金融審議会金融分科会第二部会(第36回)・「情報技術革新と金融制度に関するWG」(第22回)合同会合議事録

日時:平成18年11月29日(水曜日)14時00分~16時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

○岩原部会長

それでは、時間でございますので、ただいまから第36回金融審議会金融分科会第二部会と第22回情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、本日もお忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、早速、お手元の議事次第に従いまして議事を進めさせていただきたいと存じます。

本日は、これまでのご議論を踏まえまして事務局に作成していただきました「これまでの論点の整理について」をもとに、忌憚のないご意見をいただきまして、取りまとめに向けた議論をしていただきたいと考えております。

それでは、まず「これまでの論点の整理」につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。

○高橋企画課調査室長

本日、資料は1つでございまして、お手元の資料の第二部会36・情報技術革新WG22の「これまでの論点の整理について」でございます。

今、部会長からご紹介いただきましたように、事務局で、これまでにご議論いただきましたことにつきまして、文章を整理させていただきました。恐縮でございますが、事務局から読み上げさせていただきたいと存じます。

○仲野企画課調査室課長補佐

では、読み上げさせていただきます。


これまでの論点の整理について

電子登録債権の意義

  • 近年、経済社会のIT化が進展し、商取引・金融取引の分野にも電子的手段を用いたサービスが広がりを見せる中で、わが国の国際競争力を強化し、経済を発展させる基盤として、ITの更なる活用が期待される。

  • このような状況を踏まえ、社債、株式等については、証券市場の国際競争力を高めるため、わが国の証券決済システムを改革する一環としてペーパーレス化が実現し、権利の移転を電子的に行うための法整備が行われたところ。

  • 一方、企業間信用の手段である手形については、中小企業者を含む事業者の資金調達の手段として利用されてきたが、紙媒体を利用することに内在するリスクやコストの問題から、近年その利用が減少。

  • 指名債権についても、二重譲渡のリスクや債権の存在確認等のコストの問題があり、事業者がその保有する売掛債権等を用いて資金調達を行う際の制約要因。

  • 経済社会のIT化が進展する中で、これらの問題を克服し、事業者の資金調達環境を整備するため、電子的な記録によって権利の発生等の効力を生じさせ、取引の安全や流動性を確保する新たな制度として、電子登録債権制度の整備を行うことが期待される。

  • また、本制度を整備することにより、わが国経済の活性化にも資するもの。

電子登録債権制度と管理機関の果たすべき役割

  • 電子登録債権は、手形や指名債権に代わり、電子的手段による債権譲渡を通じた新たな資金調達の手段として、広く利用されることが期待される。

  • このためには、電子登録債権制度の信頼性を確保することが必要不可欠の課題であり、取引の安全や流動性を確保する要請とともに、利用者の保護の要請に応えていくことが何より重要。

  • とりわけ、電子登録債権の権利の内容・帰属を定める登録原簿を管理し、業務規程等を通じて利用者の取引を規律することとなる管理機関は、社会の公器として、公正性・中立性が確保され、国民から信頼される存在である必要。

電子登録債権の決済の安全性の確保

同期的管理の必要性

  • 電子登録債権の効力は管理機関が管理する登録原簿への記録によって生じるなど、登録原簿は重要な役割を果たすため、電子登録債権については、取引関係者の意思等を迅速かつ正確に登録原簿に反映させることが、取引の安全や利用者の保護にとって非常に重要。

  • 取引関係が迅速かつ正確に登録原簿に反映されることにより、利用者は安心して電子登録債権を利用することができ、電子登録債権制度自体に対する信頼性も向上。

  • 電子登録債権制度においては、管理機関に対する支払等登録(記録の抹消)の請求は、原則として債権者が行うこととされており、債務者は債権者が承諾しない限り記録の抹消の請求を行うことが困難。

  • このため、債務者が支払等を行ったとしても、債権者の対応如何では、債権が譲渡され、債務者に二重払いの危険が発生。

  • とりわけ実際の取引において一般的に利用されている金融機関を通じた資金送金により支払等がなされる場合、通常、債務者による資金送金が、債権者による記録の抹消の請求に先立って行われることになると考えられるため、この二重払いの危険の回避が、電子登録債権制度にとって極めて重要な課題。

管理機関による同期的管理

  • 以上のような債務者の二重払いの危険を防ぐためには、債務者が支払等を行った場合、管理機関が、債権者からの請求を待たず、職権により記録の抹消を行う仕組み(管理機関による同期的管理)を導入することが有効。

  • 電子登録債権の抹消の場面のうち、資金送金を伴うものについては、資金送金の事実を管理機関が確認することによって、管理機関が同期的管理を行うことが可能。

  • 他方、資金送金を伴わない相殺などについては、管理機関が相殺などの事実を確認することは事実上困難であり、管理機関による同期的管理を行うことは困難。

  • これらを踏まえれば、管理機関による同期的管理は、事実の確認が比較的容易な金融機関の口座を利用した資金送金が行われる場面を対象とすることが適当。

  • 相殺の場合などは、管理機関による同期的管理が行われず、専ら当事者からの記録の抹消の請求によることとなるが、このような場合であっても、債務者の二重払いの危険をできるだけ回避するための方策を検討することが重要。

管理機関による同期的管理の方法

  • 管理機関が資金送金の事実を確認することにより同期的管理を行う場合、債務者の口座から債権者の口座への資金送金があった旨の連絡を、管理機関が金融機関から受け、記録を抹消する方法が考えられる。

  • この方法をとる場合、資金送金にあたっては、債務者の口座からの出金と債権者の口座への入金との間に通常タイムラグが生じることとなるが、債務者にとっては、二重払いの危険を回避する観点から、債務者の口座から出金された時点で、登録原簿の記録が抹消されることが望まれる。

  • 他方、債権者にとっては、自らの口座への入金が確認されないまま記録が抹消されるのは不適当。

  • このため、記録の抹消自体は資金送金の完了時に行うことを基本としつつ、例えば、債務者の口座からの出金の時点から、債権者の口座への入金の時点までの間について譲渡登録を禁じることなどによって、このような問題を解決することが重要。

  • 利用者にとって安心で確実な制度とするため、今後適切な実務的検討が行われることが期待される。

  • 管理機関が債権譲受・債務引受を行い、又は債権者を代理して支払を受領することにより、管理機関による同期的管理を確保する方法も考えうるが、(1)管理機関が自ら取り扱う電子登録債権の債権者・債務者となる点で公正性・中立性を害するおそれがある、(2)他の債務者の信用リスクを引き受けるため破綻リスクが高まる、(3)自らが資金送金に関与することとなるため、資金送金に係るトラブルが生じかねず、また、資金流用を防止する措置が必要になる、といった問題があるため、不適当。

管理機関の業務の適正性の確保

管理機関の公正性・中立性の確保

  • 電子登録債権の発生等の効力は、登録原簿の記録によって生じるものであり、その登録原簿を管理する管理機関については公正性・中立性が確保されることが極めて重要。

  • 管理機関の公正性・中立性が十分に確保されない場合には、管理機関に集中することになる利用者に関する情報が管理機関自らの利益のために流用されるのではないか、また管理機関が管理する登録原簿について、自らの都合のいいように記録が行われるのではないか、といった懸念が生じ、電子登録債権制度そのものへの信頼が揺らぎかねないところ。

  • このため、管理機関の公正性・中立性が確保されるような制度設計が行われる必要。

管理機関の破綻の回避

  • 管理機関が破綻した場合には、利用者に多大な影響を及ぼすだけでなく、わが国の経済社会にも大きな混乱が発生する懸念。

  • 登録原簿の誤った記録(不実の登録)については管理機関には特別の責任が課されているが、管理機関が破綻した場合には、その責任が果たされないため、管理機関の破綻は極力回避する必要。

  • 管理機関が破綻する要因としては、管理業そのものの不振、登録原簿の管理ミス等による賠償責任、他業を行う場合の当該他業の不振による影響など。

  • これらの要因に対応し、管理機関の破綻を回避するような制度設計が行われる必要。

登録原簿の信頼性の確保

  • 電子登録債権は、登録原簿の記録によって発生等の効力が生じるもの。登録原簿の記録に誤りがある場合には、譲受人が誤った記録を正しい記録であると誤信して電子登録債権を取得するおそれがあり、取引の安全を阻害。

  • 管理機関が不実の登録を行った場合には、管理機関に対し特別の責任が課されることとなるものの、そもそも管理機関が登録原簿の真正性を保ち、その信頼性を確保することが、本制度が円滑に実施されるための大前提。

  • 管理機関が管理する登録原簿の信頼性が確保されるような制度設計が行われる必要。

管理機関の要件

(業務範囲)

  • 管理機関が他業を行うことについては、次のようなことから、兼業を認めるべきとの指摘。

    • 損失が生じた場合の他業の利益によるカバーや、システムの共有等による相乗効果などが期待される。
    • 仮に金融機関が管理業を行えば、金融機関の提供する決済サービスと連動したものとして電子登録債権制度を仕組むことができ安心して使える制度となる。
  • しかし、次のような観点に立てば、専業とすることが適当。

    • 仮に兼業を認めると、登録原簿に記録された利用者に関する情報が流用される等の懸念があり、管理機関の公正性・中立性の観点から問題。
    • 他業の破綻リスクが管理業へ及ぶことを遮断するには、法人格を分離することが最も有効な方法であり、また、これにより、監督当局による業務の実態把握を効果的に行うことも可能。
    • 管理機関を専業に限ったとしても、金融機関のみならず、多様な事業会社が別会社の形態で管理機関を設立することが可能であり、公正性・中立性の確保や、破綻リスクの影響の遮断という要請に応えつつ、ビジネスニーズに応じた多様なサービスが提供されることが期待される。

(財産的基盤)

  • 利用者が電子登録債権を安心して利用できるようにするためには、管理業が安定的・継続的に行われ、その破綻を回避する必要があることから、管理機関は、適切なシステムを維持するための投資能力、不実の登録などの責任を負った場合に備えた賠償能力等を有する必要。

  • このため、管理機関には一定の財産的基盤が必要であり、適切な形で外部監査が実施される必要。

(業務遂行能力)

  • 管理機関は、電子登録債権の権利の内容・帰属を定める登録原簿の管理を行う重要な役割を果たすため、登録原簿を適切に管理する能力が必要。

  • このため、記録の改ざん等を防止することが重要であり、管理機関は、情報管理態勢の整備、情報セキュリティ水準の確保、適切な本人認証の実施等の措置を講じることが必要。

  • また、管理機関は、利用者の請求時の内容を確実に保存するほか、改ざん等をできるだけ早期に発見するなど、改ざん等が生じた場合に備えた適切な措置を講じる必要。

  • さらに、債務者の二重払い防止のため、管理機関は同期的管理の方法を提供する必要。

  • 管理機関は、金融機関と適切な連携を行い、資金送金を確認した上で、確実に記録の抹消を行えるようにすることが必要。

  • 企業グループ内などの関係者に利用が限定される場合には、管理機関による同期的管理を義務づける必要はないとの意見もあったが、そのような場合であっても第三者に電子登録債権が移転する可能性があるほか、そもそも信頼関係のある関係者間で取引がとどまるのであれば、あえてより高い取引の安全や流動性の確保が図られる電子登録債権を利用しなくとも指名債権の形で取引を行えば足りることから、すべての管理機関は、同期的管理の方法を提供することが必要。

