金融審議会金融分科会第一部会(第54回)・第二部会(第47回)合同会合 議事録

日時:平成20年11月5日(水)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○岩原第二部会長

それでは、そろそろ時間でございますので、ただいまから第54回金融審議会金融分科会第一部会及び第47回金融審議会金融分科会第二部会の合同部会を開催いたします。

皆様、本日、お忙しいところお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。

先日の10月15日の金融審議会金融分科会第一部会で取りまとめ役に指名されました第二部会長の岩原でございます。この合同部会の議長進行役を務めさせて頂きますので、どうかよろしくお願いいたします。

この会議に先立ちまして、本日の会議は公開とさせて頂いておりますので、まずその点をご了承頂きたいと存じます。

本日は、金融ADRを議題とする第一部会、第二部会合同部会といたしましては、第1回目の会合でございます。第一部会及び第二部会のメンバーと事務局出席者でございますが、第一部会、第二部会のそれぞれの名簿、事務局出席者を記載した席表をお手元にお配りしてございますので、ご覧頂ければと存じます。

早速でございますが、本日の議事に移らせて頂きます。

本日の議題は、第1に、20分弱をかけて事務局から金融ADRに関する取組状況等のご説明を頂きます。第2に、各5分、合計約20分で業界団体、自主規制機関、合計4団体からの各団体における金融ADRに関する取組状況等に関する発表をして頂きます。その後、第3に自由討論を予定しております。最後の自由討議の時間をできるだけ確保したいと考えておりますので、それぞれの方は持ち時間を厳守して頂きたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

まず、事務局から金融ADRに関する取組状況等につきまして説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○中沢企画官

ありがとうございます。

それでは、手短に事務局のほうからこれまでのADRに関する議論の流れと、それから現在における問題状況を、ごく簡単にご説明したいと思います。

本日議論頂いております金融ADRの議論の源流をたどりますと、平成9年6月の金融制度調査会答申とか、あるいは証券取引審議会の報告書における日本版金融サービス法の検討の必要性の提言に行き着くわけでございますが、その流れを受けまして、新しい金融の流れに関する懇談会、いわゆる流れ懇、ここで論点整理がまとめられまして、金融審議会の議論へと移ったと、これが最初の議論のきっかけであったわけでございます。

お手元に資料1-1といたしまして、平成12年6月27日の金融審議会答申を配らせて頂きました。8年も前の古い旧聞に属することではございますが、この議論の中で現在の金融ADRに関する議論に関する論点整理の最初の段階が行われたわけでございます。

簡単におさらいをいたしますと、議論の内容としましては、中立・公正性の確保、紛争処理機能の向上、制度の実効性・透明性の確保、紛争処理機関の統一化・包括化、コスト負担をどうするかという問題、窓口の明確化、広報活動による裁判外の紛争処理制度の活用促進、こういった議論について、完全な意見の一致は当時見られませんでした。それでも幾つかまとめたところはあります。個別紛争処理における機関間連携を強化しようじゃないか。あるいは苦情・紛争処理手続は透明化を図ろうじゃないか。それから苦情・紛争処理事案のフォローアップ体制を充実させよう。苦情・紛争処理実績に関する積極的な公表。広報活動を含む消費者アクセスの改善。こういった点についてはおおむね意見の一致を見て、これを受けまして議論を一層深めるために、金融当局、消費者、行政機関、消費者団体、それから各種自主規制機関・業界団体、弁護士会等の参加を得まして、「金融トラブル連絡調整協議会」の設置が提言されました。

資料の1-2でございますが、金融トラブル連絡調整協議会は、平成12年9月に第1回が開催されました。お手元の資料の3ページになります。平成12年の9月に第1回が開催されまして、今年の6月に38回が開催されましたが、実に38回にわたる総力的な議論をお願いいたしました。

この間、平成13年には紛争処理手続についてのモデル案を検討して頂くワーキンググループが設置されまして、中間試案として協議会に示して頂いた。それを現在もアップデートする作業をしているわけでございますが、この協議会におきましてさまざまな問題点、あるいは取組みについての意見交換をして頂きまして、これまたほぼ議論が出尽くした感があるということでございますが、今年の6月、第38回の金融トラブル連絡調整協議会におきまして、今日も取りまとめをお願いしております岩原座長による取りまとめのメモがまとめられたわけでございます。

お手元の資料の6ページ、資料1-3として、座長メモの要旨を掲載させて頂いております。この中では、かなり議論が整理されました。少なくとも金融ADRの理念としまして、業界横断的機能、苦情・紛争解決の一連の手続、こういったものがあり、中立・公正性、それから透明性、秘密性、迅速性、低廉性という手続の質、この3要素の実現が重要だということで、おおむねコンセンサスはとれたというわけでございます。

一方で運営主体、あるいは中立・公正性の確保、このためにどういうふうな手段が必要なのかということは、意見が分かれたところでございます。例えば、中立性・公正性の確保につきましては、消費者団体、弁護士会、学識経験者の先生方の意見としては、紛争解決支援に従事する者の中立・公正に権限を行使できる立場が確保されるべきと、主張され、一方で業界団体のほうからは、消費者のほうだけではなくて、業界に対しても中立・公正であるべきだという意見表明がなされました。

一番大きな問題点であり、今回の議論も主としてお願いしたいと思っていますのは、実効性の確保の部分です。自主規制機関化ということについては条件付きながらも、消費者団体のほうからは自主規制機関化による対応が望ましいという意見はあったわけでございますけれども、さらにどういう形で法的な担保を、どういう形でその実効性を確保していくのかということをめぐっては、法的な担保を求めるべきだという意見もある一方、現在の自主的な取組みで十分だという意見もあり、これは双方の意見が闘わされたということでございます。それは、資料にしますと6ページから7ページに書いているところでございますけれども、実効性を確保する上ではどういう形が必要なのかということで、金融ADR機関の認定についての議論がなされたほか、ADR機関との契約締結義務づけをどう考えるかという議論もその場でなされました。

さらに、統一化・包括化に関しては、平成12年の段階からずっと議論がなされている点でございますけれども、統一的・包括的な第三者機関の設置は将来的には望ましいという、考え方としては総論としてはおおむねの賛同を得たということでございますが、中長期的に検討すべきだという意見が多数でございました。

今後の方向性としまして、学識経験者、弁護士会、消費者団体の方々は、金融ADRの一定の水準機関を確保するためには法的な整備が必要であるという意見が大勢であったものの、業界団体からは、自主的取組みの結果、金融ADRの公正性・中立性、業者の手続応諾等が確保されてきており、自主的な取組みを強化していくことでよいという意見が多数であった。先ほど紹介したとおりの意見が出たところでございます。

8ページのところに座長メモの本体を用意してございますので、今回の一連の議論の中で議論をすべき論点がふんだんに含まれているものと考えております。

それから、21ページ、資料1-4でございます。今年の6月に岩原座長による取りまとめのメモが発表されたわけでございますが、ほぼ時期を同じくいたしまして、私ども金融庁から金融商品取引法の一部改正法案を提出しておりました。その国会審議におきまして、衆議院、参議院ともに国会の附帯決議がついております。お手元の21ページの衆議院のほうを読ませて頂きますと、「金融商品取引に関する苦情等に対し、公正かつ迅速で透明性の高い解決を図るため、金融分野における裁判外紛争処理機能の更なる拡充に向けた検討を進め、広く活用される中立な制度を確立すること」。参議院も同趣旨の文章でございますが、金融ADRに対する国民的な関心の強さを反映して附帯決議となったということでございまして、私ども大変重く受けとめているところでございます。

それから、資料1-5でございます。私ども金融庁で行っております「金融サービス利用者相談室」というサービスがございます。これについて若干ご紹介しようと思ってつけさせて頂きました。

この金融サービス利用者相談室でございますが、これは平成17年の7月から発足させている仕組みでございまして、相談及び苦情を中心として受け付けております。こうした相談に対しては、専門的な知見を有しております専門員のほうからのアドバイスを差し上げたり、苦情についても同じくアドバイスを差し上げたり、要すれば、必要なことは私どもの行政に役立てる、あるいは具体的な話であれば金融機関とのお話の中で役立てると、こういった形で活用させて頂いております。かれこれ3年近く行ってきておりますこの実績を四半期ごとに私どもは公表してございまして、一番最近が去る先週10月31日に、7月から9月までの相談状況を公表させて頂きました。

1枚めくって頂きまして、25ページにざっと書いてございますが、3カ月間の間の相談件数は1万2,661件。これを1日当たりに直しますと201件と、かなり膨大な苦情及び相談が私どもに寄せられているということでございます。

内容をつぶさに説明することは省略いたしますけれども、行政機関に対するもの、注文あるいは意見、あるいは制度に対するご質問、あるいは犯罪と思われるような事実に対する通報、公益通報的なものも含まれているわけでございます。

1つ紹介いたしますと、28ページに、例えば5の(1)に書いてございますけれども、預金・融資等に関する利用者からの相談事例。振り込め詐欺救済制度に関する相談があって、どういったものが対象になりますかということの相談。これは制度に対する相談でございます。これに対しましては、「振込利用犯罪行為」とされるものはかくかくしかじかのもので、振り込め詐欺救済法の施行前のものも対象になるといったことを紹介いたしまして、消費者の便に供しているということでございます。また、案件によりましては、今後の私どもの監督、あるいは検査の場で活用させて頂くこともございます。

さらに、貸し渋り問題、あるいは金融円滑化に関する問題についても取組みをしているところでございますが、こちらの35ページの別紙2、「貸し渋り・貸し剥がしに関する情報の受付・活用状況」、こういったものも受け付けておりますし、39ページ、金融円滑化ホットライン、これは今年の4月に設置された窓口でございますけれども、金融円滑化ホットラインにおきましても日に数件お問い合わせを頂いているところございます。傾向といたしましては、これまで自主規制機関、あるいは業界団体で受け付けておられます苦情の内容とかなり似通った性格のものもございます。

それから、最後に資料1-6、43ページでございますが、「金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争解決支援の取組みについて」と題してまとめたペーパーでございます。これは金融トラブル連絡調整協議会の中で紹介されたもので、年に1回程度まとめて頂いているものでございますが、6月17日時点の各業界団体での取組みについてまとめさせて頂きました。

44ページに、目次的なものが用意されております。5項目についてのアンケートを取りまとめておりますが、いずれも平成12年の答申で求められる、望まれる金融ADRの姿、これがどのぐらい実現してきているのかということに着目した内容の調査ということでございます。後ほどもご紹介があるかと思いますが、幾つかの業界団体において、6月時点以降、進展がございまして、現状、現在11月の段階におきましてはさらに一歩進んだ取組みということになっているわけでございます。

