金融審議会金融分科会第二部会(第50回)議事録

1. 日時:

平成21年1月9日(金曜日)10時00分~11時40分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室


○岩原部会長

それでは、時間でございますので、金融審議会金融分科会第二部会の第50回会合を開催させていただきます。

皆様、明けましておめでとうございます。メンバーの皆様におかれましては、新年早々お忙しい中ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開することとなっておりますので、その点、ご了解くだいますようお願い申し上げます。

本日は、池尾委員、金丸委員、野村委員、堀内委員、山下委員、吉野委員、神田委員、田中委員がご欠席とうかがっております。

さて、本日は、資金決済に関する制度整備につきましてご審議をいただきたいと存じております。議事次第にございますように、銀行間の資金決済についての審議、当部会に設けられておりました決済に関するワーキング・グループの報告を受けたいと存じます。第二部会は、専門委員の方にもご議論に参加していただくこととされておりますが、銀行間の資金決済について、専門委員でいらっしゃいます金融機関の方におかれましては直接の利害関係もあろうかと存じます。また、決済に関するワーキング・グループにつきましては、金融機関だけではなく、新しい決済サービスを提供する事業者の方々にも審議にご参加いただきましたが、専門委員の方には新しい決済サービス事業者の方はいらっしゃいません。このため、本日の議題に関しましては、専門委員を除き、委員及び臨時委員のみの審議とさせていただいております。

なお、銀行間の資金決済については、参考人として、東京銀行協会理事の和田様、同じく事務システム部長の増田様をお招きしておりますので、後ほどご説明をいただきたいと存じております。

それでは、まず銀行間の資金決済についての審議を行いたいと思います。まず初めに、事務局からの説明をお願いいたします。

○高橋決済システム強化推進室長

それでは、お手元の資料の50-1と50-2に基づき、ご説明をさせていただきたいと存じます。

まず、資料50-1でございます。最初のページで検討の経緯等と書いてございます。現在ニューヨーク、ロンドンに比肩する国際金融センターの確立に向けまして、我が国の金融・資本市場の競争力強化が強く求められております。資金決済、証券決済を合わせました決済システムにつきましても、一層の利便性の向上、リスク管理の強化等の指摘がなされております。

資料50-2でございます。1ページ目で、経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会の指摘でも、決済システムの戦略的強化というところで、安定的かつ効率的で、外国とも円滑にアクセスできる決済システムの存在は、国際金融センターが備えるべき最も基本的な要件の1つであるとされております。

2ページ目でございます。金融審議会の我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループにおきましても、決済システムは金融・資本市場を支える重要なインフラであり、その安全性、効率性及び利便性の高さは、金融・資本市場の国際的な競争力を左右する極めて重要な要素の1つであるとされております。

決済システムはこのような重要な社会的基盤(インフラ)であり、決済システムの強化(安全性、効率性、利便性の向上)なくしては我が国の金融・資本市場の国際競争力が得られないと考えております。

3ページでございますが、したがいまして、一昨年12月に公表されました金融庁の「市場強化プラン(金融・資本市場競争力強化プラン)」におきましても、「安全かつ効率的で利便性の高い決済システム等の構築」をその目標の1つとして掲げております。この中で資金決済システムについても目標として揚げたわけでございます。

そこで、資金決済システムはいかなるものかということでございますが、資料50-2の4ページあるいは5ページでございます。通常資金決済はいろいろな場面で行われるかと思いますが、現金による支払のほか、振込など銀行の口座を介して行われることが多いかと思います。また、こうした振込などに複数の銀行が利用される場合には銀行間の資金決済が必要となりまして、最終的には銀行が日本銀行に有する当座預金の振替によりまして資金決済が完了するという形になります。

このように、資金決済はいわば階層をなして行われるものでありまして、個人や企業の間で行われますリテールの資金決済と銀行間の資金決済に分けることができるのではないかと思います。

なお、リテールの資金決済に関しましては、前払式証票の規制等に関する法律、俗にプリカ法といわれておりますが、そのような例外を除きまして、銀行を中心とした制度整備が行われております。しかし、近年情報通信技術の革新やインターネットの普及等により、銀行が提供する従来のサービスとは異なる新たなサービスが普及発展してきておりまして、その制度整備のあり方に関する検討の必要があると考えられたところ、金融審議会におきまして第二部会のもとに決済に関するワーキング・グループの設置をお願いし、ご議論をいただいたところでございます。これが次の議題の決済に関するワーキング・グループの報告でございます。

そこで、銀行間の資金決済の現状でございます。また後ほど東京銀行協会の方からご説明をいただけるかと思いますので、ここでは簡単にご説明をさせていただきます。

現在取扱高等は、6ページにございますような規模に達しておりまして、営業日ベースですと1日当たり550万件あるいは10兆円を超える規模に達しております。

この推移でございますが、7ページのところでございます。1973年(昭和48年)ですが、全国銀行内国為替制度を始めております。いわゆる全銀システムといわれます全国銀行データ通信システムを稼動いたしまして、オンライン化を実現しております。

その後、8ページにございますが、新内国為替制度と呼ばれます制度、債務引受けのセントラル・カウンター・パーティ(CCP)を日本銀行から社団法人東京銀行協会に変更する。あるいは、もし加盟行が決済不能となった場合には、不払行の担保処分等により回収した資金でその補てんを行うといったような新しい制度を導入する。あるいは、最近では、次世代RTGS(Real-Time Gross Settlement:即時グロス決済)といわれておりますが、大口資金につきましては即時にグロスの資金決済を行うなど、安全性、効率性の向上に向けたさまざまな取組みが行われているところでございます。

このような現状につきましては、世界的に見ましても全国各地の銀行で受け付けた振込依頼を振込先の銀行まで送信する手続をリアルタイムで処理したり、あるいは銀行間の決済を当日中に完了する決済サービスはあまり例がございません。このような決済の効率性の高さは、我が国の資金決済システムが持つ優れた特徴として、高い安全性とともに評価されるべきものであると考えております。

しかしながら、利便性の観点からは必ずしも十分でないとの指摘がございます。資料50-2の1ページでご紹介いたしました戦略的強化の見地からも、例えば国際標準化の努力といった指摘を受けております。

これを簡単に課題としてまとめたものが9ページでございますが、金融庁の金融研究研修センターにおける決済に関する研究会で、国際化あるいは標準化への努力、あるいは顧客ニーズへの対応のための努力といったものの指摘があるところでございます。

そこで、全銀システムの運営主体の話でございます。資料50-2の10ページでございます。また、資料50-1の2.運営主体のところでございます。全銀システムにつきましては、現在、公益法人であるところの、銀行を構成員とします、特例民法法人である東京銀行協会によって運営をされております。また、幹事行制度をとっておりまして、その幹事行制度の中で実質的な運営が行われております。しかしながら、こうした組織運営形態では、継続的・戦略的な意思決定を行いづらいのではないか。あるいは、利用者ニーズに応じた迅速な対応を行う上で適切なガバナンスを発揮しづらいのではないかといったような指摘がございます。このため、安全性・効率性を維持しつつ、利用者ニーズに対応した利便性の高い資金決済システムを運営するために、リスク管理能力などの高い専門性に加え、より公正性・透明性の高いガバナンス体制の構築が必要であるのではないかと思っております。

