金融審議会金融分科会第一部会(第11回)議事録

日時:平成15年11月5日(水)13時00分~15時00分

場所:中央合同庁舎四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 神田部会長

それでは予定の時間になりましたので、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の第11回会合を始めさせていただきます。

いつもご多忙のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

なお、いつものことですけれども、議事は公開となっておりまして、報道機関の方々などのために後ろに席を用意しております。

前回10月17日に開催されました第10回の会議におきましては、投資教育のあり方、投資サービスにおける投資者保護、市場監視の強化という、この3本柱でご議論いただきました。今回も引き続いてこれらの3本柱について議論をさせていただきたいと思います。

なお、前回ちょっと話が出ていましたが、内閣府政府広報室が行いました証券投資に関する世論調査というのがありますので、その概要の資料を今回お手元に配付させていただいております。

それでは、お手元の議事次第に従って今日も進めたいと思います。また本日も相当立て込んでおりますので、時間が足りないかもしれませんけれども、積極的なご議論をお願いしたいと思います。

まず最初に、投資教育のあり方について、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会の常務理事でいらっしゃいます紀平正幸さんにお話を伺えるということでございます。どうも今日はお忙しいところを来ていただきまして、ありがとうございました。

それでは、早速ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○ 紀平日本FP協会常務理事

日本FP協会の紀平でございます。初めまして。よろしくお願いいたします。

今日は、「投資教育のあり方について」という題名でお話をさせていただきます。私どもファイナンシャル・プランナーは、ご存じのとおり、一般の生活者に対する生活設計と金融に関する相談やアドバイスを行っております。そういった面から、実際に普段の活動の中で一般の生活者や、投資を行う人たちの意識といったところに出くわしておりまして、金融については、特に投資についてはさまざまな問題を抱えております。私たち自身としても、もう少し国民の投資に関する関心であるとか理解であるとかというところを進めなければならないという意識を持っております。

レジュメにありますように、私どもが実際の生活者とかかわっておりますパーソナル・ファイナンス、個人の生活設計においては、特に最近で言えば年金の問題が将来に対する大きな不安としてありますので、長期的な資産形成ということが必要になっておりまして、こういったところでは証券投資は欠かせないと思っております。そして、こういった投資に関して、株式投資にしましても、投資信託にしましても、最も一般の人たちが取り組みにくいという理由の一つに、知識がないというところがあります。もちろん、知識がないだけに、リスクに関してもかなり大きく感じているということが言えるのではないかと思います。したがいまして、こうした投資教育については、個人の資産形成や、市場経済の円滑に機能する上で重大なインフラであると解釈しております。

レジュメの中ほどにありますように、私どもが一般の生活者に対して資産形成の中で特に目的資金として活用する金融商品としては、そういったさまざまな商品があるわけでございます。こういった中でも一般の生活者が選ぶものは、ほとんどリスクの少ないものというところで選ばれております。

そして、一般の相談を受けるとか、セミナーをやる場合でも、こうした中での反応は、多くの方たちは、利回りは高くて、でも元本割れがない金融商品を教えてほしいといったことです。そんなうまい話があればいいんですけれども、ここでは、利回りは高く求めたいんだけれども、リスクについては自分たちが知識がないだけに不安が大きくなるというところがあるのではないかなと思います。

家計管理のセミナー、例えば家計費の見直しであるとか、保険や住宅ローンの見直しであるとかというところでのセミナーの参加者は、とても多いんです。ところが、資金運用セミナーということになりますと、途端に参加者が少なくなっております。例えば、証券投資ということはどうしても必要になってきますので、私たちのセミナーのやり方としては、家計管理セミナーとセットでやっているというのが実際でございます。そういった中で、特にパーソナル・ファイナンスにおいて資金運用の考え方であるとか、ディスクロージャー資料の見方であるといったところのお話をさせていただいております。

海外におきましては、皆さんご承知のとおり、アメリカにおきましても、イギリスにおきましても、学校においても金銭教育のガイドラインや到達目標がしっかり立っております。米国の場合でも、米国教育法に基づいた金融教育の普及というもので、特に所得であるとか金銭管理であるとか、それから貯蓄と投資といった項目別にガイドラインと到達目標がありまして、例えばこの中の投資に関する項目でいいますと、小学生低学年から貯蓄預金など金銭教育についての教育がなされているということです。英国におきましても、金融サービス庁が中心になって消費者教育を実施しておりまして、これも学校のステージ別に、金融能力であるとか、金融に関する実行力であるとか、金融に関する責任能力について、到達目標とガイドラインを定めております。例えば5歳から7歳のところでは、もう既にリスク・リターンの基本としてお金の紛失とか盗難といったことから学び始めまして、7歳から11歳では金利や金融取引、さらには14歳以上では投資商品のリスク・リターンについてしっかり学んでおります。このように、ガイドラインや到達目標をしっかり決めて、しかも行政が投資教育にかかわっているということから、教育の内容というものも統一化されておりまして、それぞれの関係機関がこの統一化されている内容で教育をしているというところで効果が上がっているのではないかと思われます。

一方、我が国の投資教育の取り組みでございますけれども、学校教育におきましては、小学校、中学校、高校教育では公民のところでの教育になっております。ここでは、金融に関して消費者として必要な知識を身につけ、理解を深めるということで、一応内容としてはこういった内容にはなっておりますけれども、実際に行われているケースは少ないですし、行われているところでも、各学校や教師の判断で、その時間数や内容についてはかなり差があり、全体としては消極的であると思われます。

民間団体におきましては、投資に関する学生や一般生活者向けの取り組みは非常に数多くございます。レジュメにありますように、金融広報中央委員会であるとか、証券業協会であるとか、取引所であるとか、さまざまなところが数多くのレジュメ、テキスト、パンフレット、さらにビデオなど、さまざまな資料をつくっております。こういった数多くの資料はあるのですけれども、そのほとんどが、知識中心的内容となっています。しかし、生活者の立場から言いますと、もっと実務的な内容が知りたいし、資料だけではなく、その資料に基づいた相談やアドバイスを求めています。そうした点から考えますと、従来型の資料をただ配布するだけの方法では不十分だと考えます。こうした投資教育にはセミナーで解説したり、相談を受ける体制をつくるため多くの人的口数が必要になってきます。

「わが国における投資教育の課題と意見」のところでございますけれども、「投資教育」という形にいたしますと、消費者や学校教育の現場ではある種の偏見から消極的になるというのが、先ほど申し上げたような状況でございます。そして、経済教育から投資教育まで一貫した体系的な指針や、学習段階別に到達すべきカリキュラムといったものをつくっていく必要があるのではないかと思います。現在、先ほども出てきましたように、さまざまな資料はありますけれども、各団体がばらばらにというか、それぞれにやっておりますので、こういったところでは効果が少ないのかなと思われます。

そこで、意見といたしまして、経済から始まって投資教育までの一貫したスタンダードというものをつくる必要があるのではないかと思われます。そして、各団体がさまざまなそういった教育の資料をつくっておりますけれども、統一する必要がある。アメリカやイギリスの例もそうなのですけれども、行政がかかわっていく必要があるのではないか。そういう意味では、例えば金融庁の指導のもとに金融広報中央委員会などがつくって、そういったガイドラインをもとにして各団体がカリキュラムや教材をつくることにすれば、非常に全体的に統一した内容になるのではないかと思われます。そして、冒頭に申し上げましたように、投資教育ということになりますと引いてしまうというところがありますので、パーソナル・ファイナンス、個人の生活設計の中でなぜ投資が必要なのかということを理解してもらうような流れになっていくのがよろしいのかなと思われます。そして、その教育をどこがやるかということですけれども、証券界に対しましては投資経験者や未経験者も含めて偏見や不信感が根強いということが感じられます。英国や米国などのように、NPOなどが教育を担当するのが望ましいのではないかと思われます。

最後に、私ども日本FP協会なんですが、現在14万人おります。47都道府県に支部がありまして、それぞれの地域でお金に関するフォーラムを実施したり、セミナーや無料相談会をやっております。こういったところでお役に立てればと思います。

また、日本FP協会では、体系的な教育、これは経済と金融なのですが、スタンダードと教材、教師用のマニュアルを今作成しております。16年度にモデル校で試験的に実施しながら指導用のテキストをつくっていきまして、17年度でモデル校の検証を踏まえて、教材のブラッシュアップと利用拡大のPRをしまして、18年度から本格的なスタートをしていきたいと考えております。対象としては、高校、大学での金銭教育ということを考えている次第でございます。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。大変要領よく話をしていただきまして、ありがとうございました。

それでは、今いただきましたお話につきましてのご意見、ご質問、それからいつものことですが、それに関連して、この問題を考える上での視点ですとか、基本的な考え方等についてのご意見でも結構ですので、お出しいただければ思います。どなたからでも、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。嘉治委員、お願いいたします。

○ 嘉治委員

ありがとうございます。前回の会議でもセミナーやパンフレットの話があったのですが、本日のただいまのお話で、例えば5ページの課題のマル4のように個人のニーズや知識レベルに合致していないというご指摘もございます。ただ「内容が合致していない」ということと、「内容は合致しているが、合致しているということがわかるかたちで消費者に伝わっていない」というのは別のことです。恐らく後者の面もあるのではないか、つまり問題は、インターフェースにあるのではないかと思われます。こういうセミナーあるいは教育活動についての情報を、消費者に金融商品を売る立場のかたが、その場で消費者のそのときのニーズに合わせて焦点をしぼって流せば、違いが出てくるのではないでしょうか。例えば「この点に関して説明が必要でしたら、こういうセミナーもあります」とか、「これについては説明担当者がいますから、この人のところに行って聞いてください」とか、そういうご説明は現段階ではあまりないようです。投資に関する決定を行っているとのときには「やっぱり今ひとつわからないのでもう少し考える」でということ終わってしまう。それとは別に後日セミナーご案内のための、カラフルでマンガも入った、わかりやすそうな感じのパンフレットがたくさん郵便物として届くという形になっていますと、ちょっと全部目を通す時間がないということで読まない。せっかくこれだけ資源があるのですから、もうちょっとつなぎ方を変えればもっと活用できるのではないでしょうか。一人の人間が一日のうちに考えなければいけないことがたくさんある中で、その人のアテンションが投資に向かっているその瞬間に、相手になってくださっている方が効率よくその消費者のニーズに合った部分にしぼって情報を与えてくれれば、消費者としては理想的かもしれません。

