金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」(第4回)議事録

日時:平成20年5月30日(金曜日) 16時00分~18時07分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○村本WG座長代理

それでは、時間になりましたので、協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループの第4回の会合を開催させて頂きます。委員の皆様におかれましては、大変ご多用中のところ、ワーキング・グループにご参加頂きまして、ありがとうございました。本日は神田座長がご欠席でございますので、座長代理の私が司会をさせて頂きます。

併せて、本日は若松委員もご欠席でございます。

それでは、お手元の議事次第に従いまして、早速議事に入らせて頂きます。

本日は、まず当ワーキング・グループのメンバーの家森委員から、協同組織金融機関のあり方に係わるご意見を頂戴し、それを踏まえてご自由にご議論頂くというのが最初でございます。

その後、八千代銀行から、信用金庫から銀行に転換した当時の状況と現状に関するご説明を頂くということと、それから農林中央金庫からJAバンクシステムに関するご説明を頂き、これらを踏まえてさらに議論を深めるということでやってまいりたいと思っております。

プレゼンテーターとしては、八千代銀行からは田原経営企画部長、農林中央金庫からは池上委員に加えまして、奥JAバンク統括部長にご参加いただいておることをご紹介いたします。

それでは、早速、家森委員からご意見を頂戴したいと思います。

○家森委員

それでは、ご報告させて頂きます。

本日、協同組織金融機関を巡る諸問題ということで、事務局の方から、かなり枚数の多いものを配らせていただいておりますが、それに従いながら説明をしたいと思います。

1ページめくって頂きますと、目次がありますけれども、今日お話しすることは7つの項目に整理しております。この7つの点について、これから説明していきたいと思います。

まず、第一に3ページのところでございますけれども、高度情報化時代の「地域」ということで、まずそもそも論として、経済のグローバル化ということが謳われる時代に、「地域」ということを問題にする必要があるのかという点をまず確認しておきたいということです。

もし本当の意味での経済のグローバル化ということが実現するとしますと、地域としての問題は生じません。ある地域で失業が発生しても、そこから労働者が他の地域へ移動すればよいという答えになります。しかし、現実にはそういうわけにはいかないということでありまして、調整はゆっくりとしか進まないのが現実ですので、どうしても地域特有の経済問題が残るということになります。

次に、特に金融の場合にはITの技術が発達してきたので、金融取引においては距離が問題にならなくなったのではないかという、こういうようなご意見もあります。しかし、少なくとも中小企業金融においては、情報の非対称性という問題があって、この結果、全国が一つの市場にはならないということであります。すぐにご紹介しますが、中小企業にとっては物理的に近くにある金融機関に頼らざるを得ないというのが現状であります。したがって、先に政策インプリケーションを申しますと、日本全体に金融機関の数が幾つあるかということが問題ではなくて、その企業の周りに金融機関の数が幾つあるかというのが非常に重要になってまいります。ですから、地域という視点が重要であるということになると、地域ごとに金融機関の数を見る必要が出てくるということであります。

例えば、Stiglitz and Greenwald、これは内藤純一先生と一緒に翻訳したものでありますけれども、その中で「信用というのは非常に個別的であり」、「信用市場は非常に不完全な競争によって特徴付けられる」ということが書かれています。金融機関の数ということを問題にする場合には、かなり地域を限定して数えないといけないと、こういうことになります。

さて、現実に、アメリカ、ヨーロッパの研究でも、金融機関と企業の距離というのは非常に近いということがよくわかっております。

4ページのところに掲載している、私がやりましたアンケートでも、10分以内、或いはせいぜい30分以内でほとんどの企業が実際に金融機関と取引をしている。金融機関と企業の距離というのは非常に短いということであります。下の図表2の方は、特に現状では金融機関と企業がどういうふうにしてコンタクトをとっているかというアンケート結果なんですけれども、「直接面会をする」というところに斜を入れておりますけれども、80.3%ということで、他に比べても金融機関とはフェイス・トゥ・フェイスの付き合いというのを非常に重視しているというのが現状であります。

5ページのところには、私が愛知大学の打田先生と一緒にやった研究です。もし地域の金融機関が地域にとって重要であれば、金融機関の経営と地域の経済パフォーマンスに何らかの相関が見られるだろうということで、市町村レベルでの実証研究を行ったところ、やはり影響が見られました。細かいことは時間の関係で申し上げませんけれども、信用金庫の経営と地元の経済のパフォーマンスには関係があるんだという、こういうことも見い出しております。

以上で、グローバル化の時代、情報化の時代にもかかわらず、中小企業金融においては依然として物理的な距離というのが非常に重要になる。その結果として、地域ごとの金融状況を把握する必要があるというのが1つ目の節での主張であります。

2つ目、6ページ以下で協同組織金融機関と銀行は異なった行動をとっているか、ということで、今回このワーキングでも議論になっておりますように、協同組織金融機関と株式会社の銀行では、例えば目的における非営利性であるとか、一人一票制であるというような形で、組織や構造が違う、法律上の仕組みが違います。ただ、他方で業務の同質化が進んでいるというようなことが言われている。その結果として、行動が異なっているのかどうかを調べてみたというのがここであります。

6ページのところでは店舗展開を調べています。簡単に申し上げますと、大都会では銀行が展開し、中規模のところでは信用金庫が展開し、それ以下の小さなところではJAとか郵便局が多いというような形の店舗展開になっているということで、店舗展開上、現実には銀行と協同組織金融機関では異なった行動をとっているということが見られるということであります。7ページは、これを全国について行った研究です。

次に、私が行いました東京商工リサーチのデータを使った分析を紹介します。中小企業のメインバンクを調べて、そのメインバンクの業態別に、消滅した企業がどのような理由で消えたかというのを調べてみました。

9ページからグラフがありますが、倒産発生率というのを見て頂きますと、一番上のところの、例えばマイナス4%未満というのは、売上高利益率がマイナス4%未満という非常に経営の苦しい企業群について、それが2005年に存在していたんですが2006年に一部消えております。2%は倒産で消えているということがわかっているということであります。これは信用組合の例です。

次に重なっていますが、信用金庫と第二地銀がほぼ同じで1.6%というような形になって、少し間を置いて地銀と都銀が続いているということで、以下この図表の5、6、7を見て頂きますと、信用金庫、信用組合と特に都市銀行では差があり、地方銀行はその間ということで、各業態で倒産が発生するとか、解散或いは廃業、休業が発生する、合併が発生するというのが違っているということが読み取れるわけです。これほど行動が違うのです。

ついでながら、この行動の違いをもう少し解釈しておきますと、倒産発生は信用金庫や信用組合で高くて、都銀や地銀ではかなり低いという差があります。逆に解散とか廃業、休業という早期の処理が行われているのは都銀や地銀でありまして、協同組織金融機関ではあまり行われておりません。合併発生率に関しては、都市銀行で非常に高い比率になっておって、協同組織金融機関では低いということであります。ここから解釈できるのは、協同組織金融機関は経営が非常に悪くなるまで早期処理はせずに支えており、最後にぎりぎり悪くなって、やむを得ず破産、破綻に至っているというような可能性が読み取れるということです。一方、都市銀行では早期に処理を行うというような傾向が読み取れるのではないかということも、ついでに申し上げておきます。このように、協同組織金融機関と銀行では、現状明らかに店舗立地、或いは企業の処理といいますか、支援についても行動が違うということが読み取れます。

12ページにまいりますけれども、リレーションシップバンキングの取組みということで、今度は中小企業金融機関というよりは、中小企業の方がどう考えているかということであります。経済産業研究所(RIETI)でこういうアンケート調査をさせていただいております。それに基づいて13ページのところに、そのアンケート結果を書いておりますが、ここでは点数が載っております。例えば1.93という数字がありますが、これは1が強化した、3が弱くなったということですので、小さくなればなるほど評価していると、こういうふうな図表であります。

全体に2というのは真ん中、中立なので、2よりも小さいと一応強化した方向に出ているということです。ほとんどのところで2よりも小さくなっておりまして、企業の側もこのリレーションシップバンキングの取り組みについて評価をしているということが読み取れます。ただ、特に資産査定、信用リスク管理への強化というあたりで強化をしているというようなところが出ておりまして、必ずしも金融の円滑化というようなところの評価は相対的に言うとまだ高まっていないということが見られます。

リレーションシップバンキングについてなんですけれども、これは中小企業の金融を緩和するという目的で入れられたわけですが、結果としては、やはり企業への対応の二極化が進んでいるということも見受けられます。端的に申し上げますと、業績低迷企業や小企業はリレーションシップバンキングの対象外になっていると。これは理解できるわけでして、リレバンというのは非常に手間がかかりますので、手間がかかってもそれだけリターンが返ってくるような取組み先でないと、そもそも取り組みできないということになります。

したがって、銀行といいますか、金融機関がこういうふうに選別するのは悪いことではなくて、自然なことであります。そして、現実に、こういうことが起こっている。ただ、信用金庫は銀行に比べると相対的に幅広くリレバンの強化を図っているということであります。これが信用金庫が今回議論しておりますような、非営利性や、或いは会員組織ということに起因するのかどうかについては、必ずしも明快な答えを持っているわけではありませんけれども、信用金庫と銀行を比べると、よりリレバン的に弱いところまで対応しているというのは信用金庫であるということがアンケート結果から読むことができます。

例えば15ページでございます。

15ページの図表の11のところで見て頂きますと、この質問では、都市銀行をメインバンクにしている企業、地方銀行をメインバンクにしている企業という形で聞いているのですが、このリレバンプログラム以降、金融機関はお宅の会社のことをよく知ってくれましたかと、貴社に対する知識の深さは高まりましたかと、リレーションシップバンキングの根幹に当たるわけですけれども、それを尋ねてみると、この比率では信用金庫が20.4%で、最も強化したという回答が多くなっておりまして、先ほど申し上げましたように、信用金庫は相対的には最もリレーションシップバンキングに熱心に取り組まれてきたというようなことがわかるということであります。

他もちょっと図表をつけておりますが、時間の都合上、次17ページの4.中小企業は地域金融機関に大きな期待をもっているというところにまいりたいと思います。

今まで申し上げましたように、銀行と協同組織金融機関の間では行動様式が違う、そのことが企業から見て評価されているかということを、4のところで確認をしたいというふうに思うわけであります。

中小企業というのは、取引金融機関数が少なく、財務諸表の精度が低く、本業のリスク分散が通常難しいような企業でありますので、与信の観点から言いますと、情報の非対称性が大きいということになります。したがって、新しい金融機関が取引を始めるのは難しいし、直接、金融市場で資金を調達することも難しいということになる。ですから、小企業ほど地域金融機関への依存度が高いということが事実としても理論的にも予想される。

図表の15のところを見ますと、資本金別に今後資金調達方法としてどういうものを重視するかという点を尋ねておりますけれども、メインバンクからの調達というのが資本金1,000万円以下の企業ですと6割ぐらい。この場合は公的金融機関からの調達があと3割ぐらいありまして、小さなところについては公的な金融機関や銀行に頼っています。1,000万円から5,000万円ぐらいのあたりになりますと、7割ぐらいの企業がやはりメインバンクから借りたい、今後も依存すると。10億円を超えるような大きな会社になりますと、メインバンクから資金を調達するというのは半分以下に減るということで、小さな企業については今後もメインバンクからの資金調達ということを非常に重視しているということがわかります。

