金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第5回) 議事録

  • 1.日時:

    平成30年4月23日(月)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

それでは、予定の時刻になりましたので、開始させていただきます。金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」第5回目の会合を開催させていただきます。

皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

早速でございますけれども、議事に移らせていただきます。

お手元の議事次第にありますように、本日は、まず、ゲストの方にお越しいただいておりまして、非財務情報やガバナンス情報を含む開示のあり方全般についてお話を伺いたいと思います。

ゲストとしてお越しいただいている方々でございますけれども、まず、ファラロン・キャピタル・マネジメントのポール・コールドウェルさんと今井英次郎さんです。本日は、お忙しいところを、どうもありがとうございます。

それから、インダス・キャピタル・アドバイザーズのハワード・スミスさんです。どうもお忙しいところを、ありがとうございます。

それから、カナダ・ペンション・プラン・インベストメント・ボードのプレム・サムタニさんです。お忙しいところを、ありがとうございます。

これらのゲストの方々からお話を伺います。なお、日本語でお話を伺えるというふうに聞いております。

次に、時間に余裕があるようでしたら、事務局から、その他の課題として、ITの活用及び英文開示に関する主な論点についてのご説明をしていただきます。

それでは、早速ですけれども、まず、ファラロン・キャピタル・マネジメントのコールドウェルさんと今井さんからご説明をいただきます。資料1をご提出いただいております。

では、よろしくお願いいたします。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  コールドウェル様】

はじめまして。ファラロン・キャピタルのポール・コールドウェルと申します。アジア地域の投資を統括しております。本日は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。

弊社は、1986年に設立された資産運用会社で、大学の基金、慈善財団、年金を含む機関投資家、及び、富裕層の資産を運用しております。サンフランシスコを本社として、そのほか、ロンドン、シンガポール、香港、東京、サンパウロに拠点を有しています。世界中で様々なアセットクラスに投資をしています。

2ページをご覧ください。弊社では、主として5つの投資戦略を実行しています。上場株式への投資はそのうちの1つです。いずれの投資戦略においても、厳格なリサーチ、分析が利益の財源で、また、それにより、リスク管理もしています。投資後は、投資先の経営陣や財務、IRの方々と建設的な対話を通じて友好な関係をつくることが一番望ましい状況です。

3ページをご覧ください。上場株の投資のスタイルとしては、厳格なリサーチ、分析に基づき、弊社が評価した会社の本質的な価値に対して、株価が過小評価されて、その両者が大きく差があるときに投資します。そういった過小評価は、一般的な市場環境、一時的と考えられる問題、経営陣や戦略の変更、市場と我々の間での見方の違い等から生じます。また、企業再編等の大きな変化が生じる会社にも投資します。

4ページをご覧ください。弊社が上場株式へ投資を行う際は、大きく3つの投資基準があります。1つ目が魅力的な事業形態、いわゆる事業フランチャイズの有無です。我々は、業界構造やビジネスモデルを詳細にリサーチ、分析し、中長期的に高い収益性を継続できるような魅力的な事業に投資します。

2つ目が経営陣との利害の一致です。経営陣が中長期に企業価値を向上するインセンティブを持っているかを非常に重視します。そのためには、報酬形態や会社の株式の保有比率を可能な限り詳細に調査します。投資先の経営陣の方々と定期的に意見交換をすることも重要です。

3つ目は資本政策です。例えば、仮に魅力的な事業があっても、生まれた利益、キャッシュを適切に再投資することなく、また、株主に分配するわけでもなく、会社のバランスシートに貯めていくというような資本政策を採用していますと、価値の向上には繋がらないことになると思います。

ここで大事になりますのが資本コスト、及び、投下資本利益率、いわゆるROICです。取締役が企業価値を向上すべきという視点からは、自社の資本コストを正しく認識し、事業のROICがそのコストを上回る場合のみに投資を行うべきです。そうでない限り、仮に会計上は売上や利益が増加していても、価値を毀損していることとなります。そして、資本コストを上回る投資先が見つからない場合には、株主に分配するというのがあるべき姿です。そういった資本政策が行われることにより、個別の会社の企業価値が向上するとともに、社会全体の生産性が向上するものと考えます。

2つ目の点と3つ目の点は関連していまして、経営陣の報酬形態が中長期的な企業価値の向上と結びついていない場合にも、経営陣による資本コストやROICの考え方を無視した、価値を生まない自己の権限の拡張、いわゆるempire buildingにつながる可能性があります。

欧米の会社と比較して、日本の会社が資本コストに十分な注意を払っていない大きな理由の1つは、報酬制度の設計にあると考えています。したがって、我々が日本の会社に投資をするときは、この点、いわゆる経営陣との利害の一致を特に重視します。

5ページをご覧ください。我々は過去数年間で日本のコーポレート・ガバナンスには前向きな進展があったと考えています。スチュワードシップ・コード、及び、コーポレートガバナンス・コードの採用、そして、結果として、独立取締役の数が増加し、ROEが改善していることを前向きに捉えています。

他方で、さらなる改善の余地もあると考えております。

1つ目は、資本政策です。先ほど申し上げたとおり、事業運営や資本政策は企業価値向上のための車の両輪と考えられますが、日本の会社の多くは資本政策の重要性に対する認識が必ずしも十分ではないのではないかと考えます。

2つ目は、インセンティブの調整です。経営陣の方々が中長期的な企業価値の向上に対して大きなインセンティブを持つような報酬形態がより多くの会社で採用されることが重要であると考えます。

3つ目は、取締役会の機能です。投資家が会社に期待しているのは、独立取締役の数や独立取締役で構成されている委員会の設置といった形式的なことではなく、それが実質的に機能していて、どのように企業価値の向上につながるかという点です。形式的な進歩があったことは非常に前向きに捉えていますが、今後、その中身、実質を評価し、さらなる改善を目指すことが望ましいと考えています。

ここからは、日本のディスクロージャーについて、今井から、より詳細に説明させていただきます。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  今井様】

今井と申します。私は日本で弁護士として働いた後、投資業界に転向しまして、その後、日本と米国で投資実行のための会社や業界の調査、投資後のモニタリングを担当してまいりました。弊社では、頻繁に世界中の投資アナリストと意見交換を行っております。そういった経験を通じて、日本のディスクロージャーに関して、感じるに至った点を幾つか共有させていただきます。

6ページ目ですが、まずは、ひな形の文言の使用についてです。以前の会合でもご指摘があったかと思いますが、日本の法定開示の非財務開示におきましては、ひな形的な文言が多用されているというような印象を持っています。それが顕れるのが、日本の会社の株式のグローバル・オファーリングが行われて、日本と米国の双方で目論見書が作成されるような場合です。日本の投資家と米国の投資家には大きな情報の差があるというふうに思います。

投資家は、いわゆるロードショーにおけるプレゼンテーション資料と目論見書双方を投資判断に用いるのですけれども、日本の目論見書に比べて、米国の英文の目論見書の方が、プレゼンテーション資料に載っているような経営戦略、市場環境、競争優位性、将来に関する記述がより詳細に記載されている場合が多いというような印象です。

ファンダメンタルズ分析をする投資家が会社に投資をするときには、業界構造を分析し、その業界の中で会社がどのように競争優位性を保ち、超過収益を獲得できるのかということを分析します。そして、多くの場合、業界環境や競争優位性は常に変化しています。そういった分析に資するような紋切り型ではない開示がなされることを望んでいます。

この点、会社が任意に作成して公表しているアニュアルレポートでは、詳細に、分かりやすく開示されている企業が数多くあるというふうに認識しておりますが、その場合でも、リスクの開示が不十分であることが多いように思います。投資家に有益な情報を法定開示として求めることには意義があると考えます。

次が、役員報酬についてです。人間はインセンティブの生き物でありますので、コーポレート・ガバナンスを改善するに当たって、企業価値の向上と合致したインセンティブ設計は極めて大事であると考えます。

その観点で申し上げますと、日本企業の役員の皆様は、統計的には固定給の割合がとても高く、報酬が中長期的な企業価値向上に紐付けられた設計にはなっていないのではないかなと思います。以前の会合でも、日本の会社の資本コストへの意識は低いというご指摘があったかと思いますが、その根本的な理由は、日本の会社の経営陣の皆様が資本コストや中長期の企業価値向上を意識するインセンティブがないことにあるというふうに考えます。インセンティブのよりよい理解のため、関連するKPIを含むトップの役員の方の報酬のより詳細な開示が望ましいと考えます。

なお、現在の1億円という開示の要否を規定するハードルにつきましては、1億円を若干下回る報酬とすることにより開示を回避するような、当初の意図とは異なるインセンティブを与えている可能性があるというふうに思っていますので、そちらについては再考する余地もあろうかというふうに考えています。

次は、重要な契約についてです。日本の開示制度の下では、重要な契約に関する開示が限定的であると思います。有価証券報告書には、重要な契約の概要の開示が求められていますが、開示の対象となる契約の範囲や数も、その概要の記載も限定的です。

他方で、米国においては、重要な契約については、一部の文言や数字が隠されることもありますが、例えば10-Kや10-Qの別紙として契約がそのまま開示されております。例えば、日本の会社と米国の会社で締結されている双方にとって重要と思われる契約について、米国では非財務情報として詳細に説明されている上で、添付資料として契約書がそのまま開示されているのに対して、日本では、有価証券報告書の重要な契約にも載っていないということもあります。

重要なM&Aに関する契約であっても、日本では、株主総会決議が必要な場合以外は、契約内容について十分な開示がされないことがほとんどです。株主総会決議が必要な場合ですら、概要の記載のみの開示にとどまり、契約書そのものが開示されることは極めてまれです。このような場合、米国では、契約書そのものが開示されるのが通常です。

