金融審議会「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(第51回)議事録

1. 日時:平成21年4月24日(金曜日)10時00分~12時00分

2. 場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○山下WG座長

それでは、定刻でございますので、ただいまから第51回保険の基本問題に関するワーキング・グループの会合を始めさせていただきます。

皆様方におかれましては、本日もご多用のところお集まり頂きまして、ありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議も公開ということになっておりますので、その点をまずご了解いただきたいと思います。

それから、本ワーキング・グループ委員の異動がございましたので、ご紹介いたします。3月末をもちまして、森崎公夫委員が本ワーキング・グループ委員を退任されまして、新たなメンバーとして瀧下行夫委員をお迎えしております。よろしくお願いいたします。

それから本日の出席者でございますが、小島委員、根本委員、野村委員、山手委員、米山委員がご欠席ということを伺っております。また、第二部会のほうからは太田委員、金丸委員、高橋委員、増井委員にご出席頂いております。なお、太田委員は今年度から新たに二部会の委員になられております。よろしくお願いいたします。

それでは、本日の議事のほうへ移らせていただきます。本日は事務局側より保険金支払についての説明、さらに海外出張報告として、海外における募集・支払及び保険料積立金等の制度等についてのご説明を頂くことにしております。事務局のご説明をすべて伺った後、皆様方に自由なご議論を行っていただきたいと考えております。

それでは、まず長谷川保険課長よりご説明をお願いいたします。

○長谷川保険課長

保険課長の長谷川でございます。

お手元の資料の51-1、保険金支払いについてという資料に沿いまして、ご説明を申し上げます。

表紙めくっていただきまして、1ページでございますけれども、これは近年の生保、損保の保険金の不払い問題と言われているものについての一覧にした資料でございます。4つ箱がありますけれども、左2つが生命保険会社に関する部分、右側が損害保険会社に関する部分です。それぞれ上半分が不適切不払いと言っているものでございまして、これはどちらかと言いますと意図的に払わなかったというものであります。逆に下半分は、どちらかと言いますと過失的なもの、あるいは支払い管理態勢の不備によって支払われなかったようなもの。多くは請求者が請求をしなかったということもあって、支払われなかったようなものであります。それぞれ報告徴求をいたしまして、各社からの報告を受けて、それに基づいて問題の大きいところについては業務改善命令、特に悪質なものについては業務停止命令という処分を行っております。また、報告徴求の結果判明した不払いの件数、金額はここに記載のとおりでございますけれども、いずれもほぼ100%、現時点では支払われているということになっております。

次の2ページでございますが、それぞれの具体的な事例を見ていただこうと思います。

まず、左側の不払いのほうでございますけれども、典型的な事例を掲げておりますが、最初のポツのところですけれども、これは契約者側に告知義務違反があったわけですけれども、これについては、保険会社が告知義務違反を理由として解除する場合は、約款上、契約効力発生から2年以内というような制限があるわけですけれども、この事例はこの2年を超えていたので、告知義務違反を理由とする解除はできなかった。しかし、それがあるがゆえに、その告知義務違反ではなくて約款上の詐欺無効という規定を適用して、本来支払うべき保険金を支払っていなかったわけです。ただし、この事例においては、契約者側の告知義務違反は意図的なものではなくて、詐欺を問うことが困難な事例であったわけですけれども、約款上かなり無理な解釈をして詐欺無効を適用して払わなかったという事例であります。

その下のポツは、これは募集の段階で、募集人が告知しなくていいですよということで、ある意味では告知義務違反を教唆したにもかかわらず、保険金を支払う段階で告知義務違反、さらには詐欺無効を適用して支払わなかったという事例であります。

それから、その下の3番目ですけれども、これは医療保険ですが、保険責任開始以前の発病について、約款上は医師の判断で保険会社の免責が認定されることになっていたわけですけれども、社員が医師の診断に基づかずに、勝手に認定を行って払わなかったという事例であります。

それから、右側の支払い漏れのほうですけれども、最初のポツですが、医療保険ですけれども、通常、医療保険の場合は診断書を契約者の方が保険会社に送って、保険会社のほうでその診断書を見て該当する保険金を支払うというような事務フローが多いわけですけれども、診断書はお医者さんが手書きで書く場合もありますので、見落としがあって払うべき保険金が払えなかったという事例であります。

それから、2番目のポツですけれども、これも医療保険ですが、これは複数の特約があるような場合について、その主契約である入院給付金については請求があって支払ったけれども、特約の通院給付金については請求がなかったので支払われなかった。これは原因としては、もともと契約者側には請求書のフォーマットというのはなくて、契約者のほうが何か問題が起きたときに保険会社に電話で連絡して、保険会社のほうから請求書を送ってもらう。そのときに、主契約の請求書は送ってもらったけれども、特約については言い忘れたということもあって送ってもらえずに、結局、その特約については請求はできなかったという事例が多くありまして、これは請求書がそもそもフォーマットが別々になっているというところにも問題があったと思っています。

それから、3番目は自動車保険ですけれども、これも同じように、特約についての保険金については請求がなかったために支払われなかったということであります。特にこの自動車保険の特約はさまざまなものがありまして、恐らく契約者自身もこのような特約があることについて知らなかった場合も多かったのではないかというふうに思われます。

こういった事例が典型的な事例でございましたけれども、この原因ということで5点整理をしております。1つは、まずもって、経営陣においてこの適切な保険金支払いの重要性についての認識が不足していた。さらには、支払い渋り、現場が支払い渋りをすることを助長するような社内風土を醸成していた。例えば利益を優先、利益優先主義で利益を上げるための数値目標を経営陣が立てるとしますと、例えば死差益を○○億円増加するとか、損害率を○○%に引き下げるとか、そういう数値目標を立てますと、どうしても現場は保険金の支払いを抑制する傾向になってしまう。こういった問題がありますので、まずもって経営陣自身がしっかりと保険金支払いの重要性についてよく認識して、全体として支払い渋りを行わないような態勢を整備する必要がある。そういう意味での、経営管理態勢の抜本的な改革が必要ということであります。

それから、2番目は現場における保険募集人あるいは支払い査定担当者に対する研修や指導の不足、あるいはマニュアル等の未整備ということですので、これについては従業員の教育の徹底や、マニュアルの整備ということが必要になろうかと思われます。

3番目は、商品開発、募集、支払い等の各部門間の連携不足ということで、先ほど申しましたように、商品がどんどん複雑になってきますが、一方で、募集や支払いの部門はそれに追いついていない。複雑化した商品をしっかりと募集段階でよく説明できなかったり、あるいは支払いの段階でもよくそこを認識していなかったという問題があります。そういったことで、各部門間の連携、一貫した態勢整備・連携強化ということが必要になろうと思われます。

4番目は、さらに内部監査による検証・牽制の不徹底ということで、内部監査部門がしっかりとそれをチェックする必要があるわけですけれども、内部監査部門の独立性確保・機能の強化、さらには外部の専門家による外部の目を使ったチェックの強化ということも必要になろうかと思われます。

それから、顧客からの苦情や相談というものが会社に寄せられるわけですけれども、これに対して個別の対応が不十分だったり、あるいはそういう苦情や相談が多数寄せられていることについて経営陣が必ずしも十分認識していなかったという問題がありました。したがいまして、そういう苦情・相談に対する対応強化、あるいはそういう問題についての経営陣による適切な関与ということが必要になろうかと思われます。

こういった発生原因と改善の方向性を踏まえまして、その下にありますように、特に問題のある社に対しては、それぞれ業務改善命令等を発出いたしまして、現在、各社の業務改善計画の進捗状況をフォローアップしております。また、あわせまして監督指針も改正しておりますし、また、各事務年度ごとに監督方針というものをつくっておりますけれども、その中でも重点項目として取り上げております。

3ページ、4ページは、それぞれ業務改善命令を受けまして、各社が出してきています業務改善計画をアグリゲートしてまとめたものでございます。個別の社の計画の概要は、それぞれの会社のホームページ等で公表しておりますので、そういったところをご覧いただければと思います。ざっと見ていただきますと、左側の不払いのところは、これは実は生保は1社でありますけれども、1のところはガバナンス態勢の抜本改革ということで、委員会設置会社に移行して経営の監視機能、監督機能を強化したとか、総代について一定割合を立候補制にしたとか、内部監査を強化したなどが掲げられております。

2番では、保険金等の支払い管理態勢の抜本的な見直しということで、支払い業務の適切性を点検する支払い審査室を設置したり、あるいは不払い決定案件を再度検証するような審査会ですとか、さらには不払い決定に対する不服申し立て制度を創設するとか、あるいは不払いの事例について四半期ごとに開示するといったようなことをやっております。

あるいは、3番目ですと、苦情対応・処理の一元化ということで、お客様の声統括部といった専門の部署をつくったり、さらに、そういう苦情の件数や具体的事例等を四半期ごとに開示して、さらには、その改善策などについても毎年、お客様の声白書という形で発表しているというようなことをやっております。

右側の支払い漏れ。これは10社をまとめたものですけれども、同様にガバナンス態勢の改善・強化、内部監査態勢の改善・強化。それから3として、再発防止策の改善・見直しということで、こちらはどちらかといいますと過失的な問題でありますので、再発を防止するためのさまざまな施策を掲げております。例えば3番目の○ですと、支払い事案に対して全件事後検証を実施するとか、その下の保険商品をそもそも簡素化していくとか、あるいはその下にありますように、販売時の商品説明を充実するとか、さらには下から2番目のように、そもそも請求書が複数になっていて、請求者の方からすると非常にわかりにくいという問題がありましたので、請求書を一本化していくといったことも実施、検討しているところであります。

4ページは、損害保険会社の業務改善計画の概要ですけれども、これも同様の内容の項目が掲げられておりますので、説明は省略させていただきます。

5ページは、当局としましては、こういった不払いの問題を受けまして、平成18年に監督指針を一部改正をしております。項目程度の説明にとどめますけれども、(1)にありますように、まずもって取締役自身が十分認識してもらう。あるいは、取締役会がしっかりとその機能を発揮して、現場任せにするようなことはしないといったような趣旨のことを書いております。(2)は、バックオフィスとしての支払い管理部門の管理者自身についても十分よく認識し、その役割を発揮してもらうということ。それから(3)は、現場での支払い査定担当者の人材育成とか、査定能力の維持・向上。6ページですけれども、(4)は関連部門がしっかりと連携するということ。(5)はバックオフィスとしての支払い管理部門における態勢の整備。(6)は内部監査の機能の発揮。さらには、(7)では外部監査もしっかりと機能を発揮してもらう。そういった組織全体としての機能を発揮して、こういう不払いの問題に対応していくということを求めております。

7ページは、その中で毎年出しております監督方針ですけれども、これは昨年の夏に出しました20事務年度の監督方針ですけれども、その中で最初の1番の項目としての(1)で、適切な保険金等支払い管理態勢の構築というものを掲げております。マル1で経営陣がこの問題に主体的に関与する。そういう態勢が整備されているかということを検証する項目として掲げております。マル2でも、保険金等支払いに係る事後検証や内部監査が適切に行われているか。あるいは、部門間の連携が有効に機能しているかについて検証する。マル3については、再発防止策について、単に事務ミス等を防止するための態勢整備の状況だけではなくて、まずは契約者等がみずから必要な保険金等を漏れなく請求できるような環境が整備されているかを検証する。特にこれは保険金の支払い漏れのほうを念頭に置いているわけですけれども、基本的には請求者が請求をしていただく必要があるわけですけれども、これまでの事務フローを見ると、必ずしも請求者が容易に主体的に請求できるような事務フローになっていなかったということを踏まえまして、自己責任原則ではあるけれども、請求者にとってその自己責任原則がきちっと発揮できるような環境を保険会社のほうでしっかりと態勢整備してもらう必要がある。例えばとしまして、保険金等の請求手続に関し、請求者等が請求可能な保険金等の内容を漏れなく把握でき、容易かつ主体的に請求できるような仕組みとなっているかを検証するということを掲げております。

