金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第2回)議事録

  1. 日時:

    令和7年9月19日(金曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

【神作座長】

おはようございます。定刻より少し早いのですけれども、皆様おそろいでございますので、ただいまより金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ第2回会合を開催いたします。皆様、大変御多忙のところ御参集あるいはオンラインにて御参加いただき、誠にありがとうございます。

本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。

なお、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でおりますので、よろしくお願いいたします。

会議を始めるに当たりまして、事務局から留意事項をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

事務局を務めさせていただきます小長谷でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

本日の会議におきましてはオンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。

なお、対面で御参加の委員におかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から御指名いただきます。御発言後は、恐縮ですが、お名前のプレートを元にお戻しいただくようお願いいたします。

以上でございます。

【神作座長】

ありがとうございます。

それではまず、会議の公開についてお諮りいたします。金融審議会議事規則第4条にのっとり、ディスクロージャーワーキング・グループの審議につきまして公開することといたしたく存じますけれども、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神作座長】

どうもありがとうございます。御了承をいただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継させていただきます。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より資料の御説明をいただいた後、質疑応答及び討議を行いたいと思います。

それでは、事務局の金融庁から資料についての御説明をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

それでは、事務局より資料について御説明いたします。

1ページの目次にございますとおり、今回の会合では、セーフハーバー・ルールと確認書制度について御議論いただきます。セーフハーバーにつきましては、前回同様、効果、適用範囲、適用要件という各項目について御議論いただければと考えております。

2ページを御覧ください。まず、セーフハーバー・ルールの効果についてでございます。前回会合では、民事責任を免責の対象とする方向性、また、刑事責任を免責の対象外とする方向性については、おおむね御意見の一致が見られたのではないかと認識しております。他方で、課徴金を免責の対象とすべきか否かについては、両面からの御意見を頂戴しております。資料にございますとおり、行政のエンフォースメント手段の確保の観点から課徴金についてはセーフハーバーの対象外とすべきとの御意見があった一方で、課徴金納付命令が発端となって民事訴訟が提起される例が多いことを踏まえると、課徴金、民事それぞれで責任を問われる虚偽記載の範囲はそろえておくほうが望ましいと考えられること、また、後のスライドに出てまいりますが、仮に適用要件を主観要件の見直しではなく、一定の要件の下に免責とする案を取ることとするのであれば、民事責任だけでなく課徴金についても免責の対象とするほうが合理的ではないかとの御意見がございました。

こうしたもろもろの御意見を踏まえてでございますけれども、虚偽記載等の責任に対する企業側の懸念を解消し、有報における情報開示の充実を図るというセーフハーバーの趣旨に照らせば、民事責任に加えて課徴金も免責とすることが適当ではないかとここでは御提案しております。なお、当局による適正な法執行につきましては、ガイドラインによっても確保できると考えられることから、課徴金の免責につきましては、法改正ではなく、ガイドライン改正により手当てすることとしてはどうかとしております。

次に、資料の3ページを御覧ください。有価証券報告書の虚偽記載に係る近年の訴訟の状況をまとめております。件数はここにございますとおり20件ございまして、うち12件は課徴金納付命令の対象にもなっておりました。また、虚偽の記載がされた情報は、いずれの案件においても財務情報なのですが、財務諸表とともにガバナンス情報の虚偽記載が争点となった例が1件ございました。

次に、会社の過失の内容という欄を御覧いただきたいのですが、後のスライドで出てまいります適用要件に関する御議論の参考として調べてみたのですが、会社側から過失がなかったことが主張されている例はごく少数となっておりました。

次の資料4ページと5ページには、この20件の訴訟における、例えば原告の属性とか時価総額の下落額等を御参考までにまとめております。

6ページを御覧いただけますでしょうか。継続開示書類の虚偽記載等に対する課徴金の導入以降の件数をまとめております。現在、合計148件となっておりまして、そのうち非財務情報の虚偽記載が対象となったケースは5件となっております。

次に、資料の8ページを御覧ください。次に、セーフハーバー・ルールの適用要件についてでございます。非財務情報のうち、将来情報、見積り情報、統制の及ばない第三者から提供された情報に限定するという方向性について、こちらもおおむね一致したものと認識しております。将来情報等に限定せず、非財務情報全般に広げるべきという御意見もあったところではございますが、非財務情報の虚偽記載等についても投資判断とか価格形成に影響を与える可能性がある以上、いきなり全般に広げることについては慎重であるべきではないか、まずは非財務情報のうちの将来情報等に限定してセーフハーバー・ルールを導入することとしてはいかがかと考えております。

将来情報と現在情報の境界とか、あるいは財務情報と非財務情報の境界などについて不明瞭とならないよう整理が必要ではないかといった御指摘もあったところでございまして、その点につきまして次の9ページを御覧いただければと思います。明確化を図りつつ、他方で一定の柔軟性も確保する観点から、例えば以下のような点をガイドライン等で示すこととしてはどうかと考えております。

まず、将来情報についてですが、有報の作成時点から見て将来に関する情報であって、作成時点において金額、数量、事象の発生の有無等が確定していないものとしてはどうかと考えております。これにより、例えばMD&Aに含まれる将来の業績予想などについてはセーフハーバーの対象となる一方で、既に確定している財務数値を活用して当期の業績を分析する部分などについては、過去情報であり、対象外になるという整理になるかと考えております。

次に、統制の及ばない第三者から入手した情報についてでございます。子会社や関連会社を除く第三者から取得した情報に基づき開示される情報としてはどうかと考えております。この第三者情報については、データプロバイダーなどから取得した情報をどうするかという論点があるかと考えますが、企業においてその情報の正確性を検証することが困難という点を踏まえまして、セーフハーバー・ルールの対象とするものと整理してはどうかと考えております。

最後に、見積り情報については、Scope3なども念頭に、不確実性のある数値について入手可能な情報を基に合理的な数値を算出するとすることが考えられるかと思っております。

次に、資料の11ページを御覧ください。セーフハーバー・ルールの適用要件については、前回会合で様々な御意見を頂戴しました。それを踏まえまして、案①、案②のそれぞれの課題などにつきまして改めて整理をさせていただきました。

12ページを御覧いただければと思います。前回会合での御議論を踏まえますと、案①につきましては、挙証責任を原告に戻すこととセットで主観要件を見直す方法と、挙証責任については被告に課す現在の規定を維持したまま、主観要件のみを見直す方法の2つがあり得るかと考えております。

まず、挙証責任の転換についてでございますが、金融商品取引法21条の2に関しましては、2014年改正の際に、投資者の訴訟負担が過大にならないようにとの観点から、立証責任を原告から被告に転換する規定が設けられたものでございまして、これをまた元に戻すということはこの規定の考え方になじまないのではないかと考えられます。

では次に、挙証責任のところは現行と変えずに、主観要件のみ過失から重過失に変更することとした場合にどのような懸念があるかという点についてでございます。3ページのところでも御説明しましたとおり、金商法を根拠とする証券訴訟において過失の有無が争点化されていないことなどを踏まえますと、この案の場合、果たしてセーフハーバーとして機能するかどうかは必ずしもはっきりとしないところがあるかと考えております。また、これは2ページにございますセーフハーバーの効果の論点と関係してくる点ですが、主観要件の見直しにより民事責任のセーフハーバー・ルールを設けることとする場合、もともと過失・故意を問わない規定となっている課徴金や発行開示の民事責任についてはセーフハーバー・ルールの対象とすることが難しくなるという悩みも生じるところでございます。

次に、13ページを御覧ください。案②につきましては、ここにございますとおり、非財務情報のうちの将来情報等については、その合理性が確保されていると認められる場合には金商法上の民事責任の規定を適用しないと法律に規定することが一案として考えられます。この合理性が確保されていると認められる場合としては、下にございます考え方の1つ目の矢羽根ですけれども、情報開示に係る体制の整備と開示の要素を考慮することが明確性の観点からも適当ではないかと考えております。また、考え方の2つ目にございますとおり、課徴金の免責についても同様の要件とすることが考えられるかと思います。考え方の3つ目でございますが、こうしたセーフハーバー・ルールを設けることにより、金商法上の民事責任規定が適用されないこととなっても、投資者が会社の過失などを立証した上で、一般不法行為法上の責任を追及することは引き続き可能と考えられます。

次に、その下の追加検討事項についてでございます。これまで継続開示の場面における会社の責任を中心に御議論いただいておりましたけれども、役員の責任とかあるいは発行開示の場面における責任について、同様の要件の下でセーフハーバー・ルールの対象とすることについてどのように考えるべきか、この点について御意見を頂戴できればと考えております。また、刑事責任をセーフハーバー・ルールの対象としないこととの整合性を確保する観点からは、例えば故意でないことを要件とすることも一案かと考えられますが、こちらについても御意見を頂戴できればと思っております。

次に、14ページを御覧ください。前のページで述べました、その合理性が確保されていると認められる場合というセーフハーバー・ルールの適用要件をより具体化したものとなっております。有価証券報告書という欄を御覧いただきたいのですが、今後、SSBJ基準にのっとり、サステナビリティ関連のリスクと機会について、その監督に責任を負うガバナンス機関の名称・その責任や、どのように、また、どのような頻度で情報を入手しているかといった情報の開示を求められることとなります。

また、前回会合の資料においても言及しましたが、サステナビリティワーキング・グループにおきまして、有報の記載事項として、将来情報等を記載するに当たり前提とされた事実、仮定及び推論過程などを追加することが提案されているところでございます。こうした開示とか、あと、この後のスライドに出てまいります見直し後の確認書制度を通じて、企業内のガバナンス機関、さらには経営者が関与する形で開示手続の整備・向上が進み、結果として、将来情報等の合理性が確保されていくことが期待されるのではないかと考えております。したがいまして、今申し上げた有報と確認書の記載事項が真実であることを前提に、その開示をもってセーフハーバー・ルールが適用されるとすることが一案かと考えられます。

次に、16ページを御覧ください。確認書制度につきましては、前回会合において事務局提案におおむね御賛同いただいたものと認識しておりまして、内容的には同じでございますので、改めての御説明は省略させていただきます。参考として、それ以降のスライドに米国の宣誓書制度との比較を資料としておつけしております。

