金融審議会金融分科会第一部会(第6回)議事録

日時:平成14年10月9日(水)10時30分~12時30分

場所:中央合同庁舎四号館(11階)共用第一特別会議室

○ 神田部会長

それでは、予定の時間が参りましたので始めさせていただきます。

ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の第6回目の会合を開催させていただきます。

皆様方には、いつもお忙しいところお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

前回の会合は、市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループとの合同という形で開催させていただきましたけれども、9月17日の第4回、前々回の部会でご一任をいただきまして、もう1つ別のワーキング・グループをさせていただきました。そのワーキング・グループというのは「取引所のあり方に関するワーキング・グループ」であります。このワーキング・グループにつきましても、このたび、座長の先生を含め、16名の方にメンバーへのご就任をお願いいたしました。そこで、本日はそのメンバーの方々との合同、すなわち、第一部会と「取引所のあり方に関するワーキング・グループ」との合同の会合という形で開催させていただくことになりました。

先般ご承認をいただきましたとおり、この「取引所のあり方に関するワーキング・グループ」では、読んで字のごとくですけれども、取引所のあり方について幅広く検討をお願いし、そのうちワーキング・グループでご議論がまとまりましたものにつきまして、その検討結果をこの第一部会にご報告いただき、年内に結論を取りまとめたいと考えております。

それでは、まず、このワーキング・グループのメンバーの方々につきまして、事務局の方から紹介をお願いしたいと思います。

○ 乙部市場課長

お手元の名簿にあるとおりでございます。

当部会の池尾委員に座長となっていただいております。

また、当部会からは、神田部会長、古賀委員、吉野委員、本日は欠席されておられますが黒沼委員にメンバーとなっていただいております。

続きまして、当部会以外でメンバーとなっていただいた方々をご紹介いたします。

石橋英樹、ゴールドマン・サックス証券マネージングループ・ディレクターでございます。

菊一護、日本証券業協会常務理事でございます。

佐賀卓雄、日本証券経済研究所主任研究員でございます。

関哲夫、新日本製鉄副社長でございます。

林部健治、大和證券グループ本社取締役でございます。

松本大、マネックス証券社長でございます。

安陽太郎、十字屋証券社長でございます。

米澤康博、横浜国立大学経営学部教授でございます。

米田道生、大阪証券取引所専務取締役でございます。

兼坂光則、新光証券取締役副会長でございます。

なお、このほか、藤田友敬、東京大学法学部助教授にもメンバーをお願いしておりますが、本日はご欠席です。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ワーキンググループの方々につきましては、これから大変忙しくなることが予想されますけれども、本日を含めまして忌憚のないご意見をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

本日はこの部会とワーキング・グループの合同会合ということでございますので、議事は公開ということにさせていただきます。議事次第に従いまして、本日は私の方で議事進行を進めさせていただきます。

本日の予定ですけれども、議事次第にございますように、まず事務局から、「金融システム改革以降の取引所市場を巡る動き」あるいは「取引所のあり方に関するワーキング・グループ」の検討課題として現時点で考えられる項目等について、説明をいただきます。その後で、市場関係者でありますワーキングのメンバーの方々からさらに幾つかのお話を伺いたいと思います。そして、その後、他の皆様方を含めまして、今後のワーキング・グループでの検討課題について自由討議ということで進めさせていただきたいと思います。

それでは、まず、事務局からの説明をお願いいたします。

○ 乙部市場課長

お手元に資料1、2、3とございますが、まず、金融システム改革以降の取引所市場を巡る動きについて説明させていただきました後、今後のワーキングの検討課題として考えられる項目について説明をさせていただきたいと思います。

資料1がこれまで行われてきた「市場を巡る動き」でございますが、大きく言いまして、従来、取引所に上場されております株式を取引するときは、会員はその取引所に注文を集中しなければいけないという取引所集中義務がございましたが、これを廃止いたしました。これとの関係で、証券会社はコンピューターネットワークを利用して、市場に似たような形で取引を行うことのできるPTSというシステムを運営できるようにもいたしました。その他の大きな動きとしては、取引所は今までは証券会社を会員とする会員制組織でございましたが、これを株式会社形態も選択できるようにいたしました。この3つが大きな制度改革でございます。

まず資料の1ページでございますが、これは平成9年の大蔵省時代の証券取引審議会の報告でございまして、ここで、取引所集中義務の廃止とPTSの導入、これが打ち出されたものでございますが、アンダーラインが引いてございますので、それに沿って説明させていただきます。

当時の取引所でございますが、今でもそうですけれども、取引所というのは需給を集約して公正な価格形成をするということ、それから、効率的な証券取引の実現をするという大きな役割を果たしておりました。そこで、独占禁止法の適用を受けないという扱いになっておりましたし、証取法上の自主規制機関として会員の行動に一定の制約を課すということも認められていました。他方で、取引所が定めております定款によりまして、取引所に取引を集中しなければいけないという義務が定められておりましたし、株式の委託手数料、これも固定手数料が定められておりまして、競争制限的な要素もございました。そこで、証券市場改革を進めるに当たりましては、競争促進が不可欠であるということで、市場の参加者や仲介者がそれぞれのニーズに応じて最もふさわしい場で取引できるようにしようということが目指されたわけでございます。

この取引所集中義務を見直す必要性として当時挙げられました理由が4つほどございました。(2)でございますが、1つは市場間競争の促進でございました。もう1つは、市場における機関化現象が進展いたしまして、株式注文の大口化ですとかバスケット化が進むというように、取引ニーズが多様化いたしました。それに加えて、取引コストの削減とか、即時一括執行、あるいは匿名性を求めるニーズもございました。当時の取引所の取引システムでは十分対応しきれないというような状況にございました。3番目が通信情報技術の発展でございまして、従来の取引所という一定の場所における取引、これを越えていろいろな取引市場が開設される可能性が出てきたということがございます。それから、最後は国際化でございました。国内で執行しにくい取引は海外へ流出していくと。こういうようなことを背景としておりました。

これへの対応でございますが、1つは、今の取引所内における取引システムの見直しということで、大口・バスケット取引に対応できるような売買制度を導入するとか、いろいろなことを検討すべきという指摘が行われました。2番目が、3ページでございますけれども、すべての投資家に取引所外取引を認めるということでございました。ここで留意すべき点として、第三でございますけれども、取引所外の取引によって独自に価格形成が行われた場合、それは取引所における取引と同様に公正かつ透明なものでなければならないということがございました。これを突き詰めますと、取引所外取引を行う証券会社に対して、常時、気配を提示して、各会社・取引所の気配をシステム的にリンクした上で、顧客の注文を最良執行する義務を負わせることが前提であろうと当時は考えられておりました。ただ、こういうようなインフラ整備にはコストと時間が必要になりますので、当面は、取引所外取引を認めるにしても、取引所の価格形成機能を最大限活用する方法が現実的であろうというような整理が行われました。それから、取引所外取引を認める場合にも、投資家保護の観点から手当が必要という指摘が行われました。

ちょっと飛ばして6ページへ行っていただきたいと思います。こういう指摘がされたわけですけれども、その中で、委託手数料につきましては累次にわたって自由化がされまして、平成11年10月から完全自由化になっておりまして、かなり下がってきております。

次のページは東京証券取引所が行ったいろいろな改善でございます。大変いろいろ行われておりますけれども、先ほどの答申で指摘されましたことについては、左側の2つ目の塊の「取引インフラの整備」というところに、立会外取引制度の導入とか、ToSTNeT システムの稼働ということで、大口売買とかバスケット売買、終値取引というようなことができるようになっております。

8ページが「取引所集中義務の撤廃」でございますが、平成9年の報告を受けまして、取引所の定款において取引所集中義務は削除されました。その上で証取法の手当が行われたわけですけれども、証券会社が投資家に対して取引の対応、取引所で取引をするのか、あるいは取引所外で取引をするのか、これを説明して、投資家が取引所外での執行を明示的に希望した場合には、取引所外で実行するという規定を置きました。証券会社が取引所外取引を行った場合、その内容を証券業協会に報告し、協会はそれを公表するということにいたしました。それから、相場操縦のような不公正取引の禁止規定ですが、従来は取引所の取引を前提としておりましたけれども、これを取引所外取引にも及ぼすということにしております。それから、取引所外取引における価格の公正さを確保するという観点から、取引所での立会時間中に行われる取引については、そこにありますように、一定の価格の範囲内というような規制を打ったところであります。

次のページに取引所外取引がどのぐらい伸びてきたかという棒グラフがございます。四半期ごとでありまして、季節要因が出ておりますけれども、14年の第二クォーターで東証一部、二部に占める比率が大体6%程度となっております。

また4ページへお戻りいただきたいと思いますが、(5)でございますけれども、この取引所集中義務が撤廃されることになりますと、今後、証券会社が取引所外でいろいろなサービスを展開することが予想されます。コンピューターネットワークを利用して、一般の投資家から注文を集めて、そこで取引を行うというのが予想されました。これを法制上どう位置づけるかということが問題になったわけでございますけれども、この新しいシステムは、取引所と同じような機能を果たすのであれば取引所と同じような規制を当然受けなければいけないということになるわけでございますけれども、当時考えておりましたのは、現実問題としては、当面は、そういうような新しい電子取引システムにおいては取引所の価格機能を活用して取引が行われるだろうと、ですから、価格形成機能は取引所ほど高くないのではないかと考えられましたので、それを前提として、こういうような新しい取引システムは取引所の規制ではなくて証券業として整備することが適当であると、こういう整理が行われたところであります。

10ページをお開けいただきたいと思います。これは、この報告を受けて整備されましたPTS/私設取引システムでありますけれども、電子的技術を利用して、同時に多数の者を相手に有価証券の売買、媒介を集団的に行うものでございますが、これについては、証券業と位置づけて、必要最小限の規制にとどめております。具体的には、認可制にとどめております。取引所の場合は免許が必要なのですが、これは認可にとどめております。他方で、ここのPTSにおける価格決定方法に制約を課していまして、当時認められましたのは、取引所の終値を用いる方法と、もう1つは顧客同士が相対で交渉をして取引を成立させる、この2つの方法に制限されておりました。その後、平成12年に規制の見直しが行われまして、この2つの価格決定方法に加えて、顧客同士の注文を対当させることによって取引を成立させる方法と、売買の気配を提示する方法、これが追加されたところであります。これがPTSです。

次のページに利用状況が出ておりまして、表の右側の方にシェアが書いてありますけれども、いずれにせよ0コンマ幾つと、まだまだ微々たるものに留まっております。

それから、次が12ページでございまして、取引所の株式会社化でございます。平成12年5月に法律ができましたけれども、ニューヨークやロンドンで株式会社化の計画があったことを受けて日本でも法制化を行ったものでございますが、狙いは、円滑な資金調達ができるようにするということと、意思決定を迅速にするということでございました。ただ、株式会社になりましても取引所は公共的な機能を果たさなければいけませんので、2の(2)でございますけれども、所要の措置が講じられておりまして、1つは資本金が10億円必要であるということ、もう1つは、支配株主が影響力を行使することによって公正な機能が阻害されてはいけないということで、5%以上株式を持ってはいけないという規制を導入いたしました。それから、業務範囲も市場の開設に限定されております。現在のところ、東京、大阪、名古屋が株式会社に変更されております。

