金融審議会「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(第41回)議事要旨

1. 日時:

平成19年12月4日(火)13時00分~15時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3. 議題:

保険法改正への対応について

4. 議事内容:

  • 法務省法制審議会で審議されている保険法改正への対応に関して、前回に引き続き、保険会社に対する監督・規制という観点から考えられる論点について議論を行った。具体的には、法制審議会における保険法改正についての議論状況を踏まえ、
    マル5保険募集、
    マル6保険金支払、
    マル7損害保険会社に対する先取特権、
    マル8傷害・疾病保険契約に関する規定の創設、
    の4つの論点について取り上げ、論点毎に事務局がそれぞれ資料を用いて説明を行った後、自由討議を行った。その後、前回議論を行った論点のうち、「保険料積立金等の支払」および「未成年者の死亡保険」について、引き続き議論を行った。

【自由討議における主な質疑等】

【保険募集について】

  • 法制審では、いわゆる告知妨害については、告知妨害があった場合には、保険会社は契約を解除することができないという形での効果を定める方向で議論が進んでいるが、募集締結時の一般的な説明義務あるいは損害賠償の特則については、基本的に規定を設けない方向で現在議論がされている。

    契約法上の効果を設けるとなると、一体、具体的にどのような効果を設けることができるのか、それについて合理的な説明ができるのかといった観点、あるいはそもそも契約法上あるいは民事法上の効果と結びつけられるだけの明確な形で説明義務を設定することができるのか、そういった観点から検討がされているが、なかなか難しく、基本的には規定を設けない方向での議論になっている。

  • 保険法部会でも、募集時の情報開示ないし説明義務というものを契約法の基本ルールとして定めたらどうか、あるいはそういう義務に違反した場合の損害賠償責任が、今の民法の一般不法行為の規定ではなかなか十分な救済が得られないので、少し特則を設けてはどうかというような意見が一部委員から有力になったところではあるが、立法から見て技術的に難しいのではないかという点や、今この業法を中心にして、非常に規定が整備されているところであって、それを全部契約法に移すのはなかなか現実的ではないだろうし、また監督の実効性という面からも問題だろう。そのような総合的な判断で、契約法の方に募集に関する規定を設けるというようなことは、基本的には見送るというようなことで意見が集約されてきつつあるところである。

  • 募集のところについての規定は充実をして頂きたい。3ページに今の保険業法における募集関係の規定とあって、マル1募集人の責務で、説明義務があって、業法の第100条の2、それから施行規則ときているが、業法の100条の2の書き方は、何か措置を講じていなければいけないという書き方になっており、あれをストレートに説明義務とは読めないと思うので、やはり説明義務の規定が必要だと思う。

    これは、今の業法全体に言えることで、保険業法は典型的に事業者のための法律で、事業者が何をなすべきかで書かれているものなので、どうしても募集にしても、支払いにしても、契約の場面のところについての規定がすごく入りにくい。だから監督指針に入れたりという工夫をしているのだろうと思うが、そういったところからの検討もぜひして頂きたい。

  • 今ご指摘のあった100条の2というのは、業務運営に関する措置となっている。具体的には、保険会社はその業務に関し、この法律または他の法律に別段の定めがあるものを除くほか、内閣府令で定めるところにより、その業務に係る重要な事項の顧客への説明、その業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取り扱い、その業務を第三者に委託する場合における当該業務の的確な遂行、その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じなければならないとある。いわば、包括的な規定が盛り込まれていて、例えば、その下に保険業法施行規則として、53条第1項で、保険会社は法第100条の2の規定により、その業務に関し、次に掲げる措置を講じなければならないということで、1号、2号、3号、4号、それからずっと続いていく。

    3号では、保険料の計算に際して、予定解約率を用い、かつ保険契約の解約による返戻金を支払わないことを約した保険契約の保険募集に際して、生命保険募集人または損害保険募集人が保険契約者に対し保険契約の解約による返戻金がないことを記載した書面の交付により説明を行うことを確保するための措置ということで、いわゆる無解約返戻金のタイプの保険を募集する際には、別途きちんとその旨を説明した書面の交付によって説明を行うための措置を講じることが求められるというスタイルになっている。確かに契約法的な整理であれば、個別の一つ一つの契約ごとにおいて何らかの行為がなされていなければ、その契約が無効になったり、解除事由になったりするという形での説明の義務を課す。これは契約法上の権利義務関係に差異を与えるという意味での文脈での説明義務という考え方だと思う。

