- ホーム
- 審議会・研究会等
- 金融審議会
- 議事録・資料等
- 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」
- 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第3回)議事録
金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第3回)議事録
日時:
令和7年10月15日(水曜日)9時30分~12時00分場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
【神作座長】
おはようございます。ただいまより金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ第3回会合を開催いたします。皆様、御多用のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議は、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。
なお、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でおりますので、よろしくお願いいたします。
会議を始める前に事務局から留意事項をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
事務局を務めさせていただきます企業開示課の小長谷でございます。今日もどうぞよろしくお願いいたします。
留意事項などを御案内させていただく前に、恐縮ですが、カメラはここまでということでよろしくお願いいたします。
本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。
なお、対面で御参加の委員におかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。御発言後は、お名前のプレートを元にお戻しいただきますようお願い申し上げます。
【神作座長】
どうもありがとうございます。
それでは、まず会議の公開についてお諮りいたします。金融審議会議事規則第4条にのっとり、ディスクロージャーワーキング・グループの審議について、公開することとしたいと存じますけれども、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【神作座長】
どうもありがとうございます。御了解をいただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただきます。
それでは、議事に移らせていただきます。本日は、スタートアップ協会の砂川様、日本商工会議所の山内様、日本ニュービジネス協議会連合会の永瀬様に御参加をいただいております。お忙しいところ、大変ありがとうございます。
まず、スタートアップ協会、日本商工会議所、日本ニュービジネス協議会連合会、日本証券業協会の順に御説明をいただいた後、事務局より資料の御説明をしていただきます。その後、質疑応答及び討議を行いたいと存じます。
それでは、早速でございますけれども、スタートアップ協会の砂川様から御説明をよろしくお願いいたします。
【一般社団法人スタートアップ協会】
皆様、おはようございます。スタートアップ協会の砂川と申します。今日は貴重な発言の場を頂戴いたしまして、ありがとうございます。ぜひスタートアップの現場に則したお話をさせていただければと存じ上げております。
2ページで、現在、今、スタートアップ、どんな形で実際、資金調達がなされているのかというお話をさせていただければと思っております。これはなかなか知られていないんですが、合意事項としては、基本的には少人数私募の枠組みの中で資金調達をしているというのが実態でございまして、それぞれラウンドによって参加者が異なりますし、使われる株式みたいなものもちょっとずつ異なっていくものなんですね。今日の趣旨になぞらえてお話をしますと、アーリー、ミドル、レイターのレンジでは、基本的にはベンチャーキャピタルですとかプロの投資家が参加し、有望なスタートアップを支援していくという形になりますので、もう本当にいろいろな人たちにリーチアウトして、いろいろなピッチをするということはあまりなく、ある程度絞られた形で、対象者に対して私募をすると。少人数私募の枠組み内、すなわち49人の中でお話をしているというのが実態でございます。
ただ、問題はシード・ラウンドでございまして、シード・ラウンド、すなわち資金調達を初めてする人。簡単に言ってしまえば、起業したばかりという状態の人たち。この人たちが、将来的にはユニコーンになっていったりするわけですけども、その最初のところでいろいろなことが起こります。すなわち少人数私募の枠組みですが、実際には、今、自分の会社に外部株主がいない状態なので、誰に相談して、どこに資金調達のお願いをしに行けばいいか分からない状態です。すなわち調達する金額はそれほど大きくなく、ここに書いてあるとおり、本当に1,000万から、ちょっとディープテックになると、数億円、5億円のレンジぐらいまで行くと思いますけども、こういったところがターゲットになるんですが、いろいろな人たちに声をかけてしまうということがあるわけです。
その際に、一番効率的なプロセスとしてお話をさせていただくのが、3ページに行っていただければと思うんですけども、例えば問題点に書かせていただいているとおり、ピッチイベントみたいなものがございます。これはもうスタートアップ特有のショーケースみたいなものですね。いろいろな会社が壇上に上がって、私の会社はこういうことをしています。ぜひ投資を検討してくださいということを言うわけですが、その際に、発言の内容によってはそれが勧誘と取られてしまう可能性があるというところが一番大きな問題だと考えておりまして、そういうことを想定はしてはいないんですが、非常に曖昧というか、明確になっていないルールの中で、どこまで言っても大丈夫なのかというのがよく分からないというところになるわけです。
なので、こういった問題を回避するために、当初、我々スタートアップ協会としては、アメリカのレギュレーションルール506(b)を参考にして、少人数私募あるいは私売出しの人数要件を勧誘基準から取得基準、すなわち調達した人の数字ですね。対象を、投資をしてくれた人の数で管理するようなことが考えられないかというお願いをさせていただいたところではあるんですが、いろいろな議論させていただく中でなかなか難しいということで、今回、対案として、少額免除の上限を引き上げるというお話をいただいているという理解をしております。
その中で、我々としては、問題が解決するのであればもう全然それでいいと思っているんですが、今回、そういう意味で言うと、その金額が、少額免除の上限が、我々が想定している、例えば5億円とか10億円というところになりますと、先ほど言ったとおり、シード・ラウンドの危険性、誤解の起こる可能性がなくなるということもありますので、問題がかなり軽減されるのではないかと考えている次第ではございます。
ただ、一つ、最後、懸念事項として残りますのが、全体的に先ほど申し上げたとおり、ほかのラウンドも含めて、少人数私募という枠組みの中でみんなやっているものなので、シード・ラウンドだけが、少額免除、すなわち募集なんだけども、免除というところになりますと、基本的には有価証券通知書の提出が必要になったりする。違うルールが適用を一部されるということになりますので、そこの部分がしっかり理解されるのかと。特に本当にこう言ってはなんですが、ラフラフの、例えば学生起業家みたいな人がやったときにそこまでちゃんとサポートできるのかというところが懸念材料として一部残るのではないかと考えている次第でございます。
以上になります。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、日本商工会議所の山内様から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【日本商工会議所】
日本商工会議所企画調査部長の山内でございます。本日は貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。発言時間は5分ですので、ポイントのみ申し上げます。
資料の1ページ目を御覧ください。私どもとしては、地域経済の好循環、そのためには地方での投資の拡大、地域を支える企業・産業の成長資金、特にエクイティの調達環境の整備が急務だと考えております。政府が目指す付加価値創出型の経済実現、ここへの有効な成長戦略であると考えております。
よって、本日、この議論の対象としましては、地域の中小企業、中堅企業、子会社ベンチャー、スタートアップを念頭に置きながらお話をさせていただきます。
私は経営支援や創業塾を担当してきましたが、事業創出時の資金調達が困難という声は依然として根強く、商工会議所でもクラウドファンディング、株主コミュニティの活用を進めております。今、J-Shipsでも10億円以上の調達額が出てきておりますし、需要は確実に拡大しているのかなと思っております。
2ページ目を御覧ください。本日のテーマでございます、経営者など地域の投資家からの直接投資によるエクイティ調達・資金供給の促進についてであります。少額公募につきまして、本日の事務局資料でも募集実績を見ると5億円から10億円の資金ニーズがあるということが示されています。現場感覚でも、物価も上がってきております。ニーズは拡大傾向だと思っております。ニーズに即した制度設計とするために、ぜひ募集額の上限は10億円とすべきであると考えております。
推進役と期待しております証券会社にこれを活用してもらうためには、やはり少なくとも10億円程度に設定しないと収益性が見込めず、御活用いただけないと思います。5億円まではクラウドファンディング、5億円から10億円は少額公募、そして、何よりも投資家保護は大事でありますので、ここには十分な配慮が必要ですが、会社内容説明書など高コストなものが現状のままですと、なかなかに少額公募が使われる見込みはありませんので、廃止や大幅な簡素化による簡易開示で対応という投資環境の整備をぜひお願いしたいと考えております。物価高に打ち勝ち、賃上げを実現するためにも、原資となる付加価値の創出は必要でありまして、ぜひ政府として地方への投資、付加価値の拡大を本気で目指すということでありましたら、実現をよろしくお願いしたいと思います。私どもも、やはり適正な規律ある運用は大事でありますので、ここを後押ししてまいりたいと考えております。
繰り返しになりますが、投資家保護は極めて大事でありまして、しかしながら、制度が使われないと意味もありません。コスト見合いの簡易開示をお願いしたいという趣旨の今回の話になっております。会社内容説明書などの作成は、少額公募等、5億円未満では廃止、そして、10億円未満もできれば廃止と思いますが、難しい場合には大幅に簡素化、特に高コストの財務諸表の監査は任意にしていただければ幸いです。
また、投資型クラウドファンディングは政令で上限が5億円に改正されました。少額公募が使えるようになりましたが、現在の少額募集では有価証券届出書の簡素化が不十分でありまして、有価証券報告書などの提出義務は残ります。実際に活用されていないのが実態なのかなと思います。したがいまして、少額公募の募集額上限と届出免除基準の10億円への引上げに伴って、このクラウドファンディングの届出免除基準も実質的な募集額上限となる5億円への引上げをぜひともよろしくお願いいたしたく存じます。
下に、望ましいと私どもが考える開示義務の概要をお示ししております。少額公募は10億円、クラウドファンディングは5億円、欧米の水準は次ページに記載しておりますが、ぜひ国際競争力のある投資環境の整備をお願いいたしたく存じます。
5億円までの簡易開示につきましては、事務局から御提案いただいたものは十分に妥当でございまして、私どもの意見も御反映いただき感謝いたしております。その上で、表の下に記載しておりますが、有価証券通知書の記載事項は基本的に現行どおりで、また、証券会社に投資勧誘を委託するときも同じ簡易な開示をお願いしたいと思います。
クラウドファンディングの5億円未満につきましては、現行、1億円未満で行われているものと同じ対応でぜひよろしくお願いいたしたく存じます。
最後の3ページ目を御覧ください。時間の関係で詳しくは御説明いたしませんが、一言だけ。未上場株式の発行・流通市場の整備といたしましては、少人数私募における証券会社による未上場株式の投資勧誘を促進するため、会社内容説明書の作成負担の軽減、簡易化。また、投資家のところにつきましては、特定投資家の資格要件の主要国並みの富裕層全般への拡大と、資格取得手続の簡素化をお願いしたいと思っています。
先ほど成長ステージに応じてという話もございましたが、直接金融と間接金融を組み合わせたデット・エクイティファイナンスが非常に重要だと思っています。金融機関と証券会社の協調的な支援ということになりますが、事業創出の初期の資金調達の可能性を高めて、その後の調達額を拡大していく有効な政策ですので、ここをぜひお願いしたいと思っています。
地方での投資拡大、成長型経済への転換を目指していくということでありましたら、ぜひ思い切ったこうした政策の御英断をお願いしたいと思っています。
投資家に対して、私どもも各地で説明していますが、商工会議所の役員や議員などにもぜひ地方での投資に関心を持っていただき、進めていきたいと思っており、ぜひ環境整備にも使わせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、日本ニュービジネス協議会連合会の永瀬様から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会】
ニュービジネス協議会連合会から参りました永瀬と申します。ニュービジネス協議会連合会の立場と、併せて、新潟で、新潟ベンチャーキャピタルという地方の地銀の子会社でなく、あくまでも独立系のVCをやっております。そういった観点から、地方の事情なども含めてお話ができればと思います。あと、このニュービジネス協議会、全国組織でございまして、全国4,000社の会員がいる、そんな組織でございます。
