金融審議会第一部会(第29回)会合議事録

日時: 平成12年9月20日(水)14時00分~16時00分

場所: 霞ケ関ビル(35階)東京會館ゴールドスタールーム

○ 蝋山部会長

時間がきましたので、ただいまから、第29回金融審議会第一部会を開催いたします。

ちょっといつもと雰囲気が違って、特に前回は狭かったんですが、今回はいやに広く、しかも向こう側の席は後光が差しています。何となく雰囲気が違うんですが、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

議事に入ります前に、前回の部会で私どもの方に御一任いただきましたワーキング・グループにつきまして、6名の方にお願いいたしました。そのメンバーを御紹介したいと思います。さらに、今回からこの部会に御参加いただくことになりました7名のオブザーバーの方についても御紹介いたします。その中に今日は4名の方が御参加いただいております。

それでは、樋口さん、御紹介をお願いいたします。

○ 樋口信用課長

信用課長の樋口でございます。

それでは、今部会長からお話がございましたが、まず、ワーキング・グループのメンバーでございますが、皆様のお手元に名簿をお配りしてございます。こちらにございますように、第一部会からは、神田委員に座長をお願いいたしまして、岩原委員、吉野委員にメンバーとなっていただいております。また、これに加えまして、翁委員、八木委員、それから山下委員の方々にもメンバーをお願いをしているということでございます。

それから、次に、オブザーバーでございますが、委員の皆様の右手から、もし御面識がないとあれでございまして、御紹介いたしますけれども、奥 正之住友銀行常務取締役でございます。

○ 奥オブザーバー

奥でございます。

○ 樋口信用課長

それから、川原 尚三井海上火災保険執行副社長でございます。

○ 川原オブザーバー

川原でございます。よろしくお願いいたします。

○ 樋口信用課長

それから、反対側にまいりまして、濱田三平中央三井信託銀行常務取締役でございます。

○ 濱田オブザーバー

濱田でございます。よろしくお願いいたします。

○ 樋口信用課長

それから、森脇邦剛朝日信用金庫専務理事でございます。

○ 森脇オブザーバー

森脇でございます。よろしくお願いいたします。

○ 樋口信用課長

それから、このほか、本日御欠席でございますけれども、お三方、石橋三洋日本生命保険代表取締役・専務取締役の方。それから、高橋厚男日本証券業協会専務理事。中村芳夫経済団体連合会常務理事のお三方にもオブザーバーをお願いしております。

以上でございます。

○ 蝋山部会長

どうぞ、ワーキング・グループの方、よろしくお願いいたしますし、また、オブザーバーの方も忌憚のない御意見をこの場で御披露いただきますようお願い申し上げます。

ありがとうございました。

続きまして、事務局の方からワーキング・グループの運営方針について説明をいたします。

○ 樋口信用課長

口頭で恐縮でございますけれども、ワーキング・グループの運営につきまして御説明をいたします。

まず、ワーキング・グループのメンバーにつきましては、先ほど御紹介した方々に限定をせず、今後、議論の過程で専門家の意見などが必要な論点というものが明らかになった場合には、適宜メンバーの追加などを検討することとしたいと考えております。

それから、ワーキング・グループは、部会審議の材料を整理・提供するということを主たる役割としておりますので、これまでどおり資料や議事要旨等の公表は、原則として行わないこととさせていただいております。

それから、ワーキング・グループと当部会との連携でございますけれども、前回も部会長から御案内のございましたとおり、ワーキング・グループの議論の節目節目で部会に報告を行っていただき、それに基づいて部会での検討を進めていただきたいと考えておりますので、委員の皆様にはよろしくお願いしたいと思っております。

以上でございます。

○ 蝋山部会長

どうかよろしくお願いいたします。

何かこのワーキング・グループにつきまして、御意見なり御注文ございますでしょうか。

我々の成果はこのグループの六つの肩にかかっているということですな。よろしくお願いします。

それでは、今日は、この部会とワーキング・グループとの合同会合ということですので、お配りしております議事次第に従いまして、私の方で議事を進めさせていただきます。

今日は、この部会の中心課題であります異業種による銀行業への参入などの問題に関連いたしまして、実務界の方から、また、学識経験者からお話を伺うということで、今日は2組のゲストスピーカーをお招きしております。

これから3時過ぎまでは第1組、オリックス株式会社投資銀行本部シニア・ヴァイス・プレジデントの福島さん。皆さんお顔はおなじみだと思いますが。それから、同じくオリックス株式会社の法務室法務チーム課長の阿部さん。お二人の方からお話を伺いたく思います。実務的な観点から、親子会社間の関係とか、現行の規制に対する考え方、どう受け止めておられるかといったお話を伺いまして、我々と意見の交換をさせていただこうと思います。そして、オリックスチームの後、慶応義塾大学の國領先生から、経済・社会のネットワーク化が、日本の経済や金融業に与える影響といった点についてお話を伺おうというふうに予定しております。國領先生は3時頃にお見えになる予定であります。

今申し上げたように、質疑応答は、それぞれのお話を伺った直後にさせていただきますので、よろしくお願いします。

それでは、福島さん、阿部さん、どうかよろしくお願いいたします。

○ 福島ゲストスピーカー

ただいま御紹介いただきましたオリックスの福島でございます。一緒にやっております阿部と申しますので、ひとつよろしくお願いいたします。

それでは、冒頭30分強になるかもしれませんが、お時間を頂戴いたしまして、私の方から一通り用意いたしましたレジュメに則しまして、プレゼンテーションをさせていただきます。その後の質疑応答は、私、阿部、適宜対応させていただければと、こういうふうに考えております。

まず、プレゼンテーションに入る前に、皆様当然御承知のことかと思いますが、現在私どもは、オリックス株式会社の100%出資子会社として、オリックス信託銀行を有しております。この銀行は、元山一信託銀行をM&Aによって私どもの傘下にお越しいただいたと、こういう経緯の銀行でございます。

また、この9月1日から、日債銀(日本債券信用銀行)の14.5%の株主になったと、こういう状況でございますので本日お招きいただいたと、こう理解をしております。

2点今考えておりまして、1点は、極めて直接的な当事者でございますので、私企業の利害が関連する場合もある。ただ、利害がない人間には問題意識が余りないものですので、その問題点とか問題意識を、本当にフラットな意見なのか、そうではないのかというところはよく御審議いただければというふうに思っております。

もう一点は、私どものスタンスとしては、私企業のことも当然ありますが、それをできる限り超え、よりよい制度ができ、金融の活性化が図れればということを当然ながら考えておりますので、そんな2点を考えながら、本日は参りました。ひとつよろしくお願い申し上げます。

それでは、早速レジュメの方に入りたいと思います。資料の29-1「異業種による銀行業参入等における一考」ということで、「親子間のあるべき姿について」ということで御説明をしていきたいと思います。

表紙をおめくりいただきまして、1ページの「1.親子間のあるべき関係」という本題にまさに入っていこうと。後段の方で新たなルール作りをまとめておりますが、重きはこの親子間のあるべき姿になっていくというふうに考えております。

1ページの「1.親子間のあるべき関係」。まず、その(1)としまして、「独立性について」ということを取り上げさせていただきました。中身はa.bという2項目からなっておりまして、明瞭性、独立性というものをどう解釈するのかというところで、実態の企業経営をする者にとっては、いかに不自由とか困っているか。もう1点目は、独立性というのは本当に必要なのか。こういう2点に分けて整理をいたしました。

1点目の「a.明瞭性の問題について」これを御紹介申し上げます。

まず、先般のパブリック・コメントを私ども提出させていただきましたが、そこに関する当局からの対応として、「独立性」についての御回答をいただいております。それが四角の中でございまして、「コメントの概要とコメントに対する考え方」。読みます。

「本指針で定めている「独立性」については、例えば、」このかぎ括弧が御回答でございますね。「子銀行の経営陣が常に銀行経営の健全性を最優先として、独立して経営判断を行う経営体制が確保されているかどうか」や、「銀行業務の一部を事業親会社等に委託したり、事業親会社等の職員が銀行員を兼職すること等により、保安上ないしリスク管理上、銀行業務の健全かつ適切な運営が損なわれていないか」このような観点が独立性の具体例であると、こういう一つの方向性をお示しいただいているわけでございます。

これに対する私どもの意見、下に4ポツを書いてございますが、1ポツ目。従来から銀行経営上の大前提として「独立性」の観点から監督がなされていたが、「独立性」の意味は必ずしも明確に定義されていなかった。

2ポツ目。このため、判断する者によってその解釈が大幅に異なることとなり、事実、オリックス信託銀行は「独立性」の解釈においてより保守的な判断に立ち、グループ間のシナジー効果を自ら絶つというスタンスをとっている。

3ポツ目。今回の「運用上の指針」「コメントの概要とコメントに対する考え方」の公表により明らかにされたところによれば、銀行業務の一部を事業親会社等に委託する場合に、銀行業務の健全かつ適切な運営が損なわれていなければ禁止されるものではないことが明らかになったと解される。

この意味において本指針には大きな意義があるが、今後ともより実態に則した明確なルール化が期待される。こんなふうにまとめました。

簡単に実例を紹介いたしますと、親子間でのやりとりも含めて、いろんなテーマがある。例えば、何でもいいんですけれども、オリックスが流動化のアレンジャーになって、一つのお客様のその流動化のビジネスをとりまとめ、我々はアレンジャーフィーとして儲ける。ビークル、器にはSPCを使うか、信託を使うかなんていうのは日頃よくやられているもので、お客様の指定する信託銀行を使うケースもあれば、たまたまどこでもいいよと言えば、オリックス信託を呼んできて使うケースもある。そんなところで当然ビジネスが絡んでくるわけでございますね。そうすると、そのアレンジをやっているオリックスの営業がオリックス信託をリコメンドしていいかどうか。どこまでは言ってよくて、どこまでは言ってはいけないか、そんな局面に例えば遭遇するわけでございます。そうすると、そこのいろんな細かい具体的なルールが取り決められているところはいいんですが、ルールがないと最後に行き着くところは、大体独立性の議論になります。

これはオリックス信託銀行の経営者、それから、オリックス信託のコンプライアンス部門、それから、オリックスのコンプライアンス部門、オリックスの営業をやっている人間、みんな独立性というのが違うんですね。

