金融審議会金融分科会第一部会(第49回)議事録

日時:平成19年11月21日 10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

それでは、定刻になりましたので、まだ若干ご出席予定で到着されていない委員の方もおられますが、時間が限られておりますので、本日の金融審議会金融分科会第一部会、第49回会合を開催したいと思います。皆様には、本日はご多用中のところをご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

いつものことですが、本日も議事は公開で行わせて頂いております。本日は、戸井田政務官にお越し頂いております。政務官、何か一言。いいですか。

それでは、本日の議事に移らせて頂きます。本日は非常に盛り沢山ですので、まず前半では、プロに限定した取引の活発化及び取引所の取扱商品の多様化に関してご審議を頂きたいというふうに思います。後半は、前回に引き続き、銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直しが議題ですが、前半は取引所関係の論点をご審議頂きたいと思います。

それで、これまでの議論を踏まえて、さらにご議論頂きたい論点につきまして、まず事務局から説明を頂いて、その後、討議に入りたいと思います。それでは、まず事務局からの説明をお願いします。

○井藤市場業務管理官

それでは、早速でございますが、お手元にお配りしております資料1の論点メモ(5)及び資料3の関係資料を用いまして、説明させて頂きたいと思います。

まず、資料1の1ページでございますが、「プロに限定した取引の活発化について」でございますが、前回ご議論頂きました枠組みといたしまして、1つは「現行のプロ私募を活用した枠組み」、2つ目に「取引参加者を特定投資家にまで拡大した場合の枠組み」についてご議論頂いたわけでございますが、今回さらにご議論頂きたい点といたしまして、下にずらっとありますが、最初にプロ私募を活用した枠組みにつきましては、取引所の子会社等の業務範囲について、まずご議論頂きたいと考えております。

取引所がプロに限定した取引の場としてのPTS業務を行う金融商品取引業者が子会社等を設立することについてでございますけれども、資料3の3ページ目をご覧頂きたいんですけれども、現行の子会社等に関する規制でございますが、まず子会社の業務範囲といたしましては、親会社と同様に、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務と。次のバーでございますが、ただし、認可を受けた場合には、市場の開設に関連する業務を行うことができるということになっております。

この関係で、PTS開設というものをどういうふうに考えるかということでございますが、次の黒マルでございますが、2ページ目に幾つか点を挙げてございますが、時間の関係で読み上げることは割愛させて頂きますけれども、これらの点を踏まえますと、取引所の関連業務として整理することが可能ではないかと。その上で、さらにそれを行うことによって弊害といったものが生じるおそれも低いのではないか。従って、子会社としてPTS、その場合は専業である必要があるというふうには考えておりますけれども、PTSを行う金融商品取引業者を設立することを認めるべきではないかという点が最初のポイントでございます。

次の2ページ目でございますが、2つ目のパターンといたしまして、取引参加者を特定投資家にまで拡大した場合の枠組みということでございますけれども、現行の取引所の主要株主規制につきまして、これは資料3の同じく5ページ目をご覧頂きたいと思いますが、原則といたしまして、取引所につきましては、その20%以上の議決権の取得・保有を禁止されてございます。ただし、取引所やその持株会社等が所有する場合は100%までの取得・保有が認められていると。さらに、地方公共団体、その他政令で定める者については、認可を受けて50%までの範囲で議決権の取得・保有が可能ということになってございます。現在、政令におきましては、地方公共団体のみが規定されているという状況になってございます。

プロ向け市場の開設に関しまして、我が国の取引所が、海外の取引所と共同出資によって、プロ向け市場を開設する取引所を設立するということを考えるわけでございますが、この場合、この主要株主規制につきまして、どのように考えるべきかという論点がございましたが、これにつきましては、3ページ目の黒マルですけれども、小さいポツの方ですけれども、プロ向け市場の創設に関して、先行する海外取引所のノウハウ等を活用していくことは非常に有効な方策ではないかという点。次に、我が国取引所の子会社等として、そのグループ内にプロに限定した市場を開設する取引所が設立される場合には、中長期的な取引所業務の健全かつ適切な運営の確保というような点からも問題が少ないのではないかと、こういった点を踏まえますと、我が国取引所が子会社等として、プロに限定した市場を開設する取引所を設立する場合であって、その出資の残りの範囲内で、海外取引所による議決権の取得・保有を認めるということは問題がないのではないかということについて、ご議論頂きたいと思います。

次に、投資家に対する情報提供でございますけれども、このプロ向け市場のコンセプトということを踏まえれば、公衆縦覧を前提とした現行の法定開示というものは免除することでよいのではないかと。その場合であっても企業内容の虚偽等といったものを防ぐという観点からは、以下のような法的枠組みを設ける必要があるのではないかということでございまして、1点目は、3ページ目の一番下でございますが、発行体は、そうは言っても少なくとも年1回以上、企業等の内容やリスクに関する的確な情報の提供をすることが必要ではないか。次のポツですが、その際、プロ市場のコンセプトにかんがみまして、提供すべき情報の具体的な内容について、様式・基準等については法定しない。すなわち、言語や様式、会計基準、監査証明の有無といった詳細な点については、開設者のルール等によって自主的に設定するということでよいのではないか。

次に、提供された虚偽である場合等については、これはやはり問題が生じるわけでございますので、民事上の賠償責任など、こういったものによってきっちりとした情報提供がされることを担保すべきではないかということです。

次に、タイムリーディスクロージャーに関しては、これは開設者において、タイムリーに集約して提供する仕組みというのを設けてはどうかという点でございます。

次に転売制限。4ページ目の一番下でございますけれども、一般投資家への流通を防止するため、転売制限等の方策を講じる一方で、その発行企業のオーナー等、一般投資家が既に保有するものについては、当該市場において、転売できることとしてはどうかということでございます。

1ページおめくり頂きまして、5ページ目でございますけれども、現行制度上、ご案内の通り、株主数が500人以上になった国内会社に対しては、通常の開示義務がかかることになるということでございます。プロ向けの市場について、これは我々として相当程度の流動性が生じるということを想定して、期待もしているわけですけれども、そうであるとすれば、こうした一般の開示というものがかかっては、プロ市場としての意味がなくなってくるわけでございますので、この基準の緩和の検討が必要となるのではないかという点が出てこようかと思います。具体的には、現在基準としている500人というものから、例えば適格機関投資家を控除することや、この500人という基準を引き上げることなどが考えられるのではないかという点が論点になかろうかと思います。

次に、公開買付制度、大量保有報告制度については、基本的に現行制度と同等のものがやはり必要なのではないかということについて、ご議論頂ければと考えております。

次に1ページおめくり頂きまして、取引所の取扱商品の多様化に関しまして、前回ETF等につきましては、かなり方向性を示して頂いたわけでございますけれども、残りの論点といたしまして、金融商品取引所と商品取引所との相互参入にかかる点が残っていたかと思います。これにつきましては、我が国取引所の経営基盤を強化し、国際競争力の強化を図っていくという観点から、これを可能とする制度的な土台をつくる必要があるということが前回のご議論であったかと思いますが、そのための具体的制度整備の方向性といたしまして、真ん中より上の2つ目の黒マルでございますが、この場合、金融商品取引法に商品取引所法を統合していくべきという議論もあろうかと思います。他方で、コモディティ・デリバティブ取引については、引き続き産業政策的な観点からの規制が必要との指摘があろうかと思います。このような状況の中で両法を統合しようとすれば、金融商品取引法というのは、金融商品等に関する横断的な法制としての性格を持っているわけでございますが、この性格を損なうのではないかという問題が生じるのではないかという点があろうかと思います。

こうした中で、次の黒マルでございますけれども、フルラインの品揃えを可能とするグループ化等に向けた制度整備を早急に行っていくためには、両法制の枠組みの下ということであっても、資本提携等を通じた相互参入を可能としていくことが、まず喫緊の課題というふうに考えられるのではないかということでございます。

このために必要となる法的な整理や法的措置等についてでございますけれども、1ページおめくり頂きまして7ページでございますけれども、まず、コモディティ・デリバティブ市場の開設業務についての位置付けでございますが、これは最初の黒マルでございますけれども、その性質等を考えますと、金融商品取引所の関連業務として整理することが可能ではないだろうかということ。その場合、関連業務であれば、現行法上、資料3の16ページをご覧頂きたいんですけれども、真ん中のカラム、金融商品取引法というところでございますが、取引所の業務の範囲です。子会社につきましては、先ほどご説明した通り、認可を受ければ関連業務ができると。取引所本体については、金融商品取引法の一番上ですが、市場の開設及びこれに附帯する業務だけに限定されておるわけでございますけれども、この場合、金融商品取引所本体でコモディティ・デリバティブ市場を開設した場合であっても、弊害が生じるおそれというのは、コモディティ・デリバティブ市場の性質等を考えれば低いのではないかと。従って、金融商品取引所本体の業務範囲を拡大し、子会社の場合と同様に、認可を受けてコモディティ・デリバティブ市場を本体で開設することも選択肢として用意することが適当ではないかという点でございます。(注)といたしまして、商品取引所法との関係等々書いてございますけれども、当然これは金融商品取引所法の手直しだけでできる問題ではなくて、商品取引所法において、所要の規定を整理する必要があるということでございまして、また、こういった話を考えていく際にはイコールフッティングの観点から、商品取引所が子会社として金融商品取引所を設立、保有するといったこと等についても、同様に検討することが必要となったということだと思います。

次に、最後のページ、その他といたしまして、コモディティ・デリバティブの取扱いに加えまして、以下のような点についてご議論の必要があるのではないかということでございまして、排出権についてでございますが、現状、法的な位置付け等について、必ずしも明確ではないということでございますが、諸外国ではいろいろと取引が行われていると、こうした中で、今後我が国においてもこうした取引が活発化することが考えられるという中で、関連業務として認めていくことが、まず考えられるんじゃないかと。さらに法的な位置付け等の明確化が図られる等の状況が整った場合に向けて、金融商品として取り扱うことについても幅広く検討する必要があるのではないかという点でございます。

