金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年9月2日(木)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室

【廣川企業開示課長】
 それでは、最初に事務局から留意事項を御案内いたします。御発言をされない間は、必ずミュート設定にしていただくようにお願いいたします。それから、御発言される際にはミュートを解除いただきまして、御発言が終わりましたら、再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。
  
 以上でございます。
 
【神田座長】
 それでは、皆さん、おはようございます。始めさせていただきます。ただいまから金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の第1回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
  
 申し遅れましたが、私、このワーキング・グループの座長を務めることになりました神田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
  
 本日の会議でございますけれども、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議を併用した開催とさせていただきます。議事録は通常どおり作成をして、金融庁のホームページにて後日公開をさせていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。
  
 審議に入ります前に、事務局から、留意事項と、このディスクロージャーワーキング・グループの委員等の御紹介をお願いいたします。よろしくお願いします。
 
【廣川企業開示課長】

7月に企業開示課長に着任いたしました廣川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には、冒頭にお名前をお願いいたします。

 続いて、ディスクロージャーワーキング・グループの委員の皆様を御紹介させていただきます。

 資料2の「ディスクロージャーワーキング・グループ」メンバー名簿の記載順に、井口譲二様です。

 上田亮子様です。

 上柳敏郎様です。

 近江静子様です。

 神作裕之様です。

 清原健様です。

 熊谷五郎様です。本日は途中から御参加いただく予定です。

 黒沼悦郎様です。

 小林いずみ様です。

 佐々木啓吾様です。

 三瓶裕喜様です。本日は途中で御退席される予定です。

 高村ゆかり様です。

 田代桂子様です。

 永沢裕美子様です。

 中野貴之様です。

 藤村武宏様です。

 松元暢子様です。

 次に、オブザーバーとしては、全国銀行協会、東京証券取引所、日本監査役協会、日本経済団体連合会、日本公認会計士協会、日本証券業協会、日本労働組合総連合会に御参加いただいております。また、官公庁等のオブザーバーとして、法務省、財務省、経済産業省、日本銀行に御参加いただいております。

 事務局については、時間の都合もございますので、お手元の配席図をもって紹介に代えさせていただければと存じます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それから次に、今後、万が一、私が何らかの事情で会議に参加できないような事態が生じる可能性があるかと思いますけれども、そういう場合に備えまして、座長代理をお願いしたいと思っております。

 大変恐縮でございますけれども、座長代理は神作委員にお願いできればと考えておりますけれども、いかがでございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】

どうもありがとうございます。それでは、神作委員、恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。

【神作委員】

よろしくお願いいたします。

【神田座長】

それから、会議の公開についてお諮りをさせていただきたいと思います。

 金融審議会の会議の議事規則というのがございまして、その第4条にのっとり、ディスクロージャーワーキング・グループの審議については公開という扱いとさせていただきたいと思います。そのようにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】

どうもありがとうございます。なかなかオンラインで、ちょっとやりにくいところがあるのですけれども、御協力いただきましてありがとうございます。それでは、御了解をいただいたということで、進めさせていただきます。本日の会議の模様もウェブ上でライブ中継をさせていただいております。

 それでは、議事に移らせていただきます。本日は、事務局から資料の説明をいただいた後、質疑応答と討議を行いたいと思います。

 それでは、事務局から資料についての御説明をお願いいたします。廣川課長、よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】

ありがとうございます。それでは、事務局から御説明させていただきます。時間の関係で飛ばし飛ばし、早口の御説明になりますこと、御容赦ください。

 最初、画面でも投影させていただいている事務局説明資料、おめくりいただきまして、2ページを御覧ください。本ワーキング・グループの検討の背景と諮問事項についてでございます。本年6月25日に開催されました金融審議会総会における諮問においては、中ほどの「検討の背景」にありますように、近年、サステナビリティの重視や、コーポレートガバナンスの議論の進展といった経済社会情勢の変化を受けまして、下の諮問事項のところ、企業情報の開示の在り方について幅広く検討を行うこととされております。

 続いて、4ページを御覧ください。2018年6月に取りまとめられました前回のディスクロージャーワーキング・グループの報告の内容と、それとを踏まえた取組を御紹介いたします。前回は、財務情報及び記述情報の充実、例えば経営戦略、MD&A、リスク情報の記載の充実、また、ガバナンス関連では、役員報酬の算定方法、政策保有株式の保有状況等の情報提供の充実などの御提言をいただきました。これを踏まえて、右側、金融庁の取組といたしましては、MD&A、リスク等の開示に関するプリンシプルベースのガイダンスの策定、それから②のところ、開示の好事例の収集・公表、③の開示ルールの策定を行っております。

 続いて、5ページを御覧ください。こうした有価証券報告書の記述情報の見直しと、別途企業会計審議会で御議論いただいた成果として、監査報告書における監査上の主要な検討事項、いわゆるKAMの記載の導入を並行して実施することによりまして、企業情報の開示の充実を図ってまいりました。

 6ページを御覧ください。金融庁では、ディスクロージャーワーキング・グループの報告を受けまして、投資家、アナリスト及び企業の方々から成る勉強会を開催いたしまして、2019年3月から記述情報の開示の好事例を公表、その後も、新型コロナウイルス感染症、ESGといった新しい項目を追加しつつ、随時更新を行っております。

 7ページを御覧ください。有価証券報告書の記述情報における近年の記載の変化を、試みとして定量的に分析してみたものでございます。左側は、有価証券報告書の経営方針等における記載が、2018年3月期と2021年3月期でどの程度類似しているかについて、上場企業二千数百社の分布を取ってみたものでございます。記載内容が変化傾向にある企業が大宗という結果になっております。また、右側は、有価証券報告書の事業等のリスクにおけるサステナビリティ関連の単語の増減ですけれども、これらの単語が全体的には増加傾向にあることが確認できます。

 8ページを御覧ください。企業開示の役割と主な開示項目の参考資料でございます。企業情報の開示については、投資判断に必要とされる情報を十分かつ正確に、また適時に分かりやすく提供することが求められております。

 9ページを御覧ください。上場企業による投資家への情報提供の手段といたしましては、金融商品取引法に基づく法定開示書類である有価証券報告書を基礎といたしまして、それぞれの目的に応じて、法定開示書類、取引所規則による開示、任意開示の書類がございます。

 10ページを御覧ください。ここからはサステナビリティに関する御説明をさせていただきます。

 11ページです。まず、近年のサステナビリティ、特に環境社会をめぐる動きとしては、2015年の国連総会におけるSDGsの採択、COP21におけるパリ協定の採択の流れがあって、開示に関連いたしましては2017年、金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォースが、企業による自主的な開示を促すための提言を公表しております。これを受けて、我が国でもTCFDに沿った開示の取組が進んでまいりました。また、昨年10月、我が国では、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことといたしまして、金融庁におきましても、サステナブルファイナンス有識者会議やコーポレートガバナンス・コードの改訂の議論におきまして、サステナブルファイナンスの開示が取り上げられております。

 12ページを御覧ください。今申し上げました金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議におきましては、このスライドの右側の企業という箱の下にありますように、サステナビリティ情報に関する適切な企業開示の在り方について幅広く検討を行うことが適当とされておりますほか、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえたTCFD等に基づく気候変動開示の質と量の充実が提言されております。

 13ページを御覧ください。日本では、今申し上げましたようにコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われておりますが、米国におきましては、気候変動開示に関するルール見直しのための意見募集の実施、英国におきましては、今後5年間のロードマップを公表し、順次、気候変動開示の充実を図る取組が進展しています。また、EUにおきましてはサステナビリティ情報の開示を要求する指令案の公表が行われると、こういったように内外で気候変動等に関する開示の充実に向けた取組が進められております。

 14ページを御覧ください。こうした中、国際会計基準を策定する国際的な財団であるIFRS財団が、気候変動をはじめとするサステナビリティに関する報告基準を策定すると、こういう方針を打ち出しておりまして、この方針に沿った作業プログラムというのはG7等においても歓迎するというふうにされておりますなど、国際的に認知されてきております。

 15ページを御覧ください。本年11月上旬に開催されるCOP26に向けて、サステナビリティ開示を巡る動きが加速しております。IFRS財団は本年第4四半期に、サステナビリティに関する報告基準設定を行うISSB、国際サステナビリティ基準審議会の設置を公表する予定でございます。また、来年第1四半期に気候変動に関する基準の公開草案を公表予定、さらには6月に基準最終化を目指すと、こういうことになってございます。

 16ページを御覧ください。気候変動以外のサステナビリティという文脈で、人材投資に関しまして、企業の中長期的な投資・財務戦略において、投資家は、IT投資、研究開発と並んで、人材投資をより重視しているということが伺えます。

 17ページを御覧ください。人材投資に関する開示の外国の動向といたしまして、アメリカの証券取引委員会でございますが、2020年、昨年8月、非財務情報に関する規則を改正し、新たに人的資本についての開示を義務づけることを公表、2020年、昨年11月から適用されております。

 18ページを御覧ください。人材に関連して、国内では、企業の人材の多様性確保に関する政府の方針として、2020年12月25日閣議決定、第5次男女共同参画基本計画におおいて、ジェンダー平等の確保の観点から、有価証券報告書等における開示の在り方を含めた検討を行うとされているほか、男性社員の育児休業の取得状況の情報開示を推進するとされております。また、2020年5月29日閣議決定の少子化社会対策大綱においても、有価証券報告書などに育児休業取得率の記載を促すとされております。
 
 続いて、コーポレートガバナンスについてでございます。
 
 20ページを御覧ください。コーポレートガバナンスをめぐる近年の動向としては、コーポレートガバナンス・コードの改訂、再改訂、また、前回の本ワーキング・グループの結論を踏まえたガバナンス情報の開示の充実、それから2019年12月、社外取締役1名の設置義務づけなどを行った会社法の改正、それから、昨年でございますが、スチュワードシップ・コードの再改訂、こういった動きが見られます。
 
 21ページを御覧ください。このうち本年6月のコーポレートガバナンス・コードの再改訂におきましては、指名委員会、報酬委員会の設置により、企業が指名や報酬などの特に重要な事項を検討するに当たりまして、これらの委員会の適切な関与・助言を得るべきというふうにされております。開示の関連では、このスライドの一番下、東京証券取引所のプライム市場上場企業は、指名・報酬委員会の構成の独立性に関する考え方、権限、役割等を開示すべきであるとされています。
 