具体的に言えば、割合柔らかい意見で言えば、多少一緒にやるところがあっても、最後の経営判断、オリックス信託としてこれは儲かる商売なのかどうか、リスクとリターンは見合っているのか、そこをきっちりと自分で経営判断できれば独立性は保たれているんだと、こういう人間もいれば、オリックスが営業し、後から結果だけオリックス信託がはめ込まれたということは、判断だけオリックス信託でしても、それは独立しているとは言えない。非常にもたれかかった商売である。こういう取引は独立性の観点から違反しているとか、いや、待て、その独立性といえども、やはりここに示されたような銀行の健全性を損なわない独立性だったら、多少はそこの解釈は柔軟でいいんじゃないかとかと、微妙に違うんですね。

既存の金融機関の方は、この独立性というものにそう大きな疑問をお持ちになる方は恐らくいらっしゃらないと思うんですが、新たに参入し、今までのヒストリーとか、行間に潜む深い意味合いを知らない人間にとっては、額面をどこまで、どう解釈するかという問題に常に当たる。こんなところでこの独立性というのが一つの大きな問題になっているわけでございます。

そうしますと、ここまでが明瞭性の話でございますが、1ページおめくりいただきまして2ページです。「「独立性」は当然に前提とされるべきものであるか」という観点でまとめてまいりました。

1ポツ目。「独立性」が保たれることによって、必ずしも「健全性」が確保されることにはならない。下図に示したように銀行の私物化・機関銀行化は言うまでもないケース(D)であるが、「独立性」を確保したとしても実際に破綻したケース(B)もある。一方、事業親会社からのガバナンスによって「健全性」を確保すること(C)も十分に考えられる。

2ポツ目。事業親会社が子銀行に対して株主としてガバナンスを働かしてはならないのであろうか。

独立性、従属性、あえて「従属性」という言葉がいいかどうかわかりませんが、健全、不健全というと、こういう四つのマトリックスが出来上がる。そうすると、重要なのは、(A)にならなければならないというのが恐らく従来からの考え方で、今回の銀行参入の問題を契機に、(C)というのはだめなのか、(C)はどこまでいいのか、ここら辺の具体的なルールが出来上がればありがたいなというふうに考えております。余り(A)に固執し過ぎても、実際世の中では(B)ですね。既に独立性が保たれるとされていた銀行が数多く破綻してきたというのは、我々の目の前で起こってきた事象でございますので、必ずしも独立性が健全性を保つ最高の手段とは言えないのではないか。

一方、従属だと不健全になりやすいという面も否定はいたしませんが、果たしてそうなのかというところの問題でございます。

ここで一つのメッセージとして簡単にまとめをいたしますと、その下の四角の枠の中を読みます。

「本審議会のテーマである銀行法改正の観点において、現行法の条文上存在しない「独立性」を要求するのであれば、その法益と根拠を議論し、法文上も規定する必要がある」こういう意見もあるのではないかと思います。

いずれにせよ、「独立性についての具体的、明確なルール化が必要ではないか」というふうに考えております。

次に、その下ですね。「子銀行の健全性の確保は当然であるが、独立性の確保は当然なのか」若干疑問が残る。

「経営の健全性を損なうような独立性の喪失を防止することに焦点を当てるべきではないか」

あえて付け足しますと、異業種による銀行参入を認める以上は、この独立性の枕詞である経営の健全性を損なうような独立性と、この枕詞が極めて具体的にビジネスをする者にとっては重要になっていくのではないかと、このように考えている次第でございます。

続きまして、3ページ目、もうちょっと各論を御紹介したいと思います。

「(2)銀行業務及び信託銀行子会社等の業務の代理・媒介・紹介について」読みます。

1ポツ目。異業種の銀行業参入によって利用者利便に資するためには、事業親会社による媒介、顧客紹介によって顧客基盤を共有し、子銀行の顧客を拡大することが是非とも必要である。

しかし、上記の「独立性」の議論の各論として、事業親会社が子銀行又は子信託銀行に対してどこまで取引の媒介又は顧客紹介ができるかという問題が存在する。

3番目。銀行法及び信託業法上、代理店業務を行うためには、監督官庁の認可を取得することが法定されている。加えて、信託代理店については事務ガイドラインが存在するが、銀行業務に関してはこのようなルール、事務ガイドラインなるものは存在しない。

信託代理店事務ガイドラインの「信託代理店チェックリスト」こういうものが存在しておりまして、この記載事項は、法的な「代理」の範囲にとどまらず、媒介とか顧客紹介までも実質的に禁止する運用を行っているものと解される。

このため、銀行業務に対する媒介又は顧客紹介についても、この事務ガイドラインを準用せざるを得ない状況が生じている。銀行の方はルールがないものですから、これを準用して考えておけという意見が大勢を占める。

この事務ガイドラインを遵守すると、異業種の銀行業参入によるシナジー効果は生じないこととなる。

その下の「代理店チェックリスト」というのがこの現物でございます。何が問題かというと、太字にしてまいりましたその真ん中より下なんですが、一つは、例えば、親銀行等又はその他代理店以外の者が、一般事業会社が読替えてもいいと思うんですが、信託業務を営む銀行の顧客開拓を営業目標としていないか。こういうチェックリストがあるんですね。そうすると、仮にそのシナジーを呼び起こすときに、オリックスの支店に行ってオリックス信託の人間が、業法上支店の人間ができないことは明確。預金の受入れとか、信託の営業とかできるはずがないんです。見込み顧客の会社だけ紹介してください。紹介だけしてくれれば、あとは全部信託が営業する。こんなことというのはあり得る。

ところが、そういうプレゼンテーションだけして引き揚げてくると、みんな忙しいから紹介しない。そうすると、あの手この手を普通は考えるわけで、例えば、「一つの支店で最低10社は紹介してください」こう言う。この10社紹介しろというのが一つの目標になりはせんかとか、もっと言えば、10社紹介してだけだと、また紹介するかどうかわからないので、今度オリックスの内部で、10社紹介したら営業支店にポイントを上げましょうと、このポイントというのは営業成績の一つとしてカウントしましょうと、こんなことによって顧客紹介を促進させるなんていうことは誰もが考えることなんですね。ところが、それをするとみんなここに引っかかってくるので、そんなことができないという、非常に枝葉末節な話ですが、現実問題はそういうことの積み重ねだという一例でございます。

もう一つがその次。例えば、親銀行等又はその他代理店以外の者が顧客の要請に基づくことなく信託業務を営む銀行に顧客紹介していないか。こういうリストがあるわけですね。

そうすると、オリックスの営業がお客様に行って、いろんな技術とかファイナンスの営業をしている。そこで、何でもいいですが、例えば、何か信託絡みのストラクチャーの話をする、もしくは「大口の預金を預けたいけど、いい先ない」という話が出たとする。そこでオリックスの信託の話をしようとするときには、する手前でお客様から、「是非オリックス信託の説明をしてください」とか、「オリックス信託を紹介してください」と一筆を取れて言っているわけですね。そうすると、金融というのは御承知のようにお金が商品で、どうやって他社と差別化するのかというのは非常に辛い中で、紙一重の競争をやっている中で、世の中に信託銀行もたくさんある。その中でオリックス信託をリコメンドするときに、書面で一筆を取らないと紹介できないというのは、実質紹介ができないのにも等しいと、こういう現状でございます。

実際このレジュメの一番最後のページに、現在オリックスに存在するコンプライアンスルールの抜粋を付けさせていただいております。紙が分かれていますね。失礼いたしました。

○ 蝋山部会長

別紙で「委員・オブザーバー限り」となっているものです。

○ 福島ゲストスピーカー

完全な内規の内部資料でございますから、ひとつ扱いは御注意いただければと思いますけれども、こんなガイドラインができております。

ポイントだけ御紹介しますと、2行目の「また、」のところからです。これらの業務の一部を媒介・代行する行為が行われるかどうかについては、法律上必ずしも明確ではありません。したがって、オリックスグループ各社は、OTB(オリックス・トラスト・バンク)の銀行業、信託業両方につき、その媒介・代行は行わないものとし、必ず顧客からの要請に基づく顧客連絡にとどめてください。そして、そのOTBへの顧客連絡に当たっては、以下の事項に留意してください。

1は、代理・媒介・代行はだめよという話ですね。

2は、顧客の要請があれば、預金商品、信託商品等の一般的説明を行うことは差し支えない。この場合には説明時に添付の要請確認書を取れと。

3.オリックスグループ各社は、顧客からの要請があればOTBに対して顧客連絡をするものとする。顧客から取得した要請確認書をOTBへ送れと。

ほとんど先ほどの代理店チェックリストのとおりに運営がなされている。実態はこのコンプライアンスルールを作ってしまうとシナジーは起きない。ただ、これも過渡期なのかということで、今はあえて厳し目のルールを作っている。何とか、何がいい、何がだめというルールが明確になって、よりスムーズなビジネスができればということを今は考えている次第です。

そうしますと、レジュメの方に戻りまして、4ページでございますが、今のところのメッセージをまとめますと、異業種による銀行業参入の目的というのは何か。

利用者にとっては、身近なコンビニエンスストアで銀行業が利用できるとか、オリックスの営業のワンストップショッピングができるとか、こういう新たな金融サービス法よる利便性の向上が顧客側の当然の目的でございます。

一方、事業者側というのは何かというと、顧客基盤の共有により、既存ビジネスと銀行ビジネスの双方における収益機会の拡大。

異業種の銀行参入の究極の目的の大きな一つというのは、やはりこの顧客基盤の共有化ではないか。コンビニに来るお客様に、そこで銀行業務を提供する。銀行を目的に来たお客様は、ついでに買物をしていく。この顧客基盤の共有化。当然既存金融機関がいろんな金融コングロマリットを満たすのも、一つのワンストップショッピングとして、生保も損保の銀行も同時にセールスできる。それはまだ業法のルールの中でしょうけれども、そこと余り大きくは変わらない。それが異業種と金融というところにまたがることになるということが目的だと考えております。

そう考えますと、次を読みます。異業種による銀行業参入を認める以上、代理は法律の認可が必要ですから別としても、顧客紹介や取引の媒介を可能とする必要があり、前記の代理店チェックリストの改廃やルールの明確化が必要不可欠ではないか。こんなことを考えているわけでございます。

続きまして、5ページにまいります。今の営業基盤の共有化についてのところで御説明を申し上げますと、ここに示されておりますのは、先般私どもが提出したパブリック・コメントとそれの回答でございます。