この資料の前に、まず新潟でございますけれども、2018年、国交省だったかな、今の花角知事という方が2018年に就任されてから、ずっとスタートアップ支援というのを大きな柱にしてまいりました。その結果、スタートアップのプレーヤーはすごく増えまして、かつ、知事が就任されて、もう7年目を迎えるんですが、直近で東京プロマーケットも3社ほど上場、そして、今年は、東証グロースに上場したスタートアップも新潟で初めて出たとか、結構いろいろな経過が出てきている、そんな状況でございます。
そのような中で、やはり地方が資金調達できないという、そういう感覚というのはまだまだございます。これは非常に国が掲げる地方創生に大きなマイナスになっていると思います。地方で資金調達ができないから、東京に行って資金を調達する。その結果、地方の人口が減ってしまう。これが大きな根幹だと思っています。私どもは、このニュービジネス協議会連合会の立場を利用しまして、地方にいても仕組みとして資金調達ができるということをぜひ訴えていきたいと思います。こういったことで、市井の中からベンチャー支援をすることで地方の活性化が行われるものだと僕らは強く信じている次第でございます。
資料でございますけれども、めくっていただきまして、先ほどの商工会の方とほぼこの主張は似ているんですけども、ここはとてもいつも連携させていただいているので、主張する部分は一緒でございます。この1億円から、今回、5億円検討いただいているというのは非常に大きな第一歩だと思っております。ただ、この5億円というのは、2018年にしまった、グリーンシート時代に合った5億円という上限でございます。今、2013年、2025年において、2018年のときに戻ったのが5億円というだけでありまして、やはり今の世界のいろいろなスタートアップと戦わなければいけないベンチャー企業の立場を考えれば、やはりここは10億円までルールを軽くした資金調達ができるということがまず重要だと思っております。
細かい点を一つだけお話しすれば、ここに書いてございます開示書類ですね。非常に、10億円まで簡素な内容になっております我々の提案です。特にここの有価証券通知書ですね。これは有価証券届出書ではございません。あくまでも有価証券通知書で、会社の中身を説明し、やはりある程度の投資家の方の保護をしつつ、動きが活性化できるような軽いルールの下で資金調達ができる。こういったものを我々としては地方の声として届けていきたいと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、オブザーバーとして参加いただいております日本証券業協会の松本様から御説明をお願いいたします。
【日本証券業協会】
ありがとうございます。ただいま御紹介いただきました日本証券業協会の松本と申します。本日はよろしくお願いいたします。
私から、金融庁と共同で開催いたしましたスタートアップ企業等への成長資金供給等に関する懇談会の報告書について紹介させていただければと存じます。
まず、本懇談会の開催の経緯でございますが、資料2ページ目をお願いいたします。昨年6月に閣議決定されました規制改革実施計画におきまして、下線部のところでございますが、非上場株式の発行市場、流通市場ともに、金融庁と日証協が連携して検討を行うよう御提言をいただいたところでございます。
また、次のページでございますが、日証協におきましては、昨事務年度、また、本事務年度の重要施策といたしまして、スタートアップ育成の支援を掲げたところでございます。
こうした経緯を踏まえまして、次のページでございますが、昨年12月、金融庁と日証協が共同で本懇談会を立ち上げまして、本年9月に懇談会としての報告書を公表したところでございます。
5ページに名簿と6ページに検討経緯が書いてございますが、こちらは省略させていただきまして、この9月に出しました報告書につきまして簡単に紹介させていただきます。
8ページを御覧ください。このページでは、報告書の全体のポイントを示してございます。報告書におきましては、まず一番上にありますとおり、海外の事例も参考にいたしまして、スタートアップ企業への資金供給のあり方の全体像を確認した後、仲介業者経由の資金調達額のKGIですとか参考指標の考え方を示してございます。その後、大規模投資家から始まる投資家層を区切って提言を行い、最後に制度周知の重要性を訴えているという構成になってございます。
本日は時間の関係から、大規模投資家から始まる投資家に関する箇所について紹介をいたします。
11ページを御覧ください。まず大規模投資家についてでございます。企業価値の向上ですとか株主構成の観点から、特にアーリー期以降のスタートアップ企業におきまして、大規模投資家による資金供給のニーズが高くなってございます。一方、投資家のサイドからは、投資の規模が大きくなれば、その分、スタートアップ企業においても相応の事業基盤ですとかガバナンス、また、継続的な情報提供の確立などが求められるとしてございます。大規模投資家からの投資促進のためには、規制改革のみならず、投資の推進施策ですとか運用高度化を図るための施策が必要とされてございます。
下のほうに何点かポツを示してございますが、具体的にはベンチャーキャピタルガイドラインですとかアセットオーナー・プリンシプルの普及を通じまして、運用力の向上、運用資産の多様化が図られること、また、官民ファンドが直接・間接的にスタートアップ企業へ投資を行うことによりまして、機関投資家からの資金流入の後押しになる効果が期待できること、また、税制上の措置の拡大や見直しによるインセンティブの拡充を提言してございます。
12ページを御覧ください。SPVスキーム、投資信託、エンジェル投資家についてでございます。これらの投資家につきましても、大規模投資家と並んで、スタートアップ企業からの資金調達ニーズが高く、特にSPVスキームやエンジェル投資家についてはシード期の企業からのニーズが高いと認識してございます。SPVスキームにつきましては、クラウドファンディングにおける株主の増加を防ぐために、株主を一本化するスキームの法的手当てを頂いてございますが、今後、それを活用していくためには、保有持分の換金やスキームについて、契約書のモデルが必要と提言されてございまして、その検討が進むことを期待してございます。
また、投資信託につきましても、自主規制ルールの改正等が行われてございますが、さらに非流動性資産を組み込んだ投資信託の新たな組成・販売の枠組みの検討ですとか、また、エンジェル投資家についても、税制の拡充・見直しの措置を提言しているところでございます。
13ページを御覧ください。リスク許容度・投資判断能力のある投資家につきましては、①の特定投資家を対象としたJ-Shipsの利活用の拡大といたしまして、情報提供の見直しなど、5点について提言してございます。
このうち⑤でございますが、原則勧誘禁止の見直しと書いてございます。現在、日本証券業協会の自主規制規則におきまして、非上場株式につきましては、原則として勧誘禁止、例外として勧誘を認めるという規則体系になってございますが、こちらにつきまして、非上場株式の勧誘を行う証券会社のリストを公開するなどの投資者保護に留意をしつつ、日証協の規則に定める取引制度に基づき勧誘を行うという体系に転換するということを提言してございます。
また、③といたしまして、準特定投資家による投資を提言してございますが、これにつきましては、次の章で紹介をいたしますので、16ページを御覧ください。
スタートアップ企業への成長資金の供給を拡大していくためには、繰り返しになりますが、大規模投資家からの投資が重要ということでございますが、一方で、投資者の裾野拡大を図るという観点からは、大規模投資家以外のリスク許容度・投資判断能力のある投資者による投資も重要と考えてございます。こういったリスク許容度・投資判断能力のある投資者による取引制度としましては、少し触れましたが、特定投資家を対象といたしましたJ-Shipsという制度がございます。
ただ、一般投資家がこの特定投資家に移行する場合には、適合性の原則等の金商法上の行為規制が適用されなくなるといったことから、特定投資家の移行には慎重な姿勢が見られるところでございます。
ただ、特定投資家に移行していない一般投資家の方であっても、移行要件を満たす投資家の中には、特定投資家と同等のリスク許容度や投資判断能力を有している方も存在します。こういった方、この懇談会の報告書では準特定投資家と呼んでいますが、こういった方によるスタートアップ企業への投資につきましては、スタートアップ企業にとっては資金供給の裾野拡大、投資者にとっては投資機会の拡大に寄与すると考えられます。
一方、非上場企業でございますので、一般的に上場株式に比べてリスクが高いということですとか、金商法上の不公正取引規制ですとか情報開示が十分でないということがございますので、日証協において適合性の原則を踏まえつつ、投資者保護の観点から規制を整備して、当該規制に基づき勧誘や取引が行われる必要があると考えられるところでございます。
そこで、この下のところでございますが、懇談会の報告書におきましては、準特定投資家を対象とする非上場株式の制度につきましてルール整備を行うべく、今後、日証協のワーキングで投資家保護に留意して検討するよう提言をいただいたところでございます。
なお、準特定投資家による投資につきましては、現行の開示規制で認められております少人数私募や少人数私売出し、また、少額免除の枠組みを利用した取引制度を前提としてルール整備を行うということが前提となります。
17ページを御覧ください。準特定投資家を対象とする非上場株式の勧誘取引制度の整備に向けた日証協の対応の方向性について紹介してございます。
まず、制度整備に当たっての基本となる考え方につきましては、繰り返しになりますが、準特定投資家による投資につきましては、適合性の原則を踏まえつつ、投資者保護の観点から規制を整備する必要があると考えてございます。また、検討におきましては、この懇談会で示された問題意識でございます非上場株式の投資に係るリスクですとか、上場株式等との違い、こういったことに留意する必要があると考えてございます。
具体的な自主規制規則の検討はこれから行うところですが、現状、事務局で考えているイメージを一番下に記載していますので紹介いたします。
まず①でございますが、準特定投資家と取引を行おうとする証券会社は、社内規則の制定など、社内の整備を図る必要がございますが、社内規則で定める事項につきましては、自主規制規則で明記することを考えてございます。
次の②でございます。証券会社が準特定投資家と取引を行うためには日証協の指定を受けることを必要といたしまして、日証協が指定するに当たりましては、社内規則の内容等について日証協において確認を行い、指定した証券会社については、③にあるとおり、日証協のホームページで公表したいと考えております。また、証券会社が特定の銘柄について準特定投資家に販売する場合には、④にありますとおり、事前に当該銘柄について審査することですとか、⑤の投資者の範囲を決定すること、こういったことも自主規制規則で定めたいと考えてございます。また、実際に顧客に勧誘する場合に必要となる情報提供の内容についても自主規制規則で定めることを考えてございます。
18ページを御覧ください。このページでは今後の課題といたしまして、先ほど申し上げました準特定投資家による新しい取引制度に係る課題と現行の金商法上の特定投資家に係る各課題を記載してございます。
まず、準特定投資家による取引制度に係る開示上の課題についてでございます。先ほど申し上げましたとおり、準特定投資家による投資は、現行の開示規制上、少人数私募、少人数私売出し、また、少額免除の利用のみが認められまして、J-Shipsが利用してございます特定投資家私募制度を利用することはできないことになってございます。そのため、少人数私募や少人数私売出しで行う場合には人数の制約があるということ、また、少額免除につきましては、上限の引上げの議論をいただいてございますが、資金調達額の制約があるということで、スタートアップ企業が希望する資金調達額での調達が行えない可能性がございます。
また、少人数私募や少人数私売出しを行う場合の人数制約は、勧誘ベースでカウントということになってございますが、証券会社にとって、勧誘した投資家の人数管理については実務上の負担が大きいというのが実態でございます。
次に、特定投資家制度に係る課題でございます。特定投資家に移行いたしますと、開示規制との関係では特定投資家向け私募等に該当しますJ-Shipsですとか、東証のTOKYO PRO Marketなどの取引をすることができるようになるという一方、行為規制の観点では適合性の原則をはじめとする一部の行為規制が適用除外になるということでございます。
J-Shipsにつきましては、米国の制度である自衛力認定投資家制度を参照といたしましたが、米国におきましては、適合性ルールが適用されない機関投資家と、この自衛力認定投資家は別の概念となってございます。米国において開示上のプロの投資家と行為規制上のプロの投資家の概念が必ずしも一致していないということは、今後、我が国においてプロの投資家の概念について検討する機会があれば、参考になる可能性があるのではないかと考えているところでございます。
私からの報告は以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、事務局の金融庁から資料について御説明をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
それでは、事務局資料に沿って説明させていただきます。
まず1ページにある目次を御覧ください。本日は、有価証券届出書の提出免除基準の検討、特定投資家私募制度の見直し及び株主報酬に係る開示制度の見直しについて御議論いただきたいと存じます。
2ページを御覧ください。第1回会合におきましては、有価証券届出書の提出免除基準を引き上げるという方向性について事務局から御提示したところ、本件検討に当たっては、効果、妥当性を判断するためのデータが必要との御指摘や、投資者保護の観点からの検討も必要といった御指摘を頂戴しました。
5ページを御覧ください。こうした御指摘を踏まえまして、事務局において開示書類に基づく調査と私募の実態に関する調査を実施いたしました。
①の開示書類に基づく調査については、2015年以降の10年間に提出された有価証券届出書等を用いまして、提出免除基準を1億円から引き上げた場合に、今後開示が行われないこととなる範囲、件数の規模を把握いたしました。
②の私募の実態調査につきましては、スタートアップ企業やその資金調達に関与し得る関係者など、20先に対して私募の実施方法や調達金額等をヒアリングしたものでございます。
