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金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第6回)議事録
日時:
令和8年9月4日(金曜日)9時30分~12時15分場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室議題:
- (1)開会
- (2)日本IR協議会からの説明
- (3)海外投資家(NBIM)からの説明
- (3)討議
- (4)閉会
出席者:
- 【委員】
-
神作裕之(座長)、飯田秀総、井口譲二、上田亮子、大瀧晃栄、加藤貴仁、清原健、黒沼悦郎、小林いずみ、
阪智香、三瓶裕喜、武井一浩、田代桂子、永沢裕美子、樋爪謙一郎、藤本貴子、松井智予 - 【金融庁】
- 井上企画市場局長、田部審議官、小長谷企業開示課長、中島総務課長、倉持国際会計調整室長
- 【オブザーバー】
-
東京証券取引所、日本監査役協会、日本経済団体連合会、関西経済連合会、日本公認会計士協会、
日本証券業協会、法務省、経済産業省、財務省
議事録:
【神作座長】
定刻より少し早いですけれども、皆様お揃いですので、ただいまより、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ第6回会合を開催いたします。皆様、本日も大変御多忙のところ、御参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。
なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公開させていただく予定でおりますので、よろしくお願いいたします。
会議を始める前に、事務局から留意事項をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
留意事項など御案内させていただく前に、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から御指名いただきます。なお、対面で御参加の委員におかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から御指名いただきます。御発言後は、お名前のプレートを元にお戻しいただくようお願いいたします。
【神作座長】
御説明どうもありがとうございました。
それでは、初めに、会議の公開についてお諮りいたします。金融審議会議事規則第4条にのっとり、ディスクロージャーワーキング・グループの審議について、公開することとしたいと存じますけれども、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【神作座長】
どうもありがとうございます。それでは、御了解をいただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただきます。
それでは、早速、議事に移らせていただきます。本日は、日本IR協議会の佐藤様、ノルウェーの政府年金基金の運営主体でありますNorges Bank Investment Management(NBIM)のジーニー スタンプ様に御参加いただいております。お忙しいところ、御参加いただき、大変ありがとうございます。
本日の会合におきましては、まず、日本IR協議会とNBIMから御説明をいただいた後、質疑応答を行いたいと存じます。
それでは、早速でございますけれども、日本IR協議会の佐藤様から御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
【日本IR協議会】
御紹介ありがとうございます。日本IR協議会の佐藤と申します。
このたびは、このような報告の機会をいただき、誠にありがとうございます。日本IR協議会は、1993年の設立以来、IR担当者・責任者向け研修活動、IR優良企業賞の選定と審査結果のフィードバック、IRに関わる調査の実施などの公表などを通じて日本企業のIR活動のレベルアップ、ひいては企業価値向上、資本市場の活性化に向けまして活動を続けております。2026年3月末時点で会員数は733であり、おかげさまで増加傾向にございます。
私について、簡単に自己紹介申し上げますと、設立の準備から協議会の活動に携わり、首席研究員として企画や運営を続けてきております。マネジメントとしての経験もあり、専務理事も務めさせていただきました。
本日は、この表題、「企業の情報開示をめぐる課題と対応」につきまして、日本IR協議会が実施しているIR活動の実態調査結果と海外企業の事例を軸にお話をさせていただきます。私が報告いたしますけれども、一緒に調査いたしました中央大学商学部教授で、日本IR協議会の客員研究員でもある古賀裕也さんにも同席いただいております。
それでは、2ページ目でございます。本日は、上場企業の情報開示の進展と課題、そして実際に制作・活用されている媒体や資料、情報開示の媒体について、これらを実態調査結果から、そして海外企業の開示事例と特徴、まとめという形で進めてまいります。
まず第1パートの上場企業の情報開示の進展と課題でございます。こちらのワーキング・グループや経産省の企業情報開示のあり方に関する懇談会における議論を参考にして整理いたしますと、進展については、まず有価証券報告書において、コーポレートガバナンス・コードやサステナビリティなどに関する記述情報の開示が拡充されております。また、資本コストや株価を意識した経営への要請を機にして、投資家視点を踏まえて取り組みの情報開示も進んでいます。
任意開示という点では、統合報告書に中長期の企業価値向上ストーリーなどを掲載して、投資家との対話に活用する企業も少なくないといったところが見られます。
他方、課題といたしましては、拡充の結果とも言えますけれども、多岐にわたる開示媒体が存在し、情報量は増えたものの、内容の重複も散見されている、情報開示の量のみならず、その質を高めることが必要である、開示媒体の役割を踏まえ、整理・統合・一体化するといった効率化も検討される、といったことがあげられるかと思います。そのような課題があるなかで、企業が前向きに情報を開示し、投資家が有効活用できることを目指す姿勢が重要であり、開示や対話の基盤をつくっていく際も、それを大切にすべきである、と感じております。本日はそんな考えをベースに報告を進めていきたいと思います。
次の第2パートでは、上場企業におきまして実際に制作・活用されている開示媒体や資料について、「IR活動の実態調査」結果から御報告をさせていただきます。「IR活動の実態調査」というのは、我が国で実施されているIRに関する最大規模の調査であると感じております。調査は、今年で33回目を迎え、調査結果は上場企業のIR活動の推進や改善に活用されるだけでなく、IRの実態把握に欠かせない調査として、学術、学識経験者の方とか、また今回のような場などでも引用されております。
2026年は、全ての上場会社を審査対象としまして、2026年2月9日から3月25日まで実施、948社から回答を得ました。そのうちIR活動を実施する企業は917社ございまして、この企業数を母数として、多様な活動がどのように進んでいるかという割合を算出しております。
2026年については、5点ほど特徴を挙げております。いずれも積極的にIRを取り組んでいる企業が多いことを表していると思います。実態調査の設問は、毎年尋ねるもの、1年おきに尋ねるもの、ある年に限って尋ねるものに分かれております。この理由は、毎年大きく変化するような項目でないものは隔年で聞いていたり、逆にこの年はフォーカスした方がいいものは新しく取り入れたり、という組み合わせを設けております。
「制作しているIRツール」という設問については、1年おきに尋ねておりますので、最新の結果が2025年となります。お示ししていますように、電子媒体として投資家向け説明会の資料を制作していますという企業が、IRを実施している企業のうち、80.8%と最も多い結果となりました。統合報告書は、日本語で51%、英語で46.2%、という結果でございました。
制作しているIRツールの傾向を調査時点の株式時価総額ごとに示しております。最も実施率が高かった投資家向け説明会資料というのは、時価総額の規模の大小にかかわらず制作している割合が多く、オレンジ色の枠で囲んでおります。一方、統合報告書は、規模別に差があるというところが見てとれます。これを文章でまとめますと、時価総額の規模にかかわらず上場企業で最も制作・活用されているIRツールは、決算説明会を中心とする投資家向け説明会資料、といえるわけでございます。
こうした資料は、説明会での説明はもとより、アナリスト・投資家との質疑応答や対話でも活用されている。そのため、このような高い割合であるということが考えられます。
時価総額の規模によって回答の割合が違うのは統合報告書で、和文、英文とも同様でございます。株式時価総額が大きい企業ほど回答割合が高く、しかも増加する傾向にございます。この背景といたしましては、統合報告書には企業価値向上ストーリーや非財務資本の活用、取締役会の状況や社外取締役のコメントなども掲載されておることから、機関投資家の分析対象になりやすいこと、また、機関投資家からのいわゆるエンゲージメントなどで活用されることも多いからと考えられます。
次に、東京証券取引所がプライム上場企業、スタンダード上場企業に要請なさった「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取組の記載場所・媒体」を尋ねたところ、2026年の結果では、投資家向け決算説明会資料が80.7%と最大で、コーポレートガバナンス報告書が68.0%、統合報告書が58.8%、IRサイトが55.3%と続きました。
こちらも株式時価総額ごとに企業の動向を見てみたところ、オレンジ枠で囲んだ投資家向け説明会資料は規模の差がないという結果になっています。有価証券報告書については、赤枠で囲んでございますが、利用されている企業も半数以上あります。また規模による差はあまり大きくないという傾向もみられます。ただし先ほど御紹介したトップ4には入っておりません。統合報告書は、やはり株式時価総額ごとに差があるという結果になっています。
このような結果からは、資本コストや株価を意識した経営の要請以後、経営層の意識は大きく変化し、開示も進んでいるということがわかります。これは私どもも実感しているところでございます。
2026年の調査結果では、開示媒体として最も利用されているのは投資家向け決算説明会資料であり、87%に及んでおります。今回の報告に向けて結果をグラフ化はしなかったのですけれども、「資本政策を策定し公表していますか」と実態調査で聞いたところ、回答割合が65.2%という結果でした。この割合は、2年前に比べると大幅に上昇しております。そのうち、還元に関する目標値を表明し、ROEや総還元性向なども活用するというのが59.7%、自社の資本コストを算出し、それを上回る収益性の実現に向けての方策を具体的に説明というのも48.1%という結果になっています。
他方、資本コストや株価を意識した経営の実現の課題としては、「社内のリソースや体制が整っていない」が41.9%、「外部要因による計画未達のリスクも大きい」が38.3%、「企業価値向上の意識を事業部門などのグループ全体に浸透させる仕組みが整っていない」が34.4%と続きました。
資本コスト経営について開示する資料のうち、時価総額の規模で違いがあるのは、制作しているIRツールと同様に統合報告書でございました。大規模企業ほど統合報告書で開示していますという割合が大きく、同様の傾向が見える経営計画の説明と合わせて活用していることが読み取れます。有価証券報告書につきましては、どの企業規模においても開示媒体として利用されていますけれども、統合報告書や経営計画に比べると、開示媒体として挙げる企業の割合が低い結果になっています。資本コスト経営を統合報告書などで開示することが顕著な時価総額の大きい企業ほど、有価証券報告書の活用度や株主・投資家向け開示媒体としての位置づけが読み取りにくいとも言えるかなと思います。
それでは、第3パートということで、海外の上場企業ではどのように開示媒体を作成し活用しているのかということで、地域ごとに事例と特徴について御紹介をしたいと思います。
経済産業省の企業情報開示のあり方に関する懇談会における議論を参考にして整理いたしますと、情報開示の体系及び様式は国によって様々であります。日本については、それぞれの報告書の目的などは異なるものの、記載内容の重複は大きい、開示媒体の間での内容の重複なども指摘されています。米国については、Form 10-K、いわゆる有価証券報告書的なものですが、それとproxy statement、すなわち株主総会の招集通知にはほぼ重複がない。欧州については、複数の報告書を年次報告書で一括して開示ができるようになっている。英国についても、1つの報告書で複数の法令等の要求事項に対応しているといった状況かと思います。
事例について、米国、欧州、英国の企業6社を御紹介します。この6社にした理由は、第1に株式時価総額が大きく、多くの株主・投資家が開示情報を活用していると考えられるからです。第2に日本の上場企業が事業の競合相手であるため、日本企業が情報開示の参考にしたり、私どもとの意見交換の際に名前が挙がったりもしています。第3に、日本IR協議会や大学の講義で事例紹介する際にも活用しています。その3点からご紹介しようと考えました。
1社目、著名なスポーツブランドの米国NIKEでございます。事業報告などが含まれるアニュアルレポートなどについては、同社のウェブサイトを見ますと、アニュアルレポートという標題の下に3つの資料が並んでおります。それはShareholder Letter、Proxy、そしてForm 10-K、これが併せて参照できる、そういった形になっています。これは、Form 10-Kラップ型というアニュアルレポート形式の1つかと言えると思います。Form 10-Kラップ型というのは、Form 10-Kを主体にして、Shareholder Letterなどを追加したものです。それをまとめてアニュアルレポートと称するということで、米国NIKEはその典型と言えるかなと思います。