同じようなことを言っておりまして、当社のコメントのところの1行目の最後、子銀行が事業会社等の営業基盤を共有することに対する強い規制を設けるならば、事業親会社等の営業基盤を利用した新たな銀行業は結局認められないことになりかねないか、こういう意見を言ったところ、右側、当局のコメントとして、ポイントは3行目の一番最後の「特に、」のところですね。子銀行と事業会社等が営業基盤を共有しているような場合には、事業親会社等の破綻等による店舗の閉鎖等に伴い、子銀行の営業基盤が一気に失われる恐れがある。よって、このような事業リスクの遮断策が十分に講じられているかどうか、免許審査及び免許後の監督の際にチェックを行う必要がある。こういうここは否定した意見をいただいております。

これをどう考えるかというのを私なりに整理してみましたが、1ポツ目。営業基盤の共有の定義を明確にする必要がある。その下に二つポツで書いてきましたが、一つは、ホストコンピュータなどの事務インフラの共有。これも多分「営業基盤の共有」という言葉の中に入っているんだろうと。

それから、もう一つが、営業網や顧客基盤の共有。今まで話してきた話でございます。

そうしますと、例えば、インターネットの場合にはいいんでしょうけれども、コンビニ銀行が、自分のコンビニ全店で銀行業務をやって、とりあえずは多分そこからスタートしたいはずなんですね。コストがその方が一番安いとか、手間暇とか折衝の時間が非常に短縮されるとか。ところが、100%自分のコンビニ網だけで営業をやると、この営業基盤の共有ということを考えるとリスク遮断がとられない。では、一定割合はほかに振れと。そうすると、違うコンビニさんにも話をして、そのリスクを振ることになる。

ところが、下にも書いてまいりましたが、10割自分のネットワークを3割や5割程度振っても、残りの5割は自分のネットワークであれば、この5割のネットワークが親会社の破綻によって封鎖された場合に、当然半分の営業基盤を失った会社というのは営業はしていけない。一般的なビジネスをやっている感覚だと、リスクの排除という意味だと、1割以下に抑えないと、とても怖くて営業基盤を一点に集中させるなんていうことはできないわけですね。実際、自分の店舗が1割しか持たないコンビニ銀行というのは本当に成り立つのか。理屈では営業基盤の分散、リスクの遮断ということが言えますが、実際はここの意味を二つの意味の後段だというふうに捉えると、現実的には遮断するのは不可能ではないかと、こんな考えを持っているわけでございます。

続きまして、6ページ、後段の方のテーマを御紹介したいと思います。「異業種による銀行業参入における新たなルールについて」ということで幾つかまとめてまいりました。

(1)が「機関銀行化について」。1ポツ目を読みます。

「機関銀行化」という概念も「独立性」の定義と関連し、幅広い解釈となる可能性が高い。「機関銀行化」と言われる問題は、実際は具体的行為の問題というべきであり、行為規制として明確にすべきものではないか。

例えば、事業親会社等への貸付の禁止とか、銀行経営の健全性を阻害する行為の禁止とか、こういうことの中でいかに具体的ルールがたくさん設けられるか、こういうことでございます。

貸付の禁止は、親が傷んできたら、もしくはグループも含めて総与信で大口融資規制にかける、かけないという議論に多分なると思いますが、仮に親会社への貸付が全面的に禁止になっても、今銀行業に参入しようと思っていらっしゃるところでは、自分の子銀行を調達の導管にしようという意図で参入される方は、恐らくほとんどいないと思いますので、余り不自由はない。もっと言えば、大体子銀行というのは割合小さなボリュームでスタートしますから、それの自己資本比率規制とか大口融資規制で言うと、親がかじれても、たかだか数十億になりますので、数十億の資金はここから借りなくても、他から調達できるというのが一般的な事例ではないでしょうか。

続きまして、「(2)親会社への報告徴収、検査権限につい」

1ポツ目。あらゆる業態であることが予想される事業親会社への実効性ある検査、立入検査は不可能ではないか。

2ポツ目。仮にその検査を行おうとすれば、膨大な行政コストが発生することとなる。

3ポツ目。報告徴収、検査権限によって何を見ようとするのか、事業親会社の健全性をチェックしようとするならば、銀行が二つあるということと変わらないこととなる。

ちょっとわかりにくい表現ですが、子も徹底的に健全性チェックをし、親も徹底的に健全性チェックをするということは、親自体が銀行になることと変わらなくなるのではないかと、こんなことを考えております。

最後のポツ。報告徴収、立入検査が必要とする見解の根拠は、事業親会社等の業況悪化による共倒れリスクを防止するために株式売却命令を発動するとすれば、事業親会社の業況を把握する必要があることにあるのではないか。そうであれば、事業親会社に対する報告徴収、立入検査までは必要なく、子銀行に対する事業親会社等の業況に関する財務諸表等の届出により、事業親会社の倒産の危機は十分に把握できるのではないか。

その事業親会社が公開企業か、非公開企業かによってもかなり大きく変わってくると思いますが、ただ、最近のゼネコンの問題であるとか、それから、一部既に破綻した百貨店がございましたが、そういう百貨店の問題であるとか、その他の業界を見ましても、傷んできているというのは、大体いろんな雑誌とか何か、風評で伝わってくるものでございますので、一部には、公開しているのがグループ数十社の中の本当の1社か2社で、あとはグループの連結がぐちゃぐちゃで、どうなっているかわからないところもありましたが、総じて、傷んでいるというような風評が起きますので、何を物差しにするかという問題はございますが、株式の売却命令というのは、立入検査権までを持たなくても発動できるのではないかというふうに考えております。

最後に、「その他」という項目で幾つか付け加えさせていただきました。6ページの一番下を読みます。

「事業親会社による子銀行の株式保有割合を経営支配権が及ばない一定レベルに制限すべき」又は「事業親会社が子銀行に対する一定以上の持株を保有する場合には、監督上の規制を強化すべき」こういう意見がパブリック・コメントに存在しておりますが、これらの考え方は、子銀行の経営に悪影響を及ぼす経営支配を回避するためのものであるが、前述した「独立性」の議論と同様であり、もしこの見解に立つ。例えば、50%以上は持ってはいけないとか、50%以上持つならば厳しい規制が必要だと、こういう見解に立つと、実質的に異業種による銀行業参入を認めないのと大差はないのではないか。売るかどうかは別として、既存銀行の株式を10%保有する、これときっと一緒になるということが考えられるので、余り意味がないことになってしまわないかということを心配しております。

7ページの1ポツ目です。「免許付与時の事業親会社の子銀行に対する支援体制、コミットメント等を継続的に維持することを要請する権限を監督当局に付与するべき」というパブリック・コメントが存在しますが、このような方法ではレター・オブ・ギャランティなのか、レター・オブ・コンフォートなのかわかりませんが、あくまでも支援しろと、こういうことを法的に持たせることというのは本当に可能なのか、その効果はどうなのかというところに疑問を感じている次第でございます。

最後になりますが、「異業種による銀行業参入という事態を踏まえ、既存の銀行についても、公正な競争条件の確保と適切な収益の観点から規制の一層の緩和をすべき」こういう意見がパブリック・コメントに存在しますが、単純なイコールフッティングの発想は妥当ではないのではないか。なぜなら、銀行には預金保険制度があり、さらには公的資金の供与を受けている。そこがそもそも競争条件がイコールではない。私どもがオリックス信託銀行と話をしていても、このネットに関わっているというところ、場合によっては公的資金が入る可能性も皆無ではないということによって、やはりほかの事業子会社とは明らかに分けた議論をしておりますので、単純なイコールフッティングの議論ではないのではないかということを考えております。

以上、30分ちょっと経過いたしました。

○ 蝋山部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの福島さんからのプレゼンテーションに対して、いろいろ御質問、御意見あろうかと思います。福島・阿部チームでお答えいただこうというふうに思いますが、いかがですか。

余り今日は顔つき、目つきがわからないんです。だけど、クーさんは何か言いたそうな雰囲気を持っていたというのは感じられましたので、クーさん、どうぞ。

○ クー委員

では、御指名ですのでちょっとコメントさせていただきますが、今のお話を聞いていると、異業種が参入することについて、儲かることがあたかも保証されているようなトーンだったような気がするんですが、私はこの点については、異業種が入ってきたからといって必ずしもそこのシナジーをもとに、皆さん儲けてくださいという意味の異業種参入なのか。それとも、今の銀行と全く同じ土俵でやってくださいと、それでも皆さんが、例えば従業員の給料が安いとか、もっと効率的な経営ができるから、それで今の銀行に対して優位に立ってくださいという、この辺を恐らく我々はもっと議論しなくてはいけないと思うんですね。

今のそれぞれのパブリック・コメントに対する福島さんのコメントを聞いていると、どちらかというと、異業種なんだから、これを認めてもらっていいはずだと。今の銀行はイコールフッティングで議論するのはおかしいというのは、ちょっと虫が良過ぎないかという気がします。

今の銀行で公的資金を受け入れているのはたくさんありますが、政府が公的資金どうかと言ったときに、自ら入れてくれと言った銀行は一つもない。あれは相当政府がねじ込んで入れているんですね。なぜそういう行動を政府がとらなくてはいけなかったかというと、当時貸し渋りの問題が発生して、それは自己資本比率の問題から発生していた。銀行が倒産するから資本投入したのではなくて、資本投入しなかったら貸し渋りがひどくなってしまって、それで日本経済がだめになるから投入したわけですね。

そういう状況に、たまたま今の時点で銀行業に参入されるオリックスさんは、過去の10年間のものがないわけですから、「うちはもらってないから、いいじゃないか」という話になるかもしれませんが、これはもしも例えば、オリックス信託銀行が10年前にあったら、今頃全く同じ状況にあったかもしれないわけですね。したがって、今から入ってくるから、イコールフッティングの議論はおかしいというのは、私はちょっと虫が良過ぎるんじゃないかという気がします。別に、銀行だって公的資金入れてくれと頼んだわけではなくて、入れないと貸し渋りを続けなくてはいけないという状況に日本経済が直面したから、そういう処置をとらなくてはいけなかったということはちょっと注意していただきたいなという気がします。

