金融審議会金融分科会第一部会(第60回)議事録

1.日時:

平成20年12月17日(水曜日)10時00分~10時46分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室


○池尾部会長

それでは、定刻になりましたので、まだ若干、ちょっとお見えでない委員の方もおられますが、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会第60回会合を開催いたします。

皆様には、本日はご多用中のところをご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

それで、いつもどおりですが、本日の議事も公開の形で行わせて頂いておりますことをご報告申し上げておきます。

それでは、早速ですが、議事に移らせて頂きます。

議事次第には、事務局説明としか書いていませんが、今日は2つありまして、1つは、前回の会合におきまして、委員の皆様方からご意見等を頂いたものを踏まえまして、第一部会報告案を修正させて頂きましたので、その修正点等についてご確認頂いて、その上で第一部会報告ということで取りまとめさせて頂きたいということです。後で中川大臣がお越しになる予定ですので、中川大臣に報告書をお渡ししたいというふうに思っております。それが1点目です。

それからその後、金融ADRに関します検討結果が取りまとまったということで、金融ADRについては、第一部会、第二部会の合同会合でやっていたわけですが、その第一部会・第二部会報告につきましても、本日公表の運びという予定だそうなので、その内容につきまして、第一部会の場でご説明頂くということが2点目です。

それで、先ほど申しましたように、本日は中川大臣が後ほどお見えになる予定ですが、若干時間的に前後する可能性があり、金融ADRの審議に入った後で来られる場合には、中断ということになる可能性がございます。その際、カメラ撮り等も入るという都合がありますので、そうした場合は少しご協力をお願いいたします。

それでは、早速ですが、まず最初のほうの第一部会報告案の修正等につきまして、事務局から説明を頂きたいというふうに思います。

○池田市場課長

それでは、お手元に資料1としまして、第一部会報告(案)をお配りしております、こちらをごらん頂きたいと思います。

表紙をめくって頂きまして、さらに次の名簿をめくって頂きまして、報告(案)でございます。前回からの修正点は網かけをしております。こちらに沿いましてご説明をさせて頂きたいと思います。

まず、「はじめに」のところでございますけれども、前回の会合では、原委員のほうから、9月以降の金融の状況の中でどういうようにこれからの金融政策とか金融行政をとっていくのかといったことを、この「はじめに」のところに盛り込むことができないかというご指摘を頂いておりました。そうしたことで、若干加筆をさせて頂いております。ここにございますように、現在の国際金融・資本市場は、米国のサブプライム・ローン問題に端を発する大きな混乱にさらされている中で、高レバレッジ取引による短期的な利益追求といったこれまでのビジネスモデルの問題点等が大きく浮き彫りとされている。こうした中で、各国が国際的に連携し、金融システムの安定に全力を尽くすとともに、金融危機の再発防止、金融システム強化を強力に推進していくことが急務となっているということを第1段落で述べておりますが、他方、多様な経済活動をサポートし、適切な資源配分をもたらすための金融仲介機能の重要性には変わりがない。また、その中で、金融・資本市場が果たす役割は極めて大きい。特に、我が国においては、少子高齢化社会が到来している中で、経済の持続的な成長を確保し、国民の資産形成に資するため、我が国金融・資本市場の競争力強化に引き続き不断に取り組んでいく必要があるということを述べさせて頂いておりまして、こうした問題意識のもと、今般の金融・資本市場の混乱がもたらす教訓を一方で踏まえつつ、他方で我が国金融・資本市場の国際的な競争力の一層の強化を図っていく観点から、ここにありますような、主に3つのテーマについて審議を行ったということを記載させて頂いております。

あわせまして、前回の審議のときに池尾先生から、池尾先生が雑誌のほうに書かれたものについてご覧頂きたいというご発言がございましたので、お手元に東洋経済の記事ですが、写しを配付させて頂いております。事務局のつたない作文で不足の部分は、そちらのほうをぜひご参照頂ければというふうに考えておる次第でございます。

それから、報告書のほうですが、格付につきましては、後ほど企業開示課長のほうからご説明したほうがよろしいかと思いますので、ちょっと順番が入れ繰りしますが、最後の14ページのほうを先にご覧頂きたいと思います。

