金融審議会金融分科会第二部会(第35回)・「情報技術革新と金融制度に関するWG」(第21回)合同会合議事録

日時:平成18年11月15日(水曜日)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

○岩原部会長

ただいまから第35回金融審議会金融分科会第二部会と第21回情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、本日もお忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。

早速でございますが、お手元の議事次第に従いまして議事を進めさせていただきます。

本日は、前回の管理機関の業務の適正性の確保について、事務局から補足のご説明をいただき、討議の時間を持ちたいと考えております。続きまして、電子登録債権と金融関連法等との関係について、事務局からご説明をいただき、討議をいたしたいと考えております。

それでは、まず管理機関の業務の適正性の確保その他について、事務局から補足説明をお願いいたします。

○高橋企画課調査室長

資料21-1「管理機関の業務の適正性の確保その他」でございます。

まず1ページ、管理機関の兼業についてでございます。

前回、管理機関につきましては、その兼業のメリットあるいはデメリットにつきましてご議論をいただきました。管理機関が管理以外の業務─管理業から見れば他業─を自由に行うことにつきましては、損失が生じた場合の事業会社本体によるカバーや、システムの共有による相乗効果などの点が考えられるなど、そのほか種々メリットについてご意見をいただきました。

ただ、事務局といたしまして、ここに書いてありますような点を踏まえれば、管理機関は専業を基本として考えることが適当ではないかと思っております。

まず、他業からの破綻リスクを管理業に及ぼさせないためには、法人格の分離が簡便である。それから、管理機関の公正性・中立性が専業の方が高いのではないか。情報流用等を抑止しやすいのではないか。兼業を行う場合には、兼業部分についても適正な監督を行う必要があるのではないかと思いますが、専業であれば、その監督コストが相対的に小さいのではないか。あるいは、兼業を認めなくとも子会社方式をとることによって多様な事業主体が管理業に参入することができるのではないかという点があるかと存じます。

このような点を踏まえまして、管理機関は専業とすることが適当と考えるがどうかとさせていただいております。

この場合、前回もいろいろご議論いただきましたように、一定の業種に限って例外的に管理業を行うことを認めることについて、なおその必要があるのかどうか改めてお伺いしたいと思っております。

次に、2ページでございます。

電子登録債権の消滅の場面と管理機関による同期的管理についてでございます。

電子登録債権の決済につきましては、通常、債務者の金融機関の口座から債権者の金融機関の口座に対する資金送金をもって行われることが一般的であると考えられます。しかしながら、電子登録債権が消滅する場面は資金送金が行われる場面に限らず、電子登録債権が消滅する場面においては、二重払いの危険が回避されることが債務者にとって重要なのではないかと思います。また、権利関係が極力正確に登録原簿に反映されることが、電子登録債権への信頼性を得ることにつながるのではないかと考えられます。

そこで、電子登録債権の消滅の場面でございますが、3ページに「(参考)電子登録債権の消滅の場面」ということで、民法における消滅の場面を簡単に整理させていただいております。

このうち資金送金を伴うものにつきましては、金融機関の口座間送金を管理機関が確認することによりまして、管理機関が同期的管理を行うことが可能であるかと思います。

相殺契約などにつきましては、資金送金を伴うものではありませんが、2ページの「・」にありますように、自らが債権者である電子登録債権の支払等登録の請求と同時に、自らが債務者である電子登録債権の支払等登録が行われなければ、自らが債権者である電子登録債権だけが消滅する危険がございます。

少々分かりにくいかと思いますので、4ページの「例1 二当事者間における相殺契約」の図をご覧いただければと思います。

相殺契約に基づいて権利が消滅する場合、例1でございますと、相殺契約によりまして100のうちの80が一部抹消され、80についてはすべてが抹消されるということが、それぞれの債権者からの請求で行われると思います。その後、 I の段階を経まして、ネット尻として債権が20生ずると思いますが、これを資金送金について最終的に決済するという形で、ここの20の送金部分について、管理機関による同期的管理が行われる形になると思います。

ただ、この場合に、自らが債権者である電子登録債権、例えばAの債権であれば100のうち80については抹消させたものも、反対側のBの80については、支払等登録が行われなければ一方的に80の権利を失い、Bからは80について支払を求められる。人的抗弁の問題とかいろいろございますが、電子登録債権について言えば、そういう形になるではないかと思います。

また、ネット尻が生ずるような場合、今、2段階に分けてプロセスのご説明をしましたが、第三者、例えば管理機関がこのプロセスをすべて管理し、資金送金の20の確認にあわせて、元の100と80についてすべて一気に抹消してしまうといったニーズも考えられるのではないかと思います。

また、例2につきましても同様でございまして、特に例の2では、「置き換え」と書いてございますが、この I の段階の置き換えが正しく行われないと、ABCDの関係者が被害を被る局面も想定されます。

これらを踏まえますと、資金送金が行われないような相殺契約の I の部分でございますが、管理機関による同期的管理を行う必要があるのではないかという問題があったかと思います。従来から、管理機関による同期的管理の意味が多義的というご指摘もあったかと思いますが、それは、この問題として整理できるのではないかと思います。

ただ、管理機関がこのような相殺契約などの権利の消滅について同期的管理を行おうとしますと、相殺契約などの内容を把握する必要があるのではないかと思います。その把握が困難であったり、あるいは把握したとしても相殺を認めることが正しいのかといった実質的判断を要することになり、それもなかなか困難ではないかと考えられます。したがいまして、管理機関が同期的管理を行うことは難しいのではないかと書かせていただいております。

なお、本日ご欠席の和仁委員から、この権利の消滅と同期的管理に関しましてご意見を頂戴しております。配付資料の最後にございますので、こちらをご覧いただければと思います。

このように、管理機関は資金送金を伴う場合について同期的管理を行うことが適切ではないかと思っておりますが、資金送金を伴わない場合でありましても、電子登録債権が消滅する場合に、債務者には、登録原簿の記録が抹消されなければ、やはり二重譲渡の危険がございますので、債務者は債権者に支払等登録の請求をしてもらわなければならず、債権者がその請求をしてくれない場合、債務者は裁判手続によって債権者に支払等登録の手続を行うことを命ずる判決を得ることなどが必要となります。

資金送金が行われる場合には、債務者は、管理機関による同期的管理によってこのような裁判手続をとる必要はないのですが、管理機関による同期的管理が行われないと、一気に裁判手続によるしかないということになりますと、いささか債務者に酷ではないかということも考えまして、2ページの最後の「○」でございますが、管理機関による同期的管理を行うことができない場合であっても、債務者の二重払いの危険をできるだけ回避するための方策が必要ではないかということで、もう少し何か簡易な制度、あるいは管理機関に何らかのアクションをとってもらったら、もうちょっと簡単に権利保全みたいなことができるのではないのかという問題意識でございます。

続きまして5ページ、管理機関による同期的管理の方法でございます。

最初に兼業か専業かということをまたご議論いただきますが、専業であるところの管理機関が債務者から債権者への資金送金に関しどのように同期的管理を行うのかという方法の問題でございます。

まず、金融機関口座間送金の確認でございますが、債務者から債権者に対する金融機関の口座間送金を管理機関が確認することによって、職権で電子登録債権の記録を抹消─これを支払等登録と言っておりますが─しようとするものでございます。

具体的には、さらに次のイ、ロ、ハのような方法が考えられるかと思います。

それぞれ時点の問題でございますが、イであれば、債務者口座から債権者口座への送金の時点で金融機関が確認し、その確認の連絡を金融機関から管理機関に行い、管理機関が職権で支払等登録を行うというものでございます。

ロは、債権者口座への入金の方を金融機関が確認した上で、その確認の連絡を金融機関から管理機関に対して行い、管理機関が職権で支払等登録を行うというものでございます。

ハでございますが、債権者からの依頼で債務者口座からの金銭の引き落としを行い、その引き落としの確認の連絡を金融機関から管理機関が受け、職権で支払等登録を行うというものかと思います。

これらの方法をとる場合でありましても、資金送金と登録原簿の支払等登録は、厳密な意味ではリアルタイム─全くの同時─ということは難しいかと思いますが、その点につきましては、例えば債権者口座への入金が確認されるまでの間は譲渡登録を禁じるなどによりまして、債務者の二重払いの危険を確実に回避することが可能なのではないかと考えております。

なお、いずれの方法でありましても、利用者にとって安心で確実な制度とするために、さらに実務的な検討を要するかと思っております。

続いて6ページ、その他の方法でございます。

このほか、当初から債権者を代理したり、あるいは債権の譲受、債務の引受を行うことによりまして、管理機関自らが債務者から送金を受け、自ら債権者に送金するということも方法としては考えられなくもないかと思います。

これらについては、管理機関自らが法的主体として資金送金に関与することにつきましては、一定のメリットがあるとは考えられますが、送金に係るトラブルが生じたり、あるいは管理機関において資金流用が生じて債権者に資金が渡らないことがないよう、管理機関に厳重な措置をとることが必要になるのではないか、管理機関が自ら取り扱う電子登録債権の債権者、債務者となることになり、公正性、中立性を害するおそれがあるのではないか、あるいは管理機関が他の債務者の信用リスクを引き受けることになりますので、破綻リスクが高まるのではないかといった問題があると考えております。

管理機関が自ら資金送金に関与すると、このような問題がございますので、あくまでも金融機関との提携によって同期的管理を行うことが適当ではないかと思いますが、このあたり、自らが資金送金に関与することによって同期的管理を行うことについてどう考えるかという問題意識でございます。

7ページ、4.その他でございます。

3.は、専ら管理機関の同期的管理を中心とした業務の問題かと思いますが、これに関して周辺的な問題として提示させていただいております。

まず、電子登録債権を用いましたネッティングにつきましては、4ページの「例2 多数当事者間におけるネッティング」にありますように、CCPに関係者、ここではAからDでございますが、その信用リスクが集中いたしまして、その信用リスクが一部債務者の不履行により全債権者に伝播する危険があるかと思います。この図でございますと、債務者であるBとDが支払ができない場合には、CCPが何らかのカバーをできませんとAやCに対して資金の支払ができない状況にございます。これはたまたまABCDがこのような関係ですが、この関係がグルグル回り得る形になるかと思います。

