金融審議会金融分科会第一部会(第1回)議事録

平成13年10月3日
金融庁 総務企画局

○ 神田部会長

それでは、時間も参りましたので、ただいまから、金融審議会金融分科会 第一部会の第1回目の会合を開催させていただきます。

本日は、皆様方、ご多忙のところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

私は、2月の金融分科会で蝋山分科会長よりこの第一部会の部会長のご指名を受けました神田と申します。よろしくお願いいたします。

それでは、まず、当部会のメンバーでございますが、お手元にお配りしております名簿のとおり蝋山分科会長からご指名がございました。名簿をご参照いただければと思います。

本日は初めての会合でございますので、委員及び事務局の方々のご紹介をお願いしたいと思います。

○ 大森調査室長

金融審議会の定員の制約もございまして、新たにお願いした方には臨時委員とか専門委員といった肩書きがついておりますが、議論におきましては、肩書きにこだわらず、自由にお願いしたいと存じます。配席もお名前の五十音順にさせていただいておりますが、その順でご紹介申し上げます。

まず、東英治委員でございます。

壱岐浩一委員でございます。

池尾和人委員でございます。

岩原紳作委員でございます。

太田宏委員でございます。

黒沼悦郎委員でございます。

古賀信行委員でございます。

斎藤静樹委員でございます。

杉崎肇委員でございます。

首藤委員は若干遅れていらっしゃいます。

高橋厚男委員でございます。

田島優子委員でございます。

鶴島琢夫委員でございます。

成川委員も若干遅れていらっしゃいます。

浜矩子委員でございます。

福間年勝委員でございます。

淵田康之委員でございます。

前田晃伸委員でございます。

なお、弁護士の上柳敏郎先生にも委員をお願いしておりますが、本日は欠席されております。

また、金融分科会の委員の方々につきましては、この第一部会にもご自由にご参加いただくことになっております。本日は蝋山会長にご出席をいただいております。

次に、幹事として、日本銀行の和田哲郎企画室参事役にご出席いただいております。

委員等の皆様方につきましては、以上でございます。

次に、金融庁側のメンバーを紹介させていただきます。

村田金融担当副大臣でございます。

原口総務企画局長でございます。

佐藤企画担当審議官でございます。

三國谷監理官でございます。

大久保参事官でございます。

谷口財務省信用機構課長でございます。

向かって左手、有吉企画課長でございます。

鈴木政策課長でございます。

厚木市場課長でございます。

細田企業開示参事官でございます。

山崎市場課企画官でございます。

私は、委員の皆様との連絡調整に当たらせていただきます、調査室長の大森でございます。よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ここで金融庁側を代表して、村田副大臣からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 村田副大臣

皆さん、きょうは大変ご苦労さまでございます。

第一部会の立ち上げに当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

当部会の前身であります証券取引審議会は、平成9年6月に、本日もご出席をいただいております蝋山分科会長、神田部会長、太田委員、福間委員、鶴島委員ほか、多くの皆様方のご苦労の末、当時としては考え得る限り広範囲にわたる証券市場の改革プランをおまとめいただいたわけであります。このいわゆる日本版ビッグバンが目指しましたのは、我が国の金融システムを過度に金融リスクが集中する金融仲介からリスク分散に優れた仕組みであります市場による金融仲介に移行させることにより個人に多様で魅力的な商品を提供するとともに、新規産業に円滑に資金供給をいたしまして経済産業構造の転換を図るということを目指したものでありました。

証券取引審議会におまとめいただきました市場改革のプランは現在までに予定どおり実施されておりまして、商品・サービスの多様性という面でも、市場や仲介者のあり方という面でも、市場における競争の枠組みが一変しております。投資信託や外貨預金、外債の残高も増加いたしましたし、預金金利が低い中で少しでもリターンを高めようとする投資家行動が伺えることでもありますし、これに呼応した新しいタイプの仲介業者の活動も活発化しているということでございます。しかし、ここ三、四年にわたるそうした広範な改革にもかかわらず、ビッグバンの目標でありましたマネーフロー構造の変革という課題はまだ実現しておらないという状況にあると思います。また、相次ぐ大手金融機関の破綻によりまして、個人金融資産の安全志向はかえって強まったと言われております。さらに、金融システム不安に対処するために講じましたセーフティーネットの整備が、銀行中心の金融仲介構造を温存させたという指摘もあるわけであります。

こうした状況を打開するためには、改めて証券市場の機能を強化して資金が流れるルートをつくり出す必要があり、去る8月に私どもが公表した証券市場の構造改革プログラムもこうした問題意識に基づいておりますけれども、この問題意識は証券取引審議会におまとめいただいた日本版ビッグバンの理念そのものであります。構造改革プログラムは行政として当面取り得る措置を列挙しておりますが、もとより決して完全なものとは考えておりません。したがいまして、今必要なことは、これまでの改革の成果とこの間に明らかになりました課題を踏まえまして、個人投資家が主役の証券市場の構築に向けた方法と手順を、法改正の必要性も含めまして、改めて包括的に検討することだと考えております。

委員の皆様方の忌憚のないご審議をお願いいたしまして、私のごあいさつとさせていただきます。きょうは本当にありがとうございました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、次に、ここで部会長代理を指名させていただきたいと存じます。

金融審議会令によりますと、部会長代理は部会長が指名することになっております。まことに僭越でございますが、私といたしましては太田委員に部会長代理になっていただければありがたいと存じますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

ありがとうございます。

それでは、太田委員に部会長代理をお引き受けいただいたということで進めさせていただきます。どうもありがとうございました。

続きまして、金融分科会において定められました第一部会の審議事項、会議運営に関する事項につきまして、事務局からそれぞれ説明をお願いいたします。

○ 大森調査室長

ご案内のとおり、本年2月22日の金融分科会におきまして、第一部会、第二部会及び特別部会の3つの部会が設置されております。この第一部会では、我が国の証券市場を取り巻く諸課題についてご審議をいただくことになっております。

また、金融分科会では、分科会及び部会の会議の公開と議事録の公開に関して定めておりますので、この点につき簡単にご説明いたします。

まず、会議の公開につきましては、第一部会では本日から公開とさせていただいております。これも審議の透明化という観点から金融分科会で決定されたものでございます。今後とも第一部会の会議は原則として公開させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。会場等の都合もございますので、当面は金融庁を担当する記者クラブに所属する記者の方々で各社1名ずつを対象とさせていただいております。

次に、議事録等の公開につきまして、会議後できるだけ速やかに議事要旨をインターネットで公表し、詳細な議事録は、原則として、会議の都度、事務的に作業が完了次第、インターネットで公表することとさせていただきたいと考えております。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ただいま事務局の方からご説明いただきましたこの第一部会の審議事項、会議運営に関する事項について、ご質問等がございましたらお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、先へ進ませていただきたいと思います。

まず、きょうの議事でございますが、事務局から、去る8月に発表されました「証券市場の構造改革プログラム」、それから、「平成14年度税制改正要望」、この2つにつきまして説明していただきます。これを皆様方の議論のいわば材料としていただいて、きょうは何分第1回目でございますので、幅広く皆様方がお感じになっていること等を自由討論ということで進めたいと思っております。

では、まず事務局から説明をお願いします。

○ 鈴木政策課長

それでは、お手元の資料の中に「証券市場の構造改革プログラム」というのがございますけれども、これに沿ってご説明したいと思います。

これは、6月の閣議におきまして、いわゆる骨太の方針の中で、貯蓄重視から投資重視へ政策の力点を置きかえ、証券構造改革を行うことがうたわれたことなども踏まえまして金融庁で取りまとめたものでございます。全体は、「基本的な考え方」と、「具体的な構造改革のプログラム」という部分に分かれております。

1ページの「基本的な考え方」でございますけれども、このうち、「我が国証券市場の現状」あるいは「我が国証券市場の構造改革の必要性」は、委員の皆様がよくご承知のところでございますので省略させていただきます。

