金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第2回) 議事録

  • 1.日時:

    平成27年12月24日(木)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

定刻になりましたので始めさせていただきます。金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ、第2回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

早速でございますが、議事に移らせていただきます。お手元の議事次第にありますように、本日はまず事務局から配付資料について説明をしていただきます。その後に、項目ごとに皆様方にご審議をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、早速ですけれども、事務局からのご説明をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

それでは、お手元の資料1と資料2につきましてご説明を申し上げます。

資料1、事務局説明資料で、本日の日付がついているものでございます。1枚おめくりいただきまして論点とございますけれども、前回ご議論をいただきました内容を整理させていただきまして、今後このような構成でご検討をいただいてはどうかということでまとめさせていただいたものでございます。まず1つ目といたしまして見直しの視点ということがございます。2つ目といたしまして、これに沿いまして、金融商品取引法・会社法・取引所規則による開示、それぞれにつきましてその内容、それぞれをこの3つの制度開示につきまして内容の整理とその開示の日程・手続に応じました選択肢の拡大というものにつきましてご検討いただきたいと思っております。3つ目が、非財務情報の開示をめぐる問題ということでございまして、最後にその他ということで4つに分けた形にさせていただいております。

まず1つ目の見直しの視点、次のページ、2ページになりますけれども、日本企業の事業活動のグローバル化など、企業の情報開示をめぐる環境が大きく変わっているということでございまして、前回会議におきましては、そういった中で、日本再興戦略にも掲げられておりますように、企業の稼ぐ力を高めて持続的に企業価値を向上させるために、企業と投資家の中長期的な成長に向けた価値創造を念頭に置いた建設的な対話を促進すると、そういうことが重要ではないかということ、あるいは株主に占める海外投資家の比率が増加しているということで、対話重視の要請があるのではないか。また、企業のガバナンス強化や社会問題、環境問題への関心の高まりなどによるESG情報をはじめとする開示内容の充実の要請といったことがあるのではないかということでご指摘を頂戴いたしました。

また、個人による投資を促進するための環境の整備ということも重要だと考えられるかと思います。

このような環境の変化等を踏まえまして、開示内容の整理、開示日程・手続等の見直しを検討すると、こういったことをするということになるかと思いますけれども、その際の視点というものについてどういうふうに考えるかというのが1つ目の論点でございます。

2つ目でございますけれども、3つの制度に基づく開示の目的及び役割ということ、それから、それに沿いまして、その内容の整理、あるいは日程・手続に応じて選択肢の拡大ということでございますけれども、3ページには、前回もご説明しました、各開示書類の目的及び役割について再度掲載させていただいております。このうち、目的につきましては、少し詳しい説明を4ページに書いてございます。もう皆様、よくご存じだと思いますので、これにつきまして再度読ませていただくことは省略させていただきますけれども、例えば、金融商品取引法につきましては、こういった目的ということでございますので、事業等のリスクや財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、いわゆるMD&Aと言われるものを含むような詳細な事業状況等の開示が要求されておりますし、会社法につきましては、議決権行使等に必要な各種の情報、それから相対的に注記が簡略化された計算書類等の開示が要求されております。また、取引所規則につきましては、決算期末後45日以内の開示ですとか、監査不要の財務情報の開示等が要求されていると、こういう役割分担になっているということでございます。

1枚おめくりいただきまして、こういった役割分担ということを前提といたしまして、まず開示内容をどのように整理していくかということでございますけれども、前回いただいたご議論などから例示として書かせていただいておりますけれども、例えば、決算短信につきましては速報性を重視している開示書類でございますので、その性質上、必要な事項を中心に、より自由な開示を促進すべきではないか。あるいは、経営方針は、中長期の企業の目標を判断する上で有用な事項であるとの指摘がありましたので、有価証券報告書や事業報告に記載するということについてどう考えるか。また、先ほど申し上げましたMD&Aは、有価証券報告書で書くということにされておりますけれども、投資家との対話促進の観点からも重要な情報でありまして、一方で我が国の企業による有価証券報告書のMD&Aはひな形的開示になっているのではないかというご指摘がございました。こうした指摘も踏まえまして、中身についてどう考えるかと、こういったことが開示内容については議論の対象として、例としてあるのではないかということでございます。

それから、中身の共通化ですとか合理化ということでございますけれども、6ページのほうに記載をさせていただいておりますが、前回もご説明させていただきましたように、3つの制度に基づく開示につきましては、これまでも共通化を進めてまいりましたけれども、ここに書いてございますような項目について、少し中身が違うのではないかというような指摘がされているということがございます。こういった項目についてどう考えるかということについてもご議論いただければと思っております。その1つ目でございますが、事業報告の上位10名の株主の状況につきまして、有価証券報告書では大株主の状況という形で、類似した情報を求めているわけでございますけれども、こちらについて、自己株式を控除するかしないかという違いがございます。条文などについては次のページに書いてございますので、ご参照いただければと思いますけれども、こういったことについてまずどう考えるかということがございます。

それから、同じく事業報告に新株予約権等に関する事項を書くこととされていますが、有価証券報告書におきましてもストックオプション制度の内容を書くこととされております。こちらも新株予約権等に関する事項を開示させるという点では共通いたしておりますが、ここに書いてございますような相違点があるということで、事業報告では役員と使用人につきまして、それぞれ分けて開示をすることになってございます。有価証券報告書ではこれを分けて開示することとはなっておりません。こういった違いについてどういうふうに考えるかということがございます。これらが共通化の例ということでございますけれども、一方で合理化ということもございまして、下に書いてございますが、有価証券報告書のストックオプションに関する事項ということで、8ページ目の例を見ていただければと思いますけれども、有価証券報告書におきましては、ストックオプションについて新株予約権等の状況というところと、ストックオプション制度の内容というところで、結果として重複した内容を書くことになっているという指摘がございまして、こういうものについては統合して合理化してはどうかというようなご指摘をいただいているところですが、これについてどう考えるか、それからこういった項目がほかにもあるかということについてお伺いをさせていただければと考えております。

7ページ、8ページは先ほど申し上げましたものについての資料でございます。

それから、2つ目の論点の、その中の2つ目の点でございますけれども、開示の日程・手続に応じた選択肢の拡大についてでございます。株主が、例えば株主総会議案に関する十分な検討を行えるような開示の日程手続、あるいは開示のあり方というものについてどういうふうに考えるかということにつきましては、日本再興戦略のほうでも指摘をいただいているところでございますけれども、例えば前回も議論が出ました、株主総会の7月開催というものを企業さんが選択されたときに、開示についてどのようなあり方があるのかということで、例えば事業報告・計算書類と有価証券報告書を同日に開示して、できるだけ同じ1つの書類として出せるようなことをしてはどうかというご指摘も頂戴するわけでございますけれども、そういった際にはここにポツで列記してあるような対応が必要となると。例えば、議決権行使基準日と配当基準日を決算日より後とする必要があるのではないか。あるいは事業報告と有価証券報告書では、先ほど申し上げました大株主の状況というのを記載しておりますけれども、議決権行使基準日と決算日がずれると、株主の確定を2回行う必要が出てくるけれども、これについてどう考えるか。また、どう考えるかというときに、2回行うことを避けるために、大株主の状況の記載にかかる基準日を企業さんが選択できるというふうにする場合、企業ごとに大株主の状況の基準日が異なってしまうと、こういうことについて何か支障が生じるのかと、こういった点が出てくるわけですけれども、こういったことに対応していく必要があるのか、それともそうではないのかというようなことについてご議論いただければと考えております。

また、事業報告・計算書類の電子開示につきましては、前回のご議論でも、こういったことを進めていけば実質的な対話の期間というものは増えるのではないかというようなご議論、ご指摘を頂戴したところでございまして、一方でそういうメリットがあるけれども、紙媒体で提供されなくなると、株主の議決権行使への関心が低下するのではないかというご指摘も委員の方から頂戴をいたしました。こういうことを踏まえまして、この点についてどう考えるかということ。

それから、最後に、先ほどのお話とも少し重なりますけれども、四半期決算短信と四半期報告書、それから決算短信と事業報告・計算書類というのは近接したタイミングで公表されているわけでございます。こうした実務を踏まえまして、効果的・効率的な開示のあり方についてどう考えるかということでございまして、その点につきましては10ページに詳述してございます。

まず、10ページの1つ目、四半期決算短信と四半期報告書でございますけれども、下の括弧の中をごらんいただきますと、3月決算の上場企業2,422社中、この2つの書類を同日に開示している会社さんが349社、14%あるということでございますが、この中身が非常に似ているということで、企業にとって手間であるというようなご指摘も頂戴しているところでございます。一方で、両方とも出さないといけないし、できるだけ早く出せる情報は早く開示すべきだというようなご指摘も頂戴しているところでございまして、この点についてどのようなお考えかを伺えればと思っております。

また、2つ目は、決算短信と事業報告・計算書類でございますが、先ほど申し上げましたように、比較的近接したタイミングで開示されているということで、1社でございますけれども、同日に公表している事例も見られると。こういったときの取り扱いについてどう考えるか。それから、先ほどの9ページ目のところでもご説明しましたけれども、事業報告・計算書類と有価証券報告書について見ますと、例えば株主総会を7月に開催することを選択された企業さんがあったときに、双方の開示内容を満たす書類を作成して、同日に開示することが可能となるわけですけれども、これについてどういうふうに考えるかということでございます。

11ページ目が3つ目の論点でございます非財務情報の開示でございます。企業のガバナンス強化、あるいは社会問題、環境問題への関心の高まりなどによりまして、ESG情報をはじめとする非財務情報の開示の充実に関心が高まっているということにつきましては、先ほども申し上げさせていただいたとおりでございますけれども、こういった非財務情報につきましては、現在、結構多くの企業さんが任意に開示をされているわけですけれども、仮にこれを制度化いたしますと、定型化したり標準化することで創意工夫の余地がなくなって、かえって投資家の方々との対話を阻害するんじゃないかというようなご意見も頂戴しているところです。こうした意見も踏まえまして、非財務情報の開示の充実、それから法定開示と任意開示の役割分担についてどのように考えるかということが3つ目の論点でございます。

最後に、12ページ、その他、企業情報開示に関する論点ということで4点挙げさせていただいておりますけれども、第1回会合でご指摘を頂戴いたしましたが、単体財務諸表におけるIFRSの使用を認めるべきであるという意見についてどう考えるかというのが1つ目の論点でございます。

それから、2つ目が、我が国で情報の選択的な開示についてのルールを検討すべきではないかというご意見を頂戴いたしました。アメリカなどではフェア・ディスクロージャー・ルールということで、公平・公正な開示という観点から、選択的開示を禁止するルールがございますけれども、そういったものを日本において導入する必要がないかということが2つ目の点でございます。