また(2)では、保険募集態勢の確立の中で、この請求時の請求手続について顧客が十分に理解できるような説明態勢が構築されているかを検証するということも掲げております。こういった形で監督指針や監督方針にもこの支払い管理態勢の整備について掲げることによって、今後ともこの監督当局としては、保険会社がしっかりとその保険金を適切に支払うようフォローをしていきたいというふうに考えております。

少し長くなりましたけれども、私からの説明は以上でございます。

○山下WG座長

ありがとうございました。

それでは引き続きまして、保険企画室の方々より海外出張についてのご報告を頂きます。よろしくお願いいたします。

○吉住課長補佐

保険企画室の吉住秀夫でございます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

先般、アメリカのニューヨークとイギリス、ドイツに調査出張してまいりましたので、その結果をご報告申し上げます。

今回の調査は、保障性商品を中心といたしました保険の募集・支払い、そして後ほどご報告いたします保険料積立金についての調査を行ってまいりました。今回、この3カ国を選びましたのは、今後の保険の募集・支払いのあり方を考える上で、やはりアメリカの状況、特に州の独立性が高いアメリカにおいては代表的な州でありますニューヨーク州の状況を見ておく必要があるということ、あと、イギリスでは近年、保険関係の規制、FSAのハンドブックの改正があったこと、ドイツにつきましても、同様に新保険契約法が2008年1月より施行されていること、こういった理由によるものであります。

それでは、恐縮でございますが、1ページを開いていただけますでしょうか。

「はじめに」というところで書いておりますが、今申し上げましたような理由によりまして、アメリカはニューヨーク州の保険庁、ここはニューヨーク州保険を所管しております。イギリスは日本の金融庁に相当いたします英国金融サービス機構、FSAを訪問いたしました。この機構は金融サービス市場法に基づき監督機関として2001年に設立されております。さらに、この機構は有限責任保証会社という形になっておりまして、独立の非政府機関で、運営資金は規制対象機関からの手数料等、収入等によって賄われております。

なお、イギリスの法体系でございますが、2000年に制定されました金融サービス市場法のもと、具体的な行為規制をFSAのハンドブックにおけるビジネス・スタンダード委任しておりまして、投資型の高い生命保険などの投資型保険商品にはいわゆるCOBS、Conduct of Business Sourcebook、損害保険、純粋保障契約などの保障性商品につきましては、保険事業特有の規制ということで、ICOBS、Insurance: Conduct of Business Sourcebookが適用されることになっております。今回は主にICOBS、すなわち、保障性商品のほうを中心にご報告申し上げたいと考えております。

ドイツにつきましては、連邦の銀行監督庁、保険監督庁、証券監督庁が2002年に統合いたしまして、連邦金融監督庁Bafinが設置されております。今回はBafinの日程がどうしてもつかないということでございましたので、ドイツに設立されております世界でも有数の保険グループ、民間保険会社のほうに訪問いたしまして、調査を行ってまいりました。なお、ドイツにつきましては、保険について保険監督法、保険契約法、そして不正競争防止法が適用される形になっております。

これから具体的な調査内容をご報告申し上げますが、この「はじめに」の下のほうに書いておりますように、発表の項目は「約款及びその公開」、「募集文書」、「適合性の原則」、「広告規制」、「比較情報の提供」、「保険金支払」、「仲立人」、「募集コストの開示」といったものになっております。これらについて比較を行っておきますが、言うまでもないことですけれども、各国規制のあり方は異なっておりまして、これらの項目が有機的に連関した形となっております。

それでは個別のご報告を申し上げたいと思いますので、次のページ開いていただけますでしょうか。ここではアメリカ、ニューヨーク州の記述を行っております。

まず、アメリカの現状をご報告申し上げたいのですが、右下の円グラフのほうに書いているのですけれども、アメリカは収入保険料ベースで年金保険が51.2%、医療保険が23.7%という形になっている。この表は、かなり簡略化して、似たようなものは一緒にまとめておりますけれども、こういう形になっております。死亡保障保険が過半を超える日本とは、このように様相を異にしている。すなわち、社会保障制度等の違いを背景といたしまして、貯蓄性保険、あるいは医療保険等が多いという特徴があります。イギリス、ドイツも後ほどご報告申し上げますが、アメリカと同じように日本とは異なる現状というものを持っております。こういった状況を踏まえつつ、ご報告申し上げたいと思います。

それでは、左側の部分からご説明申し上げますと、「約款及びその公開」ということで、NAIC(全米保険監督官協会)の「フレッシュ読みやすさテスト」と同様の基準をニューヨーク州でも採用、当局は、「約款をわかりやすくするためには、分量が増えたとしても構わない」との考え方、約款の公開は行われていないと書いております。今回、訪問いたしました3カ国の中で、このニューヨークのみが商品や約款の事前審査、認可というものを行っております。

これは下に書いております募集文書や適合性の原則とも関連してくるのですが、まずニューヨークについてご説明いたしますと、1970年代の消費者運動等を受けまして、NAIC(全米保険監督官協会)が約款の簡略化等に向けたモデルを作成しまして、ニューヨークにおきましても、これをもとに州独自の約款モデルを設定し、商品認可に当たっての基準といたしております。なお、ニューヨーク州の3102条に関連する話ですが、「フレッシュ読みやすさテスト」、これはフレッシュ教授という方が作成されたのですけれども、1982年にNAICが導入しましたこの「フレッシュ読みやすさテスト」に従いまして、ニューヨークでも短い単語を使って短い文章を書くということを奨励しております。

NAICモデルで言いますと、点数がこれは出る形になっておりまして、一定の評点が出る形になっているのですけれども、40点以上とるということがNAICモデルですが、ニューヨークは若干高く、45点が必要ということです。採点方法は全単語数を全文章数で割ったりとか、全音節数を全単語数で割ったりとかという形で、短い単語を使って短い文章になっているかということをチェックする形になっております。また、ニューヨーク独自の特徴といたしまして、約款を10ポイント以上で印刷するとか、1ポイント以上あけるとか、約款に3,000語以上の単語が使われている場合は、ちゃんと一覧表をつけなさいとか、索引をつけなさいとか、あとは十分な余白をつけなさいとか、インクと紙の対照が十分に印刷されるようにしなさいとか、そういうものが決められております。

このような基準に基づきまして、保険会社が自らチェック、セルフチェックを行いまして、商品認可を求めてくるということになっている。このように事前認可において細かいところまで規制しているということでございました。当局として考え方を伺ったところ、要するに約款は非常にわかりやすくあるべきである。したがって、こういったいろんな基準で規制する。ただし、それによって文章が長くなったとしても、それは構わないんだというふうな考えでやっているということで言っておりました。また、約款の公開は法的に義務づけられておらず、保険会社が自主的に行っていることもないと話しておりました。

その下の募集文書のところでございますが、募集文書で「契約者の手引き」、「予備情報」、「契約概要」の配布を義務づけ、記載の内容は各社ともほぼ同様という形で書いておりますが、生命保険につきましては、長期にわたる契約といった性質を考慮し、これらの文書を配布することを義務づけております。損害保険につきましては、生保並みの文書の配布は規制上は要求しておりません。これらの文書の作成に当たりましては、どのような記載とするか、かなり詳しいところまでNAICモデルを参考に当局が決めておりますので、実際、各社ごとあまり工夫がなされていなくて、内容はほとんど変わっていないと言っていました。この記載内容の指示については、10年ごとにその状況を見ながら改正することもあり得る。また、保険会社からこれらの文書に対して、コンプライアンス・コストなどの観点から苦情は出ていないということを当局は言っておりました。

その下でございますが、「適合性の原則」を書いております。ニューヨークは、適合性の原則の規定なしということで、これはいわゆる事前認可と密接にリンクしておりまして、事前認可があるために、募集段階においての適合性の原則は規定されていないということでございました。

それでは、次おめくりいただきまして、イギリスをご覧いただけますでしょうか。

イギリスでございますが、まずアメリカと同じように右側の円グラフをご覧いただきますと、ちょっとこれは簡略化を図るために一時払いと平準払いとを合算して、あとその貯蓄性みたいなものはまとめたりはしておりますが、大まかなくくりで年金保険は非常に大層を占めて、死亡保障商品というのが日本に比べると全体を見て少ないという形になっております。こういう貯蓄型が多いというのがイギリスの特徴であろうというふうに、収入保険料から見てとれるのではなかろうかと思います。

それでは左側でございますが、約款及びその公開というふうに書かせていただいておりますが、事前認可はなし、当局は事後チェック、商品ごとの約款を簡略化したものを、各社が自主的にインターネットで公表というふうに書いております。イギリスはニューヨークと異なっておりまして、商品認可については個別ごとの事前認可を行っておりません。事前認可でなくて商品を事後チェックしているということでございました。約款につきましては、契約概要のように約款を簡略化したものを、各社が自主的にインターネットに載せているということを言っておりました。なお、約款そのものは、やはりご多分に漏れず分厚いものになっているらしいのですけれども、それを読みやすくするための工夫を今、鋭意やっている。ただし、保険会社がつくる自主的な協会みたいなのがあるみたいですけれども、自主ガイドラインが作成できるほどまだ強力な組織ではなくて、いまだ改良中で苦労をしているというふうに言っておりました。

次の募集文書でございますが、募集文書は「契約概要」の配布は義務づけているものの、「保険会社により柔軟性を与え、顧客保護の観点から何ができるかを判断させ、当局がそれをチェックする」方針に転換ということにしております。以前と違いまして、2008年1月より「契約概要」を配布する必要があるものの、基本的に保険会社は自由に文書を作成することができるということになっております。これはFSAが画一的なルールを敷いたので、保険会社が創意工夫をすることなく、結果として顧客の最良のサービスになっていないということなので、事前には一定のルールのもとで自由につくってもらう、ただし、その後で厳しくチェックして、それがきちんと顧客のニーズを満たしているものになっているかどうかということをチェックする態勢になっているということでございました。

次に「適合性の原則」でございますが、募集に当たっては、保険会社は顧客に対しそのアドバイスの適合性を確保し、顧客の需要やニーズに沿ったものとするために、合理的な配慮をしなければならないということでございます。イギリスについては事前認可ではございませんので、その反面といたしまして、アメリカとここははっきり異なっているんですけれども、募集現場できちんとやってもらうというために、適合性の原則、ここで言うところの合理的な配慮でございますが、リーズナブルケアがきちんとなされなければいけないという募集現場での規制がきちんとかけられている。さらに、私が今ご説明申し上げているのは保障性ですが、投資性の商品にはより強い適合性の原則がかけられるという形になっております。当局に伺ったところ、やっぱりイギリスはEU指令をやや拡大して国内で取り組んでおりまして、それはやっぱりイギリスが中心的な金融センターとして様々な投資家が集まってきたために、透明性を確保する必要があって、こういった理由が発達したのでなかろうか、歴史的理由が大きいんじゃなかろうかということを言っておりました。なお、当該原則に実効性を持たせるために意向確認書を作成することが求められておりまして、顧客の需要や必要性、当該契約に対して助言を行った理由というものを特定しなければいけないという形になっております。

