金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」(第4回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年6月29日(月)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

それでは予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」第4回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきましてまことにありがとうございます。

初めに、人事異動に伴うオブザーバーの交代のご紹介と、本日の参考人のご紹介を事務局からお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは私からご紹介申し上げます。

本日、皆様方のお手元に新しいメンバー表をお配りしているかと存じます。日本銀行における人事異動に伴うオブザーバーの交代についてご紹介申し上げます。あちらのほうにご着席いただいておりますが、日本銀行金融機構局林審議役でございます。

【林オブザーバー】

よろしくお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

続きまして本日の参考人をご紹介申し上げます。私から向かって右側にご着席いただいておりますが、慶應義塾大学経済学部池尾和人教授でございます。

【池尾参考人】

池尾です。よろしくお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私からのご紹介は以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。皆様、どうかよろしくお願いいたします。

それでは議事に移らせていただきたいと存じます。本日はまず外資系金融機関のストラクチャーや経営管理の状況、規制見直しの要望事項について、中村委員から20分程度ご説明をいただきたいと思います。その後、池尾参考人から「金融グループについて」と題しまして30分程度ご説明をいただき、最後にこれらのご説明に関し一括して討議を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは中村委員、お願いいたします。

【中村委員】

UBSグループ在日代表を務めております中村でございます。本日は国際銀行協会(IBA)を代表いたしまして、外資系金融機関の現状と日本の金融規制に対する要望を述べさせていただきたいと思います。

本日は4部構成でご説明申し上げたいと存じます。まず最初にグローバル金融業界の流れですが、7年前のリーマン・ショック後に世界の金融規制の方向が大きく変わりました。この流れを受けて、UBSでの対応、そのビジネスモデルの変更について説明いたします。そして、それらを支えるUBSのガバナンス体制、UBS Japanの運営体制についても述べさせていただきます。最後に、IBAから外資系金融機関からの要望についてまとめさせていただきましたので、そのことをご報告させていただきたいと思います。

それでは第1部の説明に入らせていただきます。2ページをご覧ください。2008年のリーマン・ショックに前後いたしまして、金融市場では流動性の危機が発生し、グローバル金融機関の一部にも公的資金が投入されました。信用収縮はグローバル実経済に大きな影響を与え、金融機関は世論の批判を浴びるとともに、二度とこのような事態を起こさないよう法令が改正され、規制が大幅に強化されました。米国ではドッド・フランク法、スイスではToo Big To Fail法、イギリスでは銀行改革法案、EUでは銀行再生・破綻処理指令が出されました。さらに、スイス緊急対策を含む破綻処理計画をはじめとする規制が整備され、ボルカー・ルールが本年より、バーゼルIIIが2019年に施行されるなど、実行段階に入ってまいりました。申し上げるまでもありませんが、これらの法令・規制の厳格化に共通することは、グローバルな金融機関に対する資本規制等を強化することによって、金融機関が抱えるリスクを減額されること、大き過ぎて潰せない金融機関に対して破綻処理方法を明確にさせておくことです。

それでは次に、このような法令・規制の厳格化がグローバルな金融機関に与えた影響につきまして、UBSを例にとりましてご説明を申し上げたいと思います。4ページをご覧ください。この図はToo Big To Failに対応する前のUBSの会社組織を表しております。資本、流動性、資金調達、リスクマネジメントがUBS AGを中心に一元管理されておりました。その結果、経営リソースの配分という観点からは非常に効率のよいストラクチャーになっておりました。しかし、UBSが何らかの形で一部でも揺らいだ場合には、UBSの全オペレーションに影響を与える構造になっていたわけでございます。

これに対しまして5ページの新法人組織図は、まだ最終段階への移行途中ではありますが、UBSグループ持株会社を設立し、破綻処理能力を大幅に向上させ、Too Big To Failに対応する組織構成になりつつあります。新しい組織図では、スイス、EU、米国などのリージョンが中心になってそれぞれが独立して経営リソースを管理し、兄弟会社間の金融取引を制限することによって、効率は悪いのですが、どこかで問題が発生してもUBS Group AGがSingle Point of Entryとして債権をベイルインし、必要となる子会社を支援し、また場合によっては子会社を切り離すことによって、リスクが他のビジネスの運営に伝播しない形になっております。

それでは次に、UBSのビジネスモデル、経営戦略、その成果についてもう少し具体的に説明したいと思います。6ページをご覧ください。金融機関にとりましては、規制が変わることは、そのビジネスモデルにとっては最大のリスクの一つです。例えば投資銀行業務、とりわけトレーディング業務はかつて最も収益性が高く、資本効率が高いビジネスとされておりました。しかし、新しい資本規制の導入によりまして、UBSでは今後高い株主リターンを望めないトレーディング業務を縮小し、長期にわたってリターンが望める対顧客ビジネス、特にウェルス・マネジメント業務を戦略の中核として位置づけました。また、スイスにおいては商業銀行オペレーションを含む総合金融グループを目指すこととしました。さらにはアドバイザリーや高速の電子ブローキング・ビジネスを中心に投資銀行業務を再定義し、バランスシートとリスク・アセットの縮小を図りながら、複雑な商品のトレーディングを大幅に縮小し、オペレーション・リスクの低減を図りました。また、バックオフィスなどを積極的にオフショアリング、それからハビングをし、低い収益でも高い利益が出るようなコスト構造をつくり出すことによって、以前よりも資本効率が改善された投資銀行ビジネスモデルを再構築いたしました。

その成果を数字を踏まえて説明させていただきたいと存じます。7ページをご覧ください。まず左のグラフになりますが、リスク資産を大幅に削減しました。2011年から14年にかけて43%の削減を行っております。結果、真ん中のグラフにありますように、自己資本比率は670ベースポイント向上いたしまして、2014年末には普通株Tier1比率はバーゼルIII完全適用ベースで13.4%、自己資本比率換算では18.9%となっております。一方、右のグラフにありますように、再構築いたしました新しい投資銀行、インベストメント・バンクは、目標とするRoAEの15%を上回る成果を上げております。

次の8ページですが、成長戦略の一つの成果である収益をあらわしております。中核といたしましたウェルス・マネジメントを中心に、左の棒グラフにありますように順調に収益が拡大しております。その結果、右上の円グラフにありますように、2010年の税前利益のうち半分近くがウェルス・マネジメントからの利益となっております。さて、ここでそのときのリスク資産の内訳を見たものが右下の円グラフでございます。ウェルス・マネジメントが約半分の利益を稼ぎ出していると申し上げましたが、ここで使用されているリスク資産を見てみますと4分の1以下となっておりまして、収益は半分ですが、リスク資産は4分の1ということで、資本効率がよいというのがお分かりいただけるかと思います。一方、インベストメント・バンクは先ほど目標リターンよりも高いRoAEを上げていると申しましたが、他のビジネスと比べますと、相対的にリスク資産の比率が高く、RoAEが低いということで、将来的には、現在27%の利益を上げておりますが、20%以下の収益にまでさらに落としていく予定です。といいますか、周辺のビジネスが立ち上がって、結果的に比率が下がるということになります。

9ページはご参考でございますが、UBSがどの地域でどれぐらいの収益を上げているかを示してございます。

それでは次に、こうした大胆なビジネスモデルの変更、ビジネスポートフォリオの変更を決定し実行したUBSのガバナンス体制についてご説明させていただきます。セクション2の11ページをごらんください。ご存じの方も多いかと思いますが、UBS Group AG、UBS AGは、Board of DirectorsとGroup Executive Boardの二重役員体制によって構成されております。取締役会というのは、会長の指揮のもと、グループCEOによって推薦されたグループ戦略の決定、グループ執行役員会のメンバーの指名権等を持ちます。取締役会のメンバーの4分の3はUBSグループとは非利害関係者でなければならないと定めております。補足でございますが、現在の取締役会のメンバーは会長以外全員が社外取締役となっております。一方、グループ執行役員会は、グループCEOの指揮のもと、UBSグループとそのビジネスの最終的な経営責任を負い、戦略の執行等を含む全体的な責任を持ちます。要するに、執行と監督責任を完全に明確に二重ボード体制で分けているということでございます。

それでは次に、UBSのリスク・ガバナンス体制について説明いたします。12ページをご覧ください。UBSではバーゼルのオペレーション・リスクの議論から3層のディフェンスラインが設定されております。1番目のディフェンスラインは、ビジネスの現場においてリスク管理するビジネス・マネジメントそのものです。2番目のディフェンスラインはコントロール部門で、彼らはビジネスとは一線を画して、第三者の立場から客観的にリスク管理を行います。以前は共同で行っていたものを、1番目、2番目というふうに分離しております。そして、これらを横断する形で部門ごと、地域ごと等のリスクコミッティーが設けられており、フロント・ツー・バック、横断的なチェック体制が設けられています。さらに3番目のディフェンスラインとして内部監査部門がありまして、この部門はグループCEOにではなく、その上の取締役会に直接レポートするという形になっております。

さて、ここまでUBSのグローバルレベルの話をさせていただきましたが、ここからはUBS Japanの運営体制について説明させていただきます。14ページにありますとおり、UBSグループは3つの法人と1つのジョイント・ベンチャーを持っております。

この図を頭に入れていただいた上で、次のページの法人組織とグループラインの関係をご覧になってください。この図にありますとおり、UBSのビジネスラインは規制及び業務内容に従いまして複数の法人を通じて業務展開を行っております。これら3つの法人にはそれぞれ銀行支店長、社長がおりますが、法人組織の垣根を越えてUBS Japanの全体業務をまとめておりますのがカントリー・ヘッドの私になります。内部管理部門や業務上必要のあるフロント部門は兼職者としてダブルハット及びトリプルハットとしております。このファイアウォール規制につきましては、後ほど規制化の要望のセクションで触れさせていただく予定でございます。