この独立性についても、確かに独立していてもおかしくなる銀行はあるわけですけれども、独立していなかったら、もっと大きな問題が起きていたかもしれないということは言えるわけですね。だから、独立性が確保していても、銀行がつぶれたんじゃないですかというのは、必要条件か、十分条件かという議論ではないのかな。私は独立しているというのは必要条件であるけれども、それが十分条件ではない。銀行の健全性を守る十分条件ではないというふうに見るのが正しいんじゃないかなという気がします。

顧客の紹介については、これは私のいる業界でも、銀行系の証券がお客を名前を使って持っていっちゃう。そうすると、証券会社からしてみますと、これは随分不公平じゃないか。一部証券会社が、ちょうど今福島さんが言われたとおり、証券会社は一銭も公的資金を受けてないのに、銀行が公的資金を受けて、信用力で顧客を持っていくのはおかしいじゃないかと、こういう議論はこっち側にもあるわけですけれども、やはり新たに参入されるということであれば、その土俵でどのくらい戦えるのかと。そのシナジー・シナジーということであったら、恐らく先ほど福島さんが指摘されたシナジー効果を期待するのてあれば、当然親会社のチェックは入るわけですし、親会社のチェックは嫌だけど、シナジーは欲しいというのは、余りにも虫が良過ぎるのではないかという気がします。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。

今クーさんから提起された問題二つあったと思うんです。それに似たような御質問なり御意見。濱田さんは似ておられますか。ちょっと違いますか。

○ 濱田オブザーバー

ちょっと違います。

○ 蝋山部会長

それでは、次にお回ししますので。吉野さん、似てますね。

○ 吉野委員

はい。

○ 蝋山部会長

はい。

○ 吉野委員

似た質問なんですが、新しく参入される場合のことなんですけど、アメリカは95年の論文に、これから銀行業というのはますます儲からなくなると、こういう議論があるんですね。それは、優良企業であれば資本市場からお金を調達しますから、よりリスクのあるところに銀行はお金を貸さざるを得ない。ですから、マーケットはどんどん縮小してくる。その中でいろんなところが入られるわけですから、そうすると、二つ利潤を上げるのに多分ソースがあると思うんです。

一つは、集める方で非常にコストが安くできる。もう一つは、審査能力が既存の銀行より優れている。この二つのどちらかだと思うんですけれども、そうだとしますと、オリックスさんの場合にはどちらを、クーさんに似ているんですけれども、両方含めた形で利益をお上げになると思われていらっしゃるのか。もし貸す方の審査能力であるとすれば、既存のオリックスさんのビジネスの能力を使わないと、なかなか新しく銀行業務では難しいと思うんですね。

それから、新しいのが参入してくれば、既存の銀行はますます苦しくなってくるわけですね。というのは、ビジネスも先細りますし、より安いところで集めてくるのがあるわけですから、そうしますと、既存の銀行はますますつぶれるところが出てくるので、そこのことも後で考えなくてはいけないと思うんですが、ですから、オリックスさんの場合にはどういうところをメリットと考えられて参入されているのかということです。

○ 蝋山部会長

前回のこの会議で何人かの方から、異業種からの銀行業への参入、銀行に限ったことではないかもしれませんが、そのインセンティブは何なんだと、その動機は何かということをちゃんとコンファームしよう、確認しようや、こういう話がありました。ちょうどクーさん、吉野さんの御質問はそういう基本的な問題と関わってきますので、この段階でもう福島さんお答えいただいてよろしいですか。

オリックスの具体的なケースについて、どういうインセンティブによってオリックス信託銀行、山一信託銀行を買われたのか。日本債券信用銀行の14.5%の株主になったのか、その辺のところを聞かせていただけるとよろしいですね。

○ 福島ゲストスピーカー

的確なお答えができるどうかわかりませんが、クー委員の方からの御質問の観点からお答えをいたしますと、既存銀行と同じ土俵でというところについては、当然そう認識をしております。何も特別扱いをしてほしいということは当然ながら思ってもないし、思っても多分できないであろうというところは理解しているつもりでございます。

では、既存銀行と全く同じことをやろうとしているのかというと、それは恐らく全く同じでは、ただでさえ既存銀行とのこれから激烈な競争の中に入っていくわけで、後発で信用力も、ネットワークも、人材も何もいないところが既存銀行と全く同じことをやって勝てるはずがない。同じ銀行をやろうとして参入するところは恐らくないばずである。そうすると、1点目の話と含めて、いかに特色を出すかの勝負。それはもちろん銀行という一定のルールの中でいかに特色を出せるかというところの勝負だと思っておりまして、そこを結果的に端からふさごうなんて思っている人はいないんですが、独立性の議論にしても、この顧客紹介の議論にしても、気をつけないと実態としては結果的に塞いでいくことになる可能性があるということをメッセージとしてお伝えしたかったわけでございます。

それから、あと、御指摘がございました、いかにも儲かると思っているのかというお話をございましたが、そこは恐らく、銀行業に参入し、銀行業の方の利益はそこそこで本業がもっと儲かるのか、両方儲かるのか、銀行だけ儲かるのかという問題はありますけれども、儲ける自信がないところは恐らく参入しないであろうし、儲かるFSが金融再生委員会に提出できないと、多分認可はおりないでしょうから、儲かる自信があるところだけが手を挙げているという状況ではないかと思っております。

○ 蝋山部会長

宮内さんも同じような答えを言いますか。

○ 福島ゲストスピーカー

企業の経営者は当然収益の追求というのは株主利益の拡大のための第1点目ですから、同じことを言うと思います。

○ 蝋山部会長

そうですか。

○ 福島ゲストスピーカー

あと、総論での吉野先生からの御指摘のところの回答をいたしますと、やはりそうすると、オリックス信託は集めたコストの削減か、審査能力の方かという御指摘をいただきましたけれども、微妙で、これこそ宮内に聞いた方がいいのかもしれませんが、基本的にはやはりコストの削減ですね。幸い、クー委員からも御指摘がありましたが、店舗を1店も持ってない銀行でございますから、駅前の良い立地に支店がない、この弱みを逆に強みに変えられて、支店というコストがかからない中でどうしたら勝負ができるかというような観点で入口はスタートしておりますので、どちらかといったらコストの削減である。究極の目的はというと、先ほどお話しした顧客基盤の共有化によって、いかに既存ビジネスと新規銀行ビジネスのシナジーが高められるか、そこが参入の目的だというふうに理解しております。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。

相当明瞭になった面があるのではないかというふうに思いますが、こればかり議論していてもあれですので、濱田さんからどうぞ。

○ 濱田オブザーバー

先ほどの御説明の中で信託のことが出ていましたので、その説明かたがたちょっと一言述べさせていただきます。

信託というのは基本的には大量の事務を受託することを商売にするというのが基本のベースだと思いますし、お客様が信託をやるには、その能力ということが基本的に選択の基準になると思います。先ほどのような御指摘の話がありましたのは、もともと信託代理店というのは、地銀さん、第二地銀さんとか、金融機関ということを前提にしておりまして、本体の持っている融資機能の影響力を行使して商売を広げるというのは問題があるということでこういう基準を設けたわけでございまして、その当時はオリックス信託さんというのは念頭にあったわけでも全くございません。

先ほどクー先生のお話がありましたけれども、金融機関の持っている融資機能というのは、ある意味で大変な商売上の影響力があり、これを他の業務をやるときにどの程度行使していいものかどうかということが基本的に一番ポイントになるんじゃないか。ですから、表現の問題といいますか、そういう影響力というものがどうなのかという議論の問題ではないのでしょうか。

それから、もう一つは、お話全体を通してちょっと感じましたんですが、実質的にそういうことがなければいいじゃないかという議論もあろうかと思うんですが、実質的にというのはなかなか判断が難しいところですので、ある程度のところは形式的な基準なり何なりで判断せざるを得ないのではいか。そういう形でいろんなことができているんじゃないかと思っていまして、どこかでは線引きなりの形式的な基準も必要じゃないのかなというふうに思っています。

以上でございます。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。御意見として。

それで、私の方から一つ濱田さんにお尋ねしたいんです。オリックス信託銀行は脅威ですか。

○ 濱田オブザーバー

ダイレクトは。ちょっとお答えできませんけれども、いろんな意味で競争しながら信託をやっていくという意味で、私はウエルカムというふうに思っております。

○ 蝋山部会長

ほかに御質問なり御意見を頂戴したいと思います。

高橋さん、どうぞ。

○ 高橋委員

今信託の方からお話がありましたので、関連して二、三お伺いしたいと思うんですが、オリックスさんが信託銀行を名乗っていらっしゃいますけれども、信託協会には所属しないで、銀行協会の方に準会員というふうに、インターネットのホームページを見ますと、銀行協会の方の準会員で、信託協会の方には所属されてないように見えるんですけれども、現状がどうなのか。もしそうであるならば、どうしてかということを1点お伺いしたいと思います。

それから、2点目は、異業種参入の中で、消費者、顧客に支持されるという自信がおありになってお入りになってきていると思われるんですけれども、一般消費者の立場からお伺いしたいんですが、店舗がない銀行ということで、相談とか問い合わせ対応をオリックスさんの場合には、オリックスコールセンターという会社で一本化しておられる。オリックスのインターネットのホームページを我々が見まして、ファイナンシャルのゲートに入りますと、保険も証券もリースも、銀行も全部一緒にあって、そこで知りたいと思ってクリックして、問い合わせ先どこですかというふうにやりますと、0120のフリーダイヤルが出てくるわけですが、それは多分沖縄にある会社につながるんだなと思うんですが、そこではそれぞれ遮断して、各グループ会社の担当者がおられて、顧客情報は別々にしていらっしゃるのか。コールセンターそのものは総合なトータル窓口として設置されているのではないかなというふうに思うのですが、そのシナジー効果とか諸々の面で、今のコールセンターの現状と、今後こうあるべきだと思って目指していらっしゃるところがあれば教えていただきたいと思います。

以上です。

○ 蝋山部会長

大変具体的な御質問ですが、どうぞ、福島さん。

○ 福島ゲストスピーカー

協会の問題は御指摘のとおりでございまして、現在、全銀協には加盟しておりますが、信託協会には加盟しておりません。正確に申し上げますと、当初は加盟をしておりましたが、非常に会費が高いものですから、経営を最優先して、昨年でしたか、一昨年ですか、最近になって脱会をしたと、これが実情でございます。

