金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」(第6回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年9月18日(金)15時30分~17時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」第6回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、議事に移らせていただきます。これまでの会合では、ヒアリングを中心に討議を進めてまいりましたが、今後の会合では、これまでの討議で把握された様々な論点について議論を深めていきたいと考えております。本日は、事務局より討議資料「金融グループにおける経営管理のあり方」について、まずご説明をいただき、討議を行いたいと思います。

それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私のほうから、資料についてご説明を申し上げます。お手元に資料が配付されているかと思います。討議資料(1)「金融グループにおける経営管理のあり方」と題したA4縦の紙、全体で7ページになりますが、これがあり、さらに参考資料として、参考資料1、2、3と配付されているかと思います。この討議資料の(1)に沿いましてご説明を申し上げて、参考資料につきましては、必要に応じて参照し、ご説明を申し上げたいと思っております。

まず、この討議資料(1)につきまして、最初に「はじめに」と書いております。ここは、この討議資料の論点を取り巻く環境変化等々をまとめたものでございます。朗読をさせていただきます。

1.はじめに。足許、金融グループを取り巻く環境は、大きな変化にさらされている。

FinTech(ITを活用した革新的な金融サービス事業)の拡大に代表される近時のITイノベーションの急速な進展は、決済をはじめとする金融サービス業の今後のあり方に大きな影響を及ぼすものである。欧米金融機関が、こうした環境変化に戦略的に応じる動きを活発化させる中、日本の金融グループがこれと伍して戦っていくためには、日本の金融グループにおいても、決済サービスをはじめとする様々な金融サービス分野において、イノベーションの促進に向けた取組みを強化していくことが重要な課題となっている。

また、金融グループの状況を見ると、メガバンクグループなど大規模金融グループでは、銀行以外の業態の子会社や海外子会社のグループ全体に占める収益の割合が増加傾向にあるほか、地域に目を転じれば、持株会社を活用し、県域の枠を越えた経営統合の動きが見られ、その中で統合によるシナジー・コスト削減効果を発揮することが期待されるなど、グローバル・ローカルな経済・金融環境の変化に対応しつつ、それぞれ新たな展開を迎えている。

金融グループを巡る近時の国際的な議論では、持株会社を中心とした金融グループ全体としての健全性等を母国当局が責任を持って監督していくべきとの流れにある。

金融グループを巡る制度的枠組みについては、これまで、業態別子会社方式による銀行・証券・信託等の相互参入を皮切りに、銀行持株会社制度の導入、これらに伴う業務範囲の見直しなど、累次の見直しが重ねられてきたところであるが、金融グループを取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、日本の金融グループが実効的な経営管理のもとで、より戦略的かつ柔軟な業務運営を行うことが可能となるよう、金融グループを巡る制度のあり方について、今日的な状況に即した見直しを行っていく必要があると考えるが、どうか。

次のページをお開きください。次のページ以降につきましては、経営管理のあり方について、幾つかカテゴリーに分けまして記述をしております。

最初が(1)としまして、金融グループの経営管理を巡る状況でございます。

持株会社をつくって形成される金融グループは、大別して、持株会社を頂点として、その傘下に銀行、証券、信託など多様な業態の子会社(海外子会社を含む)を有するケースと、持株会社のもとに複数の銀行と幾つかの子会社を有するケースが存在する。こうした金融グループにおける経営管理のあり方について、これまでのヒアリング等を通じて、下記のような実態が確認されている。

まずマル1として、メガバンクグループ等でございます。

メガバンクグループなど、大規模な金融グループは概ね前者――前者と申しますのは、最初に書いていました持株会社を頂点とし、その傘下に銀行、証券、信託など多様な子会社があると。こういったケースに該当し、いずれのグループにおいても、グループ全体としての経営管理機能の充実に向けた取組みがなされている。また、足許では、各エンティティベースでの経営管理に加え、例えば、リテール、ホールセールなど、ビジネスセグメントベースで横断的な経営管理を行う、いわゆる「マトリクス・マネジメント」と呼ばれる欧米金融機関において一般的とされる手法での経営管理の取組みも見られるところである。

各グループにおける経営管理の具体的な態様をみると、必ずしも一様ではない。

例えば、グループ内のストラクチャー(法人構成)については、持株会社の下に銀行・証券・信託など、グループ内の主要会社を併存させるストラクチャーを採り、持株会社がこれら主要会社の直接の株主となることで、グループ全体の経営管理の中心的な存在とする例も見られる。他方、持株会社の直接の傘下に主要会社を置くものの、幾つかの主要会社をグループ内の中核銀行等の子会社(持株会社からすれば孫会社)とするストラクチャーを採り、経営管理上、持株会社傘下の中核銀行等にある程度大きな役割を担わせる例などもある。更に、規模の大きくない子会社については、持株会社の直接の傘下に置くか、孫会社とするかは、各グループによって様々である。

また、各グループにおける持株会社及び傘下子銀行の機関設計について見ると、持株会社に関しては、指名委員会等設置会社であるものと監査役会設置会社であるものとがある。また、法令に基づく委員会という位置づけではなく、任意の委員会を設けているケースがある。子銀行については、いずれのグループも監査役会設置会社となっている。

ここで、参考資料1参照とあります。参考資料1というのが、縦書きの表で別添として添付されているかと思います。この参考資料の1では、主だったグループにつきまして、持株会社、その子銀行の機関設計がどうなっているかをまとめたものでございます。最初に上のほうに、いわゆるメガバンクグループが並んでおります。持株会社レベルで見ますと、指名委員会等設置会社であるもの、あるいは監査役会設置会社であるものがございます。一方でその下の子銀行のレベルを見ますと、概ねこの監査役会設置会社となっております。後で文章でもご説明しますが、この表の下のほうは、地域銀行グループについてまとめたものでございます。持株会社レベルで見ますと、監査役会設置会社であるもの、監査等委員会設置会社であるもの、また指名委員会等設置会社であるものもございます。傘下の子銀行を見ると、この地域金融機関グループでは、監査役会設置会社であったり、監査等委員会設置会社であったり、また指名委員会等設置会社、持株会社でも子銀行でも指名委員会等設置会社というケースもございます。このように、機関設計は様々なものがあるという状況がございます。

もう一度、討議資料の3ページにお戻りいただきたいと思います。3ページの3行目からでございますが、グループ運営の実態について見ると、程度の差はあるものの、持株会社と各子会社との間及び子会社相互間で、役職員の兼務などを通じて情報共有と意志決定の調整を行いつつ、グループの経営戦略の策定等を行っている例が多く見られる。

続きまして、マル2地域銀行グループについてでございます。

地域銀行グループにおいては、上記のような経営管理形態とは異なり、各地域におけるブランド力・顧客基盤等を背景とし、持株会社の直接の傘下に複数の銀行が存在するケースが一般的である。

地域銀行グループにおいては、ブランド力等を背景に持株会社傘下の各銀行がある程度の独立性を保つケースが多いと思われるが、グループの運営上、持株会社が果たす役割の大小、及び傘下銀行その他の子会社の果たす役割は、各グループによって様々と思われる。一方で、この機関設計について見ると、先ほど申しましたように、指名委員会等設置会社であるものや監査等委員会設置であるもの、あるいは監査役会設置会社であるものなど、その形態は様々である。

また、地域銀行グループのストラクチャーについては、恒久的な形態として捉えているグループと、将来的な統合・再編等を見据えた過渡的な形態として捉えているグループがあると思われる。

続きまして(2)経営管理のあるべき姿についての基本的考え方でございます。

こうした各金融グループにおける経営管理形態の差異は、まず国際業務を展開しているか、国内業務のみに注力しているかといった経営形態の差異等に由来する他、各グループが強みを持つ、あるいはこれから注力しようとするビジネス分野の差異、グループが営む各ビジネスの規模・リスク特性、グループ外企業との提携関係、人事・資本政策を含む経営戦略全般などに由来するものと考えられる。また、グループ形成に至る歴史的な経緯等も反映されているものと考えられる。

こうした点を踏まえれば、金融グループにおける経営管理のあるべき姿は区々であり、例えば、単一のモデルのようなものを念頭に置くよりも、むしろ、営業基盤・規模・リスク特性・経営戦略等に応じて区々であることを前提とした上で、如何にして実効性を有する経営管理体制の構築を図っていくかとの視点が重要と考えられるのではないか。

各金融グループにおいて、どのような経営管理体制が望ましいかについては、各グループの実状を踏まえた上で、各グループと監督サイドとの間で日常的に対話が行われているところである。銀行法令等の規制は、それが銀行業を営む金融グループが共通に遵守すべきルールを定めるものであるとすれば、各金融グループと監督サイドとの対話等を通じて見出される各金融機関の実状を踏まえた経営管理のあるべき姿を制約するべきものではなく、各金融グループの経営管理体制の選択に対して基本的に中立的なものであるべきと考えられるのではないか。

続きまして、(3)グループ全体の経営管理の実効性でございます。

最初に、経営管理に求められる機能。

金融グループにおける経営管理のあるべき姿は区々であることを前提としつつ、それぞれのグループの経営管理体制が十分に実効的であるためには、どのような機能が求められるべきと考えられるか。

金融グループは、法人格を異にする各エンティティが、いわばひとつの集合体を形成し、エンティティの枠を越え、グループ一体として様々な業務を展開するものとの側面がある。これを踏まえれば、各金融グループにおいて、グループ全体の経営方針が明確に策定され、それがグループ各エンティティにおいて浸透・徹底されるとともに、経営方針の実行に伴う各種リスクを的確に把握し、リスク顕在化時にも適切に対応できる体制の構築・運用が求められると考えられるのではないか。

この観点から、グループの経営管理として、例えば、箇条書きで書いておりますが、グループの経営方針の策定、グループの収益・リスクテイク方針、並びに資本政策等の策定、グループの経営管理体制の構築・運用、コンプライアンス体制の構築・運用と利益相反の管理、グループの再建計画の策定・運用などを行うことを求めていくことが考えられるがどうか。