最後に、21ページを御覧ください。本日は、ここにございます大きく4つの点を中心に御議論いただければと考えております。

事務局からの説明は以上でございます。

【神作座長】

御説明どうもありがとうございました。

それでは、これより委員の皆様から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。限られた時間ではございますけれども、全ての委員の方々から5分以内で御意見等を頂戴できればありがたいと存じます。なお、本日の会議では、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで事務局員よりメモを差し入れさせていただきます。加えまして、御発言の順番につきましては若干前後する可能性がございますけれども、あらかじめ御了承いただければ幸いでございます。

初めに、本日御欠席の永沢委員より御意見を頂戴しておりますので、事務局から御紹介をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

それでは、永沢委員から頂戴しております意見書を代読させていただきます。

セーフハーバー・ルールの対象範囲の明確化について。

将来情報等に限定する事務局案に賛成します。セーフハーバー・ルールの適用対象範囲が広がり過ぎると、制度が骨抜きになってしまいかねないと考えるからです。責任を免除する範囲は限定すべきであると考えます。

企業の予見可能性を高めることが企業の心理的負担を軽減することにつながると思われることから、将来情報等の範囲を明確化することが必要という意見にも賛成します。

将来情報等について、個人投資家の関心が環境からガバナンスや人材に移ってきているという調査結果も出ているようです。投資家が重要視する項目が拡大・変化していくことが予想されることから、その内容や範囲を固定化せず、大枠を内閣府令やガイドラインで示し、柔軟に対応できるようにするという考え方が妥当と思います。

9ページに現時点での考え方の大枠を示していただいており、おおむね賛成です。なお、第三者について、企業に都合のいい事業者が選定されることが想定されます。後述の情報開示体制整備に関連することですが、選定基準等についても情報開示が行われることが望まれます。

セーフハーバー・ルールの内容・適用要件について。

案②を支持します。明確性や法技術的な観点から優れているという事務局説明に加えて、投資家・株主の立場からは、非財務情報の開示に係る体制整備等はまさにガバナンスの一端であり、虚偽記載がないことが前提となりますが、これに係る情報が有価証券報告書に記載されて市場に提供されることにより、投資家・株主は企業がどういうリスクにどう対応しようとしているかを知ることができ、結果的に投資リスクの管理に資することになると考えるからです。

案①が採用される場合、挙証責任の転換には反対します。金商法21条の2の創設の経緯に鑑みると、投資家保護の後退のように思えるからです。

セーフハーバー・ルールの効果について。

将来情報等の開示に当たっては企業にリスクテークをしていただく必要があり、その背中を押すという観点から民事責任を免責することには合理性があり賛成しますが、課徴金は、行政のエンフォースメントの手段であり、これを免責してしまって問題がないのか、金融庁の御見解をお聞きしたいと思います。

確認書制度の見直しについて。

事務局案に賛成です。開示体制・手続の整備・運用状況が有価証券報告書に記載され、それを経営者が確認することで免責になるということが明確になってよいと思います。

以上。

【神作座長】

どうもありがとうございました。永沢委員の意見書の中に1点御質問事項が含まれていたかと思います。セーフハーバー・ルールの効果について金融庁の御見解をお聞きしたいということでございますけれども、よろしければ、小長谷さんから御回答いただけますでしょうか。

【小長谷企業開示課長】

ありがとうございます。課徴金が行政のエンフォースメント手段であり、これを免責してしまって問題がないのかという点でございますが、課徴金は行政庁にとって重要なエンフォースメント手段であるという点は、永沢委員はじめほかの委員の方々からも御指摘を頂戴している点であり、おっしゃるとおりかと思います。

他方で、資料に記載した点の繰り返しになってしまう面もございますが、有報における情報開示の充実を図るというセーフハーバー・ルールの今回の趣旨に鑑みますと、やはり民事責任と課徴金とで免責の範囲がそろっているほうが望ましいのではないかと考えて、今回の御提案をしている次第でございます。仮に免責の対象をもっと広げる、例えば非財務情報全般に拡大するといった話になればまた別の話になるかと思われますけれども、今回は非財務情報のうちの将来情報等に限定するということとセットで課徴金も免責の対象とする案を御提案しているところでございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様方から御意見、御質問等をお出しいただければありがたく存じます。どなたからでも結構でございます。御発言を御希望の方、名札を立てる等意思を示していただければ幸いです。いかがでしょうか。

それでは、加藤委員、御発言ください。

【加藤委員】

加藤でございます。資料1の21ページの御議論いただきたい事項に沿って意見を述べます。

まず、セーフハーバー・ルールの効果について、民事責任のほか、課徴金を免責の対象とすることについてどう考えるかについてです。立法政策としてはこのような方策はあり得ると思います。ただ、先ほどの永沢委員の御発言とも関係しますが、民事責任や行政責任の対象ではなくなっても、セーフハーバー・ルールの対象となる情報について、それらを法定開示の対象とする趣旨に沿った対応を上場会社が行うことが他の手段によって確保されていることを明確に示す必要があると考えます。民事責任や行政責任以外の手段によって情報開示の質と量が投資家の期待に沿うものになるような仕組みが存在しているということが示されなければ、セーフハーバー・ルールを導入した後の運用が保守的になるということも懸念されるように思われます。

次に、セーフハーバー・ルールの適用範囲の明確化についてです。セーフハーバー・ルールの対象か否かについて上場会社と投資者の間で争いが生じることを避けるという観点からも、セーフハーバー・ルールの適用範囲の明確化は望ましいと考えます。資料1の9ページの注1が示しますように、セーフハーバー・ルールの適用対象となり得る箇所について予見可能性が確保されていることは重要であると思います。ただし、将来情報などの開示を法定開示として求めるわけですから、開示される情報は信頼に値しないというような印象を投資者に抱かせるような開示は適切ではないと思います。セーフハーバー・ルールの適用対象である情報については、適用範囲について投資者が誤解を招かないようにするだけではなくて、セーフハーバー・ルールの具体的な制度設計とも関係しますが、会社内部においてどのような手続を経て作成された情報であるかを投資者が分かるような開示を促すことが望ましいと考えます。

次に、セーフハーバー・ルールの内容・適用要件についてです。案①と案②のいずれが妥当かということについては、前回の会議でも申し上げましたとおり、案②をベースにして考えていくほうが適切ではないかと私は考えております。その上で、案②をベースにして御提案いただいたのが資料1の14ページの提案かと思います。この資料1の14ページの提案を私なりに理解いたしますと、開示書類の提出時点で開示書類の作成のために上場会社が整備していたシステムの状況を的確に開示していた場合には、セーフハーバー・ルールの対象となる情報について金商法上の民事責任に関する規定は適用しないというものであると思います。これは、上場会社が実際に整備していた開示統制、手続の適切さを問うものではないという点で過失とは区別されると思います。上場会社が整備していたシステムに関する情報は会社側が有しているわけですから、仮にこの点について上場会社に立証責任を課すとしても、過大な負担とは言えないと考えます。ただ、このような形でセーフハーバー・ルールを設ける場合には、開示の統制や手続の質を確保するという点で果たして十分な仕組みがほかに存在するかということについて配慮する必要があるように思います。

最後に、発行開示における役員の責任についてもセーフハーバー・ルールの対象とするべきであるかという点についても意見を述べます。原則として対象にするという方向で考えていいのではないかと思っております。その理由として、まず第1に、セーフハーバー・ルールの必要性は、それが記載される開示書類が何かということではなくて、情報の性質によって基礎づけられると思います。そうしますと、発行開示における責任と継続開示における責任を区別するという必要はないのだろうと思います。

また、資料1の14ページのようにセーフハーバー・ルールを設計するのであれば、これは非財務情報における将来情報などの開示のためのシステムの内容が適切に開示されていたという場合には、そのようなシステムを経て開示された情報であるということを前提として投資家が行動するわけですから、民事責任による救済を基礎づけるほど投資判断はゆがめられたとは言えないという、整理もできると考えます。こういった整理は、発行会社の責任だけではなくて役員の責任にも当てはまるかと思いますので、セーフハーバー・ルールの対象については、発行開示の責任と役員の責任も対象に含めるということを一応正当化できるのではないかと考えております。

私の意見は以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

それでは、大瀧委員、どうぞ御発言ください。

【大瀧委員】

ありがとうございます。セーフハーバー・ルールにつきましては、企業の積極的な情報開示を促すための法的対応と理解していますが、その一方で投資家保護を十分に踏まえた法的基盤の整備も重要であると考えております。セーフハーバー・ルールの民事責任につきましては、提出会社に挙証責任を残すことに強く同意いたします。

また、適用要件において、案②のほうが法技術的な観点から優位性が高いことも理解いたしました。案②では、将来情報等において合理性が確保されていると認められる場合、金商法の民事責任の規定を適用しないとし、有報における見積りの前提や、推論過程、情報入手における適切性の評価手続等を記述し、かつ確認書において開示手続の整備、実効性について記述することを求める提案がなされています。

このとき、当該記述が真実ではなく実態とは異なる、すなわち、経営者によって内部統制が無効化されるといった状況で、合理化が担保されず、非財務情報に重要な虚偽記載が記述された場合について検討する必要があると考えております。非財務情報における将来情報等については、正確性は問われずとも、会社にはその合理性を担保するための開示に係る内部統制の構築や合理性の判断に係る責務があると考えます。重要な虚偽記載の発生は合理性が確保されているとは認められないと考えられるため、民事責任の免責要件として故意でないことは当然のこと、重過失でないことも要件に加えるべきだと考えます。

また、この問題は適用範囲とも関連してきます。MD&Aの業績予想等を適用範囲に含めることに同意しますが、会計上、繰延税金資産の回収可能性の判断においては、将来の合理的な見積り可能期間としておおむね5年としており、将来の業績見通しを前提に当期の財務数値が生成されます。減損会計や退職給付会計も同様に将来情報等を用います。その際、当期の財務情報の生成に用いられた将来情報等と非財務情報において記述される将来情報等が整合していなければならないと思います。ここで非財務情報における将来情報等について責任問題を含め一定の合理性が確保されるような規律でなければ、財務数値の信頼性との整合性が保てなくなる可能性があると考えます。また、昨今、将来情報等について財務情報とサステナビリティ情報との整合性も求められており、これらの垣根が低くなりつつあることも考慮する必要があると考えます。

したがって、適用範囲において一定の柔軟性を持たせる方向で進めるのであれば、非財務情報における将来情報等の合理性が確保されることがより重要となるため、免責条件のハードルを引き上げることをセットで検討したほうがよいと考えます。なお、有報における将来情報等に係る前提等について、例えば為替前提等といった、可能な範囲で定量的な情報があったほうが投資家にとって有用性が高まると考えます。

