金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」(第12回)議事録

1. 日時:平成21年3月13日(金曜日)16時00分~17時59分

2. 場所:中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

○神田WG座長

ほぼ予定の時間ですので始めさせて頂きたいと思います。事務局側が国会の関係等で遅刻する方々が多いようですけれども、また委員の皆様方、若干遅刻してこられる方もいらっしゃると伺っております。

本日ですけれども、協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループの第12回目の会合ということになります。委員の皆様方におかれましては、いつも大変お忙しいところをお集まり頂きまして、ありがとうございます。

こちらでご欠席と伺っている方々は、久保田委員、それから日本銀行の早崎さん、農林水産省の青山金融調整課長、そして中小企業庁の藤木金融課長であります。

まず、議事に先立ちまして、前回の会合において村田委員からご発言がございました貸出条件緩和が円滑に行われるための措置の効果はどうかという点について、事務局から簡単にご説明を頂きたいと思います。

渡邊室長、よろしくお願いします。

○渡邊協同組織金融室長

それでは、協金WG12-2という資料でございます。金融庁では、昨年11月7日に「中小企業向け融資の貸出条件緩和が円滑に行われるための措置」というものを発表いたしました。金融機関が中小企業に対する貸出条件の緩和に柔軟に応じることができるように、中小企業向け融資の貸出条件を緩和しても、この債権が不良債権とならない措置を拡充したものでございます。

金融庁では、この措置の後、銀行、信用金庫、信用組合に貸出条件緩和の状況について調査を行っておりまして、その結果を2月20日の金曜日のワーキング終了後に公表することに致しました。そういったことで、前回のワーキングでご説明できなくて、申し訳ございません。改めて本日ご説明させて頂きます。

それで、資料でございますけれども、中小企業に対して貸出条件を行った債権につきましては、信用金庫、信用組合全体で、20年の10-12月期ですけれども、1万714件、3,823億円というふうになってございます。これをその直前の7-9月期と比較いたしますと、件数ベースで27.5%の増加、それから金額ベースで42.2%の増加でございます。

また、条件緩和を行った債権のうち、経営改善の見込みがあり不良債権に該当しなかった債権、これにつきましては、10-12月期において2,240件、948億円でございます。これを直前の7-9月期と比較いたしますと、件数、金額ベースとも約3倍に増えているということでございます。

この措置を始めてから2か月弱の調査の時点ということなので、まだ確たることは申し上げにくいのでございますけれども、この調査結果を踏まえますと、今回の措置の効果というものが表れてきているのではないかというふうに考えてございます。

以上でございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

ご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、先へ進ませて頂きたいと思います。

本日の議事に移らせて頂きます。

本日ですけれども、前回ご議論頂きました中小企業金融について、引き続きご議論をお願いしたいと思います。それから、前回議論する予定だったのですけれども、時間の関係で議論できませんでした不良債権問題についてご議論頂きたいと思います。

そこで、まず順序として、中小企業金融についてであります。これにつきましては、前回佐藤委員と中津川委員から取組み事例を詳細にご紹介頂きまして、それを踏まえてご議論を頂きました。ただ、どうしても佐藤委員、中津川委員に対するご質問というか、取組み事例についての質疑応答にかなり時間を割いたように思います。それは大変活発なご議論を頂いてよかったことなのですけれども、何といいましても中小企業金融のあり方というのは、まさに重要なテーマというか、このワーキング・グループの根本でありまして、最近の取組み事例だけではなくて、平成元年の当時の金融制度調査会の報告書以来、これまで――この間20年間というのでしょうか――の間の信用金庫、それから信用組合に対する評価、これをきちんとしませんと報告書が書けないということがありますし、またそういうことをきちんとしませんと、今後の果たすべき役割というものについて、このワーキング・グループとして取りまとめなり提言なりをすることはできないというふうに言わざるを得ないと思います。

既にこれまで活発なご議論を頂いていますので、幾つかヒントなりポイントは出てはいるのですけれども、やはりこの時点において、もう少し皆様方にご議論を頂いたほうがいいと思いますし、そのようなもう少し議論したほうがいいというご指摘は、前回のワーキングの会合の後、委員の皆様方からも頂いております。

そういうわけですので、本日もまず中小企業金融についてのご議論をお願いしたいと思います。

そこで、事務局が資料を作成してくださいましたので、まずその内容についてご説明して頂きます。

小野参事官、よろしくお願いします。

○小野信用制度参事官

それでは、お手元にございます資料、右肩に協金WG12-3とついたものと、協金WG12-4とついたもの、これをご覧頂きながらご説明させて頂きたいと思いますので、お手元にご用意頂ければと思います。

まず、12-3でございますが、これはこれまでの議論、特に前回の委員の皆様から出されたご議論を踏まえまして、今日、集中的に、中小企業、地域金融における協同組織金融機関のあり方ということについてご議論頂く参考になればと思いまして、事務局のほうで整理した、これからの皆様の議論のたたき台のための参考メモというような位置づけということでご理解頂ければと思っております。

そして、まずは、田座長からもお話がございましたように、地域金融、中小企業金融において、協同組織金融機関がどういう役割を果たすのか、これまでの役割をどう評価するのか、今後どうするのかということは、この協金WGの協同組織金融機関のあり方の取りまとめを行っていく上でも非常に重要なポイントになりますし、また、これができないことには他の議論もなかなか難しいと思いますので、ここをきちっと押さえておく必要があるだろうということで、整理したものでございます。

まず、これまでの信用金庫、信用組合の評価、この地域金融、中小企業金融における評価をしていく上で、どういうような座標軸が考えられるかと考えたときに、1つヒントになりますのが、この12-4の資料をお開き頂きまして、右下にあるページで言うと2ページ目でございますけれども、先ほど神田先生からもお話がございましたように、前回、20年前に当時の金融制度調査会で議論した中間報告というものに、実は評価をする上での座標軸と申しますか、ポイントがあるのではないかと思っております。

ここに書いてございますように、当時の議論として、協同組織金融機関の基本的なあり方という中で、抜粋でございますけれども、主なポイントと書いてございますが、このときに3つの視点から、この評価というか、あり方について考え方が示されております。

1つのポイントが、中小企業、個人等に対する専門金融機関の必要性という観点から書かれているところでございます。ここにございますように、まず中小企業の重要性は増大しているので、特に技術開発や設備投資の推進が課題であると。

また、次のポツでございますけれども、個人の分野においても、多様化する消費者ニーズに的確に対応するということが課題だと。したがって、中小企業、個人の分野において円滑な資金の供給と多様な金融サービスの提供を確保することが重要だと。その上で、そのような機能を果たす専門金融機関が今後とも必要だと。即ち、特に一番下のポツで書いてございますように、金融情勢の如何にかかわらず、中小企業、個人に対する安定的な資金供給を確保する必要性があるのだと。そういう中小企業、個人に対する専門金融機関の必要性ということに、まさにこの協同組織金融機関の意義があるのだということ、即ち、中小企業、個人に対する専門金融機関としての役割を果たしているかというのが、1つ評価のポイントであると思います。

次のページを見て頂きますと、2つ目の示唆と申しますか、座標軸として、協同組織形態をとるということの意義ということで、それは、ここに書いてございますように、利用者ニーズへの的確かつきめ細かな対応をするというところに、協同組織形態を取るこの信金、信組の意義があると。もう一つは、長期的な視点に立った適切な金融仲介機能を発揮してもらうということに、協同組織金融機関の意義があるということでございます。

3つ目の示唆として、今度は地域金融機関としての意義、役割というものがあると。その中で、ここに書いてございますように、1つは、情報提供とか経営指導とか相談業務等、幅広いサービスを提供するということが期待されている、求められていることであると。また、もう一つの役割として、一番下のポツに書いていますように、地域を基盤とするこの協同組織金融機関というのは、地域から資金を吸収して、それを地域に還元する、均霑するという役割を担っていると。 

そういう意味で地域金融機関としての役割があるのだということでございます。

以上、ご説明したように、平成元年に出されたこの報告書、20年たっておりますけれども、この20年たったところで、信金、信組の役割を評価する上で、3つのポイントというものとして、(1)中小企業、個人等に対する専門金融機関としての役割を果たしているか、(2)協同組織金融機関として利用者ニーズに的確かつきめ細かにこたえているか、長期的な観点に立った金融仲介機能を果たしているか、(3)地域金融機関として幅広いサービス提供、地元への還元を行っているか。こういう観点から、評価をして頂くということが、1つの方法ではないかというふうに思っております。

そのような評価を行っていくために、前回の資料に追加をしておりますので、これからこの12-4に基づいて、ご説明させて頂きたいと思います。

まず、4ページ以下は、前回の中小企業の動向でございますので、ここは省略させて頂きまして、7ページを見て頂きますと、これはかつて1回お示しした表でございますが、地域金融機関の計数の比較ということでございます。報告書が出された平成元年当時と、平成20年3月とでどうなっているか。ここで比較しますように、下の矢印は減っているということでございますけれども、金融機関数について言うと、信金、信組の数は減っていると。また、店舗数で言うと、合併とか破綻した金融機関の店舗をそのまま引き取ったということもございまして、信金はそうは減っていない。信用組合は結構減っている。

そういう中で、預金と貸出金のところ、次の8ページを見て頂きますと、これは1つの傾向値が見てとれると。即ち、まず地銀を見てみますと、地銀は、この平成元年に比べて、20年たったところで、資金を吸収するという意味での預金も増えておりますが、同時に、地域に均霑するという意味では、貸出しというのもほぼ、預金見合いで増えております。

ただ、信金を見ると、地域から資金を吸収するという預金は増えておりますけれども、貸出金はその預金の伸び具合に比べると、半分ぐらいしか増えていない。

一方、信組につきましては、数が減ったということもあるのでしょうけれども、預金も減っていますし、貸出しも減っている、そういった状況にございます。

そのことは、次の9ページを見ても明らかでございまして、貸出金、預貸率は、信金、信組とも平成元年から見ると、やはり貸出金は大きく減ってきている状況にございます。

それから、次に、11ページにいって頂きますと、これも前回の繰り返しになりますが、ラフな議論として、製造業、建設業、卸小売業、その他の中小企業というものを1つの典型的な地元の中小企業というふうに捉えるとすると、信金の業態別の貸出金残高シェアは、平成元年当時は63.7%あったものが、19年度には47.5%ということで、16ポイント減少してきているということでございますし、同じような傾向は、次の12ページの信用組合にも見られまして、平成元年当時64.9%あった典型的な地元中小企業への貸出しというのは、この19年度には47.1%ということで、約18ポイント減っているということでございます。したがって、必ずしも地元に十分資金が回っているのかといいますと、実は必ずしもそうではないという傾向が見てとれるということでございます。

それから、1つ、15ページでございますが、これは前回、東京情報大学の堂下教授のおやりになった調査結果でございますが、その際、サンプルが偏っているのではないかとか、詳細が分からないとミスリードになるのではないかというようなご指摘を頂きましたので、直接、堂下先生と連絡を取らせて頂きまして、確認したところでございます。

まずこの資料の調査方法は、インターネットのアンケート調査でありまして、調査対象は零細企業の経営者、ここで言う零細企業とは、個人事業主と、資本金2,000万円未満の株式会社でございます。

