金融審議会金融分科会第二部会(第51回)議事録

1. 日時:

平成21年1月14日(水曜日)15時00分~15時50分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室


○岩原部会長

それでは、時間でございますので、金融審議会金融分科会第二部会第51回会合を開催させていただきます。

メンバーの皆様方におかれましては、大変お忙しいところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開することとなっておりますので、その点、ご了解くださいますようお願い申し上げます。

本日は、関委員、野村委員、堀内委員、神田委員、田中委員、根本委員がご欠席と伺っております。

さて、前回は「銀行間の資金決済」についてご審議をいただくとともに、当部会に設けられておりました「決済に関するワーキング・グループ」の報告を受けました。本日は、これらを踏まえまして、事務局に第二部会の報告書(案)を用意していただきましたので、まず、事務局からそれを読み上げていただき、その後、報告書(案)についてご審議をいただきたいと存じます。

それでは、まず事務局からお願いいたします。

○高橋決済システム強化推進室長

それでは、お手元の資料でございます。

表題は、資金決済に関する制度整備についてとさせていただきました。また、決済に関するワーキング・グループ以来、イノベーションの促進と利用者保護ということがずっと掲げられておりましたので、副題といたしまして、イノベーションの促進と利用者保護とさせていただいております。

1ページおめくりいただきまして、目次でございます。内容は短いのですが、目次をつけさせていただきました。1「はじめに」、2「リテールの資金決済」、3「銀行間の資金決済」でございます。別添に委員の方々の名簿と、それから前回報告がございました決済に関するワーキング・グループの報告をそのまま添付をさせていただいております。

それでは、さらに1ページおめくりいただきまして、1ページでございます。恐縮ですが、読み上げをさせていただきます。

1 はじめに。

決済システムは金融・資本市場を支える重要な社会的基盤(インフラ)であり、決済システムの強化なくしては、我が国金融・資本市場の国際競争力は得られない。現在、ニューヨーク、ロンドンに比肩する国際金融センターの確立に向けた我が国金融・資本市場の競争力強化が強く求められており、決済システムについても、安全性、効率性、利便性の一層の向上等の指摘がなされている。

平成19年12月に公表された金融庁の「市場強化プラン(金融・資本市場競争力強化プラン)」においても、「安全かつ効率的で利便性の高い決済システム等の構築」がその目標の1つとして掲げられている。

資金決済は、いわば階層をなして行われ、個人や企業等の間で行われるリテールの資金決済と、銀行間の資金決済とに分けることができる。

リテールの資金決済に関しては、近年、情報通信技術の革新やインターネットの普及等により、銀行が提供する従来のサービスと異なる新たなサービスが普及・発達してきている。また、これまで銀行のみに認められてきた為替取引を他の事業者が容易に行い得る状況になっていると考えられる。こうした環境変化に対応するため、当部会の下に設けられた決済に関するワーキング・グループにおいて、決済に関する新しいサービスについて、その法的な位置づけを整理し、イノベーションの促進と利用者保護を図るべく制度整備のあり方について検討することが求められたものである。

当部会においては、決済に関するワーキング・グループの報告について意見交換を行うとともに、資金決済システムの強化のための銀行間の資金決済に関し議論を行い、資金決済に関する制度整備について、次のように意見をとりまとめたものである。

2ページでございます。

2 リテールの資金決済。

リテールの資金決済においても、事業者の破綻が生じた場合や資金決済の適切な履行が確保されない場合には、利用者保護に欠けるだけでなく、社会的・経済的な混乱を招くおそれや、資金決済システムに影響を与えるおそれがある。しかし、利用者保護等を重視し、過度の規制を設ければ、利用者の利便性を低下させるおそれや、イノベーションを阻害するおそれがある。

リテールの資金決済について制度整備を図る際には、資金決済システムの安全性を確保することは当然のこととして、イノベーションの促進、利用者保護など様々な観点からバランスのとれたものとすることが必要であり、規制によるコストとベネフィットとのバランスも考慮する必要があると考えられる。

