金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第4回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年12月1日(水曜)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室

【神田座長】
 ただいまから金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ第4回の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会議ですけれども、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、金融審議会議事規則にのっとって、オンライン会議を併用した開催とさせていただきます。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただきます。

 会議を始めます前に、事務局から留意事項の説明をお願いいたします。
 
【廣川企業開示課長】

企業開示課長、廣川でございます。よろしくお願いいたします。オンライン会議について2点ほど留意事項がございます。

 1点目でございますが、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名をいただきます。また、御発言をされる際には冒頭にお名前をお願いいたします。

 2点目でございますが、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わりましたら再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。
 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。なお、今までのように本日の会議の模様もウェブ上でライブ中継をさせていただきます。

 それでは、議事に移らせていただきます。本日は、まず事務局から資料の説明をしていただきまして、その後、質疑応答と討議の時間とさせていただきます。

 それでは、事務局からの資料説明、よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】

ありがとうございます。お手元にあります「事務局説明資料(コーポレートガバナンスに関する開示)」、この資料に基づきまして、説明させていただきます。

 まず、本日の本題のコーポレートガバナンスに関する開示に入ります前に、2点ほど御報告事項がございます。

 おめくりいただきまして、1点目、2ページですけれども、サステナビリティの開示に関する御議論、これまでも本ワーキング・グループにおいて行っていただきましたけれども、それに関連して本年11月3日にIFRS財団が気候変動をはじめとするサステナビリティに関する基準設定主体の設立を公表してございます。

 プレスリリースの内容ですけれども、まず、新しい国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立するということを公表。その拠点については中ほどですけれども、米州、欧州、アジア太平洋地域において複数の拠点を持つということでございまして、議長のオフィスはフランクフルト、それ以外にモントリオール、サンフランシスコ、ロンドン。アジア太平洋の拠点としては、北京と東京の提案についてさらに議論を継続するとされてございます。

 また、メンバーに関しましては、今後のステップということで、ISSB議長・副議長以外のメンバーの募集を早期に開始する。また、ISSB議長・副議長についてはまだ任命はされていませんが、任命され次第、ISSBとして作業を開始し、作業計画や、それから気候変動基準のプロトタイプに関する市中協議を開始すると、こういった予定になってございます。

 これに関連して日本の動きでございますけれども、次の3ページでございますが、11月16日に、日本経済団体連合会から、日本国内においてサステナビリティ基準委員会の設立を求める提言が公表をされてございます。御参考までにつけさせていただいております。

 大きく2点目でございます。4ページを御覧ください。こちら会計監査を巡る動向と信頼性確保に向けた取組みということで、具体的には、本年の9月から11月にかけて、金融庁におきまして、「会計監査の在り方に関する懇談会」というのが開催をされてございます。11月12日に論点整理が取りまとめの上、公表されているということでございます。

 特に中ほどですけれども、近年の会計監査を巡る環境変化、特に上場会社監査の担い手が拡大していることや、公認会計士の働き方の多様化が進んでいる。こういったような環境変化の中で、下にありますように会計監査の信頼性確保、公認会計士の能力発揮・能力向上、さらには、高品質な会計監査を実施するための環境整備等について、御議論をいただいたところでございます。

 次の5ページに論点整理の概要を1枚でまとめさせていただいております。いろいろございますけれども、例えば右側、対応の方向性の2番目のところにありますように、上場会社の監査に高い規律を求める制度的枠組みを検討すべきである、こういった内容。あるいは公認会計士の能力発揮・能力向上に関しましては、右の対応の方向性の1つ目ですけれども、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限について見直しを検討すべきといったものがございます。

 また、本ワーキング・グループと関係が深いという意味でいきますと、一番下になるかと思いますけども、高品質な会計監査を実施するための環境整備等のところで右側ですが、例えば監査役等や内部監査部門と監査人とのコミュニケーション・連携の強化、あるいは内部統制の整備・運用状況の分析、さらには実効性向上に向けた議論を行っていくべき、こういったような内容になってございます。

 それでは、本題のコーポレートガバナンスに関する開示の御説明をさせていただきます。

 7ページ御覧いただきまして、コーポレートガバナンスを巡る近年の動向ということで、2018年6月にコーポレートガバナンス・コードの改訂、また、スチュワードシップ・コードの再改訂もありまして、本年の6月にもコーポレートガバナンス・コードの再改訂が行われているといった流れがございます。本年6月の再改訂のところ、一番下でございますけれども、プライム市場上場企業については、独立社外取締役を委員会の過半数選任することを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等の開示をすべきである、こういった内容も盛り込まれてございます。

 次の8ページは、ガバナンス改革と非常に関連の深い東京証券取引所における上場株式の市場区分の見直しの話でございます。特に、新市場区分、プライム市場におきましては、コーポレートガバナンス・コードをより高い水準を求めていくという考え方になってございます。

 9ページを御覧ください。こちら、前回2018年のディスクロージャーワーキング・グループの報告を受けた、ガバナンス関係における見直しと、その後の進捗・課題をまとめたものでございます。

 前回のディスクロージャーワーキング・グループにおきましては、まず、取締役会・委員会等の共通記載事項のところでありますけれども、ガバナンス情報の充実を図る観点から有価証券報告書におきまして、こういった取締役会等の構成、それから設置目的、権限、こういったところについて記載をしているということで、現時点までの進捗・課題という意味でいきますと、ガバナンスに関する基本的な情報の開示が進んでいるということかと存じます。

 さらに「活動内容」関連の記載に関しましては、取締役会、指名委員会・報酬委員会等と書いてあります真ん中のところですけれども、役員報酬等の額の決定過程における取締役会及び委員会等の活動内容を有価証券報告書に記載することとなりました。

 右側、見ていただきますと、役員報酬の決定過程の開示が進展しています。他方で、取締役会及び委員会等の活動状況の開示については、コーポレート・ガバナンス報告書や任意開示では一定の進展が見られるが、有価証券報告書ではなお限定的ということでございます。

 一番下、監査役会等でございますけれども、監査役会等の活動の実効性を判断する観点から、有価証券報告書において活動状況を記載することとされました。右側にいきまして、監査役会等の活動状況の開示が進展しているということでございます。

 11ページに参ります。ここから取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況に関する資料でございます。

 11ページは、先ほど少し申し上げました2018年のディスクロージャーワーキング・グループ報告を踏まえた開示の充実ということで、特に本日の関連でいきますと、真ん中の青字の変更箇所のところの一番下でございますけれども、役員報酬等に関しまして、報酬等の額の決定過程における取締役会・委員会等の活動内容を記載することとされているということでございまして、これを受けまして、12ページでございますけれども、実際の開示例ということで、報酬委員会の活動内容として開催日付、協議した内容等を具体的に開示している有価証券報告書の記載をつけてございます。

 13ページに参りまして、それ以外ということで、コーポレート・ガバナンス報告書におきましては、取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況の記載が望ましいということで、その活動状況につきましては、これはTOPIX100構成銘柄の開示状況を表にしたものですけれども、一定の開示が進展しているということかと存じます。

 次、14ページ参りまして、企業の開示例ということで、任意開示の統合報告書の中で取締役会の活動状況、主な検討事項について開示されている例でございます。

 15ページに参ります。こちら先ほども少し紹介申し上げましたけれども、本年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂におきましては、指名委員会・報酬委員会の設置により、指名や報酬など特に重要な事項に関する検討に当たって、それらの委員会の適切な関与・助言を得るべきとされているということで、そうした流れの中で補充原則の4-10①ですけれども、一番下のところで先ほども申し上げましたけど、特にプライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立に関する考え方・権限・役割等を開示すべきであるとされてございます。

 そうした流れの中で16ページですけれども、少し遡りまして、2015年以降ですが、指名委員会・報酬委員会を設置する会社の比率は増加してきているということでございますが、見ていただきますと、多くは任意の指名委員会・報酬委員会の形で設置されている会社が多いということでございます。

 17ページを御覧いただきまして、そうするとということですけれども、任意の指名委員会・報酬委員会になりますと、役割の範囲、権限の程度、開催頻度、これは各社によってまちまちでございます。その運営自体は上場企業によって様々ということで、そこにいろんな例、開催頻度も含めて、様々であることをお示しさせていただいております。

 18ページに参ります。次は指名委員会に関して、投資家が何を期待されているかということで、指名委員会の審議内容につきましては、投資家は、社長・CEOの後継者計画、取締役会の構成、社長・CEOの業績評価についての審議の充実が必要と考えているということをサーベイ調査でお示ししているものでございます。

 それから19ページに参りまして、今度は報酬委員会に関して、投資家がどういう御意見を持たれているかですが、実際の活動状況について、より詳細な開示が必要と考える、あるいは委員会がどのような役割を担っているかを説明する目的で、委員会の活動状況や構成については適切に開示することが必要だと考える。さらには、委員会の構成、役割や権限に応じて肯定的に判断できるかが変わってくるため、これらの内容の開示が前提となるといったような御意見が出ているところでございます。

 20ページを御覧ください。ここから海外の例でございます。

 まず、イギリスの例ですけど、イギリスの上場会社は年次報告書において、取締役会や指名委員会・報酬委員会、そして監査委員会に関して、活動状況を開示することが求められているということで、ちょっと詳細になりますが、つけさせていただいております。

 また、21ページはアメリカの例ですけれども、アメリカの上場会社は年次報告書において、取締役会や各委員会の開催状況、検討プロセスなど、その活動に関連する事項の開示が求められているということでございます。

 22ページからは実際の開示例でございまして、これはイギリスの個社のアニュアルレポートの例でございますけれども、取締役会の開催頻度や各取締役の出席状況について、あるいは取締役会における主要な議題について具体的に開示がなされているといったところでございます。