前回、金融商品取引法上のプロ・アマの移行の問題についてご議論頂きまして、そこでのご議論を踏まえまして、本日、ここのくだりを盛り込ませて頂きました。ちょっと読み上げさせて頂きたいと思います。

「金融商品取引法上の特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)の間の移行手続について、現行では、プロからアマへ移行した顧客が、アマ扱いの継続を希望していたとしても、期限日(移行から1年)経過後に、再び申出を行わなかった場合には、プロに戻ってしまうこととなる。この点、顧客の意思の確認の徹底や迅速な取引の妨げになりかねないことから、顧客から申出があるまで、原則として、移行の効果が持続することを検討することが適当である。」とさせて頂いております。

第2段落ですけれども、「また、現行では、いったん、プロからアマ、アマからプロへの変更を選択した場合、期限日までの1年間、元の属性への変更はできないこととされている。この点について、期限日を待たずに属性の変更を認めることを検討することが考えられるが、その場合には、実務上の円滑に留意しつつ、顧客の意思が確実に確認されるように留意すべきである。」ということで、前回の議論を踏まえ、このようにさせて頂いております。

なお、前回の議論では、アマからプロに移行した場合の顧客についての移行の効果、現在1年になっておりますが、これについても、事務手続の合理化を図ることができないかというような観点からご議論がございましたけれども、この点については、一方で顧客の意思の確認ですとか、資産要件の確認等を適切に行えるのかというようなご指摘があったところでありまして、この点については引き続き検討が必要かというふうに考えておりますことから、今回の報告(案)には盛り込んでいないということでございます。

それでは、格付等のところについては企業開示課長のほうからご説明させて頂きます。

○三井企業開示課長

すみません、それでは2ページにお戻り頂きたいと存じます。

2ページの真ん中のパラグラフ、「しかしながら、」のところでございますが、その1つ目の小さい点でございます。「かつ十分な」ということで、前回、原委員から、この正確な情報を十分に入手をしてと、こういうふうに修文すべきであるというご指摘を頂いておりまして、そのように修正させて頂いております。

次は、5ページをごらん頂きたいと存じます。

(2)の情報開示のマル1の適時の情報開示のくだりでございます。淵田委員から、このストラクチャードファイナンスについて、今回のサブプライム・ローン問題を踏まえて、ここについての議論というのがあったはずであるということで、この情報開示のところ、仕組み債と一般の社債について、投資家が間違いのないように、この違いについて理解できるようにするということも含めているということを明示すべきであるというご指摘を頂いておりまして、ここではこのように「格付は、」というところからでございますが、「また、」のところで、「格付の意義や限界に関する投資者等の理解を促進する観点から、仕組み商品に関する格付を一般の社債の格付と区別して取り扱うことを含め、個々の格付について、」云々というふうにしてございます。

また、上柳委員から、この金融商品の仕組みについてのこのディスクロージャー、情報開示ということについてもきっちり書き込むべきであると、こういうご指摘を頂いておりまして、業者がそれを説明していくということにもつながるわけですが、その先でございまして、「その属性や限界を明確にすることや、格付の付与又は見直しの際に、金融商品の仕組みを含め、格付意見の基礎となる主要な要素をレポートなどにおいて説明していくことは不可欠である。」というふうに直させて頂いております。

次のページでございまして、(4)の禁止行為でございます。禁止行為の下に、「現在、」という1つ段落をあけたくだり、真ん中辺にございます。ここで、前回淵田委員から、このストラクチャードファイナンスの組成や仕組みについてのレコメンデーション、推奨については、IOSCOでも、あるいは米国、EUの提案においても禁止ということになっておりまして、このところ、その趣旨が明確になるようにというふうなご指摘がございました。ということで、「現在、」というところですが、「欧米において格付会社に対する公的規制の導入・強化についての検討が進展している。このうち、特に、格付対象商品の発行者や仕組み商品の組成者等に対する一定のコンサルティング行為」、コンサルティング行為ということには、推奨、アドバイスを含むというふうに考えておりますが、「の同時提供を禁止することについては、欧米におけるその後の検討状況を注視しつつ、基本的には我が国においても、同様の枠組みの導入を検討すべきである。」ということで書き加えさせて頂いております。