それから、2点目のコールセンターの方は、ホームページをよく見ていただくとわかるんですが、銀行の共同店舗の規制の問題とか、ここはいろんな御議論があるところで、それがインターネットというものを余り想定してないでできているルールなものですから、一応自主的なルールとして、お客様が証券の商品なのか、銀行の商品なのか、オリックスの商品なのかというのを誤認しないように、一つのページには出ている場面はあるんですが、区分けをして、預金は銀行のものですよ、投資信託は証券ですよというところを区切ってなるべく出すという注意を払っているつもりでございます。

フリーダイヤルは、よく見ていただくとわかるんですが、銀行のフリーダイヤルと証券のフリーダイヤルと、オリックス本体のフリーダイヤルと、当然全て別の電話になっておりまして、沖縄のコールセンターで出る人間も全て人も違う。コールセンターではあくまでもオリックス信託銀行です。信託のフリーダイヤルにかければ「信託です」と出ますし、証券にかければ「証券です」と出る。それは1人の人間が鳴るボタンの光るのを見て、代えて出ているのではなくて、違う人間がきちっと出ているというものをしております。

○ 蝋山部会長

まだあとお一人、お二人、御質問なり御意見を頂戴したいと思いますが、もしもございませんでしたら、私の方からお聞きしたいと思うんですが、前半で独立性の問題を非常に強調された。そして、ちょっと気になる表現をされたと思う。福島さんは既存の銀行は独立性を考えなくてもよいというようなニュアンスの表現をされたというふうに思います。既存の銀行について、これはもう福島さんにお尋ねするというよりも、むしろ我々がちゃんと認識しなくちゃいけないわけですが、既存の銀行についても独立性というものをどう考えるか。よく大株主との関係で、貸出云々というようなこともあり得ると思うし、実際にもあったんではないかというふうに思いますし、いろんな点で、いわゆる政策投資の問題とも絡んでくるわけですね。

御指摘のように独立性の問題をどう考えるかというのは大変重要な問題であると思いますし、これは何も異業種からの参入ということのみならず、銀行の経営の独立性ということをもし見るとすれば、一体どういうことになるかという点は、私は共通の問題ではないかというふうに思います。そういう点で、既存の銀行は独立性を考えなくてもよいのではないかというような認識を示された点がちょっと私気になるんですね。

それで、もう一つは、シナジー効果というのは、よく独禁法の問題、抱合せ販売とか、そういう問題との絡みがいつもあると思うんですね。いわば乱用する。先ほどちらっと濱田オブザーバーも御発言の中で言ったと思うんですが、銀行の持っている融資力というのは今は大分落ちているのかもしれませんけれども、相当なものであって、それを背景にした様々な力の乱用。そういう独禁法の問題とどう考えるか。競争政策、その辺のところのお考えがもしもあったら、伺いたいなというふうに思います。

それから、3番目の点では、異業種から入られて、銀行業について、日本はノールール・ビーンズ・プレビジュンですね。要するにルールが書いてなければ、やっちゃいかんということですね。そういう考え方ですね、基本的に。しかし、そうでない考え方も、ルールとして書いてなければやっていいことだと考えてやる、そういう法理も考えられるんですね。

その辺のところ、福島さんの御議論を伺うと、基本的に法律の書き方というものを変えた方がいいんじゃないかという御提案のようにも受け止められる。要するにちゃんとしろということは、これからの時代を考えれば、何も書いてものは自由にやらせてほしい、おかしいところだけきちんと禁止するということなのかなというふうにも思うんですが、そこまで強くおっしゃっているんですか。そういう質問をちょっとさせていただきます。

○ 福島ゲストスピーカー

1点目は私からお答えしまして、2点目、3点目は阿部からお答えをします。

1点目、ちょっと誤解がございましたらお詫びしなければいけないんですが、独立性のところで、既存の金融機関には独立性の問題がない云々という発言は、既存の金融機関の方々は余りその独立性というものに疑問を持たれないという意味で申し上げた。

○ 蝋山部会長

それは当然独立しているからか、それとも、当然独立していないからか。

○ 福島ゲストスピーカー

いや、どうでしょうね。それは恐らく銀行というのは独立してあるべきものだという風土の中で今まで展開されてきたので、特に違和感がないという意味で申し上げたつもりでございまして、当然その健全性を損なうような独立性は担保されるべきだというのは、新規参入組も既存銀行も同じルールの上で競争するわけですから、全く変わりがないルールの下での競争という意味で申し上げたつもりでございます。

○ 阿部ゲストスピーカー

2点目の方につきまして、シナジーと抱合せ販売との関係ということについてですけれども、その前に、濱田さんの方から御指摘がありましたとおり、濱田さんがおっしゃったことはごもっともだと私どもも理解しておるつもりです。銀行の影響力というのが問題なんだと、それはおっしゃるとおりだと思うんですけれども、この代理店チェックリストというものが出来上がりまして、どちらかというと我々のような者は想定されてなかった。

我々、日常営業活動をしておりまして、我々の影響力というのは実際ほとんどないということで、我々が何らかの形で我々のグループ会社との間でシナジー効果を働かせようとしても、全く影響力がないものですから、独禁法に違反しているのではないかということについて、正直申し上げまして、余り危険を感じることはないというのがざっくばらんな話でございます。

といいますのは、一つに大きく違うのは、私どもオリックスというのは運転資金等を貸すという事業を行っておりませんで、設備投資等の資金、リース等をはじめということですので、私どもが付き合いがなくても、お客様の方が別に大して困らない。運転資金を供給しているいただいている銀行が、ああせよ、こうせよと言うと、やはり事業会社としては従わざるを得ない部分が強くあるんでしょうけれども、設備投資の場面で個々、設備投資があるときに関係が生まれるという、我々正直言ってそういう効果がないものですから、そもそもシナジーと抱合せ販売とはどうかという、一般論として語るのは、ちょっと私の能力の範囲を超えておりますので、私どもの日常の業務という観点からしますと、正直言って余り独禁法に触れるようなことにはなってないだろうと。お客様が本当にメリットを感じていただいたので、そういう形の取引が初めて成立しているというように理解しております。

それから、3点目に質問いただきました、ルールがないことは、それは許されていない。ルールがあって初めて許されているというのが日本の姿だといふうに部会長の方からお話しがありましたけれども、確かに日本の姿というのは、日常事業のこういう場面に接しておりまして、そういう感を強くする場面は正直言って持っております。ただ、私、一応業務との関係で法務というものをやらせていただいております関係からしますと、多少そういう法律の勉強をしたレベルの知識ではございますけれども、やはり禁止されて初めて禁止であって、書いてないことは禁止されていないことだというふうに原則としては考えております。

ただ、やはり社会が、特にこういう規制業種の分野においては、書いてないことはできないことというふうに解釈されているところに、正直言って強い違和感を覚えております。私はあくまでもオリックス株式会社というノンバンクの一種コンプライアンスセクションにも携わっている者ですけれども、我々の子会社であるオリックス信託銀行のコンプライアンスセクションとの人間といろいろな議論を闘わせている場面でも、私どもは法律に書いてない、禁止されてないことは禁止されてないことだということで理解しておりますけれども、やはり銀行業界でそれなりの経験を積まれてきた方とかということになりますと、書いてないことはできないこととやっぱり理解しているなということを感じる場面がございますので、部会長から質問のあったことに対して正直に御回答するとすれば、法律によって禁止されていないことは自由にやっていいことだというふうに、はっきりさせてほしいと思っております。

○ 蝋山部会長

どうもありがとうございました。

まだまだいろいろ御質問なり御意見あろうかと思います。しかし、時間もまいりましたので、今日は、オリックスの福島さん、阿部さん、お忙しい中来ていただきまして、大変興味深い、参考になる御意見を伺わせていただきまして、委員を代表いたしましてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

〔ゲストスピーカー退席〕

〔國領教授着席〕

○ 蝋山部会長

それでは、第2のゲストスピーカーを御紹介いたします。

慶応義塾大学大学院経営管理研究科の國領教授であります。國領先生は、インターネット等情報化の問題に大変詳しくて、IT革命の仕掛人の1人ではないかと。私も國領さんの書かれたものを幾つか読ませていただいたことがありますけれども、経済・社会のネットワーク化といった問題についても大変優れた研究をされておられます。その國領先生から、御専門の分野から見ました金融分野の変化、あるいは今後のあり方、こういった点につきましてお話がいただきたく思います。ちょっと遅くなって申し訳ありませんけど、よろしくお願いします。

○ 國領教授

慶応大学の國領でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

私、最初から言訳になってしまうんですけど、必ずしも金融の専門家ではないということで、情報化が経済の中でどういうふうな意味を持っているのかということ。それから、どちらかというと電子商取引をやろうとしている方々が周りにたくさんいらっしゃいまして、そういう人間が、あんなのが欲しいとか、こんなのが欲しいとかというような視点でお話し申し上げたいというふうに思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

どこから始めようか、随分考えたんですけれども、最初はやっぱり大きなところから考えて、このお話を考える上では、歴史的な流れというのですか、大きなところでまず考えるのが大事なんじゃないかというふうに思っております。余り大げさに言い過ぎるのもよくないのは随分自覚しているんですけれども、恐らくやっぱり歴史の中で500年に一遍か、つまりグーテンベルクの印刷機とか、ルネッサンスがあって、国民国家というのができて、そういう中で秩序ができてきたというぐらいの流れの中でこの話を考えるべきだろう。その中では、例えば産業革命なんていうのも、その中の一連の流れの一つであるというふうに考える。

この話が非常に難しいのは、片側でものすごく速いスピードでいろんなことがどんどん起こってきておりまして、その迫ってくる課題にきちんとその場において解決策を出していかなければいけないという手堅い視点と、それを超えて大きな流れがどういうふうに来ているのかということを考えていかなければいけないという二つ。矛盾する話じゃないんだと思うんです。大きな視点を持つことによって、いかに次々立ち会われてくる応用問題に答えていけるかという話ではないかと思います。

その観点で2ページ目。この絵は非常に技術寄りに書かせていただいているわけなんですけれども、技術と社会的なインプリケーションの橋渡しをどうするかが結構難しい訳なんです。

今日、90年代以降現れてきているインターネットというものが、ある面でこれまでの情報化の流れの、それこそ活版印刷みたいのの一つの同じ系列の上に乗っている部分があるわけなんですけれども、もう片面で、極めて今までと違う異質なものを持ち込んできていることは事実だろうと思います。