次に決算と総会のスケジュールをウェブサイトから調べて整理したものを御紹介します。まず、米国のNIKEは決算期末からどの程度の期間でForm 10-K等が公表され、また株主総会の開催時期はいつかというのを整理してみました。大まかに御紹介しますと、決算期末から約1か月で決算発表し、その後3週間でForm 10-Kと招集通知公表、さらに1週間後にアニュアルレポート公表というスケジュールで進んできています。株主総会は、決算期末後の3.3か月後に開催されています。NIKEのアニュアルレポートは、総会向け情報開示媒体として活用されています。なおサステナビリティレポートは廃止したということです。現在はデータブックを代わりに開示しているからという理由でしたが、今回、資料を作成した時点では確認ができませんでした。
米国の2社目、Amazonです。ECの最大手で、こちらもForm 10-Kラップ型アニュアルレポートを採用しています。ウェブサイトには、NIKEと似たような感じですけれども、アニュアルレポートという標題があります。確認してみますと、文字通り、Form 10-Kをくるむような形で、表紙、Shareholder LetterとForm 10-Kが貼りつけられたForm 10-Kラップ型アニュアルレポートを確認できました。
Amazonについても、決算期末からアニュアルレポート公表や総会のスケジュールを整理してみました。まず、決算期末から約1.2か月で決算発表し、ほぼ翌日にForm 10-Kを公表、2か月後に株主総会招集通知を公表、ほぼ同日にアニュアルレポート公表というスケジュールです。株主総会は決算期末後の約4.7か月後に開催をされているということになりました。
米国の3社目、Microsoftでございます。Microsoftもアニュアルレポートとproxy statementを併せて見られるようにしております。アニュアルレポートは、Form 10-Kラップ型を採用し、表紙、Shareholder Letter、それからForm 10-Kが貼りつけられて作成されています。前記の2社と比べると、Form 10-Kの内容が簡素化されているという印象を受けました。投資家が関心の高い項目を選択して載せているような内容です。
Microsoftも決算期末からのスケジュールを見てみたところ、決算期末から約1か月で決算発表とForm 10-Kを公表、その2.7か月後に総会招集通知とアニュアルレポートを公表という流れです。株主総会は、決算期末後の5.2か月後に開催されています。決算発表とForm 10-K公表が同じ日というのも特徴のひとつかなと思います。
ここまでの米国についての特徴を整理します。この3社を中心に、米国の大企業のアニュアルレポートというのは、いわゆるForm 10-Kラップ型が主流と言えるかと思います。繰り返しになりますが、Form 10-Kラップというのは、Form 10-Kを主体にして、Shareholder LetterやProxyを追加しただけの簡易な報告書をいいます。それが主流になっている。また、御紹介したNIKE、Amazon、MicrosoftとともにForm 10-Kラップ型アニュアルレポートを総会前に公表しています。これはForm 10-K公表後、基本的に議決権基準日後の株主向け情報開示という位置づけにしていると考えられます。各社のスケジュールから読み取れるように、株主総会向け資料等の開示日は日本より早い傾向にございます。ただ、総会開催日が日本のようにほぼ同じところに集中するのではなくて幅があり、企業ごとにかなり異なります。それから、日本では、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示が充実しておりますけれども、米国の場合、サステナビリティ情報は別途レポートやデータブックとして開示する企業も現われてきております。そのサステナビリティレポート等の開示時期についても、総会の数か月後とか、NIKEに至っては決算から1年以上後、といったように、かなりの幅がございます。
また、Form 10-Kラップ型との絡みで、米国企業においてはアニュアルレポートのコスト削減が結構進んでいるというところが挙げられるかと思います。回答者が限られた調査ですけれども、全米IR協会の調査によりますと、印刷したアニュアルレポートの予算の中央値は1999年の13万8,800ドルから2015年の5万ドルと、その時点で64%減少していたと報告されています。それからForm 10-Kラップ形式を採用している企業の予算中央値は3万ドルでした。いわゆる伝統的なアニュアルレポートの作成企業の中央値は5万ドルであることから、40%ほど予算削減をできるというところが広がった背景かなと思います。
それに関する調査結果ですが、全米IR協会はアニュアルレポートの作成状況を調査しております。2015年の調査では、回答した企業の72%が作成しています。2024年の調査結果では、Form 10-Kラップ型とグロッシーアニュアルレポートという、日本のアニュアルレポートに近い写真や図などを載せたものと併せて、65%が作成という結果でした。つまり、作成工程を効率化し、コスト削減をした上で、アニュアルレポートを公表する企業というのがアメリカでは主流になっていることが読み取れます。
ここからは欧州の企業について御紹介をしてまいります。1社目は、フランスのロレアルでございます。フランスでは、財務と非財務情報を併せて株主・投資家に公表するURD(Universal Registration Documentの略称)があります。これは、財務諸表・ガバナンス・サステナビリティ情報を統合した資料であり、日本でいう統合報告書に近いのかなと思われます。それを含めて、ロレアルの決算期末からアニュアルレポート、URD公表、総会のスケジュールを整理してみます。決算期日の約1.4か月後に決算発表、その1.1か月後にURDと株主総会招集通知を公表しております。株主総会は決算期末後の3.8か月後に開催されているスケジュールになっています。
URDはかなりの情報量があり、ロレアルは452ページありました。構成も、Contentsからわかるようにかなり多岐にわたっており、いわゆる統合報告書的なものと考えられます。なお、URDは、フランスの金融市場庁、AMFに提出するもので、法定開示書類に該当すると言われております。最初に作成するかを企業が決めるのは任意ですけれども、一度作成して、公表する、すなわち金融市場庁に報告、提出すると、法定開示情報というふうに扱われるようでございます。
次に、ドイツのSiemensでございます。Siemensも、決算期末からアニュアルレポート公表、株主総会のスケジュールをウェブサイトの情報から整理してみました。決算期末の約1.5か月に決算発表、その0.7か月後にアニュアルレポートを公表しています。これは、ロレアルのURDに近いような内容です。さらに1週間後に、株主総会招集通知を公表しています。アニュアルレポートは、URDに近いと申し上げましたけれども、構成としましては、Combined Management Report、IFRS連結財務諸表、HGBと呼ばれる単体財務諸表、これを1冊に統合したものです。Siemensの場合は、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)に準拠されたものとして提出されておりました。
Siemensのアニュアルレポートも情報量が多く、335ページあります。非財務情報、コーポレートガバナンス情報、財務情報をまとめて開示しており、CSRDにも準拠したものということで、非常に充実した内容になっております。
次、英国のMarks & Spencerでございます。こちらは決算期末から約1.8か月後に決算発表、その2週間後にアニュアルレポートと招集通知を公表しています。株主総会は決算期末後の3.1か月後に開催されております。Annual Report and Financial Statementsというところに、財務・ガバナンス・サステナビリティ情報が統合されております。英国は、EU域外国ですので、ドイツのところで触れましたCSRDは適用されません。Marks & Spencerのアニュアルレポートを確認しますと、欧州、大陸の企業のレポートよりはページ数は少なく、それでも224ページございます。日本の統合報告書にも少し近いものがあるかなと感じます。非財務情報も入っていますので、コーポレートガバナンス情報、財務情報をまとめたものということで開示をしているようでございます。
ここまでの欧州、英国の企業事例のまとめでございます。まず、アニュアルレポート、呼び方はそれぞれですけれども、盛り込む情報量が非常に多いです。大陸に限っては、CSRDという指令に基づいて、1つの書類に財務・ガバナンス・サステナビリティ情報が統合されたことが影響されていると思われます。例えば、フランスのロレアルのURDは452ページ、ドイツのSiemensも300ページ以上ということで非常に多くなっています。ただ、各社のインベスターリレーションズに関するウェブサイトを参照しますと、企業価値向上に向けた戦略やキャピタルアロケーションを含む戦略、財務戦略などを、投資家向け資料などを通じて説明しています。統合された情報量の多い資料はあるものの、それぞれの投資家視点に即した説明や対話にも注力していることがうかがえます。
英国のMarks & Spencerは、アニュアルレポート、200ページで、欧州企業に比べると少ない。ただ、いずれも株主総会向け資料の開示日は日本より早い傾向にございました。また総会前の資料は各企業によって形式が異なり、総会開催日も幅があります。日本とは、前提状況が異なるという印象でございます。
最後、私見ではございますけれども、今日お話したまとめでございます。まず近年は、多くの日本の上場企業が法定開示、適時開示、任意開示を拡充させておられます。情報開示というのは建設的な対話の礎となり、説明会やミーティング、さらには株主総会でも活用されていると認識します。上場企業を対象にした「IR活動の実態調査」によれば、最も活用されているIRツールは決算説明会資料を含む各種説明会の資料でございます。これは決算説明会が定期的に開催され、質疑応答やミーティングなどでも投資判断に資する情報として活用されているかと考えられます。統合報告書は時価総額の大きい企業で制作・活用する割合が大きい結果となりました。これは資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた経営計画や資本政策を策定し、さらに投資家との対話やエンゲージメント機会を活用して内容を充実させているかと考えられます。有価証券報告書は、どの企業規模においても開示媒体として位置づけられておりますけれども、決算説明会資料などと比べると、開示時期が遅いため、より詳細な分析や投資判断のために参照する媒体として活用されていると考えられます。
他方、課題もあると考えられます。情報開示の拡充によって量は増えたものの、媒体間での重複も散見されます。そもそも開示の質を高めることも必要です。そのため多様になった媒体の役割を踏まえ、整理・統合・一体化するといった効率化も検討されます。その観点で海外企業の事例に注目いたしますと、いずれも開示資料の一体化や重複回避の傾向がうかがえます。米国では、1つ目、効率的にアニュアルレポートを作成して株主向けの資料に活用している。2つ目、総会の開催日は柔軟に設定して情報を早めに開示、3つ目、サステナビリティ情報は別媒体で総会後に開示するといった特徴が見られました。欧州では、1つ目、詳細なルールに基づいて作成した開示媒体を株主向け資料として一体開示している。2つ目、総会前の開示資料はサステナビリティ情報も包含しており情報量も多いといった特徴が見られます。英国も、欧州ほどの情報量はないけれども、同様の傾向にあるということでした。
ただし、一律化、効率化された情報開示にとどまらず、経営トップが投資家向け説明会などで、資本収益性を高める経営戦略やキャピタルアロケーションなどを語り、対話する欧米企業は少なくないと考えます。日本市場に、さらなるグローバル投資家の資金を招き入れるために、開示の体系や様式は様々ではあるものの、海外の開示制度や企業の取組を参考にして開示の質を高めることは重要になると考えられます。ただ、日本企業は株式時価総額の規模などによって、投資家からの関心や対話の頻度、内容も異なっており、時間やコスト、人的資本などの経営資源にも限りがございます。その中で有価証券報告書は、全ての上場企業が公表を義務づけられ、情報も拡充されています。財務諸表について公認会計士監査もついており、内容の正確性が高いと以前から認識されております。これからの情報開示は、企業が課題としている時間やコスト、人員の負担を少なくし、前向きに制作できる体制を整備する。また、投資家側も情報開示の意義を踏まえて活用できる人材を育成していただくといったことが望まれると思います。中長期の金融価値向上を目指した対話のベースになるのが情報開示であります。建設的に対話を続けるためにも、企業と投資家の双方が義務感にとらわれず、積極的に開示と対話に取り組める基盤づくりが重要であり、皆様方のこれからの御活躍もお願いできればと思います。
以上、私からの御報告とさせていただきました。
【神作座長】
佐藤様、大変貴重な御報告をありがとうございました。
続きまして、NBIMのジーニー スタンプ様から御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
【NBIM】
本日はこのような発表の機会をいただきありがとうございます。私ども、NBIMは、6月30日現在において総額2兆2,900億米ドル(約373兆円)の資産を運用しており、このうち約1,110億米ドル(約18兆円)を日本の上場企業1,064社に投資しています。
本日お話しする見解はあくまで発表者である私個人のものであり、私どものNBIMの公式な見解ではございません。また、今回御紹介いたしますのは、AIを活用した分析の事例で、この分析は、重要情報に関する企業報告を効率化する、意思決定に役立つものにするための改善の余地についての検討で、特定の企業、セクターまたは国・地域に対する最終的な評価を行うものではありません。