恐縮でございますが、次、ご覧いただけますでしょうか。

次にドイツでございます。次のドイツを見ていただきますと、同じように円グラフを載せさせていただいております。ドイツは養老保険が多い、貯蓄準備金の積み立てを背景とした民間養老援護制度等を背景としまして、ドイツは養老保険が多く、死亡は少ない。養老保険が多くて、年金がまた3分の1ぐらい。そしてユニットリンク、その変動性のものがあって、3つが大体バランスが取れた形である、そういう形になっております。

ドイツでございますが、約款及びその公開ということで、事前認可はなし、当局は事後チェック、約款の公開は行われていないという形になっております。ドイツもイギリスと同じでございますが、認可については事前の認可は必要ないということになっております。これはほかのEU諸国と同じで、約款の作成についても形式自由。

この民間会社にそれについてどう思うかと聞いたところ、やっぱり事前と事後の関係につきましては、事後チェックのメリットとしてはやっぱり商品開発が早いなということを言っておりました。事前許可制をとりますと、認可されるまでに時間がかかって、日本と違って向こうはすごく時間がかかるみたいで、販売が1年後ぐらいになってしまう。だけれども、EUにおいては、EU加盟国のどこかの国で販売が可能となった商品については、それ以外の加盟国でも販売していいということになっておりますので、1年かかってしまうとやっぱり後手に回ってしまうので、事後で厳しくチェックしていただいたほうがいいのではなかろうかということを言っておりました。事後チェックは当局が3、4年に1度。最低でも5年に1度検査に入って、その商品について規制をかけているすべての法令に違反していないかを見る。違反している場合は修正、あるいは販売停止ということになっている。

約款の公開につきましては、日本よりは少ないんですけれども、商品数が3,000以上に上るとあって、行っていないというふうに言っておりました。

それで、次の募集文書でございますが、契約に関する情報等の配布を義務づけ、ドイツ新契約法により情報開示の項目を増やす、販売費用総額の開示などとともにフォーマットを統一し、類似の商品の比較を容易としたということでございます。ドイツは募集に当たって一緒のフォーマットに従った情報を提供するスタイルとなっております。EU諸国はドイツ同様の工夫を行っておりまして、各国が基本的に同様なものを基礎としながら、各国の国事情に応じて情報量を増やす。ドイツにおいては、どのような工夫を凝らすかということを2年以上議論して、情報開示を増やした項目はコスト分を明確に示すというのが1つの目玉になっているというふうに言っておりました。項目自体は日本と一般的な話でございまして、どのような性質かとか、リスクが保障されているかとか、どのリスクは保障されないかとか、契約締結に関してどの義務に注意する必要があるのか、怠った場合どうなるのかとか、そういうことなんですけれども、この総額表示を新たに工夫したものであり、目玉だと言っておりました。

適合性の原則については、イギリス同様、事前認可がないために募集現場できちんと対応するということになっておりまして、保険会社あるいは保険募集人は、保険契約者の側に何らかの助言すべき事情が生じている場合には、助言義務が発生する。ただし、助言を行う場合は新規契約のときだけで、継続時は法律や約款の変更がない限り助言を行う必要はない。この助言義務をもって適合性の原則としているということでございました。保険会社、仲介者は助言に関する記録をきちんと取っておかなくてはいけないということでございます。

それで次のページを開いていただきますと、マトリックスという形にしておりまして、規制が有機的に図でご覧いただけるかと思いますが、ニューヨークは事前認可あり、しかし適合性の規定がない。イギリスは事前認可がない、そのかわりきちんと合理的な配慮の必要性を規定している。ドイツは事前認可がなし、しかし助言義務規定という形での適合性原則を置いているという形で結びついていることがご覧いただけるかと思います。

それでは、次のページをご覧いただけますでしょうか。募集コスト等の開示という形で書かせていただいております。

募集コストの開示でございますが、アメリカでございますが、ニューヨークは、保険募集に関しての手数料の開示義務はない。ただし、近年、関係手数料の開示について内部で検討しているというふうに言っておりました。ニューヨークではこれは最も動きが活発な分野と言っておりまして、これはニューヨークに限ったことじゃないのかもしれませんが、欧米は保険契約者の自己責任がとられる面もあるんですけれども、その一方で、保険契約者が約款をよく読んで、主張すべきことはきちんと主張してくる。したがって、正しい判断ができるように情報はきちんと見せなければいけない。そういった概念のもとでこれを開示しようという動きがニューヨークの中で検討されているということで、これは事務方の予想でということで、まだわからないんだけれどもとは言っておりましたが、1年以内にというか、数年以内に開示を求める法律が出されることになるのではないかと言っておりました。まだ、どういうものが出されるかというのは内部で議論しているとは言っておりましたが、開示は募集人とブローカーの両方に対して求める、そして、具体的には、契約数によって受け取る手数料はどう変わるかとか、金銭以外に何らかの特典があるのか、例えばたくさん契約を取った人は小旅行に行けるかとか、そういうものを全部開示することを想定している。まだ意見は分かれていると言っていましたが、そういうことを内部で検討しているというふうに言っておりました。

次、イギリスでございますが、イギリスは、保険募集人は顧客の要請に応じ、速やかに当該保険契約に係るコミッションを開示する必要がある。フィーについてはすべてを開示する必要があるということでございまして、コミッションとフィーの違いは、コミッションがいわゆる保険会社が保険募集人に支払う手数料、フィーは顧客が保険などの仲介人に支払う手数料ということですが、コミッションではなくてフィーについては、保険仲介業務に関するあらゆる手数料の詳細を開示しなければならないという形にされておりまして、いわゆる手数料とか雑多な経費みたいなものも開示となっております。保障性商品につきましては、商業顧客の要請に応じというふうになっておりますが、投資性商品は両方とも開示する、すべて開示するという形になっております。

ドイツでございますが、その下、ドイツは販売費用総額(申込審査のための出費・契約書類の作成・助言用ソフトの準備開発費用の充当等を含む)を開示することとされている。ただし、保険募集人または仲立人が保険会社から受け取る手数料、報酬その他の対価については開示義務はないということで、これは総額表示を行う。これがドイツ契約法で2008年1月より開示が義務づけられた。これまで開示義務はなかったんだけれども、いろいろ契約法を改正していく中で、透明性を高める方法の一環としてこれが規定されている。これが目玉だと言っておりました。保険募集人、保険仲立人が受け取る手数料、報酬その他の対価については開示義務はございませんが、総額のうちの約9割ぐらいと言えるんじゃなかろうかということをその会社は言っておりました。

これが募集コストの開示でございます。

それでは、次のページを開いていただけますでしょうか。次は広告規制について書かせていただいております。

アメリカニューヨークでございますが、広告規制あり、ただし、実際の広告内容は具体的な商品の説明ではなく、会社のイメージである場合が多いというふうに書かせていただいております。これはニューヨーク州法の保険法の2112条ですが、名称をきちんと表示すること。財務状況がきちんとしている場合にしか報告は出せないといった規制は存在するのですけれども、それほど細かい規制ではございません。当局に、なぜこういう大まかな規制になっているのかという理由を伺ったところ、実際の広告というのは具体的な商品内容を広告するんじゃなくて、会社のイメージを広告するようなものが多い。これは日本でもある程度、似通った部分もあるのかもしれませんけれども、アメリカは特に州ごとに州法、州保険法を持っておりますので、規制が異なっている。したがって、イメージ的なものを広告することによって、全米で広告できるような形にしていると言っておりました。

次に比較情報の提供でございます。これは不完全な比較情報の提供を禁止、比較情報の提供は進まずというふうに書いておりますが、保険商品の比較情報を保険募集人が提供するに当たり、ほかの保険契約を失効解除させるような勧誘目的を持って不完全な比較をしてはならないといった規定がございます。これは誤解を与える説明とか、不完全な比較を禁止して、いわゆる保険市場における不公正な競争を阻止しようということらしいんですけれども、実際には比較情報の提供はなかなか進んでいない。それは、やはり一覧性のある最新の比較情報を提供するとなると、なかなか難しい。要するにすべてをチェックしなければならない。だからあまり進んでいないというようなことを言っておりました。

それでは、駆け足で恐縮ですが、次のイギリスをご覧いただけますでしょうか。イギリスでございます。広告規制といたしまして、手紙、電子メール、新聞、雑誌等による勧誘について広告規制ありというふうに書いております。保障性の保険商品につきましては、業者によるノンリアル金融プロモーション、要するに非対面、対話型以外の勧誘について、手紙、電子メール等について規制が設けられております。具体的には、広告に際して記述が正確でなければいけないといったことを書いております。これ以外の広告規制は存在しない理由としては、手数料の開示が進んでいる上に、いわゆるオンブズマン的な方がよくチェックされていて、顧客も保険会社やオンブズマンが提供する比較情報等をよく見ているからと言っておりました。あるいは、自らが保険商品をよくチェックすることによって、誤った情報に基づく保険商品の購入をしないからといったことを言っておりました。

比較情報でございますが、下に見ていただきますと、比較情報の際には、公平で誤解を招かないことが必要、近年は比較情報の提供は進んでいるということで、比較情報の提供を行っても、要するに非対面の部分については明確、公平で誤解を招かないものであるという形で書いています。FSA、この監督機構も、苦情の多い商品リストを比較情報として提供していると言っておりました。比較情報の提供が近年は進んできているのだと。民間企業によっても比較情報は提供されている。契約者も非常に一定程度、比較情報というものに慣れているので、特段、問題も生じずにそれを活用しているんじゃなかろうかと。ちなみに、FSAは苦情を調査して比較広告を出すとともに、苦情の多い商品については改善命令を出すという形にしているということを述べておりました。

次、ドイツをご覧いただけますでしょうか。ドイツは一般法の不正競争防止法が適用されているということでございます。保険については特別な規制があるわけでなくて、この一般法であります不正競争防止法を使う、第5条を使う。不正競争を禁じる法令のもと、保険においても公正な競争という規制が存在し、厳格に運用されているということでございました。あとは業界の自主規制みたいなものでありますが、比較情報についても一般の不正競争防止法が適用されまして、情報適用の際にはそれが客観的に引用されているということが必要である旨規定していると言っておりました。ただ、民間保険会社も言っておりましたが、比較情報をもって情報の提供あるいは商品の宣伝を行うことは実態としては少ないのだと言っておりました。

次のページをご覧いただきますと、各国比較を載せておりますが、ニューヨーク、イギリス、ドイツで広告規制、そして比較情報の提供はどの国も規制があるんですけれども、比較情報の提供が比較的進んでいるのはイギリスと言えるのではなかろうかと思います。

それでは、次を見ていただけますでしょうか。次は保険仲介人という形で書かれております。これは中の実態的なものでございますが、ニューヨークにつきましては保険仲介人は保険エージェント、保険ブローカー、大まかに言えば二分しておりまして、これらの資格は両方とも免許制になっておりますが、実際に募集を行う者は、両方の免許を取得している場合がほとんどであるというふうに言っておりました。

イギリスにつきましては、専属募集人か独立金融アドバイザー、アドバイザーは仲立人みたいな方だと思いますが、といった二極化ルールが廃止されまして、2004年に複数の保険会社の商品を取り扱う、乗合的な業者も出現してきている。