次の図表の16では、メインバンクとの長期取引はちなみにどういうメリットがあるのかということを聞いております。この業態ごとに、例えば資本金1,000万円という規模の小さな企業について、メインバンクが都銀、地銀、それから信用金庫、信組ということに分かれますので、それについて整理をしてみますと、特に信用金庫、信用組合をメインにしているところは、安定的に資金調達ができた、借り入れが迅速にできたという点で非常に高い評価を置いております。

資金の金利よりも、より重要なのが量であるということが伺えるわけで、信用金庫や信用組合が、地域において安定的に資金を供給できる体制を維持するということが中小企業の側から見ても非常に期待されているということが読み取れるわけです。

図表の17からは地元ということについてのアンケート結果でありますけれども、ちょっと飛ばさせて頂きまして、21ページの図表の21まで進ませて頂きます。

図表の21のところに地元金融機関の違う点ということで、企業の方に地元の金融機関と地元外の金融機関で違う点があるか、どういう点が違うと思うかということを尋ねてみました。それをまたメインバンクごとに回答を整理してみましたところ、都市銀行や長期信託銀行をメインにしているようなところですと、例えば貸出金利が違うのではないかというような回答が多いわけですけれども、信用金庫について特徴的なのは、いざという場合に支援してくれるという項目を多くの企業が回答しております。この項目は、都市銀行が最も低く、地方銀行が真ん中で、信用金庫が最も高いという順位になっておりまして、いざという場合に支援してくれるという点について、地元と地元外とで違うんだという認識が信金をメインにする企業の間にかなりあるということであります。

そういう点から言いますと、今、信用金庫は地区規制があって、この地区から逃げられないということをみんなが知っている。大きな銀行ほど、必ずしもこの地区にずっといる必要がないということになっているので、こういう地区規制が制約であるということもその通りだと思いますが、他方でいざという場合に支援してくれるという意味の信用金庫の一つのイメージをつくっていることに役立っているかもしれないということであります。

その下にあります図表22では、今のメインバンクへの満足度を聞いておるものですが、この点でも信金・信組に対しての満足度は他業態に比べて高めに回答が出ております。これは愛知県のアンケートの結果であります。これも解釈すると、多分、都銀や地銀の場合には満足させるステークホルダーとして、株主がいる。信用金庫・信組の場合にはそういう株主という部分がいないので、より顧客に対して満足度を高めることができているというようなことであろうかと思われます。

5番にまいりまして22ページですが、協同組織金融機関の金融機関としての能力アップの必要性です。以上説明してきたように、私のこれまで行いました研究では、信用金庫、信用組合という協同組織金融機関が銀行と違った行動をとっていて、その違った部分で、特に規模の小さな企業から期待をされているというのが事実としてあるということでありました。ただ同時に、今後改善していく必要もあるという点を幾つか指摘したいというのが5のところであります。

その1つは、経営改善支援能力ということです。金融庁から発表になっておりますが、業態ごとの債務者区分別の経営改善支援率とか、不良債権に関しての経営改善がどういうふうな状況で進んでいるかについて公表されておりまして、それを使って各業態ごとにどうなっているかを調べました。

要点から申し上げますと、信用金庫の場合には、その改善を行った先がその結果としてよくなるという率は、実は各業態の中で低いんですけれども、悪くならないという意味で言うと上位に来る。悪くさせないという意味では上位に来るというような結果になっておりまして、信用金庫の経営支援というのは、経営悪化を食いとめることにおいては銀行よりもかなり効果的であった。多分、懸命に支えるということがこれまで行われてきたんだろうと思うんですが、経営改善にまでつながるほど強力なものではなかった。先ほどの合併とか、そういうことが少なかったという点とも兼ね合うわけですけれども、信用金庫については経営改善支援策がされているんですけれども、アップするところまでつながらなかったというふうなことが統計から読み取れます。

それから次に、26ページまでまいりまして、企業へのアドバイス提供の能力ということでありまして、例えばこれは関西地域のアンケートなんですけれども、メインバンクの業態別に、最近ビジネスマッチングというのが盛んに行われていますが、そういうものに参加したことがありますかということを聞いております。

誘いもなかったというところだけを見て頂きますと、都銀や地方銀行をメインにしている企業では3割の、例えば地方銀行ですと30%ぐらいの企業で誘いがなかっただけですので、7割の企業には誘いがあったと。ところが、信用金庫では誘いがなかったのは4割あるということで、ビジネスマッチングの取組みなどが他業態と比べるとやや低調であるというようなことがわかります。これは恐らく企業間とのネットワークの情報が信用金庫の場合、やはり規模が小さいため、地域を越えてそういうネットワークを持たないために、どうしても本業関連の支援機能が弱くなっているんだろうと思われます。

これについては、27ページの図表の27のところにも、これまで金融機関から有用な助言や情報を受けたかという点を聞いておりますけれども、信用金庫は例えば地元の不動産なんかの情報はかなり提供しているようでありますが、新しい販売先とか技術、新しい仕入れ先、そういうものについての提供というのは非常に低いという結果になっておりまして、こういう部分について今後強化する必要がある。恐らくこれを単独の信用金庫で行うということは難しいので、当然ながら中央機関なり中央の協会という、そういう組織でもって対応する必要が出てくるのではないかというふうに思っております。

もう1つ、28ページのところの図表28のあたりでは、信用金庫は規模の小さなところということですから、どうしても若い企業が中心であろうと思われますけれども、意外にアンケートをとると、若い企業で確かに多少高めなんですけれども、それほど高くないということで、新しい企業を獲得していく必要がある。要するに創業やそういうところの支援についても、今後強化していく必要があって、その部分についても単体ではなかなか難しいだろうというふうに予想されます。

駆け足になっておりますが、次に29ページで6.協同組織金融機関のガバナンスの課題ということについてお話をしたいと思います。

ガバナンスの課題について、ここでは4つほどの観点からお話をしていきたいと思います。1つが総代会制度の機能強化であります。これについては、リレバンのアクションプログラムでかなり強化されてきたという判断をしております。ただ、30ページのところに書いておりますけれども、総代制度を幾ら工夫しても、或いは仮に総代をやめて総会制度に変えたとしても、日常的な経営監視機能を期待するのは難しいというふうに考えます。したがって、信用金庫、信用組合のガバナンスを強化するという観点からは、理事会機能の強化を図ることが現実的ではないかというふうに私は考えております。それで、最近、理事会制度に関していろいろな研究を行っております。

1ページめくって頂きまして、図表の31に信用金庫の理事数というものを調べた図を載せておりますけれども、最近の理事の数、こういうものもなかなか統計としてありませんで、金融機関の名簿を勘定して調べたんですけれども、この状況をまとめますと、一つは近年信用金庫の役員の数というのは減少しています。理事会の規模は小さくなっております。特にその規模が小さくなっているのは、非常勤の役員の数が減少しておりまして、役員の専業化が進んでいるという現象が起こっております。役員数が全体として減少する中で、実は監事の数はわずかですが、平均値として拡大しております。もう1つ特徴は、大きな信用金庫ほど非常勤の役員が少なく、役員のプロ化、専業化が進んでいると、こういうことが調べてみますとわかってまいりました。

次のページにありますのは、信用金庫法では理事の人数を5人以上にしなさいということを決めておりますが、それの大きさについて、例えば最大何人までということを決めておりません。海外の取締役に関しての研究では、取締役会が不必要に大きくなってしまっているというような研究がありますので、そういう点を調べたというのが図表の32以降であります。結論から言いますと、今の日本の信用金庫では、役員数が過剰に大き過ぎるというようなことは検出されませんでしたということでありまして、今の信用金庫の理事数について特に問題があるということはなかった。

次に、33ページに非常勤理事の分析ということをやっておりまして、ここの分析の簡単なイメージは、株式会社制度で社外取締役を非常に重視する制度改正が行われております。この信用金庫における非常勤理事というものの役割は何なんだろうかということを詳しく調べてみたということであります。これは私の大学院生の冨村君と一緒に何本かの論文で研究しているものであります。

35ページのところを見て頂きますと、信用金庫の非常勤理事の経歴としては、信用金庫の元経営者、例えば理事長であるというような方がやられているようなOBの理事、それからもう1つが地元の経営者の方、経営者理事、それから弁護士さんであるとか税理士さんなどの専門家の方、それから市町村長や助役さんなど、いろいろその他の理事、それから統計集に肩書というか、経歴が載っていない方がいらっしゃるということです。このうち2番から4番が、信用金庫法上に社外理事というのはないわけですけれども、社外者的な役割を果たすだろうというように考えて、こういう方がいらっしゃるところの経営がどうなっているかを調べてみたというのが、図表の35以下であります。

36ページの下のところに結論を書いておりますけれども、社外者理事のいる信用金庫というのは、規模が小さくて、収益性が低く、自己資本比率が高めで、経費率が高めで、預貸率は低めであるということがわかります。

ここから私の解釈は、社外者理事は信用金庫の経営陣に対して保守的な経営を要求している。したがって、自己資本比率は高めになりますし、それからハイリスク・ハイリターンをしませんので、収益性が低くなると。それから、監視を行うので経費率が高めに出るし預貸率も同様であるというふうに解釈できるだろうと。したがって、金融システムの安定上もこの社外者理事がいるということは現状非常に望ましい機能を果たしているというふうに解釈できるということであります。

与えられている時間がもう少ししかなくなってまいりました。37ページに書いていますが、私の提案としましては、非常勤理事の役割を積極的に評価すべきではないかというふうに考えておるということを申し上げておきたいと思います。相互扶助から出発した協同組織金融機関のあり方として、会員の代表である企業経営者が理事に選任されることを積極的に捉えるべきだということです。現実には、非常勤理事の数も比率も減っている。金融業務は専門化し、経営リスクが高まっているので、なかなか適任者を選任することは難しくなっているのかもしれない。したがって、適任者を選任し、その社外者理事が期待される役割を果たし得るような権限と責任及びその報酬のあり方について検討が必要であろうと考えているということであります。

ちょっと時間がなくなってきましたので、もう飛ばさせて頂きまして、次に7の信用金庫の再編、39ページのところに進みます。信用金庫の再編において40ページのところに書いておりますけれども、すべての会社が同じように合併していくわけではなくて、特に大規模な信用金庫ほど、より大規模になっているということが結果として見られるわけでありまして、信用金庫の中でも業態内の格差が非常に拡大しているということになっております。

次に、42ページですが、効率性の向上を目指した再編かどうかということですが、これまでのところ私が実際に行われた再編について調べてみましたところ、これらの再編は平均的に見れば合併した後に効率性を改善しているという、その意味でよい合併が行われてきました。これまではよい合併が行われてきたというふうに見ることができます。

しかしながら、43ページのところの(4)で再編によって信用金庫の強みを失う可能性があるのではないかということを指摘しておきたいと思います。

その一つは、大きな規模になると、例えば銀行員の訪問数が少なくなるとか、それからメインバンクそのものが他の金融機関と統合をしてしまうということ自体が、企業から見ると銀行が遠くの存在になったと、こういうような点がこの図表の42のところに書いておりますけれども、メインバンクを変更したいというような企業の理由になっているということであります。

44ページに進みますと、大規模化することによって、顧客との密着度が落ちるかもしれない。全般的に大きな金融機関ほど顧客との密着度が弱いと言われておりますが、例えば担当者が交代する頻度と企業が金融機関に対して、自分のことをよく知ってくれているという点の評点を調べてみますと、担当者の交代頻度が低ければ低いほど、企業側からすると自分のことをよく知ってくれているという、こういう満足度が上がっている。こういうことが協同組織金融機関を企業が選んでいるということにつながっているわけでして、大規模化をすることによって、そういう密着度が落ちることがもし起こるとすれば、これはむしろマイナスになってしまうということであります。