6ページを御覧いただけますでしょうか。スタートアップ企業による利用が想定される有価証券届出書の第二号様式について、資金調達の際に提出されたもの、122件を資金調達金額別に並べ直したものがこちらの棒グラフになっております。御覧いただいてのとおり、5億円未満と5億円以上10億円未満の2つの金額帯の件数が多くなっておりまして、提出免除基準の引上げに当たっては、5億円または10億円を念頭に置いて検討を進めることが適当かと考えられます。
次に、7ページを御覧ください。開示書類に基づく分析の結果をこのスライドにまとめております。先ほど申し上げましたとおり、第二号様式はスタートアップなど、上場して間もない企業に利用されることが想定される様式です。他方で、第二号の2様式は組込方式、第二号の三様式は参照方式を利用する場合の届出様式でして、これらの様式は既に有報を提出している企業や時価総額が一定以上の企業に利用されるものとなっております。仮に提出免除基準を1億円から5億円に引き上げた場合は、第二号様式で見ますと22%の部分、3つの様式の合計で見ますと28%の部分が届出書の提出を免除されることとなります。他方、仮に提出免除基準を1億円から10億円に引き上げた場合は、第二号様式で見ますと42%、3つの様式の合計で見ますと46%が届出書の提出を免除されることとなります。
なお、注1に記載しておりますが、株式報酬に関する制度見直しに伴い、この円グラフの緑色の部分につきましては、届出書の提出免除基準の引上げの効果と別の文脈で届出が不要となります。
次に、8ページを御覧ください。このページと次のページに私募等の実態調査の結果をまとめております。私募等は当局への届出がなされないものでございますので、全体像を把握するのが難しい点は御容赦いただければと思います。
ここでお示ししておりますのは、先ほど申し上げましたとおり、スタートアップ企業をはじめとする20先から事務局がヒアリングした結果をまとめたものとなっております。かいつまんで御説明いたしますと、企業の成長ステージにかかわらず、少人数私募が広く利用されており、その場合は、対面、メール、電話など対象者を特定できる方法で勧誘が行われることが一般的であるようです。また、こちらは私募ではなく募集の一類型となりますが、株式投資型クラウドファンディングを使って資金調達を行う事例も見られるようです。この株式投資型クラウドファンディングにつきましては、今年2月に施行された金融商品取引法施行令の改正によりまして、発行価額の上限が1億円から5億円に引き上げられたところですが、1億円を超えますと有価証券届出書の提出が必要になりますので、このページの下部にございますとおり、現状は1億円の範囲内で利用されることが一般的なようです。
次に、9ページを御覧ください。事務局がヒアリングした20先に対しまして、届出書の提出免除基準の引上げや、この後、御説明いたします特定投資家私募制度について意見を伺いまして、その結果をまとめております。
まず届出書の提出免除基準の引上げについてですが、仮に引き上げられたとしても、引き続き少人数私募が利用されることのほうが多いのではないかといった御意見もございましたが、投資型クラウドファンディングの金額要件としての発行総額の上限が5億円に引き上げられたことを踏まえると、届出書の提出免除基準も5億円に引き上げることで投資型クラウドファンディングの利用が促進されるのではないかといった御意見ですとか、また、届出書の提出免除基準が引き上げられれば、金融商品取引法に抵触する懸念を抱くことなく投資家との交流などを行いやすくなるのではないかといった御意見がございました。
また、特定投資家私募制度につきましても、企業のステージが進むにつれて資金調達対象を広げるニーズが生じるため、特定投資家の裾野を広げることへのニーズはある。J-Ships制度の利用促進に向けた見直しを求めるといった御意見がございました。
次に、10ページを御覧ください。以上の点を踏まえてですが、提出免除基準につきましては、5億円に引き上げることとしてはどうかという御提案をしております。その理由としましては、このページの下部に3点掲げております。
1点目でございますが、第1回会合の資料でもお示ししましたとおり、この金額は1998年の改正によって5億円から1億円に引き下げられたものでございますが、その際の改正理由は、投資者保護の要請が高まったこととされておりまして、投資者保護の観点から急激な引上げについては慎重な検討が求められるのではないかと考えられます。
また、2点目ですが、今お示しした開示書類に基づく調査の結果を踏まえますと、スタートアップ企業への資金供給の拡大という政策効果と投資者保護とのバランスを取るためには5億円が妥当な水準ではないかと考えられること。最後に3点目でございますが、先ほど御説明しましたとおり、投資型クラウドファンディングの発行総額の上限が5億円に引き上げられておりまして、それと同額に設定することで政策的な効果が期待できるのではないかと考えております。
次に、11ページを御覧ください。仮に提出免除基準を5億円に引き上げることとした場合に、調達金額1億円から5億円の範囲につきましては、今後、有価証券届出書が開示されないこととなります。何らか投資者保護策が必要ではないかと考えられますが、現在、1,000万円から1億円未満の募集に関して、当局への提出を求めている有価証券通知書につきまして、1億円から5億円未満の募集についても提出を求めることとして、さらに、当局への提出だけではなく、EDINETを通じた公衆縦覧を義務づけることとしてはどうかと考えております。また、併せて会社法上の事業報告、計算書類を添付書類に追加することとしてはどうかと考えられます。
次に、14ページを御覧ください。第1回会合の資料にも記載しましたとおり、1998年の改正により提出免除基準が5億円から1億円に引き下げられた際、それまで開示義務のかかっていなかった1億円から5億円の範囲の募集等に適用される制度として少額募集制度が導入されました。この少額募集制度の下では、このページの表にございますとおり、通常の様式と比べて簡易な様式での届出が可能とされております。この少額募集制度につきましては、ここにございますとおり、廃止する案①、あと、利用可能な募集等の範囲を見直し、5億円以上10億円未満の募集等とした上で存置する案②のいずれかの対応を検討する必要があると考えられますが、最後の四角にございますとおり、資金調達を目的とする有価証券届出書の提出件数を金額別に分類した場合、1億円以上5億円未満と5億円以上10億円未満の件数が多数でございまして、後者のボリュームゾーンに対応する方策として、少額募集制度を存置する案②を取ることが適当ではないかということをここでは御提案させていただいております。
次に、16ページを御覧ください。特定投資家私募制度の見直しについてでございます。この16ページでは、特定投資家制度及び特定投資家私募制度の導入経緯についてまとめております。特定投資家という概念は、2006年の証券取引法改正の際に、行為規制の柔軟化を図ることを目的として導入されたものとなっております。具体的には、金融商品取引業者が特定投資家を相手方として販売勧誘を行う際には、このページの概要欄にあるような規制、例えば適合性原則などが適用を除外されることとなっております。
特定投資家の範囲についてですが、適格機関投資家に加えて、国、日本銀行、投資者保護基金、その他の法人がこれに該当することとされております。また、年収や知識、経験などに関する一定の要件を満たす一般投資家が証券会社に申請して、特定投資家に移行すること、いわゆるプロ成りも可能とされております。
その後、2008年の改正では、特定投資家等のみが参加するプロ向け市場の制度が新設されるとともに、併せて特定投資家私募という私募の類型が新設され、開示規制の対象外とされました。
次に、18ページを御覧ください。その後も2022年に特定投資家の範囲の拡大を行ったほか、J-Ships制度の新設といった取組を行ってきておりますが、特定投資家による取引はいまだ限定的となっております。課題欄にございますとおり、J-Ships制度の本年8月末時点の株式の取扱い件数は30件、資金調達金額の合計は228億円にとどまっておりますし、プロ向け市場につきましても、上場銘柄は増加しているものの、資金調達が行われる事例は極めて限定的となっております。
その要因は様々あろうかと思いますが、その一つとして、先ほど日証協・松本本部長からもお話がございましたとおり、特定投資家の裾野が狭いという点があるかと考えられます。また、裾野が狭いことの背景としましては、ここの背景欄にございますとおり、一般投資家が特定投資家に移行する際、契約の種類ごとに移行手続を取る必要がある点や、複数の証券会社と取引を行っている場合には、証券会社ごとに手続を行う必要があり、また、その有効期間が1年間であって、更新手続が必要であるといった点があるかと考えられます。
次に、21ページを御覧ください。以上の点を踏まえまして、プロ向け市場やJ-Ships制度に参加する投資家の裾野を広げる観点から、特定投資家要件を満たし、高い情報分析能力等を有する者の、特定投資家への移行手続はまだ取っていない一般投資家、ここでは潜在的特定投資家と呼ぶこととしておりますが、これを特定投資家私募の相手方の範囲に追加することとしてはどうかと考えております。
次に、22ページを御覧いただけますでしょうか。今申し上げましたとおり、開示規制の文脈では、特定投資家私募の相手方の範囲に潜在的特定投資家を加えることとする一方で、金商業者に課せられる行為規制という文脈においては、投資者保護の観点から、潜在的特定投資家をこれまでと同様、一般投資家と同様に扱うものとする。すなわち、適合性原則などは引き続き適用されるものとするとしてはどうかと考えております。
次に、24ページを御覧ください。株式報酬に係る開示制度の見直しについてです。第1回会合におきまして、日本の非上場会社や日本市場では上場していない外国の会社が、役員・使用人に株式報酬を交付する場合についても届出書の提出を不要とする御提案をしまして、方向性についておおむね御賛同いただいたものと承知しております。
この方向で検討を進めたいと考えておりますが、届出書の提出を不要とする方法としては、ここにございますとおり、案①として、上場株券を株式報酬として交付する場合に関する現行の制度を前提に、有価証券の募集には該当するとした上で、その特例として、届出書の提出を免除する方法。また、案②として、上場株券の付与も含めて、そもそも有価証券の募集には該当しないとする方法の2通りがあるかと考えられます。
次の25ページを御覧ください。現行の金融商品取引法におきまして、具体的にどのような行為が案①、②に分類されているのかを表にまとめております。この整理の大きな考え方としては、案①につきましては、既に情報開示がなされていることを理由として、届出書の提出を免除している一方で、案②につきましては、相手方の属性などを踏まえて、有価証券に関する情報を自ら入手できる者に対する勧誘を有価証券の募集から除外していると言えるかと考えております。この点、取締役等に対する株式報酬やストックオプションの付与につきましては、どちらかといえば案②の考え方に近いかと考えられ、この際、上場株券を株式報酬として付与する場合も含めて、有価証券の募集から除くこととしてはどうかと考えております。
最後に28ページを御覧ください。本日御議論いただきたい事項は、このページにございますとおりでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【神作座長】
御説明、どうもありがとうございました。
それでは、これより委員の皆様からの御意見、御質問等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。限られた時間ではございますけれども、全ての委員の方々から6分以内で御意見等を頂戴したいと存じます。
なお、本日の会議では、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで事務局員よりメモを差し入れさせていただきます。加えまして、御発言の順番については多少前後する可能性があるかと存じますけれども、あらかじめ御了承いただければ幸いに存じます。
初めに、本日御欠席の委員の皆様方より御意見を頂戴しておりますので、事務局から御紹介いただきます。小林委員、田代委員、三瓶委員の順で御紹介してください。よろしくお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
それでは、まず、資料6の小林委員の意見書を御紹介いたします。
「諸用のため、金融審議会『ディスクロージャーワーキング・グループ』第3回を欠席いたしますので、以下の通り、書面にて意見を提出させていただきます。
(1)有価証券届出書の提出免除基準
・有価証券届出書の提出免除基準については提出件数分布、提出免除基準を引き上げた場合の免除割合の調査結果を踏まえると5億円にすることに異論はありません。
・一方、引上げに伴う投資者保護については、非上場企業の情報へのアクセスが限定的であることを考えると、開示の負担を考慮しつつも、有価証券届出書に代わる投資判断に必要な情報の種類と質の担保はしっかりと議論すべきと考えます。特にスタートアップへの投資の場合は投資を受ける側に内部管理、開示の経験・意識が十分でない場合も多く、教育的意味も含め、投資判断をする上で必要な財務、非財務情報の基本的な開示のレベルをしっかりと定めることはスタートアップの今後の成長を支える上で必要と思います。
・上記の2が確保されれば、そもそも使われることが少ない少額募集制度を廃止しても良いのではないか。
(2)特定投資家私募制度の見直し
・特定投資家制度・特定投資家私募制度に潜在的特定投資家を新たに加えることを議論するのは時期尚早と考える。その理由は、①特定投資家私募制度が十分に活用されていない理由が明確ではない。事前の説明からは特定投資家の裾野が広がらない背景の課題への対応や、制度そのものの有効性についての検証が十分になされているのかどうか疑問が残る。②加えて、潜在的特定投資家に裾野を広げることが、すなわち1)スタートアップ企業への投資拡大につながるという理由が明確ではない。2)開示情報の質が、特定投資家の要件を満たしているとはいえ、その投資判断に耐え得るものであるかは前項の有価証券届出書の議論とも重なるものであり、その点が明確になる前に判断できるものではない。3)潜在的に特定投資家の要件を満たしているにも関わらずあえて特定投資家にならない投資家が制度が変わったからという理由だけでスタートアップ企業に投資すると考えるのは短絡的ではないか。③一方、特定投資家制度を安易に拡充することで、問題がある投資家が市場に入り易くなる可能性の有無という視点からの検証もすべきと考えます。また形式基準を満たすこと=当該投資リスクを理解しているとすることは必ずしも妥当とは思えず、実質のリスクテイク能力を確認するステップもあった方が良いと考えます。以上」。
