金融審議会金融分科会第二部会(第30回)・「情報技術革新と金融制度に関するWG」(第16回)合同会合議事録

平成18年6月14日(水曜日)15時00分~16時40分

中央合同庁舎第4号館11階 金融庁特別会議室

○岩原部会長

それでは、時間でございますので、ただいまから第30回金融審議会金融分科会第二部会と第16回情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、本日はお忙しいところをお集まりいただきましてまことにありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開ということになっておりますので、まずその点のご了承をいただきたいと存じます。

本日の議題に入ります前に、本年1月の第29回第二部会以降の専門委員の異動についてご報告申し上げます。お手元に名簿をお配りしてございますが、岡内欣也委員、町田充委員が辞任されまして、鈴木優委員、平野信行委員がご就任になりました。

次に、本年4月の情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループ第15回会合以降の専門委員の異動についてご報告申し上げます。今井三夫委員が辞任されまして、木村拙二委員、小足一寿委員、平田重敏委員がご就任になりました。

また、本日は日立キャピタル株式会社業務役員社長室長でいらっしゃいます佐藤良治様に参考人としてお越しいただいております。なお、佐藤参考人は、現在任命手続中でございまして、次回以降は専門委員としてご出席いただく予定であることをあわせてご紹介申し上げます。

それでは続きまして、事務局から事務連絡があるということでございますので、よろしくお願いいたします。

○新川企画課調査室長

企画課調査室長の新川でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、今回、合同会合としては第1回目ということでございますので、私よりオブザーバー及び事務局のメンバーを紹介させていただきたいと思います。

まずオブザーバーの方々ですが、委員の皆様方に向かって左より、日本銀行決済機構局の米谷参事役でございます。

そのお隣、法務省民事局始関民事法制管理官でございます。

次に、事務局側メンバーをご紹介いたします。

岩原部会長の隣からです。総務企画局参事官の妹尾でございます。

同じく審議官の細溝でございます。

それから、私の隣から、総務企画局企画課調査室企画官の石川でございます。

同じく課長補佐の西方でございます。

それから、総務企画局CIO補佐官の喜入でございます。

次に、夏季軽装について述べさせていただきます。17年4月28日の閣僚懇談会申し合わせにおきまして、夏季においては政府全体について軽装での執務を促すということになっております。6月1日から9月30日まで、ご案内のように、夏季軽装、ノーネクタイ・ノー上着を推進することといたしましたので、このような格好になっております。ご了承をお願いいたしたいと思います。つきましては、委員の皆様方におかれましても、この期間における審議会の出席に当たりましては夏季軽装にご賛同いただけるようお願い申し上げます。

以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、早速でございますが、お手元の議事次第に従いまして議事を進めさせていただきます。この合同会合におきましてご審議をお願いしたいと考えておりますのは、電子債権、特に電子債権管理機関のあり方についてでございます。電子債権につきましては、昨年、情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループで審議を行いまして、野村修也座長のもとで座長メモを取りまとめたところでございますが、その後、法務省が本年2月から法制審議会電子債権法部会を発足させ、電子債権の私法上の性格づけに関する議論を始めていることなどから、金融審議会におきましても電子債権、特に電子債権管理機関のあり方について議論を進めたいと存じております。具体的な取り進め方といたしましては、金融審議会第二部会が金融仲介機能のあり方等を審議する場であることから、第二部会と情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループとの合同会合といたしまして、次回以降もこういった形で進めさせていただきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

本日の予定でございますが、電子債権や電子債権管理機関についての本格的な議論を行う準備といたしまして、電子債権の概要及びこれまでの検討経緯について、第2に電子債権の実務的な活用について、第3に今後検討すべき課題について、そして、これはちょっと時間的に可能かどうかわかりませんが、第4に韓国における類似制度について、それぞれ概要を説明の上、皆様からの率直なご意見、ご質問をちょうだいするという形で進めたいと考えております。

それでは、まず事務局の新川調査室長より、資料2に基づき、電子債権の概要及びこれまでの検討経緯についてご説明をお願いいたします。

○新川企画課調査室長

それでは、お手元の資料、委員の先生方の名簿の下に少し分厚い資料があると思いますが、それに従って説明させていただきます。WG16-2と右肩に書いてある資料でございます。

1枚おめくりいただきまして、まず電子債権のイメージについての絵がございます。非常に簡単な絵でありますけれども、左下のところをご覧いただきますと、債務者、その横に債権者と書いてございます。例えば商取引などをなさったときに債権が発生した場合に、そのちょっと上に電子債権管理機関と書いてありますが、その横にマル1とあります発生登録をいたします。これによって電子債権が発生するということになろうかと思います。それから、やや右の方に債権譲受人A、Bとございますが、マル2にございますように、移転登録をすることによりましてこの債権が移転されていくということになります。それから、最終的に、少し上の方に金融機関と2つ並んでおりますが、送金の形などで支払いが行われた場合、マル5の電子債権の抹消登録がなされて、電子債権が消滅するということでございます。

その下に表を簡単にまとめてありますが、電子債権の特色ということで、通常の債権、いわゆる指名債権、それから手形債権、こういったものがメジャーな債権になってくると思いますが、それぞれ一長一短といいますか、そちらの△のところにあるような使い勝手その他の問題があるものもあるということで、電子債権の形をとることによってそうしたいろいろな問題について克服することも可能ではないかといった議論がなされているところであります。これについては後ほど少し触れさせていただきたいと思います。

1枚おめくりいただきまして2ページでございますが、これまでの検討経緯をまとめてございます。上の方、17年の7月をご覧いただきますが、当金融審議会の情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループで17年7月に「金融システム面からみた電子債権法制に関する議論の整理」ということで、一旦論点整理をいただいております。それから、昨年年末に法務省あるいは法務省・経産省・金融庁の3省で、基本的な考え方あるいは論点整理ということで、一定の議論の整理をしてございます。今年になりまして2月、法務省の法制審議会電子債権法部会における議論が本格的にスタートされております。それから3月、閣議決定「規制改革・民間開放推進3カ年計画」と書いてございます。1枚おめくりいただきまして、これが決定を抜粋したものでありますが、下線部をご覧いただきますと、電子債権法の制定に向けた検討を進め、平成18年度中の法的枠組みの具体化を目指すという日程などを閣議決定しております。

ちょっと1枚お戻りいただきますが、2ページのところ、今年7月に法制審議会の電子債権法部会で中間試案の提示を予定されていると伺っております。

時間の関係で先に進めさせていただきます。何枚かおめくりいただきまして15ページは、今申し上げました、昨年12月に法務省・経産省・金融庁3省で基本的な考え方をまとめたものでございます。かなり詳しいので、説明は割愛しますが、柱のところだけご紹介いたします。2枚おめくりいただいて17ページ、基本的視点として幾つかの視点を並べてございます。1とありますのは、手形や指名債権の課題の克服による既存のサービスの法的安定性の確保ということでございます。先ほど幾つか、手形あるいは指名債権、紙媒体を利用するとか、盗難や紛失のリスク、それから指名債権についても、二重譲渡のリスクその他、こういった問題がある。それらを克服することによって既存のサービスの法的安定性を確保するといった基本的視点。それから、次の2というところ、多様な利用方法への対応という視点。それから、おめくりいただいて、電子債権に対する信頼性の確保というのが3つ目。4つ目は、既存の法制度と両立するオプショナルな制度ということでございます。

これもはしょりますが、18ページの下の方、電子債権制度の骨格とございますが、おめくりいただいて、概念のところは説明が重なりますので割愛いたしますが、その下、発生、譲渡、消滅といったことについて一定の論点をまとめてございます。

それから最後、20ページ、電子債権管理機関という項目がございます。電子債権管理機関のあり方、2つの論点が示されております。それから、電子債権管理機関が管理する電子債権原簿についても、ご覧のような論点が書いてあるところでございます。

それから、昨年の7月にいわゆるITワーキングでおまとめいただいた論点整理がその後ろにございますが、通し番号24ページをあけていただきまして、電子債権法制の構築に当たって4つの基本的な論点をおまとめいただいております。柔軟、簡素、成長、信頼、こういったものを基本的視点として考えていってはどうかと、おのおのについてご覧のような各論点が示されているところでございます。

非常に駆け足でございますが、時間の関係もありますので、以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの新川室長からのご説明につきまして、ご質問等がございましたらお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。

