金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第3回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年10月29日(金曜)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室

【神田座長】
 ただいまから金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ第3回を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところ、本日も御参加いただきまして、ありがとうございます。

 本日の会議も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、金融審議会議事規則第1条第2項にのっとりまして、オンライン会議を併用して開催させていただきます。議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。

 会議を始めます前に、事務局から留意事項の説明をお願いいたします。
 
【廣川企業開示課長】

ありがとうございます。企業開示課長の廣川でございます。よろしくお願いいたします。

 オンライン会議について2点留意事項がございます。

 1点目ですが、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から御指名をいただきます。また、御発言される際には冒頭にお名前をお願いいたします。

 2点目でございますが、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わりましたら再びミュート設定にしていただくようお願い申し上げます。

【神田座長】

どうもありがとうございます。それから、前回までと同様、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただいておりますので、よろしくお願いいたします。

 では、議事に移ります。本日は、事務局から資料の説明をしていただきまして、その後、質疑応答と討議をお願いしたいと思います。それでは、事務局からの資料説明よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】

ありがとうございます。それでは、スライドに投影させていただいております「事務局説明資料(サステナビリティに関する開示(2))」に沿って説明申し上げます。

 おめくりいただいて、まず2ページですけれども、これまでの議論を踏まえた論点整理です。前回は気候変動の対応ということで御議論をいただきまして、今回は右側、サステナビリティ開示全般について、総論として重要性に基づく開示、そして、各論として個別のサステナビリティ項目の開示等について御議論をいただきたいと考えてございます。

 飛びまして、4ページ、5ページは前回の御意見をまとめさせていただいているものでございます。4ページですけれども、開示における重要性の考え方については、投資家の投資判断にとって重要な情報か否か、企業価値への影響で判断するのがよいのではないか等々の御意見をいただいております。また、開示充実の方向性につきましては、グローバルな枠組みの中で開示をしていくということ、特に「ガバナンス」、「リスク管理」、「戦略」、「指標と目標」、これについてどう開示していくのかというような御意見を多々いただいたところです。また、有価証券報告書と任意の開示書類、こちらの関係性についても複数御意見をいただきました。

 5ページに参ります。そうした中で、有価証券報告書の中にどのように記載をするのかという御意見も賜りました。その際には、有価証券報告書作成者が約4,000社ということで大変数が多くございますけれども、それを踏まえた適用の在り方について複数の意見があったと存じます。また最後に、基準について、特に国際的なサステナビリティ報告基準でありますISSB基準、それを受けた日本の対応について御意見をいただいています。

 6ページに参ります。これは今の話とは少し離れますけれども、御参考までということです。前回のディスクロージャーワーキング・グループ以降の話として、10月8日に岸田総理大臣が所信表明演説の中で、「企業が、長期的な視点に立って、株主だけでなく、従業員も、取引先も恩恵を受けられる「三方よし」の経営を行うことが重要です。非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進めます。」とおっしゃっておられます。

 戻りまして、本日は、気候変動対応以外のサステナビリティ項目を含む開示というテーマでございます。8ページでございます。様々なサステナビリティに関する情報が存在している中で、SASB、それから、世界経済フォーラム、欧州委員会等様々な区分がこういった形で示されているということでございます。開示の枠組みによって推奨される開示も異なる状況でございます。

 次のページ、9ページに参ります。そうした中で例えばSASBにおいては、産業別のマテリアリティマップも示しています。

 10ページに参ります。こちらは、本年6月に改訂されました我が国のコーポレートガバナンス・コードでは、サステナビリティに関連する項目として、気候変動などの地球環境問題への配慮、人的資本、知的財産、人権、従業員の健康・労働環境・処遇等が記載されてございます。

 11ページに参ります。前回もお示ししましたが、記述情報の開示に関する原則におきまして、投資家の投資判断における重要性は、企業の業態や経営環境等によって様々であり、記述情報の開示に当たっては、各企業において企業価値や業績等に与える重要性に応じて判断することが求められるということで、重要性、いわゆるマテリアリティについての考え方が示されているところでございます。

 続いて、マテリアリティについては、12ページでございます。このマテリアリティに関しては、投資家の投資判断にとって重要な情報か否かは、企業価値への影響を考慮して判断すべきとの御意見が第2回でもあったところでございますが、国際的にIFRS財団の戦略の方向性においても同様の考え方が示されているところでございます。

 それから、13ページに参ります。企業のマテリアリティ、これは特定の企業の例ですけれども、有価証券報告書の中で企業のマテリアリティを特定し、マテリアリティごとにリスクと機会、取組内容を開示している事例の御紹介でございます。

 14ページに参ります。これも前回にお示ししたスライドでございますけれども、民間基準設定5団体、いわゆるG5のサステナビリティ関連財務開示のプロトタイプでございます。こちらの中での考え方として、四角の2つ目ですけれども、TCFD提言の4つの柱というのは、気候変動だけではなく、他のサステナビリティ関連財務情報を表示する上でも有用であると、このような整理がなされてございます。

 15ページに参ります。こちらは気候変動以外の開示基準策定の動きということでございます。IFRS財団のほうですけれども、2022年第1四半期を目途に気候変動以外のESG要素について、基準を検討する項目の優先順位や作業計画に係る市中協議が行われる予定となってございます。

 16ページに参ります。有価証券報告書の記載事項についてでございます。第2回の会議での御意見といたしましては、有価証券報告書の中に「枠」を作り、そこで開示することとしてはどうかという御意見。さらに、「ガバナンス」と「リスク管理」の開示を求めてはどうか、「戦略」、「指標と目標」については、企業にとって重要性がある場合に開示することとしてはどうか。また、基準に関しては、国際的な基準であるISSB基準を踏まえた開示が重要。その際、有価証券報告書提出企業が4,000社以上あることから、段階的な適用も考えられるというような御意見をいただきました。

 これを踏まえた有価証券報告書の改正のイメージでございますけれども、例えば1つ記載項目として「サステナビリティに関する考え方、取組み」を新設し、当初の開示項目としては、「ガバナンス」、「リスク管理」を記載いただく。「戦略」、「指標と目標」については、各企業が重要性を踏まえて判断する。そういった中で、我が国におけるサステナビリティ開示の個別項目、例えば気候変動といったものについては、基準の状況を見ながら将来的に取り込んでいく段階的な適用も考えられるのではないかというようなところが、御意見を踏まえると1つのイメージであるのではないかということでお示しをさせていただいております。

 17ページに参ります。同じようなスライドですけれども、基準に関して、IFRS財団のISSB基準の策定の動きに対して意見発信を行うための組織が必要ではないかというふうな御意見をいただきました。特に図の右側のほうですけれども、この意見発信と併せてさらに御意見としていただいたこととしては、ISSB基準に対して我が国としてどのような個別項目を開示していくのかという検討もやっていくべきではないかということで、こうした対応を行っていく組織が必要ではないかという御意見をいただいたところでございます。

 18ページに参ります。この関連といたしまして、国内の動きでございます。財務会計基準機構ですが、我が国において会計基準を作っている団体でございます。こちらのほうで定款変更がなされまして、昨日公表されたものでございますけれども、会計基準のみならずサステナビリティ報告基準についても、基準の調査研究・開発、そして、国際的な基準の開発への貢献、こういったものをやっていくということが目的と事業において掲げられることになったということでございます。

 20ページに参ります。ここからは、個別項目に関連するような事柄を幾つか御紹介させていただきます。1つは多様性確保の開示に関する動向です。これは第1回のときにお示しした資料ですが、女性活躍の推進等のコンテクストで、第5次男女共同参画基本計画及び少子化社会対策大綱、これにおきまして、それぞれ有価証券報告書において、例えば育児休業取得率の記載を促すなど、この政策のコンテクストでは有価証券報告書の中でその開示の在り方の検討を行うといったことが掲げられてございます。

 21ページに参ります。これは先ほどの20ページに関連する法律の御紹介でございます。女性活躍推進法、それから、育児・介護休業法におきましては、一定規模以上の企業に対して関連する一定の項目の公表を義務付けているということでございます。中ほど、開示状況で例えば女性活躍推進法の例示を掲げさせていただいていますけれども、女性管理職比率に関する開示、育児休業取得率に関する開示といったものが進んできているということでございます。

 それから、22ページに参ります。こちらのスライドも第1回でお示しした人的資本の開示に関する国際的な動向の例ということで、アメリカの証券当局SECの規則改正が昨年11月から適用という形で行われておりまして、人的資本の開示が行われるようになってきているということでございます。

 23ページに参りまして、このSECの規則改正に関しては、規則改正後に企業で人的資本に関する開示が既に始まっております。その状況を簡単にまとめたものをここにお示ししています。例えば項目として、Safety(労働安全)、それから、Health(健康)、Diversity and Inclusion(多様性と包摂性)等のカテゴリーを設けて人的資本に関する開示を実施してきているような状況になっているという分析がございます。

 次の24ページに参ります。こちらは英国財務報告評議会(FRC)が出した、従業員の開示に関する報告書の御紹介でございます。こちらのほうでは、従業員の開示に対する投資家のニーズ及び当該ニーズを満たすために企業に期待される開示内容はこういうものということで開示例も用いて解説をしている文書でございます。1つの特徴として、2つ目の四角にありますように、「解説は、TCFDの4つの柱(「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」)に概ね沿って説明をされている」ということで、経営戦略と結びつけた形で人的資本の開示をしていくといったことを御紹介しているものになってございます。

