金融審議会金融分科会第二部会(第33回)・「情報技術革新と金融制度に関するWG」(第19回)合同会合議事録

日時:平成18年10月10日(火曜日)13時00分~15時00分

場所:中央合同庁舎第4号館11階 共用第一特別会議室

○岩原部会長

それでは、時間でございますので、ただいまから第33回金融審議会金融分科会第二部会と第19回情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、本日もお忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。

前回、同期的管理についての議論が積み残しになっておりますが、本日はまずその他の利用者の保護といたしまして、電子登録債権に関する決済の安定性の確保、その他の利用者の保護のうち、前回ご議論いただいた決済の安定性の確保以外の点について、事務局からご説明をいただき、討議の時間を持ちたいと考えております。

続きまして、前回の積み残しになっております同期的管理について、引き続き委員の皆様からご意見を伺いたいと思いますので、事務局から補足説明をいただき、その後、討議を行いたいと考えております。

それでは、その他の利用者の保護について、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○高橋企画課調査室長

それでは、その他の利用者の保護でございます。資料の方は1-1と1-2でございます。

1-1でございますが、電子登録債権は主として事業者による利用が念頭に置かれているかとは思いますが、制度の成長性、あるいは柔軟性等を考慮いたしまして、個人の方が電子登録債権の利用者となることが排除されているものではございません。

電子登録債権制度は、取引の安全性に重点を置いた制度でございますので、個人が電子登録債権の利用者となる場合には、弊害が生じることも考えられるかと思います。この点を考慮いたしまして、まず、資料1、1ページ目でございますが、法制審の中間試案では、電子登録債権に係る意思表示をした者が消費者である場合につきまして、第三者保護規定を適用しない、債務者が消費者である場合には人的抗弁の切断の規定を適用しない、譲渡人が消費者である場合には善意取得の規定を適用しないとされておりまして、法制的な保護が図られている形になっております。

法制的には、基本的にはこのような手当で私どもも問題はないのではないかと考えておりますが、個人が電子登録債権の利用者となる場合につきまして、法制審だけではなくて金融審でも、ご検討をいただく必要があるかと存じまして、このような資料を用意させていただいております。

補足資料でございますが、個人が電子登録債権の債務者となる場合と債権者となる場合をそれぞれ場合分けいたしまして、どのような場合に債務者、債権者となるのか。それぞれの場合にどのような弊害が考えられるのか。また、その弊害につき、法制的にはどのような解決が用意されるのかについて検討をしたものでございます。

こちらにつきましては、後ほどご覧になっていただければと思いますが、このような形で法制的な保護としては十分なのではないかと考えております。例えば、電子登録債権を用いて手形貸付けと同様な方法の取立てにつながらないかというような点につきまして、補足資料の1-2の6ページでございますが、手形訴訟類似の簡易な訴訟制度が設けられていないとか、あるいは人的抗弁が切断されていないなどの理由によりまして、基本的に問題はないのではないかと考えております。

そこで、本来の資料の2ページでございますが、電子登録債権において保護される個人の範囲は、法制審では消費者契約法における消費者ということになっておりますが、そのような消費者契約における消費者と一致させることでよいかどうかについて、一つ議論があろうかと思います。

それにつきまして、私どもといたしましては、その範囲が消費者契約法における消費者と異なる場合には、原因債権と電子登録債権との間で齟齬が生ずることも考えられますので、基本的に消費者契約法における消費者と一致させることでよいのではないかと考えております。それについてご意見をいただきたいと思っております。

3ページ、この消費者契約法における消費者の概念を簡単に整理したものでございますが、個人事業者の方も電子登録債権を利用して資金調達環境を良くする必要がございますので、まず、個人事業者につきまして、マル2のようなケースは電子登録債権の利用が当然できる。一方、何の事業も営んでいない個人につきましては、マル3のようなケースは消費者として保護されるべきではないか。そうしますと、あと残るのが、個人事業者が事業として又は事業のため、ではなく、例えば自宅を購入するような場合ですが、消費者として保護されることになっております。これも個人事業者にもいろいろな方がいらっしゃることが考えられますので、マル4のケースについてまで、消費者ではないとすることはどうかということで、消費者になっていると思います。

そこで、4ページでございますが、消費者概念が今のままでよいとしても、法制的な解決でございますので、裁判所に行かないと最終的な解決が図られないということがございます。しかし、そもそも紛争に巻き込まれること自体が不利益なのではないか。紛争を未然に防止することが重要と考えられますので、このためにはどのような方策が考えられるかというものです。

例えばでございますが、二重払いの危険等の防止のため、同期的管理の方法を必ず提供することにしておけば、そういった二重払いの危険からは逃れられる。あるいは、法制審でもご議論があったかとは思いますが、事務コストとの兼ね合いもございますが、登録された内容を速やかに消費者に通知するとか、あるいは支払期日前にあらかじめ支払期日等を消費者に通知するといったような実務も考えられるのではないかというのが4ページでございます。

それから、5ページの資料2でございますが、これは個人に限られませんが、業務規程により申請の方法などの運営に関する重要事項が定められることとなりますので、そのような業務規程等の周知についてどう考えるか。特に個人につきましては、電子登録債権という新しい制度で、その特性等が十分に理解されない場合もございますので、制度の概要等をどのように周知すべきかということを、例も含めて書かせていただいております。さらに、利用者への周知に関し、そのほかにどのような方策が考えられるかというものでございます。

6ページの資料3でございますが、続いて、周知だけではなくて、利用者の情報の保護が重要ではないかと考えておりますが、管理機関に秘密保持義務を課したり、あるいは管理機関が本人認証、情報セキュリティ対策を万全に行うのは当然と考えておりまして、それについて、技術的な検討というよりは法制的な面での検討をさせていただいております。

最初の○ですが、秘密保持義務が当然に求められると考えられますが、業務遂行のためには登録原簿の情報の一部を外部に提供する場合もあり得るかと思います。どのような場合であればそれが許されるのであろうかというものでございます。

例えば、同期的管理を実現するために、管理機関が金融機関でない場合ですが、その支払期日等に関する情報を提供するのは、当然にして許されるのではないかといったことを書かせていただいております。

それから、次回、管理機関が他の業務を兼業することが適当であるかどうかをご議論していただきますが、仮に他の業務を兼業してもいいとした場合であっても、登録原簿の情報を他の業務に流用すること自体は、当然許されないのではないかと考えております。例示としまして、登録原簿からライバル企業の経営状況や顧客に関する情報を入手して、自己の業務に利用するような弊害が考えられるのではないか、そのあたりをどのように考えるかという問題でございます。

7ページが、そのほかにどのような利用者の情報保護に関する方策が考えられるかというものです。ほかの例をいろいろ見ておりますと、目的外利用の制限だとか、安全管理措置規定などもあるということでございます。

それから、最後、8ページ、資料4でございますが、利用者のITをめぐる環境ということで、電子登録債権が多くの利用者に適切に利用されるためには、利用者のIT関係への配慮が重要なのではないかというものです。管理機関が簡単に操作ができるようなインターフェースを構築したり、あるいは申請について、任意に設けられる機関を経由して行うようにしたらどうかとか、あるいは民間主体の話でございますが、例えば参考に書いてありますように、大手ゼネコンとその取引業者の間で電子化されたシステムが使われておりますが、大手ゼネコンで、例えば初期設定、操作教育の出張サービスなど、有料・無償のものがございますが、このようなサポートが行われているような例もございます。電子登録債権の利用に際しては、こういったような点も考慮されることが望ましいのではないかということを参考までに書かせていただいております。

以上が、まず、その他の利用者の保護として念頭に置いているものでございますので、こちらからご議論をいただければと思います。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見があれば承りたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

2点ほどありまして、個人消費者の保護という点は、それはそれで重要だと思いますが、手形代替機能としてこの電子登録債権を使うということは非常に大きな眼目の1つと思うのですが、その場合に、手形法ではそういう制限がないにもかかわらず、こちらの方ではそういう制限をするというのが、何か手形代替機能として利用するときの阻害要因となるのではないか。消費者保護というのは、消費者契約法の改正とか、違った法律で同じ効果で対応すれば、結果的に同じになってしまうかもしれませんけれども、よろしいのかなという。これは、ある意味では法制審の議論かもしれませんから、一応そういうふうに思うところでありますので、一言質問させていただきます。

もう一つは、個人消費者の保護、個人利用者の保護という観点から、抗弁の話ではなく業務規程との関連なのですけれども、恐らく抗弁の切断云々ということも重要であるかもしれませんが、やはり業務規程の中の免責規定のあり方とか、業務規程をある程度自由度、柔軟性を持たせるということは重要ですけれども、他方において個人利用者の保護ということになりますと、業務規程の中の約款に対する規制というのもある程度きちんと視野に入れる必要があるのではないかと。

それと、その辺はそうなのですけれども、また別に銀行というのはどうしても、銀行がやるかどうかはわかりませんけれども、金融機関というのはやはり重要なお客さんを大事にすると。これは事実としてはしようがないのかもしれませんけれども、管理機関の義務として公平に取り扱うとか、ちょっと違う切り口、違う観点になりますけれども、そういう観点からの個人利用者の保護ということも検討の視野に入れてはいかがかなと思う次第です。

以上です。

○岩原部会長

では、事務局から答えていただきます。

○高橋企画課調査室長

手形代替の件ですけれども、まず、人的抗弁云々のところはまさに法制審のご議論かと思います。阻害要因とおっしゃられた点が、プラスアルファである管理機関の通知云々のことであるとすれば、法文的にそういったことを予定するよりは、管理機関に対してその利用者が個人である場合の注意義務とか、努力義務みたいなものを課して、それぞれのビジネスモデルに応じた形で、適切に対処し得るような状況をつくるのであれば、それほど阻害要因にならないのではないかと考えております。

それから、免責規定云々のところでございますが、業務規程の重要性については論を待たないかと思いますので、当然、管理機関の参入時に業務規程等について認可制度などで適正性を担保する形になると思います。

それから、何が公正であるかの問題があるかと思いますが、公正に取り扱うことにつきましては、前回の資料の中でも、業務規程におきまして一方的に自分の系列の金融機関の口座を強制したりとか、あるいはグループ内の企業しか使わせないとかの問題が生じないよう、業務規程で公正性が十分に担保される必要があるというのは当然だと思います。

