金融審議会第一部会(第30回)会合議事録

日時: 平成12年9月28日(木)14時00分~16時12分

場所: 合同庁舎四号館(四階)共用第一会議室

○ 蝋山部会長

それでは、ただいまから第30回金融審議会第一部会を開催いたします。お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。

議事に入ります前に、ワーキング・グループのメンバーにつきまして、今回、この部会から柳川さんにもメンバーとして入っていただくということになりましたので、御報告いたします。ワーキング・グループのリストは紙で配られているというふうに思います。

お手元に議事次第がありますので、それに従いまして議事を進めさせていただきますが、今日は前回に引き続きましてヒアリングということで、株式会社住友銀行常務取締役の奥さん、日本生命保険相互会社の石橋さん、三井海上火災株式会社の川原さん、3人の方からお話を伺うということになっております。銀行、保険業における異業種参入に伴うルールをどう整備したらよいかというこの部会の本題、また業務範囲に関する規制緩和といった問題につきまして、現場からのお声を拝聴したいというふうに思います。

質疑応答は、それぞれのお話を伺った後にまとめて行いたいと思いますので、これまで御発言のなかった方々、ぜひ御発言をお考えいただきたく思います。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、奥さんから、どうぞよろしくお願いいたします。

○ 奥オブザーバー

住友銀行の奥でございます。全銀協の企画委員長を務めております。それでは、説明に入らさせていただきます。

資料1ページ目に目次がございますが、本日は、そこにお示ししてございますように、2つのテーマについてお話をさせていただきたいと思います。1つ目は銀行業への異業種の参入問題、それから2つ目が、それと裏腹の関係にございます銀行の業務範囲に関する問題でございます。なお、2つ目のテーマでございます業務範囲の問題につきましては、私どもの全銀協の場では特に議論を行っていないという前提で一応お話をさせていただきたいということでございます。

資料の2ページ目、まず、銀行業への異業種の参入についてということでございますが、そこの枠で囲ってございますように、一般事業会社などが銀行を保有する際の基本的問題は、一言で申しますと、子銀行の経営の健全性の確保ということであるかと思います。その健全性の確保・維持のためには、親会社などが実質的な支配力や影響力を不適切に行使することのないように、これを防止する必要があるということになるのではないかと思います。その不適切な支配力や影響力の行使を防ぎ、また牽制するということを行ってまいりますためには、その下に図示をしておりますが、左上の株主の適格性のチェック、それから右上の子銀行の事業親会社などからの独立性の確保の問題、それから3つ目として真ん中の下に囲ってございますように、子銀行に対する事業親会社などからのリスク遮断と事業親会社などの業況等の把握の問題、この3つに特に注意を払わなければならないというふうに考えるわけであります。

1つずつ、敷衍して進めさせていただきますと、資料の3ページ目でございますが、第1点目の銀行の健全性に支障をもたらす不適格な主要株主の排除ということになりますと、これは免許付与時の審査だけではなくて、既存銀行の買収の際におきましても銀行に対して実質的に影響力を及ぼすことのできる株主の適格性、これをチェックする必要があるかと考えるわけであります。資料と致しまして、次のページをご覧いただきたいわけでありますが、ここではイギリスにおけます大口出資者に関する適格性の基準をお示ししております。英国におきましては銀行に対して10%以上の出資を行うなどの大口出資者は審査の対象になるということであります。一番上の英国銀行法の第9条第2項というところで、「本法付属規定3に示された基準を満たしていなければ、申請を認可しないことができる」とされ、そこで認可権限が規定されているということであります。その付属規定3の第1項の2つ目に「上級取締役」と書いてありますが、脚注をごらんいただきますと、銀行などの10%以上の株式を有する者は、この上級取締役に該当するということでございますので、10%以上の出資を行う大口出資者は、監督当局がその適格性、フィット・アンド・プロパーについて審査をするということになるわけであります。その際の基準と致しまして、その第3項にaからd号まで4つのテストを課しております。このような例を考えますと、我が国におきまして株主の適格性を判断する場合に、こういった基準も参考になるのではないかというふうに考えるわけであります。今申し上げましたのが、適格性の問題でございます。

それから、資料の3ページにお戻りいただきたいわけでありますが、2つ目の子銀行に対する事業親会社などの不適切な影響力の排除ということにつきましては、これはいわゆる子銀行の経営の独立性の問題であろうかというふうに考えます。先般公表されましたガイドラインでは、「銀行の経営の健全性を確保するためには、銀行経営の独立性の確保が前提」というふうになっているわけであります。先日もこの場でのオリックスさんのプレゼンテーションで議論になったわけでありますが、この独立性というものは観念的には理解できるわけでありますけれども、具体的な範囲・内容、これについては必ずしも明確ではなく、なかなかここは難しい部分ではあると思います。親会社などが主要株主であります以上、当然のことながら、子銀行を事業戦略上どのように位置づけ、子銀行に対してどのようなコミットメントを維持するかという基本的な戦略、それから方針については親会社などは株主として、ステイクホルダーとして当然関与することになるわけであります。一方で、日々の業務運営にまで親会社などが関与いたしまして、例えば貸出先を指示するといったような行動をとるということになりますと、これは銀行経営の健全性が最優先されているかどうかということにつきまして、多大の懸念が生じてくるということになるかと思います。

この両者をどのように区分していくかということについて考えますと、線引きが難しいわけでありますが、例えば子銀行の役員が親会社などの役職員を兼任しないという形式基準、これを考えた場合に、これだけで十分なのか。あるいは、平常時と非常時──非常時といいますか、非常に問題になるようなケースの場合に親会社などの関与について求められる内容が違ってくるのか、こういった点についても検討の余地が十分あるのではないかというふうに考えているわけであります。

いずれにしましても、現実的にはある程度形式的な基準を設け、またはわかりやすいような例示規定を設けるなどの対応とせざるを得ないのではないかというふうに考えるわけであります。

それから、3番目の事業親会社などのリスクが子銀行に波及する可能性の排除についてでございますが、まず事業親会社などの事業リスクから子銀行を遮断するための措置につきましては、明確な手当てが必要であるというふうに考えるわけであります。ガイドラインでは、「事業親会社などの業況が悪化した場合に、支援・融資などを行わないこと」を求めておるわけでありますが、現実に業況が悪化したという判断をするとなりますと、これはどの時点で業況が悪化しているのか非常に難しい判断となります。また、悪化してしまった後の対応というと、さらに問題は難しくなるということでございます。その意味におきまして、やはり事業会社などが銀行の親会社として存在する場合の、いわゆる機関銀行化の懸念を払拭するためには、事後的な行為規制だけではなくて、事前の形式的な規制というものが必要であるかと思います。その例と致しましては、子銀行に対して現行よりも厳しい大口信用供与を課すとか、さらには親会社傘下のグループ内各社に対する与信を禁じてしまうとか、そういった措置も検討に値するのではないかというふうに考えるわけであります。

さらに、この点について申しますと、銀行監督当局が銀行を子会社とする事業会社に対しまして、子銀行経由ではなく、直接その財務状況などに関する報告を徴求して、その内容についてヒアリングを行う権限、これを付与することも一つの考え方ではないかと、むしろそうすべきではないかというふうに考えるわけであります。特に、親会社が非公開会社といったケースになりますと、子銀行を通じてこの種の情報を入手するという間接的な対応では非常時間的な流れの中で考えますと適時性とか的確性が確保されないといった懸念があるというふうに考えるわけであります。以上のような点については、十分検討を加えていただく必要があるのではないかというのが私どもの銀行業への異業種参入問題についての考え方であります。

次に、大きな項目のIIとしまして、銀行の業務範囲規制の緩和について述べさせていただきたいと思います。

銀行の業務範囲につきましては、これまでも社会・経済構造の変化に伴います銀行の果たすべき役割の変化にあわせまして順次見直しがなされてきているわけであります。しかしながら、これまでの業務範囲の見直し・拡大というものにつきましては、基本的に金融関連分野におけます業態別縦割りの規制体系のもとで相互の垣根を時間をかけて段階的に低くしていくというアプローチであったというふうに認識しているわけであります。

一方で、近年のビッグバンの進展、それからIT革命の進行ということになりますと、大きな社会・経済構造の変化をもたらしてきているわけでございます。特に金融業におきましては、個人・企業の金融に対するニーズそのものを根底から変化・多様化させつつあるわけでありまして、その中で広義の金融サービスの、いわゆる提供の主体の多様化が進む一方で、金融サービスを提供する場所、いわゆるチャネルと申しますが、これにつきましても従来のリアルの世界と異なる新たなネットワーク化が進展しているわけであります。このような流れをさらに着実に進め、発展させていくためには、1つは技術力というものが必要でしょうし、2つ目には新たなビジネスモデルというようなものが必要でしょうし、加えまして、それについての適切なルールというものが必要になってくるということを考えるわけであります。

銀行は、現在、5ページの右上のところで図示しておりますが、金融サービス業へのパラダイム・シフトを図るべく新たなビジネスモデルの構築に注力してきているわけであります。その際、既存のルールが足かせとなっている面があることは否定できないわけでありますが、国民経済的な見地から、銀行の国際的な競争力強化を図る意味からも、銀行の業務範囲のあり方につきまして、その基本となる考え方もあわせまして、抜本的に見直す時期に来ているというふうに考えるわけであります。

次のページにお移りいただきたいわけですが、金融ビッグバンのもとで、銀行を含む金融機関に求められる役割といいますのは、利用者の金融サービスに関します多様なニーズに的確に応えていくということであり、この点につきましては、皆さんも異論のないことではないかと思います。そのためには、これからは従来の縦割りの業者規制という考え方から利用者の視点に沿って規制を変えていくことが重要だという点につきましても、恐らく総論としては認識を共有できるのではないかと思います。全国的に展開しております銀行に対しまして、信託業務への従事を禁じましたり、それから銀行に販売できる保険商品の制限を課すといった規制は、明らかにそういった意味では業者サイドからの規制でございまして、利用者の視点に立ったものとは言いがたいわけであります。今後、利用者の金融ニーズが多様化していく中で、どの場所で金融商品・サービスを購入するか、これを判断するのは利用者自身であるべきであります。また、どのような金融商品・サービスを提供するかは、これは業者自身が自らの経営戦略、経営ポリシーに沿って決めるべきものではないかというふうに考えます。このような認識に立ちますと、これからの金融サービス業の業務範囲につきましては、これまで各業態別に規定されておりました、6ページの左のほうに書いてございますように、固有業務、それから付随業務、法定他業、こういった概念を大きく組み換えまして、米国でのグラム・リーチ・ブライリー法において示されました考え方を参考に、右のほうに書いてございますように、金融サービス業全体を対象にしまして業態横断的な金融サービス、それから金融サービスに付随するより広い業務・サービス、3番目には金融サービスを補足する業務・サービス、この3つに整理し直して考える時期に来ているというふうに考えるわけであります。