 それから、25ページに参ります。こちらのほうは、2019年1月にISOがHuman Resource Managementに関して社内で議論すべき、また、社外へ公開すべき指標をガイドラインとして整理しているものでございますけれども、その御紹介です。

 次、26ページに参ります。こちらは、我が国の有価証券報告書において現在人的資本に関する開示としてどのようなものがなされているかということです。右側にありますように、従業員の状況がまず開示事項になっているということと、2つ目、経営方針の中では、人的資本に関する考え方や取組みに言及していらっしゃる企業もあるということ、それから、財務諸表の中では、一定の状況の場合には販売費及び一般管理費のうちの人件費あるいは製造原価明細書の労務費という形で、人件費・労務費関連の財務諸表上の開示もあるということでございます。

 それから、27ページに参ります。こちらは企業の開示例でございます。人件費、女性管理職比率等が企業価値に影響することを示した実証研究を実際に開示していらっしゃる企業もありますという御紹介です。

 28ページに参ります。こちらは、知財に関連してということですけれども、研究開発活動に関する開示ということです。有価証券報告書におきましては、研究開発活動の状況とその金額について、セグメント情報と関連付けて記載することが求められてございます。右側のイメージ例でいきますと、それにとどまらず、経営戦略と関連付けた開示をなさっていらっしゃるところもあるということでございます。

 その上で、30ページに参りますけれども、本日御議論いただきたい事項でございます。

 総論ということで、多様なサステナビリティ要素の投資家の投資判断における重要性は、各企業の業態や経営環境等によって様々であると考えられる。このことを踏まえ、多様なサステナビリティ要素の開示における取扱いについては、原則として、各企業において企業価値や業績等に与える重要性に応じて判断するというアプローチをどのように考えるか。

 あわせて、比較可能性等の観点から、以下の項目については開示が必要との意見があるがどう考えるかということで、多様性確保に関する開示(女性管理職比率等)、人的資本に関する開示、その他、どのような事項に関する開示について、検討すべきか。

 31ページに参りまして、サステナビリティに関する情報開示について、例えば、以下のような意見があるが、どのように考えるかということで、投資判断に必要な情報を提供する観点から、核となる情報を有価証券報告書に記載することができるよう、サステナビリティ情報の「記載欄」を設けることが適切。その際、各企業の創意工夫によりに任意開示での取組みが先行していることを踏まえ、任意開示の内容を適切に「記載欄」の記述に反映させることが重要。

 2つ目として、有価証券報告書の「記載欄」について、サステナビリティ全般の情報を記載することとする場合、以下の点についてどう考えるか。気候変動と同様、「ガバナンス」、「リスク管理」について開示。「戦略」、「指標と目標」については、各企業が、自らの企業価値や業績等への影響の重要性を踏まえ判断。

 3つ目として、サステナビリティ情報の開示に関しては、国際基準策定への意見発信や、我が国におけるサステナビリティ開示の個別項目の検討を担う体制整備が不可欠との意見が出されている。今後、民間におけるそうした取組みをどのように後押ししていくことが考えられるかということでございます。

 私からは以上でございます。

【神田座長】

どうも御説明ありがとうございました。それでは、今日は、残りの時間は質疑応答・討議とさせていただければと思います。

 いつものことで恐縮ですが、まず委員の皆様方から御発言をいただき、その後でオブザーバーの方々にも御発言があれば承りたいと思います。

 それで、御議論いただきたい事項は、今、御説明いただきましたように、お手元の事務局説明資料の最後、30ページと31ページに掲げさせていただいておりますので、参考にしていただければと思います。

 それではまず、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただきたいと思います。いつものように時間が限られておりますので、大変恐縮ですけれども、お1人当たり3、4分程度をめどに御意見をいただければと思います。できれば、御参加の全ての委員の皆様から御質問、御意見をいただければありがたく存じます。

 それでは、チャット欄に「発言希望」などと記入していただければありがたいのですけれども、いかがでございますでしょうか。

 いつもありがとうございます。上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】

事務局説明資料の31ページ、2つ目のポツに関連してです。4つの柱の中で、「ガバナンス」と「リスク管理」を開示項目として、残りの「戦略」、「指標と目標」を任意的にするとしたら、私は疑問があります。経過措置はあり得るかも分かりませんけれども、やはりこれは4つの柱がワンセットであって開示の目的が達成されると思います。

 もちろん「指標と目標」については、すぐに確立することが、ましてや半年でやるというのはなかなか難しいということは理解できますし、また、各企業において目標をあまり拙速に立てるというのはむしろ不適切だとは思います。けれども、事前に頂きました事務局説明資料の14ページの引用元であるG5の去年の報告書の24ページの18項には、「指標と目標」については、コンプライに向けての計画を示せば、エクスプレインでもよいというふうに明示されている。つまり、これはやっぱり開示項目として、その中での個々の開示の中ではエクスプレインでもよいという構えがよいと思います。

 もう1点は、事務局説明資料30ページの一番下の多様性あるいは人的資本関係の開示のところですけれども、これもぜひ盛り込むべきだと思います。関連して気付きましたのは、事務局参考資料の27ページの開示例に、特にサプライチェーンにおける人権といいますか、特に児童労働とかあるいは強制労働を言及されておりますが、これはぜひ加えることを、今後、検討していく必要があると思います。事務局参考資料の32ページにはイギリス現代奴隷法の人身売買等についての規定がありますけれども、外国での児童労働、強制労働にこれから数年で広がっていくと思いますので、ぜひ対応を準備することが必要だと思います。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットをいただいております順番で、次に三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】

アストナリング・アドバイザーの三瓶です。よろしくお願いいたします。事務局説明資料30ページ、31ページの「ご議論いただきたい事項(1)、(2)」について、意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、「ご議論いただきたい事項(1)」の総論ですけれども、重要性に応じて判断するということは、その重要性、すなわち、マテリアリティの特定が前提であるということを明記、明確にしておく必要があるかと思います。

 各論のほうについて3点あります。1つ目は開示指標について、2つ目は開示内容について、3つ目はNon-GAAP開示についてです。1つ目の開示指標については、まず国際的なスタンダードである例えばISO30414とか、今SECが検討している指標などがあります。そういうものに加えて、各社が自分で考える独自指標という、大きくこの2つのレイヤーがあると思います。

 国際的なスタンダードは、比較可能性があることが1つ優位性であって、また、促進することで水準の底上げを広く浸透させていくという意味合いがあります。他方、独自指標のほうは、国際的なスタンダード指標に現れにくい改善や取組みを表現すること、また、取組実態を時系列推移で示す効果などがあります。独自指標は、自分たちで考えたことの証であって、また、経営者は何に注目しているのかということも読み取れます。また、現場目線などが伝わり、大変興味深いと思います。したがって、国際的なスタンダード指標は、開示しないと減点対象になるような減点主義的な見方、一方で独自指標は、積極的に開示することによって加点評価できるような加点主義的な見方で評価できるのではないかと見ています。

 2つ目の開示内容ですが、女性活躍や多様性に関する開示について、ただ単に女性管理職比率を開示しているだけでは、我々投資家は評価しにくいです。例えばそういった比率を開示する場合に、改善に向けて取り組む方向性、方針、なぜそれを取り組むのか、そして、目標設定等があれば、なぜその目標設定なのかというようなことの説明を加えながら開示することが重要であって、そういう取組みになっていれば評価の仕方があると思います。

 また、人的資本に関する開示については、例えば従業員エンゲージメントのようなものがありますけれども、経営者目線だけではなくて、従業員の意識を反映する開示が重要になります。それは例えば経営戦略と従業員の意識との間にギャップがあるかないかについて、投資家が非常に強い関心を持っているからです。なぜかというと、経営戦略の達成確度にそのギャップがあるかないかはすごく大きな影響を与えるからです。

 3つ目のNon-GAAP開示については、人的資本などを資本と捉えることで、費用が投資になって資産として捉えることができます。それによって、投資成果を、時間軸を加味して見ることができるというメリットがあります。ただ、財務数値化する場合、投資家にはすごく直接的である分、その定義を明確・明瞭にしないと信用されません。なので、そこが非常に重要な点。例えば、スイスのネスレ社はIFRSを採用していますけれども、Non-IFRS開示について別冊を開示していて、そこで11ページにわたって詳細に定義を説明しています。要は、投資家が自分で再計算して答えが一致するぐらい明瞭な定義の開示があるということが必要だということです。

 論点の2点目ですが、31ページです。ここで「記載欄」を設けることの適切性、ここは要注意の部分があると思います。「記載欄」に何を記載するかによって、この欄を設けるか否かの是非が変わってくるように思います。現在多くの企業が真剣に開示を検討していますけれども、聞こえてくるのは、経営トップが経営の重要課題として捉えていないという実態です。経営トップが重要視しないと、現場での単なる開示作業に追われるとか、また、関係各部署での作業分担の問題になってしまって、そこで現場が疲弊するだけという状況が起こりつつあります。