また、全銀システムの運営主体は、複数の銀行間でなされた資金決済に関する債務の引受けを行う清算機関としての役割を果たしております。

この清算機関という仕組みでございますが、例えば資料50-2の15ページでございますが、証券取引につきましては金融商品取引清算機関制度というものがございます。甲と乙との間で証券の売買が行われたときに、その証券引渡債務と代金支払債務がございますが、これにつきまして、清算機関と呼ばれるものが間に立ちまして、それぞれから債務引受けをして清算を行う制度がございます。これと同じように、資金のやりとりにつきまして東京銀行協会が債務引受け等を現在行っておりますので、まさに清算機関としての役割を果たしているかと思います。

このように、清算機関は各清算参加者に分散しております決済リスクを集中的に引き受ける存在でございますので、その規則や手続が法的有効性を有し、その効果につきまして予見可能性があることが重要であると思います。

したがいまして、この清算機関が行う清算の効果を一段と確実なものにするため、法的安定性の更なる向上を図るよう検討することが望ましいと思っております。

諸外国におきましても、いろいろな形態で銀行間の資金決済の運営が行われております。資料50-2の11ページでございますが、諸外国における銀行間の資金決済、米国におきましてはCHIPS(Clearing House Interbank Payments System)、あるいは欧州ではEURO1といったような、いろいろなシステムがございます。その運営主体の組織形態のあり方につきましてはさまざまなものでございます。12ページ以下でございますが、例えばカナダでは金融機関間の清算の法的有効性の確保の努力、あるいはフランスでも資金決済システムの円滑な運行と安全性をオーバーサイトする権限を中央銀行に付与するといった動きでございます。

また、13ページでは、G10中央銀行「支払・決済システム委員会」報告書の最初のところでも、システムは、全ての関係法の下で確固とした法的根拠を持つべきであるというような指摘がございます。

特に米国のサブプライムローン問題に端を発しました国際金融、資本市場の動揺が続いている状況のもとで、国内外の決済システムの相互依存関係が一段と強まる中で、資金決済システムを強化する必要性が増してきているということで、アメリカにおきましても、14ページでございますが、ブループリントといわれる勧告が出されております。その中でも、最初に、決済システムに関する連邦免許を創設するということがあります。資金決済システムに関する監督のあり方あるいはガバナンス体制の強化といったものが諸外国でも見られるというようなことでございます。

このように、ガバナンス体制の強化による銀行間の資金決済の強化あるいは資金清算に関する法的安定性の確保あるいは資金清算に関する公共性の確保と適切な監督体制の整備といったものが必要であるのではないかと考えております。諸外国や証券決済における制度を踏まえまして所要の制度整備を図ることが必要ではないか考えております。

以上でございます。

○岩原部会長

それでは、続きまして和田参考人よりご説明をお願いしたいと思います。

○和田参考人

ご紹介いただきました和田でございます。本日は、私のほか、実際のシステム運営に責任を持っております事務システム部長の増田と一緒に参りました。よろしくお願いいたします。

それでは、お配りしております資料50-3に沿いまして説明をさせていただきます。先ほど金融庁からご説明をいただきましたものと重複している部分につきましては簡単に触れさせていただくということで、約10分ぐらいお時間を頂戴できればと思います。

初めに、全銀システムの仕組みについて、2ページをご覧いただきたいと思います。全銀システムは、全国の金融機関の間の内国為替取引をオンラインで処理するシステムでございます。主として、お客様間の資金決済を取扱い、全国の銀行で受けました振込依頼を振込先口座にリアルタイムで送信いたします。そして、銀行間決済も当日中に完了いたしております。平成19年12月に公表されました金融庁の決済に関する研究会の中間整理におきましても、ただいまご紹介いただきましたが、世界的に見てもこのような決済サービスを提供している例は少ないという評価をいただいております。

なお、全銀システムの運営主体は、東京手形交換所などを運営しております社団法人東京銀行協会でございます。東京に営業拠点のない金融機関もありますので、それらの参加を得るために内部に内国為替運営機構という組織を設けて専門的に対応しております。

3ページは、取扱規模の推移を示しております。棒グラフが取扱金額でして、ここ10年くらいは、減少した年もございますけれども、基本的には増加しております。折れ線グラフが取扱件数でありまして、こちらは右肩上がりで推移しております。

4ページをご覧いただきたいと思います。全銀システムを通じた為替の流れは、図にございますような形のオンライン・リアルタイムで、顧客口座間の送金を実施しております。また、統合ATMシステムを経由して、事前に振込先口座を確認して、誤振込の防止を図っております。データの形式については、単一電文形式のテレ為替、それから大量データ一括処理のためのMTデータ伝送の2種類を扱っております。

5ページの銀行間の資金決済について、ここは少し詳しく説明をいたします。

内国為替取引では、通常日は8時30分から15時30分の間、それから月末日は1時間前倒しで7時30分から、後ろも後倒しで16時30分の間に発生いたします個々の取引ごとに、決済金融機関にとっては相手方の金融機関に対する債務が発生をいたしまして、同時に相手方金融機関はそれに対当いたします債権が発生することになります。東京銀行協会はこの銀行間の債権債務を引き受けた上で全銀システムの通信時間終了後、金融機関ごとの当日決済されるべき累積債権債務の差額を計算いたしまして、通常日ですと15時50分ごろ、月末日ですと16時50分ごろに日本銀行に通知いたします。その後、この差額を日本銀行における各金融機関の当座預金口座と東京銀行協会が持っております口座との間で、当日中、通常日は16時15分、月末日は17時15分の時点で振り替えることにより銀行間決済を完了させております。

このように、東京銀行協会が内国為替の資金決済に関する集中決済の当事者、いわゆるセントラル・カウンター・パーティになることにより、安定的かつ円滑な決済を実現しているところであります。

この決済スキームに関するリスク対策ですが、下のほうにございますとおり、内国為替制度では、まず金融機関ごとに許容する仕向、被仕向取引の最大差額、言い換えますと最大の債務額をあらかじめ仕向超過限度額として設定いたしまして、各金融機関はこの額に相当する担保、これは現金ですとか、国債等の債券、上場株式などを対象にしておりますけれども、これを東京銀行協会に差し入れてもらうことにしております。ただし、万が一不払が発生した場合ですが、この担保を当日中に処分して決済に充当することは非常に難しいため、あらかじめ資金を速やかに供給する役割を担う銀行を流動性供給銀行として25行選んでおりますが、これらの銀行からの資金提供によって当日の決済は一旦完了させまして、後日担保を処分してこの流動性供給銀行へ返済するというスキームとしており、これによって実効性を確保しています。