以下、このような整理に従って、各カテゴリーについて簡単に考え方を述べさせていただきます。

資料の7ページ目でございますが、まず業態横断的な金融サービスについてということでありますが、このカテゴリーに関しましては、基本的に銀行、信託、証券、保険といった従来の業態の枠組みを越えまして、より柔軟かつ横断的に銀行が提供できる金融サービスの範囲を拡大していくことが求められるわけであります。しかしながら、残念ながらそのような姿を構築するということになりますと、これはある程度中期的な課題ということにならざるを得ないと思うわけであります。そこで、次期通常国会での手当というタイムスパンに絞って申し上げれば、少なくとも、「規制緩和推進3か年計画」におきまして「12年度中に結論」とされた項目につきましては、着実かつできれば前倒しで検討を行っていただきまして、早期に規制緩和を実現していきたいというふうに考えるわけであります。

その事例の1つが、先ほども触れましたが、銀行によります保険商品の窓販の解禁でございます。既に保険業法の改正によりまして、銀行は来年4月から保険を販売してよいことになっておりますが、実際に売ることのできる商品につきましては、「保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない場合として内閣府令で定める場合に限る」というふうにされているわけであり、7ページの事例にお示ししているところでございます。平成9年に取りまとめられました保険審の報告では、「子会社・兄弟会社である保険会社の商品に限って、住宅ローン関連の信用生命保険と長期火災保険の販売を認めることが適当。ただし、長期火災保険については仕入先を限定しないことも考えられる」という趣旨の記載があるわけであります。私どもと致しましては、少なくとも来年4月の時点におきましては、最低限、今申し上げました「ただし書き」の部分も含めました範囲は当然解禁されるものというふうに考えているわけであります。さらに、「規制緩和推進3か年計画」では、「商品の種類や仕入先を限定しないことについて検討し、12年度中に結論を得る」ことが求められているわけであります。銀行界としましては、保険審報告から既に3年が経過しておりまして、この間、金融市場をめぐる環境の激変という大きな事情変化が生じており、この保険審報告の商品・仕入先の限定という考え方自体が現状にそぐわなくなっているというふうに考えているわけでございまして、利用者利便の向上というビッグバンの目的を踏まえまして、ぜひとも前倒しで検討を進めていただきたくお願いするわけであります。

特に、仮に仕入先制限を残したまま銀行の保険窓販を解禁するとした場合には、この保険窓販を行うことのできる銀行はほとんどないという事態になる可能性が極めて高いわけでありまして、実質的に意味の乏しい規制緩和になってしまう懸念が非常に高いというふうに言わざるを得ないと思います。

保険審報告がまとめられました際の議論を見てまいりますと、預金との商品性が違うにもかかわらず顧客をミスリードするおそれや、銀行の優越的地位を背景とした圧力募集といったことが議論になったと聞いております。しかしながら、この3年の時の経過の中で、銀行法において預金と他の金融商品との誤認防止を義務づける規定が整備されております。また、いわゆる金融商品販売法も制定され、来年4月から実施されるわけでありまして、顧客への商品説明の義務づけにつきましては制度的な手当がなされてきております。加えまして、実務面では、銀行は既に平成10年12月から投資信託の窓口販売を、コンプライアンス体制、それからリスク管理体制を整備しました上で始めておりまして、残高も着実に増えてきているわけであります。今の時代におきまして、銀行の圧力販売という行動は銀行自らレピュテーションリスクを損なう行為ということになるわけでありまして、そのような事態が生じないように各種のリスク管理体制を十二分に整備して行うということは、大前提であり、当然というふうに考えるわけであります。従いまして、既に投信販売が緊済と行われているという事実を十分踏まえていただきました上で、現時点におきまして保険審報告の内容が妥当かどうかということにつきまして、早急に御検討をしていただきたいというふうにお願いするわけであります。

やや長くなりましたが、以上がいわゆる業態の垣根の問題でございます。

次に、8ページでございますが、金融サービスに付随する業務・サービスの範囲につきまして、より柔軟に考えていく必要があるという考え方であります。

米国におきましては、欧州と異なりまして、銀行と商業の分離が徹底されているというのが一般的な認識であるわけでありますが、米銀に認められております業務の内容を子細に見てまいりますと、例えばここに事例を挙げているわけでありますが、ファインダー業務というものがございます。仲介といいますか、物を見つけてくるというファインダーとしての業務ということですが、これも銀行業務に付随する業務として明示的に認められているわけであります。定義としては、ここに書いてございますように、「仲介業務として、潜在的な売り手と買い手の発掘、利害に関する照会、取引場の提供、または売り手と買い手同士が交渉し、契約を締結する取引に導くこと」といった意味で、エグゼキューション自身を行うわけでありますが、そのを引き合わせを行うといった業務であります。

このように、一見しますと一般事業のように思われるものであっても、米国では銀行の業務に付随する業務として認められているわけでありまして、これが日本でも認められるということになれば、銀行が保有するお客様の情報を有効に活用して、お客様のためになるサービスを提供することは十分可能ではないかというふうに考えるわけであります。

我が国の銀行法に列挙してあります付随業務は、御承知のとおり、あくまでも例示であるわけです。銀行界としては、新たな業務に従事しようとする場合に、法の条文にあります「その他の付随業務」に該当するかどうかにつきまして御当局に一定の判断基準を示していただきまして、個々の業務がその基準に合致するかどうかにつきまして、都度行政としての解釈が明らかにされていくという方法を活用することによりまして、銀行としてはいわゆるリーガルリスクをミニマイズできるわけであります。そういった意味で、こういった仕組みをぜひとも定着化していただきたいというふうに考えるわけであります。

このやり方は、米国の金融監督において採用されております、いわゆるノー・アクション・レターとか、インタープリティブ・レターと言われる手法でございまして、既に金融庁の平成13年度の予算要求におきましても、「法令解釈等の照会に対して書面による回答を行うための監督体制の整備」が盛り込まれ、たまたま本日の日経新聞の1面にも掲載されておるわけでありますけれども、今後ますます加速する利用者のニーズの変化に対しまして、銀行が金融サービス業としてタイムリーに、的確に対応していくというためにも、ぜひともこの制度のもとで柔軟な解釈を通じた実質的な規制緩和が図られることを願っておるわけであります。

次に、金融サービスを補足する業務というあまり聞きなれない言葉でありますが、米国の場合には、金融サービスに付随しない業務でありましてもこれを補足する業務という考え方があるわけであります。9ページにそれをお示ししているわけであります。これを補足するというふうに考える場合でありますが、銀行監督当局が「銀行や金融システムの安全性・健全性が損なわれていないか」という基準から判断した業務については、銀行による従事を認めているわけであります。その際の判断基準の一つとして用いられておりますのが、その下に例としてお示ししております“excess capacity”──余剰能力を有効活用することを認めるという考え方であります。銀行が内部に有しております各種の経営資源を経営の健全性を損なわない範囲で有効に活用するということでありまして、これは銀行自身にとりましては経営の効率化をもたらすものとして認めるということであります。

銀行が他業禁止が課されている理由と致しましては、資料の9ページの右上に参考でお示ししてございますが、基本的には2つあるかと思います。1つは銀行業務への専念による社会的意義と経済機能の発揮であり、2つ目が他業への従事から波及するリスクの回避ということであります。補足する業務という観点から申し上げますと、その業務自体は金融サービスに付随しない業務でありましても、単に他業であるということから事業を認めないということではなくて、他業禁止の趣旨に反しないかどうかと、こういった観点といいますか基準から判断されるべきということになるわけであります。

1枚切り離して米銀のATMレシートを活用した広告という例をお示ししております。切り離しましたのは、これはウェルズ・ファーゴ銀行の例でありまして、無断で使用することをはばかられるからでありますが、例えば米国ではATMのレシートの裏側やATMの画面そのものを使いまして、他社の広告などを掲載している事例があるわけであります。これを広告業そのものだということになりますと、明らかに金融サービスに付随する業務の範疇に入らないということになるわけでありますが、銀行経営の健全性に何らの影響なく収益機会を拡大するということで、これを認めているということでありまして、今申し上げました補足する業務の一つの典型例であります。

このようなケースでも、判断の手法としましては、付随業務の扱いと同様に、よりタイムリー、適切な対応が可能となりますように、いわゆるノー・アクション・レター制度の活用をお願いしたいというふうに考える次第であります。

以上、銀行界として基本的な考え方を申し上げたわけでありますが、足元で解決いただく課題とやや中間的に対応を要するものに分けて話をさせていただきました。いずれにしましても、銀行の将来像を展望しまして、金融サービスの概念変化という大きな流れを踏まえました上で他業禁止の見直しに関する議論を進められまして、実のある規制緩和に向けた方針を示していただきたくお願いするわけであります。

以上でございます。

○ 蝋山部会長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして石橋さん、よろしくお願いいたします。

○ 石橋オブザーバー

石橋でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、私のほうからは、保険業への異業種参入に関しますルール整備の問題を中心に意見を述べさせていただきたく存じます。なお、私からは基本的に生保業界を念頭に置いて発表させていただきたいと存じます。

なお、皆様のお手元にレジュメ、そして資料をお配りしておりますので、適宜御参照いただきますようお願いをいたします。

一般事業法人等、いわゆる異業種が保険会社の新設、あるいは既存会社の株式取得といったような形で保険業に参入することにつきましては、銀行と同様、現行の法制上これを排除する規定はございません。ちなみに、生保業界では、既に一般事業法人が保険会社の株式を連結決算の対象となります20%を超えて保有しております例が数例既にございます。健全な事業法人が生命保険事業の特性、すなわち公共性、社会性が高いということ、またリスクを選別するための引受機能が重要であるということ、長期にわたり保障を提供していくということ、これらをよく理解し参入されること自体は、競争を促進し加入者利益の向上につながるものであって、基本的に望ましいものだというふうに考えております。ただし、今申し上げました前提、これらを満たさない形での参入につきましては、さまざまな弊害の発生も予想されるところでございまして、契約者保護の観点からルール整備が必要と考えております。

去る6月の金融審の答申におきましても、新たな形態による銀行業への新規参入の対応が求められているほか、保険業についても同様の観点から検討する必要があるとの指摘がなされておりまして、保険についてのルールを検討する必要性が明示されております。かねてから銀行につきましては、親会社等が投融資の形で傘下の銀行をその経営に利用するいわゆる機関銀行化、この弊害が生ずるおそれが指摘されておりました。保険につきましても、同様に、投融資機能等を利用いたしまして、機関保険化を図るといった問題が発生するのではないだろうかと危惧をしておりましたところでございます。

