金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第7回) 議事録

  • 1.日時:

    平成30年6月8日(金)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

それでは、定刻より少し早いのですけれども、本日ご出席予定の皆様方、全員おそろいでございますので、始めさせていただきます。金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」第7回目の会合を開催させていただきます。

皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

早速ですが、議事に移らせていただきます。

お手元の議事次第にございますように、本日はまず事務局から、意見募集に寄せられたコメント(資料1)の紹介、そして、「論点整理」(資料2)についてご説明をいただきます。

もし、今日ご議論いただいた後、時間に余裕があるようでしたら、経済産業省さんから、「統合報告・ESG対話フォーラム」の報告資料(資料3)についても簡単にご紹介していただく予定でございます。大変申し訳ありませんが、もし時間がなくなっていた場合には、資料の配付のみとさせていただきます。

それではまず、事務局からのご説明をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

それでは、お手元の資料1、2につきまして、ご説明をさせていただければと存じます。

先般、今回のディスクロージャーワーキング・グループでの議論につきまして、意見募集を実施させていただきました。資料1は、その意見募集に寄せられたコメントをまとめさせていただいたものでございます。本日はお時間の関係がありますので、口頭での詳細なご説明は省略させていただきますけれども、おめくりいただきますと、1ページ、経営戦略・ビジネスモデル、2ページ、MD&A、3ページ、リスク情報・人的情報、4ページ、政策保有株式、5ページ、役員報酬、6ページ、ガバナンス情報全般、それから、7ページ、8ページに会計監査に関する情報、9ページ、その他の意見ということで、広範な意見を頂戴いたしております。おおよその意見は、これまで当ワーキング・グループでご議論いただいた内容を後押しするようなものではないかと思っておりますけれども、適宜ご参照いただきまして、本日の議論に反映させていただければと存じます。

次に、お手元の資料2をご覧いただけますでしょうか。本日ご議論いただきたい「論点整理」でございます。これまでの議論をまとめさせていただいたものでございまして、大きく4つのパートからなっております。本日は主にこの中の四角で囲った部分につきまして、ご意見を頂戴できればと存じます。その部分につきまして、10分ほどでご説明をさせていただきたいと存じます。

1ページおめくりいただきまして、まず1つ目の柱であります「財務情報」と「記述情報(非財務情報)」についてでございます。

「2.経営戦略・ビジネスモデル」でございますけれども、2ページの四角の中にございますように、我が国におきましても企業の目的、経営戦略、ビジネスモデルにつきまして、取締役・経営陣の見解に即して、より具体的で充実した説明がなされ、投資家がこれを適切に理解することができるようにしていく必要があるのではないかというご議論が行われてきたように思います。

具体的には、企業の目的と経営戦略の説明につきましては、イギリスの例などを参考に、企業の計画・方針などをより明確にご説明いただくようなことが必要なのではないか。また、3つ目の丸で、ビジネスモデルにつきましても、どのように中長期的な価値創造に取り組んでいるかといったことがより明確にされ、先ほどの企業の目的や経営戦略と関連付けて説明されるということが重要ではないかという議論であったように思います。また、こういった際に、取締役・経営陣が積極的に自らコミットして考え方を示していただくとともに、MD&AやKPI、リスク情報との関連付けをした上で説明されることが重要ではないかといったご指摘をいただいたように思いますので、この点について、ご確認をいただければと思います。

次に、「3.MD&A」でございます。4ページの四角の中でございますけれども、MD&Aにつきましては、投資家が経営者の視点から企業を理解するための情報を提供し、財務情報全体を分析するための文脈を提供するとともに、企業収益やキャッシュ・フローの性質やそれらを生み出す基盤についての情報提供を通じ将来の業績の確度を判断するという、開示上、非常に重要な役割を担っているということでございますけれども、これまでその内容についていろいろご指摘をいただいてきました。

2つ目の丸の最後にございますように、経営のトップレベルが早期から関与し、経営者としての説明責任を果たしていくことが肝要ではないかと、ご指摘を頂戴したように思います。また、3つ目の丸にございますように、セグメント分析につきましては、セグメントの状況がより明確に理解できるような情報が開示されることが必要ではないかというご指摘があったように思います。それから、MD&Aの中で非常に重要な一部を成します資本の財源とキャッシュ・フローに関する情報につきましては、どこからどのように資本を調達しているのか、経営戦略の遂行上、調達した資本をどのように設備投資や研究開発などの資金需要に振り分けていくのかといった情報がより実効的に開示されるべきではないかというご指摘をいただいたように思います。また、会計上の見積り・仮定につきましては、経営陣の関与の下、より充実した開示が行われるべきではないかというご議論であったように思います。

次に、「4.リスク情報」でございます。5ページの下の四角の中でございますけれども、リスク情報につきましてもいろいろご議論を頂戴いたしまして、我が国においても、英国で見られる開示実務を参考に、経営者視点からみたリスクの重要度の順に、発生可能性や時期・事業に与える影響・リスクへの対応策等を含め、企業固有の事情に応じたより実効的なリスク情報の開示を促していく必要があるのではないかというようなご議論であったと思います。

その下から、「5.その他」ということで、人的情報等、重要な契約、分かりやすい開示についてでございます。

1つ目の人的情報等につきましては、6ページの上の四角でございますが、人的情報やいわゆるESG情報への関心が近年高まっているということでございまして、こうした情報につきましても、法定・任意開示でより適切に開示することが求められているのではないかというご議論をいただいたように思います。

それから、2つ目の重要な契約につきましては、現在でも開示をお願いしておりまして、米国並みの規定を設けているわけでございますけれども、米国で開示されている契約内容はそもそも契約書という形で添付されているわけですが、米国で開示されている契約がが日本では説明されていないことがあるのではないかというご指摘を頂戴いたしたところでございます。したがいまして、重要な契約につきましては、より適切な開示を促していく必要があるのではないかというご議論であったように思います。

それから、3つ目の分かりやすい開示につきましては、次のページの中ほどの四角でございますが、こちらにつきましても、諸外国の取組みなどを参考に、法定開示書類等において、投資家にとって重要な情報を十分かつ正確に、また適時に分かりやすく提供するため、更なる取組みが行われていくべきではないかというご議論であったように思います。

6ポツで、「財務情報」と「記述情報」の充実につきまして、考え方を整理させていただいておりますけれども、こういった情報の提供に当たりましては、やはり経営トップの関与が重要ではないかというご指摘を頂戴しているところでございます。一方で、一部の我が国企業では、そもそも経営戦略・財務状況・リスク等について十分議論されていない、認識がないのではないかというご指摘も頂戴しておりまして、そういった開示が足りないことによって、一部の短期投資家が企業分析に立脚せずに値動きを追うような事態にもなっているのではないかというご指摘も頂戴したところでございます。

8ページをご覧いただきまして、一番上の丸でございますけれども、こういった観点から、自社の経営戦略・財務状況・リスク等に関する議論を促し、我が国企業における、これまで申し上げてきましたような情報、記述情報の開示の充実を実現していくことが重要であるというご意見を頂戴してきたように思います。

その際のやり方でございますけれども、もとより、開示内容について具体的に定めるルールの整備は必要かと存じますが、それが単なるコンプライアンスという形になってしまいますと、この10年、20年、うまくいかなかったことを繰り返してしまう面もございますので、1つのやり方としまして、その開示内容や開示への取り組み方について実務上のベストプラクティス等から導き出される望ましい開示の考え方・内容・取り組み方をまとめたプリンシプルベースのガイダンスの策定を検討してはどうかということで、ここにまとめさせていただいているところでございます。

その際、先ほど申し上げましたように、経営トップが責任を持って早期から関与するということですとか、取締役会において開示の方針が十分に審議されることが重要ではないかということについて、ご指摘をいただいてきたかと思いますので、それを記載してございます。

それから、英国FRCでは、「財務報告ラボ」という組織を立ち上げて、投資家と企業が集まって、企業情報の開示の更なる充実に向けた実務対応について議論をされているということでございまして、ルール、プリンシプルベースのガイダンスの整備に加えまして、適切な開示実務の積み上げを図る観点から、例えば、一部企業のベストプラクティスを全体に浸透させるための取組みを行っていくことが必要と考えられるのではないかと思っております。ベストプラクティスを参考にして、全体のレベルの向上を図るべきと。また、そういったものを積み上げていく中で、必要に応じ、先ほど申し上げたガイダンスに反映させていくということを通じて、記述情報の充実を図っていくことが重要ではないかと考えておりまして、その点についてご指摘を頂戴できればと存じます。

1ページおめくりいただきまして、9ページから、2つ目の柱でありますガバナンス情報の提供についてでございます。大きく2点、役員報酬と政策保有株式でございます。

まず、「2.役員報酬に係る情報」についてでございますけれども、10ページ、我が国におきましても、経営陣の報酬内容・報酬体系と中長期的な企業価値向上との結び付きを検証できるように、役員の報酬プログラムの開示において、例えば、固定報酬、短期の業績連動報酬、中長期の業績連動報酬それぞれの算定方法ですとか、固定報酬と業績連動報酬の支給割合を定めている場合にはその内容など、業績連動報酬の決定・支給の方法やこれらに関する考え方を分かりやすく記載することが必要ではないかというご議論を頂戴してきたように思います。

それから、報酬実績につきましても、実際の報酬が報酬プログラムに沿ったものになっていることが確認できるような情報提供が行われるべきではないかというご指摘を頂戴したように思います。

また、報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能とするための開示も重要であるというご指摘を頂戴したと思いますので、その点について、3つ目の丸で書かせていただいております。

議論が分かれておりますのが11ページの丸でございますけれども、役員に関する報酬総額等の個別開示でございます。現行の開示制度上は、連結報酬総額1億円以上の方につきましては、個別開示をお願いするということになっているわけでございますけれども、企業価値の向上に貢献した経営陣に対して、それに見合った報酬を提供していくべきとのコーポレートガバナンス上の要請に合ったものとなっていない可能性が指摘されているところでございます。

例えば、英米では、この場でもご紹介しましたように、取締役全員と、執行部については報酬額上位から一定数の者について個別開示を求めておりますので、例えば報酬水準ではなく、報酬額上位から一定数の者について個別開示を求めることが考えられるという意見もございました。一方で、我が国企業の役員報酬の水準が諸外国と比較して低いことですとか、先ほどの報酬の内容や決定方針等に関する開示が充実すれば報酬の適切性を検証することが可能となるので、個別開示の対象を拡大することは必ずしも重要ではないというご意見も頂戴したところでございます。この点について、本日ご指摘を頂戴できればと考えているところでございます。

それから、「3.政策保有株式」についてでございます。11ページの下の四角になりますけれども、政策保有株式につきましては、コーポレートガバナンス上もご議論をいただいているところでございます。その中で政策保有株式の保有意義・効果について様々な見方が示されており、そうしたことについて議論をしっかりしていく観点、それから、資本コストをかけてリスクをとって株式を保有する以上、政策保有に関する方針、目的や効果は具体的かつ十分に説明されるべきではないかというご議論であったように思います。また、政策保有株式の保有につきましては、その合理性を検証する枠組みや取締役会等における議論の状況について開示を求めるべきではないかというご意見も頂戴しました。