次に、6ページですが、ここでは全銀システムのインフラ構成を示しております。多重化、暗号化を実施し、安全性を確保しております。

また、通信プロトコルは、米国規格協会(ANSI-American National Standards Institute)のX.25規格を採用しております。これは時々の技術面や製品供給動向などにかんがみまして、平成7年から使用しているところであります。

次に、全銀システムのこれまでの経緯と今後の取組みについてご説明をいたします。8ページの全銀システムの沿革をご覧いただきたいと思います。

全銀システムは1968年(昭和43年)にスタートいたしました「全国地方銀行データ通信システム」の取組みを生かしまして、先ほど高橋決済システム強化推進室長からお話もございましたように、1973年(昭和48年)に、全国銀行87行と商工組合中央金庫を参加者にスタートいたしました。

その後は、資料にありますとおり、参加金融機関が第2次システム及び第3次システムにかけて一挙に増加いたしましたほか、第3次システムでは、東京・大阪の2センター化、大量データの一括処理を可能としますMTデータ伝送を開始いたしました。また、決済リスク対策といたしまして、仕向超過額の管理や同日決済への移行を実施いたしました。

第4次システムでは、専用回線方式を自営パケット交換網に変更したほか、通信時刻を9時から8時30分に繰り上げております。また、決済リスク対策として、東京銀行協会がセントラル・カウンター・パーティとなる現在の仕組み(新内国為替制度)を採用したところであります。このほか、証券系の信託銀行、インターネット専業銀行等も参加いたしました。

現在の第5次システムでは、回線をフレームリレー網に変更し、併せてデータの暗号化を実施いたしました。また、電文フォーマットとしてEDI(Electronic Data Interchange)欄を追加したところであります。そして、今年の1月5日からは、皆様ご案内のとおりでありますけれども、ゆうちょ銀行が参加しております。

今後は、現在のシステムライフを8年としております関係から、一番下にございますように、2011年(平成23年)に第6次全銀システムへの移行を予定しております。

次に、ごく簡単に第6次システムの概要を紹介いたします。9ページをご覧いただきたいと思います。現時点では2011年(平成23年)の11月からの稼動を予定しておりますが、安全性、安定稼動を最優先として、以下の施策を実施する予定としております。

1つ目は、国際化・標準化への対応として、従来の電文に加えてXML(Extensible Markup Language)電文、ISO20022を採用すること、それからEDI情報の拡充、通信プロトコルにTCP/IPを採用、それからネットワーク網にIP-VPN網を採用する、ということを考えております。

2つ目は、顧客ニーズへの迅速・柔軟な対応ということで、SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)の導入によるシステムの柔軟性向上を図ってまいります。

3つ目は、決済リスク削減や業務継続体制の強化として、大口取引の日銀ネット次世代RTGSへの対応、現在のMTデータ伝送の次世代として、新ファイル転送の導入、試験環境の整備を行ってまいりたいと考えております。具体的な内容はまだ調整中の事項もございますが、概要を10ページ及び11ページに記載しておりますので、後ほどご覧いただければと思います。

最後に、12ページに大口取引の日銀ネット次世代RTGS決済スキームをご参考までに添付しておりますので、ご覧いただければと思います。

以上が次期の全銀システムにおいて採用を予定している新たな施策等でございます。

私からのご説明は以上であります。

○岩原部会長

それでは、銀行間の資金決済につきまして、皆様からご意見を承りたいと思います。いかがでございましょうか。

○鮎瀬幹事

私ども日本銀行も決済の分野におきましてさまざまな役割を担わせていただいておりますので、本日の議題に関連する事柄といたしまして審議のご参考ということで、日本銀行と民間決済システムの関わりについて申し上げさせていただきます。

日本銀行は、自ら日銀当座預金による資金決済システム、あるいは国債(JGB)に関する決済システムを運営しておりまして、これらを通じて、先ほども言及していただいておりますが、全銀システムを初めとする民間決済システムに対しましても最終的な決済を行うための決済サービスを提供させていただいております。

また、これに加えまして、私ども日本銀行は民間決済システムが安全かつ効率的に機能するように、そのモニタリングを行いまして、必要があれば改善に向けた働きかけを行っております。こうした活動でございますけれども、一般に決済システムに対するオーバーサイトと呼ばれておりまして、日本銀行にとりましては日本銀行法に規定されております金融機関の間で行われる資金決済の円滑確保を通じて信用秩序の維持に貢献するという役割を果たしていく上での大事な活動の1つと位置づけられております。

また、こうした決済システムに対するオーバーサイトでございますけれども、これが中央銀行の重要な責務であるということにつきましては、各国の法的枠組みの違いにもかかわらず国際的な共通認識となっているところでございます。

私ども日本銀行としましては、今後とも金融庁あるいは民間決済システムの運営主体とも連携をさせていただきまして、ただいま申し上げましたような活動を通じまして、我が国決済システム全体の安全性・効率性の向上に貢献してまいりたいと考えているところでございます。

以上でございます。

○岩原部会長

それでは、各委員の皆様いかがでございましょうか。

それでは、まずはお手元の資料の2ページ目の現状について、ここら辺について何かご指摘いただくことはございますでしょうか。いかがでしょうか。金融機関間の大口決済システムは、まさに決済の要でありますので、その安全性、効率性は経済全体にとっても根幹をなす非常に大きい問題であります。そのような点について皆様から何かご指摘いただくことがあればと思いますが、いかがでしょうか。

主にご紹介いただきましたのはリテールに関する全銀システム等でありますが、資料50-2の4ページにございますように、決済システム全体として見ますと、全銀システムによる1営業日平均の資金決済額は10.7兆円で、それに対して日銀ネット当預系での決済額は120.4兆円です。したがって、リテール以外の非常に大口の取引が実際には多いということで、例えば外国為替円決済制度等は、1営業日当たり23.0兆円という枠で、このようなところを含めた全体の大口の資金決済システムが円滑かつ安全に運営されていくことは、経済にとって最も重要なことであると思っております。日本においては、資料の2ページに書いてありますように、全国規模でリテールのこのようなシステムが完備しているという意味では、世界の中でいわばかなり先進的な国であると思っております。一方で大口資金取引のRTGS化その他の安全性・効率性の向上については世界各国が競ってその向上を図っておりまして、先ほどご紹介がございました新世代のシステムは、他の国において既に先行しているシステムに、日本も足並みをそろえて新しいRTGS化を進めていくことが図られるわけです。それが2011年(平成23年)をめどに導入されるということであります。ここら辺のところについて、何かご指摘いただくところがあれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

新世代のシステムは、ある意味で日銀ネットに従来の民間主体でやっていた全銀システムなどがかなり吸収されていくという方向に進んでいるということを意味します。世界の中で見ますと、ヨーロッパはそのような方向で、中央銀行がより大きい役割を果たしたシステムです。それに対して、アメリカはCHIPSを中心に、いわば民間金融機関のシステムが中心的な役割を果たしています。全体としての安全性・効率性を考えて、いわばこのような新しいシステムにもっていこうとしているということであります。