よろしゅうございますか。それでは、特にご質問がないようでございましたら、先に進めさせていただきたいと思います。

続きまして、全国銀行業界を代表して平田委員より、資料3に基づき、電子債権の実務的な活用についてのご説明をお願いしたいと存じます。どうかよろしくお願いします。

○平田委員

三井住友銀行の平田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、「電子債権の実務的な活用について」という表題を打っております横長の資料に基づいてご説明させていただきたいと思います。

1ページ目をめくっていただきたいのですけれども、まず、想定されるスキームが幾つかあるわけなんですけれども、そのスキームにつきまして簡単な補足をさせていただいてから、それぞれのスキームの説明をしたいと思います。いずれのスキームにつきましても、利用される顧客――お客様については、法人企業を主として前提として考えております。

まず、手形代替手段としての活用というところです。現在、買掛債務の決済手段の一つとして支払手形が使われておりますけれども、これを電子債権に置きかえて、支払い手段として活用しようというものでございます。債務者側におきましては、手形発行によりまして発行事務、印紙代の負担とか、こういった事務コストが発生しておりますので、これを削減したいというニーズは引き続き根強いものがございます。債権者側から見ますと、電子債権の流動化によりまして資金調達手段を確保することができるということでございますので、双方にとって意味があるということかと思います。

次に、一括決済方式でございます。一括決済方式はそもそも手形の削減手段、手形の代替手段として昭和60年ぐらいから使われてきている制度でございまして、一言で言いますと、売掛債権を対象として包括的・継続的な債権譲渡契約を締結しているといったスキームでございます。この対象売掛債権を電子債権に置きかえて契約できないかといったものでございます。売掛債権を対象にしますと、先ほどもご指摘がありましたけれども、どうしても二重譲渡リスクの問題というのがございますので、これを電子債権に置きかえることによって軽減できないか。また、一括決済の場合は手形と違って完全な裏書きの機能というのはありませんので、これにかわるものを電子債権で実現できないかといったこともポイントとしてございます。

3点目に、ローンの譲渡でございます。現在も、債務者のリスク分散とか業種ごとのポートフォリオの調整手段ということで、債務者の承諾をいただいてローンの債権譲渡を行っているわけなんですけれども、ローン債権を電子債権に置きかえることによりまして、債権譲渡に伴う法的な安定性の向上を図りたいと。具体的には、債務者の承諾がなくても流通できるような環境、また流通時に登録を信頼して購入した方が保護されるような流通の保護、こういった法的な安定性を実現できないかということでございます。当然個別のローンというのも対象としてあるわけですけれども、シンジケートローン等も対象として考えているという次第でございます。

それでは、個別の仕組みにつきまして、次葉以降で説明したいと思いますけれども、3ページをお開きいただきたいと思います。これは、手形の代替手段としての活用をイメージしたものなんですけれども、まず電子債権の発生でございます。この図の中では、債務者A、これは具体的には例えば大手のメーカーとかをイメージしております。債権者B、これはこの大手のメーカーに対して部品を納入しているような会社といったものをイメージしていただければいいかと思います。A・B両者間で売買契約がありまして、ここで債権債務関係が発生しているわけなんですけれども、今まででしたら、債務者Aが債権者Bに対して手形を振り出すといったことを想定していただければいいと思いますけれども、それにかえまして電子債権を活用する。マル2で電子債権の発生登録申請を当事者から行う。ここでは銀行が電子債権管理機関をやっているケースを想定して書いておりますけれども、電子債権管理機関の中に電子債権原簿というのがありまして、右肩の方に吹き出しで、登録情報ということで、電子債権原簿の中に登録番号、債権者、債務者、金額といったものを登録することによって電子債権を発生させるといったことをイメージしております。この申請に基づいて、マル3で管理機関が登録の手続を行う。これによって電子債権が発生するといったことをイメージしております。

次のページをおめくりいただきますと、次は電子債権の譲渡の局面でございます。債権譲渡をするわけですけれども、今、権利者になりましたBと別の譲受人Cとの間で債権譲渡の約束をする。これを実現するために当事者から管理機関に対して譲渡の申請を行う。この申請に基づく登録を行うことによって電子債権の移転が実現するということでございます。ここでは単純なB・C間の1回だけの譲渡というのを書いておりますけれども、これがもし手形的に裏書き的に使われるということを想定しますと、さらにC以降も転々と流通していくような環境をつくるということも一つの課題かなと考えております。

次のページにいきまして、今度は電子債権の消滅でございます。これは、債権者がBの場合に、E銀行の中に債務者Aの口座があるという想定で書いておりますけれども、Aの口座から資金が引き落とされて、Bの口座に対して振込が行われるということで、ここで資金決済が完了するわけなんですけれども、債権者Bは抹消登録申請を行う。これによりまして電子債権原簿に抹消の記録がされて、電子債権が消滅するといった形でございます。この図は、支払いと同時に抹消登録申請をBが行うという前提で書いております。簡単でございますけれども、一連の流れとしては発生、移転、消滅といった流れを考えております。

まためくっていただきまして、次に一括決済方式に関してなんですけれども、7ページをあけていただけますでしょうか。次に、先ほどご説明しました一括決済方式でございますけれども、まず現行の一括決済方式がどういった仕組みなのかといったところからご説明したいと思います。当事者としましては、債権者Bと債務者A、それと譲渡を受けますファクタリング会社、あと金融機関Dとございますけれども、これはデータ管理を行うといった位置づけでここに入ってきております。債権譲渡契約なんですけれども、まず右の方のフローということで、契約締結を行うんですが、ファクタリング会社と債務者Aと債権者Bの3者でもって売掛債権の譲渡契約を締結します。通常ですと、債権譲渡というのは債権者と譲受人との間で契約することになると思うんですけれども、債権者Bが債務者Aに対して包括的に債権譲渡の代理権を付与しているという契約を結んでおります。その契約に基づいて、毎回の流れということなんですけれども、まず1番で、債権債務関係が発生します。この発生した債務のデータをAから金融機関の方に送ります。ここでデータ管理が発生するわけなんですけれども、その管理されたデータに基づいて、マル3で個別の債権譲渡手続を行う。ここには債務者Aの承諾とか確定日付の取得手続といったものが含まれております。ここで債権者が持っておりましたAあての債権をファクタリング会社Cに売りましたということで、債権者はCに対して譲渡代金債権というものを取得することになります。それがマル4なんですけれども、この期日よりも資金化を早くやりたいというケースには、期日前支払いの申し込みをCあてに行います。ファクタリング会社のCは、金融機関から期日前支払いを行うための資金を借り入れて、その資金を振込資金ということで金融機関に引き渡す。金融機関は債権者Bに対して振込の手続を行う。マル8で、この債権の期日には債務者Aから期日代金支払いが行われまして、この代金でもってCはDに対して融資の返済をする。こういった一連の流れになっております。これは単純化しまして一つの顧客の間だけの話をしておりますけれども、実際は、一括決済と言われているゆえんは、債権者というのが非常に多数になっていまして、同時並行的にこの契約をやっていく、また毎月毎月こういったものが順次発生していく、こういったことをイメージしてお考えいただければよろしいかと思います。

これが基本的な仕組みなんですけれども、次のページをご覧いただきますと、電子債権の発生を前提とした一括決済方式の利用イメージでございます。この図の中で、基本的な流れにつきましては先ほどご説明したものとほぼ同じなんですけれども、どこが違うかといいますと、マル1で商品を納入して、債権債務が発生する、ここまでは全く一緒なんですけれども、マル2で発生した債権の金額データを金融機関に送りますが、このデータを送るというところが、電子債権の発生登録申請と譲渡登録申請とを兼ねた内容になるとイメージしております。この発生登録申請によりまして、売掛債権とは別に、マル2で電子債権も発生する。BからAに対してちょっと太い矢印で伸びているものなんですけれども、発生したものを直ちにまたBからCに譲渡するということですので、これを一挙にこの申請でやってしまおうというものでございます。マル2で発生した債権がマル3でBからCということで、ファクタリング会社Cと債務者Aとの間で伸びている太い矢印の方に電子債権が移転したということをここに書いておりますけれども、これをマル2マル3のところで一挙にやってしまおうということでございます。譲渡の対象が売掛債権から電子債権にかわったというだけでありまして、債権者が電子債権の譲渡代金債権を取得するということで、マル4以降の流れにつきましては基本的に同じ流れになるということでございます。ここまでが一括決済方式の利用イメージでございます。