次に、資料7の田代委員の意見書を御紹介いたします。
「所用のため、金融審議会『ディスクロージャーワーキング・グループ』(第3回)を欠席いたしますので、以下の通り、書面にて意見を提出させていただきます。
(1)有価証券届出書の免除基準の検討
・届出免除基準の金額水準
資本市場におけるスタートアップ企業の資金調達を促進する観点から、免除基準を1億円から5億円引き上げることに賛同します。
有価証券届出書における資金調達金額別の件数は、有用なデータであると考えます。1~5億円の募集件数が多いこと、また、投資者保護とのバランスを踏まえると、5億円への引き上げが妥当なステップであると考えます。
・引上げに伴う投資者保護策の在り方
個人投資家が多く含まれることを踏まえると、投資者保護の観点は非常に重要です。御提示いただいた資料のとおり、事業報告や計算書類をEDINETで公衆縦覧に供することは、透明性の確保および投資者保護の観点から有効な手段であると考えます。
加えて、資本市場の健全な活性化を図るためには、保護の仕組みの整備に加え、投資家のリテラシー向上や自己責任原則の啓蒙といった側面も欠かせないと考えます。
・引上げ後の少額募集制度
まずは5億円への引き上げ後に投資者保護制度の効果を十分に検証し、その実効性についてフォローアップするための体制整備に取り組むべきと考えます。その上で少額募集制度の範囲を5~10億円に拡大することが、企業の資金調達の機会をさらに広げ、また投資者にとっても適切な制度的枠組みとなっている旨を確認できた場合に、金額引き上げを検討してはどうかと考えます。
(2)特定投資家私募制度の見直し
潜在的特定投資家の新設は、潜在的特定投資家への勧誘を可能とすることで市場参加者の拡大を図る一方で、適合性原則等を一般投資家と同様に適用することで、投資者保護を確保する制度であると理解しています。
潜在的特定投資家制度は、移行手続を経ていない一般投資家に対しても、特定投資家私募等でのプロ向けの商品等を御案内することになります。投資家の意思を確認するとともに、理解度に応じた説明義務等を果たす必要があり、極めて慎重な対応が求められるものと考えます。
同時に、資本市場の健全な活性化を図るためには、保護の仕組みの整備だけでなく、投資家のリテラシー向上や自己責任原則の啓蒙といった側面も欠かせないと考えます。
(3)株式報酬制度の見直し
役員・使用人に対する株式報酬は、有価証券等の情報を自ら入手できる者への勧誘に近い性質を持つことから、そもそも「募集」に該当しないとする方法による見直しに賛同します。以上」。
最後に、資料8の三瓶委員からの意見書を御紹介いたします。
「所用のため、金融審議会『ディスクロージャーワーキング・グループ』(第3回)を欠席いたしますので、以下の通り、書面にて意見を提出させていただきます。
1.有価証券届出書免除の検討
1)引上げ後の届出免除基準の金額水準について
第1回DWGでの意見を踏まえ、資金調達の状況に関する調査・分析を実施いただき事務局に感謝いたします。P6資金調達金額別の件数分布、P7金額基準を引き上げた場合の影響の分析を踏まえつつ、P9「届出免除基準の引上げに関する意見」に記載されている3点はいずれも引上げ理由として納得感があり、5億円に引き上げることをサポートしていると考えます。
他方、東証の集計によると、2018年以降のマザーズ・グロース市場へ上場した357社のIPO時の資金調達額は、その67%が10億円未満です。また、IPOの配分状況は84%が個人投資家です。したがって、届出免除基準を10億円まで引き上げてしまうと東証グロース市場へのIPOと大きく重複します。未公開のスタートアップの資金調達支援とグロース市場へのIPOなど各成長段階のスムーズな連鎖が事業基盤の強化及び成長を加速する政策に重要であると考えます。
したがって、引き上げる金額水準は5億円が妥当であると考えます。
2)届出免除基準の引上げに伴う投資者保護策の在り方について
これまで1千万円~1億円未満の募集等の場合に提出が求められていた有価証券通知書は「新規発行(売出)有価証券及び「有価証券の募集(売出)の方法及び条件」について2~3ページ記載しているに過ぎず情報が限られています。したがって、届出免除基準金額の引上げに伴い、特定投資家私募について求められている特定証券情報に準じて添付書類として会社法上の事業報告及び計算書類を追加、EDINETを通じた公衆縦覧は発行者の追加負担を考慮しても妥当な案と考えます。
3)届出免除基準引上げ後の少額募集制度のあり方について
案①(廃止する)を支持します。
1998年改正で少額免除基準を5億円から1億円に引き下げた結果生まれた通常の募集金額基準との差額範囲を埋めるために導入された少額募集制度の経緯からすると、埋める差額範囲が無くなったので廃止とするのが適当と考えます。
また、案②を選択する場合、5億円以上10億円未満という前述したグロース市場の67%のIPOの資金調達額に匹敵するにも関わらず、少額募集で可能としている簡易な様式での有価証券届出書は、「単体のみ」や「1期分」など大きく見劣りする内容であり、金商法の下での多様な資金調達規律の整合性の観点からも説明しにくいと考えます。
2.特定投資家私募制度の見直し
潜在的特定投資家を追加する施策の方向性については、特定投資家の裾野を広げるという政策意図は理解できます。しかし、今回の事務局案では潜在的特定投資家の位置づけが不明瞭です。一般投資家と特定投資家の違いには、「特定投資家になるための要件」、「特定投資家としての地域(手続き)」、「その結果得ることができるメリット」が明確になっていますが、P22の表の整理の通り、潜在的特定投資家は、一般投資家と特定投資家の双方にまたがっており、3者の区別、特に行為規制の適用や不招請勧誘の禁止等の適用に関わる権利義務などが複雑になる懸念があります。
3.株式報酬制度の見直し
有価証券届出書の提出を不要とすることの法的な整理を、①「募集」に該当するが特例として免除するのか、②「募集」に該当しないとするのか、については、発行会社、株式交付を受ける者、その他の株主いずれへの影響にも差がないと考えられるためどちらでもよいのではないかと考えますが、②を選択すると、他の状況で「募集」に該当しない条件を検討する場合に影響する可能性があるかもしれません。したがって、①の方が当該規律にのみ関係するため、より適当ではないかと考えます。以上」でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、委員の皆様方から御意見、御質問をお出しいただければ幸いに存じます。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。
それでは、黒沼委員、どうぞ御発言ください。
【黒沼委員】
私からは、各論点について簡潔に意見を述べたいと思います。
まず、届出書の提出免除基準の検討ですが、近時の欧米における金額基準の引上げに照らして、5億円に引き上げるのが適当と考えます。この引上げに伴う投資者保護策についてですけれども、有価証券通知書を利用するというのは、これは有価証券通知書の従来の機能とは異なると思いますが、投資者に情報を提供する手段として賛成したいと思います。
添付書類を追加した上で公衆縦覧に供するということにも賛成ですが、これはEDINETに掲げるけれども、法定のディスクロージャー制度と違って、有価証券届出書の虚偽記載等に関する民事責任などは適用されないと理解しています。ただし、会社法上の書類に重要な虚偽記載があった場合には、風説の流布に該当し得ると思うのですけれども、そのような理解でよいか。この点は確認をお願いしたいと思います。
それから、少額募集制度の利用を残すかどうかという点です。少額募集制度は、有価証券報告書の記載が連結中心のものに移行しつつある時期に、連結財務諸表の作成の負担の大きい非上場会社向けのものだったと理解しています。現在では、連結財務諸表の作成・開示が定着していると思われますので、少額募集制度は廃止してよいと考えます。
次に、特定投資家私募制度の見直しの点です。特定投資家向け私募の範囲を広げる場合、まず開示規制における区分と行為規制における区分が異なることになるわけですけれども、もともと両者をそろえなければならない理論的な理由はありませんので、この点は障害にならないと思います。
他方、特定投資家への移行を表明していない潜在的投資家を特定投資家私募の範囲に含めることは、投資家の申出により区分を変えるという制度からの大きな変更になります。潜在的特定投資家というカテゴリーを設ければ、これは購入できる有価証券は特定投資家と同じになりますので、今後は特定投資家に移行する一般投資家は出なくなると思われるからです。これまでスタートアップ企業の私募に応じてもよいと考える潜在的特定投資家が特定投資家に移行しなかったのは、特定投資家になると投資者保護のための行為規制が適用されなくなるためであり、行為規制と開示規制の区分を分けることによって、特定投資家私募に応じる可能性が高くなるという、そういう需要が本当に大きいのであれば、改正に意味はあると思います。
他方、そういう投資家の需要がなかった、資金を供給してもいいという投資家の潜在的な需要がなかったというのであれば、改正は空振りに終わってしまうわけです。スタートアップ企業の需要だけではなく、資金を供給する投資家側の需要も勘案した慎重な検討が必要だと思います。
3つ目の株式報酬制度の見直しですが、新株予約権を報酬として付与する場合との一貫性を図るという観点から、株式報酬を付与する場合にも有価証券届出書の提出を不要とする案に賛成します。そして、その場合の構成としては、そもそも勧誘がないから募集に当たらないと考えることも可能だとは思いますけれども、適格機関投資家私募と同様の考え方から募集に当たらないとする、資料25ページ、②の構成も可能だと思います。
私からは以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。会社法上の書類について、EDINETで公表する場合における金商法上の取扱いについて御質問があったかと思いますけれども、事務局からお願いできますでしょうか。
【小長谷企業開示課長】
ありがとうございます。一般論でのお答えになるかとは思いますけれども、金商法の158条の風説の流布等の規制は、有価証券の募集、売出し、売買、その他の取引と幅広い適用対象となっておりますので、通知書の範囲の募集であっても適用の余地はあるのではないかと考えております。
【神作座長】
ありがとうございます。
続きまして、永沢委員、御発言ください。
【永沢委員】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私も事務局から目次に御提示いただいた順番に意見を申し述べさせていただきます。
まず1つ目の提出免除基準の引上げにつきまして、5億円に戻すことに反対はございません。過去の経緯もございますし、データも示していただきましたので、特に迷いはないところです。また、ここで平仄を合わせるという表現が適当なのかどうか分かりませんが、株式クラウドファンディングでも直近で5億円に引き上げておりますので、5億円で妥当ではないかと思います。
加えまして、免除される3割につきまして、11ページのように手当てをしていただくということの方向性を示していただきました。これまでよりも投資者保護の手当てが厚くなるとも解されますので、望ましい方向への改正ということで歓迎したいと思います。
次に、2番目の少額募集制度の見直しですが、当初、廃止してもいいのではないかとも思いましたが、データを示していただき、金融庁事務局出案②を推されるということであれば、私は特に反対はありません。
それから、3番目の特定投資家私募制度の見直しのところでございますけれども、私も特定投資家の範囲の拡大には非常に慎重な対応をお願いしたいと思っております。対象となるのが法人ではなく生身の自然人であり、時間とともに老化し変わり得るものですから、1年ごとの更新について見直しをという意見も出ているようですが、私はこの点についても慎重に考えていただくことを強く希望します。
また、日本証券業協会のお話の最後のところで米国では自衛力認定投資家という括りがあるというご紹介がありましたが、このような考え方も新たに日本でも検討していくことが、特定投資家の範囲の拡大と併せて、議論をする必要があるのではないかと考えます。
潜在的特定投資家という区分新設についても同様に、慎重に考えていただきたいというスタンスでございます。ほかの委員の先生方もおっしゃっていますが、そもそも特定投資家への切り替えに要件を満たしていても応じないのには、応じたくない個人的な理由があるのであって、私はこの潜在的特定投資家という概念を安易に範囲を認めてしまうと、無理な営業が行われて特定投資家に移行されてしまう可能性が大いにあると思っておりますし、また、個人投資家というのはそのときの気分で言うことが違いものでして、結果的に、証券会社や発行会社と投資家との間に不要なトラブルを生むことになり、そうした紛争解決のコストが社会コストになってしまいます。こういった社会コストが発生するという負の部分もよく検討いただいて、今後の議論を慎重に進めていただきたいと思います。
最後の4のところですけれども、株式報酬制度の見直しに関しては賛成でございます。方法については、私はどちらがいいのかということを申し上げるのに十分な見識を持っておりませんので、専門家の御意見に従いたいと思います。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、大瀧委員、お願いいたします。
【大瀧委員】
どうもありがとうございます。私も資料の最後、議論いただきたい事項に沿ってコメントいたします。
有価証券届出書の免除の金額基準につきましては、御提案のように、現行の1億円から5億円に引き上げることに賛同いたします。また、金額基準の引上げに併せて、資料11で提案されている投資家保護の施策についても、投資家保護と発行者負担のバランスに配慮した提案になっており、同意いたします。