以上、ちょっと駆け足になりましたけれども、協同組織金融機関というのは現状、銀行とは異なった役割を果たしておって、その役割というのが中小企業には期待されているものであると。ただ、能力アップをするために、例えば単体では難しいかもしれませんけれども、能力アップをする必要があるし、それからガバナンス上、理事会制度などについて改善を進めていってはどうだろうかというふうなことを申し上げました。

以上で終わらせて頂きます。

○村本WG座長代理

ありがとうございました。

ただいまのご意見について、ご質問、ご意見があればお願いしたいと思います。

どうぞ、久保田委員から。

○久保田委員

ありがとうございます。大変よくわかりました。

レジュメの8ページのところで、家森先生は「信用金庫には今よりも総合力が必要で、中小企業の合併を推進していくような、そういう力も揃えた方がいい」というふうにおっしゃったと思うのですが、(銀行がメインで扱う)大企業とか中企業同士の合併というのは割とイメージできるのですが、(信金が扱う)中小零細企業の家族経営みたいなところで必ずしも合併がしやすいのかどうか、僕にはあまりよくわからないのです。そこで、小企業で合併によって救われるケースというのは具体的にどのようなものか、簡単に教えていただければと思います。

○家森委員

合併だけではありませんけれども、例えば後継者がいなくなるような状況のもとで、どちらかの会社に引き取って頂くと従業員の方はそのまま仕事ができるとか、例えばそんなものをイメージしています。他にも信用金庫の方からご指摘があるかもしれません。

○村本WG座長代理

どうぞ。

○佐藤委員

多摩信用金庫の佐藤ですけれども、今日はどうもありがとうございました。

家森先生のお話で、近くでお取引するとか、地域でもっとフェイス・トゥ・フェイスでやっているというお話は全く私どもの実態に合わせたお話で、非常に納得して、そうだなということで理解できたわけで、リレバンの取組みなどについての評価も非常に私自身も心強いような気もしたんですけれども、ただ、いろんな分析の中で、これは私の考えですと、私どものお客様の、例えば3万社という融資先があるんですけれども、そのうち4人以下といいましょうか、5人未満の先が65%ぐらいあるんですね。それで、10人未満というものを入れますと8割を超えるぐらいのことになっているので、単に中小企業といっても、そうした取引先がビジネスマッチングであるとか経営改善の助言であるとかいう、そのことと劇的に変わっていくだけのものがないということも事実なので、そうしたものと同じ中小企業といいましても、銀行さんの対象となっている先との違いというのは、非常に分析の中でもそういう中での分析ということで、見ていくと実態がもうちょっと私どものあれが出るのかなという気がするんですけれども、いずれにしても先生のお話で私どものやっていることがそのまま評価されるということについて、非常によかったような気がするんですけれども。

もう1つは、やはり経営が悪化するという、その前に銀行さんは実態として手を引いてしまうので、それがどうなったかということについては、表に出てこないのかなという気もしますけれども、その辺はどうなのかなと、先生はどうお考えかなと、ちょっとお聞きしたいと。

それからもう1つは、ガバナンスの点なんですけれども、合併によりまして理事数がどうしても増えるので、そこが私ども実は合併して理事、監事合わせて30人を超えていたんですけれども、それが20人を下回るというふうな状況になるんですけれども、現在も非常勤の理事さんが4名、常勤理事が13名という体制でやっておりますけれども、そうしたことがやはり影響しているのかなというふうに思うのと。

もう1つは、金融高度化という問題がどうしても避けて通れない、高度化というとあれですけれども、非常に経営管理機能というものがバブル崩壊後の時代激変の中でいろんな問題が起きてきて、それに対応していくために、やっぱりプロの経営者としての能力を要求されるというふうなことが非常に強くありまして、そういう点でも非常勤理事と常勤理事という優先度から見て、常勤理事を減らさずに来たということがあるのではないかというふうに思うんですけれども、その辺のことと。

もう一つは、36ページで今日お聞きして、社外理事の役割というところでお話がありましたけれども、社外理事のいる信用金庫は規模が小さくて収益性が低くてというふうにありましたけれども、私の率直な印象からしますと、これは地域的な特性というもので、どうしても地域の状況を反映して信用金庫というのは大きかったり小さかったりと、また合併したということもあって、そういうふうな結果が出てきているので、逆にこうしたことが社外理事のいる信用金庫がこうなのではなくて、どちらかというと地域として首都圏ないしそうした地域、そうしたところの信用金庫と地域の地方の信用金庫の規模が小さいところとの差ということで見た方が、私自身には納得できることなのかなというふうに思うんですけれども、その辺についてはどうお考えか、その私の印象とお聞きしたいことなので、ひとつよろしくお願いいたします。

○家森委員

どうもありがとうございました。

1つ目の質問ですが、従業員10人以下という区分で、比較はしているんですけれども、4人以下と10人の企業ではかなり違うかもしれないというご指摘ですか。

○佐藤委員

ええ、経営そのものを中小企業といいましても、全く違ってくるという印象もあるわけですね、私どもの取引先を見ますと。そういう点での必要なのかなというような気がしたということでございます。

○家森委員

ありがとうございます。

こういう調査をするときに、どうしてもある程度の規模の会社しかデータベースにないので、なかなかそういう小さな企業は難しいです。ぜひ信用金庫さんと協力させていただいて、そういうところの声を聞けるようなアンケート調査をやらせていただければうれしいなというふうに思います。そういうところの声というのは、実際にはほとんど我々もリサーチはできない状況になっておりまして、今回も東京商工リサーチのデータベースを使うということになるので、ある一定規模以上の会社に、中小企業でも一定規模以上の会社になっているという限界があります。

2つ目、経営悪化の際の銀行の行動と信用金庫の行動が違うのではないかと。これも我々が使えるようなデータで言うと今日お話ししたようなことでして、今おっしゃっていただいた現場の話というのはぜひ、むしろこれからお聞かせいただけるとありがたいということであります。

3番目の理事数が合併により増えるということは、我々も調べてみたんですが、実は多くの信用金庫さんが合併しても、理事数をほとんど増やされていませんし、わずかな間増えているケースもあるんですが、すぐに減らされています。ここで申し上げたかったのは、資産規模はすごく大きくなったのにこの間理事の数は減っているということです。すごく大きな変化が起こっているということを申し上げようとしておりました。

それから、金融が高度化をしたので、プロの経営者じゃないと務まらないと、こういうご意見でありますが、これは株式会社の社外取締役の議論とも同じかと思うんですが、社外取締役も必ずしもその業界のプロではなくても、経営に対しての見識とか、いわゆる常識的な判断ができるという部分で働いて頂く。いざという場合のブレーキにむしろ社外取締役がなるということで言うと、今後この信用金庫の非常勤の方も、日常の融資の判断にむしろコミットして頂くというわけではなくて、理事長さんがおかしなことをやったときには首を捕るよという、そういうところだけにはすごい権限が出てくるというような感じのイメージで私は思っております。おっしゃるように、金融業務そのものはプロの方がやらないと難しくなってきているということは同感です。

それから、最後の部分の研究でありますが、この社外者の比率が金融機関の経営に影響しているというよりは、別の要因ではないかということのご指摘がありました。分析上はそういう点を考慮をして出している結果なんですが、もちろん因果性が必ずAからBへといっているとは限りませんので、ご指摘のような懸念が残ることも確かであります。こういう分析というのは、ある仮説とデータが矛盾していないかどうかをチェックするだけでして、今回こういう保守的な経営をやっているんだという仮説と、データは矛盾していないというわけです。ですから、違う可能性は当然あり得るという、こういうスタイルで実証研究というのはやっております。

○村本WG座長代理

はい、どうぞ。

○宮村委員

どうもありがとうございました。

ガバナンスのところについて、ちょっとお伺いしたいんですけれども、理事会の当然機能強化というのがいいと思うんですけれども、それをすればほかの面については別にいいというのとちょっと違うんじゃないかなと。理事会であれば、理事会の機能を強化すれば日ごろの業務のチェックはできますけれども、総代会や総会というのは、また1年に一辺だとか、そこでもってきちんとするようなチェック機能というのは必要じゃないかなと思うんですね。ですから、日常業務に関するチェックとしての効果というのは、それは理事会かもしれませんけれども、それだけというのは違うんじゃないかなという感じがちょっといたしました。

それから、あとは今議論のあった社外理事がいるかどうかということなんですけれども、詳しくは次回お話ししたいと思うんですけれども、小さな信用金庫に比べて、大きな信用金庫の方が世襲とか、細かいことは忘れましたけれども、世襲か長期政権だとかという場合が多いんですね。ということは、ここで言うのと似ていて、恐らく大きな信用金庫になればなるほど、地域の会員だとかの距離がだんだん離れてきて、そういうチェックが甘くなってくるという面があるんじゃないかなと。それが外部の人を中に入れようかだとかという、自主的な自分たちをチェックしようという意欲の違いが小さいとか大きいとかの差が出てくるんじゃないかなという気がするので、そこら辺の大きな金庫であれば、世襲がどちらかというと多くなるということと、小さな信用金庫であればあるほど社内理事が多くなるというのは似た傾向じゃないかなという感じがいたしました。

以上でございます。

○家森委員

ありがとうございます。

もちろん、総代会制度をやめろと主張するつもりではありません。ただ総代会制度の機能強化は、アクションプログラムで考えられたことがほとんど既に実現していまして、でもこれだけではなかなかガバナンスの強化にならないだろうということで、今後は理事会機能を強化しようということを提案したのです。総代会制度の改善策も、ほかに方法があるのかもしれませんけれども、今私が考えられる範囲ではなかなかそこは難しいかなというふうに思っているというのが1つ目の私の方の考えです。

それから、大きな信用金庫ほどなぜ非常勤理事が少なくなるかで、宮村先生は世襲とか、そういうものが影響しているのではないかというご指摘ですが、私の分析ではそういうところまで考慮に入れられておりませんで、大きな金融機関の方がプロ化が進んできたんだという、そういう解釈をしておりました。ほかの解釈を否定しているものではありませんで、他の可能性については、また研究を見せて頂きながら判断したいと思います。

○村本WG座長代理

ありがとうございます。

まだ議論がちょっと尽きないのですけれども、まだお二人ほどご発言をいただかなければいけませんので、ひとまずここで区切りまして、先に進めさせていただいて、まとめて最後にまたご議論をと思っております。

それでは、続きまして八千代銀行の田原経営企画部長よりご説明を頂きたいと思います。

○田原参考人

八千代銀行の田原と申します。よろしくお願いいたします。

私自身は、昭和53年に八千代信用金庫に入りまして、以来30年が経過しております。その間、13年間を信用金庫で、17年間を銀行で業務してきたということになります。

本日はお手元の資料に基づきご説明させて頂きますが、当行は普通銀行に転換した当時の状況と現在ではバブルの崩壊ですとか規制緩和の進展、マネーフローの変化による貸出競争の激化等、かなり金融情勢も変化してきております。普銀転換した17年前と現在を単純に比較することはなかなか難しい面もございますが、与えられたテーマにつきまして発表させて頂きたいと存じます。

それでは、お手元の資料で3ページ、右下に数字が振ってございますが、当行の沿革から申し上げたいと思います。

矢印左下から右上に沿ってお話しさせて頂きますが、当行の設立の経緯でございますが、創業者を同じくする京王線初台を本店といたします代々木信用金庫と小田急線の町田を本店とする東神信用金庫が昭和29年1月に合併いたしまして、八千代信用金庫は誕生しております。