次にローンでございますけれども、10ページをお開きください。ローンにつきましては、どういう原因で発生するかによっていろいろなパターンが当然あり得るわけなんですけれども、ここでは一番単純な、債務者Aと債権者、これは銀行ですけれども、この2者間で個別に発生したローンを前提で考えております。この基本的な図というのは、一番最初にご説明しました手形代替手段でやる場合と基本的に全く同じでございまして、当事者から発生登録の申請を行って、管理機関がその登録を行うことによって債権が発生するということでございます。ここで融資取引に基づいて発生登録を行うのですけれども、既に発生しているものをこれで切りかえるようなパターンですとか、あと新規に貸し出すときにいきなりこの発生登録から入るといったいろいろなパターンもあるだろうと考えております。

次の11ページにいきまして、電子債権の譲渡ということで、これも基本的には先ほどご説明した手形の場合と同じでございまして、当事者からの申請に基づいて移転の登録を電子債権管理機関の方で行うといった絵になっております。

さらに12ページにいきまして、電子債権の消滅ということでございます。この絵も全く基本的に先ほどと同じなんですけれども、このローンの場合は、BからさらにまたCに譲渡されて、AとCの間で決済されるという前提で書いております。ここも、Aからの支払いと同時に抹消登録申請をCが行うという合意があるという前提で書いていますので、Aの口座からその資金がCの口座に振り込まれて、Cからの抹消登録申請によって電子債権が抹消されるといった流れで書いております。

これで一連のそれぞれの流れをご説明したわけなんですけれども、一番最後のページでこの一つの対象ということで考えていますシンジケートローンについて、簡単に参考の資料をつけております。シンジケートローンというのは、一番左の上のところでシンジケートローンではない相対の契約のローンのケースを書いているのですけれども、借入人と貸付人が1対多の場合であっても、基本的に借入手続等は借入人とそれぞれの貸付人が1対1でやっていくということなんですけれども、これがシンジケートローンになりますと、借入人が主幹事銀行――アレンジャーに取りまとめをお願いしまして、このアレンジャーが複数の貸付人の契約条件の調整とか調印手続等の取りまとめを行う。あと、実行のときには、この左下の方にいきますと、貸付人がそれぞれ、エージェントに開設しています借入人の預金口座に振り込んでくる。元利金の支払い時には、借入人はエージェントに対して支払いを行いまして、エージェントから貸付人に対して元利金の支払いを送金するといった流れになりまして、基本的にアレンジャー、エージェントが取りまとめを行っているといったところがほかの相対の融資とは若干違っているといったところでございます。

ちょっと駆け足になりましたけれども、以上で説明の方は終わらせていただきたいと思います。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの平田委員からのご説明につきまして、ご質問あるいはご意見がございましたらどうぞお願いしたいと思います。いかがでしょうか。では、原さん、どうぞ。

○原委員

質問ということでもないんですけれども、少し補足的に情報提供をお願いできたらなと思いましたのは、すごく難しい話なんです。それで、各国がこういった電子債権について今どういう取り組み状況にあるのかということと、それから今こういう具体的に3つぐらいのパターンというのをお話しいただきましたけれども、国内で動くようになったときに、皆同じぐらいの可能性で動いていくような感じなのか、当初このあたりから動いていくかなといったあたりがあれば、少し補足的にお話をお聞かせいただけたらと思います。

○岩原部会長

どうしましょうか。事務局の方からお願いしましょうか。

○新川企画課調査室長

まず最初に事務局の方から、諸外国でありますが、今、法務省法制審の方で検討されている電子債権法制と全く同じようなものがあるかどうかはちょっとまだ調べはできておりませんが、今日の議事予定にございますように、韓国におきまして法制化に先立って我が国の電子債権に類似するような仕組みが中央銀行主導で組織されて、かつ法制化に向けた動きもございまして、私どもがつかんでいる情報では、4月に電子債権法制が成立したと聞いております。どういった中身かにつきましては、今日資料も提出されておりますので、その中でご説明をと思っております。

それから、今3つの実務的な活用事例について平田さんからご紹介のあったものについて、どれが優先するのかということになりますと、これはまさに今後どういった制度設計を我々でやっていくのかということ、それとあわせて実務的な検討で恐らくメリットがあるあるいは実務的なハードルが低いというところが仮にあるのであれば、そこが先にということになると思いますが、今の時点でどれが先行し得るかというのは、まさに実務の世界の方々がどれが一番メリットがあると感じられて、かつ実施しやすいとご判断されるかということにかかっているかと思います。したがって、むしろ平田さんの感触の方が場合によってはきちんとしたお答えになるかもしれません。

○岩原部会長

平田さん、ではその点。

○平田委員

大変難しいご質問なんですけれども、支払手形を例にとると、手形をなくしたいと思っている方は、いろいろと私も直接お客様からお話を聞くと大体、もうやめられるのだったらやめたいと思っているわけです。という意味で、非常にそこの実需というのは強いのかなと思っているんですけれども、一方で今までの手形の制度というのは手形交換も含めて非常に便利な制度でして、一括決済も裏書きにも対応できていないところがあるのですけれども、結局そういったものも含めて手形に完全にかわり得るものを用意しようとすると、非常にインフラ的な整備といいますか、コストといったものも重要になってきますので、ニーズがあるからといって、では業務としてやって採算に乗るような業務ができるのかどうかといったところの判断も非常に難しいなと今思っておりますので、お客さんのニーズを踏まえながら、できるだけコストをセーブして、やれるものからやっていくといった感じなのかなと、ちょっと一般的な答えになってしまいますけれども、そういったところかと思います。

○岩原部会長

最初の他国の制度についてでございますけれども、私もきちんと調べたわけではございませんが、世界的に見てかなりユニークな制度だろうと思います。債権の電子化そのものを進めている国としては、先ほどご紹介があり、またこの後でご説明がある韓国が先行しておりますが、韓国以外の国で一般債権の電子化の法制の整備をしているという国は余りないように思っております。韓国につきましても、後でご説明があると思いますが、日本で現在法制審議会で検討されているものとはかなり違った点があります。では世界の他の国でなぜ債権の電子化の法制がそれほど進んでいないかと申しますと、恐らく一つの大きい理由は、チェックトランケーションといった形で、むしろ手形・小切手の方の電子化の制度の整備が各国で進んでおります。立法化がかなり早い段階からアメリカ、ヨーロッパ等で進んでいまして、むしろそちらの方の制度の整備が進んでいまして、債権自体の電子化という方の制度整備はそれほどなされていないのではないかと理解しております。あるいはこの点は法務省あるいは野村委員あたりから補足していただければと思いますが、よろしいですか。

ほかに何かご質問等ありますでしょうか。佐藤参考人、どうぞ。

○佐藤参考人

電子債権に関するニーズのお話がちょっとございましたので、補足させていただきますと、平田委員は主として銀行のお立場から3つの例示をされておりますが、私ども事業会社に近いような立場からお話し申し上げますと、例えば手形になる前の売掛金、売った買ったの債権が膨大な金額で世の中にございまして、これを金融目的にもっと活用できないかといったニーズは非常に大きいものがあると思います。手形にしますとどうしても紙にするためのコストもかかりますし、ある意味では当座預金という銀行取引が前提になるわけですけれども、そこまでいかない金額でありますとか、最近は電子商取引という形で、インターネットで物の売り買いが完結するような取引が非常に多くなっているわけですけれども、いわゆる資金決済、それから債権債務のやりとりも電子的に行いたいというニーズは結構多いんだろうと思うんですが、その部分だけ伝統的な、例えば振込とか、そういう手段によらないと対応できないというのは、ある意味ではIT立国を目指す日本としてはちょっとお粗末なのかなという気もしますので、その3つの類型に限らず、相当大きないろいろなニーズがありますということをちょっと補足させていただければと思います。

