金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第3回) 議事録

  • 1.日時:

    平成30年2月21日(水)16時30分~18時40分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【神田座長】

それでは、予定の時間より少し早いのですけれども、あらかじめ遅刻されるというご連絡をいただいている方を除いて全員おそろいですので、始めさせていただきます。

皆様方には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の第3回目の会合を開催させていただきます。

早速ですが、議事に移らせていただきます。お手元の議事次第にございますように、本日は、まず事務局から「建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供についての主な論点」についてご説明をいただきます。

それから、本日ゲストとしてお越しいただいておりますゴールドマン・サックス証券株式会社のベン・ファーガソン様と、清水大吾様、そして委員の井口委員、三瓶委員、これらの方々からお話を伺いたいと思います。

それでは、早速ですけれども、事務局からの説明をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

それでは、資料1-1に従いまして、本日ご審議をお願いする項目につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。なお、第1回のディスクロージャーワーキング・グループで関連する項目としてお示ししました資料も、資料1-2として添えさせていただいておりますので、そちらも適宜ご参照いただければと存じます。

1ページおめくりいただきまして、今回の全体の議論の流れでございますけれども、本日は、IIの建設的な対話を促進するという観点から、どういったガバナンス情報が提供されていくべきかということについて、ご議論を頂戴できればと存じます。

次のページに目次がございますけれども、これまでご議論いただきました中で、政策保有株式に関する開示、役員報酬に関する開示、それから、ガバナンス情報はどういった形で提供されるべきかということについて、ご指摘を頂戴いたしましたので、こちらにつきまして整理をさせていただきました。また、これ以外の点につきましてもご意見を頂戴できればと存じます。

1ページおめくりいただきまして、3ページ、4ページに第1回会合で頂戴いたしました政策保有株式に関する開示情報に関するご意見を列挙させていただいております。保有目的・効果、前年からの異動状況、議決権行使の内容、対象銘柄の範囲、保有されている株式についてどう考えるべきか、それから、情報提供のあり方などについて、ここに書かせていただいているようなご意見を頂戴したところでございます。

おめくりいただきまして、5ページでございます。その際、コーポレート・ガバナンス報告書における開示はやや抽象的な方針の記載にとどまっている例が多いのではないかというご指摘もございましたので、典型的にどういう開示が行われているかということで、開示例を資料として付けさせていただいております。

また、対象銘柄数についてもご議論を頂戴いたしました。5ページの下には、議論のご参考といたしまして、日経500種企業の皆様が、政策保有株式としてどれぐらいの株式を銘柄で持っているかということを記載させていただいておりまして、平均値で約114銘柄、事業会社ですと80銘柄ぐらい、銀行ですと450銘柄ぐらい、保険会社ですと1,000銘柄ぐらいということで、最大になりますと、事業会社で550銘柄ぐらい、銀行で2,800銘柄ぐらい、保険会社で2,000銘柄ぐらいとなっているということでございます。

2点目の役員報酬についてでございますけれども、6ページ目でございまして、前回のご議論では、役員報酬の内容、制度の具体的な中身ですとか、実際に支払われる金額についての開示がどうあるべきかというようなことについてご意見を頂戴しました。また、役員報酬の個別開示につきましても、現在1億円以上ということで区切りを設けているわけでございますが、その区切り自体について今日どう考えるべきかということ、また、個人報酬を開示するかどうかということについて、諸外国では一般的に開示されていることが多いわけですけれども、日本の報酬水準なども考えて、どういうふうに考えていくかということについてご意見を頂戴いたしました。

そういったことで、次の7ページ、8ページには、日本、米国、英国の報酬に関する開示制度について、開示内容を比較させていただいておりますので、ご参照いただければと存じます。

9ページ目、ガバナンス情報の提供方法についても、第1回会合でご意見を頂戴いたしました。具体的には、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書という2つの媒体で、主に開示がなされているわけですけれども、それぞれの中で整理が必要ではないかというご指摘を頂戴いたしました。また、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書のそれぞれの役割の整理というものも考えてもいいのではないかというご意見を頂戴しましたので、それにつきましても記載をさせていただいております。

本日、ご議論いただきたい論点につきまして、10ページから12ページに書かせていただいております。

まず、政策保有株式につきましては、2010年に見直しをいたしまして、それまでの有価証券明細という形から、現在の政策保有株式ということで、開示を変えていただいたということでございますけれども、政策保有株式について、投資家の方がいろいろな投資判断ですとか対話をしていく上で、どういった情報が必要とお考えなのか、また、それを提供する上で留意すべき事項にどういったことがあるかということで、こちらに書かせていただいているようなことについてご意見を頂戴できればと存じます。

1ページおめくりいただきまして、役員報酬でございます。役員報酬につきましては、先ほど申し上げましたように、その役員報酬制度、それから実際の支給についてご意見を頂戴したとともに、その中で個別の開示について、役職などを基準に開示すべきというご意見、あるいは1億円以上という区切りについてどう考えるかということについていろいろご意見を頂戴したわけでございますけれども、本日もこの点についてご議論を頂戴できればと存じます。また、個別開示につきましては、なぜそういう個別開示が必要なのか、必要でないのか、どういうふうに考えるかということについても、踏み込んだご意見を頂戴できればと存じます。

最後、12ページでございますが、ガバナンス情報の提供方法ということでございまして、有価証券報告書、あるいはコーポレート・ガバナンス報告書の中での記載内容の整理、それから、相互間での記載についての分担といいますか、役割についてどう考えるかということについて、ご意見を頂戴できればと存じます。

また、これまで開示についていろいろご議論をいただく中で、複数の書類を作成している中でどうしても同じような情報を記載することが分かりやすい、あるいは必要になるということがあるわけですけれども、例えば有価証券報告書に記載していることをコーポレート・ガバナンス報告書にも記載する必要があるときに、中身をコピーすることで総覧性を高めそれぞれの書類の分かりやすさを追求するという方法と、必要な追加情報だけを、例えばコーポレート・ガバナンス報告書に記載するという方法と両方あると存じておりますが、それについてのご意見はどちらかというと前者の方が多い、特に投資家サイドからはそういうご意見を頂戴することが多いようにも思うわけですけれども、開示する側の負担ということも考えて、どちらの方がいいかということについて、もしご意見があれば頂戴できればと存じます。

以上、駆け足でございますけど、本日は3名の方からご意見をいろいろご表明いただくということで、私のご説明は手短にさせていただきました。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、ゴールドマン・サックス証券株式会社のファーガソンさんと清水さんから、「日本のコーポレート・ガバナンス改革に対する海外投資家の見方」について、ご説明をいただきます。ファーガソンさん、清水さんからは、お手元の資料2をご提出いただいております。

本日はお忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございます。それでは、よろしくお願いいたします。

【ゴールドマン・サックス証券株式会社 ファーガソン様】

よろしくお願いします。本日は、貴重な場でお話をする機会をいただき、誠にありがとうございます。

弊社は、世界各国のお客様に金融商品を提供しており、私自身は一貫して海外投資家とお付き合いをさせていただき、現在、アジア・太平洋地域の機関投資家と事業会社のお客様とのやりとりの営業チームの統括を務めております。

我々はあくまで現場の人間でして、学術的な知識は乏しいかと思いますが、数多くの海外投資家と話をしてきた実務家として、海外投資家の声をお伝えさせていただき、お役に立てれば幸いです。

お手元の資料の6ページをご覧ください。種々議論されているかと思いますが、弊社が考えるところでは、海外投資家の不満は、大別して2種類あると認識しております。

不満の第1のカテゴリーは、開示情報の質・量に関するもので、例えば海外投資家から、英文開示が少なく、セルサイドのアナリストレポートやアニュアルレポートに頼らざるを得ないとの声を聞きます。英文も含め、開示は多いにこしたことはないのですが、海外投資家は特にガバナンスに本質的に取り組み始めたことで企業価値を大幅に向上させた企業の転換点となるような非財務情報が知りたいという要望を持っています。これは経営戦略や経営陣の考え方、人事、ESGへの取組みなど、さまざまな情報が統合されているものと認識しております。

不満の第2のカテゴリーは、経営陣の取組み姿勢についてです。典型的な例は、株主資本コストで、日本の一部企業では株主資本コストに対する認識が希薄で、事業ポートフォリオの入替え、資本コストの最適化といった議論が深まっていないため、バランスシートの効率化ペースが遅いとの印象を海外投資家は有しています。また、政策保有株による安定株主比率が高いことが、株主資本コストに対する認識が広がっていない理由ではないかという見方をしている投資家は珍しくありません。

また、安定株主比率の高さは、少数株主が軽視されてしまうことにもつながっていると思われ、海外投資家は少数株主の立場をより考慮した上で経営するべきとの見方を持っています。

こういった状況を打破するためにも、海外投資家は日本の会社の経営陣が、株主と近い目線を持って企業価値の向上に向けて努力するため、中長期の業績に連動した株式報酬の割合を高めるべきだと強く思っています。

【ゴールドマン・サックス証券株式会社 清水様】

ここからは私、清水が担当させていただきます。

7ページ目をご覧ください。先ほどありました話を裏付けるようなデータがございまして、こちらは弊社のセミナーでとったアンケート結果でございます。日本の企業様に対して、コーポレート・ガバナンスに対する取組状況といったものを聞いたアンケート結果でございまして、選択肢1というのが、独自の考え方に基づいて適宜必要な改良を重ねてきたと。要は本質的に取り組んでいる企業と。選択肢2というのが、同業他社と比べて見劣りしないように、最低限、必要な対応をしてきたと。

やはり我々日本人のカルチャーとしても、表面的な対応に終始してしまうということはよくあるのかなと思っているのですけども、この割合を見ていきますと、2016年は本当に3割の方が選択肢1で本気で取り組んでいると。少しずつ増えてきてはいるものの、まだ約半数にとどまっていると。ここのやはり表面的な対応をしている企業はまだまだ多いというところが、海外投資家の不満の根底にあると我々は思っております。

8ページ目をご覧ください。こういった状況の中で、どういった開示を強化していけばこういった海外投資家の不満が和らぐのかといったところを簡単にまとめております。

株主資本コストの認識というところに関しましては、ダイレクトに株主資本コストを開示していただくと。もしくは株主資本コストを考慮した上で、保有資産からの撤退ルールを開示事項とする。もしくは、自社が考える最適資本構成を開示事項とすると。あと、よく海外投資家から聞かれるのは、やはり手元保有現金、この合理性に関して、全く説明が深まらないといったところもございますので、こういった開示事項を入れるということも1つなのかなと思っております。

安定株主比率のところに関しましては、海外投資家は少数株主でございまして、企業価値向上をとにかく目的とするといった投資家なのですけれども、企業の株主の中に、そうではない議決権行使をしている安定株主、もしくは政策保有株が存在するということは、非常に事前に知っておきたいと。もし知っていたら投資しないということも、もちろん選択肢として出てきますので、やはりこういった政策保有株の議決権行使の個別開示といったところも1つ有用な手なのかなと思っております。

役員報酬に関しましては、先ほどもありましたけども、開示の額だけではなくて、それが本当に経営者にとってインセンティブになっているのかどうか、ここに関する検証が重要だと思っております。

取締役会の実効性のところは、もちろん数も重要ではございますけれども、数よりやはり質の方が重要だと思っておりまして、本当に経営トップに対して物を申せる取締役、社外取締役が入っているのかどうか、ここを判断するためには、選定プロセスであるとか、その人の人となりといったところを分かっていただく必要があると思っております。

我々も先週、ニューヨーク、ボストンでいろんな投資家と話をしてきたのですけれども、やはり聞かれる質問というのが、この企業のCEOはどういう人なんだと、どういうレピュテーションでどういう仕事っぷりなのかと、この社外取締役は本当に物が言えるのかとか、そういうやはり定性的な話がメーンでございますので、形だけではなくて、質のところを見ていく必要があると思います。

また、最近よく言われるのが、不祥事がいろいろ続いているといったところがございまして、こちらもやはりガバナンスは形ではなくて、実際のところを深めていかないといけないと。ただ、やはり日本のカルチャーとして、終身雇用を前提とした雇用の前提がございますと、なかなか会社に対して物を言えないといったところもございますので、そこは内部通報制度、こういったものを拡充していくことで、そういったものを早目にあぶり出すことができるんじゃないかという意見もいただきました。