また、ネッティングを行う者、ここではCCPでございますが、関係者の債権債務を正しく把握し、ネッティングの計算を正しく行い、かつ正しく登録原簿に対する記録の請求を行わなければ、それぞれの債権者、債務者について二重払いの危険があったり、あるいは本来、有するべき権利が消滅するといった危険がございます。また、それが適切に行われない場合には、元の電子登録債権について決済が終了せず、決済の安定性を害することになるかとも存じます。

このような電子登録債権を用いたネッティングにつきましては、先ほどご説明させていただきましたように管理機関による同期的管理を行うことは難しいので、行わないことにしたらどうかと思っているのですが、その場合でも、電子登録債権のネッティングを行う者につきましては決済にかかわる重大な責任を負うものであります。また、電子登録債権が債権の流動化を容易にするなど、その特性に鑑みれば、ネッティングが現状の指名債権のように一部の限定された者の間で行われるのではなくて、広範に多数の者の間で行われて、社会的な、いわば決済網として利用されるような事態も考えられるのではないかと思っております。

このような場合につきましては、利用者保護の観点から、電子登録債権を用いたネッティングを行う者に関し、何らかの規制について考える必要があるのではないかというのが、ここでの問題意識でございます。

なお、CCP制度につきましても、和仁委員から「2 CCP制度について」としてご意見をいただいておりますので、資料をご覧いただければと思います。

○岩原部会長

ただいまの高橋室長からのご説明につきまして、ご意見、ご質問ございましたら承りたいと存じます。

いかがでございましょうか。

○平田委員

まず、管理機関の兼業について、1ページの例外を認める必要があるかどうかというところでございますけれども、金融機関としてお客様にサービスを提供する、利用者の視点に立った場合のという観点からの意見なんですけれども、我々としては、引き続き兼業でやりたいというニーズは持っております。その上で、これは前回も申し上げましたけれども、特に金融サービスを提供する中で、窓口が管理機関と金融機関の2つ別々に分かれてしまうのではないかという点と、同期性につきましては5ページに整理されていらっしゃいますけれども、特にリアルタイムで行うことが難しいという点ですけれども、兼業でやりますと、専業でやる場合に比べ情報連携という意味で、より高くなるのではないかと思いますので、そういう意味で、兼業が認められると、サービスレベルとしてはより高いものが提供できるのではないかと考えております。

○今松委員

私は、基本的には事務当局から出された案に賛成であります。確かに同期的管理をやる上では、金融機関が兼業することに非常にメリットがあることは分かりますけれども、では、それを例外と認めた場合、どこまで例外が広がるかということになりますし、基本的に管理機関自体の公正性、中立性が本当に担保されるのかと考えた場合には、メリットとデメリット全体をはかった場合、管理機関は専業という形で、なおかつ実態としては子会社という形式をとることでかなりの程度できるとすれば、この原則を基本としてもらえればと思っております。

○関委員

私は前回も、利用者の立場から見てどう考えるんだという議論で申し上げたんですが、現実に、電子登録債権というものがどんどん流通し銀行振込だとか手形といったものと全く同様に、大量に、かつ日常的に流通し、決済されることが本当に「使われる」ということの意味だと思うんですね。そうなってくると、銀行の兼業を認めるということで電子登録債権のスムーズな導入が図れるのではないか。

私は銀行の肩を持つつもりは全くないんですが、私どもが本当に使って、これをどんどん入れていって、そして自分たちの会社のシステム、これは購買システムとか販売システムも含めて手直しが要るわけですが、そこまで本当にやりますかと問われたときに、銀行振込や手形といった現行の支払手段に劣後しないように、使い勝手のよいものにすることが必要なわけで、そういう意味では、利用者としては自分の銀行口座に資金を用意しておけば電子登録債権が安心して決済されるという状況になるわけでありまして、ここの文脈で言うと、「例外を認める必要があるか」といえば、銀行については例外を認めなければいけないのではないかと実は思っております。

では、なぜ銀行について例外を認めるかということになるわけですが、これは金融庁等の銀行に対する経営健全度のチェックは相当働いているという前提でありまして、銀行以外の業態が参画する場合には、本体事業が一体どうかという議論になるわけですが、銀行については相当ガバナンスが働いていると考えなければいけないのではないか。したがって、銀行以外の管理機関の兼業も認めるべきだと私は思いますが、その場合には、銀行並みの経営健全度のチェックと決済機能との連動性が確保されていることが非常に重要だということで、そういう観点でいきますと、恐らく銀行以外の管理機関の場合は、自然に子会社方式にならざるを得ないというのが、利用するという立場から物事を立論したときの議論だと思うんですね。

ここで、なぜ管理機関は専業とすることが適当と考えるかというのが5点出ていますけれども、これが実質的な意味であるわけですから、これがきちっと、いわゆる監督というようなことで、例えば銀行について言えば経営健全性というのはかなりチェックされて、こういう問題がクリアできるということであれば、何が何でも例外は認めないぞということには、私は論理必然的にもならないと思うんですね。ですから、本当に安心して利用して、せっかく電子登録債権をつくるわけですから、我々利用者から言っても積極的にこれを使っていこうという条件をどう担保するかということから、あまり観念的に考えずに考える必要があるというのが私の意見であります。

○根本委員

これまでは、例外として金融機関について認めてもいいのではと思っていたんですけれども、なおよく考えてみますと、制度の主体が中小企業の資金調達の利便性だということに鑑みますと、銀行に多分そういう趣旨はないとは思うんですけれども、管理機関と銀行が結びつくことで、その銀行との取引を強制されるような動機を持ってしまうことが問題にもなるかもしれないと思い直しまして、やはり専業の方が望ましいのではないかと考えました。

ここに書いてあるように、やはりこの機関の信頼性とか中立性、情報の保護というのが非常に重要かと思いますし、専業であるとスペシャリティといいますか、そういうものが育成されるのではないかと思われます。ただ、弊害としては、システムの共有などができなくてコストがかかるところだと思うんですけれども、そこは振替機関のように、スケールメリットというか、そういうものを生かして固定費を下げるような仕組みが利用者にとってはいいのではないかと思っております。

あと、例外として私、議論を聞き逃しているのかもしれませんが、例えば取引所とか全銀協とか、ああいった団体がすることはどうなのか、ちょっと疑問としては感じたというか、非効率性という意味ではそんなに問題はないようにも思いました。

○池田委員

私は、事務局ご提案に賛成で、したがって、今松委員、根本委員のご意見と同じラインで、関委員のご意見には反対ということであります。

理由は、やはりこれ、前回も部会長から法人格の分離ということをおっしゃっていただきましたけれども、ここに専業とすることが適当と考える理由が5つの「・」で挙がっておりますうち、上の3つ、特に上の2つが大きいと思います。従来から私、意見を申し上げていますように、管理機関というのは本来、ブックキーピングの機関でありまして、そうすると、公正性、中立性が求められる。そして破綻リスクを及ぼさせないための法人格の分離というものも、やはり考えるべきである。情報流用等を抑止しやすいという理由は、その次に来るんだと思います。

4つ目の監督コストのことは私はあまり重視しないので、制度としては上の3つ、そして実際の対応策として、5つ目の子会社方式ということで考えるべきだろうと思いますので、専業が適当だと思います。

前回も議論したところですけれども、先ほどの関委員のご意見は、金融機関については例外を認めて優遇していいのではないかということなんですが、ここについて私は、是非フェアにやってほしいと。つまり、兼業する者にはより厳しい規制を課すということになると、現実には結局、金融機関が優遇されることになってしまう。前回の議論で私は、金融機関だけに例外を認めるのであれば、ほかの業態のものにも例外を認めるべきだという発言をいたしましたけれども、今回のご提案のように、専業でやることを打ち出してくださるのであれば、専業でやっていただきたい。そして例外については、是非そういう業態による不利益がないようにフェアに考えていただきたい。ということは、現実には、例外はあまり認めるべきではない。こういう考え方でございます。

○池尾委員

すみません、ちょっと欠席しがちで議論をちゃんとフォローしていない面があるかもしれませんので、もし誤解等があればご指摘いただきたいんですが、管理機関に関しては金融機関に限定しない、しかしながら銀行と提携してやってほしいという話になっていると思うんですが、提携を求める側の管理機関はいいとして、提携を求められる側の銀行のスタンスはどうなんだろうというのがあります。

今、池田委員がおっしゃったフェアネスの話、公正競争みたいな話にむしろなるかと思いますが、銀行の側の管理機関との提携の姿勢みたいなものが担保されている必要性が当然あると思うんですけれども、銀行が本体で兼業したときに、他の管理機関との提携というものと差別的な取扱いがされる危険性はないか。子会社にしても、自分の子会社と他の、資本系列のない企業との取扱いを本当に公平に銀行側にやっていただけるかどうか。これは公正取引のマターかもしれませんが、提携を求められる側としての金融機関のスタンスのようなところがどういう感じになっているのかを確認させていただきたい。

どちらかというと、意見というより質問に近いことなんですが。

○高橋企画課調査室長

以前、提携の話のときにも、金融機関が本当に協力する担保があるのかというご質問があったかと思いますが、それにつきましては、例えば金融機関が仮に兼業したとしても、自らの銀行口座についてはちゃんとやるけれども、ほかの銀行の口座についてはやらないのではないかという問題があるのと全く一緒で、そこのところで法令上の担保が要るなら、何らかの法令上の担保を検討すべきかとは思います。銀行が自らやれるとしてもすべての銀行が協力してくれる保証がないという点においては、管理機関が専業である場合と兼業である場合について実質的な差はないのではないかと思っております。