最後にマトリックス・マネジメントについて説明いたします。16ページをご覧ください。先日のメガバンクさんのご説明によりますと、本邦においてもマトリックス・マネジメントが始まったようでございますが、外資系企業ではグローバル規模でのマトリックス・マネジメントが一般的となっております。この図の最初にありますとおり、青い四角のウェルス・マネジメント、富裕層向けビジネスの日本ヘッドは、カントリー・ヘッドである私にレポーティングするだけではなく、アジアのウェルス・マネジメント・ヘッドにもレポーティングを行います。私とアジアのウェルス・マネジメント・ヘッドは共同して日本でのウェルス・マネジメント業務を進めるわけですが、アジアのウェルス・マネジメント・ヘッドが主に業務執行権を持っているのに対して、私は最終的に日本法人の中でのガバナンスを行うために、それに対する承認権、拒否権を持っているという格好になっております。このように上司が2人という体制のもとで、部門長レベルに限らず、ほぼ全ての管理職もしくはシニアの社員が2人の上司を持っております。人事評価においても2人の上司の意見が反映されます。ローカル・マネジメントもファンクション・マネジメントも最終的にはグループ全体のCEOの指揮監督を受けるという形でグループ全体の経営が行われております。このように法人格を超えたファンクショナル・マネジメントは主に以下の2点で裏打ちされています。まず1点目ですが、親会社が定めるポリシーがグループ全体に適用されており、その中で重要事項については法人格を超えたファンクショナル・マネジメントの承認が必要とされています。2番目は、グループ各社の従業員は雇用契約の中でローカル・マネジャーだけでなくファンクション・マネジャーへのレポーティングが定められています。この2つの根拠でございますけれども、グループトップの親会社が子会社に対して持っている株主権がベースとなっておりますが、株主である親会社は株主としての議決権を行使するだけでなく、グループのポリシーを通じて日々グループ全体を管理し、さらに本国の規制当局がグループ全体としてリスク管理を求めているということに依拠しております。

以上、UBSについて説明させていただきました。

次のところから、IBAが取りまとめました外資系金融機関から寄せられた要望についてご説明させていただきたいと思います。なお、IBAは日本で活動する外資系の銀行と証券会社から構成されております業界団体で、現在22の国と地域から56の金融機関が参加しております。

それでは、セクション4の18ページをご覧ください。最初に申し上げたいことは、私どもにとりまして、日本におけるグループ経営上の最重要問題とは銀行と証券の関係であるということでございます。その一つは、銀証など複数のグループのグループ内法人の間で顧客情報の共有を禁止している内閣府令の規定でございます。私どもはこの規定を撤廃していただきたいと考えております。もう一つはグループ内法人間での兼職する役職員についてですが、金商法64条の2の規定によって、2つ以上の法人の外務員として同時に登録を受けることが禁止されているということで、私どもはこの禁止規定を廃止していただきたいと考えております。

次に銀行支店の業務範囲についてですが、このワーキング・グループを通じて、国内の銀行や銀行グループの業務範囲について規制緩和が行われる場合、同様の業務が外資系金融機関にも可能となるよう平仄を合わせていただきたいと考えております。また、外部委託可能な業務の拡大や業務委託の共同化などについては外資系金融機関としても要望したいと考えております。

そのほか、外資系銀行支店を含む銀行の事業年度が4月から3月と銀行法で規定されているのには、私どもには多少の問題がございます。最後に、破綻処理制度において、ある金融機関が破綻し、その結果、預金保険機構に損失が発生した場合、特定負担金の基準となる資産の算出方法が外資系金融グループにとって不公平な制度設計となっておりますので、改善を要望したいと考えております。

それでは、銀証間の顧客情報共有禁止規定の撤廃要望について少し詳しくお話ししたいと思います。19ページをご覧ください。まず前提といたしまして、グループ内法人間で顧客情報を共有すること自体、弊害または利益相反そのものではないと考えております。今、世界の流れは銀行業務と投資銀行業務の分離に向かっていますが、この流れは預金者や納税者を投資銀行業務のリスクから守るためのリスク分離の流れであって、グループ内法人間の情報遮断とはそもそも関係がありません。ここで申し上げたいことは、実体的なファイアウォール規制と既に導入されている利益相反管理義務とのベストミックスを目指していただきたいということでございます。もう少し詳しくご説明します。ここで実体的ファイアウォール規制と呼んでおりますのは、金商法上のファイアウォール規制のうち情報共有禁止規定以外の実質的な利益相反行為の類型を列挙した部分でございます。具体的に言いますと、抱き合わせ営業の禁止、優越的地位濫用の禁止などでございます。2009年からはこれらに加えまして利益相反管理体制を整備する義務が課されました。これはグループ法人の行為によって顧客の利益が不当に害されることのないよう適切に管理する義務を定めたもので、諸外国における規制とほぼ合致します。私どもでは、この利益相反管理義務を、金融グループの利益相反行為を防止し、顧客利益を確保するための包括的プリンシプルとして、これに実体的ファイアウォール規制を適切に組み合わせることが最も規制効果を生むものと考えております。

最後に20ページをご覧ください。ちょっと長くなりましたが、顧客情報共有規制のもたらす弊害・不経済について最後に触れさせていただきたいと思います。ここでは2点だけ説明いたします。1点目は、先ほどUBSにおけるリスク管理の中で、Three lines of defenseを申し上げました。その実効性についての問題でございます。例えばマネーロンダリング防止体制に関して顧客と接触する営業部門が前線で顧客のスクリーニングや取引の適切性の検証をFirst line of defenseとして行うことが求められるわけですが、現在のファイアウォール規制では、内部管理目的で共有される顧客情報は内部管理部門から営業部門に伝達されることができなくて、First line of defenseが機能しないという格好になっております。

もう一つは、顧客情報共有禁止規定によりまして、外資系金融グループのアジアの地域統括本部を日本に置くことを難しくしているという問題でございます。外資系金融グループにおきまして経営管理は、各地域のCEOなど厳密な意味での経営管理者レベルのみで行っているのではなく、先ほど紹介しましたマトリックス・マネジメントのようにあらゆるレベルで行っておりまして、役員以外のスタッフも関与いたします。そういう意味でいろいろな問題が出てくるというわけでございます。法人営業部門を例に挙げますと、日本では顧客情報共有禁止規定のため銀行と証券会社の間で顧客データベースとスタッフを少なくとも一部について分断せざるを得ないという問題がありまして、包括的な顧客管理を行うことができない東京拠点の法人営業部門がアジア地域全体の同部門の経営管理や営業戦略を立てることができないということが私どもの問題になっております。

以上、外資系の金融機関を代表いたしまして、私からの報告と要望とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは引き続きまして、池尾参考人にお願いしたいと思います。どうかよろしくお願いします。

【池尾参考人】

慶應義塾大学の池尾と申します。本日はよろしくお願いします。ちょっと声が今日は出にくいので、お聞き苦しい点はご容赦下さい。それで、意見を表明させていただく機会をいただいたことはまことに光栄に思っておりますが、ただ、どういう位置づけで私が意見を述べることになったのかという点で、ちょっと戸惑っている面も正直言ってあるんですが、お話しさせていただきたいと思います。

お手元に資料2という形で配付されていますレジュメに沿って話を進めさせていただきたいと思います。3項目に分けてお話をさせていただきます。1項目目が業務範囲拡大をめぐる経済思潮の変化、2項目目が金融コングロマリット化の動因です。それから3番目が金融グループの組織構造ということでお話しさせていただきたいと思います。

それで、まず1番目の考え方の変化ということで、先般の金融危機の前後で、業務範囲拡大をめぐる考え方といいますか、フィロソフィーに大きな変化が生じていると認識いたしております。金融危機以前、1980年代ぐらいから金融自由化の進展とともに、銀行の業務範囲に関する制限が緩和されてきた、業務範囲の拡大が図られてきたという流れがあったかと思います。当時から、例えば利益相反だとか銀行の優越的地位の濫用の危険性等を指摘される、そういう懸念を述べられる方もおられたわけですが、総合的な金融サービスが提供されることが望ましい、ワンストップで総合的な金融サービスが受けられるということはメリットが大きいんだというのが基本的認識としてあったと思います。そういうことを背景に業務範囲の拡大が進行してきたわけですが、少なくとも欧米において、その結果として実際に出現してきたものは何かといいますと、いろいろなことを取り込んだ形で活動しているので、極めて複雑な、それから外から見てどういうことをやっているのかという全体像がよく見えないような、そういう意味でコンプレックスでオペークな巨大金融グループというものであったと思います。そして、金融危機を経験して、金融危機の中でそうした複雑で不透明な巨大金融グループというのを処理しようとしたときに、内部で極めて相互に関連し合っているような構造になっているので、処理をすること自体が極めて困難であるということが強く認識されるようになったと思います。そうしたことから、複雑で、かつ曖昧な組織構造というのは市場規律、マーケット・ディシプリンの働きを阻害するものでありますし、それから、繰り返しになる面もありますが、相互関連性が非常に高いということはシステミック・リスクを増大させる要因につながるということが認識されるようになったということです。それで、実際の問題として、結局、業務範囲の拡大を図ってきた中で、少なくとも欧米においては銀行のビジネスモデルがハイリスク・ハイリターンのものに変わっていったということでしかなかったのではないかという反省が金融危機以降に強まったのではないかと思っております。すなわち、業務範囲を拡大することのメリットの一つとして、後でも申し上げますが、分散化することによるメリット、ダイバーシフィケーションのメリットというのが言われていたわけですが、それによって全体としてのリスクが軽減されるという話があったんですが、実際のところはリターンも上昇したけれども、そのボラティリティーも上昇するというのが起こったことであって、繰り返しですが、ビジネスモデル自体がハイリスク・ハイリターンのものに変わっていったというのが結果として起こったことではなかったかということで、金融危機以後はコンプレックスでオペークな組織では困るということで、組織構造をもっとシンプルなものにしてもらわなければ困ると。組織構造をシンプルなものにして、外から見たときの透明性も高いものに改組してもらって、かつ破綻処理可能な存在へ転換を図るということが必要なんだという認識に切りかわったと思います。今申し上げたことは、先ほどの中村委員の報告の最初のほうで言われていたことと符合する話かなと思います。そういうシンプルで透明な組織に変えると。破綻処理可能な存在への転換を図るということで、米国においてはボルカー・ルールが導入されるとか、米国だけではなくてイギリスではビッカーズ・レポートというのが出ていますし、EUではリーカネン・レポートというのが出ていて、それぞれ多少違いはありますけれども、商業銀行業務と投資銀行業務の一部を分離すると、そういう業務範囲の制限にかかわる規制が再導入されてきているということが見られると思います。