 本来、サステナビリティを巡る課題は経営課題であって、経営方針にどう組み込んでいくか、それを取締役会で責任を持って決定する問題だと思います。したがって、まずは有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】という欄で全体像を示すべきだと思います。その上で、関連指標や取組みを開示する場合に、別途「記載欄」を設けて集約するということが考えられると思います。

 そして、任意開示との関係も次のポツにありますけれども、既に先行している有価証券報告書の開示の取組みについて、金融庁で好事例の勉強会を行っています。先進的な企業でも、有価証券報告書のどこに記載すべきなのかという試行錯誤が見受けられます。そこで議論したところ、現在は、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、または【事業等のリスク】に記載していますけれども、これまでの議論では少なくとも方針や課題の全体像については、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】に記載して、経営のコミットメントとすべきという議論に今なりつつあると思います。

 2つ目のポイントですけれども、サステナビリティ全般の情報を記載するとかいうところです。今まで申し上げたことを踏まえると、気候変動以外のサステナビリティ課題に関する情報は、「ガバナンス」、「リスク管理」、「戦略」まで、この3つは全体像を先ほど申し上げた【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の欄に記載すべきと考えます。TCFDの場合は4本の柱の中にあった「戦略」が、シナリオ分析などかなり具体的な項目が含まれていたために、有価証券報告書の経営方針のところに記載するのが非常に難しい面があるということは理解しています。それ以外のサステナビリティ全般であれば、「戦略」についても、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の欄に記載すべきと思います。

 その上で、「ガバナンス」に関しても、仕組みなどの具体的なものは、【コーポレートガバナンスの状況等】の欄、「リスク管理」についてもリスクの分類評価などは【事業等のリスク】等の欄に記載することが適切であると考えます。「指標と目標」については、概略を【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の欄に記載することが考えられると思いますけれども、具体的な指標・目標については、その詳細はXBRL化できる対象として、別途「記載欄」に集約するというのが、利用者にとって有用ではないかと考えます。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】

よろしくお願いいたします。私も、事務局説明資料で示されております30ページ以降の「ご議論いただきたい事項」について意見を申し上げられればと思っております。

 最初の論点の有価証券報告書の重要性についてですが、前回も申し上げましたように、まさに事務局説明資料の12ページに記載されているように、投資家の投資判断に有用な情報であり、その情報とは、主に経営者もモニタリングしている中長期的な企業価値やキャッシュフロー創出力に関わる情報になると考えております。

 それで、もう1つあると思っておりますのは、重要なサステナビリティ情報というのは、財務情報のIFRSの概念フレームワークにありますような、財務諸表上での認識が必要となる蓋然性や測定可能性などの認識基準を満たすまでには数年かかるという事項も多くあると考えておりますので、中長期的という時間軸も重要性に含めていく必要があるのではないかと思っております。今申し上げたことは、前回の事務局説明資料でも示されたダイナミックマテリアリティの考え方と同じになると考えております。

 2点目の各論のポイントも重要だと思っておりますが、三瓶委員がおっしゃったことはまさにそのとおりと思っていまして、私のほうは1つ飛ばさせていただいて、3つ目の論点の「記載欄」についてコメントさせていただければと思っています。事務局説明資料の14ページにあるIFRS財団が示したプロトタイプや、TCFD開示でも、サステナビリティ情報の望ましい開示項目として、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」などが共通して示されております。従って、このように「記載欄」を設定して共通した記載項目に記載するということは、明瞭性とか簡潔性の点で有用ではないかと考えているため、「記載欄」を設けることに賛同いたします。

 ただ、事務局参考資料のたしか8ページにもいろいろ関連性を書かれておったページがあったと思うのですが、三瓶委員がおっしゃったこととちょっと重なるかもしれませんが、気候変動とか人権などのテーマはサステナビリティの「記載欄」で完結できると思います。しかし、例えば人的投資とか知的財産とか多様性といった事項は、有価証券報告書でいいますと例えば【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】とか【事業等のリスク】などのページへ記載するほうがストーリー性を保つ観点で相応しい場合もあると思っています。従って、サステナビリティの「記載欄」を設けるということには賛同しているのですが、例えば利用者と有価証券報告書作成者の利便性を考えますと、特に「戦略」や「指標と目標」などの開示内容というのは、有価証券報告書内で開示項目を超えて相互参照可能ということをガイダンスなどで示されるということが必要ではないかと考えております。

 次に、4つ目の論点となります。前回議論をして皆様から意見をいろいろ聞かせていただいて、ここに書いていらっしゃいますように、「戦略」と「指標と目標」を重要度に応じて開示するということに賛同したく思っております。ただ、逆に言いますと、重要と判断したならば、「戦略」、「指標と目標」も開示するということを意味しているというふうに考えますので、例えば気候変動のような事項というのは、多くの企業で開示の必要が出てくるのではないかとも考えています。

 あと、前回、藤村委員がおっしゃいましたように、業種によっては「戦略」、「指標と目標」の定量面で一部定まっていないというところがあると認識していますので、事務局説明資料の17ページに示されておりますように、特に一部の定量面については、ISSBの議論を待って有価証券報告書に取り入れていくという方向性を示すというのは妥当だと思っています。

 ただ、ここで重要と思いますことが2点あります。1つは、当ワーキング・グループから報告書が作成されると思っておりますが、その中で、状況が整えば、定量面含め、TCFDなど重要なサステナビリティ情報を有価証券報告書に開示するというロードマップをしっかり示していただくことが重要だと思っております。もう1つは、これも報告書の中でぜひ示していただきたいと思っているのですが、既に有価証券報告書で、定量面も含め、TCFDなどを開示していただいている企業もいらっしゃいますので、よく言う早期開示ではないのですが、可能な企業はISSBの基準を待たずやっていただくということで、開示に前向きな企業を止めないということを示すということも重要と考えております。この考え方は、上柳委員がおっしゃった事項と共通すると思っております。

 最後の5つ目の体制整備の論点というところですが、前回も申し上げましたように、エンドースの仕組みの確立というのは重要と考えております。利用者サイドでは、例えば日本証券アナリスト協会の中には、今年、利用者の声をまとめて伝える、サステナビリティ報告研究会が設置されておりますので、財務情報におけるASBJの役割を果たすようなサステナビリティ基準の設定主体を設置するとともに、この設定主体が利用者の団体とか作成者の団体と意見交換をすることによって、日本における意見をまとめて対外的に発信していただくということもできるのではないかと考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】

ありがとうございます。藤村です。手短に大きく3点申し上げます。

 まず「記載欄」について、三瓶委員のおっしゃったことと大分重なりますが、「記載欄」を作るとマニュアル的になって、私のような立場のサステナビリティ担当部署の人間にとっては実務上のやりやすさはあります。しかし、サステナビリティのベースとなる企業のマテリアリティに関する考え方やその特定といったものというのは、企業理念にリンクしますし、経営方針のベースとなるものなので、理念や方針の中で語られることが望ましいと思います。有価証券報告書の今の枠組みの中でいえば、【事業の状況】等の箇所で、自社の企業価値にマテリアリティをどう照らし合わせて考えていくのかについて、経営方針の文脈で説明されるべきだと思います。その上で、「リスク管理」や「ガバナンス」等は特に、例えば対処すべき課題として説明されるほうがしっくりくると思います。

 次に、人的資本に関するお話です。これは人的資本のみならず、サステナビリティに関する情報一般に妥当する話だと思いますが、あまり画一的な項目の開示になっては意味がないと思います。やはり各社固有の業種とか業態とか、更には固有の事業戦略等に関連性を持つ人的資本のデータが開示されるべきだと思います。卑近な例ですけれども、テクノロジーが非常に重要な業界における企業であれば、技術者の採用、教育や研究、これをどう行っているかというのが重要です。一方、例えば弊社のような総合商社においては、これらの情報は相対的には重要ではありません。やはり人的資本のデータは戦略ストーリーに適したものをKPIとして位置付け、これに関するデータを入れるべきだと思います。

 3番目に、「ガバナンス」、「リスク管理」、「戦略」、「指標と目標」、この分け方についてです。基本的にはマテリアリティ基準を適用し、マテリアリティがあれば、「戦略」、「指標と目標」も開示するということでいいと思います。1点だけ、前々回お話ししたところですが、例えば、Scope1、2の排出量は、もともとは「指標と目標」としてマテリアリティ基準に服していたわけですが、ついこの間発行されたTCFDの新しい文書によれば、これら排出量はマテリアリティ基準とは関係なく全企業が開示すべきだとされています。要するに、外部環境によってマテリアリティが変わってきて、TCFDの目から見ると、Scope1、2は全企業にとってマテリアルとなっているという考えに至ったということで、言わばダイナミックマテリアリティの表れだと思います。こういった形で、外部環境の変化の中で「指標と目標」であってもマテリアリティの判断によらずに開示すべきという項目も出てくるという点は留意が必要だと思います。

 最後に、私の勉強不足で分かってないところがあるのかもしれませんが、確認しておきたい事項がございます。有価証券報告書において開示する対象というのは、冒頭あったように企業価値ないしは投資家から見て投資判断にとって重要ということで理解しています。一方、資本市場向けではない他の政策目的のために、企業に開示が要請される情報も当然ありますが、これは基本的には有価証券報告書の射程外と理解しておりました。例えば事務局で記載していただいている英国の現代奴隷法などが1つの例だと思いますが、もともとこれは投資判断というよりも、児童労働、強制労働を撲滅したいという政策目的に基づいて開示を強制しているものだと理解しています。だからこそ、媒体は財務報告ということではなくてウェブでの開示ということが強制されているわけです。

