金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第8回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年4月18日(月曜日)9時30分~11時30分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

【神田座長】
 ただいまから、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの第8回目の会合を開催させていただきます。
 皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会議でございますけれども、これまでと同様に、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、金融審議会の議事規則にのっとりまして、オンライン会議を利用した開催とさせていただきます。

 議事録ですけれども、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開をさせていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 会議を始めます前に、事務局から留意事項の説明をお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 おはようございます。金融庁企業開示課長、廣川でございます。本日もよろしくお願いいたします。

 オンライン会議につきましてですけれども、2点ほど留意事項がございます。

 1点目でございますが、御発言を希望される際はオンライン会議システムのチャット上にて、全員宛にお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名をいただきます。

 また、御発言される際には冒頭にお名前をお願いいたします。

 2点目でございますが、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いいたします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わりましたら再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。そして、本日の会議の模様ですけれども、これまでと同様にウェブ上でライブ中継をさせていただいております。

 それでは、早速ですけども本日の議事に移らせていただきます。

 本日は、まず事務局から資料の説明をしていただいて、その後、皆様に質疑応答、討議をお願いするという流れになります。

 それでは、まず事務局から資料についての説明をお願いいたします。廣川課長、よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 ありがとうございます。お手元の事務局説明資料に沿って説明をさせていただきます。

 おめくりいただきまして目次でございますが、まず最初に、本日の議題ではございませんけれども、前回、3月24日にサステナビリティの開示の御議論をいただきましたけれども、その後にサステナビリティ開示をめぐる国際的な動きがございましたので、1点御報告をさせていただきます。

 具体的には2ページ以降、4枚にわたってスライドをつけさせていただいておりますが、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のほうから、3月31日に気候関連開示基準に関する公開草案が公表されております。

 市中協議のコメント期限は7月29日までの120日間ということでございまして、今回改めて、公表されたものの概要をつけさせていただいております。

 前回御議論をいただいたときに説明させていただいたものを、前回時点はプロトタイプというものでございましたので、そこから公開草案に変わったということで、変更箇所が分かるように、例えば次の3ページですけれども、この青字の箇所ですね、こういった箇所はプロトタイプから変わっているというふうに私どもが認識したところを書かせていただいているというものでございます。例えばこちらですと、サステナビリティ関連のリスクと機会の特定に当たって、ISSB基準のほかにSASB基準など、ほかの基準設定組織が公表している最新の公表物、または同じ業種や地域で活動する他社の実務を考慮することを要求するといったような、プロトタイプからの変更点がございます。

 また、1枚飛んで5ページに行きまして、気候関連開示の関係でも、例えばシナリオ分析のところで、シナリオ分析が不可能な場合というのを想定して、代替手法を用いる場合にはその説明を求めるといったところ。あるいは、温室効果ガス(GHG)排出量につきましては、Scope 1、2のところで連結対象企業と連結対象に含まれない企業とを区別して開示をする。あるいは、一番下ですけれども業種別指標のところで、一部指標を国際的に適用可能な形に修正するといったような修正がなされて、プロトタイプからの変更がなされているといったところでございます。

 以上は御参考でございます。

 それでは、6ページですけれども、本日の議題になります。

 3つございます。「情報開示の頻度・タイミング」、「英文開示」、それから「有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載内容の関係」ということで、順に資料を説明させていただきます。

 おめくりいただきまして、次の7ページからですけれども、情報開示の頻度・タイミング、四半期開示あるいは適時開示等についてでございます。

 7ページにつけておりますのは、四半期開示の御議論をしていただきました第6回会合(2月18日)で出していただいた御意見を1枚の形に凝縮をさせていただいております。

 様々御意見いただいておりますけども、例えば一番上だけ御紹介させていただきますが、金融商品取引法の四半期報告書と取引所規則の四半期決算短信には重複が見られるため、両者を「一本化」してはどうかということについては、多くの委員の皆様方から御意見をいただいたというふうに認識しております。

 ただ、「一本化」する場合には、その下の小さな黒丸ですけれども、「開示内容や監査法人のレビュー、虚偽記載に対するエンフォースメント等の課題について、具体的な検討を進める必要がある」ということで、様々論点があるという御指摘も同時にいただいたというふうに認識をしてございます。

 今回は、次の8ページにもありますけれども、そうしたことでさらに御議論をいただこうということで、資料をいくつかつけてございます。

 8ページの実証研究、これは第6回会合で中野委員から、国内外の四半期開示に関する実証研究の説明をいただきました。それを1枚にまとめているものでございますけれども、例えば特徴的なところ、中ほどですけれども、企業の投資行動への影響ということで、特に短期主義というのが認められるのか認められないのか。認められる場合に実証研究でどういう結果が出ているのかということですけれども、そこにありますように、短期主義というのが有意な形で認められるという分析結果もあれば、認められないという分析結果もあり、また、認められるといった場合にも影響がプラスマイナス様々であるということで、検証結果は必ずしも収れんしていないということが分かっているということではないかと思います。

 9ページに参ります。先ほども申し上げました金融商品取引法に基づく四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信の「一本化」の方向性については、コスト削減等の観点から幅広い支持があったというふうに認識してございます。

 先ほど申し上げましたように、ただ、その際には開示内容、虚偽記載に対する責任、情報の信頼性等の論点があるということかと存じます。

 10ページに参ります。また、仮に「一本化」ということになりますと、四半期開示のタイミングというのが1つ論点になり得るところかと存じます。

 四半期決算短信については30日以内に開示して、四半期報告書を法定期限近くに提出する企業というのが一定数存在しているということ、これは前回も確認されていたところでございます。

 次の11ページに参りまして、四半期決算短信公表時の情報開示ということで、上場企業におきましては四半期決算短信の発表と併せて、決算説明資料ですとか決算説明会の模様等を公表するなど、任意で投資家への積極的な情報開示を行われている例があるということでございます。

 12ページに参ります。これは前回もお示ししたアメリカの例ですけど、アメリカでは、プレスリリース等で開示された企業の情報につきましては、Form 8-K(臨時報告書)の形で、SECに対してもファイリングをするということ、開示することが求められているというところでございます。

 次の13ページに参ります。四半期決算短信と四半期報告書の違い、特に虚偽記載の責任についてでございます。

 仮に四半期開示を四半期決算短信に「一本化」することになった場合でも、同じ内容を臨時報告書で開示するという仕組みとすることで、四半期報告書と同様の虚偽記載の責任を課すことというのは可能かということが考えられるということで、下のほうで、虚偽記載に対する責任について、取引所規則と金融商品取引法、どういったものがあるのかというのを示させていただいております。

 また、レビューの有無ということで、今の金融商品取引法上は、四半期報告書には監査法人のレビューがあるということでございますけれども、四半期決算短信にはそれがないということで、どういうふうに考えるかという点があろうかと存じます。

 14ページに参ります。今度は、四半期決算短信の内容と四半期報告書の記載事項の比較でございますけれども、四半期決算短信のほうが、そこにありますように、より簡易なものになっています。前回もおつけした資料でございます。

 15ページでございますけれども、経緯的には2016年のディスクロージャーワーキング・グループ報告におきまして、四半期を含む決算短信については速報としての性格に比した作成・公表の事務負担、それから記載内容の有価証券報告書の重複について指摘があったということで、それも踏まえ、速報性の観点から整理・合理化が提言されて、一定の簡素化が進んできているということでございます。

 それから16ページでございますけれども、これも今後の御議論の参考ということで、有価証券報告書を提出する非上場企業についてですけれども、非上場企業の制度がどうなっているかということですが、金融商品取引法に基づきまして、半期報告書の提出が求められています。そこには中間監査ということで監査もつくということでございます。

 17ページに参りまして、こちらも前におつけした資料でございますけれども、中間監査と今の四半期レビューでは、手続、それから証明文言の違いがあるということで、ごく簡単ですけれどもお示しをしております。

 18ページに参ります。これは参考でございますけれども、エンフォースメントの話が論点になり得るかということで、参考までにつけさせていただいております。

 アメリカSECにおきましては、年次報告書等につきましてはSECがレビューを行っております。

 一定規模以上の企業につきましては、SECのレビューで指摘された事項が年次報告書の提出時点で未解決の場合には、その未解決のSECスタッフコメントというのを年次報告書にて開示することが求められるといった制度があるということでございます。

 次の19ページに参りまして、ここからは少し適時開示についての資料をつけさせていただいております。

 四半期開示の御議論をいただくに当たって、関連するものとして、企業の側からどのような形でタイムリーに情報が提供されているのかというのは、1つ議論の材料になるというふうに考えてございます。

 そこで、改めてですけれども、まず19ページのスライドにありますのは、ごく簡単にですけれども、適時開示の仕組みについての国際比較ということでございまして、日本におきましては開示対象、それから重要性基準を定めるような細則主義を採用しているということでございますが、一方で、アメリカやイギリスでは原則主義に基づいて企業が開示すべき事項や重要性を判断しているというような仕組みになってございます。

 次の20ページに参ります。これは、新型コロナウイルス感染症拡大時、2020年の適時開示の状況でございますけれども、当時、そこの上のほうにありますように、「取引所における対応」として、東証から、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響について、積極的・速やかな開示を企業が行うように要請というのがなされておりました。

 そうではあるのですけれども、決算発表時期の到来前に適時開示を行った企業は1割程度でした。

 そのページの一番下にありますように、ただ、蓋を開けてみますと、3月期決算会社の第1四半期決算において、半数以上の企業が前年同四半期比で30%以上の減益になっていたということが開示されておりまして、結果的に、それよりも早いタイミングでの適時開示というのは必ずしも十分に行われていなかったということが確認できているところでございます。

 21ページに参りまして、同じ2020年頃の話ですけれども、他方で、企業会計基準委員会(ASBJ)から、会計上の見積りに用いた仮定を具体的に開示するように周知というのもなされており、また金融庁におきましても充実した開示というのを企業側に要請をしたという経緯がございました。

 これを踏まえて、有価証券報告書ですとか四半期報告書では一定の開示が進展していたということで、一番下にありますように、約7割8割の対象企業が開示をされていたということは確認してございます。

 また、22ページに参りまして、足元の適時開示ということで、ロシア・ウクライナ情勢ですけれども、これを踏まえてということで、今回も東証でロシア・ウクライナ情勢が事業活動等に及ぼす影響、それからリスクの丁寧な説明をしていただくよう、企業側に要請を出しておられます。