少し先に進みまして、9ページの「その他」の節でございます。原委員から、この格付会社の取り組みということにとどまらず、消費者の、あるいは社会からの目線を入れるべきであるということで、一般の人が格付や格付会社をどう見ていけばよいのかということについて、格付についての情報提供をしっかりすべきであるということを記載すると、こういうふうなご指摘がございまして、次の10ページの冒頭でございます。2行目からですが、「投資者に対する格付の意義や限界の周知を徹底していくとともに、」ということを書き加えさせて頂いております。

それから、さらに開示制度の見直しの13ページでございます。13ページの下の段の(2)の「目論見書制度」につきまして、原委員からご意見がございました。一番下の「このため、」という段落でございまして、この交付の目論見書簡素化ということは、現状、たくさんの項目が書かれ過ぎていて、説明が大雑把になっているのではないか。むしろ説明が大事であると。わかりやすい情報を提供すると、こういうコンテクストで、それを明確化するということから、交付目論見書について、「投資判断に重要な」ということを加えまして、「情報が投資者に理解できるよう、分かりやすく」と、こういう修文をいたしております。

私のほうからは以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明のあった第一部会報告(案)の修正につきまして、何かご意見といいますかご発言、報告書(案)につきましてご発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。特にご意見等がございませんようでしたら、この報告書(案)を第一部会報告ということで取りまとめさせて頂き、前回ご説明のありましたディスクロージャー・ワーキング・グループの報告書を添付する形で最終的な第一部会報告という形にさせて頂きたいと思いますが、それでご異議ございませんでしょうか。

はい、どうぞ、原委員。

○原臨時委員

前回、いろいろとご意見申し上げた点、反映させて頂きましてありがとうございました。少し前文の工夫をして頂きたいということで、こうして頂いたのですけれども、「はじめに」の2段落目のところで、「他方、」と書かれているのですが、「他方、」ではなくて、引き続きというんでしょうか、全体にこういった金融市場、資本市場が大事だということで、「他方、」という前置きなしに書いて頂きたいというところがあります、本意としては、金融経済のこの市場が大事だということをもう一度きちんと明確にして頂けたらと思います。

それからもう一点ですが、前回新たに出された提案で、プロからアマへの移行とアマからプロへの移行の部分ですが、一番最後に「その他」というところで、14ページでまとめて頂いておりますけれども、またいろんな方々のご意見をお聞きすると、プロからアマへの移行のところはわからないのですが、アマからプロへの移行のところは、今の実務もちょっと点検をしてほしいというご意見が出ましたので、あわせて適合性の原則のところで資産状況などの確認があるかと思いますけれど、今の実務上のちょっと齟齬は起きていないかどうかも確認しての作業にして頂きたいと思います。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

後者の点はいいですよね。

○池田市場課長

その辺は行政面でまたご意見を伺わせて頂いて、必要なものは点検させて頂きたいと思います。

○池尾部会長

ほかにご意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、先ほど申しましたような形で第一部会報告書を取りまとめさせて頂きます。どうもありがとうございました。

それでは、中川大臣お越しですので、報告書を手交させて頂きたいと思います。

(カメラ入室)

○池尾部会長

報告書をまとめましたので、どうぞお受け取りお願いします。

(中川大臣に報告書を手交)

○池尾部会長

それでは、ここで中川大臣からごあいさつを頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○中川大臣

おはようございます。中川でございます。

先生方には、10月から5回にわたりまして、大変お忙しいところを、大変貴重なご討議、そしてまたご議論を頂き、ただいま金融審議会金融分科会第一部会報告を池尾部会長から頂きました。委員の先生方、心から厚く御礼を申し上げます。

昨年来のアメリカ発の金融を発端とした金融危機あるいはまた実体経済への影響というものは、本当に麻生総理は百年に一遍と言っておりますけれども、大変な状況になってきているわけであります。世界中で大手あるいは地方を問わず、金融関係の機関が数多く破綻をしている状況が現在も続いているわけでございます。