勿論、追加的に情報をえるためにはコストが多少上乗せになるかもしれない。それを支払っても情報を得たいと思う消費者はもう少し詳しい説明を受けられる、というのは合理的だと思います。民間企業ですから、コストに見合わないことはできないということは、ある意味で当たり前です。投資家としても必要な情報を入手できるならこれだけのコストを払う、証券を売る側でもこのコストならここまで消費者の情報入手を手助けするのがコストに見合うということで、買い手も売り手も納得のいくコストの水準が一致したところでサービスが提供されるはずです。ただし、情報が効果ある形で伝わらない場合は、望ましい水準の取引が実現しません。せっかくこれだけ情報のリソースがあるわけですから、上手につながっていないのはもったいないと思われます。あと一歩のところで非常に残念な状態になっているということも言えるのではないでしょうか。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。板谷委員。

○ 板谷委員

今の嘉治先生のご発言に関係して、前回は投資教育ということで私が説明させていただきましたが、私どもは投資教育と投資セミナーということで分けて考えております。投資教育は、どちらかというと、中学、高校、大学生を中心に、最近は地域のコミュニティーの中高年齢の方を対象にしてそういう場を提供させていただいておりますけども、これはどちらかというと中長期的なものであり、目先に私どものビジネスに直接目に見えた形で何か結果が出るといったことではなくて、マーケットのすそ野を広げる、あるいは参加するかしないかの判断材料を提供するという息の長い活動だろうと思います。他方、投資セミナーも、これはかなり商売に近くなってくるわけでございますが、これはそのときどきのマーケット環境にもよるのですけれども、最近のケースでいいますと、証券投資セミナーと銘打ったものに参加される方が結構多くなってきたといった状況がございます。例えば先日名古屋の方で東海3県を対象にした2日間のセミナーがございましたけれども、約1万2,000人の方がご来場いただくといったこと、あるいは証券会社、最近は銀行さんにおいてもやられていると聞いておりますけれども、資産運用のセミナーということで各支店あるいは支店の近くの会場で商品の説明も含めたものをやりましても、かなりの方が参加されていると聞いております。その意味では参加者の絶対数はかなり増えているのですけれども、この国のマーケットをさらに大きくするためには、従来関心を持っておられなかった方も含めて、さらに広げていくという努力をやっていく必要があるし、それは少し時間がかかるので、投入した資源に対する効果がすぐに出てくるということではないかもしれないけれども、続けていかなければならないのかなと思っております。

それから、先ほどご説明いただいた紀平さんの話に関連して、前回少し言い足りなかった部分を一つだけ申し上げますと、学校においてこういう証券知識の普及ということをやっておりまして感じたことが一つございました。先生方に証券知識あるいは市場に関する知識、関心が少し少ないかなということを感じることがございます。私どもは、夏休み等で教育委員会等からの依頼を受けて、先生方にグループで1週間程度いろいろな説明をさせていただくのですけれども、最後に参加していただいた感想のようなものを書いていただくと、「自分たちはほとんど何も知らなかった」といったコメントを頂戴することもございまして、生徒さんたちへ証券知識を普及するということをやるためにも、先生方に対して市場についての知識を普及していくということもあわせて大事なのではないかなと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。東委員、どうぞ。

○ 東委員

1年前の世論調査を見ても、これは一番厳しい時期でのアンケートになるのだろうと思うのですけれども、7割強の方が「関心がない」という結果が出ています。その理由としては、ある種の合理性を持った関心のなさと、錯覚による関心のなさとがあるのだろうと思います。その錯覚による関心のなさを小さくするために、従来型の例えば金融機関がセミナーをやるという努力はずっとやっているわけですけれども、それにもかかわらず、現状はこのアンケート結果なんだろうと思います。その意味では、合理性の部分は別として、錯覚による部分をどうやって今後早く知っていただくかという、そこが一番ポイントになるのではないかと思います。長い目で見た学校から始まる投資教育の重要性はもちろんなのですが、それ以上に常に家計として資産を運用する立場にいる人にその錯覚に気づいて、小さくしていただくかということだろうと思います。その意味で現実的に効果が一番大きいのではないかと思いますのは、日本版の401Kといった実際に自分で運用の選択を迫られる場をどれだけ多く提供できるかではないかと思います。日本版401Kのさらなる拡充は、錯覚による関心のなさを払拭するために相当効果的な方策になるのではないかと考えています。

○ 神田部会長

ありがとうございます。淵田さん、どうぞ。

○ 淵田委員

今の東委員のご意見にも賛成ですが、同時に私は小さいころからの教育というのは大事だと思っております。今、教育という一くくりで言っていますが、義務教育とその後ということは区別する必要があると思うんです。いろいろな偏見が生まれてくる前の段階できちんとしたことを教育していくというのは大事ではないかと思っております。その場合、投資教育ではなくて経済教育だという紀平さんのご意見は大賛成であります。この場合大事なことは、経済教育と言っても、私は個人的には市場経済というものの教育が必要ではないかと思っています。つまり、公平・公正・効率的な市場においてプライスが決まるということがなぜ重要なのかということの認識というのが、日本の今の大人の人たちの間であまり浸透していないのではないかという気がしておりまして、そういうことがいろいろな証券投資に対する各種の偏見の根源にもあるような気がしております。その義務教育段階でのマーケットエコノミーの教育というところさえしっかりしていれば、そこから後はいろいろな人がいろいろな形で教材をつくってもかまわないと私は思うんです。個人にどういうニーズがあるかということを、別に中央で把握してガイドラインを決めなければ対応できないというものでもありませんし、さまざまな団体がそれぞれ目的があって行動しているわけですから、そこはいろいろなものが出てきても構わないと思うんです。重要なのは義務教育レベルでおっしゃったように何らかの達成ガイドラインなりをつくって、きちんとした経済教育をしていくことではないかと感じました。

○ 神田部会長

ありがとうございます。高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

今、学校教育が大事だということで、その学校教育の年齢とか進行に応じたプログラム、カリキュラムをつくっていくということが非常に大事だということは、全くそのとおりだと思います。ぜひ何かの形で先ほどの紀平さんのご指摘のスタンダードが、小学校とか中学校高学年というようにもうちょっと細かに学年に沿ったそういうものがつくられたらいいと思います。

それから、嘉治先生のご指摘は一般消費者への啓蒙とか投資教育ということであると思うのです。全く先生のご指摘のとおりでありまして、いろいろやっているわけです。それだけやっているということがなかなか周知できない。証券会社の窓口で買いにこられたお客さんにこういうことがあると伝えたらいいではないかというのは、これは大変ご指摘のとおりだと思います。ただ問題は、証券会社へ来てくれない人に対して新たに証券というものを知ってもらうということが今大きな課題だと思います。証券会社の窓口での努力も大切だと思いますけれども、一般の方が広くそういうセミナーだとか、相談だとか、あるいはオープンになっているものを知ってもらうための努力を今以上にやらなければいけないと思います。そういう点でいろいろな方にご協力いただきたいということも考えています。もっと周知を図るべきだという嘉治先生のご指摘のとおりだと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

紀平さん、いかがでしょうか。今まで幾つかのご意見が出たのですが、お聞きになって、このFP協会さんのセミナーに来られる方というのはどういう層の方なのでしょうか。あるいは、それと今までのご意見をお聞きになって、ご感想等ありましたら、お聞かせいただければと思います。

○ 紀平日本FP協会常務理事

セミナーも、テーマ別にさまざまなものがございまして、一般の生活者の生活設計に関するものから投資に関するところまで、さまざまなテーマのものがあります。先ほどもお話がありましたように、投資の経験があって、特に投資の必要性を感じておられる方にとってみますと、これはかなり熱心に頻繁に来られまして、ご本人自身も勉強もしていて、投資も今まで以上にこういった、もちろんマーケットの状況にも影響はされますけれども、やはり長期的なところでのしっかりした勉強をされていきます。問題はまだ投資の経験のない方なんですけれども、こういった人たちに対して、「投資教育」というタイトルではなかなか来てもらえませんので、なぜ投資が必要なのかというのを、「投資」というタイトルではなくて、むしろ「生活設計」のところのタイトルで来ていただいた中で、長期的な資産形成の中では投資というものが必要なんだというところでお話をして、こちらについてはなかなか理解していただくにも時間もかかりますし、来ていただくための集客も厳しいというところでございます。そうやっていきますと、短期的な成果を狙うものも一つは必要なんですが、もう一つは先ほどからお話がありましたように、時間はかかりますけれども、学校での長期的なこういったものも並行してやっていく必要があるかなと思っております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。まだまだ議論したいのですが、今日はほかのテーマもこなさなければいけませんので、このあたりで先へ進ませていただきたいと思います。前回も申し上げましたが、皆様方からさらにご意見がありましたら、この部会の時間は限られていますので、どうか個別の事務局にまたお寄せいただきますようによろしくお願いいたします。

紀平さん、どうも今日はお忙しいところをありがとうございました。

それでは、次に進ませていただきます。次のテーマになりますが、まず経産省経済産業政策局産業組織課長の日下部さん、そしてゲストとしておいでいただいております株式会社バイオフロンティアパートナーズの取締役でいらっしゃいます藤波光雄さん、今日はお忙しいところをどうもありがとうございます。このお二人から投資事業組合についてのお話をお伺いしたいと思います。なお、質疑応答の際にご発言いただけるということで、株式会社ジャフコの常務取締役でいらっしゃいます米澤則寿様、それから日本ベンチャー協会の青木秀憲様のお二方にも、今日は特にお忙しいところをいらっしゃっていただいております。藤波さん、それから米澤さん、青木さんには、大変お忙しいところをおいでいただきましてありがとうございます。よろしくお願いいたします。

それでは、日下部課長から、よろしくお願いします。

○ 日下部経産省産業組織課長

経済産業省の日下部でございます。本日、投資事業組合について経済産業省の方からご説明させていただくゆえんは、現在、日本の中で中小企業等有限責任組合法というのがございます。ベンチャー・ファンドを対象にした有限責任性の組合法制を定めたわけでございますが、経時的に見ますと、この法律は経済産業省が5年前に定めたものでございまして、さらにこの法制をどのような形で変えていくのかという議論を現在経済産業省の方で検討中でございますので、この機会を借りまして投資事業組合にまつわる今後の検討課題についてご紹介したいと思います。

まず、資料2-1という横長の資料を見ていただきたいと思います。「投資事業組合の歴史と発展の方策」と題した資料がございます。ページをめくっていただきますと、目次がございます。お話し申し上げたいのは、まず投資事業組合の歴史を一度振り返ろうと思います。約20年前に日本で第1号の投資事業組合ができて以降、大ざっぱに整理すれば、3つの段階に分けて投資事業組合が発展してきたということをご紹介申し上げます。その上で、現在かなりファンドの中身あるいは投資家層の拡大という議論からして、多様化という議論が相当出てきております。したがいまして、そうした多様化にこたえるために、組織法制の議論もございますし、それからここで議論されております投資家保護の議論もあろうかと思います。3番目に、その投資家保護のルールを考えるに当たって、どういう検討が必要なのかということをご紹介したいと思います。

