金融審議会金融分科会第一部会(第4回)議事録

日時:平成14年9月17日(火)13時00分~15時00分

場所:中央合同庁舎第四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 神田部会長

それでは、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の第4回目の会合を始めさせていただきます。

本日は、皆様ご多忙の中をお集まりいただきましてまとこにありがとうございます。

それでは、議事に入ります前に、本年2月に第3回の会合以降の委員の異動についてご報告をさせていただきます。

まず、福間年勝委員が第一部会を退任されました。それから、専門委員として、前田晃伸委員に替わりまして、中村正人委員にご就任いただきました。

○ 中村委員

中村でございます。よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

よろしくお願いいたします。

それから、鶴島琢夫委員に替わりまして、吉野貞雄委員が就任されました。

○ 吉野委員

吉野でございます。よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

よろしくお願い申し上げます。

また、杉崎肇委員に替わりまして、宮川和雄委員が就任されましたが、本日は欠席されております。

なお、議事は公開となっておりまして、報道機関の方などのために後ろの方を席を確保しております。よろしくお願いいたします。

本日は、証券市場改革の今後の進め方についての審議をさせていただきたいと思います。

まず、ここで金融庁側を代表して、村田金融担当副大臣から一言ご挨拶をいただきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

○ 村田副大臣

皆さん、ご苦労様でございます。第4回金融分科会第一部会開催にあたりまして、一言、私の方からご挨拶を申し上げたいと思います。

本日の会合におきましては、今後の証券市場改革の進め方について幅広くご議論をいただく予定でございます。証券市場は家計、企業等の資金運用と資金調達を直接的に結びつける機能を担う基本的なインフラであります。このような認識の下、政府は証券ビッグバン、証券市場の構造改革プログラムなど、市場改革に積極的に取り組んでまいりましたが、実体経済の低迷があるとは言え証券市場は依然として活力に乏しい状況にあります。

このような状況の下、証券市場を幅広い投資家の参加する真に厚みのあるものとし、市場機能を中核とした我が国金融システムの中心を担い得るものとしていくために、金融庁は先月6日に「証券市場の改革促進プログラム」を発表したところであります。

お手元にお配りしておりますこのプログラムは、誰もが投資しやすい市場の整備、投資家の信頼が得られる市場の確立、効率的で競争力のある市場の構築、この3つの具体的な目標と、それぞれの目標に対応するより具体的な施策を掲げているわけであります。

具体的には、誰もが投資しやすい市場の整備といたしまして、証券会社、投信会社、投信顧問業者の最低資本金の引下げ、証券会社の販売代理店制度の導入、銀行等におきます有価証券の販売など、これが1つ。

2つ目は、投資家の信頼が得られる市場の確立といたしまして、米国の不正会計事件の教訓を踏まえました監視体制の強化や会計監査の充実・強化。

3番目として、効率的で競争力のある市場の構築といたしまして、世界に目を向けた中長期的な市場のあり方の検討、上場廃止基準の厳格化や私募債市場の拡充などの市場の整備を掲げております。

これらにつきまして、この金融分科会第一部会におきまして審議をお願いする事項が数多く含まれておりますが、できる限り迅速なご審議をお願いいたしまして、可能なものは次期通常国会に法案を提出したいと考えております。

今後の証券市場改革を進めるにあたりまして、委員の皆様の忌憚のないご意見を承りますようにお願いいたしまして、私のご挨拶とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、恐縮ですけれども、カメラはここまでということでお願いいたします。

議事を進めさせていただきたいと思います。

まず、事務局から証券市場改革の進捗状況についてご説明いただき、引き続きまして、最近成立した法律の「アメリカの企業会計改革法」の内容や、ディスクロージャー制度についての検討課題等についても説明をしていただきたいと思います。その上で、これらの内容や今後の証券市場改革の進め方について、皆様方から幅広くご議論を進めていただければと思います。

それでは、事務局からの説明をお願いいたします。

○ 乙部市場課長

お手元に「証券市場改革の進捗状況について」ということで資料1から9までございますが、このうち、A4横長の資料1を左手にお置きいただいてごらんいただき、資料2の「プログラム(概要)」に沿って、プログラムの中身と現在の進捗状況を説明させていただきたいと思います。

プログラムの趣旨及び特徴につきましては、先ほど副大臣がご挨拶の中で説明されたとおりでございますが、平成4年ぐらいから始まりました一連の金融制度改革、平成10年の証券ビッグバン、制度改革をいろいろ進めてまいりました結果、日本の金融制度は制度としてはほぼアメリカ並みのものが整備されておりますけれども、実態が思うように変わっていってないという状況にございます。

制度改革の結果、競争が促進されまして、株式の販売の委託手数料はだいぶ下がりましたし、ネット専業証券のような特色ある証券会社も出てまいりました。銀行の投信の窓販も進んでいるようでございます。他方で、実体経済が低迷しているということに大きな原因があろうかと思いますけれども、証券市場は活力に乏しい状況にあります。また、個人の金融資産に占める株式・投資信託の比率も、現状7%程度と増えていない状況にございます。こういうような中で、証券市場を幅広い投資家の参加する厚みのあるものとして、今後の日本の金融システムの中心を担ってもらいたいということから、対応可能なものは速やかに実施していこうということで取りまとめたのがこのプログラムでございます。

1番目の柱が、誰もが投資しやすい市場を整備していくということでございますが、証券会社による販売チャネルの拡充というところがございます。何といっても投資家が証券市場にアクセスする一番のチャネルでございます。ここについては、特色のある証券会社に参入してきていただきたいということで、最低資本金、今、1億円と定められておりますが、これを引き下げると同時に、不適格な主要株主をチェックできるルールにしたいと思っております。それから、今、証券会社は販売代理店制度を認められておりませんけれども、これも可能になるようにしたいと思います。この2つは法律事項でございますので、金融審議会においてご審議いただきたいと思っております。

それから、信頼性の向上に向けた業務のあり方の検証でございますが、内閣府が行いました 2,000人に対する対面調査の結果を見ますと、「証券会社を身近な存在でない」と感じている人が7割弱、「信頼できると思わない」と言っている方が4割ぐらいいらっしゃる。これは証券取引をやったことのない人が全体の9割ですので、イメージの問題ではありますけれども、こういうイメージを持たれているということ自体、問題でございます。証券会社ご自身が鋭意努力されていると思いますが、行政としても実態把握を進めて、どこか問題があれば対応したいということからヒアリングを開始したところでございます。

それから、少し技術的ではありますが、取引一任勘定の範囲の見直しというのがございます。顧客が証券取引を証券会社に依頼するときには、どの銘柄の、例えば株であれば株を何株、幾らで売るのか買うのかというのをきちっと決めて発注しなければいけないということになっておりますが、価格については時々刻々変わるものでございますので、顧客の利便性という観点から見たときに、価格の指示については弾力化できるのではないかという観点から、今、見直しをしているところでございますが、できれば9月中に結論を得て、実施に移したいと思っているところでございます。

それから、銀行における有価証券の販売でございますが、投資信託を銀行で販売したところ大変好調な売れ行きを見ております。それから、先ほどの内閣府の対面調査によりましても、証券投資をしたことのない人に対して、「今後、証券投資をするとしたらどこと取引したいか」という設問がございまして、「証券会社と取引したい」という人が12%、「銀行と取引したい」という人は22%というような回答がございました。「どちらでもいい」という割合も結構あったわけでございますが、銀行も、今まで証券投資をしたことのない人が証券投資をする際に、一つの有力なアクセスチャネルになろうと思っております。

そこで、銀行と証券会社の共同店舗の実現ができるようにいたしたいと思っております。資料4が配付されておりますので、見ていただきたいと思いますが、そこに「銀行と証券会社の共同店舗に係る内閣布令の改正」というのがございます。本日、内閣布令を改正いたしまして公布いたしておりますが、その改正の概要というのがございます。現在、親子関係にある銀行と証券会社の店舗の共用制限を定めた箇所がございますが、これを削除いたしまして、そういう制約をなくしました。他方、親子関係のない銀行と証券会社については、今まで何らルールがなかったわけでございますけれども、ここについては親子関係の有無にかかわらず、銀行と証券会社が店舗を共有する際の誤認防止を図る必要があろうということから、そういうような措置を追加いたしました。

具体的にイメージがなかなか湧かないかと思いますが、5ページ目をお開きいただきたいと思います。具体的にどう変わったかというのを事務ガイドラインで示しております。1.の(1)にございますが、従来定められていたガイドラインは、証券会社と銀行の店舗の間に固定された壁、間仕切りがなければいけない、出入口が別でなければいけないというふうになっておりまして、1つのフロアで営業することはできませんでしたけれども、このガイドラインを削除いたしました。かわりに、(2)でございますが、新たに設けたガイドラインといたしまして、窓口の区別、業務主体の表示などの措置を講ずること。ありていに言えば、窓口さえ分かれていれば、同じフロアで隣あって営業をやっていただいても構いませんということにいたしました。これが共同店舗でございます。