それから、3つ目でございますけれども、企業の急速な業績変化に応じた取引機会が投資家の方々に公平に提供されることと、中長期的な企業価値の向上を通じた投資家の長期的な資産の増大というものはともに重要というふうに考えられますけれども、こういった中で、投資家の方々、これは機関投資家ということが中心になるかもしれませんけれども、個人投資家の方も含めて、そういった方々の中長期的な視点からの投資を促すために、どういった取り組みが考えられるかということについてもご議論をいただければと考えております。

それから、最後の論点は、先ほどの非財務情報の開示とも関連いたしますけれども、私どものほうにお見えになる海外の投資家さんからよくご指摘を頂戴するわけですけれども、日本の開示がいろいろなところに分かれて開示されているのでややわかりにくいというご指摘を頂戴するところでございます。企業情報へのアクセスの利便性を向上させて、企業と投資家間の相互理解、対話を促進するという観点から、本日議論いただいていますような書類のほか、コーポレートガバナンス報告書ですとか、CSR報告書ですとか、アニュアルレポートなど、複数の書類に分かれて記載されている企業情報をできるだけ1つにまとめてわかりやすく記載してほしいと、こういった要望に対してどういうふうに考えていくべきかということにつきましても議論を頂戴できればということでございます。

以上、簡単でございますが、資料1についてご説明をさせていただきました。

それから、資料2のほうでございますけれども、前回のご議論で幾つか宿題を頂戴いたしたわけですが、本日、準備させていただきましたのは、原田委員のほうから頂戴いたしました、実際に個人投資家の方々がどういうふうに議決権を行使しているのかというものについての資料でございます。

内容につきまして簡単にご説明を申し上げますと、上段が、個人株主の方の議決権行使がどの程度会社に影響を与えるかという観点から、株式の所有者の分布に関する各国の比較というものを表示させていただいております。青が日本で、緑が米国、オレンジが英国ということでございまして、例えば個人ですと、日本の場合は、所有者別の保有単元株式数で17%が個人の方、アメリカですと37%が個人の方で、イギリスは11%ということになるわけでございます。

下段のほうが所有者別の議決権の行使状況ということでございまして、信託銀行3行からいただいたデータをベースにしたものでございますけれども、個人の方で見ますと、36%の方がこの3社の中で一番高い数字でありまして、31%がその3社の中で一番低い数字ということですので、個人の方で言いますと、大体3割強の方が議決権を行使されているということでございます。

これにつきまして、右のほうをごらんいただきますと、米国では個人の方が大体28%、議決権を行使している。また、英国ですとその右側ですけれども、20%、議決権を行使しているという状況になっておりまして、我が国における個人投資家の方々の議決権行使状況は、この資料によりますと欧米に比してやや高い状況になっているということでございます。なお、ご参考でほかの機関、ほかの所有者の方々の情報も書いてございますけれども、合計いたしますと大体57%から59%ということで、6割弱の議決権が行使されているということで、右側のほうに私どものほうでわかりました数字を、アメリカの機関投資家と英国の全体ということで記載させていただいておりますけれども、米国につきましては大体9割の機関投資家が議決権を行使していると。英国は全体という数字ですけど、7割の方が議決権を行使されているという状況になってございます。

以上、事務局からの説明でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、審議に移りたいと思います。なお、関根委員と静委員より資料の提出がございましたので、お手元に資料を席上配付させていただいております。

今日の議論の進め方ですけれども、スライドの1枚目にあります項目立てごとに、その順で、ご質問、ご意見をお出しいただければと思います。まず、最初の項目は、スライドの2ページ目になります、見直しの視点、これにつきましてご質問とご意見をいただく。それから、次にまたスライドの3ページ目と4ページ目と、こういうふうに順番に行きたいと思います。

それでは、スライド2ページ目の見直しの視点につきまして、ご質問、ご意見がございましたらお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

【太田委員】

弁護士の太田でございます。前回は欠席をさせていただきましてまことに申しわけございませんでした。

前回の議事録等も拝見いたしまして、この見直しの視点について、基本的に私のほうとしてもほとんど違和感がないわけでございますけれども、今、若干話が出ておりました個人による投資を促進するための環境整備のところで言いますと、前回の議論の中では、全部電子化した場合に、紙が個人投資家のほうに行かなくなると、それはそれで問題なのではないかというご指摘があったかと思いますけれども、全体的に、金融庁としても、政府の方針としても、貯蓄から投資へという方向を押し進めている中におきまして、個人投資家、現在の保有比率をさらに高めていくことというのが我が国として課題なのかなと思っておりまして、そういたしますと、私も企業法務の現場にいますと、個人投資家の方については依然としてデジタルデバイドの問題といいますか、特に中高年の投資家の方もかなりいらっしゃいますので、全部電子化されると、それはなかなか困るというようなことは出てくるのであろうなと思っておりまして、今、細かな部分のウエブ開示がどんどん進んでおりますので、ウエブ開示を進めて、非常に脚注的な情報についてはウエブでということは十分あり得るかと思いますけれども、全部電子化ということになると、なかなか個人投資家の方にとってはかえって会社のガバナンスに作用していくということについて意欲がそがれる面もあろうかなと思いますので、私も、前回指摘がありましたとおり、ある程度これは紙ベースを送るということも残していかざるを得ないのではないかなと思っております。

あと、制度全体の話でございますけれども、前回のこの議事録の中でも、企業側の委員からご指摘があったと思いますけれども、企業法務の現場にいる身としては、それなりの制度としての安定性は保たれているところかなと思いますので、もちろん共通化できるところはした上で、ただ、会社法、金商法、東証規則、それぞれ異なった制度目的がありますので、やはりその制度目的に沿った形での開示は、これはある程度、その目的に沿った形でやらざるを得ないところもあるかなと思いますので、その制度目的の趣旨に沿った形での開示というものと、できるだけ共通化をして、企業、発行体の開示の負担、それから投資家側から見たわかりやすさという観点から、共通化できるものはなるべくしたほうがいいと思いますけれども、制度の趣旨に沿った部分でどうしても共通化できない部分というのはある程度残ってくるのではないかと思っているところでございます。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【大場委員】

東京海上アセットマネジメントの大場でございます。私も前回、海外出張をしておりまして、出席できておりませんでしたので、見直しの視点について意見を申し上げたいと思います。

2点ございまして、第1点は、ここにもございますけれども、非財務情報の開示についての重要性ということであります。私どもが仕事をしております資産運用の世界では、定量評価と定性評価というようなことがよく言われておりまして、そのときに定量評価というのは実績でございますので、これは非常に説得力があり、わかりやすいという面があるわけです。しかし過去の実績は将来を保証できるのかという問題が当然ございますので、私どもは定性的な評価というのを相当重視しないと持続的なトレンドは読みきれないと考えているわけであります。資産運用の世界では、そういう意味におきまして、定量評価と定性評価をどのような割合で評価をするのが望ましいのかというような議論が行われているわけでありますけれども、どちらかというと定性的な評価ということにウエートが置かれる傾向がございます。

言ってみれば、財務情報というのは事実、ファクトでございますので、過去のトレンドを確認するのに非常に有効です。しかし、将来を展望するときに、どのように考えたらいいかという課題があって、これには非財務情報が欠かせないという立場であります。したがいまして、今回の開示の見直しの目的が「持続的に企業価値を向上させるために、企業と投資家との中長期的な成長に向けた価値創造を念頭に置く」ということになっておりますので、非財務情報の開示が大変重要だということになろうかと思います。

2点目でありますが、では、どのような形で情報開示をするのが必要だと認識しているかということですが、各社さんから出されている非財務情報を読みまして、もう少し腹に落ちるような形で書かれると、すごく投資家も納得しやすいのではないかと思われる点があります。それはどういうことかというと、自らの強み、弱み、それから自らの会社が保有している経営資源をどのように活用して、持続的な企業価値の向上につなげるかという、このストーリー性が非常に明確でないレポートが多いと感じております。もちろんそういうことが非常にうまくできている企業さんもございますので、全てというようなことはもちろん当てはまらないわけでありますが、みずからの経営資源をどのように活用して持続的な企業価値につなげようとしているのかというストーリー性をもう少しイメージしながら開示をしていただくと、投資家はこの目的に沿った判断が非常にしやすくなるということではないかと思います。以上2点、意見として申し上げさせていただきたいと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにスライドの2ページ目についてご質問、ご意見等ございますでしょうか。どうぞ、関根委員。

【関根委員】

ありがとうございます。

私は、先ほどご説明いただきましたように、資料を出させていただいておりますが、見直しの視点を含め、複数の項目に関係することを述べておりますので、まずは見直しの視点のところだけご説明させていただきます。

このワーキング・グループでは、今もお話がありましたように、企業と投資家の建設的な対話を促進する観点を踏まえつつ、投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するためにはどのような開示があるべきなのかを考えることが目的と考えています。ですので、視点もあくまでもその視点に立つ必要があると思います。その際、第1回でも発言したことですけれども、検討に当たっては、開示される情報は、信頼性が担保されているものだということが前提になっているということは忘れてはならないと考えています。

また、同時に、対話のためには、私も、財務諸表に対する経営者の考え方、会社のスタンス、先ほど大場委員がストーリーということもおっしゃっていましたけれども、まさにこれらを明確に示していくことが必要と考えております。財務情報のそれぞれの数字というのは、経営者の考え方、そして会社のスタンスがあらわれてきているものではないかと思いますし、そうした数字がどうつながっていき、会社がどのような方向に向かっているのかということにも深く関係していると思いますので、将来の展望といったことも含めて、経営者が経営者自身の言葉で説得的に語っていくということが必要なのではないかと思っています。

これを明確に示すためには、数字は正確である必要があり、また、具体的である必要がありますが、会社法と金商法の二元的開示の問題点を考えますと、目的が違いますので違う部分もあるのかもしれませんが、2通りの微妙な違いのあるものを維持していく意味が本当にあるのだろうか、むしろ、2種類の財務情報をつくり分けている労力を、経営者が、経営者自身の言葉で説得的に語るための時間に振り分けたほうがよいと考えています。

また、対話促進のための情報の整理というと、今ある情報が減るということを危惧される方も当然いると思うのですけれども、今ある情報をただ維持するというのではなくて、意味がある情報、投資家の方との対話に資するような情報を開示することに意味があるのではないかと、そういうふうな視点を持っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにこの総論の部分といいますか、2ページの部分について。どうぞ、小畑委員。

【小畑委員】

経団連の小畑でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。

今、関根委員からご発言がありましたので、若干、疑問点を述べさせていただきたいと思います。先ほど、大場委員から非財務情報において、企業のストーリーを語れというお話がございましたが、全くそのとおりでございまして、その点については、まさに投資家サイドからの視点を踏まえて、企業としてはしっかりとストーリーを語っていくことが重要でございます。その意味においても、あまり定型化せずに、企業のそれぞれのストーリーを自由に語ることが重要であると思っております。関根委員から、その点と、会社法と金商法の二元的開示の問題とがかかわっている、一元化が望ましいというお話がありましたけれども、私の理解が非常に不足していて恐縮ですが、ストーリーを語ることと一元化するということについては全く関係がないとしか思えませんので、その点だけは申し述べさせていただきたいと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。次へそろそろ移ろうかとも思うのですが、何かございましたら、2ページの点につきまして。どうぞ、熊谷委員。