個別の政策保有株式の保有目的・効果につきましては、現行の開示状況に照らして、より具体的な記載を求めるべきではないかというご指摘をいただいたように思います。

それから、12ページの真ん中の四角でございますけれども、政策保有株式の増減とその理由が明確に分かるようにすべきではないかというご指摘を頂戴しました。

それから、開示対象となる銘柄数につきまして、現在30銘柄の開示をお願いしているわけでございますけれども、例えば、日経500種企業が保有する政策保有株式数の中央値が約60銘柄であることなどを踏まえれば、開示対象を拡大すべきではないかというご指摘も頂戴したところでございます。

また、純投資と政策投資の区分の基準や考え方について説明をいただいた方がいいのではないかというご指摘も頂戴しました。また、先ほどの意見募集の中でもご指摘を頂戴しているのですが、純投資の対象である株式等についても一定の開示を求めることが必要ではないかというご指摘も頂戴したところでございまして、この点についてもご意見を頂戴できればと考えております。

それから、12ページの一番下の四角になりますけれども、政策保有株式として株式を保有している相手方にどれだけ株式を保有されているかということも重要な情報でありますので、これについても記載を求めるべきではないかというご意見を頂戴いたしました。

また、次のページになりますけれども、個別の政策保有株式について、議決権行使の内容の開示を求めるべきではないかというご意見も頂戴いたしました。これらの点につきましても、本日ご議論を頂戴できればと考えております。

それから、「4.その他のガバナンス情報の充実と提供」についてでございますが、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書におけるガバナンス情報の提供のあり方について、ご指摘を頂戴いたしました。

まず、有価証券報告書のガバナンス情報の記載の仕方について、より分かりやすくする観点から整理が必要ではないかというご指摘を頂戴したように思います。

それから、企業統治の体制の「概要」につきまして、提出企業の機関設計に応じまして、その構成、設置目的等が分かるようにするべきではないかというご指摘も頂戴したと思います。

取締役会、委員会等の活動状況につきましても、欧米同様、開示をするべきではないかというご指摘を頂戴したように思います。こちらにつきましては、有価証券報告書に記載をするという考え方もあると存じますが、現状の記載のバラつき具合などを考えますと、まずもってはコーポレート・ガバナンス報告書で記載の充実を促すべきではないかと考えてございますけれども、この点につきましてもご指摘がありましたら頂戴をしたいと考えております。

また、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の関係でございますけれども、14ページ中ほどに整理させていただいておりますように、見やすさという観点から、有価証券報告書に記載された内容につきましても、コーポレート・ガバナンス報告書でもう一度記載をしていただいて、総覧性を高めた方がいいのではないかというご指摘を、主に投資家サイドから頂戴したように思います。一方で、それは重複であるので、そういったことは避けるべきで、できるだけリンクで開示するということが望ましいというご指摘を、主に作成者、企業サイドの方々から頂戴したように存じます。必ずしもどちらのサイドがどちらの意見というわけでもございませんでしたし、実際どう提供されるべきかについては、少しずつ実務の積み上げというものを見ながら考えていく必要があるのではないかと思いますけれども、この点につきましても本日ご議論を頂戴できればと存じます。

15ページ以降、3つ目の柱であります提供情報の信頼性・適時性の確保についてでございます。

まず、「1.会計監査に関する情報」でございますけれども、16ページの四角にございますように、会計監査に関する情報の充実の必要性ということにつきまして、昨今の監査、会計をめぐる様々な事件を機に、議論を頂戴してきたところでございます。そういった中で、1つ目の黒丸、ネットワークベースの報酬額・業務内容についての開示、それから、2つ目の黒丸、非ネットワークの監査人に対するものであっても、連結子会社等に係る監査報酬については開示が必要ではないかというご指摘を頂戴したところでございます。なお、後者につきましては、現行でも重要なものについては開示をお願いしているところでございますけれども、実際の開示の状況についてはバラつきがあるという指摘がございまして、今回ご指摘も踏まえながら、こういった形で整理をさせていただいております。

それから、会社法上の開示の内容と有価証券報告書での開示の内容の関係についての考え方ですとか、有価証券報告書に監査役会等の活動状況についても開示すべきではないかというご指摘も頂戴しましたことから、その点についても、17ページにあるような形でまとめさせていただいておりまして、ご意見を頂戴できればと考えております。

次が、「2.開示書類の提供の時期」でございます。

まず、有価証券報告書の株主総会前提出についてのご指摘でございますけれども、19ページの最初の四角の中でございますけれども、投資家と企業の対話の促進、議決権のより実効的な行使という観点から、各企業において、投資家との対話の状況等を踏まえながら、有価証券報告書の株主総会前提出への取組みが求められるのではないかというご指摘を頂戴したように思います。

それから、次が、重要情報の公表タイミング、19ページの下の方から20ページにかけてでございます。20ページの四角の中でございますけれども、一般的な重要情報の公表タイミングにつきましては、より適時に公表されることが望ましいのではないかという意見が強かったように存じます。

次に、四半期開示でございます。四半期開示につきましては、21ページにございますように、見直すべきとする意見、維持すべきとする意見、それぞれ頂戴しております。22ページの四角の中にまとめさせていただいておりますけれども、前回WGの議論などを踏まえた四半期決算短信の簡素化によりまして、四半期開示に伴う企業の負担は減少傾向にあると考えられる一方、投資家サイドからは、四半期開示の必要性について強い意見が寄せられていると考えております。したがいまして、現状におきましては、四半期開示を維持することが適当ではないかというふうにまとめさせていただいておりますが、この点についてもご指摘を頂戴できればと存じます。

それから、22ページ以降、沈黙期間でございます。23ページの四角でございますけれども、沈黙期間につきましては、一般的に日本企業の沈黙期間が米国企業などに比して長いということでございますので、この短縮を促すべきではないか。それから、決算期間中、決算期末においても企業と投資家の対話が妨げられていないことが改めて認識されるべきではないか。それから、決算数値等の情報の取扱いに関する自主規制、公平な情報提供に係る法整備が行われたことを踏まえますと、沈黙期間中、あるいは決算期末における柔軟な対応によって、取材や対話がより積極的に行われることが強く期待されるのではないかというご指摘を頂戴したと思います。こういった点について、海外の実務なども踏まえながら適切に進めていくべきではないかということであったかと存じます。

最後に、4つ目、その他でございますが、ITを活用した情報提供、EDINET等につきましてご指摘を頂戴いたしました。EDINETの利便性を向上させるべきではないか。それから、開示書類の縦覧期間の延長について、様々な制約要因はあるわけでございますけれども、今後検討していくべきではないかというご指摘を頂戴したように思います。

また、24ページの下の方、英文による情報提供についてでございますけれども、先ほどの意見募集でも、海外投資家から英文での情報提供を進めてほしいという強い意見が寄せられてございます。EDINET上での工夫、あるいは既に有価証券報告書を訳されている会社さんをウェブサイトなどに載せることで、そういった取組みを慫慂していくというようなことが必要ではないかというご指摘を頂戴してきたように思いますので、それを24ページ以降、まとめさせていただいております。

個別の話といたしまして、25ページの最後のところでございますけれども、先ほどの政策保有株式につきましては、有価証券報告書の英訳がなかなか進んでいないという現状を踏まえて、上位30位の例えば株式の保有状況について、ウェブサイトで英訳して公表することを促してはどうかというご指摘を意見募集で頂戴いたしました。この点につきましても皆様のご指摘を頂戴できればと存じます。

少し長くなってしまいましたが、私からの説明とさせていただきます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、これから討議に移らせていただきたいと思います。いつものことで大変恐縮でございますけれども、皆様方には、多数の方々にお越しになっていただいておりますこともあり、議事進行上、一人当たりの時間を意識して、ご意見、ご質問をお出しいただければ大変ありがたく存じます。

なお、小畑委員、熊谷委員、高濱委員、永沢委員からは意見書の提出をいただいており、大変ありがとうございます。委員の皆様方におかれましては、タブレット端末でご覧いただければと存じます。傍聴の皆様におかれましては、恐縮ですが、金融庁ウェブサイトに掲載しておりますので、適宜そちらをご覧いただければと存じます。

それでは、どなたからでもご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。とりわけ、今ご説明のありました資料2の枠囲みの部分を意識してご発言をいただければありがたく存じます。

それでは、川島委員、まずどうぞ。

【川島委員】

どうもありがとうございます。資料2について、3点、意見を申し上げます。

まず1点目は6ページ、「(1) 人的情報等」の第2段落目についてです。この中で、「人事労務管理など従業員に関する情報の充実が重要」という意見を記載いただいて、意義のあることだと思っております。人事労務管理全般に加えて、労働安全衛生や、女性活躍など多様性確保といったことが近年重要性を増しておりますので、こうした言葉を補っていただけたらと思います。

2点目は、その下の枠内にあります3行目以降のところで、「必要性に応じ、(中略)より適切に開示することが求められている」という記述がございます。その前の3ポツや4ポツのところでは、例えば、「より実効的に開示されるべき」ですとか、「より充実した開示が行われるべき」といった記述になっております。ここでいう、「より適切に」というのに加えまして、「充実させる方向で」といった記載にしていただけたらというのが2点目でございます。

最後、3点目は、11ページの枠内の最初の丸にあります、報酬総額等の個別開示についてであります。投資家と企業との建設的な対話、その基盤となる適切な情報開示という観点からは、報酬総額等の個別開示については、充実させる方向で検討することが望ましいと考えております。その際、開示の目的は、金額の水準のみならず、その額が役員等のインセンティブとして適切であるか、報酬プログラムに沿って適切な支払いがされているかなどを評価できるようにするためであることなどを踏まえると、報酬額で線引きすることよりも、経営に対する権限の大きさや、責任の重さなどで線引きすることの方がより合理的と考えます。したがって、報酬額上位から一定数の者という考え方に加えて、例えば代表取締役については個別開示をするといった線引きもあるのではないかと考えますので、その点についてご検討いただけたらと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、札を立てていただいた順番と私が理解したところで、石原委員、中熊委員、水口委員、小林昭広委員、柳澤委員の順でお願いします。

石原委員、どうぞ。

【石原委員】

ありがとうございます。最初に基本的な考え方のところで1点申し上げた上で、各論について申し上げたいと思います。

基本的な考え方に関してですが、投資家と企業との建設的な対話を促進する観点から情報開示が重要であることは、もちろん言うまでもないのですが、情報開示は、制度開示と任意開示から成り立っているわけでして、両者の目的的で効率的かつ効果的な役割分担について、とりわけ任意開示の重要性について、明確に記載されるべきではないかと考えております。