それからもう1つ、銀行が有価証券売買を行うこと。今、証取法65条で禁止されておりますが、この例外として顧客から書面の注文を受けた場合は、有価証券の売買ができるという規定が法律上ございます。これについて、今まであまり利用されておりませんでしたけれども、この解釈を明確化いたしまして、実際に銀行がこういう業務ができるようにいたしました。資料5の最後のページをおめくりいただきたいと思います。証取法65条第1項但し書き、これは銀行が顧客の書面による注文を受けて有価証券を売買していいという規定でございますが、この規定の解釈を明確化いたしました。

(1)、銀行がこの業務を行う際には、顧客に対して有価証券の売買その他の取引の勧誘を行ってはいけないという解釈でございます。ただし、以下の行為は勧誘には該当しない。ですから、以下の行為はやっていいということでございますが、1つは、銀行が扱っている業務内容の説明を顧客に対して行うこと。それから、この業務内容について、新聞、雑誌、ダイレクトメール、その他の方法で紹介すること。それから、注文用紙とか紹介の文書を銀行の店舗に備え置く、あるいは、顧客に送付するということは勧誘に当たらない。したがって、やっていいという解釈を明確化いたしました。

それから、銀行がお客さんから受け付ける書面は、売買の別、銘柄、数、価格をきちっと書いていただく必要があるわけでございまして、この書面を一回一回の注文に必ず出していただくということが原則ではございますが、他方で継続的な定型的な取引がございます。あらかじめ定められた期日に定められた有価証券を定められた量だけ継続的に購入していくというような取引も考えられますが、これは最初に書面でそういう契約を結んでおけばできるというふうに解釈を明確化いたしました。

また資料2にお戻りいただきたいと思います。先ほどの有価証券売買の書面による売買でございますが、これは銀行はできますけれども、信用金庫とか信用組合、農協の協同組織金融機関は法律上規定がございません。これらの協同組織金融機関について法律の整備をいたしたいと思います。これも金融審議会でご議論いただきたいと思っております。

3番目が投資信託でございます。証券投資を行ったことのない投資家にとって格好の入門的な商品でございますが、これについて特色のある投信会社に参入していただきたいという観点から、証券会社と同じように最低資本の引下げ、主要株主ルールの導入をいたしたいと思います。これも法律改正事項ですので、金融審議会でご検討いただきたいと思います。

それから、信頼性向上に向けた業務のあり方の検証でございますが、これも投信委託会社は、真に投資家の利益を考えた業務運営をやっていただいているとは思いますけれども、行政としてもその実態のあり方を検証して、必要があれば所要の措置をとるということでございまして、実態把握のためのヒアリングを開始したところでございます。

それから、投資信託もディスクロージャーが重要になりました。個々の法人の発行する株式と違いまして、集合的な投資が行われているわけで、投資家にとってディスクロージャーが非常に重要になってまいります。ここについて、一方で、運用方針とか運用成果を具体的にディスクローズしているかどうかという指摘もございます。そういう面でディスクロージャーの充実が望まれます。他方で、目論見書、大変だいぶなものが購入の際に手渡されるわけでございますけれども、もう少し簡単なものでいいのではないかという声もございます。こういった点から検討が必要かと思います。これはディスクロージャー・ワーキング・グループがございますので、そちらの方で検討をお願いしたいと思っております。

それから、投資知識の普及・情報の提供。これも内閣府の対面調査によりますと、 2,000人のうち、「株式投資をするつもりがない」という人は80%、投信についても、「投資をするつもりがない」という方が9割近くいらっしゃる。その理由を訪ねたところ、一番多かったのは「知識がない」、それから、「リスクがある」、「まとまったお金がない」という回答でございます。リスクについてもリターンと見合いでございますので、これも投資知識の普及・情報の提供という点でかなりカバーできるのではないかと思います。まとまったお金がないという点についても、株式ですと投資単位は50万円程度必要ですけれども、投資信託であれば1万円から投資できますので、これも投資知識の普及とか情報の提供という点でかなりカバーできるのではないかと思っております。

この点については、金融庁といたしましても、ホームページを充実したり、学校教育での取り上げについて文部科学省にお願いしたいと思っております。それから、日銀の中にございます金融広報中央委員会に、ほかの業界団体、NPOと連携をとって活動していただきたいという要請をしているところでございます。税制についても、投資家の積極的な参加を促す税制措置ということで、次の税制改正に向けた要望を財務省に行っているところでございます。

2つ目の柱が、投資家の信頼が得られる市場の確立ということでございます。これも内閣府の対面調査の結果でございますが、証券市場を活性化して多くの個人投資家に市場に参加してもらうために、政府のなすべきことという点に対して、上位回答のうち、3つございますが、1つは景気の回復、これが一番でございまして、2番目にきたのが不正行為の規制監視をしっかりやってもらいたい。3番目が企業に財務状況、証券に関する情報をディスクローズさせてもらいたいということでございました。金融庁といたしましても、証券取引等監視委員会の体制、機能の強化を図っていくこととしておりまして、次の予算編成に向けまして、機構、定員の充実を要求しているところでございます。

1枚おめくりいただきまして、米国の不正会計事件を踏まえた会計・監査の充実・強化でございます。監査法人に対する監督の強化とか、人数の拡大を図っていきたいと思っております。後ほど、開示担当参事官からご説明があるかと思います。

それから、市場における公正な取引の確保として幾つか挙がっておりますが、一番上の信用取引について公正な取引を確保するための価格ルールの導入。これは資料7にございますが、株を持ってない人が誰かから株を借りて市場で売るのを空売りと申します。この空売りを行う場合には、公正な価格決定が行われるようにという観点から、直近についた価格以下で空売りをしてはいけないというルールがございます。

機関投資家から証券会社が相対で交渉して株を借りてきて行う空売りについては価格ルールがかかっていたわけですが、証券金融会社から株の融資を受けて空売りをする信用取引については、価格ルールが適用除外になっておりまして、ルールはかかっておりませんでした。もともと信用取引は個人の利用を想定しておりましたので、こういう違った扱いになっていたわけでございますが、信用取引の利用の現実を見ますと、半分は証券会社が自己の売買に使っているという状況にあります。

証券金融会社から株を借りて空売りするのも、機関投資家から借りてきて空売りするのも、経済効果は同じでございますので、片方についてだけ価格ルールがあって、片方にないというのはルールとして大変いびつでございますので、今般、この信用取引についても同じような価格ルールを導入することといたしました。これはアメリカにおいても導入されているものと同じでございます。

他方で、個人の行う小口の取引とか、顧客の実需を背景とした売付けを背景とした空売り、その他ヘッジ・裁定のようなものにつきましては、幅広く適用除外というふうにいたしております。これも内閣府令を改正いたしまして、本日から適用しております。

資料2にお戻りいただきまして、店頭登録市場における顧客注文が最もよい価格で執行される仕組みの導入でございます。店頭登録市場は、マーケットメイク制になっておりまして、マーケットメイカーとなっております証券会社が売り気配、買い気配を提示いたしまして、一般の投資家はそこへいってその値段で売り買いするわけでございますが、マーケットメイカーによって価格が違っております。現在、最良執行義務というのがかかっておりませんので、顧客がたまたま行った証券会社の値段で取引が成立いたします。隣の証券会社の方がもっといい条件を出していたとしても、顧客がそれを知らなければ、自分で行ったところで取引されるわけですが、これは顧客から「わかりづらい」という苦情が多うございますので、どの証券会社に顧客が最初に行っても最もよい価格で執行されるような仕組みを導入していただきたいと思っておりまして、こういう制度にするよう日本証券業協会に要請を既にいたしております。

それから、機関投資家の受託者責任の検証でございますが、これも証券会社とか投信会社と同じように実態把握のためのヒアリングを始めたところでございます。

それから、マル4マル5、ディスクロージャーの充実とかコーポレート・ガバナンス、これは証券市場における投資対象とも言うべき企業に対する要請でございます。企業の方々は厳しい状況の中で市場開拓とか新商品の開発をやっておられるわけですれども、それに割いておられる努力と同じような努力を投資家の方にも向けていただきたいという観点からの要請でございます。

1つは有価証券報告書に係る「リスク情報」の開示の充実、それから、上場企業の四半期開示の充実でございます。有価証券報告書につきましては、ディスクロージャー・ワーキング・グループでご検討いただきたいと思っております。上場企業の四半期開示でございますが、現在は半期ごとの開示でございますけれども、アメリカでは四半期開示になっております。それから、シンガポールとかマレーシア、中国でも四半期開示と決めております。投資家にとって時々刻々その企業の状況を見て投資判断をしたいというニーズが大変強うございますので、グローバル・スタンダードとも言うべき四半期開示を一刻も早く導入してもらいたいということでございます。

6月に閣議決定されました「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」の中で、こういうものを盛り込んでおりまして、これを受けて東京証券取引所におきましては、16年4月から開始する事業年度から諸外国と遜色のない四半期開示を義務づけるというアクション・プログラムを発表いたしました。現在、その実務要領を準備しているところでございます。

