金融審議会金融分科会第一部会(第16回)議事録

日時:平成16年4月16日(金)10時00分~12時15分

場所:中央合同庁舎第4号館(9F)金融庁特別会議室

○神田部会長

ただいまから第16回の金融審議会金融分科会の第一部会を開催させていただきます。

皆様方にはいつもご多用のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

この第一部会でございますが、昨年12月に部会の報告として「市場機能を中核とする金融システムに向けて」を取りまとめ、以降、しばらくお休みをさせていただきましたけれども、また本日から開催させていただきたいと思います。

当部会のメンバーですが、お手元にお配りしております名簿をご参照いただきたいと思います。

今回、新たにご就任されました皆様方を、私の方からご紹介させていただきます。

まず、委員でございますが、名簿順で、木村裕士委員でございます。

○木村委員

木村でございます。よろしくお願いいたします。

○神田部会長

次に、原早苗委員でございます。

○原委員

原です。よろしくお願いいたします。

○神田部会長

次に、専門委員でございますが、これも名簿順、アイウエオ順にいきますと、まず、石橋三洋委員でございます。

○石橋委員

石橋です。よろしくお願いいたします。

○神田部会長

次が、太田省三委員でございます。

○太田委員

太田でございます。よろしくお願いいたします。

○神田部会長

奥野順委員でございます。

○奥野委員

奥野でございます。よろしくお願いいたします。

○神田部会長

田中浩委員でございます。

○田中委員

田中です。よろしくお願いします。

○神田部会長

種橋潤治委員でございます。

○種橋委員

種橋でございます。よろしくお願いします。

○神田部会長

以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、今後、今の皆様方を含めて、名簿にあるメンバーでご審議をいただくことになります。皆様方にはどうぞよろしくお願いいたします。

また、この場では忌憚のないご意見を積極的にご披露いただければと思います。

なお、議事は、いつものことですけども、公開になっておりまして、報道機関の方々のために後ろの方の席を確保しております。

それでは、早速議事に入らせていただきます。

本日は、お手元の議事次第に従いまして、今国会に提出されました証券取引法等の一部を改正する法律案、その他の第一部会報告のフォローアップ、それからディスクロージャー・ワーキンググループにおける検討状況、これらにつきまして事務局等から、まずご報告をいただきます。それから、今日のメインのテーマになりますが、本年度の検討方針、すなわち一体この部会でこれから何を審議いただくかということについて説明していただきまして、この部会で審議していく今後のテーマにつきまして、皆様方からご自由にご意見をお出しいただければと思います。

それでは、早速ですが、まず証券取引法等の一部を改正する法律案、その他の第一部会の報告の、いわばフォローアップとでも言うのでしょうか、につきまして事務局からの説明をお願いします。

○大森市場課長

基本的には、昨年暮れにおまとめいただいた報告の内容を条文化して、先月冒頭に国会提出をして、審議入りを待ってる状況ですが、お詫びといいますか、お断りすべき事柄が2つございます。

資料1-1を1枚めくっていただきますと、法律案要綱がついておりますが、その6、銀行による証券仲介業につき、当部会ではとりわけ銀行の系列関係にある証券会社の場合に弊害が生じるおそれが大きいんではないかと。であれば、その系列関係にあるという、いわば外形基準に基づいて業務を制約すべきではないかといった意見があり、一方、系列関係にあるからといってどの程度の弊害があるのか定量的に明らかではない、想定できない以上、アプリオリに規制に差を設けるべきではないといった意見もございました。

このため、銀行による証券仲介業は当局による認可制とし、業務を始める前に、系列であるがゆえの弊害防止体制が整っているかどうかを含め、行政がチェックするということでおまとめいただいたわけでございます。

この点が与党の法案審査の過程で問題になりました。もちろん証取法に限った話ではございませんが、事前予防的な行政裁量を可能にする認可制あるいは許可制を極力排して、要件を満たせば登録して業務が行えるようにすべきだというのが、現在の与党の法案審査の基本スタンスでございます。

本件についても、行政が権限を留保したいがゆえの認可制ではないということは、もう重々承知された上で、そうはいっても認可制のほうが業態間の話がまとまりやすいというような、そういう考え方そのものがいかんだろうと言われますと、なかなか恐れ入って立法府のご判断に従うしかないわけですけれども、ただ当然ながら、認可制が登録制になったからといって、銀行としてこの業務を行う場合にやらなければならない体制づくりとか遵守しなければならない義務は何ら変わりはございませんので、体制が整ったので認可してください、わかりましたという、そういうプロセスがなくなって、検査で事後的にチェックするということでございます。

もう1つ、法案要綱の2ページ目の8でございますが、市場監視機能については、報告をおまとめいただく段階では、法務省あるいは内閣法制局などと具体的な内容が詰めきれておりませんでした。課徴金の水準について、報告の段階では違反行為による不当利得の吐き出しは必要だが、市場への信頼を傷つけるという社会的損失をもたらしていることを考慮し、抑止のために十分な水準となるよう検討すべきであるとされましたが、結局、ここに書いてありますように、不当利得相当額の吐き出し、また虚偽開示の場合には募集額の1%ないし2%という形で立法化することになりました。エンフォースメントのツールはないよりもあったほうがいいわけですから、今後、運用の実態を踏まえて、小さく生んで大きく育てることもあり得べしということだと思います。

また、アメリカのような、行政判断による差止命令の導入も検討すべきであるとされた点につきましては、今回は成案に至っておりませんで、引き続き検討させていただきたいと思います。

また、行ったり来たりで恐縮ですが、1枚戻っていただきまして、要綱の「4.民事責任規定の見直し」については、現在発行開示の虚偽記載があれば、被害者が発行会社の過失を立証することは不要とされておりますが、同じ扱いを継続開示にまで拡大をいたします。

こういったエンフォースメントの話になりますと、さまざまな政府の各担当部門にも、その固定観念と戦わなければならないということが、制度をつくる上で事実上の障害になっていることが結構ございまして、今後、投資サービス法とかあるいはインサイダー取引規制の仕組みを検討していくに際しても、恐らく同じようなハードルが出てくると思いますので、そういったものにどう対応していくかも想定しながらの骨太の議論をお願いしたいと思います。

また、法律マターではありませんけれども、自主規制について、株式会社化してその営利追求をする証券取引所、あるいは業界団体でもある証券業協会に有効な自主規制が可能かどうかという論点につきまして、報告では、その自主規制型の業務から独立して行われるように担保すべきであるとおまとめいただきました。

証券業協会においては、この課題に対して、年明け以降、特別委員会を設けて精力的に取り組まれて、定款変更、組織分離により、おのおのの業務を独立して効率的に執行するという結論が得られておりますので、後ほど高橋委員からご報告いただければと思います。

同じく、法律マターではありませんけれども、資料の1-2をご覧いただきますと、投資教育については、学校から社会人に至る、そのスタンダードモデルをつくって、限られた資源を効率的かつ有効に活用していくべきだとされたことについては、金融広報中央委員会を事務局とする消費者教育の進め方についての連絡協議会において取り組んでいただくことになりましたので、あわせてご報告申し上げます。原委員におかれてもよろしくお願いいたします。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして日本証券業協会の高橋副会長から証券業界の取り組みにつきまして、恐縮ですが簡潔にご説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○高橋委員

はい、ありがとうございます。

今、大森課長から既にご説明いただいたんですが、資料1-3で、私ども日本証券業協会が自主規制という業務のあり方という問題について、ご指摘をいただいた点についてどう対応したかというご報告をしたいと思います。

今、もうご報告があったんですが、念のために、この資料1-3の最後の2ページに、どういうご指摘をいただいたかということを抜粋してございます。

市場監視体制の一環として自主規制のあり方ということが言われておりまして、マル2に書いてある、最初のパラグラフの真ん中ぐらいにありますように、「業界団体でもある証券業協会に有効な規制が可能か」という問題提起がありまして、その次のパラグラフの冒頭に「自主規制業務の遂行体制としては、他の業務から独立して行われるよう担保すべきである」ということとなっております。

なお、関連いたしまして、この一番下の「また」というパラグラフに、検査につきましても「行政の体制一元化を契機に、行政と自主規制機関及び自主規制機関相互での主たる役割分担を見直すべきである」、こういうご指摘をいただいております。

この資料の冒頭に戻っていただきたいんですが、今年の1月から特別委員会を設置いたしまして、非常に短期間ではありましたけども集中的に検討をいたしまして、3月17日の理事会でこの新しい体制の基本方針を決めて、現在その定款を改正し、実施の準備をしております。7月1日から新しい組織機能ということで対応していきたいということで、準備をしている段階でございます。

