この色分けしているセルというのは、この中で例えば旭川の一番上のところだと、この緑のセルの中に入っている地域というのは、ほかのどの10万規模の都市よりも旭川が一番近いということです。ですから、都市の後背地、圏域と思って頂いて結構です。これが今83あります。
これが2050年になると、68になる。よく見て頂くと、都市と都市の間が広がっているのが分かると思います。ですので、真ん中にある地域というのはどんどん孤立化していきます。
1個前に戻って15ページです。これは100年後です。100年後になると、大体3分の1未満になってきます。そうすると、北海道には5つの10万都市があったのが、札幌だけになる。東北には仙台だけになる。そういうふうになっていく。間がどんどん開いていく。過去50年間が学習データで、それを使って将来に外挿しているわけですけれども、特に東日本というのはもう過去50年から人口減少が急速に進んでいますので、その傾向を捉えています。
17ページです。これは50万都市です。現在は21個あります。これは50万都市の30年先です。今となっては25年先ですけれども、これが3分の2になります。3分の1の50万都市がなくなってしまうというか、小さくなる。これもやはり間が開いていくのが分かると思います。これも間に残された地域はどんどん孤立化していく。
18ページです。これは100年後です。21都市から3分の1未満になってくる。これもう6都市になると、今の100万都市の数よりも小さいということになります。これもやはり間がどんどん開いていくのが分かると思います。
19ページです。これは100万都市です。つまり、今11ありまして、これが30年後、今から20年後になると8都市になる。やや減ってくる。
20ページです。100年後になると、今のトップ4、東京、大阪、名古屋、福岡だけになる。西側に重心が偏っていくんですけれども、こんな感じになっていくわけです。こんなふうに、これはべき乗則ということと過去の変化というのを捉えて、それをそのまま外挿しているんですけれども、今後も輸送・物流はよくなっていくという想定でプロジェクションしているんです。そうすると、大体こんな傾向が出てくる。それは実は経済集積理論というミクロ経済学の理論があるんですけれども、それとも整合する形になっています。
21ページです。結局、大域的には、つまり、国レベルでは何が起こるかというと、より少数のより互いに離れた大都市に集中するということが起こってくるんです。これは輸送費とか通信費用とかが基本的に下がっていくと何が起こるかというと、小都市はどんどん不利になっていくんです。小都市にいるアドバンテージというのは、例えば企業サイドで見ると、まず、デメリットは市場が小さい、需要が小さいということですけれども、アドバンテージというのは、その分競争相手が少ないということなんです。輸送通信費が低くなることは何を意味するかというと、供給範囲がどんどん広がっていくことです、企業の。そうすると、もともと地方にあった小都市のメリットがなくなっていく。要するに、企業はどんどんグローバルな競争にさらされていくことになります。ですので、小都市にいられなくなる。それで東京に行くと、そういうことが起こっています。それが国レベルで起こっている、都市間で起こっている変化です。
22ページです。これは都市間で起こっている変化で、先ほどべき乗則の分布が時計回りに旋回したということの背景にあるメカニズムなんですけれども、では、都市の内側では何が起こっているかというと、これも冒頭で少し申し上げましたけれども、人口分布が平たくなっているんですね。これは人口分布です。企業の分布でも同じです。平たくなっています。都心で下がって、郊外へ流れているということが起こっています。これはコロナ以降の状況を考えて頂くとすごくよく分かると思うんですけれども、通信がよくなって、かつては週5で通っていたのが、今、週2とか週4になる。あとはリモートワークをする。そうすると、一回一回の通勤の時間が長くなっても、より郊外に出て広くて安い家に住むということが、世帯としてはインセンティブとして出てくるわけです。これは企業も一緒で、対面で取引する必要性が下がれば、都心のメリットは下がってくるわけで、そうすると郊外に出ていくということが起こります。
23ページです。これは実際の東京のケースですけれども、左の2つは実績です。1970年と2020年の人口の分布です。カラーがついているところが、私たちが言っている、定義している都市としての東京の領域です。これは非常に鮮明に出ていると思うんですけれども、これはこの間、人口はものすごく大きくなっているんですね。当時の大阪1個分以上東京は大きくなっていて2,000万ぐらいから3,400万ぐらいまで人口が増えています。にもかかわらず、人口分布は平たん化しているのが分かると思います。都心の人口密度も減っています。これはこのまま続くわけで、どんどん便利になっていくと、今までほど密に集まる必要性がどんどんなくなっていくんです。右側は、社人研の低位数計の下で予測した100年後の東京の人口分布です。面積はそれほど変わらないんですけれども、人口分布は平たくなってきます。
24ページです。全部は話せないんですけれども、政策についてちょっと話したいと思います。地方創生2.0、これというのはどういうものかというと、個々の地域・都市というのをコンパクト化して、個々の都市間、地域間で連携して補完することによって地域全体で維持していきましょう、そういう目標で進められている政策だと理解しています。
25ページです。これは立地適正化計画に取り組んでいる市町村のマップです。地方創生1.0のときはコンパクトシティというのがあって、それと地方創生というのはちょっと分かれたものだったんですけれども、今、2.0になってコンパクト・プラス・ネットワークということになって、コンパクト化してそれを連携しようという言い方に変わったわけです。
そのコンパクト化部分をやっているところは日本で大体700ぐらいあるんです。この地図では色がついているところです。そのうちのグレーのところというのは、今私たちが言っている都市人口がゼロ、コンパクト化する対象になっている都市人口がゼロという自治体です。都市人口が正のものはそこそこあって、700のうち566あるんですけれども、これが100年後になると、次の26ページです。
こうなります。この黒のところは2020年以降100年後までの間に都市人口がゼロになるところです。カラーの色がついているところが都市人口がポジティブなところなんですけれども、これが300まで減ってくる。要するに、2分の1未満になってくるわけです。この黒のところというのは、要するに、人口戦略会議が言うところの消滅可能性自治体の私たちバージョンなんです。ブルー、寒色系の色がついているところは、都市人口のシェアがどんどん減っているところで、これはその予備群ということになります。
27ページです。こんなふうにやってみると、大体半数の自治体でコンパクト化した都心が廃墟化する、要するに、住む人がいなくなるということなんです。衰退していくところまで含めると、予備群まで含めると、80%だということです。総花的にやると、こうやって残っていくわけです。開発した都心が残っていくということが起こります。
28ページです。消滅可能性自治体とか持続可能な自治体というのはいろいろな見方ができると思いますけれども、例えば産業構造からも見ることができる。先ほどのように人口集積としての都市を見ると、いろいろなことが芋づる式に分かってくるんです。人口集積という形で都市を定義すると、人口が分かれば、そのほかの都市の性質も芋づる式に分かってくる。その一つが産業構造なんですけれども、規模が決まると、大体どんな産業がそこの都市に立地可能なのかというのはおよそ決まってくるんです。そこにもあまり自由度がない。
ある産業を特定すると、ある規模以上の都市で存在して、立地できて、その規模未満だったら立地できないという、その境界のしきい値の人口が見えてきます。それを例えば生活必需サービスで考えてみる。生活必需サービスを一揃え供給できるような都市を持続可能都市と例えば定義するとしましょう。ここでは書いてないんですけれども、NTTタウンページデータベースを使っていまして、そこで例えばこういう5つをピックアップします。産婦人科がある。葬儀サービスがある。スーパーがある。コンビニがある。クリーニングサービスがある。これを生活必需サービスと呼ぶかどうかについては異論があると思うんですけれども、何でもいいです。この一揃えを供給できる都市というのは、例えば大体3万人ぐらい、2万8,000とかそのぐらいなんですけれども、そうすると、そのしきい値を満たすような都市がどこにあるのかというのは分かっていく。