金額基準引上げ後の少額募集制度につきましては、資料14ページで、廃止する案①と、利用可能な範囲で存置する案②が提案されておりますが、当該少額募集制度が金額基準の引上げの際に設けられたこと、また、通常の様式で提出することも可能であり、実際に利用件数も少ないことに鑑みれば、今回の金額基準の引上げを機に廃止する案①でよいのではと考えております。一方で、本日、関係者の皆様から10億円等のニーズが聞かれておりますので、そういった際の金額引上げについては、今後の検討課題としてよいのではと考えております。
次に、特定投資家私募制度の見直しに関してですが、資料18ページに指摘されている特定投資家の裾野が狭いという課題への対応として、潜在的特定投資家という新しい区分を設け、資料22ページにあるように、特定投資家私募等の範囲に含める一方で、行為規制やデリバティブ規制については一般投資家の扱いとする提案につきましては、制度の活性化と投資家保護のバランスの取れた提案であり、賛同いたします。
一方で、一般投資家が特定投資家に移行するメリットが少なくなり、毎年手続を行ってきた特定投資家が潜在的特定投資家になる可能性があるように思います。また、勧誘の裾野を広げることに対して、潜在的特定投資家に対する金商業者の適切な対応が重要になると考えます。潜在的特定投資家に対しては、適合性を踏まえ、十分な説明に基づく勧誘や取引が必要であることに加え、潜在的特定投資家の該当者の特定を誤ることによって、潜在的特定投資家を特定投資家と誤認して行為規制を逸脱するリスク、もしくは、潜在的特定投資家に該当しない個人等の投資家を勧誘してしまうリスクに十分配慮する必要があると思われます。
日証協様でも検討されておりますが、金商業者における適切な社内手続の整備及び運用のほか、規制当局等によるモニタリングといったことも併せて検討する必要があるように思われます。
最後に、株式報酬に係る開示の見直しについてです。これまで資料26ページにあるように、上場会社の新株予約権証券に関して特例措置の適用範囲を広げることで対応を図ってきたと思われますが、資料25ページの案②のように、今回を機に、募集の考え方及び法的整理を行い、募集から除外することが適当ではないかと考えます。
私から以上です。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、藤本委員、御発言ください。
【藤本委員】
藤本でございます。まず、事務局の皆様からいろいろな事例等を検討いただきまして、大変ありがとうございます。状況が大変よく分かりました。
それでは、私からも御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきます。
まず届出書の提出免除基準の金額水準ですけれども、諸外国の要件も調べていただいて、それと比較しても、確かに1億円というのはやや低い水準であると思われますので、スタートアップ育成の観点から、基準額の引上げについては賛同いたしております。その上で、5億円という金額がどうなのかということが議論されていると思います。御説明いただいた資料の中では、5億円なのか、10億円なのかというのはありますけれども、やはり5億円が適正な水準ではないかと考えております。これまでの話にも出ていましたとおり、10億円というのはやや一足飛びに引上げがかなり大きな金額ではないかと考えております。ただ、最終的には、投資家の方々がどのように考えるかということをまず優先すべきであると思います。
それから、投資家保護策として、投資家に対して情報提供されるということは大変重要だと思いますので、会社法上の事業報告や計算書類を添付書類に追加した上で、通知書を公衆縦覧に供するという案については賛同いたします。
なお、これまで届出書が開示されていたものが、会社法上の事業報告や決算書類を添付した通知書に変わるということになりますと、会計監査人設置会社でない場合には、会計監査人の監査報告書が添付されない計算書類がそこに添付される可能性もございます。その上で、信頼性についてこれまでと異なるものが出てくるということも事例としては考えられると思いますので、その点、財務諸表に対する信頼性を付与する立場としては指摘をしておきたいと考えております。そういったことも踏まえて、十分に投資家の自己責任の原則がこれから重要になってくると思っております。
これまで話にも出ております投資型クラウドファンディングなども、特に個人の方が非上場企業に直接投資するということは、流動性の観点とか、また、情報が限定されてしまっていると考えております。先ほど申し上げた情報の信頼性に関しても相対的にリスクが高い領域であると思いますので、追加的に届出書から変わって監査報告や会社法上の書類が求められていることの趣旨ですとか、免除されていることの意味というのを丁寧に御説明いただき、投資家の自己責任の原則を十分御理解いただくような啓発活動、これも併せて実施いただくことが必要ではないかと考えております。
それから、少額募集制度につきましては、5億円から10億円という案もあろうかと思いますけれども、一足飛びにそこを認めていくというのはどうなのかと。今回、基準を5億円に引き上げ、その後、実態を見てから判断するということなど、段階的に今後検討していくというアプローチも考えられるのではないかと考えております。
それから、特定投資家私募制度の見直しについては、これを追加するという施策の方向性について、いろいろと懸念というか、課題も多いと理解しております。投資家保護に留意するという前提で、裾野を広げようとする試みの方向性については賛同いたすところですけれども、こうした課題も十分に検討した上で慎重に御判断いただくのがよろしいかと思います。
なお、規制改革実施計画の中では、少人数私募における勧誘者基準から取得者基準への見直しの検討ですとか、あるいは継続開示要件の見直しといった論点もあろうかと思います。この点について、今後、この場で検討される予定があるのかという点については確認させていただきたいと思っております。
それから、株式報酬制度の見直しについては、特段コメントはございません。事務局の方向性に賛同いたしております。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。1点、御質問があったと思います。勧誘基準から取得者基準への見直し等の今後の予定について、もし既にお考えがあれば御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
【小長谷企業開示課長】
ありがとうございます。御指摘いただきましたとおり、規制改革実施計画の中で、継続開示要件の見直しですとか、あと、勧誘者基準を取得者基準に見直すことなども記載されておりますけれども、少なくとも、今回のワーキンググループでは、そのトピックについては扱うことは予定していないところでございます。
【神作座長】
よろしいでしょうか。
それでは、続きまして、飯田委員、御発言ください。
【飯田委員】
飯田です。まず、提出免除基準の5億円についてですが、賛成です。事務局資料の理由も含めて賛成です。水準については、スタートアップの業種ないしは分野によっても、資金のニーズに違いはあり得るのかもしれませんけれども、法制度としては一律の基準とせざるを得ないと思います。また、水準を考えるに当たっては、国際比較の視点も重要であり、資料12ページからすれば、3つの法域だけですけれども、現状の1億円基準は低過ぎると思われますし、5億円ではなく、10億円基準とすることもあり得ると思います。
脇道にそれますけれども、資料12ページのアメリカのことについては、ルール504のことが書かれていると思うんですけれども、これは記載のとおり、連邦法のセーフハーバーではあるんですけれども、なお、州法のブルースカイローはなお適用されるはずだろうと思います。
それから、有価証券通知書を公衆縦覧とするということについてですが、これも理由も含めて事務局案に賛成です。
なお、既に黒沼先生からも指摘があったかもしれませんが、ちょっと違うかもしれませんが、投資家保護としては、計算書類の虚偽記載等の場合については、会社法429条2項によって、取締役等の損害賠償責任もございますから、この制度も相まってこの有価証券通知書を使うということは、それなりに投資家の保護の制度として期待はできるのではないかと思いました。
それから、少額募集制度の見直しについて、提出免除基準を5億円とするのであれば、事務局案の案②に賛成したいと思います。なぜなら、先ほど申し上げたとおり、そもそも基準を10億円とすることすらあり得ると考えられるからであります。ただ、IPOをするという場面については、特別に例外をするとか、そういうこともあり得るかなと思いました。
それから、特定投資家私募の関係ですが、①の施策を取ることに反対はしないという感触、意見です。それをすることで、どれほど、そもそも裾野の拡大効果が見込めるのかというのが必ずしも明らかではないように思いました。
また、今後の中長期的な課題として、プロ向け市場に関しては、J-Adviserが存在することですとか、そもそも公開買付け規制の対象になっているということなどもありますから、少数株主保護の制度なども一定数あるということも一応言えるわけですから、一定の投資家保護が期待できるので、プロ向け市場の関係はもう少し規制緩和して、参加者を増やして、実際に取引が行われる流通市場になるようにするという方策も検討課題としてもいいのではないかなと思いました。そういう視点からしますと、特定投資家の要件を既に満たしているけれども、移行手続を取っていないというだけの投資家が新たに今回、プロ向け市場に参加できるようになるということは差し支えないように思います。
なお、行為規制と開示規制とでプロの概念を分けるということにしたほうがいいと思います。また、そういうことになると、既に金商法上、様々なプロという概念が存在していて錯綜しておるわけでございますけれども、仮に改正するのであれば、用語法も含めて分かりやすい条文づくりを期待したいと思います。
それから、株式報酬ですけれども、これも募集に該当しないという整理をすることについて、理由も含めて事務局案に賛成です。理論的には、株式報酬については、実質的な出損、お金を出すというところが伴わないという場面ももちろんあるわけですから、取得勧誘がないという整理もあり得ると思っておりますが、しかし、個別具体的な事情によってはそうでない場面もあるということになりますでしょうから、今申し上げたような方向で整理してしまうと、勧誘に当たるかどうかの予測可能性が必ずしも確保できないという課題を抱えてしまうのだろうと思います。ですから、事務局の提案という形で提案されているように、募集から除外されることを明確化するということにメリットがありますし、株式報酬の対象者が自ら情報入手できるものであるわけですから、募集に当たらないという制度にすることは十分に合理性があるように思いました。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、清原委員、どうぞ御発言ください。
【清原委員】
発言の機会をありがとうございます。清原です。
まず、届出基準の引上げのところですけれども、その5億円か10億円かというところに関して、現在インフレ傾向にあること、それからあとはやはり、今、グロース市場改革が証でも進んでいること、上場するに当たっての規模がかなり小さい会社が上場していて、そのため、内部管理体制も実質上、十分でない会社が少なくないのではないかという問題意識を持っていることからすると、以前あった閾値の5億円に戻すというよりは、むしろ10億円としてもいいぐらいではないかと考えているところですが、ただ、いきなりこれだけ大きく引き上げることに対して、やはり慎重になったほうがいいかなという考えを持っております。
それらを総合的に考えると、まず届出基準については5億円としたうえで、5億円から10億円の間について少額募集の届出という制度を残すという、そういった形として、フルブローンでの届出書の提出については10億円としつつ、5から10億円の間について、少額募集とする、というのがよいのではないか。その少額募集についての届出書の記載は、先般、簡易化が図られており、そういった形で運用状況を見るべきということもあるので、廃止をしてしまうというほど、この制度が有用性が乏しいというところまではまだ明確でないと思いますので、まずそこは残すと。そして、インフレ傾向、それから、諸外国の水準とのバランスを見ながら、また、政策的にもスタートアップ企業の規模を大きくして上場していく方向へ進めていく。上場前に資金調達ができる、届出書といった、非常に重要ではあるものだけれども、負担が重いものに対するコストや労力のところについて、スタートアップ企業は成長資金にまず重点的に割り振ってやれるというようなことを含めて考えて、10億円から、そして5億円から10億円については少額募集という形でいくことではどうかと考えるところであります。
次の潜在的特定投資家の制度のところは、ほかの委員の御意見にありましたように、制度が複雑になるというのも一つ課題があるとは思うのですけど、この考え方というのをよく考えると、移行という手続そのものがあまりうまくいっていないことが、これまでのところを見れば想定されると。ただ、その要件を満たしているかどうか、移行という正式な手続を取らずに判断した上で進めていくことになるという意味でいうと、やはりミスるといいますか、本当にちゃんと要件を満たしているかどうかがはっきりしないときにもやってしまうおそれがあります。記録の残し方をきちっとしないと、本来は私募になっていなかったものも私募と扱ってしまうということが起こり得るので、そのことを考えると、進め方を非常に慎重にしなければいけないし、仮に私募でなかったと分かったときに、何らかの形で救われるような、要するに、手続的な細かなミスが全体を大きくひっくり返すような大きな結果につながらないような、その意味でのセーフハーバーという発想を持ったルールづくりというものもあってよいのではないかと考えます。手続的に明確な形式としてのステップである移行というものをなくすという私募を認めるのであれば、そこについての考え方を整理するのも重要ではないかなということで、今回、ここですぐということはないんですが、あわせて検討していく必要がある、という形で意見を述べさせていただきたいと思います。
