金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第7回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年3月24日(木曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

【神田座長】
 ただいまから金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの第7回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会議ですけれども、これまでと同じく、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、金融審議会の議事規則にのっとりまして、オンライン会議を併用した開催とさせていただきます。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページで後日公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 会議を始めます前に、いつものように事務局から留意事項の説明をしていただきます。よろしくお願いします。
 
【廣川企業開示課長】

おはようございます。金融庁の企業開示課長の廣川でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、オンライン会議について2点ほど留意事項がございます。

 1点目ですけれども、御発言を希望される際にはオンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらの確認をした上で座長から御指名をいただきます。また、御発言をされる際には冒頭にお名前をお願いいたします。

 2点目でございますけれども、御発言をされない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いいたします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わりましたら再びミュート設定にしていただくよう、お願い申し上げます。

 なお、今回ですけれども、多様性もテーマに取り上げる関係で、議論を円滑に進める観点から、今回、厚生労働省にもオブザーバーとして御参加いただいております。以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それから、いつものように、本日の会議の模様もウェブ上でライブ中継をさせていただいております。

 それでは、議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、まず事務局から資料の説明をしていただきます。その後、質疑応答、討議を皆様方にお願いすると、こういうことになります。

 それでは、事務局から資料についての説明をお願いいたします。廣川企業開示課長、よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】

ありがとうございます。それでは、事務局説明資料に沿って説明をさせていただきます。

 おめくりいただきまして、目次ですけれども、今回はサステナビリティ開示に関して御議論をいただきたいと考えてございます。サステナビリティ開示については、本ディスクロージャーワーキング・グループにおきましては、昨年10月1日と10月29日の2回、御議論をいただきました。本日はまず、それ以降、特に11月以降の動きが、国際的にも、また国内的にもございましたので、その御紹介をさせていただきます。特に気候変動に関する開示に関していろいろ国際的にも動きがございました。

 また、テーマとして、目次の2つ目にありますように、人的資本・多様性等に関する開示についても、この後、御説明を申し上げ、また御議論をいただきたいというふうに考えてございます。

 それでは、中身に入らせていただきます。おめくりいただきまして、次の2ページでございます。サステナビリティ開示基準の国際的な動向と日本からの働きかけということで、昨年の11月3日でございますけれども、国際会計基準財団(IFRS財団)は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設置を公表しております。

 そこの左の下のところに国際的な動向ということで書いてございますけれども、現在はメンバーとしては議長・副議長の2人が決まっており、他のメンバーは最大12名ということで、現在選定中ということでございます。

 これに対して、日本からは積極的に働きかけをしていく。具体的には、内容面で基準開発に対して積極的に貢献していく。また、特に我が国の意見を積極的に発信していく。そして、運営面でも人材面や資金面での貢献をしていく。さらにはIFRS財団にはアジア・オセアニアオフィスが東京にございますので、東京の拠点をサステナビリティ開示基準の開発の観点からも積極活用してもらうということで、右にありますように、日本から、私ども金融庁もそうですし、また経団連にも提言をいただいて、働きかけをしていこうということでございます。

 そうした中で、国内的には、右下にありますように、昨年の12月公表ですけれども、財務会計基準機構の中にサステナビリティ基準委員会を新設するということが公表されておりまして、先々、このサステナビリティ基準委員会から国内の意見を取りまとめて、意見発信をしていくという流れ、これを考えていくということでございます。

 次の3ページでございます。ここからは昨年11月3日に同じタイミングでIFRS財団から公表されておりますサステナビリティ開示基準のプロトタイプについての資料をつけております。これはまだプロトタイプ、いわゆるひな型の段階でございますけれども、そこの3ページにありますように、例えばISSBによる基準策定や戦略に関する提言の全体像を示すという、そういうものから、具体的に全般的な開示要求事項と、それからテーマ別にいきますと気候関連の開示について、プロトタイプという形でひな型が示されているということでございます。

 4ページに参りまして、まず、全般的な開示要求事項のプロトタイプ部分でございますけれども、まず、こちらの中でマテリアリティ、いわゆる重要性の考え方についても示されておりまして、「主要な利用者の企業価値に関する評価にとって重要な、全てのサステナビリティ関連財務情報の開示を要求」というような形になっておりまして、重要性については定量的な閾値を設けずに、経営者に対して重要性の判断を要求するというような内容です。

 また、これまで本ディスクロージャーワーキング・グループにおける議論でも出てまいりましたけれども、サステナビリティ項目というのは「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの側面から開示を要求するといった内容になってございます。

 そのうち、5ページに参りますけれども、IFRSの重要性のマテリアリティの考え方の整理も、改めて資料が公表されておりましたので、そこにおつけしております。

 また、6ページに参りまして、ISSBのほうの基準策定の構造ということで、今少し申し上げました全般的な要求事項は表示基準というふうに書いてございますけれども、それがあった上で、さらに分かれてテーマ別、例えば気候変動関連ということでテーマ別の基準、それから業種別の基準、業種固有の開示、こういった複層的な構造になっているということで、そうした中で、先ほど申し上げましたように「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」という4つの柱で開示をするような、こういう構造になっているということでございます。

 7ページに参ります。こちら、気候関連開示の具体的な開示要求事項でございます。見ていただけるように、ここの中でも「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」ということがあると、先ほど申し上げましたように、業種別指標といったようなものも付録文書として出ております。

 それで、8ページに参りまして、その中でも特に留意すべき事項ということで今回抽出しております。1つは、シナリオ分析というのが戦略の中で求められているということで、気候関連リスクに対する戦略のレジリエンスの分析の開示が求められている。

 それから、下に参りまして、業種横断指標のところでは、温室効果ガス排出量について、いわゆるScope 1、2のみならず、3についても排出量の開示というのが求められるような中身になっているということ。

 それから、先ほど来申し上げています業種別指標というのは、68の業種ごとの指標の開示が求められている内容になってございます。

 9ページは、こういったサステナビリティ開示の検討スケジュールということでございますが、昨年秋に申し上げていたよりは少し後ろ倒しになっているというのが実態でございまして、ISSBの気候関連開示基準の公開草案というのはいまだ出ていないということではございます。3月末を目指すということでありましたけども、大分3月末が近づいているような状況が今の状況ということであります。

 また、基準の最終化のタイミングについては、昨年秋段階では早ければ6月にもということではありましたけれども、現実的には今年の下半期というのが見込まれるところでございます。

 それから各国の動向ですね。中ほどに当局とありますけれども、後ほど御説明申し上げますけれども、アメリカのところで、3月21日に証券取引委員会(SEC)のほうでオープンコミッティーが開催されまして、そこで気候関連開示規則案というのが議論をされ、公表されている。案としては決まって、公表されている、そういうことでございます。

 それから、次のページに参ります。先ほど御説明申し上げましたIFRS財団のプロトタイプについては、イギリスの当局であります財務報告評議会(FRC)が早くもプロトタイプに対する予備的見解というものを公表しているということで、そこの中ではISSBによる国際基準の策定及び当該基準の英国内での採用を強く支持する旨の表明がなされているということでございます。

 11ページ、12ページ、これが今申し上げました3月21日にアメリカの証券取引委員会が公表した規則案の概要でございます。簡単に申し上げますと、まず手続的には3月21日から市中協議をかけて、コメントの期限は5月20日になっているということでございます。

 それから、早ければ2023会計年度から段階的に適用開始という予定になってございます。

 内容面でございますけれども、その下の規則案の概要ということで、対象企業は全てのSEC登録企業、外国企業も含みます。それから、開示媒体としては、年次報告書、証券登録届出書というところで、「気候関連開示」のセクションを設けて開示をするという形になっておりまして、その中では、TCFD提言の4つの柱に類似したような形で、基本的にはTCFDベースでと言ってもいいかもしれません、開示を求めていくということでございます。

 例えば、「リスク管理」の中では、上から4つ目ですけれども、「リスク管理」の一部として、移行計画、トランジションを採用している場合には、当該計画の説明、物理・移行リスクを特定し、管理するための指標と目標を含むという形で、こういった開示も求められている。

 あるいは、シナリオ分析を行っている場合には、その下ですけれども、使用したシナリオ全体、前提、予想される主要な財務的影響を開示。それから、温室効果ガスの排出量については、いわゆるScope 1、Scope 2については開示ですけれども、Scope 3につきましては、企業が重要だと判断する場合、または目標を設定している場合の開示ということで、1、2とは少し差がついているということが特徴でございます。

 それから、次の12ページに参りまして、保証ということで、今申し上げました温室効果ガスの排出量のScope 1、2に関しましては、段階的に保証を求めるというような形になっているということでございます。

 最後、適用開始時期は、先ほども少し申し上げました、アメリカではもともと大規模早期提出会社、早期提出会社といった登録企業のタイプ分けというのが時価総額で行われておりまして、細かく定義は下の注のところに書いてございますけれども、こういった区分ごとに、早ければ2023会計年度からの開示ということ。また、保証については、一番早い場合は大規模早期提出会社、2024会計年度限定的保証からというようなことが案として示されているというような状況でございます。以上、海外の話でございました。

 13ページに参ります。これまでの本ディスクロージャーワーキング・グループの会合の議論を概要という形でまとめさせていていただいているというものでございます。特に有価証券報告書におきましては、サステナビリティに関する考え方、取組みを記載する記載案の新設というのを御議論いただきました。今日はその点について、また後ほどもう少し詳しく御説明させていただきます。

 それから、14ページに参りまして、国内のほうで、先ほども申し上げましたけれども、財務会計基準機構にサステナビリティ基準委員会の設立が昨年12月20日に公表されております。本年1月からその準備委員会というものが設置されておりまして、これまで4回会合を開催されているということで、正式委員会になるのは今年の7月1日というふうに聞いてございます。

 次の15ページは、これまでにお出しいただいた意見の概要ですので、割愛させていただきまして、16ページでございます。このスライドは新しいスライドでございまして、御議論のためにということでございますけれども、先ほど申し上げましたサステナビリティ情報の記載欄を有価証券報告書に設けるということになった場合に、その考え方、あるいはどこに位置付けるのか、こういったところで御議論のために一案を作成しているものでございます。

 右側を見ていただきますと、サステナビリティに関する考え方、取組みということで、当初の開示項目は、これまでの議論も踏まえまして、「ガバナンス」、「リスク管理」、また、各企業が重要性を踏まえて判断する項目として「戦略」、「指標と目標」と。その上で、こちらについては、サステナビリティに関する情報というのは、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】ですとか【事業等のリスク】ですとか、あるいはそれ以外、様々なこれまでにある有価証券報告書の記載欄と、記載欄で記載すべき事項と非常に関連が深いものというのがあるということで、それをどういうふうに書き分けるのかが悩ましいというお話であったかと思いますけれども、1つの案として、記載欄を右のように新設する一方で、そこに情報を集約しつつ、他方で、この左側、今、図で示させていただいています既存の記載項目との相互参照というのを認めていくといいますか、そういったことを今後念頭に置いていくと。必要に応じて相互参照していく。

 また、右下にありますように、任意の開示書類、サステナビリティ報告書、統合報告書がございますので、こちらについては有価証券報告書の中で参照を可能にしていくという考え方、これをどう考えるか。

 それから、この記載欄の位置付け、どこに位置付けるかということで、ここは試案で、案1、案2をお示ししていますけれども、案1としては、「第2【事業の状況】」の中に新設する。また、案2としては、「第4【提出会社の状況】」と「第5【経理の状況】」の間に新設するということでございます。これに限るものではございませんので、本日は御意見を賜れればと存じます。

 次の資料に移ります。17ページに参りまして、有価証券報告書の開示の考え方ということで、開示の重要性、これはこれまでにもお示ししている投資家の投資判断にとって重要か否かにより判断すべきと考えられることを基本とした考え方を改めて付けてございます。

 18ページに参ります。こちら、将来情報に関する記載と提出後の事情変化ということで、サステナビリティの文脈でも将来情報が非常に多くなってくるかと存じます。これまでは金融庁より、【事業等のリスク】のコンテクストで2019年1月の府令改正時にパブリックコメントに対する回答として一定の考え方をお示ししているわけですが、今回、サステナビリティを議論しているということで、前回のワーキング・グループの御議論でも、金融庁のこうした考え方というのが十分広まっていない、あるいは考え方の整理、ガイダンス、例示等が今後求められるのではないかといった御意見もあったところでございますので、それも踏まえて今後の在り方はどう考えるかというのが1つ論点になるかと考えてございます。