決済に関するワーキング・グループでは、決済サービスを提供する事業者、利用者、有識者等、多様な立場や観点に基づき議論が行われた。その結果、すべての事項について共通した認識が得られたわけではなく、その報告において種々の意見が記述されている事項がある。

おおむね共通した認識が得られた事項としては、サーバ型の前払式支払手段について紙型・IC型のものと同様の規制を行うこと、前払式支払手段について現行の枠組みを維持しつつ所要の改正を図ること、銀行のみに認められている為替取引について、他の事業者が行うこと(資金移動サービス(仮称))ができることとし、送金途上の資金について全額その保全を図ること等がある。このように、おおむね共通した認識が得られた事項については、実務面での検討を深め、制度整備を図ることが適当と考えられる。

これに対し、種々の意見が記述されている事項としては、ポイント・サービス、収納代行サービス、代金引換サービス等がある。例えば、収納代行サービスについて、銀行法(為替取引)に抵触する疑義がある、サービスを提供する事業者が破綻した場合には収納を依頼した者に被害が生じる可能性がある等から制度整備を行うことが適当との意見に対し、為替取引に該当しない、支払人に二重支払の危険はない、利用者の利便性を低下させる等から制度整備は必要がないとの意見があり、サービスを提供する事業者や関係省庁等からも制度整備に対する強い異論が出された。このように共通した認識を得ることが困難であった事項については、性急に制度整備を図ることなく、将来の課題とすることが適当と考えられる。ただし、制度整備を行わないことは、利用者保護が十分であることを意味するものではなく、収納代行サービス等が銀行法に抵触する疑義がないことを意味するものでもないと考えられる。

リテールの資金決済に関して、利用者保護に欠ける事態や資金決済システムの安全性等が損なわれる事態が生じることがないよう、引き続き注視をしていくことが必要である。

3 銀行間の資金決済。

リテールの資金決済に伴う銀行間の資金決済については、全国銀行内国為替制度がその中核を担っている。昭和48年の全国銀行データ通信システム(全銀システム)の稼働開始によりオンライン化を実現して以来、利用規模の拡大を続けており、我が国の経済社会において極めて重要な役割を果たしている。安全性・効率性の向上に向けては、新内国為替制度の導入、大口資金取引のRTGS(Real-Time Gross Settlement:即時グロス決済)化等、様々な取組みが行われてきている。また、世界的にみても、全銀システムのように、全国各地の銀行で受け付けた振込依頼を振込先の銀行まで送信する手続をリアルタイムで処理し、銀行間の決済を当日中に完了する決済サービスを提供している例は少ない。このような資金決済の効率性の高さは、我が国の資金決済システムが持つ優れた特徴として、高い安全性とともに評価されるべきものと考えられる。

しかし、利便性の観点からは必ずしも十分ではないとの指摘もある。この点で、次期システム(第6次全銀システム)においては、基本機能の安定的かつ安価な提供に加え、安全性を確保しつつ、目的に応じたインターネット標準技術や国際標準の積極的活用等、利用者ニーズへの対応に向けた取組みが関係者において行われることが期待される。

また、全銀システムについては、現在、公益法人(銀行を構成員とする特例民法法人である東京銀行協会)により運営されている。その実質的な組織運営は幹事行制に基づいて行われているが、こうした運営では継続的・戦略的な意思決定を行いづらい、利用者ニーズに応じた迅速な対応を行いづらい等の指摘がある。このため、安全性・効率性を維持しつつ、利用者ニーズに対応した利便性の高いシステムを実現すべく、より公正性・透明性の高いガバナンス体制を構築することが望ましい。

