金融審議会金融分科会第一部会(第7回)議事録

日時:平成14年11月29日(金)9時30分~11時30分

場所:中央合同庁舎四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 神田部会長

おはようございます。きょうは、朝早くからお集まりいただきまして、ありがとうございます。予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。

本日は、金融審議会金融分科会第一部会の第7回目ということになります。いつもお忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

当部会では皆様方ご存じのとおり、9月17日に開催いたしました第4回の会議におきまして、証券市場の改革促進プログラムで掲げられました3つの柱について、その具体的な施策の迅速な実現、実施に向けた審議を進めるために、3つのワーキング・グループでのご審議をお願いすることになりました。すなわち、2つのワーキング・グループの新設、それから、既に存在しているワーキング・グループの再開をさせていただきました。

新設いたしましたワーキング・グループは、まず市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループ。これは、証券会社、投資顧問会社、投資信託委託会社の最低資本金の引き下げ、主要株主規制、証券代理店制度の導入等について幅広く検討していただくものであります。

2つ目は、取引所のあり方に関するワーキング・グループ、これはグローバル化やIT化の進展等に対応した取引所のあり方について幅広く検討していただくものであります。そして3つ目は既に存在しておりましたが、ディスクロージャー・ワーキング・グループ、これを再開させていただきまして、リスク情報、経営者による財務経営成績の分析。MD&Aなどとアメリカでは呼んでおります。その他、コーポレート・ガバナンス関連情報の開示等、証券市場の改革促進のプログラムの内容に加えて、最近のアメリカの企業会計改革法というのでしょうか、サーベンス・オクスリー法と呼ばれている法律の内容等も検討していただくというものであります。本日は、大変盛りだくさんでございますが、これら3つのワーキング・グループにおける検討が取りまとめられたということでございますので、それぞれのワーキング・グループから報告をしていただきまして、そして来月16日を今予定しておりますけれども、その部会報告の取りまとめに向けて、委員の皆様方からご審議をお願いしたいと思っております。

なお、本日の部会は、部会報告の取りまとめに関する内容になりますので、会議は非公開ということにさせていただきます。また、本日は、この部会のメンバーではいらっしゃらないのですけれども、市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループの座長をお願いいたしました吉野先生に来ていただいております。また、金融審議会の総会の方の委員の関委員にもお越しいただいております。どうかよろしくお願い申し上げます。この場では忌憚のないご意見をぜひ積極的にご披露いただけますとありがたく存じます。

それでは、早速でございますが、それぞれのワーキング・グループからのご報告をお願いしたいと思います。順序ですけれども、議事次第にありますように、まず市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループにつきまして、座長の吉野先生から総括的なご報告をいただくとともに、事務局から報告書の読み上げをお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○ 吉野座長

慶応大学の吉野です。よろしくお願いします。

お手元に、「『市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループ』報告」というのが配付されていると思いますので、それを中心にご説明させていただきまして、後は企画官の方から後で詳細にご説明いただきたいと思います。

当ワーキング・グループでは、1行目から4行目にございますように、まず「誰もが投資しやすい市場の整備」。それから、やはり投資者がアクセスしやすい形の市場仲介者を目指したいというのが大きな目的でございます。

2番目でございますが、当ワーキング・グループでは、証券会社、それから、投資信託委託会社、投資顧問会社の最低資本金の引下げ。2番目が主要株主規制。3番目が証券会社の販売代理店制度の導入。これを中心に3つの柱を立てて議論いたしました。2の(1)のところでございますが、まず最初の最低資本金につきましては 5,000万円と引き下げることによりまして、新規参入を促進させるということが2の第1でございます。

それから、2番目は、市場仲介者等に影響を与える主要株主については、法令違反の蓋然性の高い不適格者を排除するということと同時に、やはり市場仲介者等としての健全性の確保に一層配慮することが必要である。これは、南証券のような例も参考にいたしましてここで議論いたしました。

それから、2の3番目でございますが、販売チャネルの多様化であります。これは、仮称でありますが、証券代理店の制度を導入することが適切であろうということであります。さらに、それぞれの販売代理店に対するいろいろな責任に関しましては、専属証券会社がその責任をきちんと持つ。ただ、一社専属制でありますと、やはり競争的なところで排除がいきますので、一社専属制は必ずしも求めない。ただその場合には、損害賠償の責任などに関しましては、きちんとした手当てをしていく、こういうことが主な議論事項でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、報告書の読み上げをよろしくお願いします。

(事務局「市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループ報告」読み上げ)

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、これは1つ1つやはり皆様方からご意見、ご質問をいただいた方がいいと思いますので、ただいまのご報告につきまして、ご質問、ご意見を、皆様方からお出しいただければありがたいと思います。どなたからでも、どうかよろしくお願いいたします。

上柳委員、どうぞ。

○ 上柳委員

私は、ワーキング・グループの方でも若干参加しましたので、重複になるところがあるかもわかりませんけれども、今回の改正、資本金の引き下げ、それから、株主規制は今まで手当てができなかったところの手当てということかもわかりませんけれども、特に私、注目しておりますのは、3つ目の証券代理店制度です。