それからもう一つ、いわゆるGlobal-SIBの方々はRecovery and Resolution Plan(RRP)というものの作成を義務づけられるようになってきているわけですが、RRPですね、俗に。そこに書いていますように、「生前遺言書」(“Living Will”)という言われ方、呼ばれ方もしていますが、そういうものの作成に際してはやはり組織構造を法的な面でも可能な限り簡素化することを結局要求されているというふうになってきていると考えています。先ほどのお話にもありましたが、銀行のビジネスモデルを規定する大きな要因として、テクノロジーということもありますが、規制環境というのが非常に大きな要因であって、現在の規制環境というのは金融グループに対してできるだけシンプルで透明な構造であることを求めていると。そういう制約条件がかかっているということは認識しておく必要があると思います。したがって、業務範囲の拡大を今後図っていくとしても、それに伴って組織構造が複雑になることは許されない。できるだけ単純な組織構造を保ちながら業務の拡大を図ると、後でまた申し上げますが、そういう組織構造上の工夫が求められているということかと思います。それが1番目の話です。

2番目ですが、それで実際に金融コングロマリット化ということが進行してきたわけですけれども、それをもたらした動因といいますか、ドライビングフォースはいかなるものだったのかということであります。それで、80年代に業務範囲に関する規制緩和の議論をしていたころは、先ほどもちょっと申しましたが、反対する人は利益相反と銀行の優越的地位の濫用の話を持ち出して、それから賛成する人は規模の経済ないし範囲の経済というのが存在すると、そのメリットを生かすべきだという議論をしていたわけです。その後、規模あるいは範囲の経済に関しての研究というのは、我が国も含めてかなり活発に行われてきていると思います。そうした一連の研究の結果、完全に一致した見解が経済学者の中に存在するところまで来ているとは思いませんが、かなり緩やかなコンセンサスはできてきているんじゃないかと思っておりまして、範囲の経済あるいは規模の経済に関する緩やかなコンセンサス的な結論として2点指摘できるかと思っております。

1点目が、レジュメの1ページの下のところに書いている話ですが、規模と範囲の経済というのは存在することは存在するけれども、それほど実は大きいものではなくて、むしろ、これは当たり前の話ですが、巨大で複雑な組織というのは小さくて単純な組織に比べて経営するのが非常に難しい、マネージしていくのが困難であるということに伴うある種の非効率性というのが発生することは否めないわけです。そういう巨大組織の運営にかかわって発生するような非効率性をX-inefficiencyという言い方を経済学ではしたりしていますけれども、そういうもののほうが実は大きくなったりして、規模とか範囲の経済はあることはあるんだけれども、そういうものは凌駕されてしまいがちで、したがって、Conglomerate Discountと呼ばれるような現象が見られるケースのほうが多いと。Conglomerate Discountというのは何かと申し上げますと、コングロマリットを形成しているいろいろな部門がそれぞれ独立した企業であったとしたときの企業価値の合計よりもコングロマリット全体の企業価値が下回ってしまうと、ばらばらでいたときの企業価値の合計のほうが大きいと想定される場合にConglomerate Discountが存在する。逆に、ばらばらに存在しているときよりも統合した企業体のほうが価値が大きくなっているときはプレミアムが存在すると言うわけですが、多くの実証研究において、もちろんプレミアムが存在するケースもあるんですが、ディスカウントが存在するケースが非常に多いと。これは金融グループだけではありませんで、一般の事業会社の場合もそうですが、なかなかプレミアムが出てこないケースのほうが多いということです。それが1点目です。それで、プレミアムが生まれるケースもあるわけですが、そういうケースの場合には、多角化しているとしても、やはり一定程度絞り込んでいるといいますか、絞り込んだ中での多角化というケースの場合にプレミアムが見られやすいという研究結果が存在しています。だから、金融業の場合の規模の経済とか範囲の経済、あるいはシナジーというのも、一般的に何かシナジーがあるんだというようなことではなくて、どういう源泉からそれが生まれているかということをしっかり区分けして、スコープエコノミーならスコープエコノミーを生み出す源泉に沿った形での多角化というかなり限定した形のものでないと、範囲とか規模の経済を生かすことは難しいというのがコンセンサスになっているんじゃないかと思っています。そこのマル1からマル4というのは考え得る範囲の経済ないし規模の経済の源泉に関して並べたものです。

それで、2ページ目に進ませていただきますが、もう一つのコンセンサスとして、緩やかなコンセンサスですが、もう一つのものとして、範囲の経済とか規模の経済と見られるものと市場支配力の変化というものとの効果をなかなか識別することは難しくて、一見して規模や範囲の経済と言われているものについても、かなりの程度は実際上は市場支配力の変化に起因する場合が多いのではないかということが言われています。市場支配力の変化、市場支配力を高めるために規模を大きくしたり統合したりするというのは、当該の金融グループにとっては望ましいことかもしれませんが、経済全体にとって必ずしもいいことかどうかというのは、当該の金融グループが独占力を強めて収益力を強化できるということはあったとしても、その反面の利用者にとってそれが本当にいいことなのかというのが疑問になります。技術的に本当に規模とか範囲の経済があれば、それは社会的にメリットだと言い切れるわけですが、そうではなくて市場支配力の変化という場合であれば、ちょっとそこは議論が違ってくるということですね。大きくて複雑な組織は経営が難しいという話を申し上げましたが、銀行業に関して特に申し上げますと、銀行業の場合にソフトな情報の活用というのが一つの大きな役割としてあると思うんですが、ソフトな情報というのは、財務情報とかそういうデータとしてしっかり明示化できるような種類の情報内容をハードな情報と呼ぶのに対して、銀行員の方が経営者と面談して、そこで得た経営者の印象のような話であって、この経営者は本当に信頼できる人物だというふうな、あやふやといえばあやふやな感じなので、ソフト情報、ソフト・インフォメーションと言っておりますが、そういう情報の活用というのを考えた場合に、その種の情報というのは伝達するのが非常に難しい。正確に第三者に伝えるということが難しい。財務情報等で数字とかデータに落ちている情報であれば、伝えることは比較的容易なわけですけれども、受けた印象のようなものを正確に第三者に伝えるというようなことは非常に難しいので、組織が巨大化することによってコミュニケーションの階層等が増えてしまうと、そうした情報の活用に支障を来すと、そういう問題が考えられますので、リレーションシップ・バンキング等に注力していくような場合に同時に規模の拡大を図るということはやや相反する問題を惹起しかねないということが銀行業特殊の問題としてはあると考えています。

それから、そのほかに金融コングロマリット化を推進した動機といいますか、ドライビングフォースとして考えられるものといたしましては、1つはToo Big To Fail(TBTF)ステータスを獲得したい。潰れないというか、あるいは潰せない銀行になるということを目指すとか、あるいは経営者自身が純粋に大きな企業を経営したいと思ってやるというempire buildingという話があります。こうした話は欧米の文脈では大いに考えられる話なんですが、我が国についてどうかというのはちょっとよくわかりません。90年代の銀行危機のときには多少TBTFステータスの動機はあったかもしれませんが、現在どうかということはわかりません。

以上に対して、ちょっと別の角度から考えたときの業務範囲の拡大ということで申し上げたいと思います。リアルオプションという話を聞かれた方は多いかと思いますが、リアルオプションの一種に拡張オプションと呼ばれているものがあります。要するに、将来の事業拡大の機会をキープするために現在資金を投じておくというケースです。それに関しては、将来の事業拡大機会をキープするというオプションを買うために現在資金を使っている。現在投下する資金というのはそのオプションの代金だと理解できるということで、そういう事業拡大機会をキープするために業務範囲を拡大する戦略というのが考えられます。オプションの価値というのはボラティリティーが高いほど上がりますから、要するに、将来その事業分野についての不確実性が非常に大きいというときにはそのオプションの価値はかなり高い可能性があるということで、このワーキング・グループ等で問題関心として持たれている、いわゆるFinTechの分野を考えると、どのようなproductsとかdistribution channelsが今後受け入れられて成長していくかということに関しては極めて現状では不確実性が高い環境に置かれているわけです。そういう不確実性が非常に高い環境においては、拡張オプションに投資しておくということは十分意味のある活動である可能性はあると考えています。もちろん早期参入を図るというのはコストのかかることですし、失敗に終わる可能性というのも非常に多いわけですが、将来に関する不確実性が非常に高いときには待機することにも非常にコストが伴うということであって、そういうことを考えたときに、FinTech分野等については拡張オプションとして業務範囲の拡大を図るという戦略をとることが十分経営判断として考えられると思います。経営判断として、コストも大きいんだから、それはやらないという判断ももちろんあり得るわけですが、現状だと、経営者のそういう判断にかかわらず、規制によって待機を強いられていると、そういう側面は確かにあって、そういうところは再検討の余地が十分に存在するということだと思います。

それから最後、3番目に金融グループの組織構造ということですが、そこにMulti-units型組織と書かせていただきましたが、上に持株会社があって、その下に子会社なり関連会社がぶら下がっているという構造の組織を考えた場合に、そういう組織についての大きな問題点の一つというのが、「各部門が共通資源の配分を自らに有利なものにしようとしてinfluence活動に時間と労力を割くことである」と書かせていただきました。結局、金融グループというのは、グループの内部に非常に大きな労働市場と資本市場を抱え込んでいる形になるわけですね。巨大な内部労働市場と内部資本市場を持っているということになるわけでありまして、このワーキング・グループの2回目の会合の資料を見させていただきましたら、例えば三菱UFJフィナンシャル・グループであれば14万人雇用しているわけで、14万人の労働力をグループ内部で配分しているわけですね。配置転換等によって配分しているわけですし、総資産は286兆円ということですから、それだけの資金を組織内部で配分しているわけです。それは巨大な内部労働市場、内部資本市場を持っているという形になるわけですが、その内部市場における資源配分というのは、いわゆる価格メカニズムで行われているわけではないわけでありまして、権限に基づいて辞令を出して配置転換するわけです。このように権限のメカニズムで配分していることになりますと、その配分に対しては働きかける余地というのが存在するわけです。影響力を行使して、特定のディビジョンにとって有利なように資源配分を誘導すると、そういう動機というか、インセンティブは、金融グループだけではありませんが、巨大組織においては常に存在するインセンティブでありまして、本当は使える時間をもっと生産的な目的に使えばいいんだけれども、そういう生産的な目的に、プロダクティブな活動に時間を割くんじゃなくて、他者に対して働きかける、インフルエンスを与えることに時間とか労力を使ってしまう。そうしたほうが個別的な観点から見ると効率がいいということが考えられるわけです。