こうした中で、今般大変残念なことでございますが、大正生命が業務の一部停止命令を受けるという事態が発生してしまいました。この件は、同時に詐欺を容疑とする強制捜査が行われておりまして、事実上のオーナーが逮捕されるという極めて悪質、また例外的なケースではあるかもしれませんが、支配的な地位にある者が傘下保険会社の投融資機能を悪用したいわゆる機関保険化、これを行い、会社経営を危機に陥らせた典型的な例と私ども受けとめてございます。金融監督庁並びに金融庁におかれましては、早期是正措置の発動等、現行法令に基づきさまざまな手段を尽くされたものと存じております。しかしながら、最終的に残念な結果に至ったこのことにつきましては、やはり保険業への参入ルールが法制面で整理されておらず、不適正な参入を法的にチェックし排除することができなかったことが大きな要因として挙げられるのではないかというふうに思っております。今後、このような弊害の発生を未然に防止する観点から、保険業への参入ルールを整備するとともに、監督当局が参入時、そして参入後も必要なチェックを法令に基づいて行えるような手だてが必要だというふうに考えております。

先ほど、生命保険事業の特性ということを申し上げましたが、これは繰り返しになりますが、第1に公共性・社会性、第2に適正な引受機能の重要性、第3に20年、30年、あるいはそれ以上という契約の長期性にあるものと考えております。具体的に申し上げますと、適正な保険群団を保つための危険選択の実施や善意の集団への悪意者の混入を阻止するための徹底したモラルリスクの排除、あるいは長期契約を前提といたしました予定利率をはじめとする保険料計算の基礎率の適正な設定、契約の長期性に伴う長期運用能力の充実、こういったことが保険会社の健全な経営に当たって不可欠であると考えております。仮に参入会社がこうした保険事業の基本をなおざりにしまして支配下の保険会社に短期的な業績追求を求めた場合、例えば危険選択を疎かにして契約引受を行ったり、あるいはまた短期的な収益を目指し不適切な基礎率を設定した場合、確かに目先の業容拡大は図られますが、将来的には収支が悪化し、経営の健全性が損なわれ、その結果当該会社の契約者に多大な迷惑を与えるということになってまいります。生命保険事業では、不適切な経営による結果が5年後、10年後、あるいはそれ以上の相当な時間差をもってあらわれるのが一般的でございまして、この点が生命保険事業が他の事業と大きく異なるところだというふうに強調させていただきたいと思います。

従いまして、生命保険事業につきましては、他の事業にも増しまして公共性、社会性の見地とともに長期的健全性を確保する視点に立った経営の遂行とそのための監督が必要であります点を強く皆様にも御認識をいただきたいというふうに思う次第でございます。

次に、諸外国の関連法制につきまして、お手元の資料をご覧いただければと存じますが、米国をはじめ欧米諸国ではその規定ぶりは区々でございますが、何らかの形で法令に基づきまして参入者に対する審査がなされております。例えば、アメリカにおきましては、その役員の信頼性や取得のための資金源等、これらをチェックすることとされております。また、カナダにおきましては、参入者の経営計画の長期的な健全性やその実行可能性等につきましてチェックすることとされております。さらに、その審査基準でございますが、各国とも保険会社の新規設立の場合と既存会社の株式取得による経営参加に共通してこれらが適用されることになっております。このほか、参入後の監督につきましても、この資料にも書かせていただいておりますが、各国とも法制化されております。

このように、国際的に見てまいりますと、過去の経験をもとに歴史的な知恵といたしましておのおの的確な法制化がなされているというふうに我々は事実を認識しております。我が国におきましても、保険業への異業種参入に関するルールを早急に整備する必要があると考えるのは、諸外国の例を見ても明らかだというふうに思います。

それでは、次に、我が国におきましていかなる法制化を行えば弊害を防止できるか、この点につきまして私見を述べさせていただきたいと存じます。説明をわかりやすくするために、保険業に参入し、保険会社の経営に影響を及ぼす会社を以下「支配会社」という言葉で呼ばせていただきます。

まず、参入時の審査についてでございますが、支配会社につきましては、これまで述べたことからの当然の帰結ではございますが、公共性・社会性からのチェック、またリスク引受機能の重要性及び契約の長期性から必要となる事業計画の長期健全性・安定性についてのチェックが重要であると考えております。また、支配会社の財務状態やその役員の信頼性、これに加え、支配会社がどういった考え方を持って生命保険事業に参入しようとしているのか、こういった海外で今御報告をいたしましたように一般的となっている審査項目につき法令化を図る必要があるものと考えております。さらにまた、適切な保険引受を行うためにいかなる体制整備を行っているのか、あるいは長期的な健全性を確保するためにいかなる内部牽制体制を整備しようとしているのか、こういったところも審査を行うとともに、機関保険化防止のために支配会社への投融資を一定比率以下に制限するということも必要になってこようかと思います。

次に、参入後の監督でございますが、参入時には健全な状態にあった支配会社の経営が参入後に悪化をし、それが保険会社に悪影響を及ぼすおそれが生ずるということも十分に考えられるところでございます。従いまして、こうした場合への対応策として、支配会社への監督の手だてを講じることが必要になるものと考えております。その手段といたしましては、保険会社そのものへの検査で目的が達せられない場合には、支配会社自体に対しましても必要の範囲内で報告を求めることや、場合によっては立入検査を行うことにつきまして法制化を検討すべきと考えております。そして、何よりも重要なことは、保険会社の経営、さらには御契約者に対して誰が責任を持つのかということを明確にすることでございます。

こうした観点から、保険会社が経営悪化、あるいは破綻に至った場合、支配会社に対しても責任を問える法的枠組みの整備が異業種参入の前提として必須だと考えております。

生命保険業への異業種参入のルール整備に関しましては、以上でございます。

続きまして、生命保険会社の業務範囲に関して申し上げたいと存じます。

生命保険会社に関しましては、事業の健全性確保、あるいは契約者保護の観点から、その業務範囲につきまして制約が課されております。保険の固有業務は保険業法上保険の引受及びこれに伴う資産運用とされておりますが、一方で顧客の利便性向上の観点から、その健全性を害さない範囲でさまざまな分野につき本体や子会社での業務範囲の拡充が図られてきているところでございます。生命保険会社が社会からの付託にこたえまして経営資源を有効に活用し、顧客利便の一層の向上を図るためには、健全性の維持に十分な留意を払いつつも、今後とも業務範囲の見直しが図られることが必要と考えております。個別の業務範囲に関する要望につきましては、先日、当部会で配付されました規制緩和推進3か年計画で挙げられているものに加えまして、この6月、経済団体連合会を通じまして私どもの新たな要望を出させていただいておりますので、これを踏まえた御検討をお願いしたいと存じます。

細部にわたっての考え方については、ここでは省略をさせていただきます。

さて、先ほど奥オブザーバーのほうから銀行の保険窓販の問題につきまして御意見がございましたので、この点につきまして私のほうからも簡単に触れさせていただきたく存じます。

銀行の保険販売業務、これにつきましては、先の通常国会で成立いたしました改正保険業法におきまして、銀行の他業とされました。そして、その範囲は奥オブザーバーからの御説明にもありましたとおり、「保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない場合」として、「内閣府令で定める場合」、これに限定されております。また、平成9年の保険審議会報告におきましても、先ほど御説明があったとおりでございます、生命保険については銀行の保険子会社、あるいは保険兄弟会社が引き受ける住宅ローン関連の信用生命保険に限ることが適当というふうにされております。このような法改正や報告の背景には、生命保険業務の本質ということがあるというふうに私どもは認識をしてございます。すなわち、生命保険は対面販売を基本といたしまして、保険者がお客様の健康状態や加入理由等を見きわめて保障内容の御説明を行い、御納得をいただいた上で、一人一人のお客様に対する長期の引受責任、これを全うしていくべき商品と考えております。販売を行った者はみずからが説明し、販売した相手方に対し、その後の長きにわたる保険期間中さまざまなお申し出への的確な対応も含めた責任を果たすのが保険会社であるというふうに認識をしておりますし、その責任を果たしていかなければならないというふうに思っております。また、お客様もそのことを期待しているはずでございます。

この点、銀行が生命保険を窓口で販売した場合、本当にこのような長期の引受責任を果たせるか、正直疑問を呈せざるを得ないというふうに私ども認識をしております。従って、銀行の保険販売につきましては、このような本質的問題が存在しております。引き続き慎重な検討がなされるべきものと考えております。

ちなみに、米国の例で恐縮でございますが、金融各業態の相互参入を大幅に進めました今般のグラム・リーチ・ブライリー法、この法律のもとでも、従来どおり銀行は保険引受会社を保有できないこととされております。そしてまた、銀行の窓口での保険販売もこれまた限定的なものとなっており、銀行業と保険業の分離が引き続き維持されております。この背景にもただいま申し上げましたことと同様の考え方が存在するものと私ども認識をしております。

以上で窓販をも含めまして、私からの意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。

時間が随分押しておるんですけれども、3番目に三井海上の川原さん、よろしくお願いいたします。

○ 川原オブザーバー

三井海上の川原でございます。私のほうからは、損害保険業の立場から、異業種によります保険業への参入につきまして、意見を述べさせていただきたいと思います。

資料を用意してございますので、それをごらんいただきたいと思いますが、まず2ページのところでございますが、現在、日本には国内社と外国社をあわせまして63社の損害保険会社がございます。平成11年度には国内社の合計で9兆3,596億円の元受正味保険料を計上しておりまして、この数字は世界規模で見てまいりますと、米国に次いで第2位という規模になってございます。異業種からの参入という視点で見ますと、生命保険業と同様、損害保険業におきましても、一般事業が損害保険会社の株式を20%以上取得している実例、これが数例ございます。それぞれの特色を生かした経営を行っているというところだろうというふうに思います。

こうした動きにつきましては、規制緩和と競争の促進及びそれによります消費者の選択の幅の拡大、こういう観点から、基本的には歓迎するものでございます。

しかしながら、保険契約者の保護並びに保険会社の健全性の維持の観点から、何らかのチェック手段を講じるということも検討に値するというふうに考えております。本日は、このチェックの視点としまして、3ページですが、適格性“Fitness”、健全性“Stability”並びに“Arm's Length”、こういった3つを取り上げまして、それぞれについて若干御説明をさせていただきたいと思います。「異業種による保険参入におけるF.S.A.」と、若干しゃれたつもりでございます。