ドイツは保険代理商と保険仲立人ということになっておりまして、数を言いますと、イギリスは独立金融アドバイザー的なような仲立人が過半を占め、ドイツでは代理商が多いというのが実態かなと思います。

最後に保険金の支払いを次のページに書かせていただいておりますが、アメリカについては、支払い期限の設定あり、支払い遅延の場合は遅延利子が発生ということで、死亡保険の場合は死亡した期日、損害保険の場合は必要な書類がそろった期日に支払う必要がある。遅くなった場合には遅延利子を払う必要がある。5年米国債を基準に各保険会社が設定しているらしいのですけれども、支払う必要があるということでした。なお、余談でございますが、昨年のAIG等の状況を受けまして、州内の保険会社を監督している州保険庁の機能を連邦保険庁に移行するべきだという議論も生じているんだけれども、当然のことながら州の独立性という観点からいろいろ反発・議論が起こっているということでございました。

それでイギリスでございますが、支払い期限の設定はなし、迅速・公平な支払いを推奨ということで、保険金支払いの期限は特に定めていないのだけれども、保険会社には保険料の支払いの請求があった場合、迅速に公平に行うように指導しているということでございます。

ドイツでございますが、支払い期限の設定はなし、迅速・公平な支払いを推奨ということで、同じように保険金の支払いについて期限はない。期限はないのだけれども、保険会社が適切かつ必要な調査を行った後、速やかに支払いを行わなければならないという形になっているということでございます。

やや駆け足になりましたが、幾つか本ワーキングでも議論になっている点につきまして調査してまいりました。この3カ国を見まして、いろんな当局とお話をさせていただきましたが、いずれにしても、規制というのは有機的に結びついており、その中で全体像といいますか、大きな観点から相互作用といったものを考えながら、各規制のあり方を議論しているといった印象を受けたところでございます。

これで募集・支払いの報告を終わりまして、次に保険料積立金等のご報告をいたします。

○工藤課長補佐

保険企画室の工藤寛之です。それでは、引き続きまして次に保険料積立金等の海外の制度と現状につきまして、ご報告させていただきます。

右肩に保険WG51-3と書いた資料、保険料積立金等についてをご覧ください。

それでは、1枚おめくりください。まずは、アメリカのニューヨーク州、イギリス、ドイツにつきまして、解約返戻金にかかる規制を概括してご説明申し上げます。

まずは、アメリカのニューヨーク州でございます。アメリカには全米保険監督官協会、NAICが定めておりますモデル法というものがございます。この中に標準不没収法がございまして、ニューヨーク州ではこのモデル法を参考に、州法であります保険法に類似の規定を4221条、4223条に定めてございます。これによりまして、最低解約返戻金を定めているのが特徴です。なお、解約返戻金額の開示も求められておりました。

次にイギリスでは、最低解約返戻金を定める法令というものはございませんでしたが、解約返戻金額や解約控除額等を開示しなければならないこととされておりました。これによりまして、保険商品の良し悪しは顧客が決めるという考え方が徹底しているようでございます。

ドイツでは、2008年に改正保険法を施行いたしまして、生命保険の章にございます最低解約返戻金規制を改定しておりました。なお、解約返戻金額や解約控除額の開示も求められておりました。

これより解約返戻金につきまして、その規制内容や実態も含めましてご説明申し上げたいと思います。

1枚おめくりください。次にニューヨーク州の最低解約返戻金規制についてご説明申し上げます。ニューヨーク州では不没収価格法を保険法に定めておりますが、そこでは不没収価格、すなわち最低解約返戻金額とは、将来支出現価から許容される費用の額を差し引きまして、得られる金額のことを指してございます。将来支出現価といいますのは、CSO表といったもので定める死亡率と割戻率によって得られる金額のことで、予想される支払い保険金額の現在価値というものを示してございます。ここでCSO表といいますのは、全米保険監督官協会、NAICの依頼で保険計理士協会と、それからアメリカン・アクチュアリー協会が作成した新しい死亡率表で、CSOというのはCommissioners Standard Ordinaryの略でございます。現在、使用されておりますものは、2001年に定められたものです。このCSO表は保険金支払い状況が改善すると、すなわち死亡件数の減少により保険金支払いが減少いたしますと死亡率が低くなりますことから、このCSO表の死亡率と実績死亡率に一定の乖離が生じましたという場合には、保険会社がニューヨーク州の保険庁に申し立ててくるという実態がございまして、これによりまして改定作業が始まるとのことでございました。

現在価値の割り戻し率は、責任準備金に使用するものの125%に設定しているとのことです。この割り戻し率は、市場の利回りに近づける観点から、毎年6月に改定を行っているとのことでございました。

次に許容される費用の額につきましては、記載している計算式によって計算されます。この計算式にMinという記号がございますが、これは括弧内の数字のどちらか小さいほうという意味を示しております。したがいまして、この算式は1%に保険金額を掛けたものと、それから4%に保険金額を掛けたものと、それから平準年払保険料のどちらか少ないほうに125%を掛けたものを、それぞれ足すということで得られる数字が許容される費用の額ということになります。

なお、ここでご報告させていただきました算式のうち、1%ですとか、4%、125%といった数値は政治的に決められたものであり、その意図する理由はわからないとのことでございました。この不没収価格規制は、契約締結後3年程度は契約締結費用が保険料積立金を上回ることから、解約返戻金は一般的にはゼロとなりますことから、契約後3年程度経過してから意味のあるルールというふうに考えておるようでございます。なお、各保険会社の商品開発におきましては、この不没収価格規制に定めるとおりに解約返戻金を設定しているため、本来必要な費用分の控除額を超過する解約控除であったり、逆に解約控除が費用に比べて不足するといったものなど、どちらの場合も考えられることになります。したがいまして、解約返戻金額の計算上、違約罰としての違約金、いわゆるペナルティーにつきまして差し引いているか否かは、これはわからないということを言っておりました。

なお、先ほど申し上げました不没収価格の計算式は一般的な保険に適用されるものでございますが、例えばユニバーサル保険、定額年金保険、エクイティ・インデックス年金、マーケット・バリュー・アジャストメントを用いた保険商品などは、別途、定める方法により不没収価格が決められることになってございます。本日は恐縮ながら時間の関係もございまして、割愛させていただいております。

1枚おめくりください。次に、イギリスの解約返戻金に係る考え方をご説明申し上げます。

イギリスでは保険契約を解約返戻金のあるものと、それからないものに区分しております。解約返戻金のある保険契約は投資型保険契約と呼びまして、解約返戻金がない保険契約を非投資型保険契約と呼んでおりました。投資型保険契約につきまして、最低解約返戻金といったものを定める法令等はございません。なお、解約返戻金については、解約返戻金額や解約控除額といったものを契約者に開示しなければならず、フィナンシャルアドバイザーの方が契約者に対応している実態にあるとのことでした。その一方で、商品性の可否判断は個々の契約者が行うという考え方をしてございました。したがいまして、ペナルティーを解約控除に含めたような保険商品に加入するか否かということにつきましては、契約者みずからが決める問題であると考えているとのことでございました。なお、広告宣伝は新聞、雑誌、テレビなどのメディアを通じて行われておりますが、広告費の多寡につきまして何らかの規制をするということは考えていないとのことでございました。

非投資型保険契約については、先ほど申し上げましたように、一部の例外があるようですが、基本的には解約返戻金がない保険商品を非投資型保険契約と呼んでおります。この保険契約の場合、解約返戻金がないことを説明しなければならないこととされておりまして、我が国と同様のルールとなってございました。なお、我が国の終身保険といいますと、貯蓄性があると一般的に言われているようでございますが、イギリスでは逆に貯蓄性があるという認識はないと考えているとのことでございまして、こういった保険商品におきまして、無解約返戻金型を開発したとしても問題ないとのことでございました。

1枚おめくりください。ドイツの解約返戻金規制につきましてご説明したいと思います。

ドイツの解約返戻金規制につきましては、まずドイツ保険契約法改正の経緯からご説明申し上げたいと思います。ドイツでは1995年に保険商品の認可を廃止いたしました。このため、1995年以降の認可のない保険商品につきまして、解約返戻金について記載している約款条項について透明性がないという判決が下されました。また、2005年の判例では、保険契約の場合は解約返戻金がないか、あってもわずかであるため契約者にとって不利であり、説明が不足している約款の場合は保険料の払い戻しをしなければならないことになりました。これにより、保険料の払戻額はドイツの国全体では150億ユーロと推定されているとのことでございます。こうした商品認可における規制緩和の影響や解約返戻金が著しく少ないことはよくないのではないかという世論がございまして、その結果、保険法に定められております解約返戻金条項につきまして改正の機運が高まっていったとのことでした。

1枚おめくりください。次にドイツにおきまして保険法の解約返戻金条項が具体的にどのように改正されたのかについてご説明をしたいと思います。

ドイツでは2008年の1月以前は、保険契約法176条第3項において、解約返戻金は承認された保険数学の算式に基づき、その保険の時価額として計算されなければならないと定められておりましたが、その時価額が何かということについてまで定めは行われていませんでした。新たに定められた保険契約法169条第3項では、解約返戻金は最低でも算出された契約締結費用及び販売費用を、契約締結から5年間で均等に分割償却した場合に積み立てられる責任準備金の金額と定められまして、最低解約返戻金につきまして明確に定めております。なお、解約控除に用いる新契約費の金額は、総保険料の4%を最大値として、これは保険監督法に別途定められております。右下の図は改正後の保険法のもとで販売される保険商品の解約返戻金の計算構造を示しております。すなわち、総保険料の4%を新契約費として、このモニターでは赤い破線で表示してございます積立金額を限度に、この積立金額から新契約費を5年間均等に控除した金額を解約返戻金額としております。モニター、もしくはお手持ちの資料のほうでは太い実線で解約返戻金額を示してございます。このように積立金額を上限としておりますことから、契約初期におきまして新契約費は控除しきれず、数年間の間、解約返戻金額がゼロとなっております。

以上、ご説明申し上げましたとおり、ドイツにおける解約返戻金の保険制度的な仕組みがご理解いただけるのではないかと存じます。

こうした保険法が定められるまでには、5年の均等分割償却をめぐって議論がございました。すなわち、均等分割償却期間を5年に限るということは、残存契約者が解約者の新契約費の未償却分を事実上負担することになりますことから、解約をする者と解約をせずに残る残存契約者との間の公平性に問題があるとする反対意見があったとのことでございます。こうした議論を得まして、先ほどご説明申し上げましたような条文が定められることになったとのことでございます。なお、連邦憲法裁判所に不透明とされました約款の文言でございますが、現在では改められまして、新たな保険契約法169条3項と同様の文言で約款に定められておるということでございます。

1枚おめくりください。無解約返戻金型保険商品の販売の状況について、ご説明申し上げたいと存じます。

ニューヨーク州では、先ほど申し上げましたように不没収規制がありますが、これには適用除外というものがございまして、保険期間が30年以下で、かつ81歳前に満了する保険契約などが適用除外とされてございます。したがいまして、かなりのケースにおきまして無解約返戻金タイプの保険商品が開発されて販売されているといった現状でございます。なお、2002年にこの適用除外を20年以下かつ71歳前満了から、先ほど申し上げました保険期間が30年以下かつ81歳前満了とするものに拡大をいたしまして、規制緩和を行っておりました。このように適用除外を拡大して規制緩和を行いました理由につきましては、一般的に高齢になるほど高まります死亡率が改善しまして、81歳まで死亡率がほぼフラットになったことや、定期保険の保険料を安くしたほうがいいのではないかというのが法改正の趣旨であると、現地の当局者は説明をしておりました。