 日本企業の開示例というのは、しかしながら必ずしも多くないという指摘もなされてございます。

 次のページに参りまして、そういった中でも、ロシア・ウクライナ情勢の影響について開示をしている事例ということで、この日本企業、今回は参考までに日立製作所の例をつけさせていただいておりますけれども、それから24ページで、海外の例ということでDeutsche Bank AGと、それからBritish American Tobacco p.l.cについての適時開示の例をつけているということでございます。

 以上が、情報開示の頻度・タイミングに関してでございました。

 次に、25ページ以降は英文開示についての資料でございます。

 26ページを見ていただきまして、英文開示に関しては、前回の2018年6月28日に報告書を取りまとめましたディスクロージャーワーキング・グループにおきまして御議論をいただいた上で提言をいただいているということでございます。その中には、英語情報については、EDINET等の公共的システムへの掲載が情報ベンダーによる情報提供につながり、実務上有効という御意見などもあったという中で、3つほどですけれども御提言を前回はいただいておりまして、1つは、下のほうの黒丸なんですけども、EDINET上の情報について、システム上、一定程度英訳を進めるという提言。それから2つ目ですけれども、金融庁のウェブサイトで有価証券報告書の英訳を実施している企業の一覧を公表するという提言。さらに一番下ですけれども、英訳された有価証券報告書をEDINETの英語サイトに掲載することを可能とするという提言でございます。

 現在の金融庁における取組みというのを、次の27ページでお示ししております。

 このうち2つ取組みをしております。この27ページの右側になりますけれども、1つ目は、日本語で提出された書類につきまして、利用者の方、閲覧者の方が、ブラウザの翻訳サービス等を利用して、英語に仮訳できるような、そうしやすいような環境というのを、今、構築作業中の次期EDINETシステムにおいて提供するということを予定しております。

 また2つ目、下側ですけれども、これは既にやっていることなのですが、英訳をされた有価証券報告書を自社のウェブサイトに掲載されている企業の一覧表というのを、EDINETの英語サイトに掲載しているということで、28ページに実際のこの一覧表のイメージをつけさせていただいております。

 英文開示に関しましては、次の29ページですけれども、昨年秋に本ディスクロージャーワーキング・グループ第1回会合を開催させていただいたときに、御議論、御意見をいただいていたということで、「有報の英文化は、日本の資本市場の国際化の観点から必要」という御意見を複数いただいておりまして、ただ同時に、「今ある有価証券報告書を単純に英訳しただけでは海外の投資家に理解されないのではないか」とか、そういった意味で「英文開示には工夫が必要だ」という御意見もまた複数いただいたというような状況かと存じます。

 30ページに参ります。こちらのほうですけれども、有価証券報告書以外も含めて、どういったものの英文開示が今なされているのかということの実際の状況でございますけれども、そこにありますように時価総額ベースでは約9割が決算短信、株主総会招集通知の英文開示を実施しているということでございます。

 ただ、和文と同時に英文を開示されているというのは少し割合が下がって、決算短信ですと73%、株主総会招集通知は61.4%となってございます。

 31ページに参ります。コーポレートガバナンス・コードの昨年6月の改訂におきまして、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報については、英語での開示・提供を行うべきであるということを出されておりまして、その下に、どういった書類について英文の開示がなされているかということを市場区分別につけてございます。

 ちなみに、プライム市場選択会社の有価証券報告書の提出の数ですけれども、全体1,840社中260社ということでございます。

 32ページに参りまして、この英文開示の状況を海外投資家はどのように評価されているかということで、東証が実施されましたアンケート調査の結果でございますけれども、端的に申し上げますと、そこの上にありますように、海外の投資家は、近年の取組みを進んでいると肯定的に評価している一方で、日本語の開示資料と比べて情報量に差があることや、開示タイミングが遅いというような指摘もありまして、そういう意味では現状には「不満」・「やや不満」というのが、合わせると半数を超しているという状況になってございます。

 33ページに参りまして、では英文開示が期待される具体的な媒体は何かということで、同じ調査ですけれども、上から決算短信、IR説明会資料、決算短信を除く適時開示資料とありまして、有価証券報告書は「必須」・「必要」を合わせますと70%ということになってございます。

 34ページ、これは御参考ですけれども、金融庁におきましては、国立研究開発法人情報通信研究機構と連携をいたしまして、AI翻訳システムの開発をいたしているということで、参考までに御紹介でございます。官民協力によりまして業界団体単位でまとまったデータをいただきまして、これを効率よく活用してAI翻訳の精度を向上させていくというものでございます。

 次、35ページからは、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載内容の関係ということでございます。

 36ページに参りまして、まず有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書ですけれども、こちらのほうで、コーポレート・ガバナンスに関する情報というのがそれぞれ開示されている部分がございますけれども、スライド青字の部分ですけれども、項目において相当程度の重複箇所というのがあるというのが現状でございます。

 37ページに参りまして、これに関しては前回の2018年のときのディスクロージャーワーキング・グループにおきましても、また本ワーキング・グループ第4回会合におきましても様々な御意見が出ているということでございます。

 そうした中で、38ページですけれども、第4回会合でまさにコーポレート・ガバナンスの御議論をいただきましたときに、取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況については、有価証券報告書においても記載をしていってはどうかという御意見、かなり多くいただいたというふうに認識してございます。

 そうした中で、仮に有価証券報告書におきましてこうした取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況の記載をしていくということになりますと、今、コーポレート・ガバナンス報告書のほうで委員会の活動状況、取締役会の活動状況を記載する欄がございますので、また重複が新たに増えるということになり得るわけでありますけれども、そうした中で記載事項の整理というのをどういうふうに考えるのかというのがあろうかと思います。

 以上が素材でございまして、最後に、「ご議論いただきたい事項」を読み上げさせていただきます。40ページです。

 四半期開示については、経営が短期主義になるとの意見、経営の短期主義とは無関係である等、幅広い意見がありますけども、実証研究においては四半期開示と短期主義との関係に対する明確な答えが出ていない。この点については、引き続き幅広く企業・投資家をはじめとするステークホルダーの意見や、海外の実務も検証しつつ議論を深めていく必要がある。

 また、第6回会合の議論では、コスト削減の観点等から、取引所規則に基づく四半期決算短信と金融商品取引法に基づく四半期報告書との「一本化」には幅広い支持が寄せられた。

 「一本化」の進め方については、四半期決算短信を基本とする方向、四半期報告書を基本とする方向の両論があり得るが、開示のタイミングがより遅い四半期報告書に集約させることは、情報の有用性・適時性を低下させるおそれがあること。四半期決算短信に関しては投資家に広く利用されていること。また、一部の企業においては、その発表と併せて充実した決算説明資料を公表し、さらには経営幹部によるアナリスト等とのQ&Aの模様などを公表する動きが進んでおり、こうした積極的な開示姿勢の後押しも重要であること。

 41ページに参りまして、監査法人のレビューがある四半期報告書を期待する意見もあるが、「正確性の担保」という点からは、四半期報告書の形でなくても代替的な手法(例えば適時開示を臨時報告書とすることにより担保する方法等)により確保することも考えられるとの指摘があること等を踏まえると、四半期決算短信への「一本化」を基本に検討することが考えられる。

 これらを踏まえると、今春時点においては以下のような方針とすることとしてはどうか。

 上場企業について、法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に「一本化」。

 任意化を含め四半期開示(「一本化」する四半期決算短信)の位置づけについては、四半期以外の適時開示の在り方と併せて、さらに幅広く企業・投資家などの市場関係者の声や海外動向を踏まえて検討すること。

 42ページに参りまして、その上で、今夏以降も本ワーキング・グループにおいて、「一本化」する四半期決算短信に係る諸論点の議論を深めることが考えられるが、具体的にどのような点を整理すべきと考えるか。例、四半期開示の内容、虚偽記載に対するエンフォースメント、監査法人によるレビューの有無。

 それから、投資家の投資判断上、よりタイムリーに企業の状況変化に関する情報が企業から開示されることが重要と考えられる。四半期以外の適時開示の充実を図るためにどのようなことが考えられるか。

 なお、適時開示と四半期開示との関係については、仮に四半期開示義務が廃止されても、大半の企業で任意で四半期開示を継続したり、四半期以外の適時開示において投資家への充実した情報提供が行われていたりするのであれば、四半期開示は任意でもよいとの考え方もある。この点について、日本の上場企業は「間違いのない開示」を行おうとする傾向が強いと指摘される一方で、投資家側はリスク情報等について前広な開示を求める傾向にあり、情報の作成者と利用者との間に「期待ギャップ」が生じがちであるとの指摘がある。

 43ページに参りまして、英文開示でございます。

 東京証券取引所の調査によると、全市場時価総額ベースで約9割が決算短信、株主総会招集通知の英文開示を実施、又は実施予定となっている。

 一方で、他の開示書類と比較すると、有価証券報告書の英文開示は進んでいない状態である。海外も含めた投資家に有用な情報を提供する観点から、有価証券報告書の英文開示についてどのように考えるか。また、以下の例についてどのように考えるか。

 有価証券報告書の英文開示のタイミング。例、日本語開示書類と同時公表。

 2つ目に、有価証券報告書の中で、特に英文開示が求められる開示項目。

 海外投資家へのアンケート結果によると、開示書類が日本語版しかない場合は、翻訳ツールを利用する投資家もいるが、有価証券報告書については、情報量の多さや表示方法により、機械翻訳が難しいとの意見もある。

 こうしたことを踏まえ、短期的には、外部の翻訳ツールを利用しやすいようにEDINETの表示方法を改修する予定であるが、中長期的には、法定開示書類の英訳に適した翻訳機能の精度向上に取り組むことについてどのように考えるか。

 最後、44ページでございます。有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載内容の関係。

 上場企業は、取引所規則により、企業のガバナンス関連情報を記載したコーポレート・ガバナンス報告書の提出が求められている。第4回会合では、コーポレート・ガバナンス報告書において開示推奨項目となっている取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況を有価証券報告書でも記載すべきという意見が多かったが、そうした見直しとともに、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載を整理することも考えられる。企業の負担や投資家の一覧性を確保する観点から、記載事項を整理することについて、どのように考えるか。また、具体的にどのような項目を整理することが望ましいと考えるか、ということでございます。私からは以上になります。

【神田座長】
 どうも御説明ありがとうございました。それでは、今日は残りの時間、委員の皆様方から御意見、御質問等を出していただく討議の時間とさせていただきます。いつものように、まず委員の皆様から御発言いただき、その後、オブザーバーの皆様方から御発言を承りたいと思います。

 今、廣川企業開示課長から御説明ありましたように、「ご議論いただきたい事項」は、資料の最後40ページから44ページに記載させていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。いつものように時間が限られておりますので、皆様方の御発言のお時間を確保できるようということで計算をいたしますと、大変恐縮でございますけれども、お1人当たり5分程度になるかと思います。