私のほうからは以上で締めたいと思います。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

大森課長のほうから。

○大森企画課長

9月以降、私たちも危機対応一色のような形になっておりまして、金融審議会をお願いいたしましても、こちら側の空席が非常に目立つような状況になっておりますことを申しわけなく思っております。

危機対応は危機対応的な制度の形成のされ方をするわけですけれども、非常時というのは同時に金融システムに対する国民の信任が低下している事態でもあります。こういうときであるからこそといいますか、非常時、平時を問わず、お客さんがこんなはずじゃなかったというようなときに、どういう解決の方向が用意されているのかが金融システムのインフラとして大変重要であると思っております。その意味で有識者の方、業界の方を問わず、この課題について率直で建設的な意見をお願いできればと考えております。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

続きまして、自主規制機関及び業界団体から、金融ADRに関して発表して頂きたいと思います。

まずは、全国銀行協会における金融ADRについて、川端雅一委員、よろしくお願い申し上げます。

○川端専門委員

川端でございます。

それでは、全銀協における金融ADRに関する取組みについてご報告を申し上げます。

資料を1枚めくって頂きまして1ページ目、これからご報告申し上げる内容を項番ごとに書いてございます。

資料2ページ目は、これまでの全銀協における取組みでありますが、まず苦情解決の支援機関といたしましては、「銀行とりひき相談所」、これは全国に51カ所ございますが、ここで受け付けをし、支援を申し上げるという体制で、件数、今までの実績件数は資料に記載のとおりでございます。

さらに、紛争解決の支援機関といたしましては、これまで弁護士会仲裁センターを利用させて頂くという対応を行ってきました。ただ、こちらにつきましては、苦情から紛争までの解決支援をワンストップでなかなか行ってこられなかったために利便性に課題があった、実効性がなかなか上がらなかったという反省をしております。それを踏まえまして、本年10月、私ども自主的に紛争解決支援機関である「あっせん委員会」を設置いたしまして、認定投資者保護団体の認定を取得させて頂いたところでございます。

3ページ目をご覧ください。この紛争解決支援機関、つまりあっせん委員会の概要を記してございます。設置場所は東京でございます。地方でご利用の方は、各地の銀行協会におきまして電話によりまして利用頂く体制をとるというのでスタートしております。業務の内容は、あっせんを行い、最終的にあっせん、つまり和解案を作成するということであります。対象業務は、証券関係業務、保険関係業務を除きました業務全般でございます。委員の構成でございますが、弁護士の方、消費者問題専門家の方など5名で構成をしております。

4ページ目をご覧ください。こういう機関で最も大事であります「公正性・中立性を担保するための取組み」でございますが、まず、先ほど申し上げました認定投資者保護団体としての認定を取得させて頂いたということであります。それから、あっせん委員会は弁護士の方2名、消費者問題専門家の方2名を含む5名の委員会制をとりまして、あっせん委員会の委員につきましては、「以下は選任できない」ということにしてあります。つまり、全銀協会員銀行の役職員であること、あるいは現に全銀協・各地の銀行協会または会員銀行の顧問となっている弁護士の方、この方々は選任しないという体制をとっております。また、申し立てのあった紛争案件を手続に乗せるかどうかの判断は、あっせん委員会が実施するという体制をとっております。

5ページ目をご覧ください。さらに、今までの反省も踏まえまして、「実効性を確保するための取組み」でございますが、まず、あっせん委員会の利用上の会員銀行の義務というものを申し合わせてございます。具体的には、3つございまして、あっせん手続への参加義務、あっせん手続に関する資料等の提出義務、あっせん案の尊重義務でございます。次に、苦情・紛争解決支援機能の強化等を図るべく、あっせん委員会の利用、利用者への周知等について理事会で申し合わせを行ったということであります。また、規則を守らない、規則を遵守しないときには、あっせん委員会は全銀協の理事会に報告いたしまして、全銀協は改善措置の概要を公表するという体制をとっていこうと考えております。

6ページ目でございます。「運営の透明性を確保するための取組み」でございます。1つは、紛争解決支援手続の実施件数、事案の概要、あっせん結果の概要等を公表申し上げることにしております。それから、あっせん委員会の公正・円滑な運営を図るため、外部の有識者の方を招聘しまして、「あっせん委員会運営懇談会」を設置いたしております。懇談会のメンバーは、学者の方、消費者団体の方、消費者行政機関関係者の方でございます。それから、利用者の方、まさにお客様でございますが、利便性確保の観点から、あっせん手続の手数料は無料という体制で臨むということでございます。

それから、会員及びお客様への周知広報活動が7ページ目でございます。まずは、会員銀行での店頭での周知ということで、会員銀行各店舗1枚必ず張られるように、ポスターを1万6,000枚用意し、配布しております。リーフレットにつきましては各店舗に100部は置けるように、155万部を配布しております。また、マス媒体を使いました広報活動にも取り組んでおりまして、新聞広告、あるいはマネー雑誌、一般雑誌への広告掲載、あるいはインターネット・バナー広告、あるいは東京メトロの戸袋ステッカーの広告掲載、タウンページへの広告掲載、それからラジオのCM等で広報活動に取り組んでおるところでございます。

最後、8ページ目でございます。今後私どもが考えております課題でございますが、利用者に方にとりましての利便性・効率性と業界型ADRとしての専門性を兼ね備えた体制を強化していくということであります。あっせん委員会の実効性の向上、利用者への周知のさらなる強化に取り組んでまいる所存でございます。

それから、もう一つ。各業界団体によります自主的・自律的な取組みを促進していくということでございます。そのためには、苦情・紛争解決支援モデルの高度化を図っていくというのが大事な課題であると考えております。具体的には、今協議がなされておりますモデル改正に向けたワーキンググループへの積極的な参画をしていくこと、各業界団体のADRへのモデルの定着化を図っていくことに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

私からのご報告は以上でございます。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

引き続きまして、生命保険協会における金融ADRについて、殿岡裕章委員、よろしくお願いいたします。

○殿岡専門委員

明治安田生命の殿岡でございます。このたび、このような機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。

本日は、ADRに関連をしたこれまでの生保業界における取組みと今後のADRに対する考え方、お手元の資料に沿って簡単にご説明させて頂きます。

まず、表紙をあけて頂いて1枚目、1ページでございますけれども、生命保険業界では業界のADR機関として、平成13年4月に裁定審査会を生命保険協会に設置して、紛争解決に当たっております。裁定審査会、ご契約者様等々、生命保険会社との当事者双方で一定程度話し合いをしたにもかかわらず解決に至らなかった場合に、そこの図にございますような手続の流れに沿って、無料で紛争を申し立てることができる制度でございます。

続いて、2ページで裁定審査会の中立性・公平性につきましてご説明をいたします。本年6月24日付の金融トラブル連絡調整協議会の座長メモ、先ほどございましたけれども、でも触れられておりますとおり、ADRの運営に当たっては中立性・公平性の確保が極めて重要であり、裁定審査会におきましてもこの点を踏まえて記載をしてある取組みを実施しております。

まず、裁定審査会のメンバーでございますけれども、弁護士、消費生活相談員などから構成をされ、法律と消費者の立場の両面から公平な事実認定に努めております。

次に、運営に関しましては、協議会で策定されましたモデルに基づいて規定を整備して、会員各社に対しては協力義務、参加義務、尊重義務を課し、ADR機関として必要な実効性を担保いたしております。

さらに、ペーパーに記載をしておりますけれども、学者、弁護士、医師、消費者代表など、外部の有識者で構成をする裁定諮問委員会を設置して、裁定審査会の運営状況をチェックいたしております。

なお、協会では中立性・公平性の確保に加え、苦情から紛争までの一連の解決支援手続、これは座長メモにございます、縦の広がりということになるかと思いますけれども、これを制度的に整備しているということから、ADRに必要な専門性・迅速性・効率性をもあわせて確保していると認識いたしております。

次に、3ページで、「会員各社の経営改善に向けた取組み」についてご説明をいたします。金融ADRにつきましては、お申し出をされた個人の利用者保護だけではなくて、全社的な利用者保護にもつなげていくということが重要であると考えております。そうした観点から、裁定審査会といった協会運営との関連で、会員各社の経営改善に向けた取組みについてもご紹介をさせて頂きます。

まず、裁定審査会事案の内容、結果、また広くお客様からの相談・苦情につきましては、「ボイスリポート」、それから「相談所リポート」、その左側にございますけれども、そういった形で四半期ごと、あるいは半期ごとに取りまとめて、会員各社にフィードバックをいたしております。あわせて協会ホームページでも公表しており、会員各社に対して改善に向けた取組みを促しております。

また、裁定審査会事案を含め、お客様から寄せられた声につきましては、その右側ですけれども、協会の「消費者の声」事務局で集約・分析をして、会員各社の経営改善、再発防止ですとか業務改善に生かす仕組みを取り入れております。

最後に、4ページ目で、今後の金融ADRのあり方についてご説明をいたします。まず、基本的な認識として、これまで生保協会においては、次ページに参考資料としておつけをしておりますけれども、モデルに沿った自主的な取組み、これを推進しておりまして、ADRに求められる機能というのは適切に発揮できているというふうに認識をいたしております。

一方で、広く金融業界全体として消費者保護の体制を充実させていくということは、消費者の信用を高め、金融市場の健全な発展にも資するということから、今後金融分野における裁判外紛争処理機能のさらなる充実に向け検討を進めていくことは望ましいことと考えております。

検討に当たりましては、金融ADRの機能に求められる専門性・迅速性、中立性・公平性、効率性・合理性の確保を十分考慮して、紛争解決支援のレベルアップに取り組むことが重要だと考えます。

そうした点を踏まえれば、ADR機能の実効性確保のために、各業界団体にてモデルに沿って必要なルールを規定化し、その上で金融業界として態勢を標準化していくということが、今後の取組みの方向性になるのではないかと考えております。そのためには、まず業界団体が各業界の特性に応じて、金融サービス業におけるプリンシプルも踏まえて、自主的取組みを促進していくということが重要であり、ADR改善に向けた取組みの基礎となるのではないかと考えております。

私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

次に、日本損害保険協会における金融ADRについて、二宮雅也委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○二宮専門委員

日本興亜損害保険の二宮でございます。このような機会を設けて頂きまして、ありがとうございます。私のほうからは損保協会におけるADRの取組状況及び今後の金融ADRの取組みにつきまして、ご説明を申し上げます。

初めに、損保協会におけるADRの取組状況についてご紹介をいたします。資料2ページ目の「損保協会の苦情・紛争対応体制」をご覧頂きたいと思います。

損保協会では、相談や苦情の最も多い交通事故対応を中心に、全国都道府県を網羅した対応体制を敷いております。2007年度に全国で受け付けた件数は、資料左側のマル1のとおり、相談が9万2,976件、苦情が1万7,446件ということで、合計で11万422件に上っております。