それを象徴するのが分散処理という考え方。集中処理型と分散処理型という考え方の違いですね。集中処理型というのは、真ん中にコンピュータがあって、そこにいろんな情報やら情報処理をする機能が集中しているわけです。これを組織でアナロジーを考えていただいてもいいかと思うんですけれども、とにかくいろんな情報を真ん中に集めて、そこで管理して統制するタイプのシステムから、インターネットというのは基本的に情報が分散していまして、それを処理する能力も分散している。こういった分散構造です。

それから、集中処理型が中核組織による囲い込みがあって、中央でコントロールして、保護とかガバナンス、特に集権的なガバナンス。そのかわり中央に負荷がたくさんかかるというような構造としておりました。

これに対して、分散処理というのは、センターの存在しないシステムで、自律分散で情報共有で、自己責任で、セルフガバナンスでということであるわけなんですけれども、この逆。例えば、分散しているなんていう話のインプリケーション深追いして、余りこれも狼少年やってはいけないんですけれども。

今、例えば音楽業界なんかで著作権が守れないという話が出てきているわけなんですけれども、これも、中央のデータベースに海賊版ソフトが大量に集積していて、そこからダウンロードして、音楽が手に入るというようなものだと、これは取り締まれるんですね。

ところが、世の中じゅうのコンピュータに海賊版ソフトがばらばらに散らばって存在していますと、これはなかなか取り締まれないんですね。ところが、所有権が成立しないとかというような簡単なところで話が止まらないのは、情報を世の中に安価にばらまくという観点から考えますと大変優れているんです。鼠算式にコピーしていいよという形で情報を、つまり中央に負荷がかからない仕組み。負荷がシステム全体に分散していくシステムというのは極めてローコストに情報を伝達していく仕組みであるということで、とにかく構造的に違うんですね。

この話は、余りこれも狼少年をやってはいけないんですけど、著作権だとかと言っている間はまだ話は簡単で、恐らく税金とか、そういうような話になってくると、経済活動がどんどんピア・トゥ・ピアですね。例えば、銀行なんてものが本当に必要なのか、必要でないのか。証券市場なんてのが必要なのか、必要でないのか。完全に個人間でどんどん交換していってしまえばいいじゃないかというような話になってきたり、これも頭の中で空想するだけですけれども、でも、アプリケーションが出始めてきているのが、例えば物々交換みたいなものがどんどん広がってくるとかいうような話になってきますと、根本的にどこかに中心性があるので、そこでコントロールできるという話ではなくなってくるという側面があります。

ただし、これをやることによって、次に繰っていただきたいんですけれども、最も大きな特徴があるとすると、とにかくこういう構造をすることによって、情報を発信するコストが劇的に低下した。放送ですね。テレビとかラジオができた時点で、中央に存在する情報を世の中じゅうにばらまくというコストはものすごく下がった訳です。なので、そっち側の情報のコストはもう既にかなり低いわけなんですけれども、今日の情報技術が持っている極めて大きな特徴は、末端にばらばらに分断されて、分散している情報を発信してもらって、かき集めて、編集して価値を出すということに極めて適しているわけです。

例えば、今ネット上のオークションなんていうのがものすごくはやっていますけれども、これは誰も買うと思わなかったようなものでも、試しに出してみると、それに非常に大きな価値を見出す人が世の中に何億人もいたりするわけですね。これが今までは、その情報を発信するコストが極めて高かった、伝達するコストが非常に高かったので、巡り合わなかったわけですね。ところが、インターネットというのは基本的にただみたいな値段で世界中の人に情報をとにかく投げるわけですね。投げるとシステムが、それを欲しい人にめぐり合わせてくれる仕掛けになっています。

だから、私の中古ゲームソフトなんかでリサーチを現実にしてみたことがあるんですけれども、オークションにかけると、下取り店に持っていくよりも倍以上で売れたりして、しかも買う側も3割引きぐらいで買えたりする。それだけ今まで需要と供給をマッチングできなかったことによって不完全なものがあったわけなんですけれども、そういうのが分散的な情報の構造、誰でも情報が発信できる構造ができることによって実現できるんだろうということだと思います。

社会的なインフラストラクチュアとして、そういう状態になってくると、その次、決済どうするのかという話にすぐつながっていくわけでございまして、こういった潜在的な可能性をどうやって、片側で秩序を保ちながら、もう片側でその可能性をどれぐらい引っ張り出してあげることができるのか。それが今課されている課題だろうというふうに思います。

個人が主体的に情報を発信して、社会の進路を決める参加型の社会構築が構想できるはずだというふうに思います。この辺になってくると単なる銀行のファイナンスの話だけでなくて、エクイティファイナンスなんかも、もっと個人ベースで、自分の意思を発露するという形で社会に投資が行われる仕組みを作っていこうとかというような提案につながっていくということでございます。

次のページを繰って、4ページに繰っていただきますと、私が専門であります経営学の観点からいきますと、そういうような新しい可能性と構造を持った経済空間の中に、どんな新しいビジネスモデルが構築できるかというような話になってきます。条件が随分変わってきますので、今までと構造的に違うビジネスモデルがいろいろできる。

「ビジネスモデル」という言葉が余りに世の中に流布して、ちょっと安直に使われているところがあって、意味がはっきりしてこなくなってきたので、ポイントは三つといつも申し上げているんですけれども、どんな価値を提供しているか。

例えば、最近ですと、お客さんのイントラネットの中に入り込む文房具とか、旅行の発券業務とか、こういうような業界が、お客さんのイントラネットの中に入り込む競争を激しく繰り広げていらっしゃるわけです。それを入れると、自分の机の上から文房具の発注ができたり、チケットの発注ができたりするというようなことなんですけれども、これも表面的に見ると、単に発注という行為をネットの上に乗せただけなんですけれども、お客さんに対して付ける付加価値が何なのかというのをちょっとでも追っかけていくと、往々にして、それはお客さんの間接費部門の業務を受けてあげる仕事になっていたりするわけですね。

つまり、企業というのは、経費管理をするために庶務担当の方を例えば30人に1人なら30人に1人、50人に1人なら50人に1人配置されているわけですね。これはもう計算すればすぐわかるんですけれども、消しゴムみたいなものが一番ばかにならないのは、なぜかというと、消しゴム1個を発注するコストも、もっとずっと高い機器1個を発注するコストも、余りコストが変わらないわけですね。だから、アクティビティベースで掛けますと、1個50円だと思っている消しゴムが100円ぐらいしている話なら幾らでもあるわけで、そこの部分をイントラネットの中に入って、あなたの会社の経費管理をやってあげますという形で入っていきますと、100人に1人でよくなったりするわけですね。その管理する人が。そうやって人件費をがんと減らした方が、コンピュータ発注なので、「今まで50円で売っていたものを48円でいいです」なんていうよりも、ずっと大きな効果をお客さんに対して提供することができるということになってまいります。

ということで、こうやるとお客さんにそういう形でアウトソーシングのオペレーション請負型で入ってくるわけですけれども、その議論をしていると長くなるのですが、すぐに、じゃ決済どうしようとか、購買限度額を各従業員に上げて、その範囲内で勝手に発注していいという仕組み作るといいねとかという話になってくるわけです。それを誰が金融付けるのか、付けないのか、銀行と組む、組まないのか、その辺のシステム・デザインの御相談に乗る場合が多いんですけれども、すぐそういうような話になっていきました。そういったニーズにどうやって応えていただけるんでしょうかというような話ですね。

どのように価値の生産と供給を行うかというのが、サプライチェーンの設計とかレベニューモデルとか、そういうような話ですね。

レベニューとインセンティブの設計、これもありまして、レベニューモデルというのがネットビジネスの業界では言葉としてよく出てくるわけですけれども、これも構造が随分よく変わるわけです。今まで優良だったものをただにしますとかというような、お金のいただき方が全然違う。本当にただにするわけでなくて、エンドユーザーからいただいていたのを、逆に川上のマーケティングの費用で賄ったりするとかというような、ちょっと発想の転換、いろんな違うビジネスモデルが出てきました。

次の絵、この辺だけで1時間ぐらい話すことがよくあるので、価値の源泉について。非対称性の構造を変化させるようなモデル。先ほどのオークションなんていうのは、経済の中における情報の分布。基本的にネットなので、物を運んでくれるわけじゃなくて、情報を運ぶだけなんですね。ただ情報の世の中における分布を変化させるだけでビジネスモデルが変わっていくという、そういう話になってきました。

認知限界というのは結構大きい話になっていまして、この辺が信頼と関係してくるので大きいんですけれども、とにかく情報が膨大にあるんですけれども、その中で何がクレディブルな情報なのかということを判断する人間の認知能力が最大のボトルネックになっておりまして、そのサービスをいろんな形で提供しようと。

これは例えば、我々がかつて思っていたほどネット上の消費者は浮気をしないんですよ。どこかのお店に付くと、値段が高くてもそのお店に付いちゃう傾向が、我々が当初思っていたよりは傾向として強くて、これは恐らく信じられない。いろんな原因があると思うんですけど、基本的に人間の側の情報処理能力が限られていて、情報がたくさんあるからといって、次から次へと最適なところへ行くわけじゃないという話になっているように見えました。

それから、三つ目が情報の非物財的特性というもので、これは基本的に情報というのは限界費用がゼロだというところが出発点でありまして、放っておくと──この辺が情報のおもしろいところなんです。情報が増えれば増えるほど市場が競争的になっていくんですけれども、情報そのものは貨幣経済の上に非常に乗りにくいという特性を持っていて、現実ネットの上では情報がただになる傾向が非常に強いわけですね。この辺は知的所有権、所有権制度そのものをどう考えるか。これも話し出すと長いんですが、そういうような多くの話がございました。

次にめくっていただきまして、この辺が後ろ側に流れているいろんな原理なんですけれども、その結果としてどういう構造変化がきているのかということです。今まで申し上げたような背景の結果として、どういう構造が立ち上がってきているかということで、「オープン・アーキテクチャ時代の経営」という絵を見ていただきたいんですけれども、基本的に押さえるべきは、どちらかというと冒頭に申し上げたような、むしろ世の中で今まで中に囲い込んでいたような情報じゃなくて、世の中に分散して、分断しているようなリソースとか知識とか知恵みたいなものを強力な力で集めてきて、編集して価値を生み出すことができる道具を今我々手にし始めていまして、それを企業経営的に考えると、フルセット会社の中でタレントを抱え込んで運用していた企業にとっては、いかに外部の会社のリソースを機動的に活用できるんでしょうかというところが非常に重要だということになってくるわけでございます。