29ページです。これは今、1,800の市区町村の中で大体半分ぐらいこれを一揃え供給できる都市があります。このカラーの色がついているところ。グレーのところはできない。
30ページです。これが100年後になるとどう変化するかというと、黒いところというのはもう持続可能な都市を含まない市町村です。要するに、これはこのバージョンで言うところの消滅可能性自治体ということになります。これはもう実際に維持しているところというのは、6分の1、5分の1ぐらいになっていきます。こんなふうに持続可能性を検証することもできます。
31ページです。こういったことを通してどこを拠点として地域経済を再編成していくのかというのはやっぱり考えなければいけないです。全て残すというやり方よりも、100年先に残る都市、50年先に残る都市から重視して、そこに向けて逆向きに拠点性の順位づけをする。そこを中心にして地域経済をどう再編していくのかということを考える必要がある。どこを残して、どこを畳んでいくのか、畳むときにどうソフトランディングしていくのかというのが政策としては本当に一番考えなければいけないというところだと思います。
例えばインフラに関して言えば、今、固定グリッドで張り巡らせて、それを維持してきているわけですけれども、これは人口が増えていく局面ではいいんですけれども、減っていく局面では非常にコストがかかるようなっていくんです。ですから、集約していく過程で畳んでいく地域というのは、徐々に自律分散型に変えて、撤収していくということが必要になってくる。それをどうやってやっていくのか。これは生活インフラだけではなくて金融サービスもやっぱり同じだと思います。ですので、何とか全ての地域を維持するようにということよりも、どう集約、縮小していく地域経済に対応していくのかと、そういうことを考える必要があると思います。
32ページです。今日は時間がなくてお話しできませんけれども、高速交通網の整備、とりわけその目玉は中央リニア新幹線なんですけれども、これはものすごいお金がかかるプロジェクトなわけですけれども、これは本当にメリットがあるのか、今日の地域金融の話とは直接関係がないかもしれないですけれども、こういうことも必要で、これは非常に難しいと思っています。
もし時間が残れば後でもう1回戻ってしますけれども、まず、大阪というのは、「のぞみ」を導入して、「のぞみ」が運行頻度を一気に上げた段階で縮小しているんです。要するに、大阪というのは東京に近づき過ぎていて、いわゆるアーバンシャドウという集積の陰に入ってしまっているんですけれども、これはストロー効果で東京にもうがっつり吸われているわけです。
中央リニアが所望のアクセシビリティーを確保できたとしたら、そのストロー効果は「のぞみ」の比じゃないと思います。もっと縮小する。もっと重要なのは、中央リニアを支えるだけの運行頻度を、今の「のぞみ」とかあのレベルで維持するようなことができるのかというと、恐らく無理だと思います。ですので、そういったことも考えて、本当はどういう地域政策を打っていくのが必要なのかというのは考える必要がある。
最後、高層化を伴う都市再開発。これは結局魅力的な都市をつくって、企業や人口の立地を促すということが目的だと思うんですけれども、これも本当にうまくいくのかというのはよく考える必要あると考えています。
33ページです。これは、国交省のウェブサイトにある不動産価格指数のデータから作っています。これは3大都市圏。これは我々の都市ではなくて、いわゆる一般的な都市圏ですけれども、東京圏、大阪圏、名古屋圏。御存じのとおり、大都市の都心での地価はものすごく上がっているんですね。特に2020年以降、ものすごい勢いで上がっています。これは去年までのプレゼンだと2023年までしかなかったのでずっと上がりっ放しだったんですけれども、ずっとずっと下がると言ってきました。実際、名古屋では下落を開始していて、関西圏でも上がり止まっています。もっと細かいデータを持っているんですけれども、何が起こっているかというと、関西圏は軒並み、京都市も大阪市も神戸市ももう上げ止まっています。東京圏に関しては、はっきり上がっているのはもう23区だけです。埼玉、千葉、神奈川はもう上げ止まっていて、次はもう東京23区も止まると思っています。
これはもう上がる必要、上がるわけじゃないわけです。どんどん交通アクセスもよくなっていく。地方間の交通と都市内の交通とは違います。地方間の交通では、これから人流費用がどんどん上がっていって、地方の拠点都市はどんどん難しくなっていくと思うんですけれども、例えば東京の中の内部の交通アクセスはこれから基本的によくなっていくと思うんです。それで、通信もよくなっていくと、今までほど、冒頭で申し上げたように密に集まる必要はなくなってくる。高層化の必要性も下がっていく。タワマンの需要も下がっていく。今みたいに、東京は特にそうですけれども、危ないところにどんどん建っているわけですから、その必要もなくなっていく。そうすると、もう都心で地価が上昇する理由がなくなっていくんです。これは早晩下がっていくし、高層ビルも余っていくと思います。
こういうことも想定して、今進められている政策というのが所望の効果というのはなかなか得難いということを前提にして地域金融というのも展開を考えていくというのが非常に重要かと思います。
以上です。
【家森座長】
森先生、ありがとうございました。会場のマイクの調子が悪いので、今後御発言頂くときは、PCを事務局が持っていって、そのPCのマイクで発言して頂くという対応を取りますので、御了解頂きたいと思います。
それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、委員の皆様に討議を頂きたいと思います。なお、本日は初回の会合ですから、諮問事項や当ワーキング・グループの検討課題を含め、幅広い観点から御意見を頂戴したいと思います。また、御説明に対する御質問がありましたら、併せて御発言頂きたいと思います。
今回は初回なので、もう全員に御発言頂こうと思いまして、初めは当てていこうと思ったんですが、マイクを持って動くのがあれなので、名簿の順番にお願いをしていきたいと思います。申し訳ございませんけれども、そのような順番でお許し頂きたい。まず、大庫委員からになります。今、残りが70分しかなくて、委員が12人いるというと、掛け算して頂くと1人5分ということになろうかと思いますので、ぜひその辺りでお願いしたいと思います。
それでは最初に、大庫委員からお願いいたします。
【大庫委員】
大庫です。事務局の説明も森先生の説明も非常によく分かるもので、もう本当にこうなっていってしまうんだというふうに受け止めた次第です。特に森先生のお話を伺うにつけて、基本的にはあまり自由度がなく、時間の経過とともに都市の数が減って集約していくということになっていくかと思います。そうなると、基本的には、今と同じだけ地域にそれぞれの地域金融機関があるのが本当に望ましいのか、あるいはもっと率直に言えば、それは持続可能なのかというと、少なくともお話を聞く限りにおいては、やっぱりかなり難しい問題があるのかなと思った次第です。
そう考えていくと、今後の考え方として一つやっぱり避けて通れないのは、経営統合ではないのかなと思います。これまで特に直近の5年間ぐらいのスコープで見ていくと、地域統合といっても、まずは同じ地域内の金融機関同士での統合という形で進んでいたかと思いますけれども、むしろ隣県、さらにその周辺まで含めた広域の統合みたいなものをどんなふうに進めていくのかということが非常に大きな問題になってくるのかなと考えます。これは単に経営統合を進めていくことで人口の集中度に対応するということだけではなくて、結局、1つの金融機関の規模が大きくなっていきますので、いろいろな形の企画機能、あるいは支援機能などが充実してくるのではないかと思います。
事前説明のときに事務局より御説明頂いた中で、銀行業高度化等会社の数が増えているという御説明があった一方、私から御質問させて頂いたのは、どこまでそれが十分ビジネスとして成り立っているんですかということでした。どうしても今の多くの数があり中でも十分な規模がない金融機関では、1つの金融機関が新しい業務に費やしていくだけのリソース、これは限界があるかと思います。広域統合が進むということを考え合わせると、それぞれの銀行業高度化等会社がうまくいく確度も高まっていくのではないのかなと思う次第です。ぜひ銀行業務ということだけではなくて、併せて、2021年の業務規制緩和がなされたときの様々な業務がどうなっていくかということをこの会合の中で議論することができたらなと思います。