重要な契約は、投資家の投資判断に極めて大きな影響を及ぼしますので、より詳細な開示がなされることが望ましいと思います。

では、ページをめくっていただいて、次は、コーポレート・ガバナンスについてです。コーポレートガバナンス・コードの制定により、この点の開示は充実したと考えています。しかしながら、現時点の開示はやや形式面に傾斜しているような印象を受けています。

投資家が興味があるのは、形式的にどのような組織設計になっているかではなく、実質的にガバナンスが機能しているかです。そのためには、取締役会に要した時間の開示ですとか、投資家が独立取締役と直接意見交換をできるような機会の提供というものがあれば、望ましいというふうに考えています。

投資家が独立取締役に求めるのは、主として、経営のモニタリングと価値創造的な資本政策の提言です。そのような観点からは、基本的には経営、金融、特に投資の実務家、専門家の方々が適任であろうというふうに考えます。実際に、欧米ではそういった方々が独立取締役を務められるケースが大半であろうというふうに理解しています。

もちろん、必要な経験やスキルはそれぞれの会社に固有な事情もあるということは理解しています。ぜひ、独立取締役の選任の際の考慮要素を、会社の置かれた経営環境等から敷衍して、説得的に説明いただきたいと考えています。

次は、四半期開示についてです。四半期開示は、中長期的な経営計画のKPIを継続的にモニタリングするために重要であると考えています。私は以前、日本と米国で、いわゆるプライベート・エクイティ・ファンドで、投資後の事業改善の仕事も担当していましたが、そういったファンドの投資先の会社では、上場会社よりはるかに頻繁で厳格な説明責任を伴う業績のモニタリングが行われています。

中長期を重視するから短期は気にすべきではないというのは、短期の業績が振るわない際の言い訳に使われる可能性もあります。中長期の経営目標を達成するためには、KPIを継続してモニターして、短期の目標を繰り返し達成する必要があるというのがあるべき考えであろうというふうに思います。

なお、四半期開示が先進国の市場ではスタンダードだという点も指摘させていただきます。

最後に、資本政策です。先ほどポールも申し上げたとおり、日本の会社の資本政策に対する考え方はより改善する余地があると考えます。ここでは関連するトピック3点について、述べさせていただきます。

1つ目は、株式持ち合いです。この点については、現在のような紋切り型な説明ではなく、より具体的な理由が必要であろうというふうに考えます。そうしますと、必要な事務作業が増えるというご指摘もあろうかと思いますが、簡潔で個別具体的な理由の説明を多くのステークホルダーが納得する形でできないのであれば、そもそも、そのような持ち合いは不適切ではないのかということを問うのが適切であろうというふうに考えます。

2つ目が過大な現預金についてです。日本には、欧米と比較して、現預金や事業とは直接関係のない資産を過大に保有している会社が多くあります。この点はいわゆる伊藤レポートのROE8%ですとか、ROEを重視するインデックスが登場した結果、ROEに対する認識は大きく改善したというふうに考えます。

しかし、一定の基準を満たしたらそれで満足し、自社の達成可能な最大限の数字、いわゆるフルポテンシャルを目指さないといったケースも散見されます。不測の自体に対処するために一定の手元流動性を確保したいといったニーズは投資家も当然理解しますけれども、それを踏まえても、過大な現預金があるというケースもあります。

資本の効率的な活用という観点では、資産が持ち合い株であっても、キャッシュであっても、その他の資産であっても同様ですので、資本コストを意識した上で、事業に直接関連しない保有資産の妥当性の説明があれば、望ましいというふうに考えます。

3つ目は、セグメント情報についてです。欧米の会社と比較すると、日本の会社はセグメントの数が多く、事業ポートフォリオの管理が必ずしも効率的、合理的に行われていないというふうに考えます。投資家がセグメントごとに事業分析を行う際には、例えば、製造原価、セグメント別のより詳細な財務数値の情報が必要です。また、各セグメントにおいて目標とする投下資本収益率、いわゆるROICですとか、そもそも複数のセグメントを有している戦略的合理性の説明があると望ましいと考えています。

昨今は、日本の大企業の中の一事業が、プライベート・エクイティ・ファンドによる買収等を契機に独立し、大きく事業が改善するといった例が多く見られます。事業の多角化に関する規律が向上して、事業ポートフォリオの効率的な入替えが行われることは、日本経済全体の生産性の向上に結び付いて好ましいことだと考えます。

なお、以上3点については、欧米ですらそのような開示は求められていないといったご指摘もあろうかと思います。しかしながら、日本では、前述のとおり、報酬制度が中長期の企業価値向上と紐づいていないことから、資本政策や、資本コストや資本の効率的な活用に対する意識が不十分であるという構造的な問題があるという点で、欧米とは置かれた環境が大きく異なるというふうに考えています。このような構造的な問題を解決するために、ディスクロージャー制度を用いることも重要であろうかというふうに考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、インダス・キャピタル・アドバイザーズのスミスさんからご説明をいただければと思います。

スミスさんからは、資料をご提出いただいてはいるのですけれども、恐縮ですが、タブレット及びスクリーン投影のみということにさせていただきたいと存じます。傍聴の皆様方には、大変恐縮ですけれども、スクリーンの方をご覧いただきますよう、お願いいたします。

それでは、スミスさん、よろしくお願いいたします。

【インダス・キャピタル・アドバイザーズ  スミス様】

ありがとうございます。インダス・キャピタル日本代表のスミスと申します。よろしくお願いいたします。

私も、こういった貴重な時間をいただきまして、大変ありがたく思っております。

私の資料は英文で恐縮ですが、できるだけ日本語で説明をさせていただきます。

インダス・キャピタルというのは、ファラロン・キャピタル様と非常に似ている部分が多いような気がしないでもないので、先ほどのプレゼンテーションを聞きながら、自分たちの説明の区別をどうすればいいのか、ちょっと困りますが、できるだけ違った話をさせていただきます。

まず、簡単に、インダス・キャピタルの自己紹介をさせていただきます。投資の運用額は約7,000億円で、本拠地はニューヨークにございまして、アメリカの西海岸のサンフランシスコにも大きな事務所を設けています。グループ全体の従業員は95名で、アジアにおきましては、東京、それから、香港に調査部を設けています。ファラロン・キャピタル様と全く同様で、きちんとした企業分析、会社訪問、それから、経営者との話合いに基づいて、ボトムアップ的な分析を行って、投資判断をしているスタイルです。7,000億の運用額のうちの約半分は日本株への投資になっています。

それでは、次のページをお願いします。これからの話の内容ですが、一部は、金融庁の質問に基づいて回答しますが、後半の部分は、自分たちで考えている話題について申し上げます。

まず、金融庁の質問の中から、MD&Aについてですが、日本のアニュアルレポート、それから、決算説明会資料、あと、決算短信等々を分析すると、見かけ上の利益、会計上の利益に関するコメントが非常に多く、残念ながら、ファラロン・キャピタル様もおっしゃっていましたが、投下資本、キャッシュ・フローに関する分析が不足しているところが多いような気がします。特に資本コストに関するコメントはほとんどなく、一部の企業は資本コストという概念を持っていると思いますが、9割以上の企業は、全くこういった概念を持っていないというふうに考えています。

したがいまして、投下資本、設備投資、M&A等々に関する話合いの中で、では、どういった高リターンを求めているのか、その資本コストに対して本当に上回るリターンを得ているのかどうかというのは、とても不足しているような気がします。

したがいまして、バランスシート全体の一番望ましい姿、あるべき姿という話合いもなかなか少ないような気がします。最も適切な株主資本比率、適切な総資産の回転率、目指しているROA、ROE、レバレッジに関してはどう考えているか、そういったことについて説明する企業は少ないような気がします。

特に我々の分析の中で、非常によく注目しているのはフリー・キャッシュ・フローについてです。当期純利益は、あくまでも会計士の意見で、特損があったり、事業売却があったり、あと、在庫の評価損があったりすることによって、非常にばらつきが生じてしまいます。それを避けるように、やはりフリー・キャッシュ・フロー、営業キャッシュ・フロー、それから、投資キャッシュ・フローを見るべきだと思っています。フリー・キャッシュ・フローの使い道に関する意見交換というのはなかなかまだ足りないような気がしています。

次は持ち合い株についてですが、ファラロン・キャピタル様も触れましたけれども、コーポレートガバナンス・コードの誕生によって、やっと持ち合い株に関するディスクロージャーが改善していますが、まだ、多くの企業の持ち合い株の根拠をみると、非常に曖昧な表現があるような気がします。

残念ながら、一部の大手企業は、持ち合い株をたくさん持っています。例えば愛知県にある自動車会社ですが、そういう企業は、バランスシートの何割かがまだ現預金と持ち合い株になっていますが、なぜ持っているかについて、明確になってないような気がします。コーポレートガバナンス・コードの誕生というのは大変望ましいことではありますが、この辺については、強制的なインセンティブがないと、なかなか難しいような気がします。

金融業界、特に銀行、生保に関しては、おそらく、金融庁の森長官のおかげもあるかと思いますが、進歩しているような気がします。特に大手3行の銀行の持ち合い株の解消というのは、徐々に、順調に進んでいる形にはなっていますけれども、金融業界以外の企業、特に製造業に関しては、なかなか進捗率が低く、これが資本効率の低迷に繋がっているような気がします。この辺のコーポレートガバナンス・コードの改正が必要ではないのかなというふうに考えています。

次のスライドです。役員報酬ですが、一般論としては、皆さんご存じだと思いますが、日本のトップの経営者、特に社長、会長、執行役員、CFOを含めて、報酬の全額、総額が非常に少ないような気がします。特に欧米の企業と比べて、絶対水準が極めて低いというふうに思います。

最近、一部の企業は1億円以上を払っている社長もいますけれども、そうでない会社さんがまだ数多くいます。まず、報酬の総額を引き上げることがとても重要ではないのかなというふうに思います。

