金融審議会金融分科会第一部会(第51回)議事録

日時:平成19年12月11日(火)10時02分~11時59分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

それでは、定刻になりましたので、若干まだお見えになっていない委員の方もおられるようですが、時間が限られておりますので、ただいまから、金融審議会金融分科会第一部会、第51回の会合を開催いたしたいと思います。皆様には本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

いつものことですが、本日の議事は公開の形で行わせて頂いております。

それから本日は後ほど、渡辺大臣、山本副大臣、戸井田政務官がお越しくださる見込みだということです。

それでは、本日の議事に移らせて頂きますが、本日はこれまでの議論を踏まえまして、第一部会報告書の案文というのを事務局に用意して頂きましたので、これについて審議をしたいということですが、事務局から読み上げて頂くということです。それから、プロ向け市場における開示制度の詳細について補足がありますので、案文を読み上げて頂いた後、その補足の説明を伺うということにします。その後、議論ということで、案文の確認とそれからプロ向け市場における開示制度の詳細についての補足説明というのをまず行って頂きます。それでは、よろしくお願いします。

○池田市場課長

それでは、読み上げさせて頂く前に、2点ほど最初にお断りをしておきたいと思います。お手元に配付させて頂きました資料1が報告書の案文でありますけれども、ここでは、これまで議論頂きました取引所の取扱商品の多様化、それからプロ向け市場の問題、さらに銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直しについての報告書(案)を用意させて頂いております。

当部会としましては、このほかに課徴金制度の見直しがテーマになっておりまして、この点については、一番最後の16ページになりますが、現在この部会の下に置かれております法制ワーキング・グループで審議が行われております。この法制ワーキング・グループでの審議結果につきましては、次回の部会の際にご報告を頂きたいと考えておりまして、その審議結果を踏まえまして、この部分については加筆をさせて頂きたいと考えております。

それから、報告書をご紹介しました後に、企業開示課長の方から資料2、資料3について、プロ向け市場における開示制度の詳細についてのご説明、論点の提示をさせて頂きますが、この資料1の報告書(案)には、既にその内容については盛り込んだ形で報告書(案)は作成させて頂いております。詳細については、後ほど企業開示課長の方から説明させて頂くことにさせて頂きたいと思います。

それでは、朗読をさせて頂きます。

○読上者

では、読み上げさせて頂きます。

金融審議会金融分科会第一部会報告(案)~我が国金融・資本市場の競争力強化に向けて~

はじめに

少子高齢化が進展する中で、我が国経済が今後も持続的に成長するためには、我が国金融・資本市場の機能を拡充し、1,550兆円を超える家計部門の金融資産に適切な投資機会を提供するとともに、内外の企業等に成長資金の供給を適切に行っていくことが重要である。また、金融機関・金融グループには、内外の利用者に対して多様で質の高い金融サービスの提供が求められている。

国際的な市場間競争が激化する中、我が国金融・資本市場の競争力の強化は喫緊の課題であり、スピード感を持った取組みが必要となる。

金融審議会金融分科会では、平成19年1月に「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」を設置し、我が国金融・資本市場の競争力向上に向けた検討が行われ、その検討結果は、中間論点整理(平成19年6月13日)として取りまとめられた。

金融審議会金融分科会第一部会では、我が国金融・資本市場の競争力の強化を図るとの観点から、スタディグループでの指摘等を踏まえ、特に制度的な対応が必要となる課題について検討を行った。具体的には、

  • 取引所の取扱商品の多様化、
  • プロに限定した取引の活発化、
  • 銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直し、
  • 課徴金制度の見直し

について、本年10月から●回にわたり審議を行った。検討に当たり、課徴金制度の見直しについては、当部会の下に「法制ワーキング・グループ」を設置し、専門的な観点から検討を行った。

本報告書は、当部会における検討結果をとりまとめたものである。今後、関係者において、本報告書の趣旨を踏まえ、適切な制度整備が進められることを期待する。  

I .取引所の機能の拡充・強化

  • 1.取引所における取扱商品の多様化

    取引所を巡る国際的な状況をみると、諸外国では、ETF(上場投資信託等)やデリバティブ取引等について、商品の多様化が進展している。また、取引所間の国際的な競争が進展する中で、海外取引所は、取引所間の提携等により、取引所グループとして、株式、債券や金融デリバティブからコモディティ・デリバティブまで、幅広い商品を提供している状況にある。

    我が国においても、厚みのある市場を形成し、我が国金融・資本市場の国際的な魅力を高めるため、海外取引所で上場されているような多様な種類の商品が取引所で取り扱われることが重要であり、こうした商品の多様化によって利用者の利便性が向上することが期待される。

    また、我が国取引所の国際競争力を強化するためには、取引所間の競争を促進することによって、新しい金融商品の開発やシステム投資を促進することが重要である。このため、我が国においても、取引所又はそのグループ等において、株式、債券や金融デリバティブからコモディティ・デリバティブまでの総合的で幅広い品揃えを可能とする制度整備を行っていく必要がある。

    • (1)ETFの多様化

      ETFは、投資家にとって、個別株に投資することと比較すると、低コストにて、簡便かつ効果的な分散投資を可能とする投資手段である。また、非上場の投資信託と比較すると、取引所市場において、市場価格によるタイムリーな取引が機動的に行える等のメリットがある商品でもある。利用者利便の向上の観点から、こうしたETFの多様化を図ることが必要である。

      このため、コモディティ関連のETFを始め、海外取引所で上場されているような多 様な種類のETFを、投資者保護の観点等に留意しつつ、我が国取引所においても柔軟に上場することができるよう、以下の制度整備を行うことが適当である。

      なお、コモディティ関連のETFが上場されることとなれば、金融商品市場の厚みの拡大に加え、ETFの投資対象資産への投資やヘッジ取引等を通じて、コモディティ市場の厚みの拡大にもつながるなど、相乗効果が働くことも期待できる。また、商品設計等を通じた金融商品取引所と商品取引所間の協力関係が深まれば、将来的により本格的な提携等に進展していくといった効果も期待される面があるのではないかと考えられる。

      • マル1受益証券発行信託を活用したETF

        金融商品取引法の施行により、主として有価証券に対する投資を目的とする場合を除き、受益証券発行信託を活用することにより、柔軟な商品設計に基づくETFを組成することが可能となっている。

        こうした受益証券発行信託を活用したETFの上場が可能となるよう、必要な投資者保護の枠組みの下、取引所において上場規則の整備等が図られていくことを期待したい。

      • マル2投資信託を活用したコモディティ関連のETF

        受益証券発行信託の活用に加え、コモディティ関連のETFについて、一般投資家等に広く認知された投資信託の枠組みも活用できるよう、以下の制度整備を行うことが適当である。

        • イ コモディティ現物等への直接投資

          投資信託の主たる投資対象(「特定資産」)を拡大し、コモディティ現物やコモディティ・デリバティブを投資対象に加えることが適当である。

        • ロ コモディティ現物等に係る現物交換型の投資信託

          コモディティ現物等を投資対象とする投資信託について、投資額を適正に評価できるものなど、投資者保護上問題ないものは、現物交換型の商品設計を可能とするための制度的な手当てを行うことが適当である。

      • マル3商品ファンド法の適用関係

        投資運用業者によって、コモディティ・デリバティブへ直接投資するETFが組成される場合、現行の商品ファンド法制においては、投資信託法等に基づく規制に加え、商品ファンド法に基づく規制が重畳的に課されることとなる。これは、ETFの組成に当たって過重な負担を課すこととなりかねず、結果として、ETFに投資する一般投資家の利便性を害することともなりかねないと考えられる。

        したがって、コモディティ・デリバティブへ直接投資するETFについて、投資運用業者が投資判断を行う場合には、商品投資顧問業者に対する投資判断の一任を要しないこととすることが適当である。

      • マル4投資信託法における株価指数の告示指定のあり方

        現行制度上、現物設定・現物交換型の投資信託の連動対象となる株価指数は、金融庁長官が個別に指定(告示)しているが、時機に応じた迅速な商品設定を可能とするため、適切な価格形成や相場操縦防止の観点から問題のない範囲で、対象となる株価指数を包括的に定めるなどの方策を講じることが適当である。

      • マル5現物設定・現物交換型の投資信託の拡大

        現行制度上、現物設定・現物交換型の投資信託の運用対象は、証券の場合であっても株式に限定されている。例えば債券やREIT(不動産投資信託)の受益証券等、投資額の適正な評価が可能なものであって、投資者保護上問題のない証券については、現物設定・現物交換型の投資信託の対象とすることが適当である。

    • (2)金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れ等

      諸外国の状況を踏まえると、我が国取引所の経営基盤を強化し、国際競争力の強化を図っていくためには、我が国の取引所についても、取引所間の資本提携を通じたグループ化等によって、株式、債券や金融デリバティブからコモディティ・デリバティブまでのフルラインの品揃えを可能とする制度整備を早急に行っていく必要がある。

      この場合、金融商品取引法に商品取引所法を統合していくべきとの意見もあり得る。一方、コモディティ・デリバティブ取引については、引き続き、商品の生産及び流通の円滑化を図るという観点からの規制が必要との指摘もある。このような状況の中で両法を直ちに統合しようとすれば、金融商品取引法の、金融商品及び金融取引に関する横断的な法制としての性格を損なうとの問題が生じると考えられる。

      こうした現状を考慮すれば、フルラインの品揃えを可能とするグループ化等に向けた制度整備を早急に行っていくためには、金融商品及び金融取引は金融商品取引法で規制し、コモディティ・デリバティブ取引は商品取引所法の下で規制するという、両法制の枠組みの下で、資本提携等を通じた相互参入等を可能としていくことが喫緊の課題であり、以下の法的措置等を早急に講じることが適当である。

      • マル1コモディティ・デリバティブ市場の開設業務の位置付け

        コモディティ・デリバティブ市場の開設業務は、その公共性や果たすべき機能、リスク管理等の面で、金融商品市場の開設と極めて類似している。また、取引所グループとして、コモディティ・デリバティブを含めた多様な品揃えを可能とすることは、金融商品市場、コモディティ・デリバティブ市場の双方に相乗効果をもたらし得る。

        このような点を踏まえると、コモディティ・デリバティブ市場の開設は、金融商品取引所の関連業務として整理することが適当であり、金融商品取引所の子会社等による開設を認めていくことが適当である。

      • マル2金融商品取引所本体でのコモディティ・デリバティブ市場の開設

        金融商品取引所が本体でコモディティ・デリバティブ市場を開設する場合であっても、通常、金融商品市場の運営を適正かつ確実に行うことに支障が生じるおそれは低いと考えられる。

