金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」(第3回)議事録

日時:平成20年5月9日(金曜日) 16時00分~18時03分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田WG座長

それでは、予定の時間になりましたので始めさせて頂きたいと思います。協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループの本日は第3回目の会合になります。

委員の皆様方におかれましてはいつも大変ご多忙のところをこのワーキング・グループにご参加頂きまして大変ありがとうございます。

それでは、早速本日の議事に移らせて頂きます。

前回から本格的な勉強というのを始めさせて頂きまして、今日はそういう意味では本格的な勉強の2回目になろうかと思います。1回目を含めれば3回目ということになります。また、本日はこの分野についてご研究をされ、ご知見を有しておられるお二方の先生方にゲストとしておいで頂いております。

まず、大阪大学経済学研究科の筒井義郎先生です。

それから、大阪市立大学の経営学研究科の清田匡先生です。両先生には遠いところを、またお忙しい中ありがとうございます。

お二人の先生方からご意見を頂戴し、これを踏まえて議論を深めるということで進めさせて頂きたいと思います。なお、最後に時間がもし許すようであれば前回、前々回の会合において委員の皆様方からいろいろ頂きましたご質問、ご指摘がございまして、それについての説明を事務局からして頂きたいと思います。

それでは早速ですが、まず、筒井先生からご意見を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○筒井参考人

ただいま紹介頂きました大阪大学の筒井でございます。よろしくお願いいたします。本日はこのような発言の機会を与えて頂きましてありがとうございます。

それでは、パワーポイントに沿って説明をさせて頂きたいと思います。最初に今日の話の構成全体なのですが、3つの問題についてお話をしたいという具合に思っております。1つが、これはマル1と書くべきだったのですけれども、信用金庫の営業地域規制についてどういう具合に考えるかという問題であります。営業地域規制についてどう……。

○神田WG座長

もし、よろしければお座りになって……どちらでも結構ですけれども。

○筒井参考人

では、疲れてきたら座らせていただきます。(笑)

話の内容は経済学でいいますと、金融機関の競争度をめぐる話と市場構造成果仮説と呼ばれる話、それがメインなのですけれども、あと市場分断ということと効率性仮説ということについて若干お話をするということにしております。この1番目の問題というのは、実は結構きちっとした話ができるという具合に考えている、つまり経済学でかなり実証研究までできているという分野です。

2番目の問題というのは、組合組織と株式会社形態のどちらがいいのか、これはコーポレートガバナンスといわれる分野なのですが、これについてお話をしたいのですが、これは理論的にはかなり明確な予測があるわけですけれども、実際に実証的にやってみるとどうもよくわからないというのが現状かと思います。そのお話をいたします。

それから3番目は、協同組合組織に対して税の減免をした方がいいのかどうかということで、これについてはかなり雑駁な一般的な経済学でいうとどういうような具合に考えるかという考え方みたいなことをお話ししたいと思います。

まず、一番目の問題、金融機関の規制と競争度というところですけれども、随分ふりかざった形ではありますけれども、高度成長期のことから思い浮かべていただきたいと思います。高度成長期と現在とを比較して考えてみるということですけれども、高度成長期の特徴というのは規制でいいますと護送船団方式と呼ばれるような規制がありまして、それに対応して銀行は横並び行動をする、これが今の金融庁などはこういうことをしてはいけないということを非常に強く言われているわけですけれども、こういう傾向がありました。その評価はどうなのかといいますと、金融システム全体の安定性にはプラスであったけれども、いろんな形の効率性には問題が生じたのではないかというのが基本的な考え方でして、それに対して金融自由化が進められたわけです。その結果として金融業がかなり競争的に変化して効率性が向上したといったようなことが言えます。

次のスライド(資料3-1の6ページ参照)ですが、それでは高度成長期の問題点についてはどういう具合に考えられるかというと、大きく分けて2つの問題があります。後でもちょっと参照しますのでお話ししたいのですが、1つは所得移転という問題でして、低金利政策というのは基本的には預金金利規制で行われたわけですけれども、その結果として非常に大きな所得移転があったことを示すことができます。預金金利が低いために銀行にその分お金がたまって、企業に全部いったわけではありません。銀行にとどまった分があるだろうというのが推定であります。それは結構大きな値でして、1年当たりにしてもかなり大きな値が出ているということであります。

それからもう1つの問題というのは、先ほどから言っています効率性の問題でありまして、これは経済学でいいます非常に単純で古くからある命題なわけですが、独占とかあるいは寡占的な状況によって高い価格とか多い利潤という望ましくない結果がもたらされる。これは後で時間がありましたらリマークしますが、多い利潤というのは個別の企業にとってはいいわけですけれども、こういう経済全体のパフォーマンスを測るときにはこれは悪いことだという具合に考えられております。またデッドウェイトロスという、これは誰にとっても、社会全体を合計したものにとって損になるような、そういう損を引き起こすということがわかっております。これは結構大きな額でしてデッドウェイトロス自体が貸出収入の1%あるいは多いときですと3%ぐらいになるというような結果が得られております。それからもう1つは、これは私の研究ではないのですが、今、富山にいらっしゃる本間先生という方が推定をされて、経営の非効率性を生んだということを実証していらっしゃいます。

まず、最初の報告では金融業を構成します銀行・証券・生命保険あるいは今やっているのでいいますと消費者金融産業といった産業についてどういうような競争度であったのかということを報告したいと思います。時間があまりありませんのでスライドを省略させていただきます。銀行業の話が最初のスライド(資料3-1の9ページ参照)で書いておりますけれども、それもスキップいたしまして、証券業についての話もスキップをさせていただきまして、生命保険業についてもスキップをさせていただきます。全体のグラフも競争度の推定結果というのもスキップをさせていただきまして、消費者金融業もスキップをさせていただきます。

そして結論というところが出てまいりますが(資料3-1の16ページ参照)、金融業の中の銀行業、それから証券業、生命保険業というもの、それから消費者金融もそうですが、それを比べて見ますとどうも銀行の競争度が最も高いという結果が得られています。それに対して生命保険業の競争度が最も低い、ただし、いろいろ推定方法を違う方法でやっていますのでダイレクトに比較はできないのですけれども、そういう感じでまとめられるのではないかと思っております。証券業はその中間ということになります。そういう競争度を規定するのはいろんな要因があるわけですけれども、1つは金融業に対する規制、今ここでそういうことを考えようというワーキング・グループができているわけですけれども、その規制のあり方によって競争度がかなり変わってくるということも示されているというように考えております。次に具体的な話で銀行業の内部、一番よさそうだという銀行業の内部がどうなのかというお話を少し詳しくさせていただきます。

まず、私の見方の特徴といいますのは銀行業を大きく分けますと都市銀行あるいは今信託銀行というのが残っておりますが、そういったものから構成される全国市場、実はグローバルな世界の一角ということになるわけですが、そういう金融業の部分というのと、それから地方銀行とか信用金庫などから構成される地方の貸出市場、こういうように、まず二分して考えるのがいいのではないかと考えております。地方の貸出市場の方はさらに地域的に分断されている。分断されていることをどうやって見るかといいますと、一番簡単なのは県ごとの貸出平均金利が違うのか違わないのか、一つの市場であれば同じものについて一つの金利がつくということを考えまして、そういうことを調べることによって分断されているかどうかということを確かめるということになります。

その次にKano-Tsutsuiと書いておりますのが実際にその分析をやった結果で、これは1997年度だけの信金と地銀の貸出市場分断化説を調べているわけですが、この結果によりますと信金の貸出市場は県ごとに分断されているけれども、地銀の貸出市場は県ごとには分断されていないという結果になっております。最近は少し違うやり方で、データが一番違うのですが、1990年から2002年のデータで少し違うやり方で地銀の県別の分断市場化説を見てみますと、どうも地銀を含めても県ごとに分断という具合に言ってもいいのではないか。すなわち分断をかなり強く示唆するような結果が得られております。そのことのインプリケーションは何なのかといいますと、地域分断あるいは県別分断というものが結局好ましくないような成果、例えば価格でいいますと高い貸出金利になりますし、利潤でいうと先ほど言いましたように多い利潤というのはまずいという、ちょっと普通の実業界でやっている方からいうと変に思われるかもしれませんが、そういうのが好ましくない成果ですが、そういう結果が得られる。

競争程度はどうなのかということを考えてみますと、地方銀行と都市銀行を比較して競争度を測ってやろうということを、これはUchida-Tsutsuiという論文でやっておりますが、分析方法は大雑把にいいますと、例えば金利とかあるいは貸出の量をある金融機関が増やしたときに他の金融機関がどう反応するか。あまり正確な言い方ではないのですけれども、どう反応するかという反応程度が競争の程度だという具合に考えてそれを推定するという方法になっております。そうしますとこれは得られた結果のグラフ(資料3-1の22ページ参照)ですけれども、都市銀行のグラフでいいますと、この結果を見るのに真ん中ぐらいに「0」と書いてあるのですが、この値の推定値は0~1の間におさまるはずでして、0というのは完全競争、競争が行き着いたような状態です。1というのが一番競争がない、独占的な状況でしてその間の値をとるわけです。都市銀行の場合には80年代になりまして多くの年で0を棄却しない、つまり完全競争だといってもよいような状況になっております。それに対して次のグラフが地方銀行の競争度ですが、これはやはり80年代に競争度が高くなっている、この線が下がっているということは競争度が高くなっていることですが、そういう結果が見られるわけですけれども、それでもどのときにおいても完全競争0というものを棄却して、つまり競争が十分でないという結果が得られています。

それからもう1つは、寡占的かどうかは市場の集中度という概念で測りますが、例えば一番単純な感じでいいますと金融機関の数が少ないと集中度が高いという感じになるわけですけれども、その集中度が高い場合に金利が高くなるかどうか、これが市場構造成果仮説と呼ばれている仮説で、きっとそうなるだろうという具合に思われているわけですが、それを調べてみますと銀行数が少ない、あるいは、集中度が高い県の信金ほど高い金利をつけているということを示すことができます。利潤についても同じことが言えまして、集中度が高いほど利潤が大きいという、これはかなり昔の論文なのですけれども、80年代についての地銀については利潤についても同じようなことが言えるということを示しております。