現実的に、独自の投資判断基準を持って個別銘柄選択を志向するアクティブの投資から、株式市場全体の成長に依存するパッシブの投資、あるいはESG等のテーマに応じたインデックスの投資等、投資家類型に応じて、必要とする情報の項目や深みというのは全く様々と思います。したがって、制度開示は、特に記述情報に関しては、ミニマムスタンダードをベースにベストプラクティスを確立していく、一方で、特に企業との個別のミーティングを重視するような投資家に対しては、関心事に応じて柔軟な対応が可能な任意開示を充実させて、深みのある対話を実現していく、こうした役割分担の考え方やあり方について、明確に記載していただけないかと考えております。制度開示だけでは投資家のニーズに応えられないことは、この場でプレゼンいただいた投資家の皆さんの話を聞いても明らかですので、この点についてぜひご検討いただきたいと思います。これが基本的な考え方に関してです。

このような基本認識に基づきまして、個別の論点につきできるだけ簡潔に意見を申し上げたいと思います。

まず、1番の財務情報、記述情報に関してですが、この記述情報に関しまして、ベストプラクティスを促すべく、プリンシプルベースのガイダンスを策定することについては賛成です。

それから、2番のガバナンス情報に関してですが、ベストプラクティスを参考としながら、役員報酬体系についての記述を充実させることには賛成です。一方で、個人別の報酬の開示につきましては、やはりいろいろなお話を伺っても、投資判断における具体的な情報の活用の仕方が不明でありますので、反対です。

それから、政策保有株に関してですが、この場でプレゼンされた投資家の皆さんのお話を伺っても、投資判断の際にどのように情報を活用されるのかが正直よく分かりません。世界に類例を見ない開示とも思われますし、グローバルスタンダードの観点からも、開示の一層の詳細化は不要と思います。投資家サイドの皆さんの意見は、政策保有は日本企業の資本収益性が劣位にあることの原因との、総論反対的な認識に立脚しているように拝察されますけれども、事業投資対象資産の選択というのは経営の根幹でもありまして、基本は総論ではなく各論の議論であるべきであろうと思います。したがって、むしろ企業との個別対話の中で深い対話が行われて、相互理解を深めて、保有意義のないものが解消されていく姿が本筋と考えております。なお、他社が保有する自社の株を開示することは、正確な情報の確実な入手という面で困難と認識しております。

それから、3番の提供情報の信頼性・適時性でありますが、ネットワークファーム以外の監査人に支払われる監査報酬の開示については、独立性とも関係がないように思われますので、実務負担も考慮しまして、反対です。

監査役会で議論した内容の開示という点ですが、これは、法的リスクにも関わりかねない問題でして、まず会社法としての議論が先決であろうと考えます。

有価証券報告書の株主総会前提出への取組みに関してですが、株主総会における議決権行使のために必要な、会社法書類では不足する追加的な重要情報は何かということについての議論が必要と考えます。

沈黙期間につきましては、もともとセルサイドのアナリストの皆さんが、決算発表前に、バイサイドの皆さんを連れて、企業に取材を求めるような状況が行き過ぎた反動という認識があります。当然ながら、企業にとって重要な投資家との有意義な面談の機会は貴重でして、多くの企業で既に柔軟に対応していると思われますので、殊更強く取り上げるような問題なのかどうか、少し疑問を感じるところです。

最後になりますが、投資家サイドの皆さんは、総論で情報を、情報をと言われるわけですが、どの情報を具体的にどう反映させて個々の投資判断を行ったかについて、分かりやすく納得感のあるご説明をいただけないかというのは、いつも感じるところです。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、中熊委員、どうぞ。

【中熊委員】

それでは、まず全体についてでございますが、論点整理の内容に関しまして、違和感は全くなく、当「論点整理」に挙げられた全ての項目について、今後更に議論を深め、実現に向けた取組みがなされることを希望します。

特に、経営戦略やビジネスモデルについて、取締役・経営陣が積極的に自らコミットして考え方を示すとともに、MD&AやKPI、リスク情報とも関連付けた説明が行われること、また、実施状況や今後の課題がしっかり示されることについては、これを強く望みます。

経営戦略やビジネスモデルに関する開示の充実については、企業側において「負担」の増加として捉えられる向きもあるように思います。しかし、経営戦略やビジネスモデルを示すことは、本来それを通じて、自社の強さや他社にはない特徴、事業の継続性などをアピールするための「機会」として位置付けられるべきものと考えます。また、リスク開示についても、経営陣が経営に影響を及ぼす可能性のある課題を認識し、対策を有していることを示し、投資家をはじめとする多くのステークホルダーに安心感を与えるための「手段」として捉えられるべきものと考えます。

このような「負担」と「機会」という認識のずれが生じている背景には、日本企業が自分をアピールすることに慣れていない、あるいは不言実行的な価値観を有することも一因になっているように思われます。こうした文化に根差す心理的なハードルを下げるという意味においても、ガイダンスを積極的に活用することは有効ではないかと考えます。

続いて、「論点整理」において、「どう考えるか」とされている点について、幾つか考えを述べさせていただきます。

まず、役員報酬の個別開示についてですが、1億円以上という金額を基準とすることについては、報酬制度のゆがみをもたらす可能性があり、見直しが必要ではないかと考えます。見直しに際して、必ずしも対象の拡大は必要ないと思われますが、CEOなど、価値創造において重要な役割を担う一定範囲の役員については、報酬制度の実効性を確認するという観点において、開示が必要であると考えます。

次に、政策保有株式についてですが、個別の論点に言及する前に、1つ意見を述べさせていただきます。政策保有株式に関する最近の議論を見ておりますと、戦略的な投資に関わる政策保有と、外部からの干渉を受けにくくするための、いわゆる持ち合いに関わる政策保有とが同列に扱われており、これが混乱をもたらしているように思われます。国内外の投資家から不透明さを指摘されているのは、主として後者の持ち合い目的の政策保有株式であります。両者を分けて議論ができるように、関係者の理解を深め、環境を整えていくことが重要ではないかと考えます。

では、個別の論点に移ります。まず、開示対象の拡大ですが、単純に数を拡大することについては、積極的に支持はしません。自社の資本に対する比率や相手方における議決権の比率など、一定の基準に照らして重要性を判断し、該当するものについて保有理由を丁寧に説明することの方が望ましいと考えるためです。重要な契約に関する開示と同じ文脈において、重要な投資についても説明がなされるべきであり、数的な拡大よりも、説明が優先されるべきと考えます。

次に、純投資に関する開示ですが、一定の開示を求めることを支持します。ただし、この際もマテリアリティ、あるいは重要性という観点は考慮されるべきであると考えます。例えば、自己資本に対して一定以上の純投資ポジションを有する場合に限るなど、作成者側の負担を軽減する配慮が必要であると考えます。

また、相手方に保有されている株式数の記載については、実務的に可能な範囲で開示を検討するべきと考えます。これは戦略的な投資と持ち合いとを区別する上で必要な情報の1つであり、議論の整理に資するものと考えます。

政策保有に関する議決権行使の開示については、政策保有株式は基本的に相手先経営陣を支持するものと想定されるため、追加的な情報量が少ないと考えており、作成者側の負担も考慮して、積極的に支持はしません。

最後に、政策保有に関する英文開示については、基本的には望ましいと考えます。ただし、中期的には、EDINETなどを通じて、海外投資家にも日本企業の情報にアクセスしやすい環境整備を行うことの方が、より重要ではないかと考えます。例えば、政策保有についても、見出しの英文化に加えて会社名が英語表記されるだけで、格段に使いやすくなるのではないかと思われます。この種の工夫が反映できるようなフレームワークを検討してはどうかと考える次第です。

私の意見は以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

水口委員、どうぞ。

【水口委員】

ありがとうございます。「論点整理」において多くの利用者のニーズを取り上げていただき、大変感謝しておりますし、「論点整理」の提言に賛同いたします。

活力のある資本市場を実現し、持続的成長を図る企業に対する円滑な資金供給を実現するためには、投資家の投資判断に必要な情報が十分に提供されること、また、こうした開示が効果的かつ効率的に行われることが必要であると認識しております。ここで、投資家による適切な投資判断を可能として、投資家と企業の建設的な対話を促進することによって、経営トップの情報開示への積極的な関与を伴う形で、企業の経営の質の向上に資する情報開示の充実に向けて諸施策がとられることには大いに意義があると考えます。この際に、形式要件を満たすことを目的化することなく、実効性のある取組みを実施することが肝要であると考えます。より具体的な「論点整理」に関する私のコメントの幾つかに付言させていただきたいと思います。

まず、「I.「財務情報」及び「記述情報(非財務情報)」」に関わる基本的な考えについて、賛同いたします。

企業による取組みについては、資本コストへの意識が希薄であるとか、そのため事業選択が進んでいない企業もある、また、ガバナンスの見直しが形式的にとどまっている面があるなどの指摘があると認識しております。こうした中で、中長期的な視点を踏まえた持続的なキャッシュ・フロー、企業価値創造の観点から、投資家が企業と建設的な対話を行った上で、的確な投資判断を行うためには、財務情報に加えて、非財務情報も不可欠です。

投資判断においては、中長期な視点も含め、事業リスク及び事業機会などの観点からの事業環境と当該企業の戦略の整合性、また、戦略の遂行状況のモニターや適時適切な見直しを行う経営能力を持っているか否かについて、十分理解することが重要と考えます。また、個別企業の競争や技術面での脅威に対する耐久力、また、商品、サービスの戦略的な位置付けや顧客への訴求力の観点から、ビジネスモデルの持続可能性や脆弱性について判断することがポイントであると考えます。さらに、リスク管理に対する企業文化を含めた諸観点やガバナンス構造がいかに企業価値創造を支え得るかといった情報も重要であると思います。

こうしたことを踏まえて、企業の目的と経営戦略、ビジネスモデルについて、取締役・経営陣の見解に即して、より具体的で充実した説明がされ、投資家が適切に理解することができるように取組みを進めることに付言した「2.経営戦略・ビジネスモデル」における記述、また、投資判断・経営判断に直結する会計上の見積り・仮定に関わるより充実した開示などに付言した「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」における記述、さらには、経営者視点からみたリスクの重要度の順に、リスクへの対応策等を含め、企業固有の事情に応じた実効的なリスク情報の開示に付言した「4.リスク情報」における記述を大いに歓迎するところです。

さらに、英国の事例のような枠組みを視野に入れて、ステークホルダーとの建設的な対話などを通じた開示の改善に向けたよいPDCAサイクルを視野に入れる仕組みは非常に有用だと考えます。こうした視点から、「6.「財務情報」及び「記述情報」の充実」で付言されているような開示に関するルールや、プリンシプルベースのガイダンスの整理に加えて、適切な開示実務の積み上げを図る取組みを大いに歓迎します。

また、「一部企業のベストプラクティスを全体に浸透させるための取組みを行うなど、全体のレベルの向上を図ること」や「ベストプラクティスについては、必要に応じ、ガイダンスにも反映させていくこと」が妥当だと考えます。また、ベストプラクティスを反映する実効性のあるPDCAサイクルの仕組みを構築していかれることに大いに期待いたします。