苦情としてカウントしている事案の中には、保険会社の説明内容について損保協会にセカンドオピニオンを求めるものや、匿名での情報提供、ご不満の申し出が多く、これらの苦情の大半は相談員の説明によりご理解を頂いておるところでございます。一方、相談員の説明でもご納得頂けない場合は保険会社に解決を依頼しております。2007年度において損保協会から保険会社に解決依頼を行った事案は、マル2のとおり2,131件でございました。

これをもっても解決に至らなかったものについては、紛争として所定のスキームで解決を図る体制を損保業界として用意をしております。資料の右側に記載のとおり、損保協会の損害保険調停委員会、財団法人交通事故紛争処理センター、及び財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構、この3つの機関でございます。2007年度は損保協会を経由せずに直接各機関に申し立てのあった事案も含めまして、これら3機関で7,000件を超える紛争対応が行われております。

なお、これら3機関の概要は資料の3ページ目をご覧ください。この「損害保険関係の紛争解決機関」のとおりでございますが、いずれの機関も中立的な立場のメンバーが対応しておりまして、調停結果尊重義務など、保険会社側に片務的な義務を課しております。

次に、現在対応を進めている協会の苦情・紛争対応の強化策についてご紹介をいたします。資料4ページ目、「損保協会の苦情・紛争対応の強化策」、これをご覧ください。フロー図のとおり、それぞれの事案につきまして損保協会として責任を持って解決まで進捗管理を行う体制を整備いたします。その過程におきましては、必要に応じて当事者にアドバイスを行い、さらには、一定期間未解決の事案の中で損害保険調停委員会等の対象となり得るものについては、申し出人に対し、積極的に案内、誘導をしていく予定でございます。これにより一層有効に機能するものと考えておりますが、そのためには損害保険調停委員会の体制強化が必須となることから、金融トラブル連絡調整協議会でのご指摘も踏まえまして、一連の対応に先立ち、この10月から東京と大阪の2カ所体制といたしております。また、苦情の受け付け段階における相談員の応対の一層の向上を図っており、今後はより多くの紛争により迅速に対応できるものと考えております。

続いて、今後の金融ADRの取組みについて意見を述べさせて頂きます。本年6月に金融トラブル連絡調整協議会が取りまとめられました座長メモの中で、金融ADRの現状に対する問題指摘が多々なされており、金融ADRや統一的・包括的なADRの設立が論議をされました。私どもといたしましては、各事業者が真に消費者の期待にこたえるサービスを提供していくためには、業界みずからが自主的に取組みを進め、責任を持った対応を行うことが重要と考えております。業界団体ADRについて中立性の観点からの問題指摘もなされておりますが、損保業界関連のADRでは、紛争解決実務に携わるのは会員会社と利害関係のない弁護士や消費者代表者であり、中立性の確保を重視しておるということが言えると思います。また、紛争解決手続の実効性の確保の観点から、会員会社に対し、手続応諾義務や結果尊重義務を課しておるところでございます。

今後は、これら中立性の周知を図り、またADR機能の一層の強化・整備により実効性を高めていくことが重要であると考えております。損保協会では、現在業務品質の向上に取り組んでおり、ADR機能の充実も重要な課題として認識をしております。今後も継続して機能強化に取り組み、お客様の保護、利便性の向上を図っていきたいと考えております。

私からのご説明は以上でございます。ありがとうございました。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

次に、日本証券業協会における金融ADRにつきまして、増井喜一郎委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○増井専門委員

日本証券業協会の増井でございます。こういった機会をつくって頂きまして、ありがとうございます。

お手元の資料の5というのでご説明をさせて頂きたいと思います。もう既に各協会からいろんな手続等についてはご説明をして頂いておりますので、私どものほうから、このそのあっせんなどの手続について、ほかのご説明は省略させて頂きたいと思います。

まず、沿革でございますが、私ども73年に苦情相談室を設置いたしまして、92年からあっせん業務開始をいたしております。2002年に現在の「証券あっせん・相談センター」という組織に変更いたしまして、より独立性、あるいは公正性を高めるという趣旨でこういった組織変更をいたしました。さらに、今年の6月30日にADR法に基づく認証を取得いたしまして、そういった体制の整備が行われているということでございます。

「組織と人員」のところでございますけれども、現在あっせん委員は弁護士の方31名にあっせん委員になって頂いております。それから、あっせん・相談センター自体は、所長以下全体でセンター職員18名の体制をとって、苦情、相談・あっせんの業務を行っているということでございます。

次のページをご覧頂きたいと思いますが、あっせんの申し立ての件数の推移でございます。一番上のあっせんが今、20年の上半期で109件でございますが、これは今のところ過去最高のレベルに達しております。これは理由は多分、金商法の施行に伴っていろんな説明義務などの違反などを訴えるものが増えてきているということが言えるかと思います。

2つ目の苦情でございますが、これは若干減っておりまして、上半期で365ということでございますけれども、これも中身は説明義務違反、あるいは適合性に関する苦情などが増えている。ただ、一方で証券会社のサービスが不十分だといった苦情が減少しているということのようでございます。一般的に言いますと、苦情は証券界特有かもしれませんが、株式相場が安定しているときが少ないんですが、悪くなると多くなるということで、多分これから増えてくるんじゃないかという感じがいたしております。

それから、相談件数でございますが、これも特に今回は株式の電子化などのお話もございまして、少し増えぎみでございます。20年度上半期で3,610件ということでございます。

次のページは、今申し上げた中身、どんな中身の相談があったかとか、あっせんがあったかということでございます。大体お読み頂ければわかると思いますので、ここについては省略をいたしたいと思います。

以上がご説明の主な中身なのでございますけれども、あとは若干個人的な意見にわたりますが、少し感想めいたことを申し上げたいと思います。私ども証券界、証券業協会、あっせん・相談体制については、これまでそれなりに努力をしてきたつもりでございますが、私の認識から言えば、まだ十分な水準に達しているというふうには思っておりません。例えば具体的には、まず第一に、やっぱり知名度とかあるいは認知度がまだ低いのではないかと。苦情・相談の件数もこのレベルではまだ十分ではないというふうに私は思っておりまして、先ほど金融庁の相談室の相談の件数を見ますと、それよりもちょっと少ないぐらいなものですから、金融庁に負けているようじゃだめだなと思っております。さらに、あるいは国民生活センターなどにも相談が行っていますが、それでいいと思うんですけれども、そういったところよりもさらに認知度が高まらないといかんのかなというふうに思っております。やはり1つは、もちろん認知度だけではなくて、一方で公正性・中立性といった観点からもあそこのセンターに相談をしてみようという気持ちになって頂くということが大事ではないかというふうに思っております。

それから、第二は、最近商品が、いろんな金融商品多様化が進んでおります。こういったことに対する対応も必ずしもまだ十分ではないのではないかというふうに感じておりまして、なるべく、特に私どもの業界の中でシームレスな対応ができる体制をつくる必要があるんじゃないかというふうに思っています。

そのための試みといたしまして、今年の1月から当協会と、あと投信協会さん、あるいは投資顧問業協会、金融先協会、商品投資販売業協会、この5者でフリーダイヤルによります共通の苦情・相談窓口を一元化、一本の窓口を設けております。そこでご相談を頂ければ各担当の協会に回るというような形になっていることでございますので、そういう意味で第一歩ではあるかと思いますが、さらに努力する必要があるというふうに思っております。

それから、第三は、これは先ほど生保協会さんからもお話があったかと思うんですが、このあっせん、あるいは苦情・相談といった、こういったことから得られる情報の活用の問題があると思います。当然、投資家の方々にもその状況を公表するということは大事なことでありますが、それ以外に経営、私どもの経営サイド、あるいは行政、自主規制にそういったものが十分生かされているのかといった問題意識がございます。もうちょっときちっとしたフィードバック体制の構築をしなければいけないのかなという感じがいたしております。もちろん個別の救済というのも重要でありますけれども、こういった現場の生の情報がどれだけそういった行政だとか経営サイドに生かされるかということが勝負ではないかというふうに思っております。

なお、そのあっせんの状況についてはこの資料の一番最後にちょっと横長の資料がございますが、これは私どものホームページであっせんの状況についてこういった公表をいたしております。これは一例でございまして、もうちょっとこの後もずっと続いているんですけれども、幾つかのケースが、こういうケースがございましたということで、一般には公表しております。それから、もうちょっと経営サイドから言って、周知をしたほうがいいようなあっせんの事例につきましては、もうちょっと詳しい内容のものをまとめて、これは業界の会員に流したりなんかはおります。ただ、まだ十分な体制ではないのではないかとは思っております。

こういった問題意識もあるものですから、私ども日証協では、自主規制のすき間を埋めるという観点から、先ほどもご紹介をいたしました5つの協会や、さらに現在自主規制の枠の外にあります第二種金融商品取引業者をも対象とする苦情・あっせん体制を整備したいというふうに考えております。そのために、新たに横断的な、さらに独立性・公正性の高い認定投資者保護団体を設立すると。私どもの今あっせんセンターをある意味で独立させて、そういった横断的な組織にしたらどうかという検討を、現在行っております。なるべく早いうちに結論を出して、そういった方向に進めればいいなというふうに思っているわけでございます。

私からは以上でございます。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

それでは、事務局からのご説明、業界団体等からのご発表を終えましたので、自由討議に移りたいと思います。これまでのご説明、ご発表と関係しないご意見でも結構ですので、どうか皆様、ご自由にご発言頂きたいと思います。

原委員、どうぞ。

○原臨時委員

ありがとうございます。私は金融トラブル連絡調整協議会の委員をしておりまして、この課題については10年来手がけてきております。これは岩原先生も同様でありますけれども、ようやく金融審議会でこれをテーマに議論できるということを大変喜んでおります。ぜひ実りある成果を出して頂きたいというふうに思っております。

私の意見なのですけれども、今の増井委員がご発言になられたとおり、金融分野の規制緩和とともに多様な金融商品が登場し、それから多様な販売ルートが登場してくる中で、苦情とか相談が非常に増えてきているということです。国民生活センターは各地の消費生活センターの相談・苦情をPIO-NETで集約をしておりますけれども、年間百数十万件の相談・苦情を集めている中で、去年の年度が金融・保険分野は17%を占めています。百数十万件の中の17%で、この中には振り込め詐欺とか、それから悪質な詐欺商法とか、製品安全なんかも含まれておりますので、健全な企業体としてあるべき金融とか保険とかの分野が17%も占めているということは、私はやはり業界全体、金融機関全体として大きな問題として、私はとらえて頂きたいというふうに思っております。こういった公的な消費生活センターに寄せられる相談とか苦情は全体の5%と言われていますので、その背後には20倍の相談とか苦情があるということはよく言われていることですので、やっぱりそのことをまず認識して頂きたいということです。