こうした点を踏まえまして、現下の具体的な課題ということで、2ページ目の一番最後のところの・でございますが、「証券市場の構造改革の具体的課題」として我々が感じておりますのは、1つは、個人投資家の方々の証券市場への信頼がまだ低いということで、この向上に向けたいろいろなインフラを整備する必要があるのではないか。2つ目が、具体的な商品としてはやはり当面は投資信託というようなものが個人投資家として一番入っていきやすい商品ではないか、その意味で魅力のある投資信託を実現することが必要ではないか。3番目が税制でございますけれども、リスクがあるという商品性に着目して、それにふさわしい税制をつくっていただく必要があるのではないか。最後に4番目として、やはり投資家教育ということですが、リスクのある商品をどのようにみずからの資産運用の中で使っていくかということを積極的に考えていただくというようなことも含めた、教育といいますか普及と言うべきかもしれませんが、そういうものが必要ではないかということでございます。

3ページ目に移りまして、具体的な構造改革プログラムの内容でございますが、1つは、まず信頼向上のためのインフラ整備としまして、(1)の、「証券会社の営業姿勢の転換に向けた方策」ということ。いろいろ伺ってみますと、証券会社に対します信頼はまだまだ不十分な部分があるということで、例えばマル1でございますけれども、これまで証券会社が違法行為をした場合には、営業停止など営業に係る処分をした場合にだけ公表をしておりましたけれども、行為違反に係る全行政処分を公表することによりまして、市場でそれぞれの証券会社の営業姿勢に対する評価が形成されるようにしてはどうかということ、あるいは、マル3のところにございますように、証券外務員の方の資質の問題などについてもきちんとチェックしていただくようにお願いしようということ。さらには、新しい問題でございますけれども、株式投信なんかについての乗りかえの勧誘についてもきちんとルールを整備しようというようなことでございます。

2つ目のところが「行政による市場監視の強化」ということで、マル1のところは、証券取引等監視委員会等としまして、個人投資家の不信を取り除くということを1つの大きな目標として取り組んでいこうということ、そして、そのため、行政サイドも投資家を守るために厳格な行政処分を実施していこうということとしております。また、マル2につきましては、人員等の増強を図ろうということ。マル3としましては、証券会社だけでなく、銀行や保険という形で資本提携が進んでおりますので、こうしたコングロマリット化に合わせた検査等の連携強化も行っていこうということでございます。

(3)は「市場インフラの整備」ということで、まずはディスクロージャーの充実、特に電子開示。又、いろいろな形での目論見書をわかりやすいものにしていくというふうなことも進めていこうということにしております。ページをめくりまして、マル2のところは、金庫株解禁等に伴います法的なセーフ・ハーバー・ルールの整備等をしていく必要があろうということ。さらには、マル4でございますけれども、投資単位の引下げを具体的に進めるということでございますので、それが意味のある形になるように取引所等に検討を要請したということでございます。

(4)は、(2)で行政機関による監視の強化というのが出ておりましたけれども、やはり自主規制機関にもそれぞれ十分な市場監視の機能を発揮していただこうというものでございます。(5)は、証券会社あるいは金融監督という分野だけではなくて、発行企業に株主重視の経営姿勢の拡充をしていただくことが必要ではないかということで、直接的な働きかけというのは難しいのですが、取引所等にお願いしまして、例えば発行企業が決算短信等によりましてROEの目標値を設定したり、あるいは、その向上に向けた具体的な施策を公表できるように様式を整備していただくという形で、株主重視の経営の方向に向くように環境を整備できないかというものでございます。

5ページ目でございますけれども、やはり個人にとって魅力のある株式投信ということで、投信の改革を進める必要があるのではないかということです。1つは、投信については目論見書がわかりにくいという声が非常に多いものですから、そういうことについての改善。それから、販売手数料等について、相当引下げが進んだという話もありますけれども、一層その環境の整備をしていこうということ。それから、マル5でございますけれども、株式投資信託の商品の多様化及び販売チャネルの多様化ということで、上場投資信託の範囲を拡大したり、将来的には銀行によるETFの窓販に向けての環境整備を行っていってはどうかということでございます。

ページをめくっていただきまして、税制のところでございますけれども、後ほどまた税制改正要望のところは改めてご説明しようと思いますので、省略させていただきます。

7ページ目、「投資家教育の推進」ということで、多様な金融取引を身近なものにするための取組みということで、各種の機関がホームページで発表しております商品についての情報をネットワーク化していこうというふうに考えております。それから、教育の問題として、例えば(2)のマル1でございますが、最近、学校におきましては総合教育ということで、いろいろな形での教育が可能な枠があるようでございますけれども、そうした学校教育の支援事業というのをいろいろな団体がやられておりますので、そうした団体を金融庁のホームページを使いまして紹介していこうと思っております。それから、証券業協会でのご努力ということで、投資クラブという形の普及促進をお願いしようということでございます。

以上のような形で、全体的に総合的な施策を講じてはどうかというのが構造改革プログラムの内容でございますが、この中の税制改正要望につきましては別途「税制改正要望」という形で別紙がございます。全体は大部でございますので、簡単に解説させていただきたいと思います。

2ページ目に、「証券市場の構造改革のための税制措置」ということが書いてございます。実はもう今週中にも税制措置については税制改正の内容が決まるという時期ですので、そういう意味ではご説明するタイミングが遅いのかもしれませんが、どういう発想でこういう要望をしたかというところに力点を置きながらご説明をさせていただこうと思います。

2ページに書いてありますように、証券市場の構造改革のためには、(1)として、株式の譲渡益課税に係る税制措置、(2)投信に係る税制措置、(3)ETFに関するもの、(4)配当課税に関するもの、最後に、(5)高齢者貯蓄を経済活性化に役立たせるための贈与税の特例措置、こういうふうな形で5つの柱を立てさせていただいております。要するに、総合的な対策が必要ではないかという観点でございます。

具体的に、3ページ目でございますが、「株式の譲渡益課税に係る税制措置」の関係でございますが、まず申告分離課税を、リスクを取ることについて、少なくとも中立、あるいはそれを促進するような税制にすべきであるということです。その1つは、「譲渡損失の繰越控除制度の創設」ということで、各国の仕組みを書いてございますけれども、各国ともこうした繰越控除制度を持っておりますので、我が国でも早急に整備した上で、できるだけ長い繰越をということを要望したわけです。

それから、「税率の引下げ」でございますが、表の一番右側に出ておりますけれども、現在、株式の場合は申告分離で26%、預貯金の利子の場合は源泉分離で20%、要望としては10%ということでございます。やはり貯蓄優遇から投資優遇といった場合に一番わかりやすいと言うと語弊があるかもしれませんが、税率については預貯金の半分の10%という思い切った引下げをすべきではないかという要望でございます。

それから、ページをめくっていただきまして4ページ目でございますが、「長期保有上場株式等に対する優遇策の拡充・恒久化」でございます。やはり私どもの狙いは、株式を長期保有していただくということであり、長期運用を前提としていただく投資家のすそ野を広げるということが重要ではないかということで、この春に、長期保有の上場株式につきましては、そこの中段の図にかいてございますように、1年以上保有している長期の株式を売った場合には、譲渡益からの特別控除としては 100万円の控除ができるという特例を認めていただいたわけですけれども、これをさらに拡充・恒久化できないかということでございます。

それから、4ページの最後のところに「申告不要制度」というのが書いてございますが、要するに、現行の源泉分離課税については所得が実際の所得ではなくみなし所得であるとか、あるいは、源泉分離課税と申告分離課税を取引ごとに選択できるといったような欠点が指摘されておりますので、将来的に申告一本化というのは避けて通れないわけですが、その中で投資家の方がすべて申告に行くということもなかなか現実的ではないのではないかと私どもは考えておりまして、そのことが投資家が証券市場に入っていく障害になるのは問題ではないかということで、申告が不要になるような簡便な制度をつくる必要があるのではないかということでお願いしております。