それから、3番目の柱が効率的で競争力のある市場の構築でございます。世界に目を向けた中長期的な我が国市場のあり方の検討。日本の取引所の法制は基本的に日本の国内だけの取引を想定しておりますけれども、こういう法制ができましてから、グローバル化とかIT化が進んでおります。ヨーロッパ、アメリカでは取引所間の提携とか合併とか持株会社の動きもございます。それから、ITを利用いたしまして、外国の取引所での取引を国内にいながら発注するというようなことも行われております。こういう動きを踏まえまして、日本の取引所のあり方について検討をして、必要な制度を整備していきたいと思っております。これは金融審議会でご議論いただきたいと思っております。

マル2が直ちに取り組むべき事柄でございまして、一番上が上場廃止基準の厳格化。これは資料8を添付してございます。最近の厳しい経済情勢の中で、取引所に上場したまま、突然破綻するという企業が相次いでおりますが、こういうことが続きますと、取引所の上場ということに対する信頼が失われますので、上場廃止基準を厳格化していただく必要がございます。そういうことを受けまして、東京証券取引所におきましては、8月20日に上場廃止基準の強化について議論をして、それを発表いたしております。

1ページおめくりいただきますと、その中身がございます。1つは債務超過基準による上場廃止基準の厳格化でございます。現行では連結及び単体の両方で3年連続債務超過になった場合に上場廃止になっておりますが、改正案では連結ベースで2年連続債務超過になった場合、上場廃止というふうに強化する案になっております。それから、新たに時価総額に係る上場廃止基準を新設することとしております。時価総額が9カ月連続して10億円に満たない場合は上場廃止ということでございます。現行ルールではこういうような基準はございません。

もう1枚おめくりいただきまして、第一部上場銘柄から第二部上場銘柄への指定替えの基準でございます。債務超過基準といたしまして、連結ベースで債務超過に陥った場合は、一部から二部へ指定替えを行うということにいたしております。新設でございます。二部に落ちて、もう1年債務超過が続くと、先ほどの基準で上場廃止になります。それから、(2)は一部上場銘柄の時価総額が20億に満たないということになった場合、それが9カ月続くと一部から二部へ落ちるというような指定替え基準を設けることとしております。この基準については、さらに議論をした上で、10月初旬には決めたいと東証では考えているようでございます。

また、資料2にお戻りいただきまして、そのほかベンチャー企業の資金調達を容易にするという観点から、未公開企業の株式売買の拡充を検討するということになっておりまして、これは日本証券業協会に検討を既に依頼しております。それから、私募債市場の参加者の範囲を拡大するということも考えております。これは適格機関投資家の範囲の問題ですので、ディスクロージャー・ワーキング・グループで検討をお願いしたいと思っております。

さらに、3番目は円滑な市場取引を支える証券決済システムの改革の推進でございます。先般の国会で社債まで含めた証券決済法制が整備されましたけれども、年内に政省令を公布いたしたいと思っております。残された株式を含めた証券決済システムの完成につきましては、9月11日より法務省の法制審議会で審議が開始されたところでございます。

最後になりますが、住宅ローン証券化市場の育成、住宅金融公庫の住宅ローン証券化支援として、この商品が円滑に流通できるよう証券決済面での実務的な対応とか、証取法上の対応について、金融庁としても検討の上、年内に措置したいと考えております。

このプログラムにつきましてはパブリック・コメントを付しておりまして、資料9に意見が出ておりますが、説明は割愛させていただきます。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、羽藤開示参事官、お願いします。

○ 羽藤企業開示参事官

それでは、引き続きまして、お手元にクリップでとめております「ディスクロージャー関連資料」という資料をお配り申し上げておりますので、そちらをごらんいただければと思います。「アメリカの企業会計改革法の成立に至るまでの経緯」と、1枚めくっていただきますと、アメリカの法律の骨子がございます。最後に、ディスクロージャー・ワーキング・グループにおける検討事項として、技術的な点も含めてどういう点を念頭に置いているのかということを紹介させていただいております。

まず最初に、アメリカの企業会計改革法は、我が国におけるディスクロージャーのあり方、あるいは、監査のあり方を検討していく上で、重要な示唆をもたらすものだと考えております。特に、不祥事の発生を抑止するという観点もさることながら、企業の競争力をいかに高めていくのかといった観点から、我が国における企業の経営の意思決定の仕組み、その経営の監視、監査の仕組み、こういうものをディスクロージャーという形を通じて投資家がどのように認識をし、そして、それをマーケットの中でどのように生かしていくのか、そういった観点から、アメリカの法律の教訓も踏まえながら、今後ワーキング・グループの場を中心にご検討いただきたいと考えております。

まず、資料の2枚目の「経緯」でありますけれども、ご案内のとおりエンロンという会社は85年に天然ガスのパイプラインの運営会社としてスタートをして、15年の間でエネルギーの卸売企業として世界最大というふうに至ったわけですが、昨年の12月に経営破綻をし、いろいろなことが表面化してきました。

そういう中で、ブッシュ大統領は、この3月に企業統治の強化、監査の充実、経営者の不正行為防止のための施策ということで10項目の提案を行いました。

議会では、4月に下院で法案が可決され、この法案の中で新しい監視機関をつくること、あるいは、監査法人が独立性、つまり監査をする企業との関係においていかに厳しい意見を出せるかという独立性の問題、また、その企業に対して一方でコンサルティング業務を行っている、そういう非監査業務との関係でいかに独立しているのか、そういった観点から規制強化という方向でこの法律が可決されているわけであります。

6月は、ワールド・コム社の粉飾決算が表面化したということで、いろいろな事例が出てきている。

そういう中で、7月になりましてから、ブッシュ大統領が不正摘発のためのタスクフォースを設置する、罰則を強化する、SECを人的にも体制強化・拡充するということで、経営者の不正行為対策を表明したわけであります。

上院では、7月に法案を可決。そして、下院の法案と上院での法案との協議が行われて、特に焦点となりましたのが罰則の強化という観点で、新しく法案が一本化という形で7月24日に合意に達して、一番下の行にありますように大統領が30日に署名をしたということでございます。

この間、SECは、一定の規模以上の上場企業に対して財務諸表が適正であることを、CEO、CFOに対して署名を求めたというのが法律の成立に先立ちまして行われまして、8月14日の締切に向けて宣誓書といった形で証明書が提出されたというのは、報道でもご記憶に新しいところだと思います。

また、この法律ができましてから、いろいろなルールがSECの下で策定されるというふうに書き込まれておりまして、その一連のルールが定められているというのが今の状況でございます。

次のページをめくっていただきまして、それでは具体的にどういう法律の中身であるのかということでございますけれども、大きく申し上げて3つ柱がございます。

1つは、監査法人の独立性を確保すること。先ほど申しましたように、監査を行っている企業に対してコンサルティング業務を提供することを原則として禁止すると。ただし、8つの業務については認められる、あるいは、税務業務については監査委員会が事前に承認することを条件に認めるということが法律で書き込まれています。

このほかにも、会計士が同一企業の監査を5年以上行うことを禁止する、あるいは、この監査法人の出身者が経営陣となっている企業の監査を行うことを1年間禁止するといったように、被監査企業と監査法人あるいは監査をするサイドの間での距離を適正に保つといったことが、この法律の中で具体的に書き込まれているわけであります。

2つ目の大きな柱が、監査法人の監視体制の強化でございまして、こういった監査法人が距離感を適正に保つために、それを後ろから監視するという役回りの新しい機関、PCAOBと略しておりますけれども、新しく設置するということも法律の中に盛り込まれたわけであります。これはSECの監督下に置かれる独立の監視機関であると位置づけられておりまして、5人の常任の委員から構成される。そして、この中で会計業界から選出される委員は3名以上になってはいけないということもあわせて書き込まれています。

権限ですけれども、公開会社の監査を行う監査法人はすべからくここにまず登録をしなければならないというところから始まっておりまして、この新しい監視機関が監査の基準とか倫理規則を策定する、また、監査法人に対して懲戒処分を監視機関が行うととなっております。それから、大手の監査法人に対しては年1回、その他の法人に対しては3年に1回という形で、直接的に調査を実施すること。そして、新しく置かれる独立の監視機関が運営するための資金は、マーケットでの資金調達額に応じてその会社から運営資金を徴収するというふうにされておりまして、一部の特定の会社からの寄付から運営資金が成り立たないように中立性を保つという趣旨の下で、こういった運営資金の調達方法までが法律の中で定められています。

3つ目の柱は、企業責任の強化ということでありまして、この項目と、次のページの「その他」という項目に関連しまして、ディスクロージャーのあり方について幾つか示唆に富む事項が盛り込まれております。

まず企業責任の強化でありますけれども、先ほど経緯のところで申しましたとおり、本法律が経営陣に対する罰則の強化という形で非常に強く最終的に打ち出されております。郵便・通信詐欺罪の禁固刑の刑期を最長20年に引上げるとなっております。既にアメリカでは証券法あるいは証券取引所法において、虚偽の記載をすることに対しては重い刑事罰規定があるわけでありますが、連邦法としては、それぞれの州を越えた郵便の手段とか通信の手段によって詐欺を働く、この結果として投資家等々を欺いたといった策略を重罪と位置づけて、現行の4倍の20年という形で禁固刑の刑期を定めたというのが大きな特色になっています。また、司法妨害に対する刑事罰の規定も現在存在しているわけでありますけれども、刑期をやはり20年に引上げると。