中身は、その資料の真ん中ぐらいに「新体制のガバナンス構造」というところで書いてございますように、いろいろ第一部会報告の中でご提言いただきました方法のうち、同一法人内別組織とするということで、自主規制業務と業界活動機能というものをきちっと分けて、それぞれ独立的に対応していこうと、こういう組織としております。

具体的には、2ページの真ん中ぐらいから、まず理事会というのがあるわけですが、理事会につきましては協会運営全体を監督する、そういう機能といたしまして、自主規制業務、業界活動業務につきましては、理事会の委任を受けてそれぞれの意思決定機関を設置すると、こういうガバナンス体制といたしました。

また、そういうことにいたしますと、理事会につきましてもできるだけコンパクトなものとし、かつ公正性、中立性が確保できるような体制といたしました。

それから、3のところに書いてございますように、自主規制のための意思決定機構といたしまして、自主規制会議というものを設置をすることとしておりまして、自主規制会議につきましても、公正性、中立性の確保が必要であるということで、公益委員を入れた構成とするということといたしております。

具体的にどういうメンバーにするかというのが、別紙1というところをちょっとご覧いただきたいんですが、理事会につきましては、現在理事の定数が33名でございまして、欠員がありまして現在30名なんですが、それを10名といたしまして、公益理事3名、会員理事3名、以下そこに書いてあるとおりでございまして、10名のうち、業界の人であります会員理事は3名とするという体制としております。

それから、自主規制業務の意思決定機関であります自主規制会議につきましても、11名の委員といたしまして、またこの自主規制会議につきましては、公益委員、つまり証券業と直接関係のある業務をする方でない方に公益委員として入っていただきまして、その方に議長をしていただくということ、公益委員を4名、会員委員を4名ということで、全体11名のうち会員委員は4名にすると、こういう体制といたしまして、公正性、中立性を確保しようというところでございます。

別紙2に、その全体のイメージ図がついてございますので、ご参照いただきたいと思います。

それから、もう1つの点の検査につきまして、行政と自主規制機関の検査の役割分担、これは資料をつけてないんで恐縮でございますが、役割分担、また自主規制機関同士の、これは取引所とか証券業協会ということでございますけども、自主規制機関同士の役割分担を図るべきだという先ほどのご指摘につきましては、現在取引所と鋭意協議をいたしておりまして、今年度16年度の監査から東証あるいはほかの取引所と、検査につきましては一つのチームとして実施をするということを決めておりまして、具体的な分担等について現在詰めているところでございまして、新しい体制で9月ぐらいから検査ができることとなっております。

以上、ご報告をさせていただきました。

なお、せっかく発言の機会をいただきましたので、一言だけ先ほどの大森課長のご説明について発言させていただきたいんですが、12月に第一部会で大変広範な分野にわたってこの市場のあり方ということでご答申をいただいて、それを法制化をしていただきました。短い間にこれだけの法制化というのは大変ご苦労が多かったと思います。ご努力を感謝したいと思いますし、またできるだけ早く法律として成立するように、これからもよろしくお願いしたいと思います。

その中で1つ、先ほどもご説明がありました金融機関の証券仲介業の参入につきまして、いろんな議論がありました。証券市場のすそ野を広げるという役割が大いに期待できるという反面、金融機関が行うことによります弊害というものが、投資家あるいは預金者に対して起こる可能性がある、そのことがかえって市場の信頼を傷つけることになるんではないかという議論もございます。この審議会での、第一部会でのぎりぎりの整理というものが、先ほどもご説明のあったように、弊害防止体制を確認するために認可をしていただくと、こういうことであったと思います。

先ほどのご説明も、事情がわかるわけでございますけども、認可という点につきまして、この第一部会の答申がそういうふうにならなかったということは、第一部会の議論に参加した者の1人といたしましても大変遺憾に思いますし、残念なことであったかと思います。こういう形で法制化されましても、弊害防止ということにつきましては、市場の活性化ということの大変不可欠な要素でもあろうかと思いますので、大森課長のご説明に既にありましたけれども、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それではここで、ただいまの大森課長及び高橋委員からのご説明、最後の部分は高橋委員のご意見というかご感想でしたが、いただきました説明につきましてご質問、ご意見がございましたら、いただきたいと思います。どなたからでも。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

順序が逆かもわかりませんが、高橋委員のご説明になった関係で資料1-3をちょうだいしてるんですけれども、ここでの議論に従って組織改変であることは理解しておるんですけど、例えば別紙1の理事会の構成を見ますと、公益理事さんが入られるのは承知はしたんですけれども、例えば理事会の常任理事さんというのはどのような方なのか、できればご説明いただきたいということ。それから自主規制会議の中でも、特別会員、これはわかりますがね、あるいはそのほかの方を入れると、結局11分の4だけが外部の方というふうに伺ってよいのかというあたりで、特に外部委員を過半数にするかしないかについて、どのような内部の議論がされたのか、ご紹介いただければというのが1点と。

それから、もう1つは、その証券業協会の中での、そのスタッフといいますか実際に作業そのほかをされる方の体制についてはどのようにお考えなのか、もし今議論されてることがあれば、教えていただきたいと思います。

○神田部会長

どうぞ。

○高橋委員

今の点でございますけども、まず先に常任理事というのは、協会の事務局に常勤をしている役員でございます。例えばで言いますと、今、会長は常任理事でございます。常任でないというのは、要するに証券会社の代表のまま理事になってる、あるいは公益の理事の方でも非常勤として理事になってると、こういう方でございます。常任というのはそういうものでございます。

それでこの理事会では、会員理事が3名。それから特別会員理事と書いてございますのは、これは銀行が投信や国債の窓販等、そういう証券業務をやっております銀行がこの特別会員でございまして、この方は銀行とか金融機関の方を代表する理事でございます。

常任理事は、先ほど申し上げましたように、事務局の理事でございますので、現在証券会社の人ではないと、こういうものでございます。

したがいまして、証券会社か証券会社でないかということになりますと、10名のうち3名が証券会社で、そのほかは証券会社でないと。特別会員を入れましても、4名が協会員の代表と、こういうことでございます。

自主規制についても、そこに書いてあるとおりでございます。

今、先生がおっしゃいましたように、どういう議論があったかということでございます。これはいろんな議論がありました。外部の人を多数にすべきであるというような、あるいは業界の方とその他を比べてその他のほうを多くすべきであるという議論、あるいは逆に業界のほうを多くすべきだという議論もございまして、そのいろんな議論の末、こういうバランスで決まったということでございます。

それから、最後にスタッフ、事務局のお話がございました。

事務局につきましても、この新しいガバナンスの体制に合わせまして、今、事務局の組織につきましてもきちんと分離をする体制を準備中でございます。この新体制が発足いたします7月1日から、事務局につきましても自主規制部門、業界活動部門、それからその全体の管理部門と、明確に分けるという方向で作業をいたしております。

○神田部会長

ありがとうございます。ほかの点も含めていかがでしょうか。

どうぞ、嘉治委員。

○嘉治委員

今のご質問と関連していますが、いろいろな議論があってこういう人数配分に落ち着いたというお答えだったと思うんですが、もし可能であれば、いろんな議論があった結果、なぜこういうふうに落ち着いたのかということをご説明いただけますでしょうか。それと、政府の審議会等とは違うものですので、当てはまらない質問かもしれませんが、議論のプロセスのディスクロージャーはお考えなのでしょうかということを、もしできればお聞きしたいと思います。

○神田部会長

では、高橋委員。

○高橋委員

どうしてこう落ち着いたかということですが、バランスをとったとしか言いようがないんですけど。

ご覧いただきますと、この事務局というのは、先ほど申し上げましたように、現在私もこの常任理事の1人なんですが、要するにその人たちを業界の人と見るのか業界から離れた中立の人と見るのかという見方で、多分いろんな議論があって結論が出たと申し上げましたけども、常任理事というのは中立なんだと見れば、公益理事と会員理事の数は同じになってると。また、常任理事も公益理事と同じように業界外で、そういう意味では公正中立なんだということであれば、逆に公益理事、常任理事を足した数が6人で多数になってると、そんなようないろんな議論があった結果、十分これで中立性、公正性が確保できるという判断でございます。

それから、この議論のディスクロージャーにつきましては、議論が終わりましたときにというか、その特別委員会の都度、全協会員に対しまして、こういう議論だったということを報告をしております。