        したがって、金融商品取引所本体の業務範囲を拡大し、金融商品取引所等の子会社における場合と同様に、内閣総理大臣の認可を受けて、商品取引所法の枠組みの下、コモディティ・デリバティブ市場を開設することも選択肢として用意することが適当である。

        なお、金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れを実現するためには、以上のような法的措置等と合わせて、商品取引所法においても、金融商品取引所でのコモディティ・デリバティブ市場の開設や、金融商品取引所等による商品取引所の議決権の取得・保有等について、所要の規定を整備することが必要となる。また、商品取引所が子会社として金融商品取引所を設立・保有する場合における金融商品取引所の議決権の保有制限等の取扱いや、商品取引所本体において金融商品市場を開設する場合の規定の整備についても、合わせて検討を行うことが必要である。このため、関係当局による適切な連携を期待したい。

    • (3)排出権取引等の取扱い

      諸外国においては、排出権等についても、取引所における取引が開始されている状況にある。排出権については、金融商品に近い側面を持つと考えられるものの、現状、その法的な位置付けや価格評価方法等は必ずしも明確となっていない。一方で、今後、我が国においても、排出権取引等、金融取引に類似した性質を持つ取引が活発化することが考えられる。このような取引についても、例えば、公益又は投資者保護上、金融商品取引所グループにおいて取引の場を設けることに問題のない枠組みであれば、関連業務として認めていくことが考えられる。更に、排出権の法的な位置付けや価格評価方法等の明確化が図られる等の状況が整った場合に、その取引の具体的な態様等も踏まえつつ、金融商品として取り扱うことについても、幅広く検討を行っていく必要がある。

  • 2.プロに限定した取引の活発化

    諸外国においては、英国のAIMや米国のSEC規則144Aに基づく市場等、プロ投資家を念頭に置いた自由度の高い市場が拡大しており、魅力ある市場の構築に向けて国際的な市場間競争が進展している。

    我が国では、一般投資家が直接参加する市場においては、法定の情報開示等による厳格な投資者保護の枠組みが設けられているが、海外企業や国内の初期段階の新興企業にとって法定の情報開示等のコストが負担となり、我が国市場へのアクセスを遠ざける要因となっているとの指摘がある。

    このため、我が国においても、プロ投資家を対象とした自由度の高い取引の場を設けることにより、我が国金融・資本市場の活性化、国際競争力の強化を図っていくことが喫緊の課題となっている。

    すなわち、金融・資本市場においては、投資者保護の観点から、今後とも、情報開示等の重要性はより一層高まっていくものと考えられるが、情報収集能力・分析能力が十分に備わっているプロの投資家については、自己責任を基本とすることが可能であり、一般投資家とプロの投資家を区別した上で、プロに限定した自由度の高い効率的な取引の場を早急に整備すべきである。

    このような自由度の高い取引の場を活用すれば、

    • 海外企業や国内の初期段階の新興企業にとっては、情報開示等の規制によるコストを抑え、成長に必要な長期資金の調達をより円滑に行うことができることとなる、
    • プロの投資家にとっても、投資運用先として新たな収益機会を得ることができることによって、我が国金融・資本市場の魅力が高まるとともに、プロの投資家間の競争が促進されることによって、我が国における金融イノベーションが促進されることが期待される、
    • 一般投資家も、企業の将来性を見極めるプロの投資家の専門的な資産運用能力が発揮されることにより、その資産運用の利益を享受することができる、

    等の効果を期待し得るものと考えられる。

    このようなプロに限定した取引の場の枠組みとしては、マル1現行のプロ私募(適格機関投資家が対象)を活用した枠組みとマル2取引参加者を特定投資家にまで拡大した場合の枠組みの2通りの枠組みを考えることが可能であり、それぞれについて、以下のような制度整備等を行うことが適当である。

    なお、自由度の高い取引の場において、プロ投資家が適正な規律  なく運用を行えば、マーケット価格の変動等により、取引参加するプロ投資家自身やその背後の一般投資家等に想定外の損失が生じる可能性がある。プロ投資家は、適正なデュープロセスとリスク管理の下、プロとして責任をもった行動が求められることを忘れてはならない。

    • (1)現行のプロ私募(適格機関投資家が対象)を活用した枠組み

      適格機関投資家に対して開示制度の適用を行わないプロ私募制度やPTS(私設取引システム)制度等の現行の制度を活用した取引の場について、以下のような形で整理するとともに、必要な手当て等を講じることが適当である。

      • マル1取引の場

        現行のPTS制度を活用した取引の場を設けることが可能である。

      • マル2開示規制

        プロ私募により発行された有価証券であるため、開示規制の適用はない。

      • マル3転売制限等

        プロ私募の有価証券については転売制限が課されるため、プロに限定した取引の場の取扱銘柄が、その場の外において、一般投資家に流通することは防止される。

        他方、一般投資家がプロ私募以外で既に保有するものには転売制限が付されておらず、原則としてプロに限定した取引の対象とはならない。

      • マル4不公正取引規制

        認可金融商品取引業協会において、プロに限定した取引の場の取引対象となる有価証券を、取扱有価証券(協会員による売買等の取引の勧誘を禁止しない有価証券)に指定することにより、不公正取引規制を適切に適用することが適当である。

      • マル5その他

        取引所が、プロに限定した取引の場としてPTS業務を行う金融商品取引業者を子会社等として設立することも考えられる。この場合、

        • 取引所グループとして多様な取引の場を提供することは、取引所の魅力を高め、取引所の円滑な業務運営に資する、
        • PTSと取引所金融商品市場は、一定の方法により金融商品の集団的・組織的取引を行うことができる場という点で共通の性格を有し、リスク管理手法の面でも同一性が認められる、
        • PTS専業の金融商品取引業者であれば、これを子会社等としても、通常、取引所の業務運営の公正性や中立性を阻害することにはならないと考えられる、

        等の点を踏まえれば、PTS業務は取引所の関連業務と整理することが可能であり、また、一般に、取引所の財務の健全性や業務運営の公正性等に支障が生じるおそれは低いと考えられる。このことから、PTS業務の専業体制の維持が担保され、また、親会社が開設する取引所金融商品市場との中立性を確保する等の態勢整備が行われる場合には、取引所の子会社等として、PTS業務を行う金融商品取引業者の設立を認めていくことが適当である。

        なお、同様に、取引所がPTS業務(専業)を行う金融商品取引業者に50%以下の出資を行うことも、通常、特段の問題はないものと考えられる。

    • (2)取引参加者を特定投資家にまで拡大した場合の枠組み

      取引の場に厚みを持たせる観点から、取引参加者を特定投資家にまで拡大することにより、開示規制等については自己責任に立脚した新たな規律に基づく取引所市場を以下のような形で整備していくことが適当である。

      • マル1取引の場

        開示規制等について自己責任に立脚した新たな規律に基づく取引所市場を整備することが適当である。

      • マル2投資家に対する情報提供

        プロ投資家のみが参加する市場であることを踏まえ、当事者間の自主的な情報提供・収集・分析を基本とし、公衆縦覧を前提とした現行の法定開示は免除することが適当である。ただし、その場合、企業内容の虚偽又は不適正な説明・提示を防ぐ等の観点から、以下の法的枠組みを設けることが適当である。

        • 発行体は、プロに限定した市場の取引参加者に対し、少なくとも年1回以上、企業・発行体の内容やリスクに関する的確な情報の提供をしなければならないこととする。
        • 提供すべき情報の具体的な内容について、その様式・基準等を法定しないこと とする。情報提供の言語・様式(連結のみの情報とするか否かを含む)・会計基準・監査証明の有無といった詳細は、市場開設者の定めるルール等により自主的に設定することとなる。
        • タイムリーディスクロージャーに関し、市場開設者において必要な情報をタイムリーに集約して投資家に提供する仕組みを設けることが考えられる。
        • この場合、発行体による取引参加者への情報提供の方法としても、同様の仕組 みを活用することが考えられる。
        • 提供された情報が虚偽である場合等には、民事上の賠償責任の規定や虚偽情報 の提供を防ぐための仕組み等を検討する必要がある。
      • マル3転売制限等

        現行開示規制の適用除外の前提として、この新たな市場において発行・流通する有価証券については、その発行・流通をプロ投資家(適格機関投資家を含む特定投資家)に限定することが適当である。具体的方策としては、現行の適格機関投資家私募(プロ私募)における転売制限を参考に、例えば以下のようなものが考えられる。

        • 何人も、プロに限定した市場で取引される有価証券(上場前に発行されたもの 及び海外において発行されたものを含む。以下「プロ向け銘柄」という。)については、原則、法定開示がなされない限り、一般投資家に対して、売付けの申込み若しくは買付けの申込みの勧誘又は譲渡を行ってはならないこととする。
        • プロ向け銘柄については、金融商品取引業者は、一般投資家に対して、販売(売買、売買の媒介・取次ぎ・代理等)・勧誘してはならないこととする。
        • 金融商品取引業者には、プロ投資家に対し、販売・勧誘をする場合には、一般投資家への転売禁止の告知等をしなければならないこととする。
        • 一方で、オーナー株主等、一般投資家が、プロ向け銘柄を保有する場合に、プロに限定した市場やプロ投資家に対して売却することは認めることとする(そのための(勧誘なしの)金融商品取引業者の売買、売買の媒介・取次ぎ・代理等も認める)。
      • マル4不公正取引規制

        特定投資家が取引参加する場合には、相当程度の流動性が生じる可能性もあること等から、現行の上場有価証券に適用される規制と同様の規制を適用すべきである。

      • マル5その他

        • 株主数が500人以上になった国内会社に対する現行制度上の開示義務について、プロに限定した市場の整備により、相当程度の流動性が生じること、また、平成5年の現行制度の導入後、十数年間の有価証券報告書提出会社の実態等に鑑みれば、人数基準を一定程度引き上げることが考えられることを踏まえれば、例えば、現行基準の緩和(例えば、人数基準を(プロに限定した市場での取扱銘柄か否かを問わず)500人から1000人へ引き上げること)が適当であると考えられる。
        • 公開買付制度について、会社支配権等に影響を及ぼすような証券取引について透明性・公正性を確保するという制度の趣旨から、プロに限定した市場での取扱銘柄も同様に扱うことが適当である。
        • 大量保有報告制度について、経営に対する影響力等の観点から重要な投資情報を投資家に迅速に提供して市場の公正性・透明性を高めようという制度の趣旨から、基本的にプロに限定した市場での取扱銘柄も同様に扱うこととする。その際の、報告義務の発生要件(現行開示制度においては、5%を超える保有・1%以上の変動に報告義務)については、プロに限定した市場の特性を踏まえつつ、迅速な情報提供の必要性の観点から今後適切な水準を検討することが適当である。
        • 我が国取引所が、海外取引所との共同出資によりプロ限定の取引所市場を開設する取引所を設立することも考えられる。この場合、
          • ― 我が国取引所が、プロに限定した市場の開設に関し、海外取引所のノウハウ等を活用していくことは、その競争力強化の観点から有効な方策と考えられる、