あと、例えば振替法であれば、不当な差別をしてはいけないという条文があり、そういった条文を導入するのが適切であるかということが議論の対象になるかと思います。

以上です。

○岩原部会長

最近、手形を使って貸金業者が消費者側の取立てに使うので、実際に日本でも手形取引を一般消費者相手に使うことによる弊害も起きているわけでありまして、アメリカなどですと州レベルの立法で、そういう消費者取引については手形を利用するときに一定の制限をかけるような立法が行われているわけです。もし今日新しく手形が立法されるのであれば、多分そういう点を押さえる監督的な手当も本来は必要なのではないかと私自身は思っているところであります。向こうがないからこちらもないというわけにはちょっといかない話かなという気はいたします。

なお、今、田村金融担当政務官がおいでくださいましたので、一言ごあいさつをいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

○田村政務官

どうも、金融担当政務官を拝命いたしました田村耕太郎です。皆さん、よろしくお願いします。

皆さん、今日ご議論いただいている電子登録債権制度の問題は、私は、金融担当だけではなくて経済財政と再チャレンジ、この3つを担当しております。再チャレンジということで、中小企業の資金調達を多様にして、しかも迅速にする可能性が非常に大きな制度でありますので、ぜひしっかり議論していただきたいと思います。

今、議論にもなっておりますが、利用者の保護、特に管理機関の採算性と独立性、公正性、これをいかにバランスをとるかということも大きな論点になってくるかと思いますので、ぜひご忌憚のない意見をしっかりいただいて、いい議論にしていただきたいと思います。どうぞ皆さん、よろしくお願いします。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、議論を続けたいと思います。

野村委員、よろしくお願いいたします。

○野村委員

今、直前の議論に関連してでありますけれども、確かに手形の場合にはない制度があるということですが、もともと今回の電子登録債権の場合には、人的抗弁の考え方自体が、どういうものが人的抗弁になるのかということ自体も違っておりますし、法制的には必ずしも手形代替と、もともとの根幹のところがすべて手形という行為になっても、ここだけが違うというわけではありませんので、やはり議論を分けていく必要があるだろうと思いますし、部会長ご指摘のとおり、やはり悪用される危険性が、特に個人の場合については多く想定されるということを前提に法制化されていくのだろうと思いますので、私はここはあまり違和感がないところでございます。

むしろ、論点になっていることについて一言意見を述べさせていただきたいのですけれども、消費者契約法における消費者の概念と、それから電子登録債権における消費者の概念が同じでいいのかというこの論点に関しましては、観念的には同じであるべきだろうというふうに思いますし、同じでいいのだろうというふうに思います。といいますのは、ご指摘のとおり、原因関係上は消費者契約法が適用されていて、電子登録債権だけが別な概念で動きますとずれが出るということは当然でありますので、そこは平仄を合わせた方がいいだろうというふうに思うのです。ただ、1点、ちょっと気になりますのは、3ページのところの表で、論理的にはまさにこのとおりで、事業として又は事業のためにというのとそれ以外のもので明確に分かれるのですが、事業としての方は比較的明確なのですけれども、何が事業のためになのかということに関しては、場合によっては解釈がかなり、裁判に持ち込まれたときに、事業を営んでいる方であってもこれを事業のためにと言っていいのかどうかということについては、最近の傾向としてはここを狭く解釈をして、消費者の方に合わせて保護するという傾向も出てきているやに思いますので、観念的にはこう整理されますけれども、必ずしもここはクリアーではないということだけは確認しておくべきではないかなというふうに思います。

そういう意味では、2ページの下のところに書いてありますコンメンタールのように、何か事業との連関性があるのかというのは、かなり個別具体的な事情を考慮した上で判断されるものだというふうに思いますので、このあたりのところは事後的紛争解決との関係でいくと裁判所の判断に大きく依存することになるだろうというふうには存じます。

そうした場合に、今後議論していく上で、消費者というのが非常に明確な概念であるかのようなことを前提にして制度設計をしていきますと、実際に消費者の場合にはこうしろとか、消費者の場合にはああしろというふうに管理機関の方に要求した場合に、動けなくなってしまう可能性がありますので、だれが消費者なのかということは、法制上はこの消費者契約法と一致させるとしても、それを管理機関に判断させるということは非常に難しいということだけは前提にして議論すべきではないかなというふうに思います。

○岩原部会長

はい、ありがとうございます。

ほかに何か。

平田委員、お願いします。

○平田委員

多少細かい点なのですけれども、4ページの、登録された内容を消費者に速やかに通知するということで、通知の方法として、今の段階でどういった決めにするということを想定されておられるのかというところをちょっとお伺いしたいと思います。

これは、利用者のIT環境をどう考えるかということと不可分の話かもしれないのですけれども、せっかくIT技術を使ってシステムを組んでいこうという話だと思いますので、そこで通知の方法がリアルの方式に限定されるということになりますと、お互いに負担感もあるのではないかなと思いました。そのところで、今のところ想定されているものがありましたら教えていただければと思います。

○岩原部会長

では、事務局、お願いします。

○高橋企画課調査室長

現時点で具体的な通知手段を想定しているものではありません。条文的に個々具体のものを規定しようということではなくて、考え方としてこのような考え方が成り立つのではないかということです。ビジネスモデル等を踏まえ、政省令で定めるのか、業務規程で定めていただくのか、あるいはそれ以外のものかというのをこれから考えさせていただきたいと思います。

○岩原部会長

ほかに何かご質問、ご意見ございませんでしょうか。

木村委員、お願いします。

○木村(拙)委員

5ページの資料2の方でよろしゅうございますか。

○岩原部会長

結構です。

○木村(拙)委員

業務規程の利用者への周知ということなのですけれども、いわゆる業務規程がそれぞれ管理機関によって任意に定められるということになっているわけでございますけれども、そうなると、いろいろな管理機関によって当然違いが出てくるかと思うのですけれども、そういったときに、我々事業者の立場から言ったときに、どれだけ管理機関を我々のオプションで選べるかということなのですが、大体において例えば取引先大企業が、私のところはここを使うよというふうなことで言えば、当然、それに従って我々はそこに登録をし、そこで利用をするという格好になるかと思うのです。

そうなると、取引先ごとにいろいろなところを指定されてきた場合に、我々中小企業としてみると、いろいろなところにその業務規程を理解していなければいけないとか、あるいはそれに合わせていかなければいけないというようなことになろうかと思いますので、大変複雑な話になるかもしれない。

そういうことからいけば、周知をすることもさることながら、その前に業務規程に委ねていいことというのをできるだけ制限をしていただくというか、あまり数が多くなると我々事業者の方とすると若干混乱をするなというふうなこともございますので、その辺についてまず何らかの形で少し絞っていただくようなことも考えていただく必要があるのではないかということを申し上げておきます。

○岩原部会長

はい。確かに、業務規程のあり方についても、恐らく電子登録債権の管理機関の監督法制をつくるときには、当然こういう基礎部分を考えて、業務規程のあり方についても一定の規制が必要になってくると。これは先ほどまさに高橋室長もおっしゃったことですが、その中での一つの考慮要素として、木村委員のようなご指摘も考えていくことになるのではないかと。

佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員

今、木村委員がご指摘された点なのでございますが、木村委員ご指摘の点は十分ごもっともな点もあろうかと思いますが、一方で電子登録債権のメリットの一つとしては、柔軟性であるとか多様性であるということかと思います。

それを実現するためには、やはりある程度バラエティがある業務規程をつくっていかざるを得ないということもあろうかと思いますので、その辺は、ぜひバランスをとったご議論をいただきたいなというふうに考えております。

○岩原部会長

はい、ありがとうございます。

両者のバランスの問題ですね。

ほかに、田中委員。

○田中(浩)委員

8ページ目のところで質問なのですが、例の3番目で、「電子的手段以外での申請も行えるようにする」というふうにあるのですが、これは具体的にどういうことを想定されているのかという質問なのですが、利便性を考えた場合、こういうのがあった方が多分いいのだろうなと思う反面、ただ、これを認めてしまいますと、いろいろと利用者の保護という観点から考えなければいけない要素がどんどん増えてきてしまい、結果として非常に脆弱な仕組みになりはしないかなという懸念を持ちます。どういうことを想定されているのかご説明をお願いしたいと思います。

○岩原部会長

それでは、高橋室長、お願いします。

○高橋企画課調査室長

一番原始的なのは、紙で管理機関に申請するというタイプで、もちろんそうするとそれを入力するのはだれかとか、入力ミスの責任とかの問題が生ずるであろうことは想像に難くはないと思います。そのときに、例えばどのような設計をするかの問題です。2つ目のポツのように、「任意に設けられる機関」というのは仮に管理機関の方で提供するのであれば、そこまでは紙で持ってくることもあり得るということです。いずれにせよ、ここで申し上げたかったのは、電子登録債権なのでおよそすべてが電子的に処理されなければならないというわけでは必ずしもないという点で、あとは、先ほど政務官からいろいろご指摘を受けましたけれども、まさにコストと公平性を考えた中で管理機関が自主的な取組みがとれるような法制度を考えるべきではないかと思っております。

○岩原部会長

よろしいですか、田中委員。

池田委員、どうぞ。

○池田委員

ただいまのところに関連してですが、申請について任意に設けられる機関というのは、この金融庁で野村先生が座長で行われたワーキンググループで、経由機関というのが表に出されたというか。

私は、ちょうど政務官がおいでになるところで申し上げれば、この電子登録債権の法制及び管理機関のあり方というのが、確かに中小企業者でパソコンをちゃんと使えないという人が排除される仕組みになってはいけない。しかし、一方でこれは政府のIT関連立法の1つとして位置づけるならば、ITレベルの低い法律をつくってもいけない。

だから、経由機関のようなところが、十分に電子的操作ができない中小企業については、一たんそこが引き取って、そこできちんとした形の電子登録申請のフォームにして管理機関に送るということを前から提言しているのでありまして、そうしないと、今、室長からお答えになったように、直接管理機関が紙で受け取って、管理機関が打ち込むというのは間違いのもとでありますし、セキュリティレベルが一遍に低くなる。

だから、そこはIDパスワードでも電子署名でも、きちんと電子登録債権の管理機関にはそういう形のフォームで情報が流れてくる。電子登録債権管理機関はあまり中身をいじらない。間違いを起こさないようにして、それで、そのために中小企業が排除されないように、こういう金融庁さんで出されたような経由機関の考え方はきちんと議論を深めておく必要があるのではないかと、こういうふうに考えております。