それから、これが消費生活センターの相談の場所に入ってきても、非常に専門性が高いというところがありまして、解決には大変な苦労をしております。なかなか解決にも至らずに、それから、じゃあそれならば訴訟をということを言われるのですが、訴訟に行っても消費者側が勝訴をするということは本当にまれで、そういう意味では非常に消費者側は苦難を強いられておりますし、それから、裁判に行けば個別の紛争解決は和解や何かを通じてなされるとしても、その個別の紛争どまり、解決どまりなんですけれども、やはりここで集められた情報、例えば苦情とか相談の場面に集まってきた情報というのは、それからの業務の内容の改善に生かしたり、それからルールメイクに使うということもできるわけで、やっぱりそういった活用ということもぜひ考えて頂きたいというふうに思います。今、ほかの分野の会社では24時間体制で苦情とか相談を受け付けて、非常にそれを貴重な声だとして経営の改善につなげていらっしゃるところも大変多い中で、私は非常に遅れているのがこの金融・保険の分野だという認識を持っております。

資料1で全体のご説明があったんですが、説明をちょっと飛ばされたのですが、20ページをご覧になって頂きたいと思います。20ページは、これは「平成19年度金融分野の業界団体・自主規制機関における相談、苦情・紛争解決支援件数」ですが、これを見て頂くと、苦情の件数、保険は1万件を超えてはおりますけれども、銀行協会は2,000件あたりですね。それから、紛争のところに行くと、紛争の申し立て件数というのは1桁になるということです。保険は2桁です。日本証券業協会と先物は3桁いっておりますけれども、173件と131件、すごく少ないですね。まず、苦情で上がってくるものも少ないし、それから、そこから紛争に至るということも大変少なくて、先ほどルール、今の現状の説明と今の仕組みでよくやっているからこれでやっていきたいという業界団体のお話がありましたけれども、私はやはり機能不全に陥っているというふうに考えております。座長メモにもありましたように、今後の方向性としては自主規制機関化が望ましいというふうに考えておりますし、基本的なことは法的に担保するということで今後の検討を進めて頂きたいというふうに考えております。

以上です。

○岩原第二部会長

ほかにいかがでしょうか。

上柳委員、お願いします。

○上柳臨時委員

恐れ入ります。私も座長メモを強く支持したいというふうに思っております。本当に10年間の討議、あるいはこの間の紛争の実態、そのほかを踏まえたものというふうに考えておりまして、現段階で最低限実現すべきものだろうというふうに思っております。

そのとおりなんですけれども、特に2点申し上げたいことは、1つは通しページで言いますと15ページの下のほうになりますけれども、これは現段階ではいわゆる既存の各業態あるいは業界ごとにということになると思いますけれども、自主規制機関化をこの機会にすべきだと思います。望ましいではなくて、すべきだというふうに思います。自主規制機関の中身はいろいろもちろんあり得ますけれども、特に規則制定権とそれから規制権限については当然含めるべきであろうというふうに思っております。

もう一点は、通しページで言いますと18ページになりますけれども、「今後の方向性」の第2パラグラフのところに書いてありますように、このADR、つまり自主規制機関に置かれるべきADRにおいては、業者さんのほうの手続応諾義務、あるいは誠実交渉義務、あるいは結果尊重義務を法律的に決めておくというのが必要だと思います。この2つ目の点は既に先ほどのご発表の中でも、その方向で実際には動かされているんだと思いますけれども、この点は確認しておきたいというふうに思います。

私自身はもちろん少なくとも近い将来にいわゆる包括的、あるいは横断的なADRが実現されること、さらには年来の話であります金融サービス法につながることであるとか、一方でADRだけではなくて、やっぱり裁判が使いにくいというのが問題がありますので、証拠の利用の問題であるとか、あるいは裁判手続自体についても、例えば労働分野では労働審判というようなものが工夫されておりますけれども、裁判所のほうの改善も必要だと思っておりますが、今回のこの機会にぜひ自主規制機関化のところが実現されるべきだと思います。

あと一言だけですけれども、この座長メモは6ページから7ページにかけまして、自主規制機関化に対する反対論といいますか、消極論が幾つか掲げられていますけれども、私の見るところ、自主規制機関にしてもあまり消費者団体が考えているようなふうにならないんじゃないかというような、そういう趣旨のことが主張としては見当たるんですけれども、逆に自主規制機関にすると何かまずいところがあるのか、ここのところは本音のところを教えて頂きたいというふうに思うところです。

もしご回答があれば頂きたいということと、もしもう一点質問できるとすれば、先ほど4機関お話がありましたけれども、独立性、あるいは公平性についてはかなり考慮はされていらっしゃることはわかったんですけれども、全国各地にあるかどうかという点と、もう一つは、そのADRで何を規範といいますか、何をルールにして、それで場合によっては業者さんに対して任せるということをやっておられるんだろうか。そこはやっぱり規則制定がないと、証券業協会さんは公正慣習規則そのほかありますけれども、なかなか難しいんじゃないかと思うんです。いずれにしても、なかなか言った言わないの争いになりますから、事実認定、つまり裁判所のように証人尋問をやって事実認定できないところですと、よくわかりませんねという話で、あいまいになってしまうような気がします。そこのところでやっぱり業界それぞれに即したルール、きっちりとした説明、あるいはきっちりとした適合性原則がなされているのであれば、こういう周りの証拠があるはずだというようなことで、各業界に即した規則制定ができて初めてADRが実効性のあるものになるんじゃないか。そういう意味での実効性の確保のために自主規制機関化が必要であるという、こういうご指摘だろうというふうに思いました。

以上です。

○岩原第二部会長

ほかにいかがでございましょうか。藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

質問してもよろしいんでしょうか。

○岩原第二部会長

どなたに。

○藤原委員

銀行協会の方に。

○岩原第二部会長

どうぞ。

○藤原委員

銀行協会が金融ADRに取り組んでいるというのは今回のプレゼンでよくわかりました。1つネーミングに関して質問があります。証券業界の窓口は「苦情相談室」と呼ばれているのに比べ、7ページからも分かるように銀行協会の苦情相談窓口は「銀行とりひき相談所」というネーミングになっております。もし、銀行協会が本当にADRに関して取り組んでいるのでしたら、「銀行トラブル相談所」と名前を変えたほうが銀行のお客さんにより分かりやすいのではないでしょうか。

○岩原第二部会長

どうぞ、川端さん。

○川端専門委員

今、みずほ銀行は全銀協の会長行を務めさせて頂いていますので、そういうことでお話ししますと、銀行とりひき相談所にお寄せ頂く声というのは、単にトラブルだけではなくて、銀行の利用の仕方を含め、種々のご相談を頂くということになっております。トラブルだけを表立って出したほうがもっといいのではないかというのであれば、その意見も持ち帰りまして検討はいたしますが、今の銀行とりひき相談所の位置づけと申しますのは、トラブルに限らず気軽にご相談くださいというたてつけになっておりますので、そういう名称をとっていないというのが現状でございます。

それから、先ほどの原委員、あるいは上柳委員のお話にあった自主規制機関にかかわる議論でございますが、これは全銀協としてという意見ではなくて、個人としての意見として聞いて頂くほうがありがたいのですが、業界を経営する者として2つ、そのことについて消極的になる課題がございます。

一つ目は、これは非常に物理的で、言ってみればプリミティブな問題なのですが、規制というものが何重化にもなってしまうということです。私ども預金を取り扱う金融機関につきましては、金融庁から銀行法に基づいて種々の監督を受け、規制を受け、指導を受けている。それにさらに規制が加わるということの問題と、もう一つはそれを維持するためのコストが膨らむというのが、これが物理的な問題であります。

もう一つ、非常に重要な問題なのですが、これが本質的だと私は考えておりますが、私どもも当然ながら従来の規制に守られた業界から自由競争の状況になってきて、お客様からどう評価されるか、どう思われるかということが、銀行の業績をすごく左右する状況になってきています。そういう意味で、経営としては常にお客様を意識する、そういう組織に持っていきたい。そのときに、規制でいくのかどうかという問題です。

多くの先生方がいらっしゃる前で非常に原始的な例を申し上げて恐縮なのですが、例えば先ほど話題があった振り込め詐欺の問題がございます。振り込め詐欺ということについて、全銀協も警察庁あるいは金融庁と一緒になって撲滅を図ることに取り組んでおりますが、このことについて規制という考え方、この語感が持つものというのは、防げなかったらしかられるぞという考え方です。私どもが経営として行員、あるいはパートスタッフの方に取り組んで頂くときに気持ちとして持っていてほしいのは、何としても大事なお客様のために防いで差し上げたいと。この気持ちで取り組みたい。実際に私どもをご利用頂くお客様にとって、がちがちに行員が対応するのではなくて、まさにその本当の気持ちで取り組む、このように持っていきたいというのが経営の本音なのです。そういう意味で自主的な取組みをしたいと考えております。

ただ、私どもも従来の取組みでは不十分でございましたので、今回、自主的にあっせん委員会を設けて認定投資者保護団体として活動を開始しました。10月に立ち上げてから現状4件、既にあっせん委員会で取り扱う案件が出てきておりまして、その周知度も少しずつ上がってきており、さらにこの取組みを強化していきたいというのが私の考えでございます。

○岩原第二部会長

藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

すみません。お答えしてもらってから次のことを言おうと思っていたのですが、私の質問に対する答えが別の方向に行ってしまったようですので少し付け加えさせて下さい。先ほどなぜ私が、銀行トラブル相談所という具合に、もっとわかりやすい名前に変えたほうがいいのではないかと質問をしたのは、金融ADRは銀行のカスタマーサービスの問題であると思っているからです。

1つ具体例を挙げますと、金融知識があまりない主婦の友人が銀行にヘッジファンドを勧められ、ヘッジファンドを買いました。ヘッジファンドは金融の自由化ではリーダー格のイギリスであっても個人は買えません。ところが、日本は違った意味で金融の自由化が進んでいて、金融知識がない個人でも買えますしその結果、大きくダウンサイドリスクをとってしまったりしております。ファンド価格が急落した時、この友人は困ってしまい、私に相談してきました。私は「投資リスクをあまり分からない友人がヘッジファンドに投資しているのにびっくりしましたが、当時、友人も私も銀行に苦情相談所があるというのは知らなかったです。私は証券会社の苦情相談所というのは知っていました。