あとは企業年金のスチュワードシップ・コード、まだ数社にとどまっているという認識なんですけれども、やはりインベストメントチェーンの中の大きなプレーヤーでございますので、ここはやはり企業本体の方から働きかけていくということも重要だと思っております。

最後になりましたけども、我々、先週ニューヨーク、ボストンを回ってきて、海外投資家と話をしていると、日本企業のバリュエーションは安いということは、かなり一致した見方になるのですけども、では株を買うかというとそうではなくて、永遠にこれは割安のまま放置されるんじゃないかと。過去10年もそうだったし、今後10年も永遠にというところが、やはり日本企業に対しての投資が進まない根本的な理由だと思っておりますので、やはり日本企業はガバナンスに真剣に取り組んで、企業価値向上に本当に進み始めたぞといったようなメッセージを出していくというところが、海外投資家のハートをつかむという意味では重要なところなんじゃないかなと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして井口委員から、「望ましいコーポレート・ガバナンス情報の開示の在り方」についてご説明をいただきたいと思います。資料3をご提出いただいております。

それでは、井口委員、よろしくお願いいたします。

【井口委員】

ありがとうございます。

今日は、投資家にとって望ましいガバナンス情報の開示のあり方ということで、事務局が挙げられた論点でいいますと、最初に3のガバナンス情報の提供に関する論点、それから次に、その中で役員報酬に関する論点、そして最後に、政策保有株式に関する論点の順番で、事務局と逆になって申し訳ないですが、そういう順番で意見をさせていただければと思います。

資料に入る前に、最初に申し上げたいのは、今までもこの審議会の議論でも出ましたように、有価証券報告書はそもそも何なのかということです。有価証券報告書は、私や多くの投資家にとって、企業価値創造プロセスを一覧的に理解できる信頼できる資料と考えております。

この意味からいいますと、企業の持続的な成長への確信度を高めるためには、取締役会に経営課題解決に対するモニタリング能力があるかどうかの判断は重要であり、この判断に資するガバナンス情報は必要な情報となりますので、これを有価証券報告書に掲載するということも必須であると考えています。

では、ガバナンス情報はどのように開示されるべきか、ということですが、私の意見を資料3の3ページに示しております。ご存じの方も多いと思いますが、ガバナンス・コードの原則3-1に、経営理念や経営計画とつながりのある形でのガバナンス情報の開示ということがありますが、このような形でガバナンス情報が提供されるのが、私は投資家にとっても望ましい開示のあり方だと考えております。

3ページの下の方に簡単な図を描いております。左の方に、経営理念・経営計画、これは前回、こちらの審議会でも議論した部分ですが、まず、そういうのがあると。それとつながりのある形で、(1)のガバナンスについての考え方があり、そして、その考え方に基づいて、(2)と(3)の役員の方の選任と開示が行われるという形が望ましいと思っています。その下に、(4)の取締役会評価、それから(5)の取締役会・指名委員会等、監査役会等の活動状況、(6)の役員報酬・報酬委員会等の状況が続いている形になっていますが、この(4)から(6)の3つの開示の役割は非常に重要だと思っております。ちょうど矢印を上の方向に書いておりますが、この3つの開示が、役員の選任の説明力を高める、あるいはガバナンスの説明力を高めるということになると考えているからです。そして、最後に、(7)の政策保有株式の開示が続く、といった形が望ましい開示のあり方と考えています。

その下に課題点と書いておりますが、現状のガバナンス情報の開示においては、情報のリンクというのはかなり少ないと考えております。これは、経営理念・経営計画から(1)のガバナンスの考え方、そして(2)と(3)の役員の方の選任のつながりのところとなります。

また、下の方にあるガバナンスの説明力を高める箇所と申し上げた(4)から(6)においては、取締役会評価についてはガバナンス報告書に開示していただいていますが、(5)、(6)において、かなり情報が不足しているというのが現在の開示の状況と思っております。

次の4ページに行っていただければと思います。すみません、1ページで入り切らなかったので、4、5ページにわたって書いていますが、こちらには何を書いているかというと、今申し上げた(1)から(7)の要素を左の方にずっと並べまして、右の方に、ガバナンス報告書とか、あるいは有報に開示されている情報を当てはめています。幾つかポイントがあるとは思いますが、1つ目が、有用なガバナンス情報が既にあるということです。ただ、それが、有報とかガバナンス報告書とかに点在しているということで、一覧性のある状況にはなっていないということです。

2つ目が、(2)の③で役員の状況の開示は有報にありますが、これが現状、「コーポレート・ガバナンスの状況」の外にあるということですので、これは「コーポレート・ガバナンスの状況」の中に入れるべきと思っております。

最後、3点目が、5ページの下の方の点線で囲んでいるところですが、これがさきほど申し上げた、(5)、(6)の箇所ですね。この部分の開示が、投資家の視点、グローバルの視点でみても、かなり不足していると思っています。

(5)の部分でいうと、具体的にいいますと、⑧の取締役会の活動状況の報告、⑩の指名委員会等の活動状況の報告、あるいは⑪の監査役会・監査委員会等の活動状況の報告です。これらに関する体制としての開示はありますが、具体的にどう活動しているかという情報の開示はないと思っております。

(6)の⑫の役員報酬と報酬委員会の活動状況の報告ということで、こちらの方もやはり開示という意味では不足していると考えています。

これらの点について、次のページ以降でご説明させていただきます。

6ページをお願いします。最初の⑧の取締役会の活動状況の報告ですが、これがなぜ重要なのかというと、企業内の最高意思決定機関は取締役会ですが、その取締役会の方向性を確認するということは投資家にとっても重要であるからです。その方向性を確認することにより、企業の中期計画の達成度の確信度を上げることができると考えています。

ここで必要になる情報は、取締役会の具体的な活動状況で、開催回数、議題やモニタリング事項、モニタリング事項に対する取締役会の判断と考え方、と考えております。

現状は任意のアニュアルレポートで一部簡単に取締役会のアジェンダを開示されている企業もありますが、多くの企業で開示はなされていないと認識しています。

海外に目を転じますと、海外ではかなり詳細に開示が行われています。英国というといつも開示がいいので例に挙げられるのですが、実は英国だけではなくて、アメリカとか、あるいはドイツ、北欧の国でも既に開示が行われていると認識しています。

7ページにドイツのシーメンス社、あとH&M社、北欧のスウェーデンの会社ですけれども、そのアニュアルレポートからの抜粋を載せています。シーメンス社の方でご説明しますと、「Report of the Supervisory Board」という、これは取締役会の報告ということですが、そちらの方でも、「We held a total of six regular plenary meetings」ということで、6回の会議を開催したと述べています。また、その下の方に下線を引いていますが、11月9日にディスカッションした内容、アプルーブした内容も開示されています。右の方のH&M社でも同じような開示がされています。

めくっていただいて、8ページですが、左の方が英国のM&S社という小売の会社でございます。英国の開示はすごくいいわけですが、こちらの方では戦略など各分野ごとに取締役会がとった行動と、Progressということで、それに対する進展も開示されています。

次に、9ページで、⑩の指名委員会等の活動状況の報告です。この開示がなぜ重要かということですが、企業の状況に応じた、モニタリングにおいて必要となるスキル、経験等を明確化できるということです。これによって、投資家は、取締役会全体の構成の妥当性を認識し、役員に選任される方の妥当性及びガバナンスの説明力を向上させることにつながると考えています。

ここで必要となる情報というのは、先ほどと似ておりますが、具体的な活動状況、あと、これは非常に重要だと思うのですが、指名委員会の取締役会構成についての考え方、具体的には、例えば理想的な役員構成と現状の役員構成のギャップに関する考え方ということが必要な情報になると思っています。

現状、任意のアニュアルレポートで、一部の企業が役員指名の方針を開示しているケースはありますが、具体的な活動や考え方の開示は行われていないと認識しております。海外では、英国では指名委員会の報告書があり、考え方を詳細に開示しています。ただ、英国だけではなくいろんな国で開示が行われており、10ページにはH&M社の例を載せています。

nomination committeeの活動ということで、下の方の下線を引いていますが、「nomination committee also discusses the size of the board」ということで、取締役会の規模に注意していることを開示しています。

その次の11ページには、アメリカのP&G社の例を載せています。左の方にnomination committeeの活動の開示、あと右の方に取締役会の構成員の資質、どういう取締役が今いらっしゃって、どういうふうにその方の資質を見ているかということも開示しています。この開示は、取締役会構成に対する投資家の信頼度の向上に資するのではないかと考えます。

12ページにあります、⑪の監査役会とか監査委員会の活動状況の報告というのも重要と考えております。この開示により、リスクに対するモニタリグ機能が適切に果たせているかを理解できるからです。必要な情報といたしましては、委員会の具体的な活動状況ということで、先ほどと同じですが、そのほかに必要と考えておりますのが、金融庁の企業会計審議会の監査部会で議論されている監査報告書の透明化に対する監査役会等の考え方です。これを開示する適切な場所になるのではないかと思っております。

また、既に有報に掲載の監査報酬の内容とか外部監査委員の指名方針の考え方もこの活動状況に含め、一覧性のある開示情報としてはどうかと考えています。

海外では、ご存じのように、英国では監査委員会の報告書というのがあります。ただ、英国だけではなく、その活動状況の報告は広く行われていると認識しています。13ページにシーメンス社の例を載せています。「Audit Committee met six times」とありますが、6回開催されて、どういうことをやったかなど、監査委員会の報告書ではありませんが、監査委員会の活動状況を開示しています。下の方にも下線を引いていますが、key audit mattersについても議論したということも書いていらっしゃるということです。

次のページ、⑫の役員報酬の開示のところでございます。役員報酬は、投資家としては個々人の報酬額を知りたいというよりも、中期経営計画の達成度への確信度を高めるに当たって、中期的な業績と連動した役員報酬がうまく機能しているかということを確認する点で非常に重要と考えています。

必要となる情報は3つあると思っています。①が役員報酬の考え方、②が役員報酬体系、③が役員報酬額です。①の役員報酬の考え方に関しては、先ほどの他の委員会と同様、報酬委員会の具体的活動や考え方の開示があれば考え方を示せると考えています。

②の役員報酬体系は非常に重要と思っています。業績や企業価値に連動しているKPIとKPIの目標値の開示、KPIと業績連動給与への連動度合いの開示、目標値を指名委員会がaccountableな形で調整するということもよくありますので、それがどの程度なのかというようなことの開示も必要と考えております。

③の役員報酬の額の開示ですが、今までの議論でお分かりかもしれませんが、役員報酬体系が詳細に開示されるという中で、それが機能しているかどうかを確認することは非常に重要だと思います。この点において、現状の総額開示だけではなく、一定の個別開示の検討も必要と考えています。ただ、日本の現在のガバナンスの状況とか、あるいは高額報酬が海外に比べてそれほど問題になっていないということを考えますと、当面は、全取締役の報酬の個別開示までではなく、代表取締役やトップ経営者など、全体の業績に連動する報酬体系を持ってらっしゃる方の開示でいいのではないか、と思います。

役員報酬で必要となる情報の最後ですが、現在、役員報酬は1年分だけ開示されていますが、過去の報酬も開示されるとその変化率が分かるので、KPIとの比較が可能になると考えています。

海外の状況ですが、例えばグローバルの機関投資家団体であるICGNは、「Guidance on Executive Director Remuneration」というのを発行しておりまして、私が申し上げたように役員報酬のKPIの開示や役員報酬の透明性を重視していることが分かります。

海外でも、ご存じのように、役員報酬の開示は非常に重要と考えられており、米国、英国だけではなくて、ドイツとかあるいはフランスも含めて、役員報酬体系の開示、あと個別開示も広く行われていると認識しております。

下の方に、シーメンス社のアニュアルレポートから抜粋した例を書いていますが、役員報酬の体系と、その下の方に、役員報酬とひもづけられたKPI、そして100% of target、KPIの目標数値と実績が開示されているという状況です。

最後、16ページで、政策保有株式の開示について意見を申し上げます。政策保有株式の開示については、投資家がその状況を理解し、この議題に関して対話を行えるという状況が重要と考えております。ただ、このような環境整備のためには、開示の改善も必要と考えております。