今申しましたのが市場構造成果仮説ですが、大雑把にいうと利潤が高いということと、その集中度が高いということが相関していますということを確かめて、そうですという結果が出てきたわけで、それを市場構造成果仮説が正しいのだという具合に考えると、例えば集中を減らしてやる、つまり大きい金融機関を分割すべきだとか合併に反対だとかいう話になります。ところが実は利潤の大きさと集中度の間に全く逆の関係を想定する考え方がありまして、それは効率性仮説と呼ばれます。ちょっと難しい話になるのですけれども、つまり同じ現象に対してそれがいいとする見方が効率性仮説、まずいとする見方が市場構造成果仮説でして、これは同じ現象について原因と結果を逆に考えるわけです。効率性仮説でいいますと効率的なところがどんどん大きくなっていくんだという具合に考えてやると、結果として大きくなっているのはいいことだと、集中度が高いことはいいことだということになります。したがって効率性仮説と識別した形で市場構造成果仮説が成り立つかどうかということを見てやる必要が出てくるわけです。結果的に言いますと、実はこれは私うまくできていませんで、一応発表している論文では都市銀行については効率性仮説が成立しますと、つまり効率的な銀行が、都市銀行の中でですが、より効率的な銀行の規模がだんだん大きくなっていくという結果だということを示しているわけです。だからこれは都市銀行の市場は普通の競争的な市場だということを示しているわけですけれども、今はその分析はちょっとどうかなと思っています。時間がありませんので次の分析方法というところは飛ばします。

地方金融機関についても効率性仮説が成立するかどうかという、これが問題で一番知りたい、私も知りたいことなのですが、実は私は効率性仮説は多分成立しないのではないかと思っているのですけれども、実際やってみるとあまりうまくいっておりません。京都の信金について分析した結果がありまして、京都の信金については効率性仮説は否定されるという結果が大体得られていますが、ほかの全国の信金について行った分析は定式化によって結果が違うという結果でして、まだ要するに断定的な結論が得られていないという状況であります。

以上なのですけれども、結論をもう一度まとめてみますと、地方の貸出市場には地域分断があって、その結果として競争度は低下し貸出金利が高いというようなことが出てくる、だからこれはまずいということです。今日の報告では触れておりませんが、もう一つスライドの下の方にいく矢印ですが、結局地域分断をしますと貸出先が一地域に限定されるので、その結果としてポートフォリオリスクが高くなる、例としては地元企業が不振だとその地域の銀行まで、金融機関が倒産してしまうというようなことが出てくる、こういう可能性も指摘できます。その結果としてやるべきことは地域を超えた相互参入を促進すること、あるいは信金に対する営業地域規制を緩和すること、そういうことを通じて効率性を確保するということが必要だということになります。

スライドでは書くのを忘れたのですけれども、経済学をおやりになっている方には言うまでもないことですが、この結論のインプリケーショは何なのかということです。例えば今の話で競争度が低いとかあるいはパフォーマンスが悪いとかというと、何かその企業が悪いような、パフォーマンスが悪い企業が悪いとか競争をしていない企業が悪いとかという具合に考えられる方が結構いるのだろうと思うのですけれども、経済学ではもちろんそう考えていないわけでして、企業とか金融機関とかというプレイヤーはルールの下でプレイをして、例えば企業は一番儲けなければいけない、儲けることが責任になるわけで目標とするわけです。で、たくさん儲けた企業が出てくればその企業は成功しているわけでいいわけです。今パフォーマンスとしてそういうのは悪い、独占的だと、そういう状況は悪い状況だというときに何が問題なのかというとそのルールを作っているところが問題なんですね、つまりここということになりますけれども、行政とかその背後にいます学者とかそういう人たちのルールの作り方がどうかが問題になるわけです。ルールの中で競争した中で、個別の企業でいいますと高いパフォーマンスを得るという結果としてそれぞれの企業が高い利潤を得たりするわけです。これは言うまでもないことかもしれません。

2番目の話ですが、組合組織は効率的なのかという話でして、これはコーポレートガバナンスの問題ということで、最初に申しましたように理論的な考察は結構はっきりしています。そしてインプリケーションと、結論ははっきりしております。ガバナンスの問題というのはどういう問題かといいますと、その会社を所有している人が誰かいるだろう。普通は株主だという具合に考えるわけです。会社は所有者のものですからその人の意図どおりに動かすことができるかどうか、そういう具合に経営者や従業員を動かすことができるかどうかということがコーポレートガバナンスの問題というわけです。そうすると一つの結論といたしましては所有構造が散漫である。散漫であるというのは、例えば所有者が一人というような集中している場合に比べて所有者が何十万人いる、株主が何十万人いるという場合には所有者の意思がまとまらないので、その結果としてガバナンスが弱くなるだろうという具合にいわれているわけです。今、組合組織と株式会社の違いを考えてみますと、組合組織の場合には会員が一人一株ということで平等になるような形になっています。それに対して株主の場合ですと例えば十万人株主がいても実はそのうちの一人が半分持っているということになりますと、これは結局集中していることになります。このことから出てくるのはそういう組合組織の方が株式会社よりガバナンスが弱いということが一般的な理論として言えます。

それからもう1つは、株式会社で上場しているかどうかなのですが、つまり株式であっても上場しているか、それとも非上場であるかによって違ってくるということでして、上場株式に対しては、株式投資家が企業収益がいいかどうかという観点から経営を監視するといったようなことになりますので、株価が変動するということ自体が実は経営に対してのガバナンスになるというそういう側面があります。その結果として上場株式会社とそれ以外との間でガバナンスの状況が違ってくるのだろうというように考えられているわけです。それを両方まとめますと理論的な予測としては組合組織の方がガバナンスは弱くなっているはずだという具合に考えられます。

実証研究ですけれども、一般に株式会社のガバナンスについては今非常に流行っておりましていくらでも研究があります。多くは今言いました株式所有構造と株式をどういう具合に、散漫に持たれているのか集中的に持たれているのかということと、会社のパフォーマンスがどうなのかということの関係を見るというものです。ほかに例えば取締役会、その構成人数とかそういったものとパフォーマンスの関係を見る、こういった研究がたくさん行われております。でも大体今までの理論的なプリディクションからそれほどはずれていないのだろうと思います。ただ組合組織については私が知っている限りではあまりありません。そこ(資料3-1の33ページ参照)に挙げていますように、 Mester 、1993年と随分古いのですけれども、アメリカの組合組織で協同金融機関(S&L)ですね、その中で株式会社形態のものもありますので、その費用関数を推定することによって相互会社の方が、つまり組合組織のような形の方が平均的に効率的であると、予測と反対になる結果を報告しています。これはアメリカの例です。もう1つの1981年の論文は経費愛好仮説というもので、これは経営者がどのくらい経費をむだに使う傾向があるかというそういう仮説なのですけれども、それでいきますと相互会社形態の方が経費愛好的な、これはアメリカの例ですが、つまり効率性が悪いような傾向があるという論文が書かれているのですが、88年にはそれと反対の結果を導くような論文が発表されております。つまりあまりはっきりしていない。実証的に言いますと、予測が支持されるようにはあまりなっていないということです。

日本について金融機関でガバナンスと関係したようなものというのはたくさんあるのかもしれません、家森先生もおやりになっていたのが入っておりませんが、ほかにもあるかと思いますが、福山先生がおやりになっているのですが、それ(資料3-1の34ページ参照)で見ますとポイントは民族系か民族系でないかということで効率性が違うと。それからここにいらっしゃいます宮村先生がおやりになっているのですが、それも世襲であるかどうかによって違うという結果です。それからマッケンジー先生が生命保険について相互会社と株式会社の費用効率性を比べていますが、結果は結構ミックスになっています。

私ですけれども、これ(資料3-1の35ページ参照)は2003年に書いているもので、2001年の地方銀行と信用金庫と信用組合の経営効率性を比較してみましょう。いろんなことをやっているのですけれども、一番わかりやすい結果の方を説明いたしますと、効率性では、例えば経費率を比較してみましょうということですが、規模の経済性が結構ある、つまり大きな金融機関の方が効率的になるという傾向がありますので、比較をするときにほとんど同じ規模の地銀と信金を比較してやってみようではないかと。

その後に出てきます図2(資料3-1の37ページ参照)ですが、×印がついているのが地銀で、◆印がついているのが信金ということになりますが、大体同じような預金残高で比べてみるとどうも信金の方が少し効率性が高いのではないかと、つまり経費率は低いと、そういう感じになります。図3(資料3-1の38ページ参照)も同じでして規模が違うのですけれども、こういう規模をとっても信金が青い◆印で地銀×印ですけれども、信金の方が効率性が高いように見えます。信金と信組が図4(資料3-1の40ページ参照)なのですけれども、比較しますと■印が信用組合で◆印が信金なのですけれども平均的にはあまり違わないのではないかと、信用組合の方が経費率が非常に高かったり低かったりする傾向があるということで、こういうざっとしたのを見てもあまり結果が明らかでないと言っては言い過ぎなのですが、例えば今の図で言いますと信用組合の方が効率的なのではないかというような結果になるわけです。

もうちょっと進んだ分析で言いますと、費用関数を推定してそれに業態とか上場、非上場のダミー変数をつけて、その符号を見るというようなことをやりますと、いろんなことによって結果が違ってまいります。規模の変数に貸出をとるか預金をとるかでガラッと違います。先ほど言いました経費愛好仮説を使って分析するかどうかというのでも結論が違ってくるわけでして、要するにあまりちゃんとしたことが言えないわけです。協同組織形態と株式会社形態のどちらが効率的だと、結構簡単そうに見えるのですけれども実証的にやってみようというと、少なくとも今のところ、私はちゃんとした結果は得られていないということです。

では、自分的な予測から言いますとかなり明らかに株式会社組織の方がいいのではないかという具合に言えそうな感じがするのですが、なぜそういう結果が得られないのかといいますと、これは単なる推測に過ぎないわけですけれども、一つの推測としては株式会社としての地方銀行においても結局ガバナンスが不十分なのではないかということです。そうすると差がわからない。どうしてそういう推測をするかといいますと、その前に都銀と地銀の競争度を比較してやると地銀の競争度が低いということがあるわけですので、地方に分断されている金融市場ではそれは完全競争の市場ではない、不完全な市場であるということで競争が十分でない。そうするとそれほど利益を重視しなくても生きていけるような状況になっているのではないか、生きていけるからもちろん競争が不十分になる、競争をしなくていいからということになるわけです。そうすると例えば規制緩和をしたりすることによって競争を激しくしたら株式形態の方が効率的だというような結果が出てくるのではないか、これは私が持っている推測にすぎませんので、まだわかりません。

