金融審議会「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」(第3回)議事録

  1. 日時:

    令和7年10月28日(火曜)10時00分~12時00分
  2. 場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用
  3. 議題:

    • (1)開会
    • (2)事務局説明
    • (3)ヒアリング
    • (4)討議
    • (5)閉会
  4. 出席者:

    【委員】
    家森信善(座長)、翁百合(座長代理)、大庫直樹、小倉義明、河野康子、西原里江、
    野崎浩成、原恵美、松本憲治、山本眞弓
    【プレゼンター】
    株式会社八十二銀行
    【金融庁】
    岡田政策立案総括官、大城参事官、今野総合政策課長
    石田監督局長、田部参事官、小野銀行第二課長、澤飯協同組織金融室長、和田地域金融モニタリング参事官
    井上企画市場局長、山下参事官、繁本総務課長、横山信用制度参事官、
    守屋信用制度企画室長、本間信用機構企画室長
    【オブザーバー】
    全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、
    財務省、中小企業庁、日本銀行、預金保険機構
  5. 議事録:

    【家森座長】

    まだ定刻まであと1分ほどありますけれども、全員お揃いでございますので、ただいまから地域金融力の強化に関するワーキング・グループの第3回会合を開催いたします。

    皆様、御多忙のところ、お集まり頂き、誠にありがとうございます。

    本日の会合も前回に引き続き、オンライン会議を併用した開催とし、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂いております。

    また、議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させて頂く予定ですので、よろしくお願いいたします。

    メディア関係者の方々はここで御退席をお願いいたします。

    (報道関係者退室)

    【家森座長】

    それでは、ただいまより議事に移ります。本日は、初めに、事務局より「地域金融力の強化に必要な方策(案)(全体像)」、「金融機能強化法等の改正の方向性」、「早期警戒制度」について、資料1から3に基づいて御説明を頂きます。

    続けて、八十二銀行様より、「地域金融力発揮に向けた環境整備下における経営統合の取組」について、資料4を基に御説明頂きます。

    その後、全体について、資料5「御議論頂きたい事項」を基に、まとめて委員の皆様より御意見を頂くという流れで進めていきます。

    また、前回のワーキング・グループでの御意見を踏まえ、このワーキング・グループでどこまでを議論するのかについて、私と事務局との間で調整をさせて頂き、優先的に検討頂きたい論点を資料6として整理させて頂いております。

    本ワーキング・グループには時間的な制約もございますので、事務局より示された整理に沿った議論を進めて頂ければと思っております。

    それでは、まず、事務局より資料1から3について、御説明をお願いいたします。

    【今野総合政策課長】

    総合政策課長の今野でございます。それでは、まず、私からお手元の資料1に沿って御説明をさせて頂きます。資料1「地域金融力の強化に必要な方策(案)(全体像)」を御覧頂ければと思います。

    1ページ目、標題、「地域経済を支える地域金融力の強化(考え方)」ということでございます。地域において人口減少・少子高齢化が進行し、地域企業の人手・後継者不足も深刻化しております。こうした課題に対応しつつ、地域経済が発展していくため、地域金融には中小・零細企業を資金繰り支援等で下支えすることにとどまらず、内外のプレイヤーと連携しつつ、中堅企業の研究開発やデジタル化等を含む設備投資、事業買収などを戦略面・ファイナンス面で後押し・成長につなげること、M&A・事業承継や経営人材確保、DX支援、まちづくりへの参画などを通じて地域経済に貢献する力、すなわち地域金融力を発揮していくことが強く期待されております。

    このため、地域金融機関をはじめとする様々なプレイヤーが連携して地域金融力を発揮していくための政策を総動員してまいります。

    地域金融機関は、十分な経営体力・収益基盤を確保し、地域の「要」として地域金融力を発揮していくことが求められますが、その役割を果たしていく上での課題にも直面しております。高度化するサイバー攻撃やマネロンへの対応等を求められ、コストは増大し、高度なシステムや専門人材確保の必要性も高まっています。預金減少に直面する地域金融機関では、中長期的に経営の選択肢が狭まる可能性があります。さらに、大規模な自然災害や新たな感染症のまん延等が生じれば、経営基盤が大きく損なわれます。

    こういった課題を踏まえつつ、地域金融機関が地域社会からの期待に応え続けていくための環境整備にも取り組むことを考えております。

    2ページ目、地域金融力の強化に必要な方策の検討ということで、地域が持続的に発展を目指す中で、地域金融の地域経済に貢献する力(=「地域金融力」)への期待は極めて強いです。

    各地域ではこれまでも数多くの優れた取組が行われておりますが、地域金融機関をはじめとする様々なプレイヤーが連携して地域金融力を発揮していくため、①地域企業の価値向上への貢献・地域課題の解決、②地域金融力発揮のための環境整備、この2つからなる地域金融力強化プランを強力に推進することとしてはどうかと考えてございます。

    3ページ目、具体的施策のイメージでございます。先ほど2つの点に分けて御説明いたしましたが、1つ目として、地域企業の価値向上への貢献・地域課題への解決、2つ目として、右側、地域金融力発揮のための環境整備、この2つの項目に分けて御説明させて頂きたいと思います。なお、下線部の具体策につきまして、次ページ以降に掲載しております。

    4ページ目から、地域企業の価値向上への貢献・地域課題の解決の項目でございます。5ページ目、内外プレイヤーとの連携を通じた中堅企業等の成長支援です。

    地域には、相応の売上高の中堅企業も存在し、潜在的にはビジネスを日本全国や海外に拡大できる企業が存在すると考えられます。こうした企業による革新的な研究開発・設備投資などを後押しし、高い成長を実現していくことが重要であります。

    このためには、高度な知見に基づく事業戦略や、証券会社やファンド、政府系金融機関とも連携した融資にとどまらないファイナンス手法が必要となると考えます。

    地域についての圧倒的な情報を有し、地域・企業からの高い信用を得る地域金融機関が内外のプレイヤーと連携しつつ、事業戦略やファイナンス手法に関する知見を高め、企業価値の向上を総合的にサポートする。これにより、地域から全国や世界の市場に飛翔する企業を生み出すことを目指してはどうかと考えてございます。

    右下に例示として3つほどございます。例の1として、国内外の市場開拓や事業の発展に知見を有するプレイヤーとの連携を促進すること。例の2として、企業価値創造業務に関する地域金融機関職員への知見の提供。例の3として、海外進出などを支援するJBIC(国際協力銀行)、DBJ(日本政策投資銀行)、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫等との協調融資の促進などが考えられると思います。

    6ページ目を御覧ください。M&A・事業承継や経営者等を含む人材確保の支援という項目でございます。

    地域には、新たな株主や後継者を見つけられないオーナー経営者が多数存在しており、様々な民間プレイヤーによりM&A・事業承継の支援が行われております。政府としても、レビキャリ等の取組により、地域企業の経営人材確保を後押ししておりました。地域にとって欠かせない事業や雇用の場を確保していくため、官民の取組を更に加速していく上で考慮すべき事項は何かということについて、御意見を賜れればと思います。

    右下、例示でございますが、例の1として、他の金融機関との連携を通じたマッチング支援、経営人材確保等を含めた事業承継の支援を行う事業者との連携。例の2、レビキャリへの人材登録を促進するため、経済産業省と連携した大企業等への働きかけの強化などでございます。

    7ページ目、事業性融資・DX支援でございます。

    事業性融資につきましては、地域金融機関による事業性融資――これは不動産担保や経営者保証によらず、事業の実態や将来性に着目した融資でございますけれども、この取組を後押しする観点から、2026年5月に導入される企業価値担保権の活用に向けた環境整備を進めていく。その際考慮すべき事項は何かについて御議論頂ければと思います。

    次に、DX支援でございますが、地域企業のデジタル化とデータ利活用の高度化を一層支援できるよう、金融機関の業務としてITコンサル支援や経理業務の受託を位置づけてはどうかと考えてございます。

    8ページ目、地域金融機関の官民連携のまちづくりでございます。

    地方自治体のみならず、民間の知恵や資金も活用しつつ、地域の課題やニーズ、特色を踏まえたまちづくりがなされることが重要と考えております。

    公有不動産・遊休資産の活用等に係る官民プロジェクトへの地域の様々なプレイヤーの出資・参画を促していく観点から、その中核として、地域に幅広い顧客ネットワークを有する地域金融機関の参画を促してはどうかと考えてございます。

    9ページ目、地域金融機関における地域活性化の取組事例の共有と活用でございます。これまでも、地域金融機関による地域活性化の取組は数多くの経験が積み重ねられております。こうした取組事例を金融庁が取りまとめ、公表し、各地域の取組を横につなげる場を創ることとしてはどうかと考えてございます。

    10ページ目から、地域金融力発揮のための環境整備の項目でございます。

    11ページ目、金融機関共通の課題における「共同化」による効率的・効果的な対応の推進でございます。

    マネロンやサイバーセキュリティ等への対応には高度なシステムや専門性が必要とされ、金融機関の対応コストも上昇しております。このような領域も念頭に、リスク管理や内部監査について複数金融機関が共同で対処ができないか検討するほか、複数金融機関による広範なシステムの共同利用を促進してはどうかと考えております。

    12ページ目、投資専門会社を通じたエクイティ出資の促進でございます。地域活性化のためには、リスクマネー(資本性資金)の供給が重要となります。投資専門会社の出資に関する以下の要件等について、更なる緩和・明確化を行うこととしてはどうかと考えてございます。

    右側下、要件等の緩和・明確化案でございますが、①投資先の裾野を広げる観点から、投資専門会社の株式会社以外への資金供給を可能としてはどうか。②投資先のコンサルティングを強化する観点から、投資専門会社の業務範囲にM&A仲介業務を追加してはどうか。③ベンチャービジネス会社へのクロスオーバー投資を可能としてはどうか。④事業承継会社については、上場会社であっても資金供給を可能としてはどうか。⑤地域活性化事業会社の要件を明確化し、手続きを簡略化してはどうか、でございます。