さらに、全銀システムの運営主体は、複数の銀行間の資金決済に係る債務の引受けを行う清算機関としての役割を果たしている。清算機関は、各清算参加者(銀行)に分散している決済リスクを集中的に引き受ける存在であるため、その規則や手続が法的有効性を有し、その効果が予見可能であることが重要である。全銀システムにおいて行われる清算の効果を一段と確実なものとするため、法的安定性の更なる向上を図ることが望ましい。

米国サブプライム・ローン問題に端を発した国際金融・資本市場の動揺が続いている状況の下、国内外の決済システムの相互依存関係が一段と強まっており、諸外国では決済システムに関する制度整備の検討が行われている。我が国でも、銀行間の資金決済について、適切な監督等を行うため、諸外国や証券決済における制度を参考に、所要の制度整備を図ることが必要である。

以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま読み上げていただきました報告書(案)につきまして、ご意見等がございましたらお願いいたしたいと存じます。いかがでしょうか。

何かご質問、ご意見等ございませんでしょうか。特にございませんか。

あまりご意見等ないようですが、念のために、それぞれ分けてご意見があれば承りたいと思いますが、「はじめに」のところの基本的な認識等について、よろしいでしょうか。よろしいですか。

では、2ページのリテールの資金決済について、いかがでございましょうか。

黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員

報告書(案)では、おおむね共通した認識が得られた事項については制度整備を図ると言っています。その認識は得られたかどうかは、決済に関するワーキング・グループの報告の中で、何々と考えられると書かれたところではないかと思いますけれども、1点お伺いしたいことは、ポイント・サービスについて対価性がある場合には、前払式支払手段としての取扱いを受けると考えられると決済に関するワーキング・グループの報告書では書かれています。これは、対価性がある場合には、前払式支払手段、前払式証票規制法の適用を及ぼすという趣旨かと思いますけれども、どのような場合に対価性があるかという点については、どうもこの決済に関するワーキング・グループの報告書を見ても意見が分かれているところがあると思いますが、この点は今後どのように制度整備を図っていく予定なのか、お聞かせいただければと思います。

○高橋決済システム強化推進室長

現行のプリカ法でも、対価をもって発行されるものがプリカだと定義されております。今回ご検討いただき、意見がまとまったのは、サーバ型プリカと言われるものについて、法律が有体物をベースとしているので、その適用が及ばないということの問題点ですので、原則としてそこの点を改めるという形で考えるべきであるかと思っております。また、対価性について、現在でもいろいろご指摘、あるいはよくわからないという指摘も受けておりますが、それについて一定程度ガイドライン等ではっきりさせております。したがいまして、対価性の判断等につきましても、原則として、現在と同様な考え方のもとで行われるべきと考えております。引き続き同じような考え方のもとで、制度整備を図っていくことがよろしいのではないかと思っております。

○岩原部会長

よろしいですか。

現行法でも対価性を基準に前払式証票規制法の適用の有無を決めているわけでありますので、その基本的な考え方は維持されていくという前提であります。ただ、その対価性の中身について、法規定としてより具体的な立ち入った制度整備をすることについては、なかなか意見が一致しませんでしたので、そこまでのことは現時点では難しいのではないかと理解しております。ですから、今までと同様、解釈により実務的な中での明確性を図っていくことになるのかなと思います。

ほかに何かございますでしょうか。

原委員、どうぞ。

○原委員

前回も随分発言させていただきましたので、その趣旨は組み入れた形でこのリテールの資金決済も書かれていると思いますが、2点だけですが、2ページの上から4行目のところ、「しかし、利用者保護等を重視し、過度の規制を設ければ、利用者の利便性を低下させるおそれや、イノベーションを阻害するおそれがある。」という書きぶりになっているのですが、確かにこのような発言がございましたけれど、利用者保護を重視すると、いつも必ず過度の規制になるというふうな、転がるとこのような話になるという書き方に違和感があり、利用者保護を重視したにしても、別に過度の規制にもならなければ、利用者の利便性が低下をさせないというようなこともできるわけなので、単純に、「しかし過度の規制を設ければ」という形で書いていただけないかと思います。