以上です。

○岩原部会長

やや対照的なご意見をいただいたわけであります。

金丸委員、どうぞ。

○金丸委員

前回欠席をしておりまして、重複したら恐縮でございますが、今日、同期的管理についての議論が再び行われるということで、前回配付資料の3ページに同期的管理の重要性というページがありまして、その中に決済を容易にすることによる社会的コストの削減とか安全性の実現、利用者の利便性の向上ということが書いてあるわけです。今までの各委員の皆様も、利用者の利便性の向上のところでご意見があったわけですが、私なりにこの利用者の利便性の向上のところで意見を言わせていただきたいと思うのです。

現在、IT業界で行われている競争というのは、利用者にとっていかに簡単に操作できるかという、そういうところに自分の付加価値を使うということでして、今までのように、簡単な技術を難しくして、利用者に不便を与えるという競争の観点は既にもうなくなっているわけです。

そういう意味で、個人も大企業も中小企業もすべての利用者の方々にとって、複数の管理機関から複数のハードウエアを都度購入しなければいけないというようなことは最低ないような、標準化が重要です。この委員会あるいはいろいろな法制度をつくって、行政としてリリースするタイミングは標準化のところで主導権をとった以降にきちんと放していただきたいなと思います。

現在は、パソコンを買っても、例えばファームバンキングですと、銀行ごとにパソコンを購入しなければいけなかったり、そういうのは最低限ソフトの入替えで済むとか、あるいはアプリケーションのインターフェースはあくまでも共通で、その上位のレイヤーで各社が創意工夫を行うとか、それから通信のプロトコルについても、これももう標準化で1種類ぐらいのものを決めればいいわけでして、そういう意味で標準化の推進が重要と思いますので、その点はぜひご検討いただきたいと思います。

それから、2番目でございますけれども、こういう新しいサービスが、手でやっていたようなことがデジタルネットワーク化されるということで新しいサービスだと思うのです。この新しいサービスは、基本的には情報のやり取りは既存のインフラを使いながら新しいサービスが実現されます。ここに、真に社会的コストの削減ということが書いてありますが、リアルタイム処理ではない既存の社会インフラが存在していますので、その上にこの新サービスは、本来ならリアルタイムな同期処理がものすごく求められるのですけれども、既存のインフラの技術制約上それは手に入らないわけです。多分それで同期的管理ぐらいの表現になっているのかなと思っています。

そうすると、この既存の社会インフラに、いずれいつかだれかが手をつけなければいけないのです。これを民間の金融機関任せになさるのか、それともある一定の配慮を金融庁もともにパートナーとしてしながら、新しい社会インフラのシステムを再構築するか。

例えば、これは具体的にいうと、全銀ネットみたいなものですけれども、今はタイムラグがあるわけですよね。これを民間だけに再構築しろと言われると、今、特に日本はシステム上のトラブルが起きたら金融機関のトップの首が飛ぶぐらいの社会情勢ですから、そうするとこれを一斉にいつかだれかが変えるというデシジョンは、私はだれもできないのではないかと。それは、例えば2年間か3年間かわかりませんけれども、これはある意味では利用者の理解もないといけないのですね。でも、我々日本は社会的コストを削減し、可処分所得をマキシマイズにするためにも、いつかだれかが手をつけなければいけないので、その検討を避けては通れないと思います。この法案が通った以降は、ぜひそういうご検討も深くしていただきたいし、その間はトラブルはオーケーとは言いませんけれども、ある一定の理解がないと、このことには多分だれも手をつけられないと思います。

世界で一番高い社会インフラコストがずっと我々日本には、永遠に残り続けて、今から導入なさる中国は、多分ものすごく安いインフラコストで振込みとか送金ができるようになるのではないかというふうに思いますので、その辺も社会的コストの削減に期待をしているところでございます。

以上でございます。

○岩原部会長

はい、ありがとうございました。

吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

今の金丸委員のご発言に関係しますが、1つはインターフェースを日本で非常に強固なものをつくっても、アジアとか世界で使われないものになってしまいますと、結局日本のロスになってしまうと思います。ですから、インターナショナルスタンダードもよく考えていただきまして、あわよくば日本の新しいネットのインターフェースが世界で使われる、それくらいの基準を持てるようにぜひお願いしたいと思います。

それから、2番目は、IDなどに関してなのですが、アメリカですと、保証書にソーシャル・セキュリティ・ナンバーというのがありまして、だれでもそういうものを持っています。これを利用するたびに利用者が別のIDを使うというようなことになりますと、また煩雑になると思います。ですから、情報保持の問題もあると思いますけれども、こういうIDの付与に関しても、ある程度公的なところがしっかり仕組みをつくっていただきたいと。

○岩原部会長

はい。この管理機関への技術水準と申しますか、利用者のIT環境についていろいろなご意見を承りまして、中には、かなり違った方向からのご意見もあったかと思います。

確かに、管理機関に関する監督的な規制をつくると、そこにおける技術もセキュリティその他がしっかりしたものでないといけませんので、それについての多分監督的な規定も入れることになると思いますし、また、セキュリティの問題、この中で個人情報保護等の関係のことも指摘されておりますが、そのほかにセキュリティの関係も非常に重要であって、一定のセキュリティが確保されるような管理機関の体制にすることも、多分監督的な規制の1つの重要な目的になると思います。そういう意味で、一定の法制の整理というのは多分必要なわけです。

さっき、全銀システムのご指摘がございましたけれども、全銀システム等、銀行のペイメントに関するシステムも最近のカードの偽造の問題にあらわれておりますように、銀行が協調して、よりセキュリティのレベルを高くするための努力を金融庁も今されているところでございまして、そのような方向の作業が、多分電子登録債権についても必要だろうということは、十分理解されるところであります。

ただ、一方で、先ほど佐藤委員もご指摘になりましたように、管理機関の対応の柔軟性と申しますか、それも必要なところでありますので、それの兼ね合いも必要であると考えております。基本的には管理機関がそれぞれのビジネスニーズに応じて対応しやすい形で技術水準、あるいはITの利用者からどれぐらいのレベルのもので受け入れるかということも考えていただいた上で、全体としての先ほどのセキュリティ等を確保するための一定の枠組みは監督規制の中で行う。多分そういうことになっていくのではないかという感じを持っております。

何かほかにございますでしょうか。

では、まず川本委員、それから和仁委員、お願いします。

○川本委員

2点、感想ですけれども、消費者を参加者とする前提として、システムの安定性の確保をするためには、やはり4ページで書いてあることはすごく大事で、消費者にとっては紛争に巻き込まれること自体がやはり不利益だと思うのです。個人が電子登録債権の債務者となる例で、金融庁でも盛んに議論されている消費者ローンなども対象となるわけですから、そういう意味では、そこで一番怖いのは二重払いだと思います。二重払いのところをやはりどういう形で防止するのかという点については、細心のご注意を払っていただきたいと思います。

あとは細かな論点なのですが、8ページのところで利用者のIT環境についてで、コストをやはり安くするというか、低く抑えるためには、金丸委員がおっしゃいましたけれども、標準化とかが大事で、フォーマットの紙1枚も共有されてないと、とにかく利用者にとってはコストが高くなりますので、そこのところもご注意を願えたらと思います。

以上です。

○岩原部会長

はい、ご指摘のとおりだと思われますので、二重払いの問題はこの後で、同期的管理のところで、まさにそれをどういう形で制度的に担保するかということをご議論いただきたいと思っております。

次、和仁委員。

○和仁委員

そんなにレベルの高い質問ではないのですけれども、1ページ目以下で、消費者をどうやって保護するかという話がいろいろ展開されて、理論的には全くこのとおりだと思うのですが、実際にこれをシステムに載せた場合、この人は消費者だ、消費者ではないというのを認識するというのが、技術的に可能なのでしょうか。本人が申告するのでしょうか。どう考えておられるのでしょうか。

消費者になりすました、あるいは消費者のはずなのに消費者でないようななりすましで取引をやっていたとか、あるいは債権譲渡が起こって途中で消費者が譲り受けて、それが譲渡人になって譲渡した場合に、これは消費者保護の規定が働くのかということで、非常に複雑なシステムが必要なような感じがするのですが、これは、実現可能なのでしょうか。

何を私が言いたいかといいますと、多分この考え方を採用すると、では消費者は外した形での電子決済システムをつくりましょう、あるいは電子決済の機関が2種類出てきてしまうことになるのではないでしょうか。皆さんは、できるだけ1つの電子決済システムでということを考えておられるのですけれども、あまりにも大変だと、これは消費者を排除した形での小規模な電子登録債権システムしかできないということにはならないでしょうか。もし何かアイデアをご議論されたのでしたらお教えいただければと思います。

○岩原部会長

それでは、まず、高橋室長にお答えいただいた上で、始関管理官に一言お話しいただきたいと思います。

では、高橋室長。

○高橋企画課調査室長

先ほど、野村先生が消費者というのが一義的に決まらないと言われたのと同じご質問だと思います。

おっしゃられたように非常に難しいことになると思いますので、予想で言えば、ビジネスモデルとして消費者を相手にしない管理機関と相手にする管理機関が出てくる可能性もあるかと思います。

消費者であることについて具体的にどのようなチェック体制になるかについては、基本的にはその時点で考えさせていただくとしか、今の時点ではお答えのしようがないかと思います。

チェックのために相当重いシステムになって登場が危ぶまれるのであれば、それはそれでやむを得ない。ビジネスモデルとしてそもそも消費者金融とかいろいろな金銭債権をバルクで処理するとか、ビジネスの発展性を前提にしてシステムが導入されるのではないかと理解しておりますので、それを排除しない。一方こういった保護が最低限必要ではないかと考えられますので、その中でおのずと答えが出てくるのを期待するということだと思います。

○岩原部会長

それでは、始関管理官、お願いします。

○始関民事法制管理官

消費者かどうかというのは、先ほど野村委員からもお話がありましたように、行動における属性ですので、管理機関が消費者であるかどうかを判断することは極めて困難であるということを前提に、法制審議会でも議論をしていただいた結果、この中間試案がとりまとめられたわけでございます。消費者の利用を排除すべきだというのが本来的な考え方なのですけれども、それを管理機関に判断させることが不可能であるから、裏からこういう形で規制をしているわけでございます。

ですから、消費者である可能性がある人が登録されていれば、非常に危険な債権であるということを認識して取得しなければならないという形にすることによって、消費者が電子登録債権を利用することが実際上はなくなるのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。

つまり、もう少し言いますと、中間試案に対する意見照会の過程で、クレジット産業協会等でもご議論があったわけですけれども、当分の間は消費者向けクレジットについての電子登録債権化の利用は考えないと。消費者保護がありますので、消費者向けの債権は取引の安全のための規定が適用されず、指名債権と同程度の取扱いになりますから、流通させることは無理だと。ですから、指名債権と同程度のものであれば苦労して電子登録債権にする意味はないわけですので、そういう形で業界の方で利用されないという形になるのだろうと思っております。