 もちろん、人権の配慮というのは、当然今、サプライチェーンにおける人権配慮というのは企業のリスクにも繋がるので、その観点で有価証券報告書での開示を求めていくという考え方はあるとは思いますが、概念的な整理として、有価証券報告書を他の政策目的に使うということはあるのでしょうか。私自身は、基本的には企業価値、投資判断に有用な情報のみが対象であり、他の政策目的というのは基本的には入らないと理解しておりました。投資判断にも重要だという、被る目的がある場合にはもちろん有価証券報告書に記載するということになると理解しております。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。御質問の部分、もし何かありましたら、お願いします。

【廣川企業開示課長】

企業開示課長の廣川でございます。今の最後の点は、基本的には、私の理解は、藤村委員がおっしゃっていただいたとおりでございます。同じことかもしれませんけれども、私なりの言い方で申し上げさせていただきますと、有価証券報告書というのはあくまで金融商品取引法上の制度でございますので、他の法律での政策目的を直接に受ける形で何か有価証券報告書において記載を義務付けるという考え方にはならないと理解をしております。

 他方で、他の政策目的で、他の法律があってそれに基づいていろいろな義務付けがそれぞれの法律でなされるという中で、それが企業活動にいろいろな形で影響が出てくるのだろうと思います。先ほど藤村委員からも企業のリスクという言葉をいただいたかと思います。そういった諸々のものが、企業価値等々の観点から見たときに企業価値に影響が出てくる、あるいは、そういったことを通じて投資家の投資判断にも影響を与えるというものになってくると、そういったことであれば、金融商品取引法の中でも開示を考えるに当たってそれは1つ取り込み得るということ、そういう理解ではないかと思います。

 そういう意味では、元へ戻りますけれども、藤村委員がおっしゃっておられた理解と私は基本的に同じ理解をしております。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。藤村委員、よろしゅうございますでしょうか。

【藤村委員】

例えば事務局説明資料20ページの第5次男女共同参画基本計画において、「有価証券報告書等における開示の在り方を含め」となっていますけれども、これは、それが企業価値に影響するということであれば、有価証券報告書における開示の在り方も含めて検討するということと理解しました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、近江委員、どうぞお願いいたします。

【近江委員】

近江です。ありがとうございます。私からは、開示するサステナビリティ要素の選定に関する総論と各論を、それから、サステナビリティ開示の具体的な在り方について、簡単に意見を述べさせていただきます。

 まずサステナビリティ要素の選定におきましては、今までの議論を踏まえて、投資家の投資判断の重要性の観点から、企業が判断するという整理でよいと思います。参考資料にも記載されているとおりですが、多くの企業はマテリアリティの特定を行っておりますし、その選定においてはこれが活用されるということが十分想定されるわけですが、この際に、これは三瓶委員からも意見がありましたけれども、マテリアリティの特定プロセス、こういったところが説明されて、経営の関与とか判断の根拠が具体的に示されるということが欠かせないと私も考えております。

 各論の件ですけれども、日本、それから、諸外国での対応状況を踏まえても、やはり数あるサステナビリティ課題のうち、人的資本は事業の持続可能性、そして、企業価値の観点からも最重要な課題であると思っております。特に少子高齢化が進んでいる日本において、女性活躍の重要性は、企業、投資家においても認識が一段と進んでいると、そのように認識しております。

 ちなみに、内閣府男女共同参画局において、機関投資家が求める女性活躍情報に関する調査研究が発表されております。ここで2018年、そして、2020年にスチュワードシップ・コードに賛同する機関投資家にアンケートを実施しているというところで、特に2020年の調査においては200以上の機関投資家がアンケートに参加して、そして、その結果として、女性活躍情報と企業の業績には長期的に影響があると考える機関投資家が9割になるということが示されていると。また、投資や業務において活用する情報としては、女性役員比率であったり、あるいは女性管理職比率が多く挙げられているということです。特にここは、もちろんそういった比率は、コンテクストの中で企業の状況あるいは業態の中で理解されるべきであるということは思いますけれども、こうした情報がまず対話のスタートポイントとして明確に示されるということの有用性は非常に高いと考えております。

 特に有価証券報告書においては、【従業員の状況】の開示の中で、投資家にとって大変重要な情報として人的資本の状況が開示されておりますけれども、ただ、この中で、人的資本の多様性に関する情報がないというところとか、あるいは一部のデータが提出企業のみであるといった点が、投資家サイドから見て、企業活動の状況に照らしても、やや不足感があるところだと考えますので、こうした多様性の観点が開示項目の中に加えられていくということは望ましく、例えば男女別の従業員比率であったり、管理職比率、あるいは海外従業員比率などの基本的なデータが連結ベースで開示されるということは、投資家がその企業の人的資本の状況について把握する上で、これは大変需要が高い情報であると考えています。

 あと、サステナビリティ情報の開示方法についてですけれども、サステナビリティが経営においてますます重要な課題となっている中、やはりこの取組みが経営戦略の中に統合されつつあるという状況だと思っております。既に多くの企業が行っているように、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】という項目の中で、経営方針の中に統合された形でサステナビリティの方針の大枠を説明されるということが望ましいかと思っておりますし、また、その中で、重要性に鑑みて人的資本に対する対応と経営の考えが示されるということも大変意味があると考えます。

 ただ一方、サステナビリティ情報に関する「記載欄」を個別に設けることによって、確かに約4,000社のサステナビリティ情報が、特に統合報告書あるいはサステナビリティレポートを作成していない企業ではなかなか出てこないということがございますので、このような「記載欄」を設けて、比較可能性を上げて、また開示を促していくということからも、こういった「記載欄」を特別に設けていくということに対しては有用性があるのかなと認識しております。

 私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、中野委員、どうぞお願いいたします。

【中野委員】

中野です。3点申し上げたいと存じます。

 まず、事務局説明資料16ページのサステナビリティ情報に関する「枠」に関して申し上げます。会計基準の研究に照らすと、社会においてディスクロージャーが十分に機能するためには3点が重要です。第1に統一的な基準があること、第2に行政機関及び監査等のエンフォースメントがしっかりしていること、そして第3が難しいのですが、企業が開示への動機をもっていることです。第3はなかなか難しい点です。

 サステナビリティ情報に関する「枠」については、経営戦略等に書いていただいた上でテクニカルなことに関しては別に専用の「枠」を設けるなどのあり方は良いとは思うのですけれども、例えば好事例集が作られるならば、企業間で良好な開示の競争が始まり、サステナビリティに関する開示は経済合理性に適うものだという意識がもたれるように導いていくのが重要だと考えます。

 次に、「相互参照」についても非常に適切だと考えます。例えば、KAMについては、同一の主題に関し監査人という別の立場からの見解が開示されるようになったことにより、情報の価値が向上したように直感しています。情報群を紐付けることは有用でしょう。

 2点目は、事務局説明資料26ページの「人件費」の開示について指摘させていただきます。人的資本の重要性が指摘されているところですが、およそ伝統的な意味での従業員、人的資本に関する分析というと、労働分配率、労働生産性・付加価値分析ということになろうかと存じます。「人件費」の開示は、利用者がそれを資産と見做して独自の分析が可能になるなど人的資本分析の可能性を広げます。ただ、日本では、ミクロレベルでは、人件費データは連結ベースでは入手が難しい現状にあります。

 問題の核心は、事務局資料26ページの(注1)に記載されている点にあると考えます。現状においても「IFRS適用企業」については、連結ベースでの人件費の開示が行われており、グローバルな比較可能性が確保されているのに対して、「日本基準適用企業」については当該手当が済んでおらず、グローバルな比較可能性はもとより、国内における比較可能性も確保されておりません。もちろん、本問題については第一義的には財務諸表注記に関わる事柄ですので、本ワーキング・グループの範囲を超える問題かとは存じますが、重要な問題ですので、指摘させていただきました次第です。

 3点目は、人的資本と知的財産等の開示全般のあり方についてです。日本企業は、例えば米国と比べると事業の多角化が進展しているという特徴があります。このため、人的資本及び知的財産等の戦略についても、重要性の高い場合はセグメント別に記載するということを推奨し、好事例集を通じて良質な実務を醸成していくことが望ましいと考えます。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、清原委員、どうぞお願いいたします。

【清原委員】

ありがとうございます。清原です。まず、「ご議論いただきたい事項」の最初にある重要性のところですけれども、こちらのところは考え方として、各企業の企業価値・業績に与える重要性に応じて判断するアプローチでよいとは思うのですけれども、サステナビリティの要素というのはやはり非常に多彩で、例えば今、事務局説明資料8ページにもありますように、SASB、世界経済フォーラム、それから、欧州委員会、それぞれが出しているサステナビリティ項目というのはかなり多様で、統一性が必ずしも取れていない、ある種ばらばらになっているというところからすると、企業がそれぞれ独自に判断するのは当然ですけれども、ある程度ベンチマーク的なものがあるとやはり有用だろうというところがあると思います。