以上がこれまでの改革の動きでございます。

それから、今後の考えられる検討項目、一応事務方として整理をしたものでございますが、資料2でございます。これに対応する説明資料が関連資料の資料3ですので、両方並べておいていただきたいと思います。

資料3、関連資料の1ページ目をお開けいただきたいと思いますが、「海外取引所が設置する取引端末による取引の仕組みの例」というのがございます。海外の取引所の会員が端末を日本国内に置いて、日本国内で投資家の注文を受けて、その端末から取引を発注するということが行われております。

次のページ、2ページをお開けいただきたいと思います。これまでのところ行政といたしましては、こういうような行為に対して、法律上の有価証券市場の開設の免許というような手続きをとらずに、一定の事項について報告を求めるという対応を行ってきております。もちろん日本国内の投資家から注文を受ける行為自体は証券業ですので証券会社でないとできませんけれども、その注文を端末を通じて海外の取引所に発注をするということ自体については明文の規定がないということでございます。ただ、関係する規定が1つございまして、2でございますが、有価証券市場の開設との関係が問題になります。日本の有価証券市場は取引所と同様の機能を有する施設と解されておりますので、この開設には免許が必要でありますから、海外取引所端末を日本に設置する行為が有価証券市場の開設に当たるということになりますと免許が必要になるわけで、この規定との関係が問題になるわけです。3でございますけれども、端末を設置して注文をするといってもいろいろな形態が考えられますので一律に判断することはできないということでいろいろな情報を出してもらっていたわけですけれども、現在のところ、設置されている端末を使って行う取引については、いずれも市場の開設には当たらないという判断で、何ら法的な規制をかけずにこれが行われているわけでございます。

ちょっとページを飛んでいただいて、5ページ目に現在設置されている端末というのがございます、シカゴのマーカンタイル取引所とかシドニーの先物取引所の端末が日本国内に幾つか置かれております。

6ページは海外における法制でございますけれども、一番左にアメリカSECの例がございますが、アメリカの場合は法律に根拠がございまして、取引所を開くときには登録が必要なわけですけれども、海外取引所がこういう端末を設置する場合は登録免除の申請ができるということになっておりまして、その免除申請をしてノーアクションレターを出してもらっているようであります。他方で、そこに制限がつけられておりまして、取扱商品の制限とか取引可能なものの制限、それから、取扱数量について条件が付されているようでございます。日本の場合は根拠規定がございませんのでこういうような対応にはなっていないところでございます。これが海外の取引所端末の設置の問題であります。

次のページ、7ページでございます。これは海外取引所とのクロス・メンバーシップへの対応でございますが、シカゴ商業取引所とフランスの国際金融先物オプション取引所/MATIFというのがありますが、この間で取り決めを結びまして、システムの接続を行っております。右下にありますが、MATIFの会員がCMEの取引参加者資格を取得しておりまして、フランス国内の端末から注文を出すと、これがCMEで執行されるという形になります。ただ、清算・決済は安全確実でないといけないということで、CMEの清算会員を通じて行われるということでございます。この仕組みの中で取引の公正さを担保する必要があるということで、監督当局であるCFTCとCOBがMOUを結んで相互に情報交換等を行っていると、こういう仕組みがございます。

日本ではこれをやろうとすると、次のページでございますが、法制上の対応が必要になります。1つは、取引所の会員、取引参加資格の問題でございますが、日本の証券業者が海外の取引所にアクセスをする、これは海外の法制で規制をされるわけですが、逆に、外国の証券会社が日本の取引所にアクセスをする場合には、日本の法制が適用になってきますので手当が必要になります。1つは、今の証券取引法は、市場における取引は国内の証券会社または登録を受けた外国証券会社に限るということになっておりまして、外国証券会社が日本で登録を受けるときには日本国内に支店を設けなければならないということになっております。この支店がないような海外の業者が日本の市場に直接アクセスできるようにするには、ここの見直しが必要になります。この場合、どういうような法的枠組みを導入すべきか検討が必要になってまいります。同時に、その業者が行う取引の公正を確保するためにどういうようなルールを設け、かつ、その実効性をどう担保していくかということも必要になりますし、決済リスクにどう対応するか、これの検討が必要になってまいります。これが海外絡みでございます。

次の論点では取引所市場と私設取引システム/PTSの関係がございますが、これは資料の9ページに概念図がございますけれども、証券取引法の規定で、右の四角の中に「有価証券市場」というのがありまして、有価証券の売買を行う市場、これは免許が必要である、これが原則でございまして、左の塊の「取引所有価証券市場」、これは免許を受けて証券取引所を開設する市場になります。それと同じようなものに証券業協会、これは内閣総理大臣の認可を得て設立される協会でありますが、これは店頭売買有価証券市場を開設することができるとなっております。この2つが有価証券市場ということになっておりまして、いろいろな公正な取引を行うために規制を付しているわけでございます。ただ、有価証券の売買を行うという点は、証券会社も当然できるわけでありまして、その証券会社が行う売買の態様によっては取引所と似たような取引が行われるということになりますので、その証券会社が行う行為と取引所が行う行為の線引きが必要になってまいります。ここが、証取法では、基本的には価格決定の仕組みによって区別をしております。オークションとかマーケットメイクによって価格を決めるようなものは取引所として規制しております。それ以外のものを証券業というふうに、簡単に言えばそういうふうな価格決定方式で区別をしているわけでございます。

ページは11ページまで飛んでいただきたいと思いますが。PTS、証券会社がインターネットシステムみたいなものを使って行っている取引、経済的には市場に近いものだと言えますが、これは、取引所ではなく、証券業、証券会社の業務として位置づけております。その特色は、価格決定方法を限定しているということでございまして、認められている方法の1つは、顧客の注文をぶつける方式。これは顧客の指値をつけ合わせるという点で一定の価格形成機能を有してはおりますけれども成行注文とか板寄せが行われないという点で、取引所の価格形成機能ほど高度ではないという整理をしております。それから、売買気配の提示方式、これも認められておりますけれども、これも店頭市場でマーケットメーカーが自分の気配を常時提示して、かつ、そこで注文があったときには必ず注文を受けなければいけないということに比べて、このPTSの場合は常時気配値を出さなくてもいいとか、その気配値の範囲内で注文があっても義務的にそれに応じなければいけないということもないということで、店頭市場ほど高度な価格形成機能を有しないと、こういうふうに整理をしているわけでございます。

次のページをめくっていただきたいと思います。以上の点は法律・政令できちんと書いてあることでございます。他方で、事務ガイドラインで、3の(2)でございますが、取引高シェアに基づく数量基準が導入されておりまして、PTSで扱われる取引の量がふえてまいりますと、価格形成方式が取引所とは違うとは言っても量がふえてくるとやはり取引所との関係が非常に近くなってくるということで、一定量を超えた場合は取引所の免許を求めていただくということを認可の条件として運用上つけております。こういうような問題をどう考えていくかということが必要になります。

アメリカの法制については15ページにありますが、詳しくは説明いたしませんけれども、アメリカの場合は日本と違いまして、価格決定方法に制約は設けておりませんで、もっぱら取扱量で取引所間でこの違いをつけております。

次は、取引所市場と店頭登録市場の関係でございますが、これは18ページに大まかな違いを載せておりますが、取引所市場の開設は内閣総理大臣の免許を受けた会員制法人か株式会社、店頭登録市場の場合は証券業協会というふうに、設立主体が違っております。主な違いはこれだけでございまして、あとは細かな違いでございます。株式の保有制限は、取引所には株式形態がありますのでこういうようなものを設けていますが、協会は会員制ですのでこういう問題は生じません。それから、重複上場の問題がございます。取引所市場は幾つかありますけれども、その間で、大証と東証と名古屋と同じ株を3つ上場してもいいわけですけれども、店頭登録市場と取引所との重複上場は認められないということになっております。それから、商品の種類では、取引所はデリバティブもいいのですが、店頭登録の場合は有価証券の売買のみというふうに制限されております。それから、細かな違いですけれども、取引所市場の場合は市場外取引という概念がございまして、立会時間外に行われる取引所外取引については価格規制が適用されないわけですけれども、店頭登録市場の場合は、法令上は市場外取引の概念がありませんので、システムが動いていない時間帯であっても価格規制がかかってしまって実務上支障になっているというようなこともあるようでございます。

それから、取引所市場、店頭登録市場、いろいろと上場基準とかディスクロージャーのルールが違っております。19ページに詳しい資料がありますが、説明は省略いたしますけれども、当然、市場間競争ということがありますからルールに特色があってもいいわけでありますが、他方で、取引のインフラとして、例えばディスクロージャーの一定のものというようなものについては最低限共通化しておかなければいけないものもあるのではないかという指摘もございます。この点についても今後検討課題になってこようかと思います。

それから、資料2に戻りますが、その他の検討事項として考えられますのは、市場開設者のあり方の見直しでございます。特に、これは証券業協会でございますけれども、証券会社の集まりとして自主規制機能を持っていると、それから、店頭登録市場の市場開設者という機能も持っております。それから、法律上は書いてありませんけれども、業界の代表という機能を持っております。こういう性格を持った協会について市場開設者のあり方としてどうかというのがもう1つの論点になってこようかと思います。

それから、市場間競争ということになりますと、投資家の観点から見れば最もいい条件で実行してもらわなければいけないわけで、最良執行を義務づけてもらいたいという声があるわけですけれども、明文の規定では証取法には入っておりませんけれども、こういうのをどう考えるかというのが論点になろうかと思います。

かなり技術的で、かつ広範にわたっておりますけれども、法制度から見て今後対応が必要かと事務方として考える点はこういうような点でございますが、実際に市場を利用されておられる証券会社の方とか市場を運営されている方からこの後いろいろご意見があろうかと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

端末の設置とかクロス・メンバーシップのような問題は法制的にも非常に技術的な面も含んでおります。それから、最後の方でお話しいただいた問題は、従来本当は議論して方向観を出してくるべきだったとも思われますけれども、いろいろビッグバンのときには時間的な制約もあって十分に議論ができず、将来へ送ったというような面もあろうかと思いますけれども、かなり根本的な政策的なあり方にかかわる部分の問題もあるように思います。

いずれにしましても、幅広く問題をご説明いただきましてどうもありがとうございました。

引き続きまして、今ご説明いただきましたそれぞれの有価証券市場とかかわりを深く持っておられます市場関係者のメンバーの方々からお話を伺いたいと思います。

今の事務局の説明で、ワーキング・グループでの今後の検討課題として考えられる項目というのが資料2で1ページにまとまっていますけれども、提示されております。これを踏まえまして、あるいはこれから離れてでも結構でございます。さらにどのような項目が検討課題として考えられるのか、どのような項目に重点を置いて検討を進めていくべきか、また、それぞれの項目についてどのような視点、観点から取り組んでいくべきか等につきまして、実務に詳しいお立場からどうかご自由にご意見を伺えればと思います。大変恐縮でございますが、議事の関係で、お一方10分ということでひとつよろしくお願い申し上げます。