それでは、次のページでございますが、第1点目は、適格性“Fitness”の視点でございます。現在、我が国では、新たに損害保険事業を営もうとする場合には、金融再生委員会の事業免許が必要ということになっておりますが、免許の申請会社の親会社が誰なのか、これは審査基準には明記されておりません。また、一般事業会社が保険会社の株式の過半数を取得し、経営を支配しようとする場合も、監督当局の認可は必要とされておりません。こうした取り扱いは、世界的に見ますとむしろユニークだということでございます。この4ページでは、欧米の主要国の制度を記載してございますが、保険会社の株式を一定以上取得しようとする場合には、監督当局の何らかの審査が必要とされているということでございます。

また、銀行業におけるバーゼル委員会に相当する機関としまして、保険の場合には世界の保険監督当局の会議体でございます保険監督者国際機構──「IAIS」と呼んでおりますが、こういったものが存在してございます。このIAISでは、現在、保険基本原則メソドロジー、こういった監督の原則が検討されておりまして、5ページでございますが、監督当局は免許申請会社の所有者が保険会社を犯罪目的で不正しようとしている場合などにおいては、免許申請を拒否する、こういった権限を有するべき、こういったような提言がされているというところでございます。損害保険事業への参入は、基本的には歓迎するものでありますけれども、保険会社の経営者がどのような方なのか、これは監督上の重要な要素ではないかというふうに考えております。

保険会社を支配する持株会社の設立につきましては、現在日本でも金融再生委員会の認可が必要とされているところでございます。こうしたことから、例えば保険会社の株式の一定割合以上を取得しようとする場合には、監督当局の審査を必要とすると、こういうような措置を講ずるべきではないかと考える次第でございます。

次に、健全性“Stability”の視点でございます。これは、いわば参入後の監督の問題ということでございます。これは、保険会社の日々の営業に関することであって、契約者保護にとっては極めて重要であるというふうに考えております。保険会社の監督の中核をなすものとしましては、資料の6ページにございますとおり、現在の制度では報告・資料の提出を求めること並びに立入検査、これが挙げられているわけでございます。

本年8月に金融再生委員会並びに金融庁が異業種から銀行業への参入につきまして、運用上の指針を公表していらっしゃるわけでありますが、資料の7ページでございますが、ここにありますように、その中でも免許付与後の監督として、子会社の健全性維持の観点からリスク遮断、あるいは顧客情報の保護などについて、主として「子銀行に対する検査ないし報告徴求」によりまして、その銀行の健全性を確認するというふうにされております。この考え方は、異業種によります保険業の参入についてもある程度当てはまるというふうに考えられます。

まず、リスク遮断につきましては、事業会社であります親会社の業況等について定期的に子保険会社に対して報告や資料提出を求める、こういったことにより確認するということが検討に値するというふうに考えます。

次に、顧客情報の保護につきましては、一般事業会社がその事業目的のために取得した顧客情報、これを子保険会社の保険事業の展開のために不当に流用するということは好ましくないというふうに思われます。

この関連で、8ページにまいりますが、現在、個人情報の利用と保護のバランス、これを基本精神として個人情報保護基本法の大綱が検討されているというふうに伺っております。この検討状況を踏まえて御検討いただく必要があるものというふうに考えております。

3番目でございますが、健全性の維持とも関連いたしますが、“Arm's Length”の観点からのチェック、これも必要だろうというふうに考えております。ある特定の一般事業会社が保険会社の経営を支配している場合に、その事業会社と子保険会社との間の取引が通常の条件と著しく異なるものであることは、保険会社の健全性維持の観点から不適切であると考えております。“Arm's Length”規制としましては、資料の9ページにお示ししましたとおり、現在も保険業法に規定がありますけれども、一般事業から保険業への参入という観点から、もう一度この規定を見直してみる、そういったことも必要なのではないかと考えております。

次に、先ほど奥オブザーバー並びに石橋オブザーバーのほうから、銀行による保険の窓販につきましてお話が出ました。この問題につきまして、私どもからも若干コメントさせていただきたいというふうに思います。

平成9年の保険審議会の報告で方向性が示され、先の保険業法改正を踏まえて今後細目の検討がされるということだろうというふうに考えておりますが、2人のお方がお話しされた中で、まず1点目、銀行が損害保険を販売する場合に、銀行の子保険会社あるいは兄弟保険会社の保険商品に限定するかどうかということにつきまして、私どもとしましてはそれに限定する必要はないというふうに考えております。契約者保護の観点から、子保険会社、あるいは兄弟保険会社の商品に限定しなくても、そこの保護は図り得るというふうに考えております。

それから、商品のところでございますが、保険審議会報告では、住宅ローン関連の長期火災保険については銀行等がその子会社または兄弟会社である保険会社の商品を販売することに限定しないことも考えられるというふうに述べられておりますが、そういった述べられている内容でよろしいかというふうに思っております。

また、これ以外の商品の種類の販売につきましては、今後具体的にこういった審議会の中で御検討いただけたらというふうに考えております。

それから、弊害防止措置につきましては、銀行の影響力の強さにかんがみまして、融資との抱き合わせ販売の禁止などの措置を講ずるべきという考え方を持っております。窓販につきまして、私どものほうからもコメントさせていただきました。

私からの説明は以上でございます。

○ 蝋山部会長

どうもありがとうございました。

ちょうど1時間ほど経過いたしまして、予定では40分に終わるということだったので、ややディスカッションの時間が足りなくなったかもしれませんが、御承知のように、今日でヒアリングは一応終わりということになりますので、これまで御発言のなかった方にまず優先的に発言のオプションを差し上げたく思います。いかがでしょうか。岩原さん、どうぞ。

○ 岩原委員

始まる前に部会長のほうから当てられましたので、それでは若干意見を申し述べさせていただきたいと思います。

今まで2回の審議がございまして、そのときのいろいろな各委員の御発言や、あるいはこちらで御意見いただいた方の御発言を伺いましてちょっと感じたところを申し上げてさせていただきます。

今までの議論の中では、異業種からの参入にどういうメリットがあって参入するのかという点に関する議論、あるいは質問が多かったように思います。前回のオリックスの福島さんからのお話にそのメリットの具体的な内容の一端が出ていたのではないかという感じがいたします。いわば「事業親会社と一体となった経営を行うことによるシナジー効果を期待している」ということが福島さんが特に力説された点ではないかと思います。

そこで、問題は、そのシナジー効果が適切なものであるのかどうか、あるいはシナジー効果の具体的な中身は何かについて、その具体的な中身によって問題が違ってくるのではないかというふうに考えております。

まず、第1番目に考えられますのは、事業親会社と顧客基盤を共有するという点であります。これは、福島さんが大変力説された点でありますが、これは原則としては別に問題ないと思うんですけれども、問題があり得るといたしますと、一方の会社のビジネス上の強い影響力の行使を受けて、いわば抱き合わせ的な取り引きが行われないかという点ではないかと思います。先ほどの本日の御意見にもありましたように、銀行が例えば証券子会社なり、あるいは保険会社を関連会社などとして持ったときにファイヤー・ウォールが必要ではないかという問題があって、既にこの点については規制がされてきたわけでありますけれども、この事業親会社と子銀行の間でもそういった問題が生じないかというのが一つの論点になるのかなというふうに思います。

これは、ある程度既に存在している銀行の子会社が他業を行っている場合に同じようにファイヤー・ウォールの問題が起きているのと、やはりある程度パラレルに考える必要が出てくるのではないか。全く同じとも思いませんけれども、やはりある程度共通した問題だという面はあるのかなというふうに思います。

なお、顧客基盤を共有するというときには、もう一つ問題がないことはないと思います。それは、顧客基盤の共有によって共倒れのリスクが起きる場合がないのかどうか。例えば、異業種といっていいのかどうかわかりませんけれども、銀行と保険会社が関連会社になっているときに、その保険会社の保険を担保にして融資などを行っているときに保険会社が破綻したとしたら、銀行がそのリスクをある程度かぶるといったような問題も起こり得るわけですので、例えば関連している──適切な例かどうかはわかりませんけれども、保険会社に危機があるときには銀行がその救済に乗り出さなければならないといった問題が起こり得る可能性がありますので、そういった問題を考える必要があるかどうかというのも一つの論点になり得るかというふうに思います。

2番目が、顧客情報の流用の問題ではないかと思います。シナジー効果を期待するというときに、多分次に考えられるのは、例えば事業親会社が持っている顧客情報、あるいは逆に子銀行なり子金融機関が持っている顧客情報をお互いに利用し合うといったことが恐らくシナジー効果として期待されている2番目の問題ではないかと思います。これも非常に有益であり、経済的に有効な場合も多いと思うんですけれども、一方でやはりプライバシーその他の点で問題が起こり得ることがあり得るわけでありますので、これはむしろ第二部会の問題に関連していると思いますけれども、この点が2番目に考慮すべき点になるのではないかというふうに思います。

3番目が、営業基盤の共有、あるいはこの間の福島さんのお話の中の言葉を使えば事務インフラの共有から起こり得る問題、あるいは営業網等の共有から起こり得る問題ではないかと思います。事業親会社の例えばコンピュータを子銀行がそれを利用している、あるいは事業親会社の店舗にATM等を置くというようなことを考えますと、事業親会社が倒産して差し押さえを受ける、あるいは管財人のもとに置かれるということになりますと、そういった設備が利用できなくなるとしますと、そのリスクを避ける必要がやはり出てくるのではないかと。ただ、それを徹底的にそのリスクを避けようとして完全に遮断しようとしますと、今度は逆にシナジー効果が十分利用できないということになる、ある面ではトレードオフの関係があるわけでございますので、それをどこら辺で線を引くのか、あるいはどれ位の最低限の抑えをするかという問題になるのかと思います。

最後に、シナジー効果というのを越えて子金融機関を不当に利用するということも考えざるを得ない場合があるというふうに思われます。まさに先ほどから御指摘のありますような機関銀行化の問題、あるいは機関保険会社といったような問題がやはり起こり得るというふうに思います。

さらには、これもいろんな問題があり得て、一番大きいのはやはり事業親会社やその関連会社等に融資等の形で利用するといったことでありますけれども、そのほかにも例えば中央銀行などを使った決済システムの参加資格をそれによって使うといったような問題があるわけでありまして、これは日本で起きたことではありませんけれども、かつてアメリカではフォードが財務的に苦しかったときに銀行を買収しまして、その銀行を使って中央銀行に再割引を切ってもらうと、自分の持っている手形をですね。といったような利用の仕方がされたこともありまして、それがフェッドから非常に問題にされたこともあったというようなことでありますので、いろんな形でのそういう弊害が起こることもあり得るというふうに思います。

そういうことを考えますと、異業種の参入ということもありますけれども、その前に、特に今の最後の例なんかを考えますと、これは単に異業種ということだけではなくて、いわば主要株主が不当に影響力を行使するといった弊害はやはり起こり得ると。従来日本ではそういう例が非常に少なくて、弊害が少なく済んできたために特に規制をする必要がなく済んできたというだけのことではないかと思っておりまして、例のバーゼルのコアプリンシプルなどを見ても、主要株主の不当行為をチェックする仕組みをつくれということは言われているわけでありますし、主要各国とも相当厳しい規制をしているわけでありますので、やはりそういった取り組みは必要ではないかと思います。