 23ページを御覧ください。こちらの指名委員会の開示例ということで、これもイギリスの例でございます。指名委員会におきまして、例えばですけれども、新任取締役の選定・育成プロセスについて記載をする。あるいはスキルマトリクスに基づいて取締役の選定について開示をする。あるいは取締役会の開催頻度とか各委員の出席状況、それから多様性の確保について図表・グラフなども用いて記載をするといった例でございます。

 また、24ページを御覧ください。今度は報酬委員会の開示例ということで、これも別の企業になりますが、イギリスの例でございます。報酬委員会について、業務執行取締役の報酬方針のほか報酬の構造、パフォーマンス指標の戦略的な根拠について開示をされている例でございます。

 次、大きく2つ目、監査に対する信頼性の確保の御説明をさせていただきます。

 26ページを御覧ください。前回の内閣府令の改正におきまして、有価証券報告書において、監査役会等の活動状況の記載をすることとされており、実際の開示例のとおり活動状況の開示が進んでいるといったようなところでございます。

 それから監査の関連の話としては、27ページですけれども、監査に対する信頼性の確保の観点から、監査報告書において、KAM(監査上の主要な検討事項)の記載が導入され、2021年3月期決算から全面的に適用が開始されているといった状況でございます。

 こうした中で、次の28ページでございますけれども、監査役あるいは監査役会の活動に関してということでございますが、監査役会等による報告書を求めることなどを通じた監査役等の責任の明確化を求める意見があるということで、先ほども少し御紹介を申し上げました「会計監査に関する在り方懇談会」の論点整理におきまして、青字のところですが、有価証券報告書に監査役等による報告書を求めることを通じた財務報告に係るガバナンスに対する監査役等の責任の明確化などについても、中長期的に検討されるべきであると、こういった御意見も出ているところでございます。

 下は現行の監査役会等に関する情報開示の制度でございますけれども、有価証券報告書におきましては、先ほども少し御説明申し上げましたが、監査役監査の組織、人員及び手続について具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。そして、前回開催で追加されました監査役及び監査役会の活動状況を記載することとなってございます。

 また、会社法のほうでは株主総会の招集通知において、監査役会等の監査報告書の添付が求められているということで、その中で監査役会等の監査の方法及びその内容、監査の結果について記載することとされてございます。

 次の29ページに参りまして、海外ということでイギリスの例、これは第1回のワーキング・グループでもお示ししたものでございますけれども、イギリスではアニュアルレポートの中で、Audit Committee Report、監査委員会の報告書ということで、監査委員長名で監査委員会の活動状況というのが詳細に開示をされているということでございます。

 先ほどのKAMとの関係でいきますと、例えば右下ですけれども、監査委員会が重要と考えた事項のページの中で、実務上、KAMとして監査報告書に記載されている事項も開示をされているということでございます。

 30ページを御覧ください。こちら、監査関係でまた別の話でございますけれども、コーポレートガバナンス・コード、前回6月の改訂におきましては、内部監査部門が取締役会、監査役会等に対して適切に直接報告を行う仕組み、いわゆるデュアルレポーティングラインを構築するということが求められるとされてございます。

 現状、右側の棒グラフでございますけれども、内部監査部門の監査結果の定期的な報告先はということでありますけれども、これは重複回答可能ということで、社長が79%、取締役会が48%、監査役あるいは監査役会が41%等々となっているというところでございます。

 31ページを御覧いただきますと、実際にその内部監査部門が内部監査の結果を監査役にも直接報告をする仕組み、デュアルレポーティングを構築していらっしゃる企業の中で、有価証券報告書においてその旨を記載されている、開示をされていらっしゃるところがあるということの御紹介でございます。

 続いて大きく3つ目の政策保有株式等に参ります。33ページを御覧ください。

 前回のディスクロージャーワーキング・グループの報告におきましては、政策保有株式の開示内容の充実とともに、純投資目的の株式について、重要性を考慮しつつ、一定の開示を求めることとされておりまして、本日、説明を省略いたしますけれども、詳細な記載が下のとおりなされているところでございます。

 そうした報告書を踏まえまして、34ページでございますけれども、2019年3月期から適用されている改正内閣府令におきまして、政策保有株式の開示内容の拡充がなされております。具体的には、政策保有株式の保有方針、それから、保有の合理性を検証する方法、あるいは保有目的、それから保有の効果、あるいはその相手方の保有の有無、株式数の増加の理由といったことにつきまして開示をする。特に個別銘柄の開示数というのがこれまでの30銘柄から60銘柄に拡充されているということでございます。

 純投資との関係でいきますと、ちょっと分かりにくいのですが、右上のほうですけれども、純投資目的の投資株式とそれ以外の目的の投資株式(政策保有株式)の区分の基準や考え方というのを開示することとされているということと、右下ですけれども、純投資目的の株式の銘柄数についても開示することとされたというところでございます。

 次の35ページを御覧いただきますと、こうした制度改正を踏まえてということでございますけれども、中ほど、政策保有株式につきましては、投資家が好事例と考える開示と実際の開示の乖離が大きいとの意見が聞かれたということもございまして、私ども金融庁で好事例集の公表に代えて、「政策保有株式:投資家が期待する好開示のポイント(例)」というものを公表させていただいているところでございます。

 また、政策保有株式、あるいはその純投資に関連してということですけれども、投資家からの意見ということでいきますと、下に2つ書かせていただいておりますが、業務・事業提携を行うために株式保有をするといった場合には、そうした目的のために保有することを他の株主に対して開示をする必要があると。有価証券報告書であれば、経営上の重要な契約などで開示することが適当ではないかという御意見があるということでございます。また、純投資につきましては、保有株式が同社の資産に大きな割合を占めるにもかかわらず、純投資として開示されない場合には投資家にとって誤解を招くことになるため、主要な保有株式銘柄が開示されるべきという御意見もあるところでございます。

 36ページ、それから37ページ、こちらは先ほども申し上げました政策保有株式に係る投資家が期待する好開示のポイントの例でございますけれども、保有方針ですとか保有の合理性の検証方法、あるいは取締役会等における検証の内容、さらには、次のページに参りますと、保有目的、定量的な保有効果、増加の理由、発行者による当社株式の保有の有無といったところで、どういった開示が望まれるか期待されるポイントが書かれてございますけれども、その辺はまだまだ期待に実態が追いついてないという意見も出ているところでございます。

 次に、参ります。38ページでございますけれども、こちらは政策保有株式に関連して、議決権行使についてでございますが、コーポレートガバナンス・コードにおきましては、政策保有株式に係る議決権行使に係る具体的な基準の開示が求められているところでございます。

 それによりまして、具体的に議決権行使の判断を定めていらっしゃる例もあるということで、下に具体的に政策保有株式の議決権行使基準というものを策定し、公表されている例をつけてございます。

 以上が資料の説明でございます。これも踏まえまして、本日ご議論いただきたい事項、最後に御紹介させていただきます。40ページに参ります。ちょっと早口ですが、読み上げさせていただきます。

 「コーポレート・ガバナンスに関しては、取締役会の機能発揮の強化などの観点から、指名委員会・報酬委員会等の設置が進んでおり、それらの機能発揮の状況に関する開示の必要性・重要性が増しているとの指摘がある。

 この点、諸外国では法定書類において、取締役会や指名委員会・報酬委員会等の活動状況が開示されている。我が国では、コーポレート・ガバナンス報告書において、取締役会等の活動状況の記載が促されていることに加え、一部の企業では任意開示において、取締役会等の活動状況をそれぞれの企業の事情に応じて開示する動きが広がっている。

 こうした中、有価証券報告書において取締役会、指名委員会・報酬委員会それぞれの活動状況の記載欄を設けるとともに、それぞれの企業において委員会の役割・権限等に幅があることを踏まえ、まずは「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」を記載事項としつつ、各企業の創意工夫を生かした開示を促すことについてどう考えるか。その際、一部の上場企業におけるこれまでの任意開示の取組みを受け止められる枠組み(例えば、有価証券報告書において任意開示等を参照することにより総覧性を確保すること)についてどう考えるか。」というふうにさせていただいております。

 次に、監査に対する信頼性確保に関しましては、「情報の信頼性確保の観点から、企業における監査役会等や内部監査部門の機能発揮も重要になる。そうした観点から、例えば、次の事項の開示を促すことについてどのように考えるか。」

 1つ目は、「KAMについての監査役等の検討の説明」、2つ目は、「監査役等の視点による監査の状況の認識と監査役会等の活動状況等の説明」、3つ目は、「デュアルレポーティングの有無を含む監査の実効性の説明」でございます。

 そして、「政策保有株式等につきましては、投資家からはさらなる開示の充実の観点から、例えば以下の事項の開示を促すべきとの意見があるが、どのように考えるか。」1つは、「業務提携等を行っている場合の説明」、2つ目は、「政策保有株式の議決権行使の基準の説明」。

 また、「純投資目的の株式についても重要性を考慮しつつ、一定の開示を求めるべきとの意見があるが、どのように考えるか。」

 最後、その他といたしまして、「上記の他、検討すべき事項はあるか」とさせていただいております。

 説明は以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、今の説明を踏まえて、これから委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただきたいと思います。

 まず委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただき、その後、時間の状況も見ながらオブザーバーの方々からも御発言があればいただきたいと思います。

 今、御説明いただきましたように、最後に御説明いただいた「ご議論いただきたい事項」というのが、事務局説明資料の40、41ページに書かれてございます。いつものように大変恐縮ですけれども、時間も限られておりますので、皆様方の御発言のお時間を確保するという観点から、お一人当たり、3、4分程度をめどに御発言いただけるとありがたく存じます。

 それでは、委員の皆様方、どなたからでも結構です。御発言いただける方はチャット欄に全員宛てにチャットを出していただければと存じます。

 ありがとうございます。上柳委員と井口委員にチャットをいただいております。それでは、上柳委員、どうぞ、お願いいたします。

【上柳委員】

恐れ入ります。上柳です。

 「ご議論いただきたい事項」は、簡単に言うと全部賛成です。ただ幾つか申しますと、指名委員会・報酬委員会、特に「主な検討事項」という言葉になるのだと思いますけれども、それも開示事項とするということが適切だと思います。ただ、私の希望としては、今回の事務局説明資料の24ページに例えばイギリスの企業の報酬の考え方の右下の枠のところ、これは好事例ということだと思いますけれども、このぐらいを書ける企業は日本にもたくさんあるのではないか、あるいはまだ検討中であるというところもあるかもしれませんけれども、このレベルを希望します。