    一方、業法での説明義務というものの整理の仕方は、保険業法が保険契約者の保護ということ、あるいは裏返せば保険会社に健全な経営を求めるという観点から、業法でまず措置を講じることを求めており、この100条の2については、別途行政上の行政罰がついている。そのもとで、具体的なケース・バイ・ケースの求めるべき説明については施行規則に書き込んで、会社の業務運営としてそういったものを求めていくということで、その会社が単純なミスではなくてそういうものを構造的にやっていないということであれば、業務改善命令なり、業務運営に対する措置が講じられていないということで、最終的に行政罰といったことを求めると、保険会社に保険契約者に対する説明なり、さまざまな行為を要求するというふうになっている。

    したがって、どういうスタイルで保険会社と契約者の関係においてこういう書面交付なり説明を求める措置を担保していくのかということだと思うが、保険業法ではこういう形で行政罰、あとは別途刑事罰がついているような形で記述をして、保険会社に適切な説明を求めることになっている。

  • 実際にこういった措置を講ずるとなっており、違反は行政処分と刑事罰もついているということだが、機能するような仕組みにして頂きたい。

  • 嘘の情報を開示すれば当然処分対象になるし、説明すべきことをしなくても、本当にあれば処分の対象にもなり得る。それは当然のことである。

  • 体制面としてそういったものが構築されていないということが確認されるならば、保険業法100条の2に基づいて行政処分を打つということもあり得るという法律の仕組みになっている。

  • 行政処分ないし行政上の対応をするということも、非違行為がある場合は重要だが、他方で事前にそういった非違行為が起こらないことを、業界としても、保険契約者保護のための措置をあらかじめ講じて頂くということも大変大事である。

    したがって、「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」の中で、具体的に保険業法100条の2から施行規則の53条の1項におりて、さらに監督指針におりる形で契約概要あるいは注意喚起情報、それから意向確認書面といった措置を導入頂いた。そういった措置を通じて、実効性ある説明体制の構築がなされているという理解であり、事前、事後の監督の体制は車の両輪として、実効性あるエンフォースメントの確保ということが出されているというふうに承知している。

  • 金融商品取引法のように、新しい法律の体系みたいなものを整理されると、やや保険との間で少し法の体系が違ってくるのが目立ってきているのかなと思う。こちらは古い体系の上にいろいろ継ぎはぎをして、実質的にはそう劣っているわけではないと思うが、見た目がちょっとわかりにくいという面はあるかと思う。今後の課題である。

  • 監督指針があるから消費者が守られているというふうにはなかなか考えられない。今回この保険法改正への対応として募集をどう考えるかと言われると、言えばもう山ほどあるし、どういう手順で何を申し上げればいいのかわからないというのが正直なところである。どこで何を検討するのかという枠組みを示して頂きたい。少なくとも、監督指針に関しては契約概要、いわゆる書面をいろいろ出すことで消費者保護が図られているような説明をいつも金融庁から聞くが、あれが実効性のある措置なのか、本当に消費者が望んでいるのかということは、大変疑問に思っている。本来は業法でやるべきことを業法でやれない諸々の事情があって、たまたま監督指針でやっているだけで、それを恒久的なものだと考えて頂きたくないと思っている。

  • 金融商品取引法上の開示とか説明と比べると、販売する者と当事者との間でその商品内容についての契約をするわけではない。基本的には仲介であり、その仲介であるにもかかわらず一定の商品内容の説明とか、リスクの説明が求められている。それに対して、保険契約の場合は、契約者と保険会社が直接の契約相手になるわけであり、より契約内容の説明義務というのは重くかかってくると考えられるのではないかと思う。

    先ほどの説明では、募集時の説明義務については契約法では設けない方向で審議がなされていると言われたが、それは、設けなくても私法ルールとの関係では私法上の説明義務が生じるからそれで十分であるというお考えなのか。

    もしそれが十分でないのであれば、契約法で設けないのであれば業法で設けるというのも一つのやり方だろうと思う。その際に、監督指針ではなく、法律レベルで契約内容の説明義務を法定するということも一つのやり方ではないかと感じた。

  • 契約法においては、何も置かなくても十分だから設けないという議論ではない。むしろ、契約法で何か説明義務を置くとすれば、ではそれの義務違反があった場合にどういう契約法上あるいは民事法上の効果が生ずるのかというのをセットで考えなければいけないだろうという発想がまずある。そうしてみたときに、説明をきちっとしていたらどうなるかというと、契約に入るか、あるいは入らないか選ぶわけだが、説明義務違反があったときに、義務違反があって、多分入らなかった人は問題にならないので、問題になるのはきっと契約に入った人だということになると思う。入った人にどういう効果を与えるかというと、罰則は別で民事法上の効果だが、どういう効果を与えるかというと、説明義務違反があったから本来は払われない保険金を払うという効果を与えるのかというと、説明を受けた人以上に保護されることになってしまうのではないか。あるいは、そもそもそういう人にペナルティーとして払うという発想もあるのかもしれないが、それは他の保険契約者もたくさんいて、そういう人たちの保険料から捻出されるということになる。いろいろ考えると、結局説明義務が大事なのは全く否定しないし、何か置けるものならという思いもあるが、契約法上で合理的な効果として何かきちっとセットで仕組めるかということについては、なかなか難しいということで、規定を設けることには消極的な方向で今進んでいるということである。