これは、ある意味で、一言でいうと大変可能性も秘めているわけですけれども、消費者の立場からすると、心配をし出すと切りがないところもありまして、そういう意味で、その弊害を抑止するための措置、あるいは手当てというのはきっちりなされるべきであろうと思います。可能性というのは、いうまでもなく、仲介チャネルを広げますし、消費者の立場からいいますと、この証券代理店さんは、一社専属ではなくて、場合によっては乗り合いが許される。要するに、所属証券会社が幾つかあるような代理商の方も登場するということになりますと、より消費者に近いといいますか、消費者と同じ目線に立って証券会社を選択するような機能も果たすというところで、私は大変画期的といいますか、ある意味での可能性を開くものだと一方で思っております。ただ、逆にいいますと、どこの証券会社の仕事をやっているのかよくわからないとか、あるいは、結局その方がいろいろ動かれたけれども、どの証券会社も責任を負わないという事態が起こると、これは大変なわけでして、そういう意味で、今までのいわゆる外務員とは少し違うんだよという誤認防止の点であるとか、あるいは所属証券会社の責任であるとか手数料の開示も含めて、利益相反を防止するというあたりについて、工夫をされようとしているわけですけれども、そこのところの手当てをぜひきちんとお願いしたいなと思います。

もし、補足いただけるようであれば、これはいずれにしてもこういうことを守らせていくためのある程度の体制も必要ですので、1つはお役所の方ということになると思いますけれども、もう1つは証券業協会さんの方で研修とか、指導とか、外務員に準じてやることになると思いますので、こういうふうにどんどん広がっていく方のところをカバーできるのかどうか、証券業協会さんの方も、なかなか今厳しいといいますか、規模の問題等について工夫もされていると聞きますので、もし補足があれば伺いたいなと思います。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

証券業協会というお名前が出ましたが。高橋さん、今の点についてご発言ありますでしょうか。

○ 高橋委員

今の点は、この中にも既に書かれておりますように、証券業協会の行為についての自主ルールは守ってもらうと書いてあります。私ども、それは重く受けとめて、必要な研修なり、もちろん前提は試験から始まっているわけですから、それはしっかり対応していきたいと思っております。

今、上柳先生がおっしゃったように、全体を通じてでありますけれども、販売チャネルの多様化で活性化を図っていくということは、非常に今必要な方向だと思いますが、それが信頼性を毀損するという方向にいかないように、万全の注意が要るんだろうと思います。

それと関連いたしまして、ちょっと別のことなんですが、最低資本金を引き下げる方向が示されています。これは、先ほどのご報告にもありましたように、限定した業務を小規模に営む証券会社というのが出てきているから、そういう多様な新しい種類の証券会社がもっと参入していいだろうというお考えであろうと思います。ただ、一方、証券会社の最低資本金というのは、まさに市場の信頼を回復していくためにずっと引き上げてきて今の1億円という数字になっているわけでありますから、これを今度引き下げるという方向を打ち出されるのは、販売チャネルの多様化とか、あるいは参入の促進という意味はあるし、またそれは評価できるとしても、それが信頼性の毀損につながらないんだということははっきりしていくべきだと思います。業務を限定した小規模な証券会社を対象に広げていくべきだというご報告でありますので、例えばそういうものに業務を限定するとか、あるいは運用の段階も含めて、証券市場に対する、あるいは証券会社に対する信頼を毀損することのないような配慮していただきたい。これは要望でありますけれども、お願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

最低資本金というのは、信頼の基礎シンボルになるのですか。なっているのでしょうか。

○ 高橋委員

そういう考えでずっと引き上げてきた経緯がありますので、そういうふうに理解をされているんだろうと思います。

○ 神田部会長

そこはどうでしょうか。世の中の状況変化を踏まえて考え方を多少変更するということなのか、あるいは、考え方は維持しながら、今おっしゃったようなことでの改正という整理をされたのでしょうか。

○ 山崎市場企画官

今回のワーキング・グループの検討の中では、多様な形態の証券会社の参入を容易にしていこうという方向性からまず検討させていただきました。

それで、どのような額の資本金であるかということにつきましては、現在の限定した業務を小規模に営むような会社を前提として、今回の資本金の引き下げの具体的な額を検討させていただいたわけでございます。証券会社自身の財務基準につきましては、今回の第1回のワーキングとこの部会との共同で開催させていただいた会合で、現在の資本金基準につきましては、最低資本金、それから自己資本比率等、さまざまな財務基準があるということで、一体どのような形で証券会社の財務基準を定めていったらいいかということが、ご議論もあったわけでございますが、一応、資本金の最低水準を定めるのに、大きければ大きいほど、それなりの信頼性があるのではないかと考えられる一方で、低ければ低いほど参入も容易である。これは多分、両方のバランスをどこでとるかという問題であるかと思います。

それで、実際多様な形態ということで、業務を制限すべきかどうかというご指摘がございましたけれども、基本的には、この件については、営もうとする業務に必要な人員が各部門に配置されていなければいけないといったような基準も登録の申請でございますので、資本金が小さければ、おのずから業務の範囲が限定されていくべきものなのかなと思っております。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