こういう例からも分かるように、もし銀行が、本当にお客さんのことを考えているのであるなら、売った責任だけでなく、その後のフォローアップという意味でカスタマーサービスを充実させ、その一環として、金融ADRに本格的に取り組んでいったほうがいいと思います。金融庁の調査でも分かるように、70%の人たちが証券商品について知らないと答えています。こういう現状下で、銀行が元本リスクのある商品やハイリスク・ハイリターンの商品を売るのであるなら、買った人たちが「知らないで投資してしまった」と不満を持った時に、窓口の名前が「銀行苦情相談所」である場合のほうが相談に行きやすいのではないでしょうか。つまり、カスタマーサービスの点から、「苦情相談所」と変えたほうがよろしいのではないでしょうか。

○岩原第二部会長

川端委員、どうぞ。

○川端専門委員

今お話のあった商品をそういうリスクについての許容度が低い方にどういう経緯で販売がされたのか、私もちょっと理解しがたい部分ではありますが、本来そういうことをしてはいけない、お客様保護の関係からいってもしてはいけない話で、そういうことがトラブルになった場合には、例えば、私ども個別行の場合でも、営業店や、お客さまサービス部というところを用意しており、お客さまからそこにお話が来たりします。それから、お客様が具体的に当初リスクについてご理解頂いても、このところ非常に大きくマーケットが変動しておりますので、予想外の含み損を抱えておられる方もいらっしゃる。その方については個別にすべて、そのことの内容について、銀行が取り扱ったものであれば銀行が丁寧にご説明に上がるという対応をとっております。頂いた苦情を常に類型化して、売り方に問題がなかったのかどうかというのは常にチェックをしております。

ただ、ご指摘のとりひき相談所では、なかなかそういった方がそこで相談すればいいのかというのがわかりづらいということについては、私どもも真摯に受けとめまして、どういう工夫でここをご利用頂けるようにするのか、さらに研究、検討を重ねていきたいというふうに思います。

○岩原第二部会長

吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

苦情処理のとき重要なのは、これをいかに将来に生かしていくかということだと思うんですけれども、そうしますと、3つほどあると思いますが、1つは供給者の業者側あるいは業界側がこういう苦情処理からどういうふうにそれに対応してきたか。それぞれ悪い面があればそれが改善できたかどうか。2番目は、法制度自身がなかなかわかりにくいとか、疑問とか問題点があるとすれば、そこをやっぱり将来的には直す必要があるんじゃないかと思います。それから、今度は利用者の側で教育が、消費者教育といいますか、金銭教育、金融教育がよくできていないという部分があればやっぱり苦情処理が多いと思いますし、それから我々、学生なんかでもトラブルメーカーとよく変なのがいるわけですから、2%ぐらいはそれはしようがないかもしれませんけれども、そういう意味では苦情処理を通じて業界側、それから法制度の面、それから利用者に対してそれぞれ改善が促されるかどうかということが重要だと思いまして、業界の方々には、これを通じながら、やっぱりそういうのが毎年できてきているのかどうかと。そうであるとすれば、苦情は減少していいはずのように思うんですが、先ほど日証協のお話ですと、いろいろ株価の状況によって違うということもお聞きしましたけれども。

それから、最後は、この苦情相談がどこにあるかということをどれくらい利用者が知っているかと。先ほど原先生がおっしゃいましたけれども、5%ぐらいしか知らないということは、それはこういう機関があるんだということをもっと認知させて頂けるようにして頂けることが必要なんじゃないかと思います。

以上です。

○岩原第二部会長

ほかにいかがでしょうか。嘉治委員、どうぞ。

○嘉治委員

ありがとうございます。

今日のお話の中でたびたび、協力義務、尊重義務、参加義務というような言葉が出てきておりまして、要するにピア・プレッシャーだけで機能していることがわかりました。そうなりますと、やっぱりそのインセンティブがきちんと担保されているのかどうかというのが、いま一つ不安になってくるわけでございます。

「生命保険協会におけるADRについて」という資料3の2ページには、赤い米印で、「尊重義務違反行為があった際の公表措置」も規定していると書いていらっしゃいますが、私の見方がよくないのかもしれませんがほかのご説明にはそういう文言はないようにお見受けしました。もしもピア・プレッシャーだけでいくのだということであれば、先ほどから皆様がおっしゃっている一般国民に広く知らせる面でも、公表するなどの措置をとったほうがよろしいのではないかと思います。規制だけがすべてだとは思いませんが、かといって、各関係者のボランタリーな意思だけに頼って大丈夫かというと不安も残りますので、バランスが難しいと思うんですが、やはりもうちょっと何らかの形で、義務と言われているものを守るインセンティブを高めないと安心できない面もあるのではないかと思います。

それから、これはあまり関係ないかもしれませんが、「あっせん」という日本語が全部平仮名になっております。これは文部科学省がお決めになったことなのでしょうか。教育に携わる者としては、最近ダミングダウンということが非常に問題になっておりまして、暗たんたる気持ちになってしまうのですが、その点もコメントさせて頂きました。

○岩原第二部会長

最後の点は確かにそうですね。法律自体が今そうなってきておりまして、金融商品取引法も、証券業協会のあっせん機関について77条の2で、「あっせん」と平仮名で規定するように変わりまして、これは何か法制局の指示なんですかね。

それはそれとして、嘉治委員の前半のご指摘等いかがでしょうか。

川端委員、どうぞ。

○川端専門委員

全銀協について申し上げますと、ご説明申し上げました資料の5ページ目をご覧頂ければと思いますが、私どもはまだ、この10月から認定投資者保護団体としてあっせん委員会を立ち上げたところでございますが、義務を守らないケースについては、最後の段にございますように、あっせん委員会は理事会に報告をいたしまして、全銀協は改善措置の概要を公表するということで、参加会員に対して、言ってみればプレッシャーをかけていくという対応を、現状とっております。まだ始まったばかりで具体例が出てきていないので、どういう公表をしていくか具体例でお示しできないのですが、そういう対応をとろうと考えております。

全銀協のほうは以上でございます。

○岩原第二部会長

二宮委員、どうぞ。

○二宮専門委員

損保協会におきましては、損害保険に関する苦情・紛争解決支援規則というのがございまして、この中に、1つは、調停案の提示を受けた場合これを尊重するということ。それと、もう一方で不受諾の場合、受諾をしないという場合においては、その理由を委員会に対して説明する。また委員会がこれを正当な理由に基づくと認められないと判断した場合には、委員会は紛争の概要、また最終案、会社名、及び会社が受諾しなかった理由、これを公表することができるというような規則になっております。

以上でございます。

○岩原第二部会長

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

私は今回から参加させて頂くものですから、知識の点で不十分な点があるかもしれませんが、自主規制機関化について少し、今考えたことを述べさせて頂きたいと思います。

ADRの機能を担う団体が自主規制機関となった場合には、それだけ権限が強化されるわけですから、現在それを担っている諸団体の方が権限の強化を望まないで自主的な取組みのほうが望ましいと考えておられることは、少し理解しがたいところがあるように思いました。

自主規制機関化することのデメリットとして考え得ることとして、現在の業法別の自主規制であれば、業界横断的なADR団体の設立がかえって妨げられるのではないかという懸念が考えられます。この点については、金融商品取引法には認定投資者保護団体という制度があるのですが、これは投資サービスという業態について業界横断的な取組みを促進するための制度として設けられたと私は理解しているんですけれども、実際に申請、あるいは認定されている投資者保護団体は、業界ごとの投資者保護団体でありまして、必ずしも業界横断的なものにはなっていないのではないか。しかし、考え方としては、投資者保護団体のような業態に着目した自主規制機関を、もっと自主規制機関としての内実を持たせるように強化して、その上でさらに業態を横断した自主規制機関ができるかどうか、そういう自主規制機関にした場合のメリット、デメリットを考えていくべきではないかと思います。

その際の一番の問題は、専門性の観点から、業態で知識が蓄積しているのに、業態横断的なADR団体をつくるとそれが失われるのではないかという危惧があるかもしれません。ただ、この点は、既につくられているADR団体も、実際の運営は中立性の観点から弁護士や学識経験者、消費者団体の方などを入れておられるようでして、必ずしも業界に蓄積された知識だけを使ってやっているというわけではないようですので、この点は克服可能かなというふうに思っております。

○岩原第二部会長

いかがですか。野村委員、どうぞ。

○野村委員

今の黒沼先生のお話、私も基本的に賛成なんですが、考え方として、委員の皆様方にはもう共通の認識があるのかもしれません、私だけがちょっと遅れているのかもしれませんが、ADRという言葉で何をとらえるかによってちょっと議論がいろいろあるのかなと思うんです。中には苦情相談のイメージで考えておられる方もいるかと思うんですが、どちらかというと、私、法律をやってきましたが、これの本来の機能の1つには紛争解決という機能があるわけでありまして、本来裁判で紛争解決して頂いても構わないんですけれども、裁判官が必ずしも専門性を持たないとか、あるいはどうしても法律を基準にして処理をしますので、柔軟な解決に限りがあると。裁判上でも和解というのは当然あるわけですけれども、やや法律の規律に拘束されがちであるというようなこと。それから、場合によっては裁判との相対的な比較になりますけれども、迅速な解決が可能である等々、この紛争解決という面でのADRの持っている機能というのに着目をしていった場合、この組織のあり方というのはあるいは程度しっかりとした制度化が必要ではないかというふうに考えられるわけであります。

やはり裁判に準じて、最終的に紛争解決していくのであれば、適正手続が確保されることが必要でしょうし、また示された仲裁あっせん案に対してある一定の拘束力を持たせなければ無駄打ちになってしまうということもあろうかというふうに思いますので、そういう意味では社会の中でややまだ、日本の社会の中に定着してはいない部分があるかと思いますが、裁判という非常にかたい紛争の解決手段以外のところに紛争の解決の手段を多様に設けていこうという大きな流れの中でいけば、やはりその担い手についての法制度化というのは1つの選択肢ではないかというふうに思います。

○岩原第二部会長

ほかにいかがでしょうか。和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

私も今の黒沼先生、野村先生のおっしゃったことに全く異論はないんですけれども、基本的にはADRというのは裁判ではすくい上げられない苦情をどうやって解決するか。問題解決がまずありきですから、そうなると、事実認定については、私はかなりぼかしたことになって結論が出てくるのかもしれないという感じはしています。

私もこの議論に入るのは今日が初めてなので私だけがわかっていないのかもしれないのですが、中立性・公正性ということをおっしゃる、誠にそのとおりなんですけれども、専門性というのは要らないんでしょうか。皆さん、全銀協とかあるいはほかの団体のADRを見ましても、弁護士とか学識経験者が構成員の中心です。弁護士を使って頂くのはもう私も非常にありがたいことなのですけれども、それで協会や企業のほうは受け入れられるのでしょうか。普通、仲裁の手続ですと、3人でやる場合ですけれども、要するに申立人と被申立人の各々選任した仲裁人、あと中立の人が入る、それで公正さを担保しているんですが、どうもそれとは違う考え方で考えられているというところがよくわかりません。そのほうが企業としては受け入れられやすいんでしょうか。企業のほうとしては、中立な人が言うことだからあきらめるということが可能なのか、その辺がもう一つよくわからないです。