以上、駆け足でございましたが。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今説明がありました論点メモ(5)に沿って、ご意見を頂きたいと思いますが、今ご説明がありましたように、大きく2つの部分に分かれておりますので、まずは前半の論点メモの1ページから5ページまでの「1.プロに限定した取引の活発化について」という部分についてご意見を頂きたいと思います。その後、引き続き2.の方についてご意見を頂きたいというふうに、分けて議論させて頂きたいと思いますので、まずは1ページから5ページの部分について、ご意見、あるいはご質問がございましたら、ご自由にお願いしたいと思います。

飛山委員。

○飛山専門委員

プロ向け市場のところですけれども、今回検討すべき課題として挙げられている論点ですとか、対応の方向性ということにつきましては、基本的には異存はございません。この論点メモの対応の方向性で対応頂ければ、私どももプロ向け市場を考えておりますので、非常にありがたいと思っております。

ただ、取引に参加できる者の範囲については、流動性確保の観点から、なるべく広くお願いしたいということで、特定投資家まで拡大して頂きたいと思っています。

それから、資料には書いていない論点で、ちょっと細かい点になりますけれども、1点お願いしたいことがございます。それは海外の証券業者に対する支援についてのお願いでありまして、現在の金融商品取引法では、日本に拠点を持たない海外の証券会社が、日本の取引所の参加者になれるという枠組みはあるわけでございます。いわゆるリモートメンバーシップと言っておりますけれども、そういう枠組みがあるわけでございますけれども、そのような証券会社につきましては画一的に、事業年度を日本と合わせまして、4月から翌年3月までとして財務諸表等をつくるということが法律で義務付けられております。外国の証券会社でございますと、通常1月から12月を事業年度としておりますので、日本のリモートメンバーシップを得ようとするときに、3月決算に合わせるというために財務諸表等を再作成しないといけないという必要が生じておりますので、こうした点が大きな負担になっております。

私どもでは、ロンドン証券取引所と合弁でプロ向け市場を設立したいと考えておりますが、そこには国内の証券会社だけではなくて、外国からも広く証券会社を取引参加者として募りたいと考えておりますので、ぜひ海外の業者に対する規制について、適切な見直しをお願いしたいということでございます。

以上でございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

ほかにご意見いかがでしょうか。どうぞ、黒沼委員。

○黒沼委員

私もおおむね賛成ですけれども、二、三、質問させて頂きたいと思います。

第一に、海外の取引所に50%以下の範囲内で議決権の取得・保有を認めるということなんですけれども、以前に取引所持株会社を導入したときには、私は海外の市場との連携も考えてつくられたと理解していたのですが、現在でも海外の取引所が日本国内に取引所持株会社を設立すれば、その持株会社は国内の取引所の株式を持てるのではないかと思うのですが、そういうやり方ではなくて、直接海外の取引所に保有させるのが適当だと考える理由は何かということです。

今回、必要が生じたので一定の場合に限ってこういうことを認めるというのですけれども、主要株主としての認可や届出が必要ということになれば、その限りで監督が及ぶわけですから、海外との連携を重視していけば、もっと広く、一般的に取得規制を緩和するやり方も考えられるのではないかと思います。

第2点目は、プロ向けの取引所市場の開設を認めるというときに、法定開示を課さないというのは私も賛成なのですけれども、発行者に対する監督権限を留保するのか否か、よく分からないので、その点をお教え頂きたいと思います。法定開示を課さないことになると、虚偽情報の提供に対する罰則規定はあるにしても、例えば継続開示書類の開示違反に対する課徴金などはかけられないのではないかと思うのですが、何か行政上の監督権限を留保することを考えておられるのかということをお教えください。

第3に、プロ向け市場に上場した企業については、公募は認めるのでしょうか。認めるとすれば、それは現在と同じような仕組みにするのか。現在と同じような公募を認めるとなると、公募をした後に、法定の継続開示義務がかかってきて不都合が生じると思うのですが、そうすると公募を認めないのか、それとももっと簡易な公募という別の制度を考えておられるのかという点をお教え頂きたいと思います。

○池尾部会長

そうしたら、井藤さんの方からお願いできますか。

○井藤市場業務管理官

まず、最初の海外の取引所との関係の主要株主規制について、私の方からお答えしたいと思います。

資料3の5ページなんですけれども、金融商品取引所の主要株主規制、50%以下の議決権の取得・保有が可能だということで、政令で定める地方公共団体に加えて、他の者についても可能とするという規定があるわけですけれども、その認可基準の方をご覧頂きますと、まず、マル2の認可申請者が取引所の業務の公共性に関し十分な理解を有する、ということ。それから順序が逆になりますけれども、マル1取引所の業務の健全かつ適切な運営を損なうおそれがないこと。

第1点目について、これは中長期的な観点からの安定性ということを重視しているという点がございまして、日本に進出して、すぐに去っていくというようなことが懸念されるということもあり、現在においては海外取引所というのを規定していないということでございます。先生がおっしゃった通り、今後取引所の相互参入との関係で、海外の取引所との柔軟な合従連衡というか、そういう道を開くということは重要な論点として我々も認識してございますが、まずはここの議論におきましては、プロに限定した市場を開設する局面においては、具体的には東証さんとLSEの提携が念頭に置かれているという中で、こういった状況について、取引所が子会社等として設立するという中で合弁でやるという場合については問題ないということを、この場では整理して頂けるかということでございまして、その先の話についても、我々は十分意識してございますが、この場の議論は、いろいろ議論がある問題でございますので、そこまで広げるということではなくて、まずはこの点について議論したいというふうに考えておる次第でございます。

○池尾部会長

5ページの2番目は、金融商品取引所持株会社というのを設立してしまえばというご質問だったんじゃなかったでしたか。

○黒沼委員

それもありましたけれども、それは設立が認められるということで。

○井藤市場業務管理官

設立するということについても、当然、金融商品取引所持株会社に対して議決権の取得・保有禁止はかかるということなんです。ですから、子会社としてそれを設立するということはできないので。

○黒沼委員

そうですか、分かりました。

○池尾部会長

では、三井さん。

○三井企業開示課長

残りの2点、開示関係で、開示課長でございます。

まず、1つ目、法定開示を課さない前提で発行主体に対する行政上の監督権限を持つのかどうかということでございます。仕組みとしては、少なくとも虚偽の情報提供に対して損害賠償の請求の規定を何らか置きたいというつもりはございます。今後、まだ法制的に詰める点がありまして、現時点で確たる答えをまだ見出しているところではございませんけれども、いわゆる企業内容説明書的な、企業の内容、いわゆる財務、業務の内容についての情報を投資家に渡す。場合によっては取引所のシステムを通じて渡すということになろうかと思います。従いまして、現行の有価証券届出書、報告書のように財務局に提出して頂いて、財務局が審査をする、そして、それを公衆縦覧するというような仕組みはとりませんので、現行、有価証券届出書、報告書にありますような訂正命令権という形の行政権限を設けることにはならないのではないかと考えられます。

虚偽の表示をしたということについてのペナルティとして、例えば刑事罰で考えますと、現在プロ向けファンド、これは登録という行政上の監督を受けていない、届出だけでできるプロ向けのファンドであっても、虚偽の説明については刑事罰の規定を設けていることや、不公正取引、虚偽の説明をするなどして偽計や欺罔的な行為を行った場合には刑事罰の規定があることを踏まえますと、刑事罰の規定を置くことが考えられるのではないかと考えられ、法制的には今後の検討の課題の一つになってございます。

それから虚偽の説明に対し、課徴金をかけることとするかどうかについては、現時点ではまだ検討中でございます。

それから、公募でございますけれども、一般投資家も含めた形で公募が行われるということになりました場合には、このプロ向け市場のメリットはなくなると考えられます。その意味では、出発点は、現在のプロ私募、適格機関投資家向けに私募の形で行うというものでありますと法定開示が免除されますので、それに類したものをプライマリーで考え、流通すべき有価証券が提供されて、それが特定投資家も含めて流通していくと、こういったものを考えていきたいと思います。

そのプロ私募に特定投資家を含めるかどうか。既存のプロ私募の概念とは別のものをつくるかどうか。それが今回の企業内容説明書という、この個別の企業の業績内容やリスクについての説明、情報提供義務の法制的な詰めにかかっているところでございまして、そこは今後詰めていきたいと思っております。

○池尾部会長

斎藤さん。

○斎藤委員

今の開示の件ですけれども、プロ向けに現行の法定開示を免除するということは問題ないと思います。基本的に私はルールの大幅な簡素化に大賛成です。

ただ、今の問題で虚偽の開示に対して法的なサンクション、特に刑事罰を設けるということを前提とされたときに、虚偽かどうかを判断するにはどうするかという問題があると思うんですね。これが何も法定されていなくて大丈夫か。特に関係者から何か決めてくれというご意見が出てこないかどうか、ちょっと心配にはなります。

そもそも財務情報の虚偽というのはいろいろ種類があって、例えば一番簡単なのは、現金残高が足りないという話で、あるべきものがないとか、あるはずのないものがあるといったケースは非常に簡単なんですけれども、大方の会計情報、財務情報というのはそうではないわけで、何がしかの基準がないと虚偽かどうかも判断できないケースが多いのですね。そういう問題について何か大幅にルールを緩和するにしても、うまい工夫がないかどうかということを、少し検討して頂ければありがたいなということです。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。それはノートして頂くとして。

どうぞ、田中委員。

○田中(浩)専門委員

情報開示に関して、私の方から一つコメントさせて頂きたいと思います。考え方として、こういう規制を緩和した市場をつくるということに関して、それに反対するとか、そういうことではなくて、実務上の観点から見た懸念事項というものを申し上げたいと思います。

もともとプロの市場なので投資家に判断能力があるから、情報開示のやり方に関しても非常に弾力的に考えていくということだと思います。ただ、このプロと言った場合の機関投資家の実態ですが、機関投資家はお客様のお金を預かっており、その面では受託者責任がありますので、投資判断をするときには受託者責任を強く意識して、事後的に自分の投資行動が正当化されるということを担保するための行動をとるのが普通です。そういたしますと、今までより開示情報が大幅に縮小され、内容が少ないものになった場合、なかなかそこに投資するという行動がとりにくいというようになると思います。