          • ― 我が国取引所の子会社等として、そのグループ内にプロに限定した市場を開設する取引所が設立される場合には、中長期的な取引所業務の健全かつ適切な運営の確保の観点からも問題が少ないと考えられる、

            等の点を踏まえると、我が国取引所が、子会社等としてそのグループ内に、プロに限定した市場を開設する取引所を設立する場合であって、公益又は投資者保護上問題がないと認められる場合には、海外取引所による残余(50%未満)の議決権の取得・保有を認めることが適当である。

            なお、海外投資家による投資を促進する観点から、リモートメンバーシップ制 度に関し、外国証券業者の業務に関する報告等について、母国の事業年度に対応した期間によるものを容認する等、所要の改善を図ることが適当である。

  • 3.その他

    有価証券の空売りについては、現行、売付けが空売りであるか否かの別の明示・確認が取引者等に義務付けられているとともに、原則、金融商品取引所が直近に公表した価格以下の価格での空売りが禁止されている。米国においては、本年6月に、空売りの明示・確認義務については維持・強化しつつ、空売りの価格規制については見直しが行われたところである。このような状況等を踏まえて、我が国の空売りに係る価格規制のあり方についても、検討が必要であるとの指摘があった。

II .銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直し

銀行・証券間のファイアーウォール規制は、1993年(平成5年)の業態別子会社方式による相互参入解禁時に、利益相反による弊害の防止や銀行等の優越的地位の濫用の防止等をねらいとして導入された。

その後、我が国法制がモデルとしてきた米国においては、1997年のFRBによるファイアーウォール規制の緩和や、1999年のグラム・リーチ・ブライリー法の成立等により、ファイアーウォール規制の見直しが行われている。また、我が国においても、累次の制度改革が進められる中で、ファイアーウォール規制についても、実態を踏まえつつ、必要に応じ規制が緩和されてきた。

現行のファイアーウォール規制については、利益相反による弊害や銀行等の優越的地位の濫用等、本規制が本来のねらいとする行為を抑止するための措置としては、目的に照らして過大な規制となっているのではないかとの指摘がある。また、金融のグループ化等が進展する中、顧客に関する非公開情報の授受や、役職員の兼職等に関する規制等につき、

  • 金融グループとしての総合的なサービスの提供の障害となり、利用者の利便性がかえって損なわれている、
  • 金融グループとして要求される統合的リスク管理やコンプライアンスの障害となっている、
  • 我が国金融機関の競争力の観点から見たとき、欧米の金融グループとの競争条件を不利なものとしている、

等として、その緩和を求める指摘がある。

さらに、今日、諸外国では、金融グループにおける利益相反の管理等について、金融機関の自主的な規律付けによる内部管理態勢の整備を求め、その状況について当局が適切にモニタリングするとの規制的枠組みが趨勢になっているとの指摘がある。

以上を踏まえ、ファイアーウォール規制については、

  • マル1 利益相反による弊害や優越的地位の濫用の防止等につき、一層の実効性の確保を図るとともに、

  • マル2 利用者利便の向上や金融グループの統合的内部管理等の要請に応えるため、以下のとおり、新たな規制の枠組みを提供することが適当である。

    なお、金融グループにおいては、この新たな規制の枠組みの下、新たな業務展開が一層容易になる一方、自己責任に基づく内部統制の重要性が高まる中、業務運営にあたり、これまで以上に厳しい規律付けが求められることが肝に銘じられるべきである。

  • 1.利益相反による弊害や銀行等の優越的地位の濫用の防止の実効性確保

    • (1)利益相反による弊害の防止

      利益相反による弊害を的確に防止していくためには、証券会社や銀行等に対し、利益相反の管理のための態勢整備を法令上義務付け、それを当局が適切にモニタリングしていくことにより、規制の実効性を確保していくことが重要である。

      具体的には、監督指針で、マル1利益相反の抽出・特定、マル2利益相反の管理(チャイニーズウォールの構築等)・記録の保持、マル3利益相反管理方針の策定等を着眼点として明記し、各金融機関に対して利益相反の管理のための態勢整備とその適切な運用を求めることが考えられる。

      また、各金融機関が策定する利益相反管理方針については、金融機関における態勢整備を促進する等の観点から、その概要の公表が求められるべきである。

    • (2)銀行等の優越的地位の濫用の防止

      銀行法令等では、銀行等が、顧客に対し、当該銀行等又は当該銀行等の子会社等の営む業務に係る取引を行うことを条件として、信用供与等を行うことを禁止している。

      銀行等の優越的地位の濫用を防止するためには、これに加え、証券会社が、親銀行等・子銀行等の取引上の優越的な地位を不当に利用して、金融商品取引契約の締結又は勧誘を行う行為についても、金融商品取引法令において禁止することが適当である。その際、証券会社及び親銀行等・子銀行等に対して証券取引等監視委員会による検査を可能とすることが考えられる。

      また、銀行等の優越的地位の濫用防止の実効性を確保するためには、銀行等自身において顧客等から寄せられる情報を適切に処理する態勢を整備するとともに、当局においても、顧客等から寄せられる情報を検査・監督に活用する仕組みを強化することが重要である。

  • 2.現行ファイアーウォール規制の見直し

    • (1)顧客に関する非公開情報の授受の制限

      ファイアーウォール規制のあり方を考えていく上では、金融分野における顧客情報保護の意識の高まりについて十分に留意していくことが必要であり、顧客が望んでいない場合にまで、非公開の顧客情報の共有を認めることは必ずしも適当ではない。

      そのように考えた場合、顧客意思の確認手段としては、顧客の属性を勘案し、次のように考えることが適当である。

      • マル1個人情報

        個人情報については、米国ではグループ内の共有に関する規制はない(別途、公正信用報告法でオプトアウトの機会を付与)が、欧州ではオプトインを求めている。我が国においても、個人情報の取扱いについては、オプトインを維持することが適当である。

      • マル2法人情報

        法人情報については、欧米では特段の規制はなく、我が国においても、同意書面の提出手続には法人サイドで社内稟議等の手間があるとの指摘がある。ただし、法人の中にも、自己の情報についての共有を拒みたいとするケースもありうることを考えれば、法人情報の取扱いについて、オプトアウトの機会は付与することが適当である。

        また、現在、当局の承認があれば、顧客の同意なく、内部管理目的での顧客の情報共有が認められている。これについては、各金融グループにおいて利益相反管理態勢の整備が求められることに伴い、当局の承認を不要とすることが適当である。その場合、情報共有による弊害を防止するため、内部管理目的で共有されている情報について、内部管理目的以外での利用を禁止するとともに、情報管理態勢の整備状況等に関し、届出あるいは何らかの報告を求めるなど、厳格な監督対応が可能となるような枠組みを整備する必要がある。

    • (2)役職員の兼職規制

      証券会社や銀行等に利益相反管理態勢の整備を求めることに伴い、役職員の兼職規制については撤廃することが適当である。

    • (3)その他

      • マル1発行体向けクロスマーケティング規制

        現在、発行体向けの営業に関し、銀行等の職員が、取引先企業に対し、証券会社の職員と共同訪問することは認められており、更に、株式公開等に向けたアドバイスを行い、又は引受証券会社に対し、株式公開等が可能な取引先企業を紹介することも認められている。一方、銀行等の職員が、引受に関するアドバイスや紹介に止まらない具体的な引受条件の提示や交渉を行うことは、「引受」そのものに該当する可能性が高いとして認められていない。

        この点については、金融グループによる企業に対する総合的なサービスの提供を一層容易にするとの観点から、緩和を求める指摘がある一方、証券会社の引受審査態勢の強化が求められている中、引受リスクを負う証券会社に代わって銀行が引受条件の提示や交渉を行うことは証券会社のリスク管理や経営の独立性等の観点から問題があるとの指摘も多い。このことを踏まえれば、発行体向けのクロスマーケティングに関し、更なる規制緩和を行うことにはなお慎重な検討が求められよう。

      • マル2主幹事引受制限

        現行、証券会社が、その親法人等・子法人等が発行する有価証券の引受主幹事会社となることは原則として禁止されている。既上場会社の増資については、金融商品取引法の施行に伴い、一定の要件の下で規制が緩和されたが、IPO(新規公開時の増資)については、格付けが取得されていない限り認められていない。

        IPOについて、例えば、資本・人的構成の面で独立した他の証券会社の価格決定プロセスへの関与により、価格決定の透明性が確保できる場合には、制限を緩和するなどの措置を講じることが適当である。

以上でございます。

○三井企業開示課長

それでは引き続きまして、資料2と資料3につきまして、開示関係、特定投資家を参加者とするプロ向けの市場を検討する場合の開示についての論点について、いくつか前々回の論点メモに補充すべき点を説明したいと存じます。資料2と資料3を使って説明いたします。

まず、資料3、関係資料の1ページをお開き頂ければと存じます。

現在、有価証券の募集・売り出し、多数の方々に向けて株や債券を発行し、あるいは売り出し、既に発行された株や債券の販売の勧誘をする場合には、有価証券届出書の提出が義務付けられております。それから、取引所に上場されている等の株券などにつきましては、有価証券報告書の提出義務がございます。

これに対しまして、プロ私募という概念がございまして、新たに発行される有価証券を適格機関投資家のみに勧誘する場合には、これらの有価証券届出書などの法定開示規制が免除されます。

それから、その次のページでございますけれども、そのプロ私募の要件としまして、これは、現行の金融商品取引法、それからそれに基づく政令や内閣府令に詳細が書いてございますけれども、一言で言いますと、適格機関投資家以外の人に譲渡されるおそれがないものとして、具体的な譲渡制限、あるいは譲渡制限が付されていることを販売・勧誘の相手方に告知すると、こういうふうな制約がかかっているということでございます。

次の3ページでございますけれども、告知義務についての具体的な規定ぶりを参考までに掲げてございます。時間の関係で読み上げるのは省略しますが、それでこれらの現行のプロ私募の規定を前提に、資料2の方に進んでまいりたいと思います。

先ほどの読み上げさせて頂きました資料1で言いますと8ページから10ページにかけての部分についての補充的な資料でございます。

では、資料2の論点メモ(7)をご覧頂きたいと存じます。この記述はプロ向けの市場のうち、現行のプロ私募を利用したものではなくて、特定投資家まで参加者を拡大した場合の枠組みでございます。