○岩原部会長

はい、どうも。

ほかに何かご質問、ご意見はございませんでしょうか。小野委員、どうぞ。

○小野委員

一般的な質問ですが、電子債権の定義のところで、発生はいいんですが、消滅についても電子的と、基本原則はこれで構わないし、そういうことで議論が続いているとは思うんですが、そうすると、同時履行をどうやって達成するかは、今後この合同部会における検討課題に直結する話で今後いろいろと議論を重ねると思うんですけれども、定義そのものに従って議論を進めるということになりますと、実体関係として支払いが行われているにもかかわらず何らかの理由によって登記が残っているという状況についてどうするのだろうかという疑問が残ってしまうと思いますし、結論がある議論ではなくて、意見ですし、質問でもあるのですけれども、公示ということになりますと、もちろん手形と類似かもしれませんけれども、抵当権とか不動産登記類似かもしれません。そうすると、実体関係として支払いがなされているときは、もちろんたてつけが違いますから、だからという理屈になるわけじゃないんですけれども、その後抵当権の譲渡が行われたとしても、抵当権の譲渡としては空振りになってしまうということもあります。また不動産登記について議論しますと、双方申請の場合と一方申請の場合とありまして、始関さんがよくご存じだと思いますけれども、ですから相手方の協力を得ないで何かをしなければいけないというものは、場合によっては債務者、抵当権設定者側に対して非常に不利益になることもあります。この支払いに伴う登録の抹消というのも一つの例かと思います。ということで、消滅においても電子的というのは、電子的に残っている電子債権について何らかの効果を与えるということは、それはあり得るとは思うんですけれども、手形でも期限後になれば、手形としては存在しているかもしれませんけれども、それは手形行為によっては移転しないということになりますし、先ほどの抵当権の例もございますし、ですから結論的に言いますと、残っていることによって何らかの効果を与えるということは、それはそれで一つの議論かもしれませんけれども、違った効果ということもあり得るのではないかということ、相手方の協力、債権者側の協力なくして抹消はできないというのは、やはり債務者にとって酷ではないか、登記との関係で言えば、仮登記とかあり、何らか違った効果を与えることもできるのではないか。

それからあと、手形類似との議論について、そのとおりと思うんですけれども、手形の場合ですと、銀行が手形を取り上げてしまう。これは物理的にそうせざるを得ないのですが、ということは、実質同時履行といっても、手形の引き渡しは先履行みたいな形で行われていますし、そのほか世間一般で同時履行の関係にあるというのは本当に同時履行かというと、最後は信頼関係に基づいて行われていることが多いと思うんです。ですから、この場合、銀行の決済手続を使うとしても、本当に瞬間にまで同時ということはあり得ないはずで、長くなって申しわけありませんけれども、定義のところの消滅についての電子的というところも少し検討する必要があり、また始関さんの方にその辺についてのお考えをお聞かせ願えればと思いますけれども。

○岩原部会長

この同時履行というか、同期性と呼ばれている問題、これは非常に大きい問題でありまして、法制審議会の電子債権法部会でもそれは非常に大きい論点として検討されておりますし、また実務的にどうやるかということも金融界などで検討していただいておりますので、とりあえず始関さんの方から法務省での検討状況をちょっとご紹介いただきたいと思います。

○法務省民事局始関民事法制管理官

それでは、法務省での法制審議会における検討状況をお話ししたいと思います。

まさに今、小野委員が言われたとおりの問題がありまして、そこを議論していただいているところなんですけれども、先ほど新川さんから、昨年の12月に私どもも入らせていただいて、法務省・経産省・金融庁で取りまとめた、「電子債権の概要及びこれまでの検討経緯」という資料のご紹介があった訳ですが、この資料ですと15ページ以下の「電子債権に関する基本的な考え方」の具体的には19ページに「電子債権の概念」ということで、「抹消登録をしなければ消滅しない債権であって」という整理を去年の12月段階でして、それで法制審議会にこの点も含めてお諮りしているところなんですけれども、先ほど小野委員がおっしゃられたように、消滅は移転とか発生とはちょっと違うのではないかという議論がございまして、むしろ手形でも消滅については手形の返還が消滅の効力要件になっているわけではないということもあって、消滅につきましては別の考え方もあるのではないかという方向でむしろ議論が今進んでおります。

それから、支払期限後の譲渡についてどうするかというところは、法制審議会の方では両論の議論がありまして、手形と同じように、つまり期限後裏書と同じように、もはや抗弁の切断とか善意取得というものはないという扱いにすべきというご意見と、デフォルトになった債権の流動化ということも最近では重要な課題なので、デフォルトになって支払期限が経過した後であっても抗弁の切断や善意取得を認めるべしというご意見の双方が今出されているところでございます。

私からはとりあえず以上でございますが、岩原座長あるいは池田委員から補足していただければと思います。

○岩原部会長

今、始関管理官からご説明のあったとおりの検討状況でありまして、まさに小野委員と同様の問題意識を持ちまして、今、法制審の方で検討が進められているということです。また同時に、この問題は特に同時履行、同期性を確保するために、いわば支払いによる登録の抹消をなるべく同期性を確保する形でできないか、それに管理機関がどういう形でかかわって、例えば管理機関に支払いがなされて、その後管理機関が責任を持って登録を抹消するということで同期性を確保できないかといったことが考えられておりまして、そこからまた同時にこの管理機関にはどういったことを期待すべきかということをまさに当第二部会の方で管理機関のあり方として検討していただくということになっていくのではないかと思っております。

池田委員、何か。

○池田委員

ただいま座長のご説明、それから始関さんからのご説明で尽きていると思います。わかりやすく言うと、一番最初に小野委員がおっしゃった点は、消滅については、この12月の段階の資料では、抹消登録がなければ消えないということになっていたわけですが、そこのところについては抹消登録がなくても消滅を認めるという議論が強くなってきていて、したがってその場合には消滅登録はまた別の対抗要件的な意味になるのだろうと思います。ここはまだこれからの詰めの議論があるだろうと思いますけれども、小野委員のご指摘のところは法制審議会の部会でも今十分に議論されているということだろうと思います。

以上です。

○岩原部会長

よろしいでしょうか。

ほかに何かご質問、ご意見はございますでしょうか。野村委員、どうぞ。

○野村委員

1点だけ。先ほどニーズの話がありましたので、金融審議会のもとに置かせていただきましたワーキンググループでの検討の方向性についてだけ、1点ちょっとご記憶を喚起していただければと思います。

お手元のこれまでの審議経緯につきましてのペーパーの通し番号5ページのところなどにも書かれているのでありますが、当初この電子債権法制に関する議論は経済産業省におけるニーズの確認から始まって、議論が推移してきたわけでありますけれども、我々の方のワーキンググループでの検討の中では、そういったニーズに対応する手段はほかにも現状の制度を発展させていくことの中で確保し得る可能性もある、しかしながら今後将来にわたって金融サービスの提供、金融インフラとして電子債権法制というものができ上がることによって生じ得る可能性というものに重点を置きながら法制をエンカレッジしていくべきではないかというまとめにさせていただいているわけであります。したがって、もちろん今後の議論の中で、現在どこにニーズがあるのかとか、そういった現実的な議論を進めていくことは非常に大切なことでありますが、それに加えまして、将来にわたってもこの制度が多様に活用できるような形での業規制等を考えていただく必要があろうかなと思っているところであります。ただ、もちろんペーパーの中には、安定性といいましょうか、安全性といいましょうか、セキュリティーの問題も十分配慮すべしということをあわせて書かせていただいておりますので、その相関の中で検討していくことになると思いますが、現在行われているものの担い手がだれであるかということも重要でありますけれども、将来さまざまな人がこの電子債権を活用していくということを視野に入れながら、業規制を考えていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。

それでは続きまして、事務局の新川調査室長より、資料4-1から4-4に基づきまして、電子債権管理機関等に関して金融面から検討するに当たり留意すべき課題について、イメージ図を用いながら説明していただき、その上で当面の検討テーマ及び検討事項についてご議論をお願いしたいと思います。それでは、お願いします。

○新川企画課調査室長

お手元の右肩に4-1と書いてある「電子債権に関して想定される事例について」という絵をご覧いただきながらご説明させていただきます。

1枚おめくりいただきまして、事例1とございます。これは、今まさにご議論のあった抹消登録、債権の消滅についての事例でございます。ちょっと絵がごちゃごちゃしているかもしれませんが、債務者Aが債権者と当初債権債務関係にあったとお考えいただいて、このお金を借りて債務者Aの方が債権者に支払期日の前にまず支払いをした、したがって債務者の気持ちとしてはもうちゃんと弁済したという状態がまず前提にございます。その際、本来であれば、すぐ抹消登録がされて、債権債務関係はなくなってしまい、原因債権が消滅するということであるのでしょうが、抹消される前に債権者Bが第三者であるCにその債権を譲渡してしまった場合、その結果、上のところのマル2にございますように、抹消登録されないで債権が移転してしまう移転登録がされてしまうというケースです。この場合、債権を譲り受けた人C、この善意の譲り受け人は、期日が来れば債務者が支払いがあるものとして受けておりますので、この債務者の方にしてみると、一旦自分としては支払ったわけですけれども、期日が来ればもう1回支払わなければいけないという二重支払いの問題のあるケースが発生するという場合があろうかと思います。