それから、(3)のところですが、先ほども触れましたように、企業の経営者が自社の開示の適切性について宣誓するということを求め、そして、ここにありますように、これを法律の中では刑事罰で担保している。つまり、不適切であることを知りながら証明した場合や、故意に証明をした場合、それから、管理不行き届きによって修正を行った場合にまでも、禁固刑ないしはボーナス等特別報酬を返還すべきということが法律で書き込まれております。

我が国の現状については、[参考]というところに記しておりますとおり、現行法上も証取法の違反等盛り込んでおりますけれども、アメリカの罰則は非常に強い形で盛り込まれているわけであります。

それから、マル2は、不正行為を働いた企業の幹部が他社の幹部に就くことについて、SECが無条件又は条件付きでの禁止命令を可能にしているということでありまして、現行法では裁判所が命令するという形になっているわけですけれども、それをSECが申し立てることができるというふうに権能を強化したものであります。

我が国では、商法の刑事罰を受けた者が刑期後も2年間は取締役になることはできない、それから、商法以外の刑事罰を受けた者も、刑期中は取締役になることはできないという規定がございますけれども、アメリカの法律はSECの権能を強化する形で企業経営者の責任を問うているという条項がございます。

次のページにまいりまして、これまで自社の経営陣への融資を禁止するという規定はなかったわけですけれども、これが新しく盛り込まれております。我が国でも、現在、取締役が自社から融資を受ける場合、これは取締役会の承認事項となっております。また、取締役と取引が行われたということになりますと、証取法上の開示義務がかかっていまして、商法上も我が国では附属明細書でこれを開示するとなっていますけれども、これを禁止するということになっています。

マル4は、従業員が年金基金で保有する自社株の売買を禁止されている期間に、自社株を売買することを経営陣に対して禁止すると。特にエンロンの事件のときに、いわゆる“ブラックアウト・ピリオド”というふうに言われている、売買が禁止されている時期に経営陣が自ら売却したといったことを踏まえた形で盛り込まれているわけであります。それから、5番目は、損害を被った投資家への補償のために基金を設立すること。また、6番目に、内部告発者を保護するといったところまで盛り込まれています。

そして、ディスクロージャーの関係では、オフ・バランス取引の四半期開示といったことを書いておりますけれども、我が国でも現行の証取法上は半期の報告制度という中で、一定のオフ・バランス取引についての開示を求めておりますが、四半期の報告は現行の法的な義務としてはございません。今回のアメリカの法律では、こういったものについて四半期開示ということで非常に強く開示を要求しているということをはじめとして幾つかのことが盛り込まれている、これはまた後で触れさせていただこうと思います。

「その他」といたしましては、SECがルールを策定したり、調査をするといったことが法律で書かれております。また、「その他」のマル3にありますように、SECの予算や人員を拡充するということが打ち出されています。

この法律の外国企業とのかかわりにおいては大きく2つの問題があるのではないかと思っております。1つが、その他のマル4に書いてございますように、外国の監査法人に対する適用の問題でございます。アメリカで公開している企業の監査を行っている場合には、外国の監査法人に対してこの法律が適用されるということを法律で書いておりますので、先ほど申しましたように、監査法人はすべて新しくつくられる監視機関に登録をしなければならないというところから始まって、それに基づく義務、先ほど調査が行われるということがありましたけれども、実際にアメリカで公開している日本の企業の監査を行っている、例えば日本の大手の監査法人に置き替えてみた場合には、過重な負担が課される、あるいは、直接SECあるいは新しい独立の監視機関の監督下に置かれるという形になることについては、SECによるルールの組み立てがどういったことになっていくのかということも含めて、懸念を持ちながら本件については注視し、いろいろなことを引き続き我々もSECに対しては申し述べてまいりたいと考えているところでございます。

もう1つは、アメリカにおける証券の発行者に対してもこの法律が適用されるという点であります。発行者というのは、アメリカの法律に基づいて証券を登録する、あるいは、報告書を提出する等々となっておりまして、実際に日本の企業がアメリカで資金調達をしようとするときに幾つかの書類、財務諸表を提出するわけですけれども、そういったものに対してこの法律が適用になっていくということになります。特に問題になると思われますのは、企業が監査という関係できちんとしたガバナンスが行われているかどうかという点では、監査委員会の設置が義務づけられています。

監査委員会の設置はニューヨークの証券取引所で上場の基準を8月1日付けで新たに改定いたしまして、例えば従来は取締役について3名の社外取締役を入れるべきであるというものでしたが、これを過半数にする。あるいは、監査委員会もそうですけれども、報酬委員会等々の設置を義務づけるといったことが打ち出されています。

この法律では、監査委員会は、先ほど申しましたように企業とのある程度の距離感を保っているという意味で、例えば独立した取締役から構成される監査委員会でなければならないということがうたわれております。「独立した」という意味は、例えば社外の取締役、インディペンデントな取締役であるということで、その企業の経営者、あるいは、従業員またはその家族であってはいけないということにまで及んできております。そういった形で監査委員会の義務づけがこの法律の適用によって求められるようになっては、相当な影響が生じるのではないかというふうに思われます。

域外適用の問題については、外国の監査法人に対する適用の点についてはあわせて適用除外の条項を定めることができると法律上定められているものですから、そこがどういうふうになっていくのかということについて注視をし、発行体である発行者に対する本法の適用という点については、必ずしも域外適用の点についての適用除外の条項がないものですから、SECの規則、あるいは、ニューヨークの取引所の中でどう取り扱われていくのかということについて、懸念を持ちながら注視をしているという状況でございます。

最後の紙ですけれども、ディスクロ―ジャーに関する課題については、アメリカの法律に盛り込まれたアイテムも含めて、およそ3つぐらいの大きな観点でくくることができるのではないかと思っておりまして、こういったことを具体的に詰めていく必要があるのではないか。そして、この点については制度改正につながっていくので、金融審議会の場でご議論いただきたいと考えているところであります。

1つ目が、先ほど証券市場の改革プログラムについて市場課長からご説明申し上げましたとおり、信頼される市場の確立、これが大事なことであると。そのためのディスクロージャーをどう充実・強化を促していくのか、あるいは、制度として用意していくのかということでありまして、まず1つが「リスク情報」、あるいは、「経営者による財務や経営成績の分析」マネジメント・デシジョン・アンド・アナリシスと言われているもの、それから、「コーポレート・ガバナンス関連情報」、こういったものの開示を積極的にしていただくように制度上の手当をすべきではないかと考えております。

また、アメリカの法律の関連項目で、先ほどオフ・バランス取引の四半期開示といったことを具体的に挙げましたけれども、このほかにも企業の中で財務を担当する役員に対して倫理規定を設けているのかどうか、設けている場合はそれを明らかにすべしといったことが法律では書かれております。また、アメリカの法律では、監査委員会には財務に精通した者が入っていないといけないといったことも書かれています。また、自社株の取引という点については、この法律では速やかにこれを開示しなければならないとなっておりますけれども、我が国の現行法ではこの点については翌月の15日までに開示すべしとなっています。アメリカの法律ではこれを2営業日以内に開示するとなっておりまして、速やかに開示していくということをはじめとして、アメリカの法律の中で盛り込まれているような項目について、我が国においてその適切性も判断しながら、ご議論いただいた上で、制度改正の検討を進めていきたいと思っております。

もう1つの大きな柱としては、経済の活性化に資するようなディスクロージャー制度であるべきであると。そういう観点から見てみますと、細かい点も含めて申し上げますと、現在、私募といった世界で投資家をどういう範囲で保護しながら、今の証券取引法上のディスクロージャーの規制を適用していくのかといった議論から物事を考えていきますと、必ずしも弱い投資家ではない、アメリカで言いますと、例えば自衛力があるような投資家であれば、一般の大衆の投資家に適用するような形で、ディスクロージャー制度を適用するというのはやや過剰ではないか、そういった議論もございます。

そういう観点から、現行の証券取引法上も一定の投資家については必ずしも厳しいディスクロージャーによる保護を求めていないというような状況になっているわけですけれども、適格機関投資家と呼んでおります投資家の対象、あるいは、人数といった点で、現行の制度を見直し、未公開の企業を中心にしてより資金の調達をしやすいような仕組みにしていくためには、幾つかの課題があるのではないかと考えております。これは「プログラム」の中でも位置づけておりますし、政府の総合規制改革会議の中でもこういった問題意識から幾つかの指摘をいただいているところでございますので、金融審の場で制度上の論点を詰めていただきたいと思っております。

また、強制公開買付規制の適用除外条件の拡大と言いますのは、通常であればマーケットの中で株式の売買をするわけですけれども、相対の取引をするときに、そのほかの投資家に対するディスクロージャーとか、株主を平等に取り扱うべきであるといった観点から、公開買付を強制していくといったことが現行の規制ですが、一定の要件の中で適用除外の拡大を認める、認めていくとことによって、例えば事業の再編なり集約化ということが行われやすいようにしていくということも重要な視点ではないかと思っております。