それから、特定投資家私募という制度を振り返ってみると、実は金商業者が関与している。金商業者に委託した形でのものについて、始まっている制度で、これは特定投資家は移行というステップがあるから当然そうなってきたのだと思いますけれども、もし移行を外した形で、この特定投資家私募を潜在的特定投資家に対する私募というものを認めていくのであれば、ベンチャーというのはそもそも証券会社を使わないで直接資金調達することが多いということを考えると、少人数私募でほとんどやってきたということはあるんでしょうけれども、もし特定投資家私募というものもベンチャーの実務から利用可能性を高めるということを考えるとすれば、証券会社が関与しない形の特定投資家私募というのも概念的にはあっていいかなといえそうです。ただし、そこは、先ほど申し上げたように、やはりミスをしてしまうリスクというものがどうしても残るので、そこまで踏み込むのは恐らく時期尚早であって、まずは証券会社が関与する形で、特定投資家私募を考えて、それが本当にきっちりと機能するか。それはこれからの日証協様のほうでのルールづくりというものがどううまく機能するかということにかかるのですが、そこをにらみつつではあるんですが、見直しの導入ということについては、私は賛成したいなと考えております。
他方、先ほど申し上げたベンチャーの実務ということから考えると、やはり本来は証券会社が関与しない形での資金調達というものがメインになってくると。そうすると、ここが広がったとしても、ベンチャーのほうにはあまりメリットといいますか、直接影響がないとすると、少人数私募というものがやりやすいようになっていくということを併せて、今回、事務局案の中に入っているわけではないんですけれども、少人数私募をどううまく運用できるようにするかというところを考えるのはどうか。そうすると、先ほど来お話が出ている取得者への見直しの点について考えると、これはかなり大きなステップになるので、そこまで今回踏み込むのは難しいとしても、どのあたりから届出書の提出が必要になる行為なのか、もしくは、このぐらいであれば届出書を出さなくてもできる行為というところを明確化するという意味での、勧誘の概念についての考え方の整理ということが示されるとすると非常に実務には有用ではないかなと思われます。そもそも勧誘というのは、投資するということに向けられた、やはりそこに近い行為を勧誘として届出書の提出が必要になるというところが重要で、ベンチャーというのは、まず自社のビジネスを理解してもらうという形でのピッチということが第一歩としてあるのですが、それが勧誘に当たるというのは本来おかしいのではないかと。やはり勧誘というのは取得に向けられた、かなり具体性を持ったやり取りや働きかけがあって投資者保護が必要ということから勧誘と考えることができるはずなので、ここまででとどめておけば、勧誘、すなわちすぐに取得につながるような話でないというところを明らかにする。ベンチャーのピッチというのは、会社を知ってもらった後、接触できるようにするまでという段階のものというのはあるのではないかと。その意味で、勧誘というものについて、ここまでは安全にすることができる、すなわちセーフハーバーと言っていいかもしれませんが、安全にできる範囲というものがどの範囲なのか、ということがクリアになることが仮にあれば、それはベンチャーのピッチが、まずはたくさんの人に自分たちの会社を知ってもらうという意味でのアウトリーチがやりやすくなるという意味で、すごくメリットがあるのではないかと考えられます。
したがって、そのベンチャーの実務と、金商法で求めている投資家保護で取得につながる勧誘行為というのはどのあたりからか、という点について少し精査した形で、何らかの運用のガイドラインなどがもし設定することができれば、それはプラスになるのではないかと考えるところであります。
次に、最後のところの株式報酬の制度の見直しについては、案①②それぞれ意味はあるところで、悩ましいところであるんですけど、現段階では案②で、募集に該当しないと言い切ってしまうというところに対しては若干躊躇があるので、案①の免除されるということでまず行くということがよいのかなというふうに現段階では考えているところであります。
以上になります。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
井口委員、どうぞ御発言ください。
【井口委員】
ありがとうございます。今日はオンラインで失礼させていただきます。
まず、関係者あるいは事務局の御説明、ありがとうございました。私も皆さん同様、最終ページの御議論いただきたい事項についてコメントいたしますが、最後の株式報酬制度の見直しにつきましては、以前、意見させていただきましたように、その考え方につき賛同いたしますので、残りの2つの点についてコメントさせていただきます。
まず、全般的なところでは、経済成長の観点から、既に関係者の方から御説明がありましたように、非上場企業あるいはスタートアップ企業に成長資金を提供する制度を整えるということは非常に重要と思います。また、上場企業を中心とする資本市場から見ますと、申し上げた資金調達の課題に加え、多くの非上場企業等の経営者の目的が、早期に上場して資金を回収することとなっておりまして、従って、機関投資家が投資できず、モニタリングできない規模の企業の増加を招いているということもあると思います。そして、このことは資本市場における一般投資家の投資家保護の観点でも大きな課題になっていると思います。
この意味で、本日、上げていただいている、非上場のステージで、いかに企業に成長するための資金を提供するのかという施策は、経済成長という観点に加えて、資本市場の健全性の観点でもすごく重要と考えております。
従って、今回、御提案いただいている施策は、詳細なルールづくりのところはあるのかもしれませんが、非上場企業等への資金供給の円滑化に資するものであると理解しておりますので、原則、賛成いたします。
御議論いただきたい事項のところに戻りますが、最初の免除基準の引上げにつきましては、まず詳細なヒアリングと分析、ありがとうございました。8ページに記載していただいておりますが、スタートアップ企業の持続的な成長においては、資金が容易に集まるレイターステージの企業よりも、むしろ資金集めが難しいアーリーステージへの企業への円滑な資金供給ということが課題と思っておりまして、分析いただいた結果から、今回の施策が、アーリーステージの企業への資金供給において大きな効力を発揮すると理解できましたので、この基準の引上げについて賛同いたします。また、多くの委員の方がおっしゃっていますように、11ページにあります投資家保護策、これも必要と考えております。
2つ目の特定投資家私募制度につきましては、私も委員をさせていただいておりましたが、2021年の市場制度ワーキンググループでの議論を経て、ちょうど資料20ページに詳細に御記載がある、成長資金の供給促進の観点で特定投資家の要件の明確化が行われたと理解しております。このワーキンググループの報告書内に記載がありますが、この特定投資家の制度が適切に運営されるように、特定投資家となり得る投資家の範囲を適切に拡大する観点から、特定投資家に移行可能な個人の要件を新たに勘案できるようにすることが適当と考えられるといった、という趣旨のことが報告書に記載されております。今回の措置は、こういったこれまでの議論に沿った方向であると思っています。つまり、特定投資家の定義の拡大ではないかもしれませんが、資料に御記載ありますように、現状でもまだ十分に特定投資家が活用されていないことが認識される中、投資家保護も考慮に入れながら、さらなる改善の方向性を探って、非上場企業への成長資金供給促進を図るという施策であると理解しています。先ほど申し上げましたように、これまでの施策の方向性と連続性があるということ、それと、非上場企業への成長資金提供において非常に重要な施策であるということで賛同いたしたく思います。
簡単ではありますが、以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
岩井委員、御発言ください。
【岩井委員】
岩井です。御説明含め、どうもありがとうございます。オンラインで失礼いたしますが、私からは、まず有価証券届出書の提出免除基準について3点、それから、最後の株式報酬制度の見直しについて1点、簡単にコメントさせていただきたいと思います。
まず有価証券届出書の提出免除基準の検討について、引上げ後の金額水準を5億円に引き上げるという事務局案に、基本的に異論はございません。事務局にて実施していただきました引き上げた場合の影響調査、1998年の改正前の水準に戻るということ、及び急激に引き上げることによるスタートアップ企業への資金供給の拡大と投資家保護のバランスを考慮いたしますと、原案に一定の妥当性があると考えております。
一方、国際的な比較という観点では、5億円でもまだ低いなと感じられる感も否めず、また、インフレや物価上昇等の状況変化もありますので、金額をさらに引き上げるということについて、継続検討課題として明確に位置づけていただきたいと思います。
それから次に、投資家保護策のあり方について、こちらも事務局案の基本的な方向性に異論はございません。なお、企業側の観点からは、対応する類型が増えるということで混乱が生じるとか、各社の実務に落とし込んだときに意図しない負担を生むといったことがないように、実際の影響には留意して具体化を進めていただきたいと思います。
それから、3点目でありますが、少額募集制度のあり方についてということでございます。本件については、私は案②、すなわち、利用可能な募集等の範囲を5億円以上10億円未満の募集等に見直した上で存置すべきだと考えます。提出免除基準5億円以上とすることを前提にいたしますと、国際的に見ると免除基準が低いということや、スタートアップや成長企業への投資をさらに促進するという観点からは、簡易な様式による有価証券届出書の届出を可能にしたほうが望ましいと考えておりますので、見直しをした上で存置するということを支持したいと思います。
最後に、株式報酬に係る開示制度につきましても、事務局案に特段の異論はございません。有価証券届出書の提出を不要とする方法について、2通り提示いただいておりますが、株式報酬やストックオプションの付与はそもそも有価証券の募集とすることに違和感があるということを含めて、案②のほうがよろしいかと考えてございます。
私からは以上でございます。
【神作座長】
ありがとうございます。
続きまして、上田委員、どうぞ御発言ください。
【上田委員】
上田でございます。本日はオンラインから失礼いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、御説明ありがとうございました。そしてオブザーバーの皆様からの御説明も、実務の状況でありますとか、あるいは課題感、あるいは期待みたいなものも大変よく分かりました。こちらも参考にさせていただきまして、ありがとうございました。
私も28ページの御議論いただきたい事項に沿って3つの点についてコメントさせてください。
まず1点目の有価証券届出制度の提出免除基準の検討でございます。 大きな方向性といたしまして、スタートアップの資金調達を促進するという観点、あるいはスタートアップ協会からも御説明があった募集に関わる企図しないようなリスクの部分といったお話を伺っていますと、有価証券届出書の提出免除基準の引上げという方向性には賛成するものでございます。ただ、引き上げられる幅については、資金調達の実効性を確保しながらも、他方で、投資家保護というところのバランスも求められるのではないでしょうか。その点で、11ページに記載がありましたように、有価証券通知書及び既に現に作成されている会社法上の事業報告や計算書類を添付して、これをEDINET経由で公衆縦覧に供するといった点についても合理的であろうと思いますので、賛同いたします。
金額についてですが、これはほかの委員の皆様からもございましたけれども、5億円という基準は、もともと98年に5億円だったというところで、今の2025年に5億円という金額の合理性はどうなのかなとは思いつつ、これに反対するものではありません。ただ、いただいたデータや諸外国における金額、あるいは、本日御説明いただいた点を踏まえますと、5億円よりも高い10億円という選択肢についても検討する余地はあると考えました。仮に5億円にするとしたらですけれども、そうすると5億円から10億円の間というレンジについても同様の資金調達の効率性というニーズはあるかと思いますので、そうであるとすれば、10億円までのレンジについては、少額募集制度を残すという意味はあろうかと思っています。
ただし、現状で、この少額募集制度、あまり活用されていない制度ということでもありました。そういった制度を残し続けるということの意義もどうなのか、複雑になるのではないのかなというところも考えますと、ここについては、一旦、将来的な検証を置くといったところの考え方でもよろしいのかと思います。曖昧な表現ですみません。実態のニーズと適切な制度設計といったところで、複数の選択肢があると思いました。
2点目の特定投資家私募の話でございますが、この点、スタートアップの資金調達という観点から投資家層を拡大したいという意図については十分理解しているところです。他方、ちょっと懸念していますのが、昨今、グロース銘柄においてすら課題が多く、実際に問題になっているケースも出てきているわけです。こういう場合は、例えばゲートキーパーとしての証券会社はしっかり見ているのかもしれませんが、一方で、監査法人についても大手ではなく中小が担当しているとか、そういったことを考えますと、相応にリスクが高い銘柄というのも入ってきていると思います。
そうすると、なおさらですが、J-Shipsの銘柄については、リスクの高さ、あるいは流動性の低さを踏まえると、投資家保護という視点が重要なのではないかと思います。不用意に、ここに資金が入らないから投資家層を拡大するという議論よりも、先に、まずJ-Ships制度の活性化については、スタートアップの出口をつくるということは大事だとは思うものの、マーケットの信頼性という観点からすれば、投資家保護のために、投資先として信頼性の確保を議論することが先なのではないかなと感じたところでございます。
そういった点を含めて、プロ投資家、特定投資家の裾野の拡大につきましては、私もデータがないので、判断ができません。なぜ現状ではこれが使われていないのかといったところの検証というものを教えていただきたいなと思ったところです。つまり、現にどの程度プロ投資家への移行が進んでいるのか、対象となる投資家層の属性はどうかなど。仮に、投資家層に高齢者が多いとすれば、高齢者の方にこのJ-Shipsへの投資を促していくというのは果たしてどういうものなのかというところです。そして、プロ投資家への移行が進んでいないということであるとすれば、それは制度の認知が十分ではないからか。つまり、精度を知らないから移行しないのか。あるいは、精度は分かってはいるけれども、例えば適合性原則等を含めて、投資家保護を享受したいという点で、あえて積極的に選択していないのかといった点等についても、少し数字も含めて見せていただけると、実際のニーズ等を踏まえてより具体的に検証できるのかと思いました。