それから、3ページです。3ページの上から9行目の末尾が「考えられる。」という形で結語されて文章が終わっておられるのです。確かに決済に関するワーキング・グループはいろいろな意見が出ましたので、「考えられる」というような書きぶりが大変多くなっているという印象があるのです。ここはもう本当に断定的に、利用者保護が十分であることを意味するものでもなく、銀行法に抵触する疑義がないことを意味するものでもないということで、私は当然だと思いますので、特に考えられるという言葉は要らずに、言い切りでいいのではないかと思います。

文章の表現としてはそのようなことをお願いすると同時に、前回も発言したとおり、実質的な議論をしなかったという印象が大変強いです。性急に制度整備を図らないと書かれておりますが、将来の課題というのが、ぜひ、随分長い先送りになることがないようにはお願いをしたいと思っております。

以上です。

○岩原部会長

具体的な文言に関するご提案をいただいたわけでありますが、最初の2ページの本文4行目、恐らく原委員のご提案は、「しかし、」の後の「利用者保護等を重視し、」という言葉を削って、単に「過度の規制を設ければ、」というのにつなげてはどうか、というご提案ですね。その点について何かご意見ございますでしょうか。

特にご異論はないと見てよろしいでしょうか。

川本委員、どうぞ。

○川本委員

利用者保護の名目が過度のコストを生みとか、書きようはあると思います。やはり利用者保護が思わぬところで利用者の利益につながっていない、コスト高になるということはあり得るわけです。これを単純に削ってしまうと、若干、そのような場合を排除し過ぎないかなというのが私の意見であります。

○岩原部会長

そうしますと、川本委員としては、この言葉をこのまま残すようにということですか。それとも何らかの……

○川本委員

何らか事務局でいい知恵を考えていただくということなのですけれども。

○岩原部会長

事務局も大変考え込むと思いますが、できれば川本委員からいいお知恵をいただければ、どのような表現なら。

○川本委員

今申し上げた利用者保護の名目が過度のコストを生みとか、余りいい言葉ではないかもしれませんけど。

○岩原部会長

名目という言葉、実は単にそういうだけであって、実質が必ずしも利用者保護になっていないというような少しニュアンスが出てしまうのかもしれませんが、どうでしょうか。

いかがいたしましょうか。原委員、どうぞ。

○原委員

川本委員がおっしゃられたことも、私、同感するところがあります。文章として、「利用者保護等を重視するとして、過度の規制を設ければ」という感じであれば、名目というようなお話も含まれてくるかなと思います。今回のいろいろなご発言を聞いていても、やはり利用者保護を考えたら規制はないほうがいいような感じの言い方が多かったので、私はやはりそこは少し違うと感じておりましたから、利用者保護等を重視するという、本当は名目でということを入れたいのですけれど、名目でというのが少し浮くような感じもするので、利用者保護等を重視するとして過度の規制を設ければというような表現だといいのかもしれないと思いますが、ほかの方のご意見とか、事務局でもご尽力をお願いできたらと思います。

○岩原部会長

原委員からただいまのようなご提案がございましたが、そのご提案については何かご意見ございますでしょうか。高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

国語の世界に入ってしまったようなのですが、もう少し明確に言ってしまったほうがいいのではないかと思います。例えば、「しかし、利用者保護の趣旨を履き違えた過度の規制を設ければ、」とダイレクトに言ったほうが、はっきり伝わるような気がいたしますが、いかがでしょうか。