ということで、とにかくコアコンプテンスのところに。この辺はもう既にいろんなところで議論されている話なのでよろしいかと思うんですけど、そういった現象のところだけ見て、そうだそうだと言っている間はいいんですけど、大事なのは、後ろ側に、なぜそうなっているのかということを理解することでありまして、それの答えが先ほど申し上げたとおりで、とにかくやっぱり分散してしまっている外部だと思っているようなところの情報をいかに取り込んで自分の力にできるかというあたりが一つの考え方。

次の8にいっていただくと、そう考えるとコンピュータ業界なんかで縦型に囲い込まれていた業界構造が、自分の会社は自分の会社のコアのところに特化しながら、全ての会社のシステムの中に入り込んでいく。逆に言うと、自分の会社の得意とほかの会社の得意を組み合わせ、最強のシステムが連合してトータルシステムを構築していくような経営スタイルという話になってくるということだと思います。

次をめくっていただきまして、今のがどちらかというと生産サプライサイドの話になってくるわけですが、非常に大事なのは、もうちょっと消費の現場の構造が変わってくるような話が出てくる。

いろんな形で消費者側が発信してくる情報が非常に大きな意味を持つ。例えば、4年ぐらい前にニフティサーブさんの内部のデータをいただいて、ニフティの中に──非常にこれは過少評価の話なんです。ニフティの中にニフティフォーラムというのがあって、その中でニフティの初心者がお互いに使い方がわからないのを教え合っているという現象ですけれども、それがそこの場が存在しないで、お客さん同士の教えというのが存在しないで、全部ヘルプデスクに電話かかってきたら、幾らぐらいかかるでしょうという試算をしたことがありまして、雑な試算なんですけれども、その同時で20億円ぐらい。これはニフティについてだけで、ニフティの中の多分数分の1だと思います。ほかのところでもいろいろやっていますので。ということは、ニフティの中にはほかの企業のいろんなメーカーのありとあらゆる商品があるので、どう考えも数千億円オーダーの価値の生産がそこで行われているということだろうというような話になってくるわけであります。

それから、先ほど申し上げましたオークションなんていうのも、個人間のオークションですね。リサイクルでのオークションなんていうのは、これだけでアメリカのイーべーツー。とにかくどの時点でアクセスしても、今500万点ぐらいの商品がそこに載っていて、取引されているわけですね。全部じゃないですけど、ほとんどがコンシューマーとコンシューマーだということになってきて、こうなると何がコンシューマーで、誰がコンシューマーじゃないかというような話になってきますし、そこでの信用の形成とか、それから、余り言うと仲間を裏切って怒られるんですけれども、世界には税金はないということですね。

その次へいっていただきまして、ネットワーク経済の中でプラットフォームを構築してほしい。課題1、この辺になると全くの素人なので、思いつきを並べたような話で本当に恐縮なんですけれども、とにかくやっぱり可能性がいろいろある。それを実現したい。それから、先ほどの付けている付加価値何かで、文房具の例でも申し上げましたけれども、今までと売り方、決済の仕方なんか全然違うビジネスモデルを組んでいきたいというニーズが非常に多くの局面で出てくるわけでございます。それに応えてくださるようなインフラストラクチュアが欲しい。

我々の側から考えると、それが既存の金融業から出てきてくださっても構わないし、それから、新しいところから入ってきてくださっても構わないんですけれども、とにかくやっぱりどんどんここの部分だけクリアできるといいなという話がいろいろある。

この例は銀行じゃないんですけれども、今、私の友達が一生懸命海外に向けて着物の古着を京都で、着物産業を何とかしたといって、海外へ販路を作りたいとインターネットでクレジットカードを売りたい。ところが、マルチカレンシーでお金を集めてくださるクレジットカード会社がほとんど日本の国内にはなくて、やろうと思うとアメリカに1回お金を集めて、アメリカから送金してもらうしかないとかというようなことで悩んでいたりするわけなんですけれども。

インターネット上では日本は明らかに入超でありまして、買うのは簡単なんですけど、売るのすごく大変なんです、海外に向けて。それはお金を集めるインフラがないからなんですけれども。こういう不満を言い出すと、いっぱいあるのでやめます。

マイクロペイメントが欲しいとか、それから、個人による代金徴収にふさわしいインフラストラクチュアが欲しいとか、そんな難しいこと言わずに、とにかくコスト下げてちょうだいとかですね。

それで、2番目が先ほど申し上げましたとおりで、お客さんの業務のアウトソーシングを受ける、例えば消込み作業だけだって、日本じゅうでどれぐらい人件費かかっているのか知りませんけれども、そういうオペレーションにまで入っていく中で、ついでにちょっと金融もそこの中に入っていると、それが本業じゃないのかもしれないけれども、大きな付加価値になったりするような例というのはいっぱいあるわけでありまして、そういったニーズに今どうやって考えていけるか。

それから、エクイティの話をあえて書いておいたんですけれども、この話は、もうちょっと全体的に金融サービスの中の一環として、こうやっていきたいということです。

時間もないので2枚飛ばして、課題2:制度整備なんですけれども、eコマースの側から考えていきますと、決済の話以外にも幾つか整備しなければいけない話があって、いっぱいあるので、その中で一番重要だと私が思っているもの三つだけ持ってきたんですけど、間接税の話。プライバシーの保護の話。これは銀行の話と密接に関係していると思います。知的所有権の話。所有権という概念そのものが今もう一回問われている時代だと思います。

課題3:リスク・マネジメントというのがあって、自分がそれの実現に一生懸命やってきたので、良いことばかり並べたいんですけれども、やっぱり悪いところも認識しておかなければいけない。

最大の悪いところは、システムとしての安定性があるかどうかがちょっと怪しいところがある。これも数日ぐらいの単位だと、風説なんかが流れても直す力を持って、要するに変な情報が流れると、それは辺だというクレームがつくのも早いので、そういう意味では大丈夫なんですけれども、非常に短時間の間に何かが起こって、それが爆発的に広がっちゃう。ウイルスにしても、システムダウンにしても、不正アクセスにしても、それに対する危機管理の仕組みというものは大変重要であるというふうに考えざるを得ない。

ただし、そのときも、これが冒頭に戻るわけですけれども、中央で集中的に管理して、危機管理する体制というのも極めて重要なんですけれども、分散的な仕組みの中では、集中的な管理だけでは、多分管理し切れない。いかにシステムの安定性を保つメカニズムそのものも分散的にやれるか、この辺がボランタリーな社会の仕組みを作っていかなければいけないという話につながってくると思うんですけれども、そういう話になってくる。

とにかく、最後に、基盤としての信頼のメカニズムをどうやって社会的に構築できるかというあたりに答えを出していかなければいけないということになろうと思います。

大体30分と伺ったので、以上でございます。

○ 蝋山部会長

どうもありがとうございました。

お話を細かく伺おうと思えば、恐らく今日の話はこれの30分掛けるページ数ぐらい必要なんですかね。そういう中で無理やり30分に押し込んでいただきまして、申し訳ありませんでした。しかし、いろいろ啓発されるところが多かったのではないかと思います。どうか、委員の方々、御意見をどうぞ。御質問をどうぞ。

先ほどインターネットの話をされた高橋さん、どうぞ。高橋さんが一番インターネットを活用されているようで。

では、考えているときに、私の方からぜひお伺いしたいと思います。金融機関が合併するとき、最近大型合併や提携と。よくIT投資のためにとか、こういう新しい時代に即応するために非常に多額の投資が必要で、それで1社では賄い切れないので、そういうことが理由としてよく挙げられるわけですが、専門家から御覧になって、そういうような金融機関の合併の理由というのはどんなふうにお考えになりますか。こういう新しいネットワーク社会にアタックするために、そんなにコストがかかるものなんですか。

○ 國領教授

これは今に始まったことではなくて、金融業のシステム化の歴史が始まったときから、そのプレッシャーは非常に大きくかかって始まってきたんじゃないかと思います。今オンラインシステムの大規模なものを開発しようとすると、数千億円のオーダーの、国内だけ考えてもかかっちゃうと思います。だんだん経済がソフト化していくにつれて、開発コストがべらぼうに大きくなってきて、それをどれくらいの分母で配賦できるかという勝負になってきている。

例えば、もっとずっと身近なことを考えて、Windowsなんて考えて、機能的にダントツそんなに優れているかというと、そんなことないんですけれども、あれだけの分母を確保されちゃうと、もうほとんど開発費で、粗利100%のビジネスでしょう。でも開発コストものすごく大きいというような構造していますので、かなり強烈に規模の経済性がそこの部分で働いてしまうということはあると思うので、これはむしろ日本国家、合併が日本国内の中で進んでいる方に私としてはやや危惧を抱いておりまして、そんな分母じゃないんじゃないかという気が片側でいたします。

ただ、その中で注意しなければいけないのは、そういう金融機関ばかりかというと、そんなことはなくて、余りにもそこの部分の規模の経済性が大きいので、マーケティングをやることを中心に、つまりシステムの部分をアウトソースするという業態がかなり出てくると見るべきでありまして、なので、単純に今までのシステムも持っているし、マーケティングもやってというような、統合化された会社がどんどん大きくなっていくという構図から、共通基盤的なものは少し相乗りしながら、マーケットのニーズについては、むしろ顧客データを中心に回っていくように業界構造が変化すると考える。金融業界の専門家じゃないんですけれども、システム化に伴っていろんな業界構造が変化していく定石というか、一つのパターン的なものを金融業界に当てはめて考えると、そんなようになると思います。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。

どうぞ、高橋さん。もう用意できたでしょう。

○ 高橋委員

感想めいたことでちょっとお伺いしたいんですけど、課題2で制度整備、そして課題3でリスク・マネジメントを課題に出していただいているんですが、システムの不安定性、脆弱性というところで、金融システムの安定性というのがインターネットを通じて、そこにある危険性を私は非常に感じているんですけれども、例えば、今ネット上でいろんなところの掲示板で、次に危ない会社はどこだというようなことが名指しで出ていて、そこで風評の段階だったらいいんですけれども、インサイダーを名乗る人、そこの社員が出てきたりとか、いろいろ出てきている状況の中で、こういうものが続きますと、やはり「では、当局はどうなんど」とか、あるいは当事者の会社自体も記者会見しなければいけないとか、そういう状況が出てくるのかなというふうに思っているんですけれども、今後というのは、今掲示板に随分書き込むというのがはやっていて、金融の関連のサイトがどんどん立ち上がって、今の合併とかそういうことも含めて、いろいろネット上で論議されているんですが、その辺は先生はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、ちょっとお話を伺いたいと思います。