○田中(浩)委員

私も、今回の事務局案に賛成いたします。

ほかの委員の方も説明されているので繰り返しは避けますが、この5つのポイントは、そのとおりだと思います。

管理機関の競争の公平性という観点から考えた場合、やはり例外を認めない方が、より公平な管理機関の運営ができるのではないかと思います。

○米澤委員

私は、基本的には関委員のご意見に賛成なんですが、それは何も金融機関優遇ということではなくて、ここに挙がっている5つの理由のうち、皆さんやはり破綻リスクのことを一番大きな問題にしておられるんだと思いますが、管理業の破綻リスクと金融機関の破綻リスクとどちらが大きいかというと、圧倒的に管理機関の破綻リスクの方が大きくて、金融機関の破綻リスクの方が小さいんだろうと思います。その意味では、むしろ金融機関に兼業を認める方がリスクが小さいのではないかと思っております。

ただ、公平性、中立性ということを考えたときに、果たして金融機関が兼業するのがいいのかどうかは非常に悩ましいところで、ポイントはそこにあるのかなという気がいたします。

○佐藤委員

兼業については、専業でいくという考え方があることは当然理解できるんですけれども、一言で言うと、ちょっと大袈裟に考え過ぎている部分があるのではないかという気がします。

行政の方々がお考えになると当然そうなるんだろうとは思いますけれども、今、法制審の方の議論では、電子登録債権というのは非常に幅広い金銭債権を考えていまして、今後、電子登録債権がビジネスの世界でどう使われていくかということは、実はまだよく分かっていない。どんな使われ方をするかも分かっていない段階であまり固定的に「管理機関はこうあるべきだ」と強く求め過ぎてしまうと、民間側の創意工夫の余地を狭めてしまう可能性があるのではないかと思います。

ですから、ルールのフレームワークを提示することが必要だと思います。

さらに、管理機関の業務というのは、ある意味では特殊な業務だという位置づけは明確にするべきだと思いますけれども、専業がいいか兼業がいいかは現段階ではそんなに明確にせず、むしろ何を行うからどうなんだというような考え方をとっていった方がいいのではないか。インターネットが普及するかどうか分からない、どんな事業に使われるか分からない時代に「インターネットの事業者にはどういう規制をかけるべきでしょうか」ということを議論してしまっているような、大袈裟に言うとそういう気がします。

それから、専業することが適当だということについての論拠として5点挙がっていますけれども、少なくとも上3つは兼業でもコントロール可能なのではないか。専業であった方がコントロールしやすいという部分はあるのかもしれませんけれども、こういった部分については兼業だからといってできないという話では、恐らくないのではないか。

それから、監督コストが総体的に小さいという部分も、今、基本的に今考えている管理機関の業務はブックキーパーですから、そんなにいろいろ裁量を働かせて行うことをもし予定していないのであれば、その部分だけを見ることについての監督コストはそんなに高いものではないのではないかという気がいたします。

○小野委員

池尾先生とか池田先生、また、佐藤委員のお話とつながるところもあるんですが、どういうビジネスモデルで何をするのか、それを今の時点で固めるのかという議論だと思うんですね。特に、原則専業、どんな原則にも必ず例外はありますから、ここで例外はごく限られたものだと議論したところで、必ず例外は出てきますから、そうすると、普通に想像するのはやはり銀行が例外ということになるのではないかと思いますけれども、果たしてそれが唯一の、恐らく今後、未来永劫日本において使われることになる指名債権のほぼ代替的機能を果たしていく電子登録債権の管理機関のあり方か、この建てつけでよいのかというと、ちょっとがんじがらめ過ぎるのではないかと思います。

もちろん専業制のよいところはいろいろありますから、それを否定するという意味ではないんですが、原則例外、例外を恐らく銀行とだれもが観念してしまうことの怖さみたいなものを感じますし、なおかつ、池尾先生等の議論ともつながるのかもしれませんけれども、もともと中小企業のファイナンスということでこの議論が出てきたわけですから、なおかつ日本において銀行の存在があまりにも肥大化し過ぎている、だから市場型間接金融が必要なんだとか、これまで一生懸命資本市場の発展をということで議論している中で、またこれも大きな銀行グループの中だけのものになってしまうというのも、せっかく市場を発展させようという議論と逆になってしまいます。

また、どなたかが金融庁がしっかり見ているからいいんだとおっしゃいました。それは一面真実かもしれませんけれども、現在の会社法は内部統制システムが導入されていますから、金融庁がやっていることと同じことを本来、会社はやっていなければいけないんですね。ですから、今の会社法はそうした建てつけになっていますから、それをわざわざ金融庁が見るのか、株主がチェックするのかの差であって、それがこと、電子登録債権については金融庁が必要なんですということは、ある特定のビジネスモデルを考えての議論としては当てはまりますけれども、広く一般に今後、指名債権又は現在の手形の代替的な役割を一般市民の間で担っていこうという電子登録債権においては、必ずしも妥当でない、柔軟性に欠ける議論ではないかと思います。

また、同期的管理が必要だからというところからこの議論が出てくるとしますと、これはまた子会社であろうが銀行本体であろうがまた別の議論になってくると思います。日銀ネットにどういうことであればつなぐことができるのか、日銀の方がどういうところであればそのシステムを開放するのか、その辺の議論ともつながると思います。

○吉野委員

管理機関の話で、先ほど金融機関の破綻のリスクの方が少ないとおっしゃいましたけれども、98年とかああいう段階ですと相当危険がありました。現在になると、喉元過ぎればですけれども。あと、事業会社がこういう管理機関に入ってきますと、やはりそこからの破綻リスクも出てくるような気がいたしまして、私は、専業の方が今の段階ではいいように思います。

ただ、その後の2のところと関係しますけれども、やはり特定の顧客とか特定のグループだけに管理機関がサービスを提供するのではなくて、むしろ公平性、中立性という、これは新しい管理機関には是非それをお願いしたいですし、かえってそれをお願いすることがスケールメリットとかで、管理機関でほかのお客様も自分のところに吸収することができるような気がいたしまして、そういうことがずっと極端にいくと、管理機関というのは1つになってしまう可能性もあるのではないかと思います。

○佐々木委員

結局、独立した専門の機関とするということは、この業務だけでビジネスが成り立つということだと思うんですね。ですから、ビジネスモデルの話が出たんですけれども、そもそも手数料を少なくしようとか、いろいろな中小企業のためにということでスタートして、今、言っている公平性とか中立性は大変重要なんです。一方で、独立しなければならないということによって、ここからどうやって利益を生み出すのかを考え始めなくてはならなくなったときに、利便性と相反するというか、手数料が高くなったり利用側にとって不利益があるかどうかも1つ考えないといけない点ではないかと思っております。

○金丸委員

ちょっと時間が経ってしまいまして、考えていたことのほとんどが出てしまいましたが、多少軌道修正しながら話をしたいと思います。

基本的には、技術革新を契機に新しい時代が訪れて、今、新しいサービス出現の可能性と、その法制度の設計について議論しているわけですけれども、インフラの一番の可能性というのはインターネットだと思います。

このインターネットが出現してから新市場がいろいろな形で出てきたんですけれども、その新市場をつくられた人たちはほとんど新規プレーヤーなんですね。そういう意味で、ハードルが非常に高そうで儲かりそうもないというご意見も多数あったわけですけれども、儲かりそうもないとみんなが思っているからこそ、実はそのハードルを乗り越えた人たちが新市場を創造するわけですから、そういう意味で、いわゆる兼業を認めたら、特に銀行は今の決済網を持っているわけですから、同期的管理も含めて有利に違いないわけです。もしこの新サービスを銀行にすごく期待するというなら今までの議論が本末転倒のような気がしていまして、そういう意味で私は、専業でいいと思います。

私自身は日ごろ、新しいサービスとか新しい事業を行う人に対して自由であるべしという論者ですから、兼業だろうと専業だろうと、それはその経営責任を負う人が考えるべきだという主義なんですけれども、その私においても、今回のこのサービスとこの機関においては、専業が競争性の公平を担保する。そして、先ほど経営責任をとればいいではないかと申し上げたんですけれども、これは単に経営責任を1組織がとるという話ではない。結構社会を混乱せしめるサービスでもありますので、その点からも専業がいいのではないかと思っております。

○小足委員

前回ある委員が保振機構の例を出されましたけれども、保管振替機関とこの電子登録債権管理機関の持つ類似性等を考えますと、原則的な考え方としての専業というのは合理的な考え方だと思いますが、先ほどから例外について、事務局からそういうご提示があったのでということだと思いますが、一定の業種についての例外を認めるかどうかというところに、皆さんの議論が集中しています。

どのような業法を見ても、専業制をとる業法の中で例外的に兼業を認めない業法というのはあまり見たことがないと思います。というのは、本業に関連する業務であるとか、本業を効率的にし付加価値を上げるような関連する業務を行うことを例外的に認めるというのは、どのような業法にもあるような気がしております。

そういう観点も、管理機関の兼業について検討する際には必要ではないかと思います。

○高橋委員

前回まで、利用者とサービスを提供する側の、言ってみれば直接的な利害関係の方の議論が続けられたと思っております。本日は多様な意見が出ているので、ちょっと発言させていただきたいと思います。

私自身は、やはり専業でスタートすべきではないかと考えております。その視点としては、倒産隔離の観点と、公平性、中立性という観点でございます。どこに例外を認めるかという話もありましたけれども、そしてまた、ビジネスの世界、どのように使われるか分からないからあまりガチガチにするなという話がありましたけれども、どう聞いていてもメガバンクのようなものが想定されていて、ほかのものは例外としてはなかなか認めがたい状況なのかなと理解しております。

その点から考えますと、銀行の優越的地位の濫用の危険性は決して低くはなくて、公正取引委員会が排除勧告、排除命令を出している状況から見ましても、この辺を正していただいてからでないと、私どもとしても、なかなか「銀行ならいいですよ」とも言い難いと思っています。

私は先ほどの金丸委員のご意見に大変賛成でございまして、もうこの制度がスタートするということ自体が大きな進歩なわけですから、その中で汗をかいて工夫する事業者が出てくることを期待したいと思います。

○小宮産業資金課長(経済産業省)