ポイントを3つ挙げております。1つが、海外投資家の状況把握の促進ということです。私は海外投資家にたくさん友人がおりますが、話していて一番感じるのが、政策保有株はすごく問題であると彼らも思っているのですが、ただ、個社別の状況がよく分からないということがあります。これは当審議会の第1回目でも申し上げたのですが、有価証券報告書の英訳率が非常に低いということもあって、日本の投資家は個別企業ごとにどういう株を持っているかを理解できるのですが、海外投資家はそれさえ把握できないということが大きな問題だと思っています。ですから、有価証券報告書の英訳化の促進、これが一番望ましいとは思っていますが、それが難しい場合、既に英訳化率が高いコーポレート・ガバナンス報告書で政策保有株式の開示を行うというのがよいのではないかと思っています。

2つ目の開示方法の変更は、政策保有株式の異動状況の把握ということです。現状、年度ごとに開示されているので各年度の異動状況が非常に分かりにくい状況になっておりますので、これを保有株式ごとに開示するということがよいのではないかと思っています。

最後の3つ目ですが、取締役会、これは社外取締役の方を含んでの検証の開示ということです。投資家の不安の1つは、ガバナンス・コードで定められております毎年の取締役会の検証が本当に行われているかどうかについて確信が持てないというところにあると考えております。ですから、社外取締役も含んだ取締役会でどのように検証されたのかを開示していただく、これが投資家と企業が議論をするにあたって非常に有効ではないかと考えております。

ただし、先ほど申し上げましたように、現状、取締役会の活動状況を報告する場所がないということになっております。開示方法を2つほど挙げます。

1つ目が、現状、唯一の取締役会の活動状況を伝える媒体である取締役会評価に政策保有株式の評価を入れていく。どういうことを点検したかということもあると思うので、そういうことを入れていただくというのが1つかと思っています。

もう一つが、先ほど申し上げましたように、日本でも海外と同様に、取締役会の活動状況の報告の箇所等を設置し、その中で、取締役会としていつどのように政策保有株式についてapproveしたかということを開示していただくということです。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして三瓶委員から、「投資家側が必要とするガバナンス情報」についてご説明をいただきます。資料4を提出いただいております。

三瓶さん、よろしくお願いいたします。

【三瓶委員】

よろしくお願いします。

委員の方は、資料4と、もう一つお手元に別冊資料、「対外秘」というのがあると思います。この両方を並べてご用意いただけますでしょうか。

では、資料4の方からご説明させていただきます。カバーしているのは、政策保有株式の開示と役員報酬の開示、有報とコーポレート・ガバナンス報告書の関係です。

開いていただきまして、2ページ目。いろんな論点があるのですが、その前に、企業情報開示に求める三原則、これは私の三原則ですが、私が今まで長いことこの業界にいる中で学んできたことですから、広く業界に浸透している三原則だと思います。

それは、企業価値評価をする場合に必要な情報として、「透明性」、「比較可能性」、「予見可能性」。この3つということです。ですからこれ以外の理由で、ただ単に知りたいとか興味本位でということではないです。目的があるということです。

透明性は、ここに書いてあるとおり、検証可能性ということが大事です。比較可能性は、時系列比較、または比較対象会社との横比較などの相対比較です。予見可能性というのは、今の状況を知るだけではなくて、それが将来どうなっていくかということで企業価値を評価しますから、そういう意味で、将来の可能性、不確実性について評価できる、一定程度の蓋然性を持って見通すことができるのかどうかということです。将来の価値を盛り込むことができるのか、いや、将来のことは全く分からないから、それは評価に入れないでおこう、こういった判断につながります。非常に大事です。

では、最初の観点として、政策保有株式の開示についてお話ししたいと思います。4ページ目をお願いします。

ここに掲げているのが、コーポレートガバナンス・コードに書かれている原則1-4です。まずこれを読んだだけで、私にとって引っかかる点が2つあります。赤い下線をしている[1]、「主要な政策保有について」、こう書いてあります。では、主要でない政策保有の場合はどうするんだと。主要でないから検証しなくていいか。いや、主要でない政策というのは何だということですね。ですから、ここの時点で矛盾があって、では検証するまでもなく解消するということではないかと思います。

また、その後の方で、下線をしている[2]ですけども、「リターンとリスクを踏まえた」、ちょっとこれは私見ですけど、ミスリーディングではないかなという気がします。というのは、リターン、リスクで株を評価するというのは、純投資の考え方です。実際は、政策であれば株価が上がるということを見込んでいるのではなくて、別の何らかの目的があるということだと思います。そういうことであると、その目的のために株を保有すること、それからバランスシートにどれだけの負担を与えるか、株は動きますから、リスク性資産です。借入れの担保にするときには5割掛けというぐらいですよね。ですから、それだけどうなるか分からないものと見られるわけです。そこに重要な株主資本を充てて支えるということで、相当な株主資本の無駄遣いになり得る状況だということで、政策の意図というのを明確にすべきであると思います。

そのことをもう少し具体的に示したのが、次のページ、5ページです。先ほどゴールドマン・サックス様のご説明の中でも、株主資本コストについての意識が低いということがありましたが、そのとおり、資本コスト意識の欠如ということではないかと思います。

ここで示しているX社とY社の左右の例は、X社は、よく言われる現金保有が過大で、非常に非効率ではないかという例です。それについて、例えば単純に総資産に占める割合が40%ありますと。そうすると事業資産は一体全体どのぐらいかということですね。非常に少ない事業資産しかないということ。それと、それを支えるのが株主資本、または純資産であるとすると、相当なコストをかけて現預金等を持っているということで、これは逆ザヤ関係ですね。

ですから、それがおかしいという例ですが、右側のY社の例というのは、現預金はこの場合、20%ですが、投資有価証券、いわゆる政策保有株式が17%ありますと。そうすると、これを足して37%ですから、こちらの会社もいわゆる現預金、ちょっと拡大した考え方の現預金同等物の保有が相当大きいですということです。

ただしもっと悪いのは、先ほど申し上げたとおり、投資有価証券というのはリスク性資産です。それを純資産で支えていると。左の会社よりももっと少ない純資産で支えて、負債も支えながらですから、本来、成り立っていない。こういう無駄遣いが行われていて、これがまずそもそもの問題ですということです。

6ページ目、そもそもの問題②ということで、今度は別の観点ですけれども、これはあるA社について、A社が保有しているいわゆる政策保有株式についての話です。A社がE社とF社の株式を保有しています。一方で、持ち合い関係にありまして、E社はA社の株式を保有しています。F社もA社の株式を保有しています。ところが、このときにA社がE・F社の株を保有する保有の仕方は、有報に書いてある特定投資株式ではなくて、みなし保有株式です。みなし保有ということは、退職給付信託において保有されていて、議決権だけ母体企業が持っているという状況です。

一見すると、どのくらい重要なのかというのはありますけれども、これはみなし保有の中での第1位と第2位なんですね。しかも退職給付信託に占める比率というのが非常に大きいです。1銘柄でこれだけあるということはどんなポートフォリオだという感じがします。そうすると、受託者責任というのを果たしているのかという疑問がわいてきます。

実は今日の午前中も、この会社じゃないですけど、別の会社とこういう話をしましたが、そういう認識は今までなかったようで、答えをいただくために、ちょっと宿題として、実態のご確認をしていただいています。

7ページに行きます。情報開示についての問題意識として、今までのこういったことを踏まえて、やはり透明性、比較可能性、予見可能性のいずれも欠如していると言わざるを得ないのではないかということです。先ほど井口委員にもご説明いただきましたけれども、有報上で特定投資株式としてここに書いてあるとおり、資本金額の1%を超えるもの、または上位30銘柄というリストがありますが、それだけでは、それが異動したときに、昨年までは30位以内にあったけれども、今年は30位から落ちた会社について、それは売却したのか、それとも時価が低下したのか分からないというような状況です。

そういうことからして、ここでの問題点というのは、まずそういった状況が株主総会前に議決権行使を考える段階で分かるかというと、その段階では、通常有報が出てくるタイミングからすると、前期、1年前の有報に依存せざるを得ないというのが現状です。

それと、先ほどの原則1-4は、「毎年、取締役会で合理性を検証し」、「具体的な説明を行うべきである」となっていて、コンプライをしている会社は非常に多いんですが、本当にそういった具体的な説明があるかというと、そうは感じられません。

3つ目の問題点で、いわゆる政策保有株式について、保有させている側の問題、これは先ほどのページでも持ち上がりましたけども、そういう関係があります。これについて、どうほぐしていくのか。

4つ目の問題として、先ほど2で申し上げたとおり、原則1-4の具体的な説明が行われているかどうか、検証がされているかどうかがあまり定かではない。ということは、同じコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11③、取締役会の実効性評価ですが、その実効性評価で漏れているのではないかと。ちゃんとやっていないということが確認されていない、またちゃんとやっているのであれば、ちゃんとやっている、どのようにということが説明されるべきではないかということです。

こういった問題意識について、幾つかの解決案、またはこういうふうにしてほしいというのがあります。

案1として書いているのは、特定投資株式、みなし保有株式全銘柄について開示をしていただく。

または、あわせてというのでもいいんですけども、案2は、保有状況の異動を開示していただく。

案3は、これは持ち合い関係にある場合が多いわけですが、そのときに今どちらがどのように、先ほどの6ページで見た、どちらがどのように持っているかというのは、要するに全て反対側(持ち合いの相手側)の有報も見ながら確認しなければいけません。これは先ほど30銘柄よりもっと、全銘柄出してくれということを言いましたけど、全銘柄についてそれをやるというのは、とんでもなく手間暇がかかります。ですから、その銘柄を開示するときに、反対側の保有状況も開示していただく。

案4は、保有させている側の問題について明らかにするために、場合によっては、原則1-7にある関連当事者間の取引ということで説明していただくこともいいのではないか。

ここで、別冊をお開きください。具体的に有報のどんな部分を見てそういうふうになるのかということをご説明します。

別冊の1ページ目ですが、ここに実際の例があります。これは2013年3月末と2014年3月末、2015年3月末の政策保有の状況、有報からのコピーがありますが、ここで赤枠で示した企業について、2014年3月末の決算の段階で企業と話をして、「この会社さんは2013年には載っていたけど2014年には載っていないので、解消されたんですか。」と聞きました。そうしたら、「そうです。」という答えです。ところが1年経って、さらに解消が進んでいるのかなと思って確認したら、また浮上しています。2年前と全く同じ株数です。ですから、これはどういうことかと、解消したと言ったのはどういうことかということで確認すると、「1年前の説明が間違っていました。」と。この1年間かかって間違えを確認するという手間をとらなきゃいけないという状況は、とてもじゃないですけど無駄ですよね。

そして、2つ目の例、この別冊の2ページ目ですが、「当社」と書いた会社の特定投資株式の一覧です。下に書いている表がそうです。それと、その上に書いてあるのは、コーポレート・ガバナンスの状況等として有報に書いてある、社外の役員の方の属性の説明です。ここで、「当社」が保有しているB社についての話です。

「当社」においてはB社の保有は10位になっています。ところが、社外監査役としてB社の代表取締役会長が就任しています。この段階で、独立性等の心配があります。独立であるのであれば、政策保有ではないのかなと思うと、政策保有として書いてある。この矛盾を同じ有報の中で出している、ちょっと言葉は悪いんですけど、わきの甘さというか、保有目的が本当にここに書いてあるとおりなのかどうかというのは甚だ疑わしいです。この会社と直接やりとりしています。それで、困った顔をしていました。

ここで、丁寧にどれだけ持っているかという株数と保有比率を開示していただいています。ですから、この有報を準備した段階でそれを確認できているということですね。

次のページになりますが、3ページ目、今、話題になっているB社、反対側の会社ですね。B社から見たときに、「当社」はどのぐらいかというと、2位の保有状況です。それで、その表の下に書きましたけれども、私たちが知りたいのは、この一件一件、両社の有報を照らし合わせるのではなくて、最初から「当社」のリストを見ると、B社については反対はこれだけ持っているということが分かることですね。これを同時に開示していただくと、話はもう少し早く進むというところです。