下のところで、注の3でつけていますが、profit-seekingとrent-seekingというような言い方をしたりしていますが、profit-seekingというのはパイそのものを拡大させるような活動で、rent-seekingというのはパイの切り方に影響を与えて自分への配分を増やすための活動ですが、個別の観点から見ると、パイは増えなくたって、自分に対する配分を高める余地があれば、そしてそっちのほうが効率が高ければ、そちらをやるということは十分考えられるわけです。でも、それは全体から見ると非効率になります。パイを増やさないような活動に資源を投入するというのは全体から見れば非効率なんだけれども、それを十分やる余地があって、巨大グループにとって大きな問題は、そうしたinfluence活動に時間と労力を割くということをいかにして抑制するか、させないか、時間と労力をプロダクティブな活動に振り向けさせるかということが非常に大きな課題だと考えています。

それで、そこにいろいろとトレードオフが考えられまして、例えば上位部門(持株会社)に権限を集中して集権的なコントロールを行うというのは、グループ全体の活動についてのコーディネーションを強化できるという意味では望ましいことなんですが、実はinfluence活動を活発化させてしまう余地を生み出しかねません。つまり、集権的にコントロールしているところがあれば、そこにうまく働きかければ、自分の部門に対する資源配分を有利化する余地が非常に高いということで、ヘッドクオーターに権限が集中していると、働きかけをすることの個別的リターンがむしろ高まってしまうという問題が起きて、influence活動をかえって刺激してしまうということがあります。だから、influence活動を抑制するためには、一見すると非効率な組織運営等が実は求められるという非常に厄介な話がありまして、例えば、働きかけても無駄なような硬直的な組織運営をするというのが考えられるわけです。一般的に柔軟な組織運営をするのがいいとされているんですが、柔軟な組織運営をするということは働きかけによって変更をもたらす余地が大きいということになってしまいますので、むしろ頭のかたい運営をしたほうがいいというところ等があって、巨大グループを運営されている場合に、そういうところにどういう工夫なり努力をされているかということが、私なんかの立場からすると極めて関心の高い事項になるということです。

それで、個別論点というのは後回しにして、そういうinfluence活動の結果かそのほかの原因で、各部門間で内部補助が生じるということが十分考えられます。文献リストの最後のところに挙げている、「内部資本市場のダークサイド」という論文を書いたSharfsteinとかの研究だと、内部市場における資源配分は社会主義的なものになる傾向が強い。つまり、平等な配分をもたらす可能性が高くて、したがって、不振部門にも多くの資源が配分されることになってしまうということとかが起こり得るということで、内部補助が生じると、そういうことで、今申しましたように、不振部門に対する投資が継続されたりするということもありますが、投資の機会費用が人為的に下げられてリスクテークが過度なものになるというふうなゆがみが生じる可能性も非常に大きいということで、金融グループの場合は特に投資の機会費用がゆがむということが重要な問題ではないかと思います。

それで、規制監督上の観点からは、守るべき部門(protected unit)、決済とか小口預金を取り扱っている部門だと思いますが、それに対して提供されているセーフティーネットの効果が他の部門に広がって補助金効果が生じてしまう、セーフティーネットがアビュースされてしまうということが最大の懸念であって、それを回避するということが制度設計上非常に重要なことで、それを行うためには、今日のお話にあったように、適切な破綻処理体制で裏づけられたコミットメントというのが必要になって、つまり、protected unitだけを切り離して存続を図るとともに、その他の部分については公的な支援なしに破綻処理ができると、そういうことが事前にクレディブルなものとして確保されているという体制がとられている必要があるということかと思います。

そういうことで、以上の条件といいますか、セーフティーネットがアビュースされないということが確保されているならば、FinTech等の分野について特に業務範囲の拡大を認めることは基本的に、今、銀行業が極めて将来が不確実な環境下に置かれているということを考えると必要なことではないか、つまり賛成だということです。ただ、その場合にも、業務範囲の拡大に伴って、巨大組織については運営が難しいとか、内部での相互補助につながるようなさまざまな非生産的活動に資源が割かれてしまうとか、そういう大きな問題があるので、そうした問題を抑制するグループ・ガバナンスの構造を各金融グループが工夫していくということが当然条件として求められるのではないかと思います。

最後に、1つ飛ばした個別論点として、金融グループ所属の資産運用会社のガバナンス問題というのがちょっと個人的に関心がありまして、一昨年、スチュワードシップ・コードが出ましたが、現在、日本の企業、金融機関の場合は、人事を通じて全体のグループを統括しているようなところがあって、だから、資産運用会社の役職員に関してもグループ本社の人事部が一括的にコントロールしているようなところがあるわけですけれども、そういうあり方が例えばスチュワードシップ・コードで資産運用会社に求めているようなことと本当に整合的なのかという疑問があって、資産運用会社をグループの中に同列に置いておくことが本当に構造的に望ましいのかとか、そういう論点はちょっと付随的にあるかなと思いますということで、雑駁ですが、一応以上で報告を終わらせていただきます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、これより討議に移りたいと思います。これまでのご説明に関しましてご質問、ご意見があればお願いいたします。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。大崎委員。

【大崎委員】

ありがとうございます。中村委員と池尾先生にそれぞれちょっとお尋ねしたいことがございます。

まず中村委員にお伺いしたいんですが、銀証間の顧客情報共有禁止規定の撤廃が必要というお話がございまして、形式的な事前規制よりもプリンシプル・ベースで実質本位の規制をするというその基本的な考え方については私もなるほどなと思ったんですが、他方で、形式的事前規制と言われるような仕組みがとられがちになる背景には、どうしても現場における規制の精神をきちっと遵守していくという体制が必ずしもしっかりしていなくて、事後的な監督や検査だけで規制の実効性を担保するのが容易じゃないという判断もあるのかなという気がしておりまして、もしUBSなり外資系の金融機関のプラクティスとして、社内におけるこういった情報共有の情報の濫用をしないというようなことについての事前的な抑止の制度などがあればぜひ教えていただきたいなと思います。これが中村委員にお伺いしたい点です。

それから、池尾先生に2点教えていただきたいと思うんですが、1点は、規模の経済、範囲の経済についての研究が進展して、実際はそんなに大きな意味はないんじゃないかというようなお話があったんですが、こういう分析について、いわゆる製造業とかの産業と銀行業のような、知識集約的とでも言いますか、そういった産業の違いによっての何らかの差異というのはあるのかないのか。何となくあるような気もするので、その辺もし何かご知見があればぜひ教えていただきたいということと、もう一点は、池尾先生の今のお話は主として効率性という観点からいろいろなご指摘をいただいたと思うんですが、他方、例えば先ほどの中村さんの話にあったファイアウォールのような話は効率性ということには、もしかするとファイアウォールを緩めるというのは効率性の向上という点には資するかもしれないんですが、他方で顧客利益の保護ですとか利益相反行為の防止というような観点からはちょっと問題があるかもしれないというような、また別の観点が入ってくる話のような気がするんですけれども、そういった問題については何か先生、特にご意見がおありかどうか、もし何かご意見があれば教えていただきたいと。

以上3点でございます。

【岩原座長】

中村委員、まずお願いします。

【中村委員】

最初のご質問に対してなんですけれども、弊社では過去にレギュレーション関係で違反行為もあったということを踏まえまして、プリンシプル・ビヘービアという主義を取締役会から規定されました。要するに従業員とはどうあらねばならないかというのをきちんと定めて、言葉は悪いんですけれども、道徳教育というものを徹底的にやるということをやっております。これはブンデスバンクから来ました、弊社の会長のアクセル・ウエーバーもかなり力を入れていまして、社員への浸透を推進しているということでございます。けれども、プラクティカルに何をやっているかということが多分ご質問の趣旨だと思うんですが、我々の組織間、それから従業員間のコミュニケーションは、効率性を追求するという意味でも大きく変わってきておりまして、チャットを使ったり、それからメールを使ったり、電話もそうなのでございますけれども、そういうものをどちらかというとリアルタイムにモニタリングしていって、即時にそれを発見していくという体制を目指しています。これがグローバルで行われようとしている一つの手法かと思います。今はまだそういう体制ではないんですけれども、さらには多分今後は、FinTechじゃないんですけれども、これは私見でございますが、AIとかを使って、こういう行動をしている人は間違いを起こしやすいとか、こういう行動をしている人は起こしにくいとか、そういうもので、できるだけ即座にアクションをとれるような体制というのが今後つくられていくという意味で、先を少し見越していくというような形で、実務に合った規制をかけていくという方向にあればと思います。

【岩原座長】

中村委員へのご質問、以上でよろしいですか。

【大崎委員】

ちょっとよろしいですか。そうすると、リアルタイムに近い監視をするとなると結構なコストもかかるかなと思うんですが、やはりそこは相当程度投資もされているという理解でよろしいんですか。

【中村委員】

はい。いわゆる民間金融機関でいいますと、コンプライアンス・コストと呼んでおりますけれども、金融機関の一つの大きなコスト増大項目がコンプライアンス・コストということでございまして、逆にコンプライアンス・コストが非常に高くリスクが高い業務は少し業務比率を下げるというか、アロケーションする経営リソースも落ちるということになりますし、それも一つのコストとして考えておりますので、おっしゃるようにコストは上がりますので、それを踏まえて経営管理をやっていくという形になると思います。