しかし、幸いにしてといいましょうか、日本の場合には過去の苦い経験もあり、また皆様のご努力もあって、システムはしっかりと機能し、破綻した金融機関はただの一つもないということだけははっきりとした事実だろうと思っております。

しかし、実体経済の急速な悪化あるいはまた年末を迎えました金融機能がこの流動性等々の問題で少し私は問題があるのかなというふうに思っているところでございます。

11月のG20金融経済サミット、ワシントンでのサミットでは、こういう共通認識の中で、しかし各国は勝手に自らだけを守るために、無秩序な為替の切り下げ、あるいはまた関税の障壁を高くするといったブロック経済化的なことはしないというコンセンサスが得られているわけでございます。各国協調しながら、そしてその中で各国ができることを目いっぱいやって、この世界的な危機を乗り切っていこうという共通認識の中で、各国それぞれがまたできることをやっているわけでございます。

金融機能と申しますのは、ニーズのあるところに資金を提供して、信用創造をして、仲介機能をして、そしてまた決済機能を果たしていくという非常に重要な役割を果たしておりますし、現在の日本において、この機能というものはますます重要なものがあるというふうに考えております。

そしてまた、将来にわたりましては、少子高齢社会の日本という中で、日本が前進していくためには、やはり金融機能のさらなる強化というものが極めて重要であろうというふうに考えております。

私どもは、本報告書を頂いて、しっかりとその内容、趣旨を踏まえまして、必要がありますならば法律改正も含めまして、次期国会に向けて作業も進めさせて頂きたいと思います。先生方の本当に多大なご努力に対しまして、心から感謝申し上げますとともに、その報告書が日本の金融の強化のために大いにその機能が果たされますように、我々も全力を挙げて努力することをお誓い申し上げまして、御礼のごあいさつとさせて頂きます。どうもありがとうございました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、カメラの方は退席をお願いいたします。

(カメラ退室)

○池尾部会長

それでは、次に、事務局から第一部会・第二部会の合同で検討してまいりました金融ADRに関する報告ですね、「金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR)のあり方について」のご説明をお願いしたいと思います。

○中沢企画官

ありがとうございます。お手元に資料2、「金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR)のあり方について」という資料が配られているかと思います。この議論は、11月5日、11月25日、12月3日、3回にわたる第一部会・第二部会合同会合におけるご審議を頂きまして、大体議論が出尽くしたということで、12月3日、取りまとめ役の岩原座長に報告の取りまとめをご一任頂き、この2週間の間にさまざまなご意見をちょうだいいたしました。頂きました意見、この私の手元にございますけれども、非常に活発なご意見を先生方から頂きました。このご意見を踏まえまして、報告がまとまりました。

本日は、第一部会という場ではございますが、この場をお借りしまして、この報告書の紹介、公表をさせて頂きたいと思います。

取りまとめ役一任ということで、日付がはっきりしなかったんですが、今日、12月17日、この日をもってこの報告書の日付といたしたいというふうにも考えてございます。

また、第二部会の先生方に対しましては、別途郵送において、本日発送させて頂くということを考えてございます。

それでは、報告書のご説明に入りたいと思います。

お手元の報告書でございます。まずタイトルでございますが、「金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR)のあり方について」とあります。金融ADRという言葉を報告書の頭から打ち込んでおります。裁判外紛争解決制度という非常に長ったらしい名前でございますので、この際、金融ADRという言葉を前面に出して普及していくと有り難いという気持ちもございまして、こういうタイトルにさせて頂こうと考えております。

報告書、ご検討頂きました先生方の名簿から始まりまして、目次、さらにめくって頂きますと、「はじめに」という箇所がございます。この「はじめに」で問題意識について言及しております。