5ページ目でございますけれども、さらにそうした一本化への移行に際して、移行が円滑に進むように経過措置をつくっていただけないかということで、2つ要望しております。1つは「取得価格が不明な株式等への対応」ということで、遺産で相続されたとか、そういうふうな場合はなかなか取得価格が把握できないということがございます。特に平成元年までは非課税であったこと、それから、現在も源泉分離課税を利用できるということで、取引者の方は取得価格を記録しておく必要がなかったということがありますので、そうした方に取得価格を急に探してこいというのは酷ではないかということで、それが急な市場への売却につながらないように、取得価格が不明な株式への対応をお願いしたいということでございます。

それからもう1つは「現行の源泉分離課税制度利用者への経過措置」ということで、現行の源泉分離を使っておられる方が7割程度おられるということがありまして、こうした方がうまく申告一本化に徐々になれていただけるように、仕組みとして一定の規制を残した上で、あるいは今の不公平を是正した上で、少しの期間継続してはどうかという提案をしたわけでございます。

次が、6ページ目でございますけれども、(2)のところで、「株式投資信託に係る税制措置」を要望しています。株式譲渡益課税の改善が重要であることは言うまでもないのですが、やはり具体的に個人の方が証券市場に入るところというのは投信というような形で入っていくことが非常に合理的といいますか近い道ではないかということで、この点につきまして、株式投信、特に株式での運用が平均50%を超すような投信については株式に準じた投資ということで、リスクに見合った税制にする必要があるのではないかということの提案でございます。これには幾つかございますが、1つは、税率についても、株式の申告分離課税は10%と要望しておりますので、それ並みに下げること、それから、損益通算ということで、株や他の株式投信との通算を認めること、3つ目に、先ほど申し上げました長期保有株式の優遇策、特別控除でございますが、そうしたものも利用できるようにしてはどうかと、それから、損失が出た場合の繰越控除を認めてはどうかというような提案でございます。

8ページ目のETFの話は非常に技術的ですので、飛ばさせていただきます。

9ページ目の「配当課税に係る税制措置」でございますが、現在、株式を長期保有する際に配当の水準が低いということが、長期保有を妨げているのではないかというご指摘もあります。そういうことも踏まえると、配当に対します税制についても預貯金に合わせてできるだけ不利がないように、あるいは優遇されるようにというところにも力を入れていく必要があるのではないかと考えて要望したところでございます。配当については制度が非常に複雑でございますが、基本的には総合課税の世界ではあるのですが、源泉徴収を基本的に20%取るというのが現行の制度でございます。ただし、一番下の欄を見ていただきますと、1銘柄当たり年間10万円以下の配当所得のものについては総合課税での申告を不要とするという制度になってございます。他方で、一番上の欄でございますが、1年当たり50万円以上受け取る場合には総合課税というふうになっておりまして、その間の区分については、総合課税を選択するか、または35%の源泉分離課税を選択するというふうになっております。35%というのは預貯金の金利に対しましても非常に高いものですから、ここは20%、預貯金並みの金利でよいのではないかということで、こうした区分を簡素化した形で整理してはどうかという提案でございます。

下の方は技術的ですので、飛ばさせていただきます。

10ページ目でございますけれども、これは、実際、 1,400兆という個人金融資産があるというふうに言われておりますけれども、60歳以上の高齢者の世帯に50%程度、約半分が集中しているという現状がございます。50歳以上という世帯をとりますと75%という数字にもなるということで、高齢者の方が実は個人金融資産をいっぱい持っておられます。しかし、高齢の方に直接金融市場、証券市場に入ってきていただくということはなかなか難しい面もあろうかということで、そこで、こうした高齢者の方が子や孫に贈与をするという際に、右下にございますが、株式やETFや適格な株式投信に運用するという条件で贈与の特例をつくってはどうかとの提案です。この特例の内容が一番上の四角に書いてございますが、 1,500万円を限度に、5分5乗方式で最大 550万円までの非課税ということでございます。これは、実は、住宅資金についての贈与についての現行の制度をそのまま移しかえてきたものでございますので、今でもこういう制度はございますけれども、株で運用するということを条件に贈与の特例をつくってはどうかということで、思い切った証券市場への資金の流入を促してはどうかということでございます。

以上、今回のいろいろな作業の中で認められる部分と認められない部分があるかと思いますが、今申し上げたような思いでこうした要望をしたということでございます。

以下、「金融資本市場の基盤整備に関する税制措置」、これはいずれも今後のご議論では重要な部分があろうかと思いますけれども、今回は省略させていただきまして、資料だけということにさせていただきたいと思います。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明に対するご質問、ご意見でも結構ですし、あるいは、今のご説明をいわば参考にしていただきまして、先ほども申しましたが、本日は第1回目の会合でございますので、今後この部会で審議を行っていく上でどういう視点とか考え方に立って審議を行っていったらいいかといった視点であるとか基本的な考え方、あるいは、もちろん具体的にこういう内容を採り上げていったらいいのではないかというご意見等でも何でも結構でございますので、幅広くお感じになっていること、あるいは今の説明についてのご意見等をあわせて、皆様方からご自由にご意見をちょうだいしたいと思います。

どなたからでも自由にご意見をちょうだいしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ちょっと会場の部屋の形から見ますと、気がつくとは思いますけれども、蝋山先生の方式というのがございますけれども、ご発言希望の方はこれを立てていただいて、前に落ちないように気をつけていただきたいんですけれども、もし私の方で気がつかないことがありますといけませんので、その場合にはお声をかけていただければと思います。もちろんそれ以外の方法でシグナルをいただいても結構でございます。

どなたからでも結構でございますので、いかがでしょうか。どうか、第1回目ですので、幅広くお気づきの点を気楽にお出しいただければ大変ありがたいのですが。

池尾委員、いかがですか。

○ 池尾委員

そんなに総論的に申し上げることがあるわけではありませんが、私が日ごろちょっと気にかかっていることをせっかくですから1点申し上げたいと思いますが。

金融システムの役割といいますか、証券市場、資本市場の役割と言ってもこの場合はほとんど同じことだと思うのですが、我が国の場合は、金融システムとか資本市場というのは資金を流す場なんだという認識がちょっと強すぎるのではないかという気がいたすんですね。私は今後の日本の金融の姿を考えた場合に、日本経済は、足元が低迷しているというだけではなくて、中期的に考えても成熟化が進んだ経済になっているわけで、そういう状況において企業部門にせよ大幅に外部資金調達に依存するというふうな状況が、むしろそれは不正常な状況であって、大幅に外部資金調達に依存するというふうなことはむしろなくなっていくというか、ないのがノーマルのような状況に経済の発展段階として来ているのではないかというふうに思っております。

つまり、標準的な企業の場合には、内部留保の範囲内で設備投資を行うというのがむしろ通常の姿であるような段階に今来ているのではないかと思うんですね。そうすると、では資本市場とか金融システムは何のためにあるんだという話になるかもしれませんが、これは、リスクを評価したり、投資機会を発見したり、リスクの評価とか情報の集約とかそういうふうな機能に資本市場の役割がますますあると。ファイナンスの分野ではもとから資本市場の機能というのは情報効率性の観点から考えるというのがむしろポピュラーでありますけれども、日本の場合も、経済発展段階から考えたときに、資本市場の機能というのはリスクの評価であったり情報の集約であって、お金を流すというふうなイメージでものを考えて制度設計を考えるというのはおかしいのではないかというふうなことを思っております。そういう観点から言うと、やはり価格形成が適正に行われるかどうかということがもっぱらの主眼であって、我が国の証券市場において価格形成が適切に行われているかどうかというふうなところが、現状を評価し今後の制度設計を考える際の基本的な視点になるのではないかと。つまり、金詰りが起きているとか起きていないとかということではなくて、価格形成が適切かどうかということだと。

ちょっと余談で、ついでだから言いますが、価格が下がると、例えば株式市場において、株価が下がると株価対策だと言っているようでは申し上げた資本市場の本来の機能を阻害するようなことを逆にしているという話になりかねない、そういう状況にあるのではないかというふうに思っておりますので……。こんなことを今申し上げるのは適切なのかどうは知りませんが、最初に発言しろということでしたので、一応以上のことを申し上げさせていただきました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