同様な例で申し訳ありませんが、4ページ目、こちらの「当社」について、また「当社」とC社の関係ですが、社外取締役の誰々さんは、C社の代表取締役会長であり、当社の社外取締役になっていただいていると。ここで「通常の会社間の取引はある」と、社外取締役として独立性があり、利益相反の懸念がないとの説明があります。一方で、このリストの中では「相互の事業拡大や取引関係の強化のため」という政策になっている。政策なのか、通常の会社間の取引なのかよく分かりません。

こちらでも保有株数について、また保有比率については有報開示の時点で把握されて、開示していただいているので、その姿勢はとてもありがたいとは思います。それで次のページでは、また双方の持ち合い関係ということが分かるわけですが、こういったことを最初から表の中で説明していただくことがいいだろうと思います。

ここで一旦本体の資料4に戻っていただいて、9ページになりますが、そういう意味では、政策保有株式をめぐるさまざまな矛盾・懸念というところなんですが、こういったことを今ここに挙げた会社全部、それぞれの会社とやりとりをしていますが、個別面談においてこういったことをお聞きしたときに、合理的な説明で打ち返されたことは一回もありません。“よく分からないので調べ直す”とか、または、“いや、実はそのとおりだ”と、“申し訳ないんだけどいろんなしがらみがあって、すぐには解消しないけれども、これは問題なので持ち帰らせていただく”というような状況です。

ここに10個挙げましたけども、いろんなことが、先ほどの「主要な」と「主要でない」というのが政策保有にあるのかとか、政策保有なのに純投資のような方針が示されているとか、それを純投資にもしくらがえしたとすれば、今度はますます保有意義の説明は難しくなるはずです。ですから、そうしていただいても全く逃げ道にはならないと思いますが、その他、ここにいろいろ書きました。そんな状況で、すぱっと答えていただいたことはないという状況です。

10ページに、ご参考で、これは以前、投資家フォーラムがまとめたものですが、金融庁のフォローアップ会議でも提出させていただいています。おそらく政策保有目的であり得ると思われるものは、戦略的資本提携ぐらいかなと思います。ただ、戦略的資本提携であれば、有報の「経営上の重要な契約等」というところに書かれるはずです。または当事者の取引の関係ということで開示があることで、その内容はもっと明確になるはずです。

11ページ目は、取締役会の実効性についてです。4-11③には、こんなことが書いてあります。これからすると、先ほど申し上げましたけれども、実効性評価の中で重要な政策保有については見直していただくのがいいのかなと思います。ただ、実効性評価について、日本ではまだ始まったばかりなので、多くのコンサル等、海外の先例を参考に実効性評価をしている場合が多いです。そうすると、アンケートの項目等を海外に倣うわけですが、次のページ、12、13ページにありますとおり、これが悪いと言っているわけではないんですが、積極的にこの評価項目を開示していただいている会社さんですから、すばらしい会社なんですが、ここのどこを見ても今の政策保有に関する原則1-4について、レビューをちゃんとしているかどうかが読み取れる場所はないです。ですから、政策保有がこれほど問題になっていない海外から輸入した取締役会の実効性評価のアンケート項目というのは、ちょっと足りない部分があるのではないかなと思います。

次に役員報酬についてです。15ページをご覧ください。こちらについても役員報酬の開示について、問題意識としてはやはり「透明性」、「比較可能性」、「予見可能性」がまだ足りていないということではないかと思います。これは先ほど井口委員も随分ご説明を分かりやすくしていただいたんですけれども、やはり長期的な企業価値の最大化、または企業価値を棄損から守り保全するという大事な目的を果たしているかどうか、それでそれをやっていただいているので、それに対しての報酬がどのぐらいが妥当かということを見ていくのに重要な情報だと思います。

そういう意味では、報酬体系、どういう設計になっているのか、インセンティブのKPI、また大事なのはその達成度、先ほどシーメンスでしたっけね、アチーブメント・レートみたいなものが出ていました。どのぐらい達成しているのかと。ああいった評価というのはとても大事だと思います。これが長期投資においての予見可能性を助けると思います。

ここでは、さらに先ほど欧米の例をたくさん見せていただきましたが、欧米でも何度も見直しがされています。その見直しができるのはなぜかというと、達成度と実際の支払い、また会社がそのKPIの達成度を例えば100%と評価しても、株主がこれでは100%ではないだろうと、たまたまKPIが達成しやすいKPIだったとか、そういったものがありながら、見直しがどんどん進んでいます。それで株主と実際の達成度のすり合わせが行われているから、そもそもの報酬体系の見直しがどんどん行われているということです。

そういう意味で、具体的に言うと、報酬の総額についてはこれまでも開示されていますが、その情報、それを決議した株主総会の年月、特に業績連動賞与についての支給基準、KPIを含むと、長期インセンティブの付与基準、KPIを含むといったことをぜひ開示の対象としていただきたいということです。

こちらは、ここからも先ほどの別冊資料の7ページに幾つかの例があります。7ページには、日本では極めて珍しくグラフィックに図で示した報酬体系があります。非常に分かりやすいですね。これはいい例です。

そして、8ページに具体的な支給総額の算式があります。ですからこれも分かりやすいです。インプットする項目も分かりますから、自分たちで計算できます。また、丁寧に個別の支給額についてもポイント制でそれぞれの役員の方のランクに応じて書かれているので、分かります。

9ページに、こういった報酬体系はいつ、どこでどう決められたのかということで、内容と、これは報酬の限度額ですけども、限度額と、それがいつの株主総会で決まったかというのがあります。ここまでは非常にいい例として挙げています。

10ページ目ですが、その会社の実際の支払い、支給がどうだったかということですが、達成度というのは書いていないですね。書いていないので、私が計算しました。そうすると、賞与についてはまず計算どおりできた賞与が枠に対して59.3%です。ところが、計算では出てこない特別賞与というのを支給しているので、それを載せると上限枠の98.2%になります。この辺が本当の達成度は何なんだというのが分からないところです。

11ページにそのサマリーというか概要がありますけれども、よくよく見ると、月例報酬の方は上限に対して支払額は69%なんです。ただ、賞与はそんなにいい、史上最高益を更新したので、特別賞与を出したいぐらいよかったにもかかわらず、計算から来るのは59%なんです。そもそもこのバランスはいいのかということがあります。おそらくそのバランスがよろしくないという感じがあるので、特別賞与を上乗せということになったんだろうと。なので、結果について、それはいかんとは思いませんが、透明性というのと予見可能性ということで、分かりやすいかというと、ちょっとそこまでは分かりやすくないなということですね。

それで、資料4に戻っていただいて、最後に有報とコーポレート・ガバナンス報告書の関係です。資料4の17ページですが、ここで一覧表で、有報とコーポレート・ガバナンス報告書のどこがどう微妙に違うのか、これも先ほどの井口委員が同様のことをしていただきましたが、これはどちらかというと私がぱっと調べたいことを調べるときに、どちらを頼りにするかというところです。

役員の情報を知るときに、有報は社内役員、社外役員全部のリストがあります。コーポレート・ガバナンス報告書は、社外の役員の方の情報は非常にたくさんあります。選任理由、独立役員の表示、こういったものも表になっているのでわ分かりやすいです。

ただ、企業統治全体の体制についての体系的な説明、文章として読みやすいのは有報の方です。コーポレート・ガバナンス報告書の方は、項目はありますけれども、ばらばらにというか、なっているので、若干見にくい感じはあります。

ただ、委員会について、有報の場合、説明があるときは助かりますが、コーポレート・ガバナンス報告書では必ず表形式で、社内・社外の方の人数、委員長はどちらの属性かということが書いてあるので、すぐに分かります。

それと、実効性の評価については、コーポレート・ガバナンス報告書ではその項目がありますので、書いてありますね。

あと、株主との対話というのは大したあれではないと思われるかもしれませんが、原則5-1で、どの方が担当する、または社外取締役もその対話の相手になる余地があるのかとかいったことも明確に書いてあるのはコーポレート・ガバナンス報告書です。それ以外、ここに書いてあるような責任限定契約とか役員の報酬等、特定投資株式、会計監査の状況等は有報にその特定の項目があって、そこで見つけることができます。

ここで思ったのは、有報の中で「関連当事者情報」というのだけ少し離れてセグメント情報の後ろの方にあるんですね。随分遠いところにあります。ですから、これは本来、利害関係について明確にしているところですから、有報のコーポレート・ガバナンスのセクションにあっていいのではないかと思います。

コーポレート・ガバナンス報告書について、有報とうまく一体化のようなことができないかと、効率化できないかというような議論もあると思うんですが、あえてコーポレート・ガバナンス報告書の固有の利便性ということを18ページに書かせていただきました。それは、自由度、それと更新頻度です。対話の成果の反映が非常に速いです。年に1回ということではなくて、いつでも更新できます。

それと今、これは東証のシステムの絵を貼り付けましたけども、うまくコーポレート・ガバナンス報告書の開示項目について集計ができるようになっています。これはとても便利なので、今後、何らかの変更があるとしても、この利便性は維持していただきたいと思います。

そして最後ですが、19ページ。このコーポレート・ガバナンス報告書をいかにうまくエンゲージメントの成果または対話の中で使えているかということなんですが、ここに掲げたI社については、取締役CFOとの面談で、ここに書いてあるようなことを申し上げました。

独立性の判断が、取引が僅少というような説明で、よく分からないので、何%未満か書いてくれるとすぐに判断できると。それと、独立性があると言い切っているなら、なぜ独立役員指定がないのかと。出せるんだったら独立役員届出を出してほしいという話をしました。

そうしたら、これは私が経験した中でも記録ですけれども、午前中にミーティングをして、午後にはガバナンス報告書を変更しましたと、実際、私が見られるのは翌日ですけど、翌日に確認してくださいということでした。

その結果、この会社の役員の再任議案がそれまで低かったんですね。60%台だったのが90%台まで上がりました。これは対話の1つの成果だと思います。当然、私たちも賛成しました。

J社について、こちらはやはりそのコーポレート・ガバナンスの全体の取組状況について議論しましたが、コーポレート・ガバナンス報告書の更新頻度が自由なのはいいんですけれども、どこが更新されているか分からないことがよくあるということで、それを明示していただけるとありがたいなという話と、あとは取締役会の実効性評価には、“できています”ということだけではなくて、課題を書いてほしいと。そういったことを申し上げました。

また、先ほど申し上げたとおり、委員会の仕組みというのが書かれていますが、それについて、この比率はどうなんだということを申し上げた結果、それも検討していただきました。

やはりこれは半年ぐらいの間にいろんな検討を行われて変更がありましたけれども、全てについて対応していただきました。ですから、有報で変更が確認できるよりもっと前に、コーポレート・ガバナンス報告書で指名諮問委員会の構成の変更等が把握できています。ということで、コーポレート・ガバナンス報告書にはそれなりの自由度・柔軟性があって、それは非常に有用であるということを申し上げたいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、皆様方から今日のテーマについてご意見をお出しいただく前に、今お話をいただいた方々へのご質問があれば、少しだけ時間をとって、出していただきたいと思います。ファーガソンさん、清水さん、そして井口委員、三瓶委員のご説明についての質問がありましたらお願いします。意見はまた後ほどお願いします。

上柳委員、川島委員、石原委員の順で、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

ありがとうございます。

ゴールドマン・サックスの方々に2点伺いたいのですけれども、資料の8ページの役員報酬について、業績インセンティブ報酬の割合を開示事項としてはどうかというご示唆だと思うのですけれども、インセンティブ報酬の割合の問題と、役員報酬額総額の問題があると思うのですけれども、ご趣旨は、総額はもちろん開示すべきで、加えてインセンティブ報酬の割合というニュアンスなのか、それとも総額はさておきインセンティブ報酬の割合の方を優先してはどうかというサジェスチョンなのか、教えていただきたいのが1点です。

それからもう一点は、安定株主比率のところで、お話の中に安定株主がたくさんいるということを知っていれば投資をしないという傾向がある、あるいはそういう方針をとっておられるというようなご発言があったのですが、これは知らなければ投資をしちゃうということなんでしょうか。そうすると開示をしない方が得だみたいな話になってしまうので、むしろ安定株主の比率が少ない、あるいは安定株主の合理性が説明されているところに投資しようとしているというニュアンスなんでしょうか。もし特定できるようであれば、教えてください。