その後1991年、平成3年に普通銀行に転換し、八千代銀行となっております。普銀転換して以降、平成11年、1999年には神奈川県の要請によりまして、破綻いたしました相模原市に本店を置きます相模原信用組合の事業の譲り受けを行っております。その翌年の2000年には、こちらも破綻いたしました第二地方銀行の国民銀行の営業も譲り受けて、公的資金の受け入れを350億円行っております。

2006年、平成18年3月には信託機能を兼ね備えた銀行を目指しまして、住友信託銀行と業務・資本提携を結んでおります。と同時に、公的資金の返済を行っております。

昨年、2007年には東証の第一部に上場をしております。

次の4ページにいかせて頂きます。

普銀転換理由でございます。

当行は中小零細企業及び勤労大衆のための金融機関として、金融業務を通じて地域社会の繁栄に貢献するという、創業以来の一貫した経営理念に基づき営業活動を行ってまいりましたが、これは普銀転換以降も何ら変わるものではございません。

これより普銀転換理由を4つ挙げさせて頂きますが、これらは後ほど述べさせて頂きます普銀転換のメリットにもつながるものです。

まず、上段の転換理由の網かけ部分を要約いたしますと、お客様のニーズを満たすために、収益を上げられる余裕のあるうちに、より自由度の高い業態に転換したかったということになります。

具体的に申し上げますと、1つ目、会員組織に対する意識の変化がございます。

普銀転換を決断した当時、競合金融機関であります都市銀行等が新たな資金需要を創造するため、中小企業等への積極的な営業を展開しておりました。このため、当行の営業地域のお客様も信用金庫に対し都市銀行と同等の機能、サービスを求めるようになっており、お客様におきましては新規融資を受ける際、なぜ出資金を払い込まなければならないのかという、出資の必要性についての認識も薄れ、その説明に苦慮する等、信用金庫の特色であります会員組織に対する意識が変わりつつありました。しかしこれは、東京、神奈川を営業基盤とする当行だけが感じていたものであり、地方を含めすべての信用金庫に当てはまるものではなかったかもしれません。

その下の総預金に占めます会員比率でございますが、平成2年3月期では、総預金残高に対しまして約34%、3分の1、総口座数に対しまして約13%でありました。その右は端株主の状況でございますが、当時私も融資係を担当しておりましたが、新規融資の際にはお客様に出資金をお願いするときに、1万円から3万円程度と、転換時には基本的に出資金5万円を1株に振り替えておりましたが、1万円から3万円程度お願いするということが一般的でございました。

次のページ(p.5)にいかせて頂きます。

普銀転換理由の2つ目でございますが、顧客ニーズの多様化に対応した自己資本の充実が挙げられます。

お客様のニーズにこたえるためには、業容の拡大も必要でありましたため、自己資本を充実させ、経営体質を強化する中で、貸出金の増加を図りたいと考えておりました。

その下の左側の自己資本比率の推移でございますが、平成3年3月期では5.2%、出資金は33億円でございましたが、直近、平成20年3月期では自己資本比率11.56%、資本金は437億円となっております。その間、第三者割当増資ですとか公的資金の受け入れ、或いは上場による公募増資といったことがございました。

一方、貸出金の推移は右側にございますが、平成3年3月期、1兆1,928億円に対しまして、平成20年3月期は1兆3,635億円ということで、この間バブル崩壊の影響もありまして、貸出金残高は15%の増加となっております。

続きまして3つ目、自由裁量による機能拡充と将来方向の見定めがございます。

金融の自由化等に伴いまして、競争環境が激しくなる中、信用金庫が税法上の優遇等を受けている以上、業務の多様化や機能の拡充に対する一定の制限、これは融資先の規模や営業地域などがございますが、こういったものを受けることはやむを得ない状況にございました。しかし、都市銀行との競合の激しい首都圏において、中小零細企業等に真に役立つ金融機関として、当行が成長し続けるためには、こうした制限が阻害要因になりかねないとの危惧を抱いておりました。そういったことから、自由裁量による機能拡充を図ることで将来方向を見定めたいとの考えに至っております。

当時、外為業務は大蔵省の認可業務でございましたが、まず都銀、地銀、相互銀行といった順で認可され、信用金庫はその後で認可されるという状況でございました。

次のページ(p.6)でございます。

4番目が闊達な組織・有為な人材確保でございます。

有為な人材確保につきましては、普銀転換時には余り予想はしておりませんでしたが、結果として新卒採用におきまして、応募者が格段に増え、一定数の学生を採用することが可能となっております。また、闊達な組織につきましては、当時の経営陣が人材育成のためには大きな試練を乗り越えることが必要との信念を持っており、普銀転換という大きな試練の経験により、役員、行員が測り知れない無形の財産を身につけ、将来への躍進に帰結するというふうなことを確信しておりました。

そういったようなことから、普銀転換以降も当行は信用金庫の良さを持った銀行になると、そういった方針のもとで、営業地域内の国民大衆及び中小企業者を対象とした地域密着の銀行を目指してまいりました。営業地域の規制はなくなったものの、みずから地域を定めて地域金融に徹するとともに、お客様との接点を重視し、集金訪問も含めたフェイス・トゥ・フェイスの営業を実践してまいりました。そして、営業エリアにつきましては、点から線へ、線から面へというシナジーを考慮した店舗展開を行ってきております。

7ページにまいります。

ここで普銀転換のメリット・デメリットでございますが、これは結果として申し上げられることかとは思いますが、1つ目としましてメリットでございますが、1つ目、ステークホルダーの評価を反映した経営の実践がございます。お客様や株主等、投資家のほか、さまざまな関係者等からの評価を常に意識した自己責任に基づいた、より緊張感のある経営管理体制の構築がございます。昨年の上場後は、それらは当行の株価にも反映されるようになってきております。

2つ目といたしまして、資本政策の柔軟性の確保が挙げられます。増資による資本増強、営業譲り受け等による営業基盤の拡大、住友信託銀行等との業務・資本提携による企業価値向上等が可能となりました。

3つ目といたしまして、取引先の多様化が挙げられます。信用金庫のときは、融資先の企業規模等の制約がありましたが、普銀転換によってそのように規制はなくなり、取引先層の拡大が可能となっております。よって、地域のすべてのお客様を対象とした営業の展開、大企業、中堅企業との取引の拡大も行われてきております。

4つ目といたしまして、行員のモラールの向上と優秀な人材の確保が挙げられます。株式会社化並びに株券の上場による知名度の向上等もございまして、そういった一定数の人員を確保することが可能となってきております。

2つ目といたしまして、デメリットでございます。

1つ目はコスト負担でございます。税法上の優遇の放棄、また出資から株式への転換による株式事務の費用コスト、或いは上場の費用、また転換時の看板の撤去或いは看板の塗りかえ、通帳等の変更費用等がかなりの負担がございました。

また、2つ目といたしまして、共同事業からの脱退と自行による運営がございます。それまでは信用金庫の傘のもとで運営していただいておりました年金基金、健康保険組合、保証会社、クレジット会社等は脱退をすることになりまして、自行で運営することとなっております。それによって一定のコスト負担がございます。

3つ目、非営利組織から株主も考慮した経営の転換がございます。

一定水準の利益の確保と配当の還元等が求められております。

4つ目といたしまして、上場もいたしまして、敵対的買収の対象となっております。

次のページ、8ページ目でございますが、経営体制の比較でございます。

左側が信用金庫の時代、右側が銀行でございますが、まず左側の信用金庫の場合の経営組織でございますが、先ほども先生からお話がございましたとおり、総代会がございます。平成3年3月末現在でございますが、総代は166名いらっしゃいました。会員数は7万6,635名でございます。それに対しまして、直近の20年3月末は株主が1万2,001名、また株主総会のもとで新たに監査法人の監査、これはかなり厳しい監査を受けるということが義務づけられております。

その次に理事でございますが、左側の理事の数は当時23名という理事がおりました。最近の取締役の数ですが、直近では取締役が9名ということになっております。

一番下の総代会でございますが、信金最後の総代会は平成3年2月7日に行われました。出席人員が103名で、うち別途63名の委任状の提出がございました。所要時間は40分で質問は特にございませんでした。

また、最近の株主総会は、過去3年間を平均いたしますと、出席人数は156名、所要時間は72分、質問者数は2.3人ということで、質問内容といたしましては、そういった方々からは地域金融機関としての営業戦略の説明を求められる、或いは株式上場の条件とその時期、そういったものを問われたり、或いは振り込め詐欺やキャッシュカードの偽造等への対応策、住友信託銀行との業務提携の経緯、現在の経営課題について、或いは役員退職慰労金についての詳細と、こういったような質問がございました。

次に、9ページにまいらせて頂きます。

株式・資本等の状況でございます。

上段の一番左が信用金庫最後の平成3年3月末の株式数、或いは株主数でございます。20年3月期、一番右でございますが、その比較で申し上げますと、総株数は増資による新株発行により増加しております。一方で総株主数は端株の買い取りにより減少しております。その間、第三者割り当て増資或いは資本提携、上場といったようなイベントがございました。

中段にまいりますと、株主1名当たりの保有株式数でございますが、平成3年3月末では一人当たり4.54株、一方直近では私どもの普通株式の保有株式数は12.48株と増えております。これにつきましては、端株買取のため機関投資家等との株式持ち合い等も柔軟に対応してきた経緯がございます。

また、信金時代の配当金でございますが、5万円の1株に対しまして8%配当ということでございました。直近の私どもの普通株式の配当は、1株に対して6,000円でございます。直近株価約50万円といたしますと、その配当負担は1.2%ということになりますが、当時私どもの出資金から株主に転換された方が多数いらっしゃいますが、当時5万円で1株となっていらっしゃいます株主にとってみますと6,000円の配当は12%の配当に当たるということになります。

一番下が会員勘定の推移でございますが、信用金庫の時代の会員勘定は671億円でございました。直近の20年3月期は純資産で1,126億円ということで、455億円の増加を見ております。

次に、10ページ目にまいります。営業の状況でございます。

店舗数でございますが、平成3年が53店舗、平成20年3月末は77店舗でございますので、24店舗増加しております。一方、従業員数は当時平成3年は2,154名に対しまして、20年3月末は1,725名ということで429名減少しております。

この間、平成11年3月の相模原信用組合の事業譲り受けにおきましては、4店舗の譲り受けを行っております。これにより30名の正社員を採用しております。また、平成12年の国民銀行の営業譲り受けでは、23店舗譲り受けるとともに、265名を再雇用しております。

また、その下の1店舗当たりの預貸金残高でございますが、預貸金残高は増加したものの、店舗数の増大の方が顕著でございまして、その影響で1店舗当たりの預貸金残高は減少しております。

その下の従業員一人当たりの預貸金残高でございますが、こちらは従業員数の減少と預貸金残高の増加によりまして、こちらは増加しております。

次に、11ページでございます。

上段が貸出金、当座貸越を除く状況でございます。この平成3年3月期との比較でございますが、信用金庫時代は当座貸越を除いた貸出金の内訳しかなかったため、そのベースにあわせ直近データを加工した関係で、上段右側の数値、普銀転換して直近の平成20年3月末ではなく、4月末現在を記載させていただいております。

これを比較いたしますと、1つ目といたしまして、1先当たりの平均貸出金は1,900万円から2,900万円と増加しております。

2つ目といたしまして、先数の構成比は中小企業者がプラス6%、個人がマイナス6.3%、先数そのものは全般的に減少する中で、大企業、中堅企業は増加しております。

3つ目といたしまして、残高が増加する中で、住宅ローンの構成比はプラス10%、大企業、中堅企業向けはプラス10%、中小企業者がマイナス7%という数値となっております。