調査項目については、回答者の業種、従業員数など、基本的な事項に関すること、資金調達の実績に関すること、その他日銀短観に準拠したことを調査したということでございまして、結局、5,572の会社から回答を得たと。その中で、さらに従業員5名以下を抽出して、この資金調達する必要がなかった先を除外して、分析したものが、この資料でございます。

この資料のサンプルはこういう条件で抽出されておりまして、例えば貸金業者等を利用していた者とか、特定の業種など、別に条件を加えたものではなく、業種は広く各業種が対象となっているということでございます。ただ、残念ながら調達した金額とか期間は、調査対象にはなっていないということでございます。

なお、先生からの補足として、この論文の引用データというのは速報値でございまして、確定値では数値を含めて調査結果の変更があり得るということでございます。ただ現在、最終確定値で分析途中であり、確定値で若干数値が変動するものの傾向や順位が入れ替わるような変動は確認されてはいないということでございました。

そういうことでございますので、ご疑念のような、サンプルに偏りがあるとか、そういうことではないというふうに考えております。

それから、次に、もう一つ今回新たにおつけした資料として、17ページに資料をつけさせて頂きました。前回、中津川委員からご報告がありましたように、信用組合のほうでも多重債務問題に取り組んでいらしているようでございますけれども、別の切り口としまして、現在、いわゆる信用生協、生活協同組合でも同じような取組み、生活支援のための貸付けを行っている事例がございます。ここに3つの事例が書いてございますけれども、1つは岩手県の信用生協ということで、この信用生協が多重債務者に対しまして、生活再生のためのカウンセリングを行った上で、融資を実行しているということでございます。この事例は結構長い伝統がある、一番最初に取り組んだところでございますけれども、貸付条件としては、貸付限度額500万円で、貸付金利は9.41%ということで、この実績の一番下を見て頂きたいのですけれども、貸倒れ率は0.2から0.3%と、非常に低い貸倒れ率になっています。

同じような取組みで、最近始めた事例として、グリーンコープ生協ふくおかという、福岡の生協組合、それから熊本の生協組合が同じようなことを始めております。生活費、借金返済のための資金の貸付けを実施しておりまして、これもまず面接をして、いろいろな家計簿の書き方等を指導するということを行いまして、債務者の家計管理をフォローすると。単に貸付けるだけじゃなくて、そのアフターフォローもきちっと行っていくと。事前の相談、それから貸付けの実行、アフターフォローというので、結構きめ細かに行っているということでございます。

貸付金利は同じように9.5%でございますけれども、貸倒れ実績は今のところなしということでございます。このように貸倒れ実績が低い、またはないというのは、事前の相談、コンサルティング、それから事後のフォローアップを非常にきちっと行っているということもあって、非常に極めて低い貸倒れ率になっているのではないかという、こういう取組み事例もあるということでございます。

このような資料も踏まえまして、信金、信組の評価をさっき言った3つの視点からお願いできればと思っていますが、その議論をして頂いた後には、次に、協同組織金融機関にどういう役割が求められるのだろうかということにつきまして、ご議論頂ければと存じます。

これにつきましては、これもこれまでの議論、特に前回の議論までも踏まえて、事務局のほうで先生方のご意見を幾つか分類して集約してみました。この協金WG12-3の1ページの2.ですけれども、まず幾つか役割があるのかなと。1つは中小企業金融機能、それから次のページの中小企業再生支援、多重債務者支援というような役割。それから、地域金融支援という役割。最後に、こういうことを行っていく上でのコンサルティング機能というようなものもあるのではないか。

1つ目として、中小企業金融を行っていく上で、その協同組織金融機関としての特性、独自性をどう考えるか。例えばラストレンダー、最後の貸し手としての役割、つなぎ資金の提供を含めた最後の貸し手の役割とか、規模に応じたきめ細かな金融機能の発揮とか、あとはミドルリスク、ミドルリターン、前回ご説明しました、いわゆるふたこぶラクダの中で、例えば6%から20%ぐらいの間のところをとるようなことはできないかどうかとか、あとは地域のニュービジネスに対する支援、リスクマネーの提供、こういうものができるのではないかと。また、こういうのを行っていく上で、何か弊害とか課題とかあるのかどうかというようなことが載っています。

それから、2つ目の役割としては、中小企業再生支援ということで、これは前回、佐藤委員、中津川委員から、具体的事例のご説明がございましたが、こういうのを踏まえた上で、どういうときにこの協同組織金融機関が再生支援に踏み切る、どういうときに踏み切るのかというポイントとか、様々な債務整理交渉を中心となって当たっていく上でどういう役割を果たすのかということです。

それから、3つ目として、協同組織金融機関が果たす役割として、多重債務者支援ということが考えられないかと。即ち、もともと役割として消費者の相互扶助があるわけでございますので、多重債務に果たす役割がないかと。先ほどご説明しました生活協同組合の取組み事例等を考えた上で、何かできないかということであります。

4番目の視点が地域金融支援ということで、特に今、非常に地域経済が疲弊しておりまして、そういう中で、この地元に密着した協同組織金融機関がどういう役割を果たしていけるのかと。また、そういうのを果たしていくときに、そもそもなかなか1つの金融機関で担うことは困難であり、新たな協働スキーム、例えばファンドなどが考えられないかというようなご意見が、前回委員の方からご指摘があったところでございます。

最後に、このような様々な役割を果たしていく上で、今後、コンサルティング機能というものが重要になってくるのではないかと。また、そのコンサルティングの中身としましても、前回委員の方からご指摘がありましたように、単に財務のみならず、事業全体を見極めるようなスキルというのも大事ではないかと。それから、そういうことを行っていく上で、内部の人的資源の開発と同時に、外部の人的資源の活用というものを考えていくべきではないかというようなご意見が出ております。

とりあえずこれは単に例示を列挙しただけでございますけれども、こういうことも踏まえて、まずは、これまでのこの20年間の評価、それからその評価を踏まえた上で、今後、協同組織金融機関にどういう役割を期待するのかということについて、ご議論頂ければと存じます。

以上でございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それでは、ご議論をお願いしたいと思います。今ご説明頂きました、資料番号で言いますと12-3というものですね。このメモは、1から6番まであるのですけれども、1番と、それから2番から6番までとをちょっと別にして、まずメモの項目の1についてご意見を伺いたいと思います。2から6はその後で、今後、協同組織金融機関が果たしていくべき役割というほうで整理というか、ご議論をお願いしたいと思います。

そこで、メモの1.ですけれども、これは一言で言うと、先ほどから言及のあります、平成元年の当時の金融制度調査会の中間報告以降、20年間で、この信用金庫及び信用組合はどうなのかという、この20年間の評価とでも言うべきでしょうか。そこに3つ柱がありまして、専門金融機関、協同組織金融機関、地域金融機関というふうにあるわけですけれども、この20年間の市場、それから経済の変化を踏まえて、今、小野参事官から数字等を示して頂きましたけれども、参考資料等を見ながら、一体どう評価したらいいのかということでありまして、ここの評価をきちんとしませんと、今後のあり方についての提言とか、あるいは制度上の工夫とか改善というものを、なかなか提言していくことができませんものですから、これをお願いしたいというふうに思います。

今、ご説明頂きましたように、もう一つの分厚いほうの12-4において、金融制度調査会の当時の中間報告の概要、あるいは今ご説明頂きました業界におけるいろいろな数字等を示して頂いたわけですので、これらも参考にして頂いた上でご意見を頂ければと思います。ちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、どなたからでもご意見、ご質問をお願いします。

宮村委員、よろしくお願いします。

○宮村委員

協同組織金融機関が中小企業金融、個人金融でもって重要な役割を占めているということの疑いはないわけですけれども、地銀との比較で少し考えてみたいと思います。

一番の問題は、預貸率を見ますと、現在信用金庫が55.8%、信用組合は57.5%ということで、その残りはどうなっているかというと、当然のことながら、資金は地域外に流出しているということになるわけです。

一方、地方銀行を見るとどうなるかというと、地方銀行の場合は、地銀にしても第二地銀にしても、75%ぐらいの預貸率になっていて、地域外への流出は25%ぐらいにしかならないと。この差は、信用金庫、信用組合と地方銀行の差というのは15%ぐらいになっているわけです。

それで、ここのところ景気がずっと悪いので、資金需要がないから落ち気味だというようなご意見も結構ありますけれども、地方銀行で見てみますと、平成元年から比べると、預貸率の落ち方は5%ぐらいしか落ちていないと。それに対して、信用金庫、信用組合については14%、18%ということで、落ち方もまた非常に大きいということになっております。

もちろん、地方銀行の場合ですと、中小企業、個人以外に、中堅企業への融資もございますけれども、ざっと考えて、地方銀行の融資のうちの80%ぐらいが、中小企業、個人向け融資と考えますと、中小企業、個人向けに限っても、預金に対して60%ちょっと位はあるということです。

そうしますと、地元の人から見ると、地方銀行にお金を預けようか、協同組織金融機関にお金を預けようかということになると、協同組織金融機関にお金を預けると資金が外に流出するという状態になっているということになっております。

このように、確かに景気がずっと不調で、資金需要が、地方の場合、特に景気がよくなくて資金需要がないということでもありますけれども、地方銀行の預貸率なんかの、バブル期の平成元年と現在との差を見て、5%しか違わないというようなことを見ますと、貸出し競争でもって競り負けているという部分があるのではないかということで、努力の余地があるのではないかなと思います。

とにかく、そうしますと、地域金融機関として地方銀行と比べると、数量ベースで言うと負けているというふうな評価になるのではないかと思います。

これがまず1つ目です。

中小企業金融の細かい話については、また次回、次のポイントということになるわけですね。

○神田WG座長

将来のあり方、つまりこのメモで言うと2.から以下は、後でまたと思います。この1.のこれまで20年間の評価に係ることであれば、細かい点でもおっしゃって頂いて結構です。

○宮村委員

一応そこまでということで。

○神田WG座長

ありがとうございます。

吉野委員、お願いします。

○吉野委員

先ほどの資料12-4に、平成元年のところの3つのポイントが、ここの1と関係していると思うのですけれども、ちょうどこれはバブルの最後ぐらいのときの答申ではないかと思うのですが、それと当時と比べて、今、もう一つ違うのは、マクロ経済の環境が変化してきているという点が、この時とは大きく違うと思います。

それで、特に地方ですと、当時はまだ建設業とか不動産業を中心とした成長的なパターンであったと思うのですけれども、その大きな産業構造の変化があるということに直面しますと、後とも関係するのですが、産業構造の転換のために、どういうふうに小さい地元の中小企業の転換をスムーズに促すことができるかということも、こういう信用金庫とか信用組合にとって必要なのではないかと思います。ですから、マクロ経済の環境の変化というところはもう一つあると思うのです。

それから、関係するところとしては、人口の高齢化なり人口の変化というのが、多分地方ではあると思いますので、その中で、やっぱり信用金庫、信用組合のあり方というのがあると思います。