その中で、固定の部分と変動の部分があるかと思うのですが、変動の部分、特に成功報酬がありますが、我々の業界だと、成功報酬というのは当たり前のことで、成績がよければ報酬も増える、成績が悪ければ報酬は伸びない、これは当たり前の話なんですけれども、日本の上場企業の中では、まだ珍しいことであるというふうに思っています。ですから、その固定の部分を減らして、成功に直接関連するところを引き上げる余地が非常に大きいというふうに思います。

その変動の部分に関しては、何らかのエクイティ関連の成功報酬、最近、ストックオプションの制度を導入している企業も数多くありますし、別の形での株式での報酬の仕組みを導入している企業もありますけれども、まだまだ非常に足りないというふうに思っています。ここら辺の加速というのは、極めて重要な課題だというふうに思います。

欧米の企業、ほかの先進国の企業をみますと、トップの経営者が、自分たちが経営している企業の株をかなり大量に持つというのは一般的だと思いますが、日本の企業はまだサラリーマン経営者というのが非常に数多くいますし、5年、6年社長をやって、引退して、会長や顧問になったり、それはなかなか文化の問題もあると思いますけれども、もう少しやはり株式を持ってもらいたという気持ちが非常に強いです。少数株主のインセンティブと一致するところがまだまだ不足しているような気がします。

次のスライドです。これはディスクロージャーの全般的な話ですが、ある意味では、日本の上場企業のディスクロージャーというのは、5年前と比べて随分よくなっているような気がします。非常に頑張っていらっしゃる会社さんが数多くいらっしゃると思います。決算説明会資料だけではなくて、工場見学、個別の事業説明会をやったりして、最近、分厚い資料を出している企業は非常に増えているような気がします。それは非常にありがたいことでもありますし、ぜひこれからも頑張っていただきたいと思います。ただ、冒頭に申し上げましたように、投下資本、それから、キャッシュ・フローに関する説明というのはまだ少ないと思います。

多くの会社は中期計画を発表していますが、主な目的、主なKPIというのは営業利益高、及び、当期純利益になっていて、売上高、営業利益高、当期純利益の絶対額を増やしていこうというのは一般的なやり方だと思います。やっとROAとかROEという概念も少しずつ出始めているかと思いますが、まだまだこの辺の説明がちょっと足りないというふうに思います。1年間の利益の目標に関するディスクロージャー、例えば数量の前提、価格の前提、売上高の前提、粗利率の前提、販管費の前提、営業利益高の前提など、1年間のスパンで、非常にきめ細かく出していらっしゃる企業が多いと思いますが、もう少し3年とか5年とか、それから、投下資本、資本コスト、あと、キャッシュ・フローの使い道に関する説明があればいいなというふうに考えています。

ただ、批判的なことばっかりではなくて、ディスクロージャーの改善に関しては、これは認めざるを得ないと思います。明らかに5年前と比べて、日本の企業ディスクロージャーというのは良くなっています。

残念ながら、一部の企業に関してはほとんど改善が見られない。例えば投資家に会わないとか、決算説明会資料を作らないとか、決算説明会そのものをやらないとか、残念ながら、一流の東証一部の企業もその中に含まれていますが、これは大変大きな問題だと思います。上場している企業として、最低限の責任がある中で、なぜ株主に会わない、会社のオーナーに会わない、説明をしてくれない、資料を全く準備しないのか、もうさっぱり分からない会社さんも、ごく一部いらっしゃいます。その辺の、ばらつきの改善が必要ではないかと思います。これは多分、東証の責任だと思いますが、この辺の改善の余地が大きいような気がします。

では、次のスライドです。これは多くの外国人投資家の間、多分、国内の投資家も話していると思いますが、マスコミの役割、影響についてです。残念ながら、日本というのは、マスコミがまだインサイダー情報をたくさん発信している国だと思います。しかも、その中で、公共の放送局も出していると。先日もやってしまったんです。ルネサスという会社が午後4時ぐらいに株式の売出しを発表しましたが、NHKのお昼のニュース番組にその情報が流れてしまいました。公共放送がああいうような報道をしているのは極めていけないというふうに思います。

残念ながら、日経新聞のような新聞社も観測記事を出していて、「何々会社さんの営業利益高が何百億円になった模様だ」という言葉を使います。なぜそういう情報を入手しているのかというのは、さっぱり分からないところがあります。これもいかがなものなのかなというふうに、以前から思っています。今回のフェア・ディスクロージャーのルールでは、マスコミは対象外になっていますので、その辺の見直しは、個人的な意見ですけど、ぜひ必要なのかなというふうに思っています。より健全な資本市場の構築のプロセスの中で、マスコミの影響も大きいような気がします。

次は、四半期の開示です。ファラロン・キャピタルさんも触れましたが、基本的には同様の意見です。引き続き、ぜひ四半期の開示を継続していただきたいという結論です。

ただ、反論もよく分かります。四半期開示によって、株価のボラティリティが増加するとか、一部の投資家さんが勘違いして、間違った投資判断をするとか、四半期開示によって経営者が忙しくなってしまうとか、自社株買いを実施できる期間が縮小したりとか、投資家に会う期間が短くなるとか、欠点もあります。ただ、総合的に判断すると、やはり維持すべきだというふうに考えています。ファラロン・キャピタルさんと全く同じような根拠でして、やはり、KPIの継続的なモニタリングのために欠かせない、非常に重要な開示だと思っています。これは廃止するべきではないというふうに思っています。

以上です。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、カナダのペンション・プラン・インベストメント・ボードのサムタニさんから、ご説明をいただきます。

サムタニ様からも資料をご提出いただいておりますけれども、これもタブレット及びスクリーン投影のみという扱いとさせていただきます。傍聴の皆様方には、恐縮ですけれども、スクリーンの方をご覧いただければと存じます。

それでは、サムタニさん、よろしくお願いします。

【カナダ・ペンション・プラン・インベストメント・ボード(CPPIB) サムタニ様】

どうも、こんにちは。私はCPPIBのサムタニと申します。今日、我々にとっては大切なトピックの場に招待を受け、非常にうれしく思っています。日本語で頑張っていきますので、聞きづらいかと思いますが、よろしくお願いします。

話すのが四番目ですので、もう全部話すポイントもなくなっています。基本的には、結構同感です。まず、トピックに入る前に、簡単に自己紹介から始めますので、よろしくお願いいたします。

まず、CPPIBはどういった会社か、何が役割であるかについて、簡単に説明します。CPPIBはインベストメントオンリーのアセットマネジメント会社で、カナダの国民年金のお金を扱っています。カナダにいる約2,000万の労働者の月給の約10%、半分は個人、半分は企業から入ってくるお金を管理し、年金者にはベネフィットを払います。今の段階で、入ってきている金額と出ていく金額のバランスはサープラスで、このサープラスは、あと4、5年は多分続くと思います。

我々は基本的にグローバル企業でして、数字が少々古いのですが、現時点で、大体我々のアセットの8割程度は日本を含む海外に投資しています。世界に8つの拠点があり、約1,400人が働いています。

我々は上場企業ではありませんが、透明性はコアプリンシプルの1つです。我々のホームページをご覧いただくと、四半期ごとに開示できるものは全部開示していますし、アニュアルレポートも毎年開示しています。これは、我々のDNAに近いものと言えます。

ポートフォリオは、パブリック、プライベート、リアルアセットとインベストメント・パートナーシップという4つの部門に分かれています。リターンは悪い実績ではないと思います。

我々が考えている強みや価値は、長期的なビジョンであることです。よく我々の社長は、四半期の定義は何だろう、うちの場合には90日間ではなくて、25年間で考えて投資判断しましょうと申します。もちろん、これは少々極端ですけれども、こういう考え方を持ちながら投資判断しましょうという考え方です。なぜこれができるかというと、我々が投資している資産の方が、これから間違いなく増えてくるからです。Certainty of Assetsと呼んでいます。スケールも結構あります。

先ほど報酬制度の話がありましたが、我々の場合も、こういう大きな金額をうまくマネージできるような人材を、マーケットから採用しないとうまくリターンは出せないのではないかと考えています。例えばファラロンさんとかインダスさんとか、そういった会社さんともパートナーシップを組みながら、投資しています。最後は、Total Portfolio Approach、これはトロントから全部管理しているということです。

資産のイメージですが、これから大体70年間の見通しで見ると、間違いなく何倍にも資産が増えてくるというトレンドが見えています。今の時点で、大体337ビリオンカナダドル、約28兆円程度ですけれども、今後、例えば3倍か4倍か5倍になっていても全然おかしくないです。我々のミッションはどんどん難しくなってきていると思います。

次のスライドは、簡単に、2007年からの実績を載せています。アジアの中で一番大きなエクスポージャーは日本です。12月段階の数字ですが、大体カナダドルで20ビリオン、日本円に直しますと、大体1.8兆円程度になります。トータルポートフォリオは約6%、日本に対しては、いろんなパブリックとプライベートマーケットには投資案件を探しています。この約20ビリオンカナダドルのうち、大量の部分がパブリックマーケットですから、今日のトピックは我々にとってとても重要です。

先ほど、ファラロンさんとインダスさんがお話されたこととは、違うトピックを出そうと思っていますが、少し重複するかもしれないです。ご容赦ください。

まず、基本的な考え方ですが、パートナーシップとか透明性の考え方に基づいて投資先を選定します。そこをもうちょっと深く掘って、良い投資判断をするためには、どういう情報が経営者から提供されるべきかという点から始めたいと思います。

ミーティングや会社の経営者と面談するときには、いつも我々は生徒の立場で、「御社の事業に関して、どういったポイントが重要で、我々は何に注目すべきか、そういうことを全部教えてください」という教わる姿勢で入っていくことが多いです。ですから、エデュケーショナルな情報が我々にとってはすごく大事だと思います。

