金融審議会金融分科会第二部会(第40回)・「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(第38回)合同会合議事録

日時:平成19年10月24日(水曜日) 14時00分~16時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

【保険関係】

○岩原部会長

それでは、時間でございますので、ただいまから第40回金融審議会金融分科会第二部会及び第38回保険の基本問題に関するワーキング・グループの合同会合を開催いたします。

皆様、本日もお忙しいところお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開とさせて頂きたいと存じますので、その点、まずご了解をお願い申し上げます。

今回、第二部会につきましては、9月18日の保険関係の審議以来でございまして、保険の基本問題に関するワーキング・グループにつきましては、10月3日に、銀行等による保険販売に関しまして、関係者からご意見をお伺いする機会を開催して以来ということになります。

議事に入ります前に、9月の第39回第二部会以降の委員の方のご異動がございますので、ご報告申し上げます。水上委員がご退任になりまして、黒沼委員がご就任になられました。

本日は、第二部会の神作委員、木村委員、黒沼委員、野村委員、堀内委員、田中委員、保険ワーキング・グループの深尾委員がご欠席になるご予定であります。

それでは、本日の議事に移らせて頂きます。お手元の議事次第に沿いまして、ご議論を頂きたいと思います。本日の議事の進め方でございますが、保険と信託の2つのテーマがございます。まず、保険関係につきましては2つございまして、第一に、銀行等による保険販売についてでございます。これに関しましては、まず10月3日の保険ワーキング・グループの概要について、保険ワーキング・グループの山下座長から、簡単にご報告を頂いた後、事務局より銀行等による保険販売に関する監督上の対応などについてご報告を頂きたいと思います。

第二に、9月の第二部会におきましてご紹介させて頂きました、保険に関する規制緩和に関連した項目。具体的には保険会社の資産別運用比率規制及び保険契約移転時における移転単位について、損害保険協会よりご説明頂き、これに関しましてご審議を頂きたいと思います。

保険に関する審議は以上でございまして、合計1時間程度を考えております。その後、信託に関する審議に入ります前に一旦数分程度休息をとって頂きまして、その際に信託ワーキング・グループの委員にもご出席頂くようにしたいと考えております。その後、平成16年改正後の信託業法の施行状況につきまして、1時間程度ご審議を頂きたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、まず、銀行等による保険販売に関しまして、山下保険ワーキング・グループ座長よりご報告を頂きたいと思います。それでは、山下座長、よろしくお願いします。

○山下WG座長

山下でございますが、ご報告申し上げます。

10月3日に保険の基本問題に関するワーキング・グループが開催されまして、銀行等による保険販売に関しまして、関係者等の皆さんからのご意見の聴取を行いました。その状況について、簡単にご報告させて頂きます。

開催の経緯につきましては、委員の皆様方ご紹介のとおりかと思いますが、本件に関して、第二部会より保険ワーキング・グループに参加されなかった方々も含めて、いろいろなご意見があるということを伺っておりましたし、また金融庁の方でも関係者等からの意見も十分にお聞きするとともに、モニタリング結果等について、関係者に対して丁寧に説明し、各方面の理解が得られるよう努めてまいりたいということでございました。そのため、3年前の規制の緩和の際にも保険ワーキング・グループを開催しまして、関係者からご意見を聞いたこともございまして、今回も保険ワーキング・グループにおいて、関係者からご意見を聞く機会をつくってはどうかということで、これが10月3日に開催されたワーキング・グループの会合ということであったわけでございます。

ワーキング・グループにおきましては、まず金融庁から銀行等による保険募集に関するモニタリング結果についての説明がされました後、関係者からご意見の聴取を行い、その後自由討議を行いました。具体的な関係者としては、生命保険協会、日本損害保険協会、外国損害保険協会、全国生命保険労働組合連合会、損害保険労働組合連合会、生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会、日本損害保険代理業協会、日本保険仲立人協会、在日米国商工会議所、全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会と、以上の14団体からお話を伺いました。

その後の自由討議において出されたご意見について申しますと、例えば、圧力募集等を防止する弊害防止措置について強化するべきであるというご意見、逆に緩和すべきであるというご意見、両様がございました。非公開情報の保護措置に関しても両様の規制の強化、緩和というようなご議論がございました。銀行と保険会社の業務の分担を定めて利用者に分かりやすいような形で示すべきであるというようなご意見、銀行や保険会社が自ら弊害防止に関して規制に頼ることなく、まず自ら取り組む努力が必要であるというようなご意見、規制ルールとその実効性というものはいかがなものかという点についてのご議論、銀行等が保険販売体制についてさらに整備すべきであるというようなご意見、保険会社においても委託管理体制をさらに整備すべきであるというようなご意見。それから、消費者や利用者の利便の観点から、これらの銀行や保険会社における内部管理を強化すべきであるというようなご意見、金融庁による検査監督やモニタリングの強化に関するご意見、国際競争力という観点からこの問題を前向きに考えていくべきであるというご意見、各団体で収集した問題、販売事例等があるというご意見とこれに関してのご議論、生保営業職員や損保代理店など、既存の販売チャネルのあり方、銀行窓販解禁が既存のチャネルに対して及ぼす影響についてのご意見、中小金融機関特例を採用する中小金融機関における1,000万円の上限という販売規制の見直しに関するご意見など、多くのご意見を伺いましたが、詳細につきましては、お手元に事務局より配付されております保険の基本問題に関するワーキング・グループ第37回議事要旨というペーパーにまとめられておりますので、こちらをご参照頂きたいと思います。

私からの報告は以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

続きまして、事務局より、銀行等による保険販売に関する監督上の対応などにつき、ご説明をお願いしたいと思います。

○諏訪園保険企画室長

よろしくお願いします。

9月18日にこちらの場におきまして、モニタリング結果を公表し、あわせて予定どおり12月22日の解禁を行いたいと。一方、それとあわせまして、今後関係者等からの意見も十分にお聞きするために、上記のこのようなモニタリング結果については、関係者に対して丁寧に説明を行い、各方面の理解が得られるように努めてまいりたいという旨を申し上げまして、その後、いろいろな場でいろいろな方々からのご意見をお伺いしてまいりました。それにつきましては、先ほど山下座長からご紹介して頂いたように、まさに多岐にわたるご意見がございました。

そうした中で、私どもは、銀行等による保険販売の全面解禁を予定どおり、本年12月22日に実施するということ、その際、より一層の保険契約者等の保護を図るため、監督上の対応を行ってまいりたいというふうに考えまして、お手元の資料38-1でございますが、そちらのとおりのような考え方を整理してまとめたものでございます。

それでは、おめくり頂きまして1ページでございます。柱書きで1、銀行等における責任ある販売体制の整備、監督指針の改正による対応でございます。1つ目は、保険契約締結後に発生する業務の適切な分担でございます。具体的には、保険会社及び銀行等が委託契約等において保険金等の支払い手続に関する照会などといった保険契約の締結後に発生する業務について、業務分担を明確に定め、顧客に明示すること。これによりまして、顧客の側にとって、わからないことがないように対応して頂きたいというものでございます。(注2)にございますように、保険契約締結後の業務としては、例えば、契約内容の照会への対応、顧客からの苦情・相談への対応などが考えられるところでございます。

2点目が、こうした保険契約締結後の業務につきまして、保険会社及び銀行等双方において、この締結後の業務を行うため、十分な要員の確保に努めるなど、必要な体制を構築すること。(注)にございますように、現行、そうした定めは保険会社方にもございませんでしたが、これを求めるというものでございます。

2ページ目でございます。銀行等の販売責任等の周知でございます。そこのまず(注)からご説明させて頂きますと、「現行では、銀行等は以下の事項を内容とする保険募集指針を定め、公表することになっている」と。その内容といたしまして、例えば、違法な保険募集で損害を与えた場合には、銀行等に募集代理店としての販売責任があることを明示、あるいは募集を行う保険契約の引受保険会社の明示や保険契約にかかるリスクの所在についての説明、顧客の自主的な判断により選択を可能とするための情報の提供といったものでございます。これにつきまして、太字に戻りますと、銀行等のこの保険募集指針の内容を顧客に周知徹底するため、銀行等において、書面による交付、店頭掲示などの必要な措置を講ずることということでございます。

2番目が顧客情報の利用態勢の整備でございます。現行では、保険契約の締結に際しまして、非公開情報が事前に顧客の同意を得ることなく利用されてはならないとされておりますが、これについて、より実効性を確保し、新たに事後的・客観的な検証を容易なものとするため、事前に顧客の同意を得なければ、保険契約の締結の代理、または媒介ができないようにするための必要な措置を講じること。具体的には、(注)にございますように、上記の「必要な措置」とは、例えば、非公開情報を利用しようとする場合は事前に合意をとらなければ、商品説明を行えない。さらに書面による同意がなければ、契約申込み・締結を行えないような事務手続を整備することが考えられるというものでございます。

3点目が、コンプライアンス、銀行等の法令等の遵守態勢の整備等でございます。1点目が、法令等遵守責任者等の要件といたしまして、現在、支店などの単位に法令等遵守責任者を、本店にその統括責任者を配置しておりますが、法令や保険契約に関する知識等を有する人材を法令遵守等責任者として配置して頂くこと。それから、(2)内部監査態勢の整備でございますが、これも同様の人材を内部監査部門に配置して頂くことを求めるものでございます。

4ページ目でございます。公取のガイドライン関係といたしまして、銀行等が保険募集業務に関し、不公正な取引を行わないよう、公取ガイドラインに従った、十分留意した業務運営を行うことというものでございます。(注)にお示ししたようなことが現行書いてあるということでございます。

それから、5ページ目でございます。モニタリング及び検査監督ということで、金融庁としての対応でございます。保険契約者等の保護の観点から弊害が発生しないよう、全面解禁後においても引き続き銀行等の保険募集について、モニタリングを行うこととする。モニタリングでは、金融サービス利用者相談室、あるいは保険会社、銀行等に寄せられた苦情を収集し、十分分析する。その結果を検査・監督にも活用。今回改正した監督指針等の趣旨を十分に踏まえた検査・監督を行い、問題が認められた場合には、必要に応じ厳正な対応を行う。モニタリング結果等を踏まえ、契約者等の保護やあるいは利便性の観点から弊害防止措置等について、概ね3年後に所要の見直しを行うものでございます。