最後に組合金融機関に対する税の減免をどう考えるかという問題について若干お話をしたいと思います。これは後でもちょっとお話ししますが、私は全然専門家でも何でもありませんで一般的な話をするだけですが、この組合金融機関に対する一種の補助金になるわけですけれども、そういうことをするのが中小企業に対して金融を速やかにする、中小企業に対して補助金を与えるということが目的であるという具合に考えられるのだったら、中小企業が資金を融通されたときに補助を受けるというのが非常に自然な形ということになります。補助をする機関に補助をするよりも補助されるところで補助をした方がいいというのが一般的な話になります。理由は明らかなんですけれども、例えば中小企業に補助をしたいといえば中小企業は組合金融機関以外にも借入をしているわけなのでそことの齟齬が出てくるとか、それから先ほど高度成長期の話のときにしましたが、あれは低金利政策という形でもって、いわば銀行全体に補助が与えられたというのが金融研究者の普通の見解なわけですけれども、そこで銀行にたまったようにそういう場合には最後まで借り手に回らないということが可能性としては常にあるということです。ですから補助というのはできるだけダイレクトにやった方がいい、これは一般的な話になります。

ただし、言うまでもないのかもしれませんが、金融機関が資金融通以外の役割を果たしていてそれも補助するのだというのだったら、これはまた話は別になってまいります。例えば私はあまり知らないのでこういうことを言うのはよくないかもしれませんが、信金は恐らく地域コミュニティへのサービスが重要だというようにそういう活動をされているのだろうという具合に言われることがありまして、もしそういうことに価値がある、それを進めていくためには信金に対して補助を与えなくてはいけないというのならば、これはまた話が別になってまいります。そういう話が一般的にいろいろありまして政府系金融機関で貸すのがいいのか、あるいはそういう政策金融には金利補助をした方がいいのかという話で、普通は金利補助の方がダイレクトでいいだろうということです。大学も、もし教育だけしかやっていないという具合に考えた場合には国立大学と私立大学の補助というのは問題になるわけですね。しかし例えば大学の場合でいいますと研究というのは補助なしにできないようなことであって、研究に対する補助だという具合に考えたらそれをやめてしまうと、じゃあ、教育だと考えてやめてしまうと、日本の研究が全部潰れちゃうと、こういう話になりますので、その辺をちゃんと見極めて考える必要があるのではないかというように思います。雑駁ですが以上です。

○神田WG座長

どうも大変ありがとうございました。ご質問、ご意見等あろうかと思いますけれども、清田先生のお話も伺ってからまとめてということにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

それでは、そういうことにさせていただきたいと思います。続きまして清田先生からご意見をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申します。

○清田参考人

清田でございます。本日はこういう席でお話をする機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

今日は「協同組織金融機関の理念と諸問題」というタイトルで意見を述べさせていただきます。2ページ目に目次を掲げておりますが、まず、初めに基本となる「理念と組織」という問題についての意見をお話しし、その後で幾つかの問題、規制の問題、地域の問題あるいはガバナンスの問題について理念の立場から意見を申し上げさせていただきます。

3ページに進んでいただきまして「はじめに」ということで、ここでは表示しておりませんけれども、たたき台としては最初に主張を明確にした方がよかろうかと思いますので、私自身の主張について簡単に述べさせていただきます。

協同組織の金融機関の理念からいって、組織内のあるいは組織間の協力関係を強めるべきではないかと、様々な問題もこの観点から考えられるべきではないかということになるかと思います。もう少し話を進めますと最終的に信用金庫、信用組合、農協、労金といった協同組織の金融機関は、日本でのその発生の当初のような一つに統合された組織の方向を目指すべきではないかと、一つになるべきではないかというのが私の主張でございます。

4ページに進んでいただきますと、まず2の「理念と組織」の問題からお話させていただきます。第1回のワーキング・グループでもご紹介がありましたように、協同組織の金融機関とは、そもそも中小企業、農業漁業者及び個人など、一般の金融機関から融資を受けにくい立場にある者が構成員となり相互扶助の理念に基づき、これらの者が必要とする資金の融通を受けられるようにすることを目的として設立されたものと考えられます。よって立つべき理念が相互扶助であるということについては、あまり異論がないのだろうと思います。しかし後に触れますようにドイツの組織などと比べますと、日本の現状で私が疑問を持ちますのは協同組織の金融機関相互の扶助という観点が非常に薄いように思われる点です。

5ページに進んでいただいて、協同組織の金融機関の扶助ですけれども、中小企業や農業漁業者の相互扶助の延長線上には個々の協同組織の金融機関の相互扶助というのがあるべきだというふうに思われます。一つ一つの協同組織の金融機関の規模は小さくとも全国レベルで相互扶助を行い、あるいは中央機関との間で密接な分業と協業を行うことによって存在感と競争力を発揮する、それがまさに協同の組織なのだというふうにドイツなども見て考えております。ここで協同組織の金融機関の相互扶助と申します場合、同じ系統の、例えばある信用金庫と別の信用金庫の相互扶助、そして異なる系統の間の、例えば信用組合と農業協同組合の相互扶助というものがありまして、実は区別して扱った方がよい場合もありますけれども、時間の関係で以下ではまとめてお話させていただきます。

6ページに進んでいただいて、今申し上げました点、つまり協同組織の金融機関の相互扶助ということを強調するために、次にそのドイツから協同組織の金融機関の仕組みを輸入した日本の組織の違いといいますか、歴史的な変遷の大きな相違について触れさせていただきます。

まず、ドイツですけれども、明白にするために非常に単純化して申し上げますと、もともと農業系の信用協同組合と商工業系の信用協同組合がそれぞれ別に設立されてきます。この別系統の組織はその後いろいろ対立等があったのですけれども統一され、一つの中央機関を持つ一つの系統となっております。統合された結果、そのポートフォリオの業種的な集中というのが緩和されるだけではなく、地域金融市場での大きな存在感を持つようになっています。現在のシェア等については第2回のワーキング・グループでご紹介があったかと思います。なお、この統合の過程でドイツにおきましては農業系の信用協同組合からいわゆる経済事業は分離されるということになります。

7ページの図1というのはこの辺の統合の過程を非常に単純化して示しております。農業系と商工業系から発生して一つになったということを単純化して書かせていただいております。

8ページに進んでいただいて、日本ではドイツとは全く対象的に組織が変化してきます。ドイツから輸入されたときには一つの点、ポイントで始まったわけですけれども、あるいは一つの組織だったのですけれども、その後農業系と商工業系の分裂などが進み、全く別の系統となっていきます。ドイツでは協同組合のことをGenossenschaftといいまして、この単語というのはゲノッセという男性名詞からきているのですけれども、平たくいうと仲間とかそういう意味なんですけれども、日本ではドイツ系のように金融機関の相互の間でもあまり仲間といった意識がない、ましてや系統が違うとかつて同じ出自であったとか出身であったということさえも意識されないというのが現状ではないかなというふうに思っております。ドイツとは対象的にこのように協同組織が分裂していった結果、地域の金融市場でもそれぞれ別の金融機関として活動し、東京とか大阪とか特別な地域は別としまして、一般的に存在感が弱い、あるいは業種別の信用集中が強いといった現状になっているのかと思います。

9ページに進んでいただきますと、図2はこのような組織の分裂の過程を非常に単純化して示しております。以上が「理念と組織」についての私から申し上げたかったことです。

次にこれとの関連で個別の問題について申し上げます。10ページに進んでいただきまして、まず、理念と業務規制、優遇税制の問題について述べさせていただきます。先ほども申し上げましたように日本とドイツの地域金融市場を比べますと、かなり違った様相を示しています。ドイツでは系統の金融機関が統合されたことによって、地域金融市場でその協同組織の金融機関は非常に重要なプレイヤーとなっております。それから前回のワーキング・グループでも触れられたかと思いますけれども、繰り返しになりますが、日本では協同組織の金融機関の存在感というのはドイツと比べますと非常に弱いというのは否定できないように思います。あるいは先ほどの筒井先生のお話にも通じるところがあるかもしれませんけれども、そのような地域での競争圧力が非常に弱いという指摘もあるかと思います。

11ページに進んでいただきまして、例えばドイツの地域金融市場ですと、これも非常に単純化しておりますけれども、図3に示しておりますように、日本でいいますと普通銀行に相当する複数の信用銀行のほかに、貯蓄銀行と協同組織の金融機関である信用協同組合が三つ巴、四つ巴でかなり活発に競争しており、その競争の厳しさに対する嘆きといったものがその金融機関の間から聞かれてきます。これらのドイツの金融機関の競争状況についてはこれ以上詳しくお話する時間はありませんけれども、補足資料のアペンデックスの1で簡単にこれらの金融機関の歴史的な推移について私が書いたものを付けさせていただいております。

12ページに進んでいただきまして話を日本に戻しますと、日本の場合は競争状況と申しますか競争圧力は地域によってかなり違っているように思われます。また協同組織の金融機関が強い地域もありますし、そうでないところもたくさんあるように思われます。ここで規制と優遇の話になるわけですけれども、そのように競争圧力や協同組織の金融機関の体力の違いがある中で一律に規制緩和、優遇税制の撤廃ということをするのは問題であるのではなかろうかというふうに思っております。その優遇税制の一律の撤廃は、強力な機関にとっては、力の強い、体力の強い機関にとっては大きなダメージとはならない場合でも、そうではない、それほど強力では金融機関ではダメージになり得る。また劣後債の解禁等の規制緩和が行われましても小さな機関にとっては恩恵はなく、単に優遇だけなくなると、そういったことも考えられます。そうするとますます協同組織の金融機関の内部での格差が広がっていく。最初に申し上げました相互扶助あるいは協同組織自体がさらなる解体の方向に向かうのではないかというふうに思われます。このことは仮に強力な力の強い機関だけが従来の組織から分離して規制緩和と優遇の撤廃ということを行っても、あるいは株式会社化しても同じことだというふうに思われます。つまり協同組織の金融機関のさらなる分裂ということにつながっていくのだろうというふうに思われます。

13ページに進んでいただきまして、次に金融機関の中でも地域に関する規制について理念との関連で意見を申し上げます。営業地域に関する規制は、協同組織の金融機関にとりまして一方では確かに制限ではありますけれども、他方では相互扶助を行うメンバーのつながり、まとめ上げる理念の役割、いわゆるコモンボンドの役割を果たしております。つまり協同組織の会員というのは、ただ何となく集まっているわけではなくて地域というつながりをベースにして相互扶助を行っているということができるかと思います。

14ページに進んでいただきまして地域規制は単なる規制に過ぎないわけではないわけです。ですから地域規制を単純に撤廃することは、いろんな問題に関連してくるのではなかろうかというふうに思われます。