ただ、そういう意見に対しましては、私も最初に申し上げておいたほうがよかったと思うんですけれども、規制が常によいというのでは全くなくて、本来自由なわけです。こういう株主の資格等について何も法律に規制がないということは、それは本来法律上自由にやれると。競争をやってもらうことは非常に歓迎するというのは本来的なものですね。ただ、問題は、そこから弊害が起きたときの債務はどうするかということでありまして、一つの意見としては、そういった個別の弊害が起きたときに弊害ごとに個別の是正措置をすればよいではないかという考えは当然あると思います。それで対応できるのであれば、なるべくそれで行くのがよいと私も思うのでありますが、ただ、恐らく規制の方法としてそれだけでは対応し切れない場合が残るのではないかというふうに思います。例えば、既に起きてしまった事件で言えば、銀行であれば幸福銀行みたいな例もございましたし、先ほど石橋さんの挙げられました大正生命みたいな例も起きているわけでありまして、やはりそういう不当な行為をするものはどうしても出てくるわけでありますから、そういうものが出てきたときにはやはり抑えることができる仕組みが必要ではないかと思います。大正生命なんかは株主が事業会社ではないわけですけれども、でなくてもそういう行為をする株主が出てくることがあり得るわけでありますので、私は事業会社、異業種ということに限らず、そういう株主資格のチェックが必要なことを証明した例ではないかというふうに思います。いわば株主による金融機関の搾取といいますか、悪質な利用が行われ得るということを示したと思います。報道によりますと、100億に上る損害を大正生命に与えたというふうに報道されているわけでありまして、その結果、契約条件の切り下げなどによって大正生命の保険契約者に大きい被害を与えますし、株主にも当然被害を与えますし、さらには──ちょっと私の立場上言いにくいんですけれども、保険契約者保護機構による支援等を通じて、他の生命保険会社やその契約者、株主等に被害を与えると。場合によっては、下手したら国費の支出さえ必要になる場合が出てくるわけでありますので、そういったことを考えますと、やはりそういう最悪の事態を抑える規制は必要ではないかというふうに考えるものであります。

そういうふうに考えますと、まず1つやるべきことは、まず不正行為そのものを抑える手段としましては、その点でも今の日本の法規制は不十分だと思っておりまして、例えばアメリカの連邦準備法の23条のaや23条のbにならって、銀行と主要株主、あるいは保険会社もそうでありますけれども、その主要株主との間の取り引きをチェックする仕組みを強化する必要があるのではないかと思います。23条のaは主に業的制限であり、23条のbは例えば関係者との直接の取り引きを規制したり、あるいは低品質の資産を購入させることを禁止する──まさに大正生命で起きた例でありますけれども、これを23条のbは禁止しているわけでありまして、そういった規制が日本でも必要ではないかとまず思います。

しかし、そういった個別の規制だけでは多分足りない場合がある。今回の大正生命の例を考えてみますと、株主になる条件として不当取り引きを持ちかけていたというわけでありますので、株主になってから行われた不当行為を後から抑えても既に損害は発生してしまっているわけでありまして、株主になる時点で抑えないとそういった不当行為は抑えられないのではないかと思います。あるいは間違っていればその点は御指摘いただきたいと思うんですけれども、いずれにせよ、個別の行為をチェックするという規制方法には限界があると思いますので、やはり株主資格そのものをチェックするという仕組みが必要ではないかと思います。アメリカの例で言いますと、“Change In Bank Control Act”を見ますと、あるいは銀行持株会社法を見ますと、非常に幅広い株主になるための資格も事前承認制を定めているわけでありまして、アメリカの場合はさっきのイギリスの10%と違って、25%以上の議決権ある株式を取得するときは取得する者に対してその身元や従来の履歴、あるいは資金の源、その額、従業員等をあらかじめ報告させた上、株主となることが独占や競争阻害になるおそれがあるか否か。あるいは、株主となろうとする者の財務状況が銀行の財務の安定性を危うくするおそれがないかといった非常に、かなり抽象的といってもよいかもしれませんけれども、要件、あるいは能力をチェックして承認を受けなければ株主になれないという仕組みにしているわけであります。行政に透明性が必要なことは当然でありますけれども、一方でこういった資格のチェックというようなことは個別の形式的に証明できることだけで資格を審査するということは非常に困難でありますので、やはりある程度そういった一般情報的な資格審査の仕組みが必要ではないかというふうに考えております。

そのほかに、一般的な株主の資格のチェックのほかに、では異業種であることに基づいて株主の資格を制限する必要があるか、ないかというのが次の問題になると思います。これは、アメリカでは先ほどから出ているグラムリーチブライリー法制定過程で大議論した結果、やはり従来の規制を守って、いわゆるバンキングとコマースの分離を維持して、金融関連のサービス以外の者は入れないということにしたわけであります。ここは私もよくわかりませんけれども、恐らくここで特に問題になるのは、1つは私はそういう主要株主になることを認めた上で、今度はなった後で主要株主に対する検査もやはり必要だと思っています。先ほどの御意見で幾つかありましたけれども。問題は、対事業会社の場合にそういった検査が適切に行えるのかどうか。それによって、うまく不当行為が行われないようなことができるのかどうかという点、いわば検査の可能性、有効性、実行性が大きい問題ではないかと思っておりまして、それが他業種の場合、他業の業務全体にそういう検査をすることは非常に困難であるということになりますと、やはり他業からの進出についてはある程度の限界を定めるということも必要になるのかもしれない。問題は一つはそこであると。

もう一つは、あんまり最近日本でははやらない業務なんですけれども、やはり先ほどのグラムリーチブライリー法の過程で非常に問題になった一つの点は、銀行、あるいは金融機関と他業の大きいコングロマリットができたときに競争政策上問題ないのかという点が一つやはり問題になって、それも大きい議論になったところでありますので、やはりその視点も忘れてはいけないのではないかと。経済力集中へのチェックという点も必要かなと思います。

それから最後に、今のような規制をするときに、銀行業を一色において全体について同じように考える必要があるのかというのは一つの論点かと思います。最初のときに柳川委員が御指摘になった点ですけれども、銀行業の定義というのは国によって随分違っていまして、多分最も広いのはドイツなんかであろうと思いますし、逆に狭いのがイギリス、預金受け入れだけが銀行業になっているわけです。日本はその中間ぐらいで、預金受け入れ、貸し付けと為替取り引き。為替取り引きを銀行業務に入れているというのは、アメリカ、イギリス等は入れていないわけでありまして、恐らくその間で、あるいは場合によっては線を引いて考えることができるかもしれない。銀行業務の中でも分けて考えることがあり得るのかなというふうに思っております。

長くなりましたけれども、以上でございます。

○ 蝋山部会長

初めにお願いして、期待どおりというか、第4のリポートをちょうだいしたという感じがしました。ありがとうございました。

今の岩原さんの御意見は、御質問という形にはなっていませんけれども、しかし議論の進め方として非常に重要な問題提起を、はっきりとは言われませんでしたけれども、提起されたのではないかというふうに思います。それは、この部会、異業種からの金融機関への参入という視点で入ってきているわけですけれども、「それでよいの?」という疑問を岩原さんは、直接にはおっしゃっていませんけれども、疑問を呈されているインプリケーションがあるというふうに思います。むしろ、この主要株主をどういうふうに考えるかという点であって、そういうものを基本に置いておいて、その上で異業種の参入の場合にはそれの応用問題としてどうそれを特殊なケースとして解くかというふうに問題を提起されている、そういうふうに考えるべきだという御意見というふうにも私は受けとめました。大変重要な点を提起された、現在の日本の銀行法、あるいは金融機関に関するそれぞれの業法の一つの穴を鋭く指摘されたのではないかと思います。

そういう点では、現場的に考えると、主要株主との関係というものはそれぞれ──日本生命は株主はおられないというふうには思いますが、特に銀行の場合はどんなふうに考えますか。今の異業種からの参入という問題を岩原さんのようなところから出発するというのは、それこそフィット・アンド・プロパーですか。奥さん、いかがでしょう。

○ 奥オブザーバー

株主と銀行の関係というのは、銀行の今までの歴史及び規模、すなわち歴史についてはかつての財閥系なのか、それとも非財閥系なのか、また規模については都市銀行規模なのか、地方銀行規模なのかということによって随分色合いが違いますので、一言では申し上げられないと思います。例えば、私どもは歴史的にはもともと財閥系銀行ということでございますが、長い歴史の中で、財閥の中から分かれていった企業との関係から始まり、昭和40年代、50年代の資本の自由化のもとでさらに財閥系を離れて一般のお客様との関係で持ち合いというものがかなり進んだというような経緯がございます。ただし、株主と銀行との関係は歴史の中でずっと見ますと強い時期もありましたけれども、今となりましては非常に希薄化してきているということも事実でないかと思います。しかも、現在においては、やはりボラティリティー・リスクが株の保有を通じて非常に高くなっているという認識があるわけでありまして、そういった状況で経営を考える場合に、そのボラティリティー・リスクをどうミニマイズしていくかということを考えますと、株式の相互の持ち合いというものも解消しなくてはいけない。生損保さんとの関係におきましても、従来の考え方では株式を保有していれば利益が出ていたわけでありますが、むしろリスクが高いということで、相互に解消するというような動きが出てきているということでありますので、そういった意味での株主と銀行という関係は随分変わってきていると思います。

では、新しく銀行の株主になる人はいないのかと言えば、それはやはりおられるかと思いますが、どうでしょうか。今、銀行の株主になろうという一般の投資家の方は極めて少ないと思いますし、大銀行では数%も持とうということはまずないと思います。ただ問題はそうではないケースをどうみるかということだと思います。そのあたりにつきましては、先ほど申しましたように、入るところで10%とかそういう大きな影響を与えるようなケースでは、やはり十分なチェックが必要なのではないかということを申し上げたわけです。

○ 蝋山部会長

ありがとうございます。

石橋さん、どうぞ。

○ 石橋オブザーバー

蝋山先生のほうから私ども会社形態が株式会社でなくて相互会社ですからそういう問題はないという御指摘をいただいた上での私的な意見なんですが、蝋山先生、それから岩原先生がおっしゃったとおり、外国の例なんかを見てまいりますと、確かに支配力、支配者という当該会社を支配する力という面からしますと、確かに御指摘のとおり株主からのアプローチということがやはり一つの大きな柱に立つのではないかというふうに思います。