また、国際的には、先ほどの外為円決済にも出ていますように、決済金額からしますと、国内だけではなくて、外国為替を含めた取引額が非常に大きくて、そこの安全性の向上は非常に大きい問題であります。いわゆるヘルシュタットリスクその他の問題です。それについては4ページの図にありますが、CLS(Continuous Linked Settlement)というような仕組みが非常に広く利用されるようになっておりまして、国際的な資金決済の安全性を向上させるための努力が位置づけられています。日本もそれに加わって貢献しようとしているということであります。

何かそこら辺についてございますか。

○和仁委員

東京銀行協会の資料の5ページ目のところで、決済リスク対策ということで、銀行が万が一倒産したときにどうするかという話を、このようなシステムを提供しますということですけれども、これは実際に担保の値洗などはどれくらいの頻度でやっていらっしゃるのかということと、それから、流動性供給銀行が幾つかある。かなりたくさんあるということですけれども、流動性供給銀行が倒れたときはどうなるのかということまで、あるいは日本銀行が出てくるようなシステムになっているのか。その辺をお教えいただけますでしょうか。

○増田参考人

ご質問にお答えさせていただきます。

担保の値洗ですけれども、まず株式は基本的に毎日行っております。当然上場株式で一定の範囲のものとしております。債券につきましては、月2回行っております。

それから、流動性供給でございますけれども、ランファルシー・プラスの基準、これはいわゆる最大債務額を持つ大きいところが2つ当時に破綻し不払が生じるようなケースがクリアできるかどうかということでございますが、本日金融庁から配っていただいている年表の中にも2003年にクリアしているという記述もございますが、実際の流動性供給の割当て上はクリアできるようになっておりまして、またその実効性につきましても確認をさせていただいている状況でございます。

それから、先ほど外為円決済制度についても触れていただいたのですけれども、これも東京銀行協会が制度を運営させていただいておりますが、昨年10月から次世代RTGSの第一段としてRTGS化しておりますので、付言させていただきます。

○和田参考人

流動性供給ですけれども、流動性供給銀行というのは、毎年見直しをいたしまして、それで供給能力を見ながら、毎年見直して契約を行っているということを付言させていただきます。

○岩原部会長

かつては日本銀行がCCPだったわけです。ある意味でいえばそのほうが完全に安全といえば安全だったわけですけれども、決済システムをなるべく民営化して、決済リスク等の削減について、マーケットメカニズムをなるべく働かせようということから、このような制度にしてきているということであります。

○小島委員

今、全銀システムの決済の流れについて教えていただきましたが、50-3の資料の5ページにありますように、決済時間は通常日ですと8時30分から15時30分、月末日には7時30分から16時30分となっています。また、本日用意していただいた金融庁の資料の50-2の9ページに、決済に関する論点の中間的な整理について(座長メモ)の抜粋の中で、(2)顧客ニーズへの対応で、現行の資金決済システムの稼動時間帯の拡張の必要性についても触れていますが、次の新しい第6次の全銀システムの改正に当たっては、稼動時間の拡張が検討課題に入っているのかどうか教えていただきたいと思います。

○和田参考人

ご指摘のとおり、私ども、内部で全銀システムを検討する中で、稼動時間帯の拡張についても議論いたしました。技術的には可能です。ただし、技術的には可能であっても、周囲の状況、すなわちお客様のニーズ、決済慣行あるいは商慣習、決済リスクの問題、他のシステムの決済時刻への影響などを見まして、多面的かつ慎重に検討しなければならないと考えておりまして、第6次全銀システムでの拡大というのは難しいと考えております。

○岩原部会長

資料50-2の9ページの決済に関する論点の中間的な整理についてにございますように、日本のこのような金融機関が提供している決済システムは、システム全体としては、全国規模で従来は非常に安全に運営されてきているという点で高い評価を得ているわけです。しかし顧客利便性をどこまでよく考えられているかという問題と、国際性の問題、この2つが我が国の大きい問題として指摘されているというところであります。今の稼動時間の問題もその1つでありますし、特に国際的な資金移動等をするときに非常に使いにくいとも指摘されています。非常に卑近な例でいえば、海外のキャッシュカードと日本のキャッシュカードで仕様が違うものですから、海外の人が日本に来て資金の引き出し等をしようとしてもうまくいかないというようなこと、その他いろいろな非常に身近な問題から始まって、さらには企業のキャッシュマネジメントサービス等について、国際的なキャッシュマネジメントサービスを提供するのに適切な体制になっているのか。そのような、まさに先ほどのSOAがどこまでできているのかというのが大きい課題として出ているというところかと理解しております。そこら辺は多分皆様も日常生活の中で感じられているところだろうと思いますので、ご指摘いただける点があればと思います。

いかがでございましょうか。

○鮎瀬幹事

ただいまの点について、若干補足をさせていただきますと、国際的な側面等につきましても、先ほど岩原部会長からご紹介がありましたCLS銀行の利用といったような形で、いわばできるところからいろいろな改善を図ってきているということであろうかと思います。

また、国際的な側面にせよ、顧客サービスをどのような形で展開していくかといったあたりは、やはりコスト、それからニーズといいますか、それがもたらす効果、そのあたりを勘案しながら、最も効率的・効果的な進め方はどのようなことがいいのだろうかというようなところを軸にして進めてきているというのがこれまでの経緯であろうかと思っております。

○岩原部会長

日本の場合は、日本国内独自のシステムとして出発し、それで非常に完成されたシステムとしてでき上がってきているのです。それを国際化するということは、でき上がったものを変えていくことになるものですから、それなりにコストがかかりますし、既にでき上がっている慣習等々をどのようにして補っていくかという問題も出てくるということではないかと理解しております。これが、例えばヨーロッパのフランスですと、国内の資金移動についてもSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)のシステムを使うという、最初から国際化されたシステムで始まっておりますので、日本の場合と非常に事情が違っているということがいえるかと思います。

何かご指摘いただくようなことがございますでしょうか。そのようなことから、例えば日本で働いている外国の人が自国に海外送金するときにはコストがかかったりするような問題が出てきてしまうのかもしれません。

○根本委員

やや違う観点かもしれないのですが、海外の状況ということで、特にここ数年ですけれども、清算機関の格付を取るという動きが非常に最近は増えております。それは金融機関の安全性というものへの不安とか、取引の国際化によって海外の金融機関あるいは海外の清算機関等にもいろいろ信用力を証明したいというような動機が増えているのかと思います。格付に当たってはどのような点を見るかというと、債務内容というものもそうですし、加盟行のデフォルトのような、そのようなイベントリスクに対してどのようなリスク管理がなされているのか。そのような手当てはされていて、訓練等がなされているのか。競争力というのでしょうか、会員というのでしょうか、会員あるいは顧客の利便性に対してどのようなサービスを提供しているのか。そのような点を見ています。ご参考までに申し上げますが、そのようなニーズが高まっていくのではないかと思っております。