最後でございますが、その他といたしまして、融資先への販売規制等の圧力販売を防止する規制に関し、全銀協等の業界団体が会員行に対し、規制の趣旨を踏まえた適正な保険募集を行うよう要請する。それから、内閣府令の改正、これは実は技術的なものでございますが、まず第三分野保険について、中小金融機関特例にかかる保険金額の計算方法の見直しということでございます。現行、営業地域が限定されております中小金融機関については、弊害防止措置の一部を緩和する一方で、売ってよい保険は小口のものに限るというふうになってございます。第一分野ですと、保障1,000万円ということで分かりやすいわけですが、第三分野の場合は、入院日数1日当たりいくらという保険金もございますので、そうしたものについて、日額基準で小口の額を設定するというものでございます。具体的には、1日5,000円、それからガンなどの特定疾病の場合にはプラス5,000円、1万円を上限とするというものでございます。

それから、最後は銀行本体について保険販売を全面解禁するのにあわせまして、銀行等の子会社に係る商品制限、今、第三次解禁までの商品となっておりますので、これも解禁するというものでございます。以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、山下座長及び事務局からのご説明を受けまして、皆様からご質問、ご意見等がございましたら、ご自由にご発言を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。

筒井委員、お願いします。

○筒井委員

本件で、これまで生命保険協会といたしまして、利用者保護の視点からいくつか主張させて頂きまして、それに対して必要な態勢整備について措置を講じて頂けるということにつきまして、高く評価をさせて頂いておりまして、御礼を申し上げたいと思います。

加えてになりますけれども、2点お願いをさせて頂きます。1点目、先ほどのご説明で全面解禁後も引き続きご当局によりモニタリングを継続して頂けるということでございますので、利用者保護の視点から、ぜひ実効性のあるモニタリングをお願い申し上げたいということでございます。

2点目では、生保労連等で収集された事例の中に、銀行等の優越的地位が問題になり得るケースといたしまして、融資先企業代表者の家族への保険募集でありますとか、支店長自らによる保険募集といったものが含まれております。これらの点につきましては、今回特段監督上の措置は講じられませんでしたけれども、生命保険業界としては、引き続き問題意識を持っておりますので、この点、監督ご当局におかれましても、今後ともご留意を頂ければと考えております。

以上2点ですが、当然私どもの生保業界各社も今回講じて頂く措置の趣旨をよく踏まえまして、利用者保護の観点から疎漏のないように12月の全面解禁に対応してまいりたいと考えております。

以上でございます。

○岩原部会長

どうも。それでは、今の件で諏訪園さん。

○諏訪園保険企画室長

今、ご指摘の点が2つございました。モニタリングにつきましては、私どもも金融庁としては保険契約者等の保護の観点から全面解禁後においても、引き続き銀行等の保険募集について、しっかりとモニタリングを行ってまいりたいと考えております。

また、2点目のご指摘についてでございます。この点につきましては、金融庁として行ったモニタリング結果については、そうした指摘を裏づける事例はほとんど見当たらなかったということから、現行の内閣府令に基づく圧力販売を防止するための弊害防止措置を見直さないということにしたものでございます。ただし、全面解禁の実施に当たりまして、保険業界と銀行界とで知恵を出し合って適正な保険募集のためにさらに何かお考え頂ければ、保険契約者の一層の保護に資するものと考えるところでございます。よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

森崎委員。

○森崎委員

意見と質問をさせて頂きたいと思います。まず、第一に、今回のガイドラインの改正問題でございますが、先般、金融庁の方から発表されました現行の規制につきましては、これは有効に機能しているというご報告を頂いておりますが、今回、さらにこういう規制が入ってくるというのは、やや違和感を覚えるところでございます。しかも、今回のこのガイドラインの改正につきましては、保険会社と代理店、すなわち銀行ですね、との関係について一定の規制をするということなんですが、これは保険会社とその委託先の代理店との関係につきましては、言うまでもなく保険会社に管理監督責任があるわけですから、これはあえてこういうふうに言うというのは、よほど銀行が信用できないと、こういうことだろうと思うんです。もしくは、保険会社としては、銀行が手こずるということなのか、お上にすがってやるというのはいかがなものかというふうに考えます。

それから、第2点目でございますが、非公開情報につきまして、ここで「より実効性を確保し」と書いておられますけれども、今までの規制につきまして、それが実効性がなかったのかどうかということですが、これは実効性があってよく機能しているというふうにおっしゃっていますので、こういうのは何か別のことがあるのかなということです。

それから、もう一つは、書面による同意の問題なんですけれども、対面募集の場合と非対面募集の場合ですね、これをぜひ分けて考えて頂きたいと。と言いますのは、非対面募集の場合は圧力がかかるということはまず考えられませんので、この辺は2つに分けて指針を作るならば、作って頂きたいというふうに思っております。

それから次に、最後の見直しなんですが、概ね3年後となっておりますが、この前ほかの委員の方から、いつまでこの論議をやっているのかというご指摘もありましたけれども、この3年を足しますと、もう10年ぐらいになるわけですね。これだけの人たちが集まって10年も議論するという、そういう代物かということなんですが、これは3年ではなくて、やはり1年ぐらいで見直をしていくというふうに考えて頂くのが妥当ではないかというふうに思っております。私どもも銀行窓販というか、そういうチャネルを活用して、今後、顧客の利便性を高めるということに努力をしていきたいと思っておりますけれども、こういう自主的な責任の中でやっていくという、新しい監督の考え方からいたしますと、いかにもお上の知恵、お上の力をかりなければ何もできないと、こういうことはできればやめて頂きたいというふうに思っています。

○岩原部会長

では、諏訪園さん、お願いします。

○諏訪園保険企画室長

最後のモニタリングのところから、ご説明いたしますと、ここに書いてございますように、これは保険契約者等の保護やあるいは利便性の観点からというものでございます。つまり、契約者保護の観点から、さらに規制を強化すべきということもあり得ますし、利便性の向上という観点からは現行の規制を少し緩和すべきではないかというご議論も想定されるかと思います。いずれにしましても、それはモニタリングをしてみて、そうした事実をもとに、また議論が行われるということだと思います。もちろん、仮に何かの問題があれば、3年を待たずに議論が行われることも、これもまたあろうかと思います。このように考えております。

それから、非公開情報について、ケース・バイ・ケースではないかというご指摘もありました。そうしたご指摘も踏まえながら、なるべく早く作業をいたしまして、監督指針の改正案をお示ししたいと思っております。

それから、それとの関係で、「より実効性を確保し」についてご指摘ございました。我々のモニタリングの中で、基本的には有効に機能しているという考え方は変えてございませんが、例えば不祥事件報告の中では、非公開情報保護措置についての、事務ミスとはいえ、問題事例もあったところでございます。そういう意味で、文章上の表現として、「より」ということを入れさせて頂いているというところでございます。

以上です。

○岩原部会長

ほかに。砂田委員、どうぞ。

○砂田委員

ちょっとお尋ねしたいんですけれども、12月22日に全面解禁ということで、監督上の対応を述べられておりまして、この業務分担を明確に定め、顧客に明記するとありますが、あと2カ月ということで、この販売体制の整備のスケジュールについて、いつどのように進めていかれるのでしょうか。それから、保険会社及び銀行と双方において保険契約締結後の業務を行うため、十分な要員の確保に努める等、書かれておりますけれども、双方ということは別々に案を出していかれるのか、保険会社と銀行と絶えず連絡をとりながら話し合って作り上げていかれるのか、この2点をお願いします。

○岩原部会長

諏訪園さん、お願いします。

○諏訪園保険企画室長

まず1点目でございますけれども、業務分担を明確に定めて、顧客に明示することということで、こうしたことを踏まえながら、どのように販売体制を進めていくか、これは私どもも半ば報道ベースで聞いているところでもありますけれども、制度上は12月22日に完全に解禁されるものでございます。同時に、すべての銀行、すべての保険会社が全商品を横並び的にラインナップをするということではなくて、それぞれの経営判断によって、あるいは経営戦略によって取扱い商品をそれぞれごとに絞って販売されるというふうにお聞きしているところでございます。

それから、態勢整備のところでございますけれども、これは、先ほどの業務分担を定めた場合に、保険契約後の業務がどの程度それぞれ発生するかが恐らく見込まれるのだと思います。そして、保険会社、銀行等、それぞれが引き取られた業務に見合うきちんとした態勢を作って頂きたいということを、監督上の指針として明確化したというものでございます。

○岩原部会長

よろしいでしょうか。ほかに何か。

落合委員。

○落合委員

2点ほどお願いごとがございます。

1点目は、今回の全面解禁において、保険契約者の保護を図るという観点で審議されて来たのですが、私たちもこの必要な施策に対しては、現場を中心に、態勢整備を充実して行く事を、心を新たに再認識しているところでございます。

ただ、通して見ていますと、やはり銀行窓販だからという特殊な見方によって、規制があまり強化され過ぎると、お客様保護が、逆にお客様の利便性を阻害することにもなるのではないかと思います。

従いまして、是非、この3年間のモニタリングの中では、単に規制を強化するための観点からだけではなくて、真にお客様の立場に立って、バランスの良いものになっているのかとの観点よりモニタリングをして頂きたい。

その場合、逆に規制緩和も含めた視点を持って見て頂きたいと思います。

2点目は、私ずっと審議内容を聞いておりまして、現場と論議の中にちょっと意識の違いがあると痛感しました。

それは、今回の一番のキーワードであります優越的な地位の濫用についての認識であります。融資先に対して金融機関は優越的な地位にあるんじゃないか。確かに昔はあったと思います。ただ、時代の変化とともに、直接金融が増えたことにより、オーバーバンキングなどという言われ方をしているように、各金融機関は融資が増加せず預貸率のアップに苦労している状況でございます。こういう状況になりますと、競争原理というのは逆転していきまして、必ずしも本当に融資先に対して金融機関が優越的な立場にあるのかどうか、この辺も含めましてご検討頂ければと思っております。

以上でございます。

○岩原部会長

諏訪園さん。

○諏訪園保険企画室長

先ほどご説明しましたとおり、保険契約者等の保護の観点からのモニタリングを行っていくということでございますが、同時に今ご指摘頂いたような2点についても十分念頭に置きながら作業を進めていきたいというふうに考えております。

○岩原部会長

國部さん。

○國部委員

本日、12月22日に予定どおり全面解禁という方向でお話を頂きましたが、これを受けまして、銀行界といたしましては、もともと保険窓販の全面解禁のメリットでありますお客様の利便性向上ということに貢献できるように、今後新しく販売をしていきます保険商品につきましても品質の高い商品サービスの提供に努めていきたいと考えております。