次に、「II.建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供」の「1.基本的な考え方」のセクションに記載された内容にも賛同いたすところです。

例えば、政策保有株式については、株式保有に関わるリスクとリターンを勘案して、事業ポートフォリオ全体を捉える形での資本効率の向上に向けて、政策保有株式の削減が合理的であるといった整理がなされるケースも想定されると思います。このように政策株式を継続的に保有するか否かの判断について、定量的な観点も踏まえた開示も有用であると考えますので、ここの「論点整理」で記載された内容について賛同するところです。

最後になりますけれども、さらに、「III.提供情報の信頼性・適時性の確保」のセクションの記述にも賛同いたします。

財務情報の信頼性の向上に向けて、各法域の規制を踏まえる形での監査人の選任・再任の理由の開示、また、監査役会等による監査人監査の評価、監査人の継続監査期間、独立性の担保のみではなく監査品質の確保などの観点から、まず監査人のネットワークベース、連結ベースも視野に入れた監査及び非監査業務に関わる報酬額・業務内容などの会計監査に関する情報の充実を歓迎いたします。

また、監査役会等による監査人監査の評価に関わる透明性の向上に向けて、有価証券報告書の記載が充実されるのであれば、市場関係者による建設的な相互監視の強化につながると考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大和証券の小林委員、どうぞ。

【小林昭広委員】

私は、個別の論点と、全体としての論点についての意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、個別の論点としましては、「論点整理」の8ページに出ております、ベストプラクティスを反映させたプリンシプルベースのガイダンスの策定は、ぜひ実施すべきであると考えます。本ワーキング・グループの第2回会合でも申し上げたんですけれども、ベストプラクティスを明らかにすることにより、多くの企業に対して模範になると同時に、動機付けになり、また、そうした望ましい開示をしている企業にとっても、一層の開示レベルの向上へのインセンティブになるのではないかと考えています。

それと、全体としての論点として、このワーキング・グループの最初にお示しいただきました企業開示の役割というのは、投資家の投資判断に必要な情報が、十分かつ正確に、また、適時に分かりやすく提供されること。そして、企業と投資家との対話を通じて、企業の中長期的な成長を促していくことでした。この事務局に「論点整理」としてまとめて整理していただいたように、論点は数多くあり、これまでの議論で必ずしも意見が一致を見ていないものもありますが、今述べました企業開示の役割を鑑みますと、何らかのルール変更を行う場合に大事なことは、それが開示の後退になってはならず、また、企業にも投資家にも有益で、資本市場の発展に資するものではなくてはならないということだと考えております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、柳澤委員、どうぞ。

【柳澤委員】

発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。今回お示しいただいた事務局資料の「論点整理」につきましては、それぞれのボックス内でご提案として記載されている、「~ではないか。」及び「~してはどうか。」に該当する事項全般に関し、投資家の立場から望ましい方向性と考えておりますので、全ての項目に対して賛同いたします。

その上で、これまで述べさせていただいた内容の確認になるかもしれませんが、全般的な観点から、制度開示と任意開示の関係について、個別の項目からは、役員報酬に係る情報、政策保有株式、会計監査に関する情報の3点について、いずれも投資家にとって重要な論点と認識しておりますので、改めてコメントさせていただければと思います。

まず、制度開示と任意開示の関係についてですが、事務局資料6ページの脚注にも記載がございますとおり、企業開示レベルの全般的な底上げを図っていくためには、任意開示の領域ではなく、制度開示において情報開示を充実させていくという方向性が重要と考えております。企業と投資家の建設的な対話の基盤を成すという観点からも、制度開示の充実を通しての情報開示レベルの継続的な改善が、その前提として求められていると認識しております。あくまでこうした前提の下に、任意開示の領域では、更に制度開示の充実を補完するような形で、それぞれの企業が独自に訴求すべき情報やテーマを深堀りしていくといった開示の仕方が考えられ、このような双方の関係が制度開示と任意開示において成り立ちうるものと思います。そうした中で、任意開示で示された情報のうち、投資判断に必要とされる情報があれば、任意開示の領域に留め置くことなく、制度開示の充実として取り込んでいくというプロセスも重要ではないかと考えております。

仮に情報開示の充実を任意開示の領域に委ねてしまいますと、恐らく一定の開示レベルを企業全般に担保することが難しくなり、不確実性も伴ってきますので、企業間の開示レベルのバラつきや格差が容易に是正されないリスクも高まるのではないかと思います。特に、任意開示の充実に任せた状態ですと、企業側の開示スタンスとしては、ネガティブな情報若しくは不利に働くような情報は記載しないという傾向が少なからずございますので、ポジティブ情報とネガティブ情報の適切なバランスが損なわれるといったリスクにも留意しておく必要があると思います。こうした任意開示の充実に依拠している場合に、常態化しかねない情報開示面でのリスクをカバーし、マイナス影響を回避するといった意味合いからも、制度開示としての有価証券報告書において、情報開示の充実を図っていくことが重要であり、全般的な企業開示レベルの向上のためにも不可欠な対応と考えております。

次に、個別論点の1点目、役員報酬に係る情報に関して、報酬プログラムの開示を充実させる目的についてですが、持続的成長と企業価値向上を図る上で適切なリスクテイクを促すインセンティブ設計が構築されているのか、そうした分析視点からの十分な検証を可能とするためには、報酬の算定方法やKPIを含めて、具体的な報酬プログラムの内容が開示される必要があると考えております。

投資家の着眼点として、企業に対する投資判断に際しては、経営戦略や中期経営計画で掲げられた施策がどの程度着実に遂行されるのか、その確度について、役員報酬プログラムと企業価値向上との連動性の観点からチェックを行いますので、そのような検証を可能とするためには報酬プログラムの具体的な内容が不可欠な情報として位置付けられることになります。

例えば、役員報酬プログラムが企業の経営戦略の方向性と整合的で、中期経営計画における業績達成度にリンクした設計となっているのであれば、投資家としては、経営陣がその戦略にコミットし、責任を持って計画を遂行するであろうとの前提に立って、今後の中長期的な業績トレンドを予想し、目標達成に対する確信度を高められるといった分析の仕方が可能になります。

さらに、実際の報酬額が企業の提示した役員報酬プログラムに沿ったものになっているのかどうか、また、経営陣のインセンティブとして、実際に機能しているのかどうかをチェックするためには、外部から検証できるような情報が必要となりますので、報酬プログラムに基づく報酬実績に関しては、当期の報酬額に決定した理由、KPIの目標値と実際の達成度、固定報酬と業績連動報酬の支給割合といった情報について、それぞれ実態に即した具体的な開示が求められると考えております。

個別論点の2点目、政策保有株式に関してですが、コーポレートガバナンス・コード改訂の影響もあり、改めて資本コストをかけての株式保有というリスクテイクに対して、資本効率性の観点から課題認識が強まってきているように受け止めております。企業として、株式市場に上場している以上、こうした問いかけに的確に応えていく責務を負っているものと認識しておりますので、純投資と政策投資の区分に対する基準や考え方を明確にした上で、政策保有に関する方針、保有目的やその効果、保有の合理性を検証する枠組みや取締役会等での議論の状況について、具体的かつ十分な説明が求められると考えております。

また、開示基準に満たない銘柄も含めまして、売却や買い増しを実施した政策保有株式の異動情報に関してもチェックが必要となりますので、銘柄名や銘柄数ベースでの変動を分かりやすい表形式で開示していくとともに、それぞれの売買理由については、個別具体的な説明が必要になるものと思います。

なお、こうした政策保有目的の株式に限らず、純投資目的の株式や債券、その他有価証券の保有がある場合には、それぞれの保有に対して資本配分の適切性や効率性が問われることとなりますので、外部からのモニタリングを可能とするためには、一定の情報開示を求めていくことが望ましいと考えております。

最後に、個別論点の3点目、会計監査に関する情報についてですが、企業の潜在的な財務リスクを評価する上で、その手掛かりとなるような情報が、一定の総覧性をもって開示されることが重要と考えております。こうした観点から、会社法上で開示されている事項も含めまして、企業が適正な監査の確保に向けて監査人とどのような取組みを行っているのか、監査役会等による監査人の選任・再任の方針とその理由、監査人監査の評価、監査人の継続監査期間、ネットワークベースでの報酬額・業務内容に関して、有価証券報告書において開示される必要があると考えております。

なお、こうした情報と併せて、監査役会等の活動状況については、開催頻度や個々の委員の出席状況といった定量的な情報に加えて、監査役会等で議論した主な内容をセットにして、定量・定性の両面から、より活動の実態が把握しやすいように開示していくことが望ましいと考えております。今後、監査報告書にKAMが開示される状況も考慮に入れますと、監査役会等がKAMをどう認識し、どのように対処したかといった記載が企業評価において有用な情報になってくると想定されますので、監査役会等の活動状況、特に議論した内容に関しては、有価証券報告書の中で適切に開示されることが求められると考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、井口委員、三瓶委員、太田委員、高濱委員、中野委員、小林建司委員、加藤委員、貝増委員の順でお願いしたいと思います。

井口委員、どうぞ。

【井口委員】

ありがとうございます。最初に、各論に入る前に、私が考える法定開示の重要性について、述べさせていただきたいと思います。

現状、投資家向けの任意の開示資料というと、統合レポートとか、あるいはアニュアルレポートがあります。これは第1回目の会合でも申し上げさせていただいたのですが、私は「日経アニュアルリポートアウォード」の最終審査員を約10年近くやっておりまして、アニュアルレポートの発展を見てきました。企業さんのすごいご尽力のおかげで、かなりクオリティの高いレポートが見られるようになったと思います。ただ、現状、私の知る限り、統合レポートは200社くらいしか出てないということです。ですから、上場企業数からすると社数がかなり限定的です。

また、開示内容をみますと、残念ながら、本当に投資家が知りたいネガティブ情報や、恐らく企業さんが出したくないであろう監査に関する情報やガバナンス情報の記載は十分ではありません。ここでも議論されています政策保有株式の情報については、開示しているレポートを見たことがありません。他方、投資家はそういった情報が非常に知りたいということで、任意の開示では、投資家のニーズに応えることができていない状況になっていると考えています。

任意の開示はここまですごく発展してきて、これは企業の方にすごく感謝申し上げることではありますが、一方、任意の開示はここに来て、限界に達していると私は思っています。ですから、ここにある論点は、全て法定開示という形で、もう一度くくり直していく必要があると思っております。

法定開示の中でもいろいろ媒体があるわけですが、ガバナンス情報や監査に関する情報は、株主総会での議決権行使を行うに当たって非常に重要であるということで、主に議決権行使関連書類に掲載される状況であったと思います。ただし、スチュワードシップ・コードが導入され、投資家の目線が長期目線となり、企業さんが持続的に成長するかどうかを見極めるためには、ガバナンス情報や監査に関する情報も非常に重要になっていますので、こういった情報は、有価証券報告書に記載されるべきであると思っています。この審議会で何度も議論されておりますように、有価証券報告書というのは、企業価値創造プロセスを一覧的に理解できる資料であると理解しているからです。