1ページ繰っていただきます。投資事業組合の歴史は、一言で言えば、自主的な規律と競争の中でさまざまな創意工夫が発揮されて、金融機関系以外の方々も含めて、多様な主体が参入して、一方で投資家保護上の問題があまり生ずることなく、新しい金融の手法が開発されてきたということで要約できるかなと思っております。

第1フェーズは、ベンチャーの未公開株式中心で民法組合を活用した段階で、これが82年から97年まで続きます。もともとベンチャー・ファンドに対する投資のスキームとしては、先行事例としてアメリカのリミテッドパートナーシップというのがございました。これは、無限責任社員が1名で、その他有限責任組合から成り立っている組合形式でございます。その中身を見れば、少数のプロ投資家との間で投資案件を丁寧に発掘していく。オーダーメードのメニューではなくて、投資家全員がメニューを作り込んでいくというやり方でございます。なおかつ、一度投資をすれば、ころころ投資家の中身が変わるのではなくて、おおむね10年間ぐらい固定するといった性格でございました。したがって、日本の中でこうしたアメリカのリミテッドパートナーシップに近いやり方を考えてきたときに、いろいろな選択肢があったかと思うんですが、結果的に民法組合に落ちついております。

民法組合の場合は、ご存じのとおり、共同事業性が当然必要になりますし、持分の流動性も非常に低うございます。したがいまして、こうした投資事業組合を組む際には日本においては民法組合を活用しようということで、ちょうど20年強前の82年に本日ご出席になっておりますジャフコさんが第1号のファンドを積み立てられております。そのときに構成員課税という税制上のメリットも当然念頭に置かれていたと聞いております。その際、組合契約によって私募的な自主的な規律を機能させるということが考えられております。例えば、組合員契約を見ていただきますと、組合員数50人未満、あるいは投資期間原則10年間、持分譲渡は全員同意、あるいは投資金額の規制につきまして、1人当たり出資金額最低1億円といった契約が結ばれて、ある種非常にプロの仲間の間で丁寧に投資案件を発掘するというなりわいが継続したわけでございます。82年当時は3ファンドしかなかったのですが、97年までに268ファンドが発生したということです。

次のページをあけていただきます。第2フェーズは、民法組合ではなくて、中小有責法という新しい法制が創設されて、その活用が進んだ段階でございます。きっかけは、いわゆる機関投資家、なかんずく年金基金の資金を導入したいといったときに、民法組合の場合は無限責任性が障害となりまして、どうしても有限責任性の組合組織が必要だということで、98年に中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律が制定されております。

この法律の内容なんですが、当時は投資対象としてベンチャーが注目を集めておりましたので、中小企業等の未公開株式に限定されております。若干産業再生法の改正によりましてそこの対象が広がっているところはございますが、基本的には中小の未公開株式で、中小企業等の定義は下に書いてございます。法律上の立てつけとして重要な点は、有限責任性の導入に伴って債権者方式を入れるということでございます。そのために、財源規制、債務超過時の利益分配の禁止規定が導入され、それから有限責任組合だということを対外的に明らかにするために、組合契約の登記制度が導入されております。次のページで、さらに従来の民法組合を活用した投資事業組合の本質を踏襲いたしまして、組合員数につきましては法律上49人以下に設定しておりました。これは、当時証取法上の私募の概念を参考にしながら設定したということでございます。2001年にアメリカにおける投資会社法のセーフハーバールールなどを参考にしながら100人までその制限数を拡充しておりますけれども、人数制限があることは変わりございません。そのほか、機関投資家の投資を促すために、法律上開示制度を整備しております。公認会計士による監査、財務諸表の事務所への設置、それから組合員・債権者による財務諸表の閲覧といった措置が法律上決められております。こうした中で、中小企業有責組合は、現在335ファンドに上っているわけですが、投資家との間でトラブルを起こすことなく現在に至るということでございます。

続きまして、第3フェーズなのですが、これはちょうど有責法ができ上がりました98年当時から起こった現象で、ファンドがかなり多様化していきます。2つの流れがございまして、1つ目は、未公開株式投資という意味合いでは、ベンチャー・ファンドと同じ性格を持つ事業再生ファンド、企業再生ファンドとも言われますが、それが登場してきます。日本では98年以降本格化したと言われております。その場合、有責性を有する各種組合制度の活用が必要だということなんですが、日本国内には、先ほどご紹介しましたように、中小有責法は、大企業の公開株式は取得できない、あるいは金銭債権を保有できるような機能がないということで、現在の日本における事業再生ファンドは主としてケイマンのLPSを使っています。我々が把握した感じでは、約8割がケイマン、残りが匿名組合、民法組合、一部有限会社という構成になっているようです。

この理由は、先ほどちょっと申し上げましたように、事業再生ファンドの運用実態は実は私募的でありまして、それほど多くの投資家を募るわけではございません。具体的には、銀行、生命保険、証券会社、一部事業法人等々のプロの投資家を10人から30人程度集めて私募的に運用するという状況なので、その意味では中小有責法の概念には合致するのですけれども、業務の内容に制限がある。したがいまして、中小未公開株式に限定されており、かつ債権取得や融資機能のない中小有責法は使えないということで、ケイマンなどの活用を余儀なくされているということでございます。最近、そこのポツに書いてございますが、最近、公開株式を取得して未公開化するケース、あるいは公開株式を取得してそのまま事業再生をするケース、あるいは債権取得後DESをかけて事業再生するケース等々、さまざまな形態が出ますが、こうした形態に対応できないということでございます。

もう一つのトレンドは、次のページでございますが、実はベンチャー・ファンドの一部に、一般投資家から資金を調達したいという実需が出始めていることもございます。そうしますと、現在組合員数100人以下の制限がございますので、ここをどうするかという議論が課題になろうかということでございます。

したがいまして、次のページをあけていただきますと、現在の投資事業組合を産業金融の担い手として発展させていくためには、こうした制度がなかなか実態に追いついていないことを変えていかなければいけないと。1つは有責組合制度の拡充でございまして、もう一つは投資家保護ルールの多面的な検討であろうかと思います。有責組合制度の拡充につきましては、投資対象の拡充や機能の拡充が必要だと考えておりまして、これにつきましてはなるべく早く法案改正を金融庁さんともご相談させていただきながら成立したいと思っております。もう一方で、投資家の対象を拡充したいというニーズもございますので、投資家保護ルールは非常に重要な課題だと思っております。

次のページをちょっとあけていただくと、そのときに幾つか押さえるべき点があろうかと思っております。要約して言えば、従来私募的な運用で自主的に講じてきた投資家保護規律の評価をする、その上で有価証券とは異なる性格を踏まえた対応をする、さらに言えば事前の規制がない中でいろいろな商品設計が競争の中で行われてきた活力を維持するといった視点が大事かと思っております。幾つか書いてございますが、トラブルがなかったというのは先ほどちょっとご紹介したとおりでありますが、重要なのはファンドの実態に合った対応でございまして、長期間の投資、持分の非流動性、共同事業体的な性格といった点における有価証券との違いをどう踏まえるか。さらには、投資先が未公開株式中心でありますから、いわゆる標準化できる情報はあまり重要でなくて、標準化できない情報をどのように投資家に対して開示していくのかという、ある種の開示の難しさがあろうかと思います。それから、ご紹介申し上げてまいりましたように、ビークルは多種多様であります。ケイマン、匿名組合、民法組合。合名、合資はございませんが、有限会社の例もございます。こうした横断的な取り扱いも不可欠になろうかと思います。その上で、次のマルで書いてございますけれども、当然、非流動的な持分ということになれば、合名・合資会社や有限会社の持分を含めて、どこまで投資家保護の対象にするのかといった論点も出てこようかと思います。

それから、投資家保護につきましては、自主的な規制、有責法の開示制度、あるいは出資法、金融商品販売法、証取法など、さまざまな体系がございますので、そうした体系をどう合理的に組み合わせるのかという検討も必要かと思います。金融のスキームでございますから、海外法制との関係で過剰な規制ということは避けなければなりませんし、そのほか構成員課税という税制面に対する影響も配慮しなければいけないと考えております。

次のページでございますが、日本のファンドは、相当程度伸びてはきているのですけれども、下の方にグラフがありますが、バイアウト・ファンドとベンチャー・ファンドをアメリカとかヨーロッパと比べてみても、GDP比で例えばイギリスの9分の1、アメリカの12分の1程度でございます。ここをもう少し発展させていくためには、組織法制の整備と、投資家保護ルールのあり方、この車の両輪2つが必要かと思っておりますので、こうしたいわゆる多面的な検討をこの金融審議会の方でやっていただくことについては、こちらの方からも期待したいと考えております。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは引き続きまして、藤波さん、どうぞよろしくお願いいたします。

○ 藤波バイオフロンティアパートナーズ取締役

バイオフロンティアの藤波と申します。よろしくお願いします。

今日は、「ベンチャーキャピタル投資事業組合について」ということで、ベンチャーキャピタルが運営しています投資事業組合について、その実務上どういう形で現在行われているかということを詳しく述べるとともに、その組合持分の有価証券化についての検討点というところをちょっとお話ししたいと思います。

ベンチャーキャピタル投資は、資金だけではなくて、ベンチャーキャピタルは事業のノウハウとか知財の利用及びその事業化などの方法等も提供して、投資先の育成を図るという意味合いを持っております。その主な投資商品は、未公開株式への投資ということです。先ほど経済産業省の日下部さんからもお話がありましたように、未公開株投資というのは、投資した有価証券には流動性がありません。それから、投資から回収まで一般的には非常に期間が長くかかる。したがいまして、ハイリスク・ハイリターンとよく言われますけれども、非常にリスクがある投資でございます。ただ、ベンチャーキャピタルとしては、自由な発想、また自由な組合契約、自由な活動でベンチャーキャピタル投資を拡大しております。1982年、日本合同ファイナンス、今のジャフコが初めて投資事業組合を設立してから20年経過しました。その当時、最初に投資事業組合をつくったときから私はかかわっておりますけれども、設立に当たりましては、アメリカのリミテッドパートナーシップ、それから当時の大蔵省なり国税庁なりといろいろな議論をした結果、今の形になっているわけです。今や投資事業組合の資金による投資が主流になってまいりました。こうした新規の事業の投資・育成・支援というベンチャー企業の活性化と経済の活性化及び雇用の拡大等をベンチャーキャピタル投資は担っているのではないかと思っております。また、新しい金融商品として新規公開株式の提供という役割も果たしているのではないか。

それから、投資事業組合の形態につきましては、先ほどのお話にありましたように、当初は民法上の組合で、民法の組合が共同に事業を営む共同事業であること、組合財産は共有財産、投資決定は原則過半数以上でやるといったことがございましたけれども、そこで民法の組合ではない出資者に有限性を持たせるということで有限責任法組合が設立されました。これは、出資者の有限責任を担保しつつ、基本は民法の組合に準拠した規定が非常に多くなっております。