あと、この機関投資家の方のファンドマネジャーの立場からすれば、いろいろな投資対象がたくさんございます。その中で一番有望なものを効率的に見つけて投資するという効率性というものが求められます。そのときに、有価証券報告書という一定のフォーマットで情報が取れて比較対照できるというのは、非常に効率的な銘柄選択につながります。それに対して、新しいフォームで情報が少ない、どこで何をチェックしていいのか分からない、あるいはひょっとしたら情報開示の面で、後日落とし穴があるかもしれないというようなものに対しては、ファンドマネジャーの立場としては、なかなか投資しにくくなってしまう可能性があると思います。

つまり何が言いたいかといいますと、この開示基準を緩和すればするほど、発行者の方からすれば非常にやりやすくなるということは、一方では投資家サイドからすると、投資しにくいマーケットになるというような側面があるということを申し上げたいと思います。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

では、原委員。

○原委員

4ページに書かれているところです。今、田中委員がおっしゃられたところと、先ほどの黒沼委員の発言と重なりますけれども、特定投資家にまで市場を広げるということになると、今後、特定投資家としてどういう方々が登場してくるかがまだ読めないようなところもありますので、基本的には、自主的な情報提供・収集・分析を基本とし、市場開設者が定めるルール等によると情報提供については書かれておりますけれども、自主的にルールを定められたとしても、それが適切なものかどうかということは、やはり過渡期の段階では私は注意深く見て頂きたいと思っております。

それから、虚偽情報については、斎藤先生からもご意見がありましたけれども、今、法制ワーキングで課徴金の拡充の話をしております。そういう意味から考えると、新たにできるプロ向け市場についての課徴金のかけ方について、今、虚偽情報の話だけが出ておりますけれども、ほかにも市場の公正さをゆがめるような行為がないのかということも含めて、ぜひ課徴金の分野についても検討を深めて頂きたいと思います。

それから質問ですが、転売制限については、やはり同じ4ページに一般投資家がすでに保有するものについては、転売できることとしてはどうかということで、これはプロ向けの市場に売るということだけという限定でいいのかどうかということを確認させて頂きたいと思います。

○三井企業開示課長

最後のご質問でございますが、プロ向け市場から一般投資家に売ることができない。逆に一般投資家がたまたま、一般投資家と分類されていますけれども、オーナーのお友達とか何かで起業段階で協力したという方が何らかの事情で換金する、相続などで換金するという場合にプロ向け市場で換金してもいいと、こういう趣旨でございます。

○池尾部会長

どうぞ、黒沼委員。

○黒沼委員

先ほどの三井課長のお答えについて、少しだけコメントさせて頂きます。プロ向け取引所に上場された銘柄について、その上場の際の募集あるいは追加的な募集について、従来のプロ私募とは別に特定投資家を含めた募集概念を用いるということは問題ないと思うのですけれども、それによって一般的な私募の概念を拡大して、従来のプロ私募の概念まで拡大するということになると、これは初めにこの論点整理でもプロ私募を利用してやるやり方と特定投資家を加えてやるやり方とをきちっと分けて論じていますので、矛盾してくることになると思います。また、プロ私募の範囲をどうすべきかを十分議論したわけではありませんので、限定的に考えて頂きたいと思います。

○池尾部会長

それでは、和仁委員。

○和仁委員

これは単に質問なんですけれども、2ページから3ページにかけて、取引所の主要株主規制ということを書いていますが、主要株主規制ということで、20%を今超えることができないので、これを50%にしてよろしいんじゃないかという話なんですけれども、50%以下なので結局過半数はとれないことになります。20%から50%に上げることで、そんなに外国の取引所が来てくれるのかなということです。

要するに、私が申し上げているのは、政策の判断の問題なのかもしれないですけれども、これは子会社の話だし、別に50%でこだわる必要はないのではないかということです。あるいは、ゴールデンシェアを取引所に持たせるとか、いろいろな工夫ができると思うんですが、20%を50%にするということだけで海外の取引所が来て、ノウハウを自由に使わせてくれるというふうな、そんな甘い時代ではないと思いますし、はっきり言って、20%と50%で差は全然出ないんじゃないかなという感じがします。やはりそこも魅力あるものにするというのであれば、もう少し知恵を出して頂いた方がよろしいんじゃないかなと思います。

○池尾部会長

おっしゃることはよく分かりますが、今、計画されているのは50%で計画されておりますので。

どうぞ、米田委員。

○米田専門委員

私どもは具体的にプロ向け市場を考えているわけじゃないんですけれども、プロ向け市場というものを考える場合に、こういう枠組みを設けることについては、全く異論がございません。

1点、先ほど黒沼先生の方からもご質問があったので、重ねての質問になるのかもしれないんですけれども、今回PTS業務を行う金融商品取引業者への出資、外国証券取引所の出資というものを、プロ向け市場というところに限定しているわけなんですけれども、例えばPTSへの出資というものは、限定しない形だってあり得ると思いますし、それから海外の取引所とのジョイントベンチャーというのは、プロ向け市場に限らず、海外の取引所のシステムだとか、商品戦略等々のノウハウを使うためにジョイントしていくということも可能だと思うんですけれども、その辺のところは、法的な枠組みをどういうふうにつくるかによって、変わってくるんだと思いますけれども、その辺の考え方みたいなものを、お聞かせ願えるんだったら、お聞かせ頂きたいと思います。

○井藤市場業務管理官

今回は先ほども申しましたように議論を拡散しないということで、論点を絞ってご議論を頂いているわけですが、ご指摘の点も応用問題ということで考えていくと、同じような考え方に立って考えていくんだろうというふうには思ってございます。ただ、この場におきましては、議論を、限られた時間の中で十分な方向性を示した報告を頂くために、論点を絞ってご議論を頂いているということでございます。

○池尾部会長

よろしいでしょうか。

では、東委員。

○東委員

論点の方向性については、大枠賛成であります。その上で2点、5ページ目のところでありますけれども、開示義務と株主数の関係なんですけれども、発行市場を考えた場合には株主数での開示義務というのは当然、義務を課すべきだろうと思いますが、流通市場を考えた場合に、数で縛るというのは全く意味がないというか、弊害になってしまいますので、ここは株主数のところでプロ、あるいは適格機関投資家を外した上での開示義務のルールにしておけば、プロ市場に参加できるのはプロという格好になりますので、そこは非常にすっきりするのではないか。つまり、流通市場において人数で制約するというのは意味がないという趣旨でございます。

それから、2点目は、その下の黒マルでありますけれども、大量保有報告制度について、結論は現行と同等でよいかということなんですけれども、これは想像ですけれども、プロ市場に出てくる企業を考えた場合に何となく小ぶりな印象がございますので、その場合に5%、あるいはその1%という、このルールをはめた場合に、投資家からすると非常に煩雑になる可能性があります。ここも緩和をするということが必要なのではないかと考えております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございます。

それでは、時間の制約もありますので、後半の方に進ませて頂きたいと思います。取引所の出資のお話等が出ておりましたが、それとも関連性があると思いますので、2.の方に進ませて頂きたいと思います。取引所の再編とか連携をより自由にするような制度的な枠組みの自由化をもっと前向きに考えたらいいんじゃないかというのは、私個人としてはそう思っているんですけれども、先ほど説明がありましたように、12月末までの3回でその議論をやり始めると収拾がつかなくなるので、今回はプロ向けのところに限ってという話と、この2.のところでグループ化に関しての話を取り上げているということです。

2.の方につきまして、いかがでしょうか。

どうぞ、米田委員。

○米田専門委員

金融デリバティブの世界と商品デリバティブの世界を、こういった形でブリッジングするというのは、極めて大きな前進だと思います。それを前提にした上で、住商の高井さんがお話になったように、金融デリバティブも商品デリバティブも、デリバティブという観点になれば、原資産が何であるということは全く関係なく、言うなれば一つの投資商品として市場に流通しているわけです。

そういった中で、この枠組みというのは、もちろんいろいろな難しさがあることは重々分かった上での話なんですけれども、商品取引所法の法制の枠組みと、金融商品取引法の枠組みをそのまま残した形でジョイントベンチャーというか、ぶら下がりの形でやっていくということなんだと思いますけれども、やはり手前ども金融商品取引所を運営している側といたしましては、商品取引所法の1条に、非常に包括的な産業政策、物というものが全面に出た産業政策、農業政策的な観点が入ってきて、それで具体的に何が起きるかというのは、正直言って私もよく分からないんですけれども、そういったものがあったときに、実際に運用していく場合というのは、率直に言って相当難しさが伴うなという感じを持っています。

だから、こんなものをやってもしようがないということじゃなくて、こういった形で一歩前進していくということは、それなりに前に進んでいくということだと思いますので、それはそれで非常にいいことだと思いますけれども、一言意見としてだけ申し述べさせて頂きます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

では、和仁委員。

○和仁委員

今の米田さんのご意見に全く同感ですし、ブリッジングというのはいろいろな問題があるということも存じ上げておりますけれども、OTCの世界ではコモディティであろうが何であろうが、みんな一緒に一体にやっておりまして、取引所だけこういう形で取り残され、規制も分かれているというのは非常にやりづらい状況でございます。

ですから、その意味で、ブリッジをするのは一歩前進なんですけれども、もっと根本的に解決をして頂きたい、ただし12月までにということですから無理なんでしょうから、これでいかざるを得ないと思いますけれども、問題の所在を行政当局としては視野に置いて頂きたい。

それから、もう一つは、コモディティと言っておりますけれども、日本の商品取引所法で言っているコモディティと、国際的なマーケットで言っているコモディティは随分ずれております。例えば、ウェザー・デリバティブはコモディティに入っておりますし、それから運賃のフレート・デリバティブとか、あるいは電力のパワー・デリバティブ、これはみんなコモディティ・デリバティブとしてOTCが処理しております。ところが、日本の金融商品取引所、あるいは商品取引所法の規定ではどうもそうは読めない。これを何とかしないと問題だと思います。ここに書いてあるような小手先の対策だけでは、なかなかいかないので、やはり抜本的な改革という視野を頭に置いて進めていって頂きたい。ただ、今回の提案は第一歩としては評価いたします。

以上でございます。

○池尾部会長

どうも。

他にご意見はいかがでしょうか。

○池田市場課長

今、和仁先生からあった点について、大きい方向としてはご賛同頂いているということなのであれかもしれませんが、1点だけ申し上げたいと思いましたのは、OTC取引として、商品と金融が融合してやられているという現実があるということは、そうだろうと、我々も認識しています。そこを法的な枠組みの中でどう切り分けるかと言えば、それは金融デリバティブの部分と商品デリバティブの部分とは、OTCの世界であっても、一応今は切り分けて観念されているんだろうと思うんです。