 その観点でいうと、SASBのマテリアリティマップ、業種ごとにどの項目が、重要性が高いと思われるものかというものが整理されているというのは、比較可能性、また、企業に考えを促すという観点からも、有用性が高いアプローチではないかと。そして、必ず開示しなければならないというよりは、むしろその開示が推奨される、検討が推奨されるという項目として取りまとめられるようなことがあれば、我が国の企業においても開示を進める上で、また、検討を進める上で、有用だろうと思います。

 一歩翻って考えてみますと、サステナビリティの定義そのものも、実はやはりコーポレートガバナンス・コード、また、その前のスチュワードシップ・コードの頃からも、やはり若干漠としていて外縁がはっきりしないようなものであるというところもあるので、開示基準、その中で今後より具体化してくるだろうとは思うのですけれども、サステナビリティの定義、それから、どこまでを何のために開示していくかということの考え方みたいなものの整理をもう一度していくことが重要になってくるのだろうと考えるところであります。

 その上で、今申し上げたように、ある程度業種ごとに関連するものが明らかになってきた上で、今度は、本来だったら多くの企業が同業者で開示している、もしくは取り組んでいるというものが、自社はどう考えるのかということの考え方、これをやはり求めていくということもこういった開示の中で有用になってくるのではないかと思います。

 そういったところを考えていったときに、先ほど来議論がある「記載欄」のところですけれども、今ある各開示の記載欄に情報が散らばってしまうと、むしろ分かりにくい、見えにくくなる面もやっぱりあるのではないかと。同業他社との比較可能性とか、また、日本のみならず海外の企業で同業他社がいるときの比較可能性とかということを考えるときにも、やはりある程度同じ欄にまとまっているということは有用であろうと思います。

 また、サステナビリティの開示の基準が設けられたときに、ここの記載のところに関してはやはりその開示基準、また、将来的にはアシュアランスの議論があると思いますけれども、その開示におけるアシュアランスも、ある種集約された箇所があると、今後の対処も容易になるという面があるのではないかと思います。実際に記載をする上で、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】とか【事業等のリスク】の欄とかに書いたほうがよりストーリー性が出る、もしくは他との関連性で重複が避けられる、そういうことがあれば、そこに書いた上で、サステナビリティに関する「記載欄」でリファーするという形での柔軟な対応もできるようにするのだと思われますが、やはり1つの枠組みとしてのサステナビリティの「記載欄」というのは有用なのではないかと考えるところであります。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、黒沼委員、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】

早稲田大学の黒沼でございます。私からは簡単に2点ほど申し上げたいと思います。

 まず、サステナビリティ要素のうち、どの項目を開示するかという点については、原則として、各企業が企業価値や業績に与える重要度に応じて判断するというアプローチでよいと考えますけれども、それは各企業において取組みが進んでいる、開示した場合に見栄えがいい要素を取り出して開示することを認めるものではなく、あくまでも投資家の立場に立った場合の重要性を企業側で検討した上で、重要な項目であれば、取組みが遅れていたり、都合の悪い項目も開示する必要があるということを徹底していただきたいと考えています。

 それから、第2に、開示欄のことですが、私も皆様の意見を聞いていろいろと迷うところはあるのですけれども、投資家にとっての分かりやすさの観点からは、「記載欄」を設けるのが適切だと思います。これまで金融商品取引法で新たに開示を求める項目については、例えばリスク情報とかMD&Aなどのように記載欄を設けて、初めは記載例を示して自由に記載させるということから始まりました。それがどうしてもひな形的開示になってしまうことが多くて、最近、府令改正が行われたところです。サステナビリティ情報の開示については、任意の開示がある程度先行している分野ですので、そのように「記載欄」を設けても、任意開示を行っている企業ではそれを反映させるということが行われるでしょうから、ひな形的開示を避けることができるのではないかと思います。

 また、確かにサステナビリティ情報を【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の欄に記載するのが最もいいというお考えもよく分かるのですけれども、中身の項目を分けて記載する場合でも、この部分が相当大部になってしまって、投資家から見て分かりにくさが生じてしまうのではないかと思います。また、御指摘があったように【事業等のリスク】にも関連するので、これまでの開示の記載欄の幾つかに関連するということは疑いがないところでもあります。

 そこで初めに戻りますけれども、当事者にとっての分かりやすさから考えて、1つ欄を設けて、それからあとは、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】とか【事業等のリスク】と関連させる形で記載をしていただくのがいいのではないかと考えます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】

どうもありがとうございます。神作でございます。私からは3点コメントさせていただきたいと思います。

 1点目は、サステナビリティ要素についてです。基本的な考え方は、重要性基準と申しますか、ここにいう重要性の意味は、合理的な投資家が投資判断をするに当たって重要と考えるかどうかという観点からの重要性基準だということだと思います。このような観点からはおのずから、各企業の規模とか業態、経営環境、その他様々な理由によって合理的な投資家であれば投資判断に際して重要と考える事項が当然異なってくると思われます。したがって、私は、「ご議論いただきたい事項」に指摘されているサステナビリティに関する情報開示については、まとめて「記載欄」を設けることが適切であると考えます。

 2点目は、サステナビリティ情報の「記載欄」を設けたときに、一般的な「ガバナンス」とか「リスク管理」について記載していただくというのは結構だと思いますけれども、やはり何か具体的な事項も書いていただくのがいいのではないかと思います。私は、先ほどの合理的な投資家が重要と思う基準でどの企業にも当てはまるものといったら、やはり人的資本であろうと考えます。人的資本についてはサステナビリティ情報の「記載欄」に書いていただくということを前向きに検討していただいてはいかがかと思います。その場合には、特に労働法の分野は各種の法令だけではなくて、ソフトローのようなものもたくさんある分野だと思いますので、例えばこういったソフトローへの対応の方針やそれに対する具体的取組みと、あるいは従業員に対する動機づけ、また、スキルや能力の発展のための取組み、こういったものについてはサステナビリティに関する「記載欄」において各企業が共通して書いてくださることが比較可能性を高めるという観点からも望ましいように思います。

 最後、3点目でございます。開示規制には、情報提供の意味と、それから、第1回目のワーキング・グループから既に何回か御指摘のある政策的な側面があるという点についてでございます。先ほど申し上げましたように、金融商品取引法上の開示としては、合理的な投資家が投資判断をするに当たって重要と考えるという基準で判断すべきであって、ここに政策を持ち込むというのは議論の射程が不明確になるので注意を要すると思います。基本的政策としてある開示を進めるべきだということになりますと、おそらく有価証券報告書提出企業には限らないという話になると思いますので、このワーキング・グループでは、あくまでも投資家にとっての重要性基準という観点を徹底して議論する必要があるのではないかと考えております。

 以上、3点述べさせていただきました。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、高村委員、どうぞお願いいたします。

【高村委員】

ありがとうございます。私からは、事務局から「ご議論いただきたい事項」としてお示しいただいた31ページを中心に3点申し上げたいと思います。

 1点目は、これまでも委員の先生方から御意見が出ておりますけれども、サステナビリティに関する情報開示については、やはり独立した「記載欄」を設けるということが重要ではないかと思っております。これは近江委員、清原委員などから、同じ趣旨で既に御発言がございました。経営戦略等に統合的に記載していくということももちろん重要ですけれども、しかしながら、やはり投資家の分かりやすさ、これは黒沼委員がおっしゃいました比較可能性といった観点から、こうしたサステナビリティに関する情報開示については独立した「記載欄」を設け、統合的な記載については、井口委員がおっしゃったように、事項によって相互参照ができるような、そうした作り方というのができないだろうかと思います。

 開示項目に関しては、「ガバナンス」、「リスク管理」、これはとりわけ重要だという点はどの方も異論がなかったと思います。特に全ての企業にとって、非常に幅広いサステナビリティに関する事項について、その企業がマテリアリティを特定するに至ったプロセスあるいは方法、それから、企業経営におけるサステナビリティに関する事項をどう取り扱っているか、マテリアリティを特定するに至った体制とか「ガバナンス」をしっかり開示をしていただくということが、全ての企業にとって前提だろうというふうに思います。

 同時に、「戦略」、「指標と目標」についても、開示項目として立てるのではないかというふうに思います。ただし、これも何人かの委員からありましたけれども、そこに開示する内容については、当然その企業が特定したマテリアリティに応じて重要性を踏まえて判断をしていく一定の裁量があるもの、あるいは限界があるものについてはそうした限界、課題も含めて、できない理由、不十分な理由を書いていただくといった裁量がある開示ではないかと思っております。

 2点目は、論点出しでもあるのですけれども、これまでのこのワーキング・グループの議論の中でも、特に気候変動のプライオリティーが高いということについて異論はなかったと思います。サステナビリティに関する記載項目を立てるとしたときに、気候変動に関する開示項目を特出しするのかという点でございます。これは投資家の気候変動問題についての企業の対応への関心の高さ、あるいはおそらく大多数の企業にとって重要性を持つ課題であることなどを考えますと、項目を特出しして開示項目とするのも1つのあり得る方策のように思います。これは事務局からの資料にもありますように、基準設定が先行して展開しているということも考えますと、そうした判断もあるように思います。あるいは、基準設定を待って、開示の基準が出来た段階でそれを挿入するというのも、プランBじゃないですけれども、2つ目のソリューションとしてはあり得ると思います。これは私自身の結論があるという話ではなく、気候変動のプライオリティーが高いというふうに考えてきた、この気候変動関連の開示をどう扱うかという点で論点出しをさせていただきました。