監督

  • 管理機関には上記の要件が求められるものであり、電子登録債権制度を信頼性の高いものにするため、管理機関と類似した組織である社債等振替機関等を参考に、指定制等を設けることについて検討を進めることが適当。

  • 行政は、管理機関の経営状況を的確に把握し、その業務が適切に行われているかを監督する必要。

  • このほか、管理機関に課される各種規制の実効性を確保するため、必要な検査・監督規定を整備することが適当。

利用者の保護

消費者による利用

  • 電子登録債権制度については、民法の特則としての第三者保護規定(意思表示に関する第三者保護規定、人的抗弁の切断規定、善意取得の規定)が設けられるなど、取引の安全に配慮された制度設計とされているが、他方で、利用者保護の観点も重要な課題。

  • 特に、消費者は、事業者に比べ、一般的に、情報の質、量、交渉力などにおいて劣ると考えられることから、消費者が電子登録債権の利用者となる場合については、民法の特則としての第三者保護規定が適用されず、民法の原則に戻ることとされる。

  • このように、消費者については、法制面での保護が図られているものの、そもそも紛争に巻き込まれること自体が不利益であり、紛争の発生を未然に防止することが重要。

  • このため、管理機関は同期的管理を行うだけでなく、利用者が消費者の場合、必要に応じ、例えば、支払期日の前にあらかじめ支払期日、支払金額等を通知するなど、消費者保護のための適切な対応をとることが期待される。

利用者の情報の保護

  • 管理機関は、利用者の情報が蓄積された、電子登録債権の登録原簿の管理を行う者であることから、秘密保持、本人認証や情報セキュリティの確保のための対応を万全に行う義務を負うべき。

  • 利用者の情報の管理については、厳正な対応が行われるべき。

業務規程等の利用者への周知等

  • 電子登録債権の利用については管理機関の定める業務規程等に規律されることとなるため、管理機関は、例えば、業務規程やその概要をインターネットに掲載する、利用者へのID等の付与に際し業務規程やその概要を知らせるなど、業務規程等の周知に向けて適切な措置を講じることが重要。

  • 特に、利用者が消費者である場合には、業務規程等を十分に理解することができるような環境を整えることが必要であり、そのために、利用契約の締結に先立ち、電子登録債権の特性や取引に関するリスク等を分かりやすく説明するなどの配慮を行うことなどが期待される。

  • また、ITに関する知識・能力の水準は利用者により異なるため、管理機関に対する請求を中継機関(経由機関)を経由して行えるようにするなど、利用者のIT環境への配慮が期待される。

その他

金融商品取引法等との関係

  • 現在、商業手形や指名債権は金融商品取引法の規制の対象とされていないため、電子登録債権がこれらと同様の利用にとどまる限り、同法の規制の対象とすることは不要。

  • しかし、電子登録債権は一定の流通性が確保され、多様な利用方法が考えられる仕組みであり、社債に関する金融商品取引法等の諸規制を免れようとして、投資家からの資金調達の手段として利用される可能性も否定できない。

  • このような規制の潜脱目的での電子登録債権の利用を防止するため、社債の代替として用いられるような場合には、社債と同様の規制を適用することが適当。

  • このほか、電子登録債権の利用実態を踏まえつつ、投資性が高まるなど規制を及ぼす必要が生じる場合に、機動的に金融商品取引法の規制を適用することが適当。

  • 金融商品取引法の規制を適用する場合には、金融商品販売法の規制についても、同様に適用することが適当。

  • 本人確認法による本人確認義務や、組織的犯罪処罰法による疑わしい取引の届出義務については、社債等の振替機関など幅広い対象に対し課されているが、これらの法律の趣旨に鑑みれば、電子登録債権に係る取引にこれらの規制を適用しない理由はなく、管理機関に対し本人確認義務等を課すことが適当。

  • 電子登録債権の仕組みを踏まえれば、電子登録債権がいわゆる「電子マネー」として利用される可能性は現段階では低いと考えられ、当面、特別な規制を行うことは不要。

電子登録債権のネッティング

  • 多数当事者間の、関連する多数の債権について、ある者がこれらの債権・債務を引き受けることによって、債権・債務を打ち消しあい、清算に要する資金移動額を削減する仕組み(ネッティング)がある。

  • この債権・債務を引き受ける者はCCP(セントラル・カウンターパーティー)と言われるが、ネッティングについては、CCPに関係者の信用リスクが集中し、その信用リスクが、一部債務者の不履行によって、全債権者に伝播するリスクがあり、CCPには重大な責任。

  • 特に、電子登録債権のネッティングについては、ネッティングに係る相殺について管理機関による同期的管理が行われないため、CCPが、支払等登録などの請求に関し、正しい処理を行わなければ、債務者の二重払いの危険や債権者の権利消滅の危険が顕在化し、決済の安定性を阻害。

  • 現在行われている指名債権のネッティングについては、このようなリスクを確認した上で、関係者の自己責任の下、問題なく処理されているとの指摘。

  • しかし、電子登録債権の特性に鑑みれば、電子登録債権のネッティングが一部の限定された者の間にとどまらず、広範に多数の者の間で行われ、社会的な決済網として利用される可能性。

  • このため、電子登録債権のネッティングについて、利用者保護の観点から、どのような対応が適切か、検討していく必要。

標準化

  • 複数の管理機関が存在する場合、管理機関ごとに端末機器が異なったり、登録原簿の方式などが異なるときには、利用者の利便等が損なわれる。

  • このため、電子登録債権制度に関し、手続に関する電子フォーマット、管理機関と金融機関間の電子データ交換に関する技術、電子登録債権の記番号管理体系などについて標準化が図られることが適当。標準化については、利用者にとって最適な枠組みが構築されるよう、実務を踏まえた適切な対応が図られることが期待される。


以上です。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご意見、ご質問等を承りたいと思いますが、長文の論点整理でございますので、順次ご議論いただきたいと考えております。

そこで、まず「電子登録債権の意義」及び「電子登録債権制度と管理機関の果たすべき役割」、この2つにつきましてご質問、ご意見を承れればと思います。どうかよろしくお願いします。

よろしいですか、いわば総論に当たる部分でございますが。特にご質問、ご意見はございませんでしょうか。

ないようでございますから、続きまして、「電子登録債権の決済の安全性の確保」につきまして、ご質問、ご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

それでは、米澤委員、お願いします。

○米澤委員

ここだけではなくてもう1か所あったかと思うんですけれども、質問です。「同期的管理の必要性」の3つ目の○で、「原則として債権者が行うこととされており」となっている。それから、4ページの「管理機関の破綻の回避」の2つ目の○で「特別の責任が課されているが」と。これは法制審の中間試案のことを頭に置いておられるんだろうと思うんですけれども、「されており」とか「なっており」というところまで法律になっているわけでもないと思うので、その辺は何かコメントが要るのではないかと。大した話ではないんです、書き方の問題ですが、どうなんでしょう。

○岩原部会長

ありがとうございます。

では、事務局。

○高橋企画課調査室長

ご指摘のとおり、法制審の議論を前提に書かせていただいていますので、誤解を招くような表現があるとすれば、次回までに整理させていただきたいと思います。

○岩原部会長

ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、特にご質問、ご意見がないようですので、続きまして、「管理機関の業務の適正性の確保」につきまして、ご質問、ご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

それでは、平田委員、どうぞ。

○平田委員

4ページの「管理機関の要件」で、前回、前々回、ご議論させていただきました兼業なのか専業なのかというところでございます。ここでは兼業を認めるべきという意見もあり、一方で専業とすることは適当ということで、その両方の意見を提示していただいていることになっていると思うんですけれども、前回、前々回も申し上げましたとおり、引き続き兼業の可能性も残した形で検討を進めていければとこちらとしては考えております。

そもそも電子登録債権を使ったビジネスに対する基本認識というところですけれども、将来いろいろな活用方法が生み出される可能性は否定できないと思うんですが、現実的にこれを使って業務をやっていくという立場で考えますと、今、別の形態、契約でやっている業務の置き換えという形になると思っています。それが手形であったり一括決済であったりローンであったり、それがまたCMSであったりということだと思うんです。

その場合に既存業務の置き換えということになりますので、最初は初期コスト、ランニングコストが先行することになると、従来からある業務と電子登録債権を使ってやったものが併存することになりますので、それによって二重になる部分もあって、限界的にはコストがどうしても先行する。それが、電子登録債権が使われるようになって、徐々にシフトしていくことになりますと、そういった合理化効果をシフトしている中で回収していくということになると思うのです。こうした観点から考えると、専業と兼業という問題はコストの観点から見ると、何年で回収できるかというのは不透明なわけですけれども、だれにこのコストを負担させるのがいいのかという問題だと思っています。

一方で、現実的に考えますと、専業でやった場合の手数料で採算を賄うというのは非常に厳しい面もあるということですので、例えば銀行が子会社として設立した場合、銀行からの収益的な協力が必要になってくるかなと思うんです。銀行の場合、特にアームズレングスルールというのもあって、安易な協力も難しいという状況もあります。そうしますと、採算的にもかなり厳しい面があるのかなと考えております。

そうした中で、今後さらにどういった新しい業務ができるかということも、将来的にどう発展するかも分からないという中で、入口のところからあまりがちがちに制度を決めてしまうのはどうかなというところもありますし、前々回、前回も、両者の立場からも兼業もいいのではないかというご意見もあったと思います。そういったこともトータルに考えまして、兼業ということも選択肢の一つとして検討を続けていっていただけないかなと思います。

以上でございます。

○岩原部会長

いかがでしょうか。では、佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

同期的な管理の必要性というのは私もよく認識しているつもりでございます。私がちょっとひねくれた見方をしているのかもしれませんが、前ページにもかかわってくるんですけれども、電子登録債権が二重払いを内包した危険な制度であるということではなくて、債務者がちゃんと支払をしていれば、支払等の抗弁は当然主張できるわけですね。ですから、法律で自動的に規定がなくても、利用者の創意工夫によって二重払いのリスクを低減することは十分可能であると考えています。その一つの手段として、資金決済等の同期的管理を重要視するというのは分かるんですけれども、それだけではないということを指摘しておきたいと思います。

それから、1点質問ですが、同期的管理の方法の1つ目の○で「管理機関が金融機関から連絡を受け、記録を抹消する方法」と書かれておりますけれども、例えば債権流動化のような場合ですと、オリジネーターが債権回収をそのまま代行するというケースがございまして、銀行口座等を介在して資金を集める場合が多いんですけれども、ここですと「管理機関」が主語になっておりますので、いわゆるオリジネーターが資金を回収した連絡を通常は金融機関から受けるわけですけれども、そういった場合も対象として読み込むことが予定されているのかどうかということについてご質問させていただければと思います。