以上です。

【ゴールドマン・サックス証券株式会社 清水様】

1点目のところに関しましては、総額ももちろん大事なんですけども、ここでの意図は、やはり企業価値の向上に対して寄与するようなインセンティブが与えられているかどうか、こちらの方がより重要だと我々は思っております。

そのインセンティブが、やはり指揮系統の中で一番上の人間がそういった意識を持っていれば、会社全体がそういった意識の中で物が動くということになってきますので、やはりこのインセンティブ構造が一番大事だと我々は思っております。

2点目の、安定株主のところなんですけども、直近もあったような話なんですが、財団がありますと、これがどういう議決権行使をするのかふだんは分からないと。ただ、ふたをあけてみたら、これはもう実質的な安定株主だったんじゃないかというようなことも起こりますし、海外投資家としては、ふたをあけてみたら実はこうだったというのはちょっとずっこけてしまうというところがございますので、やはり最初から純投資というか、そういったマインドで自分たちと同じ目線を持っている人がどれぐらいいて、どれぐらいこの企業がガバナンスをきかせられるかというところなんですけども、ということは、やはり最初の投資の判断に入れたいと思っていますので、そういった意味での開示があればいいのかなと思っております。

【神田座長】

よろしゅうございますか。

それでは、川島委員、どうぞ。

【川島委員】

今日は皆様、ご説明いただきましてありがとうございました。

私は、ゴールドマン・サックス証券のお二方に、役員報酬の個別開示について、2点質問をさせていただきます。

1点目は、日本において現行1億円以上という区切りがあります。このようなルールは妥当かどうか、あるいは見直しが必要であれば、その内容についてお教えいただきたいと思います。

2つ目ですが、米国、英国では、全取締役の報酬が開示されておりますが、この情報を実際に利用される立場からご覧になって、全員の開示が必要なのか、そうではなく、日本のように一定額以上に限定する、あるいは例えば会長、社長に限定するなどということでもよいのか否か、その点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

以上です。

【ゴールドマン・サックス証券株式会社 清水様】

1億という数字にこだわるつもりは我々は本当に全くございませんので、逆に1億という数字がそこにあることで、そこを超えないようなインセンティブが働いたりとかそういったことになってしまうと本末転倒でございますので、金額は正直、のけてもいいんじゃないかというぐらいに我々は思っておりまして、やはりインセンティブが正しく働いているかどうかというところかと思います。

では、どこまでその枠を広げるかというところも、それに絡むんですけども、その人に対するインセンティブ構造が本当にその会社全体にとっての企業価値向上のマインドに寄与する人に限定していいんじゃないかと思っております。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、石原委員、どうぞ。

【石原委員】

ゴールドマン・サックスさんに簡単なご質問です。

8ページのところに、海外投資家の不満を解消するための開示情報と開示方法案ということで、一覧化されていますけれども、特にこの一番上の株主資本コストの認識であるとか、安定株主比率と書かれていますが、これらは海外ではやはり常識的に開示されているものなのでしょうか。

【ゴールドマン・サックス証券株式会社 清水様】

そういった開示は特にないと認識しております。ここであえて入れているのは、特にアメリカの場合というのは、そういった開示がなくてもROEというのを本当に一番大事に考えて、逆に言うと、突っ走り過ぎてしまうというぐらいなのがアメリカのカルチャーでございますので、日本の場合、やはりそこの意識が希薄過ぎるということで、あえて開示をするというところをここに載せております。

安定株主のところも、政策保有株というカルチャーというのはある意味、日本特有、昔のドイツもそうだったんですけども、今は日本と幾つかの国ぐらいなのかなと思っておりますので、これも日本固有の話かと思います。

【神田座長】

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、時間の関係もありますので、討議に移らせていただきたいと思います。これまで時間が不足して会議が長引きまして申し訳ありませんでしたけれども、今日もなかなか厳しいかなという感じです。皆様方にはあらかじめ議事進行上、お1人当たり3分程度というむちゃなお願いをしているかと思いますが、今日ご出席の皆様方は全員で23名いらっしゃいますので、実は2分程度でないと終わらないという状況ではございます。ただ、もちろん多くの方々からご意見をぜひいただきたいと思いますので、早口でお願いします。

なお、中熊委員より意見書の提出がございますので、席上に配付させていただいております。

皆様方からご意見をいただきたい論点は、資料1-1、事務局から説明をしていただいた最初の資料の10枚目から12枚目、これらの論点についてご意見、ご発言をいただければありがたく存じます。

それでは、上柳委員、石原委員の順でお願いできますでしょうか。上柳委員からどうぞ。

【上柳委員】

ありがとうございます。短くします。

政策保有株式については、基本的には縮減というのが基本的な態度としてとるべきだと思います。とりわけいわゆる持ち合いになっている部分についてはそうだと思っていますが、いきなり縮減というのは難しくても、少なくとも開示をするということが必要で、今日も事務局の資料の5ページに、中央値で事業会社についてですけれども、62社というような数字がありますけれども、これを考えればやっぱり数十社については開示されるべきであると思います。

役員報酬について、これも個別開示を金額にかかわらずするというのが基本的ではないかと思います。ただ、役員の方の報酬が開示されると、例えば話が大分飛びますけれども、電話とか訪問でいろんなセールスが来るとかいう苦情をよく伺ったりしますけども、これはまた別の問題で、不招請勧誘の禁止とかで対処すべきであると思います。きちんと個別開示するというカルチャーになるべきだと思います。

有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書との関係ですけれども、私は一部分は内容に重複があって構わない、それぞれ分かりやすければよいと思っております。けれども、とりわけ有価証券報告書については、法定責任がありますので、この有価証券報告書の開示水準が下がるようなことは、これは国際的に日本の開示水準が後退すると受け取られる危険性もあるということも考慮して、慎重であるべきだと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

では、石原委員、どうぞ。

【石原委員】

ありがとうございます。

今回の検討の目的をまず確認させていただくとするならば、それは株主、投資家との建設的な対話を促進するという観点であります。仮に政策保有株式は保有すべきではないと、そういう認識に立った議論をするのであれば、それはそもそも建設的な対話を否定しているようなものではないかと考えています。すなわち、企業の投資対象資産に制限を設ける、会社法になるのでしょうか、そういった議論になるので、情報開示の議論ではないと考えています。

出資政策の観点からいいますと、海外で政策保有株式の議論をあまり聞かないのは、海外ではマジョリティーの取得による支配ということが非常に重要視されているからと認識しております。

一方で、日本の場合は少なくともこれまで比較的、緩やかな関係の中で、バリューチェーンの関係者間でリスクとリターンを分け合うような、そういうモデルで経済成長してきたという側面はあると認識しております。これは社会的に貧富の格差が少ないとか、サラリーマン社長が多いとか、企業は株主だけのものではないとか、単に企業社会にとどまらず、少なくともこれまでにおいては日本の社会に幅広く根付いてきた価値観ではないかということであります。

しかしながら、今、日本自身が人口減少や需要停滞、国力の相対的な低下に直面する中で、企業社会のあり方そのものもこれまでどおりでいいというわけでは当然ないということであります。見直すべきものは見直す。しかし、大切な強みは捨ててはいけない。この取捨選択こそが問われているということだと思います。

そういう認識に立って、論点の2点ですが、まず政策保有株式であります。私、結論から申し上げますと、ミニマムスタンダードとしての制度開示としては、現在の開示レベルで必要十分だと考えています。あとは投資判断基準として、これに重きを置かれる投資家の皆さんが制度開示情報を切り口に、企業との個別対話の中で、保有目的や変動の理由、これらに関する相互理解を深めた上で投資判断をされればいいのだろうと考えます。納得感ある対話が行われる中で、保有意義のない株式保有は当然に解消していくと思います。事実として、おそらく政策保有株式は減少傾向にあるだろうと思っています。そういうまさに建設的な道筋こそが重要であって、事実として多様な、一口に政策保有株式といっても多様な形態があるものを一律に悪と決めつけて制度開示の議論を行うことは、決して有益とは思っておりません。

それから、2点目の論点、役員報酬の議論であります。企業価値向上に向けた役員報酬の算定方法に関する情報、特に中長期のインセンティブに関する情報は価値があるだろうと思います。建設的対話の中で、開示以前の問題として、どのような報酬体系がいいのかといった点について、よく議論されるということは、非常に有意義だと思います。

しかしながら、役員報酬の個人別の開示には、プライバシーの観点も含めて反対であります。個人別報酬の情報をどのように投資判断に活用するのか、正直よくイメージができません。過去に業績に対して報酬が高過ぎるといった理由でこれに反対といったような議決行動があったというのは、海外を含めて何となく記憶しておりますけれども、中長期投資家の皆さんが、具体的な投資判断の中で、このような個別報酬の情報をどのように、どの程度の重要性を持って活用されるのか、今後の議論のためにも、その辺については、ぜひより詳細にご説明いただけないかと思うところであります。

以上であります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それで、今度は皆様方の左側に行きたいのですけれども、早めに札を立てていただきました水口委員、柳澤委員、高濱委員にお願いしたいと思います。

水口委員、どうぞ。

【水口委員】

ありがとうございます。

第1点目では、ガバナンス情報の提供方法の全般についての意見です。有価証券報告書において提供されるガバナンス情報といたしましては、経営理念とか経営戦略、経営計画やKPIなどとの関連付けができる開示が有用であると考えます。

具体的には、中長期的な視点からも、企業を取り巻く経営環境やリスクを認識し、選別的にリスクをとって、効率的かつ効果的に資本配賦をして、財務基盤を維持しながらも、持続的な経済価値向上と資本コストを上回る資本効率の向上を視野に入れる経営戦略を立てて、その履行に向けていかに事業ポートフォリオの見直しや先行投資を行っていくかなどの方針にかかわる非財務の情報が、有価証券報告書において開示されることを期待します。

さらに、前述したような非財務情報と関連付けられる形で、有価証券報告書のガバナンス情報の有用性の向上に向けて、取締役会の活動状況や役員報酬の開示の充実などを望むところです。

2点目は、取締役会の活動状況についての開示に絞った意見です。前述したような非財務情報と関連付けて、企業の許容するリスクとは何か、また、経営戦略の妥当性はどうか、経営戦略の履行に向けた方針が明確に定められているか、それから、事業ポートフォリオの見直しのプロセスが実効的なものとして機能し、さまざまな施策が戦略的・計画的に実行されているかなどの観点を含めて、企業経営の基本となる議題について取締役会で議論されることが想定されます。

取締役会のモニタリング能力についての理解をさらに深めるといった観点から、取締役会に付議された企業経営の基本となる議題と、それを受けた取締役会の考え方の開示は有用だと思います。

3点目、役員報酬に係る開示に絞った意見です。役員報酬体系の仕組みを開示の対象にするのに加えて、役職などを基準として、KPIの達成度合いを含めた貢献度の理解に資する内容を目指すといった観点から、役員報酬の個別開示を求めるのが妥当だろうと思います。

経営報酬体系は、経営理念、戦略目的と整合的な仕組みであって、貢献度合いに見合った適正な水準であることが肝要であると考えます。経営報酬体系に組み込まれたKPIや、その他の内容やその構成のあり方を踏まえて、報酬体系が短期的、また長期的な戦略目的にかかわるKPIとどの程度連動しているのか、KPIの達成度合いはどうかなどについて、理解が深まる開示が有用だと思います。

このように、経営理念とか経営目的と整合的な報酬体系が適用されているか、有効なインセンティブとして機能しているか、また、基本に立ち返って、報酬体系が妥当であるかなどの理解に向けて有用な開示が行われることを期待します。

それから4点目、政策保有株式については、VaRなどで計測される株式にかかわる価格変動リスクなども勘案した形で、資本効率向上に向けて政策保有株式の削減が合理的であるといった整理がなされるケースも想定されるのではないかと思います。このような政策株式を継続的に保有するか否かの判断については、こうした定量的な観点も踏まえた開示が有用と思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。皆さん、いつもより早口でご発言いただき、ご協力に感謝します。