    私からの説明は以上でございます。

    【横山信用制度参事官】

    信用制度参事官の横山でございます。続きまして、お手元の資料2「金融機能強化法等の改正の方向性」について御説明をいたします。資料が大部になっておりますけれども、時間の関係もありますので、ポイントを絞って説明をさせて頂きます。

    まず、3ページ目でございます。金融機能強化法、大きく2つ制度がございます。上が資本参加制度、下が資金交付制度ということでございます。内容は後ほど詳しく説明しますが、この2つの制度ともに申請期限が2026年3月末となっておりまして、これを延長するには法律の改正が必要であるということでございます。

    少し飛びまして、11ページ、金融機能強化法に基づく資本参加制度の概要を御覧ください。金融機関は、資本参加の申請をする場合、経営強化計画を提出することとなっております。国はその計画の内容等を審査しまして、資本参加の是非を決定する仕組みです。資本参加後は計画の履行状況をフォローアップすることとなっております。

    資本参加に用いる「公的資金」は、預金保険機構が政府保証付で市場から調達した資金になりまして、いわゆる「税金」ではないということでございます。

    12ページ目を御覧ください。金融機能強化法の震災特例とコロナ特例ということでございますが、東日本大震災、新型コロナウイルス感染症の影響により自己資本の充実が必要となった金融機関を対象として、これまで震災特例やコロナ特例をいずれも法律改正を実施することによって創設しております。

    これらの特例におきましては、資本参加を通じた金融機能の発揮を促し、地域の復興や地域経済の再生に貢献できるように、経営強化計画の記載事項や審査基準を緩和する枠組みとなっております。

    続いて、13ページを御覧ください。震災特例における協同組織金融機関向けの枠組みということで、協同組織金融機関に対しては更に特別の枠組みが整備をされております。

    具体的には、中央機関と経営指導契約を締結した協同組織金融機関に対し、国と中央機関が共同で資本参加をする。資本参加から原則10年経過後に財務状況が一定程度以上悪化している場合には、資本整理を含む事業再構築を実施するという仕組みとなっております。

    少し飛んで、15ページを御覧ください。協同組織金融機関における優先出資の消却についてであります。協同組織金融機関の資本調達については、会員・組合員からの普通出資が原則でありますけれども、優先出資法という法律がございまして、会員・組合員以外の者からの優先出資を可能とする制度がございます。

    この優先出資の消却の原資は、原則として剰余金と普通出資の増加分に限定をされております。他方、金融機能強化法に基づいて資本参加をする場合には、法定準備金・資本準備金・資本金を減少させることで、消却原資とできる特例が認められているところでございます。

    前回のワーキング・グループで、全国信用金庫協会からの要望として、業界支援等により優先出資を発行した場合は消却方法が限定されており、資本供与後に自己資本比率が十分な水準に回復したとしても、供与資本の返済が進まない等の問題が生じているということで、柔軟な消却を手当てするように要望を頂いています。

    続いて、16ページでございますが、これまでの資本参加の実績ということで、本則、震災特例、コロナ特例を合わせて約7,402億円の資本参加を実施しております。

    次に、18ページを御覧ください。資本参加の効果についてです。業務純益については、地域銀行、信用金庫・信用組合ともに、資本参加以降、全国平均とのギャップは概ね改善傾向が見られます。

    また、中小企業向け貸出残高については、地域銀行、信用金庫・信用組合ともに、資本参加以降、増加傾向がございます。

    それから、震災特例に関してみますと、被災者向けの事業性新規融資実行額については、資本参加以降、同地域の平均額とのギャップは改善・プラス方向に拡大しているということが見てとれるかと思います。

    続いて、19ページでございます。資本参加の効果に関する分析事例ということで、学術研究を御紹介させて頂いていますが、金融機能強化法による資本注入を受けた銀行は、非注入行よりも総貸出、中小企業向け貸出を増加させていること、金融機能強化法の注入行は保証の利用を減らすこと、震災特例による資本注入行は、担保や保証を利用せず、中小企業向け貸出を増加させていることなどの分析がされておりまして、結論として、金融機能強化法による資本注入政策は効果的であるといえる、といった結果と解釈が示されているところでございます。

    続いて、20ページで、震災特例で資本注入を受けたいわき信用組合の不祥事案でございます。いわき信組が、遅くとも2004年3月頃から2011年3月頃にかけて、ある会社のグループに対して迂回融資や無断借名融資の手法を用いて極めて多額の融資金を不正に資金提供し、かつ、その事実を2024年11月の公表時まで組織的に隠蔽をしていたという事案でございます。

    21ページでございます。いわき信組に関する業務改善命令といたしましては、経営管理態勢・法令等遵守態勢の確立・強化、特定震災特例経営強化計画の見直し、口座の名義人などに対する丁寧な説明、更なる事実関係の精査や真相究明の徹底というのを行政処分として命じております。

    いわき信組が策定した業務改善計画の概要としては、経営責任の明確化、民事・刑事の責任追及、経営監視・牽制機能の確立、法令等遵守態勢の確立等々の改善計画を作成しているということでございますが、本事案については、今も立入検査を行っているということでございます。

    22ページでございます。この事案も踏まえまして、金融庁の中で体制の強化を行っているということでございます。

    23ページ、資本参加制度等の期限延長・拡充の方向性について、以下の諸点について御議論を頂きたいと考えております。1点目は申請期限についてでございますが、資本参加制度を、地域金融機関が人口減少等の構造的課題に対応しつつ、その金融機能を維持・強化するために必要な制度と位置づけて、長期的な目線で申請期限を設定してはどうかということでございます。

    2点目、現行の震災特例に相当する資本参加の特例を予め制度的に整備しておき、必要に応じて個別の災害等を指定することで当該特例を適用できるようにしてはどうかと考えております。

    3点目は優先出資についてですが、優先出資の消却可能性を高めることで、協同組織金融機関に対する優先出資を行いやすくする観点から、優先出資法上、債権者保護手続を設けることを前提に、優先出資の消却のための資本金等の減少を認めることとしてはどうかと考えております。

    4点目が、最近の不祥事案を踏まえ、資本参加先の適切な経営管理と業務運営の確保のために、必要な規定を整備してはどうかと考えております。

    米印が3つございますが、※1は、6月の金融審総会において頂いた御意見として、有識者で構成される金融機能強化審査会の意見を聴くことについて、現在対象外となっている事案もあるけれども、審査会の機能を強化・充実してはどうかという御意見がございました。

    ※2ですが、2024年度以降における信金・信組に対する行政処分のうち、その多くで内部監査態勢の改善・強化(内部監査部門の独立性の確保等)が命じられているということがございます。

    ※3ですが、金融機能強化法においては、経営強化計画についての変更命令が規定されていないというのが現状でございます。

    続いて26ページ、これは参考でございますが、協同組織金融機関における員外監事の選任について、現状において複数の員外監事を選任している信用金庫・信用組合は限定的ということで、特に理事長の在任期間が長くなるほど、その割合が低くなっているという傾向が見て取れるところでございます。

    続いて、資金交付制度についてでございます。28ページがその概要ですが、合併・経営統合等を行う地域金融機関等が経営基盤強化の実施計画を作成し、国の認定を受け、国から資金の交付を受けることができる制度でございます。追加的な初期コストの3分の1、上限30億円を交付する制度となっております。

    続いて、30ページを御覧ください。資金交付制度の対象となる行為でございます。合併・経営統合のほか、単独で業務効率性・収益性が大きく向上する場合も対象となっておりますが、⑤のところで、当事者である金融機関同士で行われるものという要件がありまして、第三者からの株式取得は対象外となっております。

    それから、その他のところですけれども、業務改善については、修正業務粗利益経費率が15%ポイント以上、修正経費が20%以上低下というのが、いずれも見込まれるものといった要件になっております。

    続いて、31ページでございます。資金交付制度の対象経費でございますが、情報システムの整備(改修・統合)や店舗の統廃合等に関する一時的な経費が対象となっております。他方で、経常的に発生する経費や各種契約の解除等に伴って発生する経費(違約金等)は現在対象外ということになっております。

    それから、32ページが実績でございまして、これまでの交付予定額の合計は約150億円となっております。これについて地域銀行の合併について見てみますと、交付予定額が上限の30億円に達しているものが大半という状況でございます。

    33ページでございます。地域におけるシェアが高くなっても特例的に合併が認められるよう、10年間の時限措置として独占禁止法の適用除外を認める特例法が制定をされております。これについては2020年に施行されておりまして、10年間の時限措置ということで、残り5年程度の期限がございます。

    34ページ、資金交付制度の期限延長・拡充の方向性(案)ということでございます。1点目は、期限に関してですけれども、資金交付制度は資本参加制度と異なり返済を求めないものであり、財源にも限りがあるということを踏まえまして、独占禁止法の特例法の廃止期限も意識しつつ、政策効果の発揮が期待できるような延長幅を検討することについてどう考えるか、ということについて御議論頂ければと思います。

    それから、2点目、合併・経営統合に限らず、事務の共同化を含めた業務の効率化を一層強力に支援する観点から、次のような方向性で資金交付制度の拡充を行うことについてどう考えるか、御議論頂きたいと思います。

    青枠のところが具体的な項目ですが、1.の1点目は、まず、交付上限額(現行30億円)を引き上げること。それから、現行の補助率3分の1を、協同組織金融機関については中小企業向けの補助金の例を参考に引き上げてはどうか。

    2点目として、例えば、資本増強に関する業務改善命令を受けた金融機関を当事者とする合併・経営統合、それから合併転換法に基づく業態を超えた合併については、交付上限額や補助率を通常よりも引き上げて、インセンティブの強化を図ってはどうか。

    3点目は、交付対象行為に、例えば公開買付等を通じた金融機関の子会社化を加えるほか、交付対象経費に合併・経営統合に伴って生じるシステム解約違約金を加えてはどうか。

    4点目に、情報管理を徹底しつつ短期間で実行される経営統合もあることを踏まえて、経営統合後の相当の期間内に資金交付の申請を行うことも可能としてはどうか。

    2.の1ですが、単体で資金交付を受ける場合の業務効率化の要件について、人件費・物価上昇等を踏まえた適切な水準に見直してはどうか。それから、2点目で、中小の地域金融機関について、地域経済の活性化に向けた取組を行うことを前提に、業務の効率化に資するシステム共同化に関する資金交付の枠組みを整備してはどうかということでございます。