 20ページに参ります。ここから人的資本に関してでございます。2022年1月17日、岸田総理大臣の施政方針演説の中で、中ほどですけれども、「人への投資の抜本強化」というコンテクストで、「人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します」というふうにおっしゃっておられます。

 また、一番下ですけれども、「男女の賃金格差も大きなテーマ」ということで、「この問題の是正に向け、企業の開示ルールを見直します」というふうにもおっしゃっておられます。

 21ページに参ります。人的資本に関連して、例えば企業における研修ですとか人事政策、こういったものが財務的なパフォーマンスとポジティブな関係があるというふうな論文が多く見られるというようなリサーチの部分がございましたので、御紹介でございます。

 22ページは個別の論文ですけれども、ダイバーシティとの関係でいきますと、取締役・執行役員の社内女性割合が、企業業績、株式評価とも正の有意性を示すとの分析結果があるということで、これも御紹介でございます。

 23ページに参りまして、機関投資家が評価する女性活躍情報ということで、機関投資家の投資判断においては、女性活躍に関する情報が活用されている。その理由としては、「企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため」というのが左側に示されております。

 また、右側を見ていただきますと、例えば「ダイバーシティの確保がイノベーションに繋がることなどが期待できる」、あるいは「人材獲得に良い影響があると判断できる」といったことで、女性活躍情報を重視しているということでございます。

 24ページ、人的資本に関する任意開示の進展ということで、味の素と日本ユニシスを挙げていますけれども、例えばということですが、統合報告書において人的資本であるとか人的投資、こういったものと生産性を結びつけたような開示の例も見られるなど、任意開示の中では好開示の事例が積み上がっている状況でございます。

 25ページに参ります。これは参考ですけれども、内閣官房におきまして、非財務情報可視化研究会というのが開催をされております。その中で、人的資本の開示に関してはいろいろ御意見が出ているということでございます。

 下線が引いてあるところ、「アウトカムを生み出す仕組みと、それに必要なインプットが分かるように説明することが重要」。また、「進捗をKPIを用いて説明することが必要」。

 具体的な人的資本の指標としては、例えば、「日本では人材育成、衛生・安全・健康、従業員エンゲージメント、ダイバーシティ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)人材の確保といったものが候補になりうる」という御意見も出たところでございます。

 26ページに参ります。多様性確保の開示に関連してということで、ここでは制度の御紹介でございます。女性活躍推進法、それから育児・介護休業法におきまして、一定項目の公表というのを求めているということでございます。

 例えば、常時雇用する労働者数301人以上の事業主というのは、そこの開示項目というところにあります(1)「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」、それから(2)「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」ということの、それぞれの区分から各1項目以上選択して、2項目以上公表するということが求められておりまして、例えば、「管理職に占める女性労働者の割合」ですとか「男女別の育児休業取得率」、こういったものが項目の中に入っているということでございます。

 また、下側、育児・介護休業法におきましては、令和3年6月の改正におきまして、従業員1,000人超の企業を対象に育児休業取得の状況の公表が義務付けられるということになっておりまして、予定としては令和5年4月1日施行ということでございます。

 27ページに参ります。有価証券報告書における男女別給与の開示に関する経緯ということで、有価証券報告書におきまして、男女別給与の開示が省令改正によって1993年3月期までで廃止をされて、2000年3月期のところからは開示義務がなくなっているということでございます。

 当時の考え方としては、開示情報を単体情報中心から連結情報を中心に転換するという中で、そのときには投資情報としての有用性が相対的に低下した単体情報について、可能な範囲での簡素化の措置を講じたということでございます。

 28ページに参ります。ここからは、国際的な非財務情報の開示の枠組みを少し御紹介ということで、特に人的資本関連でございますけれども、そこにありますように、任意の開示の枠組み、あるいは制度的には欧州それからアメリカ、こういったところで人的資本の開示というのをやっていくようなフレームワークがございます。

 29ページに参りまして、こちらはISO30414、以前も御紹介をしたスライドでございます。

 また、30ページに参りまして、制度開示の例として、アメリカのSEC規則です。2020年11月から適用されている人的資本開示に関する規定部分。

 それから31ページは、実際のアメリカにおける規制改正後の開示の状況でございます。これ、いずれも以前御紹介したものでございます。

 32ページは、イギリスのFRC、これも以前御紹介しているかと思いますけれども、2020年1月にイギリスのFRCが出した人的資本開示の在り方に関する考え方ということで、TCFDの4つの柱に沿っているものが示されてございました。

 33ページに参りまして、多様性の確保の観点でございますけれども、実は海外にも多様性の確保に関する開示を求めるという規定、探してみるとございまして、特にヨーロッパですけれども、会社法開示の中でということで、会社法あるいは商法体系の開示の中でということになりますけれども、多様性の方針を開示したりとか、一番下のところにありますように、ジェンダーの多様性あるいは男女平等のための措置とか、そういったものの開示が求められているということでございます。

 34ページに参りまして、これは参考ですけれども、証券法以外の規律による男女別賃金に関する開示ということで、海外でも証券法以外の開示ですけれども、それぞれそこに示されているような法律があって、一定の規模以上の企業について、男女の賃金格差に関する一定の開示が求められているというような状況でございます。

 35ページからですけれども、ここからは開示例ということで、諸外国の人的資本・多様性の開示の状況ということで、いくつか例をつけてございます。35ページは、人的資本に関しての概要とか目標とか、あるいはその取組内容、こういったものの検証なんかも含めて開示している事例。

 それから36ページですけれども、こちらのほうは多様性の関係で、従業員とか取締役に占める女性の比率、あるいは女性管理職比率を開示している例をつけてございます。

 37ページ、こちらは男女の賃金格差ですね。様々な計数を用いて開示している事例をつけてございます。

 38ページ、39ページは、これまでの議論の中で出していただいた御意見を付けているというものでございます。

 41ページに参ります。ここからが本日ご議論いただきたい事項です。

 まず、この41ページからですけども、サステナビリティ情報につきましては、先ほど申し上げましたISSBの基準開発が進められるということと、国内においてもSSBJが始動していくということでございます。

 そうした中で、サステナビリティ開示の検討に当たっては、2つ目の丸ですけれども、国内外からの投資を呼び込み、国際的な比較可能性を確保するとともに、我が国の事情、国内企業の取組み、投資家の声などを十分に踏まえ、そういった中で、企業、投資家の声を集約して、国際的な働きかけを進めるということが求められるという考え方でございます。

 その上で、具体的な論点としては、42ページに参りますけれども、本ワーキング・グループの議論を踏まえて、以下の取組みを並行して進めていくことについてどう考えるかということで、まず、サステナビリティ開示全般については、有価証券報告書に「記載欄」を設ける。当初の開示項目として、「ガバナンス」と「リスク管理」は全ての企業が開示し、「戦略」と「指標と目標」は各企業が重要性を判断して開示するということ。

 特に、その(注1)でございますけれども、様々なサステナビリティ要素があるという中で、企業は自社にとっての重要性のあるサステナビリティ項目について、この「記載欄」に記載する、また、「記載欄」では投資家の投資判断に必要な情報を開示しながら、詳細情報については任意開示書類を参照可能とすることが考えられるということでございます。併せて、任意開示等におきましても、気候変動関連の開示の質と量の充実を促すということが考えられる。

 一番下でございますけども、さらに日本におけるSSBJにおきまして、サステナビリティ基準委員会におきまして、国内開示実務や投資家の期待を集約しつつ、ISSB等への意見発信を進めるということ。

 43ページに参ります。その上で、日本のSSBJにおきまして、今後のISSBにおける基準策定の動向を踏まえた上で、日本における開示の個別項目について実務面も含めた検討を進める。

 本ワーキング・グループにおきましては、このSSBJの検討成果を踏まえて、改めてサステナビリティ開示の個別項目の取扱いを議論するとともに、基準設定におけるSSBJの役割の明確化に向けた検討を進める。

 また、中期的な課題としては、サステナビリティ開示における保証の在り方に関する検討を進めるということについてどうか。

 そして次、「人的資本・多様性」に関しましてですけれども、これまでのワーキング・グループの会合等におきましては、企業価値判断における重要性が特に増しているという指摘もありましたものですから、そういったことを踏まえて、ISSBの基準策定作業を先取りして、以下の取組みを進めることについてどう考えるかということで、具体的に2つ、中長期的な企業価値向上における人材戦略の重要性を踏まえた「人材育成方針」や「社内環境整備方針」の開示を求めること。それから、それぞれの会社の事情に応じて、上記の「方針」と整合的で測定可能な指標(インプット、アウトカム)の設定、その目標及び進捗状況の開示を求めることでございます。

 44ページに参りまして、企業の多様性確保に係る指標として、女性管理職比率、育児休業取得率、男女間賃金格差等、中長期的な企業価値の判断に必要な項目の開示。また、この場合、企業負担等の観点から、他の法律、定義・枠組みに従って開示すること。

 それから、最後の黒丸ですけれども、気候変動以外の項目を含めてサステナビリティ情報の開示に関しては、我が国としての意見集約を行い、SSBJを中心として、国際的な意見発信やISSBにおける基準策定への働きかけを積極的に行うことが求められる。特にアジア・オセアニアオフィスがアジアの拠点として機能することが期待されているが、そうした取組みを進めるに当たって、どのような点に特に配意すべきと考えられるか。

 一番最後、次の45ページ、「その他」でございます。提出日現在において、将来情報の記述の前提等について、一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がされていた場合、提出後に事情が変化したことをもって虚偽記載の責任が問われるものではないと考えられることについて、実務への浸透を図るとともに、更なる明確化を検討してはどうか。

 それから、サステナビリティ情報に対する保証については、その前提となる開示基準の策定、国内外の動向を踏まえた上で、中期的な課題として検討することとしてはどうか。

 さらに、気候変動開示等のサステナビリティ情報について、今後、日本における開示を円滑に進める観点から、ロードマップを示すことについて、どう考えるか。

 上記の他、検討すべき事項はあるかということでございます。

 最後46ページは、今申し上げたことを概観で1枚にまとめてございます。私からは以上です。

【神田座長】

どうも御説明をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、今日残りの時間、委員の皆様方から御意見、御質問等をお出しいただいて、討議ということとさせていただきたいと思います。

 今、御説明ありましたように、ご議論いただきたい事項ということで、事務局説明資料によれば41ページから45ページと46ページの概観という、すごく分量が多くなっていて恐縮ですけれども、他方におきましてといいますか、いつものことで恐縮でございますけれども、時間も有限でございますので、1人当たり計算させていただきますと、3、4分程度をめどに御発言をいただけると大変ありがたく存じます。

 まず、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただき、その後、オブザーバーの皆様方に、もし御質問、御意見があれば承るということとさせていただきたいと思います。

 それでは、委員の皆様方で御発言いただける方はチャット欄にて全員宛てに一言を入れていただければありがたくと思います。ありがとうございます。今、上柳委員、藤村委員の順で入れていただいておりますので、まず上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】

ありがとうございます。皆さんからたくさん発言があると思いますので、私からは国際的な基準策定のタイムラインと日本との関係ということでなるべく短くしたいと思います。

 事務局説明資料43ページの特に下のほうですか、人的資本の問題については、ISSBの基準策定作業を先取りしと、極めて注目すべき言葉があるというふうに理解いたしました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 ただ、ちょっと思いますのは、アメリカは訴訟がたくさん起こっていますし、ヨーロッパは労働組合が強いというようなこともあって、何といいますか、主要国の中では実際の基準はかなり進んでいるというふうに思うのです。ですので、そこでどこまで我々が貢献しているのかというところは、あまり独りよがりにならないようにしたほうがいいかなというふうに思います。

 他方、欧米はやはりサプライチェーンのことをすごく気にしていますので、そう簡単になかなか全部基準にしにくいという点があるのかもしれません。

 そういう意味からいうと、事務局説明資料41ページの上のほうですけれども、サステナビリティのほうについては、これはISSBにおける基準の策定動向を踏まえつつというふうに、若干様子見みたいな形になっているのですが、こちらもぜひ先取りするつもりで日本としては臨むべきではないかというふうに思います。