まず最初に、取引所市場の代表ということで、吉野さん、どうぞよろしくお願いいたします。

○ 吉野委員

東京証券取引所の吉野でございます。発言の機会をちょうだいいたしましてありがとうございます。

本日は「取引所のあり方に関するワーキング」ということでございまして、取引所の視点から「証券取引所を取り巻く環境変化」についてまずご説明を申し上げまして、その上で「今後の検討課題」について考えるところにつきましてご説明をさせていただきたいと思っております。

資料を用意させていただきました。「証券取引所を取り巻く環境変化」というデータを用意してございますので、適宜ご参照いただきながら説明を進めさせていただきたいと思っております。

証券市場はインターネットに象徴される情報通信技術の飛躍的な発展によりまして大きく変化しております。投資者は、自国にいながらにして世界各国の市場動向や企業などの情報を容易に取得し、投資判断を行うことができます。また、どこの市場におきましても取引を行うことが可能になってきていると、こういう状況でございます。企業等の資金調達者も、また、自国のみならず、グローバルなベースで資金調達の手段を選択することができるという状況でございます。こうした中では、証券会社などの仲介者の活動も必然的にグローバルなものになってきておりまして、それは取扱う商品や応対する顧客層においていわゆるビッグプレイヤーに限られたものではございません。このような証券市場のグローバル化、ボーダレス化によりまして、各市場は国際的なレベルで投資者あるいは企業などの選別を受けることになっております。そこで、すなわち、国際的な市場間競争の激化をもたらしている状況にあるということが言えるのではなかろうかと思っております。

証券取引所を取り巻く環境が国際的に大きく変化している中で、各取引所や各国はみずからの市場の国際的地位を確保するために競争力を強化しようと躍起になっておりまして、取引所の株式会社化、非会員組織化を初めとする組織改革がその端的な例でございます。

お手元の資料の2ページをごらんいただきたいと思います。これは「ヨーロッパの動向」という形で書かせていただいております。国際的な市場間競争の激化については、近年繰り広げられている欧州での取引所の合従連衡の動きにおきまして、まさに現実のものとして見て取れるのではないかと思っております。殊に一昨年ぐらいから極めて情勢の変化が目まぐるしくなっておりまして、ロンドン証券取引所とドイツ取引所が提携・合併の動きを見せましたが、それは実らずに数カ月で破談になりました。かわって、今度はスウェーデンのOM、これがロンドン証券取引所にTOBをかけました。これも実っておりません。一方で、パリ証券取引所が中心になってアムステルダムとブリュッセルの取引所の三者の間で「Euronext」を立ち上げました。その後、ご承知かと思いますが、LIFFE をめぐりまして、ロンドン証券取引所が、続いてEuronextとドイツ取引所が次々と買収をオファーして競り合いました。結局のところ、英国ではないEuronextがLIFFE を買収したという事実がございます。また、Euronextはポルトガルのリスボンも傘下に収めたという事実もございます。こうした結果、現在、ロンドン証券取引所とEuronextとドイツ取引所の3つが欧州の主要市場として名乗りを挙げるという状況でございます。最近でもヨーロッパの取引所をめぐる話題には事欠かない状況でございまして、並行して取引所と関連の深い清算・決済機関についても再編成の動きが急になってきております。

先日、当取引所の社長の土田がEuronextのトップであるテオドール議長以下の幹部と面談をする機会がございました。これはEuronextの相互取引協定の締結調印のためにパリを訪れた際の面談の機会でございますが、そのときの話といたしまして、Euronext全体の公用語にはフランス語ではなく英語のみを採用しているということでございました。また、先般、Euronextの半期決算の発表は、パリではなく、ドーバー海峡を渡ってロンドンで行われていると、こういう実態がございます。かの誇り高きフランス人が公用語として英語を用いるというふうなことでございます、また、ロンドンで決算発表を行うという、こういうふうな時代になってまいりました。ヨーロッパでは取引所の再編の動きが大きく押し寄せているということを感じさせる1つの事例ではないかと思っております。また、Euronextではブック、すなわち日本では板と呼んでおりますが、これは一本化しており、どの市場からでも自由に選択して注文ができるようになっているという事実でございます。さらには、上部の持株会社のもとに5つのいわば支部がございまして、それぞれの支部はそれぞれの国の法律によってつくられた法人でございます。準拠法は一本化せず、5つの支部のトップにはそれぞれ地域の出身者を当てるなど、実によく工夫された仕組みをとっております。こうしたことを見聞きしまして、また、ロンドンなどにおいて関係者の方々に様々な話を聞く機会がございまして、土田を初め私ども東証は、グローバルな取引所の陣取り合戦はいよいよ本格化が極めて間近いのではないかということを実感しているところでございます。

それでは、この欧州における取引所の合従連衡の動きにつきましては、果たして欧州経済連合という特殊な事情によるものだと言い切れるものかどうかということでございますが、確かに契機にはなっているのではなかろうかと思いますが、いずれにせよこうしたことはアジア太平洋地域あるいはタイムゾーンをまたいで起こってくるのではなかろうかと考えております。こうした中で、国際的に見て本当の意味で競争力のある大型で強力な取引所というのは、こういうことを推定していいのかどうかという問題はありますけれども、アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋を通じて各地域にそれぞれ2カ所、多くても3カ所程度しか存立し得ないのではなかろうかと思っております。我が国におきましても、まずアジア太平洋地域で、究極的には全世界的な規模での市場間競争に耐え得る中核的な取引所をつくることが急務ではなかろうかと認識をしているところでございます。

取引所市場は高度に組織化された価格発見機能を担う市場でございまして、証券市場の中核的役割を果たすことが期待されている市場でございます。取引所の競争力はその国の経済力を基盤とした証券市場全体の競争力と直結するものとも考えられます。先般、金融審議会が取りまとめられました「金融システムの中期ビジョン」では、我が国金融システムの国際競争力の確保、アジアとの共生というパートで、アジア圏内に位置する日本経済はアジア経済と共存共栄の関係にあると、日本がアジアの一員として金融面でも実態経済面でもアジアの地域統合の軸となる役割を担うことが重要である点に留意する必要があるというふうに記されております。そのためには、我が国金融システムを効率的で優れた市場機能を中核とするものへと再構築することによりまして、国際競争力を高めていくとともに、あわせて、日本の取引所は国際的な資金フローにおいてアジア圏内のハブ的な機能を果たしていくことが重要であると考えられます。

では、アジア太平洋地域において今後の日本の取引所の地位は安泰と言えるかどうかということでございますが、資料をめくっていただきまして、「アジアの証券市場」と題する資料をごらんいただきたいと思います。アジアの各市場の時価総額の推移を載せてございます。例えば上海について言えば、現在は中国経済、中国企業の勃興期でございまして、目を見張るほどの成長期であります。将来、上海取引所はまことに端倪すべからざる存在になるであろうと思っております。こうした情勢に鑑みれば、日本でも早く国際競争力の観点に立った強力な取引所をつくらなければならないということでございます。少なくとも私ども東証は日本のセントラルマーケットとして、国際的に勝ち残っていくため、その目標に向かって努力を積み重ねていかなければならないと、そういう認識でおります。

それでは、グローバル市場として取引所が担うべき機能とはどういったものかというふうなことでございますが、証券市場の中核的役割を担うべき取引所としては、投資者、市場仲介者に対してハードとして効率性、利便性の高い市場インフラ、そして、その上にソフトとして高い信頼性、安全性という市場の高い品質をあわせて提供することが重要であると思っております。国際競争力という観点からは、グローバル市場たる取引所の機能のあり方を考えますと、水平・垂直の両面で統合されたサービスを提供することが求められていると考えられます。

皆さんご承知のことかと思いますが、あえて申し上げれば、水平とは、すなわち、上場商品の品ぞろえでございまして、多様な商品に対していわゆるワンストップショッピングを可能とするものでございます。これによりまして、投資者、市場仲介者に高い利便性を提供するとともに、インフラの共通化によってまた高い効率性の実現が期待できるのではないかと思っております。垂直とは、マッチングから決済、情報サービス、自主規制といったもろもろの機能が有機的に一貫した形で行われることでございます。これらの諸機能がばらばらに行われるようでは投資者や市場仲介者の利便性が損なわれるのではないかと思います。これらの機能が有機的に働くことによって市場全体としてのコストの低廉化に資するものと考えております。また、市場の品質という面で見ますと、アメリカにおけるエンロン、ワールドコムなどの事件もございまして、国際的に関心が高まっているところでございます。ますますこの辺のところは重要になってくるのではないかと考えられております。

そこで、最後に、法制面における今後の検討課題について触れさせていただきたいと思います。取引所において株式会社形態の導入のための法改正など、先ほど説明がございましたが、これまでもさまざまな対応をいただいておりますが、今申し上げました最近の諸外国の取引所の動向等を踏まえますと、将来的に日本の取引所が同じようなことをやるといったときに、法的に制約があって対応できずに後手を踏むことになったということがないように、あらかじめ法的な枠組みについては整備をしておいていただく必要があると考えられます。

そのような観点から、まず優先的にご議論をいただきたい検討課題といたしまして、クロスボーダー取引に備えた取引所の取り組みを可能とする法的枠組みの整備、具体的には、クロス・メンバーシップやリモート・メンバーシップといったものの法整備をお願いいたしたいと思っております。海外におけます主なクロス・メンバーシップ、クロスボーダー端末設置の状況につきましては、4ページに概略を説明させていただいておりますが、先ほど事務局の方からもご説明がございましたように、既に欧米の取引所におきましてはクロス・メンバーシップ、クロスボーダーといった形でクロスボーダー取引への対応が進んでおります。この点についてはぜひともご検討をいただきたいと思っております。

また、取引所のあり方とは直接関係する問題ではございませんが、取引所の国際競争力という点では、外国企業の法定開示につきましてはぜひ英文での開示を認めていただく必要がございます。私どもはそれでなければ日本は世界のローカル市場になってしまうという危機感を持っております。ドイツ、フランスでは、既に外国企業の上場を促進するため、目論見書、アニュアルレポートについて英文での開示を認めております。かねてからお願いをしている点ではございますが、外国企業の上場誘致または退出防止のためにもぜひとも早期の対応をお願いしたいと思っております。

さらに、取引所の組織形態は、会員組織もございますが、株式会社形態は、海外の取引所におきましては、その中でも持株会社形態を活用している例が数多く見受けられるようになりました。その背景や目的はさまざまだと思いますが、取引所の戦略上の選択肢をふやす意味では、そのための法制度を整備しておくということも考えられるのではなかろうかと思っております。なお、その際には、現在の株式会社の取引所の5%の株式保有制限の見直しも検討課題になるのではなかろうかというふうな気持ちを持っております。

加えまして、中期的な検討課題として考えられるものを挙げさせていただきますと、非金融商品の扱いや、証券、金融先物取引、商品の相互乗り入れといった、業態別取引所規制の見直しといったことも考え得ると思います。いずれにしましても、東証に限らず、我が国の各取引所はそれぞれ国際的な市場間競争というものに対応すべき努力をいたしているところでございます。したがいまして、そのための環境整備をぜひとも継続的にお願いいたしたいと思っておるところでございます。