それから、3番目は、先ほど宮村先生から預貸率が低いということですが、裏腹にいきますと、多分、国債でたくさん運用されているのではないかと思いまして、それは債券市場で運用する非常に安心したたま(、、)が出来てきたという、それもあるのではないかと思うのですけれども、でも本来やはり、預金を集めて貸出しをするということだと思います。

ただ、平成元年と違うのは、大きなマクロ構造の環境の変化があり、ですからやっぱり転換というか、今までの産業から他の業種に転換したりする時にスムーズに資金が供給できるかどうかということが、1つ重要ではないかと思います。

それから、地域金融機関として、これはご質問なのですけれども、自治体との連携というのは、あまり信用金庫さんとか信用組合さんの場合には関係がないのか。もしあるとすれば、先ほどの生協のお話もございましたけれども、いろんな局面で自治体なんかと連携取りながら、こういうところは公的な融資が必要である、こういうところは民間の信金とか信組がやるべきであるというところがあるのかどうかは、これは皆様にお聞きさせて頂ければと思います。

それから、最後は中央機関との関係なのですけれども、地銀さんの場合には、最近お話を聞いていますと、いろいろ横で住宅ローンに関してはこんなことをやろうとか、そういう情報を交換されておられるそうです。それも地銀さんの場合、おもしろいのですけれども、隣の県は仲が悪くて、1県ごとに仲がよくて、情報交換するという話があるのだそうなのですけれども。

そうすると、信用金庫さん、信用組合さんの場合には、中央機関がそういうようないろいろな新しくやるべき情報というのをこれまできちんと集約されて、いい事例などを他の信用金庫や信用組合に流してこられたのかどうか。それができるのが、まさに中央組織のいいところだと思いますし、それから、有価証券運用というのはむしろ中央組織のほうでまとめてやるというやり方も、1つはあると思いまして、各地域信用金庫さんはやっぱり地元に行くというところではないかと思うのですけれども。

それから、関連では、やはり地元密着ということと同時に、地元から逃げられないというところがありますから、180破綻した金融機関の、この前、一番最初ぐらいに見せて頂きましたけれども、そのときには地域の経済が破綻して、どうしてもうまくいかなかったというところがあったと思います。ですから、そういう意味では、少し地域を越えた、今後は連携なり合併なり、そういう組織として今後どうあるべきか、ということも考えて頂く必要があると思います。

以上です。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

皆様方に対するご質問があったと思いますけれども、まず他の委員からご発言をお願いします。村本委員と原委員の順番で。

村本先生、お願いします。

○村本委員

平成元年の報告書は、極めて我々が考えるのに重要な視点を提供しているわけですけれども、私自身は、この視点をどうやってチェックすればいいのだろうか、あるいはどういうふうに論証すればこれがうまく言えるのかなというのを考えているわけですが、1つは宮村委員が言われたように、預貸率というので見るのも1つの方法であると、これも大変、重要な視点でございます。

もう少し別な視点でちょっと考えておりますのは、前にこれは私も発言したことがあるんですが、信用金庫とか信用組合が経済で果たす役割という意味で、例えばGDPに占める貸出額の割合ってどうなのだろうと、こういうのを調べてみますと、例えば平成元年ごろ、約13%ぐらい、信用金庫です。信用組合で4%ぐらい。現在、12%と2%ぐらいです。これをどう見るかということなのですけれども、経済の動向に対しては、一定の役割はやっぱり果たしているのではないかというのは感じます。

あるいは、この20年ぐらいの間に、先ほどのデータで申しますと、企業数というデータが4ページでございましたけれども、ご案内のように、企業数はこの10年ぐらいで100万社なくなって、2割なくなっているわけでございます。特に小規模企業はたくさんなくなっているわけで、それに引っ張られる可能性が高いのではないか。20年間のものを簡単な回帰分析をしてみましたけれども、非常に回帰係数が、決定係数が高くて、回帰の優位性も高いという結果を持っておりますが、そういうことを考えますと、どうも経済の変動、特に吉野委員も言われましたが、人口の変動、そして企業数の変動に非常に引っ張られているのではないか。

逆に言うと、それに弱さがあるのだろうと思うのですね。つまり、やや経済に対して受け身な傾向があるのではないかという印象を持っておりまして、この辺が課題といえば課題になるのだろうと思っています。

そういう意味で、平成元年の報告書で書かれたこと、特に中小企業、個人というところにしますと、それなりの役割を果たしてきてはいるのかなという感じがしてはおります。

ただ、例えば技術開発を積極的に支援したかねという話とか、そういう面について、十分であったかどうかについては、これは検討課題であろうなという感じがしております。

それから、もう一つキーワードで、中小企業と同時に個人という分野ですね。

例えば、先ほどご説明頂きました11ページの業種別シェアで見ますと、個人が少しずつ増えてきていて、地元の中小企業に対する資金というのは、やや減ってきているねという話があります。

真ん中辺に不動産業というのがありまして、ここのところが1つのブラックボックスになるわけですが、この辺が、例えばアパートローンのようなものだというふうに、もし考えますと、個人のところがどういうふうになっているのかというのを、もう少し丹念に調べなければいけないのかなという印象を持っていまして、例えば住宅ローンだけで、私、住宅ローンの研究もしておりますが、住宅ローンだけで申しますと、やはり銀行、特にメガとかとか地銀さんが行っていらっしゃる住宅ローンと、信金、信組が行っている住宅ローンというのは、やはり多少違うねという感じを持っていまして、メガで借りられなかった人が行っているのではないかみたいなところとか、メガさんでも条件の合わない人があるのではないかとかいうことで、銀行から弾かれた層といったら多少語弊がありますけれども、銀行で対応されない層が、あるいは小さい意味での経済的なある種の弱者がそこで対応しているという可能性もあるのではないか。この辺はきちっと、場合によっては業界の方に説明して頂いたほうがいいのではないかという感じがしております。

そんなことで、預貸率の問題は確かにございますけれども、それ以外のところでも幾つか、それなりの貢献はしているということは言えるかなというのは、ちょっと感じているところでございます。

特にここ十数年の間に、中小企業分野の資金量というのは、ピーク時350兆円近くありましたが、直近は250兆ぐらいで、100兆円ぐらいなくなってきております。これは、ほとんどは銀行形態のものでなくなっているわけでございまして、その減少率で見ると、むしろよくがんばっているところもあるねという評価もできるかなと思ったりしておりまして、この辺、マクロの大きな数字でも少しチェックしておいたほうがいいかなという印象で申し上げました。

以上でございます。

○神田WG座長

ありがとうございました。

原委員、お願いします。

○原委員

今の村本委員の後半の個人のところと重なることになってしまうのですけれども、資料12-3で、1.のアのところの一番最初に、「多様化する消費者ニーズへの的確な対応」という文言が書かれていて、この文言は、今日再度お示し頂いた平成元年の、この中間報告の第1章の1.の中でも、上から3つ目のポツのところで、「個人の分野においても、住宅をはじめ、多様化する消費者のニーズを的確に対応し」と書かれていて、この用語がこのままこちらへも移ってきているという感じがするのですけれども、恐らく20年前のここで書かれた多様化する消費者のニーズというのは、住宅ローンだけではなくて、自動車ローンですとか教育ローンですとか、そういったものではなかったのかと。

今回、20年たった今の状況で、ここに多様化する消費者ニーズへと書かれたときは、やはり私は内容がちょっと違ってきているのではないかと思っていて、うちの近くの信金、信組のポスターなんかを見ると、住宅ローンもありますし、年金もありますし、それからあとは投資信託とか、そういったものも扱っていらっしゃるというのが分かるのですね。

そうすると、多様化する消費者ニーズというのもありますけれども、金融環境がやっぱり20年前とは様変わりをしてきていて、銀行とか信金とかの窓口でも、投信とか保険とかを販売をされるようになっていて、そういう新たな接点というのが出てきていて、それは必ずしも消費者側のニーズからだけではなくて、金融機関側からの営業形態の変化というのでしょうか、それに消費者が接点を持っているというような場面も出てきているように思うので、同じ文言を使われていますけれども、中身の精査はもっと必要ではないかと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それでは、村田委員、神吉委員の順で。

○村田委員

協同組織金融機関を評価する場合に、出資者のための金融機関なのか、利用者のための金融機関なのかということがあると思うのですが、当然、これは利用者のための金融機関であるべきだと思います。

そういった意味で、今、この評価の中で消費者ニーズ、あるいは利用者ニーズということが出ていることは大変結構なことでありますし、私も現実におつき合いしていた信用組合が倒産しまして、そのときに初めて出資者ということを意識したというか、むしろ、やはりそれまでは利用者という意識であったということを考えますと、やはり利用者のための金融機関であるべきだと考えております。

ただ、現実にはこの預金に対して貸出しが伸びていないということを考えますと、これはより一層、評価に値する金融機関として、利用者のための金融機関ということをより強調するといいますか、そういった金融機関になって頂きたいと考えております。

○神田WG座長

ありがとうございました。

神吉委員、どうぞ。

○神吉委員

確かに協同組織金融機関の必要性というのは認められるところなのですが、今までのご説明を聞きまして、さらに資料を見まして感じますことは、やはり協同組織金融機関の理念からだんだん、現状の姿が遠ざかってきているというふうに見ることができるのではないか思います。それは、預証率が上がってきていること、それから貸出しの内訳も地場の業者である製造業や卸小売業に対する構成比が減ってきているというようなところに見られると思うのです。

これは、もちろん佐藤委員や中津川委員からご説明がありましたように、業界では一生懸命努力していらっしゃるんですけれども、結果的にこういう形になっている。それは、やはり銀行が中小企業金融、あるいは個人への融資に、最近は積極的に進出しているということと、やはりパラレルにとらえられるかなというふうに思います。

それから、もちろん複数の委員からご指摘がありましたマクロ的な面をどうとらえるかということもございます。預金がどんどん集まりますので、それをとにかく運用しなければいけませんから、結果的に預証率が高くなっているというようなことなのかもしれません。ただ、この傾向がどんどん進んでいきますと、大変乱暴な言い方で、また極論かもしれませんけれども、預金者がノーリスクで有価証券投資をするための受け皿のような姿になってしまうかもしれないと思います。もちろん、貸すことを一生懸命やっていらっしゃるんですけれども、そんな危惧も持たれます。

さらに、将来的には、存在意義がより厳しく問われるようになると思います。確かに相互扶助を理念にして、存在意義は認められるとしましても、より明確にそれを発揮するということが強く求められるように思います。今この場でそれが何かということをお答えできないんですけれども、そうしませんと、ゆうちょ銀行の問題もございますので、非常に厳しい競争にさらされて、ジリ貧に陥っていくという見方もできるのではないかと思います。針小棒大な見方かもしれませんけれども、このように感じるところでございます。

○神田WG座長

ありがとうございました。

それでは、お隣の今松委員、どうぞ。

○今松委員

平成元年のこの中間報告、これが先ほど吉野先生から指摘がありましたけれども、ちょうど経済が非常にバブルの時期で、その意味では、先々非常に、将来的ないろんな形での展望というものをどうやって持っていこうか、その中において、地域経済を活性化し、非常に大きな金融的な機能をこの協同組織金融機関がどう果たしていくのか、果たす可能性という点、こういう点を、ある意味では新しい展望という意味で、前向きに展開したという意味もあったろうと思います。