なお、上記のような点については、金融グループを巡る国際的な議論等でも指摘がなされているところである。

ここで、参考資料の2参照とありますが、この後ろについている参考資料の2というA4の横紙がございます。最初にバーゼル銀行監督委員会が公表しております、「銀行のためのコーポレート・ガバナンスの諸原則」、その関係するところを抜粋しております。最初に、原則の5と四角で囲んでいるところがございますが、グループ構造において、親会社の取締役会は、グループに対する全般的な責任を有し、またグループやグループ内企業の構造・業務及びリスクに照らして適切で明瞭なガバナンスの仕組みを確保することについて、全般的な責任を有する。それで取締役会、上級管理職等は、このリスクを知り、理解すべきであるということで、具体的にその下に幾つか箇条書きで書いております。

例えば、最初の箇条書きのところに、親会社、またはその子会社の複雑性や重要性に応じて、子会社、親会社それぞれの役割や責任を明確にし、グループ構造やコーポレート・ガバナンスの枠組みを構築すべき。あるいは、その次にあります、子会社取締役会を適切に形成し、適切な経営管理の構造を形成すべき。また3つ目にありますが、グループ全体の事業活動や構造全体にわたるリスク管理を行えているかを査定すべき。そのほか、2ページ目にわたりますが、2ページ目の最初のところでは、グループのコーポレート・ガバナンスの枠組みが、潜在的なグループの利益相反を特定し解決するために十分なものになっているか。また、グループ構造や、新たに法人を設置する場合の方針を承認し、それらがグループとしての方針と利益に整合的なものであることを確保すべき。その次には様々なグループ法人間における情報交換を促し、リスク管理等々を行っていくべき。また、ガバナンス上の要件について十分なリソースを有しているべき。監督当局と実効性のある関係を維持すべき。実効的な内部監査機能を構築すべき。このようなことが書かれております。

参考資料の3ページ以降は、私ども金融庁の検査マニュアルですとか監督指針をつけております。大体同じような趣旨のことを書いております。大部にわたりますので具体的な説明は省きますが、必要に応じてご参照いただければと思います。

また、討議資料の5ページ、続きのところにお戻りください。5ページの4行目からでございます。先ほどグループの経営管理に求められる機能を箇条書きで記載しておりましたが、このような機能をグループの中でどのような経営管理体制のもとで発揮していくかが論点となる。これについては、まずマル1としまして、持株会社において統合的にグループ全体を運営する体制。マル2として、持株会社を設置することなく、例えば頂点に立つ親銀行等がグループ全体の経営管理を行う体制。マル3として、持株会社を設置しつつ、グループ傘下の主要なエンティティが持株会社とともにグループ全体を運営していく経営管理体制の例が考えられる。

このうち、マル2持株会社を設置しないケースについては、リスクの把握、利益相反管理の徹底等について、マル3の場合には、これに加え、主要エンティティに対する株主による直接のガバナンスが機能しにくくなり得ることについて、ガバナンス上の工夫が必要になり得ると考えられるが、いずれにせよ、最終的にどのような経営管理体制のもとで、どのような工夫を行っていくかについては、各金融グループと監督当局との日常の対話等を通じ、最適な解が見出されていくものと考えられるのではないか。

その次、マル2ガバナンス機構でございます。

例えば、持株会社が上記の機能を果たす際の、当該持株会社におけるガバナンス機構の設計については、上記のとおり、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社、監査役会設置会社の例がある。持株会社においては、持株会社の取締役会等に「社外の視点」を取り入れるなどの工夫も行いながら、グループ傘下の各エンティティの業務執行全体に対し、実効的な監督機能を発揮できる体制が確立されていくことが重要と考えられるが、そのためにとられるべきガバナンス機構の具体的な形は、グループごとに区々であり得ることを踏まえれば、持株会社のガバナンス機構に関し、特定の機関設計を強制するなど、外形的・画一的に規定することは適当でないとも考えられるが、どうか。

続きまして、マル3持株会社による業務執行・役職員の兼職でございます。

上記のように、金融グループの経営管理体制として、「社外の視点」を取り入れるなどの工夫も行いながら、グループ全体に対して実効的な監督機能の発揮が確保されているのであれば、例えば、グループ内の各エンティティにおける共通・重複業務などについて、持株会社がこれを統括的・一元的に実施することは、持株会社が現行制度上認められていない業務執行の一部を担うことになるものの、これを容認する方向で検討することが考えられるのではないか。また、持株会社と傘下のエンティティの役職員が兼職することなどについても、柔軟に考える余地があるのではないか。

続いて、マル4会社法との関係でございます。

金融グループの経営管理のあり方を考えるにあたっては、会社法による規制等との関係で、以下のような論点が考えられる。これについて、どう考えるか。

まず(イ)としております。持株会社において実効的な監督機能を発揮する体制が整っており、その下でグループの経営管理を行っているといったケースについて、会社法や銀行法がその子銀行にまで監査役会等の設置を求めていることは、「屋上屋を架していないか」との指摘がある。一方で、個々に監査役会等を設置することにより、より強固な監督機能が発揮されるとの議論もあり得るが、これについて、どう考えるべきか。

次の(ロ)でございます。持株会社は子銀行の株主としての権限を有するが、子銀行の取締役等に具体的に指揮命令する権限を有してはいない。株主としての権限行使とは別に、持株会社が子銀行に対して指揮命令を行い得ることを制度的に担保すべきとの指摘がある。一方、法人格が異なること及び子銀行に少数株主や債権者が存在することを踏まえると、慎重に考えるべきとの議論もあり得るが、これについて、どう考えるべきか。

次の(ハ)でございます。持株会社の指揮命令に子銀行の取締役が従った場合には、当該取締役には任務懈怠責任が生じないこととすべきとの指摘がある。一方、子銀行の取締役は持株会社の指導を受けつつも最終的には自己の判断で経営判断を行うべきとの議論もあり得るが、これについて、どう考えるべきか。

注書きを付しておりますが、この(ハ)の検討に当たっては、近時、会社法について、親会社株主及び子会社の少数株主の保護の観点からの改正がなされている。こうしたこととの関係をどのように整理するかといった検討も必要と考えられるのではないかということでございます。

最後に7ページ、マル5としまして、情報の共有でございます。

グループ全体の実効的な経営管理を行う上では、グループ内でそのための情報を集約・共有することが必要になると考えられる。この点に関しては、既に現行法令においても、「子法人等の経営管理に関する業務」に係る情報の共有は、許容されているところであり、これにより、グループ内での適正な情報の共有を可能とする枠組みはあると考えられるのではないか。

注書きでございますが、これに関連して、銀行と証券のファイアーウォール規制の修正(法人情報のオプトアウトの撤廃)が必要ではないかとの指摘もあるが、これは「経営管理」を超えて、「対顧客の取引」との関係での情報共有のあり方の問題であり、利益相反管理、銀行の優越的地位の観点など、金融グループの経営管理のあり方とは、別個の慎重な検討が必要と考えられるのではないか。

その他、金融グループの経営管理のあり方に関して、検討すべき点はないか。

最後に、参考資料の3が配付されているかと思います。この参考資料の3は、今の説明の中の特に後半について、何点か法規制の話が出てまいりまして、その関連の条文の主なところを抜粋しているものでございます。大部にわたりますので、かいつまんでご説明申し上げますと、例えば先ほどの私の説明の中で、持株会社の業務執行を行うことをどう考えるかという話がございました。現行、銀行法の52条の21というところでは、銀行持株会社はその子会社である銀行、あるいは幾つか掲げられている会社、すなわち銀行持株会社の子会社のことですが、子会社の経営管理を行うこと並びにこれに附帯する業務のほか、ほかの業務を営むことができないということで、銀行持株会社が営むことのできる業務は経営管理とそれに附帯する業務のみということになっております。

次のページ、2ページ目以降は会社法の関連条文、あるいは銀行法の関連条文を書いております。私の先ほどの説明の中で、持株会社に適正な経営管理体制があるとするならば、子銀行に監査役会等を求めることをどう考えるべきかと申しました。これにつきましては、まず銀行法の4条の2というものがございます。ここでは、銀行は、株式会社であって次に掲げる機関を置くものでなければならない。1号で取締役会、2号で監査役会、あるいは監査等委員会または指名委員会等ということになっており、監査役会的なものを置かなければならないとなっております。その上に、会社法の規定がございます。会社法の328条では、大会社(公開会社でないもの等を除く)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならないとなっております。ちなみに大会社という意味では、銀行法は銀行法の中で最低資本金規制というものがございまして、今、法律上は10億円以上で政令で定める額以上、政令で20億円となっております。したがいまして、銀行は必然的に大会社ということになり、非公開会社を除き、監査役会を設置することが会社法上も必要になっているということでございます。

次のページ以降は、株主総会の権限、あるいは役員の損害賠償責任、責任追及の訴えのところでございます。これは皆様ご承知のところが多いかと思いますので、説明は割愛させていただきまして、その後ろに情報共有の関係の規定をつけております。

情報共有の関係の規定は、金融商品取引法の44条の3といったところから、詳細は内閣府令に委任をされております。その次のページに、関係の内閣府令の規定を入れております。金融商品取引業等に関する内閣府令、第153条というものがございます。ここで7号というのがありまして、有価証券関連業を行う金融商品取引会社が、発行者等に関する非公開情報を当該金融商品取引会社の親法人、子法人等から受領し、または当該親法人もしくは子法人等に提供すること、これを禁止しております。いわゆるファイアーウォールを設けているということでございます。

その後に、次に掲げる場合において行うものを除くという除外規定がございます。そのリというところに、内部の管理及び運営に関する業務の全部または一部を行うために必要な情報を受領――括弧がついておりますが2行飛んで――受領し、またはその特定関係者に提供する場合ということで、内部管理運営に関する必要な情報の受領、提供は例外として認められていると。その内部管理及び運営に関する業務等は、次に掲げる業務をいうと、この3項でありまして、7号で、子法人等の経営管理に関する業務ということが規定されているということでございます。

次のページは、今、金融商品取引業者について申しましたが、登録金融機関、つまり金融機関が登録を受けて証券関係業務を行う場合についても同じような規定が設けられているという状況にございます。

少し駆け足になりましたが、私からの討議資料及び関連の参考資料の説明は以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。

それでは、これから討議に移りたいと思います。本日の討議資料に関して、委員の皆様、どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。