3番目としまして、投資事業組合の仕組みにつきましては、別紙1が3枚目の最後のところにございまして、これは皆さんご存じかと思いますが、ちょっと簡単に説明させていただきます。真ん中の下に運営管理というのが無限責任組合員、これが通常ベンチャーキャピタルでございます。それが投資事業有限責任組合を設立するというときに当たりまして、出資者を募って設立を行います。もちろん無限責任組合、いわゆるベンチャーキャピタルも一部出資するということでございます。その投資事業有限責任組合からベンチャー企業への投資を行います。株式、新株予約権付社債などで投資を行っております。そのベンチャー企業が株式公開なり売却をすると、その売却益が投資事業組合に入っていって、それを各出資者に分配するという形をとっております。一方、無限責任組合員につきましては、投資事業組合を運営していく上で投資活動を行うわけですけれども、未公開企業、将来の有望な企業を発掘するための活動を行っております。そこで、投資事業組合の方から管理報酬を毎年いただくという形で運営します。それと、売却益、キャピタルゲインが出たときには、その成功報酬も受けられるという形をとっております。その間、投資したベンチャー企業につきましては、いろいろな支援、コンサルティングを行っていくということにしております。一方、出資者につきましては、決算期ごとに決算報告書、それから投資先の状況を記載した運用報告書、その他出資者が必要とする資料を作成して提供するという形で投資事業組合は運営されております。

1ページ目に戻っていただきまして、4番目として、投資事業組合の実務上の運営・管理ということでございますが、民法上の組合をベースにしておりまして、出資者の勧誘というのは、民法組合では出資者を49人以下としています。これは、自主規制としまして49人以下ということで、民法組合は今ほとんどこの49人以下で設立されます。有限責任組合法では100人以下に決められているということです。対象とする出資者は、特定かつ少数の人たちを対象にしているということで、不特定で、かつ多数の出資勧誘はしないという形をとっております。また、その出資者を勧誘する場合にも、ベンチャーキャピタル投資を理解して、リスクを負担できる出資者、先ほどの説明で、投資事業組合設立当初は1口当たり1億円という形をとっておりましたけれども、これのリスクを負担できる出資者を対象にしております。個人も一部おりますけれども、原則としては機関投資家及び事業法人などが対象になるということです。

それから、リスク情報の開示としましては、勧誘時に設立趣意書あるいは説明書などで説明しておりますけれども、最終的にキャピタルゲインが得られるということは確約できません。それから、未公開株投資ということで流動性がないものですから、原則脱退はできないことになっております。それから、出資については流動性がない。ただ、契約の地位の譲渡ということで権利移転ができるという形になっております。それから、出資金は流通を前提にしたものではない。投資先の信用リスク、あるいはマーケットの市場リスクもあるといったことを説明しております。

マネーロンダリングの排除ということで、原則的には、投資事業組合を設立するときには設立調印を行い、その際に出資者の属性を明確にしているのが現状でございます。契約書は実印で、印鑑証明書を徴収する、あるいは取締役会で出資を決議しているかどうか、組合の契約書に代表者以外の人が来たときには委任状を徴収するなど、いろいろな形で出資者の属性を明確化しております。また、設立するときに、所轄税務署に出資者の氏名・住所を組合契約書とともに提出するということです。それから、投資事業組合で受領した利子・配当は組合の各出資者の持分に帰属するということで、組合としてその代理受領した利子・配当を組合ごと、出資者ごとに記載した支払調書を税務署に出すといった運営をしております。その結果、組合は組合自体が課税主体ではなくて、ここの出資者が課税主体となっているというところです。

組合については、共同投資活動であるということで、ディスクローズの体制にも関連しますけれども、投資時及びその後継続的に投資レポートを作成するということで、状況の報告も行われるということです。それから、出資者総会においては、その投資活動について出資者が意見を述べるような機会も設けています。ただ、民法上の組合ではこういうことをやっておりますけれども、有限責任組合法ではこれは法的要件にはなっておりません。

ディスクローズの体制としましては、少なくとも年1回以上行われる決算時には、決算書には公認会計士または監査法人の監査を受けて、組合員に提示する。これは有限責任組合法では義務ということになっておりますけれども、任意組合では任意でほとんどの組合はこれを行っているということです。投資先情報についても、投資時及び決算期ごとに開示する。

5番目としては、最近エンジェルという形の投資家がございますけれども、エンジェルは一般投資家とは違いまして、エンジェルは素人ではなく、高いリスクを負うことができて、ベンチャー投資を理解している人と解釈しております。ですから、先ほどの組合創設時につきましても、高いリスクを負うことができる、あるいはベンチャー投資を理解している人を組合勧誘では対象にしているということです。

6番目として、組合の持分を有価証券とした場合の問題点というか、検討点ということですけれども、組合持分の譲渡は制限されているため、流通を前提とした有価証券とはディスクローズの方法が違うのではないかと考えています。それから、相対契約が前提なので、私募となる人数要件をもう少し緩和してもいいのではなかろうか。それから、これも私募、公募の人数に加える一つの課題ですけれども、適格機関投資家の範囲をもう少し広げたらいいのではないか。それから、出資勧誘がそういう形で募集になったらどうするのか。そのとき、有価証券の提出義務があるのだろうか、ないのだろうか。それから、継続開示義務が届出書提出後発生したときには、恐らく未公開企業の情報は非常に限定されているということで、その情報をどれだけディスクローズするか、あるいはディスクローズしたものがどれだけ意味があるのかというのも検討する必要がある。それから、有価証券となった場合の証取法の範囲になるのかどうかというのもあるのですけれども、取扱業者というのはどうなのだろうか。いわゆる証券会社とかそういうところに限定されるのか、ベンチャーキャピタルはどうなのか。

それから、組合の出資金というのは今ほとんどが分割払い込みとなっています。当初1億円出資するということでも、最初に20%、その次にまた20%とか、何回かに分割で払い込むのが多くなっておりますけれども、これが一つの契約でそのように分割払い込みにする。また、こういう形をとる方が出資者も非常に出資しやすいということ。それから、先ほどの出資者の課税上どうなるんだろうか。要は、組合自体は課税主体ではなくて、個々の出資者が課税主体になっているという点については、この投資事業組合の非常に大きなメリットになっております。

これに関連しまして、先ほど4番の(3)と(5)のところで、マネーロンダリングの排除ということで、設立時に組合の出資者の氏名・住所などを出すと、それから利子・配当の支払調書を継続的に出しますよいうことで、匿名性を排除していますけれども、これと出資者総会などを開いて出資者に投資活動の意見を表明する機会を与えるというところが、まさに組合が課税主体ではなく、ここの出資者が課税主体になるという国税の取り扱い、これは組合に一番最初1982年に組合を設立したときに、国税庁とのそういう話をしております。

最後に7番でございます。ベンチャーキャピタルによる新規事業への支援・育成は、自由な活動のもとで行われ、その結果、経済の活性化に貢献できるのだと。ベンチャーキャピタル活動に制限が加わることは、ベンチャー企業の活性化を損なうおそれがあるのみならず、リスクマネーの供給をどう拡大していくとかというより大きな課題に対してもマイナスになるのではないかと考えています。

以上ですけれども、今後この投資事業組合について議論されるようなときには、ベンチャーキャピタルの意見等もなるべく入れていただきたい、あるいはそういう議論に一緒に参加させていただきたいと思っております。以上です。

○ 神田部会長

どうも貴重なお話をいただきましてありがとうございました。

それでは、ただいまのお二方からいただきましたお話につきまして、皆様方からご質問、ご意見などをご自由にお出しいただきたいと思います。どなたからでも、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。西村委員、お願いいたします。

○ 西村委員

端的にお聞きいたします。藤波さんにお伺いしたいんですが、今の現状は最も望ましい形態であるとお考えですか、それともそれを変更した方がより本来の趣旨に合うとお考えですか。それから、私募でやる場合と一般公募でやる場合とでは非常に大きな差があるわけです。ベンチャーキャピタルがこのままの形でいけばこのまま私募の形だと思いますが、どこかの時点で例えばある種の証券化をするといったことになると事態が変わってくると思います。そういったことをお考えになっているのかどうか、もしくはそういう可能性が非常にあるのかどうかということを一つお聞きしたいんですが。

○ 藤波バイオフロンティアパートナーズ取締役

個人的な意見で申しますと、今までこういう形でやってきたことに事故がなかったんですけれども、実はこの投資事業組合をつくる上で、例えば民法上の組合を49人以下でやっていますのでということとか、それから本来、小口資金の出資者を対象としないで、ベンチャー投資を理解して、またそのリスクを負担できる人を対象にするという形でやってきているわけです。その限りでは、今のままでもいいのかなと思っております。ただ、実は最近、小口の資金を集めようといったところが、いわゆるベンチャー投資の中ではリスクを負担できる人だけに限定していこうという中で、大々的に新聞広告を出してファンドを集めようとしたり、そういうところまで、では今のままでいいのかと言われると、それは好ましくないだろうとは思っております。

それから、2つ目の問題としては、今の形でいきますと、確かにいつまでたっても私募の中でいくということですけれども、ただ、先ほどファイナンシャル・プランナーズの紀平さんがおっしゃったように、一般の投資家というのは、元本割れがないとか、リスクをあまりとりたがらない。ましてやベンチャー投資というのは非常にリスクがあるということを前提にしますと、限られた中で、なおかつそれでもある程度幅広く出資者を募りたいとは思います。

○ 神田部会長

米澤さんか青木さん、今の件にもし何か追加でご発言いただくことがありましたら、お願いします。

○ 米澤ジャフコ常務取締役

ジャフコの米澤でございます。藤波さんの話とほとんど重なるのですけれども、ベンチャー・ファンドといいますか、プライベート・エクイティー・ファンドのあり方自体、先ほど経産省の方からご説明がありましたように、アメリカの制度を参考として導入されてきました。有責法を導入されたときも、いわゆる長期のリスクに耐えられる、かつ大量の資金(年金資金)を集めるためにという目的で有責法というものが導入されたというご説明がありましたけれども、まさに長期間の、非流動性、それらのリスクに耐えられる資金を集めるということで考えますと、そういう方たちの範囲というのは非常に限られているわけです。私募という言い方をするのが適切かどうかは別にして、そのリスクに耐えられる人達・投資家の中でやっていくというのが趣旨なのではないかと思います。人数のお話が出ましたけれども、公募という形に入っていくのであれば、それはそれなりに現状の仕組み・制度の中でも人数が増えることに対して対応可能ないろいろなビークルがあると思います。PEファンド、ベンチャーキャピタルファンドは、先ほども何人かの方がおっしゃっていましたけれども、一般の商品性とは性格が随分違うものだと思います。投資した後にその会社の成長を促進するようなことをいろいろやって行く、そこに初めて価値がついていくといいますか、価格がついていくわけで、いわゆる流通を予定していないものに、(将来的には流通を予定しているんですけれども)、主体的に付加価値をつけて行くプロセス・時間が介在するそういう商品と一般の有価証券との間の差は非常に大きいのではないかなと考えておりまして、これも私見になりますけれども、ベンチャーキャピタル、PEファンドが対象とする投資家は、やはりそういうリスクが背負える限られた人たちです。そのためにも、有責法をつくっていただいて、年金資金の導入等々を目指したのですけれども、それが現状そういう方向になっていない中で、すそ野を広げていくという方向は、私から見ますと、少し方向がずれてしまっているのではないかという感じも一部しております。