  • 募集のところに入るべき項目として広告規制の問題があると思う。金商法の実施以来、やはり非常にほかの投資系の商品との差異が目立っていると思うので、有利誤認を与えるような表示についての禁止みたいなものは、検討頂きたい。実質的に広告がきちんと規制されればいいので、よろしくお願いしたい。

  • 保険業法施行規則234条1項4号の中に、不特定のものに対しても保険契約等に関する事項であって、その判断に影響を及ぼすことになる重要なものにつき、誤解させるおそれのあるものを告げ、または表示する行為というのが禁止行為の中に入っており、現状これで充足しているものと考えている。

  • 規定があるとすると余計エンフォースメント側の問題に今度なると思う。差が目立ってきていると思うので、そこの平仄を合わせて頂く必要はあるのではないか。

  • 業法の募集規制というのは、なかなか分かりにくいものになっているのは間違いないようで、どこかの地点ではいずれ総合的に見直していく必要があるのではないか。

  • 今回のワーキングにおいては、保険契約法の改正に伴う議論という枠組みでやらせて頂いているが、中長期的な課題というものはそもそも別にあるのではないかというご指摘もあったので、また取りまとめに向けて最終的に、ご指摘のあった点について今後どのように検討していくのかということについても整理しなければいけないのかなと思っている。

  • 貯蓄性の保険について、内部収益率を明示すべきだと思う。例えば年金の場合では、年金の支給開始年齢からその時点での平均余命まで生きた場合の内部収益率を何%といった形での開示をすべき。

    実際これを聞いても、募集人が数字を持っていない。これは、内部体制としてもおかしいと思うし、少なくともそれは重要な事項として、債権を買うときに金利を表示しないというのはあり得ないので、利回りを開示すべき。期待利回りでいいわけで、長生きしたら得ですよと、早く死んだら損ですよと、平均的な場合にどういう利回りになっているのかということは開示すべきだと思う。

    また、死亡保険でも同じことであり、掛け捨ての部分を貯蓄していると勘違いしている人が山ほどいるのがわかっており、これは内部収益率がどの程度か、もちろん配当などを全部除外した上で、これだけ最低限払いますというラインで内部収益率を開示させるということが必要だと思う。実際上マイナスになる場合も結構あるので、それはマイナス何%と開示させればいいと思う。

  • 今、保険についての国民の不信感というのは非常に強い。ここでしっかりしたルールを早くつくらないと、もう保険そのものが、格差社会の中で保険どころじゃないと、保険はもういいよというような風潮もないわけではないということをもう少し真剣に受けとめていくべきだと思っている。

    早急に検討を開始して、迅速にルールをつくるということをお願いしたい。募集の法律というのは、業者を律する法律で、今こんなにトラブルが起きているのは、やはり消費者が知らない、契約者が知らないということで、知っていればもっとパブリックプレッシャーみたいな形で不法な行為とかいろいろなことを取り締まることもできると思うが、まさに消費者が全く守れないほど、何をこの人たちは私たちにしてくれるのか、しなきゃいけないのかということさえわからないのだという原点に立っていくべきであると思う。

【保険金支払について】

  • 保険法部会における審議について、1つ目の保険金の支払時期については、現在商法に規定は置かれていないが、規定を設ける方向で審議が進められている。

    具体的には、民法412条に一般的な債務者が遅滞に陥る時期についての定めがあること、それから保険契約については、火災保険の約款についての判例だが、平成9年3月25日に最高裁判所の判例が出されているということ、大きくその2つの点を踏まえた規定を設ける方向で検討が進んでいる。

    具体的には、民法が、期限の定めがある場合には、その期限に従って支払時期が到来し遅滞になるということ、期限の定めがない場合には、請求によって遅滞に陥るということ、がベースになっている。それから平成9年の最高裁の判例が、保険契約においては損害の確定や損害額の評価あるいは免責事由の有無の調査など、必要な一定の期間内は遅滞の責任を負わないという約款の定めに合理性があって、そういう定めが有効だということ。ただ、それはあくまで合理的な範囲内に限られるので、それを超えた場合は無効だという判断が示されているということなので、まさにその実質を条文に落とす方向で検討が進められているところである。