今のご意見についてのご意見でももちろん結構ですけれども、それ以外に中身についてでも結構ですので、いかがでしょうか。

東委員、お願いします。

○ 東委員

今の先生のお話で、価格形成を効率化するために個人のすそ野を広げようというのがこのいただいたプランだと思うんですね。これを拝見して2つ感じたのですが、1つは、仮にこれが実現したときに、望むような金融資産構造の変化がどの程度起こっているんだろうか、というのをいつどう想定したらいいのかというのが1つ。

それからもう1つは、7ページに「投資家教育の推進」というのがございましたけれども、ここの中では一言も投資家の運用に対する自己責任という文言がなくて、「安心」と「身近」という単語が非常に目につくんですね。ここは、運用に対する責任は自分でとるというところをどう教育するかという、ここの視点をより強く出す必要があるのではないかなと、そんな印象を受けました。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

今の第1点の方について、事務局の方で何か見通しみたいなものはおありなんでしょうか。

○ 鈴木政策課長

どの時期にどのぐらいということは私どももなかなか想定したことがないのですが。例えば、個人金融資産に占める今のいわば株式等のウエートなどを見ますと、やはり相当低い。なかなかアメリカ並みというのは難しいのでそこを目標にするのもいかがと思われますが、他方で、非常に間接金融の強いと言われていたドイツ、この水準は金融資産で言うと大体1割程度の運用になっており、日本の大体倍近い数字になっているということもありますので、何とか個人金融資産の中で、それはどういう根拠かというのはなかなか説明が十分ついていない部分もありますけれども、やはり1割程度はそういうふうなリスクのある、あるいは将来の運用が期待できる分野に振り向けられるようなことがあっても当然自然ではないかと、逆に言うと、そういうふうなことができるような状況あるいはインフラを整備すべきではないかという思いはございます。ただ、そこは余り論理的でない部分がありますので、やや直感的な私どもの感じということでございます。

○ 神田部会長

何年後に一応お考えですか。

○ 鈴木政策課長

できるだけ早くというふうな感じでは申し上げたことはありますけれども、ちょっと具体的な年数というのはまだ出していないのですが。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

浜委員、どうぞ。

○ 浜委員

ありがとうございます。ほとんど先ほどのお二人の委員のご発言を繰り返すような感じにもなるかと思うんですけれども。

きょうご説明いただいた資料ではサブタイトルが「個人投資家が主役の証券市場の構築に向けて」ということになっていますけれども、そうではあるんだけれども、この説明を伺っていると、やはりこれは調達の金融の発想から、調達する側の都合に従って個人投資家を主役にしなければいけないという感じで議論をして、したがって、何となくなりふり構わず何もやってもとりあえず個人投資家を引っ張り込まなければいけないという感じになっている面というのがこのところ数日盛んに――以前からですけれども、新聞などでも報道されている税法の議論などもそういうふうになっている面もあるという感じが非常にいたします。

ですから、何のために個人投資家が主役になるのかというと、やはりこれは個人投資家のために主役になってもらうという発想でないと多分バイアスのかからない議論というのはできないだろうなと思いますし、そういう観点から言えば、必ずしもできるだけ早く無理をしてゴールインしなくても、本当にきちんとした形をつくるためには早くやることが目的で、今までが余りにも個人不在の市場だったからその意に沿わなければいけないという面もあるのかもしれませんけれども、やはり「個人投資家が主役の」という言葉に忠実な形での議論と実態の進み方というのは差し当たり調達の金融から運用の金融へ大きく変化を、この個人投資家を呼び込むということで、そういう格好にしたいのであればそこのところの視点がずれるとまずいなという感想を持つ次第でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

○ 蝋山分科会長

少し視点を変えて。証券市場の構造改革プログラムというのを拝見したときに、ややがっかりしたんですね。「やや」というのは、この場だから「やや」をつけたんです。それは、長年、旧大蔵省証券局が何を苦労したかという点に関する思いが余り入っていなくて、金融庁になったらやはりこういう形かということなんです。

一言で言えば、証券というのは何ですかということに関してのチャレンジをあきらめて、通念にどっぷり浸ってしまったと、間接金融がうまくいかないから直接金融だと、個人に株式市場に入ってもらいましょうというふうに。長年、株式市場がおかしくなると――鶴島さんがおられるけれども、今までに何遍行かれましたか、東京証券取引所なり、兜町なり、北浜なりが言われてきたことの繰り返し的な部分にモダンな装いをつけて述べておられるというところが私は感じ取られたんですね。これはこれでいいんですよ、これはこれで必要だと思いますが、やはり証券というものに関する伝統的、19世紀以来のコンセプトを打破するぐらいの意気込みがなければならないのではないかと。投資信託の方が書いてあるからまだいいのかもしれませんが、昔は証券投資信託で、今度は投資信託ですから、そういう点は少しは改善されているのかもしれないけれども、これはもう実現されたと。

もう少し戦略というよりも戦術的に言いますと、例えば国債の話が全然出ていない、債券の話がほとんど出ていないわけですね。私は、個人が主役の市場と評価といったときに一番大事な点は、経済学的に言えば、the pure rate of interest 、あるいは、安全な収益率。今は何%ですか、僕はわからないんです。アメリカやイギリスで言えば、TBとかそういう元本が安全なディスカウントのものをベースにして3カ月後のTBの金利が安全な利子率、 pure rate of interest の一番近いプロキシーとして、世の中の人がたくさん取引をしていて、時間選好が純粋に反映されるものとして考える、それをベースにして、リスクプレミアムとか、あるいはさらに長期の時間に関する選好度合というのを考えていく、そういう評価ができていると思うんですね。ところが、日本の場合にはそういう金利はあるんですか。僕はないと思うんですね。みんな適当にやりますよ、インターバンク・レートとか何とかで適当にやるけれども、僕は世の中の社会全体としてのそうした評価を反映するという金利はないというふうに私は思います。

そういうふうなことを考えていくと、池尾さんの理論に乗っかっても、やはりもう少しこの証券市場というのを幅広く考えて、戦術的に考えても、例えば、債券を個人に持ってもらうようにしよう、個人の意向が債券市場に反映されるようにしようよというようなことが何で出てこないのかというのが非常に不思議なんです。興銀の調査によると、この10年間で蓄えた個人金融資産 410兆円の88%が国の債務に回っているという分析があります。そんなふうに考えてみると、資金の流れの考え方が大分古いというふうに池尾さんはおっしゃるけれども、やはり日本の資金の流れは少しゆがんでいるのではないかと、大いにゆがんでいるのではないかと、何で個人の貯蓄が債券の保有に直接向かうようになっていないのだろうかと、そんな感じもします。基本的に言えば、もっと証券市場というのは大きいのではないかということです。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

黒沼委員、どうぞ。

○ 黒沼委員

証券市場を改革して何ができるかということを考えたときに、貯蓄重視から投資重視へ転換させるということは、もちろん証券市場を再構築しただけでは足りないのでありまして、金融制度全体の問題だと思います。金融制度全体の運営の中で、貯蓄制度も改善し、証券制度も改善し、双方が競争することによって適正な国民の金融資産の運用とか企業の調達資金の配分というのが決まってくるのではないかと思います。

そのときに、証券市場にとって何が大切かというと、結局は、ディスクロージャーと不公正取引の規制に尽きるのではないかというふうに思います。そういう観点からこの構造改革プログラムを拝見させていただきますと、4ページ目の「発行企業の株主重視の経営姿勢の確立」というところで、「取引所等への検討要請」というふうにあるんですが、ここに挙がっている具体的な内容はいわゆるディスクロージャーなんですね。ここにあるディスクロージャーというのは、1つのやり方としては取引所に委ねて、取引所の自主規制によって行わせて、それを取引所あるいは証券市場におのおの競争させてよりよいディスクロージャーに向けて促していくというやり方もあるでしょうけれども、法によって強制するということも考えられるわけでして、法律改正とか府令の改正でこれを達成するということも視野に入れていいのではないかと思います。

もう1つ、不公正取引の規制は同じページの上の方に出ていますけれども、インサイダー取引についてはここには書いていないんです。どうも現行のインサイダー取引規制の法律の内容とその運用の実態がかみ合っていないように私には思われます。いずれが適切なのかということを考えて、もし必要があれば法律を改正するということも検討されてよいのではないかと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