それからもう一つ、経営統合の中で私が非常に関心があるのは、経営統合することによって幾つか独占的な地域が出てくるわけですが、そこにおける顧客便益というものに関しては随分モニタリングの仕組みなどを導入して、一定期間ということに限りできてきたのかなと思いますが、モニタリング期間が終わった後どうなっていくのかということとか、あるいは独占的な市場で得た利益をどんなふうに処分するのが公正競争条件でフェアネスにつながるのかなどということもぜひ議論をし、広域統合、経営統合をより実りの多いものにできたらいいかなと思っております。
家森先生、私からは以上です。
【家森座長】
大庫先生、どうもありがとうございました。それでは続きまして、翁先生、お願いします。
【翁委員】
それでは、意見を述べさせて頂きます。今日、20ページに2つの項目に分かれていますので、その順番でお話しさせて頂きます。
まず、地域金融機関に求められる役割ということですけれども、本当に今後の日本の成長にとって地域金融力はかつてなく重要になっていると思っております。今直面していることは、生産年齢人口の減少で人手不足がクライシスになっている、一層これが厳しくなっていくということで、特に地域の中小企業、小規模企業にとっては死活問題になっていると思っています。
この状況で何をすべきかといえば、やはり少ない人数でもしっかりアウトプットを上げていく、付加価値、生産性を上げていくということが大事であって、その施策の要はDXと人への投資だと思っております。言い換えれば、中小企業、小規模企業が稼ぐ力を上げて、持続的に賃金を上げていかなければ人は雇えなくなり、企業自体はサステナブルでなくなる。こうしたことを地域金融機関が自らの経営基盤に関わることだと認識して、取引先企業にしっかり寄り添って多面的に支援していく必要があると思っています。
今年の6月に策定された新しい資本主義実行計画においては、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」というのがありまして、そこで地域金融機関の働きかけの重要性が改めて指摘されていると思っています。監督指針は既にM&A支援など踏み込んで書いて頂いていますけれども、ぜひ次の改定では、この人手不足の問題、これに対応するために企業に寄り添って、生産性向上に向けて付加価値の高いコンサルティング機能を地域金融機関が提供しながら、省力化投資などの支援をすることも盛り込んで頂きたいと考えております。そして、それが明確に地域の金融機関の役割であると考えて頂くことが大事だと思っています。
それから、人への投資に関しては、今、森先生のお話にもあったんですけれども、座して見ているわけにもいかず、なかなか難しいんですけれども、少子化のスピードをこれ以上加速させないということも大変、政府だけでなく民間企業としても考えていかなければならない課題になっていると思っております。性別を問わず若い人たちが家庭生活と両立しながら成長できる環境を用意していくということは地域の企業にも求められると思っていまして、そうしないと、地域の縮小均衡がどんどん加速してしまう可能性があると思っています。そういった取組の重要性を周知し、企業で取り組んでいる好事例を金融機関側から企業にシェアするとかそういったことも大事になってきているのではないかなと思っています。
それから、もちろん事業再生支援、これもほかのプレーヤーと協働しながらやっていく。それから高度化等会社などを活用して顧客基盤の拡大などでしっかりとサポートしていくことも地域金融機関の役割として極めて重いと思っております。まさに今後の中小企業経営の先行きを左右するのが地域金融力であると思っていますので、しっかりと役割を果たしてほしいと思っています。また、経営者保証は新規では減ってきているという話がありましたけれども、既存で事業再構築しようとするとこの経営者保証が邪魔をするということもあるので、既存のものについての見直しとかも金融庁のほうからしっかりとサポートして頂きたいと思っています。
2ポツ目の中長期の課題ですが、現状は問題ないということでしたけれども、やっぱり今の森先生のお話のように、人口減少は長期的には極めて深刻な状況で、様々な点で地域金融機関の経営にインパクトを及ぼすものと思っております。人を採れないというような問題も既に直面している金融機関も多いわけですけれども、それだけでなく、やっぱり取引先企業、地域全体を支えていけるかという問題が出てくると思っております。
それから、実は今日の資料にはなかったんですけれども、預金量やOHRについては二極化の兆候が見えてくるというお話があって本当にそのとおりだと思うんですが、さらに気になっているのは金利上昇のもう一つの影響でございます。小規模で地域に資金需要がそれほどない協同組織金融機関については、長い金融緩和が続いている間に長期債券へのポートフォリオがすごく大きくなっているはずだと思っています。こうした金利リスクの顕現化の可能性につきましてもまた御説明を伺えるとありがたいと思っていますし、この辺もウォッチしていく必要があると思っています。
やはり考えるべきは、今後中長期的に地域金融機関がどのようなビジネスモデルで生き残っていくかということだと思っています。もちろん短期的には銀行業高度化等会社などの成功例を金融庁としても横展開して、しっかり地域金融機関がどうやって企業を支えていくかという、そういった預貸だけでないビジネスモデルを展開していくことは地域の企業にとっても地域金融機関にとっても大事だと思っておりますが、本日お話し頂いたように、マネロン、サイバーセキュリティなどのコストの上昇とか、継続的にIT投資が必要になるということを考えると、やっぱりこういったシステムコスト、間接コストを抑えていくためには、共同化、それにさらに踏み込んで統合など、規模をある程度大きくしていくことをやっていかないと立ち行かなくなる可能性もあると思っております。そういう意味で、人口が大きく減少する中で持続可能にしていくためにどのように地域を支えられるか、どのように地域金融機関が稼いでいけるかという視点に立って、統合とかそういったビジネスモデルもしっかりと真剣に考えていくことが極めて重要と思っています。
最後に一言だけ。やっぱり地域金融機関、特に協同組織金融機関のガバナンスについては、非常に課題があると思っております。これについてもここの検討を進めていく上でしっかりとした議論が必要だと思っていますし、金融庁の監督につきましても、特に経営が悪化してきているところについてどういうスタンスで監督強化していくのかについても検討が必要だと思っております。
以上です。
【家森座長】
翁先生、どうもありがとうございました。それでは続きまして、小倉先生お願いいたします。
【小倉委員】
発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。先ほどの森先生の御講演を聞いておりまして、つくづく非常に人口減少の問題は深刻だなと感じた次第です。したがって、マーケットが小さくなる以上は、それに合わせて金融機関も統合をしていかざるを得ないのかなと思った次第です。そういった意味で、これまでどおり金融機関の経営統合後押ししていくような施策を続けるということについては私は賛成します。
もう一つ違う論点として、負債性資金に限ってみますと、いろいろな分析から明らかになっているように非常に需要が弱いと。特に生産年齢人口が減少している地域では、金利が下がっても負債性資金に対する需要がなかなか出てこないという状況があるんですけれども、ちょっと目を転じて、資本性資金のほうに目を転じてみると、ひょっとすると需要を取りこぼしているんじゃないかという疑いを持っております。というのは、最近自然災害とか地政学的なリスクとか関税のリスクとかいろいろなリスクが非常に多くなっておりまして、そういった不確実性が高まっている状況では、金融機関だけに限らず一般の事業会社も、資本バッファーなるものを備えてリスクに備えていく必要が出てきているだろうと思われますというのがまず1点です。