今回のプレゼンテーションにおける分析では、主要な開示資料を使用しています。対象は異なる6つのセクターに属する日本のプライム市場上場企業の6社になります。各社は、有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書、株主総会招集通知という3つの法定開示書類を公表しています。これらに加え、統合報告書、サステナビリティレポート、投資家向けガイド、ファクトブック、さらに資本効率や中期経営計画に関する資料などの任意開示資料も公表しています。今回は、四半期の決算書類については見ておりません。これらの決算書類は、非常に整理されており、重要で、よく活用されているものですので、今回追加的な検討を要する重要な問題点は認められませんでした。
比較対象は、自動車関連及びアパレル製造セクターの海外企業4社を分析しました。これらの企業は、調査対象に含まれる日本企業2社の直接的な競合他社にあり、ピア比較になっています。国際的な比較対象企業4社については、合計51件の開示資料を分析しました。なお、これらの分析は各法域の開示制度全体の優劣を順位付けしたり評価したりすることを目的としたものではありません。改善の余地を明らかにするために資料を読み込み、2つの側面が向上する可能性があると考えております。すなわち、投資家にとっての情報品質と適時アクセスの確保、発行体にとっての報告業務の効率化です。
最初の分析は、アーキテクチャです。これは企業が発行する資料の数、各コンテンツがどこに配置されているか、そして各社がどの程度の詳細さで報告をしているかという点です。対象とした6社において、年間で発行される個別の報告の資料数は7件から17件になっていました。重複箇所は、1社当たり5件から12件確認されました。同じ内容を違うところに記載している事例です。コンテンツでは、財務諸表の内容について、どのように配置されている、書かれている場所や深さ、詳細度はほとんど差異が見られませんでした。いずれの企業も同じような同程度の水準で開示しています。一方、サステナビリティに関する内容については対照的でした。記載場所、詳細度、両方において大きなばらつきが見られました。また、開示の程度や情報の記載箇所と、対象となる事項の重要性(マテリアリティ)との間に明確な関係性を見いだすことができませんでした。ガバナンスに関する開示は有益な比較対象となりました。多様性に関する指標は、内閣府令によって個別項目として開示が義務づけられており、対象6社の全てが法定開示書類において同一の形式で開示されていました。一方、取締役のスキルマトリックスについては、同様の開示義務がなく、法定開示書類に記載していたのは6社のうち1社のみでした。ただし、この6社全てが株主総会招集通知には記載しています。開示内容の整合性は、要件やガイダンスがどの程度具体的に記述をされているか、また発行体が重要性をどのように適用するかによって決まっています。
2つ目は、連携性です。これは、投資家が投資判断を行う際に考慮したいと考える情報であるにもかかわらず、現状では有価証券報告書の外に記載されているケースが見られることです。6社全体で、こうした情報が法定開示書類以外の場所に記載されている事例が32件確認されました。資本コスト、資本効率に関する計画、取締役会の実効性評価、役員の選任や後継者育成計画といった項目は頻繁に見ることができました。32件中9件は、株主総会招集通知にのみ記載されていました。招集通知は、基準日時点の株主名簿に記載された株主のみに送付される文書で、翌年には新たなものに更新されます。
3つ目は、具体性です。具体性というのは、その企業またはその業界に固有であるかどうかということで、6社のリスク要因、103項目をシンプルな基準を用いて判定しました。すなわち、その情報が十分に企業固有又は業界固有の内容となっているか、それとも異なる業種の別の企業であっても、ほぼ同じ記載をそのまま用いることができるものかという観点です。その結果、56%が一般的な内容であり、投資判断にはあまり役立たないような内容でした。例えば、金融市場の悪化、地政学的な不安定さ、為替変動といったものです。また、大半のケースでは、リスクの存在自体は説明されているものの、そのリスクが企業にどの程度の影響を及ぼし得るのかについての説明は十分ではありませんでした。同様の傾向は、比較対象とした海外企業においても確認されました。具体性の観点では、多くのリスク開示が比較的一般的な内容にとどまっており、企業固有の詳細な情報を十分に含んでいませんでした。
4つ目は、関連性です。サステナビリティの情報と財務、経営情報がつながっているかというものであり、定性的や定量的で、どのようなつながりがあるかを見ています。SSBJは、キャッシュフロー、資本コストや資金調達のアクセスに影響し得るこれらのサステナビリティ関連のリスクと機会の開示を求めています。これらの情報は、その省略が投資家の有価証券の売買や保有に関する意思決定又は議決権行使の判断に影響を与え得る場合に重要であるとされています。そこで、サステナビリティリスクの説明を、例えば、財務数値、財務諸表、注記、それからバリュエーションのアサンプション、経営計画の前提条件、MD&Aまでたどれるかどうかというのを見ましたが、日本企業の6社、海外企業の4社はどちらもそのつながりを確認することができませんでした。ただし、1社だけ良い事例があり、気候変動関連の防災対策で取得した資産、それと費用を数値で示していました。さらに、関連する資産、負債の注記にも記載し、その上で、帳簿価格への影響は見込まれないという説明もありました。これがサステナビリティ情報と財務情報を結びつけたよい事例でありました。
米国企業では、Form 10-Kにおいて、ウェブサイト上のインパクト・レポートを参照するようにしていました。しかしながら、同レポートに記載されているESG関連事項は投資家向けの重要性を示すものではない旨が明記されており、投資家は最終的にForm 10-Kを参照するよう求められておりました。さらに、同レポートには第三者保証を受けた排出量データや達成済みの排出削減目標が記載されていたが、それらとForm 10-Kに記載されたOPEXやCAPEXとの関係は示されておらず、サステナビリティ情報と財務情報との連携は確認できませんでした。一方、欧州企業については、財務マテリアリティとインパクトマテリアリティの両方、つまりダブルマテリアリティを含むESRS、欧州サステナビリティ報告基準の基準を適用しています。欧州のある報告書ではサステナビリティ開示が全体の40%で600ページに及ぶものでした。ただし、欧州企業の2社については、マテリアルな項目の70%以上が財務マテリアリティではなく、インパクトマテリアリティのみに関連する項目でした。つまり、ISSBのレポートには準拠していないということです。
最後の5点目は、タイミングに関する課題です。有価証券報告書と株主総会のタイミングのことで、6社中5社は有価証券報告書提出から株主総会まで0日から7日しかありませんでした。これでは、多く機関投資家が社内判断を行う期限に間に合いません。例えば、私どもは株主総会の5日前に議決権行使の方針を公表することを目標としています。基準日は、3か月以内の株主総会にしか使えません。多くの企業が年度末を基準日にしているために、有価証券報告書と株主総会の提出期限が同じ時期に集中しています。その結果、投資家には株主総会前に有価証券報告書を分析する時間がほとんどありません。企業側も短期間で有価証券報告書を作成しなければなりません。
米国国内企業、米国における外資系企業、ドイツ、英国、シンガポールとの比較も行いました。日本の90日という提出期限自体は、比較した6法域の中で最も短いものであります。他の法域では、提出期限は一般に120日程度でした。違いは、株主総会の開催期限で、海外では年度末から120日から1年あり、いずれも書類の提出後に、株主総会を開催しています。今申し上げたことは、今後どのようなことを対応できるかといったところを検討するためです。枠組みについて、どの報告書が中核となり、それぞれ何がコンテンツとして含まれるのか、誰に向けたものなのかを明確にすることが1つの選択肢かと思われます。例えば1点目として有価証券報告書を挙げますけれども、有価証券報告書は全ての投資家にとってマテリアリティの基準を満たす情報が入っていなければなりません。期間の長い、短いにかかわらず、網羅的に記載をされていくべきものであり、例えばCEOの選任や後継者計画、取締役会の実効性評価、資本評価計画などがその例です。その年の業績を評価する文脈を示すために中長期計画のメインのポイントをここに記載することも考えられます。2点目は、企業が任意でつくっている投資家向けのガイドです。企業の沿革、市場環境、詳細な価値創造ストーリーなどが記載されています。より詳細な中長期計画の全文をここに記載することも可能です。サステナビリティレポートは、インパクト報告に関して、ESRSの閾値を用いています。CSRDの適用対象となる企業は、ESRS-40aへの対応が可能となり、日本がEUのサプライチェーンに参入するときにも信用されると考えられます。
最後、統合報告書について、統合報告書は非常に詳細にわたって様々なことが網羅的に扱われています。ただ、もしやめるとなると、投資家にとってのマテリアリティ、ESRSのダブルマテリアリティ、そういったものに該当しないものはどこを見ればいいのかということになります。関連づけの連携性の観点からいくと、株主総会の通知、内容を参照するという形で法定開示書類に組み込むことが一つ有力な選択肢となり得ます。リスクファクターは、企業にとって具体性を持つこともあります。リスクファクターが非常に一般的なものであったとすると、企業、あるいは規制当局の方々は、そこをあまり注力する必要がなくなるのかもしれません。翻訳について、情報の非対称性を解消するために、日本語版と同時に有価証券報告書の英語版を提供することが必要です。例えば検討すべき対応として今申し上げたことは非常に合理的で助かることですけれども、タイミングについても考える必要があると思います。基準日と事業年度末を例えば3週間ほど切り離すことなどです。考えられる対応の一つとして、例えば基準日を事業年度末からおおむね3週間程度後ろにずらし、有価証券報告書を株主総会の3週間前までに提出できるようにする方法があります。このような見直しを行うことにより、現在集中している開示手続や株主総会関連業務の負担を緩和するとともに、投資家と発行体の双方に追加的な時間的余裕をもたらすことが期待されます。
以上の内容は、公式な提案ではなく、私の分析をした内容を発表したものになります。日本企業の皆様がかなり大きな努力をされていらっしゃることが認識しています。大きなコミットメントをされ、情熱を持って取り組まれているといった姿勢も捉えることができました。今後は、網羅的なマテリアルな情報がより合理化をされ、企業が容易に投資家に情報を届けることをいかにしていくべきかといったところを考えることになるかと思います。投資家、企業、規制当局、セクター、産業自体が一丸となって協力をいたしまして、情報の信頼性を最適化するとともに、資本の流れも最適化していけるように工夫をしていくべきかと思われます。ありがとうございます。
【神作座長】
ジーニー スタンプ様、大変貴重な御報告をありがとうございました。
それでは、これより委員の皆様からの御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。なお、本日の会議では、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで事務局よりメモを差し入れさせていただきます。加えまして、御発言の順番につきましては若干前後する可能性がございますので、あらかじめ御了承いただければと存じます。
初めに、本日御欠席の岩井委員より御意見を頂戴しておりますので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
それでは、岩井委員から御提出いただいています意見書を代読させていただきます。
第6回ディスクロージャーワーキング・グループの議論に関連し、企業の情報開示をめぐる課題と対応についてコメントさせていただきます。
1、情報開示の重複、複雑化への対応
日本IR協議会及びNBIMからの問題提起に共通しているのは、近年、情報開示が大きく充実する一方で、開示媒体の増加に伴い情報の重複や複雑化が生じているという点であると認識しております。
企業の実務現場では、有価証券報告書、事業報告、コーポレートガバナンス報告書、統合報告書、決算説明資料等において類似した情報を記載するケースが少なくなく、作成コストや人的負担も増加しています。
こうした状況を踏まえると、今後さらにサステナビリティ情報等の開示拡充を進めるのであれば、開示項目を追加するだけではなく、既存開示のとりやめも含めたスクラップ&ビルド、重複排除、媒体間の役割分担の明確化を進めることが不可欠です。
また、重複記載ではなく参照方式を活用することや、どの媒体で何を説明するかを整理していくことについては有力な検討課題であると考えております。
2、法定開示と任意開示の役割分担
NBIMからは、重要情報が複数の開示媒体に分散しており、一部は法定開示書類で十分に把握できないとの問題提起がなされております。
この点については、企業側としては慎重な検討が必要です。
まず、法定開示書類である有価証券報告書は極めて重要な役割を有しておりますが、有価証券報告書と任意開示媒体では本来求められる役割が異なると認識しております。また、公認会計士監査の対象は主として財務諸表及びその関連部分であることを踏まえると、重要情報について、有価証券報告書への集約を過度に進めることが必ずしも最適とは限りません。特に、経営戦略や資本政策、企業価値向上ストーリー等の対話型情報まで有価証券報告書に集約していく場合には、投資家が期待する保証水準と実際の保証対象との間に期待ギャップが生じる可能性についても留意が必要ではないかと考えております。
また、日本IR協議会の調査でも示されているとおり、決算説明会資料は企業規模を問わず最も活用されているIRツールであり、統合報告書も機関投資家との対話・エンゲージメントの場面で活用されております。
そのため、対話型情報については、企業が主体的かつ分かりやすく説明できる統合報告書や決算説明資料等の任意開示媒体で充実を図る方が、投資家との対話の観点からも有効と考えております。
