金融審議会金融分科会第一部会(第12回)議事録

日時:平成15年11月21日(金)14時00分~17時00分

場所:中央合同庁舎第四号館(9F) 金融庁特別会議室

○ 神田部会長

それでは、予定の時間になりましたので、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会、本日は第12回目の会合になりますけれども、を開催させていただきます。

皆様方にはいつもご多忙のところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

いつものことですが、議事は公開となっておりますので、報道機関の方々などのために後ろの方に席を用意しております。

本日の予定ですが、お手元の議事次第に従ってということになります。まず第1に市場監視機能強化。いつもちょっと時間不足で、これまで十分議論できませんでしたので、これにつきまして前回に引き続いて事務局から説明いただいて、審議をしたいと思います。その後、続いて市場監視体制について、まず吉野委員から、証券取引所という自主規制の担い手の立場から見た自主規制のあり方についてお話をいただきます。続いて、国際銀行協会会長のジョン・マクファーレンさん、ドイツ証券会社東京支店長。――今日はお忙しいところを来ていただきまして、どうもありがとうございます――。そして、同協会証券分科委員会理事の角田浩さんから、日本の証券市場における自主規制機関を含む監視体制のあり方についてお話をいただく予定です。これが第1の柱になります。

第2の柱は、投資教育についてでして、本日は長崎大学の川村雄介さんに来ていただいておりまして、お話いただく予定です。なお、本日ご欠席の藤田委員から、投資教育について意見書の提出をいただいておりますので、お手元に配布しております。また、ここでご紹介しておきますが、島崎委員と吉野委員から、インサイダー取引規制についての意見書をいただいておりますので、これもあわせてお手元に配布させていただいております。

3つ目の柱は、投資サービスにおける投資者保護のあり方ということになりますけれども、これにつきましては、前回、皆様方からいただきましたご意見等の論点を事務局の方で整理してもらいましたので、これに基づいて審議をさせていただきたいと思います。

最後に、「その他」といたしまして、事務局の方から、「証券取引法第65条について」と題する資料を用意していただいておりまして、これについて説明をしていただく予定でございます。

いつもどおり盛りだくさんで大変恐縮でございますけれども、そういう順序で進めさせていただきたいと思います。

それでは、まず最初に、市場監視機能強化ということにつきまして事務局から説明をお願いいたします。

○ 三井調査室長

それでは、まず資料のご説明をさせていただきます。

資料1-1でございますが、お配りしている資料の全体像を示したものであります。大きく分けますと、1番は課徴金制度、2番目は被害者救済、その他のための措置で、1つ目は民事責任、2つ目は差止命令などでございます。

まず課徴金制度につきましては、前回お配りしました論点、資料1-2でつけさせていただいています。

1.は制度導入の必要性でございます。繰り返しませんが、刑事罰しかないインサイダーあるいは相場操縦等につきましては刑事罰を科するほどでない程度の違反の部分が抜けている。それから、証券会社の業者等の違反行為については、今は非経済的な処分であって、欧米のような経済的な処分が使われていない点があるということでございます。

対象につきましては、ここにありますものですが、2枚目の証券取引法上の禁止行為、具体的には監視委員会が告発ないし勧告した具体的な事例を簡単に1枚に整理してございますが、これ以外にあるかどうかも含めてご議論いただければと思います。

金額水準の目安でございます。利得の吐き出し、あるいは社会的損失、規制の実効性確保のために必要十分な水準かどうかといった観点があろうかと思いますが、これに限らず幅広くご議論いただければと思います。

それから、2番目でございます。我が国の差止命令規定、資料1-3以下の資料でございますが、これは前回説明の時間がございませんでしたので、ごくかいつまんでご説明させていただきます。

日本には、証券取引法192条という規定がございまして、これはアメリカの証券取引法をそのまま翻訳したような条文でございますが、違反行為がある等の一定の場合につきまして、裁判所に対して行為の禁止や停止を命ずるよう申し立てるという制度がございます。これについては、理由は種々言われていますが、現状使われていないというのが実態でございます。

2枚目でございます。主要国において似たような制度があるかどうかということでございますが、ここでは、ドイツについては証券取引法上の規定がございませんので、規定のありますアメリカ、イギリス、フランスについてごく簡単にご説明させていただきたいと思います。

3ページ、次のページでございます。これはアメリカでございますが、日本と同じような規定でございまして、現在、将来の違反の差止め等々でございますし、要件はここにあるとおりでありますし、緊急停止命令等の制度があります。

次の4ページは、日本ではなかなか類似の制度がないようなものかと思います。アメリカのエクイティー、衡平法裁判所の権限に基づいて、極めて柔軟な命令を発することができるような制度がアメリカにございまして、いわゆるアンセラリー・リリーフ、付随的救済命令と呼ばれているとのことでございます。

具体的な内容としましては、ここにありますように、例えば不当利得の吐出しであるとか、資産凍結命令であるとか、あるいは契約取消であるとか、将来の違反の防止として独立取締役の指名であるとか、取締役の解任、就業禁止のような命令をすることがあるというふうに聞いております。

次の5ページでございます。1990年の法改正で、行政手続きにより命令する制度として、シーズ・アンド・ディジスト・オーダー、あえて訳しますと排除措置命令とでも訳せるのでしょうか、それが導入されております。先ほど申しましたようなインジャンクションを行政手続きによって命令する制度でございます。

それから、6ページはイギリス。イギリスにおきましても、法律上同様の制度がございます。要件等が書いてございますが、詳細は省略いたします。

次の7ページ、原状回復命令制度は、同じコモンローの国、エクイティーの制度のある国として、アメリカと似たような考え方であろうかと想像されます。

8ページ、フランスでございます。COBというのは、証券取引委員会、証券行政を担当しているところでございますが、行政手続きによってCOB規則違反行為差し止めの命令を出すことができます。法令違反行為については、裁判所に差止命令を求めるという仕組みになっております。それと同時に、裁判所が資産保全措置や金銭の供託を命じることができるという制度になっております。

ごく簡単でございますが、以上が差止・排除命令等の制度の説明でございます。

それから、民事責任につきましては、前回と資料の編綴を変えておりますので、資料について簡単に説明させていただきます。横長の資料1-4でございます。

前回、諸外国におきましても国によっては日本と同様程度の民事責任の規定が法律上書いてあるということですが、特にアメリカに着目しますと、判例上、挙証責任等がかなり変わって運用されています、ということをご説明いたしました。

具体例をここに掲げていまして、1ページ目につきましては今回追加させていただいた資料でございます。日本では、民法上の過失相殺という規定がございまして、被害者の方に過失があった場合につきましては、それを斟酌して損害賠償の額を減額するという規定がございます。

これと全く同じ法理、コモンローにどういうのがあるかというと、いろいろあるようなんですが、その中に、イン・パリ・ディリクト、双方不法行為、辞書によりますとイン・イコール・フォルトと書いてありますので、同程度の過失と訳せるのかもしれません、という抗弁がありまして、被害者、原告側が違反者と同程度の過失があると請求が却下されてしまう、こういう制度でございますが、証券被害についてその適用を否定したという判例でございます。

その次のページは前回お配りしているものでございまして、マーケットというのは、発行体なりいろんな人からの情報を織り込んで価格が成立しているので、それを信頼して取引をするという投資家についてみると、例えば虚偽のディスクロージャーがあった場合には、虚偽であることがマーケットに織り込まれるので、投資家は市場を信頼して取引したということであれば、虚偽と損害との間の因果関係の立証を原告側は要しない、こういうふうな一種の挙証責任を判例上、転換したようなものでございます。以下、参考判例を掲げております。

5ページ以下は、前回一言だけ申しましたけれども、因果関係、損害についての学説、それから、地裁レベルでございますが、判例があります。なかなか立証が難しいですねというふうなことが理由に述べられていて、法律上はどうしても原告が挙証責任を負うので、原告が挙証しなければいけない。これは挙証が満たされていないので、請求を棄却したケースなんですが、7ページの最後のところで「因果関係に関する推定規定等が設けられていないのであるから」、そのためだと、こういうふうな書き方がされております。

最高裁レベルにつきましては、証券取引法についての判例はございません。似たようなロジックで似たようなことが言われているものは独禁法でございまして、12ページでございますが、アンダーラインを引いてございます。「やはりその主張立証は……」云々とありまして、下から2行目、「何らかの推定規定を設けたならば、消費者が同条に基づく訴訟を提起することが容易になり、同条の規定の趣旨も実効あるものとなるであろうと考えられる」云々といって、具体的な例も掲げていますが、そういうことがないので、この裁判では消費者の負け、こういうふうに判断されたものでございます。

それから、その次の資料1-5は、前回、具体的な事例をケースに黒沼先生がコメントされておりまして、また具体的なご提言もされているもので、資料としてお配りしてございます。

それ以外の資料は資料1-6にまとめて編綴してございます。

説明は以上でございます。

○ 神田部会長

要領よくご説明いただきまして、ありがとうございました。

1番目の柱では、資料は、今ご説明がありましたように1-1から1-6までということで一遍切らせていただきまして、この後1-7からは吉野委員に後でお話を伺うということになります。

ほとんどの資料につきましては、前回まででお話しいただいており、今ありましたように、1-5については黒沼委員から前回ご説明があったものです。ただ、時間の関係で特に1-3についてはご説明いただいていませんでしたので、今、三井さんから説明いただきましたが、差止制度です。そして、あわせて民事責任のテーマにつきましても追加でご説明いただきましたが、これは1-4と1-5ということになります。

それで、全体としてご議論いただきたい項目は、1-1に1枚で論点として書いてありまして、一つの柱は、課徴金制度という問題をどう考えるかということです。2つ目は、2の中に(1)と(2)とありますけれども、ばらして言えば、民事責任規定をどう考えるのか、そして3つ目は差止命令制度、現在存在はしているのですけれども、一度も使われたことがない、こういうものをどういうふうに考えるのかということになります。あと、その他ということになろうかと思います。黒沼さんから具体的なご提案もありましたけれども、そういったことも含めてご議論いただければと思います。

今日はこれらの問題について皆様方からご意見をぜひいただきたいと思っておりますので、どの点についてでも結構でございます。もちろんご質問も含めてということですけれども、ご質問、ご意見をいただければありがたく思います。どなたからでも結構ですので、ちょっと専門的というか、法律的な雰囲気もないではありませんけれども、どうかご意見をお出しいただければありがたいと思います。いかがでしょうか。

どうぞ、高橋委員。

○ 高橋委員

課徴金制度とか、あるいは差止命令とか、そういうことで投資者に対する市場の信頼を高めていこう、大きな流れはそういうことだと思います。

そのときに、以前にも申し上げたんですが、こういうサンクションでありますとか、あるいは検査結果でありますとか、そういうことに対する予見可能性というようなことを申し上げました。もう少し広く言えば、例えば法令の解釈とか、そういうことも含めて安心して市場に参入していく、これは投資家のサイドもそうでしょうし、業者のサイドもそうだろうと思います。あるいは島崎委員からご提案のあったインサイダー取引規制についてもそうであろうと思いますけれども、その解釈に対する安定性といいますか、そういうものがあわせて措置されるということが非常に大事ではないかなと思います。この場で議論すべきことであるかどうかわかりませんけれども、この議論をするのに関連して、そういうことに対する対応についてもぜひご議論いただきたいと思います。

例えば、ノー・アクション・レターという制度が今あるではないかということですけれども、ノー・アクション・レター、ほとんど使われていないですね。証券取引に関しては、2件だったですか、使われている程度で、ほとんどない。なぜ使われていないのかというようなことについての分析も要るのかなというふうに思います。

あるいは、インサイダーのところで経団連から事前相談制度というのができないかというようなご提案がありましたが、そういうものがほかのところに適用できるのか。あるいはガイドラインとか、セーフ・ハーバー・ルールとか、いろんなものの組み合わせで、もちろん私ども自主規制機関としても、それに対する何らかの対応ができるかということで我々の役割もあるだろうと思います。役割があったといたしましても、それは行政のご協力なしではできないわけでありますので、この議論の背後にあるものとして、その点についての議論を進めていただきたいなということが1点でございます。

それから、今、概略的にご説明があったので、どういう展開になるかわかりませんが、挙証責任の転換という点であります。一般論として判例のご紹介もありましたけれども、消費者にとって立証が難しいではないかというような議論、これは基本的にいろんな分野であるだろうと思います。証券取引の分野だけではなくて、金融販売はもとよりいろんな世界であるだろうと思います。

そういうことの基本はもちろん民法の規定だろうと思います。いろんな実態に応じて特例の規定が法律によって定められているケースがあるだろうと思いますが、消費者は立証責任が難しいからというだけの議論で進めていいかということもあるだろうと思います。そういうようないろんな事情があって、今の立証責任の分担というようなものが法令上形成されてきた、そういう背景があるだろうと思います。

それを考えますときに、もとより消費者が立証するのは大変だということはもともとあったと思いますけれども、そういうものと、例えば証券取引ということであれば、利益が出る場合、損が出る場合、いろいろあるわけでありますので、そこが悪用されるというようなことも考えなければいけない、あるいは証券取引の安定性ということも考えなければいけないということであろうかと思います。ですから、そういう観点だけではなくて、そういうことも踏まえたバランスのとれた検討というものが要るのではないかなというふうに思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

いかがでしょうか。第1点目は、おっしゃるとおりの話で、それはそれとしてというか、あわせてというか、検討しなければいけない重要な点だと思います。

どうぞ、東委員。

○ 東委員

今の高橋委員と趣旨は同じになりますが、課徴金制度を導入する目的は、市場の信頼を高め、より多くの投資家を参加しやすくするということだと思います。一方で、今のルールの中でさえ多少市場に参加することに萎縮してしまうという面が見られると思います。したがって、参加しやすくするということと同時に萎縮する心理状態を排除する。そこの2つのバランスをとるというところが重要になるのではないかというふうに考えております。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

いかがでしょうか。議論はなかなかしにくいと思うのですね。先ほど高橋委員のおっしゃった2点目は、法律問題で、一般論としてそういうことはあると思いますけれども、現在の日本の証券市場の実態をどう認識するかというのが法律論へいく以前の問題としてあると思います。ルールの不確実性等があってという論点は先ほどから高橋委員が何度も強調しておられることで、そういう面があることは確かだと思いますけれども、今の日本の証券市場の実態として、証券取引法違反がどのぐらいあるのかということですよね。