あと、コーポレート・ガバナンス報告書と有価証券報告書のガバナンス情報部分の関係についてですが、両方ともすごく大事な書類だと思いますが、機動性の面ではコーポレート・ガバナンス報告書に利があると思っていまして、コーポレート・ガバナンス報告書でアップデートをしていただいた情報を有価証券報告書に年1回書いていただくということで、有価証券報告書の一覧性を確保できるのではないかと思っております。

各論の方ですが、最初に破線で囲まれているところからいいますと、「~ではないか。」といった、事務局に方向性を示していただいているところに関しては、全ての方向性に賛成します。資料1の意見募集に寄せられたコメントを見ましても、事務局が方向性を出されたところに対して賛同しており、グローバルでみてもこの方向性は支持されていると思っております。それを前提に、事務局が問題提起されているところを中心に、幾つかの追加コメントをさせていただきます。

最初に、1ページ、2ページにあります経営戦略・ビジネスモデルとMD&Aのところですが、方向性については全く異論はないのですが、1つ付け加えていただきたく、これは以前の会合でも申し上げたんですが、図表等を入れるということを是非やっていただきたいと思います。これはもしかしたら「分かりやすい開示」の方に入ってくるのかもしれませんが、文章がズラッと並んでいるのではなくて、図表を入れていただくことが、投資家の理解に非常に資する大事なことであると思います。例えば、三井物産さんの有価証券報告書では、法定開示書類ではありますが、図表を入れていただいて分かりやすくなっていますので、他の企業さんが図表を取り入れることも可能であると思っております。

次に、10ページの役員報酬に係る開示のところです。これは先ほど柳澤委員から詳細にご説明いただいたので、投資家にとってどのように重要かということはお分かりになっていただけたと思いますし、私もその考え方に賛同します。実際、今年度も、業績連動報酬を新しく取り入れてらっしゃる企業さんが多くありますが、その開示資料を拝見しますと、KPIの概要は分かります。例えば、ROEに連動しているなどは分かるのですが、ただ、実際にどうなったらこれが役員の方の報酬に反映されるのかといった具体的な運用は全く分からない状況となっています。

11ページの役員報酬の個別開示のところですが、確かにここに書いてらっしゃいますように、日本の場合、経営者の方の高額報酬というのが欧米ほど問題になっていないということはあります。ただ、先ほど柳澤委員からもご説明がありましたように、その報酬体系が実際、具体的にどのように運用されているのかを確認するには、やはり個別開示も必要になってくるのではないかと思っています。資料1の意見募集に寄せられたコメントの5ページを見ますと、役員報酬の個別開示については支持する意見が多いというのも、そういうところから来ているのだと思います。ただ、繰り返しになりますが、それほど高額報酬が問題になっていない中で、全ての役員の方、取締役の方の報酬を開示する必要は、現状ではないと考えておりまして、経営トップの方の役員報酬の個別開示が必要になってくるのではないかと思っています。

続きまして、11ページの政策保有株式のところです。確かに、世界ではあまりこういう開示がないとは思いますが、海外でも、例えば支配株主がすごく問題となっている国でしたら、そういうことに焦点を当てたガバナンスの体制が組まれるということがありますので、適切な開示の内容は、地域によってある程度散らばりがあると思っています。

日本で特に問題視されているのは、この政策保有株式が原因で、議決権行使をしてもなかなか成果が出てこないということがあると思います。そういうことで、11ページの最初の丸のところというのは賛成です。ただ、その意味も入っているのかもしれませんが、コーポレートガバナンス・コードに、政策保有株式の縮減に関する方針を出すということが新たに入れられたと思いますので、これと平仄を合わせるような形で、こちらの有価証券報告書に書くというのはどうかと思っております。

12ページの、これも点線の中の上から3つ目の丸のところですが、政策保有目的と思われる株式保有が純投資に区分されているケースがあるということで、純投資と政策投資の区分の基準や考え方の明確な説明を求めてはどうかということですが、これも重要だと思います。ただ、具体的にどのようになっているかを理解するには、純投資の主な保有についても開示していただくのがいいのではないかと思います。これは政策保有株式の議論だけではなくて、財務分析をするときに、企業さんがどういうリスクを抱えてらっしゃるかを見る時にも非常に有効となりますので、そのような開示をやっていただければと思っております。

次に、13ページの下にあります取締役会・委員会等の活動状況のところです。これも以前の会合で発表させていただきましたが、この開示というのは非常に重要です。取締役会が実効的に機能しているか、あるいは各委員会が実効的に機能しているかを確認するために重要だと思っています。こういったこともあり、前回、ご紹介させていただきましたが、グローバルでもこの開示が広く行われていると思っています。この部分に関しては、任意の開示では絶対進まないと思いますので、コーポレート・ガバナンス報告書とともに、有価証券報告書にも記載する方向で考えていただければと思っております。

16ページ、17ページの会計監査に関する情報のところです。これも前回申し上げましたように、有価証券報告書に記載されるということは重要であると思っています。特に17ページの最後の丸のところの、監査役会等の活動状況の開示があって、初めてその実効性が理解できると思っておりますので、ここは非常に重要なところです。特に、この活動状況の中でも、議論した主な内容というのが非常に大事になってくると思います。ご指摘あったように、全て開示ということになると、確かにいろいろな守秘義務と関わってくるリスクがあるのかもしれないですが、例えば、アジェンダを示していただくとか、あるいは、議論した主な内容の概要というと、ちょっと日本語が変かもしれませんが、何かそういうふうなことを示していただくということは、前回事務局から示していただいた海外の事例でもありましたので、可能ではないかと思っています。

次に、22ページの四半期開示です。これは前回も申しましたが、四半期開示というのは非常に重要です。これは皆さん、そんなに異論はないと思います。あと、決算短信というのも、投資家が慣れ親しんだもので重要ですが、その四半期決算数値の信頼性を確認できる、投資家というのは内部にいる人間ではありませんので、外部にいる投資家も確認することができる四半期レビューがついている四半期報告書というのは、すごく重要であると思っています。また、あともう一つ付け加えると、四半期報告書には注記とかが短信よりも載っていますので、その理解を深めるという意味でも重要かと思います。

最後になりますが、25ページ、一番最後のところです。政策保有株式の英語訳というところで、これは事務局からもご指摘いただきましたように、有価証券報告書の英訳が進まない一方で、海外投資家は政策保有株式がどういう状況になっているか知りたいという中では、こういうものをウェブサイトにおいて英訳するというのはすごくいいアイデアで、これは日本がグローバルに開かれた市場であるということを示すためには、ぜひ実現していただければと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、三瓶委員、どうぞ。

【三瓶委員】

ありがとうございます。私も個別の論点と全体的な話と両方させていただきたいと思います。

まず、資料2の「論点整理」の取りまとめをしていただき、ありがとうございます。「~すべきではないか。」というところについて賛同いたします。

まず、論点整理全体がぶれないようにするために、最初の「1.基本的な考え方」というのが非常に重要だと思っています。その基本的な考え方の中で、もう少し明確にした方がいいのではないかというところがあるので、意見を述べさせていただきます。

というのは、今ここでも情報開示をもっとしてほしいという意見と、いやいや、それはかなりの負荷であるというご意見がありますが、当然そういう議論になると思います。ただ、その情報開示の必要性について、どう使われているか分からないと、先ほど石原委員がおっしゃいましたけれども、単に知りたい、もっと知りたいということで情報開示を要求する形になっていって、で、もし企業がそれを受け入れれば、開示の充実というのは無限に広がっていくと思います。ただ、それでは企業の負担は計り知れません。ただ、一方で、だから開示はできませんということでは、株主資本を預かっておきながら、真に必要な情報を株主に開示しないということになってしまい、それならば、経営陣は全株買い戻して、自身が100%株主になるしかないと思います。

では、どの程度の開示の充実がバランスがいいのか、どのぐらいの詳細な開示が求められるのかということを考えたときに、大事な軸が2つあると思います。1つは、企業価値評価という軸です。情報を何に使っているかというと、企業価値を評価するために使っているということです。もちろん何でもかんでも企業価値評価に使える情報なんだと言ってしまうと、元も子もなくて、重要性というのが関わってきます。もう1つは、「役員等の企業価値向上への貢献評価という軸です。これは報酬開示にもつながってきます。要するに、企業価値がどうであるかということを外部から評価するための情報と、その企業価値向上に対して、役員がどのように関わってきたのかという、今度は役員の評価。この2つに関して、情報開示が必要だということです。そうすると、単に知りたいだけで求めるのではないということの線引きがどこかでできると思います。

例えば、1ページの基本的な考え方の1行目なんですが、「投資家による適切な投資判断を可能とし」というのがありますが、これは実は曖昧なのではないかと思います。その後に続く文章と、実は論理的につながっていないと思います。投資判断というのは、いわゆるミスプライスを是正するような機能、アービトラージ、裁定取引のようなことも含まれます。そうすると、これは企業価値評価が必要かというと、そういうことでもないし、有報のようなタイムリーではない情報を使うかというと、使いません。対話が必要かというと、対話も必要ではない。となると、この後の文章につながらないということです。

では、どうしたらいいかというと、この「投資判断」という言葉をそっくりそのまま、先ほど申し上げた「企業価値評価」に入れ替えるとすっきりします。そうすると、その後の「対話」、「経営の質を高め」、「企業価値を向上させる観点」全てつながっていきます。

このことは、この論点整理全体を通じて言えることです。同じようなことが様々なところにあります。同じページでも、基本的な考え方の3つ目の段落の「投資家の理解が深まることで」というところも、「投資家の理解が深まる」と言ってしまうと、何でもよく知っていくことで理解が深まるということかもしれませんが、そうではなくて、「企業価値評価に資する」ということになれば、これはスッと統一されます。この後も実はたくさん、「投資家が企業を理解するための」とか、「投資判断に不可欠な」とかいう記述があるんですけど、それは少し物事を曖昧にする危険があると思っています。

そして、企業価値評価を目的とするとすれば、よく言われる重要な要素が3つあります。これは以前にも申し上げましたが、透明性(transparency)、比較可能性(comparability)、予見可能性(predictability)です。透明性は、あることが本当かということを検証しようとしたときに、それが検証できるということにつながって、その情報を信じることができるということです。比較可能性は、相対的な判断に役立ちます。全ての情報について絶対的な判断ができるわけではないので、いろんな比較をしながら、それがより優位なのかどうかということが分かるということです。それと、予見可能性、これは企業価値評価ですから、その企業の将来性を評価するのは当然のことですが、その将来性にどれだけ期待していいものなのか。遠い将来のことですから、いろんな不確定要素もあるので、あまりにも情報が足りなければそこを評価できないということになって、評価判断に非常に大きく響いてくる部分であります。