大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

2、3質問や、ちょっと感想めいたことを申し上げたいと思うんですが、まず全体の印象としまして、個別のグループの事情に配慮した柔軟な機関設計なり組織の形態を認めましょうというトーンになっていることは、非常に結構なことなのではないかなと思っております。とりわけ4ページのあたり、経営管理のあるべき姿を制約するというようなことではなく、金融グループの経営管理体制の選択に対して基本的に中立的なものであるべきだと――監督がですね、これは非常にいいことじゃないかなと思っております。

それから、6ページの会社法との関係のところで、監査役会等の設置を求めていることについてという記述がございますが、これは私は100%子会社の場合とそうでない場合で一応分けて考えたほうがいいのかなという感じがしておりまして、確かに100%子会社ですと、屋上屋を架していないかという感じも大いにしてくるんですが、少数株主が子会社のほうにいるとなると、大分話が違うのかなという気がいたします。

それから、これは教えていただきたいんですが、その前のところで、取締役の兼任についての話かなと思う記述がございますが、監査役なり、例えば親会社、持株会社の監査委員である取締役が子会社の監査役を兼務するとかいうようなことについてどう考えるのかというのを、ちょっと教えていただければというふうに思っております。

それから、最後のページで、銀証のファイアーウォール規制について言及していただいておりまして、これはここの注に書いてあるとおりだと私は思いまして、今回、グループの経営管理ということを専ら議論しているわけでございますが、顧客情報を共有して取引に使うという話になってくると、これはやっぱり利益相反の問題、優越的地位の問題など、非常に問題が大きいのかなと思いますので、少なくとも今の経営管理とかグループのあり方という文脈でこれを論じるべきではないんじゃないかなという気がいたします。

外国銀行の方からは、その辺ちょっと違うニュアンスのご指摘もあったと記憶しておるんですが、これはやっぱり元々銀行業と証券業を分離していない母国から進出してこられている金融機関もおられるので、違和感をお持ちになるのは何となくわかるんですが、銀行業と証券業が基本的に分離されている日本では、こういう点については非常に神経質にならないといけないのかなと思う次第です。

以上です。

【岩原座長】

御質問事項について、佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、大崎委員のお話にございました、監査役、あるいは監査委員等の兼職をどう考えるかということでございます。まず、私ども事務局でこのペーパーをつくったときに、役職員という、わりと広いカテゴリーで捉まえた上で、兼職することについて実態を踏まえれば、柔軟に考える余地があるのではないかという問題提起をして、ご意見を賜れればと思っているところです。おっしゃるとおり、役職員の中でもいろいろな役職員がございまして、その責務に応じてどう考えるかとか、いろいろとご議論、ご意見あろうかと思います。そのあたり、先生方のご意見をお伺いしたいと思っております。

【大崎委員】

それでは、今のご発言を受けて、いいですか。

【岩原座長】

大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

私、今、確たるどうすべきという考えがあるわけじゃないんですが、もう一つ、関連して気になるのは、会社法上の社外性の要件がちょっと変わりましたよね。そうすると、親会社と子会社で、社外の取締役なり監査役が兼務ということが非常にできにくいのかなという気もしまして、その辺も何かちょっと検討の必要があるのかなと思う次第です。どうすべきという結論が今、あるわけではございません。

【岩原座長】

竹林参事官、どうぞ。

【竹林オブザーバー】

法務省でございますが、配付資料の記載の内容につきまして、3点ほど確認させていただきたい点がございます。6ページの「マル4会社法との関係」の部分でございます。まず最初に、(イ)でございますが、「持株会社において実効的な監督機能を発揮する体制が整っており、その下でグループの経営管理を行っている等のケースについて、会社法や銀行法が、その子銀行にまで監査役会等の設置を求めていることは、『屋上屋を架していないか』との指摘がある。」というふうに記載されております。

前回の会合で、松井委員が配付されました資料や、松井委員がされたご指摘、あるいは岩原座長が配付されたご論文や、岩原座長がされたご指摘等によりますと、ここで提起されている問題は、銀行法4条の2において、銀行は株式会社であるということと、要するに、監査役会、監査等委員会、または指名委員会等を置くものでなければならないと規定されておりますけれども、持株会社について厳格なコーポレート・ガバナンス体制がとられ、持株会社が子銀行に対する経営管理を適切に行って、そのような経営管理について金融監督当局の検査・監督が適切に行われると、そういう前提の下であれば、ここは一部大崎委員のご指摘にもかかわるところでございますが、完全子銀行自体に監査役会、監査等委員会、または指名委員会等を置くといった厳格なコーポレート・ガバナンス体制を要求する必要は必ずしもないのではないかという、銀行法上の規制のあり方についての問題であるというふうに理解してよろしいのかという点が1点目でございます。

続いて、同じく(ロ)でございますけれども、「持株会社が子銀行に対して指揮命令を行い得ることを制度的に担保すべきとの指摘がある。」というふうに記載されております。前回の会合での松井委員や岩原座長のご指摘等によりますと、ここで提起されている問題は、銀行法52条の21において、要するに、子銀行等の経営管理を行うことが銀行持株会社の業務として規定されていて、また監督指針においても定められている、金融規制固有の目的を実現するために、持株会社が子銀行の経営に介入、あるいは指揮命令するということを認めることも必要ではないかというものであるというふうに理解してよろしいのでしょうかというのが2点目でございます。

最後に3点目、(ハ)でございますが、「持株会社の指揮命令に、子銀行の取締役が従った場合には、当該取締役には任務懈怠責任が生じないこととすべきとの指摘がある。」というふうに記載されております。こちらにつきましても、前回の会合での松井委員や岩原座長のご指摘等によりますと、ここで提起されている問題については、(ロ)と関連いたしまして、金融規制上、銀行法52条の21において規定されている経営管理、あるいは監督指針において想定されている経営管理としての指揮命令に、子銀行の取締役が従った場合であっても、子銀行の少数株主、あるいは債権者等の第三者の利益を害してはならないということが前提とされているというものと理解してよろしいのでしょうか。これが3点目でございます。

以上でございます。

【岩原座長】

では、佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私ども事務局において、この資料を作成した際の考え方としまして、まず(イ)のところにつきましては、子銀行にまで監査役会等の設置を求める必要があるか否か。竹林参事官ご指摘のとおり、確かに銀行法の規定があり、株式会社であって、監査役会等を設置することが必要であるとされております。一方で、会社法は会社法で、先ほど説明で申し上げましたとおり、銀行は必然的に大会社になり、そうすると非公開会社の場合には監査役会等の設置までは義務づけられていなく、ただ監査役の設置は必要であるとなっております。そうした会社法の規定と若干抵触するといいましょうか、関係するところもありまして、資料の中では、こうしたことについてどう考えるのかということについて、必ずしも例えば会社法だけ、あるいは銀行法だけと限定したつもりもなく、銀行の特殊事情というところもあろうかと思いますけれども、子銀行にまで監査役会等の設置を求める必要があるかどうか。まずその議論と、その上で、もし何か制度上の手当をするならば、どういう手当が必要なのかということを考えていく必要があるかと思っております。そうしたことを前提に、この資料を作成いたしております。

また、(ロ)と(ハ)につきまして、金融規制上の問題かというお話がございました。これは、十分に整理しきれているのかどうか自信がないところではありますけれども、まず金融の特殊な事情というのは大きな背景としてあろうかと思います。それは松井先生、岩原先生のご指摘も、おそらくそういう問題意識で論点が提起されていたかと思っております。金融の特殊事情を踏まえた上で、この(ロ)とか(ハ)の論点について考えるときに、今のご質問にありました、銀行法の特定の条文をもとに何か行動したときにどう考えるかということだけに限定していいのか、それに限らず、もう少し、銀行ビジネスに関連する特殊事情に基づいて、こういう論点が生じるとするならば、それについてどう考えるのかということも含め、この資料を作成したということでございます。

ご質問に正確にお答えできているかどうか自信はないのですが、私ども事務局で作成した考え方の背景はそういうことでございます。

【岩原座長】

ただいま佐藤参事官からご説明いただきましたけれども、竹林参事官。

【竹林オブザーバー】

今のお答えのうち、(イ)の部分でございますけれども、必ずしも銀行法4条の2の問題だけではないというご趣旨の指摘は承りました。もしそういうことであるとするならば、やはり会社法の機関構成についての原則というのは、会社法の根本的なあり方というものにかかわるものでございますから、それと銀行法の規律についての抵触の問題ということにつきましては、銀行法上どのような必要性と許容性があって会社法と異なるような機関構成が許されるのかということについて、十分にご議論いただければなというふうに思います。

以上でございます。

【岩原座長】

竹林参事官からご提起された最初の問題は、銀行法4条の2によって、銀行、子銀行、金融グループにおける100%子会社である子銀行は、監査役会設置会社か、指名委員会等の設置会社か、監査等委員会設置会社か、いずれかにならなければならないのが原則だけれども、しかし、会社法の条文でいいますと、328条の1項で、大会社であっても公開会社でない会社であれば、その3つのいずれかにする必要はないということですので、100%子会社の場合、銀行としては必ずしも公開会社にしなくてもいいということになりますから、会社法に抵触しない形で、公開会社でない会社にすることによって、監査役会設置会社等でないということも許されるわけです。ですから、そういう意味では、会社法に抵触するという問題を起こさずに、監査役会設置会社に必ずしもしなくてもいいという検討をここでする、銀行法4条の2の特有の問題として考えるということはできると思います。

ただその場合でも、328条2項で、公開会社でない大会社は、会計監査人設置会社でなければならないということになり、327条3項で、会計監査人設置会社は監査役を置かなければならないということになっていますから、少なくとも監査役は置かなければいけないというのが会社法上の規制ということになります。そこまでのことが必要かというようなことは議論とはなり得ますけれども、とりあえずは銀行法4条の2が会社法に抵触しない範囲で、公開会社でない会社にすることによって、監査役会設置会社でないことも可能にするということは考えられないかというのが、ここで提起されている問題かと思います。