では、首藤委員、どうぞ。

○ 首藤委員

販売チャネルの多様化ということで、導入されるということですけれども、例えば、これは証券会社と、それから、販売店との間の契約で成立するわけですね、この販売店を営めるかどうかというのは。そういたしますと、販売店が所属証券会社の代理店という形で契約が結ばれるということになりますので、例えば、前にここで、いつの部会かちょっと忘れましたけれども、お話を伺ったときに、既存の証券会社の方は非常にネガティブであるという印象を持ったのです。例えば、ほかの証券会社と契約を結んでいる場合には、そういう販売代理店とは契約を結ばないとか、そういうこともあるのではないのかという気がいたします。任意ですので、1つの店舗で複数の証券会社と契約を結べるという形になっても、実際にそれは可能なのかどうか。あるいは、何か担保されるのかどうかという点が1つわからないところです。それから、例えば責任の所在を明確にするというのであれば、これは法人、個人、両方とも契約が結べるということですので、例えば集合店舗みたいな形、そういう販売業務もできるのかどうかとか、販売チャネルの多様化と、それから、証券会社の間の競争を促進するという2つの側面にきちんとこたえていけるような、そういうさまざまなケースを想定して、実際に動けるのかどうか。変な質問かもしれませんけれども、ちょっとその点についてご説明をお願いいたします。

○ 神田部会長

新しいルールのもとでどうなるのであろうかという、ちょっと仮定の世界なので推測しかできませんけれども、いかがでしょうか。

○ 山崎市場企画官

まず1点目でございますが、今回の制度設計においては、制度的には必ずしも一社専属でなくてもいいという形で結論を出させていただいております。ただ、実際がどうなるかというところは、これは今後どういった形態で業務が展開されるかということによるかと思いますが、もちろん先生おっしゃるように、一社専属の方がコンプライアンスが高いという可能性もあるので、実際一社専属でいきたいというふうに考える証券会社さん、代理店さんもおられるかと思いますし、代理店さんの方でも、なるべく投資家の皆さんに選択肢を広げていきたいということで、複数の所属証券会社を選びたいという要請もあるかと思います。これは、現段階では、どちらの形態が主流になるかということは、我々、なかなか判断しにくい面がありますが、ただ、投資家の方々にいろんな選択肢を与えるという意味では、あえて1社だけでやっていくというようなことではなく、なるべく自由な世界でやっていただけたらと思っておるところでございます。

○ 首藤委員

ということは、要するに実際の運営上で、意図した効果が上がらないということも、極めて可能性としては高いというふうに理解してよろしいわけですね。

○ 神田部会長

何を意図した効果と見るかじゃないでしょうか。意図した効果は、制度としては両方いいですよという制度を用意しておいて、そこは市場における選択に任せましょうということであれば、そのときの市場が専属という方を多数望むのであればそうでしょうし、その後、環境が変わって乗り合いというもののニーズがまた出てくれば、それは、今回の制度の中で乗り合いというものが登場するという。制度づくりとして物事を考えていますから、用意しておいたけれども、1つのものが出てこなかったからすぐ予想どおりでなかったとはいえないのではないでしょうか。例えば、昔会社型投資といって、投資法人制度をつくりましたけれども、すぐには出てこなかったのですよね。失敗かというと、そうでもないんじゃないでしょうか。今になってみると幾つか登場していますし、それはやっぱり登場してきた環境の変化がその間あったんですよね。ですから、制度をつくるときに、最初から1社専属としてつくるのがいいのか。今回の報告にあったようにつくるのがいいのかという、そういう問題じゃないでしょうか。

どうぞ。

○ 首藤委員

いえ、私、この制度自体はよろしいかと思います。実際にチャネルの多様化ということにつながればいいなとは思っておりますが、実際にどう動くかということについては、非常に問題があるなという気がいたしております。ですから、意見ということでございます。

○ 神田部会長

古賀委員。

○ 古賀委員

前にも申し上げましたけれども、最低資本金の引き下げ、これ自体は全く異論ございません。多分、参入業者は自由にというのでいいと思います。

さっきの資本金の意味というのは、私はかなりの程度減退してしまったと思っていますので、それ自体に余り意味づけをしてもしようがない。むしろ、多分、この文面にもありますけれども、例えば投資者保護基金なんかも充実しと書いてありますけれども、今後も充実するかどうかというのは、それぞれの業者が資本金ではなくて、多分、財務を一定に保ちながら、それからやっぱり分別管理をきちんと行っているというのが最終担保だと思います。そういう意味では、むしろこれから大事なのは、行政上は自己資本規制比率に多分フォーカスする形でされていると思いますし、業界ベースの話でいえば、分別管理の徹底というのをどうやってきちんと担保していくかというところにフォーカスした形でやっていくべきだろうなと思います。