それから、3点目は、幾つかのテクニカルな点も含めまして、スピーディに、簡素化をしていくといった観点から、現行のディスクロージャー制度を見直さなければいけない点があるのではないかと考えております。例えば有価証券届出書の効力発生期間、これは基本的に15日としているわけですけれども、こういうものを短縮してはどうか。あるいは、EDINETによって提出される訂正発行登録書については、最高4日となっていますけれども、こういった期間を停止することになりますと、例えばインターネットなどを使って資金の調達をグローバルに行おうとすると、日本だけ効力の停止期間が長いとそれだけ先に進めなくなってしまい、他国では具体的に訂正をしながら資金調達ができるようになるにもかかわらず、日本だけ4日間となっている間、投資家にとっては機会が失われてしまう。この期間を短縮化するといった見直しの課題もあるのではないかと思っております。

それから、一番下にございます目論見書による情報開示のあり方、特に投信の目論見書という点については、金融審の第一部会の下に設けられたディスクロージャー・ワーキング・グループで、昨年秋にご議論いただいたところでもありますけれども、さらに簡素化といった観点から見て、残る課題はどういったものがあるのか、よりわかりやすい目論見書にしていくという視点からの課題もあろうと思っております。

これらの課題を金融審の場でご議論いただきたいと考えている次第でございます。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。大変詳細に説明していただきました。

これから第一部会も大変忙しくなるのではないかと思いますけれども、よろしくお願い申し上げます。

ただいま事務局からいただきましたご説明、あるいは、今後の証券市場改革についてでも結構ですので、ご意見なりご質問なりいただければと思います。さらには、今ご説明の中になかった範囲というか、今後、当部会で審議を行っていく上での視点、あるいは、基本的な考え方、そういった基本論みたいなところについてご意見をいただいても大変ありがたいことと思います。

このあとの残りの時間は自由討議ということにさせていただきたいと思いますので、皆様方からご自由にご意見なりご質問をお出しいただければと思います。

どなたからでも結構ですので、どうかよろしくお願いいたします。

浜委員、よろしくお願いします。

○ 浜委員

ありがとうございます。それでは、感想じみたコメントを1つと、質問が2点ほどございます。

まず最初は、冒頭でご説明がありました「証券市場の改革促進プログラム」、これは前からずっと走っている話でありますので、そういう意味では今さらという感じもあると思います。こう申し上げるのは申しわけないと思うんですが。

1、2、3と大きく並んでいる柱間の関係と言いますか、プライオリティーのつけ方というところについて申し上げたいと思います。私が思いますには、この中で一番ポイントで重要になるのは、この流れの中では2番となっている「投資家の信頼が得られる市場の確立」というところだと思っておりました。

それとの関係で、3で挙がっている効率性、競争力というところが問題になるのだろうなと感じるわけです。別段この1、2、3と並んでいるのがプライオリティー順ということではないんだろうと理解していますけれども、信頼性が得られないままに使い勝手だけよくなってもしようがないだろうという感じもあって、その辺のプライオリティー感覚というもの、プライオリティー認識というのが、ここで議論していく中でも必要なのではないかという感じがいたしておりますということが1点です。

あと、質問2点ですけれども、1つは、この「プログラム」のペーパーの最後の方でありました、「効率的で競争力のある」というところのマル1の取引所のあり方の検討というところです。これはこれから考えていくテーマということで投げかけられているところかと思いますが、それはそれとしても、現段階で日本の証券取引所というもののあり方、どの辺が問題点だという整理を現状においてされているのか、どんなところに議論の焦点を持っていきたいと考えられているのかというようなところを伺っておきたいと思います。取引所の株式会社化というような制度的な変化は進みましたけれども、中身は旧態依然じゃないかというような指摘もあるというところも踏まえながら、ここはこれから突っ込んでいくべきところかなと思いますので、現状認識を伺っておけば今後の議論に参考になるのかなと思います。

もう1つは、今、ご説明がありましたアメリカの企業会計改革法の話ですが、特に外国企業に対する適用というところで、私の記憶が正しければ、日本、ドイツの企業及び行政当局からオブジェクションが提示されていたかと思います。一部は、ここでご指摘のある外国監査法人云々というところなんだと思いますが、確認のために、これも今後の議論を進めていく上で、ほかの部分で強い異議が外から唱えられていたんだとすれば、その辺がどうだったかということを復習していただけるとありがたいなと思います。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ご質問の部分、いかがでしょうか。

○ 乙部市場課長

取引所のあり方は、これからワーキングを設置していただいて、その第1回目までにはきちっとした形で整理させていただきたいと思いますが、制度面について言えば、海外との関係、国内での市場間の関係、2つに分けて考えております。

1つは、また海外との関係では、外国の取引所への取引の発注を国内からの端末で行うということが既に行われております。ただ、これについて明確な法的な枠組みがあるわけではございません。海外で行われております取引所間の提携の一形態としてクロスメンバーシップというものがございまして、どっちかのメンバーになっていれば、相手方の取引所で取引できるわけですが、日本の証取法の中にはそれに対応する枠組みはございません。

国内について見れば、経済的な意味でのマーケットという点では、取引所と店頭市場、それから、PTSというのがございますが、経済的に考えれば同じようなことが行われているのであれば、それを取り巻く枠組みもハーモナイズされたものでないといかんのではないかというふうな意見がございます。細かな点で、取引所と店頭市場、PTS、それぞれルールが違っていますので、今後の市場間競争を考えたときに、そういう制度面でのいろいろな扱いが何か問題を生じていくのではないか。制度面から言えばこの2点でございます。

運用の点についてはいろんなご意見が利用者の中にあろうかと思いますが、何かあれば吉野委員から補足していただければと思います。

○ 神田部会長

いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

○ 吉野委員

結構でございます。また機会があればきちんと申し上げたいと思います。

○ 神田部会長

そうですか。

それから、もう1点のご質問について。

○ 羽藤企業開示参事官

アメリカのこの法律と我が国の企業との関係において3つ課題があるのではないかと、当初整理をいたしました。1つは、先ほど委員からもお話がありました、外国の監査法人への適用という点。もう1つが、外国企業に対して監査委員会の設置を義務づけるという点。3つ目が、企業のCEOあるいはCFOが決算報告書に署名するという点。この3つが外国企業との関係でかかわりになるのではないかというふうにとらえてまいりました。

まず外国の監査法人への適用については、先ほど申しましたとおり、上場している企業の監査を行っている場合、適用になるということでありまして、併せて適用除外の可能性も法律上定められております。適用除外というのはどういうケースにおいて認められるのかということについて、我々も新しい監視機関やSECの監督下に直接、我が国の監査法人が定期的な報告が義務づけられたり、過剰な負担のみならず、我が国の法制度にも抵触する恐れが出てきますので、わが国の監査法人に対する適用除外ということは引き続き強く働きかけていくという方針で臨んでいるところでございます。

2番目の外国企業に対する監査委員会設置義務の適用という点につきましては、この法律では原則として社外取締役からなる監査委員会の設置を義務づけるというふうになっております。アメリカに上場している我が国の企業の中でも、この適用については、一体どうなるのかということでそれぞれ関心を持って見ていると承知していおりますし、中にはさほど直接的な影響はないんじゃないか。何となればニューヨークの取引所の現行の規則においても、外国企業に対して監査委員会の義務づけということを例外視しているということがあるので、楽観的にとらえているという企業もあれば、いやいや大変なことである、このルールがそのまま適用されればアメリカでの上場も考え直さなきゃいかんのじゃないかと懸念しておられる企業もあるということで、率直に言って見方も分かれているように理解しております。

ただ、この点については、我が国の法律に基づいて内部統制というものがしっかりと行われている以上、アメリカが我が国の企業に要求してくるということになりますと、経済界としては、非常に大変なことになると認識しておられるというふうに承知しております。実質的に過剰な負担が生じないように、今後、SECが関連する規則も含めてどういうふうに具体化していくのかという点について、我々の立場からも注視をしております。

3点目は署名の問題でございますけれども、署名についてはアメリカで資金調達を行っております日本企業の中でも、特段これ自体を問題視する企業はないのではないかというふうに認識をしております。

○ 神田部会長

浜委員、よろしゅうございますか。

○ 浜委員

はい。

○ 神田部会長

そうですか。

それでは、上柳委員、どうぞ。

○ 上柳委員

上柳です。2点あるんですけれども、1つは、証券会社の破綻が大きな社会問題になってからしばらくたっているわけですが、それについて今回の、今おっしゃったような課題を考えるにあたって、どのように総括するのかというか、分析するのかということを、もう一度確認というか、お話いただければと。これはきょうこの場でというより、これからの部会なりワーキング・グループも含めて、十分に検討するということがまさに課題なのかと思いますし、あまり簡単な答えを言っていただいて、私も「わかりました」というふうにしない方がいいのかもわかりません。