 言い方が難しいですけれども、ある意味では1年余裕ができたようなところもありますし、国内の体制もできてきておりますので、SSBJを中心に国内についてはきちんとやっていくと。「戦略」あるいは「指標と目標」についても、法定開示を原則とすると。ただし、エクスプレインで、「戦略」、「指標と目標」等の設定の道筋を示すということで当面は対応せざるを得ない組織企業もあることは理解しておりますけれども、そのようにお願いしたいと思います。

 他方、サステナビリティについてアジアの拠点的なところを日本で担うというお話がありましたけども、国内については頑張って先進を目指すということですけども、他方、途上国の実情を代弁といいますか、それを世界に知らせていくという役割も日本は担うべきだと思いますので、その両面をにらみながら進めていく必要があると思います。以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】

ありがとうございます。藤村です。開示義務化の方向性への全体感については、私も異論ございません。

 ただ、ちょっと4つ、留意点として感じているところを申し上げたいと思います。

 1つ目は項目の細則化ですけども、今回プロトタイプなんかを見ていても、特に気候変動に関して細則的な開示基準になっているというふうに理解しています。特に「指標と目標」の部分ですね。

 「指標と目標」で7項目出ていますけども、例えば移行リスクにさらされている資産の割合を出せとか、物理的リスクにさらされている資産の割合を出せ、こういうことになっているわけですけども、当然のことながら、何をもってリスクと言うのか、各企業によってまちまちであります。シナリオ分析の結果、出てくるリスクということになると思うのですが、そのシナリオは何を用いているのかとか、弊社でもシナリオ分析をやっておりますけども、様々な前提を置いているのですね。その結果として、全体の何割がリスクにさらされているということを開示しても、相当程度の前提を説明しないと、十分な開示にならないと考えます。

 一方で、数字が独り歩きして横比較されるというのも、相当企業にとっては不安材料になりますので、あまり細則的じゃないものにしなければならないのではないかなと思います。逆に、あまりソフィスティケートされていない投資家に開示情報だけ独り歩きして御覧いただいても、むしろ開示情報の信頼性を害するということになるのではないかなと考えております。

 それに関連する2点目ですけども、虚偽責任及び保証についてです。そういった情報ですので、何をもって虚偽と言うのかと。先ほどの事務局の御説明では合理的なという基準が出ておりましたけども、開示情報のコンテンツが虚偽であるかどうかというのはなかなか難しいと思います。

 したがいまして、プロセスについて、例えば取締役会にきちんと報告しているものであるかとか、そういったところの縛りを設けるべきであって、将来情報、気候変動に関して何が起こるか分からない様々な前提を置いた開示情報の内容についての正確性を求めるというのは相当苦しいだろうなと思います。

 それに関連して、保証についても、今、実務で行われているのは、唯一基準が少しGHGプロトコルという形で明確になってきているであろうGHGの排出量についての限定保証というのは行われていますが、それを超えて保証というのをどう考えるか、なかなかまだ議論は詰まっていない。どうやってやるのかというのは見当がつかない部分です。したがいまして、ご議論いただきたい事項にあるように、中期的な課題と位置付けて、今すぐにこの保証をどうこうするというのは難しいと思っております。

 3番目に、4つの柱についてでございますけども、これは私もTCFDの委員をやっていたので、非常に使い勝手がいい切り口だと思います。ただし、人的資本とか無形資産に対する資産とか、こういう4つの柱、こういうサステナビリティ情報の中でも、将来の変化に対応できるか、レジリエンスを説明するような気候変動とか生物多様性とか水の問題とか、こういったものはこの4つの柱になじむと思うのですが、人的資本の投資の「リスク管理」とか、どうやるのかなというのがあるので、ちょっとそれは別に考えたほうがいいのではないかなと思います。

 4つの柱のもう1点は、これは非常に細かい点でありますけども、「ガバナンス」と「リスク管理」は全ての企業、「戦略」、「指標と目標」は重要性と、これは非常にいい切り方で、TCFDも当初はそういう形になっていたのですが、1点、注意点は、「指標と目標」のScope 1、2についてはTCFDも立場を変えていて、全企業が開示しろということになっているので、この辺を日本としてどう取り扱うのかという細かい論点はあるかと思います。

 最後に、実施のタイミングですけども、先ほどの上柳委員の御意見とはちょっと逆な意見になって恐縮ですけども、そういった形で、まだまだセトルしていない部分も多いので、あまり拙速にこれを義務化するというのは難しいのではないかなと考えております。

 特に人的資本だけ先行させるということですけども、その理由付けが、人的資本は企業価値に対する影響が大きいということですが、気候変動だってそのとおりだと思うので、あまり理由付けとして十分な説明というふうに私は理解できないと思っております。

 いずれにしても、ISSBの基準等もきちんと踏まえながら、日本なりの基準というのを考えていくべきだというふうに思っております。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。多くの方からチャットいただいており、どうもありがとうございます。チャットの順番ですと、永沢委員、近江委員、神作委員の順になると思います。永沢委員、どうぞお願いいたします。

【永沢委員】

ありがとうございます。永沢でございます。私からは2点、意見と、それから質問を1つさせていただきたいと思います。

 まず、それぞれの項目について意見でございますけれども、サステナビリティの観点からの開示基準につきましては、最近、投資信託のほうにおいて、サステナビリティを標榜している投資信託が大変増えております。大変望ましいことだと思うのですけれども、インベストメントチェーンという観点から、良いお金の流れをつくって持続可能な社会を築いていくというところに、最終受益者である私たち個人投資家がどういう形で関われるのかというところ、やはり、その点も期待されていると思っておりまして、企業のほうで情報開示を進めていただくわけですけれども、これが例えば投資信託の情報開示においてどのように開示されていくのかというところも、今回、資産運用関係の方々も多く出席されていますので、企業における開示と併せて検討いただき、最終的に、個人投資家、最終受益者にどのような形でこの情報が提供されていくのかというところも意識して、議論を進めていただけたらありがたいと思っております。

 望ましいのは、例えばこのファンドを買えば、どれだけCO2の削減になるのだというような情報、なかなか難しいとは思いますが、そのような情報の開示につながっていくようなことを期待しておるところです。そのためにも、資産運用会社の皆様とも連携いただき、情報開示、情報のアウトプットについて議論をしていただきたいというのが1点目でございます。

 それから、人的資本に関しましては、情報開示を通じて、女性の活用も含めて、いろんな意味で人を大切にする企業風土が醸成されていくことを期待できるわけですけども、1点、気になりますのは、確かにKPIが重要ですけれども、数字をよくするために、例えば自分の会社の従業員だけ処遇を改善し、下請などにしわ寄せがいくことがないようなチェックというのも必要なのではないかと思います。

 数字化して見えるところを重視するあまりに、そのようなことにならないような配慮というのも、金融庁のマターではありませんが、気になりましたので、お願いしたいと思い、発言させていただきました。

 最後に、厚生労働省にこのような機会ですので質問です。不勉強で恐縮ですけども、これまで度々「女性管理職」という言葉が出てきておりますけれども、この女性管理職というのはどのように定義をされているのか、比率何%と出すときに恐らく算定の基準が定められていると思うのですけれども、この機会に教えていただけたらと思っております。本論とは直接は関係ございませんが、よく出てまいりますので、御教示いただけたらと思います。私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

ありがとうございました。まずは、事務局の廣川課長からお願いしたいと思います。

【廣川企業開示課長】

企業開示課長の廣川でございます。今の最後の御質問、私から可能な限りでまずお答えをさせていただきます。

 女性管理職比率の定義の御質問だったかと思いますけれども、女性活躍推進法におきましては、いわゆる管理職に占める女性労働者の割合、これ女性管理職比率ですけども、これについては、具体的には女性活躍推進法省令の第2条第1項第4号において定めがございまして、ここで言うところの管理職の定義につきましては、さらに厚生労働省の通達におきまして定めがございます。ちょっと読み上げさせていただきますけれども、「管理職」とは、「課長級」及び課長級より上位の役職にある労働者の合計をいうということ、また、「課長級」とは次のいずれかに該当する者をいうことということで、2つございます。次のいずれかというのが2つございます。

 1つは、事業所で通常「課長」と呼ばれる者であって、その組織が二係以上からなり、若しくは、その構成員が10人以上(課長を含む。)のものの長ですね。2つ目は、同一事業所において、課長の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと。)、このように定義をされているということでございます。

 管理職に占める女性労働者の割合ですので、「女性の管理職数」割る「管理職数」掛ける100(パーセント)になるということでございます。よろしいでしょうか。

【永沢委員】

はい。御丁寧に説明いただきありがとうございました。細かく分かりやすく定められているということを理解いたしました。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に進ませていただければと思います。次は近江委員、どうぞお願いいたします。

【近江委員】

近江です。御指名ありがとうございます。議論事項いろいろ多くありますので、いくつかに絞ってコメントさせていただければと思います。

 まず、事務局説明資料42ページの「サステナビリティ開示全般・気候変動」に関しましては、先の議論のとおり、有価証券報告書に「記載欄」を設けて、全ての企業に共通の枠組みとして「ガバナンス」と「リスク管理」を求めて、「戦略」、「指標と目標」については、マテリアリティに応じた開示ということで、まずはスタートするということに異論は特にございません。

 今後のSSBJの活動において、例えばセクター別の開示項目などについては、日本での適用性を確認しながら、ISSBに対しても貴重な発信などをしていくことは重要であると思います。

 一方、事務局説明資料43ページの「人的資本・多様性等」ですけれども、ここはグローバルの投資家が企業価値を考える上で、重要性に対する認識をますます高めているという状況は本当にそのとおりです。コーポレートガバナンス・コードも踏まえまして、先んじて、例えば、人的資本に関する経営の方針の開示、この大枠を求めていく意義は高いと考えていますし、また併せて、それらの方針に合致した指標が企業にとって適切な整合性が取れている形で開示されることは、投資家サイドが、方針が適切に実践されているのかを正しく理解して評価していく上では不可欠だと考えております。

 特に、その指標について、事務局説明資料44ページにいくつか代表的な指標として挙げられておりますけれども、例えば当社においても女性活躍の状況を示す情報、例えば連結グループ全体としての人的資本の状況、各階層における女性管理職比率などは重要ですし、また、特に企業が操業している主要な市場における男女別給料の格差の状況、あるいはそれを解消するために企業が実施している施策などは、企業のダイバーシティの取組状況や課題、進捗を評価していく上で大変重要であるということで、これを静的な形で捉えているというよりも、今後その企業が進むべき動的な中で企業の取組みを把握し、エンゲージメントなどを通して後押しするという上でも非常にスタートポイントとしても重要な項目と認識しております。

 厚生労働省におかれましても、女性活躍推進法に基づく男女間賃金格差の開示を充実する制度見直しの検討をしているということですし、また、かつて有価証券報告書においても、単体ですけれども、開示されていた状況を踏まえれば、企業にとっての開示のハードルというのはそこまで高くなく、投資家にとってもますます重要になっているということでありますので、開示が望まれる項目かと思っております。

 また、日本企業のグローバル化がますます進んでいる状況ですので、男女別の従業員数などの基本的な情報は、従業員の情報のところで連結全体をカバーされて開示されるということが望ましいと考えていまして、とりわけ企業との対話を通じて、日本企業、特にグローバルの人的資本の把握であったり、活用においてまだまだ課題があると、そのように認識していますので、グローバルなガバナンスの向上の観点からも連結ベースの開示を求める意義は高いと考えております。

 あと、サステナビリティに関する項目の開示に関しては、事務局説明資料44ページにあるひな型というものが、企業にとっても、利用者にとっても、情報提供においてフレキシブルな開示の枠組みであると思っておりまして、確かに【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【MD&A】などにおいてサステナビリティに関する情報が統合されて、全体として一貫のある開示になると考えていますけれども、今後、サステナビリティに関するテーマの基準が増加していくということを考えると、フレキシビリティを持たせた個別のサステナビリティ事項を開示する欄というものが設けられて、その下にいろいろと加えられるということは比較可能性という観点からも便宜性が高いと考えます。私からは以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】

神作でございます。御指名ありがとうございます。御提案の方向性に基本的に賛成いたします。有価証券報告書におけるサステナビリティ情報一般の記載について、事務局説明資料16ページにおきまして、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方、取組み」という欄を設けて、当初はその「ガバナンス」と「リスク管理」の2つを開示項目とし、「戦略」と「指標と目標」については、各企業がその重要性を踏まえて、任意開示書類等で自発的に開示することとするという御提案がなされています。