現状とかそういうところを見たときに、やはり地域経済が非常に疲弊していると。そうすると、単にこれは金融機関だけではなく、全体としてのこれまでの日本経済の構造であるとか、そういうところがかかわっているわけですけれども、やはり金融がどうかかわっていくのかというところ、これは特に地域を根城とするというか、そこから逃げ出せない金融機関としてどうとらえていくのかと。これは極めて重要な観点になると思います。

その点で言えば、安定的な資金供給の機能ですね。これはやはり相当程度果たしているというふうに見ていいと思います。色んなところで取材してみましても、やっぱり足の速い金融機関というのは、メガとかがわっと来て、いいときには来るけれども、その後必ずしも、次第に状況が悪くなるというけれども、そこはやっぱり信用金庫であるとか信用組合の場合には、そこから逃げ出せないのだよと。実際に経営者の方とか、あるいは担当の方もおっしゃるという、その意味では目利き機能とかそういうものを十分発揮した形でやっていくという、この機能はそれぞれ努力されていると思います。

ただ、難しいのは、先ほどの融資の全体の中で見ましても、やっぱり製造業であるとか、そういうところの比率が下がって、個人をここで重視するのはいいことであるわけですけれども、やはり基本的には地域経済全体という場合には、地域中小企業、そこがどれだけ、こういう地域経済が疲弊している中でそこを盛り上げていくかということ、この観点から言えば、やはり新たな金融の仕組みであるとか、あるいは幅広い意味でのサービス、相談、コンサルティングとか、そういう機能、これをやっぱりこれまで十分に持ち得た地域金融機関、協同組織金融機関、信金、信組はあるわけですけれども、全体として持ち得たのかどうなのかとなると、やっぱりこの点は不十分な点はあったということは認めざるを得ないと思います。

それと、この間にいろいろ離合集散といいますか、数が減って、それによって経営体質が強化されてきたのかどうなのか。もちろん、破綻の場合は単純にそう言えないと思いますけれども、やはり経営体質が十分に強化されて、それで同時にきめ細かい、今言いましたような機能を持ってきたかどうか。やはりこれからこの協同組織金融機関が地域において大きな役割を果たしていくためには、この点を十分に留意していくというか、この点、どうやり続けていくのか、かなりこれまで以上に大きなウエートを持った形で考えていく必要があるのではないかと思います。

以上です。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それでは、家森委員、お願いします。

○家森委員

まず、この信用金庫や信用組合の評価ということですが、極端に言うと、それぞれの信用金庫、信用組合ごとに違うので、これは仕組みとして考えないとしようがない。その場合にも、地域の多様性があるということを、我々は既に前提にしているので、地域によってかなり評価が本当は違うんだろうと思います。その上で、全体として見たら、ということをお話ししたいと思います。

まず、経済学で言うと、役に立たないものはつぶれていくという、極端に言うとそういうことになるわけで、優勝劣敗が働きます。実際にたくさんの会社がつぶれたということが起こったということは、やっぱりシステム上の問題があったんだろうというふうに思わざるを得ない。このために、預金者を保護するために多額の資金を使ったというのは、事実としてこの20年間にあったということですので、やはりここには何らかのシステム上の問題があって、それはもう解決したかどうかは別にして、とにかく20年間にその問題が出たのは事実だろうと思います。

他方、この今日配って頂いた13ページのものや、あるいは私自身がやっているいろんなアンケート調査を見ても、既存の中小企業の方から、今の協同組織金融機関に対しての評価は非常に高いです。全般的に高い。これはいろんなアンケートをやっても、大体そういうふうに出ております。

その点で言うと、今いるお客さんか、20年前からずっと守っているようなお客さんに関しては非常に評価が高いんですけれども、新規のお客さんを取り込めてこなかったという問題が、多分あるんだろうと思います。だから、そのところへ聞くと、不満は多分出てくるんだろうと思います。

そういうことから考えると、それの例の1つとしては、90年代の後半ぐらいに問題になったような中小企業者が非常に高利な資金を借りざるを得ないとか、消費者が非常に高い金利でお金を借りるというようなことが起こったというのも、状況証拠としてあるのではないかというふうに思うわけで、既存の中小企業に向けてはとりあえず高い評価が得られているけれども、その新規の部分に非常に弱さがあったということです。先ほど吉野先生や村本先生がおっしゃっているように、中小企業の既存の部分が小さくなっている中で言うと、いわばジリ貧になっていかざるを得ない、なっていくおそれがあるという心配があるのではないかということになろうかと思います。

○神田WG座長

どうもありがとうございます。

宮村委員、どうぞ。

○宮村委員

先ほど、個人の融資の話について色々出ましたので、私、その点について言いたいことがございます。

このところ、平成元年以降から住宅ローンというのは、あらゆる金融機関でもって非常に出ているところであって、住宅ローン自体に、住宅ローンを信用金庫、信用組合がぜひ行ってもらいたいという社会的なニーズというのはなくなったと。 

もちろん、やって構わないですし、サービスして構いませんけれども、それが必要だから我々は信用金庫や信用組合をサポートしなくてはいけないという論理にはならないと思うわけです。

中小企業金融については、いまだにそのようなニーズがございます。

では、個人金融についてのニーズというのは、信用組合ならでは、絶対必要だ、この部分の個人金融には絶対必要だというようなところはないのかというと、そうでもなくて、実は見捨てられた分野である、例えば50万円前後の無担保消費者ローンを、トランザクションバンキングでやらないで、リレーションシップバンキングでやると。前回、ミドルリスク・ミドルリターンというような話がございましたけれども、リスクで考えないで、要するにリレーションシップでもって50万円の融資、普通だったらトランザクションバンキングで50万円の融資をすると、金利は20%取らなきゃいけないというようなことになりますけれども、先ほどの生協の話のように、コンタクトをちゃんとつけてやれば10%でもいけるのではないかと、そういうようなところというのは、実は金融機関からはほとんど提供されていないというようなことになります。

そういうのについてのニーズというのは、ニーズというか、そういうのは地方銀行とかで、あるいは消費者金融もできませんので、信用金庫や信用組合に非常に期待される役割ではないかと思いますけれども、それに比べたら、住宅ローンなんていうのはどちらかというと消極的と、私は思います。

これはなぜかというと、まず、今後のことを言ってしまうと、要するにゆうちょ銀行が住宅ローンを行い出したとした場合には、これはゆうちょ銀行の一人勝ちということはないかもしれませんけれども、要するに個人向けのお金を預かる、個人向けにお金を貸すという点についてのゆうちょ銀行は、あちこちにありますので、地域に信用金庫、信用組合があって、そこで住宅ローンを供給しなければならないということにはならなくなってしまうということと、それから、先ほど指摘されていますように、預貸率が低い中、貸金のうちの半分近くが住宅ローンと不動産融資と。不動産融資の中に、じゃあどのぐらいの賃貸不動産融資があるのかというと、開示している信用金庫・信用組合としていないところがございますが、佐藤理事長のところと中津川理事長のところは開示されていまして、大体そういうのを見ますと、全体的に不動産融資に占める賃貸用の建物の不動産融資というのは7割ぐらいかなと思われます。

そうしますと、住宅ローンとそのようなアパートローン、賃貸マンションローンなんていうのを合わせると、4割以上が大体融資額になっていると思われます、全体的に判断しますとですね。そのような住宅ローンと、そのような賃貸マンションローンの審査というのは、簡単と言えば簡単だというふうになってしまいます。住宅ローンの場合でしたら、これはほとんどの金融機関の場合、外の自分の子会社、または外の独立系の保証会社の審査に任せてしまうということになって、当然、そのような取引を渉外担当者が行っていると、どんどん審査能力が落ちてくるということになってしまいます。

アパートローンも同じような状態じゃないかと思います。現に話をいろいろ聞きますと、住宅ローンを一生懸命やると、そのような人というのは中小企業融資の目利き能力がなくなるというようなことになって、ただでさえ今、渉外担当者の人数が減って、非常に、この間あたりは預金、お金を取ってくるような人たちもいっぱいいたのだけれども、そういう人たちもいなくなってしまって、中小企業だけをぽつぽつ回るような、非常に渉外活動の数を絞っているにもかかわらず、住宅ローンに頭がいってしまうと、当然、中小企業融資についての力が入らなくなると。

要するに、中小企業融資というのは難しくて、焦げつきやすくて、大変だと。金額もなかなか大きくならないと。住宅ローンだったら、金額が大きくて、担保もあって、審査は即時お任せで簡単だというようなことになってしまうと、どんどん中小企業融資が圧迫されるということになってしまうと思うのですね。

ところが、現在の制度を考えますと、信用金庫、信用組合に対して、中小企業融資を住宅ローンに比べて優先させるような要素は全くないのですね。住宅ローンであれば、自己資本比率規制から言っても、もう全くもって有利ですし、仕事としても不動産担保が取れるわけですから、非常に焦げつきにくいということになってしまいますし、もちろん、国債を買うなんていうと一番安易なことになってしまいますけれども、そうしますと中小企業融資を、じゃあ信用金庫や信用組合が今やっているというのは、ほとんど自分たちの存在価値なんていう政治的なものでやっている状態になっているのではないかなと、私は思うのですね。

このような、制度的にも、中小企業融資のほうに動かすような誘因がなくて、仕事も難しいということになったら、やはり長期的にこの中小企業融資がだんだん減ってきて、融資の中でも、住宅ローンが増えてくるのは、仕方がないと言えば仕方がないというふうに言えるのではないかと思うんです。

そういうことがありますので、かつ、今一部の職域信用組合がなくなってしまうと、集めたお金は、前もお話ししましたように、全額住宅ローンにして、かつ焦げつきは0%と。税金をまけてもらっている分は、まけてもらって、余剰金が発生して、その余剰金は貸し手に対して利用配当という形で、事実上の利子補給になっているというようなことになって、もうこれは民間金融機関とそういう、今の職域信用組合なんかで考えますと、住宅ローンなんか考えますと、株式会社銀行と、補助金を受けている信用組合との間の不公正な競争状態になっていると。

いまや住宅ローンに関して見ると、昔は例えばゆうちょがあると、「官業による民業の圧迫だ」と、こういう話になりましたけれども、現在の住宅ローン市場を考えますと、信用金庫や信用組合については優遇税制があって、ゆうちょ銀行というのはいまやもう株式会社になったということで、そこら辺の間で住宅ローンの競争を行うと、昔と逆パターンの官業と民業、官業による民業の圧迫状態になっているということなのですね。

そのように考えますと、もういまや住宅ローンに関して、信用金庫や信用組合にやってくださいとか言うべき話じゃないのではないかと思います。

以上でございます。

○神田WG座長

ありがとうございます。今の点は、この後ご議論頂く、今後という2から6にも関連し得る点だと思いますけれども、これまでの評価にもかかわるご指摘だというふうに理解いたしました。