【大崎委員】

ありがとうございます。

【岩原座長】

よろしいですか。

【大崎委員】

はい。

【岩原座長】

それでは、池尾先生、お願いします。

【池尾参考人】

規模あるいは範囲の経済に関してですが、もともとはご指摘のように製造業を念頭に置いた概念であることは疑いないわけです。その概念を金融業に持ち込んできたときに、無理なく持ち込めているかどうかということに関して、私個人としてはなかなか無理がありそうな感じもしているというのが正直なところです。というのは、金融業の場合は生産物を定義すること自体非常に大変だということがありまして、何が生産物なのかよくわからないところがあって、例えば貸出残高とかを生産物として扱って分析したりしているようなこともあるわけですが、貸出残高が生産物かと言われると、やはりちょっと本当は違うわけで、貸し出しに伴って行った情報生産が生み出した付加価値のようなものが金融業の生産物といえば生産物のはずで、そういうところの定義自体からなかなか難しいところがありますので、金融業における研究がどこまで信頼に足るものかというのは議論の余地があると思うんです。だから、申し上げましたように、完全なコンセンサンスのようなものまではできていないんだけれども、いろいろやってみたけども、大まかにはこんな感じかなぐらいのところまでは研究が来ているんじゃないかというのが認識です。

それから2点目ですが、利益相反の問題というのはあらゆるケースに潜在的に想定されますので、金融グループの問題をめぐってもそれはそういう意味では想定されると思いますが、効率性の話と公正性の話とかをわざわざ分けて議論、あるいは対立的に考える必要はあまり金融グループについてはないんじゃないかと思っています。例えばコンプレックス、複雑な組織構造はやめてシンプルにしてくださいというのは、これはどっちなんでしょうという話になるんですね。必ずしも効率性の追求を言っているわけでもないわけでありまして、できるだけ外から見てもわかりやすい、それは規制監督がしやすいという面もありますが、別に規制監督当局にとってだけメリットがあるんじゃなくて、やはり利用者とか市場参加者にとってもtransparentな組織のほうがいいという面はあると思いますので、それは広い意味の効率性でもあるし、フェアネスとつながるような話だと思いますので、特に分けて考える必要性はないかと思っています。

【大崎委員】

ありがとうございます。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは、ほかの方。舩津委員、どうぞ。

【舩津委員】

すみません、中村委員に質問なんですが、中村委員の資料の20ページの「アジア地域統括本部がなぜ日本に置けないか」というところなんですけれども、「例えば法人営業部門の場合、銀行と証券で顧客データベースを分断しスタッフを分離した拠点が地域全体の同部門の経営管理や営業戦略を担うことはできない」という形で書かれておられるんですが、私の認識といいますか、条文等を見ておりますと、例えば法人の場合ですと、オプトアウトの手続は必要かもしれないけれども、そういうことをすれば顧客情報というのは共有できるということなのではないかと。それからあと、経営管理等に関してですが、子会社の管理ということであれば、内部管理、運営の目的であれば情報の共有というのも許されているように、条文上はそう読めるのかなと考えた場合に、具体的にアジア統括本部というのがどういうような活動をするということを念頭に置かれて、どういう規律がそれを阻害するんだと外資系金融機関としては考えていると思われるのかという点につきまして、もう少し具体的な例を挙げて教えていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

【岩原座長】

中村委員、お願いします。

【中村委員】

まず最初のオプトアウトの件でございますけれども、確かに今オプトアウトの手続をとることによってある程度顧客情報がシェアできるという形になりつつあるというのも一つのやり方かと思います。ただ必ずしも、皆さんがどう考え、どういうふうに合意されるかというのはございまして、オプトアウトをするとオートマチックにシェアできるかというと、それに合意してくださらないお客様もいますし、それはお客様によっていろいろな事情があると思うんですけれども、いろいろな手続をとらねばならないという意味で一つの障害になると考えております。

それから、内部管理の問題でございますけれども、確かに内部管理を目的に行いますと、いろいろ情報のシェアはある意味で可能なのでございますが、そもそもそういうものをいろいろな形で日本だけ違う形で準備しなければいけないということは、我々にとってはシステムの構築上ですとか組織の整理上いろいろ問題になることが多くて、結果的に避けられている一つの理由になっているということかと思います。ちょっと具体性に欠けますが、特にシステム等は大きな障害の一つになっておると考えております。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは、先に宮本委員、その後で野﨑委員、お願いします。

【宮本委員】

中村委員にお伺いしたいんですけれども、先ほどご説明のありました11ページのガバナンスなんですが、このBoard of Directorsと、それとGroup Executive Boardを分けられていて、一応それぞれが見る項目は概括的には書かれているんですけれども、この2つ、例えば取締役会にはどのような項目を、「推薦されたグループの戦略を決定」と書いてあるんですが、どういうものがかけられるのかということをちょっとお聞きしたいのが一点と、もう一点は15ページで、日本法人、このガバナンスを書いていただきましたが、ジャパン・カントリー・ヘッドと、それからそれぞれの組織の長と、こういうのがありましたけれども、ジャパン・カントリー・ヘッドがガバナンス面から承認あるいは拒否権を持つということでありましたが、具体的にはどういうことで拒否権を発動されることがあるのか、具体的には難しいでしょうけど、どういう項目で拒否権を発動されることがあるのかということを教えていただければと思います。

【岩原座長】

中村委員。

【中村委員】

まず最初にBoard of Directorsの例から申し上げたいと思います。例えば今回、UBSはインベストメント・バンキングの業務を大幅に変更した。これは池尾参考人からの説明もありましたけれども、私もそう思いますが、いろいろな規制環境の中で投資銀行業務は長期的にわたって安定的なリターンを出せないと判断するわけでございますけれども、そういう形でビジネスモデルを大幅に変更するという場合には、グループCEOがこういう形で変更したいと、したがってUBSとしてはこういうようなビジネスポートフォリオになりますということを、いろいろな市場環境、規制環境を踏まえながら説明して、UBSとしては、ではどういうことを中核に置いてどういうビジネスを今後も継続的にやっていくかということを取締役会で決めていくという形になりますので、執行に当たってこういうふうにしたいということと、それを承認、最終的に認めるということを分けることになっております。

それから、ビジネスモデルに限らず、例えば先ほど大崎委員の質問に対してプリンシプル・ビヘービアということを申し上げましたけれども、従業員としてどういうふうにあらねばならないかという方針はこのBoard of Directorsから出て、その方針を受けて実体的にどういう形でそれをインプリメンテーションしていくかというのは下の執行役員会で決めるということで、会社としての大きな方針、それから上層部の人事、それからコンペンセーション、会社としてどういうレスポンシビリティーを果たさねばならないかというようなことについて大枠をグループの役員会で決めていって、そのコードに対してどう実行していくかというのは下の層が決めるということなので、必ずしも承認というわけではなくて、そういった大枠を決める権限を役員会が持っているという形になります。

それからマトリックス・マネジメントについてですが、一番簡単な例を申し上げますと、まずウェルス・マネジメントのヘッドを採用するということは両方が合意せねばなりません。例えば新しい人を任命する場合には、ウェルス・マネジメントのアジアのヘッドがこの人がいいと言っても、それはこの人はよくないということで例えば私は拒否権を持っておりますし、コンペンセーション、それからビジネスモデルその他に関しても、ウェルス・マネジメントがこういうセクターに対してこういうアプローチをしたいという場合にも、私のほうでこれはこれこれの理由でよくないという場合には拒否できるという権限を持っておりまして、最終的には合意しないと前に進まないという形式をとっております。

【岩原座長】

よろしいでしょうか。

【宮本委員】

ちょっと追加でよろしいですか。

【岩原座長】

では、宮本委員。

【宮本委員】

質問ではないんですけれども、これは意見なんですが、先ほど中村委員からUBSの戦略をご説明いただきまして、リーマン・ショック後の戦略、それからその成果を示していただいたということなんですけれども、逆のサイド、ユーザーから見ますと、そういうときにはやはり欧米系はそれぞれのホームマーケットが中心になるからかもしれませんけれども、リーマン・ショックの後、特に全体での人員削減とかアセットの縮小が大幅に進んで、こういうときやはり大きく落とされるのはホームマーケットじゃないところかなというのは感じております。

それから、組織はマトリックスなんですけれども、やはり縦割り意識が非常に強くて、決裁も原則それぞれのラインになっているのかなと。セクショナリズムも日本より強いということだと思いますので、先ほど池尾先生からinfluence活動というのもありましたけれども、これもよくあるなと思っております。そういった意味で、横の連携を補完していくという面も含めてマトリックス組織とされているということで、そういう課題のある組織だという目でも見ておかなければいけないなと思っておるところであります。

以上であります。

【岩原座長】

それでは野﨑委員、お願いします。

【野﨑委員】

ありがとうございます。特に今まで4回の会合を踏まえて、池尾先生のお話というのは非常に刺激もあって、頭の整理もできたということで御礼申し上げます。その中で1つ非常に興味深い話としてリアルオプションの話をいただきました。資料2、池尾先生の資料のちょうど2ページ目の真ん中あたりですか。拡張オプションというところが一応ボールドで示されておりますけれども、これは私の感想ですが、例えばFinTechに限らず、新しい業務を行うに当たって、今までのこの会合の議論ですと、例えば認可の仕方で2つ方式があるだろうと。1つは限定列挙の幅を広げる、もう一つは個別認可の裁量というか、柔軟性をもう少し強化するというのがありますけれども、これによっても大分違ってくるんじゃないかと考えております。ですから、例えば限定列挙の拡大ということですと、池尾先生がおっしゃっている拡張オプションで、不透明性が高いのであればオプションの価値は大きいから、とりあえず手挙げておこうかというようなところも出かねないとは思うんですけれども、個別認可という話ですと、例えば以前、家森委員からもご指摘、リマインドいただきました、例えば平成19年の基本的考え方で、例えば銀行業との親近性、リスクの同質性あるいは波及性ですか、こういったところが必要条件となって、あと十分条件としては、ユーザーにとってメリットがあるのかどうなのか、あるいは事業としての採算性ですとか、そういったところのモニタリングも当然出てきますので、そうすると、おそらく限定列挙の拡大と個別認可というアプローチの違いによって、この辺の拡張オプションについての考え方も少し変わってこようかと思うんですけれども、先生のご意見はいかがでしょうか。