したがって、開示の充実を図る場合であっても、直ちに有価証券報告書への記載事項を追加するという方向ではなく、法定開示と任意開示の役割分担を踏まえて検討することが重要ではないかと思います。
3、有価証券報告書の提出早期化に関する考え方
また、NBIMからは有価証券報告書の提出時期と株主総会との関係についても問題提起がなされております。
この点についても慎重な検討が必要であり、有価証券報告書の提出早期化については、単に提出期限の前倒しを議論するだけではなく、まず開示内容そのものの整理・合理化を進める必要があると考えております。
これまでも申し上げておりますとおり、有価証券報告書と事業報告をはじめとする開示体系全体の抜本的な見直しを伴わずに、有価証券報告書の早期提出のみを求めることは、企業実務上大きな負担を生じさせる可能性があります。提出時期の議論と開示内容の見直しは、一体的に進めるべきものと認識しております。
近年は有価証券報告書の提出時期を株主総会前に数日から1週間程度前倒しする企業も増えつつありますが、そのことによって実際に株主総会における議論や株主との対話がどの程度活性化されたのかについては、改めて検証が必要ではないかと考えております。単に提出日を数日前倒しすること自体を目的化するのではなく、投資家や株主にとって実質的な利用価値が生じているかという観点から議論すべきではないかと考えます。
一方で、株主総会の開催時期を遅らせることを前提とした議論はすべきではないと考えております。株主総会を遅らせることにより、過年度事項への対応が続くことで、次年度の企業活動に注力すべき時間が損なわれることは、株主の皆様にとっても望ましいことではありません。
4、今後の開示制度見直しに向けた提言
最終的に重要なのは、開示資料の数やページ数を増やすことではなく、企業と投資家との建設的な対話に資する情報を、適時かつ効率的に、分かりやすく提供することだと認識しております。
今後の制度見直しにおいては、重複開示の排除、既存開示のとりやめも含めたスクラップ&ビルドの徹底、法定開示と任意開示の適切な役割分担、参照方式等を活用した効率化、利用者の有用性と企業の実務効率性の両立という観点から議論を進めていくことが重要であると考えております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様方から御意見、御質問をお出しいただければありがたいと存じます。会場にお越しの委員の皆様におかれましては、お名前のプレートを立てて御発言の意思をお示しいただければと存じます。
オンラインで阪委員から御発言の御希望いただいております。阪委員、どうぞ御発言ください。
【阪委員】
阪と申します。本日、途中で抜けますために先に発言をさせていただきます。
本日は貴重な御報告を頂戴し、ありがとうございます。現在、日本やEUのサステナビリティ開示基準の適用に向けて企業が準備を進めている時期にあります。SSBJ基準では投資家の意思決定に有用な情報開示が求められていますが、企業は投資家の具体的なニーズを把握することを難しいとも感じておられます。また、記述情報については、財務情報と異なる判断が求められることから大変悩んでおられるようです。
そのような中、今回、この時期に投資家の観点から具体的なニーズや課題、さらに海外企業の動向も含めて明らかにしていただいたことは大変ありがたく思っております。
重要なことは、市場にとって真に有用な情報が提供され、開示制度そのものが持続可能なものとなり、社会的にも意義のある制度であり続けることだと考えております。そのためには、本日の御報告にもございましたように、これまでの開示の経験やその中で直面してきた課題も踏まえて、真に有用で質の高い情報が投資意思決定に適切な時期に提供されるよう、また財務情報とつながりのあるサステナビリティ情報の開示を確保しつつ、企業、投資家双方の過度な負担を避けることが重要だと思っております。
海外の開示要求との二重の負担を回避する、強制開示と任意開示との位置づけを明確にするなど、時間、コスト、人員の負担を抑え、企業が前向きに開示に取り組める仕組みとすること。また、投資家側の人材育成を含め、開示された情報を真に建設的な対話につなげていただくことが必要だと感じております。
こうした企業と投資家双方の動きを促進する仕組みや働きかけを進めることが、ひいては資本市場、さらには公益にもかなうものと考えております。これは関連するステークホルダー全員が問題意識を持って取り組み、その方向にかじを切っていくことが重要であると思っております。
私からは以上です。改めまして、本日は大変貴重な御報告をいただきまして、ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、会場で御参加くださっております藤本委員、小林委員、井口委員の順で御発言をお願いいたします。
藤本委員からどうぞ。
【藤本委員】
藤本でございます。本日は、まず貴重なプレゼンテーションをいただきまして、大変ありがとうございます。今、開示制度に関しましては、いろいろと検討しなければならない状況の中、大変参考になる情報が多数あったと思います。
私も関与しております日本公認会計士協会においても、2021年に開示ガバナンス検討特別委員会というところで報告書を出しておりまして、本日御指摘をいただいたような企業の開示体系と情報構成に関する課題ですとか、あるいは企業のガバナンスや監査保証の役割について検討してまいっております。
御指摘をいただいているような開示媒体間の重複、それから作成負担の増大というのは、様々な利用目的に企業が対処するということのためと思いますけれども、それらに対応するために、会社の中でも、IRや総務、財務、サステナビリティ部門など、開示媒体ごとに担当が異なって、結果として情報の重複であったり、開示媒体間の情報に整合性がないなど、首尾一貫した情報開示というものが実現できていないのではないかと感じられております。
また、特に重要だと思いますのが、ガバナンスの関与でございます。取締役会や監査役会を含むガバナンス、統治機関が、開示の方針であったり、開示のプロセスを適切に関与、監督し、かつ第三者保証による信頼性を付与するということが、企業の中長期的な企業価値の向上に向けた経営状況を開示するという点においても、結果としては、開示情報の効率化であったり、信頼性の向上の双方に寄与するのではないかと思っております。そういう意味では、やはり投資家の方々に利用していただくに当たっては、制度開示である有価証券報告書がその中核的な書類になるべきであると考えております。
また、本日のプレゼンテーションをお伺いしまして、2点ほど、課題があるなと感じている点がございます。それはやはり信頼性の観点から、制度開示書類と任意開示書類についてどういうふうに考えるべきなのか。どこにどういう開示書類を、開示内容を記載すべきなのか。また、参照方式というやり方もあるとございましたけれども、信頼性の程度をどこまで参照先の情報に求めるべきかという内容も検討すべきではないかと考えております。あわせて、ガバナンスの関与をどの書類に対してどの程度必要になるのかということも検討課題なのではないかと考えております。
もう1点は、先ほど価値創造ストーリーについても御言及ございましたけれども、特に企業が中長期的に価値向上していく資本コスト経営の観点からも、こういった内容について有価証券報告書で開示をすべきではないかと考えております。一方で、有価証券報告書は記載項目が規定されていて、どうしてもその順番で記載されるといった実務が通常かなと思っておりますので、特に個別性の高い内容について、有報の中でどのように開示をしていくのが望ましいのか、こういった点も課題ではないかと考えております。
本日は大変貴重なプレゼンテーションありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、小林委員、どうぞ御発言ください。
【小林委員】
本日は大変興味深いプレゼンテーションいただきまして、ありがとうございます。私からは、関連して2点質問させていただきたいです。まず、佐藤様のプレゼンに関して、日本は欧米と比べて開示書類の作成のリソースが不足しているというようなことも課題として挙げられていらっしゃいましたが、具体的に、欧米の企業は開示書類の作成に対してのリソースのアロケーションがより多いと考えるべきなのか、あるいは、日本と欧米とリソースは同じだけれども、開示書類が多過ぎて1人当たりの負荷が大きいと考えるべきなのかということが1点目です。
それから2点目はスタンプさんにお伺いしたいですが、先ほどの岩井さんからのコメントの中で、過年度事項への対応が続くことで次年度の企業活動に注力すべき時期に、時間が損なわれるので、株主総会の開催時期を遅らせることの議論は避けるべきだというコメントがありました。また一方で、欧米では、決算から株主総会までの時間が日本よりはるかに長い時間を取っているので、その場合に岩井さんが御指摘された過年度事項への対応が続いてしまうというような事態は実際に発生しているのかどうか、あるいは発生していないとしたならばどういった手当てが行われているのかという点をお伺いしたいと思います。
全体としての意見は、現在の制度は、過去の企業の状況に応じてつくられてきたものであり、サステナビリティも含めて、現在の投資家が求める情報は、企業活動そのものも変わってきており、大幅に変わってきている。これを機会に現状の制度の改良というよりは、全面的に見直しをして、本当に投資家が何を求めているのかということを視点に今回の議論を進めていっていただきたいと思います。
【神作座長】
どうもありがとうございました。佐藤様とスタンプ様に対しましてそれぞれ御質問がございました。始めに佐藤様からお答えいただけますでしょうか。
【日本IR協議会】
御質問ありがとうございます。プレゼンの際に申し上げていなかったのですが、この場での意見は、私の個人的なものですので、御了承いただければと思います。
御質問の開示に向けてのリソース不足という課題でございますが、日本企業、特に大規模企業におきましては、ガバナンス・コードが導入されたこの10年ぐらいは、人員面としましては充実の方向にあると感じております。他方、プレゼンでも少しご紹介しましたが中小型株企業は人員不足であり、かけるコストも十分でないと思います。この背景には、機関投資家の投資対象となっていないため情報ニーズが低い、また面談の要望が大型株企業に比べて少ないことなどが関係しているのではないかと思っております。
逆に大規模だからこそ課題となっているのが、先ほど藤本委員からも関連の御指摘がございましたが、業務が組織の中で必ずしもきれいに整理されていない、連携が難しいといったところでございます。これに対しては、一定の企業で、例えばIR、SRを統合するですとか、あるいは担当役員を一緒にした組織を整えて機能的に活動するといった取り組みも始まっております。けれども、今回、議論のテーマの1つとなった多様な情報開示媒体の担当部門をどう配置するか、また担当部門も開示だけやっているわけではないので、各部門でどう連携し、業務を効率化していくかというのもが課題かと思います。
あと、3点目の課題としまして、情報開示のガバナンスといいましょうか、開示すべき内容をどのように検討して開示を決定するのかという点です。この点につきましても、社内に情報開示委員会などの組織を設けて、適切に開示するための体制を整えているところもあります。また、取締役会は、法定開示に向けて意思決定をするわけですけれども、経営トップが意識を高め、ガバナンスの体制を整え、関係部門が取り組みやすいよう組織も整備していくというところを併せてやっていくところが大事なのかなと思っております。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、スタンプ様に対しまして、過年度事項への対応についての御質問がございました。お答えいただけますでしょうか。
【NBIM】
ありがとうございます。株主総会について、最も重要なことは、中身を合理化する、重複を避ける、シンプルにしていくといったところがまず一番の重要なことだと考えております。単年、あるいは複数年といったことについて、多年度の情報はあまり多く入れないということです。企業というのは、3年計画、5年計画をもち、その時点でスナップショット的にコンテンツを入れることはいいことだと思いますが、多年度について、バランスが必要だとは考えております。SSBJは、開示を求めており、例えば、資本的な効果ですとか、中長期的な機会がどのようなものがあるかといったところは開示をする必要があります。そういった意味でも、多年度の開示も必要だということであります。例えば、2050年までに排出量をいくらにするとか、そういったような内容というのは、有価証券報告書で入っていたとして、短期的な資本アロケーション的な資本政策のところが入っていないと一貫性も損なわれるということになりますので、バランスが必要になるかと思います。投資家には、現在の状況を反映した最新の情報が必要です。しかし、同時に、現在の業績や経営上の意思決定が、より長期的な目標とどのように結び付いているのかを理解する必要もあります。現在の資本配分に関する意思決定と長期的な経営目標とのつながりは、投資家にとって重要性の高いマテリアルな情報です。
【神作座長】
小林委員、何か追加の御質問等ございますか。
【小林委員】
ありがとうございました。今のスタンプさんのご説明点についてですが、実際には企業の決算や株主総会に関わる作業は、決算日から株主総会当日までの時間軸の中で、多分本来の事業活動そのものとは別の枠組みで行われてきていると思います。けれども、欧米の企業の場合、単年度、前年度の決算についての事項、イシューに対応する時間とリソースと、進行中の当年度、あるいは、将来の課題に対して対応するということについてはリソースや部門を分けて対応されているのでしょうか。
【NBIM】
それに関しましては、一定の企業では、新しい年度の第1四半期の決算発表と過年度の決算について、同時に話をする、投資家とのインタラクションで両方をカバーすることもしております。