 それでは、どなたからでも、どの点についてでも、御質問、御意見をお出しいただければありがたく存じます。チャット欄に全員宛てチャットを入れていただけると大変ありがたく思います。いかがでしょうか。どうもありがとうございます。三瓶委員、どうぞ、お願いいたします。

【三瓶委員】
 三瓶です。御説明ありがとうございます。40ページから42ページの「ご議論いただきたい事項」(1)から(3)のところ、情報開示の頻度・タイミングについて、まず四半期報告書(第1・第3四半期)の廃止、四半期決算短信に「一本化」という考え方に、基本的に賛成です。

 内容について、現在、四半期報告書で開示されている研究開発費の開示は継続してほしいというふうに思います。

 現在、四半期報告書で研究開発費が開示されているので、任意で決算短信で開示したり、また説明会資料で研究開発費を開示したりする企業もありますけれども、四半期報告書を廃止することによってこれが開示されなくなるというのは、一種の後退に映るというふうに思います。

 特に、昨年のコーポレートガバナンス・コードの改訂で、知的財産への投資の重要性が明記されています。この研究開発費というのは、知的財産への投資に直結する財務データの1つであるというふうに思います。

 ですから、東証の改訂コードとの整合性の観点からも、もし決算短信に「一本化」するとしても、研究開発費の開示というのは続けていただきたいなというふうに思います。

 もう1つ、虚偽記載に対するエンフォースメント、これは、四半期開示がもし任意化されるという場合でも、市場の価格形成に重要な影響を与える情報なので、虚偽記載に対するエンフォースメントは重要である、必要であるというふうに思います。

 四半期以外の適時開示の姿勢については、ちょっと先ほども御説明ありましたけども、欧米企業に比べて劣っているというのが現状だと思います。

 そういうことからすると、株価形成と適時開示の関係を、東証が例えばAIを駆使してモニタリングするなど、そんなことはできないのかなというふうに思います。

 適時開示が適切・タイムリーに行われていない場合に、そうした企業にヒアリングするとか、また不適切な場合には指導するとか、企業名を公表するとか、何らかの規律付けを促進すべきではないかなというふうに思います。

 次に、43ページの英文開示に関してですけども、プライム市場を選択した企業は、本来は例外なく有価証券報告書を英文開示すべきだというふうに思います。また、日本語の開示と英文の開示にタイムラグを想定するのはフェアではないというふうに思います。

 ただ、本来のあるべき姿と現状を見たときに著しい乖離があるというのも事実なので、ここはやはり考慮せざるを得ないというふうに思います。

 その時に、実は有価証券報告書の中でも優先的に英文開示が必要な項目と、そうでないものはあるのかなと思います。特に優先的に英文開示が必要なところというのは、MD&A、事業等のリスク、特定投資株式などではないかなというふうに思います。

 ですから、こういうところを、例えばデジタル化をもう少し使って、先行して日英同時に開示するというような検討をしてはどうか。そういった企業については、一部の英文開示にしても、先ほどの事務局説明資料の28ページにEDINETで英訳した有価証券報告書を公表している企業一覧がありましたけど、そんな形で、一部だけれども重要な箇所について英文開示している企業を公表するとか、そんな誘導もあるのかなというふうに思いました。

 最後に「ご議論いただきたい事項(5)」のところの、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の関係ですけども、内容については収れんというのがあり得るのかもしれないのですが、私は、コーポレート・ガバナンス報告書の非常にいい点というのは、更新のタイミングが随時であるということ。有価証券報告書は年1回ということに対して、タイミングが随時であるということが非常に利点であるのと、また、東証のコーポレート・ガバナンス情報サービスというシステムが非常に使い勝手がいい、豊富な項目が選択可能な検索システムになっています。そして、そこからいろんな統計的なデータ集計もできます。

 ですから、こうした情報検索という利点とか、更新タイミングということを考慮していただいて、このコーポレート・ガバナンス報告書の非常にいい部分というのは残していただきたいなというふうに思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、チャットをいただいております順番で、次に神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】
 神作でございます。御指名ありがとうございます。

 四半期決算短信と四半期報告書を「一本化」し、その場合に四半期決算短信に「一本化」する場合を念頭に置いて、何点か御発言申し上げます。

 第1に、四半期決算短信で開示された内容を臨時報告書で開示する仕組みとすることが、事務局説明資料13ページに御提案いただいておりますけれども、このような仕組みを設けることによって、法定開示制度の下での監督とエンフォースメントを実現することが可能となり、この御提案は前向きに検討すべきであると思われます。

 第2に、有価証券上場規程に基づく適時開示制度について申し上げます。

 適時開示制度は、有価証券の投資判断に重要な影響を与える上場会社の決定事実や発生事実を直ちに開示しなければならないというものでありますけれども、実際には、四半期以外にタイムリーに開示する制度としては、必ずしも十分に運用されていないように思われます。

 本日の事務局の御説明の中にも、新型コロナウイルス感染症拡大やロシア・ウクライナ情勢における四半期以外の開示を例に取っても、英米などに比べると、あまり適時開示が行われていないという御指摘がございました。四半期開示を補うタイムリーな開示としての適時開示制度が、その字義どおりに運用されることが望ましいと思われます。

 適時開示制度については、開示されるべき情報の範囲の問題と、それから開示する時期の2つの問題があると思います。開示されるべき情報の範囲は、有価証券上場規程では「インサイダー取引規制における重要事実」と極めてパラレルに定められており、細則主義と申しますか、詳細に開示すべき情報を規定するとともに、重要性基準ですとか軽微基準についての定めがございます。

 これに対し、米国やEUでは、「証券市場に重要な影響を与えることが想定される情報」ですとか、「金融商品の価額等に重大な影響を及ぼす可能性が高い未公表の情報」を速やかに公表すべきものとされ、実質的プリンシプルベースで開示すべき情報かどうかが判断されていると思われます。開示を目的とするのであれば、やはりプリンシプルベースでタイムリーな開示を求めることが望ましいと思われます。

 開示する時期につきましては、日本の取引所における適時開示ルールは、先ほど述べましたように、必ずしもタイムリーに情報が開示されていない場合があるように思われますけれども、適時開示ルールがインサイダー取引規制の未然防止ルールとして強く意識されているということが、その1つの要因であるように思われます。

 日本と米国のインサイダー取引規制は、Disclose or Abstainのルールですので、投資家の投資判断にとって重要な情報であっても、株式の売買をしない場合には開示する必要はないということになります。

 これに対し、証券市場や金融商品の価格等に重大な影響を与える情報を開示することが、証券市場における情報の非対称性の縮小や、証券市場の価格効率性の向上の観点から望まれ、それが本来、開示ルールとしての適時開示規制であると思われます。

 しかしながら現状は、取引所の適時開示の中で、この2つのルールがやや混同されている状況にあるように思われます。今後は、適時開示ルールは言わば純粋な開示ルールとして、またDisclose or Abstainルールはそれ自体として、それぞれ整理し直すことが必要であると思われます。

 日本では一般に、適時開示規制における開示すべき情報は、インサイダー情報よりも狭い、換言すると、開示すべき情報ではなくても、インサイダー情報としてインサイダー取引規制に服すべき情報があると解されていると思います。

 例えば、インサイダー情報の発生時期に関する判例も、インサイダー情報の発生時期を会社法上権限がある機関による正式決定よりも早く認定する、事実上の決定権限があればそこでの決定をもって決定がなされたと早く認定する場合がございます。

 インサイダー取引規制における重要事実について、現行の金融商品取引法の規制を前提にいたしますと、タイムリーな開示制度の対象になる情報は、それとは別に、情報の非対称性の是正や市場の効率性の向上という観点から決定されるべきであるように思われます。

 第3に、ちょっと広い話になりますけれども、インサイダー取引規制の在り方に関連いたしますけれども、インサイダー取引規制の対象になる情報について、実質主義、原理主義、すなわちプリンシプルベースを採用するということも立法論としては考えられ、そのような場合には、適時開示ルールの対象をインサイダー情報と一致させるとともに、Disclose or Abstainではなく、インサイダー情報については原則として速やかに開示させるというルールも考えられると思います。EUはまさにこのような考え方を取っていると理解しています。

 この考え方は、インサイダー情報を速やかに開示することによって情報の非対称性を是正し、証券市場の効率性に資するというルールとして、インサイダー情報に関するルールを見直すというものです。

 この場合には、インサイダー情報であっても、それを速やかに開示することが発行会社や投資者の正当な利益を害するような場合には開示をしなくてもよいものとする、適用除外のルールをきちんと整備することが必要になると考えられます。

 なお、最後に申し上げた点については、インサイダー取引規制における重要事実について、現行法を維持しつつ、適時開示制度をインサイダー取引規制の未然防止制度から切り離して、言わば純粋な開示制度として発展させる場合にも、適時開示することが発行会社や投資者の正当な利益を害するような場合には開示義務を免除するということが合理的であると思います。長くなりましたが以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】
 ありがとうございます。まず、事務局には御説明と資料の作成ありがとうございました。本日の事務局説明資料40ページ以降の、「ご議論いただきたい事項」に沿ってコメントさせていただければと思います。

 最初に、情報開示のタイミングですが、この点につきましては、四半期決算短信と四半期報告書の「一本化」ということですので、以前のワーキング・グループでも申し上げましたが、四半期決算短信に「一本化」した場合でも、投資家に対して同等の有用な情報が提供される仕組みの確保が重要だと思っております。

 決算短信というのは、実務的に投資家が慣れ親しんでおりますサマリー情報とか、あるいはこの決算短信と連動した形で、配当や業績予想の変更など重要な事項を幅広く投資家に知らせるという適時開示の仕組みがあるという点で、優れた面があると思います。

 これも前回申し上げましたが、ただ一方、注記情報など財務情報が不足していることとか、あるいは四半期レビューによる開示情報の保証がないといった是正されるべき面もあると思っております。

 注記情報に関しましては、事務局説明資料15ページにあります、2017年4月の開示の緩和によって生じているということと思いますが、こういったことを要請事項に戻す必要があるのではないかと思っております。

 一方、四半期報告書の全ての情報が必要になるとは考えておりませんで、四半期開示に関しましては、決算状況の開示にのみ焦点を絞ればいいのではないかと思っております。

 事務局説明資料14ページで比較されているところで言いますと、【事業の状況】というのは既に四半期決算短信にも記載されておりますので、これはもう当然そのまま残すべきと思っておりますが、あと、【主要な経営指標等の推移】などは、これはもう四半期では不要ではないかと思っておりますし、【株式等の状況】も、他の項目同様大きく変化があったときのみ開示とするというのでよいのではないかと考えております。