より問題なのは、法的にどう観念するかというよりも、現実にそうした取引がOTCではできるものが取引所ではできないということが、やはり足元においては最大の問題点であると我々は認識をしていて、先ほどあったように、商品取引所法には産業政策というような目的規定が入っているという状況。それがどう影響するか分からないけれども、ということでしたけれども、法的な枠組みは枠組みとして、現実にOTCで行われているものが取引所取引としてできないという現実を、とにかく一刻も早く解決していくことが重要な課題ではないかというふうに考えているところでありまして、取引所の世界だけ、何か法の適用がOTCとの関係と違っているというのは、前提として必ずしもそうではないのではないか。ただ現実に、結果として現在取引所でそういう取引ができない結果になっていることに最大の問題があるというふうに認識して、それをできるだけ速やかに解消したいというのが我々の考え方でございます。

○和仁委員

私が問題提起したのは、今、池田さんのおっしゃったことは全くその通りだと思うんですけれども、基本的に商品取引所法の考え方自身も考えを改めた方がいいんじゃないかという方向まで進めて頂きたいということです。ご参考ですけれども、デリバティブというのはアンダーライングアセットの上に成立しており、要するにデリバティブを道具として日本市場の国際化のキーをあけようとするのが今までの日本の考え方だったんですけれども、その基本は、デリバティブになってしまえば、みんな同じカテゴリーでくくれるんじゃないか。そういう見地から考えた方がいいんじゃないかということです。これはあくまで将来的な話です。ここでは、私が先ほど申し上げておりますように、今回の提案についてはこれはこれで結構ですと申し上げております。そこの基本的なものの考え方の実現をちょっとお願いいたしますというのがご質問であります。

○池尾部会長

川本委員。

○川本臨時委員

コモディティ・デリバティブを取引所のフルラインの品揃えとして持ってくるという方向性に大賛成ですし、早急にやって頂きたいと思います。

同じグループ内での子会社方式での相互参入のみならず、やはり金融商品取引所本体においても品揃えとして扱うことができるようにとも思いますし、本当は子会社方式ですと、時間をロスした例も過去にあると思うんです。ただ今回は仕方がないのかなと思います。コモディティ・デリバティブということを言えば、当然のように排出権の取引の活発化は今後目に見えているわけですから、それも範囲に置いて頂きたいと思いますし、先ほどご議論が出ましたけれども、これらを議論していくと当然のことのように取引所の子会社の業務範囲と資本構成についても議論が及んでいくのだと思います。ですから、その問題が、何か案件が出る前に、当局の側でもご用意を頂けたらと思います。

つけ加えれば、コモディティ・デリバティブの取引というのは、実需の大体30倍ぐらいの量の取引が入っている世界です。その意味で、産業政策という名の下の業界保護的な規制はやめて頂きたいということを申し上げたいと思います。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

私も金融をやっているせいだと思いますが、デリバティブは全部金融商品と思っているんですけれども、原資産が何であれ、全く無関係とはやはり言えないという方が世の中にはまだたくさんおられて、苦慮しているということです。

よろしいでしょうか。それでは、細かな点とか、もっと制度設計上詰めていくべき課題は残されているわけですが、基本的な方向性としては、プロに限定した取引の活発化についても、取引所の取扱商品の多様化についても、論点メモの方向性で大枠はご承認頂けたということで理解させて頂きたいと思います。

それでは、後半の銀行と証券の間のファイアーウォールの見直しに関して、進みたいと思います。

それで、前回議論させて頂いて、いろいろご意見を頂きましたが、一つの論点として、要するに機械的、一律的になりやすい公的な規制を、金融機関自身の自己規律による内部管理態勢で代替できるかということが大きな論点だったというふうに思います。ファイアーウォール規制を緩和したからといって利益相反を起こしていいとか、そういう話じゃないわけですから、利益相反の抑制をファイアーウォール規制というやり方ではなくて、自己規律の形で解決できるかというのがポイントだったと思います。

そこで、本日は、まず初めに、内外の金融機関グループにおける利益相反管理態勢の具体的整備状況につきまして、前回もご意見を頂いたポール・クオさんと國部委員から、追加的なヒアリングというか意見表明をお願いして、その後、欧米における利益相反の管理等に関する監督ガイドラインの内容につきまして事務局から説明を頂いて、それで全体を合わせて議論をしたいというふうに思っております。ということで、利益相反管理等についての内部コントロールの現状につきまして、まず、ポール・クオ参考人からご意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

○ポール・クオ参考人

国際銀行協会のポール・クオです。前回に引き続き、説明の機会を頂き、光栄であります。

利益相反の管理について説明する前に、一言お断りしておきますが、外資系金融機関が何か驚くような難しいことをしているわけではなく、利益相反という問題と正面から向き合って対応しようとすれば、自ずと必要となることを行っているだけにすぎません。日本の証券会社や銀行でも、社内管理体制として取り入れていることが多いのではないかと思います。そういう意味では、我々がプレゼンテーションする割には目新しいことがないなと感じられましたら、ご容赦くださいませ。

まず、利益相反の類型ですが、最初に利益相反の事例は多様であり、法令による画一的な規制にはなじまないという点を強調させてください。概念的には顧客と業者の間、顧客と顧客の間、業者と従業員の間の3つに分類することが多いようですが、実際にはこれらは重複する場合が多く、その見極めが必要であります。

利益相反は法令上の問題やレピュテーション上の問題だけではなくて、顧客との関係維持の観点からビジネス上の判断も多いため、営業部門が利益相反のある取引を行うかどうかを判断する中心的な役割を果たすのが一般的です。もちろん、法務コンプライアンス部門も利益相反の特定や解消方法について助言したり、法令順守の観点から取引を行うべきかどうかという判断に参加します。また、実務レベルで判断がつかない重要な問題については、経営レベルまで事案を上げて、最終判断を仰ぐことになります。

2ページをご覧ください。利益相反の管理の観点から分類した事例を挙げています。言うまでもなく、ここに示されている事例は利益相反の一部にすぎず、また、典型的なものばかりであります。法令で禁止される行為以外にも幅広く利益相反が存在し、その対応方法も利益相反の程度に応じて異なることが見てとれるかと思います。

幾つかの例を細かく見てみましょう。上から3番目の調査部門と引受部門との利益相反についてですが、引受部門は、発行体に対するアナリストの意見が当該企業にとって都合が悪い場合などでも、これを変更するように圧力をかけることは許されません。この点は日本では証券業協会の理事会決議に基づいて、各社の自主ルールを導入しているわけであります。このように引受部門と調査部門の間にはチャイニーズウォールがあるので、この企業の将来性についてアナリストが極めて悲観的な見解を示したとしても、引受部門が将来性を見込んで株式を引き受けることは、法令上は問題ない行為です。しかし、利益相反の管理という観点からは、チャイニーズウォールがあるとはいえ、同じ会社やグループから、異なる見解が出ることはレピュテーション上好ましいことではないので、さらに高い見地からその是非を検討することになります。検討の結果、その株式引受案件を断る可能性もあると思います。

下から3番目のM&Aのケースですが、基本的に同じグループ内の関連会社が、自己投資をしている企業の株価に影響を与える取引(買収のアドバイス)を他の顧客と行うことは、それ自体、利益相反があります。業者としては(自己投資先の企業の)株価が上昇することはグループ全体の利益ですが、買収元である顧客としてはなるべく安く買収したいと思うでしょう。このようなケースにおける対応は業者と顧客との信頼関係や、M&Aが友好的なのか敵対的なのかという状況、加えて、自己投資の目的は何であるかといった要因に左右されます。アドバイザーの役割を引き受けるためには、利益相反の事実を買収元である顧客に開示し、承諾を受けることで利益相反を解消する必要があります。加えて、チャイニーズウォールを設けて、当該M&Aの情報が自己投資を行っている部署に漏洩しないように情報管理を徹底する必要があります。

もちろん、(自己投資先の企業の)他の株主や利害関係者に対する信義誠実の原則の問題もあります。例えば、(当該グループ内関連会社の自己投資が)単なる純粋投資の場合であれば、(他の株主や利害関係者との)利害関係は比較的少ないですが、経営に影響を与えるような戦略投資の場合には、利害関係、利害対立が大きくなります。レピュテーション上の観点からアドバイザーの役割を断念する可能性まで検討する必要があります。ここで、ディスクロージャー・アンド・コンセントという概念がとても重要になってくると思います。

このような判断を行う手続が、コンフリクト・クリアランスであります。3ページをご覧ください。コンフリクト・クリアランス手続においては、グループ全体の重要な取引をすべて見渡した上で、利益相反のある取引を検出し、その利益相反の程度や解消方法を検討します。このような検出作業が可能なのは、グループ全体にまたがるチャイニーズウォールで、重要な取引の情報が管理されているからであります。重要な取引に関する情報は、公表される前にグループ全体にまたがるデータベースに登録されます。このデータベースはウォッチ・リスト、あるいはグレーリストなどと呼ばれております。ウォッチ・リストには、公表前の取引について、その内容、顧客、その他の関係者、社内の担当者、その他、当該情報を知っている従業員などが登録されております。

4ページをご覧ください。コンフリクト・クリアランス手続は各社各様ですが、共通するポイントは次の通りです。まず、市場価格に影響を与える取引及び重要な非公開情報の入手を伴う取引のすべてをチャイニーズウォール内の取引としてウォッチ・リストに登録します。営業部門はこうした情報を入手次第、速やかに法務コンプライアンス部門の中のコントロール・ルームに報告する義務を負っています。次に、新規取引の登録が行われると、コンフリクト・クリアランス担当者は、当該取引の関係者が、他の取引に関与しているかどうか、ウォッチ・リストを検索します。仮に、他の取引が検出された場合には、コンフリクト・クリアランス担当者は双方の利益相反の有無を法務コンプライアンス部門も交えて検討します。