斎藤委員、どうぞ。

○ 斎藤委員

今、ディスクロージャーの話が出たわけですが、私も非常にこれは大事な点だと思うんですね。ただ、そうではあるんですけれども、個人投資家に安心してもらうために市場インフラの整備としてディスクロージャーをどんどん拡充しましょうということだけが突っ走るというのは多少首をかしげるところもあって、先ほど議論が出ましたけれども、やはりそこでは投資家の自己責任という観点は外せないと思うんですね。1つ間違えると、個人投資家に安心してもらうためには何でもかんでもどんどん情報を出しましょうと、場合によっては、投資家はものを知らないから、投資家にかわっていろいろ必要な情報を経営者の方で出してあげましょうという話になって、ディスクロージャー制度が非常に混乱するという事態が予想されるわけであります。

ディスクロージャー制度というのは、ご承知のように、投資家に対して優位な情報を持っている経営者がそれを市場にシグナルする手段であります。必ずしも投資家に比べて経営者が優位な情報を持っていないというものについてまで経営者にいろいろ見積りをさせるという議論が最近非常に多くて、この領域に住んでいる人間としては非常に困っています。そういうディスクロージャー制度に過剰な期待をかけすぎない、そのためにはやはり投資家の自己責任という観点はきちんと押させておく必要があるのではないかという感じはいたしております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

福間委員、お願いします。

○ 福間委員

最初にお話がありましたように、これは長野証券局長の時代から始まって今日に至っている問題で、銀行・証券の相乗りの問題、持合い株解消後の受皿の問題、あるいは個人投資家の問題としての金融サービス法の問題など、大きなテーマはいろいろありましたがそれぞれ解決の道を模索しながら進んできていると思います。

アメリカが1929年以降の大恐慌の中で33年法/34年法を施行、またSEC設立というインフラを整備していきましたが、やはり日本においてはバブル崩壊とともに我々が失ったものをどのように再構築するかという動きの中で、それは何も法律や組織を作るということを言っているわけではありませんが、今の議論があると思います。先ほど、日本の個人投資家の株式保有比率が1桁台だという話がありましたが、当時はそれが2桁台(11~12%)だったと記憶しています。投資信託を勘定に入れるとさらに大きかったかと存じます。それが低下した一番の原因は、やはりサクセスストーリーが崩れたということにあります。投資家は、「Greedy」ですから、儲かると思えば自ずと投資を増やしていきます。従って、株式市場というのは人為的に上がるものではなく、上げる為には、参加者それぞれが役割を果たす努力が一番大切なことです。企業の経営者はROEを上げていくことであり、仲介業者は信頼を得ることです。

市場関係者がそれぞれ役割を果たしていく上で、一つ重要なことは、市場そのものが皆の「共通資産」であるという認識を持つことです。市場を殺したらなんにもならないという「危機意識」を持たないと市場そのものが成り立ちません。本日は証券業界の方もいらっしゃるので、少々表現としては相応しくないかもしれませんが、証券の世界で「個人を殺す」という言葉があります。個人投資家を蔑ろにすることで、その場は凌げても、結局は市場全体をダメにしてしまうことになるということです。発行会社にしても、市場全体のことを考えず自分の目先の利益だけを考え、過剰にエクイティ・ファイナンスをやると、結局株価は低迷を続け、市場全体も不活性化するということに通じます。従って、やはり市場というのは参加者がそれぞれの立場で育成していかなければならないという観点が必要です。

今回のこのレポートを見せていただき、必要な論点は入っていると思いますが、問題はこれをどうやって実行に移していくかということです。ここで認識されていることは、今までこの場で議論されたものもありますが、ずっと以前からのものもあります。ただ、内容としては「Too Little,Too Late」ではないでしょうか。例えば、今回の税制改正にしても、私自身この世界に長く身を置く者としては、日本的には相当思い切っているとは思いますが、99年のドイツのシュレーダーの政策のように「パラダイムの転換」と言うところまで踏み込んで行われているかどうかは甚だ疑問です。皆が飛び上がるほど相当思い切ったことが行われてはじめて「パラダイム転換」が意識され、その政策が具体的に認識されます。ドイツの場合ですと、「投資重視へのシフト」ということが明確に打ち出されていることが伺えます。

論点は既に明確であり、政策のフレームも提示されており、「On the right track」の状態で、後はゴールを目指すだけですから、スピーディーに、ドラスティックに、実行に移していくだけと考えます。もはや10年も15年もかけてやるべきことではなく、繰り返しになりますが、今回の議論を実現することを大前提として、スピードを上げるということが一番必要なのではないかと思います。

個人投資家の問題で言えば、昔のような「事前規制」の時代ではなく、「事後監視」という体制になっていますが、「市場のプロセスを監視」する機能がありません。事故や不正が起きて罰する仕組みはありますが、プロセス段階からチェックする仕組みがなく、自己責任の原則ということで見過ごされ、もう少し注意を払えば阻止できたかもしれない問題がここ数年随分あったのではないかと感じます。現状の証券取引監視委員会体制は、過去の損失補てん問題の解決から設立された経緯もあり、事故が起きないと動けない。しかし、市場を守る為には、事故の発生過程をウォッチする仕組みが必要です。保護行政に帰るわけではありませんが、個人投資家を健全に育成するという観点で、知識を広めたり、情報を流したりするプロセスがあっていいと思います。市場というのは常に動いているものであり、仮に事故が起きた時でも、問題解決には市場と一緒に動いて行くことが必要なことです。

長くなりますので、これくらいに。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

貴重なご指摘だったので、それをどうやって実現したらいいのかということはぜひ今後も議論させていただきたいと思います。

前田委員、どうぞ。

○ 前田委員

今、福間さんのおっしゃったことと全く私も同感でございまして、最近、上場会社に対して意図的に信用毀損する例が実際に起こっております。いわゆる30社問題とかいうようなことで、よくよく見れば名前がわかるようなものを意図的に言って、それについてはだれも罰されないというような、極めて未成熟な日本の資本市場なのかなと。さっき福間さんが言われましたように、起こってからやっつけるというのは当たり前の話なんですけれども、経済大国である日本でこういうことが堂々と起こって、まさにこういう審議会で冷静に議論をしないでいいのかなというのが1つです。

それからもう1点は、先ほど自己責任原則の確立というお話がございましたが、非常に逆説的な言い方を申し上げますと、明治以降これだけ文明開化が進んで教育が進んだ我が国でこういうのがいまだに課題になっているとしますと、これは何が原因なんだろうかと。これはちょっとやりすぎではないかなと。自己責任原則の教育をいくらしても、この株式市場に個人が投資をするとは考えられませんで、それは自分で判断すればいい話で。お尋ねしたいのは、先進国でこういうことをこういう審議会の場で議論をしている先進国はあるんでしょうかという点をお尋ねしたいと思います。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

先ほど、村田副大臣から冒頭お話がありましたように、ビッグバンというのは着実に実施されているんだと思います。そういう中で、次にどうしていくかという問題意識をとらえられたペーパーだと思います。その中で、着実に実行されているんですけれども、実施してきてみるといろいろな問題点がやはりあったんだなと思うんですね。例えば、登録制により、自由な競争ということで、いろいろな種類の新しい証券会社が入ってきた、それはそれで大きな成果が上がっているんだと思いますが、ところが思いもしないようなことも生じてしまい、不適切な大株主であったり、不適切な経営者というのをどうやって排除できるかというような仕組みがやはり必要なのではないかというような面が出てきた事例もあったわけです。

例えば、先ほど、ディスクロージャーについてのご指摘があり、そのとおりだと思いますけれども、投資家に大量の情報を目論見書という形で与えれば、それで十分ディスクロージャーができている、リスクに対する説明はできているという期待がこもっていたんだろうと思いますが、実際には膨大な目論見書をもらって投資家が本当に理解できるようなものであったのかということも考えてみる必要はないでしょうか。アメリカではプレーン・イングリッシュ、わかりやすい目論見書というようなことが言われたこともあったと思いますが、本当に必要な情報がもっとわかりやすい形で提供されるような工夫が必要であると思います。あるいは、インサイダー規制等をきつくした関係で、それはそれで効果があったと思いますが、株式というものに対する、株を持つことに対する忌避感といいますか、株は持たない方が安全なんだというような意識が、蔓延までは行かないにしても、そういう意識ができてしまったというようなこともあったのかなと思うんですね。