次に、課徴金の取扱いです。会社に法定開示の合理性を確保させる観点からは維持したほうがよいと考えます。我々投資家は任意を含め様々な開示情報を利用しますが、法定開示である有報を最も信頼して利用しています。それは行政のエンフォースメントにより信頼性が担保されているからです。民事責任との法的整合性は理解できますが、適切な情報開示は健全な資本市場の根幹であり、原因は何であれ、重要な虚偽記載が発生し資本市場にネガティブな影響を与えたならば、課徴金を課し、それによって適切な開示に係る内部統制の整備といった牽制効果につながると考えます。また、発行開示における責任や役員の責任についてはセーフハーバー・ルールの対象とし、要件等についてはこれまでの議論に加えて特段の配慮は必要ないと考えております。

最後に、確認書の件です。セーフハーバー・ルールにおいて免責要件を設ける方向性であれば、経営者には、重要な虚偽記載はなく、適切な情報開示に対する意識づけを高める必要があると考えます。提案されている開示手続に関する記述に加えて、17ページの②にございます重要な事項につき虚偽の表示・省略がないことを追加したほうがよいと考えます。

私からは以上です。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。三瓶委員、どうぞ御発言ください。

【三瓶委員】

「ご議論いただきたい事項」に沿ってお話しします。

まず、虚偽記載等に対する責任のあり方のセーフハーバー・ルールの効果についてです。虚偽記載というのは、対象書類に重要な事項につき真実と異なる記載、いわゆる虚偽があることということだと思います。したがって、真実と異なる記載があったという事実は変わらないけれども、記載時点で確定した事実がない状況で開示を促す目的から、刑事責任を問われるような場合でない限り、民事責任及び課徴金を免責するというのがセーフハーバーの効果を期待する上で妥当だと考えます。その上で確認したいことが2つあります。

1つ目は、虚偽記載等の場合の「等」というのは、記載すべき重要な事項の記載が欠けていることを指すと思いますけれども、重要な事項の記載が欠けていることまで免責にしてしまうと、そもそも目的である開示の促進に反してしまうというふうに懸念します。この点についてどう考慮しているのかということで補足説明をいただければと思います。

2点目は、記載の欠如に関して、行政上の措置である課徴金制度では、記載すべき重要な事項の記載が欠けているときというふうに対象範囲が狭いんですけれども、金商法上の民事責任では、記載すべき重要な事項もしくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときということでもう少し対象範囲が広くなっています。なので、民事責任及び課徴金を免責する場合に、この対象範囲の差異が問題とならないのか、どう平仄をそろえていくのかということに対してお考えをお聞かせいただきたいと思います。

【神作座長】

まず、御質問を2点いただきましたので、この点について事務局から御回答いただけますでしょうか。

【小長谷企業開示課長】

今、三瓶委員から御質問いただきました、まず1点目、虚偽記載等のところでございます。御指摘いただいたとおり、金商法上の民事責任の対象行為としては、重要な事項の虚偽記載のほかに、記載すべき重要な事項の記載が欠けていること、あと誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていることがございます。今回のセーフハーバー・ルールについては、将来情報等の合理性が認められる場合には、金商法上の民事責任の規定を適用しないとすることを予定しておりまして、虚偽記載に当たらないとするものではございません。今のところ、事務局の提案としてはというところでございますけれども。そのため、虚偽記載のみならず、重要な記載の欠落につきましても、同一の要件の下でセーフハーバー・ルールの対象になるというふうに今の時点の御提案ではそのようにしております。

2点目の御質問については、事務局内で確認させていただければと思います。

【三瓶委員】

ありがとうございます。今の点については分かりました。2点目については、また御確認いただければと思います。

そして、適用範囲の明確化については、9ページに書いてある統制の及ばない第三者から入手した情報のところで「関連会社」と書いてありますけれども、関連会社を全て除くことが妥当かというのには疑問を持っています。例えば他の支配株主の存在等の理由から協力が得られず統制が及んでいると言えない場合もあるのではないかということで、内部統制と平仄をそろえるような形で、関連会社だからというよりは、具体的にはどこまで統制が及んでいるのかというところで判断すべきではないかと思います。

もう1点の見積り情報ですけれども、最初に「引当金の金額等」と書いてあるところがあります。この例示が必要なのかどうか疑問です。もちろん引当金等が財務情報に書いてある場合にはそこは対象外ということだと思うんですけれども、こういうふうにわざわざ例示をすると、引当金に限定したようなイメージというか、そういったことを誘導しているような感じになってしまうので、特にこの例示は要らないのではないかと思います。

次に、内容・適用要件については、前回、案①を推しましたが、今回様々な説明が加えられた中で、そもそも過失の内容が争点化されていない状況だということを踏まえると、案②が妥当だということは理解します。その上で、案②について、「故意でないこと」も要件とするというほうがより分かりやすくて、それが適当だと考えます。

確認書制度の見直しについては、前回も申し上げましたけれども、提案されている2つの事項を加えることはセーフハーバー・ルール適用の前提条件だと思います。17ページから19ページに米国のSOX法の例が示されていますけれども、サステナビリティ情報開示のワーキング・グループで共有されたISSB基準とESRSの開示のガバナンスにも、「統制及び手続における経営陣の役割」が明記されており、将来情報等を含むサステナビリティ情報開示という新しい取組を意識して行うにはこれが非常に重要だと思いますので、提案されている2つの事項を追加すべきと考えます。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、岩井委員、御発言ください。

【岩井委員】

私からは、虚偽記載等に関する責任において3点、それから確認書制度の見直しについて1点、合計4点発言させていただきたいと思います。

まず、虚偽記載等に関する責任において、最初に免責対象ということでありますが、民事責任に加えて課徴金を免責の対象とする事務局案に賛同いたします。仮に民事責任のみが免責対象となった場合には、課徴金が課せられるという事実をもって民事訴訟が提起されるという事例が多いということからしても、課徴金と民事責任で平仄を合わせるのが合理的と思います。第1回でも申し上げましたとおり、悪意または重過失による虚偽記載でない限り、会社の過失責任を問わないような制度設計、さらには課徴金が免責対象から外されることのないようお願いしたく、原案に賛同させていただきます。

続いて、適用範囲についてでございます。事務局案で掲げていただいた将来情報等に限定、明確化することについて、基本的な方向性に異論はございません。本案は、前回申し上げたScope3などのサプライチェーン情報、それから将来情報、見積り情報等がセーフハーバーの適用範囲に含めていただいたというふうに理解をしております。明確化という意味では、足元の国際会計基準の動きでも顕在化しているように、非財務情報の拡充に伴って、財務情報なのか非財務情報なのかというバウンダリー、これが曖昧にされて議論されているというケースが多いように感じておりますので、本件においてもそのような適用範囲か否かの境界が曖昧にならないように整理することが肝要と申し添えさせていただきます。

それから、3点目でございます。虚偽記載等に関する責任の3つ目は適用要件ということでございます。これも前回申し上げたとおりですけれども、企業がサステナビリティ情報を萎縮することなく開示できる制度設計とするという観点や、海外の各国法制との整合性確保の観点から、米国のSECと同様に挙証責任を原告側に見直していただくということを前提に、悪意または重過失の責任のない限り、会社の過失責任を問わない制度設計にしていただきたいというのが私の意見であります。すなわち、挙証責任を原告側に戻した上で案①としていただきたいということを強く要望したいと思います。挙証責任の戻しについては、御説明では金商法21条の2の考え方になじまないということでございますけれども、今回議論している背景は、サステナビリティ情報開示が将来情報、第三者からの情報が多いという、従前のいわゆる実績中心、連結中心の財務情報とは情報の特性が大きく異なる情報開示というところに踏み込んでいる点と認識しています。こうした中で国際的な潮流に基づいて法制開示されるという大きな変化を考えると、従前の延長にとらわれることなくぜひ検討いただきたいと思います。

仮に案②となった場合は、情報開示に係る体制の整備及びこれに係る開示があれば合理性が確保されていると認められるとの記載をいただいておりますが、心配しておりますのは、過失であっても結果的に虚偽記載が実際に生じた場合は、結局遡って合理性判断に影響が生じないかが少し不明瞭ではないかと感じております。この点、事業会社としては、実質的に企業の挙証実務負荷が生じないように明確にしていただくことにより、本来の目的である企業の開示姿勢が萎縮しないことへの配慮をぜひお願いしたいと思います。

それから最後でありますが、確認書制度の見直しについて述べます。これも前回の発言の繰り返しになりますが、現行の確認書の範囲が有価証券報告書全体に及んでいるということから、改めて記載事項の追記の必要はないのではないかと考えております。御提案にある開示手続の整備、開示手続の実効性確認といった追記事項は、SSBJ基準の開示要求事項でもあり、改めて確認書に記載しなくても企業の開示姿勢の向上に資することになると考えており、確認書に記載する意義や実効性に少し疑問を持っているということでございます。

また、例示として米国の宣誓書の記載がありますが、これは準拠すべき法律名の記載がないことから記載しているのではないかと、推測しておりますが、この辺り、事務局の御意見も伺えればと存じます。

いずれにしましても、これは企業側の実務負荷の多寡という問題ではなく、日本の場合、現行確認書で準拠法となる金商法が明記され包括的ということになっている中で、一部の開示要求事項の確認を追記するということは、立てつけとして重複感や違和感があると考えておりますので、我々としては再考いただければと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、小林委員、御発言ください。

【小林委員】

御指名ありがとうございます。御議論いただきたい事項に沿って発言させていただきます。

まず、1点目につきましては、民事責任との整合性を図るという意味で、私は課徴金も免責の対象とするべきと考えます。

それから、2点目のセーフハーバー・ルールの対象範囲の明確化については、基本的には事務局案に賛成ですが、統制の及ばない第三者から入手した情報に関して、子会社・関連会社からの情報は排除するということですけれども、仮に子会社・関連会社から入手したデータにおいて、それが今議論されているセーフハーバーに該当するようなデータであり、親会社がそれを基にそれを使った開示をした場合に、子会社・関連会社のデータは仮に上場していればセーフハーバーの対象になるにもかかわらず、それを使った親会社がセーフハーバーの対象にならないというのには矛盾があるのではないかと思います。この点はについては一律に認めないということではなく、ケースを分けて検討していただきたいと思います。