 ただ、四半期レビューについて、これも前回申し上げましたが、開示内容の保証という面では重要と考えておりまして、四半期決算短信に「一本化」した場合でも、事務局説明資料13ページの上にありますように、臨時報告書の仕組みを活用して、保証の仕組みというのを維持することが必要ではないかと思っております。

 あと、事務局説明資料20ページから21ページ辺りで御説明があった、適時開示のエンフォースメントについては、より実効的な開示となるようエンフォースメントの在り方を検討すべきではないかと思っております。

 次に、英文開示にコメントさせていただきます。有価証券報告書というのは、グローバルでいいますと最も重要な年次報告書、アニュアルレポートに相当すると考えております。

 したがって、私の知る限り、海外投資家の有価証券報告書の英文化の要望は強いと考えておりまして、海外投資家団体のICGNは、株主総会前の英文開示を強く望んでいる状況と考えております。

 日本語が読めない海外投資家は、英語版の有価証券報告書を企業が作成したアニュアルレポートと考えて読み込むわけですので、自動翻訳機のサポートがあったとしても、最終的には発行企業が責任を取る仕組みというのが必要と思います。これが、三瓶委員もおっしゃっていましたが、国内投資家との平等な投資機会を与えることにもつながるというふうに思っております。

 また、全ての上場企業に英文開示を求める必要はないと思っておりまして、国際的な投資家を対象とするプライム市場上場企業のみ、英文開示を義務付けるということがよいのではないかと思います。

 ただ、そうはいってもあまりに現状とギャップがあるということで、暫定期間が必要ということで、開示項目を絞るということとしますと、経営方針などが記載されております【事業の状況】の項目、大項目になりますが、そういった項目のほか、株主総会の意思決定に活用する必要のある財務情報を記載している【経理の状況】、それから政策保有株の開示を優先すべきではないかと思っております。

 最後、コーポレート・ガバナンス報告書についてコメントさせていただきます。別の機会でも申し上げたかもしれませんが、基本的には、企業価値創造プロセスを一覧的に閲覧可能な有価証券報告書に、コーポレート・ガバナンス報告書の情報というのを記載すべきというふうに思っております。

 ただ、そうするとコーポレート・ガバナンス報告書をなくしていいのかというとそうでもないと思っておりまして、コーポレート・ガバナンス報告書の利点もあると思っています。年度途中に変更事項を迅速に反映できるということもありますが、それだけではなくて、コーポレート・ガバナンス報告書には機関投資家が活用している有用な固有の開示事項もありますので、どの項目を有価証券報告書に移行して有価証券報告書のみに開示するのか、あるいはコーポレート・ガバナンス報告書と両方に記載するのかということは、慎重に検討する必要があると思っています。

 例えば独立性の有無、支配株主、相談役、顧問の有無といった開示項目は、東証のデータベースと連動しておりまして、このデータベースを通じて、投資家がその企業のガバナンス状況を把握することが可能となっており、多くの機関投資家が活用していると思います。また、この独立性や顧問、相談役などの項目は、既に多くの機関投資家の議決権行使基準にも入っている状況となっておりまして、株主総会の意思決定においても非常に主要な項目となっております。これとは別に、コーポレートガバナンス・コードの対応状況も一目で分かるという非常にいい開示項目もあると思っています。

 今回の開示対象になっております、有価証券報告書に記載される取締役会等の活動に関わる3項目はこのような項目ではないと考えています。つまり、定量データとして出席率がありますが、これは株主総会開示書類で確認することが可能ですし、年度途中でアップデートすることもないので、コーポレート・ガバナンス報告書から有価証券報告書に記載を変更しても問題はないと思っています。

 ただ、冒頭申し上げましたように、今後の項目の整理においては、機関投資家の活用方法も踏まえて、有価証券報告書に片寄せするのか、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の両方に記載したほうがよいのかを、個別に、慎重に検討する必要があるのではないかと思っております。長くなりましたが以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして近江委員、どうぞお願いいたします。

【近江委員】
 近江です。御指名ありがとうございます。私からも議論事項についてコメントをさせていただきます。

 まず、四半期開示については、長期的な企業価値創造に関する建設的な対話に資するものでもあると考えておりますけれども、一方で、四半期開示における四半期決算短信と四半期報告書の重複は解消されることが望ましいと考えておりますので、「一本化」には賛成です。

 四半期決算短信の発表タイミングや投資家と企業における活用状況に考慮すると、四半期決算短信を活用する形として、これを臨時報告書として提出することで虚偽記載を防ぐ対応といったところに基本的に賛成いたします。

 四半期決算短信の開示の内容につきましては、四半期報告書よりも相当簡素化されておりますけれども、四半期報告書に開示されている、例えば【企業の概況】や【提出会社の状況】など、これは簡素化してもよいのかなというふうに思いますし、また事業の内容やリスク、契約などにおける重要な変更については、四半期決算短信に記載を求めていくなども今後の検討事項とすることで対応できると考えます。ここは十分議論をする必要があると思っております。

 有価証券報告書の英文開示ですけれども、とりわけ任意の英文開示情報がそもそも少ない企業においては、有価証券報告書の英文開示の有用性というのは非常に高いと考えております。

 特に、【事業の状況】に含まれております各項目、特に「MD&A」や「事業等のリスク」であったり、また「コーポレート・ガバナンスの状況等」や「株式の保有状況」における、政策保有株式の開示といったところは、多くのグローバルの投資家も既に参照しておりますし、今後サステナビリティ情報の項目が設けられた場合には、この内容が参照されていくと考えます。

 既にグローバルな投資家は、有価証券報告書に記載されている必要な内容については、AI翻訳などを活用して内容をチェックすることも行っている状況ですので、これが行いやすい形を意識した体裁の変更は、大変要請が高いと考えております。

 あとコーポレート・ガバナンス報告書につきましては、有価証券報告書の開示内容とは重複があります。今後、有価証券報告書におけるガバナンスやサステナビリティ情報の一層の充実化ということが図られていく方向であることを考慮すると、記載内容の整理は大変重要だと考えます。

 将来的には、現在のコーポレート・ガバナンス報告書における記載内容のかなりの部分を有価証券報告書が吸収していくということも考え得るのではないのかと思います。

 コーポレート・ガバナンス報告書は、投資家が必要とする企業のガバナンス情報を比較可能性を高めて開示する媒体としては大変重要な役割を担っておりますし、ここを見に行かなければ得られない情報というのが多い状況ではありますけれども、企業におけるガバナンスの取組みはますます進化していて、例えば取締役会の実効性などに関する部分に関しては独自の取組みを自由な体裁で統合報告書などに記載する企業なども増えているという状況に鑑みると、現在のコーポレート・ガバナンス報告書の記載形式はやや画一的な印象もあるというところで、例えばコーポレート・ガバナンス報告書の体裁についても柔軟性を高める、そして有価証券報告書や統合報告書、サステナビリティ報告書など、その他の媒体を参照する上での自由度を増やしていく。そして、ガバナンスの基本的な情報は有価証券報告書において比較可能性を担保する形で記載するなど、いろいろな工夫が考えられるのかなというふうに考えますので、今後しっかり検討していくことが重要かと思います。私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして中野委員、どうぞお願いいたします。

【中野委員】
 中野です。御指名いただき、どうもありがとうございます。

 大別して4点申し上げたいと存じます。最初に、四半期開示に対する私の考えを申し上げておきたいのですけれども、2つの意義があると考えています。まず、信頼性を備えた実績値としての財務情報を公表するということ、すなわち四半期で業績予想を行うということではなく、信頼性を備えた実績値としての財務情報を年4回定期的に報告することによって企業の透明性が確保されるという意義があります。信頼性の低い情報を迅速に公表するのではなく、信頼性を備えた財務情報を定期的に報告するということです。その結果として、非財務情報の開示の効果も高まるのではないか、これが財務情報と非財務情報の「補完性」という議論です。

 2つ目の意義としまして、2月18日の第6回会合の事務局説明資料22ページにまとめられておりますけれども、各四半期の決算手続で会計上の問題を検出でき、虚偽記載を早期に発見できるなど、財務情報全体の信頼性の確保につながるという点を指摘できます。これは個々の四半期決算のみならず年次決算の信頼性の確保にも資するということです。四半期開示には、以上述べた2点に主たる意義があると捉えております。

 その上で、「ご議論いただきたい事項(1)」についてですが、「一本化」について、私は四半期報告書を基本とする方向のほうがより適切ではないかと考えます。

 主な理由が2点ございまして、第1に、財務情報の信頼性およびエンフォースメントの観点から、四半期報告書制度を継続するほうが合理的ではないかと考えるためです。仮に四半期決算短信を基本とする方向を選択した場合、財務情報の信頼性およびエンフォースメントの有効性をいかに確保するかについて課題を残し、またその結果として現在と同程度の信頼性や有効性を確保できるかについて不分明な部分を残します。このため、四半期決算短信ではなく、四半期報告書への「一本化」のほうが、作成者のコスト削減を図りつつ、制度変更に伴う影響を小さくとどめることができると考えます。

 第2の理由としまして、四半期報告書への「一本化」により、情報の適時性が著しく損なわれるとは想定しにくい点を指摘できます。事務局説明資料10ページによりますと、四半期決算短信と四半期報告書の提出日の差は平均で約5日間でございまして、同じページのクロス集計表によりますと、47.7%の企業は、両提出のタイミングはほぼ一致し、両提出日の乖離が10日間に及ぶケースは限定的です。こうした実態を踏まえますと、四半期報告書への「一本化」により、情報の適時性が著しく損なわれるとは想定しにくい。むしろ、四半期報告書への「一本化」には、作成者のコスト削減を図った上で、現状の情報の信頼性、エンフォースメントの水準を市場全体として維持し得るという長所があるので、適時性が若干低下する短所を補って余りあると考えます。

 以上が私の基本的な考えですけれども、ただし、仮に事務局提案のように四半期決算短信への「一本化」という政策決定が行われる場合には、財務情報の信頼性およびエンフォースメントの水準が十分に確保されるような措置が講じられることを強く要望します。もちろん、財務情報の信頼性の確保、および、虚偽記載の早期発見の観点からは、監査人による四半期レビューが引き続き行われることは有用と考えます。