 22ページを御覧ください。取引所の規則に基づくコーポレートガバナンス報告書におきましては、取締役会、指名委員会、報酬委員会の活動状況の記載を促しており、一定程度の開示の進展が見られるところです。
 
 23ページを御覧ください。こちらはコーポレートガバナンス改革とも関係の深い東京証券取引所における上場株式の市場区分の見直しと、コーポレートガバナンス・コードの適用関係についての資料を参考としておつけしたものでございます。
 
 24ページを御覧ください。政策保有株式についてでございますが、こちらは、前回のディスクロージャーワーキング・グループの報告を受けまして、政策保有株式の保有の合理性の検証方法の記載、個別銘柄の保有目的、定量的な保有効果の記載などが求められるようになりまして、開示ルールの改正が行われております。その後の実際の開示の状況につきましては、投資家、アナリストの方々から、有用性が高いと評価する声がある一方で、改善を求める声など、様々な声が出ております。また、前回ワーキング・グループでは、純投資と政策投資の区分の考え方の明確な説明を求める、あるいは純投資についても一定の開示を求めるといった意見が出されていたところでございます。
 
 25ページを御覧ください。監査についてでございます。まず1つ目、会計監査に対する信頼性の確保に向けて、監査上の主要な検討事項、いわゆるKAMの記載の導入が行われております。また、下のほう、コーポレートガバナンス・コードの改訂におきましては、上場会社の内部監査部門について、取締役会や監査役会等に対して適切に直接報告を行うデュアルレポーティングラインの構築が求められることになっております。
 
 26ページを御覧ください。こうした広い意味での監査の関連で、海外、具体的に英国の例でございますけれども、こちらでは監査委員会の活動状況について、監査委員長名で、その詳細、例えば財務諸表に関して監査委員会が重要と考えた事項及び当該事項への対処の状況等についての記載がなされています。
 
 28ページを御覧ください。その他の個別課題ということでございます。前回のディスクロージャーワーキング・グループでも指摘された事項といたしまして、まずEDINETについてでございますが、これは利便性の向上に向けて現在進めている次期システムの構築作業におきまして、例えば、初めて御覧になられる方向けの検索ウインドウの分かりやすい配置とか、閲覧期間の延長等の対応を予定しております。
 
 次に、下のほう、開示書類の記載事項の整理につきましては、有価証券報告書と会社法の事業報告等との共通化・一体化について、これまで関係省庁と御協力をさせていただきながら、取組支援を行ってきております。また、有価証券報告書とコーポレートガバナンス報告書の記載事項の整理といった論点もございました。
 
 29ページを御覧ください。1つ目、重要な契約につきましては、前回のディスクロージャーワーキング・グループにおいて、投資家による日本企業への投資判断において重要と考えられる契約について、契約の相手方である海外企業からは契約書の内容、中身が開示されているにもかかわらず、日本企業からは開示がない事例が見られるとの御指摘がございました。なお、次の30ページでございますが、この関連で、必ずしも前回ワーキング・グループで御指摘をいただいた事例とは限りませんが、外国で開示されている契約について、日本では詳細に開示されていない事例があったことを御紹介する参考資料でございます。
 
 一旦、29ページに戻らせていただきます。次は英文による情報提供でございますけれども、金融庁の現行EDINETにおきましては、有価証券報告書の英訳を自社ウェブサイトで掲載している企業の一覧表を公表しております。また、本年6月のコーポレートガバナンス・コードの再改訂におきましては、特にプライム市場の上場会社については、英語での開示提供を行うべきというふうにされてございます。
 
 一番下、重要情報の公表のタイミングについてでございます。前回のディスクロージャーワーキング・グループでの御指摘といたしましては、適時開示に当たって、多くの上場企業による公表のタイミングが証券取引所の立会時間終了後の15時以降に集中しているという御指摘がありました。改めて御紹介させていただきます。
 
 最後に、32ページを御覧ください。本日御議論いただきたい事項でございます。1つ目の丸、前回の2018年のディスクロージャーワーキング・グループにおきましては、財務情報及び記述情報の充実、ガバナンス情報の提供、情報の信頼性・適時性の確保等が検討事項になっておりました。その後の経済社会環境の変化といたしましては、2つ目の丸ですけれども、サステナビリティ、コーポレートガバナンスのほか、本スライドに記載のその他の個別課題が考えられるといったところでございますが、論点に過不足はないでしょうか。また、優先順位をどのようにお考えでしょうか。最後の丸でございますけれども、そのほか審議を進めるに当たってどのような点に配意・留意すべきでしょうかというふうになってございます。
 
 事務局説明は以上でございます。

【神田座長】

どうも御説明ありがとうございました。それでは、今日残りの時間は、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただくという討議の時間とさせていただきたいと思います。

 今日御議論いただきたい事項は、今、課長から最後に御説明のあった資料3の最後のページ、32ページに挙げられておりますけれども、もちろん初回ですので、皆様方お気づきの点を幅広く御指摘いただくということでも結構でございます。
 
 委員の皆様方から、まず御質問、御意見をいただきたいと思いますけれども、人数もそれなりですので、大体時間を割り算しますと、大変恐縮ですけれども、1人当たり、目途としては三、四分以内程度というあたりを目途に御発言をいただければと大変ありがたく存じます。ただ、初回ですので、できれば全ての皆様方から何か御発言いただければありがたいとは思っております。皆様方のほうの御判断で御発言していただければと思います。
 
 それでは、冒頭御説明させていただきましたように、チャット欄というものがございますので、御発言を御希望の方は、そのチャット欄に全員宛てに発言希望と、あとお名前を書いていただけませんでしょうか。そうしましたら、私のほうから御指名をさせていただきます。御指名を受けられたら、お名前をおっしゃっていただいて、ビデオも適宜オンにしていただいて、御発言いただければと思います。大変恐縮ですけど、御発言が終わりましたら、またマイクをミュートに再設定していただければと思います。いかがでしょうか。
 
 それでは、まず上柳委員、井口委員の順でお願いしたいと思います。上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】

ありがとうございます。このワーキング・グループで議論すべき事項としては、説明資料の32ページに幾つかのポツで書いていただいているとおりということで、賛成でございます。中でも気候変動の問題について重要と思っております。御説明にもありましたけれども、この一、二年に大きな国際的動きがあると思いますので、それへの対応というのは必要だろうと思いますが、私自身は、さらにといいますか、特にヨーロッパはその先を見ているように思いますし、あるいはアメリカの中はなかなか意見が分かれているのかも分かりませんけれども、各国がその先に目指しているところも踏まえながら当面の対応を考えていくと、あるいは制度改革をしていくということが重要だろうと思っております。
 
 気候変動問題というのは、このワーキング・グループの大きな課題である、いわゆる非財務情報の開示一般をどういうふうにしていくのかについての試金石にもなるだろうと思います。単に個別企業が気候変動からどういう影響を受けるのか、いわゆるリスクの面だけではなくて、気候変動問題であるとか、そのほかの社会課題の解決に個別の企業がミッションを持ってどういうふうに貢献していくのか、あるいは事業機会にしていくのかということだろうと思います。そこのところを説得力を持って開示するということをどう促進していくのか。その際、単に取り組んでいきますという姿勢だけではなくて、当該企業の財務状況であるとか、あるいは人的資本の現状、あるいは将来の展望、あるいはノウハウ含めて、そういう資源に根拠を持った姿勢を示すというところが非財務情報と財務情報の組合せということで大事だろうと思います。
 
 これをどういうふうに法定開示の枠組みで実現していくのか、様々な企業なり、あるいは課題をお持ちの個別企業がある中で、それを統一的に法制化していくというのはなかなか難しい面があるとは思いますけれども、まさにそこが問われていると思います。
 
 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】

ありがとうございます。よろしくお願いします。
 
 事務局の御説明ありがとうございました。最初ということもありますので、開示に関する基本的な考え方を述べさせていただきたいと思っておりますが、有価証券報告書は法定開示書類で、企業価値創造プロセスを一覧できるという点で、グローバルでいう投資家が最も重視するアニュアルレポートと位置づけられると考えております。任意の統合報告書もありますが、これはあくまで有報を補強する位置づけと考えております。この意味で、前回の府令改正以降、企業の御尽力で開示内容に大きく改善が見られたと思いますが、記述情報の一段の充実は必要と考えております。また、個別課題にありました有報の英文化も、日本の資本市場の国際化の観点から必要と考えております。
 
 それで、事務局からありました優先事項についての論点ですが、上柳委員がおっしゃったように、11月のCOP26、あるいはIFRS財団による開示の基準化といった状況を考えますと、サステナビリティ事項、特に気候変動の有報における取扱いについての議論を優先すべきというふうに考えております。ガバナンス・コードで開示ということを定めていただきましたが、サステナビリティ事項は投資家の投資判断、あるいは議決権行使にとって重要ということですので、当然のことながら有報に開示されるべきというふうに考えております。また、開示の際には、グローバルの投資家も含めた利用者の利便性を考えまして、世界共通のフォーマットでありますTCFDとか、あるいは将来的には、IFRS財団が定めるサステナビリティ基準を活用すべきと考えております。
 
 もう一つの論点ですが、ガバナンスの開示についてもコメントさせていただきます。前回の府令改正以降、開示は大きく進展したと思っております。ただ、コーポレートガバナンス報告書との間で情報が分散されているということに加えまして、現状の開示は活動の体制の開示となっておりまして、利用者がガバナンスの実効性を確信できる開示とするためには一段の開示の充実が必要と考えております。この1つの例というのが、事務局から御説明のありました監査役会の活動の開示です。主な検討事項の開示と定められておりますが、過去1年間でどのような事項を議論したか、時間を割いたかといった、投資家にとっての望ましい開示ではなくて、会議規定などに定められている審議事項が開示されているケースが多いと考えております。また、監査報告書のKAMに対する言及がないとか、KAMに対する監査役会における検討結果などもなくて、監査役会の実効性を判断できる開示になっていない状況と考えております。時間の関係で説明を省略いたしますが、取締役会、指名委員会、報酬委員会も同様の形で活動の開示が行われるべきと考えております。
 
 あと、事務局から御説明がありました重要な契約も重要と考えておりまして、例えば政策保有株式の保有の説明のところで、契約があるといった記載があるにもかかわらず、重要な契約に記載がないとか、あるいは事務局の例にありましたような、企業間の提携だけではなくて、最近フランチャイズ契約というのもかなり出ておりますが、そういうことに関して契約内容を詳細に開示している企業とそうでない企業があったりなど、将来の企業価値、利用者の分析にとって重要である場合でも、開示が適切に行われていないケースがあると考えております。
 