○岩原部会長

金融機関間の決済においては、日本では、先ほどお話しございましたように、社団法人東京銀行協会が排他的なCCPとして機能しているわけでありますけれども、東京銀行協会自体が、特に資産とか、そのようなものを備えているわけではなく、全体としてのシステムとして、先ほどの流動性供給銀行その他の制度全体としてカバーするという体制になっています。ただ、そこら辺のところ、現在の東京銀行協会がCCPとして機能していくという点での法的な問題を含めて、十分に問題が解決されているかというと、なお整備するべき点が残っているのではないかと思います。1つは、そもそも一旦CCPたる東京銀行協会との債権債務関係に引き移すということをやった上でネットアウトするということになっているのですけれども、それが法律的にうまく説明し切れているのかどうかという問題があります。実は現在民法の改正作業が行われておりますけれども、その点が問題になっておりまして、民法改正の中で一人計算という規定を設けることによって、そのような問題の法的な疑義をなくすという方向での検討が現在行われております。

さらに、もう1つの問題として、いわゆるネッティングとして、現在の東京銀行協会のネッティングは、恐らく厳密に言うとクローズドアウトネッティングではなくて、ペイメントネッティングになっているのではないかと思います。そのような点でのリスクの削減もなお努力の余地といいますか、法的により安全なものにする余地があるのではないかと思います。そのようにいろいろな問題がなお残されていると思います。そのような点を今後改善していく努力がされるべきだと考えております。

そして、さらにもう1つ問題として、本日資料として配られていましたように、東京銀行協会というのは社団法人であるということから、金融庁が主務官庁ということで、金融庁の監督を受けるということになっておりますけれども、ご存じのように公益法人改革の結果、主務官庁による監督がなくなることになります。そうなりますと、銀行自体については銀行法に基づく決済システムの安全性について金融庁の検査監督の対象になりますけれども、銀行間の決済を扱う全銀システムの部分については、東京銀行協会が行っておりますことから、今でも主務官庁としての金融庁の監督しかないわけですけれども、それすらなくなることになる。そこの部分の安全性のチェックがそれで十分なのかという問題が出てくるわけであります。先ほど紹介いただきましたように、アメリカにおいては2008年のブループリントでFRB等がそのような決済システムについての監督権限を持つべきであるということが提言されました。多くの国においても決済システムの強化の制度改革が図られる方向にあるわけでございますが、日本においても、今、申し上げましたような制度改革がなされる中で、先ほども言いましたように、非常に重要な決済の根幹をなしているところを扱っている全銀システムについて、安全性等をチェックする何らかの仕組みを設けるべきではないかという点が課題としてあると考えております。先ほどの高橋決済システム強化推進室長からお話いただきましたのはそのような点を考えるべきであるということであります。

さらに言えば、先ほどの決済システムの効率性あるいは顧客利便の向上その他国際的な決済システムの質の向上を図っていく上で、現在の東京銀行協会が管理しているシステムが本当にそのような点で適切なシステムなのか。先ほどお話しが出ましたように、社団法人としての管理システムで幹事行が順番で実際の運営に当たっているというやり方で、本当に国際的な競争に耐えるような、より質の高い、安全性の高い、そして顧客サービスの利便性の高いシステムを提供していけるのかということが問題になっているわけで、そこら辺のところもここでご検討いただければと思う次第であります。

○和田参考人

ただいま岩原部会長からご指摘をいただきましたが、まず社団法人組織で運営をしているという点につきましては、確かに権利を持っているメンバーには、例えばメガバンクから地方銀行までいろいろな業態が含まれており、また、幹事銀行が毎年交代していくという状況にあるわけです。以前はなかなか議論がまとまらないようなこともあったのですが、最近は、各銀行とも周りの状況を強く認識し、当事者意識はかなり強くなっております。それから、自分たちの都合だけではなく、よそ様のメリット、ニーズにどうつながっていくのか、そのような中で、どれだけの投資ができるのか。―これは体力の問題もありますけれども―、このような点での当事者意識が非常に強くなって運営に参加している状況です。また、大きな銀行の意向だけではなく、メンバーには各地方銀行まであるわけですから、加盟銀行全体の意見が幅広く議論に反映できるようになっています。いろいろメリット、デメリットはあると思いますけれども、そのようなメリットもあるということを申し上げさせていただきたいと思います。

それから、CCPになっている件でありますけれども、平成13年から新内為制度に移行する際に、リーガルオピニオンを法律事務所から頂戴いたしまして、法的には有効だという話をいただいており、日本銀行にもご了解をいただいているところであります。ただし、岩原部会長もおっしゃいましたようにいろいろな問題、状況が変わっているということは十分我々も認識をしておりまして、法的安定性のさらなる向上を図ることは、資金の清算システムの安定的な運用という観点からはよろしいのではないかなと個人的には思っております。

○岩原部会長

何か皆様からご指摘いただくことはございますでしょうか。

特にないようでございましたら、銀行間の資金決済について、制度整備を図ることについての基本的な方向についての特段のご異論はないように思われますので、先ほど事務局からご説明いただきました方向に沿って取りまとめをさせていただくことにさせていただきたいと存じます。

ここで、和田参考人、増田参考人にはご退席をお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは、次に決済に関するワーキング・グループからの報告に移らせていただきたいと思います。まず、事務局より審議の経過等についてご説明いただきたいと思います。その後、決済に関するワーキング・グループの座長を務めさせていただきました私から、皆様に報告の要点をお話しさせていただきたいと考えております。

なお、報告書は資料4として添付をさせていただいております。では、事務局から説明をお願いいたします。

○高橋決済システム強化推進室長

リテールの資金決済につきましては、先ほども申し上げたと思いますが、近年の情報通信技術の革新や、あるいはインターネットの普及などによりまして、銀行が提供する従来のサービスとは異なる新たなサービスが普及発達をしている状況かと思います。

また、例えばいわゆるプリカといわれます前払式証票に関しましても、商品券やICカードなど、券面やICチップ内に金額の情報が記録される紙型あるいはIC型のものにつきましてはプリカ法の適用対象となっておりまして、50%以上について供託あるいは金融機関の保証が必要といったような最低限度の利用者保護が図られているという状況でございます。

しかしながら、金額などの情報がコンピューターのサーバのみで管理されておりまして、紙あるいはIC等にその記録が記録されていない、ここではサーバ型と呼んでおりますが、サーバ型のものにつきましてはプリカ法の適用がなく、利用者保護が及んでいないという状況がございます。

また、プリカが換金できる場合、そのやりとりが自由に行われるとすれば、送金と同様の機能があるのではないか。特に電子的な記録について利用者間の記録の移動と換金を組み合わせることになりますと、銀行の行う送金とほとんど変わらないのではないか。あるいは、ポイント・サービスと言われるサービスが発達してきておりまして、それが支払手段として広く利用され得る状況になっているのではないか。あるいはコンビニエンスストア等で収納代行と言われる決済に関するサービスといったものも相当普及してきているという状況であるかと思います。