    私からは以上でございます。

    【小野銀行第二課長】

    銀行第二課長の小野です。それでは、お手元の資料3に沿って説明させて頂きます。

    ただいま説明のあった金融機能強化法による資本参加制度や資金交付制度は、地域金融の持続可能性を高めるための国によるサポートですけれども、持続可能性の観点からは、通常の監督において、各々の地域金融機関の健全性確保が図られるよう、しっかりモニタリングしていく必要があります。そのためのツールである早期警戒制度について、まだ運用に改善の余地があると考えております。

    2ページを御覧ください。1つ目のポツですが、早期警戒制度は、最低所要自己資本比率を満たしている地域金融機関に対して、健全性の維持・向上を促すため、2002年から運用しております、いわゆる最低所要自己資本比率を下回った先に対する早期是正措置の手前の対応でございます。

    2つ目のポツですが、2019年には、「持続可能な収益性と将来にわたる健全性」を早期警戒制度の着眼点に追加して、モニタリングを実施しています。下の図がその概要です。左端に、早期警戒制度の枠組みとして、収益性、信用リスク、安定性、流動性とあります。

    その中で収益性については、右側のように、2019年の見直しにより、いわゆる動的な監督というものを導入しました。具体的には、ステップ1として、当局側で足元の傾向が継続すると仮定した場合の将来のコア業務純益やストレスシナリオに基づく自己資本比率を算出します。これが一定水準を下回る先について、ステップ2に進み、今度は該当した銀行側において、将来の収益や自己資本の見通しについて検証してもらいます。その結果を踏まえて対応を行いますが、ステップ3において、必要に応じて更なる行政対応に進みます。

    3ページを御覧ください。御参考までに、2019年の見直しの際の議論です。動的な監督の意義について記載されています。当時と比べても、足元では予想を上回る人口減少や金利環境の変化など、動的な監督の必要性は増しているという認識です。

    4ページを御覧ください。地域金融機関を取り巻く環境の変化です。左側の表は、このワーキング・グループの資料としては再掲になりますが、預金が減少している先が増えており、二極化が進んでおります。

    右側の表は、有価証券評価損の推移です。上段が地銀、下段が信金・信組です。地銀全体では、金利上昇に伴い青色の円債の評価損が拡大していますが、ピンク色の株式の評価益で打ち消し、ネットで評価益を維持しています。信金・信組は、御覧のとおり全体で円債の評価損が拡大しています。円債の評価損については、デュレーションの見直しなどで金利リスク量を抑制する方向で全体は動いていますが、今後とも注視が必要です。

    最後に、5ページ、早期警戒制度について御議論頂きたい項目です。1つ目のポツにありますように、人口減少や金利上昇といった環境変化を踏まえ、将来の地域金融機関の収益性や健全性に与える影響について、より深度ある検証、つまり、動的な監督を更に強めることについてどう考えるか、ということです。

    具体的には、2つ目のポツですが、例えば、現行の早期警戒制度において、国立社会保障・人口問題研究所のデータや公的機関が公表する金利シナリオなどのストレステストを新たに加えて、その検証結果を基に地域金融機関との深度ある対話も進めたい。このように考えておりますが、この点について御意見を賜れればと思います。

    以上です。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。

    それでは、続きまして、資金交付を受けられた御経験もある八十二銀行様より御説明をお願いいたします。

    【樋代副頭取】

    八十二銀行の樋代でございます。よろしくお願いいたします。本日は、大変貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。それでは、現在弊行が進めております地域金融力の発揮に向けた長野銀行との経営統合の取組について、御説明を差し上げたいと思います。

    2ページ目を御覧ください。先ほど事務局から資料2の32、33ページでもお話がありましたが、我々八十二銀行と長野銀行は、資金交付制度及び特例法を使わせて頂いて、2026年1月1日の合併を目指しているというところでございます。

    両行の概況ですけれども、八十二銀行はいわゆる第一地銀、長野銀行は第二地銀であります。八十二銀行は県庁所在地であります長野市に本店、長野銀行は第2の都市であります松本市に本店がある銀行でございます。両行合わせて総資産は約13兆円、従業員数は4,000人弱でございます。既に子会社化をしておりますので、直近2025年3月期の連結自己資本比率は16.29%ということでございます。純利益は連結で479億円ということで、こちらは合併に関わる様々な影響もありますけれども、従来八十二銀行が出してきた純利益では過去最高ということになっております。

    経営の歩みについて、その下の段になりますが、2022年9月28日に長野銀行との経営統合に関する基本合意書を締結し、同日、記者会見をしたところでございます。その約4か月後、2023年1月20日に長野銀行との経営統合に関する最終合意をさせて頂いて、2023年6月1日、最終合意からまた約4か月半後、長野銀行との経営統合、完全子会社化をしたところでございます。

    その後、先ほど申し上げたとおり、2026年1月1日の両行合併に向けて、経営統合、完全子会社化から約2年半になりますが、現在準備を進めているという状況でございます。

    3ページを御覧ください。経営統合の背景と狙いでございます。長野県に限らず、全ての地方は人口減少に悩まされております。長野県の総人口、約10年前は209万人であったものが、一昨年200万人を割り、197万人ということでございます。この10年間でマイナス5.7%というところでございます。コロナ禍を除いては徐々に減少率自体も高くなっていて、足元は0.8%程度になっているということでございます。参考に東京都の数字を入れてあります。

    名目GDPにつきましても増加はしているものの、国内の全体から見ると低いという状況でございます。あとは、事業者数でございますが、国内でいきますと580万事業者ということで、570万事業者から10万事業者増えて約1.6%増加している中で、長野県は12万事業者から11万事業者ということで、マイナス8.3%ということでございます。

    右側にありますが、長野県が抱える課題、人口減少、事業所数の減少、経済成長(率)の遅れ、こちらに対して、我々、長野県を地盤とする地方銀行としていかに地方創生に取り組むかということを課題として考えております。

    当然ですけれども、今回の合併の目的は、より一層地域やお客様の役に立つことということでございます。ですので、合併はあくまでその一手段ということですけれども、合併を選んだ理由は、この下のところにありますが、圧倒的な人材量・質の不足です。それから、先ほど事務局からのお話にもありましたが、マネロンの高度化・サイバーセキュリティ等の非競争分野の投資の増加ということでございます。

    これらの、我々銀行における課題に対応するために合併という手段を取りまして、店舗網最適化によって600名、業務効率化によって600名の人員を出しまして、これで1,200名いるんですけれども、人員は大幅な自然減を迎えています。どこの会社もそうですが、採用難、それから、いわゆるバブル前後で大量採用した者の退職というところで1,000名減りますので、差し引き200名を戦略人員確保ということで戦略分野に取り組んで行きたいということでございます。

    4ページ目、そちらのことが上の段に書いてございます。右側、地方創生の取組への戦略的人員ということですが、詳細は多少ずれるかもしれませんが、今のところ、コンサルティング業務に100名、それからデジタル業務、地域のデジタル化も進めなければいけませんので、それが50名。さらに新規業務に50名ということで、この新規業務というのは、お客様への役に立つ部分と、それと銀行自体が収益基盤をさらに広げていくと、こういう意味の新規事業であります。

    そんな中で、合併に係る課題ですけれども、中段になりますが、多額のコストでございます。御覧のとおり、我々のケースで総コスト131億円になっております。うちシステム関連71億円、店舗統廃合23億円、その他37億円、これは全て資金交付制度の対象となる経費です。対象となる経費以外におよそ同額ぐらいのコストがかかっているということを御理解頂ければと思います。

    結論の欄にありますけれども、資金交付制度及び独占禁止法特例法は、我々の合併を進める上で大きく後押しをして頂いたということでございます。先ほどもありましたが、コストの3分の1、上限30億円を全て使わせて頂いているということでございます。

    合併作業の進捗につきましては、5ページです。いろいろなパターンがあると思いますけれども、八十二・長野銀行におきましては、合併前から既に人員を兼務出向などで一緒にやって、お客様の窓口も一本化して、事務人員を除く全ての、本部人員も含めて、もう既に合併前に一緒に仕事をしているということで、できるだけ早く合併の効果を地元に還元したいということでございます。地域金融力発揮に向けた成長戦略につきましては、今、新銀行での計画も立てているということでございます。

    6ページを御覧ください。それでは、実際どんなことをやっているかということですけれども、地場産業メーカーA社について、長野銀行、八十二銀行共同で、株式を集約して借入れの長短バランスの適正化を図ったということです。

    この地場産業メーカーというのは、長野県らしいのですが、きのこ関連を主力とする会社で、売上が20億円弱の黒字企業です。事業承継を安定させるために、株式の集約が必要でした。それから、コロナ禍でいろいろ借入れが増えたので、長短バランスの適正化が必要ということで、これを長野銀行と八十二銀行共同でやりました。

    お恥ずかしい話なんですが、こちらの地場産業メーカーは、かつて八十二銀行が融資をお断りしたことがあり、八十二銀行とはもう取引はしないということで、ずっとなかったのですけれども、今回のケースで、もうそういう時代じゃないということで、両行でお役に立てたという事例でございます。

    7ページになります。こちらは、先ほどもありましたけれども、スタートアップ企業と長野県の中核企業をつなげて新規事業をやったというものでございます。この中で、信州新規事業創出プログラム2024というので4社やったんですが、そのうちの1社、自動車部品の製造についてお話をさせて頂きたいと思います。

    こちらについては自動車部品製造で、EV化などの波も受けて、今後、違う柱の事業をつくりたいということで、新たに農作物を自動的に集荷する物をつくっておりました。そこを東京のAIに強い企業と結びつけてその事業化を進めているという事案が上段でございます。

    それから、事例3、下段でございますけれども、こちらはまさに長野県とか田舎にありがちな事業承継ができない先を売手企業として、これから大きく羽ばたいていこうという会社とマッチングしたというものでございます。