まず、最初に、本来的には協同組織の金融機関は地域的に活動して、地域を越える活動に関しましては他の協同組織の金融機関や中央機関と連帯して相互扶助を行って活動をするものだというふうに考えております。例えばある地域で資金の余剰が生じれば直接に他地域に進出するのではなく、中央機関を通じて資金を配分するというのが本来の姿であろうというふうに思います。この点も銀行法上の銀行とは異なる点であります。地域規制の単なる撤廃というのはこのような協同組織の金融機関の間の相互扶助の仕組みを解体させることになりはしないかというふうに懸念されます。また、そもそも協同組織や協同組織として相互扶助を行うためによって立つ理念というものを単純に撤廃するということは、極端に言いますと自己否定につながりはしないかということが懸念されます。ただし、相互扶助を行っていく際のつながりであるコモンボンドが地域でなければならないかというと必ずしもそうも言い切れないことは、例えば第2回のワーキング・グループで内田先生からアメリカの複数コモンボンドについてご紹介があったかと思いますけれども、こういう問題とも関連してくるかと思います。アメリカでは時代の変化に対応する形で地域だけではなくて様々なコモンボンドが採用され、その他のコモンボンド、中体、共通のつながりとかというふうに言いますけれども、それを利用して構成員を拡張していっております。アメリカの複数コモンボンドにつきましては補足資料のアペンデックスの2で私どもの大学院生の書いた論文の抜粋を紹介しておりますけれども、時間がありましたら後でまた言及するかと思います。

次に15ページに進んでいただきまして、問題となっておりますもう一つの論点であるガバナンスの話に移らせていただきます。協同組織の金融機関のガバナンスを向上させるためには協同組織あるいは協同組織の相互扶助を利用するのが一つの方法ではないかというふうに私は考えております。会員制度の改革という話もありますけれども、むしろ会員制度に手を加える話は先ほどふれましたコモンボンドとも関連していますけれども、協同組織の金融機関の営業の領域を広げる話ではなかろうかというふうに考えております。

16ページに進めていただきまして、これも前回のワーキング・グループで紹介があったかと思いますけれども、ドイツの例で言いますと協同組織の金融機関が地区で連合を形成しております。そしてその地区の連合が監査とかあるいは職員の教育等を行っております。仲間うちの監査だからゆるくなるのではないかという懸念もありますけれども、これも前回のワーキング・グループでご紹介があったかと思いますけれども、ドイツの協同組織の金融機関は自前の預金保険を持っており、この預金保険には上限がありません、つまりペイオフがありません。したがって、ゆるい監査で協同組織の金融機関が破綻すれば別の協同組織の金融機関にも大きなダメージが生じます。このことは実証されているわけではありませんけれども、規律の向上につながっていくのではないかというふうに考えております。

この点につきましては、日本銀行で出された論文からの抜粋を補足資料のアペンデックスの3に付けさせていただいております。アペンデックスの4は具体的な地区協会のリストです。必ずしもドイツのやり方が日本の環境に適しているとは限りませんけれども、いずれにせよ協同組織あるいは相互扶助の理念の延長線上にガバナンスの向上を考えることができるのではなかろうかというふうに考えております。また、その系統が統一され、より大きな組織となることによって監査やガバナンスの向上を目指すといった考え方も成り立つのではなかろうかというふうに考えております。

17ページで最後にまとめさせていただきますと、これは最初に申し上げましたけれども、そもそも協同組織の金融機関は相互扶助という理念をベースにでき上がっております。この理念を維持する限りではその理念の延長線上に組織を考えていかなくてはならないのではないかと思います。 フィージビリティー等は全く無視して考えますと中央機関と系統が統合され、協業や分業を高めていくことが地域金融市場の活性化あるいは競争圧力の上昇、またその協同組織の金融機関のガバナンスの向上につながっていくのではなかろうかというふうに考えております。

ちょっと早口になったので少し時間がありますので、補足資料について付け加えさせていただきます。補足資料の1ページから3ページのアペンデックスの1は、先ほどふれました私の書いたものからの抜粋です。ドイツは3つの銀行グループがあるのですが、その3つの銀行グループの出自をご紹介しております。このご紹介の趣旨は出自の異なるこれらのグループが第二次大戦後同質化し、その結果互いに活発な競争を行うようになったということです。その重要な主体が協同組織の金融機関であること、そしてそれは協同組織の金融機関が分裂せず一体として活動していることに基づくということです。結果として日本と異なり地域金融市場でも活発な競争が行われています。よく国際比較等で各国の協同組織の金融機関の絶対量の比較がなされることがありますけれども、単純に比較しても意味がないとは申しませんけれども、誤解を生むわけでして、ドイツの場合にはこれは一つに集中しております。日本の場合は幾つもに分裂しておりますので、単に残高を合計して比較してもミスリーディングだというふうに思われます。

補足資料の3ページのアペンデックスの2は、コモンボンドについての論文の抜粋です。コモンボンドについては内田先生からのご紹介もあったかと思いますけれども、日本と異なりアメリカでは地域のみならずその他のコモンボンド、紐帯、共通の絆に基づいてクレジットユニオンの会員が集められております。ご紹介しているこの抜粋の趣旨は地域というコモンボンドの単なる否定は協同組織の自己否定につながる。仮に地域という制約が経済状況にあわないというのであれば、それは単にコモンボンドを単純に否定するのではなくて、地域というつながりを単に否定するだけではなくて、別のコモンボンドを地域に加えて追求するといった考え方の方がまだ相互扶助の理念に即しているのではなかろうかということを申し上げたかったわけです。

補足資料の4ページのアペンデックスの3は、日本銀行の論文からの抜粋です。理念に即し協同組織に沿った形でガバナンスの向上を図るべきであるのではないかということを申し上げるために、そのようなことが行われているドイツの例をご紹介するというのが、この抜粋を補足資料として挙げております私の趣旨でございます。

ちょっと途中緊張しまして早口になりまして、大分早く終わってしまいましたけれども申しわけございません。

○神田WG座長

どうも大変ありがとうございました。

それでは、今、両先生からいただきましたお話につきまして委員の皆様方、オブザーバーの方々も含めてですけれども、ご質問あるいはご意見でも結構ですので出していただきたいと思います。

それでは、佐藤委員どうぞ。

○佐藤委員

多摩信用金庫の佐藤ですけれども、両先生のお話大変ありがとうございました。その前に前回の先生のお話を伺って勉強をしたのですけれども、その中で海外で非常にアメリカもヨーロッパもそうですけれども協同組織間、非常にパフォーマンスを上げているというお話を伺って非常に意を強くしたということがありまして、また質問もちょっとできなかったのですけれども、後からお答えいただいたということで大変感謝しております。

実は今日のお話なんですけれども、難しい理論についてなかなか理解できなくてよくわからないことが多いのですけれども、実際の信用金庫の実務という面から幾つかやはりお聞きしたいといいますか意見というのがございまして、そのことをお話させてもらいたいというふうに思うのですけれども。率直に言いますと、ちょっと私の感覚で一番ピンとくるのは、何となく腑に落ちないというふうな気持ちもあるということなので、そのことをご理解いただければと思うのですけれども。

1つは、市場が分断というふうなお話が筒井先生の中で非常に大きなテーマで、それによっていろんな問題があるというふうにお話があったと思うのですけれども、私どもの理解では信用金庫はそのものが非常にある面では狭い一定の市場社会、地域社会の中の課題解決のために要請があっていろんな状況の中で設立されたということがあるので、これはもともとはそうした広い社会というものの中での役割を果たしていこうという、そういうものではなかったというふうに思いますし、今現在でもそういう意味では確かに狭い範囲で営業しているということがあると思いますけれども、ただ、今現実には相当地域も入り組んでおりまして、すみ分けは地域的にできているという状況ではないというふうに思っております。非常にそういう意味では信用金庫同士も切磋琢磨していると言いますか、そういったことがありまして県単位で見れば確かにそういうことでしょうけれども、むしろもっと狭い範囲での地域社会の要請、ニーズといったものに対しての役割を果たしていくというそういうことが今行われていると思いますし、その中でもまだお互いに競争が行われているというふうにも非常に実態としてはそういう感覚を持っております。

それからそうした分断によって金利の問題、競争がないということですけれども、私どもは日ごろ競争ということを非常に強く意識せざるを得ない状況が今あるということ、これも事実でございまして、そういう中でどうやって生きていくかという問題から、むしろその競争を同質なものではない、それぞれの金融機関が分野を変えてやっていこうとしているという状況がありまして、その中の一つに金利の問題もあるのだと思います。ですから金利ということで競争度を図るというのが必ずしも私どもの実感としてはちょっと違うのかなというふうに思いますし、また対象先も、私どもが対象としている中小企業といいましても本当に5人未満の先が多いわけで、そうした先について入ろうと思えば十分に株式組織の銀行がどんどん参入できる状況というのはあるのですけれども、そうしたところには入ってこないということもありまして、そういう中で自然に意識せざるを得ない競争というのがそうしたバッティングするところで起きているということだろうと思いますけれども、そういう中でむしろ利潤が高いというよりは、どんどんその利潤が削られていっているという状況で金利についても私どもがやっているコストのかかる営業活動、そうしたものについて十分な収益を得ているとはとても言い難いというのが私の実感でございます。

そういう意味で効率という面から見ましても、むしろ本来は効率よくしたいのですけれども、なかなかできないという状況もありますが、その競争があるがゆえに何とか内部的な努力、ないしは業界での共同での努力をして効率をよくしていこうという動きがあるというのが1つと、もう1つはどちらかというとなるべく無駄なことをしないで、よく言えば集中して、資源を集中してやっていこうというふうな動きがあって効率化が図られているのかと思いますけれども、本来はもうちょっと地域のニーズに対応したことをもっとやっていかなければいけないのではないかなというふうに考えております。

それからちょっと長くなって申しわけないのですけれども、金利というものが貢献度ということによって決まってくる時代になっているというふうに私は考えておりまして、貢献しないで金利をいただくというのは、これは全くぶったくりみたいなものでよくないわけですけれども、貢献度を上げて、具体的に言えば企業の再生であるとか創業支援であるとかそういったことに貢献をしていく中で金利をいただくということが認められれば金利は高い方がいいわけで、それはむしろすみ分けをしていく中で当然これから起きていく問題だと思いますし、そうしたことをしっかりやっていかなければいけないと、これも競合があればこそ、そういうふうな形でそれぞれの分野での強みを活かしていく必要があるのではないかというふうに思っております。

それからガバナンスの問題ですけれども、所有者が経営者、従業員を意のままに動かしていくというそれができるかどうかという意味でのガバナンスということは理解できるのですけれども、むしろ私どもの考えるガバナンスというのは、本来存在している価値を高める役割を果たしているのかというそういう観点から見てガバナンスが効くのかどうかということが大事なことではないのかなというふうに思っておりまして、そうなると株式会社組織と協同組織の金融機関という組織とのガバナンスの比較というのは、それ自体を比べてみるというよりはそれぞれの役割を果たす上でどういうガバナンスが効くのかということを検討しなければいけないのかなというふうに感じております。そういうことでちょっとあまりうまくお話ができないので申しわけないのですけれども、そんなふうに感じまして、これからも先生のいろんな面でのご検討、そういうものをまた教えていただければというふうに感じております。

