金融審議会金融分科会第一部会(第45回)議事要旨

1. 日時:

平成19年10月17日(水)13時00分~15時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

3. 議題

○ 事務局説明

○ 証券取引所よりヒアリング

  • 東京証券取引所 斉藤 惇社長
  • 大阪証券取引所 米田道生社長

○ 討議

○ その他

4. 議事内容

  • 渡辺金融担当大臣より挨拶があった。

  • 事務局から、証券市場の現状等について説明があった。

  • 東京証券取引所の斉藤社長、大阪証券取引所の米田社長よりヒアリングが行われた。

  • 討議における主な意見は以下の通り。

  • 我が国の証券取引所の取扱商品は少ないと思う。日本はこれまで稼いだ富をたくさん持った国民がいるので、このお金の運用がもっと便利になるのはよいことだ。

  • 日本の株式市場の時価総額が例えば500兆円から1000兆円規模まで増大すれば、それは税収面にも大いに貢献する。そういう視点も重要だ。

  • ひとつ問題提起をするならば、戦略的な資本主義というか、長期投資資金という戦略的投資マネーがあってもいいのではないか。例えば、取引所の中にプロ向けとして、長期投資とか、超長期投資の場を作るということも、一つの考え方ではないだろうか。

  • 個人の金融資産を貯蓄から投資へと向かわせるためには、商品の多様化が重要。実務的には、アプローチしやすいのは、ETFをうまく利用することだろう。現行の投信法上の特定資産の範囲を商品現物まで拡大するのは重い話なのかわからないが、商品先物を入れるだけでも意味は大きい。例えば、商品取引所の上場商品先物を特定資産に加えれば、多様なETFの組成が可能になる。これは早急に実現可能なものではないかと思う。

  • 1990年代以降、日本のデリバティブ市場が振わないのは、個人がデリバティブ市場に投資するメリットがない、つまり、現物取引とデリバティブ取引の損益を通算する税制になっていないということが影響しているのではないか。需給が十分マッチせず市場規模が小さいままとなっているのではないか。

  • 取引所のシステム処理速度については、日本だけに残っている空売り規制が関係していると思う。日本はアメリカの仕組みを参考に空売り規制を導入したのだろうが、アメリカはもはやその規制を撤廃しているはずだ。注文時に空売りを明示し、取引所は空売りを判別した上で処理する必要がある。その分だけ、日本の取引所の執行速度が遅くなるのであり、システム処理速度の遅れを克服するには、空売り規制の見直しも行うべきではないか。

  • 取引所が国際的な競争に打ち勝っていくためには、システムインフラへの多額の投資が必要ということだろう。その際、商品取引所も含め日本において市場が乱立している現状について、取引所間の競争もある程度は必要だろうが、国内で競うというよりは、むしろ国外との関係で欧米に差をつけられアジアがプレゼンスを高めているという状況を考えると、もう少し大きな視点で合従連衡を考えるべきではないか。

  • 現在、日本には商品取引所を含めると11の取引所が存在し、数は多い。取引所が国際的に競争しているのだから、日本はオールジャパンで取り組むべきという意見もあろうが、日本はスモールエコノミーではなく経済大国だ。

    これまでの国境を越えた取引所の経営統合では、国により取引制度が異なるために、実際には、取引所は別々に運営せざるを得ない。取引所の一本化によって独占が進むと、イノベーションが低迷し非効率になる。また、取引手数料が必ず上昇する。このような弊害をどう考えるかも重要。ただし、国内取引所の競争の意味を考えるべきだという点は、そのとおりだと思うが。

  • マーケット活性化のためにはイノベーションが重要であり、これは普通、プロの市場で起こるものだ。そのためには機関投資家の育成と更なる規制緩和が必要ではないかと思うが、日本においてプロ市場の活性化のためにはどのような規制緩和が望まれるのか。

  • 日本では、プロ投資家がデリバティブを使わず、むしろ個人がデイトレーディング等でデリバティブ市場を多用するという特異性がある。新興市場は、本来はポートフォリオ上どの程度リスクをとるべきかということで投資先として選択されるべきところだろうが、日本の機関投資家は新興市場に参加せず、個人が多い。