    2点目の保険金の支払に関する保険者の責務については、主に保険法部会では保険者サイドの請求妨害のような行為があった場合に関するルールを置くべきではないかという点、それから、請求案内に関する規定を設けるべきではないかと大きく2つの提案がなされおり、それについて検討がされている。請求妨害の点については、損害賠償一般の問題でやはり吸収されるというか、そこで説明がされる問題あるいは請求があったかなかったかという事実認定の問題ではないかという問題意識があり、具体的な規定を置くということについては消極的な形で議論が進んでいるというように認識している。

    また、請求案内についても、特に保険法部会で問題となった請求案内は、他の契約の請求についても合わせてという観点での請求案内のご意見であったが、他の保険契約の保険金請求権といっても、他の契約と具体的に請求があった契約との関係というのはさまざまなので、それについて一般的な形で他の契約についても同じ保険会社が持っている場合には請求案内をしなさいよとはなかなか書けないのではないか、あるいは、それは下手をするとがんの告知のような、病名の告知といったことにつながりかねない。そういう深刻な問題も背後にはあるという問題意識を考えると、なかなか一般的な形で請求案内の規定を契約法上置くことは難しいのではないかということで、消極的という形で審議は進んでいると認識している。

  • 法制審では、遅延利息というのが法定利息ということで決められているようだが、この遅延利息を設定するということは、1つは経済合理性、お金を払うのをくれたらその分だけ金銭の時間的価値を付与しようという経済合理性で考える考え方と、インセンティブというよりも、ペナルティーのような形で、なるべく保険金を早く払わせようとする一種の仕組みとしての考えと、2通りあったと記憶している。どちらかというとペナルティーとする議論があったということを報告しておくが、ペナルティーは別にあるべきであって、遅延利息というのは経済合理的に金銭の時間的価値と考えるような方がいいのではないか。

【損害保険会社に対する先取特権について】

  • この点については、中間試案の公表前までの審議においては、損害保険会社について先取特権の規定を設けるべきであるという意見があった。ただ、その意見に対しては、保険業法における議論の経緯だとか、あるいは各事業主体の実態に即した手当てをする方が契約者保護という観点からは望ましいのではないかといった観点から疑問が出されていたところである。中間試案のパブコメ後に改めてこの問題を取り上げて、同じような疑問があったため、どう考えるべきかという問題提起をしたところ、その審議の場では特に強く規定を設けるべしという意見は出なかった。したがって、現在、保険法部会における審議の状況としては、基本的にこのような規定は設けないという方向で取りまとめがされるだろうと考えている。

  • 損保業界の立場としては反対の立場である。

【傷害・疾病保険契約に関する規定の創設について】

  • この点については、中間試案における整理は資料の17ページの囲い込みの中で整理頂いたとおりの整理がされている。

    ただ、この点については、保険法部会での総意としてこういう整理がされたというよりは、とりあえずこういう形でパブリックコメントに付そうというところであり、その趣旨は、前回配付された40-1-3、参考資料マル2の20ページ、21ページをご覧頂ければと思う。20ページの一番末尾の「なお」で始まる行のところであり、中間試案では、今の囲い込みのとおりの整理がされているということであるが、次の21ページのところに書いているとおり、これ自身がこの法案の編別構成そのものを意味するものではなく、この編別構成については立法形式とも関係するものなので、それも含め、法制的な観点から整理する必要がある項目であると、こういう認識を断らせて頂いている。部会でも事務当局の側から説明させて頂いているところであり、これで既に確定している、あるいは既定路線であるということではない。

    むしろ部会では、主に保険法の学者の先生方などから、本日の資料1の17ページの保険業法における整理のマル1にあるとおり、損害てん補方式、定額給付方式を区別せずに、まとめて第三分野、すなわち障害・疾病保険という整理をすべきであるという意見の方が強く出されていたということもある。その意味で、資料1の17ページにある、保険業法の規定と保険法における規定との差異が発生するかどうかは今もって未定、現在検討中であるので、まだはっきりしないということしか申し上げられない。ただ1点、その下の表とも関係するが、現在、保険法部会の審議では、傷害保険あるいは疾病保険、あるいは傷害死亡給付、疾病死亡給付、傷害か疾病かで区別すべきという意見はあまりない状況であり、恐らくこの障害、疾病の中で区別をするということにはならず、傷害・疾病保険というのが1つの枠組みとして何らかの位置づけを与えることになるであろうということは申し上げられるのではないかと思う。