 最後、3点目です。今の2点目の点とも関わりますが、これまでのお話を伺っておりまして、やっぱりサステナビリティ開示に関して、一定の開示を支援する何らかのガイダンスのようなものは必要ないだろうかという点であります。

 もちろん開示の基準の明確化は前提ですけれども、あるいは法令の中で注記をされるということもあり得ると思います。今、これまで話を伺ってきて、マテリアリティの考え方、もちろん投資家にとっての企業価値、業績に与える重要性に応じた観点からマテリアリティを見るというところは良いとしても、他方で、企業が環境社会にどういう影響を与えているか、サステナビリティに関わる問題にどういうふうに対処していくかということ自体が、金融市場の投資家の評価の大きな1つの基準になってきているといったような基本的な考え方や、気候変動の開示の重要性、あるいは、上柳委員がおっしゃった、サプライチェーンに対する管理等、サステナビリティ事項についても管理あるいは開示をしていくといった、そうした優先事項を開示項目として表現できない場合はなおさら、一定のガイダンス、指針を与えるようなものが、開示の質を高めるのに有用ではないかと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、上田委員、どうぞお願いいたします。

【上田委員】

ありがとうございます。上田でございます。よろしくお願いいたします。私からも大きく2点申し上げたいと存じます。

 まず1点目、他の委員からも御意見がございましたけれども、サステナビリティに関する独立した「記載欄」を設ける点でございます。私はこれに賛成です。統合報告書においてもちろん素晴らしい任意開示をされておられる企業が今500社、600社あるかと思いますが、約4,000社の上場企業があるうち、できているといってもそれぐらいの企業数でございますので、やはり投資家から見ると、共通の、サステナビリティに関する重要性が高まっている中で、まずは法定開示の中でそういったものを設けて開示を進めていくということが必要であろうかと思います。

 ただ一方で、本日もございましたが、アクティブ投資家の方とか、あるいは経営戦略上、サステナビリティを強く推進しておられる積極的な企業においては、サステナビリティという欄があることを不適切というか、それよりも、経営の状況とか「リスク管理」、こちらに入れていくほうがより全体的な取組みになるのではないかと、こういった企業、投資家の意見があるとも考えております。

 そこの懸念は何かと考えますと、サステナビリティという「記載欄」を設けることで、セクショナリズムに陥って、そこがサステナビリティ専従部門あるいはCSRの世界に入ってしまって、企業価値や投資判断と違う世界が形成されてしまうということへの懸念であろうかと思うのです。そうではない、ここは企業価値の視点である、あるいは投資判断のために必要であるという大前提を踏まえて開示を促すような仕組みづくりも必要なのかと思っています。もちろん【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】とか【事業等のリスク】、ここにサステナビリティが入らないというわけではありませんので、そこは企業においては負担かもしれませんが、より取り組んでいただきたいというところがあります。

 また、今後、サステナビリティの内容が多岐にわたってくると思っております。例えば生物多様性の問題など。したがって、やはりこういう「記載欄」を設けて、何か他のところに書きにくいものを記載できるようにすることも必要かと思います。

 今、高村先生からもございましたが、その際にはやはりそうはいっても最低限欲しい項目、あるいは大項目でもいいかもしれないのですが、そういったものについてガイダンスのようなもの、指針のようなものがあると、これは企業にとっても有用だと思います。また、XBRL等でデータ化を進める場合に項目づくりということにも役に立つのではないかとなっています。

 次に、2点目といたしまして、具体的に内容の部分ですが、やはりいろいろ分野が多岐にわたるとはいえ、全ての上場企業に必要であって、そして、投資家にとっても重要ということになりますと、やはり人的資本、これは最も重要な取りかかるべき項目であろうかと思います。ただ、人的資本もなかなか難しいようでして、先般、経産省のある会議で、こちらのメンバーでもある投資家の御意見等を伺っていますと、やはり確たる答えがあるわけでもなくて、対話、むしろ考え方のほうに重点が置かれているというふうに伺っております。ただ、そうはいっても、定量情報で何を取るかということと、定性情報で「戦略」等にどう組み込んでいくかという、この2段構えでの開示がやはり必要になってこようかと思います。

 具体的な項目といたしましては、例えば1人当たりの人件費については、労働生産性と労働分配率に分解できます。人件費とは何かという定義づけのところから始まって、企業の人的資本に対する考え方を示すものでもありますので、いろいろ専門の方に伺うと、これは、企業は持っていても出しにくい数字なのではないということのようでもあるのですが、こういった数字の開示を促すということも1つの考え方ではないのかと思っております。

 いずれにしても、そういった切り口の中で重要なのは、イギリスのFRCの人的資本開示にもありますけれども、「ガバナンス」と「リスク管理」という視点が最低限必ず必要なものです。そのうえで、「戦略」への組み込み、「指標」は難しくても「目標」のようなもの、こういったものも当然重要な情報については必要になってくると思います。例えば人的資本のようなものであれば、「戦略」や「目標」にまで踏み込んだ開示を促すことも必要かもしれません。今後法令・規則の改正を伴うかは把握しておりませんが、サステナビリティ開示について新設するのであれば、併せてガイドライン、ガイダンスのようなもので、企業の開示、そのための社内の取組みを促すような改正を支援するような仕組みも考えていただければと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】

どうもありがとうございます。佐々木でございます。私からも、事務局説明資料の30ページ、31ページに関して少しコメントをさせていただければと思います。

 まず、皆様おっしゃっていることとあまり変わりがないのですけれども、サステナビリティ要素の重要性が、各企業の業態なり、あるいは経営環境によって様々であるということは、これはもう異論がないところだと思います。また、こういったものもおそらく時代とともに少しずつ変わっていくものかなと思いますので、ある意味、こういったものについての開示というのは、画一的でないほうが多分いいのだろうと思います。そのために任意開示があると思います。

 一方で、皆様おっしゃっているとおり、やはり有価証券報告書の作成をする企業が約4,000社にわたっており、その中にはもう任意開示がかなり先行している企業もありますし、まだこれからという発展途上の企業もあると思ってございます。したがいまして、何人かの方がおっしゃっていましたけれども、やはりガイダンス的なものを示してあげるというのが1つ重要だと思います。また、当初ちょっと画一的になってしまうきらいがあるかもしれませんけれども、「記載欄」を設けて、それに従っていわゆる開示を促すということが必要かなと。それで、段階的にいろいろもう少し広げていくというふうなことを考えるべきではないかなと私は思ってございます。

 さらに、今、イギリスとか一部の国はかなり議論が先行しているところもございますけれども、恐らくいろいろな国がこういったところを検討していき、日本も意見発信をしていくということですけれども、場合によっては他国との連携も考えないといけない時が来るのかなと思ったりいたします。したがいまして、事務局説明資料31ページの最後のポツのところでございますけれども、日本国内にやはりこういったことを民間の組織として検討していく体制を整えるべきだと思います。これが非常に、今後の日本の開示を促したり、あるいは近江委員もおっしゃいましたけれども、若干開示についての不足があるというところの解消にも繋がっていくのではないかと思ってございます。

 私からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、熊谷委員、どうぞお願いいたします。

【熊谷委員】

私も大きく3点ございます。まず最初、事務局説明資料30ページの「ご議論いただきたい事項(1)」に関わるところでありますけれども、重要性基準によるアプローチ、これは賛成ということと、あと、サステナビリティ基準に関する特別な「記載欄」を設けることに関しては、私も賛成いたします。皆様がおっしゃっておられるように、簡潔性、明瞭性あるいは理解可能性、あるいはこういう記述情報で比較可能性というのはすごく難しいと思うのですけれども、どこに何が書いてあるかということが分かるという意味ではこういう特別な「記載欄」を設けるということの意味は大きいと思っております。

 ただ、三瓶委員あるいは井口委員等が御指摘されておりましたけれども、やはりサステナビリティの「記載欄」を設けるとしましても、この問題自体はやはり大きな経営問題でありますので、経営方針にまず大枠を記述して、詳細は「記載欄」を参照していくということでいいと考えております。

 こういったことに絡めまして、好事例集への言及とか、あと、高村委員が口火になりましてガイダンスの話が出ておりますけれども、そもそも「記述情報に関する好事例集」とセットとして、「記述情報の開示に関する原則」というのが作られているわけであります。この記述情報の開示に関する原則を作りましたときには、サステナビリティ情報はスコープ外でありました。この記述情報の原則、これの多くはサステナビリティ情報についても当てはまるとは思うのですけれども、今回のディスクロージャーワーキング・グループの議論を踏まえまして、この記述情報の原則を改訂するのか、あるいは、これとは別途、サステナビリティ情報の記述に関する原則を考えるのか、こういったことは検討に値するのではないかなと思っております。いずれにしても、やはり、どういうふうな書き方をしていくと利用者にとって分かりやすいのかということに関して、何らかのガイダンスが必要になると思いますし、せっかく記述情報の開示に関する原則があるわけでありますから、これをどう活用していくかというような視点も重要ではないでしょうか。