もし投資家保護を求める投資家が多いとか、あるいはターゲットとなる投資家層に高齢者が多いということであれば、潜在的プロ投資家への拡大を進めていく必要はあるのか、投資家側のニーズに合致しているのかなというところは少し疑問に思ったところでございます。
というところで、現状、直ちに反対するというものでもないのですけれども、いただいた御説明だけでは、若干、潜在的プロ投資家まで拡大するというところについて材料が少ないなというところも感じましたので、この辺、実態の数字等あれば納得感を持って議論ができるかなと思ったところです。
最後、3点目、株式報酬に関わるところですが、これは賛同いたします。日本の非上場会社とか、上場していない外国子会社の場合についても上場株券と同様の扱いをするというところは、整合的で合理性があると感じました。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
武井委員、お願いいたします。
【武井委員】
すみません。お疲れさまです。どれもとても大切な改正で、最初に4人の方からプレゼンがありまして、どのプレゼンもすばらしいと思っておうかがいしておりました。特に言うまでもないことですけれども、スタートアップ、育成、ベンチャー、新規産業の創出、あと、地方創生。これらはこの10年前から重要な課題で、しかも、今、本当に喫緊の課題、喫緊の経済成長戦略の課題だと思います。それに関して、金融庁さんでできることを最大限一生懸命されようとしているものであって、まさにこれはこの内容で、本当にいろいろなことを考えて、しかも、いろいろなバランスを取っているので、ぜひこれは全面的に前に進めていただきたいと思いますし、これもやっていくべきタイミングだと思うので、ぜひともお願いしたいと思います。
1つ目の5億円の話に賛成です。ただ、同時に、ほかの方もおっしゃいましたけれども、2つ目の少額募集ですね。これを残すということをもうパッケージで一緒にやるという意味で、5億円のほうに賛成で、かつ、少額募集も残すということだと思います。少額募集に関して、今、使われているか使われていないかという点は、むしろ、今回、いろいろなルールも変わる中で前提も変わるので、今、これまで使われていくということはあまり関係ないと私は思います。あと、グロース市場の5億円、10億円の上場なども、今ここは抜本的に見直されているところで、これまで過去5年、10年、グロースの比較というよりも、今回、新しい制度の下で新しいバランスを考えるので、いずれにしても、少額募集制度を廃止するという理由ではないと思います。あと、いろいろな選択肢をやっていかないといけないので、「やってもどうなるか分からないよねでやらない」というのはやめたほうがいいと思います。
あと、ここの話もそうでしょうし、あと、潜在的特定投資家のところもそうなのですけれども、金額基準を含めて法律にいろいろ細かく書き過ぎているのではないかなという気がしています。先ほどインフレだの、円安だの、いろいろな話もありまして、本当に今、経済の状況はすごく大きく動いていて、スピーディーにいろいろルールを考えていくというのがとても大事なタイミングです。従来からの何でもかんでも一番高いレベルの法律に書くべきなのかということから含めて、今回、その点も抜本的に考えていただけましたらと思います。そういう意味で、機動的にどんどん直していけるということをぜひともできるような、可能な範囲で、法改正にしていただければなと思っております。
あと3つ目の潜在的特定投資家について、これも賛成です。これはまさに行為規制が及んでいればいいと思いますし、これも本当に現状から変える以上、移行に伴ういろいろな現場の対応は出てきますけれども、これもやはり前に進めるべき話なので、分けて行為規制をかけるという、ある意味、ジーニアスなアイデアでなされるということは本当にすばらしいので、これもぜひやっていただきたいと思います。
あと最後、株式報酬に関しても、これは案②といいますか、募集から外すのに賛成です。これはそもそも海外でも、取締役、従業員の交付はオファリングでないという国も多いので、別に日本だけ変なことはしていないし、もうここはばっさり募集から抜くということのほうがいいと思います。案②に賛成いたします。
以上です。ぜひとも改正を頑張っていただければと思います。よろしくお願いします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
高村委員、御発言いただけますでしょうか。
【高村委員】
ありがとうございます。この議論について、特に、スタートアップ、成長企業等への投資をさらに促進するという観点から幾つか御提案をいただいているかと思います。
私から2点だけ発言させていただこうと思います。
一つは、有価証券届出書の提出免除基準の検討について、先立つワーキングの議論を踏まえて、調査分析などを進めていただいて、今回、御提示をいただいているかと思います。やはり先立つワーキングの議論の中でも一番大きな関心事は、投資者の保護という点であったと思います。この点については、スライドの11に御提示をいただいていますように、有価証券通知書を活用して、そこに会社法上の事業報告あるいは計算書類を追加する。さらに、監査報告書がある場合にはそれらの添付を求めるという形で、一定の対応をしていただいていると思っております。本日の議論の中でも出ておりましたけれども、実際の運用、どういう形でなっていくかということも見ながら、随時見直しは必要かと思いますけれども、基本的な方向性として賛成したいと思っております。
もう1点は、特定投資家私募制度の見直しの方向性についてであります。御提示いただいている、特に潜在的特定投資家にも拡大をしていく。これは特定投資家の要件を満たすものの移行手続を行っていないものを含めていくということについて、一つの見直しの方向性としては理解をいたします。ただ、これまでも委員の先生方から御指摘ございましたけれども、この効果、あるいは、そもそもの移行の仕組みが果たして十分なのかどうかという点も含めて、慎重な制度設計を検討いただく必要があるのではないかと思っております。
いずれにしても、投資の拡大、呼び込み、資金供給をどういうふうに拡大していくかという点等と、投資家保護をどう両立させるかという点で御苦労をされての御提案だと思いますけれども、この点については、慎重な検討、制度設計の検討をお願いしたいと思います。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
本日御参加の委員の方、全員から御意見を賜ることができました。誠にありがとうございました。
オブザーバーの方々でもし御意見がございましたら、お一人2分以内で御発言をお願いできればと存じますけれども、オブザーバーの方で御発言の御希望ございますか。
それでは、日本経済団体連合会の魚住さん、よろしくお願いいたします。
【日本経済団体連合会】
ありがとうございます。経団連の魚住です。本日、プレゼンテーションいただいた皆様、御説明ありがとうございました。伺っておりまして、スタートアップの5か年計画というものが政府としても閣議決定をいただいていると思います。こちらで裾野を10倍、質も10倍、ユニコーン10倍という目標が設定されている中で、これをどう達成していくのか。こういったレールに今回の制度改正というものも乗っていく必要があるであろうと思っております。
そういった中で、今回の有価証券届出書の免除基準の金額水準を考えますと、従来、1億円とされたときの目安として、4ページ目の記載もございますけど、米国において100万ドル未満ということから1億円という数字を判断されたということが御説明にございます。一方で、12ページ目に、今の各国の水準がございまして、米国で1,000万ドルということで10倍に上がっていると。一方、ヨーロッパも、12のところでございますけれども、ユーロの基準が1,200万ユーロ、これは日本円に換算いたしますと、今、20億円程度かと思います。そういった中で、日本がどういった水準に持っていくべきなのかということを考えますと、決して10億円が突飛な数字ではないだろうと思います。ここで注意すべきは投資家保護というところだと思いますけれども、8ページに投資家の現状の属性が、記載がございました。属性で、主にVCであるとかCVC、あるいはエンジェルといった方々が属性としては分類されるのかと思います。こういった方々は知識も経験も十分におありの方々でありますので、そういった方々が5億円でないと保護できない問題なのか。10億円でもそこは問題がないのか。そういったところの御意見もしっかり検証をいただく必要があるのではないかと、そういったところも参考にしながら、金額水準というところは考えていただく必要があるのかなと思っております。
もう一つ、これまでのディスクロージャーワーキングの資料の中で、2025年の規制改革実施計画、こちらのほうで少額募集については20億円ということも御紹介があったかと思いますので、逆に言うと、少額募集の金額がさらに上積みされた水準というのが考えとしてはあったのではないかというところも踏まえて御検討いただければと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、経済産業省の松田さん、どうぞ御発言ください。
【経済産業省】
すみません、スタートアップの支援なり、地域経済の活性化の観点での提出免除基準について、簡単にコメントさせていただければと思います。
今日の会議でも、日商さん、ニュービジネス協議会からは10億円という数字があったかと思います。あと、スタートアップ協会の方から5億円から10億円という言及もあられたと思います。
12ページの国際的比較も、これはどこを取るか大変悩ましいところだとは思いますけれども、米国が1,000万ドルで、独仏が800万ユーロで、割と上げていくというフェーズにもあるのかなと思っていまして、10億円という数字ももう少し、十分検討できるのではないかということと、ただ、14ページで、金融庁さんがお示しされた少額募集制度について、一つのグラデーションをつくるような制度設計で御提案されているのかなと思ってございまして、これも一つの段階をつくっていくための知恵なのかなと思ってお聞きしております。
ただ、その際、開示コストがどうしても高いので徐々に金額を上げていくというところもあると思いますので、本当に開示コストがどれぐらいかかっていて、事業者の方にとって本当にこれが、募集したんだけど、かなり手数料で取られて、ほとんど得られないみたいなことがないような、開示コストと、もちろん投資家保護等とのバランスももちろんありますけども、実際、これがワークするのかというところを、少し数字も見ながらぜひ検証していく必要はあるのかなと思ってございます。
すみません、オブザーバーの立場で恐縮ですけれども、発言させていただきました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、日本商工会議所の山内さん、どうぞ御発言ください。
【日本商工会議所】
ありがとうございます。私は今も実際に企業支援をしており、地域の活性化や投資、秩序ある形での投資ということですが、商工会議所としては地方の投資を拡大していくというところに強い関心があります。そのため、先ほどの免除基準につきまして、10億円への引上げをお願いしたわけですが、私どもの実感としても、5億円から10億円、15億円のラインの中間領域といいましょうか、ここのところの投資が非常に日本としては弱い。資金供給のところも弱いという感じがしています。ある意味、ミドルのところだと思いますが、そういった認識も持っておりまして、少額募集のところについて、先ほど御説明できませんでしたので申し上げますと、ここにつきまして活用されていないのは、今、少しありましたけれども、有価証券報告書の提出義務や監査が続く、開示のコストが高いという課題はかねてより指摘されているわけでもありまして、ここを大幅になくすとか大幅に簡素化をするというようなことをお願いしたいと存じます。しかしながら、信頼性は大事ですので、会計参与やコンピレーションのようなものを使って担保しながら、ここをしっかりとやっていくような形で、いずれにしても、5億円、10億円、15億円、この辺のラインのところが弱いので、ここをぜひ何らか政策として支援をいただきたい。その中で、開示についても簡素化していただけるということであれば、この少額募集の存置は非常に有効ではないかなと思いますので、御検討いただければありがたいと思うところでございます。
【神作座長】
ありがとうございました。
それでは、続きまして、東京証券取引所の青さん、どうぞ御発言ください。
【東京証券取引所】
東証の青でございます。まずスタートアップに関しましては、数を多くするだけでなくて、相応の規模を持った有力な企業が育つ環境をつくっていくことが重要と考えております。そうした考えのもと、私どももグロース市場の見直しを進めておりますが、その中で、一般向けの上場市場未満の部分の企業が多くなってくるという点も考慮する必要があり、一般向け上場市場の世界ではない部分での、株式の流通や資金調達の円滑化を図っていくことは極めて重要です。そのため、これまでの政策の方向性は十分貫徹する必要があると思われますので、今回の潜在的特定投資家の件に関しまして、効果がないというお言葉もありましたけれども、各論における問題点を解決するというのは大事かと思いますが、基本的には積極的にすそ野拡大を検討していくことが必要ではないかと思うところでございます。また、現状のままではあまり効果がないのではという御意見に関しては否めないかもしれませんが、それについては、潜在的特定投資家に拡大するという見直し以外にも、よりよくしていくための方法をあわせて検討していければと思ってございます。
また、プロ向けの市場と一般投資家向けの市場の使い分け、それから、プロ向け市場とJ-Shipsの使い分け、それについては同じようにバランスを取ってやるべきところと、異なった形でやるべきところがあるかと思いますので、その点は、実際の自主規制も含めてバランスよく検討していければと思うところでございます。