○岩原部会長

よろしいですか。先ほど、佐藤委員のご指摘がございましたように、管理機関がそれぞれの利用者資格といいますか、利用の前提等をお決めになることになりますので、その中でどういうタイプの方が電子登録債権の債務者として利用されることになるかということを事実上お決めになっていることになります。それによって、事実上いわば棲み分けが行われまして、今のようなリスクのある消費者の債務が紛れ込むような電子登録債権のシステムにしたくないという、管理機関はそういう業務規程をお決めになって、そういういわば利用の棲み分けが行われていくことになるだろうということを期待しているということであります。よろしいでしょうか。

野村委員、どうぞ。

○野村委員

消費者の立場から考えてみますと、債務者になる場合と債権者になる場合がありますが、消費者が債権者になって、自己の債権をこの電子登録債権を使って流動化させるというニーズはあまりなくて、別段それを使わなかったからといって困るというようなことは、社会的にやや想定しにくいだろうというふうに思います。

そうなるとしますと、消費者が自己が債務者になっている債権が勝手に登録されて流通するということが、歓迎すべからざる状況であるということの方がむしろ社会的には共通認識になっているだろうと思いますので、そういう意味では消費者というものが紛れ込んでくるようなそういう場面で、むやみやたらと登録させるということが行われないような、そういう方向で制度設計をされているということでよろしいのではないかなと思います。

つまり、消費者にとってみると自分の債権・債務関係が電子登録債権にならないということが社会的不利益ではない、ということが前提となって制度設計されればいいのではないかというふうに思います。

○岩原部会長

はい、ありがとうございます。

それから、國領委員、どうも遅くなりましてすみません。

○國領委員

議論がちょっと消費者から戻るのですけれども、よろしいですか。

○岩原部会長

はい、結構です。

○國領委員

先ほどのインフラコストの議論のところについて、金丸委員と近いのですけれども、やはりITを一生懸命追いかけていると、どうしてもそこのところで気になるのが、大概いろいろな時間とコストをたくさんかけたのに使われないで終わるシステムというのがものすごく多くて、名前を挙げると差し障りのあるでかいやつが幾つもあったり……。

で、金融とか決済におきましても、もうちょっとセキュアなクレジットカードの使い方というのが、かつてかなり検討されたのに、結局こういう議論をやっているうちにどんどん重たくなっていって、結局何だかとても危ない、クレジットカードの番号をそのままホームページの中に投げてフィッシング被害に遭うとかというような結末になっていますので、やはり仕組みはいかに軽いものにして使われるようにするかというのを、ぜひ配慮したいところだと思うのです。

そこで考えるのが、制度がシステムを不必要に重たくしてしまう原因が発生するパターンが幾つかありまして、1つは先ほど池田委員がおっしゃった、利便性のことを一生懸命追求するあまりに、複雑なシステムになってしまうというパターンです。これは、金丸委員が先ほどおっしゃったとおりで、昨今はどちらかというと端末側のソフトウエアなどがすごく発達してきているので、ユーザーフレンドリーであるという部分については、そちらの方で確保するということが大分可能になってきていますので、インフラシステムの側の方はなるべく簡素、単純な構造にするということが一つ大事だと思います。

もう一つは、これはきっと次のフェーズの議論になると思うのですけれども、例えば二重払いを防止というのが目的で、同期的管理というのは手段ですね。担保しなければいけないのは、目的が達成されることであって、そのために手段までちゃんと縛らないとだめという場合もあるので、ちょっと一律にこちらでなければだめだという議論をする気はここではないのですけれども。

ただ、一般論とて、目的と手段のところで、手段のところまで縛ると先ほど佐藤委員がおっしゃった柔軟性が失われてきて、もっとコストパフォーマンスのいい解決法があるようなときに使えないとかというような話になってきてしまいますので……。

やはり、この辺の制度をつくることが、システムの構造とか経済性にどういう影響を与えるかということについて考えながら制度を設計するということが重要だと思います。

○岩原部会長

はい、ありがとうございます。

今、目的と手段のご指摘は、大変貴重なご指摘だと思います。同期的管理がそんなに重い問題かどうかは、この後でご議論いただくことにしたいと思います。

ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。

それでは、基本的には多分この事務局でご用意いただきましたような利用者保護に関する方向性で、皆様もご理解いただいたものと理解しております。

そこで、次の問題に移らせていただきたいと存じます。

まさに、今、何人かの委員の方からご議論がございました、いわゆる同期的管理。これも、いろいろに受けとめられてしまっているようでありますけれども、その本当の意味するところというか、どういうことを実現しようとしているのかということ等を事務局から説明をいただきたいと思っております。

前回にも一定の説明をいただきましたけれども、補足説明をまずいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○高橋企画課調査室長

資料の3-1と3-2が前回の配布資料でございまして、ご議論をいただきたいと思っておりますのが3-1の資料6、同期的管理の方法として、例えば次のような例が考えられるけれども、問題はないのかというお話と、それから13ページでございますが、必ず何らかの同期的管理を行わなければならないのか、それから同期的管理を行う場合、管理機関にはどのような適格性・行為規制が必要なのか、それから他社との提携を通じて実施する場合、管理機関と提携する者にはどのような適格性や行為規制が求められるのかといった点でございます。

ここで、3-1の資料3の3ページの注のところで、「同期的管理とは」ということで、「債務者の債務の弁済等と、債権者への弁済資金引渡し及び支払等登録を一体的に管理することによって、同時に実現しようとすることをいう」ということで、同時にとは書いてありますが、5ページのところにございますように、同期的管理について考える視点としまして、できるだけ同時が望ましいのですが、「同期性」ということで、必ずしも同時ではなくてもいいということの裏返しで、どれだけ同時に行われるかということを書いてあります。その場合、利便性とか信頼性等を考慮した上で、どの程度同時性が外れてもいいのであろうかという趣旨でございます。

いずれにしましても、同期的とかあるいは同時にというのが、誤解を招く表現であったかもしれませんが、債務者から債権者にきちんとお金が渡り、二重払いの危険とか、あるいは資金受領前の権利が消滅することのような危険をなくして、その管理機関が職権によって支払等登録をどのように行うかということが重要で、そのような場合とはどのような場合であるかというのを探りたいというのが趣旨でございます。

同時が一番理論的には望ましいわけですけれども、実務や利便性等を考慮すれば、必ずしも同時でなく、もう少し時間がたっても問題がない場合や方法があるだろうとは思いますし、それはどのような場合や方法で、どういった要件があればいいのかという趣旨でございます。

そこで、前回の追加資料ということで、今回の資料でございますが、こちらの方、前回、小野委員と法務省の始関民事法制管理官との間でやり取りがございましたので、それを改めて整理したものでございます。

こちらの方は、「法制審の中間試案では、「支払等をする者は債権者等に対し支払をするのと引換えに、支払等登録の申請をすることについて承諾すべきことを請求することができる」とされている。」ので、必ずしも同期的管理が必要ではないのではないかという趣旨の話であったかと思いますが、しかし、「電子登録債権の支払が金融機関口座間の送金によって行われる場合、送金が先に行われるため、債権者が入金をしたにもかかわらず承諾をしなかったり、あるいは承諾をしておきながら債務者からの申請が行われる前に第三者に譲渡してしまう可能性」――それは二重払いの危険ですが――がございますので、「承諾請求権があるからといって、同期的管理の重要性が低下するものではない。」ということを整理させていただいております。

さらに、同期的管理につきまして、前回の資料で、「必ず、何らかの同期的管理を行わなければならないのか。」という書き方が、趣旨として同期的管理の方法を認めない場合があるのではないかというとらえ方もあったかと存じますが、私どもとしましては、同期的管理の重要性……。

○石川企画課調査室企画官

資料はお分かりですか。

○岩原部会長

前回の追加資料でございます。前回の追加資料。第二部会33・情報技術革新WG19-2と右上に書いてあると思います。よろしいでしょうか。

○高橋企画課調査室長

前回の配付資料に追加する形としての「前回追加資料」というふうに表題を出させていただいております。19-2でございます。

資料1が、前回の議論であった承諾請求権と同期的管理についての説明でございます。資料2が、同期的管理の重要性ということで、私ども事務方としましては、何らかの同期的管理の方法が必ず提供される必要性があるのではないかということでございます。その1点目が、先回も法務省の始関管理官からご説明があったかと思いますが、法制審では同期的管理が必要だという議論で進められていると認識をしております。野村委員からも、座長メモにおきまして、当然同期的管理が確保される必要があるという前提であったというようなお話が先回もあったかと思いますが、3ページでそれについての資料を参考に載せさせていただいております。

それから、同期的管理の方法を提供する管理機関が、仮に同期的管理を誤って支払等登録を行えば、法制審で議論されております不実の登録の責任を負うこととなると考えられますので、その方が利用者保護に資するのではないか。それから、同期的管理を必要としない利用者が仮にいるとすれば、そういった者に限定した管理機関を認めるとしても、同期的管理を必要とする第三者が、債権者・債務者になる可能性がありますので、やはりそういった方々に二重払いの危険があるなどの問題があるので、何らかの同期的管理の方法が必ず提供される必要があるのではないかともう一度資料を整理させていただいております。

以上でございます。

○岩原部会長

ありがとうございます。

今、高橋室長からご説明いただきましたように、先ほどの國領委員のご指摘に沿って申しますと、同期的管理という言葉からしますと、支払と支払等登録をまさに同時にやらないといけないというリクワイアメントを課すように、非常に厳格な意味では当たるのかもしれませんが、ここで考えられているのはもっと広くて、事実上二重払いや債権の回収漏れがないような仕組みとしてどんな仕組みが必要かという問題を取り上げているものと理解しています。現実に同期的管理ができればそれは完璧なのですけれども、それよりも広いものとしてそういう二重払いが起きないようなこの課題の仕組みとしてどういうのが考えられるか。そのためには、どういうリクワイアメントを考えたらいいかということをここでご議論いただこうということでございます。

この問題につきましては、何よりも電子登録債権を利用される側、とりわけ債務者等になられたり、あるいは債権者の立場に立たれる利用者の方々にとっての一番の問題でございますので、利用者の委員の方からまずご意見をいただいて、それから、他の委員からもご意見をいただきたいと思います。できれば、まず利用者サイドの委員の方からご発言をいただきましょうか。