その下段の普通銀行転換後の貸出金の状況は、当座貸越等も含めた数字でございますが、今申し上げました上段と同じような傾向でございますので、割愛させて頂きます。

次に、12ページでございます。

決算等の状況でございます。

平成3年当時と現在を比較いたしますと、金利水準が大きく違っており、単純な比較は困難でございますが、結果だけ見ますと業務純益等は信金時代の方が良く、税引前利益及び税引後利益は現在の方が良いという結果となっております。

具体的に幾つかの項目を見てまいります。

上から6つ目でございますが、金融機関向貸付・短期資金でございます。こちらの当時の信用金庫時代の収益が221億600万、多大な金額となっております。こちらにつきましては、平残が2,983億円、利回りが7.4%と非常に高い利回りとなっております。当時の貸出金利回りが7.47%ということでございますので、貸出金利回りと遜色のない利回りとなっております。

一方で、直近3月期でございますが、こちらの利息収益は14億8,200万ということで、短期資金平残、これは主にコールローンでございますが、2,034億円の平残に対しまして、運用利回りは0.72%ということで、この差異は206億2,400万円の減少ということになっております。

その2つ下、役務取引等利益でございますが、信金時代は7億4,600万円の収益に対しまして、直近では25億7,600万ということで、18億3,000万増えておりますが、金融リスク商品収益といったようなものも上がってきております。

次に、その下4つ目、人件費でございますが、人件費につきましては、比較いたしますと14億3,500万円減少しております。こちらは主に従業員の平均人員が435名減少したことが主な要因となっております。

また、その下の物件費でございますが、信用金庫時代は土地建物賃借料が3億2,500万円、預金保険料が1億3,300万円だったものが、直近では土地建物の賃借料が14億800万円と大きく増えております。これは、国民銀行の譲り受けに対しまして賃貸する店舗、こういったものが増加した影響もございます。また、預金保険料の算出方法も変わっておりまして、預金保険料の負担が15億3,800万ということで、物件費全体で、32億4,000万円の負担増となっております。

結果といたしまして、当期純利益、一番下の段は11億1,300万円の増加を見ております。

最後に13ページにまいります。

主要計数でございます。

一番上の貸出金平残でございますが、当時と比較いたしますと2,643億円の増加を見ております。一方、預金平残でございますが、こちらにつきましては5,348億円と貸出金よりも倍ぐらいの増加を見ております。この中で特徴的なことを申し上げますと、その下の流動性預金比率でございますが、信用金庫の時代は16%台だったものが直近は45%ということで、28%の増加を見ております。流動性比率は非常に上がってきております。

また、その下の4つ下でございますが、信用金庫の特徴でありました定期積金につきましては、当時1,440億円あったものが今は330億円と1,110億円の減少となっております。

その下、6つ目でございますが、総資金利鞘、こちらにつきましては0.14%の悪化となっております。また、預貸金利鞘、こちらにつきましては0.13%プラスとなっております。

以上が普通銀行転換の概要と現況ということになります。

以上で説明を終わらせて頂きます。

○村本WG座長代理

どうもありがとうございました。

ただいまのご説明についてのご質問は後ほどまとめてということでさせて頂きまして、引き続いて、JAバンクシステムについて、農林中央金庫の奥JAバンク統括部長からご説明をお願いいたします。

○奥参考人

ご紹介頂きました農林中金の奥と申します。よろしくお願い申し上げます。

私の方から、JAバンクシステムということでテーマをいただいております。このテーマの中では、主として協同組合、単位組合のあり方というよりも、私の方から業態なりグループのあり方というところに力点を置いた説明になろうかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

なお、JAバンクシステム、JAバンクというところを農協がこういう愛称を使っていることについて、若干違和感があろうかと思いますが、これはもう平成10年ぐらいから使っているグループのアイデンティティーでございまして、むしろ当時は業務なりレギュレーションの同質化が非常に進む中で、農協としてもきちんとした業務をしていこうといった意識改革という観点で導入したというような側面もあったことを申し添えたいと思います。

ページをめくって頂きまして、2ページに目次を置かせていただいております。今日はJAグループということなものですから、あまり馴染みが通常ないかと思いまして、JAグループの概要を少し導入部としてご説明させていただいた上で、JAバンクシステムのコンセプトであったり、導入の経緯であったり、運営状況であったり、そういった中における農林中金の取組み、こういった構成でご説明させていただければと思っております。

3ページを見ていただければと思っております。そこにJAグループのストラクチャーを書いておりますが、ご一瞥いただければと思っております。左側に組合員数932万人、これに対してただいまのJAの数が794というようなことでございますが、特徴的なことを申し上げますと、このJAが総合事業を行っているということで、そこにありますように信用事業であったり、農産物の販売、或いは生産、生活購買等、経済事業と言われるもの、それから共済事業、そのほかに医療厚生事業ということで、言ってみますと組合員の生活なり生業全般にかかわる業を行うというような観点で総合事業を展開しているという点が特色の1点かと思いますし、見て頂きますとわかりますように、市町村レベル、都道府県レベル、全国レベルということで、3段階という構成になっているというあたりが特色の2点目かと思っております。

そのうち、このグループ全体は農協法という網がかかっておりますが、このうち中程の右側にありますが、農林中金、全国レベルございます。ここには別途農林中央金庫法という法体系のもとで構成されているということでございます。

特色の3番目としては、このグループの組織再編の動向等になりますが、基本的には市町村レベル、農協間の合併と、それから都道府県レベル及び全国レベルの連合会間の統合というような中で全体の組織再編なりが会員の意思のもとで決定なり動いてきているということでございます。

おめくり頂きまして4ページでございますが、組合員数の動向ということでございまして、何といっても特色は、そこにあります正組合員数と准組合員数というところに信金さんなりとの違いがあろうかと思いますが、正組合員は名前のとおり、農民がその組合員資格でございます。一方で准組合員は地区住民及びこの農協を継続的に利用する者ということでございまして、正組合員とは違って議決権を有しておりません。

そういった構造の中で、そこに平成元年から18年までの時系列でその推移を記載させていただいておりますが、ざっと足元で見ますと18年度のところで正組合員490万に対して準組合員430万ということでございますが、そこに記載していなくて恐縮でございますが、直近の農家戸数が280万戸でございますが、そういった戸数の中の農家人口と言われる部分が830万、一方で農業従事者が560万といった構造の中でのこの正准組合員、こういった位置づけでございます。

それから、5ページにいきまして、JA数というところでございますが、当然JAのところ、経営の効率化なり機能強化というような観点から合併をしてきた経緯がございまして、そもそもは1万3,000有余のJAが足元794と、こういった推移になっておりまして、よく市町村の数とJAの数なりが比較されるところでございますが、足元では市町村の1,800なりに対してJAは794と、こういった状況になっているということでございます。

6ページに入って頂きまして、その結果としての大体のJAの規模数の分布状況ということで、平成6年3月、或いは11年3月、或いは19年3月といった時系列で整理させていただいておりますが、平均貯金量としましては平成6年3月、すなわち5年度のところでいきますと228億、10年度のところで398億、18年のところで961億ということで、まだまだ小規模ということになります。

一方で、こういった経営の効率化なり基盤強化という観点で合併をしてきておりますが、そういった意味で経営規模の追求余地はさらに有しているという見方もある一方で、先ほど先生のご指摘にもありましたように、地域の密着性というような観点から、こういった合併がどこまで進められるかといった論点もあろうかと思います。

7ページに入って頂きまして、JAの組織ということで、若干特徴的なところとして、経営管理委員会制度という制度を入れております。これは平成8年の農協法改正によって、平成8年時点では組合の選択性というもとで導入されております。ねらいはそこにありますように、統治と執行の分離ということで、経営の専門家を執行に充てようというようなねらいでございましたが、その後、平成13年に一部そこの、アスタリスクがついておりますが、13年の農協法改正で、一部の連合会なり会員500人以上の連合会なりは導入義務付けと、こういった制度変更を見ておりますが、ただいまの導入状況といたしましては、連合会で65、JAで36というようなことでございます。

それから、そこら辺のイメージ図が8ページにございまして、JAの組織ということで理事会制度のJA、或いは右側にあります経営管理委員会制度を導入したJAということで、左右お見比べをいただければというふうに思っておりますが、左側が理事会制度のJAということで、総会、総代、それから監事、理事会ということで、理事会のところは定員の3分の2以上は正組合員、理事は5名以上、うち信用事業専任理事1名以上、こういった枠組みでございますし、経営管理委員会制度を導入したJAということで、意思決定機関として経営管理委員会と、ここは定数の4分の3以上は正組合員ということで、5名以上の経営管理委員ということでございまして、そのもとに業務執行機能を行う理事会ということでございます。

こういったところがJAグループのストラクチャーの概要でございますが、9ページ以降は本題でございますJAバンクシステムということで、ご説明をさせていただければというふうに思っております。

ここで言うJAバンクシステムというシステムは「制度」というふうに、とりあえず広義で、広い意味でご理解いただければと思いますが、このJAバンクとはということで、ここはJA、信用事業を行っている部分のJAと、それから信連と農林中金、この3者で構成するグループの総称というふうに置かせていただいております。

ここでJAバンクと申し上げていますけれども、言ってみますと、経営体は別々の中で、会員制をとるということでもありますし、この会員が広い意味でのアライアンス、業務提携を行うといったところだと思っておりまして、そういう意味ではJAバンクという組織そのものがあるわけではございませんで、ある意味バーチャルな総称ということでございます。ただ、ここで申し上げる本質は、この会員間の相互規律を求める、こういうシステムであると、こういうふうに私自身理解しております。

そこの下にJAバンクシステムとはということで、2つの矢尻で説明をさせていただいておりますが、1つ目の矢尻にありますように、このJAバンクシステムとは、会員の総意のもとで、JAバンクの基本方針ということで、グループはこういうふうに運営していきましょうというような基本方針を策定しております。その基本方針のもとに、会員が一体的に事業運営をしていきましょうということで、後ほどやや詳しく申し上げますが、平成14年にスタートしておるところでございます。

その主な柱は2つございまして、1つは言ってみますと会員相互に研鑽し合って、経営の健全性を高めていきましょうといった部分がマル1でございますし、マル2はグループ全体として総力を結集する中で、競争力をつけていきましょう、こういったコンセプトでございます。

10ページに入って頂きまして、そこら辺の立てつけをこのJAバンクシステム、イメージ図という格好で置かせていただいておりますが、いずれにいたしましても、組合員なり利用者に2つの遡求をしていこうということで、安心と便利さ、金融サービスという2つの矢印がJAバンク全体から組合員なり利用者に向かっておるかと思いますが、このまず安心、健全性のところにつきましては、破綻未然防止システムというような表現になっております。

構成は3つからなっておりまして、会員の経営状況のモニタリング、或いは会員に対する経営改善指導、或いはそれの極度の部分として、JAバンク支援基金というところからの資本注入、こういう財源的支援、こういう構成からなっておりますし、一体的事業運営というのは、言ってみますと会員のレベルの業務レベルの均質化を進めていこうというような中でございまして、2番目のポツにありますような電算システムの一元化をしようだとか、それからその次にありますような全国的にサービスの質なりの近てん、均質化を図ろうと、こういったやや抽象的な構成になっております。