このことは、先ほど何名かの委員の方がおっしゃっていましたが、任意開示と法定開示の話につながります。法定開示に求められる姿勢というのは、この3つの要素が備えられていることです。平易な例えとしてちょっと考えてみたんですけれども、医療現場に例えると、例えばドクターがレントゲン写真を見て、その診断をするとき、企業価値評価の代わりに、健康度の評価をしているということだと思います。そこで何か問題があれば、問題を解決していく、原因を突きとめるということです。ドクターは職人なので、一般的には分かりにくくても、必要な情報をレントゲン写真から読み取ることができますが、レントゲン写真が、例えば本来決まった箇所を撮影しなきゃいけないのに、その撮影箇所が決まっていなくて適当な箇所を撮ったとなれば、診断ができません。または、撮影箇所が決まっていて、ちゃんとそこを撮ったとしても、ピントがぼけていれば、それは読み取れません。そういったことと同じと考えていいと思います。また、そういった情報を得るために、代わりに問診で賄おうとしてできますか。できませんね。ですから、対話すればいいということでもなくて、その対話の前提として必要な重要な情報だということです。これをちゃんと担保するには、法定開示ということで、どのぐらいの範囲を、どういうタイミングで出さなきゃいけないのかということは決めなければいけないと思います。任意に任すということでは、先ほど井口委員もおっしゃっていましたけれども、足りない部分があるということです。

そして、「II.建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供」ですが、順番が逆になりますけれども、先に「3.政策保有株式」のところです。ここでも大事なのは、先ほどの3要素ですけれども、ただ、ここでは予見可能性や比較可能性の前に、透明性に既に重大な問題があると思っています。例えば、ここでよく言われる情報源はどこにあるかというと、有報の特定投資株式、みなし保有株式があります。ただ、ここだけではありません。この情報と、経理の状況の注記に書いてある関連当事者情報、これは実は関係しています。もう一つ、経営上の重要な契約等。これはなぜかというと、先ほど政策保有にいろんな種類がありますという話がありましたけれども、資本提携があるような重要な関係の場合に、もし経営上の重要な契約に記載されていないということであると、有報のもともとのルールを守っていないのではないかということになります。一方で、経営上の重要な契約ではないけれども、この持ち合いは大事なんですというのも、どういうことかよく分かりません。それと、みなし保有株式というのは、その説明に大抵、議決権行使の指図権というふうにあります。ですから、議決権行使を指図するために、その権利をこちらに戻してきているわけです。それにもかかわらず、関連当事者ではないのか、何の記載もないのかという疑問が残ります。つまり、政策保有、重要な契約等、関連当事者情報の3つは三角形で結びついていて、どこかに強い理由があれば、どこかにその影響が出てくるはずなんですが、今は全くばらばらの取扱いになっています。

また、政策保有株式がどう企業評価に関係するのかというような問いもありましたけれども、まずその前に、事業価値というのと企業価値というのがイコールではないということです。連結の企業価値というのと事業価値が違って、この政策保有とか、よく言われる現金保有というのは、事業に使われていない部分かもしれなくて、それがバランスシートに大きな位置を占めている。これが事業価値ではない、企業価値の段階で毀損している可能性があるということで、大きく取り上げているわけです。なので、ここについては、今、論点整理でいろいろな新しい方向が書かれていますけれども、そういうことをぜひともやっていただきたいと思います。

若干関連して、13ページのその他というところで、情報を整理するのがありますけれども、今申し上げたとおり、関連当事者情報は、経理の状況の注記の一番後ろの方にあります。ほとんど単体の財務諸表の前にあります。これはかなりコーポレート・ガバナンスの情報から離れたところにあるので、同じ1冊の有報にあるとしても、実際は非常に見にくい状況になっているので、もう少しまとめていただいた方がいいのではないかということを感じています。

2番目の役員報酬ですけれども、役員報酬については、先ほど最初に申し上げた2つの軸の1つ、役員の企業価値向上への貢献評価、こういった視点で見るべきであるだろうと思います。そうすると、先ほど来いろんな方からご意見がありますが、正直言って、個人の役員報酬の開示が本当にこの観点から必要かというのは若干の疑問があります。それよりも、もし二者択一しなければいけないとすれば、報酬プログラムの内容、全体の報酬の設計ですね。固定、単年度、長期のインセンティブの構成。また、その達成度の評価。そういったことが示される方が、全体としてはよっぽど重要であろうと思います。

こういったことをしていく中で、恐らく、今、アメリカで始まりましたペイレシオであるとか、あと、従来からアメリカではやっていましたけれども、バリュー・ベースド・マネジメントということで、経営者の評価、達成度評価というのを随分詳しくやってきましたが、そういったことがやっと始まるのではないかなということです。

個別のところでは、小さなところかもしれませんが、5ページのリスク情報の箱の中にあります「重要度の順に」と書いてあるところは、重要度を具体的に順番付けるのは難しいのではないかということで、「重要性を踏まえ」とかそういった表現の方がよいのだろうと思います。

あとは、政策保有株式のところで、基本的に「~すべきではないか。」というのは、そうしていただければというふうに申し上げましたが、例えば12ページの最初にある「売却したり、買い増した政策保有株式については、銘柄名、減少・増加数、売買の理由の記載を求めるべきではないか。」というところついては、まず真っ先にしていただきたいと思います。

その次の、開示対象を拡大する件については、例えば、これは段階的にという方法もあるのではないかと思います。というのは、日経225の上位の企業を見ていったときに、政策保有株式の数が400に近い銘柄数あるとか、そういった場合に、それを全部1行ずつ開示したとすると何ページになるんだろうかと思います。それをすぐにやるというよりは、段階的にという方がいいのかもしれません。ただ、それだけある中で、上位30とか60とかいう議論はあまりにも一部でしかないので、下位の方は開示しなくていいということにはならないと思います。

もう一つ、非常にいびつだなと思ったのは、ある新聞に、今、公募の投信の平均残高が160億円という衝撃的な記述がありましたが、日経225の上位の企業の政策保有の残高は、数百銘柄保有していて、数千億円の規模です。数千億円とか、場合によっては兆円単位の規模の政策保有のポートフォリオになっています。この公募投信の規模と、そういう一般事業会社の政策保有の残高の規模のいびつさというのは、株式市場を非常に不健全な形にしている可能性もあって、やはりここは段階的にでも開示を拡大するということで、方向付けていくべきではないかと思います。

大体以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ご指名いただきありがとうございます。私は、基本的に個別論点についてのみコメントさせていただきたいと思いますけれども、今から申し上げます幾つかの点以外のものに関しては、「論点整理」の中で、「~すべきではないか」と書かれているものについては、全て基本的な方向性としてはこれでよろしいのではないかと思っております。

その上で、幾つかコメントさせていただきたい点があるわけですけれども、論点整理の6ページに記載されております「(2) 重要な契約」でございますけれども、先ほどほかの委員の方からも若干言及がございましたが、我が国において、経営上の重要な契約に関する記載の具体性が非常に今ばらついているところでございまして、契約のタイトルと締結日だけ書いてあるような上場会社もあれば、一方で、重要な契約の中身についてそれなりの具体性をもって会社に与える影響とかも分かりやすいような形で開示をされている上場会社もあると承知をしております。

この重要な契約は、ほかの開示情報と比べても、ある意味で、当該企業が法的に拘束されている経営上重要な契約の内容の開示ということでございますので、株主や投資家にとって非常に重要な情報であることは論を俟ちませんし、特にその重要な契約の中身に企業のガバナンスに関わるような内容が含まれているような場合には、その重要性は言うまでもありません。

したがいまして、重要な契約に関して、四角の中では、「各企業がより適切に開示を行うことが求められるのではないか。」という、非常に抽象度の高い記述になっているわけですけれども、契約の具体的な中身について、もう少し株主及び投資家が、企業に与える影響、重要度、インパクトが分かるような形で、具体性を持って開示をさせるということが必要だと思いますし、また、いろいろな企業で開示の対象がばらついていることを踏まえて、何らかの形で、金融庁等からガイダンスといいますか、こういうものについては個別的な状況いかんでは開示すべき重要な契約に該当するというようなガイダンスを示していくことも有用なのではないかと思っております。それが1点目でございます。

それから、ページ順で申し上げますけれども、10ページ・11ページの役員報酬に関してでございますけれども、何名かの投資家側の委員の方からもご指摘がございましたけれども、この10ページの四角の中に入っている、最初の丸、次の丸、それから、3番目の丸、このあたりの報酬の体系と、それから、業績連動報酬等である場合には、そのKPIがどういうものであるか、その報酬全体の中で、固定報酬、業績連動報酬、インセンティブ報酬のコンポジションがどういう形であって、それらがどういうメカニズムで決まっていくのかという開示は、非常に重要であると思っておりますので、これらについて開示を充実させるということは非常に重要だと思います。

他方で、11ページに記載されております報酬の個別の金額の開示でございますけれども、総体的には、特定の個人について、その報酬の金額が多額にわたるような場合には開示をすべき必然性があるかと思いますが、他方においては、デミニマス基準というのは当然あり得るかと思いますので、1億円未満の報酬しかもらってない人について、あえて個別の開示を求める必然性がどこまであるかについては、やや疑問に思います。その丸の中で、例えば報酬水準を基準に区切るのではなく、報酬額上位から一定数の者について個別開示を求めることが考えられると記載されている点ですけれども、報酬水準にかかわらず、例えば上位3名とかいうことだと、報酬水準が相当低い人についてまで個別に開示を求めるということになって、いかがなものかという気がいたします。したがって、これは報酬水準にかかわらずというのが最高業務執行責任者に関してであれば、そういったことも考え得るかと思いますが、それ以外の1億円未満の報酬しかもらっていないという人についてまで、個別に開示させる必要性は高くないのではないかなと思う次第です。

それから、12ページ、政策保有株式に関するところでございますけれども、ほかの委員の方からもご指摘ございましたけれども、政策保有株式に関しては、これは株主によるディシプリンが効きにくくなるという観点もあり得るかと思いますので、一定の開示の強化というのは、海外機関投資家の要望等も踏まえるとあり得ることかと思うのですが、この四角の中の最後の丸に記載されている、純投資の対象である株式、債券、その他有価証券についても一定の開示をという部分については、その四角の上に書いてある、こういうものについても開示されることが望ましいという理由は、理解できなくはありませんが、できるだけ開示してくれた方が投資家にとってはありがたいという面は当然あるかと思いますけれども、企業側の負担もあるかと思いますので、ここまで開示させる必要性は乏しいように思います。この点、2014年に有価証券明細表の作成が不要となったために、この部分についての情報が減少したということでありますけれども、逆に言いますと、それから4年で、この部分についての開示のレベルを元に戻すということの政策的な必要性がどれほどあるのかという気も致しますので、私は、その政策保有株式と、ある意味、そのほかの資産、資産資本効率の観点から開示を要求するという項目とはやはり分けるべきではないかと思います。即ち、後者の部類に属する純投資の対象である株式、債券、その他有価証券についてまで、詳細な開示を求めるということは、企業の負担を考えると、あまり適切ではないと思っております。