○岩原部会長

それでは、事務局からお願いします。

○高橋企画課調査室長

今の質問でございますが、おっしゃられるようなケースが、このような書きぶりで読めなくて、実務的に問題があるというのであれば、ぜひ検討させていただきたいと思います。ここではとりあえず基本的な流れを書いているというふうに理解していただきまして、おっしゃられるようなことが管理機関の業務として過重なものではなかったり公正性を害するものでなければ、十分検討しうるものだとは思いますが、直ちにいいとか悪いとかいうふうには申し上げられませんので、ご指摘の点はよく考えたいと思います。

○岩原部会長

ほかに何かご質問、ご意見ございますでしょうか。米澤委員。

○米澤委員

ここで議論するのがいいかどうかというのは問題なんですけれども、ここにしか書いていないものですから、指摘させていただきます。

5ページの(業務遂行能力)の2つ目の○のところに「情報セキュリティ水準の確保、適切な本人認証の実施等の措置を講ずることが必要」と書いてある。それはもちろんそのとおりなんですが、この問題は(業務遂行能力)中の記録の改ざん等を防止することが重要だというだけの目的の狭い問題ではなくて、このシステムが成り立つか成り立たないかの非常に重要な要素だと思います。

また、私が「セキュリティ」というと必ず反論があって、「そんな高いハードルをつけられたらコストが高くなって使えなくなっちゃう」という反論があることが予想されるので、申し上げますけれども、そんな非現実的なことを申し上げているつもりは全然ありません。もともとインターネットを使うんですから、100パーセント安全なんていうことはあり得ないんです。そんなものを求めてコストをかけろなんて非現実的なことを言っているわけではないんですけれども、せめてインターネットバンキングの一番進んでいるところ並み。

というのは、前にも申し上げましたけれども、インターネットバンキングよりも取引の安全性の確保ということで、転々流通するということから考えると、それ以上のセキュリティが必要だというのが最低限の要請だろうと思うんです。ですから、せめてインターネットバンキングの一番進んでいるところ程度の、これは日進月歩ですから、レベルは変わっていくと思いますから、確定的に書くことはできません、考え方で書くしかないと思うんですけれども、せめてその程度のセキュリティは確保しておくと。

そのセキュリティの確保というのは、記録の改ざんの防止という、管理機関内部の問題にとどまるのではなくて、不正アクセス、不正入力をどうやって防ぐかというところに重要性があると思います。ちょっとご紹介しておきますと、『トッパン生活者レポート』というのがありまして、「インターネットバンキングが使われない理由は何だ」というアンケートをやったところ、「セキュリティが不安だ」というのが60%ということで最高を占めているんですね。ですから、この制度が使われるかどうかという点では、セキュリティに対する信頼が非常に重要だと思うんです。

したがいまして、ここで書く問題でなくて、どこか一項起こして、「標準化」というのがハードの話ですから、その前ぐらいに一項立てるのではないかという気がします、一案です。細かく言い出せばいっぱい項目はあるんですけれども、それを書くのが取りまとめの目的ではないと思いますので、思想だけ書いておけばいいと思うんですが。例えば、「インターネットバンキングでの事故や犯罪事例に顧み、不正アクセスの防止、システム攻撃を防止するための十分な態勢を構築することが必要」というぐらいのことが要るのかなと。「万全の」と言いたいところですけれども、「万全の」というとまたコストだ何だって言われますから、せめて「十分な」ぐらいかなと思っています。

それからもう1つ、これはトラブル、システムダウンの話がないんですけれども、バックアップ体制が必要だというのは、取引の安全性を実現するための不可欠な手段だと思います。それから、バックアップ体制をとっているということだけではなくて、顧客との関係でいうと、システムダウンのときの代替手段ですね、バックアップをどういう形で使うかということを含めてだと思いますけれども、その代替手段の周知徹底が重要ではないか。

細かいことを言い出せばきりがないんですが、不正アクセスについて、これは書く必要ありませんけれども、考え方として申し上げますと、少なくとも2要素での本人確認というのが必須だろうと。今、ほとんどのインターネットバンキングは2要素の確認をしていると思います。せめてその程度のものは必須だろうと。ID、パスワードだけでいいというのはこの制度にはなじまないかなというのがその心です。書く場所については事務局にお任せいたしますけれども、そういう中身をこの(業務遂行能力)の改ざん防止という狭い問題ではなくて、この制度の根幹を支えるハードの問題としてぜひ書いていただきたいと思っています。

○岩原部会長

ただいまの点について何かございますでしょうか。確かにセキュリティの問題は重要な問題でございますが、実際、電子登録債権がどういう使われ方をして、利用者がどういう形で利用していくかという実態を踏まえた上での検討が必要だと思いますので、そこら辺を含めて報告書の文言については、今のご指摘を踏まえて事務局に考えていただきたいと思います。

柳川委員、お願いします。

○柳川委員

書きぶりの問題かと思いますけれども、4ページの「管理機関の破綻の回避」のところです。破綻を極力回避するような制度設計が必要だというのは私も全くそのとおりだと思うんですけれども、ここの感じでいきますと、とにかく破綻を回避することに100パーセント注力すると、それが信頼性の確保だというような感じに見えてしまうので。実際には世の中どんなものでも100パーセント破綻を防ぐということは不可能ですから、結局、破綻してもこのシステムの信頼性は確保できるような仕組みをつくっていくというのが、ほかの金融のところでも何でもそうですけれども、本質的に必要なところで。その上で極力破綻を回避するようにやってくれというということですので、破綻をした場合でもきちっとできるというところを、どういうふうな書きぶりかはちょっと具体的には思いつかないのでお任せしますけれども、少し考えていただければと思います。

それから、もう1点は5ページ目の先ほどの(業務遂行能力)のところです。これは多少感想めいたことになりますが、最後の○で「グループ内の関係者に利用が限定される場合でも、第三者に移転される可能性があるので」と、これもこのとおりだと思うんですけれども、実際問題としてこれがどの程度あるのかということで、実務上は重要性なり危険性が非常に大きく変わってくると思うんですね。そうしたときに、確率的可能性はすごく小さいにもかかわらず、大きな仕組みあるいは堅い仕組みをつくってしまうと、すごくコストがかかるということになりかねないというのはちょっと気になるところですので、確かに少しでも可能性があれば安全性を確保するという考え方も重要だと思いますけれども、実務的な需要があれば、この辺は少し柔軟に考えてもいいのかなという感想を持っております。

以上です。

○岩原部会長

分かりました。ただいまのご指摘の前者について言えば、100パーセント破綻回避ができるはずのものでありませんから、制度として考えられているのも、たとえ破綻があってもその影響はなるべく少ないようにというものであって、先ほどの法人格を分離するというのもその一つの手段であるわけです。

それでは文言については事務局に考えていただきたいと思います。

今の問題ですか。はい、それでは池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

破綻回避のところですけれども、私もちょっと気になっていて。上のところで、3番目の○で主な破綻原因として3つ挙げられているわけですね。それ以外にもあり得るんでしょうけれども。その3つのうちの3番目の「他業を行う場合の当該他業の不振による影響に対する制度設計」というのは、今、部会長がおっしゃいましたように、法人格を別にするとか、そういう制度設計の方向性が議論の中で見えているんですけれども、それ以外の2つに関して制度設計をする必要はあるでしょうが、どういう制度設計をイメージしているのかというのが今ひとつ不透明な感じがして。

管理業そのものの不振という、固定設備投資をしてしまったけれども、使う人がいなくてというケースが考えられないことはないわけですね。これは財産的基礎の中にある種の自己資本比率規制みたいなことを入れるのかなと想像はできるんです。ただ、登録原簿管理ミスによる賠償責任というときに、先ほどのセキュリティの話と絡むと思うんですが、セキュリティを破られてしまって、天文学的な損失を引き起こすということがあったときに、単なる財産的基礎では対応しきれないようなケースが十分考えられると思うんですね、この2番目のところについては。

通常、主にあり得るようなケースについては一定の財産的基礎ということで対応がきくんでしょうけれども、それで尽きないような話もここには随分あると思うので、制度設計が必要ということだけだと、議論の方向感が今ひとつ見えにくいなということを感じました。柳川さんがおっしゃったように、破綻した場合のセーフティネットを用意するのかということもあるでしょうけれども、破綻予防策としての制度設計の具体的イメージを伴うべきでないかという気がします。

以上です。

○岩原部会長

今の点について事務局から一言お願いします。

○高橋企画課調査室長

まず、管理業そのものの不振という点については、先般来、専業か兼業かのところでもコスト面という話がありましたので、中立性・公正性を重んじて専業にするとしても、なるべくコストのかからないように法令を、中立性・公正性を欠かない中で整備していくということで、一つ方向性があるのではないかと思っています。

それから、登録原簿の管理ミス云々のところは、おっしゃるように、観念的にはどんな数字になるか全く予想がつきません。それに対してすべての用意をしろというと、相当ハードルが高くなってしまいますので、まずは一般的なミスがあっても大丈夫な程度の金額というイメージかなと思っています。

それから、セーフティネットのところも、どれだけ管理機関が出てくるか分からないという中では、原則として1つの管理機関がコスト負担をするかと思いますので、その辺のコスト面も考えると全般的な意味でのセーフティネットというのは難しいというふうに認識しております。その中でどの程度財産的要件を課すことによって賠償責任に備えていくのかという問題かと認識しております。

○岩原部会長

今の問題は先ほどの米澤委員のご指摘にもかかわると思うんですけれども、今、高橋室長からお話ございましたような、賠償能力を高めるような制度設計のほかに、そもそも事故を起こりにくくするような体制ができているかということを、検査・監督を通じて担保していくということ等が考えられるのかなと思います。

ご指摘を踏まえまして、文案については考えさせていただきたいと思います。

もう一度手を挙げてください。ごめんなさい、何人かの方が同時に挙げられたので。高橋委員が確か早かったような気がするので、高橋委員から。

○高橋委員

恐れ入ります。私は5ページの(業務遂行能力)のところでございます。先ほどの米澤委員のご意見と同様の意見を持っておりましたが、その点は繰り返しませんので、追加的なことを申し上げたいと思います。

2つ目の○のところに「記録の改ざん等を防止することが重要であり」とありまして、それに加えて3つ目に「また」という文章で始まっているんですが、ここの「利用者の請求時の内容を確実に保存するほか、改ざん等をできるだけ早期に発見するなど」という部分についてです。この書きぶりでいきますと、万全には防げないけれども、改ざんがあってはならないというふうに読めなかったんですね。

この「確実に保存する」には、当然ながら改ざんなどが行われないということが入っていると思います。したがって文面としては「確実に保存するほか」の次は、「万一、履歴等の改ざんが行われた場合には早期発見も含め」とするなど、改ざんは起こってはならないという趣旨に沿った書きぶりにしていただきたいと思います。

○岩原部会長

はい、分かりました。では、そのように文案を検討させていただきたいと思います。

それから、翁委員ですか。

○翁委員

先ほどの池尾委員の質問に対するご説明を伺っていまして、ここで言っている3つの要因に対応して管理機関の要件がきちんと整理されると、非常に分かりやすいのではないかと思いました。

それから、破綻した場合にどういうふうにするのかということに関しては、行政の監督のあり方ともかなりかかわるので、経営が悪化したときにどういった対応をとるのか、また、万が一破綻したときにほかのところに移すとか、そういったことについてどういうことを用意するのかということが、どこまで具体的に書けるかは別の問題として、検討しておく必要があるように思います。