その次の第2点、第3点は、なかなか難しいですね。これは金融規制上の問題に、限定して考えているのですかというのが竹林参事官のご質問のご趣旨でしょうか。会社法に影響を与えないかという御質問なのでしょうか。経営管理を実現するために、親会社が子会社に対して影響力を行使する方法としては、会社法上は、例えば経営委任契約を締結するとか、幾つかの方法はあるわけですけれども、それで十分なのか。もしそれで十分でないとすれば、何らかの工夫をする余地はないのか。例えば、会社法の解釈に銀行法上の経営管理の趣旨を読み込む可能性があり得るのかどうかということは考えていい問題であると思います。会社法自体も会社法355条が株式会社の取締役には法令遵守義務があるとしており、その法令の中には銀行法も入ると考えられますので、そういう形で銀行法は会社法の解釈の中にも影響を与える可能性があり得ることから、そのような銀行法と会社法の関係はここで議論してもいいのではないかと思います。これは別に会社法を変えるという話ではなくて、既に会社法自体が持っている、そういう他の法令の遵守義務の意味をどういうふうに考えていくかということとして、ここで議論することはあり得るのではないでしょうか。これは私の個人の考えですがそれは任務懈怠責任についても同様だと思います。

私自身がしゃべり過ぎましたが、何か皆様からご意見があれば。よろしいですか。今、竹林参事官から提起された問題でも結構ですし、それ以外でも結構ですので、ご意見いただければと思います。いかがでしょうか。

林田委員、どうぞ。

【林田委員】

ご説明ありがとうございました。途端に雑駁な話になって恐縮なのですが、まず「はじめに」のところにありますように、世界的に金融のIT化が進んでおりまして、日本においてもやはり金融の競争力向上、あるいは利用者の利便性向上を図ることが成長戦略を進めるという意味でも重要だと思っておりまして、ここにあるように、しっかりとした経営管理のもとで戦略的かつ柔軟な業務運営が行えるようになると、そういうふうな工夫をする余地があると。ここに書いてある方向性は妥当ではないかと思いました。

経営管理のあるべき姿についてですけれども、先ほどもご指摘ありましたが、金融グループごとの特性などに応じて、区々といいますか、まちまちといいますか、そうしたことを前提に考えるという方向性についても大変結構ではないかと私は思います。

ちょっと細かくなりますが、経営管理のあるべき姿について、各金融グループと監督サイドの対話等を通じて最適な答えを見つけていくという考え方にも大きな異存はありません。ただ、監督当局と金融機関が何か密室で相談をして、いろいろ大事なことを決めているのだというような印象を持たれますと、かつての護送船団行政でありますとか、裁量的な業界指導といったようなものが、事によると想起されるというおそれもありますので、透明性・公平性についてしっかり確保していく何がしかの工夫が必要ではないのかというふうに感じました。

それから、先ほど来議論になっております6ページの問題ですけれども、ちょっと私は法律の専門家ではないのでわかりませんが、わからないのに言うのも恐縮ですが、銀行、金融持株会社にいわゆる子会社役員への指揮命令を認めるとした場合、金融以外の持株会社に関しては、そのままになるのか、どういう扱いになるのか。あるいは、金融とそれ以外について差をつけるとした場合に、差を設けることについての合理的な説明というのはどういうふうにつくのだろうかというあたりを、どなたか専門家の方にご説明いただけるとありがたいなと思っています。

以上です。

【岩原座長】

佐藤参事官、とりあえずお答えになりますか。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

非常に難しい論点であると思っております。まず、例えば6ページの(ロ)とか(ハ)について、何かの例外を設けるとしたときに、何ゆえに例外を設けるかについての整理が必要なのかなと思っております。例外を設けるとした上で、持株会社の下にある子銀行、銀行ではない子会社、そこについて差を設けるべきかどうかというのは、何ゆえに(ロ)でいう権限が必要だったり、(ハ)でいうような責任の減免ということを認める必要があって、それが合理的と考えられるのか。それが銀行以外のほかの子会社にも当てはまるような、何か合理的な理由であるのかというところになるのかなと、個人的な意見ですが、そのように感じております。ただ、その理由について、どう考えるかについては、まさに様々なご意見があろうかと思いますので、皆さんのご意見を拝聴させていただきたいと思っております。

【岩原座長】

委員の方々の中には、こういう持株会社の問題を専門にされる方もいらっしゃいますので、そういう方からでも何かご指摘があれば。

舩津委員、どうぞ。

【舩津委員】

すみません、大したことを申し上げられないと思いますが、この親から子への指揮ということに関してなんですが、少し分けて考えたほうがいいかなと思いますのが、まさに「経営管理」の意義ということになるのかもしれませんが、大まかに言って、情報をまず収集するということと、それから、その情報を吟味した上で、実際に何か不都合があった場合に指示をするという、その2つの局面に大きく分かれると思うんです。子会社の取締役の免責の話であったり、あるいは親会社の指図権といったものというのも、実はこの2つの局面で分けて考えられるんじゃないかなというふうに思うところがあります。

私個人の考えで申し上げますと、情報はやはり持たないと経営管理はできないんじゃないかという意味では、指図とかそれに対する免責といった効果というのは、かなり正当化されやすいような気はしております。ただ、その情報を吟味した上で、実際にああしろこうしろという形で親から子に対して指図をして、それに対して――それを守らなかったらそれで法令違反なのかどうなのかちょっとわかりませんが――法的効果が出てくるというような、そういうのはまたちょっと1つさらにハードルが高いような気がしております。

すみません、雑駁ですけれども、以上でございます。

【岩原座長】

それ以外にございませんか。加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

私も、大それたことは言えないのですけれども、おそらく子銀行が最低限備えなければいけない機関設計というかガバナンスの仕組みというのは何かという観点から検討していく必要があるのかなという気がしております。その観点から申し上げますと、やはり銀行を有する金融グループ全体の健全性とはいいましても、子銀行がそれぞれ独自で健全性を保っているということは非常に重要ではないかと思います。そういった場合に、子銀行がしっかりとした計算書類をつくるということは非常に重要なわけであります。そういう観点からしますと、会社法が、公開会社ではない大会社であっても監査役と会計監査人をセットで要求しているというのは、そのような機関設計が適切な計算書類をつくるために必要という立法判断の表れではないかと思います。ですから、そのような会社法のポリシーを、金融規制の実効性確保および金融グループの経営管理という観点からどこまで修正できるかということが問題になるのかもしれません。

もう一つ、やや乱暴な議論であることは重々承知しているのですけれども、6ページの事務局作成資料の(イ)や(ロ)の問題が生じる理由は、銀行が取締役会設置会社であることが要求されているからではないかと思います。つまり、会社法の枠組みでは、取締役会が設置されているか否かということで、株主総会と取締役会の権限分配が大幅に異なります。仮に取締役会設置会社でなければ、株主総会は何でも決めることができます。さらに取締役会を設置しなければ、子銀行のレベルで独自に行わなければいけないこともかなり少なくなってくるわけです。そうすると、これは国際的な金融規制との関係で問題があるかもしれませんけれども、いわゆる日本的な取締役会というものを子銀行に要求する意義というものを、考え直す必要があるのかもしれないという感想を持ちました。

以上です。

【岩原座長】

どうもありがとうございます。

指揮命令については、何かご意見ありますか。林田委員からご指摘のあった、経営管理の必要からくる指揮命令、会社法的にどのようにそれが影響を与えるかという問題について、何かご指摘があれば。

【加藤委員】

私が答えるべきなのかちょっとよくわからないですけれども、1つ申し上げたいのは、事務局作成資料の中で示されているように、金融グループにおける経営管理のあり方には多様なものがあることは確かかと思いますが、金融グループの経営管理の中心となるのは、やはり、銀行持株会社と銀行の関係だと思います。銀行の健全性を確保するという観点からは、銀行持株会社の傘下にあろうとなかろうと、銀行のコーポレート・ガバナンス構造の同等性が確保されている必要があるかと思います。銀行がグループの頂点に位置する場合と比較して、銀行が銀行持株会社の傘下にあると子銀行に対する規律が緩むというような事情があるのであれば、先ほど述べた同等性を確保するために、銀行持株会社の子銀行に対する指揮命令権を認めることが正当化できるように思います。

次に、銀行持株会社と銀行の関係に加えて、銀行持株会社とグループの傘下にある他の会社との関係に対して、どこまでを金融規制の対象とすべきかについて意見を述べさせて頂きます。子銀行以外の子会社であっても、金融グループ全体の健全性の観点から、銀行持株会社による強力な経営管理が求められる場合があるかもしれません。このような事情が存在するのであれば、銀行持株会社と子銀行の関係と同じく、銀行持株会社の子会社に対する指揮命令権を認めることが正当化できるように思います。また、子銀行以外の子会社は、銀行持株会社の業務範囲が制約されていることから、銀行持株会社本体が行うことはできないがグループとして行う必要がある事業を子会社が行っているという事情があると思います。この点では金融規制によってグループ・ガバナンスの選択肢が狭められていますので、それを補うために、親会社の子会社に対する指揮命令権を銀行持株会社についてのみ認めることが正当化できると思います。

また、銀行持株会社と子銀行以外の子会社の関係を考える際にも、子会社の機関設計が重要な意味を持つのではないかと思います。子会社が行う事業を対象とする業法が存在しない場合、子会社は自由に機関設計を選択することができるはずです。株式会社である必要はなく、合同会社でも構わないですし、株式会社であっても取締役会設置会社である必要はないわけです。つまり、銀行法4条の2が存在するため、銀行の場合は機関設計の選択肢が限定されているわけですが、ほかの子会社については、いわば機関設計の選択肢が限定されていない場合もあるわけです。

そこで、このように機関設計の選択肢が業法によって制約されていない子会社については、親会社の子会社に対する指揮命令権という形以外に、グループの健全性の観点から銀行持株会社による強力な管理が必要と思われる子会社については、株式会社であっても公開会社ではない会社や取締役会を設置しないという形であることを要求するということも考えられるように思います。子銀行と異なり機関設計の選択肢の制約が緩やかな子会社については、子会社を株式会社とする必要性の意味も含めて、金融グループと金融庁の折衝を通じて、グループの効率的な経営と金融グループ全体の健全性の観点の調和を探っていくことが必要であると思います。

【岩原座長】

今のお話は、機関設計の問題ですよね。林田委員からご質問があったのは、機関設計の問題ではなくて、銀行持株会社が子銀行等に対して経営管理としてどれだけの情報提供を求めたり、さらには指揮命令まですることができるのか。似たような問題は、金融グループ以外の事業会社のグループ会社だってあるのではないか。その場合における持株会社の指揮命令の可能性と、銀行持株会社の指揮命令の可能性と違いがあるのか。あるとすれば、それはなぜかというのが林田委員のご質問ですね。