そういう意味で、1つだけちょっと問題なのは、2番目の主要株主規制です。例えば最後のところに、一定の報告徴収、立入検査権が付与される必要があるが、その権限は必要に応じて行使されるべきであるとなっていますが、この「必要に応じて」というところを、ある程度の尺度というか、それはきちんと明示すべきだろうなと考えます。というのは、ここでは、さっきも出ましたけれども、例えば南証券みたいな、とんでもない人は排除すべきだ。これは多分だれも余り異論のない正しいことだと思いますけれども、片方、1番目でありましたように、なるべく多くの人に参画させるということは、主要株主になるような人、一番典型的にいえば、今、日本企業でも一番大きくて優良だといわれている、例えばトヨタさんみたいなケースが主要株主として登場することも、本当はこれは大いに歓迎しなきゃいかぬわけで、そのときに、必要に応じ、トヨタについて、どういう形のときにはチェックするんだというのははっきりさせておかないといけないと思います。たまたまきょうの日経のトップに、トヨタさんがアメリカで銀行免許をとると出ていましたが、そうすると、アメリカの銀行免許についてどうなのかというのを詮索するために来られるみたいな、そういう懸念を呼んだら、新たに証券業者として参画しようということの、やっぱりこれは1つのバリアになるでしょうから、ここの「必要に応じて」というのは、やっぱり尺度だけはきちんと明示した上で運営すべきだろうなと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。私も、今の点につきましては全く同感です。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、後の予定も詰まっておりますので、大変恐縮ですけれども、今回の市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループからご報告いただきました3つの内容、最低資本金の引き下げ、すなわち証券会社、投資顧問会社、投資信託委託会社の最低資本金の引き下げ。それから、主要株主規制。それから3つ目が証券代理店制度、この内容につきましては、基本的には今いただいたご意見も当然踏まえてということですけれども、皆様方からご了承いただけたと思いますので、これを第一部会の報告としての取りまとめを行いたいと思います。文書にするに当たっての報告案につきましては、恐縮でございますけれども、私の方にご一任いただいて、次回の第一部会でご審議いただくということにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

それでは、次に進ませていただきます。

次は、取引所のあり方に関するワーキング・グループでございますけれども、座長をお願いいたしました池尾先生から、まず総括的なご報告をいただきまして、その後事務局から報告書の読み上げをお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 池尾委員

慶応大学の池尾です。よろしくお願いします。

お手元に、「『取引所のあり方に関するワーキング・グループ』」報告というのがあると思いますが、それの3ページを開いていただければと思います。

3ページのところにありますように、当ワーキング・グループは、本年8月6日に公表されました「証券市場の改革促進プログラム」、これを踏まえて、グローバル化やIT化が進展する中での我が国取引所のあり方について、中長期的な観点から幅広い検討を行うために金融審議会金融分科会第一部会のもとに設置されたわけでありまして、とりあえず、取引所のグローバルな展開への対応というのをテーマに、5回検討を行いまして、具体的には3つの大きなイシューについて検討をいたしました。

3つのイシューのうち、1番目が海外取引所端末の国内設置という問題でありまして、これに関しましては、国内投資家保護の観点から、国際的なルールの調和に配意しつつ、法令において海外取引所端末の国内設置にかかわるルールの明確化を図るべきとの結論に達しました。

ちょっと敷衍させていただきたいのですが、この点を議論する過程で、ワーキング・グループのメンバーの中から、我が国と同一の時間帯に存在する海外取引所で、我が国の取引所に上場されている主要商品と同じような商品を上場している取引所、要するにシンガポールのことですけれども、シンガポールの取引所などが海外取引所として考えたときに、それが国内に端末を直接設置するということは、市場間競争上、非常に脅威である。空洞化を招きかねないという懸念が出されました。ただ、そういう懸念は事実だと思うのですが、だからといって鎖国的対応をとるわけにもいきませんので、それは我が国取引所の国際競争力を高めるための全般的なルールの見直しとか整備という中で対応すべき課題ではないかというふうにワーキング・グループとしては考えております。だた、そういう意見が出たということはご報告しておきます。

それから2番目に、国内取引所の海外展開、リモートメンバーシップ、クロスメンバーシップにつきまして検討を行い、我が国の取引所市場の流動性の向上と国際競争力の強化を図る観点から、不公正取引の防止に配意しつつ、海外の証券業者が国内に支店を設置することなく我が国の取引所市場に直接発注することを可能とする制度を整備すべきとの結論に達しました。

それから、3番目といたしまして、内外取引所の連携・統合という問題を検討いたしまして、我が国取引所の国際競争力の確保を図る観点から、取引所の公正性、中立性、信頼性の確保に配意しつつ、取引所の持ち株会社や、親子会社形態による提携を可能とする制度を整備すべきとの結論に達しました。

これらの各項目についての検討結果は4ページ以下に掲げているとおりでありますが、本報告を踏まえて、必要な制度整備が速やかに実現されることを改めて期待したいということです。

それから、ワーキングはこれで終わらせていただけなくて、まだ何かいろいろしろということで、当ワーキング・グループは19ページに掲げる今後の検討課題に沿って、取引所のあり方について、より本質的な議論を引き続き進めていきたいと考えております。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、報告書の読み上げをお願いいたします。

(事務局「取引所のあり方に関するワーキング・グループ報告」読み上げ)

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。時間の関係で非常に急いで読んでいただきまして、どうも申しわけありませんでした。

それでは、ただいまの報告につきまして、皆様方からご質問、ご意見をいただきたいと思います。どなたからでもどうぞよろしくお願いいたします。

○ 上柳委員

1つだけにしたいと思います。これでいうと、12ページのところにかかわるかと思います。日本の取引所に海外の業者さんが参加された場合、国内に代表者の設置を義務づけるということになっています。国内に代表者がいれば当然、例えば日本の裁判所の管轄に入って、そこに訴状を送ればいいということに多分なるんで、心配しなくていいと思うんですけれども、ちょっと心配なのは、撤退された後に何かいろいろインサイダーのこととかがわかって訴えるときにどうなるのか。そういう心配もあるので、できれば、一定期間に限り、いわゆる訴状受領人みたいな工夫ができるといいなと思って申し上げました。