 2つ目が、監査役の関係ですけれども、これも有価証券報告書に定型的でない、ボイラープレートでない監査役報告を求めるということが求められると思います。監査役なり監査等委員が、今、当企業について主にどういう関心事項、あるいは問題意識を持っているかということ、KAMが中心になるかも分かりませんけれども、それ以外の非財務的あるいは人材その他も含めて、問題意識を何行かでも書いていただくようになるべきではないかと思います。

 最後に政策保有株式ですけれども、これも説明を詳細にできるだけ求めていくとことが方策と思います。けれども、事務局資料の36ページあたりでも好開示のポイントが指摘されているだけで、個社の好事例が出ていないところを見ても、なかなか説明をきちっとするということは難しいのではないか。そういう意味では、やはり政策保有株式というのは基本的にはないと、若干は持って他社の動向を株主として知るということはあるかも分かりませんけれども、そう思います。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、井口委員どうぞ、お願いいたします。

【井口委員】

井口です。ありがとうございます。事務局には御説明ありがとうございました。私も「ご議論いただきたい事項」について順に意見させていただければと思います。

 最初の取締役会等の活動状況の開示のところですが、投資家にとって、中長期的な企業の課題への対応を監督する取締役会や委員会が、経営状況や課題を適切に認識しているかどうかを確認することは、取締役会等の実効性を判断する上で非常に重要ですので、この活動状況の開示の方向には賛同いたします。

 また、上柳委員がおっしゃったように、私も、事務局資料に示されている水準より、もう少し開示していただきたいと思っておるのですが、今回は、前回のディスクロージャーワーキング・グループで決められた監査役会の活動の開示と同様、「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」の開示事項から始めて、次回のディスクロージャーワーキング・グループで更なる開示を求めるということでいいのではないかと思っています。

 ただ、1点だけ注意しなければならないと思っておりますのは、事務局説明資料13ページに、コーポレート・ガバナンス報告書での取締役会等の活動の開示状況が示されていますが、TOPIX100のような日本を代表する企業であっても、投資家として最も知りたい、ちょうどこの表の一番下にあります「前年度の具体的な検討事項」を記載している企業の割合は10から20%と極めて低い状況です。東証一部とかで言いますともっと低い状況になるのかなと思います。

 投資家として知りたいのは、取締役会の会議規程に定められている主な検討事項ではなくて、ここにあります具体的な検討事項の記載となりますので、有価証券報告書における開示ルールの定め方は、コーポレート・ガバナンス報告書の定め方とは異なったものにするのがよいと思っています。つまり、有価証券報告書における監査役会の活動の開示と同様、「前事業年度における」をつけていただいて、「前事業年度の取締役会・委員会の主な検討事項の開示」という定め方が有用な開示につながるのではないかと思っています。

 あと、事務局の論点の中で、任意開示の参照という記載があります。私は、有価証券報告書というのは企業価値創造プロセスを一覧的に掲載する報告書という役割を担っていると思っていますので、任意開示については慎重に考えるべきと思っています。

 ガバナンス情報に関しましては、現状でも少な過ぎるぐらいですので、到底、情報過多の状況とは言えないのではないかと思っています。ただ、以前のワーキング・グループでも申し上げましたように、例えばサステナビリティ情報とかTCFDの開示で、非常に細かい計算数値などは、明瞭性の観点で全て掲載するということは必ずしも妥当とは言えませんので、任意開示への参照というのもあり得るのかなと思いますが、その他のケースについては、参照というのは慎重に考えるべきと思っています。

 2つ目の監査に対する信頼の確保ですが、御提案のように、監査役会等の活動の開示の拡大に賛同いたします。特に最初のポイントのKAMへの検討の説明というのは重要と考えております。投資家として確認する必要があるのは、監査報告書のKAMだけではなくて、それを受けて、企業の側にいる監査役会がそのKAMについてどう判断し、対処したかということになりますが、現状では、KAMに関する検討結果の開示がないというケースが多くて、監査役会の実効性を判断できる開示になっていないと考えるからです。

 3つ目の政策保有株式等のところです。こちらのほうも一段の開示の方向には賛同いたしますが、ただ、1つ申し上げたく思いますのは、開示も重要ですが、資本市場にとって大きな課題は、株主総会や議決権行使判断前に、この政策保有株式の情報が出ておらず、有効に活用することができないということです。

 もう1つの観点ですが、事務局参考資料35ページに、議決権行使助言会社ISSの、政策保有株式への議決権行使対応が掲載されております。ここで言っているのは、株主総会までに有価証券報告書の情報開示が間に合わないので、前年の開示情報を用い、判断するというものです。

 私は投資家、特に海外投資家を中心に強い期待があると思いますので、ISSとしてもやむを得ない判断をされたと理解しますが、例えばこの結果、企業が1年かけて必死に政策保有株式を減らしたとしても、1年前に基準に抵触しているとすると、その努力の甲斐もなく、引き続き経営トップに反対されるということになります。あと、政策株式保有先出身の社外取締役も反対されるということになると思っております。グローバルのパッシブ運用投資家が、このISSの助言に従うとすると、日本の資本市場としては、極めて不健全な状況になってしまうのではないかと懸念しております。

 ですので、私は、この有価証券報告書の政策保有株式の開示情報というのは、株主総会関連書類にも掲載すべきと思っています。この話は、ここでするのではなくて、法務省の会議とかで話すべきことかもしれませんが、せっかくの機会ですので、申し上げさせていただきました。

 最後のその他のところですが、今回取り上げられたかったのですが、企業価値創造プロセスやガバナンスの実効性を見るのに最も重要な役員報酬の開示ということについて簡単に言及させていただければと思います。

 1回目のワーキング・グループでも申し上げさせていただきましたが、現状の評価項目ごとの目標・実績の他に、項目ごとの支給率、あるいは企業によりましては評価係数とおっしゃっていますが、この評価係数と、これに、項目ごとの評価割合を掛けて算出した全体の評価係数の開示が必要と考えています。

 既にこれは日本でも、先端的な企業はやられることではありますが、せっかく報酬実績が開示されていても、評価係数がなければ、開示されている評価方針が適切に運用されているかどうかは判断できないという状況ですので、ぜひここは検討していただければと思っております。

 長くなり申し訳ありませんでした。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでチャットをいただいている順番ですと、この後、三瓶委員、近江委員、神作委員という順番でお願いしたいと思うのですけれども、今日、早めに退出されるとお伺いしている高村委員、もし御発言があれば承りたいと思うのですが、いかがでしょうか。

【高村委員】

ありがとうございます。高村でございます。

 今こちらに示していただいております「ご議論いただきたい事項」ですけれども、これまで御発言がありましたように、基本的にこの方向に賛同いたします。私のほうからは、その点だけ申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】

三瓶です。私からも事務局からいただいている「ご議論いただきたい事項」について発言したいと思います。

 まず、取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況についてですが、そもそも指名委員会・報酬委員会等を設置する目的ですけれども、私は3つあると思っています。1つ目は、代表取締役等への権限集中による権力化の回避、また、周囲の忖度による機能不全を排すること。2つ目は、プロセスの透明性、客観性の確保。3つ目が説明責任、結果責任の明確化です。これを踏まえると構成メンバーの氏名、委員長の氏名、こういったことは開示すべきだと思っています。今は属性とかそういった形になっていると思います。

 そして役割、権限というものも非常に重要です。こういったものは、本来、開示はマストだと思っています。例えばですけれども、指名委員会について、代表取締役等の解任プロセスへの関わり方がどうなっているか。例えば、代表取締役が委員長の場合に、解任議題がある場合のみ、代理を立てて行いますという説明を実際に面談で聞くことがあります。しかし、これは非現実的だと思います。

 毎回、代表取締役抜きで審議する時間が設けられているなどの実効性あるプロセスの説明・開示が重要だと思います。こういったことを記述式で開示してほしい思っています。

 また、報酬委員会についても、取締役の個人別報酬の決定プロセスへの関わり方。例えば令和元年改正会社法で、取締役の個人別報酬の内容の決定を代表取締役に委任する、いわゆる再一任の場合には、事業報告に開示するということになりました。また、これは同じく有価証券報告書でも同様な開示が求められています。事務局参考資料の3ページにそれがあります。

 こういったことを踏まえると、取締役会が報酬委員会に諮問する。ただ、結局は代表取締役に決定を再一任するのか、それとも取締役会に答申し、取締役会で最終的に決定するのか、そういったことが今現在はかなり読み取りにくい状況にあります。こういったことを明確に明記すべきだと思います。

 そして、任意の委員会の場合に指名と報酬に関して兼務する委員会が多いということがあります。そうした場合には「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」、こういったことは特に重要になると思います。また、開示について先ほど井口委員もおっしゃっていましたけれども、参照ではなくてコピー&ペーストでもいいから、有価証券報告書に記載してほしいと思います。

 続いて、監査に対する信頼性確保についてですが、まず、今KAMについての開示が始まっているわけですけれども、内容を見てみるとビジネスモデルの特徴を踏まえたKAMの抽出、丁寧な説明というのは、株主・投資家の重要な関心事項を“分かっている”、また、“正面から向き合っている”という姿勢を示すことになっており、信頼感を増していると思います。

 一方で、当たり障りのないような事項をKAMとして選んで、一般的な説明に終わっている開示もあります。これは逆に問題をはぐらかしているようにも見え、印象が悪くなります。ただ、だからといって一律に細目を規定して、各社の姿勢の違いが分かりづらくなるということは、実際にマネジメント姿勢まで評価して、長期アクティブ投資しようとする投資家にとっては解決にはならないという難しさがあります。