それから、まとめるに当たりましては、全協会員にコメントを求めて、当然そのときの案をディスクローズをいたしまして、コメントを求めながらこういう結論を出してきたということでございます。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

上柳さん、どうぞ。

○上柳委員

つくる上かもわかりませんし、証券業協会の中ではきちんと、それこそ投資者の立場に立ってお仕事をされてる方がたくさんいらっしゃるので、全体が悪だというつもりではないんですけれども、やっぱりここで議論しましたのは、一方でその業界規制的なことをやってみえるんで、その協会の方、ここで言うと常務理事さんというのも、どちらかというと業界寄りに見られるから、そこのところを独立させろという趣旨だったろうというふうに思います。

くどいですけれども、それだけ申しておきたいのは、今回、これは証券業協会さんが今までやってみえたことを、さらにきちんとやるという面もあるんですけども、一方では行政がもともとやっておられたことを二重にやらないように、あるいはいろいろマンパワーの問題もあって合理化しようということで、私の理解するところですと、今まで行政がやってみえたことを自主規制のほうにお願いするという側面もかなりあると思ってますので、そこのところについては緊張感を持つ必要があるんではないかなと思いました。

○神田部会長

はい、ありがとうございます。

どうぞ、原委員。

○原委員

私、前回までの会議に出席しているわけではないので、それまでの議論を知らないところで、感想的なことだけで大変恐縮なのですけれども、今まで出ていたこのやりとりをお聞きしていてなのですが、資料1-3の別紙2が一番これからやろうとしていることとか、それから位置づけがよくわかるのですが、私の感じとしても、今上柳委員がおっしゃられたように、自主規制機関というのはもっと独立した形で、これまで行政がやってきていたようなことを、ご自分たちの努力でおやりになろうというふうなことであろうというふうに思うのに、この理事会の下に設けられているのでは大丈夫なのでしょうか。

機能のところを見ると、一番最初の○のところに「業界意見のとりまとめ」というふうになっていて、業界意見の取りまとめをするところは、例えば理事会なり証券戦略部門なりであって、これが一番メインの仕事というのは、何かちょっと違う感じがするのですが。もう少しその監視をしたり、市場ルールですとか行政ルールですとか、それから監視をするようなルールとかをもっと中立的に決めていくような機能ではないのかなというふうに思うのですが。

それから、苦情相談やあっせんということも機能の中に入っていますし、ディスクロージャーの考え方の整理というのも入っている、この4つの○の中でもそれぞれに機能がちょっと違うように思いますので、もっと丁寧な検討というのが必要ではないかというふうな印象をもっています。

○神田部会長

ありがとうございます。

高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

業界意見のとりまとめというのは業界団体じゃないかというご指摘で、それはそのとおりでございます。

ここに書いてありますのは、あえて書いたんですけど、専門家としての業界という意味で書いてあって、要するに専門家の意見、つまり市場ルールとかあるいはいろんなルールをつくるときに、市場の実際に仕事をしている人たち、これは市場関係者という場合もありますし、あるいは証券取引の仲介業者の場合もあります。そういう人たちの業務の実態をしっかり把握をして行政ルール等をつくっていただく、あるいはそれを受けて自主ルールをつくるということは非常に大事なことでございます。そのことをここでは書いてありまして、専門家としての意見というものをまとめて自分たちのルールをつくる、あるいは行政に意見を申し上げるということは、自主規制機関として非常に大事な仕事の1つだというふうに認識をしております。

○原委員

そうすると、証券としての業界の専門家というふうな感じですか。それは証券会社ではないということですね、この業界というのは。

○高橋委員

証券仲介に関しては証券会社ですけれども、もちろん銀行が、先ほど申し上げましたように投信窓販とかそういうのをやると、それはその場合は銀行でありますし、それから市場参加者というときには、例えば公社債の取引のルールというのが、市場ルールというのがあります。この場合は、参加者は証券会社だけでない場合が非常にございます。そのテーマ、テーマに応じて市場にどういう人が参画しているか、どういう人がそういう業務をやってるかということで、専門家としての意見をまとめていくということです。

○神田部会長

この点についてのご議論は、いったん今日はここでとめさせていただいてもよろしいでしょうか。

ちょっと進行役の権限を濫用して大変恐縮ですけれども、ガバナンスの問題というのは非常に重要なのですけれども、議論は非常に難しい面があると思いますので、必要に応じて、その後の実際動かしていく上でまたお話を伺うなりして、議論する必要があれば議論させていただきたいとは思います。貴重なご指摘をいただいたと思います。

一言だけ感想ですけども、証券業協会のような団体は非常に難しいですよね。さっきお話がありましたけど、一般に内部者、外部者という区分をしますけれども、証券業協会のような団体の場合、何が内部者なのかですよね。証券会社から来ておられる方は、形式的には外部だけども、実質的には内部ですね。逆に、常任理事のような方は、形式的にはむしろ中立のはずなので、ただ実質的にはどうかとか、そういう整理をきちんとしないといけないと思います。ちょっと普通の会社とか普通の団体とは違った面がありますし、しかもそういうところに自主規制という機能がさらに絡んできますので、詰めた議論をすると難しい点はあるし、そういう意味ではいろいろな意見があると思うのですけども。必要に応じて、また今後議論させていただくということにさせていただけませんでしょうか。

若干進行が予定よりも遅れ気味ではありますが、法案等についての大森課長からのご説明について、もしご質問、ご意見がありましたら、簡単にいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、先に進ませていただきます。

次が、ディスクロージャー・ワーキンググループの検討状況についてですが、これは事務局からの説明をお願いします。羽藤さん、よろしくお願いします。

○羽藤企業開示参事官

お手元に資料2ということで、「「英語によるディスクロージャー」についての視点の例(未定稿)」と書いてございますけれども、これは昨年の12月に第一部会で報告をさせていただいて、ディスクロージャー・ワーキンググループのもとで検討を引き続き行うということになっておりましたものについて、既に2回、ワーキンググループを開催して、その際に視点の例として事務局で用意をさせていただいた紙でございます。実は昨日もディスクロージャー・ワーキンググループを開催していただき、岩原委員、今日お見えでございますけれども、座長を務めていただき、議論を続けていただいております。

今後、できる限り早い段階で論点を整理して、引き続き議論をいただき、できれば6月ぐらいを目途に取りまとめていただくということを事務局としては考えておりますけれども、その後、四半期開示の問題をディスクロージャー・ワーキンググループでお願いしたいと考えております。以上は、既にこの第一部会、前回の場でもご報告をさせていただいたところでございますので、その線に沿って、今、論点を詰めていただいておると、そういう状況でございます。

翻って英語によるディスクロージャーですけども、そもそもどのような視点でご議論をいただいているのかという点は、大体3つぐらいの観点から整理をすることができると思います。

1つは、外国企業の上場あるいは資金調達を容易にするという観点、特にコスト論というものが一方あるわけですけれども、そういった観点がまず1つあります。

それから、2番目は、我が国の投資家にとっての投資機会の拡大、あるいは利便性の向上というんでしょうか、現在の制約要因というものを払っていくにはどう考えるかということで、これは投資家保護をどのように図るかということとの関係での議論としても課題になるわけであります。

それから、3番目は、我が国の資本市場全体として、金融情報センターと言うとやや表現が大仰かもしれませんけれども、資本市場としての機能が、特にアジアの各国の資本市場との競争という中で、より競争力を増していくという観点が重要ではないかということであります。

このように基本的な視点を持ちながら、現実の問題としては、国際的に見て市場の共通語が事実上英語であるというベースがあるわけでもありますし、そういう環境の中で、論点を落とし込んで整理をしていきますと、資料2のような視点の例ということで、具体的な課題が出てきておるということでございます。

既にワーキンググループでは、参考人からの意見聴取を行い、それから海外における取り扱いがどのようになっているのかということをリサーチをしながら、またアンケート調査を実施いたしております。特にアンケート調査では一般の投資家について、金融庁のホームページのもとで意見募集を行いました。また、証券会社を通じて、いろんな投資家サイドにアプローチを行ったりということで、ご協力をいただいたりしてございます。それから外国企業から、現に我が国の取引所において、上場しておられる方々に対するニーズというものもお伺いをすると、そのような形でアンケート調査も実施をしながら、議論を進めていただいております。