また、保険契約者等の保護という観点、特にここでお示し頂いている銀行等における責任ある販売態勢の整備等につきましては、私どもとしても、今後手当てされます監督指針の改正等を踏まえまして、適切な保険募集の確保という観点でしっかりと対応していきたいと考えております。態勢整備を図りまして、全面解禁の日を迎えたいと考えております。

先ほど砂田委員の方からお話がありましたが、役割分担につきましても、それぞれの銀行とそれぞれの保険会社さんとの関係において、役割分担をお互いに取り決めまして、契約書に明記するという形、あるいは販売員をしっかりと確保して販売していくということで、しっかりと臨んでまいりたいと考えております。

以上、ご報告させて頂きます。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

よろしいでしょうか。

それでは、以上をもちまして、この件を終えまして、次に進めたいと思います。

次に、保険に関する規制緩和等に関連する審議に移りたいと思います。本件につきましては、保険会社の資産別運用比率規制及び保険契約移転時における移転単位に関しまして、損害保険協会を代表して、三井住友海上火災保険の常務執行役員であり、部長でもいらっしゃいます柄澤委員からご説明を頂きたいと思います。それでは、柄澤委員、よろしくお願いします。

○柄澤委員

日本損害保険協会一般委員長の柄澤でございます。お手元の資料を適宜ご覧頂きながら、保険会社の資産別運用比率規制及び保険契約移転時における移転単位につきまして、政府に対して規制改革を要望した立場から、制度の概要を説明いたしますとともに、要望趣旨を申し上げたいと思います。

初めに、資産運用比率規制についてでございます。資料の1ページ目をお開きください。保険会社の資産運用につきましては、資産別の投資上限を定めた、いわゆる3-3-2規制が適用されております。次ページ以降で改めて説明いたしますが、現在、保険金等の支払い能力の充実の状況が適当であるかどうかとの基準でありますソルベンシー・マージン比率規制のあり方も検討され、またモニタリング等の監督手法も整備されております。これらを踏まえまして、私どもといたしましては、当該規定の見直しを要望しておりまして、政府の規制改革推進3か年計画にも記載されたところでございます。保険会社の健全性を確保しつつ、経営の自由度向上や、より機動的な資産運用を可能とする観点から、ソルベンシー・マージン比率規制の見直しにかかる検討結果を踏まえた上、規制を撤廃する方向でご検討願いたいというふうに考えております。

2ページ目をお開きください。現行規制の概要を示しております。資産の類型別に運用比率の上限が規定されていますが、保険会社の健全性を示す指標としては、問題があると考えております。具体的には、貸借対照表上の資産のみを対象としており、負債や資本を考慮していないこと。また現物資産のみを対象としており、デリバティブ等のリスクを考慮していないこと。簿価によっており、時価変動リスクを考慮していないこと等が挙げられるというふうに考えております。

3ページ目をご覧ください。関連する法制度の概要を示しております。資産、負債の双方と保険会社が抱えるリスクに着目したソルベンシー・マージン比率規制、オフサイト・モニタリング制度、ディスクロージャー制度と、保険会社の健全性との一貫した趣旨に沿って運用される、直接、間接の監督手法や、監督機能は一定整備されているというふうに考えております。以上、申し上げた点も踏まえつつ、幅広い観点よりぜひご検討頂きたいというふうに思っております。

次に、保険契約移転時における移転単位についてご説明申し上げます。4ページをお開き願います。現在、保険契約の包括移転に関しましては、保険業法上、責任準備金の算出基礎を同じくするもの、具体的には保険種目の単位で移転することとされておりまして、これをさらに分割することは認められていません。破綻会社の更生手続による処理につきましては、裁判所の管理下で責任準備金の算出基礎によらない分割が可能ですが、破綻以外の場合につきましても、保険契約の一部を移転することにつきまして、保険契約者等の公平と、その保護に留意しつつ、見直しをぜひご検討頂きたいというふうに考えております。

5ページ目をご覧ください。現在の保険業法の規定におきましては、包括移転、及び会社分割を行う場合、責任準備金の算出基礎が同一である契約の全部を包括して移転ないし承継させることが必要とされております。

6ページ目をお開きください。責任準備金の算出方法につきましては、火災保険、自動車保険など、保険種目ごとに定められております。したがって、保険種目単位ごとに契約を移転することは可能ですが、例えば、北海道、本州や、九州、四国など地域の移転、あるいは企業契約や個人契約などお客様単位の移転、それから自動車ディーラーや専業代理店など、募集チャネル単位の移転などは実施できないことになっております。

破綻によらない事業再編や、更生手続によらない経営悪化会社の救済におきましては、責任準備金の算出単位と異なる単位での移転ができないため、機動性に欠ける面があるというふうに考えております。

一方で、本件につきましては、前回会合の際、裁判所ではなく、行政庁が審査することから、保険契約者間の公平のため、技術的な点等も検討する必要があり、慎重な検討が必要であると、そういう趣旨のご発言もございまして、行政庁の裁量による認可で実施するには難しい面があることも十分承知しております。また、明示的な記載はないものの、本規制は破綻時を前提としていると解され、平時における適用に当たっては、債権者保護に留意する必要もあると考えられます。保険会社の健全性、保険契約者間の公平を損なわないための措置を講じることなどもあわせて考慮しつつ、ご検討頂きたいというふうに思います。

添付の資料について若干補足させて頂きますと、7ページの資料1は、ソルベンシー・マージン比率規制の現在の概要について示しております。下段の算式のとおり、支払余力をリスク量で除したもので表す比率でありまして、これが200%を下回りますと経営改善計画提出命令等の発動トリガーとなることでございます。

8ページ目、資料2でございますが、ソルベンシー・マージン比率規制につきましては、IAIS(保険監督者国際機構)などの国際的枠組みにおける論議を踏まえまして、現在見直しが検討されているところでございます。2010年をめどとした根本的な見直し論議とともに、短期的な見直しについて、本年4月の報告書で示されております。

9ページ、資料3、並びに10ページ目の資料4につきましては、現行のオフサイト・モニタリングと、ディスクロージャー制度の両制度を記載しております。監督官庁によるモニタリングと、開示によりますパブリックプレッシャーの双方によって監視されているところでございます。

11ページと12ページの資料5、6につきましては、協会加盟会社の資産運用の現状を示しております。11ページの資料5の直近年度の株式比率というのは、34.6%というふうになっておりますが、これは時価によって計算した比率ですので、簿価ベースの3-3-2規制の基準は、これを下回っております。資料6をご覧頂きますと、平成18年度時価につきましては、簿価の3倍程度であることと、簿価ベースでは、年々株式運用を減少させてきたことがお分かり頂けるというふうに思います。

13ページの資料7でございますが、これは過去における包括移転、会社分割の実例を紹介しております。包括移転の2件につきましては、一括しての移転ですが、大成火災の破綻時におきましては、再保険を新設分割によりまして、切り離して処理する手法がとられました。

以上、私からの説明は以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。それでは、次に柄澤委員及び事務局からのご説明を受けまして、ご質問等があれば伺いたいと思いますが、翁委員、どうぞ。

○翁委員

意見ということで申し上げたいのですが、最初の運用規制の緩和につきましては、幾つか弊害を挙げておられましたけれども、やはり私はそのほかにも、こういった画一的な規制というのは、どうしてもプレーヤーがそれをクリアさえしていればいいというような姿勢になりがちでございまして、やはり今、金融庁も標榜しておられますリスク管理をより自主的に高度化していこうというインセンティブに対して、コンパティブルなアプローチとは必ずしも言えないというように思いますので、こういった規制については見直していくという方向感ではないかというふうに思います。

それから2番目の方でございますけれども、これも規制改革要望につきましては、方向感としては、保険会社の専門性を生かしたり、その業務を効率化するなどの要請に応えることができる手段の一つだと思いますので、ぜひ検討していく必要があるというふうに思っております。ただ、幾つか契約者間の公平を担保したり、契約者保護を担保するための条件があると思うんですが、そのうちの一つは、技術的に個別に責任準備金をきちんと移転するときに、算定できるかということだと思っています。分割する前と後では、やはり保険集団のリスクの大きさが変わるということと、移転するグループにおいても、移転しないグループにおいても、大数の法則が働く必要があると思っております。ですから、そういったことを踏まえて、移転するときに、個別に責任準備金額を算定するということが技術的に可能かどうかということについても、ぜひ業界の方でも専門的見地からご検討頂いて、ご報告頂ければというふうに思います。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

根本委員、どうぞ。

○根本委員

最初の運用比率規制なんですが、翁委員がおっしゃったように、現状を考えますと、やはり事業内容とか負債構造が異なる中では、画一的なものの規律というのはちょっとそぐわないものがあると考えておりまして、やはりそのALMに基づいて自主的なご判断というのが、構成としてはよろしいんではないかと思います。

そうは言いながらも、投資家の立場から言うと、極端に資産がある、集中化されるというのは、あまりもちろん望ましいことではないんですね。この辺は当局のモニタリングが十分になされているかというところもポイントかと思います。また、情報開示による市場の監視ということも述べられていらしたんですけれども、ちょっと印象としては、やはりまだ開示において、改善する余地もあるんではないのかなと思いまして、例えば銀行の場合のバーゼル II というところが導入されて、かなりリスク情報がすごく進歩しているんですけれども、それに比べると、やや不足なのかなという感じもしまして、どういう各社さんが資産配分のリミットとか、お考えを持っているのかとか、もう少し株式外貨リスクとか、そういう多少リスク量がわかるような、考え方がわかるような、そういう開示をして頂くことが望ましいかと思います。

また、2点目の契約移転というんですか、これの緩和に関しては、私もいろいろな事業再編とか、破綻処理をスムーズにさせるという意味で方向性としてはいいと思います。ただ、例えば、地域によって損害率が異なっているとか、地震とか、そういう場合、ある地域だけ残されるとか、それは架空の話なのかもしれませんけれども、あるいは、非常にビジネスの切り分けとかがたやすく行える場合に、契約者にとって、別の会社に移行することで、当然責任準備金の問題もあると思うんですけれども、会社の信用力自体が変わってしまって、公平性が保たれないとか、そういうことがないのか、留意して頂く必要があるのではないかと思います。よろしくお願いします。

以上です。

○岩原部会長

はい、どうも。洲崎委員、ではお願いします。

○洲崎委員

2点目の包括移転に関する問題でございますが、損保協会からのご要望というのは、保険業法135条2項では、責任準備金は算出基礎が同一での保険契約、その他の政令で定める保険契約の全部を包括して移転しなければならないというところを、その全部を包括しなくても一部でも包括移転させることができるという、そういうことを認めて頂きたいということだと理解いたしました。しかしながら、その次の3項では、移転元の保険会社にはその他の債権者に対する債務を弁済するに十分な財産を残さなければいけないと定めております。