それから、16ページでございます。会計監査に関する様々な開示の充実ということでございますけれども、前々から議論がございましたけれども、監査人の継続監査期間に関しても、これはあまりに長期にわたって同一の監査法人が監査をしていると、被監査企業の経営陣や財務・経理部門との慣れ合いの問題も生じ得るかと思いますので、この継続監査期間の開示等は重要であるかと思います。また、このネットワークベースの報酬額・業務内容について、これは企業の負担も勘案し、重要性も考慮しながら記載することとしてはどうかと書いてございますが、近時、監査法人系の様々な法人がアドバイザリー業務を非常に多岐にわたって展開しております。タックスプランニングや税務については、従来からあるかと思いますし、M&Aのときのデューディリジェンスとかそういうものもあるかと思うんですが、最近ではさらに、危機管理的な分野ですとか、フォレンジック関係ですとかリーガルサービスの提供といったようなものまで、非監査業務が非常に拡大していく傾向が顕著でございますので、この16ページに記載されているネットワークベースの報酬額・業務内容について、一定の足切り基準といいますか、企業側の負担もありますので、重要性の観点から、一定の金額以下のものまで、必ずしも全て開示しなくてもいいかと思いますけれども、非監査報酬、それから、非監査業務も含めて、このネットワークベースの報酬額・業務内容の開示についてはぜひ前向きに取り組んでいただければなと思っております。

それから、最後、17ページのところでございますが、この会計監査に関する情報に合わせて、監査役会等の活動状況の開示ということでございますけれども、ここには、監査役会の開催頻度ですとか、委員の出席状況、議論した主な内容といったものが書かれています。しかしながら、特に監査役会設置会社の場合には、むしろ常勤監査役の活動というものが非常に重要性が高い部分でもございますし、監査役会の開催頻度や出席状況といった外形的なところだけに着目すると、開催はたくさんしているけれども、監査の実は薄いといったようなことにもつながりかねないおそれもあるかと思いますので、むしろこの監査役会等の活動状況に関しては、常勤監査役の活動等も含めて、重点監査項目としてどういうものをセレクトしたかですとか、それから、その重点監査項目の監査を通じて、翌年以降に向けてどういう監査上の課題がと認識したかですとか、そういう、ある意味でより実質的な内容を開示させるべきであるように思います。即ち、外形的な開催頻度とか、出席状況とか、そういう点に着目するのではなくて、もう少し、ここの部分については、ある程度自由な記載内容を認めてもよいのではないかと思いますし、いずれにせよ、実質的な活動内容が分かりやすいような形で、各企業がこの監査役会等の活動を投資家に対して分かりやすく説明することができるような工夫が必要ではないかと思っております。

以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、高濱先生、どうぞ。

【高濱委員】

ありがとうございます。私からの意見は、書面において提出させていただいておりますので、それ以外の部分について、確認事項と依頼をさせていただきたいと思います。

ネットワークファームの様々な非監査業務についてご発言がありましたが、16ページの会計監査に関する部分の1つ目のポツのところの最後にある、「企業側の負担も勘案し」以降の「重要性も考慮しながら記載する」ということについては、監査報酬と同時提供可能な非監査業務を含むという理解をさせていただいておりますけれども、その辺を明示した形で最終的な報告書の記載にしていただければありがたいなと思っています。

加えて、2つ目のポツの2行目にある「ネットワークファーム以外の監査人に支払われる監査報酬」という部分についても、これは重要性を考慮しながらという理解をしておりますけれども、その辺についても明確に分かるような記載で取りまとめをお願いしたいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、中野先生、どうぞ。

【中野委員】

まず、事務局が「~べきではないか。」という方向性を示された部分については全面的に賛成します。その上で、2点申し上げたいことがございます。

まず第1点目は、6ページの人的情報等に関してですが、この点に関して、第2回目の本審議会において、単体開示の簡素化ということをキーワードにして、特に製造原価明細書等の開示が行われなくなっている点は問題がある、当該開示は連結ベースで行われる必要がある等のご意見が複数の委員より示されたと記憶しております。加えて、同簡素化が図られた際の議論を振り返っておきますと、企業会計審議会が「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」という文書を平成25年6月19日に示されておりまして、当時の議事録を拝読しましたところ、一部の委員は単体開示の簡素化に対して懸念を表明されていたという経緯もございます。企業会計審議会による前述の文書においては、「単体開示の簡素化に当たっては、単体開示の情報が少なくなることへの懸念に対応しつつ、金商法の単体財務諸表と会社法の(単体)計算書類の統一を図る観点から、例えば、連結財務諸表におけるセグメント情報の充実や、注記等の記載内容を非財務情報として開示することなどについて検討すべきである。」と明記されておりますので、私からぜひお願いしたいことは、本ワーキング・グループの取りまとめに当たっては、この単体開示の簡素化をめぐる課題について手当する必要がある旨言及していただきたいということであります。

第2点目は、MD&Aとリスク情報についてであります。8ページに、プリンシプルベースのガイダンスを策定して、ベストプラクティスを示していくという案が示されているのですが、これについて私も全面的に支持しますし、期待をしております。ただ、任意開示ですと、やはりバラつきが出るのと、ネガティブな情報が開示されない懸念があるという点は、本日ご指摘があったとおりであります。

制度開示の効果を実証的に検証してみますと、大規模企業よりも、小規模・中規模企業において大きな効果が検出されるのが一般的です。そうしますと、制度開示ではいかに開示の底上げを図っていくかが重要と考えておりまして、現在でも金融庁が財務諸表を中心とするレビューを行っているのですが、その範囲や深度を拡張し、SECが実施しているようにMD&Aやリスク情報等についてもレビューを行い、全体の底上げを図っていく必要があるのではないかと強く思っております。ですから、できれば報告書の中に、法定開示書類に対するレビューの範囲や深度を拡張し、MD&Aやリスク情報の質を高めることも検討課題になる旨の記述を加えていただければ幸いに思います。

特にそのように思うのは、4ページの「セグメント分析に際しては、経営管理と同じセグメントに基づいて、セグメントごとの資本効率を含め、セグメントの状況がより明確に理解できるような情報が開示されることが必要ではないか。」という記述に関してです。こうした方向性についてはそれこそ全面的に賛成いたしますが、ガイドライン等を整備するだけでは実現は極めて難しいのではないかと思っております。2点理由がありまして、まず1点目として、現在の開示は、会計基準に基づいて監査も行われているのですけれども、決算説明会資料や新聞報道で出されるセグメントは、かなり細かい単位で議論されているにもかかわらず、有価証券報告書にはそれらをかなり集約したセグメントが記載されているという実態があるからです。

もう一点、アメリカの状況について少しご紹介させていただきたいのですけれども、SECが法定開示書類に対するレビューを行っていると先ほど申し上げましたが、そこではセグメント報告に対するレビューを重点的に行っております。MD&Aにおけるセグメント別報告をレビューしておりまして、ある研究では、2004年8月から2007年7月までの3年間においてセグメント報告の改善に至った事案に関するコメント・レターが1,392通あると報告されています。その中の約半数はセグメントの区分に関するもので、業績不振事業等が他のセグメントに集約されることによって独立のセグメントとして報告されていないなどのケースに対して、SECが厳しいチェックを実施しております。以上の点を考えますと、規則をつくるだけでは上場企業の開示の質の底上げは進展していかないのではないかと考えられますので、金融庁によるレビューの範囲や深度を少し広げていただきたいということであります。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、三菱商事の小林委員、どうぞ。

【小林建司委員】

総論について申し上げます。一部企業のベストプラクティスを全体に浸透させる仕組みを行うということについては全く賛成でございます。ぜひ進めていただきたいと思います。

各論について1点申し上げたいと思います。有報の総会前開示ですけれども、これについては慎重に取り進めることが必要ではないかと思っています。有価証券報告書の提出の前倒し、ましてや、総会前の開示ということに関しましては、企業の努力だけではなくて、監査のスケジュールも考慮する必要があろうかと考えています。現状、監査法人のローテーションとか、あるいはキー・オーディット・マターズの導入など、どちらかというと監査時間が増加する方向にあります。そうした中で、有報の前倒しを進める、あるいは監査期間の短縮をするということになると、監査法人に対する一定の手当ても必要なのではないかと考えます。

もう一つ、会計基準ですけれども、IFRSを適用している会社においては、子会社の財務データ等を収集するフォーム、連結パッケージというものがありまして、会社法、金商法開示のパートだけでも、これは相当膨大な分量になります。この膨大な分量のデータをまとめ上げて、有価証券報告書の提出を前倒しするというのは、企業にとってはかなりの負担になると考えます。こういったことをルール化するということであれば、そういった負担を企業側にかけさせてでも得られるであろうメリット、効果というものを、より具体的に示していく必要があると考えます。

なお、資料2の18ページで、株主総会よりも前に有報を開示している会社ということで、22社挙げてございますけれども、これらの企業のご努力には敬意を表します。しかしながら、その22社の大宗が日本基準の会社でございます。IFRS適用会社はわずか5社にとどまっております。そういった意味で、若干ミスリードになりかねないと思っております。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

ありがとうございます。3点コメントさせていただきます。

1点目は、記述情報の充実についてですが、記述情報につきましては、数字と比べて、経年の変化というものが分かりにくいと思います。ですから、例えば記述情報についてのガイドラインなどを作成される場合には、何か変化が起きた場合には、明確にそれを書いてもらうようなことを求めてはどうかと思います。

2点目は、政策保有株式の開示についてです。論点整理の11ページから12ページに掲げられていることについて、私も開示を求めることは望ましいと思っております。ただ、11ページから12ページで掲げられていることは、直近のコーポレートガバナンス・コードで、いわばコンプライ・オア・エクスプレインとして要求されたこととかなり重なるのではないかという気がしています。そこで質問なのですが、11ページから12ページにかけてご提案いただいている事項は、例えば議論していたら、その議論の内容を開示してはどうかという、そういう形での開示を求めるというご提案なのか。それとも、単純に議論の状況または方針を開示せよということなのか。いずれにせよ、開示の求め方によって、かなり意味合いが違ってくるかなという気がしております。

3点目も政策保有株式の開示についてですが、論点整理の12ページの最後で触れられているいわゆる持ち合い株式の開示の話です。このような開示を求めることの妥当性は、提出会社が、自分が政策保有目的で保有している株式の発行会社が提出会社の株式を持っているかどうか確認することがどれだけ可能かという問題と連動すると思います。ただ、少なくとも、現在、有価証券報告書で大株主の状況については開示が求められていますし、提出会社が政策保有目的で保有している株式の発行会社が提出会社の株式を保有しているか否かについても、株主名簿の記載を基準として開示を求めることは可能だと思います。株主名簿に記載されている株主については、基準日の総株主通知を通じて、株主名簿の名義書き換えが行われます。ですから、株主名簿に書かれている株主については、提出会社が政策保有目的で保有する株式のリストとマッチングすればいいだけなので、それほど大変な作業ではないと思います。