 次に、「ご議論いただきたい事項(2)、(3)」に関して、「今春時点の方針」について意見を申し上げます。私は、本審議会は、日本はグローバルな観点からどのような資本市場を構築していくのか、目指していくのかを審議する場と認識しております。こうした観点からいえば、四半期開示の見直しをめぐる議論はコスト削減を中心とし、議論がやや内向きになっているのではないかと懸念しております。2月18日の第6回会合では、四半期開示制度には日本の資本市場の質の確保等の観点から意義があること、また、同制度を継続する必要があるという意見が支配的であったと認識しています。この点を踏まえまして、本ディスクロージャーワーキング・グループの報告書では、コスト削減を目的とする「一本化」の議論のみならず、資本市場におけるディスクロージャーにおいて四半期開示制度には意義があること、そして、我が国は同制度を維持するという方針をしっかりと発信することを要望したいと存じます。事務局参考資料7ページにまとめられておりますように、世界の主要諸国において四半期開示制度の検討が行われてきているわけでございますけれども、他の国々の動向をうかがうだけではなく、四半期開示制度に対する我が国の方針、ビジョンを主体的に発信することが、日本の資本市場への信頼の醸成につながると考える次第でございます。

 続いて、「ご議論いただきたい事項(4)」の有価証券報告書の英文開示についてですけれども、有価証券報告書の英文開示のタイミングは、情報開示の役割から考えて、日本語の開示書類と同時公表が原則になると考えます。その際、どの程度英文化するかは作成コストが絡んでくるわけですけれども、作成コストの観点から、特に英文開示が求められる開示項目に限定するという案は合理的と考えます。また、機械翻訳の開発についても賛成いたします。

 最後に、「ご議論いただきたい事項(5)」の、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載内容の関係についてですけれども、サステナビリティ情報の開示をめぐる審議では、有価証券報告書には重要かつ本質的な情報を記載した上で、詳細な情報等は適切に参照できるようにする方向性で議論が進展していますので、事務局説明資料38ページのように、両者の記載事項を整理することに賛成いたします。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、黒沼委員、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】
 私からは、「ご議論いただきたい事項」のそれぞれについて意見を申し述べたいと思います。

 まず、四半期開示について3点ほど申し上げます。

 四半期報告書を四半期決算短信に「一本化」するという方向性が今回提案されているわけですが、仮に「一本化」するとしても、発表の時期が決算短信のほうが早いからといって、それだけで決算短信に引き寄せる形で「一本化」することが正当化されるわけではありません。内容の詳細は夏以降に議論するということですが、その際、次の3点を要望したいと思います。

 第1に、開示の実効性を担保するために、四半期決算の公表を臨時報告書の提出事由として、虚偽の四半期決算に対する民刑事の責任及び課徴金制度の適用を必ず確保してもらいたいということです。これは私としては、「一本化」を認めるための最低の前提条件だろうと考えております。

 第2に、四半期報告書によって詳細な情報開示が行われるということを前提として、これまで四半期決算短信の内容は大幅に簡素化されてきました。四半期報告書を廃止するとしますと、その前提が崩れますので、四半期決算の公表に伴う臨時報告書の記載事項は、現在の四半期決算短信の内容にとらわれずに、例えば決算発表時の公表資料を臨時報告書の記載内容とするなど、四半期報告書を前提としない臨時報告書の記載事項として1から検討がされるべきです。

 第3に、事務局説明資料41ページには、臨時報告書の提出事由とするといった代替策により、四半期レビューが不要になるという意見が紹介されていますが、虚偽記載に対する法定の責任は、四半期レビューの代替になるものではないと考えます。四半期レビューの要否については、レビューのある、なしによって、情報の有用性にどれくらい差異が生じるのか、四半期レビューを要することで、四半期決算の発表がどれくらい遅れるのかといった諸点を勘案して、慎重に検討して決定すべきであると思います。

 次に、四半期以外の適時開示については、新型コロナウイルス感染症拡大時やウクライナ情勢について十分な適時開示が行われていなかったという御報告がありました。確かに適時開示規則は細則主義を採用していることもその一因であると思われますが、適時開示規則には包括条項もあり、列挙事由についてのみ開示を検討すればいいという発行会社側の姿勢がもしあるとしたら、そこに問題があったのではないかと思います。

 また、適時開示は発行者において生じた事由を開示するものであって、外部環境の変化が発行者に及ぼす影響については、それには含まれないという考え方があるとしたら、それも本来の適時開示の考え方からは違っていたのかなと思います。

 このように、適時開示が十分でなかったのは、私は、制度の問題というよりは運用の問題であると考えますので、まずは、取引所が上場会社向けに特定事項の適時開示を促すということや、発行会社の開示責任者が開示の必要性をチェックする範囲を広げるなどの方法によって改善を図っていくべきだろうと考えております。

 次に、英文開示については、単なる翻訳ではなく、意味において同一となるような英語を用いて記載したものを有価証券報告書の提出に遅れることなく公表するのが理想です。もっとも、その実現が難しいということも確かであります。ただ、専門用語には共通する部分が多いので、翻訳だけで情報が伝わる部分もあるでしょうし、まずは日本語の書類を作成する際にも海外投資家に理解できる言葉を用いるよう、つまり、平易な日本語で記載するよう、発行者において努力していただくということが重要ではないかと考えております。

 最後に、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載の整備ですが、この2つの報告書に重なりがあることはやむを得ないことと考えています。有価証券報告書においては一覧性が重要であるということ、それから、参照先の情報は有価証券報告書の記載とみなされないという解釈を前提としますと、重複があるからといって参照で済ませてしまうということには慎重な態度で臨まなければならないだろうと思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、田代委員、どうぞお願いいたします。

【田代委員】
 ありがとうございます。私からは、事務局説明資料40ページから個別にというよりは、全般的に、ちょっと個人的な意見ですけども、今回、議論しております四半期開示、非財務開示、また英文開示につきましても、3つともに言えることだと思いますが、全ての上場会社に一斉に適用するのは現実的には厳しいのではないかと思います。もちろんグローバルな資本市場のためには全て、特に英文開示に関しては、日本語と同じタイミングで同じ項目を分かりやすく公表するのが理想ですし、必要だと思いますが、小規模な企業やスタートアップに同じものを課しますと負担がすごく大きいと思います。基準を設定する場合に企業の規模なのか、何をベースにするかはいろいろな判断があると思うのですけども、それに基づいて、開示のタイミングとか、開示の項目とか、どのタイミングで出して、どの項目を英語にするかというのを分けるという考え方を導入していかないと、今後は、投資家が企業価値を判断するのに必要な開示情報が増えていく状況において、全ての企業が対応するのは難しいのではないかと思います。新たな考え方ではありますが、今後は全ての上場会社と一括りにするのではなく、分けて考えるというアプローチを検討してはどうなのかなという意見を述べさせていただきたいと思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、清原委員、どうぞお願いいたします。

【清原委員】
 ありがとうございます。清原です。まず、「ご議論いただきたい事項」の第1点目の四半期開示のところの四半期報告書と四半期決算短信ですけれども、見直しをする中で、重複を避けるという意味で対応していくことはもちろん合理的だと考えているところでありますが、「一本化」の方向については2通りあるというのはそのとおりで、四半期決算短信に寄せるのが果たしてよいのかについては慎重に考えたほうがいいのではないかというのが1点目でございます。

 2016年のディスクロージャーワーキング・グループのところで出された方向に従って、決算短信のほうは速報性重視ということで開示項目を絞ってきた流れがあり、また、2018年のディスクロージャーワーキング・グループで示された記述情報の開示の充実を図るという方向が底流にあって、有価証券報告書がメインですが、また四半期報告書でもやはり重要なものとして、MD&A、リスク情報、それから、研究開発費について、これは先ほど他の委員の方からもお話ありましたが、あとは「経営上の重要な契約」などがあります。確認をしてみたところ、直近の四半期報告書で開示している例もあり、四半期報告書というものが持っている記述情報という面での重要性というのは非常に大きいものがあるのではないか。もしここで四半期決算短信に寄せてしまった場合に、そういったこれまで進めてきた記述情報の開示の充実化を図っていこうという流れに少し逆行するといいますか、戻ってしまって、後退することになってしまうことを懸念するところであります。

 現在、このディスクロージャーワーキング・グループで考えている方向としてのサステナビリティ、広い意味での非財務情報の開示を充実していくという流れの中において、そのような記述情報、現状においても、四半期報告書の記述情報は、ある種、まだ途上といいますか、2018年の後、有価証券報告書の開示の充実を図った部分は進んだのですけど、四半期開示の方は充実してきたとまだ十分に言い切れないところもある中で、これがまた昔に戻ってしまうようなということが果たしていいのかというのは慎重に考えなければいけないのではないかと考えているところであります。

 したがって、四半期報告書を残すということも考えていただきたいというところが1点目であります。もし今回、これを廃止するという方向で政策的に決定されるとしても、やはり記述情報、特に今後のサステナビリティ絡みの情報の開示が進む中で、四半期ベースでの記述情報についての開示のニーズというのは、私はあると考えております。特にリスクに関して、であります。

 適時開示は、発生した事項、結果が生じたものについての開示には適しているのではないかと考えられるところでありますが、リスクというものに関して、新しいリスクが発生した、または、そのリスクの性質が変わった、こういったことについてはなかなか適時開示で開示をしていく、議論していくのは難しいのではないか。経営者がそのリスクを踏まえてどのように考えて経営を進めていくか、戦略にどういう影響があるか。こういう話は、タイムリーに話をするというよりは、それを踏まえた定期的な四半期などの開示の中でアップデートしていくということが資本市場にとっては有用ではないかと考えるからであります。そういったことをもろもろ踏まえた上で、今回の議論の取りまとめのほうに進んでいただければと考えているところであります。

 次に、英文開示についてであります。英文開示に関しては、今まで御議論ありましたように、海外の投資家と国内投資家との間での公平、平等を図る上で、特に重要な情報がある有価証券報告書の英文化を進めることは重要であることは疑いがありません。ただ、ここで少し補足しておいたほうがいいのではないかと思っておりますのが、東証のアンケート結果、これは重要な内容のものでありますけれども、アンケートの回答をしている方は日本株に投資をしている方が主なものだろうと思っております。すなわち、既に去ってしまった海外の投資家や日本株に関心を持っていただけていない海外の投資家の意見というものは、十分にここでは反映できていない。すなわち、これだけですと狭い範囲での話になってしまいかねないというところも考えた上で、英文開示の意義、または海外に向けたディスクロージャーの在り方を考えていく必要があるのではないか。

 次に、アンケートの中身を見ていた中で、重要な指摘として、IRの担当者で、英語での対応ができる方がいることの重要性、それから、IRに関して経営陣がその戦略的な意義、経営上も重要だということを経営陣が考えることが重要だといった海外投資家からの意見、こういったものもございました。