もう1点が、最近の企業成長に必要な投資として注目されているのは、有形資産投資ではなくて無形資産投資のほうであると。つまり、人的資本投資とか、あるいはブランド力を高めるための何らかの工夫とかといったものです。そういったものは実物を伴わないものですから、なかなか負債性資金になじまないという投資になっている。そういった無形資産投資を支える資金調達方法としてより適しているのは資本性資金であると思われるわけなんです。議決権を伴うかどうかは別として資本性資金のほうが適しているとふうに考えられる。そういった形で資本性資金に対するニーズが非常に増大しているという可能性がありますので、地域金融機関におかれましては、そちらのほうの供給能力もしっかりとつけて頂く必要があるんじゃないかなと感じています。
最近ですと、証券業協会とかあるいは投信協会等で自主規制が緩和されて、少し文脈が違うかもしれませんけれども、非上場株式の取引の受皿がだんだん出来つつあるようなそういう情勢でもありますので、それに乗っかると言うとちょっと言い方が悪いですけれども、それに合わせる、踵を合わせる形で、地域金融機関による資本性資金の供給を後押しするような工夫をしてもよろしいんじゃないかなと思ったというところでございます。それをする場合にも、やはりある程度規模がないとなかなかそんなリスクは負えないというところであろうと思いますので、そういった意味でも経営統合は必要なことかなと思っております。
以上です。
【家森座長】
小倉先生、どうもありがとうございました。続きまして、神作先生、お願いいたします。
【神作委員】
神作でございます。発言の機会を与えて頂き、どうもありがとうございます。事務局のプレゼンテーション、それから森先生のお話を伺って、地方には本当にたくさんの課題があって、それを解決していったり、あるいはそれに適切に対応したりしていく、森先生のお言葉を借りると、選択と集中を進めるためには莫大なお金が必要だという印象を受けました。翁先生も指摘されたと思うのですけれども、莫大なお金が必要な場合に、中長期的な資金供給が必要になるのではないかと感じました。御指摘いただいた課題に対応するためには、かなり長い目を必要とし安定的に資金を必要にすると思います。
そうだとすると、小倉先生のお言葉で言えば、資本性の資金(エクイティ)をやはりきちんと利用し、それを適切に活用することが非常に重要なのではないかと思います。これまでも規制緩和がされてきて、銀行業高度化等会社を実際に利用できるようになっておりますけれども、その実態をより詳細に教えて頂くとともに、本当に地域金融機関がエクイティを十分に活用していると言えるのかどうかを検証する必要があるように思いました。企業価値担保権の話もありましたけれども、単に融資を回収するというだけではなくて、融資先・投資先の価値を高めていくという観点からの取組が非常に重要だと思います。
そのこととも関係するのですけれども、そうするとさらに一層難しくなるのが、リスク管理だと思います。資本性の資金とかエクイティに対する投資を行う場合だけでなく、企業価値に着目した融資を行う場合でも同じことだと思いますけれども、リスク管理の高度化がさらに求められることになると思います。
他方で、金融機関は特に遵守すべき法令上の要請が強いわけでありまして、コンプライアンスも大切ですけれども、コンプライアンスに非常に多くの労力を割かれているというような実態がもしあるとすると、コンプライアンスや、あるいはシステム、サイバーセキュリティなど共同化できる部分があるのではないかと感じます。そのような共同化を促進するという方向には私も、合理的であり、賛成したいと思います。
その際の視点というのは、地域金融機関が何をアウトソースできるのか、その線引きといいますか、アウトソースできることと金融機関に残るべき業務とをきちんと整理するために議論する必要があって、そしてアウトソースすることができる業務について外部委託した場合には、アウトソースした場合に特有のリスクが生じ得ると思います。リスク管理の観点からすれば、アウトソースした場合に生じる特有のリスクを適切にコントロールすることが重要になってくると思います。他方で、アウトソースすることができる業務については、アウトソースすることによって効率化するとともに、今度はアウトソースを受けた側がさらに当該業務についての高度化を実現することが重要だと思います。アウトソースや共同化に際しては、効率化と高度化を実現することが重要であり、この両面がセットになって議論されるべきではないかと思います。
次回以降の論点になるのかもしれませんけれども、19ページに指摘されている共同化の環境整備は、今申し上げた効率化と高度化を促進し得るとすれば、非常に有益だと思います。先ほど銀行業高度化等会社の実態について次回以降の本WGで教えて頂ければありがたいということを申し上げましたけれども、資本参加と資金交付についても、これらの実態と、それから検証というのでしょうか、まだ十分に効果が現れる、測定するには時期尚早だという問題はあるかもしれませんけれども、とりあえず現時点でできる検証を行って、教えて頂ければと思います。
簡単ではございますけれども、私からは以上でございます。どうもありがとうございました。
【家森座長】
神作先生、どうもありがとうございました。続いて、河野先生、お願いいたします。
【河野委員】
日本消費者協会の河野でございます。森先生、それから事務局からの御説明、本当にありがとうございました。私の立場からはなかなか詳細について専門的な知識はないのでございますけれども、地方の一都市に住む消費者としては非常に関心の高い問題だと思って、しっかりと勉強してこの議論に参加していきたいと思っております。
それで、私自身は今申し上げたように北関東の人口7万人弱の自治体に住んでおりますけれども、最近ぐっと数が減ったと感じるのは、昔からある商店街の一部店舗とガソリンスタンド、そして銀行の窓口業務でございます。銀行の窓口業務というのはフィンテックの浸透などで業務の効率化が進んでいますので、私にとって必要なサービスは維持されていると自覚しておりますし、生活に困ることはございませんが、先ほどの森先生の地域経済のトリアージという御提案を伺うと、足元は本当に確かなんだろうかととても不安に思うし、それに対して今回のこのワーキングがしっかりと対応して頂きたいと改めて思ったところでございます。
今回の諮問は、地域金融機関等が地域経済に貢献する役割を十分に発揮できるように地域金融力の強化に必要な方策について検討することですけれども、この検討の背景には先ほど森先生から御解説頂きました地方創生2.0の基本構想の実現があるのではないかと受け止めております。私自身も全部、全体、内容は拝読いたしました。地方創生2.0では、我が国はこうありたいと思う姿が幾つも描かれていますけれども、誰がどうやって計画を進めていくのかについては十分に説明がされていません。柱として置かれている5つの政策に共通する課題として、恐らくどれを実現するにも資金調達は避けて通れない視点だと思っておりますので、このワーキングの議論への期待というのはそういった意味でも大きいのではないかと感じているところです。
その上で、最後に事務局から提示されました2つの論点について申し上げたいと思います。1つ目の求められる役割についてなんですけれども、それぞれの地域の課題と可能性について、過去の経験等からそれなりの知見を蓄積していると想定される地域銀行さんが、プロジェクト推進のための資金調達と、それに関わる地域内外の事業者の選定とマッチング機能のハブとなるのではないか、ハブになってほしいとは思っております。
その前提なんですけれども、資料3の7ページに記載されている地域銀行の取組の好事例についての検証が私は必須だと思っています。特に短期か中長期か、また、持続可能か発展性があるのか、また、投資に対して相応のリターンが見込めているのかなど、各プロジェクトに対する目利き力について検証し、経過をフォローアップする仕組みが必要ではないかと思っています。また、環境整備として、この間行われた独禁法特例法の整備、それから資金交付制度の創設、業務範囲、出資規制の見直しなどがどの程度機能したのか、そこに課題は生じているのか、その課題は、当然のことながら、すぐに対処すれば解消するのか、やはり抜本的に見直さないといけないのか、その辺りもぜひ検証して頂ければと思っております。
2点目の経営基盤強化については、私自身に十分な知見がないので具体策は申し上げられないんですけれども、希望はお伝えしたいと思います。このワーキングのミッションは、様々な支援策を弄して地域銀行を助けることではなく、地域のために地域銀行は何ができるのか、何をやらなければいけないのかという視点に立って、地域銀行自身が自らの意思で主体的に行動することで、地域が持つ価値や魅力を再発見し、そこで暮らす人々が安心して働ける場をどうつくっていくのかについて本気で取り組むことが、人口減少、都市消滅という本当に大きな危機への挑戦になるのではないかと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