○ 神田部会長

青木さん、何かございますか。

○ 青木氏

今お二方にお話いただいたのと全く私の発言も重なる部分があるんですけれども、投資と言っても、投資という一言で済ませる対象物というのはものすごく幅広いと思うんです。だから、その中でベンチャーキャピタルの投資というのは、非常に特殊性というか、他の投資と比べると非常にプロ的な部分が多いということであって、そういう意味では、私募、公募という言葉を使えば私募、非常に限定されたところで対象にしていくべきかなという気はします。これがどんどん時間がたって将来ということになれば、ちょっとその辺はわかりませんけれども、ただ、この商売というか、このビジネスには非常に限定された特殊性があるというところで、考え方としては、今お二方がおっしゃったような私募、限定された中でということでやるべきかなという気がしております。

○ 神田部会長

ありがとうございます。どうぞ、西村委員。

○ 西村委員

次に日下部さんにお伺いしたいんですが、今のルールで基本的な問題はあまりないというお話が結構強かったわけです。が、経産省はその中でもこういったルールを広げるという可能性が重要であるということを主張なさっているわけですが、その説得的な説明を少しお願いしたいんですが。

○ 日下部経産省産業組織課長

有責法の投資対象と機能が、現在中小ベンチャー・ファンド向けに限られているんです。したがって、今ベンチャー・ファンドというご議論が幾つかご紹介がありましたが、似たような形態の投資形態として事業再生ファンドというものが現在非常に伸びてきていて、なおかつ私の目から見ると、それを皆さん、日本に法制がないものだから、ケイマン組合だとか、いろいろなちょっと特殊な組合制度を活用なさっている。だとするならば、今の中小有責法と同様の開示制度とかを完備しているような法制をつくること自身は、ファンドを創生する方々にとってもコストの低減につながるであろうし、あるいは投資家の方々にとっても法律上ある種の開示規制が導入されるという意味合いでは安心ができるだろうということで、その組織法制自身を拡充するという方向性は我々は進めていきたいと思っております。ただ、そのときに、もともと事業再生ファンドも、現行調べてみると、ほとんど私募の世界なんです。皆さんお伺いすると、100人、200人集めている人なんて全然いなくて、一番多くてたしか30社ぐらいの投資家から集めてやっているというケースが多いものですから、基本的には現在の有責法の立てつけを前提として投資事業組合の機能を拡充する方法で定義をするというのが、まず今求められていることなのかなというのが私の感じでございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。よろしいでしょうか。

○ 西村委員

私の意見を申し上げますと、リミテッドパートナーシップの問題というのは、もちろんアメリカから出てきたわけですが、ここには入りませんけれども、特に不動産ではLPをものすごく使われているわけです。それと同時に、ジェネラルパートナーシップのコンフリクト・オブ・インタレストの問題というのがものすごく大きな問題になっているということがあります。恐らく、事業再生、それからベンチャーキャピタルという形でやるならば、いわば本当のプロの世界という形になりますが、例えば不動産といった形でこれがだんだん広がっていったときに、私募と公募の差が非常にあいまいになる部分というのはたくさん出てくると思うんです。そういうときに、ある種の明確な線引きをして、公募及び公募対応に対応するものに関してはきちんとしたルールをつくる必要があるということに関しては、私は賛成です。ただし、今ちょっと気になったのは、こういった形でずるずると広げていくというのはやっぱりちょっと問題があって、きちんとした形で明確にどこかで線を引くということが恐らく重要になってくるだろう。その中で、例えば私募のケースの場合はできるだけ自由に、そして公募のケースであれば、投資家保護、特に公募に対する投資家保護というものを極めて明解にするような有価証券型のスタイルというものをとるべきだろうと思います。以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

○ 池尾委員

だから、運用の対象の方を広げるという話と、それから資金調達の方を広げるという話とは、基本的に違う話だと思うんです。それで、今ずっとご説明とかを聞いていると、運用対象面については、広げた方がいいという合理性というか根拠がどうもありそうだと。ところが、資金調達の面については、どなたも別に公募にいこうという話はされていないわけで、現状でいいと。私募で49人以下とかであっても、それは自然人が入っているのではなくて法人の機関投資家が入っているわけですから、機関投資家は、広く小口の資金を集めてきている機関投資家という人もいるはずですから、ファンドそのものが広く小口の資金を直接集めなくても、エージェントは一つ増える形になりますけれども、機関投資家が広く集めてきて、そこが責任をとる形でエクスパティーズをちゃんと持った形でそのファンドに入るという二段階構えで十分なはずです。エージェンシーが重なることによる問題の発生の可能性はもちろんありますけれども、そういうスキームの話だと思いますから、あまり公募に移るということを仮定の話で詰めても始まらないんじゃないかという印象を受けましたけれども。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

今の点については、日下部さんの資料では、5ページでしたか、一部に、再生ファンドとか、こういう種類のものに一般投資家から資金を獲得するニーズが出始めていると。どの程度あるのかというのはよくわかりませんけれども。ですから、恐らく私の理解でも、今行われているものに何か新たに規制を加えようとか、そういうことは全然考えていなくて、むしろ西村委員がおっしゃった表現で言えば、議論の主たる焦点は、公募についてのルールが今はないという点だと思います。ない中で私募が議論となっていますが、公募についてのルールがある中で私募が行われるという方がいいのではないかというのが西村委員のご意見だと私は理解しました。そういう世界であれば公募にいきたければその公募へいくことができるわけで、そういう話をしていると思うのですけれども。池尾委員のおっしゃった出口の方の資金調達の面で公募のニーズがないのかあるのか、その辺はどうなんでしょうか。日下部さん、どうですか。将来は。

○ 日下部経産省産業組織課長

今、こちらに来られている方々のお話からすれば、私募の世界でいくんだという議論が大多数だと私も思っています。ただ、最近本当に一部、一般の投資家も含めた形で資金を広く集めたいということが出始めていることも事実だと思っています。それはどれぐらいの大きさかと見ることはなかなか難しいんですが、現にそういう方々がいるというのは事実だと思っております。

それから、恐らく若干議論としてあるのは、先ほど有限責任組合の機能を拡充していくと、当然ある種公開株式を買って未公開化するというケースを認めようと思えば、公開株式を取得するようなファンドも出てくる。あるいは債権を取得するようなファンドも出てくるといったときに、今のような私募的な運用だけではなくて、もう少し違った運用をするような方々が出る可能性もなきにしもあらずという議論もあるかもしれません。ただ、いずれにしても現状私募でいくという議論が中心であることは事実なんですが、一部そういう公募的な世界を、目指しているとはおっしゃってはいないんですけれども、集めたいという議論が出てきていることは、我々も把握しております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

私が発言するのもどうかと思いますけれども、今は公募についてルールがないわけですね。ですから、公募は存在しないのです。ですから、公募についてルールをつくれば、公募をしようという人も出てくるかもしれない。今のままのものは、そのままもちろん発展するものでしょうが、この辺の話はいつも出てくる話ではあります。淵田委員、どうぞ。

○ 淵田委員

有限責任組合法ですが、中小企業から始まって企業再生とかいろいろ目的を広げていけるようにということですが、今基本的に我が国においてオルタナティブ投資のビークルというものがきちんと位置づけられることが大事だと思います。何か特定の目的のためにこういう法律をつくり、しばらくたったらもっと広げようとか、そういうつぎはぎではなくて、オルタナティブ投資というのが円滑にできるような枠組みが必要だと思います。そのとき、それを行うビークルの法人の姿はどういうものかというのはいろいろあるかもしれませんが、重要なことは、どういう法人形態をとろうと、同じような規制の枠組みの中に置かれるのであり、ある形態をとると規制逃れができるといったことがないようにしなければならない。

それから、今出ました議論で、1つでも2つでも小口にしてたくさんの人から集める試みが出て、それで何か問題が起きたら、それは本当に1回であっても、この業界の発展に重大な障害と将来なってくると思うのです。ですから、そういう試みが出始めているとすれば、それをすぐ何らかの形で問題になれば取り締まれるような枠組みがきちんとなくてはいけないと思います。そして、投資家保護に関する基本的な総合的な枠組みというのは証券取引法にあるわけでありまして、そういう枠組みをできるだけ活用した、適用除外とかいろいろそういうことも必要かもしれませんが、証取法の枠組みの中で考えていくのが自然ではないかと思うのです。そのときに一つは、議論の中で流動性がないからといったお話もありましたけれども、私は法律の専門家ではありませんけれども、別に証取法は流動性のないものは除外しているわけではありませんし、それから業界の活性化を妨げないようにというお話がありましたけれども、アメリカにおいて証取法の枠組みの中でこういう投資契約が位置づけられているにもかかわらず、日本よりもはるかに活性化したマーケットになっているということも考えていく必要があるのではないかと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。岩原委員、お願いいたします。

○ 岩原委員

私も、今までの西村委員を初め何人かの委員の方がご指摘されたのと同じように考えております。もし資金調達の方で少しでも一般投資家から資金を集めるという方向を目指すのなら、日下部さんはそういう向きもあるとおっしゃいましたので、もしそうであるならば、やはりディスクロージャーなり投資家保護の法制が必要であって、それは基本的には証券取引法と同じような、実質的に少なくとも同じものでなければならないと私も考えております。何となく平成4年の証券取引法改正のときの議論を思い出してしまうんですけれども、少なくとも実質的にはそういった投資家保護の仕組みはぜひ必要ではないかと思います。そのような観点からいきますと、今日の藤波さんの資料の6に組合持分を有価証券とした場合の問題点として幾つかの論点を書かれているのですが、これは、仮に一般公募というか、一般投資家を対象にするにしても、ベンチャーキャピタルの場合は違いがあるから、証券取引法のディスクロージャーその他のルールが必ずしも要らないということをおっしゃっているのでしょうか。このマル1からマル8で主張されようとしているところをちょっとご説明いただければと思います。