○岩原部会長

池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

私は最初の削除説をサポートします。それが一番しっくりきます。だから、利用者保護に関していろいろな理解があり得るわけです。利用者といっても、どのような水準の利用者を想定するかということで、要するに、当然払うべき注意も払わないような人まで全部保護することまで考えるのか、当然、一定の健全な市民としての注意力とか責任とかを前提にした上での利用者保護を言うのかとかで随分話が違ってきたりするわけです。そのようなところの理解の幅が利用者保護の概念にはあると思うのです。それを少し短い文章でどうのこうの表現しようとしても無理があるように思うので、要するに過度の規制はいけないということを言えばいいわけだから、もう単純に、削除説のほうがいいのではないかと思います。

○岩原部会長

ありがとうございます。

私も利用者保護等を重視という、この言葉をいじると、またそれ自体がいろいろな見方を生んでしまって、議論を生むような気がします。確かに池尾委員がおっしゃるように、問題は要するに過度な規制はすべきでないということですから、その過度の中に利用者保護の本来の趣旨を超えるような、あるいはそれを単に名目にするようなものは避けるという意味も入っているのでしょうから、それを考えれば、そのように理解していただいたらという気持ちもするのですが、川本委員、よろしいでしょうか。

○川本委員

はい。そのように考えれば削除説で構わないと思います。私が申し上げたかったことは、原委員がおっしゃった文脈に私は違和感があったので、そこのところについてコメントをさせていただいたということであります。

○岩原部会長

わかりました。そのように、いろいろな違ったお考えがこの「利用者保護等を重視し、」に入ってくる可能性があって、それ自体が議論を呼ぶ可能性がありますので、そのような意味では、単純にこれを削除して、要するに過度な規制は避けるべきだという文章にすることでご了解いただけますでしょうか。

では、そのようにさせていただきたいと思います。

それから、原委員がご提案になった第2点目でございますが、3ページの上から9行目、「意味するものでもないと考えられる。」というのを「意味するものでもない。」でもう切っていいのではないか。「考えられる。」という言葉は要らないのではないかというご意見でございます。これについて何かご意見ございますでしょうか。池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

私も事実認識としては、制度整備しない限りリーガルリスクは残っているということだから、「考えられる。」というのはとてもいいと思うのだけれども、削除して本当に言い切ってしまうと、やはり将来の課題として棚上げしたことが非常にまずいという話になって、非常にそのような微妙さはあるということで、原文どおりでいいのではないかと思います。

○岩原部会長

「考えられる。」という言葉がついても同じ問題があるようには思いますが、ただ、無論ニュアンスの強さということで、「考えられる。」をつけるかつけないかで若干のニュアンスの違いがあるかということかと思いますが、いかがでしょうか。

私も本当は言い切りたいところですが、若干のソフトなタッチにすることで、考えるというのを残すことでもよろしいでしょうか。それでは、そのようにさせていただきたいと思います。

あとは、原委員からのご指摘は、前回もご指摘いただいたところでございますけれども、実質的な議論が必ずしも十分尽くされなかったことが残念であるというご意見をいただきまして、今後、なお継続的に検討していってほしいと、それはご要望としていただいたところだと思っております。私自身もそれは同じ気持ちであります。これはそのようなことでよろしいですか、皆様。

ほかに、それではご意見ございますでしょうか。

なければ、次の3の銀行間の資金決済について、ここで何かご意見をいただくことございますでしょうか。

第二部会では必ずしも時間をかけて検討していただいたわけではないのでありますが、ただ、恐らく内容的にはあまりご異論のないところかと思いますが、何かご指摘いただくことがあれば。それでは池尾委員、お願いします。

○池尾委員

質問ですが、私、前回の議論に出られなかったので申し訳ないのですけれども、4ページのところの下から2つ目の段落の最後のところで「法的安定性の更なる向上を図ることが望ましい。」と書かれています。それはそうであると思うのですけれども、これは、ほかの部分では制度整備を図る必要があるという言い方になっているのに対して、ここは「法的安定性の更なる向上を図ることが望ましい。」という書き方ですが、これは制度整備を図るという意味なのか、少しそれとは違うニュアンスの表現なのかという点を質問させていただきたいのと、その上のパラグラフの最後のところも「公正性・透明性の高いガバナンス体制を構築することが望ましい。」とありますが、これは望ましいと我々が言うと、東京銀行協会は配慮していただけると期待していいものなのでしょうかということです。