株主総会を遅らせるということだけが唯一の方法、ベストのソリューションであるということではないということです。タイムリーな開示とマネジメントとしての負荷ということの両方の課題を同時に是正することは可能であると考えています。
【神作座長】
よろしいですか。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、井口委員、どうぞ御発言ください。
【井口委員】
ありがとうございます。私も質問をさせていただければと思います。最初、佐藤さんにさせていただければと思います。プレゼンありがとうございました。プレゼンのアンケートの中でも、開示の重複が1つの大きな課題とされていて、この委員会でも、まさに、そのことが議論になっていると思います。今さら、任意の統合報告書を充実させるという企業もいないと思うので、有報を充実させるために何が必要かということが重要になると思っております。
制度的には、有報に開示をしやすくするために、セーフハーバールールも入り、あるいはサステナビリティ開示も行われるということで、有報の充実に向けた様々な取組が行われていると思います。また、佐藤さんに御紹介いただいた海外の事例でも、グローバルでは、法定開示の資料に重要な情報を開示する、これは当たり前、常識であるということだと思っています。
その中で、任意の統合報告書については、禁止するということはできないので、どういうふうに有報の魅力度を高めていくかということになってくると思うのですが、アンケートで聞かれている中で、どうすれば、もっと、企業が有報にもっと開示できるようになるなどの示唆があったら、ぜひ、共有していただければと思います。
【神作座長】
それでは、まず初めに佐藤さんから御質問に対する御回答をお願いいたします。
【日本IR協議会】
ありがとうございます。有報が投資家向けの開示媒体としてはやや位置づけが分かりにくいという御報告をさせていただきました。第1点としましては、投資家との対話において活用されやすい情報というのは、有報のような網羅的な開示媒体よりも、経営戦略、経営計画の要点をまとめたものが多いように思います。例えば統合報告書だったり、その基になる経営説明会の資料だったりします。もちろん有報も法令や制度上、投資家向け開示媒体という位置づけではありますし、機関投資家の投資スタイルによっては活用されているとは思いますが、対話における活用度合いとしては、少し距離があるというようにも感じております。
あと、企業の中で有報を担当する部門と、株主総会や招集通知・事業報告を担当するところが異なるケースがあります。各部門が連携して開示にいたっているのですけれども、今回、海外の事例を見てみますと、決算発表の時点で、後に株主向け情報として開示する内容を前提に資料を作成しているような会社も見受けられました。その辺り、日本企業も同じような体制にしていくのかは、今後の議論次第かと思っています。
それに関連して、業務効率化というところで申し上げますと、日本企業におきましても、決算発表の資料作成の時点で、後にアップデートすれば他の開示資料としても活用できる。そういう前提で内容を整えておいたり、関係部門に連携を依頼したりするところもあります。それから、必ず毎年説明する情報については、電子化を活用する、あるいはAIを使った業務効率化で作成工程を短縮していく。さらに新たに作成して加える部分があればスピーディーに編集できるような構成にしておく、IR部門のみならず、情報を提供する部門を含めて社内体制も整えていくと。今、そういった議論はIR部門の方を中心にして進んでいると感じます。
有報の総会前開示の課題につきましては、今、ちょうど、会員企業を対象にしたものですけれども、アンケート調査を実施しておりまして、1か月ぐらいしたら公表できるかと思います。限定的な調査対象ではございますけれども、参考までに結果を見ていただけるとありがたいなと思います。
【井口委員】
ありがとうございました。ジーニーさんへの質問ですけど、まず、御説明内容の中で、特に、開示のアーキテクチャのところで、有報を中心に開示体系を組み立てるということ、現状のダブルマテリアリティの任意の統合報告書を、インパクトに絞ったサステナビリティ報告にするということ、あと、有報を補完する形で、投資ガイドをつけるということだったと理解していますが、まさにそのような形が一番アーキテクチャとしていいのではないかと思いました。
質問させていただきたいことは、非常にプリミティブな質問になってしまいますが、改めて法定開示書類の重要性について教えてもらえればと思います。というのも、企業の中には任意で報告しているから、法定開示書類は要らないだろうという人もまだいます。その中で改めてジーニーさんから法定開示書類の重要性ということを教えていただければと思います。
【神作座長】
それでは、スタンプさん、御回答をお願いできますでしょうか。よろしくお願いします。
【NBIM】
まず、制度開示の文章はやはり最も信頼でき、完成度の高いものであります。これを使って投資家がバリュエーションとかモデルをつくり、それから、財務数値の裏にあるものを深く理解するのに役立つことができます。非常にクリティカルなものであります。
2つ目は、先ほど株主総会の質問に関して、日本IR協議会の提出資料では海外の事例がいくつかありました。それによると、海外のアメリカの企業は年度末から3.3か月から5.3か月後に株主総会を開催しています。一方で、EUのケースは3.8か月かかっているということで、新たな年度の第1四半期の成果がもう既に出ているということであります。その結果、株主総会は企業の現時点における財務業績に焦点を当てたものとなり、経営陣も事業運営から注意をそらされることなく、本来の経営に専念することができます。実際、投資家がより早い段階で情報を受け取ることができ、その情報がより質の高いものであり、整理され、簡潔かつ分かりやすく提供されるのであれば、株主総会における前事業年度の業績に関する議論は、より限定的なものになる可能性があります。また、投資家は企業の足元の業績や現状をより深く理解できるようになるため、取締役会や企業の取組をより適切に支援することが可能になると考えられます。
先ほど株主総会の開催時期について、動かすかどうかといったお話をしましたけれども、株主総会だけを動かすということはよくないということであります。それ以外のソリューションも必要で、例えば合理化することなく、重複を除去することなく進んでいくとレポートのほうがより肥大をするだけになってしまいます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、オンラインで御参加の樋爪委員から御発言の御希望をいただいております。樋爪委員、どうぞ。
【樋爪委員】
住友電工の樋爪でございます。発言の機会をいただきありがとうございます。本日の両者からの御説明は、諸外国との比較を通じて、我が国の開示制度全体の在り方を考える上で示唆に富むものでありまして、厚く感謝を申し上げます。
私からの質問と意見を述べたいと思います。まず質問については、IR協議会様の資料につきまして2点お伺いしたいと思います。1点目は、12ページの「米国Form 10-Kとproxy statementには重複がない」との記載についてであります。16ページのAmazonや18ページのMicrosoftの事例を見る限り、proxy statementの公表日がForm 10-Kの提出日よりも後になっているように見受けられるのですけれども、これは米国では提出時点で未公表の開示情報を後日公表することを前提に参照するということが認められているという理解でよいかどうか確認させていただきたいと思います。その場合、どのような開示事項について、どのような期限や条件、手続のもとで認められているのかといったことも御教示いただけますと幸いです。
2点目は、同じく12ページの「欧州は、複数の報告書を年次報告書で一括して開示可能」という記載に関する質問であります。これは異なる法制度に基づく報告事項が一体となっている、あるいは法定開示部分と任意開示部分が併存している状態なのかなと理解しましたが、そうした中で、虚偽記載等に対する法的責任をどのように明確化しているのか、その取扱いについても、もし分かればお伺いしたいと考えます。
まず、質問事項は以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、佐藤様、御回答お願いできますでしょうか。
【日本IR協議会】
御質問ありがとうございます。実は12ページについては、経産省の懇談会における議論を参考にして整理したので、そこまで細かいところを、直接、把握してないというところが正直なところでございます。
推測ではございますが、米国について、Form 10-Kとproxy statementの内容や公表時期が微妙に違ったということが認められるというのは、慣行としてこれが根づいているため、制度上も問題ないという扱いになっているのではなかろうかと考えております。
それからヨーロッパのほうですが、御懸念のところは虚偽記載ということだと思うのですけれども、URDにつきましては、最初は任意で作成をする。それを公表するという意味で当局に提出した時点で法定開示になるということですので、これも推測でございますけれども、任意の開示のときから、投資家からリスクの高い情報として認識されているものは、対応をしていく。また、法定開示に認められるというタイミングでも、何かしら当局のほうで指摘するような部分があれば是正しているのではなかろうかと思っております。
いずれの地域も日本よりはこの慣行が先行しておりますので、もう少し詳しく調べればその背景というのは正確に分かるかなと思います。十分な回答でなくて申し訳ございません。
【樋爪委員】
いえいえ、どうもありがとうございます。承知いたしました。
意見を少し申し上げさせていただきたく思います。本日のお二方からの御説明から、我が国の開示制度の課題としましては、多様な資料がばらばらに開示されている点にあると思います。利用者にとってどこに何があるのか分かりにくい。作成者にとっても負担であるということで、これらを一体化や統合によって整理するという考え方は一定の意義があると考えます。
その際、仮に欧州のように複数の開示事項を、一体の書類として開示する場合に、任意開示に属する情報にまで金商法上の虚偽記載等に関する責任が及ばないように責任の範囲を明確に区分する必要があるのではないかと考えます。諸外国の制度も参考に、この点を丁寧に整理することが検討の大前提になるのではないかと思います。
また、記載事項の整理に加えまして、開示の時期や頻度も含め、制度全体の在り方を検討することが重要と考えます。例えば、現状において、有報を株主総会の3週間前に開示するならば、現場の実務負担や監査法人との調整を勘案しますと、やはり総会の時期の後ろ倒しを検討せざるを得ないという状況であります。両者の御説明にありましたとおり、諸外国の開示と対話の在り方を参考に、総会前開示を促進するのであれば、他の法域と異なる我が国の開示制度、例えば四半期開示を含む期中報告の在り方や、女性活躍推進法に基づく開示などについても同様に考え直すべきであると考えます。
いずれにしましても、こうした検討を進めるに当たりましては、まず、現在の有報の記載事項について、削減や簡素化、あるいは重複の解消が可能な項目と見直しの方向性を年内めどに具体化をしていただき、その上で、年明け以降、本日の御説明も参考にしながら、各開示媒体の役割分担や開示の時期、頻度、公的責任の在り方まで含め、開示制度全体の抜本的な見直しへと議論を進めていただくのがよいのではないかと考えます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、会場で御参加の田代委員、どうぞ御発言ください。
【田代委員】
ありがとうございます。私は1999年に当社のIRの担当になったときに、佐藤さんの御指導を受けまして、当初はまだ企業におけるIRというのが本当に走りでして、右も左も分からない中、大変お世話になりました。
それで、質問がそれぞれに1つで、どちらかというと現状についての質問ですけども、皆様、結構3週間前開示の話は非常に課題が大きいからこそ気になる点だと思うのですけども、現状においては3週間開示をぜひという背景はすごくよく分かります。けども、どちらかというと国内よりも海外の投資家のほうがより大きな声でおっしゃっているような気がします。
佐藤さんにお伺いしたいのは、日本の国内投資家は、ある程度、いろんな事情、岩井さんがおっしゃったような事情を理解して、それが早くすることが、株主総会を後ろに回すことがマイナスのほうが、3週間前開示のプラスよりも大きいと思っていらっしゃるから現状のままがベストなのではないかと思っていらっしゃるのかというのが佐藤さんへの御質問です。次に、海外投資家の現状の立場では、3週間前開示が海外における一般的な開示なのでということなのですけども、現状において、1日から3日前の開示が多いんですけども、その中でどのようにそれを利用していらっしゃるのか、利用していらっしゃらないのか、はたまた、このままいくと、情報不足のために投資をやめようとするのか、総会での議案に対する議決権行使をどう考えるのか。3週間前に開示できるまでには、その方向に行くとしてもしばらく時間がかかると思うので、その中で、現状、どういう投資家様としての行動を御検討していらっしゃるのかというのをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
佐藤様とスタンプ様に対してそれぞれ1つずつ御質問がございました。初めに佐藤様から御回答をお願いいたします。
【日本IR協議会】
御質問は、有価証券報告書の総会3週間前開示に向けた、機関投資家さんの意見というか、見方についてのもの承りました。私もそんなに多くの投資家の皆様の意見を集約しているわけではないですけれども、やはり総会前に、正確性、信頼性の高い情報があるのが望ましいというところは、皆様に共通するところかと思います。
他方、同じ時期に集中して大量の情報が開示されますと、結局は深く分析し切れないというような声も聞かれます。そのため、開示時期は早めが望ましいが、一定程度分散するような形で出してもらいたいみたいなところが1点。