○岩原部会長

ありがとうございます。それでは、そのようなご指摘を踏まえまして、報告書を考えさせていただきたいと思います。より具体的なイメージが湧くようにというご指摘を何人かの委員からいただいているように思いますので、それに従って検討させていただきたいと思います。

ほかに。それでは、川本委員、お願いします。

○川本委員

今の破綻のこととも絡むことで、(業務範囲)の兼業と専業のところ、前回いろいろなご意見が出たので、ここで繰り返すまでもないと思いますが、一言付け加えさせていただきます。4ページのところに「損失が生じた場合の他業の利益によるカバーや」という文言がありますが、これはクロスサブ、内部補助を前提にしているということなので、銀行経営上健全ではないのではないかということが非常に気になります。コストの負担者はだれであるかというときに、極力そのベネフィットを受ける利用者であるべきであって、預金をしている人とかローンをしている人の方から転嫁する可能性を残すというのはちょっとどうなのかなと思いました。

そういう意味では、銀行だけに兼業を認めるのは公正競争上問題があって、根拠が薄いのではないかと思います。だからといって、だれにでも兼業でいいというのは制度の安定上冒険に過ぎるのかなと思いますので、破綻リスクの分離を優先することと、多様な事業会社が参入するチャンスを大事にするために、管理機関を専業で始めるというのが適当なのではないかと思っております。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員

どこで触れていただくかというのはよく分からない部分があるんですけれども、管理機関の業務の範囲、専業、兼業以外に電子登録債権のビジネスモデルとしては多様なものが検討されてきていますので、管理機関についてもビジネスモデルに応じた多様な管理機関があってしかるべきと考えております。法制審でも業務規程等に委ねている、管理機関が自主的に電子登録債権を管理するんですよということを予定しておりますので、もしかしたら冒頭のところなのかもしれませんけれども、管理機関の多様性を認めるべきであるということはぜひ触れていただきたいと思います。

それから、2点目として、これもどこで触れるのかということはあるんでしょうけれども、過剰規制というのはぜひ避けていただきたい。規制がいろいろな面で必要であるということは十分理解していますけれども、特に預金受入金融機関と同等の規制が必要かどうかというのはぜひ慎重にご議論いただきたいなと思っているところでございます。規制のかけ方に関しましても、新しいサービスですから、法律だけで規律するということは事実上不可能だと思いますので、いわゆるソフトローと言われている自主規制というような点も含めてご検討いただければと思います。

○岩原部会長

最初の点の「多様なビジネスモデルが管理機関にあって、管理機関のあり方も多様であってしかるべきではないか」というご意見をいただいたわけですが、具体的にどういう多様性が必要だというご意見なんでしょうか。

○佐藤委員

例えば、手形的な利用を予定しているものと、管理機関ではシンジケート・ローンの例も出ておりましたけれども、コベナンツ等の中身をしっかり管理することを中心に置くものと、管理機関の役割、あり方というのは随分違うような気もします。それから、譲渡制限、譲渡回数を制限するとか分割を制限するということは、業務規程等によって対応が可能だと法制審で議論をしているかと思いますので、ある程度の流通性を予定しているものと、あまりハイレベルの流通性を予定していないものとは、おのずと管理機関に求められるハードルというか、規制水準も異なるのではないかなと思うんです。

○岩原部会長

今、お話を伺った範囲ですと、法制審の議論で業務規程で柔軟な工夫ができて、おっしゃるようないろいろなニーズに応じた対応ができるように考えられているわけで、それと比較しますと、こちらの管理機関の監督・検査については、一般的な枠組みの中で業務規程がきちんとつくられ、それに従ってきちんと管理機関の業務がなされているかということを押さえていけばいいのかなという感じはいたしております。

それから、過剰規制が望ましくないことは当然ですので、一般論としてはそのとおりかなと思います。

管理機関を専業にして、預金受入機関とは別として設計するわけですから、それにふさわしい必要な範囲での検査・監督の規制かなと思います。

では、次に小野委員、お願いします。

○小野委員

三、四点発言させていただきます。全体にわたるコメントで申しわけないんですが、電子登録債権の意義ですけれども、私は電子登録債権は最初に議論されたときから参加していたということもありまして、中小企業の資金調達に資するという点を加えていただければということが1点。「資金調達」という言葉が出てきますけれども、全体としてはIT化という議論が強いのかなと。そのとおりだと思うんですけれども、IT化の別の側面といいますか、重要な側面としては中小企業の資金調達に資するということは総論的な議論ですが必要と思います。

2番目のコメントとして、全体の意義に該当するのか、各論に該当するのかという議論がありますけれども、これは民間が電子登録債権をやるときの行為規制、規範的な意味合いということでの論点整理になっているように思われますが、国として何がしてあげられるかという視点が必要ではないかと。そういう視点で書かれたのかもしれませんが、私なりには必要なのかなと思います。

それは2つ視点があると思うんですね。1つは経済的な視点があると思います。それは昨今の事情だとこれについてどの程度の予算的措置ができるのか分からないということで、そんなことは書けないのかもしれません。ただ、各国の例でも国がやっていたりしますから、国ができないことではなくて、国ができることを民間がやっているという視点がございますから、何らかの形で記述していただければ。

それが経済的な意味だけではなくて、ひとつの制度的担保とでも言うんでしょうか、例えば金融機関とか銀行関連の管理機関がやる場合には特に制度的担保は必要ないかもしれませんけれども、ベンチャー系やノンバンク系が管理機関になろうとしたときには同期的管理が大分ネックになるかもしれません。この点は散々議論したところですけれども、それを制度的に担保することは、法律によって担保することはできると思うんですね。

完全に自由というわけではないんですけれども、当事者間における契約自由ということだけですと、独禁法違反にまでは至らなくても、立場の強い弱い、交渉力のあるなしとかによって影響してしまうと思いますので、一言、二言、制度的な支援、制度的担保も国としては惜しまないというようなことをどこかに入れていただけるとよろしいのかなと思います。

あと、各論的なところですけれども、5ページの(業務遂行能力)のところで散々議論したところなので、蒸し返すつもりは全くありませんけれども、「管理機関は同期的管理の方法を提供する必要がある」と書かれております。他方において、同期的管理の方法については、3ページで管理機関による同期的管理の方法ということで書かれています。

これは確認的な質問になるんですけれども、同期的管理の方法が必要であるといって、このペーパーで同期的管理の方法というのは何かというと、結論的なところは「今後適切な実務的検討が行われることが期待される」と。要するに多様な同期的管理の意味合いに応じて幅広く考えていきましょうということで結論づけていただいているのかなと理解しているんですけれども、「それでいい」と言っていただけるならありがたいんですが。出だしのところは「抹消する方法が考えられる」と言っているんですけれども、とは言ってもいろいろありますねというような書き方になっていると思うんですね。そういう趣旨で同期的管理能力というものは必要ですということで、私としてはこのペーパーを理解しているということが2番目です。

それから、ちょっと細かい議論ですけれども、その方法のところの最後で「譲受とか引受は不適当」と、これは原則例外という意味ではなくて、認めないという趣旨でかなり断定的な議論だと思うんですが、これは一つの政策的な判断でこういうふうにとられたのかもしれません。他方において、最後の方でネッティングの議論が出てきて、「今後検討していく必要がある」となっているんですけれども、ネッティングのところだと相殺的な意味合いが出てくるのかなと思うんです、私の理解が間違っているのかもしれませんけれども。その整合性と言いますか、原則論として譲受・引受をしないというのは、引き受けすることは不適当というのは分かると思うんですが、多様な利用を考えた場合には多少例外的な広がりもあるという議論というふうに理解してよろしいのかどうかと。こういう質問です。

以上です。

○岩原部会長

最後のところについて申し上げますと、「譲受・引受等が不適当」と言っているのは、管理機関自身が自分で譲り受けたりすること、あるいは、債務引受をしたりすることが、問題がありうるということで、8ページに書いてありますのは、管理機関ではなくてCCPのような機関がこういうようなサービスを提供して一定の機能を果たすようになったときに、それについて何らかの配慮をする必要があるか検討してはどうでしょうかということを書いてあるわけです。その意味では管理機関自身がやることを考えているわけではないということであります。

それ以外の点で何かありますか。

○高橋企画課調査室長

同期的管理のところは十分議論をさせていただいて、書いている趣旨もあくまで資金送金について管理機関が同期的管理をやるということになっています。「実務的な検討云々」のところは、資金送金で銀行とタイアップしてやるといったときの具体的なやり方については、入金時に直ちに消し込んでしまうのか、出金の時点で消し込んでしまうのか、そのあたりはまだ確実な詰めができていないという趣旨で、「実務的な検討」としているわけです。銀行間送金に関してどこかの時点で管理機関が連絡を受けて消しましょうという趣旨ははっきりしているのではないかと思っておりますので、ご疑念のようなことはないかと思います。

○岩原部会長

では、木村委員、お願いします。

○木村(拙)委員

今の同期的管理の方法についてですが、前回のご説明ではイ、ロ、ハと3つの案が示されていたと思うんです。ここで書かれているのを見るとイ案を中心に書かれているということですが、5つ目の○のところで「今後適切な実務的検討が行われることが期待される」となっておりますので、これはイに絞り込んだのではなくて、イ、ロ、ハのどれがいいかというのをこれから検討すると、こういう意味でございますか。

○岩原部会長

それでは、高橋さん、お願いします。

○高橋企画課調査室長

おっしゃるように細かな点を後で考えるという意味での例示でございます。全部書くと冗長だろうということで、資金送金を中心にやりましょうということです。必要であれば「例えば」というような文言を補えばよりはっきりするかと思います。先般配付させていただきました資料のハみたいなやり方についても、検討の対象になり得ると思うんですが、本当にできるかどうかは、もう少し銀行界の方々とご議論させていただかないと、確実にできるかどうかの保証がないものですから、例示として確実にできるであろうということを先に書いているという趣旨でご理解いただければと思います。

○木村(拙)委員

はい、分かりました。

○岩原部会長

それでは、池田委員、お願いします。

○池田委員

2点申し上げさせてください。

1点目は、6ページの監督のところですが、ここにお書きになられていることにはすべて異論はございませんけれども、指定制とか監督等のルールをこれから具体的につくっていかれるときに、何人かの委員からのご発言がありましたように、過度なハードルがかからないようにお願いしたいということでございます。

それから、管理機関というのは、素人が言うのも何ですが、規模の経済が効くものであって、先行者、先に入った人の利益が大きいものになるのではないかと思うんですね。専業がご意見の多数になるのであろうと思いますけれども、専業で初期コストがかかっても、あえて参入したいという企業もあるかと思いますので、そういうときのフェアな参入競争ができるような形で指定制等もお考えいただければと、これはお願いであります。したがって、管理機関の多様性と言いますか、業務内容をいろいろオリジナルな形で変えても、自分たちで決めていってもいいというのが法制審でも考えられてきたことだと思いますから、多様性が生かされるような形をぜひお考えいただけたらというお願いであります。