通常営業部門が開催する合議体で取引実行の可否が決定されますが、このような合議体にはビジネス部門の管理責任者に加えて、法務コンプライアンス部門も出席します。また、重要案件でこのような合議体で結論が出ないような場合には、さらにエスカレートして経営陣の判断を仰ぐことになります。

利益相反のある取引を実行する前提として、利益相反の解消方法を検討する手法があります。解消方法は、個別の取引ごとに多様ですが、大きく分類すると、以下の方法が基本となります。

まず、利益相反の事実を顧客などの関係者に開示し、了承を得ることです。次に、複数の取引の間に利益相反がある場合であって、利益相反の程度が比較的軽微なケースや、重大であっても、上記のように顧客の了承がある場合には取引ごとに担当者、担当チームを置き、それぞれの情報隔離を徹底することが考えられます。さらにこのような方法では利益相反が解消しない場合には、利益相反がないように取引の内容、方法を変更することも考えられます。

以上のいずれの方法でも解消せず、無視し得ない利益相反が残る場合には、一方の取引を断ることになります。

ウォッチ・リスト上の取引は公表と同時にリストリクティッド・リストに移管され、チャイニーズウォールの外側の従業員も見ることができるようになります。重要取引が公表された以上、チャイニーズウォールの外側の従業員であれ、レピュテーション上の問題がある行為については制限がかかります。

以上、コンフリクト・クリアランス手続を足早に説明してきましたが、もちろんこのような手続で捕捉されない利益相反も存在します。しかし、重要な取引について、営業部門が法務コンプライアンス部門に助言を仰ぐことが企業文化として根づいているため、個別の取引の検討過程で、重大な利益相反が明らかになるケースがほとんどと言えます。

このような企業文化は、従業員の意識を高めるトレーニングを通じてはぐくまれます。出席率の悪い従業員に対しては懲罰などの措置をとるなど、トレーニングに対する取り組みは真剣であります。また多くの先で、ITを活用したEトレーニングや、法務コンプライアンス部門が講師となって行うコースを繰り返し実施しております。利益相反についても例外ではなく、特に近年、利益相反は重要科目の一つであります。

以上、見てきましたようにビジネスの進化に合わせて変化する利益相反を機動的にとらえるのは、各社の自主的な対応が不可欠です。多様な利益相反についての判断基準の詳細を法令により成文化することは不可能ですし、欧米でもそのような対応はしておりません。むしろ、重要なのは、各社が自主的に行う次の4つの対応であります。

すなわち、利益相反の検索のためのシステム構築。利益相反を検討する手続の確立。法務コンプライアンス機能の充実。社員教育の充実による意識改革であります。ご当局には、利益相反の多様性に配慮し、管理手法の多様性を尊重した上で、各社の自己対応の適切性を個別に評価して頂く必要があります。そのような牽制機能によって各社の自己規律を維持することが最も重要な役割と考えます。本日のプレゼンテーションの標題であるファイアーウォールからチャイニーズウォールへとは、まさにこのことを示すものであります。

法令による機械的な金融機関の企業形態の隔離であるファイアーウォールから、金融機関の自主的な規制による行為の規律を求めるチャイニーズウォールへ転換することによって、より効率的な規制環境をつくり、顧客利便性に資するとともに、私ども業者にとっても、より使い勝手のいいマーケットになることによって、東京の国際金融センターとしての競争力を高めることになると思います。

ありがとうございました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続き、國部委員からお願いします。

○國部専門委員

三井住友銀行の國部でございます。前回に引き続きまして、プレゼンテーションの機会を与えて頂きましてありがとうございます。

昨今、我が国でもM&Aの件数が増加をしておりまして、中には敵対的買収の提案がなされるケースも出てきているわけでございます。こうした環境変化を踏まえまして、私どもにおきましても、欧米主要行の先進的な取り組みも調査をいたしまして、体制整備を図ってきているところでございまして、現在の私どもの取り組み状況についてご説明をさせて頂きたいと思います。

お手元、資料5の1ページをご覧ください。私どもが行いました欧米主要行における利益相反問題の対応に関する調査結果を整理させて頂いております。先ほどの国際銀行協会さんのプレゼンテーションとやや重複する面がある点、また、本調査は公表を前提とせずヒアリングを行っていますため、調査をいたしました個別行名の開示等ができない点についてはご容赦頂ければと思います。

欧米主要行の取り組みの特徴でございますが、まず、下の図表ですけれども、問題となる利益相反が生じる可能性が高い大企業・投資銀行部門を主な管理対象としております。リテール分野における預金や決済業務等の大量トランザクション型取引については、原則対象外としている例が多かった状況です。

具体的には、M&Aや各種アドバイザリー、社債引受、エクイティファイナンスや、各種形態の敵対的取引等は全件が管理対象となっています。

組織的な対応として三点挙げてございますけれども、まず第1に、業務ラインから独立した専門組織を法務コンプライアンス部門に設置し、統括して管理する体制を構築しているケースが多数でした。第2に、コンプライアンス部門内の専門組織は、従業員が遵守すべき利益相反ポリシーを作成し、管理すべき有害な利益相反の定義や典型事例、従業員の義務、基本的な管理プロセス等を規定しておりました。3点目といたしまして、業務部門間やインサイダー取引規制対応のために情報隔壁、いわゆるチャイニーズウォールを構築し、利益相反管理の有効な対処法として活用していました。さらに、部門間だけではなく、部門内においても、例えばシンジケートローンや株式、社債の引受け等の間には情報隔壁が構築されておりました。ただし、リスク管理目的では部門間、部門内でも情報が共有されておりました。

2ページをご覧ください。専門組織において行われます審査のポイントでございますけれども、業務部門から報告を受けた個別案件ごとにリーガルリスク、そして、レピュテーショナルリスクの両面から検証が行われています。リスクがあると判断された場合の対応としては、当然ながら法令違反の疑いがある案件は不認可となります。

一方、対応策を講じることによりまして、リスク回避が可能な案件につきましては、顧客に利益相反の内容を説明した上で、業務継続の了解を取得する。または個別案件ごとにチャイニーズウォールを設けるといった方策で対応可能かどうか検討し、業務セクションに示達するといったことが行われていました。ここで、対応できないという結論に至った場合は、取引の辞退が指示されることになります。

また、複数の重要顧客間で利害対立が発生した場合など、ビジネスジャッジも必要となる場合におきましては、専門組織が業務部門と共同して決定することとされていました。

なお、一番下にお示ししてございますが、専門組織が利益相反リスクありと認めた案件のうち、法的問題があるケースとレピュテーショナルリスクの問題と割合をお聞きしましたところ、法的な問題があるケースは1割程度ということでございました。

次に、3ページをご覧ください。これまでご説明した欧米の事例等も参考にしまして、現在、三井住友銀行で行っております利益相反の管理状況を整理しております。まず、体制面におきましては、欧米と同様にコンプライアンス部門内に専門組織を設けております。また、欧米におけるポリシーや従業員の義務にかかる規定などに対応するものとして、総則的なルールの策定に加えまして、利益相反が典型的に発生する商品・サービス、具体的には例えばMBOであるとか、プロジェクトファイナンスであるとか、そういったものについて、個別にルールを策定するといった体制整備を行っております。

管理対象につきましては、法的な義務違反だけではなく、レピュテーショナルリスクも対象としておりまして、業務部門から利益相反リスクの高い取引にかかる情報を専門組織に集約いたしまして、個別取引ごとに検証を行っております。その結果、法令違反の疑いのある案件は不認可とする一方で、リスク回避が可能な案件については、欧米と同様に、当行が当該取引でとり得る立場等をお客様に説明して了解を取得したり、そうした措置を講じることができない場合には、お客様に取引の辞退を申し出るということにしております。

また、ビジネス上の判断が必要な事案については、必要に応じて業務部門と協議の上で対応しております。

さらに個別の重要案件につきましては、右側の上のところにありますけれども、コンプライアンスやリスク管理担当の役員等で構成するCOI委員会――COIはConflict of Interestの頭文字をとったものでございますが、そのCOI委員会でありますとか、その下部組織であるとかCOI検討部会――これは部長クラスの会合でございますけれども、におきまして、より深度のある検討を加えることとしております。

また、当然のことながら、M&Aを実施している部署等につきましては、必要なチャイニーズウォールを構築しているところでございます。

以上、私どもの現時点での取り組みをご説明いたしました。欧米の主要行と比較して、これで十分と考えているわけではありませんが、今後ファイアーウォール規制の見直しなどに応じて管理体制の一層の高度化に努めてまいりたいと考えています。

最後の4ページに、これは利益相反の問題とは少し違うのですけれども、前回の会合におきまして、情報共有の同意についてご議論がありましたので、若干補足させて頂きます。

まず、ファイアーウォール規制上の事前同意義務でございますが、これは右側にお示ししてございます通り、グループ内の銀行と証券会社のみに対し、個人情報保護法であるとか、金融商品販売法に加えまして、利益相反と優越的地位の濫用の懸念があることから課せられている事前規制でございます。こうした状況の中で、左下、法人のお客様でございますけれども、銀行が証券サービスに関して、概要しか説明できず、具体的な条件を提示することができないわけです。このため、お客様の方では、メリットを把握できない状態で同意書を提出するか否かの判断が必要となってきます。結果として、各行、同意書を頂戴できないケースがあるわけですが、これはお客様が望んでいないということではないというふうに考えております。

次に、個人のお客様に関するポイントですが、現在、そこにお示ししてある通り、ファイアーウォール規制と個人情報保護法が重畳的に適用されております。このファイアーウォール規制が一律に書面による同意を求めるということで、やや柔軟性を欠く規定である点がポイントでありまして、個人情報保護法を遵守することによりまして、グループ外と同様に、消費者保護と利用者利便の調和を図りつつ、お客様にメリットがあるグループの総合力を活用したサービスを提供することができるものと考えております。なお、センシティブ情報の取り扱い等については従来通りでございます。

右下に最後にお示ししてございますが、当然ながら、個人のお客様への金融商品販売における基本原理と言いますのは適合性の原則の徹底でございまして、これはグループ会社同士であるか否かにかかわらず、その重要性は何ら変わるものではないというふうに認識をしてございます。

以上を踏まえますれば、利益相反であるとか、優越的地位の濫用について、厳しい自己規律と適正な監視・監督によって回避することによりまして、見直していくことが適当ではないかというふうに考えております。以上、前回会合において指摘頂いた事項について、補足をさせて頂きました。