ほかにいかがでしょうか。評価というのは難しいなということがよくわかるのですけれども。家森委員。

○家森委員

すみません、先ほどもう一つ言いたかったことを忘れていました。

預貸率が低いということが問題になっているのですけれども、その面もあるのかもしれませんが、むしろ預金が集まっているということが、この比率が下がっていることになっているのではないかという気がするんです。というのは、非常にシンプルな世界を考えれば、別に信用金庫が何故か分からないのですけれども、貸出能力がなかったら、地方銀行が貸せばいいわけですから、私は預金が、相対的に言えば集まりすぎる結果、預貸率が低く出ている面もあるのではないかというふうに思います。

むしろ、今後のことはこれからなので、これまでで言いとどめますが、リスクが取れなかったために貸出しが少ないのだとすれば、それはやっぱりリスクを取れるキャピタルの部分が不足していたのかどうかを検証する必要があるのではないかというふうに思います。絶対的なマネーフローとしてのお金はあるけれども、リスクを取れる力があったのかどうかの検証が必要かもしれないというふうに思っております。

○神田WG座長

どうもありがとうございます。

村本先生、どうぞ。

○村本委員

1点だけ。信用金庫の預貸率の減少の問題にかかわるのですが、地銀ないし第二地方銀行の預貸率高まっているということの背景には、実は貸出件数というデータを取りまして、先数でもいいのですか、実はあまりこれは増えていないのですね、地銀の場合。つまり、1件当たりの貸出しを増やすことによって預貸率を高めているということがございますので、その辺はきちっと整理して議論しないといけないかなという感想でございます。

以上でございます。

○神田WG座長

ありがとうございます。

先ほど吉野先生から2つご質問がありまして、一部事務局からご発言頂けるかもしれませんので。それは、1つは地域金融ということで言うと、自治体との連携はどうかということ。それから、もう一つは中央機関の役割、特に情報の収集、利用という点でどうかということなのですが、もしあれば。

○渡邊協同組織金融室長

自治体への融資の関係につきましては、前回に資料を出させて頂きましたが、連携をしているかどうか、個別に調べてみなければわかりませんので、我々のほうでどこまでできるのかということはあるのですけれども、ちょっとトライしてみたいなと思っております。

それから、あと、情報交換がどうかということにつきまして、これも正確にはわからない部分はありますが、ただ中央機関の役割として、資料の一番最後につけております、いつもの参考資料(12-5)の44ページをご覧頂きますと、中央機関の機能ということで、経営力強化とか、こういったことが書いてあります。運用とかですね。したがいまして、こういうことからすると、業界に関するビジネスに関する情報交換というのはちょっと違うのかなという感じはいたします。

ただ、自治体はよくわからない部分があります。ただ、業界には、中央機関のほかに、それぞれの、信用金庫であれば信用金庫協会、それから信用組合であれば中央協会というものがございまして、そうした機関の中においては、いろんなビジネスに関する情報交換というのはあるのではないかというふうに思っております。

○神田WG座長

ありがとうございます。

それでは、その他の点について、小野さんから。

○小野信用制度参事官

まず、自治体との協働ということでございますけれども、中津川先生、佐藤先生がもっとお詳しいかもしれませんけれども、私が知っている限り申し上げます。この資料12-4の17ページをお開き頂きまして、先ほどの多重債務者の生活支援ですけれども、この岩手県の信用生協というのは、岩手県の市町村、自治体が、このような取組みに協力しますという金融機関、ここには信金も入っていますけれども、そういうところに資金を預け、その数倍のお金をこの信用生協に貸し付けて、信用生協がこのような生活支援活動を行っていると、そういう事例がございます。

同じような事例は、宮城県の栗原市というところでも一年前から始めておりまして、やはり同様に、自治体が協力してくれる信金、信用金庫にお金を預けて、その信用金庫から信用生協に融資するというという、2ステップ・ローンみたいな形でしょうか、そういうことを行うような事例というのがございます。

それから、もう一つ、幾つかの先生方から、先ほどの資料12-4の11ページでございますが、信用金庫の業態別貸出残高シェア、それから次のページの信用組合の業態別貸出残高シェアの中で、個人の中の住宅ローンとその他はどういうふうになっているかというご質問がございました。実はこれは、我々も疑問に思いまして、本当は今日、お配りできればよかったんですけれども、直前になって調べましたところ、業界の方々のご協力を得まして、数字が取れました。即ち、まず信用金庫で言いますと、平成元年当時、この個人全体で個人のシェアが24.1%ございますが、このうち住宅ローンのシェアが11.9%でございました。それが、この19年度になりますと、この30.1%のうち、住宅ローンのシェアが23.4%でございます。したがいまして、先ほど宮村先生からのお話がございましたように、仮に先生のおっしゃるとおり、不動産業の18.0%のうち7割ぐらいがアパートローンだとすると、これとこの23.4%を足し合わせると36%で、大体4割ぐらいになると。ですから、先生のご試算は正しいと思います。

それから、信用組合の業態別、一応、ご参考までに申しておきますと、信用組合につきましては、平成元年当時の個人向けローンは17.4%でございますが、そのうち住宅ローンの割合が、当時は5.3%でございました。これがこの19年度になりますと33.6%になっていますが、そのうち住宅ローンが20.5%です。ですから、5.3%から20.5%で、約4倍に増えたということです。

次回の会合のときに、この表、内訳を入れたものをお配りいたしますが、今日は間に合わなくて申しわけございませんでした。

それから、先ほど家森先生からご質問がございました、キャピタルが十分かどうかということにつきましては、後ほど不良債権のところでご説明させて頂きたいと思います。

○神田WG座長

ありがとうございました。

佐藤委員、何かございますでしょうか。

○佐藤委員

先ほど、もうお答えして頂いたようなものですけれども、自治体との連携ということで、資金としては起債に応じるということは結構あって、これはたしか比率が出ていたと思うのですけれども、信用金庫業界としての。

最近特に多いのですけれども、地域振興のためにどういうことを一緒にやっていこうかということが、非常に自治体との間で多くなってきているということで、そういったことが連携ということであれば、実際に自治体が地域振興のために、いろいろな中小企業支援であるとか、インキュベーションのそうした方式を考えるとか、そういったことのために相談をしてこられて、それを一緒にやっていくということは非常に多くなっていると。現実にやっていることも、自治体と商工会、商工会議所、それと私ども、信用金庫ということで、密接に連携を取りながらやっていることが多いというふうに思います。特に多くなっているような気がします。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

だいぶ時間を頂きましたので、次へ進みたいのですけれども、この評価というところを一応何とかまとめないと気持ちが悪いということがあって、先程からずっと考えているのですけれども、ちょっと私の能力が至らずなのですが、最大公約数的にまとめてみると次のような感じなのかなという気がいたしますので、これはそうですというふうに断定するものでは決してありませんけれども、ちょっと一言申し上げて、先へ進ませて頂きたいと思います。

専門金融機関としての役割、地域金融機関としての役割、それから協同組織金融機関という3つの柱が、20年前の中間報告であったわけですけれども、専門金融機関の役割、地域金融機関としての役割というのは、この20年間の間、それなりにというか、表現はいろいろありますけれども、果たしてこられているということかと思います。しかし、十分だったかと言われると、数字等を見ますと、十分とまで言えるところではない部分があるということではないかと思います。

もしそうだとすると、それを、やや失礼な表現で、果たしきれていないと表現させて頂くと、その理由は何かというのが恐らく問題になり、その理由を明らかにして、それを改善していく。特にこういうワーキング・グループでは、その改善のための制度的な工夫なり改善点があれば、それを提言していくということになろうかと思います。そういう中で、この後ちょっとご意見を伺いたい今後の役割として、2から6ということが位置づけられると思うわけです。

そして、協同組織性という点は、恐らくこれまでの昨年来の議論からしますと、協同組織性というのは金融機関の組織形態ですので、専門金融機関、地域金融機関としての機能を発揮するための手段というのでしょうか、としてふさわしいかという、こういう位置づけに恐らくなるのだと思います。それで、手段としては、およそ協同組織でなければならないということにはならないわけです。現に地域金融ということで言いますと、株式会社金融機関も役割を発揮してきているからであります。

そうだとしますと、問いが戻りまして、この20年間の数字を見ますと、十分な役割を果たしきれていない理由は何かと言うときの、その理由としては、それは協同組織性にあるということは恐らく現時点では言えないし、言うべきではないというふうに感じます。ただし、宮村委員の重要なご指摘がありまして、協同組織性、すなわち協同組織形態がいいのか、株式会社形態がいいのかというのは、なお根本論はある。私は個人的には一長一短だと思っているのですけれども、その点は重要な留保が必要かもしれません。

そうすると、果たしきれてこなかった理由はほかに何があるかということなのですけれども、いろいろ考えられて、皆様方のご指摘では、1つは20年間の間の経済環境の変化。ただ、これは株式会社金融機関も同じです。それから、もうちょっと、金融環境の変化という言葉を使われた方もいらっしゃいます。

そういったことよりも、恐らく2つぐらいあって、1つは、今日、先ほどどなたかおっしゃいましたし、前回もご指摘ありましたけれども、有り体に言いますと人材の不足というか、あるいは審査能力の点で課題を抱えていたのではないかと思われること。それから、もう一つは、この後ご議論頂くことになりますけれども、これも有り体に申しますと体力がないというか体力の不足ということです。もしそういうことだとすれば、そういうところを改めていくことによって協同組織金融機関は今後一層、これまでの評価を踏まえますと、専門金融機関および地域金融機関としての機能と役割を発揮していくことができるということになるのであると考えられます。

こういうふうになるのかなというのが、差し当たり、前回と今回の皆様方のお話を聞いてのとりあえずの感想です。ちょっと長く時間を取って恐縮ですけれども、一応先へ進ませて頂きます。

今後、さてということで、今、宮村委員から、住宅ローンについては重要なご指摘とご意見を頂きましたけれども、メモの2.から6.について、あまり異論はないとは思いますけれども、ご意見を頂ければと思います。なお、その後で、不良債権についても今日ご議論頂きますので、2.から6.についてのご意見は、手短にお願い頂ければありがたいと思います。

吉野先生、どうぞ。

○吉野委員

2から6のときに、1つ先ほどの預貸率のお話だったのですけれども、預金が集まりすぎて貸出先がないということですけれども、これは日本銀行の金融政策で緩和をすることによって、それで景気を刺激したいわけですから、それによって金利が下がり、需要があればそこに貸出しができるわけですけれども、先ほどの家森委員のお話ですと、それですとリスクが取れないというわけですから、ちょうどここの2のところの(イ)とか(ウ)にあるミドルリスク・ミドルリターンなり、リスクマネーをどうやってこの信用金庫や信用組合が提供できるかということがないと、いくら日本銀行が金融緩和して量的緩和してもできないということになると思います。それが先ほどの預貸率の低下に関してです。

ですから、普通の供給曲線、需要曲線でない、違ったところの市場をもう一つ考えないといけないのではないかと思います。

それから、全体のこの流れとして、2から6で結構だと思うのですけれども、今、神田先生がおっしゃったところと関係するのですけれども、地元の情報をこまめに取れるというのが、まさにこの信用金庫、信用組合の地域密着の一番いいところだと思うのですが、それがどこかにここの中で当てはまれば、それが入ればいいと思うのです。それがやはり一番情報を取って、そこが日々どうなっているかがわかって、それが6に結びつくのですけれども、そこでうまくいっていなければコンサルティング機能で、あなたのここのところはこういうふうにすればいいですよというところまで情報を提供してあげるということが、一番地元の企業にとっては必要なことではないかと思いました。