 私はこの御提案にも賛成ですけれども、その理由を申し上げたいと思います。全ての上場企業と投資者にとって、企業の持続的な発展は目標とすべきものであると思われます。投資者の投資判断にとって重要であるかどうかという判断基準、すなわちシングルマテリアリティの基準に基づいて、サステナビリティ要素を特定し、分析し、コントロールし、リスク管理と収益化機会の拡大へとつなげていく体制を整備することは、会社法上も経営者の行為規範として求められているところであると考えます。

 すなわち会社法においては、大会社の取締役会にはリスク管理体制を含む内部統制体制構築義務が課されており、重要なサステナビリティ要素を「リスク管理」の対象とし、各企業のコーポレートガバナンスに組み込むことは、経営者としてなすべきことであると考えられます。

 そのようなサステナビリティ情報を有価証券報告書で開示し、サステナビリティに関する欄に集約して、リファランスを付けることは、有価証券報告書の利用者にとって必要であり、かつ分かりやすいものになると考えられます。

 なお、サステナビリティ情報の開示について、ダブルマテリアリティの考え方を視野に入れて、かなり踏み込んだ法定開示をしようとしているEUでは、先月、コーポレートサステナビリティ・デューディリジェンス指令案が公表されました。そこでは一定の規模またはリスクを持つ企業に対し、企業及びその子会社並びにバリューチェーンが人権と環境に対して与え得るマイナスの影響を認識、評価し、それを排除または減少させるような体制を整備する義務を課すとともに、経営陣に対しても、ステークホルダーモデルに基づいて、サステナビリティの観点からデューディリジェンスを実施し、監視する注意義務を課す等の提案がされています。

 指令案の帰趨は不明ですけれども、EUではサステナビリティ情報の開示についてダブルマテリアリティの考え方を採用し、サステナビリティガバナンスの方向へと大きく進もうとしているように見えます。EUのような方向に舵を切る場合には、会社法との関係が問題になるように思われます。しかし、本日の御提案によるサステナビリティ情報の開示は、先ほど申し上げましたように現行の会社法に整合的であると考えられます。

 また、ハードローである会社法のみならず、この御提案されているサステナビリティの開示は、2021年に再改訂されたコーポレートガバナンス・コードにも整合的です。すなわち、同コードの補充原則2―3(1)では、「取締役会はサステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず、収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべき」と述べています。

 本日の御提案は、このような取組みについての開示を法的に担保する御提案であると言え、ソフトローであるコーポレートガバナンス・コードの実効性を担保するものであるとも考えられると思います。

 最後に、投資者の観点からもこのような開示は望ましく、特にスチュワードシップ・コードに署名している機関投資家にとっては意義が大きいと考えられます。2020年のスチュワードシップ・コードの再改訂の前文において、サステナビリティを、ESG要素を含む中長期的な持続可能性と定義した上で、サステナビリティの考慮に基づく建設的な目的を持った対話などを通じて、持続的成長を促すことにより、顧客、受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべきであるとしています。

 そして、2020年の改訂では指針4―2というのを新設し、そこでは「機関投資家は、サステナビリティを巡る課題に関する対話に当たっては、運用戦略と整合的で、中長期的な企業価値の向上や企業の持続的成長に結び付くものとなるよう意識すべきである」と定めています。スチュワードシップ・コードは機関投資家に対し、投資先企業とサステナビリティ要素について踏み込んだ対話をすることを求めており、投資家と企業の対話ガイドラインではさらに一歩踏み込んで、「サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか」を重点的な対話項目として掲げています。

 機関投資家が、サステナビリティ要素について、実効的でかつ有効なスチュワードシップ活動を行う前提としても、法定開示書類である有価証券報告書において、「ガバナンス」と「リスク管理」について記載がなされることは大変重要であると思います。以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットをいただいております順番で言いますと、三瓶委員、黒沼委員、小林委員の順になると思います。三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】

御指名ありがとうございます。三瓶です。私から各論点についてコンパクトにお話をしたいと思います。

 まず、ご議論いただきたい事項(1)の下段ですね、(ⅱ)に書いてあることですけども、これは日本企業が不利にならないように働きかけるという感じに読み取れるかなと。ただ、そんな国際的な働きかけに海外は応じないと思いますので、この(ⅲ)にはつながらないなと思います。国際的に働きかけをするということは、国を問わず皆をよりよい方向へ導くようないい提案だったら取り入れられる、そんなことかと思います。

 ここで心配される方がいらっしゃるのは、恐らく国際基準にのっとって開示をすると、特に多様性なんかが頭にぱっと浮かぶと思うのですけども、そうすると、日本の多様性がないことが非常に不利に見えると。

 ただ、一方で、ISO30414などを見ていくと、労働安全とか、または重要ポジションのサクセッション、欠勤率みたいな項目もあります。こういう項目を見た場合は、自然体で日本企業が公表したときに、より優れているということをアピールすることができる可能性があると思います。ですから、違いは何かということで、日本企業の持っている共通の企業文化であるとか、そういったことのコンテクストも踏まえて、それをもっと、単なる数字だけじゃなくて説明していくという姿勢を準備していくということのほうが大事なのではないかなというふうに思います。

 ご議論いただきたい事項(2)ですが、ここでは特に「記載欄」と記載箇所について、先ほど神作委員も御指摘されていました事務局説明資料16ページですけれども、案1、案2というのがありますが、私はあえて案3というのを提案したいと思います。

 というのは、箇所的に言うと、「第1【企業の概況】」の後、「第2【事業の状況】」の前ですね、この間に入れるということ。なぜかというと、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の前に、大前提としてのサステナビリティという地球課題を捉えておくほうが、収まりがいいからです。そして、相互参照というのがあったらいいかなというふうに思います。

 例えば、最近の統合報告書なんかを見ていると、マテリアリティを踏まえた経営戦略というふうに趣向は移ってきています。また、先ほど事務局説明資料の中で11、12ページにSECの説明がありましたけれども、SECが各企業について、何々している場合は開示してくれと、そういう表現をしているということは、マテリアリティとかサステナビリティに関する大前提があって、それを企業が選択することによる、または優先順位つけることによって開示をしたり、しなかったりするということにもつながるので、少し前のほうに持ってくるというのがありではないかなということです。

 また、ご議論いただきたい事項(2)のところに「詳細情報については任意開示書類を参照可能とする」という注書きがありますが、それ自体はいいと思いますけれども、要注意点があると思います。というのは、ISSBのハイライトの1つは、財務情報と非財務情報のコネクティビティです。そうすると、彼らは当然のごとく、財務情報と非財務情報は同時に公表されるというふうに思って疑いの余地がないと思います。

 ただ、日本の場合、御存知のとおり、財務の制度開示と非財務の任意開示には実務上、大体3か月以上のずれがあると思います。ですから、日本での大前提が、実は海外とずれているのではないかということと、こういった情報が国際的に出てくることになると、データベンダーが財務情報と非財務情報を同時に集めていきます。こういったことで、日本の任意開示と制度開示のタイミングのずれは、大きな問題になる可能性があるので、ここは注意点だと思います。

 また、ご議論いただきたい事項(3)のほうですけれども、下段のほうの人的資本・多様性等について、ちょっとここだけ粒度が細かいなと思って見ていました。国際的に働きかける、または先取りするということを踏まえると、私は先ほどの財務と非財務のコネクティビティということにおいて、特に人的資本・多様性がまだまだどこでもできていないと思うのですね。それを日本で、今、非常に人的資本についての話題が盛り上がっていますけれども、企業も多くのベストプラクティスのようなものが出始めています。こういったものを使って、いかに財務と非財務をコネクトするかというところの見本みたいなものを示していくほうが、先取りということになるのではないかなというふうに思います。

 ご議論いただきたい事項(4)は、簡単に1点だけ、注5のところに単体ベースというふうに書いてありますけれども、正直言って、私はこれはあり得ないと思います。投資対象は連結です。ですから、連結のほうに動いてきたわけで、単体ベースでの開示というのは国際的にはあり得ないなというふうに思います。

 それで最後、ご議論いただきたい事項(5)ですけども、将来情報についてです。今、国際的ないろんな枠組みづくりをしている団体、IFRS財団を含め、IIRC、CDSB、CDP、全部イギリスに本部があります。イギリスの会社法で法定のストラテジックレポートというのが定められていて、ストラテジックレポートは将来情報を記載することが明確に指針として示されています。

 具体的に書いてある言葉は、「Information in the Strategic Report should have a forward-looking orientation.」ということで、こういうことがあるから、非財務情報について将来的な話をすることが、非常に親和性が高いのです。イギリス主導でいろいろ動いている中で、彼らは非常に自然に将来情報に重きを置く非財務情報を取り込めるんですけれども、ここが、今、日本で例えば有価証券報告書に取り組むときの1つのチャレンジになるなと。なので、この違いをどうやって乗り越えるかという検討も必要かというふうに思います。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、黒沼委員、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】

黒沼でございます。私からは3点ほど意見を述べたいと思います。

 第1に、サステナビリティ開示全般及び気候変動については、事務局におまとめいただいた方向性に賛成いたします。サステナビリティ情報の「記載欄」を有価証券報告書中に設ける場合の場所についてですけれども、サステナビリティ情報が企業価値にとっての重要性の観点から絞り込まれるということ、それから【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】といった開示項目と関連性が深いということを考慮しますと、第2【事業の状況】の中に欄を新設するというのがよいのではないかと考えております。

 第2に、将来情報の開示についてです。パブリックコメントに対する回答として示された金融庁の考え方は、将来情報の記載と実際の結果が異なったとしても、それだけでは虚偽記載には当たらないという当然のことを示すとともに、虚偽記載に当たらない条件として、「一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がされていた場合」という限定を付しています。

 確かにこの条件が抽象的過ぎて使いにくいという声は理解できます。私の理解では、この条件は、アメリカのセーフハーバールールや判例を参考にして、将来情報の記載が合理的な前提に基づいて、合理的な推論過程を経て導かれたことが実際に表示されているときは、虚偽記載に当たらないという意味で設けられたと考えております。言い換えると、紋切り型の注意文言では足りないということです。したがって、今述べた方向性でこの条件の具体化を図るということには賛成したいと思います。

 また、今回取り上げられている【事業等のリスク】に係るパブリックコメントについては、恐らく記載上の注意の書きぶりから、発行者が提出時に重要と認識していなかったリスクについて記載していなかった場合に、不記載に当たらないという解釈がパブリックコメントの発出者にあったか、パブリックコメントの発出者がそういった解釈を求めていたのではないかと思います。

 それに対する回答がきちんとなされていないように思われるのですけれども、今述べた将来情報の考え方からすると、発行者が提出時に重要と認識していなかったということが、合理的な根拠に基づいていない場合には、なお不記載に該当する可能性があると考えられますので、その趣旨を明確にすべきであったと思います。

 今後、サステナビリティ関連情報についても、将来情報の記載が問題になるであろうという趣旨から、より具体的な解釈の基準を示すことは重要だと思いますけれども、そのときにも今のような考え方を重視していただければというのが私の考えであります。

 第3に、人的資本や多様性に関する開示についてです。先ほどからISSBの基準を先取りすることの是非について御意見がありましたけれども、欧米の開示制度の御紹介も本日ありました。それと比較しますと、日本の制度は既に少し立ち遅れてしまっていることに今日気付かされました。これを法定開示に取り込むことに基本的に賛成ですが、注意すべき点が2つあるように思います。

 第1に、「人材育成方針」とか「社内環境整備方針」といった基本的な事項の開示を求めるのはよいですが、開示がひな型的開示にならないように注意をする、方策を立てる必要があると思われます。

 第2に、それぞれの企業の事情に応じ、方針と整合的で測定可能な指標を設定し、目標や進捗状況の開示を求めるということにも賛成ですけれども、こちらのほうは、各企業が自社にとって都合のよい指標を選ぶことのないように確保することが重要で、その方策としてどういうことが考えられるのかを十分に検討する必要があると考えております。私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、小林委員、どうぞお願いいたします。

【小林委員】

小林です。よろしくお願いします。私からは4点のコメントと、それから追加で1点お願いがございます。

 まず1点目は、SSBJの今後の議論と検討ですけれども、これにつきましては、日本の特殊事情ということに偏り過ぎないということを十分念頭に置いて、日本の事情に合わせた開示と、それがグローバルな視点からどのように見えるのかということのバランスを常に検証しながら進めていただきたいと思います。