 最後ですが、事務局の論点の過不足についてコメントさせていただければと思います。ここでは役員報酬体系の開示を取り上げていただければと思っています。前回の府令改正によって開示が大きく改善しているという箇所ではありますが、近年、業績連動報酬の役員報酬に占める割合が急速に増えるとか、あるいは役員報酬というのが一段と重要となる中、事務局、参考資料12ページにありましたように、企業のベストプラクティスも数多く出ておって、全体的に一段の開示の充実を図る必要があると考えております。具体的には、業績連動報酬での業績連動係数の開示、あるいはクローバック条項の導入などとなります。
 
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。多くの方々からチャットで発言希望をいただいていて、どうもありがとうございます。その順番で、三瓶委員、藤村委員、小林委員、近江委員の順になると思います。三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】

三瓶です。どうぞよろしくお願いいたします。ただいま井口委員からいろいろ御指摘があって、私が考えていたのと重複するところもあるので、そこを除いて発言したいと思います。
 
 まず論点の過不足についてですが、2つあります。1つは、今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂でも具体的に、原則3、4で追加された知財・無形資産への投資、これもぜひ議論させていただきたいと思います。また、同じくコーポレートガバナンス・コードの中で明確化され、また経産省の事業再編実務指針でも指摘されている事業ポートフォリオに関する基本方針の見直しについて、「少なくとも年1回取締役会において行うこと」、そうした「事業ポートフォリオに関する情報開示の媒体は有価証券報告書が基礎・中心である」というふうにありますので、こういったことも論点としていただきたいと思います。
 
 また、優先順位についてですが、特に新しい論点を優先するのがいいのかなと思います。このディスクロージャーワーキング・グループでの議論について多くの企業が注目していると思いますが、特にサステナビリティ関係で、これまでにない新しい開示についてどのような方向性で議論されているのかというのは早めに知りたいだろうということがあります。
 
 一方で、継続・フォローアップ案件みたいなものがあります。これについては、もしかすると開示そのものではなくて、取組方針とか、別のところでのやり方もあるのかもしれないので、優先順位的には少し下げてもいいのかもしれません。ただし、個別課題として挙げられている中では、先ほど井口委員からもありましたけれども、重要な契約、これは優先順位が高いと思います。それは、例えばサステナビリティと関連していて、これから企業がいろいろなパートナーと組んでいくということが大いに考えられます。そのときにどのような重要な契約があるのか見えないというのは非常に問題になるということ。また、様々な変革が起きるわけですけれども、それに伴って、これまで保全してきた重要な契約があったにもかかわらず開示していなかったものへ影響が出てくるというようなことも起こり得ます。ですから重要な契約は、個別課題になっていますが、他の重要論点とも関連するので優先順位が高いというふうに思います。
 
 そして、議論の留意点についてですが、サステナビリティという観点で申し上げますと、開示に関して2種類の性質があると思います。例えば気候変動のような非常にハードルが高いもの、しかも国際合意があって、それぞれの企業がトップダウンで方向性を定めていくもの、これに関しては方針、計画、KPIの進捗等を開示していくというのがあるべき方向だと思いますが、他方で、もう一つの性質としては、人的資本のような、最終的には従業員一人一人に浸透して、一人一人が実感を持つという、じわじわ伝わっていくようなもの、これができていないと、どこまでやりましたというふうに会社の視点だけで開示しても実態が伝わらないものもあります。ですから、こういったものについては従業員の声や意識、そういったものを拾った、浸透度を示すような開示が必要になってくると思います。なので、開示を求めるとしても性質が随分違う点があるので、こういったところについては留意が必要だと思います。
 
 もう一つ気候変動関係で、先ほども出ましたけれども、TCFDと、これからIFRSのほうに移ってISSBの基準ができますけれども、非常に簡単に整理すると、TCFDにはかなり開示内容に自由度がある、一方でIFRSのほうでは、恐らくミニマムスタンダードのようなものをつくると思います。なので、我々が議論している間に、だんだんIFRSのほうに収束していくわけですが、そうすると我々の議論がそっくりひっくり返るかもしれないということも考えながら、時間的な配分と、どういったことに順序立てて議論していくのかということの留意が必要かと思います。
 
 私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】

ありがとうございます。私はTCFDの代表をやらせてもらっているので、その関連で委員に呼んでいただいたと理解しています。あと事業会社に勤めていますので、その観点でもこのワーキング・グループで貢献できればと思っています。
 
 留意点として私が考えておりますのは、当たり前のことなんですけれども、サステナビリティに関して、その課題というのは、企業にリスクや機会が生じるような課題に着目するシングルマテリアリティの考え方と、地球環境や社会に生じる影響を加味して考えるダブルマテリアリティの考え方がございますけれども、本ワーキング・グループでは、基本的には前者、すなわち企業にリスクや機会を生じさせる課題を主眼とするということを確認しておくべきだと考えております。特に最近、マルチステークホルダーの議論とか、欧州の動きなんかを踏まえると、ダブルマテリアリティ的に考える、こういった動きもある中で、本ワーキング・グループ、特に有価証券報告書を念頭に考えているワーキング・グループだと思いますので、そういう意味では、そういった動きとは多少性格が違って、シングルマテリアリティで考えるということになるんだと思っています。
 
 次に、我々企業の立場からですが、開示するということになっても、サステナビリティの対応は、やはり定性情報、記述情報が中心になってくるわけです。参考資料にもございましたが、TCFDの開示推奨項目を見ても、定量情報はほんの一部でしかないと。ただ、定性情報の性格上、横比較が極めて難しいという問題をはらんでいます。一方で、比較可能性を重視し過ぎて、無理に定量情報を追求すると、それぞれの企業のリスクとか事業機会とか戦略といったことと関連性の薄い情報を開示させるというようなことになりかねないと思っています。そういう開示のフレームワークになると、企業側にとっても情報利用者側にとっても意味のない開示を推奨するということになりかねないので、この比較可能性と関連性のバランスというのが非常に重要になってくると思っています。
 
 論点の優先順位、過不足につきましては、やはり気候変動に関しては企業のリスク、機会に直結するので、企業価値を大きく左右する要因にもなっていますので、投資家の関心も非常に高いということで、重要という意味では優先順位が高いんだろうと思っています。先ほど三瓶委員からありましたように、IFRS等々の動きの中で、どういう順番で議論するかというところはあると思いますが、重要性は非常に高いと思っています。
 
 もう1点、過不足についてですが、若干各論的になりますけれども、ESGのSの項目について、比較的人的資本への投資とかダイバーシティーということが最初に念頭に浮かんでくるわけですが、人権への配慮、自らの従業員の人権はもとより、サプライチェーンにおける人権配慮というのが非常に重要な課題になっています。この対応を怠ると不買運動で収益が悪化したり、あと逆にこの対応をしっかりやることで、エシカル消費における競争力につなげていくというケースも、特に欧米では見られています。イギリスをはじめ、現代奴隷法といった形で企業に情報開示を義務づける例も出てきているので、この辺も念頭に置く必要があろうと思います。
 
 私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、小林委員、どうぞお願いいたします。

【小林委員】

小林です。よろしくお願いします。もう既に皆様がおっしゃったことと幾つかかぶる点はあるかと思います。本件を考えるに当たって、今既に皆さんからいろいろな御意見出ていますけれども、ちょっと整理をしておいたほうがいいなと感じておりますのは、日本国内独自の問題、例えば政策保有株式の問題や、個別具体的な開示項目の話と、一方グローバルな開示の方向性、主に気候変動、ESG等非財務情報についてですが、そこの対応をどのように組み合わせて議論をするのか。単純に気候変動等についても1つの項目として考えるのか、それとも世界の流れの中で開示全体の在り方という視点で検討するのかを整理しながら、優先順位を決めていく必要があるのではないかと思います。
 
 多分私が今回ここの席に呼ばれておりますのは、バリューレポーティングファンデーション、今年の7月にIIRCと、SASBが合併してできましたVRFのボードに入っておりますので、そういったところから、海外での動きということも含めてお話しすることが期待されているのではないかと思います。
 
 皆さんも既に御存じのこととは思いますけれども、IFRSによる基準の設定に関しまして、IFRS自体は11月に向かってかなり速いスピードで進んでいるようでありますし、それに当たっては、ゼロから基準をつくるというのではなく、既にある基準をある程度取り込んで作っていくというような方向であると理解をしております。一方で、アメリカのSECがどう動くのか、あるいはIFRSとEUの綱引きもあるように聞いている中で、一方、投資家サイドは、とにかく統一基準を作って欲しいという非常に強い声があるわけです。いずれにせよ、これが最終的に一本化されるのか、あるいは結果的に幾つかの基準が提示されるのか分かりませんが、いずれにしても非財務情報の開示については何らかの基準が示されるということは変わりがないと思うので、それを前提に日本として整理しておく課題は何なのかということを、まず1つ、大きなフレームとして考えておく必要があると思います。
 
 その意味において、1点目は、開示書類の整理です。既に前回のワーキングでもやっていただいていると思いますが、制度開示と自主開示のクオリティーの担保と、それからその関連性というのをもう少ししっかりと明示したほうがいいのではないかと思います。それから、有価証券報告書が結果的には一番重要な情報ですが、例えば、今、藤村委員もおっしゃられましたが、有価証券報告書はそもそもファクトを開示するために出来上がっているものなので、ファクト以外のことを書くとなりますと、罰則規定等がある中で、なかなかどこまで書いたらいいのか分からないというような声もあるようです。その辺の課題を整理する必要があるのではないかと思います。
 
 またこれは個別事項ですが、有価証券報告書の英語版を作るということですが、今ある有価証券報告書を単純に英訳しただけでは、恐らく海外の投資家には理解されないと思います。その観点から、英語版を作るときに何を変えるのか、どういうふうな視点で自由度を持たせるのかということについても検討する余地があるのではないかと思います。
 
 2点目は、非財務情報の開示全体に関して言えば、投資家の視点に立って望ましい開示の在り方、単純に数値で出すということだけではなく、どのように実質が見えるような開示をするのかということと、質の担保が非常に重要なので、その担保をどのように行うのかということについての議論も必要かと考えます。また、その非財務情報の開示において、取締役会あるいは監査人がどのように関与しているのかということについての開示も必要であると思っております。
 