それから、ちょっと細かくなりますが、修文のところで申し上げますと、5ページの終りの3行目から6ページにかけてです。「そもそも信頼関係のある関係者間で取引がとどまるのであれば、あえてより高い取引の安全や流動性の確保が図られる電子登録債権を利用しなくとも指名債権の形で取引を行えば足りることから」という理由づけがされているんですね。これは先ほど柳川委員からご指摘のあった企業グループ内などのケースですけれども、今、私が見るところでは厳密に言うとあまり適切ではない理由づけだと思います。

というのは、この合同会合でも問題になったCMSについて、グループ内で例えば1か月分の持ち合いの指名債権をネッティングすると対外的な証明になるデータが残らないわけです。それで「決済尻だけを送金すると中間の消し込みが不明瞭だ」ということを言う方がおられる。その個々の債権について差押えがかかってきたときにどうなっているのかということを批判されるわけですよ。だから、そういう意味では1か月なら1か月の期中でも個別に、私、既に申し上げたことですけれども、バイの関係で相殺契約をしてこまめにそれを支払等登録をしていく、そうするとそのデータが客観的に残る。

繰り返しますが、権利段階でお金を動かさずに消し込めるのが電子登録債権の一つのメリットであると。だから、そのメリットをここで使って、指名債権ではなく電子登録債権を使うことによって、グループ内の取引であっても対外的な客観データを残して、CMS的な取引の正当性と言いますか、合理性をより高めるということが一つ考えられるわけです。そういう意味で指名債権で足りるという説明はあまり適切ではないと。ご趣旨は分かるんですが、少しお考えいただければありがたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

はい。記録を残す必要があるということ自体が、身内であってもきちんとした関係を確認しておこうということで、身内だけの話から一歩出てきている場合かと思いますが、修文はちょっと考えさせていただきたいと思います。

関連してですか。では、佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

池田先生にご指摘いただいたとおりなんですが、グループ内のCMSにおいては電子登録債権が利用できないというようなイメージを与えてしまうというのも非常に悲しいと思います。また、同期的管理というのはグループ内CMSでも行うわけです。ただ、その頻度がリアルタイムに近いようなものまで必要かどうかということをかねて私も申し上げていたつもりでございます。

ただ、電子登録債権を活用する場合については、いわゆるリアルタイムまではいかないけれども、マンスリーではちょっと不十分でしょうと。ですから、デーワンのうちにT+0みたいな、T+1なのか分かりませんけれども、1日の営業時間内にとか、もしくは一定の営業日内にこういう処置をしてくださいということだったら、グループ内であろうと外であろうと十分対応ができるものだと考えておりますので、その辺のところもご認識いただければと思います。

○岩原部会長

まさにグループ内であっても、より信頼性の高い決済制度として使うときに電子登録債権を使ってもらうということではないでしょうか。同期的管理等につきどれぐらいの制度的手当てがされていれば信頼性があるものとして扱ってもらえるのか、多分そういう問題だと思いますので、そこら辺、修文は考えさせていただきたいと思います。

はい、吉野委員、お願いします。

○吉野委員

これまで出ていた点なんですけれども、1つは危機管理と言いますか、検査・監督のところで、一般的に幅広く使われる管理機関の場合には、その対応を国がやるべきなのか、それとも各機関がやるべきなのか、各国に一つであれば国がやると思うんですけれども。

もう1つは、ここでは「監督」と書いてありますけれども、検査の中でそれぞれのシステムがどうなっているかというのを把握しておいていただきまして、破綻したときにそのシステムがスムーズに次のところに継続できるような形にお願いしたいと思います。その場合には、グループ内だけでの管理機関と、一般に幅広く使われる機関においては、違った対応になると思います。

○岩原部会長

はい、ありがとうございます。最後の標準化のところもまさにそれにかかわってくるわけです。システムとしてそういうことが起きたときに、その後スムーズな事務処理ができて引き継いでいけるようにするにはどうしたらいいかというようなことは、当然考えておく必要があるかと思います。

よろしいですね。

それでは、田中委員、お願いします。

○田中(浩)委員

7ページ目の「金融商品取引法等との関係」についてですが、よろしいでしょうか。

○岩原部会長

まだそこまではいってないんです。そこまでいってからまた改めてご意見を賜ります。

○田中(浩)委員

分かりました。

○岩原部会長

では、小足委員、お願いします。

○小足委員

この「業務の適正性の確保」全体については、書きぶりについても大きな違和感はないというのが基本的な意見でございます。管理機関の業務範囲のところで、専業、兼業、皆さんいろいろご意見をいただいているわけですけれども、前回も「原則的な考え方として専業というのが合理的だ」ということを申し上げました。あまりくどくどと申し上げるつもりはございませんけれども、やはり公正性・中立性という一番最初に掲げた管理機関の最も重要なポイントを、破綻の回避とか兼業制限においてどう反映させていくかということが、制度設計上は非常に重要な点だろうと思っております。

例えば、前回もどなたか指摘されていましたけれども、自らの債権とか債務を自らが登録するということは、公正性・中立性の観点から大きなハードルがあるのではないかといったことも、兼業、専業の検討の際にはポイントとしてあるのではないかという気がしております。

もう1点は質問ですけれども、「財産的基礎」のところで、「一定の財産的基礎」という部分がございます。これは先ほど池尾委員からもございました自己資本比率とか、純資産規制といったものを具体的にイメージされているんだと思いますが、もう一つの要素として組織形態というのは、例えば株式会社に限定するといった考え方というのは、これから先の話かもしれませんが、あるんでしょうか、ないのでしょうか。

○岩原部会長

それでは、事務局、お願いします。

○高橋企画課調査室長

振替機関ですと、最初に財団法人で始まって、その後資金調達等の観点から株式会社化されたという経緯がございます。公正性等の観点から、前回もどなたかの委員から全銀協ということもあるのではないかというお話があったかと思いますが、ガバナンスの面とか資金調達の面を考えますと、わざわざ民間の方にやっていただく以上は、通常は株式会社形態が当然なのではないかと思っております。

○岩原部会長

ほかに何か。今松委員、お願いします。

○今松委員

「管理機関の要件」のところで、この読み方としては専業と、今、部会長もそういうことでおっしゃられていますが、専業ということでいくとそういうふうな解釈でできると思いますので、そこのところについては今までの議論が十分踏まえられていると思います。

それから、「管理機関の破綻の回避」とか、あるいは、その公正性等々の確保ですね。全体を読んでいくと分かりやすいのは、「破綻の回避」の次の「登録原簿の信頼性の確保」とか、今の「管理機関の要件」ですね。あと、(財産的基盤)、それに(業務遂行能力)、これは今まで出てきたいろいろなところを含めて見れば、「登録原簿の信頼性の確保」が明確になっていれば、破綻は相当程度回避されると、そういうふうな文章のつくりになっていると思うんですが、そのあたりもう少し明確にした方がいいのではないかなと思います。

○岩原部会長

ありがとうございます。それでは、ご指摘を踏まえて文章をさらに練らせていただきたいと思います。

ほかに何かございますでしょうか。小宮さん、どうぞ。

○小宮産業資金課長

先ほどの佐藤委員のご発言にも関係いたしますけれども、CMSについては、8ページのところにも関係しますが、5ページと8ページで関係するところが出てくるわけです。これを素直に読ませていただきますと、ネッティングとCMSというのは非常に近い世界ですから、基本的にこれらはできないというふうにしか読めない感じがいたします。オープンな方は非常に危険があるということは理解できるんですけれども、現状の閉鎖的な利用まで今の段階から規制するというのはちょっといかがなものかという感じがしております。実務的には管理機関の指定などの段階で、業務規程で参加者を例えば限定するとか、いろいろな手法はとれるのではないかという感じがします。

それからもう1つ、兼業と専業の問題が今議論されておりますけれども、前回も申し上げましたように、例えばリース・クレジット債権の流動化を考える場合に、同期的管理というのは、ご案内のようにクレジット会社は銀行口座への出入金を確認して、実際に消し込みをやっているわけですから、現存のコンピュータを使えば同期的管理は確実にできるわけですけれども、これを専業でやってくれということになると、コンピュータをもう1台買って、かつ新しく資本金とか役員も準備しなければいけないということになりますので、参入コストが著しく上昇する。したがって、リース・クレジット債権の流動化を考えた場合に、もし専業とした場合にはこのビジネスモデルは成り立たなくなるなという感じがしております。このあたり、安全性とのバランスの問題ではあろうかと思いますけれども、今までいろいろ多様なビジネスモデルをやろうということで考えてきた当省としては、こういう形も認められるような規制であってほしいなと思っております。

以上です。

○高橋企画課調査室長

コスト面について費用がかかるというご議論は分かりますけれども、リース・クレジット債権でも専業の管理機関を使っていただければ何ら問題なくビジネスモデルにかなうと思います。コスト面について何度かいろいろな方からご指摘を受けている点については、あまりコストのかからないような制度設計にすべきではないかということについては同感でございます。

○岩原部会長

リース・クレジット債権等の流動化は、最初の方で佐藤委員がご指摘になった点もかかわっているかと思います。実際にはオリジネーターあるいはサービサー等が計算して、それを管理機関に通知するという形になっていくと思いますので、管理機関そのものの問題と直ちに直結するかどうかはまた別で、実際上どういうことなのかというのは確認させていただきたいと思います。

最初の小宮さんのご指摘のネッティング、CMSは、現在指名債権で行われているようなものを妨げるものでないというのは前から申し上げているとおりでありまして、そういったものがどこまで電子登録債権の制度に載ってこれるかということがここの問題で、それが一定の信頼性が求められる電子登録債権を利用して行われるためには、どういった要件が備わっているものであるべきかということをこの報告書では検討していると理解しております。

ほかに何かございますでしょうか。よろしければ、次のテーマに移らせていただきたいと思います。

それでは、「利用者の保護」及び「その他」につきまして、ご質問、ご意見いただきたいと思います。最初に先ほど手を挙げていただきました田中委員から。

○田中(浩)委員

それでは、「金融商品取引法との関係」について申し上げます。まず最初に、前回、15日のこの会議で議論された内容についてですが、金融庁のホームページに書いてあります前回の議事要旨の中で、「金融関連法制との関係では、例えば、金融商品取引法との関係で、社債等の代替として利用される場合には、社債と同様の規制が適用されることが適当であるなどの考え方で概ね意見が一致した。」と記載されていますが、この点については私も含めてかなり多数の方から否定的な見解が出されていたのではないかと記憶しており、少々違和感を感じています。

そのときの議論の確認ですが、商取引に基づかないものと、そうでないものを分けて、商取引に基づかないものは資金調達の一形態だとして、社債と同様に扱うということで、その考え方自身は理解できるのですが、実務的に本当にそれは回るのかということに関して疑問に感じています。具体的に、どの債権が商取引に基づいており、どの債権がそうではないのか、実際明確に分類できるのかということです。それに対して前回事務局からは「要件で分かれます」というお答えをいただきましたが、実務的に考えますと非常に難しいと考えざるを得ないと思います。

それから、実務的という面で申し上げますが、社債と同様の規制をかけるということになりますと、購入者の数で公募、私募を分けなければなりませんが、その場合、当初の購入者というか債権者の数が50以下であっても、それが次に転売される際にさらに細分化されると50を超えてしまいます。そのような場合、公募、私募の規制のかけ方が実務的に機能しうるのかというと、非常に難しいと思わざるを得ないと思います。