これは推測でしか言えないわけですけれども、そこの認識があって、それがアンダーエンフォースメントというのでしょうか、そういう状態であって、それが国民の証券市場への信頼にかかわっているのか。あるいは逆の極論を言えば、そういうことはない、証券取引法は遵守されておりますということなのか、というところの認識をどう持つかということで非常に違ってきますよね。ルール違反というものがある程度あるけれども、アンダーエンフォースの状態にあるということだとしますと、これは信頼にかかわることであり、東委員がおっしゃったように、市場に入ってくるというときも、そういうところだから入ってきにくいということなのか。そうではなくて、高橋委員が最初の方におっしゃったような意味で、ルールそのものが不明確だから入ってきにくいということなのかによって、当然対処方法は違ってくるわけですよね。

恐らくもともとの問題意識というのは、日本では違反した場合の規定は証券取引法にいろいろあるんですけれども、民事の規定はほとんど使われなくて、ワラント訴訟とか、業者と個人投資家との間の訴訟はありますが、証券取引法が用意している民事規定はほとんど使われない。刑事罰で少しずつやってきていますけれども、それは非常に極端な場合に限られる。そうすると、行政が出ていく場面というのは、ほとんど業者に対する行政処分というものだけで、諸外国なんかを見ると、課徴金があり、差止めがありというところで、ルール違反というものに対するサンクションという形でルールがエンフォースされている、そういう問題意識だと思うのですよね。

私ばかりしゃべって恐縮ですけれども、日本の証券市場の今の現状はどうなのかというところについての皆様方のご認識というか、そのあたりもあわせてお聞かせいただけると本当はありがたいと思います。それをどうするかについては細かい法律論があるとは思いますが。どうぞ。

○ 高橋委員

私が申し上げましたのは、例えば課徴金制度を導入して処分の複線化を図るというようなこととか、差止命令とか、諸外国にあるような制度の導入を検討して、今、先生の話で、アンダーエンフォースメントにならないようにしていくという大きな流れに異を唱えているつもりは全くないです。そのことと並行して、予見可能性というようなこともあわせて持っていかないと、かえって仲介業者が萎縮してしまうとか、あるいはインサイダーの話ではよく言われていますように、過剰な社内規制ができてしまっている、そういう点もあるだろうと思います。ですから、決して今のエンフォースメントが十分だということを申し上げているつもりはありませんので、その点をつけ加えておきます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

いかがでしょうか。岩原委員、お願いします。

○ 岩原委員

神田部会長がおっしゃいましたように、そもそもの基本認識として、現在、証券取引法がきちんとどれだけ守られているのか、それがアンダーエンフォースメントの状態にあるのかどうかという基本認識は非常に問題だと思いますけれども、少なくともエンフォースされた事例が非常に少ない、これは確かであります。最近、よく中国からいろんな調査団の方がお見えになって、証券取引法についてもいろいろご質問を受けたんですけれども、向こうの方がいろいろお調べになって、「結局、日本では証券取引法上の民事責任の規定が発動された例は実はないんですね」と、確かに厳密に適用された例はまずないと思います。

日本の証券関係の人たちは皆さん、多分遵法意識は高いと思いますけれども、かといってアメリカなどと比べて、隔絶に高くて、一切そういう事件を起こしていないかというと、そうはちょっと思えなくて、むしろ世界中大体どこでも同じような問題が起こるというように考えるとしますと、アメリカの証券取引法違反の判例の多さと比較すると、ゼロというのは何かおかしいのではないかと考える方が自然ではないか。最近は随分改善されているとは思いますけれども、かつては特に相場操縦を疑われるような市場価格の形成が行われている例が随分あったように思いますが、それについてそれを摘発するような例は非常に少ないわけですし、ましてや民事責任がそれで認められた例は極めて少ない。ここでは1つ例が出ていますが。

また、例えば、比較的最近の例で思い出しましても、大和銀行の例の有名な事件、あれはアメリカであれだけ大きい問題になって、何百億という罰金を科せられた。あれは要するに嘘をついたということで、本来の正しい財務諸表の提供を当局にしていなかったというわけですけれども、隠していたとき、ちょうど大和銀行はたしか転換社債か何かを日本で発行しているんですが、当然隠して発行しているわけです。ところが、日本でそれを摘発されたということは全然聞きませんし、民事責任を追求されたという話も聞かない。そういうのを考えますと、これは何かおかしいのではないか。

日本でエンフォースメントの手段が使いにくいということは確かでありまして、民事責任であれば、黒沼さんのご報告にありましたような論点、いずれもそのとおりであって、例えばアメリカの判例で認められている市場に対する詐欺の理論とか、ああいうような形での損害の立証ができる。実際に使えるような規定にならない限り、幾ら立派な法の規定があってもそれは使えないものであって、いわゆる牙のない規定になっているわけですので、そこは改善して、日本の市場に対する信頼を回復する必要があるのではないかというように思う次第です。

とりあえず以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

今おっしゃっていただいた点が非常に基本的なところだと思いますけれども、日本の現状をどういうふうに皆様方、ご覧になっておられるのか、そういった点も含めて田島委員、お願いします。

○ 田島委員

私も岩原委員と同じような感想を持っておりまして、証券取引法違反で刑事罰を処せられた数少ない事件の内容を見ましても、決して非常に特殊、特異な状況下で起きているものとは思われませんで、ほかに類似の事案があっても全くおかしくないと思われるケースが多々あるわけです。非常に悪質なもの、ごく少数の刑事罰の対象になったものは刑事事件として立件されて、ペナルティーを科せられているという実態はあるものの、刑事罰を科せられるのは本当に氷山の一角というのが今、実態になっておりまして、検察庁も数多くの事件をこなせるだけの人員が充実しておりませんし、そういう意味でも制約があって、やるべき事件がやられていないというところもある可能性も否めないと思います。

そこにいくまでの中間的なケースで、行政罰というような形で処罰、処罰というのは適切ではないかもしれませんけれども、ペナルティーを科するのが適当な事案がかなり潜在的にあるのではないかというふうに感じられます。規制緩和で自由にいろいろな取引ができるようになっていく場合には、違反行為についてのペナルティーの制度が充実しておりませんと、そこに一般の投資家が参入していくというのは、なかなか躊躇せざるを得ないところがあるというふうにも思われますし、課徴金制度というのはぜひとも新たに設けるべきものだというふうに考えております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。島崎委員、お願いします。

○ 島崎委員

インサイダー規制とか、そういうような問題のいろんな手当て、規則の問題というのはちょっと置いておきまして、日本でなぜそういう事例が少ないだろうかということを考えますと、一番大きいのは、企業の立場からすると、資金の調達というのは、証券市場から直接調達するというか、例えばアメリカとの比較においてみますと、米国の場合は、ほとんど企業の信用において社債なり、あるいはエクイティーなりで資金を調達する。日本の場合にはまだまだ間接金融の度合いが大きいわけで、そういう意味での資本市場を使った資金の調達は非常に少ないことが基本的にあるだろうなということがあります。

もう一つ別な観点で見ると、証券取引と企業経営というか、そういうことに対する倫理観というか、今日の日経新聞でもアメリカの証券取引所のいろんな問題も出ていましたし、高額報酬とか、ある節度というか、こういうところが大分違うのかなということがもう一つあるのかなと。例えばコーポレートガバナンス一つにしても、アメリカのありようと日本のありようは随分違うような気もするわけで、この辺のところの関係者の倫理観というか、そういうものの違いというのもあるのかなということ。

それからもう一つは、個人が参画していないという問題があると思います。これも前回からの議論になりますけれども、アメリカの場合には、個人が自分の財産は自分で形成していく、その手段として資本市場を通して形成していく。これがあるわけですから、そういう意味において個人がそういうものに対して訴えていくことは非常に多い、日本の場合にはそういうケースは少ない。だから、ケースというか、証券市場を使う立場、使う度合いが欧米とは大分違うというのが一つあるのかなという感じがいたします。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

証券市場に近いところにおられる方はどんな認識でいらっしゃいますか。板谷委員、いかがでしょうか。

○ 板谷委員

アンダーエンフォースの状態なのかどうかということなんですけれども、正直言って、私ども自身もわからない部分が多々あります。今、島崎委員の話にもありましたけれども、証券にかかわること、それだけで比較できるのかなというのがございまして、国民性という言葉で言ってしまいますと少し大きな話になり過ぎますが、いろんな訴訟というのが起こっているわけです。証券取引にかかわる分野以外のことにおいても訴訟がたくさん起きている国柄と、民事の問題ですけれども、日本とで、母集団が違うところでどれぐらい起こっているのかという比較は、必ずしも正確ではないかもしれない。

それから、行為について一律にではなくて、物によって随分違うのではないか。インサイダー取引のところというのが一つ代表的だろうと思いますけれども、島崎委員の意見書にございますが、要は、インサイダー取引規制の内容は必ずしも当事者にとって明確ではないというような意識がございます。私ども証券会社ということで、いろいろ発行会社の方からご相談も受けるわけですけれども、そうしたときに、明確ではない、したがって社内ルール等もかなりがちがちのものを決めてしまう。したがって、俗っぽい言い方になりますけれども、手が縮こまっているというような状況があります。

そういう意味で、米国等に比べると、そもそも会社の役員、幹部職員といった投資をするであろうような人たちが最初から参加していない。したがって、インサイダーのところ以外、規制のかかわりが遠いところにいっているというような状況があって、そもそも違反行為以前のところにとどまっているというようなことが多分にあるのではないか。そういう意味で、日本で数が少ない、そういうことはないはずだ、分野によってはそういう分野もあるのかもしれませんが、そもそも取引自体が行われる件数が少ないので、そういう事案が発生していないというような事柄も同時にあるのではないかなというふうな感じで受けとめております。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。なかなか現状はわからないのでしょうか、西村さん。

○ 西村委員

私もどちらかというと門外漢の方なものですから、どうしても全体の金融のシステムということから考えてしまうんですが、そうしますと、こういう問題を考えるときには何が一番有効かということで、コストとベネフィットを考えてやらなければいけないというふうに思います。

そのときに、例えば不当利得の剥奪、社会的損失、いろんな議論がありますが、課徴金を取るか取らないかというより、課徴金の計算方法をどうするかということの方がはるかに重要な話で、課徴金を入れたところで、それが非常に小さな額であれば効力はないという形になりますから、こういう議論の場合には、所定の目的に関して何が最も有効かという見方で考えていった方が、問題が存在しているか存在していないかという考え方より、より効果的な議論ができるのではないかという気がいたしました。これは経済学者のバイアスがかなり入っているという気がいたしますけれども。

経済的に考えれば、金融システムというのは、大きな意味での制度資本になるわけで、制度資本を崩すような行為に対しては、何らかの形で的確な対処をしなければいけないという形になると思います。そういう形で考えれば、不当利得の剥奪という形になっていますが、例えば社会的損失というのは、経済的に考えれば本当は重要な論点だというふうに思います。ただし、これをはかるのが非常に難しいということで、実際上はなかなかこういうものは入ってこないんですが、私、法律の専門家ではありませんのでよくわかりませんが、それに対応するような何らかのロジックを立てて、社会的損失をはかれるようなシステムにしなければいけないのではないかなというふうに思っております。

実際、金融の発展と経済の発展のいろいろな関係を見た最近の実証研究を見てみますと、トラストとか、そういうものが金融の発展を通じて経済の発展に影響を及ぼしているという結果もあることですから、その意味でコストとベネフィットをわきまえた制度設計というのが非常に重要だというふうに思います。

そのときにどういうようなことをすれば一番不正取引が少なくなるかという効果の立場から恐らく見るべきで、そのときに必要になってくるのは、手段の透明性というのが一番重要なことになるのだと思います。この透明性というのは、事前の意味での透明性であると同時に、事後の意味での透明性ということです。先ほど出たノー・アクション・レターというのは事前の意味での透明性ですけれども、恐らくもっと重要なのは、事後の意味での透明性だというふうに思います。

確かに現状適用された事例がないというのは、見方によっては非常にうまく動いていたというふうに言えないわけでもないという見方もあるわけで、したがって必要なのは、問題が起こったときに対処できるような体制が制度的にできているかどうかということであって、結果として訴訟が多いか少ないかというのはあまり大きな問題では、それも重要な論点ではありますけれども、より重要な点というのは、そういった問題が生じたときに対する対処が明確になっている、それに対してリカーレンスの制度がちゃんとできていることだというふうに思います。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

岩原委員、お願いします。

○ 岩原委員

今のご指摘の延長でちょっと申し上げさせていただきますと、日本の法制度の非常に大きい問題の一つとして、罰金の額が非常に低くて、かつ刑事罰の運用が厳格で、適用されるのが難しいということがあるかと思います。

さっき申し上げました大和銀行の例で言いますと、大和銀行は、要するに当局に嘘の報告をしたことでアメリカで刑事罰を受けたわけですけれども、そのときの罰金の額はたしか1,000億を超えた額で、しかも結局、閉鎖して国外追放というか、営業できなくなったんですが、日本の当局に対しても実は同じ問題があったはずで、日本の銀行監督当局に対して虚偽の報告をしたときの罰金、たしか当時300万だったと思います。300万だったら、金を払って嘘をやった方が多分得なわけでありまして、これで経営者が法律を守るようにコントロールしようという方がおかしい。

では、何でそんなに罰金が低いかというと、他の刑事罰の規定とのバランス論が必ず出てきてしまって、ほかのところが重くないのに、ここだけ突出して重い罰金額にすることはできないということで、法制局との調整等で、どうしてもそうなってしまっているわけなんですけれども、それを前提にしている限り、証取法違反等をきちんと押さえるということはできるはずがない。刑事罰の罰金刑等が非常に軽くて、しかも検察庁の積極的な摘発等も、日本の非常に慎重な刑事手続の中では動くのが難しいということになってくると、どうしてもそれ以外のエンフォースメントも考えざるを得ないということで、課徴金という話が出ているのだと思います。

私は、もっと罰金を重くしたりする方が本筋だと思いますけれども、現在の日本の実情を考えれば、こういう案が出てくるのはやむを得ないところかなと。「とにかく本気に法律を動かして、法律を守らせようという気があるのか」と外国の人に聞かれるのではないかというふうに思います。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございます。池尾委員、どうぞ。

○ 池尾委員

エンフォースメントの仕方というのは、原理的には2通り考えられると思います。1つは、ルール型のエンフォースメントで、違反した場合には第三者のオーソリティーがしかるべきパニッシュメントを与えるという形でエンフォースメントを図るというルール型。もう一つの類型は、取引の継続的な繰り返しのようなものを前提にして、違反をした者は取引の継続的な連携から排除するというふうなことで、ルールを守ろうというインセンティブを持たせるというやり方があると思います。