3点目のセーフハーバー・ルールの内容・適用要件については、私は案②に賛同いたします。案①につきましては、過失の内容について明示されないまま裁判所の判断によることになり、確認書、保証手続との関係で企業が保守的な開示になるのではないかという点を懸念しておりますので、案②になるかと思います。ただ、この適用要件についてはしっかりとした議論が必要であると考えております。

さらに、「故意でないこと」を要件に加えるかどうかという点については、社内の体制に問題があり、故意ではないけれども、開示に虚偽や誤りが発生するような場合は、社内の体制については、確認書、それからこれから議論される保証のところでは検証されると理解しています。よってあえて「故意でないこと」を加える必要はないのではないかと思います。「故意でないこと」を加えるが必要である事例を、具体的に御説明をいただきたいと思います。

4点目の確認書については、開示手続を整備していること、それから開示の実効性を確認したことというのは、セーフハーバーの適用と直接連携していることなので、セーフハーバー・ルールの適切な運用を担保する上で必要であると考えます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それではここで、オンラインで御参加の松井委員より御発言の希望をいただいております。松井委員、どうぞ御発言ください。

【松井委員】

ありがとうございます。私からは、まず要件のところから議論をさせていただければと思います。

まず、この制度は、金融庁としてはシングルマテリアリティの観点から導入した制度でございます。頭の体操になりますが、そもそもサステナ情報を開示事項としたという整理から、マテリアリティがおよそないというふうに考えるという整理が難しいという事情がございます。将来情報について、投資家と企業が同じ不確実性の地平に立っていると考えた場合に、虚偽記載の民事責任を生じさせるようなマテリアリティがないのだといったような学術的な整理もあり得るところかと思います。もしそのように考えた場合にはおよそ責任は発生しないという形になると思うんですけれども、今般の考え方というのは、主観要件を重過失とする、挙証責任を戻すという考え方、あるいは一定の要件の下、免責とするという考え方であって、必ずしもマテリアリティの有無という枠組みの整理になっておりません。

したがって、あるかもしれない責任を否定する際に、政策的にどういうところを重視するのかということによってどちらを取るのかということが決まってくると思うんですけれども、今回は例えば案②を取ることにより、不記載を含め、免責ということが確保できるといったようなことから、確実に免責できて制度的な落ち着きがよいということが重視されたのではないか、またそうだとすると、開示を促し、企業の安心を確保するということが政策的に重要なのだということですから、適用の効果についても行政罰等を含め、企業に対する安心を与えるということが一貫しているのかなと思われます。

他方、この案②を取ったということにより、案①を考えなくていいのかということにつき、基本的に事務局は、非財務情報全体に拡大するということでなければ議論をすることはないのではないかというご発言がございまして、第2回の議論の俎上には今回上っていないと思うんですけれども、案②を取ったとして、案①について議論することが全くないのかということは考えておくべきかと思います。特に事務局は、不法行為などによる役員等に対する責任追及訴訟、あるいは商法上の責任追及といったことがあり得るということをおっしゃっておられましたけれども、完全に金商法上の免責だけをかっちりとつくりますと、そういった別の訴訟との落差という問題が発生するということになるかと思います。

訴訟を提起する側は、サステナビリティ情報であるかどうかということと関係なく、金商法以外の法律の条文に基づく訴訟の提起をすることが考えられますので、その場合の企業の責任ということともある程度整合性が取れるようにしながら、この際さらにより広い範囲で主観的要件について手当てを考える余地があるのではないかと考えたところでございます。

話が戻りまして、先ほどの課徴金に関しては、連動をするほうが政策的な目的に沿うと理解したところでございます。したがって、そのような形で今回つくっていくということに一定の説明ができるのではないかと思ったところです。

また、不記載を含め、体制整備があれば一定の記載につき免責をするという、そういった規制の形をとるのであれば、発行開示と継続開示について区別を全くしないルールも可能であるところ、情報の質については継続開示の場合には、何が重要だか分かりにくいということで不記載が大事だということになってくると思うんですけれども、発行開示に関しては記載を、上場するときの目玉となるような企業の姿勢について記すということが重要になってくるという、重点の差はあるかと思うんですけれども、こういった点の区別は難しいので、免責をするというルールを入れてしまうのであれば違った制度を別々に考えるという必要はそれほどないのかなと思いました。ただ、加藤委員がおっしゃっておられたように、その外側において運用が保守的にならないような環境が非常に重要ではないかと考えております。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、黒沼委員、御発言ください。

【黒沼委員】

虚偽記載等に対する責任の在り方について、幾つかの意見と質問を述べたいと思います。

まず、課徴金を免責の対象とするかどうかについてですが、これは虚偽記載の抑止という観点から実質的に議論すべきだと思います。そして、私個人としては、エンフォースメントの手段を確保しておくために、課徴金を免責の対象とすべきではないと考えます。一定の手続を取った場合に、記載が虚偽でないとみなされるという形式ではなく、一定の手続を取った場合に、金商法21条の2等の規定を適用しないという形式を採用すれば、課徴金を免責の対象としないということも不自然ではないと思います。アメリカでも、将来情報に対するセーフハーバー・ルールはSECによる差止め訴訟に適用されないと理解しています。

関連して1つ質問ですけれども、セーフハーバーを民事責任と課徴金について設けた場合に、192条の緊急差止命令との関係で、虚偽記載のある書類の提出には法令違反があったということになるのかどうか、192条が適用されると考えておられるのかどうか、金融庁のお考えをお聞かせいただければと思います。

また、仮に課徴金を免責の対象とする場合であっても、訂正報告書の提出命令の対象としては残しておくべきではないかと思います。さらに、仮に課徴金を免責の対象とする場合、ガイドライン改正によってセーフハーバーを整備するという御提案がありますけれども、現行法上、金融庁長官は一定の場合に課徴金の納付を命じなければならないという法形式になっていると思うのですが、当該規定を適用除外規定として設ければ、命じる義務がなくなるということになりますから、法令改正で対応することもできるのではないかと思いました。

次に、セーフハーバー・ルールの適用範囲の明確化についてですが、将来情報の定義及び適用範囲は提案のとおりでよいと考えます。それから、第三者から入手した情報を、統制の及ばない第三者からと限定した点は賛成です。ここでもう一つ疑問に思ったのは、第三者から入手した情報を加工した情報について、どこまでセーフハーバー・ルールが適用されるかが問題になり得ると思うのですが、その点について金融庁はどうお考えになっているのかお聞かせいただけると幸いです。

それから、見積り情報について、入手可能な情報を基に合理的に算出することが可能な数値というように明確化するということには賛成です。過去情報も見積り情報に該当し得ること、財務情報はセーフハーバー・ルールの対象としないことは、共に合理的であって、賛成できると思います。

次に、案①と案②については、セーフハーバーとしての明確性、実効性の確保の観点から、案②に賛成です。役員の責任についても同様とすることに賛成します。発行開示における発行者の責任については、発行者が資金を調達しているということ、投資者保護の必要性が高いことから、セーフハーバー・ルールの対象とすべきではないと考えます。仮に発行開示の発行者の責任についても免責を与える場合であっても、IPOについては、発行者において開示体制が事実上整えられていない事例も多いのではないかと思われること、継続的な情報開示がなく、それによる市場価格に依拠して発行することができず、投資者保護の必要性が特に高いことから、免責の対象とすべきではないと考えます。

故意でないことも要件とすべきかという点ですが、将来情報については故意は考えられないところですけれども、第三者提供情報、見積り情報については、合理的に算出された結果と発行者の役員等が何らかの経路によって実際に知っていた真実の情報とが例外的に食い違うということもあり得ると思います。ですから、発行者の役員等が虚偽であることを知っているという場合があり得るので、故意でないことも要件とすることに賛成します。

次に、合理性が確保されていると認められる場合に免責を認めるという大くくりと、それを具体化した14ページに書かれている要件についても賛成です。法形式として民事責任規定の適用を除外とするという形式を採用する場合、その範囲を明確化する必要があるために、法律に書かないときには、委任して内閣府令できちんと書くべきだと考えていまして、ガイドラインで定めるのでは足りないのではないかと思います。

さらに、有価証券報告書と確認書の記載事項が真実であるということを前提にというのは賛成なんですが、例えば、将来情報についての前提事実についてはそのとおりですけれども、仮定及び推論過程については、それが合理的であることがやはり必要なのではないかと思います。合理的であるということを要件にすべきではないかと考えます。

長くなりましたけれども、私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。2点御質問があったかと思います。1点は、セーフハーバー・ルールと金商法192条の緊急差止命令との関係。それから第2点は、第三者から入手した情報を加工した場合、以上の2点について事務局のお考えがございましたら、小長谷課長から御説明いただけますでしょうか。

【小長谷企業開示課長】

ありがとうございます。現時点での御回答ということにはなりますが、まず1点目ですけれども、今回セーフハーバー・ルールを設けることによって、法律上の書き方でございますが、例えば金商法21条の2の規定を適用しないといった書き方を想定しておりますため、一義的には192条の適用は残るのかなと考えております。ただ他方で、この192条は、緊急の必要がありといった場合に限定されておりまして、そういった事態はちょっと想定はしづらいのかなとは思っているところですが、最初にお答えしたとおり、形式的には当たるということにはなるのかなと思っております。

あと、第2点目の御質問でございます。第三者情報を加工した情報をどう考えるかというところでございますが、現時点でガイドラインに書く事項はそこまで詰め切れてはいないのですが、一義的には、入り口の時点で第三者から取得した情報だったのであれば、それが加工されたものであってもここでは対象になるのかなと考えております。ただ、いずれにしてもガイドラインを策定する際にもう少しその点は詰めて考えてみたいと思っております。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、井口委員、御発言をお願いいたします。

【井口委員】

ありがとうございます。皆さん同様、最終ページの御議論いただきたい事項についてコメントをさせていただきます。

最初の課徴金も免責対象とすることにつきましては、前回も申し上げましたように、有報の開示拡充という観点で、ルールを揃え、企業により積極的に開示をしていただくということで、御提案の内容でいいのではないかと思っております。

2つ目のセーフハーバー・ルールの適用範囲についてですが、将来情報等とすることに賛同いたします。これによってセーフハーバー・ルールの適用範囲は、SSBJ基準が適用されますサステナビリティ記載欄を超えて、MD&Aやあるいは中長期志向の投資家が最も注目して、近年、経営理念や中期経営計画が掲載され、開示内容の充実が著しい経営方針や対処すべき課題にも適用されるということと理解しております。このような適用範囲の設置は、統合報告書の開示内容の有報への移管を促進するとともに、開示媒体の統合化をより一層加速させるため、資本市場の効率化に大いに資するものと思っております。