よく技術的なことに集中している企業さんが多いのですが、もっとMD&Aや会社の経営者の意見も入れてほしいです。最も業界の知識やインサイトを持っているのはおそらく経営者だと思うのですが、そういう情報をシェアして欲しいと思います。

あとは、使いやすいか、使いにくいかのポイントもとても重要です。僕はちょっとバイアスもかかっていると思いますが、日本は非常におもしろいマーケットだとみんなに話していますが、分からないという投資家さんも多いです。日本は複雑なマーケットだ、情報が全て日本語で英語でないので、リスクを増やすのがちょっと怖いという意見も聞いたことあります。だから、ユーザーフレンドリーの観点は大事だと思います。

どの頻度で情報が出すべきか、四半期ごとの開示で適正かどうかについてですが、必要な情報を正しいタイミングで出してほしいと考えます。例えば小売事業だったら月次の数字も結構大事なのですけれども、そういう程度でも出すべきではないかと思います。

企業側において、ディスクロージャーのレベルを高めることのマイナスインセンティブはちょっとよく分からないですね、はっきり言うと。世界中のいろんな投資家にアピールできるような立場をとりながら、これは会社にとってもポジィティブじゃないかと僕は思っています。

次に、どういった情報がディスクローズされるべきかについてもよく聞かれますが、我々としては、基本的にはマテリアルで、レレバントな情報で、投資判断には必要なものであれば、全部ディスクローズしてほしいです。

もうちょっと細かいところでいきますと、MD&Aの中で、経営者の貴重な意見とか、短期的ではなくて、もっとロングタームのアウトルック、資源のアロケーションがあります。投資判断するときには、どのプロジェクトとか、どのアセットか、なぜなのかをもうちょっと明確にしてほしいです。

あと、リスクファクターはとても大事です。一般的に、為替や地震などが開示資料に出ていますが、その業界や企業にとって注目すべきリスクや、これらのリスクについてどういう戦略をとっているとか、そういうことを教えていただけると助かります。

なぜ四半期ごとの情報が必要なのかということをよく聞かれますけれども、KPIとか、我々がもともとアンダーラインした投資のシーシスが合っているかをチェックするために、四半期の情報がとても重要だと思います。

日本のキャピタルマーケットは流動性も高く、バリアもないので、コストも安いですから、なぜもっとグローバル投資家にアピールしないのかと思います。だから、言葉に対してのハードルなどをうまく乗り越えられた場合には、結構Win-Winじゃないでしょうか。

例えば、日本語と英語、あるいは、ほかの言葉によるディスクロージャーは全部同時に公表してほしいです。あとは、ディスクロージャーのcomprehensivenessですが、日本語も英語も、ほかの言葉に関しても、情報は全部出していただければと思います。我々が会社の経営者と議論するときは、例えば会社のウェブサイトにも情報は出してほしいとか、あるいは、四半期ごとのIRの説明会の資料とか、質疑応答のコメントも全部、ウェブサイトにアップロードしながら、これももちろん日本語だけではなくて、ほかの言語でも出していった方がいいんじゃないかというサジェスチョンをします。

明らかに、過去5年、10年と比べると、IRとかディスクロージャーの質が大分よくなってきていると思います。頑張れる余地は、シニアの方々によるIRとかディスクロージャーへの関与にあると思います。我々は長い目で投資していますが、10年、20年先のビジョンを話せるような方々を相手に対話できると助かります。

最後ですけれども、2015年、CPPIBとマッキンゼーがイニシアチブをとって、Focusing Capital on the Long Termという取組みをしました。これは、企業と投資家の間のコミュニケーションの質はどうすれば良くなるかというプロジェクトです。

その結果ですけれども、こういう情報がマテリアルの中に入れていただければ、かなりのギャップはうまく乗り越えられるんじゃないかと思っています。

まず、会社のミッションステートメント、何がミッションであるか。そして、ビジネスモデルの強みと、ロングタームバリューにはどうやってつないでいるか。マーケットのビュー、これは先ほどのMD&Aの話です。あと、会社の経営者は何を差別化のポイントと考えているか。これは短期的であるか、長期的なコンペティティブ・アドバンテージであるかどうか。そこをもうちょっと明らかにしてほしいです。戦略としては、ロングタームのオブジェクティブは何か。エグゼキューションロードマップ。メトリックスはKPIの話です。あとは、リソースアロケーションですね。これは資金だけじゃなくて、経営資源とか、人的資源はどうやってどこにかけるか、そのリターンをどうやってトラッキングできるか。

リスク情報はとても大事です。どういった戦略をとってリスクをマネージしているかを含め、もうちょっと深く開示してほしいです。

報酬に関しては、これはロングタームバリューにどうやってつなげられるかということが重要なポイントです。これらの10点は、我々にとってはすごく大事なキーポイントです。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、今、コールドウェルさん、今井さん、スミスさん、サムタニさんからいただきましたご説明につきまして、委員の皆様方からご質問等があれば、お出しいただきたいと思います。ご質問等に対しては、英語で回答していただくことになると思いますので、逐次通訳をさせていただきます。

なお、委員の皆様方におかれましては、前回同様、ご質問等をされる場合には、日本語、英語、どちらでも結構です。日本語でのご質問の場合は、通訳のほうで英語訳をさせていただきます。英語でのご質問の場合は、議論の内容を全体で共有するため、質問内容を日本語に会場全体に逐次通訳させていただきます。もちろん皆様方ご自身で通訳していただいても結構でございます。

それでは、どなたからでも、また、どなたに対してでも結構ですので、ご質問等ございませんでしょうか。

石原委員、どうぞ。

【石原委員】

3投資家の皆さん、プレゼンテーションをどうもありがとうございました。お伺いしたプレゼンテーションに関する私自身の認識を踏まえて、ご質問をさせていただければと思います。

この場は、情報開示のあり方をどうすることが投資家と企業との建設的な対話に資するかということに向けて議論を重ねているとの認識でおりますが、本日のお話を伺っていると、留意すべき2つの側面があるのかなと感じております。

1つの側面は、ファラロンさんのプレゼンテーションの中でも非常に分かりやすくおっしゃられておりましたけれども、日本の企業経営には構造的な問題があるということ、裏返して言いますと、欧米の経営モデルに対して、これまでの日本の経営モデルというのは劣位にあり、だから業績も劣位にあるという見方です。したがって、より欧米的な考え方をベースとした情報開示を目指すべきであるとなり、海外で情報開示を要求されていないような項目であっても、日本では要求すべきであるといった考え方に到るということです。こうした考え方はフェアに言いますと、情報開示の問題ではなくて、経営モデルの問題であって、どちらが優位かということは情報開示が決めるような話ではないのではないかと思うところでございます。

次に、本日の3人の投資家の皆さんは、基本的にアクティブな投資スタイルで、例えばファラロンさんは、相対的に割安な株式への投資スタイルであるとおっしゃられておりました。

今、我々は、制度開示と任意開示において、任意開示の中には投資家との個別ミーティングも広い意味では含まれると思いますが、どこまでの情報開示を行うことが適切なのかを考える必要があると認識しています。

例えば、割安な株に投資するならば、まず、一義的には、財務的なバリュエーションによって相対的に割安ではないかと思われる株を抽出されると思いますが、その後、最終的に投資判断をされるに至るプロセスの中で、今日の3社のお話を伺うと、やはり個別の企業とのミーティングを非常に重視されている印象を受けました。これが第二の側面です。例えば、キャッシュ・フローとか、資本コストとの対比とか、投資効果といったようなものは、今の制度開示の中では必ずしも十分に開示されておりませんが、個別のミーティングの中では十分に議論可能な項目と思います。だからこそ、最終的な投資決定に向けては、やはり個別の企業とのミーティング、個別の対話こそが非常に重視されると拝察をしております。

そうであれば、例えばバリューの投資として、最終的に投資判断をするときに、制度開示の情報というのは一体どのように投資判断の中に反映されていくのでしょうか。例えば割安であるという株を抽出したときに、次に非財務情報、定性的な情報の中で、この程度の開示であれば何点である、といったように開示項目毎に評点を付けて選んでいくのか、恐らくそうではないだろうと思いますけれども、どうやって制度開示の情報を具体的な投資判断の中に使われていくのかというあたりについて、ご教示いただければと思っております。

よろしくお願いいたします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、どなたからでも、いかがでしょうか。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  コールドウェル様】

ご質問、ありがとうございます。おそらく、企業の価値向上と開示がどうつながっているかという観点だと思いますが、一点申し上げさせていただきます。おっしゃるとおり、個別のマネジメントとのミーティングで、それなりに情報を得られる場合はあると思います。けれども、先ほどサムタニさんがおっしゃったとおり、やはり市場で買える投資家が限定されると、当然、需要と供給とのバランスで割安になる傾向があります。多くの投資家が正しい分析をするために、そもそもの情報が必要です。情報がないと、そもそも分析をする人が減って、結局、実際に株を買える方々がその分、少なくなってしまいます。市場でのエクリビアムの値段がその分、低くなることによって、ある意味で、企業の永久的な価値を表している資本市場の推移が低迷してしまうというのが、情報開示の不備による影響だと思っています。

当然、細かく分析をしてボトムアップで買う方々は、得するチャンスは逆に増えるかもしれませんが、社会全体において、やはり日本の企業で、一番大きい割合が日本の国内の個人及び日本の金融機関ですので、彼らの財産の最大化にはつながらないのが根本的な問題ではないか、というのが、非常にビッグピクチャーでの情報開示と企業評価のつながりだと我々は思っています。

これもよく海外では言われることですけれども、結局、非常に長い目で見て財産をつくり上げる場合には、やはり長期的なキャピタルのコンパウンディングの利回りが非常に重要で、そこを本当の意味で国民の財産につなげていくことでございます。やはり適切な情報が開示されないために、投資できる投資家の層が少なくなって、企業が過小評価されて、かつ、経営者としても株主と一致した経営手段をとらない場合には、長い目ではやっぱり国のキャピタルのコンパウンディングにはつながっていかないので、そこはそういう意味では、やはりディスクロージャーをきちんとして、できるだけ多くの方々に分析してもらって、それによって、資本市場としてのあるべき姿をつくり上げるのが重要なポイントではないのかなというふうに我々は思います。