 以上、具体的な優先順位をつけてはおりませんけれども、ワーキング・グループで議論するに当たっての課題の整理について御提案いたしました。よろしくお願いします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、近江委員、どうぞお願いいたします。

【近江委員】

ありがとうございます。既に委員の皆様からの御発言にもありましたが、今回の論点の大枠においては、これで特に問題ないのかなというふうに私も思っております。とりわけ、やはり今回は、この新しいサステナビリティというものを優先課題としまして、既に今までいろいろな進捗があるコーポレートガバナンスに関係するところその他に関しましては、特に不足感のあるところを議論するということかと思います。
 
 特に運用の現場において、サステナビリティを運用に統合する動きというのは、もちろん欧州の運用機関はもとより、今、米国、それからアジアにおいてもますます加速しているというのを日々肌で感じておりまして、投資家が企業を評価する際に、サステナビリティに関する基本的な開示があるかないかということが大きな鍵を握っているということから、将来を見据えて、今、先見性を持ってプロアクティブに対応を進める必要性が非常に高いと認識しております。ガバナンスはもちろんですが、気候変動、人権尊重、それから人的資本と多様性であったり、またサイバーセキュリティーの確保など、サステナビリティに関する基本的な方針や対応については、企業は開示するということが、そもそもグローバルな投資家が投資対象を考える上で最低限必要なことになってきておりますので、これに対するソフトロー側の対応というものもありましたが、いろいろ議論の余地や工夫の余地があるとは思いますが、ハードローにおいても対応を進めるということが、結局は日本企業の長期的な競争力強化につながると考えております。
 
 とりわけ気候変動に関する議論が急速な勢いで進展しているわけですけれども、ここにおいても、長期的な視点から、日本企業が持続的に、これをきっかけにして価値を向上していくということを後押しするためにも、TCFDあるいは同等の枠組み以上の開示というものを後押しすることが大事であって、こういった将来の方向性を見据えた上でいろいろな工夫をして、例えば企業が虚偽記載などにおける法的責任を懸念して躊躇しているのであれば、この懸念に応える考え方などを提供していくことなどによって、幅広い企業がそれなりの開示をしていくということを後押ししていく必要があるかなと思っています。特に、業種によって気候変動のマテリアリティはある程度異なるとはいえ、排出量などの基本的な情報というのは投資家が将来的にますます活用していく情報となっておりますし、そういったことを考えますと、全社に対して開示が求められるということもございます。また社会の課題においても、投資家においてはますます重要性は認識されておりますので、例えば、藤村委員からもありましたけれども、人権方針や人的資本に関する基本的な開示というものを充実させていく必要があるかと思っています。
 
 ガバナンスについては、前回のワーキング・グループを踏まえてかなり対応が進んでいるというところではありますが、私のほうから1点申し上げたいのは、政策保有株式に関する説明においてはまだ課題があるかなという認識を持っているということです。特に政策保有株式の、個別銘柄の保有の適否などに関する開示、取締役会などにおける検証の内容といったところは、まだ非常に表面的な記載にとどまっている場合が多いと認識しております。そうした企業との対話においては、政策保有がいまだに取引の条件となっているとか、あるいは買収防衛の対応策として捉えられていると、そのために削減が進まないといった説明を受ける場合もまだまだ多い状況でして、議決権行使の方針についての適切な基準であるとか、議決権行使の状況についての具体的な記載も乏しいことから、より踏み込んだ開示を求めていくことなども必要ではないかと考えます。
 
 私からは以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットの順番で、中野委員、松元委員、黒沼委員、清原委員、神作委員の順になると思います。中野委員、どうぞお願いいたします。

【中野委員】

中野と申します。発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 
 私からは3点指摘させていただきたいと思います。まず1点目は、既に多くの委員が指摘されていますように、審議の優先順位については、サステナビリティ報告、中でも気候変動リスクの開示を最優先課題に位置付けて審議すべきだと考えます。会計基準については10年以上前に国際会計基準の導入が大きな問題になったわけですけれども、本質的にはそれに類似する状況が今起きつつあると理解しています。国の社会経済政策の観点からも非常に重要な審議事項として位置付けられると認識しています。
 
 2点目としては、本日の事務局の御説明に含まれていた、人的資本の開示も非常に重要な事柄だと考えています。その検討課題は、二つに大別されます。まず全体として日本企業がどのような姿勢をとっているのか、すなわち人権やジェンダー等の問題について正面から開示するかという企業全体の視点が一つです。もう一つは、財務諸表との関連で言いますと、人的資本は財務諸表にはなかなか表れにくいので、それらを補足・補完するという意味で人的資本の開示は重要とかねがね思っているところであります。
 
 ただ、同開示に関連して、ここで1点強調しておきたいことがあります。以上の開示はたしかに重要なのですが、それ以前に、日本では、そもそも「人件費」について十分な開示が行われていない、という点を十分認識しておく必要があります。各企業において人件費がどの程度生じているのか、これが、有価証券報告書の第1【企業の概況】、5【従業員の状況】において、「提出会社」ないしは親会社の人件費しか開示されておらず、有価証券報告書において連結ベースの人件費の把握が難しい現状にあります。私は、各国の企業の付加価値および労働生産性等の分析に関する国際比較研究を拝見することがあるのですが、日本では、事実上、「人件費」が開示されていないために、国際比較研究において、日本企業が同比較・分析の対象に含まれていない、という状況によく遭遇します。
 
 わが国のディスクロージャー制度は、国際的に見ても相対的に高いレベルにあると国内外において認識されていると思いますが、「人件費」が、事実上、非開示になっている点については国際水準に比べ劣っており、制度上、手当の必要があると強く考えています。前回のディスクロージャーワーキング・グループとの関連で言いますと、同報告書の5ページの注13、こちらのほうでも、人件費の開示に関連する課題について記載されておりまして、少し細かい話ですが、会計の領域で言いますと、一定の条件を満たす場合には製造原価明細書の開示を省略することができ、有価証券報告書の利用者は、「人件費」を掴みにくい状態になっております。この点について、人的資本の開示を行う上での前提事項としてしっかりと議論し、制度上の手当をすべきだと考えているところでございます。
 
 最後に3点目ですが、本日、事務局が御準備くださった説明資料7ページおよび参考資料7ページにおいて、前回のディスクロージャーワーキング・グループの提言の効果について御報告いただいておりますが、参考資料ではMD&Aおよび経営戦略等においてまだまだ課題があることも示されています。金融庁においていろいろとフォローされているところではありますが、本ワーキング・グループにおきましても、前回の提言の効果が、どのように、どの程度発現しているかについて議論する機会を設けていただくことも要望しておきたいと存じます。本ワーキング・グループにおいて、御見識をお持ちの委員も多くおられますけれども、前回、外部の投資家の方などもお呼びして非常に有益な議論が可能になったと思いますので、今回も外部の投資家等をも必要に応じてお招きして、前回の提言の効果や課題についてお聞きする機会を設けていただくことも有益かと考えます。
 
 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、松元委員、どうぞお願いいたします。

【松元委員】

ありがとうございます。私からは1点だけ発言させていただきたいと思います。今回審議を進めるに当たって留意すべき点ということになるかと思いますが、これまでいろいろな委員の皆様方の御指摘ありましたように、やはりサステナビリティ情報の開示というのが、今回かなり優先的な課題になってくるんだと思います。その中でサステナビリティ情報の開示をどう位置づけるかというのは、実は、理論的にはすごく難しい問題を含んでいるというふうに思います。

 先ほど藤村委員からシングルマテリアリティ、ダブルマテリアリティというお話がありましたが、すごくざっくり言ってしまえば、サステナビリティ情報というのが、投資家の投資判断に重要だから、企業価値の判断に重要だから開示させるというのが、恐らくいわゆるシングルマテリアリティという考え方であると理解しています。それに対して、必ずしも企業価値とか投資判断には関わらないとしても、気候変動へのインパクトというものを考えて開示させるというように、企業が環境に与えるインパクトというものを考えていくのがダブルマテリアリティという考え方なのだと理解しております。

 そして、サステナビリティの情報の開示をさせるというときに、このうちのどちらの考え方を取っていくのかというのはすごく難しい問題で、確かにこれまでの金融商品取引法などの開示の考え方というのは、投資家のための開示ということですので、シングルマテリアリティの考え方というのがすごくしっくりくるというのは私もすごくよく分かりますが、じゃあ投資家の判断、企業価値に関わるものだけを開示すれば、それで本当に十分なのか。
 
 もしかするとヨーロッパなんかは、さらにダブルマテリアリティの方向に舵を切っているようにも見えますし、仮に有価証券報告書では投資判断に必要な情報だけを開示させるとして、もしかするとソフトローの部分で、罰則がないとか強行規定ではないとか、そういった部分ではさらに、企業価値には直接関係ないのだけれども、気候変動に対して積極的に企業に行動していただくために、よりたくさんの開示を求めるということも、もしかすると考えられるのかもしれないですし、その辺り、今までのディスクロージャーの枠組みの考え方が、がらっと変わる可能性もあるような。理屈の上ではすごく難しいところだと思いますが、そこは必ずしもシングルマテリアリティでいくのだということで決め打ちはせずと言ったら変ですが、難しい議論ですので、委員の皆様方の意見を聞いて、広いというか、大きな理論的な問題も念頭に置きながら、開示の内容、具体的な内容というものを詰めていくべきなのではないかというふうに思っております。
 
 私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、黒沼委員、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】

黒沼です。よろしくお願いします。まず、前回のワーキング・グループ報告に基づく施策の実施場面においてガイダンスや好事例集を活用したということは、画期的なことだったと思います。これによって、従来のひな形的開示から、より企業が何をしようとしているかという、実質面の開示が進んだと思います。ただ、好事例集を見ますと、これはやむを得ないことだと思いますが、統合報告書などの任意の開示書類中の開示例が示されていて、それが望ましいという場合に、そのうちどこまでを法定開示書類に開示すべきかという点について、戸惑った企業もあったのではないかと思います。
 
 今回の検討課題のうち最優先に取り上げるべきものは、私もサステナビリティ開示、特に気候変動への対応と考えています。これは、諸外国でその動きが活発であって、我が国でも重要性は認識されていましたが、法定開示のところでは個別的には取り上げてこなかった問題だからです。サステナビリティの関連項目は、多くの上場企業において何らかの任意開示を行っているものですけれども、法定開示でないところから、比較可能性に乏しいものになっていると思います。また、開示書類の性質上、法定開示書類は投資家に向けた開示であるのに対し、任意開示は広く利害関係者や社会一般に向けられたものという相違があります。
 