特に課題となっております最低資本金の問題等については、最低資本金だけで証券会社の信頼なり、あるいは、内部体制の確立ができるわけではないですから、総合的に考えなければいけませんし、あるいは、市況の問題もあるので最低資本金だけがポイントだと言うつもりはありませんけれども、そのほかの問題と総合して、いい証券会社あるいは証券仲介者に入ってもらうためには、このような改革が必要なんだということを総合的に説得できないと、国民というか、潜在的投資者は証券会社、あるいは、そのほかの証券という名前のつくところをますます敬遠するのではないかと危惧しております。

2番目の質問は、似たようなことなんですけれども、少し前に金融審議会で金融サービス法という名前の下で改革を進めようというふうに構想したことがありました。これについては放棄するのかというのが私の質問です。多分そうではないと、今やっていることが全体として金融サービス法で目指した大きな体系の一部をなしているんだという答えなんだと思いますけれども、私が申したいのは、潜在的投資家なり国民は、この国の体制から、自分のお金を有効に使える、投資した企業がちゃんと使ってくれるという信頼を回復することが大事で、そういう意味から言うと、今ここで一生懸命議論していることを総合的な体系として、例えば金融サービス法という名前をつけてパッケージとして示さないと、アピールというか、中身もついてこないのではないかと思うんです。

ちょっと変なたとえかもわかりませんけれども、お寿司屋さんとか魚屋さんと似たような感じがするんですね、本質は違うのかもわかりませんが。食べる側がこの魚はおいしいとかいうふうな賢い消費者、投資家が育ってこないと、我が国の資本市場は育たないんだと思うんです。それもさることながら、今、国の仕組みで考えるべきことは、いい板前さんとかいい魚屋さん、目利きができて、製造業者からいいものを仕入れてきて店先に並べると。そのときにもちろんインチキは言わないと。目利きができるということとインチキ、これと最低資本金と考えますと、最低資本金が多くなくても目利きできる人が育てられるというような体制をつくる。

そういう趣旨で、私は全面的に何かもかも抵抗勢力になるという趣旨で発言しているのではないんですけれども、そのあたりについてお考えのところがあれば披露していただきたいと思います。

以上です。

○ 乙部市場課長

証券会社の破綻でございますが、上柳先生ご指摘のように資本金が足らずに破綻したということはないと思っております。山一は大きな資本金がございましたけれども、こけてしまいました。証券会社が倒れて投資家が困るということではいかんわけでございまして、資本金がどれだけあればいいということではないと思いますが、証券会社の健全性につきましては、証取法の中に規定がございまして、自己資本比率の規制に基づく監督がございますし、分別保管が義務づけられております。

倒れたときに資本金が幾らあっても、それに見合う財産がなければ何の意味もないわけでございますので、証券会社が倒れても投資家が困らないような仕組みとしては、分別保管と投資者保護基金というセーフティネットがあるわけでございますが、倒れないようするための監督としては、自己資本比率とかきめ細やかな監督で対応していくのではないかと思っております。

金融サービス法につきましては、大蔵省時代に金融サービス法の議論を金融審議会でもやっていただきまして、その成果物として、1つは集団取引スキームの法制化、もう1つは金融商品販売法ができたわけでございます。もちろん、これで終わりということではございませんで、金融商品販売法につきましては、施行されて1年でございますので、今回のプログラムの中でも引き続き周知に努め、施行状況を調査して点検していきたいと。そこから次にどういうステップが必要になろうかということかと思います。

あと、残された課題として紛争処理手続の問題がございます。これについてはいろいろ議論がございまして、業界内の機関とのネットワークのようなものをつくっておりまして、それから、証券業協会におきましても、証券あっせん相談センター設置とか、いろいろな措置がとられておりますが、これもその効果を検証していく必要があろうかと思います。それから、それ以外の専門性、中立性を有する機関についても、例えば証券業協会のあっせんと同じような法的効果を与えるということについても検討していく、これもプログラムに盛り込んでおります。

ですから、既に行われた法制度の整備ないしその改善を踏まえて、実施状況及びその実効性を検討していきたいというのが、金融サービス法に対する現時点のスタンスでございます。

○ 神田部会長

第1点目については、上柳委員のお考えでは、現在の制度的な枠組みを変えるべきだというお考えですか。

○ 上柳委員

制度的枠組みと言いますと?

○ 神田部会長

証券会社の破綻に関係するような。

○ 上柳委員

破綻の仕組みを変えるというよりも、山一証券の問題は、破綻したときにどうするのか、あるいは、破綻の早期発見と言いますか、早期警戒というんですか、そこの問題も大きな問題だと思いますけれども、加えて、あの会社が調子悪くなっていったというのは、投資家が利用しにくい、あるいは、顧客の集客が十分にできなかったということではないかと、私、勝手に考えているんです。

そういう意味で、単に破綻の問題とか破綻の早期警戒だけではなくて、本当にお客様の方を向いた仕事ができるような証券会社の規律のあり方でなければいけないんじゃないかと思いまして、倒れる直前というよりも、むしろ生きているときの体制、これはもちろん営業努力あるいは社内努力があるわけですけれども、それをやりやすいような証券取引法なり証券会社の規制というふうに、もっと総合的に考えなければいけないのではないかという趣旨で申しました。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

おっしゃるとおりだと思いますね。そのために今の制度のどこかを変えるべきだというご提案というか、ご感触というのはおありですか、具体的に。

○ 上柳委員

もちろん、これこそ総合的に考えなければいけないことで、そのために皆さん知恵を出されているんだと思いますけれども、まずは顧客とのインターフェイスのところに、矮小化すると説明義務のもう少し大きな履行ということになるかもわかりませんが、お客さんへの情報提供あるいは説明の問題、それから、どういうポリシーで仲介業者が商品を仕入れる方をしているのか。そのときには、先ほど開示の問題がありましたが、仕入れられる側の製造会社あるいは一般企業の開示が進めば、仲介業者も仕入れやすくなるということになっているんだろうと思うんですけれども、そのあたりを総合的にということです。

まだちょっとまとまっておりませんでしょうかね、もう少し考えたいと思います。

○ 神田部会長

はい、ではまた。

○ 乙部市場課長

これもプログラムの概要では端折っておりますけれども、本体の中で同じような問題意識を記述しております。それはつぶれるかどうかと関係ない話でございますが、顧客に対する忠実な業務執行は金融サービス業者の基本であろうと思います。

新しいプログラムの3ページにございますが、「顧客に対するより一層忠実な業務執行を図る観点から、証券会社の業務について、幅広く実態把握に努め、そのあり方を検証し、ルール・検査・監督面で、信頼性の一層の向上に向けた必要な対応を行う。」と。今、対応の中身については白紙でございますけれども、先生ご指摘のような点も踏まえて、まずは実態把握を広くやっていきたいと思います。

それから、よく言われておりますけれども、手数料収入を稼ぐために必ずしも顧客が望んでないような取引を勧めるという指摘がございます。こういうような批判に対して、他方で、証券会社、資産管理型営業へ転換していかないといかんというような意見もございます。こういう業務に移行するにあたって、今の制度なり運用上何か支障になるようなものがあれば、それは行政としても制度面での対応を図っていかなきゃいかんという問題意識も持っております。

ですから、両面から幅広く検討したいと思っております。その検討結果を踏まえまして、審議会にもご報告させていただきたいと思っております。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

そういうことで引き続き皆様とともに考えさせていただければと思います。よろしくお願いします。

ほかにいかがでしょうか。

○ 池尾委員

今の話の続きになるんですけれども、市場に対する信頼の確保ということが、一番最初に浜委員もおっしゃいましたが、プライオリティー上、緊急性の高い課題ではないかという話がありまして、金融サービス法云々というのはその点にかかわる話だったと思うんですね。金融商品販売法によって実現された投資家保護という話をもちろん含むわけですけれども、それを越えて横断的、統一的なルールの設定という話だったと思いますので、その点について前進を図っていく必要性というのはあると思うんですね。

それと、そういう横断的、統一的なルールの設定とともに、そのルールをエンフォースする体制と言いますか、ここでいうと大きな柱の2になるわけで、2のマル1で監視体制をどうするのかということですね。これは、世間的には例えば日本版SECをつくったらどうだと。SECがいいのか、英国FSAのような組織体制がいいのかというのは議論かあると思うんですが、監視体制に関しての組織的な見直しないし抜本的拡充の必要性というのは、議論としてあると思うんですが、先ほどのご説明では予算請求をしたというだけで、そこはさらっと流れてしまったので、そういう話はもう少し腰を据えて議論をしなくてもいいんだろうかと、そういう問題意識があるんですが、いかがでしょうか。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

金融庁として何かこの際……。

○ 大久保審議官

今のご質問につきましては、市場課長のご説明ではこの部分は時間の関係でかなり省略させていただいているところがありますが、監視体制の強化というのは、単に予算の拡充だけの話ではなくて、その手法等も含めて常に見直しを図って向上させていかなきゃいけないと思っておりまして、そういった体質を強化していくためにどういうことをしていく必要があるということにつきましては、予算や人員等も含めて、機能の強化について年内に検討をしていきたいと考えているわけでございます。