それから清田先生のお話の中では非常に私どもも理解できることが多いとは思うのですけれども、中小企業の協同組織の金融機関に対してそれぞれやっぱり設立の趣旨といいますか、そういったものが随分違っていまして、事情といいますか、ですからそれを一つにしていくということがその地域に対しての課題解決という意味では非常に弱くなっていく、そういう面が個別の金融機関としての特性発揮という面からどうなのかなというふうに現実にそういう気がするというふうに思います。

以上です、すみませんでした。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。どういたしましょうか、筒井先生と清田先生にその都度お答えいただくか二、三名委員の方からご質問、ご意見をお出しいただいてまとめてお答えいただくか、両方の方式があると思うのですけれども、もうお一人、お二人ご発言があったところでまとめてでもよろしゅうございますか、あるいは忘れてしまうといけないので……。

○筒井参考人

でしたら一つずつ。

○神田WG座長

それで結構です、どうぞ。

○筒井参考人

ありがとうございます。佐藤委員からご意見をいただきまして、そういうご意見をいただくのではないかなと思っておりまして、それで先ほどスライドの途中で実はスライドがないのですがという余計なことを申し上げたわけですが、今それぞれの金融機関が一生懸命やっていて、もちろん競争もしていて努力されているというのは当然そうであって、それはそうであって敬意を表することだと思うのです。そのことを何も私は否定しているわけではございません。個人的にもいろいろな信金のことを見ておりまして、それは一生懸命されているということは重々承知しております。

ここでしている話はそうではなくて、皆さんが一生懸命やるときのルールをどうやって決めるかというところでありまして、ルールを決めた中でどういうようにプレイヤーが一生懸命ゲームをするかと。そのルールの決め方によって当然その目指すところも違ってくるわけでして、結果も違ってくるわけです。私が例えば何かほかの業態と比較してどうだこうだ、高度成長期のことから今の変化を見たときに今の制度のうちのどの部分は高度成長期のものを引きずっている、そういったお話をするときにはルールの問題をお話ししているわけでして、それぞれの信用金庫の特に経営責任者であるような方がもう必死にやっていらっしゃるということは当然了解しております。

私の話の中で一番重要なのは、具体的な分析が間違っていて実は結論が間違っているのではないかということもあり得るわけで、そういう可能性も十分ありまして、それは学会の中で叩かれていかなくてはいけないことだろうと思っております。それ以外のことで言いますと、今お話になった中で言いますと、私が一番自分で理解していなくてお聞きできたらありがたいと思うのは、地域のニーズということです。それは恐らく私の分析の中で全然入っていない話の部分だというように考えていまして、それは非常に私の分析の中で問題の部分である可能性もあると思いまして、できたら地域のニーズ、それからそれに対してどういう具合に対応しご努力されているのかということをお聞かせいただけたらという具合に思います。

もう一つは、ガバナンスの問題、経済学一般で考えているガバナンスの問題、これは一番極端な形のことをお話ししたわけで会社の所有者というのは株主で、株主の意図にあうようにやっていくのがガバナンスだろうという具合に申し上げましたが、日本の場合には必ずしもそう考えない研究者がたくさんおりまして、従業員とかあるいは利用者とかというステークホルダーの意図全体を何か考えてやっていくべきだというような、そういうガバナンスの問題をアメリカ型の所有者のという形ではなくて考えるべきだという意見もかなりございます。しかし一番典型的な話では所有者の思うままにという形でも言えるのだろうと思っていまして、要するに所有者というのは、個人でいえば自分は自分ですからノークエスチョンなんですけれども、法人の場合には要するに法人は誰なんだというと、それは所有者なんだというのが一つの答えなわけですけれども、その場合でも所有者になっている株主が何でも好きなことをやっていいかというとそれはそうじゃないわけでして、私個人の問題を考えても個人のガバナンスの問題もありますけれども、個人として社会の中で当然社会貢献をしたりとかいろいろな人たちと協調してやっていくということも当然必要で重要なことですから、法人にとっても当然、所有者が株主だとしても儲ければいいという話にはもちろんならないわけでして、社会的な責任を果たしていくことが必要なんだということ、これはもう今の社会でも十分に認知されていることなのではないかなという具合に思っているわけです。

○神田WG座長

ありがとうございます。清田先生いかがでしょうか。

○清田参考人

私の方は非常に簡単でして、おっしゃるとおり違いもありますし、その地域差も非常に大きいです。例えば東京、大阪とその他の地域では全然競争状況も全く違うというふうに思っております。ただ、それをすべて一つにすべきだと言っているわけではございませんでして、ドイツもそうですけれども、協同組織の金融機関は独立していながら組織として一つにまとまった方がよろしいのではなかろうかということを申し上げたのが私の主張でございます。

○神田WG座長

佐藤委員、よろしゅうございますでしょうか。あるいは地域のニーズというご質問もありましたけれども、よろしゅうございますか。

○佐藤委員

逆に質問をしていただいたのですけれども、例えばコモンボンドというお話が清田先生の方からございましたね、そういった意味でいろんなコモンボンドの違いというのは地域にあったと思うんですね、例えば私どもの多摩信用金庫の前身である多摩中央信用金庫は、その地域の行政までを含めた地域の有力者、商工業者、それから個人の有力者、そうした者が集まって何とかこの地域での金融を、特に銀行に相手にされないような中小の零細企業の金融機関をつくらなければいけないと、そういう意思のもとでできたということなんですけれども。

ほかには例えば市場があって、その市場に集まっている方々がその市場のために、市場(いちば)ですね、そういうことのためにつくったというお話もありますし、特定の業種の方々が集まってそれをつくったという、そうしたものを設立する必要があるということでやられたということがあるのですけれども。ですから地域のニーズというのはかなりそれぞれの場所で、また動機みたいなもので違っていると思いますけれども、いずれにしても地域の課題を解決しようという、私は包括して地域の課題解決ということで一括りすればみんな一緒かなというふうには思いますけれども、そういう意味で地域のニーズというふうに申し上げたので、例示すれば全国の信用金庫は280ぐらいありますけれども、それぞれそうした歴史を持ってやっているということで非常に興味深いことだというふうに思いますけれども。

それからそのニーズ自体も随分変わっていくだろうというふうに思いまして、そうした課題を解決するためのインフラとしての信用金庫の活動というものがこれから非常に重要になってくるというふうにまた考えておりまして、課題はいろんな面で地域の課題として変わるでしょうけれども、それにどう対応していくかということがまさに我々の課題なのかなというふうに。そうすると、そういう中で見ると、あまり論点にはなっておりませんけれども、税の問題についてもそうしたことを、その地域の課題解決ということをやる限りでは清田先生のお話の中にもありましたけれども、当然ながらみんなで負担し合うという意味での税の軽減とかそういうものも妥当なのではないかというふうに考えております。ちょっと余計なことかもしれませんけれども、そういうふうなことが地域のニーズというふうに私は捉えております。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それではほかに……久保田委員どうぞ。

○久保田委員

筒井先生、清田先生、非常に興味深いご意見ありがとうございました。私は法律学者なので必ずしも理解しないところなのかもしれませんが、私の聞いたところでは筒井先生はどちらかというと金融機関相互間で地域を超えた相互参入をして競争をするというイメージで、ただ地域貢献の部分が認められれば税優遇していいと伺いました。一方、清田先生の方は、むしろ金融機関同士が競争ではなく、協業したり分業したり相互に扶助したりということで一つに統合してやっていくようにお伺いしました。そうすると競争か協力かという点で一見対照的なように見えるのですが、両者が重なり合う部分もあって、筒井先生におかれましても地域貢献の部分は別途考えていいとされており、清田先生におかれましても、一つに統合化されていく部分においては、弱小先というか非効率な先は多少整理されていくことになるという意味では競争も恐らく起こり得ると思うんですね。そうすると、どこがどう同じで、どこがどう違うか、筒井先生は清田先生の意見との違いを、清田先生は筒井先生との意見の違いを説明していただけるとありがたいなと思いました。

○神田WG座長

ちょっとアンフェアな(笑)質問と言えるかと思いますけれども、どちらでも結構です。いかがでしょうか。

○清田参考人

想定していた嫌な質問ですけれども(笑)、私が申し上げたのは相互扶助というのは協同組織内でのお話でして、そこはドイツのイメージにありまして、ドイツの協同組織の信用協同組合というのは一つにまとまることによってかなり大きなプレゼンスを持っておりまして、日本でいいますとうちの学生とか大学院生とかも、特に地方に行きますと東京、大阪は別として金融機関というのは競争しないものだと思っているんですね、ちょっと差し障りがあるかもしれませんけれども。そのドイツの例で言いますと、まとまることによって地域の競争圧力が強まる。で、地域の競争圧力を強めるべきだという意味では筒井先生のお考えと基本的には違わないのではなかろうかと思っております。

それから地域を越えるということ自身も全く否定しているわけではありませんでして、問題はその越え方だろうと思います。何もすべてルールも何もなくしてしまって勝手に越えるというのだったらばらばらになってしまいますし、あるいは地域を越えるにあたっても地銀のベースでいいますといろんな越え方を現在されていますけれども、越え方も例えば福岡銀行が熊本に入っていくやり方と、あるいは東北地方の銀行が越えるのだけれども、地銀同士が提携していくというやり方では全然その競争に対する影響が違ってくるだろうと、それは区別すべきかなというふうに思っております。以上でよろしいでしょうか。

○筒井参考人

私も清田先生のご報告を伺ってあれあれと思っていたのですけれども、清田先生のスライド17番にございますが、結論としましては「理念を維持する限りでは」という結論なわけですね。その理念とは何かというと相互扶助ということでして、あっ、それが私とえらい違うんだなというように私自身はそういう具合に思っております。私がイメージしております相互扶助といいますと、一番近いのは例えば私が友達と一緒に相互扶助します。いろんな活動の中で非常に私の中で重要なことで研究で共同研究をするとか、これは非常に重要なことでお金とは全く縁のない世界なわけですけれども、そういう相互扶助の世界をイメージされていればそれは当然私と考えていることは全然違うだろうという具合に理解いたします。

私がお話をしておりますのは、先ほど地域のニーズということもお伺いしたのですが、結局お金を借りるということのニーズなのか、それともそれ以外のニーズがあるのか。お金を借りるというニーズであれば私は金融の理論の中、つまり経済学で割り切れるに世界に入ってくると思いまして、私の分析の中にのってくるのだろうという具合に思っている。で、お金では割り切れない世界があると、それが地域のニーズであり、あるいは相互扶助でありということだと私の話は当てはまらないだろうというように考えております。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それでは、村本先生、吉野先生の順番でお願いします。