もう言わんとしていることはわかってしまったと思いますが、行政スタイルとエンフォースメントというのは対で考える必要があると思います。過去のことだから差し障りがもう少なくなっていると思いますが、行政当局が広範囲に裁量権を有していて、変な言い方をすると、江戸のかたきを長崎で討つ能力を持っていれば、これはフォーマルな意味での罰金とか、そういうものが小さくても、ルールを守らせる力、エンフォースメントの能力という意味では非常に高かったというふうに思います。

でも、そういうしぶりの悪い者はほかのところで叩くみたいな、そういうことはやらない。そういう行政スタイルは放棄します、事後チェック型のルールに基づいた行政をやるんですということで切りかえてきているわけですから、そうするとそういう新たな行政スタイルに適合的なエンフォースメントのメカニズムを備えないと、エンフォースメントの面で空白が生じるということになっていると思います。

だから、過去というか、切りかえの時期がこの10年間ぐらい続いていると思いますから、この10年間ぐらいはよくわからないんですが、それより以前はある種のエンフォースメントの強力なメカニズムが日本にあったと思うのですね。それは通常のルール型とは違うものだけれども、強力なメカニズムがあったのが、それが否認される過程で、それにかわるエンフォースメントのメカニズムを十分まだ用意し切れていないということで、それを用意する一環としてこういう議論が必要になっている位置づけではないかというふうに理解しております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

一部では、日本版SECという議論がありますが、あれもおっしゃる方によって内容が違うかもしれませんけれども、ポイントは、SECという言葉を使うのは市場の番人ということであり、それは今の池尾先生の分類で言えば、ルール型のエンフォースメントとして強力な番人が日本でも必要ではないかという議論だと私は思いますが、もしそういう議論だとすれば、それは岩原委員や池尾委員からご指摘があった話と非常に整合的な議論ということだと思います。

他方において、実態認識のところで皆様方のご意見が共有されているかどうかというのはもう少し伺わないと自信が持てないところがあるのですけれども、ご発言のなかった方、いかがでしょうか。もちろんご発言いただいた方が再度でも結構ですが。

個別の項目で伺った方がいいでしょうか。

違反していることが明らかならば、当然それはサンクションがあってしかるべことなのですが、そこら辺がはっきりしないという気持ち悪さがあるのですけれども、今日はこのぐらいにさせていただいて、また皆様方の方でちょっとお考えいただいて、ご意見があればお寄せいただくということにさせていただきたく思います。よろしゅうございますでしょうか。

貴重なご指摘をいただきまして、ありがとうございました。

それでは、次に、証券取引所の立場から見た自主規制のあり方ということで、吉野委員からお話をいただきたく存じます。続いて国際銀行協会の方からのお話をいただきたいと思います。

それでは、吉野委員、よろしくお願いいたします。

○ 吉野委員

本日は説明の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。時間も限られておりますので、早速、資料1-7というペーパーに沿いましてお話を申し上げたいと思います。

この部会の審議テーマでございます市場監視機能につきましては、規制当局によるものとあわせて、その役割を実際に果たしている自主規制がございますが、今日は東証の事例をお話させていただきたいと考えております。

今日は3つの項目に分けてお話を差し上げたいと思います。

では、早速ですが、3ページの証券取引所の自主規制の意義から入らせていただきたいと思います。

まず、自主規制の特徴ということでございますが、証券市場規制に関しましては、取引所や証券業協会という自主規制機関による自主規制が活用されているわけでございますけれども、歴史的に見ますと、自主規制は法的な規制が始まる以前から行われており、証券市場の発展に寄与してきたという歴史的経過をたどっていることは皆さんもご承知のとおりだと思います。また、自主規制は、行政官庁による直接規制だけでは十分期待し得ない多くの優れた面も持ち合わせているのではないかと認識している次第でございます。

こうした自主規制の特徴のうち最も重要な点は、現場主義の要請から、市場に密着した自主規制機関が法令を補完するために市場の実態に合わせて自らルールを作り、実効性を確認しながら、木目細かく微調整させていく、つまり、実態の変化に機動的に対応することができるというところにあるのではないかと思っております。

また、注意喚起のような形で、関係者の合意をベースにした未然防止がやりやすいというのも、自主規制の特徴の一つではないかと考えております。

また、自主規制機関は、それぞれ市場や金融商品に関する実務に精通し、それに関する豊富な知識、経験、さまざまなネットワークなどを持った人材を有しておるわけで、実効性、効率性の高い規制機能を提供することができる点も見逃せないところではないかと思っております。

それでは、意義の2番目で、証券取引所の自主規制機能についてご説明いたします。

個人投資者が証券市場に安心して参加できること、このことがまさに今、問われているわけでございますが、そのためには取引所の市場が公正で信頼できるものでなければならないということでございます。そのためには、市場に最も近い市場開設者自身がこうした自主規制機能というものを発揮いたしまして、市場の公正性・信頼性の確保を図ることが不可欠ではないかということでございます。

これは、取引所の組織形態のいかんにかかわらず、市場運営と密接不可分な市場開設者としての機能の根幹ではないかと思っております。つまり、取引所にとって自主規制機能は、市場についての一種の品質保証でございまして、市場が本来的に持っている機能と言うことができるのではないかと思います。言いかえますと、市場の規律を保つという市場開設者が本来的に持っている機能に着目いたしまして、それに法の裏づけを与えて、活用することによりまして、実効的で、かつ効率的な証券市場規制を実現しようというのが、現在の自主規制の制度であろうかと認識しております。

引き続きまして、3つ目の意義についてご説明いたします。柱の一つは、取引の公正性確保で、皆様ご承知の売買審査がその主たる業務でございます。もう一つは、市場への直接参加者であり、決済までの担い手でもある取引参加者の信頼性を確保するということでございます。

具体的には、取引参加者である証券会社の受託から決済までの業務に関しまして法令・取引所規則の遵守を確保することでございまして、そのための業務を取引参加者考査と呼んでおります。市場開設者が市場の品質を保ち、投資者や発行会社に対する責任を全うするためには、取引の公正性確保とともに、取引参加者の信頼性を確保することが不可欠であるということをご理解いただければと思います。具体的な実務につきましては後ほどまたご説明させていただきたいと思います。

それでは、4ページに移らせていただきます。証券取引所の自主規制に関わる法的枠組みでございます。

これは皆様、ご案内のとおりでございます。取引所は、免許制の下、行政当局の厳しい監督を受けているということでございます。昨年度は金融庁並びに証券取引等監視委員会の検査を受けて、自主規制業務の遂行状況につきましてもご確認いただいたところであります。

次に、5ページでございます。ガバナンスシステムと標題を掲げさせていただいております。

先ほど自主規制は市場の品質保証だということを申し上げました。つまり、自主規制機能の発揮というものは市場の付加価値を高め、そのことによって結果的には収益性向上に資するものではないかということでございまして、利益追求と自主規制機能ということに関しては、東証が株式会社化するときもいろいろ議論がございましたが、基本的には相反するものではないと考えております。

ただ、投資者などの信認を確保するためには、適切な予防策も必要でございます。その一つは、行政当局による監督でございますが、それもさることながら、私ども東証では、コーポレート・カバナンスの充実や内部牽制組織の確立など二重三重の予防策を講じ、自主規制機能の独立性を確保するための対応を図っているところでございます。

具体的には、まず取締役会でございますが、少人数による取締役会の活性化、過半数の社外取締役、指名報酬委員会の設置などによりまして、監督機能の強化を図っております。また、監査役会におきましても、4名のうち3名は社外監査役でございますし、内部監査の体制も整えております。

また、特徴的なものは、諮問委員会の設置でございまして、公益代表が参加する自主規制委員会を設置いたしまして、先ほど申し上げました売買審査や考査に関する制度などに関しまして意見を述べていただくとともに、取引参加者の処分につきましては、過半数の公益代表により構成いたします規律委員会で決定することとしております。

さらに重要な点といたしまして、自主規制に関わる業務を行う自主規制部門につきましては、一つの業務部門として独立性を確保しているところでございます。当然のことながら、他の部門とのファイアウォールも整備いたしているところでございます。

また、自主規制の重要性の一層の高まりを考えますと、当然のことでございますけれども、今後さらに自主規制部門の独立性確保のための手段を講じる必要性があると考えておりまして、取締役会との関係や他の業務部門とのファイアウォールに関しまして必要な対策を検討してまいりたいと考えているところでございます。私どもとしましては、今後ともコーポレート・カバナンスや内部牽制組織の充実などに努めまして、投資者の信頼確保を図ってまいりたいと考えているところでございます。

次の6ページで、取引所の実際の自主規制業務はどういう形で行われているかをご説明いたします。

先ほど2つの柱ということを申し上げました。その一つ、図の右側に売買審査部という部署がございまして、これが不公正取引の監視を主に行っているセクションでございます。もう一つの柱でございます取引参加者の管理については、考査部という部署がございます。この2つが自主規制業務を行う主力部隊でございます。

両部は相互に密接に連携しながら業務を行っているわけですが、加えて両部の活動は、市場の動向をリアルタイムに監視しているマーケット部門、上場会社のタイムリーディスクロージャーの徹底を図っている上場部との連携によって支えられております。つまり、こうした現場における市場運営との連携によって市場の動きに迅速かつ的確に対応していくことができると考えております。

それでは、実際の業務はどのような流れになっているかというのが7ページに書いてございます。売買審査の業務は、市場で行われた取引を対象に相場操縦やインサイダー取引などの不公正な行為がないかを審査するものでございまして、具体的な審査の流れは資料に記載しているとおりでございます。

売買審査の結果、法令や取引所規則に違反する、またはその恐れがある取引が認められた場合には、取引参加者に対して処分や注意喚起を行うととともに、証券取引等監視委員会にも報告いたしております。

次に、8ページでございますが、もう一つの柱である取引参加者考査であります。市場開設者といたしましては、取引の公正性だけでなく、取引参加者の信頼性を確保することが不可欠でございます。このような観点から、取引参加者の受託から決済に係る業務に関しまして、法令や取引所規則に違反する行為がないかどうか、あるいは内部管理体制が十分であるかなどにつきまして、取引参加者の店舗に出向きまして法定帳簿などの検査を行っております。

考査の結果、法令や取引所規則に違反する事案が認められた場合には、取引参加者に対して処分や注意喚起を行うとともに、証券取引等監視委員会にも報告いたしております。これが取引参加者考査の事務の流れでございます。

9ページに、実際の考査状況等のデータを掲げてございます。なお、、証券取引所の考査と証券業協会の監査との関係が重複しているのではなかろうかというご指摘を受ける場合がございますので、その点について若干触れさせていただきたいと思います。

確かに法令上は、どちらにも法令等の遵守状況の調査が求められておりますので、わかりにくい面もございますが、実務上は相当程度、自主規制機関同士で役割分担をいたしているところでございます。

幾つか事例を申し上げますと、取引所では、例えば空売りや逆指値注文の管理、あるいは信用取引に係る委託保証金の管理など、つまり取引参加者の注文受託から決済に至る業務につきまして、法令や取引所規則の遵守状況及びそれらに関連する内部管理体制の確認に重点を置いた検査を行っているわけでございます。

一方、証券業協会におきましては、例えば資格外の外務行為であるとか、顧客資産の分別管理、あるいは仮名取引、つまり証券会社の営業姿勢であるとか投資勧誘などに係る業務について、法令や協会規則の遵守状況及びそれらに関連する内部管理体制の確認に重点を置いた検査を行っているわけでございます。

また、例えば同じ損失補てんということに関して検査を行う場合でも、取引所が売買状況から検査するのに対しまして、証券業協会は、証券事故であるとかその他の利益供与的な部分から検査をするわけでございまして、そういった点でも役割は分かれております。検査の対象も当然異なっておるわけでございます。つまり、現状では、検査項目であるとか検査対象につきまして協会、取引所の間での重複はほとんどないのが実態となっているところでございます。

ただ、そうは申しましても、検査を受けられる証券会社の立場からしますと、まだまだ事務の負担感や重複感をお持ちであることは承知いたしておりまして、今日的にこのような重複をいかに解消し、効率的な検査を早急に実現していく必要があると強く認識しておりまして、そのための具体的な方向については後ほど今後の課題で触れたいと思います。

10ページは証券取引所の処分・注意喚起ということでございますが、これはこの項目をごらんいただいたとおりでございます。代表的なものは処分でございまして、過怠金の上限は通常1億円、著しい信用失墜の場合の過怠金の上限は5億円となっております。

次に11ページは、処分の手続きでございます。これは、先ほどカバナンスのところで申し上げました規律委員会の手続きを経て決定するなど、公正な処分が行われるよう努めているということでございます。

さて、次の12ページでございますが、今後の課題を最後に申し上げたいと思います。

日本における市場監視体制としては、行政当局による直接規制と取引所であるとか証券業協会等の自主規制機関の自主規制が、それぞれの長所を活かして、相互に補完し合いながら、いわば車の両輪として機能することによって、全体として実効性が高く、かつ効率的で調和のとれた体制が構築できるのではないかと考えているところでございます。

また、市場監視体制のあり方を検討する上でのアプローチとしては、現状の実態を十分に踏まえ、投資者や発行会社の視点に立って、現在の体制のどこにどのような問題があるかを明確にいたしまして、その上で実効性のある対策を優先的に講じていくということが適当ではないかと考えております。そういった観点から、市場監視体制のあり方として3点申し上げたいと思います。

1つは、行政当局のエンフォースメントの強化でございます。事後監視型の監視体制における行政当局の主たる役割は、法令等による明確なルールの策定とそのエンフォースメントであり、その実効性を高めための様々な工夫と人員など体制の整備を図る必要性があると考えております。

2番目に、自主規制機関の役割の明確化と機能強化でございます。市場監視体制全体としての実効性と効率性という観点から、取引所等の自主規制機能を最大限活用することが適当と考えているところでございます。各自主規制機関が担うべき役割の明確化と機能強化を図った上で、自主規制機関に委ねられるものは出来る限り委ね、行政当局は、その部分、つまり委ねた部分に関しましては自主規制機関の業務遂行状況を監視する体制が望ましいのではないかと思っております。それによりまして自主規制機関と行政当局の間で適切なチェック・アンド・バランスが働くことも期待されるのではないかということでございます。