 そういったものをも踏まえますと、翻訳機能というもので便利になるということはもちろん技術革新の中では重要だと思うのですけれども、各社、特にプライム市場上場企業などにおいては、英文開示にしっかり対応でき、IRとしても英語で対応できる、そういったところまで踏み込むということが望まれるということがあり、書類としての英文開示というだけでなく、もう少し踏み込んだところを御理解いただくことが今後の日本の資本市場の発展にもプラスになっていくのではないかと考えるところであります。

 次に、コーポレート・ガバナンス報告書と有価証券報告書の関係についてであります。そのことについては、2018年のディスクロージャーワーキング・グループでもコメントさせていただいたことがあったのですけれども、コーポレート・ガバナンス報告書のほうで、やはり便利であると思いますのが、検索機能などがかなり進んでいるということがあって、こちらのほうで、例えば重なり合う取締役会、委員会の活動状況に関しても、開催の回数ですとかそういったものなど、横比較をしたいというときに東証のコーポレート・ガバナンス報告書にそういった検索機能が利用できるような形でフォーマットができていけば、これは非常に有用ではないか。

 他方、有価証券報告書は、これまで記述情報の開示の充実ということで進んできた中で、ガバナンスに関しても記述を充実させていくことが適切です。したがって、そこは比較可能性という意味で言うと、文字で書かれていますので、なかなか横比較が容易にできないところもあったりするので、そこの観点で2つの関係を補完し合うものとして整理することができるかなということがあると思います。

 また、サステナビリティ絡みの情報の中で、任意開示書類を有価証券報告書の中でリファー、参照することはどうかという議論がありましたけれども、コーポレート・ガバナンス報告書ですと、更新の頻度が有価証券報告書より回数が当然多く、また、任意にできるところがありますので、気候変動その他のサステナビリティ絡みの情報に関する任意開示書類を公表したというときに、そこの情報がどこにあるかということも含めたリファレンスを載せる、更新していくのにコーポレート・ガバナンス報告書というのは向いているのではないか。法定開示書類で参照すると、その情報が取り込まれたのかどうかとか、基準日はどうなのかという問題について、法的にもやや複雑な問題も惹起しかねないところがあるわけですけれども、コーポレート・ガバナンス報告書を通じた参照という方策を考えていくと、そういった懸念というのもなく、対応できるといえるのではないかと考えるところであります。私からの意見は以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】
 御指名ありがとうございます。佐々木でございます。まず四半期開示についてでございますけれども、「一本化」する方向性につきましては支持いたします。適時開示といった観点、あるいは投資家に対する有用な情報開示という観点から、金融商品取引法上の四半期報告書は廃止して、四半期決算短信に「一本化」することが妥当だと思ってございます。この「一本化」に当たって、4点ほど申し述べたいことがございます。

 まず1つ目が開示の内容でございます。私ども作成者側としましては、できる限り現行の四半期決算短信の開示事項を踏襲していただきたい。それ以外の情報につきましては、企業が任意で開示するということで補足するという方向にしていただきたいと思ってございます。1つは開示の適時性を確保するということが目的でございますけれども、また、これは一部の企業ですけれども、特にIFRS適用企業におきましては、IAS第34号に基づきまして、相当の開示を今、四半期報告書で行っておりますが、仮に四半期決算短信でもこれを求められるということなりますと、適時性の確保にはかなりマイナスになるだろうということが懸念されるからでございます。

 それから、2つ目は、エンフォースメントについてでございます。虚偽記載のエンフォースメントに関しては事務局説明資料13ページにもございましたけれども、取引所規則で厳正な措置が既になされているということでございますので、四半期決算短信に対してさらなるエンフォースメントということを考えるのは非常に慎重にあるべきだ、慎重に検討すべきだと思ってございます。

 3点目でございますが、レビューに関することでございます。四半期決算短信に対するレビューにつきましては設けるべきではないと思ってございます。四半期決算短信の正確性は、今申し上げました東証のエンフォースメント、それから、企業の内部統制システム等によって十分に担保されているのではないかなと思いますので、レビューにつきましては不要であると思うところです。

 これらに加えまして4点目でございますけども、第2四半期の取扱いが論点になってございますけれども、四半期開示というのは、本来的に年度の業績の途中の経過を報告するという趣旨であると思いますので、第2四半期につきましても、第1、第3と同様に、四半期決算短信に「一本化」することが妥当だろうと思ってございます。仮に、事務局説明資料16ページにありましたような非上場企業ですね。決算短信を作っていない非上場企業の扱いに準じて、半期報告にプラス、いわゆる中間監査ですね。レビューでなくて、監査、こういったものを求められた場合は、企業の負担が非常に大きくなる。恐らく監査人の負担も著しく大きくなると思いますので、ある意味、今回の開示の効率化等の議論には逆行すると考えますので、この点は強調しておきたいと思います。

 それから、英文開示に関してでございますけれども、英文開示はここ近年、各企業が非常に努力して、かなり対応できるところが徐々に多くなっていると思ってございます。ただ、基本的には、企業側の、作成側のニーズといいますか、これは資金調達をどこから行うかということですとか、あるいは属する市場ですね。市場区分、プライム市場であるとかそういったもの、それから、あとはやっぱり人的リソースですね。各企業の人的リソースなどを踏まえて、各社がそれぞれの事情に合わせて、検討を進め、実施していくのが望ましいと思ってございます。

 御指摘の有価証券報告書でございますけども、これは他の開示書類と比較して英文開示があまり進んでいないということですけれども、御承知のとおり、いろいろな方がおっしゃったとおり、企業側のかなり大きなコスト増となりますし、無理にこういったことをさせますと、恐らく本来的には、日本語、英文は同時がいいということでしょうけども、ますます英文が遅くなってしまう、開示が遅くなってしまうという可能性もございますので、これは投資家、特に海外の投資家にとってベネフィットはあまりないのではないか、こういうことが懸念されます。

 今、御説明がありました金融庁で進めておられます自動翻訳エンジンの開発、こういったところは非常にいいソリューションだと思いますので、国とか、あるいは市場として何か取り組むということであれば、こういったものの精度向上といったところが非常に期待されるところかなと思ってございます。私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】
 ありがとうございます。要は、現行の実務、いろいろ問題があるかも分かりませんけれども、その中で、いわゆる四半期決算短信の速報性と、それから、四半期報告書の信頼性をいかに融合させるか、「一本化」させるか。そして、よりよい開示を促進するということが方向性であるべきだと思います。ということで、私としては、今の時点で四半期決算短信ベースなのか、四半期報告書ベースなのかについては留保させていただきたいと思います。「一本化」が両方のよいところ、あるいは維持すべきところを損なうということではまずいと思うからです。従来の四半期報告書の内容のうち、省略してよいという部分があると思っておるのですけれども、重要な事項については、虚偽記載の規制、あるいは監査、あるいはレビューが維持されるべきだと思っております。

 今回の事務局説明資料10ページの左下に、四半期決算短信と四半期報告書の提出日の分布の表が再掲されております。これを見ますと、四半期決算短信を早く開示して、四半期報告書を法定期限近くに提出する企業がかなりあるということが分かり、この間に恐らく精査あるいは確認なり、あるいは監査をされているのではないかと思います。

 他方、同時に、あるいは四半期報告書を早めに提出されている企業も相当数あり、先ほど中野委員から御指摘ありましたけれども、全体平均では両書類の差が6日であると。これは平均なので、なかなか読み方は難しいかも分かりませんけれども、いずれにしても、このように企業のほうで努力されているということだと思いますので、それを促進する方法で、よりよい、充実した開示を目指すべきだと思います。

 これも中野委員から言及がありましたけれども、第6回、2月18日の事務局説明資料22ページに、法定開示の提出延長件数をここ数年、4つの四半期ごとに整理した貴重な資料がありました。それによりますと、「各四半期の決算手続きで会計上の問題が明らかとなっている」とあります。四半期ごとの、現在の法定開示の実質のところは維持されるべきであるということが示されている大変重要な立法事実だと思っております。

 あと、英文開示については、少なくともプライム市場に上場されている企業については、即時にといいますか、早急に実現されるべきだと思っております。以上にいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に、永沢委員、どうぞお願いいたします。

【永沢委員】
 ありがとうございます。永沢でございます。ほかの委員の皆様の御意見を伺いまして、非常に悩ましいところでございますけれども、1つ目の四半期開示につきましては、企業の本業にとって負担が大きいということであるならば、軽減するということもやむなしと考えまして、「一本化」という方向性については、考え方としては私も支持したいと思います。大事なのは速報性を確保することと同時に、正確な情報の開示が確保されなくてはなりません。その点を考えますと、今回の事務局の御提案には賛同したいと思っております。

 先にご発言された委員の間でも、四半期決算短信か、四半期報告書かは、意見が割れていたように思いますが、私は、個人の投資家の感覚でございますけれども、四半期決算短信で私どもは慣れ親しんできておりますし、特に個人にとりましては、メディアを通じて個人投資家には情報が届いているというのがこれまでの状況だったと思います。発表される企業の目線も、四半期決算短信はそういうメディアや個人投資家を意識されているのに対して、誤解かもしれませんが、四半期報告書は、粛々とEDINETにファイリングされる作業をされることになるわけで、目線は金融庁に向いているのではないかと思います。このように考えまして、私としては四半期決算短信に寄せるという考え方を支持したいと思います。

 その上で、四半期決算短信のほうに「一本化」する場合には、開示内容について、もう一度見直す必要があると思っております。前回のディスクロージャーワーキング・グループでは一旦簡素化しましたが、事務局説明資料15ページのところになりますが、今一度、今の時代に要請される情報開示になっているか、再検討をする必要があると思います。

 上柳委員の御指摘もありましたように、この後に四半期報告書が控えていることから、先行する四半期決算短信で開示される情報の正確さが担保されてきたという面も否定できないと思います。そのため、一本化する場合には、虚偽記載が起こらないようにする手当を行っておくことも必要と思います。

 英文開示につきましては、プライムとかスタンダードという市場区分ができましたが、私どもが想定した以上の数の企業がプライムに移行したように感じています。正直申しまして、英文開示を適切にできるだけの体制整備ができているのだろうかと疑問に思う企業もないわけではありません。これも他の委員の方からご指摘がありましたけれども、グローバルな開示の要請に応えていく必要があると思いますが、全ての企業がその要請に応えことができるわけではないように思います。