○村本委員

筒井先生、どうも今日はありがとうございました。清田先生、どうもありがとうございました。

先生方とは普段から論争していますので、ここでは細かいことはやめますけれども、基本的にはルールの問題が重要ですよというお話をされまして、アプリオリに地域が分断されているのだからその結果として競争が低下していくというのが実感かなと思いましたけれども、その地域の分断というのはアプリオリにやるのかなというところがちょっと気になっていまして、結果としてそういうことが起きているのではないかという可能性も排除できないのではないかと。つまりそこに例えば高い金利がつくようなマーケットがあれば、当然ですけれども地方銀行、地域銀行であれば別に地域制限というのはないわけで自由に参入していくはずであると。であればそこにもう少し競争条件の激しいものが出てくるはずですねということになるわけで、そうすると地域のマーケットが分断されているということは、ひょっとすると地銀レベルで対応しないマーケットがそこにある、つまり顧客層が違うということになるのですか。そういうような話があるのかもしれないので、その辺の整理をどうされたらいいのかなという、その辺の結果としての地域分断ということも考えた方がいいのかなという気がしたものですから、ちょっとお教えいただきたいというのが一つでございます。

清田先生のお話も大変おもしろく伺ったのですが、複数ある現在の日本での協同組織に四つの大きな業態があるとすると、これをもし統合するような方向に考える、これは私も感じておりますけれども、どうやったらなるのかなという、どういうふうな考え方をすればそっちに向くのだろうかなという、何かその辺でアイデアでもあればお聞かせいただければありがたいということでございます。

○筒井参考人

村本先生から大変難しいお話をいただきまして、地域分断はあるとしてもそれは何か内生的に決められたものであって、私の議論で言いますとそれは規制によるのだというように書いているわけですけれども。例えば規制をなくしても地域分断のような状況は残るのではないかというようなお話かと思うのですけれども。確かにその点については実は我々よくわかっておりません。少なくとも明示的になぜ地域分断が起こっているのかということについて幾つかの仮説は考えられるわけですけれども、そこまで踏み込んで、例えば仮説をどう定義するかということも問題ですけれども、それがわかっているということはまだないと思います。私、論文を書きましたときも何人かの方から要するにこれは内生的にといいますか、均衡としてあるべき状態としてこうなっているのではないかというようなご指摘をいただきまして、それは否定できないだろうと思います。

では、どういう可能性が考えられるのかといいますと、一つは金融機関の集中、生産要素の集中ということが必要であって全国展開をするというようなこと、あるいはそこまでいかなくても地域に広げていくということは当然規模が大きくならなければいけないわけでして、そういう具合にリソースを増やすということは本当は利益を生まない、だから金融機関としていえば、例えば地銀が自由ですよと言っても全国展開をするということは採算に合わないという具合に、そのリソースの生産関数みたいなものの要請によって地域にまとまっているということが一番可能性としては考えられることだと思います。

もう1つは先ほどのお話でいいますと協調といいますか、私は競争が足りないとか言っていますけれども、競争しないのは当たり前でして競争すれば利潤は減るわけです。だから企業がみずからある環境のもとでもって競争を選ばないというのは当たり前なわけでして、それは悪いことでも何でもないわけですね。それは先ほどから何回も言っていることですけれども、そういうことをすればむしろ株主に対する違反みたいなことになるかもしれないわけでして、だから自分は外に出ていかないから相手も入ってくるなよというのが無言の形であるような協調ですね、そういったものが地銀の場合などの地域分断をもたらしている。これも内生的であって、これは銀行の側からいうと正しい利益を上げる結果になるわけですけれども、ただ利用者の立場あるいは国民の立場からいうと全体の厚生を下げるような結果になっている。そういう可能性もあると思います。

そういう可能性のうちどれが正しいかを調べようと思いまして、オーストラリアにいる友達と一緒にそういう分析をしようといって、彼は理論家なので理論を作ってくれたのですけれども、何と彼がつくった理論は全然違いまして、県の指定金融機関がありますけれども、指定金融機関制度が実は非常に利益を生むのだと、そういう利益を生む形でほかの銀行が入ってこれないような、そういう状況が出ているという理論モデルを作っておりまして、それも可能性としては……私はどうもそうじゃないんじゃないかと思うのですけれども、可能性としては排除できないと思います。

○清田参考人

途中でもちょっとお話ししましたけれども、あまりフィージビリティーを考えずに申し上げているのですけれども、ちょっと乱暴な議論をさせていただくことが許されるとすれば手順としては恐らくこの間、非常に現場の機関の数が合併等によって減ってきております。信用金庫も信用組合も農協も減ってきております。その協同組織の金融機関のピラミッド構造ですけれども、ピラミッド構造の底辺が非常に短くなっているのに上だけ昔のままでいいのかという疑問は持っております。だから手順としては現場で例えば信用金庫と信用組合が合併するとかの話ではなくて、恐らく頂上機関から始まっていく問題ではなかろうかなというふうに考えております。

○神田WG座長

ありがとうございました。吉野委員お願いします。

○吉野委員

ありがとうございます。三つほどあるのですが、一つは村本先生の質問と似ているのですけれども、地域のニーズという先ほどからのご議論の場合にその地域の金融機関しか借りられない企業と、それからもっと大きく都銀さんとか地銀さんとか全部から借りられる中小企業と2つのグループがあるのではないかと思うのですけれども、そのときに先ほどの相互扶助とかコモンボンドというのは前者の地域でしか借りられない企業に対する、そこが多分地域ごとに分断されているのではないか。私の同僚のワタナベ君というのが今、実証分析をしているのですけれども、銀行と競争があるところの金利は低い、しかしそれに対して分断されちゃっている企業はより高い金利を払わされている可能性があると。そうするとそこに対して何らかの形で取り組まなければいけないのではないかという気がしていまして、それが分断ということになっているのかなと感じました。

二番目は税の優遇に関しまして、これは筒井先生にお聞きしたいのですけれども、よく経済学では供給曲線と需要曲線の弾力性で銀行側がその利潤をもらっているのか、相手の中小企業にその利益がいっているのかとよく言われるわけですが、そうしますと地域によって貸出の傾きと借入の傾きが違うはずですから、そうすると同じ税制を全国一律にしていてもある地域は中小企業がそれでデメリットを受けているし、あるところは金融機関がデメリットを受けていると、そういうふうに考えていいのでしょうか。

それから最後は中央組織というのがどういうふうにあるべきかということがあると思うのですが、清田先生のお話ですと中央組織を通じて地域を超えた競争のバランスをとればいいというお話だったのですけれども、貸出まで地域を越えて中央組織がやった方がいいのか、貸出というのはやっぱりそれぞれの地域の情報を持っているところがやるのが一番いいような気がしまして、中央組織というのはもう少し大きなところで有価証券投資とかそういう運用のところで中央組織がグローバルなところも含めてやる方がいいのではないかという気がしまして、中央組織のあり方ということをご質問させていただきたいと思います。

○筒井参考人

ありがとうございます。一番目のご議論ですけれども、どこからでも借りられるグループとその地域からしか借りられないグループがあるのではないかということですけれども、私はその地域からという定義ではあまりよくわかりませんで、この話というのは一般的にリレーションシップバンキングの話だと思うんですね。つまり誰からでも借りられるというのは、借り手がどのくらい返済能力があるのかということは書類を見れば簡単にわかる。極端にいえば長野に住んでいる借り手を大阪の銀行がその財務諸表を見て判断できる、リスクがあるから判断しないかもしれませんけれども、まあ、判断できると、そういう世界。そうじゃない、財務諸表をそもそも持っていない借り手というのはもちろんそういうことができないわけで、そこへ行ってウォッチしないといけない。それは、だから基本的にその地域といってもいいのかもしれませんが、ウォッチしてくれる銀行、金融機関から借りざるを得ない、リレーションシップバンキングが出てくるという話で、リレーションシップがあればよそへスイッチするコストがかかりますから、その分だけ金利が高くなるということはそのとおりだと思います。一般にそれが地域金融になるのかというと、ある意味ではそうかもしれませんが、むしろ中小企業金融の非常に小さな形態という具合に考えた方がいいのではないかということです。

それから二番目に、同じ税制であってもどこが利益を受けるかどうか、その需要曲線、供給曲線の弾力性を調べればわかるのではないかというお話でしたが、私は実はあまりそういう話はよく知りませんで、お話を聞いてそういうこともできそうな気もしますけれども、これはむしろ吉野先生がやっていただけたらという具合に思います。

○清田参考人

三番目の問題ですけれども、原則はどこの国でもやはり現場の仕事はその現場の組織の金融機関がやり、資本市場関連とかそういうところは中央機関がやるというのが基本的な、あるべきかということも含めて現実そうなっているのだということだと思います。協業と分業という話でして中央組織あるいはその中央組織傘下の子会社等がやっているのが現状だろうと思います。ただ、融資は基本的には現場の信用金庫とか信用組合、農協等の問題だとは思いますけれども、ドイツの例でいいますと金額とかが大きくなりますとメタゲシェフトとかいって、中央機関とジョイントでやるというふうなケースもございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それではほかにいかがでしょうか、神吉委員どうぞ。

○神吉委員

ご報告どうもありがとうございました。清田先生に一点お伺いしたいのですけれども、協同組織金融機関というのは協同組織性と金融機関性という非常に、場合によっては相反するような2つの特徴を持っておって、それをどうバランスをとるかというのが制度発足以来ずっと大きな課題であったというふうに私は理解しております。長い歴史の中では金融機関性が徹底されてきたというような歴史なのではないか。員外預金の取り扱いの解禁に見られますように、そういうことの流れできて現在に至っているというふうに考えられると思っております。その中で協同組織性ということをどう考えるかということなのでございますが、相互扶助という概念もあるのですけれども、この協同組織金融機関は人的結合体であるということがまずスタートであるというふうに私は理解しておりまして、その人的結合体の核となる概念が地区であり、それはつまりは地縁であるというふうに理解しております。

業態によっては、さらに地縁以外に農協や漁協のように業がさらにこの人的結合の拠り所になっているというふうに私は理解しているのですが、それでお伺いしたいのは、先生がおっしゃるコモンボンドについて、この地縁というものが現在我が国全体から見た場合に、人的結合としての拠り所になり得るのかということに、私ちょっと疑問を感じておりまして、先生は地域規制の撤廃は反対だというお考えなのですけれども、何かそれに変わるこの人的結合の拠り所となり得る何かほかに変わり得るものがあるのか、先生のお考えをお伺いできたらということでございます。