 なので、ここは任意でKAMについて監査役等の検討の説明があるといいのではないかと思います。

 そして、デュアルレポーティングについてですが、これはコーポレートガバナンス・コードの4―13③に対して、コンプライしている場合でもエクスプレインしている場合でも、役割、プロセスを図で説明するだけではなくて、記述形式で説明したほうが明瞭で分かりやすいと思います。これは事務局説明資料の31ページに不二製油グループ本社株式会社の例がありましたが、こういった例がいい例だと思います。

 最後に政策保有株式ですが、まず、政策保有株式の考え方です。これはまず「自社の自由意思で売却できないリスク資産を保有していること」ですから、マネジメント放棄という問題。また、リスク発現の際に損失を吸収するのは株主資本になります。したがって、政策保有株式によって、株主資本コストは上昇します。これは事務局参考資料の33ページにエビデンスとなるような情報が載っています。

 そうした状態の放置というのは、当該企業の一般株主との利益相反に当たると思います。また、取引関係の維持強化のために、政策保有株先企業の議決権行使については、会社提案に賛成するという暗黙の了解があるとすれば、政策保有株先企業の一般株主との利益相反が生じていることにもなります。

 ということで合理的な保有理由というのを説明するのは非常に難しいはずです。ただ、例外的に特殊な調達ルートを確保するとかという目的のために、業務資本提携を必要とする場合も考えられます。その場合には株式保有に関し、どのような合意があるのか、「経営上の重要な契約等」の欄に記載すべきだと思います。

 また、このような業務資本提携がある場合に、純投資的な議決権行使方針を説明するということは、むしろ矛盾があると思います。そして、純投資についても少し触れます。

 政策保有株式の縮減を議題にしたエンゲージメントをこれまでしてきていますが、売却を加速していただいた企業が多いです。ただ一方で、純投資への区分変更や、特定投資株式として売却した株数と全く同じ株数をみなし保有株式で新たに保有しているケースもあります。これは本末転倒だと思います。みなし保有株式は年金資産の一部ですから、年金資産がその本来の目的から逸脱していびつになっているということは明白です。

 こうしたことを踏まえて、純投資区分には別途、次のような開示を求めることを提案します。なぜならば、株主から預託された内部留保を使った運用であるからです。株主は本業への投資をしてほしいのに、内部留保を本業ではない使途に充てているということを知って、その内容を確認する必要があると思います。

 どんな開示かというと5つあります。投資目的、投資目標、パフォーマンス実績、パフォーマンス分析、リスク管理です。こういうことができてなくて、純投資をするということはあり得ないと考えます。

 最後にその他ですが、今後の議題になるのかもしれませんが、「経営上の重要な契約等」は、現在記載がない場合が非常に多いです。ですから、この項目が機能していないという感じです。なのでこれが1つ。

 もう1つ、コーポレートガバナンス・コードの5―2①、4―2②に関連して、経済産業省のほうで策定された事業再編実務指針では、少なくとも年1回の事業ポートフォリオに関する基本方針の見直しを、取締役会に求めています。そして、有価証券報告書での開示を促しています。これについてもぜひ議論がされるといいと思っています。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、近江委員、どうぞ、お願いいたします。

【近江委員】

御指名ありがとうございます。近江です。私からは主に委員会と政策保有株式について意見を述べさせていただきます。

 今まで、前回ワーキング・グループの観点を踏まえまして、委員会に関しての開示情報が増加しておりますけれども、今まで他の委員の方々からの発言もありましたとおり、開示の質についてはまちまちであるというのが現状でして、今回御説明いただきました事務局説明資料17、18ページにまとめられているとおりだと、認識してございます。

 特にその権限、役割についての記載が具体的でない場合がまだ非常に多いということであったり、指名委員会における審議対象者の範囲の記載が不明瞭、あるいはその報酬委員会において、報酬決定の権限であるとか対象者、個別の報酬も含まれるのかなどが全く明確にされてないという場合も散見されるということで、まだ情報開示はまちまちということだと思っています。

 委員会の運営状況についても開催状況が記載されてなく、実効性について把握できない場合もまだ多いという状況を踏まえまして、やはりこの御提案どおり、取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況の記載欄を設けて、委員会における具体的な「検討事項」、「開催頻度」、「出席状況」といった説明を求めることにもちろん異論はありません。

 このときに欧米の事例のように、指名委員会・報酬委員会が、委員会としてオーナーシップを持って検討事項や成果などについて説明を行うということが重要であると考えておりまして、これにより透明性が増すと考えております。

 ですので、その記載欄におきましては、委員長でなかったとしても委員会による活動状況の説明という形で、具体的な説明を求めることができないかというところが1つ御提案でございます。

 任意の開示につきましては、やはり有価証券報告書に対しても記載するということが重要だと考えてございますので、ここは任意の開示だけに任せることはなく、重要なところはこの有価証券報告書にも記載ということが望ましいと、そのように考えております。

 政策保有株式ですけれども、ここはいろいろな説明の巧拙というところよりも、本来的に政策保有株式が必要なのかということが真摯に検討、説明されるべきだということですけれども、先ほどからもいろいろ御意見ありましたとおり、合理的な説明というのは非常に難しいと我々も認識しているということでして、ほとんどの場合において、保有に関しては十分納得できる説明がなされない、なされていないと、弊社の運用担当者も含めて受け止めているということであります。

 特に取引関係強化を目的とした保有においては、そもそも利益相反関係が疑われますし、政策保有が取引を得るための条件に使われているため、削減できないという説明も度々聞くこともあるということで、公平な競争が妨げられているという、そのような不利益も懸念されると、社会全体としての便益にも資さないと考えます。

 また、政策保有株式の削減の一方で、これが純投資に振り替えられる場合も散見されますけれども、これは削減に向けた一時的な状況である場合もあります。そうなのか否かの説明がないために理解できない場合があるということで、政策保有から純投資に区分が変更されると、透明性が格段に落ちてしまうということもありますので、純投資に関しましても、保有期間が長期にわたる場合とか、多寡の場合に一定の水準を設けて個別の開示を求める必要があるのではないかと考えますし、また純投資に区分変更した場合にも、その説明というものを求めるということも必要なのではないかと考えております。

 政策保有株式に関するエンゲージメントの中では、特に議決権行使において、実際に営業担当のところに議決権行使の判断の権限があるという、そのような説明が起きる場合も多いということも踏まえまして、議決権行使の基準に加えまして、これは少し難しいかもしれませんが、例えば議決権行使判断自体についての開示というものも、ある程度望まれるのではないかと、そのように考えております。

 議題事項以外にはなりますけれども、例えば役員報酬に関しまして、その報酬システムだとか決定過程の開示が進んだということは高く評価しておりますけれども、透明性の面からはまだ不十分であると考えておりまして、少なくとも代表取締役については、評価の透明性の観点からも、個別の開示というものがなされるべきでないかと考えてございます。

 特に過去数年にわたって、成果に報いる報酬設定が進んできて、役員の報酬額も全体として増加傾向にあるということでありますので、透明性をさらにこの一段向上するという意味では、個別開示というものに対しての取組みというものも期待しているところであります。

 私から以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作委員】

御指名ありがとうございます。神作でございます。2点申し上げます。

 1点目は、40ページの取締役会、指名委員会・報酬委員会、それぞれの活動状況の記載欄を設けてはどうかという御提案についてです。開示すべき事項として、現行法の下でも、例えば第二号様式の場合には、記載上の注意(54)において、法定の機関及び会社が任意に設置する委員会、その他これに類するものの概要として、その名称、目的、権限及び構成員の氏名(社外取締役、社外監査役である場合にはその旨の記載)等が求められています。

 また、御説明にもございましたように、監査役会等につきましては、既に活動状況についての開示が求められています。監査役会等以外の機関や委員会につきましても、活動状況の欄を設けて、少なくとも「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」を記載事項とし、具体的な活動状況を開示することに賛成いたします。

 2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの再改訂において、取締役会の監督機能を発揮するために極めて重要な事項である指名と報酬に関して検討を行う法定または任意の指名委員会及び報酬委員会等の設置を求め、その適切な関与、助言を得るということを、ベストプラクティスとして提示しています。

 そのようなこともあり、これらの委員会等の活動の実態に関する情報提供は、コーポレート・ガバナンスの評価、ひいては投資者の投資判断にとって、有益な情報であると考えられるからです。

 将来的には、さらに開示すべき情報の範囲を拡大することが考えられると思いますけれども、コーポレートガバナンスの要である取締役会と、各種の委員会等との関係や連携の状況、それから、各種委員会相互の関係や連携の状況、さらには、委員会の決定がもし取締役会等によって覆されたようなときには、その旨やその理由、また、委員会等が外部コンサルタントなどを利用したときには、その旨及びその概要などなど、将来的には、開示していただく項目を増やすことも検討に値すると思います。けれども、差し当たりは御提案にあるような「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」を記載事項として、少しでも取締役会及び委員会等の活動状況の実態についての情報提供を進めていただくことが期待されます。

 2点目として、41ページの政策保有株式等に関する開示事項について、意見を申し上げます。

 政策保有株式規制の在り方については、株主資本コストと、それから安定株主の構築、この2つの面から主に政策保有株式が問題になっていると理解しています。特に、株主資本コストについては、株主資本コストを下回る収益しか期待できないような政策保有株式を削減させるべきであると考えられ、この点については、機関投資家との対話の重要な論点の1つになっていると思います。

 機関投資家のスチュワードシップ活動、とりわけ投資先企業との対話において、株主資本コストの観点から、正当化できる政策保有株式であるかどうかということを、建設的に議論するための情報が提供されることが望ましいと思われます。

 そのような観点から、スライドに掲げられている具体的な開示事項である業務提携等を行っている場合には、その説明ですとか政策保有株式についての議決権行使の基準について説明することは有益であると思われます。