これはユーザーサイドで見ると3つぐらい、本当は4つぐらいあるんですけれども、うちの役所の関係ですと、手形の代替とリースクレジットの債権の流動化、それからCMS、3つぐらいビジネスモデルがあるのです。手形の代替については、もうこの審議会でも相当議論が出ていますけれども、例えば1つの大きな管理機関があった方がいいとか、やはり銀行が兼ねていると情報を覗かれてしまうのではないかと心配という声も上がっていまして、専業が望ましい、よしんば兼業するにしてもファイアーウォールは高くしてくれという、これは中小企業の割と大きな意見だと思います。

他方、例えばリースクレジット債権の流動化というのは、1回限りSPCに譲渡をするとか、もしくはCMSみたいに内輪でやるような場合は既存のシステムを有効に活用したい、これが事業者の方々のご意見でありまして、いろいろなリスクについてご指摘もありますけれども、例えばリースクレジットなどを見ても、クレジットの二重払いのリスクと電子登録債権の二重払いのリスクを比較したときに、もちろん昔は相当事故も起きましたけれども、近ごろは、クレジットで二重払いということはかなり少なくなってきているというのが我々の認識でありまして、そうすると、クレジット会社が例えば兼業で1回限りの譲渡をやるとしても、そんなにおかしなことにはならないのではないかという感じがしております。

昨年末に、当省と法務省と金融庁の3省庁で文章を出したときも、低コスト、低ランニングコストということはうたっているわけでありまして、やはり専業にすると1つ新しい会社をつくらなくてはいけないわけですから、当然のことながらコストは上がる方向に行くわけなのです。今の議論を聞いておりますと、専業が前提で兼業するとしたら銀行だ、こういうお話なんですが、そこは思考を逆転させて、むしろ銀行は非常に流通性の高い電子登録債権を扱うから専業を前提に考えて、兼業するとしてもものすごくファイアーウォールを高くする。譲渡回数が非常に少ないような場合というか、内輪でやる場合には兼業を認めるといった考え方があってもおかしくないのではないかと思います。

○岩原部会長

専業制にするか兼業制にするかの問題につきましては、多くの委員からご意見を承りまして、専業制が望ましいというご意見が多かったようには思いますけれども、なおそれ以外のご意見もありましたので、それを受けて、今後、答申案に向けて考えていきたいと思います。

では、それ以外の論点についていかがでしょうか。

まずは「2.電子登録債権の消滅の場面と管理機関による同期的管理について」の部分でお願いします。よろしいですか。

それでは、「3.管理機関による同期的管理の方法」、「4.その他」を含めてご意見を承りたいと思います。

○池田委員

「4.その他」の最後でお書きになっている2行について、いろいろご検討になった結果だろうと思うんですが、前回も議論が盛んにされていたCMSの関係で、上の2つの「○」に書かれていることの途中までは、そのとおりだろうと思うんです。つまり「管理機関による同期的管理が行われない電子登録債権を用いたネッティングを行う者は、他者の決済に関わる重大な責任を負うものである」それは確かなんですが、グループ企業間でのCMSなどの場合には、だからこそ自分たちでお金を出し合ってインハウス・クリアリング・センターというんですか、CCPというんですか、そういうものをつくっているはずでありまして、したがって、そこのCCPが計算を間違えれば自分たちに不利益が及ぶ。自分たちでリスクをとるという発想でやっていると思うんですね。

しかし、どうもここでは、その後「電子登録債権の特性に鑑みれば、ネッティングが現状のように一部の限定された者の間で行われるのではなく、広範に多数の者の間で行われ、社会的な決済網として利用される可能性もある」とお書きになっているところを見ると、今のCMSの発想とは違うことをお考えなんだろうと思います。

つまり、CMSの場合、そういうふうに広がる話では絶対にないはずでありますので。極端に言えば、CMSは、例えばある大自動車メーカーがそのメーカーのグループ企業相互の間での債権債務だけを取り扱うという形で処理するんだろうと思いますから、何かこう、ある中小企業に「おたくの債権をネッティング処理させていただければ、お金を動かさないで割と簡単にできますよ」というようなことを言ってくるような業者が出てきた場合にはとか、そういうような限定がつかないと、この文章はちょっと理解できません。

したがって、最後の「○」に「このような場合については、利用者の保護の観点から、電子登録債権を用いたネッティングを行う者に関し、何らかの規制を行う必要があるのではないか」と書かれていますけれども、これは今、私が想像したこのような場合、何かそういう業者が中小企業に何か呼びかけをするとか、「そういったケースについては利用者の保護の観点からと」と続く。さっき申し上げたように、今、行われているCMSでは、利用者は自分たちのリスク負担でCCPをつくってやっているはずでありますから、この文章は、そういう限定がつかないと理解できないと私は思います。

したがって、「電子登録債権を用いたネッティングを行う者に関し、何らかの規制を行う必要があるのではないか」というところだけ読みますと、CMSなどをやっているところ全部に特別な規制がかかるような感じに読めてしまいます。

私がなぜこれにこだわって申し上げているかというと、別にCMSをやっているようなところに与しようと思っているわけでは全くありませんで、本来、電子登録債権については、取引の規制法ではなくて取引の促進法として、私たちは考えてきたはずなんです。そして、その電子登録債権は、前回まで話が出てきたように、金銭移動なしの権利段階での決済処理ができるのが一つの利点であると。手形も実際には、法律的には相殺処理できるけれども、それは現実には行われない。一枚一枚交換所で決済するのが現実だということは、学会などでもほかの先生も言っておられます。そうすると、金銭移動なしの権利段階での決済処理ができる電子登録債権の利点を生かす制度にしなければいけない。グループ企業内の反復取引というのは、まさにこれが生かせる取引なんです。だから、そういうものに規制をかけてはいけないはずですよね。

ここでは管理機関について一定の規制を考えるということでやっているはずですから、私、最初のときの専業の議論でも、そういうことで発言しました。ところが、この最後の2行は管理機関の話ではありません。管理機関に支払等登録をするときの、そこまでの計算をするセンターをどうするかという話ですから、最後の2行のように、電子登録債権を用いたネッティングを行う者に関して何か一律に規制を行うがごとき表現をするのは、私は適切でないと思います。

さらに言えば、電子登録債権の利点を消すような規制をこの段階で発想すること自体、私は賛成できない。

○佐藤委員

まず、管理機関による同期的管理の方法の(2)その他の方法に含まれるのかと思いますが、今、実務のビジネスとして、収納代行するというサービスが結構広範に行われています。コンビニで電気料金や電話料金が払えたりということもあるわけですけれども、これはいわゆる収納代行者が電力会社とか電話会社の代わりに代金を受領するという取引形態でございまして、当然そういうことも予定していただきたいということが1つです。

2点目としては、その他のネッティングにかかわる部分です。

池田委員がご指摘になられたとおり、私も、1番目の「○」のご指摘は非常に適切に整理されていると思いますが、物事にはいろいろな見方がございまして、ネッティングを行う一つの効果として、トータルのリスクが減るという効果があるんですね。したがって、トータルリスクを排除するためにネッティングを行っている部分があるので、その反面的な現象としてCCPにリスクが集中してしまうということは、確かに現象としては起こるんですけれども、CCPに集中したリスクをそのままにしておこうということは普通は考えないので、瞬間的なリスクをいかに早く消していくかは当然、実務の世界でも考えますし、その際に一番重要かなと思っているのは、実は法的な安定性。いわゆる契約で行ったことが「確かにこれで債権の消滅、相殺が的確に行われたんだね」という法的な透明性とか安定性が一番重要だと考えておりまして、そこの整理をつけていただくと、CCPに集中するリスクは相当割合なくなってくるんですね。

最後のところで書かれている何らかの規制というのが、司法的なところまで含まれたようなお話であるのか、それとも管理機関の業務についてなのかよく分からないんですけれども、例えば資本規制とか業務規制を通じてネッティングのリスクを削減できるかというと、実はそれだけではないですよ、むしろ司法的な整理をきちんとしていただく方が先ではないですかというのが私の意見でございます。

○米澤委員

私は、基本的に2.以下は事務局原案に賛成なんですけれども、幾つかコメントしたい点がございます。

まず、原則型は、やはり送金だと思うんです。これは最初のころの法務省のご説明もそうでしたから。この送金の場合に、職権で抹消するという意味での同期的管理が必要だという点は何よりも基本で、一番大事な根幹だと思っています。そこを、周辺の議論はいっぱいあるんですけれども、本末転倒してはいけないので、まずその根本をしっかり押さえておくことが大事だと思います。

そこで、5ページの一番下の「利用者にとって安心で確実な制度とするため、実務的な検討が必要である」ということで、方法としてはまだ詰める点がいっぱいあると思いますが、1つ私が問題提起しておきたいのは、どこまでが法定要件で、どこまでが業務規程で、どこまで当事者との契約に任せていいのか、その整理は弱者保護という意味で非常に重要なことではないかという点です。

2番目に、6ページの「その他の方法」の債権譲受又は債務引受。これは9月の一番最初の会合で私が申し上げましたように、ちょっと言葉が足りなかったのでご理解いただけなかったかもしれませんけれども、ここに書いてあるとおり、管理機関が自ら債権債務の当事者になるということは非常によくないと思っておりまして、この事務局の問題提起に賛成でございます。

多分、2ページの相殺などの部分が一番難しいんだろうと思いますが、ここは私も実務的にどういうことができるのか、よく分かりませんが、事務局の問題意識の「同期的管理を行うことができない場合であっても、債務者の二重払いの危険をできるだけ回避するための方策が必要ではないか」こういうことで実務的な検討を進めるべきだろうと思います。

それから7ページの一番下、先ほど来、池田委員、佐藤委員のお話があった点ですが、ここは「このような場合については、」と事務局が書いておられるので、要は上にあるような、そういう場合には必要だということで、そう目くじら立てる話ではないのではないかという気がいたします。

○池田委員

米澤委員おっしゃるように、資金移動のある決済がメインである、これはそのとおりなんですが、資金移動のない支払等登録もあるので、その場合の処理ということで、先ほど佐藤委員から、透明性、安定性を司法の段階でということでご質問がありましたので、そこをちょっとお答えさせていただきたいと思います。