【熊谷委員】

今、非財務情報の重要性とか、あるいはストーリー性の話が出ておりまして、実は前回、まさにMD&A等につきまして発言させて頂きました。非財務情報といいますとMD&Aという、企業の戦略ですとか業績にかかわる分析というものと、あと、ESG情報というふうに、大きく分けてそういう2つの流れがあるのだろうと思うのですけれども、ストーリー性というのはどちらかというと会社経営にかかわる、例えばビジネスモデル等にかかわるところで、これはやはりほんとうに重要だと思います。これを制度開示の中でどうやって充実させていくかということは非常に難しい問題もあろうかと思います。ただ、こういうものに関しては、諸外国に非常に優れた実例がございます。

例えば、先ごろ、12月17日イギリスのFRCというところからクリア・アンド・コンサイスという、ストラテジックレポートというのが制度開示について、それをいかに簡潔にわかりやすく書くかというようなガイドラインという形の文書が出ておるようです。

そういったものも参考にしながら、方向性は多分、充実させるという方向しかないと思うのですけれども、具体的に何を起こすかということに関して、ここのワーキング・グループ、3カ月でいろいろなことを決めていくわけでありますから、拙速になるというよりは、そういう、決めるべきこと、3カ月の間に方向性を打ち出せるもの、あと、時間をかけて、このワーキング・グループが終わった後もじっくり検討すべきことを切り分けて議論していただけたらと考えています。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、時間の関係もございますので、次へ進ませていただきます。

次は、スライドのページ数で言いますと3ページと4ページとなります。各開示書類の目的及び役割。3つの開示書類があるわけですけれども、これらの目的及び役割につきまして、皆様方からご質問、ご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。静委員、どうぞ。

【静委員】

私も資料をお出ししているのですが、これにかかわる部分だけ少しお話をさせていただきたいと思います。「決算短信について」という資料の2枚目でございます。決算短信は、実はこれだけが法定外の資料でございまして、いわゆる上場ルールだとか上場制度で運用されているものですので、皆様方の中には、名前は聞いたことがあるけれどもどんなものかよくわからないということもあろうかと思いましてつくったのが2ページの資料でございます。

決算短信というのは、上場会社、今、3,400社ありますけれども、これが決算情報の適時開示というものをするときに使う定型の資料のことでございます。決算情報を適時開示することを、俗に決算発表と呼んでいるわけですけれども、その際に使うプレスリリースがこの決算短信で、上場会社の適時開示というのは、皆、プレスリリースの形で行われているのですけれども、この適時開示の中でも決算情報については比較的、形の決まった、一覧表の、比較的厳格に様式が決まっているというところに特徴があるということでございます。

ごらんいただいている上のほうの表にございますように、上場会社の開示情報につきましては、開示のタイミング、早い、遅いで2通りの開示が行われておりまして、早いほうが適時開示、後から正確性を要求されるほうが法定開示と、この2つということになっているわけでございまして、この両方をするというのが通常でございます。このうち、適時開示については、どちらかというと速報として迅速性が求められるということになりますし、一方で法定の開示につきましては、確報として正確性が求められているということで、大分その目的とか役割とか、今もあったように、事務局説明資料の三、四ページあたりが違うということでございます。

ということでございまして、同じ情報が2回にわたって出てくるというのは、性質の違いから出てくるということを1つ、最初に申し上げておきたいと思います。

では、決算短信の速報性というのはどうやって実現されているのかというのが3ページなので、ここまでご説明させていただきたいと思うのですけれども、決算短信の速報性というのは、実は、2ページのところにもちょっと書いてあるのですが、監査とかレビューの完了を待たないという、いわばそういう性質です。つまり、早期開示性とでも言うべき性質と、それから、開示した決算情報が報道機関などを通じて即時に投資家へ配信されるという、即時周知性とでも言うべき性質によって支えられているわけでございます。その結果、市場での価格形成が公正になるとか、あるいはインサイダー等をはじめとする情報格差を用いた売買はしにくくなるということが起こるわけですが、それがこの3ページの仕組みでもって支えられているということを申し上げたかったわけです。

3ページは、決算情報を上場会社さんが流したときの決算情報の流れが書いてあるわけですけれども、これ、意外と皆さんご存じないと思うのでご紹介させていただきます。この流れをごらんいただきますと、上場会社が決算短信を作成して、私どもに大体4月の終わりとか5月の頭ごろに提出をしてこられます。提出された決算短信につきましては、TDnetというシステムで私どもが受け取りまして、その内容を確認させていただきます。そのときに、登録をするときに上場会社さんのご希望の時間を入れていただきます。そうしますと、その時間になったときに即時にその情報が開示されて、私どものホームページで参照が可能になるという仕組みでございます。

同時に全く同じ時間に決算情報はかなり多い、四、五十ぐらいの報道機関ですとか情報ベンダーに対して一斉にプッシュ型で配信されます。これを受けた報道機関だとか情報ベンダーは、下のほうにありますように、スマートフォンですとか新聞ですとか、あるいはネット証券の顧客向けのホームページ、あるいはブルームバーグ等の契約端末といった媒体を通じまして、内外の機関投資家にも、国内の個人投資家にもただちに情報を発信するという形になります。それが新聞の紙面の場合ですと、夕刊ですとか翌日の朝刊の記事になるということであります。また、その前にも新聞社は速報メールを使った周知をしておりますので、皆さんの胸にあるスマートフォンがちょっと鳴ったりすると、実は上場会社のニュースだったりする、そんな形での速報も出ているということでございます。

また、電子版のニュースですとか、ブルームバーグ等の端末は、もともと速報媒体ですので、時差なくただちに情報が流れるという特徴もございます。したがいまして、株価を見てみますと、決算発表からほんの数秒で世界中の投資家に情報が届けられるという特質を適時開示、特に決算短信は持っているということをひとつ頭の中に入れて、今後のご審議の参考にしていただければということでございます。

それを示しているのが右上にある図でございます。これは、実はある上場会社が、この5月でしたか、決算発表をしたときの株価の動きを示したものになります。立会終了後の午後4時に通期の決算発表をしたところ、先ほどのルートで情報がただちに周知されて、翌日の朝刊には会社の名前が入って、その後に、今期営業益500億円に倍増しましたというようなことが書かれる。その記事が載ったことを受けまして、翌朝9時の立会開始時には6.5%株価が上がるという形で急騰する。こんな仕組みになっているということでございます。実はこれ、引け後の発表だったのでこういうことになっているわけですけれども、立会時間中に決算発表する会社もございまして、その場合には、私どもで幾つかはかってみたのですけれども、大体数十秒ぐらいで株価に決算情報が盛り込まれているという、そんな形になってございます。

このように、決算短信そのものというか、私どもの決算短信が持っている仕組みというのは、そういう意味では法定開示を確報とすれば、その前の速報という、そういう位置づけになってございまして、そういう違いで重なっている情報の、いわば重複を排除したりとか、共通化を進めたりする場合には、そのあたりの速報性を失わないような形での検討が必要かなと思っておりますので、そのことだけ1点申し上げさせていただきます。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、関根委員。

【関根委員】

すみません、たびたび。

確認ですけれども、IIのうち、1だけを先に話したほうがよろしいでしょうか。

【神田座長】

はい、できれば。

【関根委員】

それでは、たびたび恐縮ですけれども、資料を用意していますので、その中で、IIの1のところを中心にご説明させていただきます。

資料に書かせていただいていますように、日本公認会計士協会では、平成27年11月4日付で「開示・監査制度の在り方に関する提言」を公表しております。その提言書自体は分厚いものですので、本日はお配りしていませんけれども、資料にURLが記載されていますように、私共のウエブサイトに掲載されているものです。その提言内容のうち、IIの1に関連するところですが、まず、横長になっています2枚目のほうをごらんいただけますでしょうか。先ほど、静委員からもお話がありました決算短信と、法定開示である計算書類と有価証券報告書があることを踏まえ、これらの役割をそれぞれ記載しております。情報の内容と範囲については、決算短信は、速報値として投資家が必要とする情報であり、計算書類や有価証券報告書は、最終報告として投資家等が必要とする情報になります。また、情報の信頼性については、決算短信には監査による信頼性の担保は求められていませんが、計算書類、有価証券報告書は監査が求められております。また、情報開示の適時性ということでは、決算短信は早期開示が必要で、また、計算書類や有価証券報告書は、監査による信頼性担保を前提とした作成期間が必要ということになると考えております。

他方、我が国における現状の開示実態ということですが、3月決算の上場会社のうち、約4割の会社が速報値である決算短信の発表以前に確報値である会計監査人の監査報告書が提出されているという実態があります。これは、実際に調べた結果であり、決算短信というのは企業の責任でできるだけ正確なものを出すというのは当然のことですが、速報性にこそ意味がある決算短信に、確報値に求められる信頼性まで求める、こういう慣行があるということを示唆する実態になっているのではないかと思っています。

この資料にはそのほかのことも書いてありますけれども、これはタイミングの問題にもなりますので、次のところで述べさせていただきたいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ちょっと私の進行が悪くて申しわけないのですけれども、IIの1にも(1)と(2)があって、今のご指摘と関連して、若干次の項目に関連しているものでして、そういう意味では本日の事務局の資料1で申しますと、次の項目である5ページから8ページまで、これがこの3つの書類の開示内容の整理、共通化・合理化ということになりますので、これについてもあわせてご意見をお出しいただければと思います。

もし関根委員、続いてスライドの8ページ目までにかかわることがあれば、あわせてお聞きしたほうがわかりやすいと思いますので、どうぞ。今ので全部済んでいると考えてよろしいですか。

【関根委員】

すみません、とりあえずはここまでで結構です。

【神田座長】

はい。また必要に応じて後でご発言いただければと思います。

そういうことで、8ページ目まで、具体的な話、開示内容の整理、共通化・合理化ということまで含めてご質問、ご意見をお出しいただければと思います。よろしくお願いいたします。熊谷委員、それから太田委員の順で、熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

ありがとうございます。

まず、この開示、本邦の開示制度というのは、今ご説明いただきましたように、決算短信、それから会社法上の計算書類、事業報告書、それから金融商品取引法に基づく有価証券報告書の3本立てになっております。それぞれに目的があって、それぞれの目的が非常に大切であるということに関しては、多分どなたも異論がないと思います。その上で、まず多くの機関投資家、及びアナリストと言われる財務諸表の分析、あるいは会社の分析を専門に行っておる者の周知資料の使い方ということをご説明させていただきますと、決算短信、これは大変重要で、最も使われる資料であります。もちろん、有価証券報告書はとても大切です。実は決算短信には監査報告書がついていないというデメリットはございます。ただ、ご案内とは思いますけれども、決算短信で出てまいりました数字というのは非常に信頼性が高い。監査済みの報告書にほぼ匹敵すると言ってもいいぐらいの精度のものが出てくるわけです。それゆえに先ほど静委員からご説明がありましたように、即座に決算内容が株価に織り込まれていくと。そういう意味で、資本市場の効率性を担保する上で非常に重要な書類であるというふうに認識しております。