その次に、これまでの取り組み、同じ1ページの下から2ページにかけまして、これまでの本問題に関する経緯について触れさせて頂いております。

3ページ目でございます。「金融分野における裁判外の紛争解決のあり方」の中で、まず基本的な考え方ということで、1つ項を起こさせて頂きました。苦情・紛争解決における利用者の信頼感、それから納得感を高めるためには、金融ADRの中立性・公正性及び実効性を確保する必要があるという認識のもとで、将来的には専門性・迅速性・実効性も確保された金融商品・サービス全般を取り扱う権威のある横断的・包括的な金融ADRが構築されることが望ましいという認識をまず示しております。

ところが、その次の段でございますけども、さまざまな課題もあることから、「横断的・包括的な金融ADRの構築を目指すためより努力を重ねるとともに、これまでの業界ごとの苦情・紛争解決への自主的な取組みを踏まえ、現時点では、複数のトラブル解決手段の存在を許容しつつ、段階的に金融ADR全体の改善を図ることが、過渡的な姿として考えられる。」この対比が基本的な考え方であるというふうに示しております。

また、コスト面を重視した制度をつくることも必要だということにも、次の段で言及をしております。

その下の(2)から(7)、6ページに至るまでの間に、現状の制度を踏まえて、どういう姿が望ましいのかということを示してございます。

(2)から(7)でございますが、これまでの業界団体等による自主的な苦情・紛争解決の取り組みを活用するということを踏まえて、業態ごとに設立される中立・公正な金融ADR機関を行政庁が指定します。ただ、業態ごとに設立される場合でも、窓口の共通化については実務上検討していきましょうというふうには考えてございます。

この金融ADR機関が行政庁によって指定された場合、紛争解決に当たっては、個々の金融機関は手続の応諾、結果尊重などを求めていく。ただし、結果尊重については、裁判を受ける権利にも十分配慮をしていくなど、想定される仕組みを6ページまでに書かせて頂いたというところでございます。

さらに、実効性を確保するために、6ページの(8)でございますが、行政庁も関与するとさせて頂いております。「金融ADRの中立性・公正性及び実効性を確保するため、金融機関及び金融ADR機関に対する行政庁の一定の権限を設け、行政庁の検査・監督等を含めた関与を可能とすることが適当である。」ということでございます。

それから、この報告書の結論部分、あるいは提言の要点に当たる部分が6ページの下、「まとめ」以降に書いてあるわけでございますが、ここでは「金融ADRを改善・充実し、苦情・紛争解決における利用者の信頼感・納得感を高め、金融商品・サービスに関する利用者の信頼性の向上を図るためには、」上記で示したとおり、述べたとおりでございますが、「中立性・公正性及び実効性のある金融ADRの法的枠組みを設けることが望ましい。」という提言でございまして、関係者に対する期待といたしまして「本報告書の趣旨を踏まえ、一層の制度整備が進められることを期待する。」と書いてございます。

この柱をもとに、幾つかの項目について触れております。最初の(1)「業態の実態を踏まえた対応」というところでございますが、特にこの2段目に書いてあるとおり、「全ての金融商品・サービスについて一律に同様の法的枠組みを適用するのではなく、金融ADR機関のあり方、金融ADR機関の利用の業への参入要件化や金融ADRの枠組みの導入時期などについて、業態ごとの実態を踏まえた柔軟な法的枠組みを構築することが重要である。」

(2)としまして「金融トラブル連絡調整協議会」、これは過去8年間活動して頂いてきた協議会でございますが、これにつきましても「各業態における金融ADRに関する取組みを促すとともに各金融ADR機関相互の協力・連携等の取組みや制度の周知を進め、金融ADR全体の改善・発展につなげていくため、」引き続きこの役割を再認識した上で「金融ADR改善の推進役として重要な役割を果たしていく必要がある。」というふうにまとめております。

さらに、基本的な考え方で申し上げたとおりの「横断的・包括的な金融ADRの構築に向けた今後の取組み」の箇所でございますけども、そもそもこの報告書というのが実現可能性を考慮して、金融ADRの当面のあり方として提言をしたものであるという認識に立って「今後、各業態における金融ADRの個別の取組みと金融トラブル連絡調整協議会を核とする金融分野全体での取組みが、関係者により着実に進められることを期待しつつ、今後の展開を見守っていきたい。」という形で締めております。