なお、自主規制が十分に機能するためには、市場に最も近い立場にある者が現場の目で行うこと、つまり市場単位で行うことが適当と考えている次第でございます。

3番目は、行政当局と各自主規制機関の連携強化でございます。各機関がそれぞれの特徴を発揮して十分に役割を果たすことに加えまして、市場監視体制全体として一体的に機能するよう、行政当局と各自主規制機関相互の間で有機的な連携・協力関係を確立することが必要ではないかと思っております。

特に検査体制に関しましては、検査の重複を解消し、検査を受ける会社の事務負担軽減を図る必要性がございます。自主規制機関の間では現在、実務的にはある程度の役割分担がなされておりますけれども、あくまで関係者間で実務上の取扱いとして行われているものであり、証取法が各自主規制機関に同様に法令の遵守状況の調査を義務づけていることもございまして、必ずしも十分でない面もございます。証取法の関係も含めました各自主規制機関の役割を明確にすることによりまして、検査項目の重複をなくすことができるものと考えております。

また、検査項目に重複がなくなったといたしましても、各機関が別々に検査を行うのであれば、検査を受ける側の検査の重複感というのは免れ得ないところでございます。したがいまして、検査を受ける側の証券会社の過重な事務負担を解消するための工夫というものも必要ではないかと考えておりまして、各自主規制機関が連携して一体的に検査を行うことによって相当程度問題の解決が図れるのではないかと考えております。検査の一体化は、法令と各自主規制機関の規則の解釈、運用につきまして整合性を高める効果も期待できるのではないかと思います。

こうした観点から、東証としましては、検査の一体化を図るべく、同一期間での合同検査、検査計画の調整、書類様式を含む検査方法の統一化、さらには検査結果の共同分析、検査を受ける会社に関する情報の共有及び定期的会合の開催などの実施に向けまして、今後、他の証券取引所であるとか証券業協会、さらには行政当局とも協議してまいりたいと考えております。

なお、検査の一体化につきましては、資料の最終ページに参考として掲載いたしております米国の実例が大いに参考になろうかと思います。時間の関係で説明は省略させていただきたいと思います。

時間をちょっと超過したかもしれませんが、ご勘弁いただければと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして国際銀行協会のマクファーレン会長、角田理事に、日本の証券市場における自主規制機関を含む監視体制のあり方についてお話をいただきたいと思います。

お忙しいところを今日はお越しいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○ マクファーレン国際銀行協会会長

神田部会長、大変ご親切なご紹介、どうもありがとうございます。私、ジョン・マクファーレンと申します。現在、国際銀行協会執行役員会の会長を務めております。

国際銀行協会を代表いたしまして、金融審議会金融分科会第一部会の場でこのようにお話しさせていただく機会を得たことを感謝申し上げたいと思います。今ご質問に出ました点につきまして、私どもの証券分科委員会が作成しました「規制制度改善に向けての提言」と題しました提案書に関連して意見を申し述べさせていただきます。

私どもの提案書にありますように、簡潔で継続性を持ち、かつ透明な規則に支えられた健全で活発な市場をつくり上げる、これはすべての証券市場関係者共通の目標であります。この目標達成のために建設的な意見を提示するということを目的として作成いたしました。この提案書にありますとおり、日本の証券会社におけるコンプライアンス体制は、規制当局並びに自主規制機関のご尽力により目覚ましい進展を遂げてきたと思います。

これまで多くの市場における改革が実行されてまいりましたが、私どもが今後取り組むべき課題としては、規制制度の効率性と実効性を高めるということだと考えております。これは、複数の重複する規制当局及び自主規制機関のそれぞれの役割の合理化並びに法令、諸規則の明確化を通じて、市場仲介者、そしてより直接的には投資家に課せられる費用負担を軽減するということであります。

私どもの証券分科委員会は、外資系証券会社を会員としておりますが、提案書における提言は日本の証券業界全体にかかわるものだと考えております。御部会の事務局より、提案書に盛り込まれました4項目につきさらに追加して意見を述べるようにというご要望がございました。時間の都合から日本語で回答をまとめさせていただきましたが、証券分科委員会の理事であります角田の方から紹介させていただきます。

○ 角田国際銀行協会理事

それでは、ご回答させていただきます。

ご回答する前に資料のご説明をさせていただきます。

2ページ目に「規制制度改善に向けての提言」という資料がございますけれども、私どもは、今年の7月から10月にかけまして調査を行いまして、10ページ足らずの提言書を作成しております。今日ご回答申し上げますのは、このうちの第2章でございますけれども、規制機関の構造と運営、この中から4点を選びまして、ご回答申し上げます。

まず、4点は、1枚目のペーパーにございますように、規制機関の職責配分の効率化というのが第1点でございまして、これは参考資料の3ページ目の提言の中の一番最初に書いてございます。

2番目は自主規制機関の独立性と権限委譲について、これは1ページ目、研究結果というところでございますけれども、ここの下から2番目のパラグラフに自主規制機関の独立性と権限委譲についての意見が述べられております。

3番目は株式会社化された東京証券取引所の自主規制機関としての役割、これは2ページ目、調査結果にあります。私ども、会員会社29社おりますけれども、29社にアンケート調査をいたしまして、そこから得た回答結果のうちの抜粋でございます。東京証券取引所につきましては、同じく調査結果の3番目のテーマに掲載されております。

最後の証券業協会の機能の利益相反について、これは同じく2ページ目にございまして、東京証券取引所の下のパラグラフに簡単に記載しております。その下のパラグラフも、同じく証券業協会についての私どものメンバーの意見が記載されております。

それでは、ご回答いたします。

まず、御部会が提示されました第1番目の問題は、金融庁と自主規制機関において法令の解釈並びに検査及び処分等の分野において重複して権限が行使されているという点であります。これは、2番目の問題とも関連いたしますが、人数において豊富でなく、かつ経費の増額を伴う専門性を有する人的資源を、規制効率を高めながら、自主規制機関と規制当局との間でどのように配分していったらいいのかという問題でございます。

この点につきまして、証券分科委員会は、規制当局と自主規制機関が協議の場を持ち、法令の解釈については、いずれの規制機関がどの問題について解決する権限を有しているかを明確に決めていくべきであると提言しております。

このアプローチは、英国の金融サービス機構がイングランド銀行と大蔵省との間で取り交わしました覚書を例にとったものでございます。このような協議を通じまして決定された職責の配分は一般に公表され、市場関係者は、問題が発生した場合はどこへ行って解決を図ればよいかがわかるようになっております。私どもは、規制当局と自主規制機関とのこのような合意を職責配分原則と呼んでおります。いったんこの配分についての合意ができ上がれば、その後は解釈の相違を回避し、合意された職責配分の継続的な遵守を確認し合うために、規制機関同士が定期的な協議を行うということでございます。日本においても、規制当局と自主規制機関がこのような原則を採用すれば、規制上の重複を最小化し、かつ規制にかかわる効率性が高まるものと考えております。

次は、自主規制機関の独立性と権限委譲についてでございます。ご質問は、日本の自主規制機関には自主性が十分でなく、権限委譲も十分になされていないではないかという点に関連するものでございます。

自主規制機関は、往々にして業界の意見を積極的に取りまとめて、関係当局に働きかけることをしていない、または法令解釈の明確化におきましては、金融庁がいまだその意見を明確にしていないということに対する配慮からか、その解釈の明確化に向けて積極的な努力がなされていないということでございます。

このような問題への対応としまして、それぞれ主要な管轄分野における規制方針をみずからが明確に決定するため、自主規制機関により大きな指導力を発揮できるように権限を付与すべきであると考えます。したがいまして、金融庁はみずから優先課題としている事項にかかわる規制方針や自主規制機関の権能を超える問題に限り関与すべきであると考えます。すなわち、金融庁は、自主規制機関からあらかじめ事前の相談を受けるという実務慣行を通じて、自主規制機関による自主規制を事細かに管理すべきではないということでございます。

さらに、複数の規制機関は特定の事案に対して異なった解釈を提示すべきではないということでございます。これは、法令諸規則の解釈上の一貫性を損ない、私どもが法令諸規則の解釈混乱現象と呼ぶ状況が起こる原因となるものでもあります。金融庁及び自主規制機関は、相互の調整を図り、問題となった事案の背景説明や法令解釈を含む事実関係を一般に公表することによって、規制上の効率性、実効性を高めることができると考えます。市場仲介者及び規制機関が類似した事案の内容を知る機会が増えてくれば、広範な知識の集約化が図られまして、規制過程における明瞭性も高まるのではないかと思われます。

次に、3番目の御部会のご質問は、昨年、株式会社化されました東京証券取引所による自己規制と検査権限における潜在的な利益相反の問題でございます。

証券分科会におきましては、東京証券取引所における検査は、民間企業としての性格と矛盾するのではないかと考えております。すなわち、会社が存続基盤でありますステークホルダーとしての会員証券会社に対して検査主体となることは利益相反の問題が生じるということであります。

また、民営化された海外の証券取引所においては、組織構造上の問題から、検査権限を他の組織または他の規制機関に移管するということがよくございますが、そのようなことが諸外国において大きな懸念材料となっているということをご指摘させていただきます。

証券分科会は、さまざまな規制機関による種々の検査は、これを統合することによって規制にかかわる効率性を高め、検査に伴う証券会社の負担を軽減すべきであると提言しております。この件で、さきの御部会の会合で、行政レベルにおける検査機能の一元化を検討すべきであるという旨のご発言がございました。私どもの見解は、現在の金融庁、東京証券取引所、日本証券業協会、証券取引等監視委員会による検査機能は統合され、一つの検査組織とすることが効率性を高めることとなると考えております。

証券取引所の自主規制機能については、より焦点を絞り込み、市場規制の政策、市場監視、市場取引ルールの制定等をすべきであると考えております。このような変更をしましても、東京証券取引所の市場監視機能を損なうこともなく、また市場監視から得られた情報を私どもが提案申し上げている単一の独立した検査組織に提供することの障害になるとも思われません。

御部会の最後の問題は、証券業協会が有する自主規制機関、市場管理者、検査機関及び業界の要望団体等の、複数の機能を見直すべきであるという点に関するものでございます。

私どもの懸念の中心は、日本証券業協会の業界要望団体としての機能が独立した機能として十分に発揮されておらず、また協会の運営費の大部分を負担する会員会社に影響を及ぼすこととなる問題に対して、十分な配慮が払われていないということでございます。また、検査につきましては、既に述べましたとおり、証券分科会は、日本証券業協会の検査権限は金融庁、証券取引所及び証券取引等監視委員会の検査権限と統合することを検討すべきであると考えます。

また、その他の協会の機能につきましては、日本証券業協会はそれが有効に発揮できるような体制に再編すべきであると考えております。私どもの考えでは、日本証券業協会は、まず業界が関心を持つ市場にかかわる諸問題について、その規制方針を明らかにし、これを検討することに注力すべきであり、そして次に、業界における主要な会員会社の意見を反映して、より有効かつ自主性を持った提言活動をしていくべきであると考えております。

最後に、御部会の皆様に、私どもの提案書、これは3つの章からなっておりますけれども、今日ご紹介いたしませんでしたその他の提案について幾つかご紹介させていただきます。

まず第一に、日本市場をより円滑に運営し、投資家及び市場仲介者が負担する規制上のコストを削減するという大きな目標に立ちまして、金融庁及び自主規制機関に対する報告義務の細目にわたる見直しを行い、報告義務に伴う大幅な負担の軽減を提言しております。

また、別の提言では、規制機関と市場との関係が成熟してきたことに対応いたしまして、金融庁及び自主規制機関による検査と処分のあり方につきまして広範な見直しを行うことを提言しております。

以上で私どもの提案書に対するご質問のすべてをご回答申し上げました。終わりに当たりまして、本日の本部会に出席できる機会を得まして、委員の皆様にお会いできましたこと、大きな喜びであります。またこのような機会があることを希望しております。ご質問等があれば喜んでお答え申し上げます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、吉野委員、マクファーレンさん及び角田さんからいただきましたお話につきまして、どなたからでもご質問、ご意見をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。どうぞ、淵田委員。

○ 淵田委員

自主規制の問題でデメリットが生じるとすれば2つあるかと思います。1つは、規制という公共的目的と自主規制機関が同時に担っている業界の私的な目的のコンフリクトの問題、2つ目は規制主体の重複によるコストの問題、コンフリクトとコストの2つがあり得ると思います。

一方、自主規制機関というもののメリットについては、お二人の発言を聞きましても、それなりにあるということでしょうし、私なりに解釈しますと、公的な規制というのはいわば最低ラインを決めて、より厳しい規制というのを業界が自主的に決めていくというのは結構なことでしょう。あるいは公的な規制というのは、大枠を決めるだけであって、自主規制というのは、その大枠の範囲で実務に近い立場で細かい規定をつくっていく、そういう役割分担があるなら意味があるでしょう。あるいは、お話がありましたように、現場ですぐに機動的に対応するということも自主規制機関ならではのメリットかと思います。

以上申しましたメリットの部分を考えますと、例えば当局にすべて集中してしまって、自主規制機関は要らないというのは乱暴かなと思います。

一方、デメリットの部分を考えますと、後半のお話で、例えば検査だけ切り出すといったようなご提案、これは一つの解決策といいますか、興味深いなというふうに感じました。

いずれにしても、自主規制機関の機能というのは、何らかの形で必要だという立場に立ちますと、先ほど言ったコストとコンフリクトの問題をいかに抑制するかという工夫は必要だと思います。選択肢としては、例えば客観的、中立的な自主規制機関というものをつくってしまう、あるいはそういうものを選ぶという考え方も一つあるかもしれません。もう一つは、現行の自主規制機関の機能というものをそのまま使いながら、しかしコンフリクトの可能性に対しては、行政がきちっとオーバーサイトしていく。そして、重複コストの問題は、先ほど東証の方からお話がありましたように相当程度解決の手法はある、そういうアプローチがあるかと思います。

重複の問題については、自主規制機関同士の重複の問題と、官と自主規制機関の重複の問題があるように思います。後者に関しましては、国際銀行協会さんの資料の4ページ目の2つ目、「専門性が明確に確立した領域においてはより広汎に指揮権をSROへ委譲すべき」といった考え方ですとか、あるいは吉野委員からご発言がありました12ページ目の(2)のところ、「自主規制機関に委ねられるものは出来る限り委ね、行政当局はその部分に関しては自主規制機関の業務遂行状況を監視するという体制が望ましい」という点が注目されます。

さらにそれに関連しまして、吉野委員の資料の13ページの参考、例えば3つ目に「自主規制機関の検査の確認を主な目的とするSEC検査」というふうにありまして、「SECがブローカー・ディーラーに対する検査については、自主規制機関による検査の内容について再検査(オーバーサイト)することを主たる目的としている」というふうに記述があります。