 もちろん、日本がグローバルな市場であるためには、日本企業の底上げをしていくことが必要ですので、これは必ず英文にすべきという項目についてはきちんと明示をすることと併せて、今回、金融庁から御提案がありました英文自動翻訳など、金融庁がサポートできることはしていただくことが必要と思います。また、情報開示が十分に行われているということはいい企業の条件ではありますけれども、今求められていることは、いい企業が適切にタイムリーに正しく情報開示をして、グローバルなお金が呼び込めることが大事なのではないかとも思います。上位の企業の情報開示がどんどんよくなっていくことももちろん大事ですけれども、情報開示において落ちこぼれる企業がないようにすることも大事ではないでしょうか。本業において優れている企業がグローバルに評価されるように、国としても情報開示を支援していくというが必要なのではないかと改めて感じているところです。私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に上田委員、どうぞお願いいたします。

【上田委員】
 上田でございます。御指名ありがとうございました。では、私は、「ご議論いただきたい事項」に沿って意見を申し述べさせていただきたいと思います。毎回、事務局の方には資料と御説明ありがとうございます。

 では、まず四半期開示について事務局説明資料41ページにございますが、私はこちらで御提案いただいている「一本化」に賛成いたします。実務上の負担、そして、全体としての情報量、そして、投資家への普及効果ということであれば「一本化」でよろしいかと思いました。その場合ですけれども、今、四半期報告書か四半期決算短信かどちらかというような御議論をされていますけれども、私は、実は実務上、利用が多いという実態を踏まえますと、ここは四半期決算短信への「一本化」でよろしいのではないかと存じます。

 ただし、その場合であっても、市場の健全性、そして、投資家保護という観点からは、財務報告の信頼性であるとか、エンフォースメントの確保というのは必須のことでございますので、監査人が関与できる仕組みであるとか、あるいは臨時報告書の仕組みに乗せていくとか、こういったことを検討することは必ず必要であろうかと思います。

 次に、では、四半期開示を将来的にどうするかというときに適時開示の在り方についてというところでございます。事務局説明資料42ページにありますが、適時開示について、「上場会社」とありますが、日本の上場企業は「間違いのない開示」を行おうという、確かにこういう意識が強く、一方で、投資家はグローバルに、より前広な情報、特にリスク情報については求めようとしています。この点、海外企業というのは、今回のウクライナ情勢の情報に関する各国の開示等を見ていましても、比較的、投資家の期待に沿ったような開示をしようという努力がされているのではないかと思います。

 これは事務局説明資料19ページだったと思うのですが、各国の適時開示に関する制度にそれほど違いがないという中で、ところが、日本では個別の開示すべき事項というのが列挙されており、あるいは重要性の判断基準について定めがあるということから、カルチャー的なというか、意識、姿勢の違いが出てくるのかと思いました。特にこれはウクライナ情勢、今、足元に大変重要な影響があるものですけれども、刻々とリスクが変化するという中で、例えばインパクトが軽微な場合には開示しないであるとか、あるいは確実な情報を開示しようという傾向があるのかなと拝察しております。

 例えばこういう状況下では、投資家から見るとどうかというと、インパクトが軽微かどうかというのは分からないわけですね。だからこそ、適切に企業を評価して、あるいは株価を安定的に形成するという観点からは、まず事実、ここで言えば、ロシアのエクスポージャーがどうかみたいなものを開示して、その上での現時点での見通し、そして、今後のインパクトというものを見せることで投資家は安心しますので、これは企業側が負っているリスクを投資家とシェア、共有するということにもなって、必ず企業側の負担も全体的には減ると考えます。

 ところが、やはり日本ではこういうリスク情報を出すことで、自らに対する評価が下がるとか、あるいは厳しい評価を受けるというようなことも懸念されているのではないかと思います。これは市場全体で情報をより出すということが推奨されて、我々も含めて、適時情報の開示が素晴らしいことであるという認識が進む努力をしていく必要があると思っています。

 次に、英文開示についてです。私は基本的には、グローバル市場として位置付けられるプライム市場上場企業については有価証券報告書の英文化というものが必要であろうと考えております。さらに、内容のところですけれども、任意のアニュアルレポートとか統合報告書と異なって、開示項目が定められているということもあって、企業にとってはあまり出したくない情報、例えば、政策保有株式の問題であるとかそういったものについても開示義務の対象であるということですので、この辺りの有価証券報告書の英文化というのは大変重要だと思っています。

 具体的に優先するのはどこかといったところですが、非財務情報の部分がもちろん多くなるのですけれども、具体的にはMD&A、あるいは事業等のリスク、そういった【事業の状況】です。【事業の状況】のところ、あるいは【コーポレート・ガバナンスの状況等】、そして、政策保有株式、この辺りというのは、そして、将来的にサステナビリティについての開示が始まるとすれば、この辺りは優先的に英文化されることが必要かと思いました。

 現在、金融庁でAIを活用する自動翻訳の仕組みも御検討中ということで、ただ、これは足元の状況で見ると、やはり社会全体のコストが下がるということで、大変いいお取組みと拝察いたしました。

 最後に、コーポレート・ガバナンス報告書との関係ですけれども、コーポレート・ガバナンス報告書、東証のサイトの検索性が大変高くて、分析しやすいということもあるもので、そして、実務上も定着して、投資家も使用がかなり進んでいるかと思います。他方、有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況等】にその一部分を持ってくるというのは、正直、現実的な手法だろうとは思うのですが、一方で、別の東証のサイトに行くとより詳細なコーポレート・ガバナンス報告書というものが別途存在しているということになるかなと思います。

 可能であればというか、ほとんど希望に近いのですけれども、有価証券報告書の添付書類としてコーポレート・ガバナンス報告書をアペンディックスという形で添付できるような仕組みを御検討いただけないかなと思いました。EDINETにおいても、例えば株主総会招集通知のようなものが添付書類として掲載されていますので、そういった形でコーポレート・ガバナンス報告書が同じプラットフォームで、そして、有価証券報告書の後ろに掲載されるという形があればありがたいです。できれば、もし英語で有価証券報告書を出されている企業があれば、英語のほうでも同じようなものがあると、かなり投資家から見ると1つのプラットフォームで関連する情報が全部取れるということで、いい仕組みになるのではないかと思いました。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に、熊谷委員、どうぞお願いいたします。

【熊谷委員】
 どうもありがとうございます。みずほ証券の熊谷でございます。私も「ご議論いただきたい事項」に沿って発言させていただきたいと思います。まず四半期開示の「一本化」でありますけれども、もともと四半期開示は、今回のディスクロージャーワーキング・グループにおいて議論されるというのは、事務局説明資料40ページにもございますように、短期主義につながるという問題意識から、こういう四半期開示の見直しが求められてきたという中で、第6回会合の議論におきまして、そこまでの明確な答えが出ていない。むしろ否定的な意見が多かったのではないかなと理解しております。そうした意見を踏まえて、四半期開示が残されるといったことは非常に重要なことではないかなと思っております。

 「一本化」について、前回の会合における皆さんの意見を聞いておりまして、今回、報告書でなくて、四半期決算短信に「一本化」されたというところに関しましては、正直驚いているところではあります。ただ、コスト削減という観点ですとか信頼性を担保するという中で、四半期決算短信、第1・第3四半期に関しまして、「一本化」していくという方向性についてはやむを得ないといいますか、支持させていただきたいなと考えております。

 しかし、第2四半期についても四半期決算短信にすべきではないかという御意見もございましたけども、これは、私としてはやはり半期報告書、しかも、レビューではなくて、やはり監査を付けるべきではないかなと考えております。と申しますのも、第1・第3四半期について四半期決算短信にいたしますことによりまして、信頼性なりということに疑念が生じることがあるわけであります。中間決算をしっかり、第2四半期という中間決算という形で行っていただきまして、監査もしていただくということで、第1・第3に関しましてはまさにラップとしての情報を報告していくという性格がより強く打ち出せるのではないかなと考えております。

 そうしましたときに、第1・第3四半期についての虚偽記載に対するエンフォースメントといったことが問題になってくるわけであります。それをどうするかという議論が大変問題になってくるのだろうなと思っております。これにつきましては、御提案どおりで、臨時報告書を添付することによって、エンフォースメントは確保されるのだろうと考えてございます。そもそも四半期開示で虚偽記載が起こるということもあるとは思いますけれども、虚偽記載、重大な誤謬と違って、虚偽記載というのは一度始めてしまいますと、連続していきませんと、悪意を持って虚偽記載をする人の目的が達成できないのではないかなと思います。そう考えてきた場合に、中間報告書、あるいは年度の有価証券報告書でしっかり監査が行われているということ、それから、そこにおいて仮に虚偽記載というものが発生していた場合でも、そこでエンフォースメントを行えるという、臨時報告書と併せてエンフォースメントを行えるような仕組みになっていれば、十分な信頼性、あるいはエンフォースメントの実効性を確保できるのではないかなと考えております。

 ただ、これは今回のディスクロージャーワーキング・グループでそこまで決めるのではなくて、この夏以降、議論するということであると理解しております。ここにつきましては、やはり慎重に議論していく必要があると思います。私自身は、今申し上げましたように、監査付きの中間報告書、それから、第1・第3四半期に関しましては臨時報告書で十分ではないかと考えております。やはり利用者の中には、四半期決算短信によって提供される情報の信頼性を確保できないという声がございます。一方、特にレビューなしで臨時報告書の提出ということになりますと、企業の経営陣や監査役等の心理的不安コストが高まり、開示が後退するのではないかということを指摘する声が、利用者の中からも出ておりましたことを御報告させていただきたいと思います。

 決算短信における開示内容につきましては既にいろんな方から出ておりますけれども、決算短信の、特に第3四半期決算短信の開示内容につきましては、半期報告書があるということで簡素化されてきたという事実がございます。先ほど来、注記の充実ですとか、それから、MD&A、リスク情報等といったことの開示を要請事項とすべきではないかというような御議論もございましたけれども、これについても、この夏以降、しっかり議論していくことが必要ではないかと思っております。

 次に、適時開示でありますけれども、これは神作委員が御指摘になっておられたかと思いますけれども、我が国の適時開示制度というのがプリンシプルベースではなくて、むしろインサイダー規制と整合性を持たせるために、ある種、細則主義的になっているというところが問題ではないかなと考えております。これにつきましては、欧米と同様、プリンシプルベースに切り替えていくと。そういったときに、これから、これまでの財務報告でもIFRS基準は随分入ってきたりしておりますし、サステナビリティ関連でもそうですけれども、経営者の判断というのが非常に重要になってくるのだろうと思っております。