 しかし、まず気候変動対応に関する情報については、投資判断上も重要になってきていることは間違いがなく、少なくとも投資情報として重要な情報事項は、比較可能性を確保するために法定開示に載せるべきだと考えます。その際、最も参考になるのは、やはりTCFDの求めている開示基準ではないかと思いますし、その導入方法については今後議論すべきだと思いますが、EUや英国のやり方が参考になるように思います。
 
 次に、人的資本への投資、多様性確保という項目は、いわゆるESGのうち、主としてS、一部はGに関わる事項だと思っております。この分野は、任意の開示書類においても、日本企業の取組や開示が後れている分野ではないかと思います。そこで法定開示への取組を検討することによって、企業の取組を促すべきではないかと考えています。その際こちらは、投資判断にとって重要かどうかということに加えて、開示により企業の取組を誘導するという、そういう政策目標を念頭に置いて考えてよいのではないかと思っています。また、既に御指摘ありましたけれども、サプライチェーン全体の情報が開示されるようにするということも重要だと考えています。
 
 個別の項目については、今日は初回ですので発言は控えますけれども、いずれも重要な項目であり、時間的な余裕があれば取り上げるべきだと考えています。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、清原委員、どうぞお願いいたします。

【清原委員】

ありがとうございます。清原でございます。まず、過不足があるかどうかという点に関して申し上げると、挙げられているところは大項目ですので、特段ございません。ただし、例えばサステナビリティということで括弧書きになっているところは、主要な項目だけあげられていて、「等」とはなっていますが、もう少し広げて考え方を議論していくんだろうと思われます。その意味で、大項目のサステナビリティの中の議論の中で、位置づけを含めて個別の事項を議論していくものは多々あろうかと思っております。
 
 また、サステナビリティに関しては、ほかの委員から御議論がありましたように、どの範囲まで議論していくかということを含めて、任意開示と法定開示の関係の整理の議論が出発点としてあって、なぜサステナビリティの部分を法定開示の中に取り込むかについて、今の実務にある任意開示でのサステナビリティがそのまま法定開示に取り込まれていくわけではないと思われますので、議論を整理していく必要があると思います。その中で、項目としても気候変動は重要であると思いますが、SやGの部分の中での重要な項目がピックアップされ、法定開示の中に入ってくると思います。
 
 次に、現状あるサステナビリティの報告書などを拝見していると、基本方針、それから、サステナビリティマネジメントの考え方や、推進体制、重点課題、課題をどうピックアップしたかのプロセス、そういった形で、かなり一連の流れを開示している企業があるようです。その関連で、コーポレートガバナンスのほうにも繋がっていくかと思われますが、ガバナンス構造の中での各機関がどう関わって、サステナビリティの課題を特定し、開示に繋がっているのか、課題への対処に繋がっているのか、そういった点の開示の議論があろうかと思います。そして、自社におけるサステナビリティの課題をピックアップする過程で、やはりマテリアリティ、重要性の話があり、そこはリスクマネジメント、それから経営戦略その他のものとの関連性も非常に強いものとなります。2018年のワーキング・グループの報告で取りまとめた中で、従前の開示からかなり開示項目を整理・拡充したところではありますが、サステナビリティの議論の中でも、経営方針、経営戦略、そういったところの開示、これもその後開示が進んできたところですが、サステナビリティ議論の中でもう一度議論するところが出てくるのではないかと考えます。
 
 ガバナンスの開示のところに関してですが、まず第1点目が、取締役会等の活動状況としてあがっているところについて、今後の議論で取り上げることが望ましいのではないかという点についてですが、先程、事務局の御説明で、海外での監査委員会に関する開示例に言及があり、監査委員長の説明が載っていたことに触れられていました。現在の有報での監査役等の活動状況などで記載されているところの現状がどうかというと、有価証券報告書を作成する事務方が起案をしたものが出されているように見受けられるものが多くあると思われます。ここは、グローバルに他国の開示などを見たときには、委員会がどう考えてどう動いているか、委員長が、自らの言葉で語るというものがある、その意味で、説明責任を果たすという面を持った開示の実務が海外にはあるわけですが、そういった考え方での開示は今までの日本ではありませんでした。このような点に関して、少し考え方を整理した上で、ワーキングの報告の中でも取り上げていくことがおそらく必要になるのではないかと考えております。同様に、サステナビリティの考え方や課題を特定していくというところですとか、推進していくというところ等でも、関係してくるのではないかと考えております。
 
 政策保有や重要な契約などの項目に関してですが、重要な契約に関しては、何をもって重要とするかということが、恐らく十分クリアになっておらず、重要なものであっても、開示しなくていいのではないかとか、開示しないでおこうということを許容してしまうようなところが現実にはあるのではないかと懸念しています。そこで、重要性の考え方、特に重要な契約でなぜ開示が求められているかというところを少し整理おかないと、問題が残ったままになってしまうのではないかと考えます。そして、次に、事業にとって重要なものについては、事業にリスクになりうるものとか契約上の拘束であるとか、例えばファイナンシャルコベナンツみたいなものまで含めて考えたときに、重要な契約というのはかなり広くなってくるし、事業活動に関して重要な契約というのも現在よりも開示されるべきものの範囲は広くなってくることもあると思われます。
 
 また、重要な契約に入ってくる他のものとして、資本業務提携などが結ばれて、適時開示で開示されるものは多いですが、そこで挙がっているような開示項目ですら、有報にまだきちんと載ってきていない状況があるようです。資本業務提携契約などで取り決め、第三者割当をしたり、部分買い付けがされたりするとき、その契約では、有報提出会社と第三者割当を受ける会社との間での、発行される株に関する取決めや、役員選任などのガバナンスに関する取決めが実際になされている、契約ですので法的拘束があると思いますが、そういう取り決めがなされているにもかかわらず、それを有報で開示せずに済ませている、そういった状況に対して、スポットライトを当てて、開示が求められる重要な契約の重要性とはどういうものか、契約に関して開示すべき事項としてどのようなものがあるか等の考え方の整理や例示をして、開示すべき契約や開示事項がより具体的に明らかになることで、投資家の一番嫌がるサプライズ、そんなことは知らなかった、そんな重要なことを開示しないのはどうしてか、というような状況が防げるようになってくるのではないかと思います。
 
 この重要な契約は、有報の文脈での議論だけでなく、併せて大量保有報告書における保有株式に関する重要な契約や取り決めに関しても、議論すべきではないかと考えます。現状、例示されている保有株式を担保に出していることなどの開示はされていますが、保有株式を売るに当たって契約上制限があったり、もしくはその他の取り決めから、実は買い増しができるなどという取り決めがある場合もあるようです。もしオプション権というような側面まであるのであれば、重要な契約であるとともに、また保有割合の計算のところに入ってくるはずだったりするわけですが、一度考え方の整理をしておかないと、適切な開示がなされない状況が残ってしまうと懸念されますので、そういったところまで含めて整理が進めばよいと考えております。
 
 先ほども他の委員の方からもお話があったところですが、サステナビリティに関する開示について、企業サイドで法的責任についての懸念があると思われます。将来に関わる不確実な情報について開示をしていくとき、法的責任の問題に対する一定のセーフハーバーの考え方を整理しておくことは有用だろうと思われます。前回のワーキング・グループの後、開示府令の改正案のパブコメの中で一定の考え方が示されているところですが、サステナビリティを含め、将来に向けた情報の開示の充実を進めていくうえで、企業が前向きに開示に取り組みやすくするために、この部分の整理についても検討いただければと考えます。
 
 最後に、やはり法定開示というところからすると、コーポレートガバナンス・コードでいうと守りのガバナンスに相当するところについて、企業サイドがしっかりと確保すべき「ベース」になるところについての開示をもう少し充実する方向での議論が必要となると考えております。その点に関連して、監査に対する信頼性の確保等だけでなく、リスク管理、内部統制について、現状について開示上の問題点を検討した上で、制度開示として求めるべきところは何かを明確にしていくとよいのではないか、総論的なところとしてこのように考えております。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】

神作でございます。発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。大きく2つ、コーポレートガバナンス関係の開示と、サステナビリティ関係の開示について、それぞれコメントさせていただきます。
 
 コーポレートガバナンス関係の開示につきましては、報酬委員会、指名委員会について、コーポレートガバナンス・コードの再改訂において任意のものも含めてより活用するという方向が打ち出されており、対話ガイドラインでは、サステナビリティ委員会等についても言及されています。これらの報酬委員会、指名委員会、サステナビリティ委員会といったコーポレートガバナンス上重要な委員会については、その構成や位置づけ、それから活動の内容等について、さらに踏み込んだ開示について検討する必要があると思います。こういった社外取締役を中心とした委員会では、自分たちだけで仕事をするというのには大きな限界があり得ると思います。特に外部のコンサルタントなどを利用したような場合には、そういった利用、どのようなところをどのように利用したかというようなところまで含めて、開示の対象を考えるということがあり得ると思います。
 
 また、重要な契約に係る開示について、個別課題として分類されておりますけれども、先ほど清原委員からも問題提起がございましたが、特に支配権に関わる重要な契約というのは、これはむしろコーポレートガバナンスに関する開示の枠組みの中で考えていく必要があると思います。
 
 大きく2つのタイプがあると思っております。1つは、議決権行使の拘束に関する契約であり、もう一つは、これも清原委員が御指摘された点かと思いますけれども、株式の譲渡とか移転に関す社員間の契約です。ただし、こういった社員間の契約というのは全て開示の対象になるというものでは恐らくなく、今申し上げた議決権行使に係る拘束契約や、株式の譲渡・移転等に関わる何らかの制限に係る約定というのは、会社が関与していると申しますか、会社に知れているような、そういったものについては開示を促進していくという方向で考えるべきであると考えます。もちろんそれ以外にも重要な契約というのはたくさんあると思いますけれども、まずは支配権に関わる重要な契約については、開示の充実を図っていく必要があると思います。
 
 次に、サステナビリティ開示について申し上げます。環境の問題、それから従業員の問題、地域社会、人権、従業員を除いたそれ以外の人権への配慮、こういった様々なサステナビリティの要素があると思います。これらの要素のうちどれが重要かは、会社ごとによっても異なると思いますし、環境だけを取り上げるのではなくて、サステナビリティ開示については、入り口としては、幅広く議論してはいかがかと思います。
 