10分をちょっと延びまして申しわけございませんでしたけれども、私の説明は以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。限られた時間の中で大変重要なご指摘を多数いただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

それでは、続きまして、各市場の関係者ということでご意見を承りたいと思います。順番でございますが、まずは外国有価証券市場の関係者ということで、石橋さんからご意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○ 石橋委員

石橋でございます。本日は一取引所の参加者あるいは会員として述べさせていただきたいと思っております。簡単ではございますが、幾つかの論点を順を追ってお話しさせていただければと思っております。

まず一番最初の「取引所有価証券市場と外国有価証券市場」、ここにつきましては、ただいまもご報告がありましたとおり、主に先物取引に関しましては、国内においての端末設置ということも法的な解釈も含めて行われており、実態としても行われていると。そこにおきまして、今後、クロスボーダー取引あるいは24時間取引の進展におきましては、現物市場というところにおいてもいずれ考えていかざるを得ない問題であろうと。殊に先物取引等におきましてはヘッジニーズというところが中心としてございますが、今後は現物取引におきましては、ヘッジだけではなく、さまざまなアセットアロケーションの一環として国内市場あるいは海外市場への参加ということ、こういったことに関しましては今度考えていく問題ではないかと思っております。

ただ、この中で、全体としての議論でもあるところでございますが、視点といたしましては、まず第1にありますのが投資家にとっての利便性、それともう1つ忘れてはならないのが投資家からの信頼性の確保、この2つをやはり重要な視点としてとらえていかなければならないのではないかと。その2点を踏まえた上で厚みのある市場を、これはグローバルなもの、あるいは国内においても構築していくということが必要ではないかと考えております。したがってそこで出てまいりますのが適切な投資家保護体制ということで、海外の取引所端末に国内に設置するというときに、国内の投資家の保護体制をどのようにして確保していくのか、こういったことが1つ大きな課題になるのではないかと考えております。

一方、逆の意味での、それでは海外投資家が日本の国内の市場へ参加していくということにつきましても考えられるかと思いますが、ここにつきましては、1つは、今後、夜間取引等も含めました24時間取引体制というものが国内においても今後更始されるということであれば、海外からの参加ということも見込まれてくるのではないかというところが1点。もう1つは、同じ時間帯にありますアジアの取引所間の中で、アジアの投資家が今後日本に対して直接の参加を求めてくるということも考えられるのではないかということがあります。

その中でも参加方式として考えられますのは、1つは間接的な参加。これは現在でもそうかと思いますが、国内の取引参加者等を通じた参加になるということでございますが、それが今後仮に24時間取引体制になった際に、国内取引参加者のサーバーだけを通じての参加というようなことになった際に、それでは執行についての責任というのはだれが負うことになるのか、サーバーを貸し出しているだけの国内取引参加者になるのか、あるいはそうでないのかと。以前議論があった際には、現在の法制の中では、国内の取引参加者あるいは証券会社、外国証券会社の執行に対する責任ということはやはり免れないのではないかと、となりますと、取引参加者といたしましてはそこで二の足を踏んでしまうということも考えられるかと思いますが。

そこで出てまいりますのが、今後、クロス・メンバーシップ方式によります直接参加ということがありますが、これにつきましては、やはり執行についても海外の取引参加者あるいはそのメンバーにおける直接の責任ということになってまいりますので、次のポイントといたしましては、それでは不公正取引に対してはどのようにして対処していくのかということになろうかと思います。現状では、具体的には、例えば証券会社の行為規制に関する府令でさまざまな監視あるいは取締りを行っているわけですが、それが今後は海外の業者に対してどのようにそういった不公正取引の防止を図っていくのかということ、あるいは、ビッグバン等におきまして外務員制度ということを充実したわけでございますが、日本における外務員を通さない証券取引というものにつきましてどのようにして不公正取引の防止を図っていくのかといったところが今後の課題になっていくかと思われます。

また、実際の問題といたしましては、私どもはやはりミスの取引を行ってしまうと、買いの注文を間違って売ってしまったり、注文株数を間違って入力してしまったりすると。そういったところにつきまして、海外におきましては、場合によっては両者の合意により取消ができるというようなことが行われている市場もあるようでございますので、そこにつきまして、国内においてはそういったことが認められるのか認められないのか、認められないとすれば、そこについてはやはり周知徹底を図っておく必要、それに対する対応ということも取引参加者に対しては認識してもらっておかなければならないということが考えられるかと思います。

ここで、ちょっと海外取引というところとは若干ずれてくるのかもしれませんが、今の話の流れの中では、海外の証券業者に対して国内の取引を開放していこうと、クロス・メンバーシップのような形であれ、あるいはほかの形であれ、開放していこうということになれば、国内におきましてもやはり証券会社等以外による取引の直接参加ということが今後の議論にもなってくるのではないかと思われます。

やはりまず考えられますのは機関投資家でございます。これにつきましては、海外におきましても、特に米国におきましては仲介業者を省いた方法ということも考えられますので、今後そういった議論も恐らく出てくるのではないかと。また、個人投資家におきましても、これはむしろ松本委員の方が詳しいところかと思いますが、インターネット取引の隆盛に従いまして、かなり直接に近いような形で取引に参加しているというような実感を持ちながら取引をしていらっしゃる方がいるのではないか、すると、そこでもさらにそれが直接参加に近いような形として今後考えられていく可能性もあるのではないかと思われます。

それと、やはりここでも問題になりますのが、証券会社等を通さないということになりますと不公正取引の監視体制をどのようにして確保していくのか。これは、現状におきましては、いわば防波堤として証券会社があり、そこで不公正な取引等につきましては防止を図るということが法令上義務づけられているわけでございますが、その防波堤を取り去ってしまうということでございますので、そこにつきましての監視体制の確保ということが難しくなってくる問題であろうと。

こういった証券会社を抜きにした取引というものは現在まではあたかもタブーであるような形でございまして、と申しますのは、私ども市場仲介者に関しましてはそのことの議論自体が自己否定につながるようなところもございますのでそういったことがあったのですが、ただ、先ほどもございましたように、委託手数料の自由化以降、やはり証券会社自体のビジネス・モデルというものを再構築していかなければいけないと、それと、やはり委託手数料に依存したような経営体質、これに対する見直しというものが図られてくるであろうと、場合によっては市場仲介者という者が流動性の提供ということに徹するような場合も考えられるでしょうし、あるいは、今話題になっておりますリサーチのところのあり方ということについても考えられる。そういった中で、これはもう1つの仲介者のあり方に関するワーキング・グループの方にそこの議論の方は譲るところになろうかと思いますが、そういったところも若干かかわってくるのかということがあるかと思います。

先ほどからございましたとおり、不公正取引の監視体制については、やはり最もノウハウあるいはインフラストラクチャーを持って監視できる体制にあるのは取引所、市場開設者ではないかということが考えられます。現在におきましても、市場開設者である取引所ともう1つの監視組織であります証券取引等監視委員会、こことの間の連携というのは非常に密になっていると私どもは印象を持っておりますし、そこにおきまして監視体制ができているのではないかと。ただ、もう1つありますのが、場合によっては、今後、取引所がそういった市場の取引監視ということにさらに特化していってもいいのではないかと。そこで1つ問題がありますのが、現在の法律のもとにおきまして、取引所あるいは証券業協会というものはその定款の中に会員あるいは取引参加者の法令確保の遵守状況の調査を行うということになっておりまして、金融庁を初めといたします検査機関と、私ども受検者の方の立場からいたしますと、ある意味でオーバーラップしているところがかなりあるのではないかと。そこで、監視体制につきましても一定のすみ分けというものを今後考えていくこともできるのではないかと、このように考えております。

以上、簡単でございましたけれども、ざっと述べさせていただきました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、次には、PTSと言うのでしょうか、私設取引システムの関係者ということで、松本さんからご意見を伺えればと思います。よろしくお願いします。

○ 松本委員

マネックス証券の松本です。どうぞよろしくお願いいたします。

まずPTSということなのですが、簡単な紙を書いてきたのですが、今までの議論というか、報告等を踏まえて申し上げますと、そもそも考え方の切り分けとして、取引所とPTSを比べた場合に、個人とかそういった投資家が入ってくる場なのか、あるいはプロだけが入ってくる場なのかというのは大きな質的な違いがあると思うのですけれども、この関連資料、資料3として配られているものの16ページを見ていただくとPTSの実際の概要といったものがありまして、もう1つ資料1の方の11ページには実際の売買状況といったものがございますけれども、この2つを見てみると、PTSと言いましても個人投資家向けに開かれているものは実は当社だけでありまして、あとは、株に関しましても債券に関しましても基本的にディーラー間もしくは機関投資家等のプロの間で行われているものです。資料1の方の11ページの売買状況を見ましても、PTSの取引というのはかなり低迷しているわけなのですが、かなり月によって大きな差がありまして、大体このうちの恐らく10億円とかその程度が当社の行っているもので安定しているのですが、そのほかの--いきなりこう数百億とかになっていますけれども、これはすべてプロの間での取引であると思われます。一応そういう状況の中で、そもそも個人向けなのかプロフェッショナル向けなのかということで全然考え方が変わってくると思いますので、それは価格形成であるとかいろいろなところについても変わってくると思うので、まずそういった切り分けをするべきではないかと、そのように思います。

プロの方の話もいろいろしなければいけないのだと思うのですが、私としては個人向けの市場といったものの方が気になるので、そちらの方でお話を申し上げます。先ほど吉野さんの方からもお話がありましたように、欧州の動向を見ますと、かなり取引所が集中してきていて、板も集中させてきていると、これはすなわち流動性をしっかり確保しようということだと思うのですが。及び、個人等が入ってくる市場であれば当然そのプラットホームとしての市場としての安定性というのが大変重要だと思うのですけれども、これは、昨今、ナスダックジャパンという市場が市場間競争に負けて撤退したと、そういうのは競争だからいいことだというご発言も金融庁長官の方からあったようですけれども、基本的には、特に個人が入ってくるような市場の場合には、プラットホームとしての市場としては安定性の確保というのは大変重要なことであって、必ずしもそのような競争を促すことが正しいのかという気が私はいたします。

また、適正な価格形成ということを考えましても、小さなわかりにくいPTSというよりも大きな市場でやった方がいいので、少なくとも個人等の一般の投資家が入ってくるような場においては、流動性の確保、あるいは市場のプラットホームとしての安定性、適正な価格形成を担保する、そういった3つの点においては必ずしもPTSのような方法が好ましいとは言えないと私は考えておりまして、もともとの平成9年等の考え方というページが一番最初にございましたけれども、根本的なPTS、市場集中が本当によくないことなのか、そうでもないのかと、少なくともそういう根本的な考えの部分について、個人向けのものに関しては必ずしも市場集中させるというのは悪い考えではないと、そういったような議論もなされてもいいのではないかと、そのように思います。