○岩原部会長

それでは、高橋決済システム強化推進室長。

○高橋決済システム強化推進室長

最初の「法的安定性の更なる向上」という意味ですが、まず、現行でも清算効果について否定されているのかと言えば、この前も全国銀行協会からご説明がありましたように、一応リーガルオピニオンとしては問題がないのではないかと言われております。しかし、例えば金融商品取引清算機関であれば、行った行為について巻き戻しが起こらないような法律の規定がございます。資金清算機関が行った債務引受けについても、巻き戻しが起こらないような規定の整備を同様に図れば、法的安定性の更なる向上が図られるのではないかという趣旨でございます。制度整備につながるかどうかという点については、毎箇所毎箇所制度整備をする必要があると書くのか、最後に所要の整備を図る必要があると書くのかなので、まとめて書かせていただいたというものであります。ここのところは金融商品取引清算機関などでの法的安定性について前回ご説明させていただいたものでございます。

それから公正性・透明性の高いガバナンス体制のところでございますが、現行の社団法人のままですと、会計監査を受けるとか、そのような規定がございません。現在の東京銀行協会の配慮という点ですが、一般社団法人でいいのかという点については、単なる一般社団法人ではなく、例えば会計監査を受ける制度にするなり、理事会制度にするなり、体制が整えられている必要があるのではないか、あるいは、株式会社であれば、株式会社としてガバナンスの効いた会社、組織としてやっていただく必要があるのではないかということです。組織形態については、現在、当事者と協議をする必要があるので、検討中ということでございます。

○岩原部会長

後者に関して言えば、配慮するわけではないけれども、改善を望んでいくということかと理解しております。

川本委員、どうぞ。

○川本委員

今の点ですけれども、改善を望んでいくのであれば、ガバナンス体制という少し遠い言い方ではなく、運営体制と直接お書きになっておられない理由はどのようなことなのでしょうか。

○高橋決済システム強化推進室長

運営体制ですと、例えば月に1度理事会を開けとか、週に1度開けとか、法律の問題では必ずしもないのではないかと思われるものですから、まずは組織体制が改められるべきではないかという趣旨で、ガバナンス体制と書かせていただきました。ガバナンスが改められれば、取締役会が必ず月1回開かれるのか、年に1回しか開かれないのかということとは必ずしも直結はしないので、ご指摘のように、よい運営体制が発揮できるようなガバナンス体制が、適切なのかもしれません。ご指摘のような点に思いが至らなかったので、今このような表現になっておりますが、もしよい修文があれば。

○岩原部会長

いわば、むしろ組織の構造そのものが、そのように適切な効率化あるいは顧客の利便性を志向したような体制になっているか、そのようなことを求めていきたいと思っております。単に理事会を何回開くとか、そのような個々的な問題よりは、全体の仕組み、オーガニゼーションがそのようなものになっていることを求めたい、そのような気持ちが込められているのではないかと思っております。

ほかに何か。吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

4ページの中で2つあるのですが、一番上の今後第6次全銀システムでいろいろやっていただきたいのですけれど、日本の場合よく言われる、システムを構築するためのコストが非常にかかると言われているわけです。なるべく安価でやることと、それから柔軟なシステムにしていただいて、また新しいことをしなくてはいけないときの対応に、また第7次をつくらなくてはいけないというのではなく、そのような柔軟なシステムで、やはりなるべく安価でできるようにしていただきたいと思うのです。