それでは、池田局長、どうぞ。

【池田総務企画局長】

林田委員からご指摘のあった点で、ちょっと最初のご指摘のほうに戻らせていただきますけれども、監督サイドでやるというのはいいけれど、公平性、透明性を確保されたほうがいいですよというご指摘は大変そのとおりだと思います。それでそのときに、この討議資料であまり明確に書けていないということだと思いますが、意図しているのは、最近、よくルールベースとプリンシプルベースということを金融庁は言ってきておりますけれども、あまりルールベースではなくて、プリンシプルをしっかり立てて、そのプリンシプルが達成されるように対応をしていく。

そういうプリンシプルとして、この討議資料では主として2カ所あると思っていまして、1つは、4ページで、実効性ある経営管理としてどういう機能が発揮されるべきかという、そういうプリンシプル。もう一つは、5ページに2回出てくるんですけれど、持株会社の取締役会等がグループ傘下の各エンティティの業務執行全体に対して実効的な監督機能を発揮できるということが確保される。そのためにどういう機関設計をし、どういうふうに兼職をするのか。大崎先生が言われたように、ケースによっては、ある兼職が、このプリンシプルに抵触してしまうという場合ももちろんあると思うんです。

それじゃあ、今言った後半のプリンシプルが、林田委員の後のほうのご指摘との関係で、これがなぜ金融機関、金融グループに特に求められるのかというのは、むしろ金融機関を経営されておられる方のほうが正しいことをご存じだと思うんですけれども、私どもが金融関係の方などから聞くことがあるのは、やはりグループとして、この紙でいうとリスク管理みたいなことを的確にやっていくとする場合には、単に持株会社が各銀行等の上に存在しているだけではなくて、かなり業務プロセスにまで踏み込んで、日々のリスク――あるいは、時々刻々のリスク管理をしなければ、リスク管理が有効にできない。舩津先生から、情報収集と対応という話がありましたが、それが非常に瞬時に起きるという問題がある。その辺が、事業会社にいろいろな事業部があって、それの全体を束ねる経営管理の主体として持株会社が存在しているというのと、場合によってはかなり違うものが金融持株会社の経営管理に求められることがあるのではないかと。

金融機関の場合は、兼職がここにあるようにかなり多い。おそらく事業会社よりも多分兼職が多いという実態があると思うんですけれども、それは金融機関の方から聞くところでは、そういうリスク管理上の要請などを実行するための工夫であるという説明が、しばしばされるというふうに理解をしております。金融機関の方にも説明していただいたほうがいいとは思いますが。

【岩原座長】

藤原委員、どうぞ。

【藤原委員】

まさに金融機関を担う者として、一言申し上げます。まず今回のペーパーについては、非常に論点が整理されていますし、柔軟な対応ということで、これについては私どもも賛成でございます。まず、経営環境そのものでございますけれども、コーポレートガバナンス・コードですとか、スチュワードシップ・コード、こういった流れの中で、我々自身が自らのディシプリンとしてこのガバナンスに対する目線を上げて取り組んできていると。これはグローバルな流れでもあり、我々邦銀にとっても非常に重要な経営のテーマだと思っています。

そういう中、今回の基本的な考え方は、過去に何回か申し上げているんですけれども、やっぱり部分最適ではなく、グループ全体最適というのが1つのキーワードとなり、この中でガバナンス体制をどう整えていくのかというのが非常に大きなポイントだと思っております。金融機関ですから、もちろん堅確性というのが大前提となっておりますので、そこのところについてはしっかりと認識した上で、グループ全体の効率性、あるいは実効的な監督機能、こういったあり方についての論点が整理されるべきだと思っております。

今、池田局長からもありましたけれども、例えば5ページのところの、監督当局との日常の対話といったところについて、林田委員からも注意点についてご指摘がありましたけれども、私ども金融機関の認識といたしましては、もちろんこういった監督当局との日常の会話もさることながら、ある意味市場、あるいは投資家の方々に対する説明責任というのを強く意識しております。例えば、みずほフィナンシャルグループですと、コーポレートガバナンスのガイドラインは自ら自主的に開示をしておりますし、6月1日、いの一番にコーポレートガバナンス報告書を出す。さらにIR資料ですとか、今回銀行界では初めてとなりました統合報告書等々で、こういった考え方について自ら説明をし、市場に働きかけていく、説明責任を果たしていくということによって、間違ってもこういった密室というようなことが言われないように、こういった説明責任を果たしていくといったことも大事だと思っております。

そういう中で、今後の展開を考えたときに、このグループ全体の最適ということを申し上げましたけれども、ここにも書かれております。ページの6のところで、持株会社が現行法制上認められていない業務執行の一部を担うことを容認する方向で検討するという考え方には、私どもは賛成でございます。これ自身がお客様、利用者の方々の利便性を高め、なおかつ経営管理の実効性を担保するという観点で賛成と申し上げておりまして、またこの業務範囲拡大におきましては、収入依存度規制等々の問題も出てきますので、そういった点についても見直しの必要があろうかと思います。

また、6ページの(イ)、(ロ)、(ハ)のところの論点でいいますと、まず堅確なガバナンス体制ということがありました。先ほど池田局長からも、リスク管理というキーワードが出てまいりましたけれども、やはりこういった日常の経営管理というのは、株主の権利を超えて、やはり持株会社がやるべき職責の1つというふうに考えております。みずほフィナンシャルグループでは、持株会社と傘下のエンティティで、経営管理契約というのを結んでおりまして、適宜適切に情報が上がり、持株会社でリスク管理その他の経営管理に十分な情報が得られるような、こういった工夫もしております。そういった中、こういったいわゆる法律、あるいは監督方針の担保が得られるということについては、我々自身が既にやっていることと軌を一にするという観点から賛成でございます。

また、今後このグループ全体最適という観点でいいますれば、ともするとエンティティでフルラインのガバナンスを求められていたところ、例えば戦略策定ですとかリスク管理、コンプライアンスをグループベースで最適をするといったことも非常に大事だというふうに考えております。

最後になりますけれども、情報共有の問題については、当然ながら優越的地位の濫用ですとか、利益相反といったものについては重々我々も憂慮していかなければいけないというふうに考えております。一方で、法人情報のオプトアウトの使い勝手等、今後いわゆるグループ一体で経営管理をする際のグループでの情報共有のあり方、この議論の場は今回の場ではないとは思いますけれども、今後引き続き検討させていただきたいという論点でございます。

私からは以上でございます。

【岩原座長】

よろしいですか。先ほど林田委員から出された問題は、ここで議論すべき非常に根本的な問題ではないかと思います。ご指摘のとおり、事業会社でもグループ全体の管理という問題はあるわけで、それこそ子会社が不祥事を起こしますと、グループ全体に不利益を与えたりするわけですから、金融グループに限らず、そういうグループ全体の管理という問題はやはりあります。ただ、ここで議論するのは、さっきの竹林参事官からのご指摘にもかかわりますが、金融グループであることによって、普通の事業会社グループよりは、ある意味でレベルの高いグループ管理が必要なのではないかという問題です。アメリカで有名な論文がありまして、「Are Banks Special?」、銀行って特別なんですかと。多分、それはイエスだと思うんですね。だからこそ、銀行法という法律があるわけで。自動車会社については、自動車会社法なんていう法律があるわけじゃないわけで、銀行法という法律があるということは、銀行は他の一般の事業会社と違う、特別の要素があるから、それについて一定の監督的な規制が必要であるということです。

それは特に銀行法第1条に、「銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保」ということが書いてあるわけで、そういうふうに銀行が公共性を持っていて、預金者保護等のために、特にリスク管理等が必要であるということになります。そういう観点からすると、銀行がグループを形成したときには、一般事業会社よりはさらにある意味でレベルの高いグループの管理が必要ではないか。それが銀行法の経営管理という言葉の中にどれだけ込められていて、一般の事業会社の場合とどれだけ違うことが銀行法上要求され、それがさらに、場合によっては会社法上の解釈にも影響を与えてくるのではないか。それをこのワーキングで議論していただきたい。そこがこのワーキング・グループのテーマの一番コアの問題ではないかと考えています。私個人の考えですけれども。

松井委員、どうぞ。

【松井委員】

今の指揮命令のところで、日本の会社法は、取締役会等を置いた場合には、株主からの指揮命令はできないという前提にしてあります。これは歴史的な経緯もあって、やはり一定規模、あるいは一定の事業等を行う会社については、個々の株主の意向が直接に反映することは好ましくないという価値判断が、そもそも会社法の中にビルトインされているのだと思います。それには相応の理由があって、やはりある一定規模の企業であり、特殊な事業をやっている場合には、高度な専門性が経営上の判断として求められるので、株主の意向に左右されることはかえって企業の価値を損なうことだと、多分、こういう考えがあったのだろうと思います。

このレベルまで抽象化すると、まさに金融機関と事業会社では、実はそれほど問題状況は変わらないのではないかと思います。ただ、仮に金融機関において、さらにそれを超えて、やはり株主の意向を反映しなければいけない場合があるのだという強い政策的な要請があるなら、それは銀行法の問題としてこれを考えることになると思います。そうではなくて、事業会社だって大なり小なり同様の問題を抱えていて、それは程度の問題でしかないということであれば、これは会社法の問題になるのだろうと思います。

この点については私自身まだ解がないので、問題提起にとどまってしまうのですけれども、おそらく会社法、昔の商法の持っている、株主の意向がある一定の企業に反映することが好ましくないというのは、非常に古いモデルなのではないか。今、これだけグループの形態が多様化してくると、一定の株主持分割合を超えているような企業、例えば特定の株主の持分が50%を超えている、あるいは70%を超えているという会社であれば、株主側から、親会社側からの指揮命令が認められる場合がひょっとしたらあってもいいのかもしれません。そして、それはグループごとに考えればいいのかもしれないということもあるのかもしれません。さらに金融機関の場合は、それは特に強く出てくるということなのかもしれないということで、会社法の問題として整理することも、むろん金融機関に特に問題が顕著であれば銀行法の問題として整理することも、どちらからも議論ができるのかなという感じがしております。