それから、先ほど自治体のところはどうもありがとうございました。よくわかりましたので。

それから、信用組合が破綻した大きな理由って、前申し上げて4つあったのですが、1つは、バブル姿、担保に依存した貸出しだったと思うわけですけれども、そうすると宮村先生のおっしゃるように、住宅ローンが増えていくということは、今はいいですけれども、サブプライムローンと同じように、地元が疲弊していけば、結局みんなの所得が減っていくわけですから、その担保価値も安心できなくなると思いますから、担保に依存した貸出しというのはやっぱり気をつけなくちゃいけない。

破綻した理由のところで大口融資、あるいは貸出しの分散が行われていなかったというのが、2番目の大きな理由だったと思います。

それから3番目が、経営者のガバナンス、あるいは経営者の能力。これは、先ほど神田先生がおっしゃった株式会社かどうかというところの違いかもしれません。

それから、4番目が、地域経済で、非常に割合、地域のところで貸していますから、その地域全体が疲弊してしまいますと、やっぱりそこの金融機関もうまくいかなくなると。ですから、4番目のところは、もう少し広域で信用金庫や信用組合を合併するような形で考えていくのかどうかということだと思います。

それが全部、ここの中にその論点が、2から6にうまく入っていればいいと思います。

以上が意見です。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それでは、神吉委員、どうぞ。

○神吉委員

2から6までに指摘されている点を踏まえまして、以前にも申し上げたのですが、やはり問題解決型の金融というようなものを目指していけばどうかというふうに考えております。

その上で、金融が全部ポイントになりますけれども、例えば協同組織ですので、事業計画に基づいて融資していくというようなことをしてはどうかというふうに考えます。事業計画というのは、融資先の経営が不振になってきて再建計画を立てる。それから、じゃあどうしましょうか、というようなことがこれまでは一般的だったと思うのですが、そうではなくて、健全なうちから、事業計画に基づいて計画的に事業を遂行して頂くということでございます。事業計画を見て必要な資金を出していくとか、それから融資先も、事業計画の検証作業を実施して頂く。

そういうようなことを繰り返していって、協同組織金融機関とお客様とが一体となって成長していくというような金融を目指してはどうかと思います。それは銀行もやっていないと思いますので、そういうやり方が考えられるかなと思っております。

○神田WG座長

ありがとうございます。

家森委員、お願いします。

○家森委員

これらの機能、全部重要なんですけれども、これが経営体としてのいわば赤字になるような業務というものを、例えば機能として要求することができるのかというような点で、強制するのは難しいんだろうと思うんです。例えば多重債務者支援というのが、これをきめ細かくやったときに、それで黒字でやるということは多分難しいと思うんですけれども、そうするとその赤字をどうやって埋めるのかというような問題が、多分出てくるのではないかというふうに思いました。

○神田WG座長

ありがとうございました。

村本委員、どうぞ。

○村本委員

2点だけ、課題にかかわるわけですが、1つは、ある種の連携ないしコラボレーションというのが非常に重要で、協働のスキームというのがここに書かれていますが、これをきちっとしていくことではないかと思います。産学官連携と言われていますが、それだけではなくて、例えばファンドと書いてありますが、ファンドのようなものをうまく活用しないと、ミドルリスク・ミドルリターンにいきなりは、なかなか難しいわけでございますから、いかにリスクを取ることをビジネスとして展開するかということに係るわけでございます。これは実は、再生支援でも同様の問題がありまして、再生ファンドの問題等がございます。

後のご議論になると思うんですが、不良債権を処理するという過程で、協同組織の場合どうしてもメンバーシップを考えますから、なかなか処理にいかれないという問題がありますので、早めの再生支援をいかにうまくするかという仕組みですね。業界内で、私はADRをつくればいいんじゃないかとすら思っているんですが、そういうようなことを考えることが、実は必要なのではないかということがあろうかと思います。

それから、神吉委員が言われた事業計画に基づく融資、これは非常に重要なことで、私もコンサルティング機能の2番にありますように、事業全体を見極めるスキルというので、ヨーロッパで行われていますようなインテレクチャル・キャピタルという仕組みがありますけれども、知的資本というのをきちっと評価するというのが、日本でももう必要なところに来ているんじゃないかというふうに考えておりますので、日本では知的資産と言っていますが、そういったものをきちっと評価するようなことを考えなければとても無理かなという印象を持っております。

以上です。

○神田WG座長

ありがとうございました。

原委員、どうぞ。

○原委員

4.の多重債務者支援なのですが、私も言葉としてこの多重債務者支援と書かれると、本当に赤字になるような事業をどうして積極的にやれるかという感じになって、私もここは言葉としては、生活基盤支援というような言葉に変えて頂いて、その1つに多重債務者支援があるということ。このアからイまで書かれておりますけれども、直接に信金、信組がこういったところの個々の貸出しの人たちにお金を貸すということというもですが、先ほどいろんな生協の取組みを紹介して頂きましたけれども、NPO法人も含めて、相談とかそれから家計管理とか、そういったベテランの人たちを抱えた組織というのがあるわけで、そういった組織への助成という形ですよね。そういうことも考えるのがいいのではないかと思っております。

それから、つい半月ぐらい前だったと思うのですけれども、厚生労働省が社協を使って、高齢者を見守るためのファンドをつくるという報道が流れておりまして、社協をベースにして、高齢化している地元社会の中にファンドをつくってみんなで助け合っていきましょうというような形の提案をされていたのですけれども、内閣府でも3年ぐらい前から、高齢者見守りネットワークというものの構築を始めておりまして、こういったところで、社協とか、それから消費生活センターを核にした高齢者見守りネットワークとか、それからこの信金、信組を中心にしてファンドを組み立てるとかという形での生活基盤支援みたいなものも十分考えられるのではないかと思いますので、4.のところは少し範囲を広げて頂いて、今後の課題として頂けたらと思います。

○神田WG座長

ありがとうございます。

佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

最初の評価については、自ら評価するというのもおかしな話で、とても言えたものではなかったのですが、ただ、基本的にこの新しいこれからのあり方を考えていく上でも、過去やってきたことが本当によかったのかということを考える必要は、当然あると思うのですね。

そういう意味で、ちょっといろんな委員の先生方からのお話というのは、私にとっても非常に、1つ1つ、本当にこれはいいといいますか、非常にずっしり来る話ばかりだったのですけれども、ただ、幾つかそのことと、これからも関連しているのでお話しさせて頂くと、預貸率が下がっているのは、必ずしも我々の努力が足りないということの証ではないというふうに感じていて、むしろずっと20年間、どっちかというと過去の預金から貸出しをどうやって増やしていくかということに注力してきた時代だったなというふうに思うのですけれども、それでもそのことがこういう状況になっているというのは、非常にいろんな面で構造的に変わってきた、それが反映されているというふうに思います。

ただ、反映されているから、じゃあ経営としてまずいのかというと、そうではなくて、例えば個人の問題であっても、まさに最初に、20年前に出たあり方についてのお話を整理されたのを今日見ても、本当にこれ、今現代でもこういったことがちゃんとできればいいのだなというふうに思うのですけれども、そのことが本当に分かっていなかったという点は確かにあると思うのです。

ですから、それをわかってきた時代というのがこの20年だったというふうに思いますし、最初の10年は、何とか前の混乱を切り抜けていくということでしたけれども、その後の10年というのが信用金庫にとって非常にこれからどうしていくかということで、これまでのようなことではない、本当に課題解決型の金融というものをやっていくべきだということをわかってきた時代であったなというふうに思っていまして、そういう意味から幾つかお話ししますと、地銀に負けているかどうかというお話もありましたけれども、地銀の場合、例えば私どもの地域ですと支店がありまして、非常に地元よりむしろ積極的に、地銀の地元という意味ですけれども、ほかから来られたところが積極的に非常に安い金利でどんどん貸出しをするという、そういったことをやっているわけで、じゃあ我々はそれに対して同じことをやるかというと、そういうところでできるというのはお任せしようと。

逆に言いますと、我々ができない、本当にそういうことではない、課題の抱えた中小企業の課題解決をしていくというのが我々の仕事だというふうに考えてやってきているわけで、それは中小企業だけではなくて、住宅ローンでもそうですし、例えば住宅ローン、先ほども先生のおっしゃったことに、全く私も共感なのですけれども、他でやれるのであればやって頂いて、それがお客さんにとってもいいのであれば、それはいいのではないかと。

ただ、できない、借りられないという先があるわけですね、それは定型的なものでは。そういった先に対して、本当にしっかりできるようにしていこうということで、商品性もそういったことにしてやっているという事実があるわけですけれども、そういったことを含めて、本当に課題解決というのは、地域そもそもが持っている課題もあるし、個人の課題もあるし、それから中小企業の課題も常に起きているわけで、それをどうやって解決するかということに我々の仕事の焦点を当ててやっていくというのが、これからのというか、もうそういうことをやってきているわけですけれども、やり方ではないかと。

そうすると、今おっしゃられた多重債務者ということについても、生活基盤ということでお話がありましたけれども、私も全くそうだと思うのですけれども、それは単にローンを出すとかそういう問題ではなくて、生活設計ということを根本的に据えて、そうした地域の方々のニーズにこたえるという中の1つに、やはりそうした破綻しそうになったときにどう対応するかということがあるんだと思うんですね。そういうことを真剣にやっていこうとしているということなので、これは非常に、例えばローンだけの問題ではなくて、貯蓄をどうやって将来に備えてやるかということを、我々は定期積金ということで、わざわざ集金、足で稼ぐと言いますけれども、これは稼ぐのではなくて、足で奉仕するというふうな感じでやっているわけです。コストは合わないのですよね。でも、そういったことがやれるのが、協同組織である我々の仕事で、しかもそれを認めてもらっているということが収益に結びつくというふうな形だと思います。

そうなると、ここにあります2から6までの問題というのは、個別の問題というよりは、信用金庫が取り組むべき課題解決を分けてみるとこういうことになるので、最後の6番のコンサルティング機能にしても、課題解決型の金融をやると、そうしたことをやるにはどうしても欠かせないことになるわけですから、これは能力的にも、先ほど能力や体力がないからというふうに言われましたけれども、本当にそういう意味では危機感を持ってこういうものに取り組んでいくということが、どうしても必要だというふうに思いますし、地域金融支援というのも、当然のことですけれども、ただやり方が違うので、例えばミドルリスク・ミドルリターンということを1つ取り上げても、我々の場合にはそのリスクに応じたリターンを得るということはちょっと意味合いが違っていまして、どれくらい手間暇かけたものができるかという、そうした、そういう意味でコミットメントコストというふうに言っているのですけれども、そうしたコストがあると。それはやっぱりそういうことで認めて頂いてフィーを頂くというふうにしていかない限り成り立たないということも言えるのですけれども、何とかそういうことをできるための能力をつけて、トータルでやはりこういうことをやらなければ、中小企業だけがうまくいくということではだめですし、個人だけがうまくいくということではだめで、地域の課題というのはそういうことではない、やっぱり総合的に対応していけなければいけない。そのための存在として存在意義があるというふうにも感じています。