まず1つ目の黒マルにありますことは、前々回、さらにその前のプロ私募の審議の際に説明したものと同様でございます。新たな市場は情報収集・分析能力が十分備わっていると考えられる投資家だけが参加する市場であるということから、公衆縦覧を前提とした現行の法定開示は免除すると。ただし、虚偽の説明、あるいは虚偽の情報がもともとのインプットとしてありますと、これはプロの投資家といえども判断を誤るということになりまして、自己の責任による分析・判断の前提が崩れてしまいますので、そこだけは防ぐ必要があるということで、最低限度の法的な枠組みを整備しようということでございます。発行体は、少なくとも1年に1回以上は、その財務内容等を的確に情報提供するということで、ここでは、具体的な会計基準や開示の様式などは法令上定めないということで、基本的には当事者間の自主的な判断によるということでございますが、プロ向け市場ということで、市場を構成するわけでございますので、一定程度、市場の開設者としては、何らかのスタンダード化をする必要があるかもしれません。注書きは、今のようなことを申し上げています。

それから、次のページ、タイムリーディスクロージャー、それから、その仕組みを情報提供に用いる、それから、最低限度、虚偽があった場合には、民事責任の、民事上の賠償責任など、あるいは虚偽情報の提供を防ぐための行政法的な枠組みを検討する必要があろうかと思われます。ここまでは、これまでの説明の繰り返しでございます。

転売制限、プロ市場である理由がこの転売制限でございますので、この具体的な仕組みということで、これは若干法制的な、あるいは技術的なところに及んでしまって恐縮でございますが、仮に、この資料1のような報告書の枠組みで作っていくといった場合に考えられる枠組み、詳細について書かせて頂いております。

小さいポツでございますが、「何人もプロに限定した市場で取引される有価証券については、原則法定開示がされていない限り、一般投資家に対して売付けの申し込みや買付けの申し込みの勧誘・譲渡を行ってはならない」。これはどういうことかと言いますと、現状、プロ私募、適格機関投資家だけに販売・流通するがゆえに法定開示が免除されているものは、これと同様な規定がございます。プロ私募に当たりますと、法定開示が免除されますが、その際には、プロ以外の人を勧誘すると、あるいはしようとする場合には、法定開示を発行者にしてもらわないと、一般投資家向けに勧誘ができませんという規定がございます。それと同じような枠組みをここで書いてはどうかということでございます。

次の3ページでございます。これもいわば今の規定のコロラリーと言いますか、延長線上でございますけれども、当然のことながら、金融商品取引業者、証券会社もプロ向けの銘柄については一般投資家に販売・勧誘はしてはいけないということでございます。

従いまして、その次のポツですけれども、こういう譲渡制限がついているということを、これはプロ投資家に売るときには、一般投資家に売れないんですよということを知っておいて頂く必要があろうかと思います。

片や、その次が政策判断でございますけれども、オーナー株主などが既に存在するというふうなベンチャー企業などがこの市場に上場されるといった場合に、そういったオーナー株主などが、――これは特定投資家でない場合が十分想定されまして、――そういった一般投資家がこのプロ向け銘柄を保有している場合、プロに限定した市場やプロ投資家に向けて売却するということは、これは制約しない、あるいは一定の条件で認めるといったことが考えられるのではないかという論点でございます。そうしますと、それを取り次ぐ証券会社が、そういった売買の取次ぎなどをするということが認められる必要があるということでございます。

それから、さらにこの転売制限、ここまではある程度制度上必然的に出てくる話かと存じますが、波及する論点が1つございまして、海外で発行されている証券を日本に持ち込むという場合には、この金融商品取引法全体にありますプロ投資家、一般投資家の区別をすることなく、制度が既に存在しております。チェックの1つ目ですが、現行法上、一般投資家が勧誘を受けることなく外国で既に発行されている有価証券を購入することは当然ながら可能でございます。

2つ目、一定の条件、これは一括転売と言っていまして、買った有価証券をまとめてロットで売却しなきゃいけないという一括転売の義務付けといった要件を満たす場合には、少人数(50人未満)の一般投資家に対しても、外国で既に発行された有価証券の買付けの申し込みを勧誘することができるという規定がございます。

さらに、金融商品取引業者が海外で一定の開示がされている有価証券――上場されているものなどが想定されます――について、当該外国証券の内容を説明した文書(外国証券内容説明書)という文書を交付し、かつ投資家から当該有価証券の保管の委託を受ける場合、保護預かりを受ける場合には、一括転売の制限が外れ、50人未満の少人数の一般投資家であれば勧誘することができるというルールがございます。

今回のプロ向け市場の制度の創設をしますと、このプロとアマが区分された制度が新たにできることになりますので、そのプロ向け市場に海外の証券を上場するというふうな制度を考えますと、この海外証券市場についても、プロ・アマの区分を導入しまして、プロ向け銘柄については、先ほど申しましたような転売制限の対象とする必要があるということで、この制度ではなく、本則と言いますか、プロ向け市場の制度の仕組みに沿った扱いをするということにする必要があろうかと思います。

注2が、ただし残された論点がございまして、このプロ向け市場に上場されなかった銘柄が存在するわけです。これについて、プロ・アマ区分を設けようにも、プロとアマの規定となるベースの市場が日本にないということになりますので、これについては当面状況を見ながら、現在の状況を当面は続けるということでいかがかということでございます。

それから、報告書(案)で言いますと、10ページの「その他」のところにあります点について、これも繰り返しになる点を省略しながら、かいつまんで説明いたします。

外形基準でございますございますけれども、参考にありますように、500人を超えている会社というのが41社でございまして、1000人までの会社というのは19社でございます。従いまして、これまで、平成5年にこの制度を導入したこの基準の実施状況を踏まえるということと、もう1点、今回プロ向け市場の創設に伴いまして、ある程度こういったプロ向けの銘柄の流動性が非常に高くなるということを踏まえまして、この500人という基準を1000人と一般的に引き上げてはどうかという提案でございます。

それから、公開買付制度を飛ばしまして、大量保有報告制度でございます。本文で言いますと10ページの最後のポツ、この横長の資料ですと5ページの最後の論点でございますが、制度の趣旨から言いますと、現行の大量保有報告制度について、何ら変更を加えることなく、このプロ向け市場にも適用するというのが本来のこの趣旨にはかなうわけでございますが、他方、前々回、その前でしょうか、議論の中でこのプロ向け市場に上場される銘柄の特質に鑑みると、少し緩める必要があるのではないかというご議論がありました。それを踏まえまして、いずれの考え方をとるべきかという問いかけでございます。

かなり大幅に緩めるとすると、例えば10%を超える保有について大量保有報告義務をかけ、2%ずつ買い増す、変動するごとにその変更報告を義務とするというふうな緩和の特例ということが考えられようかと思います。

説明は以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま事務局から読み上げて頂きました報告書(案)につきまして、今、三井さんから補足説明があった点もあわせてご議論頂きたいと思いますが、報告書(案)は多岐にわたっているというか、取り上げてきた論点、本来は4つですが、説明がありましたように、課徴金制度については次回ということですので、3つ大きな論点に即して取りまとめられておりますので、その順に、議論は3回に分けて行わせて頂きたいと思います。

まずは、第1の論点にかかわる部分ですので、前書きを含めて1ページから6ページの頭のところまでです。6ページの「2.プロに限定した取引の活発化」の前のところまでを第1部分とします。それから、今の6ページの「2.プロに限定した取引の活発化」から、11ページの終わりあたりのところまで、ここが第2論点にかかわる部分ですので、パート2ということで2回目ということです。それから、11ページ以降の銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直しの部分、15ページまでについて3回目ということで、それぞれ議論を行っていきたいと思います。よろしくご協力ください。

それでは、まず冒頭から6ページまでの取引所の機能の拡充・強化のうちの「1.取引所における取扱商品の多様化」の論点の部分です。ここに関しまして、ご意見、ご質問等ございましたら、ご自由にお願いいたします。どなたからでも結構です。

既にこれまでの審議の中で大枠はご確認頂いてきた論点メモの内容を文章化しているということですので、大体ご承認済みかという感じはするんですけれども、もし何かありましたら、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

この取引所における取扱商品の多様化の部分に関しましては、とりあえずはご意見、特にすぐは……、藤原委員。

○藤原委員

くだらない質問かもしれませんが、ちょっと質問させてください。

ETFは、新規の金融商品ではなく、現在、東京証券取引所で扱われている商品です。アメリカなどに比べ、日本のETFの発行件数も少ないだけでなく、一日の取引量も少ないので流動性もあまりありません。だからETFの多様化が必要であるということは十分に理解できるのですが、この16ページの報告書の中で 3ページ半ETFについて書かなければいけないぐらい、ETFの多様化というのは、重要なのでしょうか。申し訳ありません。こういう質問をしてしまい・・・。 繰り返しになりますが、ETFが全然ないところから、ETFを新規導入して多様化するというんでしたら私もわかりますが、これだけの紙面を割く背景は何なのかについて教えてもらってもいいでしょうか。

○池尾部会長

もちろん結構ですが、事柄の重要性とスペースの長さは必ずしも比例しているわけではなくて、制度整備上の必要性を正確に書くと、どうしても長くなってしまうということで、事柄としては、ETFの多様化をしようというだけで済むんでしょうけれども、実際ETFの多様化をしようと思うと、制度上の手当てとしてはこれだけのことをやらなきゃいけないという、そういうことで、スペースが長くなっているという理解なんですが、事務局からありますか。

○池田市場課長

今、池尾部会長の方からご説明があった通りでして、確かに、ETFの多様化をすべきだということであれば、そのことに限ればクリアなメッセージはそれに尽きるのかもしれませんが、私どもが制度をそういう方針のもとで組み立てていこうとしますと、3ページから4ページの初めまでにかかるように、個別には対応しなければいけないことが種々ある。

これは個々に書いていますが、これはそれぞれ法令上のレベルが違うような部分がありまして、例えば、受益証券発行信託を使ったETFということは、これは金融商品取引法の方で既に法的な手当てがされていますので、基本的に取引所の上場規則での対応が可能かと思いますが、「マル2」あたりになりますと、イであれば政令改正、ロであれば法律改正までが必要であり、「マル3」についても他省庁所管の商品ファンド法の方の手当てを考えなければならない。それから4ページの方になりますと、「マル4」は金融庁の告示の問題でもありますが、あわせてこれは税法の問題でもあったりいたします。ということでございまして、各項目、非常にテクニカルなことを書き過ぎているきらいはあるかもしれませんが、やや、それぞれの項目ごとに法令のレベル、あるいは関係者が異なるということから、かなり詳細に書き込ませて頂いているということでございます。

○池尾部会長

どうぞ。

○藤原委員

もう一つ聞いても宜しいですか。

例えば、東証の場合、ETFの銘柄は11ぐらいしかないです。アメリカなどはETFが200ぐらい上場されていると思いますが、東証も商品先物などにもリンクするETFなども導入して今後4~5年で200ぐらいに増やそうとしていると理解していいのでしょうか。