木村委員、よろしくお願いします。

○木村(拙)委員

私ども、事業者の場合には、この電子登録債権については、債権者・債務者の両方の面から利用させていただくことになろうかと思います。

で、債務者の立場に立ってまず考えますと、やはり何よりも、今もお話がありましたように、二重払いはしたくないということでございまして、そういうことからいけば、支払をすれば直ちにその時点で債務から解放されたいわけでございます。間違っても二重払いをしなければならないというふうなことが起きるとすれば、それは避けたいというふうに考えるわけでございます。

で、そのためには、支払をしたのに電子登録債権が残っている可能性があるとすれば、これは大変私ども不安に感じるわけでございまして、決済と支払等登録の同期性というのが確保されることを強く望みたいところでございます。

そのためには、管理機関が何らかの同期的管理を行うことができるということは必須だろうと思っておりますし、言葉を変えて言えば、何らかの同期的管理ができない管理機関というのは、果たして管理機関としてふさわしいのであろうかなというぐらいに考えております。

また、法務省の中間試案では、電子登録債権の支払等登録は、「当該支払等をした者は、債権者として登録されている者に対して支払等登録の申請をすることについて承諾すべきことを請求できる」、あるいは、「当該支払をする者は、債権者に対し支払と引換えに支払等登録の申請をすることについて承諾すべきことを請求できる」というふうにあるわけでございますけれども、要するにこれはいずれにしても債権者の承諾がなければ電子登録債権は消滅しないことになるわけですね。あるいは、時間的にずれが生じて、支払をしたにもかかわらず原簿上は電子登録債権が残っているということもあり得るわけでございます。その間に、もし第三者に譲渡されれば二重払いの危険が生じる可能性があるわけでございます。

債務者としては、決済口座から決済替わり金が引き落とされた時点で、管理機関が職権で支払等登録をしてくださる、そういう仕組みができていることが必要だというふうに考えております。

それともう一つ、私ども債権者の立場に立つことが当然あるわけでございますけれども、債権者の立場に立って考えたときに、この法務省の試案にございますように、支払を受けたときに債権者として、「支払等登録の申請をすることに承諾をする」という作業が必要になるわけでございます。よく考えてみると、これは大変な事務的な負担だなというふうにちょっと心配をしております。

ということは、今現在、売掛金を回収したときに、もし手形で回収したときには手形の領収書、受領書というものを全部発行しております。振込みで入ってきたときには、私どもは何も相手方に対して手続をしていないわけでございます。もちろん社内的には売掛金の消込みという作業をやるわけですけれども、先方の債務者に対しては何らの手続はしていない。債務者の側も、振込銀行に送金の依頼をすれば、その受取書をもらってそれでもう全部手続は完結したというふうに多分処理をしていると思います。私ども、現に送金したときにはそういう格好で、相手方に対して何も求めていないということでございますが……。

今回のこの制度の下では、債権者はすべての電子登録債権の回収に当たって、支払等登録の承諾という手続が必要になるわけですね。こういう手続というのは、今まで全くやってなかったことでございます。こういったものも新たな事務負担として乗っかってくるのかなということ。

それから、もう一つは、今までやっていなかった手続であるために、もしかしたら忘れてしまうなということも当然ある得るわけです。それで、もしそれを忘れたとしても、債権者としてみると何も実害もないわけです。要するにいただくものはいただいてしまっているということですので。そういうことから言うと、支払等登録がされずに残ってしまうという可能性は結構あるのではないかというふうに思っています。

そういう点も合わせて考えますと、支払がされた時点で管理機関が職権で支払等登録ができる同期的管理の必要性というのは、大変大事なのではないかというふうに考えております。

以上です。

○岩原部会長

はい、どうもありがとうございました。

佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員

二重払いのリスクを排除するというのは大変重要なことだろうと思いますけれども、決済の同期性を確保したから二重払いのリスクが全部なくなるかというと、必ずしもそうではない。むしろ、これは法制審の話なのかもしれませんけれども、弁済の抗弁をどういうふうに認めるのかということと、本当はセットで突き詰めて考えていく必要性があるのかもしれないなということが1つ目です。

さらに、これは岩原部会長がご指摘になりましたように、時点のところまで、時点決済まで1刻1秒まで合わせるということになると、システムとしては大変重たいものになるわけでしょうし、実務的に言うと手形資金だって当日資金として使えないという部分もありますので、どれぐらいが許容範囲なのかということは、きちんと考えていかなければいけないのかなという気がします。

それから、実は今日資料を見ていて、ちょっとショックを受けてしまったところなのですけれども、先ほど、前回追加資料WG19-2の2ページ目の最後のポツのところですけれども、「同期的管理を必要としない利用者、例えば同一グループ内企業などに限定した管理機関を認めることについては、同期的管理を必要とする第三者、例えばグループ内企業が債権者・債務者になる可能性があり、その場合二重払いの危険があるなどの問題がある」と。これがまさしく、例えば企業グループ内のCMSなどで活用する事例というのが、障害が出てきてしまうのかなという気がしておりまして、ちょっとショックなのですけれども。

実は、決済と言っても、これは専門の法律の先生方に補足をしていただいた方がよろしいと思うのですけれども、権利の移転の決済と資金の決済というのはこれは別だと思っています。例えば、いろいろな取引が常時行われている継続的な取引関係がある者同士ですと、債権・債務の関係をネッティング、相殺して、最終的な資金移動を減らしましょうというようなことを当然考えたりするわけですけれども、これは資金決済の話ではなくて、権利関係を相殺してしまうことによって最終的な資金の移動を減らそうという目的で行われる取引でございますので、決済との同期性の話とはちょっと次元が違う話だろうと思います。

で、民法の規定だと相殺がしにくい場合もあるのですけれども、例えば問屋さんの取引などについては、商法の中でも交互計算というような規定がございまして、こういった取引でも電子登録債権が活用できれば――交互計算というのは実際に法律上の規定があるのですけれども、あまり使われたというのは聞いたことがないのですけれども――そういった場面でも活用の範囲が広がるのかなというふうに考えています。

この辺については、権利の決済と資金決済のところというのは、ぜひよく整理をしていただく必要性があるのではないかというふうに感じております。

○岩原部会長

はい。何人かの方から手が挙がったのですが、多分今の点に関して池田委員と経産省の方からのご意見があると思いますので、それを伺いたいと思います。

では、まず池田委員、それから経産省、お願いします。

○池田委員

今、佐藤委員からお話のあったところを補足させてください。

つまり、これは政務官にもご了解いただきたいのですが、今ここで話している同期的管理というのが重要だというのは前提とした上で、その同期的管理の話の前に、支払のない決済といいますか、相殺を中心にするスキームに電子登録債権が使われるということが非常に可能性が高いと言うか、実際に絶対あるだろうというふうに思われるのが今のCMSというケースでありまして、これは7日の土曜日の金融法学会で私ともう1人の委員が報告した大きなポイントの1つに、権利段階で相殺で処理できるのが電子登録債権の1つの大きなメリットである。つまり、資金移動、実際にお金の移動なしに決済できるのが、そしてそれをやって対外的にもきちんとデータが残るのが電子登録債権の1つの大きなメリットであるということがございました。

つまり、手形債権でも理論的には紙同士で相殺できるのですけれども、現実には手形の紙と紙を突き合わせて相殺するということはなくて、一枚一枚交換に出して決済をしている。で、それに対して、このCMSというグループ企業内での取引の場合には、相互に売ったり買ったりがあるわけですから、マルチネッティングというか、相殺に相殺を重ねて期末ごとに決済時期だけ出すのですね。その決済時期については資金を送りますと。そこだけは同期的管理の必要は当然出てきますけれども、そこの途中のところは、相殺でお金を動かさないで消していける。これが電子登録債権の1つの大きなメリットである。

法務省の方の中間試案では、この相殺のようなものについても支払等登録という名前にしているのですけれども、実際にお金が動くわけではない相殺などもここに含まれるわけです。そうすると、これは前回もここでご議論が出た電子マネーなどとは明らかに異なるというか、対極にある発想として使われることが、この電子登録債権にはあり得るというか、現在もCMSをやられていることが、そのまま電子登録債権で活用されれば当然発生するわけです。

ですから、今申し上げたように、そのCMSをやる管理機関も最後の決済時期については金融機関と提携して同期的管理をする必要があると思うのですけれども、その途中のお金を動かさない処理で決済尻を出すところまでで、支払等登録で消していけるのです。だから、そこの途中のところは、金銭決済の同期的管理の問題は出てこないということを申し上げておいて、そういう意味で、私もこの資料2のところで、今佐藤委員のおっしゃられた4つ目のポツで、「同期的管理を必要としない利用者(同一グループ内企業など)……問題がある」というのが、今のような意味でのCMSに対するご批判だとすると、かなりこれは電子登録債権の利用についてちょっとミスリーディングではないかと。

だから、繰り返しますけれども、CMSの場合も決済時については管理機関が金融機関と提携して同期的管理を図る必要はあるのだと思います。送金のところはね。送金しない決済の部分がかなり大部分あるという、そういう取引もあるのですということをご了解いただきたい。

以上です。

○岩原部会長

それでは、小宮課長、お願いします。

○小宮産業資金課長

今、お二方からもありましたように、当省としても、一般論としてこの同期性を求めるというのは、これは非常に意義があるというふうに思っております。ただ、今も事例に挙がりました、キャッシュマネジメントシステムなどの場合におきましては、限られた当事者間で権利段階で相殺処理をやるわけでありますから、そうしますと、決済と個別の支払等登録が同時に行われる必要は必ずしもないわけでありまして、こういうのを含めて同期的管理の方法を必ずやれということになりますと、これはやや過剰な規制になるのではないかという感じがいたしております。

それから、そもそも論ですけれども、このような場合、債務者がこういう二重払いのリスクについて、こういうことを生じないように、例えば支払とか相殺をした後に登録が抹消されているかどうかを、普通は確認をすると思うわけですけれども。そうすると、実態に反する登録が存在するとしてもごく短期間であることが想定をされる。そうすると、例えば第三者の関与があるとしても、差押えが外からなされるという極めて限られたケースになることを指摘しておきたいと思います。

それから、これは法制審の議論にもかかわりますけれども、このような場合、例えば仮に債権者が支払等登録申請に協力をしないような場合、こういう場合でも仮処分によって現状保全をして、第三者の登場を防止することも可能だと思いますし、それから債権者に対する支払等登録承諾申請等も可能であると思います。