【家森座長】
河野委員、ありがとうございました。それでは続きまして、西原先生、お願いいたします。
【西原委員】
西原です。このたびはこのような機会を頂きまして、ありがとうございます。資料3の20ページで2つの議論するポイントがございましたけれども、そのうち経営基盤強化に関して、経営基盤を強化するために必要な地域金融機関の経営を取り巻く環境の変化というところについて、申し上げたいと思います。
今回のこのワーキング・グループは、2020年の前回の審議時と異なり、様々な構造的な変化が同時並行的に起きていると思います。人口減、高齢化のみならず、30年ぶりの本格的な金利上昇が起きていますし、また、預金から投資への動き、金融技術の進歩などがございます。
このうち、第1に申し上げたいのが、人口減とか、第一次ベビーブーマーが後期高齢化され、そしてNISA普及によって預金から投資に動いていくということで、預金からその他の金融商品への資金シフトが今後本格的に起きてくる可能性が高いという点です。金融正常化が始まった2年前と比べますと、預金から投資への大きなシフトがまだ起きているわけではありません。個人が持っている資産のうちまだ5割以上は現預金としてそのままあるのですが、ただ、この現預金の中身をよく見てみますと、高利回りの預金へのシフトが急速に起こっているのです。これが近い将来、地域金融機関が取り扱わない金融商品へのシフトを通じてバランスシートから流出していくリスクを、前もって想定して把握しておく必要はあるのではないかと思います。業態的にみると、既に預金が増加しなくなったり、預金が減少を始めたりという業態も出てきていると認識しています。
第2に、金利上昇は金融機関には最終的にはプラスに効いてくると思いますが、その過程において有価証券の含み損の拡大にどの程度耐えられるかという、翁先生も指摘されていました古くて新しい問題があります。インフレ2%、そして潜在成長率1%という政策の目標がありますがこれらが達成されますと、金利3%の世界も見えてくる。こういう世界を想定して、システムとか個別の金融機関の経営を考える準備をしていく必要があるのではないかと思っています。この下で持続可能な経営やシステムを検討し目指していくべきではないでしょうか。
第3に、金融の技術革新でございます。リスク管理の観点はもとより、プラットフォーマーの事業が拡大しており、これも地域金融機関の預金減少のリスクにつながり得ると思います。こうしたリスクの参考事例が、近年のアメリカの銀行システムにあります。アメリカでは2008年から超低金利、量的緩和が始まりましたけれども、15年に利上げ、そして17年に量的引締めに転じました。これにより、預金の利回りが上昇して、さらに預金からMMFなどの高利回りの商品への資金のシフトが起こりました。預金利回り引上げへの耐性とか、取り扱う商品の品ぞろえの観点から、やっぱり預金がリージョナルバンクからマネーセンターバンクにシフトしまして、これがリージョナルバンク再編の引き金になったと考えています。
リージョナルバンクは、預金や顧客を獲得するためにマネーセンターバンク並みのデジタル投資を求められましたし、支店網などコスト削減も進めましたが、22年に再度利上げ局面が始まりますと、金利上昇で国債の含み損拡大、バンクランが起こり、2023年3月にシリコンバレー銀行(SVB)の破綻があったということは記憶に新しいことです。SVBは特異性がありまして、日本の金融機関には関係ない部分もあるんですけれども、やはり金利上昇局面で、地域金融機関の預金コストが上がり、預金流出が業界再編につながったという点は関連性があると思いますので、やっぱりこの分析は日本のこれからのシステムのグランドデザインを考えていく一つの材料となるのではないかと思っております。
そして、資料の中では、株価が上昇する銀行、そして横ばいの銀行ということで二分化の図表がございまして、その格差が拡大している様子が示されていました。今の日本の経済は全体が成長し、株式市場も成長していますので、この下で横ばいというのはシェアがどんどん下がっていることを意味します。市場は先を読むものですが、この状態が続きますと顧客や従業員など必要な事業基盤の維持も難しくなってきますのでそうなる前に望ましいシステムへの移行を促す仕組みを考える必要があるのではないでしょうか。
最後に、経営基盤強化のアプローチでございます。資料では金融機能強化法で7件の経営統合とか合併が実現したと書かれています。この政策を延長・拡充していくということですので、これらの銀行の経営基盤がどれぐらい改善したかを検証する必要があるかと思います。また、こうした公的制度を利用する以外にも、プラットフォーマーに地域金融機関が経営参加をする事例もあります。こうした事例でも、公開資料を用いて、その後それらの金融機関の経営基盤がどう変わっていったのかを示していただけると、地域金融機関がそれぞれ将来設計をしていく上で役に立つ情報になるのではないでしょうか。
【家森座長】
西原先生、どうもありがとうございました。続きまして、野崎先生、お願いいたします。
【野崎委員】
ありがとうございます。森先生の御報告の中で私にとってのキーワードは、より少数の、互いに離れた都市への集中ですかね、これは端的に問題の本質を語っているのかなと考えています。ですので、地域金融というものを都道府県単位で語るような時代はもう終焉を告げつつあると。以前、道州制の議論もありましたけれども、まさに広い地域での地域金融の議論が不可欠かなと考えております。
ただ、現状の問題としては、例えば独禁法の特例法がありますけれども、この本則そのものが問題ではないかと個人的には考えております。もうHH指数で都道府県単位でマーケットを規定するという時代は終わっているんじゃないかと。私から言わせれば、97年の店舗通達の廃止で店舗規制も大分緩和されていますので、そういった意味ではマーケットの範囲というのはより広くあるということです。
地域金融の問題に関しては、今、地域課題、例えば人口減少とかそういった問題もあるんですけれども、それ以前の問題として、今、個人の行動変容とか法人金融の構造変化、これにまず対処しなければ、地域金融の課題というのはまず多分解消し切れないかなと考えております。
具体的には、西原委員からも預金の言及がありましたけれども、個人に関して、恐らく預金量は減っていくだろうなと考えております。異次元緩和から法人、個人ともに預金が急激に増大しました。ただ、この中身を見ますと、固定性預金、いわゆる定期預金は減っています。流動性預金のみが増えている。これを考えますと、まさにこれは待機資金である。今、起きている現象というのは、ネット銀行への預金の移動ということと、それからインフレを経験してインフレが常態化しつつある中で、金融のリターンを預金で確保できるのかという疑問なんですね。ですから、こういったものを考えると、預金が地域の中で減少していく金融機関がより増えるのではないか。ですから、預金の規模の減少というものを前提とした経営というのをこれから考えなければいけない。そうしますと、翁委員からも御指摘あったとおり、これから固定費はどんどん増加していくわけですね。そうすると、固定費を支え切れないような経営規模になってしまう、そういった機関が増えるんじゃないかと考えております。
一方で法人金融に関しましては、金融庁さんのほうで定点観測されていますけれども、まさに3月にデータの報告があって、6月にいわゆる地域金融機関の取引先の法人金融のニーズというのがありましたけれども、まさに金融ニーズから非金融ニーズのほうに変わってきているわけですね。そうすると、それに対処するにはどうしたらいいかということで、銀行法も2回にわたって大きく変わり、監督指針も変わり、その結果として、例えば投資専門子会社も非常に使い勝手がよくなった。ソリューションビークルと言えるような立場になった。しかしながら、そこまで活用されてないというのが私の印象です。ですから、ここの問題点をいま一つつまびらかにしていく必要がある。例えば具体的には、ノウハウの蓄積がないということと、あと、今回は1回目なので詳しくは申し上げませんけれども、VC条項、いわゆる会計上の制約条件もあるので、こういった問題もこのワーキングの中で議論していきたいなと考えております。