それからもう1つ、別の観点から申し上げますと、例えば、資金調達を目的とした電子登録債権の一形態ということを考えた場合、シンジケート・ローンの電子版が一例として考えられると思いますが、シンジケート・ローンを含めたローンというものは金融商品取引法の規制対象に含まれていないというのが実態になっています。そのように考えますと、電子登録債権のみを切り出して規制をかけるというのは、規制上他との平仄がとれていないと思われます。

いずれにいたしましても、考え方そのものは十分理解できますが、実務が回らないというのが現実ではないのかと懸念しています。その意味で、このまとめ方に対しては、私としては少々違和感を感じています。

以上です。

○岩原部会長

高橋さん、お願いします。

○高橋企画課調査室長

まずホームページのところについて申し上げれば、実務的にうまく回るであろうかというご懸念については、先回も「検討させていただきます」とお答えしたつもりです。考え方については、今も「理解します」というふうにご発言あったかと思いますので、社債等について、ここに書いてありますように、脱法的な使われ方をするのは好ましくないのではないかという点は、皆様方からのご理解は得ているのではないかと理解して、そのように書かせていただいております。

それから、実務的に今いろいろご指摘を受けましたことが本当に可能であるのかとか、実際問題として大丈夫なのかという点につきましては、おっしゃる点もごもっともな点もございますので、なるべくはっきりさせる形で、かつ実務的に回るような形で検討していきたいと思います。その意味で原因債権云々というのはここでは外させていただいております。

それから、最後のシンジケート・ローンについて、今、規制を受けていないので、電子登録債権については規制を受けるべきではない云々について申し上げれば、シンジケート・ローンのローン形態のやり方と電子登録債権では異なっておりますので、シンジケート・ローンを電子登録債権にしたら、現在規制がかかっていないんだから、同じようにかかるべきではないという点については、必ずしもそうではないのではないかと思います。

金融商品取引法の新しい考え方で同じような経済機能を果たすべきものについては同じ規制をということで、例えばシンジケート・ローンも社債と同等の機能を果たしているのであれば、本来社債と同じように規制すべきではないかという考え方も逆にあるのではないかと思いますので、今、シンジケート・ローンは規制対象ではないからといって、電子登録債権であれば規制の対象にならないという点についてはおかしいのではないかと思います。

○岩原部会長

今の点に関連してですか。では、小宮さん、どうぞ。

○小宮産業資金課長

今の発言を銀行の方が聞かれたら驚いて、無理だなと思われると思うんです。もしそうであれば、どこまでが金取法の対象になるのかというのは早めに明確化していただかないと。そもそもシンジケート・ローンを電子登録債権を使って流動化しようということで、皆さんご検討されていたと思うんですけれども、これだったらもう検討をやめようかなという感じになりはしないかという気が私はします。もしそういうことであるならば、どこまでが社債並みに扱い、どこからが社債として扱わないのかという明確な基準を早い段階でお示しいただいた方が皆さんのためにとってよろしいのではないかなと思います。

○岩原部会長

では、小野委員、どうぞ。

○小野委員

関連する議論ですけれども、先ほど実務が回らないという議論があったと思いますが、そのとおりだと思うんですが、これは制度的な議論として十分解決できる議論だと思います。要するに、ここでは突然、社債の代替で金融商品取引法の適用と書いてありますけれども、昨今、社債とは何かという論文も近時出ておりますが、突き詰めて言えば商法の先生の議論ですけれども、会社法上社債として発行するものが社債であると、これが現在の通説的定義なんですね。

ですから、ここに「社債の代替として用いられる場合には、会社法の改正によってそれも社債として取り扱う。その場合には金融商品取引法の適用があります」と書けば。したがって、会社法の改正によって社債代替としての電子登録債権の発行ということで発行され、それが金融商品取引法の適用があると、これで分かると思うんですが、突然、価値判断が加わる、「代替」とか「脱法」とかいう言葉で、それは時にはシンジケート・ローンもそうなのかもしれないという。

脱法というのは絶えずそういう議論ですから、そうかもしれませんけれども、こと社債の議論というものは現在の通説に従って議論が十分可能なんですね。ぜひそういうふうに制度的な議論として書いていただくことが正しい方向だと思うんです。

○岩原部会長

社債の定義、会社法上の定義については大変な議論があり問題のあるところであります。ただ、ここで検討しているのは金融商品取引法の適用対象としての「社債」の定義の問題でございまして、それについては報告書も、今検討されているような電子登録債権を、例えばシ・ローンに使ったときに、金融商品取引法の適用が直ちにありうべしというようなことを考えて書いているわけではありません。もちろん明らかに脱法的な使い方をされた場合は押さえていく必要があるかもしれませんので、将来的に電子登録債権を使って実質的に社債と同じような、あるいは、金融商品取引法上の有価証券と同じような取引がされるようになった場合につき、立法論を含めて検討していく必要がありますねということを、注意喚起しているというふうに私は理解しております。

さっき原さんが手を挙げていらっしゃいましたけれども、それに関連することでしょうか。

○原委員

別です。

○岩原部会長

別のことですか。

○小野委員

もう一言だけ。前回も申し上げましたけれども、1項か、2項か、みなしか、そうじゃないかで随分違うんですね。たしか金銭債権を有価証券指定するときもどっちでもできるような立付けになっていると思うんですが、普通はみなし有価証券だと理解すると思うんです。これはいきなり社債にいくところも、もう一つ飛んじゃっているんですね。金融商品取引法の適用があるかもしれない、販売規制があるかもしれないというのはそうかもかもしれませんが、それがいきなり社債ですというところに飛んでいる。これは実務の運用ではなくて、議論が幾つか大きく飛躍していますから、その分だけ関係する人にとっては実務が動かないというのはおっかなくて触れないという意味だと思うんです。みんなが怖くなくて使えるようなものにしていくような、法律論としても可能だと思うので、よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

ご注意、承っておきます。

ほかに何かございますでしょうか。今の点でしょうか。田中委員、どうぞ。

○田中(浩)委員

今、部会長から「注意喚起という意味合いでここに出ております」という話がありましたが、それに関して私なりの一つの見解を申し上げると、法律で投資家なり利用者を保護する目的で、本件についても保護の網をかけましょうという、趣旨は理解できます。ただ、実際に実効性がない規制をかけるのは、かえって実務の混乱を招くのではないかと思います。そういう面で、規制の実効性が担保されないのであれば、この電子登録債権に関してはこのような投資家保護の規制の適用外であるということを明示するといった形で明確に線引きをすることが、結果として利用者の利益を守ることになるという側面もあると思います。

○岩原部会長

司会者の権限を逸脱して個人的な意見を申し上げさせていただきます。実際上の運用可能性がないかどうかとも検討してみないと分からないことであって、現に、商取引に基づくかどうかという基準は、アメリカの連邦証券法に関する判例も、まさにそういう考え方をとっていますので、とれないわけではないと思っています。ただ、日本でそのような基準が本当にうまく運用できるかとか検討すべきことはあると思いますので、それは今後の課題としてありますよということを言っているのかなと私は思っております。

池田委員、どうぞ。

○池田委員

関連して一言だけ。これだけ何人かの委員の方から同じように不満というか批判が聞かれるのは、この「その他」の金融商品取引法等々の関係の1つ目の○はいいわけですが、「しかし」からの例外というか、今、部会長が「注意喚起」とおっしゃったところがかなり強い規制のように読めるように書かれているというのが皆さんの心配の原因だと思うんですね。ここへきてシンジケート・ローンに電子登録債権が使えないがごとき議論がされたら、業界の人も大変な不満というか違和感を持つと思いますので、その辺の心配はありませんと。ごくごく例外的にこういうことをやった場合にこういうことを注意喚起しておきますぐらいのイメージが伝わるような書きぶりに工夫をされてみたらいかがかと思います。

以上です。

○岩原部会長

表現ぶりについては検討させていただきたいと思います。どうもありがとうございます。

ほかに。それでは、原さん、どうぞ。

○原委員

「利用者の保護」のところについて発言したいと思います。先ほどからお話が出ている金融商品取引法との関係のところは、金融商品取引法制定の議論にも参加しておりましたので、これは逸脱がない形での規定を設けていただきたいと思います。

6ページの「利用者の保護」についてですが、「消費者による利用」ということでページを割いていただいたことは感謝申し上げたいと思いますけれども、消費者による利用がどういう場面でというところはまだまだ想像もつかないようなところがあります。文章を読んでおりまして、2か所なんですが、3つ目の○のところですね。これは前段は民法の特則としての第三者保護規定が書かれていて、2つ目の○でただ「民法の特則としての第三者保護規定は適用されず、民法の原則に戻る」と書かれ、3つ目のところで「消費者については、法制面での保護が図られているものの」と書かれていますが、民法の原則に戻ったところで必ずしも十分には図られていないので、「法制面での保護が一定程度図られているものの」とかやっていただかないと、この15年来、民法の原則にどうやって消費者保護を入れていくかで検討しておりますので、ぜひお願いしたいと思います。

それから、4つ目の○のところで、「利用者が消費者の場合、必要に応じ、例えば」という書き方になっているのですが、「必要に応じ」という言葉が要るのかどうか。私はここは削除していただいて、そのまま「例えば」というふうに続けていただきたいと思います。「例えば、支払期日の前にあらかじめ支払期日、支払金額等を通知するなどの説明義務を果たし、消費者保護のための」というふうに、「説明義務を果たす」ということを入れていただきたいと思います。

先ほど来の議論を聞いておりまして大変懸念しております。消費者への利用の場面がどういうところかというのがイメージできないままで大変恐縮なんですけれども、過度のハードルにならないようにとか、多様性とか、尊重とかおっしゃっておられるので、消費者のところはこの「必要に応じ」というのではなくて、きちんと説明を果たすということにしていただきたいと思います。

それから、7ページですが、「業務規程等の利用者への周知等」が書かれていて、2つ目の○の語尾が「配慮を行うことなどが期待される」、3つ目の語尾は「配慮が期待される」と書いてあるんですが、「配慮が期待される」ではなくて、「配慮すべきである」と両方とも書くべきだと私は思います。

それから、前に戻って大変恐縮ですが、文章でちょっと気になる表現が1か所ありましたので。5ページの一番最初の行ですが、「仮に兼業を認めると、登録原簿に記録された利用者に関する情報が流用される」という書き方なのですけれども、「流用される」ということは日常用語的には「流用」だと思いますが、登録原簿に記録される利用者の数は5,000件を超えると思いますので、個人情報保護法がかかると。そうすると、「目的外利用」とかいう言葉に置き換えていただいた方が。これは事業者にとっても「流用」というような言葉で括られるよりは、「目的外利用」ということになるのではないかと思います。これは文言ですけれども、修正をお願いしたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

はい、分かりました。ご指摘いただいた点、報告書の文案を考えさせていただきたいと思います。

ほかに何か。木村委員、どうぞ。

○木村(拙)委員

今の7ページの「業務規程等の利用者への周知」というところです。1番目の○で「管理機関の定める業務規程等を云々」ということで周知を図るということは書いていただいてはいるんですけれども、問題は管理機関の選択の余地がどの程度あるのかということなんですね。中小企業が自分で管理機関を選択して、それに対して取引の相手方も従ってくれるというならばいいんですけれども、大体において例えば大企業がこういう形で決済するよと言われれば、それに引きずられて管理機関を使わざるを得なくなるというケースもあるんだろうと思うんですね。