さらに、支払等登録を債権消滅の要件としない法制のもとでは、実態と登録の不一致は当然に予定をされるところでありますけれども、法制審の中間試案においても、その場合の第三者との関係が規定をされている。具体的に言うと、支払等を人的抗弁とするということにされているわけであります。

先ほど、國領委員の方からもご指摘がありましたけれども、特にこのCMSとの関係を考えると、あまりここに同期的管理ということを厳格に適用すると、多分、このビジネスモデルというのは死んでしまうのではないかなというふうに危惧をしております。

以上です。

○岩原部会長

ただいま、佐藤委員、池田委員、オブザーバの小宮課長からのご意見をいただいたわけでありますが、この点について何か……。

和仁委員、お願いします。

○和仁委員

私はCMSをつくっている方の人間なので、こういう契約書もつくっており、殊さらに揚げ足をとるつもりではないのですけれども、相殺をやったと言っても相殺と債権の消滅の登録の間に実際に時間差ができてしまいますと、ここでも同期的管理の問題というのは絶対に起こるわけです。要するに、登録されないと債務は消えないわけですから。

今までの池田委員や経産省の方のコメントは、確かに最終的に決済時の資金と債権との関係をどうしますかという指摘では正しいですけれども、実際にはその前のCMSでやっている相殺の手続のところだって、実際に債権が消えたのかということが問題になります。それが本当に登録上消えているのかというところでは、時差が発生しますので同期的管理の問題は、実はここでも存在し続けるのではないかなと思います。

これはいろいろ議論があると思いますけれども、同期的管理ということを言えば、またこの話を出すのは非常に恐縮なのですけれども、コンビニでの公共料金の支払の場合も同じです。結局コンビニで公共料金を払っている人は、コンビニに金を払ったらもうその時点でもう自分の債務は消えたと思っているわけですね。消えてくれなければ困るわけなのですけれども、そうすると、支払の同期的管理というのを実現する1つの方法としては、ほかにもっといい方法が出てくるかもしれませんが、結局は、弁済受領権を与えるということしかないのではないでしょうか。そうすると管理機関は金融機関かというような話も出てくるかもしれませんけれども、そういうふうな形での処理しか債務者の保護というのはできないのではないかなという気が私はしております。

○岩原部会長

それでは、池田委員、それから小野委員、お願いします。

○池田委員

ちょっと確認のご質問なのですが、今の和仁委員のお話は、お金の処理をしない支払等登録、つまり相殺による支払等登録のときも、時間差があったらまずいのではないかというご指摘はわかるのですけれども、そこにも同期的管理という言葉を使うということですか。そうすると、これはお金を振り込んだりする決済とは違うところでも同期的管理というのを同じように使うという意味なのでしょうか。

○和仁委員

お答えします。

私は、今そういうように使っています。

○池田委員

その辺は、ちょっと用語の使い方を確認して整理した方がいいと思いますし、それから、CMSで出てくる途中での相殺による支払等登録は、これは現実にやっておられる方々に、佐藤委員などにももし間違っていたら補足していただきたいのですが、期中でもインハウス、クリアリングハウスというのですか、中央計算センターが、これとこれは消せるということになって、そのA社とB社のものが相殺で消せるとなったら、A社とB社の申請を双方からの委託を受けて計算センターが管理機関に登録するというようなことだと思いますから、そこでの合意があって消すというときの計算センターから管理機関への申請ということ、この辺にも同期性を要求するということになるのでしょうか。

○和仁委員

ちょっと誤解していたのかもしれませんが、池田先生の考えていらっしゃるのは、債権者と債務者が同意して消していって相殺していくという、相殺契約に基づくネッティングを考えていらっしゃるのだと思うのです。

確かに、そういうシステムもございますけれども、もう一つは、要するに債権者の側からの意思表示で消していくという消し方もございます。中心になっているシステムの中でそれを認識するというは、どうしてもやはり時差が出てしまうということをどうするかという問題がございます。

ですから、もし池田先生のシステムで、債権者、債務者がちゃんと同意して消していくというやり方のCMSであれば、それは全然問題ないのですが、同期性の問題というのは、要するにそこで当事者が合意しているから消していいのだということで構いませんけれども、合意というものを経ない形で一方的な意思表示での消し方をやってしまっていますと、やはりそこに時差が生じてしまう。そこを見れば、やはり私は相殺で消えたということの登録ができることについては、どうしても時間差が発生してしまう。だから、必ずしもCMSをやっているから同期的管理は問題にならないのだという議論にはならないと思います。

○岩原部会長

小野委員、どうぞ。

○小野委員

池田先生と同じような意見で、プラスアルファ、幾つか申し上げようと思うのですけれども、同期的管理という言葉か、元々多義的に使われてしまっているのかなと思って聞いておりました。ところが、和仁委員、今のところでまたちょっと原点に戻ったような感じもあったので、もう一度確認的に申し上げさせていただきます。

事務局の資料ですと、同期的管理の要点というのは、二重払い防止というところが目的かもしれませんけれども、管理機関の職権で抹消するというところが1つの要点になっていると思うのです。

手形代替機能と言うと、必ずしもそれに限られていないかもしれませんが、そういう場合でなおかつ手形交換所も含めた手形代替機能と考えると、これはこれで1つの道理であるとは思うのですけれども、今の議論はCMSの議論でございますから、話は大分違う。

CMSの場合に、相殺をする、それは法定相殺でも合意相殺でもどちらでも構わないのですけれども、いずれにしても管理機関の職権で相殺したことを認識して抹消するということは、管理機関に実体法的な判断をさせるということになって、管理機関にある意味では紛争に介入させる、ある一方当事者が相殺したと言う、一方はいやいや売った物に対して欠陥があったからと言うかもしれませんし。

管理機関というのは本来適正なシステムを提供し、公平に利用者に資することが目的であって、中身に立ち入ってこれは相殺、これはどうのということを職権でやらなければいけないということまで強要すること自体、ある意味ではちょっと違った方向の議論なのではないかと。

もちろん、そういう場合に、当事者が申請する、又は承諾を得て、承諾と引換請求できますから、承諾と引換請求を主張して相殺して申請すると。一方が申請すると。それに基づいて抹消する。これは当然のこととして、そこまで含めて和仁委員が同期的管理と言うのであれば、それはそのとおりであって、だれもが否定しないことだと思うのですけれども。

繰り返しになりますけれども、管理機関の職権で抹消することを同期的管理ととらえた場合には、CMSのような場合には、ネッティングとか相殺が主たる権利の消滅手段として使われる場合には、同期的管理という言葉は適切ではないのではないかというふうに思います。

あと、先ほどの消費者の例でもそうですけれども、シンジケートローンとかCMSもそうかもしれませんけれども、手形的な使われ方ではない、指名債権の代替的機能としてこの電子登録債権を利用される場合というのは、人的抗弁が切断されないという形で利用される。要するに契約書そのものが任意的記載事項として添付されるとか、そういうこともあるかと思うのです。その場合には、支払自体が人的抗弁でございますから、なおかつ人的抗弁が切断されないことが電子登録上明らかでございますから利用者にとって何ら不便はないと。

不便があるとしたら、個人が巻き込まれた場合で、なおかつそこに債権の電子登録が残っている場合ということに限られるかもしれませんけれども、それはそれで、法律論としてはこの管理機関が自らしゃしゃり出ていって本当に払ったのですかということを確認までしなくても済むのではないか。ですから、その2つは、やはり手形代替的機能の場合とCMSの場合、あとはCMS以外も指名債権代替的機能としてこれを利用しようとする場合は、分けて考えるべきではないかというふうに思います。

また、全然法律論的ではないかもしれませんけれども、あまり支払と結びつけると、いずれかの金融機関のグループと結びつく議論になってしまって、それはそうではないという議論もあるかもしれませんけれども、利用者からするとあまり好ましくないかもしれません。本来管理機関というのは自ら選択して入っていくわけですから、同期的管理が行われてない管理機関は困るという意見、先ほど木村委員がおっしゃっていましたけれども、それは利用しないという選択肢を持っているという点もあるかと思います。

長くなって申しわけございませんけれども、この議論の発端が私と前回の始関管理官との議論ということもありますので、それはさておいて、先ほど木村委員が、引き落としの段階で抹消されるようなシステムがほしいと。引き落としを送金と置きかえれば、送金の段階で二重弁済がなされないようなシステムが必要であるというようないい方なのかもしれませんけれども。

そうすると、何らかの形で送金時点でも、前回のお話ですと入金時点で、これは当たり前のことかもしれませんが、入金時点での二重弁済という話がありましたけれども、送金時点で二重弁済がなされないようにシステムが必要という議論になるかと思います。これは、実際には譲渡の禁止をするとか、そういう業務規程のあり方で対応はできるのかもしれません。

○岩原部会長

野村委員、お願いします。

○野村委員

私もCMSに関しては、権利の相殺、ネッティングの段階で、必ずしも同期的管理は必要ではないということはそれでよろしいのではないかというふうには思うのですけれども、この資料の2ページ目に書かれている最後のここの部分は、同期的管理が必要とされないCMSにだけ関与しているつもりで、そういうCMSを管理するためだけの管理機関という、そういうものが認められていいのかという、別の論点も含んでいるのですね。

つまり、CMSでのネッティングの部分について、それが同期的管理を要するか否かという点について、同期的管理は必要がないという命題が出てきたからといっても、ここのパラグラフは必ずしも否定されるものではなくて、やはり同期的管理のできるような管理機関が、同期的管理を必要としない利用者のためだけにサービスを提供するというシステムにしておく必要があるのではないかという問題提起でありますので、ここのパラグラフは必ずしも否定されないと。

それは、私は考えられるものだと思っておりますのは、ここにありますように、必ずしもその中にいる人たちが本当に同期的管理を必要としない人たちだけなのかどうかということは、やってみなくてはわからないわけでありまして、実際そこにトラブルが起こって、それについてはちゃんともう同期的管理をしてほしいと、職権で同期的管理をしてほしいと思ったときに、私のところの管理機関は同期的管理はできないのですというような、そういう無責任な形の管理機関がこの全体の社会システムの中に介在してくることが是か非かということを議論しなければいけないのだろうというふうに思います。

そういう意味では、本来同期的管理ができる人が、同期的管理を必要としない人たちに対して同期的管理を必要としないシステムに対するサービスを提供することはあってもいいと思いますけれども、同期的管理についての何らシステム上の対応のない人が管理機関として認められるかどうかというのは、別論点だろうというふうに思います。