そして、3項の要件が充足されているかどうかは監督官庁がチェックして、それが認められない限りは包括移転を認可できないということになると思うのですが、そうすると、監督官庁による財産状態のチェックは大変重要になると思うのです。しかし、従来の保険会社の破綻事例を考えますと、破綻するまでソルベンシー・マージン比率がかなりの数値であった会社が、ある日突然破綻してしまうということがしばしばあったわけで、そういうケースを見ていると、普段からの監督官庁による資産状態のチェックというのが果たしてきちんとできていたのか、疑問に思わざるを得ないところもございます。135条2項のルールを緩和するということは、それだけ一部の包括移転がなされやすくなると思うのですが、移転元会社の財産状態を確認することについて、チェックを強化するための何か具体的な方策があるのか、ということについて、損保協会の方、あるいは金融庁の方にお伺いできればというふうに思います。

○岩原部会長

どうしますか。柄澤さん、お答えになりますか。

○柄澤委員

先生のおっしゃられたご指摘は、現在の包括移転でも現時点で問題となるものと認識しております。そういう意味では、行政官庁のチェックというか、監視体制が重要なのかなというふうに私どもとしては認識しております。お答えはむしろ行政の方に譲りたいと思います。

○岩原部会長

では、諏訪園さん。

○諏訪園保険企画室長

お答えしますというよりは、どういう具体的な方策が新たに考えられるのかについては、宿題として受け止めさせて頂きたいと思います。

○岩原部会長

十分検討してください。

ほかに。筒井さん。

○筒井委員

ご意見は大分重なっておりますけれども、やはり地域別とか、販売チャネル別で、切り分けの仕方によっては、大分リスクの濃縮度に問題が出てくるということで、言葉は悪いですけれども、「いいとこ取り」ということにならないような措置がやはり必要ではないかと思っておりますのと、もう一つは、今の包括移転の制度でいきますと、移転される契約については、異議申立制度という意思表示の機会が設けられておりますが、先ほど申し上げたように、リスクの濃縮度の問題、残された群団の危険性ということも考えていきますと、移転の対象ではない、残された保険契約者にそういう異議申立の機会が確保されていないというところ、自らの意思表明の手段がないということでございまして、この問題はこういった点にもちょっと留意をして議論をしていく必要があるのではないかと考えております。

最後にもう1点は、本件は「規制改革推進のための3か年計画」というものの中で、「責任準備金の公平な分割に留意しつつ、・・・結論を得る」というふうに記載されております。しかし、現在、IAISでまさに責任準備金の評価に関する議論が行われている真っ最中でもございまして、その議論の動向がこの責任準備金の算定基準にも影響を与える可能性があるとも思われますので、そちらの議論の動向にも配慮しながら検討をするべきではないかというふうに考えております。

以上でございます。

○岩原部会長

では、山下座長。

○山下WG座長

2点目の方でございます。今、異議申立の点のご指摘がございましたが、資料5ページにありますように、包括移転と会社分割は責任準備金の算出基礎が同一の契約全部という単位でやるので、これは保険群団として、そのまま移転するのだから、それはある程度認める、ただし、異議申立てという要件はかけるということなんですが、実際に異議申立てルールが機能するかというと、なかなかこれは難しいわけで、ましてや群団を切り分けて移すことに対して、異議申立てという手続をかけるということがどこまで正当化できるのかというあたりも検討する必要があるんではないかなと思います。

役所の方で、責任準備金の計算から、先ほどの資産の状態まできちんと把握して、承認していく。これは当然の前提かと思いますが、それでまた万全という保障もない。異議申立ても、どこまで機能するかというあたりになると疑問の点もありますので、移転した側と受け入れた側がそれぞれのもともとあった契約について、実体法上どういう責任を負い合うべきかというあたりにもちょっと遡って検討してはいかがかなというふうに思っております。

○岩原部会長

ありがとうございます。私も研究者を代表してつけ加えさせて頂きますと、先ほど実は柄澤委員がそれをちゃんと留意した上でご発言されていたんですけれども、保険業法上の包括移転及び、会社分割の場合は、普通の会社が事業譲渡をしたり、あるいは会社分割をするときよりは、債権者による異議の保護が非常に弱くなっているんです。本来ですと、債権者というのは、債務者が変わるということは非常に重大なことですから、債権者の同意がないと債務者が勝手に変わるということはあり得ないんです。会社法上は、事業譲渡、あるいは会社分割によって、契約の債務者が変わるときは、債権者は必ず異議を申し立てることができると、異議が申し立てられたら、移転の効果が債権者にとっては生じないという原則がとられているんですけれども、ところが、保険業法だけは、先ほど筒井さんがおっしゃったように、残る債権者の部分はまた別の問題があるわけですけれども、移る債権者につきましても、保険業法の137条と173条の4によりまして、「異議を申し立てた債権者が契約者の金額の5分の1を超えないと異議として認めない」ということになっているんですね。これはかなり乱暴な法制で、何でそんなことをしたかというと、つまり実際には破綻のときしか使われないから、そういうときはもう一部の債権者が異議を申し立てても、全体にとってはやはり包括移転なんかしないと、契約者全体の保護の点ではかえって問題が生じるということで、そういう特例的な扱いをしているわけなんで、今検討されているのは、そういった包括移転や保険会社の分割を平時にも使おうということを考えられているわけですから、それは直ちに同じには考えられないだろうと。

先ほどから財務状態の問題、あるいは特に責任準備金の公平の問題等を指摘されて、それは非常に重要な問題なんですけれども、それと同時に、保険会社はいろんなサービスを顧客に提供しているわけですから、あの保険会社なら安心して任せられると思って契約していたところ、全然違う会社に、自分の意思に関係なく変えられてしまうということは、サービスの内容についても変わってしまうことがあり得るわけで、それは債権者の意思を無視してそういうことをやっていいのかという問題はあり得ますので、そういったことを含めて慎重な検討をして頂く必要があると思っております。

よろしいでしょうか。高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

今まで出た多数の論点に関して、私も同様な考えを持っておりますので、重なるところは申し上げません。

1点お伺いしたいのは、今般、損害保険業界の要請という形で出ているわけですけれども、この問題は損保だけではなくて、生保、保険分野でいえば第三分野のところもかかわってくることであり、国内の保険会社だけではなくて、特に損保の分野は、今日も外国損害保険協会の方がいらしておられますけれども、いろいろな利害関係者がいて、実需があるというところが、今回こういうことを要請されているというふうに思います。先ほど、生命保険の方から少しご意見がありましたけれども、生命保険業界、あるいは外国損害保険業界はどのような見解をお持ちなのか、お聞かせ頂きたいと思います。

○岩原部会長

それでは、では、森崎委員、どうぞ。

○森崎委員

私どもは今、柄澤委員が言われました原則ですね、これに100%賛成でございまして、マイナス面を言われる方が多いんですけれども、やはり選択と集中と申しますか、私どもの外国会社の場合はそういうことはないんですけれども、日本の会社の場合は、すべての会社が同じ種目、同じ地域で営業しているというのが現状ですよね。ところが、現実には箇所別バランス等を検証しますと、10年以上赤字のところもあるわけです。そうすると、かなり利益を上げている会社があれば、そういうものをそこへ移転するということは、契約者にとって決してマイナスではないわけです。ですから、そういうことが可能になるということで、私どもとしては賛成でございます。

私どもの会社の場合は、結構出入りがありまして、その場合は、ほとんど契約の量が少ないものですから包括移転ということで、すべての契約を一括して移転しているということをやっておりまして、これは今後もそういうことでしか対応のしようがないんではないかなというふうに思っております。

ただ、問題は、この国で免許を取った場合に、歴史をさかのぼってみますと、その時点でこのマーケットで売られた商品すべての認可をとっているという会社がほとんどなんですね。ところが、やっても量が少ないですから、利益が出るはずがない。当然、また経費もとてもじゃないけれども、今の料率構成では賄えないというようなところが結構多いんです。そのところにやはり移転をして、むしろ契約者のためになるという方向を選んだ方がいいんじゃないかというふうに思っておりまして、日本の会社はあまり効率がよくないわけですけれども、私は今後の効率的な経営を考えますと、非常にいいご提案だというふうに思っています。

○岩原部会長

よろしいでしょうか。

では、原委員、どうぞ。

○原委員

私は疑念というんでしょうか、疑問に思っていることが、今、高橋委員からの質問が出たので……。保険でありながら、今日は損害保険のプレゼンテーションということがありましたけれども、生保の方はどういうご意見かなというのは非常に素朴にお聞きしたいと。それから、岩原先生がおっしゃられたように、ここに出されている規制改革の具体的要望の内容というのは、責任準備金の算出基礎が同一である保険契約の一部を移転することを認めてもらいたいというふうに書かれていて、例示で掲げられているのは、これまで、破綻時に同意があったかとか、それから包括移転の場合も非常にいろいろある状況だったということが、やはりこれがごく普通に行いたいということの解禁緩和の要望というふうになっていると、どんどん何というのか、これまで私たちはここと契約していたのに、何か知らないうちに分割、移転されていたとかというような、それは企業にとっては自由に企業体を組み直せるということになるんだろうと思うんですけれども、契約をしている側からすると、果たしてどうなのかというところは根本的なところで残るというんでしょうか、疑念が残るというところが、疑念というのでしょうか。そうやりたいということを否定するわけではないんですけれども、その場合に一体どういう手当てをしたらいいのかということを考えて頂きたいと思います。

それから、第一の資産別の運用比率の規制についてなんですけれども、これも確かに翁委員とか根本委員がおっしゃられるように、ガチガチに何で運用しなければいけないというふうにパーセントで、30%とか10%とかいうふうに分けられているというのは、大変厳しいようで、確かにきちんと運用されていればオーケーかなというふうには思うのですが、一方ですごく気になるのは、予定利率の引き上げ、引き下げの部分が、予定利率の話をここへ持ってきてはいけないのかもしれないけれども、経営が失敗した場合に、運用が失敗して、その場合はその場合はソルベンシー・マージン比率とか、いろいろなところに響いてくると思うんですけれども、そういったときに、おんぶに抱っこのようなこういう比率で運用するというのはベストとは思えないんですけれども、きちんと担保できるのか。今のソルベンシー・マージン比率200%というのも、あまり意味があるのかないのか、ちょっとよくわからないような基準というんでしょうか、そういうふうになっていて、どこで保険経営のあれなどを見て調査に入られたりとか、そういう発動になるのかというのがちょっと見えないところがありまして、根本委員がおっしゃられたように、やはり開示が足らない点をやはり開示を充実させるとか、モニタリングを充実させるとか、そういうこととセットでぜひ考えて頂きたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