以上です。

○ 神田部会長

それは外国会社の一般のルールとして考えるということだと思いますけれども、ご指摘、どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

○ 東委員

取引所の持株会社化の話があったわけですけれども、取引所のインフラとしての重要性を考えた場合に、ディスクローズの問題が出てこようかと思います。連結決算としてディスクローズされてくると思うのですが、現状持株会社単体というのは、実態としては会計上ほとんど意味がないわけですけれども、連結のディスクローズでは総体でしかわからない。今後ここで想定されている他の取引所を仮に傘下に入れるという場合、個々の取引所の内容がディスクローズされない可能性があるわけです。

現状、セグメント会計はやっているんですが、非常に粗いディスクローズですので、取引所が仮にこういう形態になった場合には、持株会社下での個別取引所の財務内容等のディスクローズの規制は、通常の企業に対するディスクローズの要請よりはより厳しくあってもいいのではないか、そんな印象を受けました。

○ 神田部会長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

○ 淵田委員

1つは確認で、海外取引所の端末の国内設置とあり、また、国内取引所への海外のクロスメンバーの参加というふうになっておりますが、これは取引所だけなのか、例えば自主規制機関が運営するNASDAQ、日本でいえばJASDAQのような市場も含むのか、PTSのようなものはどう考えるのか。「取引所」という言葉がほとんどのところで強調されていますけれども、その辺はどう考えたらよいのかということを確認したいと思いました。

もう1つは、海外端末を日本に設置することと、海外の参加者を日本の取引所に直接参加させるということが、何か国際化という名のもとに同列に議論されているような気がいたしますが、この2つは質的に相当違うことだと思います。例えば、よいか悪いかは別として、空売り規制なるものを日本の市場が導入するというときに、海外の証券会社がシステム面も含めてそれに対応できるのかどうか。例えばある国の在外会員が対応できないという騒ぎになって、日本における市場の公正な運営というものがなかなかできにくくなるといったおそれは十分に考えられると思っております。

○ 乙部市場課長

技術的ですので事務局から。これは証券取引法上の取引所についての持株会社ということで考えております。PTSは証券会社ですので。

○ 淵田委員

持株会社の方ではなくて、在外端末の設置及びクロスメンバーシップの件です。

○ 乙部市場課長

端末設置、クロスメンバーシップも取引所ということです。

2番目でございますけれども、本国当局のきちっとした免許を受け、そして監督を受けている海外の業者でないと、日本の取引所の会員になれないという法制にします。具体的な国名を挙げると、いろいろ差しさわりがありますけれども、いいかげんな国の、いいかげんな監督しか受けていない、いいかげんな業者は、当然入れないようになるということだと思います。

○ 神田部会長

よろしゅうございますか。

○ 淵田委員

としますと、例えばNASDAQは取引所ではないということで日本に在外端末を置けないということでしょうか。最初の問題ですね。

○ 乙部市場課長

海外から日本に端末を置く場合は、向こうの置く主体は証券取引法上の取引所には限られません。それは日本の法制が及びませんから。ここの法律上の問題は、日本に端末を設置することで日本の証取法上の市場の開設に類似するような効果が出る場合、今の法制では取引所の免許という規制の枠組みしかないわけですけれども、端末を設置する者がどこかの離れ小島でコンピューターの端末しか置いていなくて、そこでの市場実体がないにもかかわらず端末だけ日本に持ってきて、それが端末の設置であるということで何らの規制なく取引されると、実際は日本で市場を開設しているのと同じでありながら規制の網を逃れることになりますから、こういうものは端末の設置であっても免許の開設を求めないといけないわけです。

しかし、実際に海外できちっと規制、監督を受けている取引所、店頭とかも含めて経済的な意味でのきちっとした取引所であれば、日本に持ってきた端末について日本の取引所と同じ規制をかける必要はない、こういう発想でいますので、その場合は主体は取引所に限られないということになります。

○ 神田部会長

よろしいでしょうか。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、先を急ぐようで恐縮ですけれども、今ご報告いただきました、グローバルな展開への対応という1つの大きな題名のもとに3つを整理するというのは、やや気をつけるべきだというご注意もありましたけれども、中身の方でいえば、海外取引所端末の国内設置への対応が第1、第2が国内取引所の海外展開ということで、リモートメンバーシップとクロスメンバーシップへの対応、第3が内外取引所の連携・統合への対応、この3つが今回の内容です。それから、まだ今後検討していただく課題があるということでして、それらが今後の検討課題ということになります。これらの内容につきまして、先ほどのワーキング・グループのご報告と同じように、皆様方からご了承をいただけるとという線で、今いただきましたご意見も踏まえまして、第一部会への報告の取りまとめとしての報告案の作成の作業をさせていただきたいと思います。

これも案文のところは私にご一任いただくということで進めたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

○ 神田部会長

それでは、最後になりましたが、ディスクロージャー・ワーキング・グループの座長をお願いいたしました岩原先生の方から総括的なご報告をいただきまして、その後、事務局から報告書の読み上げをお願いしたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

○ 岩原委員

ディスクロージャー・ワーキング・グループは、10月4日から昨日まで合計7回の会合を重ね、ディスクロージャーの充実強化について精力的に審議に取り組んでまいりました。回数でいうと、一番多かったということになります。