お隣の柳澤委員、どうぞ。

【柳澤委員】

発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。政策保有株式と役員報酬の論点について、コメントさせていただければと思います。

まず、政策保有株式の開示に関してですが、純投資と政策保有の区分について、明確に説明した上で、各銘柄の保有目的と効果をより具体的に記載すべきと考えます。

保有の合理性を評価するためには、検証の枠組みが開示されることが必要であり、検証に用いた指標や取締役会での議論の状況などが、有用な情報となります。また、政策保有株式の異動状況は、対応の進捗を見る上で必須の情報になりますので、前期と当期の株式数変化が把握しやすい記載の仕方に見直すことも考えられると思います。

なお、開示基準に満たない銘柄であっても、前期から異動がある場合には別途、異動明細表として取りまとめ、その理由も含めて開示することが望ましいと考えております。特に政策保有縮減の方針を掲げながらも、新規保有や買い増しを行った銘柄に対しては、判断理由を具体的に説明する必要があると考えます。なお、保有株式の縮減に向けて売却をしている場合には、解消のめどや時期を示すことで、進捗状況に対する理解が深まるものと思います。

対象銘柄の範囲についてですが、事務局資料5ページでお示しいただいたとおり、政策保有株式の銘柄数データを踏まえますと、現状で記載が求められている30銘柄ではカバー範囲として十分ではないというのが実状です。範囲の程度については議論が必要ですが、検討の方向性としては、開示すべき銘柄数の範囲を拡充し、政策保有の実態をより的確に把握できるようにしておくことが望ましいと考えております。

次に、役員報酬の開示に関してですが、報酬ミックスやKPIの達成度と反映の仕組みといった報酬プログラムの開示内容を充実させることが、経営戦略や中期経営計画の達成確度を判断する上で有用と考えております。

また、報酬決定プロセスにおいて、報酬委員会の実効性をチェックするためには、委員会の位置付けや権限の範囲、委員長を含む構成メンバーの属性、報酬決定の透明性や客観性に関する情報などについて開示されることが必要ではないかと思います。

役員報酬の個別開示については、現行の基準では報酬額を1億円未満に抑えようとする企業側の意向が働くため、業績貢献に見合う十分な報酬が支払われていない可能性や、優秀な人材確保の面でも影響が及んでいるように思います。開示基準の妥当性を改めて検証し、経営環境の変化なども考慮に入れて見直しを行うことや、経営トップから一定の役位までの報酬開示についても検討すべきではないかと思います。

報酬プログラムが実態として機能しているかをチェックするためには、実際に支払われた報酬額を把握する必要がありますので、一定の基準や範囲を定めて個別開示を促していくことが望ましいと考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、三菱商事の小林委員、大和証券の小林委員の順で、三菱商事の小林委員、まずどうぞ。

【小林建司委員】

政策保有株式について、実務の観点から申し上げたいと思います。

地域戦略とか、あるいはバリューチェーンの構築等々で、商社の立場で見てもパートナーシップをつくっていくというようなビジネスの手法がとられますので、政策保有というのは実際、企業の手法としてはよくあると考えています。

ただ、その目的について、具体的に有価証券報告書で書き込むというと、これは個別銘柄によってさまざまで、大体こんな形であるというような概略を書くことはできますけれども、その個別の銘柄について詳細に書くということは、煩雑な記述になると考えますので、むしろこれは投資家との対話の中で説明していくということが、実務的には妥当ではないかと思っております。

あと、効果ですけれども、個別の銘柄、あるいは個別の企業との具体的な取引金額であるとか利益というのは、これは守秘義務に該当しますので、実際それを有価証券報告書に書面上に記載するというのはなかなか難しいということになってくると思います。これも対話の中で、相手が求めているものが実際、何なのかということを分かった上で、きちんと対話していくと。具体的に金額を出すということではなくても対話は成立すると考えています。

前年度からの異動ということに関しては、投資家との対話でそれをことさら個別銘柄について聞かれるということはないんです。ただ、それを本当に投資家が必要であれば、それを開示することはやぶさかではないと考えます。実務上もさほどの労力がかかるような問題でもないと考えております。

あと、議決権行使の内容なんですけれども、実はこれは投資家との対話の中でほとんど話題になりません。政策保有という性質もあって、言わずもがなという事もあって聞いてこないんだとも思います。果たして事業会社にとって、この議決権行使の内容を記載することが本当に意味があるのかという気はしております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大和証券の小林委員、それから高濱委員の順で、小林委員、どうぞ。

【小林昭広委員】

私、2つあります。1つは、政策保有株式についてと、もう一つは、役員報酬の個別開示についてです。

1つ目の政策保有株式についてですけれども、今までのいろいろなお話とか資料を見て私が思うのは、すなわち投資家は効率性を伴ったものであるかということと、ガバナンスの空洞化になっていないかということを検証するために知りたい、と考えます。とすると、30銘柄では事務局のおつくりいただいた資料の5ページの平均で82.2銘柄ですか、これと比較して相当少ないなと思います。

一方、企業側のご負担はあろうかと思いますから、拡充の方向なんでしょうけども、例えばせめて82の半分以上で切りのいいところの数字が落としどころとしてあるのかなと考えました。

2つ目です。役員報酬の個別開示、1億円のことですけれども、1億円については、やはりロジックはないんでしょうということです。一方、何度もお話に出ておりますが、1億円のためにキャップになっているというのでは本末転倒です。投資家はゴシップ的に知りたいというのではなくて、開示された報酬プログラムがしっかりと行われているか、そういうことを検証したい、知りたいということであるのであれば、米国のようにトップ及び報酬上位5名等、数名でよいんじゃないかというのが私の意見でございます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、高濱委員、どうぞ。

【高濱委員】

ありがとうございます。

私の方からは、スライド12のガバナンス情報の提供方法に関する論点について、意見させていただきたいと思います。

まず1つ目は、年次報告である有価証券報告書と、随時更新されていくコーポレート・ガバナンス報告書というそれぞれの情報の内容をしっかりと確認をして、役割分担を考えていくべきであると考えています。

その際に、有価証券報告書はEDINET、コーポレート・ガバナンス報告書は東証のウェブに掲載され、離れたところにあるものですから、先ほど質問された総覧性といった議論が生じると思いますので、それぞれの電子データの置き場所のリンクなど、相互閲覧性を高めることによって、その辺の議論ももう少し深まるのではないかと考えます。

それから2つ目は、このガバナンスの議論をした際に、スライド10ページの下から2つ目にありますが、いわゆる有価証券報告書の提出時期がやはり議論になるのだろうと思っております。先ほど来の発言の中にもありましたが、1年前の情報を見てという議論というのは、やはりあまり得策ではないと考えられますので、総会前の開示ということについて、作成者の方々には非常に負担があるという理解はしていますが、やはりそこの運用についての議論を深めるべきではないかと思います。

それから1点、提言でございます。有価証券報告書に、コーポレート・ガバナンス報告書の方から何か情報を移すといった議論をするのであれば、いわゆる事実情報を移していくという方法があるのではないかと思います。具体的には、日付や数字等で開示されているもので、例えば株主総会の日付というもの、あるいは事前に出すのであれば、総会予定日なるものを提出することによって、より客観的な考察が行われる可能性があるのではないかと思っています。

この背景には、いわゆるコーポレートガバナンス・コードに対するコンプライといった内容に、結果として各社、やはり幅があって、例えば総会開催日も各社のコーポレート・ガバナンス報告書を見ているとコンプライ、あるいは熟考されたというエクスプレインになっているのですが、ふたをあけてみると、かなり重なっている事実があることなどから、やはりそういった定性情報開示から糸口があるのではないかと考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、おおむね名札をお立ていただいた順と思いますが、加藤委員、小畑委員、中野委員、和里田委員、太田委員、熊谷委員の順でお願いしたいと思います。

加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

ありがとうございます。3点、意見を述べさせていただきます。

1点目は、政策保有株式の話です。政策保有株式の開示を求める趣旨を再確認しておく必要があると思います。その目的として、会社資産の活用方法に関する開示という点が強調されることもあるようですが、それだけではないと思います。先ほどガバナンスの空洞化という話もありましたけれども、やはり政策保有されていることの開示も重要だと思います。そういった発想というものは、既にコーポレートガバナンス・コードにもあらわれていると思います。なぜかというと、政策保有株式に関する開示に関する原則1-4は、原則1-3の資本政策の基本的な方針と、1-5の買収防衛策の間にあるわけであって、その趣旨は株主構成に関する開示であることは明らかです。別の言い方をすれば、政策保有されていることが株主構成の歪みなど何らかの問題を生じさせる場合があるという認識に基づいて、ガバナンス・コードは作られていると思います。そうすると、あまり会社資産の有効活用という観点にこだわるのではなくて、政策保有されていること、要はどの程度相互に保有し合っているかを直接的に明らかにする開示が望ましいのではないかという気がいたしております。

2点目は、コーポレート・ガバナンス報告書と有価証券報告書の関係についてです。コーポレート・ガバナンス報告書などを拝見しておりますと、有価証券報告書だけではなくて、例えば招集通知であったり、各会社が独自に作成されているガバナンスの規則などにリンクを貼って、そこを参照してくださいというような形の記載もあります。これは有価証券報告書の参照方式のような開示だと思いますが、使い勝手がいいと言えるのか、つまりアニュアルレポートのように1冊でまとまっていた方がいいのか、それともちゃんと丁寧にリンクが貼ってあればよいとするのか考える必要があると思います。

3点目は、コーポレート・ガバナンス報告書と有価証券報告書の差異についてです。管理という言葉が適切かどうか分かりませんけれども、有報については金融庁、コーポレート・ガバナンス報告書については東京証券取引所が記載事項の決定などの管理について、最終的な責任を負っているわけであります。具体的な開示内容が改善されていくメカニズムとして理想的なのは、機関投資家と上場会社の間の対話を通じて改善が行われることだと思います。しかし、それは理想形であって、全ての会社で妥当するとは限りません。

例えば政策保有株式の開示について、開示内容が一般的であるという問題が指摘されることがありますが、もう少し具体的な開示を行ってはどうかといったことを金融庁が言いやすいのか、それとも東京証券取引所が言いやすいのかといったことも考える必要があると思います。

関連して1点、外国の例を挙げると、イギリスのスチュワードシップ・コードでは、報告書の内容を改善させるために、FRCが機関投資家のランク付けをしているようです。類似の作業を上場会社の開示書類について行うことは現実的ではないと思いますが、有価証券報告書やコーポレート・ガバナンス報告書の記載内容が一般的、抽象的になって制度趣旨に反しているような場合に、改善を促す仕組みの作りやすさも考えてはどうかと思いました。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

小畑委員、どうぞ。

【小畑委員】

ありがとうございます。本日の金融庁説明資料の1-1の10ページのところからお話しさせていただきたいと思います。

政策保有株式については、そもそも現行の開示は、持っている側、すなわち保有している側からの開示という制度になっているわけですけど、もともとこの制度ができた背景には、持ち合い株をどう開示するかという議論があり、持たれている側から開示するのはなかなか難しいという技術的な困難性から、持っている側が開示することになった経緯があったと思っております。そういう意味では、持たれている側で政策保有株主の比率が分かればいいのですが、それができないということを前提に現行の開示制度が成り立っているという経緯からすると、開示によって達成できるものには限界があるのではないかと思っております。

その中で、どういう記載を求めていくかということですが、10ページにいろいろな項目が書かれておりますけれども、実際に企業に伺ったところ、この中の幾つかの項目については、いまだかつて投資家から聞かれたこともない、株主との対話でも聞かれたこともないということで、本当に必要性があるのか疑問です。その辺りについて、よくよく慎重に吟味いただければと考えております。

それから、目的の開示でございますけれども、保有目的を掘り下げていきますと、最終的には営業秘密にかかわるような部分まで及んでくるおそれもあるため、一律に目的の開示を求めることはなかなか難しいのではないかと思います。やはり開示をきっかけにして、個別の投資家との対話の中で目的を明らかにしていくということが現実的なのではないかと考えております。

それから、対象銘柄については、現行の数でほぼ足りているのではないかと思っておりますが、事業会社が保有する銘柄数の中央値を見ますと、大体60ということであり、現行の開示の対象銘柄数はその半分ということで、それほど変な数ではないと思っております。