また、前回の事務局の資料に記載されておりました国際比較におきましても、英国ではセーフハーバー・ルールの適用範囲が、将来情報を中心とする戦略報告のみとしておりまして、過去情報が中心になりますガバナンスとか役員報酬報告などは適用範囲外となっております。この意味で、今回の適用範囲はグローバルとも同等と理解しております。

3つ目の内容・適用要件につきましては、資料の13ページに御記載がありますように、案②とした上で、合理性が確保されていると認められる場合にはセーフハーバー・ルールを適用するということに賛同いたします。このような定め方は、これも前回も申し上げましたが、情報の精度向上の観点での内部統制構築、そして開示にとどまらず、こういった内部統制を通じ、企業価値向上につながる企業行動にも結びつくということで期待しておるからです。

また、この合理性の確保の観点で、最後の論点になりますが、確認書の記載充実は欠かせないと考えております。このセーフハーバー・ルールは、全ての有報発行者の方に適用されると理解をしておりますが、現状、金融庁さんのサステナビリティ開示と保証のところで議論されているSSBJ基準の適用スケジュールからいたしますと、全ての企業さんにこのSSBJ基準が強制適用されるというわけではありませんので、こういった範囲の違いを考えますと、やっぱり確認書の内容の充実ということがより一層求められるのではないかと思っております。

以上でございます。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、飯田委員、御発言をお願いいたします。

【飯田委員】

まず、適用範囲についてですけれども、事務局案の方向でよいと思います。

それから、内容・要件に関してですけれども、基本的に案②の方向でよいと思っております。また、案①については、前回も申し上げたとおり、財務情報も含めて中長期的な課題として民事責任の在り方そのものを再検討するという余地は十分あると思っておりますけれども、今回の話としては案②でよいと思っています。また、中長期的な課題ということがあり得ることを考えたときには、今回の改正の際にあまりそういう将来的なことも含めて考えたときの妨げになるような改正にはならないようにしたほうがいいのではないかなと思ってもおります。

それから、発行開示についても責任の対象にするかということですけれども、上場会社の場合は、1人に対する第三者割当増資であっても有価証券の募集に当たるという法制度になっておりますから、発行開示の場面と流通市場の場面とであまり差を設けるべきではないと思いますから、そこはそろえるというか、流通市場のほうで何らかのセーフハーバーをつくるということであれば、発行開示のほうも同様に考えるのがいいのではないかと思っています。

ただ、黒沼先生もおっしゃったとおりですけれども、例えばIPOの場面のときなどはちょっと慎重な検討は必要だと思います。ただ、財務情報の将来情報等は今回セーフハーバーの対象にならないんだろうと思いますし、ですので、最も危ないところは外れているということになりますし、IPOの場合は取引所の審査もあるわけであります。それから、今回の話が、上場会社の一部においてサステナビリティ開示を義務化する、増やしていくという方向の文脈で出てきた話ですから、IPOの場合についてはちょっと慎重な検討が必要ですけれども、あまりそこで特則を設けるとか、あるいは逆のパターンで上場会社の有価証券の募集に当たる場合だけ免責にするとかという形にするのも、話の経緯からしてやや不自然かなというところが少し気にはなっております。結論はないんですけれども、慎重な検討は必要だろうと思います。

それから、そもそもの考え方というか議論の順序のところに若干疑問というか、私はこのように考えているということを申し上げたいと思います。つまり、セーフハーバーがどういう理由で責任を否定するのかということによって、刑事、行政、民事のいずれの対象にするのかということが決まるように思います。

2つ考え方があり得て、一つは、責任要件を全て満たす。ですから、重要な虚偽記載等の要件は全部満たして、本当は責任は発生するんだけれども、政策的な理由で責任を免除するという思考でセーフハーバーを立法するということもあり得ると思います。この場合、民事を対象とするということが主に意識されておりますけれども、例えばクラスアクション制度のない日本の証券訴訟について、どれほどそこだけ特別扱いする必要があるのかというようなことが若干疑問はあり得るように思います。また、民法とか会社法より訴えやすくするという形での特則を金商法に置いているという方向もあるわけですから、そことやや整合しない。したがって、極めて政策的な規定だということになるんですけれども、ややそういうことになってしまわないかということが懸念材料になると思います。

また、現在の条文の在り方としても、責任の範囲は刑事が一番狭くて、民事が一番広いという、つまり、刑事は虚偽記載の場合で、行政の課徴金のときには不記載が加わり、民事責任については誤解を招く表示が加わるという形になっているわけであります。議論のまとめとして、前回の意見では、刑事責任はセーフハーバーの対象にする必要はないという方向だということがありましたけれども、虚偽記載があるという場面で、刑事についてはセーフハーバー規定はないけれども、民事についてはむしろ虚偽記載の場合の責任成立範囲が狭いというのは、金商法の条文の立てつけというか、立法の哲学みたいなものとややバランスが悪いのではないかなというような懸念というか疑問が若干あります。

2つ目の考え方としては、虚偽記載とか重要性の要件とか過失の要件などの解釈で本当は対応できるような場面で、過失がないとか虚偽記載がないというような形で本当は解釈でも対応できるような場面をくくり出して条文化して、それらの要件の何かを否定しているという趣旨でセーフハーバーをつくるんだという考え方もあると思いまして、私としてはそちらのほうで考えるべきではないかと思います。ですから、案②のイメージとして書かれていることは一例であって、例えば○○の場合には虚偽記載はないものとするとか、そういうような形の条文のつくり方というのも排除せずに検討すべきではないかなと思います。また、虚偽記載をもし否定するということになるのであれば、刑事、民事、行政、いずれの責任も否定されるのは当然のことということになると思います。

逆に過失を否定するという方向で整理していくということになると、これは当然、民事の責任だけ否定されるということになります。ただ、その場合は、例えば統制の及ばない第三者から入手した情報について、重要な虚偽記載がある可能性はあるということを役員等が認識、認容した上で有価証券報告書を提出したという場合、これは故意があるということにならざるを得ないんだろうと思います。そうすると、セーフハーバーとして何か機能するだろうかということが若干疑問があるように思います。

したがって、意見としては、虚偽記載を否定するというような方向を意識した上でセーフハーバーをつくっていくということが妥当だと思います。

また、13ページのところで故意でないことというような要件をかけるという方向性自体は賛成なんですけれども、そこは未必の故意ではなくて、投資者を誤解させるような目的など何らかの積極的な害意みたいな、そういった積極的な、悪いことしようとしているという目的がないことというようなことを要件にかけてはどうかなと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、藤本委員、御発言ください。

【藤本委員】

藤本です。発言の機会をありがとうございます。また、前回の様々な御意見を取りまとめいただきまして、大変ありがとうございました。私からも、御議論いただきたい事項に沿ってコメントをさせていただきます。

まず、最初の点、セーフハーバー・ルールの効果についてということで、私も民事責任のほか、課徴金を免責の対象にするかどうか、いろいろな御意見があるところだと思いますが、方向性については異論のないところでございます。資料の中でも記載いただいているように、民事で免責されても行政で責任が問われるということになりますと、今回の導入の目的や趣旨が達成されない可能性があるであろうと考えておりますし、先ほどもコメントがございましたように、課徴金を契機として民事訴訟が起こされる傾向もあるだろうと考えられますので、免責の対象にするということで合理性があるのではないかと考えております。

それから、セーフハーバー・ルールの対象範囲の明確化についてです。資料の8ページ目のところで、非財務情報のうち、不確実性が高く、正確性を求めることが投資者のニーズや企業負担の観点から必ずしも相当とは言えない情報と定義をいただきまして、この点については賛同したいと考えております。

次の資料の9ページ目のところで、将来情報等というのを3つ掲げていただいております。将来情報につきましてはそのとおりかなと思いますが、統制の及ばない第三者から入手した情報や見積り情報をどう考えるべきか、慎重に考えるべきではないかなと考えております。

例えば統制の及ばない第三者から入手した情報のうち、データプロバイダーから取得した情報も含まれております。確かに統制が及ばずに、そこまで責任を取って開示をしていくというのは非常に難しいと考えておりますけれども、一方で、信頼ある情報をデータプロバイダーから入手し、それを開示するというのがあるべき姿ではないかと考えておりますので、将来的にはそのような実務が醸成されることを期待いたします。

それから、見積り情報のところでございます。前回も発言させていただきましたが、例えばGHG排出量も仮定に基づく排出係数に活動量を乗じて算定されるということでございますが、その活動量の部分に見積りが一部使われる可能性があるということでございます。ただ、こういう情報は、会計、財務諸表の中でもこういう見積りは考えながら合理的な見積りをし、最善の見積りをもって数値を算定し、開示をされていると理解していますので、こういったものも含めてよいのかどうか、ビュレットの2つ目の、過去情報であっても見積り情報である限り対象とするということにしてよいのかどうかというのは改めて検討いただければと思います。全体としては、どこの部分をセーフハーバー・ルールの対象とするのかということを明示していただくことが重要ではないかと考えております。

また、今後、こういった情報を保証していくときに、セーフハーバー・ルールの対象となるような不確実性の高い情報の保証について、この開示と保証の関係についても御検討いただく必要があるのではないかと考えております。

続いて、セーフハーバー・ルールの内容と適用要件については、案②が妥当であると考えております。案①のところで、資料の12ページに方法が2つ書かれておりますけれども、いずれによっても投資家や経営者に負担が寄り過ぎるということもございますし、案②においては、合理性が確保されていると認められる場合として、情報開示に係る体制の整備と開示の要素を考慮することを要件とするということは、ガバナンス情報の開示を推進するという流れからも整合していると考えております。

一方で、どのような体制整備が求められるかという点については、さらなる検討が必要ではないかと考えております。その要件につきましては、例えば現行の開示ガイドラインの5-16-2で事業の状況に含まれる将来情報に関する事項について記載がございますが、例えばこれがどのように整理をされるのかといったイメージも御確認、御検討いただくことが必要ではないかと考えております。