    売手企業は、売上2億円強ですけれども、非常に特殊な細密な穴を空ける技術を持っておりまして、利益率が非常に高い会社ですが、事業継承する方がいない。片や買手企業は、売上15億円の黒字企業で、プラスチック成型及び金属製品加工をやっていたのですが、その微細な穴を空ける技術が自分たちに生きるということでマッチングになりました。

    この2社ではなかなか100億円企業というわけにはいきませんけれども、こういうことも地元でマッチングをしながら100億円企業を育てていきたいというふうに考えております。

    私からの説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。

    それでは、ただいまの説明を踏まえて、委員の皆様に討議を頂きたいと思います。

    御発言を希望される際は、対面で御出席されている方におかれましては、机上の名札を縦にして頂き、オンラインで御参加されている方におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てに発言がある旨御入力頂ければ、それを確認して私が指名いたします。

    なお、限られた時間の中で、可能な限り委員の皆様方に御発言を頂きたいと考えておりますので、お一人当たり4分以内でまずは御発言を頂いて、残りはまた御発言を頂くということでお願いをしたいと思います。

    それでは、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。それでは、野崎先生からお願いいたします。

    【野崎委員】

    ありがとうございます。

    地域金融力の強化という文脈でいくと、十分条件、必要条件の整理が必要というふうに考えておりまして、申し上げるまでもなく、必要条件というのは、地域の持続的な金融機能提供だけではなくて、市場の信認というのが重要と考えております。その意味では、ミクロ・プルーデンスの確保というところがやはり大きな必要条件の鍵かなというふうに考えております。十分条件に関しましては、再三議論されているとおり、地域の課題のソリューション能力の向上が重要というふうに思います。

    今回は、必要条件について少し重きを置いて説明をさせて頂きます。金融機関の破綻については、経済的あるいは社会的なコストが非常に甚大であるということで、これに対して、金融機関をある意味で支えるための資金提供あるいは資金負担というものを大きく上回るような規模に達するということは歴史的に証明されています。

    ですので、こういった点から、金融機能強化法に基づく資本参加制度に関しましては、極力長期的な制度設計が望ましいというふうに考えます。

    そればかりではなく、特例措置に関しましても、機動的な対応を確保するために、特例条件を盛り込むことは非常に有益であると考えます。

    また、優先出資の消却等の手当についても、これも行う必要があるかなというふうには考えております。ただし、資本参加先のガバナンスの在り方につきましては、改めてよく精査する必要性を非常に感じるところであります。

    他方で、各金融機関がより長い時間軸で地域金融を支えるための経営基盤であるとかあるいは経営戦略の在り方についてしっかりと考えることが重要であるというふうに思います。これは自覚を促すだけではなく、ある意味、行政としてのいわゆる最低品質保証というところですかね、そういった点から認識を高めさせる、あるいは高めるための枠組み、これを整える必要があろうかなと考えます。

    すなわち、金融機能強化法の見直しというのは、あくまでも、地域金融の持続可能性について各金融機関あるいは経営陣がしっかりした認識を確保するというところとセットで議論することが非常に肝要かなというふうに考えるところであります。

    その意味で、ミクロ・プルーデンスの予見可能性を高める文脈での早期警戒制度についての実効性向上というのは非常に重要であると考えております。2019年の早期警戒制度見直しがあったときには、私的にはコペルニクス的な転換だなというような感想を持った次第です。持続可能な収益と将来にわたる健全性の着眼点を導入したというのは高く評価されるべきだというふうには考えておりますけれども、ただ、残念ながら、収益性や財務的な影響についての精度、あるいは深度については十分でない印象を持っています。

    例えば、人口減少が加速化していることは、第1回のワーキング・グループでの森先生の御説明でも明らかです。その影響は預金ばかりではなく貸出サイドにもかなり顕著に表れていくことが想定されます。

    そこで、将来的な人口動態や金利変動等について、定量的なデータに基づいた説得性のあるシナリオに基づく検証を実施して、持続可能な収益と将来にわたる健全性に着眼したモニタリングの必要性は極めて高いというふうに認識しております。

    その検証の結果が各金融機関の経営的な危機意識を適切なレベルに高める。それによって経営基盤強化に向けた行動に向かうインセンティブづけにつながるんじゃないかというふうに考えておりまして、これをサポートする意味での金融機能強化法等の制度設計の見直しというのは、極めて重要性を認めております。

    最後に、十分条件の部分でありますけれども、今回、八十二銀行さんと長野銀行さんの事例で、例えば、アクセラレータープログラムに象徴されますように、八十二銀行の投資専門会社をビークルとして活用して、より広い取引先に開放していく、こういった事例については、第1回のワーキング・グループでも私が申し上げたとおり、いわゆる情報の経済ですかね、これを最大限活用した経営統合の成果というふうに言えるんじゃないかと考えております。

    こういった活動を支えるためにも、例えば、今回事例で出ました投資専門会社についてのクロスオーバー投資を可能にするとか、全ての緩和措置については、私としては賛成であるということであります。

    したがいまして、経営基盤強化を支える制度設計については、こういった地域金融力を高める上での必要条件、十分条件をそれぞれ満たす、こういうことで寄与するんじゃないかと考えております。

    以上です。

    【家森座長】

    野崎先生、どうもありがとうございました。

    それでは、続きまして、西原先生、お願いいたします。

    【西原委員】

    ありがとうございます。まず最初に、明快な論点整理と資料作成、ありがとうございました。事務局案には多くの点で賛成でございます。以下で、特に賛成と考えます点と、一方で検討が必要と思われる点について申し上げます。

    まず、賛成の点としましては、1点目、地域企業の価値向上への貢献、地域金融力発揮のための地域金融力強化プランの推進、2点目は、投資専門会社を通じたエクイティ出資促進のための出資の要件緩和・明確化、そして3点目は、早期警戒制度で動態的でより深度ある検証を行うこと、です。

    特に2点目については、投資専門会社の株式会社以外または上場後の事業承継会社への資金供給を可能としたり、M&A仲介業務の追加などは、地域経済活性化のために金融機関のキャパシティを高めることにつながり、望ましいことだと考えます。

    次に、検討が必要と考える点は、資本参加制度、資本交付制度の見直し、そして早期警戒制度についてです。

    1点目、資本参加制度の見直しにつきましては、大規模災害が想定されている我が国において、特例の恒久化は進めなければならない待ったなしの政策だと考えます。一方、人口減少など構造変化を想定した本則の恒久化には、基本的には賛成ではございません。

    こうした構造変化が今後加速する見込みの中で、金融機関が自助努力で筋肉質の経営基盤を取り戻せないならば、地域経済の活性化に貢献できないばかりか、制度が単なる延命策に終わるリスクがあるためです。制度の枠組み上、特例のみの恒久化ができないならば、制度の限界効用が低下し、副作用も見られ始める資本増強後、6、7年後を念頭に、本則の返済期限の短縮化を検討することが一案ではないでしょうか。

    2点目の資金交付制度の見直しにつきましては、資料2の34ページ、「期限延長・拡充の方向性(案)」の2.事務の共同化支援のための制度拡充の2)が入ったことを評価しております。一歩踏み込んで、運用面での課題を申し上げれば、インフラ産業化する金融界において、地域金融機関でも一定規模のまとまったシステム投資が求められています。事業環境変化のスピードを考えますと、個々の経営統合や合併促進もさることながら、待ったなしのサイバー対応等を含めたシステム共同化と、それを契機とするより大規模な再編も念頭に迅速に進めていくことで、地域経済を支え得る強靱な金融システムへの転換を求める運用が必要だと考えます。

    3点目の早期警戒制度につきましては、2019年の見直し時の経験に基づいて、今回は、動態分析による対話の深度とともに、それを実効性を持って経営基盤の強化につなげるガバナンス評価など、フォローアップ体制の見直しの必要があるのではないでしょうか。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。

    それでは、続きまして、山本先生、お願いします。

    【山本委員】

    ありがとうございます。

    ちょっと視点が違うかもしれないんですが、地域の金融機関の方々が今回のワーキング・グループのこの検討をどう受け止めるかという視点を私は忘れないでもらいたいなと思います。その視点がないと、せっかくいろいろな施策を出しても、何となく意味がないような気がしています。

    例えば人口減とか、預金が減っているとか、事業所が減っているとか、これから想定されるいろいろな現実の中で、その地域自体が元気にならなければ地域金融機関も残れないよと。そのために活躍できる環境整備を進めるのだから、地域が元気になるようにどうか動いてくださいというメッセージをうまく出して頂きたいなと思っています。

    例えば、取組事例の共有と事務局資料に出ていましたけれども、それを受け取った側がどういうふうに思うかとちょっと想像すると、そういうことをやっているところもあるんですね、でも、うちでは無理です、できませんねみたいに受け止められてしまったら全く意味がないような気がするので、受け手の方々がどういうふうにこれを受け止めるかということに意を払って、動きたくなるというか、モチベーションが上がるような報告ができればなと思っています。

    いつも私の言葉は乱暴で申し訳ないですけれども、こういうことを頑張って進めるといいことがあるよみたいな、背中を押すようなものにできればいいなと思います。国が出すものなので難しいのかもしれませんけれども、トライしてください。仮にエラーがあっても、とにかくトライしてくださいみたいなふうに動き出せるようなイメージを持って頂けるようなものにできればなと思っています。

    個々の施策とかそういうことについては、特に反対するというものはないのですが、個別にちょっと申し上げると、資料1の3ページの環境整備の項目のところで挙がっていました、モニタリングにおける金融機関の事務負担軽減。下線がついていないのでちょっと気になったけれども、前に銀行の方たち皆さん意見をおっしゃっていたので、ぜひそこは具体的な検討をして実現をしてもらいたいなというふうに思っています。無駄なことをさせるのは全く意味がなくて、むしろ実質を重要視してほしいと思っています。

    それから、1点気になったのは、資料1の5ページの最初のところに、日本全国や海外に拡大できるような可能性のある中堅企業の成長支援をしようみたいなことが出ているんですけれども、地域金融機関に全国や海外に進出するのをサポートするノウハウは、多分難しいと思うんです。だから、ここに、5ページの右側にいろいろな施策の例を出して頂いていますけれども、結局は他のところと協働してやれよということなので、これの道筋というか、それをもっと具体的に示してさしあげないと、ここに一歩出づらいのかなというふうに思いました。