一点、今般の情報共有でありますとか、兼職、それからクロスマーケティング等にかかるファイアーウォール規制の見直しというのは、今議論されている通り、金融機関の厳しい自己規律と当局によるモニタリングを前提に、現在の規制を廃することによりまして、利用者保護と利用者利便の向上の両立を実現し、我が国における金融サービスのさらなる質的向上を図り、そして、ファイアーウォール規制が緩和された米銀でありますとか、欧州のユニバーサルバンクに対する国内外における競争力の強化を実現するものというふうに考えておりますので、よろしくご議論頂ければと思います。ありがとうございました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続き、事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

○中村監督調査室長

資料6をご覧頂いて、そこで欧米の規制の枠組みについて、簡単にご説明させて頂きたいと思います。

1ページ目でございます。欧米の規制の枠組みですが、利益相反管理に関する欧米各国の規制というものは、総じて見ますと、利益相反の管理に関する一般的な原則を提示した上で、そのために必要な体制整備等について規定していると。こうした枠組みの中で、自主的な規律付けを促すものという枠組みとなっております。

アメリカの方を見ますと、注)のところにありますように、Regulation Yにおいて一部行為規制がありますが、利益相反管理に関する包括的な意味での規制という意味ではないんですが、2番目の黒マルですが、FRB等の監督マニュアルの中で、レバレッジド・ファイナンスですとかプライベート・バンキング、証券ブローカレッジ等の業務に関しまして、それぞれ利益相反の特定・回避・管理のための組織体制の整備をすることとか、方針を定める手続を定める、それから情報開示を行うなどの規定を設けておりまして、これを検査の対象にしまして、チェック項目というふうにしておるという状況でございます。

欧州の方でございますけれども、EUの「金融商品市場指令」(MiFID)におきまして、域内各国当局が、業者に対し、利益相反の特定・回避・管理のための組織体制整備、それから方針・手続の策定、情報開示等を求めることとされております。

イギリスのFSAの監督指針においては、プリンシプルが幾つか提示されておるわけですが、そのPrinciple 8に、「業者と顧客の間、及び複数の顧客の間で生じ得る利益相反の十分な管理」を原則の一つとして位置付けた上で、各業者が最低限満たすべき組織体制等々を規定しております。

そして、UKFSAのリスクアセスメントのフレームワークというものがございまして、カスタマー、プロダクト、マーケットの管理という項目の中にリスクエレメントの一つとしてコンフリクト・オブ・インタレストというものを定め、監督をしているということでございます。

続きまして、ドイツですが、ドイツは証券取引法で利益相反回避の観点から、禁止行為を規定するとともに、業者と顧客の間、及び複数の顧客の間で生じ得る利益相反を最小化するための内部統制手続の確保を義務付けております。また、この規定を受けた監督指針においては、業者内の業務隔壁、それから、取引監視態勢、コンプライアンス部門の機能等についてそれぞれ規定しておりまして、監督に生かしていると、こういう枠組みでございます。

2ページ目は国際的なミニマムスタンダードについて掲げさせて頂いております。一つはバーゼル銀行監督委員会の「コア・プリンシプル・メソドロジー」ですが、原則8において、監督当局は、銀行が利益相反を排除し、arm’s lengthの原則にのっとって与信を決定することを求め、定期的に確認するというミニマムスタンダードが掲げられていると。

それから、証券の方ですと、一番下でございますが、IOSCOの方で、市場仲介者は、いかなる利益相反も避けるよう努力しなければならない云々というような最低基準が定められているという状況でございます。

○森田証券課長

では、続きまして、私の方から、発行体向けクロスマーケティングに関連いたします、これまでの規制緩和の流れをご説明させて頂きたいと思います。

続きまして、資料6の3ページでございます。まず、規制の概要と書いてございますけれども、お手元の資料にございますように、銀証分離により銀行による引受け業務というのは、33条で禁止されておるわけでございますけれども、銀行等が取引先企業に対しまして、株式公開等に向けたアドバイスを行い、または引受金融商品取引業者に対し、株式公開等が可能な取引先企業を紹介するという業務は認められております。

一方で、こうしたアドバイスや紹介にとどまらない具体的な条件の提示や交渉と言いますものは、銀証分離を定めました33条の趣旨に照らしまして、引受けそのものに該当する可能性があるということで、現在のところは行われていないということでございます。

この件につきましては、規制緩和の要望が出されてきておりまして、発行体向けクロスマーケティング規制の緩和というものの中では、銀行がこのような証券会社の発行体向け業務を一部代行することを、市場誘導ビジネスの対象拡大、または金融商品仲介業の対象によって認めるべきというようなご意見を頂いてございます。

発行体向けクロスマーケティングにつきましては、これまで、これを解禁することで金融機関が企業に対し、総合的かつ高度な金融ソリューションを提供することに資するというご意見があります一方で、他方で利益相反や優越的地位の濫用との関係とか、最終的に引受けのリスクを負う証券会社の独立性、リスク管理、財務の健全性との関係、また、証券会社の引受け審査機能の拡充強化との関係、証券外務員制度との関係、金融商品取引法第33条そのものとの関係といった点を考慮し、慎重に検討すべきであるという意見もございました。

そういう中で、これまでこういう要望にお答えするために、弊害の少ないと思われるものから順次、制度を緩和してきております。

それがその下でございますけれども、まず、(1)に共同訪問の解禁というふうに書いてございますけれども、これは平成11年に金融システム改革を踏まえました弊害防止措置の見直しの中で、銀行と証券会社の職員の共同訪問が解禁されたということでございます。これにより、現在でも、例えば銀行員が証券会社の引受担当者を伴って顧客を訪問して、商品を説明するといったことが可能になってございます。

その下に書かせて頂いておりますのが、(2)顧客からの包括同意による非公開情報授受の解禁と書いてございますけれども、これも同じ年に顧客の非公開情報の授受の禁止規定につきまして、顧客からの同意があれば、個別同意から書面による包括同意でもよいというふうに変わったということでございます。

それから、お手元の資料の5ページの一番下でございますけれども、金融審議会金融分科会第一部会報告というのがございます。ここにおきまして、銀行が貸出先中小企業に対し、市場調達や株式公開に向けたアドバイスを行うとか、公開可能な貸出先企業を引受証券会社に紹介するといった市場誘導業務を行うことにより、銀行と証券会社が連携して、市場機能を中核とする金融システムに向けた大きな流れをつくり出せるのではないかと考えられるというご提言を頂きまして、これを踏まえまして、また3ページに戻って頂いて恐縮ですけれども、(3)アドバイス、紹介業務の解禁ということで、証券会社向け及び主要行等向けのそれぞれの監督指針におきまして、冒頭ご説明申し上げましたアドバイスとか紹介する業務というのは33条に該当しないという整理がなされております。しかしながら、これを超えるものについては、現在行われていないということでございます。

私の方からは以上でございます。

○池田市場課長

あと、事務局の方からは、資料番号を振っておりませんが、英文の資料を2つ配付させて頂いているかと思います。これは前回、田中委員、國部委員からご指摘を頂きましたシティバンクとドイツにおけます関係書面、前回の部会でご指摘のあったものの現物をご提供頂きましたので、配付をさせて頂いております。

シティバンクの方については、2枚目の右のところですが、前回、田中委員からありましたように、これは自主的な取り組みとして、この右に1、2とチェックをするところがありまして、個人の情報についてどの範囲でディスクローズに対しての制限をするかということを選択できるような、いわゆるオプトアウトの機会を与えているといったフォームかと思います。

それから、ドイツの方につきましては、これは口座開設のアプリケーションの中で、最後のページから2枚目を見て頂きますと、ここの枠で囲ってあるところに、情報の利用についての説明がありまして、同意をするためのサインの欄があるといったことかと思います。

以上、ご提供頂きましたので、配付をさせて頂きます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、本日はもうそんなに時間が残っておりませんが、それでも30分ほどまだありますので、以上のご説明に関連して、ご意見、あるいはご質問がございましたら、ご自由にお願いします。それでは、田中委員。

○田中(浩)専門委員

本日、銀行の自己規律に関しての説明を頂戴したわけですが、証券会社のコンプライアンスの責任者として日ごろ感じておりますのは、形の問題ではなくて、実際の中身、あるいは魂がいかに入っているかということが重要だと思います。そういう面では、クオさんの方から、重要なポイントということでトレーニング制度、これが非常に重要であり、どれだけ役職員にこの精神、考え方、それからあと具体的なルールを理解させて実行してもらうかということが重要だとご説明がありましたが、これは私も全くその通りだと思います。

そういう面で、甚だこういう指摘というのは個人的にはあまりしたくはないのですが、現実を考えた場合、実際に発生している問題はどうかということを触れたいと思います。

先月、メガバンクで資産規模が2番目に大きい銀行グループに対して、ファイアーウォール規制に関しての行政処分が出ております。中身は銀行が多数の法人顧客の顧客情報を、顧客の同意なく系列の証券会社の方に渡して、そこで営業活動をさせていたということであります。ここで、やった事実がどうのこうのというより、私は2つ大きなポイントがあるかと思います。一つは、組織的に営業活動をさせていたということで、単に一、二名が関与していたということではなくて、相当多数の人間がこれに関与していたということです。そして二つ目は、そうしたことが証券取引等監視委員会の定期検査で初めて分かったということです。自己規律ということで、きちんと体制をつくり、その監視する体制があるとはいうものの、実際にそれが機能していなかったということが、非常に現状をあらわしているのかなというふうに思います。

大きな組織であれば、不心得者が出てくる可能性というのは皆無にはならないのですが、ある程度そうした行為の範囲が広がれば、きちんと内部管理というものができていれば、そういう行為がどこかの段階で分かり、自主的にそれが規制されるというのが本来あるべき姿ではないかなというふうに思います。

そういう観点で申し上げますと、メガバンクの資産規模の一番大きいところについても、過去1年余りの間に、日米の行政当局から5回処分を受けていますが、これも内部から自主的に発見された問題ということではなくて外部からの調査、あるいは指摘で明らかになっているという実態があります。そういう面で、自己規律のところは形ではなくて中身が問題であるということだと思います。