左側に若干立てつけとして、このJAバンクシステムを運営していく上でのいろんな立てつけとして、1つは行政との連携、或いは別途中央会、先ほどのストラクチャーで見て頂きましたところにあります中央会との連携だとか、監査機構という監査法人がございますが、そことの経営データの連携、或いは貯金保険機構、それから財源を管理する支援協会、或いは回収機構等々の立てつけ上のストラクチャーがありますということでございます。

さて、11ページにはこの導入の経緯なり、このJAバンクシステムを入れた背景、理由なりを11ページ以降整理させていただいておりますが、大きく言って3点だと思っております。

すなわち平成13年ごろの当時の認識ということで、金融環境というところで3つ置かせていただいておりますが、言ってみますと金融サービスの質なりコスト面における大競争時代、それからIT革命の中で単体の金融事業体ではなかなかやっていけないだろう、こういった観点の中からIT投資に関する効率性の観点、3番目が貯金者が健全性を比較して金融機関を選択する時代だろうというような中で、これまでは自己責任ということが一本やりでございましたが、それに加えて相互規律というところを大きな項目に入れていくというようなことかと思っております。

そういった観点から、平成13年当時、グループとして生き残るための戦略ということを考えたときに、グループ全体のコンバージェンスというか、連帯を強化して、この生き残りをしていこうと、こういうような観点で、むしろ合併で単位組合を強くするという方法論もあったのかと思いますが、分業アライアンスというあたりをより軸に置いた戦略を13年ごろ判断したというようなことかと思っております。

そうしたところは12ページと13ページ、やや詳しめに整理させていただいておりますが、一番上にありますJAバンクに期待される役割として、組合員、利用者のサービスにきちんとこたえていくと。そのための課題は、それぞれの経営体が自己責任でやるというのは当たり前だけれども、一方で全体として取り組まなければ、なかなかそこまで対応できないんではないか、こういった課題認識のもと、13ページに入って頂きまして、キーワードとして一体的な業務運営というキーワードを置いておりますが、JAと信連と農林中金が総合力を結集して運営していくんだと。

そういう中で、◆にありますように相互監視システム、こういったもの、或いは次の◆にありますようなグループの総合力を結集した金融サービス機能、こういったものが当時の課題認識でございました。

なお、アスタリスクでこういった健全性なりのところを一つの柱にした理由として、我々農協形態においても、これまでいろいろ破綻の事例がございました。それらの教訓、すなわち農協によっては能力なり体制が整わないまま資金運用がなされて、経営破綻なり要処理額が非常に大きなものになったと、こういった話だとか、経営内容がなかなかディスクローズが十分されなくて、実態が十分把握し切れなかったというような教訓も踏まえて、このシステムのモニタリングだとか、経営改善だとか、必要に応じての資金支援、資本注入等、資金援助、こういったシステムをつくったわけでございます。

14ページに、それではこのJAバンクシステム導入の経緯なりということでの2番目として、法制的な手当てということでございます。

マル1にこういった全体の自治なり運営を決める話でございます。したがいまして、この全国JA大会決議というのがございまして、これはJAグループが3年に1回開催しているものでございますが、言ってみますとJAグループの最高意思決定機関ということになりますが、ここで先ほど来申し上げているようなJAバンクシステムということに関する全体の決議をいたしまして、その後農水省さんの中で検討会を開いていただいて、その後15ページに入りますが、再編強化法ということで、13年6月の成立、14年1月の施行ということで法律の手当になっております。

そこに3条から6条までありますが、大きなポイントだと思いますが、主語はすべて農林中金というふうになっておりますが、3条は農林中金の指導権限、4条は農林中金が全体の基本方針を策定する策定義務、5条が報告徴求権限、6条が協力依頼権限、こういった法律上の手当てでございます。

駆け足になって恐縮でございますが、16ページにそれでは基本方針の中身について概略ご説明申し上げたいと思います。

こういった基本方針でございますから、当然その間、私どもの会員であります全国の信連の会議であるとか、全中の会議であるとか、或いは農林中金の総代会の決定というような基本方針でございます。その基本方針の要旨を時計文字の I から VI まで整理させていただいております。

I の基本的方向のところに関しましては、大変恐縮でございますが、口頭で5点ほど補足させて頂きたいと思います。

1つはJAバンクは実質的に一つの金融機関として機能しましょうと、こういうことでございます。

2番目はJAバンクは全国にあるわけでございますが、そのサービスの均てんなり均質化を図りましょうということでございます。

3番目は体制なり能力に合った資金運用をやっていこうと、こういうことでございます。

4番目は破綻未然防止のための早期の経営改善を会員としての義務としてやっていきましょう、それができないような場合は組織統合なりということをしていきましょうと、こういうことでございます。

5番目は、会員全員が財源の確保に向けて義務を負うと、こういった基本的な枠組みでございます。

2番目以降に若干詳しく会員の役割等ということではございますが、農林中金の役割として全体の戦略を作って、マル2でございますが、JAバンク中央本部を設置して、このシステムをきちんと運営していくと、こういうことでございますし、傘下のJA、信連の役割としては、信連は各県に県本部を設置して管内のJAを指導すると、こういう役割分担になっております。

17ページの方には、右上に若干JAバンクにおける会議体系というふうにございますが、総代会以下、このJAバンク中央本部委員会の位置づけ、或いはそこで審議したことの周知なりということで、会員からなる会議体と、こういったことを置かせていただいております。

3番目にJAバンク会員の義務ということで、マル1からマル7までございます。大体先ほど申し上げたとおりでございますから説明は割愛いたしますが、7番のところのJAバンク全体の安全効率運用ということで、言ってみますと、会員は自ら会員なりへの融資といったところをした上で、ここでは余裕金と呼んでおりますが、貯金から主として貸し出しを引いた、その余裕金の一定部分を上部団体である信連であったり、信連は農林中金に対してであったりは、預け入れ義務というのがざっくり言ってしまいますと、総量で3分の2、2分の1という、こういうルールがございます。

それから、5番目と6番目に、この会員のメリットであったり、会員がその相互規律にそぐわない場合のペナルティーであったりといったところが置いておりますが、最後に基準の見直し等は会員の全体総意の中で運営していくわけでございますから、必要に応じて毎年なりの見直しを行っていくと、こういう枠組みになっております。

それから、18ページに若干経営の健全性のところに関して、少し詳しめに説明をさせていただいておりますが、ざっくり申し上げますと、左側に実質自己資本比率であったり、体制整備であったり、検査、監査の指摘状況だったりと、こういう切り口のもとでレベル格付というのを会員に対して行います。その結果として、軽度の方からレベルゼロ、重度の方でレベル3というような格好でそこにあるようなマトリックスに基づいてレベル格付をして、そのレベルに応じてそれぞれ経営改善への取組みの義務であったり、或いはそこにありますように、資金運用上のリスクの接受、収受の限度を定めたりと、こういった枠組みでレベル格付制度というのを運用しております。

別途右下に二重線で囲っておりますが、私ども早期指導対象JAというような制度にしておりますが、言ってみますと、ここは一定の前提を置いたストレステストのもとで、そこにありますような5つの項目なりに基づいて、経営破綻に至る早い段階から経営指導なり経営改善に取り組もうと、こういった枠組みでの取り組みでございます。

19ページが全体として保有している財源のところでございまして、JAバンク支援協会という独自の財源と、一方で貯金保険制度という公的法律に基づく制度ということで、そこにありますような、ただいま現在の残高を有しておりますし、或いはそこにありますように、支援実績ということで、平成13年度以降の資本注入なり、資金贈与なりの実績とその金額でございますし、最後に一番下段にありますのが全国のJAの平均でございますが、自己資本比率の推移と、こういった中身でございます。

一方で、20ページ以下はもう一つのコンセプトであります一体的な事業推進ということでございますが、これは言ってみますとグループとして、いかに経営実績を上げていくかというようなことでございますので、グループ全体として3カ年の経営計画なりを持ちながら、その経営目標を会員全体で共有をしながら運営していくというようなことで、3カ年おきにこういう戦略を策定しているところでございます。

21ページには、別途このJAバンクとして会員への対応を通常の対応に加えてアグリサポート事業というような事業を行っておりまして、矢尻の一番最後にありますが、農林中金の拠出なりのもとで100億円程度の財源を持って、言ってみますと農業の担い手に対していろいろな利子助成をしていく、或いは信用度がすぐには持ち得ない人に対して、ファンドというような格好で新規就農なりを支援していく。或いはマル2のところにありますように、地域貢献事業ということで、今では職能教育への支援だとか、そういった取組みをしているところでございます。

22ページと23ページはそういった中での計数の推移ということで、後ほど詳しくはご高覧いただければということでございまして、直近の残高、業態シェア、貸し出しの残高、業態シェア等々、記載しておりますし、23ページはJAの利益なり店舗なり職員数の推移ということでございます。

24ページは、JAバンクシステムのうちの電算システムにつきましても、18年5月、これまで各県で持っておりました電算システムを一つに集約して、ITのコスト戦略なりという観点から、これを整備なりしているということでございますし、25ページと26ページはそういった中での農林中金の役割というようなところで、25ページには農林中金の経営戦略の中の1つとして、このJAバンクのところの経営戦略がビルトインされているということを表した図でございますし、26ページはグループ全体としての、或いはキャッシュフローというか、資金の流れをあらわした表でございますので、詳しくは後ほどご高覧いただければということでございます。

大変駆け足になって恐縮でございました。

○村本WG座長代理

どうもありがとうございました。

八千代銀行、そして農林中央金庫のご説明を踏まえまして、委員の皆様から御意見を頂きたいと思いますし、先ほどの家森委員からのご発言についても、御意見頂きたいと思います。

どうぞ、佐藤委員。

○佐藤委員

すみません、いつも手を挙げて申し訳ないんですが、本当にお二人の方のお話ありがとうございました。

私どもも八千代銀行さんと地盤も近く、親しくさせていただいていた経過もあります。また、JAバンクさんについては、よく地元でいろんな面で単位農協さんとのお付き合いということもありますので、そうした営業面、事業面から非常に納得できるようなお話をお聞きして、理解できたというふうに思うんですけれども、まず八千代銀行さんのお話で、部長の話は確か銀行としては17年という経歴をお持ちで、その前は信用金庫だということでしたよね。

ちょうどこのころが私は本当に時代が全く変わってしまったという、そういうときだったと思うんですけれども、その17年の中というのはそういうことで、私どもも激動というよりは激変の中で、何とか生き残りをかけてやってきたという思いが非常に強くて、そうしたことで、本当に八千代銀行さんが銀行に転換されて立派にやってこられた、今そうしたしっかりしたことをやっていらっしゃるというのは大変だったろうというふうに、本当に感じるんですけれども、その変化の中で感じたことなんですけれども、私どもとしては、むしろ銀行さんとの競合、都銀との競合、こうしたことが非常に大きな課題だったんですけれども、地域的にも同じだと思うんですが、今考えてみますと、最近の競合というのは、むしろ競合があるから我々はこういう生き方をするんだという信用金庫としての価値をつくり出していくというふうなことをやっているというふうに考えているわけで、例えば外為についての制約であるとか人材確保という、そうしたことを挙げられたわけですが、これも非常に大変なそうした制約だったという意識でしょうけれども、今現実にそういうものがあるかというと、私どもとしてはないということを感じるわけですね。

同じ外為の扱いでも、私どものやっていることは中小企業のサポートということで、いわゆる価値を生み出していくサポート、そういうものの中での取り扱いをしていますし、全部形は違うと思っているんです。