○池田市場課長

数がどういうことになっていくかは、これは各取引所の取り組みでありますので、予断を持って申し上げることは困難ですが、例えば、我が国の制度、現行制度を前提にしますと、ETFの中にいろいろな有価証券を組み込んでいくということはかなり自由にできるわけですが、例えば、商品の先物ですとか、商品の現物、今、大証の金のケースがありましたが、大証の場合もなかなか金の現物を組み込むことは現行制度上難しいので、一旦リンク債という形に変換して、そのリンク債を組み込むという形で商品化をされているので、逆に商品現物を入れたり、商品先物を直接入れたりするという部分については、法令上の手当てが要るということです。

それから、例えば、4ページの頭に書いてあります告示指定、これは税法にもリンクしている問題ではあるんですが、ETFの対象となる指数については、個別指定が必要な枠組みに今なっておりまして、これをしますと、新しい指定をするときにパブコメ手続等までが必要になって、これは新しいETFを開発するのに自動的に1カ月程度、時間がかかるということがございまして、この辺については、数につながるかどうかわかりませんが、機動的に商品化するということが可能になっていくというふうに考えております。

○池尾部会長

1ページに記載していますように、今年の前半はスタディグループという形で藤原委員にもご参加頂きまして議論したわけですね。スタディグループは問題を掘り起こすという観点からの議論をしたわけですが、その下にありますように、第一部会の議論というのは、特に制度的な法制度的な対応が必要となる課題を議論しているということで、問題そのものについて全般的にというよりは、そのうちで法制度面の対応が特に必要なことを議論するということで、第一部会を開いているということで、ちょっとそこは役割がありますので、ご理解くださいということです。

ほかに、第1のパートの部分につきまして、取扱商品の多様化の部分について、ご意見等、ございますでしょうか。

特にすぐご意見がないということであれば、後でまた戻って頂いても結構ですので、2番目のパートで、6ページ以下のプロに限定した取引の活発化の部分について、ご議論をお願いいたします。この部分につきましては、先ほど補足説明がありましたように、新しい論点というか、プロに限定した取引の開示規制の部分について、より具体的な内容を書き込んでいる形になっておりますので、ここは新しく議論して頂くことになるかと思いますので、この6ページから11ページにかけての部分に関しまして、ご意見等ございましたらお願いしたいと思います。

では、原委員、お願いします。

○原委員

プロに限定した取引の活発化の中の8ページです。取引参加者を特定投資家にまで拡大した場合の枠組みということで、この特定投資家というものがどういう存在というのでしょうか、どういう形で存在してくるかというところにもかかってくるかと思いますが、ここで考えられていることは、具体的なことは9ページに書いてございますけれども、マル2の投資家に対する情報提供のところで、情報提供はコストがかかるから、あまりコストがかからない方法で、ただしやはりプロに限定しても年1回以上は開示をするという、それから民事上の賠償責任の規定と書かれているのですが、全体のトーンとして投資家に対する情報提供というのは非常に重要なので、私はいろいろな形で工夫して、情報提供がなされるべきだというのが前提として第一部分にあって、ただそれであっても、ややコストがかかる面については、このようなことを考えるという書きぶりにして頂いた方がいいと思います。

それから、ここで民事上の賠償責任の規定とか、虚偽情報の提供を防ぐための仕組みはぜひ導入して頂きたいと思っておりまして、具体的に何かお考えがあれば教えて頂けたらと思います。

それから、転売制限については、今日細かなご説明がございましたけれども、これで過不足はないのか、足りているのかいないのかというのが、やや気になる点でございます。

それから、10ページのその他のところで、株主数が500人以上になった場合の開示義務を1000人に引き上げたらどうかということが書かれてありまして、その前提として、「この制度導入後十数年間の有価証券報告書提出会社の実態等に鑑みれば」と書いてあって、資料2でご説明があったところにも同じ文章があるのですが、実態がどうだったのかというところが明記されておりませんので、実態がどうであったから1000人にしてもいいというご判断になったのかは、ここはもう少し詳しくご説明を聞きたいと思います。

質問としては、具体的な民事上の賠償責任の規定と虚偽情報の提供がある程度考えられていらっしゃるのでしたら、その部分。それから、1000人という数字になったところをご質問したいと思います。

○池尾部会長

これは開示課長から。

○三井企業開示課長

まず、その具体的な仕組みでございますが、今、法制面について関係省庁と議論をしておりますので、具体的な結論に至っているわけではございませんけれども、民事責任の規定は現在、法定開示について17条から21条、22条ぐらいのところに、まず虚偽の法定開示をした会社やその役員などは賠償責任があるという規定がありまして、それに加えて賠償責任の因果関係や損害賠償額を推定する規定がございます。発行開示、流通開示、それぞれにその規定がございます。これがそのまま準用なり、似たような規定が置けるがどうかというのを、現在、関係する役所と議論しているところでございます。

それから虚偽の情報提供を防ぐ仕組みとして、1つは刑事罰、1つは課徴金のような制度が想定し得るわけでございまして、これもそれぞれ相談すべき役所がありますので、現在相談中でございまして、まだ結論は出ておりません。

それから、情報提供が必要であるということから、この一般的な情報提供の仕組みについては、これもまだ相談すべき役所があるので結論は出ていないんですが、法定開示とは別の制度として、金融商品取引法の法定開示の後ろなのかどこかわかりませんけれども、それなりにきちんと条文を起こして、書いてはどうかという考えを持っております。

それはひとえに、この情報提供は大事であるということなんですが、片や、投資家がプロに限定されているという場合の開示について、国とか役所が公衆縦覧を前提として、その書類を受け取って、国のシステムで情報発信をするというのである必要はなくて、むしろそれは取引所のシステムで情報が流せるという仕組みの方が、当然コストなり、それから利便性もあるし、片や参加者が特定投資家以上に限定されるということになれば、それで十分に情報が行き渡るということから、新たな制度として仕組みたいという気持ちがございます。

そういうことですので、現行の法定開示の軽減なり緩和という発想でいきますと、制度的にはやや複雑になり、あるいはいろいろ漏れが起きたりという可能性がありますので、スパっと法定開示は一旦免除するというふうに発想を切りかえまして、それを前提に今度は別のローコストな、かつきめ細かい、当事者間の創意工夫で情報提供がされるという仕組みを考えてはどうかという提案でございます。

それから、1000人のところでございますが、すみません、個別の企業をチェックしておりまして、先ほどの横長の資料の5ページのところにありますように、外形基準、上場企業は数千社あるわけでございまして、それ以外にファンド系のものも含めて4000ぐらいあるとして、この外形基準に該当して有価証券報告書を出しているというのは、そういう数の中で見ますと、全体で41社ございます。そして、1000人以上の場合が22で、1000人から500人というのが19社でございます。この具体的な会社をここでお配りするのはどうかなと思ってお配りしていないんですが、そういったものを施行されてからこの間ずっと眺めておりまして、500人ということで切ることによって法定開示ですので、かなりのコストと手間をかけて、監査証明をつけて開示して頂いているわけですが、それがどのぐらい利用されているだろかといった観点から、やや見直す時期に来ているのではないかという問題意識がございます。全体の法定開示対象会社からしてみると非常に数が少のうございまして、またその会社の中身を見ても、それだけのコストをかける意味があるかどうか、だんだん疑問になってきているということから、今回数字の見直しを提案した次第でございます。

○池尾部会長

よろしいですか。

黒沼委員。

○黒沼委員

 2点ございます。1つは今の外形基準のことです。外形基準を見直すということ、すなわち500人から1000人に規制緩和するということと、プロ向け市場の外形基準のあり方とは、少し趣旨が違う問題なので、本来は切り離して議論すべきことではないのかと思いました。500人を1000人にするのはよいとしても、むしろプロ向け市場の場合には、プロ投資家の数を除外して計算すれば、原則はゼロで、後はオーナーとか一部の者がいるだけになるので、趣旨からするとすっきりするのではないかと思うのです。そういうやり方をとらずに、500人から1000人に一律に引き上げると考えたのはなぜかを教えてください。

もう一つは、これは確認なんですが、公開買付制度について同様に扱うということの意味です。これは、プロ向け市場も有価証券市場なので、そこでの取引は市場取引であると位置付けて、市場外で多数の者から買うとか、あるいは買った結果3分の1を超える場合には公開買付けを強制するということでしょうか。その場合に、公開買付けも開示の側面があるんですが、対象証券についての継続開示が行われていないようなものについて、買付者による開示制度を維持して、制度を仕組むということを考えておられるのか。これは質問ですけれども、よろしくお願いします。

○池尾部会長

それではまた三井さん、お願いできますか。

○三井企業開示課長

それではまず第1点、別の議論があるというご指摘はその通りでございまして、その意味では、資料2・論点メモ(7)の4ページから5ページに、2つのことを一緒に書いてございます。「また」の前にあるのがプロ市場の話で、「また」の後ろにあるのが制度のそもそも論でございます。

2つ目の論点と関連するのですが、おっしゃる通りでありまして、プロ投資家、特定投資家を除外して計算するという方式を今回導入するのであれば、後段の制度一般論は出てこなくて、プロ市場だけの話となろうかと思います。そこで一番悩ましいのは、一般投資家から特定投資家になることも、それから逆方向に移行することも自由であるということであります。それから、お客さんは、取引する証券会社ごとに特定投資家、一般投資家の取り扱いを自由に選択できます。それから、自分が特定投資家であるか、一般投資家であるかは、一般的には公示されない仕組みになっております。そうしますと、発行会社は、仮にそういう制度を導入しますと、理屈上は可能なのかもしれませんけれども、一定期間ごとに期間が切れて、特定投資家から一般投資家になるかもしれない。あるいは一般投資家から特定投資家に随時移行される、あるいはそれは契約の種類ごとに選択することになっていますので、当該有価証券が、プロ投資家を選択した契約の種類になっているかどうかということを、各証券会社を通じて、直接ではなくて、契約の当事者となっている証券会社を通じて発行会社は情報を収集し、そして、株主数を計算するということになろうかと思います。

もちろん、それがフィージブルであれば一つの解になるんですが、特定投資家の、相対かつ、かなり自由度の高い制度であるということから考えますと、発行会社にはその事務をして頂くというのがなかなか困難なのではないかというふうに考えた次第でございまして、そうしますと、一番シンプルで発行会社が見て処理しやすい形として、プロもアマも含めて1000人というのを提案した次第でございます。ここはご議論があるところかもしれません。発行会社の方からもご意見を賜れればと思います。