それにつけ加えさせていただきまして、これは先ほどから繰り返し申し上げておりますが、生保の場合にはそこにプラスするものがあって、やはり損保さん、それから銀行さん、そのほかの場合にはそれぞれのお客様との契約が1年、あるいは2年、3年という一般的に短期で、問題が起こればそのときに契約内容を変更する等の対応で何とか危機を未然にといいますか防ぐことができますし、再現の防止ということもできようかと思いますが、生保の場合には、繰り返しになりますが、30年、あるいは50年という超長期の契約で、かつその契約内容を原則変更ができないし、しないという前提になっておりますと、各事業会社さんがユニークなアプローチの仕方で当該業界に入ってくるということが非常に社会的な受けとしてはいいような響きを持ちますけれども、それ自体が大変危険な形にならざるを得ないと。一瞬の、あるいは短期の場面ではユニークさということでのアピールがありますけれども、長期、あるいは5年、10年後にその問題が発生したときに、我々としては取り戻しがきかないと。その契約を来年からやめるということができないという問題。このあたりが生保の特殊性ということでぜひ御理解をいただきたいというふうに思っておりまして、それが外国におけるいろいろな規制、参入のスタンダードというものをつくり上げているということの例だし、そして外国では単純に机の上での議論ではなくて、何度かの失敗の繰り返しの中でこういう法制化がされたんだというふうに私ども認識をしておりますので、大変恐縮ですが、ちょっと開陳をさせていただきました。

○ 蝋山部会長

ありがとうございます。日本でも大正生命というのは大変大きなインプリケーションを持っているはずであって、そのことを十分、異業種からの参入ではありませんけれども、非常に重要な我々は経験を積んで、これを生かしていかなければいけないというふうに思いますね。

3人の方の──プラス1でもいいんですが、この御報告に関して質疑を続けたく思いますが、大塚さん、ございませんか。ありましたらどうぞ。それから田中さん、あるいは八木さん。

○ 大塚委員

私、この問題については、今日が初めてで、これまでの議論を必ずしも十分にフォローしていませんので、的確な質問ではないかも知れませんが、御容赦いただきたいと思います。私常々思っておりますのは、最近の一つのキーワードというのが「顧客重視」とか、それから「利用者サイド」とか、「顧客の満足」とか、そういったようなことが一つの大きなキーワードだろうと思うんですね。先ほどのお話を聞いておりますと、例えば銀行の業務範囲の規制緩和のお話の中で、「利用者サイドに立った立場から言うと」と述べられて、要するにより規制を緩和してほしいと、もっと生保の窓販を増やしてほしいと、こういうような議論の展開をされていらっしゃいます。私、前回のオリックスの話を資料でしか見ていませんのでよくわからないんですけれども、私は異業種が参入しようということの目的の一つには、自分のところの業務範囲を拡大したいとかそういうことももちろんあるかと思いますけれども、一つは顧客サイドに立っているという、顧客のためにそういうことが必要なんだという、そういうような視点もあるんじゃないかと思うんですね。そういう視点に立ってみると、やはり異業種の参入というのは基本的にはある程度肯定する立場から検討して、そしてそれを先ほど来ありますようないろいろなまずいことが起こることをチェックするシステムを確立するというような基本的な立場で行うことが必要かなと思います。これはいわゆる利用者サイドに立ったといいましょうか、顧客サイドに立ったという、現在求められている行き方ではないかなというふうに考えておりますので、そういったことだけをちょっと感じました。

○ 蝋山部会長

今の点は、一番初めに金融庁からのスタンスをお伺いした時も、どうも金融庁は少しブロックしているんではないかというような、世情そういう印象を与えているんですが、本音はそうじゃないよと。今まさに大塚さん言われたところがちゃんとした本音であってですね、しかし、表現上歓迎なんだけれどもという形でいろいろおかしなことが起こらないようにするというところがなかなか上手く受けとめられないんだという苦しい胸の内を第1回目に伺ったところでありまして、まさに今大塚さんのほうからきちんとしたプリンシプルを御意見として頂戴したというふうに理解しております。

八木さん、ございますか。どうぞ。

○ 八木委員

それでは、1回目何も申しませんでしたので、質問なんでございますけれども、私共は事業会社なんですが、物をつくってきた会社が最近ハードウエアではもうからなくなって、どんどん今ソフト、サービス、システムというほうへシフトしている。これは我々の会社だけでなくて国内、日本企業は特にそうだと思うんでございます。その一つのあらわれは、例えば昨今のビジネスモデル特許の繁盛ぶりにあります。そして、この中の半分が金融関係で、半分が電子商取引だと言われておるんですが、例えば私どもの会社は製造業ですけれども、それでもビジネスモデル特許を年間何十件も提案して、認可されて、そういう一つのボリューム感が出ておるんです。何が言いたいかといいますと、それで我々はどんどんお客様にいろんなソリューション・ビジネスといいまして提案をしているわけですね。その中に先ほど来話題がありましたいろいろな電子商取引、それはこっち側から参入してゆくほうも、銀行さんのバックアップも両方やっているという会社が今たくさんあると。こういう背景がございまして、この傾向はこれからももっともっと続くどころか拡大していくと思うし、そのことによっていろんなものの垣根がどんどん低くなるんではないかと考えております。

そういう上で、先ほど奥常務さんの説明を聞いたんですが、この資料の中の5ページに、新しい業務から生まれる利益を増やしたいというお話がございまして、全くそのとおりだと思うんですね。つまり非金利収入とでもいうか、そういうところをこれから銀行さんの場合特に増やしていかなきゃいけない。私は、異業種が銀行のほうへ参入してくるんではなくて、むしろこれをいかに迎え撃つかということもぜひ考えていくべきだと思うんでございますが、そういう意味で、その一つの切り口が電子商取引なんではないかと、こう思うんですね。

ここに2つ問題があると思うんです。ひとつは、信用リスクをどういうふうに受けるかという問題、それからもうひとつは商取引から出るリスクなんですね。ところが、信用リスクについては僕は銀行というのは非常に有利なポジションにいると思います。つまり、過去、銀行の取り引きというのは信用と信頼のもとでの取り引きであるわけなんで、そういうものを見抜く目を一番お持ちなのは銀行さんですから、そういう意味では全然心配はしていないんですね。

一方、ただ銀行さんには従来の銀行業務というお仕事の範囲しかないんで、例えば物を買いつけてその代金を払うとか、あるいは営業活動をやってその代金を回収するとかというのは、これはちょっと世の中では別の業種のほうに所属する業務なんですね。ところが、銀行の利益というものを考えると、銀行自身が仕事をするか、銀行が連結対象にできるようなもので利益を上げない限り、連結、単独いずれも利益に入らないという悩みもこれありで、ほんの数%出資してみんなでつくり上げた一つの組み合わせで出た利益というのはみんなで分け合っちゃいますから、銀行さんに入るのはわずかな手数料ぐらいなのかなと、こういうふうに危惧するわけです。

そこで申し上げたいのは、では銀行自身がある程度リスクをテイクする意味で一般商取引まで入っていく、これが奥常務の最終ページにあった「金融業務をサポート・補足する業務」というところをどこまで取り込むのかなというところにかかってくるわけですが、それが許される範囲なのかどうか。これは住友さんがという意味ではなくて、銀行全体として見た場合、そこまで踏み込んでいくおつもりがあるのか。そうしないと、御自身の業績の利益というのは出てこないという悩みがあるんではないか。手数料ばっかり高くしますと他に取られちゃいますので、そこら辺もこれからルールという、規制緩和という観点からも見ていく必要があるのかなというふうに感じながらいろいろお話を聞いていたところでございます。

質問にもなっておりませんが。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。非常に抽象的な表現をされましたけれども、恐らく奥常務には何を具体的に心配されているか、八木さんのインプリケーションはよくおわかりだと思いますので、ただいまの点、何か御印象がありましたら、奥さん、どうぞ。

○ 奥オブザーバー

八木さんは銀行員かと思うぐらいよくお考えというふうに承りましたが、従来の銀行といいますのは、どうしても預貸という業務からなる資金関係面からの収益が多かったわけですね。この点はこれからの財務基盤を安定させていくという意味で、収益基盤の構造変化をみずからの手でどうやって進めていくかというのは大きな問題で、それを組み替えていくためにいろんなビジネスモデルというものを考えているわけであります。例えば、個人と法人とを切り分けてまさに個人業務について完全にターゲットを絞って個人のお客様のセグメンテーションして、そこにフィット・アンド・プロパーな商品をタイムリーに提供していくという考え方。それはお客様のニーズに応え、お客様が安心して買えるもの、こういうものを製造から販売までどう扱うか、または、途中でそれを購入してきて販売するのかというようなこと、こういうことを考えるのもビジネスモデルの変革の一つであります。

それからもう一つは、今、八木さんのほうからお話しありましたように、銀行が今まで蓄えてきた信用リスクのデータというものをどういうふうに使えるかと。まさに信用リスクの判定モデルというものを電子商取引にどう使っていくのかということで、恐らくどこの銀行も今一生懸命考えているところでございます。それはどうしてかといいますと、例えば商取引のところにおいて、最後の問題になってくるのが、これを売ってよいかどうか、この人に売ってよいかどうかということになるわけですね。それがネットの上で瞬時に判断できるかどうかというような場合に、銀行は「これでやっていいですよ」とは言いませんので、その方が判断される場合に、こういうデータを入れればここは恐らく大丈夫じゃないですかと、これだけ広いデータをもってつくり上げた信用判定リスクモデルから見れば、こういう回答がでてきますよ。これをひとつ判断に使われてはどうですかと。それによって使われる場合には若干のフィーを頂戴しますというようなことができないのかということは、今真剣に考えているわけでありまして、そういう意味では、まさに銀行が今までやってきて、自らの手の内で考えていたことを外にそういうふうに使って、単に決済ということだけではなくて、IT化の中での電子商取引、さらには電子取引の中での信用リスク判定モデル、すなわち単に決済ということだけではなくて、信用判定のところまで入れたものができないか、いろいろ検討はしておるところでございます。恐らく私どもだけではなくて、同じことは各銀行が考えているのではないかと思います。それを提供することによって、一般の事業会社さんと商売がよりスムーズにいくような形、それから電子商取引というものがよりスムーズにいくような形にしていきたいというのが新たなビジネスモデルの前提の一つでございます。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。