4ページの例1の方で言いますと、AからBへ債権100、BからAへ反対債権80、これを両方とも電子登録債権であるとお考えいただくと、相殺後という次の図で、AからBに債権20が残るんですが、私の考えでは、当然ここで80についての相殺による支払等登録をしていただきます。そして、そのデータを残していただく。これは私が書いているものでは、A、B両者の委託を受けてCCPが申請をする。要するに、A、Bからの申請ということで、きちんと消したものについて登録していただく。このことをやれば、「同期的管理が行われないものについても二重払いのリスクを回避すべき」とお書きになっているところが相当程度に実現できるはずだと私は考えております。

そのやり方を、例2でも極力使ってくださいと。つまり、この図で言うと、C-D間に50、20、A-B間に10、30とありますよね。こういうものについて1つずつ今の消し込みの支払等登録をしていただく。これはデータですから、できると思います。その結果、こういうふうにネット尻の資金送金が行われる。つまり期中の途中のところも全部支払等登録をしていって、クリアにしていただく。これが二重払いのリスクを回避することにもなるし、CMSのような内部的にやっているグループ内でのものを、中で何をやっているのか分からないという批判から救うといいますか、より確実な制度にすると思います。

最後にもう一点、和仁委員のお出しになられたものをお読みになって、高橋室長は先ほどBとDが債務者になったとき、これが払われないときにCCPがどう負担するのかと言われましたけれども、これは、和仁委員のやり方では、CCPに債権譲渡とか債務引受をするからなんです。だから最後、CCPが債権者になっているとかいったことになって、DとBが払えないときにCCPがどうやって負担をカバーするのかという話になるんですが、私の申し上げたやり方では、CCPは計算するだけであります。A、B、C、Dからそれぞれの債権のデータをもらって計算するだけですから、債権譲渡も債務引受もしません。したがって、Bがマイナス30、Dがマイナス10という場合には、BとDに債務負担があるだけでCCPには何の債務負担もない、こういう考えでこれから出る論文には自分の意見を書いてありますが、そういうこともご検討いただければ司法的な意味での透明性、安定性が、電子登録債権なら、今、申し上げたようなことができると思いますので、実現できるのではないかと考えております。

○池尾委員

今の点、1つ質問させていただきたいんですけれども、ネッティングに参加しているだれかがデフォルトしたときに、それを全部巻き戻すという話で考えられているということですか。

例えば、BがAから受け取ったものですぐCに払っているときに、Aがデフォルトした場合、BからCに対する支払も全部巻き戻して処理するというイメージで議論されたのか。

○池田委員

逆であります。私の今の発想は、期中でも支払等登録をしていって、そこで消し込んでいく。だから、巻き戻しはない。デフォルトの段階から払えないものをどうするか、債務不履行の部分をどうするかという議論になるのであって、そこまで消していったものはきちん、きちんと相殺について一個一個支払等登録をしていけば、そこで債権は消えている、そういう考え方です。

○池尾委員

それは本当にリアルタイムで同期的に支払がされていないと成り立たないような気がするんですけれども。

○池田委員

ですから、それは申し上げているように、相殺による支払等登録はお金が動かないという民法的な考え方です。ですから、資金移動がない形で、お金がそこで払われることなしに両方の債権が消されるんです。電子登録債権の場合は、権利段階での消し込みができるということです。それで、例えば100と80のものを相殺契約で相殺して「80は消しました」という支払等登録をすれば、もう20の債権しか存在しないんです。そうやって順番に消していこうという考え方です。

○岩原部会長

これは、あるいは始関管理官から伺った方がいいのかもしれませんが、まさに和仁委員のご意見の2ページ、「2 CCP制度について」に「多数当事者間に存在する債権債務関係を一括して清算・決済してしまう多数当事者間ネッティングを達成する方法としては、各当事者間の債権債務関係を、中心に存在する清算機関との間での債権債務に、債権譲渡又は債務引受を用いて置き換える方式と、CCPは置かず、当事者間のネッティングの合意のみを通して連鎖的に各支払額、受取額を決定して決済していく方式があります」と書いてあります。

今、池田委員がご指摘になったのは、多分、この後者の方法を使えばいいのではないかということ……。

○池田委員

いや、違います。後者についてCCPを置くんです。つまり、CCPが入るので、今のやり方ではCCPを置いて、そこに債権を譲渡したり債務引受をするんですが、それは入れませんということです。ただ、ここに書かれている後者は外から見えないやり方で、当事者が勝手に合意したということが前提になりますから、そこのところはCCPを通して支払等登録をして、データを残しましょうということです。

○岩原部会長

法律的に言いますと、池田委員のご指摘のようなCCPは計算をするだけの機関ですから、法律上の主体としてはここに関与してこないので、その意味では、和仁委員がおっしゃっている後者の場合についても、CCPみたいな計算機関があることは別に構わないわけで、それを含めて言えば、池田委員の御意見は、「CCPは置かず、当事者間のネッティングの合意のみを通して連鎖的に各支払額、受取額を決定して決済していく方式があります」ということになるのではないかと思います。

その後者の方法が実際上どれだけうまくいくのかということについて、これは世界的に大問題がございまして、実を申しますと、アメリカはU.C.C.のアーティクル4aという法律の405条e項で、そういうことを可能にすることを立法により決めております。ただ、そういう立法を行わないときに、計算は確かにCCPでやるのかもしれませんけれども、非常に多数当事者間のこういう債権債務関係を、私法上まさに適切にネットアウトしていくということをCCPに権利関係を引き移さないでやることは、実際上、非常に難しいところがあります。アメリカみたいな立法をせずにやれるかどうかは多分大きい議論のあるところだと思います。これは私法上の問題で、ここで議論すべきことではないと思いますけれども、そういうことがあるということだけ申し上げておきます。

○池田委員

1点お答えさせてください。

専門家の部会長にこう言うのは恐縮ですけれども、電子登録債権はまだ世の中に存在していませんので、今のままでは後者のやり方は非常に難しい。その正当性の証明ができないんです。ですから今、部会長がおっしゃったとおり、そこのところを電子登録債権のデータで、支払等登録をするということできちんとしようというのが私の提言です。

ですから、今までにおいては、電子登録債権のような公示性のある制度が当事者の合意のネッティングにはありませんから、私は、個々のネッティングの内容を分解して一つ一つ支払等登録をしていけば、そこがクリアできるのではないかと申し上げているわけです。

○野村委員

難しい議論に割り込んだ割には、単純なことを申し上げて恐縮です。

いろいろな議論があるんですが、基本的に考えなければいけないのは、決済のファイナリティをどう考えるかという点で、人によってかなり理解が違うということ。本来、日本の制度の中では現金決済か、あるいは日銀当預しかファイナリティを与えていないわけなので、そことの同期性を考えていくとなれば、池尾先生のようなご議論、これを途中で消し込んでいくことについて違和感を覚えられるということになっていくんだと思います。

恐らく将来的な方向性として考えたときに、私たち一般のユーザーの中には、例えば電子登録債権がこれだけ広範にネッティングされていくという現象が起こったときには、その段階でファイナリティが与えられるのではないかと思う人が出てくる。あるいは小口の電子マネーで今、行われていることに対して、実際もそこでファイナリティが与えられているのではないかと思っている人も出てきている、こういう現状の中で、その将来の図を描いたときに何か規制が必要なのかという問題提起がなされていると私は理解しています。

そういう点では、現状のファイナリティの制度の中でいくと、池田先生がおっしゃっているように事前に今回、電子登録債権で消し込みができるようになったときには、恐らくそこが間違いないような形で行われる司法上の制度を整備するという議論になって落ち着くんだと思いますけれども、実はもっと将来のことを考えているんだと思いまして、金融庁の方も、今、現実の問題ではないとしても、ここに論点があるということを頭出しされることによって、将来、社会的なインフラとして電子登録債権の決済が現実の社会でファイナリティを与えてもいい程度まで多様なネッティングが行われていくという現象が起こったときに、それを管理する人に何か業法上の規制がなくてもいいのか、そういう問題になるのではないかと思います。

そういう点では、今、実際に「ちょコム」のような形で、インターネットの世界で電子マネーがあたかも決済手段のように使われているという現状も含めた上で、そういった資金決済のあり方について業法上の規制を改めて考えていただくことが必要なのではないかと思います。

ですから、問題提起は私も共有しておりますけれども、今、ここでいきなりやるという話よりは、将来を見込んだ形で統一的に、ほかのものも含めて電子決済のあり方についての議論を本格的にやっていただく必要があるのではないかと思います。

○佐藤委員

断定的なことを申し上げる自信はないんですが、まさしく岩原先生がおっしゃったようなことが電子登録債権ができれば実現できるのではないかなといった期待感は持っています。

池尾先生がご質問されたことは、例えば4ページの図で言いますと、Dがデフォルトした場合に、債権債務の関係はそのままにして最終の資金尻だけを決済していると、巻き戻さなければいけなくなるんですけれども、途中で権利関係がネットアウトされているということになると、いちいち巻き戻す必要はなくなりますということになるんだろうと思います。

ただ、その場合であっても、例えばDのデフォルトリスクをだれが負担するのか、その部分は分担ルールとしてCCPが負担するのか、参加者が何らかのルールをもって損失分担ルールを別に定めるのかという問題が出てきますけれども、トータルのリスクからすると、非常に小さなリスクに削減されているとは言えるのではないかと思います。

○岩原部会長

今の佐藤委員のご指摘は、あるいは決済の期日が来たときのネットアウト、いわばペイメントネッティングではなくて、既にオブリゲーション・ネッティング、つまり債権関係の発生の時点からそれを、相殺となるかどうかは分かりませんけれども、それをネットアウトして消していくことを認めることによって、決済の、まさに池尾委員がご指摘になったような組み戻しをすることによるリスクを削減できるのではないかというお話だったかと伺いましたが、まさにそういうオブリゲーション・ネッティングを認めるためには、一括清算法という法律がつくられたわけで、そういう法的な手当てなしに一体どこまでのことができるのかという私法上の大きい問題が多分、控えていると思います。