ですから、ここにいろいろと書かれている点について、証券会社の信任の回復、あるいは市場の信任の回復、啓蒙、いろいろなアプローチがあるんだろうと思いますが、そういう中でこういう現実に起こっている問題にできるだけ機敏に対応していくということも必要なことではないかと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

鶴島委員、お願いします。

○ 鶴島委員

先ほど蝋山先生からもお話がありましたように、今、私はこういう会議に久しぶりに出てきまして、数年前に総合部会でさんざん議論をしたことを思い出しております。あのときも、どういう切り口で金融ビッグバンという問題を片づけていくかということで随分議論をし、そして整理をした上で、かなりいい答案ができたのではないかと思っております。これは蝋山先生ご自身も当時おっしゃっていましたけれども、ほかに金融あるいは保険、こういうものと一緒に議論が進んだのですが、ほかの分野に比べてこの証券市場の議論というのは相当進んだものになったというふうにおっしゃられたのを今でも覚えています。

当時の議論でも、今後の証券市場というのは、従来はややもすれば資金調達側からの議論が多かったけれども、今後はやはり資金運用の場として、こちらにこのスタンスを置きながら議論をしていく必要があると、いう認識が強く、そういう色合いが報告書にも強く出ていたと思います。そういう流れの中で、先ほどご指摘がありましたけれども、私ども取引所も、あるいは証券界も、かなりいろいろな部分について制度改正を行ってまいりました。したがって、あそこに書かれた方向なり答申なりというものは今でも十分通用するものだと――当時、福間さんもご一緒に議論をしましたけれども、通用するものだと思いますね。ここに出てきている今回のプログラムというのは、その後、それでも足りなかったもの、あるいは、その後の環境変化によって出てきたものも含めて、かなりの部分がここに網羅されているのだろうというふうに思います。もちろん先ほどの蝋山先生のご指摘のように足りない部分もまだあるでしょう。しかし、少なくともこうした部分というのはできるだけ早く対応をしていく必要性の高いものとして挙がっている問題だと私は理解いたします。

したがって、こういう議論が出ますとそもそも論に議論がいつも戻ってしまうのですけれども、やはり今まで多くの時間を割いて識者がいろいろと指摘をしてきた、そうしたよしとする答申あるいは流れに沿って、先ほどのご指摘にもありましたように、少なくともこれからやらなければならないものをスピーティーに対処していくということが、今の証券市場の改革なり、あるいは、先ほど来指摘を受けております間接金融から直接金融への流れ、これも両面あると思いますが、調達側からも資金運用者側からも両面から見ても、そもそも論に戻ることばかりではなく、場合によってはそれも必要でしょうけれども、必要なものをスピーディーに対応していくということが肝要なんだろうなというふうに思います。

それから、今出たご意見の中で、自己責任というものと自己責任に対比されるディスクロージャーとかあるいはその他の制度というものが対峙されて話されるんですけれども、私はちょっと違うと思っているのは、自己責任原則というものを投資者に求めるためには、やはりそれを求めるだけの制度、インフラが整備されていることが必要だというふうに思うんですね。自分の判断がまさに自分の判断として自分に戻ってくると、これが自己責任の前提だと思うのです。したがって、そのインフラ整備として必要なものは、ディスクロージャーであり、公正な市場であり、証券会社の営業姿勢であり、そういったようなものがきちんと市場のインフラとして整備されていて初めて自己責任が問えるんだろうというふうに常々思っておりますので、自己責任とそうしたインフラ整備というものを対峙するような形で議論をするのはやや違和感を感じております。

感想めいたことですが、以上で終わります。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

淵田さん、お願いします。

○ 淵田委員

まず、前田委員がおっしゃった自己責任に関する教育のことでありますけれども、これはアメリカなどでも、過去10年の株高の中で非常に大衆投資家がふえたということもありまして、当局も大変重視していると私は認識しております。やはり監視とか監督でできることは限られております。幾ら検査の人の数をふやしても、投資家の一般的なレベルが上がっていかないと取り締まってもきりがないという問題がありますので。前のSECの委員長のレビットさんも、もう何十回となくタウンミーティングのようなことをやって、リスクとかリターンについてのお話を一般大衆にしていったという経緯がありますので、この点について今回の構造改革のプログラムが言及されているということは適切ではないかと思います。

それは今たまたまそういう話が出たので申した次第ですが、全体的なこの改革のプログラムについての感想を一言述べますと、証券市場の今の問題というものの背景は3つあって、1つは行政の問題もあると――行政といいますか、監視・監督をより改善することで対応できる部分、2番目は、競争の活発化で対応できる部分、3番目は、市場環境、例えば不良債権問題といったものが解決しないとなかなか解決していかない部分と、この3つがあると思います。

3番目については置いておきまして、1番目の監視・監督をどうしていくかという観点については、今回のプログラムは非常に適切なご提言、方針を打ち出されていると思っております。ただ、この競争促進ということで解決できるという部分に関しては、余り明確ではないのかなと思っております。例えば、証券会社の営業姿勢の転換に向けた方策の中で、個人投資家中心のビジネスモデル構築を奨励していくと。私が思うに、こうしたことは行政がいろいろおっしゃることではなくて、やはり個人投資家にとって受け入れられないような営業姿勢をやっているところは競争に負けていくと、個人投資家のことをよく考えている証券会社が登場し、そこが成長することによってほかも競争上そういうものを真似ていくと、特定のビジネスモデルを行政が奨励したりするのはちょっと違和感を感じる次第であります。

あるいは、もう1つ、投資単位の引下げということも求めておられますが、これはやはりどういう投資単位にするかは企業が自主的に他の企業との競争上考えるべきことであって、理論的にも、投資単位を引下げることによってかえってコストが高まり企業の価値が低くなるといったような理論も成り立ち得るわけですから、こういうことを強制する――強制ではないですけれども、行政が介入するのは違和感を感じます。

それから、ROE等の目標設定という部分もありますけれども、そもそも企業価値の指標としてROEというものが適切なのかどうか、これはいろいろ議論のあるところだと思います。例えば、向こう1~2年大胆なリストラをやるために利益の出ない状況を続けようということをやる企業があったとしても、ROEの目標を設定してしまったからちょっとやりにくいなとか、そんなことになっては非常におかしなことであって、本当に株主価値の増大につながらないかもしれない。これも基本的には企業が競争の中で自主的に決めていくことだと思っております。

以上は例に過ぎませんけれども、ビッグバンのときを振り返りますと、あのときのキーワードは「競争」だったと思います。ところが、この改革プログラムには「競争」という文字が私が見たところ1回も出てきておりません。競争政策というのは重要なパブリックポリシーの1つであると考えますので、これは登録制への移行とか、あるいは市場間競争の導入といったことで随分進展してきたということがありますので、あえて今回出てこなかったのかもしれませんけれども、こういった先ほど3つぐらい例を挙げたところに見られますように、あえて市場あるいは企業、証券会社、参加者の競争に委ねればいいところにまで踏み入ることはする必要はないのではないかという感想を持っております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

首藤委員、お願いします。

○ 首藤委員

最初に、きょうはちょっと電車の事故に巻き込まれまして、遅れてしまいましたことをお詫びいたします。

最初からの議論を伺っていないのでもしかしたらちょっと的外れかもわかりませんけれども。このタイトルの「個人投資家が主役の証券市場」ということなんですけれども、私は個人投資家が主役の証券市場が個人のためになる証券市場かということを非常に疑問に思っております。と申しますのは、日本では今急速な勢いで高齢化社会に進んでおります。そして、高齢化に関しまして、非常に偏った資産の分布があるわけです。そして、家計に証券投資をしてお金を集めるということになりますと、お金を持っている層により多くリスクの高い投資を行ってもらうということになろうかと思うんですけれども、そういった層にそういうリスクの高い投資を直接に行わせるということが果たして望ましい政策なのだろうかと。私はむしろ、個人投資家にとって――個人にとってと申しますが、望ましい市場というのは、個人の代理人としての機関投資家が健全に競争をして、そして、個人の利益を実現するような、そういう市場ではないだろうかというふうに考えております。