ちょっと長くなりましたけれども、そういうことが私は方向なのではないかなというふうに思っております。

○神田WG座長

ありがとうございました。

お隣の中津川委員、どうぞ。

○中津川委員

似たような内容になりますから、手短に申し上げます。

1つは、資料の中で、地元の中小企業、地場産業への貸出金が極めて少ないというご指摘ですけれども、これはちょっと違和感がありまして、例えば不動産業であるとか、不動産の賃貸業というのはそこには入らないよという見解でございますが、少なくとも私のような、東京というエリアで商売をしていますと、不動産の賃貸業というのはある種の地場産業だという理解に立てるはずなんですね。ですから、今、商業ビルであれ住居用のビルであれ、これはやはり地元のニーズというのはかなりありますから、そういう意味でそこを数字として外した評価でいいのかどうかという、1つ疑問が1点ございます。

それから、先ほど佐藤委員からのご指摘のとおり、地銀が預貸率が非常に高くて云々というご指摘でしたけれども、これは我々経験則からしますと、全く佐藤さんのおっしゃるとおりで、どこどこ県に本店がある地銀が東京に支店を出して、その支店で運用をもう猛烈にやると。この結果として融資が増えているという側面があることも、また否定できません。

それから、預貸率の問題、これは確かに低下してきておりますし、事実でございます。これはじゃあ中小企業に対して積極的に貸さないから預貸が下がっているのだというご理解だと、ちょっと私どもとしても不本意かなと。やはり何で、それじゃ貸出しが増えないかという背景は何ぞやと。これは我々の努力の問題、片方では当然多くありますけれども、資金のニーズが果たしてその地域であるのかどうかという問題。ニーズがないとすれば、何でないのかと。それは産業政策その他いろいろな絡みが出てくるわけでございまして、私どもだけの例で申しますと、私どもは東京全域でございますので、地域を5つほどに分割して評価をしているんですが、やはりその5ブロックで非常に高い伸び率の貸し金の地域と、それから逆に大きくマイナスしている地域というのは当然あるんですね。アベレージとして何とか預貸が7割近く維持できているんですが、そういうことが一金融機関ではなくて、信金、信組としての全体像として、そういう地域性という問題を考えて評価をして頂きたいなという点がございますので、一応申し上げさせて頂きました。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

どうしましょうか、もしよろしければ、2から6はこのぐらいにして、もし追加でご意見、ご感想があればまた事務局のほうにでもご意見頂くことにして、不良債権の問題についても何とか今日、多少ご意見を頂きたいのですが、よろしゅうございますでしょうか、そういう進行で。

それでは、すみません、不良債権問題について、前回から先送りになっておりますが、今日もちょっと時間が限られておりますので全部は無理かもしれませんが、ご審議をお願いします。

これにつきましても、事務局が資料を準備してくださいましたので、事務局から内容についてのご説明をお願いします。

○小野信用制度参事官

それでは、お手元の資料、12-4の資料でございますけれども、18ページをお開き頂けますでしょうか。18ページに、業態別の不良債権比率の推移というものがございます。これは前々回にもお示ししたものでございますけれども、この推移を見てみますと、信用組合が平均で、20年3月末で10.3%、それから信金が6.4%ということになっておりまして、一方で都市銀行は1.4%でございます。

都銀か地銀の場合には半期決算、あと四半期決算を行っていますので、9月末

を見ると、やはり世界的な金融市場の混乱の影響を受けまして、昨年の9月末にはじわじわと不良債権比率が上がりつつあるということでございます。

また、先般発表されました主要行の12月の四半期開示を見ましても、各行によって状況は個々ではございますが、決して状況は不良債権比率が下がっていくというベクトルの方向ではない。むしろやや上がり気味の方向ということでございまして、これはおおよそ全業態に言えることでございますので、信用金庫、信用組合の不良債権比率も、この21年3末に向けて上がっていく可能性は大いにあるのではないかというところは懸念されるところでございます。

それで、次のページをお開き頂きたいのですが、19ページでございます。これはどう見るか、ちょっと見にくい表でございますが、上のほうは不良債権の処理をどうやっていくかというフローの表でございまして、下がストックの表でございます。即ち、先に下のほうから見て頂きたいのですが、下のほう、大ざっぱに言うと、要するに左側が、不良債権がどのぐらいあるかという棒グラフでございまして、それに対して右側の棒グラフは、純資産がどれだけあるかというのを信用金庫全体で足し合わせたものでの推移でございます。

それを見ていきますと、10年、11年、12年、13年、14年と不良債権のほうがむしろ純資産より多い状態にあったわけでございます。それをだんだん減らしていくわけですけれども、その減らしていく原資は何かというのが、この上のほうのフローでございまして、即ち、右側が実質の業務純益でございまして、この稼ぎ出した業務純益の中から不良債権の処分、即ち注1に書いてございますが、一般及び個別の貸倒引当金繰入額と、実際の貸出金償却というので、要するに業務純益の中からそういう引当金を積み充てる、または実際に償却するということでやっていって、処理していくということでございます。

そうしますと、この10年を見ていきますと、信金業界の場合には、業純の相当部分を不良債権処分に充てて、ストックベースでの不良債権をどんどん減らしていくべく努力したと。その結果、平成15年には不良債権と純資産がほぼ並んで、その後は今度はだんだんむしろ純資産のほうが積み上がってはきていると。そういう状況にあるわけであります。

ただ、やはり気になるのは、この21ページをお開き頂きますと、全国銀行との対比を見て頂くとお分かりいただけると思うのですが、全国銀行の場合もこの下のほうを見ていきますと、ストックベースで不良資産が、平成10年のときには不良資産と純資産がほぼ並んでいたと。そういう中で、資産や不良資産が増えていき、平成13年にはむしろ純資産を上回るようなベースでありましたが、それをこの上の表のストックベースで見ると、業務純益をはるかに上回る不良債権処分を一生懸命行っていき、ほぼ平成15年ぐらいに大体ピークアウトして、その後は不良債権がどんどん減っていき、むしろ、どんどん純資産が積み上がっていくというような構図になっております。それでこの平成19年のところの純資産と不良債権の隙間というのを見ますと、相当空いている。それに比べると、信金の場合には、まだ隙間が、全国銀行に比べると少ないし、今後さらに不良債権が増える見込みであることを考えると、準備として大丈夫かなということでございます。まさに右側がキャピタルでございますので、キャピタルと不良債権の関係について、これをどう見ていくかということが、先ほどの家森先生のお問いかけではないかというふうに見ております。

同じようにして、次の20ページで信用組合を見てみますと、状況は同じでございまして、平成10年当時、純資産をはるかに上回るいわゆる不良債権というものがある中で、やはり上のほうのフローベースで見ましても、業務純益というもので一生懸命不良債権処理をやっていったと。ただ、特に業務純益が十分出ない中では、ドラスティックに不良債権を減らすことはできないということで、業務純益の範囲の中で、特に平成14年以降は、その処分をしているということで、非常に緩やかな処理という形にどうしてもならざるを得ないということです。結局、平成19年度で不良債権のほうが純資産より少し頭が出ているということでございますので、信用金庫がほぼ15年でピークアウトしたのに比べると、まだ少し厳しい状況にあるということではないのかと思います。

それで、そういう状況を見まして、22ページでございますが、不良債権というのはどういう意味を持つのかということでございますけれども、これは委員の皆様には釈迦に説法かもしれませんが、もう1回改めて、その不良債権が持つ意味というものを、金融機関のバランスシートに係るポンチ絵をつくって考えてみました。つまり個別の不良債権、ある貸出債権がこのバランスシート上で不良債権化するとなりますと、これは当然、個別の貸出引当金を積むか、償却することとなりますので、当然その分、自己資本が食われるということになります。これが右から2番目の表になるわけです。さらに不良債権をいつまでも持っていまして、時間がたっていきますと当然、担保価値が下がりますし、業績の悪化等によりまして、どうしても個別引当金をさらに積み増す必要が出てくると。そうすると、さらにその分、自己資本が食われるということで、このままでいきますと、自己資本が縮むわけですから、当然新たな貸出しというのはできないと。つまり金融機関のリスクテイク能力が低下するということになるのではないか。これはまさに先ほどの家森先生の問題提起と軌を一にする話ではないかと思います。

したがいまして、不良債権が高くてもやむを得ないという議論、ある程度高くても良いのだという議論にはならない訳であり、不良債権問題はきちっと対処していかないと、自己資本がどんどん減少していって、新規貸出しが困難になるのではないかということでございます。

以上でございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

それでは、委員の皆様方からご意見を頂きたいのですが、論点メモで申し上げますと、ややこしくて恐縮ですけれども、今日のワーキング・グループの番号で言うと12-1という、毎回お配りしております論点メモ(要約版)というのがありまして、それを目次の次、右下のページ数で2ページというのをご覧頂きますと、1.総論、(1)中小企業金融というふうにあります。この(1)の中小企業金融のうちの黒丸の下3つが不良債権問題になりますので、ちょっとお時間を取りますけれども読み上げますと、最初の黒丸が、中小企業金融において期待される役割を遂行していく上で、高止まりしている不良債権比率についてどのように考えるか。2つ目が、不良債権問題に対するこれまでの取組みをどのように評価するか。そして3つ目が、今後、不良債権処理を進めていく上で、中央機関との連携等の方策についてどのように考えるかということでございます。

今日は時間が限られておりますけれども、どなたからでもご意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

村田委員、どうぞ。

○村田委員

ただいまのご説明にございましたけれども、いわゆる不良債権比率が高止まりというよりも、表現としては増加しているということではないかなと理解しております。

そして、この不良債権比率というのは、数字で示される大きな基準ではありますけれども、この不良債権比率の高い低いかだけでその金融機関がいいか悪いかということを評価するのではなくて、むしろ評価するのは、その金融機関が企業の、いわゆる苦しんでいる企業といいますか、そういった企業にどのように取組み、どのように対応して、事業再生に力を出しているか、事業再生のために努力してきたか、そういったことで、この不良債権問題というのはとらえていくべきであろうと、私は思っています。

○神田WG座長

ありがとうございました。

神吉委員、どうぞ。

○神吉委員

必ずしも問いかけに対する答えというような形ではないのですが、申し上げます。不良債権問題を考えますときに、2回ほど前の会合で、佐藤委員からのご発言があって、ある程度高くならざるを得ないというような趣旨のご発言だったと記憶しておりますけれども、当局の認識、問題のとらえ方と、ずいぶん違うというふうに感じたところでございます。

それで、私なりにこの不良債権問題について考えます場合に、2つの見方があるのではないかと思っております。まず第1は、会員、組合員との関係のあり方に関する問題でございます。

その中にさらに2つございまして、1つ目は、事業再生重視の考え方に切り替えていくということが重要かと思います。世の中がすべて早期に事業再生を図るという考え方に切り替わってきておりますので、それを徹底していくということでございます。

2つ目は、相互扶助というのは貸し続けるということじゃないということを確認しておくということが重要なのではないかと思います。先ほど私から申し上げましたように、事業計画に基づいて融資してまいりますと、早期に経営の悪化傾向をとらえて対応するということもできていくのではないかと思います。