そういう点に関しまして、証券会社と銀行との違いということで、私なりに見ますと、2点あるのかなと思います。

1点目は、この体制面についてですが、証券会社の場合は、日本証券業協会という自主規制機関が存在しています。ここで自主規制という形の中で、協会として定期検査を行い、違反行為があれば、そこに過怠金をはじめ、いろいろな処分を行っているという実態があります。こういう自主規制機関が、銀行さんの方には今の段階では存在しないというのがあります。

それから、2点目は、もともと証券会社の方はお客様との間に利益相反というところに関しましては、ビジネス上、常につきまとうと言いますか、本質的に内在している問題であり、この辺りの対応に関しては、過去からずっとそういうことをやってきています。それが今完璧だというふうには申し上げられませんが、かなりそれに関してはいろいろと過去の事例を踏まえて取り組んできたということを申し上げられるかと思います。

そういう点を踏まえまして、今後規制緩和の方向に向かっていくとした場合、やはり実効性のある対応というのが非常に重要かと思いますので、そういう面でまず、2つ提案をしたいと思います。1番目は利益相反に関しての法的な位置付けというものを、なるべく明確にすべきではないかなと思います。先ほどクオさんの方からもご指摘がありましたように、確かに利益相反の件に関して、具体的に条文に落とすのは非常に難しいわけなのですが、ただ、その基本となる考え方というのは明確に落としこんで、法的になるべく高いところに規定すべきだろうと思います。

それから、2番目は、検査体制をより実効性の高いものにして、変なことをしたら、最終的にはそれが露顕して、金融機関にとって大変な問題になるような実効性のある形の検査体制を構築して頂きたいというのがあります。

以上が、利益相反及び自己規律に関する点ですが、最後に、顧客の同意を得ずして、顧客情報をグループ間で共有するという点に関しても一言申し上げたいと思います。先ほど事務局の方から説明がございましたように、今、規制緩和が進んでいって、基本、ほとんどの業務を銀行ができるような形になっています。銀行本体でできないのは引受けのうち、ダイレクトな引受けそのものとその周辺のところが規定されているだけで、それ以外のサービスは銀行本体でもできる形になっています。また、顧客の同意があれば、系列証券会社の方に情報がどんどん流せるという形になっています。先ほど、國部委員の方からなぜ同意書が入りにくいかという質問に対して、目的が明確でないと、なかなか顧客が同意書を入れてくれないという趣旨の発言があったかと思います。この発言は、裏を返して言えば、事業会社の方からすれば、使用目的が明確でないようなときには、系列会社といえども、情報は共有してもらいたくないということになるかと思います。そういうことを考えると、やはりこの同意書というものがない中、あるいは顧客が同意しないにも関わらず、グループ間の意思で情報を系列の証券会社に出すというのは問題だというふうに思います。

また、個人に関しても同様のことが言えるかと思います。

ちょっと長くなりましたが、以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、関委員。

○関委員

私、前回欠席したものですから、前回の議論をどこまで踏まえた発言になっているか分からないんですけれども、今日のテーマであるこの規制で、本当に利益相反が防止できるのかというのとはちょっと違うんですけれども、今、田中委員からも出ましたし、また國部委員からも、最後のページで情報共有、書面同意による問題点等についてということが出ましたので、私は発行体というか事業会社の立場で、最近非常に強く感じているということについて、少し申し述べた方がいいんではないかということで発言させて頂いておるわけであります。

ご案内の通り、コーポレートファイナンスというのは、もうエクイティであるとか、デットであるとかという単純な議論ではほとんどなくなってきておりまして、いわゆるハイブリッド型というか、中間的なファイナンスのやり方をどうするかということが、最大の問題になっています。常にそういう議論になるわけであります。

したがって、私は、デットの方ですよ、私はエクイティですよというようなことでは、私ども事業会社のニーズには全く応えられないということでありますし、また、もう一つ大切なことは、事業会社で、これからの事業戦略というのは、海外のM&Aを含めた事業投資ということに中心はなってきます。私は鉄鋼業にいるわけですが、鉄鋼業に関していえば、日本の金融機関が海外の投資なんかのファイナンシャルアドバイザーとして、コーポレートファイナンスに対して、有効な提言をしたなんていう実績は一つもない、皆無なわけです。そういう意味では、事業会社の立場から言って、日本の金融機関は新しいビジネス展開、新しいファイナンススキームについて、本当にニーズに応えられて、私は率直に言って、いないんだと思うんです。

そのときに、なぜ情報を共有して、本当に事業会社あるいは発行体のために、すぐれたファイナンススキームを構築できないのかということになるわけでございまして、私どもの会社では当然包括同意のようなものを特定の金融と結びまして、いろいろなアドバイスをもらうような状況にはしてあるわけですけれども、何もこれはそういう大きな会社だけではなくて、私どもの会社でいっても、グループ会社を含めてさまざまな事業展開をやっておるわけであります。海外の事業投資を打つ場合にどのようなファイナンススキームでやるかという問題に際して事前同意を持ってこい、包括同意であれ個別同意であれ、そういうことをやらないと話が始まらないということになっておるわけでありまして、そういうことをしておると、結構時間がかかって、これは実例があるわけですけれども、完全に出遅れる。海外は、それはもう海外の国際金融資本というのは大変力がありますし、海外の投資家なんかも随分持っていますから、直ちにいろいろなハイブリッドな資金スキームを提案してきます。こちらの方は、おい、同意はどうなっているんだ、どういう条件で結ぶんだということから始まって、社内稟議を通らなければいけない、いや、意外と手続もややこしいぞというような話になって、全く競争力がない。

日本の金融機関に別に頼らなくていいという議論は別にありますけれども、少なくとも日本の金融機関を強くするということであれば、これはどうしても國部さんが提案した情報共有、書面同意にかかわる問題点というのが出ておるわけですけれども、このファイアーウォール規制はぜひとってもらいたい。では、どういうふうなことで利益相反の問題を防ぐのかというのは、これはクオさんの提案でも國部さんの提案でも、そういう問題は利益相反が重大であるというふうに考えられたときには、当事者への開示了承を多用する。むしろ、原則同意なしでいいということを前提にして、そういう問題があるということであれば、それはそういうことを率直に開示して頂いて、そして議論させて頂くというふうな対応に、ぜひしてもらたい。

ですから、今日お話があったクオさんの話も國部さんの話も、要するに顧客と事前に情報開示して、利益相反問題について議論する。あなたのところはこういうことがあるからこうなんですよといえば済むことで、そのときには同意書をつくってやるということもありますし、そんなややこしいことを言うんだったらもう結構だということになるかも分からない。そういう議論ができるということが担保できれば、私はこの問題はクリアできるんではないかと思っております。

以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

原委員。

○原委員

前回は、富裕な資産家の方の発言に圧倒されて、端くれ投資家はちょっと発言の機会を逸してしまったという感じがあって、今も関委員から事業者側の意見が出ましたので、ややまた発言の機会を逸しそうになったのですけれども、ぜひ貴重な機会なので、発言させて頂きたいと思います。

幾つかあるのですが、一つはクオさんからご説明があったところで、今後はファイアーウォールからチャイニーズウォールへということで、この流れというところは私も否定するところではないのですが、4ページのところに、コンフリクト・クリアランスの考え方として、ウォッチ・リストが作成されていて、それに個別の項目を登録して、そして3.のところに担当者でその利益相反を検討する。最終的には経営者の判断もということが書かれているのですが、これがどういうふうに作成をされて、また、開示をされるのかというところを、もう少しご説明を頂きたいと思います。

というのは、金融商品販売法が制定された折に勧誘方針の策定公表という項目が盛り込まれまして、適合性の原則が、一応こういう形で内部規律の中で検討して頂きたいということになったのですが、金融オンブズネットで、証券会社はたしか40社、それから銀行も40行の勧誘方針を調査させて頂きました。三、四年前になるので今は少し変わっているのかもしれませんけれども、非常に抽象的な文言で、一体何をされているのかというのが、これは内部の規律で使うとしても分からず、それから外部の人にも明確ではないというところがありまして、あのようなものであれば、私はほとんど意味をなさないという感じがありまして、明確性みたいなものをどこまで持たせるのか。

それから、内部の方だけでこういったリストをつくられたり、担当者で検討なさるとなると、全然別の観点なのですけれども、私は製品安全もかなり長くかかわっておりまして、これも、NITEというところが製品の安全を担当している機構なんですけれども、そこが事故情報を分析した結果というのを報告書で毎年出されておりまして、これは開示をされているのです。ところが、10年以上も前ですが、私が消費者の目で見ると、誤使用か欠陥かというところの判断で、誤使用ではなく製品の欠陥だと思われるものが3割ぐらいはあり、ぶれがある。ずれがあるということで、今は評価のところに消費者を入れて評価をした形での報告書を外部に出されているのですけれども、やはり内部だけでおやりになっているときの明確性とか判断基準というのはちょっとぶれるのではないかというところを私は気にしておりまして、これは質問です。

そして、7ページのところで、最終的には各社は自己対応の適切性を当局が評価をすることというふうにご提言なさっていらっしゃるのですが、この評価ということについては、一体どの程度のことを考えていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思っております。

それから、國部委員のご発言の中で、一番最後のページの情報共有の書面同意にかかわる問題点のところについてなのですが、これについては、法人のお客様と個人のお客様に分けて考えておられるので、関委員がご発言になった法人の部分についての対応というのは、またそれなりの工夫というのがあるかと思いますが、私は個人はやはり書面による同意というのが大原則だと思っておりまして、適合性の原則の徹底ということを考えると、個人情報も私たち消費者は出しましょうということを今は話しておりますので、そうであれば、出された個人情報についてどのような扱いをするのかについては、事前同意が原則だと思っております。

個人情報保護法が制定されることに伴って、銀行協会でもたしかガイドラインをつくっておられるのですが、それに基づいて今出されている書面は非常に包括的で、だからやはりサインをしたくないという、一体どこまで自分の情報が流れていくのかというのが明確に見えないところがあって、私は同意書には、やはり一層の工夫が必要だと考えております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