 政策保有株式についての情報提供が不足しているため、特に政策保有株式については事業機密との関係で、情報開示が進んでいない場合が多いと理解しておりますけれども、このように情報が不足している状況の下では、株主資本コストの観点から、当該政策保有株式の保有の是非を判断できないということになり、そのような場合には、機関投資家としては政策保有株式の削減を一律に求めるという傾向になるのもやむを得ないところではないかと思われます。

 そのような観点からもぜひ開示を進めていただき、建設的な対話の俎上に上げていただき、合理的な議論がなされることを期待しております。

 最後に、純投資目的の株式についても、重要性がある場合には、一定の開示を求めるべきという御意見は、株主資本コストを下回る収益しか期待できない株式保有かどうかということは、政策保有株式であるかどうかに関わりなく、純投資の場合にも当然妥当すると考えられます。

 したがって、重要なものに限り、純投資目的の株式についても、一定の開示を求めるということは十分に考えられると思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】

ありがとうございます。藤村です。よろしくお願いいたします。私からは取締役会、委員会の活動状況、あと政策保有株式について申し上げたいと思います。

 まず、取締役会、各委員会の活動状況につきましては、これを開示していくという方向性には違和感はございません。当然株主からの負託を受けて取締役会、委員会が活動しているわけなので、投資家の皆さんに透明性を持って説明するというのは極めて重要だと考えております。事務局説明資料に記載の3項目についても、例えば当社も含め多くの企業は既に開示しているところだと思いますので、違和感はありません。

 一方で、さらにこの3項目以外についても順次開示項目を拡大していくという方針、そういった御意見もありましたけども、この辺は投資家の皆さんと若干意見が異なるところでありますが、開示媒体について様々な開示媒体で開示することの負担とか非効率性、さらに法定開示とすることによる一定のデメリットですね。特に開示企業側の開示の萎縮とか自由度の低下、そういったことに鑑みるとやはり任意開示の取組み、活用を受け止めることができるような枠組みと事務局説明資料に書いていただいていますけども、そういったことを整理することが望ましいのではないかなと思います。

 少し具体的に申し上げますと、有価証券報告書での開示となりますと企業のほうでは各媒体で開示内容を変えるということが難しくなっていくので、有価証券報告書が他の媒体での開示のベンチマークというか模範回答になってきます。

 当然有価証券報告書と他の開示、他の開示をいい加減にするというわけではございませんけども、やはり法定開示と任意開示では性質が異なるので、有価証券報告書での開示については、企業側はより慎重になって任意での開示が特に充実しているところは、むしろその開示の萎縮とか自由度の低下というものを招くのではないかなと考えます。

 次に、政策保有株式につきましても、開示のレベル感にもよりますけども、対外的に説明を尽くすという点で開示することについて、違和感はございません。既に有価証券報告書上で保有目的は開示を求められておりますし、業務提携していれば、機密保持の観点とかそういった法的な制約を除いて、その内容を当然に開示していくべきものと思われます。

 議決権行使の基準につきましても、こちらの開示を促す方向性には違和感はございません。ただ、取締役会のところで申し上げたように、任意開示の取組みを活用できるような枠組みを整理するというのが望ましいと考えます。

 最後に純投資のところですが、これはそもそも短期的に売却の可能性のある純投資目的の銘柄をそこまで詳細に開示をする必要が本当にあるのかというのが若干疑問に思っています。むしろこの開示拡充の意図は、政策保有株式に分類されるべきものが純投資に分類されてしまうところを懸念しているということだと理解しております。

 そういう意味では、企業によっては、適切に分類が行われてない企業もあるのだと思うのですけども、そこに合わせて適切に分類している多くの企業が不必要な開示を求められるというのは非効率なのではないかなと。むしろ政策保有株式や純投資目的株式の定義、金融庁のほうから出てはおりますけども、より具体的な定義があったほうがいいのではないかなと。比較的今の定義だと各社の判断の余地があるので、これが減るような定義に変更するとか、もしくは政策保有株式、純投資に分類される例示を多く示すということで、隠れ政策保有株式みたいのを無くしていくということが必要なのではないかなと思います。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、黒沼委員、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】

黒沼です。私からは1点、第一の御提案について意見を述べたいと思います。

 取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況の開示ですけれども、前回ワーキング・グループを受けた府令改正で、監査役会等の活動状況の開示が求められたということ、コーポレート・ガバナンス報告書において、取締役会や指名委員会・報酬委員会の活動状況に関する記載が進展してきているということ、さらに、今日御紹介があったように、投資家の御意見などを考慮しますと、やはり最低限、「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」の記載を求めるべきだと考えます。それに加えて、井口委員が言われたように、前年度の具体的な検討事項の記載も求めるべきではないかと感じました。

 さらに、既に委員会の目的や権限については記載事項に入っておりますけれども、それらの記載だけでは、実際に、当該委員会がどのような権限を発揮しているのか、あるいは役割を果たしているのかということが分かりにくいのであるとすれば、具体的な実際上の役割についても、他社との比較可能な形で有価証券報告書に記載させることが重要なのではないかと考えます。

 これでもイギリスの年次報告書における記載事項などと比べますと、かなり見劣りはするのですけれども、その点については、最低限記載すべき事項以外についても、有価証券報告書に任意に記載することを認め、また、コーポレート・ガバナンス報告書を参照するということで補っていけばいいのではないかと考えます。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に清原委員、どうぞお願いいたします。

【清原委員】

ありがとうございます。

 40ページのところの最初の取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況ですが、こちらについて、私も記載欄を設けて記載を求めていくことについて賛成であります。ただ、取締役会の活動状況と申しますと、非常に広い範囲のものをカバーし得るものとなります。ということで、今回の提案のところで、「まずは「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」を記載事項としつつ」と、小さく始めようとされている御提案のようですけども、私は、これはアプローチを少し変えたほうがいいのではないかと考えています。ここでは、せっかく取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動、そういった開示を求めるのですから、何のための開示かということをより明確にしたほうがいいのではないかと。言い換えると、投資家のほうから見たときに、職責をしっかり果たせているのか、そういった意味で、機能を果たせているかということを知る端緒となるものであり、ここの透明性を高めるということが投資家サイドとしての期待ですが、開示書類を作成する側としても、何のためなのかということが分からないと、このぐらいから始めようということになりかねないので、そこのところを明確にした上で、目的をはっきりとさせた上で、開示項目というのを考えていくと良いのではないかと考える次第です。

 機能を果たせているか、職責を果たせているかという観点からすれば、「開催頻度」、「主な検討事項」、「出席状況」、これだけではやはり足りなくて、取締役会、指名委員会・報酬委員会は、その実効性を強化したりしておられるところがあるわけですから、どのように実効性を果たしているか、機能しているか、という評価のところの開示まで、むしろ踏み込んでいくことができるような、そういった開示制度に進んでいくことがより望ましいのではないかと思います。

 今回、事務局参考資料11ページに、大手電機メーカーの実効性評価の開示例が挙げられていますが、この企業ではないのですけれども、有価証券報告書に実効性評価のことを記載している企業も日本の上場企業でありますので、不可能ではないと思います。そして、実効性を考えたりする上で、先ほどから、委員の御意見がありますように、任意の指名委員会・報酬委員会、そちらに関しては、どういう権限を持っているか、どういう役割を果たしているか、そこのところが明確でないということがあるので、そういった意味で言うと、実際の活動の内容というのは、もともとある権限、役割、言ってみると「型」といいますか、枠組みといいますか、そういったものと、それから活動の状況という実情・実質面と、そういった形式面と実質面と言ってもいいかもしれません、そういう両面が開示される、そういった仕組みを考えていくことが本来は望ましいのではないかと。

 その観点で、「開催頻度」は、これも必要ですけれども、事務局資料に挙げられている開示例の中にも商社の例がありましたけれども、そちらのところでは議題が上がっているとか、それからいつ開催されて、例えば任意の委員会であれば、その開催の時に何の項目が討議された、報酬、指名の何が討議されたということをコーポレート・ガバナンス報告書で開示している例もありますので、そういう意味でいうと、頻度というよりは、むしろどういったものを審議したか、検討したかということが重要なのではないかと。

 次に、「主な検討事項」という言葉ですけれども、これは監査役会の活動状況の時には、恐らくKAMを念頭に置いていて、こういう開示項目とするのが適切ということで判断されたのだろうと思うのですが、取締役会ですとか指名委員会・報酬委員会の場合には、検討したというだけではなくて、それがどうインプリメント、実施されているかということがあるので、「検討事項」という表現は見直したほうがいいのではないか。例えば「主な活動内容」とした上で、その中に、検討された主な事項ですとか施策ですとか、内項目がもう少し入ってくるような、そういったことを考えていくことが適切ではないかと考えるところであります。

 それから、次の監査に対する信頼性、こちらの関係でございます。現状、監査役会等の活動状況の中で、「主な検討事項」というものが入ってきているのですが、実際の開示内容を見ていった時には、検討した項目は概括的には記載されているけれども、ではどうなのかという具体的なところ、まさに知りたいというところがなかなか開示されてない状況にあると。言ってみれば、寸止めという言葉がいいのか、ラストワンマイルの問題というのがいいか、はあるのですけども、あと一歩、本当は踏み込んだ記述というのが、本来、読み手、利用者側からすると期待されるところであるのに、そこに届ききれていない実状があると思われます。ここの点も、そこでの開示を通じて、何をなさんとしているかということがより明確になってくれば、監査役等としても、求められているものに対して、書ける範囲ではこうだということがよりはっきりしてくるだろうと。

 利用者側からすると、監査役会が判断しているところ、考えていることと、仮に経営陣や監査人の考え方との間で相違があるのかどうか、検討した時にそれは結論が同じなのか、それとも異なる意見があったのか、そういったところがより分かるような、そういったところが求められていると思われるので、その表現のところはあるかとは思うのですけれども、これから開示項目について具体的に詰めていく上で、監査役等に期待される内容というものがより明確になった形で、開示項目、そして、記載上の注意などのインストラクション、ガイダンスというものが定められていくとよろしいのではないかと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。 それでは、次に小林委員、どうぞお願いいたします。