次にイギリスでございますが、イギリスでは解約返戻金の有無によって商品タイプを変えておりますので、無解約返戻金型保険商品は販売されている実態にあるとのことでございました。

それからドイツでは、保険金支払いの義務を保険会社が負う保険商品、具体的には年金保険、養老保険、終身保険を意味しておるということでございますが、保険期間中に必ず保険金を支払うというものを意味しているということです。これらの保険商品以外のものでは、保険契約法の解約返戻金条項が適用とならないことから、アメリカで同じように適用されない保険商品で無解約返戻金型保険商品が販売されている状況にあるとのことでした。

1枚おめくりください。最後に解約返戻金の開示規制についてご説明を申し上げます。

ニューヨーク州では予備情報に、第10保険年度または第20保険年度の終了時または保険料支払い期間終了時のいずれか早い時点の基本契約分の保証解約返戻金総額を開示しなければならないこととされております。また、契約概要には第5年度分及びそれ以降の代表的な新契約年度などの基本契約と、特約の解約返戻金を別々に開示しなければならないこととされておりました。なお、解約控除額の開示を行っていないのは、不没収価格規制がございます関係上、おのおのの保険商品は不没収価格規制に定めるとおりに解約返戻金が設けられ、商品開発やその販売が行われている実態にございまして、解約控除額を開示する理由が見当たらないとの理由によるものでございます。

イギリスでは投資型保険契約について、解約返戻金額と解約控除額等を一定の様式に従って開示しなければならないこととされておりました。

それからドイツでは、毎保険年度の解約返戻金額と解約控除額を開示しなければならないこととされておりました。

次のページに先ほどのイギリスの様式を掲載しましたので、ご覧ください。これは、先ほど申しましたイギリスのCOBSの添付資料3というところに掲載されている解約返戻金の開示のための様式でございます。英語表記の部分につきましては、左から保険年度、それからこれまでの払込保険料、引出金額、合計控除額、それから控除の効果、予定解約返戻金額といったものになるかと存じます。

以上、ご報告申し上げます。

○山下WG座長

ありがとうございました。

それでは、ただいまのご報告に対しまして、ご質問、ご意見をご自由にいただきたいと思います。いかがでございましょうか。高橋委員。

○高橋二部会委員

皆さんお考えのようなので、先に質問させていただきます。

3点ございます。1つは保険金支払いについてなんですけれども、不適切な支払い、あるいは支払い漏れに関する対応のご報告をいただきましたが、現在、簡易保険で大量の保険金支払いが発生しております。大変深刻な状況だというふうに私は受けとめておりますけれども、これについて、金融庁としてのご対応はいかにというところをお伺いしたいということが1点です。

それから2点目は、発生原因と改善の方向性、その他、態勢整備について、いろいろやっていらっしゃるというふうなことはよくわかったんですけれども、私この問題に関して、やっぱり一般の企業の不祥事が明るみに出る過程と大きく違ったというふうに思っているんです。一般の企業の不祥事の場合には、マスコミに内部告発でいくか、あるいは社内の中でのそういう内部通報制度が働くかということだと思うんですが、保険会社の場合の事例を見ていて、こういうケースというのが私はなかったのか、ほとんどなかったのではないかというふうに思うんです。だとすると、そういう各部門の連携不足というふうなことで内部管理態勢ということが言われておりますけれども、コンプライアンスの観点から、研修に言及しているだけではなくて、現状についてそういう態勢が引かれているのかどうなのかということに大変疑問を持っております。ですので、一般的なスピークアップラインとか、いろんなホットラインとか、そういうものの整備の状況がどうだったのか。現状にご存じのところを教えていただきたいと思います。それが2点目です。

それから3点目は、これは海外ご出張報告の募集・支払いについてのところなんですが、広告規制、それから比較情報の提供というような形で各国の状況を教えていただいたんですが、この比較情報の提供については、保険会社あるいは募集人みずからがどういう視点で、この提供がどうかということをお話しされたと思うんですけれども、他の主体が行うものについてはどうなのかということをお聞きしたいと思います。例えばブローカーであるとか、FPであるとか、消費者団体であるとか。そういうところも比較情報の提供というのを行っているので、広告とか、かなり限定的な形でヒアリングをなさったのか。そのあたりも含めて教えていただけるとありがたいです。

以上です。

○山下WG座長

それでは、大きくは3つぐらいあったかと思いますが、順次、適宜、お願いいたします。

○長谷川保険課長

それでは、最初の2つについてお答えしたいと思いますけれども、かんぽ生命は現状、総務省と金融庁で共管して監督をしておりますが、今回、明るみになりました簡易保険における不払いの問題は、民営化前の旧郵政の時代のものというふうに聞いておりまして、この点については、基本的に総務省の問題というふうに理解をしております。

それから、2番目の不祥事が世の中に出る過程において、内部告発というようなものがあまりなかったのではないかということでありますけれども、確かに保険会社の場合には、検査などによって不払いの実態を当局として把握しまして、その後、報告徴求などで報告を求めた上で、行政処分をやったというのが実態かとは思いますけれども、他方で、このホットラインのようなものというご質問でしたけれども、我が国において内部通報制度というものがございますけれども、こういうものを通じていろいろ情報が来たり、あるいはそれを使わないで任意で来たりというものは、実はございます。いずれにしても、社内でのコンプライアンス態勢といいますか、そういったものは逐次、各社においても整備されてきているのではないかというふうに、私どもとしては認識をしております。

○吉住課長補佐

最後の1つのご質問にお答え申し上げます。

当局以外の消費者団体や民間の団体でどのような提供がなされているかというご質問だと思いますが、まずイギリスにつきましては、民間も提供してきており、それが契約者側にもよく活用されていて、契約者側もそれをもとに、自らの選択において参考にしているということでございました。アメリカにつきましては、まだ当局としては、イギリスと比べますとそれほどでもないということを言っておりまして、ドイツも自主協会みたいなことがありまして、そういうところでいろいろ規制は定めていると思うのですが、イギリスに比べるとあまり提供されていない。結論から申し上げますと、イギリスが当局側としても、あるいは民間の消費者側としても、オンブズマンの方にしても、一番提供されているということが私の調査の結果でございます。

○山下WG座長

よろしいでしょうか。

○高橋二部会委員

1つ目のお答えのところなんですけれども、そうですと、金融庁の共管になってからは、そういう不払い、不適切な事例がないというふうに考えてよろしいのかどうか。

それから2点目なんですけれども、社内でのコンプライアンス態勢は整っているだろうというふうなご説明だったんですけれども、本当に整っているかどうかわからなくて、これについては私も調べてみたいと思いますけれども、何らかの金融庁からの文書も必要ではないかというふうに、私は個人的に考えています。

3点目なんですが、当局と民間についてはよくわかりました。ただ、その間にありますブローカーが、ファイナンシャルプランナーとか、アドバイザーとか、業として何らか保険にかかわる人たちがやっていることに関しても、規制という観点があるのかどうかだけ教えてください。

○長谷川保険課長

第1点目のかんぽの件ですけれども、民営化後についてはどうかということでありますけれども、私、実は直接の担当ではないんですけれども、まだ民営化して間もないと思いますし、逐次、検査や監督を通じてフォローしていくということだというふうに思っております。現時点でお答えできるものは、材料はちょっと持ち合わせてございませんので、申しわけございません。

それから2点目の点で、実態としてはどうなのかということですけれども、我々監督サイドは、いわばオフサイトで報告を受けながらその実態を把握はしているんですけれども、確かにそのレベルでは必ずしも十分なフォローはできないと思いますので、また今後、逐次、実際の検査をして、オンサイトでその実態を見ることになろうかと思いますので、そういった形でもう少し詳しく実態を見ていきたいというふうに思っております。

○吉住課長補佐

3番目の件でございますが、その中間にある人についての比較情報とか広告の点でということでございますでしょうか。主として調べてまいりましたのは会社と当局だったものですから、そこについては詳しく調べていないのですけれども、ドイツについては自主規制機関みたいなのがあり、そういうところである程度規範を決めて、それに従った形で保険に関係する方が広告等を行っているというふうに聞いております。

○山下WG座長

いかがでしょうか。川本委員。

○川本委員

3点質問させていただきたいと思います。

最初にちょっとすごく小さなことなんですけれども、1ページ目のチャートで下にポンチ絵がありますよね。資料の51-2です。海外出張報告。これ約款とか公開とか、募集文書、適合性の原則が真ん中にあって、3つの広告規制、保険仲立人と募集コストは微妙にかぶっていて、保険金の支払いだけ離れているんですけれども、最後に規制が有機的で相互作用があるというコメントがあったんですけれども、どういう意味づけでこれつくっていらっしゃるのか。

○吉住課長補佐

お答え申し上げます。

1つは募集・支払いということでございまして、もちろん支払いも募集に強くリンクしているというのは承知申し上げているのですけれども、やはり募集側と支払い側はわけたいということで、支払いのほうは若干、空間をとらせていただきました。

それで募集側のほうでございますが、広告規制と情報提供は、いわゆるアドバタイズメントに近いので1つかなと。くわえて、仲立人と募集コストは、話としてはもちろんリンクしているのだけれども、項目として若干、離れているかなということで離してある。これと比較して約款とか、募集の事前認可の部分と、あと募集現場でどうなっているかという適合性の部分というのは、より有機的に強く結びついており、かつ、よく各国の体系がわかりやすいかなということで、こういう形でまとめて、比較表も提示させていただいているということでございます。

○川本委員

わかりました。

あと2つなんですけれども、2ページ目のところに、アメリカの場合、約款をわかりやすくするために分量が増えるとしても構わないという考え方が書いてあるんですけれども、約款については、保険業法が難しい言葉で書いてあると、約款をいくらやさしくしようと思っても、なかなか難しいんじゃないかというのが、我が国の場合あるというふうに私は認識をしています。そういう意味で、このアメリカの場合、保険業法的な法律の部分と約款というのは、どういう関係があるのかというのが1つ目の質問。

もう1つは、ごめんなさい、質問を申し上げてしまいたいと思います。広告の比較広告の話なんですけれども、今、高橋さんとのやりとりでもあったんですけれども、提供されているという、そういう文言で今ご説明をされている。提供されている、されていないという。状況の説明をされているんですけれども、消費者にとっては客観的な比較情報があるほうが好ましいと私は思います。企業のほうは、比較広告をなるべくしたくないという気持ちもあると思うんです。その中で、当局は比較広告が進んだほうがいいと思っているのかどうか。そこについての感触を教えてください。

○吉住課長補佐

お答え申し上げます。

業法と約款との関係ということでございますが、ニューヨークにつきましては、業法といいますか、ニューヨーク保険法で非常に詳しく、例えば余白をとりなさいとか、コントラストをよくして、はっきり見えるようにしなさいとか、そういうところまで書いておりまして、要するに細かく、かつわかりやすく、例えば、約款をつくる際に、約款本文は10ポイント以上で印刷して、かつ、行間は1ポイント以上あけなさいとか、約款全体で3,000語以上の単語が使われている場合、あるいは3ページ以上にわたる場合は、約款の使用条項の一覧表または索引をつけることとか、あるいは適切に区分された見出しをつけることとか、読みやすくするために重要な余白をつけること、インクと紙の対照は十分なように印刷されているかなど、そういうことをきちんとチェックしなさいみたいなことを書いてありまして、それによりまして、1つの規範に沿って約款がつくられてくるということでございますので、そういう保険業法である程度、保険業法といいますか、ニューヨークは契約法と監督法が一緒になっていますが、法である程度詳しいところまで規制することによりまして、約款もわかりやすいものになっているんじゃなかろうかというふうに認識しております。