もう一歩進んで考えると、先ほど小倉委員、それから神作委員のほうからエクイティ資金というのがありましたけれども、このエクイティ資金というのは何も非上場だけではない。まさに一つの大きな問題は、スモールIPOであったり、いわゆるグロース市場の問題なわけですね。上場企業というと、どちらかというといわゆる大手銀行の問題と捉えられがちなんですけれども、こういったグロース市場のスモールIPOの問題は、まさに地域金融の問題だと考えております。ですから、上場、非上場を問わず、こういったエクイティに関わる問題に関してより地域金融が力をつける必要があるんじゃないかと考えています。
そこで、最後に申し上げたいのが、やはり情報の経済という言葉であります。規模の経済、範囲の経済がありますけれども、私は勝手に情報の経済と呼んでおります。やはり経営資源が限られている、ネットワークが限られているということになりますと、情報力そのものが非常に弱体化してしまう。したがって、こういったソリューションビークルの活用機会は限られると考えておりますので、今後は情報の経済を基としたようなそういった再編があってもいいんじゃないかと考えております。
以上です。
【家森座長】
野崎先生、ありがとうございました。それでは、オンラインの原先生、お願いできますでしょうか。
【原委員】
原でございます。発言の機会を頂きまして、誠にありがとうございます。
最初に事務局から頂いた御説明の内容あるいはその後に頂いた森先生のお話からも明らかなように、人口減少や預金の伸び悩み、あるいはサイバーセキュリティあるいはアンチマネーローンダリング対応の固定費の上昇といったような要因から、地域金融の二極化が見られるということがよく分かりました。一方で、M&Aの支援や人材仲介、事業性融資といった事業支援機能というのが着実に拡大しているということもよく分かりました。
こうした中で事業支援機能を支えるためには、私は金融機関による借手企業の企業活動に関する情報の収集とその活用の基盤形成、あるいはもっと広い意味で言えば、地域金融機関が地域経済のプラットフォームとなるということがさらに重要になるのではないかと思います。こうしたことがM&Aや事業再生の気づき、あるいは地域経済への波及効果の把握にもつながるのではないかと考えます。
このことを、専門が担保法でありますため、そこに引きつけて少し考えてみると、こうした情報集約に有益な担保権の設定という観点があるのではないかということが言えるかと思います。企業価値担保権というのは、まさにそうした観点から評価される担保権ではないかと考えます。この場合、情報集約とか情報収集というのはいわゆる目利き力につながったりだとか、あるいは期中管理の在り方につながるものです。また、経営者保証の慣行の撤廃に向けた取組も、企業活動に関する情報収集の必要性を高める素地となります。こうした取組によって、例えばサプライチェーン全体の取引関係や未活用の売掛債権が可視化されるように考えます。
なお、国際的にも、国際機関が策定しているような担保法関連の文書において、オール・アセット・セキュリティ・インタレストの設定可能性を法制で提供するということが現代的な担保の在り方としてあるべき姿として示されておりますので、企業価値担保権というのは、そうした文書とも理念を共有出来ていると思います。そのため、国際的にもこういった企業価値担保権というのは歓迎されるものだと思っております。
担保の観点から見ると、補足的なことではありますが一言付け加えると、カーボンクレジット、デジタル資産やデータといったような新たな財産への担保の設定の促進も、新たな産業の成長の手助けの役割を地域金融機関が果たすという意味で、今後期待されます。例えばカーボンクレジットの担保は、これを通じて資金が地域の環境投資や雇用にどう還元されているのかというようなことを把握できるという意味で、情報集約という先ほど申し上げた観点からも有益ではないかと思います。
加えて、さらに補足的なことを一言申し上げると、担保と大きく関連する信用情報の取得についてです。AIやデータベースのオートメーション化も言われるところですけれども、オートメーションと地域密着のリレーションシップバンキングというのは一見矛盾するようにも見えるわけですが、情報集約の観点からすれば、双方は補完的な関係にあると。自動化が網羅的に進める定量データと、リレバンが把握する地域固有の定性情報を統合することによって、信用判断とか担保価値の評価というのが精緻にできることが期待されます。
こうしたことによって地域金融機関には地域経済のプラットフォームの役割を果たすということと、あるいは先ほど申し上げたような企業価値担保権や新たな財産に担保を設定するというようなことを含めた事業の評価をするということにより、新たな産業の成長の手助けの役割が期待されているのではないかと思っております。
私からは以上です。
【家森座長】
原先生、どうもありがとうございました。それでは続きまして、松井先生、お願いいたします。
【松井委員】
ありがとうございます。それでは、私からも発言をしたいと思います。
諮問では金融機関の役割に着目されておりますけれども、従来から言われておりましたアンバンドリング論を念頭に、機能別に銀行の最適密度について考えるのがよいのではないかと思います。銀行には、預金の受入、決済、貸付の3つの機能があるところ、最適な商圏や規模というのは機能別に異なっているのではないでしょうか。銀行の数というのは、その3つの機能がそれぞれ持っている最適な事業規模の中間を取るような形で制度的に法規制によって数を調整することで歴史的に決定されてきたという経緯があるかと存じます。
決済については、歴史的には明治初期には、銀行が為替業を祖業として業種とか地域別の決済圏ごとに膨大な数が設立されたわけですけれども、政府から多くの資金注入があったにもかかわらず赤字になることも多く、国策によって統合され、現在の形になってきたと理解しております。現在についていえば、技術革新により、決済のためのビジネスインフラ投資がサンクコストになっている面がございまして、合理性という点では、携帯電話など顧客端末機での決済にビジネスの軸足が移っていく形になるかと思います。将来、最適な事業規模というものが地理的に拡大していることを考えて、特にそういった送金のプログラム、あるいは送金指示を受け取ったバックオフィス業務のプロトコルなど、今のうちから共通化していくということにより、長期的な事業の統合など視野を持った事業展開をしていくことが必要かと思っております。
預金を集めるという機能について、戦前は特に国債消化など大きな政策的な目的があったわけですけれども、戦後には資金形成機能が重視され、その機能を果たすためのリテール預金者への対応費用が幸いに地域の発展によって利ざやで確保できるという状況があったのだとは思います。収益を損なうことなく経営をすることはできたけれども、その時点でも、やはり都市銀の資金需要に対してお金を集め、運用結果をまた地方に吐き出すというような地方でのフロント機関としての役割というのが強かったと考えております。したがって、預金の受入についても、やはり窓口を統合するほか、遠隔で案内するなど共通化していくというのが、ビジネスとしては合理的なのであろうと思っております。もちろんオンライン化によって慣れないために非常に使い勝手が悪くなったと不利益を被る方への対応を考えるということはありますが、決済と預金の機能というのは、長期的には大きな単位で実施するということをしないと、インフラコストが維持できなくなるのであろうと思っております。
現在、20行程度グループ化していると伺っておりまして、これは合理的だと思いますけれども、現在、利益率が一息ついて体力に余裕があるというのであれば、将来の縮小が見えているということもあり、今後新規の長期投資を多く行うに当たり、こういった統合の可能性をにらんだ共通化を含め考えていく必要があるであろうと思います。
この2つと違う議論をするのが必要なのが貸付ではないかと思っております。戦後、銀行は商業ベースの金融機関ではなくなった後も、日本では、地域の発展を政策的に重視しており、地場産業とか地元の人口への資本還元について配慮を欠かさずに政策を執行してきたと思っております。森先生の御議論がございましたけれども、日本では人口密度が低い地域であっても、自然災害が多い国土について手入れが必要ですし、一次産業を維持したり、あるいは人が住まなくなった場所は安全保障面で危険であるといった点もあるので、人口減少地域の活力を放棄するわけにいかないという特性があるかと思います。この点、金融機関の規制緩和に関して、現在までも地域への貸付力の強化について様々な施策が展開されてきたわけで、こういったサービス提供の密度を保つ必要があると思っております。