【岩原座長】

池尾先生、どうぞ。

【池尾参考人】

もちろん将来の事業拡張といった場合に、競争相手がどういう行動をとるかによって大いに影響を受けるということがありますから、そういう競争相手との戦略的関係みたいなことを本当は入れて考えなければいけないんだと思いますが、ちょっとそこまでは考えてこなかったというのが正直なところであります。それからもう一つ、不確実性が非常に高いわけですから、ちょっと失礼な言い方になりますが、規制当局者にも判断はつかないと思ったほうがいいと思います。官にとっても民と同じ程度の不確実性だと思うんです。だから、認可するという場合も、アメリカのケースなんかを参考にして考えれば、やはりきちっとしているところが言ってきたら認めるということで、内容を審査して認めるかどうかを判断するというのはちょっとできない相談だと思うんです。だから、ガバナンスがしっかりしているとか、資本がちゃんと十分にあるとか、そういう先が自ら検討して、やっぱりやったほうがいい、ここでオプションを買っておいたほうがいいと思ってやってきたら認めると、そういうやり方がやはりいいかなという気はしています。横並び的な行動を引き起こしやすいやり方は、特に我が国の風土において適切かどうかは確かに疑問なところだと思います。

【岩原座長】

よろしいですか。

【野﨑委員】

ありがとうございます。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょうか。林田委員、その後福田委員。

【林田委員】

ご丁寧なご説明、どうもお二方ありがとうございました。中村委員に2つ、池尾先生に1つご質問したいと思います。

まず中村委員のご説明は、UBSグループのガバナンス体制のリニューアルを通じて、その成果として順調に新戦略に移行し、リスク資産の削減あるいは資本比率の向上ができたという文脈でお話があったと理解していますけれども、もともとこうしたドラスチックな経営というのは日本の金融機関よりも外資系は実は得意であって、リーマン・ショックの前からそういう形で比較されてきたと思うんですけれども、今回のガバナンス体制の変更が特にこういう形で資本比率、利益その他のところにこういう役に立ったんだというもう少し関連づけた形での理解をしたいと思うので、その辺のご説明の補足をいただけたらなというのが1点。それから、このグローバルなグループの中で中村委員は日本のヘッドということを務められていらっしゃるんですけれども、従業員が日本人であることによって、グローバルなグループの中のスタンダードと日本国内も抱えた経営のギャップのようなものを感じていらっしゃることがあるのかどうなのか、あるいはその対処法などについても教えていただけたらと思います。

池尾先生には1つご質問で、このレジュメの最後のところに、こうした2つの問題を抑制する工夫が必要だと。これは経営陣に考えてほしいということであろうかと思いますけれども、先生のご私見でいうとどんな工夫があり得るのかというのを、何かお考えをお持ちであればご参考までに教えていただけたらありがたいと。

以上でございます。

【岩原座長】

それでは中村委員。

【中村委員】

ちょっと私見ということで述べさせていただければと思いますけれども、私の個人的経験も踏まえて言いますと、やはり欧米の金融機関は、お客様、従業員、株主、どれを大切にしていくかということで相対的な比率を見ますと、日系の金融機関よりもかなりの程度、株主リターンを継続的に長期にわたって提供できるようなビジネスモデルは何かということに、すなわち株主に重点を置くと思います。これは相対的な話でございます。株主リターンを長期にわたって継続的に上げるために、例えば顧客を大切にするビジネスモデルがいいので顧客を大切にしましょうとか、株主を大切にしているというのが日本人からすると強い印象でございます。かつてはUBS、AAAの格付を使って安いファンディングをし、バランスシートをかなり拡大させて収益を上げていくというような時代もございましたけれども、現在はどちらかというと、逆のビジネスモデルになっておりますが、これを移行するに当たってはさほどスムーズではございませんで、2009年ぐらいから11年までぐらい、いろいろな形で投資銀行ビジネスのトレーディング業務復活に向けていろいろ模索した時代もあったのですけれども、最終的にはこういう形にならねばいけない、なぜならば株主リターンを長期にわたって継続的に提供できるようなビジネスモデルで、かつシンプルでわかりやすく、先ほどの話にございましたけれども、切断可能というようなことを考えたときに、このビジネスモデルに帰着、行き着いたということです。この議論に当たってはほぼ3年ぐらいを費やして最終的にこの形になったと理解しております。

それから、日本ならではといいますか、先ほどのカントリー・ヘッドの件でございますけれども、比較的欧州系のほうがむしろローカルの人をヘッドに使用する確率は高いと、これも個人的ですが、ちょっと思っております。米系のほうがむしろ米国人あるいは米国内で教育を受けた方というのを使っている例が多いのではないかと、これも私見でございますけれども、考えておりまして、どちらかというといろいろな文化、経験の違う人をむしろ使いながら全体のダイバーシファイされた意見の中から戦略を決めていくというのが欧州系金融機関に多いのではないかと考えてございまして、それは欧州の歴史にもよると思うんですけれども、いろいろな民族をマネージしてきたという彼らの歴史的な経験も踏まえて、そういったことが会社全体の繁栄につながると考えている根本的なところもあるのではないかと思います。ですが、全体としては、逆に戦略という意味では、かなりポリシーも含めて、欧州系のほうがトップダウンですし、米系のほうがボトムアップで現地の意見を別な形で集約していきながらやっていくという意味では、同じマトリックス・マネジメントでも欧州系と米州系では多少違いがあるという認識を持っております。

以上、ご理解の助けになりましたかどうか、もし必要でしたら追加のご質問をお願いします。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは続いて池尾先生。

【池尾参考人】

個別の経営コンサルティングができるほど経済学は精緻な科学ではないので、極めて一般論を言うしかないんですけれども、市場支配力の強化というのがやはり大きなファクターとしてあって、それで大きくなってきているという面は否めないと思っています。だから、それがあるんですけれども、市場支配力のことをちょっと棚上げしておくと、やはりもう少し小さくなったほうがいいんじゃないかと思っています。スピンオフさせて少し機能を絞り込むような形にフィナンシャルグループは整理し直したほうがいいのではないかと私個人は思っているんですが、それによって市場支配力が失われるということが個別経営体としては非常に懸念されるかもしれないので、そっちに踏み出せないということはあるのかもしれませんが、一つのフィナンシャルグループをサブグループみたいな形で幾つかにもう少し分けたほうがビジネスチャンスなんかもとりやすい面もあったりするんじゃないかとは思っているんですけど、それは全くの雑駁な話で、科学としての話ではないです。

【林田委員】

そうすると、前段の業務範囲の拡大を認めることには賛成だけれどもというところの平仄はどういうことになるんでしょうか。

【池尾参考人】

ここの業務範囲は主にFinTechとかの分野のことを念頭に置いていまして、繰り返しになりますが、やはり今銀行業は極めて将来に関して不確実性の高い状況下に置かれていると思うんです。そういう状況である。もっと安定した経済環境であれば話は別なんですけれども、将来どういう形になるかわからない。ひょっとすると、ある種の主役の座を新参者に全部とられてしまうかもしれないぐらいの可能性がある状況にいるわけですね。そういうときに、ある種の事業機会の拡大のために布石を打っておくというふうなことを規制でやってはいけないと言うのはちょっとやはりきついかなという思いがあって賛成だということです。

【林田委員】

ありがとうございました。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょう。失礼。福田委員、どうぞ。

【福田委員】

中村委員に2つ、関連はしていると思うんですけど、質問させていただきたいと思います。

1つは、池尾先生がおっしゃっているように、金融業の業務範囲をこれからどういうふうに拡大していくかというのは極めて不確実な状況にもあると思います。実際、今の金融ビジネスでも20年前に想像できないようないろいろなビジネスが起こっているとは思います。そうした中で、11ページ、ガバナンス構造、非常にご丁寧にご説明いただきましたし、あるいは現状でインベストメント・バンキング・ビジネスを縮小してウェルス・マネジメントを拡張しているというお話も伺いました。ただ、それに加えて、例えばディビジョンをなくしたり、あるいは新たにつくる意思決定というのはどういう形でこういうガバナンス構造の中では行われるのかということを教えていただきたいのが第1点です。どういう考え方になっているのか教えていただきたいのが1点です。

それから第2点は、UBSもかなり巨額なIT投資をされていると思うんですけれども、そういうIT投資の意思決定というのが全体のこのガバナンス構造の中のどこで行われているのかというのを教えていただきたいと思います。それを具体的にどこが担当してどういうふうに実務的に進めているのか、内部の中のどこでそういうことが行われているのかということを教えていただけるとありがたいんですが、これは2番目の質問ということになります。

【岩原座長】

中村委員、お願いします。

【中村委員】

すみません、ちょっとお答えするのに、2番目のITはどういうふうに。

【福田委員】

全体でどういうシステムをつくるかという意思決定は全体のガバナンスの中でどこで行われているのかということです。グループ全体、個々のディビジョンのITであれば個々でやれると思うんですが、全体の例えば共通のプラットフォームといいますか、そういうものをつくるとかというときの担当といいますか、考え方というのはどこで行われているのかを教えていただけると助かります。完全に外注しているというのであれば、それはそれで結構だとは思いますけれども。

【中村委員】

それでは第1番目の質問からやっていきたいと思います。まず業務範囲ということでございますけれども、一番最初に業務ストラテジーといいますか、全体のストラテジーというのが決まっておりまして、1つはウェルス・マネジメントをグローバルにやっていく。それから、投資銀行でいいますと、投資銀行、アセット・マネジメントについては、全てではなくて、自ら選んだ、選択した分野についてトップレベルを目指していく。それから、スイスの商業銀行オペレーションについては、スイス総合金融グループでナンバーワンを目指すといったような全体の戦略というのが決まっております。これは先ほどから申し上げていますとおり、役員会で決まっております。こういった形に沿って例えばディビジョンの統廃合をやる場合には、グループの執行役員会で決定して、その上のボードに推薦し、上げて、許可をもらうという形になると思います。全体の戦略の変更がなく、それが極めて効率的、戦略的であるというのであれば、認められるという形になるかと思います。

