金融審議会金融分科会第二部会(第42回)議事要旨

1. 日時:

平成19年11月29日(木)15時00分~17時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3. 議題:

○ 平成16年改正後の信託業法の施行状況について

  • 有識者からのヒアリング
  • 自由討議

4. 議事内容:

  • 事務局より、「信託会社の経営の概況」について、説明があった。

  • 以下の有識者からヒアリングを行った。

  • 筑波大学 新井 誠教授
  • 日本弁護士連合会 赤沼 康弘弁護士、深山 雅也弁護士
  • (株)朝日信託 皆見 一夫社長

【自由討議における主な意見等】

  • 福祉型信託は高い収益性が見込めないので担い手になり得る層が限定されてくるという側面と、逆に受託期間等を考えるとしっかりした企業体でないと担えないという側面のトレードオフの中で、どういう担い手を適切と考えるかが議論となる。福祉型信託の概念が広いので、類型を細分化したうえで、ある類型では担い手を幅広く開放し、別の類型ではかなり厳格な制限を置くということが不可欠ではないか。

  • 弁護士の仕事は、億円単位の事件を1人で処理することや、公益的な観点から採算度外視で行うことは珍しくない。福祉型信託は採算性が高くないと考えられるが、だからこそ弁護士が担うことが期待されている。また、弁護士には弁護士会による懲戒制度があるので、他の受託者とは違った規制があり得るのではないか。

  • 類型化については、現行の信託業法にある運用型信託会社と管理型信託会社の分類を前提として、福祉型信託は管理型信託会社をベースにして考えたらどうか。

  • 福祉型信託による財産管理では、財産を安全に管理保全するだけではなく、それが受益者の生活、医療、介護のためにきちっと使われるという身上配慮が重要。信託銀行が財産管理を行い、別の方に身上配慮をやって頂いて、それを連携させれば良いのではないか。公益法人やNPOが受託者になるのであれば、基本的にはそこで一本化して身上配慮義務を担うことが理想。

  • 福祉型信託の利用者は成年後見人と受託者の両者に十分な報酬を支払う余裕はないことが多いだろうから、基本的に、弁護士が受託する場合には、弁護士が信託の財産管理と身上監護の両方ともやらなければならないだろう。成年後見における後見人は、財産の名義は移らないが、処分権を含めた全ての権限がある。それと同じような役割を果たすべく、信託を利用することで安全に財産を隔離し、その上で財産管理を行うことは十分可能。

  • 各地域の社会福祉協議会がやっている地域福祉権利擁護事業というものがあり、成年後見の前の段階の者を対象にして、証書等の重要書類の預り、預貯金の出し入れ、公共料金の支払い等の金銭管理サービス等をやっているが、これが福祉型信託につながるのではないか。

  • 地域福祉権利擁護事業はうまく機能しているところもあるが、全国的に見ると普及はまだ限定的。社会福祉協議会が福祉型信託に参入することも選択肢としてはあると思うが、本当に受託者になれるかは議論が必要。

  • 弁護士が弁護士会等を経由して財産管理を行う場合には、基本的に弁護士賠償保険に入ることと、定期的に弁護士会に運用状況を報告することが義務付けられており、信託を受託できるようになった場合もそのような監督があり得る。

  • 弁護士が仮に信託を受託するとしても、信託業務を中心にやることを想定しているのではなく、むしろ諸々の法律問題、紛争等が絡んだ中でその解決の手段として信託を使いたいという観点で考えている。

  • 信託会社にとっても、任意後見や障害者のための信託が営業の中核になりえる。

  • 弁護士自治の中で手当てがあるとしても、財産を受託するのであれば財政的基盤や様々な規制が必要で、弁護士が単体または副業的にやることはそぐわないのではないか。

  • 弁護士が受託する信託において、財産の運用は考えていない。全国の弁護士会に財産管理に関する高齢者・障害者支援のチェックをしている支援機構があるので、ここの機能を充実させることで弁護士のチェック体制をつくることが十分可能。また、支援機構が頻繁に研修を行い、ノウハウを蓄積し伝えている。

  • 福祉型信託の受益者は高齢者や障害者という社会的に保護される立場なので、受益者の保護等を考えると適切な参入基準があるべき。また、財産名義が変わることによるリスクはかなり大きく、オペレーショナルなリスクに対する財政的基盤も必要。

  • 弁護士賠償責任保険は、着服の場合は免責事由で補償してもらえないので、その部分に対する財政的基盤が必要。財政的基盤があれば、当然着服も起こりにくい。

  • 高齢者・障害者の分野をやっている人たちはボランティア的、献身的なことでやっている人たちが多いので、その人たちが信託を受託する場合に保証金の供託が必要ということになると、受託する人がいなくなってしまう。

  • 弁護士に懲戒制度があるから大丈夫だというのは、弁護士会の中だけの独りよがりの議論で、実際には懲戒に至らなくても、ひどい例や和解で済ませているものもある。受託者として問題がない者であることを公的に認証する制度を入れざるを得ないのではないか。

  • 金融は社会のインフラではあるが、信託業法は事業者法であるので、事業として成り立つことが大前提。高齢者、障害者という最もケアを必要とする人たちに対する社会政策を金融のインフラの中で考えていくためには、公益信託法の整備も絡めて、もう少し幅広いアリーナで議論をしないと難しい。また、弁護士自治があるから信託業法の適用除外という考え方には大きな違和感を覚える。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3582)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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