それから、TOBはまさに一番鋭いご指摘だと思いまして、法定開示を免除すると。法定開示の適用対象外のものにしますと整理しているわけでございますけれども、大量保有報告とTOBに関しては、開示のシステムを使った、いわば公衆縦覧というシステムを使った規制がこの部分には適用されるということになります。若干悩みはあったわけですけれども、不公正取引、マーケットの取引の公正性を担保するという規制をかけるマーケットとしまして、かつ公衆縦覧型の現行の法定開示は免除して、新たにフレキシブルな情報提供の仕組みを作ろうと考えましたときに、この公開買付けと大量保有報告というのがどちらかに近いかと。法形式上は明らかに開示なんですが、実質的には不公正取引の防止規定に近い機能、効果を持っているかもしれないと思いまして、それでは、それは公開買付けなり大量保有報告、相場操縦やインサイダー取引の規定と並んで同じような規律を求めるのが、市場参加者から見て、より公正な取引に参加できることになるのではないかということで提案した次第でございます。ここもご議論頂ければと思います。

○池尾部会長

お願いします。

○黒沼委員

 第1点目は、発行会社なり市場運営者にとって、まさに言われたようにフィージブルな使いやすい方であれば、私としてはどちらでも構わないと思っています。

ただ、ちょっと感想ですけれども、プロ向けの証券を特定投資家という資格で保有している者がいるとして、その者は一般投資家になったら当該証券を売りにくくなるわけですから、普通は一般投資家にはならないと思うので、それほど複雑にならないんじゃないかという感じはします。

○池尾部会長

今ご指摘があって、開示課長からご説明頂きましたけれども、その点を含めまして、もう少しご意見等ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○藤沢委員

今のとは少し違うんですけれども、私の理解不足かもしれませんので教えて頂きたいんですけれども、10ページの真ん中だったと思いますが、3番目のポツです。「オーナー株主等、一般投資家が、プロ向けの銘柄を保有する場合に」というところなんですけれども、「売却することは認めることとする」というふうになっているんですが、これは売却のみということなのでしょうか。買付けをするということは、基本的にはできませんという理解でよろしいのでしょうか。

○三井企業開示課長

おっしゃる通りです。

○藤沢委員

その背景は。

○三井企業開示課長

法定開示を免除するという仕組みの前提として、これはプロしか参加していない市場だからということですので、プロしか参加していない市場なのでというところを確保するために、原則、プロ向けだと定義した銘柄については一般投資家向けの販売・勧誘はしないというルールにする必要があります。

そうであっても、特定投資家として購入した方が何らかの事情で、例えば財産が減っちゃって、それで一般投資家になったという場合に、売れないということだと困るかなということがありまして、そういった手当て。それから、もう一つは公開買付け規制をしますと、公開買付けに応募するオーナー株主などが存在し得ますので、それは可能にする必要があろうかと思います。

○藤沢委員

例えば、自分の会社、オーナー株主にとって買い戻しをするときというのは、どう考えればよろしいのでしょうか。

○三井企業開示課長

プロ市場で買うということではないんだろうと思います。ただし、オーナーさん、オーナーの親族、あるいは出資者、共同に事業に賛同されて出資された方々は依然として持っておられることだろうと思います。どのぐらいの割合になるかはケース・バイ・ケースでしょうけれども、プロ向けに上場されるというのは、全株式ではなくて、その一定部分だろうと思いますので、その限りについて、現状の上場株と同じように固定株主というんでしょうか、そういったものが事実上は存在し得ると思いまして、その部分の取引は制約されていないわけであります。

証券会社がそれを積極的に勧誘するとか、あるいはオーナーさんが反復継続目的でインターネットにポスティングするなどで、売り主を勧誘していくといったことになりますと、それは一種のディーリング行為になってしまう可能性がありますが、そういうふうに至らなければ、現状と同じ程度の範囲で、それはできるのではないかというふうに整理したいと思います。

○池尾部会長

高橋委員、その次、斎藤委員。

○高橋委員

第二部会所属で、この議論には参加してこなかったものですから、初歩的なことで恐縮ですけれども、意見と質問を出させて頂きます。

まず、今回、一般投資家とプロの投資家を区別した上で、プロに限定した自由度の高い効率的な取引市場を早急に整備する。これについては賛成でございますけれども、特定投資家まで巻き込んだ開示規制の緩いプロ市場を整備するということに関しては、この政策選択のリスクというのを、私はそれなりに感じております。

と申しますのは、個人が特定の投資家に移行する場合というのは、能力が備わっているというような表現が、説明資料等々にあったと思うんですけれども、情報収集とか分析能力が備わっているかどうかというところまでは、たしか審査していないのではないかと思うのですけれども、ここは教えて頂きたいと思います。特定投資家という名の単なるお金持ちが巻き込まれる可能性をどう考えるかということだと思います。証券会社が、有利な取引ができる市場があるからと言って勧誘したと。しかし、自己責任であると、これでよいのかどうかということを1点お伺いしたいと思います。これまでにもしかして議論があったら恐縮ですが、教えてください。

それから、2つ目も基本的なことですけれども、このプロ向けの銘柄は転売制限がかかっているというふうにあるんですけれども、ファンドなどに組み込んで、つまり集団投資スキームの商品としてエンドユーザーが一般の個人投資家になるということがあるというふうに考えてよろしいのかどうか。確認ですけれども、お願いいたします。

○池尾部会長

答えてもらえますか。

○三井企業開示課長

まず第1点は、まさにここの一部会での議論の争点だったと思います。その意味で、今のプロ私募は機関投資家だけなので、法定開示がなくて、かつそれ以外に全くの情報提供義務がない世界ですが、特定投資家まで巻き込んだ場合に、プロ私募と全く同じ扱いでは、特に発行企業が虚偽の情報を提供した場合にはまずいのではないかという考え方があったかと思います。プロ私募で全く法定開示が免除されているものの背景には、機関投資家という力の強い、知識・経験だけではなくて、力の強い投資家であって、その投資家が発行サイドに情報提供を要求できる地位にある、あるいは対等であるという前提があったかと思います。

片や、特定投資家は、どちらかと言うと受動的に情報を受け取ると。それを分析するなり、知識、投資経験などはある、あるいは財産はあるかもしれませんが、それをやや資産家である個人で投資経験があるからといって、発行体に情報提供を要求する、あるいは新たな情報を出せと言えるという立場にはない可能性があるので、そこは情報提供義務と、それが虚偽でないという仕組みが必要なのではないか。

片や、会計基準や監査、あるいは単体・連結といった具体的な会計基準の選択や、それからフォーマットまで法定するという仕組みまで要求するということが、コストの点、あるいは新しい商品のイノベーションといった観点から、やや画一的なり、あるいは過重かもしれないということで、新たな情報提供の仕組み、いわば直接開示というべきか、情報提供という仕組みを作りまして、そこはきちんと虚偽を防ぐ仕組みを整備しながら、制度を設計していこうといった議論ではなかったかと思います。まさに、そこの重要な論点ですので、細かい制度もご覧になったところでご意見を賜れればと思います。

それから、2つ目でございますけれども、プロであるファンドが参加して、それをエンドユーザーが投資の機会を得るということは想定しているところでありまして、その特定投資家以外の、いわゆる機関投資家、その実質的な意味での機関投資家が参加していれば、その先には最終投資家がいるという前提かと思います。

○池尾部会長

だから、集団投資スキームに組み込んで、一般投資家に販売するときは、一般投資家に受益証券を販売するところで普通の規制が全部かかるということですね。

それでは、斎藤委員、お願いします。

○斎藤委員

今、三井課長の話を伺っていて、もう少し細かな話になってから申し上げた方がいいのかもしれないのですが、先ほど、虚偽情報の提供を防ぐ仕組み等の中に、刑事罰の可能性というのが、まだ残されているというお話でした。その際に、何をもって虚偽とするかというルールについて、全く法的な裏付けがなくても安心していられるかどうかという、前に申し上げた論点を、もう一遍確認させて頂きたいんです。

繰り返しになりますけれども、財務状況というのは、直接観察して、正しいか間違っているかを確認できるものじゃない。言ってみれば、体重をごまかしたとか、年をごまかしたという話じゃないわけです。むしろ、利益だとか資本だとか、非常に抽象的な概念について、解釈を与えることで初めて真偽を確認できるという性質のものだと思うんです。

もちろん、開示のルールを直接法定する必要はないと思うんですけれども、しかし、それを市場開設者に全部ゆだねるというだけですと、そのルールに反したものを市場から追放することはできても、刑事罰ということになるとどうなのか、私は法律家じゃないのでよくわからないのです。何か開示のルールを、包括規定でもいいから法的に裏付ける工夫は必要ないのかどうかということを、念のためにご質問させて頂きたいと思います。

○三井企業開示課長

最も重要な、特にこれから法律を書いていく人間からしてみると最も重要な論点でございまして、実は現行の金融商品取引法にも虚偽とかいう構成要件は多々ございまして、同じ虚偽が、ある場面では最高刑が10年であったり、ある場面では6カ月だったりします。それぞれ、保護されている法益だけではなくて、実際に想定される局面が先生のおっしゃっているようなことがあって、法定刑の違いが出ていると思います。従いまして、現行の法定開示の規制の10年の法定刑のところに入るかどうか。あるいはそうでなくて、例えば業者が販売・勧誘をするときに虚偽のことを言った場合、それから現行ですと届出義務しかないファンドについての販売・勧誘における虚偽の説明についても刑事罰が、法定開示よりもかなり軽いですけれども、ついております。

従いまして、まさに先生のおっしゃる通り、どのような基準で情報が提供されて、それがどれだけ公衆に信頼されて、そこに虚偽があった場合に、どれだけ社会的な法益が侵害されるかという程度なり、具体的内容によって、刑事罰とした場合の分類されている場所が変わってくるかと思います。

現在考えております案ですと、財務諸表をきちんと作って提供すべきであるといった大枠は法令に定めたいと思いますが、それを日本の企業会計原則を初めとする会計基準でなければならないとか、あるいは現在の財務諸表規則の様式に従って表示されていなければならないという基準・様式の規制は加えないということを考えております。

そうした場合に、刑事罰がどの分類に入るかと。そのまますぽっと法定刑が10年の法定開示のところに入るのかどうかというところは、法制的に詰める点はあろうかと思います。例えば、基準が法律上どのように位置付けられているかによって、仮に法定開示の10年のところに入れた場合に、どのような違反態様が虚偽として立件し得るかという範囲も変わってくる可能性がございます。日本基準だったら粉飾にならないけれども、国際会計基準だったら粉飾になるというケースをどう扱うかとか、ご指摘のような問題があろうかと思います。