    被保険者同意については、これは今最も方向性が出ないまま残された論点であり、事務当局としては、資料1の19ページで引用している部会資料21のようなご提案をさせて頂いているところあるが、これに対しては、被保険者の同意はまさに原則なのだから、その原則どおりとるべきであって、マル2のaやbのような形で、同意を不要とする例外の場面を広く認めるべきではないというご意見がなお強くあり、そのあたりの調整が残されているところである。

  • 保険法の方で整理すると、今の業法の傷害・疾病保険(第三分野)と生命保険という境とは違った境が2つの法律の間でできるということになるということであった。そう考えると、業法の方で現在の整理でいいのかどうかということを一応検討する必要が出てくるということである。

    業法の方で、疾病死亡給付というのが生命保険と言い続けられているのは、病気で大部分の人は死ぬから、これを第三分野の保険とすると生命保険とほとんど違わないということが実質的な理由だったと思う。これはこれで合理的な境界の整理の仕方というふうに従来考えてきたと思うが、そういうことを維持することでいいのか、あるいは契約の内容、給付の内容を論理的にたどると、先ほどおっしゃったような保険法のような整理も可能だということである。

    規定ぶりは保険法ができたらまた少し考えなくてはいけないのかもしれない。今の保険法は商法の古い規定を前提に条文をつくり上げているようなところがあるので、何らかのテクニカルな見直しが必要かもしれない。

    あわせて、19ページの被保険者の同意。これが非常に意見の対立があって、まだ収束していないところである。

    今回の改正では、生命保険については比較的厳しく同意を得ると。現在の商法では、死亡保険金の受取人が相続人になっていれば、被保険者の同意は要らないという条文になっているが、ただ実務上はそういう場合でも同意を全部要するという形で運用されていたと思う。傷害保険はとにかく商法に現実に規定はないが、生命保険に関する規定があって、それを準用するような形で解釈がされてきたので、受取人が相続人になっていれば同意が要らないということで、比較的同意なしで他人の傷害・疾病の保険というのが幅広く締結されてきた。生命保険の方で例外をなくすと、同意は厳しく要求しましょうとしたときに、傷害保険もそれと同じで行くと、現在までは被保険者の同意というのをほとんどとらないで契約できていたものが、全部同意をとらないと契約できないことになるということである。例えば家族全員の傷害とか疾病の保険というのをお父さんが締結しようとすると、家族全員の判をとってこないと契約が有効に締結できない。あるいは、海外旅行傷害保険を空港で、時間もないので、出発間際に家族やお友達の分をまとめて締結しようとすると、ここでも1人ずつ連れていって同意の手続を経ないと契約できないと。現実には、そういうことはなかなか要求するのは難しいかなということがある一方で、やはり実務上は非常に高い死亡保険金の保険が他人について被保険者の知らないところで締結されているおそれはあるということで、そのあたりをどう考えるかということで意見が大きく割れて、まだ収束していない。

  • 被保険者の同意について、モラルリスクで、どこで線を引くかという話であれば、例えば保険法でそれができるとは思わないが、一定の金額で線を引いて、バーの上は本人の同意が必要でそれ以下は不要とか、そういうふうなアプローチというのは議論される余地はないのか。

  • 保険法というか、契約法の立法としては、金額で制限するのは無理だということであり、その前提で、どうルールを合理的なものにするかという難しい問題になってきている。

    多分、業法であればいろいろなタイプの障害・疾病保険があるので、そこをきめ細かく決めることはできると思うが、契約法というのは基本ルールを定める法律で、そこで例えば1,000万なら1,000万といっても、どういう傷害保険に加入するかによってそれが随分違うと思う。そこまで細かくはとても規定できないということかなと思う。

  • 切り方としては、傷害あるいは疾病の場合の治療費のようなものであれば問題はないと思うが、死亡した場合は本人に行かないで相続人に行ってしまうという問題があって、ここで切り分ける手はあるのではないか。つまり、死亡保険については、普通であれば生命保険に入っているはずであって、特段、旅行のときだけ死亡保険を上積みする理由ということはあまりないと思うため、ニーズから言えば、死亡よりはむしろ疾病と傷害救援の方が要るに決まっているわけなので、死亡保険金がある場合は本人の同意を要するというようなやり方があり得ると思う。実際上、それによってマーケットを動かしていくことがむしろ望ましいのではないか。

  • 法制審での検討がスタートする時点で、事業者の方からは最大ここが自分たちとしては大変な論点で、具体的に個別に同意をとるという作業が伴うので、ここがどう決まるかが自分たちにとっては非常に大きい課題だと思って見ているという話があった。やはり保険の種類、それから金額、それから同意のとり方、同意の工夫というところもあると思う。それで、工夫をしていくことで、やはり被保険者の同意を契約の効力要件ということで同意を原則とするというところは曲げない方がいい。