それから、4ページの最後のパラグラフで少し違和感があるのは、サブプライム・ローン問題に端を発して、それで国際金融・資本市場の動揺が続いている状況のもとで、国内外の決済システムの相互依存関係が一段と強まっておりと。これは決済システムもそうですけれども、資本市場の連携も強まっていますので、決済システムばかりではなく、やはり金融のいろいろなシステムの市場が連携がなっている、その中の1つが決済システムであるという表現のほうがいいのかなと思いました。

○岩原部会長

今ご指摘いただいた前者でございますが。

○吉野委員

別に文章を直していただきたいというわけではなく、やはりシステムを構築するときにがちっとし過ぎて、新しいことができないようではいけないと思いますので、柔軟なシステムにしていただきたいということです。

○岩原部会長

わかりました。ご要望ということであれば、まさにおっしゃるとおりだと思います。システムが安価であることも当然重要なことであります。なるべく安く、いいシステムで柔軟に対応していけることは当然必要なことですから、それは銀行界においても受けとめてやっていただきたいと思いますし、恐らく銀行界自身そのように考えていると思っています。

次の、もう1つの最後のサブプライム・ローンのところですが、これは確かにおっしゃるとおり、単に決済システムの問題でないことは明らかであります。もっと大きい、より大きい金融、まさにここに書いてあるように国際金融・資本市場の見直し、あるいは制度整備が求められているわけであります。ただこの報告書は決済に焦点を合わせておりますので、そこで決済について書いているとご理解いただければと思います。よろしいでしょうか。

池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

だから、最後のパラグラフの2行目の国内外の決済システムの相互依存関係が一段と強まっているという文章のところを、国内外の決済システムに関してもとかにすれば、吉野委員がおっしゃった趣旨が出ると思います。国内外の決済システムに関しても相互依存関係が一段と強まっておりという修文提案です。

○岩原部会長

ありがとうございます。

今のご提案いかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、そのように修正させていただきたいと思います。国内外の決済システムに関しても相互依存関係が一段と強まっておりという文章にさせていただきたいと思います。

ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

特にさらなるご意見がなければ、ただいまいただきました2点の修正、即ち、1点は原委員のご指摘に基づく、2ページのところの「利用者保護等を重視し、」という言葉を削除する。もう1つは、ただいま池尾委員からいただきました4ページの下から5行目のところで「国内外の決済システムの」というところを「システムに関しても」という言葉に改める。この2点の修正をした上で、第二部会の報告書としてこれをお認めいただくということでよろしいでしょうか。

それでは、そのように修正した上で、第二部会の報告書として本日公表させていただきたいと思います。どうもありがとうございます。

なお、この後、事務局の方と私とで記者会見を行いまして、報告書の概要につきましてご紹介をさせていただくことにしたいと存じます。

最後に事務局から連絡などございましたらお願いいたします。

それでは、内藤総務企画局長からお話をいただきます。

○内藤総務企画局長

いろいろお世話になっておりまして、本当にありがとうございます。

私、昨年来、国会関係もございまして、金融・資本市場の非常に大きな変化の中で、なかなか決済に関するワーキング・グループあるいはこの第二部会に出席が思うようにまいりませんで、非常に残念な思いと、また失礼なことをしたという思いでございますけれども、本日、このような形で報告書を取りまとめていただきまして、本当にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。

思い返しますと、一昨年の決済に関する研究会から立ち上がりまして、昨年は決済に関するワーキング・グループでかなりホットな議論をしていただいたと思います。本当にその議論を聞いておりましたときにも、これはどうなるのかなと。どのように整理をしていくのかなと。岩原座長からも何回もそうした問いを投げかけられたのですけれども、私のほうもいいアイデアが必ずしもあるわけでもなく、ご議論を深めていく、ご議論を尽くしていただく以外にないのかなと。このような思いで、この第二部会の取りまとめは越年という形になりましたけれども、こうしておまとめていただき、本当にありがたく思っております。