この点、融資ではなくて投資性資金の供給の機会ということも含めて考えるべきだというお話がありました。事業機会が縮小して経済合理性を保った融資が難しくなる可能性はありますけれども、政策的には収益性を度外視する、あるいはリスクを取るべき事項についてお金を入れていく必要というのは十分あるかと思います。長期的にはもしかするとこれは金融行政ではない国土政策になっていくのかもしれませんけれども、こういったものについてビジネスレベルでもできる限り維持していくという議論がある、可能性があるということを考えるべきだと思っております。
まとめますと、政策的な方向性として、都市銀については従来預金保護が重視されてきたわけですけれども、地銀では資金供給に軸足を置いて議論していくということになると思っております。これに応じて銀行で行うべき実務ということですけれども、ビジネスの地域的な広がりが機能ごとに別々に再編されていくことが必要なのであれば、機能別の収益性が認識できるような管理会計の高度化が有益であろうと思っております。銀行内の管理会計の実情について詳しくございませんので的外れかもしれませんけれども、融資からの回収収益と決済手数料及び預金、さらにその先に貸し付けていく利息の手数料収益、このビジネスを切り分けて見られるような会計制度が必要ではないかと思っております。
決済や預金管理についての費用と収益を切り分けると、それに応じて長期のインフラ投資をなるべく手数料ビジネスで賄えるような統合規模とかシステムは何かという議論ができるようになるかと思いますし、また、融資についても、行内調達ではありますけれども、利息がつくようになった預金を調達して融資し、費用及び利息分を上回る回収をするということですので、業務の高度化に資するのではないかと考えております。
私からは以上です。
【家森座長】
松井先生、ありがとうございました。続きまして、松本委員、お願いいたします。
【松本委員】
ありがとうございます。日本商工会議所中小企業振興部長をしております松本でございます。よろしくお願いいたします。
商工会議所は、全国515か所に展開しており、地域の中小企業を会員にしております。人口減少に伴い事業者数も減少しており、私どもも厳しい状況を強く認識をしています。商工会議所が今、力を入れている業務の1つに、成長志向の事業者に向けた経営支援活動があります。地域に元気な企業を一社でも増やしていきたいという思いで業務に従事しております。特に、地方で生まれ、地域に根づいて付加価値を生み出し、地域経済の好循環のベースとなっていくような「地方発・地方拠点」の事業者を一つでも多く増やしたいという思いで事業活動を展開しています。
先ほど来、地方創生というキーワードも出ておりますが、「まち・ひと・しごと」創生という言われ方もされます。我々は、あえて「しごと・ひと・まち」と表現する場合もあります。まず仕事があり、それにより人が集まり、その働く人々が地域で暮らすことでまちができます。魅力ある仕事があれば、若者や女性が都会へ流出せずに、その地域に根を張ろうと思ってくれるはずです。仕事が人を呼び、人がまちをつくる。地方創生の実現に向けては、いろいろな考え方があると思いますが、少なくとも我々はこうした思いで活動をしています。
今回のテーマである地域金融機関についても、商工会議所と様々な場面で連携頂き、事業者支援を実施させてもらっています。大まかに言えば、金融機関の役割はまず融資であり、伴走による経営課題の解決の手助けです。一方これから非常に重要になるのは、支援団体においても今後あらゆるリソースが限られる中、商工会議所も金融機関も、いかに協働し、一緒に取り組んでいくかという点かと思っています。
全国の商工会議所でも様々な連携が行われています。例えば、三重県の四日市商工会議所は、創業支援を他の支援団体と協力して行う取組を長年実施しております。県の信用保証協会や支援機関、自治体、金融機関が座組をつくって、創業者を支援する仕組みです。協働して地域の事業者を育てていくといったような連携が、非常に重要であり、今後ますます精力的に取り組む必要があると考えております。
次に、金融機関自体の経営基盤の強化についてです。総花的にはなりますが、収益基盤の多様化、コスト構造の改革、人材強化、連携・再編、ガバナンスの確立が主な5項目としては挙げられます。中でも我々が金融機関に最も期待するのは、人材の強化に向けた新たな機能の発揮です。これは、金融機関自体だけではなく、地域全体においても、専門性を持った人材が、各地域の支援機関が協働するための、ハブや触媒の機能を果たして頂くことで、地域の活性化につながっていくのではないかと考えております。
併せて、地域活性化に向けた課題としては、地域自体にそもそも人材が少ないということがあるため、人材不足の解消がカギとなります。金融庁におけるREVICなどの取組にもあるように、いかに都心の専門人材を還流させて、その地域で根づかせるかが求められます。金融機関とともに地域全体でこうした取組に力を入れて頂きますと、地域の再活性化につながってくると思っております。
私からは以上です。
【家森座長】
松本委員、ありがとうございました。それでは、山本先生、お願いいたします。
【山本委員】
山本です。一番最後で、最後の割には大したこと言えないんですけれども、森先生の講演を聞かせて頂いてすごく思ったのは、今回の地域金融力とか地域の活性化というときに使っている「地域」という言葉をどういうふうにイメージするのがいいのかというのを考えなければいけないのかなと思いました。普通に私なんかも、今日ここで森先生のお話を聞くまでは、日本全体のそれぞれの思い浮かぶ地域という感じでいたんですけれども、とてもそれではこの先のことを考えるのにふさわしくないんじゃないかなというのを、半分ショックを受けましたし、半分は今後この議論を進めていく中でもそこを常に頭に置いておく必要があるのかなということをまず申し上げたいと思います。
今日森先生のお話をお聞きする前までここでお話ししようと思っていたことは、確かにいわゆる地域を活性化するために地域金融機関が一生懸命何かやれることをやっていこうという方向性自体を別に否定するつもりは全くないんですけれども、銀行はしょせんはお金を預かるのが本来の仕事というか本来の出発点なので、そこを忘れてしまうと何かまずいのかなというのをいろいろな事務局から頂いた資料を見ながら思っていました。
例えば、4ページかなんかに「資金繰り支援にとどまらず、付加価値の高い支援」をするみたいな文言があるんですけれども、付加価値の高い支援って資金繰り支援以外に何をするのか、それって本来の仕事とどう関わるのか、というところをすごく思いました。ここの4ページに同じように、こういうことですというのは、まさしく銀行業務について書いて頂いているのでそうなのかと思ったんですけれども、その次のページに行くとM&Aのコンサルティングとかそういう言葉が出てきますよね。だけど、果たして銀行自身がこんな機能を持つような人材を持っていらっしゃるんですか、そういう人材を銀行自身で育てるんですかとか、いろいろなそういう疑問を思いました。だから、これからこのワーキングで議論するについても、銀行の持つ人材の幅というか、どういうものを持っていけばいいのかということも考えながら議論したほうがいいのかなと思いました。
後ろのほうにちょっとありましたけれども、そもそもサイバーセキュリティとかマネロン対策とか、もっと言えばコンプライアンスの体制構築とか、そういうこと自体についてだって、専門的な人材がいないというようなところがほとんどの中で、M&Aとかそういうところまでコンサルなんかできるのかなというのが正直な感想です。だから、そういう意味で、人材の面も含めて金融機関としてどういうことができるのか。それには今まで委員の方皆さんおっしゃってくださったように、例えば銀行が持っている事業ネットワークみたいなものの情報を提供するとか、あと、資金の提供はもちろんですけれども、早めにいろいろな各企業の状況をキャッチして、早めに支援策を一緒に考えるとか、それから、今、松本さんがおっしゃったように、いろいろな協働する作業を積極的にやっていくとか、そういう形で何かできることを探していくという方向がいいのではないかなと勝手に思っていました。