かつ、仮にそれができるとしても、先ほどCCPが単に計算すればいいというご指摘がございましたが、それが本当にきちんと適正に行われるのか。先ほど私法上の問題として、本当に相殺関係として適切な処理が行えるのかという問題もあるというご指摘もありましたし、和仁委員のご意見書の中にもそういうことが書いてあるわけでありまして、特に、非常に多数の決済の参加者がいる場合には、CCPが仮に計算関係をするだけだとしても、非常に複雑な計算関係をきちんとやらないと、大変なことになるわけであります。更にデフォルトが発生した場合に、デフォルト時点でのオブリゲーション・ネッティングをした計算結果で債権・債務関係を処理するだけでいわゆるシステミック・リスクに対応しきれるかという問題はやはり残ると思われます。計算結果による破綻した当事者に対する債権額を有することになるCCPによる決済の参加当事者が、その債権額の支払を受けられないことから、連鎖的に他の参加者に対する債務を支払えないという問題が生じうるわけです。

そういう場合を含めて、まさに事務局原案の7ページの2つ目の「○」の後半部分、「ネッティングが現状のように一部の限定された者の間で行われるのではなく、広範に多数の者の間で行われ、社会的な決済網として利用される可能性もある」、そうなったときにはまさに、特に債権債務関係を引き受けるCCPですと、これはもう特に重要な問題ですし、そこまでいかなくても、計算関係等についても相当きちんとやってもらわないと大きい影響を与える可能性が出てくるし、そのような決済システムに生じうるシステミック・リスクの問題もある。そういう問題については何らかの法的な手当てが必要になってくるのではないでしょうか。それには恐らく佐藤委員ご指摘の、私法的な対応もあるでしょうし、広い意味での監督法的な対応も、あるいは考えられるかもしれないという問題意識を、この原案は書いているのではないかと理解しております。

○池尾委員

いろいろご説明を聞いていて、大分理解が進んできたような気がするんですが、ボトムラインとしては、佐藤委員がおっしゃったことで私に全然異議がなくて、損失分担ルールを適正に定めておけばいいだけの話であって、そういう「損失分担ルールをちゃんと設けなさい」くらいの緩い規制は要るかもしれないけれども、それで十分な話であって、あとは、そういうルールのもとで運営されているんだということを認識した上で、自己責任でやるといいますか、市場規律が働くような世界を期待するということで結論はいいと思うんですよね。

ただ、まだ1つよく分かっていないのは、オブリゲーション・ネッティングをマルチラテラルでやっていくとすると、どういう順番でやっていくかによってデフォルトリスクの配分が変わってしまうような気がして、順番の選び方によってデフォルトリスクのアロケーションが変わると思うので、それは2者間でやるときとは随分違う話になるのではないかという疑問です。

○小野委員

CCPの議論、非常に興味深く聞いていたんですけれども、現在の法制度としての電子登録債権というものは、CCPのような形でビジネスモデルとして利用しようと思えば不可能ではないと思いますけれども、ここではあくまでこの原則形の、AとBが相殺する、だからそこにおいて資金移動が行われ、その原則形は、恐らく送金だろうというふうに議論されているわけです。

マルチラテラル・ネッティングが行われるかもしれない、だから相殺の場合でも何らかの規制的措置が必要である、こういうふうに議論が流れているような気もしますが、それは和仁弁護士がおっしゃっているように全然別個の議論であって、電子登録債権がそれを利用するかもしれないけれども、全く別個の議論。ですから議論の場としてこの場がふさわしいのか、全然違う場がふさわしいのか、また、そういう私法的な、2人ならいいけれども3人なら規制されるのかとか、本来、私法にどれほど金融規制が及ぶのかという大きな問題だと思うんですね。ですから、簡単に結論が出る問題ではないと思います。

ずっとCMS等で議論してきたのは、もっと小規模な相対での決済、相殺の議論でして、それに対して今回の整理は、同期的管理としての消し込みは難しいかもしれない、難しいだろう、これが原則的におっしゃっていることだと思います。ただ、その後、それでも利用者のために何らかの規制が必要かもしれない、なぜならば、マルチラテラル・ネッティングの場合どうするんだというふうに議論が発展しているような、ちょっと議論が飛び過ぎているのかなと思います。

原則的には、もともとの議論、手形的利用かもしれませんけれども、その場合には同期的管理が必要でしょうと。そして、前半の議論かもしれませんけれども、銀行以外のところがどうやって同期的管理ができるんだろうか、それをちゃんと推進するような法制度としてくれるんだろうかというところがポイントであって、なおかつ後者のもともとの権利についてのCMSというところにおいては、同期的管理はもともと不可能、できない、する必要がないものであろう、これでもうピリオドでいいと思うんですね。将来もしマルチラテラル・ネッティングのようなものを考えるとしたら、それは別個の制度として議論しましょう、そういう議論だと思います。

○木村(拙)委員

業者の立場から一言申し上げたいと思うんですけれども、3.管理機関による同期的管理の方法として5ページに書かれております意見について、私は賛成でございます。

特にこの中で、2つ目の「○」のハの意見に私、大変関心を持っております。通常、私ども手形を発行したりした場合には、債権者から手形の提示を受けて、我々は銀行にその支払資金を提供することで一応すべての債権債務関係の整理が終わるわけですね。そういうことからいけば、この手続のように、我々債務者に立った場合には、口座に決済資金をプールしておく、それを管理機関が引き落としをする、その資金を管理機関が自分で管理しているレコードに従って債権者に配分するということで、引き落としと同時に管理機関が職権で支払と登録をして、これですべてが終わるといった流れになることが債権者、債務者双方にとって事務的にも負担が軽いものだろうと思います。

そういうことで、この意見に大変関心を持っております。

○岩原部会長

ほかに、よろしゅうございましょうか。もう一つ議題を抱えておりますので。

先ほどのオブリゲーション・ネッティングの問題に関連して一言申しますと、日本でオブリゲーション・ネッティングを唯一立法として認めているのが一括清算法でありますが、一括清算法は、あくまでバイラテラル・ネッティングだけを規定しておりまして、マルチラテラル・ネッティングを私法上、解決する立法措置というのは法技術的に難しいところがございます。さっき申しましたように、世界的に見ると、恐らくアメリカのU.C.C.のアーティクル4aの405条e項だけだと思いますが、わが国でそのような立法が可能か、非常に大きい問題だと思います。

先ほど池尾委員がご指摘になったような問題があるものですから、いろいろ難しい問題があるということだけ申し上げておきます。

それでは、今日のもう一つの議題に移らせていただきたいと存じます。

電子登録債権と金融関連法等との関係について、事務局から説明をお願いいたします。

○高橋企画課調査室長

電子登録債権と金融関連法等との関係について、ご説明いたします。資料21-2-1と、補足資料として資料21-2-2でございます。

まず、資料21-2-1の2ページでございます。

金融商品取引法との関係でございますが、社債等につきましては、金融商品取引法の対象とされておりまして、投資家保護と流通の促進などの観点から、仲介者規制や開示規制などが行われております。具体的な規制の内容については、簡単でございますが、補足資料の4ページにまとめさせていただいております。

電子登録債権につきましては、このような金融商品取引法の対象となる社債等の代替として利用されることも考えられます。金融商品取引法の対象となる社債等のうち、その代替として電子取引債権の利用が考えられるものは、(参考)にありますように、SPCの特定社債などがございます。このように、社債等の代替として利用されるような電子登録債権につきましては、やはり金融商品取引法につきましても、社債等と同様の規制を適用する必要があるのではないかと考えております。

具体的に、社債等の代替として利用される電子登録債権でございますが、原則として、この電子登録債権が売掛債権の流動化を行うことを目指していることを考えれば、商取引を原因とはせずに、投資家からの資金調達を目的とする電子登録債権が社債等の代替として利用されることが考えられるのではないかと思っております。

3ページでございます。

一方、商取引を原因とします電子登録債権につきましては、現在、商取引を原因とする手形─商業手形でございます─が現在、金融商品取引法の規制の対象とされておりませんので、それと同様に、同法の規制の対象とする必要はないのではないかと考えております。

ただ、将来その投資性が高まりまして、金融商品取引法の規制を及ぼす必要が生じた場合には、機動的に規制ができますように、現在、同法ではみなし有価証券に追加的に指定する仕組みもございますので、そのような法令の手当を行うことによりまして、金融商品取引法の規制を適用することが適当なのではないかと考えております。

なお、電子登録債権と社債の違い、あるいは金融商品取引法の概要につきましては、補足資料の方に簡単にまとめておりますので、ご覧いただければと思います。

特に補足資料の5ページ、細かな点で恐縮でございますが、このように、発生当初から小口化したり、発生後に小口化するケースがございまして、このように使えば社債等と同じように使えるのではないかということでございますが、このような利用が社債等に関する規制をあたかも潜脱するようなことになるのは適当ではないのではないかと思っております。

ちなみに、電子登録債権は記番号管理でございまして、同一の内容であっても必ず異なる記番号となりますので、同一の電子登録債権を発行するということは観念的に考えられなくなってしまいますので、必要な規制が適用されないおそれもございます。しかし、補足資料の6ページの(参考1)でございますが、現在でも、有価証券の発行の際に、1回当たりの勧誘を50名未満にすることにより開示義務等を回避するおそれがあるため、一定の期間の間に発行されたものを1つの有価証券としてカウントするという制度もございますので、このような規定を利用いたしまして、社債等に関する規制と同様の規制を行う必要があるのではないかと考えております。

次に、本体資料の4ページ、金融商品販売法との関係でございます。

現在、社債等につきましては、顧客に対する説明義務などを定める金融商品販売法の適用の対象となっております。先ほど申し上げましたように、商取引を原因とせず資金調達を目的とするような社債等と同様の電子登録債権につきまして、社債等と同様の規制を行うのであれば、この金融商品販売法につきましても現在、社債等が対象となっていることから、同じように対象とすることが適当ではないかと思います。