○川本委員

今のはフォーマットの話ですよね。保険法の言葉自体が難しいという、そういう認識はない。問題にはなっていないということですか。

○吉住課長補佐

当局に伺いましたが、保険法の文言は読みづらいとか、あるいは難解であるとか、そういうことについて問題があるようなことは当局も申しておりませんでしたし、基本的にディテールに至るまで丁寧に書いているというのが当局の認識で、これは10年ごとに一応その状況に合わせて指示は変えるか変えないかというのは、当局のほうで見直すと言っておりましたが、現段階で非常に文言が難しいとか、読みづらいとか、わかりづらい面があるとか、曖昧であるとか、そういうものについて何らかの苦情といいますか、そういうのが来ているという形では言っておりませんでした。

次の保険の比較情報の部分のご質問ですが、アメリカについては、どちらかというと、消費者側のほうが積極的に約款等を読んで、いろんな保険支払いを求めてくると。そういう中で、つまり、正確な情報を提供するということが重要であるという中で、最新のものが提供されるのが当然必要なのだけれども、ややアップデートに欠けるようなものが提供されると間違った情報になってしまいますので、そこは当局として危惧するところである。いずれにせよ、今のところ、自主的な取り組みに任せているということを言っておりました。

イギリスにつきましては、イギリスは当局が自ら苦情のリストみたいな比較情報を提供している。これはイギリス当局が非政府の独立機関ということもあるのかもしれませんが、市民オンブズマンの方も、当局のほうも、比較情報を積極的に提供している。

ドイツにつきましては、ドイツは民間会社だったものですから、当局の考え方ではないのですけれども、民間会社は現在、比較情報を提供できたらいいなと思っているんだけれども、なかなか現状では使う場面というのがなく、実際の募集においては使っていない。自分たちも提供はしたいとは思っているのだけれども、なかなかアップデートするのが難しくて、商品数が多くて、うそを言ってはいけないので、そこには苦慮しているという形で申しておりました。

○山下WG座長

最初のご質問だと、法令用語はアメリカだって難しいに決まっているんですが、保険約款については、例えば保険契約者とか保険者という言葉は、これは使わない。youとかweとか、そういう言葉に直す。そんなイメージでおられるとよい。だから、そこはかなり違った文章的なものがあらわれるという、そういうイメージでよろしいかなと思います。

○瀧下委員

たまたまイギリスに駐在しておりましたので、イギリスの事情を若干承知しておりますので、情報提供させていただければと思うんですけれども、約款のわかりやすさというのは、保険行政の問題ではなくて、例えば役所の文章って非常にわかりづらい。わかりづらい、難しいというのは、保険の約款のみにかかわらず、ほかの約款でも同じようにわかりづらいということで、たしか1980年ごろからプレーンイングリッシュという、国民的な運動が起きておりまして、それでその中には政府機関も入っていて、政府の役所がつくる文書もやさしくしようということで入っております。これは任意に入る団体ですので、企業は企業単位で入っておりまして、保険会社もかなりの数の保険会社が入っております。この団体がその基準に適合するとクリスタルマークというのをくれまして、保険証券とか適合した文書にはクリスタルという結晶、ダイヤモンドみたいなマークがついております。保険証券にもクリスタルマークつきだという、そういうことを逆にうたい文句にして宣伝に使うというようなこともやられております。したがって、行政とは別に自主的な国民運動として、そういうプレーンイングリッシュという運動があって、たしかアメリカにも同様の運動があって、一部の保険会社はその運動に参加しているというような話は聞いたことがございます。

○山下WG座長

ありがとうございます。

深尾委員、どうぞ。

○深尾委員

2点、質問とコメントです。

コメントのほうは、保険金支払いについて、資料1の中の3ページの経営管理態勢の抜本的な改革ということが一番初めにうたわれております。取締役を社外取締役を中心にするというのは、確かにガバナンスの強化という面があるかと思いますが、委員会設置会社に移行することがガバナンスの強化になるかどうかについては、かなり疑問に思っております。特に経営者の報酬の決定が報酬委員会で決定できる。そういう意味で、株主の議決権が及ばないところで決まってしまうという点で、最近の証券会社の粉飾決算の疑惑でも、株価を高くするために粉飾したのではないかと疑われておりますが、このあたり、委員会設置会社に移行したことがガバナンスの強化であるというふうに金融庁が表に出してくるということには、大分疑問を覚えます。

1点質問ですけれども、これは募集・支払いについての資料ですが、保険会社がみずからの健全性、あるいは比較の場合に、自社の健全性についてをアピールする場合の規制はどうなっているのでしょうか。ソルベンシーマージンや自己資本比率などを募集に使う場合の規制について、聞かれていれば教えていただければと思います。

○吉住課長補佐

お答え申し上げます。

そもそも広告をする場合に、例えばアメリカでありますと、財務状況がきちんとしている場合じゃないと広告をしてはいけませんとか、そういう規制がありますので、まずその段階ではじかれるといいますか、不健全なところというのは広告を出せない。出していればその法令に引っかかるというような形になるんだと思っております。健全性につきまして、特にそれを前面に出しているかという話につきましては、話をしましたが、そういうのはあまり出していない。どちらかというとイメージに近いようなものを出しているということで言っておりました。

ほかの国も広告につきましては、どちらかというと個別のものを出すというよりは、自社のイメージ的なものを出しているほうが多いという形でありまして、例えばすごく健全性がありますとか、そういう形での広告というよりは、安心ですというようなメッセージ的なものが多いというふうに語っておりました。

○深尾委員

今の点に関してですが、アメリカの場合は広告規制をする。健全でない保険会社に対して広告規制をするということですが、これは広告を全面的に禁止するというか、どういうような形で規制を行っているんでしょうか。当局としては、むしろそういうところが募集をしないことによって、その会社を小さくするという意図なのか、あるいは、販売を強化して立て直すということにはもちろん矛盾するかと思うんですが、このあたりどういう考え方でやっているのかということについて教えていただければと思います。

○長谷川保険課長

ちょっと時間がかかるようですから、その前に最初のコメントについて、もちろんそういうご意見ということで承ります。ただ、ここに書いてありますのは、それぞれの保険会社が計画として書いているものでございまして、問題は、この書いていることが実際に、本当にしっかりと魂がこもって運用されているかどうかだというふうに思っておりますので、この委員会設置会社に限らず、いろんな何とか窓口とか、何とか統括部とか、いろいろありますけれども、本当にそれがしっかり機能しているかどうかだというふうに思っておりまして、私のほうもその辺も適宜フォローはしていきたいというふうに思っております。

○吉住課長補佐

すみません。お答え申し上げます。

アメリカの財務状況がきちんとしていないと出せないというところの考え方ということでございますが、それをきちんとしていないと出せないというのは、基本的に私が話していた感じでございますと、まず大前提として、それをもって規模をシュリンクさせていこうとか、そういうふうに何か意図的なほうに誘導させようというよりは、広告を打つ者として、要するに公共の保険、消費者を対象とするものとして、最低限のものは満たしてくださいよということで、規制を置いているという感じでございました。

○山下WG座長

丹野委員。

○丹野委員

まず、保険金支払いのこのペーパーにつきまして、ちょっとよろしいですか。いわゆる不払い問題に関して、きちんとした総括という形で拝見させていただきました。要はビジネスモデルが破綻したんだけれども、それに対して各社がどういう態勢をして、それに対して金融庁がどういう観点からそれをウォッチングしていくのかということについておまとめになったペーパーだと拝見をさせていただいて、細かいことを申し上げればいろいろ言いたくなるんですけれども、それは控えさせていただくとして、要は今までは見えなかったもの、このことが起きたことによって、今まで保険会社、業界、それからもしかすると金融庁も見えていなかった不適切な取り扱いと不適切な仕組みがあぶり出された。それを根本的に根っこから変えて対策をしましょうというお話なんだろうというふうに受けとめさせていただきました。

今、長谷川課長のほうからコメントございましたけれども、ややもすると、のど元過ぎればというふうになりがちでございます。そういうふうにならないように、これで十分ではなくて、まだ足りないところがたくさんあるというふうに、私なんかは思って、例えば募集人の資質の問題だとか、それから商品の簡素化の問題だとか、それからこちらのほうのテーマになっています約款の問題だとか、そういう問題がたくさん実はあるのですが、そこが書き込まれていない。どちらかというと総論的に、総花的に書いてあるのに書き込まれていないというふうに思っています。それでもそれをよしとしたとしても、やっぱりのど元過ぎればというふうにならないように、ぜひお願いをしたいというのがございます。それが1つ目です。

それから2つ目ですが、募集・支払いにいついて、海外出張報告というこちらのほうを拝見させていただいて、募集・支払いというテーマが、今まで具体的にどのテーマで金融庁が取り上げていられるのかが、あまりつまびらかに明瞭化されていなかったという部分があるから、そういう意味では、ここに1ページ目のところに、約款及びその公開、募集文書、適合性の原則、それに付随して、支払いはちょっと離れているけれども、こういう形であるということが見せていただいたというのを、まず、こういうことを考えていらっしゃるんだなということが、わかりました。でも例えば、じゃあ日本について約款と募集文書と適合性の原則をこのペーパー1枚にぽんとまとめられるのかという、非常に疑問があるから、本当にこんなふうなのと思いながら実は拝見をさせていただいたんですが、そうは言いながら、こういうふうにまとめていただいたのはまあ宜しい。ただし、本当に淡々とご報告だけなんですね。もうちょっと踏み込んで、例えばこの点ではここが参考になったとか、日本では例えば募集文書で言うと、契約概要と注意喚起情報とその他を始めたけれども、それのお手本になったこの国では実はこうなっているなど、もうちょっと踏み込んだご報告があるとうれしいなというふうに期待してお聞きしていたんですけれども、その辺がないというのがありまして、そこら辺につきまして、例えばどこがどういうふうに参考になるというふうにお考えなのか、ちょっとお教えいただきたいというふうに思っております。

○山下WG座長

いかがでしょうか。

○石田保険企画室長

すみません。今回、海外出張報告ということでご紹介させていただきまして、まず、この募集・支払いの話につきまして、昨年の9月から議論を始めさせていただいたんですけれども、もともと法務省というか、保険法の議論のほうで、募集については引き続きこの金融庁というか、幅広くいろんなテーマ、話題があり得るので、保険法での対応というだけの話じゃなくて、いろいろ実際のこの監督とかいうことも行っている、金融庁の金融審議会のほうで、いろんな観点、幅広い観点から問題点、あるいはどういうことが課題なのかということも出してもらいながら議論をしていっていただきましょうということでご議論をいただきまして、例えば丹野先生にもこの前プレゼンテーションしていただいたような項目、特にこれまでいろいろ挙げられているような話題について、我々もできるだけ幅広い観点から、いろいろ問題点がどこにあるのかということで議論をいただくということなので、テーマの絞っているわけじゃないんですけれども、これまでご議論いただいた点を中心に、できるだけ、短い時間ではあったんですけれども、例えば募集文書がどうなっているのかとか、あるいは、今お話いたしましたように広告規制とか比較情報とか、向こうの実際の規制がどうかということもそうですし、あと当局者が実際にどういう考えでいるのかということと、あと実態がどういうことなのかということをご紹介させていただいて、それでこれからの議論の参考というか、土台にさせていただければということで紹介させていただきました。