どうしてそういうふうな方向に議論が行ってしまうのか。もしADRに本当に業界がコミットするのであれば、業界のほうからも人が1人入って、その方は、もちろんその利害関係の直接の当事者でない方ですが、そういう方が入ったほうがいいと思います。それで公正性を保つのだったらまだいいんですけれども、そういう考え方とは違う形でADRというのが組み立てられてきているというのが、何か私にとってはちょっと理解できないのです。これだと業界のほうには不満が残るのではないかなという感じがいたします。

もう一つ、自主規制機関化したらどんないいことがあるのかということについては、確かに先ほど全銀協の方のほうから規制の多重化、コストの増大、これは確かにあるかもしれませんけれども、規制の多重化というのは、今でも存在しているわけで、登録金融機関業務をやっていれば銀行は銀行法と金商法により、二重に規制を受けているような状況になってしまっているわけですので、これはそんなに大した問題ではないんじゃないかなと私は思います。

問題は、どうやって苦情を吸い上げて、それを実効性のあるものにしていくのかということの見地から、じゃ、エンフォーサビリティを確保するためにはどういうシステムにするかというところにあると考えます。そうすると、今の各業界のADRだけだと、言うことをきかないメンバーの名前を公表することで今はおさまっていますけれども、それじゃ言うことを聞かない金融機関が出てきたときにはどうされるのかなというのが、ちょっと私としては心もとない。

むしろ、問題の解決という見地から考えれば、これは実はもう一つ意味があって、要するに被害者の救済という営業活動なのですね。金融機関のマネジメントとして営業をどう考えるかという問題として捉えることもできます。先ほど藤原委員がおっしゃったように、カスタマーサービスとしてどういうふうにお客様を扱っていくのかという問題なので、そこにこういう制度が出てくるというのは実はちょっと情けないことでもあるのですけれども、でもそれがうまくいっていないということであるならば、やっぱりそこは公的なシステムと連関する形で制度設計をしたほうがいいんじゃないかなというのが、私の意見でございます。

○岩原第二部会長

非常に重要なポイントを幾つかご指摘頂いたように思いますが、まず、最初にご指摘頂いた現在の各ADR機関のあっせん委員会なり調停委員会の構成で、うまく専門性をくみ取ることができ、そして金融機関側、業者側の納得を得られることができるかということについて、各団体のほうから何か。

じゃ、川端さん、どうぞ。

○川端専門委員

先ほどご説明のあっせん委員会の構成委員でございますが、弁護士の方が2名、それから消費者問題専門家の方が2名、それからもう1名、全銀協の役職員を加えてございます。これによりまして基本的な金融の専門性のところを補完したいと考えています。ただ、この比率を高めますと、どうしても利用される方にとってみると、業界寄りの判断になるんじゃないかということで、ぎりぎり5名のうち1名のみ専門家を加えているという体制でございます。

○岩原第二部会長

二宮さん。

○二宮専門委員

損害保険調停委員会のメンバーでございますけれども、これは弁護士が2名、あと消費生活相談員の方が2名、学識者が1名ということですが、この学識者のところで、やはり保険に詳しい方にお入り頂いているということでございます。この5名でございます。

○岩原第二部会長

殿岡さん。

○殿岡専門委員

生命保険協会でございますけれども、お配りしております資料の2ページ目に裁定審査会の構成を記載しております。一番上が「裁定審査会のメンバー構成」ということですけれども、弁護士3名、消費生活相談員3名、それから生命保険協会の相談室長1名ということで、ここで専門性は確保をすると。実際の運営は、この弁護士の方3名と消費生活員3名の方をそれぞれ分けまして、3つの部会をつくっております。弁護士の方と消費生活相談員の方、生命保険相談室長、各1名ずつで3つの部会をつくって、それぞれの検討はそこで行って、何か決定するときには全体会で決定をすると。そういったやり方をとっております。

この裁定審査会のチェック機能として、一番下ですけれども、裁定諮問委員会というのがございます。こちらのメンバーを一番下に記載しておりますけれども、学者の方、それから医者の方、弁護士の方、消費者代表の方、それとまた協会の人間ということで、ここでもおっしゃるような形での専門性は担保をすると。こうすることによって、やはり苦情処理というのは業界全体の経営改善ですとか、そういったところに、再発防止ですとか、そういうところに生かされなくては意味がないので、こういったことで業界の人間も入って、そこを十分踏まえた検討を行うということにしております。

以上でございます。

○岩原第二部会長

増井さん。

○増井専門委員

私どもは自主規制機関でございまして、少しほかの協会さんと違うかもしれませんが、いずれにいたしましても、あっせん委員は弁護士さんお一人でやって頂いております。基本的に、ですから業界の人は入っていないということですけれども、それなりにあっせんの事例も積み重なってきておりまして、判例じゃありませんけれども、いろんなケースが出てきているということもあるのと同時に、それぞれのあっせん委員の先生方も、そういう意味では結構ベテランの方もいらっしゃるということでございますので、そういう意味で全くその事情を理解しないで勝手にあっせんをしているというような声は、私どもの会員からはあまり聞こえてきておりません。あまり業界が入ると、逆に公正性を疑われて、このあっせんの制度を利用して頂けなくなる可能性もあるという、そういう気持ちもあるわけでございます。状況としてはそういうことでございます。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

いいですか、その点は。実際入っていらっしゃる弁護士の方なんかも、大体そういう問題に詳しい方が大抵は入っていらっしゃるのかなという感じは持っていますが。

和仁委員のご指摘の第2点、これが非常に大事で、エンフォーサビリティ、こういうADRの実効性をいかに確保するか。この問題はさっき嘉治委員からもご指摘のあったところで、実際に、今ここでプレゼンテーションして頂きました4団体はある意味で優等生の団体でございまして、この皆様の資料の46ページ、あるいはその後の49ページ以下にそれぞれの各種業界のADR団体がどのような組織を持ち、運用されているかということが書いてありまして、そもそもあっせん、あるいは調停機関を持たないところが圧倒的に多いわけでありますし、さらに49ページからご覧頂きますと、ここでの公表というのは実は紛争解決結果の公表でありまして、今のようなあっせん等に従わなかったかどうかの公表ではないんですけれども、それについても、むしろ公表していないところが圧倒的に多いと。そもそもどういうADR活動をしているかということの公表さえしていないところが多い状況でございまして、今プレゼンテーションして頂きました4団体は優等生中の優等生でございまして、そのような中で、非常に今、金融のサービスが多様化している中で、全体のADRの質を格上げしていくにはどうしたらいいか、さらに優等生のところでありましても、本当にそれを実効性を担保するにはどうしたらいいかというのが、多分ここでの合同部会の審議の要かなというふうに思います。

その1つの方法として主張されているのが自主規制機関化ということと理解していますが、ただこの自主規制機関化といいましても、その理解はいろいろ、その名前で呼ばれている中身はいろいろでありますし、ここで議論しているのはまさにADRを実効的にする意味で、その部分について業界団体が一種の自主規制機関化して、会員に対して一定の拘束力を持つ団体になるべきかどうかというのがここでの検討課題でございまして、全面的にすべての問題について業界団体が自主規制機関化するということをここで検討しているわけではないということはご理解頂きたいと思います。その上で皆様からのご意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

金丸委員。

○金丸委員

トラブルの解決のためのこういう組織ができるということは非常にいいと思うんですけれども、私の認識は、もともと金融商品取引法ができる前に、多分金融機関の皆様は、金融庁の検査の過剰攻撃に対して過剰防衛に入らざるを得なくて、この法律が出てきて、さらに過剰防衛に走られていて、法律と運用とか実態のギャップはますます広がって、金融庁のほうから、あれは11の誤解でしたっけ、何かを発表なさるということをせざるを得なくなったわけです。お金を持っていらっしゃる人たちがそれほどの専門知識がなくても安心して投資ができるというような環境づくりということがそもそも目的だったと思うんです。今のところ、そういう意味では、割り切って考えますと、少し過渡的な期間なのかなと思っているんです。この法律ができて、金融商品に対する対象範囲が広がったということは利用者にとって多分それはいいことだったと思うんですけれども、今のところ私はささやかな利用者の一人として、この法律ができる前後で私にとってメリットがあったということはほとんど感じたことはございません。これはこの金融審議会でも何回も申し上げていることなんですが。

ですから、先ほど法律と運用のギャップがあると申し上げましたけれども、金融庁からあれこれさらに言われないがために、実は利用者保護ではなくて、まず供給者サイドが、自分が金融庁から防衛するために、いろんなことをなさっておられて、まだ真にカスタマーのところに目が行っていないんじゃないかなと思うんです。

それは先ほど申し上げました、貯蓄から投資へと言って、もともと専門知識が乏しくても安心して多少金融商品に投資しようという時代を迎えようとしたわけですけれども、利用者が、取引をしようとするといろんなものにサインをさせられるわけです。十分な時間もあって、専門知識がある人ならまだしも、例えば私はその説明を受けたときに、十分な説明を受けたということにサインをしなければいけないんです。十分な説明を受けたということに、利用者にサインをさせるのであれば、本来なら供給サイドのほうがまず十分な説明を私はしたというのにサインすべきです。結局、末端の利用者がいろんなものにサインをしなきゃいけないという紙の束が増えて、これが私は実態だと思うんです。ですから、このままこんな形で続けていれば、金融危機もありますが、とても金融立国というか、投資へなんか行かなくて、我々は世界にもう一度更なる貯蓄立国としてやっていくというような宣言すら、私はせざるを得ないんじゃないかというふうな認識でおります。

ですから、ぜひいつかこの法律と運用のギャップがなくなり、官民の相互不信もなくなり、金融庁と金融機関の皆様が、フラットな関係になって初めて、私は利用者に今回の法律の効果が、なるほど、この法律ができてよかったなという実感に私はなるんじゃないかなというふうに思っております。ぜひいつかこの金融商品取引法が施行された以降の実態評価について、別途研究をしてみたほうがいいんじゃないかなというふうに思います。

ですから、もっとADRより前に私は大きな問題があると思っております。このままだったら、私が苦情を申し立てたいと思った件は何件かあるんですけれども、でもサインしてしまっているんですね。ひもとくと、あれもこれもあれもと、供給者サイドは十分な説明を仮にしていなくてもしたことに、サインをさせられていてなっているというのが実態ではないかなというふうに思います。