それ以外に、証券市場に対する行政のあり方についてもさらに検討していく必要があると考えております。金融庁の発足以来、金融のコングロマリット化とか国際化を踏まえまして、金融庁の組織体制が、監督、検査、企画と3つの部局と、さらに監視体制とに、大きく分ければ4つに分かれて対応してきているわけでございます。証券市場に対する対応につきましては、この4つの部局がうまく連携していくことが非常に重要なわけであります。

そのために、先ほどの資料の説明は省略させていただいておりますけれども、資料6の「証券関係部署の連携強化の具体策について」ということで、8月22日付けで対外公表をさせていただいております。この中では、証券市場行政を担当する部署間の連携を一層強化するという観点から、証券市場行政総括官を置くということで、私がその役割を拝命しておりますが、この役を非常に重く受けとめておりまして、今までの機能別の組織という金融庁の特色を生かしつつも連携を強化し、また対外的なコミュニケーションも一層よくしていかなきゃいかんというふうに認識しているわけでございます。

さらに、金融庁部内におきましても、金融庁の証券行政連絡会議を明示的に設けておりまして、これまでも非公式にいろいろな議論をしてきたわけでございますけれども、関係部局が参加しまして、証券行政のあり方をいろんな角度から連絡強化するための体制を敷いてきているところでございます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

○ 村田副大臣

いいですか。

○ 神田部会長

どうぞ。

○ 村田副大臣

正直に言いますと、国会でもこれは何回も出てくるわけですし、経団連もつとに言っております。何か問題がありそうだと、組織を変えろと言うんだけれども、今の体制、組織を次から次へとやってみて、それで抜本的改善になるのか、よくなるのかという前に、現行体制で何が問題かということは議論をしていただいていいのではないかと思います。

大久保さんが今答えられましたけれども、そこを省いて、避けていきたいという意味じなくて、落ちつかない情勢を続けていくことがいいのかどうかということですね。今の体制では何が問題なのかということは、皆さん方、ご意見があったら出していただいたらよろしいんじゃないかなと思います。国会では金融のコングロマリット化などを挙げて答弁をしているんですが、決定的な問題点がありましたら、ご指摘いただいたらありがたいと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

○ 池尾委員

私も組織論先行の議論は個人的にはあまり好きではなくて、機能論と言いますか、役割の議論を幅広くやった上で組織の話が出てくるのが筋だと思っているんです。だから、先ほども申しましたが、そういう議論を少し腰を据えてやるような機会を持つことを考えていいではないかという趣旨で発言をしたということです。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

たしかにこれまできちんと議論したことはないと思いますね。ただ時間的な問題もあるとは思います。後で申し上げますように、これから12月まで目が回るようなワーキングになってきますので。

○ 乙部市場課長

金融サービス法の横断的、統一的なルール整備は、ご指摘のとおりでございます。私も二、三年前、大蔵省時代に携わったことがございますが、銀行とか保険、証券会社、投信会社、投資顧問業者、それぞれの業法で規定されております。中を分解してみますと、投資家にアドバイスをする業務とか、信任を受けて投資家の金を運用してその結果をそのまま投資家にお返しする業務、それから、自分で投資家の資産を預かって返すという業務などのように、経済的な観点から見ますと似たような機能が幾つか組み合わさっている。似たような部分については同じような規制をしていくべきではないかというのはまさにご指摘のとおりでございます。

これは、証券市場にかかわる業者だけの問題ではなくて、金融システムにかかわる金融サービス業者の法制のハーモナイズというのは依然として残された問題だと思っておりますけれども、第一部会で審議するテーマの範囲を超えるのではないかというふうに私なりに整理させていただいております。

○ 神田部会長

とにかくご意見はどんどん出していただいて、また事務局で整理していただいて、議論すべきことは、するようにしましょう。今、副大臣からも大変重要なご発言をいただきましたので、そういう視点からのご議論はぜひ進めたいと思います。

ほかにいかがでしょうか。田島委員、お願いします。

○ 田島委員

先ほどアメリカの企業会計改革法に関しまして、我が国の監査法人等に対する域外適用については適用除外も考えているというようなお話があったと思うんですけれども、私はそれはむしろ逆ではないかという気がしております。我が国の企業なり監査法人なりは、必ずしも投資家の信頼を得られる状況にあるとは思えないと私は理解しておりますので、米国内でそういう業務を行う場合には米国の法律に服して、そこできちんとやれるということを示してもらいたいと思いますし、我が国においてもアメリカの法制をまねるということではなくて、取り入れるべき点があればそういうものを取り入れて、こちらもきちんとチェックしていくという方向にいくべきではないかという印象がございます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

そういう視点で考えようということですね。

○ 羽藤企業開示参事官

アメリカで資金調達をする以上はアメリカのルールに従うのが基本であるとは思います。ただ、例えばアメリカで資金調達をする企業の日本での活動についても、日本の監査法人が監査をしているという限りにおいては調査の対象になり得るという点があるわけですね。したがって、そういうふうなところまで、日本の中でいろいろな規制に服している監査法人が直接アメリカの規則なり制度下に服して、義務づけが行われる、あるいは、調査に来る、資料を出さなきゃいかんというふうになるのは、二重にいろいろなことがかかわってくるという点で不適切な面があるのではないかと、そういう問題意識を持っているということでございます。そこのところは明らかにすべきところはきちんと明らかにしないといけないというふうに思っております。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

淵田委員、どうぞ。

○ 淵田委員

いろんな論点が挙がっておりますけれども、先ほど浜委員がおっしゃったようなプライオリティーは何かというところが、いろいろ並列的に書かれている項目を考える上で重要ではないかと思います。例えば資本金をもっと下げようという議論がある一方で、信頼性を回復しなくてはいけない、向上させなくてはいけないと。あるいは、開示書類、目論見書等をもっとわかりやすくという項目がある一方で、こういう項目を開示させ、盛り込まなくてはいけないといったような話もあるわけですね。これは見方によっては相反するようなことが並んでいると。したがって、プライオリティーは何かということを念頭に置いた上で議論していく必要があるかなと思います。

その場合、ここをこう変えたら一番効果が上がるよと、今の問題はここであって、ここを変えることで本当によかったなと思えるようなところに重点を置いていく必要があるかなと思います。随分昔、円建てBA市場というのを大騒ぎして導入できるようにしたわけですけれども、全く使われないというような経緯もありましたし、例えば4月からETF、銀行取次ぎができるようになったといっても、どこもやっているようには思われないと。協同組織金融機関等で取次できるようにしましょうといった話も先ほどありましたけれども、本当にそういうことでよかったなという結果が期待できるのかどうか、その辺のプライオリティーづけ、12月まで大変忙しくてという時間の制約がある中で、本当によい改革を順番づけしながら検討していくことが大事な気がいたしました。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。今、淵田さんからご意見をいただきましたけれども、今日は証券界の皆様方は割と静かなような感じがちょっとしますが。

どうぞ、東委員、お願いします。

○ 東委員

1回目の会合で、今回のプログラムの目的と言いましょうか、ゴールを何に設定されているのかということをお伺いしたことを覚えています。現状、例えば個人金融資産のうち、エクイティが7%ですが、これを15%に上げたいということですとか、あるいは、市場の厚みを上げたい、つまり参加者を多くしたい、あるいは、売買代金を増やしたいと。これがゴールという設定でこのプログラムの優先順位を考えていっていいのかどうかというのがまず1点であります。

もう1つは、どこまで根っこにいったらいいのかなというのが気になっています。例えばアメリカの例で、会計監査でどんな制度をつくっても、所詮その会社から監査をするところがお金をもらうわけですね。その限りにおいて本当に大丈夫なんだろうかという議論は常に出てくると思うんです。例えば、きちっとした利害関係者からお金をもらう。株主からもらえば会計監査という意味でも筋が通りやすいんだろうと思うんですね。

ですから、ここはゴールを設定して、そのゴールに向かう軸足というのでしょうか、これら先ほど来ご議論が出ている優先順位の議論だと思うんですけれども、私の理解しているゴールは市場の厚み、平たく言うと売買代金が増えるにはどうしたらいいか、もう1つは、個人の金融資産の中での株式の比率を上げるということを1つのゴールとして考えていいのかどうか、そこをお伺いできればと思います。

○ 乙部市場課長

資料3にプログラムの基本的考え方を書いておりますが、今、別の場所で日本の金融の中期ビジョンの議論をいたしております。そこでは、日本の金融システムは有効な価格メカニズムの下でリスクが適切に管理・配分される市場機能を中核としたものになっていくことが必要であるというふうになっています。このプログラムも目指すところはそれございます。

こういうようなシステムが実現するためには、投資家のリスク選好とかライフスタイルに応じて、市場で魅力ある金融資産が多様なチャネルを通じて提供されるとともに、市場メカニズムへの信頼が確固としたものになる必要がある。その上で、幅広い投資家層が、今までの一部の投資家だけが営々と株式市場に参加すると、その売買代金が増えてということでは、バブル以前に戻るだけであって何も変わらないわけですが、今まで投資したことのない、預金しか持ってない人が自分の判断で証券市場に入ってきてもらいたい。これを通じてリスクマネーが円滑に供給され、経済の構造改革を支えていく、これが目標でございます。