もうちょっと踏み込んだというところについて、いろんなご議論あり得ると思いましたので、できるだけ客観的に、当然、行った人間の主観がその中に入っているわけですけれども、そうは言いましても客観的に聞いてきたこと、持って帰ってきたことを、できるだけバイアスなくお伝えすることはお伝えして、ご議論をいただければという考えのことから、こういう格好でご説明させていただきましたので、その点ご理解いただければというふうに思います。

○山下WG座長

砂田委員。

○砂田委員

すみません。資料51-1の、6ページです。

少し文言に不満がありまして、支払い管理部門における態勢整備のところですが、1番のポツですね。保険金等の支払いが保険会社の基幹業務の一つであることを理解、認識しと書いてありますが、まさにこの保険金というのは適切に支払われての保険会社ということで、消費者としては認識しておりますので、業務の一つというのではなく、基幹業務そのものではないでしょうか。

次、7ページです1番のマル3です、終わりのほうで、契約者等がみずから必要な保険金等を漏れなく請求できるような環境(自己責任原則を発揮できるような環境)が整備されているかを検証する。例えば、保険金等の請求手続に関し、契約者が請求可能な保険金等の内容を漏れなく把握でき、容易かつ主体的に請求できるような仕組みとなっているかを検証すると、このように書かれておりますけれども、保険商品というのは本当に多種多様で、自分で情報を収集して比較検討する作業は極めて難しいわけです。例えば消費者団体として今まで学ぶべきことに対しては、食の問題であるとか、あるいは環境の問題というのは、学ぶ機会が多いのですが、保険について学ぶところがほとんどありません、運よく保険に関する口座を見つけて、聞きに行きましても、非常に高度で、一般の庶民では、消費者では理解できないという高度な内容で、自分の生活、自分の加入する保険に何ら参考にならないということがあります。消費者が本当に自分の保険を見直す、これから入るときの参考にできるような、そういうような消費者教育をこれから考えていっていただけるのでしょうか。消費者庁もできるということになっておりますので、その辺の消費者教育の中に保険の教育もお願いしたいと思っております。

次に海外出張報告ですが、丹野委員も言われておりましたように、視察して淡々と並べたよ、という感じなんですけれども、せっかくいろんな情報を、収集されたもの、例えばアメリカ、イギリス、ドイツと比較して我が国のすぐれている点、それから学ぶべき点、こういうふうにしたらどうなのかという具体的な比較検討して、すぐそれが生かしていけるというような比較検討をされたものが欲しいなと思っております。

それと、外国の保険の内容につきましては、年金保険、貯蓄型が多いようですが、トラブルがないのかなと思っています。その辺のお話もありませんで、わかりません。日本の場合は特約についての請求漏れが非常に多かったわけですけれども、そういうのはなかったのでしょうか。日本の保険の現状、支払い、それから募集などと外国との比較がされていなかったので、お聞きしたかったです。

○山下WG座長

コメントございますか。

○長谷川保険課長

ありがとうございます。

まず1点目の、6ページの基幹業務の一つであるという文言ですけれども、全くおっしゃるとおりでございまして、まさに保険金の適切な支払いというのは、保険会社の基幹業務そのものだというふうに思いますので、また機会があるときに文言は工夫させていただきたいというふうに思います。

それから2点目の、7ページのところですけれども、この例えばのところの文章の背景には、ややもすると保険会社の募集の段階から見て、契約者が十分理解しないまま手とり足とり教えて、それで保険契約者のほうがその説明を十分理解しないまま契約に入ってしまう。その結果、請求段階でも十分契約内容を理解していなかったので請求漏れが発生するというような風潮といいますか、態勢が従来あったのではないかという問題意識がございまして、そもそも契約者がまずは主体的に請求が容易にできるということが大前提だろうという意味合いを込めまして、こう書きました。ただ、当然、普通の契約者が、普通の教育を受けた人が、普通に、容易に、なおかつ主体的に請求するには、やはり今までの請求書のフォーマットが非常に複雑すぎるとか、あるいはもっとさかのぼって、商品自体が不必要に難解でわかりにくいものであったということはあろうかと思いますので、そういう商品の設計の問題、あるいは募集の段階での説明の度合い、それから請求の仕方、そういったものを全体として、通常の人が普通に請求できるというような態勢を整えてほしい、そういう意味合いを込めて書かせていただきました。

後半おっしゃっておられた消費者教育の充実、それは全くおっしゃるとおりだと思いますし、そういうことも別途、政府全体としても、あるいは政府だけではなくて民間レベルを含めてやっていく必要があると思いますけれども、そういう特別なことをしなくても、普通の人が普通に問題なく請求できるというのが一番望ましいかと思います。そういう意味合いを込めて書かせていただいたわけであります。

○石田保険企画室長

それから、砂田委員からご指摘の、まず消費者教育で、今、保険のことを金融教育の中で保険をどのようにやっているのか、ちょっと説明するような材料を持ち合わせておりませんけれども、確かにおっしゃるとおり、保険も相当複雑なものになっているものも多いというのがございますので、今後のそういう教育という観点から取り組んでいかなければいけない大きい課題だということは、そのとおりだと思います。

それで、今回の資料で外国との比較で、丹野委員ともおっしゃる部分がご趣旨重なるところがあるかと思いますけれども、我が国としてどういうところを参考にするといいのか。学ぶべき点というところについて、まさに今日、そういうご議論いただければというところがあるわけでございますけれども、今日、説明をした中で、例えば募集コストの開示というようなのは、我々も情報が今まで割とはっきりしなかったところがあったんですけれども、例えば今ご説明した中では、イギリスとかこういうところは規定があったんですけれども、ニューヨークとかアメリカでも、今まで募集手数料等の開示義務というのはないという話だったんですけれども、今回の出張で私聞いた中でちょっと驚いた話では、アメリカもやらないと言っていた話が、向こうの当局者がこういうことをやっていこうという話で、今、内部で検討中というような話をされているというような話もあって、なかなか大きい、これが実際に実現していくということになれば、かなり衝撃というか、大きい話だなというようなところもあるかと思います。いろんな点について全部、網羅的にお話しするあれではないんですけれども、まさに、こういうご紹介した中で、我が国との関係で今後の方向をご議論いただく際に、材料としてご議論いただければなというふうに思ってございます。

外国で請求漏れとか不払いというような話というのは、私は日本のようなあれだけの件数なり、ああいうことで、それが大きな問題になったというのは、少なくとも私は承知してございません。

○山下WG座長

よろしいでしょうか。

増井委員、どうぞ。

○増井二部会委員

すみません。今のご質問と相当ダブるので、あまり特別な質問ではないんですけれども、今、石田室長からお話があったように、この保険のこういった不払いの問題だとか、いろいろな顧客をめぐるトラブルというのは各国であるのかもしれない。あるいは、ないのかもしれません。よくは知りませんけれども、やっぱりこの制度を見ていますと、各国の、1つは監督当局の問題意識というんですか、日本でもいろんな事件があって、監督当局の問題意識も大きく変わってきているのかもしれませんけれども、相当差があるような気もするんです。この資料だけ拝見しただけで必ずしもわかるわけではないんですけれども、行かれたときにいろんな問題を投げかけた際の各国の監督当局、あるいは保険会社も含めてですけれども、こういった問題に対する問題意識というのはどの程度のものなのか。あるいは、それは自分ではなかなか評価しにくいかもしれませんが、日本の状況と比べてどうなのかとか、全体としてそういうことはまず大事かなと。もちろん一つ一つの制度をいいところを取るというのは大事かもしれませんが、そもそもそういう問題意識がないところに制度をとっても、うまくいくかどうかもよくわかりませんし、もしそういうところがあまり見られないようなら、日本で自分で考えなければいけないということにもなるんだろうと思うんですが。細かなことをお聞きするつもりもないんですけれども、全体の日本のポジションというんですか、こういった問題についてのですね。そこら辺はどういうふうにお感じになったかということをお聞かせいただければなと思います。

○吉住課長補佐

お答え申し上げます。

説明の中でも申し上げさせていただきましたが、日本は死亡補償みたいな保険が多くて、どちらかというと、海外に比べると貯蓄性みたいな保険が少ない。ところが、アメリカですと貯蓄性とか、あるいは医療費が高いこともあってか、医療保険が多い。イギリスで言いますと貯蓄性が多いとか、社会保障制度との関係もあるのでしょうけれども、当たり前と言えば当たり前なのですけれども、日本と違った状況がございます。

また、話しておりまして、やはり海外においては、いわゆる契約者のほうが、約款、あるいは自分が保険に入っている部分について、比較情報等含めまして、いろいろ勉強して、支払いの部分についても私はこれに該当しているのじゃないかとか、これも当たっているのじゃないのと、そういう形で、どちらかと言うと積極的に支払いを求めてくる部分がある。したがって、それに対して当局としてどうするかというと、よく商品を理解できるような正しい情報をちゃんと提供しなければいけない。わかりやすいものであって、あるいはうそが入っていなくて、誘導的ではなくて、正しいといった、要するに契約者が意識を持って、自分から取り組もうとしている状況に対して、きちんと手助けできるような規制や制度、そういうインフラ的なものを整備しなければいけないという形から取り組んでいるのではなかろうかという印象を受けました。

海外が訴訟社会だとか、日本とはそういう若干違いはあるのかもしれませんけれども、ただ、そういう実態上の保険の仕組みの構成の違いとか、あるいは国民的な気質の違い、あるいは社会保障制度とか社会情勢の違いというのはあるのですけれども、ただいずれにしても、日本にしても海外にしても、募集の部分については、募集の際にきちんと正しい情報が出されるように、ちゃんと指導していこうと。そして、きちんとした支払いがなされるように、そこの部分についても指導していこうということで、基本的にやや契約者の意識は違うものの、両方とも正しい情報が正しく伝わって、かつそれに基づいてきちんと支払うべきものは支払われるようにしていこうと。これについて、各々の国の事情に合わせながらどういう取り組みができるかということを模索しているということを、全体的な印象として感じました。

○山下WG座長

木下委員。

○木下委員

募集・支払いについての海外出張報告について、アメリカのことでお教えいただきたいんですが、適合性原則について、ニューヨーク州については規定がないということですが、NAICについてはAnnuity Suitability Regulationというモデル規制があるというふうに聞いておりまして、恐らくこれはニューヨーク州では採用していない。まだ採用しいている州は過半数いっていないように報じられていますので、これはニューヨーク州では多分採用されていないということなんだろうと思いますが、もし、ニューヨーク州がこれまだ採用していないということについて、何かニューヨーク州当局のご見解等お聞きであれば、ぜひお教えいただきたいということと、アメリカにおきましては、もともとSuitabilityの問題は、判例法がもともと先に出ていた問題ではないかと思いますので、規定だけ見て、ないからないというのは、バイアスのないご報告としては少し不足しているのかなという印象を持ちましたので、お教えいただければと思います。