あとは、量規制の話というのがございましたけれども、アメリカの方でも数量規制といったものが行われているということなのですが、一方で、PTSが開かれて流動性が高まってくると取引量がふえてくるということは、そもそもその価格形成等の方法に問題が、もし、ないと仮定すると、仕組みに問題がないと仮定すると、流動性が大きくなってくるということは、その市場の妥当性というか、いろいろな運営であるとか価格形成の機能が機能しているという妥当性が推定されるような気が私はしますので、必ずしも流動性が大きくなると余計に規制をかけていくというのが果たして本当に正しいやり方なのかという気は、いたしまして、一方で、仕組み自体に問題があって、ループホールというか、法の抜け穴のような形になっていて、その結果としてそこに流動性が流れ込むということもあり得ると思いますので、量がふえたからいろいろな規制をするというよりも、そもそもの価格形成の方法であるとか、そういった仕組みの部分についてしっかりと議論がなされるべきではないかと、そのように思います。

一例になりますけれども、これは個別の例で大変恐縮ですけれども、私の書きました紙の2段目にありますように、PTSがマーケットメイクのような形式をとる場合には、2社以上のマーケットメーカーが入って初めてPTSであって、1社の場合には、仮にそれが個人投資家相手のものであってもPTSの法令の範囲に入らないということで、ある意味で穴が開いているわけですけれども、そういったものであるとか、そういう仕組み自体についての整合性といったものをしっかりもう少し詰めることの方が重要ではないかと、そのように思います。

あとは、取引所のあり方ということで、ここにもともと「案」と書かれています議題以外にも何か意見があれば構わないということなので1つ申し上げたいのですが。

取引所の果たせる役割としまして、1つは需要にこたえるといったものがあると思うのですが、夜間取引といったものが数年前に東証の方でも議論されましたけれども、本来、個人の需要があったので夜間取引を開こうという話になったのに、業者の間でそういう需要がないということで--これはもともと証券会社が昼間しか開いていないので、だから個人の投資家が夜にやりたいというニーズがあるので、東証が夜の市場を開けましょうかという話をしましたら、その当時の業務委員会と証券会社の代表者はもともと昼しか開いていない証券会社なので、当社においてはそういうニーズはないと--これは当然のことでございまして、だからあぶれた者として夜にやりたいというお客さんがいたわけなのですけれども。そういった理由で夜間取引というのは見送られたわけなのですが、先ほど話したPTSの議論との関係でも、しっかりと夜間に適正な価格形成が期待される、しかも流動性のある夜間取引市場といったものを取引所が開設するといったことも考えてもいいのではないかと思っています。

あとは、書いてまいりました紙の後段、2番の方になりますけれども、取引所のあり方ということで、私は、ここに書いてありますように、現状のマーケットを見ますと、いろいろな形でディスクロージャーの事実上の違反というのがよく行われているわけでありまして、例えばアナリストであるとか一部の者に対する事前の情報の開示であるとか、あるいは、例えば昨今の企業の不祥事等の場合にも、いろいろな形で、何でそういうことをやったんだとか、営業自粛をしろとか、そういう話が出る一方で、上場企業である以上、その責任者がマスコミの前に出てきて「こういうことはありませんでした」と言った次の日に「実はこういうことがありました」とか、そういったことがたびたび行われていて、そのたびに当然株価にも影響が出るわけでありまして、上場企業である以上、もっと追及されなければいけない責任といったものが上場企業にはあると思うのですが、ただ単に安全な肉を売るとかそれ以外にそういったこともあると思うのですけれども、そういった部分については現状においてはほとんど規制というか意見がなされていなくて放ったらかしになっていると。

これは現状のSESCの体制にも、人的な人数とかにも問題があると思いますし、証取法上も虚偽開示等には懲役刑等も規定されていますけれども、実際に適用されたということを私は聞いたことがございませんし、現状、我が国においては、上場企業のディスクロージャー等について実際の牽制といったものはほとんど効いていないように私には見えます。そういった部分について、企業を上場させるのは取引所の権限ですから、そういったディスクロージャー上の問題等があった場合に、取引所の方でそういったものを検知して、それが数回続いた場合には例えば上場を取り消すとか、そういった形で現状のSESCではできないアメリカのSEC的な役割といったものをもっと取引所に持たせる、そういったことも考えてもいいのではないかと、そのように考えております。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。新しい論点等も指摘していただきまして、ありがとうございました。

それでは、続きまして、最後になりますけれども、店頭登録有価証券市場の関係者ということで、菊一さん、よろしくお願いします。

○ 菊一委員

日本証券業協会の菊一でございます。よろしくお願いいたします。私からは、日本証券業協会が開設・運営をしております店頭登録市場の位置づけの見直し等につきまして、資料に沿って申し上げたいと存じます。

まず、店頭登録市場の目的でございますが、昭和58年6月の証券取引審議会の報告にありますように、我が国経済を担う活力ある将来性のある未上場の中堅・中小企業に対して、株式の公開、流通及び資金調達の場を提供するとともに、投資者に対してまして魅力ある投資対象を提供するというものでございます。協会におきましては、これらの期待に適切にこたえつつ、市場参加者にとって、公正で、効率的かつ利用する上でわかりやすい市場とする努力をしているところでございます。

次に、店頭登録市場の沿革でございますが、昭和38年2月に店頭登録制度を設けまして、一定の要件を具備した株式について、証券会社からの申請に基づいて協会が登録銘柄として登録いたしまして、証券会社間の売買値段、売買高等を発表いたしますとともに、登録銘柄の発行会社に関する資料の開示を行うことといたしております。

当時は店頭登録市場は取引所で上場廃止になった銘柄の受け皿的な色彩が強く、中堅・成長企業のための市場という姿にはほど遠いものだったと言えるのではないかと思います。次いで、昭和58年6月でございますが、証券取引審議会の報告書におきまして店頭登録市場の機能拡充が提言されまして、昭和58年11月に抜本的な店頭登録市場の制度改善が行われまして、いわゆる新店頭登録市場がスタートした次第でございます。このように店頭登録市場は成長性のある中堅・成長企業のための市場に大きく転じたわけでございますが、店頭登録市場の位置づけにつきましては、引き続き証券取引所市場の補完的機能を果たしていくことが適当であるとされておりました。

その後、店頭登録市場が急速に成長いたしまして、平成9年6月の証券取引審議会報告におきまして、店頭登録市場は取引所市場と並んで我が国の制度化された証券市場の1つとして重要な役割を果たしており、今後も次代を担う成長産業への資金供給がこれまで以上に重要になってくることが予想され、この面で一層大きな役割を果たすことが期待されることから、店頭登録市場が取引所市場の補完とされてきた位置づけを見直し、証券取引所と競合する特徴ある市場とすることが適当であるとの提言が行われております。

また、平成10年12月にはいわゆるビッグバンの一環として、店頭登録市場の位置づけについて法制度を含めた見直しが行われまして、証取法においては、証券業協会が開設する店頭売買有価証券市場として明確に規定されたところであります。これによりまして、マーケットメイク機能を活用した特徴的な市場としての位置づけのもとに、店頭登録市場の開設・運営を行っているところでございます。

このように、店頭登録市場が、証取法上、店頭売買有価証券市場と明確に規定されまして、店頭登録市場は取引所と同様に法律上の証券市場となったわけでございますが、証取法上、この市場について明確な定義はなされていないわけでございます。したがって、現実的な売買取引規制におきまして法的な整理が十分に行われることが望まれるところでございます。

次に、店頭登録市場の現状でございますが、店頭登録市場で売買されるもの、すなわち、証券業協会が登録原簿に登録するものは、本邦法人が本邦内において発行する証券取引所に上場されていない株券、新株引受権証書及び転換社債型新株予約権付社債券でございます。昨日現在で登録銘柄数は 932銘柄に達しておりまして、例えば、ヤフー、楽天、日本マクドナルド・ホールディングスといったような銘柄が売買されております。平成13年度の売買代金は4兆 7,500億円となっておりまして、東証第二部市場の売買代金を上回る程度の規模となっております。売買手法といたしましては、オークション銘柄の売買方式に加えまして、我が国唯一のマーケットメイク銘柄の売買方式の2種類を併用しております。昨日現在でオークション銘柄は 600銘柄、マーケットメイク銘柄は 332銘柄となっております。

店頭登録市場は本質的には相対売買取引の市場ではありますが、売買の増加に伴いまして、相対取引の手法を取り入れつつ、売買を効率的に執行するため、現在はシステム売買の手法を取り入れております。具体的には、オークション銘柄、マーケットメイク銘柄の売買について、JASDAQオークション売買システム、JASDAQマーケットメイクシステムを、それぞれ提供しているところでございます。このJASDAQシステムの稼働時間内におきましては、売買手法はシステムを通じる売買と、システムを通じない売買で会員証券会社が協会に約定結果を報告してくるものとの2形態がございまして、協会ではそれぞれにおいて成立した価格を統合して公表をしております。それから、平成12年2月にはJASDAQシステムの稼働時間外における売買報告制度を整備しているところでございます。

次のページをごらんいただきたいと思います。平成13年2月には店頭登録市場の売買システムの管理・運用、日常的なディスクロージャー対応業務等、具体的な運営機能の大部分を株式会社ジャスダックに業務委託をいたしまして、市場運営において株式会社機能を有効に活用することといたしております。協会といたしましては、引き続き、市場開設者として、市場ルールの作成、登録承認、売買監視等を行いまして、市場運営の基本的な枠組みを設定するとともに、取引の公正性を確保する立場からの市場の監理を行っているところでございます。

続きまして、このような現状のもとでの課題等について、技術的になると思いますが、若干申し上げたいと存じます。

まず、店頭登録市場の位置づけの見直しといった観点でございますが、店頭登録市場は本質的には相対売買取引市場の要素がありますものの、近年の店頭登録市場はその多くをシステム売買によっておりまして、この売買の手法は取引所市場と同様の統合的売買による仕組みで行われております。このような実態を勘案いたしますと、店頭登録市場の考え方といたしまして、システムに統合させる取引とそれ以外の純然たるOTC取引とでは規制のあり方について異なる整理をすべきではないかと考えておりまして、システム売買が行われない時間帯における売買は取引所市場外取引と同様の考え方で整理する必要があるのではないかと考えております。

現在、店頭登録市場には、取引所市場と異なりまして、市場外取引の概念が明確には存在しておりませんで、24時間すべて市場内取引と整理されているところであります。このため、先ほど申しましたように、JASDAQ売買システム稼働時間外の取引を平成12年に導入したわけでありますが、店頭登録市場には市場外取引の概念がございませんので、時間外取引における売買価格の制限につきまして、取引所上場銘柄における取引所市場外取引と異なりまして、終値の上下7%といった価格規制が設けられております。このため、流動性の低い銘柄の時間外取引を行いにくいといった状況が指摘されているところでございます。また、証取法におきまして、インサイダー情報を相互に有する会社関係者等の間で取引所市場または店頭登録市場によらずに有価証券の売買を行う場合には、証券市場の健全性・公正性に対する投資家の信頼を害さないという理由からインサイダー取引規制の適用除外となっておりますが、逆に、店頭登録市場につきましては市場外の概念が存在しませんので、インサイダー取引規制が形式的に適用されてしまうということになっています。また、取引所市場外取引におきまして適用されている公開買付規制につきましても、店頭登録市場におきましては市場外の概念が存在しませんので適用されないこととなりますが、実態的には規制があるものとして諸手続きを行っているのが現状でございます。