○ 藤波バイオフロンティアパートナーズ取締役

マル1からマル5までのところについては、この最後に有価証券となったら証取法の範囲内ですという中では、こういうのは難しいだろうという結果になると思います。ただ、そういう中で、ディスクローズについては、未公開の投資で、情報がそんなにディスクローズできるものは非常に少ないということで、同じようなディスクローズを求められると、それはできなくなってしまう。それから、ファンドを募集するときに、まだ投資をしていない段階がほとんどです。投資先が決まってからファンドを募集するというのは非常に少ない。だから、どういうディスクローズの形なのかというのは、議論が必要なんだろうとは思っています。

それから、マル6以降ですが、マル6は、では証取法の中に入ったときに扱えるのが、ベンチャーキャピタルは入っていない。そのときに、ベンチャーキャピタルがそういう業者と同じような線に全く入ってしまうのだろうかというのは、ちょっと違うのではないかなと。マル7番はちょっとわからないんですけれども、要は有価証券ではなくて、分割払い込みの出資金が分割で3回とか5回に入ってくるわけです。最初の一つの契約でそれが決まっていくのか、どういう形になるのかということです。分割払い込みができるのだろうか。それから、出資者のいわゆるパススルーと言われて、組合課税はなくて、出資者が直接投資しているのと同じような課税体系になっていますけれども、これは維持してほしいという意味合いです。

○ 神田部会長

どうぞ。

○ 岩原委員

今お答えいただきましたように、マル1からマル5は、投資家からも資金を集めるようになったら、ちょっとこれはなかなか認めにくい話ではないかと思います。マル6の点は、かつての平成4年改正のときのような問題で、これはむしろ私の関心の外の問題というか、もっとほかに知恵を絞って考えていただきたいと思いますけれども、まだ投資対象等がはっきりしていないから開示すべき内容がないといったことをさっきおっしゃいましたけれども、それは普通の一般の証券投資だってあるわけでして、資金だけ集めてまだ投資先が決定していない場合だってディスクローズはするわけで、そういった実態に合わせたディスクローズをしていくわけですから、特に心配される必要はなくて、一般の有価証券と同じように、できる範囲で開示すればいいだけのことですから、特別の扱いをする理由になるわけではないのではないかと思いました。分割払い込み、これ自体は特に大きい問題ではないと思うんですけれども、もしこれを使って事実上小規模な投資を可能にするとか、そういう手段として使われると問題ではないかとは思います。以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

今の点について、米澤さんや青木さんは何かありますか。なければ無理にご発言いただかなくてもいいですが。どうぞ、池尾さん。

○ 池尾委員

今のお話を聞いていると、だから投資組合としての現状のような骨格をそのままにして小口資金を直接集めるというのは無理があるという話になるということで聞くのが何か自然なような気がしまして、小口資金を集めるのだったら、先ほどの繰り返しになりますけれども、もう一つ機関投資家を介在させるという形にしないと、マル1マル5のような形の処理ということはできないと理解するのが自然のような気がするんですけれども。

○ 神田部会長

ありがとうございます。どうぞ。

○ 米澤ジャフコ常務取締役

ひとつ確認したいのはいわゆるファンドというか、組合を募集する際、内容が募集当初から全て明確には固まっているわけではないと言うことです。条件が最後の最後まで投資家とのやりとりの中で変わって、最後にファンドの組合規約・契約に落とし込んでいくということがよくあります。小口でこの形ですよと言ってバーッと集めるのとは随分様子が違うわけです。我々は、こういう目的でこういう投資をやりたいのだけれども、これにご賛同いただけますか参加されますかというものを限られた人たちに持って歩く・交渉するような形であることがが一つ大きなポイントです。

それから、分割払い込みの点ですけれども、ベンチャー・ファンド、PEファンドは特にそうなのですが、10年の運用期間中で分割払込をしていくのですが、ある程度までいったときに、そこでやめてしまうこともよくあるわけです。パフォーマンスを最終的によくするために、10年の満期を待たずに8年で解散しようとか、それまでの、我々はコールと呼んでおりますけれども、資金の払い込みのコールをかけるのを途中でやめてしまう。そうすると、1口1億円のコミットメントだったものが、実際に払い込むのは6,000万円で終わってしまうといった形になります。有価証券または持分という話をするときに、ベンチャー投資の場合の特異性というのがここにもまた出てくると思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。どうぞ。

○ 岩原委員

さっきの発言が誤解されるといけませんので、取扱い業者の限定の問題ですけれども、これは、業者規制という形で不公正取引などをしないようにチェックするという意味があるわけです。ほかの広い意味の投資商品についても、商品ファンド法、不動産特定共同事業法その他の各法律で、それぞれの商品ごとに、行政自体のそういった不公正取引などをチェックする仕組みはつくっているわけですから、何らかの形でのチェックがきくような業者にやってもらおうということはやはり必要かなという気はします。以上です。

○ 神田部会長

どうぞ。

○ 藤波バイオフロンティアパートナーズ取締役

今のご意見に対して、証券業者であれば、それを扱う人が証券外務員の試験とか、そういうのでやっていますけれども、では果たしてベンチャーキャピタルをやる人間にはどういう資格が必要なのかという形になったりすると、これは全く資格はないんです。ないけれども、ただ、経験と知識が非常に必要になってくるというのが前提になっていますので、これは一律にこういうものとはできないのではないかと思います。

○ 岩原委員

これもあくまで一般投資家を相手にしたときには、そういうのが少なくとも必要だということでございます。

○ 青木氏

基本的には、公募か私募かというところがポイントだと思うので、ちょっとそこを一緒くたに話をすると、どうも議論が見えにくくなるなという感じがしました。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

私も個人の資格でいっぱい議論に参加したい気持ちです。ちょっと一、二だけ。今までのベンチャーキャピタルは、問題もそれこそないし、いいと思うんです。ただ、再生ファンドとか最近の動きが出てきているという中で、今後の日本の法制インフラをどのように設計していくかということが今問われているのだと思います。どのように設計していっても、今までのベンチャーキャピタルは今までどおりのはずだと思います、実質は。ですから、そういう広がりを持ってものを考えたときに、藤波さんの資料で岩原委員が先ほどから分析しておられるマル1からマル8はどうなるのでしょうかというと、前向きに見ると、恐らくマル6マル7マル8は関係なくてというか、ディスクロージャーでいうとマル1からマル5が主として問題になって、マル2マル3は、今まさに青木さんがおっしゃったように、公募か私募かをどこで線を引くかということですね。それで線を引いて公募に入りましたといった場合には、マル1マル4マル5は、これは要するにディスクロージャーの仕方の問題です。伝統的な株式とか、そういうもののディスクロージャーとは違った形で一般投資家向けにどういうディスクロージャーがふさわしいのかということだと思います。前向きの整理をするとすれば、恐らくそういうことになるんだと思うのですけれども、なかなかいろいろ実態認識の違いというのがあるように思いますし、そういった難しい問題がありますけれども、ほかにいかがでしょうか。もう一つテーマがあるのですけれども、このテーマも重要だと思いますので、もしご意見があれば、ぜひお出しいただきたいと思います。

よろしゅうございますでしょうか。それでは、さらにご意見等がありましたら、個別に事務局の方までぜひお寄せいただければ大変ありがたいと思います。

藤波さん、米澤さん、青木さん、今日は大変お忙しいところをおいでいただきましてありがとうございました。引き続き、ご意見等を伺うことが多いと思いますけれども、どうかよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

それでは、今日の最後、3番目の柱になりますが、ちょっと時間が押しておりまして、ご意見をいただく時間がとれるか大変微妙ですが、市場監視機能・体制強化の話に移らせていただきます。3つのお話なり説明をしていただきます。まず第1に、黒沼委員から、不実開示に対する民事責任規定のあり方ということでお話をいただきます。2番目に、事務局から市場監視機能強化についての説明をいただきます。3番目に、前回ちょっと話が出ておりましたが、自主規制を含む市場監視体制の現状ということで、事務局からお話をしていただきます。それでは、黒沼委員、よろしくお願いいたします。

○ 黒沼委員

それでは、私から、不実開示に介する民事責任規定のあり方について話をさせていただきます。資料としては、3-1にレジュメが3ページほど、それからその後に資料としてある判決の概要と判決の要旨を抜粋したものを付してございます。

有価証券届出書、有価証券報告書等に不実開示があった場合の関係者の民事責任については、証券取引法の18条から24条の5にかけて、詳細な規定が置かれています。ここでの不実開示とは、重要な事実の不開示、すなわち開示しないことを含む意味で用います。一般に不実開示について関係者に民事責任を負わせるのは、被害者を救済するとともに、関係者に民事責任の賦課による威嚇を加え、開示書類の作成に注意を尽くさせる効果、これは違反行為の抑止効果とも言われますが、そういった効果があると言われています。しかし、我が国ではこれらの民事責任規定が用いられたことはほとんどありません。判例データベースで調べますと、わずかに1件出てきまして、それは後の資料に掲げたものなのですが、これもよく読みますと、証券取引法を根拠に請求しているものではなく、一般不法行為規定である民法709条を根拠に損害賠償を請求しているものであります。

なぜこのように民事責任規定が利用されていないのか。その最も大きな理由は、我が国にクラスアクション制度がないため、証券民事訴訟を個別に提起しても、投資家ないし原告側代理人にとって割に合わないことにあると思われます。ただ、クラスアクション制度の導入は一朝一夕にできるものではありませんので、今日の検討対象からは外します。

第2の理由として、不実開示を発見することが困難であるということを指摘できると思います。しかし、粉飾決算が明らかになったケース、特に有罪判決が既に下されているようなケースでは、有価証券報告書等に不実開示があったことを個人原告が立証することもさほど困難とは思われません。

第3として、証券取引法上の民事責任規定を利用しても、多くの場合、不実開示により原告がこうむった損害額を原告の側で立証しなければ賠償が得られないわけですが、その損害額の立証が困難であることを挙げることができます。

次に、我が国の裁判所が不実開示に基づく損害賠償責任を認めることにいかに消極的か、また損害額の認定にいかに慎重かということを、唯一の公表裁判例である東京地裁平成13年12月20日判決を見ることによって紹介いたしたいと思います。

この事件は、山一證券の元従業員が、従業員持株会ないし自社株融資制度を利用して購入した同社の株式の価値が、同社が自主廃業及び破産宣告を受けたため無価値になったことから、有価証券報告書の不実記載を行った同社に対し原告らが不法行為に基づく損害賠償債権を有するかどうかという点が、破産手続の中で争われたものであります。判決は、原告の請求を棄却しました。

判決はいろいろなことを言っているのですが、興味深い点だけ要約しますと、まず「一般に株価は、様々な事象を織り込みつつ変動するものであるから、破産会社が真実の財務内容及び営業内容を公表した場合、破産会社の株価は下落したであろうことは推認できるものの、公表により株価がどの程度下落したかは証拠上明らかでない」と述べています。確かに、証券の市場価格はさまざまな情報を反映するわけで、不実開示の市場価格に対する影響を取り出すことは困難であります。私は、米国の判例・学説を参考にして、不実開示の市場価格に対する影響度をいわゆるマーケットモデルを用いて測定することができるということを解釈論として主張したことがありますけれども、裁判所の受け入れるところとはなっておりません。そういたしますと、裁判所がこのような一般論を立てている限り、真の情報が公表されていたら株価が幾らであったかを投資家側で立証することは極めて困難であると言わざるを得ません。