また、為替取引といいますものが現在銀行法によって銀行のみができることとされておりますが、このように銀行以外の者であるとしても、安全にかつ便利に為替取引を提供することができる環境といったものも生じてきているのではないかと思われます。

このため、このようなリテールの資金決済に関しまして、その制度整備のあり方に関しての検討が必要ではないかということで、金融審議会での審議をお願いしたというものでございます。

決済に関するワーキング・グループにつきましては、このような認識のもと、第二部会のもとに設けていただいたものでございます。新しいサービスでございますので、サービスを提供している事業者の方々のご意見をよくお伺いするため、特にメンバーとしてご参加をいただいております。メンバー等につきましては資料50-4の報告の最初のページのところにあります。

5月の第1回会合から第5回会合までは、この決済に関するワーキング・グループのメンバーであり、実際にサービスを提供している方のご説明を中心に、その事業内容についてのヒアリングを行ったというものでございました。

審議経過につきましては、報告の最後のページに参考で審議経過といったものを載せさせていただいております。第6回会合以降につきましては、それまでの説明等を踏まえましてご議論をいただいております。主な論点といたしましては、大別して前払式の支払手段というものと、資金移動に関するものということで分けさせていただきました。まず、前払式の支払手段でございますが、現行法の適用対象となっております紙型、IC型のものと同様な経済的機能を有しているにもかかわらず現行法の適用対象となっていないサーバ型のものにつきまして、その利用者保護などについてどう考えるのか。また、前払式支払手段の換金が可能である場合、銀行が行う為替取引と同様の機能を果たす可能性あるいは出資法との関係について、どのように考えるか。それから、前払式支払手段との対比という形で、ポイント・サービスについてどのように考えるか。特に支払手段としてのポイント・サービスについてどう考えるかといったことについてご議論をいただきました。

また、資金移動に関するサービスにつきましては、まず銀行以外のものにそもそも為替取引を行うことを認めること、これは仮称でございますが、資金移動サービスを認める必要性についてどう考えるか。仮に認めるとした場合にその制度の枠組みのあり方についてどう考えるかといったことについてご議論をいただきました。

また、資金移動サービスとは別に現在行われております収納代行サービスあるいは代金引換サービスなどにつきまして、銀行法の為替取引との関係などについてご議論をいただいたところでございます。

その内容につきましては、恐縮でございますが、岩原部会長からご説明をいただくということで、私からの説明は、簡単でございますが、以上とさせていただきたいと思います。

○岩原部会長

それでは、私から報告書について手短にご説明をさせていただきます。

先ほど高橋決済システム強化推進室長からお話がございましたように、決済に関するワーキング・グループでは、決済サービスを提供する事業者、利用者、有識者の皆様に参加していただきまして、多様な立場、観点に基づいて大変活発な議論が行われたと思っております。私、7年以上金融審議会の委員を務めておりますが、これほど活発な議論が行われた例はまれではないかと考えております。

その結果、すべての事項について共通した認識が得られたわけではなく、いわば両論併記の形で種々の意見を記載した事項がございます。

まず、おおむね共通した認識が得られたと考えられております事項といたしましては、第1にサーバ型の前払式支払手段について、紙型・IC型のものと同様の規制を及ぼし、利用者保護を図るということ。第2に前払式支払手段について現行の枠組みを維持しつつ、所要の改正を図ること。第3に現在銀行のみに許されている為替取引について、銀行以外の民間事業者が行うことができることとする一方、送金途上にある資金については全額についてその保全を図ること等の、そのような民間事業者が行う場合の法制整備を行うということであります。

国際的に見ますと、そもそも銀行が何を行うか。銀行しか行えない業務は何かということは、国によって非常に異なります。アメリカ、イギリスなどは基本的に預金を受け入れることが銀行の定義であり銀行しか行えないということです。それに対しまして、ヨーロッパ大陸諸国、ドイツ、フランス等は、預金の受入れだけではなく、資金移動サービス、即ち為替取引等についても銀行しか行えないという立場を伝統的にとってきたわけでありまして、日本も戦前以来そのような法制をとってきたところであります。その見直しを図ろうということでございます。

これはまさに先ほどのお話にも関連しますが、決済システムをより活性化させるために、銀行以外の民間の機関にも資金移動サービスに参加してもらう。そのかわり参加する以上は安全なサービスを提供して、利用者の不安を招かないようにしようということであります。

これに対しまして、方向性の異なるご意見もございました。共通した認識が得られなかったと考えられ、種々の意見を記載した、いわば併記した事項といたしましては、ポイント・サービスや収納代行サービス、あるいは代金引換サービスに関する事項がございます。

まず第1に、ポイント・サービスにつきましては、消費者から対価を得ず、基本的に景品、おまけとして無償で発行されているため、制度整備は不要であるというご意見がございました一方で、消費者はポイントに対して支払を行っているというか、あるいは得られるポイントを考慮して財・サービスの購入を判断しているのであるから、ある意味での対価があるという認識があるということから、何らかの消費者保護を図る必要があるという意見がございました。このような2つの考え方があったわけです。

第2に、収納代行サービスや代金引換サービス等につきましては、為替取引に当たり得るものであって、また、現状必ずしも利用者保護等が十分には図られていないことから、制度整備を行う必要があるというご意見がある一方で、これらについて既に法的安定性は得られているというご意見、支払人が二重払いを行う危険性がないことなどから、制度整備の必要はないという意見がございました。また、委員の方からは、サービスを提供されている事業者や関係省庁等の制度整備への反対意見のご紹介もなされたところでございます。

以上が決済に関するワーキング・グループについて報告書の経緯のご説明でございますが、決済に関するワーキング・グループ報告につきまして、皆様からご意見がございましたら承りたいと思います。よろしくお願いします。

○和仁委員

多様な意見というか、意見は2つにしか分かれていなかったと私は思いますけれども、このようにしてみますと、最後のところでご意見を言っていらっしゃったので、意外と楽天の方が多くて、芝﨑委員が余り出てきておられないのは、少し意外な感じがしました。基本的に、議論が収納代行サービスと代金引換サービスのところばかりにいってしまって、この決済に関するワーキング・グループは違う方向に議論がいってしまったということで、非常に残念でした。

ただ、なぜ残念かというと、私は銀行法第10条第1項に定める為替というのが一体何を意味するのかが非常に不明確なまま平成13年の最高裁の決定で、私に言わせれば極めて乱暴な定義をしてしまった。それに従ってお役所は動いてしまっています。そうすると、実は平成13年の時点でも存在していたサービスについて、為替というものによる銀行法の規制がかかります。その規制をどのようにして外すかということで、この決済に関するワーキング・グループはつくられ、そのために活動してきたのだと思うのです。ですから、本日の日本経済新聞の記事を見てもやはり規制をかけるという方向で話がきたという捉え方がされているのです。実はこれは規制を外すということで、そして自由にテクノロジーの進歩に従ってテクノロジーイノベーションをもっと活発にやっていこうということで、この決済に関するワーキング・グループあるいはその前の研究会もつくられ、活動してきたと私は理解しております。その意味で非常に誤解を受けた、不幸なワーキング・グループだったと思います。