このように、店頭登録市場には市場外の概念がございませんので種々使い勝手の悪いところがございまして、先ほど申しましたように、システム売買が行われない時間帯における売買は取引所市場外取引と同様の考え方で整理する必要があるのではないかと考えているところでございます。そのほか、証取法において、協会は有価証券の売買のために市場を開設できるとされておりまして、店頭登録市場における取引対象証券が有価証券のみに限定されておりますことから、デリバティブ取引が行えないことになっております。将来的に、例えばETF等を導入する場合には、ヘッジ取引を行うための先物取引が不可欠となってまいります。この点につきましても議論の必要があるのではないかと考えております。

次に、ルールの共通化の観点から申し上げます。

この取引所市場と店頭登録市場のルールにつきましては、ディスクロージャー関係等、インフラ的なものは共通化する必要があろうかと考えております。しかしながら、すべての市場のインフラを含む完全なルールのイコールフッティングでは、単一の取引所市場だけでよいのではないかという議論も生じてこようかと思われます。それに、例えば各市場の上場基準等につきましては、それぞれの創意工夫によりまして、市場のユニークさにおいて差別化をいたしまして、投資者及び発行会社、その他市場ユーザーがニーズに応じて選択できる市場とすることも必要ではないかと考えております。

また、市場の競争を通じて、それぞれの市場の特性と投資者にとってわかりやすい選択肢の提供を明確にするとともに、新興市場の位置づけを市場関係者のあり方とも関連づけて議論すべきではないかと考えております。さらに、中堅・成長企業のための市場である店頭登録市場におきましては、流動性の積極的提供の観点から、オークション売買方式とマーケットメイク方式が併用されているということが特徴的な点であります。その点で、取引所市場におきまして、現在、オークション方式だけが採用されておりますことから、市場概念及び市場規制の整理につきましては、売買手法の違いや構造とも関連づけて議論すべきではないかと考えております。

以上、私からの報告は終わらせていただきます。ありがとうございました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

4人の方々から大変多様な論点を出していただきました。資料2に含まれていない新しい論点等の問題提起もいただきました。

そこで、さあ、どうやってこれを進めていくかということでありますけれども、本日はワーキング・グループにとっては第1回目ということでこの部会と合同で開かせていただいておりますので、先ほど事務局からいただきました説明、そして、今4名の方からいただきましたご意見等につきまして、皆様方からご質問あるいはご意見という形ででも結構です。それから、もうちょっとより広くというのでしょうか、取引所のあり方に関するワーキング・グループで今後検討していただくべき課題、あるいは検討をしていただくときの方向性、さらには進め方等について、幅広くご意見、ご感想をお出しいただければと思います。本格的な作業は次回以降に池尾先生のもとでお願いしたいと思いますけれども、きょうはそういう意味で、次回以降、ワーキング・グループを進めていく上でのご意見、課題等もあわせてお聞かせいただければと思います。

どなたからでも結構でございますが、いかがでございますでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○ 上柳委員

済みません、途中退席をいたしますので。

1つだけお願いといいますか、視点というのか。やはり、多分キーワードとしては公正な価格形成がどのようにできるかという、そのときに、市場間競争があって各市場でいろいろ工夫をされるという方が全体としてよいのか、あるいは、ひょっとすると、私はその説ですけれども、逆にある程度集中して1つのところでやった方がむしろたくさんの取引が集中して公正な価格形成になるのではないかというようなこともあるのかもわかりませんけれども。

例えば私は投資者の方の代理をして裁判をやったりすることが多くあるのですけれども、そういう観点から言いますと、随分事後であっても、取引が実際にどのように行われたのか、そのときの価格形成がどのように行われたのかということがトレースできることというのが大変重要になってきます。具体的には、裁判所に証拠を提出してもらうということになってしまうのですけれども、これも随分と後の事後の事後規制の最たるものですけれども、そういうものについても各市場でいろいろ工夫をしていただきたい。これが、もう少し言えば、いわゆるクロスナショナル的と言うのでしょうか、例えばヨーロッパの市場に直接私たちがアプローチできるようなふうになったときでも、少なくとも事後にそういう取引の記録等を日本国民あるいは日本の市場取引者がトレースできるような、そこについては少なくとも日本の行政として何か手助けをしていただくとか、あるいは、そのルートを確保するように何らかの工夫をするとか、そういうことも検討していただければなというふうに思いました。

以上です。

○ 神田部会長

今の点は、ブローカー、ディーラーに、いわゆるレコード・キーピングというか、その義務はあると思いますけれども、市場の運営者にもそういう点に配慮してほしいという、そういうご意見ですね。

吉野さん、今の点はどうなんでしょうか。当然、市場についての記録保持みたいなことは行われているようには思うのですけれども。

○ 吉野委員

実は、先ほどの金融庁の資料の中にもございましたように、クロスボーダー取引といったときに、取引所間でMOUを結んで、その間でいわゆる取引規制なり何なりというふうなことができるような仕組みというのは、先ほどの石橋さんの話にもありましたように、不公正取引の防止とかそういうふうな観点からは大変重要なポイントだろうというふうに思っております。そういった面では、法的な枠組みをきちんと決めた上でやるということが一番大事なポイントかなと思っております。

そういった点でもう1つあるのは、あとは国際間のいろいろな協調体制ですね。そういった部分では、例えば東証の今までの形跡という形で先ほどご説明がありまして資料もついてございますけれども、ISG(International Surveillance Group)という先進国の取引所で構成する市場間監視グループがございまして、そういった機関にも私どもは加入しておりまして、そういうふうなことの体制をつくっていくということも大切な1つのポイントかと思っておりますけれども。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、米田委員。

○ 米田委員

大阪証券取引所の米田でございます。

先ほど店頭有価証券市場の問題点という話がございましたが、私どもも取引所側の立場としてまさに今おっしゃった問題点を強く認識しました。

というのは、やや具体例を挙げて恐縮ですけれども、ナスダックジャパン市場でマーケットメイクを取り入れた取引市場といったものを考えたときに、まさに証取法の2つの有価証券市場である取引所市場と店頭市場、この違いというものが、例えば具体的には、たしか証取法42条だったと思うのですけれども、フロントランニングルールというのが取引所市場にはかけられているけれども店頭市場にはかけられていないということで、取引所市場にマーケットメイク制度を取り入れるということは法上では難しいという問題点が出てまいりました。そういった中で、まさに今の法的な位置づけというのは取引所市場と店頭市場とでは全く違った概念で位置づけられている。ところが、現実の店頭有価証券市場というのは歴史的な経緯を踏まえてどんどん大きくなってきている。まさにいろいろなニーズが出てきているということがあるのだと思いますけれども、菊一常務もおっしゃっておられましたように、この位置づけというのをはっきりと法的に明確にしていくことが必要ではないかと。言うなれば、今は店頭有価証券市場というのは非常に緩い規制になっている、取引所市場に関しては法的にきっちりとした規制になっている、そういった問題も含めて店頭有価証券市場のあり方を考えていく必要があるのではないかと。

それは、詰まるところは、店頭有価証券市場がどんどん拡大していった場合に、取引所市場と何の違いがあるんだ、それならば取引所になればいいじゃないかと、そういった議論にまで及んでいく問題があるのではないかと思いますので、我々はまさにナスダックのときにそういった問題を考えまして、そういった矛盾というのか、非常に問題点がありました。マーケットメイク制度というのは、店頭市場に付随しているということよりも、言うなれば、新興市場であれば流動性をつけるためにマーケットメイクというのは必要であろうと、そういった流動性の観点から出てきたものですから、必ずしも店頭だけにマーケットメイクをということではなくて、取引所にもマーケットメイクがあってもよいと思いますね。

そういったもろもろの難しい問題、議論があると思いますので、その辺はぜひきっちりと議論をした方がよいと思います。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

何度もそれを議論しなければいけない機会は過去にあったのですけれども、何となく先送りになってきたというところがありますね。

私からもちょっと一言だけ。おっしゃるように、取引所市場でも、ロンドン証券取引所とかは、伝統的にはクオートドリブンであって、オーダードリブンのシステムではなかったわけですよね。ですから、「オーダードリブン」と「クオートドリブン」という言葉を使わせていただければ、これは学界ではどちらがより効率的かは決着がついたという意見もありますけれども、それはともかくとして、今おっしゃったような問題というのはあるわけですね。だからどうしたらいいかというところは十分にこの場で議論をしてきておりませんので、今回どのぐらいやれるかということはあると思いますけれども、いずれにしてもきちんと整理をしませんと、やっていることは要は市場――市場と呼んでいいかどうかはあれですけれども――取引システムの、PTSも含めてですが、取引の仕組みの提供であると、そのための手段としてどういうやり方がいいのかということですので、そこはできれば、今回、皆様方の英知をひとつ結集して、法制上の枠組みをきちんとつくっていただければありがたいと私などは感じます。

淵田委員、どうぞ。

○ 淵田委員

私も全く同感でありまして、先ほどの菊一委員の資料に「店頭登録市場の目的」ということで昭和58年の証取審の報告が抜粋されております。つまり「将来性のある未上場の中堅・中小企業に対して株式の公開、流通云々」というわけです。しかし、今は、ご承知のように、取引所もベンチャー企業を活発に取引する時代になっているわけでありまして、まずこの未上場の中堅・中小企業といいますか、中堅・中小企業のベンチャーの取引の場という位置づけで店頭を取引所と分けるということは難しくなっていると思いますね。

それからもう1つ、それでは売買手法で分ける、例えば相対かオークションかという分け方が何度も出てきておるのですけれども、しかし、そもそも昔の店頭登録市場は事実上のオークション市場でありまして、店頭イコール相対という考え方、これ自体が間違いだと思いますね。そもそも、これはPTSの問題もそうですけれども、売買手法、あるいは価格決定手法によって取引市場としての法的な枠組みを全然変えてしまうと、売買手法に関するさまざまな創意工夫を阻害するおそれがありますし、それは、投資家、ユーザーから見て全く意味のないことだと思います。

大証の方からも出ましたけれども、そもそも店頭売買有価証券市場と取引所というものを区別する意義が今日どの程度あるのかというところから考える必要があると思います。注文執行とか価格発見といった機能を果たす組織された市場ということで両者は共通なのであり、区別する積極的な意味はもう薄いのではないかと思っております。これは、本来は、1983年の証取審で整理されるべき課題だったと私は思うのですけれども、特に今はこの点に関連していろいろな課題が生じておりますので、今この機会にやはり変えていくべきではないかと思っております。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