    日本の投資家の行動を見ていると、欧米人がやると自分も投資を行い出す傾向があると思う。日本の市場で欧米の投資家が自由に取引できるようにすれば、日本のプロ投資家も刺激されて参加するのではないか。また、ETF等の商品を多様化し長期ポートフォリオのためのツールを増やすこと、また、その過程では現物株等だけではなく、証券取引所において商品も扱えるようにすることが、プロ投資家・個人投資家双方のメリットに繋がるのではないか。

  • 現在、不動産上場投資信託(REIT)の投資対象不動産は国内に限定されているが、世界的には国外不動産も可能としているところが大勢だ。この状態が続けば、日本のREITの国際競争力の低下が懸念される。REIT改革のための本格的な検討が必要ではないか。

  • 現状、株式の取引は東証に集中し他の取引所と大きな差があるが、現状でも独占の弊害は懸念されるのではないか。国際競争力の強化とは別に、国内の差にも注目しなければならないのではないか。

  • 取引所の独占性の問題は世界の取引所にとって長年の課題だが、近年は、取引所を民営化して利益を追求するのが流れだが、取引所が公益的な仕事をすることは変わりない。

    例えばEUの指令では、証券会社による取引所業務や、証券会社を通さない形で投資家同士を直接マッチングさせるPTSを規定したように、取引所の独占性を排除するために、取引所間の競争というよりも、取引所と取引所以外のものとの競合が進んでいるのが実態になっている。これには、取引所以外の形の取引の場合に、価格の公正性や透明性等がどのように確保されるのかという別の問題があり、このように、取引所の独占性については議論が混沌としている状態だ。

    本来は、取引所間できちんと競争されていれば、自然に1つとか2つになってくるはずなのだが、日本ではなぜかそうはなっていない。競争によって、ある取引所は他の取引所と比べて特徴を出すために海外の取引所と手を組むかもしれない。最終的に利用者にどういうベネフィットを提供するかという競争が起こるべきだろう。たくさんあるから一つになれということでなく、競争を生き残った市場が、結果的には、国民の利益につながるものだと理解している。

  • ETFの品揃えを拡大する際には、投資家保護の観点から、商品性について情報開示を徹底する必要がある。

  • 証券取引所の上場商品多様化を可能としたり、取引所の連携を進めるための整備においては、金商法における取引所や取引所子会社の業務範囲の制限がもう少し緩やかであるべきという議論もあろう。

  • 取引所における取扱商品を多様化することには賛成だ。品揃えの拡大の制約となっているもの、例えばETFの組成に関して制約があるならば外すべきではないか。

    また、品揃えを増やす意味においても、アジアの企業に日本でどれだけ上場してもらうかが重要である。現状で、一度日本の基準に戻すコストが負担ならば考えなければならない。国際会計基準とのコンバージェンスを待たず、プロ向けの市場では国際会計基準によるものを許容したり、英文開示を認めるなどの選択肢もあるのではないか。

  • プロ向け市場は、現実になんとか作りたいと考えており、関係者と議論を詰めないといけないが、国際会計基準であれ英文開示であれ、旧来の取引所というものの規程で固まったものではない形のものができないかと考えている。外国において大成功している例があり、それがどういう制度で動いており、それがどうなっているのかといった点を、現在徹底的に研究しているところである。できるだけ早く具体的なテーマにしたいと、現在作業を行っているところである。

  • 取引所における取扱商品の多様化については、投資者保護の仕組みがあることが大前提である。現状は市場間でルールが異なっており、このようなルールの下でこういう商品を扱うべき、という観点からの議論が必要である。

  • プロ向け市場については、取引所に上場するものを前提としてプロに限定するのか、あるいは、取引所を利用するが非上場のものを前提としてプロに限定するのか、また、プロが直接参加する市場なのか、それとも仲介業者や委託者を通じて間接的に参加する市場なのか、これらの論点を整理して議論する必要がある。

  • まず言いたいのは金融市場は実体経済の鏡ということだ。金利が低すぎるとヘッジニーズもなく、価格変動率も小さくなる。取引のメリットが低下し、スプレッドも低下する。これらが日本の金融市場のプレゼンスを低下させているということを認識すべきだ。

  • 現在、市場におけるデリバティブ取引の参加者は7割が外国人だ。金融機関にはヘッジニーズが本来あるはずなのに、日本の金融機関は保守的。本来リスクをとるべき機関投資家が臆病になっており、一方、個人投資家がデリバティブ市場に入っている。こういう現状を踏まえた議論をすべきだ。

(以上)

問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局 市場課(内線3619)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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