【岩原座長】

大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ちょっと私は、今の松井先生のご発言にやや違和感を覚えたところがあります。抽象化すると、事業会社でも金融機関でもあまり変わらないかもしれないとおっしゃったんですけれども、私はやっぱり少なくとも銀行法上の銀行持株会社であるかないかということは、根本的な違いだという気がいたします。銀行持株会社は、それ自体として金融システムの構成要素になっているわけですから。したがって、業法的規制を様々に受けておりますので、銀行持株会社であるがゆえに、子銀行の役員等に対して指揮命令をすべき局面が出てくるというふうに理解すると、この問題は非常に理解しやすいんじゃないのかなと、私は感じております。

ただ、問題は、その場合に、銀行でないエンティティについても、全て同じような指揮命令権を持つべきなのかどうかというのは、これはちょっと今すぐ答えはないんですけれども、全体としてのリスク管理なんだから持つべきだという考えもあるかもしれませんし、非銀行子会社については、やっている業務の内容自体にまで踏み込んで、銀行持株会社の経営者が介入することが果たして適切なのか。それこそ専門性といいますか、適性があるのかという問題が逆に出てくるような気もしまして、少なくとも子銀行に対して銀行持株会社として指揮命令を行い得るというのは、私はそれはまさに銀行持株会社の特殊性ということで十分説明がつくのかなと。他の例えばエレクトロニクスの会社がホールディングスと事業子会社に分かれているというのとは、相当状況が違うんじゃないかなという気がいたします。

【岩原座長】

福田委員、その後川村委員、お願いします。

【福田委員】

ちょっと法律的なことはわからないので、かなり超越的なことになるかもしれませんけれども、私は今日の資料の中で一番大事なのは、やっぱり1ページ目だと思います。今後を見据えた金融グループのあり方という視点が、あくまでも一番大事なんだろうというふうに思います。そういう意味では、現状の金融グループを見てどうこうという議論よりは、今後の金融グループのあり方が変わっていく姿を予想しながらの最適な経営管理のあり方というものを議論すべきだろうというふうに思います。

それを考えたときに、我々が想像している以上に、銀行のあり方、あるいは金融のあり方というのが近い将来変わるかもしれない。これは1、2年で変わることはないかもしれないけれども、もしかしたら10年後ぐらいには、かなり銀行というものが今とは全く違う姿になっている可能性も十分ある。そういうことも考えながら、経営管理のあり方に関する議論をすべきで、現状の銀行がどうこうということだけにこだわるよりは、新しい将来の姿というものを見つめて、経営管理のあり方の議論を進めていく視点というのが非常に大事なんだろうと思います。

そういうふうに考えたときに、特にFinTechみたいなものが非常に重要になっていくということを考えたら、やっぱり子会社も今までのように完全子会社よりは、IT関連企業との業務提携というような子会社のほうがむしろ増えていくようなイメージもあり得て、そういう意味では、少数株主のいる子会社というものの役割は、これまで以上に企業持株会社の中でも重要になってくると思います。また、先ほど池田局長から、規制もプリンシプルベースがいいのかルールベースがいいのかという議論がされましたけれども、産業がダイナミックに変わっていくとき、そもそもルールベースでは、変化に追いつかないという問題があって、実質的にプリンシプルベースにならざるを得ないのではないかと思います。また、そういうふうに産業が大きく変わっていく可能性があるときには、藤原委員がおっしゃったように、やっぱり個々の子会社の利益の最大化よりも、あくまでもグループ全体を見つめた最適化という形で、経営管理ができるような議論というのが必要だろうというふうに個人的には思っておりますというのが第1点です。

もう一つ、これもちょっと門外漢なので変な言い方をするかもしれませんが、事業会社か金融持株会社かというときに、1つやはり問題になるのは、事業会社の持株会社だけれども、その傘下にやっぱり銀行がある、金融機関があるというところの扱いは、やはりもう一つ別途の議論が必要なのではないかなと思います。もちろん当初の目的は、そういう参入を促進するという形で始まったと思いますし、その目的は現在はある程度達成できているんじゃないかとは思います。実際現状、事業会社の持株会社傘下にある銀行の中には、メガバンクや地銀上位行よりは規模は小さいけれども、それ以外の銀行とは利益や預金量で匹敵するところもあらわれてきている。そういう現状を踏まえたときに、やはり当初の新しく銀行業に参入しましょうという発想とは違う発想で、経営管理のルールづくりというものも考えていく必要があるのではないかというふうに思います。

法律の専門家ではないので、ちょっと変なことも言ったかもしれませんけれども、私からは以上でございます。

【岩原座長】

それでは、川村委員、どうぞ。

【川村委員】

株主の指揮命令権の皆さんのご意見を伺いながら、私どもはちょうど持株会社をつくって、銀行を2つぶら下げていくという作業中なので、そこで議論しているところとお話に出ているところを重ねてみました。私どもでは、持株会社をつくって東日本銀行、横浜銀行がぶら下がっていくときに、持株会社が子銀行をしっかりグリップしてリスク管理を行う際に、一番重要な項目が、市場運用と大口与信先に対する取組み方針です。市場の状況が一定のときに、グループとして債券を買うのか売るのか、株を買うのか売るのか。これを子銀行がばらばらでやられたら、銀行グループとしてのリスク管理も、市場運用の効率的な運用もあり得ない。これは持株会社の方針の下、傘下の子銀行は絶対に従うんだと。これが守られなければリスク管理にならないのです。

大口与信先が子銀行間で重複している場合に、片方の子銀行は融資を回収しようとする、別の子銀行は貸出を増やしていくというのはあり得ないわけでして、銀行以外の子会社はもしかすると違うかもしれませんけれども、具体的な銀行業務の運営に対してタイムリーに指揮命令ができる持株会社をつくらなければいけないと考えて、準備をしているところです。健全でしっかりとした銀行グループをつくるためには、持株会社にそういった機能や権限がないといけないのではないかと思います。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょう。舩津委員。

【舩津委員】

申し訳ございません。ちょっと委員の方々のご意見のまとめのような話になって恐縮なんですけれども、指揮命令のところですが、一番最初の大崎委員のご発言で、完全子会社かそうでないかを分けるべきじゃないかというお話があったと思いますけれども、それはまさにそのとおりだと思います。それで、完全子会社の場合にはまさに加藤委員がお話になったような、株主総会によるガバナンス――ガバナンスというか、株主総会による指揮命令というのが可能なストラクチャーなんだというふうに考えることができると。加藤委員のご指摘としては、銀行法4条の2が阻害要因となってというか、取締役会設置会社であることが阻害要因となって株主総会による指図権がないというふうに解釈されるんだというご趣旨だったかと思います。そういう点では、仮に、規制の緩和を、完全子銀行との間だけについての問題とするのであれば、そこの修正でとどまっていいのかなという気がしております。

(ロ)と(ハ)のほうが、問題意識としては、おそらくは福田委員がご指摘のような、少数株主がいるということを前提にした場合ということになってくるのかなというふうに考えます。そうなったときに、少数株主がいる子銀行に対して指揮命令をした結果、グループ全体としてはオーケーだけれども子銀行が損害を被ったというような場合に、子銀行の取締役として免責される効果を持たせるかどうかというのが、1つの問題になってくるのかなという気がしております。

その場合に、岩原座長のご指摘がありましたように、法令遵守義務というのはやはりあるのではないかと私も思っておりまして、法令遵守義務というのは、そもそも当該会社の株主の利益にかなわないような法令であっても守らなければならないというふうに、おそらく日本の多数説は考えているのだとすれば、銀行の健全性といった、公益を守るための法令を守った結果として、子銀行の少数株主が害されたとしても、それはやむを得ないんだと言えるほどの公益性があるかどうか、子銀行に対する指図権を与えるということに公益性があるかどうかという観点から、この(ロ)と(ハ)の問題というのは検討していくべきなのかなという気がしております。

すみません、何かつなぎ合わせただけのようで申し訳ありませんけれども、以上でございます。

【岩原座長】

野﨑委員、それから小鈴委員。

【野﨑委員】

全体で3つあるんですけれども、大雑把な話からいきます。

まず第1に、グループ戦略として、銀行、あるいは金融グループというのは、事業会社と違うかと。これは明らかに違うわけですね。というのは、やはり制度、あるいは規制上、法的なエンティティというのが分けざるを得ないという事情があります。一方で、いわゆるライン・オブ・ビジネスですか、いわゆる例えばリテールですとか、ホールセールですとか、そういった業務でいくと、マトリックス経営というのがありましたけれども、まさにそれはグループ横断的に戦略を組まざるを得ないというところを考えると、やはり指揮命令系統としては、グループ戦略を統括するような立場で、持株会社がそれなりの権限を発揮するというのはあってしかるべきかなと。

その結果として、福田委員おっしゃったとおり、これからいかなる構造変化があって、ランドスケープが変わってくるかもしれない。それに対して柔軟に対応できるためには、やはり持株会社の機動性というのが必要だと。これが1点目です。

2点目としては、ちょっと細かいんですけれども、こちらの討議資料の6ページ目ですか。一番上のほうに、兼職の話があります。持株会社と、それから傘下の会社との兼職です。特に、例えば指名委員会等設置会社の場合ですと、執行役に関しての兼職、これが内閣総理大臣の認可が必要だと。これが敷居が高いんじゃないかというところが少し懸念されていると思うんですけれども、だた現象面からしてみると、例えばみずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャルグループ、ともにたしか17、8名執行役がいらしたと思うんですけれども、うち兼職がほとんどで、実際に持株会社の専任は1名から3名のレンジだったと記憶しております。それを考えると、運用面からすると、それほど高いハードルには見えないと。これが2点目です。

3点目、最後になりますけれども、これは個人的な意見として、持株会社のいわゆる業務内容ですか、これはある程度柔軟性を認めてもいいんじゃないかと。特にこれから、横浜銀行さんをはじめとして地域再編が進んでいく可能性があるというところを考えると、シナジー効果をより効率的に出すためには、ある程度その辺の運用の柔軟性というのは認めてあげてもいいんじゃないかなと。