○池田委員

1点だけ。

○岩原部会長

先に手を挙げられた平田委員の後にお願いします。

平田委員。

○平田委員

やや一般的な話に戻ってしまうかもしれないのですけれども、債務者の二重払いリスクの排除ということに関しましては、法務省の中間試案でも支払期日後の効力をどう考えるかということで、これで大体解決する部分もあると思うのですけれども、支払期日ではない期中に債務者が任意に債務を返済するということも通常実務ではあるわけでして、例えば銀行の実務でいくと、最近は減ってきていますけれども、手形による貸付、手形貸付というものがありまして、これは手形の期日が決まっているだけで、期中にお金ができたところで債務者が随時これを返済していくというふうなことがあるわけです。これは、期日だから返済するとかということではなくて、お金ができたので、債権者と債務者の合意の上で返済するというふうなことが行われています。

こういった場合に、やはり同期性というのが図られないと、支払等登録が行われないままで流通する可能性というのがあるわけですから、そういったことも含めますと、やはり同期性の確保というのは非常に重要なのではないかというふうに思う次第です。

○岩原部会長

それでは、池田委員、どうぞ。

○池田委員

野村委員がおっしゃられた、同期的管理を多くは必要としない利用者を対象とする管理機関であっても、同期性の要求はすべきだと。それはもう原則として、私はそこを否定しているのではないのです。ただ、この2ページ目の表現がちょっとミスリードなのは、その後、要するに2行目、3行目で書いてあることは、CMSのようなグループ内でやるべきことにほかのグループ外の関係者がかかわることだってあるじゃないかということを批判しているところなので、これは例えば一括決済システムだけを扱いますという管理機関でも、一括決済から外へ出る債権者の行動があるかもしれないじゃないかということと同じでありまして、だから、何か一定の取引形態に対する批判に読めるようなことを入れるのはミスリードではないでしょうかということを申し上げたので。だから、恐らく金融庁さんの方でも、CMSの取引自体について否定的なお考えであるのだろうとは思わないものですから、そこのところだけご注意いただければと思います。

以上です。

○岩原部会長

それでは、始関管理官、その後、窪田委員。

○始関民事法制管理官

今、資料19-2の2ページ目の同期的管理の重要性の一番下のポツのことが問題になっていて、池田委員も小野委員も、このポツの書いてあることがおかしいのではないかということをおっしゃっておられるところは同じだと思うのですけれども、しかし、おっしゃっている内容は全然違うように私には聞こえました。つまり、池田委員がおっしゃっておられるのは、私の理解では、CMSという方式自体を否定しているように読めるところがけしからんとおっしゃっておられるのであって、その相殺と支払等登録、それから決済尻の決済と支払等登録の同期性というものは、やはり確保されなければならないということを池田委員はおっしゃっておられるように思われます。

それに対して、小野委員はそれも必要ないというものを認めるべきだとおっしゃっておられるように聞こえたのですけれども、そこは少し論点を整理していたただいた方が後の議論がしやすいのではないかと思いましたので、一言発言させていただきました。

○岩原部会長

はい、ありがとうございます。

それでは、両委員のご意見の、いわば中身のクラリフィケーションの問題ですので。今のような、始関委員のような整理で両委員のご意見を理解してよろしいでしょうか。

池田委員、どうぞ。

○池田委員

私の方から言いますと、私は、最後の決済尻のところは資金移動があるのですから、そこは同期的管理が必要だろうと。その限りでCMSを専門にやる管理機関は金融機関と提携等をする必要があるでしょうということなのですが、その以前の、期中での支払等登録、相殺である支払等登録は、私はここで言う同期性の問題、同期的管理の問題ではないでしょうと。お金を扱うわけではないのだから。

あとは、私の理解では、結局期中でも相殺で消していけるときに、A社とB社の差額がこれは同じになりましたね、消しましょうということで計算センターから確認を受けた両方の、形としては両方の債権者、債務者が申請して相殺で消すと。支払等登録をするということだから。そこでは、タイムラグがあまりない方がいいのですけれども、ここで言う同期的管理の問題ではないはずだと。その相殺に関しての支払等登録については、金銭決済の問題とは別ですねということを強調しております。

○岩原部会長

はい、始関管理官どうぞ。

○始関民事法制管理官

確認だけなのですけれども、確かに金銭決済ではないということはそのとおりだと思うのですけれども、和仁委員のおっしゃられたように、ここで問題にしているのは金銭決済との同期性ではなくて、債権の消滅行為と登録との同期性だというふうに、私も和仁委員と同じように理解していました。その前提でご議論をしていただいた方がいいのではないかと思います。

○池田委員

私はそこは違うのだと思っていましたけれども……。

○始関民事法制管理官

そこをまず確認した方がいいと思います。それは事務局が確認していただいた方がいいと思うのですけれども。

○岩原部会長

それでは、高橋室長、その点を。

○高橋企画課調査室長

あくまで、職権で支払等登録をしていい場合はどういう場合であるかにつきます。問題点としては2ページ目、ミスリードだというご批判はございますが、そういう問題点は理論的にはあり得るだろうということを、まず、言わせていただきます。

CMSについて、同期的管理としてどこまで関与すべきであるかの深度の問題みたいな話でありまして、相殺などについて管理機関が関与しようと思えば関与してもいいのではないかと思っていますし、そこまで見て職権による支払等登録をすべきなのか。全く中身を見ないで、逆に言えばそこのところは自由にやってくださいという話になれば、同期的管理の必要はない。ですから、職権で支払等登録をしてもいい、あるいはしなければならない場合というのは、一体どういう場合なのでしょうかということをご議論いただきたい。債権譲渡方式等は今申し上げたような問題点があるから、そもそも同期的管理の方法としては不適切であるというのであれば、そもそも認めない選択肢も別にあるのではないかと思っているわけです。池田委員がおっしゃられるように、決済尻だけについて同期的管理の方法として認めて職権で支払等登録する場合もあれば、相殺等のプロセスまでも含めて同期的管理の方法として職権でやる場合もあれば、そこまでは見ず同期的管理もしないということもあるかもしれない。

その辺をご議論いただきたいと思っているのですが、どこまで同期的管理をするかの話は置いておけば、まず、議論の大前提として少なくとも同期的管理を提供しない管理機関という存在は適切かという、先ほど野村委員がおっしゃられたことと全く同じことを申し上げたいわけです。同期的管理は重要と思いますが、仮に全く必要としないという人がいるとすれば、その人たちはそういった形で管理機関を使うことが否定されているわけではありませんので、そういう形で使えるのかもしれないとは思っていますということです。

○池田委員

つまり、支払に係る送金手続に関係ないのも同期的管理で、ここで議論するということですか。

○高橋企画課調査室長

それは、しうるということで、和仁委員がおっしゃられるように、そこまで中身を見るべきであるということが皆様方の大勢であれば、当然そこまで含めて見た上で支払等登録をする、あるいは職権によってやることだと思いますし、池田委員がおっしゃられるように、そこまでは本来的には関係のない話であるというのであればそこは見ない。逆に言えば、同期的管理をしないということだと思いますので、その決済尻についてだけ同期的管理を行うという話だと思います。

ですから、どういった同期的管理を望んでいるのかということになりますけれども、少なくともまず議論の大前提として、同期的管理はまず要りますよねということで、そのあとは範囲の問題ではないかと思っております。

○岩原部会長

窪田委員、どうぞ。

○窪田委員

私も、その決済と原簿を消す同期性を別に考えた方がいいと。というのは、1つ例を申し上げますと、私、金融機関なので。

例えば手前どもでお客様にお貸ししている資金に関しては期日に落としてしまうのです。元帳ではもう抹消してしまうのです。それは資金を即決済できるからですね。手元にお金もあるから。

今回の管理機関は、外にあった場合には、手形交換と同じなのですね。向こうの場合は抹消するのだけれども、資金決済はずれるのですね。だから、それを分けて考えないと、同期性というのは、お話あったように、元帳の原簿を消すのは、要するに期日の場合はもう職権でやらせてしまう。二重払いが一番発生しやすいというのは、恐らく期日前、今平田委員がおっしゃった期日前の決済ですね。これは職権ではできない。これはあくまで債務者、債権者の意向で動くものですから、リアクションとしてはトリガーはあくまで債権者、債務者から行うのではない。期日の場合には、管理機関の職権でトリガーとしての形をとれば二重払いは発生しないのですね。

資金決済はどうしても同期性は多少ずれると。それをどちらか整理をして話さないと。原簿の抹消の話と資金決済の同期性を考えたら、まずうまくいかないのです。それは、いろいろな業態に管理機関を認可した場合に、資金は必ずしも足元にないケースがいっぱいあります。だから、その時間というのは相当ずれる可能性がありますね。ただし、二重払いが発生しない仕掛けをつくれば、それは業務規程でつくれば。

ただ、先ほど木村委員からお話がありました、エンドユーザーからすると、管理機関で業務規程が違うと非常に使いにくいのです。譲渡が発生しました。そうすると、やはりエンドユーザーの方はどこに移っても関係ない、譲渡が発生しても業務規程は変わらないという仕掛けでないと非常に使いにくい。今の同期性は、原簿の抹消と資金決済とを分けて考えた方がいいのではないかと思います。

以上です。

○岩原部会長

さっきの始関管理官からのご発言について、小野委員のご意見の理解は始関管理官のようなご理解でいいということでよろしゅうございましょうか。半ばですけれども、時間も迫ってきたので私としては非常にはらはらしています。

○小野委員

やはりきちんと申し上げなければいけないところは申し上げたいので、簡単にすませますけれども。

基本的に始関管理官のおっしゃったとおりでいいです。それは、先ほど言いましたように、現在のCMSを考えた場合には、先ほどから繰り返しますが、指名債権、手形ではない指名債権のままですから、人的抗弁が切断されておりませんから、支払をすればこれは支払済みですということは十分言えますから、で、ほとんどの場合、最後の帳尻が相殺で行なわれますから。最後の帳尻のところも、今申し上げましたように、人的抗弁が接続しますから、それに不可避な制度として同期性を要求する必要はないと思います。

もちろん、同期性がある機関があれば、より利便性が高いことは認めますけれども、多様な機関ということになりますと、こちらもおっしゃるとおりです。

あと、先ほど高橋室長が法務省の中間試案における整理として、先ほど池田委員がおっしゃったと思うのですが、支払等ということで、決して支払が送金だけに限られるということではなくて、これは民法上の概念と同意義で整理されています。ですから、管理機関はいずれにも必ず対応できるようにする必要があることは前提とすべきだと思うのです。