 特に適時開示に関しまして、何が重要か。これも神作委員がおっしゃっておられたと思いますけれども、インサイダーということではなくて、やはり何が株価に影響を与えるかということから重要性の判断をしていただきたいと考えてございます。

 今回の新型コロナウイルス感染症ですとかウクライナ情勢のような問題でありますけれども、これにつきましてもそういう重要性の観点から判断していていっていただければ十分かなと思います。個人的には昨年、新型コロナウイルス感染症に関する連絡協議会に参加させていただいて、かなりワークしたのではないかなと思っております。滅多にないことでありますけれども、新型コロナウイルス感染症ですとか、ウクライナ情勢のような緊急事態、非常事態が発生した場合には、そういう関連する利害関係者を集めまして状況把握をして、必要なガイダンスといいますか、適時開示に関するガイダンスを出していく体制をつくれるような、そういうことを制度化していくということも一案かなと思います。

 最後に英文開示については、これも皆様と同様、私も英文開示は、我が国の資本市場の国際化にとって非常に重要な論点であるとは考えております。しかしリソースの問題を考えますと、全ての企業に英文の開示を義務付けるというのはやはり無理があるのではないかなと思います。特に、せっかくプライム市場という市場ができたわけでありますので、プライム市場に関しては、やはり将来的には、英文開示と日本語による開示との同時公表というのを義務付けるという方向になると思います。しかしリソースの制約からそれが非常に厳しいという中で、開示すべき項目について、やはりガイダンス的なものを作って、プライム市場の上場企業に関しまして、どういう項目が英文で開示されているかということについて、ある程度統一性を持たせること、それから、それ以外に関しては、任意の英文開示を妨げないというような形に持っていけたらいいのではないかなと思っております。

 EDINETに既に英文開示している企業の一覧とURLが載っております。このような取組みを、例えばLinkedIn等のSNSを活用しまして、海外の投資家に向けまして、日本企業の英文開示の状況、例えばある企業が英文開示した場合に、EDINETに載せて、それがSNSで海外の投資家に向けて発信されるような体制を構築していただけたらいいのではないかなと思っております。私からは以上であります。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、これで本日御参加いただいております委員の皆様方、全員の方々から御発言いただきました。大変貴重な御指摘、御意見をいただきましてありがとうございました。

 では、オブザーバーの皆様方で、御質問、御意見等、御発言がおありの場合はお伺いしたいと思います。チャット欄にて全員宛で入れていただければありがたく存じます。

 今いただきました。ありがとうございます。経団連の小畑オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小畑オブザーバー】
 経団連、小畑でございます。発言の機会を頂戴しまして、ありがとうございます。今回、四半期決算短信のほうに、四半期開示を「一本化」していくという方向性を出していただきまして誠にありがとうございます。この方向に賛同いたします。ぜひこの方向で進めていただければと思います。

 ただ、気になっておりますのは、「一本化」するのが第1・第3四半期のみならず、第2四半期も含めて、全て「一本化」していただきたいということでございます。特に第2四半期について、半期報告プラス中間監査ということになりますと、これは実務負担の軽減どころか、過重になると理解しております。これはもともとのコスト削減という観点からしても逆行すると考えております。特にIFRS適用企業におきましては、非常に詳細な開示ということになりかねず、こうした方向になってしまいますと、IFRS導入を促進するという観点からも全く逆行してしまうと思っておりますので、第1・第2・第3四半期全て四半期決算短信に「一本化」する方向で御検討願いたいと思っております。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に、日本公認会計士協会の小倉オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小倉オブザーバー】
 会計士協会副会長の小倉です。第1・第3四半期の情報開示を四半期決算短信に「一本化」し、金融商品取引法の四半期レビューを廃止することを前提として、上場会社の監査事務所に対して意見を聞きました。50を超える監査法人の意見を得ましたので紹介させていただきます。

 大手監査法人からは、「企業の会計不正や虚偽記載に対する抑止力、海外の投資家を含むステークホルダーからの開示に対する期待、海外の開示制度との比較等も含めて、全体最適の観点からの検討が必要である」という意見や、「第1、第3四半期の短信への統合と、それ以外の施策をセットで、今春時点のディスクロージャーワーキング・グループの結論としていただきたい」というコメントがありました。

 また、準大手及び中小規模の監査法人には、「四半期レビューが廃止された場合に、担当クライアントの開示情報の信頼性確保の観点で懸念事項はあるか」という質問をしました。準大手及び中小監査法人は上場会社数で約3割の企業の監査を担っています。これについては、「大きな懸念はない」という回答と、「懸念がある」という回答の両方が見られました。懸念があるというものは、「新しい会計基準が導入されるケースにおいて、企業だけでは対応ができない」というものや、「中小規模の会社で、内部管理や開示体制が脆弱なケースも見られる」という意見です。

 この点は、必ずしも不正だけではなく、適正開示の観点からの懸念であり、制度検討の際にぜひ参考にしていただきたいと思います。有価証券報告書で内部監査の体制というものが開示されておりまして、人数等も開示されておりますが、グロース市場を見ますとほぼ1名というのが非常に多くの企業で公表されております。

 また、「情報の信頼性の確保の観点から意見はあるか」という質問をしました。これについては、「四半期レビューの廃止によって年度の監査手続を充実することができ、信頼性が増す」という意見や、「情報の信頼性が低下する可能性は否定できない」、「廃止する場合には、開示情報利用者に対する周知や注意喚起が重要」という意見がありました。現在でも決算短信は監査を受けていないということははっきり明記していただいております。

 公認会計士協会としては、情報の信頼性確保によって、資本市場の健全な発展に寄与するという立場から、引き続き企業情報開示制度について全体を俯瞰した議論に参加し、事実と状況をお伝えして、しっかりと対応してまいりたいと考えております。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に、東京証券取引所の青オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【青オブザーバー】
 東京証券取引所の青でございます。お時間を頂戴しましてありがとうございます。まず今回の見直しに関しましては、私どもとしましても、こうしたことを取り上げるのは大変有用なことだと考えてございます。そうした中で、まず投資者がエクイティ資金、リスクマネーの供給者であるということでございますので、十分にそこのニーズを考慮するということをしながら、なおかつ、開示の重複を避けるということで、作成者の負担への相応の配慮をするという形で議論が進んでいくということについては賛同しているところでございます。

 今後のところで、さらに具体的なところを詰めていくときには、金融商品取引法、それから、取引所での開示というものを全体として考えて、整えていくということが大事と考えてございます。そうした意味では、先ほどの投資者の声といったものも十分に踏まえながら丁寧かつ、慎重な御議論を今後においても進めていくということをぜひお願いできればと考える次第でございます。

 それから、適時開示そのものに関しまして、様々な御意見や御指摘を頂戴しているところでございますけれども、まず将来的なことで言えば、神作委員から御指摘ありましたように、インサイダー取引規制を含めて、そもそも適時開示という仕組みがどうあるべきなのかというところも重要な論点と受け止めてございます。

 その前の目先のところとしては、開示制度そのもの以前に、まず実態として物事が変わっていくということが非常に重要であると考えてございまして、例えばMD&Aや、経営戦略、リスク情報といった、定性的な事項について、まず取締役会でしっかりと御議論いただくということ、その上で、それについて有価証券報告書等で開示していただくということをどんどん進めていくことを企業の方にはぜひお願いしたいと思う次第でございます。

 また、四半期開示の話、あるいは新型コロナウイルス感染症や、ウクライナ情勢の開示の話を考えていきますと、経営管理において、事業環境の変化をタイムリーに把握していくということ、あるいは自社の経営にどういった影響があるかということについて十分に平時から機動的に把握していくということが非常に重要でございます。

 さらに言えば、経営管理、決算作業等に係るデジタル・トランスフォーメーションといったことも非常に重要だと思っておりますので、そうしたところも企業の方々にしっかりとお考えいただくことをぜひ薦めていっていただくことをお願いできればと思う次第でございます。

 いずれにせよ、制度的なところの話の前に、随時こうした適時に、積極的に開示していくことで、投資家に対して必要な情報を伝えていくという姿勢を十分にお持ちいただいて、実際にそうしたプラクティスが充実していくということがあって、初めていろいろな制度の簡略化ということも説得力を持ってくるということだと存じてございますので、ぜひ企業の方々にもそのような姿勢で取り組んでいただくということをお願いできればと考える次第でございます。私どもとしても、そうしたことをできる限り御支援する努力はしてまいりたいと思ってございます。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に、連合の片山オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【片山オブザーバー】
 連合の片山です。発言の機会をいただきましてありがとうございます。私のほうからは適時開示について発言させていただきたいと思います。先ほど事務局からロシア・ウクライナ情勢の事例も紹介されましたが、こうした変化に合わせて、ビジネスと人権など、非財務情報についても開示することが重要であると思っております。こうした観点から、適時開示について開示基準を設定していただきたいと思っていますのでよろしくお願いします。私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。あっと言う間に時間が定刻になりつつありますが、本日はこの辺りとさせていただければと思います。御意見などさらに追加でございましたら、ぜひ事務局までメール、お電話でも結構ですので、お伝えいただければ大変ありがたく存じます。

 そこで、このワーキング・グループの今後ということになりますけれども、今日御議論いただきましたテーマの1つである四半期開示を例にとって申しますと、その「一本化」という方向については、おおむね皆様方の議論はまとまっていると言えるのではないかと思います。もちろん個々の具体的な姿に関する各論については、今日も多様な御意見をいただきまして、さらに議論を深めていただく必要があるとは思います。

 同じように、それ以外の本日のテーマ、それから、さらに前回まで取り上げさせていただきましたテーマにつきましても、種々、大変貴重な御意見を多数いただいているわけですけれども、議論の全体的な方向性という点ではおおむね出ているというか、示されてきていると思います。

 ということでございまして、さらに皆様方に御議論をしていただかないと取りまとめに向けた議論ができないということはないと、私としては認識しておりまして、繰り返しになりますけども、今日取り上げさせていただきました四半期開示の点についてもそういうふうに言えるのではないかと思っております。ということですので、これまで皆様方にいただきました御意見を踏まえて、来月には取りまとめを意識したといいますか、取りまとめに向けた議論をお願いしたいと考えております。

 それでは、そういうことでございますけれども、御質問等ございますか。よろしゅうございますか。どうもありがとうございます。お気づきの点がございましたら事務局までお知らせいただければと思います。それでは、最後に、事務局から御連絡ございましたらお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 次回のワーキング・グループの日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえました上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと存じます。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。皆様方には本日も大変活発に、また、貴重な御意見、幅広い視点というか角度からの御意見を多数お出しいただきまして、どうもありがとうございました。

 以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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