では、クオさん、ちょっとお答え頂けますか。

○ポール・クオ参考人

1つ目の質問で、コンフリクト・クリアランスの点ですけれども、各社多様でありますので、皆様がこうだということではないんですけれども、共通するポイントとしてはこの4ページに書いている通りで、すべてのセンシティブインフォメーションが集中されているウォッチ・リストで管理することによって、ほかの取引が出てきたときに、それは実際にコンフリクトがあるかないかということが初めて議論できるということです。普通の商品(開発など)とは違って、この時点ではかなりセンシティブな非公開情報なので、(判断の適切性に)外部のインプットを、その時点で入れることはとても難しいことだというふうに思います。

2点目のポイントですけれども、この自己対応の適切性を評価するということですけれども、これはまさにそういう意味ではグローバルのレギュレーターのベストプラクティスであり、この辺は進化していくものであるというふうに考えております。

○池尾部会長

國部委員、何かありますか。いいですか。

では、根本委員。

○根本委員

前回、欠席させて頂いたので、重複してしまったら申し訳ないのですが、ファイアーウォール規制に関しては、緩和をもう一歩進めるというのが、恐らく世界的な流れでもあり、関委員のおっしゃったようなメリットというのもあると思います。ただ、長年銀行業界とか、他国を見ていても感じるんですが、やはり日本の銀行がかなり特殊な地位というんですか、そういったものにあったということは事実ですし、これに関しては配慮が必要なのではないかと思います。また、規制緩和の目的というのは、競争が活発化して、より事業会社にとってクリエイティブな提案が生まれてくるということだと思いますので、そういった方向に進めるようにして頂いて、これまでの取引関係とか、そういうもので無理に販売がされるような結果にならないような配慮が必要ではないかと思います。

銀行が特殊というのも改めて言うことでもないんですけれども、やはり企業に関しての非常に細かい情報を常に得ていらっしゃるとか、銀行さんが圧力をかけている意識はなくても、企業というのは相当銀行に気を使っているというのを感じるところです。その辺は、商業銀行が非常にこれまで規模が小さく発言力も少ないアメリカの状況とはちょっと違うんではないかと思います。また、事業会社の側からも、今の関委員のように歓迎するというお話もあったんですけれども、一方、ある程度複数の金融機関からいろいろな提言を得たいというような、それが一つに集約されることに懸念を持つというような声も全くないことはないと思います。

先ほど内部管理を強化されるという話があって、これは非常に望ましいと思うんですけれども、やはり一方で、田中委員からもご指摘があったような、これだけいろいろ行政処分があるとか、自主規制機関でも、外資系機関も含め、処分が出ているというようなことを見ると、やはり少なくとも過渡期において、自主規制だけで十分なのかというところは若干懸念を感じます。

そういう意味では、利益相反に関して、金商法なり法律である程度整備をされるということも検討に値するのではないかと思いますし、それが実態として、第三者から見てどうなのかというようなことで、証券取引委員会とか、そういったところの検査も含めて、検討に値するのてはないかと思います。

情報に関しては判断が難しいんですが、その情報を共有されることで、企業なり個人なりの、利益を特に害するものでなければ、そんなに問題がないように思うんですが、それが、ダメージを与えるものであれば、慎重な対応が必要ではないかと思います。

以上です。

○池尾部会長

和仁委員とはい。和仁委員、先で結構です。

○和仁委員

方向としてはこれでよろしいのではないかと思いますけれども、ファイアーウォールは利益相反ですね。利益相反という問題は、別に金融機関だけの問題ではなくて、我々弁護士についても存在している話であります。ここでの問題は日本では利益相反についてどういう判断をしたかという実質論のところで議論がなされている。レギュレーターの方もそちらの方向に走っているような感じがするんですが、さっきクオさんがおっしゃったIBAの外資系の考え方というのは、どういうふうな手続を踏んでいくのかということが重要ではないか、つまり手続を踏んだかどうかということで、判断していく方がいいんじゃないかということです。これは、やはりレギュレーターの方でも、そちらの方向へ方針を変えて頂いた方がいいんじゃないかと思います。

メガバンクがいろいろファイアーウォール規制を守っていなかったということも取り上げられておりましたけれども、申し上げますと、ルールがあるんだから守らなくちゃいけないというのは正当なんですけれども、守りづらい、守れないルールを強制しても守れない。多分破られた方というのは、これはどうも経済の実態に反すると考えられていたのではないでしょうか。昔、我々の世代ですと造反有理というような言葉を、紅衛兵が叫んでいましたけれども、多分そういうふうなこともあったんだろうと思います。実際にアドバイスをしている方でも苦しいよねということがありますので、要するにルールが守れないというよりは、守れるルールをきちんと導入することが大切だと思います。そういう形でのアプローチによるレギュレーションというのも考えて頂ければと思います。

以上です。

○池尾部会長

若松委員。

○若松委員

時間もないので手短に申し上げますけれども、私は前回も申し上げたように、ファイアーウォール規制の見直しに当たっては、この金融機関の今日、一番論点になった自己規律というものが一番重要だと考えています。

最後に、聞きたいんですけれども、要するに先ほどから形があっても機能しなければ意味がないんだと。まさにその通りだと思うんです。配られたポール・クオさんの7ページに重要なのは次の要素と4点書かれていて、確かにシステムで、最後の4点目に挙げられている意識改革というのがやはり、今の欧米と日本を比べた場合の結果として、あくまでこのルール、自分たちがつくったルールを徹底して守るんだという意識の部分が重要なのかなとは思います。 今日ご報告してくださったポール・クオさんか國部さんにお伺いしたいんですけれども、欧米と日本を比べて今後の一番課題となるか、日本がこのファイアーウォール規制をこちらの見直しの方向に行くに当たって、決定的に欧米の金融機関と比べて、日本の金融機関が今後さらにやっていかなきゃいけない自己規律に当たっての課題、個人的な見解で結構なんですけれども、それは何だというふうにお考えになるのか、最後にお聞かせ願えたらと思います。

○池尾部会長

では、一言で。

○國部専門委員

今日、私どもが説明した管理体制は、これで十分と考えているわけではなく、さらに高度化をしていきたいと先程も申し上げたわけですけれども、やはりこの枠組みを本当に実効性のある形、実効性が今ないと申し上げているわけではなくて、すべてのいわゆる利益相反が懸念される、あるいはレピュテーショナルリスクが懸念される取引が漏れなくコンプライアンス部門に集中されて、それでしっかりと議論をして、判断をしていくことが重要であると。これはやはり事例を積み重ねてやっていくことが大事だと思います。日本のマーケットにおいても、利益相反について非常に議論がなされるようになってきているのはこの数年だと思いますけれども、実績を積み上げてやっていくということが大事だというふうに思っています。

端的な答えにはなっていないかもしれませんが、今後、高度化していくという意欲を持っており、さらに強化をしていきたいというふうに思っております。

○池尾部会長

この問題に関しては、次回も引き続き議論しますので、ちょっと田中委員、先ほどから手を挙げられていたので、お願いします。

○田中(浩)専門委員

すみません、手短に申し上げます。

先ほど、関委員の言われたことは、本当にもっともなことだというふうに理解しております。

この同意書の中身に関しましては、基本的には國部委員のつくった資料で言うと、C銀行とC証券と企業の三者間での合意事項になるわけで、基本的には銀行が持っている情報を、系列証券会社に流したい。それに対して事業会社が同意するかどうかということで、包括的な同意も可能です。今現在、日本の金融機関で銀行とその系列証券会社のことを考えると、基本的にはメガバンクの3つのところが、この同意書が必要になるのだろうと思いますが、包括的な同意書を、一回事業会社が入れてしまえば煩わしいことはないので、それほど実務上何か問題になるようなことはないのかなと思います。

また、その一方で、関さんのような大企業のところはよろしいのですが、中堅企業のところで、C銀行にいろいろとデータを握られているのはしようがないけれども、それをC証券まで勝手に情報を出してもらいたくないという企業サイドというのは当然あるわけなので、それに対してはその権利を無視するというのもいかがなものかなというふうに思います。

○池尾部会長

すみませんが、手短にお願いします。

○鴇田専門委員

クオさんのおっしゃるように、法令による画一的な規制というのは、これだけ多岐にわたる利益相反を問題にしていることから難しいということでございます。それから、いずれにしても、ユーザーサイドといいますか、日本のやはり法人にしても個人にしても、ユーザー、顧客にとって何が一番有利かという視点で考えるべきです。ですから、一部の業界の利益的な発言とか、そういう次元を超えて、国益にかなう仕組にすることが重要です。ビッグバンというのはそういうものだったと思うんです。従って、そういう状況に置かれた今の金融機関を考えてみますと、一日も早く、こういったファイアーウォールの問題を、国際化の流れの中に合わせて頂きたいというふうに思います。

以上です。

○池尾部会長

川本さん。

○川本臨時委員

手短に3点、申しあげます。

クオさんがおっしゃったコンフリクト・クリアランスというところですけれども、これがまさに金融機関の競争力の源泉です。どれだけデータベースをそろえて、迅速にここで意思決定できるのかということが、欧米金融機関の競争力の源泉だと思います。ですから、これを第三者に開示するということはなじまないのではないかと思います。それから、2点目ですけれども、情報開示については、このシティバンクのペーパーを拝見しても、原則自由です。本当に嫌な人だけが嫌と言える枠組みと、煩雑なことをどの人もしなければいけないという体系というのは全く違うと思いますし、あと、ホールセールとコンシューマーというのは全然違うのではないかと思います。

最後に、ご議論をお聞きしていて、いまだにファイアーウォールがあって、規制がなければいけないというのは、日本の金融機関だけチャイニーズウォールをちゃんと自分でつくって、自己規律を持てないようで、何か恥ずかしい感じが致します。

○池尾部会長

その通りなんですけれども。

では、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、引き続き次回もこのテーマに関しましては、ぜひご審議頂きたいと思います。あまりそれ以上ご審議はしている時間はないんですが。

最後に事務局から連絡をお願いします。

○池田市場課長

次回は、11月29日、午後1時から3時ということで開催させて頂きます。今、部会長からありましたように、引き続きファイアーウォールの問題を扱いたいと考えておりますので、第二部会の委員の方々にもご都合がつかれる方はぜひご参加頂きたいというふうに考えております。

○池尾部会長

どうもありがとうございます。次回は29日、木曜日の13時からですので、よろしくお願いします。それではどうもありがとうございました。

以上

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