申し上げたいことは、何が問題かというと、今回ポイント・サービス、収納代行サービス、それから代金引換サービスに関して議論があったということですが、問題は、平成13年の最高裁の決定で、実は法律的には規制がかかってしまっているものの規制をどのようにして外していこうという話を議論していたのが、先ほど申し上げましたように新しく規制をかけるのかというふうな議論で展開してしまったことが非常に残念です。私どもの報告に従って立法がなされ、そしてある程度の形で資金移動サービスというものに関しては銀行法の規制からのカーブアウトが図られるということになるのです。その対象にならなかった分野、ポイント・サービスにしろ、収納代行サービスにしろ、それから代金引換サービスにしろ、ここのところには、実は平成13年の最高裁の決定がまだ暗雲のごとくのしかかっているわけです。私自身は平成13年の最高裁の決定は実は反対しております。収納代行サービスに関してもある程度法律的にはそれは為替に当たらないのだということでしのげるということは、法律論としてはできると思いますけれども、それと違うご意見を持っていらっしゃる方が官にはいらっしゃいます。裁判所の方、それからレギュレーター、検察庁にもいらっしゃるということになるので、実は規制を外そうとしているにもかかわらず、新しく規制をかけるようになったということで、今回は収納代行サービス、それからポイント・サービスが外れたわけですが、それで本当によかったのか。結局今そこにある法律上の危険が、まだ収納代行サービス、代金引換サービスに関しては続いていくということは非常に残念であろうと私は感じます。そのうちどこかで火を吹いて、そこでどのように対応するのかということをまた議論しなければいけないのだろうと思うのです。その意味で、今回の報告書に関しては、意見が結集できなかったのは私は非常に残念だなと思います。

逆に、資金移動サービスに関してはどのようなことをお願いしたいかというと、これは金融庁に対してお願いですけれども、やはり銀行のような重武装ではない資金移動サービスをやれということが新しいビジネスであり、それから新しいビジネスを支えるビジネスであるということです。銀行のような重武装ではなく、なるべく軽武装でできる、しかし資金を、送り手と、受け手に対してある程度の保護を与える。決済に関するワーキング・グループの中でも話を申し上げましたけれども、3万円ぐらいまでのものだと別に、いざうまくお金が着かなくてもしようがなく、だけれども、100万円のものを送金するということは、やはり皆様銀行へ行き、そこである程度資金移動の質に差があってもいいのかなというふうな議論もされたと記憶しております。そのようなことも考えて、いわゆるイノベーションに関して親和的な規制を築いていただき、余り銀行と同じような重武装のパターンは求めないでいただきたい、とそのように私は思っております。

以上です。

○原委員

和仁委員と同様な感想を持っています。本当に回数を重ねて検討はいたしましたけれども、同じ議論を繰り返していたという感じで、金融ルールとして新しい為替取引のルールを検討したいというところが、事業者の事業に対しての規制というところと混同がされてしまって、空中戦というよりは、空中戦であれば空中で闘っているのですけれども、異次元の空間で話をしているという、このような印象で、非常に審議は不十分だったという印象を持っております。いまだ十分な議論はされておらず、この数か月の議論で、今の段階で取りまとめた報告書という扱いにしていただきたいと思っております。

為替取引のもっと軽い仕組みを考えようということがここの検討のスタートでしたけれども、事業者の方々は、事業の抑制になるということをしきりにおっしゃられたのですが、消費者側からすると非常に利便性高く利用させていただいているので、それをより安全、安定した仕組みにしたいということが本旨です。ですから、事業者の委員もそのことに対しては非常に責任があると思っております。事業者規制として反対をされるということは、私は非常に違和感を感じておりまして、事業者としても安定した仕組みにどうしていくか。それから、あまり重くなくて、軽く、利用者及び事業者の双方にとってある程度軽く利用しやすいような仕組みについてどのようにしたらいいのかということを本当は検討する場であったと考えています。

ポイント制については、それぞれ自分がポイントをどう捉えているかによって意見が食い違っているという印象もありました。やはり対価性を持っている部分については金融ルールの中に入れるべきだと私は今でも考えておりますし、特に代金引換サービスについては問題はないとおっしゃられたのですが、今ここでヒアリングの対象、それからオブザーバーで入られた方々のところは問題がないにしても、送りつけ商法とか、振り込め詐欺もそうですけれども、あの仕組み自体は随分悪用されているというところがあります。割賦販売法改正でクレジット会社と加盟店との関係で加盟店管理についてかなり厳しい規制がクレジット会社にかかるように法改正されましたけれども、同様な感想を持っておりまして、ポイント制についても、代金引換サービスについても、これは国土交通省、経済産業省だと思いますけれども、そちらでも本当に真剣に議論をしていただいて、それからその中での金融ルールをどう考えるかということで、再度検討を深める場というのはいずれ設けていただきたいと考えております。

以上です。

○今松委員

今の2人と基本的に同じですけれども、ここでの審議してきた一番の根幹というのは、新しい資金移動サービス、いろいろな形で必要性が高まっています。これまでの銀行法という極めて重い法律に基づいていろいろな、資本等々、総資産等々のかかっているところより、ここにありますような柔軟な制度をつくるということがまずポイントだったわけです。ここについては恐らく皆様ほとんど異論はなかったです。そうすると、その中で、全体として、資金が移動するというところをどう捉えるのかということ、これはやはり単なる、今、やっておられるような仕組みが資金の移動であるけれども、いろいろな方便はつくわけです。それ自体を法的に考えていけば資金が移動している。そうすると、それについてはどのように捉えるのかということは常に明確に把握し、認識しておく必要があるのだろうと思います。ただ、その中でより簡便な、あるいは使いやすいということを新しいシステム、移動サービスそのものでも考えていくわけですから、そこでおかしな形の規制とかそのようなものがかかるということではなく、それが安全かつ、先ほどありました決済システムのところでもそうですが、やはり法的安定性が十分伴っている、あるいは、なおかつそれが安心・安全であるというところ、それを適切にした形でエンドースする形のもの、これが必要だろうと思います。そうしますと、今、それぞれ別の、国土交通省であるとか、そのようなところが所管していることについても、国土交通省なりもそのような、これ自体は単なる物と物との受渡しで、それを途中つないでいるというのではなく、資金が動くサービスであるという認識はやはり適切に持っていただく。だからといって、ではこれが金融上のいろいろな意味での強い規制とか、そのようなものではない。規制をかけるわけではないということを、少なくともここの場では明確に皆様に持っていたわけですから、そのような視点からはっきり出していく。つまり、新しい今のイノベーションとかそのようなものに対応したサービスをこれからどんどんつくっていく際にも、そこのところを明確にしておかないと、潜脱的なというか、法律に必ずしも、すき間をねらったいろいろな形のものが出てきた場合、それは望ましいものであればそれをうまい具合に適切に法に基づいたものとして意味づけていく必要があるわけなので、そこのところをより、今の時点ではどうしても両論にならざるを得なかったところがあるので、議論としてさらに積み重ねていって、少なくとも、国民的に、今、消費者の認識として、この議論をどう捉えているのかということは、もう1つ十分にまだ認識されていないと思います。この点、十分国民的、消費者の中での議論についてもより認識を高めてもらいたいと思っております。