根本的な問題としましては、具体的にどのようなニーズがあるのかという点であります。実は議論を詰めてまいりますと、本質的な問題であります。

と申しますのも、市場外取引においては、投資信託商品などを中心にして、我が国の投資家、それも単に機関投資家だけではなく、一般の投資家もかなり投資をしているという実態があるわけでありますし、また外国企業サイドにとってみましても、仮に我が国のマーケットで資金調達をするメリットがあるということであれば、それはいかなるコストを払ってでも、日本語にも翻訳をしながらアクセスをしてくるということでもあるわけであります。

また、証券取引法上の規制が非常に制約要因になってるということが仮にあるとすれば、いわば東証でのこれまでの「外国株式市場」と言われるところに対する上場企業が、昭和48年に当時は6社だったものが、一時期は120社を超えて、現在では32社になっているという、この推移をどのように考えるかということになりますと、単にコストだけの問題でもなかろうし、あるいは規制緩和ということだけでもこれは解決はしないのではないかということであります。

もとより英語によるディスクロージャーというのは、英語によっての開示を認めるということであるわけでありますけれども、この議論は、その延長線として英語によって、外国で作成された財務書類をどのように日本で受けとめていくのかということになりますと、どのような会計基準に準拠しておるのかといったような論点までもカバーをし得る課題でもあります。

そういう意味では、資料2の一番最後のところに、今申し上げました論点を例に挙げておりますけれども、基本的には、外国会社が提出する、現在の証取法を基本としてそれに基づく開示書類について、日本語ではなく英語による提出を可能とするということを、英語によるディスクロージャーとしての課題として中心に据えながら、論点を整理をしながら、引き続きご議論をいただき、取りまとめを得たいというふうに、事務局としては考えております。

事務局からは以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今のご説明につきまして、ご質問、ご意見がございましたら、どなたからでもお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

今、参事官がおっしゃった後半のことで、もう説明が尽きてるのかもわかりませんけども、特にそのニーズの点が私はよくわからなくて。確かに、一般的には簡単に日本資本市場に参入しやすくなるので活性化するのかなというふうに思っているんですけれども、日本の投資家の立場からいえば、どちらかというと英語でよりも日本語で説明があったほうが、これは商品の中身あるいはリスクの程度等わかりやすいので、そこのニーズがどの程度あるのかなというところが、若干疑問に思ってました。

ただ、自分で質問しておいてあれですけれども、よく考えてみたら、今でも日本の投資家が英語であるいは外国語でしかディスクロージャーされていない商品も、これは買ってますし、それにさらされてるわけですので、同じことかなというように思ったりすると、2つ目の質問で、投資家保護のところの論点がやはり問題になってこようかと思います。

現在あります東京証券取引所は、外国株というのはもちろん別の何か区切りがされてるんですけれども、あのような形できっちりと、何かだれの目にもわかるようにできるような工夫があるのかどうか。

それから、もちろん個々の投資勧誘に当たっては、そのことがとにかく理解できるような形で説明しなければいけませんから、日本語しかわからない方には日本語できちんと、英文のディスクロージャーの内容が伝えられるということが前提かと思いますけれども、そういうふうに前提を言ってしまうと、もう現在の法制でも手当ては十分でということにもなりかねないので伺うんですが、具体的にはどのような方策を今検討されてるのか、ディスクロージャーグループでお話がもしあれば、教えていただきたい。

○神田部会長

テーマは、何か恐ろしく難問のように思いますけど、どうしましょうか。

どうぞ。

○羽藤企業開示参事官

そういう意味では、これから議論を整理をしていくことが、次回が5月の連休明けでございますので、連休中の宿題であるというふうに事務局としては思っております。

英文開示に限らず、外国企業に関してはいろいろなニーズがあります。その中で、英文開示を認めることによって解決されるものが何かを見極める必要があると考えております。例えば、ひとたび外国企業が日本で募集を行って、上場を廃止をしましても、継続開示は一定の要件のもとで求められているということがあります。有価証券所有者が25名未満になるまでは、継続開示をしなければならないというわけです。

必ずしも募集をしないにもかかわらず開示をし続けなければならないということは、コストになってるという指摘もあります。それから、一方、投資家サイドでも、我が国の投資家で外国株を保有してる方々が、国外で第三者割当増資などが行われたときに、結果的に応じられないような制約があるといったニーズがあるとも言われています。

いずれにしましても、繰り返しになるんですけれども、機関投資家にとって、あるいは英語がよく理解ができる方にとって、仮に投資をしたいと、そしてそれに見合うコストを払うということであれば、特段制度上の制約があるわけではないという指摘もありますし、また、外国企業にとっても仮に日本で資金調達をするというメリットがあるのであれば、コストを払ってでも出てこようということになります。そういう意味では、この議論は、英語による開示の議論として入っていくにしても、その前提の環境、あるいは与件をどのように設定するのかというところを整理しないと、制度的な対応についての結論を導いていくことも難しかろうと考えております。

あるいは、対応ということでは、法律で縛ることが適切であるのか、あるいは、ほかの手段で、マーケットの中の1つのルールとして組み立てていくということがむしろ適切であると考えるのか、さらには、やはり投資家の判断に委ねるべきであるということなのか。英語力ということをどう考えるのかとか、議論が出てまいりますので、ある程度、与件なり前提の条件なりを整理したいというふうに思っております。そういう意味では、これからご指摘も含めて、ニーズがどういうところにあってということも含めて、議論を整理していかなければならないと思っております。

○神田部会長

ありがとうございます。

池尾先生。

○池尾委員

ちょっと言葉じりだけの話になってしまうのかもしれませんが、外国企業が上場する目的ですけれども、先ほどからのご説明を聞いていると、資金調達ということしか目的として言及されなかったので。株式市場というのは、企業にとって資金調達の場だという理解の仕方は、私は個人的にそれだけの場だというふうに理解するのは間違ってるというふうに思ってまして、むしろ株式市場というのは投資家から評価を仰ぐ場だというふうに考えたほうがいいというふうに思ってますので。

特にアジアの、その母国の制度整備が日本よりも遅れてるような国から日本に上場する場合には、資金調達が専らの目的というよりは、ある種の制度基準を満たすということを、企業として示すような効果が上場ニーズとして大きいんじゃないかというふうに考えますので。そうすると、そういう企業のニーズを満たすために必要な取引所側が課す基準はどうあるべきかという視点が、やはり必要だと思うのですね。

ルーズな基準にしてあると投資家保護に欠けるということではなくて、ルーズな基準にしてしまうと、そういうきっちりした基準を持っているところに上場することによって、ある種、経済学の言葉でいうとボンディングするという機能をむしろ弱めてしまうことになるわけですから、企業自身のニーズにもかなわないという話になりかねないというところがありますから。

そういうことは理解された上だと思うんですけども、資金調達の場というよりは、くどいですが、投資家から評価を仰ぐ場なんだという位置づけのもとで考えるということが重要ではないかと思うんですが。ちょっと言わずもがなだったかもしれませんが。

○神田部会長

ありがとうございます。

そういう場合に、ちょっと一言だけ。基準を緩めるという話ではなくて、英語でいいかどうかの問題はどういうふうに考えたらいいんでしょうか、今のような視点に立った場合に。ついでに教えていただければ。

○池尾委員

それは、自分でも発言しながら、強い基準という意味では、別に言語はそれほど、どういう言語で書いてあろうが、要求しているコンテンツの問題ではないかという言い方は多分できると思うんですね。もうちょっとゆっくり考えてみないと、私としてもそれはわかりませんが、今基準を満たしてる立派な企業だということを対外的に示したいというニーズからいえば、言語形式よりは、コンテンツそのものが問題だということに多分なるんだと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

原委員、どうぞ。

○原委員

手を挙げたのですけれども、ワーキングの座長の岩原先生もいらして、ちょっと発言を控えていらっしゃるからよかったかなとためらいつつなのですが、まだ実際にはワーキングは2回しか開かれていません。昨日がその2回目だったわけですけれども、今池尾委員がおっしゃられたような感じが出てきていますね。それから、上柳先生からもご発言があったようなことも昨日の段階では出てきていて、何のためにやるのかというところが、やっぱりそもそも論のところをもうちょっと丁寧にやらなきゃいけないし、それから今まで日本語だったものを英語のままというふうになっても、単なる言語だけの問題ではなくて、会計基準の問題なんかも、それから様式の問題も入ってきますので、非常に複雑ですね、考え方の整理をしていくのは大変複雑です。

アンケートもとられていますけれども、やはり発行体は、コスト論を考えると、より軽くというふうに出ていると。それで、利用者側のほうからすると、やはり日本語の要約がついてないと困るなというような感触みたいなものも出ていて、まだまだ大変検討すべき課題が多い状況だというふうに思っていて、新聞報道も出たりしておりますけれども、必ずしもすべてがまだ言い尽くされてもいないし、中の雰囲気を伝えてもいないというふうに思っております。