ですので、この中で、そうしますと、個人の代理人としての機関投資家として出てきていますのが投資信託ですね。投資信託というのは、ご存じのように、個人の家計の視野で見ますと2~3%でしょうか。そうしますと、今の日本のシステムですと、これから非常に大きな問題になるというのはやはり年金の運用だと思います。日本ですと年金は厚生労働省ということになりますけれども、そこに今すぐどうしろということは申し上げられないんですけれども、しかしながら重要なのは、受託機関の役割だと思うんですね。個人の代理人として年金資産の運用にかかわる受託機関というのがどのように行動するかということが本当は個人の利益になるような市場をつくり上げるということではないかというふうに、私は最近は強く感じているわけです。

しかしながら、ここではそういったところには全く触れられていないということで、もちろん直接に個人が市場に入っていくためのそういうルートを拡大するということは非常に重要なことだと思いますが、それにはいろいろな意味で時間がかかる。そういう時間を十分かけるということを承知でこういうのは取り組むべきであろうかと思いますが、もう少し緊急な課題というのは、やはり、個人の代理人としての機関投資家というのを果たして日本できちんと育てて――育ててという言い方はおかしいですが、行動しているんだろうかと、私はここがポイントであろうかと思います。ですので、これを拝見した限りでは、そういう視点というのが欠落しているなというふうな印象を持っております。

以上でございます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

杉崎委員、どうぞ。

○ 杉崎委員

機関投資家の一部でございますので、今のお話はなかなか耳の痛いことでございますが。やはりこの議論については、今おっしゃられたように、投信、年金マネー、こちらにもブリッジをかけたような議論が、恐らくこの「証券市場の構築に向けて」というところでは担い手の議論をかなり中心にされていらっしゃいますので、今のご指摘のとおり、それに年金を加えて 進めていただくことがポイントになるかなというのが1点でございます。

それからもう1つは、個人投資家が主役というところで、家計が主役でもよろしいのだと思いますが、この変化が今どういうふうに起きてきたのだろうかというところについて、もう 少し突っ込んだ検討の必要があるのではないかと。これについて実務家の我々から申し上げますと、個人の投資家はかなりポートフォリオで、いいかえれば家計セクターがポートフォリオを考え出したというところ がポイントと考えております。したがって、リスク・アンド・リターンについてのもう少し正確なところ、これは蝋山先生のおっしゃった金利の問題も背景にございますので、そちらとランダムウォークする世界とのリスク感覚というのをもう少し明らかにしていかなければいけないなというような感じがいたします。もう既に個人はかなり――日本は遅れているとか遅いとか言いますけれども、変化を始めたというのが私ども窓口の実感でございます。

それからもう1つは、この10月から 401kという年金のところに自己責任の世界が入ってきます。これは大変な変化でございまして、今変化を始めた個人の方とつり合ってこれが進化していけるかというところがもう1つ課題になっているのではないかと考えておりまして、この面については先ほどの投資家教育のところがあるのでございますが、これについても、我々金融に携わる者ももう少し全力投球でやっていかないとバランスがとれないかなというような気がしております。

ちょっと違った観点から二、三、感想を申し上げました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

古賀委員、どうぞ。

○ 古賀委員

このレポートがどうだとかいうのはちょっと置いておきまして、このプログラムもそうですし、最近の税制論議もそうですが、個人と言うときに、個人というのをどうイメージするかというのがかなり議論の中でさまざまなような印象が非常にございます。例えばキャピタルゲイン課税の論議なんかが非常に典型だと思いますけれども、毎日好きで売ったり買ったりしている投資家もいます、その結果、これはマーケットの話ですから、大もうけする人も大損する人もいます。それから、片方、親の遺産でという人もいます。それから、起業家で、自ら原始投資して、それが自分の活動の成果となって果実を得るという人もおります。それを全部個人として議論してしまいます。

したがって、何か同じことを議論しているときに、それは個人にとって――若干今日なんかの議論でもあると思いますけれども、どういう個人を想定してどう組み立てをやっていくのかというところは、個人という一くくりで議論していくだけではなかなか現実的な姿というのが出てこないのではないかと、その辺は実態面も含めて個人がどうなっているかという共通認識を持った上で議論をしていくことが必要ではないかなと。

本日のには余り関係ないんですけれども、最近の議論でそう感じますので、一言だけ。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

太田委員、どうぞ。

○ 太田委員

私も、前回というか、金融ビッグバンというか、その場面には参加をさせていただいているわけですが、私のような利害関係者以外の立場から言わせていただければ、大変細かい詳細な話をぎちぎち詰めていいものができたかなというふうに思ったわけですが、大変見事に流れ去ったということが実感であります、あのときは大変いいものができたと思って鼻高々だったわけですが。

狭い範囲での株式という意味での証券市場ということで個人投資家が主役ということを言うとしたら、この足元の話では、大変異常な経済のもとで流動性のワナというか、マネーに対する大変な偏愛が生まれてきている状況で、何をやっても恐らく効果がないということになるのではないかというふうに思うわけですが、そう言っていてもしようがないので、前回、取り残してきたもの、しかし、大変重要だけれども、取り残さざるを得なかったものにどういうふうにこの審議会として踏み込んでいくかと、こういうことが重要になってくると思います。

多分それは雑駁に言って2つあって、1つは、証券会社、市場の担い手にのびのびと活躍をさせて、やや乱暴でもいいからやってもらって、その後の不正なり何なりを強力に排除していくと。風説の流布による空売りという、さっき前田さんがおっしゃったように、97年、98年当時のような状況が再び生まれつつあるというのは大変嘆かわしい話だと思います。日本型SECというところが、先ほどからの話にありましたけれども、いかんせんこのマーケット市場にいろいろな判断を委ねていくというには余りにも弱々しすぎる。監視あるいは不正の排除ということが十分に行われないマーケットの価値判断が金融ばかりではなく企業や行政も引きずり回すという状態は、極めて異常だと思います。ここは思い切って、大きな姿でもいいので、大きな改革をしていく必要がある。これは前回取り残したことの1つだと思います。

それから、非常に乱暴な言い方をすれば、やはりコストの問題、税をどうするかという問題が大変大きいと。税はコストでありインフラであるということなわけですから。ただ、いかんせん税を扱っているところがここの官庁ではないということもあります、最終的には与党を動かし、小泉さんがどのぐらいわかっているかどうかはわかりませんけれども、それを動かしていくということにどうつなげていくかという戦略みたいな話が必要かなと言うふうに思います。そういう意味からすると、自民党の税制改革案は今日あたり新聞に載っていますけれども、大変中途半端で直接金融にシフトしていくんだと、投資にシフトしていくんだという理念からはほど遠い内容だというふうに思いました。そこにどういうふうにプレッシャーをかけていくかということは、実態的に、我々がせっかく議論をしたことが実効をあらしめるための最大のポイントではなかろうかというふうに思っております。これは副大臣にも頑張っていただきたくお願いをということでございます。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

○ 斎藤委員

先ほどの発言をちょっと補足させていただきたいのですが。

私はディスクロージャー制度と自己責任というのを対比させて申し上げたつもりは全くなくて、投資家に自己責任を求める前提としてディスクロージャー制度の充実というのは不可欠な条件であると確信しておりまして、それが自分の専門領域でもあり飯の種なものですから、それは確認させていただきます。ただ、その上で、経営者が投資家と同じ立場でしか情報を持っていないようなことについては、これは投資家が自分の責任で評価し判断しなければいけないわけでありますけれども、そういうものについても最近はともすれば、経営者が投資家にかわって情報を開示すべきであり、かつ、開示した情報について責任を持つべきであると、そういう議論が出かねない状況がしばしばございますので、あまりディスクロージャー制度に過剰な期待を持つのも危険ではないかということを申し上げたに過ぎません。その点だけお断り申し上げておきます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