それから、提供方法については英文化の要望が強いということはよく分かりましたけれども、海外投資家の保有比率もさまざまであり、全ての会社に一律に英文化を求めることは行き過ぎではないかと考えております。

その次、11ページの役員報酬については、先ほどの投資家の方々のヒアリングからも分かりますように、やはりどういうふうに算定をしているのか、それから中長期のインセンティブとしての構造がどうなっているのかというところの説明が極めて重要だと受けとめておりまして、そこをしっかりと書くということについては、投資家サイドにもアピールできるポイントなのではないかと考えています。

それから、ガバナンス情報の提供方法については、先ほど投資家サイドからのご説明もありましたとおり、ガバナンス報告書の方が機動的に対応できるため、非常に有用性が高いのではないかと考えておりまして、ガバナンス情報については、ガバナンス報告書の方に寄せていくということをご検討いただけないかと考えています。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、中野委員、和里田委員の順で、中野委員、どうぞ。

【中野委員】

政策保有株式と役員報酬について意見を申し上げます。

まず、政策保有株式、言い換えれば株式の持ち合いについては、これまでデメリットとともに、石原委員等からご指摘がありましたように、そのメリットについても学術上指摘されてきました。

この点について企業と投資家が建設的な対話をすることに加えて、私は、現在、株式の持ち合いに経済合理性があるのか否かについて証券市場全体を対象とした科学的検証を行うべき重要な時期にあると考えています。

その意味では、先ほど三瓶委員からご提案がありましたように、持ち合いについて、「保有している株式と保有されている株式」の対照表を開示することによって、企業の外部から持ち合い構造をより精緻に把握できるようになるので、対話の進展はもとより市場全体を対象とした科学的な検証の進展も期待できると思います。当該対照表の開示を望みます。これが1点です。

もう一点は、役員報酬についてです。私の専攻分野でいえば、業績連動の部分が重要だと思っておりまして、米国の研究等では、営業利益等特定の利益を業績連動報酬のKPIとした際、経営者は自らが望む役員報酬額を得るため、KPIの多寡に最も影響を及ぼしうる項目、たとえば研究開発費を抑制する等の行動をとるという知見があります。

役員報酬プログラムと報酬額の開示はこうした経営者のインセンティブを明らかにする点で有用ですが、会社によってトップに権限が集中しているケースと、役員間で権限の委譲が進展しているケースとがあるので、トップ一人の報酬とかではなく、役員全体の状況を把握できることが重要です。具体的には、役位ごとに業績連動の基準・算式が開示されるとともに、役位ごとに報酬の総額が開示され、情報利用者は公表された基準・算式に基づいて役位ごとの総額に一致するかを検証できるということであれば、役員全体のインセンティブが明らかになり、役員報酬に関する対話、さらには経済合理性に関する検証も進展することになると思います。したがって、こうした開示を望むものであります。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

和里田委員、どうぞ。

【和里田委員】

ありがとうございます。

コーポレートガバナンス・コードで求められている政策保有株式に関する方針、その記載なんですが、事務局で用意されている資料にあるように、非常に抽象的な記載で、株主からすると果たして合理性の検証をされているのかというところが疑問点じゃないかと思います。

先ほどのお話では、悪い例ばかりが結構出ていたんですが、実は良い例もあって、現行制度の中でも上場企業の中でも先駆けて政策保有株の開示の充実に取り組んでいる企業があります。例えば個人的には、メガバンク3社なんかは比較的いいんじゃないかなと思っています。

例えば、彼らは、「政策保有株式に関する方針」と、「政策保有株式に関する議決権行使基準」を公表しまして、コーポレート・ガバナンス報告書にその内容を記載し、かつ有価証券報告書でもその内容を参照しています。ただ、「政策保有株式に関する方針」を見ると、「合理的な理由がなければ保有しない。定期的に個別銘柄ごとに合理性を判断し、合理性がないと判断される銘柄については売却を進める」という内容です。これだけ見ると、非常に一般的な内容で、事務局の用意された記載内容と同じなんですが、ただ重要なポイントは、彼らは「保有に係る合理性のプロセス」、「検証プロセス」をウェブサイト上で開示していまして、「採算性評価に関する指標」、それから「検証結果」等についても説明されています。ここまでの開示は、明らかにほとんど多くの上場企業の開示内容とは違うんじゃないかと思います。

例えばその「採算性評価」については、銀行なので、金利収入と手数料収入から、経費、信用コスト、株式保有コストを控除した収益、これをベースにしてRisk Adjusted Return on Assetだとか、Risk Adjusted Return on Risk Weighted Assetsという形で、採算性評価に関する指標を明確にしていますし、かつ「保有残高の何%が採算性評価を充足していない」というような検証結果も開示しています。かつ、「充足していない銘柄については、採算改善ができるように交渉する。そして交渉が決裂すれば売却する」というような方針も明確にされています。もちろん、資本コストを踏まえてハードル・レートが何%であるかまで開示するべきかというような議論はありますけれども、こういうケースもあります。

ただ、メガバンク各社も、「合理性の検証プロセス」は有価証券報告書には直接、記載はしておりません。日本語、英語のURLのリンク先をコーポレート・ガバナンス報告書に記載していますので、そういうやり方というのもありなんじゃないかなと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、太田委員、熊谷委員、永沢委員、黒沼委員の順で、太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。私の方からは、政策保有株式の問題を中心に、役員報酬、ガバナンス情報の提供方法について、簡単にだけコメントをさせていただきたいと思います。

政策保有株式に関しましては、まず銘柄数の対象銘柄の範囲でございますけれども、実務感覚的には30銘柄で主要な政策保有株は大体カバーされているというのが実状ではないかと思っております。

それで、事前の説明の際にもご指摘申し上げたわけでございますけれども、銘柄数でこう出していると、80銘柄だったら半分とかそういう話になるわけですけれども、本来は、私はそのカバー率といいますか、政策保有株全体の例えば時価又は簿価があるとして、30銘柄で相当程度の部分がカバーされているのであれば、例えば3分の2とか4分の3とかカバーされているのであれば、この現状の30銘柄の開示で特段問題はないと。その細かな部分までいちいち開示させることは、負担との関係でいかがなものかというところがございますので、私はそのカバー率の検証はしていただければと思うんですけれども、基本的には30銘柄の開示で十分ではないかと思っております。

それから、議決権行使の内容なんですけれども、これはおよそスチュワードシップ・コードが適用されるような機関投資家の場合には、これは背後の投資家から資金を預かって運用しているという受託者責任の立場で、その議決権の行使結果について個別開示をせよという議論は理解できるわけですけれども、事業会社、一般の会社は株主から得ているエクイティーをさまざまな分野に投資して事業を行っているわけでございまして、その政策保有株の議決権行使の内容についてだけ機関投資家と同列に個別開示というのは、非常な違和感があります。また、先程来の議論からしますと、ここまで個別開示をするという必要性は、特にそういう強いニーズもないということのようでございますので、あえてこれを開示させる必要はないのではないかなと思っております。

それから、純投資と政策投資の区分の基準や考え方について開示をさせるというのは、これは一般論として理解できなくはないのですが、一口に政策保有株式といってもさまざまなものが含まれていると思っておりまして、資本業務提携に基づいて保有している株もありましょうし、歴史的な経緯から保有しているというものもあって、ある意味で行政控除説で言うところの残ったものがこの政策保有株だという側面があろうかと思いますので、結論的には、これは個別銘柄についての保有目的等の開示でカバーできる話ではないかと思います。純投資と政策投資の区分の基準や考え方というのを明確化しろといっても、なかなか難しいのではないかなというのが実感でございます。

それから、有価証券報告書、1年前の有価証券報告書の古い情報を利用しなければならないというこの問題というのは、理解はできるんですけれども、もしこれを貫徹するのであれば、機関投資家が議決権行使をするときまでに有価証券報告書を出さなければいけないということになります。要するに招集通知を発送する直後には、有価証券報告書を出しておいていただかないといけないと、そういう議論になってしまうと思っていて、さすがにそれはタイムスケジュール的に企業側が対応が不可能なのではないかなと思います。

なので、これを本当に対応しようとするのであれば、株を持たれている側の会社の事業報告における大株主の状況の開示で、例えば今、会社法では上位10社ということになっていますけれども、これの数を15社とか20社とか拡充すると。そういうのは1つのソリューションだと思うんですけれども、有価証券報告書に、1年前のものであって古いからという問題への対処としては、有価証券報告書の早期提出という方法で招集通知発送時ぐらいにまで開示時期を前倒しするというのはなかなか難しいのかなと思いますので、このあたりは違った形で対応する以外にはないのではないかというのが率直な感想でございます。

それから、役員報酬に関してでございますけれども、おおむねこの事務局でご作成いただいた、特に役員報酬の内容についての開示のところとかはほとんど違和感がないところでございますけれども、個別開示に関しては、これは諸外国、アメリカ、イギリスの例を比較対象として挙げておられますけれども、やっぱりアメリカ、イギリスは非常に、特に執行側のいわゆるオフィサーの報酬が非常に高いので、これを詳細に開示しろということになっている部分があろうかと思います。現状、1億円以上という線引きされていますけど、これはある意味でのデミニマス基準だと思っておりまして、これに達しない程度のレベルの報酬をあえて開示して、それでそのレベルの少ない報酬に関して、機関投資家がそれをもとにKPIの達成状況を云々するというのは、やや違和感がありますので、1億円というのはある程度定着している区切りでもあるので、これでよろしいのではないかと思います。

ただ、考え方としては、経営の最高責任者であるCEOについてだけは個別開示をすべき金額のバーを下げるというような対応、ないし金額のバーをなくすという対応はあり得るのかもしれないとは思いますけれども、いずれにしろこの1億円に行かない報酬に関して、あえてそこまで個別に開示させる必要性がそれほど強くあるのかなというところは疑問に思います。

それから最後に、ガバナンス情報の提供方法に関する論点ですけれども、これは一体化という話では本来ないのではないかなと思います。有価証券報告書は、虚偽記載に対して金商法上の罰則による制裁が規定されているので、かなり重い法定開示の書類である以上、有価証券報告書にはミニマム、最低限、開示しなければいけないものは必ず記載してもらうのが在るべき姿であると思います。

その他、任意にいろいろとガバナンスの取組みについて書きたいということであれば、現状でもそういうものはコーポレート・ガバナンス報告書などを積極的に活用して開示しているというのが実務ではないかと思いますので、任意開示とかを広く書く受け皿として、現状のコーポレート・ガバナンス報告書というのは機能していると思います。従って、有価証券報告書はあくまで最低限、開示しなければいけないものを開示するという法定開示書類として、それはそれで役割に十分意味があると思うので、これをあえてCG報告書と統一化する必要はなくて、単にすみ分けをすれば十分なのではないかと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

ありがとうございます。時間も2分以内ということなので、極力手短にお話ししたいと思います。

まず、政策保有株と、あと開示の見直しのあり方について、簡単にお話ししたいと思います。政策保有株についてでありますけれども、先ほど石原委員から、マジョリティーをとらないという形での政策保有が多いというようなご指摘がございました。そもそも歴史的に見ますと、やはり1960年代に資本の自由化をしました。そのころにたまたま、前回の東京オリンピックの後の証券不況というのがあって、証券保有組合等ができまして、それをとけ合う中で、日本的な持ち合いができてきたと認識しております。

そういった意味では、日本で独自に発展した側面はありますけれども、やはりそういうある種、資本の自由化という大きな変化に対して、まさに安定株主、もっと平たく言うと買収防衛という形でこういう持ち合いが形成されてきたというのが歴史的な流れであったと思いますし、それが特に70年代、80年代においては、いわゆる当時の日本的長期的経営という名のもとに、うまく機能していた時代もあると思います。

ただ昨今、この特に建設的対話という流れの中で問題視されておりますのは、先ほど来、効率的保有ということと、あとガバナンスの問題が挙げられておりますけれども、どちらかというと、日本の企業の稼ぐ力ということを考えたときに、ガバナンス上、やはり阻害要因になっているという認識が広く共有されてきたからではないかと思います。