最後に、確認書の見直しについては、方向性については賛同いたしております。

私からは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、樋爪委員、御発言お願いいたします。

【樋爪委員】

ありがとうございます。私からも資料の御議論いただきたい事項に沿って発言をさせていただきます。

まず、1点目のセーフハーバー・ルールの効果についてですけれども、本来は民事責任、行政責任、刑事責任の3つがそろって対象となることを法律で定めることが、企業の積極的な情報開示を促す上では明確であり、望ましいと考えます。ただ、2ページに記載のとおり、民事責任については法律改正、行政責任についてはガイドライン改正によってもし整備するということであれば、内容について異なる解釈の余地が生まれないように平仄の取れた記載としていただく必要があると考えます。

2点目、セーフハーバー・ルールの適用範囲についてですが、非財務情報のうちの将来情報等を対象とすることに賛同いたします。また、将来情報等の具体的内容として、9ページに記載された項目や内容についてもおおむね妥当と考えます。なお、9ページの注1にサステナビリティワーキング・グループの中間論点整理にて、有価証券報告書の記載事項として、「将来情報等を含む記載箇所を特定した上で、これらの情報が含まれる旨」と「将来情報等が、事後的に異なるものとなる可能性がある事項については、その旨及び要因」を追加することが提言された旨が記載されておりますが、これらについては、内容によっては企業に過度な負担が生じたり、あるいは結局免責がされないといったことにもなりかねないのではないかと懸念をいたします。仮にこれらを適用するのであれば、合理的な要件設定にしていただくべきであり、どのような記載が求められるのか、具体的な記載例などを事前にお示しいただく必要があると考えます。

また、やや細かくなりますが、SSBJの基準において、開示すべき事項として「戦略」の中に財務的影響というのがあり、現在の財務的影響及び予想される財務的影響の記載が求められておりますが、このうち、現在の財務的影響というのがそもそもセーフハーバーの対象外となるのか、あるいはあくまで財務情報や財務諸表に属する情報でなければ対象となるのかといった論点については、クリアにしていただければと思います。

それから、3点目のセーフハーバー・ルールの内容・適用要件についてですが、案②とすることでよいと考えます。ただ、やはり作成者の意見としては、米国や英国のように立証責任が企業側にない法制度としていただくことが最も望ましいと考えております。具体的には、第1回の会議でも発言したとおり、米国気候変動規則案の、当該開示が合理的な根拠なく、または誠実に開示しなかったことが証明されない限り不正な開示ではないとみなされるというセーフハーバーの規定にするのが最も適当だと考えます。

ただ、SSBJ基準の適用開始が迫る中、金商法21条の2そのものの改正には様々な整理が必要であり、時間がかかるということも理解をいたします。したがいまして、他国と比べて企業側の責任の重い金商法21条の2を、将来的に少なくとも将来情報等については立証責任を企業側から外すよう見直しを検討することとした上で、現在取り得る措置として、免責要件を金商法に規定するという方法が望ましいと考えます。また、その際には、14ページに記載いただいている、「以下の記載事項が真実であることを前提に、その開示をもってセーフハーバーが適用されるものとする」ことを法律上明記していただくとよろしいかと思います。

なお、発行開示における責任や役員の責任についても、同様の要件の下でセーフハーバー・ルールの対象とするべきと考えます。発行開示において有価証券報告書が参照されるなど、企業としては一体的な開示を行っており、発行開示を別ルールとしてしまいますと、積極的な開示を阻害してしまうのではないかと懸念いたします。

最後に、確認書についてです。第1回でも申し上げましたとおり、作成者としましては、有価証券報告書全体の記載内容について開示手続の整備や、実効性の確認を含めて、経営者が確認した上で署名をしているということから、見直しの必要性はないと考えております。ただし、セーフハーバー・ルールの適用要件として確認書の追記が必要だということでありましたら、記載の追加事項は、16ページで御提案いただいている2行程度の簡潔な表現にとどめていただくことが必要ではないかと考えます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、田代委員、御発言をお願いいたします。

【田代委員】

ありがとうございます。私はアプローチが若干違うかもしれないですけれども、事務局の皆様が作成していただいた提案でおおむねよろしいのかと思います。

ただ、少し申し上げたいのが、このタイミングでこのルールを入れるというのは、SSBJ基準の導入の準備段階だということで、企業の負担を減らして、萎縮しないように開示を促すというメッセージを持っていらっしゃって、御提案の中でそれが色濃く出ていると思います。

一方で世間から見ますと、何となく企業が楽できるようなルールに見えてしまうおそれがあると思いますので、やはり投資家サイドからのバランスというものが非常に大切になってくるのではないかと思います。ルールの策定もそうですが、導入するときのメッセージ性が大切ではないかと思います。そういった観点から、例えば対象範囲につきましては、今ここで将来情報と見積りというある程度の限定的なものにするのがふさわしいのではないかと思います。ただ一方で萎縮を避けるためには、ガイダンスをはっきりさせるということも必要だと思います。

また、確認書につきましても、私どもも本来であれば、現状の文言で十分カバーできるのではないかと思いますが、一方では、今お話がありましたように、このセーフハーバーを担保するため、また、説明をするためには、御提案いただいた文言を入れるというのも一つ、安心材料ではないですけれども、両サイドバランスよく進めていくという意味合いもありまして、よいのではないかと思います。

また、先ほど藤本委員からもありましたように、保証も、今回非財務情報を入れるに当たりまして新しいルールになると思います。投資家からすると、非常に安心して投資できる要件だと思いますので、セットで発表するのがよいかと思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、清原委員、どうぞ御発言ください。

【清原委員】

ありがとうございます。重複があるかもしれないですけれども、御議論いただきたい事項に沿って、コメントさせていただければと思います。

まず、課徴金のところですけれども、考え方としては、やっぱり民事責任と課徴金は取扱いが異なる可能性が将来的にあり得ると考えております。現状、範囲を限定するということであれば平仄は合うかもしれないのですが、今後、対象となる情報の範囲を変えていくとかそういったことがあったときに、当初のとおり全く同じでいけるか、ということがあるので、考え方としては、同様であるのは現状そうだけれども、法的な規定の対象は民事責任にして、課徴金のほうはガイドラインその他の柔軟性を残した形でスタートされることが将来性を考えるとよいのかなと考えております。

次の対象範囲の明確化のところです。こちらに挙げておられる9ページのところの明確化、これはまさに重要ですけれども、将来情報のところは抽象的な記述の形になっていて、作成時点において金額、数量、事象発生の有無等が確定していないものという考え方が示されているのですが、実際に記述をする、開示をする項目との関連性がまだ見えにくいというところもあって、やっぱりこれを具体化して、例えば開示項目でいうとこれに当たるというようなことを今後は明確にしていっていただくようなことを御検討いただければと思っています。

米国のほうでのセーフハーバーでは、フォワードルッキングステートメントの定義では見通しだとか見込みだとか計画だとかこれが入るというふうに列記しているところがあったりしており、かつその中でもアサンプション、仮定だとかそういったものがあるというふうに明示されていることがありますので、そういった点で、日本でもどの項目がこの将来情報の対象として取り扱われるかというのを明記すること、今後、府令もしくはガイドラインのほうで明記したり例示したりすることを検討いただければと思います。

この資料で分析の部分について、過去情報であり対象外と明確に排除する形で整理されているんですけれども、アサンプションのところというのは、やっぱり分析をした上で将来につながる。よって、そういう意味でいうと、前提になっているというようなことも含めて、場合によるとこの分析の部分についてもセーフハーバーの対象にする必要もしくはそのほうがベターだということもあり得ると思いますので、ここは一律排除するという形にならないように、少し柔軟性を持たせた検討を進めていただければと思っています。

適用要件・内容について、案①、案②の考え方のところですが、私は、案①自体が排除されるということでなく、やはり広範に影響が及ぶ。その意味でいうと検討に時間がかかるということも踏まえて、今回検討の目的としている「虚偽記載の責任について、企業側の懸念、負担を緩和することで有価証券報告書における情報開示の充実を図る」という政策目的ということからすると、当座セーフハーバーとしては案②で適切と考えております。

案②の考え方で重要かなと思いますのが、一定の要件の下で合理性のある開示がなされていれば不正な記載とみなされないという記述が事務局資料にあるところで、先ほど来議論になっているその効果のところの考え方について、責任が発生しているけれども免除する話なのか、それともどうなのかというところでいうと、そもそも論でいえば、例えば将来の情報について虚偽って何か、というと、比較対象となるものは現状ないんですよね。だから、その意味でいうと、過去情報のように、事実としてあって今比較できて、それが不実だとか不正確だと言えるものと、そうじゃない、不確実性があってどうなるか現時点で、記載する時点で分からないものについて、これは何をもって虚偽記載等の責任の発生するような虚偽記載等になるかということ、その根本的な概念の整理というのはやっぱり必要というべきで、それは、できることをやって開示をしていれば、それは民事責任の対象としての虚偽記載等には当たらないと整理するのが適切ではないかと思っております。

そうすると、考え方として、金商法上求められる記載をするうえで、ちゃんと体制を整備してそれに基づいてやっている。よってそのような開示というのは、言ってみれば、違法性がない。よって、先ほど来議論になっている、損害賠償責任の発生根拠として、民法等の規定があるという話がありますけれども、金商法上の開示書類を作成するに当たって、こういうことをしてこういう記載をして、それで開示していると。そのような場合、それは、金商法という法律の求めるものとしては違法な開示になってない、という考え方で整理ができるのであれば、民法709条だとか、会社法上の責任のほうの関係についても、同じように違法でないと整理ができることになるのではないか、というふうにも考えることができるので、これはあくまで試論的な話ですけれども、考え方として御検討いただくのがよいのかなというところがございます。

他方、この要件として示されているところが、体制の整備というところに今とどまっているところについてずっと懸念を持っております。今、事業報告、有価証券報告書の開示の一元化進められるときに、内部統制のところでいうと、会社法のほうは運用状況まで記載をするような形になっていて、枠として、会社の内部統制の体制はこうですという形式面だけではなくて、実際の運用状況を書くとなっていると。やっぱり運用のところまで見ないと本当はそれが適切な開示をなされていたのかどうか分からない。体制はつくったけれども、実際にはその年はやっていなかったとかそういうときには、やっぱり問題とすべき事案にも当然なり得ると思います。ただ、それを書き込めるかというとなかなか書き込めないだろうとも思っています。

そのところでいうと、場合によると、合理性のある開示と推定するという形で推定規定を置くことにして、反証として運用がおかしかっただとか主張して、別途、セーフハーバーの適用対象にならないようするように持っていく、という法律上の規定の仕方というのも可能性として検討できるのではないかと考えているところです。この点は今後の検討事項として御議論いただければと思います。