  • 保険契約法の同意というのは、これは効力要件として定められているもので、保険契約法で同意は不要だということになると監督を設けないという話があったが、業法上は効力要件ではないような、手続要件としての同意のようなものを設けることも可能なのではないか。そういうものを設ければ、それについては範囲を限って同意をとる義務を課すという形にすれば、業法上の監督は動くのではないか。

    要するに、保険契約法上の同意と保険業法上の同意というものを、効力を別にすれば、違った要件として課すことができるのではないかということである。保険業法上の同意の要件というのは、保険契約の勧誘とか締結を適正に行わせるための業者の公益性として課すという形にすることも可能なのではないか。

  • 傷害保険を中心に、損保業界に深く関連する事項であるが、いろいろな契約形態もあるし、モラル上のリスクの発生の度合いも当然異なるかと思う。いろいろなことを考えなければいけないと思うが、各会社としても、あるいは業界としても、モラルリスクの排除というのは最大課題の1つなので、現時点でこれをやりますということを申し上げられる段階にはないが、いろいろなご指摘を踏まえ、各社としてももちろんだが、業界としてもそういったモラル上の弊害等を防止するための策を早急に検討して、なるべく近いうちに効果を持った議論ができるようにしたいと思う。非常に商品も多岐にわたり、実際に該当する被保険者の数も数百万といった膨大な数であったりするので、なかなか今、申し上げられないのは申しわけないが、早急に検討していきたいと考えている。

  • 保険事業者としては、モラルリスクの排除というのは最大の課題であり、みずからモラルリスクを誘発するようなことをしようということを考えている会社はまずないだろうと思う。したがって、何らかの手を打つというよりも、既にそういうことは考えながら会社経営に当たっているというのが保険会社の常道であるので、そういう意味では、特に保険契約法でそれを規定するというのは、問題だと思う。また、保険業法でやるというのも、商品が非常に多岐にわたっているということと、将来どういう商品ができるかということを現状で予見するというのはかなり難しいことなので、それは保険会社ないしは監督法のガイドライン等で規定していくというのが筋ではないかと思う。

  • 一個人として、知らない人が自分の生命に対して巨額の保険をかけるということには絶対反対であり、そういう立場から反対している。

  • 傷害・疾病というのに関しては、同意は要らないと思う。死亡保険の場合、モラル上の発生があって懸念されているところもあると思うが、他人と、それから相続人という分け方もあるが、相続人は同意が要らないということになっているが、最近は相続人も危ないので、他人だから、相続人だからということも一考しなければいけないのではないか。金額が一番判断の材料になると思っている。

  • 本人の生存中ないしは本人の救援のために使うものであれば無制限でいいと思うが、本人が死んだ後に出るものについては、やはり制限すべきではないか。

    疾病と傷害だけの大きなものを買おうとすると、大抵のスケールでは高くなり、生命保険についてのカバーがないとパッケージになっていない。もともと不要なものを買わされていると常々思っているので、そういう意味で、契約法でやれるのであれば、それは規制して頂いた方がずっとよい。

【「保険料積立金等の支払」および「未成年者の死亡保険」について】

  • 解約返戻金の条文に関する質問だが、仮に予想外に大量の解約が出ると積立金が相当計算上余るが、その余ったものを最後に解約する人に返さなければいけないという計算にはならないのか。ここの条文をそのまま読むと、当該保険契約と同一の計算の基礎を用いて、保険料の金額を算出している他の生命保険契約に基づく将来における保険者の債務の履行に備えるために必要な金額として、計算の基礎により算出されるということは、当初の基礎で算出されるから予想外でも構わないと読むのか。

  • そこも、契約の仕方によっては変動していくというのがあり得なくはないかもしれない。それは、ここの規定では予定していないということではないかと思う。

  • 前回、未成年者の死亡保険については非常に強い意見を出させて頂いて、その意見が変わっているわけではない。つくづくやはり、この国には未成年者保護規定というのが非常に貧弱であるという実態を今回勉強させて頂いた。これが必要である、あるいはこれを変える必要がないのだという論拠が、ニーズがあるとか、非常に根拠が薄いと思う。実際に法律の専門家の方たちが経済のニーズ、あるいは経営のニーズというものをいうが、それが実態に即したものかどうか、死亡保険契約が相当数あるいうが、知らず知らずのうちに多分そういうことになっているだけで、実際のニーズかどうかについて監督の方で調べて頂く必要があるのではないかと思っている。