おっしゃるとおり、海外が必ずしも正しいというわけではありませんが、やはりある意味で、日本の特徴は、海外の良いところを取り入れて、海外よりもっと良くしていくという、何百年もの歴史で何回も成功しているケースがございますので、ここもぜひ、海外のディスクロージャー、海外の企業経営から一番良いところをとって、国全体の利益につながっていくのがおそらく一番良い方法ではないのかなと我々は考えています。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  今井様】

私が申し上げた報酬制度の話は、欧米が優れていて、日本が劣位ということを申し上げたかったわけではございませんでして、企業価値、中長期的な企業価値に何が向上する報酬制度かというところの議論があまりなされていないのかなと。欧米と一括りで申し上げましても、例えば欧州の方ですと、固定給、中期インセンティブ、長期インセンティブが多分3分の1ずつぐらいの配分になっておりまして、他方で、アメリカは8割ぐらいが長期インセンティブになっているということですし、欧米と申し上げても、一括りではないわけです。

他方で、日本を見ますと、そもそも、どういった報酬制度かに関する議論が少ないです。この議論が少ない理由は開示がされていないからだというふうに認識をしていまして、スチュワードシップ・コード等で投資家と会社の間の会話が増える中で、取締役の方の役員報酬の中身が明らかにになることによって、両者が建設的に中長期な視点で会話ができると考えています。その結論が、もしかしたら、アメリカ型かもしれませんし、欧州型かもしれませんし、結果、日本独自の形かもしれませんけれども、いずれにせよ、ガバナンスの中でそこがきちんと議論されることが大事だろうと思います。

あと、ポールも申し上げたとおり、法定開示の目的というのは必要最低限な開示を法律の制度上築くということでございますので、一部の投資家の人がミーティングや、何らかの形で情報を得て、それで買う人もいるかもしれませんけれども、もともとの趣旨に鑑みますと、やはり一般の投資家の方も含めて、当該企業に投資するか否かの判断に有益な情報というのをなるべく出すべきという方向で、ルール自体は望ましいのではないかと。そこは皆さんおっしゃったとおり、言語の問題等もございますので、それも含めて考えるのがいいのではないかというふうに思っております。

【神田座長】

ありがとうございます。

スミスさん、サムタニさん、いかがでしょうか。何かもしご意見があれば。

【インダス・キャピタル・アドバイザーズ  スミス様】

私も全く同感で、ファラロン・キャピタル様と全く意見が一致しています。当然、割安の銘柄に投資するというのは投資運用業界の基本だと思います。では、何で割安になったのか、そういった外部条件は何なのか、その背景は何なのかというのを、まず、理解しないといけないです。そういった理解を探る中で、経営者との対話、会社訪問、取材というのは欠かせない道具だと思います。

最初に意見交換をするときに何をするのかというと、共通認識があるかどうかです。一部の会社は「マーケットが決めるもんですからね、うちとは関係ない」とか、そういう答えはあるんですけど、最近、ほとんどの会社さんは、やっぱり共通して「うちの時価総額はどうすれば上がりますか」というような議論になります。

ほとんどの場合、やはりディスクロージャーの改善をする余地が大きいという共通点があると思います。割安になった背景には、さまざまな理由があると思いますが、ほとんどの場合は、ディスクロージャーがあまりよくないというのが共通点だと思います。

ですから、投資家として、コンサルティング的な役割を果たして、じゃあ、今度、中計をつくるときに、こういうような資料を準備するのはどうですか、資本コストに関しては考えたことありますかとか、フリー・キャッシュ・フローの使い道については十分考えていらっしゃいますかとか、そういうような意見交換になるかと思います。

それで、結論としては、やっぱりディスクロージャーの改善によって、より多くの投資家さんに分析してもらうことになりますので、幅広い銘柄が注目されていって、企業価値が改善していくと。できれば、やっぱり経営者のインセンティブも少数株主と一致して、彼らの報酬も同時に上がっていくということも極めて望ましい条件だと思います。

【CPPIB  サムタニ様】

すみません、またお話しすることがなくなってしまったんですけれども、簡単に言いますと、これは、僕のポイントに戻ってくるんですよ。

会社側から、何の情報を出すべきか。会社の名前はちょっと出せませんけれども、よく僕が議論している企業で、自分の株価が相当安い、割安だと言っているところがあります。ただ、出している情報は全く投資家の役に立たないものが結構多いです。情報をたくさん出していても、必要な情報、その後の株価に影響するその企業のストーリー、戦略について、対話できるようなポイントにはほとんどタッチしていないんです。

だから、経営者の方で、正しい情報とか必要な情報を、自分でよく考えて出していくべきだと思います。それはレギュレーションとか、自分の方で決めていること、そういうことは別にして、もっと深く考えて準備するべきじゃないかなと個人的には思っています。

我々の場合は、ファラロンさんやインダスさんと、投資判断する際の1つの違いのポイントは何かというと、すごく集中投資していることです。1年で両手で数えられる銘柄しか投資していません。各銘柄には大体、数人がひと月かけて投資しています。ですから、IRが大事だと思いますが、それ以外にも、その業界のフードチェーンとか、upside、downsideを全部調べていますので、そこを全部まとめた情報で投資判断していることがポイントです。

我々の場合は、うちの望ましい水準まで情報が得られなかった場合には、そこは投資対象から外して別の企業を探しにいきます。うちのキャピタルに関しては、そういう考え方が結構強いです。透明性のDNAが相手の方でもなければ、別にそこへ投資しなくてもいいという考えです。

【神田座長】

ありがとうございます。

石原委員の質問の1つのポイントは、投資判断される際に、制度で要求されている一律の開示に基づく情報と投資先企業と個別にミーティングをされて、もちろん現在で言えばフェア・ディスクロージャー・ルールの下でということになりますけれども、そこで得る情報と、どういうウェイトの置き方なのか、より個別ミーティングを重視しているのか、より制度開示で一律に情報が開示されるという方を求めているのか、その辺の実務の感覚というか、御社が投資判断されるときの実務を教えていただければという点にあったように思うのですけれども、いかがでしょうか。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  コールドウェル様】

実際には、やはり投資によって結構どっちかに寄る場合が一般的です。アメリカとか、日本以外の投資を見ると、非常に細かい契約の解釈とか、契約書のどういう文言を市場がどういうふうに理解していて、我々がその契約を外部弁護士とかのアドバイスを得て理解することによって、市場とは違う意見を持ったりするケースとか、それは結構海外ではよくある投資の例ですが、残念ながら、日本ではそういう投資は、アメリカとかヨーロッパの方で何かの理由で契約書が開示されていない限り、なかなか投資戦略としてそもそもできない例でございます。

繰り返しになりますけれども、アメリカだと、結構、合併の売買契約書自体が、当然、秘密情報とかは除かれていますけれども、何百ページもの契約書自体が開示されているケースが一般的ですので、そういった場合には非常にフォーマルな開示に基づく投資判断がメインになります。

よりバリュー的な投資で企業との面談によってモデルをつくっていく中で、当然、その企業の方々と話すことによって、フィーリングの面でのモデルの詳細の調整とかはできるのですけれども、やはり、監査役やオーディットファームがオーディットした会計手法に基づくモデルづくりとか、細かい有報での部門ごとの詳細に基づくモデルづくりが非常に基本になっております。

正直、おそらくモデルをつくる中では、どちらかといえば、より重要なのはフォーマルなディスクロージャーで、そのフォーマルなディスクロージャーに今後のプロジェクションの中でのフィーリング感覚を埋め込んでいくのが、会社との面談で得る情報とか、過去の一次的な要因をより理解したりとか、そういうことが主にあるのではないかなと思います。

【神田座長】

ありがとうございます。

スミスさんとサムタニさんも、ございましたらお願いします。

【インダス・キャピタル・アドバイザーズ  スミス様】

当然、一定レベルの最低基準のディスクロージャーというのは極めて大事で、日本の場合、決算短信、有報、それから、最近、コーポレートガバナンス・コードの誕生による追加開示がありますけれども、間違いなく、平均のレベルは上がる傾向にあると思います。

ただ、個別企業レベルで見ると、まだ非常にばらつきが高くて、結局、投資判断をする際、個別企業との話し合い、つき合いというのは何よりも大事だと思います。プレゼンテーションの中で言いましたように、個別企業の中で非常に優れている会社もありますし、極めて出遅れている会社もあると思います。

連動性もあると思います。ディスクロージャーの優れている会社というのは、大体、資本効率がよく、経営者の理解が非常に高いレベルにあります。問題は、そういった会社というのは普通、高いんですね。本当は一番良いのは、こういうのはなかなか稀なケースですけれども、優れている経営者がいて、ディスクロージャーも非常に良くて、でも、何らかの形で突然割安になってしまったというのは夢の中の話ですけれども、でも、そういうのは全くないわけではないです。一次的に何らかの事故があったりとか、何らかのイベントがあったりとか、何らかのスキャンダルがあったりとか、そういうのは稀にあります。でも、さっきのご質問に直接答える上で、やっぱり個別企業との対話というのは極めて大事だと思います、個別の投資判断をする際に。

【神田座長】

ありがとうございました。

サムタニさん、よろしいですか。

【CPPIB  サムタニ様】

大丈夫です。

【神田座長】

それでは、どうもありがとうございました。

続きまして、中野委員、和里田委員の順でお願いします。中野委員、どうぞ。

【中野委員】

貴重なご説明をいただき、どうもありがとうございました。

2点ほど確認させていただきたいことがあります。

まず、本日はディスクロージャー全般についてのご意見を伺ったのですが、会計基準について確認させてください。現在、日本ではIFRS採用企業は200社弱、すなわち市場全体では約5%にとどまっていますが、一部の企業がIFRSを適用して、他の企業は日本基準を適用し続けている現状について、皆さんのお立場からすると、問題がないのかどうかを、確認させてください。