 ただ、環境については、これも多くの委員が御指摘されたように、単に開示だけではなくて、基準にまで踏み込んで議論する必要がある。それほど重要性が高いと申しますか、サステナビリティ開示の中でも、環境についての開示は一段グラデーションが濃いと申しますか、基準にまで踏み込んで議論する必要がある段階に達していると考えおります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットの順番ですと、佐々木委員、上田委員、高村委員、田代委員の順になると思います。佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】

佐々木でございます。どうもありがとうございます。まず、これからの前提となる辺りからまずお話させていただきます。企業開示は、当然ながら、投資家を初めとするステークホルダーのみなさまに対する有用な情報提供ということが前提になるわけですが、資本市場において、特に海外市場、グローバルな資本市場の中で、日本の企業が、まず不利にならないというのが重要なポイントではないかと思っています。
 
 一方で、企業の開示資料の作成者としては、やはり負担というものが非常に気になるところでございまして、この2つ、不利にならないというところと、それから負担、このバランスを考えていく必要があるのではないかなと思ってございます。
 
 それから、幾つか論点を申し上げますと、まずサステナビリティでございますけれども、ここにあります気候変動の関連と、それ以外、例えば人的資本と、この2つを見てもかなり差があるのではないかなと思っています。既に国際的な合意がほぼ整っている気候変動と、これから幾つか論点があって深掘りしていかなければならない人的資本とでは、大分議論の出発点が違うのかなと思いますので、その辺りを整理して、議論を進めたらというふうに思っています。
 
 それから、コーポレートガバナンスの関連ですが、取締役会の活動状況というのは非常に大事だと思っています。特に日本の場合は、監査役会設置会社という会社が非常に多いということで、これが国際的に見ると、なかなか理解しにくい部分があると思いますので、こういったところをぜひとも何かの形で、皆さんに御理解をいただけるような、そういった方向になればいいなと思ってございます。
 
 ただ、幾つか開示を充実すればするほど、これは藤村委員もおっしゃっておられましたが、定量的なものを出そうという方向になって、それが実は、投資家にとっても、それから作成者にとってもあまり意味がないというふうなことになって、負担だけが残るというふうなことになりかねませんので、そういったところも十分に議論すればいいのかなと思っています。
 
 それから、小林委員もおっしゃっておられましたが、例えば、個別課題にあります英文開示などは、そのまま英語に訳しても、恐らくグローバルの投資家、海外の投資家にはなかなか理解しにくい部分があると思いますので、やはりこれも工夫が必要かなと思っております。
 
 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして、上田委員、どうぞお願いいたします。

【上田委員】

上田でございます。今回から会議に参加させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。では、まず順序といいますか、どのような優先順位という、この問いかけについて、そして、それから内容についてコメントさせていただければと思います。
 
 まず順序ですが、現状、企業、あるいは投資家とお話ししていますと、とても関心が高い事項として、やはりサステナビリティ、とりわけ先般のコーポレートガバナンス・コード改訂でより強化された気候変動と人的資本に関して、双方悩みが深いようでございます。そういった中で、特に気候変動については、COP26であるとかIFRSの動向等もあって、国際的な制度設計が今動いているタイミングかと思います。こういったところで、ぜひ最初にしっかり議論をしていただきつつ、随時こういう国際的な、特にIFRSの動向等も共有していただいて、最終報告のところで企業もすごく意識しているところ、投資家も意識しているところだと思いますので、情報の発信と共有が随時できれば、最終的に優れた開示の情報共有にも、日本市場全体としてなるのかなと思いました。
 
 その上で、内容についてです。日本のガバナンスの改革というのが、企業と投資家との対話に基づいて企業価値を上げていきましょうということかと思いますが、そのベースとなるのは情報開示かと思います。ところが残念なことに、有価証券報告書というものがほとんど参考となる情報として活用されていないようでございます。とりわけ海外の投資家、外国人にとっては大変縁遠い情報であると。企業とお話をしていても、我々は統合報告等に力を入れており、詳しくは統合報告書に写真、そしてより詳細な情報も書いているということをおっしゃられるので、有報は少々置き去りにされているように感じております。
 
 ところが、やはり法定開示ということは大変重要な情報であります。英文開示、今回議論に、ほかの委員の皆様も御指摘されておられましたけれども、海外でも英語圏以外の市場において、英文開示化というような動きも進んでおります。また、コーポレートガバナンス・コードにおいても、特にプライム市場については英文開示を強化するという動きがありましたので、有価証券報告書についても、例えばプライム市場については英語化というのも、制度的な面も含めて検討してもよいタイミングになっているのかと思います。
 
 先ほど、ほかの委員の皆様から、内容をそのまま英訳したのでは、果たして海外の方々に必要とする情報が伝わるのかどうかというようなお話がございました。けれども一方で、やはり情報というのは、英語でも日本語でも、あるいはそれ以外の言葉でも全く同じ情報を伝える必要があると私は思っております。違う言葉で読むと、違う内容の情報になるというのは一番避けたいところでもありますので、この辺りをしっかり検討する必要があるのかと思います。
 
 サステナビリティですが、これはIFRSの動きを大変注目しております。やはり企業と話をしているとよく出てくるのが、国際的な面を含めて、どういった水準の情報が求められるのかといったところ。TCFDなのか、IFRSなのか。さらにこれは投資家側からの動きにもあるかと思いますが、比較可能な情報といったところが、やはり投資判断では重要なのかと思っております。もちろん任意にたくさん情報を提供することも大事ですが、やはり比較すべき必要な基本的な情報というのは、共有される必要があります。比較可能性と国際的に求められる水準を満たしつつ、さらに日本企業、あるいは日本の特徴みたいなものも、当然これは企業活動ですのであると思いますので、こういったものも反映した内容になっていく必要があるかと思います。
 
 これは環境だけではなくて、特に人的資本のところでは、日本企業は諸外国とは相当違う実態が、優れていると私は思っておりますが、あると思います。そのため、こういったところを拾い上げるような情報開示にしていければと思っております。いずれにしましても、こういった形で少し外の海外の動き等を入れながら、作成者側のニーズも酌み取る形が必要だと思います。
 
 最後に、サステナビリティとコーポレートガバナンスについては、有価証券報告書の項目についても、今のタイミングで踏み込んで議論してもいいのかと思っています。サステナビリティ、現状経営の方針ですとか、あるいは事業上のリスクといったところでいろいろ書かれて、企業は工夫されていると思います。しかしながら、現状のように重要な情報でしたら、サステナビリティという1つの枠を設けて、その中にリスクのみならず、機会も含めて書けるような、そういったこともあってもいいかと思います。ガバナンスについても、コーポレートガバナンスの状況という項目がありますけれども、コーポレートガバナンス報告書のほうで相当詳細に書いてありますので、そういったものを参考に持ってこれないかとか、枠組みと内容についても議論していいタイミングではないかと思います。
 
 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして、高村委員、どうぞお願いいたします。 

【高村委員】

ありがとうございます。高村でございます。初めてこのワーキング・グループに参加をさせていただきます。国際法学、とりわけ環境分野を専門にしておりますが、この間、事務局からも御説明がありました、サステナブルファイナンス有識者会議で、本日御参加の井口委員、田代委員と御一緒しておりました。
 
 私から、3点申し上げたいと思います。自分の専門に照らせば、恐らくお声がけいただいたのはサステナビリティに関する開示についてだと理解しており、その点について3点申し上げたいと思います。
 
 1つは、多くの委員から既に御指摘があったことに全く同意でありますけれども、昨今の世界的な動向を見たときに、サステナビリティに関する開示を、プライオリティを持って議論をしたいというふうに思っております。これは先ほど松元委員が、ダブルマテリアリティに関してということでおっしゃった御意見とも関わるかもしれませんが、もちろん企業が資本市場で、金融からどう評価をされるのかという観点からも重要でありますが、同時に、特に気候変動を例にとれば、気候変動のような問題を、企業が経営の中に統合していくということは、中長期的な社会課題や、市場の変化にどう対応していくかという点で、企業の体質の強化、あるいは中長期的な観点からの企業価値の向上といった考慮を、企業経営の中に統合するという意味で、非常に重要なイシューだと思っております。
 
 これもほかの委員がおっしゃっていましたように、やはり気候変動が国際的な議論としても、ルールの展開としても最も先行しておりますので、中でも、そこにプライオリティを置いていくということについても同感であります。
 
 その上で議論の際に、先ほど申し上げました、いかに開示によって、企業が全体として企業価値を向上させることができるか。それが金融市場から適切に評価されるか。それに十分にして必要な情報が、全体として開示されるようにするということが非常に重要だと思っております。もちろん情報開示を、どこで、どの媒体で、何を、どういう情報を出していくか、定量的なのか定性的なのか、あるいはその法的解釈や含意など、いろんな論点はあると思いますが、例えば有価証券報告書における開示の重要性は重々承知をした上で、しかし、やはり必要で十分な企業の情報開示が、全体として促進をされ、確保されるという観点からしっかり議論をした上で、それがどの媒体、どこで、何を、どういう形で行うのが、開示するのが最も効果的なのかという、そうした議論の進め方ができるとよいのではないかと思っております。これが1点目です。
 
 2点目ですけれども、繰り返しますが、企業の気候変動対応の在り方が企業価値に直結するようになっている昨今において、気候変動にプライオリティを置くということを前提とした上で、冒頭に上柳委員のおっしゃった点に同意いたしまして、つまり各国、国際的な動向を見て、プロアクティブな議論をしていく必要がある、考え方を整理していく必要があるのではないかと思います。
 
 そういう意味でいくつか、特に環境・サステナビリティの分野で、今後、開示において重要な要素になってくるのではないかと思われる項目について3つ申し上げたいと思っております。
 
 1つは、特に気候変動の関係でまいりますと、SCOPE3の排出量という形で、サプライチェーン、バリューチェーンの管理が、気候変動分野でも大きな関心を持たれるようになっていると思います。これは人権に関して藤村委員がおっしゃったことにも通じるところがありますけれども、1つは、サプライチェーンをどのようにサステナビリティの開示の中に位置づけていくか。あるいは、今後の展開を見た上で、どのような開示が必要と考えていくかという論点があると思います。
 