【小林委員】

小林です。私は、実際に取締役会に関わる側の視点で、それぞれの事項についてコメントをしたいと思います。

 まず、取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況に関しまして、御説明いただいた点に特に違和感はありません。一方で、実際には、ここに書かれているようなことは、取締役会、委員会でかなり既に行われているので、むしろ何を投資家の方々に伝えるのかということが重要だと思います。その意味では、単純に回数ですとか、その時のテーマということではなくて、その年次に応じて主要な課題というのがあると思いますので、そういうことを前広に書くような方向の開示にしていく必要があるのではないかと思います。あまり細部までいろいろなことを形式的にしてしまいますと、むしろ形式だけの開示になってしまいますので、プラスアルファで本年度の主要な検討項目というようなことでもよいのではないかと思います。ですから、毎回のテーマを個別に書くということにこだわる必要はないと思います。

 それから、監査に対する信頼性の確保ですが、ここに書かれている3点は現実に、取締役会を行うに当たって、まさにこういった点が実行されていることを取締役としても知る必要があり、監査役会、会計監査人の意見を聞いておりますので、こうした内容についての開示について違和感はございません。

一方で、政策保有株式ですが、これはなかなか難しいと現場では感じております。というのは、一応、金融庁の定義はありますけれども、その定義には曖昧な部分があるため、それぞれの企業がどういう解釈で区分をしているかによって、実は見え方が違ってしまっている可能性があります。先ほどどなたかおっしゃられました、もう少し明確な定義を行った方がいいのではないかということもありますが、あるいは、各企業がどういう基準でしているのか、純投資と政策保有株式というのをどのように分けているのかということの説明を求めるというやり方もあるのではないかと思います。

 また、業務提携、取引関係による株式保有ということがすなわち「議決権行使については何でも賛成する」と受けとられてしまいがちですが、保有している限りはその保有意義に沿って発言権、議決権を行使したいと思っていらっしゃる企業も多いと思います。むしろそうした保有意義や議決権行使に関して取締役会でどういう議論がされているのかということを開示してもらうという考え方もあるのではないかと思います。

 最後の点ですが、有価証券報告書と任意の開示の参照については、有価証券報告書に記載をしたとしても、実際に各企業の統合報告書等を見ていますと、有価証券報告書で書いてあることに加えて、例えば取締役とのインタビューですとか監査委員長とのインタビューですとか、より生の声と企業の状況が伝わってきます。ですから、全てを有価証券報告書で網羅するのではなくて、私は任意の開示の参照というのもあってもよいのではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。 それでは、次に、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】

佐々木でございます。御指名ありがとうございます。

 私からは数点お話したいと思いますけれども、まず、KAMに関する監査役の検討の説明の関係でございますけれども、会社法上、監査役はKAMのつながりも含めて、会計監査人と意見の擦り合わせをするということになっていると思います。意見形成のプロセスの中で、十分そういう擦り合わせがされていると思いますので、さらに、ここで説明をするという必要性がどこまであるのかということについては、少し疑問に思ってございます。ただ、監査人と、例えば考えが違う場合は、確実にきちんと説明すべきだと考えてございます。

 それから、政策保有株式の関係でございますけれども、業務提携を行っている場合の説明ということに関してですけれども、いろいろな形で業務提携等を検討している段階、あるいは、もう検討が終わって実施される段階、いろいろなステージがあると思います。当然、実施をして、適時開示を行っていますということであれば、それに沿った形での開示、説明というのは可能だと思いますけれども、一方で、まだ検討段階である場合は、ここは相手方との守秘の問題、あるいは機密に抵触するということでございますので、なかなか実際に開示できる情報というのは多くはない、限定的にならざるを得ないのかと考えています。

 最後ですけれども、今日のテーマ、取締役会から純投資のところまでいろいろございましたけれども、基本的には、これらのことについては、これまで、ここ数年の間にかなり開示そのものが充実してきたのではないかと思っています。その分、いわゆる有価証券報告書の作成者の負担はかなり増えてきているということを、まず御理解いただきたいと思ってございます。

 その上で、さらに開示を促す必要があるという前提に立てば、まず、開示そのものの目的を明確化するというところが我々にとっても非常に重要かと思います。そうでなければ、皆さん何人かの方がおっしゃいましたけど、どうしても形式的にならざるを得ないと。とりあえず法定開示だから、それに従おうということで、作成者側も、投資家側にとっても、結果的に良くないということになる。そういうおそれがありますので、目的の明確化が必要であるかと思います。

 それから、もう1つは、上場企業数は4,000社程度ありますので、これもいろいろな規模の企業がございます。そこを十分に勘案していただいて、慎重に検討をしていただきたいと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。 それでは、次に上田委員、どうぞお願いいたします。

【上田委員】

上田でございます。御指名ありがとうございます。私からは大きく2点、そして、全体的なところで1点申し上げたいと思います。

 まさに今、佐々木委員からもございましたけれども、この数年で、この分野の開示は相当進んできていると思っております。好事例を見ていましても、進んだ開示を有価証券報告書の中でされている企業が増えていると。ただ、一方で、有価証券報告書は単なる法定開示であるということで、白黒の定型的なことしか書かない企業もあれば、他方で、ルール作成側が望んでいるよりも、充実したより高いレベルの開示のチャレンジをされようとしている企業もあり、二極化が進んできていると思います。

 その上で、まず、「ご議論いただきたい事項」の第1点目のガバナンスの様々な組織の活動状況についてでございます。まず、御提案いただいている、活動の記載欄については、これは私も賛成でございます。さらに言いますと、事務局説明資料13ページのほうにございました、コーポレート・ガバナンス報告書のほうで開示を求めるということであったにもかかわらず、先ほど井口委員からもありましたけれども、かなり数字として低いということでございます。ここについては、ぜひ、有価証券報告書以前の問題として、まずはコーポレート・ガバナンス報告書において、より詳細な数字を出していただきたい。さらに、有価証券報告書を含めて両方とも開示をしていただきたいと考えます。ここでは監査委員会、あるいは監査役会等の開示というものが、既に実務も定着していますので、その同レベル以上のものは期待されるということに感じております。

 続きまして、政策保有株式でございます。政策保有株式は、私はかなり早い段階から問題があると思って、ウォッチしてきたのですけれども、まず、政策保有株式というのが、「保有の目的等」という項目になっているかと思うのですが、これはコーポレートガバナンス・コードのほうでは「縮減の方針」とされています。基本的に政策保有株式は持たざるものと、縮減する方向にあるものということで、例外的に保有をするという考え方で整理がされているかと思います。したがって、有価証券報告書において開示される政策保有株式というものは、例外的な保有であり、基本的には保有してはいけない、縮減される方向にある中で、例外的にその時点において保有し続けているものであると、こういう大前提に立つ必要があるかと思いますし、したがって、保有という前提に立つと、保有してもいいのかと、開示すればいいのかということではないのだということを、まず、これはしっかりと定着、認識してもらう必要があるかと思っております。

 その上で、例外的に保有をしている場合については、業務提携等がある場合はもちろんなのですが、つまり逆に言うと、これぐらい限定的な場合で、事業の具体的内容をきちんと説明できる場合の例外的保有が認められるという、これぐらい限定的なものであるという方向で進めていければと思っております。ですから、具体的説明ができない保有というのは、そもそも保有していいのかといったところ、コーポレートガバナンス・コードで言うところの縮減に組み込まれるべきカテゴリーに入るのではないかと考えます。

 さらに、定量的な保有の効果のところですが、これは取締役会等で政策保有株式についてどのように議論されているのか、あるいはされていないのかについて、報告されることが求められます。議決権行使については小林委員からも、取締役会での議論というお言葉がありましたけれども、保有についても含めて、取締役会のイシューとしてしっかりと議論したか、していないか、したとしたらどういう議論をしたかということを開示していただければと思っております。

 もう1つ、純投資との区分です。売却予定ということで純投資に移されているような場合は正しい制度の使い方ですが、そうではなくて、純投資の中に政策保有目的のものがずっと入っているということもあるかと思います。したがって、そもそも純投資との区分というところが開示上の分類として必要なのでしょうか。他社株保有ということで全体をまとめて、その中で政策保有株式については説明するということで、つまり他社株そのものを持つことについて透明性が求められます。純投資で他社株を持つというのは、政策保有よりももっと意味のない資産の利用になるわけですので、その辺りの整理も必要なのではないかと思います。

 また、現在は60銘柄の開示になっているかと思いますが、これは以前、有価証券明細表で全部開示がされていたということです。場合によっては、私は透明性を高めるということであれば、他社株については全て開示をする、その中で政策保有株式については、特に重要なものについての詳しい説明を求める。そういう制度を全部見直すということもあってもいいぐらいのところだと思っております。

 最後の任意の開示のところになりますが、今はコーポレート・ガバナンス報告書、これは任意開示というよりも、取引所規則、コードに基づく取引所の開示かと思っていますが、これを有価証券報告書に組み込む、それを参照方式なのか、あるいはアペンディックスなのか、あるいは、EDINET等で一緒に検索できるような仕組みにできないかと思っております。そうしていただけると、1つのプラットフォームにあらゆる情報が載ると思いました。今のコーポレート・ガバナンス報告書はコーポレートガバナンス・コードの対応状況の開示ということですが、基本的には日本のガバナンスのベストプラクティスを提供しているのはコーポレートガバナンス・コードですので、これが有価証券報告書上も参照できるような形になるとすごく良いと思いました。