○吉住課長補佐

お答え申し上げます。

今まさしくおっしゃいましたように、いわゆるNAIC、全米保険監督官協会が、例えば年金取引の適合性に関するモデル規則みたいなものを作っておりまして、年金保険には適合性の原則を導入しなければいけない。そういうような規定があることは承知しております。その上で、ニューヨークにその点について聞いたんですけれども、ニューヨークは、そういう規則はあるのだけれども、まだ検討中で取り入れてはいない。取り入れていないというのは、やや説明の中でもご説明申し上げましたが、まず入り口の段階できちんとしたものをつくって、それによって募集現場というよりは、まず入り口の段階でわかりやすくすることによって、全体としての適合性といいますか、適切な募集態勢というものを確保しようというふうに考えているからであると。この適合性ではないのですけれども、ただ、そのほかの部分についてはコスト開示とか、いろんなものについて正しい募集がなされるように検討しているということを言っておりました。

適合性について全く議論がないのかという話を聞きましたところ、それについて、もちろんないわけではない。ただ、それをどういうふうに規定するのかということについては、募集コストの開示と全然違って、まだ議論の中で醸成されているというような段階にはないのだというふうな話で話しておりました。

○山下WG座長

洲崎委員。

○洲崎委員

保険金支払いについて、質問ということではなくて、意見として申し上げたいことがございます。

この保険金の支払い漏れの問題が顕在化して以降に、保険法実務に起こったある大きな変化として、保険法関係の判例の数が非常に少なくなったということがございます。最近でも高裁判決、最高裁判決は出ておりますけれども、これはこの問題が顕在化する前に起こった事件が係属して判決まで至ったということで、地裁レベルでは裁判所に係属する数、そして判決が出る数というのは非常に減りました。保険関係の裁判は保険会社が原告となって提起されることはまれで、普通は契約者の側が保険会社が支払ってくれないので訴訟を起こす。そして保険会社が受けて立つという形で訴訟が提起され判決までいくというのが一般的ですから、平成18年以降に判決が減ったということは、保険会社がそのような請求に対して受けて立つことなく、保険金を支払うことが増えたのではないかと推測されますし、さらには、そういう態度をとるようになったのは、不払い問題で非常に世間から厳しい批判を受けて、保険会社が受けて立つことに対して及び腰になってしまったのではないかとも推測されるわけでございます。

例えば単純な告知義務違反のようなケースでも、約款では告知義務違反があれば、保険契約を解除して解約返戻金しか返さないということになっていますが、約款上、告知義務違反の解除権行使は2年以内に行われることになっていますし、保険料月払いの契約だと、2年以内だと解約返戻金はゼロですから、単純な告知義務違反のケースであれば、保険契約者には一切お金が戻ってこないということになるはずですが、保険契約者からの訴えに対して及び腰になっているということがあるとすれば、そのような告知義務違反に対する対処においても、する必要のない和解のようなことをしているおそれもあるのではないかと懸念しております。

この保険契約は、一般の保険契約者からすると中身を理解するのは難しいもので、したがって、保険契約者を保護するというためにいろいろな施策や法解釈をすることは大事ですが、しかし一方で、保険契約は不適切利用といいますか、反社会的目的のために悪用されるということも、保険商品の性質上、逃れることができないことでありまして、そのような悪用の試みに対しては、保険会社としては断固として支払いをしないという扱いをすべきだろうと思います。

保険金関係の争訟は、反社会的勢力からの不当な請求に限らず、一般の素人からの支払請求であっても生じますが、そのような場合であっても、約款で支払わないと書いてある以上は、あらゆる保険契約者に対して約款規定は平等に適用すべきであって、ごね得は許すべきではないと思っております。保険会社の方々に対しては、不当な支払い請求に対しては、以前と同じように断固とした態度をとっていただきたいと思いますし、保険監督に当たっても、そのような面に十分留意した上で監督をしていただきたいと思っております。

○山下WG座長

コメントということでよろしいですか。

隈部委員。

○隈部委員

今、保険会社のほうが及び腰になっているのではないかというようなご発言がありましたが、そういうことで訴訟が減ったとか、そういうことではないのではないかと思っています。これは分析的に見ているわけではないのですが、例えば今まで、不支払としたことが明らかにおかしいもの、これはなくなっていると思います。グレーゾーンにあるようなところ、そういうところは、恐らくしっかりご説明をするというところが充実してきているんだろうと思います。そういう意味では、支払い漏れの関係とかの対応が整備されてきたということの効果なのではないかなというふうに思っています。

また、反社会的勢力とか、そのあたりの対応というのは、協会レベルで対応を考えて引き続きやっておりますので、何でも払えばいいというような対応をしているということではないということはご理解いただければと思います。

○山下WG座長

高橋委員。

○高橋二部会委員

時間のないところ恐縮なんですが、本ワーキングとか第二部会で、今後どのように作業ないし検討を進めていくのかということに関連して、二、三、ご質問したいと思います。

1つは、ワーキング資料51-1の生命保険会社の業務改善計画の概要、ここのところなんですが、先ほど深尾委員からご説明に対して、保険会社がこのような業務改善計画を立てているんですということの概要のまとめだというふうにご説明あったんですが、私はやはりこれを見て、まとめ方が変だなというふうに思っているんです。検査、監督と企画と連携の結果、今、連携して動いていらっしゃると思うんですけれども、これ全体の傾向を示しているものなのか、業務改善計画の中にあったものを何となく拾っているものかということがわからないんです。今、例えば生保業界でも、協会で業務改善計画の内容をまとめて右へ倣えしているわけではないし、国内、外資でそれぞれ違ったんだろうというふうに思うんです。ですから、その辺がわからないと、何が足りなくて、何で法律で規制するなり、ルールをつくっていかなければいけないかということがわからないんです。ですから、委員会設置会社に移行というのも、全社がそう言ったというふうにはちょっと考えられないというふうに思いますし、株式会社化するとか、相互会社のままどうするとか、いろんな会社の対応というのが出ていたと思うんですけれども、これがわからないので、もう少し再度、これのもとになったデータなりを示していただいて、現状がどうであるのかということをもう少しわかるようにしていただきたいと思います。

それから、監督指針のほうなんですけれども、5ページ目のところに保険金等支払いに関する取締役会等の認識及び取締役会等の役割とあって、この等が何を示すかというのも、非常に多様な形態の保険会社があるところでこのようになっていると思うんですが、私が一番気になっておりますのは、次のページの(7)のところに、監査役監査というのを入れてあるんですが、ここに書いてあることは全くまっとうでございまして、監査役監査がちゃんとしていれば、こんな不払いの問題というのが今まで引きずってきたなんていうことはあり得ないので、これについてどう考えているのかということは、私は重要なポイントだというふうに思っているんですが、取締役ということで片づけられたり、あるいは委員会設置会社ということになりますと、監査役ではなくて監査委員になってしまいますので、また問題が別になってくるというふうに思うんです。この辺の整理をきちんとしておく必要があるのではないかというふうに思います。

先ほど内部統制のお話で、ホットライン等のお話をいたしましたけれども、参考までに申し上げれば、私が監査役をやっております金融機関でない上場会社では、監査役のホットラインというのを設けておりまして、内部管理のほうに入ってくるのはいろんな業務の問題なんですが、経営者の問題に関しては、内部管理部門も通らずに直接に監査役のところに入ってくることになっていまして、これが非常に子会社の管理を含め有効に機能しているんです。ですから、そういうことも含め考えていただきたい。この委員会設置会社であれ、監査役会社であれ、それぞれの会社で理由があってやることだと思うんです。ただ、委員会設置会社に移行と書かれてしまった場合に、委員会設置会社の場合の監査委員の選び方の問題とか、監査委員の身分保障の問題、1年で取締役の場合は交代させられることがありますので、監査役設置会社の場合の4年間は身分が守られるというところとの違い等もありますので、もう少し細かく見ていただきたいということが1点です。

それから、海外のご報告をいただいて、それと日本の現状を照らして、今後どうやっていくのかということをこの場で考えていく必要があるというふうに思うんですが、特に保険金支払いのところについては、保険法で対応できなかったところを保険業法でしっかりやっていくというところもあると思いますので、もう少し論点を明らかにしていただきたいというふうに思っています。私が問題意識を持っておりますのは解約返戻金のところなんですけれども、今日のご報告でいけば、例えばイギリスの場合には、ワーキング資料51-3の4ページのところなんですけれども、終身保険であっても貯蓄性がある保険商品という認識はないと、これだけで終わってしまっているんですが、日本の場合には終身保険というのは貯蓄性があるという認識のもとに、さまざまな移行制度というのを設けていて、年金になったり、介護保険になったり、いろいろするわけです。これ日本独自のものがありますので、そういう契約変更制度などもとらえて、どうやっていくのか。長くなって恐縮なんですが、投資型の保険に関しては海外に見習って、きちんと規制をしていかないと、日本がブラックマーケットになってしまうおそれがあるので、しっかりしていただきたいと思いますし、日本独自のものについては、本当に日本独自のものに着目したことをこの場で検討していく必要があるというふうに思います。

ですので、最後ですけれども、このワーキングが非常に作業部会と言いながら開催回数が少なく、どこがゴールなのかがよくわからないまま、何か漂流しているように私は感じているんですけれども、今後の展開を含めてご説明をお願いします。

○石田保険企画室長

このワーキングでございますけれども、今日、海外出張報告ということで、まとめて保険料積立金等についてということで、昨年の7月、ワーキングで今後のワーキングでの課題というところで、募集・支払い、保険法の議論のときの際に、金融庁のほうで引き続き検討ということで、引き継いだような格好になっているものもありますけれども、この募集・支払いと、それから保険料積立金、それから規制緩和関係の議題、それからあとセーフティーネットということについて、順次、幅広くご議論をいただいてやっていきましょうということで、ご議論をいただいています。

回数がもうちょっと何度もできればよかったんですけれども、なかなかすみません、日程調整とかで、回数がなかなか上がっていないんですけれども、事務方として今考えてございますのは、今、募集・支払いについて、いろいろ、できるだけいろんな方から報告を頂いて、先般も仲立人の方とかご報告頂いたりして、大体お話しいただけるような方からは、大体お話し頂いてきているのかなと。今回は海外出張のことも報告させていただいたりしているので、募集・支払いのほうについては、まだ深めていかなければいけないということも、もちろんこれからなんですけれども、一応、問題とされているような点についてのご指摘というのは、いろんな方面からご指摘いただいてきているのかなと。それについての海外の状況というものも報告させていただいたりして、という状況になってきているのかなというふうに思っています。

それで、できれば次回には次のテーマの保険料積立金、海外出張の報告を今日、先にやったんですけれども、こちらのほうについても、昨年のワーキングの際に、一応、今後の検討の課題についてご議論いただいた結果というのがございますので、それに沿った形でご議論いただく材料というのを、次回かその次か、ちょっとそこを調整しないといけないんですけれども、提供させていただいて、ご議論いただけるようにしたいなというふうに考えてございます。

役所でございますので、事務年度ということが当然出てくるわけでございますけれども、話が相当幅広く行われていますので、この先の議論をどういうふうに、さらにこれから展開していったらいいのかというところについて、高橋先生がおっしゃるみたいな、何か漂流しているみたいな格好になっちゃうといけないものですから、どういう格好でできるだけ議論を整理して、つなげていくことができるのかというところが、もうちょっと考えさせていただきたいというふうに今思っているところでございます。すみません。

○山下WG座長

あまり簡単に解決できる問題ではないので、拙速で小さいことをやって終わりというわけには、どうもいかないのではないかなと、私個人の感覚です。そうなると、それなりにじっくり時間もかかるのかなというところで、ぜひ、またご協力をお願いしたい。

本日、時間ちょっと超過いたしまして、これぐらいで終了したいと思います。

どうもありがとうございました。

以上

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金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課保険企画室
(内線3571)

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