和仁委員の議論からすると、相殺も当然管理機関は認めなければいけないのですけれども、そのときに、同期性を求めるがゆえに管理機関がその当事者間に入っていって、本当に相殺したかどうかという実体法的判断を下すというのは、本来管理機関がやるべきことではない。管理機関というのは中立性が大事であって、片方は相殺したと言うし、片方は相殺しないと言うときに、一体どうすればいいのかという状況に管理機関を置く必要はないと思います。

○岩原部会長

非常に議論が錯綜しておりまして、私としては非常に困っているのですけれども……。

議論の最初の時点で、まさに國領委員からのご指摘について申し上げましたように、やや同期性という言葉がひとり歩きして、それをめぐっての込み入った議論になっている感じがしていますけれども、債務者が二重払い等をさせられない、債権者は債権をきちんと回収できる、それぞれ安心してこの電子登録債権のシステムで支払ができるという制度をつくることが目的なのです。

その中で、いろいろな場合が出てくるわけですけれども、私が書いたわけではありませんが、資料2の一番下のところについてのいろいろなご意見がありましたが、それは別にCMSそのものを批判しようとか、そういう意図でこれは書かれているものではなくて、そういうものが今後とも企業の合理的なニーズとして機能し続けていくことは、それも変わらないだろうと思います。

ただ、ここで問題にしているのは、それが電子登録債権を使ったCMSシステムになった場合、しかもその利用者として、ここで書いてあるような同一グループ内企業、彼らだって実はグループ内で本当にちゃんと支払されているかという問題はあり得ると思います。仮に内部なら大丈夫だという論理が成り立つとして、それ以外の第三者も入ってくる場合も電子登録債権を利用した場合はあり得るので、そういうときに、第三者に対する関係でも、安心したシステムを提供できるようなものになるかどうかということをここで議論しているわけです。

そういう安心したシステムになるためには、最低限どういうことが担保さているような仕組みでなければいけないか。それにはいろいろなやり方があり得るとは思うのですけれども、まず、先ほど池田委員のご指摘によれば、こういうCMSで期末に期末の決済尻を出して決済すればいいというやり方だってあるではないかとおっしゃったわけでありまして、そういう場合でも、期末の決済尻の資金決済等はあるでしょうと。そうすると、その資金決済がきちんと行われて、そこから全体のそれまでの相殺によって処理してきた部分も、それできちんとファイナルな形で全体が決済されたということがきちんと担保できるような仕組みになっていなければいけないでしょうという問題があり得ると思います。

そのためには、最後の決済尻のところの決済がきちんと行われているかということをチェックできるような制度にしておく必要があって、そのためには一定のアレンジメントが必要ではないかと。さっき池田委員も金融機関との提携という言葉をおっしゃいましたけれども、管理機関に金融機関しかなれないなどという仕組みにする必要はないけれど、提携等を通じてそういうことがきちんと行われているかということを確認することが必要でしょうということです。

それから、さらに進んでいきますと、決済尻の決済の確認も要らないというところまでいっていいのかと。これが小宮課長や小野委員から出た問題だと思いますけれども、これはまさに二重払いのリスクをどのレベルまで下げるかということだろうと思っていまして、先ほど仮処分をすればいいという小宮課長のご意見等もありましたけれども、実際に裁判手続を使ってまで自分の債務が消えることを担保しなければいけないのか。それから、人的抗弁の接続があるというふうにおっしゃいましたけれども、実際に紛争になったときに、支払等登録なしに抗弁が接続しているということで支払側が安心して自分が支払ったということを第三者に対抗できのかという問題るのかと。その辺の実際上の安心感というか、取引上の安全がどれだけ確保されているかということであって、やはりそれには支払った以上は支払等登録がきちんとなされるような、ある程度のレベルの仕組みが備わってないと安心できないのではないかと。そういうものとして電子登録債権を提供をする必要はないかというのがここでの問題ではないかと思っています。

で、和仁委員が指摘した問題は、さらにある意味で重いというか、難しい問題で、池田委員のお考えのように、期末で初めてそこで決済尻についての支払等登録だけが行われたということで安心していいのか。期末と言っても期末までの間のタイムラグ、1か月なりがあるわけであります。あるいはもっと長いものがあるのかもしれませんけれども、その間存在している債権がきちんと消し込まれるのかという問題が残っているわけで、そういうような電子登録債権の支払システムで安心したものとして債務者等は利用していけるのかと。そういうものとして、電子登録債権のシステムを提供することで、この電子登録債権に関する立法が国民に安心したシステムを提供したことになるのか。それが、多分、この審議会で検討すべき問題ではないかと、答えを出すべき問題ではないかというふうに思っております。

今日は、時間が迫ってきましたので、多分これで、ファイナルはちょっと難しいかと思いますが、では、池田委員、何かご意見ございますか。

○池田委員

今、部会長がきちんとおまとめいただいたのですが、1点だけ、1か月不安定というのは、和仁委員は、一回一回の期中で、私の申し上げた資金決済とは関係ない、相殺で消す支払等登録のときにも、合意と登録の間のタイムラグがあってはいけないのではないかということまでおっしゃったので、私はそれはないだろうというふうに申し上げたわけです。

以上です。

○和仁委員

私はやはりそこのところでも確保をすべきだろうと思っています。もしやるのでしたら。

○岩原部会長

合意でやるということになると、両方側の意思表示が必要になるわけですから、そういう手続を経て初めて消えるということで安心して利用できるのかという、さらに問題が多分あるということだろうと思います。

金丸委員、どうぞ。

○金丸委員

もうやめておこうと思ったのですけれども、またぶり返しになって恐縮ですけれども、私は、企業の経営の仕組みを構築することに携わっていたり、あるいは金融界のシステムづくりに携わっていますけれども、ちょうど後半の議論はちょっと理解できなくなったのですけれども……。

我々は経営活動、何においても、お金の移動であっても、物の移動であっても、情報の移動であっても、先ほどのある特定のグループ内のお金の移動とそれの裏腹に存在している取引、売買みたいなものというのは、電子的な同期を、エンターキーを押してバンと更新しないまでも、期中に至っても経営者から見たらそれはだれだれに聞いたら全部ワンペアの取引として存在していなければいけないのです。

これは、人間が同期的管理の主役を演じているかどうかの話であって、企業の取引は期中でもきちんと、資金を移動したのだけれどもそれはどこかに権利があって、その権利とワンペアだという確認はどこかでなされているので、それを期末尻だけに―電子的には期末尻かもしれないけれども、私は法的にはよくわかりませんが、期中においてもきちんと取引処理が必要ということで、何ら矛盾しないのではないかと思います。

それと、CMSを提供したりしている立場としても、この最後の行が、池田先生がおっしゃるほどの懸念が生じる理解、認識が私にはちょっとできなかったので、どうなのでしょうか。

それから、最後の仲介機関というか管理機関か、送金者か入金者のだれかが、最後は自発的に何かを電子的に入力しない限りは、電子登録の抹消もあるいは保全ということ、例えばどなたかが送金中というのは、いわゆる電子登録債権仕掛りみたいなものですから、小売業で言うと売約済みたいなステータス管理が電子的にはなされないと、そのタイムラグは基本的にはどんなにリアルタイムで、厳密に言うと0.000コンマ何秒差でだれかに売るということは可能になるわけですから、だから、三者の行為によって、例えば管理機関だけに押しつけるとそこにものすごいコストが要ると思います。実態としてはそういうことをシステム的に考えていけば、今までの議論はほとんど実現性としては、私は可能なのではないかなと思って聞いておりました。

CMSに戻りますが、グループ内のCMSと、それからいろいろな取引関係の利便性の行為そのものも、今や株主から見たときにそれが本当に適正かというようなこととか、今、ますます内部統制とかが厳しくなりますから、グループ内だから許されるということには、私は必ずしもならないのではないかというふうに思います。

○岩原部会長

はい、ありがとうございます。

川本委員、お願いします。

○川本委員

2点申し上げます。、今の後半の方のご議論は、すごく一方方向に行っているのではないかなという感じがいたしました。

1点目は、キャッシュマネジメントシステムは限られたメンバーでやっていて、そこで今うまくいっているから、それを電子登録債権の仕組みにそのまま移行するというのは、考え方としては非常に違和感がありました。もしキャッシュマネジメントシステムの中でうまくいっているのであれば、それはそのまま現行のシステムで続けていけばいいわけで、権利義務関係に何らかの問題が生じているから電子登録債権にしたいのではないかと推測をいたします。グループ企業だからといって、別に仲がいいというわけではないし、上下関係もありましょうし、そういうところから紛争の元というのがあるのではないかと思います。

2点目は、権利の決済と資金の決済が別だということを突き詰めていくと、これはちょっと過剰な心配かもしれませんけれども、電子登録債権管理機関を通じて、多大な飛ばしのようなことが起こり得ないのだろうかということが心配になりましたので、その点を発言させていただきました。

○岩原部会長

では、窪田委員。

○窪田委員

1つだけ。今、金丸委員のおっしゃった件、私は反対ではないのですけれども、ただ、せっかく電子化するのであれば、期日管理もしていますから自動的に処理をする、要するに債権者にしても知らなくて、期日管理をしていただいて資金決済も終わるという流れが本来の流れだと思います。

要するに、債権者・債務者のトリガーで仕掛けを全部終わらせる仕掛けというのは、電子的な仕掛けではないと思うのですけれども、むしろ電子化するということは、期日管理もしっかりやって、自動的にそれを終わらせてくれると。新たに期日管理を、話したように、円滑に資金受領ができるという仕掛けが本来あるべきだし、必要だと思います。

以上です。

○岩原部会長

まだまだご発言されたいという委員の方も多いと思いますが、ある意味でこの同期的管理という言葉がひとり歩きしている感じがあって、私は、もうちょっと気をつけて議論した方がいいかという気もします。

これは管理機関のあり方と非常にかかわってまいりますので、次回の管理機関の業務の適正性の確保の討議の中で、引き続き議論させていただきたいと思います。私、改めて言うと、そちらの方で問題が解消できるような気もしております。どういう管理機関でなければいけないか。まさにそういう問題ではないかと思っています。

本日の会合はこれで終了させていただきたいと思います。なお、この後、記者会見を行いまして、本日の会合の模様につきましてお話をさせていただきたいと思います。

それでは、次回の開催予定を事務局にお願いしたいと思います。

○高橋企画課調査室長

次回は、既にご案内を差し上げているかと存じますが、10月25日の午後1時からを予定しております。詳細は追ってご連絡を差し上げたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の審議を終えたいと思います。お忙しいところ、熱心なご議論、誠にありがとうございました。

以上

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