これはまさにこれから法的な詰めをしていきたいと思っております。

○池尾部会長

和仁委員。

○和仁委員

私も二部会なので、あまりこっちには出てきていないのでよくわからないんですが、すみません、10ページの「マル5」の1つ目のポツで、いわゆるプロ向け市場の開拓と、それからプロ向けの販売という議論が分けて行えることができるんだということは、確かに黒沼先生のおっしゃる通りなんですけれども、今回考えていらっしゃるプロに限定した市場というのは外国の発行体も上場してくるというか、その発行した証券がそこで取引の対象になるということですね。

そうすると、彼らに対しては、1000人を超えても有報は出さなくていいけれども、日本の発行体は有報を出せという、そういう判断をここでやっていらっしゃるのでしょうか。すみません、議論が追いついていないんですが、もしそうだったら日本の発行体の方から、内外逆差別だというふうな議論が出てきそうな感じがするんですが、そこのところを教えて頂けますでしょうか。

○三井企業開示課長

現行の500人基準はおっしゃる通り、国内企業向けの制度でありまして、そこは今回、特段外国企業に広げるとか、あるいはそういう議論はしてございません。従いまして、その意味では現行制度の延長線上で基準の緩和の議論をしているわけでございます。

○池尾部会長

現行制度はそうなっているんですね。ぶうぶう言っている人がいるんですか、それで。

○和仁委員

いや、我々のお客さんで、そのうち言いそうな人が出てくるなと思っています。

それから、すみません、これはここで議論すべきことではないんですけれども、転売制限というのは、日本国内だけで起こる取引のみについて適用されるという理解でよろしいんですね。このような取引をすると、要するに、証券が外へ行って、外からまた戻ってくるというふうな可能性もあるわけで、昔々は、例えば少人数私募なんかに関しても、全世界含めて49人だというふうな議論がされたこともあったんですけれども、ここでおっしゃっている転売制限というのは、日本国内の取引に関しての転売制限の議論だと理解してよろしいんですね。外に行ったときの取引は全然我々の議論すべき話ではないと考えてよろしいのでしょうか。それを確認して頂ければと思います。

○三井企業開示課長

適用の地的限界の話があろうかと思います。一般的にそういったケースが多いというふうなことも私は認識しておりますが、片や、金融商品取引法ではこの資料にありますように、海外発行証券を日本で勧誘する場合の規定がございます。従いまして、事は結構複雑でございまして、この3ページから4ページ目に書いていますのは、海外で流通している証券を日本に持ち込んで流通させる場合に、これを全く内外遮断してしまっていいかと。特に海外企業の銘柄を日本のプロ向け市場に上場しますと。

例えば、海外のイギリスのAIMで上場されているものを日本でも上場しようといった場合に、日本で転売制限がかかっておりますと。片や、海外で行われるのであれば、個人でも全くいいですということを、何の留保もつけずに言っていいかというと、それはこの規定が置かれたときの考え方なり、今回の転売制限の趣旨から見て、あまり野放図ではいけないだろうということで、この海外証券の国内転売の規制については、このプロ向け規制の転売制限の措置を及ぼす必要がある。こちらの方の転売制限、プロ向けの規律で整理する必要があるというふうに考えた次第です。

その上で、一般の日本の個人投資家が海外に自分で口座を置いて自分の資金をそちらにためて買うということまで、この転売制限で規律することは難しいし、多分予定していないところでありますけれども、片や、それが日本に証券会社が持ち込んで、日本の国内で販売セールスをする、あるいは媒介をするといった場合には転売制限に服して頂く必要があるというのが原則的な考え方になろうかと思います。それをベースにどのように、個々具体的なケースを整理していくかというのが、これはむしろ法制というよりは法適用の局面でいろいろ検討する必要が出てくるかと思います。

○池尾部会長

神作委員。

○神作委員

話が若干戻って恐縮でございますけれども、今回の金融商品取引法の成立の中で、プロ・アマの区別というのは日本法がEU法、ヨーロッパ法を大いに大幅に参考にしたという点で、歴史的にも非常に意義深いものだったかと思いますけれども、ヨーロッパ法におけるプロ・アマ区分におけるプロというのは、先ほどまさに三井課長がご指摘されたように、自分で情報を集めることができるという点に力点があると思います。自分で情報を集められるのだから,わざわざ開示をしてもらわなくてもいいという、そういうプロを念頭に置いたものであったかと思います。

それに比較いたしますと、日本法上の特定投資家というのは、必ずしも自分から情報を請求するパワーまではないという投資者が含まれ得る点に特色があり、逆に制度を設計するに当たっては、その点について十分に留意する必要があるのではないかと思います。

そのこととの関連で、報告書(案)の9ページのマル2でございますけれども、「プロ投資家のみが参加する市場であることを踏まえ、当事者間の自主的な情報提供・収集・分析を基本とし」という記述のうちの、特に「収集」の部分は、自分で収集できるプロ投資家もいるのでしょうけれども、そうでないものも含まれているということを明確にし、だからこそ、一番上の黒マルで「少なくとも年に1回以上はきちんと的確な情報の提供をしなければいけない」ということにつながるのではないかと思われます。その点、日本の特定投資家というのが、ヨーロッパにおけるプロ投資家よりも相当に広い概念であるという点に留意した文言と、制度設計をお願いできればと思います。

○池尾部会長

制度設計は、神作先生がおっしゃったようなロジックで考えられていると思うんですが、確かにちょっと表現ぶりがミスリーディングかもしれませんので、そこは修正を考えますが、制度設計そのものはおっしゃった趣旨を踏まえた形になっているんじゃないかというふうに思っております。

ほか。藤原委員。

○藤原委員

先ほどの三井課長さんのコメントについて、一つ質問があります。

AIMで上場されているもとを日本に云々という発言がありましたが、ちょっと違うような気がします。皆さんもご存知のように、私はプロ市場の開設について賛成しています。しかし、金融・資本市場で引受業務に二十何年かかわってきた人間として、AIMで企業が資金調達をする際、それが上場なのか上場でないのかについていま一つ明確に理解できませんでした。そこで、ロンドン証券取引所とかNomadの関係者に直接お会いして、AIM市場の利点・欠点などについていろいろと聞いてきました。というのは、委員としてここに座っているだけでは、新規市場の創設について説得力のある意見を述べれないと思ったからです。AIM関係者は「AIMでの資金調達をする際、企業は上場する必要はない。AIMは上場市場ではないので上場基準はない。」と言ってました。日本でプロ市場を作る場合、英国のAIMを参考にすることは既に分かってますが、東証の中にできるAIMで株を発行して日本の中小企業が資金調達をする際は、上場しなければいけないのでしょうか。それとも資金調達は上場のない取引になるのでしょうか。

○三井企業開示課長

訂正いたします。アンリステッドと聞いていますので、上場でない取引と聞いています。従って、FSAの上場審査もないというふうにお聞きしています。その意味では、「上場」というのは不適切でして、「取引所で取引している非上場取引です」と申し上げるべきでした。

○池尾部会長

いかがでしょうか。

そういたしましたら、また戻って頂いて結構だということで、最後の第3部の11ページの一番下からの、銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直しの部分に進ませて頂きたいと思います。この第3の部分に関しまして、ご意見、ご質問等がございましたら、お願いしたいと思います。

この部分も第1の部分と同じように、既に、これまでの審議の中でご確認頂いてきた論点メモの内容をいじらないで、できるだけそのまま忠実にやったと。

田中委員、お願いします。

○田中(浩)専門委員

14ページの情報共有のところに関して一言申し上げたいんですが、ここにまとめられておりますように、顧客が情報の共有化を望んでいない場合のことを考慮して、こういう区分けになったということで理解しております。

それは個人に関してはオプトインがそのまま維持されるということなんですが、法人情報のところに関して、この金融審の方で事業会社のうち、大きな企業の方から、よりよいサービスを受けるために情報の共有化をされることに全く問題ないということで、そういう発言がなされているんですが、それとは別に、中堅企業、中小企業の中には、自分たちの法人情報といったものが、銀行から系列の証券会社に行くということに対して御免こうむりたいというのが存在していると思います。そういう中にあって、このオプトアウトの機会を付与することが適当であるということが書いてありますが、このオプトアウトの機会が確実に実効性を持って付与されるということが非常に重要だというふうに考えております。

この金融審でも、いろいろと議論されていますが、こことは全く別の、いわば日本の社会通念と言いますか、常識ということでいえば、銀行というのは守秘義務があって、銀行が保持している自己の情報というのがむやみに、無限定に流出するものではないというふうに考えられていると思います。そういう中にあって、オプトアウトの付与の仕方なんですが、単純に、例えば極端な話、新聞に1回広告を出して、「当行としては、系列証券会社と顧客情報を共有します。何か不都合があれば言ってきてください」と一言新聞広告を出すというのも、ある意味ではオプトアウトの機会の付与に入ると思います。そういうことであれば、ほとんどオプトアウトの機会の付与が規定上あっても実効性がない形になってしまうと思います。

現状の日本の社会通念等を踏まえた上で、きちんとオプトアウトの機会が意味のある形で付与されるということが重要だと思います。そういう面では、この報告書の書き方のところにもそういうオプトアウトの機会の付与の仕方に関して、現状を踏まえて、慎重にこれを確保するとか、そういったような文言を入れて頂きたいというふうに思います。

以上です。

○池尾部会長

島崎委員。

○島崎委員

14ページの法人情報のところで、少し文言について検討頂きたいと思います。ここの2行目に「法人サイドで社内の稟議書等の手間があるとの指摘がある」とあります。私もここで情報共有をぜひとも進めてほしいということを申し上げたんですが、金融機関が情報共有することによって、我々法人に対してよりよいサービスを提供して頂けるようになるということが一番肝心なことでありまして、稟議のことについては、多少手間がかかるけれども、これだけをもって云々というのはちょっとどうかなと思いますので、ここの書きぶりはご検討頂ければと思います。

○池尾部会長

了解しました。

前から申し上げておりますように、ファイアーウォール規制の見直しというのは、機械的になりがちな面を持つ公的な規制を、金融機関自身の自己規律、内部管理によって代替しようということでありますので、オプトアウトの機会の付与に関しましても、それは金融機関側の、それこそ姿勢が問われるという問題だというふうに思います。だから、その分、実は金融機関側の責任は非常に重くなるということで、理解はしております。

原委員。

○原委員

方向性としては、ファイアーウォール規制も現状に合わせたような形にしていく、それから内部管理態勢、内部の自主規律を明確にしていって、それをモニタリングするという仕組みに制度設計をなさるというところでは賛成なのですが、今までおつき合いをしていていくつも懸念がございまして、ちょっと申し上げたいのですが、13ページですが、(1)、(2)で、利益相反と銀行等の優越的地位の濫用の防止という2点、両方とも大事だと考えていますが、利益相反については、最後の3行で、金融機関における態勢整備を促進する観点から、利益相反管理方針については、概要の公表が求められるべきであると考えます。