一方で、有価証券報告書、これは確報性と情報の深度ということに関しまして、これほどやはり使えるものはない。一方で、この後、議論になりますMD&A、あるいは非財務情報等々に関しては不満がないとは言い切れないわけでありますけれども、これもやはり投資家あるいはアナリストにとって非常に大切な書類である。

問題は、この計算書類、それから事業報告書であります。これについては、まず出てくるタイミングが非常に中途半端です。かつ、情報の内容も、前期の比較ができない、キャッシュ・フロー表がないというようなことで、株主を含む投資家にとって非常に使い勝手が悪い。もちろん、要約情報としての使い勝手ということはあろうかと思いますし、株主総会における使い勝手というのはあるのだろうというふうには思います。しかし、投資判断を行うという意味においては非常に中途半端な書類であると言わざるを得ない部分があります。企業と投資家の対話を促進するという、今、現下の日本政府の立場、特にスチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードというのはそういうものを促していくというということだろうと理解しておりますけれども、会社法の書類というのは、そういった対話の場でほとんど、残念ながら使われていないという事実があります。これは逆に、いろいろな意味でこれを廃止するということには抵抗があるという……廃止すると言ったらいけないですね。私自身廃止することはあり得ないと思っております。しかし一元化といったときに大変抵抗があるようですが、逆に、私、法律の専門家ではないので伺いたいのですが、株主総会を開くに当たって有価証券報告書で必要な情報が取れないというような項目があるのかということが、個人的に伺いたい点です。それから、会社法の書類と有価証券報告書の一元化と言いますが、個人的には有価証券報告書で代替がきくんじゃないかと思っております。一元化することによって有価証券報告書の情報が株主総会よりも早く出せるようになるのか。これは関根委員にむしろお聞きしたい部分でありますけれども、仮に、一元化によって有価証券報告書の提出が早くなるのか。もし有価証券報告書が早く出てくるのであれば、これはおそらく投資家、アナリスト、大歓迎されると思いますし、これに反対する人はいないんじゃないかと考える次第です。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

事務局への質問というよりは、ほかの委員の皆さんへの質問になっていたと思いますけれども、もしお答えいただける方には適宜お答えいただくことにして、順番としては太田委員、永沢委員の順番で、太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。

私のほうからも5ページと6ページのところについてコメントをさせていただければと思います。

5ページ目の開示書類間における開示内容の整理ということで、ここで例えばということで3つ挙げていただいておりますけれども、私は基本的にここに書かれている内容については全て賛成でございます。特に、ちょっと熊谷委員の話とは、私の申し上げることは少しやっぱり相反する部分が出てきているような気がするのですけれども、決算短信は静委員のご説明にもありましたとおり、速報性を非常に重視した開示書類であるという、やっぱり特性がございますので、逆に、決算短信だからこそ、ある意味では監査レビューも入っていないし、法律による罰則とかも特にないということで、ある意味で速報性に重きを置いた制度であると。逆に、有価証券報告書を決算短信の時期まで繰り上げるということになると、実際、実務がもたないといいますか、虚偽開示とか、そういう問題が出てきてはいけないということで、罰則つきの有価証券報告書の開示は、これは相当、各社さん、慎重にやられているのだと思いますので、やはりこれは一元化をいたずらにどうこういうよりは、やはりそれぞれ制度のメリットというのはあるのであろうと思っておりますので、そういう意味では、私は「例えば」のすぐ下に書かれている、決算短信は速報性を重視した開示書類であるため、性質上必要な事項を中心に、より自由な開示を促進すべきではないかというところは賛成でございまして、要は、決算短信というのは、速報性が重視されるものであるので、むしろ、若干内容を簡素化することによって、ほかの法的開示書類とかと住み分けを図るのが適切なのではないかと思っております。

一方で、下に書かれている経営方針に関して、これは中長期の企業の目標を判断する上で有用な事項であるということは、これはもっともでございますし、今般、コーポレートガバナンス・コードの中でも経営方針の開示というものを要請されているところでもございますので、これはむしろ投資家、株主の利便性という見地から見ても、有価証券報告書や事業報告にも併せて記載することで、それほど企業にも大きな負担にならないと思いますので、これはよろしいのではないかと思っております。

最後のMD&Aのところ、これはひな形的な開示ではなくて、もう少し各社の創意工夫で投資家にとって実質的な内容を開示させるべきであるというのは、これは総論として、これ自体、全く当然のことであろうと思いますけれども、その実務を回す上で制度の開示の規律として、このひな形的な開示をなくするようにと言ってもなかなか動かないところでございますので、ここは企業の方々の創意工夫に任されるところが大きいのかなとは思っております。

それから、6ページ目の開示内容の共通化・合理化のところでございますけれども、確かに、例えば大株主の状況ですとか、新株予約権に関する事項のところについては、従来からこの部分が若干、制度間において開示内容にずれがあるということを指摘されていたところでございますが、どちらに合わせるかという話でいきますと、金融庁さんのワーキング・グループであるにもかかわらず誠に申し訳ないのですが、私はどちらかというと事業報告のほうに合わせたほうがいいのではないかと思っております。

理由は非常に単純でございまして、結局、事業報告での開示事項というのは、非上場会社も含めて全てやっているわけでございますけれども、例えば、今、事業報告に記載されている内容、有価証券報告書の書き方に合わせるということになりますと、非上場会社も含めて全株式会社が対応を要請されることになるわけでございますけれども、それはなかなか現実的ではないのではないかというのが一つと、そうではなくて、非上場会社と上場会社と分けてやるという考え方もないわけではないと思うのですが、上場か非上場かで開示内容が泣き別れになるというのもあまり望ましくはないのかなと思っております。そもそも論として、有価証券報告書における開示の仕方についても、それなりの制度的理由が当然あるものと承知をしておるので、どこまで共通化すべきかというところ自体も当然、議論はあろうと思いますし、私は、必ずしもここを共通化させなければ絶対ならないというほどの強いニーズはないと思っておるのでございますけれども、あえて共通化させるのであれば、事業報告のほうに合わせざるを得ないのではないかというのが、私自身の個人的な感想でございます。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、永沢委員、石田委員、神作委員の順でお願いします。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。

私は、それぞれのページについて1点ずつ申し上げたいことがあります。私は、個人の投資家を代表しているわけではありませんが、個人の投資家の立場ということでお話をさせていただきたいと思います。まず、5ページのところですけれども、決算短信と有価証券報告書は、機関投資家や証券会社のアナリスト、新聞、雑誌の記者と言った方々の分析のためにあるというふうに私は理解しております。

決算短信については、より自由な開示を促進すべきではないかどうかという論点については、まずはこれらを利用される方々の意見を聞いて決められるべきではないかと思っております。

それから、先ほど、有価証券報告書と事業報告と、どちらかを取るならば有価証券報告書なのではないかというようなご意見がありました。有価証券報告書は専門的知識のある方にとっては分析に役立つ資料ではあると思いますが、一般の投資家には難解すぎると思います。やはり株主とのコミュニケーションツールとして事業報告は重要であると思います。

次に6ページ目ですが、数字の1はおそらく金庫株をどう捉えるかという問題なのだと思っております。企業側にとっては、現時点では新株発行でも金庫株の処分でも負担に差はないということですので、理屈の上ではあまり意味がないかもしれないとは思いますが、現状のマーケットを見ますと、投資家は新株の発行ですと嫌気をして、理論値以上に、その2倍ぐらい下がるときもあるようですが、一方、金庫株の処分で対応されるときには、まあ、仕方がないかというような株価の反応なのではないかと思います。

おそらく投資家が非合理的なのだとは思うのですけれども、果たして非合理的と断定していいものか、いやいや、何かは合理的な原因があるのか、私にはわからないところでございまして、もしこれが非合理的だということであるならば、非合理的なことですよと市場に参加している投資家にメッセージを発した上で整理をするということも考えられるのではないかとは思います。

それから、7ページですが、私は、有価証券報告書に記載される大株主の状況、特に他人名義で所有している株式数を含めた実質所有の記載につきましては、投資家にとっては大変重要な情報であると思っておりまして、これがなくなるということになると、情報開示の後退というふうに投資家には受け取られると思います。

私からは以上でございます。失礼いたしました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、石田委員、お願いします。

【石田委員】

ローマ字のIIのところに関して意見を述べさせていただきます。5ページに列挙されておりますポイントについてでありますけれども、投資家、資産オーナーの立場からしますと、決算短信が自由な開示を促進すべきだというところに全く同感であります。運用会社を管理監督している立場から言わせていただきますと、日本のアナリストは決算情報にあまりにも労力を費やしてしまっているのではないかと思います。そこに大事な情報が含まれていることはたしかですが、短期的な業績が当たったか外れたかというような(我々、委託者のほうも含めてですが)、細かい数字の当てっこゲームになってしまって、本来の長期的な企業価値というところから視点がずれてしまっていると、一部の長期投資を志している資産運用会社のほうから聞いております。

もう一つは、企業のIRの方と運用会社のアナリストとの関係においても、企業のほうが業績を発表するものですから、その業績発表の数字をもらいにいくという態度がアナリストの側に定着してしまっておりまして、みずからの分析で企業が稼ぐ力がどれぐらいあるのかというのを考えることに対して、本来我々資産オーナーはお金を払うべきなのですけれども、現実的には、あまりホームワーク(宿題)をちゃんとやらずに足しげく通って数字だけもらいにいくアナリストが多いと、優れたIRをやっておられる企業の方から時々聞きます。ちょっとそれは情けないのではないかと思いますので、自由な開示を促進して、アナリストにほんとうに自分たちのホームワーク(宿題)をさせるようにしていくことが大事なのではないかと。即時性のある情報というのは大事なのですけれども、あまりに企業が手取り足取り数字を用意しなければいけないというのは、ちょっと機関投資家としては違うのではないかと感じます。

また、有価証券報告書のMD&Aですけれども、ひな形的開示が日本ではちょっと多いのではないかというところに大変同感するものであります。ただ、ここで新しいルールを公的につくっても、また新しいひな形が生まれて、またそれを取り巻く一種の総花的な、もしくは紋切り的な言葉に終わってしまうだけでは意味がないと思います。現在、スチュワードシップ活動というのが強調されておりまして、大きな運用機関はスチュワードシップ・コードにのっとって行動するということになり、対話のフォーラムを持つことになると聞いておりますので、この中で資産運用会社からこのMD&Aに関して、もっと建設的な投げかけをおこない、そういうスチュワードシップ活動を通じて企業の側が吸い上げていくのがあるべき姿かと思います。我々資産オーナー側は運用会社のスチュワードシップ行動の報告というのを受ける立場なのですけれども、そこで実際にどういう投げかけをして、それがMD&Aを通じてどう返ってくるのか、そこにどんな変化があらわれたのか、これから一つ一つ積み上げながら聞いていくことになるのではないかと思います。