    それから、あとは、いつも申し上げますが、事業承継を支援するところはぜひ力を入れて頂きたいと思います。

    それと、箇条書的に申し上げて申し訳ないですけれども、7ページに出ている事業性融資・GX支援のところの企業価値担保権活用に向けた環境整備の点なんですが、もちろんこれはぜひ進めて頂く必要があると思っていますが、ただ、この事業の将来性を判定するってめちゃくちゃ難しいですよね。めちゃくちゃ難しいことをこれからも、「勉強会も活用し」というふうに書いてありますけれども、多分準備されていると思いますが、ガイドラインできちっとした指標をある程度示していかないと、将来性の判定なんて普通誰もできないわけだから、特にこんな今のような変化が激しい時代に、すごく難しいことだと思うので、ぜひガイドラインをきちんと作って頂きたいなと思っております。

    資料2の資本参加制度とか資金交付制度等についての施策は、私は反対する気持ちはございませんが、ただ、結局はきちんと金融機関が働いて頂かなきゃいけないという点でいうと、いわき信組の不祥事案について、資料2の21ページに出ている、いわき信組が御自身でこういう施策をするみたいなことを示された業務改善計画の概要がありますよね。これを見て私は若干茫然としたというか、逆に、こんなにガバナンスに問題を抱えていたのかというふうに思いました。

    今後、モニタリングとかいろいろ、体制は整備して頂いたようですけれども、ここに出ているようなことで、結局ブラックボックスになっているということなので、これをなくす施策をぜひ進めて頂きたいですし、外部の目をどう入れていくかというのも具体的に検討して頂きたいなと思っております。

    それから、早期警戒制度について、この方向性も別に異論は全くございませんが、この深度ある検証というのは、結局、実態にどんどん踏み込んでいかないと難しいと思うんです。最終的にステップ3まで行ってしまったら、それは地域金融機関御自身にもう自分たちは無理という判断をさせることと同列ですよね。

    そうなると、そういう意味で、ここでもさっきの企業価値担保権と同じなんですけれども、将来性の判定というかな、それが同じようにどういう指標でやるのかというのを相当きちんとしてあげないと、金融機関のほうも納得性がないと思うんですよ。下手すると、実態を隠すと言ったら言葉は悪いけれども、そういうふうになってしまう危惧もあるので、きちんと金融機関と信頼を持ってコミュニケートして、将来の経営状況について認識を共有するというこの方向性、これが実態として実現できるようにぜひ工夫をして頂きたいなと思います。

    以上です。

    【家森座長】

    山本先生、どうもありがとうございました。

    それでは、続いて、翁先生、お願いいたします。

    【翁委員】

    今回、人口動態変化の加速への危機意識を十分に地域金融機関に共有して頂き、こういった施策をしっかり受け止めて頂けるようにする必要があると思っております。

    まず、資料1でございますけれども、地域金融力というのは、全ての中小・零細企業にとって課題になっていることについて、しっかり地域金融機関がサポートしていくことがこれから本当に大事になってくると思っております。

    特に人口動態変化で考えれば、事業承継とか省力化などのDXの支援、こういったことは明確に地域金融機関の役割として位置づけて頂きたいと思っております。経営者の高齢化とか人手不足の一層の進展は、地域企業にとって事業継続のリスクであるという明確な認識を地域金融機関に持って頂いて、それ自体が金融機関自らの経営にも影響するという認識を持って頂くことが大事だと思います。

    その意味で、後継者計画の観点とか人手不足問題の対応の観点を当該企業の経営課題として明確に位置づけて、金融機関と企業とが、日常的な取引関係の中で双方で課題認識を深めていくことが第一歩だと思っております。その上でソリューションを提案し支援することを地域金融機関の役割として明確にして頂きたいと思いますし、こういったことは監督指針でも明確にして頂きたいと思っております。

    その際、7ページにDX支援というのが書いてございまして、金融機関業務として、ITコンサル支援や経理業務の受託というのを位置づけてはどうかというところでございますけれども、ぜひこの監督指針の明確化はやって頂きたいんですが、地域金融機関というのも大きいところから中小まで本当にたくさんございます。中小の金融機関については、リソースの観点から、適切なコンサルができないというのが実態ではないかと思っております。ですので、やはりこういう取組は、専門家との連携が実質的にはとても大事だと思っています。だから、全て自前でやるという意味ではなくて、金融機関は、地域内外の適切な専門業者とも連携しながら、伴走してこういった付加価値向上や省力化などのIT投資を支援するという方向を示すことが大事ではないかと思っております。

    それから、12ページの投資専門会社を通じたエクイティ出資の促進というのは大事だと思っております。同時に、どの金融機関も始めるということになりますと、やはりリスク管理の徹底とか人材の確保、それから利益相反への対応、こういったことは大事で、特に内部管理態勢というのが大事ということをしっかり踏まえた上で進めて頂きたいと思います。この中にございますM&Aの仲介業務、こういったことは結局、当該企業のビジネスモデルの変革を促すものになりますので、どういうオーナーを探してくるのかということ自体が厳しい中小企業の成長と持続を支援することになります。むしろまず出資というよりは、どういうビジネスモデルで中小企業を支援していくかを考えながらやって頂くことが持続可能性の鍵ではないかと思っております。

    資料2の金融機能強化法ですけれども、資本参加制度も資金交付制度も拡充の方向という、その方向自体は、この状況ですので進めて頂く必要があるとは思っているんですけれども、やはり金融機関側のディシプリンというのがとても重要だと私は考えております。審査・決定する側のその後のモニタリングとか、いわゆるEBPM、今日も少し貸出の状況などをお示し頂いていますけれども、効果が説明できるように、必要なデータを予め取れるようにして、しっかりこれからも説明していくことが問われるのではないかと思っております。そういう体制を築いて頂くことをお願いしたいと思っております。

    気になっておりますのは、震災特例などで、もちろんこれはその時点で経営体制の見直しなどは求める必要はないわけなんですけれども、例えばいわき信用組合の例を見れば、しっかりした責任のある経営体制が敷かれていたわけではないということが後で分かったということだと思っています。少なくともしっかりした責任のある経営体制が敷かれているかということは、震災のようなときには難しいという意見もおありかと思いますけれども、やっぱり審査委員会がチェックをするといったことは必要なのではないかと思っております。全体として審査委員会の機能をしっかりと強化していくことは大事だと思っております。

    それから、今日資料にもお示し頂いておりますけれども、協同組織金融機関の場合は、役員の適格性を求める法令上の規定がないとか、それから監査の役割を担う員外監事が、先ほども事務局から御説明がありましたが、理事長の在任期間が長いほど少ないといった事実が示されております。ここはやはり制度整備を考えていく必要があるのではないかと考えております。

    それから、資本参加制度を人口減少の対応のために必要な制度として位置づけるとしても、現在どの金融機関もこの問題に直面しております。もちろん最初に申し上げたように人口問題に危機感を持って自分事としてこの問題を考えて頂く機運の醸成が必要という意味ではこの項目を入れて頂くことは適切だとは思うんですけれども、やはり15年間で返却するという資金である以上、これからも更に人口が減っていく状況にあるということは中期的には変わらないので、本当にしっかりとした改革の計画を出して頂き、これを審査して、安易に流れないようにするということは大事ではないかと思っております。また、資金交付制度をシステムの共同化の支援に使っていくことについては、大事な視点ではないかと思っております。

    資料3の早期警戒制度ですけれども、金利上昇によって協同組織金融機関の長期債券の評価損が拡大しておりまして、地域金融機関の健全性確保に向けて、当局がしっかりと早期警戒制度の段階で金利リスク顕在化のシナリオに基づいて財務健全性について検証を行うことについては賛同しますし、これについて監督対応を進めて頂きたいと思っております。

    また、人口動態変化というのも、地域によって国立社会保障・人口問題研究所とかがいろいろ出しております。こういったものをしっかりと踏まえて、10年後、20年後、30年後どうなっていくのかということを認識共有して、しっかりとどういう対応が必要なのかということを対話して頂くということが大事だと思っております。必要に応じて業務改善命令に至るケースもあるということであると思いますが、まず早期警戒制度による検証結果をしっかり踏まえて深度ある対話を行って頂く。そして、実効的な監督対応ができるように改善していって頂きたいと思っております。

    以上です。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。それでは、松本委員、お願いいたします。

    【松本委員】

    ありがとうございます。日本商工会議所の松本でございます。先ほどは詳細な御説明を頂き、ありがとうございました。論点に沿いまして、手短に中小企業・小規模事業者の立場から御意見を申し上げたいと思います。

    本日は、八十二銀行さんから詳細な御説明をいただきました。資料にもございましたが、地方創生の取組に向けた戦略的な増員という点が、我々も一番重要なポイントではないかと思っております。先ほど、「合併は手段である」との印象的な御説明もありましたが、地域においては、地方で生まれて地方で育っていける事業者をいかに増やしていくかということが地方創生の要になると思います。その実現に向けて、こうした戦略的増員をされるということは方向性としては非常にありがたいというふうに思っております。

    御承知のとおり、中小企業の抱える課題は山積しております。M&A、事業承継、人材確保、DXなど、多岐にわたりますが、そういった課題に対して適切なソリューションを御提案頂く存在になっていただきたいと思っております。特に現在、地方の事業者において本当に必要とされているのは、信頼できる相談相手だと思っております。そのためにも、日頃から事業者とコミュニケーションを密にして、問題が生じた際には「早期相談、早期支援」が可能となる体制が必要だと思っています。今回の取組を通じて、地域金融力の更なる強化と、支援体制整備が進むことを期待しております。

    もう1点、金融機能強化法の改正について申し上げます。本制度につきましては、金融機関の自己資本の増強等を通じて金融仲介機能を十分に発揮するための制度として認識しております。こうした制度趣旨を踏まえまして、制度の期限延長は適切であり、望ましい対応であると思っております。特に、震災特例を制度として改めて整備するということについては、震災時に中小企業・小規模事業者の資金繰りに甚大な影響が及んでいることを踏まえると、こうした仕組みが制度化されるということは大変有意義であると考えております。