ディスクロージャー・ワーキング・グループは、従前からディスクロージャーの強化について努力を続けておりまして、目論見書の制度の改革等についてご提言してきたわけでございますが、それをさらに進めるという課題のほかに、アメリカにおきましてエンロン事件が発生し、企業会計改革法が成立するといった事情も受けまして、我が国においてもディスクロージャーの強化をさらに見直す必要があるのではないかという問題関心から、この作業に取り組んだものでございます。問題点によりましては、意見の分かれたものもございましたが、委員の皆様のご協力によりまして意見の一致を見た点について、ご報告をさせていただく次第でございます。

具体的な内容につきましては、引き続き事務局からご紹介いただきますので、私としては次の3点を特に申し上げたいと存じます。

第1に、アメリカのエンロン事件でも明らかになりましたように、ディスクロージャーが市場における実効性を高めていくにも、市場の環境の整備、会計と監査の基準の整備、公認会計士監査の信頼性の向上、さらには発行体のコーポレート・ガバナンスの充実などが不可欠でございます。これらの課題につきましては、金融審議会として関連の議論が行われておることは承知しておりますが、ぜひしっかりとした結論を出していただきたいと期待しております。

第2に、ディスクロージャーをめぐる課題の中には、現行制度に照らして、さらなる検討を必要とするのではないかと考えられる事項もございました。これについては今後さらに検討を進めていただきたいと思います。今回の報告は、我が国の経済情勢の中で速やかな対応が適切であると考えられる措置につき、早急に具体化を求めるべきであるとの結論に至ったものでございます。事務局におかれましては、この金融審議会の提言を得られましたら、ぜひともスピード感を持って、その具体化に取り組んでいただきたいと願っております。

第3に、具体的に得られました結論については、議論の分かれる問題もありましたので、ディスクロージャーをめぐる課題に限ることなく、事務局として対外的な説明をしっかりと行っていただき、市場の中での定着と世論の支持を得る努力を行っていただきたいと願っている次第でございます。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、報告書の読み上げをよろしくお願いいたします。

(事務局「ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告」読み上げ)

○ 神田部会長

大変急がせて、短い時間で報告書を読み上げていただきまして、どうもありがとうございました。

皆様方も若干お疲れかと思いますけれども、この3つ目の報告書も大変重要な制度についての改正の提案を含んでいるものでございますので、ただいまのご報告につきまして、皆様方からご質問、ご意見をお願いします。

関委員、どうぞ。

○ 関委員

ワーキング・グループで大変精力的に論点を詰められて、内容のあるものができてきているのではないかと思いますが、その中で特に私どもの企業活動の開示の観点から幾つかお話ししたいと思います。

1つは、ガバナンス関連情報の開示の充実というところでございまして、ここにありますように、内部統制システム、リスク管理体制の整備の状況を開示していこうということでありますが、どういうふうに開示すれば本当に有用な情報になるのか、いま一つ具体的に検討する必要があるのではないかと思っているということです。経済界の方でも随分議論しているわけですけれども、どういう開示にすれば本当に有用な開示になるのかという観点から検討する必要があるということが1つです。

それから、その次の役員報酬、監査報酬というところでございますが、我が国の場合、役員報酬、監査報酬の開示がガバナンス関連情報としてどの程度重要なのかということについては、よく考えた方がいいのではないかと思っております。特に監査報酬につきましては、ご案内のとおり、商法上のディスクロージャーの議論が1つございますし、また、きょうのガバナンスという観点からどう開示するかという問題がございますし、もう1つは、ここに書いてありますけれども、監査の独立性と透明性の向上を図る観点で、監査人による監査報告書等に記載したらどうかという議論もあるということで三重の開示の議論になっておりまして、目的、それから、その3つの相互関連、整合性のようなものをどう考えるか、きちっと整理することが必要ではないかと思っております。私ども企業の立場からいうと、最も問われているのは、監査法人自体の独立性と透明性の問題ではないかということで、監査法人による開示のみで足りるのではないかと思っております。

以上がガバナンス関連情報であります。

もう1つは、その次の記載内容の適正性に関する代表取締役の確認ということであります。経営者の姿勢をみずからの判断において明確にするとここに書いてありますけれども、私どもは常にそういうことを心がけてやっているつもりであります。こういう観点からどうしても確認書を出さなければいけないということについて、それが一体投資家の信認の向上につながるのかどうか議論がございますが、姿勢を明確にすることは非常に大事なことだと思っております。しかしながら、実態上、事実として、記載内容の適正性に関して、経営者が全部知悉してきちっと確認できるかというと、できないわけでありまして、アメリカの企業改革法でも限定がついている。確認であっても「トゥー・マイ・ナレッジ」という文章があるわけで、やはりそういった限定が必要ではないかと考える次第でございます。

私は以上です。

○ 神田部会長

今の点について……。

○ 羽藤企業開示参事官

まず、ガバナンス関連情報の充実のリスク体制をどういうふうに具体的に書いていくのかという点については、ワーキング・グループの場でもいろいろなご指摘がございました。いずれにしましても、経済界の実情をよく伺いながらやっていきたいと思っております。リスク管理の体制がどうなっているのか、評価がどうなっているのか、あるいはリスクのコントロールの行動がどうなっているのか、内部規律はどうなっているのか、組織はどうなっているのか。それから、実際に人員が兼任などということになっていては実効性が上がらないわけでございますので、そういった幾つかのメルクマールがあるだろうと思っております。それに照らしながら、実情をよくお伺いしながら考えて詰めていきたいと思っております。