2番目のITの件でございますけれども、この図でいいますと、コーポレートセンターのところで一括的にシステム予算等を管理しております。全体の中で何割かを、いわゆる新規投資に決まるという比率がある意味定められておりまして、これは最初のこの会の中でも、どれぐらいを新規投資に回しているかということがいろいろ話に出ましたけれども、銀行を変えていくための新規投資をどれぐらい行っていくかという比率が決まっておりまして、残りの部分が現状の維持の中で業務範囲、新しいモデルを導入したり新しい商品を導入するための変更にあてられるという形で、大枠が決まっております。その中で各ディビジョンからこういうふうにシステム予算を使いたいという提案が出まして、全体の中でまた割り振りが決まっていくという形で、それが上から下に向かってスケールダウンしていくという形になります。最後、例えばITの部分でアジアがこういうふうに使いたい、ヨーロッパがこういうふうに使いたいというようになった場合には、あるいは横のラインでレーツ・アンド・クレジットはこういうふうに使いたい、株はこういうふうに使いたいというようなものは、ある意味で、先ほどの池尾先生の話じゃないんですけれども、取り合いという形を経て、市場メカニズムを全く使わない形で決定するということでございます。

【福田委員】

どうもありがとうございました。

【岩原座長】

よろしいですか、福田委員。ほかに。家森委員、どうぞ。

【家森委員】

ありがとうございます。やはり中村委員にお尋ねしたいんですけれども、1つは、4ページ、5ページで法人組織が変わったということなんですが、UBS AGというのが下に子会社をぶら下げているという意味では変わっていなくて、上にさらに持株会社が乗ったかどうかという点が変わったように思えるんです。これによって、先ほどのご説明のときは、ある部門が不調になったときに他の部門への悪影響が及びにくくなるとおっしゃったんですが、例えばUBS Americasの調子が悪くなると、こちらの新しいものでは他へは影響が及ばないような仕組みに変わったと理解していいんでしょうかというのが1つ目です。もう一つは、今回この議論が始まったきっかけのFinTechというものについてなんですが、スイスの規制が十分わかっていないのでとんちんかんなのかもしれませんけれども、UBSさんの場合ですと、こういう新しい金融とITを結合したようなところの分野への投資で、それが競争力となっているというような点について教えていただければと思います。以上です。

【岩原座長】

中村委員。

【中村委員】

4ページの図はUBS AGにほとんどのブッキングが行われていた時代です。UBS Limitedというのは、これはEUパスポートのために持っていた法人でございます。次の5ページの絵は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、UBS Americas、UBS Limited、それからUBS Switzerland AG、これはスイスのオペレーションを担うエンティティーでございますけれども、これらのグループ間の貸し出し、相互関係というのは極めて制限される、あるいは独立にキャピタルを持っているという形になっていますので、前段の4ページの絵では確かに切り離せなかったんですけれども、5ページの絵ではこれが切り離されるのが容易であるという形になっておりますので、地域ごとということになりますけれども、そういう意味では容易性が増していると。移行途中なので非常に理解はしにくいと思われるんですけれども、このUBS AGというのは実は近い将来1段下がりまして、Americas、Limited、Other subsidiaries、それからUBS Switzerland AGと同じレベルの兄弟会社に変わっていきます。これがインベストメント・バンク、それからスイス以外のブッキングを伴うウェルス・マネジメント、それからアセット・マネジメントを従える一つの大きな子会社になっていきます。したがって、今、Group AGとAGが2段になっていますけれども、将来的には全部を束ねるのはUBS Group AGだけという形になっていきまして、それぞれが切り離し可能というふうに、この絵だけでは見にくいんですけれども、そういうストラクチャーに変化していきます。

【岩原座長】

よろしいですか。

【家森委員】

はい。

【岩原座長】

第2点目は。

【中村委員】

すみません、2点目、もう一回お願いします。

【家森委員】

金融とITの……。

【中村委員】

すみません。FinTechの投資に関してUBSが今どこに投資しているかというのは、私はちょっと存じ上げないものですから、この質問については、すみません、お答えできません。申しわけございません。

【家森委員】

わかりました。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは翁委員、どうぞ。

【翁委員】

池尾先生にお伺いしたいんですけれども、先ほど野﨑委員のご質問に対するお答えとして、新規の事業をやりたいという銀行が出てきた場合に、監督当局のほうはその新規事業自体を審査するというのはなかなか難しいところがあって、ガバナンスと資本とかをチェックするということぐらいではないかということをおっしゃいました。その資本というほうは数字で見えてきていますので、それで確認ができるわけですけれども、ガバナンスを見るといったときには、監督当局は何を確認するのでしょうか。池尾先生は今日のお話の中では、3ページのところではガバナンスという言葉がこのことを指すのかわからないんですが、真ん中のところに、1つはこの今日のペーパーで主張されているように、simplifyされて、transparentな組織になっていて、いわば金融システムの安定性を確保するためにこういったセーフティーネットが漏出しないような組織になっているかどうかということを確認するというのが1つ確保されていることが必要だとおっしゃっていて、私もそのとおりだと思います。さっきおっしゃったガバナンスの体制というのはそれにプラスアルファ何かお考えがあるのか、今いろいろご説明されてきたことと関連して、監督当局としてここも見なければいけないんじゃないかというようなことがもしございましたら、お考えをお教えいただきたいと思いましてご質問させていただきました。

【岩原座長】

池尾先生。

【池尾参考人】

これも全く個人的な意見になりますが、決済とか小口預金を担っている部門がちゃんと守られていて、そこを守るために提供されているものが外部に濫用されないようになっているというのをチェックするのはミニマムスタンダードだと思います。それはだから、ミニマムなチェックであって、したがって、それ以上チェックする項目があり得るのは当然あり得ると思うんですが、今それをちょっと網羅的に挙げろと言われても、それをリストアップする準備はないんですが、やはり一番最初に大崎委員がおっしゃったような公平性というかフェアにかかわるような話は当然あるわけですし、それから企業グループとしての戦略的な方向性をどういう形でオーソライズしてきているかとか、FinTech分野に出ていくとした場合に、それは経営の意思判断ですけど、その経営の意思判断を例えばどういう形でオーソライズして、取締役会で承認を受けているかとか、そのあたりはやはり見るんじゃないかという気がしますが。

【岩原座長】

よろしいですか。ほかに何かございますでしょうか。先に小鈴委員、どうぞ。

【小鈴委員】

中村委員にご質問させていただきます。UBS様におけるリーガル・エンティティーをベースとしたガバナンスの位置づけについてでございますが、例えば資料の16ページを拝見しますと、各ファンクションから日本のヘッドやリージョナル・ヘッドにレポートしていく流れとなっており、リーガル・エンティティーは特に図の中に入っていないと思います。この図に表れているように、リーガル・エンティティーよりも、やはりファンクションやローカル、リージョンを重視しているということなのか、それともこれは作図上の問題だけであって必ずしもそういうわけではないということなのか、この点についてお伺いできればと思います。

【岩原座長】

中村委員。

【中村委員】

ビジネス・マネジメント上と申し上げますと、おそらくローカル、リージョン、グローバル・マネジメントとファンクショナル・マネジメントで見ていると申し上げたほうが現実に近いと思います。ただし、日本の商法その他ございますので、会社法上、ガバナンスの観点からやらねばならないこともございますので、それはもちろんミニマムとしてやらせていただいております。ただ、そのどちらに重きがあるかといいますと、どちらかというとローカル、リージョン、それからファンクションというほうに重きがあるかと思います。

【小鈴委員】

ありがとうございます。

【岩原座長】

それでは大崎委員。

【大崎委員】

すみません、たびたび。先ほど中村委員のご説明を伺っていてふと思ったんですけど、UBSグループの前の状態と今の状態の違いについてなんですが、危なくなったものを切り離したりする、あるいは売ってしまったりすることが容易になったというのは何となくわかるんですが、他方で、そういうふうにそれぞれの地域なり分野のエンティティーが割と独立性を持ってくるというか、自立性を持ってくると、今度、親としてそういうことを全体でやっているという意味は何なんだろうかという感じがちょっとしてきたんですが、やはりそこはあれですか、戦略的な目標は厳しく上のほうから下ろしていくので、それに十分応えられなければ切っていくというのを機動的にやるというようなことで、トップのUBSグループによるコントロールというのは、以前、UBS AGがやっていたコントロールとさして変わらないのか、それ自体大きく変わっているのか、その辺いかがなんでしょう。

【岩原座長】

中村委員。

【中村委員】

経営戦略、ガバナンス上の結びつきというのは全く変わっておりません。ただ金融システム上、何らかの形で子会社がシステム不安の中で問題が起こった場合にリーガルに切り離せるようになっているとお考えいただいたほうがいいかと思います。

【岩原座長】

よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。藤原委員。

【藤原委員】

お二方、今日は貴重な意見を聞かせていただきましてありがとうございます。UBSさんについては、実はUBSさんにかかわらず、私どもメガバンクとして欧米の金融機関の経営体制について随分研究してまいりましたので、質問はございません。池尾先生のところで、いろいろご示唆をいただいて、拝聴したご意見について少しコメントさせていただきたいと思います。確かに我々も業務範囲あるいはガバナンスについては転換期に来ていると思っておりまして、幾つかの論点の中で一つ一つ、4点ほどお話ししたいと思います。

まず1点目、池尾先生の2ページのところ、市場支配力の変化に起因する場合が多いということで、実際私も経営チームの一員として経営しております観点から申し上げると、市場支配力というよりは、やはり競争力の維持・拡大ということなんだと思います。すなわち何を言っているかというと、国際金融機関とのボーダレスな戦いが始まり、あるいはデジタルテクノロジーの発展において異業種が入ってくる。先ほど先生がまさにご指摘されたところの中で、我々自身が従来の規制、金融機関としてのメンタリティーを少し脱却して、やはりこのイノベーションに突入していかなければいけないという観点の中でこの業務範囲というものを考えていかなければいけないんじゃないかと、ある意味危機感を持っております。そういう観点で先生のお話を、先ほどFinTech等々について前向きなご発言をいただいて非常に心強いと思っています。