また、MD&Aに関して国際的な比較調査を、私は不勉強であまり目にしたことがございませんので、(もちろん、英語圏には英語圏でそれなりの紋切り型とかあるとは思いますが)どのような内容を欧米の企業は語っているのかに関して、全体的なリサーチ、これは多分、業種別で切ったほうがわかりやすいと思うのですけれども、こういったものに業界全体としてリサーチに資金を投じていって、全体の実務の底上げを図っていくということが考えられるのではないかと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

神作委員、お願いします。

【神作委員】

ありがとうございます。

2点ご発言させていただきます。第1点は、MD&Aに関係する部分でございますけれども、既に現行法においてMD&Aについては経営成績、財政状態、キャッシュ・フローの状況の分析をしなければいけないということになっておりますので、そのような意味ではたしかに、今、ご指摘がありましたように、ルールを変えるという話ではないかとは思うのですけれども、他方で、スチュワードシップ責任を実効的に果たすために、やはり対話のとっかかりが必要であって、MD&Aの中で経営成績や財政状態等の分析がきちんと書かれていれば、「建設的な対話」に資するところが大きいと思います。したがいまして、そのように書いてもらえるための工夫が何かできるのであれば、せっかくこのような機会を得て議論をしていますので、企業の努力に委ねるというだけではなくて、何かできることがないかということを考えてみることが望ましいと思います。

それから、第2点でございますけれども、資料6ページに関連して、開示内容の共通化、合理化でございますけれども、これは前回の会議から何度も繰り返されておりますように、決算短信、それから会社法開示、金商法開示、これらの開示はそれぞれ目的が違うので、単純にそろえたり、どれかをなくすという話ではないですねということは、私はもう既にコンセンサスがあるのかと思っておりました。むしろ問題は、6ページにあるように具体的に、これについてはそろえることができないかというような、そういう観点から個別に議論をしていくのが建設的ではないかと思うのですけれども、6ページに書かれている2つについて申し上げますと、上位10名の株主の状況と、それから大株主の状況については、両者の目的は共通しているのではないかと思います。そこでは基本的には議決権を中心とした株式所有に基づく会社に対する影響力等を開示させるというところに主眼があると思いますので、そうだとすると、そろえることは可能であって、自己株式を控除するとき、議決権が停止されている自己株式を控除するという形で事業報告にそろえることが考えられると思います。

また、新株予約権等に関する事項と、それから、ストックオプション制度の内容は、これはなかなかそろえるのが難しいところがあると思っております。事業報告では役員と使用人を区別して開示することになっておりますけれども、これはおそらく会社法が役員に対してストックオプションを付与する場合には、これは報酬等の中に含まれ、定款または株主総会の決議が必要であるというところから、使用人に新株予約権を付与する場合と、会社法上の手続が分かれ得るという点が反映しているように思われます。

先ほど熊谷委員から事業報告にはあって有価証券報告書にはない情報というのはあるのかとご指摘されたと思いますけれども、やはりあるということだと思います。

以上2点、ご発言させていただきました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

6ページの開示内容の共通化について少しだけ申し上げます。私は、前回、目的が違うから開示事項が違うのは当然だという発言をしましたけれども、それは全体の方針についての話でありまして、神作委員と同じように、個別事項については個別に検討していくことが有用だと思っております。そこで、この共通化ということなのですけれども、何のために共通化するのかということから考えなければいけないわけで、前に重複感があるというようなお話がありましたけれども、作成者側にとって負担が大きいのか、それとも利用者側にとってわかりにくいというのか、そこによっても違ってくると思うのです。例えば、1の大株主の状況につきましては、これは自己株分を控除して議決権で見るのか、それとも自己株も含めた割合も出すのかという話です。おそらく、有価証券報告書のほうでは、現在は自己株式の処分については新株発行と同じ手続が必要なので簡単にはできないのですけれども、将来どのぐらい自己株が放出される可能性があるかとか、そういうことも含めて、有用な情報になることからこれを入れているのではないかと思います。

そうすると、結局これは自己株を除いた議決権割合と、それから自己株を含めた発行済みに対する割合を両方書けば済む話でありまして、括弧書きで議決権のことを書けばいいわけです。それを有価証券報告書に記載して、事業報告についてはその一部が事業報告になっているとして、例えば後で議論するような参照方式がもし認められるのであれば、その部分を参照させるということも可能ではないかと思います。これは大きな問題ではない。

2のほうは、確かに事業報告のほうはインセンティブ報酬の付与という観点からの開示であり、有価証券報告書はやはり新株予約権が行使されて株式数が増える可能性がどれぐらいあるかという観点からの開示だろうと思います。目的は違うのですが、投資家にとってインセンティブ報酬のあり方ということも、広く言えば投資判断の資料になり得ると思いますので、私は有価証券報告書においては両方の情報を開示していただければ、利用者にとってはいい。書類によって違うことが書いてあってわかりにくいということはないと思います。その上で、事業報告についてはその一部を引用することにすればよいかと思います。

ただ、そういうようなやり方をとりますと、結局、全部開示しなければならないということになって、作成者側の負担が大き過ぎて、何のために共通化しているかわからないという声が大きいのであれば、もう共通化はやめるしかないというふうに私は考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、小畑委員。

【小畑委員】

5ページ、6ページについて少し申し上げたいと思います。まず年度の決算短信でございますが、ここに書いておりますとおり、速報性重視ということで、必要な事項を中心に、より自由な開示にするという方向には賛成でございまして、今の本体部分については、必須でございますけれども、残りの添付資料部分については、現在いろいろと細かく具体例等を示していると思いますが、そのような具体例等を無くす方向で、より自由なものとしていただければと思います。

それから、経営方針については、現行の有価証券報告書や事業報告においても、対処すべき課題などでかなり書き込まれていると認識しておりまして、その書き方をどう工夫していくかということだと思っております。それとの関係で次のMD&Aも、できれば企業の自由に任せていただきたい。特にコーポレートガバナンス・コードではプリンシプルベースということで、せっかく企業の創意工夫を導く方向であるにもかかわらず、またここでいろいろルールベースの話が出てくると、結局、向こうで緩めてこっちで縛るということで、ルールベースは少しも変わらないということになりかねないので、そのあたりの頃合いはよく見計らっていただきたいということでございます。

6ページの開示内容の合理化、共通化ですけれども、それぞれの制度の違いというのはもちろんあるわけで、共通化できるところは共通化していくということかと思います。できれば、より簡素な実務対応のしやすい方向へそろえていっていただければと思っております。

合理化については、ここに記載されているもののほか、法務省令、特に計算書類において注記すべき事項が非常に増えてきております。それは、会計基準の開発に伴って出てきているのですが、果たして計算書類においてもそのような細かい情報が必要なのかという点はあります。その点については実務的な観点から削減していくということもぜひご検討いただきたいと思っております。

それから、ここには記載されておりませんが、法務省令と金商法、それぞれを見比べて合理化を図るということも重要ですが、企業には別記事業というのもありまして、それぞれの所管の法令で別途規制されているものもございます。この点についてもお忘れなく、一緒のベースで合理化を図っていただければと考えております。よろしくお願いします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、逆瀬委員。

【逆瀬委員】

たくさんは申し上げませんけれども、5ページについて。

決算短信は速報性を重視する、最大の使命はそこにあるという中で、実態はその開示の要請があって、適時開示としての書類でありながら、昔から比べるとかなり長文化しているというようなこともありますし、今回の見直しにあたりできるだけ自由な開示に委ねていくという観点を入れても何ら差し支えないというのが1点です。

経営方針ですけれども、これはなかなか難しくて、経営方針というものを誰が決めるかと。普通は経営トップが決める。経営トップが新たになった段階で新たな経営方針が出る。長いところは10年やる人もいるし、もっと短い人もいる。方針もいろいろあって、古法墨守で伝統的な経営方針をずっと江戸時代からやってきていますと。これが我が社のもう揺るぎない経営方針ですといったものもおかしくない。そういう事業の場合もあるし、グローバル化せざるを得ない状況にあって、事業のポートフォリオもそんなに長く考えていては問題が大きいといったような、そういう企業集団もあるわけですね。そういう場合は、経営方針を適時的確に、先のことも考えた上で変えるべきという判断をトップはすることになります。そのときの開示が非常に重要だと思います。また、経営方針の変え時、これを見極めるのも投資家さんのお仕事でしょうけれども、企業の内部ではなかなか気がつかないケースや外部からご指摘を受けるといったことも、ままあるわけです。常にそれを変えているという事業集団もあれば、変えてはいけないという事業集団もあります。そういうところを十把一絡げの法定開示にするよりも自主任意開示こそふさわしく、実のある開示ができるのではないかと思います。

それから、MD&A、これは経営者自身による自己査定みたいなところがありまして、皮相的な分析になっているなど、いろいろご批判もあるでしょう。しかし、また、紙幅を使って場合によっては対処すべき課題などを引用しながら五、六ページにおさめているといったケースもある。いずれにせよそれはあくまでも経営者による一方的な見方です。アナリストの方は、深掘りした開示もあれば、浅いものもある中で、これらを評価し、みずからの投資判断等に反映していくという役割であろうと思います。ですからMD&A開示の要請は比較的緩い形で任せて、その開示内容を外部から評価するところに妙味があると思います。そういう位置づけのほうが、むしろ意味のあるディスクロージャーになるという気がします。

とりあえず5ページに限って申し上げました。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。関根委員、どうぞ。

【関根委員】

2度目の発言で失礼します。先ほどは一部だけでしたので、5ページ、6ページも含め、お話ししたいと思います。

まず、決算短信ですけれども、先ほど申し上げましたように、本来、速報性を重視した開示書類であるにも関わらず、実態としては金商法の開示を先取りした開示の実務になっているところがあると思っております。この点は、本来の趣旨を踏まえ、先ほど、他の委員からも話が出ておりましたけれども、基本的には、1枚目のサマリー情報のみを出すものとして、簡素化を図るべきではないかと考えています。

また、MD&Aについては、こちらも委員の方々からお話が出ていますが、ひな形的開示になっているところがあるのではないかと思います。もちろん、必ずしもそうではなく、きっちり書かれている企業もあり、特質が出ているところでもあるかとも思いますし、これも何か言ってしまうと規制になってしまうという難しい面もありますが、ひな形的な開示というのから脱出できるように検討できないかと思っています。

なお、ここには書かれていませんが、財務諸表の中の開示でも、ひな形的になっているところがあり、これも同じような意味合いがあるのではないかと思っておりますので、この点も含めて、ひな形的開示から脱するような形が必要ではないかと思っております。