 それから、たまたまではありますけれども、現在、IASBにおいてもマネジメントコメンタリーの実務記述書の改訂作業が進んでおります。そういったような成果も取り入れ、マネジメントコメンタリーの実務記述書も、サステナビリティは当初スコープ外で付け足しのような扱いになっておりますけれども、そういった成果も踏まえながら、我が国におけるサステナビリティ情報の開示の在り方に関するガイダンスを作っていってもいいのではないかなと思っております。

 またサステナビリティの情報全般について、TCFDの4つの柱、これを取り入れるのはどうかということでありますけれども、私も多くの方々と同様、これには賛成でございます。世界的に見ましても、ISSBの議論、それから、G5の議論、それから、先ほども御紹介ありましたとおり、英国においてもこういう4つの柱に従ったような開示が気候変動以外にも応用されているわけであります。これはやはりそれだけ汎用性が高い枠組みなのかなと思っております。

 それから、「戦略」、「指標と目標」に係る開示ですけれども、「ガバナンス」、「リスク管理」は開示を義務付けないことがコンセンサスだったと思います。それに対して「戦略」、「指標と目標」につきましては、上柳委員が御指摘されておられたかと思いますけれども、重要性で判断するということに加えまして、やはりコンプライ・オア・エクスプレインの原則を適用して、もし開示できない場合には説明していただくということでいいと思っております。

 気候変動について「戦略」とか「指標と目標」を義務付けから外したのは、シナリオ分析等に基づく作成者の負担が重いということだったと理解しております。しかし他のサステナビリティ要素において、「戦略」とか「指標と目標」を立てるということがそこまで大きな負担なのかなというのが、私自身は正直、疑問に思っているところでありますので、仮に開示しないということであれば、コンプライ・オア・エクスプレインの原則に沿ってやっていただくということがいいのではないかと思います。

 それから最後に、意見発信とエンドースメントの論点、これ私自身、非常に気にしていた論点でございます。FASFにいろいろな検討体制が作られるということを聞きまして、非常に安心したところであります。金融庁やFASFの関係者の御対応に感謝したいと思います。ISSBの基準開発の過程においてFASFの検討体が意見発信をしたりとか、あるいは最終化された基準のエンドースメントの検討、それから、ビルディングブロックアプローチに基づく国内上乗せの要件を検討するということになってくるのだろうと思います。こういった組織の設置というのがこのディスクロージャーワーキング・グループにおいて検討されるというのは非常に重要なことだと思っておりました。

 このような枠組みを積極的に支援すべきだと思うのですけれども、現在、FASFやASBJに、このサステナビリティ報告の分野において必要とされる、あるいは人的・財政的な基盤がないというのが現状ではないかなと思っております。そういった意味では先行する諸外国にキャッチアップするために、国や民間利害関係諸団体においても、この分野で必要とされる人的・財政的支援を積極的に検討していただく必要があるのではないかと思っております。

 私からは以上であります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、永沢委員、どうぞお願いいたします。

【永沢委員】

フォスター・フォーラムの永沢でございます。最初に、藤村委員の、有価証券報告書の制度の目的とその他の政策目標との関係性についての御質問と、その御質問に対する廣川課長の御説明は、このワーキング・グループの議論を進めていく上で重要な視点であり、原点とすべきところと思いました。

 続きまして、事前に資料を拝見して気づいたことを4点ほど述べさせていただきます。

 まず、1点目でございます。私も、サステナビリティ情報全般について独立した「記載欄」を設けていくことが、一般投資家の視点からも望ましいと考えます。

 2点目でございますけれども、人的資本に関する開示につきましては、神作委員が御指摘されましたように、どの企業にもこの項目は共通した事項でありますので、必要開示事項としていいと考えます。また、資料中に示していただいたような海外の開示の例を参考にして、項目や内容を充実していただくことをお願いしたいと思います。

 関連して、人的資本に関する開示の視点については、サプライチェーンを個人投資家でも想像できるような情報の開示のあり方が望ましいし、必要とも考えております。また、消費者活動をしております立場から申しますと、サステナビリティというよりもエシカルという言葉のほうが欧州などではよく使われており、人権への配慮が大変重要な課題となっており、グローバルな展開をしている日本企業にとっても、この視点が不可欠となっていると思いますところ、事務局の資料全体にこの視点が少し弱いと感じておりますので、その辺をもう少し御留意いただいてはどうかと思います。

 3点目は、多様性確保に関する開示についてです。例示として女性管理職比率が挙がっておりますが、こういう例示に何を掲げるかでワーキング・グループの姿勢が評価されるところもございますので、例えば障害者雇用についても多様性というところで例示として挙げるべきなのではないかと思いました。

 それから、他の委員の方からも御指摘ありましたように、女性の管理職登用については、その比率を出せばいいというものでもありません。有価証券報告書制度の目的から離れてしまうかもしれませんが、現状、低い数字にとどまっている企業にこれから変わっていただくこと、企業の変化を後押しする力が情報開示にはあると思っており、例えば、管理職全体に占める比率だけでなく、新規登用ベースの女性比率を示すというようなこともされてはどうかと思います。

 最後に、サステナビリティ情報というのは、マーケティングに利用されそうな予感、懸念を一般投資家の立場からは感じておるということを申し上げたいと思います。そのため、民間でこのような基準の在り方を競い合っていただくことはもちろん歓迎いたしますが、開示基準対応については、中立かつ高い専門性を維持して継続的に行っていただく組織を御用意いただくことが必要と思っており、公的な組織がその役割を担うこととし、そこに対し相応の財政的支援を行っていくという考え方に賛成であり、事務局御提案を支持します。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、田代委員、どうぞお願いいたします。  

【田代委員】

皆様の御意見では最後のほうだと思いますので、私からは1つだけ、意見というか考え方です。

 サステナビリティ要素で、EとSとGの中でEにつきましては、グローバルに2050年までにネットゼロという目標がある程度共有できているので、何を開示するか比較的分かりやすいと思いますが、人的資本のところにつきましては、各国とも制度が全然違う中で、何を目標にしていくかというのも違いますし、何を開示して参考になるかというのと、数字が独り歩きしてしまうリスクが非常にあると思います。

 新卒採用をやっているとか、正規・非正規があるとか、人材の流動性が他の国に比べて非常に低いとか、そういう環境の中で、日本の企業はビジネスをしていて、それで人的資本はという話だと思うので、これをどうやって投資家、特に海外の投資家の皆様に分かってもらえるかというのは、多分説明の部分で各企業が定性的に説明しないと、数字だけでは参考にならないか誤解されてしまうと思います。その辺りの開示をどうやっていくかというのは私の中でもまだ全然分からないのですが、1つの課題ではないかというふうに認識しております。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。これで本日御参加いただいている委員の皆様方からは全員の方から御意見をいただきました。どうもありがとうございました。

 オブザーバーの方々で御発言があれば承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。チャット欄に記入していただければありがたく存じます。

 どうもありがとうございます。日本公認会計士協会の小倉オブザーバー、どうぞお願いいたします。   

【小倉オブザーバー】

発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。公認会計士協会の小倉です。本日の議論で、事務局説明資料31ページのところについて1点と、もう1点意見を述べさせていただきます。

 1点目は、事務局説明資料31ページの2つ目のポツの考え方、これは企業が様々なサステナビリティ課題の重要性を評価して、自らが重要と判断した課題について「戦略」と「指標と目標」を報告するアプローチと理解しております。マテリアリティについては、企業による重要性判断の客観性をいかに担保していくかについて度々議論が重ねられてきた領域と承知しています。例えばIASBの公表したマネジメントコメンタリーの実務記述書公開草案では、重要性の判断を行う際の留意事項を示しています。自ら判断するとしても、判断の基軸をしっかりとしたものとする必要があると考えています。既存のIIRC等のフレームワークでは重要性の考え方を示しつつ、企業側に重要性の決定プロセスの開示を求めています。こうした重要性の判断の適用について企業側の説明を求めるアプローチについても、今後検討をしていただきたいと考えております。

 2点目は、企業情報開示の年間のスケジュールについてです。本日もいろいろな委員の皆様から、有価証券報告書にサステナビリティ情報を含めるべきという御意見が多数ございました。有価証券報告書は、皆様御存知のとおり、株主総会前に提出することを投資家の皆様も要望されていますが、今のところ、2021年3月期でも総会前の有価証券報告書提出企業は30社程度と承知しております。

 ただ、そういうスケジュールの中で、今、任意の統合報告書は大体8月ぐらいに出されている企業がほとんどであると考えております。有価証券報告書をきっちり出されてから、こういった統合報告書について経営トップのメッセージも含めて出されているので、8月ということだと思います。こういう開示の議論をされる中で、果たしてその有価証券報告書のこのタイミングでいろいろな情報を開示していくことについては、作成者側の実現可能性、負担ということも含めて議論をされていく必要があるのではないかと考えております。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、経団連の小畑オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小畑オブザーバー】

経団連、小畑でございます。発言の機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。私からは、本日の議題の一番最後の国内基準の設定の取組みについて一言申し上げたいと思います。