○神田部会長

ありがとうございます。

斎藤委員、どうぞ。

○斎藤委員

私は、ディスクロージャー・ワーキンググループのメンバーでもあるのですけど、ちょっと所用でこの2回ほど欠席しておりまして、背景をちゃんと承知しておりません。ピント外れなことを申し上げるかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。

英文の開示というのは、今お話がありましたように、単なる英訳じゃないわけですね。英訳というのは、要するに日本のルールに従った日本語バージョンがあっての話ですけれども、英文開示というのは、どっちかというとそれをなくすのが目的みたいなところがあると思うのですね。

ということは、準拠するルールが本国基準で、しかも日本円に換算してない本国通貨で開示されている、そういう情報を、できればそのまま使いたいという、多分そういうニーズがあるのだろうという感じがするのです。

そうしますと、当然ながら、一つは投資家保護といいますか比較可能性といいますか、そういう観点からの議論がでてきますし、あるいは同時に、今池尾先生からおっしゃられたような、ガバナンスなりボンディングなりという観点から、それをそのまま日本の市場で認めていいか悪いかという話になると思うのですね。

ただ、例えば情報をつくる会計基準を仮に完全にそろえたとしても、恐らく投資家なり市場なりが評価するときには、表示された通貨を共通の通貨に換算しなければいけませんから、そうすると為替レートがかなり変動しますので、いくら会計基準のところでそろえても、レートのほうでバイアスが相当入ってくる。その意味で、世に言うほどの比較可能性というのは、実は実現できないと思うのですね。その意味で、よく言う会計情報の比較可能性というのは、かなり制限のついた一定の制約内の話でしかないという感じもしています。私自身は、会計の問題を専門にしていますけれども、マスメディアで言われるほどの比較可能性にはそれほど幻想を持っていないつもりです。あまり言っちゃうと、おまえ何のために商売をやってるかということになりますけれども、それは一定の制約の中で考えなきゃいけないという感じがするのです。

そうしますと、これはニーズがあればの話ですけれども、本国基準による開示をなるべく広く認めて、予想されるような弊害に対しては、個別に対応するという方法をとったほうがいいような気がします。

もちろん、日本基準と非常に違った基準に従ってできてくるようなものは困るのですけれども、そんなに大きく違わない、最近のはやりの言葉で言えば、日本基準とエクイバレントなスタンダードであればよしとしよう。本国通貨のままでもいいじゃないか。無理に換算しなくてもいい。それから言語についても、英語ぐらいならいいことにしようかと、そういう感じが私なんかは割に強いのですね。

ただ、例えば情報をつくる際の基準であれば、あんまり違っているのは困るから、そこをチェックする必要がありますし、一応認められた範囲内でも、重要と思うものについては、場合によっては調整を求めるなり、あるいは違いを付記していただくなりという情報開示は必要だと思います。

それから、もっと困るのは監査のシステムですね。例えば、日本の市場に出すときに、外国基準を使っていて、しかも監査の仕組みがきちっとできてないと非常に困るので、その場合には情報を開示する際に使った本国基準に対応する監査基準に従った監査をきちんと要求する、そういう体制が必要だと思うのです。

それから、言語については、英語ぐらいならいいかと申しましたけれども、本当に日本の投資家に対してきちんとアピールをして、資金を調達するなり評価を受けようとしますと、もしかすると英語でいいと言っといても、日本語による要約とか説明をつけてくる可能性があると思うのですね。むしろ、われわれはそちらに神経を使うべきであって、もしかするとそこに規制がないと、インチキな翻訳をつけたり、妙な要約をつけたりする可能性があるので、むしろ英文で開示することについては規制を緩めて、日本語による概要や翻訳をつけるときにそこをきちんとチェックする体制をとるとか、そういう形で対応をしていくことを一応検討してみる価値はあるのじゃないかと、私などは考えております。

○神田部会長

ありがとうございます。ますます難しい問題だなというふうに感じますけれども。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、吉野委員。

○吉野委員

実は、この英語のディスクロージャーの問題は、前にも私どもから何回か説明、お願いを申し上げて、やっと取り上げていただいたという経緯がございますので、繰り返しになりますが少しだけ申し上げておきたいと思います。

ニーズがあるかどうかということについては、ニーズというのは両面あって、発行会社のニーズと投資家のニーズとがあり、投資家のニーズという見地を忘れてはならないというのは、まさにおっしゃるとおりの話だと思います。、もちろん、会計の基準をどう取り扱うかという問題もあると思います。羽藤参事官からもお話がありましたように、127社あった上場会社が32社に減少した大きな理由は、やはり翻訳の費用が非常に多かったということも事実です。しかし、上場会社数の減少の理由は、それ以外にもあるわけで、翻訳費用の削減だけで日本のマーケットが外国企業に利用されるようになるかというと、決してそうではない。そのほかの要因も幾つかあるわけで、それをあわせて解決をしていかなきゃならないと考えています。

ただし、この英文開示の問題というのは、よく発行会社から指摘される大きな問題であるということで、前々から私どもマーケットサイドから要求をさせていただいてたという経緯でございます。

○神田部会長

ありがとうございます。

何年も前からこういう声は出ていた問題ではありますですよね。

どうぞ、東委員。

○東委員

今の議論で私が感じますのは、かつて多くの欧米の企業が東京市場に来ていながら、その後減少した1つの理由は、日本の流動性の厚みが大変少なかったことと、マザーマーケットが十分大きかったこと、これが一番大きいのではないかと思います。ですから、先ほど池尾先生がおっしゃった、指標性が極めて乏しいという印象を受けています。

グローベックスができてますので、取引自身はどこでもできるという時代になってます。そういう中で、やはり、先ほどおっしゃった外国企業と日本の投資家という、この位置づけで考えたときに、そのニーズがあるかないかという議論ですと、そもそも日本企業にとっての市場の活性化でさえ不十分だという議論がもとにあるわけですから、外国企業はましてという感じがします。したがって、ここは相当意識的に意思を持って広めにいくというようなスタンスにならないと、なかなかうまくいかないのではないかというふうに思いますし、私自身はそういう方向で動くべきだろうというふうには考えてます。

特に今気になりますのは、外国企業という場合に、とりわけ我々が視野に入れていますのはアジア企業になるのだろうと思います。アジア企業にとって日本がある種のマザーマーケット的な機能が果たせたらいいなと。それぞれのアジアの国の、母国の市場の厚みはまだ十分でないという中では、日本の市場が貢献できる場というのは大変大きいというふうに思います。

ただ、現実に何が起こってるかというと、アジア企業にとっては海外での上場は結局香港とニューヨークで良いということになっています。そうした企業が大変多くなってきているという意味で、アジアにとっての日本市場としての位置づけを、どう意思として方向づけをするのかというところが、むしろ大変重要なのではないかと、そんなふうに考えています。

○神田部会長

ありがとうございます。

制度として英語でいいということは、制度としてフランス語や中国語はだめということを同時に意味するわけですよね。

○東委員

現実に、例えば仲介業者が何をしてるかというと、これは必ず日本語での資料をお客様にお渡しするのが、普通の投資家の場合です。大手の機関投資家は、直接現地のマーケットへ発注しに行きますから別ですが。ですから、日本で取引を普通にやられる個人投資家を仮にイメージするならば、それは先ほどおっしゃったように、日本語にする過程のほうが多分大変重要で、結果として為替の換算も含めて、日本語の資料で勧誘するというケースが、多分現実的には多いのだろうと思います。

したがって、現地の言葉自身が極端な制約があるという印象は受けずに、オーバーに申しますと、どの言葉であっても良いということにはなろうかと思います。

○神田部会長

私も、先ほどからいろいろ出てるご議論から言えば、本国でつくったものはそれでいいにして、販売勧誘をするときは日本語にするという先ほどの斎藤先生のお話も、要約文書をどういう取り扱いにするのかというような議論をし始めると、英語だけいいと言い切ると、制度としてほかはダメということを意味しますよね。そこも難問の1つだなと思うんですが。

岩原先生、どうでしょうか。ちょっとまだ2回ワーキングがあったばかりの段階で恐縮ですが(笑)。このあたりで中間取りまとめをしていただいて、次に進みたいのですけれども。