再検査というのは、響きとしてはもう一回やり直すみたいな響きがありますが、聞くところによりますと、自主規制機関がちゃんとやっているかどうかをチェックするということのようでして、ある意味で自主規制機関というのは、前衛といいますか、前線で対応する人たち、規制当局というのは、後衛部隊であって、いわば司令塔で、前線がちゃんとした働きぶりをしているかどうかをチェックする。ただし、案件によっては特別調査等の必要もございますでしょうから、直接前線まで出ていってやるということもあるけれども、通常は一種役割分担をしているというような姿が、例えばアメリカの事例から言えるのかなという気がするんですね。

日本では、当局の検査というのは、どんどん頻度が高まっているというお話も聞いたことがありますし、あるいは人員も増強されている。それは今までそういうことが必要だというふうに認識があったと思いますが、足りない部分は補うと同時に、自主規制機関というのがそれなりにメリットがあると考えるのであれば、監視委員会なり金融庁との一種役割分担的なものをもっと明確にして、前衛、後衛なのか、どういう役割分担なのか、考えていく機会かなというふうに思います。

自主規制機関同士のコンフリクトの問題は、確かに市場運営をやっていたり、業界団体をやっていたり、プラス自主規制をやっていたりすると、コンフリクトの潜在的可能性というのがあるとは思います。ただし、それを官が司令塔となって、そういう問題が起きないようにしていくという工夫はまだ追求し得る余地があるのかなという気がいたします。今のアメリカのように次から次へといろいろな問題が起きてくると、もうそれではだめだという判断もどこかであり得るかもしれませんけれども、今の日本で果たしてそういう問題が起きているかというと、そこまでの問題には至っていないのではないかという気もいたします。

コストの方の問題は、先ほどご指摘がありましたように、いろいろな工夫の余地があるのではないかという印象を受けました。

最後に、証券業協会につきましては、今、申した論点以外に、規制機関同士のコストの重複の問題とは別に、組織内でのコスト配分のあり方という別な論点もあるようですので、それはそれで別途改善するなり何なり議論していく必要があるかなと思いました。

ちょっと長くなりまして、恐縮です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

よく考えれば考えるほど難しい問題のような気もしますけれども、ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、成川委員。

○ 成川委員

吉野さんの方から証券取引所の自主規制についてのお話があったんですが、ここで審査なり考査なりを200前後ですか、最近やられているということなんですが、この結果として処分なり注意喚起もできる制度になっているというご紹介があったんですが、処分なり注意喚起に至ったような事例はどのぐらい出ているのか等について教えていただけたらと思います。

先ほどのお話ですと、法的な面では処分といいますか、罰金とかの発動はあまりない、こういうなんですが、自主規制の場合には実態はどうなっているのか、大変興味深い点ではないかと思いますので、ぜひ教えていただきたいと思います。

○ 神田部会長

吉野委員、お願いします。

○ 吉野委員

売買審査であるとか考査であるとか、いろいろな部分がございますけれども、今年の1月からに限って言いますと、内容を申し上げられない部分がございますが、件数としますと、10件ございました。

中味は、いわば作為的相場形成、市場関係のそういうふうなことが4件、特別の利益を約してというふうな部分の関係が3件、そのほかは取引一任勘定の件であるとか、兼業承認違反関係であるとか、これは法的規制の処分との関係で出てきた部分でございます。それから、法人関係の情報管理の不十分さというふうなものも項目で上がっておりまして、今年の1月以降では10件でございます。14年度は、似たような案件でございますけれども、件数だけ申し上げますと、14件でございました。その程度でよろしゅうございますか。

○ 神田部会長

よろしゅうございますでしょうか。どうぞ。

○ 成川委員

今、教えていただいたんですが、先ほど西村先生から、ルールの実行状況については透明性というのが大変信頼を高める、こういうふうなご指摘もあったところです。私、不勉強でこれらの点について見ていないわけですが、ぜひこれらの情報を積極的に開示して、各関係者に実態を知らしめることが市場の信頼性というふうなことを高めるのではないかというふうに感じたところですが、その辺についてもしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

○ 神田部会長

件数は公表しておられるのですか。

○ 吉野委員

処分で過怠金を科せられた事例ですとか、そういうのはすべて公表いたしております。私どもは、ご存知のように、証券会社が処分された後、法令に基づいて自主規制機関としての処分をするようなっておりますので、それに基づきまして証券取引所がどういう事案に対して幾らの課徴金を何々の証券会社に科したということは、処分のときに発表いたしております。

○ 神田部会長

今ご紹介のあった件数も公表しておられるのですか。

○ 吉野委員

公表しております。

○ 神田部会長

件数自体は公表されておりますので、それなりの情報はその範囲ですけれども、世には伝わっているということだとは思います。

○ 吉野委員

補足しますと、対象となった件数と、注意がどのぐらいまでいったか、処分にいったのは何件か、そういうことはすべて公表いたしております。

○ 神田部会長

よろしゅうございますでしょうか。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○ 板谷委員

規制機関の規制について、規制の対象というのは、必ずしも証券会社だけではなくて、証券市場の参加者ということになると思います。規制を受けている証券会社としての実感みたいなことを申し上げますと、現場の方では重複感というものがあるのは事実でございます。

それはどこにあるかというと、検査のところに特に重複感というのが出てきている。といいますのは、証券会社が検査、調査、考査の対象となる、検査、考査する主体の数がかなり多くなっておりますので、その中では重複した項目についての検査等が行われているというようなことがあります。先ほど吉野委員のご発言で、現実には協会と取引所と調整しながらやっていただいているということがあるんですが、さらに一段とそこら辺の工夫というのでしょうか、そういうのをやっていただければ現場における過剰な負担感みたいなものは減ってくるのかなと思います。

それから、規制機関の規制の中で、検査だけではなくて、規制の内容をつくるというのでしょうか、ルールをつくるという部分があろうかと思います。先ほど淵田委員の話にありましたように、ルールには幾つか種類があるのだろうと思いますが、法律で公的な機関によって規制されている、それが大枠であって、細目を決めるたぐいの自主規制、法律で決めてないものを付加して、よりよい慣行が行われるようにつくられている自主規制というのがあろうかと思いますが、それはそれぞれの効用を果たしている。つまり、法律で大きな枠を決めていますけれども、細目の実施要領等につきましては、きめ細かに決めていく必要があるといったものについては、自主規制機関等が果たしている役割というのがあるのかなというふうに思っております。

もちろん付加しているものについても、事情があるものについてよりよいマーケット慣行をつくろうということでございますから、それも当然機能しているということかと思います。

ただ、重複感のところは、それぞれの目的に従ってできているものが必ずしも整理がついていないというようなこともあろうかと思いますが、今回そういう方向で進んでいるということですから、この機会に、行政当局のやっているもの、自主規制団体あるいは複数の自主規制団体の間のものについて、調整等ができるものは調整していただくということが必要なのかなというふうに思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。どうぞ、高橋委員。

○ 高橋委員

自主規制であります証券業協会についていろいろなご指摘をいただきました。それぞれ大変重要なご指摘だと思いますし、私ども、真剣に検討したいと思っております。いずれのご指摘についても、細かい点で意見はあるんですけれども、基本的には大変重要なご指摘だというふうに思っております。アイデアのご指摘も含めて、そういうふうに認識しております。

自主規制機関は一体何のためにあるのか、いろいろご議論がありました。私どもとしてどういうことを考えているかというと、大体もう出たご意見なんですけれども、吉野専務のご主張にありましたように、マーケットの専門家がきちっと見ている、証券市場という非常に専門的な分野で専門家がルールの制定等について見ている。あるいは、行政がルールをおつくりになるときに、マーケットの専門家としていろいろ意見を集約して言わせていただく。マーケットの専門家として、あるいはマーケットにより近い立場にいる者が行う自主規制、そういうことで意味があるのだろうと思います。

2つ目は、非常に速いテンポで市場の動向が動いていく。もちろん行政が遅いということを言うつもりは全くないんですが、行政の規制の場合は、例えば法律制定ということであればそれなりの時間がかかっていくわけでありますので、変化するマーケットに迅速に対応するために、まず自主規制で対応するというよう意味合いもあるのではないかというふうに思っております。

それからもう一つは、これは大変重要なことだと思っているんですが、これも何人かの委員の方からおっしゃっていただいたんですけれども、行政の規制というのは、多分必要最小限の規制ということを求めていくだろうと思います。まさに行政の規制でありますから、必要以上のことをするということはないだろうと思います。

自主規制機関の役割は、例えば倫理性でありますとか、最低のスタンダードではなくて、むしろ質的により高いものを仲間内の規制として求めていくというようなことがあるのかなというふうに思っております。

最後に、国境を越えた取引の規制、これは当然のことながら、行政の法律規制ではなかなか及ばない。もちろん受け皿としていろいろつくって、法律で手当てをしていだたくということがあるわけですが、国境を越えた規制、今で言いますと、例えば決済期間を短縮するというような国際的な動きがございます。こういうものに対応していくというようなことは、自主規制あるいは市場の規制ということでできていくのではないかなというふうに思っております。

大きく分けると、そういうような4つほどの切り口から役割というものを私どもは自覚しているところでございます。重複の問題でありますとか、あるいはコンフリクトの問題でありますとか、いろいろなご指摘につきましては、私どもも大変重く受けとめて検討いたしておりますので、この場では申し上げませんけれども、いろいろご指摘いただいたことに感謝したいと思います。ありがとうございました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、田島委員。

○ 田島委員

吉野委員にお尋ねしたいのですけれども、東京証券取引所の考査部と売買審査部で不信を持たれる取引の調査に当たっておられる人員はそれぞれ何名ずつおられるのか、不信を持たれる取引の調査の人員としてはその数で充足していると考えておられるのか、あるいは不足するというご感想があるのか、その辺について。

○ 神田部会長

いかがでしょうか。

○ 吉野委員

6ページの話だろうと思いますが、考査部と売買審査部、合計でほぼ100人の体制で、大体半々ぐらいとお考えいただければと思います。

次の7ページの「最近の売買審査状況」に件数が記載されておりますので、この件数で人員が足りているかどうかというご指摘だと思います。実を申し上げますと、私どものマーケットは、すべてシステムで構築されているということもあり、売買審査面でも、不公正取引に近いような案件をシステム的に抽出しております。つまり、過去の取引結果に基づいて、どういう案件を審査対象にすべきかをシステム的に抽出しているわけであります。

例えば、ここに書いてございますとおり、インサイダー取引の視点から見れば、重要事実が発表されたときにその会社の株価がどう動いたかということをプログラムに組み込んでございます。重要事実が発生した時点からどのぐらいさかのぼれば価格変動がどのような状況にあったか、それに関与した証券会社がどのぐらいあったかというものが自動的に出てくるような仕組みを既に持っております。このような形で、省力化というか、効率的な審査体制ができるようになっております。

もう一つは、考査というのは、実際に出かけなければならないということでございまして、私どもは109社の取引参加社があるわけですが、これにどのぐらいのインターバルで、どのぐらいの頻度で行けるかどうかということになると、かなりインターバルが長くなってしまうという状況でございます。大体二、三年に1回ぐらい考査に行く状況でございますが、すべて証券会社のところに二、三年に1回行けているかというと、決してそうではないという状況でございます。

以上でございますが、よろしゅうございますか。

○ 田島委員

ありがとうございました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。どうぞ、淵田委員。

○ 淵田委員

追加的にコメントですけれども、結局、オフサイトモニタリングとオンサイトがあって、オフサイトに関しては、フォーマットの統一化など、そういうところで対応を進めていく。オンサイトについての負担感が特に多いようでありますので、その点については仕組み自体を少し考えていくということではないかと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

まだほかにもご意見、おありかと思いますけれども、ほかにまだご議論いただかなければいけない課題がありますし、今日は3時間ということで、初めての試みなので特に休憩等も予定しておりませんが、あとの件もありますので、このあたりにさせていただければと思います。

マクファーレンさんと角田さん、お忙しいところを来ていただきまして、どうもありがとうございました。また引き続きご意見を伺う機会もあると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○ マクファーレン国際銀行協会会長

また再びこのような場で意見を申し述べさせていただくことを期待しております。ありがとうございます。

○ 神田部会長

それでは、どうもありがとうございました。先に進ませていただきます。

続きまして、市場監視機能・体制強化との関連だと思いますけれども、冒頭にご紹介いたしましたように、島崎委員と吉野委員から、インサイダー取引規制についてのご意見をいただいており、お手元に配布させていただいております。今日はこの中を議論する時間はちょっとないと思いますので、この問題は次回以降、どういうふうに議論したらいいか等考えさせていただいた上で、議論するということにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、2つ目の柱へ移らせていただきまして、投資教育のあり方でございますが、今日は長崎大学の川村雄介教授にお話をいただくということです。長い間お待たせして恐縮ですけれども、どうかひとつよろしくお願いいたします。

○ 川村長崎大学教授

ご紹介いただきました長崎大学の川村でございます。本日はこのような意見を申し述べる貴重な機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

早速でございますけれども、お手元に資料2と銘打ってございますごく簡単な、レジュメと申しますより、メモをお配りしているわけでありますが、まず大きな1番、これ自体は既にさまざまな関係者の皆様から、いろいろ詳細なご報告がなされたやに仄聞しておりますので、頭の整理、私なりの理解ということで、これは飛ばさせていただきます。

2ページ目の大きな2番、3ページ目の III で何を言いたいかということでありますが、本日、私のよって立つ立場と申しますか、私なりに投資教育というものに関与している主体的、能動的な立場が一方であり、他方で、 III にございますように、現在、多数あるさまざまな投資教育プログラムであれ、あるいはサービスであれ、そのようなものを利用させてもらっているユーザーという立場、2つの側面があるということを簡単にメモったものでございます。

こういう日常的な投資教育というものの活動、受動、能動を含めてどんなことを感じているか、あるいはどんなことを課題として認識しているか、留意点はどうか。時間が大変限られているということもございますものですから、むしろ結論と申しますか、私の感触的なもの、つまり3ページの大きな4番について申し述べたいというふうに思っております。

4番、教訓と課題、やや大仰なタイトルで恐縮でございますけれども、これ自体は、今ほど申しましたように、定量的なデータとか、客観的な蓄積された基準に基づいて物申すというより、この数年間、日常的にこの分野にかかわってきた中から、正直感じているものについて列挙させていただいたものであります。また、ここでは、本来、場として、つまり教育の場としてさまざまな場が考えられるわけでありますけれども、家庭教育という場については除いてございます。したがって、つまり学校あるいは広い意味での社会人教育というものについてフォーカスしているというふうにご理解いただければと思います。