それから、人材につきましても、最近は信用金庫だからこそ、そういうところで働きたいという新卒の話を聞きますと、実際にそういうことをして、またそれを生かして仕事をしていくという体制になってきていると思うんですね。これは就職のときにうまいこと言って入ってくるということではなくて、そういう人が増えているということも事実なので、これだけ環境が変わってきたという中で、初めて本来の信用金庫としての仕事ができるようになってきたように思いますし、それを一言で言えば、私はどこでだれのために何をするのかということが生き残りをかけてはっきりしてきたと。

それを定めて、また定まってきたという経過があると思っているんですけれども、そういうことについてそれぞれ八千代銀行さんとしての価値はすばらしいと思いますし、本当にそういうことを生み出してこられたと、株式会社、銀行としての価値を生み出して上場されたということなので、そういうことであるということなんですけれども、そちらの方から見て、信用金庫というものをそうした価値から見て、今現在信用金庫が存在している我々に対して、どんなふうに見ていらっしゃるか。

それから、どこでだれのために何をするかという問題、私はこれははっきりしたことが非常に我々にとって幸せだったと、我々というより私どもの信用金庫にとって、そう思ってきたんですけれども、メガバンクさんにしても、都銀にしても、そういったものが確立されているというふうにはとても思えないというのが大変失礼だけれども、感じているんですが、制約があるがゆえにそうしたことを確立してきたということなので、その辺についてどんなふうに感じられるのかということをちょっとお聞きしたいなということを、後で結構なんですけれども。

それから、効率の面でお話があって、非常にこれは私どもそういう面では劣っているというふうに思うんですけれども、人員の数字が出ておりますが、あれは正規職員でパートさん、それからその人については入っていないんでしょうか。

○田原参考人

入ってございません。パートは別途、多分400名ぐらいいると思います。

○佐藤委員

そうすると、2,100とか、それぐらいの。そういう意味では、私ども全部合わせれば2,100ぐらいになって、大体2兆円ですから。そういう意味ではそう効率的にはあれかなと思いますけれども、ただ中身が大分違っているのかという気もしますけれども、ありがとうございました。

そういうふうなことをそちらでご覧になる信金の価値、それからどこでだれのために何をするかということをどう定められているか、その辺の感覚が変わってきたのかどうかということ。

それから、私どもは4人以下の取引先が非常に多いんですけれども、その辺も変わられたのかどうかということも、もしわかれば教えて頂きたい。

それから、大変長くてすみませんが、JAバンクのシステム、奥様にはこの経営管理委員会という、そうしたものがあるということなんですが、その目的として私が考えられるのは、金融のプロ化が必要といったようなことと説明がございましたけれども、確かにそうなんだろうと思いますが、それでいいのかどうか、そのために必要なのかなという制度なのかということをお聞きしたいのと。

もう1つは、1つの機関としてJAバンクシステムが単位農協さんが3段階に分かれていますけれども、それを1つの形態として考えていらっしゃるというお話だったんですけれども、それについては間違いないかというお話をもう一度確認だけしたいんですけれども。どういうことかといいますと、そうすると私どもも信金中央金庫という中央機関がありますけれども、かなり同じようなことをセーフティネットも含めてやっているわけです。非常にそれはしっかりした形で私どもも信用という面では恩恵に預かっているわけですが、そういったことをただし我々の場合にはそれぞれの地域の特性に合わせた経営をして、それを連帯と協調といいますか、そうしたことを含めて中央機関がサポートしているという状況なんですけれども、そういう状況を見てみますと、銀行化、株式会社の銀行としての独立したものと、今日はたまたま八千代銀行さんのお話を聞いて、それからJAバンクさんの話を聞いたので、信用金庫というものはどちらかというと、中間的な今のあり方というのは何となく私も納得できるかなというふうに自分自身で感じるんですけれども、その辺についてもしコメントがありましたらお聞かせください。

大変長くなってすみません。

○村本WG座長代理

恐れ入ります。

では、村田委員、どうぞお願いします。

○村田委員

村田でございます。ありがとうございました。

八千代銀行さんに2つ伺いたいのですけれども、冒頭普通銀行への転換のきっかけとして、いわゆる会員組織に対する意識が変わったということがございましたけれども、転換した後で、或いは転換の段階で、いわゆる取引先、お客様の反応は皆さんが歓迎したのか、或いは一部でむしろ信用金庫の方が自分たちに密着していてよかったということもあったのか、その辺りを1つ。

もう1つは転換してのメリットの話がございましたけれども、そのメリットは非常に大きかったと思うし、私も八千代銀行さんが転換して成功したというか、評価しているところなのですが、後が続いていないというのも事実で、不思議に思っているところなのです。

そこで、収益性の面で税法上のいわゆる協同組織金融機関の優遇の面は収益性の向上でカバーしていくということで、そのカバーしているのがこの直近の決算ではわかるのですが、途中八千代銀行さんも何期か赤字の決算もあったと思いますし、収益性の上がらなかった時期もあったわけで、そういうことを考えて、この転換に当たってのこの税法上の優遇というのは、どの程度の比重を占めるものかというのをお聞きしたいと思います。

○村本WG座長代理

どうぞ、原委員。

○原委員

どうもありがとうございました。

JAバンクさんにひとつお聞きしたいのですけれども、今回のこのワーキングがスタートしている一つの理由としては、金融の協同性というところに着目をしてワーキングをスタートしているのですが、ちょっと経営の話が続いているということで大変恐縮なのですが、借り手側からお聞きしたいというふうに思っておりまして、資料の21ページにJAバンクとして取組むアグリサポート事業ということで、ここで借り手の姿が少し見えるのですけれども、実際には例えばグラミン銀行なんかの話もございますように、協同性というところに着目をして、借り手側としてどういう人たちが登場してきていて、自分たちとしてはどういうところに融資をしたいという、そういう理念のようなもの、ポリシーのようなものというのは、どのように持っていらっしゃって、具体的にはこういう形で資金を融資しているというようなことがございましたら、少し借り手に着目をして、どういう人たちが登場しているか、お聞かせいただけたらと思います。

○村本WG座長代理

恐れ入ります。吉野先生までですみません。

○吉野委員

八千代銀行の方と農中の方にそれぞれお聞きしたいんですけれども、株主の構成というのはどんなふうになっていらっしゃるのか、例えば関連の中小企業の方が大半お持ちになっていて、前と似ているのかどうか。

それから、普通銀行に転換した後、大企業とか中堅企業の貸し出しが11ページで伸びているわけですが、ということは反面、中小企業への貸し出しが相当その地域で減ったのかどうかということです。

それから、農中の方、26ページを見てみますと、最初に集まってくる預金が82兆円で、そしてどちらかというと、農業関係に出されるのはほんの少しで、最後農中さんの資産運用が61兆円ですから、大半が農業関係でないところに資産運用されているような感じがするんですけれども、今後ますますこういうことが増えていくような感じがしまして、こういう農業金融というのはどういうふうにお考えになられるかということと。

それから、農中の全体での資産運用は非常にグローバルに運用されているように思うんですけれども、そういうグローバル性の情報というか、ネットワークというのがどういうところから出てこられて、それが大手のメガバンクと同じようなものなのか、それとも違うのかどうかを教えて頂きたいと思います。

○村本WG座長代理

神吉先生、手短であれば。

○神吉委員

ご報告ありがとうございました。

八千代銀行さんに1点お伺いしたいのですが、業態転換の事例として八千代銀行さんの事例が非常に貴重な先例になっているわけですけれども、この業態転換を実施されるに当たっての阻害要因としてどういうものがあったのかということをお聞かせ頂きたいんです。例えば、ちょっと例としては不適切ですけれども、当局の認可がなかなか下りなかったとか、もしそういうことがあるならば、どんなものがあったかということをお聞かせ頂きたいと思います。

○村本WG座長代理

それでは、まとめてで恐縮なんですけれども、お願いします。

○田原参考人

それでは、私の方からお話しさせて頂きたいと思います。

かなり大量にあったものですから、すべて網羅できなかった場合には、再度、ご質問頂きたいと思いますが、まず多摩信金の理事長さんにはいつもお世話になっておりまして、ありがとうございます。府中とか、いろいろなところで多摩信さんといろいろ共同作業もやらせていただいておりますし、競合もしておりますけれども、切磋琢磨してやらせていただいております。

そういった中で理事長様から信金に対するイメージというようなことがございましたが、私どもはそもそもいまだに信用金庫の良さを持った銀行でいこうということでやっておりますので、信用金庫のそもそもの理念というものを一切変えておりませんし、忘れてはおりません。そういう意味では、中小零細企業と国民大衆のために奉仕していくのだと、こういった気持ちは一切変わらずにやってきております。

それで、その中で大きな違いは、信用金庫さんは、いまだに狭域高密度の中で、非常にきめ細かくお客様のところを訪問されて、まさしくリレバンの精神ということで非常にきめ細かくやられているなということを常々思っております。

そういった中で、私どもは若干店舗数も増えた関係で、あと人数もそれ以上に減っているものですから、そういった中で信用金庫さんと競合した中でかなり劣後するような案件もございます。そういう意味では、非常に信用金庫さんの強みというのがいまだに発揮されているのではないかなということを脅威に思っております。

それと、どこで誰のために何をやるかということでございますが、どこでという点では、私どもは基本的に店舗のある地域でということしか考えておりません。地域を捨ててどこかに行くということもできませんし、地域とともに発展していくと、共存共栄でいくと、そういう気持ちがございます。

そこで、だれのために、これはお客様でございます。地域のお客様のために、それとあと地域のお客様が認めていただけるような独自的な商品、或いは八千代銀行でなくてはできないサービス、これは何かということを常に考えながら、これはどこの信用金庫さんの皆さんも銀行も同じだと思うのですけれども、そういった発想でもって、気持ちでもって営業を続けてきております。

それと、最終的にはお客様あっての銀行であること、お客様から見放されてしまったら、銀行であろうと信用金庫であろうと生き残れないこと、これは確かではないかなというふうに思っております。

あと、効率の面でいきますと、バブルの崩壊というのは、非常に私どもも痛手がございました。それで、普銀転換以降、不良債権の償却等で2,000億以上の償却をしておりますので、そういう意味では貸出金がその間に2,000億以上減っているということでございます。ですから、良質な貸出をする一方で償却をしていくようなことが、ようやくこの数年でその辺が落ち着いて、地価も下げ止り、前向きな方策に転換できると、こういうような状況になってきております。

あと、取引先層の変化でございますが、取引先層は基本的に大きく変わってはおりません。先ほどの経営理念のもとで地域のお客様のためにということでございますので、例えば私どもの今の貸出金でまいりますと3,000万円未満の融資先数、こちらはほぼ85%を占めております。そういう意味では、非常に地域のそういった零細のお客様、或いは個人を中心とした取引先層でございまして、そのプラスアルファとして中堅、或いは優良でもう少し大きな企業、そういったものに対しても躊躇なく行けるようになったということであります。

普銀転換前までは規制がありましたので、そういったところには貸出ができませんでしたが、そういった規制がなくなったので、そういったところにも普通通り行けるということになったのです。ですから、お客様の層としては今までの層は変わらないのですが、それにプラスアルファ上の、もうちょっと年商とかの大きいところにも行けるようになったこと、こういった違いが出てきているのではないかというふうに思っております。

あと、会員組織の意識が変わったということでの取引先の影響でございますが、当時17年前でございますが、私が記憶するところではお客様では昔の八千代銀行のその良さを捨てて、或いは集金活動も一切しなくなってしまうのではないかとか、地域の我々を見捨てて、大企業の方に行ってしまうのではないかと、こういうような危惧されるお客様もいらっしゃいました。ただ、割合としましては、かなりの方が良かったと賛意を表していただいたのではないかなという気がしております。