○岩原委員

多くの委員の方から大変貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございます。ワーキンググループとしては、2回しかやっておりませんで、やっといろんな論点を多くの委員の方からご指摘いただいて、これを論点として取りまとめて、次回から実質議論を始めることになってますので、ここの時点で中間取りまとめで方向性を出すわけには、むしろそれ自体がワーキンググループの司会者として不見識だと思いますので、それはできませんけれども、今日いただいたご意見は、いずれももっともなご意見だと思っていまして、それを踏まえて、次回の実質審議を始めるときに、事務局のほうに一体何が本当に問題であって、どういう点を押さえていく必要があるかということを論点として提出していただいて、非常にその詰めた議論をさせていただきたいと思ってます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、また今後、ワーキング等で精力的にご議論いただけると思いますので、必要に応じてこちらでもご意見をいただければというふうに思います。

次に進ませていただきます。

本年度の検討方針についてということで、まず事務局からの説明をお願いします。

○大森市場課長

昨年末、大きく言って2つ、投資サービスにおける投資者保護といいますか、いわゆる投資サービス法の議論、それからインサイダー取引規制の議論が積み残しになっておりまして、資料3の最後、3-5、3-6、3-7に神田先生と黒沼先生と島崎委員のお書きになったものをつけさせていただきましたが、この3つの論文の趣旨を金融審議会としてどう受けとめて議論していくかが今後の本質的に大事な仕事であろうと思います。

私からは、主に資料3-3を眺めていただきながらお話をさせていただきます。というのは、金融サービスにおける機能別・横断的なその消費者保護の必要性という議論はビッグバン改革のころからありまして、金融サービスが多様化する一方、それまで預金と保険しかなじみのなかった消費者が、いきなり自己責任の世界に放り出されるんではないかといった懸念が背景だったと思います。

ただ、あの改革をやってる側からしますと、何よりも金融システムを変えなければならないという意識が先行しておりましたのと、既に市場における横断的投資家保護法制として証取法があるわけですから、業態の違いがあるのに、さらに何を横断化させるのか、法制的なイメージがなかなかわきにくいものが正直言ってございました。

そんなわけで、この課題はポストビッグバンの課題として位置づけられまして、大蔵省にまだ企画部門が残っていた時代の金融審議会第一部会において、ビッグバン改革に引き続き、蝋山先生のもとで21世紀の金融サービスと規制の枠組み、いわゆる日本版金融サービス法の議論として精力的に行っていただいたわけでございます。

そのときご参加いただいた方も、この当一部会にまだたくさんいらっしゃいますけれども、もう4年前になりますが、この議論の取りまとめに際しての蝋山先生の総括が参考になるのでご紹介しますと、まずかつて銀行局、証券局、保険部という、その業態別の行政組織の中に金融制度調査会、証券取引審議会、保険審議会という業態別の諮問機関があった時代が終わって、行政組織は企画部門、監督部門、検査部門という機能別に再編成されて、諮問機関も金融審議会に一元化されたのだから、その金融審議会でこういった機能別・横断的な金融サービスと規制の枠組みの話を詰めていけば、おのずとそういう法制、そういう法制という金融サービス法のようなものがついてくるだろうという、自分の見通しは大変ナイーブだったと言っておられます。観念的に大風呂敷を広げるやり方はまずかったと。

それは、一つには、その観念的に大風呂敷を広げても、その議論が収束しないということもあるでしょうし、あるいは霞が関の中の力学だとか永田町との関係だとか、もっと卑近には金融行政のマンパワーというようなこともあったと思います。

そこで、当時の第一部会は、この資料3-3にありますように、機能別・横断的なルールというのを3つの概念に分けて、可能なものをやっていこうという方向になっていったわけでございます。

1つは、金融取引の当事者間の私法的な権利義務関係を規定する取引ルール、それと金融サービスを提供する業者の行為規制である業者ルール、さらに典型的には証取法のディスクロージャーあるいは不公正取引規制のような、市場参加者すべてに適用される行為規制である市場ルールの3つであります。

一番上の取引ルールとして、業法の適用のいかんにかかわらず、販売業者に説明義務と、説明義務違反に対する賠償責任を定めた金融商品販売法が制定されまして、適合性原則などについては、業者に勧誘方針の策定公表を促すという自主的な取り組みを促す仕組みとしてスタートしたわけでございます。

また、いわゆるその集団投資スキームとして、幅広い資産を運用対象として、運用業者に対して縦割りではない一般的な行為規制をかけるとともに、このスキームによって発行される証券、信託受益権をその証取法の対象にするという、そういった集団的投資スキームの整備もされました。今国会に提出しております信託業法というのも、こういった流れに沿ったものと位置づけられると思います。

こういった3類型を前提にしますと、不招請勧誘とか裁判外の紛争処理手続とか、さらには個人情報保護といった消費者保護の問題というのは、一番上の取引ルールの問題として考えていくということだと思います。

業者ルールについては、厳然とその銀行、証券、保険といった業態が存在しておりますので、法制面で横断化といいますか一元化、縦のものを横にしてもその業法の集合体になるだけというところがあると思います。当たり前ですけれども、国民に提供する金融商品の種類による役割分担というのがあって、銀行は資金を貸し出し、運用する個人には預金、調達する企業には貸し出しというサービスを提供する業態であり、その役割が、その株式とか社債が担う場合には証券会社が担当する業態になる。そういった提供する金融サービスの種類にふさわしい業者側の行為規制になっていますから、役割分担を変えないまま、その法制だけ横断的といってもあまり意味がないのではないかということだったと思います。

イギリスの金融サービス法も、その業態とか規制体制の見直しとセットで手当てをされまして、かつ実際にはその目次が並んでるというに近いというところがあって、中身は大蔵省令とかFSAルールを見ないとわからないというところがございます。

ただ、(2)から(3)への流れ、業者ルールから市場ルールへの移行といいますか、この(3)の市場ルールの役割がますます重要になっているという流れは厳然としてありまして、銀行も証券業務のウェイトが高まれば、それだけ証取法に服するようになっておるわけでございます。であれば、その業態が存在する間における機能別・横断的な金融法制として、まず検討すべきは投資サービス法ではないかというのが、昨年末までの議論をちょっと視点を変えて、大蔵省時代の金融審議会から続けて説明してみるとこんなことではなかったかという気がいたします。

この投資商品サービスの、その一般の商品サービスとの違いというのは、この当時の金融審議会でも議論されておりますけれども、リスクとリターンをセットで提供するということで、そのリスクとリターンがどういう状況になればどういうふうに売り手と買い手に配分されるのか、その仕組みを理解して購入するということが前提になるわけですけれども、現実には、後ほど申し上げます外為証拠金一つとっても、そもそも仕組みの説明をしていないのか、あるいは説明してもわからないような相手に言ってるのか、そういった入り口の取引ルールの問題もあれば、どんな売り方をしても何のペナルティもないというその業者ルールの問題もあって、これらにどういう方法で対処していくかということが課題になると思います。

ちょっと釈迦に説法みたいになって恐縮なんですけれども、アメリカと日本で、ごく大ざっぱにその次に書いてありますけれども、日本の証取法はアメリカの大恐慌の反省を踏まえて、33年から34年にかけて制定した証券法、銀行法、取引所法、以下面倒なので証取法と言いますけれども、それをそのモデルにしておりますから、似てるところも多いですけれども、かなり本質的に違ってる部分も幾つかあって、その1つが神田先生の文章にあるセキュリティの範囲でございます。

そもそも安全とか安心とか防衛とかいう概念と証券という概念が同じ言葉だというのが、なかなか私などにはイメージがわきにくいんですけれども、一般的な投資契約を含む概念で、さらに46年のハウイ判決によって、果樹園の管理サービスつきの土地分譲も投資契約だということになりましたから、およそリスクを判断して資金を投下して、他者の努力または共同事業によって収益の分配、リターンにあずかるのはみんなセキュリティであって、あらゆる金もうけのために世界中からお金を集める仕組みだと言ってよいと思います。

なかなかアメリカという国は、いろいろ不都合というのか暴力というのか詐欺というのか、そういう側面がこの国のその資本主義には色濃くあるように見えるんですけれども、それを制御してシステムへの信頼を確保することにも非常に大きな努力が払われてるようにも見えるわけでございます。

大恐慌は、セキュリティの価格形成が異常に歪められて、暴落して、実体経済を破壊したという事件だったわけですけれども、日本だとそういうことがあると、もうそれに懲りちゃって、なるべくそのセキュリティを使わないようなという方向に流れていくような気がするんですが、むしろ広い概念として連邦法に規定して、アメリカの資本主義のエンジンとして経済金融システムの中核に据えたというふうに評価していいんじゃないかと思います。