それから、次の事例をご覧いただきます。債務者、債権者、いろいろな方が対象になり得ると思いますが、特に弱い立場にあるような方、個人の消費者を念頭に置いて一つの例を考えてみます。例えば、Bという方からAという消費者が物を買った結果、その代金債権を原因債権とする電子債権を発生させたということが最初にあったといたします。物を売った方のBさんが、またこれも善意の第三者であるCさんにこの債権を譲り渡したという状態をお考えください。ただ、AさんがBさんから物を買ったわけですが、その買った物が欠陥商品であったということで、欠陥商品の代金を支払うわけにはいきませんということで、AさんはBに対して「私は代金を支払いません」という主張をしたとしても、既にいわば代金を払ってくれといったBさんではなくてCさんに譲り渡しているような場合はどうしたらいいのかという問題があろうかと思います。

それから、次のページ、事例3をご覧いただきます。やや絵が複雑になってきておりますが、まず最初にAさんとBさんとの間で電子債権が発生し、Bさんが多数の方にその電子債権を分割して譲渡する、ばらばらにして売ってしまったような場合を考えていただきます。この場合、Aさんは最初はBさんに対して債務を負ったような状態でありましたが、たくさんの方に分割譲渡をされた結果、支払いをする相手方が多数いらっしゃるという状態が想定されます。そういった場合にAさんが、自分は支払いをまとめてした上で、支払いと同時に確実に債権の抹消登録をしてほしい、あるいは多数の方々に、しかもどなたがどういうところにいっているかというのを一々確認した上で送金するというのは非常に手間とコストがかかるので、ちょうど電子債権の原簿を管理する電子債権管理機関に対してまとめてお支払いをするので、弁済をしておいてくださいという依頼をすることを仮に想定した場合、こういう電子債権管理機関が電子債権の弁済について資金授領するといった行為についてどう考えるかといった問題があろうかと思います。

それから、次の事例4をご覧いただきます。これは、電子債権登録の原簿を管理いたします電子債権管理機関が自ら電子債権の債務者となる場合です。通常はAさんと先ほどから出てきたBさんなりCさんなりといった方の間に立つといいますか、そういう両者の債権債務関係を記述するのが電子債権管理機関ですが、自ら電子債権管理機関が債務者となって、下にございます債権者B・C・D・Eに電子債権を発生させるといった場合についてどう考えるかということでございます。これはもう少し、電子債権管理機関がこういった状況でどのように業務を適切に遂行できるのかといった問題になろうかと思います。

それから、事例5でございます。これは、電子債権は電子データでありますので、それが変造されてしまった場合、変造に限らないかもしれません、データが壊れてしまったようなケースもあろうかと思いますが、この場合、債務者Aが例えばもともとは100万円の電子債権ということで登録されたものを、電子債権管理機関のデータベースに何者か、ここには「第三者α」と書いてありますが、第三者が侵入して1,000万円に書き換えてしまって、それがまた別の方に移転した場合です。それは1,000万円の債権でありますから、仮に1,000万円で譲り渡したという状態になった場合です。こういった場合、Aさんはもちろん自分は100万円しか払わないということでしょうし、Cさんは1,000万円払ってほしいという状態になります。そこで発生した責任はだれがとるべきなのか。基本的には電子債権管理機関が負うのでしょうけれども、どういった程度の責任を負うべきなのかといった問題が出てこようかと思います。

それから、事例6と7は非常に似たケースでありますが、資金調達を念頭に置いた場合、電子債権の仕組みを活用して多数の方から資金調達をするような場合、債務者Aという方が多数の方々を勧誘いたしまして、自分が同質の多数の電子債権を発生させて、BからZまでの債権者の方々から資金を調達する。いわばBからZの方々は投資家に近い立場でありますが、有価証券の募集に非常に類似した形態となっています。こういったケースをどう考えるか。それから、7もこれに似ておりますが、債務者Aがもともと多数振り出すというよりは、もともとの債権を譲り受けた債権者Bが譲り受けた債権を分割いたしまして、これまた多数、C・D・EからZに引き受けてもらうようなケースです。これも流通過程で持っている方が有価証券を売り出すような場合に似てまいりますが、こういったケースをどう考えるか。どちらかというと、事例7まで書きましたが、恐らくまだまだたくさんいろいろ考えなければいけない事例は出てくると思います。今思いつくだけ並べてみてもこういったケースがあり得るということでございます。

これを前提に、4-2の「当面の検討テーマ例」という1枚紙をご覧いただきたいと思います。4-2と4-3は同じ内容になっていますので、両方見比べながらでも結構かもしれません。

まず1のところであります。支払いをめぐっていろいろな議論があろうかと思います。したがって、電子債権に関する利用者の保護、それから決済の安定性の確保について、金融面でいろいろ検討すべき点があろうかと、それが1つ目の論点。

2つ目は、今申し上げたような証券法制にいろいろ関係してくるものが出てまいります。特に資金調達あるいは投資勧誘その他に似た行為をやられる場合、それはどういう既存の法制との整合性を図る必要があるかといった論点。

したがって、いろいろな弊害が生じないように、電子債権管理機関の業務を適正に執行していただく必要があると思いますから、業務の適正な執行、それから一定の公正性・中立性が確保されるためにはどうしたらいいのかと。

恐らく議論の進捗に従ってさらに検討テーマの追加もあり得ると思います。一例として、テーマの追加というよりは、今1から3まで3つ例示させていただいた中でも、さらに細目をいろいろ考えてまいりますと、4-3という2枚紙の資料をご覧いただきますが、1つ目の利用者の保護及び決済の安定性の確保ということで、(1)の論点がまさに先ほどご議論になりました支払いと登録抹消の間にどのような形で同時履行関係あるいはどういった関係にするのか。あるいは、消費者が債務者になるような場合にはどう考えるのか。それから、多数の方に弁済しておいてもらうという資金受領行為ですが、電子債権管理機関が一旦資金を受け取るような行為をどう考えるか。ほかにもあると思います。

それから、証券法制に関しては、先ほど申し上げた募集や売り出しに似たようなケースをどう考えるのか。あるいは、金融商品としてとらえて、電子債権の販売・仲介といったことをやる場合にどう考えるのか。それから、側面が少し変わりますが、電子マネー。今流通している電子マネーは、前払い証票という形の法律構成をとっていますけれども、それと全く別の、こういう新しい仕組みの電子債権を使って電子マネーを利用される可能性についてどう考えるか。これもほかにもいろいろ出てくることもあろうかと思います。

2枚目をあけていただきまして、業務の適正性の確保ということで、いわばどういった業規制といいますか、業法としての規制を置き、監督していくのかといった論点であります。

一つは、電子債権管理機関に対してどういった参入適格要件を考えるのか。指定制とか許可制とか登録制とか、ほかの業法ではそういったやり方をとっておりますけれども、どういったものが適当なのかといったこと。

それから、金融機関を初めとする行政当局による検査・監督等、それから必要な行政処分といったものがあるのが通常ですが、どういった中身を考えるのか。

それから、いろいろな主体がどのような業務をやっておられるかによりますけれども、管理機関に兼業を認めることとしていいかどうか。兼業を認める場合に考えられる弊害あるいはその防止措置はあるかどうか。

それから、先ほどございました管理機関が自ら電子債権の債務者となる場合をどう考えるのか。

それから、電子データでございますので、偽造・変造・冒用、データ化けの場合、どんな責任を負うべきなのか。

それから、管理機関が破綻した場合にはどういった問題が生じ得るのか。これは金融面といいますか、資金を扱うという面での破綻もありますが、データを扱うという側面での破綻もあり得る。その場合、債権者・債務者をどのように保護していったらいいか。

ほかにもいろいろ議論があろうかと思います。少し先へ進み過ぎかもしれませんが、仮にこういったご議論にさらに今後追加されるご議論で今年度中に一定の枠組みを目指すとすれば、できれば年末目途で一定の方向性を出していただくような形でご議論いただくといった日程も考えられますが、これについてもいろいろご意見を賜りながら進めていこうと思っております。