高橋委員。

○高橋委員

先ほどお答え頂いたことについてなんですけれども、業界としてのおっしゃり方としての言い分というのはわかったんですが、やはり契約者保護、消費者保護の立場に立ちますと、安易に参入して安易に撤退してもらうというのは困るわけでございます。現在の状況では免許を取ったならば、広くやるのか、自動車保険だけでやるのか、それはまさに保険会社の選択でやっていることなので、やってみたけれどもうまくいかなかったから、どこかにあげると、そんなに簡単に言われては困るということを申し上げておきたいと思います。

それから、やはりこの制度は多分海外にも、平時で移転する制度というのはそんなにないと思うんですけれども、英国のように、あるところでもかなり厳しい規制を引いているので、この検討に当たっては、海外のケースを当然ながら参考にしながら日本としてどうするかということを決めて頂きたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

ちょっと違う見地から言いますと、多分高橋先生の方からそうじゃないと言われるかもしれませんけれども、保険というものについての性質が変わってきていると思うんです。いわゆる生活保障とか、そういう形の保険もあれば、資産運用商品としての投資信託とほとんど変わらないような保険が登場してきている。それを同じように議論していいのかという話なのではないでしょうか。

生活保障の点でいえば、高橋先生のおっしゃることとか、原先生のおっしゃることは、それは確かにそのとおりだと思います。ただ、実際に投資商品として考えている場合に、保険というのを、ほかの、例えば投資信託とかそういうものと区別して、集団的処理の特例のようなはれものに触るような扱いをしなくちゃいけないのかというのは、ちょっと私は違うんじゃないかなという気がしているんです。

生保の包括移転のところの話なんですけれども、今の規制だと確かにこれは戦時の規制という性格があるんですけれども、要するに戦時しか発動できない。そうなると、戦時になるまで待っていなくてはいけないという話も出てくるわけです。その前でかなり腐りかけたところで、腐ったところだけ取ってしまって移すということだってあり得る話でありますので、そこの合理性、必要性もあるのではないかなということはお考え頂きたい。要するに、最後の最後になって、沈没する直前の状態で移しましたということではないやり方もあるのではないかなと考えます。

それから、もう一つ、資産別の運用比率規制、確かに、何で3-3-2なのかよく分からないところですし、新しい商品、デリバとか、そういうのは一体どう扱えばいいんだという話はあるんですけれども、もう一つ考えなくてはいけないのは、同じルールを全部の保険会社に同じように適用するのですかということです。やはり保険会社の規模、保険会社のリスクマネジメントの能力等に基づいて、そこで差を設けるということもお考え頂いていいのではないでしょうか。

もちろんそうすると裁量権が増えてけしからんというふうな話もありますけれども、やはり契約者を保護しつつ、ダイナミックに活動できるところはどんどんダイナミックにやってもらうと、そういうふうなことを考えれば、もう少し個社に配慮した規制の手法というのも考えて頂いていいのではないかという気がしております。検査される側とか、意見書を書く側の人間としては日々感じていることですので、よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。一言補わせて頂きますと、現在の包括移転の規定は、法律上は平時にも使える規定になっているんですけれども、ただ、実際上今まで適用してきたのが破綻時だったものですから、規制の内容が破綻時のことを実際には念頭に置いたものでしかないもので、それをそのまま実際に平時に使っちゃっていいのかというのは問題ではないかなというふうに思います。

高橋さん、手短にお願いします。

○高橋委員

反論のオーダーがあったので、一言だけ反論させて頂きます。

保険に関して、投資商品としての保険というふうにおっしゃったんですけれども、今まで保険業界の方々は、いわゆる投資サービス法、金商法の検討をしたときも、我々は投資ではないというふうにずっとおっしゃいまして、変額年金保険でさえ、金融商品取引法の規制対象になるのは嫌だというふうにおっしゃったわけですので、その辺も十分ご留意の上、議論を進めて頂きたいと思っております。

○和仁委員

全くそのとおりです。

○岩原部会長

川本委員。

○川本委員

後半についてはやはりもう皆さんおっしゃっていることですけれども、ただ、やはり保険会社の自由な経営判断をある程度認めていく時代なのではないかなと思います。運用規制の方は、私は正直申し上げて、まだこの規制が残っていたのかとびっくりいたしまして、これこそが、やはり保険会社の経営能力とか経営判断を育てなかった要因のひとつではないかと危惧いたしておりますので、ご検討頂ければと思います。

○岩原部会長

まだまだご発言されたい方が多いと思いますが、この後信託の方の審議も予定しておりますので、大変申し訳ございませんが、以上で保険に関する審議を終えたいと思います。

本件につきましては、本日ご議論頂きました論点などをもとに事務局からの、次回以降の第二部会において、論点等をご提示頂きまして、議論したいと思います。

それでは、以上をもちまして保険に関する審議を終了しますので、一旦ご休息頂きまして、再開後に信託ワーキング・グループの委員の皆様にもご出席頂いた上で審議を再開したいと思います。

それでは、今が3時10分ぐらいですので、15分ぐらいにお席にお戻りくださいますよう、お願いいたします。よろしくお願いします。

【信託関係】

○岩原部会長

そろそろ審議を再開させて頂きたいと思います。

これまで、第二部会及び信託に関するワーキンググループにおきましては、信託を業として営む信託会社に対する規制監督を規定する信託業法のあり方についてご議論頂きまして、平成16年に信託業法が全面改正され、その際、附則におきまして、法律の施行後3年、すなわち19年の12月以内に法律の施行の状況について検討し、必要があると認めるときには、その結果について所要の措置を講ずることとされております。また、改正時におきます国会の附帯決議におきまして、高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託等を含め、幅広く検討することとされ、昨年の信託法制定時にも、同様の附帯決議が付されたところであります。

このような状況を踏まえまして、信託法や金融商品取引法の施行に伴う信託業法の改正が施行されて間もないところではありますが、平成16年改正後の信託業法の施行状況について、ご議論頂きたいと考えております。

本件につきましては、より充実した審議とするため、前回の信託業法の改正に精力的にご検討頂きました信託ワーキンググループのメンバーの方々、信託について、しかるべき時期にプレゼンテーションをお願いすることを予定しております杉浦宣彦中央大学教授、本日はご欠席でございますが新井誠筑波大学教授にもオブザーバーとしてご参加頂く形で進めさせて頂きたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、事務局より、平成16年改正後の信託業法の施行状況について、説明をお願いします。

○遠藤信用制度参事官

信用制度参事官の遠藤でございます。ご説明させて頂きます。

信託関係の資料でございますけれども、右肩に第二部会40-3-1という、「平成16年改正後の信託業法の施行状況について」と題した資料がございます。これと、主な論点ということで、第二部会40-3-2という資料がございます。この2つについて説明させて頂きたいと思います。なお、席上に、左肩に委員限りという形で基礎資料というのを置かせて頂いております。説明の際に適宜詳しい内容について、いろいろと資料をつけているものでございまして、ご説明する時間はございませんが、引用箇所等については適宜提示させて頂きたいと思います。

それでは、第二部会40-3-1、平成16年改正後の信託業法の施行状況について、これを説明させて頂きたいと思います。表紙をめくっていただきまして、1枚目、目次でございまして、目次もめくって頂きますと、信託業法の改正の経緯といった図が出てまいります。真ん中の部分が平成16年信託業法改正でございまして、これはご案内のように平成16年12月30日に施行されております。柱が4つございます。1つ目は、受託可能財産の範囲の拡大、2つ目の柱が信託業の担い手の拡大、3つ目が信託サービスの利用者窓口の拡大、4つ目が受益者保護のためのルール整備でございます。

右側の四角が平成18年信託業法改正でございますけれども、これは、金融商品取引法とともに、先月、平成19年9月30日に施行されたばかりでございまして、ここは大きく信託法改正に伴う信託業法の整備と金融商品取引法による信託業法の整備といった、大きな内容が入っております。

1枚めくって頂きますと、ただいま部会長から冒頭ご説明がありましたように、今回ご審議頂く、まさに位置づけでございます。信託業法は平成16年の附則124条に傍線が引っ張ってありますように、この法律の施行後3年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするとされております。その際の平成16年の衆参の財政金融委員会、財務金融委員会において、福祉型の信託、高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託等を含め、幅広く検討を行うというふうになっております。平成18年の信託法の改正のときの附帯決議でございますけれども、下の2つでございますが、下線部を読ませて頂きますと、「その担い手として、弁護士、NPO等の参入の取扱い等を含め、幅広い観点から検討を行うこと」、さらに一番下でございますけれども、「その担い手として弁護士、社会福祉法人等の参入の取扱いなどを含め、幅広い観点から検討を行うこと」という形になっております。

1枚めくって頂きまして、先ほど幾つかの柱があるといった16年改正の1つ目の柱でございますが、受託可能財産の範囲の拡大でございます。上、右側の四角を見て頂きますと、平成16年改正後でございますが、受託可能財産の制限が撤廃されまして、さまざまな財産の受託が可能になりました。1つは知的財産権、特許権とか著作権でございますけれども、これは実際に、後ほど説明させて頂きます、新しい運用型の信託会社でありますジャパン・デジタル・コンテンツ信託会社、あるいは既存の専業信託に大手の専業信託銀行が特許権なり著作権の信託を実際に開始しているといったことがございます。

それから、2つ目の矢印でございます排出権でございますけれども、これは実施に向けた業務方法書の変更ということを既に行っております。既に業務方法書の認可を当局に提出され、認可がおりたものもございますし、現在、認可申請中といったことがございます。ただ、排出権そのものの取引は、国連のシステム、国際取引ログと申しているようでございますけれども、この国際取引ログが稼働していないということでございますので、そういう排出権の実際の取引に伴うインフラがまだ完全に起動しておりませんので、実際の受託はないということでございますけれども、もう既にいつでも受託できるような体制になっているといったことのようでございます。