そして、そのエンジンへの信頼を確保するのがアメリカの証券取引法で、もう釈迦に説法ですけれども、セキュリティで資金を集めるものにはみずからの真実を開示せよとか、商業銀行業務とセキュリティの引き受け、売り出しを兼営してはならないとか、その取引が公正に行われるように強力な監視機関を設置して、相場操縦まがいをやっておったそのジョゼフ・ケネディに取り締まらせる、そういったことでございます。こういった、言ってみると自己規制力を備えた市場のシステムによって、リスクはあるけれども潜在的なエネルギーをくみ上げる仕組みを確立したということだと思います。

一方、日本は、神田先生の文章を見ていただいたほうがいいんですけれども、証券とそれを訳して個別列挙していますから、新しいものが出てくると、もぐらたたきみたいにその都度追いかけて改正しなければならないのと、さらにその適用するかしないか、オール・オア・ナッシングですから、証券の性質に応じた柔軟な規制ができないという構図になってます。

もちろん冒頭紹介しました蝋山先生の言葉のように、この国で包括的な定義を設けて律していくというやり方がなかなか難しいという現実は何ら変わっていませんから、この国でどういう方法で、望ましい方向に向かっていくのかというのを検討する必要があると思います。

同じ構造が不公正取引にも当てはまるので、これはちょっと乱暴な引用なんですけれども、アメリカの取引所法10条の禁止行為は「SECが定める規則に違反してSecurityの売買に関して相場操縦的又は詐欺的な策略を用いること」とあって、その規則10b-5を見ても、詐欺を行うための策略、計略、技巧を用いることとしか書いてありません。

日本もこれにならって、58条というのは昔の言い方ですね、証取法157条を規定したんですけれども、アメリカではこの10b-5のもとで膨大な判例が蓄積されたのに対して、日本の157条はほとんど使われていないということでございます。

もちろん、黒沼先生の別の論文によりますと、そのアメリカでも詐欺的ディセプティブというのは、その不実開示のように、投資家の判断を誤らせる場合により整合的な概念であって、インサイダーのように、ほかの投資家から隠れて行う行為に適用したからかえって混乱したんだというような議論もあるようなんですけれども、いずれにしてもその判例法の蓄積の中で信任義務理論とか不正流用理論とか、理屈を開発して妥当な結論を導く努力が払われているわけでございます。

日本ではこの157条だけではインサイダー取引を摘発するのは困難だと考えられたので、新たに重要事実を列挙して、重要事実を知ったら投資判断に影響しようがしまいが、とにかく公表まで取引を禁ずるという形式犯として規制する一方で、包括条項では投資判断に著しい影響を及ぼすという、実質のダブルスタンダードと言っていいのかどうかわかりませんが、要件が要求されておりまして、黒沼先生の文章を見ていただきたいんですけれども、こういう二重構造のゆえに過小規制でもあり過大規制にもなっているという状況になってます。

こういう違いが生じてしまった原因を、あんまりクリアに分析しているものがないんですけれども、多分言えることは、アメリカではセキュリティの取引というのは、自分だけがもうけたいという欲張りが集まっているんだから、ディセプティブになるのは当たり前であって、そういう前提のもとに、そうはいってもそれを放置したらシステムが信頼を失って機能しなくなるんで、事後的に摘発して罰していこうという、そのプラクティカルな構えなんだと思います。

日本では、不正取引はあってはならないことだという、事前に抑止しなければならないという意識が極めて強かったような気がいたします。かつてビッグバンが始まってしばらくしたら、野村證券から順番に総会屋の事件が広がっていったわけですけれども、これでビッグバンが出だしからつまずいたとか、だから日本の市場はだめなんだという、その自虐的な報道が相次ぎまして、そんなことを言ったらアメリカは毎日が証券不祥事じゃないかと言ってたんですけれども、もう少し不正に慣れたほうがいいような感じはするんですね。

概してアメリカという国は、とんでもなくずるいやつとかとんでもない欲張りもいっぱいいますけど、問題が起きると、それを是正していこうという力学が同時に働くところが、システムとして強靱であるように見えるわけです。

同時に、日本では、役所をやめて取引所とか証券会社で働くと天下りと言うんですけれども、アメリカでは民間の市場仲介者とか取引所とか、規制当局の間でのその人材交流が当たり前のように若いうちから行われておりまして、それは市場関係者の中でその時々、立場は違っても、みんなでつくった共同体のルールを守っていこうというような意識があるように見えるわけです。日本では、市場のルールというのは役所がつくっておろすものであって、取引所は何か役人に準じた人が運営しているところというような、そんな感覚の違いもあると思います。

そうなると、問題は法制度にはとどまらないということになってしまうんですが、とにかくこの投資サービス法とかインサイダー取引規制の基本的な構造をどうするかというのは、やや大げさに言うと、日本の資本主義の形を規定していくような話でありますので、金融審議会から日本を変えると言うとちょっと大げさですけれども、そんな構えで検討しないと、なかなか成案が得られないんじゃないかと思います。

何か思いっきり大げさなことを言った後に、最後に各論を言うのもやや忸怩たるものがあるんですけれども、3つ目の○に書いてあります外為証拠金取引については、こういうものが出てくること自体が、その投資サービス法が必要だという論拠の1つになっております一方で、常識的に考えて、機能別・横断的な投資サービス法が実現するまでには相当の検討、調整を要すると想定されますので、その間放置しておいていいのかという問題でございます。

もちろん、全く放置しているわけではなくて、この資料の、先ほど申し上げたルールの3類型でいけば、取引ルールについては、今月から金融商品販売法の対象といたしましたが、この程度ではちっともこたえないぞとせせら笑ってる業者の顔を思い浮かべる程度の想像力はあるわけでありまして、これまでと同じもぐらたたきの繰り返しではないかと言われても、やはりこの2番目の業者ルールが必要ではないか、必要かどうかという論点でございます。

この取引はだれが行ってもいい商売ですから、この問題を金融審議会で議論しなければならないという義理というのかその理論的必然性はないんですけれども、現実にはなかなか金融審議会しか検討の場がないと思います。

どこの役所も所管していませんから、確たる統計はありませんが、足もとでもかなりの勢いで取引量は増加をしております。当然広告も野放しであって、たまたまこの間、手にとったマネー雑誌によりますと、外貨預金とか外貨のMMF、外国投信などと並べてこの証拠金取引というものが紹介されていて、メリットとしては、為替の手数料が外貨預金の10分の1、極めて安い、あるいは外貨預金などと違って1日24時間、リアルタイムでの為替レートで売買できる、あるいは売りからも入れるので、円高でも円安でも収益を狙えるとか、さらに外貨預金の金利に相当するスワップポイント、外貨との金利差も受け取れると、何かいいことずくめが書いてあって、最後に3行だけ、もちろん為替がどう動くのか相場観を養うことも重要ですと書いてあるんですけれども、「も」じゃないでしょうと。(笑)相場観が1割ずれたら元手がゼロになってしまうような取引にはとても見えないわけです。

当然、こういう取引に社会的意義がないというつもりは全くなくて、金融先物取引の生みの親と言われてますCMEのレオ・メラメドが70年代の初めに金融先物取引を最初に思いついたのは、ブレトン・ウッズ体制が維持できないという懸念がもう明らかに高まってきてるのに、ポンドを持つ一般個人は自分の資産を防衛するすべがないことがきっかけだったと、彼の自伝に書いてありました。

また、より一般的に将来の為替変動によって損失を受ける可能性のある人はたくさんいるわけで、外貨投資によってヘッジしておきたいというニーズもあるでしょうし、あるいは今後、中長期に日本のインフレ懸念が相対的に強いと見るんだったら、外貨に分散を、将来の購買力を守るためにしておきたいという人もいると思います。

問題は、先ほどの外貨預金とか外国投信だと売れる業者が決まっていて、売るためのルールも決まっているのに、証拠金取引だと何にもないということでございます。もちろん、説明義務とか適合性原則をみずからに課しているちゃんとした業者もおりまして、そういう方々は、むしろこの取引が健全に成長していくためには、早く業者規制をしてほしいという意向を持っておられます。仲間だと言われたくないような人たちを早く是正なり除外なりしてほしいということですね。

そのためには、この取引を適用するに当たっての資格要件とか、遵守すべき行為規制とか行政による検査とか報告徴求権とか、あるいはその違法行為に対する行政処分、登録取消、場合によっては刑務所に送り込むような、そういう業法上のツールが必要になってまいります。