  • 前回、厳密に考えると不正確なことを申し上げたので、若干、調べた。調べた資料が絶対正しいかどうか、ほかに資料があるかも、すべての社種を読んだわけではないので正しいかどうかわからないが、今の認識を結論づけると、まず第1に、子供を被保険者とする保険はかなり古くから、少なくとも明治20年代末には存在したと。2番目に、徴兵保険の普及が子供を被保険者とする慣習を戦前において普及させた。3番目として、当時の民保の子供を被保険者とする保険は、被保険者の死亡に対しては、払込保険料プラスアルファ程度の給付であったと。養老保険型の子供保険を最初に販売したのは、恐らく簡易保険の小児保険であったと。これには、逆選択防止の仕組みはもちろん入っており、保険金額限度あるいは削減払いといったものが入っていた。5番目として、民保が養老型の子供保険を販売したのは、これは恐らく戦後の保険需要のない時期であったのではないかと。この保険にも削減払い等の逆選択防止の仕組みはあったということである。

    以上をまとめて、意見を3点申し上げる。第1点は、これだけの長い歴史があって、なお被保険者の金額制限とか保険金制限が我が国に存在しないのは、我が国の子供に対する価値観が低いのではなく、これまでに子供に関する保険金殺人が社会問題になってこなかったためではないかと思う。

    イギリスの場合、ご承知のように、ビクトリア時代に大変な保険金殺人事件があり、他国でもそういったものが多く社会問題になって、その結果、被保険者の制限とか、そういったものが生まれてきた経緯がある。日本の場合は、もちろん個々にはあっただろうが、社会問題として子供を目的とした保険金殺人事件が社会問題化したことがなかったために、今こういったことになったということで、私は存在するものがすべて合理的であるとは限らないと前回申し上げたが、外国にあるものがすべて合理的なものであるとは思わないので、むしろこの状態というのは、決して日本の価値観が低かったのではないということが第1点である。

    2番目は、子供の死亡保障に実需がないということだが、これは、実需を決めるのは、原則としては法律家ではなくて市場だと思っているので、この愛児保険のこの商品をどう理解するかはさまざまだろうが、需要がないときに保険会社がイノベーションとして市場を生み出したものと理解することも可能かと思う。

    第3点目は、これは保険者側がこういった子供を犠牲にして業績を伸ばすために保険を売っているというイメージが、極端に言うとつい強くなりがちだが、冷静に考えてみると、保険契約の当事者の保険者側も逆選択によるコストは当然考慮するということなので、つまり子供の保険金殺人事件を防ぎたいというインセンティブというのはあるわけなので、そこを基本的には重視するということは重要だと思う。

    以上、3点が基本的な私の意見だが、それでは保険法と業法をどう考えるかということについて、保険法に関しては、これまで議論があったが、保険金制限を置かないということは1つの形式であると私は考えている。では、業法ではどうかということについて、保険会社が完全であると、保険会社も実際に売るのは募集人なので、募集人をコントロールできるかといったところもあるため、単純に安全であるとはもちろん言えないと思う。ただ、保険会社が逆選択によるコストを操作する要因について、例えばポリシーリミットだとか、支払い方法だとか、そういったさまざまな要素があるが、その要因の1つを取り上げて、これでもって逆選択を防止するという方法は、結果的に市場を制約するという形で問題ではないかと思う。

    やはり、こういった子供の問題というのはアンダーライティングだとか、販売の個社の技術ではなくて、もっと社会性のある問題としてどんどん積極的に開示して、あるいは業界で調整していき、こういった子供の事故というのをこれまで以上に防ぐような体制をとってほしいと思うし、また行政の方でもそれを支援するような体制で取り組んで頂きたいと思う。

  • 実体験から申し上げたいと思うが、自分は、学資保険を掛けたが、途中で転換を勧められた。その転換を勧められた内容が、死亡保障がついていて、死亡のところが払込保険料累計額より高額な金額が出るようになっており、また、病気をして入院をした場合の入院特約がついていた。不要な契約がついていたが、やめるか継続をするかという選択のときに大変悩んだのが、やめたら解約返戻金はすごく低く、そのまま続けないと、それまでの保険料の1.5倍ぐらいを支払わなければいけないというようなことになっていたことである。やむなく転換をしたという非常に苦い思いがある。自分もやめる決断がつかなくて継続をしたが、少なくとも死亡保障がついた、子供を被保険者とするようなものは、やはり、商品上としても考えられない。それから、戦前からの説明があったが、当初は子供が死亡した場合は、払った掛金プラス若干の給付ということで、その考え方はまだある程度わかりはするが、栃木でも大変大きな金額が掛けられた殺人事件があり、これから世の中どういうような誘引が働くかわからないので、ここについては前回も大変な議論があったというふうに聞いている。ぜひ検討を尽くして頂きたいと思う。