あと、もしこの点も問題になるようならということなんですけれども、経営者保証のことがちょっと書いてあったので、それもちょっと気になっています。確かに様々な場面で足かせになっているのは十分理解しているんですけれども、ただ、経営者保証がなくていいのかというとそれもなかなか難しくて、さっきどなたかが目利き力とおっしゃったけれども、確かに目利き力がものすごくあれば、経営者保証はなくても安心なのかもしれないけれども、ここの回収の面もおろそかにできないから、そこら辺はもしもこの点も論点になるようであれば、かなり厳密に考える必要があるかなと思ったところです。
1回目の感想です。以上です。
【家森座長】
どうも、山本先生、ありがとうございました。
オブザーバーの方々で御発言の希望があれば、チャットのほうにお書きください。私が最後の発言者として発言している間に書いておいて頂ければと思います。
では、私のほうからもコメントさせて頂きます。1つ目についてです。人口減少や高齢化が進む中で、地域の中小企業は事業承継や新たな成長分野への転換を迫られています。地域金融機関も様々でありますが、特に有力な地域金融機関の役割としては、単なる資金供給にとどまらず、取引先企業の優位性や課題を見極め、それを生かして幅広い非金融的な支援を行って、取引先企業の事業の成長を実現していくことだと思っています。具体的には事業性評価に基づく早期の経営改善や再生支援、脱炭素化やデジタル化への対応支援、事業承継におけるM&A支援、人材マッチング、さらには地域の人材、専門家、行政とのネットワークのハブとなり、全国や世界とつながる窓口になることが求められていると思います。
2番目についてです。これも組織形態や規模は一様になる必要はないと私は思っておりますが、自らの収益モデルを、企業支援を通じて共通価値を創造する事業性評価型へとシフトしていくことは不可欠であろうと思います。そのためには、今日も各先生からもありましたように、職員の人材育成、専門性強化、データやITを活用したモニタリング体制の整備、広域連携、共同化、あるいはさらに進んで経営統合によるなどして経営効率化を進めていくということは不可欠であろうと思います。特に非競争分野でのコスト増については、共同化で効率的に対処する動きが広がるように、政策当局としても積極的に対応して頂きたいと思います。
私は内閣府、特許庁、環境省、金融庁などの事業で地域金融機関のノウハウを向上させる施策のお手伝いをしてきましたが、積極的に取り組む金融機関ばかりではありません。そうした変革に臨む金融機関の経営者の問題、すなわちガバナンスの問題も重要であると思います。悪さをさせないというガバナンスだけでなくて、攻めるほうのガバナンスの点も重要であると思っております。
それから、業務範囲規制の見直しを進められてきていますが、例えば合併銀行の遊休不動産の活用などの規制を見直すようなことで合併や経営統合をより魅力的なものにするような効果も期待できるのではないかという観点で、まだ残っている規制のうち、金融システムに悪影響のないものについて見直していく必要があるのではないかと思っております。いずれにせよ、地域金融機関の変革を政策的に強力に後押しすることが、結果的には地域社会の維持発展につながると考えております。今回のワーキングを通じて地域金融力の強化の具体的な方策を先生方と一緒に議論していきたいと思っておるところでございます。
ありがとうございます。私の委員としての発言は以上でございます。
チャットからお二人希望がありましたので、まず、第二地方銀行協会の方、御発言をお願いいたします。
【第二地方銀行協会】
第二地方銀行協会の会長行を務めております愛媛銀行の矢野でございます。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。
私どもは、地域の課題イコール我々地域の金融機関の課題であると切実に思っておりますし、また、地域社会の課題解決に取り組むキープレーヤーでなければならないとの自覚を持つ必要があるということを認識しております。
私どもは日頃のお客様とのリレーションにおいて、経営者の夢や経営目標、あと、家族のこととか、その他個人的な悩み事などいろいろな話をする中で、何でも相談して頂ける関係性を築いているというところが強みではないかと考えております。その人的ネットワークを駆使しながら、地域、お客様に寄り添った丁寧な事業者支援、基本は売上げとか収益向上に向けた事業性評価による本業支援ではあるんですけれども、ほかに事業承継とか人材紹介などを通じて、少しでも持続可能な地域社会をつくるお手伝いをしていくことが我々金融機関の役割ではないかと考えております。
私ども協会の今年度のテーマは、「地域とともに進化し、共創で未来を築く」でございます。地域金融力の強化と相通ずるテーマを掲げて、金融機関が持続可能性を担保してその役割を十分に発揮していく態勢、経営基盤をしっかりとつくり込んでいく取組を行ってまいりたいと思います。
次回以降も具体的な議論が行われていくと存じますけれども、私どもからも地域金融機関の取組等につきましてまた発信していきたいと存じますので、引き続きよろしくお願いします。
以上でございます。
【家森座長】
どうもありがとうございました。続きまして、地方銀行協会の横浜銀行の方、どうぞよろしくお願いいたします。
【全国地方銀行協会】
地方銀行協会で会長行をしております横浜銀行の小野寺と申します。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。
我々地方銀行を取り巻く環境は、説明にございましたとおり、少子化に伴う人口減少だけではなく、足元では米国の関税措置を契機とした先行きの不透明感、また、金利のある世界での預金獲得競争といったように、非常に課題が重くなっていると感じております。こうした課題を抱えつつ、我々地方銀行は、資金繰り支援にとどまらず、事業承継、事業再生支援や、地方創生に向けた支援といったような様々な課題に取り組んでまいりました。
今回ワーキング・グループを通じまして、こうした課題解決や企業支援の取組を後押し頂けるということでございますので、我々としてもしっかりこれまで以上に地域金融力を発揮できるような規制緩和などにも期待をしているところでございます。また、説明にもございましたけれども、今年度の金融行政方針の中で、共同化というようなキーワードが掲げられておりまして、システムの共同利用の促進は足元様々なコストが上昇する中で、小規模な金融機関のコスト削減につながるものでもございますので、非常にありがたい方針だと考えております。
また、ワーキング・グループにおきましては、2026年3月に申請期限を迎える資金交付制度や資本参加制度の延長・拡充が検討されると理解しております。これまでもこれらの制度によりまして、経営統合等での経営基盤強化を検討している金融機関や、東日本大震災などの災害時に地域を支えようとする金融機関を後押し頂いてきたと考えております。制度の利用については個別行の判断でありますが、業界としても経営の選択肢が増えることにつながるものと認識をしております。
次回以降、これまで述べてきたような論点について議論が深められていくと承知しております。我々もオブザーバーという立場ではございますが、有意義な議論に参加できるよう協力をさせて頂きたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
私からは以上です。
【家森座長】
どうもありがとうございました。ちょうど15時になりました。本当は事務局からも幾つかリプライして頂きたいところではありますけれども、ちゃんとノートに取って宿題として覚えていて頂いていると思いますので、次回以降にそれを反映させて頂くことにさせて頂きたいと思います。
森先生も貴重な御報告をありがとうございました。委員の皆様方も活発に御議論頂きまして、誠にありがとうございました。本日の御意見、御説明を踏まえて今後さらに議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【横山信用制度参事官】
事務局でございます。本日、機器の不具合で御不便、御迷惑をおかけしまして、大変申し訳ございませんでした。
第2回は、10月2日木曜日16時から開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
【家森座長】
それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了いたします。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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