2点目です。有価証券報告書については現在は英語では発信されていないのですけれども、皆さんのお立場から見て問題がないのかどうかを確認させてください。

最後に、コールドウェルさんに、確認させていただきたいことがあります。資料の4ページの価値を創造する資本政策という中で、権力拡張、すなわちempire buildingについて言及されました。もちろん経営者が報酬を高めるために、あるいは、自分の権限を拡大するために、この行動をとるということが欧米の経済理論において指摘されていることはよく承知しております。ただ、欧米で想定されるempire buildingと、日本企業におけるそれとはもしかしたら異なっているのかもしれないと、そういう印象も先ほどお話を伺っていて思ったものですから、その点について、全く同じなのか、あるいは、日本企業特有のことがあるのかについて、お教えいただければと思います。以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、お願いします。

【インダス・キャピタル・アドバイザーズ  スミス様】

では、私から簡単にお答えします。

まず、会計基準に関する質問ですけれども、私はちょっと古い人間で、会計の出発点は全部日本の会計基準の時代だったので、非常に身についていて、慣れているので、私もIFRSへの移行というのはなかなか困ってはいます。

確かにこれはあまり良くないです。200社にとどまっているということは、おっしゃるように中途半端の状態で、なかなか前に進んでいないですよね。時価総額の3分の1もやっぱり、とてももったいないところで。どうですかね。我々は会計上の利益よりも、キャッシュ・フローを重視していますので、キャッシュ・フローはキャッシュ・フローで、どこの会計基準でもキャッシュはキャッシュということで、IFRSでやっても、JGAAPでやっても、結局キャッシュ・フローは変わらないので、それは1つの対策だと思います。

でも、やはり、半面で、もう少し強制的にIFRSへの移行を進めるべきではないのかなと思います。中小企業さんにとってはなかなか大変な問題だと思います。コストもかかるし、優秀な人物がいないと、なかなか前に進まない。日本は残念ながら、労働人口が減っている中で、優秀な会計士が少ないと十分認識していますけれども、でも、やっぱりこのままでは、ちょっとまずいと思うので、やっぱりもう少し強制的なものがなければ、難しいと思います。

有報の英訳についてですが、これも半分はコストの問題だと思います。でも、やはり日本の株式相場の4割近くが外国人の保有になっていますので、そろそろここも変えないといけないのかなと思います。日本語を読めない投資家にとっては非常にハンディになってしまいます。どうですかね。政府の補正予算の中でこういったお金をちょっと使ってもらうのはどうなのかなと思うんですよね。やっぱり英語に直してもらいたい気持ちが強いです、これは間違いなく。

【CPPIB  サムタニ様】

簡単な方からお答えしますと、僕のプレゼンでもちょっと触れていたと思いますけが、情報は全部、イコールで出してほしいです。有報は日本語だけになっている。これは基本的に、僕は理解できないです。

だから、企業側は、できるだけ幅広い投資家さんにアピールできるような情報を出すべきじゃないかと、個人的には僕は思っています。僕が経営者だったら、そういう方向に多分行くと思います。

うちのメンバーからは、モデルとか作っているときには、どこからどういう情報をとっているとか、有報に出ている情報と、場合によって、短信で出ている情報と、中期経営計画で出ている情報、これら全部まとめてみないと、なかなかフルピクチャーが分からないというフィードバックを受けました。そういう面では、海外投資家で日本語ができなければ、結構大きなビルディングブロックである有報が使えなくなってくる。とてももったいないと思います。個人的意見ですが。

あと、IFRSとJGAAPの場合に関しては、コストとかニーズがあるかどうか、そういういろいろな判断の中で、おそらく話が進んでないのだと思います。もしJGAAPでだけでしか出していないのだったら、これをうちの方でJGAAPで分析するしかないと思うんですね。そこは我々で苦労してカバーしています。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  今井様】

まず、有報について今井からお答えします。現状でも、アニュアルレポートについては自発的に英文で開示されている会社さんが多いと思いますが、実際、有報とアニュアルレポート見ると、多分、投資家の視点から見ると、アニュアルレポートの方が業界環境、マーケットシェアなどいろいろ説明があると思います。なので、多分、アニュアルレポートの方がおそらく需要もあるしということで、会社様が翻訳されているのかなと思うんですけれども。私がもともと冒頭申し上げた、紋切り型の表現が多いということで、有報はどうしても金商法の対象となって、内容が間違った場合はいちいち訂正報告書を出したりとか、いろいろ面倒くさい手続がある関係で、多分、日本語においても、ひな形で数字を毎年変えるだけになってしまって、その結果、あまり英訳しても意味がないだろうし、かつ、英訳して、それが間違ったときの責任はどうなの、みたいな形で、あまり翻訳されないのかなというふうに思っています。

したがって、おそらく一番良い解決は、有報にもきちんと投資家が求めるような実質的な内容があって、いちいち、ちょっと文字を間違ったところで、訂正報告書を出さないということにすることでしょうか。分からないんですけれども、有報は完璧でないとだめで、何か事業に関する不確実な推測の情報とかは出せないというような枠組みを変えて、有報のディスクロージャーをそもそも日本語で改善した上で、それで、英語も出すというのが多分一番望ましいのかなというふうに思っています。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  コールドウェル様】

会計基準でございますけれども、私も若干、スミスさんと同様で、基本的には我々、キャッシュ・フローでの企業評価が主となっておりますので、JGAAPでもIFRSでも、その会計基準を理解してキャッシュ・フロー・モデルをつくっていくのが基本ですので、特に全部がIFRSになるべきだとか、そういうことは特に強い意見はありません。ただ、やはりグローバルで競争している企業であればあるほど、グローバルの資本コストが必要だと思いますし、グローバルの投資家とも対話が増えると思いますので、そこのところで比べやすくするために、会計基準がより分かりやすいほうが、企業価値にはつながってくるのではないかなと思っています。

具体的な業界ですけれども、生命保険業界が非常によい例だと思います。JGAAPでは非常にあらゆるコストが引かれることによって、ソニーフィナンシャルさんとかはUSGAAPとJGAAPでの利益の水準が何倍も違ったりします。そこで、なかなか海外のM&Aをするときに、高いマーケットキャップによって、ある意味で買収通貨とかが得られないとか、投資家の方で理解がしづらいことによってデメリットを受けるケースは、業界とか個別企業によってはあり得るのかなというふうに思います。

Empire buildingの質問ですけれども、やはり日本でのempire buildingと海外でのempire buildingは若干本質的なところで違いがあるのではないかなと思っております。アメリカでも報酬制度が、変に設計されていることによって、変なempire buildingとかが行われた場合もあり得ると思います。日本では、どっちかといえば、資本コストを認識せずに売上を増やしたりとか、海外の比率を上げたりとか、海外出張とか、海外の拠点を持ったりとか、そのような資本コストをそれほど見なくて、empire buildingする経営者が一番企業価値の毀損につながってきているのではないかと思っておりまして、よく新聞報道とかでもよく出ていると思うんですけれども、海外M&Aでよく高値を出して、後ほど減損する企業がこの10年、20年、それなりに多くあると思うんですけれども、やはりそこは基本的には、何か資本コスト、企業価値の向上を理由とした海外への投資ではなくて、どちらかといえば、多分別の理由でのempire buildingがそこのところでの毀損の原因になっているのではないかなというふうに思っておりますので、若干アメリカ、欧州とは違う目的があった場合はあるのではないかと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

和里田委員、どうぞ。

【和里田委員】

プレゼンテーション、ありがとうございました。

皆さん、結構日本語も達者で、日本株に従事している期間もかなり長いということで、よく日本企業の現状をご存じかと思いますけれども、スミスさんがおっしゃったように、上場企業の開示には「ばらつきがある」という問題があります。

いわゆる開示には法定開示から、取引所規則に基づく開示、それから、個別のIRミーティングであるとか、決算説明会、その資料とか、そういった任意開示もあって、いろいろな形でフルパッケージで整え、先進的にやっている会社さんもいれば、必要最小限しかやらない会社さんもいます。

皆さんのお話でも、「ばらつきがある」という指摘がありましたが、任意開示を全く何もしていない、薄っぺらい短信だけ作成しているという会社さんというのは、多分、皆さんの投資対象としてスクリーニングプロセスにすら入ってこないんじゃないかと思います。この場は法定開示をどうするかという議論ですが、その中で、まず、皆さんが今お話になった、例えば、まず投資対象とするような企業がそもそもどういう企業なのかというところをちょっと伺いたいです。つまり、スクリーニング対象になってないような会社さんの開示レベルを引き上げるというのも、このワーキングでの議論の対象であると思いますが、一方で、非常に先進的にやっている企業の開示をさらによくしていきましょうという論点もあると思います。例えばファラロンさんのさらなる改善の余地なんていうのは、後者の方じゃないかと思います。資本コストをちゃんと十分認識して、それを株主と共有していくとか、取締役のインセンティブなどの視点です。

そこで、皆さんがこのプレゼンテーションをつくる際にイメージされている企業というのは、平均的にどういう水準の開示をされている企業を想定されているのかについて伺いたいと思います。

【神田座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。

【CPPIB  サムタニ様】

一般的に言うと、日本ですごく有望な企業はオペレーション的にはたくさん見つけられます。ただ、資本コストや資本投資に関しては、ちょっとまだギャップがあるとか。例えば、ものづくりはすごく上手ですけれども、資本政策に関しては、もうちょっと頑張ってほしいとか、そういうタイプの企業を逆に探しています。そういうタイプの企業は、改善の方向に向かえば、企業価値も徐々に高まってくるのではないかと思っています。