 これに関連して、各国では委員会の報告という形で、委員長による開示ということで活動報告等をしています。日本は、企業は法定のファイリング文書として、間違いのない立派な作文になっています。しかし、そこで、各委員会の自主的な開示、あるいは、議長等の開示等があることで、とても実効的な説明というものが得られるかと思います。こういった工夫、ただの報告書ではなくて、顔の見える人物が報告しているというところを明確にするというのも1つの方策として、海外で採用されているものですので、こういったものの検討も今後、進むといいなと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。 それでは、次に、松元委員、どうぞお願いいたします。

【松元委員】

ありがとうございます。松元でございます。

 今回、事務局から御提案いただきました内容、全体的に賛成でございます。その上で、1点、デュアルレポーティングについて、一言コメント差し上げたいと思います。「ご議論いただきたい事項」のデュアルレポーティングの有無を含む監査の実効性の説明という箇所ですが、デュアルレポーティングをやっているかどうかということの有無について開示をするというのは、ぜひ進めていただきたいと思っています。

 さらに、内部監査部門がレポーティングをする先という問題を超えて、もう一歩踏み込むとすれば、内部監査部門の指揮監督権限が誰にあるかということが本質的には重要なことですので、もしもう一歩踏み込めるのであれば、好事例としては、指揮監督権限がどこにあるかも書くということは良いことだと思っております。と申しますのは、事務局説明資料30ページにもありますように、現状、内部監査部門は代表取締役社長とかCEOに直属していて、指揮監督権限はそこにあるというケースがすごく多いと思います。他方で、大規模な不祥事になればなるほど、代表取締役社長等も絡んでいるというか、当事者になっているような不祥事というものもあるわけで、そうすると内部監査部門が代表取締役社長の直属だと、こういった場合にほとんど役に立たないということが長く懸念されているわけです。

 海外では内部監査部門は監査委員会に直属にしているという例もあるわけでして、監査をより強化するという意味では、本来であれば監査委員会とか監査等委員会とか、取締役会の中でも、そういう監査とかコンプライアンスを担当する取締役に指揮監督権限を与えるということのほうが、望ましいのではないかという感じがしております。

 ただ、他方で、実情としては、内部監査部門は社長の直属だからこそ上手く動けるのだという話も聞きますので、そういう文化を前提にすると、理屈だけあまり言っても、かえって混乱させてしまうかもしれないと思いますので、最低限、デュアルレポーティングをやっているかどうかについては開示していただいて、その上で、可能であれば、指揮監督権限がどこにあるかについても開示の方向で考えていただければ、この点についての問題意識の共有というか、開示をするということを通じて、こういった意識が高まっていけばいいかと思いますので、ぜひこの点は積極的に進めていただくといいのではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。 それでは、続きまして、永沢委員、どうぞお願いいたします。

【永沢委員】

永沢でございます。私からも1点、「ご議論いただきたい事項」の第1点目について、意見を述べさせていただきたいと思います。

 私も取締役会や指名委員会・報酬委員会の設置がある場合には、そうした委員会の活動状況について記載欄を設けて、そして、ここに記載されているような「開催頻度」、「主な検討事項」、「各構成メンバーの出席状況」といったことの開示を義務づけることについては賛成です。開示することの負担は、さして大きくないと思いますし、開示をしない理由が見当たりません。

 近年、社外取締役といいますか、独立取締役を起用するという動きは、政府からの働きかけもあり、流れとしてあるわけですけれども、取締役会が形骸化してしまうのではないか、お友達取締役会になるのではないかというのが、株主からすると1つ懸念されるところで、そういったところから経営トップの専横を許してしまう素地がないわけでもないということも懸念としてあります。こういった情報を開示することによって、株主や市場からのチェックが入るということで、社外取締役、独立取締役には緊張を持って臨んでいただくということが期待されると考えることから、こうした情報は開示されていくべきだと思います。

 私自身も、ある企業の社外取締役を務めておりますけれども、こういったデータが開示されることで、自分は株主から負託を受けているということで緊張を持って臨んでおると実感しております。良い意味での緊張作用が働きますので、こういった情報は開示していくことが望ましいと自分の経験を踏まえても、そう思います。

 それから、企業は人で成り立っているということ、言うまでもないことですけれども、指名委員会の役割というものが大変重要であるということを、現在、社外取締役として関わっている事案を通じて、痛切に感じているところでございます。指名委員会の活動を、どのように株主の皆様や市場に対して説明していくのかというところは、なかなか難しいところがあることは確かですが、難しいからできないのではなく、どうしたら指名委員会が実効性のある高い活動ができるのかというところについて、ここは切り離して議論をしていただいてもいいのではないかと思っておりますし、そういう立場にあるものとしては、こういった場で参考となる方向性を示していただけると大変ありがたいと感じているところです。

 最後に、有価証券報告書での開示を義務付けると、開示情報がつまらないものになってしまうのではないかという御意見が出ておりました。私も、そうとは思いますが、有価証券報告書で開示されることによって最低限開示されるべきこと、正確に開示されるということが担保されると思いますので、そこは確保しつつ、企業の創意工夫をしようという姿勢が引き出せるような枠組みというのを考えていく必要が私もあると思います。

 簡単ではございますが、私からの意見でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に中野委員、どうぞお願いいたします。

【中野委員】

中野です。これまでの議論を踏まえていない部分もあるかと思うのですけれども、3点、意見を申し上げたいと存じます。

 まず、「ご議論いただきたい事項」の取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況についてですけれども、先ほど上田委員が指摘されていましたが、私も事務局資料13ページのデータを拝見しまして、やや驚きました。当該開示は比較的行われている印象を持っていたのですが、特に私が驚いたのは調査対象がTOPIX100という点です。それで、この数値にとどまっているということですので、有価証券報告書において、「開催頻度」、「主な検討事項」および「出席状況」の開示を求めることにつきまして賛成します。

 また、「ご議論いただきたい事項」の40ページの一番下の「任意開示等を参照することにより総覧性を確保する」という点については、以前、法的な問題をはらんでいるという議論もあったところだとは存じますが、その点に配慮しつつ、総覧性の確保を目指していく方針に賛成します。

 2点目として監査に対する信頼性の確保についてですけども、デュアルレポーティングの有無を含む監査の実効性について、監査役等の視点からの説明について、私も賛成します。

 特に私からは、KAMについての監査役等の説明、これは強く求めたいと思います。私の専門の立場からもKAMを分析したり、またKAMの実態分析を目にすることがありますが、私は、KAMは有用だと考えています。同じ主題について、異なる主体が異なる角度から記載する点が有用だと考えていまして、加えて、監査役等の観点から記載することによって情報の信頼性および有用性とも向上するのではないかと考えますので、ぜひこの点は進めていただきたいと存じます。

 最後に、3点目は政策保有株式等についてです。まず政策保有株式の開示の改善については賛成するところですけれども、加えて、重要性を考慮しつつ純投資の開示を行うことについても賛成します。

 理由は2点あります。まず、1点目は、今日も御議論がございましたとおり、政策保有株式と純投資の区分が不分明ということですから、純投資を含めて開示するのが最も明瞭性を高めます。もう1点は、私が強調したい点ですけれども、2013年までは親会社単体ベースでは「有価証券明細表」が開示されていたわけです。「開示の簡素化」のため同開示は行われなくなったのですが、私は、有価証券報告書における開示の簡素化の議論では制度改定の経緯を踏まえた検討が必要と考えています。戦後以来、有価証券報告書は親会社単体ベースに作成されてきたものの、2000年代以降、連結企業集団中心に変革されてきているわけですけれども、ディスクロージャーについては必ずしも連結ベースに移行しきれていない部分が残っており、「有価証券明細表」はその積み残しの部分だと、私は捉えています。これはもともと有価証券報告書で開示されてきたものの、戦後以来の親会社単体ベースの「有価証券明細表」は連結の時代には合わなくなったということですので、これを連結ベースの開示に移行するというあり方が本筋ではないかと考えているところであります。

 以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。多くの委員の皆様方から御意見をいただきました。あと、御意見をいただいていないのは、熊谷委員と田代委員ですけれども、もし御意見があれば承りたいと思います。熊谷委員、いかがでしょうか。

【熊谷委員】

ありがとうございます。今日はガバナンス関係の情報、3つということで、既にもう多くの皆様が御指摘になっていることが多いのですけれども、基本的に、ここの「ご議論いただきたい事項」に載っておりますような開示というのは、私も全面的に賛成するところであります。

 幾つか気になった点と、あと、自分自身重要かと思っている点について申し上げます。まず、取締役会と指名委員会・報酬委員会との活動状況ということでございますけれども、これも、ここで提案されているようなことでいいと思っているのですが、1つ任意開示等を参照することということに関しまして、やや非常にテクニカルなお話で恐縮ですけれども、これも基本的に賛成しておりますが、有価証券報告書提出タイミングと任意開示の資料の開示タイミングというのが、通常は、ずれていると思います。このタイミングの差というのを、事務局の御提案ではどのように考えておられるのかということを1つ確認したいと思います。

 通常は有価証券報告書が先に出て、それから任意の開示の書類が出てくるということだと思うのですけれども、そうした時に、その参照先として、これから出てくる、近日中に出てくる任意開示の書類を参照してくださいという書きぶりになるのか、恐らく有価証券報告書が出ている時点で出ております任意の開示資料ということになると、前年度の開示資料ということになって、そこに記載されているのは、さらにその1年前の活動状況ということで、そこを参照にしてしまいますと、やや投資家に対してミスリーディングになるのではないかということを懸念しております。特にEDINET等でリンクを貼ってあるという時に、前年度の任意開示資料に飛んでいってしまいますと、今、申し上げたような前々年度の活動状況を見に行ってしまうということも懸念されますので、その辺りを、非常に技術的なことで恐縮でありますけれども、事務局の考えをお聞かせ願えたらと思っております。