この報告書を踏まえ、今後、私ども行政府として、今後の制度設計といいますか、制度整備に向けての具体化、法案の具体化を図っていく必要があると考えております。

この制度整備の議論の中で、私としては非常に残念だなという思いが若干ございます。その1つは、これによって金融庁が非常な規制強化を図っている。もう何が何でも規制を、網の目の如く張りめぐらせて、それで規制強化をやっていくことが一番安全だ、正しいことだと思い込んでいるのではないかという1つの意見がある。実際は決してそうではないのですけれども、それは今までご議論していただいた皆様方には改めて申し上げるまでもないことだと思います。ましてや、規制強化を通じて何か金融庁が天下りを画策しているとか、そのような報道もあったのですけれども、それもとんでもない見当違いだと申し上げたいと思います。

ただ、この1年、2年という時間の中で、外部の環境がかなり変わってきていることについては、各委員の皆様方にご意見もあろうかと思いますが、やはり認めなければならない点があろうかと思います。2年前は、規制緩和を強く進めていって、それで市場の機能を発揮していくところに力点が置かれていました。ところが、昨年来の金融・資本市場の危機が表面化して以降、これをどう規制するといいますか、制度の枠組みの中できちんとした監視を行っていくべきということが大きな論点として浮かび上がってきたのではないかと思っております。このような中で、今回取りまとめていただいた方向性は、非常に現実的な対応をしていただいたのではないかと思います。意見の収れんが必ずしも見られないものについては、さらに将来の検討課題としておくとして、他方、意見の一致が図られたものについては制度化を進めていくということになったわけです。

今後、私ども行政府として、制度の整備という具体化に入ってまいりますけれども、昨今の事情を察しますと、規制緩和という必ずしもそれ一辺倒で説明ができる状況ではございません。とはいえ、規制強化を一点張りでやっていれば、それで済むという問題でももちろんありません。その辺のバランスを常に考えながら制度設計をし、対外的にも説明をしていきたいと思っておりますので、今後とも引き続きご指導をよろしくお願いしたいと思います。

簡単でございますけれども、御礼のあいさつにかえさせていただきます。どうもありがとうございました。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

私からも皆様に御礼も申し上げたいと思います。内藤総務企画局長のお話にもございましたように、決済に関する研究会に始まり、決済に関するワーキング・グループ、そして第二部会と。特にこの中の何人かの委員の方、池尾委員、和仁委員を初め何人かの委員の方には、その全部におつき合いいただきまして、本当にタイムコンシーミングなことにおつき合いいただき、さらにとりわけ超ホットな議論におつき合いいただいて、感謝に耐えません。場合によっては、ややお気持ちにさわるような部分もあったのではないかと思います。その点はお許しいただきたいと存じます。しかし、何とか取りまとめることができましたことは、本当に皆様のおかげと厚く感謝しております。今、内藤総務企画局長のお話にもございましたけれども、いろいろな意味で決済が今大きく曲がり角に来ているように思っておりまして、今までのようながちがちの銀行法の決済に関する法制では、世界的なそのような決済の変化に対応したイノべーティブで、それでいて安全性の高い決済サービスを提供していくことが難しくなっているように思います。この機会を逃しますと、なかなかそのような決済の変化に対応できるような、それでいて安全性も適切に担保できるような制度を整備するということは極めて難しくなるように思っております。この機会を捉えて何とかこのような取りまとめができましたことは、私は大変うれしく思っております。意見が一致できなかった点は非常に不幸なことであり、誠に残念ではあります。しかし、一致できたところで制度改正を行っていくことが、今後のよりよい制度への大きな一歩になると確信しておりますので、そのような意味で大変うれしく思っております。

私が決済に関する研究を始めましたのは1982年でありまして、もう30年近く経ったわけであります。何とかここまでたどり着けたという思いがしておりまして、その点でも委員の皆様、それから事務局である金融庁の皆様にも深く御礼を申し上げたいと思います。本当にどうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきたいと思います。

どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課調査室
(内線3537)

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