以上、3点です。

【岩原座長】

それでは、小鈴委員。

【小鈴委員】

他の委員の方々のご意見とかなり重複する部分もございますが、私から2点申し上げさせていただきます。

1点目は、討議資料5ページのマル3にございます、銀行持株会社の業務執行とその範囲であります。前回のワーキング・グループで、岩原座長からのご発言にもございましたが、銀行持株会社の機能や業務につきましては、2つの考え方があると思っております。1つ目は、米国のように銀行持株会社の機能や業務を広く捉える考え方、2つ目は、現在の我が国のように、銀行持株会社の機能を、子会社の経営管理に限定するといった形で狭く捉える考え方と認識しております。

今回、事務局からご提示いただいた資料を拝見しますと、金融グループの経営管理のあるべき姿は、基本的に区々であり、例えば、単一のモデルのようなものを念頭に置くよりも、むしろ、営業基盤や規模、経営戦略に応じて、いかにして実効性を有する経営管理体制を構築するかが重要とございます。また、金融グループの経営管理体制の選択に対しましても、法令は基本的に中立的なものであるべきという考え方もお示しいただいておりまして、私もまさにそのとおりだと思っているところでございます。

以上、申し上げました幾つかの考え方をあわせてみますと、グループ全体に対する実効的な監督機能の発揮という、銀行持株会社に最優先で求められるものが十分に確保されているということであれば、銀行持株会社の業務範囲につきましても、経営管理のあり方や体制と同様に、各金融グループのビジネスモデルなどに応じて様々な選択肢を認めるべきであると考えられるところでございます。したがいまして、討議資料5ページの「持株会社による業務執行」の部分でお示しいただいております、グループ内の各エンティティにおける共通・重複業務というものを持株会社が一括して実施するということは、容認するべきであると考えております。また、こうした共通する業務や重複する業務にとどまらず、米国のように持株会社が銀行グループで取扱い可能な業務を幅広く担うことができる制度とするということも選択肢の1つではないかと考えているところでございます。

2点目につきましては、討議資料7ページの一番最後にある、「その他金融グループの経営管理のあり方に関して検討すべき点はないか」という部分でございます。今回の討議資料では触れられておりませんが、子銀行の経営管理を行うという点につきましては、銀行持株会社も、銀行の主要株主となっている事業会社も同じであると思います。金融グループにおける経営管理のあり方を今後検討していく上では、やはり銀行持株会社と銀行主要株主、つまり事業会社の双方を念頭に置きながら議論を行う必要があると考えているところでございます。

私からは以上でございます。

【岩原座長】

中村委員、どうぞ。

【中村委員】

前々回に、グローバルにいかにグループをマネージしていくかということで、弊社の例をご説明させていただいたと思うんですけれども、また、先ほど川村委員のお話にもありましたように、トレーディング業務等をマネージしていくためには、持株会社の権限だけではグループをきちっと管理できず、海外の金融機関では、もっとさらに深いレベルまで、兄弟会社のレベルにまで、指揮命令系統が及ぶようなガバナンス構造になっております。

必ずしもそれが良いというわけではないのでございますけれども、例えばバーゼルが求めているグループでのマネジメントということを考えると、かつての日本の金融機関というのは、海外の子会社を会社としてマネージし、グループとしてはマネージしてこなかったように思います。そのために、海外の規制機関、FSAとかSECも、日本の金融機関がグループとしてのマネジメントがあまりないということを考えて、海外の子会社にローカルのガバナンスを強く求めてきたと思います。そうすると、本来、求められないはずのローカルのガバナンスが求められるがために、日本の金融機関だけが、グループ経営やグループ全体の最適化とは異なる方向に向かっていくというようなこともございました。そのため、この資料の一番最初に書かれているような、グローバルに伍して戦っていくという意味では、なかなか難しい制約があったと思います。最近はそういうものを徐々に効率化していっているとは思うんですけれども。

そういう意味で、ここで持株会社その他いろいろ考えてくださっていると思うんですけれども、さらに深いところまで考えていかないと、イコールコンペティションにはなかなかならないのかなというふうに考えております。まとめてくださって非常によいと思うんですけれども、持株会社と子会社で、さらに子会社間で切ってしまうということがいいのかどうかというのは、コンペティションの面から考えると、まだまだ不利な点があるのではないかなというふうに思います。

もう一つは、藤原委員からもお話があったんですけれども、最後のファイアーウォールについてなんですけれども、もともと私ども、金融グループを巡る制度のあり方ということで、私どものIBAを組織する金融機関から意見をとったところ、このファイアーウォール規制というものについて見直しをしてほしいという強い要望がありました。今回、ご趣旨として管理のあり方ということで、この項目が外れるのは当然だと思うんですけれども、多くの金融機関がこれを求めているということで、今回は排除されるということなんですけれども、今後、この点については、機会があれば引き続き議論をやっていただきたいと思います。

以上でございます。

【岩原座長】

ほかに何かございますでしょうか。

翁委員、どうぞ。

【翁委員】

重複するところもありますけれども、私もこの1ページにございますように、実効的な経営管理のもとで、より戦略的、柔軟な業務運営を行うことが可能になるようにしていく、柔軟な規制体系を考えていくということが、金融環境激変の中で非常に重要だと考えておりますし、また、4ページで指摘されているように、各金融グループの経営管理体制の選択については、基本的に中立的であるということについても大事なことだと思っております。

特に、それぞれの金融グループは、それぞれの金融グループとしての企業価値をどのように上げていくかという中で、機関設計がどうあるべきかということや、経営管理体制がどうあるべきかということを考えます。機関設計というのは、そういった経営戦略の根幹にかかわる部分でございますので、これは尊重しつつ、中立的にそれを考えていくということではないかと思っております。

それから、こういった新しいITの技術変化などのスピードが早いというような状況において、先ほどご説明がございましたけれども、環境変化にルールベースの規制でなかなか対応しにくいというような状況というのが出てきております。そういう意味で、しっかりとしたプリンシプルを検討し、プリンシプルベースで対応を考えていくということも、非常に時代環境の変化には合った考え方ではないかと思っております。ただ、ご指摘ありましたように、どうしても透明性の確保と裁量性に対する配慮というのはとても大事になってきますので、ここについての工夫というのは、重要になってくると思っております。

それから、最後のほうの法律的なことは私もよくわからないんですが、やはり実効的なレベルの高いリスク管理が必要であるという観点において、完全子会社の銀行の場合については、持株会社が、実効的なレベルの高いリスク管理をする、または機動的に対応できるようにある程度の権限を持つということは考えられるのかなというように思っております。銀行の公共性というのは、当然あるというふうに思っておりますけれども、同時に過去からの流れで考えていきますと、やはり決済とか資金仲介というのは、様々な担い手が、アンバンドリングといいますか、様々な形で担うようになってきているという現実もあります。銀行がスペシャルであるというその程度というのは、過去から比べると、いろいろな意味でそのレベル感というのは、いろいろなところがそれを担うようになってきて、変わってきているという側面があると思っています。そういったところを踏まえた上で、どういうふうにここを考えていくかということを、少し深く検討していく必要があるのかなというように感じております。

【岩原座長】

どうもありがとうございます。

さっき福田委員からもご指摘がありましたように、非常に環境変化が大きくて、銀行業務とされていたものが大きく変わろうとしている中で、銀行法第1条の公共性というのがどうなっていくのか。それこそFinTechによって、全く金融のあり方が変わる可能性もあり得るわけです。そういうときに、今の銀行法の定めている公共性、それがどう変わって、それに対応してルールやプリンシプルをどう変えていくのか。これはもう一つの決済業務等の高度化に関するワーキング・グループの問題にも絡みますけれども、それは非常に大きい問題で、検討が必要な問題だと思います。

よろしいでしょうか。特にご発言がなければ……それでは、松井委員。

【松井委員】

重ねての発言で申し訳ありません。先ほどとは違う点で2点ほど、コメントとお伺いしたい点がございます。

1つは、3ページから4ページのあたりの、経営管理のあるべき姿についての基本的な考え方のところでございます。ここでは各金融機関、金融グループの特性に応じて、経営管理体制の構築について判断をしていくとされています。監督サイドとして、基本的に中立的に規制を考えていきたいというところは、私も非常に賛成であります。前回ご報告をさせていただいた際にも、最終的には、金融グループによってそのあり方が違うので、それぞれのアカウンタビリティの問題に行き着くのではないかという話をした記憶がございますけれども、まさにそういう問題としてここは考えられるのではないかと思っております。その際に、少し難しいなと思いますのは、各金融グループとしては、何を自分にとっての最適な経営管理体制として示せば、監督サイドに理解をしてもらえるのかという部分だと思います。特に何か事後的に問題が起こったときに、それはやはり好ましい適切な体制が整えられてなかったからではないか、という後知恵の判断にもなりやすいところです。ここは監督サイドも理解されていることと思いますけれども、オフサイトでの対話を通じて最適な解を見出していくというのは、後知恵の判断で問題を指摘することにならないように日常的な対話をしていくということだと思います。そうであっても、実際にはここで非常に難しい判断が求められるのではないか、というのが感想めいたコメントでございます。

もう1点は、質問なのでございますけれども、5ページのガバナンス機構、あるいは持株会社による業務執行・役職員の兼職のところでございます。こちらにつきましては、持株会社が取締役会等に社外の視点等を取り入れるという工夫をしていくという前提で、その後の議論が進んでおります。ここでの社外の視点というのは、かなり慎重に用語を使われている感じがしますが、この社外の方はどういう利益を守る人として入ってくるのでしょうか。会社法の議論においては、社外、あるいは独立の取締役を入れるときは、一般には投資家、ないし株主の保護で入ってくるのですけれども、おそらくここでは金融機関の規制との関係で入ってきますので、そうではない、もう少し異なる利益を見る人として、この社外の視点というのが要るのではないかと推測しております。ここで、社外の視点を入れることで守ろうとしている利益、あるいはその方が配慮すべき利益というのはどのような点にあるのか、確認まで、お伺いできればと存じます。

【岩原座長】

では、佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

難しい問題のように感じまして、あまり答えにならないかもしれないんですが、まず、社外の視点も取入れるなどの工夫も行いながらということは、社外の視点ということを工夫の1つの手段として、こういうこともやりながら、実効的な監督機能を果たしていくということで書いております。今、松井先生のご質問にあった社外の視点、誰の利益を代表するのかということについては、もちろんのことながら、株主の利益ということがあり、一方で、先ほどの議論にありました法令遵守義務、あるいは公益性、公共性ということを守るんだという、銀行あるいは銀行持株会社がエンティティとして、そういう公共性を念頭に置きながら、規制の下で、公共性に合致するような行動をということになると、役員のレベルでも、当然そういう要請に応えていかなくてはいけないということもあり、そうした側面があるのではないかと思っております。