次に判決は、「本件の原告らの中には、額面額近くの価格で購入した者も多数存在する。そうだとすると、破産会社が真実を公表していたとしても、原告らが株式を購入していた可能性がないわけではなく、真実を公表しなかったことと、原告らが自社株を購入したこととの間に相当因果関係を認めることは未だ困難というほかない」と述べております。山一證券の粉飾決算が企業を倒産せしめるほど大規模であったことに照らしますと、判決のこの部分は、真実が公表されていたら投資家がどのように行動したか、つまり証券を購入したか、しなかったかを立証することがいかに困難か、またそういった因果関係の立証に裁判所がいかに消極的かを教えてくれるように思われます。

しかし、実は真実が公表されていたら現実とは異なった価格で取引していたであろうことを立証すれば、投資家はある程度の賠償額を獲得できるはずでありまして、真実が公表されていたらどのように行動していたかの立証は特別の場合を除いて不要なものと考えられます。この点は後でもう一度述べさせていただきます。

第3に、裁判所は「因果関係の有無にかかわらず、本件の原告には保護すべき法益がない」とだめを押しています。すなわち、「そもそも株主となる投資家は自己の判断と責任において企業に投資するのであるから、それによって発生した損失は投資家が負うべきである。原告らは、自社株のリスクが高いことを認識しながら、高リターンを期待してあえて購入したものと認められ、リスクが顕在化して損失が生じたとしても、そのリスクは原告ら自社株に投資した者が負うべき筋合いのものである。したがって、原告らの自社株購入による損失は、不法行為に基づく損害賠償請求権の前提となる損害には当たらないと認めるのが相当である」と述べております。判決のこの部分は、会社の従業員が自社株を購入する場合に限定してその当否を判断すべきかもしれませんが、一般論として見ますと、不実開示に基づく投資家の損害賠償請求権を自己責任原則をもって封じるものであり、大変な誤解に基づいていると言わざるを得ません。投資家の自己責任は当然のことですが、それは発行者の事業上のリスクや証券市場の需給に基づく一時的な相場変動のリスクを投資家が負担することを意味するものであり、発行者が粉飾決算を行うリスクを投資家が負担すべき理由はありません。証券市場の効率性は、粉飾決算を見抜くほど高度なものではなく、真の情報を反映していない市場価格で取引したものは等しく損害を被ることになります。

そこで、現行の証券取引法は、不実開示に対し、民・刑事の責任及び行政上の制裁を科すことにより当事者を保護するとともに、証券市場における価格形成が適正に行われるように確保しているわけです。もし投資家の自己責任を理由に発行者等の不実開示責任が否定されるならば、効率的な市場の確保など望むべくもないと思います。

このように、裁判所は解釈上の努力を行わないのであれば、民事責任規定を実効性のあるものにするために、立法上民事責任規定に工夫を加える余地はないでしょうか。重要な不実開示は、証券市場で形成される市場価格に影響を与え、市場価格で取引をする者は等しく損害を被ります。その損害の額は理論的には、もし不実開示がなかったら、言いかえると真の情報が開示されていたら、取引時に市場で形成されていたであろう価格と実際の取引価格との差額であると考えられます。米国の判例・学説では、このような損害額が投資家に与えられる賠償額になるという共通了解があり、これを現実損害の賠償と呼んでいます。同じことは我が国でも言えるはずでありまして、取引時にいったんこのような現実損害が生じていれば、たとえその後株価が上昇して投資家の損失が解消されたように見えるとしても、取引時の現実損害は賠償されるべきなのであります。先の裁判例で言いますと、発行会社が倒産したかどうかは関係がなく、粉飾決算が行われている期間に原告が株式を市場で購入したのであれば、その時点で損害は発生しているわけです。あとは拡大損害が賠償されるかどうかの問題になります。

ただし問題は、取引時に市場で形成されていたであろう価格を知ることが難しいということにあります。そこで、米国の判例では、取引時の現実損害を賠償させるとしつつも、取引時のあるべき価格に近似するものとして、訂正情報が開示され、それが市場価格に反映されたときの市場価格を用い、取引時の市場価格と訂正情報を反映した市場価格との差額をもって賠償額とするものが多いと言われています。これを修正方式と呼ぶことがあります。

これらを参考に我が国での立法論を構想すれば、訂正情報が反映された市場価格と取引時の市場価格との差額をもって投資家が賠償されるべき損害額とする推定規定を置き、市場価格の変動の全部または一部が不実開示以外の要因によって生じたことを責任を負うべき者が立証した場合には、その限度で賠償責任を免責されるとすることが考えられます。

さらに、このような規定のもとでどうなるかを少し考えてみますと、原告が推定損害額を超える損害を被った場合には、そのことを証明して拡大損害の賠償を得ることができると考えられます。例えば、不実開示がなかったら、およそ当該証券を購入しなかったであろうことを投資家が証明した場合には、購入に伴って生じた損害のすべてについて賠償を得ることができるでありましょう。また、真の情報の開示が遅れたために、投資家が購入した証券を処分する機会を逸し、不実開示とは別の要因によって生じた損害、例えば企業の倒産による損害を避けることができなかったことを証明した場合にも、拡大損害を含めて損害の賠償を得ることができると思います。

このような損害額の推定規定の立法例としては、既に証券取引法19条があります。19条は、有価証券届出書に不実開示があった場合に、18条に規定されている、募集・売出に応じて証券を取得した者に対する発行者の責任についての損害賠償額を推定する規定であり、発行者に因果関係不存在の抗弁を与えています。ただし、この19条は、証券発行時に発行者が投資家と契約的な関係にあり、かつ投資家から発行者が資金を取得していることを考慮して、届出書に不実開示があった場合に、契約を取り消して原状回復をさせるのと同じ効果のある賠償額を与える趣旨で定められたものでありまして、今回提案する推定規定とは趣旨が異なるものと考えられす。しかし、損害賠償額の推定規定はそういった原状回復的な損害賠償についてしか認められないものではないと私は思います。

もう一つの例として、米国の1995年改正により新設された、取引所法21D条(e)項が、「証券の市場価格を指標として原告が損害賠償を求めている同法下の民事訴訟において、損害賠償額は、原告による証券の取引価格と、訂正情報が市場に発せられた日から90日間の当該証券の平均取引価格との差額を上限とする」としております。この改正は、訂正情報が開示されたときに市場が過剰反応を示すことがあり、訂正情報開示日の市場価格を基準とすると損害賠償額が大きくなり過ぎることに対処したものであります。言いかえますと、この規定は、損害額を推定するものではなく、損害額の上限を画するものであり、提案の推定規定とは趣旨が異なります。しかし、このような規定が置かれたこと自体、訂正情報が市場に開示されたときの市場価格が取引時のあるべき価格の近似値であるという判例の考え方を前提とするものであると言えます。

なお、上記のような推定規定を置いたとしても、損害賠償を求める原告は、被告が重要な事項について虚偽の表示をし、または重要な事実を開示しなかったことを立証しなければなりませんから、訴訟の濫用を招く心配はないと考えます。また、被告側は、不実開示期間に市場価格に影響を与える他の要因が生じていたかどうかの情報や、マーケットモデルを用いて取引時のあるべき市場価格を推定する手法などに通じているでしょうから、推定規定が置かれても比較的容易に反証することができると思われ、むしろ推定規定を置くことにより原告側と被告側の立証責任のバランスがとれるのではないかと思います。

証券取引法の民事責任規定、特に市場に向けての不実開示が行われた場合に対応する22条、24条の4、24条の5第5項については、このほか、責任を負うべき者に発行会社を加えるべきであるとか、有価証券を売却した者を原告に加えるべきである等、改善すべき点は多々あると思われますが、これらは比較的理解が得られやすい事柄であると思いますので、本日は損害額の推定規定を置くべきではないかという点に限って私の考えを述べさせていただきました。これが議論の一つの材料になれば幸いでございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。毎回報告していただいて、恐縮です。

それでは、三井さん、お願いします。

○ 三井調査室長

それでは、事務局の方から、大部の資料でございますが、時間の関係がありますので、まず資料がどういうものかということと、それからごく一部に絞ってご説明させていただきます。

資料3以下でございますが、3-2と3-3は、前回ご説明いたしました課徴金制度について、前回は諸外国の制度と国内類似制度を淡々と説明しただけでしたので、少しその論点という形で整理させていただきました。それから、今、黒沼先生からプレゼンテーションがございました民事責任につきましては、資料3-4、それから最後の資料3-6。3-4は、簡単に整理しました我が国の制度と諸外国の制度であります。3-6は、日本の制度の関係条文と、それから開示規制に関する学説・判例の主なもの、それから実は推定規定で最高裁の判例におきまして、独禁法の分野なんですが、マーケットでかかる価格というのを因果関係を正確に証明することは、原告にとってあまりにも過酷なので、推定規定を立法論として置くべきであるといった判例がありますので、ご参考までにつけてございます。

2の方の判例の中には、原告が挙証責任を負う建前になっているので、原告の請求の棄却は免れないということで、下級審の判例ですけれども、下級審なので立法論まで言及できないのだけれども、残念ながら棄却ですというニュアンスの補助文が入っております。時間の関係で詳しく読み上げるのは省略させていただきます。

それから、資料3-4に戻りまして、横長の資料でございますが、先生から詳細なご説明がありましたので、1枚1枚ご説明はいたしません。中身は飛ばしますが、6ページと7ページでは、アメリカの判例におきまして、条文の立てつけは日本とほとんど同じなんですが、判例上、原告の挙証責任を軽減して賠償責任を認めやすくするという判決になったリーディングケースと言われているようなものを2例、特に7ページにあります「その4」が有名なものであります。マーケットが効率的に機能していれば、そのマーケットに対して虚偽の表示をしたという人は、そのマーケットを通じて投資家全体に対する一種詐欺的虚偽をやっているということなので、原告はそのマーケットを信頼して取引したので、そういう部分については因果関係の立証なりがかなり軽減されるということが、判例上機能しているということであります。この辺は、日本のように、原告にあくまで挙証責任を厳格に求めるところとはかなり違った趣があるところでございます。

それでは、資料3-2に戻っていただきまして、時間の関係で本日はここだけ説明させていただきまして、排除命令につきましての説明は次回にさせていただければと思います。いわゆる課徴金制度についての論点でございます。