また、商業手形については規制の対象になっておりませんので、同じように規制の対象にしないことが適当かと思います。

同じように、将来、金融商品取引法の規制を及ぼすような場合には、金融商品販売法についても規制の対象とすることが適当なのではないかと考えております。

次に5ページ、本人確認法等との関係でございます。

現在、金融機関だけでなく社債の振替機関など幅広い対象に対しまして、マネーロンダリングあるいはテロ対策などの目的で、本人確認法によって本人確認義務が、また、組織的犯罪処罰法により疑わしい取引の届出が義務づけられております。これらの法律の趣旨に鑑みますれば、電子登録債権に係る取引についてもこれらの法律の対象としまして、管理機関に対し、本人確認義務などを課すことが適当なのではないかと思います。

なお、本人確認につきましては、補足資料の10ページにございますように、1度本人確認を行った顧客につきましては、次回以降の取引では、本人確認済みの顧客であることを確認できれば再度の本人確認は不要とされておりますので、管理機関についても同様の取り扱いになるのではないかと考えております。

次に6ページ、電子マネーとの関係でございます。

電子マネーにつきましては、現在、定まった定義があるものではございませんが、例えば(注)にありますように、平成10年の大蔵省の報告書におきまして、ここに記載してありますような定義が書かれております。

想像される仕組みといたしましては、補足資料の12ページをご覧ください。

電子登録債権につきましては、このように、いわゆる電子マネーとして利用されることも考えられなくもないかなと思っております。その場合、発行者Aが電子マネーの発行者で、利用者Bが最初にSuica等でチャージを支払うような形で電子登録債権を購入する。それをショッピングの際に電子登録債権の譲渡という形で加盟店に支払を行い、登録原簿の方は1円単位で記録が可能でございますので、電子マネーのようにどんどん記録していくということも、使い様によっては考えられなくもないのかなとは思います。

しかしながら、本体資料の6ページでございますが、支払期日が確定日となっていたり、あるいは現時点の案では債権者、あるいは譲受人の情報の登録が必要である、あるいは譲渡人、譲受人からの申請が必要である、それから今、申し上げましたように、商取引を原因としない電子登録債権であれば金融商品販売法あるいは金融商品取引法の対象とする必要があるのではないかといった点を考慮すれば、当面、電子マネーとして利用される可能性は低いのではないかとも考えられますので、現時点では、電子マネーに使われる可能性があるからといって特別な規制を行う必要はないのではないかと考えております。

続きまして、本体資料の7ページ、電子登録債権制度と標準化でございます。

複数の管理機関があらわれる場合には、管理機関の間の競争によるコスト低減といったことも期待されますが、管理機関ごとに端末機が異なったり、あるいは登録原簿の方式などが異なる場合には利用者の利便が損なわれるということは、前からご指摘があったかと思います。このため利用者の利便を考慮すれば、電子登録債権制度に関し、一定の事項について標準化を行うことが適当ではないか。

今のところ、例として、手続に関する電子フォーマット、あるいは管理機関と金融機関の間では何らかのデータ送信が必要かと思いますので、その電子データの交換に関する技術などが標準化を図るべきものとして考えられるのではないかと思っておりますが、ほかにどのような事項について標準化を図ることが適当か、ご議論いただければと思っております。

○岩原部会長

ただいま高橋室長からご説明いただきました件につきまして、皆様のご質問、ご意見をいただきたいと存じます。

いかがでしょうか。

○小足委員

1番の金商法との関係で、質問があります。議論として、金商法の対象となる有価証券とせずに「社債等」を例として挙げられていることに意味があるのでしょうか。

もう一つは2つ目の「○」で、商取引を原因とせず、投資家からの資金調達を目的とする電子登録債権は、金商法の対象となる可能性があるのではないかというご議論になっておりますが、例えば売掛債権の流動化について、もともと売掛債権というのは商取引を原因としていますけれども、それを小口分割して投資家から資金を調達するというようなことは、よく行われているわけで、ここでは小口分割して資金調達を行うというところにメルクマールを持っておられるのでしょうか。

○高橋企画課調査室長

有価証券にするかどうかという点につきましては、有価証券は株式などいろいろ入っておりますので、法技術的な問題としまして、「有価証券だ」と言ってしまいますと株式に係る規制を適用すべきなのか社債等に関する規制を適用すべきなのかという問題がありますので、そういった株式として使われるものではないだろうということで、ここでは社債等という形で説明させていただいております。

さらに、実質的には信託の受益証券として使われる可能性があるのかとか、そういった点まで詰めていく必要があるかと思いますが、信託の受益証券が配分が確定していないという点を踏まえれば、電子登録債権が今、確定利払いかと思いますので、そのあたりを考慮すれば必ずしも受益証券には当たらないのではないかとか、そういった点もさらに考慮する必要があるかと思っております。ここでは少なくとも社債等には当たるだろうという趣旨で、まず社債等と書かせていただいております。

それから、小口分割化がメルクマールになるかということですけれども、別に社債を発行するときに、最初から小口にするか分割化するかという点は関係なく、社債の発行であれば社債ということに着目して規制がかかっているはずで、その後、私募に当たるのか当たらないのかとか、そういった人数概念は別のところで規制が働いているかと思いますので、それと同じように考えていけば用は足りるのではないかと現時点では思っておりますが、さらにご指摘の点も含めて、検討を続けていきたいと思っております。

○野村委員

今の点に関連して、確かに商取引を原因としないで資金調達を目的とするものについて、社債に該当するということで規制を課することは分かるんですが、いわゆる募集・売り出しの規制をかけてディスクロージャー規制をかけるときには、50というメルクマールがあるわけですけれども、この50について、株分けみたいな形で、例えば最初に10発行して、それが5ずつに分けられるとかいうのをある程度の期間で限っていく、そういうイメージなんでしょうか。

そのあたりのところが、場合によっては、最初に幾らに分けられたのかを全部確認しておかないと、分けてしまったら規制に引っかかってしまうというようなことが起こってくる可能性があるんですけれども、そのあたりはどう整理されておられるんでしょうか。

○高橋企画課調査室長

まず、「商取引を原因とせずに」という概念に当たった上で、その後、販売の形式といいますか、分割の形式にいろいろな場合があるのではないかということだと思いますが、先ほど申し上げましたように、補足資料6ページの(参考1)にあるような形で、とりあえずは一定程度、潜脱漏れはカバーできているのではないかと思っております。さらにそれを詳細に場合分けをして、今、ご指摘があったような点について、そこまで規制すべきではないのであれば、逆に外すべきなのか、あるいは規制すべきなのに読めないので規制の対象にすべきなのかは別途、個別に検討を続けたいと思います。現時点で「どこまでであれば」とは回答できません。ご指摘を踏まえてさらに検討したいと思います。

○岩原部会長

多くの方に手を挙げていただいたんですが、もし先ほどの小足委員のご質問に関連するご質問があれば。

○平田委員

これは本当に確認なんですけれども、2ページの2つ目の「○」の書き方を見ますと、商取引を原因としているのか、していないのか、そこで切っているようにも見えるんですけれども、考え方としては、電子登録債権を使っていろいろなビジネスモデルを展開した場合に、その行為が今の金融商品取引法の規制の対象になるかということであって、今の基本的な考え方、規制対象という考え方は特に変わらないと理解してよろしいんでしょうか。

○高橋企画課調査室長

すみません、ご質問の趣旨が必ずしもよく分からなかったんですが、ここでご提案させていただいていますのは、要は金融商品取引法と同じで、同じような性質の金融商品については同じような規制が行われるべきであるということに尽きるかと思います。そのときに、同じような性格というのは一体何だろうかということをとりあえず考えてみると、社債などと同じような機能を果たすものであれば、それは社債と同じような仕組みをとるべきではないかということに尽きます。もし細部を検討していった過程でこの考え方がおかしい、あるいはもうちょっとほかにもあるのではないか、あるいは広げ過ぎではないかということであればそこは調整できるように、法技術的には考えていきたいと考えております。

○田中(浩)委員

商取引に基づいた債権であるかどうかで規制を分けるという考え方はよく分かります。しかしながら、商取引に起因したものには規制をかけない、そうでないものには規制をかけるとした場合、根源的には商取引には関係していないものについて、商取引を偽装して電子登録債権の記録を行うようなことも生じかねないので、実務的にこういう分け方が機能するのかどうか少々疑問に思います。

○高橋企画課調査室長

まず、構成要件というか、概念がはっきりしていれば、仮に偽装的にやって多くの人に募集等をかければ、事後的にそれが偽装であることが証明できれば当然、金商法違反だということになります。まだ内部的に検討が進んでいませんが、当然監視委員会の対象になり得ると思いますので、偽装がある場合でも、観念的にはつかまえ得る形だとは思います。

○田中(浩)委員

実際には取引にそれほど必要性がないような複数の第三者を介在させて商取引を装う場合など、現実的にそれを偽装だと認定することは困難な場合もあるのではないかと思います。

○小野委員

社債類似であれば金商法の適用がありますと、これは極めて耳に心地よい議論なんですけれども、その後の、では何が社債なのかという判断が、5ページの図になるんですけれども、もともと電子登録債権ですから、記名式であることは明らかですよね。それで仮に少人数だとします。そうすると、日本の法制がもしかしたら特殊なのかもしれませんけれども、シンジケート・ローンとの差はほとんどない。海外に行けば私募形式はもう、私募の引受契約とか私募の売買契約を見ると、中に「ローン」と書いてあったりするケースもあるぐらいですから。

そうすると、原則論に戻りまして、社債類似というのは本来、発行会社が「社債」として発行した場合、ですから法制的には会社法の改正等によって「社債」として発行した場合に初めて適用がある、こう整理しないと、明らかに詐欺的なことをやれば別ですけれども、本来の価値に見合わないかもしれない債権だったということになると、またそれが、実は社債類似行為だったということを言われるかも知れないということになると、下手なことはしない方がよいということになって、使われなくなってしまうことになりますから、やはり社債類似と言うときには、会社法上の社債だということで議論する。仮に、いや、そうではなくていろいろなケースがあるんですということになれば、シンジケート・ローンについて金商法の適用がありや否やというかつての議論に、もう一回遡って議論せざるを得ないと思うんですね。