また会社法の見直しが必要じゃないかというお話もありましたけれども、持ち合いを禁止するというのはなかなか難しいお話だろうと思いますし、そういう中で、この持ち合いに関するガバナンスを強化しようとするときに、やはり開示の充実しかあり得ないのかなと考えております。それによって株主、特に機関投資家を通じたガバナンスを効かせていくというのが、より効率的な、かつ現時点においては会社法の見直しというところまで含めないのであれば、より実現可能な方向性ではないかなと思料いたします。また、このワーキング・グループ自体がディスクロージャーということでございますので、その目的にも適うのではないかと思います。

特に個別対話で対応できるんじゃないかというお話も出ておりますけれども、個別対話で対応できるのであれば開示もできるだろうというのが率直な感触であります。また既にご指摘がありましたが、ある企業が保有している株式と同時にその会社における安定株主の比率というのが非常に大切なのだろうと思います。先ほど小畑委員の方から、安定株主の把握が難しいというお話もありましたけれども、企業が安定株主として期待されている株主があるとして、その方々、まさに議決権行使の票読みなんかをよくなさっておられるようでありますけれども、そういうときに安定株主として保有されている会社の個別の会社名までは必要ないと思いますが、安定株主比率は、ガバナンス情報上、極めて有用な情報ではないかと思います。もし可能であるならば、有報上、及びガバナンス報告書上で開示していただけると大変貴重な情報になろうかと思いますし、建設的な対話に大変資すると考えます。

最後に、このワーキング・グループでこれまで議論してきましたMD&Aなどガバナンス情報以外の非財務情報、会社の経営理念及び戦略、バリュークリエーションプロセスに加え、本日議論いたしましたガバナンス情報が有機的にリンクされるような開示になってきているというのが昨今の世界的な潮流になっております。それはやはりまさに建設的な対話にしようと思ったとき、そういう開示が有効であるという認識が世界的に広がっているからだと思います。従いまして、今後もより具体的にどういう開示の仕方がいいのかというような議論も必要になってくるのではないかなと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。

私どもは、良質な金融商品を育てる会という会でございます。良質な金融商品を育てるための基本は、良質な株式会社を日本で育てることだと考えており、個人株主として会社をチェックし、ガバナンスに参加することが重要であると考え、総会にも積極的に参加をしております。このような立場から、意見を1つ申し上げたいと思います。時間もありませんので、役員報酬についてのみ意見を申し上げさせていただきたいと思います。

3名のスピーカーからご提示いただいた役員報酬に関する情報開示のご提案は、いずれもなるほどと思いましたし、ぜひ導入に向けて積極的に検討いただきたいと思いますが、一般個人からしますと、複雑な計算式などを示されても、それはよく分からないものです。誰に幾ら支払われているかという全員分の個別開示をしていただくのが一番分かりやすいと思います。

こういった情報をゴシップ的に見る人もいるというご指摘がありましたが、必ずしもそうではなく、全員の報酬を開示いただくことで、どれぐらいのばらつきがあるのかとかが分かり、そういうことから会社と株主との対話が始まるとも思います。こういった情報からでも、その会社の経営のあり方を垣間見ることができます。

また、先ほどプライバシーのお話が出ましたが、1億円以上の方についてはプライバシーを守らなくてよくて、1億円未満の方はプライバシーを守らなくてはというような話は、理解が難しいです。

メンバーの意見を聞いてきましたが、これは一般人の感覚ですけども、スポーツ選手は金額の多寡に関わらず報酬を開示しています。プロというのはそういうものを開示するものじゃないんですかと言う意見もありました。取締役には、上から下までいろいろいらっしゃるようで、一概には言えないのかもしれませんけど、一応、取締役というのは経営のプロと世の中的には位置付けられているとすれば、開示いただくのが望ましいと思います。

それから、1億円未満は開示しないということになっていますが、数千万円の報酬はさほど高額報酬というわけでもないとも思います。1億円で分けるというのは説得力に欠けるという意見が出ておりました。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

では、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

第1回の会合でも発言したことですが、今回の議論では、対話の促進のためにあらかじめ開示されていることが必要な情報、あるいは開示されていることが望ましい情報とは何かということを考えているわけですから、その情報がそれ自体、投資判断にとって重要でないということは、その情報を開示の対象としないということを意味するものではないと思います。

むしろそれ自体、投資判断にとって重要な情報は、フェア・ディスクロージャー・ルールからいうと、聞き出してはいけない情報なわけですから、それ未満のもののうち、どれを開示の対象とすれば対話が促進されるかということを考えるべきだと思います。

また、そんな項目は聞かれたこともないというご意見もありました。確かに対話の前提としても必要がないものであれば、それは除外していかなければなりませんが、他方で、そこから聞き出さなければならないとしたら、対話に時間がかかり過ぎてしまうからやっていられないと、そういう趣旨で、聞かれたことがないような情報もあるのかもしれないと感じました。ですから、この点は慎重に議論しなければならないと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

清原委員、どうぞ。

【清原委員】

もう時間も迫っていますので、1点だけに絞りたいと思います。

ガバナンス報告書と有価証券報告書の関係についてコメントさせていただきますと、今回、ガバナンスの状況についての開示のトピックについて各論としての議論がありましたけれども、総論的な点に関して申し上げると、やはり投資をするに当たって、投資にかかわるリスクを考えたときに、機関構造、もしくはそれに関連する問題というのはリスクに大きくかかわるものであって、投資家にとって非常に重要なポイントといえるところです。

そうすると、有価証券報告書の中におけるガバナンスの情報が十分に開示されて、しっかり書かれているということは大きな必要なポイントであって、ここを減らしていくという方向ではなく、むしろ今の開示が本当に十分、投資リスクを考えた上で、しっかり開示されるようになっているのかというところが重要ではないかなと思うところです。

特に昨今、「攻め」と「守り」のガバナンスと言われていますけれども、その「守り」のガバナンスの部分こそ、有価証券報告書にしっかり書かれていること、そこでの記載から十分な投資判断が投資家としてもできるような開示制度になっているというところが大きなポイントで、「攻め」といえば、言ってみればより多く稼げるという意味ですので、それは法定開示のミニマムというか、法制度上開示を求めていく情報とはちょっと違う側面があって、やはり法制度面での有価証券報告書でのガバナンスの開示の重要性というのは決して過小評価できない、やっぱり重要なものだということをまず出発点とする必要があるのだと思います。

他方、そういう開示内容はミニマムでいいということでは全然なくて、今の記載内容はやや抽象的で具体性を伴っていないとすると、モニタリング機能が働いているのかどうかを投資家が判断しようとするときに、各機関がやっていることの内容について開示が十分かというと、そこに問題が残っているのではないかと。

そういう観点で、今回のディスクロージャーワーキング・グループが、個別の問題もそうですけれども、少し全体的なものを考えるということであれば、ガバナンス情報を有価証券報告書でしっかり書き込むことを考えていくとすると、現状の開示項目に足していくものがやっぱりあるんじゃないかという観点で増やす方向の議論をしていっていただくことがいいのではないかと考えています。

他方、それでは、コーポレート・ガバナンス報告書はどうするのか、というと、やはりガバナンス報告書の方は使い勝手がいいというのは、先ほどお話がありましたように、東証のウェブページなどで項目をチェックしていくとデータが出てくるという意味で、比較可能性だとかということが非常に高いものとなっています。かつてはガバナンスの情報に関してはチェック・ザ・ボックスは適切じゃないというような話もありましたけれども、チェック・ザ・ボックスで十分比較できるものを、よりガバナンス報告書では徹底していただくというのは1つの方向性としてあっていいのではないか。そういうものの方が開示する側の負担もあまりないこともあって、頻繁に更新しようと思えば更新もできるのではないかと。それで、ファンダメンタルなものはやはり有報などで、十分考えて、ミスリーディングにならないような、そういう記載、開示をしていただくという建付けで、両者の役割を割り振るというのもあるのではないかと。

言いかえると、ガバナンス報告書の中でいうと、図表だとか、少しファクチュアルで、本当だったら報告書で開示されるべき情報というのは項目を拡充することが検討されるべきであるし、もっとディスクリプティブ、定性的なもので例えばしっかりプロセスなんかを説明するべきというところは、有価証券報告書でもっとしっかり開示がなされるような、そういう方向というのがあっていいのではないか、そういう意見でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

青委員、どうぞ。

【青委員】

まず、どのような情報を出すかという観点に関しては、何でもかんでもということではなくて、企業価値の向上を支えて、それをつくり出すガバナンス体制というものを会社がどのように考えてつくられているのかという観点が一番大事なところかと思います。

ガバナンスがうまくワークしているのか、インセンティブ付けはしっかりできているのかということを投資家が把握するために重要な情報が大切ではないかと考えます。

それに加えて、高い資本生産性、資本効率の達成に企業がきっちり向かっているのかを把握できるようにという観点から、重要な情報について分かりやすく丁寧な説明を求めるというのが基本的なスタンスではないかと考えます。

有報とガバナンス報告書の関係という観点に関しては、経営戦略とかビジネスモデルとの関係が強くて、それを支えるガバナンス情報は大変重要なものですので、基本的にはまず有報で記載することは必要ではないかと考えます。

特に経営陣に対する実効的な監督という観点から、重要な情報についてはぜひ有報にということですが、それ以外の使い勝手や利便性を高める観点から、追加的に必要な情報については有報とガバナンス報告書の関係を柔軟に考えていくということでいいのではないかと考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ゲストとしてお越しの清水さん、ご発言があればどうぞ。

【ゴールドマン・サックス証券株式会社 清水様】

すみません、1分だけください。

我々、海外投資家と話をしていて一番、実は苦労するのが、応諾という言葉を説明する際なんですね。政策保有株を売る際に、応諾を与えるとか、与えないとか、何でそんなホルダーに権利がないんだと。ここはやっぱり一番、我々苦労するところですし、海外投資家が見えていないところでございますので、そこに対してのディスカッションがないのは、そもそも見えていないからだと我々は思っています。

海外投資家も、日本企業さんの現場力、プロダクトというのは非常にすばらしいとは思っているものの、こういった純投資でない、ちょっと見えない投資家の存在というのがやはり投資をためらわせるといったところがあると思っています。

とはいえ、日本の商習慣そのものと言ってもおかしくないような状況だと我々は思っていますので、とはいえこれをやっていかないと、なかなか日本のインベストメントチェーンも改善せずに、日本という国もなかなかよくならないということで、我々の子孫のためにも、いい国を残すためにも、ぜひご検討いただきたいところでございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

あと中熊委員からは、意見書を出していただいていますが、特に何か補足はございますでしょうか。

【中熊委員】

特に補足はございませんが、先ほど政策保有株式につきまして、個別の開示は非常に難しいというようなご意見を発行体側の方からいただいておりますが、コーポレートガバナンス・コードにおいても経済合理性や将来の見通しについての検証ということが語られておりますので、一定の説明はいずれにしろ必要であると思っております。

また、フェア・ディスクロージャー・ルールとの関係性というのもございますので、全てを対話において説明するべきであるというご意見についても若干、疑問を感じるところではあります。

以上、補足させていただきます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

今日は皆様方には大変協力いただきまして、延長はしているのですが、8分という状況です。

それで、そうはいってもご発言を遠慮された方もいらっしゃるかとは思います。大変申し訳ありません。追加でのご意見を含めお気付きの点があれば、ぜひ事務局の方にお寄せいただければありがたく思います。

本日も大変熱心なご議論をいただきまして、ありがとうございました。本日いただきましたご意見を踏まえ、次回以降、さらに皆様方にご議論をお願いしたいと思います。

最後に、事務局からご連絡等お願いします。

【田原企業開示課長】

これまで3回にわたりさまざまな観点からご議論をいただいて、多くの貴重なご意見をいただいておりますが、本日の議論でも、利用者のニーズを更に聞いた方がいいのではないかというご意見を、作成者の方からも利用者の方からもいただいていると思いますので、金融庁のウェブサイトで英語版もつくりまして、3月下旬を目途に、利用者の方々を中心に意見を募集させていただこうかと思っております。提出していただいた意見については、事務局で整理をさせていただいて、この場の審議の参考にさせていただきたいと考えております。

次回のワーキング・グループの日程につきましては、これまでどおり、調整させていただきまして、後日ご案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、散会いたします。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3846)

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