それから、3つ目が担保権でございますけれども、これは実施に向け検討中ということでございまして、特にこのシンジケート・ローンにおける担保権の管理を目的とした、いわゆるセキュリティー・トラストということについては、かなり積極的に信託銀行の中で勉強中ということでございます。これに関しては、旧信託法のもとでは、本当にセキュリティー・トラストというのができるのかということ、すなわち受託者が担保権の実施権者になるわけでございますけれども、受託者が担保権を実施することができるのかということが、かつては疑義があったようでございます。これが平成18年の新しい信託法においては、第55条において、それは可能であるということが明定されたために、この担保権の受託というのが業務としてできると。その業務として行うために現在検討中、勉強中であるということのようでございます。

2枚めくって頂きまして、信託業の担い手の拡大でございます。信託業の担い手の拡大についてはご案内のように、幾つかの金融機関、参入基準の整備を行いました。4つの種類の担い手をつくったわけでございます。1つは一般の信託会社、これは運用型の信託会社で、免許制の対象になります。2つ目が管理型の信託会社で、これは3年の更新でございますけれども、登録制でございます。それから3つ目がグループ内信託ということでございまして、これは届出制。それから4つ目が承認TLO(技術移転機関。大学等の知的財産権を民間で活用することを目的としている。)ということでございまして、これは登録制といったものでございます。

こういった4つの分野の担い手、新たな担い手をつくったわけでございますけれども、それが実際にどういう形で参入されているのかというのが、8ページの図でございます。8ページは、平成17年、18年、19年のそれぞれ6月末の担い手の数を残額でとったわけでございますけれども、一番下のブロックの模様があるのが、これが運用型の信託業者、その次の白抜きが管理型の信託会社、一番上のドットがグループ内信託でございまして、それぞれ数は運用型信託会社が5社、管理型信託会社が7社、グループ内信託が5社でございます。運用型信託会社、管理型信託会社の固有名詞等については、次のページでご説明させて頂きます。ここでは、グループ内信託会社5社ということでございますけれども、これは必ずしもすべての社が、自分たちはグループ内信託を始めましたということを公表しておりません。公表しているのは、文房具などで有名なコクヨです。それから、もう一つ、日本発条という精密ばねの会社がございますけれども、この2つについては、グループ内信託を始めましたということで公表されております。先ほどちょっとご紹介させて頂きました席上配付の基礎資料がございますけれども、これの34ページ以降に、コクヨと日本発条についてのグループ内信託を始めたということについての発表文をつけておりますので、後ほどご参照頂ければと思います。

1枚めくって頂きまして、信託会社一覧ということで、運用型の信託会社と管理型の信託会社のリストをつけております。これについても、それぞれの信託会社がどのようなビジネスモデルを構築しているかということに関しては、基礎資料の方に入れておきました。ホームページからの引用でございますけれども、運用型の信託会社については、基礎資料の16ページから、管理型の信託会社については基礎資料の23ページから、それぞれのホームページを載せております。

運用型の信託会社を見て頂きますと、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託会社、これは知的財産権の信託を行うと。それから、朝日信託、これは朝日中央の弁護士事務所が株式会社をつくって、まさに今回議論の一つの焦点になります福祉型信託を信託会社として行おうといったビジネスモデルで開始されているところです。それから、日立キャピタル信託というのは、日立グループの中の金融会社なのでございますけれども、金銭債権の流動化を行っている。それから、DB信託というのは、これはドイチェバンクでございまして、ドイツ銀行グループの中の従来信託銀行があったわけでございますけれども、その信託会社に衣替えした。それから、トランスバリュー信託というのは金銭債権の流動化といったことでございます。

それから、管理型信託に関しては、SMLC信託以下、7つあるわけでございますけれども、これについては、リース債権の管理でありますとか、不動産の管理を行っているといったものでございます。

それから2枚めくって頂きまして、信託サービス窓口の拡大ということです。信託サービス窓口の拡大といたしましては、信託契約締結の代理と信託受益権の販売というのがあるわけです。この信託契約の代理についても、あるいは信託受益権の販売についても、平成16年の改正前については、その担い手というのに制限があったわけでございますけれども、16年改正によって、法人、個人を問わず参入が可能になっております。

信託受益権の販売に関しては、平成18年に下の方でございますが、金融商品取引業者として、金融商品取引法の規制対象になっておりますので、信託受益権販売業者という名称、それに関する規定というのは、この18年の改正に伴って削除されているという実態がございます。実際に、信託契約の代理店、あるいは、その信託受益権販売業者がどのように推移しているかというのが、次の12ページでございます。

左の方が信託契約代理店の新規参入者数でございまして、下の黒抜きが一般事業会社、これは5社ございます。平成19年6月末の数字でございます。それからドットが証券会社8社ということで、これは旧来、信託契約代理店の参入基準に入ってこなかった、そういう新たな業態として、一般事業会社と証券会社が信託契約代理店として名乗りを上げたという実例でございます。

それから、信託受益権販売業者というのは、これは非常に数が多くて、平成17年6月末に237から平成19年6月末638という形で、非常に数が多くございます。これは主にというか、ほとんどが不動産業者、不動産会社が信託受益権販売業者に登録しているわけでございますけれども、なぜこんなに多いのかということをいろいろ聞いてみますと、リートとか、いわゆる流動化のための商品を不動産屋で売っているのかなというふうに思ったのですけれども、必ずしもそれだけではなくて、もちろん大手はそういう形で売っている場合があるのですが、それだけではなくて、例えばマンションなども、マンション全部が裸のままの所有権ではなくて、信託の対象になっている場合があって、そのマンションの一室を売る場合に、所有権の移転の媒介という形ではなくて、結局信託受益権を販売しなければならない形式をとる必要があるという場合があるようでございます。たまたまそういうマンションを媒介しなければならないときは、この信託受益権販売業者になっていた方がビジネスチャンスを逃さなくていいといった思惑があって、また、登録をするのがそれほど難しくはないという噂が業界の中で非常に広まったということでございまして、こういった数になったということでございます。

それから2枚めくって頂きますと、信託財産の受託状況でございますけれども、推移でございますが、上のドットの線は信託財産総額でございまして、これは再信託を含んだ線でございます。再信託を除いた線が下の実線でございますけれども、それでも19年3月末で487兆円の信託勘定残高ということで、この信託財産の残高が増えたのが、16年の改正によってなのかどうかという、その因果関係はなかなか明確にはなりませんけれども、どちらにしても信託ビジネスというのは、残高ベースで見ると順調に伸びているといったことがございます。この中で、新規に参入した信託会社はどのぐらいの割合を占めているかということでございますけれども、これはまだ小さくて、信託会社の信託勘定残高というのは1.2兆円にとどまっているということでございます。

それから、その中身でございますけれども、最後の15ページでございます。ここは資産運用型信託、資産管理型信託、資産流動化型信託という形で機能別に分けてございますけれども、見て頂いてわかりますように、下の点線の資産流動化型信託、これが平成15年の27兆円から平成19年の62兆円、それから真ん中あたりの資産管理型信託、これが108兆円から215兆円という形でかなり増えております。資産流動化型信託は不動産とか金銭債権の流動化のための信託でございまして、これは確かに世の中でそういうビジネスがかなり行われているなということで実感としてわかります。それから資産管理型信託でございますが、資産管理型という名称からなかなかわかりにくいかもしれませんけれども、この中には投資信託が入っておりまして、まさに委託者の側から指示された信託財産を管理するという意味において、投資信託はこの資産管理型に分類されておりますので、ここが非常に大きくなっているのは、投資信託が伸びているからと言うことができるかと思います。

以上が信託業法の施行状況についてです。ちょっと足りない部分については、後ほど信託業界の方から、また具体例を交えつつ、ご報告して頂けるかというふうに思っております。

次に、主な論点ということで、第二部会40-3-2の資料をご説明させて頂きたいと思います。これは今回の附則なり附帯決議を踏まえまして、事務的にどのような論点があるだろうと整理してみたものでございます。主な論点の1ページ目でございますけれども、これは先ほどの説明と重なりますので割愛させて頂きますけれども、総論部分については、今回の附則の内容。それから下の方に関しては、今、一部説明させて頂きました平成16年改正としてどのようなものが行われてきたかということについての項目を載せております。

1枚めくって頂きまして、上の方の四角でございますけれども、このような改正がなされた現行の信託業法の施行状況について、信託の積極的な活用の観点からどのように評価するか。あるいは受益者保護及び信託制度の信頼確保の観点からどのように評価するかといったことをご議論頂ければというふうに思っております。

それから、平成16年改正の際に、信託業法の基本的な担い手としては、株式会社がやはり中心になるというご議論をして頂きました。平成15年7月の信託ワーキング・グループの信託業のあり方に関する中間報告書においても、この2ページの下の方の黒ポツ2つでございますけれども、「信託業の担い手は、業務の安定性・継続性の観点、ガバナンスの観点から優れた組織形態である株式会社を基本とすることが適当と考えられる」ということと、「株式会社以外による信託業への参入については、その必要性や妥当性を踏まえ、会社法制の動向や他の金融業態の取り扱いとの整合性にも配意し、参入の適否を検討することが考えられる」という形で、一応整理されております。

こういうことでございますので、株式会社以外の、例えば個人でありますとか、公益法人でありますとか、そういった者が信託業に参入するについて、どのように考えるかというのが今回のご議論の一つの焦点になるのではないかと思います。

1枚めくって頂きまして、3ページでございますけれども、一番上の(1)はまさにそういう問題をもう一度繰り返しています。「現行信託業法上は、信託業を管理型信託業と運用型信託業に二分し、信託業の参入形態を株式会社に限定しているが、このような規制のあり方は合理的か」ということでございます。

矢印を2つつけておりまして、2つ目の矢印でございますけれども、括弧の次、従来と異なる信託業の類型を認めて、株式会社以外の参入を認める等新たな規律を設ける必要があるかどうかといったことについて、一つ議論になると思います。

(2)でございますが、(1)の論点において、従来と異なる信託業の類型を認める必要があると考える場合に、「いかなる類型の信託業について、株式会社以外の参入を認める等新たな規律を設ける必要があるか」ということでございます。

矢印の1つ目でございますが、いわゆる福祉型の信託については、弁護士、公益法人等の参入の必要性が指摘されているところでございますけれども、具体的にどのような必要性があるのかということについて、改めてご審議頂ければというふうに思っております。2つ目の矢印でございますが、高齢者や障害者の生活支援のための制度として既に存在する後見制度がございます。この後見制度と信託との関係をどのように捉えるべきかということも重要な論点の一つかと考えております。