また、6ページ目のところにも関係して、先ほど一元化という発言をしましたところ、有価証券報告書か会社法かどちらにするかという話も出ていましたが、私自身はどちらかに寄せるべきと考えているわけではありません。先ほど黒沼委員もおっしゃっていたように、微妙に違うと、よくわかっている人にはどうしてここが違うのかというのはわかりますけれども、一般にはわかりづらくなってしまい、かえって混乱するのではないかと思っており、例えば、情報として、違いがわかるように、有価証券報告書に2つ書くというのでもよいのだと思います。

その上で、有価証券報告書は分厚くて読み解くのは大変だということであれば、特に個人株主の方にはわかりづらいのではないかという話もあったと思いますので、第1回目のときに少し申し上げましたように、抜粋したような形で出すというのも一つの方法ではないかと思います。私が一元化というので申し上げたかったのは、どちらかに完全に寄せろとか、1つでいいじゃないかという、そういう単純な議論ではなくて、全体として本当に必要かどうかというのを、6ページ目にあげられているような個別のことを検討していき、どうしてもどちらも必要ということであれば、両方の違いがきちんとわかるような形で示した上で、その中で必要なものを取り出すというほうがわかりやすいのではないかと、そういう趣旨でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

どうぞ、お願いします。

【熊谷委員】

ちょっと私が先走って言ってしまったせいか、誤解を招くようなところが幾つかあったようなので、若干付け加えさせて頂きたいと思います。まず有価証券報告書と会社法の一元化というような言葉を使いました。やはり諸外国と比べたときに、株主総会との関係もあろうかと思うのですけれども、有価証券報告書がやはり投資家が利用したいタイミングで提出されていないということがあって、それを解消するために、例えば監査の一元化も含め、できるのであればやっていただきたいという趣旨でございます。

先ほど、会社法と有価証券報告書とで、有価証券報告書で会社法の取れない情報があるのかという質問に対して、神作先生から、それは個別で見ればあるというお話でしたけれども、発言の趣旨としましては、株主総会を実施するに当たって、そこで意思決定をするに当たって、有価証券報告書で不十分な情報っていうのはあるのかという、そういう趣旨でございました。もちろん、こういう個別で見ていけば、片方にあって片方にないということがあるというのは重々承知してございます。

それから、MD&A、これもあるいは非財務情報でありますけれども、ここも私自身、非常に重視しておりますが、これはルールベースでやれということではなくて、まさにこの手の開示というのはどちらかというとやはり企業の自主性に任せるべきだと思っております。ただ、先日来、ご指摘申し上げているのは、やはりこういう制度がありながら、必ずしも、先ほどからひな形的な開示というお話がございますけれども、あるいは先ほどの大場委員の言葉を使えば、ストーリー性というようなものが十分ではなくて、読んでいてどういうふうな会社にしていきたいか、あるいはどういう意思決定をして、こういう業績になってきているんだというような、まさに腹落ちするようなストーリーで語られていない。諸外国の例を全て見ているわけではありませんけれども、諸外国には結構、そういう充実した例がある。日本でも日立さんをはじめとして、しっかり書かれているところもありますけれども、相対的に弱いのであれば、そこはどういう問題があるのか。先ほどちょっとご紹介しましたけれども、UKなどではコンサイスかつクリアに書くというような提言書も出ているようでありますので、そういったものもこういう場で検討してみてはいかがと、そういう趣旨でございます。

どうもありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

どうぞ、上柳委員。

【上柳委員】

6ページの関係ですけれども、私自身は大株主の状況、それから新株予約権の関係、統一化するのであれば事業報告のほうに近づけてよいのではないかと思っております。ただし、新株予約権のほうは、これは読み方にもよるのかもわかりませんけれども、現行の事業報告開示においても新株予約権等に関する重要な事項とありますから、たくさん発行できるような決議をされているときは重要事項に当たり開示が求められると解釈をしておりますので、結局、一番広いといいますか、たくさん開示していただくということになるのかもしれません。6ページに指摘されている項目以外で、このように統一化できるものがあるかどうか、ちょっと今のところわからないので、現在はこの2点についてだけの意見です。

5ページについては、私自身は経営方針であるとか、あるいは議論になっております経営者の判断といいますか、MD&Aについても、やはり現状がひな形的な開示になってしまっているのであれば、きちんと考えている企業が開示しやすいような形に、少し誘導的に、そういう意味では規則そのほかを工夫してもよいのではないかと思います。後に発言すべきことかもわかりませんけれども、社会的配慮であるとか、あるいは環境配慮についても、少なくとも有価証券報告書を発行されているような会社は、社会あるいは日本経済に与える影響が大きいですから、何かは開示していただくのが適切だと思います。特にないという開示でもいいのかもわかりませんが、やはり社会のメッセージとして日本の、あるいは上場される、あるいは公開されている企業の方には、この点について積極的にメッセージを発していただくというふうに制度としてメッセージを送るべきだと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

次へそろそろ進みたいと思うのですけれども、よろしゅうございますでしょうか。

それでは、次は日程と手続です。スライドの9ページ目と10ページ目をあわせてお願いしたいと思います。9ページのほうが開示の日程・手続、それに応じた選択肢の拡大。10ページ目のほうは同日開示とする場合の取り扱いです。ご質問、ご意見、どなたからでもお願いいたします。どうぞ、原田委員。

【原田委員】

9ページにあります事業報告・計算書類の電子開示に関することで少し検討していただければと思うことをご連絡いたします。

まず、コストベネフィットという点で考えますと、電子開示というのはコスト減につながることは明らかでありますし、ベネフィットはまだ導入もできていないので未知数であるかもしれませんけれども、ベネフィットについては、例えば先行して電子開示制度が採用されている米国の事例など、参考になるものはあると思われます。米国の場合、招集通知は郵送され、電子的にアクセスして議決権行使ができる環境と理解しています。ネットで情報は見られるが、希望者には全て郵送というオプション付きになっております。こういう制度を導入するベネフィットは大きいのではないかというふうに考えます。

先ほど田原課長のほうからご説明いただきました資料2の参考資料のほうを見ましても、米国での個人の議決権行使率は28%、日本では30%ちょっとということになっておりまして、あまり差はないと。日本は、今、会社法上の計算書類、事業報告は郵送ということになっておりますけれども、米国をはじめ諸外国では先行して電子的な開示を使うという制度になっています。そういう意味で、郵送でも電子開示でもあまり差はないんじゃないかというのは、この資料をいただいて思ったところになります。

現状、コスト面でかかり過ぎているのではないでしょうか。株式会社は株主利益の最大化というのを伝統的に目標にしておりますから、7割の個人投資家が権利行使をしていないという現状での印刷コスト、郵送コストというものは、やはり企業側にとっては負担が大きいということになるのではないかと思います。ただ、現状維持でいいのではないかといったご意見をこのワーキング・グループの委員の方々がおっしゃっておられました。先ほど、太田委員のほうからは、デジタルデバイドな人たちの扱いというのがまだ問題ではないかというご意見をおっしゃっていました。前回、大崎委員は、メールで通知が行ってしまったら、ごみ箱に入ってしまって誰も見ないんじゃないかといったこともおっしゃっておられました。電子化というのはそういったことにならないものだと理解しています、これについても、おそらくアメリカの事例などが参考になるのではないかと思います。

私は、メンバーではないのですけれども、今朝、経済産業省さんで電子化についての勉強会があったと伺っております。諸外国での電子化の制度等、を日本でももう少し研究していただくと、参考になるのではないかというのが1つ考えるところであります。

関連しまして、ちょっとページが戻るのですけれども、3ページをごらんいただきますと、ここに会社法開示(事業報告・計算書類)とありまして、開示方法のところで書面の提供となっております。括弧書きで一部電子提供可とありまして、注釈で電子提供できるものは何かということが法務省令の会社計算規則と会社法施行規則、ともに133条ということで同じなのですけれども、ここに規定されているとあります。裏を返せば、法務省令で電子提供可なところを広げれば、実際はウエブ開示という道も難しくはないのではないかと考えるところであります。私は、法律の専門家ではございませんので、先日、法務省さんに少し確認をさせていただいたのですけれども、会社法上は提出または提供というふうに書かれておりまして、提供というのは、これは提出よりもより広い意味で電磁的なものも含むのだという理解に間違いがないことを教えていただきました。そうしますと、本来、会社法の趣旨からすれば、電磁的な方法を閉ざすものではないかと思うのですけれども、なかなか現実にはそういう単純な対応は厳しいとは思うのですけれども、事業報告・計算書類、これをウエブ開示できるようにするためには、極論を言えば、法務省令の改正を申し入れるというのが一つの方法であろうかと思うのです。けれども、現実にはそれは非常に厳しいということでしたら、検討する場所をもう少し設けていただくというのも重要なのではないかという、ちょっと締まりの悪い、要望のような形になりましたけれども、ここで述べさせていただきます。

前回のこのワーキングで法務省の方が、抽象的な議論に終始するのは本意ではないということをおっしゃっておりますので、何か具体的な道筋が検討できるのであれば、このコストベネフィットという点で考えたときの、コストの削減というのは一つ重要なことではないかなと思っております。関連しまして電子開示というのは重要なことであろうと考えます。

以上になります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。

9ページ目と10ページ目のところについて、少しコメントをさせていただきたいと思います。9ページの、7月開催にした場合に対応が必要となる項目ということで、議決権行使基準日や配当基準日を決算日より後の日とする必要があると。これに伴って、事業報告では決算日を基準にして大株主の状況を記載しているので、これで基準日を後ろ倒しにすると議決権行使基準日と決算日がずれるので、株主の確定を2回行う必要があると。これを避けるためには、大株主の状況の記載にかかる基準日を選択できることとした場合、企業ごとに大株主の状況の基準日が異なることとなるが何か支障があるかということでございますけれども、企業法務の実務に携わっている実感からすると、私自身は特に支障はないのではないかと思っております。要は、この大株主の状況というのは、基本的には株主総会において、誰がこの議決権行使について大きな力を持っている人たちであるかということを開示させるという趣旨が大きいのではないかと思っておりまして、この株主総会の開催日が7月にずれた場合に、議決権行使基準日がずれて、それでその部分については当然、大株主の状況を開示する必要があるかと思いますけれども、その場合に敢えて決算日における大株主の状況を開示をさせる必要もないであろうというように思っております。