ですから、自主規制かどうかについては、私はこれ以上、過剰防衛と過剰攻撃の相互不信の中だったら、当面は私は自主規制でもいいと思うんです。それで何か問題があれば、また法律の手当てか何か、あるいは規制を強化されるということはいいと思います。

以上でございます。

○大森企画課長

相互不信とおっしゃるような状況はそんなに昔からそうだというわけでもないと思うんです。大蔵省時代の金融行政、いろいろご批判もあったかと思うんですけれども、少なくとも行政と業界がお互いに何を考えているかわからないということはなかったんだろうと思います。

それが失敗して金融行政が分離されまして、事前予防型の裁量行政からルールに基づく事後チェック型の行政に転換するんだというのが1つのスローガンになって、ルールにない裁量的な経営判断に属するようなことは極力言ってはいけないというのが普通の行政官の意識になってしまった。このことによって、今、金丸さんがおっしゃったように、例えば適合性原則というようなものを徹底していくときに、営業現場でまさか70歳以上は家族同伴してくださいなんていう対応になるとは、つくっているほうは夢にも思わないわけですけれども、検査に備えたアリバイづくりみたいなことが優先してしまうのは私たちにとっても大変不本意でありますし、新しい制度が導入されるときは、それを営業現場に移しかえていくときにどうしなければならないかについて、反省すべきは反省し、建設的な意見交換ができるようにしてまいりたいということです。昨年来、先ほど業界のほうからも若干ご指摘がありましたけれども、プリンシプルベースの行政対応というようなことを申し上げているのはそういった気持ちでございます。

ただ、ちょっと揚げ足を取るようで恐縮ですけれども、仮に70歳以上は家族同伴してくださいみたいなことがずっと起こっていたら、こんなはずじゃなかったというようなトラブルが起こることもまた少ないわけでして、この問題というのは、やっぱり過剰防衛じゃないような営業というのが現にあるから起こっているところがあるんだと思います。制度論はいつだってそうなんですけれども、業界の皆様はやるべきことはやっているとおっしゃって、それに対する1つの反応は、本当ですかという反応があって、もう一つは、本当であるとしても、岩原先生がおっしゃったように、あなたはやっているかもしれないけれどもほかの業界はやっていないんじゃないかという反応があります。あるいは、あなたがやっているのであれば、それが法律上の義務になって何が困るんですかというような、そういう構図のもっともらしさの度合いで当面の制度が決まっていくということだと思いますので、少し今日聞いておりまして、業界の皆様もやや遠慮がちなのではないか、本当に言いたいことを言わないと、この有識者の委員の方のような制度になってしまいますので、もうちょっと言いたいことがあれば遠慮なくおっしゃったほうがよろしいのではないかと思ってお聞きしておりました。

○岩原第二部会長

本当に今、大森課長からおっしゃいましたように、この場では率直にそれぞれのお考えを言って頂いて、問題点をはっきりさせて、そして、それこそ広い意味で業界、それから利用者双方が広く納得できる制度化を考えていきたいということですので、皆様、ぜひ率直にお願いしたいと思います。

川端さん、どうぞ。

○川端専門委員

金丸委員がおっしゃった、例えば金商法施行時のときの金融機関のある意味では過剰対応、これは別に金融庁に対して疑心暗鬼ということではなくて、やはり初めて法が施行され、それについてフォローされるとなると、どうしても、非常に残念なことに、お客様に対する目線よりも法律違反をしないという過剰防衛に組織が走ってしまうのはもう間違いないところです。それはどうしても起きます。それが、私が最初に自主規制機関化みたいなものについて基本的に経営がとりたくないと言った大きな要因の1つなのです。

例えば、私が支店長をしておりましたときに、まだ金商法施行前ですが、ある資産運用相談を受け付けるテラーのところに、すごくそのテラーのファンになって頂いているお客様が投資信託を買いに来られた。何回も買って頂いた。あるときに、そのテラーが日誌に書きました。支店長、私はこのお客様にまた来て頂いてすごくうれしかったんですけれども、実はお断りしました。このお客様が、これ以上リスク性商品をお持ちになることについて、私を信頼して頂いているお客様にこれ以上買って頂くのは、どんなに相手が希望されても私としてはやめたほうがいいと言ってしまいましたと。支店の業績進展のためにはマイナスだったかもしれませんが、という日誌がありました。私はとてもうれしかった。そういうふうに持っていきたい。金商法の趣旨もきっとそうだと思います。

そういうふうに持っていきたいんですが、組織というのは何かで規制する、あるいは法律ということになると、どうしても防衛に走るというのがありがちです。例えば金融庁の検査が来るときには指摘されないようにしよう、あるいは本部も監査をどんどんやっていますが、本部監査で何か問題を指摘されないようにしようと。お客様に喜ばれようという軸よりも、どうしてもそちらが強くなる。このことが非常に私ども経営者としても悩ましいところでありまして、いきなり有識者の方々が思われる法律による規制というのを一挙に進めるということではなくて、私どもが悩みながら経営をしているこの状況をもうしばらく見守って頂きたいというところが、私の本音のところであります。

○岩原第二部会長

殿岡委員。

○殿岡専門委員

何となく今日は被告席に座っている印象がございまして、かつ、また部会長の真ん前ということで、ますますその感じを強くしているんですけれども、優等生というお言葉に甘えてちょっと意見を、意見といいますか、感じたところを述べさせて頂きたいと思います。

和仁先生のおっしゃった実効性確保ということからの自主規制機関化ということかと思います。自主規制機関ということがテーマとしてずっと出てきているわけですけれども、この実効性確保という意味が中立性ですとか公平性ですとか、あるいは透明性ですとか、そういうことの確保ということを意味していて、それのための自主規制機関化ということであるとするのであれば、私どもとしては、それについてはかなりの程度努力をしてきているというふうに申し上げたいと思います。特に私どもの業界、ご承知のとおり支払いの問題でいろいろお騒がせをしておりまして、そういった中で各社、それから協会とも体制整備をずっと進めてきたと、そういう経緯がございます。

先ほど川端委員もおっしゃっていましたけれども、やはり金融というのは、特に保険はそうなんですけれども、どうしても信頼関係、お客様との信頼関係というのがやはり基本的な、最も基本的なところですので、紛争についてはだれも好まない。当然会社の側もそれは好まないということが言えるかと思います。そういった中で、各社とも紛争解決ということについてはできるだけ早い段階で各社とも第三者機関を入れる、そういった機関をつくって、各社の努力で解決をする。それから、また協会のほうでもそういったご努力をすると、そういったことをしてきているところでございます。

現在の協会のやり方で、私は必ずしも不足があるというふうには考えておらないということが、あえて法定の自主規制機関にする必要はないんでないかということの1つでございます。もう一つが、業界団体でやっているからこそのよさというのがやはり一方ではあるかと思うんです。業界で自分たちでつくっている制度なので、そこには当然協力をすると。それから参加して頂いている弁護士の方、あるいは消費生活相談員の方についても、業界から任命、委嘱をされているので、ある意味業界とは距離を置かなくてはならないと。そういう意識も当然働くのかなというふうに思っております。

仮にこれが自主規制機関というふうに、一種業界とは離れたところになっていったときに、今の申し上げた、そういったたてつけというのは一体どういうふうに変わっていくのか。やはり先ほど野村先生がおっしゃったソリッドな形の、ある意味ではもう一つのソリッドな形ということになってしまって、必ずしも、言い方は難しいんですけれども、先ほど申し上げたような柔軟な対応というのがとりにくくなるのではないかと。当然お客様と会社、双方への中立性というのが何よりも求められるということになりますので、今の協会で、協会ベースで行っている、そういった形での裁定制度とはちょっと違う、ある意味、繰り返しになりますがソリッドな形になるのではないかと。そういった危惧を一方では持っております。

以上でございます。

○岩原第二部会長

じゃ、二宮委員。その後で原委員、お願いします。

○二宮専門委員

損保協会の苦情・紛争対応の現状につきまして、これで十分というふうには思っておりません。先ほどもご説明しましたように、今後のいわゆる検証、過去の事例の検証とか、あと事例のフォローアップ等を含めまして、そのシステムの構築、これも必要でございます。先ほどのご説明の中で、予定としているのはその部分が随分ございます。2009年の1月を目指してシステム構築をしてフォローアップをして、検証体制を整える。また、相談員のそういったスキルアップというのも当然のことながら強化をしていくということでございます。

それで、先ほども自主規制機関化の問題というのが出ておるんですけれども、やはりこれを実効性の確保、向上ということからすると、私ども、今、十分かと言えばそうでないという部分もあるかもしれませんが、申し上げたようなそういった強化策を常にとっていく中で、やはり実効性の確保というのはできる、また中立性・公正性の確保も、それは実現できるというふうに思っております。

それと、やはりいろんな業態がある中で、進んでいるところはもっと進めればいいのであって、やっぱり一定の水準、最低限のやはり消費者の信頼を確保する、利便性を確保するための水準というのはあろうかと思います。そこへの底上げというのは必要であろうかと思うんですけれども、今申し上げたような点からは、即座にADRのための自主規制機関化というのはいかがかというふうに考えます。

また、ご意見の中で苦情の活用ということ、これが十分にできているのかというご意見が幾つかあったように思います。私ども損害保険業界もこの数年、特約のお支払い漏れから不適切な不払い、また火災保険料の取り過ぎと、大変消費者の不信を買うような、保険事業の根本のところに問題を露呈したという部分がございます。したがいまして、この苦情に関する対応、取扱いに対しては、個社においては当然経営のトップの関与から含めて、やはりこれを宝として事業の改善に役立てるということは、これは肝に銘じてやっているつもりでございます。そういった感覚で、損保協会もやはり業界全体の趨勢とか、そういったまた予兆等を感じ取るために、今申し上げたような強化策を含め、実施していきたいというふうに考えております。

○岩原第二部会長

それでは、原委員、お願いします。

○原臨時委員

私は司法制度改革推進本部でADR法の検討の委員会に所属をしておりましたので、少し話を整理した形にしたほうがいいかなというふうに思っているのは、消費者からは、まず金融機関側に問い合わせとか相談というジャンルがあります。それから、もう一つは、その次は苦情というジャンルがあって、それから苦情でもうまく解決できないというのが、第三者に入って頂いて、あっせんとか紛争という部分があるわけですね。

それで、先ほど野村先生がおっしゃられたように、ADR法はこの紛争解決のところに着目をして法律というのはつくられています。日本ではこのADR法を制定しておりますけれども、実はISOという国際標準化機構という組織がありまして、そこに消費者政策特別委員会というCOPOLCOというものが存在しているのですが、ここも2000年に入ってから苦情の解決についての規格化、それからそれに引き続いて紛争解決についての規格化をしておりまして、金融に限らず、世界的な状況、国際的な状況とか国内全体の状況を見ても、こういった苦情解決をどうするのか、紛争解決をどうするのかということの仕組みづくりが問われているという状況に、今はあります。