2番目の役員報酬、監査報酬についてのご指摘でございますけれども、これもワーキング・グループの場でいろいろなご指摘がございました。海外投資家から資金を呼び込んでくるということも考えていくと、この実情、単に報酬が高いとか低いとかいうことではなくて、透明性を高めることが大事ではないかというご指摘がございましたし、また、最近、業績に連動して報酬が設定されているという大きな流れの中では、その企業の業績との関係において見合った報酬が得られているのかどうかということについては、適切に開示していくべきではないかといったご指摘もございました。

そういう意味では、OECDで99年にコーポレート・ガバナンスについての原則が定められているのはご案内のとおりだと思いますけれども、こういう場でも、ディスクロージャーの充実という観点から、役員の報酬という点についてもそういうコンテクストで位置づけられているわけでもございます。したがって、これはそういうコンテクストの中でも大事な課題ではないか。ワーキング・グループの場でもそのような結論になった次第であります。

監査報酬につきましては、おっしゃられるとおり、監査法人、監査人としての独立性あるいは透明性を向上させるという観点から、この開示も重要であるというのはご指摘のとおりだと思います。いずれにしましても、これは商法上、証取法、そして公認会計士監査制度、それぞれの観点から開示の重要性はあるだろうと思いまして、過度な負担にはならないようにという配慮を常に持ちながら今後の詰めをしていきたいと思っております。

それから、代表取締役における適正性についての確認でありますけれども、この点についても、ワーキング・グループの場でこの要否を含めて議論がございました。マーケットの中でこの姿勢を示していただくということについては非常に大きな意味があるのではないかという結論になって、このようになった次第でもございます。ワーキング・グループとしての議論もご紹介しながら、これはそういうことで今後事務的にしっかり詰めていきたいと思います。

以上であります。

○ 神田部会長

そういうことで、先へ進ませていただいてよろしゅうございますでしょうか。

○ 関委員

はい。

○ 神田部会長

上柳委員、どうぞ。

○ 上柳委員

1点だけにしたいと思います。まとめの14ページから15ページ、少人数私募の場合の50名カウントから適格投資家を除外するというところです。ここは私個人的には大変抵抗があるところなので、賛否を問われると、反対という感じもあるんです。仮に導入するとしても、15ページのなお書きの2行目に書いてあるところは、できれば再考をお願いしたいと思います。これは開示のあり方ということもあるんですが、こういうふうに適格投資家とそれ以外の方とは、私募のレベルになりますと、私の感じでは、その両類型の間にも情報格差があって、適格機関投資家以外の方々の問題が大変クローズアップされるのではないかと思うんです。

多分投資家の立場からもそうですし、アメリカの法制との関係でも、人数自体が50人か35人かということがあるかもわかりませんけれども、それ以外にもここのところの手当ては必要ではないか。投資家保護の観点もありますし、アメリカそのほかの法制との関係でも若干均衡を欠くのではないかという感想を持ちましたので、指摘させていただきました。

○ 神田部会長

今の点については特によろしゅうございますか。

○ 羽藤企業開示参事官

同様のご趣旨の議論がワーキング・グループの場でもございましたので、そこをしっかり踏まえて今後対応していきたいと思っております。

○ 神田部会長

確かに今までの少人数私募の考え方を多少変えることになるのでしょうね。ですから、アメリカのように割り切るのであれば、将来的には多分50はもう少し下げるということはあるかもしれませんね。その辺はご指摘を踏まえてなお検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

○ 東委員

適格機関投資家の拡大ということで、ベンチャーあるいは中小企業への資金提供の場を広げるというのは大変いいと思います。ただ、そうであるのならば、機関投資家の範囲の中で、バランスシート上の有価証券の金額で100億円という縛りになっているんですけれども、きつ過ぎるのではないでしょうか。このルールが適用された場合に何が起こるかということで想像してみますと、ベンチャーに対して一番資金が流れやすい1つのルートとしては、IPOで公開してきた会社の資金が自社の設備投資だけではなくて、ベンチャーへの資金提供の方向に流れていくというルートが多分現実的には広がっていくのではないかと感じています。その場合、IPOで出てきた会社は、この条件ですと、ほとんど適用されないということですから、そこは公開してきたということもあわせ、また金融庁長官に届け出をするということを考えますと、この縛りは相当低い、あるいはなくてもいいのではないか、そんな印象を受けております。

○ 神田部会長

今の点についてのご議論はありましたか。

○ 羽藤企業開示参事官

同様のご指摘がワーキング・グループの中でやはりございました。今後の検討課題として受けとめさせていただこうと思っております。

○ 神田部会長

何でも「ご指摘を踏まえて検討課題とします」ではいけないとは思いますけれども、難問が多いので、とにかくできるところから先へ進むという姿勢でやりたいと思っております。よろしくお願いします。

古賀委員、どうぞ。

○ 古賀委員

ディスクロージャーについては、徐々にではありますが、こうやって拡充していくというのは非常にいい方向だと思います。ただ、ディスクロージャーの話というのは、どうしても法制上の位置づけという、法律の根幹みたいな部分でもありますし、かたくなりがちなんですが、今の世の中の状況の流れを考えると、本当はもう一回ベースのところに戻って、どうかという議論が真剣になされるべきときではないか。