 また、国際的な働きかけは、ISSBに対しての働きかけではなくて、そこに関わる関係者それぞれに、多面的に様々な場で日本からの発信をしていただきたいと思います。できれば、そういった国際的な場に個別企業も積極的に参加されるとよいのではないかというふうに思います。

 2点目です。有価証券報告書の記載につきまして、御提案いただいている内容で私も妥当と思います。あえて申し上げるならば、先ほど三瓶委員もおっしゃられていましたけれども、サステナビリティというのはガバナンス全体、そして企業の戦略と関わってくることだと思いますので、「ガバナンス」と「リスク管理」を有価証券報告書における【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】と【事業等のリスク】と直接関連して読めるような場所に置くのが良いと思います。そもそも今回のISSBの開示のフレームワークであるインテグレイテッドシンキング、IRに資するものであるというふうに考えますので、具体的な場所についてはそういった前提でさらに御検討をお願いしたいと思います。

 それから、3点目の人的資本についてです。厚生労働省、その他でいろいろな開示を要求されて、実際に開示されているわけですけれども、これはあくまでも、投資家にとって価値創造の具体的な進捗が見えるような項目ということに絞っての開示がよろしいのではないかと思います。

 その他の指標、開示の数値につきましては、様々なレポート、様々な報告書を見ることによって確認可能ですので、有価証券報告書においては、あくまでも、価値創造に直接繋がる部分、価値創造に資するアクションは様々取られておりますが、直接的に価値創造につながるデータに限定していくべきではないかと思います。具体的な項目は、既に海外の投資家、海外の企業のレポートに、かなり共通の項目として出ておりますので、それらを参考にすると良いと思います。

 それから、4点目ですけれども、有価証券報告書における将来情報に対する罰則についてです。金融庁から既に将来情報の罰則についての意見は出ているにもかかわらず、なかなかこれが浸透していないというのは、財務情報に対する罰則規定を企業ももう念頭に置いてしまっているので、なかなか、「はい、そうですか」と受け入れるのが難しいのだと思います。具体的な解釈の事例等をお出しいただくことがよいのではないかと思います。

 それから、直接本日の議論には関係ありませんが、追加のお願いです。今回、ISSBのアジア・オセアニアの拠点が日本に、東京に置かれるということですけれども、これは、アジア・オセアニアの課題をしっかりと把握して、そして、本部に対して提案していくという立場ですので、運営、事業の焦点が日本中心にならないように、しっかりとアジア・オセアニアの様々な状況が反映する人的多様性に十分留意をいただきたいと思います。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次は、中野委員、佐々木委員、上田委員の順になると思いますので、中野委員、どうぞお願いいたします。

【中野委員】

中野です。よろしくお願いいたします。5点、申し上げます。

 まず、事務局説明資料42ページのご議論いただきたい事項(2)サステナビリティ情報の「記載欄」についてですが、注1の「詳細情報については任意開示書類を参照可能とする」という御提案は、有価証券報告書に重要かつ本質的な情報を記載した上で、詳細な情報は適切に参照できるように紐付けるということですので、情報の体系化の観点から適切な扱いであると考えます。

 2点目といたしまして、事務局説明資料43ページ、45ページのご議論いただきたい事項(3)と(5)のサステナビリティ情報に対する保証についてですが、当該保証は国際的に見ても不可避な状況にあることは間違いないので、中期的な課題として検討していくことに賛成します。

 そのことに関連して事務局説明資料16ページの「記載欄」についてですが、同記載欄は「第5【経理の状況】」とともに、今後保証の対象になるという方向性だと思いますので、場所はともかくとしても、案2のように、「第5【経理の状況】」と並列させるような位置付けとするのが妥当と考えます。

 3点目といたしまして、事務局説明資料43ページのご議論いただきたい事項(3)の「人的資本・多様性」ですけれども、「人材育成方針」と整合するように、インプット/アウトカムの設定及び開示を求めていくという方向性については賛成します。その上で、アウトカムについて、各社が採用する指標に加えまして、企業間の比較可能性の観点からは、通常、付加価値に基づく労働生産性が最も標準的な指標になるはずです。そうすると、現在、各社の付加価値及びそれに基づく労働生産性が計算できない状態になっているので、事務局説明資料38ページに御記載いただいているとおり、日本基準適用企業についても、IFRS適用企業と同様に、連結ベースの人件費の開示、これは「従業員給付費用」ということになりますけれども、当該開示が必要であると考えます。

 4点目といたしまして、事務局説明資料44ページのご議論いただきたい事項(4)、特に「男女別給与等」を開示することに、私は賛成します。事務局説明資料27ページにおまとめいただいているとおり、1999年までは有価証券報告書の提出会社、すなわち親会社ベースに開示されていたのが、2000年に連結中心の開示制度に移行して以降、「従業員数」については連結ベースでセグメント別に開示するようになったのですけれども、「給与等」については連結ベースの開示に移行できていない状態が続いているというのが私の理解です。

 したがって、ここで「男女別給与等」の開示を復活させるのであれば、「従業員数」と同様に、連結ベースでセグメント別に開示するというのが現在の開示体系と最も整合するはずですので、当該方法を採用するのが最も適切と考えています。

 最後に5点目といたしまして、サステナビリティ情報の開示に関して、事務局説明資料にはない問題について指摘させていただきたいのですけれども、EUでは、多国籍企業がどの国で利益を上げたか、またどの国に納税しているかということを示す「国別報告書」の開示が義務付けられようとしています。新聞報道によれば、日本企業の中にはサステナビリティ情報として既に同様の開示を行っているところが一定数存在するということであります。

 日本企業による事業のグローバル化が著しく進展している状況下、どの国で利益を稼いでいるのか、私はこの点について企業価値の観点からも重要性が増しているにもかかわらず日本企業における同開示は最近10年間で非常に後退したという認識を持っています。加えて、適切な納税行動を取っているか否かも企業価値を左右する要因になってきています。これらの点から、私は、日本においてもサステナビリティ情報として、EUの「国別報告書」の開示を念頭に置いておいたほうがよいのではないかと考えている次第でございます。以上です。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】

佐々木でございます。よろしくお願いいたします。まず有価証券報告書に「記載欄」を設けるというところ、非常にいいと思ってございますし、気候変動の関連でございますけども、4つの柱の中で、「ガバナンス」ですとか、あるいは「リスク管理」について開示するというのは非常にいいと、妥当であると思ってございます。企業が自社にとって重要性があると判断しているいくつかの項目ですとか、そういったものの重要性そのものについては、実務的には非常に悩ましい問題をいつも抱えますので、この辺りについては、その重要性の考え方を明確にしていくべきだと思ってございます。

 次に保証の関連でございますけれども、開示基準そのものも国際的にまだ確実なものがないということでございます。将来的には保証は必要だと思ってございますけども、現段階では、まだそこまでいっていないということで、この中長期的な検討課題にするということについては非常に賛成でございます。

 海外で、IAASBで保証についての議論、検討が始まっているということを聞いてございますので、やはり日本としても意見を発信していくべきじゃないかと思ってございます。

 それから、人的資本の関係でございますけれども、企業の持続的な価値創造の基盤ということに人的資本があるということは理解できますので、開示を進めていくという方向性はいいかと思います。ただ、「人材育成方針」ですとか、「社内環境整備方針」、こういったものにつきましては、業態によっても違いますし、各社各様であるということでございますので、各企業の実情に応じて開示していくということは認められるべきだと思ってございます。

 また、こういった開示そのものは、やっぱり段階的に進めていくべきじゃないかなと思いますので、例えば、プライム市場の上場企業からということも1案ではないかと思ってございます。

 それから、ここに記載の女性管理職比率ですとか男女別給与等々、こういったものについて開示を求めるという場合は、やはり他の法令でも開示が言われてございますので、その内容と整合性を図るべきだと思ってございます。

 それから、将来情報に関してですけども、藤村委員がおっしゃったとおり、様々な前提を当然置いてございますので、そういったものについて虚偽記載と言われると非常に困るということになりますので、この辺りの免責される部分について、どういうふうなものかをできるだけ明確化をお願いしたいと思います。「一般に合理的と考えられる範囲」ということがもう少し分かりやすくというか、明確になればという意味合いでございます。

 それから、その他の任意開示書類の参照ということは非常にいいと思ってございます。三瓶委員がおっしゃったとおり、期日という意味でいきますと、財務情報も非財務情報も同じ時点であるべきだというのは非常によく分かります。開示される時点も一緒というのが一番いいのですけれども、現在でも多くの企業が財務情報よりも何か月か後に非財務情報を出しているという実情もございますので、それはやっぱりある一定期間、ある程度は作成時点の差は認められるべきであると思ってございますし、その辺りもガイドラインで示していただければと思ってございます。

 それから、ロードマップに関してですけれども、ここはぜひお願いしたいと思います。現在はサステナビリティの中でも、気候変動ですとか人的資本といったところに議論が集中しているわけですけれども、今後は生物多様性ですとか自然資本、あるいは先ほど中野委員がおっしゃった税務の観点も今後出てくるだろうと思います。こういったものもロードマップを示すことによって、我々作成者がある一定の準備ができるような形にしていただければと思います。私からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、上田委員、どうぞお願いいたします。

【上田委員】

御指名ありがとうございます。上田でございます。よろしくお願いいたします。私からも、本日は論題が大変多いのですけれども、4点、できるだけ簡潔にお伝えさせていただきたいと思います。

 まず男女別給与の開示についてでございます。これは事務局説明資料27ページにあるように1999年の改正当時には、これが廃止されたということですが、恐らく当時はこの問題は企業価値に影響を与えるという認識が全く普及されていなくて、むしろ連結情報あるいはセグメントごとの情報開示というところの透明性、こちらに重点が置かれていたのだと思いますが、ただ、現状、現時点で男女別給与の開示というのは、ダイバーシティの問題が重要になっただけではなく、ある意味、とても評価しやすい指標の1つでもあるということで、グローバルにかなり定着しているということですので、上場企業において有価証券報告書上、今回、課題とされる数値・指標になるということについては賛成いたします。

 ただ、これは注意しなければいけないのは、海外では、これは決して企業価値ではないところが背景にあったという違いもあるのかなというところです。私はちょうどイギリスに駐在していたときに、イギリスでジェンダーペイギャップの導入というものがあって、これが比較的、世界でも先行事例の1つであったかと思うのです。この背景というのは、Brexitに基づいた経済社会格差の是正。その前提として、まず所得是正、分かりやすく男女の是正といったところが争点となって、政治的に解決、社会的に解決すべき課題であるといったところが背景かと思いました。

 したがって、こういったことを含めますと、必ずしも上場企業に含まれるだけの話ではないと思いますので、現在、厚生労働省のほうで、女性活躍推進法においても御議論されているということであるとするならば、ぜひ日本全体でこういった取組みが見える化されるともっといいなと。特に上場企業については投資家に提供されるとよいなと思っております。

 第2点が、将来情報に関する記載と、提出後の事情の変化に関してです。これも今までいろいろな委員もおっしゃっておられたかと思うのですが、これをあまり硬直的に考えると大変保守的な有価証券報告書になってしまって、その結果、数字だけが出てくると。女性の管理職比率の数字、あるいは男女別給与格差の数字ということで、これはサステナビリティにおいて、こういった数字というのはそれだけではあまり意味を生まない。むしろその背景にあるところというのが大変重要になるかと思います。

 こういった企業に、より勇気をもって開示を促すためにも、ぜひ合理性があるという範囲で、精査された上で出てくる情報だと思いますので、企業が開示しやすくされるように、従来はパブコメに対する回答という極めて控え目な説明だったかと思うのですが、これをぜひ前面に出して、今後、広報活動等をされて、企業、投資家、両方に伝わるように活動していただければと思います。

 第3点目、これは事務局説明資料最終ページに関して全体的なところになりますが、概念図が書かれています。これは大変重要な絵、概念図と理解いたしました。今、少しお伝えしたとおり、数字だけ出すのはある意味簡単です。女性の管理職比率だけ出す。そうではなくて、その背景にある戦略であるとか、それを支えるガバナンス、こういったものがあって、初めてこういった数字が価値を生むのではないかと思います。

 したがって、この絵は、上からサステナビリティ共通項目として4つ、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」、そういったところが下に流れていって、より具体的に追加として書かれているような比率等を出してくる。この絵の描き方はすごく重要だと思っていまして、下から確実な数字をつくって、そこから全体像へ話をつなげていくということをすることがないように、ぜひこの上から下に落ちていっている、大きな戦略から小さな結果としての数字が出てくるという、この流れをしっかりと広めていただきたいと思います。