【インダス・キャピタル・アドバイザーズ  スミス様】

投資の基本というのは、やはりその企業価値が正しく現れていない上場企業に投資することだと思います。言いかえれば、割安な銘柄です。その割安になってしまった背景というのは、様々あるかと思いますが、基本的には、資本効率が芳しくない、資本効率をよくする余地が大きいということだと思います。

ですから、企業ディスクロージャーと資本効率の悪さというのは、必ずしも一致しているわけではないですけれど、連動していると思います。会社と手を組んで力を合わせてディスクロージャーを改善させるという努力は、多くの場合、資本効率の改善につながると思います。要するに、資本コストは一体何なのかという議論や、キャッシュ・フローの使い道は適切なのかどうかという議論など、一緒に力を合わせて、一緒に開示をよくするとともに、開示のオペレーションがよくなっていくというのは、投資家としては一番望ましいパターンだと思います。

これはエンゲージメントという言葉もよく使われますが、ディスクロージャーそのものは、全く別の世界の課題ではないと思います。資本効率と投資家エンゲージメント、スチュワードシップ・コードとの連動性もあると思います。なので、非常に奥深い言葉だと思います。やっぱりディスクロージャーの改善の余地がある会社に投資していきたいというのは、極めてよくあるパターンだと思います。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  今井様】

ディスクロージャーが改善しますと、資本効率の話がスミスさんから出ましたけれども、あと、典型的に日本の会社で、例えばセグメントが多いような会社さんがあるときに、どうしても事業ポートフォリオの管理のところで、例えばセグメントごとの詳しい数字を出していないとすると、実は非効率な事業がその中に隠れていたりとかするわけですよね。

それが例えばセグメントごとにROICのターゲットを設定して、それによって、実は社内も、例えば過去、とある会社さんなんかでは、実は事業ごとにそもそも資本利益効率性をそもそも管理していなかったというような会社さんも大企業の中には以前はあったというふうに理解しているので、対外的にそれをディスクローズすることによって、社内の中の規律が生まれて、必要なポートフォリオの入れかえが行われるといったこともあるのかなということなので、資本効率に加えて、それ自体が、まさにそれが結果的に資本効率につながるわけですけれども、社内を変革する1つのきっかけとして、ディスクロージャーがあるという側面もあるのかなと思います。

1つのデータポイントですけれども、日本の大企業さんの時価総額を20年とかで見るとTOPIXほど上がっていない。他方で、アメリカの場合は、大企業はきちんとS&Pより上がっている。セグメントが多い大企業さんほど、実は隠れたお宝、必ずしもフルポテンシャルで経営されてないような事業とかがあるのかなと。そういうものが外に出て独立するなりするということは非常にいい、投資家にとってもそうですし、社会全体にとっても生産性を高める上ではいいのかなというふうに思っています。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  コールドウェル様】

質問の直接な回答の観点からは、いろんな話が今まであったとは思うんですけれども、基本的には、サイズ的にはある程度の流動性を保っている会社でなければ、それなりの投資はできないんですけれども、ディスクロージャーのレベルは会社によって結構幅がありますし、我々の投資対象としている先も、基本的な原則は、理論価値よりも安く市場で評価されていることですので、必ずしも全ての投資先が優れたディスクロージャーを行っているわけではない状態です。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、三瓶委員、お願いします。申しわけないのですが、時間の関係がありまして、ゲストの方へのご質問は三瓶委員をもって最後とさせていただきたいと思います。どうぞ。

【三瓶委員】

ゲストの方々、プレゼンありがとうございました。フィデリティの三瓶です。

皆さんに日本と海外の比較の上で、お考えを聞きたいんですが、よく会社に、もっとディスクローズしてくださいと言うと、それはビジネス上の大事な秘密だから、これ以上は開示できませんという答えが来ます。

そういう場合でも、その会社のグロスマージンであるとか、リターン・オン・インベステッド・キャピタルを見たときに、特に高くないんですね。アベレージぐらい。ものすごく高いのであれば、秘密があって、これは誰にも言いたくないかもしれないけれども、そうでもない。けど、言えない。ほんとうにそんな秘密があるのかなということ。

もう一つ、日本の会社じゃない例では、ものすごくマージンが高くて、リターン・オン・インベステッド・キャピタルが高くて、という会社が、そのユニークなビジネスモデルを明確に説明している場合があります。たくさんあります。でも、そのときには、実は説明してももう今からまねできないから、だから、自信があるから説明しているのか。

今、2つの例を話しましたけれども、情報として話せる、話せないというのはどの辺までを求めるべきなのか、このぐらいまで話してくれればいいです、それ以上はほんとうに秘密だから言わなくていいですよという、そういう感覚があれば、ご紹介いただけますでしょうか。

【インダス・キャピタル・アドバイザーズ  スミス様】

当然、数字は極めて大事だと思いますけれども、ただ、それよりも、やっぱり経営戦略です。基本的な考え方の方が、より重要だと思います。だから、その機密の情報を開示できませんというのは、三瓶さんがおっしゃるように、多くの場合、弁解になってしまうケースが多いと思います。

うちはそんなに求めていないんです。何らかの形で調査が可能性だと思います。業界の専門家と話したりとか、競合相手と話したりとか、部品メーカーさんと話したりとか、何らかのその会社の関係者との話合いの中で、より深い勉強ができると思います。

だから、必ずしも直接会社から聞かなくても、いろんな有益な情報が入手できると思うので、それは会社から聞きたいなと思うのは……。

【三瓶委員】

ごめんなさい、会社から聞くというよりは、こういった制度開示のときに、こういう項目を開示してくださいという趣旨で、例えばクロスシェアホールディングスの考え方を開示してくださいというと、それは大事な機密情報だから言えませんという、制度開示のときの言えませんという場合です。

【インダス・キャピタル・アドバイザーズ  スミス様】

そうですね、その持ち合い株の場合は、ほとんどそれはあり得ないと思います。機密の情報があるから開示できないというのは、あり得ない。確かにお互いに深い関係があるのでしょうが、じゃあ、お互いに株を持たないといけないのか。そういうのは全く別の話だと思います。そういうのはやっぱり要注意だと思います。

だから、持ち合い株に関しては、もう少しやっぱり明確な説明が必要だと思います。機密情報があるから開示できませんというのは、とても納得いきません。

それだけではなくて、例えば各セグメントの利益率とか、粗利率とか、場合によっては、やっぱり開示できないところもあるかと思うんですけれども、でも、何となく、業界の基準、業界のトップレベルの水準は何となく勉強できると思うので、うちとしてはより個別の、細かい数字よりも、経営戦略、考え方に注目しています。答えになっているかどうか分かりませんけれども。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  コールドウェル様】

我々からすると、やはり利害の一致がなされているのか、なされてないとかというのが非常に重要だと思っています。海外だと、株価がもっと上がれば、自分の報酬も上がるケースが結構多いですので、逆に、みんなに自分のビジネスモデルの優れていることを知ってほしいというのがおそらくインセンティブの働き方だと思います。

日本の場合だと、そういう開示をしたくない方々のインセンティブは、もしかしたら、投資家に責められるのが嫌だとか、説明するのが嫌だとか、その責められることによって、逆にリストラをしなくちゃだめだから、いろんなやりたくないことをやらなくちゃだめということとかがあったりすると思います。

もともとの最初のポイントには戻りますが、やはり会社と経営者と資本市場の間での利害の関係と、その利害を確認するための開示がちゃんとなされているのか、逆に、開示自体が経営者を楽にさせるように解釈することによって、市場の機能を緩くしているのか、そこのところにつながってくると思います。

【ファラロン・キャピタル・マネジメント  今井様】

機密情報との関係は、通常、上場企業が秘密保持契約を締結する場合は、法定開示のところは多分大体カーブアウトされていてディスクローズできるということになっていますが、持ち合い株式は、厳密には法定開示ではないですけれども、そういったものも含めて、開示しないといけないというのがベストプラクティスになれば、それは言い訳として使われないのかなと。

我々もいろいろ話をする中で、よく秘密情報なのでということは言われるので、ポールが申し上げたインセンティブが一致するのが一番いいのですけれども、それが無理な場合は、法定開示の基準を高めることによって、必然的に開示せざるを得ないというような形にするのも1つなのかなというふうに思います。

【CPPIB  サムタニ様】

ちょっと別な側面でコメントをさせていただきます。我々の経験ですけれども、我々は長期的な投資判断をしていますから、短期的なグロスマージンとか、そういう数字は、一応、注目はしていますけど、そんなに大きなポイントでなくて、もっと長期的な戦略を大事にしています。

ただ、IRとかの相手方のシニオリティに関して、多分影響してくることだと思います。ジュニアの方だったら、結構開示するのが怖いと思っているケースもあります。最近、結構シニアの方、例えばCEOとかCFOとか、そういう方は、もっと開示ができることを分かっていますから。もっと会社の中でも、どこまで開示できるかについて、もうちょっと明確に出してもらえれば、もしかしたら、そこにも影響が出てくる可能性もあると思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、どうも、3人のゲストの皆様方、4人ですけれども、どうも本日はありがとうございました。

今日は、残り時間があと10分程度になっているのですけれども、事務局から資料2のご説明をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【田原企業開示課長】

それでは、引き続きまして、資料2のご説明をさせていただければと存じます。

1ページ、おめくりいただけますでしょうか。本ワーキングでは、この4つのトピックに従いまして議論を進めてきていただいておりますけれども、今回は、3を飛ばしまして、先にその他の課題からご説明をさせていただければと存じます。

主に2点でございまして、1つ目は、EDINETなど、ITを活用した情報提供の今後のあり方についてどう考えるか。2つ目は、本日も議論になりました英文による情報提供のあり方などについてどう考えるか。この2点についてご議論を頂戴したいと思います。本日は説明だけになるかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。