それから、有報を早めに開示するのが難しい、また総会を後ろ倒しするのも難しいのであれば、投資家さんが特にウオッチしている情報を早めに出してもらいたいといった意見もあります。例えば、政策保有株式縮減に関する情報です。それ以外の情報は、少し遅れて開示する形もあるのでは、といった声もありました。
こうした意見は投資家からのものですが、企業としても、総会開催の後ろ倒しというのは、かなり難しいという声は多くあがってきています。また早期開示をするためには、有価証券報告書、事業報告の監査完了が必須なので、2つの資料がどうなっていくのか、その監査スケジュールを見ながら検討するということになるかと思います。
【神作座長】
それでは、続きまして、スタンプさん、どうぞ御回答をお願いします。
【NBIM】
外国投資家が、情報がないために投資をやめているかというと、それはないと思っています。しかし、株主総会における投票について、情報をどの程度利用しているかは、やはり有価証券報告書に含まれている持ち合い株の情報など、非常に重要なものになります。しかし、1日から3日前に開示されるという問題や、株主総会がほとんど同時に多く開催されているといった問題などもあり、投資家にとっては多くの情報を同時に早く処理するということに苦労している状況です。そのため、何らかの努力、何らかのコミュニケーションによって、投資家が十分に読む時間がある、十分に理解をするような時間が取れる、そしてマネジメントや取締役会などを理解できるということが何よりも重要です。
もう1点は、例えば従業員の株の保有などのシステム、持株会とか、それから役員の株による報酬、そういったものは株主総会で投票対象となるわけですけれども、投資家として、NBIMとしては、サポートしているものであります。有価証券報告書に、こういった内容がきちんと盛り込まれていて、人への投資とか、役員報酬がどうなっているか、きちんと理解できるようになっていることが非常に重要だと思います。
【神作座長】
よろしいですか。ありがとうございます。
それでは、続きまして、大瀧委員、三瓶委員、加藤委員の順番で御発言をお願いいたします。初めに大瀧議員どうぞ。
【大瀧委員】
どうもありがとうございます。日本IR協議会様及びNBIM様、御説明どうもありがとうございました。多くの示唆を含む内容であり、大変勉強になりました。私からは本日御説明いただいた内容に関する感想及び有価証券報告書の記載内容の見直しに関してコメントいたします。
日本IR協議会様の御説明に関しましては、米国、欧州の有名企業の事例を基に、決算日後、株主総会開催までに公表される開示書類の記載内容及びその公表時期の御紹介、及びそれらを踏まえた御見解をいただきました。資料の中で、「まとめ(私見)」でも述べられているように、欧米各国の開示制度の体系や様式が様々であるものの、それらを参考に日本の開示の質を高めることが重要であると考えます。
また、NBIM様の御説明に関しましても、課題の提起とそれらに対する施策のご提案をいただき、大変参考になりました。
本日プレゼンしていただいた内容を踏まえ、有価証券報告書の記載内容の見直しを含む開示全体についてコメントいたします。日本、米国、欧州各国の開示体系や様式に違いがあり、また年次報告の提出期限や株主総会の開催時期も異なる中で、日本の情報開示の在り方を検討するに当たっては、現行開示制度の成り立ち、法的枠組み、各開示文書の趣旨及び改訂の経緯並びに実務慣行を踏まえ、海外の参考となる部分を、実務負担を考慮しながら取り込み、改善を図ることが大切であると考えます。
また、その改善の中心となるのが有価証券報告書であると考えております。本日御説明にもあったように、株主の対話促進においては決算説明資料や統合報告書が注目されることが多いですが、現行の有価証券報告書が投資家にとって最も重要で欠くことのできない開示書類であることに変わりはありません。NBIM様からも先ほど御説明いただきましたけれども、現行の有価証券報告書は、開示府令等に基づき、上場会社が年次報告として開示すべき一定の事項が網羅され、ひな形等の利用により明瞭性や比較性が具備されるとともに、制度開示として高い信頼性が担保され、1冊につづられています。資本市場における多様な利害関係者が有する幅広い情報ニーズを同時に満たす資本市場の公共財として機能していると考えております。
また、アナリストにとって有価証券報告書を隅々まで読み込むことは企業分析の基本動作であり、有価証券報告書を用いた過去分析は企業分析の土台になります。また、投資家は外部情報ベンダーも活用しておりますけれども、有価証券報告書は最も信頼する一次情報源として利用しております。
今後の審議においては、前回の第5回で事務局から御提案のあった有報独自の開示項目の検討からスタートすると理解していますが、既存の記載項目に関しては適宜見直すとともに、他の開示書類との重複開示については、各開示書類の趣旨や利便性を損なうことなく、参照方式を取り入れるなど、実務負担に配慮しながら一つ一つ丁寧に対応を進めていくことが大切であると考えます。また、今後の開示拡充に関しましても、各開示書類の趣旨に鑑み検討する必要があると考えます。
さらに有価証券報告書の記載内容の見直しに関しましては、提出時期にも配慮する必要があると考えます。個人的な意見となりますけれども、私は現行の有報の提出期限及び現行実務として定着している株主総会の開催時期、すなわち、決算日後3か月以内の総会開催を前提に議論を進めたほうがよいのではないかと考えております。提出期限や開催日程等につきましては様々な御意見があること、適切な議決権行使のために事前の十分な情報開示の検討時間の確保が必要であることは重々承知しておりますが、急速に変化する経営環境において迅速な経営の意思決定を求められる中、株主総会の最高意思決定機関である株主総会もその例外ではないと考えております。
また現状において、総会の後ろ倒しに向けての議決権基準日の変更をした会社が少数であること、加えて、本日御紹介いただいた海外企業の中にも、法規制にかかわらず3か月程度で総会を開催している事例があることも理由として挙げたいと思います。開示拡充と有報提出早期化を一気に進めるのではなく、実務負担に配慮し、準備期間や経過措置等の手当てを含め丁寧に議論していくことが大切ではないかと考えております。
最後に、有価証券報告書と事業報告との一体化については、開示書類の作成負担の軽減及び会計監査の一元化の実現に結びつく有効な制度面からの対応であると考えております。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、三瓶委員、どうぞ御発言ください。
【三瓶委員】
発言の機会をいただきありがとうございます。私からは3点申し上げたいと思います。
最初に、NBIM、スタンプさんのプレゼンありがとうございます。ここで言われたことは非常にそのとおりだなと思います。私も前職は外資系の運用会社におりましたので、グローバルの研修をするときに、海外の運用者たちに、日本企業に投資をするときに、どんな情報があって、どこから情報収集ができるのかというときに、どんな書類があって、それが法定か、任意か、何を目的としている書類なのか、いつどこに開示されるのか、これを説明するのが最初です。スタンプさんのプレゼンではアーキテクチャということですね。
説明すると、何でそんなにややこしいのだ、何でそんな重複しているような書類がいろいろあるのだと必ず聞かれます。それに対し、それぞれ法律と要請が違うからだと説明します。それにしても何でそんないろいろあるのだと必ず聞かれる。答える側として、日本人の1人として、こういう日本の制度に自分自身も完全に納得しているわけではないので、いつも困りました。
国内の投資家は、慣れでこなしているというのが現状です。今日、NBIMのスタンプさんの御説明は、改めてリフレッシングな御説明だったなと思います。
2点目は、IR協議会の佐藤様の御説明の中で、説明会資料が非常に便利なのでよく使われているという御説明ありました。それはそのとおりですが、これを岩井委員の意見書では対話型情報と呼んでいますが、そう呼ぶのは非常に危険があると思っています。説明会資料というのは非常に便利ですし、分かりやすい。ただ、長年運用している者からすると、粉飾の原因になるのが大体この資料です。ここには、non-GAAPのデータであるとか、勝手なKPIが載っていて、通常の法定開示書類にないけど一見便利な情報がある。なかなか面白いKPIだなと思って追いかけていくと、そこにはインコンシステンシーの問題があったり、後でそれは信頼に足る根拠がなかったというようなことが何社かでありました。便利でよく使うけれども、信頼性という観点では、経験のある投資家であれば、6割から8割ぐらいの信頼性しか置いてないと思います。やはり有報が一番重要だということです。
そして3点目、有報の件ですけども、有報の情報価値が近年どんどん上がっているなと思います。それは情報が充実してきているということ。そして、タイミングが若干でも早まってきているということ。そして、これは従来からですけども、法定開示書類であり、定型の項目であるということ。つまり、法定開示書類の情報が充実して開示のタイミングが早まっているということが非常に重要です。もちろん監査済みでありますし、今後、サステナビリティ情報についても保証付きになっていくということで、どんどん価値が上がっていきます。
こうしたことを踏まえると、複数の開示書類がある問題は従来からあるのですけども、これを集約するときに有報に寄せていくというのが最も合理的だと思います。利用の仕方としても、どこを探せばいいかというと、EDINETに行けばいい。過去の分も出てくる。XBRLに対応しているので、そこから様々な情報ベンダーのデータベースにもつながっています。
たまに有報について簡素化をしてくれというような話も出てきますが、これはそういう意味では流れから逆行していると思いますし、非合理的だと思います。
データベース化や、様々なデータベースへの波及効果を考慮しても、このような好条件が揃った有報に集約をしていくのだと思いますし、それが利用者として最も重要です。ただ、利用者目線から視点を変えると、現状の実務としては大変なことがあるというのは重々承知しています。ただ、そのことに関しては、会社法上の内部統制システムというのがありますね。ここの中で、業務の適正と効率性ということをうたっているわけです。ですから、情報集計の範囲の特定であるとか、見積りの活用であるとか、開示情報のvalidationというのをどういうふうに機関決定するのかという、そういったそもそものシステムの見直しの機関決定をして今の実務の業務の適正と効率性の見直しをしていくということはガバナンス上非常に重要なことですね。こういう対応をしながら、開示のタイミングと集約の両方が進捗していくのと並行してやっていくのがいいのではないかと思います。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、加藤委員、どうぞ御発言ください。
【加藤委員】
御説明ありがとうございました。私も質問というよりは感想のような意見になってしまうのですけれども、本日の佐藤様の御報告から、決算発表などにアニュアルレポートの発表が続くということを改めて確認いたしました。
そこで非常に興味深かったのは、樋爪委員とのやり取りの中でありましたけれども、アメリカにおける決算発表日、Form 10-K、proxy statementの公表時期に各社で差があるということです。私も、Microsoft等の事例のように、決算発表と同時にForm 10-Kを公表して、その約3か月後にアニュアルレポートとproxy statementを同時公表する場合に、proxy statementの中に財務に関する情報に関する何か新しい情報が加わっているのかということに興味を持ちました。なぜかといいますと、アニュアルレポート作成作業のプロセスを考えた場合に、決算発表の段階でどこまでの作業が終わっているのか。その後、最終的にアニュアルレポートの作成までにどういった作業が行われるかということを意識した上で、開示の負担の合理化ということを考える必要があると思ったからです。それが1点目のコメントです。
もう1点、これはもしコメントいただければ、スタンプ様に意見を伺いたいのですけれども、サステナビリティ情報の開示については、調査をしていただいたアメリカの実務も、EUの実務も問題があるという指摘だと理解しました。
そして、佐藤様の資料で、AmazonとMicrosoftは、株主総会の後にサステナビリティレポートを公表しています。こういった実務についてはどのように評価されているのかということについて御意見いただければと思います。
【神作座長】
御質問があったかと思います。まず佐藤さんからお答えいただいて、その後スタンプさんにお答えいただければと思います。
【日本IR協議会】
ありがとうございます。御質問の趣旨は、決算発表とForm 10-Kの公表が同時ないし非常に近いという、その背景ということでございましょうか。
【加藤委員】
樋爪委員とのやり取りでもありましたが、決算発表、Form 10-K、proxy statementの公表時期の間隔が違っています。どういった理由で違っているのかということ、最終的な決算発表で公表される情報とForm 10-Kに公表される情報、さらに言うと、その後のアニュアルレポートに反映される情報との間にどれくらいのずれがあるのか。最初の決算発表をした後に会社側がどれくらいファイナンシャルステートメントの作成の作業を続けているのかというようなことについて、もしお分かりでしたら伺いたいということです。
【日本IR協議会】
先ほど樋爪委員とのやり取りでも少しお話ししましたけれども、正確なところは把握できていないですが、MicrosoftやAmazonの情報開示の特徴として、決算発表資料やアニュアルレポートなどが日本に比べると無味乾燥というか、あまり編集を加えずに淡々と説明をするといった形をとっているものが主流になっております。したがいまして、決算発表の時点から、Form 10-K、その後、アニュアルレポートというところにつながっていくということを前提にして作成をしている、そういうふうに考えております。
開示時期の幅があるというところは背景を十分理解していないのですけれども、さまざまな情報開示媒体のもとになる情報は信頼性が高いものを採用し、それに重ねるような形で効率よく開示につなげていると考えられます。