この公表については、これをメインに検討したときにいくつか議論を重ねさせて頂きましたけれども、概要が今ある金融商品販売法における勧誘方針のような抽象的なものでは意味がないですね。理念を書かれるのではなくて、私は開示をしてほしいということを前々回の議論のときに申し上げましたけれども、それは個別具体的に内部で何をしているというような業務内容を書いてほしいということではなくて、具体性を持ったことで書いてほしいという意味です。金融機関に限らず、ほかの業態でも企業の不祥事が相次いでいるものですから、ほかの業態では非常に苦慮して、ここの明示をなさっていらっしゃるようなところもありますので、ぜひ具体性を持った形の利益相反管理方針を公表して頂きたいと思います。

それから、優越的地位の濫用の防止のところについても、後段の5行で何をすべきか書かれております。前々回のときには、当局においても顧客から寄せられる情報を検査に生かすとなっておりましたけれども、今回、銀行自身において顧客等から寄せられる情報を適切に処理する態勢を整備と書かれておりますが、実際のところ、消費者からの苦情とか相談についても、どこでどのように処理されているかあまりわからないような状況なので、これは銀行等と書かれていますが、個別の銀行なのか銀行協会なのかはわかりませんが、やはりこういう方向にあるということであれば、ぜひここはやはり具体化を図って頂きたいと思います。

それから、14ページに、顧客情報の共有についての話が書いてありますが、上から2行目に「非公開の顧客情報の共有を認めることは必ずしも適当ではない」と書いてありまして、これは「必ずしも」じゃなくて、この言葉は不要で、「認めることは適当ではない」というのが私は大原則だと思います。

それから「マル1」で個人情報について書かれていて、「オプトインを維持することが適当である」というくだりですが、先ほど田中委員がおっしゃられたように、本当に実質的にオプトアウトになっているのかというところでは、やや疑念を感じておりまして、今の個人情報について、オプトインでやっているとおっしゃられるのであれば、現状はあまりにも包括的過ぎて、やはり現行も私は見直すべきだと感じておりますので、現状維持ということにはならない、やはりもう少しご自分たちで工夫をして頂きたいという、そういう余地があるということを書いて頂きたいと思います。

それから、注1でオプトインについて、「顧客の積極的な同意を求めること」と書いてありますが、これは注書きとしてはあまり正しくないのではないかと思っておりまして、オプトインは「顧客自身による申し出による情報提供」ということなので、ここは「積極的な同意」と書かれてしまうと、何が積極的な同意なのかということになるかと思いますので、精査をして頂きたいと思います。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、順番に行きますので、國部委員から。

○國部専門委員

まず今回の報告書(案)の全体像につきまして、金融グループの総合力発揮による利便性向上や、金融・資本市場の国際競争力強化の観点から望ましい方向と考えております。

3点申し上げさせて頂きたいのですが、まず1つは15ページのクロスマーケティングのところでございます。クロスマーケティングについては、一番最後で「なお、慎重な検討が求められよう」とされているわけですが、クロスマーケティングは発行業務の一部代行ということですけれども、引受業務そのものではなくて、あくまで引受業務にかかる営業機能や、窓口を担うにすぎない業務でございます。

報告案で指摘されている問題は、要約すると2つで、利益相反の問題と金融商品取引法33条との整合性ということかと思います。融資と引受の利益相反につきましては前回少し申し上げさせて頂きましたが、引受審査部門の独立性をしっかりと確保することにより、克服可能ではないかと考えております。利益相反管理を自己規律に移行していく中で解決されるべき問題と考えております。

金融商品取引法第33条は、銀証分離を定めているわけですが、これはアメリカと同様に、預金者の保護、あるいは決済システムの安定性確保、または証券会社の健全性確保という観点から、銀行と証券会社の法人格の分離を求める規定と解することが適当と考えております。従いまして、クロスマーケティングについて見直しを行ったとしましても、33条の重要性、位置付けについては何ら変わるものではないと考えられます。

こうしたことを踏まえますと、グローバルな規制のイコールフッティングを図っていく観点から、クロスマーケティングを許容していくことが適切なのではないかと考えております。また、私の理解では、本部会でもこれまで複数の委員の方から緩和を支持されるご意見があったと理解しておりますので、今後「なお慎重な検討」ということではなくて、ぜひ早期かつ前向きに検討頂くようお願いしたいと思いますし、報告書にもそういったご趣旨を入れて頂ければというふうに考えております。

それから、2つ目は法人の情報共有のところでございますが、先ほど田中委員からご指摘がございましたけれども、今回の見直しの趣旨として、さまざまな資金調達手法を含む総合的な提案を受けるというお客様のニーズが尊重されるべきと考えておりまして、こうした見直しの趣旨に鑑みますと、法人顧客へのオプトアウトの通知につきまして過剰な頻度、あるいは方法で実施するということになりますと、実質的なオプトインになってしまうおそれがある、すなわち見直しのそもそもの意義が失われてしまうおそれが大きいのではないかと懸念しておりまして、その点、どうぞご勘案を頂ければと思います。

それから、3点目ですが、少し銀証間のファイアーウォール規制という今回の論点を超えてしまうかもしれませんが、14ページの法人情報の第2パラグラフでございますけれども、内部管理目的の情報共有につきましては、この部会でも複数の委員の方から、グループベースでリスク管理を行っていくことの必要性、重要性についてご指摘があったと記憶しております。当然のことながら、金融グループにおけるリスク管理は必ずしも銀証間に限られるものではなく、例えば金融商品取引業者ではないリース会社等々の間においても重要な課題であります。こうしたグループ会社を含むリスク管理を適切に行っていくという観点からは、金融商品取引法だけではなく、銀行法上にも同様の措置が講じられることが望ましいと考えられますので、今後、例えば金融・資本市場競争力強化プランの中で検討を行う方向性等を明示頂ければと考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

はい、わかりました。

それでは、小島委員。

○小島委員

私は13ページにあります利益相反の弊害防止について発言します。(1)の最後の3行のところ、「また」以下のところの文章です。各金融機関の利益相反管理方針についての概要を公表するということですけれども、先ほどご発言がありましたように、概要の内容についても具体的にどういうことをやっているのかということが、顧客に理解ができるような内容に工夫をぜひお願いしたい。

それと、ファイアーウォールの件で、13ページから14ページにかけてです。顧客情報の共有化の件について、個人情報と法人情報について、今回はこのように区別するという方向では理解をしているところです。そのオプトイン、あるいはオプトアウトが具体的にどういう手法になるかということもあわせて、より具体的な対応というのが必要ではないかと思っております。

それとこれは文章上の表現の仕方だと思います。「マル2」の法人情報の後半の方にある、「また」以下の文章、これは内部管理情報の共有についての文章です。これは法人情報の下に書いてあるけれども、これは個人情報についても共通にかかるので、ここは文章上の整理が必要かと思っています。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

では、佐々木委員。

○佐々木委員

ありがとうございます。

情報開示の件ですけれども、方向性は私も賛成ですが、まずは、オプトインにせよ、オプトアウトにしろ、自分がどちら側に今なっているのかということを本人あるいは企業が確認したいときに、きちんと確認が迅速にできる、今どっちにしていましたっけということができる。それから、そこで随時変更ができるということが仕組み上も重要だろうと思っています。

法人情報に関しては、当然情報共有において有利に働く、あるいは多様な提案をしてもらえるということが、背景にあって、こういったディスカッションになっていると思いますが、以前も発言させて頂いた通り、企業、法人と言っても山ほどいろいろ法人があって、有利に働かないかもしれない法人というのがたくさんある可能性もあるのではないかと。それは金融の知識や人的対応など、法人側に対応能力がないということがあるので、法人のオプトアウトに関して、可能ならば法人の規模なのか、何かによって、ちゃんと説明があるというような一定の配慮が必要なのではないかというふうに思っています。

また、そういった企業、例えば私が自分の会社で考えたときにも、それだったらこの期間、今回の提案においては共有して頂いて構わないので提案してみてくださいと。一回試しにやってみてくださいということをやってみたいかなと思うんです。そんなに金融機関がいい提案をしてくれるというのなら、やってみようかなと思って、情報共有を許可したいと思ったとしますが、その提案を受けてみたら、やはりこれは不利だと。やはり同じグループ企業が提案してくると八方塞がりになってになって、立場上、私たちのような弱小企業は不利だと仮に思ったときに、今後は共有しないでくださいということを言える、つまり、この2週間だけは共有して頂いていいけれども、すぐにシャットアウトしてくださいと、今回の提案のみですみたいなこともできるといいと思います。

きっとここにたくさんいらっしゃる専門家や金融機関の方々は、そういう面倒をやめたいのでこういうことを提案しているのだとおっしゃるかもしれませんけれども、私の立場を使って申し上げれば、それは面倒かどうかは、どうぞ企業内で工夫して頂いて、面倒でないことをして頂いて、それはやはりサービスを受ける側としては、金融機関がそれを面倒とするかしないかよりも、個人情報や情報共有がちゃんとしたサービス提供につながるのかということの方が重要ですので、その点においては、オプトイン、オプトアウト、そのステータスを自由に選べる、あるいは自分のステータスを確認できるということをぜひ、大手企業との金融機関のやりとりは大丈夫なのかもしれませんが、そうでない人たちのことをぜひ考慮して頂いたいので、その辺のことが文章の中に含まれて頂けるとありがたいと思います。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

そろそろ時間が来ましたので、今日、ほかに特にというご意見がございますか。もしないようでしたら、本日の議論は一応以上とさせて頂きたいと思うんですが。

いや、聞いていまして、ベターレギュレーションというのは難しいんだなという、プリンシプルとルールのベストミックスと言っても、どうしても詳細なルールが必要だというご意見が出てくる面があって、ただ、方向性としてはもっと自己規律で物事が片づく方向に一歩でも行きたいという。そうでないと、日本の金融・資本市場は成熟化していかないですから、やはり半歩でもそういう方向に行きたいという思いもありますので、ご理解頂ければというふうに思います。

それでは、本日頂きましたご意見を踏まえて、若干の修文等を検討した上で、所要の修正を行ったものを次回ご覧頂いて、ご確認頂くという形にしたいと思います。それと、次回は、法制ワーキング・グループで行われております課徴金制度に関する審議結果についてご報告頂いて、課徴金の話も含めて第一部会報告書の最終的な取りまとめということをお願いしたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

それでは、事務局の方から連絡をお願いします。

○池田市場課長

次回でございますが、次回の第一部会につきましては、12月18日、火曜日の午前10時からということで開催をさせて頂きたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

○池尾部会長

1週間後の同じ時間ですので、それで年内は終わりにしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、どうもありがとうございました。

以上

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