○ 國領教授

まさにおっしゃるとおりでありまして、私もそごうの不買運動まで使われたかとか、そういう研究もやっているんですけれども、非常に短時間にバースト的に出てきますよね。かつ、全く御指摘のとおりで、現実にインサイダーじゃないとこれはわからないんじゃないか。この情報が本当だとすると、インサイダーしか出せないと思っているような情報が出てきますよね。

というわけで、ちゃんと扱われないと危ない状況があることは間違いがないと思います。株価操作なんかもできると思います。そこで、集中型と分散型と「あわせ技で」と書いたのは、その辺のことでございまして、片側でそういうのをちゃんと監視していて、変なことやっている者をたたくという仕組みもあっていいと思います。

ただし、それだと、いつ、どこに、誰だって、掲示板があればどこだって立てられちゃうんですよね。私が家に帰って、自分のコンピュータの上でやると、そこで掲示板でできちゃうんで、それに対する有効なチェックは、変ながせネタを流した者がいたら、それはがせネタだって、すぐ良識というのかな、システムの安定性が大事だと思っている人が正しい情報にアクセスできていて、それがうそだということがわかる状況があって、それを叩いてくれる。

例えば、こういうふうにウイルスなんかのことで我々随分経験を重ねているわけで、ウイルス情報というのがメールリストなんかでよく流れてくるわけです。確認もしないで騒ぎ立てる人がいると、まず私はそれを制止するんです。というのは、これは面白くて、手口ははっきりしていまして、狼が来たという情報を何度も何度も流しておくんですね。そうすると、みんな狼に警戒しなくなるんですね。そこへ本物を流すと破壊できるようなところがあるので、がせネタ情報というのは怖いんですね。なので、私は、がせネタかもしれないと思う情報が来ると、必ずその人に「情報のソースが確認できないウイルス情報は流さないでください」とお願いするわけですね。即、その場には、そのウイルスについて、これは専門的に監視している人たちがいるので、そこへ行って、そこの情報をちゃんと流してあげるということがあるんです。

だから、私みたいな民間で、ウイルスなんかでシステムがおかしくなるのが嫌だと思っている人間が片側にいて、その人たちが現場で一生懸命やってくれていることも大事ですし、ただ、その人たちがいかにそういう意識を持っていても、やはり中央のリソースがあるから、それができるところがあるわけですね。そういった連携の仕組みを作っていくことによってシステム全体を安定させていく、そういう発想でいかないと、インターネット上はうまくいかないと思います。

○ 蝋山部会長

そうすると、インターネット社会でも金融庁の役割は十分あるということですね。

○ 國領教授

なるほど。はい。

○ 蝋山部会長

ウイルスの場合は、何か協会がありますね。

○ 國領教授

ITAという中にセンターがあります。

○ 蝋山部会長

ああいうところで、問い合わせると、レスポンスがすぐ返ってくるわけですね。そういうものに似たものとして金融庁の場合には考えられるけれども、それが全てを皆さん方に相対峙するんじゃなくて、國領さんのような自主規制組織も必要になってくる。それがいろんな形で層的にチェックをやっているというのが「あわせ技」ということになるわけですか。

○ 國領教授

はい。

○ 蝋山部会長

どうぞ、ほかに御質問ございませんか。

クーさん、どうぞ。

○ クー委員

金融システムということで考えますと、今、高橋さんが指摘された点ですけれども、誰でも情報発信できてしまう。自分があたかもインサイダーみたいな形で幾らでも情報を出せるというのは、特に今の日本の金融システムのように大手銀行の格付が全部地に落ちているというような状況では、極めて恐ろしいと思うんですね。今までは幾つかの週刊誌がそういうことをやっていた訳ですけれども、あの週刊誌なら、こんなものでしょうと、大体国民も最近は学んできたようですが、それを今度はインターネット上で、すごい数出てくる可能性があるわけですよね。

○ 國領教授

もうかなりあります。

○ クー委員

今もあるわけですけれども、やはりそういうことに関しては、そろそろ罰則規定みたいなのを日本も作らなくてはいけないんじゃないか。これなしに、あの世界を放置しておくと、例えば、ペイオフの解禁なんて絶対できないと思っているんです。何を流されるかわからないような世界ですから。実際私もそういう週刊誌の編集長としゃべると、「いや、派手にやって、後で裁判所にしょっぴかれても、そっちのかかるコストの方が、雑誌が売れる方がはるかに大きいから、別にそんなこと関係ないんだ」と平気で言うんですね。雑誌があのレベルですから、インターネットで自由にしたら、もっと──もう既にそういうことが起きているんでしょうけれども、やはりインターネットに限らず、変なこと言った人は牢屋に入ってもらうというのは、特にアメリカとの例を比べますと、本当に早急にやってほしいなと思いますね。

○ 國領教授

とにかく、発信できる自由があるということは、発信に伴う責任もあるということは確認しておかなければいけないですね。あと、エンフォースができるのかできないのかというのは、ちょっとまた難しい問題があると思います。

これも同じことの繰り返しになってしまいますけれども、がせネタ流す者には社会的制裁もかなりきつくかかるんですね、インターネット上では。かなりたたかれますからね。なので、そういうような仕組みと組み合わて考えていくということになるんだろうと思います。自己責任ということは、自己責任なんです。どっちの義務でもあると思います。

○ 蝋山部会長

国民のレタラシーを高めることが安全保障の問題だと書かれたのは、そういうこと。日本のパソコン普及率は統計でわかるんだけれども、國領さんの御経験では、日本国民のネットワーク・レタラシーというのはどれぐらいのレベルですか。上中下、あるいはABCDぐらいで言うと。

○ 國領教授

潜在的にはネット的なものは結構少ないんじゃないかと思うんですね。人とつながってないと心理的に不安になるところが日本人にはあって、携帯の話でも、ポケベルの話でもそうですし、パソコンのキーボードが日本で日本語入力が普及するのが80年代に入ってからということで、その時点で30を超えていたぐらいの方になると、ちょっと苦しくなってくるんですけれども、それもかなり時間の問題じゃないかという気がしますので、中期的には楽観的なんですが、ただ、現状を考えると、比べるのはアメリカじゃなくて、何とか韓国に完全に追いやられないように、韓国の方がはるかに上ですので、ちょっと危ない状況があるように思います。

この話は、単にキーボードどうこうという話じゃなくて、今まさに変なこと言わないとか、そういうレベルでの振る舞い方というのが、先ほどのウイルスの話にしても、非常に善意のつもりで、「こんなウイルスが流れているよ」と言っちゃう人がいるんですけれども、それは危ないんですね。その辺の基礎的な訓練というのはやっぱりしないといけない。

○ 蝋山部会長

吉野さん、どうぞ。

○ 吉野委員

おわかりだったら教えていただきたい。日本の金融機関がIT、こういういろんなものに対して遅れているというんですけれども、どれぐらい遅れている。要するにどういう部分ではすごく遅れているか、もしおわかりだったら教えていただきたい。

2番目が、世界的なデータを持てば持つほど規模の利益がありますから、外資がますます強くなるような気がするんですけど、そのあたりいかがでしょうか。

○ 國領教授

この辺、ちゃんと数字を押さえた議論しないと、本当はいけないんだと思うんですけれども、ちょっと感覚論になってしまう。現場でいろいろeコマースをやろうとしている人間たちと多く話している中で、サービスメニューも、それから、コストの面も、どうして決済にこんなにコストがかかるのか。ほかの部分での取引コストがインターネットの株、トレーディングの話にしたって、東証に払うコストと振込コストで、この二つでものすごい金額取られちゃって、ほかの部分を幾ら下げても、そこの部分が残るわけですね。

クレジットカードも、一時に比べるとちょっと下がってきたけれども、それにしても、eコマースをやろうとする少し小さ目の年2億円、3億円ぐらいの成果ですね、やろうとすると、かなり手数料も高くかかってくるということで、コスト面の話でもかなり差がついている。これはもう金融決済だけでなくて、日本のインフラ全部そうなんで、しようがないんですけれども、そこでかなり重荷になっているのは事実だと思います。

それから、それに伴って、この辺、私はむしろ単純なサービスでもいいから、需要がわっと盛り上がってくると、サービスメニューも需要に押される形でどんどん出てくるんじゃないかと思うんですけれども、今、政府の政策も、それから、いろんな実証実験と称するようなものも、みんな頭の中で考えてやっているようで、どうも本当のニーズに応えたサービスメニューがなかなかなくて、肝心要の先ほど申し上げたようなマルチカレンシーのお金を取れる仕組みとかいうのが品揃えとして、アメリカだとごく自然にすぐ手に入るものが、今もないのがたくさんあるのが実態だと思います。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。

まだまだたくさん御質問なり意見の交換したい、面白い話題ですけれども、予定された時間を少々過ぎております。

どうも國領先生、ありがとうございました。大変いろいろ好奇心をかき立てられて、これからのこの部会の、あるいはワーキング・グループの議論でも、ネットワーク社会のための金融機関をどう整備するか、問題の所在が明らかになったのではないかというふうに思います。改めて、金融審議会第一部会を代表いたしまして、御礼申し上げます。ありがとうございました。

それでは、本日はこの程度にさせていただきます。

次回の日程等につきましては、事務局から御連絡申し上げます。

○ 樋口信用課長

お手元に資料をお配りしてございますけれども、次回は、9月28日(木曜日)午後2時から、いつもの中央合同庁舎第四号館の4階にございます共用第1特別会議室にて開催をさせていただきたいと思っております。

なお、次回につきましても部会とワーキング・グループの合同会合ということで、前半部分がヒアリング、後半部にはまた皆様の自由討議ということを予定しておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。

○ 蝋山部会長

次回のヒアリングはどなたでしたか。決まっていますか。

○ 樋口信用課長

次回は、金融界の方から御意見を頂戴したいと思っています。

○ 蝋山部会長

それでは、またよろしくお願いいたします。

どうも今日はありがとうございました。

(以上)

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