事務局として少し思いつくものを並べたといった状態でありますけれども、資料の説明は以上でございます。

○岩原部会長

ありがとうございました。

ただいまのご説明及び当面の検討テーマの内容等につきまして、ご質問、ご意見がございましたらお願いしたいと存じます。いかがでございましょうか。米澤委員、お願いします。

○米澤委員

検討テーマ、それから検討事項につきましては、いろいろお考えになってまとめられたんだとは思いますけれども、まさにこれはこれから議論していって、非常に間口も広く、奥行きも深い話なものですから、初見で意見が尽きているかと言われてもとても困るので、これから議論していく過程で山ほど出てくるんじゃないかと思いますので、そういう留保つきでのご説明と今日のところは受け取らせていただきたいと思います。

例えばという話なんですけれども、例えば今すぐでもどんなものを思いついたかといいますと、3の業務の適正性の確保のところに多分入るんだろうと思いますけれども、(5)に文字化けなどがあったときにどういう責任を負うべきかという話がありますけれども、それ以前に、こういう電子の世界の話ですから、まず履歴が完璧に保存されているということが何よりも必要なんだろうと思うんです。その履歴の保存と、それから履歴の変更というのか、それぞれの変更についての異常な取引というのか動きといったものについては自動的に警報が出る。その警報が一体その人の中だけにあっても困るのかもしれないんですけれども、そのような非常に電子的な観点というものが一つ、これはどうしても柱が要るのではないかという気が例えばします。決してこれだけではなくて、まだ山ほどあると思いますので、まさに検討テーマ、それから検討すべき項目というものはこれからの議論の中でいろいろ出てくるということでお願いしたいと思います。

○岩原部会長

ありがとうございます。ご指摘のとおり、ここに今日挙げさせていただいたテーマに限るものではないと思いますし、今、米澤委員ご指摘のとおり、カードの場合でも異常取引検知システムが必要であるということで今検討が進んでいるわけでありますので、それと同じように電子債権についても同様の問題があり得ると思います。

ほかに何かございますでしょうか。木村委員、どうぞ。

○木村(裕)委員

岩原部会長からユニークな制度になるというお話がありましたけれども、多分世界で初めての試みということなので、できる限りいい制度にしていただきたいなと思います。先ほどのちょっと前のご説明で、3章のまとめられた報告の中に、既存の制度との併存みたいな話がありました。そうなると、先ほどのいろいろな想定される事例などでも出ておりますけれども、分割譲渡したときに、譲受人が「私は紙で欲しい」とか、そういうこともあり得るのかどうかということで、イメージがよくわからないので、その辺もどうなのかということをちょっとお聞きしたいと思います。

それから、私も若干事前にいろいろと調べたのですけれども、信金中金が沖縄で実証実験をやったという話を聞いておりますけれども、そういったところで惹起されたいろいろな問題は把握されているのかどうかをお聞きしたいと思います。

○岩原部会長

それでは、ただいまのご質問の最初の点は、ある意味で言うと、法制審議会の方でかなり議論されていますので、始関管理官からまずお願いします。

○法務省民事局始関民事法制管理官

それでは、最初の点についてご説明させていただきたいと思います。

今、木村委員がご指摘されたのは、部会資料2の「電子債権の概要及びこれまでの検討経緯」の通し番号で言いますと18ページ、第4に入ります前の4の「既存の法制度と両立するオプショナルな制度」という項目についてのご指摘と思われます。ここで、「電子債権は、手形とも指名債権とも異なる類型の債権として整理し、手形や指名債権とは並立する制度とする」という書き方をしておりますのは、要するに先ほど平田委員から資料3に基づいてご説明がありましたが、電子債権が手形代替として使われる場合、あるいは指名債権であるローンの流動化として使われる場合もあるわけですけれども、そうだからといって、手形という制度をやめてしまって電子債権一本にするとか、指名債権という制度をやめてしまって電子債権一本にするとか、そういうことは考えないということを意味しているだけでございます。つまり、先ほども平田委員から原委員のご質問に対してお答えがあったわけですけれども、どのように利用されるのかということについては、コストパフォーマンスの問題があるということを言われたわけですが、手形は、昔に比べれば流通量は減っておりますけれども、それでも何兆円というすごい額でございます。恐らく電子債権を使うというのはそれなりの初期投資が必要になりますので、それなりの規模のメリットがあるものでないと、電子債権に切りかえることはなかなか難しく、非常に小規模の事業者であれば、手形のままやった方がコストパフォーマンスがいいという場合もあるわけでございますので、手形を使いたい企業はそのまま手形が使えるということを意味した記載でございます。

それで、先ほど木村委員がおっしゃられた、途中まで電子債権だったものを例えば手形とかに切りかえられるのかというお話ですけれども、それはそうではなくて、もう電子債権として発生してしまったものは電子債権でございますので、それを譲渡するには、先ほど来ご説明がある移転登録という形で電子債権を譲渡するという形にするか、あるいは一旦発生した電子債権を抹消登録して消してしまって別途手形を発行し直してもらうという形になると理解しております。

○岩原部会長

では、信金中金の件について、事務局からお願いします。

○新川企画課調査室長

信金中金を中心といたしまして、沖縄でむしろ手形を電子化してやればどうなるだろうというので、一種実験的にやられた実例がございます。いろいろその間で問題点とかメリットとかが出てきていると聞いておりますので、可能であれば、どこかのタイミングで機会を与えていただいて、まとめてご報告させていただこうと思います。

○岩原部会長

それから、関委員、先ほど手を……。よろしいですか。どうぞ。

○経済産業省市川産業資金課長

すみません。今の話の沖縄の関係で一言だけ補足させていただきますと、平成16年度の後半ですけれども、社団法人沖縄県銀行協会の決議に基づきまして、沖縄県内で電子手形導入実証実験を行ったところです。これは、沖縄県庁さんとか、日本銀行の那覇支店、あるいは事業会社として125社も参加されて行われまして、実際に電子手形を利用した形をとったというところでございます。その中でアンケートなどによりますと、電子手形を実際にやってみてどうだったかということで、例えばですけれども、「電子手形サービスを利用したい」「かなりよかった」という企業が約6割あったとか、他方では「利用したくない」という企業も約16%ということもありましたが、大半の企業が「利用したい」という回答であったということもございますし、電子手形の有用性が一定程度示されただろうと理解しているところでございます。

○岩原部会長

ありがとうございました。

ほかに何か。野村委員。

○野村委員

一応今日は合同部会になっていますので、第二部会の委員の方々は初めてこの問題に触れておられる可能性があるのですが、私どものワーキンググループではその沖縄の実証実験の結果についてプレゼンテーションをしていただいて、どういう問題点があったのかということは一応把握させていただいた上で、メモといいましょうか、私たちの方の意見は取りまとめさせていただいております。したがって、金融庁としても、金融庁の審議の中にその実証実験の結果はある程度インプットされているというのが現状かと思いますけれども、それを踏まえて、今後の議論に必要であれば、また何らかの形で整理していただければとは思います。

○岩原部会長

佐々木委員。

○佐々木委員

ちょっと今後の12月までの間の中でこういうことが可能かどうかということなんですが、一つ大きなところで、名称が初めからとても気になっております。「電子債権」という名前がずっとひとり歩きしていくことで本当にいいのかということを、もしどこかのプロセスなりで可能であれば、もう一回考えていただけたらいいなという印象を私個人としては持っております。一つは、「電子債権」と言われたときに、一般的というか、私が受けるイメージは、電子上の債権すべての取引が含まれるような非常に大きなルールづくりと感じるのですが、今までの説明や今日の説明を聞いても、基本的には債権譲渡のシステムというのがメーンに聞こえるんです。ですから、そうであれば、債権譲渡のシステムの中での新しいステップであるということが明確に伝わる名前の方がいいのではないかという視点が一つです。それから、将来性を考えたときに、「電子」というのをつけておくことは、これからいろいろなものが電子化されていく中で、「電子」というのをここで使ってしまうのが適切なのか、必要なのかということも一つ考えられるのかなと思いまして、可能であるならば、だれにどう伝えていき、どういうふうに理解されたいかということもありますが、新聞に「電子債権法」と躍ったときには今ディスカッションされているような債権譲渡にとどまらないイメージを受けられてしまうのではないかということも考え、この名称のあり方は、可能なのかどうかはちょっと今の時点ではわかりませんが、一応意見として述べたいと思います。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。大きい問題ですので、では法務省の方からお願いします。