まず(1)でございますけれども、中学、高校レベルでの投資教育というものについてどう考えるのかというのが大きなテーマとしてあると思うのでありますが、実は先生方の間の意識の差と申しますか、関心の差というのは、非常にばらつきが大きいということがおしなべて申し上げられるかと思います。

例えば、総合学習で取り入れる。最近、カリキュラムの変更によりまして総合学習というのが小中高でございますけれども、その場合も、非常に積極的に投資教育、マネー教育を取り入れようという先生がいらっしゃる一方で、「そもそも何で中高の段階で金儲けを教えなければいけないのか」ということをはっきりおっしゃる先生もいらっしゃる。また、真ん中どころに位置する先生方としては、「どうもいいテーマが見つからない。ちょうどいいや、ではやってみようか」、こういう先生が存在するというのも事実でありまして、かなりばらつきがあるということが1点目であります。

2番目の点でございますが、ここで学生と言っているのは大学生ということでありますが、社会科学系、人文系、理系の学生によって相当濃淡がある。これはまさに実感なのでありますが、生活経済学あるいは家庭経済学という観点からの関心もあるのかもしれませんが、どちらかというと女子学生の方がこの分野では関心が強いのではないかという印象を持っております。

3番目でありますが、民間企業からの寄付講義というものの効果でありますが、本学では、昨年、そして今年度と800名をちょっと超える学生が寄付講義を履修しているわけでありますけれども、この波及効果と申しますか、本人、聞いている800人だけではなくて、その友人でありますとか家族等に対して、投資あるいは証券というものに対してのなじみが広がっていく効果は相当あるというふうに感じております。

具体的に一つの証左として申し上げますと、私自身のゼミの受講希望者、ちょうどこの時期が毎年、翌年からのゼミの受講希望者の面接受付というのをやっている、あるいはゼミ見学というのを実施している時期でありますけれども、初年度は大体10名程度だったわけなんですが、昨年は30名程度になって、今年は希望者が恐らく50名を超えてくるだろうというふうに、ここら辺も波及効果の一つなのかなという感じがすることが1点目です。

もう一つ、寄付講義になってきますと、何となく関心がある。中には、正直言って、中間試験もないし、レポート提出でオーケーだから、単位が取れるからいいやというイージーな学生がいるのも否定はできませんけれども、次第に継続的に十数こま、2単位、有単位の科目というふうに認定されている科目になってまいりますと、単なる関心というところから、学ぶという一歩二歩深いスタンスの方に入ってくる、こういう効果があるのではないかと思います。

4番目でございますけれども、中高生については、教材のコンテンツだとかプログラムの内容の是非、よさもさることながら、教え方、いかに教えていくかというメソッドの問題がある、これが大きなポイントではないか。

5番目としまして、幼稚園児等は別としまして、小学生はどうか、これはなかなか議論の余地があるのではないかと思っております。つまり、いきなり投資教育というものに入るのは正直、かなり無理がある。もっとベーシックな経済全般あるいは金融全般というものの基礎の基礎、これを教えていくという方がむしろ自然だし、望ましいのではないかという印象を持っております。

6番、7番以下は一般社会人でありますが、実は社会人と一くくりで言っても、知識や経験のレベルというものには大変差がございますし、もちろん関心にも差はあるわけであります。また、少なくとも一般社会人といった場合も、ジェネレーション、いろんな分け方があると思いますが、一つには若手、中堅、リタイア前後あるいはリタイア後というぐらいに、当然のことながらライフプランニングの観点から考えていけば関心が異なるのは当然でありまして、このようなセグメンテーションを行った上での投資教育というものを考えていく必要があるのではないかと思います。

次の8番、9番というのは、ある意味で共通、最も私が問題意識として強く思っている点の一つなのでありますけれども、ここ数年の間、教材や教育プログラムのアベイラビリティーは拡大してきて、これ自体は非常に結構なことだと思います。

ところが、それを利用する側から見たときに、よく言われるのは、何を選んでいいかわからないという疑問、いろんなご質問を私などに寄せられてくることが多いんですが、そのときには2つ、どうやって選んでいいかわからないということの意味がございまして、1つは、そもそもどの教材を選んでいいか、どのプログラムを選んでいいかがわからないというものです。もう一つは、選択するためのメジャーといいますか、選択するための基準をどういうことに置いたらいいのですかということです。言ってみれば、ボンドでいえば格付が高いか低いかという問題とともに、どの格付機関の格付ならいいのですかみたいなのに近い感じです。選択の基準自体が存在しているのか、あるいは存在しているとしてもどれを使えばいいのか、その辺がよくわからないという疑問がよく寄せられます。

これは、すなわち9番に書いてあることと密接に関連することだと思いますが、サービスあるいはプログラムというのが大変多いのでありますけれども、外部から見たときにばらばらで、整合がとれていないのではないか、統一性がないのではないかという点であります。言ってみれば大変巨大なスーパーのフロアにいろんな品物が置いてある、安いものも高いものもいろいろ置いてある。しかしながら、フロアプランがないものだから、何万坪もあるフロアを行きつ戻りつつする中、混乱しているというようなイメージが感じられるところであります。

その次のページの(10)でございますけれども、専門家の方々の間ではごくごく日常用語になっている言葉が、いわばジャーゴンのたぐいになってきているのではないか。例えばポートフォリオだとか、アセットアロケーションだとか、こういう言い方でも、恐らく一般社会人である程度関心をお持ちの方でも、私の感じでは、その言葉を聞いたこともないという方が9割ぐらい、どこまでを正確というかということにもよりますが、正確な意味を把握している人というのは1%もいるかいないか。これは、さっき申し上げたように、具体的なアンケートをとったわけではありませんで、あくまでも感覚でありますが、横文字だとか聞きなれない片仮名、数字、こういうものがぼんぼん出てきてしまう。

例えば「新株予約権付社債というのは株式のコールオプション付の社債なんですよ」と一言さらっと言っても、相手はぽかんとして、そのまま過ぎるというのが実態でありますし、また債券価格と金利の関係、専門家にしてみれば常識のイロハの世界も全くわかっていない方がほとんどだという前提から入っていかなければいけないんだけれども、その割にレベル的、あるいはさっきの教え方という問題とも絡むと思いますが、難しくなってしまっているのではないか。初期のIT教育、フィナンシャルリテラシーとITリテラシーの教え方の共通点みたいな問題を感じるわけであります。

それから、11番目というのは、いわゆるプロと言われている人たち、最近、名刺などを見ると、いろんな資格というのが書いてあるわけですが、外部から見ると、その資格は何ができて、どういうことを相談できるのかというのがいま一つよくわからない。例えば、弁護士とか税理士とか会計士と言えば、まずほとんどの人が一遍でわかるわけでありますが、最近、金融とか投資に絡む資格的なものについて、一般の外部の方がそれをはっきり認識できるかどうかというところについてやや疑問があるのではないか。

そして、12番目なんでありますが、現在はボランティア的なものが大変多い。投資教育というものの位置づけ、私としては、国民経済的に非常に重要で、必須とも位置づけられるべきものと承知しているわけでありますが、そういう教育コストを現状のままに放置しておいてよいのかということを大きな問題として感じるわけであります。

5番目にあるべき方向、全くの私見であります。例えばということで申し上げているわけでありますけれども、学校段階と社会人ではそれぞれ分ける必要は当然でありますが、それぞれにレベルに応じた体系的な教育というものが必要なんじゃないか。例えば、学校段階で申し上げますと、小中高でそれぞれ違うと思います。

先ほども申しましたけれども、小学生の段階では、いきなり投資教育ということではなくて、広く経済や金融の基礎レベルというものを学んでもらう。中学では、証券市場の基礎というより、いわば入門というようなものになるのかなと。高校生ぐらいから、基礎というものと、もう一つプラスで民商法の基礎というようなことを書いておいた理由は、金融消費者という位置づけは、恐らく我が国始まって初めて、ここ何年かの間で言われてきているのではないか。

これは何かと言えば、契約社会とマーケットというものを場とした中で、金融消費者というものはどういう権利義務を持っているのか、どういう債権債務関係というものがあるのか、あるいは会社という本来フィクティシャスなもの、人間がつくり上げてきた構造というものが法的にどうなっていて、それに対する責任と負担等々がどうなのかということ、高校生レベルからそういう意味でのある種リーガルマインド的なものを身につけさせておく必要があるのではないか、ここの部分をコンテンツとして特に強調したいなと私は個人的には感じているわけであります。

では、これをどうやってやるのかということでありますが、矢印の下に書かせていただきましたように、例えば金融庁等の関係省庁との連携をとりつつ、文部科学省が積極的に関与していかないと効果はなかなか望めないのではないか。例えば、英米等では、それぞれやり方が違いますけれども、具体的なある学年なりレベルなりの到達目標というものを示しながら、それに沿ったカリキュラムづくりというのが行われている。現在、日本の場合、指導要領の中に文言としては出てきても、そこまで明確ではない。この辺、文科省がかなり前面に出た関与というのが必要なのではないか。

大学についても、それの延長で考えられるわけですが、例えば、現在、昔と違いまして、いわゆる教養部という形をとっておりません。全学教育という言い方をしておりますが、全学教育の科目の中のどこに入れ込むかということは別として、必修科目の中に投資教育を何らかの形で組み込んでいく必要があるのではないか。最近、ご承知のとおり、大学によっては、リミーディアル教育と称して、高校時代の勉強の復習をするような講座も当たり前に開かれている、例えばそういう中での入れ込み方というのも必要かなという感じがしております。

社会人についてでありますが、これは、どっちかというと、アメリカの例えばジャンプスタートみたいなもののイメージも何となく私の頭の中にあるわけでありますが、中立的な機関なり組織、これはひょっとすると金融庁等、それに金融広報中央委員会、業界、企業、こういう関連している諸団体がジョイントのチームをつくって、ガイドラインをつくるというようなことが必要なのではないか。

ここで言っている公的認定講座というのは、ややちょっと強い表現を使っているわけでありますが、先ほど申し上げました選択基準を持つための一つのガイドラインみたいなものとして位置づけたらどうか。別に公的認定講座でないからだめだという意味ではありませんが、消費者の方の選択の基準としてこういうものを置いたらどうだろうか。

また、5ページ目にありますように、そういう中で、さまざまなシンクタンクがあるわけでありますが、例えば証券界の中に日本証券経済研究所もございますし、また投資教育という分野に関しての学会のようなものをつくり上げて、今後も検討していくということも一考したらどうかなという気がしております。

最後に、留意点と書いてございますように、既に相当体系立ったコンテンツや実績を持つカリキュラムがあるわけでありますから、全くの白地のキャンバスに絵をかくということではなく、活用できるものはできるだけ活用していくべきではないか。

2番目は、横断的な連絡を緊密にとっていく必要があるという趣旨でございます。

そして3番目、教えるスキル、ティーチングスキルを教育していくということが必要なのではないかというふうに思っております。

最後に、投資教育という表現は、非常に偏見を持たれるので、逆効果ではないかという見方が一方で強くございます。私もそれは正直感じないことはございません。しかしながら、これというのは、ある意味で価値観とのトートロジーの繰り返しみたいなところがあって、私は、こういう時期であるがゆえに、むしろ正面から投資教育ということを打ち出していってよろしいのではないかという気がいたします。

たまさか先ほど時間があるときに、前回どういうプレゼンか私、詳細は承知しておりませんが、藤田委員からの前回のコメントを拝見しておるわけでありますけれども、表現こそ違え言いたいことは同じことなのかなと。ざっと拝見しているところでありますが、そう感じております。つまり、投資教育というものを正面から取り上げて、検討、推進していく必要があろうかというふうに感じる次第でございます。

非常に駆け足で恐縮でございましたが、以上でとりあえずプレゼンを終わらせていただきます。ありがとうございました。

○ 神田部会長

どうも貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。

それでは、皆様方からご質問、ご意見があればお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。

とくによろしいでしょうか。非常に説得的なお話で、なるほどと思ってしまったところが私などは多々あるのですけれども、今、川村さんもお触れいただきましたが、きょうご欠席の藤田委員から前回のプレゼンテーションについてのご意見をいただいていますので、それもあわせてごらんいただければと思います。

よろしゅうございますでしょうか。それでは、川村さん、どうもお忙しいところをありがとうございました。大変貴重なご意見ですので、今後に生かさせていただきたいと思います。

今日はまだ2つテーマがあります。大変恐縮ですけれども、先へ進ませていただきます。

それでは、次の柱ということで、前回かなりご議論いただきましたが、投資サービスにおける投資者保護のあり方につきまして、前回までいろいろご議論いただきました内容をもとに論点を事務局で整理していただきましたので、その説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○ 大森市場課長

それでは、資料3に基づきましてご説明させていただきます。

このテーマは、委員の皆様、一見役所間の調整につき合わされているような印象をお持ちかもしれないんですけれども、金融庁で所掌しております証券取引所とか、ジャスダックなど新興市場あるいはグリーンシートといった市場からの調達手段と、例えばベンチャーキャピタルが組合型スキームを活用するのは、全く同一線上にある話でございます。ベンチャーキャピタルの投資先とか、ベンチャーキャピタル自身も成長すれば株式を公開いたしますし、資金調達のためにこういった組合型スキームを使うこともあれば、会社型の投資信託を使うこともあるわけです。

最初の丸に書いてありますように、経済効果が同じなのに、ツールをつくった役所が違うのでルールが違うとすれば、その方がよほどおかしいことだと思います。投資家にとっては、名称のいかんを問わず、経済効果が同じであれば同じように保護されるべきでしょうし、当面、当部会としては、経済産業省さん、法改正を予定しておられるということもあって、組合型スキームのルールをご議論いただいてまいりましたけれども、その後は、大きな括弧の中の最後の方に書いてありますように、包括的な投資サービス法制といったような、広く投資家保護のあり方を検討していく必要があるだろうと思います。

そこで、当面の組合型スキームでございますが、丸の2つ目にございますように、こういったスキームの活用が広がってきて、一部に詐欺的なスキームも見受けられ、たまたま一昨日、グリーンシートの担い手であるディー・ブレインの出縄さんと一緒になって、グリーンシート投資をしている投資事業組合も結構ありますが、「だれにでも簡単にできる仕組みになっていることが大変不安だ」と言っておられました。おかしなことをする人が1人出てきただけで、投資事業組合とかグリーンシート全体、まだ萌芽的な状況にあるものが不信感を持たれてしまうというのは、例えば日栄とか大和都市管財という会社のために、商工ローン業界、抵当証券業界全体がいまだ信頼回復に至っていないのと同じ構造ではないかと思います。