 最後、これは少し本件と離れるかもしれませんが、ISSB等への働きかけをどうするべきか、どうあるべきかという点です。私、外野からのコメントなので、観点が外れていたらお許しいただきたいのですが、本日のお話を伺っていますと、どうも隔靴掻痒というところ、核心のところへなかなか届いていないのかなという感じで、距離があるのかなと感じていました。

 私が以前、ロンドンに駐在していたときには、IFRSのマネジメント・コメンタリー・コンサルティブ・グループのところに入れていただいていたのですが、その際に見ていた限りでは、FRC、ロンドンの当局とロンドンに拠点のあるIFRSは大変緊密にしていて、ほぼ関係者に近いと。だから今回も英国のFRCがISSBのプロトタイプに基づいて既にコメント、そして、具体策も出している。こういった関係性があるのだと思います。

 当時、日本人というと、事務局に会計士の方が出向されておられました。もちろんボードにももっと上の委員の方もたくさんいらっしゃるのですけれども、スタッフが実質的に作っているなと感じましたので、ぜひ、スタッフレベルと言うのでしょうか、事務局のなかに金融庁の方であるとか、開示当局の方を送り込むと。東京のアジア・オセアニアオフィスが継続するとのことですので、こういったところで関係性をつくるといったところも必要なのではないかと思います。

 例えば韓国だと、韓国の金融監督庁の開示担当者が出向していたりして、いい取組みだなと思っていたところもありますので、そういった面を含めて、ぜひ金融庁、政府としてお取組みいただけるとありがたいなと思いました。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットの順番で、次は、井口委員、高村委員、清原委員の順になると思います。井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】

よろしくお願いします。まず、事務局の方、御説明ありがとうございました。事務局説明資料41ページ以降の論点に沿って意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 最初に、事務局説明資料42ページの具体的な取組みという黒丸のところですが、「記載欄」を設けるということについては賛同いたします。記載場所ですが、ちょうど事務局説明資料16ページの図で言いますと、案1がよいと思っております。また、今回対象となる有価証券報告書で開示されるサステナビリティ情報は、企業価値あるいはビジネスモデルと深く関連する情報と理解しておりますので、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の近く、具体的にはその下がいいのではないかと思っております。そうすると、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】で企業の状況、ビジネスモデルを理解して、その後、これらに関連するサステナビリティ課題を理解するといった形で読めると思っているからです。

 次の論点ですが、以前の当ワーキング・グループのサステナビリティの議論にもありましたように、私も原則、「ガバナンス」、「リスク管理」を全ての企業が開示して、重要性の観点で、「戦略」、「指標と目標」を開示するということでよいのではないかと思っております。

 ただ、藤村委員もTCFDの論点でおっしゃっていましたが、現状、ISSBから出されておりますプロトタイプでは、私の理解が正しければ、重要度にかかわらず、全て開示するということになっておりますので、近々出されると言われております市中協議案や最終基準がどのようになるかということによると思いますが、プロトタイプがそのまま基準化された場合というのは、ISSBの基準を採用した企業は対応できなくなるおそれもありますので、「戦略」、「指標と目標」の開示については、重要性での開示を原則としつつ、それにかかわらず開示することも可能とする余地を残しておいたほうがよいのではないかと思っております。ただ、ISSBの基準でも、気候変動の事項が重要ではない場合、最初のガバナンスから気候変動については開示しないということも可能とは思いますが、現状、決まっておらず、何とも言えませんので、そういうリスクを指摘したく思っております。

 その下の注1の2つ目の矢印のところとなりますが、私も前回のワーキング・グループで申し上げましたように、重要な情報というのは、有価証券報告書で一覧できるとともに、計算などの詳細な情報は、任意の報告書で参照できるような仕組みが簡潔性の観点で望ましいではないかといったことを言ったという記憶があります。

 ただ、一方、資料にあります投資家の判断に必要な情報開示を有価証券報告書にというとことになりますと、例えば将来的にISSBやSSBJで策定される基準で示される要求項目というのは、これは全て投資家にとって重要な情報になると理解しておりますので、そうすると、どのような情報が任意の報告書で参照可能かということになってくると思います。今後、最終報告書とかにまとめられることになると思うのですが、明確化といいますか、より分かるようにする必要があるのではないかと思っております。

 続きまして、事務局説明資料43ページのSSBJの役割のところとなります。私自身もSSBJの委員ですので、コメントしづらいところもあります。コメントさせていただければと思います。

 最初の矢印のところにあります、SSBJが日本における開示基準の検討を進めるということはそのとおりだと思っています。先週、ちょうど海外機関投資家団体のICGNのリポーティングのパネルに登壇させていただいたのですが、そのときにSSBJの話をしましたところ、多くのポジティブなフィードバックをグローバルな投資家からも受けましたので、早期の対応というのは、日本の資本市場の地位向上に寄与する、あるいは、寄与したのではないか、と考えております。

 2つ目の矢印のSSBJの役割の明確化というところですが、基本的には、SSBJの役割というのは、ISSB基準に基づいて、ビルディングブロックアプローチで、ただ、小林委員が強調されたように、ISSB基準と同等性を維持しつつ、日本基準を策定していくということになると理解しております。

 この基準の策定において、資料に掲載しておりますように、基準の法的な位置付けの明確化ということは極めて重要と思っています。そもそもどういう基準をつくるかというところが会計基準のように定められていないとすれば、SSBJでの具体的な基準策定も非常に難しくなってくると思いますので、法的な位置付けの検討というのも鋭意進めるべきではないかと思っております。

 また、有価証券報告書に掲載されるサステナビリティ情報というのは、SSBJ基準に基づいた情報と、SSBJの全般的な考え方に基づいた情報の2つが今後、長い間、並存するという形になりますので、先ほど会計基準と同じような法的な位置付けと申し上げたのですが、会計基準とは違った定め方になるのかもしれませんが、どちらしても、基準策定ということになってくると、やはり法的な位置付けというのは極めて重要と考えております。

 その下の中期的な課題というところで言いますと、サステナビリティ開示の保証の在り方のところとなりますが、サステナビリティ情報というのは、投資家にとって、皆様がおっしゃっているように、非常に重要な情報で、今後さらに投資判断において重要な情報になると思っておりますので、保証は重要と思っています。

 一方、保証の在り方というのは、サステナビリティ基準の策定にも大きく影響する可能性がありますので、IAASBなどの国際的な保証基準策定に影響力のある団体に対しても、中長期的に、継続的に意見発信していくという必要があるのではないかと思います。

 また、財務情報等のコネクティビティを維持したサステナビリティ情報の保証ということになると理解しておりますので、今後、そういう意味では、監査法人の働きが期待されると思っております。そういう意味では、既に会計士協会の方ではやられていると思いますが、会計士に対する啓蒙活動、それに加えて、サステナビリティ情報の保証がスムーズに行われるように、公認会計士法における監査法人の在り方の検討なども新しい企業報告の時代に備え、中長期的に進めていく必要があるのではないかと考えております。

 最後、事務局説明資料44ページの多様性のところとなります。弊社もそうですが、今年くらいから各運用会社とも女性の活躍という要素を議決権行使にも積極的に取り入れていくという動きが強まってくると思っております。そういう意味で言いますと、これはもう三瓶委員、あるいは近江委員もおっしゃっていたことですが、単体の情報でも意味がないとは言わないですが、大企業、グローバルで活躍されているような企業になりますと、単体の割合というのは極めて小さくなる一方、投資家は連結ベースで見るということで、この情報の有用性が薄れますので、連結ベースでの女性の活躍の情報について、どう対応していくのかということは大きな課題として残ると思っております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、高村委員、どうぞお願いいたします。

【高村委員】

ありがとうございます。主にサステナビリティ情報の開示について、4点、発言させていただきたいと思っております。

 まず事務局説明資料16ページのところで、新しい枠組みについて示していただいていると思うのですけれども、私自身は、事務局の御提案と御趣旨は同じだと思っておりますが、御議論も伺っていて、考え方あるいはその説明の仕方を確認させていただき、言い方を変えると明確にさせていただければと思っております。これがまず1点目の趣旨でございます。

 何かといいますと、事務局から御提示いただいているように、サステナビリティ情報の開示項目としては、「ガバナンス」、「リスク管理」、「戦略」、「指標と目標」という4つの項目を置くと。ただし、その「戦略」、「指標と目標」については、この間の議論にもありましたように、各企業がその記載内容について、マテリアリティを踏まえて記載するということだと理解します。

 つまり、「ガバナンス」、「リスク管理」は、開示必須項目であり、「戦略」、「指標と目標」は、開示するかどうかは全く、開示する企業に委ねているというものではないという理解であります。これは、これまでもありましたISSBの議論もそうですし、本日御紹介あった米国のSECもそうですし、こうした諸外国の議論とも合致する考え方かと思います。

 改めて申し上げている趣旨というのは、いわゆる開示の項目と開示の内容、そこで求める開示の内容について、ある意味では分けて議論する必要があるようにも思っております。つまり、ここで4つの項目というのは、開示する項目として、枠組みとしては、しっかり開示項目であるということを明確にした上で、場合によっては「戦略」、「指標と目標」については、先ほどの議論にあるように、マテリアリティに応じて、記載がない場合もある。しかし、そのときに、「戦略」、「指標と目標」の項目においてマテリアリティを考慮して、特段の記載はないという情報を開示していただくこと自体が非常に重要ではないかというふうに思っているからであります。

 そういう意味で、開示の項目と、そこで開示される内容がどういう条件の下で、何を開示するのかということを少し分けて明確にし直すことが必要ではないかと思っての発言でございます。これはSSBJ設立準備委員会でもISSB対応で議論させていただいておりますけれども、開示の項目と、そこで開示する内容、あるいは開示するときの条件というのを明確に分けて議論することが必要ではないかという問題意識を持っております。これは事務局の御趣旨の確認でもございます。

 それから、2つ目でありますけれども、サステナビリティ情報開示の進化性、拡張性にどう対応するかという論点があるように思っております。これは事務局説明資料13ページのところで「将来的に取り込み」という形で書いていただいておりますが、恐らく具体的にはISSBのところで議論しているテーマ別、当面は恐らく気候変動が最も早く、可能性が高いと思いますけれども、こうしたテーマ別の情報開示項目についてもやはり将来的にそれが、何が有価証券報告書上、開示される必要があるかという議論を踏まえた上ではありますけれども、こうしたテーマ別の情報開示についても取り込まれる可能性があるということだと理解しております。

 これをどういうふうに、通常、恐らくこれまでの財務情報と違っていると思いますのは、まだやはり、ある意味で、マチュアでないところもあり、これから進化もしていく、場合によって拡張していく可能性があるサステナビリティ情報開示について、どういうふうに法定開示の中に取り込んでいくかという点を、少し大きな観点でございますけれども、課題としては認識する必要があるかと思っております。

 3点目でありますが、他の委員の方からも御意見があった点でありますけれども、いくつかはやはり制度の運用に関わる論点について、遅滞なく議論を進めることが必要ではないかと思います。今、開示の項目あるいは開示の内容について議論しておりますけれども、実際に開示の質をどうするか、あるいは企業の負担をどう考えるかという点においても、具体的にその制度をどのように適用していくかということを、少し議論を遅れずに始めることが必要ではないか。

 もう既に出されている論点と重なるところございますけれども、1つはやはりこうした開示の方向性を決めたものをどういう対象に対して、どういうタイミングで適用していくか。例えば本日紹介いただいたアメリカのSECもそうかと思いますけれども、企業の規模によって、あるいは、それによって情報の開示の範囲は同じなのかどうか。あるいは、それはどういうタイミングで適用を始めるのか。こうした制度の適用のフェーズインの仕方についても議論が必要かと思います。

 これは事務局説明資料45ページで、事務局が「ロードマップ」と書いてくださっているのは、そういう御趣旨かなと思いますけれども、やはり開示をする企業の予見可能性という観点からも、この論点は遅くなく議論を始めたほうがよいかと思います。

 もう1つ同じような点は保証の点でありまして、多くの委員からもございましたけど、やはり開示の負担についても、開示の質についても、この保証の在り方を切り離すことができないと思います。恐らくサステナビリティ情報は、これまでの財務情報とかなり質が違う情報も入っている。保証あるいは情報の適切さを評価するに必要とされる知見も異なってくるとすると、開示の内容の中で、何を保証の対象にするのか、それから、誰が保証するのか。