ここに書いてあるのをやったらそういうふうにいくかというと、直ちにはいかないと思いますが、できることはどういうことがあるのかということから幅広く検討して、現時点で考えられることを盛り込んだのがこのプログラムでございます。ですから、株価が上がればいいとか、売買代金が増えればいいということでは全くございません。

○ 東委員

そういう意味では私の舌足らずで、売買代金が増えるというのは、多くの参加者が市場に参加をするという趣旨で、決して代金だけ増えればいいというつもりは毛頭ないんですけれども、残念ながら現状がだんだん目指しているところから遠くなっていっているような印象があります。先ほど来ご意見が出ていましたけれども、もう少し太い幹なり、突破口を、これは我々も考えなきゃいけないんですが、そこをもう少し集約、あるいは、プライオリティーの順番づけが一番重要なのではないかなという意見です。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

資料3にも書いてあるとおり、証券市場は依然として活力に乏しいというのが現状で大変残念です。ビッグバン以来いろんな改革をしてきたわけですけれども、現状はここに書いてあるとおりなわけですね。しかし、中期ビジョン等との関係で言えば、そこの文章に続けて書いてあることですけれども、「市場機能を中核とした我が国の金融システムの将来を担うに十分なものとはなっていない」と。したがって、証券市場が市場機能を中核とした我が国の金融システムの将来を担うようなものになるのが目標だということになるのだと思います。

冒頭の浜委員をはじめご指摘いただいていますように、何が問題なのかということをはっきりさせないとプライオリティーがつけられませんですね。これはなかなか難しい問題でして、意見が分かれるところだと思います。そういう意味では、きちんとした議論、あるいは、じっくりとした議論をしなければいけないのですけれども、先ほどからのご指摘ですと、信頼がないというのが問題だと。したがって、信頼の回復を一番のプライオリティーにしたらどうかというご意見が出ていたと思います。もう少しそこを具体的に詰めていくと、どういうふうにプライオリティーづけをするのがいいのかということが出てくるのかもしれませんね。

他方、ビッグバンのときも頑張ってあれだけの改革をしたわけですけれども、制度を変えればよくなるというわけではないということは、残念ながら実態が示しているわけですので、これだけのことをやればすぐ成果が上がるというような性質のものではないのかもしれないという点もあろうかと思います。いずれにしても、今回の「改革促進プログラム」は、証券市場がもっと広く使われるようなものになって、日本の将来の金融システムの中核を担う、そのようになるために政策的な手段を、今までもやってきたわけですけれども、今までにも増してこの時点でさらにやれることをやろうということだと思います。

ほかにいかがでしょうか。きょうご発言のなかった方に無理にご発言を求めはしませんけれども、今までの皆様方のご意見を聞いてのご意見でも結構ですし、お気づきの点でも結構ですが。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

先ほどから出ている信頼性がないじゃないかというお話は、乙部市場課長から繰り返し紹介のあった内閣府の調査ではそういう結果が出ているんですね。その指摘は全く正しいんだろうと思います。

そのときに、ここに出していただいたプログラムは非常に広範囲なアプローチで、今の状況に非常にタイムリーなプログラムを出していただいたと、これの全面実施に向けていろんな角度からアプローチしていくのがいいと思っているんですが、あえてこの中で「信頼性向上」というところにプログラムを置くということの意味なんですけれども、このプログラムは片方で信頼性向上と、外務員のコンプライアンスとか、仲介業者、市場、あるいは、発行体、それぞれの分野でガバニングに欠ける問題があって、そういうアプローチは大変必要なことだと思います。

一方、投資家にもっと魅力のある商品を提供する、魅力のあるサービスを提供する。あるいは、そういうサービスをしているということの周知を図っていく。そういうこともプライオリティーに欠けるということはないんだろうと思うんですね。むしろ今、投資家が望んでいるのは、自分たちがこういうサービスをしてほしいんだということに、証券会社あるいは金融機関が的確にこたえられるかというところも大きく問われているんじゃないかと思います。

したがって、乙部課長がさっき説明されたような、分厚い証券市場をつくっていく、層の厚い市場をつくっていくことが大事であるという大きなゴールの下に、信頼性の向上ということ、あるいは、1に書いてあります投資しやすい市場の整備をしていく、効率的な市場をつくっていくという意味では、どこにプライオリティーを置くということじゃなくて、総合的にアプローチしていく、そういう切り口を示していただいているのではないかなというふうに思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

どうもありがとうございました。

それでは、いろいろ貴重なご意見をいただきましたが、本日いただきましたご意見等も整理して、さらに審議を進めさせていただきたいと思います。

先ほどから折に触れちょっと出ておりましたけれども、当面、この部会は、きょうご議論いただきました証券市場の改革促進プログラムで掲げられました3つの柱について具体的な施策の迅速な実現を目指して審議を進めていきたいと思っております。より具体的に申しますと、いつものやり方ではありますけれども、より実務的な検討、あるいは、専門的な観点からの調査や検討を行っていく必要というものが当然出てくると思われます。

したがいまして、「誰もが投資しやすい市場の整備」という点と「効率的で競争力のある市場の構築」という2つの柱につきまして、この部会にワーキング・グループを設置したいと思います。なお、これも先ほどから既に若干出ておりましたが、ディスクロージャー制度につきましては、先ほどご紹介がありましたアメリカの企業会計改革法などを踏まえた審議も行う必要がございますので、既に存在しておりますディスクロージャー・ワーキング・グループを再開するということにさせていただきたいと思います。

なお、「投資家の信頼が得られる市場の確立」という柱の中で、会計監査の充実・強化として、公認会計士及び監査法人のあり方の見直しという論点があるわけですけれども、この論点につきましては、公認会計士制度部会がございまして、そちらで審議を行うことが予定されております。

そういう意味では、本日、この第一部会にワーキング・グループを設置することをお諮りしたいと思うわけですけれども、そういったワーキング・グループの内容、それから、ディスクロージャー・ワーキング・グループの再開につきまして、事務局から簡単なご説明をお願いしたいと思います。

○ 乙部市場課長

お手元に、「第一部会ワーキング・グループの新設・再開について」という1枚のペーパーを一番下につけてございます。

新設いただきたいワーキング・グループが2つございます。1つは、「市場仲介者のあり方に関するワーキング」でございます。先ほどもご説明いたしましたように、証券会社などの市場仲介者について資本金の引下げ、主要株主ルールの導入、証券会社の販売代理店制度の導入、市場仲介者をめぐる制度の問題をご議論いただきまして、できれば年内に結論をお取りまとめいただいて、法案を次の通常国会に提出したいと考えております。

もう1つは、「取引所のあり方に関するワーキング」でありまして、先ほど説明させていただきましたとおりでございますが、これは今まであまり議論されてない問題でございますので、年内というわけにもまいりません。来事務年度まで2年ほどかけまして検討いたしたいと思いますが、そのうち、緊急性が高いもの、あるいは、まとまったものについては、次の通常国会に法案を提出させていただくことも念頭に置いてご審議いただければと思います。

○ 羽藤企業開示参事官

それから、ディスクロージャーの関係につきましては、先ほど資料の中で検討項目としてご説明申し上げたわけでありますけれども、岩原先生に座長をしていただいておりますワーキング・グループが、昨秋に投信の目論見書の簡素化ということに関してご議論いただいたわけでありまして、その活動を再開していく形で、本日ご紹介申しましたアメリカの法律に盛り込まれている中身なども含めて、検討をしていただき、年内に結論を取りまとめていただいて、速やかに所要の制度改正に着手したいと考えております。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ただいまご説明いただきましたような形で、2つのワーキング・グループを設置するということと、ディスクロージャー・ワーキング・グループを再開する再開するということにさせていただきたいと思いますけれども、お認めいただけますでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは、ワーキング・グループの人選、それから、新たに設置されますワーキング・グループの座長の選任等につきましては、慣例によりまして部会長に一任いただくということになっておりますので、大変僣越でございますけれども、そういうことでお認めいただけますでしょうか。

どうもありがとうございました。

今後忙しくなりますけれども、ワーキング・グループ等の設置につきまして、この際何かご質問等ございましたら、お願いしたいと思います。

よろしゅうございますか。

もちろん、ワーキング・グループの審議の状況は、その都度というか、区切りごとに部会に上げて、またこの部会でも議論いただく、それから、ワーキング・グループで議論できないような問題があれば、それより大きな問題等ということになると思いますけれども、その場合にはこの部会でご議論いただくことになると思います。

今後かなり忙しくなるかと思いますけれども、どうかよろしくお願いいたします。

終了の時間には若干早いかもしれませんが、将来長引くこともあり得ると思いますので、本日の審議はこのあたりで終了させていただければと思います。

なお、このあと、記者会見を行いまして、本日の部会の模様について私からお話をさせていただきます。

最後に、事務局から連絡等がありましたら、お願いします。

○ 乙部市場課長

次回の部会は、本日、設置をお認めいただきました「市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループ」と合同で開催させていただければと思っております。具体的には9月30日、午前10時から2時間程度を予定しております。議事内容につきましては、追ってご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会合は終了させていただきます。

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