既に金融庁のこの金融研究研修センターでは、2005年ですけれども、金融ADR制度の比較法的考察ということで、イギリスとオーストラリアと韓国の制度を中心に、こういったもう立派な報告書もまとめられていて、イギリスの、金は出すが口は出さないというふうに言われているADRの仕組みなんかも紹介をされているわけなんです。

ですから、着々と世の中全般にはこういった仕組みづくりをどうするかというところに来ています。今の自主規制機関の話が出て、これがやっぱり実効性確保のためでは有意義であろうというふうに、流れとしてはそのようになっていて、私も冒頭申し上げたとおりなんですが、じゃ、それをどういうふうにするのかというところで、私も非常にちょっと悩ましく思っているところがあって、私自身は10年前にも、包括的・横断的姿が望ましいということで、それは苦情も紛争も含めて、業界横断的なことでの提案をしたんですけれども、これはイギリスなんかは、一応外形的にはそのようなスタイルをしているんですが、私もちょっと今のこの場でどういう提案ができるかということを考えたときに、先ほど、よくやっていらっしゃる、今日ヒアリングに応じて頂いたところではないところがありますね。やっぱりそういうところをすくい上げるというんでしょうか、一緒にやるためには、紛争の部分だけでも横断的にADRとしての自主規制機関を図るというのが1つあるかなというふうに考えたんですが、ただ、そのときにすごくネックになるのが、先ほどの表にあったとおり、苦情から紛争に上がる道筋がすごい今狭いので、紛争のところだけ横断的にADRで、金融ADRでやってもどうかなというのが疑問なんです。

それで、ちょっともう一つ考えたのが、業法上に自主規制機関化を考えるということがこの座長メモにも書かれているんですが、そうすると、個別の今おやりになっていらっしゃる業界団体ごとにそれを自主規制機関というふうに衣がえしてしまう、衣がえをするという手法があるんですが、それだと今とどう変わるかなというのがあって、少なくとも投資性の商品、それから保険、それから預金と貸し金、やっぱりこういった3つぐらいのグルーピングをして、その中で苦情・紛争を、苦情解決、紛争解決も含めた形での自主規制機関化、これは認定投資者保護団体の仕組みを、金融商品販売法は非常に横断的な仕組みでつくっておりますけれども、何か工夫してそういうことが考えられないのかなということを思っておりまして、これもホップ、ステップ、ジャンプのステップの段階あたりの位置づけで、今の状況では検討したほうがいいのかなというふうに思っております。私もちょっと非常に悩みながら、皆さんのご意見をお聞きしながらというふうな、感想的な途中段階の意見ということで締めさせて頂きます。

○岩原第二部会長

野村委員。

○野村委員

今、原委員のほうから、私が先ほど申し上げました苦情とそれから紛争解決についての議論を整理して頂いたんですけれども、先ほど来からお話を伺っていますと、整理しなきゃいけないのは自主規制という概念だろうというふうに思います。勢い、私先ほど紛争解決ということの機能を担わせるのであれば、ある程度の、そのことに限ってでもきちっとした手続規制であるとか、そのエンフォースメントを担保する機能というものを法制化する必要があるだろうということは申し上げましたが、いわゆる証券業協会のような自主規制団体を、銀行業界に必要だというふうに意見を申し上げたつもりは全くありません。

恐らく銀行業界の方々、あるいは保険業界の方々が懸念されておられるのはそういった意味での、いわば金融庁にかわってルールメイクをしながら、自主規制の規則をどんどんつくってそれを守らせていくというような、そういう団体が自分たちには不必要ですというご意見なんだろうというふうに思いますが、私はまさにそれはそのとおりではないかなというふうに思います。下手にADRの機能を自主規制機関化すると、そういうところに議論が発展していってしまうんじゃないかというご懸念をお持ちだとすれば、私はそこはやっぱりしっかりと慎重に議論すべきだろうというふうに思います。

なぜなら、金融庁はベターレギュレーション、先ほども大森企画課長がおっしゃられましたけれども、プリンシプルベースのという話が出てきますが、じゃ、プリンシプルをどうやってエンフォースするのかという話が恐らく課題になっているんだと思うんです。行政処分の基準のほうを示して頂きましたが、そこではプリンシプルでは行政処分はしないと書かれてはありますけれども、ルールにはすき間があるというのも事実であると。じゃ、それを自主規制機関にゆだねていくのかという、ここが1つ、恐らく金融庁の心の中でも悩んでいる部分があって、そこが見え隠れしているからこそ、業界はそういうことになっては困るという、こういう状況の図式になっているんだろうというふうには思います。

ですから、私はやっぱりそこはすごく本質的な問題で、ルールのあり方、あるいは業界と役所のあり方を含めた日本の金融機関の、金融行政のあり方を根本的に考える非常に重要な論点だと思いますので、それをADRが重要だからということで、それだけの違ったバイパスを通ってそういう本格的な議論に行ってしまうというのはやや問題があるかなというふうには思います。これはまさに金融審議会ですので、しっかりと議論したほうがいいかなというふうには思います。

それから、金丸さんが先ほどおっしゃられましたけれども、やっぱり人にいろんなことを押しつけるのであれば、やはり金融庁自身のほうも、先ほど、最初吉野先生からもお話がありましたけれども、ルールがトラブルを招いてはいないのかという、その反省はしっかりやっぱり頂くべきかなというふうに思います。ベターレギュレーションをもし語るのであれば、規制影響評価というものをやはり、イギリスがまさにそれで徹底的に自分たちの自己点検をやったように、規制が本当に効果的であるのかどうか、引っ込めるべき規制はないのかということも一方で点検をして頂くという姿勢があってこそ、自主規制なり何なり、あるいはADRなりを求めていくことができるんじゃないかなというふうに思います。

○岩原第二部会長

今、野村委員が前半で指摘されたところは、先ほど私が申し上げたところで、自主規制機関化といっても、全面的に全国銀行協会なり生命保険協会がすべての問題について、さっき野村委員がおっしゃったようなルールをつくり、みずから会員を統制していくというような自主規制機関化ということをここで議論するのではなくて、あくまでADRを実効的にする範囲で、それぞれの団体がその部分についてはある程度の強制力を持って、いわば会員にADRを実効的なものにしてもらうような仕組みをつくって頂くかということをここで議論するということだと理解しています。

さっき金丸委員がご指摘になったように、行政庁が規制をしますと、場合によっては行き過ぎということも起こり得るのに対して、自主規制機関というのは、そんな役所にお世話をして頂かなくても、自分たちでまさにピア・プレッシャーで仲間同士で自律していけるんだということを示して頂いて、もし銀行と呼ばれるに値しないようなものがいれば、銀行同士の間でそういうものをきちんと規律して、場合によっては仲間での処分ということで実効的に守ってもらうようにすると。そうすることによって行政庁の余計なお世話はしなくても済むようにしようというのが、多分自主規制機関の本来の考え方ではないかと思います。

ただ、それがうまくいかないということになると、何らかの形で実効性を持つようなことを考えなくてはいけないと。それの幾つかの考え方が先ほどの座長メモに示されているわけで、じゃ、ADRに関して、各団体がその部分に関してだけそういう自主規制的な役割をある程度果たすといういき方をとるのか、あるいはこの資料の7ページの一番下に書いてございますけれども、もしそういういき方がとれないのであれば、ある程度若干は役所が面倒を見て、業界のほうがそういう体制を中でつくれるようなことにお手伝いをしてはどうかというのが、通しページの16ページの一番下の(3)に書いてあるところでありまして、業者に対して、金融庁等の行政が認定した金融ADR機関との契約締結を免許等の要件として義務づけ、さらに、手続応諾義務、誠実交渉義務、結果尊重義務が課せられ、またアクセスの容易性への配慮がされるべきという意見があったと。これはそういう間接的な形で行政庁が手を差し伸べることによって、業界の各ADRが実効性を持つように、それぞれの業界団体のほうで努力してもらいましょうといういき方を示唆しているわけで、どういうやり方をとるのが一番行政庁などが余計なお世話をしないで、実効性の確保された、そういうADR機関を形成することができるかと。その知恵をこの合同部会で皆様にご議論をさらにして頂きたいと考えております。

もし差し支えなければ、今日はそろそろ時間が来ましたので、以上で大体本日の議論を終えさせて頂きたいと思いますが、何か特に、今発言をしたいという方、いらっしゃいますでしょうか。

よろしゅうございましょうか。

上柳委員、どうぞ。

○上柳臨時委員

申しわけありません、次回出られないかもわかりませんので。

野村先生、今、岩原先生おっしゃったように、今回の議論はADRについての規則制定なり、あるいは拘束力の問題に限るということで私も大賛成ですけれども、ただその限りにおいては、やっぱり各ADR機関で紛争解決の準則なりはつくられるんじゃないかというふうに想像はしております。

座長がおっしゃったように、今の状況のもとで、この座長メモの考え方が私もいいだろうと思いますけれども、繰り返しですけれども、1の4の国会のほうの附帯決議は別に自主規制でやれと言っているわけじゃなくて、ADRをきちんとしろというふうに言っているわけですから、それがなかなか本当に難しいということであれば、例えば金融庁さんで相談室にたくさん件数が来ているわけですから、そこでやれとか、あるいは岩原先生が座長メモに書いておられるような方向性であるとか、それも考えなきゃいけないんですけれども、ただ、やっぱり最初の座長メモで出された考え方が現実的だし、各機関、それなりの実績を積んでこられましたから実現性があるというふうに思います。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございます。

それでは、本日は以上で審議を終えさせて頂きたいと思います。次回の合同部会は現在のところ、第一部会に引き続きまして11月25日、午後3時45分から午後5時半まで、大変中途半端な時間で、かつ第一部会の委員の方には連投をお願いする、ダブルヘッダーをお願いする大変心苦しい日程でございますが、予定しております。次回の合同部会の議事進行につきましては事務局から連絡があると聞いておりますので、事務局からよろしくお願いします。

○中沢企画官

活発なご議論を頂きまして、ありがとうございました。本日議論を頂きました点につきましては、事務局におきまして論点ごとに意見を取りまとめまして、次回合同部会の場に資料としてお配りいたしたいと考えております。次回会合では、本日の議論を踏まえまして、議論を一層深めて頂きたいというふうに考えております。どうもありがとうございました。

○岩原第二部会長

ただいまお話がございましたように、事務局で論点整理を行って頂くということでございますが、よろしゅうございましょうか。それでは、そのようにさせて頂きたいと思います。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了いたします。

長時間ご熱心な討議、どうもありがとうございました。

以上

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