    ただ一方で、業務エリアが限られる信用金庫・信用組合においては、震災のような大規模災害以外の発災時でも、地域の復興のために必要となる円滑な資金繰り支援が必要になる局面というのは想定されると思います。あらゆる災害に応じて柔軟な制度として整備されるということを検討いただきたいと思います。

    最後に3点目、早期警戒制度です。こちらにつきましても、円滑な金融仲介機能を発揮して頂くという意味では、こうしたモニタリングの仕組みは必要だと思っております。一方で、先ほど事務負担のお話もございましたが、過度なモニタリングとなるようなケースが発生すると、逆に個別金融機関による信用収縮が発生して、かえってその機能の発揮が阻害されるといったケースがないように十分な御配慮をお願いしたいと思っております。

    私からは以上となります。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。それでは、原委員、お願いいたします。

    【原委員】

    原でございます。本ワーキング・グループで検討すべき課題や方向性をお示し頂きまして、誠にありがとうございました。方向性がよく理解できました。その上でコメントさせて頂きたいと思います。

    まず、地域金融力の強化ですけれども、単に金融機能を維持するのではなく、地域企業の価値向上と課題解決を通じて地域経済を持続的に発展させていくという、そういう政策枠組みが示されており、その方向性に賛成いたします。資料1が示すように地域金融機関には企業への成長投資、事業承継、人材確保の支援や、まちづくり・農林水産分野等の官民連携、地域課題の解決とインパクト投資等の役割が求められているということが明らかで、その実現に金融と非金融型の支援体制を地域全体で形成するということが不可欠であるということ、特に地域金融機関が他のプレイヤーと連携してコンサルティング力を発揮するために、共同化、人材育成やDX支援といったことを政策的に後押しするという必要性があるということもよく分かりました。

    地域金融力の強化を論じる際には、担保・保証慣行の再構築ということは避けて通ることができないと思います。今日も御紹介があったとおりですけれども、これは企業価値担保権制度につながるわけですが、中小企業金融は長年にわたり、やはり経営者保証とか不動産担保がどうしても前提になってきたところがあるわけですが、これが新規借入れや事業承継、再挑戦に挑むような場合の構造的な障害になっているということがこれまで様々なところで指摘されてきたことであります。そういった経営者保証の削減というのは、単なる負担を削減するというだけじゃなくて、やはり金融仲介の質を変革する側面があるんだろうと思います。

    企業価値担保権についてですが、企業全体の資産を担保の対象とするということで、企業の価値創造能力に着目した信用供与を可能にできるという点でも非常に魅力的な制度だと思っていますし、地域金融機関にとってこの制度が、物的担保に依存することから企業価値担保へ移行するということへの法的基盤を支えるという点でぜひ地域金融機関に活用頂きたいなと思っています。ただ、蓋を開けてみれば、結局不動産等の評価がメインになってしまっているというようなことがないように、将来的なキャッシュフローを適正に評価できるデータ整備を金融機関ができるような施策が今後重要になってくるかと思いますので、その点も併せて御検討頂ければと思いました。

    また、資本参加制度や資金交付制度の申請期限延長等に関してですけれども、これらの制度はいずれも例外的・時限的な公的支援として設計された制度だと思います。資本参加制度が恒久化すると、それが安易にされてしまうというようなことがあると、どうしても制度の緊張感が失われてしまって、常態的な公的関与を正当化するというようなことが発生してしまうおそれもあるかと思います。資本参加制度については、期限延長を行う際には、野崎委員もおっしゃっていたような、持続可能性を前提とした効果検証とモラルハザードの抑止を前提とするような法定化というのが重要なんだろうと思います。

    それから、震災特例についてです。東日本大震災時等で特例制度が効果を上げたということはそのとおりであるわけですが、本来、やはり臨時、例外的な措置であったということで、平時から常設するということはやはり発動基準の恣意化を招く懸念というのがどうしてもあるかと思います。その意味では、やはり人口減少等の構造の変化という要件について、それを発動基準に盛り込むことについては私も慎重であるべきだと思います。こうした意味で発動条件を可能な限り客観化し、明確に運用される形が望ましいように思います。

    また、現行の資金交付制度は、地域金融機関の再編効率化支援として一定の成果を上げているということを踏まえると、今回、御提案されているような資金交付制度の拡充については問題ないというように思ったわけですが、ただ、こちらもやはり制度目的から逸脱しない運用が必要だと思います。

    また、資本参加先の不祥事を踏まえたガバナンス対応ですけれども、その不祥事を受けて、当然、経営管理、内部統制の強化というのは不可避なわけですけれども、それを制度要件として過度に細分化してしまうと、これは経営の自律性を失うということにもつながって、公的関与を増加させる危険性もあるということになりますので、コンプライアンス、リスク管理体制の整備を交付参加の条件として明記することや、第三者モニタリングや外部評価によって規律を確保されているかどうかということを判断する方式が望ましいのではないかと感じました。

    また、協同組織金融機関の優先出資消却の柔軟化についてですけれども、資本政策上の柔軟性を高めるという、そういう点は理解できるわけですけれども、制度的前提を欠いたまま柔軟化が進んでしまうと、やはり債権者保護を損なうおそれがあるということで、消却制度を改める場合には、何らかの報告、異議申立てや監督・承認等の債権者保護制度を併設するということが不可欠であるということで、今後そういった債権者保護制度がどういったものとして想定されるのかということを考えるのが非常にポイントになるんだろうと思いました。

    以上であります。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。ここまで対面御参加の委員の皆様方に御発言頂きました。ありがとうございます。ここからオンラインで参加をしている3人の委員の方に御発言頂きます。最初に、小倉先生、お願いいたします。

    【小倉委員】

    発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。私は主に資料2の金融機能強化法の改正の方向性に関してコメントをさせて頂きたいと思います。

    2点ありましたけれども、資本参加制度のほうです。資本参加制度を長期目線で延長する御提案がありましたけれども、これに関しては慎重な検討が必要と考えております。一つは、政府といえども、資金的あるいは人的なリソースに限界があるはずですので、あまり多くのところに資本参加してしまうと、モニタリングが手薄になるおそれがあるかなという、そういう懸念があるというのがまず1点目です。

    もう一つが、市場の観点から、あんまり安易に優先株式を発行できるような環境をつくってしまうと、将来的に株式価値の希薄化が発生しやすい、ランダムに発生するという懸念を市場参加者にもたらしてしまうおそれがあります。そうすると、特に上場している金融機関であれば株価が低迷してしまうという問題が生じて、市場での資本調達に支障が生じるおそれがあるという、そういう副作用があるので、その点は意識する必要があるかと思っております。

    それから、予めコストをかけて自前で自己資本の充実を図るという、そういうインセンティブを確保しながら、実際にそうしてきた機関と資本参加制度を後から活用する機関との間に不公平がないようにするために、やっぱり配当とか利息の設定をできるだけ市場の実勢と揃えるようにするなどの注意深い制度設計をする必要があると思います。

    その一方で、大規模自然災害発生への迅速な対応を可能にするために、そういった震災特例のようなものを恒久化することというのは非常に重要な措置であろうと思いますが、やっぱりそれでも制度設計には十分に注意を払う必要があると思います。

    それから、協同組織金融機関の優先出資消却の原資について、金融機能強化法よりも制約が多いということについては合理的な理由があまり見出せませんので、優先出資消却の制約を緩めることには私は賛成したいと思います。

    それから、もう一つ、資金交付制度です。資金交付制度に関しまして、独禁法の特例措置の期限と合わせてあと5年延長するというのは非常に合理的な措置であると思いますので、それについても私は賛成です。

    それから、効率化要件について、インフレ調整をするという点についても、それはそれで合理的だと思いますので、そのような措置を入れたほうがいいのではないかなと思う次第です。

    それから、協同組織金融機関で見られた不祥事、これを防ぐ手立てとして、これはちょっと違う文脈でしたけれども、最初の地域金融力の強化に関する資料の中にあったリスク管理とか内部管理の共同化という方策がかなり有効ではないかなと考えております。共同化することによって、よその金融機関の目が入るということになりますので、外部の目が結果的に入ることになる。そうすると、そういった問題を防ぐという効果が期待できるのではないかなと思った次第です。その場合も、問題を隠している金融機関が逃げないように、参加を極力強制するような形を取ったほうがよいと思います。

    それからあと1点だけ、早期警戒制度に関してです。金融庁では、数年前から融資契約レベルのデータを収集されているといろいろなところから聞いております。ぜひそれを活用して金融庁内で分析をして頂いて、それを個別金融機関向けのコンサルティングに活用するようにして頂けるとよいと思っております。

    それから、ネーミングですね。早期警戒制度というネーミングが非常に強面な感じがしておりまして、早期是正措置に似ていて、金融機関側に警戒感を持たれてしまうのではないかなという気がしましたので、この辺のネーミングも少し再考して頂いたほうがいいのかなと思ったというところでございます。

    それから、その他、地域金融力の強化に関する考え方、資料1の内容に関しましては、私は基本的に賛成でございます。特に投資専門会社によるエクイティ出資に関わるいろいろな要件の明確化等については大変賛成でございます。

    私からは以上です。

    【家森座長】

    小倉先生、ありがとうございました。それでは続いて、河野委員、お願いいたします。

    【河野委員】

    日本消費者協会の河野です。御説明ありがとうございました。3つの論点について、受け止めを申し上げます。

    まず、地域金融力の強化の全体像については、人口減少という構造的変化に対して、地域金融機関が地域経済の活性化策を提案し伴走的な支援を行うという方向性に異論はございませんし、また、その実現のための方策として提案された具体策を進めるということについても賛同いたします。

    その上で、論点2として提案されている金融機能強化法等の改正については、個々の施策の是非を判断する専門的知見が私にはございませんので反対はできないという前提ですけれども、現在の地域金融サービスを担う既存の組織全てがこうした施策の対象に値するのかという点については大変気になっております。これまでも他の方の御発言にありましたように、いわき信用組合の事例は例外であると思いたいんですけれども、ガバナンスはもちろん、経営手腕等も大いに疑問がある事業者が存在する状況で、企業経営の品質を考慮せずに制度の延長策の具体を議論するのが適当かどうかというのは考えるところがありました。