それから、11ページの有価証券届出書提出免除のところで、監査役等または会計監査人による会社法上の監査報告書がある場合には添付を求めるところでございますが、藤本委員からも御指摘ございましたけれども、第三者の立場で監査を行う会計監査人が見ていない書類が法定開示書類に出てくることになりますが、今後、届出書の提出免除基準を5億円、さらには10億円に引き上げて、それ未満の募集等を行う会社が増えてきた場合に、金商法ではなくて会社法における監査制度のあり方が現状のままでよいのかという点で影響が出る可能性もあるかと思いますので、法務省で必要であれば検討ができるように情報連携を適宜行っていただければと思ってございます。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、日本証券業協会の松本さん、御発言ください。
【日本証券業協会】
ありがとうございます。
私からは、特定投資家私募制度の見直しについて、2点申し上げたいと思います。今回、こちらの特定投資家私募制度の見直しにつきましては慎重にという御意見もいただいたところでございます。もし今後、この潜在的特定投資家、特定投資家の制度が創設された場合には、今、日証協のほうでJ-Shipsについても自主規制規則を持ってございますけども、その規則の改正も含めて、自主規制での対応ということもきちんと整備してまいりたいと思っておりますし、その際にはきちんと投資家保護の視点を入れた検討を行っていきたいと考えているところでございます。
2点目でございますが、J-Ships、ここで言う潜在的特定投資家の制度もできればそれも含むと思いますが、それの使われ方についてでございまして、対象となる有価証券が、エクイティのほか、投資信託も対象になってございます。スタートアップ企業ですとか非上場株式の投資といったことからすると、投資信託で分散をしていただくということが、リスクが相対的に低くなるということ、また、投資信託協会さんのほうでも規則改正をしていただいて、非上場株式も組み入れやすくなったというところがございます。
そういった投資信託を、ここで言う潜在的特定投資家の方が取得するということは当然あり得ると思いますし、そういった投資信託を購入される方が、特定投資家まで移行するのかというところもあろうかと思いますので、使われ方としては、そういう使われ方もあるのかなというところを想定しているところでございます。
私から以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、スタートアップ協会の砂川さん、どうぞ御発言ください。
【一般社団法人スタートアップ協会】
ありがとうございます。1点だけ、実効性についてぜひお話ができればと思っておりまして、清原委員ですとか松田さんからも御指摘あったとおり、我々、スタートアップを見ていると、なぜ今、少人数私募が使われているのかというところを見ますと、相対でやって、コストがかからないからなんですね。仲介で入っていただくことを前提にしている今の議論、制度設計上は正しく動くのかもしれないんですけども、実際それを仲介してくれる人がいるのか。仲介者の経済合理性が成立するのか。その人たちがこなれてこないとそういったものが使われないと。正直、スタートアップ側で1回しかやらないことに対して、自分たちで学んで、それを実行するという能力がないので、そうなってくると必ず伴走者が必要になってきます。その伴走者のコストを払ってでも、この制度を使って実行できるのかというところ、これが多分、ものすごく大きな実効性のポイントになってくるのかなと思っていますので、その辺りがちゃんと着地できるような形につくっていただければと思っております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、日本ニュービジネス協議会連合会の永瀬さん、どうぞ御発言ください。
【公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会】
ありがとうございます。1点、特定投資家の幅を広げるというところをぜひ推進いただきたいなと思っているところでございます。私、新潟の立場でも、非常に地域には投資家候補になる方が結構いらっしゃいまして、我々ファンドにも御出資いただいている方は結構多いです。ただ、この特定投資家制度というものをそもそも知らないということとか、あと、スタートアップとの接点がないという、こういうことが地方ではとてもある現状でございます。
一方で、TOKYO PRO Marketを皮切りに、今、福岡でもプロマーケット市場ができて、近く北海道でもプロマーケット市場ができるという、こんな現状の中、スタートアップ企業が成長する一つのゲートウエーとしてプロマーケット市場が大きくなっていく中、この特定投資家の制度をどんどん広げていただいて、現場から盛り上げるような施策をぜひとも取っていただければと思っております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、日本公認会計士協会の吉田さん、お願いいたします。
【日本公認会計士協会】
発言の機会をいただき、ありがとうございます。日本公認会計士協会の吉田でございます。
有価証券届出書の免除基準のところですけれども、スタートアップの資金調達を活性化しなければいけないという政策目的があるという一方で、資料の中にもありますけども、投資家保護という観点がありますので、この辺のバランスを踏まえて様々な御意見があるところかなと思っております。
本日の資料でいきますと、11ページのところに、投資者保護策として、有価証券届出書の提出に代えて現行の有価証券通知書の制度、これを公衆縦覧に付して、さらに添付書類を追加するというところで、会社法上の事業報告や計算書類、さらにこれは監査報告書がある場合には、これらの添付も求めるということですけれども、これは監査報告書がある場合にはとなっていますので、会計監査人設置会社でない場合には、会計監査人の監査報告書が付されないというケースも想定されているのかなと思っています。そうしますと、計算書類が公衆縦覧に付されても、その信頼性の水準に少しばらつきが出てしまうような辺りも危惧されると思っておりまして、これを一つ課題として認識する必要があるかと思っております。
本日御議論の中でも、金商法上の罰則の話であったり、会社法上の損害賠償責任の話などもありましたけれども、御承知のとおり、会社法上の計算書類は、会計監査人設置会社でない場合には、監査役様が監査をするという立てつけになっているかと思いますけども、監査役の方の責任や御負担といった辺りも含めて、信頼性の水準というところについては検討課題になっていくのかなと考えているところでございます。
もう一つ、事務局の方から御説明をいただいた、規制改革実施計画の中に記載のあります少人数私募の人数要件の話であったり、あとは継続開示の要件の話ですね。このワーキンググループの論点とはされないという御説明があったかと思いますけれども、私どもとしましても、実務の課題として認識しているところでございます。この場でなくて構わないと思っておりますけれども、ぜひその辺りも見直しを進めていただければと考えているところでございます。
私どもからは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、関西経済連合会の中島さん、御発言お願いいたします。
【関西経済連合会】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私からも御議論いただきたい事項に沿って、幾つかコメントさせていただきます。
有価証券届出書の提出免除基準につきましては、6ページにお示しいただいているように、多くの企業の資金調達ニーズを満たす観点から、10億円への引上げが妥当ではないかと考えております。これは12ページに示していただいておりますとおり、米国や欧州との比較においても過大な金額でなく、また、スタートアップへの資金供給の拡大という本件検討の目的に合致しているものと考えます。また、少額募集制度につきましては、案②を支持いたします。ただし、その際には、有価証券届出書の提出免除基準を10億円に引き上げ、少額募集制度は金額を引き上げる等、提出免除基準と少額募集制度の平仄を取った上で引き上げることが望ましいものと考えます。
なお、少額免除基準制度は、内閣府の規制改革実施計画においても、例えば20億円といった例示がなされておりますので、提出免除基準を10億円とし、10億円から20億円の範囲で少額募集制度を維持するといった考え方もあるかと思います。
次に、特定投資家私募の勧誘の相手方の範囲を潜在的特定投資家に拡大するとの方向性については、賛同いたします。ただし、潜在的特定投資家が特定投資家の要件を満たしていることをどのように確認するのかであるとか、例えば20ページに記載されているM&A、IPOの業務において中核的な役割を担うものは、具体的には何を指すということなどを明確にしておくべき点が幾つかあるものと思います。
また、少し論点が異なりますけれども、18ページに記載されているように、特定投資家の裾野が狭いことがJ-Shipsと制度の利用件数が少ない要因であるならば、特定投資家の要件を緩和することも考えられるのではないかと思います。
最後に、株式報酬制度の見直しにつきましては、24ページに記載の①、②とも、企業の実務に及ぼす効果は変わらないことから、法的な整理が行いやすいほうで御検討いただくとよろしいかと考えます。
なお、現在、上場企業においては有価証券届出書の提出を免除する特例措置となっているため、今回、案②を取るのであれば、上場企業においても同様に平仄を合わせていただくよう、念のため申し上げます。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
オブザーバーの方々で、ほかに御発言の御希望ございますか。よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。まだ多少時間が残っておりますので、もし本日2回目の御発言の御希望がございましたら、ご発言ください。清原委員、どうぞ。
【清原委員】
ありがとうございます。2回目になりまして、失礼します。
投資家保護の関係で、11ページのところですけれども、先ほど来お話がある通知書の添付書類としての事業報告、計算書類のほか、監査報告書に言及があるところですが、金商法の届出書が出されるとすると、財務諸表の監査というのは当然必須になってくる。その前の段階で、開示の信頼性をどう担保するかといえば、それは金商法よりむしろ会社法の規律が当然あるわけで、そこで監査役の、もしくは監査役会の監査報告書も添付がないというような場合を本当に想定して、1億円以上5億円未満の募集の通知書が認められて添付書類の公衆縦覧がなされるというようなことが認められていいのかと。会社法がそもそも想定しているものは、株主保護ということですけれども、投資者保護ということを考える金商法の観点から、やはり少額での募集の通知書の提出には、やはりそういった監査報告を要求して開示の信頼性を確保するべきではないか。財務諸表の信頼、計算書類の信頼性を確保する監査というものがまずあって、それがある場合には利用ができるというような形で、一つ要件を埋め込む。スタートアップが上場に向けて進んでいく中で、やはり監査の重要性ということも意識しながら、上場の準備に進む、こういったことも、広い意味で、制度設計という意味では御検討いただくのにもプラスになるのではないかと思われます。
気になっていますのが、やはり上場前の段階で、監査役自身がどういう役割を果たすかということを経営トップがしっかり考えて、もしくは株主もそれをしっかり考えてということが、そこはスタートアップの場合であっても、事業だけではなくて、やはり株主保護、それから、監査という財務諸表の、もしくは計算書類の信頼性確保ということが本当に必要だということを意識した上で上場に向かっていくという、そういうドライブかかるような、インセンティブが働くような制度設計ということも併せて検討していくべきと思われるところがございますので、コメントさせていただきました。
【神作座長】
どうも御指摘ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。御発言の御希望、オンラインも含めてよろしゅうございますか。
それでは、多少まだ時間が残っておりますけれども、この辺りで本日のワーキンググループの討議を終わらせていただきたいと思います。
事務局から、資金調達の状況についての実態調査や、ヒアリング等を踏まえて現状について詳細な御報告をいただき、本日は、届出書の免除基準について、少なくとも委員の皆様の間では、5億円が妥当ではないかという意見が強かったのではないかと思います。少額免除制度をどうするかということについては、委員の間でも意見が分かれましたけれども、5億円から10億円に引き上げた上で存置するという意見が比較的有力だったように思います。少額免除制度が現在あまり使われていないという実態をどのように評価するかという点が意見の分かれ目になったように思われます。潜在的な特定投資家の制度については慎重にという御意見が多かったとは思いますけれども、しかし、方向としては、御提案の方向で進めてはいかがかという意見が大勢であったと思います。
事務局におかれましては、本日いただきました御意見をさらに検討いただき、次回のワーキングにおきましては、これまで皆様方にいただいた御意見を踏まえて、報告書のたたき台を御用意いただき、皆様方に、たたき台を踏まえて御議論をいただいてはいかがかと考えております。
最後に、事務局から何か御発言、御連絡等がございましたらよろしくお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
次回のワーキンググループの日程でございますが、後日改めて事務局から御案内させていただきます。
事務局からは以上でございます。
【神作座長】
それでは、多少時間を余しておりますけれども、本日のワーキンググループはこれにて終了とさせていただきます。大変御多忙のところ、活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。
―― 了 ――
(参考)開催実績
- 問合せ先
-
- 電話受付
受付時間:平日10時00分~17時00分
電話番号:0570-016811(IP電話からは03-5251-6811)
- ウェブサイト受付
(注)金融行政等に関する一般的なご質問等は金融サービス利用者相談室で承ります。
- 電話受付
- 所管
-
企画市場局企業開示課(庁内用3846、3688)