 それから、井口委員のほうから政策保有株式に関しまして、この手の情報というのが株主総会の前に出てほしいという御意見があったと思いますが、全般として、今日、問題になっております、取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況、監査に対する信頼性確保、それから政策保有株式等全て、私は利用者といいますか、金融商品取引法の有価証券報告書は投資家に対する情報提供というのが第一目的になっているのですけれども、これらの情報の有用性ということを考えますと、株主総会前に有価証券報告書が出ているということが望ましいのではないかと考えておりまして、そういたしますと、こういう開示について考えれば考えるほど、有価証券報告書と事業報告書の一体化、あるいは一体的開示の議論というのは避けて通れなくなってくるのではないかと考えております。

 今回のディスクロージャーワーキング・グループというよりは、これは中長期的課題として、我が国の開示制度をどうするのかということを考えていく上で、引き続き、意識していくテーマなのではないかと思っている次第であります。

 それから、KAMにつきましても、今も中野先生のほうから違う角度で見ることには意味があるのではないかという御指摘がありましたけど、これは全く同感です。特に、これまで企業と投資家の建設的対話ということが随分言われてきておるわけで、そこは進んでいると思うのですが、投資家と企業統治責任者であります監査役等との対話というのはあまりなかったということを考えますと、投資家と監査役等との対話を促進させていくという意味でも、企業経営者との対話ほど頻度は高くなくてもよいと思うのですが、そういう対話の機会、契機をつくるという意味でも、監査に関するディスクロージャーというのは充実させていっていただきたいと思っています。

 それから、政策保有株式については、これも皆様と同様になりますけれども、政策保有、あるいは、株式持ち合いと言われるもの自体が、我が国の企業統治上、非常に大きな問題になってきたと認識しております。そういった意味では、提案されております業務提携等を行っている場合の説明ですとか、議決権行使基準の説明程度の開示というのは必要であると思います。それから純投資に関しましては、これも三瓶委員から御指摘があったと思いますが、そもそも機関投資家の場合、企業、投資先が純投資をするということは期待していない。むしろ、そういうお金があるのであれば、事業に投資して企業価値を高めていっていただくということを前提として投資しているはずでありますので、そういった意味では、純投資の株式についても機関投資家の、むしろ機関投資家のスチュワードシップの観点からも、開示を強化していっていただきたいと思っているところであります。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。 1点質問があったと思います。  

【廣川企業開示課長】

企業開示課長の廣川でございます。有価証券報告書と、それから、その他の報告書、任意報告書であったり、取引所の規則に基づくものであったりということで、その他の報告書等の開示のタイミングがずれるということについては、私どもも、まさにここは難しい問題であるなと考えておりまして、現時点で、具体的に、確定的には、まだ正直なところ申し上げて、絞り込めているわけではございませんで、参照というアイディアについてお伺いしたいという気持ちで今回は載せさせていただきました。

 過去のことは確定しているのだけども、将来のことは確定していない。そうすると、確定しているものについては確定的に書けるのですけれども、将来こうするつもりだと言っても、実際そうならなかった時にどうするか。作成者側からは、この不安がある。何月に出すつもりにしているのだけど、実際に出るかどうかというのは今、確定的には言えないところの不安。法定開示で何か書かなきゃいけない時に、将来の不確定なことを書くことに対するためらいがあるというのは本日の議論でも確認されたところだと思いますので、その難しさがある一方で、投資家の方からすると、できるだけ最新のことを知りたい。あるいは、逆に企業の方々からすると、今年努力した最新の成果を知ってもらうことがプラスになると、こういう面もあるかと思うので、ですから、そこをどのように埋めていくのがいいのか。参照先が、例えばですけれども、ウェブページであったとして、毎年、2019年度、2020年度、2021年度と1つのホームページの中でさらにリンクを飛ぶような形で、そこのホームページに行けば過去のものも見られるし、将来新しいものが出れば、その時点では見られるようになっているというのも1つの考え方なのかもしれませんが、そういったところも含めて、ここはいろいろな法的な観点の考え方に加えて、投資家のニーズ、それから作成者側のお考えなどもいろいろあるかと思いますので、実際に考えていく上では、幅広い御意見を伺いながら、どういうやり方がいいのか考えていくのがいいかと思ってございます。

 確定的な答えではなくて、申し訳ございません。

【神田座長】

熊谷委員、よろしゅうございますでしょうか。

【熊谷委員】

どうもありがとうございました。現時点での事務局の考え方、大変よく分かりました。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、田代委員、もし御意見があればお伺いしますが、いかがでしょう。

【田代委員】

私のほうからは2つだけありまして、1つは皆様の御意見と同じですけど、事務局説明資料13ページ目の開示の状況ですが、何でこんなに遅れてしまったのかというのが率直な感想としてあるので、こちらはいろいろまだ改善の余地があるのかと思いました。

 もう1つ、政策保有株式の件ですけども、当社の事情としてお話申し上げますと、政策保有株式というのはございまして、政策保有するかどうかという内輪の話ですけども、経済的にメイクセンスするかも含めまして、かなり議論をした結果、保有することになりますが、投資家の皆様からすると、本当にこれは意味があるものかという目で見られるのは当然だと思いますので、そういった意味では、こちらの御提案にあるように、業務提携を行っている説明もそうですけども、経済的な合理性があるかどうかというものと、あとは、ここにある議決権行使の基準をガバナンスの面からちゃんとフォローしているということについての開示が必要なのではないかと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、オブザーバーの皆様の中で、もし御発言ございましたら御発言いただきたいと思いますけれども、チャット欄に記入していただければありがたく思います。いかがでしょうか。

 それでは、日本公認会計士協会の小倉オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小倉オブザーバー】

発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。日本公認会計士協会、小倉でございます。

 監査に対する信頼性の確保の観点で、委員の方から御意見が幾つか出ておりました。特に外部監査人のKAMについての検討状況の説明というところも含めて、コメントさせていただきます。

 監査委員会、監査役会の活動は、信頼性確保の観点から非常に重要ですので、主な検討事項を開示するようになっておりますけれども、当期の重点監査項目を書いていただくことは非常に意味があるのではないかと思います。監査人のKAMというのは、我々が当期の監査で最も注意を払った事項ということで、それを書いているのですが、なぜこれを選んだのかということも含めて書いております。監査役会のほうも、なぜそれを選んだのかということも含めて、重点監査項目を書いていただくとより分かるのではないかと思います。その際に、KAMだけではなく、KAMに関して書いていただく必要性は、私はあまり感じておりませんが、20ページのイギリスの例にある財務諸表に関して、何か問題点を認識したのであれば、そういったことを書いていただく、それから事業等のリスクやESGに関して、労働問題、品質問題、範囲がいろいろございますので、そういったもの全般について、当期の重点監査項目というものを書いていただくほうが、意義があるのではないかと思います。

 KAM自体は、監査基準に従って我々が選定して考え方も出しているものですので、それに対して監査役会の検討を書いていただいて、投資家や財務諸表、有価証券報告書の利用者の方が、何かが分かるという情報になるのかというのは、私は少し懐疑的でございます。

 それから非財務情報について、当面は監査対象外ということだと理解をしております。財務諸表は監査が入っていても、不正が結構起きていますので、独立第三者が見ない情報がなぜ信頼される形で提供されているのかというあたりは、特にこれから監査役会、監査委員会のガバナンスの観点から、信頼性確保に貢献される分野ではないかと理解をしております。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、東京証券取引所の青オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【青オブザーバー】

東京証券取引所の青でございます。発言の機会を頂戴し、ありがとうございます。私からは、内容そのものではないのですが、今後、検討を進めるに当たりまして御留意いただきたい点をいくつか述べさせていただければと思います。

 まず、取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況でございますけれども、説明も重要ですが、まずは、各社の取締役会・委員会において実質的な検討が行われ、さらに説明することで改善につながるということが重要であると思っております。

 投資家の方々は実質の進捗状況の開示を求めているわけでございますけれども、企業の方にそうしたことが分かるようにしっかり明示していただき、各社が開示していく流れがよろしいかと思ってございます。本ワーキング・グループ報告書、あるいはその他の場所で解説等をされるときには、そういうこともぜひ意識していただければと思います。また、対話のガイドラインなどは、解説の前提との位置付けになるかと思いますので、企業の方により意識していただくような、そういった打ち出し方をしていただけると良いかと思う次第でございます。

 また、2つ目の監査に対する信頼性の確保についても基本的には同様です。とりわけ、監査に関する項目については、対外的に説明を行うことに慣れていない面もあるかと思いますので、より一層、先ほど申し上げたような点についての御留意をお願いしたく考えてございます。

 監査役会等の活動状況の説明については、監査の内容だけでなく、会計監査人が交代した場合に、どのような形での交代かという点については投資家の関心が大変高いと思われます。項目はこのままで結構かと思ってございますが、例えば監査役会等の活動状況等の説明において、会計監査人の交代の場合の活動状況の説明についても、触れていただくのが良いのではないかということも、何らかの形でお示しいただくのがいいのかと思う次第でございます。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。他にオブザーバーの皆様方で御発言等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 委員の皆様方で、もし追加で御発言があれば承りたいと思いますけれども、何かございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございます。

 本日も、よく考えれば考えるほど、難しいテーマでもありまして、大きな方向性については、ある程度、御賛同いただけるのではないかと思いますけれども、なかなか1つ1つは難しい問題であり、これは非財務の情報の開示となると共通する面があるかと思いますけれども、全員の方々から今後の大変貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。そろそろ時間でございますので、この辺りとさせていただきたいと思います。

 いつも申し上げておりますけれども、会議の時間というのは限られておりますので、また、お気づきの点がございましたら、ぜひ事務局のほうまでメールとか電話とかでお伝えいただけましたら大変ありがたく存じます。本日の議論を踏まえまして、また、次回以降、さらに議論を進めていきたいと思います。

 最後に事務局から御連絡等ございましたらお願いいたします。  

【廣川企業開示課長】

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様の御都合を踏まえた上で、最終的に決定をさせていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと存じます。

 以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。長時間にわたり、熱心に御参加いただきまして、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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