それから、(3)でございますけれども、(1)(2)において、株式会社以外による信託業への参入を認めるべきと考える場合に、「新たな担い手に対していかなる規制・監督を課すべきか」ということでございまして、新たな担い手としていかなる範囲の者に参入を認める必要があるかということと、もし仮に参入を認めるとすれば、それに対する参入規制でありますとか、行為規制でありますとか、監督のあり方について、どのように考えていくかといった議論があるかと思います。

一番最後のページは、これは我々事務方としていろいろと議論をいたしました。それから夏の間にもさまざまな先生方のところに伺って、いろいろ議論させて頂きました。その中のこれは漠然とした感想になってしまいますけれども、やはりトラスト発祥の地ということで、イギリスでありますとか、アメリカでありますとか、そういった国は、恐らく日本に比べて非常に信託が身近に存在している国ではないかと思います。英米法の国と比して、我が国はまだまだ信託制度の活用というのは必ずしも広がっていないという現状にあるのではないかと思います。もちろん、英米法並みの信託の活用を目指すのかどうかということでございますけれども、今回、福祉型信託というのが一つのイシューに挙がったというのも、もっと身近な我々の問題で、信託を使えばうまく解決し得るような問題があるのではないのかと。それに関して、今のまさにできたばかりの信託法なり信託業法というものがうまくフィットしているかどうかということについての一つの問題意識のあらわれが、福祉型信託という問題で出てきたのではないかというふうに考えております。そのために、信託の活用を促進し、信託業の健全な発展や信託制度に対する国民の信頼を一層確保するために、あるいは、信託を国民にもっと利用して頂けるように、どのような方策、あるいはその法的枠組みが必要なのかといったことでご議論頂ければというふうに考えております。

以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは次に、信託業界を代表いたしまして、信託協会の会長会社でありますみずほ信託銀行より、信託業界のビジネスにおける影響と評価について、ご説明を頂きたいと思います。

宇波部長、よろしくお願いします。

○宇波参考人

みずほ信託銀行の宇波でございます。それでは、座ったまま話をさせて頂きます。

本日、貴重なお時間をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。早速話の方をはじめさせて頂きたいと思います。お手元にございます、A4横、第二部会40-4と書いてございます、「平成16年信託業法改正の信託業界のビジネスにおける影響と評価」という資料に沿って、ご説明させて頂きます。それから、お手元に信託協会の方で作成いたしました「日本の信託2007」というものと、「新しい信託法の概要」をご参考に用意しております。これは後ほどご覧頂ければと思います。それから、今、事務局の方が会議後回収と右の上の方にスタンプを押してございます資料を2部お配りしておりますが、それについては後ほどお話の中でご説明させて頂きたいと思います。また、今お話し頂いた遠藤参事官のお話と重複する部分につきましては、適宜省略させて頂ければと思います。

それでは、まずお手元の資料、1ページをお開き頂きまして目次をご覧頂けますでしょうか。ここは説明のポイントを4つに分けてご説明したいと思います。

目次の項目番号で申し上げますと、1から3までが信託の現状をご説明する部分でございます。それから4は、平成16年信託業法の改正のビジネスの影響を総括する部分。それから、その次の5、6、7、これが総括の内容を少し具体的に説明する部分。そして8が、今回の信託法の施行に合わせて整備された部分についてということで、ご説明していきたいと思います。

1ページをめくって頂いて、2ページをご覧頂けますでしょうか。これは先ほど、遠藤参事官のお話にございましたが、信託財産の残高の推移でございます。平成14年から載せてございますけれども、毎年3月末の残高推移ということで、大体この5年間で約2倍に増加しております。中には再信託も含まれております。ちなみに、ここには記載しておりませんけれども、信託協会で公表しておりますデータで、8月末のデータでは、信託の財産残高は781兆円を上回っております。

次のページをご覧頂けますでしょうか。3ページ目は、前のページのグラフの内訳を表にしたものでございます。一番右の列に、この5年間、14年3月から19年3月までの増減を載せてございます。ちょっとポイントとなるような部分を○で3つほど囲わせて頂きました。まず最初に一番上から3番目、マイナス10.3兆円と大幅な減少になっておりますが、これがかつての主力商品でございました貸付信託でございます。

それから、最近増加しているということで申し上げますと、先ほどもお話がございましたけれども、資産管理型信託と、それから資産流動化型の信託でございますけれども、この中で資産管理型信託の金銭信託と投資信託に○をつけさせて頂いています。この金銭信託、50.3兆円に増加しておりますけれども、これは公的年金や年金の特定金銭信託などがこれに含まれております。それから、投資信託は41兆円強の増加ということで、まさに貯蓄から投資への流れ、これを反映しているというふうに考えます。

4ページをご覧頂けますでしょうか。4ページは信託銀行の主な信託商品と業務を記載してあります。○で囲ってございます知的財産権の信託でございますけれども、これは16年の信託業法改正で新たに取り扱いを開始した商品ということで、これは後ほどご説明を申し上げます。

1ページめくって頂けますでしょうか。5ページ目でございますけれども、平成16年の信託業法改正のビジネスへの影響をまとめてございます。ポイントとして記載した項目が左の方に4点ございます。上から順に、受託可能財産の拡大、信託の担い手の拡大、それから信託サービスの利用者の窓口の拡大、これらによって、私どもとしては信託ビジネスの領域が拡大し、お客様の利便性が向上したというふうに考えております。この3つの項目については、後ろのページで簡単なスキーム図等を載せてございますので、後ほどご説明申し上げます。

4つ目の点でございますが、一番下にございますルールの整備でございます。これは2つございまして、信託受託者の義務が明文化されたこと、それからもう一つは引き受けにかかる行為基準や、ディスクロージャーの規定が整備されたことが挙げられます。もともと、信託受託者の義務は、従来から課せられていたものでございますが、そういう意味で言うと、新たに責任が追加されたということではありませんが、やはりこういう明文化によって、一層の徹底が図られているというふうに考えております。

それから、ディスクロージャーの規定で、まさにお客様に交付する説明資料が充実しております。先ほど事務局の方からお配り頂いた資料がその実例ということでご用意いたしました。A4判の横1枚のもの、これが信託業法改正前の2004年ですから、平成16年9月の資料でございます。これは2部とも私どもの会社の実績配当型の金銭信託の決算のご報告でございますけれども、この1枚目が平成16年のもの。折り込んでございますものが、2007年ですから、平成19年3月19日のディスクロージャーでございます。もう一目見て頂ければおわかりになるとおり、信託業法の改正でディスクロージャーの内容が大幅に充実しているということが見てとれるかと思います。

なお、この資料でございますが、基本的には受益者の方に交付する資料でございますので、大変恐縮でございますけれども、ご一読頂いた後は回収させて頂きたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

それから、ルールの整備のところで、一番下のところに、自己取引と外部委託ということが書いてございますが、これは11ページと12ページでご説明をしたいと思います。

6ページをあけて頂けますでしょうか。ここからが受託可能財産の拡大ということで少し載せてございます。16年の業法改正で、知的財産権の信託が可能になったというお話が先ほどございましたが、ここでは著作権の信託のスキーム図を簡単に載せてございます。見て頂くとおわかりになると思いますが、例えば映画の著作権などを持つ制作会社などが、委託者兼当初受益者になって、その著作権を受託者、信託銀行あるいは信託会社に信託する、そして、受託者が信託受益権を委託者に交付する。委託者はその受益権の全部または一部を投資家に販売して、投資家はその購入代金を委託者に支払う。これによって、委託者は資金の調達が可能になるというスキームです。

一方で、受益者、いわゆる投資家でございますけれども、これは例えば利用許諾に基づいて、利用者が支払う利用料、これが配当になりまして、配当を受け取るということになります。

知的財産権の信託には、このほか、権利の保護や、あるいは効率的な管理を目的とした特許権の管理信託などの実績がございまして、図の下のところに表を載せてございます。これは協会の加盟各社にヒアリングした知的財産権の9月末、先月末現在の受託状況でございます。見て頂くとおわかりになります通り、新たに参入した信託会社で17件、それから信託銀行等で9件の受託の実績がございます。

次の7ページをご覧頂けますでしょうか。これは排出権の信託のスキームでございます。これは図にありますように、左の上の方でございますが、排出権、これは一次取得企業が譲り受けますが、この企業は、委託者兼当初受益者になって、この排出権を受託者に信託する。受益者は受益権を受け取り、それを小口化した受益権を、排出権を取得するニーズのある企業に譲渡していくというスキームです。このメリットといたしましては、受託者、信託銀行等の下のところにございますけれども、割当量の口座簿を企業が開設しなくても、信託が口座管理をすることによって、排出権の取得ができるということで、この事務負担が軽減できること。それから、先ほど申しました受益権の小口化ということで、取引が円滑に進むと、そういったことが挙げられると思います。先ほどお話がございましたけれども、既に何社かで準備をしておりますが、現状はスタートを待つ段階でございます。

8ページをご覧頂けますでしょうか。これは受託可能財産の拡大ということの最後で、担保権の信託のスキーム図でございます。これは、先ほどのお話にもございましたけれども、今回の信託法改正で、55条の規定が整備されて可能となった新しい信託でございます。多数の債権者が存在するシンジケート・ローンなどにおいては、個々の債権の譲渡に伴い、担保権を移転させるというようなことになりますと、管理が非常に煩雑になりますけれども、この図のように債務者を委託者、債権者を受益者、そして担保権者を受託者として、この信託を行いますと、債権が移転しても担保権を受託者が一括して管理することが可能ということでございます。

次のページをご覧頂けますでしょうか。9ページ目でございますけれども、これは信託業法の改正で、担い手が拡大されたということで、信託協会の加盟会社の推移を載せてございます。現状、これは10月1日現在でございますが、54社ございまして、これは平成10年12月と同じ数字で、信託協会が創立されてから一番多い加盟者数になっております。ただし、平成10年当時はすべて金融機関でございましたが、現状は図にもございますとおり、運用型信託会社5社と、管理型の信託会社9社のうち4社が信託協会に加盟されています。全体で54社でございますので、6分の1が業法改正後に加盟した信託会社ということでございます。

10ページをご覧頂けますでしょうか。10ページは担い手の拡大の例ということで、代理店の増加を挙げております。ご承知のとおり、信託銀行は店舗数が非常に少のうございますので、幅広く信託サービスを提供するということで、この代理店制度を活用しています。また、この16年の業法改正で金融機関に加えて事業会社や個人も代理店になることが可能になりました。グラフの上の方に全体の状況を載せてございますけれども、代理店数も取り扱い店舗数も着実にふえているということが見てとれると思います。直近の状況を、金融機関、事業会社、個人の別に表に載せてございます。