そういうことから言うと周知というのは当然必要なんですけれども、「業務規程に定めて」云々というのはなるべく統一してくれるというか、標準化するというのか、そういう形で、いろいろなやり方があるよというふうにならないように、この辺は絞り込むことをぜひご検討いただきたいなと思っています。

○岩原部会長

はい、分かりました。難しい問題で、さっきの「多様化を」というご議論と両方のご意見がございますので。案文は考えさせていただきます。

金丸委員、どうぞ。

○金丸委員

最後の「標準化」のところですけれども、標準化というのは最終的には非常に重要なことだと思うんですが、この2つの○の文章からは重要であるという決意というか認識というのが伝わらないので変えていただきたい。

あと、○の2つ目の表現が標準化に必要な要素に対しての網羅性が、足りない気がしております。今ここでこういうふうにした方がいいというのはぱっと言えないんですけれども、要するに登場する人たちというのは利用者と管理機関と金融機関がいらっしゃって、この○の最初のところで「管理機関と金融機関間の電子データ交換に関する技術」と書いてありますよね。これは利用者と管理機関とのデータ交換技術もあるので、利用者も加えて入れた方がいいのではないかなと思います。

それから、先ほど破綻リスクについてのご議論があったわけですけれども、破綻したときにその登録原簿や履歴等の電子データを瞬時にだれかが移動して、代替の機能を発揮しないといけないと思うんですね。そういう意味では、この「手続に関する電子フォーマット」という表現の中に意図として含まれているかどうかか分かりませんけれども、電子登録債権の登録原簿というのがデータベース化されるんですが、データベースのフォーマットも標準化されていないと瞬時に移動できないのではないかと思ったりしております。そういう意味では、データ交換とデータの蓄積、それから、全体の管理というものの標準化が図られなければいけないのではないのかということで、この全体の網羅性についてもう少し、私もアイデアを考えてみますけれども、検討していただく必要があるのではないかなと思います。

それから、標準化というのは、端末のハードウエアの標準化というのは、だれが今からやったって、パソコンあるいは携帯かも分かりませんが、ハードウエアの標準化という決定された仕様の機器を購入するということで達成されるので、重要なのはその中のソフトウエアの標準化なんですね。ここはさらにご検討いただきたいと思います。

○岩原部会長

はい。それでは、米澤委員、お願いします。

○米澤委員

今のご指摘は大変重要なご指摘だと思うんですが、金丸先生がおっしゃったことにつけ加えると、暗号の標準化が要るんだと思うんですね。それを指摘しておきたいと思います。

○岩原部会長

はい。それに関連してですか。では、窪田委員。

○窪田委員

データベースのお話が出たので、この中の文章で使っている意味を確認させていただきたいと思います。戻って申しわけないんですが、5ページの(業務遂行能力)の3つ目の○、「管理機関は、利用者の請求時の内容を確実に保存する」と書いてありますが、請求時のデータの保存というのは例えば期日前に買い戻ししたとか、そういういろいろなトランザクションの情報は全部とっておくという意味で。ほかの文章は「記録」とかいう言葉をお使いになっているんですが、これはそこまで意識した文章なんでしょうか。

○岩原部会長

事務局、お願いします。

○高橋企画課調査室長

すみません、ご指摘の趣旨がよくとらえられないんですが、ここのコンテキストは、改ざんが起きた場合には不実の特別の責任を果たすためにも、申請者の請求内容がはっきりしている必要があるという意味で使っております。

○窪田委員

ほかの文章は大体「利用者の記録」とか「情報」という言葉を使って説明しているんですね。それの改ざんとかいうような言葉を使っているので。この「請求」ということは個別に、例えば決済が終わりましたという情報まで全部保管していますよという意味の言葉でお使いになっているかを確認したかったんです。

○高橋企画課調査室長

その意味であれば、厳密に言うと「請求書に書かれている記録」とかいう表現が対応した正しい表現なのかもしれません。ご指摘を踏まえて少し考えさせていただきます。

○窪田委員

分かりました。

○岩原部会長

関さん、どうぞ。

○関委員

8ページの最後には大変いい文章が出ていると思うんですね。「利用者にとって最適な枠組みが構築されるよう、実務を踏まえた適切な対応が図られることが期待される」と。全くこのとおりだと思うんですが、私の関心は、これだけの優秀な方が集まって検討された電子登録債権が本当に使われて、安心して転々流通される債権がどんどんクリエートされるということだと思うんですね。

その出発点は、もちろんこれは中小企業の資金調達に資するというのが大目的ですから、それはそれでいいんですが、そのためにも信用力のある企業がこれを大量に振り出すということがエッセンシャルなのではないかという観点が非常に重要で、そういう意味では、発行登録、振出の簡素化というのは非常に重要なのではないかという認識でいるわけであります。そういう意味から言えば、債務者が単独で発行登録手続を、実際には画面に入力することになると思うんですが、行えばそれで発行登録は完了だという法的仕組みにしていただかないといけないのではないかと思っております。

と言いますのも、企業間決済というのは、皆さんご承知のように相当程度既に効率化されておりまして、オペレーショナルなところで負荷が増えますとなかなか使いにくいということになるのではないかということでありまして、ぜひ法的枠組み、仕組みですね、枠組みはいいとして、検討いただく場合はそういう視点をぜひ入れていただきたいということであります。

以上です。

○岩原部会長

はい。その問題は法制審で大議論になって、今ご指摘いただいたようなご意見と違う方向にいきそうなんですが。始関さん、何かご発言されますか。

○始関民事法制管理官

今、岩原部会長がおっしゃられたとおりでございまして、私が申し上げるよりも池田委員や木村委員から言っていただいた方がいいと思うんですけれども、手形でも判例でも単に手形を記入しただけでは手形債権は発生しないのであって、交付契約が必要であるということからいっても、また電子登録債権は、先ほど来出ていますように、さまざまな利用のされ方があって、いろいろな条項が書き込まれる可能性があると。

債権者にとっても、どんな債権なのかということを了解した上でないと、勝手に登録されたらそれが発生してしまって、原因債権に影響を及ぼすということがあってはならないことでありますので、原因債権への影響と切り離してはどうかという意見もあったんですけれども、切り離すのもいろいろ困難な問題が生じますので、そういうことを踏まえて。ただし、債権者側が関与するといっても、簡単な形で関与すればいいんだという方向で議論が進んでいるところでございます。

○関委員

ですから、包括的に合意するとか、いろいろなやり方があると思うんですね。個別の債権一つ一つについて、債権者の同意とか管理機関の確認が必要だということで煩瑣になると、これはなかなか使いがたいぞということを申し上げているわけです。

○岩原部会長

始関さん、どうぞ。

○始関民事法制管理官

それはおっしゃるとおりでして、そういう議論は法制審議会でも随分いたしました。債権者の任意でなければなりませんけれども、包括的な事前同意を管理機関と三者間で結んで行う。一括決済方式などは既にそういう方式で行われておりますので、そういうことでもいいだろうと。

あるいは、債務者側が登録行為をして、その旨の通知をメール転送かなんかで債権者側に送って、一定期間内に異議を述べなければそのとおりに登録して、例えば3日以内に何も言わなければそれで登録して、債権が成立したことになって、原因債権にも一定の影響を及ぼすと、そういうような合意をするとかいろいろなやり方が考えられるのではないかというご議論になっています。あるいは、ワンクリックで済ませるということも考えられるのではないかと、そういういろいろな実務的な工夫はできるという前提で、しかし債権者の意思は必要であろうというのが、議論の大勢ということでございます。

○岩原部会長

池田委員。

○池田委員

簡単に申し上げますと、今、法務省の始関さんからお話があったことですが、関委員のご発言のご趣旨はごもっともなんですけれども、詳しくは法制審マターなんですね。データだけ申し上げますが、手形と違って多数のデータを書き込めるというような特徴もございますし、書かれたものが抗弁の対象に主としてなるということがあったり、いつ出されたか債権者が知らないと困るとか、いろいろ債務者だけの登録では困る問題点が出てまいりまして、それは学会でもすべて列挙した形で議論がされております。学会の議論は12月5日号の『金融法務事情』にも載せてございますので、お読みいただければと思います。

すみません、ちょっと場違いなんですが。

○関委員

学会の話を聞いているのではなく、実務的対応ができるようにしてくださいというお願いをしているわけです。

○池田委員

ですから、実務的対応をどれだけしやすくするか、ワンクリックで済むとか、そういうようなことも含めて、先ほど始関さんのお答えにあったところで、法制審議会で大議論をずっとしてきたところであるということだけ申し上げておきたいと思います。決して法制審は理論の話をしているのではなくて、実際にどういうことで使われるか、債務者だけの登録にしたら、逆に登録は簡単だけれども、あとで法律的にとか、実務上も含めてトラブルが起こらないかと、そういうことを議論したわけでございますので、その点はご了解をいただきたいと思います。

○岩原部会長

木村さん、どうぞ。

○木村(拙)委員

関委員の会社には私どもの会社も大変お世話になっておりますので、関委員に反論すること大変萎縮する思いがございます(笑)。私ども中小企業の立場として法制審でもいろいろ発言させていただいているんですけれども、今の取引の実態として、中小企業が大企業に物を納めるといったときにすんなりと取引が流れれば何ら問題はないのでございますが、ケース・バイ・ケースで、価格がまだ決まらないうちに物を納めなければいけないとか、あるいはいろいろなクレームがついたりということで、手直しをするというようなケースも具体的にございます。

そういったときにいろいろな対応を両者で打ち合わせをしながら、最終的に納品をし、決済をしていただくというふうな流れが現実にあるわけでございます。そういった過程にあるものが、例えば一方的に大企業側から「この支払はこうやって決済するよ」と言われることについては、私ども中小企業としてみると、そのとおりに進んでしまうとちょっと怖いなというふうな思いもございまして、法制審の場でもこういった議論はさせていただいております。そんなことで、中小企業の立場をおくみ取りいただけるようなことで議論をしていただいているというのが現状でございます。

○小野委員

すみません、この議論に割り込むのではなくて、管理機関という観点からの質問なんですが。

○岩原部会長

今の点ですか。

○小野委員

ええ、今の点で。管理機関は実体法上の紛争に巻き込まれないことが重要であると思うんですね。債務者の承諾が必要だと、これは法制審のマターでいいんですが、管理機関はそれの確認義務まで課せられる、または金融検査の際に一部確認がされていないとか、そこまで実体法上の確認義務が出てくると、法制審のマターではなくて、管理機関の責務、責任、または損害賠償能力とか、同期的管理でも例えば相殺のように実体上法のものについてはかかわらないというような議論もありました。その辺についてはどういう整理なのかということをお伺いしたいんですが。