この資料のところで例示として有価証券報告書に関してSSBJ基準のところを書いてあるんですけれども、ちょっと気になっていますのが、開示体制の話とここのSSBJ基準で言うガバナンス情報というのは若干ずれているところがあります。このSSBJ基準のところで言っているガバナンス情報は、サステナビリティ関連のリスクと機会をモニタリングし管理し監督するために企業が用いるガバナンスのプロセスで、開示体制のところのプロセスというものとずれが少しあるかなと。重なる部分ももちろんあるのだと思うんですけれども。そこのところで、誤解を生じないように少し整理をしていくといいところが残っているかなというところがありますので、それを考えていただければと思っております。

役員の責任のところについては、先ほど申し上げたように、もし開示としてやるべきことをやっているので、違法な開示にはなっていない、ということがいえるのであれば、役員の責任のところにもはねてくるといいますか、ちゃんと免責ができるような結果につながっていくのだろうと考えています。

発行開示のところに関しては、IPOかどうかというところを特に考えていくと、通常、上場して継続開示している企業は、組込、参照、発行登録、そういった形で継続開示を利用していくので、継続開示の内容が使われるということを考えれば、発行開示のほうについて、もし発行開示は別だとしてしまえば、企業としたら、その後に発行開示で利用しようとするときに責任を問われるおそれが残るとしたら、継続開示の段階から開示を抑えておこうと開示の萎縮が残ってしまいかねないといえます。とすれば、そういったことが起きないように、継続開示を利用する発行開示においては、責任免除がそのまま生きてくるというふうな立てつけにするのが、政策目的には合致して適切というべきではないかなと思います。

故意のところは、何が故意かということでいうと、恐らく合理性がない開示だということを分かって開示しているということが故意と言えるのではないかというところもあるので、故意の対象とは何かをちょっと考えた上で、要件としてそのような場合には、適切な開示がなされていない、やっぱりそういう開示というのは開示制度としては違法の開示という位置づけをしていくことになるのではないか、そういった意味で責任の免除にはならない開示と整理することになるのではないか、と考えています。

確認書のところについては、拡充について進めていただくのがよいかと思うのですが、ただ、開示体制・手続を整備している、それから実効性を確認したと記載しながら、実際には仮に実効性の確認が十分じゃなかったとか、何もやっていなかったというときに、何らサンクションがないということであったとすると、形骸化してしまいかねない。よって、これをほかのものとリンクさせて、ちゃんとそのとおりになってないとセーフハーバーにならないということを含めて、少し連動性を考えた形で制度を設計していくことが適切かと考えております。

長くなりましたが、以上です。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ほかに御発言の御希望はございますでしょうか。もしよろしければ、武井委員、どうぞ御発言をお願いいたします。

【武井委員】

まず、課徴金も対象にすべきだと思います。司法の場になる民事責任の話と行政の判断とがずれるのは、国民から見てもいろいろな混乱をもたらすだけなので、課徴金も対象にすべきだと思います。課徴金を含める方法論に関しては、別に法令でなく、ガイドラインで構わないと思います。ここは法技術という話なので、金融庁さんの適切な判断でなされるべきかと思います。あと、訂正命令についても、同じように対象とすべきだと思います。

あと、前回申し上げた重要な虚偽記載。要は、法令上書かなきゃいけないから、即それが裁判所に行ったときに「重要な虚偽記載」で損害賠償責任のトリガーになるという部分はぜひ改めて見直しを続けていただければと思います。今回セーフハーバーをつくることによって、セーフハーバー以外のものはおよそバツ、アウトなんだと誤解されないことも大事だと思いますので。その観点から、重要な虚偽記載だからといって即損害賠償責任でないという前回申し上げた論点は、継続して今回のこの中で検討していただければと思っております。

あと、13ページの箇所なのですけれども、まず、下から行くと、「故意の場合にセーフハーバーの対象としない」ことには反対です。これは私はすべきではないと思います。これはさきほど小林委員もおっしゃいましたが、そもそも何が故意なのかということに関していろいろな議論があり得て、そこにそこまで議論を集中させるだけの意味があるのかというのがあります。また刑事罰と民事とでやはり大きな違いがあると思っています。刑事罰のほうは、金商法の規定が主な根拠規定となって対象になるので、金商法のほうで故意を除いてしまうと本当にそれでいいのかという議論が起きる。さきほど飯田委員がおっしゃったように、本当は刑事罰を含めて免責の対象とするということがあるのかもしれませんけれども、少なくとも刑事罰に関しては金商法にしか根拠規定が主にないと。他方で、民事のほうは、別に金商法はこれはあくまで特例であって、民法と会社法の世界で実際に故意という形での損害賠償責任は係属しています。ですので、この金商法のほうであえて今回セーフハーバーに関して故意を残すということで分かりにくいセーフハーバーにして、故意の部分に関しては残してしまうと、相当、現場ではセーフハーバーに関する効果はそがれると思います。セーフハーバーとして機能しないレベルになる。いろいろな萎縮効果が出てしまって、今回の制度目的である前向きな開示ということになると、相当ネガティブな影響を与える。そのくせ、この故意を残すのにそんなに重要な効果があるとも思えない。実際、民法上の責任と会社法上の責任のほうでの損害賠償のほうで故意の部分は追求できますので。ですので、比較法制的に見ても、刑事罰、刑事責任にするからといって故意を残すということはすべきでなく、今回、故意に関しては、故意ということを除外しない形でのセーフハーバーとすべきだと思います。

あと、会社役員についても同様に、セーフハーバーの対象としないと効果がないと思います。

あと、発行開示に関しましても、皆さんおっしゃっているとおりで、これも同じように、継続開示とリンクしているものですから、発行開示をセーフハーバーの対象外にしてしまうとこれまたセーフハーバーの効果がなくなるので、発行開示も対象にすべきだと思います。IPOの場面を含めて、一緒にセーフハーバーの対象とすべきだと思います。実際、IPOの場合、何か問題になる場合は、14ページに書いてある体制が整備できていない場合だと思うので、IPOに関して同じように対象にしてもほとんど実害はないと思いますので。その観点からも、IPOを除外せず、発行開示は全てセーフハーバーの対象にすべきだと思います。

あと、14ページの整理に賛同します。これは相当現実的な路線なのかなと思っております。

あと、前回申し上げました損害論。要は、株価がそのあとバーンと上がっているのに、なおかつ虚偽記載の前後1か月時点での損害額で固定されていいんですかと。欧米ではそんな議論になっているわけですけれどもその損害論の考え方だったり、あと、皆さんおっしゃっている「案②プラス案①」での案①の在り方に関しては、中長期的な課題だと思います。それらは今回は多分間に合わないと思うので、今後の課題として認識しておいていただければということでございます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、オンラインで御参加の阪委員、どうぞ御発言ください。

【阪委員】

発言の機会をいただき、ありがとうございます。セーフハーバー・ルールと確認書について発言をさせていただきます。

まず、セーフハーバー・ルールについてです。適用範囲についてです。9ページでお示しいただきましたように3種類の情報を対象とすること、また、一定の柔軟性が必要であることから大枠を示すことに賛同いたします。

これに関連して、サステナビリティ開示では、「合理的で裏付け可能な情報」を用いることの定めが置かれています。これは従来から取り組んできた企業とそうでない企業との間で、開示の作成に利用できる資源、データの入手可能性、スキルや専門分野などに差があることに配慮して、高度な判断を要し、測定の不確実性を伴う項目については、開示を作成する際の難しさを緩和するために置かれた規定です。「合理的で裏づけ可能な情報」とは、報告期間の末日において企業が過大なコストや労力をかけずに利用可能な全ての合理的で裏づけ可能な情報とされています。これはサステナビリティ開示の基礎となるサステナビリティ関連のリスク及び機会の識別も対象となっています。

そこで、例えば9ページの見積り情報の箇所で「合理的な数値」となっていますけれども、その前に書いてある入手可能な情報が、合理的に入手可能であるという意味も含められた最終的な「合理的な数値」であるということが必要かと思います。ここではそのような意味で書かれていると理解し、賛同いたします。

同様に、13ページの適用要件の案②についての「合理性が確保されている」についても、企業の能力や準備状況に配慮して「合理的で裏づけ可能な情報」を用いる意味も含まれていると理解して、これについても賛同いたします。

また、既に御議論の中で、虚偽記載等の「等」の部分について、重要なものが欠けている場合についての扱いについても御説明いただきました。基本的にはそのことには賛同しておりますが、財務情報とサステナビリティ関連財務開示は共に財務報告の一部であり、お互いのつながりが理解できるような開示が求められているものの、それぞれ固有の目的を果たし、異なる種類の情報を提供するため、重要性の判断は必然的に異なるものとなることが、サステナビリティ開示基準にも記載されていますので、一言申し添えます。

最後に、確認書については、開示の実質性を確保する意味でも、16ページで御提案されている方向に賛同しております。

どうもありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。本日御参加くださっている委員の皆様全員から御発言をいただきました。大変ありがとうございました。

ここで、オブザーバーの方々でもし御意見がございましたら、時間の許す範囲内でお願いしたいと存じますけれども、御発言の御希望はございますでしょうか。

それでは、経団連の魚住さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【日本経済団体連合会】

ありがとうございます。各論点について意見を述べさせていただきます。

まず、最初のセーフハーバー・ルールの効果のところでございます。全体として、作成者による積極的な開示を促す観点から、免責の対象に関する今回の御提案は合理的であると考えます。ただ一方で、民事責任が生じた場合の要件について、一般的に通常の投資者の投資判断への影響が基準になると理解しております。ただ、サステナビリティ情報と財務情報を比較した場合に、投資者の投資判断への影響度や優先度は必ずしも一緒ではないと考えます。どのようなサステナビリティ情報が通常の投資者にとって重要な事項に該当し得るのかというところは議論を深めていく必要があると考えています。

2つ目のセーフハーバー・ルールの対象範囲の明確化についてですが、方向性についてはおおむね賛同致します。一方で、本日の御議論を伺っていても、やはり解釈のところでまだ一般の方々にとって誤解が生じ得る余地があると思っており、今後、明確化等で工夫していただきたいと考えております。