  • 未成年者の保険には多種多様なものがあって、発生的には子供保険の、しかも死亡保険金という形ではなくて、既払込保険料を死亡時に返すというものが主流としてスタートしたとの説明があった。ただ、最近は、随分商品性が変わってきている。簡易保険自体は死亡保険金が1,000万円まで入れるが、たしか子供の保険は700万が限度だったと、今確認できていないが記憶しているが、そういう形で死亡保険金がついているのが学資保険だった。生保の子供保険は、当初は死亡保険金はついていなかったが、いろいろ商品変遷の中では、自分が取材した以降は、乳幼児で生まれたときには死亡保険金が少ないものに入っていても、小学校ぐらいから勧められているものは定期保険がベースになっていて、学資というような祝い金というものが定期的に出る、いわゆる生存給付金付定期保険であったり、あるいは傷害保障の終身保険が若いときだったら高額買えるからということで、終身保険がベースになって、それにちょっと学資の祝い金がついているようなものであるとか、それをみんな子供保険だとか学資保険だと言って一緒くたにして売ってきた歴史というのがあると思う。

    一般の消費者の方は、死亡保険金が欲しくて買った人もいるかもしれないし、欲しくなくて同じようなものだと思って買った方がいるかもしれないが、そういう中で営業拡大のために不幸な事例が出てくるようなものをそもそも容認していいのかどうかということに関しては、私は容認するべきではないと思っている。したがって、15歳以上とか未成年者の同意がとれる年齢にきちんと制限をつけて、同意の上で入るべきものではないかと思っている。

  • 未成年者に対する高額の保険を販売するということについては、何らかの制約を加えるべきだと思う。その面では、契約法でできないというのであれば、業法で対応して制約を加えるべきである。それからまた、子供保険について定期保険の部分が大きいものが売れるという理由は複利計算が難しいからで、内部のエクセルを使ってIRRを計算できる人ならいいわけだが、できない人が多数いて、そういう人が内部収益率がマイナスになるというのが見えないということがあると思う。

    したがって、これは内部収益率を開示させることによって、つまり満期保険金までの、あるいは終身であれば余命までの内部収益率を開示させることによって、買う段階で何%で運用しているのかと、定期預金なり国債で運用した場合との比較が見える形にすれば、ある程度のチェックになっていく。そういう意味でも、内部収益率の開示というのは非常に大事だと思う。

  • 子供保険ということ自身が非常にすっきり行かない。ニーズがあるとかないとか、子供が殺されて保険金をとられた数が少ないからこれは認められるということではなくて、子供の死亡保険が存在すること自体が思想的には何か受け入れられないところがある。子供の成長を願ってという、子供のすこやかな成長を願っていくのにお金の裏づけが要るということで、出産、教育、結婚、そういうところでは親の責任としてこれは要るだろうなと思うが、それを死亡のときに頂くということが存在すること自身があまりすっきり行かない。

    したがって、仮に不幸に亡くなった場合は、掛金程度とプラスアルファというのが望ましいと思う。死亡保険を予測するというか、期待するというのは、心情的にも何か受け入れがたい。

  • 未成年者というときに、やはり15歳以下、15歳未満だと思う。親権が及ぶということをもとにつくっていくべきなのではないかということが1つ。それから、価値観が低かったのではないというご意見があったが、価値観が低かったかどうかということではなくて、現在の虐待の実態とか、保護体制の未整備なんかを見ていると、時代の変化に合っているのかどうかというところを自分は問題にしている。

    ニーズの判断というのは、非常に難しくて、私どもがニーズがあるというふうに申し上げると、業界の方たちはニーズはあまりないので自由化できないというふうにいったり、こちらがニーズがないのではないかと言うとニーズがあるというふうにいうので、非常にこれは難しい。

    消費者金融のときも、本当に必要なニーズと必要でないニーズという議論が出て、ある程度の価値観を入れた判断というのがなされたと思う。やはり保険についてもこういうようなことを考えて頂きたいし、お葬式代で300万、500万とすごく大きな金額で、お金が欲しい人は20万でも30万でも欲しいという実態があるわけなので、その辺についても考えて頂きたい。最後に、監督でも考えて頂きたいし、あと自主規制である。業界だけではなくて、心ある保険会社はこういう商品を売らないというふうになって頂きたいと思う。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局 企画課 保険企画室(内線3571)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る