    資本参加制度と資金交付制度の期限延長は、地域銀行の今後に対しては、予見性を高め、安定経営に一種のお墨付きを与えることになるとは思うものの、地域銀行にファイナンスとコンサルティングに関する十分な資質があるのかという点については、例えば第2回で事例報告頂いたSoFun様が起業したのは、既存の組織に必要な機能がなかった証左ではないかと思うところですので、地域課題の解決という視点からは、確実な資金調達に加えて、適切な経営手法や人材の支援について、事後に準備したり教育・研修するというよりは、現状どれだけの力量があるのか、そのための方策を持っているかなどという点の確認もぜひして頂きたいと思いました。2つの制度の申請期限延長については、地域金融機関の皆さんのやる気を最大限に引き出す方策として、結果、好事例が生まれることを期待したいと思います。

    もう1点、多様なステークホルダーの参加という点で、資料1の9ページに地域金融機関による地域活性化の取組事例の共有と活用のためのプラットフォームの図を示して頂いたわけですけれども、フィンテックの拡大で地域に限定されずに金融サービスを展開している金融機関や大手デジタルプラットフォームにおいても、eコマースの実績等を基にして地域創生や次世代育成、事業継承などの社会貢献プロジェクトに力を入れている企業もあるところ、多様なプレイヤーとの連携・協働を想定しないと成功にはつながらないのではないかと思いました。

    最後に、論点3として提案頂きました早期警戒制度については、事務局提案のとおり、現行制度の見直しによる精緻化、確度を高める方向に賛成でございます。

    私からは以上です。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。それでは、大庫委員、お願いいたします。

    【大庫委員】

    大庫です。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。

    3つの論点に入っていく前に、私がこの3つに共通して感じていることを少し申し上げていきたいと思います。ここに書いてある内容について、基本的には私は、今から起きてくる様々なことに対処するために、前向きに地域経済をよくするという意味において、基本的にはこういう方向でやっていってもいいのではないかなと思います。同時に、エントリーをするということについて言えば、各金融機関の使いやすさ等も考えて、なるべくガバナンス力の高いところについては、届出制などを拡充していくということもありだと思っています。一方、エントリーをしやすくすることで、逆にモニタリングをどうしていくかについては、ぜひ厳しい視点で見ていって頂きたいと。これらの3つを進めていくためには、モニタリングはやっぱり私は欠かせないと思っています。

    なぜそんなふうに思うのかということについて少しお話をさせて頂きたいんですけれども、2つの事例があります。一つは、独占的な市場を持っているケースについてです。これは決して長野銀行さん、八十二銀行さんに水を差すつもりはないのですが、独占的な市場において純利益を上回るような配当をホールディングスに対して行っている事例が事実として存在しています。当然ながら、純利益を上回る配当をすれば、純資産、自己資本は低下していきます。自己資本というのは結局はその地域に対する信用リスクのテイク能力を示すということになるかと思います。どこまで自己資本を減らして地域にコミットしていると言えるかどうか。現実にその銀行の当該県における貸出供給は減少してきています。

    加えて、純利益を超える配当をした同じ頃、何が起きていたかというと、赤字を長年にわたって垂れ流しているデジタルバンクの増資が行われています。結局のところ、独占的な市場で得た利益を競争市場に持っていくことが今の制度の中では許されてしまい、問題だと私は考えています。独占的な市場をつくるということは、その地域経済に資するため、というところに本筋があるわけで、競争市場のほうに持っていくということはかなり本来の趣旨とは違った見方ではないかと思います。ただ、ホールディングスに入ってしまえば、お金は色がないので、その辺りはなかなか、こういうふうに使っているんだというところまでは言い切れませんけれども、そういうことがある。

    なおかつ競争市場で戦っているその他の金融機関にとっては、そういう独占的な市場の利益を活用するということができませんので、公正競争条件という観点から見ても、かなり今の制度というのは歪んでいるのかなというふうに私自身は感じているというところであります。

    もう一つ申し上げたいと思いますけれども、2021年の銀行法改正に伴って、業務規制を緩和いたしました。そのときの議論というのは、人口減少が進んでいくと地域金融市場の規模が小さくなると。結果として地域金融機関がままならなくなるので、地域経済が危なくなる。何とか地域金融機関に収益確保の道筋を立てたいというところで、幾つかの業務規制緩和がなされたわけかと思います。それは基本的には利益を得るということが求められているわけですが、第1回目のお話の中に報告がありましたが、必ずしもどの金融機関も、銀行業高度化等会社で利益が全てのところで上がっているというわけではないということ。始まったばかりではないのかという御意見ももちろんありますが、一方で、どなたが銀行業高度化等会社の経営をされているかというのを見ていきますと、多くは銀行出身者であり、当然銀行出身者の中でもしっかりとした実績を収めている方もいるということは分かっていてあえて申し上げますが、デジタル、IT、HRなど、基本的にはレッドオーシャンそのもののビジネスを、果たして業界のプロでない方がやって、どれぐらい利益を本気になって追求しているのかなというふうに見てみると、やっぱりどうなんだろうと。どちらかというと地域金融力の強化という文脈よりも、むしろ銀行内の人事、処遇みたいなことも御検討されての結果なのかなというふうに思ってしまう次第であります。

    こうしたことを考えていきますと、こういう制度を改定していく、それによって銀行、地域金融機関経営をやりやすくなるということはいいと思いますが、しっかりと趣旨に合った行動をされているかどうかは、きちんとモニタリングをしていくべきではないのかなというふうに思います。

    あと、個別にちょっと申し上げたいことがありますけれども、それは金融機能強化法についてなんですが、これは何かイベントがあったときの対応と、それから、基本的には経営統合を進めていくためのある種のインセンティブを供与するということでつくられているかというふうに認識しています。前回のワーキング・グループの中でも御質問させて頂きましたけれども、単独行によるシステム共同化というところにどこまでインセンティブを与えるかというところが1つ気になるところであります。協同金融機関の皆様からの御説明は、小さいところであり、審査基準などを多様化していく意味でも、そういうことは支援があってもいいのではないかということに対しては、非常に私も同意したいと思います。一方、銀行については、単独の共同化による支援を行うということは、逆に経営統合等のディスインセンティブにもなりかねませんので、あと1か月、ちょっと十分な議論をされて、あるいは議論をしてみたいなというふうに思っているところであります。

    私からは以上になります。

    【家森座長】

    どうもありがとうございました。

    続いて、私のほうから発言をした後、オブザーバーの方、さらには時間が残れば委員の方々に御発言頂こうと思います。

    まず、初めに、論点の1つ目については、この方向性をぜひ強力に推進して頂きたいと考えます。地域金融力はしっかりした事業性評価に基づいて、金融支援はもちろん、DX支援などの幅広い非金融支援を実施することで、地域企業の価値を向上させることが鍵になります。投資専門会社についての規制緩和など、地方創生に資する規制緩和については進めて頂くのが適当だと思います。

    また、事業性評価に基づく融資の推進のためには、中小企業におけるデータ生成、これは原先生からも出ていたことでありますけれども、データの生成とか、データの金融機関における活用を促すことが必要であります。これについては、中小企業庁のほうでもそういう取組をされておりますので、ぜひ政府一体となって進めて頂ければと考えます。

    それから、地域経済の貢献という観点で言えば、金融経済教育についても、地域金融力の強化の中で触れて頂くのも適切かなというふうに感じたところです。

    これまでの規制緩和によって、かなりのことが創意工夫された結果として実施できるようになっておりまして、実際に十分に活用しておられる金融機関も出てきています。今後、その機会を生かす、つまり、地域金融力を発揮する金融機関が増えるかが重要であり、いかに前向きにそういう対応を促すインセンティブを制度の中に組み込めるかが鍵になるというふうに思っております。

    資本参加制度と資金交付制度の期限延長等は必要であると思いますが、今日、各先生方からも出ているように、私もモラルハザードや、資本参加先の経営の質のレベルの確保、あるいは事後のモニタリングの強化ということが前提となります。

    また、共同化などについても、対象を拡充することは望ましいというふうに考えます。

    資本参加制度について、震災特例の制度化について、反対ではありませんが、そうした不測の大災害に備えるのも、金融機関の経営者の本来的な責任であるということも付言しておきたいです。したがって、震災特例の制度化が日頃の備えを怠るインセンティブにならないように、監督指針の改正などによって、日常的な監督を強化する必要がないかも検討頂く必要があると思います。

    制度の延長・拡充は、本日御議論があったように、私もモラルハザードの防止とガバナンスの強化を両輪とし、地域の自助努力を最大限に引き出す設計とすることが重要だと考えております。

    また、資本参加先に対しては、国による資本参加が特別な対応であるということを踏まえますと、さらには昨今の事案の反省から、通常よりも深度のある監督が不可欠だということも併せて指摘しておきたいと思います。例えば、既に審議会等で御指摘があったように、全ての資本参加先について、金融機能強化審査会の対象にすることには、私も違和感がございません。

    資金交付制度に関して、非競争領域の共同化を進めるインセンティブとして有益だというふうに思っておりますが、地域特性に応じた多様なビジネスモデルの展開を妨げないことにも留意をしておくべきだと思います。

    また、協同組織金融機関に対する優先出資の消却については、御提案に異存はございません。これらに限らず、協同組織金融機関の特性に応じた柔軟な制度運用を今後も検討して頂きたいと思います。

    早期警戒制度についてですけれども、金利リスクなどの観点で、早期に対応することができていないということは課題だと感じます。地域金融機関の経営者の中には、目先の社内融和を優先し、抜本的な対応に踏み込めない場合や、いわゆる正常性バイアスから現状を正しく把握できていないことがあり得ると思います。本来は社外取締役や職員外理事などにその機能を果たしてもらうということを期待したいわけでありますけれども、そういうことを期待した上で、金融庁において将来のリスクを先取りして対話を行う動的な監督の趣旨には賛同いたします。ただ、早期警戒の段階で金融庁が結論を示すのではなく、あくまで金融機関自身が主体的に考え、行動することを促す仕組みとすることが望ましいのではないかと考えております。