田中さん、何か。やや時間が押しておりますので、その点御承知置きいただきたく思います、申しわけありませんが。

○ 田中委員

この部会は異業種参入に伴う銀行法の改正等の審議をするということであって、今日申し上げることはその部分とは直接関係していないのかもしれませんけれども、ただ異業種から銀行に参入されるという条件が、その部分についてイリュージョンがあるんではないかというふうにも私は思っているんです。エフィシェントマーケットができるということのはずなんで、エフィシェントマーケットというのはプロフィットが抜けない。しかも、預金・貸し出しにかかわる分野は余りにも資源が多過ぎることは当然ですし、それから決済、あるいはATMにかかわるような諸設備も既に過剰、明らかに過剰。ただ、使い方が今まで非常に限定的であったから、あたかも不足しているかの如き様相にあるわけですが、実際には過剰設備になっているというのが現実ではないかというふうに思います。例えば、小売業から銀行に参入されるという場合に、ATMが設置されるとかいろいろあるんですが、一体だれからフィーを取られるのかという問題があって、では住友銀行は自分たちのそういうチャネルが不足していることによって顧客に不便をおかけしていると。そうすると、例えばスーパーマーケットなりコンビニエンスストアがそういうATMを設置されることを通じて自分の顧客に利便を提供していただくので、ではそのフィーをお支払いしますというふうにいくのかというと、私の理解によれば、多分それはもう成立しないわけで、既にある金融機関相互の間に、フィーをお互いに支払っておられるのかどうかはあれですが、規模に応じて使い手がそれぞれ使うということだったら、入ってくるのと出ていくのはチャラですから、フィーは支払わないと。金融機関相互の利益にすれば、例えばスーパーマーケットなりコンビニエンスストアで入った人は、既にある金融機関からフィーは取れないということ、要するにビジネスモデルは成り立たないはずなんだと思います。 日米間の比較をしてみますと、日本で今600兆円ぐらいの預貯金がございますが、アメリカのようにスィング・アカウントができて最小限に預貯金の額を減らすことができると、あるいはもっと言えばより利益のある資金運用ができるスキームをいろいろファイナンシャル・インスティエーションが競って出されることを通じてどのくらい移転するかというと、アメリカ並みになったというふうに考えますと、今ある600兆円は150兆円ぐらいまで減るはずで、計算の仕方にもよりますけれども、要するに450兆円ぐらい動くわけです。そこにまた何かデポジットを何か取るという形で、参入することで何か利益が出るのかといったら、それは利益は多分出ないだろうし、あるいはそういう人たちがこれ以上出てくるのは嫌だと奥さんは思っておられるから、それを排除するためにビジネスモデルを崩すための工夫はありとあらゆる、要するに正当な手段で工夫をされるわけで、問題は、ではなぜ今までの金融機関があたかも能力が低くて何もできない人たちだから、違う分野からより高い能力の人が入ったほうがいいというような風潮になっているかというと、これは多分貝塚先生とか蝋山先生とか、あるいは私どものような立場の者がちゃんと言っていないからではないかと。そうじゃないと。もう席余りのところにさらにまた参入するというのは資源の浪費につながりますし、結果としてデフレーションなりの影響がこの業界に及ぶことになりますので、これは金融審議会の機能かどうかわかりませんけれども、何かちゃんと言わなきゃいけない。行くところでないところに行くというのを、これは絶対おかしいと。今確かに不足している金融機能はございます。普通で言うインベストメント・バンキングの分野ですが、しかしこの分野は、例えばワークアウトとかクラビティエクイティファンドが日本でどんどんできるかといったら、最終的にリスクを取る投資家がいない以上は、この業務というのはなかなか増やそうといったって増やせないわけでして、そのためには勤労者が自分のリスクを判断して資産運用できるような仕組みというものが必要になってくる。 そのためには年金改革というようなものが不可欠だと。年金改革がなければインベストメント・バンキング業務は幾ら日本のファイナンシャルの中心が歯を食いしばって能力を身につけようとしてもプレイスメントはできないということではないかと思うんですが。ですから、そこの能力というか、そこが発達していないだけであって、いわゆる商業銀行業務は人も設備もありとあらゆるものが過剰なんで、そこに大きなイリュージョンがどうも成立しているらしいんで、これは絶対ただすべきだと。米国でも、どういう分野に人が不足しているかというと、ミューチュアル・ファンドのファンドマネージャーが不足していると。ものすごい高給でとり合っている。 インデスメント・バンキング部分は確かにそうですが、そうでないコマーシャル・バンキングの分野はそういう値付けは成立していません。ですから、ものすごく整頓されていっちゃったんですが、それでもなおかつなかなかフィーを抜くことが難しいのがコマーシャル・バンキングだという現実を、だれかが言っているのかどうかよくわからないんですが、私どもの業界が少しとろいからこういう大きなミスアロケーションが起きているのかどうかという問題があるように思うんです。

○ 蝋山部会長

ありがとうございました。一番初めに貝塚さんをメンションしたので、貝塚会長に一言。

○ 貝塚会長

日本の場合は、銀行業のポジションというのは、本当にシリアスに挑戦されたらどうかというのは、ある意味ではタッチしていないんです。だけど、あるいはアメリカにおいてはもう10年も15年も前からトラディショナルというのは、低下するのはむしろ当然だと。あるいは、日本で言えば、伊藤さんなんかが言っておられると思うんですが、オーバーバンキングというものもあるということですね。ということがあるということを、そういうふうには認識をしているということで、それ以外は、あとは笑い話ですが、私は20年も25年も前から優秀な卒業生は金融機関には行くなと言っているんですね(笑)。毎回言っているんですが、それはすべて逆効果(笑)。

○ 蝋山部会長

アメリカの自動車産業が日本の輸入によって様変わりしたということを凡例として一言だけ申し上げます。岩村さん、どうぞ。

それで最後に、締めくくりとして、今まで発言のなかった神田さんにお願いします。

○ 岩村委員

時間も押しているようですので、手短に。

前回と今回とで浮かび上がってきた制度上の論点──銀行業が過剰であるかどうかとかそういうことは別にして、制度上の論点だと思われるのは、やはり今日も出ていましたけれども、異業種進出の問題ではなくて、銀行とその株主ですね。あるいは、銀行の経営に影響があるあらゆるステイクホルダーと銀行経営と。関係をどのようにこれから整理していくかと。現状がそもそも何なんだろうということ。そのコンプリケーションだと思うんです。一番最初のときに、どうも今回のガイドライン──「金融庁さんの方針はわかるんだけれども、制限的ですね」ということを言って乾さんに正されましたけれども、それもやはりそこの部分での片手落ち感が若干私はある、あるいは表に見えるところにあると思っているんですね。

例えばという話で申し上げますと、もちろん不況後の話とかプライバシーの話なんかもあるんですが、特にリスク管理に関して──これが一番大きな論点だと思いますが、リスク管理について言えば、例えば株主に対する与信ですね。というのは、一体自己資本を考えるときに、どう評価するんでしょうか。私はこれを自己資本から控除するという考え方も立派にあり得るなと思っております。もちろん控除しなくていいんだと、取り切っている金とリスクを負担している資金は違うんだという考え方ももちろんあるとも考えられますので、これは両様ありますけれども、整理はしなきゃいけないだろうと思います。しかも重要なことは、今日、奥さんのお話にも出てきたように、親会社からの事業リスクから遮断するという観点で、親会社への与信を制限する必要があるんではないかという考え方が銀行業界から出されているわけですけれども、この考え方と整合的な考え方は、むしろ株主への与信は自己資本から控除するという考え方のほうなわけで、そういうところが見えないと、やはり異業種からの進出に対してだけ厳しいのかという印象がどうしても出るわけです。その辺りは、おそらく皆さんも本意ではないと思うので、心配しております。

それから、同じようにリスクの遮断という観点で、例えば株主に対する与信が甘くなるんではないかという論点がよくあります。これも、それでは10%なのか、25%なのか、51%なのかという議論がよくなされるんですが、これは私もやはり現状についての反省というのをしなければいけない。というのは、日本の銀行、金融組織というのは、系列とか株式の持ち合い、企業集団ということの問題であると、少なくとも、事実関係はともあれ、よく言われるわけですし、また、そういう面が全くないとは言い切れない。では、その与信判断のときに10%や25%に達していなくても、0.5%とか1%であったとしても株主総会に必ず出てきて、そして経営サイドへ委任状をきちんと渡してくれている株主──要するに企業集団内株主です──に対する与信判断というのが本当にクリアにできているんですかということに対して、私はできているべきだろうと思っていますが、現状はどうなんでしょうか。現状において、例えば住友銀行さんに問題があるとは思いませんけれども、しかしそれについてクリアカットに説明がなされないと、いろいろな反発が出てくるのだろうかなと思います。

いずれにしても、本当のことを言うと、この辺の話というのは、株主に対する与信を例えば自己資本から控除してしまうという考え方だけでほとんど全部解消できてしまうのかもしれませんが、これを今度やってしまうと、現在日本の存在する銀行で困るところが恐らくたくさん出てきてしまうと思われるわけです。そうすると、やはり理論としてどうであろうかという話と、現実の中でどう切り回していくのだろうかということのバランスはとらなきゃいけない。ただ、ここの部分、現在どうなんですかと。あるいは、現在の系列とか企業集団と言われているもの、財閥銀行という言葉はなくなったと思いますけれども、あるいはメイン銀行と言われているものの実態について洗い直し、あるいは見直しをしていかないと、この異業種進出のときにいろいろな論点が言われても、そのそれぞれについて少なくとも制限的な議論をすることに説得力が非常に薄くなるだろうということを感じました。それだけ申し上げておきます。

○ 蝋山部会長

極めてラディカルな考え方を示されて、もちろん岩村さんは現実はそういうことを一方で考えながら調和的であることを欲してはおられるとは思いますが、非常にラディカルな視点を提起していただいて、ありがたかったと思います。

神田さん、岩原さんに一番初めに質疑応答の皮切りをしてもらったので、法学者に締めくくりも。

○ 神田委員

締めくくりをやれるほど何もわかっておりませんし、今後よく自分の考えをまとめたいと思っているんですけれども、何も言わないのもちょっとあれかなと思っていますので、非常に抽象的な感想を3点申し上げます。いずれも制度上の論点という形で、私も田中委員がおっしゃったことには、そういう問題は重要な問題だと認識しております。

第1点は、これは岩原委員がおっしゃったことと恐らく同じになると思うんですが、主要株主を議論するにせよ、異業種参入を議論するにせよ、あるいは禁止を議論するにせよ、銀行といっても銀行業の定義は国によって違うわけですから、その違ったまま、この国ではこうなっているから日本もそれを参考にしたらよいというのはちょっとですね、非常にミスリーディングであるというふうに思います。主要株主の議論をするにせよ、異業種の議論をするにせよ、あるいは禁止の議論をするにせよ、銀行業というのは今存在している日本の銀行における銀行業の定義を所与としてよいのか、あるいはどういう定義を用いるかということを整理する必要があると思います。ではどういう定義がよいのかといっても、私にはちょっとよくわからないんですけれども、抽象的に言えば、銀行の監督当局が例えば主要株主に対してどういうことができるか、また、すべきかの議論をするのであれば、それもやはりなぜ銀行を規制するのか、銀行規制が他の産業にはないその理由を明らかにしなければいけませんので、結局銀行とは何かということがそこで明らかにならなければいけない。そういう意味で、機能的なアプローチをすべきであって、現に存在している銀行の定義を出発点とするとやや、特に諸外国と比較して物事を見るのはミスリーディングになると思います。これが第1点です。