○法務省民事局始関民事法制管理官

今、佐々木委員がおっしゃった問題は、私どもも「電子債権」という名称は、名は体をあらわしていないのではないかという問題意識は持っております。これは実は、昨年池田委員などを中心に私法学会で電子債権をテーマとする拡大ワークショップが開催されたのですけれども、その際にも学者の先生方からも出た指摘でございまして、それを踏まえて、法制審議会の方でもより適当な名称をお考えいただくという方向で議論していただいております。当金融審議会におきましてもあわせてご議論いただければと思っております。これが法律になりますときには権限あるご当局が物事をお決めになりますので、最終的にどういう用語が使われるかというのはそちらでお決めになられることということはご理解いただきたいと思うのですけれども、いいアイデアがありましたら、ぜひともいただきたいと思います。

○佐々木委員

法制審議委員でもありますので、かかわらせていただきます。

○法務省民事局始関民事法制管理官

はい、よろしくお願いいたします。ただ、今、佐々木委員はこの電子債権というのは債権譲渡のシステムであるとご理解されているとおっしゃられたのですけれども、必ずしもそれだけではありませんで、つまり手形と似たようなものでございますので、発生から別のものとして発生しますので、譲渡だけではないということをご理解いただければと思います。

○岩原部会長

以上のようなことで、当第二部会・ITワーキンググループの合同部会でもご検討いただければと思います。

ほかに何かご質問、ご意見はありますでしょうか。小野委員、どうぞ。

○小野委員

またちょっと基本的なところで確認なんですけれども、金銭債権の電子化ですが、実際に金融商品などで多く使われているような信託受益権という、金融商品的には実質的な経済的意味においては金銭債権だけれども、民法上では金銭債権ではない。実際に電子債権として使われるかどうかはわかりませんけれども、似たようなものとしては、例えばローンパティシペーションでの契約上の権利といいましょうか、金銭をもって支払うのですけれども、でもそれは民法上の金銭債権かというとそうではないということもありまして、金銭債権性というのも法制審においては、幅広くといいますか、経済的に実質でとらえる議論をされてきているのか、それともかなり厳密に、民法上の金銭債権たる指名債権であると。原則が民法上の指名債権たる金銭債権であるということは、それはそれで原則としては構わないのかもしれませんけれども、そのほかのものを取り込んでいくような議論をするとき、先ほどシンジケートローンという話がありましたけれども、シンジケートローンということになればコベナンツの議論とか、決して手形のシンジケーションではないことは明らかなわけですから、ほかのものを取り込んでいくときにそれが取り込まれなくなってしまうことにはならないか。または登記、登録しても、それは金銭債権でないから無効であると相手から言われてしまうかもしれないとか。ちょっと法律論の細かい点で申しわけないですが、その辺についての法制審における議論、法務省の考えを教えていただければと思います。

○岩原部会長

それでは、始関さん、お願いします。

○法務省民事局始関民事法制管理官

今のご質問につきましては、あくまでも民法上の金銭債権という概念を前提に考えております。ただ、信託受益権を原因債権とする電子債権を出すこともできる。つまり、電子債権というのは、既存の指名債権とか信託受益権とか、そういうものとは全く別のものでございまして、登録することによって発生する独立の金銭債権でございます。ですから、信託受益権を原因債権として電子債権を発生させることもできるし、ローン債権を原因債権として電子債権を発生させることもできるし、あるいは売買代金が原因債権になる場合もある。ただし、その原因債権と電子債権とは別のものであると。ただ、さらには、もうちょっとややこしい話になりますけれども、では別のものである電子債権と原因債権の関係がどのようになるのかというところは、まだ法制審議会でも議論が分かれているところでございまして、さらに議論を詰めているところでございます。

以上です。

○岩原部会長

法制審の検討としてはそのような前提で検討しているということでございます。

ほかに何か。よろしいでしょうか。

それでは、まだ若干時間がございますので、最後に徐煕錫元金融研究研修センター専門研究員より、先ほどから話題に上っております韓国における類似制度として、資料5に基づきまして、韓国の電子債権についてのご説明をお願いしたいと思います。

徐さん、どうかよろしくお願いします。

○徐参考人

ただいまご紹介にあずかりました徐煕錫と申します。本日は金融審議会に発表の機会をいただきまして、まことに光栄と存じます。私はもともと韓国からの留学生でありまして、韓国の政府または金融機関などとは関係ありませんが、今年の3月末まで金融庁にお世話になっておりまして、そのとき韓国の制度について調査する機会をいただいた次第でございます。今日はそのとき以後の最新情報をプレゼンテーションする予定でございますが、それ以後、韓国の政府と電子債権管理機関と接触する機会を持ちまして、向こう側は今日私が民間人としてどのような発言をするか、かなり気になるところではないかと思います。聞きづらい日本語であろうと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

それでは、本論に入らせていただきます。その前に、先ほども若干紹介がありましたが、韓国で今年4月に電子金融取引法という法律が成立いたしました。この電子債権に関する内容も含んでいまして、この法律の内容につきましては後ほど説明申し上げます。

それでは、電子債権の実務上の制度であります電子売掛債権制度から始めさせていただきます。その開発の背景ですが、大体2つのニーズがあったと整理することができると思います。まず企業間の決済手段の電子化の要求で、BtoB電子商取引の活性化のための決済手段が必要であったということと、取引銀行が異なる場合にも使用できる銀行共同モデルの開発が必要であったということ、それからオフライン上での取引にも対応できるモデルが必要であったという現実的なニーズもありました。それから、この制度が開発された2000年ぐらいに韓国はIMF通貨危機の時期でありまして、その大きな経験から、手形の連鎖不渡りということの統制の必要性が非常に高かった時代であります。企業側から申し上げますと、信用供与機能を持つ決済手段をそのまま持ちたいというニーズもあったわけでございます。

それで、推進経過を見てみますと、2000年9月にこの電子売掛債権の開発を金融情報化事業の一環として、情報化推進委員会という総理大臣が議長を務めるところで議決したということです。それから、システム上、それから約款等の制度上の整備が行われまして、2002年3月からシステムが稼働を始めたということです。今年の4月に電子債権譲渡の対抗要件を電子化することを内容とする法律が成立したということです。

業務のフローを簡単に説明申し上げます。まず発行から見ますと、この図で見られるように、真ん中に電子債権管理機関がありまして、これと発行銀行、保管銀行と金庫銀行が専用回線でつなげられています。それから、利用企業は、それぞれの取引銀行とインターネットでつながる形になっています。それで、販売企業と購買企業が売買契約などを結んだ場合には、購買企業が自分の売掛債務を電子債権で発行することをマル4で申請するわけで、それが発行銀行を通じて金融決済院に発行登録される。それと同時に保管銀行にもそれが通知される形で発行が完了するわけです。

次のページですが、時間の都合で駆け足で走るしかないと思いますが、よろしくお願いします。満期決済の場合には、満期になった場合には、購買企業が入金して、それが登録されて、それが即時入金される形になります。それから、銀行間の決済は差額決済で行われるシステムになっています。

それから、もう一つの大きな仕組みとして、担保貸出ということがあります。この販売企業側が発行した電子債権を利用して、早期に現金化を図りたいときには、それを保管銀行に譲渡して、それを担保として貸し出しを受ける仕組みになっています。そのとき、法令上、指名債権でありますから、債権譲渡の通知が必要でありますが、現法律上ではこれはオフライン上で行うしかないという限界があります。今回の法律は、この債権譲渡の通知を電子化することを主な内容とするものでございます。

システム上の特徴として、まず金融決済院と銀行間のネットワークは、先ほど申し上げたように中央管理機関方式でございます。次のページで、特に金融決済院というところが管理機関として選定された理由でございますが、この機関は、銀行業界が共同出資した社団法人でありまして、手形交換所の設置・運営、GIRO業務、金融共同網の構築・運営、金融機関共同電算業務の開発推進及び電算処理、金融機関の電算業務の支援または代行等の業務を行っています。韓国のすべての銀行が参加していて、実際は韓国銀行の強い影響を受けるところでございます。2つの直接的な理由がありますが、先ほども申し上げましたように、銀行共同の電子決済手段として銀行間の差額決済が可能なモデルが必要であったということと、手形交換所として手形に準じる当座取引停止等の措置が可能であるモデルとして、未決済電子債権の管理が容易であることが主な理由であると考えます。