どうぞ、安委員、お願いします。

○ 安委員

私は学者でも何でもないので部外観的なことを言いますが。

やはり投資家のサイドから、特に個人投資家のサイドから、取引所のあり方というのをもうちょっと検討し直す必要があるのだろうと思うんですね。現状を見ると、少なくとも個人投資家が非常に参加していないというのはもう現象としてあらわれておりますね。例えば先ほど松本さんも言われましたが、PTSというのがいいのかどうなのか、私はそれよりも個人投資家の取引に関してはやはり市場集中をいかに図るような術を考えるべきではないだろうかというふうに思ったり、あるいは、上場企業のいろいろな決算発表みたいなディスクロージャーのタイミングが今はほとんどが午後3時以降に行われるのですが、このディスクロージャーという情報を最初に吸収するのが海外取引所で、こういう情報が市場で吸収されるというのがマザーマーケットとしていいのかどうかというような問題も取引所問題としてはあるだろうと。

それから、ちょっと焦点がぼけますが、昨年、取引所の株式化を検討する段階において、諸外国と東京市場がどう比較されるかというのを考えてみたのですが、東証は主要な取引所に比べてはるかに流動性が低いんですよね。これにはいろいろな要因があるのですが、やはりこの流動性が低いということをどういうふうに解決して公正な市場にして価格発見機能等を有効に発揮できるようにすべきかというような視点から今後議論をしていくべきではないだろうかというのが私の意見です。

○ 神田部会長

大変重要なご指摘で、ぜひそれもやらせていただければというふうに私などは思います。

市場集中というのも非常に難しい問題で、個人投資家という立場から見た場合、私どもの感覚では、余り私が意見を言うのはどうかと思いますけれども、意見というよりも取っ掛かりということで申しますと、日本語で言うと「最良執行義務」というか、非常によくわからない日本語ですけれども、英語では「Best execution」というふうに言っていますけれども、そういう旨の確保みたいなものも個人投資家から見ると非常に有用だと思うのですね。

ですから、この辺も余り議論をしていなくて、これもまたよくも悪くも先に送ってきたところがあるものですから、今おっしゃったような点からの議論もぜひお願いできればと、何か盛りだくさんのワーキングで大変ですけれども、よろしくお願いします。

ほかにいかがでしょうか。

松本さん、どうぞ。

○ 松本委員

今、安さんがおっしゃられたことの追加なのですけれども、まさにおっしゃられるように、流動性がなければ市場は意味がないわけであって、流動性のない中では最良執行も何もないと思うんですよね。流動性を伴わない価格形成というのは、形上の形形成であって、本当の意味がすごく薄いと思うんですよ。なので、とにかく流動性を高めるということが一番取引所にとっては重要な問題ではないかと。

先ほどマーケットメイクの話も出ましたが、一言だけ申し上げておきますと、マーケットメイクのクオートドリブンは流動性をふやすためにということがよく言われますけれども、海外ではローカルとかそういうのがありますが、少なくとも我が国においては、例えば店頭市場においてもマーケットメイクになっているものというのは、ほとんどがやらなくても流動性がいっぱいあるものばかりなんですよね。流動性のない銘柄についてマーケットメイクにして流動性を出すのではなくて、流動性がそもそもある銘柄をマーケットメイクにして、結局それは証券会社の利益になるわけですけれども、そういうことが実態として行われているとは言いませんけれども、実態として見るとそのように見えるのであって、そういう我が国の実態に則した形でちゃんと投資家の利益が守られる形で流動性をますような仕組みといったものをしっかり考えるべきではないかと、そのように思います。

○ 神田部会長

今の点について、実態というのは、やはりこれは所与と考えた方がいいのか、多少その実態を変化させていくような、そういうような政策的な議論というのもした方がいいのか。やはり日本の特徴というのがあると思うのですよね、諸外国と比べますと。その点はいかがでしょうか。

○ 松本委員

それは私はよくわからないのですけれども、現状のマーケットメーカーというのは証券会社がやっているわけであって、数社の証券会社がマーケットメイクをする、それに対して、プロフェッショナルとかローカルという場合にはもう少し違うと思うんですよね。本当の意味で競争原理が働く仕組みなのか、日本の場合には証券会社がマーケットメイクをするので、暗黙の上での、談合ではありませんけれども、暗黙の上でそういうビッドオファーをある程度確保しようということが働いているのか、それは私は専門家ではないので、専門家ではないというのは、そういうしっかりとした分析をしていないのでわかりませんけれども。

まずはその実態といったものを定量的にしっかり分析した上で、それには理由があるはずであるので、それに対するちゃんとした対処をすべきであって、感覚だけで余り言ってもいけないし、議論だけでもないと思うので、そういうものをしっかり確認しながら進めるべきではないかと、そのように思いますけれども。

○ 神田部会長

証券会社のお立場から、古賀さん、いかがでしょうか。非常に難しい問題だと

思うのですけれども、余り難しく事を考えずに前向きに何か・・・。

○ 古賀委員

恐らく物事というのは実態に則して考えるという態度が一番必要なのだろうなと思っております。松本さんがおっしゃるのはそうなのだけれども、例えばさっきの「かかわる者が証券業者であれば、談合とは言わないけれども暗黙の……」、これは多分別に金融に限らず現象としてはどこでも発生する話であって、そこを見境なく全部に負託させればどうなるかというと、今度は違う形でのいびつな現象が出るだろう、多分そういう循環なんだろうなという気がします、今おっしゃったことに直接的に反論すれば。

市場ではさっきから出ているような個人と取引所の関係とかいろいろあるわけですが、そのときに、基本的な枠組みとしては、それぞれの主体が自主的に判断して、その成果、結果もそれぞれの主体が負うような構図に追い込んでいく方がいいんだろうなと思います。例えば、ニーズがあるからみんなでやろうというときに、ニーズにも名目的、観念的なニーズと多分実態に則したニーズというのがあるのだと思います。余り観念的、名目的なニーズに基づいて行動するとそのつけというのをだれかが払わなければいけないようになるはずなのですが、従来の形だとどうもみんなで背負いこもうみたいな構図になりがちです。ここのところは今の時代には、はっきり峻別して、ここは割り切らなければいけないのではないかなと思います。したがって、取引所も例えば株式会社化という形で株式会社になった訳ですが、単純な事業会社とは割り切れない側面というのはいっぱい残っているわけです。そこのところは取引所自身も自己責任というのをベースにして行動原理を決めるというふうに変わっていかなければおかしいはずで、一般命題として、正しいからみんなでやろうと言っても、最後につけは必ずどこかに回ってくる。そのつけは、みんなでシェアしようというのではなくて、それぞれの責任において決めようという枠組みが必要なのではなかろうかと思います。

甚だまとまらない話で恐縮です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

今の流動性をつけなければいけないという話は非常に大事な話で、いわば市場論の基本だと思うんですね。先ほどの菊一常務からのお話にありましたように、今は店頭市場がマーケットメイクという仕組みをやっているわけですが、それから、淵田さんからお話があったように、もう中堅・中小企業あるいは未上場会社の育成ということは何も店頭だけのものではないのではないかと、そういうことにも多分なっているのだろうと思います。ただ、店頭市場というものを証券業協会が開設している基本的目的は、やはり中堅・中小企業、ベンチャー企業の育成ということが基本だとおもいます。法律でもそうなっているし、実際に開設者としての意識もそうなっているわけです。

そうなると、そういう企業のためにどうやって流動性をつけるかというときに、手法としてマーケットメイクという仕組みが非常に役に立っているのだろうとおもいます。松本委員のおっしゃったような結果になっているかどうかというのは、私どもももしそういうご指摘があれば大変心配でありますけれども、マーケットメイクという仕組みがあることによって中堅・中小企業にも流動性が付加されて取引がされているということは、少なくともその限りでは事実だと思うし、そういう観点で、「談合」というような言葉をおっしゃられましたが、それは感覚的におっしゃったのでそのことをあげつらうつもりはありませんけれども、適正な競争で投資家に最も望ましい価格形成が出されるように、それは例えばマーケットメーカーの数をできるだけ多くしていくということでそのマーケットメーカーの基準を上げていくとか、いろいろな工夫をやっていると、そういう工夫でこの制度を育てていくということが私は大事なことだろうと思います。今のようなご指摘があるほどマーケットメイクは必要のないものだけをやっているということではないだろうと思いますけれども、少なくともそういうことがあってはならないように、いろいろ、マーケットメイクシステムに、気配の出し方に競争が入るように、そういう工夫をしているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

この問題は、淵田さんのところや佐賀さんのところでひとつ実態をできるだけ客観的に分析でもしていただいて、さらにそれを踏まえてご議論を進めるということができれば一番いいように感じますけれども。

何か次々と難しい問題が提起されておりますけれども、米澤委員、どうぞ。

○ 米澤委員

もう1点だけマーケットメイクに関してつけ加えさせていただきたいのですけれども。

やはりその企業の情報がよくわかっていないような、ここで言うところの「将来性のある中堅・中小」というのは比較的マーケットメイクの方がなじむのではないかという感じがしています。ただそのときに重要なことは、本当に競争的なマーケットメーカーの方がいいのかどうか、さっき「談合」という言葉があったのですけれども、それはかなり紙一重で、そういうようなマーケットでマーケットメイクをさせていくためにはかなり独占的な利潤を出していかなければマーケットメイクはやっていけないという状況もあるんですね。ただ、重要なことは、いずれにしても不正があった場合にどういうようなビッドオファーを出しているかが完全に情報としてよくわかるように。実はちょっと離れるのですけれども、債券に関してようやくほかの業者が出しているものを一堂に見れるというふうになったのはつい最近の話でして、これはやはり裏で談合と言われてもしようがないような面があるのではないかと、僕は個人的に感じています。やはりそこのところの、独占だから悪いとかというのではなくて、少なくとも情報に関しては非常によくクリアになるようなシステムが必要でないかと、そこがほどほどの競争を担保するのではないかという感じがしています。

それからもう1つ、僕もよくわからないのですけれども、取引所とPTSなんかの関係のところに公共性という問題がどういうふうに入ってくるのか、あるいは入ってこないのかどうかという問題は、やはりどこかで整理をしておく必要があるのではないかと思うのですけれども。公共性というのが何だかはよくわからないのですが、1つは公共性のあるプライスを出すというのが、それによっていろいろ執行される税なんかも決まってくるというようなプライスを出すというところにやはりPTSでない取引所の機能があるのではないかということで、そこの公共性というのを少し議論する必要があるのではないかなと思っています。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

米田委員、どうぞ。

○ 米田委員

もう1点、きょうは東証以外の取引所というのは私だけなものですから、ちょっと一言申し上げたいと思います。

先ほど、取引所の国際競争力、まさにそれは非常に重要なポイントだと思いますし、我々もそれをぜひやっていただきたいと思うのですけれども、国際競争力というのは実際に何なんだと、それから、国際競争力をつけるためにどうやっていけばいいのか、そういった中で先ほどから投資家のニーズというのがありました。そういったことも絡めて、言葉だけが踊っているような感じがいたします。

それから、これも私もちょっと感じているのですけれども、国際競争力という観点で取引所の統合・連携というようなことがよく言われています。ただ、この取引所の統合・連携というのも、それが本当に国際競争力をつけるために意味のあることなのかどうか。確かにヨーロッパでは統合というのが行われていますけれども。先ほど吉野さんも一言おっしゃいましたけれども、ヨーロッパの統合というのはそもそも通貨統合というのがその根底にある、そこが1つの大きなポイントで、基本的にアメリカでは市場間の統合というのは何も行われていない、これをどういうふうに考えるのか、統合を決して否定するわけではないのですけれども、その辺はよく考えておく必要があるのかなということが第1点。