それから、第2は、融資業務の運営のあり方に関する問題でございます。これは非常に細かい問題になりますけれども、これも2つに分けて考えられようかと思います。

1つ目は、やはり協同組織金融機関の中で、特定人への権限の集中を避けた組織的な融資運営を図るということ。つまり、融資審査体制の確立をしっかりするということでございます。これは既に十分できているのかもしれませんが、理念どおりに徹底させるということでございます。

それから、2つ目は、これは佐藤委員、中津川委員の前では申し上げにくいのですけれども、いわゆる「役員銘柄」、あるいは「トップダウン融資」のようなものを排除するということでございます。えてしてそういう銘柄に不良債権の温床があるというような事例が多いと、私は認識しております。ですから、先ほど申し上げましたように、組織的に融資審査をしてまいりますと、そのようなことも排除できようかと思います。

それから、さらにそれを徹底します上で、非常に細かいことですけれども、融資稟議書に融資の取り上げ経緯を明確に書くということ、どういう経緯で取り上げたのかを書くということが有益ではないかと思います。これを実際に運用しますと、「先方申し出による」というふうに、すべての稟議書に書かれてしまえばそれまでなのですけれども、どういう取引経緯を経て、何を契機としてこの融資を取り上げるのかということをはっきりさせていくことによって、融資の健全化も同時に実現できるのではないかと考えております。

以上でございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

別に反論とかそういうことでは全くないんですが、役員銘柄というのは、これはもう論外ということで、ただ、これに関して言うと、地元のことを非常に精通しているという、そういったことは狭い地域で、それこそ若いときからずっと来ていますので、そういう意味では、役員であっても職員であっても、そういったことに精通していると。だから、知っていていいことと悪いこととあるということはあると思うのですね。ただし、今のような審査の体制、内部統制の中で、役員銘柄どうのこうのいうようなレベルというのは、私にはちょっと理解できないという、そういうことを1つ、ちょっとお断りしておきます。

もう一つは、拘るようですが、課題解決というのが、多分先生のおっしゃった再生重視と。その事業計画に基づいた融資ということになるんだと思うんですけれども、そういうことをやることが、逆にリスクを取るということになって、それを前提にしますと、私は不良債権比率高くてもいいという前提で言っているわけではないのですが、自然に課題のあるところほど企業は危なくなるというのは、これは最も大きな課題になるわけですけれども、そうしたところほど、我々の一緒にやっていく価値が生まれるというわけですよね、ニーズがあるという意味では。ですから、そういうところを避けて通ったのでは、我々の仕事の価値は生み出せない。また、存在価値もないということになるので、そうしたところをできるだけというか、どれだけ多く手がけられるかという、中小企業金融で言うならば、それが前提になっているので、どうしても一定の不良債権比率という問題は抱えざるを得ないというのが当然なので、それをメガバンクのようにどんどん切っていけばいいという、そのこととは全く違うビジネスモデルだというふうに私は思っているんです。

ですから、高くなるのは、そういう意味ではやむを得ないけれども、だからそれを処理できるだけの本当のコンサルティング能力を、その価値を生み出すだけのそうした力があるかどうかという問題でバランスが取れていけば、将来的にも非常に不良債権というのは、逆に我々の仕事だということから評価されるし、またそういったことで、地域での存在価値と収益は生まれると。だからそれをやっていくだけのリスク管理という問題、一番大事なのは情報だと思いますけれども、それをどうやってしっかり把握できて、将来に向かって中小企業をよくできるかと、なれるかということを、経営者とともに時間をかけてやっていくという、そういう融資のあり方がリレーションシップで言われているのですけれども、ですから不良債権問題というのは必ずしもその比率だけで考えるのではなくて、そこでやられていることと、全体としての収益とのバランスでそれができるのかどうかという、そういう問題を考える必要があるというふうに思っているということでございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

神吉委員、どうぞ。

○神吉委員

すみません、ちょっと補足したいことがございます。先ほどの「役員銘柄」、「トップダウン融資」のところでちょっと説明が足りなかったのですが、なぜ問題かといいますと、往々にしてそういうものについて、審査が無機能化するというところが問題だというふうに私は思っております。それだけでございます。

○神田WG座長

では、お隣の中津川委員、どうぞ。

○中津川委員

都内の信用組合の資料しかないので、あれなんですが、破産更生債権だけを信組と信金とか地銀さんと比較しますと、やはり信組というのは5%から10%高い、これは事実でございます。これの理由というのは幾つかあるんですけれども、1つはオフバランス化がなかなか進んでいないと。これは、今、佐藤委員からもお話が出たように、ある意味でドラスティックにはやっていかないといいますか、取引先との話し合いの中で処理を進めていくということが多分に多いのが原因であろうかなという気がいたします。

したがって、かなりそういう意味では地域性というのか、人縁、地縁というものを引きずった中での不良債権の処理がなかなか、ある意味でスピードが上がらないというところが1つあるのかもしれません。

それから、やはり信組が、全部はわからないんですけれども、部分償却をしていないところがかなりあるんじゃないかという気がしまして、こうした部分償却が進んでいるところと、同じように不良債権比率を比較すると、ちょっと違うファクターが出るんじゃないかという心配がございます。

それから、やはりこういう不況期は、我々信組というのはある意味で、今までご指摘のとおり、収益力が低いですから、不良債権の処理が遅れます。一方で、不況期は不良債権の発生が増えますから、不良債権比率そのものの上昇を必然的に招いてしまう。こういう縮図というのか、そういうものがどうしてもあって、そこからはなかなか脱却が難しいなという気がしております。

ですから、ある意味で、企業が体力を落としたときというのは、もちろん血液になる資金の供給というものが非常に重要ではあるんですけれども、一方で、返済の猶予等を図って、バランスシートを整理をしていくというような処置を、積極的に我々としてもやっていく必要があるのかなというふうには考えております。

もう1点、ちょっとやっかいなのは、相互扶助ということを標榜しております信組として、大変不況時に苦しんでいる企業に、リスクに見合った金利を取っていくということの、ちょっとやっかいな問題を抱えておりまして、以前にもお話ししましたけれども、苦しいところからは逆に金利を下げて、順調な成績のいいところから頂いていますよというお話をしましたけれども、こういう点も含めて、1つ数字をにらんで頂きたいなという気はいたしておりますので、お願いします。

以上です。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。村本委員、お願いします。

○村本委員

不良債権の問題というのは、これは悩ましい問題、協金の場合、特に悩ましい問題だろうと思います。特に、よくリレーションシップバンキングと言われますけれども、ソフトバジェット問題と称する、どうしても丁寧に企業を見ようとすれば、ソフトバジェット的な融資をせざるを得ないという問題があります。非常に悩ましい問題であろうと思いますので、1つは、協金的な不良債権処理というのは、やはりきちっと考えて頂くのが、1つ大事なのではないかというのが1点でございます。

もう1点は、さはさりながら、自己資本というのは毀損するわけですから、いかに自己資本を充実させていくかというのも考えて頂かなければいけない。劣後ローンという手段があるわけですが、それ以外に何があるのかと。場合によれば、現在整備されましたような法体系の中で、これを解決することもあろうというふうに考えております。

それからもう1点だけ、先ほどちょっと申し上げたわけですが、早めに再生支援をするというのは非常に重要なことでございます。現在、国の制度としては、全国都道府県に再生支援協議会というのが整備されておりまして、もう数年、事業をしております。約1万数千件の相談をして、2,000件ぐらいの再生計画を完了しておりますけれども、これを利用している金融機関の比率を見ますと、6割以上がいわゆる地域銀行でございます。協同組織金融機関は2割でございます。

つまり、なかなか持っていきにくいという問題がどうもあるようでございますので、いかに協金らしい支援協議会をやはり整備していくかというのは、実は重要なポイントになろうと思います。

支援協議会というのは、法律的にはいわゆるADR、裁判外紛争解決機関というものでございますので、こういうものを持っていないと、なかなか制度としては整備できないのではないかと思いますので、そういう課題も指摘しておきたいと思います。

以上でございます。

○神田WG座長

ありがとうございました。

お隣の家森委員、どうぞ。

○家森委員

不良債権問題で、2種類ぐらいの問題があると思うんですが、1つ目は、明らかなのは、これは健全性の問題です。そういう意味で言うと、この不良債権の比率というのは、ここに出ているのもそうなんですけれども、担保で保全されているとか保証で保全されているという部分が、実は入っていることになると思いますので、本当に健全性が脅かされる部分というので比較する必要があるというのが1つ目の論点です。

ですので、先ほどの信用金庫や協同組織金融機関の意義からすると、もうかなり前になりますけれども、私が春に発表したときにも、最後の貸し手としての機能があるというような実証結果を紹介させて頂きましたけれども、そういう点からすると、逆にこれがポジティブに評価できるのかもしれないということにもなる。ただ、健全性が脅かされるのは明らかに問題なので、その点については細かな情報に基づいて議論しないといけないというのが第1点の趣旨です。

それから、もう一つの問題点は、こういう形で非効率な企業とか、社会にもう存在意義がなくなってきたような企業を生きながらせることが資源配分上問題があるという議論が当然あって、そういうところが生き延びているのかという、いわゆるゾンビ仮説みたいなことなのですけれども、そういう問題がある。

ただ、それになると、それは信用金庫のお客さんだからゾンビ化するというようなことが本当に起こるのかというような問題になっていくので、地銀のほうがゾンビ化させない能力が高いとか低いとかという議論をやらないといけなくなってくるという、2点ぐらい見る必要があるのではないかと思います。

○神田WG座長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。そろそろ時間のようですけれども、もし特にご発言がありましたら。さらにまたお考え頂いて、あるいはどなたかございますか。よろしゅうございますか。またさらにお考え頂いて、お気づきの点や知恵がありましたら事務局まで出して頂ければと思います。

先ほど中津川委員がお使いになった表現で言いますと、資金は血液だというふうにおっしゃったので、そういうことで言うと、不良債権は中性脂肪というか、たまるとメタボになって、これは健康でないということになりますので、やはり対策をというか、運動しないといけないということだと思います。そのための知恵と工夫というのは、先ほどから、それからこれまでも幾つかご示唆頂いておりますので、このテーマは引き続きご意見を頂くということにさせて頂きたいと思います。

今日も大変率直で、また多面的なご意見を多くの方から活発にお出し頂きまして、本当にありがとうございました。本日の会合はこのあたりとさせて頂きます。

最後に、事務局からの連絡等をお願いいたします。

○小野信用制度参事官

本日もお忙しい中、大変真摯なご議論を頂き、ありがとうございました。

次回の協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループでございますが、今、神田先生からお話がございましたように、今日は必ずしも時間が十分ではなかったと思われますので、もし必要があれば、次回も引き続き不良債権問題についてご議論頂きまして、その後、業態別のあり方と中央機関の役割についてご議論頂くことを予定してございます。

次回は4月3日金曜日、午後4時からを予定しています。正式には追ってご連絡いたします。何とぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

○神田WG座長

ありがとうございました。

それではこれで散会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室
(内線3568、3577)

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