それから、2番目の電子開示のところでございますけれども、今、電子開示をもう少し進められないかというようなご指摘があったわけでございますけれども、私の理解では、現状でも提供を受ける側が同意をすれば、電子的な招集通知の送付等はもう可能になってございまして、これは商法の平成13年11月改正のときからそういう形になっていると理解をしています。従って、今、この議論になっているのは、それを超えて招集通知とかの提供を受ける側が同意をしない場合にも紙を送らなくてもよいこととするかどうかという問題ではないかと思っておりますが、ウエブ開示の拡大によって、紙ベースで書かなくてもいいとなっているものが2015年の6月総会から大幅に拡大をされていますが、それを超えて、紙がやはり全く行かなくなってしまうということになると、個人株主が株主総会に参加するインセンティブを著しく削ぐことになりますし、メールで来ていた場合には、よくわからないうちにスパムメールではないかとして処理されることもあり得るかもしれません。加えて、デジタルデバイドの問題もございますし、個人株主の存在感が今後、貯蓄から投資へということに伴って大きくなっていくのではないかと思っておりますので、私自身は、現状の状況で一律電子開示というのは非現実的ではないかと思いますし、開示コスト削減という観点からいくと、現状でも提供を受ける側が同意をすれば電子開示できることになっていますので、細かな事項についてウエブ開示を拡大して、株主に送付する状況で、特に細かなものはウエブで済ませるという点を進めれば、それで十分足りるのではないかと思っております。

それから、次の10ページの同日開示の場合の話なのですが、この同日開示の場合、これは実態がはっきり言ってよくわからない気がしておりまして、例えば、決算短信と事業報告・計算書類を上場会社の中で同日に公表している事例が見られるということで、NTTさんの例が挙げられておりますけれども、これは5月15日公表ということでございました。そうしますと、四半期決算短信の提出期限が45日以内であるので、それで5月15日にして、そこであわせて全部開示をしているということだと思っておりまして、同日開示ということを慫慂してしまうと、全部後ろに寄るのではないかなという気がしております。

従って、これは選択の問題でございまして、決算短信における速報性の重視、今、取引所さんのほうでは30日以内ということを慫慂されていると理解しておりますけれども、それを重視するのであれば、あえて同日開示に誘導することはせずに決算短信は早くやってもらって、法的開示はいろいろな法律上の罰則等もあるのでもう少し精査をしてから出すということで、特に問題ないように思います。同日開示にかじを切り過ぎると、かえって全体が遅くなってしまうのではないかという懸念を若干感じました。例えば349社、14%が四半期決算短信と四半期報告書を同日に開示しているという話がございましたけれども、これは同日というのが、多分、5月15日とか、要するに45日のほうにかなり、同日に提出している会社は寄っているのではないかなと思っておりまして、同日に提出していない会社はむしろ四半期決算短信を早く開示しているということではないのかなと個人的には推測しておりますので、そのあたりの実態も踏まえて、全体が後ろ倒しになるというようなことのないように、適切な配慮をすべきなのではないかと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

神作委員、静委員の順番で、神作委員。

【神作委員】

ありがとうございます。

事業報告と計算書類の電子開示の点につきまして申し上げさせていただきます。それにあわせて総会の7月開催についても私の考えを述べさせていただきたいと思います。

事業報告と計算書類が今までセットになって議論されていると思うのですけれども、これを分けて考えることはできないかというご提案でございます。私も、全く紙をなくすということには抵抗がありまして、17%、個人株主がいて、そのうちの議決権行使をされる個人の方が36%と、このような数字に鑑みても、紙があって、例えば事業報告については紙で得られる意義は依然として大きいと考えられます。それに対して、計算書類について、どうしても紙がなければいけないかというと、これは相当、見る人は実際にはそんなに多くないのではないかという気もいたしております。このあたりは私の感想にすぎないのですけれども、もちろん電子開示というのは本来は、今、申し上げたような中途半端な解決というのは、ほんとうの電子化にはそぐわないかもしれませんけれども、事業報告と計算書類について一応分けて考えることができないかというのが申し上げたいことでございます。

計算書類については、あまり利用されていないのではないかと、見る人は電子で見るのではないかということのほかに、これはご質問になるのですけれども、事業年度が終わった後、日本では定時総会の開催までの期間が短いというご報告が前回あったかと思いますけれども、このこと自体はむしろ誇るべきことと申しますか、非常によいことなのではないかと思います。そうすると、そのような良いところは維持するというところで、計算書類が電子的な開示でいいですよといったときに、招集通知の発送との関係ではそれにあわせておこなわなければならなかった監査の期間が少し延びるようなことがないのかどうかというのがご質問です。もし、電子開示を計算書類については認めることによって、監査の充実が図られるというようなことがあると、それは非常に大きなメリットになり得るのではないかと思うところでございます。つまり、6月の開催を維持しつつ、計算書類の電子開示を認めて、それで監査の期間が少し延びるようなことがないのかどうか。

最後のご質問は、実務にかかわることですので、ご教示いただければありがたいと思います。いずれにせよ、私は事業報告と計算書類について分けて論じていく意味もあるのではないかということを一言申し上げさせていただきます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

監査の期間については、後ほど関根委員からご発言があると思います。

順番でいきたいと思います。静委員、関根委員、永沢委員、原田委員、橋本委員の順で、静委員からお願いします。

【静委員】

先ほど、太田委員のほうからご指摘がありました話と同じなのですけれども、9ページと10ページにかけて同日開示という話が出ております。これは四半期の短信と四半期報告書が同じ日に提出されるということなのですが、これはご指摘のとおりでありまして、どんな会社がそういうことをしているんだと言われれば、非常に遅く四半期決算短信を開示している会社でございます。したがいまして、本来は確報と速報が近いというのはあまり褒められた話でもないので、そちらの方向だけ負担を軽減して、小さくなったじゃないかというのは、むしろ逆に、後ろに倒す方向に働く可能性があると思うので、その部分は十分注意したほうがいいというのは私も同じ意見でございます。

もう1点は、戻ってしまって申しわけないのですが、5ページ、6ページのところで、5ページのところに決算短信の話が出ているので、当事者として一言だけ申し上げさせていただきたいと思いますけれども、確かに速報性重視が短信の一番大事なところでございますので、今は速報の性質上、必要な事項、このときにはサマリー情報がそうだったのですけれども、それを中心に少し削っていく、絞っていくという方向自体については私も異論はございません。そういう意味で言いますと、経営方針の欄なんかありますけれども、これは実は平成11年ぐらいにガバナンスの強化や何かが社会的な関心になったときに、対話の基盤としてそういうものを出してもらったほうがいいということで、政策的に始めたところだったりしますので、これがほかのところで、例えば有価証券報告書等でかわっていただけるのなら、ぜひそうしていただくほうがいいというふうにも思います。

しかしながら、1点だけちょっと気をつけなければいけないと思うのは、やり過ぎて、要請もしていないのに開示してもらっている事項というのがあったりしまして、例えば、四半期決算短信については、今、1枚目のサマリー情報と、その後に財表だけつけていただければいいということになっていますけれども、どこの会社も必ず当期の概況とか次期の見通しっていう定性情報を書いています。つまり、みんなが必要だと思っていることを取引所は一律には要請しませんと言って、やり過ぎてしまったみたいなこともございますので、先ほどから有価証券報告書と事業報告が出ているように、個別の項目を見て、具体的に議論をしないと、ほんとうに大事なものをなくしてしまったりとか、そんなことになりかねませんので、決算短信につきましても、そのあたりの個別の項目をしっかり見ていくことが大事だと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

お隣の関根委員、お願いします。

【関根委員】

ありがとうございます。

先ほど途中まで私の提出した資料をご説明しましたので、その続きということと、幾つか監査についてご質問がありましたので、あわせてご説明させていただきたいと思います。

先ほど、参考資料のほうで、我が国における現状の開示実態ということで、全体の約4割が、速報である決算短信の発表日以前に確報である計算書類に係る会計監査人監査報告書を提出している実態があるということを説明しましたが、こちらについては、以前ということで、同日というのも当然入っております。私ども日本公認会計士協会で、今年9月に会社法監査に関する実態調査というのを行っております。これはウエブでも開示されているものなのですが、それを見ますと、先ほどご指摘がございましたように、やはり5月というのが一番多くなっています。細かい日付までの分析はここにはないのですが、決算短信の発表以前に監査報告書が提出されている約4割の会社のほとんどが5月に決算短信を公表しています。これは先ほども申しましたように、きちんとしたものを出したいという気持ちなのかとは思いますが、他方で、速報性に意味がある短信が、監査報告書が提出されてから公表されているという逆転現象がどういう意味になるかをあらためて考え直す必要があるということは皆様のおっしゃるとおりと思っています。

また、速報性を求める決算短信に対して、第三者として信頼性を担保するための監査については、決算短信に引っ張られているということもあるのかと思いますが、会計監査人の監査報告書の日付の平均は、決算日後44日程度で、前回申し上げた42日とは集計の仕方で微妙に違っていますが、いずれにせよ、経産省に調べていただいた諸外国の期間と比べると非常に短いというのはこの前ご説明したところでございます。

このタイミングとなっているのは、会社法監査の成り立ち、もともとは商法監査の成り立ちもあるかと思いますが、私ども監査人の立場からすると、かつての単体のみの計算書類のころとは違い、監査対象として連結計算書類も入っており、また必要な監査手続という意味では、国際的に共通化してきていますので、遜色のない監査を行うためには、諸外国とはかなり異なる非常に厳しいスケジュールになってきているといえます。

実は、先ほど申し上げた調査でアンケートも行っておりまして、実際に回答した会員、監査法人に所属していて一定の条件をつけましたので、数はそれほど多くはないのですけれども、そこのアンケート結果などを見ますと、実際厳しいという声があがっています。アンケートの中でも、監査期間が非常に短いということによる実務への影響としては、監査人による長時間の残業対応などにより監査時間を捻出することが必要になっているとか、人員が逼迫する傾向にあるとかをあげる回答が多く、かなり厳しくなっています。厳しくてもやれるのだったらいいのではないかという議論はあるのかもしれませんけれども、人間ですから、やはり一定の休息を取らないときちんと判断もできなくなるのではないかと危惧しています。また、アンケートの中で、では、監査時間はもっと延ばすべきではないかと、延ばすのが望ましいと思うかということを聞いていますが、かなりの割合の方々が監査時間はやはり延ばしたほうがいいということを答えております。監査は、監査報告書日までの保証を与えるものですから、必要以上に期間を延ばすことを望むわけではないので、これはやはり今の時間では足りない、期間的に足りないのではないかというのがあらわれているかと思います。この報告書については、ご興味ある方はごらんいただければと思っております。

そのような観点から、同日開示についてですが、まず、そのような逼迫した状況の中で会社法の監査報告書につきましては、もっと時間をかける必要があるのではないかと考えています。また、有価証券報告書の監査報告書の話ですが、先ほど熊谷委員からの、もう少し早くすることができるのかという話については、監査というのは、財務諸表が作成されて初めて監査ができますので、作成者の方がどの程度早くできるかという話にもなるため一概には言えないのですが、昨年経産省で議論をしていたときには、現在の有価証券報告書の提出日より少し前にはつくることができるというような作成者の方の発言もございました。ですから、現在6月末に提出しているからといって、つくるのにそれだけかかるというものでもないし、監査人もそういうものではないと考えております。