実際に17年経っても、私どもは地域を捨てたわけでもございませんし、今までと同じようなお客様とお付き合いさせていただいていますし、集金の先数は若干減りましたけれども、いまだに集金も行かせていただいておりますので、その辺は大きくは変わっていないというふうに思っております。

あと、税法上のメリット、デメリットでございますが、普銀転換する前は非常に税法上のデメリットが大きいのではないかという危惧はしておりましたが、実際に普銀転換した後で、大きくデメリットだなと感じたかというと、それは余り感じてございません。また、税効果会計というものもできてまいりまして、実際には赤字決算等もございましたので、累積赤字等もあった時代もございます。

そういう意味で、税金を払わないような時期もございましたので、ただ直近では累積赤字はなくなっておりますので、通常通りの税金を払うようになっておりますが、その中でも加算減算とか、そういった税効果上のものがございますので、税金はまだまだ純粋に当時よりも上がったというイメージは余り持っておりません。ですから、これは順行速度でどんどん景気がよくなってということになったときには、税負担というものに対しては、若干重いと感じることはあるかもしれませんが、今のところは大きく重いというふうに感じたことはございませんでした。

それと、あと私どもの後を続かなかったということでございますが、これはバブルの崩壊があって、それで八千代銀行を私どもは見ていながら、赤字になったこともございますので、決して普銀転換すればバラ色の世界があるのではないなということは皆さんお感じになったのではないかなと、そういう気はいたします。ですから、メリットばかりではなくてデメリットというのはかなり強調されたのではないかなという気がいたします。

それから、阻害要因でございますが、阻害要因として今思うには、信用金庫の時代には健保組合ですとか、それから保証会社ですとか、先ほど4つ申し上げましたが、それらについては信用金庫の業界の中でやっていただいていました。そのときは何とも感じなかったのですが、いざそれを自前でやるとなりますと、人もかかりますし、コストもかかりますし、そういう意味ではこれだけのコストはかかっていたのだなということを今非常に強く思っておりますし、それを脱退するときも、そうそうない事例でしたので、それなりに脱退する交渉とか、その経緯はかなりいろいろ時間がかかったということはございます。

あと、株主構成につきましては、昨年上場して大きくその辺の株主構成は変わりまして、現状は外資系の方が9%ぐらい株式をお持ちになるということになっておりますが、基本的に当時の信用金庫のときに出資でお持ちになられた方もいまだにお持ちになっていらっしゃる方が数多くいらっしゃいます。そういう意味では、先数でいきますと70%ぐらいの方は昔ながらの信用金庫の時代の出資金からずっとお持ちになられている方がいまだにいらっしゃいます。

あと、貸出でございますが、中小企業向け貸出の残高が減っているというようなご指摘もございましたが、確かに現状におきましては、中小企業向け貸出比率、これは85%程度まで落ちてきております。それで、これにつきましては、中小企業向けの貸出をどんどん伸ばしたいのは山々なんですが、資金需要がなかなか盛り上がってこないということもございます。ですから、そういった中である程度中堅企業、大企業、或いはメガバンク等の資金需要があれば、そちらの方に貸し出しをすると。ですから、運用の一環という面もございますが、そのようなことも現実としてはございます。

以上です。

○村本WG座長代理

ありがとうございました。

○奥参考人

まず、佐藤委員から2つご質問を頂きました。

1つは経営管理委員会の導入の理由なり必要性ということであったかと思いますが、ご指摘のとおり、専門性というところは大きなキーワードであったかと思っておりますが、基本的にはこれは経営に関する方法論でございますので、あくまで経営体で判断して頂くということだと思いますが、大きな点として経営管理委員の方は、むしろ会員に対してこの組織はどうあるべきかというところを真剣に考えて頂くということでしょうし、理事の方はむしろ執行なり、いかに適切に業務を執行していくか、ここに専念して頂きたいという思いのもとで入れたという私の理解でございます。

2点目が1つの経営体ということに関するご質問でありましたが、ご説明申し上げたときちょっと不十分であったかと思いますが、あくまで別の経営体が実質1つの金融機関として動いていきましょうというようなコンセプトでございまして、経営を統合するとか、そういったものでは全くございませんで、言ってみますと会員の相互規律をより高めて、みんなで頑張っていきましょうと、こういうメッセージの方が強いと、こうご理解いただいていればということで、そういう意味では信金グループさんでやっていただいているところと、本質的には同じ部分があるのかなというふうに思っておりますが、違いは先ほど申し上げたような総合事業性であったり3段階性であったり、或いは後ほど原委員さん及び吉野委員さんの方のご質問に絡みますが、農業金融の需要が非常に低迷する中で、言ってみますと組合員からの金融資産をいかに安全に運用していくかと、こういう側面が非常に強くなっている中で、上部団体への資金運用委託機能と、こういった面が非常に強くなっているというあたりのもとでの、あるとすれば違いがあるのかなと、こんな認識をしております。

2点目の原委員さんからのマイクロファイナンスを含めたどういうところに貸したいかというような借り手という観点でございますが、先ほどのところと絡みますが、言ってみますと、農業の総生産というのが8兆円ということで、GDP500兆に対してそういう水準になってきております。これは戦後のイメージからすると随分な違いを認識されるかと思いますが、そういった中で、農業融資というところに関する需要というのは、ご想像のとおり相当程度少なくなってきておりまして、ここに関しては政策金融ということも非常に大きな位置づけとしてあるわけでございますが、政策金融の受託取り扱いと我々のJAバンクで融資している、そういう融資を合わせますと、農業金融の需要に対して9割弱ぐらいの対応状況になっているんではないかなというふうに思っておりますが、そういった状況の中でどういったところに貸したいかという意味でいきますと、平成2年にこの委員会で我々JAグループも地域協同機関というような位置づけをいただいておりますが、生い立ちは農なりということでございますが、地域色というところに関しても強く意識しておりまして、そういう中で准組合員なりに対する貸し出しもしかりでございますが、地域住民に対していかにそういった意味での小口の生活資金であったり住宅資金であったり、そういうものをご対応させて頂くというのは、大きなポイントとしてあろうかと思います。

ただ、いかんせんそこら辺も踏まえましても、先ほど吉野委員さんからありましたように、トータル82兆のうち、グループ内のJAなり信連の段階の部分を差し引くと60兆ぐらいが農林中金じゃないかということでご指摘のとおりでございまして、グループの貸し出しという生の信用リスクの取り方という意味では二十数兆と、こういった状況でございまして、それには先ほど言いましたような農業金融に加えて、地域への貸し出しというところを加味して、そういう状況でございます。

したがいまして、吉野委員さんのご質問の農業金融をどう考えるかというところに関しては、相当程度飽和になっている中で、ご案内のとおり、今いろんな意味で新規の参入だとか新しい農業に対する挑戦がございますので、そういったところは実は従来のスタイルの信用リスクのとり方という意味では、なかなか難しい部分があって、ここではアグリエコサポート基金という格好で、言ってみますとファンド的な手法も使いながらと、こういうのも今後挑戦していきたいと、こういう考えでございますし、最後にグローバルな運用に行うに当たって、ネットワークはどういうふうになっているかというご質問でございますが、私ども農林中金は全体として経営のウエートと効率性というところが非常に大きく置いておりまして、海外の支店としては3支店に事務所というような格好でのネットワークでございますので、言ってみますとメガバンクさんのように、地域に非常に均てんしたネットワークを持って、それで情報を活用しながらというよりも、言ってみますと市場性のマーケット運用というところに重きを置いたスタイルをとっておりまして、いずれにいたしましても、そこのねらいは組合員から預かった金融資産、いかにリスク管理なりのもとで安全に運用して可能な限り、できればより効率的にという観点で運用している所存でございます。

ご質問足りなかったところがあったら、また後ほどご指摘いただければと思います。

○村本WG座長代理

ありがとうございました。

足らざるところはまたメール等でやりとりさせて頂きますので、よろしくお願いをしたいと思います。

もう既に時間が過ぎてしまいましたが、一応ここで3人の委員の質疑は終わりたいと思いますが、事務局から若干ご説明がございますので、よろしくお願いいたします。

○渡邊協同組織金融室長

資料の4-4でございます。

前回のワーキングの中で神吉先生の方から、地区拡張の定款変更の認可の状況はどうかというお話がありましたので、近年の状況を取りまとめてみたものでございます。

2ページの過去10年間の地区拡張の実績というものがございます。信金、信組並べてございます。地区拡張の実績で要因を見てみますと大体3種類ありまして、地区拡張を主な目的とするもの、それから事業の譲り受け、それから合併を契機とするものということでございます。地区拡張を主な目的とするものというのは、生活圏の拡大ということで、地元におけるニーズが増えてきたということで、この事例は過去からございます。

それで、16、17、18ぐらいは多くなってございますが、これは平成の大合併が全国で進んだということによりまして、それを機に拡張しようということで、件数が増えてございます。それから、13年、14年度ぐらいは事業譲受、合併というものが大きくなってございます。それから、地区縮小の実績も信用金庫で1件、信用組合においても17年度3件、これまた市町村合併に伴うものを契機にしているものというふうに理解してございます。

それで、認可に当たって、何らかの条件を付して定款変更を行ったものはないかということでございますけれども、そういったものはないということでございます。

それから、次の2ページ、3ページ目につきましては、認可に当たっての審査する内容について、資料化したものでございます。

一般的なことでございますけれども、信用金庫であれば一番最後の方でございますけれども、定款変更イ、ロ、ハ、こうした一般的な基準がございます。それに照らして現場で判断していくということになります。信用組合の方も同様な基準で、一般的な基準なんですけれども、これにのっとって具体的に考えているということでございます。

それから、あとは第1回目のワーキング・グループの中で、地区と営業エリアの関係がどうかというお話があったと思うんですけれども、この点につきましては、信用金庫は地域限定した会員により構成されていまして、会員の相互扶助を目的とした協同組織金融機関であるという特性がございますので、信用金庫の会員は定款で定められた地区内の会員に限られているということになりますので、会員サービスのために設置される支店というのは、地区内に設置されるということになると考えてございます。これは制度上ということではなくて、指導監督上の措置としてそういうことで一致させるということでございます。

以上です。

○遠藤信用制度参事官

引き続きまして、資料でございますけれども、右肩に協金WG4-5と記載されている資料でございます。

これは委員の皆様方から、前回またはその後にメールでいただいたご質問について、前回御意見を頂戴いたしました筒井先生及び清田先生、それから前々回に欧州の協同組織金融機関の制度につきましてご説明頂きました山村先生にご協力頂きまして、先生方からのご回答を取りまとめさせていただいたものでございます。中身については、ちょっともうご説明する時間はございませんが、委員の皆様方におかれましては、お目通しいただければ幸いでございます。

最後は事務連絡でございますけれども、次回の協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループにおきましては、本日に引き続き有識者の方から協同組織金融機関のあり方に関してご説明頂き、それをもとにご討議頂くことを予定しております。具体的には、委員の神吉委員、それから宮村委員から、協同組織金融機関のあり方に関する御意見を頂戴するとともに、公認会計士の方をお招きいたしまして、監査人としての立場から協同組織金融機関を見てこられた、これまでの知見を踏まえたお話を伺うことを予定しております。

次回は6月20日、金曜日、16時からを予定しております。正式には追って御連絡いたします。よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○村本WG座長代理

どうもありがとうございました。

時間の管理が不手際で大変申しわけありませんけれども、本日はどうもありがとうございました。

今日はこれで終わりにいたします。

以上

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