それから、アニュアルレポートについては、調べてみたところ、期中扱いとなる情報、例えば第1四半期決算についての情報を上乗せするということはないようでございます。
【神作座長】
それでは、スタンプさん、お答えいただけますでしょうか。
【NBIM】
御質問ありがとうございます。サステナビリティの開示について、先ほどのマテリアリティのポイントに戻りたいと思います。この点は非常に重要であり、米国の企業はサステナビリティレポートを株主総会後に作成します。これは、インパクトレスといった形ですけれども、SSBJは、サステナビリティと財務報告は、有価証券報告書で同時期に一緒に策定すべきであると言っています。マテリアリティの定義というものが関連してくるからであり、これが先ほど述べたコネクティビティ、関連性の点に関係しているものです。サステナビリティに関する事項の中には、企業の事業活動やコスト、資本配分に意思決定、成長計画と密接に結びついているものがあります。有価証券報告書で、同じマテリアリティの定義に基づいて開示すべきだと考えています。米国のSECについては、気候関連情報開示制度で廃止するという形にしています。もし今の体制で気候変動リスクがマテリアルであるならば、もう開示されているからだとしています。私どもは、ISSBに関するスタンスとしましては、これは非常に便利で有用なものであると考えております。この基準は、投資家にとって価値のある気候関連情報を提供するとともに、開示情報の質及び比較可能性・一貫性の向上に寄与するものであります。マテリアリティの閾値については、米国で証券を発行している日本の企業の多くは、Form 20-Fの開示要件に基づく規律に慣れています。その枠組みの下では、重要な情報を適切に評価し、開示することが求められており、非常に厳格なマテリアリティの判断基準が形成されています。こうした理由から、サステナビリティ情報は財務報告と統合され、共通のマテリアリティの枠組みの中で開示されるべきであり、財務情報とは切り離された別個の開示事項として扱うべきではないと考えています。
【神作座長】
よろしいですか。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、オンラインで御参加の上田委員、どうぞ御発言ください。
【上田委員】
ありがとうございます。上田でございます。オンラインから失礼いたします。
本日は、日本IR協議会の佐藤様、NBIMスタンプ様、御説明ありがとうございました。詳細なグローバルな比較分析をいただきまして、本当に大変参考になりました。また、これまでのディスカッションも大変有意義なものでした。それらを踏まえて、私から2点コメントさせていただきたく存じます。
第1点目、開示の枠組みです。日本の開示制度ですけれども、これもう皆様御案内のとおり、現状、有価証券報告書という法定開示文書と統合報告書に代表される任意開示文書がそれぞれ独立の媒体として併用されています。これは、本日、佐藤様からの御報告にもありましたように、米国では法定のファイリング文書であるForm 10-Kをベースに、アニュアルレポートを策定されているということです。私もいろいろ見ていますと、近年では非財務情報を含めた日本でいう統合報告書的なものをアニュアルレポートとして公表するという、報告書になっているかと思います。欧州においては、国により違いはあると思いますが、法定開示文書としてのアニュアルレポート、年次報告書に財務情報とか非財務情報を統合した形で開示しているという形が一般的でないかと思います。日本はどうかというと、伝統的に日本の開示制度は米国を参考にして設計されていると思っております。Form 10-Kのようなファイリングドキュメントを想定して、ここに財務とか義務開示項目を中心とした法律上求められる情報を淡々と、佐藤さんがおっしゃいましたが、淡々と開示しているという内容であったかと思います。
これが2020年代に入って、有価証券報告書をベースとして、非財務情報も有価証券報告書に統合していくという方向に大きく制度のスタイルが変換していると思います。米国型のスタイルから欧州型の開示のスタイルへと変更していると考えております。他方では、これは日本独特のことでありますが、有価証券報告書の高度化に先行する形で、統合報告書が実務に定着をして、非財務情報の開示媒体として、多くの会社で活用されているという状況にあるかと思います。この点、有価証券報告書は、投資家の企業価値評価に必要な情報が法定という形で決められています。会社にとっては、仮に開示を積極的にしたくないという情報であったとしても、投資家にとって必要な情報が有価証券報告書には含まれているという点で意味があります。また、財務情報は監査、サステナビリティ情報は、今設計が進んでいますけれども、保証が提供されているということで、信頼性も最も高い情報媒体になっていると考えます。
他方、統合報告書の内容が充実されていく中で会社負担は増しています。例えば時価総額が小さい会社の統合報告書を見てみますと、正直なところ、内容が二極化していると感じます。統合報告書に開示されている情報というのは、有価証券報告書へ記載してもふさわしい内容も多いように感じております。そのため、有価証券報告書を中核の開示媒体として、財務、非財務の情報を開示して、それを補完する場所として、株主・投資家、その他ステークホルダーに対してリーチする手段として必要があれば、統合報告書やサステナビリティレポートを利用するという形があってもよろしいのではないかと思っています。
例えば、インタビューとか、対談とか、社会貢献の紹介とか、それ自体が企業価値の算定に直接つながるというものではなかったり、また、基準化されてない情報であったりしても、将来の価値評価の参考になる情報というのが統合報告書には多く記載されているので、この活用の余地も多いのかと思っているところです。
そのためには、制度だけではなくて、企業の実務の見直しも必要であると思います。これは制度を議論するこの場で発言するのがふさわしいかどうかよく分からないですが、会社によっては、有価証券報告書は財務部門、統合報告書はサステナビリティ部門が作っているという、若干縦割り的な場合もあるようで、そういうところの整理も促していけるとよいのではないかと思います。また、担当者の意識の問題として私がショックを受けたことがあって、ある企業の統合報告書の担当者から、既に統合報告書があるのに、なぜ有価証券報告書でもサステナビリティ情報を開示させるのかと、役所は何考えているのだというような批判を受けたということがあります。背景には、この開示担当者の中には有価証券報告書よりも統合報告書のほうが重要だという意識があるのかなと思います。この辺りも企業側の文化とか意識の変化も併せて変革していただけるとよいなと思いました。
第2点として、開示のタイミングです。本日の御報告を伺っていますと、グローバルな投資家とか企業の動向として、総会前開示が定着していると理解をいたしました。この点、これも日本は従来、米国のproxy statementのようなものとしての招集通知であったかと思いますが、今回議論しているように、開示全体の枠組みが変更される中で、ここも変えていく必要があると思っています。
したがって、議決権行使の参考にすべき情報として有価証券報告書の位置づけを変えているように、会社法の事業報告との整合性の検討というのは意義あるものだと思います。その前提として、株主総会というのは、これ自体完結した対話として位置づけるのではなくて、長い継続的な対話の中での重要な一区切りということを考える必要があると思っております。そうすると、情報開示というのは、対話のベース、基盤になるものでありますので、それに合わせて、総会の日程、開示の在り方、スケジュールですとか中身というのも一連の動きとして変える必要があると思っています。
最後になりますが、強調したい点がございます。会社は1つしかなくて、ファクトも1つしかないはずなのに、複数の媒体が、制度が違うということで並走しているということの意味です。たまたま日本は任意開示が先行しましたけれども、今、法定開示の見直しが進められて、再整備されている中で、有価証券報告書を中核として任意開示媒体をどう位置づけるのか、中身をどうするのかというのを今、考えるタイミングに来ています。本日のお二人のお話を聞いてますますそのような思いを強くしたところです。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、再び会場に戻りまして、黒沼委員、武井委員、それから三瓶委員、その後に御発言ください。初めに黒沼委員、どうぞ御発言ください。
【黒沼委員】
私からは、意見でも質問でもなく感想めいたコメントを1点だけ申し上げたいと思います。今日の佐藤様の御報告で、EUの法定開示の量が多い。しかも、報告書が比較的早い時期に開示されているということが私にとっては印象的でした。そうすると、次の疑問は、企業からは負担が大きいという不満が出ていないだろうかということです。それがあるのか、ないのか。もしないとしたら、どういう工夫でうまくいっているのかということが、我々が今後ワーキング・グループで議論していく上で重要になってくるのではないかと思いました。
【神作座長】
ありがとうございました。御質問ではなくてコメントと理解してよろしいですか。
【黒沼委員】
はい。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、武井委員、どうぞ。
【武井委員】
今日のプレゼンの中身はとても有益で、大変勉強になりました。私も感想めいた話になるのですけれども、法定開示と任意開示の関係で、当然任意というのは随時に出るものでもあって、随時に出る任意開示はなくならない。ですので、今、議論しているのは、年に1回の総括における法定と任意の関係であるということだと思います。いろいろアップデートもしていく任意開示の機能は何らなくならないので、年に1回出す総括としての法定と任意の関係の話だと思っています。
年に1回出す部分について、佐藤さんのラップ型のお話し、とても面白いなと思いました。ラップ方式は日本の参照方式ともちょっと違うと思うのですけれども、何でもかんでも全部有報に書くのかということと違って、一覧して見られること。しかも投資家の方が一覧して1か所で見られて、作成言語が投資家の方がAIを使って分析できる言語で一括に書いてあれば、ラップ型というのは大変面白い試みではないかと思います。ラップ方式について、あまり私も細かいところはよく理解していないですけれども、参照方式とも多分違う話であって、それに伴ういろんな法的責任のリンクなんかも多分違ってきているのだと思います。ラップ方式というのがアメリカで相当起きている。しかも、グロッシーアニュアルレポートというつやのあるアニュアルレポートということになると、写真、動画まであると相当訴求力もあると思います。一種の「日本版アニュアルレポート」という言い方をしていいかどうか分からないですけれども、アメリカの1つのやり方がとても面白い選択肢だなと思います。ぜひラップ方式の実態とか、日本との違いとかも含めて、いろいろ詰めていただくと面白いかなと思いました。
あと、もう一つの切り口からの関連コメントで、過去と将来の切り口があります。当然、法定の書類と過去の情報とは相性がいいのですけども、法定の書類と将来の情報はなかなかいろいろ限界があるといいましょうか、将来のことを全部書き切るのはなかなか難しい。今回の法改正で、サステナ情報の絡みで、将来情報のセーフハーバーをつくっていただいて、それはとてもいいことだったのですけれども、依然としてまだ日本の有報の法的責任が欧米法制よりも厳しい中で、将来のことを全部法定でというのはやっぱりどうしてもなかなか無理が生じると。そういう中で、どうしても将来に関しては、任意にも頼らざるを得ない。任意を残すのであれば、ラップ型というか、グロッシーなアニュアルレポート含めて、任意にも頼った中での一覧性のあるアニュアルレポートということを訴求するのがいいのかなと思って、そういう意味で、佐藤さんのお話、とても興味深かったです。
あと、さらに言うならば、ちょうど会社法の改正の議論の中で、年に1回と話で株主総会の在り方ともリンクしている話になっています。株主総会で何を言うべきかという中で、日本企業が外に言うべきは、過去の情報も大事なのですけれども、将来のことももっと言うべきじゃないか。この点が多分情報開示の質として大事ではないか。株主総会でも、今日、招集通知の話も一緒に出ていますが、一緒にアニュアルレポートとして言うのならば、株主総会とかでも、会社法に書いてある情報でどうしても過去のものが多くて、過去のことばっかり説明して終わっているという総会が多い。せっかく来ていらっしゃる個人株主の方に対しても、将来をもっと総会でも言っていくべきだと。そうしたときに、今回の改訂ガバナンス・コードでも成長の道筋とかがちゃんと示されてわけなので、そういったことを総会レベルもちゃんと言うと。質としては、将来のことをどう言ってもらうかということが大事だと思いました。
その観点から、今回の会社法の改正でも議論されているとおり、紙からの逸脱といいましょうか、紙で書く、もしくは書面交付請求権の有無を含めて、紙で書かなきゃいけないとなると、どうしても書けることに限界がある。将来のこともなかなか書きづらい。今回、会社法改正がもし順調に進んでいって、書面交付請求権がなくなっていくと、まさに電子の世界で全部済む。株主総会も電子で済む世界になると、より将来のことが言いやすくなるので、将来のことを訴求するという部分を、会社法改正も踏まえて、「日本版アニュアルレポート」として組み込んでいっていただく方向性もあるのかなと思いました。以上、感想でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、三瓶委員、お願いいたします。その後、オンラインで御参加の松井委員、それから永沢委員に御発言をお願いしたいと思います。まず、三瓶委員からどうぞ。
【三瓶委員】