 いろいろなところで公表されておりますけれども、来週のCOP26でIFRS財団においてISSBを設置するということが公表される予定です。それに向かって今準備が進められており、ISSB設立後のアジェンダについても、来年早々、第1クオーターには気候変動に関する基準の公開草案を出すということで、極めてスピード感を持って国際的な議論がどんどん進んでおります。日本側の意見発信並びに、日本で基準をどう受けるかということも含めて、国内の基盤を一刻も早く作る必要があると考えております。

 経団連としては、本日は間に合わなかったのですが、近々に、民間主体のサステナビリティ基準設定主体をFASFに創設することを求める提言を公表する予定でございますので、ぜひ御覧いただければと思います。よろしくお願いいたします。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、連合の片山オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【片山オブザーバー】

連合の片山と申します。今回初めてこの会に参加して、発言させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

 私としましては、サステナビリティに関する情報開示について支持する立場から発言させていただきたいと思います。盛り込む内容として、人的資本に関しましては、やはり健全な労使関係、きちんと労使で経営をチェックする機能があるかどうかというのがかなり重要な要素かなと思っております。ですので、労使による対話がきちんと行われているとか、労働組合がきちんとあるとか、そういったことも1つの重要な要素になるのかなと思っているところであります。

 もう1点、人権についてです。やはり欧米を中心に今、人権に関する意識が非常に高まっております。企業が人権に対する取組みを行っているのか、サプライチェーンを含めて人権デューデリジェンスをきちんと行っているのか、そういったことも重要な要素になるのではないかと思っているところであります。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様方からも追加の御発言等ありましたらぜひお伺いしたいと思いますけれども、まず今、チャットをいただきまして、ありがとうございます。井口委員、どうぞお願いします。

【井口委員】

非常に簡単なコメントですが、高村委員がおっしゃったことに賛同するのですが、気候変動というのはやはり今後2050年までは資本市場において大きな話になりますので、生物多様性や人権も大事だと思いますが、気候変動については別途特出ししてやっていくというのがよいのではないか、と思っております。この意味で、「ガバナンス」、「リスク管理」はいいのですけれども、気候変動に対する「戦略」と「指標と目標」は別出しするという工夫というのも考えられるのではないかと思っております。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。本日、時間に若干余裕があるようですので、もし追加での御発言があればぜひ承りたいと思います。委員の皆様方、オブザーバーの皆様方、いかがでしょうか。

 今日多少意見が分かれた点があったとすると、「記載欄」の書き方というか、どこに書くかという話ですが、御趣旨においては別に意見の対立がおそらくあるわけではないと思いました。分かりやすさとか、あるいは将来、監査・保証みたいな制度を担っていったときの、どの部分がその対象になるかとか、そういうような観点を踏まえて、形式的にも1か所がいいのか、分かれて書く場合には、どの部分がサステナビリティ開示なのかが分かるように書いていただくかという話かと思います。

 皆様方の御意見は今日かなり承ったとは思いますけれども、他の点も含めて、追加での御発言がありましたらお願いいたします。

 藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】

ありがとうございます。今お話あった「記載欄」についてですが、先ほど、私は経営方針のところがいいのではないかと申し上げました。私の懸念は、経営方針と離れて、1つ配慮すべき項目として経営方針の外数としてサステナビリティが語られることはよくないのだろうなと思っております。井口委員がおっしゃっていたと思いますが、サステナビリティを基本的には経営方針とリンクさせて語った上で、その他情報、開示項目的なものは一定の場所を定めてそこに記載するという整理が良いだろうと、皆さんの意見を伺いながら感じました。

 あと、少し気になるのは、事務局説明資料17ページです。まだイメージが持ててない点がございます。有価証券報告書において、記述情報として、ストーリーというか文章としてこれらをサステナビリティに関する、例えば「ガバナンス」、「リスク管理」を開示していくというイメージは持ちやすいのですが、各論的な開示項目を本当に有価証券報告書で開示を求めていくのかについて、しっくり来ておりません。恐らくISSBの基準においても開示項目になってくると思いますが、たとえば、Scope1、Scope2、Scope3といった排出量の数字や、極めて各論的な個別の「指標と目標」といった、細かな開示項目を有価証券報告書に取り込んでいくというイメージがなかなか持ちにくいと感じております。

 総括的な全体的なサマリー的なものを有価証券報告書に記載して、個別のデータ等はサステナビリティレポート等に記載することが良いと考えます。例えば弊社の場合でもサステナビリティレポートのようなものを作っていますが、そこにはとても細かいデータを載せているわけですけれども、それは有価証券報告書に馴染まないという気がします。事務局説明資料においては、これら開示項目も有価証券報告書へ将来的に取り込むと書かれていますが、すべて取り込むということではなく、有価証券報告書と他の媒体の棲み分けが大事だと考えております。

 細かな指標等の開示項目が有価証券報告書に馴染まないと考える理由をもう1つ上げるとすると、比較可能性の問題です。例えば、シナリオ分析は「戦略」のコアに位置付けられます。以前も申し上げましたが、シナリオ分析の結果というのは、各社、仮定の数字を開示しています。例えば、今回TCFDでも開示しろということになった、移行リスクにさらされている資産の割合などを考えても、各社区々の前提の下での数値になります。例えば弊社は5割が晒されています、隣の同業他社は3割が晒されていますということを並べてみても、その晒されていると言っている移行リスクの定義もまちまちですし、そこで前提としているシナリオ、これもまちまちです。この辺が本当に有価証券報告書に馴染むのかなという点がとても気になっています。

 長くなって恐縮ですが、有価証券報告書における「戦略」、「指標と目標」においては、あまり個別の項目の開示を求めるべきではないと考えます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、中野委員、どうぞお願いします。

【中野委員】

先ほどの私の発言でやや曖昧な部分がありましたので、改めて申し上げておきたいことが1点ございます。私は、第2回のワーキング・グループにおいて、サステナビリティ情報に関して独立の「記載欄」を設けるべきである、さらに将来的にはそこに保証が付されていくという時間軸の流れになるだろうと発言いたしました。本日、委員の皆様の御意見を改めて伺いまして、やはり独立の「記載欄」を設け、そこに将来的に保証が付されていくというあり方が利用者の観点からも明快と考えますので、独立の「枠」を設けるという在り方を改めて支持したいと存じます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】

三瓶です。先ほど手を挙げて、その後で藤村委員の御意見を伺っていて、もう私の言いたいこと全部言っていただいたかなという感じはするのですけれども、先ほど様々な委員の方がおっしゃった中で、独立した開示項目の利点ということで、比較可能性とか分かりやすさというふうにおっしゃっていた点について、投資家にとっての分かりやすさというのは本当にそうだろうかというのがちょっとあるのでコメントさせていただきます。

 企業がそれについて対処しているのか、してないのかというのを判別するのであれば、対処していますというのはすぐに分かる。そして、例えば昨今流行っているESG評価機関のようなところがスコアリングするにはものすごく便利だと。ただ、ESG評価機関も今や世界に600社ぐらいあるというふうに言われていて、供給過剰状態ですけれども、比較可能なスコアリングで一見分かりやすそうであっても、投資家の投資判断にはあまり役に立たないなという感じがします。

 やはりサステナビリティがグローバルでも、また、長期的に見ても、経営判断の中で非常に重要な部分を占めているということからすると、企業がこれから長期にわたって社会のサステナビリティを考慮する中で、新たな価値創造、これまでの価値創造とは全く違った形でやっていかなければいけない課題がたくさんあるわけですね。それをどう行っていくのかを示して、それで初めて投資家は、そういう考え方でやるのか、それでは、こう評価できるなとか、いや、まだエビデンスが見えてないから評価しにくいなとか、そういうことを考えていくので、もちろんXBRL対応のデータとして非常に使いやすいような形での別開示というのは有用ですけれども、そこに開示する側が精神、精力を傾け過ぎてしまうことは懸念します。

 今、多くの企業が対応を考えていらっしゃいますけれども、統合報告書を開示している600社、このようなところは既にもう様々なことを考えていますけれども、統合報告書を出していない数千の企業で、いよいよやらなきゃいけなくなったからどうしようというところは、準備に対応する人員、要員をつけてもらうこと、または予算つけてもらうことすらままならないということで、1人で、社内のどこに情報があるのか分からない、とにかく何を開示すればいいのかというと、最低限のものを開示して、経営からは「決められた、定められた開示をやったのか」「やりました」というイエス・ノーで終わってしまう、そんな企業も相当数、数としてはあるようですので、あくまでも特別な開示項目を設けるにしても、全体感というか経営の方針としてどうなのだということは書いていただく必要があるのだろうと思います。以上です。  

【神田座長】

どうもありがとうございました。他にいかがでしょうか。特によろしゅうございますか。

 それでは、若干時間が早いかもしれませんけれども、早めに始めさせていただいてもおりますので、本日はこの辺りとさせていただきたいと思います。

 皆様方にはいつものことですけれども、大変貴重な御意見を多数、参加していただいた方全員からいただきまして、どうもありがとうございました。もし追加でお気付きの点等ございましたら、事務局までメールなり電話なり御連絡いただければ大変ありがたく存じます。本日いただきました御議論を踏まえ、次回以降さらに議論を深めていただければと存じます。

 最後に、事務局から御連絡等ございましたらお願いいたします。      

【廣川企業開示課長】

次回のワーキング・グループの日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえました上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと存じます。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。皆様方、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局企業開示課(内線3688、2872)

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