第2点は、主要株主や異業種参入でも、簡単に言うと規制が過剰になるとイノベーションを阻害するということを感じます。というのは、10年前ぐらいに私が盛んに言っていることなんですけれども、物を盗んだ人は罰するという刑法の規制があっても、それは実際に1万人に1人、あるいはもっと少ない確率で物を盗む人がいる。それは別に他の人をそう阻害するわけではないんですけれども、そういうルールは。もっとも銀行とか保険分野にイノベーションがあるのかどうかよく知りませんが、それはともかくとして、それが非常に問題になっている分野では、悪いものを入れないというのは当然あり得るわけですから、それは防止しなきゃいけないんですけれども、悪いものと良いものが区別できればいいんですけれども、悪いものを防止したがためにいいものも防止するということになるおそれがあるわけです。したがって、事後の行為規制というのは利益相反ルール等当然のことだと私も思いますが、事前の規制というのはそういう意味では必要最小限にとどめるべきだというのが基本的な考えで、これは先ほど実は部会長が大塚委員に対しておっしゃったことと関係すると思うんですが、第1回目は私ちょっと欠席させてもらったものですから、私は金融庁のこの前出された紙もそういう趣旨だと思うんですね。従って、必要最小限のことすら現在は法律上ないんではないかという問題意識で恐らく法律上の手当ということが議論されようとされているんではないかと。事前について申し上げますとですけれども。そういうことではないかと思います。

3点目は、他業禁止の話なので将来ゆっくり議論すればよいことなのかもしれませんが、私はこの分野はやはりパラダイムの転換が起きたと。従って、この部会として他業禁止とは何ぞやということを整理していただきたいというふうに個人的には希望しています。といいますのは、他業禁止という考え方が今日の場合は成り立たないんではないかということです。従来は、先ほども御説明ございましたけれども、銀行業なら銀行業と他業というのは、それも国によって違うものの、それなりに他業を禁止する理由があったわけですね。その一つの理由はやっぱり危ないということなんですけれども、考えてみますと、先ほどのこの参考資料にありますようなこういう広告を裏に出すことと、デリバティブをやることと、それだけ取り出したらどっちが危ないかというと明らかにはっきりしない。パラダイムの転換というのは、あることが危ないかどうかではなくて、全体としてのリスク管理をきちんとできているかどうかが問題なのであって、個別に何をやるかということではないはずなんですね。従って、銀行なら銀行の場合は、全体としてのリスク管理がきちんとできているかどうかということが非常に重要ですけれども、これは自己資本の問題であれ、あるいはリスク管理全般に重要ですけれども、あることをやっていけないかどうかというのを個別に見て、従来デリバティブは銀行業と呼ばれるような中に含まれており、広告というかさっき挙げられたような例は外ですという、そういう制度は従来は別の理由で、知的な理由もありますし通っていたと思うんですけれども、今日は成り立ち得ないと私は思うものですから、そういう意味で、他業禁止とは何かという、そこの考え方をできればこの部会できちんと整理していただければと思います。

以上です。

○ 蝋山部会長

大変期待どおりのまとめをしていただけたと思います。ありがとうございます。

今日の3人の方の御報告は大変いろいろ議論の素材として参考になったわけでありまして、今日御発言いただかなかった多くの方々、言いたいことたくさんおありになったのではないかと思いますが、そのエネルギーは次回以降まで保持していただいて、そこで発言していただきたいというふうに思います。

これまで3回にわたって金融審議会の第一部会を開催してきました。そして、当面の主題は、来年の銀行法等の改正に向けて異業種参入にどう上手く対処するかというのが当面の課題ではあるわけですけれども、今日の議論に典型的に示されたように、この問題は銀行法それ自体の、日本における銀行それ自体のあり方に大変重要な課題を突きつけているというふうに思います。我々としてはそれに対して果敢に挑戦しなくちゃいけないわけでありますけれども、同時に法改正という極めてテクニカルな問題もありますので、その辺のところは上手くバランスをとって考えていく必要があろうかというふうに思います。

要するに、銀行の経営の健全性といいますか、そして銀行のエンドユーザーの利便性、あるいは預金者保護、こういう点を十分に考えながら銀行法の問題を、特に監督規制という観点からとらえていかなければならないわけであります。

今後、こういうところをぜひワーキング・グループで相当に突っ込んだ議論もお願いして、この我々の議論に対して大いなる影響を与えていただきたいというふうにお願いするわけであります。

具体的に言いますと、親会社ないしは銀行の経営に重要な影響を与える株主に対してそもそも規制を行うべきなのか、規制をするとすればいかなる規制をするべきなのか、そういうことがフィーズナブルなのかどうか、そういうような問題が一つあるというふうに思います。

ここで言えと言われているのは、バーゼル・コア・プリンシプルという文言でありまして、これを普通にしゃべっていたのではよくわけがわからないのでゆっくりいいますと、銀行に対する主要な所有権や支配力を他の主体に移譲させる提案を点検し、棄却する権限等を銀行法においていかに具現化すべきかと、こういう問題なんだそうであります。要するに、今日の議論の中で出てきたように、参入しようとする親会社も含めて主要な株主、銀行経営に影響を与えるものの不当な行為をどういうふうにチェックしたらよいのかというふうに私は広く解釈したいと思うわけですが、当然その一環として適格性、フィット・アンド・プロパーの問題も出てくるわけであります。こういう点について十分な検討をワーキング・グループでしていただきたいと思うし、恐らくそこでは銀行とは何かというようなところにまでも踏み込むような議論もされるのではないかというふうに思います。

現在の銀行法は、法参照というようなものの考え方が理想的であるという形で、非常によく考えられているかもしれないけれども、一定の環境の中で有効な法体系にはなっているかと思いますが、現在の環境にはそぐわない点がたくさんある。インターネットを中心としたIT革命の状況の中で、従来の店舗規制といったものも銀行法の中に入っているわけでありますけれども、こういうものを本当にどう考えたらいいのかというような問題も出てくるだろうというふうに思います。

そういう監督規制という観点から見て、時代にあわせた、これからの日本にあった銀行法というものの取っかかりを我々がつくっていかなきゃいけないし、それをできるだけ十分に活用できるくらい奥深くやりたいわけですけれども、その時間的な余裕はないかもしれません。がしかし、ともかく重要な取っかかりというものはまずはつくらなきゃいけないだろうというふうに思っております。そういう仕事をぜひワーキング・グループにお願いしたいというふうに思います。

それから、もう一つは、今日、幸いにして銀行における保険窓販の問題に余り議論が集中しなかったのでよかったんですが、もしもそうなっちゃうと昔ながらの業界の水争いということに巻き込まれるのかなと思ったんですが、奥オブザーバーから問題提起だけがあり、それに対する反論もお聞きしましたので、その辺のところはまたいずれに機会にか、具体的な形は恐らく金融庁のほうでお考えがあるのではないかというふうに思います。そういう全体の、いわば従来の業態垣根論、水争い論というものはともかくとして、やはり銀行の活動について先ほど整理がされたような、奥オブザーバーのメモでも整理されているような固有業務、付随業務、さらにはそれを補完する業務、こういうものをどう考えたらいいのか。単純に規制緩和3カ年計画の前倒しとかそういう話ではなくて、神田さんが最後に指摘されたようなきちんとした長期の展望を持って我々は考えていきたいと思いますし、そういう作業もこのワーキング・グループに押しつけることになるかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。

さらに、焦点は銀行に絞られるわけですが、果たして銀行のケースというものが他の金融サービス業についても当てはまるのかどうか、こういう問題もあるだろうというふうに思います。それは銀行をどう見るかという議論とも関係するわけですが、銀行のケースがそのまま生保に当てはまるのかどうか、あるいは貸金業に当てはまるのかどうか、いろいろ金融サービス業全体への当てはまる問題、当てはまらない問題、そういう整理も必要ではないだろうか。ただ単に銀行の問題だけが解決されれば日本の金融のシステム的な改善ができるとは私は思いませんので、その辺のところもお考えいただきたいというふうに思います。

こういうような点につきまして、ワーキング・グループで御検討を十分にいただきまして、その結果、あるいは中間報告というものをこの場で議論したいと考えております。

もう一度繰り返しますけれども、次期の通常国会での法改正というものを視野に入れますと、一番初めに申し上げたような株主との関係において、例えばおかしな株主はどういうふうに排除したらいいのかとか、あるいは株主も含めて影響力のある主体、事業親会社ということが新規参入の場合には当面問題になっているような部分では念頭に置かれるわけですけれども、これに対してどういう検査・監督をしたらいいのか。こういう点はどうしてもやっておかなきゃいけないような点でありますけれども、それとして解決しておしまいということではなくて、さらにそれがより望ましい広範な銀行法改正に向けての取っかかりになるような素材をワーキング・グループから御提供いだだけますと大変助かるというふうに思いますし、またそれが上手く保険業に、他の業界にも適用されるものかどうか、そういうところもぜひお考えいただきたいというふうに思います。

大変重要な点をいろいろワーキング・グループにお願いするということになるわけでありまして大変恐縮ですが、神田さんが座長であるということで、私は大船に乗った気でおりますので、よろしくお願いします。またその他の、今日は柳川さんにもワーキング・グループに入っていただくということにさせていただきましたけれども、ワーキング・グループの皆さん、場合によっては大船を揺するような議論も歓迎したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

本日は時間を10分も過ぎてしまいました。申しわけありませんでしたけれども、一応これでおしまいにしますが、その前に事務方から連絡事項が何かありますか。よろしく。

○ 樋口信用課長

若干の御説明でございますけれども、今、部会長からお話しがございましたが、この後はしばらくお時間を頂戴しまして、ワーキング・グループでの検討ということにさせていただきたいと思っております。

ワーキング・グループのメンバーの方、この名簿はお配りしてございますけれども、さらにオブザーバーという形をつくらせていただきたいと思っています。このオブザーバーにつきましては、適宜部会長なり神田座長に御相談をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

それから、その後、次回のこの部会につきましては、ワーキング・グループでの検討状況を踏まえながら、部会長とも御相談の上、一応10月末ぐらいをめどに調整をさせていただきたいと考えておりますので、またよろしくお願いしたいと思います。

以上でございます。

○ 蝋山部会長

本日は時間を11分30秒過ぎてしまいまして申しわけありませんでした。10月の末、よろしくお願いいたします。

ありがとうございました。

──了──

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