予定の時間も実はちょっと遅れぎみというか、超過ぎみになっておりますけれども、この際皆様から何か意見がございましたらと思いますが、いかがでしょうか。

きょうは非常に活発にご意見をいただきまして、本当にありがとうございます。大きく言って、恐らく私の感じでは、2つぐらいにまとめられるのではないかと思うんですね。1つは、この構造改革にも出ておりますが、やるべきこと、やれること、これはとにかくスピード感を持ってどんどんやろうというのが1つ。もう1つは、しかし、じっくり議論すべき事項があるということではないかと思います。その際は、現在、例えば個人投資家がどういう状況にあるのかという現状についての認識とか調査ということをこの時点できちんとやった上で議論すべき事項もあるし、そういうこととは離れてというんでしょうか、考え方なり政策、あるいは蝋山先生の言葉ですと戦略・戦術的なそういう視点を持って物事を決めていく、それはやはり大きな問題、ディスクロージャーの問題ですとか、個人とは何かという問題とか、幾つかご指摘いただきましたけれども、そういう問題は、非常に大きな問題ですけれども、きちんと議論をしていく必要があるように思います。

きょういただきました非常に多数のご意見を踏まえて、今後の当部会を進めさせていただきたいと思っておりますけれども、蝋山先生、何かございますか。

○ 蝋山分科会長

いえ、ありません。よろしくお願いします。

○ 神田部会長

それでは、そういうことで、本日のご議論をちょっと整理させていただきまし

て、日本の証券市場は今後どうあるべきか、そのためにはどういう施策が必要なのかといった、とにかく大きな視点から今後も部会での議論を進めていきたいと思います。

他の部会も同様でございますけれども、いずれにしましても検討を進めていくに当たりましてはより実務的な検討あるいは専門的な観点からの調査・検討をする必要が出てくるということかと思いますので、他の部会と同様でございますが、必要に応じてこの部会でもワーキンググループというものを設置させていただきたいと思います。

実は、早速と言ってはなんですが、本日、設置をさせていただきたい、そういう提案をさせていただきたいワーキンググループがございますので、事務局からご説明をいただきたいと思います。

○ 細田企業開示参事官

それでは、私、企業開示参事官の細田でございます。

お手元の資料、下から2つ目の束でございますが、「ディスクロージャー・ワーキング・グループの設置について」という縦長の紙がございますので、それに沿って説明させていただきます。

趣旨は、この部会にこのディスクロージャー・ワーキング・グループを設置させていただいてはどうかということでございます。これは先ほど説明いたしました「証券市場の構造改革プログラム」の中におきまして、個人投資家にとって魅力ある投資信託の実現の環境整備の一環といたしまして、投資家にとってよりわかりやすくするための目論見書はどうしたらいいのか、あるいは、投資信託の販売手数料の引下げのための環境整備、こうした観点から目論見書の記載内容の見直しということが必要ではないかということが言われております。そこで、当ワーキンググループにおきまして、当面はこうした投資信託の目論見書の問題を検討させていただきたいということでございます。

なお、この問題の検討の議論がまとまった後におきましては、ディスクロージャー制度におけるその他の中長期的な視野も含めた課題につきまして、幅広い観点からの議論を行わせていただきたいということでございます。

下に幾つか資料がありますが、これは参考資料ということでございますので、今日はご説明を省略させていただきたいと存じます。

○ 山崎市場課企画官

引き続きまして、「証券決済システムの改革に関するワーキング・グループの設置について」、ご説明させていただきたいと思います。

証券決済システムは我が国の証券市場の国際競争力を左右すべき最も基礎的なインフラと言うことができるかと思いますが、当審議会におきましても、平成12年6月に、池尾先生を座長にいただいて、「今後の21世紀に向けた決済システム改革について」という報告書をおまとめいただいております。

前国会でいわゆるコマーシャルペーパー法と株保管振替法の改正法が成立いたしまして、いわば証券決済改革の第一弾が達成されたということでございますが、現在、私ども、コマーシャルペーパー以外に、社債、国債を対象といたしました証券決済システムを構築すること、それから、現在、コマーシャルペーパーは単層構造の決済システムになっておりますので、これを効率化して多層構造の決済システムにするということを主な内容といたします法案を検討しております。こういった法案の検討の過程でさまざまな問題が出てくるかと思いますが、こういった問題に対して専門的なご意見をいただきたいということで、ワーキンググループの設置をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

今のはちょっと簡単だったかとは思いますけれども、時間の関係もございまして、簡潔にご説明いただきました。2つのワーキンググループの設置を考えておりますけれども、この2つのワーキンググループの設置について、お認めいただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○ 神田部会長

ありがとうございます。

どうぞ、高橋委員。

○ 高橋委員

もちろんタイムリーだし大賛成なんですが、1つ質問を。

ディスクロージャー・ワーキング部会で当面の問題がまとまった後、「幅広い中長期的な観点」というのは、投信以外のディスクロージャーも含めてということですか。

○ 細田企業開示参事官

投信に限らずという意味でございます。

○ 神田部会長

よろしゅうございますか。

ほかにご質問等はございますでしょうか。

それでは、現在ご説明のありました2つのワーキンググループを設置させていただきます。ワーキンググループの人選や、実際の運営の細目の詰めの問題つきましては、これも他の部会と同じ扱いでございます。恐縮ですが、差し当たり私にご一任をいただければ幸いでございます。このワーキンググループでのご審議の今後の展開の過程で、皆様方からさらにいろいろご注文、ご要望、またご意見を賜りたいと思っております。

実は時間的にこの第一部会そのものの立ち上げが遅れたということもございまして、先ほどからのご意見の中にもございましたけれども、やるべきこと、やれることはスピーディーにやりたいということもありますものですから、立て込んでおりまして大変恐縮でございますが、今事務局から説明してもらいました2つのワーキンググループにつきましては、あらかじめ、ディスクロージャー・ワーキング・グループの方の座長を岩原委員に、証券決済ワーキンググループの方の座長を前からの続きで恐縮ですが池尾委員にそれぞれお願いすることで内諾をいただいておりますので、大変お忙しいところを恐縮でございますけれども、よろしくお願い申し上げます。

また、各ワーキンググループのメンバーにつきましても、きょうの部会の立ち上げがちょっと遅れましたこともございまして、きょうご承認いただけることを条件といたしまして、あらかじめ私の方で座長とご相談させていただいておりますので、本日の会合の後に事務局の方から配布させていただきたいと思います。

そういうことで、ワーキンググループには早速お仕事をしていただくということで、大変恐縮でございますが、日本のためにということで、ひとつワーキンググループの座長の先生、メンバーの皆様方にはよろしくお願いを申し上げます。また、その審議の結果、中間の状況を含めて、この部会で皆様方にご審議をお願いすることになるかと思います。

あと、ワーキンググループの開催予定等につきましては、決定しました後、直ちに事務局からご連絡させていただきます。

この時点で何かございますでしょうか。

○ 細田企業開示参事官

ディスクロージャーのワーキンググループでございますが、早速、明日の午前中、開始させていただきたいと思います。

○ 神田部会長

申しわけございませんけれども、非常に重要な問題でございますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、本日は6時終了をめどにしておりましたが、もう8分ほど私の不手際で延長しておりまして、この時間は借金として将来またここでお返しするように努力はしたいと思います。

本日の審議はこのあたりで終わります。

なお、この後、これもまた他部会と同じですが、記者会見というものを行うことになっておりますので、私の方で本日の当部会の模様についてお話しをさせていただきます。

最後になりましたが、事務局から連絡がありましたらお願いします。

○ 大森調査室長

次回のこの第一部会本体の日時については追って連絡・調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

ただいま部会長から借金というお話がございましたが、通常はこの部会は2時間ぐらいは――きょうはたまたま4時半から始まりましたので、1時間半という予定でございましたが、そういうことでございます。よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

何かございますでしょうか。

それでは、きょうは大変活発にご意見をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。

本日はこれで散会いたします。

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