 それから、もう一つは、プライオリティを置く気候変動と連関する問題として、昨今、サーキュラーエコノミー、循環経済、とりわけプラスチックに関わるものの関心が高まっていると思いますし、それから、自然資本に関する情報開示のルール化をしていこうという動きが進行していると理解をしております。そういう意味では、気候変動と関連はするわけですけれども、こうした気候変動から波及した、あるいは気候変動と連関したイシューについての取扱いです。
 
 3つ目は、今申し上げた1つ目の論点にも関わりますが、企業の中でも金融機関の情報開示についてどういうふうに考えるかということです。SCOPE3の対応というのは、金融機関についても同様に関心を持たれているわけですけれども、これは同時に投融資先の企業の情報開示とも連関して、チャレンジングな課題でもあると思っています。これが論点として申し上げたかった3つ、拡張性のある論点として検討して、プロアクティブに検討しておく必要があるのではないかと思う項目でございます。
 
 最後は、このワーキングのタスクではないのかもしれませんが、開示される情報の質、あるいは情報開示のプラクティスの拡大という観点からは、サステナビリティに関する開示は、とりわけ技術的、テクニカルな側面も高いということを考えますと、ディスクロージャーを促進、あるいはその質を向上していくための支援の在り方、あるいは支援のための国の政策の在り方ということも、同時に議論されなければいけないのではないかと思っております。これはワーキングだけのタスクではないのかもしれませんが、しかしながら、いずれかの場所でしっかり議論される必要があると思っております。
 
 以上です。 

【神田座長】

どうもありがとうございました。今、SCOPE3というお話がありましたけれども、初めてお聞きになる方もいらっしゃるかもしれませんが、SCOPE1、SCOO2、SCOPE3を含めて、また後日、そういう点についても御説明をさせていただいて、御議論をお願いできればと思います。それでは、次に田代委員、どうぞお願いいたします。 

【田代委員】

初めまして、田代と申します。よろしくお願いいたします。サステナブルファイナンス有識者会議にも参加させていただきましたが、高村委員からありましたとおり、金融機関であるということも含めて、今回参加させていただいていると思います。まず1つ目の、論点の過不足はないかという点については、事務局から御説明いただいたこちらのページにあるもので十分かと思います。
 
 その代わりといっては何ですが、1つずつ丁寧に議論する必要があるのではないかと思います。特に優先順位でいいますと、やはりサステナビリティが特に高いと思います。気候変動はその中でも、COP26やIFRS財団の発表がこれからあることを踏まえポイントになると思いますが、それぞれ何か出てきたときに、時間をかけて協議し、対応を決めていくためにも、あまり間口を広げないほうがいいのではと思っております。
 
 法定開示につきましては、ある意味、日本企業の競争力の土台となるわけですが、残念ながら今、グローバルの投資家は、個別の企業を見る担当者がすごく減っております。まず日本から見て、そこからトップダウンで見る投資家が増えていると思います。そうした意味でも、法定開示というのは、日本がどういった状況かまず見ようという視点に応える意味で、とても重要だと思いますので、今回十分議論する必要があると思います。
 
 そういった意味で、何を開示するかも併せて、英文開示が非常に重要となっています。もちろんその内容が和文と英文で違うというのは問題だと思いますが、日本独特の言い回しや制度をそのまま英語にしても分からない部分については、考える必要があるのではないかと思います。
 
 最後に、気候変動については優先順位が高いと思いますが、一方で、それ以外の人的資本や多様性の部分については、グローバルに開示する場合も、何を開示するか、どう開示するかという論点と、日本の制度的に違う部分についてどう開示していいか分からないという問題があります。さらには、人権等、今、日本があまり得意としていない分野の開示となるということなので、こちらについても、より一層難しい課題ではあると思いますので、考えていく機会があればと思います。
 
 以上でございます。   

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、永沢委員、熊谷委員の順でお願いします。永沢委員、どうぞお願いいたします。

【永沢委員】

発言の機会をいただきありがとうございます。永沢でございます。前回のワーキング・グループにも参加させていただきましたが、私には個人株主という立場からの発言が期待されていると考えまして、本日は第1回ということですので、個人株主として、最近の情報開示について感じていることを述べさせていただいた後に、今回の審議事項の中で、株主として特に関心を持っている項目について述べさせていただきたいと思います。
 
 まず、企業の情報開示姿勢についての私の感じるところでございますが、多くの個人株主の場合は、年に数回、「株主の皆様へ」と題するIRレポートなどが送られてきますが、こういったものを通じて、会社がどういう状況にあるのかを確認する方が大半であると思っております。そして近年、株主に届けられるこれらの小冊子につきましては、経営戦略やガバナンスに関する説明などが大変充実してきたと感じております。その基礎になるものが有価証券報告書であることに鑑みますと、前回2018年のときに開催されましたワーキング・グループでの議論の成果というのは、着実に表れてきていると感じております。特に経営方針については、これは任意開示の範疇になると思いますが、ビジョン、ミッション、バリューを図解するなどして、価値創造プロセスを伝えようとする企業が増えているということは歓迎しております。
 
 一方、いい事業をされているのに、情報開示に対する経営トップの意識が低いせいか、残念な企業も散見されておりまして、この点ではかなり格差が開いてきていると感じております。もちろん株主との対話はコストがかかる問題でもあり、企業体力に応じた株主との対話についても考えていくということも、今回は時間がないため、見送るべきかもしれませんが、日本企業全体の情報開示の底上げという点では、私は必要ではないかと感じておるところです。
 
 それから、リスクに関するところについての御発言が相次ぎまして、私も同じように感じておるところです。この部分については、将来について、経営トップが言及する部分でもございますので、経営トップの姿勢や力量を、我々個人株主が垣間見ることができるところでございます。その意味で、有価証券報告書はファクトを説明するものであり、ここに将来のリスクについて記載というのは、責任の問題なども生じるとかいろいろ難しいことだということは理解できますが、ほかの委員の方から、ソフトローという話も出てきておりました。株主からしますと、保有継続を判断する上では大変重要なところと思っておりますので、充実をお願いしたいと思っております。
 
 また、説明責任というお話も出てきましたけれども、説明責任を果たすという観点から、コーポレートガバナンスや取締役会等の活動に関する説明の中において、リスクに関する説明は大いに関係してくる部分ではないかと思っております。
 
 続きまして、今回のワーキング・グループで優先的に審議をいただきたい事項といたしましては、私もサステナビリティを挙げさせていただきたいと思っております。また、その中でも、人的資本については、企業は人なりと言われますし、どういう人材で成り立っているのかといった情報は、財務諸表からは見ることができません。株主は関心を持っているところでございますので、この点は充実を図っていただきたいと思っております。
 
 また、ほかの委員の方から、エシカル消費という言葉も聞かれました。人的資本の延長になりますが、誰かの犠牲の上に企業活動が成り立つということは、世界的に許されない時代になってきているということだけではなく、人の道として、これは当然のことでございまして、一般の個人投資家の心には響くところでございます。諸外国の取組なども参考にしながら、望ましい開示について議論ができることを私としては期待しております。
 
 そして、最後になりますが、これも大変多くの委員から最優先課題という声が出ておりましたが、気候変動対応というところ、大変重要だと思っております。気候変動対応というと難しく聞こえますが、個人株主といたしましては、企業活動が環境に与えている負荷について知りたい、それは当然知るべきところと思っております。会社は儲かりましたが、環境を破壊しましたということでは、その会社は、いずれは存続し得なくなるということは、我々個人投資家でも分かっていることと思います。自分の会社の企業活動が環境にどのような負荷をかけているのかということを具体的に知ることができれば、その負荷を減らすよう、企業が取り組むことを応援することもできます。1株単位の小さな株主ではありますが、我々個人投資家も、オーナーである株主として、その辺り応援していきたいと思いますので、そういう情報開示を考えていくべき時期に来ていると私も思います。
 
 ただ、ここの点につきましては、比較可能性の問題の御指摘もありましたし、やはりどうしても感性的な記述になりがちなところを心配しております。個人投資家といたしましては、ブラウンとグリーンの見分けが自分に本当にできるのかという不安もあります。この辺、信頼できる情報の開示の在り方というものを、このような場で、有識者の皆様で検討いただいて、枠組みを御用意いただけたら大変よろしいのではないかと思っております。
 
 これからの審議を楽しみにしております。私からは以上となります。   

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、熊谷委員、どうぞお願いいたします。

【熊谷委員】

ありがとうございます。みずほ証券の熊谷です。また委員の名簿にございます通り、現在、アナリスト協会の企業会計部長という役職を兼務させていただいております。
 
 今日の議題、今後、優先度はどういうふうにつけていくかという話と、それから、過不足はないかということですけれども、まず、今回のディスクロージャーワーキング・グループにおいては、その開示の内容、いわゆるコンテンツに関する議論が中心になるというふうに理解いたしました。
 
 その意味で、皆様同様、サステナビリティ報告、特に気候変動リスクにプライオリティを置くことに異論はございません。またそれ以外の論点、サステナビリティ報告においては人的資本とか多様性、あるいは人権、それから、コーポレートガバナンスに関しては、もう既にかなりの開示が進んでおるわけでありますけれども、これについてさらに深めていくという方向性については、全く異論はございません。
 
 上記のほか審議を進めるに当たって、どのような点に配慮・留意すべきかという事につきまして、これまで皆さんの御意見を伺っていて、一部関連する御発言もありましたが、まだ出ておらず、しかし重要だなと思う点につきまして発言させていただきます。
 
 まず、特に議論していくに当たって、実は昨年の11月、企業会計審議会総会、それから会計部会の合同部会で、サステナビリティ報告に関しまして、金融庁の対応の方針について質問したことがあります。その時点で古澤局長から、まずソフトローの世界で入れる、ハードローの世界については、まだ議論する機が熟していないのではないかという御発言がありました。その段階では、私もハードローの世界でサステナビリティ報告についての議論が始まるのは、早くて2022年ぐらいかなと思っておりました。しかし、実際今年6月の改訂コーポレートガバナンス・コードにより、一部サステナビリティ情報の開示が求められることになりました。また、今回のディスクロージャーワーキング・グループにおいて、ハードローの世界についての議論が始まるということで、非常に進展が早いと思っています。
 
 その背景にありますのは、もう既に出ておりますとおり、IFRS財団の議論がどんどん進んでおりまして、サステナビリティ報告に関する基準設定ボードが、11月には設置される方向です。また恐らく6月には最初の基準ができてくるという、そんなスケジュール感だろうと思います。それをIOSCOがエンドースしていくという流れになると思います。
 