以上です。

○岩原部会長

ほかに何かご指摘いただくことがございますでしょうか。特にございませんか。

今、和仁委員はじめ何人かの委員の方にお話しいただきましたように、私も決済に関するワーキング・グループの議論は、正直やや不幸な議論になってしまったと思っております。我々としては、規制を緩和して、イノベーティブな新しい資金移動サービスがより提供されるような仕組み、安定的にそのようなものが提供されるような法的な枠組みをつくりたいということで審議を行ってきたわけであります。そのような安心して資金移動サービスを提供できるようにしましょうという点が十分理解していただけなくて、逆に規制を新しくかけられるというような受け取り方をされて、議論が行われたことは非常に残念なことであったと思っております。

リテールの資金決済におきましても、事業者の破綻が生じた場合や、資金決済の適切な履行が確保されない場合には、利用者保護に欠けるだけでなく、社会的、経済的な混乱を招くおそれや資金決済システムに影響を与えるおそれもあると考えております。実際にも、先ほどの収納代行等の例で申しますと、そのような収納代行を行っている業者が実際に破綻した例も起きておりますし、そのようなときに資金移動サービスを依頼した顧客の資金が適切に保全されるのかといった問題、支払をした人がそれによって二重の請求を受けたりすることがないのかどうかという問題は、解決しきれていないように思っております。また、送金であれば、適切に頼んだ期日に確実に目的のところに資金が届いているかといったこと、これは利用者にとって極めて重要なことであります。また、それは送金する側にとっても、受け取る側にとっても重要なことであります。そのような送金サービス、資金移動サービスが安全に行われるということは、いわば社会のインフラでありますので、そのようなことが確実に行われるような最低限の押さえだけはした上で、先ほど申し上げましたように、そのようなことを銀行しかやれないのではなくて、より軽い規制を受けるだけの新しい民間の業者の方々がそのようなサービスを提供できるようにしようというのが我々の現在の検討してきた目的だったのではないかと考えております。

ただ、議論の過程で、強い規制になってしまえば利用者の利便性を低下させるおそれや、イノベーションを阻害するおれがあるというご指摘があったことも事実であります。私としては検討されている規制内容からすればそのような重い規制をかけるつもりは全くございませんので、そのようなおそれはないと考えてはおりますが、規制があるというだけでヘジテイトするというような受けとめ方があったことは事実であると思っております。

しかし、先ほど申しましたように、安心できる資金移動サービスが提供されるということは、資金移動サービスにとっては不可欠なものであり、社会のインフラであると思っておりますので、最低限の何らかの制度整備は図る必要があるのではないかと思っております。

いわばリテールの資金決済について制度整備を図る際には、資金決済システムの安定性をまず確保する。そして、利用者保護の観点、イノベーションの促進の観点、さまざまな観点からバランスのとれた制度整備を行うことが重要だと思っておりまして、規制のためのコストと、規制によって得られるベネフィットのバランスを十分に配慮した制度を考えていく。そのような知恵を出していくことが決済に関するワーキング・グループ及びこの第二部会に課せられた役割だと考えております。

決済に関するワーキング・グループにおきましておおむね共通した認識が得られました事項につきましては、金融庁において実務面での検討を深めていただくだけではなく、制度整備を図っていただくことをお願いしたいと思います。その点では皆様方もご理解いただけたのではないかと考えております。

これに対しまして、共通した認識を得ることが難しかった事項につきましては、具体的な制度整備をしていくということは将来の課題とせざるを得ないかと思います。ただ、そのようなことになりますと、先ほどの和仁委員のご指摘にございましたように、共通の認識が得られなかった部分について、特別の定めを置かないということは、先ほどの平成13年の最高裁の判例などの従来の規制がそのままかぶってくるということになってくると思います。そのような場合については、例えば収納代行サービスや代金引換サービス等が銀行法に抵触する疑義が引き続き起こってくると私は思っております。

今後も資金決済に関するサービスにつきましては、利用者保護に欠ける事態や資金決済システムの安全性が損なわれる事態が生じることがないように、引き続き注視していく必要があると思っております。先ほど和仁委員のご指摘にもございましたように、むしろある部分問題がそのまま残っていくことになると思いますし、また恐らく将来いろいろな具体的な問題として出てくると思いますので、そのような状況を見ながら、適宜適切に制度の改善を今後図っていきたいと考えております。

以上、私の所感でございます。リテールの決済につきましては、このようなコメントを付して、決済に関するワーキング・グループの報告を第二部会の報告として、銀行間の資金決済に関する、先ほどの部分と併せて公表することとさせていただきたいと考えております。次回は第二部会としての報告書案を事務局に用意していただき、ご審議をしていただきたいと思っております。

○原委員

次回があると聞いたので特に次回でもよかったのですが、先ほど消費者がこの問題についてまだあまり知っていないのではないですかというご発言があり、確かにそのとおりなのですけれども、私は事業者の方々、それから他の行政の方にもお願いしたいのですが、正確な情報で提供していただきたいと思っています。私のところにも問い合わせが入ってくるのですけれども、かなりバイアスがかかった情報で皆様のところに届いているという印象があります。非常に強い規制強化が行われて、それがコストにはね返って、もっと高い手数料が取られるようになるというような印象でお話されておられます。今でも高いのにこれ以上高くなるのという感じで言われるので、今でも高いところも問題ではないのかと私は思っているのですが、やはり正確な情報が伝わっていないという印象があります。

○岩原部会長

実際、問題の状況が必ずしも十分調べることができない、調査等ができなかったということは、決済に関するワーキング・グループの検討で残念だった点ではないかと思います。今のご指摘にございましたように、それぞれのお立場に立った情報の提供しか得られない面がございました。本当はまず冷静な事実を適切に押さえて、その上で将来起こり得るいろいろなリスクを考えた上での制度整備を図っていくということが本来あるべきところだったのですが、残念ながらそのようなことがあって、十分な情報を得た上での検討には至らなかったということは、誠に残念なことだったと思っております。

ほかに何かございますか。

なお、この後事務局の方と私とで記者会見を行いまして、本日の会議の模様等につきまして簡単にご紹介させていただくことにさせていただきたいと思います。

最後に、事務局から連絡がございましたらお願いしたいと思います。

○高橋決済システム強化推進室長

既にご案内をさせていただいておりますように、14日の水曜日に次回を予定しております。今、岩原部会長からご紹介いただきましたように、締め括りとして報告書案、簡単なものになるかと思いますが、作成してご審議いただきたいと思っております。お忙しいとは存じますが、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○岩原部会長

それでは、以上をもちまして本日の会議は終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課調査室
(内線3537)

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