4点目になってしまうかもしれませんが、このように政策保有株式の開示を強化することに対して、提出会社がどのように対応するかを合わせて考える必要があると思います。例えば現在の政策保有株式の開示というのは、私の理解では原則個別ベースというか、連結ベースにはなっていないわけです。したがって、例えばグループ会社に持たせるという対応をされてしまうと、持ち合いが闇に潜ってしまう可能性があります。悪いことばかり考えるのはよくないと思うのですが、それを踏まえた上で、開示のあり方を考える必要があると思いました。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

質問について、よろしくお願いします。

【田原企業開示課長】

政策保有株式の開示については、ここでは有価証券報告書、あるいはガバナンス報告書の開示についてご議論いただいておりますので、コンプライ・オア・エクスプレインベースではなく、対話の前提となる情報として、開示を制度上お願いするべきか、任意でするべきか、そういう議論をお願いしているということでございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、お隣の貝増委員、どうぞ。

【貝増委員】

まず、総論的なことですが、この「論点整理」を最初に見せていただいたときに、正直、前回のワーキング・グループの報告書よりも、実におもしろい。加えて、中身も非常に具体的だなという印象を持ちました。それはなぜだろうと考えたときに、一口に有価証券報告書の利用者といっても、いろいろな立場の利用者がいるわけですが、今回そのいろいろな立場の利用者の方がこの議論に参加され、しかも、ご自身の経験に基づいたご意見、あるいは実際の利用の状況等をご説明いただけたということです。加えて、事務局が呼んでくださいました参考人の方々ですが、正直、今や海外投資家の日本株投資というのは、日本株の専門家を置かないで、アジアにどれだけ、そのうち日本にどれだけ、というふうな、かなりマイナーな位置付けになってしまっている中で、よくあれだけの優秀なプロフェッショナルをここに参考人として呼べたなと感激しました。それだけの人たちの意見を踏まえて書いているので、非常に中身のある内容になっていて、有価証券報告書が実際にどう使われているのか、多分、事務局の皆様には、前回の取りまとめのときに比べれば、格段とご理解をいただけているのではないかなと思っております。

あと、各論レベルのところで、まず、先ほど中野委員がおっしゃっておられた単体開示の経緯をもし入れていただけるのであれば、私の長年の怨念が少しは晴れるという意味ではありがたいなと思いますが、ちょっとこの取りまとめ全体の流れとの関連で上手く入れられるのかなとも思います。ただ、もし可能であれば、ぜひ入れていただきたいと思っております。

それから、個別の論点でちょっと気になることがございますので、それだけ申し上げたいと思います。気になっておりますのは、22ページの沈黙期間の問題と、19ページの重要情報の公表タイミングの問題です。

沈黙期間において、いわゆる決算以外の中長期の経営あるいは戦略についての議論を積極的にしていくということは、非常にいいことだと思います。ただ、私が恐れているのは、この沈黙期間にそうやって対話をしていると、突然、新聞に観測記事が出ることです。しかも、その観測記事が、まあ最近はないんでしょうけど、特に私の現役のころは、この観測記事、どう見たって観測とは言いがたい、全ての数字を会社の人に聞いて書いているんじゃないのかと思うような観測記事がボーンと出ちゃうことがありました。これって、実はフェア・ディスクロージャー・ルール等の規制の対象にマスコミは入っておりませんので、観測記事がボンと出ちゃう可能性は今でもあります。加えて、その記事に書かれた重要情報の公表が相場に影響を与えてはいけないからといって、公表は3時以降にやるという会社も少なくありません。しかも、その日に仮に決算数字ではない戦略的な議論のアポイントが相手の会社に入っていたなんていう事態になったとき、私が現役のセルサイドのアナリストだったら、もうこれは本当に困っちゃうだろうなと思います。当然、ミーティングは中止するんでしょうけれどもね。なかなか論点整理なり報告書に具体的に書ける話ではないというのは承知の上で、あえて申し上げますが、やっぱりそういう問題も起こり得るということは、事務局にはよく認識しておいていただきたいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、黒沼委員、青委員の順で、黒沼先生、どうぞ。

【黒沼委員】

今回の論点整理は、ワーキング・グループにおける意見の分布をうまく集約して、妥当な方向性を示していると思います。全体として賛成いたします。

その上で、個々の論点について3点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。

第1に、ESG情報についてです。論点整理においては、企業が必要性に応じ、法定・任意開示でより適切に開示することが求められているとしているのは、そのとおりでありますけれども、法定開示であれば、どこに記載するのが望ましいかを示す必要があるのではないかと思います。

また、EUでは、いわゆるESG情報を法定開示に組み込むよう求めるディレクティブが採択され、一部の国で国内法化されています。ESG情報は、現在、日本では任意に開示が行われているわけですけれども、機関投資家との対話において重要な情報ですから、その開示を促す意味で、有価証券報告書の中に欄を設け、記載事項は任意としつつも、法定開示に組み込むということも検討に値すると考えます。

第2に、役員報酬の個別開示についてです。現在の1億円以上の報酬の個別開示については、役員報酬の水準を引き下げる効果があり、企業価値向上の阻害要因となるので、廃止すべきであると考えます。もっとも、報酬形態が多様化している現在、役員報酬の個別開示が行われないことにより、我が国では、投資家が個々の役員の得た報酬総額の水準を知る手段がほとんどなくなってしまっています。そこで、例えば報酬額上位から一定数の者について、氏名は記載せずに、当該者の報酬総額の個別開示を求めることにしたらどうかと考えております。

第3に、政策保有株式についての開示について示された論点のうち、最後の2つについては意見が分かれると思いますので、賛成の立場から意見を述べたいと思います。政策保有株式の持ち合いは、継続的な関係を結ぶ企業間で、相手方企業の逸脱的な行動を抑止し、関係的投資を促進するというメリットと、報復を恐れて、互いに相手を牽制せずにガバナンスの緩みを生ずるというデメリットがあると思います。いずれにしても、政策保有株式の持ち合いは当該企業のガバナンスの状況を知る重要な情報ですから、持ち合いの相手方に保有されている株式数についても記載を求めるべきです。

また、政策保有株式についての議決権行使の内容は、個別の政策保有株式の保有目的・効果が達成されているかどうかを判断する上で重要な情報であり、持ち合い株式については、特に先ほど述べたメリットが発揮され、デメリットが生じていないかどうかを判断する上でも重要な情報でありますので、これも開示を求めることが望ましいと考えます。保有目的がしっかりとしていれば、会社提案に全て賛成するということに何の問題もないわけですから、正々堂々と開示をすればいいわけです。もちろんこれらの開示をするには発行者に追加的なコストはかかるわけですけれども、政策保有株式の保有に開示コストを上回るメリットがなければ、企業は政策保有株式を減らせばよいのですから、追加的コストの負担を重大視すべきではないと考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、青委員、どうぞ。

【青委員】

今回の見直しについて、全般として賛成でございまして、特に記述情報に関するレベルが現状では必ずしも十分ではないというのが一般の受け止め方かと考えておりますので、その点を充実させるという点は非常に重要なことではないかと考える次第でございます。

開示するに当たりまして、もちろん効率的にということを考えながらということでありますけれども、先ほどから言われております投資判断上重要な情報というものにつきまして、より充実した情報をということは非常に望まれるところだと考える次第でございます。

それで、任意でというご意見もございましたけれども、やはり任意という形では限界がございますので、制度的なところで対応すべき点というのは多々あるのではないかということでございますし、対話の基礎となる情報ということで考えましても、一定の情報が制度的に根差しているということがあった上での個別の対話ということが、充実した対話のためには重要ではないかと考える次第でございます。

それから、8ページ、9ページのところで、ベストプラクティスを示していくという点が触れられてございますけれども、この点は実態を進めていくには非常に重要なことだと考えておりまして、やはり開示府令等で記載すべき項目を示すだけでは、会社の受け止め方としてレベル感にかなり差が出てしまうのが現状かと思いますので、実際に期待されるレベルの情報を、強制ではないにしても示していくことによって、特にその開示府令で記載が求められているレベル感がうまく伝わっていくことになるかと思いますので、ここは実態が大きく進んでいくために、重要な意味を持つのではないかと考える次第ですので、ぜひお願いできればと考えております。

それからあと、20ページの公表のタイミングのところでございますけれども、ここはあくまでも情報開示ができる状態になったとき、例えば決定をしたですとか、開示できる情報が整ったときには、それを社内で滞留させるということなく、速やかに開示をするということがまず大前提であった上で、ご記載いただいているようなところを考えていくということかと存じます。

それで、そのときにも昨今、情報の伝達スピードがかなり高まってきている点を踏まえながら、各企業が現状のタイミングにこだわらず適切なタイミングがどういうものかということを考えて、公表のタイミングを測っていただくということが望ましい企業行動じゃないかと考えますので、そうしたことができる限り明確になるように配慮しながら、ドキュメンテーションをお願いできればと考える次第でございます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

おおむね時間が迫ってきているのですけれども、今日も大変多くの方々から貴重な意見をたくさんいただきました。ありがとうございました。追加でご意見がございましたら、大変恐縮ですけれども、事務局の方にぜひご提出していただきたいと思います。

それでは、最後に経済産業省から、「統合報告・ESG対話フォーラム」の報告書について、簡単にご紹介いただければと思います。松本さん、よろしくお願いします。

【経済産業省 松本企業会計室長】

ありがとうございます。手短にご紹介いたしたいと思います。資料3でございます。

こちらは今回の会議において、皆様ご意見いただいていましたように、ベストプラクティスの積み上げですとか、形式的な対応にとどまらない、法定開示・任意開示を問わず、充実した企業評価に資する情報開示が行われていくということを促していくために、経産省の方で取り組んでいたものでございまして、名前としては、「統合報告・ESG対話フォーラム」ということでございます。提言として、資料3の1ページから2ページ目にかけて書いております。「目的を持った対話」を理解する。共通言語を活用する。この共通言語というところには、これからベストプラクティスなり、ガイダンスということは考えられるかもしれませんけれども、そういうことについても提言させていただいておりまして、問題意識としては共通ではないかと思っております。3番目、4番目、企業側では社内でも対話する。投資家側につきましては、投資家が企業評価手法を示すということを提言させていただいておりまして、これについても今後のご検討の際に参考にしていただければ幸いでございます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、本日はこのあたりとさせていただきます。

次回ですけれども、本日のご議論を踏まえ、できれば報告書の取りまとめということを目指したいと思いますので、皆様方の間で意見が分かれている点が幾つか今日もあったと思いますけれども、ぜひご議論を深めていただいて、取りまとめということを目指したいと思いますので、そういうことを意識したご検討、ご意見をいただければありがたく存じます。

最後に事務局からご連絡をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

次回の日程につきましては、皆様方のご都合を踏まえまして、後日、事務局からご案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

【神田座長】

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3846)

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