また、丸の後半に書いてありますように、これまでの中小企業の未公開株だけではなくて、上場株あるいは金銭債権などにも投資対象を拡大するのであれば、次のページにありますように、投資信託やSPCと同じ投資家保護の仕組みにする必要があるのではないかということでございます。

2ページ目の最初の丸は、アメリカでのリミテッド・パートナーシップは、黒沼先生のご専門ですけれども、ハウィー基準、共同出資して、他社の努力による収益獲得を期待する。そういったものであれば、証券法上の投資契約として開示、販売、不公正取引規制というものが課されて、投資家保護が図られますし、ちょっと飛んで、EUにおいては、パートナーシップを用いた証券投資は、それ自体、認可制で、開示義務あるいは許可を受けた販売業者だけが行えるということになっております。

ただ、一方で、次の丸にありますように、前回、ベンチャーキャピタルの方からプレゼンをいただきましたけれども、私募的な世界で引き続きやっていかれるというのであれば、過度な規制が課されてはならないというのは当然だと思います。

そこで各論にいきますと、まず開示、投信やSPCも公募であれば証取法の開示義務がありますから、組合型のスキームも公募であれば同じことであろうということであります。

次に、販売に当たっては、広く一般投資家を相手にするなら、ここにありますように、断定的判断を提供して勧誘してはならないとか、適合性原則を遵守せよというのは当たり前のことではないかと思います。

その次は、販売業者と当局の関係は、組合型スキームを含む商品ファンドあるいは不動産特定共同事業のファンドでは許可制ですし、次のページへいきまして、投信やSPCは登録制となっておりますので、ここでも最低限の仕組みは必要ではないかということでございます。

それから、不公正取引規制というのは、証券取引法でも先ほど申し上げたように、販売業者に課せられた義務と発行体も含めて何人もやってはいけないということがありまして、風説を流布するとか、偽計を用いるとか、それはどんな投資商品であってもやってはいけないというのは当然のことではないかと思います。

最後に、最初に書いてあることをもう一度繰り返すことになりますけれども、ビッグバンの市場改革に対する当時のご批判として、包括的、横断的な金融サービス法になっていないという意見があって、その当時は、これだけ一生懸命改革をやっているときに、ためにする批判ではないかというふうな反発もあったんですけれども、冷静に考えますと、また神田先生からもしばしばご指摘をいただいておるんですが、証取法の枠外にいる方々にとっては、大体が有価証券とか証券業といった概念そのものがかなり違和感があるだろうと思います。

一方で、貯蓄から投資への流れを加速していく必要性とか、個人投資家のすそ野を拡大していく必要性が自明の国策となっている現在、預金や保険まで含めてすべての金融サービスというより、投資サービス、投資商品という切り口で包括的な投資家保護の仕組みがあった方がよいだろうとは言えると思います。

経済産業省とも総論的な認識は一致しておりますが、ただ各論になりますと、おのおの引きずってきた歴史とか背後の業界なりがありますから、今回の話は比較的シンプルですけれども、先行きなかなか一筋縄ではいかないところがあるだろうとは思います。直ちに法改正を視野にということではなくとも、この点は今後当部会で議論していただきたいと思っているところでございます。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今ご説明いただきました点につきまして、前回もかなりご議論いただきましたけれども、ご意見をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。東委員、どうぞ。

○ 東委員

今ご説明いただいた大枠は全く同感でございます。この資料にも盛られていますけれども、将来的に一般投資家がかかわる際の保護というのはルールの枠内に置かなければいけないだろうと思いますが、一方で、前回も議論になりましたが、現状ではプロの方を相手にしています。この中にも盛られていますが、この際はっきりと認識を分けて対応する必要があるのではないかと思います。つまり、プロに対してのルールをどうつくっていくかというのが現状では一つの重要なポイントになるのではないかというふうに思います。

そして、同様に日本のベンチャーキャピタルの市場が欧米に比べて小さいという指摘が前回もあったわけですが、その中で感じますのは、逆にプロの育成も遅れているのではないかという点であります。これは既に適格機関投資家等々、枠が広がっているわけですが、適格機関投資家につきましても、例えば事業会社であれば、有価証券の運用残でたしか100億円以上を適格機関投資家とするというような縛りがあったように思いますけれども、これに関してもプロを育てるという意味でもう少しハードルを下げるようなことも検討してよいのではないか、そんなふうに感じました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。岩原委員、お願いします。

○ 岩原委員

資料3の論点に書いていただきました基本的方向は、前回の部会で私が申し上げた方向と一致していると思いますので、ぜひこの方向で進めていただきたいと思います。

さらに望むべくは、一番最後に書いてあるように、できれば包括的にこういう問題にアプローチする仕組みがあるのが一番望ましくて、現に現在でも特に消費者被害的な問題が起きていることがはざまの分野で出てきております。外国為替先物ですか、証拠金取引ですが、ああいったものが次から次へイタチごっこのように出てきてしまいまして、それがまさに投資家のトラブルとして問題になって、金融トラブル連絡調整協議会の場でも、そういったことがいろいろ指摘されているわけであります。

一般的なスキームがないと、どうしても問題が起きるたびごとにやっていかなければならない。個別に立法して後追いになってしまいますので、できれば新しく出てくるような商品についてもカバーできるような一般的な仕組みを今後つくっていく必要がある、ということをぜひお願いしておきたいと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

事務局で書いていただいたような方向を目指すことについて特にご異論はないと思うのですね。ただ、留意点は幾つかあって、前回もありましたし、東委員からご指摘もありましたけれども、例えば私募と公募の線引きをどういうふうに考えるのかということは課題ですし、前回ご指摘がありましたように取り扱いの方の問題と投資者保護の問題をどういうふうに整理するのかということはありますので、そういう意味で中を柔構造というか、柔軟な状況にしていくというような課題はあると思います。

また、従来の証券取引法とか有価証券とかという名前がいいのかどうかという問題もあるとは思いますけれども、それはともかくとして、目指す方向として、今日、紙に出していただいているような方向で、いわば柔構造を持った横断的な投資者保護というところは、恐らくそれほどご異論はないというふうに感じるのですけれども、そんなようなことでよろしゅうございますでしょうか。

それでは、そういう方向でさらに事務局の方で詰めていただくということで、よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

それでは、今日の最後になりますけれども、「証券取引法第65条について」と題しました資料について事務局の方からご説明をお願いします。

○ 大森市場課長

資料4に基づいてご説明させていただきます。長時間になって恐縮なんですけれども、最後の点でございますので、よろしくお願いいたします。

65条についてご議論いただきたいのは、第一部会再開の初回に永易委員からご提案があったからではなくというのも失礼なんですけれども、個人投資家のすそ野の拡大、先ほど来申し上げていることが金融行政最大のというか、重要なミッションだからでございます。

そこで、まず法律の構造をおさらいいたしますと、証券業の定義として、金融機関以外の者が行う有価証券の売買、売買の媒介、委託の媒介、引受け等々と列挙されておりまして、次に証券仲介業の定義は、証券会社の委託を受けて、当該証券会社のために行う行為として、中味は、証券業でアンダーラインを引いたのと同じ中味になっております。要は、証券業と証券仲介業は概念が重なっておるということであります。次が28条で証券業の登録制。次の65条は、1項で、金融機関は、第2条8項に掲げる行為、すなわち証券業を営業としてはならない。2項で、1項の規定は、金融機関が、国債、投資信託などにつき、証券業を行う場合には適用しないとなっております。

次の証券仲介業は、先ほど申し上げたように、証券業と概念が重なりますから、現在は65条を前提に、金融機関以外の者が行うことができるとなっております。

次のページに事務ガイドライン、かつての通達がありまして、金融機関が引き受け、証券会社の行為の一部を代行することは、65条1項、証券業禁止に違反するおそれがあると書いてありますので、銀行なり信用金庫の貸出先のうち、株式公開を希望する企業に所要なアドバイスをするとか、そういった企業を引受証券会社に紹介するという証券業ではない事実行為も、あたかも65条に抵触するかのごとく観念されてきたという現実がございます。

そこで、こういった金融機関による市場誘導ビジネスとも言うべきビジネスについて頭の整理をしたのが2番目でございます。

企業の成長段階に応じた資金調達の出世ルートといいますか、だんだん大きくなるにつれて、池尾先生のお嫌いな用語ですけれども、間接金融の世界では、小さいうちは信用金庫とか信用組合で、だんだん大きくなると地銀、第二地銀、さらに大きくなればメガバンクとおつき合いをしていく。直接金融の世界では、未上場株のグリーンシート、新興市場、取引所二部一部といった出世ルートがあるわけですけれども、残念ながら後者の認知度は圧倒的に低い。

例えばグリーンシート、人気のあるレストランがあって、1億円ぐらいかけて増築を考えるオーナーというのは、普通なら取引先の地銀とか信用金庫から借りようとするわけですが、常連客100人に声をかけて100万円ずつ出してもらう、株主になった常連客は引き続きそのレストランを支えていく。そういう世界でありますから、資料に書いておきましたように、大半が縁故増資に応じた個人であって、これまで株式投資の経験も乏しいし、長期保有傾向が強い。ただ、これを逆に言いますと、潜在的にグリーンシートで公開可能な膨大な数の中小企業が実際に資金調達手段として活用するようになれば、新たな個人投資家のすそ野は飛躍的に拡大する可能性があるということではないかと思います。もちろん大変リスクの高い投資対象ではあります。

これまで株式公開を手がけてこられた証券会社やベンチャー・キャピタルにとって最も手間、コストがかかるのが対象企業の発掘でありまして、100社当たって幾つかというような、そんな世界ではないかと思いますけれども、一方で、日本の現状の金融システムにおいて、中小企業の業務や財務の実情、経営者や社員の意欲能力を最も熟知しておるのは、銀行あるいは信用金庫、信用組合といった協同組織、広い意味での金融機関であることもまた確かであろうかと思います。

であれば、先ほど申し上げたように、金融機関が既によく知っている貸出先のうち、株式公開を希望する企業に所要のアドバイスをするとか、そういった企業を引受証券会社に紹介するといった業務がフィー・ビジネスとして行われて然るべきなんですが、現実には行われていない。これは、65条の呪縛といいますか、そういった途端に思考停止して、何となく幅広く法律を解してしまうということではないかと思います。

現在、例えばグリーンシートであれば、先ほど申し上げたディー・ブレイン証券あるいは松井証券といったところも新規に参入いたしまして、地銀あるいは信用金庫の方に「皆様方の貸出先にグリーンシートで公開可能な企業は山ほどあるはずなので、紹介してくれませんか」というようなオファーを活発にやっておられるようですけれども、受けた側は、その気はあっても、「65条があるので」というような反応が結構あるそうでございます。

あるいは、当部会の再開初回に永易委員から、こういった業務がフィー・ビジネスとしてやれるようになればというご発言があったということは、東京三菱銀行の企画部でもやれないという前提に立っておられるのかなと思わざるを得ないんですが、ただ2ページの下から2番目の丸に書いてありますように、先ほどおさらいしたとおり、65条は金融機関に株式の売買あるいは引受けといった証券業を禁じているわけでありまして、アドバイスや紹介はもともと証券業ではないわけでありますし、仮にこれらが証券業だとすれば、ベンチャー・キャピタルは無登録で証券業を営業していることになってしまうということであります。

確かにこのページの上に書いてありますような事務ガイドラインがあって、こんなことが書いてあると、現実に証券会社が行っていることは金融機関には一切できないという認識を形成してきたという面はあるかと思います。それであれば、3ページに、こういったアドバイスあるいは引受証券会社への紹介は、65条とは関係なく銀行法の付随業務として行えるとガイドラインに明記すれば金融機関にとって明確になるに過ぎない、そういう問題だろうと思います。

金融機関が貸出先企業の成長段階に応じて、小さなものであればグリーンシートとか新興市場、さらには取引所まで誘導する業務を新たなフィー・ビジネスとして確立するということは、昨年、金融審議会に取りまとめていただいた中期ビジョンの方向性、一言で言うと、銀行のビジネスモデルとして、市場と共存するといいますか、一たん貸したら最後まで抱え込むのではなくて、銀行の仕事としては、信用リスクを評価して貸し出しを組成するというのが基本であって、その後、債権は切り離され、あるいは証券化されて、投資家に販売される。そういった前提となっているビジネスモデルでありますが、そういう方向性とも整合的ですし、また証券会社にとっても、みずから発掘するより、金融機関に公開候補を連れてきてもらうことによるパイの拡大メリットが大きいのではないかと思います。

ちょっと長くなりましたけれども、ここまでが頭の整理であって、法律が禁じてもいないことを、法律の解釈を明確化するにすぎないガイドラインが制約している状況を放置しておくのは行政の怠慢ということだろうと思います。

前置きが長くなりましたが、3以下が審議会としてご議論いただきたい制度論でございます。

5年前の日本版ビッグバンに際しては、金融機関の証券子会社の業務を自由化するとともに、金融機関本体による投資信託販売を解禁いたしましたが、先ほど冒頭に申し上げた65条の基本的な構造は維持して、現在に至っております。

65条の母体となったグラス・スティーガル法、1933年銀行法の主要規制は99年、グラム・リーチ・ブライリー法により廃止されましたが、現時点において、日本の金融システムの実情に照らして、預貸業務と引受証券業務が連携して動いて利益相反にならないかという問題、それから金融機関のリスクを限定して健全性を確保する必要がある、そういった政策目的の意義をどう考えるかということでございます。

恐らくいろいろな考えがあって、特に日本の銀行は、「不良債権問題を解決して本業を立て直して、信頼を回復するのが先決であって、業務範囲の拡充ということを言っている場合か」という意見もあれば、そうはいっても証券会社よりは国民に信頼されているのではないかという考えもあると思います。

ただ、いずれにしても昨年、証券仲介業の導入に際して、65条があるので銀行をア・プリオリに除外してしまったというのは、やや行政の側も呪縛されていたような気がするわけで、3の3番目の丸にありますように、顧客口座を持つ証券会社のために、売買の勧誘とか媒介を行うというのは、当初懸念された利益相反、銀行経営の健全性といった趣旨から言うと、あまり関係ないのではないかという気もします。日興コーディアル証券がローソンの7,000店舗を活用していこうというときに銀行の店舗は活用できませんという仕組みの方が、国民に対して説明しにくいのではないかという気がします。