それと、金商法の適用があって社債類似ということになると、「有価証券」として扱われる、「みなし有価証券」ではないかと思うんですけれども、そうすると、いろいろ議論されているし、現在も金融庁の方で検討されていると思うんですけれども、適用関係が全く違ってくるという大きな問題があります。いったん買って売るときに、それは引受行為になるのかという問題もあります。そんなことではだれも買えなくなってしまう。転売しようと思ったら買えないことになる。

また、少人数私募だと転売規制がかかってしまう。管理機関はどうするんだろうか、転売したときに管理機関はそれに加担したことになるのかとか、そういう制度的な細かい議論は今後されるんでしょうけれども、そのそもそもの発端として、やはり「社債」として会社法上、債務者が発行した場合には、それは社債として金商法上取り扱いますということであれば、それは議論の整理としては当然だと思いますし、これはローン類似です、ですから別に、取締役会決議もローンであれば、多額の借財でなければかからないかもしれませんし、仮に人数が増えたとしてもそれはシンジケート・ローンの議論と同じであって、では、シンジケート・ローンとどこで区別するか、シンジケート・ローンはなぜ規制されないのか、というところからの議論にたどりつくと思うんですね。

全く穿った議論をすれば、これを預金類似としてやれば出資法の議論になるわけでして、それは人数の問題ではないかもしれません。ですから、会社法、出資法、金商法─金商法と言ってしまうとまたもとに戻ってしまいますが、それぞれにおいて検討すべきであって、何となく雰囲気として、多人数が出てくるとそれは金商法の世界ですよ、なおかつみなし有価証券、信託受益権も全部みなし有価証券になってしまっていますけれども、それどころではなくて、これは有価証券ですよと。したがって、今まで手形類似だけれども手形ではない、指名債権類似だけれども指名債権ではないと言っていたものが、もっと、一番のご本尊である有価証券にまで行き着いてしまい規制に服することになるというのは、利用する側にとっては危なくてしようがないということで、利用されなくなってしまうと思うんですよね。その辺に十分気をつけて議論しないといけないかと思います。

○原委員

1つは、今、ここで挙がっている関連法との整理なんですけれども、社債で整理しておいて、投資性が強くなればみなし有価証券というところで、私も、実態に合わせた定義に基づいてルールを決めていっていただきたいと思っております。

そのとき、先ほど野村委員がおっしゃったように、募集とか開示規定については人数とか期間とか、こういう要件がかかわってくるので、今回の電子登録債権がこれまでのルールというんでしょうか、要件にぴったり当てはまるかどうかというところを検討するような場面も出てくるかと思いますので、既存のルールだけに杓子定規に当てて決めるのではなくて、全体的な討議ができる形にしておいていただきたいと思います。

2点目は、議論を大変興味深く聞いてはいるのですけれども、特に消費者から見ると、電子の分野は技術が先行して、技術が発展していくことの妨げにならないようにということで、ルール整備がどの分野においても後手後手に回ってきているところがあります。それが大変消費者側の混乱を招いていると私は思いますけれども、少なくともこの電子登録債権の議論では、定義をはっきりさせ、ルールはどういうところまで設ければいいかということを明確化し、その中で法定化するのは何かということですね。ほかの電子分野とは比べ物にならないくらい、ここはしっかりしていただきたいと私は思いますので、確かに技術の進歩というのはあるかもしれませんけれども、ルール整備が後手にならないようにお願いしたいと思います。

3点目は、最後に標準化の話が出ておりました。

全銀協の方でいろいろなものについて既に標準化をなさっているということがありますが、ISOという国際標準化機構がございまして、ここのコポルコという消費者政策の委員会では、金融分野についての標準化の動きなども若干あります。金融は独特の世界があるので大変難しいところはございますけれども、ただ、こういった電子登録債権は必ず世界的な、国際的な場で活用されていくことになると思いますので、もちろん全銀協もおやりになっていらっしゃるとは思いますけれども、国際標準化機構とか、国際の場との連動も考えていただけたらと思います。

○佐藤委員

全体としては全く異論はないご整理なんですけれども、1点質問させていただきたい点がございます。

管理機関のかかわりについてなんですけれども、例えば金融商品販売法を適用するときに、管理機関の対応によっては、あたかも発行者のように見えてしまったりとか、金融商品販売業者のように見えてしまうケースがあるかもしれないと思うんですけれども、その場合は金融商品販売業者等としての規制、発行者としての規制も当然お考えになっているという理解でよろしいんでしょうか。

○高橋企画課調査室長

原則として、管理機関はブックキーピング業務になるかと思いますので、今、おっしゃったような局面が必ずしもピンと来ませんが、もしそのような局面が仮に考え得るのであれば、それは必ずしも金販法の発行者というわけではないでしょうし、そういったことに変な規制がかかることは適切ではないというご趣旨だと思いますが、私どもも、もちろんそうかとは思いますので、それに合わせて考えていきたいと思います。

○佐藤委員

そうしますと、ブックキーピングをやっている限りは、発行者でもなく金融商品販売業者でもないということでよろしいわけですよね。

○高橋企画課調査室長

その「やっている限り」というのが、債権者とか債務者にならないという趣旨であれば、必ずしもそうではないかと思いますが、申請されたものを記録するという点においては、それが金販法の発行者や金融商品販売業者になるのはちょっとおかしなことではないかと思います。

○小宮産業資金課長(経済産業省)

非常に基本的な質問をしたいと思います。

そもそも電子登録債権というのは、原因関係を問わないことが大前提だったと思うんですが、今日の議論を聞いていると、商取引を原因とするとか、もしくは社債の代替として利用されるとか、何か原因関係を問わざるを得ないような議論の建てつけになっていて、何となく思想的に矛盾があるのではないかという感じがするので、これをうまく説明していただきたいんですけれども。

○高橋企画課調査室長

先ほどの偽装の話と同じなのかもしれませんが、原因債権なり、登録時に分かるのかという問題かと思います。そもそも売掛債権の流動化を目的としていたにもかかわらず、ありとあらゆる使い方を許容するような制度をお考えなんでしょうかと逆に哲学としてお伺いしたいようなところがありまして、当然、基本的には何らか、売掛債権がベースにあるに違いないでしょうという趣旨です。では、それは実際ではどうやって判定していくのか、取引を害さないように考える必要があるのではないかという趣旨のご指摘だと受けとめておりますので、もし今、ここに書いているようなやり方ではうまくいかないということであれば改めたいと思いますが、基本的な考え方としては、今まで、申し上げたようなことではないかと思っております。

○池田委員

結論的には、事務局案に大筋賛成でございます。

今、小宮課長が言われたところは、私、以前から個人的には、別債権といっても牽連性があるんだと主張してきたところでありまして、実際に法制審の方の議論でも、別債権は別債権なんだけれども、債務者保護というようなところでは牽連性が出てくるという議論になっているわけです。

私が申し上げたいのは小野委員のご発言に沿った形で、これは法制審マターかとは思いますが、電子登録債権というのは、そもそも基本的には有価証券ではないという仕切りで考えられてきたと思います。つまり、指名債権でも手形でもない新類型ということで、有価証券ではないという発想で私たちは検討してきたと思っております。したがって、それが特殊な使い方をしたときに社債の代替として利用される可能性があるという今日の問題提起だと理解しておりますので、とりあえず社債等類似として整理しておこうといっても、それは別に電子登録債権が社債類似になるわけではなくて、使われ方としたときに考えられることを、一応社債で考えておこうということだと思います。

したがって、「商取引を原因とする」という形で仕切っていただきましたが、3ページでも、商業手形が金融商品取引法の規制の対象ではないんだから、当然これも規制の対象とする必要はない、商取引を原因とする場合には規制対象にならない、これは当然の仕切りだろうと私は思っております。

売掛債権代替で電子登録債権を使うことを考えますと、それで資金調達とか流動化をやった、途中で金融商品取引法がかぶってきたなんていうことになると大変なことになってしまうので、さっき小野委員が言われたように、そこのところでは、かかってくる法律が全く違ってしまいますので、基本的な仕切りとしては、今、申し上げたように、電子登録債権は基本的には有価証券ではないという考え方で今までやられてきたということは、是非確認していただきたいと思います。

○野村委員

今の池田委員のご指摘と全く同意見なんですけれども、先ほどのご質問との関係でいきますと、手形も無色透明の抽象的金銭債権と言ってきましたけれども、しかし、融通手形については別途の議論をしてきましたし、あるいはかつて消費者の世界でマル専手形というものが出ていたときには、現行法で言いますと特定商取引法に係る、抗弁の切断に関する議論をどう考えるかということを業法上、議論した記憶もありますので、そういう意味では、原因環境を問わないという議論と業法上の規制がかかるという議論は別次元の問題として考えていいのではないかと思います。

今、池田委員が最後におっしゃったのは、私も先ほどそういう趣旨でご質問したんですけれども、使われ方に対して余計な形でこの規制がかからないようにということだけは当然の前提として、過度な規制にならないことだけはお願いしたいと思います。

○岩原部会長

まだまだご議論あるかと思いますが、本日は時間が来てしまいました。社債類似の機能を果たす場合以外の論点もございますので、それについては次回ということでよろしいですか。

では、次回は今回の議論を整理したものと、今回なお議論していただけなかった部分を含めた形でご検討をお願いしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

それでは、私の不手際で最後の時間が足りなくなってしまいましたが、本日の審議はこれで終了させていただきたいと存じます。

この後、記者会見を行いまして、本日の会合の模様についてお話しさせていただきたいと思います。

それでは、次回の開催予定を事務局からお願いします。

○高橋企画課調査室長

次回は11月29日水曜日、午後2時からを予定しております。

内容につきましては、今、部会長からお話がありましたように、今回に限らず、これまでの議論を整理したものをお出ししたいと思っておりますので、そこにまだ何か議論が尽くされていない点があれば議論していただくといった形で、取りまとめに向けたいと考えております。

詳細につきましては、また追ってご連絡を差し上げたいと思います。

○岩原部会長

それでは、本日の審議はこれにて終了させていただきます。

長時間熱心なご議論、どうもありがとうございました。

以上

サイトマップ

ページの先頭に戻る