3つ目のセーフハーバー・ルールの内容・適用要件のところについては、企業の積極的な開示に対するインセンティブ確保の観点から、やはり誠実に開示に取り組む限りにおいては、実質的に企業側に挙証責任が発生しないことが重要と思っております。今回御提案の中では、理想としては案①のように挙証責任が原告に戻ることが本来の姿と思ってはおりますが、今回、実務に落とし定着を図るということからは、政策的な判断で案②も現実的な落としどころとも考えております。

仮に今後、案②の方向性で詰める場合は、やはり企業側の開示が萎縮をしないことが重要と思っております。ある程度、どこまで対応すれば免責されるのかというところは、今後内閣府令やガイドライン等で明確にしていただいて、市場関係者の中で共通理解を醸成していく必要があると思っております。そういう意味で、今後の丁寧な御議論とか周知活動等にも工夫をいただければと思っております。

発行開示における責任や役員の責任につきましても、やはり継続開示と共通する要件に基づいて設定いただく必要があると思っております。有価証券届出書とか目論見書でも、やはり有価証券報告書を参照することで一体的に運用されている部分があるので、同様の対応をいただくことが適切と思っております。また、IPOにつきましては、理論的にはあり得るのかもしれませんが、サステナ開示の対象となる3兆円や1兆円という時価総額規模がどれほどあるのかというところを現実的に考えて判断いただいてもよいと思っております。

最後に確認書の見直しについてですが、基本的には追加の開示は不要と思っております。今回の資料ではアメリカにおけるSECの例、サーベンス・オクスリーの例を示していただいておりますが、アメリカで必ずしも法定開示でサステナ情報が出ている現状ではないということから、比較対象として見るのにあまり適切な例ではないと考えます。前回の会合でも申し上げましたが、ヨーロッパにおいて果たしてどういう事例があって、それが市場でどういう評価を受けているのか、やはりそういったところも検証を1回いただく必要があると考えます。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、関経連の森さん、御発言ください。

【関西経済連合会】

発言の機会をいただきまして、ありがとうございます私からも幾つかコメントさせていただきます。

まず、セーフハーバー・ルールについて、2点ほどコメントさせていただきます。

1点目、セーフハーバー・ルールの対象範囲については、9ページに記載されているとおり、将来情報等の対象範囲を明確化することについて賛同いたします。明確化の方向性としましても、あまり限定列挙のような形式になるとかえって対象範囲が狭くなってしまいかねないのですが、解釈に揺らぎのあるような、具体的に何なんだろうというようなことのないようにある程度列挙していただくということもあろうかと思いますので、この点のバランスも考慮して工夫いただければと思います。また、その際、財務情報に関連していれば自動的にセーフハーバーの対象外となると誤解されないように、将来情報や見積り情報には財務的な影響も含まれるのだという点を明確にしておいていただきたいと考えております。

2点目、適用要件についてですが、これも第1回の資料で米英との比較を示していただきましたとおり、我が国の虚偽記載の責任は他国と比べて企業側に厳しいというところが気になっておりまして、この立証責任の見直しというのがやはり望ましいと考えております。ただ、実務的に現実的なところでSSBJ基準の適用に向けて取り得る方法として、14ページに記載されているような情報開示に当たっての前提、手続等が開示されている場合の免責要件を金商法に規定するということに関しては賛同し得るものかと考えます。ただ、繰り返しになりますが、将来的にはこの立証責任の在り方というのも継続的に検討していただきたいと考えております。

次に、確認書制度の見直しについて、コメントさせていただきます。確認書の記載事項の追加がやはり前提となっている点は若干違和感がございまして、企業としましては、有報全体の記載の適切性を確認書で表明しておりますので、ここは少し気になるところではございました。

最後、本日御議論いただきたい事項ではございませんが、前回と同様触れさせていただきますと、やはり第1回の報告事項になっていました人的資本開示のところが気になっております。今後、有報の記載事項の整理をしていこうという中で、また、人的資本開示の拡充について詳細な議論等がなされていない中で、進行年度である2026年3月期に適用するというところに対する不安の声が聞こえてきているところでもございます。

それから、人的資本の開示については、ISSBでも人的資本開示をネクストアジェンダとして検討している中でもございますので、日本だけ先行して有報に記載していくと、結局、また後で見直さないといけないねということにならないかというところも気がかりでございますので、この点も今後触れていただけるとありがたいと思っています。

また、議論の前提となっているこのSSBJのところなんですが、サステナWGの中間報告でも記載がありましたが、会計におけるASBJと同様に告示指定をしていただくという手続、このプロセスに関しても明確にしていただく必要があるのかなと思います。今後の議論の中で示されるのか、サステナWGの中で触れられるのかは分かりませんが、ここも作成者としては気になっているところでございますので、御検討いただければと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、日本公認会計士協会の吉田さん、御発言ください。

【日本公認会計士協会】

発言の機会をいただき、ありがとうございます。

まず、セーフハーバー・ルールのところですけれども、適用範囲のところは責任に直接関わってくるところでございますので、非常に重要で、詳細な検討が必要であると考えているところでございます。資料で取りまとめいただいている適用要件、ここも非常に重要かなと思っていますけれども、一方で資料の9ページにまとめていただいているところでは、一番下に見積り情報という項目を挙げていただいておりまして、2つ目の箇条書、過去情報であっても、見積り情報である限り対象とするであったり、3つ目の箇条書、財務諸表に密接に関連する情報として、セーフハーバーの対象外とすると、こういった形で今記載をしていただいていますけれども、具体的にもう少し明確化をしておいていただいたほうがいいかなと思っております。実際に実務に落とし込んでいったときに、現場で少し混乱をもたらしたりというようなことが生じかねないかなというところで、実務をうまくワークさせていただく意味でも、対象範囲の明確化というのが非常に重要かなと考えているところです。

もう一つ、セーフハーバー・ルールの適用要件で13ページに「合理性が確保されていると認められる場合」という記載がありますけれども、情報開示に係る体制の整備と開示の要素というのを御提案いただいておりまして、開示については、14ページにあるように記載事項が真実であることというのが前提とされているかと思います。この点、現状で真実性を担保するようなものというのは、今日のもう一つのテーマであります確認書かなと考えていますので、我々会計監査、それから保証を担う監査人の立場としては、確認書の記載、追加、充実というところをぜひ進めていただく必要があるかなと考えております。

私どもからは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、オンラインで御参加の日証協の石津さん、どうぞ御発言ください。

【日本証券業協会】

ありがとうございます。日本証券業協会の石津です。私どもからは、投資家、発行者、それを仲介するという立場を含めまして意見を申し述べさせていただければと思います。

13ページに追加検討事項という形で掲げられておりますけれども、有価証券報告書につきましては、有価証券届出書や目論見書において、制度的に参照されるなど一体として運用されているといったような観点から、無過失責任を原則としております発行開示につきましても、今後、有価証券報告書における議論と同様にセーフハーバーの対象となるような提案がされております。こちらについての検討でございますけれども、これまで必ずしも明確に論点になっていないような形になっておりましたので、感謝申し上げるとともに、この点何卒よろしくお願いできればと思います。

もう1点、同じ13ページなんですけれども、内容適用要件に関しまして、案②のほうが明確性や法技術的な観点から優位性が高いとされている点につきましては、私どもとしましては特に異論がございません。ただ、上場会社による投資家への情報開示をサポートするといったような立場からは、委員の方から御意見がございましたとおり、免責されるべき内容・適用要件が明確であるべきでございますので、開示ガイドラインにおきまして、セーフハーバーの解釈指針を置いていただくなど、どのような場合に合理性が確保されているのか解釈を示していただくことが望ましいと考えております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、東京証券取引所の青さん、どうぞ御発言ください。

【東京証券取引所】

このセーフハーバーにつきまして、具体的な事項に関しては大きな異論はありません。ただ、先ほど田代委員からもご指摘がありましたように、趣旨が最も重要だと思います。これは、不適切な開示について責任を免除するという趣旨ではなく、不確実性が高い場合や正確性の確保が難しい場合であっても、十分な開示を求めることに主眼があるという点です。この点は既に御記載いただいておりますが、私どもとしても重要なポイントと認識しております。

また、14ページにも記載されていますが、会社内部での情報作成に関する手続の整備・向上を進めていくことが期待されているという点も非常に重要だと思ってございます。

今後、これらのルールを対外的に示していく段階になった際には、こうした点について十分に強調し、趣旨や手続面での進め方について誤解を招かないよう、しっかり説明していただきたいと考えております。

さらに、内容については、できるだけ具体的かつ明確にするという話は多くの委員の方々から出ているところでございますけれども、私どもとしては、特に13ページで書いていただいております考え方の頭のところの「情報開示に係る体制の整備と開示の要素を考慮する」というところの、とりわけ開示の要素の考慮の仕方のところで、14ページに書いてあるような項目について、事実と齟齬なく記載されているかを確認することは最低限必要だと思います。例えば、仮定とか推論過程といったところについて無理があるなど、合理的な範囲を超えたような仮定、推論の場合についてどのように扱うのかといったあたりも含めて丁寧に御議論いただき、最終的なガイドライン等の作成につなげていただければと思うところでございます。

以上です。ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方で御発言の御希望はございますでしょうか。

よろしいでしょうか。それでは、まだ少々今日は時間が残っておりますので、委員の方及びオブザーバーの方々のこれまでの御発言等を聞かれて、あるいは先ほど言い残したというようなことがございましたら、ぜひ2度目の御発言をいただければと存じます。どなたか御発言の御希望はございますでしょうか。

よろしいでしょうか。それでは、もしよろしければ、定刻まで少し時間を残しておりますけれども、本日はこの辺りでの討議を終わらせていただきたいと思います。

本日の議論によって、このワーキング・グループでなすべきことと、中長期的な課題の切り分けがかなり明確になってきたと感じております。また、若干異論もございましたけれども、少なくとも行政制裁の課徴金についてはセーフハーバー・ルールの対象にすべきであるという御意見が多かったように思います。また、適用要件の案①と案②の関係では、案①というのはどちらかというと中長期的な課題として今後さらに検討していくということで、案②を軸に、さらにその要件について明確化をしていくべきであるという方向性が明らかになってきたように思われます。いずれにいたしましても、本日の議論を踏まえ、次回以降さらに御議論を進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

最後に、事務局から何か御連絡がございましたら、よろしくお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

次回の日程でございますが、後日改めて事務局から正式な御案内をさせていただきます。

以上でございます。

【神作座長】

それでは、本日の第2回のディスクロージャーワーキング・グループはこれにて閉会とさせていただきます。大変お忙しいところ御参加いただき、熱心な御議論をいただき、誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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