○岩原部会長

その点も今の問題との関連で論点になった一つです。債権者と債務者の両方の登録申請が合致したときでないと登録できないということになると、管理機関がそれに対応できるかという点も一つの論点として議論されたわけであります。それを含めて先ほどの包括同意のような形、あるいは、始関管理官がおっしゃいましたような、管理機関から通知をして一定の期間内にそれに対する異議がなければとか、それでもって両者が一致したと管理機関が扱っていいということを前提に、両方の申請が一致したときに登録ができるという形で大勢としては議論が進んでいると思います。

そういうことができるということになりますと、管理機関としての義務、監督もそういうことが行われていれば、管理機関としては務めを果たしたと、そういうふうに考えることになるんだろうと思います。ただ、私と、ここで申しますと平田委員が、むしろ関さんと同じ考えを法制審では強く主張していたんです。そういう立場からしますと、包括同意でよいということで、先ほど木村委員がおっしゃったような、中小企業へ十分配慮されることになるのかとか、考えるべき点は多いんですけれども、そういうことを含めて検討した上で、実務的に動き、かつ管理機関が対応できるようにするにはどうしたらいいかということで、今、法制審議会において最後の詰めをやっている段階でございます。

よろしいでしょうか。

木村さん、どうぞ。

○木村(拙)委員

今回整理をしていただいたもので、電子登録債権の制度の骨格がかなり固まってきたと思っております。ただ、今まで議論をしてこなかった、触れなかったこと、あるいは、もしかしたらこれから議論されるのかもしれませんけれども、ちょっと気になっておりますのが不渡制度の問題でございます。これは管理機関が、ここにありますように、財務的な基盤とか業務遂行能力とかいったものはどうあるべきかと。あるいは、システムの安全性とか安定性といったものはだんだん整備されていくんだと思いますけれども、この制度の中で登録され、あるいは、流通する電子登録債権そのものが、信頼性とか健全性が確保されなければ、電子登録債権というのが本当に信頼されるものにはならなのではないかということでございます。

現在、手形決済の場合には、手形交換所の不渡制度というのがありまして、アンペイドになれば取引停止処分があるわけですね。電子登録債権制度の下ではそれに相当する制度が分からないというか、まだ目に見えていないというのが現状だろうと思うんですね。もしデフォルトを起した人が引き続いて、電子登録債権制度の決まりがないからといって、電子登録債権を発行するということがあると困るなと。あるいは、手形交換所では取引停止処分になっている人が、手形を出せないからといって電子登録債権で決済しようということになりますと、電子登録債権というのは果たして信頼性があるものと言えるのかどうか、若干その辺を危惧しているわけでございます。

いわゆる一つの管理機関の中では、その中の利用者がデフォルトを出せば、これはこの中で分かるのかもしれないんですけれども、今のつくりつけとしては管理機関は併存することを認めているわけですね。そうすると、管理機関相互の中でのデフォルト情報が共有されるということになっていないと、電子登録債権制度そのものがまずいのではないかというふうに思っております。では、どういう仕組みをつくったらいいのかという具体的なイメージが私にあるわけではないんですけれども、電子登録債権制度を信頼できるものにするということから言えば、この辺を検討しておく必要があるのではないかと思っております。

○岩原部会長

大変重い問題を提起されたわけでありますが、少なくとも現在の手形の不渡処分の制度は、法律上の制度ではなくて、手形交換所に加盟されている金融機関が手形交換所との間の規則というか、集団契約でお決めになっていることで、むしろそれが独禁法違反ではないかといって争われたりしているのであります。したがいまして、法制審でも従来は、法律上の制度として不渡処分に類するものをつくるということを検討してはしてきませんでした。

世界的に見ますと、フランスなどは手形・小切手の不渡を出したときに刑事罰を科すという形をとっています。現行法上も、小切手については小切手口座に残高がないのに小切手を振り出すと刑事罰が科されることになっているんですけれども、実際は空文化して、適用されたことがありません。もしここで議論すると、例えばフランスと同じような制度を日本で立法すべきかと、これまた大変難しい議論になると思います。

民間でやるとすると、さっき手形交換所で申し上げたような問題がありうると思いますし、それこそ個人を債務者とする電子登録債権まで入ってくるということになると、個人情報保護との関係等を含め大変難しい問題になると思いますので、現時点ではそういうことを制度化することまでは考えないで電子登録債権の制度を進めてはどうかということで議論が進んでいると、法制審でも本部会でも少なくともそれが暗黙の前提にあると私は理解しております。そうではなくて、フランスみたいな制度を立法すべきだというご意見があれば、それはそれでまた検討いたしますが。

小野さん。

○小野委員

ぜひやっていただきたいんですが、専業制をとった場合、不渡とかいう信用情報を共有すること自体は、当事者の同意が約款の中に入っていることになるんでしょうけれども、法制的な手当がなくて大丈夫なのかなと。それはいい面、悪い面、両方あると思うんですが、制度としていいものということであれば、一定の範囲での情報の共有は必要だし、それが乱用されるのは制限するというような、制度的な手当も必要なのかなと思って質問させていただきます。

○岩原部会長

専業制にする一つの理由は、兼業しているところで、先ほど情報の「流用」という言葉が批判されましたけれども、そういったことが起きないようにと、情報のことも考えて専業制ということにしているわけです。ただ、専業制にしたときでも、情報をどういう形で不正な利用がされないようにし、また逆に必要な範囲での情報の利用についてどのような監督の態勢をつくるかというのは、今後具体的な制度を検討していく上で非常に重要な問題だと思っています。それをここで詰め切ることはできないと思っていますが、そういう点は十分配慮して、今後制度づくりを事務当局にお考えいただきたいと思っております。

始関さん、どうぞ。

○始関民事法制管理官

申し上げる時期が遅くなってしまったんですが、先ほど原委員から消費者保護の関係で、6ページの3つ目の○の「法制面での保護が図られている」というのは、「法制面の保護が一定程度図られている」にするべきだと。その理由として、前の○のところで「第三者保護規定が適用されず、民法の原則に戻ることとされる」だけだからとおっしゃったんですけれども、これは法制審議会で議論しているところでございますが、第三者保護規定は適用されませんので、人的抗弁の切断とか善意取得が生じませんから、民法が適用されることになるのはもちろんなんですけれども、さらに消費者契約法や特定商品取引法も適用される。それを排除するのが人的抗弁の切断ですので、それがなくなって、普通の消費者保護規定はすべて適用されるようになるという意味でございます。ですから、「一定の保護」に直すのではなくて、「民法の原則に戻る」という方を修文した方がよろしいのではなかろうかと思います。私どもにかかわる問題なものですから、一言発言させていただきました。

○岩原部会長

ありがとうございます。

原委員、そこについて何か。

○原委員

はい、正確な表現にしていただけたらと思います。

○岩原部会長

それでは、文案については事務局に考えていただきます。

高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

関連してでございます。利用者の保護の項目に、消費者による利用の点について、念のためと言いながらも細かく記載していただいたことは、信頼性確保の上で大変重要だと思っています。せっかくここまで書くのであればという意味で、二、三、修文の要望を申し上げたいと思います。

まず、2つ目の○のところの「特に」以下の部分ですけれども、消費者は事業者に比べ劣ると書かれています。、これは消費者保護規定の事業者と消費者の情報の非対称性等のことを言っておられると思うんですが、優劣に見えるような表現にされるとあまり気持ちがよくないなというところがありまして。一般的な書きぶりとしてよく使われるのは「事業者と消費者の情報の質あるいは交渉力の格差に鑑みて」です。それをもっと分かりやすくするために「劣る」としたかと思うんですが、最小限の修文にしても「劣る」を「劣位にある」ぐらいにしていただきたいです。

それから、2点目は4つ目の○のところでございます。先ほど原委員から支払金額等を通知するだけではなくて、「説明義務」というようなご要望がありましたけれども、私も、今のままではちょっと違うのではないかなと感じているんですね。なぜかと言えば、この4つ目の○の最初の「このため」という「この」というのは、「紛争の発生を未然に防止する」というのを受けていると思うんです。紛争の発生を未然に防止するため、支払期日や支払金額等を通知することが、消費者保護のための適切な対応の一つだととれるんですが、通知するというのは一般的に当たり前だと思いますし、通知したり、単に説明したらリスクが移転するというふうにとられたら、消費者保護にならないので、このあたりの書きぶりを工夫していただきたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

はい。それでは、表現ぶりをちょっと考えさせていただきたいと思います。

川本委員、どうぞ。

○川本委員

1点だけ申し上げます。7ページ目の一番下の行ですけれども、「電子登録債権の仕組みを踏まえれば、電子登録債権がいわゆる『電子マネー』として利用される可能性は現段階では低い」とありますが、こう書かれていると「いわゆる『電子マネー」」というのは何なのか疑問が出る可能性があるので、電子登録債権と電子マネーは違うと書いていただくのか、あるいは、その辺の整理をしていただくとありがたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

はい、分かりました。では、それも表現を考えさせていただきます。

佐藤委員。

○佐藤委員

8ページのネッティングについてコメントだけ申し上げさせていただきたいと思います。方向感としては、電子登録債権管理機関がCCP的な業務を行うことは認めない方向の方がよろしいだろうという整理ではないかと思うんですけれども、一つの考え方としては当然それはあるだろうと思います。ただ、CCPを活用したネッティングというのは今現在行われている取引だろうと思いますので、電子登録債権を活用することによって、より法的安定性とか透明性が高まるということも考えられるかと思います。

そういう整理がつくのであれば、今現在CCPが破綻したって、それが世の中に与える影響というのは大きいかもしれませんし、社会全体のリスクが減っていないわけですから、例えばきちんとしたルールをつくらせるとか。それは業務規程でつくるのか、法律でつくるのかというのは分かりませんけれども、そういうような方向感が見えれば、誘引していくという考え方もあるのではないかなと思います。

それから、CCPにリスクが集中するのは事実なんですけれども、それを放置していることは通常あまり考えられない。ですから、同期的な管理をすることによってリスクが膨張することを避けるとか、利用限度額を定めて一定金額以上のリスクを負担しないようにするというような工夫を通常はしているかと思いますので、その辺の実態も踏まえて今後ご検討いただければと思います。

○岩原部会長

はい。では、和仁委員。

○和仁委員

最後のポツのところで、今、佐藤委員のおっしゃったのはCCPという制度をどう考えるかということだろうと思いますので、最後の「このため、電子登録債権の」で、「電子登録債権等のネッティングについては」というようにして、もう少しまとめ的な、銀行法も含めての議論につなげていただければと思います。

○岩原部会長

ありがとうございます。では、銀行法の問題を含めて事務当局に重々考えていただきたいと思います(笑)。

よろしいでしょうか。それでは、時間もオーバーしましたので、特にご意見、ご質問等がなければ、本日の審議は以上にさせていただきたいと思います。

この後記者会見を行いまして、本日の会合の模様につきお話をさせていただきたいと思います。

それでは、次回の開催予定を事務局からお願いしたいと思います。

○高橋企画課調査室長

次回は12月11日(月)午前10時からを予定しております。今回さまざまにいただきましたご意見等を踏まえまして、再度文章にしたものを出させていただきたいと思っております。

あとはまたご連絡を差し上げたいと思います。

○岩原部会長

それでは、本日の審議を終わりたいと思います。お忙しいところ大変熱心なご議論をいただきましてありがとうございました。

以上

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