それから、2つ目のシステム上の特徴として、利用企業と取引銀行間のネットワークですが、これは先ほど申し上げましたように、インターネットによって行われるので、企業のインターネットバンキングということになります。このシステム上の特徴は、金融機関を経由した取引であること。その理由は、IMFの経験から、発行者の発行限度の管理及び信用管理が必要であったこと。それから、譲渡先として担保貸出をするときに保管銀行に譲渡が限定されていますが、これも同じ政策的な理由。それから、もともと貸出商品の性格を持つものとして開発されたということがあります。しかし、法律上は譲渡の制限はないということですから、今後活用される可能性はあるかと思います。

法理上の特徴として、まずこの電子売掛債権は、指名債権構成ですから、その対抗要件が必要なわけです。それから、電子売掛債権を発行することは約款上は変更権の行使と構成されています。ですから、変更権が行使されて発行されるということになりますが、もちろん登録も必要ですが、原因債権が電子売掛債権へと変更されるという構成でございます。約款上の規定であるため、原因債権が二重譲渡されるリスクが残るということがあるかと思います。それから、原因債権との関連性がありますが、販売企業の債務不履行等に対応できるモデルになっています。電子債権の譲渡承諾、これは電子債権を発行するときに約款上、その電子承諾がもともと規制されるような形になっていますが、それを留保することができます。それから、電子債権を取り消しまたは内容変更することも合意によってはできる形になっています。

この制度の利用現況ですが、2002年から2005年まで見てみますと、表のように、発行件数と金額ともに年々増えている傾向にあります。金額としては2005年を基準として約3兆ウォンぐらいです。平均金額としては3,000万ウォンで、10対1ですから、3,000万ウォンだと300万円になります。参加企業としては現在まで268企業が参加していまして、主な企業として中小企業が多いということです。大手企業といいますと、大手企業には電子方式売掛債権担保貸出制度という制度がありますが、これにつきましては5ページの7の展望のところをご覧いただきたいと思います。電子方式売掛債権担保貸出制度ということは、取引銀行が同じである場合に、当該銀行が電子債権管理機関へ登録せず、電子売掛債権制度と同様の仕組みによって決済・担保貸出を実行することで、日本で言いますと、一括支払システムと同じような、似たような制度だと言えます。韓国銀行が2001年にこの電子債権に先立って開発した金融商品でございます。

この2つの製品の実績を比較してみますと、電子売掛債権、つまり電子債権の場合には銀行共同で登録するモデルでありますが、今申し上げています電子方式売掛債権担保貸出制度は個別銀行が自分の顧客を対象にするものです。10倍以上、この個別銀行によるモデルが利用されている状況がわかるかと思います。要するに、売掛債権と連携した貸出商品として、銀行の営業戦略によって行われるものだと言えます。ですから、銀行としては、取引内訳を決済院に、電子債権管理機関に登録することを実際には望まないという実情があります。それで、実際にはこの制度が10倍以上利用されている実情があります。しかし、今回、電子金融取引法が成立したため、その対抗要件が電子化されました。ですから、電子債権管理機関に登録して電子債権化する可能性は高くなったと言えます。

前に戻りまして、2つ目の特徴として、もともとこの制度はBtoB電子商取引の債権に関連して完全な電子債権を目指すということで始まったのですが、実際は一般商取引の購買での債権が電子債権化することがほとんどであるということです。これも大きな特徴かと思います。これが実務上の制度の概要ですが、これからは電子金融取引法上の電子債権はどうなっているかについてご説明いたします。

まず、この法律は、2002年10月に韓国政府から案が出されましたが、2006年の段階で成立したのはなぜかというと、電子金融取引に関する民事ルール・金融監督ルールに関するものとして、利害関係が非常に対立していたという事情があります。

大きなものを若干申し上げますと、まずマル1で電子金融取引の事故時における責任負担のルールで、アクセス媒体、つまりすべての電子的なカードや利用者番号、暗証番号、電子署名などのアクセス媒体の偽造・変造、ハッキング等が行われた場合には、原則として金融機関が責任を負う、それからその紛失や盗難等の場合には、事故通知の時点から責任を負うということになりました。

それから、電子金融補助業者という概念が新しくつくられました。これは電子金融取引を補助または一部代行するものでありまして、システムプロバイダーや決済仲介システムの運営者またはVAN事業者などが含まれます。これを民法上の履行補助者と位置づけました。電子債権管理機関も電子債権の取引につきましては民法上の履行補助者になります。ですから、紛争のあった場合には、利用者は金融機関に直接損害賠償を請求する形、後で求償する形になると思います。

それから、いわゆる振込取引、電子資金EFT取引に関する効力として、支払いを完了する義務があって、資金返還保証、いわゆるマネーバックギャランティーが明示されました。

それから、電子マネーについての規制などが定められています。

この法律の内容につきましては、8月以降に「金融法務事情」という雑誌に概要を説明する予定でございますので、そちらの方を参照いただければと思います。

それから、電子債権についての規定ですが、その定義から始めますと、この電子債権は、電子文書に記載された債権者の金銭債権として、債務者が債権者を指定すること、債務内容が記載されていること、公認電子署名がされること、金融機関を通して管理機関に登録されることなどが定義されています。

それから、肝心なのは対抗要件の電子化でございますが、譲渡人の債権譲渡の通知または債務者の承諾が、公認電子署名をした電子文書によって行われること、またその通知、承諾が電子債権管理機関に登録されること、またそれが電子署名法上の時点確認がされた場合には、第三者対抗要件まで備えることになります。

これによって対抗要件の電子化がどうされるかということを簡単にまとめますと、この図のようになります。販売企業が保管銀行に電子債権を譲渡するときに、譲渡の申請をして、保管銀行が管理機関に債権譲渡の通知をします。公認電子署名を付して、それから管理機関は公認認証機関とつなげられて、時点確認を依頼し、それが登録されると、対抗要件が備えられる形になります。

それから、電子債権管理機関についての規定もあります。管理機関は監督当局に登録しなければなりません。細部要件は施行令などで決定しますが、そうして監督の対象になります。安全性確保の義務や取引記録保存の義務を負うことになります。

最後に展望ですけれども、(2)の電子手形との関係につきまして、韓国ではこの電子債権以外に電子手形法も成立し、現在システムが稼働しています。その2つの法理構成の違いを簡単に見ますと、電子債権は指名債権法理、電子手形は有価証券法理ということが言えます。無因性、有因性などの大きな違いがここから出てきます。しかし、システム上は非常に似たようなもので、中央管理機関方式をとっています。電子手形管理機関も金融決済院でございます。この2つの関係を今後どうするかが韓国の課題になると思いますが、この法律で削除された分割裏書きを許容しようとする動きが現在あります。もしこんな動きが成功すると、電子決済手段の多様性の一側面として両制度を位置づけることができるかと思います。

最後に、電子債権管理機関は現在金融決済院1つですが、これにほかの機関が登録しようという動きも実際にあります。その場合のBSモデルがどうなるかということが今後の課題になるでしょう。

それから、約款上の電子売掛債権となっていることで、これを二重譲渡に対応させる法律上の規定が必要ではないかと個人的には考えています。

以上です。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。短い時間で非常に豊富な内容のことをわかりやすくご説明いただきまして、本当にありがとうございました。

ただいまのご説明について、十分皆様にご質問、ご議論いただく時間はないのですが、それは次回ということでよろしいでしょうか。本日予定しました時間はもう過ぎておりますので、かつまた、正直申しまして、非常に豊富な内容のご報告で、多分委員の皆様は、何よりも私にとって十分これを咀嚼して理解するのに時間もかかると思いますので、本日のところは徐さんにご説明をいただいたということで、次回の審議の際に皆様からご質問、ご意見をいただきたいと存じます。

それでは、本日の会合はこれで終了させていただきたいと思います。この後記者会見を行いまして、本日の会合の模様につきましてお話をさせていただきたいと思います。

それでは、次回の開催予定を事務局からお願いしたいと思います。

○新川企画課調査室長

次回会合は6月下旬に開催することで現在調整中でございます。次回会合の内容は、ただいまの韓国の電子債権法制についての質疑、それに続きまして法務省から法制審議会電子債権法部会における検討状況についてご説明をいただきまして、議論していきたいと存じております。詳細につきましては後日改めてご連絡させていただきます。

○岩原部会長

それでは、特に皆様の方からなければ、以上をもちまして本日の会合を終了させていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。

以上

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