1ページおめくりいただきまして、3ページでございます。第1回の会合で、以下のようなご指摘を頂戴しました。例えばEDINETの利用に当たりまして、タブレットなどでの使い勝手が悪いので、そういったものについて改善する必要があるのではないか。それから、EDINETを通じて、株主総会前に有価証券報告書が提供されるというプラクティスが重要ではないか。現在、法制審議会で株主総会資料の電子提供について議論が行われておりますけれども、会社法上求められる情報についても、EDINETを通じて提供されることが望ましいのではないかというご意見を頂戴しました。3点目といたしまして、金商法上の開示書類の縦覧期間が短いので、延長すべきではないかというご指摘も頂戴しました。4つ目といたしましては、EDINETにおける金商法上の法定開示書類間での参照などもできるようにしてはどうかというご指摘を頂戴しました。

以下、これらの点につきまして、ご説明を差し上げられればと存じます。

4ページでございますけれども、まずは、株主総会資料の電子提供制度にEDINETがどのように活用できるかという議論でございます。開示府令上、事業報告・計算書類が有価証券報告書の添付書類とされておりますので、EDINETで開示されているわけでございます。また、有価証券報告書につきましては、提出会社様におかれまして、任意の記載を加えることが可能ですので、実務上、株主総会参考資料などについても添付されている例が多いということでございます。

先ほども申し上げましたように、現在、株主総会資料の電子提供制度の導入について、法制審議会でご議論いただいております。この中で、当庁からは、事業報告などと有価証券報告書の一体化という議論がかねてあるわけですが、これを容易にして、早期開示できるようにするという観点から、EDINETで株主総会前に事業報告などの記載事項を含む有価証券報告書を金商法の書類として開示する場合についても、会社法上の電子提供として認められることが望ましい旨、意見表明をして、現在、法制審議会でご議論いただいておりますので、この点につきましても、委員の皆様のご意見を頂戴できればと考えております。

5ページ目以降はEDINETの概要ですとかについてご説明をしているものでございますけれども、皆様、ご存じの点が多いと思いますので、簡単なご紹介にとどめさせていただければと思います。

EDINETは、提出者の皆様から、法律に基づく開示書類をいただきまして、それを開示しているわけでございまして、いち早く、XBRL、それから、インラインXBRLなどの導入も進めてきております。最近の取組といたしましては、コーポレート・ガバナンス情報やIFRS財務諸表につきましてもタグ付けをするということで、これは来年の有報から適用いたしまして、利用者の皆様がデータ分析しやすいようにしたいということを考えておりますし、また、情報ベンダーの皆様は、情報をとるときに、実際、ページを見に行って情報をとっているということで、非常に負荷がかかっておりますので、API対応することで負荷を下げて、システム全体を使いやすくするということも考えているところでございます。

6ページをご覧いただきますと、現在考えていますコーポレート・ガバナンス関連情報のXBRLの詳細タグ付けのイメージでございますけれども、現在、ガバナンス情報全体に大きなタグが付いているだけなんですが、この内訳、例えば役員の状況、男性役員の数、女性役員の数、こういったものにタグ付けすることで、分析をよりしやすくするという取組を進めているところでございます。

1ページおめくりいただきまして、7ページ、8ページ、米国、欧州の開示の動向でございますが、日本がモデルにしたEDGARは1992年から稼働しておりまして、1994年以降のデータ、稼働内のデータは基本的に全部残っているという意味では、先ほどの日本の3年、5年で消えていくというのとはかなり違っているわけでございますが、インラインXBRLなどの導入については日本のシステムの方が先んじているという状況でございます。

それから、欧州は、EDGAR、EDINETのような仕組みというものがなく、各企業が自社のウェブサイトなどで公表するという仕組みになっておりますけれども、現在、電子開示の形式の統一化や、インラインXBRLの導入に向けて取組が進んでいる状況というふうに伺っております。

9ページ、金商法の開示書類の現在の公衆縦覧期間でございますけれども、1年から5年ということで、期間にばらつきがあるということでございます。また、期間が短いものもありますので、公衆縦覧期間の延長についてのご意見を頂戴しているというふうに認識しているところでございます。

本日2点目の英文による情報提供でございますが、10ページにございますように、第1回会合で、非財務情報へのニーズの高まりの中で、翻訳へのニーズが高まっている。あるいは、本日もご紹介がありましたけれども、例えば日経225銘柄に該当される企業さんをとったときに、9割の企業さんでは英訳したアニュアルレポートを作成されていますが、有価証券報告書はほとんど英訳されていない。それから、財務諸表に関しては、先ほど申し上げましたように、XBRLで開示がされていますので、利用者側では英訳は比較的簡単ではないか。それから、非財務情報などでも、政策保有株式などについては英文対応しやすいんじゃないかというようなご指摘を頂戴したところでございます。

1ページおめくりいただきまして、以上の点について、おそらく次回になると思いますが、どんなご議論を頂戴できればということでございますけれども、まず、ITを活用した情報提供、EDINETのあり方に関する論点につきましては、最初にご説明しました事業報告などの記載事項を含む有価証券報告書のEDINET開示を、事業報告等の提供方法の1つとすることで、一体的開示をより容易にするということについて、どのように考えるかということ。

それから、EDINET上の開示書類の縦覧期間を延長すべきとの意見がございますけれども、この点について、検討するべき論点はないかということ。

それから、その他、EDINETの利便性向上のために、どのような取組が有効と考えられるかということで、15ページ以下に記載をさせていただいておりますけれども、例えば検索の仕方ですとか、それから、通称が検索しにくいというご指摘を頂戴しているわけですけれども、この点については、事業者側さん、事業者の皆様に入力データを増やしていただければ、検索しやすくできるということもございますので、16ページにあるような取組をどう考えるかということ。

それから、17ページにありますように、現状、XBRLで提供されるデータにつきまして、専用ソフトウェアを提供して、それで、処理していただくということも可能になっているわけなんですが、そもそも、HTML表示と同様の形式で提供するようなことを考えるべきではないかというご指摘も頂戴しておりますので、こういったことについて、どういうふうに考えたらいいかということについて、ご指摘を頂戴できればと考えております。

そのほか、ITを活用した情報提供、EDINETのあり方について検討すべき論点があるということであれば、その点についてもご教示いただければと存じます。

2点目の英文による情報提供に関する論点につきましては、特に海外投資家の方からのニーズが高いということについては本日ご披露があったとおりでございますけれども、どういった取組が考えられるか、例えば以下のような対応についてどう考えるか、また、検討すべき論点が何かについてご指摘を頂戴できればと存じます。

まず、12ページに掲げさせていただいておりますが、ご意見の中にも出ておりましたが、データ自体はXBRL化されておりますので、もちろん追加投資が政府の側で必要になりますけれども、EDINET上で、財務諸表本表を英語表示するという取組もあり得るかと考えておりまして、これが12ページに記載されているようなイメージでございます。

また、13ページにございますけれども、中身のデータ自体は日本語ですけれども、それがどういうデータであるかということについて英語で示すということはXBRLを使えばEDINET上でも可能でございます。これもやはりシステム対応が必要ですので、そのコストベネフィットを考えてということになります。その点についてもご指摘を頂戴できればと存じます。

それから、11ページ、そのほかの取組といたしまして、例えば有価証券報告書の英訳を実施している企業の一覧を金融庁のウェブサイトで公表するというようなこともインセンティブになるんじゃないか、あるいは、投資家の方から見たときに、どういう企業さんが英訳されているか分かりやすいんじゃないかというご指摘も頂戴しておりまして、そういったことについてどう考えるか。

それから、任意で英訳されている有価証券報告書をEDINETの英語サイトに掲載するということはしていないわけですけれども、これを掲載できるようにするという取組もあり得るかと思っておりまして、この点についてもご意見を頂戴できればと存じます。

そのほかに、本日いただいたご指摘も踏まえまして、どういった取組が有効と考えられるかについて、広くご意見を頂戴できればと存じます。

以上、駆け足で恐縮でございますけれども、次回に向けて論点についてご紹介を申し上げました。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それで、今日はちょっと残念なのですけれども、時間が来ておりますので、今ご説明いただきました資料2をご覧いただいて、特に最後のスライドの11枚目に論点を上げさせていただいておりますので、これに沿ったご意見をぜひいただきたく存じます。

ご意見をいただくのは次回ということになるのですけれども、次回の議論を円滑に行うために、また、その先、取りまとめ等を意識して議論を深めていくことも考えますと、皆様方におかれましては、もし可能であれば、次回会議の前に個別にご意見を事務局までメール等で提出いただけませんでしょうか。そうしましたら、それを整理させていただいてご披露し、さらに、その先のご議論、ご意見を次回いただくということをやってみたいと思っております。

私の司会の要領が悪くて、本資料についてのご意見をいただくところまで時間がとれませんで、申しわけありませんでした。繰り返しになりますけれども、次回ご議論をいただきますが、次回の会議の前に、ご意見をメール等で事務局までお出しいただけましたら、大変ありがたく存じます。

それでは、時間になりましたので、本日はここまでとさせていただきます。

最後に、事務局からのご連絡等、お願いいたします。

【田原企業開示課長】

第3回のワーキング・グループの際にご案内させていただきました、当ワーキング・グループでご議論いただいている論点についてのパブリックコメントでございますけれども、予定より大変遅くなって恐縮でございましたが、先週金曜日の20日から開始しております。非財務情報ですとか、あるいは、ガバナンス情報について、どういった情報が開示されるべきかということについて、広く意見を募集しているところでございますので、ご承知おきいただければと存じます。

また、お知り合いの投資家の方、企業に方にご意見をぜひ出していただくよう、お願いしていただければと存じます。提出いただいたご意見につきましては、当方で整理させていただきまして、今後の審議の参考にさせていただきたいと存じます。

次回の日程につきましては、またご都合をお伺いさせていただいた上でご連絡を差し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3846)

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