2つ目は組織の複雑性の話です。組織の複雑性の話は、私も米国に8年ほどおりまして、米銀の少なくとも複雑性というのは2つのいわゆる要因があったと思います。1つはマクファーデン法という州際業務において各州ごとに1個しか持てなかったという中で、法人格をやはり場合によっては数十持株会社に持っていた、その中での複雑性ができたこと。もう一つは、先生が先ほどご指摘されていた、ハイリスク・ハイリターンを求める中で、例えばファンドですとか会社形態をもって別会社をつくって金融コングロマリットを作ってきた。この2つの背景があろうかと思います。日本に振り返って我々を見て考えますと、実は両方ともあまり当てはまらない議論でございまして、我々においての組織の複雑性という意味では、みずほフィナンシャルグループですと銀行と信託と証券プラスアルファのグループで構成されているわけですけれども、ちょっと形態が違うかなという感じもいたしました。

3点目は規模の話でございます。確かに規模という面では、大きくなればなるほど、これは経営のマネジメントが難しくなるのは確かなんですけれども、例えば先ほど非常におもしろいなと私が感じたのは、お客様のソフトの情報、こういったものをどうマネージするかというところは確かに我々も大きなポイントだと思っております。もちろんビッグデータ等々使いましてデータ上管理するという観点と、あとはいかに権限委譲を進めてその単位を小さくしていくか。例えば私どもでいいますと支店長の権限というのは明確に規定しておりまして、例えば日本橋地区のお客様のこういう会社のこういう経営者の方々の情報というのはそこで実は管理されていて、そういう中で権限委譲された中で全体のマネジメントをしていると。そういう意味でいいますと、例えばGEの例がいいかどうかわかりませんけれども、巨大企業には巨大企業のマネジメントの仕方があり、かつ我々日本の金融機関においてもその経営のクオリティーを今問われているのではないかという気がいたしますので、メガバンクもそこにはしっかり矜持を持ってやりたいなと思っておりました。

最後に、大前提となりますガバナンスでございます。我々もガバナンスには相当意を用いてやってございます。確かに先ほど非効率性の話だとか、あるいは内部に関する話が出ておりました。内部、いわゆるinfluence活動ですね。influence活動等々については、確かに大企業になればなるほど、ないとは言えない世界に入ってくると思っています。ここはやはり1つポイントは、社外の目をしっかり通して枠組みをきっちり決めておく、ルールを決めておく、かつチェックされるという、このガバナンスは非常に重要だと思っています。みずほフィナンシャルグループの場合は委員会設置会社に去年から移っておりまして、指名委員会、報酬委員会は全員社外でございます。13名の取締役のうち社外が6名、非執行が2名で、マジョリティーは非執行の役員の方々ということで、そういう中では体制面では一歩踏み出しております。コーポレートガバナンス・コードにつきましても6月1日にファイリングしたんですけれども、これからはやはりそこをうまくワークさせていくこと、魂の部分だと思っていまして、そういったところが少しずつ進んでいくと、この業務範囲のところについてもご理解を得られるのではないかと、こういう所感を持ちました。

以上4点でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございます。ほかに。藤井委員。

【藤井委員】

非常にわかりやすいご説明をいただきましてありがとうございました。池尾先生から先ほどご説明の中でリレーションシップ・バンキングと、それからいわゆるソフト情報、こういったものに関する規模と範囲の影響についてご説明がありましたので、この点についてお尋ねさせていただきたいと思います。私どもも規模につきましては、規模の拡大がおそらくこういったソフト情報の価値を低下させる方向に働いて、結果的にはその活用に阻害的に影響しているかなということを感じておりまして、この辺は解決しなければいけない大きなポイントかと認識しております。それで、特に貸出の原資になるような、貸出金の権限だとか、こういったものは権限委譲で解決ができるかと思っておりますけれども、一方でコンサルティングですとかソリューションサービスにかかわるときに、社内のリソースを調達する権限を現場に委譲するのはなかなか難しいところがありまして、この辺で結果的に資源配分がゆがむ、あるいはinfluenceの行使につながるというようなところに問題意識を感じています。この辺は実際に現場、それから社内のマネジメントの中で解決していかなければいけない課題かと思っています。お尋ねしたかったのは、もう一つのスケールのスコープのほうについてです。ここについてはむしろ情報価値を高める方向に働く可能性を感じていまして、したがって、スコープのシナジーが組織的なコストを上回れるかどうかというのは別にしましても、いわゆるリレバンを推進する観点からいうと、こういったソフト情報についていえば、むしろスコープが広がるということについていうと、中立的か、むしろ多少プラスかなと今感じていまして、この辺は直接的に組織が大きくなるとか複雑になるということを経由しないで、スケールとスコープが情報活用についてどう働くかというあたりについて、特にスコープについて先生のご見解を伺えればと思います。以上でございます。

【岩原座長】

池尾先生。

【池尾参考人】

最初に申し上げたことの繰り返しになりますが、シナジーとかスコープに関しては、その源泉を、それがどこに由来するかという由来のところを本当にアイデンティファイして広げるという形が必要で、とにかく広げればということをやっていらっしゃるとは思いませんが、とにかく広げれば何か効果が出るということではなくて、どういう源泉からスコープエコノミーなりシナジーが出てくるかということの源泉をかなり明確にアイデンティファイした上で、その源泉に沿って広げていくような、そういう広げ方においての注意深さといいますか、限定づけた形の広げ方というか、その辺が重要ではないかと私自身は思っております。一般論ですけど。

【岩原座長】

よろしいですか。ほかに何かありますか。吉崎委員。

【吉崎委員】

すみません。若干コメントっぽくなるんですが、銀行、証券の顧客情報の話です。外資系金融機関さんだけじゃなくて、これは国内のときにも出てきた話ではありますが、これについては私ども、ドコモですけれども、お客様の情報を非常に持っておりまして、似たような悩みがありまして、かなり慎重に扱っています。今回の議論の流れからいいましても、金融機関さんのメリットというのは割とはっきりしています。両方一緒に使えばそれはいろんなことができますねということははっきりしておるんですが、お客様のメリットというのがあまりPRされていないんじゃないか、明確に伝わっていないんじゃないかと感じています。何か一言、よりよいサービスが提供できますというような話、割と漠とした話ではなくて、もう少し明示的にPRをもしできるのであればやっていったほうが世の中の理解も深まってくるんじゃないかと感じています。以上です。

【岩原座長】

ほかに何かございますでしょうか。

今のファイアウォールの問題は、昔の銀行、証券の分野調整からもともとは来ている問題で、それが顧客情報の管理という問題と結びついたような形の規制になっていて、規制の構造自体が非常に複雑で、本来の目的に沿ったものになっているのかという問題があるように思います。即ち、現在の金融商品取引業等に関する内閣府令の153条の構造自体に検討の余地があるのではないかという感じがしています。昨年の監督指針の改正で若干緩和はされていますけれども、なお中村委員がご指摘になったような点は考えていかなければならないのかなと思います。

池尾先生に私からも質問してよろしいでしょうか。せっかく大先生に来ていただきましたので。

【池尾参考人】

何をおっしゃる。

【岩原座長】

池尾先生が最初に、80年代以降だんだん考え方が変わってきたというご指摘をされたわけで、先生のご議論もトーンが少し変わってきているのかなという気がしないでもありません。本日のご報告、非常に教えられるところが多くて、そのとおりだと思うのですけれども、最後の結論では、業務範囲の拡大には基本的に賛成であるとおっしゃられましたけれども、本日の御報告では、どちらかというとむしろ業務範囲拡大の負の面のほうを強調された面が強かった気がします。例えば、業務範囲の拡大に伴う、ライベンシュタインのX非効率ですとか、influence costsの増大を抑制するグループ・ガバナンスの構造を各金融グループは工夫する必要がある、等の御指摘をなさいました。まさにそのとおりなのですが、先ほど翁委員のご指摘にあったように、これらが難しいからこそ議論しているわけで、かつて先生が、「銀行リスクと規制の経済学」の先生のご論文の中では、無関連性命題ということを議論されて、その中でリスクに関する誘因効果から見る限り、銀行は持株会社を通じる方式ではなく、直接の子会社による方式を採用するほうが銀行破綻の可能性を低下させるというような面があるというご指摘をされていたように思うんですけれども、現時点で先生は、そういう組織のあり方が、X非効率やそういうリスクの誘因等の問題についてどういう影響を与えると考えておられるのか教えていただければありがたいと思います。

【池尾参考人】

私もいろいろ学ぶことが多くて、考え方も多少変わってきていることは事実で、でも原則、業務分野を広げることに対しては私は、今日も申し上げましたように前向きな姿勢なんですけれども、ただ、大きな組織が持つデメリットというのも強く認識するようになってきているというところであります。最後におっしゃった話は、有限責任制の持つ効果みたいなもので、持株会社のもとで切れることの事後的な意義と、切れるということが事前的に与えるインセンティブ効果みたいなことと両方あると思うんです。事後的な破綻処理ということを考えると、きれいに切れるほうがいいに決まっているわけですけれども、どうせきれいに切れるんだということがわかっていると、事前的な誘因にはいい効果が出ない可能性がありますので、その辺のことを考えたときに、持株会社よりは子会社にしたほうがプルーデントな経営が行われる可能性が高い、そういう結論が出てくる場合があり得るということを多分、もう10年以上前ですからよく覚えていませんが、主張したんだと思います。だから、組織構造が持つ事前のインセンティブ効果みたいなものの重要性を最近はより強く思うようになっているということで、あまり心変わりしているつもりはないんですけれども。

【岩原座長】

どうもありがとうございます。持株会社形態をとるのがいいのか、直接の子会社形態のほうがいい面もあるのか、仮に持株会社形態をとるにせよ、全体を集中的にコントロールするようなシステムがいいのか、それともむしろ分権化したような意思決定システムのほうがいいのか、そこら辺が非常に難しいところで、それをいかに構築していくのがいいのかということを検討するのがこのワーキング・グループの課題かなという感じがいたします。

よろしいでしょうか。特になければ、今日はそれぐらいにさせていただきたいと思います。本日は活発なご意見をいただき、まことにありがとうございました。本日いただきましたご意見を踏まえまして、次回以降も引き続き検討していきたいと思います。なお、次回は松井委員から、金融グループにおけるガバナンスのあり方について会社法等の観点からお話をいただくことなどを予定しております。

最後に、事務局のほうから連絡事項がございましたらお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私から日程につきましてご説明を申し上げます。次回ワーキング・グループの日程ですが、皆様のご都合を踏まえまして、7月29日水曜日、10時から約2時間ということで予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3538、3582)

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