前回、私どもの説明なり委員からのご意見にもございましたが、制度導入の趣旨・目的でございます。不公正取引等の規制の実効性確保の手段、エンフォースメントと呼ばれていますが、それを複線化すべきではないかということでございます。まず1番目としましては、現行、民事裁判等には刑罰がございますが、刑罰の持つ苛烈なサンクションにかんがみまして、かなり社会的・倫理的に悪質なものに限って、謙抑的にあるいは補充的に適用されているということになります。したがいまして、そこに至らないものにつきましては、注のマル1にありますけれども、刑罰に値するほど倫理的・社会的に非難可能なものでない違反行為に対しては現状手段がないという状況でありますが、これについてどう考えるか。国内制度の類例でご説明したものの中に、例えばですが、交通反則金、交通違反はすべて刑事罰がついているのですが、例えば20キロオーバー程度のものに刑事罰をかけるというのは、恐らく世の中の常識からかけ離れているということだと思います。昭和41年ですので、これから大衆車が普及するという時代に、行政的に反則金を納めれば刑事罰を問わないけれども、あくまで違反には反則金を取るという制度が導入されたという類例も過去に通告制度を初め幾つかございますが、そういうこと等も思い起こしてどう考えるかということではございます。

2番目の左矢印でございますが、違反行為の程度態様に応じた機動的かつ必要十分な対応の必要性、これも同じことでございます。注のマル2にございますが、証券会社等の業者の違反行為に対しては、現在登録取消・業務停止のみで対応している。このルーツは古い行政法のドグマにございまして、まず証券業というものは、世の中いろいろ問題が起こり得るものなので、一般的に禁止してしまう、だれもできないようにしてしまう。それに対して、許可制・免許制という形で禁止の解除をする。その時点で、解除してもいい人には許可なり免許なり登録という形で禁止を解除して、悪いことをしたらまたそれを取っ払うということなので、登録取消とか業務停止というのは行政庁の権限としてあるというドグマに立っているのですが、そういう業務というのは基本的に自由なんだけれども、きちんとルールは守っていただく、あるいはきちんとした知識なり経験のある人がやってもらうという原則自由の考え方に立ったときに、こういうルールでいいのか。むしろ、欧米に共通するような、違反者に対しては必要なサンクションを多様に合理的に組み合わせて使うようにすべきではないかと。欧米では金銭的・経済的なサンクションが使われていて、日本のような非経済的なサンクションはあまり使われていないといった指摘が外国系の業者からもなされているということについてどう考えるかということでございます。

2番目で対象行為でございますが、証券取引法の違反行為というのがメインでございまして、不公正取引、例えば相場操縦とかインサイダー取引といったもの、それから開示規制違反、虚偽のディスクロージャーといったものが対象になると思います。

ごく参考までにですが、資料3-3で、過去3年間を見まして監視委員会の告発なり勧告をした違反事例がどのようなものがあるかという代表的な数字の多いものを列挙してございます。ごらんのとおりでありまして、例えば虚偽の風説の流布とか、相場操縦、インサイダー、それから有価証券届出書・報告書関係の虚偽記載、それから証券会社の行為規制違反の中で、ここに掲げていますような、例えば作為的相場形成とか、お客さんの勘定を投機的な目的で勝手に取引したとかといったものでございます。これは、イメージのご参考までにということでございまして、もちろん対象行為についてもご議論いただければと思います。

それから、金額水準の目安をどう考えるかということでございまして、規制の実効性の確保を図るものでございますので、それに必要かつ十分で、かつ過大になってはいけないという水準だと思います。まず、よくあることは、違反行為によって経済的な利得を違反者が得ている場合、それは吐き出させるべきだというのは、実はアメリカは80年に規定を導入する以前から裁判で行われていたことでありますので、まず最低限これは必要かということに加えて、例えば違反行為によってマーケット全体に損失を与えるという意味で社会的損失を与えているのではないかということとか、あるいは違反行為に着目して、その規制の実効性を確保されるために機動的・弾力的に対応すべきでないか、これはアメリカ等の発想だと思いますが、こういった観点を加えてどう評価するか。ただし、刑事罰のように、社会的・倫理的な非難を加えるような重大なものであってはならないということではなかろうかと思います。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

大森さん、お願いします。

○ 大森市場課長

時間もありませんので、ごく簡単に、自主規制を含む市場監視体制の問題。資料3の後ろから3枚目が3-7になっておりまして、この資料で言いたいことはたった一つで、機関名としていろいろな機関がありますけども、業務の概要に書いてあることは、何だか似たようなことが書いてあるなと、それだけを眺めていただければ結構でございます。

日本の証券取引等監視委員会は、バブル崩壊後の損失補てん問題で、力のあるものだけが補てんを受けていたことに対する国民の怒りを背景に誕生しております。その基本理念というのは、不公正取引を監督するコーチが不公正取引の有無を検査するアンパイアを兼ねていると独立した客観的な事実認定ができないというもので、こうしたコーチとアンパイアの分離という理念に基づいて、不公正取引の事実認定をする。認定後、刑事罰であれば検察に告発しますし、行政罰であれば金融庁に処分勧告するという監視委員会の現在の仕組みができ上がっております。一方で、証券会社の財務状況とか内部管理体制は、大蔵省時代は官房検査部ですし、金融庁では検査局が検査するという二元的な体制になっているわけであります。監視委員会ができた当時は、証券会社の財務の健全性を維持することによって、つぶさないことによって投資家保護を図るというのが証券行政の根幹でしたけれども、ビッグバンを経て免許制が登録制に移行しまして、かつ顧客資産の分別管理を義務づけましたから、分別管理を遵守している限りにおいては、会社が破綻しても投資家保護には基本的に支障がない。そういう意味では、システミックリスクのような事態を別にしますと、当局が検査において財務を把握しておかなければならない必要性というのは相対的には低下しているのだろうと思います。また、その行政処分などの業法上のサンクションも、銀行や保険会社ですと、業務・財務の状況に応じて必要と認めるときに発動するという裁量の広い仕組みになっておりますが、証券会社は、違法行為とか、財務で自己資本率が一定の水準を下回ったときに発動するという、裁量の乏しい、そういった立てつけになっておりますので、大蔵省時代と同じように何でもかんでも当局が検査で把握しなければならないということでは業法の整合性上もないのかなということでございます。

一方、2番目の自主規制機関、そもそもその自主規制というのは、元来業界が投資家の信頼を得るために自ら律していく。現場に近いだけに、かゆいところに手が届くはずだという、理念そのものはだれも否定しないわけですけれども、実際何が行われているかというと、当局も含め、あるいは日銀も含めて、違う主体が入れかわり立ちかわり行って、財務がどうかとか、コンプライアンスがどうかとか、ややというか、かなり重複のある検査をする。この検査の重複問題は、IMFあるいはEUあるいは日本で活動しております外資系金融機関からなる国際銀行協会も先般提言をまとめておりまして、この提言では、人が違うと言うことも違うので、だれに従えばいいのかわからないとか、そういったベーシックな問題に加えて、検査主体が多過ぎて、そのそれぞれが有効に機能しているとは思われないといった指摘がございます。

時間がないのですけれども、ちょっとだけ引用させていただきますと、「協会あるいは取引所といった日本の自主規制機関は、独立性に乏しく、権限移譲も不足しているようであり、その結果、金融庁が行っていることをなぞるだけで、自ら独自の考えを持たない傾向を示し、業界全体にとって関心の高い監督規制上の問題についての指導力をほとんど発揮していない状況となっている」。あるいは「東京証券取引所が引き続き検査機関としての役割を果たすことは、取引所は株式会社として新たに獲得した独立性と相いれない。潜在的な利害衝突を避け、かつ取引所会員のコスト削減のために、取引所の検査機能は単一の規制機関に統合すべきである」とか、あるいは「日本証券業協会が有する自主規制、検査官、市場監理者及び提言者としての多面的な役割を再検討すべきである」、こういったことは従来も日本の証券会社も多かれ少なかれ感じていたとは思うんですけれども、なかなか日本の会社だと、遠慮して言わなかったことが国際的なコモンセンスに照らして変だなと感じることは、遠慮なく言ってしまう人たちだったというところに、この提言の意味があるということだと思います。

最後の証券業協会については、別途取引所のあり方に関するワーキング・グループで、JASDAQの取引所化という方向で検討が進んでいる中で、取引所としての自主規制と、これまで協会が担ってきた一般的な自主規制との整理が必要だという議論もありますし、加えて、日本の証券業協会は業界団体として政策提言や投資教育も行っている、そういう複合的な性格をどう考えるかということがあろうかと思います。

時間がもう3時になってしまいましたが、こういった問題を行政と自主規制機関が相談して適切な役割分担をすればいいのかもしれませんけれども、要はどういう仕組みが国民から信頼される効率的な体制かということですから、今日はもう時間がございませんが、次回以降当部会においてもご意見を頂戴したいということでございます。

○ 神田部会長

どうも要領よくありがとうございました。もう3時になってしまいましたし、それから三井さんからのご説明の中では、資料3-5という差止命令についての話は、ご説明も次回以降にということにさせていただくことにしまして、それ以外はちょっとはしょってしまったところがありますけれども、ご説明は伺いました。3時ですので、これ以上あまりご意見を伺う時間がとれないのですけれども、黒沼委員からのご提案、それから三井さんからの課徴金についての論点、そして最後の大森課長からの話について、もしご発言があれば、お1人かお2人お願いします。島崎委員、どうぞ。

○ 島崎委員

インサイダー取引規制について今日はちょっと発言したいと思っていたのですが、時間がありませんので、私どものお願いにつきまして、後ほど書面でまた出させていただければと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。よろしくお願いします。

ありがとうございます。よろしくお願いします。

ほかにいかがでしょうか。次からは時間を2時間半ぐらいとっていただかないと、最後に報告書をまとめられないのではないかとも思うのですが、それはともかくとしまして、何かご遠慮なく、もしあれば伺いたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

本日取り上げたテーマは、いずれも重要で重たい問題です。ですから、よろしければさらにお考えいただいて、ご意見を個別に事務局にどんどん出していただいて、それをまた皆さんでシェアしていただくような形をこちらで考えますので、そういう形で次回以降さらに先へと進むようなことにさせていただいてはどうかと思いますけれども、そういうことにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。それでは、ちょっと私の不手際もありまして、最後のテーマを十分にご審議いただけませんでしたけれども、その点は次回以降ということにさせていただきたいと思います。やはりちょっと2時間というのは厳しいので、先ほども申しましたように、次回以降、場合によってはご案内の段階で2時間半とかという書き方をさせていただくかもしれませんけれども、その辺はよろしくお願いいたします。

それでは、最後に事務局からのお知らせでございます。

○ 大森市場課長

窮屈な企画をして、申しわけございませんでした。次回は、既にご連絡していると思いますが、11月21日金曜日という日程で開催させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

それでは、今日はどうもありがとうございました。これで散会いたします。

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