もう1つは、国際競争力をつけるときに、大きくなっていくことだけが本当に意味があるのか、そういった観点の中で、では国内の取引所の競争というものをどういうふうに位置づけていくのか。まさに市場間競争をやっていくことによって取引所の効率化を図っていこうという命題があるわけで、多分それは意識しておられるのだと思うのですけれども、先ほどのプレゼンテーションの中では、どちらかというと大きくなっていくと、アジアには1つか2つあればいいということは我々はどうなるのかなと若干のひがみを感じて、当然そこはそういうふうにはおっしゃっておらないと思うのですけれども、ぜひ国内の市場間競争、市場間競争による効率化、これが国際競争力をつけるんだと、こういった観点もぜひご議論をいただきたいと。

以上です。

○ 神田部会長

その点は繰り返し議論されてきながら非常に重要な点でして、ありがとうございました。

どうぞ、佐賀委員。

○ 佐賀委員

行政の方からどの程度かかわれるかという問題はあると思うのですが。この間の新興市場というのは全国で7つあるわけですよね。これがアイデンティティーのあるような組織であればともかく、必ずしもそうはっきりした個性がないというのが現状で、しかも、その辺は市場運営者が判断してやるというふうなことで、なかなか行政サイドからはコミットしにくいという問題はあると思うのですが。ただ、やはりちょっと気になるのは、そのマーケットの情報開示制度であるとか、あるいは上場基準、あるいは廃止基準といったふうなものが必ずしも統一化されていないということになりますと、これは投資家保護の観点から言うと非常にまずいのではないかということがありまして、そういう新興企業向け市場のあり方のような議論もちょっとしていただきたいというのがあります。

それから、これは私が所属している組織の性格から、最初に取引所外取引を導入するときに、取引価格を取引所で形成された価格の上下何%という決め方をしましたので、業者の方がかなり混乱したんですね。それで、ちょうど手数料の自由化の時期とぶつかっていましたから、手数料が下がった分をその範囲内で回復できるのではないかというふうなことをストレートに聞かれる業者の方もいらっしゃいまして、それは非常にまずいのではないですかというようなやり取りがあった記憶があります。依然としてその状態が現在まで続いておりますので、実際問題としてそういう弊害が出ているのかどうかというのはよくわからないのですが、このあたりで現在の取引所外取引のプライシングの問題についても実態と今後どうするかというふうなことを検討していただければというふうに思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、何度でもどうぞ。

○ 松本委員

済みません、たびたびで。

取引所のあり方に対するワーキングということなのですが、一株式会社である取引所のためにみんなで集まってどうこうというそれが目的ではないと思うので、これは資本市場というかそういうのをよくしていこうというそういう話だと思うのですけれども、そう考えると、取引所というのはあくまでも仲介する場であって、本来は、資本市場のあり方であるとか流動性云々というのは、やはり上場企業の問題が大きいと思うんですよね。これは、先ほど申し上げた、取引所にSEC的な役割をというのもそういう発想から来ているのですけれども。例えば東証の売買高あるいは大証の売買高も合わせてその流動性がアメリカに比べてすごく低いと、それは、例えば取引所だけ取りかえて、日本の上場企業のままで日本の取引所をNew York Stock Exchange に運営させたら流動性が上がるのかと言ったら上がらないと思うんですよ、逆に、上場企業を取りかえたら同じような流動性があるかもしれない。ということで、やはり問題は上場企業の問題の方が大きい、少なくとも上場企業の問題は等しく大きいはずであって、そういう観点というのを、これがこのワーキングでの議題として正しいかどうかはわかりませんけれども、それはすなわちディスクロージャーとかコーポレート・ガバナンスの問題だと思うのですが、そういった部分を落とさないでしっかり議論をする必要があるのではないかと思います。

あと、先ほどの「談合」というのは取下げますけれども、マーケットメイクに関しては債券の話も出ましたけれども、レポマーケットが、貸株・借株のマーケットといったものは店頭株の場合にはあまりないわけであって、そういうレポ市場の整備というものとパッケージで考えないとマーケットメイクというのは机上の空論になってしまうと思うんですよね。なので、もしマーケットメイクということを考えるのであればレポ市場をどういうふうに整備するかというのをしっかりと考えるべきであって、そういうふうにしなければならないのではないかと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

取引所というのは確かに場所で、上場企業こそが主役だということだと思いますが、そういう意味で、上場企業を代表して、関さん、何か言っていただけませんでしょうか。

○ 関委員

話が難しくてよくわからないことが多いのですが、資本市場の活性化をやっていか

なければいけないと、そのためにこのワーキング・グループでは、取引所の役割としてどういうことができるのか、何を改善していかなければいけないのかということがメインテーマだろうと思うんですね。

それで、皆さんがご議論されているようなことはたくさんあると思うのですが、私が最近、これはローカルな話なのかもわからないのですけれども、感じていることは、私にそういう仕事があったということなのですが、やはり取引所に上場するに至るまでの手続き、手順、それから、一たんそういうことを決意してやって来たときの、臨機応変に、上場をやるのかやらないのか、やめるのかやめないのか、やめたときに次にどういうふうにそういうことをやるのかというようなこと、これが嫌になるぐらいのいろいろな諸規制が、取引所自身の問題として私はあるような気がしているんですね。それから、上場目論見書でもいろいろな制約条件があって、例えば親会社としての、新日鉄なら新日鉄の関与するやり方にまで、その上場会社に対してあまり関係のないことまで、投資者保護という観点だと言うのですけれども、全く関係のないようなことまで極めて細かく規制する。これでは上場をしようと思っても、すぐに意思決定をしたり、いろいろと臨機応変にやっていくということにはなかなかならないのではないかと。

こんなすごいことになっているのかなというのが私の最近の経験でありまして、神田先生からせっかくご指名がありましたので、取引所の役割というようなことで言うと、取引所の自主規制だと思うんですね、恐らく金融庁の皆さんなんかのことも意識してのことかもわかりませんが、そこを議論をしていただくことがあるのかないかはよくわかりませんが、そういう実感を私は持っていることだけをちょっと申し上げておきたいと思います。

○ 神田部会長

きょうはちょっと時間が……、吉野さんにはいろいろ言いたいことがあると思

うのですが、何かございますか。

○ 吉野委員

もし関さんがそういうふうな感情をお持ちになっているとしたら、それは何かどこかに失礼があったとしたらお詫び申し上げたいと思いますけれども。

一方で、松本さんからもいろいろご指摘がありましたように、今言われているのは、企業の情報開示というのをどういうふうな形でやっていくか、それがまさに、今、市場の信頼性という形で問われているところでもございますので、そういった点でいわゆる企業の開示なり業績の反映なりがどういうふうな形でストレートに出てくるかという体制について、内部体制だとかそういったことは大変今いろいろきつく申し上げているところがございまして、この辺はいろいろと投資家からの負託にこたえなければならないというふうな形でやっている部分でもあるので、ぜひご理解をいただきたい点かなと思っております。また関委員には個別にいろいろとお話を申し上げる機会もあるかと思いますけれども、何せこれは取引所の独善的な趣味でやっていることではなくて、投資家の負託にこたえるための体制を整えるための調査だということでご理解をいただきたいと思っております。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

関委員がおっしゃったように、これは仕組みとして取引所がどこまで役割を担うのかという非常に難しい話ですね。これは国によって法制度も違いますし、日本なんかで言うと商法がやっていることをアメリカなんかではニューヨーク証券取引所がやっているとか、そういうようなこともありますので、これもきちんと本当は仕組み等の議論としてやる必要があるような問題だと思います。

どうもありがとうございました。そろそろ時間なのですけれども、これをどうしたらいいのかよくわからないのですけれども、池尾先生、きょうのご議論を伺っての感想等がございましたら。

○ 池尾座長

特にないですけれども、どうしたらいいかわからないというので引き継がれても困るなということで、次回までに、論点といいますか、検討項目の整理を、3つ並んでいますが、同じウエートではどうもないように今日の議論で思いましたので、次回までにもう一度論点整理をお願いして、その上で2回目以降のワーキングに入りたいというふうに思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

非常にさまざまな検討課題があるということだと思いますので、第一部会としては、抽象的に言えば幅広く取り上げたい、取引所のあり方に関係する問題を検討したいということだと思います。そういう意味で言えば、一般論としては、きょうは資料2として事務局の方から掲げていただいたものに加えまして、皆様方からご指摘のあった細かい問題から非常に大きな問題までありますけれども、幅広く検討の対象としたいというふうに感じます。

ただ、めりはりをつけるというか、検討項目の中には時間をかけてきちんと議論をする必要があるというものも当然ありますし、それから、法技術的な問題であって比較的短時間で整理がつくのではないかと思われるものもあるように思います。したがいまして、そういう意味では、次回から池尾先生を座長としてそのもとでワーキング・グループを開催していただきますけれども、事の順序として、グローバル化対応の部分、事務局のご説明であった資料2で言うと上の方にあった項目のように、直ちに検討をしてある程度短い時間で処理できるのではないかと思われるもの等がありますので、そういうところは事務局の方で整理をしていただいて、早めにやれるものはどんどん進めていただくべきだと思いますが、しかし、他方、重要な問題を先送りにしていますとまたさらに先送りするということになってもいけませんので、難しい問題につきましては、時間はある程度はかかると思いますけれども、その次の順序ぐらいのことでやっていただければと思います。

そういう意味で、ありていな言い方をしますと、ただちに検討を開始し、その整理がつきそうなものから項目を絞って順次ご議論をいただくという、いつものやり方と言えばいつものやり方なのですけれども、そういうことでよろしいのではないかと思います。そういうようなことで項目を事務局の方で整理して、次回以降ワーキングを進めていただいてはいかがかと思いますけれども、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございます。それでは、そういうことで進めさせていただきます。

今後の運営につきましては池尾先生にどうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、大体時間が参りましたので、本日の審議はこれまでとさせていただきたいと思います。

なお、この後、記者会見を行いまして、私の方から本日の当部会のもようについてお話をさせていただきます。

最後になりましたけれども、事務局からのご連絡がありましたらお願いいたします。

○ 乙部市場課長

本日のご議論を踏まえまして、池尾座長と相談の上、論点の整理をいたしたいと思います。

次回はワーキング・グループでの審議となります。ワーキング・グループで集中的にご審議をいただいた上で、まとまったところでまたこの部会にご報告をいたしたいと思います。

ワーキング・グループの日程は、座長と相談の上、追って連絡いたしますが、今のところ10月23日の午前中を考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

きょうはワーキングのメンバーになっていただいた石橋さん、菊一さん、松本さん、吉野さんには、初回からご報告というかご意見の開陳をお願いいたしましたけれども、急なお願いで申しわけありませんでしたけれども、どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議は終了させていただきます。

どうもありがとうございました。

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