    私からは以上でございます。

    続きまして、オブザーバーの方々から御発言がございましたらお願いをいたします。今のところよろしいでしょうか。

    それでは、ここまでで、特に八十二銀行様には御質問はなかったのですが、私から1つだけ質問がございます。今回、資金交付を受けられましたけれども、こういう点が不便だったということがありましたらお願いします。ここでなかなか発言できないかもしれませんけど。

    【樋代副頭取】

    基本的にはなかったです、本当に。やっぱりハードルになるのは特例のほうがスピード感を持ってやっていくのには厳しいと思っていたのを、御当局の御協力もあって、さっき申し上げたスピード感でできたと。交付制度はいろんな書類の提出とかありますけれども、当たり前ですけど、やっぱり資金交付して頂くので、ちゃんと疎明しながらやっていかなきゃいけないので、そこに対しての不満等はなくて、逆にやっぱりいろんなところで御指摘を頂くところが、おべんちゃらでも何でもなくて本当にありがたいなと思って、自分自身たちで気づかないところを指摘頂いた。あるいはシステム統合についても、合併に向けて非常に有益な御指摘を御当局から頂いて、ただでコンサルをやってもらっているくらいありがたいなと思っています。すみません。ありがとうございます。

    【家森座長】

    ありがとうございます。現状、モニタリングは機能しているという御発言でございました。

    それでは、事務局から何か追加で御発言はありますか。

    【今野総合政策課長】

    それでは、資料1に関して、山本先生から、9ページの地域活性化の取組事例の共有の活用ということで、しっかりと背中を押すようにというお話でありますとか、あとは5ページのところで、日本全国や世界に行くプレイヤーのために内外のプレイヤーとの連携という話、これはまさに9ページの取組事例の共有というところを実を伴ったものにしていくべきという御指摘と理解しました。我々の行政機関の出先機関としては財務局がございますので、財務局ともよくよく連携をして、この場が形式的な議論の場にならないように、しっかりと実を伴った場ができるよう、今後ちゃんとやっていきたいと思っております。

    あと、翁先生から、今後の人口動態、人口減少については、事業承継、DX化などについては、地域金融機関自らの問題であるというような御指摘がありました。1ページ目について、2行目から3行目にかけて、「地域金融には、中小零細企業を資金繰り支援等で下支えすることにとどまらず」とありまして、それが本業で、それだけじゃなくて、それ以外の内外のプレイヤーと連携をすること、M&A、あるいはDX支援、それ自身が自らの業務の役割、本来業務であるのであると、そこをしっかりと果たして頂くことが、地域金融機関そのものの持続可能性にもつながるんだというメッセージを出しているつもりでございます。

    あと、DXについて、自らできない地域金融機関、コンサルできないところもあるという7ページについての御指摘もあったかと思いますが、おっしゃるとおり全ての地域金融機関がITコンサルできるとは思いませんので、専門家との連携をしながら伴走支援していくというのがあるのかなと思っております。

    あと、河野先生から、また資料1の9ページに戻りますけれども、このプラットフォームの中で、必ずしも地域で完結せずに、域内域外関わらず、デジタルであるとか様々なプラットフォームがあるので、そういう知見もどんどん入れていくようにという御指摘もあったかと思いますので、地域活性化ネットワークを運営していく中で、そういった御指摘も踏まえて対応していきたいと思っております。

    私からは以上です。

    【横山信用制度参事官】

    ありがとうございました。何人かの先生方から、金融機能強化法の資本参加制度の長期的な目線での延長について、御意見を頂きましたけれども、モラルハザードに陥らないようにする必要があるというのは御指摘のとおりかと思っております。制度を延長したとしても、経営強化計画を審査する中で、公的資金が返済される見込みがあるか、しっかりチェックする必要があると思っておりますし、これまでの資本参加の実績でいえば、基本的にはしっかり返済は進んでいると認識しておりますので、そういった運用の中で、モラルハザードにならないようなチェックをこれまで以上にしていく必要があると考えております。

    また、山本委員から御指摘がありましたように、資本参加先での不祥事があったということで、ガバナンスの強化については第三者の目を入れることが非常に重要ではないかと思っています。その中でも幾つかありますけれども、金融機能強化審査会について、協同組織金融機関の場合は今、意見聴取の対象外となっておりますけれども、それを全件ちゃんと審査会の意見を聞くようにすることが考えられるかと思っております。また、員外監事など、外部の目をしっかり入れることも重要なのではないかと考えております。

    また、原委員から御指摘がありましたように、優先出資に関しては、債権者保護手続も併せて整備することで、しっかりとステークホルダーの意見を反映するようなプロセスが必要ではないかというふうに考えております。

    また、大庫委員から御指摘がありましたように、システム共同化に資金交付を行うことが、経営統合のディスインセンティブにならないようにということは、重要な点だと思っております。補助率や補助上限をこれから検討するわけですけれども、経営統合の場合と共同化の場合で補助率や補助上限の差をつけることで、インセンティブの差をつけるというような対応が考えられるのではないかというふうに、現在のところは考えてございます。

    私からは以上です。

    【小野銀行第二課長】

    銀行第二課長の小野です。手短にお答えさせて頂きます。

    早期警戒制度については様々な御意見頂きましたので、それを踏まえて見直しに生かしていきたいと思っております。

    1点、大庫先生から、経営統合による独占的な利益が地域のために使われていないという御指摘がございまして、ちょっと個別の事案についてはお答えできませんけれども、金融庁としましては、独禁法特例を適用した場合には、5年の経過期間を超えて独占の弊害が生じないようにフォローする必要があると。また、資金交付制度を適用した統合等については、5年を超える計画期間についてフォローすることになっています。いずれにしましても、委員御指摘の点は、今後将来、仮に地域金融機関の再編が進んだ場合には生じ得る論点であり、当局としてもしっかりモニタリングできるように考えていきたいと思います。

    あともう1点、銀行業高度化等会社が銀行の都合のよいように使われているんじゃないかという御指摘もありました。これにつきましても、しっかり地域活性化のために使われているかどうかということについてモニタリングしていきたいと考えております。

    以上です。

    【家森座長】

    ありがとうございます。

    あと5分ぐらいあるので、1人か2人追加でもう一度御発言頂くことは可能ですけれども、よろしいでしょうか。西原先生、どうぞ。

    【西原委員】

    すみません、1点だけ失礼します。先ほどの発言の中で、資本参加制度の本則の期限の短縮化の必要性について申し上げたのですが、その背景について申し上げる時間がなかったので、申し上げます。

    資料2の18ページの図表1の地域金融機関の業務純益のギャップの推移と、図表3の貸出の伸びが示されています。t+6以降をみると、資本参加先の貸出はどんどん伸びている一方、図表1の業務純益のギャップが悪化しています。すなわち、資本参加先の貸出利回り、利益率が縮小していることを示しています。これは、先ほど大庫先生も指摘されていた競争市場における公平な競争環境を、資本参加先が利回りを落とすことで損ねているとも言え、副作用が出てきていると指摘させて頂きます。

    以上、補足説明でした。

    【家森座長】

    ありがとうございます。

    それでは、野崎委員、どうぞ。

    【野崎委員】

    時間があるということで、すみません。日本全国への企業の展開ですとか海外に関わるところのコメントがありましたけれども、私は今、問題とされているのは、例えば、具体的に言えばスタンダード市場とかグロース市場ですかね、この辺で漂っている中堅企業の問題というのが大きくて、なかなかこれがメガバンクの目線には入ってこないということでありまして、まさにここは地域金融機関が役割を果たすべきところかなというふうに考えています。

    具体的には、やはり株式の流動性がないおかげで、投資家からのエンゲージメントが不足しているんですよね。ですから、こういったところにやはり地域金融機関、なかんずく地域銀行が、かなりある程度の、コンサルまでいかなくても、何らかのエンゲージメントをしていくというところが必要かなというふうに思っています。

    もう1点だけ、事業性融資は非常に難度が高いのは確かなんですけれども、ただやっぱりキャッシュフローをベースにしたレンディングというのはグローバルな潮流でありますので、ここを抜きにして、やはりこれからのクレジットというのは語れないだろうというふうに思っています。やはり、もしこれがまた今までの形の融資ですと、それがやはりリコース性を高めて、結果的に例えば経営者保証の問題になってきているというのはありますので、ある程度のノンリコース性を高めるような融資の在り方というのは今後追求しなきゃいけないし、難しさに関してはやはり、先ほどの情報共有、あるいはベストプラクティスの共有という話がありましたけれども、私はやっぱり各プレイヤーの意識を変えるためには、ベストプラクティスを開示して、ピアプレッシャーを与えるというのが正しいやり方だというふうに考えていますので、そういった形で、こういった新しい融資の在り方というのも広められればなというふうに考えています。ありがとうございます。

    【家森座長】

    ありがとうございました。ほか、よろしいでしょうか。あとお一人ぐらいは御発言できますけれども。あるいは、オブザーバーの方もよろしいでしょうか。

    それでは、大体よい時間になっておりますので、本日、概ね事務局の案の方向性については御賛同頂いておりますが、同時に幾つもの重要な留意点、注意すべき点についても御指摘を頂いておりますので、それらも踏まえて、事務局のほうでは具体的な取りまとめに入って頂ければと思っております。

    それでは、本日の討議をここまでにいたしまして、事務局、どうぞよろしくお願いいたします。

    【横山信用制度参事官】

    次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内をさせて頂きます。よろしくお願いいたします。

    【家森座長】

    それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了いたします。議事進行に御協力頂きまして、ありがとうございました。

    ―― 了 ――

(参考)開催実績

問合せ先
  • 電話受付
    • 受付時間:平日10時00分~17時00分

    • 電話番号:0570-016811(IP電話からは03-5251-6811)

  • ウェブサイト受付

(注)金融行政等に関する一般的なご質問等は金融サービス利用者相談室で承ります。

所管

企画市場局総務課信用制度参事官室(庁内用:5406)

サイトマップ

ページの先頭に戻る