 先ほど井口委員からもありました、能力構築の問題も含めて、これはやはりかなり急いで検討すべき論点ではないかと思っていまして、事務局は中期的な課題として位置付けていただいていますけれども、むしろ、開示の内容の議論と合わせて並行して議論する論点ではないかと思っております。

 最後でありますけれども、いずれにしても、この議論の目的は、投資家の適切な企業評価に資する開示の充実であると思っていまして、既に有価証券報告書上、どう開示するかということと合わせて、どういうふうに適正に開示が進んでいくかということのためのガイダンス、指針あるいは支援と切り離せないというふうに思っております。

 さらに先ほど言いましたように、開示の要求事項も、あるいはそれに伴う方法論も、指標も、まだこれから進化、あるいは拡張していく可能性がある中で、金融庁はもちろんでありますけれども、経済産業省、環境省などと連携して、今までも進めていました開示の充実の施策をうまくこのタイミングで進めていただきたいということを要望いたします。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に清原委員、どうぞ。お願いいたします。

【清原委員】

ありがとうございます。清原です。既にたくさん御意見いただいているところで、残り時間も少なくなってきていますので、ご議論いただきたい事項(5)、事務局説明資料45ページのところから意見を述べさせていただきたいと思います。

 最初の、将来情報についての虚偽記載の責任の関係ですけれども、先ほど何人かの委員から御意見がありましたが、既にパブコメで表明されている考え方をベースとして、さらに一歩明確化を進めるところについて、少し意見を述べさせていただきたいと思います。

 これまでに示されている考え方とこのページにある整理との間に少し違いがあると思われるところとして、事務局説明資料45ページのところでは、「提出日現在において、将来情報の記述の前提等について」とあり、記述の前提等に言及されているところは重要なところかと考えております。

 事務局説明資料18ページのところで、パブコメにおける質問は「例えば、当該リスクが顕在化する可能性の程度が低いと記載していたにもかかわらず、当該リスクが顕在化した場合等」についてはどうか、としており、質問の中で例示があるのですけれども、1つ目として、「当該リスクが顕在化する可能性の程度が低い」という形で、いわば断定的に、前提情報などの記述もなく記載されている例示があるのですが、そのようなものだとすると、投資家はそこの記載に対して警戒することもなく、そういうものだと受け取ることになるおそれもあるので、ここは投資家に誤解を与えないために、確定したわけではない将来情報なので変動する可能性があるということがしっかりと示されるということ、それがやはりまず第1点目として重要ではないか。

 すなわち、誤解を与えないような記述であるために必要な事項として、やはりここは将来情報だということが明示されて、投資家に注意を促すものになっていること、そのうえでその情報がどのような前提に基づいたものであるか、これはまさにここの「ご議論いただきたい事項」のところに記載されている点と申し上げたところですけれども、不確実性、変動する要素があるとすると、その要素、要因がどういうものか、ここを投資家もやはり情報として知ることにより、その情報を判断するうえで必要な情報、ベースという情報が得られることになると思いますので、前提情報について、企業が考えている不確実性の変動要因等について、分かりやすく説明するという意味で、具体的な記述といったことが必要になってくると考えます。

 次に、特に前提に関して、仮に、社内で、その内容について検討していたところとは整合的でないような記載がなされているようなときにまで、合理的な記載とは言えないのではないかと考えられますので、合理的な範囲で説明されている場合ということを考えていく上で、検討プロセスも含め、また、社内での検討事項との整合性をも含め、そういったことの関係で合理的といえるための事項というものをガイドラインなどで示していくことが必要であり、それは開示の質を高めることにつながるし、企業が萎縮をせず、こういうところまでやっていれば責任を問われることがないことが分かりやすく示されることで、開示が促進される、そのような方向に進むことになるのではないかと考えるところでございます。

 2つ目として、ご議論いただきたい事項(5)の2つ目にあるサステナビリティ情報に対する保証についてですが、保証については、高村委員などからご意見が述べられておりますように、サステナビリティ絡みの情報は多岐にわたるということもそうですし、また、必要となる知見ということがいろいろと違ってくるということもあると思いますので、短期間ではこの問題に決着をつけにくいものであり、また、海外での議論の進捗というものを抜きに、日本だけで先に中身を固めることができない問題ということでもあると思われますので、中期的な検討ということはやむを得ないものだという点があると思います。他方、ここの保証についての考え方やルールというものが何ら明確にされることがない状況のまま、開示ばかりが進んでいく、時間が経過していくことも適切ではないですので、暫定的にであっても、どういったことが対外的に開示されることを確保しておくべきか、そういったことも考えておくべきではないか。例えば、少なくとも、どういう保証主体に保証を求めているのか、ルールに基づかずに任意での保証を求めるような場合に、保証主体などについての情報、企業との関係での独立性ですとか、それから、そういった人たちの資質ですとか、開示しておくことが望まれる事実関係などの情報というものについて、考え方を整理しておくこと、そういったことは必要なのではないかと考えるところであります。

 次に、3番目のロードマップのところについては賛成であります。

 その他に「検討すべき事項があるか」ということに関連して、1点、追加的にコメントしたいところとして、今回、気候変動以外のところで言うと、人的資本・多様性、それはかなり具体性を持った形で、「ご議論していただきたい事項(3)」にも記載されているところでありますが、ここのところで、最近、政府の方針として、取りまとめる方向で議論がされているサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドラインがあり、今夏に向けて整備されるということであろうかと思いますので、サプライチェーンの問題についても少し検討しておくことがいいのではないか、と考えております。

 それから、人的資本・多様性。事務局説明資料43ページの下段のところになりますけれども、そこのところで、「人材育成方針」、それから、「社内環境整備方針」といったものが、やや限定的に書かれているところがありますので、これらは例示だということをもう少し明確にしていただいたほうがいいのではないか。

 あとは、海外では、EUをはじめ、ビジネスと人権という考え方について、国連の指導原則を踏まえて、各国で具体的な取り組みが広がっているところでもありますので、やはり人権尊重責任ということについて、環境整備のところにも関わる問題ではないかと思われるところでもありますので、人的資本そのものではないとしても、それに隣接するものとして、重要な開示項目になってくるのではないかと考えるところであります。そういったことをも踏まえて、開示項目の整理がなされるとよいのではないかと考える次第であります。以上であります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、田代委員、熊谷委員、そして、藤村委員の順でお願いします。田代委員、どうぞお願いします。

【田代委員】

よろしくお願いいたします。私のほうから3つお話しさせていただきたいのですが、1つ目はIFRSのISSBに関しまして、もともとの趣旨は、乱立している開示ルールを何とかして集約したいというところだと思います。今後TCFDやSEC、EFRAGなどの議論をどこまでまとめられるかというのは課題ですが、そういった中ですので、先ほど藤村委員もおっしゃっていた4つの柱のうちの2つだけ義務という趣旨ではなく、高村委員のおっしゃっていたような、4つとも開示しなければいけないが、企業の重要性の判断によって該当しないという考え方にしないと、例えば人的資本の項目が増えていった場合、人的資本がマテリアルではないという企業はないと思いますので、そういった観点から、先がけしてやはり4つともマストにする必要があるのではないかと思います。

 2つ目が、人的資本のところですけども、このテーマこそ日本独特な環境やその中での慣習が多くある中で、投資家に対して日本の企業が開示すべき内容は、恐らく欧米と大分違ってくるのではないかと思います。

 例えば流動性の問題というのは、日本でもかなり流動的になっておりますけども、欧米で議論されることは全くありませんし、定年退職についても、日本特有の事象かと思います。そんな中で、何を開示して、何が大切かということに関してはかなり議論を要するのではないかと思います。

 その観点から、何人かがおっしゃっていたと思うのですけども、事務局説明資料44ページの単体ベースでの開示という箇所につきましては、現在の日本の働き方において、一定年齢を過ぎたら子会社に行くというのが、多くの企業で見られる慣習であれば、そういった観点からは、これは単体ではなく、連結ベースにしないと、投資家にとって有用な情報にならないのではないかと思います。逆に単体のままにすると、メッセージ的には非常に、投資的メッセージではないとなってしまうのではないかということを危惧しております。以上、3点、お話しさせていただきました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、熊谷委員、どうぞお願いいたします。

【熊谷委員】

ありがとうございます。残り時間もあまりないようでありますので、極力簡潔に申し上げたいと思います。有価証券報告書、それから、SSBJの在り方、人的資本、多様性、それから、その他について、それぞれ簡潔にお話ししたいと思います。

 有価証券報告書における開示、「記載欄」を設けて、TCFDの「ガバナンス」、「リスク管理」、「戦略」、「指標と目標」の開示の仕方ですね。これについては賛成しております。

 高村委員、あるいは田代委員の御発言のとおり、「戦略」、「指標と目標」も開示を求めたいというのはそのとおりかなと思うのですけれども、SECのルールを見ておりましても、「ガバナンス」、「リスク管理」については、強制開示である一方、「戦略」、「指標と目標」に関しましては、重要性があったりとか、目標があったりというときに開示を求めるという形になっておりますので、現在、議論している開示の在り方というのが国際的にも、劣後しているというふうには思いません。

 むしろ、ISSBのこれから公開質問が出てきましたときに、この辺りの開示を全て強制開示にするのか。あるいは、コンプライ・オア・エクスプレイン的な対応でいくのかというようなことは、むしろISSBに対する意見発信の中で求めていくべきことじゃないかなと思っております。

 任意開示については、有価証券報告書が一般的にはまさにベースラインの開示を決めるということに対して、任意開示は、そういう規制を働かせるということだと思うのですけれども、既に有価証券報告書においても積極的にサステナビリティ関連の開示を行っているような企業もあると思います。一般的にはやはり統合報告書等に記載されているのだろうと思いますけれども、記述情報の好事例集などを活用して、有価証券報告書において、個別企業の創意工夫あふれる自主開示を促していくというのもありかなと思っております。

 そういう中で、ある種の相場観といいますか、プラクティスが形成されてきますと、先ほどの将来情報、やはりこの手の情報というのは将来情報も含み得ると思いますし、そういう中で、実務が積み上がることによって、将来情報をどこまで書けるかというような相場観のようなものが形成されていくのではないかなと考えております。

 それから、次に、SSBJにおける議論の進め方、あるいは在り方と言ったほうがいいと思いますけれども、これについては、まさに今のTCFDの気候変動の改定について、ISSBの基準というのが全て開示を強制するというふうに、今のところ読めるという形になっております。

 そうしますと、やはり今回、このディスクロージャーワーキング・グループで決めた開示の在り方とISSBの基準の在り方というのがずれてくるという可能性があると懸念しております。ISSBの今回の基準というのは、グローバルベースラインを提供するということで、上乗せすることはできるけれども、削除できないという形になっておりますので、そうなってきたときに、じゃあ、SSBJのつくる基準というのは、仮にISSBの基準よりも、先ほどのTCFDの「戦略」や「指標と目標」のところにも絡んでまいりますけれども、ある種、より柔軟性を認めるような開示基準になっていった場合に、それがISSBの基準よりちょっと緩く見えると、ISSBの基準とSSBJをつくる基準の関係性というのは、しっかり議論しておく必要があるのかなと思っております。

 先ほども井口委員から法的というお話ありましたけれども、例えば会計基準の場合は、日本基準がデフォルトであって、IFRSですとかアメリカ基準の任意適用を認めている。そういうような日本基準とISSBの我が国の開示制度における立てつけというのはしっかり議論しておく必要があるのではないかなと思います。

 ISSBの基準をそもそも強制基準として適用してしまうということもあり得ると思っておりますので、ISSBの基準の詳細が決まっていないという中で、その対応方針を決めるというのは時期尚早かなとは思います。しかし、ある程度ISSBの基準の性格が固まったところで、国内サステナビリティ基準とISSB基準の関係について議論を進める必要があると考えております。