【岩原座長】

池田局長、どうぞ。

【池田総務企画局長】

会社法の考え方というのもあると思いますが、最近でいうともう一つ、コーポレートガバナンス・コードなどで書かれているところでは、コーポレートガバナンス・コードでの独立社外役員の役割というのは、株主をはじめとする様々なステークホルダーのためということで整理がされていて、そういう観点でいうと、おそらく金融機関の場合は、株主だけではなく、最大のステークホルダーというのは、やや抽象的な存在でありますけれども、預金者、あるいは、取引関係者というのもあるのかもしれませんが、株主だけではない、様々なステークホルダーとの関係。こういった社会のステークスホルダーの利益を必ずしも1人の人で全て満たすということではないと思いますが、体制としてそういう視点を取り入れるというのが、コーポレートガバナンス・コードの延長で考えたときには、その考え方ではないかと思います。

【岩原座長】

すみません、家森委員からお願いします。

【家森委員】

本体ではなくて、周辺業務としていろいろな業務を認めてきたという歴史がありますが、持株会社が強い指揮命令権をもって、事実上一体的に運用できるということになると、わざわざ本体で禁止する必要もなくなってくるのではないかという議論が出てくると思います。持株会社なら一体でできるが、本体ではやっぱりできないという差をずっと残し続けていく理由というのは、どういうところにこれからは求めていくことになるのでしょうかという、質問です。

【岩原座長】

佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

すみません、ちょっとご質問を確認させていただきたいんですが、本体とおっしゃったのは、銀行ということでしょうか。

【家森委員】

そうです。銀行の中では、保険業務をやらずに、別に子会社でやりますとか、リース会社も別にやります、カード会社も別にやればよろしいということですけれども、今後、全体で指揮命令権を発揮して完全に一体としてリスク管理をやれるということになると、カード会社のリスクも、当然権限があれば責任もくると思うので、事実上、リスクを銀行が負うことになると思うんですけれども、そうなったときには、銀行そのものが直接カード関連業務をやれないという理由をどういうところに求めることになっていくのかなということです。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

銀行の業務としてどういうことを認めるのか、あるいは銀行の子会社なり、銀行の兄弟会社にどういうことを認めるのかということについて、1つ言われておりますのが、銀行自体は本業に専念することによって、銀行業務という公共性の高い業務を、より効率的にできるということがあります。また、リスクの関係で、銀行本来業務とのリスクの親近性、リスク遮断の効果というものをどう考えるかということで、銀行本体では、銀行の本業たる預金の受入、貸出、為替取引、それにリスク的にも親近性が高いものを行うことを基本とし、なおかつもし問題が生じたときに本体に及ぶリスクの影響ということに着目し、銀行の子会社なり、あるいは兄弟会社のところは、一応法人は別に分かれているので、銀行本体で行うものよりも少し広いものが許容されてきたというところだと思います。

問題は、指揮命令というのがどういうふうに及んで、エンティティの枠が完全には一体化しないと思うんですけれども、エンティティの枠が近くなっていったときにどう考えるかというのは、色々な見方があるのかなというふうに感じております。

【岩原座長】

銀行グループの中に、例えば保険会社が入って、銀行本体では保険業務はやれないけれども、銀行の子会社、あるいは銀行持株会社グループの中の子会社としては保険会社を持てるようにする。これはいろんな側面があると思います。今、佐藤参事官からお話のありましたような、法人格を変えることによってリスクの波及を限定するという意味もありますし、それ以外にも、計算を別にすることによって、権利関係、あるいは計算関係をはっきり区分けすることができるようになるとか、あるいは、監督する上でも銀行監督、保険の監督それぞれ手法等も違いますから、違った法人にすることによって監督をしやすくするというような意味など、いろいろあると思います。

リスク管理の面に関していうと、グループ全体の一体化を強調していくと、いわば法人格否認みたいな形で、グループ全体の責任も問われることになるのではないかという、家森委員ご指摘のような懸念も出てき得るところではありますけれども、ただ、法人格を別にしてやらせる意味はそれだけではないというように思われます。

さっきお手をお挙げになっていた川村委員。

【川村委員】

今のご意見も含めて、銀行グループの業務範囲の拡大については、いろいろな環境変化やグローバルな競争の激化の中でご賛同いただいているかと思います。ただし、地銀の8割は親子会社で、グループの持株会社を持っていない状況です。業務の拡大にあたっては、先ほどありました金融業務との親近性、リスクの大きさ、波及度の問題などは、千差万別だと思いますので、今回の枠組みが大体固まったところで、親子でもできるようなものについて今後ご検討いただきたくよろしくお願いします。

【岩原座長】

林田委員。

【林田委員】

ありがとうございます。最後、ちょっと質問といいますか、確認したいのですが、6ページの監査役会の問題の、(イ)になりますけれども、「屋上屋を架していないか」との指摘があるというところなのですが、これはどのようなところから、屋上屋なのでという指摘はどれぐらいの重さといいますか、切迫感といいますか、実害があってのご指摘なのか。それとも、何となく無駄っぽいという程度のものなのかによって、この部分を認めるべきなのかどうかという判断も変わってこようかと思いますので、確認したいと。

指揮命令のところでも、ある意味金融を特別扱いにしてでもリスク管理を強めたいという要請がある中で、多分監査役会をダブルで置くという二重のチェックということが、いろいろな金融システムに関わるリスクという面もありましょうし、あるいは子銀行のほうで不適切な取引をしていて、グループ全体の評判を落とすというようなこともあるでしょうし、いろいろあるかと思いますが、リスクの管理を強化するという意味合いもないとは言えないと思うので、そのあたりの切迫感をちょっと教えていただければと思います。

【岩原座長】

誰が答えますか。では、佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

「屋上屋を架していないか」の指摘について、関係の先生方の論文などを拝見して、私なりに理解するところでは、まず、冒頭にもありましたように、グループベースでの金融の監督が求められております。先ほどの竹林参事官の話にも関連してくるとは思うんですが、グループベースで監督が求められているという流れにある中で、そうすると、上から下に対する監督がより求められていく。そうすると、上にしっかりとした監督機能があれば、下に同様のものを設けることが必然なのかという、そういう問題意識があるかと思います。

もう一つ、これは或いは金融界サイドの委員の方に補足いただければと思いますけれども、実際、監査役会を持株会社のレベルで設け、また下のエンティティにも1つ監査役会を設けると、監査役会の過半は独立の監査役の方をということになりますので、そういう運営面で、どの程度の負担感をお感じなのか、もし可能であれば補足をいただければなと思います。

【岩原座長】

では、藤原委員、お願いします。

【藤原委員】

私どもは今、持株会社のほうは指名委員会等設置会社、下は監査委員会設置会社になっています。事業会社の銀行のほうですね。実務的には、実はあまり大きな負担と、まあ、これがずっと運営してきたところもあるものですから、現時点で大きな負担ということは感じておりませんけれども、そもそもやはりグループ全体の全体最適を求める中で、グループとして計画性が担保されているのであれば、これは監査役会の設置ということのみならず、こういったいわゆるガバナンスに関する事については、もう一回グループベースで見直してみるべきかなと思っております。前回申し上げましたけれども、やはりガバナンスの堅確性のあり方というのは、私は3つのポイントがあると思っています。

1つは、社外の目線を入れることで、社外と社内の関係によるいわゆる緊張関係。あとは、持株会社と事業会社という、経営管理をするほうとされるほうの緊張関係。さらには、執行ラインと内部監査という、いわゆる三重の鍵がかかりながら、グループ全体のガバナンスが構成されているということを前提にすれば、ここの部分について、将来的には議論があってもいいのかなという感じはいたします。

また、100%完全子会社の問題も先ほどありましたけれども、今後の論点としては、合弁会社等でフィフティ・フィフティの場合はどうするか。あるいは、こういった株主間協定によって、傘下会社のいわゆる完全子会社制みたいなものをどう考えていくかというところは、もう一つの論点としては出てくると思います。

以上です。

【岩原座長】

池田局長。

【池田総務企画局長】

どの程度の切迫感というのは、ちょっと我々もさらによく考えてみたいと思いますけれども、さっき佐藤参事官からあったように、耳にするものとしては、委員会設置会社にすると、社外役員が各委員会の過半必要なのに、別途監査役がいると、社外監査役があと少なくとも2人は必要だとか、そういう指摘もあるし、あるいは、グループの中で、例えば内部監査組織の充実みたいなことが――これは努力されている会社が少なくないわけですけれども、そのときに、持株会社を筆頭とするグループの内部監査組織と、エンティティにおける内部監査組織、このリポートするラインが必ずしも一致しないというような問題から、そこが二重になるという指摘を聞くこともあります。

さらに中村委員がおっしゃったような、これは必ずしも法制度に依拠してというよりは、独自にマトリックス方式だとかいろいろ工夫して、いろいろリポートラインを考えて、独自のそういうガバナンス体制をつくっておられるような、特に外資系の金融グループなどは、そういう独自のものをやっておられるわけです。その際、リーガルなものは、リーガルが要求するミニマムスタンダードを、とにかく形だけつくるという部分も少なくない。そういうことで、自分の工夫でやっているところは、リーガルなものはできるだけ軽いほうが無駄にならないというお考えのグループもあるだろうと思います。したがって、言われる方によって、力点を置かれているところは違うかなとは思います。その上で、ご指摘のあった切迫感がどうかというのは、ちょっと我々ももう少し勉強してみたいと思います。

【岩原座長】

よろしいでしょうか。ほかに何かありますか。

それでは、大変大幅に時間をオーバーしてしまいまして、大変申し訳ございませんでした。特にご発言がございませんようでしたら、これで終わらせていただきます。本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、引き続き検討を進めていきたいと存じます。

最後に、事務局のほうから連絡事項等がございましたらお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私のほうから、日程の関係についてご説明申し上げます。次回のワーキング・グループの日程については、来月10月に開催をしたいと考えております。一方、具体的な日程につきましては、皆様方のご都合を踏まえた上で、討議内容とあわせ、後日事務局よりご案内をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

【岩原座長】

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3538、3582)

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