最後に、今回の信託法施行によって見直された部分についてお話しをしたいと思います。まず11ページをご覧頂けますでしょうか。16年の業法改正では、自己取引に関する規定、あるいは第三者への委託に関する規定が設けられておりますが、信託業界といたしましては、これらの規定について、平成17年の金融審議会の場においても、見直しをお願いしたいということをお話ししてまいりました。その内容と今回の法改正の結果をそこに記載しております。

今回の信託法施行に伴う業法の整備で、この自己取引等の禁止の例外条件として重要な事実を開示して、あらかじめ書面等で受益者の承諾を得た場合が追加されております。

これは具体的には、例えば信託財産であるテナントビルで空室が発生した場合に、受益者の承認を得て、受託者が入居すると、そういったことが可能となるということです。それから、禁止の解除条件が明確にされております。信託の目的に照らして、合理的に必要な場合に行われる、例えば取引所における上場有価証券の取引などがこの自己取引禁止の解除条件として規定されております。

それから、さらに下のほうに書いてございますけれども、受託者が受益者の指図により、利害関係人と取引を行う場合、あるいは、個別の取引ごとに受益者に書面同意を得て取引を行う場合などについても、行うことのできる自己取引等として規定が明確にされたということでございます。

それから12ページをご覧ください。外部委託について、これについては、例えば今回の整備で不動産管理会社に信託財産である不動産の保守や清掃業務などを委託する場合には、この委託先には受託者と同様の義務、すなわち信託業法上の善管注意義務が課せられなくなったということでございます。もちろんこの場合にも受託者が委託者の選任監督を怠って、この委託先が受益者に損害を加えたような場合には受託者が損害賠償責任を負うことと、これは定められておりますので、見直しが行われても、受益者の保護が劣るということはないというふうに考えております。

以上、全体を通して申し上げますと、16年の信託業法の改正につきましては、私どもからいたしますと、お客様に信託のサービスをご提供する機会が拡大し、さらに加えて、私どもの信託のビジネスの領域も拡大したというふうに考えております。

最後の13ページと14ページはご参考までにご用意した資料でございますので、ご説明は割愛させて頂きます。

以上で、私の説明を終わらせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

それでは、ただいまの事務局及びにみずほ信託銀行からのご説明内容について、ご自由にご質問、ご意見を頂けたらと思います。いかがでしょうか。

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

附帯決議の話なんですけれども、これ、時期的に今見直すのは非常にまずい時期ではないでしょうか。新しい信託法が施行されたばかりであり、金融商品取引法も施行されたばかりであり、今の時点でこういうことを見直しても、あまり効率的ではないということで、例えばあと1年先にやるとか、そういうふうな柔軟な対応というのはできないんでしょうかというのが第1点です。

それから、もう一つは、今、宇波部長からご説明頂きまして、なるほどというところもあったのですが、こういう新しく入ってきた信託会社がビジネス的にうまくいっているのかどうなのかというデータはございますでしょうか。というのは、例えば、ここに知財を専業にする信託会社だと言われているところが、実は、商品ファンドをやっていたり、要するに、皆さんかなり苦戦しておられるんではないかなと思うんですが。実際に信託を自由化したとしても、信託業ということで、ビジネスがもっていくだけの利潤が確保できるような状況になっているのかどうなのかというのが、非常に興味があるところです。

それから、3つ目は、やはり宇波部長に伺いたいんですが、前回信託業法を改正したのは、旧商法、それから証券取引法の時代なんですけれども、今回の金商法、あるいは新しい会社法になって信託業を運営していく上で新しい問題とか、そういうものは何か気づかれたものがあるかということです。この3点をお伺いしたいんですが。

○岩原部会長

では、宇波さん、お願いできますか。

○宇波参考人

では、私の方からお話をさせて頂きます。

信託会社がビジネスで苦戦をしているというところでございますけれども、これは私の個人的な意見ということでお許し頂きたいんですが、新しく入られたところは、例えば著作権とか特許権とか、信託のビジネスモデルとして非常に個別性の強い商品をお取り扱いになってビジネスを営まれようとして、入ってこられたというようなところが一つあるかと思うんです。当然のことながら、個別性の強い商品については、マスで大量の販売をして、どんどん収益を稼ぐということではなく、お客様といろいろとコミュニケーションをして一つ一つの商品をつくっていくというようなところの多分立ち上がりの部分でかなりのご負担は負っていらっしゃると思います。

そういう意味で、急激に収益が伸びていくというようなことではないんだと思いますが、ただ、確実にこういう形で新しい商品が登場し、それが世に広まっていけば、それが少しずつ拡大発展していく過程で、ビジネスとして軌道に乗っていくのではないかと思います。もちろん今も軌道に乗っていらっしゃるところもあるんだと思うんですけれども、そういう性格はあると思います。

また、一般的に信託というものは財産の管理といったものが中心でございますから、一つの案件を受託して大きな収益を上げられるというような性質ではなくて、一つ一つの管理に適正なある一定のレベルの費用を頂くということなので、まさにそういうビジネスを一つ一つ積み重ねて拡大をしていくということによって、その一つのビジネスが大きくなっていくと、そういうようなところがあるんじゃないかなと思います。

それから、もう一つでございますけれども、私ども、ちょうど信託法が9月30日から施行されて、あわせて金融商品取引法というようなことで、今回の金融商品取引法の制定の部分で、信託受益権がみなし有価証券というようなことで含められたりして、ある意味大きな枠組みでの金融商品の体系の中に、信託が明確な形で位置づけられていったのかなと思います。

金融商品取引法というのは、基本的な理念は投資家をいかに保護していくかということだと思いますし、商品に広く網をかけるような形で、その理念を具体的に落としこんでいくということであると考えています。それから、信託法、あるいは信託業法というのは、まさにその中の信託商品について、投資家保護の見方を変えて、受託者の責任をいかに果たしていくかということからやっていくということなので、ある意味、多少重なる部分と新たに増えた部分というのは当然あるかと思います。特に今は立ち上がりの部分ですので、お客様に丁寧なご説明を申し上げるというようなことというのはあるかと思いますけれども、これによってビジネスの負担がふえるとか、そういったことはないというふうに考えております。

よろしゅうございますでしょうか。

○岩原部会長

どうも。

ほかにご質問、ご意見はないでしょうか。――よろしいですか。

せっかくですので、信託ワーキング・グループの先生方もご参加頂いておりますので、とくに最後の英米等と比較して、日本でさらにいかにして信託が活用されるようにするのはいいか等について、例えば樋口委員、何かご示唆頂けるようなことはありますでしょうか。

○樋口委員

せっかく機会を頂いたので、一言だけ。参考になるかどうかわからないですけれども、今日の主な論点の3枚目のところです。とりわけ宿題の一つが福祉型信託。大体、福祉型信託というのは何なのだろうかというところから始まりましたし、福祉というのは日本ではプラスのイメージを持った言葉ですから、そういうプラスのイメージで信託が使えれば、これは非常にいいことだというお話でご研究、あるいはご検討が進んでいることと思いますけれども、そこに高齢者や障害者の生活支援のための制度として既に存在する後見制度と信託との関係をどのようにとらえるべきかという論点があります。アメリカにおいては、信託は次のような形で利用されている場面がありまして、いわゆる日本では民事信託と呼ばれている場面なので、本当にそれが金融審議会の金融分科会で議論するようなものなのかという気もしますけれども、そのような枠を取っ払って、信託全体のことを考えるという意味ではいいと思います。

その民事信託で、アメリカの場合で多用されている、これだけではないということはくれぐれも申し上げておきますけれども、主たる利用の1つは、彼らの国では、遺言相続制度なるものが全部裁判所を通して公開で行われるので、全くプライベートで行いたいという需要が当然出てきて、遺言代替方法としての信託が行われるという話。これは非常に大きく使われているわけです、現在。だから、普通の、私クラスの人でも信託を使う場合が少なくないというふうに言われています。私の友人の大学の先生も、自分も信託をしているということを言っていますから、そうなのかなと思います。

もう一つが後見制度の方です。貢献制度はアメリカでうまくいってないのです。我が国でも禁治産制度というのが、非常にスティグマを伴うとか、そういうような話があり、それで成年後見制度をつくったのですが、その後の我が国の成年後見制度をどう評価するかという問題と絡んでいると思うのですが、アメリカではやはり一般的に後見制度はうまくいっていないと思われて、後見人をつけるということになると、例えば被後見人になるためには、はっきりと医師が鑑定をして、もうだめだということを、しかも裁判上の手続で行うという話になりますから、コストから、いろいろなことがつきまとうわけですね。

そこでどうするかというと、信託を使うと。私がまだ大丈夫なときに、例えば私が信頼している長年通っているお医者さんでそういう判断ができるような人を知っているとしますね。それから友人で、この人だけは大丈夫だと思っている親友が1人ないし2人いるとする。あるいは家族の中にいてもいいのですが、そういう何人かの人に頼んでおくんです。やはり複数の方がいいということになっているようですが、専門家とそれから私の事情をよく知っている人。私がある一定の状態になると、その人たちの判断で、ある財産について信託を始める。一種の私的後見制度なんです。

日本にも任意後見制度というのがありますけれども、結局のところ、日本の制度は裁判所を通して任意後見監督人というのをまた選任してという話で、やはりなかなか面倒な制度になっています。完全にプライベートでそういうことをやると、その人たちが裏切ったらどうするんだろうとか、もちろんリスクはあるのですが、現実にしかし、アメリカでは後見制度はうまくいっていないので、そういう形で信託が使われている例はあるということを、向こうのロースクールの信託法の先生に直接伺ったことがあります。

ご参考になったかどうか。

○岩原部会長

大変貴重なお話をありがとうございます。

何かほかに皆様からご質問、ご意見等はございますでしょうか。――よろしいでしょうか。

それでは、もう予定された時間はまいっていると思うんです。本来でしたら、まだまだご意見等はあるかと存じますが、以上をもちまして、本日の審議は終了させて頂きたいと思います。

なお、この後、事務局の方、及び私とで記者会見を行いまして、本日の会合の模様等につきましては、簡単にご紹介させて頂くことといたしたいと思います。

最後に事務局の方から、ご連絡がございましたら、お願いいたします。

○遠藤信用制度参事官

次回の第二部会の開催でございますけれども、改めて調整させて頂きまして、ご連絡させて頂きたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

○岩原部会長

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させて頂きます。どうも長時間ありがとうございました。

以上

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