先ほど複数の委員から米国のアニュアルレポートについて御質問があったので、ここで補足したいと思います。イメージですけれども、ラップ型に関して、私が知る限り、アニュアルレポートという名前ですけれども、Form 10-Kにテキスト情報が加わっただけというものです。過去、私が目を通した中で、一番簡素なものは、ギリアド・サイエンシズという会社だったと思います。Form 10-Kの公表からアニュアルレポートの公表までの期間にForm 10-K部分の内容は全く変わっていません。財務情報はアップデートや追加情報が全くない状態で、3ページほどのShareholder LetterがCEOの署名つきで追加されただけ。このテキスト情報が加えられただけでアニュアルレポートという書類の名称に変わる。その程度のことなので、財務的な情報がForm 10-Kの公表からアニュアルレポート公表までの間に何らかアップデートされたかどうかというと、そうではないという認識です。取りあえず補足です。
【神作座長】
貴重な情報提供ありがとうございました。それでは、オンラインで御参加の松井委員、どうぞ。
【松井委員】
ありがとうございます。まず、開示媒体における情報の重複の解決や質の向上については、他の委員の御発言、本日の御報告者の内容にあったとおり、やはり再整理をする必要があると思います。
ただ、問題意識の一部には、会社の実務上あるいは組織上、所掌が異なることで、法的な整理以前に実際の作業量が多くなっているということに起因する部分もあるかと感じました。例えば、冒頭の岩井委員の問題意識でございますが、過年度対応していると次年度対応が間に合わないというのは、これは総会前3か月についてだけ忙しいというわけでなく、年間を通じた作業量が純粋に多過ぎるのだということだと思います。こういったご指摘の原因としては作業部署と作業負荷の無駄という部分に起因する部分も多いのかなと思いますので、法制度の側ではそれを理由としていきなり企業が提供すべき情報量を大きく減らすという処方箋を出すのではなく、まずできるところを整理しながら業務改善も求めるというのが第1選択ではないかと思います。
次に、重複を減らすべく開示媒体をどこにするのか、参照を認めるのか、どの情報の正確性について法的な担保が必要かといったようなことについて、それぞれ検討するというのがあり得るべき方法だと思いますが、これについては有報の比重を落とす解決という御意見と、やはり有報が重要なので、一体化とか参照方式といったオプションについての責任を整理するのが重要だという御意見があったと思います。前者については、特に対話型情報という概念については、三瓶委員がおっしゃったように、曖昧で自由度の高い記載で、極論すると根拠が何もないようなもののことをそう呼んでおられるのだとすると、それは有報の記載における長期的な見通しに係る記載とは別のものだと考えております。短期的な数値を長期的な視野に基づいて出ているということを示す必要がある場合があり、長期的な見通しにかかる記載はそのために要求されるもので、そうだとすると有報から簡単には落とせず、その前提でセーフハーバーというものの保護を与えていると理解しております。したがって、自由に展望や夢を書いたようなものを、そういったものと同列だというのは少し違うのかなと考えました。
後者について、有価証券報告書の記載事項として必要な情報は何かということを明らかにした上で、一定のものについて参照方式などを用いるというやり方は適切かと思います。けれども、任意開示媒体においては、先ほど出てきたように、ダブルマテリアリティを含めた内容等が現に記載され、インタラクティブなやり取りをするということが行われているのだとすれば、どの書類のどういった記載事項にどういった責任が伴うのかは、どちらの議論をするにせよ、基本的には避けられないのかなと感じたということです。
次に、有価証券報告書の提出時期と株主総会の日程の前後関係については、まずは期間内の書類の提出が難しいことへの対処方針の第一選択として情報量を減らすという発想を取らないということを確認した上で、3週間を確保するために、総会を3か月以降に開催するという点については、法的に許されない設計では全くないですし、また株主総会において参照できる情報がよりアップデートされたものになること自体は望ましいと考えるということもできるかと思いました。過去には、計算書類作成のインターバルが長いことを前提として、株主総会の重点的な機能は、過年度の業績と配当について株主のオーソライズをもらうという点にあると整理することが自然だという実態があったのかと思いますけれども、その点自体も変わっているという議論は当然あり得るかと思います。
他方で、実務的に実施可能な期間を確保するという発想だけで総会開催期日を遅くしていけばそれで済むのかということですけれども、そうすると逆に枝葉の情報を減らせば早くなってもいいのかとか、あるいはもっと開示事項が増えればさらに遅くなってもいいのかとかいった話につながると思います。どれだけ時間があったら開催可能だという発想からする議論はあまり抜本的な解決にならないのかもしれないと思いました。この点、先ほど海外機関投資家にとっては、全ての情報をいきなり3週間前にもらうということに意味があるわけではないという御議論がありましたけれども、どういった情報がどのくらいの時点であるということが重要なのかという観点からの整理というのも重要かと感じました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、永沢委員、どうぞ御発言ください。
【永沢委員】
本日は所用で遅れてしまい、申し訳ありませんでした。お二方のプレゼンテーションを聞くことができず、とても残念です。事前に頂いた資料に基づいて感想めいた意見を申し上げたいと思います。間違った理解があると思いますが、御容赦いただきたいと思います。
私からは2点申し上げたいと思っております。
まず、他の委員の皆様の御意見をお聞きしながら、この度のワーキンググループの検討で目指すべきことは、情報を減らすことではなくて、どうしたら開示にかける企業の皆様の人的・時間的資源を投資家にとって有用な情報の提供に振り向け直すことができるのかというところにあるのではないかと思いました。リソース不足という御意見も出ました。異なる媒体を、財務部、総務部、サステナビリティ室といった異なる部署が並行して制作している状況が現状では多くの企業において起きていると思います。
投資家の立場から申しますと、経営者や取締役会に重要な情報がどう集まって、どう意思決定されているのかというところが一番の関心事なのですが、現状の報告の中からはそこがあまり見えてきていない。投資家が一番知りたいことがお伝えいただけてないというのが現状なのではないかと思います。情報開示は投資家の投資判断のためにあるという原点に立ち返っていただくとともに、限られたリソースの中で、どうしたらそういったことが実現できるのかを議論できたらと思います。
本日ご発表いただいたスタンプ様の資料を拝見し、特に、情報の量よりも、その企業に固有の具体的なことや、財務情報とのつながりをどう投資家に伝えるのかが大事だというところは貴重なアドバイスであったと思います。情報の基本的な掲載先を決めて、参照先としてこの資料があるというようなことを示すというような考え方が有効ではないかということ、投資家向けガイドと翻訳していいでしょうか、そういったものをつくるというようなアイデアにも共感いたしました。わが国の情報開示制度は有価証券報告書を核として進めていくべきだと考える立場からは、有価証券報告書に、投資判断上の重要な情報を置いて、株主総会の議案を判断するために必要な情報は招集通知に置くというように、それぞれの資料の役割を明確にした上で、ほかの資料に同じ内容をコピペするのではなく、基本となる資料の該当箇所に確実に跳べるようにするというようなことが、デジタル技術も進んでいますので、可能になってきているのではないかと私も思います。
2点目になります。今回もやはり企業規模への配慮という話がこれからの議論の途中で出てくると思います。佐藤様の資料から、統合報告書の作成や投資家との対話に充てられる人員や資源は、企業規模によって相当な差があるということも改めて確認できました。一方、規模の小さい企業の場合は、アナリストによる調査や情報発信が限られ、市場に出される情報が限られてしまう傾向があります。個人投資家でも、こうした企業に投資していますが、有価証券報告書を直に読むことまではしない方が大半であることから、規模の大きくない企業ほど、企業自身がウェブサイトに決算説明報告書などを掲載するなどして、積極的に重要な情報を分かりやすく伝えていただくことがより重要になると思います。企業規模への配慮は必要ですが、投資家に提供される情報の質の低下につながるようなことは避けるべきで、むしろ。投資判断に重要な情報については、規模にかかわらず、共通の基盤をつくっていくことが望ましく、規模の小さい企業の情報開示をどのようにサポートしていくのかについても議論できるといいと思います。
最後になりましたが、佐藤様とスタンプ様に、有益な情報と分析を御提供いただきましたことに、お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、清原委員、それから最後に飯田委員から御発言をいただければと思います。清原委員、どうぞ。
【清原委員】
ありがとうございます。今日は貴重な御報告をIR協議会の佐藤様、それからNBIMのスタンプ様からいただきまして、どうもありがとうございました。
時間が押しているところでありますので、簡単にコメントさせていただきます。今議論しているのは、制度の見直しですが、これまで積み上げられた慣行、これを一度、ゼロベースとまでは言わないにしても、少し頭の片隅に、少しずらしたところで、どう変えていくのがいいかという話にフォーカスしていかないと、どうしても現状に基づく弊害その他の議論ばかりになってしまい、堂々巡りになりかねないですので、そこは何とかした方がよいなと考えています。
見直しをするということであれば、未来志向で、今あるものの議論だけでなく、どう変えていくことが制度の本来の趣旨に合うか、現状において非効率なこと、重複、いろいろ指摘されているもの、これを対処しなければならないわけですが、その合理性を求めるとすれば、有価証券報告書を市場法制における開示情報の中核に位置づける。それは利用者、投資家にとって有用なものでなければならない。現状、軽減とか簡素化という話がありますけれども、本当に有用な質の高いものがきちっと開示されているかというところも併せて考えないとならず、単に縮小するという話では本来ないはずであって、そこのところは見失ってはいけないと思います。
企業の方からすると、重要性が高くないかもしれないものまで開示することへの手当てや、それから複数のところで開示するといった重複を排除するということはすごく御関心のあるところだと思います。同時に、実務慣行そのものも制度の見直しに合わせて変えていかなければいけないということも考えていただく必要があるだろうと思います。
慣行に関して気になっておりますのは、各部署がいろいろな書類を作っていて統一性が取れてないかもしれないこと、これに対して企業として効率化を図って統一するという姿勢、これを示していただく必要があるのではないかということがそもそもあって、1つの発行体から開示される情報は、開示の媒体が違っても、一貫性、統一性、整合性がなければおかしいはずです。そういった開示を効率的に行うためにどうするか。これは経営トップのリーダーシップとともに取締役会がしっかり見るべきということ、現状の恐らく問題で大きなところとして、取締役会がディスクロージャーに対するガバナンスをしっかり効かせ切れていないということがあって、コーポレートガバナンス・コードでも原則の中でしっかり取締役会の役割がうたわれているところであります。遵守されている企業は多いと理解はしていますけれども、やはりそこの点をも踏まえて考えた上で、未来志向でこの開示制度について、企業としてはどういう姿勢で臨むのか、投資家に対しては、課題があればそれは言っていただく。御意見の中であった非常に重要なところとして、総会の日程関係でいうと、過年度の対応が続くことで次年度の企業活動に注力すべき時間が損なわれる、これは望ましくないという点がありました。株主総会の位置づけですとか、株主総会周りの議論を法制審でやっているので、法制審の議論も踏まえていくと、どう見直していくことができるかというところまで踏まえた議論をしていくことが、我々、ディスクロージャーワーキングに求められているのかなと思いました。
最終的に、有報で全て書けということではないですけれども、参照方式を含めて、中核の書類としての有報が機能するように少し柔軟に制度の見直しが議論ができればいいのではないかと思う次第であります。
感想も含めたものとなりましたけれども、私からは以上になります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、飯田委員、どうぞ。
【飯田委員】
本日は非常に示唆に富むプレゼンテーションいただきまして、誠にありがとうございました。また、プレゼンテーションの内容及びその後のディスカッションを伺っていて、改めて有価証券報告書に期待される役割というか、機能というか、それが多様化というか、高度化するというか、そういうアップデートするべき時期に来ていて、そういう総論的なことを踏まえて、今後、各論的に開示事項の内容を足し算、引き算するということになるかと思います。そういうことを議論していく必要があるだろうということであり、改めて有報がなぜ求められるのか、そういう大きな視点を持ちながら今後も考える必要があると思いました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。これで全ての委員の方から御発言をいただきました。私の進行の不手際で時間を大幅に過ぎてしまっております。オブザーバーの方々におかれましては、次回以降、御発言をいただくということでお許しをいただければと存じます。
それでは、本日のワーキング・グループはこれにて終了とさせていただきます。
事務局から、何かございますでしょうか。
【小長谷企業開示課長】
次回ワーキングの日程でございますが、後日、事務局から改めて正式な御案内をさせていただきます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。お忙しいところ大変活発な御議論いただき、誠にありがとうございました。
―― 了 ――
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