すなわち、今回の報告書で事が終わったということではなくて、一歩前進というふうに位置づけまして、今後の発展に期待すると、そういう性格の報告書ということでまとめさせて頂いております。

以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明頂いた第一部会・第二部会報告、金融ADRのあり方についてに関しまして、何かご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。

じゃ、原委員、お願いします。

○原臨時委員

この金融ADRの議論は、10年間私かかわってきておりまして、審議会本体の場で集中して大きな課題として取り上げて頂いたのは今回初めてで、大変感謝をしております。

意見ということで申し上げたいのですけれども、やはり金融ADRの充実というところは、金融のインフラとしても非常に大きい課題だと思っておりますので、今大変な時期ではございますけれども、こういった議論を地道に積み重ねておくということが非常に重要だと考えておりまして、大変感謝しております。

その上での意見ということで、2点ですが、今、事務局の説明としても、これは今当面の課題としてまとめましたという、一歩進めたところというニュアンスのご発言があったのですが、やはり最終的には、横断的・包括的な金融ADRの姿への検討を進めて頂きたいと思っていて、前々回の議論、欠席をしたのですけれども、それぞれの個別の金融ADRの方々が、うちはよくやっているという話をなさったということなのですけれども、やはり金融業態全体としてこの問題にどう取り組むのかというところが私はすごく重要で、お金は出すけれども、口は出さないというような形の透明性と中立性を持ったような機関へ将来的には発展をしていって頂きたいということを希望しております。

それから、コストの話も随分出ましたけれども、私はやはり淵田委員が前回おっしゃって頂いたように、統合することでコストは低く抑えられるとほとんど確信的に思っておりますので、その意味からも考えて頂きたいと思います。

それから、実務の面で工夫できることがたくさんまだありまして、金融トラブルの大きな特徴は、相談に行ったことで、そこでまたトラブルになっているという二重のトラブルになっていることです。ですから、一番最初に苦情とか相談を受けられる方のところですね。これは個別金融機関も業界団体もそうなんですけど、そこを金融のプロではなくて、消費者問題のプロをそろえていくというような形で充実をさせていくことで、かなりの数が解消されていくのではないかと思っておりますので、大きなADRの話もありますけれども、個別の窓口をきちんと整備をしていって頂くということもお願いをしたいと思っております。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

ほかにご意見いかがでしょうか。

岩原先生、特にご発言はありませんか。

はい、どうぞ、若松委員。

○若松委員

私は特にこのまとめについて異議あるものではありません。今、原委員もおっしゃったことも、私は基本的には、将来的にはここの3ページに書いてあるように「段階的に金融ADR全体の改善を図ることが、過渡的な姿として考えられる。」とありますけれども、これをさらに進んで、将来的にはいわゆる一般投資家とか消費者から見ると、窓口が1つで、横断的なものが1つあるというのが一番理想形かなとは思います。

ただ、前回の議論か前々回で金融庁の方がおっしゃったように、天からそういうものをどんとおろした場合に、果たして現実的にそれが機能するのか。確かにそれもおっしゃるとおりだと思います。これは私の一つの意見なんですけど、今回の報告書というか、このまとめはまとめとして、金融庁の中でもいいし、学者さんを交えて、一つのワーキング、私的なワーキング・グループでもいいんですけれども、そういう実際にその天から降るような横断的な、いわゆる机上の理論でもいいんですけど、横断的なものを、一つのデッサンみたいなものをつくって、現実におろした場合、どういう課題があるのかというのを各金融機関の方々と詰めていって、議論としては確かに横断的なものが一番理想かもしれないけれども、まだまだこういうことがあるんですよというのを一般投資家とか消費者もひとつ巻き込んで検討して、少しずつ前進させていくということも考えられるんではないのかなという気がいたしますけれども。

○池尾部会長

そういうふうな役割も金融トラブル連絡調整協議会に今後期待するというところですよね。

ほかにご意見、いかがでしょうか。特にございませんようでしたら、どうもありがとうございました。冒頭に申し上げましたように、この第一部会・第二部会合同部会報告につきましては、先ほどの事務局から説明にもありましたが、本日公表ということにさせて頂きます。