 それから人的資本・多様性、細かい論点はいろいろあろうかと思うのですけれども、ISSBに先行して開示を求めていくということになります。しかし、これは黒沼委員もおっしゃっていたかと思いますが、むしろ欧米に比べてちょっと遅れているようなところもあろうかと思います。将来的にISSB、あるいは国際的に意見発信をしていくに当たっても、やはり開示の実務というのは国内的に積み上がっているということは重要だろうと思います。それによって積極的な、説得力のある意見発信ができるのではないかなと思います。しかし先行して取り組んでいきますと、将来的に人的資本に関わるISSB基準ができてきたときに、今回の求めていくものがオーバーライドされたときにどうなるのだという議論が出てくると思います。そういうスイッチングコストなども考えますと、現在、既に今回の法律で定められているものについて開示を求めていくというのは、合理的な方向かなというふうには思います。またその一方で、それが国際的に妥当かどうかというような検証も必要になると思います。この辺りの点については、今後議論が必要かなというふうに思っております。

 そういった意味でも、企業及び投資家の予見可能性を高めていきませんと、円滑にサステナビリティ開示というのを定着させていくことは難しいと思います。従いまして最後になりますが、ロードマップについてはぜひ策定していただけたらなと思います。私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。以上で本日御参加いただいております委員の皆様方全員から御発言をいただきました。どうもありがとうございました。それで、予定の時間がちょっと過ぎていて、大変恐縮ですが、若干延長をお許しいただくことにします。藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】

大変申し訳ございません。ちょっと企業側で、今後の開示項目を検討するに当たって非常に重要だと思う点の理解を確認したいのですが、事務局説明資料16ページの任意開示書類の参照ということを事務局でいただいておりますけども、虚偽記載の責任はこの任意開示のほうに及ぶか否かということを確認したいと思います。仮に及ぶということであると、特に詳細情報にわたるのは、「戦略」のコアであるシナリオ分析と「指標と目標」が多いことになると思うのですけど、今、実務で行われているシナリオ分析というのは、例えばIEAが出した1.5度シナリオ、これは例えばガス火力発電の新規開発とか、今、直ちに停止とか、様々な非常に困難なものを前提としてシナリオを策定しています。これが1.5度シナリオということになっている。これに基づいて企業は、そうなった場合に自分の企業は大丈夫かということをやっているわけですけども、ガス火力の、例えば発電のプレーヤーからすると、今のガス火力発電の新規停止とか、それは合理的とは考えられないわけですね。そうでないと、1.5度が達成できないという規範であるというのは重々分かった上で、エネルギーの安定供給等を考えたときに、そのシナリオというのは合理的じゃないよねと。ただし、基本シナリオだし、それをもって分析しなきゃいけないということなので分析しようということで、しっかり分析して開示しているわけですね。

 そういう様々なシナリオがある。特に気候変動を食い止めるという前提の中で、必ずしも、現状の物資で考えたときには合理的とは言えないシナリオも含めて分析しなきゃいけないという状況であるわけですけども、その辺と先ほどの合理的に考え得る前提を置いたということをどう捉えるのか。仮に参照情報、任意開示が虚偽記載の責任が問われるということであるなら、そこの部分の合理性というのを次回でも結構なので、事務局のほうで少し整理していただけるとありがたいと思います。

【神田座長】

ありがとうございました。前にもそういう話が実は出ていたと思うのですけれども、この時点でもし事務局からあれば、廣川企業開示課長、お願いします。

【廣川企業開示課長】

現時点で申し上げられることをお話ししたいと思います。まず虚偽記載かどうかについて、特に法的な金融商品取引法に基づく罰則の適用などのエンフォースメントの観点から申し上げますと、基本的には私ども当局としては、法定開示書類における虚偽かどうかということを問うのでありまして、その任意開示書類について、直ちに金融商品取引法に基づく重要情報の虚偽の記載に当たるかどうかということの判断とか適用するものでは、基本はございません。

 ただ、今、藤村委員のお話を聞いていて少し気になりましたのは、シナリオの例を挙げていただいたかと思います。本日の御議論でも多くの委員の方々から、重要となる基本的な情報というのは、法的開示書類に書くべきという御意見もあったかと思います。そうした中で、今のお話のような、シナリオの根幹に関わる大事な話というのか、何らかの形で法定開示書類の記載に全く入ってこないと言えるのかどうかというところ。つまり、法定開示書類で書いている有価証券報告書の、法定開示である有価証券報告書における記載自体の虚偽が全く問われないというものなのかどうかというところは、よくよく、何を法定開示書類に書くのかというところも関わってくると思うのですけれども、そこはよくよく考えていかないと。つまり、単純にこれは任意開示書類にしか書いていない情報だからと言っても、結局そこで、任意開示書類の中で重要な誤りがあったときに、法定開示書類部分も読んだときにはそちらのほうにおいても虚偽だと考えられるような要素が出てきたりしないのかどうかというところ。ここはリンクしている以上、落ち着いて少し考えなければいけない点になってくるのではないかと。今の例をお伺いすると、そういうふうに私自身は思いましたが、そういったことも含めて御議論いろいろあると思います。いたずらに何かこう、皆さんを心配させるということで申し上げているわけではないですけれども、少し個別に即した丁寧な議論が必要かと思いました。

 その上で関連するものとして、あえて一言だけ申し上げますと、シナリオについて、規範シナリオなので、必ずしも合理的ではないというようなお話もあったかとは思うのですけれども、これは投資家の方々に対する情報提供という観点からは、どういう考え方に基づいて、そのシナリオを置いているのかというところですね。規範シナリオとおっしゃられた、そういう捉え方を企業がされているということもやはり丁寧に、シナリオの前提となる部分であると思いますので、その部分は丁寧に伝えることというのが、この虚偽記載そのものから離れてしまうかもしれませんけれども、その前提も投資家と共有されるような形での情報開示というのが望ましいのではないかと、個人的な見解で恐縮ですけれども、思った次第でございます。

【藤村委員】

ありがとうございます。任意開示の今の枠組みの中で、かなり投資家の皆さんとは意味のある対話が行われているので、そこに虚偽記載の責任ということが入って、必ずしも十分な開示にならないで、むしろ投資家とのコミュニケーションが減ってしまうというのを懸念しています。今のお考えでよく分かりますので、どこまでを有価証券報告書のほうの責任にするかというのを今後議論させていただければと思います。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それから、私からも、有価証券報告書のどこに書くかという話は、今ある項目というのですか、並び順を前提として考える必要はなくて、重複してくる項目、例えば【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】ですとか【事業等のリスク】、【MD&A】あるいは第4の【コーポレートガバナンスの概要】とかがあるので、これも歴史があって、第1があって、第2、第3、第4と来て、第2が膨張しているというような歴史があると思うのですけれども、既に存在する項目も併せて、この際、よりベターな方向があれば再編成するという視点も含めて、サステナビリティ関連の当面のもの、それから、保証という制度が入ってきた場合の話というふうに整理していただいていかれるのがいいかなと感じました。

 すみません。予定の時間を超過してしまっているのですけれども、もしオブザーバーの皆様方から御発言ございましたら承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。全国銀行協会の伊藤様、どうぞお願いいたします。

【伊藤オブザーバー】

時間も押していますので、簡潔に申し上げます。サステナビリティ開示につきましては、銀行にとりましても大変重要だと思っております。特に気候変動関連の情報開示につきましては、英国、欧州に続き、先ほども御説明ありましたとおり、米国でもSECから、相当程度踏み込んだ枠組みが示されたと考えています。

 これからいろいろ議論があり、まだ確定したものではないということですが、いずれにしましても、この金融資本市場の国際的な競争力の観点や、さらには、グリーン国際金融センター構想からも、グローバルスタンダードに即した検討をお願いしたいと思っています。

 その上で、銀行としましても、お客様のカーボンニュートラルの支援に際しましては、エンゲージメントを通じて、お客様の課題や、トランジションプランについて共通の理解を形成していく上で、開示が大変重要な基礎となっております。御存じのとおりだと思いますが、銀行自身のサステナビリティ開示の観点からも、いわゆるScope 3のファイナンスド・エミッションを算定する上で、投融資先の温室効果ガスの排出量の把握が不可欠となります。

 本日議論ありましたとおり、「戦略」や「指標と目標」は各企業が重要性を判断して開示するということ自体に異論はございませんが、投資家や金融機関にとって、この重要性は年々高まってくると思いますので、それに応じて、実際に開示が広がっていくことを期待しています。

 その関係で申しますと、本日の議題の中の「その他」にロードマップを示すことについての是非が示されていますが、ぜひこうしたロードマップの策定を検討いただき、しかるべきタイミングで、諸外国の開示動向や、投資家、金融機関にとっての気候変動情報の重要性の高まり、実際の企業のサステナビリティの開示状況などをしっかりフォローアップしながら、改めて開示義務の範囲を検討するマイルストーンを定め直すということも一案ではないかと考えております。議論の参考までに申し上げさせていただきました。私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、経団連の小畑オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小畑オブザーバー】

ありがとうございます。手短に申し上げたいと思います。まず基本的にこの開示を充実させていくという、今回、議論いただいた事項で御提案いただいている方向性については、基本的に賛成でございます。その上で、いろいろなところで、企業が重要性を判断してという説明が随所に出てくるわけですが、その重要性というのはどういうことなのかについては、きちんと定義付けしておくことが必要と思っております。例えばIFRS財団が出しているプロトタイプで定義されている内容を見ますと、当該情報を省略等したときに、一般目的財務報告の主要な利用者が当該情報、当該報告書に基づいて行う意思決定に影響を与えることが合理的に予想される場合、重要性があると、書いております。非財務情報の重要性について、基本的には財務情報と全く同じ判断基準で、財務情報について重要性があるところは見ているということが分かるわけですが、我が国でもこの重要性の観点をきちっと位置付けておくことが必要だと思っております。

 それから、いろいろ御意見が出ておりますが、ISSBの基準ができた、あるいは日本のSSBJの基準ができた後の世界と、それまでの世界では開示においても相当レベル感が違ってくるのではないかと思っております。どの時点を念頭に議論しているのかということをよく踏まえながら、短期的な話、中期的な話で分けて、議論していく必要があると思っております。

 多様性の開示の関係では、個別項目について議論が出ておりますけれども、今日のご議論いただきたい事項(4)にもございますように、企業の負担という観点から、また情報が錯綜することで混乱を起こすのを避ける観点からも、他の法律の定義、枠組みがある場合には、その枠組みに従って有価証券報告書の情報としても引っ張ってくることが重要だと思っております。私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、公認会計士協会の小倉オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小倉オブザーバー】

会計士協会の小倉です。私からは、事務局説明資料45ページに記載いただいた保証のところですけれども、中期的な課題として検討するというところについては、特段異論はございません。ただ、金融庁の有価証券報告書の開示の好事例集で取り上げていただいている中でもあるのですが、既に温室効果ガス排出量の実績等については、「保証を受けている」と記載されている事例も出てきております。

 また、企業の統合報告書では、保証を受けているケースが見受けられますので、この辺りについて「保証を受けている」と書くだけでいいのか、その保証はどういう基準によるものなのかといったところのコンセンサスが得られていないケースもございますので、そういった、先行する任意の保証については一定の検討をしていただきたいと考えております。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、連合の片山オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【片山オブザーバー】

連合の片山です。なるべく手短にお話しさせていただきたいと思います。2点、お話しさせていただきます。

 1点目、サステナビリティ開示の基準ですが、今、環境について、基準策定がなされているということですが、ESGのSの部分も検討すべきです。社会性について検討する際には、ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言ですとか、OECDの多国籍行動指針を踏まえるべきです。

 2点目ですが、女性活躍を推進する観点から、男女間賃金格差についても公表することをぜひ求めたいと思います。あと、女性管理職比率や育児休業取得率などを開示するということも必要と思いますが、これについては、パートタイム労働者ですとか有期契約労働者、派遣労働者など、いわゆる非正規の立場で働いている人たちについても対象にすべきです。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。予定の時間を大幅に超過しまして、大変申し訳ありませんでした。あっという間に時間が過ぎましたけれども、皆様方から、いつものことではありますけれども、大変貴重な御指摘を多数いただきまして、誠にありがとうございました。

 本日はもう時間の関係もあり、ここで終了とさせていただきますけれども、さらにお気づきの点等ございましたら、ぜひ事務局のほうまで、私まででも結構ですけど、お伝えいただければ幸いでございます。本日いただきました御議論を踏まえ、次回以降、さらに皆様方に議論を深めていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 最後に事務局から御連絡等ございましたらお願いします。

【廣川企業開示課長】

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様の御都合を踏まえました上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内お待ちいただければと存じます。以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局企業開示課(内線3688、2872)

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