それからもう一点は、ご報告の先生に対するご質問ではございませんで、金融庁の方にお伺いしたいのでございますけれども、この地域規制というふうに考えますと、この地区の拡張申請あるいは縮小申請の認可の実態がどうなっているのかということを、今日はもちろん無理ですけれども、教えていただけたらと思っております。業態別に認可の実態がどうなっているのかということを、できましたらトレンドで、例えば拡張の申請があれば条件をつけて、あるいは全部認めるのではなくて一部認可するというようなことが行われたりしているのか、あるいはそれが認められないとかというようなことがあろうかと思うのですが、それが全体としてどうなっているのかというようなことを教えていただければと思います。

○神田WG座長

ありがとうございました。清田先生いかがでしょうか。

○清田参考人

私が申し上げたいのは地域以外にコモンボンドがあるのかということに関連しますと、それは先ほど佐藤委員からお話がありましたように地域によってかなり違ってくるだろうと思います。私が申し上げたのは何かほかのものを求めるべきだということではなくて、あるいは地域を維持すべきだということではなくて、理念として始めた協同組織が現実と合わなくなったから単に理念を放っちゃうよというのはまずいだろうと、理念が現実に合わなくなったら新たな理念を再編すべきであって、単に着せ替えみたいに脱いだり着たりとかはいかないだろうというのが私が言いたいことであります。以上でよろしいでしょうか。

○神田WG座長

ありがとうございました。二点目は次回以降ということでよろしゅうございますか。

○神吉委員

はい。

○神田WG座長

それでは、中津川委員、宮村委員の順番でお願いします。

○中津川委員

清田先生の例の協業あるいは金融機関同士の相互扶助というようなお話について大変関心がございまして、ただ皆様方のかなり高次元のお話を下げちゃうようで申しわけないのですけれども、多少矮小化するかもしれませんが、現実に我々の現場で考えますと例えばお取引先で経営状態がよくない企業とか事業者、これは今の債務者の区分でいきますと要管理先とか破綻懸念先という位置づけになるわけですね。こうした先に対してはリスクが高いから高い金利を取りなさいと、これが一つの行政サイドの考え方でもあろうかと思うんですね。もちろんいろいろな改定はされているわけですけれども、しかしこうした先の破綻を回避していく上ではやはりそれなりの緩和措置をとらざるを得ない。当然金利も下げる、返済条件も緩和するというのが我々現場での実際の行動でございます。そういう先の金利が安いことを批判されるのは大変まずいわけで、トータルとして私どもは貸出利息で一定の利益を確保していくという考え方に基づいてそうした先の支援を行うと、こういう考えでございます。

貸出を例にとりますと、例えば一般的には中小企業の債務の弁済期間というのは20年以上といわれているわけですね、そうしたところのタームが必要な先に果たして一般の銀行として対応しているのか、できるのかと、さらには一般的には中小の零細、特に中小というよりも小企業といっていいと思いますが、そうしたところは圧倒的な過少資本の状態ですからそうしたところに対しての自己資本の代替的な超長期資金を支援していくというスタンスも当然持っていますし、私どもの単位組合としてはそういうメニューをもって取り組んでいるわけですが、しかしこういった考え方なり行動というのは、個々の単位組合では当然限界もございますし、一つの信用組合という桁ではなくて先ほどまさにヒントがございましたように業界全体としてあるいはある地域の横断的な形での取り組みをしていくと、これがまさに協業であり相互扶助という一つの方向性にもなるのかなというふうな感じがしているのですが、当然そこには中央機関、系統機関というところの役割というのは非常に大きくなるのではないか、そんなふうに思っておりますのでその辺のところについて先生のお考えがあればお聞かせいただければありがたいなというふうに思います。

以上でございます。

○神田WG座長

ありがとうございます、いかがでしょうか。

○清田参考人

おっしゃるとおりだと思っております。中央機関がどれだけ役割を果たすべきかというのは、やっぱりその現場と各国の事情とか地域の事情とかありますので、なかなか一概には言いづらいのかなと。現場のことをあまりよく知らない私からちょっと言いづらい部分がございます。

○神田WG座長

筒井先生、よろしゅうございますか。

○筒井参考人

はい。

○神田WG座長

それでは、お隣の宮村委員どうぞ。

○宮村委員

まず、清田先生にお伺いいたしますが、地域というコモンボンドなんですけれども、これは実際そんなに意味があるのかなというのが私、最近よく思うのです。要するに東京みたいなところですと地域とは言いながら見ず知らずの人が集まっているという形になってしまうし、例えば極端な話、一方、非常に過疎の例えば伊豆七島だとかに行ったときに島に一個しか信用組合がないと、こういったときに島にある一個の信用組合を島の人たちはバックアップして支えていますけれども、じゃあ、その信用組合が東京の区内に支店を出すことをなぜ禁じなければいけないのかと、あるいは東京区内の人たちがその信用組合のメンバーになることをなぜ禁止しなければいけないのかというのはいまいちよくわからないですね。一つの村に一個しかないという信用組合を外に出してはいけないだとかということは、いま一つよくわからないし、そういう地域を限定する必要があるのかと。

あともう一つは、地域がどんどん大きくなっていく、今信用組合といったって一つの県からはみ出ているような地域のところもあります。先ほどのドイツの例のように人口のうちの10%だとか、そんなのが一つの方に入ってしまうと、それは相互扶助というものではないのではないかなと。要するにドイツ国民の間でお互いに助け合いましょうということだから、国の政策と全く同じという状況になってしまうので大きくなった県、もう都道府県レベルになった地域というのは一体どういう意味なのかということを私よく知りたいということです。

それから筒井先生に質問したいことは、都道府県別に金利が違うということで市場が分断されているということですけれども、都道府県別に物の値段というのは基本的にみんな違うと思うんですね。生鮮食料品の値段も違うし、車のディーラーから買う車の値段も違うし、そういうのというのはどちらかというと市場が独占されているからある地域で値段が高くなるというふうに考えるよりも、どこでも商売するには固定費がかかるからその固定費を賄うためにどうしても売上が少ないところは値段が上がるというところが大体主なところではないかなと思います。

先ほど地域規制があるから、区域と区域の規制があるから競争が促進されなくて隣の地域に信用組合が出ていかないから分断されているという、そういう見方も場所によってはあることはあると思うのですけれども、でも地方銀行は自由に行けるわけですよね、だから過疎までいかないにしても非常に過疎っぽい地域で信用金庫が一つしかやっていなくて、そこでもって独占状態になっているということかといっても、仮に区域の規制を外したからといっても信用金庫がそこに新しく出ていくということはあまりないと思うんですね。だからそれは独占されているから、区域の規制があるから出ていかないというわけではなくて、経済状態によって決まっているのであって、データから見ると明らかにこれは金利が高過ぎるだとか、独占利潤を貪っているのではないかというデータがあちこちから、特に地方の場合には出やすいのですけれども、単に地域の経済レベルの問題が結構大きくてそれがバイアスをかけているような気がするのですけれども、その辺についていかがでしょうか。

○清田参考人

私は必ずしも地域というものを、先ほど言ったことの繰り返しになるのですけれども、墨守しなければいけないというふうには思っておらないわけでして、一応その地域というものをベースにして相互扶助で全体の協同組織というのを作り上げたいわけですから、地域を否定するとすれば別の何らかのつながりといいますか、コモンボンドという形で協同組織を作り上げていかなければいけないだろうというふうに思っております。

それからドイツの場合ですと確かにクライスといいますか県レベルの話もありますけれども、例えばハンブルグを見ますと幾つも市町村レベルで信用協同組合があるわけですね。それらはハンブルグ全体を支配する巨大信用組合があるわけではなくて、幾つかあってやっぱり地区を分けて競争をやっているといったことが現状だろうというふうに思います。お答えになったかどうかわかりませんけれども、よろしいでしょうか。

○筒井参考人

宮村先生ありがとうございます。研究の内容に関することになりますのでちょっとややこしい複雑な話になるのですけれども、結論から言いますと私が絶対正しいとかというようなことはもちろん言えませんで、間違っている可能性がありまして、宮村先生にもぜひそういう研究に参入していただけたらという具合に思っております。

私が今までやっているところのことをちょっと説明させていただきますと、一つは価格が地域によって違っているのは当然じゃないかということ、そういうことになるわけですが、例えば物価みたいなものを考えても確かに地域によってかなり違っているわけですね。その物価のようなものが一体地域によってどういう具合に違っているのかというようなことも研究することはできます。基本的なモデルとしては国同士の物価という具合に考えてもいいわけですけれども、それは為替レートの決定のような話になるわけですが、それと同じようなことが、為替レートはないわけですけれども、日本の地域間でも考えられる。そのときに価格を変えることの一番大きな要因というのはキャリーコストといいますか物を運ぶためのコストで、国際的にいえばサービスみたいなものは価格は全然違う価格になっていってもおかしくないけれども、自動車みたいなのはみんな一致してくるとか。それをお金のことで考えますと、お金というのはほとんどキャリーコストゼロに出てきますので、そのキャリーコストがあるという話では金利が違うということは考えられないわけですが、貸出金利というのは普通のお金ではありませんで、借り手のリスクによって違っていて、県ごとに借り手のリスクが違えば、借り手は企業ですけれども、それは当然違ってくるはずでして、その点については私たちは借り手のリスクを調整しても金利が違うんだということを実証しております。だから一応そういうことをやっている。

それからもう一つは、時間がなくて先ほど説明しなかったのですけれども、金利が違うというだけの分析ではなくて、逆にそれぞれの県の中で貸出の需要と供給、需要というのは例えばその県の所得みたいなものですね、そういったものに依存するという前提でもって需要関数や供給関数を推定するということをやりまして、それで金利が決定されるというモデルですが、県の金利というのが分断されてないのだとすれば、その県の需要関数みたいなものは考えられないわけです、あるいは供給関数みたいなものは意味がなくて考えられない、全部足したものは全国で一本しかない、そういう仮説もやりまして、それで各県の需要関数や供給関数というのはちゃんと推計できる、そういう分析もしております。

○神田WG座長

ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。

○筒井参考人

私の話で分断されているとしても、じゃあ、そこから規制をやめたらいいのかという話は、そこは先ほど村本先生がご指摘になりましたように、規制をやめても変わらないかもしれないじゃないかと。で、先ほど三つをその可能性として、「規制が」というのを加えると4つになりますけれども、規制を変えたって変わらない可能性は確かにあるわけです。だからその辺がこの審議会でお考えになるときに私の観点からいうとすごく重要なところなのではないかなというように思っております。