同じように、やや小さな話ですけれども、ETFは銀行が扱える、実際には扱っていませんけれども、REITは制度的に扱うための手当てができていないという点も同様、国民に説明しにくい話ではないのかなと思っております。

事務局からは以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

大森さんらしい過激な表現もちょっと入っていたと思いますけれども、そこは皆様の方でしかるべき解釈をしていただくということで(笑)、今ご説明いただきました資料4につきまして、どの点でも結構ですので、ご質問、ご意見をお出しいただければと思います。どうぞ、永易委員。

○ 永易委員

今のお話は2つの部分からなっていると思いますけれども、前半戦の表現を使わせていただくと、市場誘導型ビジネスというんですか、誘導ビジネスというんですか、こちらの話でございますが、私どもとしても、事務ガイドラインの呪縛というのは本当にきつくて、銀行は、グレーの解釈というのは基本的にはやらないんです。白にならない限りやらないというのが基本ルールです。極めて例外はありますが、この部門というのはそういう解釈で、もしこのような形でガイドラインの対応をしていただけるのであれば非常にありがたいと思います。

9月の出だしのとき、私は、たしか逆方向なので、広い概念の証券仲介というような表現をしたような記憶が残っておりますけれども、発行体と証券会社の間に入って仲介をしたいという意味で申し上げたと思います。これが市場誘導ビジネスという形で表示されている。

このペーパーのとおりだと思いますけれども、現実に解除になるとどういう流れになるかというのを若干考えてみますと、例えば東京三菱銀行、私どもの銀行ですと、会社ベースのお客さんというのは10万社を超えます。九十数%は中堅、中小企業、社数でいったら90の上の方です。したがいまして、できたら直接金融にいった方がいいなというようなお客さんは実はたくさんいます。

ただ、証券会社さんへの単純な紹介だけであれば、今だってできるんですね。これはここに書いてありますとおりフィー・ビジネスにはなりませんので、各支店というのは、一応営利団体として動いておりますので、目標を与えられて、それをやるためにその一部としていろんなことをやっておりますので、要は、フィーにならないようなことはやらないというのが普通です。したがいまして、こういうことができるようになりますと、目標管理というのか、営業店を全部動かすという形、計画をつくって、これだけが目標ですよという形でできる、そうすると物すごい勢いで動き出す可能性があるだろうという気がいたします。

特に私どもの場合は、三菱証券というのがあるんですけれども、それの間でも実はできないわけです。そういう問題もある。もちろん三菱証券のためにだけやるつもりはありませんけれども、これは大変効果があるのではないかなという気がいたします。

証券仲介の方ですが、これについても、私どもとしては、利益相反とか健全性の確保という問題はないという認識、この前申し上げたとおりであります。

個人投資家の育成という観点に立ちますと、これは自信がありますと申し上げましたけれども、株式投資のケースなんかはまさにそうだったわけであります。教育のところでいろんなお話がありましたけれども、一番即効性があるのは、銀行の窓口に来る人、初めて投信をやる人がいっぱいいるんですね。株についても全体にそうだろうという気がします。その場は1人当たりすごい時間をかけて説明しております。これが教育の一部にもなるのではないかなという気がしながら、さっきの教育のときも聞いていたような状態であります。ぜひ検討していただきたいと思います。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

いかがでしょうか。高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

証取法の大権威である大森さんの極めて論理的なご説明なので、論理的に反論するつもりは全くないですし、永易さんの証券市場の活性化に役に立つではないかという御説明は、それは全部そのとおりだろうと思います。

「市場誘導ビジネス」については、これを進めるに当たって、65条といいますか、こういう発想の原点の一つは、ここにも書いてありますように利益相反ということだったんですね。今の永易さんのお話にけちをつけるわけではないんですけれども、融資先が重荷になっちゃったというところに、グリーンシートで資金調達させて、貸し付けを回収するというようなことを考えますと、これが一番典型的な、もともとオリジナルな利益相反だったと思います。

そういうことが起こったとすれば、これは投資家にとって大変な損失になるし、大事に育てようと思っておりますグリーンシート、新興市場、そういう活用を進めていかなければならないときに大きなダメージになってしまうだろうと思いますので、そういうことも踏まえて進めていただきたいという気がいたします。

それから、仲介業の話でございますけれども、これも先ほどの大森さんのお話、私、異議を申し上げるつもりはないんですが、ただこっちでもちょっと気になりますのは、(1)利益相反と(2)リスク限定による健全性確保、現在時点ではこれが65条の趣旨だろうという御指摘です。そういうことだろうと思いますけれども、もう一つ考えておかなければいけないのは、投資家の混同を避けるということなんですね。預金商品とリスク商品である証券商品の混同を避けるということで、例えば共同店舗というときにも、その間をしっかり、誤認がないようにいろいろ工夫するという前提で共同店舗が進んだかと思います。

共同店舗からさらに一歩進めて、具体的にどういう形にするのかイメージがまだ必ずしもわいていないんですが、銀行の職員が仲介業の職員として対応するということになりますので、投資家の混同を避けるための工夫というものが要るのではないかと思いますし、これもまたいろいろ考えてみますと、例えば貸し付けをするから有価証券を買いなさいというようなことが起こってしまう。具体的にそういうことをするだろうということを言っているつもりはないんですけれども、いろんなケースを考えてみますと、貸し付けを前提として有価証券を勧誘するというようなことが起こってしまいますと、投資家にとってためにならないことになってしまうということもあるのではないかなというふうに思います。

市場活性化あるいは個人投資家の参入促進という意味で一つのご提案だということは十分認識いたしますけれども、進めるに当たって、逆作用ということが起こらないように配慮しながら、慎重に進めていただく必要があるのかなというふうに思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

前向きのご意見と慎重にというご意見が出たと思いますが、ほかの皆様方、いかがでしょうか。嘉治委員、お願いします。

○ 嘉治委員

ありがとうございます。投資教育との関連にちょっと戻ってしまうんですけれども、先ほど永易委員が顧客に対して根気よくわかるまでご説明するというようなことをおっしゃっておられましたので、それを聞いて私が思ったことは、それがまさに日本の消費者で、これから証券投資を始めようかなと思っている人にとっては大事なことなのではないかなと思いました。毎回同じようなことを申し上げて大変恐縮なんですけれども。

先ほど川村教授のお話の中にも、3ページの(8)のところに「数多い教材や教育サービスの中から適切なものを選択する手立てがみつけにくい」ということが出ておりましたので、情報のリソースとしてはそこに存在しているんですが、消費者がそのときに持っている疑問とか不安みたいなものもあるかもしれませんが、それにカスタマイズされた形で渡っていない。選ぶ能力もないということが今日、川村教授のお話にありましたけれども、根気のよい説明、1対1の説明ということが、少なくとも過渡的な措置としては大事な役割を果たし得るのではないかというのが私の持っている印象でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。淵田委員、どうぞ。

○ 淵田委員

証券仲介業のところの記述で、グラス・スティーガル法は廃止とありますが、実際に起きたことは、GLB法のもとでの機能的規制の徹底ということであります。どういうことかといいますと、改めて言うまでもないかもしれませんけれども、銀行であれ証券業的なことをやっているのであれば、それは系列の証券会社でやりましょう。その系列証券会社でやれる業務の規制をどんどん緩和しましたから、ということであって、銀行の看板のままで証券業をどんどんやれるようにしたわけではない。つまり、証券業をやる人たちのことを証券会社と呼ぶのであって、証券業、証券会社というものを証取法のもとでその機能はきちっと分けて規制いたしましょうというのが、機能的規制の徹底をしていくという意味だと思います。

我が国においても、ビジョン懇話会などでも、機能的規制という方向性を目指そうということが提言されているわけでありまして、本来、証券業的なことをやるのであれば、系列証券会社も自由につくれるようになった時代でありますから、何で証券会社の看板でやらないのか。その大きな理由は、証券会社の看板を掲げると先ほどの話によりますと非常な不信感がある、そういうところに尽きるような気がしてしまいまして、実感としては理解できないこともないんですが、少なくとも論理的ではないなという気がいたします。これは感想でございます。

その上で、証券市場の活性化あるいは証券投資の普及ということでここに書かれたようなことが効果がある、そういう期待は当然あるわけでございます。ですから、そういう効果をフルに発揮できるように、先ほど高橋委員がおっしゃったような弊害がない形になるよう、言うまでもなく当然留意しながら進めていくという姿勢が大事かと思います。

具体的な事例を先ほど幾つかお挙げになっておりますが、私なりに整理しますと、1つは、一部の事業会社と銀行というのは異なる性質を持っている、またかという感じの議論でありますけれども、例えば信用供与能力を持ち合わせているというところです。不良債権を回収するために証券市場を使うという古典的な例ですとか、あるいはお金を貸すから買えとか、買わないと貸さないぞとか、その手のことを使うパワーがあるということ。

もう一つは、情報の流用の問題でありまして、銀行業というのは、顧客の資金にかかわる決済口座とか、さまざまな情報が集積する、あるいは住宅ローン、だれが幾ら借りているといった情報がある。実際これが使われているということではなくて、そういうものを使い得る立場にある。例えば、この人は預金をいっぱい持っているから、預金口座解約の用紙と株式の仲介業としての申し込み用紙をセットにして、「いかがですか」とやるとか、いろいろ具体的な事例というのは想像し得るわけです。あるいは、こういうふうに規制緩和していく上で、こういう弊害が起きないように進めていくという枠組みができているのか、別に本日でなくても結構ですので、今後つくっていくのかということを整理していただければ、安心してこういうものに期待できるのかなと思っております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

証券会社の立場からはいかがでしょうか。板谷さん、何か言っていただかないと……。

○ 板谷委員

65条という構造的な問題につきましては、高橋委員の方でご意見がありましたが、基本的には同様に考えております。また、淵田委員に整理していただきましたけれども、そういう方向でまたきっちりと議論したいと思います。

あえてそうでないところについて申し上げますと、市場誘導ビジネスのところなんですけれども、個人の参加者を拡大して、すそ野を広げることの一つのアイデアということだろうと思います。ただ私、少し気になりますのは、ここにあるグリーンシートの投資家あるいは縁故増資に応じる個人、よいレストランであると思った100人が集まる、そういう投資対象は、新たに参入する個人の投資家の投資先としてふさわしいのかは少し疑問に思っております。

そういう企業というのは通常公開されている会社のような形のものではないですから、証券投資というよりビジネスパートナーに近いのではないかと思います。個人投資家の拡大は望まれますが、その方々にビジネスパートナーを期待するというのは、出発点では少し異なるのかなと思います。長い目で見て将来的には変わるという要素はあるのかもしれませんけれども、そこをどうやって進めていくのかというのは、一定の条件というのを整えなければ、逆効果が出てもいけないのかなという感じを持っております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、岩原委員。

○ 岩原委員

何となくかつての亡霊が動いている問題が多いような気もするんですけれども、最近の経済環境で、ある意味で業際的な問題がかつてのような感じではなくなっているところで、改めて考え直そうということだと思います。

ただ、改めてこういうふうな形で出てくると、65条というのは一体何をレギュレートするものなのか、何が最低限押さえられるべきなのか、もう一度考え直す必要があるのかなという気がします。さっき淵田さんがご指摘になったように、GLB法、確かにグラス・スティーガル法の重要な部分は廃止しましたけれども、一方で残っている部分もあるわけで、残した部分、日本で言えば65条でどういう点を最低限押さえるものとして残すのかという点を押さえておかないといけない。単に当面の問題、何らかのビジネスニーズに応じた解釈に少し手をつけるというだけでなくて、長い目で見て、65条、さっきの淵田さんですと、ある機能に即した規制体系に変えていくための一つのアプローチではないかというふうに思いますけれども、そういうのを含めて、改めて何を最低限押さえるものとして残すのか、ここで考えておく必要があるのかなというふうに思いました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

おっしゃるとおりですね。先ほどの投資サービスと似た面がありますね。大きな流れをきちんと整理して、その流れへ向かって個別の問題をやっていきませんとてんでばらばらみたいになってしまうというのは全くそのとおりだと思いますけれども、いかがでしょうか。20年前に事務局から65条と書いた紙が出てきたら、爆弾ではないかということだったのではないかと思いますけれども(笑)、ほかにいかがでしょうか。

それでは、65条の意義等もまたよく考えて、きちんと議論したいというふうに思います。高橋委員、淵田委員からご指摘がありましたような点もきちんと整理しなければいけないというふうに思います。しかし、他方で言えば、こういう論点を提示させていただいたということは、永易委員からご発言がありましたように、こういう問題を前向きに考えていくということ、今そういうニーズが求められている面もあるということだとも思います。

私が余計なことを言うのはどうかと思いますけれども、2.の方は、一部、投資顧問業法との関係の整理が必要になりませんかね。これを言い出すと、投資顧問業法の方も、日本は、投資ジャーナル事件というのをきっかけにつくったちょっと変な法律で、変な法律といっては何ですが、つくられた経緯がそういう法律であって、アメリカのアドバイザリーアクトのような経緯で出てきたものではないですよね。ですから、投資運用者の方は投信法の中に日本は入ってしまっているので、相手が1人なのか2人以上なのかという変な線引きにもなっていますし、投資顧問業法そのものを本当はきれいにしなければいけないという課題がそれこそ中長期的にはあると思いますけれども、個別の有価証券の売買のアドバイスをフィーを取ってやるということになると、そことの調整を整理しておく必要があると思います。

今日は3時間という長丁場で、そろそろ3時間になってしまって、休憩もとらず大変恐縮でございましたけれども、65条という資料4につきましては、基本的な問題も含めてさらに皆様方でお考えいただきまして、具体的に今日事務局からご説明いただいた点を含めなおご意見がございましたら、直接事務局の方へお出しいただければ大変ありがたいと思います。

そういうことでよろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。

それでは、本日の審議はそろそろ終了ということにさせていただきたいと思います。

今後でございますが、できれば年内をめどに報告書の取りまとめに向けた審議を詰めさせていただきたいと思います。今現在、ワーキングの方で難しい議論をお願いしているような点もございますし、そうなりますと12月中にこの部会は2回開催せざるを得ない、さらに予備日としてもう一回ぐらいいただくということを考えざるを得ないというふうに思いますけれども、せっかくのことですので、おつき合いいただければ大変ありがたく存じます。

最後に、事務局の方からのご連絡等がありましたら、お願いいたします。

○ 大森市場課長

次回は12月9日の日程で開催させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、大変長時間、今日はありがとうございました。以上をもちまして散会いたします。

サイトマップ

ページの先頭に戻る