以上をもちまして、この秋のというか、もう冬ですけど、第一部会の審議は一段落となりますので、事務局から一言ごあいさつを頂きたいと思います。

○佐藤長官

金融審議会第一部会、またADRに関しましては第二部会の先生方にも大変お世話になりまして、ありがとうございました。比較的短い期間の間に、大変密度の濃いご議論をして頂きまして、時代の要請にこたえる報告をおまとめ頂いたということかと思います。

先ほどの第一部会報告の冒頭にもございましたけれども、今、世界的に金融混乱が続いているわけでございますけれども、またその際に、もともと私ども、日本の金融・資本市場を強化していくというときに、漠然とニューヨーク、ロンドンというようなものがイメージされていたのも事実でございますが、今回の金融混乱の中で、各国当局間のやりとりも非常に頻繁に行われているわけでございますけれども、一方で規制強化をしなければいけないという動きがある。他方で、急激に規制強化をあまりに性急にやってしまうと、足元の状況をますます悪化させるというふうなことで、当局にとっても大変難しい状況に置かれているというのが現状だろうと思います。

ただ、先ほどの報告書の中にもございましたように、実体経済を支える、あるいは経済活動全般をサポートしていく、そういう意味での金融仲介機能の重要性というものには変化がないわけで、今般のさまざまな混乱の中で、否定されたものとそうでないものというものを丁寧に、丹念に点検しながら進めていくということが重要かなというふうに思っております。否定されているのは、短期的な利益の追求に偏った形で、高いレバレッジをかけて、不透明な金融商品を粗製乱造して取引を行ったというようなところでありましょうし、そういう意味では、今後商品の透明性ということが着目され、あるいは商品の標準化といったことも進むのかもしれません。また、恐らくOTCの取引よりは、より標準化された取引所での取引というものに重点が移っていくというような可能性もあるのかもしれません。

いずれにいたしましても、今後の金融業は実体経済における付加価値を創造していくと、そういうことにより近いところで、さまざまな金融サービス・金融仲介機能が発揮されると、こういう方向感なのであろうかと思っております。

そういう意味では、もともとニューヨーク、ロンドンの猿まねということで「市場強化プラン」をお作り頂いたわけではないと思っておりますけれども、我が国の実情もよく踏まえた上で、真にきちんとした金融仲介機能が発揮されるような、そういう金融システムにしていくということかと思います。

ただ、恐らく、この丁寧な点検をしていく中では、部分的に修正が必要な部分が出てくるかもしれませんけれど、そういった点は注意深く進めていくということが心構えであろうかと思います。

それから、ADRのほうにつきましては、先ほど頂いたご意見も踏まえて、よく当局としても、これも丹念に進めていくということが大事だと思っております。

一つは、最終的に包括的・横断的なADRの枠組みというのを展望していくという心構えというのは私どもも同じでございまして、それが進んでいく際に、当局主導で何でも進んでいくという形よりは、進んでいる業態、そうでない業態との間で業態間の競争が行われる。遅れている業態というのは、当然のことながら、利用者、顧客の側から低い評価しか受けないわけで、そういった形でさまざまなインセンティブが働く中で、だんだんと収れんしていくと、こういう力が働くということも重要かなと思っておりまして、そういったインセンティブが働くような、それをサポートするような当局の取り組みということも重要かなというふうに思ったところでございます。

いずれにいたしましても、大変ありがとうございました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

当部会は、本年10月15日以来、短期間のうちに、合同部会と合わせますと8回の会合を重ねてまいりました。

それで、本日一つの区切りを迎えることができたわけですが、これもこれまで精力的なご議論を賜りましたたまものだというふうに思っておりますので、この場をかりまして私のほうからも厚くお礼を申し上げたいと思います。

なお、この後、記者会見を行いまして、本日の会合の模様につきましては、私のほうからご紹介させて頂くということになっております。

それでは、以上をもちまして本日の会議は終了とさせて頂きます。誠にどうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課
(内線3615)

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