○神田WG座長

ありがとうございます、よろしゅうございますでしょうか。

それでは、労働金庫協会の栂委員どうぞ。

○栂委員

労働金庫協会の栂でございます。オブザーバーでありますけれども今日の清田先生のご報告に関して一言だけ発言させていただきたいと思います。

最後のむすびでおっしゃいましたそれぞれの理念を維持するために中央機関と系統の統合、協業が一つの方向だというところをおっしゃいました。ちょうど業態内でこういう方向で議論をしている最中でありまして、非常に意を強くしたところです。小さいながらも私ども労働金庫業界はこの点では一番協同組織金融機関の中でも進んでいる業態ではないのかなと思いまして、協業の一例なり実態を少しご報告いたしまして今後の議論のもしご参考になればと、そういう立場から発言をさせていただきます。

私ども現在この10年ぐらいで再編が進みまして13金庫で全国をカバーしております。ただこの13の金庫の地区の重なりというのが全くありませんで、きれいに日本をカバーしております。そしてその主要な会員であります労働組合あるいは生協が、生協は地区が限定されておりますけれども、労働組合のかなりの部分が全国組織を持っておりましたり、あるいは都道府県をまたがった広域な地区を持っております。そうした関係もありまして、実は私の属する労働金庫協会にそういう13の金庫の業務の統一ですとか、あるいは経営に対する指導という権限が法律上与えられております。傘下の労働金庫に対して指導、連絡に関する事務をするということが法律に定められておりまして、それを受けて私ども日々業務をしております。

その一例ですけれども、定期的に各労働金庫の経営状況を限られたレベルでございますけれどもモニターしておりまして、すわこれは非常事態だというときには系統中央機関である連合会に促して資金の供給なり相互の支援をできるような態勢を整えております。もちろん連合会は一つの金融機関ですからそれなりのガバナンスが必要で、きちんと定められた機関決定はいたしますけれども、協会と連合会が一体になって有機的に結合しながらそういう事態が発生しないように未然防止、万が一発生した場合のフォローというところで運営をしております。幸いなことに、このところそういう業態内のセーフティネットを発動させたという事例はございませんけれども、ひとつほかの業態にはない特殊な協業の例だと思いますので、ちょっとオブザーバーの立場でありますけれども一言発言をさせていただきました。

○神田WG座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか、家森委員どうぞ。

○家森委員
 

清田先生にお尋ねしたいのですけれども、ドイツでは中央機関によるガバナンスが有効に機能しているということなのですけれども、例えば傘下の企業、傘下の一組織に対して中央機関はどのようなガバナンスの権限を持っているのでしょうか。例えば役員を罷免するような法的な権限が与えられているとか、取締役会に参加をするのかといったように、ガバナンスをどのような形で実行しているのかについて教えていただけたらと思います。

それから筒井先生は結論として、地域を越えた相互参入の促進、信金に対する営業地域規制の緩和ということをおっしゃっていましたが、その関連で先ほど神吉先生からも営業地域規制というのは実際に行われているのかというようなご質問が金融庁に対してありましたが、私も同じような疑問をもっています。筒井先生のレジメに書かれていることからすると、いわゆる信用金庫の再編に対しては競争を低下させるということなので、これを法律で禁止するかは別にして、望ましくないというスタンスでいらっしゃるのかという点をお尋ねしたいと思います。経済学者は競争を増すのが良いというのが一つの典型的な答え方なのですが、新規参入を盛んにするというのはどうなのかというあたりについて先生のご意見をお聞かせいただけたらと思います。

○清田参考人

中央機関がではなくて地区の協会が監査をしております。要するに公認会計士的な役割を果たしております。それ以上の詳しい話は前回確か山村さんが、DZ銀行のグループ代理店の機能保証・検査監督みたいなところのお話があったと思いますけれども、あれ以上の詳しい話は私ちょっと存じ上げておりません、申しわけございません。

○神田WG座長

個別の組合なりの役員人事等に何らかのあれがあるかということですね、ちょっと課題にさせていただくことにしましょう。

筒井先生お願いします。

○筒井参考人

家森先生ありがとうございます。私の議論からすると再編というのは結局集中度を高めることになるので望ましくないということになるのではないかというご質問だったわけですが、答えは結構複雑でして、私の議論からいうと確かにそういう傾向は必ずあるはずだということになります。つまり再編といいますか合併を続けていくことによって私が議論しているような独占的な状況が強まっていく、独占的といいますか競争が少ないような状況が強まっていく可能性はあると。ただし、ちょっと回り道をしますと、それは効率性仮説をちゃんとやらないといけないことになりますけれども、基本的にそういう方向はある。では、トータルに私がまずいと思っているかというと、それは基本的には逆でして、再編・合併は必要なことだったという具合に考えております。それはかつて競争が少なくなるような要素はあっても、それを上回って合併をすることによって得られる、本日は全然話をしていない話になりますけれども、得られる原因があると考えているからでして、それは原因はともかくとして、非常にたくさんの不良債権などを抱えるような銀行、信用金庫が生まれてきたわけでして、その原因はなぜで、それをどういう具合に解決していくべきかというのはいろんな道があるのかもしれませんが、そんなにのんびりやっていられることでもありませんで、当面それを解決するために再編というものを考えていく。それは今日言っているような話の推移とは違う効率化の道であって、とるべき道であったのではないかという具合に思っております。

それからもう一つのご質問は新規参入ですが、これが決定的に変わるものとしては重要なことだという具合に思っております。ですから家森先生の考えられているとおり、ご質問のとおりなわけですが、都市銀行がなぜ競争的になったのかといいますと、これは世界のプレイヤーになったわけでして、ある意味で自分が外へ出ていったといいますか、日本が世界の一部になっちゃったからということですけれども、競争相手がある意味で日本のああいう業務に対して世界から全部新規参入があったということで競争的になったという具合に考えております。要するにならざるを得ないわけですね。好きで競争を始めているわけではなくて。そういう状況というのが生まれるのはやはり基本的には他業態からの新規参入だろうと、銀行業全体について、例えば今コンビニで決済なんかができるというような形の新規参入というのが基本的に大きなインパクトを持った動きになるのではないかという具合に考えております。具体的にどういうものかといわれると、そこまで私はわかりません。

○神田WG座長

ありがとうございました。時間が来てしまいまして、本日はこのあたりで打ち切りとさせていただきたいと思います。

大変活発なご質問、ご意見を多数お出しいただきましてありがとうございました。前回同様まだ言い足らなかったとか、これは聞きたいということがあると思いますので、この会合の後で電子メール、電話等で事務局あるいは私当てでも結構ですのでお送りいただけましたら、それを筒井先生、清田先生にお聞きして、またお答えするということにさせていただきたいと思います。

今日は事務局説明の時間がとれなくなってしまいましたが、ごく簡単に、そして今後の事務連絡等をお願いします。

○遠藤信用制度参事官

本日お配りしている資料について若干ご紹介させていただきたいと思います。

まず、右肩に協金WG3-3と記載されている資料がございます。これは今、神田座長からご紹介がありましたように、委員の皆様方から前回の山村先生、それから内田先生の説明に対する聞ききれなかったご質問についていろいろとメールでいただきました。それについて両先生のご協力をいただきまして回答をとりまとめたものでございます。それがWG3-3の資料でございます。中身についてはご説明する時間がございませんので、お目通しいただければ幸いでございます。

それから次が協金WG3-4という資料でございます。これは前々回、第1回目のワーキング・グループの議論の中で、村本座長代理からご示唆がありました保険の相互会社についてまとめてみたものでございます。これは何ページかにわたるわけでございますけれども、基本的には3-4をめくっていただきますと2ページから5ページ当たりが相互会社についての基本的考え方、6ページが保険会社、これは相互会社形態の現在の監査役会社、委員会設置会社のガバナンスの仕組みでございます。これは今株式会社である銀行と全く同じ形態になっております。

それから7ページ、8ページが相互会社のガバナンス強化の取り組みについて記載しているものでございまして、一番最後の8ページでございますが、これは平成13年から14年にかけて行われました金融審議会の二部会報告でいろいろなガバナンス強化についての取り組みが議論されました。左の方がまさにこういった方向性についてガバナンス強化をすべきではないかという中間報告をとりまとめたわけでございますけれども、右側の方がそれに対して生命保険をめぐる対応策ということで、これは行政当局がこういった対応が検討できるのではないかといった対応策をまとめたというものが、この右側の生命保険をめぐる対応策ということでございます。本日、説明する時間がございませんので、次回以降の議論の中で必要に応じてまたふり返ってご説明させていただきたいと思います。

次にWG3-5の参考資料でございますけれども、これは1回目からご説明している参考資料を逐次加え増補しているものでございますけれども、今回増補した分についてご説明をさせていただきたいと思います。10ページから13ページでございますけれども、これも前回、村本座長代理からご指摘いただきました労働金庫と農協の条文を加えさせていただいております。当初の資料は信金、信組についての関係法令でございましたけれども、それに対応する形で労金等、それから農協についての法令というものをここにつけ加えさせていただいております。

村本座長代理ご指摘のとおり、条文の書きぶりに若干の差はございますけれども、信金、信組、労金、農協はいずれも非営利、相互扶助という基本的性格において共通するものであるというふうに理解しております。これは条文を見ていただければおわかりいただけるのではないかと思います。それからもう一つ、21ページでございますけれども、第1回のワーキング・グループで今松委員から昭和42年当時の金融制度調査会の議論、このときは地域の中小企業金融についての金融機関のあり方について抜本的な議論が行われたわけでございますけれども、そういった議論が参考になるのではないかといったご指摘がございました。それについては21ページでございますけれども、当時議論になった3つの試案について比較表を作っております。第1回目に私の方からご説明しました内容をさらにブレークダウン、詳細にしたものでございますので何らかのご参考にしていただければと思います。

以上が本日お配りいたしました資料の説明でございます。

次回でございますけれども、次回のワーキング・グループにおきましては本日に引き続き有識者の方々から協同組織金融機関のあり方に関して説明をいただき、それをもとにご討議いただくことを予定しております。具体的には家森委員、それから八千代銀行、八千代銀行はご案内のように信用金庫から銀行に転換した経験をお持ちの金融機関でございます。それから農林中央金庫からJAバンクシステムについてご説明をいただくということで、このお三方にご説明いただくことを予定しています。次回は5月30日、金曜日、16時からを予定しております。正式には追ってご連絡をいたしますのでよろしくお願いいたします。

以上でございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。筒井先生と清田先生には遠路から、また長時間にわたりどうもありがとうございました。引き続きまた教えていただくことも多いと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

それでは、本日はこれで散会いたします。

以上

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