では、片方が早くなり、片方が遅くなれば同日開示が可能かということについては、株主総会の日程が現在のままで同日開示にするには実務的には難しいところがあるかもしれません。けれども、株主総会が6月開催であったとしても、同日開示にするということが可能な会社も当然あるとは思っております。ですから、本日の資料は、7月に開催した場合というような議論にはなっていますが、私ども、全ての上場会社に7月総会を推奨するというわけではございません。定時総会の開催の設定に当たって、従来の決算日後3カ月以内の開催にこだわらなくても柔軟な対応を促すことによって、今言われている株主総会の分散化にも役立つのではないかと思っております。

また、一元化の議論と、監査に時間をかける議論、対話の議論は異なるのではないかというご意見も頂きました。確かに直接的には関係はしないのかもしれませんけれども、決算という非常に限られた時間の中で、作成にしても監査にしても、時間がない中で2種類を使い分けるというのがほんとうに必要なのかというのは、今、改めて考えるべきではないかと思っております。

この点について、投資家の方とお話ししていますと、まさにそういうお話もされていまして、先月末に公表された投資家フォーラムの報告書でも、近接した時点で複数回監査を行うよりも丁寧に監査してほしいというふうに言われております。もちろん、私どもは、いつも丁寧に監査をしているつもりでございますけれども、ぜひ、こういった点も検討頂きたく思っています。また有価証券報告書についても、これは熊谷委員がおっしゃっていましたが、株主総会前に開示してほしいという声があることは事実かと思っております。

私のほうからは以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

ちょっと1点確認なのですけれども、44日というご説明がありましたけれども、決算日後、何日で受け取っているのですか。計算書類が企業さんから監査法人に渡されているのでしょうか。

【関根委員】

ありがとうございます。

それにつきましては、正確なデータはございません。会社法の規定によって4週間以内に提出というのがありますが、実際には、できた資料からもらってみていくというようなこともあります。そういう意味では、早期に対応するため、完全に全部でき上がったところでもらっているというわけではなく、明確なものはないというふうに考えていただければと思います。もちろん個々にはあるとは思うのですけれども。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、隣の永沢さん。

【永沢委員】

ありがとうございます。

私は、9ページの2の電子開示の件につきまして意見を申し上げたいと思います。先ほどの神作先生のお話は現実的なご提案だと思いました。電子開示については、私は否定しているわけではありません。どんどん積極的に進めていただければと思っております。ただし、やはり課題がありまして、ただPDFファイルか何かをインターネットホームページに載せて、それで開示が終わるというようなことではないと思います。相当程度の工夫が電子開示には必要なのではないかと私は感じております。

また、スマホが今は中心になっており、自宅にPCを持っている方というのも減ってきております。会社のPCで見るということもできないですし、個人の投資家、個人の株主がやはり電子開示に対応していくためには、それなりにやはり企業側のほうも相当の努力をされなくてはいけないのではないかと私は感じております。

それから、私はこれは最後に申し上げようと思っていたところなのですけれども、会社は個人株主をほんとうに必要としているでしょうか。コストとかガバナンスの効率性などを考えたりすると、ほんとうに個人株主は必要とされているのでしょうか。世の中では必要と言ってくださるけれども、先ほどの開示コストのお話を伺うと、個人株主は本当に必要とされているのかしらと疑問に思ったりもいたします、ただし、この点については最後はやはり個々の会社の判断だと思っておりまして、私は、場合によりましては電子的な開示を主とするというような選択を会社側に認めてもいいのではないかと感じております。電子開示を主とする判断に対して、私たちは要らないと判断されたと思う投資家もいる一方で、デジタルデバイドでない投資家で株主を構成してコスト削減を図っている会社だと肯定的に受け取る投資家もいると思います。最終的には会社の判断、それから投資家の判断になるのでしょうから、そういう意味では選択制であってよいのではないかとも感じた次第です。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

原田委員、橋本委員の順で、原田委員、お願いします。

【原田委員】

電子開示について補足的に意見を述べさせていただきます。私の理解では、現状、全て郵送されているというふうに理解しております。事業報告、計算書類は全て郵送で、その根拠がどこにあるかといいますと、法務省令です。ウエブ開示による代替が認められていないものが明らかであるからと、そういう理解であります。ですので、個別注記表に記載されている事項などの一部のみ電子開示をどうぞしてくださいという感じです。上場企業のかなりのところは一部のみ電子開示しているという、そういう状況だろうと思います。

電子開示というときに、先ほど来から、電子メールで通知か?といったような話もありますけれども、電子開示というのは100%電子化という、そういうものではないと理解しておりますので、一度、諸外国の電子開示とは何%ぐらいの電子化なのかというところを、経産省の方にでも簡単にレクチャーしていただけると、電子開示という言葉の意味する具体的な電子化率、多分70%か60%か、そのぐらいだと思うのですけれども、より具体的に皆様にわかっていただけるのではないかと思います。

以上になります。

【神田座長】

ありがとうございました。

いろいろな方から手が挙がっているので、時間が来ているのですけれども、今の点につきましては、次回以降、どこかで機会を設けさせていただきたいと思います。

それで、橋本委員、黒沼委員、それから法務省からもご発言があると思いますので、ちょっと延長になってしまって恐縮ですが、お願いいたします。

【橋本委員】

やはり私は、この株主総会の7月開催というのは、ぜひとも選択肢の一つとして今回、実現していただきたいと考えております。やはりディスクロージャー先進国を目指すというような、そういう意気込みで国際的な評価が得られるような方向へと見直しが進んでいくことを望んでおりまして、現状ではやはり企業にとっても監査人にとっても利用者にとっても、時間的な余裕がないという状況が日本の場合、国際的に見ても明らかですので、このようなところはぜひともそういった対話の促進に向けて何とかしていただきたいと思っています。

そして、いろいろな対応が必要になりますけれども、といいますのも、株主の確定を2回行うということを避けるための選択の方法を考えますと、持ち合い状況がわかりにくくなるというような比較可能性が低下する面はありますけれども、それに比べて株主総会の7月開催の実現により得られるメリットは非常に大きいものと思いますので、ぜひ実現していっていただきたいと考えております。

それから、電子開示についても、やはり方向性としては、今はもうこちらの方向になると思いますので、そういった対応のできない人にも十分配慮をしつつ、全体の方向性としては、やはり積極的な対話を促進していく方向へ企業にも投資家にもそういった方向への意識改革を促して、現状のままということではなかなか次のステップに移れませんので、そういった関係者の皆様に意識改革を促すようなこともあわせてできればと思います。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

黒沼委員、法務省の順で、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

手短に意見を申し上げます。

株主総会の7月開催は、主として監査の充実を図るという観点から進めていただきたいと思います。1つつけ加えるならば、現在、有価証券報告書の虚偽記載について、民事責任を負う役員は提出時の役員ということになっています。株主総会をまたぎますと、新たに選任された役員が責任を負うということになるのですが、しかし、本来は有価証券報告書の作成に関与した役員が責任を負うべきですので、そういう観点からも有価証券報告書を株主総会前に提出できるように進めていただきたいと思います。

それから、基準日の点ですけれども、私は大株主の状況については、議決権行使基準日を基準にして記載するように定めれば済む問題ではないかと思っております。

それから、電子化ですが、計算書類について大幅な電子化を認めるという神作委員の意見に賛成です。ただ、そのやり方は、法務省令のウエブ開示を拡大していくというやり方ではなく、会社法は全ての株式会社に適用されるルールですので、この際、金商法に特則を設ける形でやっていくべきではないかと思います。会社法上のウエブ開示については、会社法上の根拠がないという議論も一部の学説にはあると思いまして、私もそういうふうに思っておりますので、むしろ金商法で会社法の特則を定めると、法律で定めるようにしていただいたほうがよろしいのではないかと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

法務省、どうぞお願いします。

【野澤民事局付】

法務省でございます。

事業報告と計算書類の提供の方法について、このワーキングループは本格的に議論する場ではないと理解しておりますが、議論を整理させていただきます。まず、会社法上は、会社は、計算書類等の招集通知添付書類については原則として書面で株主に提供しますが、株主の個別の承諾を得た場合は、当該株主に電磁的方法により提供することができます。他方、会社法施行規則や会社計算規則において、事業報告と計算書類の一部の事項についてインターネットによるみなし提供、いわゆるウエブ開示という制度があります。ウエブ開示は、事業報告と計算書類の一部の事項について株主に提供したものとみなすとされていることから、株主の個別の承諾を得た電磁的方法による提供の場合に株主から請求があったときは書面の交付が必要になることと異なり、書面の交付は一切不要になります。したがって、会社法施行規則や会社計算規則を改正することで、書面の交付が一切不要となるウエブ開示のみなし提供の事項を単純に広げればいいのではないかという議論にはただちにならないと考えております。先ほどの黒沼委員のご指摘も踏まえますと、ウエブ開示のみなし提供の事項を拡大すれば計算書類等の招集通知添付書類の電子的な提供が可能となるという単純な議論ではないということにご留意いただき、議論を進めていただければと考えております。現在、法務省も、経済産業省様で設置された株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会に参加して、その研究会での議論を注視しておりますので、その点も補足しておきたいと思います。

また、大株主の状況の記載の基準時について若干補足させていただきます。事業報告の基本的な性格としては、当該事業年度における事業の経過や成果等を記載するということで、原則として、当該事業年度の初日から末日までに発生や変動した事象を記載し、例外的に、記載の基準時が明示されている場合があり、例えば、記載の基準時が「現に」とされている場合には、事業報告の作成時点における内容についての開示を行うという例外的な取り扱いになっているということもご留意いただき、大株主の状況の記載の基準時についてご議論いただければと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

予定の時間を過ぎておりまして、まだご議論いただいていない点があるので大変恐縮ですが、スライドの11ページ目と12ページ目について、年明け以降にお時間を取りたいとは思いますけれども、もし、本日発言しておきたいという方がいらっしゃったら伺いたいと思います。11ページ目は非財務情報の開示。といっても、MD&Aについては先ほどご意見をいただきました。したがって、このESGとかですね。それから、12ページは、その他ということで、いろいろ既にご指摘があった点もありますけれども、意外と重要な話が並んでおります。繰り返しになりますが、年明け以降にご意見を承りたいと思いますけれども、せっかくですので、もし本日ご発言があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。それでは、司会の不手際で予定の時間を相当過ぎておりますけれども、また年明け以降にご意見を承りたいと思います。

本日は大変難しい問題が多いのですけれども、いろいろな観点、いろいろな配慮、いろいろなお立場から、非常に多様なご意見をいただきまして、ありがとうございました。宿題もいただきましたので、それらをあわせて今後の具体的な検討に当たって参考とさせていただきたいと思います。

最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

次回の日程につきましては、またご都合を頂戴した上で、後日事務局からご案内させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

本日はありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

本日は以上で散会いたします。皆様、よいクリスマスとよいお年をお迎えください。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課(内線3665、3802)

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