この部会でも何度か申し上げましたけれども、例えば発行を考えると、こういう会社のこういうイシューをします。時が流れてマーケットはどんどん動きます。値段が決まります。ファイナルな発行量が決まります。ところが、値段とか発行量も、今の法制だと、中1日あけて初めて効力が発生する。それから、そのときにはきちんと紙の形、訂正目論見書で投資家に事前に交付する流れになっています。これは法制上は非常に正しい流れだと思いますけれども、今の世の中で中1日あける意味は何だろうかというと、マーケットの変動に一生懸命さらされながら、朝は買おうと思ったけれども、昼は売ろうと思って、やっぱりやめておこうと思った。それは多分毎日起こっていることで、そうだとしたら、本当は瞬時みたいな形を何か工夫できないか。

それから、紙で交付するというのも物すごく正当みたいですけれども、今時、紙のデリバリーで単に条件とかが書かれただけのものをもらって意味があると思う人はどのぐらいいるだろうか。本当に原点にさかのぼって考えると、法律上は意味があるとしても、摩訶不思議だなというのが出てきているんじゃないか。これは世の中の変遷によってそうなったわけで、これを法律問題かどうかという形で議論するんじゃなくて、非常に素朴に考えたときに、おかしいと思うことは一回立ち返って考えてみるという姿勢が必要じゃなかろうか。

例えばこれも問題の側面のとらえ方で、投資家を保護するという観点ではこうなんですけれども、逆にいうと、ディスクロージャーに意味があるのは、投資家に商品を供給する、投資家がそれに触れることができるチャンスをどうやって正当に担保するかという話だと思うんです。きのうかおとといの部会でも申し上げましたけれども、昨今の動きでもグローバライゼーションというのは、何も日本サイドだけが全部ハンドリングできる形で発行が行われているわけではない。海外がメインで、日本の投資家にもアクセスするためにグローバル・イシューといいますか、そういう形でするときには実はこっち側には余り主導権はないわけです。

そのときに先ほど申し上げましたようなタイムリーなというのの阻害要因があると、日本市場切り捨てみたいな話になって、日本の投資家はもうアクセスしなくていいよということになる。それはその商品にアクセスするチャンスがなくなったとも考えられるわけで、ここらあたりはそろそろ……。全部そもそも論をやると大変だと思いますけれども、いかにもおかしいなというのは率直に一回振り返るべき時期ではないかという気がしております。

○ 神田部会長

今の点は伺っておくということでよろしゅうございますでしょうか。確かに各論で課題が多いものですから、各論を議論するだけでも7回も開いていただいて、哲学的な議論のところもまたさらにお願いするのもやや苦痛もありますけれども、しかし、非常にごもっともなご指摘ですから、ぜひそういう点についても今後何らかの形で議論を深める方向でというふうに私は感じます。どうもありがとうございました。

ほかにいかがでございましょうか。予定の時間を多少過ぎてはいるのですけれども、ぜひにというご意見があればぜひお出しいただいて、ほかの2つの報告書と同じように、次回までにこの部会の報告書の案という形にさせていただきたいと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

よろしゅうございますでしょうか。十分にお時間がとれませんで大変恐縮でございますけれども、特にディスクロージャーにつきましては非常に多彩な論点があり、ワーキングの方でも大変精力的にやっていただきました。したがいまして、ご意見等がございましたら、この後でも事務局の方にどうかご遠慮なくいっていただきたいと思います。このことについては、ほかの2つの報告についても同じでございます。これらも非常に重要な分野でありますので、ご意見等がありましたらお寄せいただきたいと思います。

それでは、今のディスクロージャーの関係につきましても、ワーキング・グループからのご報告について、基本的には皆様方からご了承いただいたということで、今いただきましたご意見を踏まえて第一部会の報告書の案を私の方で作成させていただくということで手続を進めさせていただきたいと思います。そういうことでよろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

それでは、以上をもちまして、本日の審議は終了させていただきたいと思います。本日の会議は非公開とさせていただいておりますが、通常この部会は公開ですので、この後記者会見を行いまして、本日の当部会の模様について簡単にお話をさせていただくことにしたいと思います。

なお、心苦しいところですが、お手元の報告書につきましては、本日は回収という扱いにさせていただきたいと思いますので、席上に残していただければと思います。

次回につきましては、さきに申し上げましたとおり、本日のご議論を踏まえまして、部会の報告の取りまとめのご議論をお願いしたいと思っております。さらに、証券市場の改革促進プログラムに掲げられた事項で、その他のものの進捗状況につきましても事務局の方からご報告していただく予定にしております。そういうことで、盛りだくさんで次々と部会を開くことになりますが、どうかよろしくお願い申し上げます。

最後に、事務局からご連絡がありましたら、よろしくお願いいたします。

○ 乙部市場課長

次回は12月16日午前中を予定しております。改めて連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

3つのワーキング・グループの座長を務められました池尾先生、岩原先生、吉野先生には大変なご苦労をおかけいたしまして、どうもありがとうございました。また、ワーキング・グループに参加いただきました皆様方にも、大変短い期間で多彩、多方面にわたるご検討の成果を盛り込んだ報告をここまで取りまとめていただきまして、第一部会として改めて御礼と感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして散会させていただきます。どうもありがとうございました。

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