 今日の皆様の発言をお聞きしておりましてそういった国際的な動きを意識しながらコンテンツの議論は進んでいくと思います。しかし、神作委員が御指摘されておりましたが、単に開示ではなくて、ハードローの世界になってきますので、基準としてどう考えていくかも重要になると思います。特に、国際的なサステナビリティ基準の開発が進行する中で、日本の制度として取り込んでいくのか、いかないのかということに関しましても議論が必要ではないかというふうに思っています。

 ハードローの世界においては、仮に国際的な基準を、我が国基準として受け入れていく場合に、どのようなプロセス、メカニズムで受け入れていくのかが問題になると思います。各国による独自の基準変更を許さないIFRSと違って、今回 IFRS財団が開発するサステナビリティ報告基準に関しましては、「ビルディングブロック・アプローチ」というものを指向しておりまして、各国が独自の基準を上乗せするということが容認されるという形の建て付けになっていると理解しております。

 IFRS財団の基準は、TCFDをベースに、今、開発が進んでいると理解しております。仮にIFRS財団の基準を我が国基準とする場合には、それに上乗せする形で、我が国独自の要素の開示を別途求めていくとすると、まさにそこのビルディングブロックという形を取ると思います。IFRS財団の基準を参考にすることはあっても、日本の基準として受け入れる必要もないとは思います。しかし、仮に監査可能性等を考え、IFRS財団の基準を我が国として、受け入れていくとした場合に、そういう気候変動が第1号として出てくる。我が国としても気候変動リスクにプライオリティを置くのは間違いないが、その後もIFRS財団から気候変動以外のサステナビリティ基準が今後継続的に出てきた場合に、それを日本としてどうやって受け入れていくのか、エンドースメントのメカニズムですとか、そういう事項を、当ディスクロージャーワーキング・グループでも検討していく必要があるんじゃないかなと思っています。
 
 今回のディスクロージャーワーキング・グループでそこまで議論するのかどうかは分からないですが、今日はこの点につきまして、最初に金融庁としてのお考えをお聞かせいただけたらなというふうに思っております。
 
 最後に、何人かの委員の方から御指摘がございましたけれども、サステナビリティ報告に関しては、企業の実態を報告するという目的はもちろんありますが、企業実態の開示によって企業行動を変えていきたいということが、世界的にサステナビリティ報告への期待が高まっている背景ではないかなと思っています。気候変動の問題、あるいは人的資本の問題、人権の問題等々を考えていった場合に、単に開示させるということではなくて、そういったサステナビリティに重要な要素を意識した経営のメカニズムを企業の中に作っていただいくという政策意図もあると思います。企業の行動変容と開示の目的をどういうふうに整理していくかというのも、非常に重要な論点ではないかと考えております。
 
 以上です。どうもありがとうございました。   

【神田座長】

どうもありがとうございました。金融庁への質問があったようですけれども。

【廣川企業開示課長】

すみません、間違っていたら後で訂正していただければなんですけども、企業開示課長の廣川でございます。ありがとうございます。
 
 会計基準と、最後の今、熊谷委員からお話ありました、基準としてどう考えていくかという点でいきますと、まさに今スライドで示されているIFRS制度ということもありますが、やっぱり確かに国際会計基準があって、日本にも会計基準があってということで、物を考えるときに、1つの考え方として、会計基準のアナロジーで物を考えていくというのは、議論の出発点としてはあり得るかというふうに私自身は思います。
 
 ただ、まさにそういったことも含めて幅広い御意見をいただくのがディスクロージャーワーキング・グループの場であるかと思いますので、今の段階で私のほうから、あらかじめの方向性を持ってこうですということを申し上げるというのは、私自身はちょっと控えたいと思います。 

【古澤企画市場局長】

熊谷委員、御質問ありがとうございました。
 
 今、課長から申し上げたとおりですが、1点だけ補足させていただきます。本日各委員から御議論いただきまして、基本的な考え方というかプライオリティの議論について、サステナビリティからやはり議論をしようとの方向だったかと思います。そのときに2つあるかなと思っていまして、1つはやはり委員からもございましたように、COP26を意識しながら議論していただくということになりますと、やはりこの秋、何回か御議論いただくということもあるかと思います。
 
 加えて、今の熊谷委員の御指摘、それからほかの委員方の御指摘、それから今、課長から申し上げたこととも関係いたしますが、年内の議論だけでいいかというと必ずしもそうでもなくて、やはり年明け以降の動向もきちんと見なければいけないと思いました。そういった点も受け止めまして、日程の設定の仕方、それからその中でのアジェンダの置き方といったことも、また座長と御相談しながら進めたいと考えてございます。
 
 以上でございます。 

【神田座長】

どうもありがとうございました。このディスクロージャーワーキング・グループでも、前回、先ほど何人かの方から言及がありましたけど、財務情報と並んで非財務情報、記述情報ということを重要な情報として法定開示を求めるということで議論しましたが、今回、今、御指摘のありましたサステナビリティ、とりわけ気候変動のほうから基準という話が出てきて、間違いなく実現していくと思いますが、財務情報は伝統的に会計基準があって、それで企業の事業活動を数字にして、そして比較可能性、それから投資家への情報の質を高めるという観点から監査というものが行われるという、これが確立しているわけですね。
 
 非財務のほうはそういうものはないので、どうやら今回、気候変動をはじめとして、サステナビリティについては、今後、基準ができていけば、今度は基準に従って情報開示がされることになりますので、そうすると監査みたいな話がまたあると。
 
 その場合に、さらにサステナビリティ以外の非財務情報について、自由に書けばいいのかという話になりますので、これ、法定開示制度の一番の基本である有価証券報告書という制度の持つ意味にも関わってくる、大変重要な話を含んでいると思います。いずれにしましても、そういったことを含めて、今後、皆様方に御審議、御議論をいただければ大変ありがたいと思います。
 
 今の熊谷委員の御発言で、委員の方々全員から、今日は御発言をいただきました。初回ということで、非常に理想的であり、大変ありがとうございました。若干時間ございますので、オブザーバーの皆様方で、御発言ございましたらお伺いしたいと思います。チャット欄で、もし御発言の御希望があれば記入して、全員宛てに送っていただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
 ありがとうございます。公認会計士協会の小倉さん、どうぞお願いいたします。     

【小倉オブザーバー】

公認会計士協会の小倉でございます。発言の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私からは、2点発言させていただければと思います。
 
 1点目は、上場企業による投資家への情報開示というのは、事務局の御説明資料にもありますとおり、非常に多様な媒体に行われております。その中で、法定開示である有価証券報告書でどういう情報を開示するかということが非常に重要と考えておりますので、そういった御意見、出ておりましたけれども、法定開示である有価証券報告書における開示情報の整理というのが、1点重要なテーマであると認識をしております。
 
 それから2点目は、投資判断において非財務情報というのが非常に重要であるということで、この非財務情報の信頼性の確保ということをどのように担保していくかということについて、御議論の中では配意していただきたいと考えております。
 
 2022年の3月期から、有価証券報告書のその他の記載内容という非財務情報に関する独立監査人による通読・検討手続が行われることになっておりますが、その他の記載内容それ自体に保証を付与する手続ではございませんで、非財務情報の信頼性の確保についても、併せて御議論を行っていただきたいと考えております。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございました。   

【神田座長】

どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの皆様方、御発言の御希望ございますでしょうか。連合の春田さん、どうぞお願いいたします。    

【春田オブザーバー】

連合の春田です。発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 既に複数の委員の方から意見が出ているところの繰り返しになって恐縮な部分もありますが、今回の論点の中で、サステナビリティ、これは本当に重要な視点だと思っております。その中で、連合としては人権の尊重というところを、ぜひとも論点の中で議論していただいたらありがたいなと思っています。ミャンマーの問題だとかウイグル自治区の問題等々、国際的にも人権の問題がクローズアップされておりますし、国内においても、海外からの技能実習生の問題などがあります。こういった問題に対して、どのように企業が取組をしているのかを開示していくことが、円滑な企業活動にとって不可欠なことだと考えておりますので、ぜひとも論点としてよろしくお願いしたいと思います。
 
 もう1点、人的資本への投資という中で教育訓練費の重要性を指摘しておきたいと思います。コロナ禍においてデジタル化、グリーン化に伴う産業構造の転換が非常に進んでいる中で、教育訓練の重要性は増しているにも関わらず、企業の教育訓練費が減ってきているというようなことがございます。そういった中で産業構造の転換に対応したリカレント教育も含めて、人的資本への投資を考えていただけたらありがたいと思っています。
 
 長くなりましたけれども、以上で終わります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。委員の皆様方、もし追加で御発言あればお伺いしますけれども、何かございますでしょうか。どうもなさそうで、どうもありがとうございます。
 
 それでは、そろそろ時間になっておりますのでこの辺りにさせていただきたいと思います。大変活発な、また、そして多様な御意見、有益な御意見を多数いただきまして、どうもありがとうございました。ただこの会議というのは、なかなか時間も限られておりますので、後から気がついたとか、そういう追加でお気づきの点、あるいは御意見、その他御質問等がございましたら、ぜひメール、あるいはお電話でも結構ですので、事務局、私でも結構ですが、事務局のほうに、ぜひお知らせいただければと思います。これは別に今日に限らないことでして、今後順番に各論を御審議いただくわけですけれども、時間は有限ですので、ぜひお気づきの点があれば、事務局までお知らせいただければと思います。
 
 それから、現在のコロナの状況ですと、大変恐縮ですけれども、しばらくは今日のようなオンラインという形式が続くと思いますが、このオンラインでの御審議というのも、気持ちよく皆さん議論をしていただくために、何かお気づきの点、こういう点を工夫したらどうかということがございましたら、ぜひ事務局までメール、電話、その他でお知らせいただければありがたく存じます。
 
 本日、多数の貴重な御意見をいただきましたので、次回以降は、本日いただきました御議論を事務局のほうで整理していただいて、各論を順番に取り上げて御議論いただくことになるわけですけれども、相当難問が山積しておりまして、皆様方には難しいテーマについて御議論をいただくことになります。そういうことですけれども、どうか御協力、そしてまた、積極的な御参加をいただけましたら大変ありがたく思います。
 
 それでは、最後になりますけど、事務局から事務連絡等ございましたらお願いいたします。  

【廣川企業開示課長】

1点だけ、次回のワーキング・グループの日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえた上で最終的に決定をさせていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと存じます。
 
 事務局からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。皆様方、本日は大変ありがとうございました。

―― 了 ――

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