また、そういったきちんと商売をやっておられる業者さんの話を聞きますと、顧客の中には、この取引をやっていて百戦百勝みたいな方がいて、どうやらその介入関係者みたいなんで気になりますなんて聞きますと、何の規制もないんで、その顧客にやってることはもちろん全く違法ではないわけですけれども、何か目の前にいたら殴ってやりたいような、そういう感じがしますね。いつも私の説明は中立な進行役を逸脱してるってマスコミにも言われるぐらいですから、ちょっと気にはしてるんですけれども。

本日のところは、ただいま申し上げた事柄につきまして、今後一部会としてどういうふうに議論を進めていくかも含めて、ご自由にご意見をいただきたいということでございます。

失礼しました。

○神田部会長

どうもありがとうございました。いつも詳しいご説明、ありがとうございます。

それでは、今日は残りの時間は、今大森課長からご説明いただきました本年度の検討方針についてのご質問、ご意見、それから今後この部会で審議を行っていく上での視点、物の見方とか考え方とか、そういう意味では、今大森課長が触れられなかった点についての何かご提案でももちろん結構ですので、そういったことを含めて、皆様方からご自由にご発言をいただきたいと思います。

どなたからでもどういう順番でも結構ですので、どうかよろしくお願いします。

原委員、どうぞ。

○原委員

大森課長のほうから丁寧なご説明をいただきました。私はこの金融審議会が立ち上がったときから参加をしておりまして、金融サービス法、それから投資サービス法という、こういったもともと取り組みたいというふうに思っていた課題を再度検討できるということを大変うれしく思っておりますし、力を注ぎたいと思っております。

それで、議論の進め方ですが、投資サービス法ですとかインサイダー取引についての、そういった市場のルールというところをもう少し決めていかなければというところがありますけれども、後半でご説明がありました外国為替証拠金取引について、やはり緊急に取り組みをスタートしていただきたいというふうに考えております。

これについては、今広告をもとにして、大森課長のほうからご意見、感想を述べられましたけれども、実際に各地の消費者センター、全国500カ所近くございますけれども、多くの消費者から苦情が寄せられている状況です。

この状況については、金融トラブル連絡調整協議会のほうで、一昨年、それから昨年と、問題であるということが意見として出されています。ただ、監督官庁がどこにもないというようなことから手を挙げるというところがなくて、また、どんどん被害が広がっていくということを懸念いたしまして、私は金融オンブズネットという消費者グループをコーディネーターということで関わっていますが、昨年10月の時点で、金融庁、それから財務省、それからきょうオブザーバーで入ってらっしゃいますけれども経済産業省と農水省ですね、こういったところを回りまして、至急対策をとってほしいということをお願いいたしました。

証券会社への事務ガイドラインのところの手当て、それから金融商品販売法での手当てというところはされてはきましたけれども、非常に隔靴掻痒というところがあって、ぜひこの業者ルール、それから市場ルールのところでの手当てを当面していただいて、それで投資サービス法それから金融サービス法の検討というところに議論を進めていただきたいと思っております。

2つ思っておりまして、1つは、ここで業法が制定されて、この取引についてルールが制定されたから、そこで終わりということにはしていただきたくない。投資サービス法、金融サービス法に検討をつなげていただきたいということが1つです。

それから、2つ目なんですけれども、寄せられている相談を見ると、特徴的に分類ができるというところがございまして、一つは高齢者の方に販売をしている。ですから、適合性の原則から考えると、とてもこういうような人に販売できない。70代どころか80代の方とかそういうような高齢者の方に販売をしている。証拠金取引ですから、いったん被害が起きるとその被害額は非常に大きいというところがあります。本来なら販売できないような人たちに販売をしている。そういう意味では、説明義務を課したところで、理解しているかどうかというところはよくわからないというままですね。

それから、広告の話が出ましたけれども、広告ですとか、それからこちらが望んでいないのに訪問という形とか電話がかかってきてこの取引に加わる方が多くて、不招請の勧誘の部分の手当てというところも必要ではないかと思っております。

それから、実際にトラブルになったときも、消費者センターとか弁護士会、弁護士に頼んでいらっしゃいますけれども、多くの被害がまだ眠っているというか、顕在化してないと思っていますので、それを手当てする形をぜひ図っていただきたいというふうに思っております。

それから、もう1つの問題は、事業者自体が、だれでもこの取引をやれるというところがあって、ほとんど詐欺をやろうと思えば、その詐欺的集団でこの取引に入ってきて消費者を勧誘していく、取引に引きずり込むということもやられておりまして、こういった事業者に対する規制。先ほど大森課長のほうからも監督の話ですとか、そういった話が出ておりましたけれども、そういった事業者の部分のところの手当ても必要だというふうに考えております。

ですから、新しい法律でつくるのか、それとも金融先物の法律のほうで手当てをしていくのかということもあろうかと思いますけれども、今の金融先物の法律では、そういった一般の利用者への販売のあたり、勧誘のあたりはほとんど手当てされていませんので、もしもその中でということであれば、その改正も含めて検討をしていただきたいと。

私自身が考えていますのは、この取引自体、やっぱり一般消費者には無理だというふうに考えていますので、一般の消費者を巻き込むということがないような形での法律的な手当てを希望したいというふうに思っております。

大変長くなりましたけれども、以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

今日は多くの方からご自由にご意見をいただきたいと思います。今の論点についてでももちろん結構ですし、ほかの点についても結構です。

それでは、木村委員、上柳委員の順番でお願いいたします。

○木村委員

私も、この日経の経済教室、部会長の文を読んで、我が意を得たりと感じた次第です。連合としましても、金融サービス法の制定を以前から求めてきたわけであり、いわゆる業際間の問題だとか政治的な側面の問題だとか、あるいは国民理解の問題だとか、この場で十分に議論すべき大きな課題もあるとは思いますが、ぜひこの投資サービス法の制定を目指して議論がされれば良いと考えております。

第二部会の保険のワーキンググループでも、消費生活総合センターの消費生活相談員の方が、新しいタイプの金融商品がいろいろと出てきているので、新しい投資家保護ルールが必要だと率直な感想を述べられておりましたけれども、このような新しいタイプのものが法律の隙間を縫って出てくるということに対しましては、やはり横断的な法律の整備が必要になるのではないかと思います。

したがいまして、ここでは投資サービス法をまず整備していただき、最終的な報告書においては、日本版金融サービス法制定可能性についても、道筋といいますか、ある程度言及するような形が望ましいのではないかと考えております。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

それでは、上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

やはりこの投資サービス法はもうぜひということで、これは私の聞いてるところですと、3月19日に閣議決定で投資サービス法についても検討することというふうになっているかと思いますので、これは当然のことかと思います。

加えて、今木村さんもおっしゃったように、金融サービス法に近づけていくべきだと。

今、外国為替証拠金取引が問題になっておりますけど、あと弁護士会で今多いのは、海外商品先物のオプション取引というのがありまして、商品先物は他管庁の管轄ではありますけれども、それにオプションがつくとよくわからなくなる。

それから、もう1つは無認可の共済ですね。これも何サービスなのかよくわかりませんが、かなり類型的にたくさんのご相談があります。一番金融サービスの中身が問題なんですけれども、ぜひその横断的な手当てが必要だろうというふうに思っています。

それから、2つ目なんですけれども、外国為替証拠金取引について、金融先物取引法の関連での手当てというような話も出てるようですけれども、原さんが言われましたように、抜本的な改正をしないと全然間に合わないということは、恐らく認識は一致するのではないかと思います。

今日はお隣に太田さんが見えてますけれども、金融先物業者としては有名なところが、金融先物取引業協会からは最初は譴責、2度目は200万円の過怠金というようなことで、去年処分されている業者がありますけれども、その人たちはまだ、例えばこの『週刊エコノミスト』に報告が出たんですけれども、この外国為替証拠金取引は金融商品の販売法適用の対象であり、金融先物取引ではありませんといって、何かこれはいい宣伝なのか悪い宣伝なのかわかりませんけれども、こんなことでどんどんと宣伝を先週号で、『週刊エコノミスト』4月13日号でされていて、かつ弁護士会等にもたくさんの相談が来ておりますので、きっちりした対応が必要だというふうに思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

場つなぎでひとこと発言させていただきますと、金融先物取引法というのは、私の理解では、あるものを金融先物というように定義してルールを設けている法律ですけれども、法律を作った時の考え方というのは、それは取引所で取引するものについてルールをつくるという考え方であったのですね。したがって、この法律は、例えば金利とか通貨のいわゆる先物ととりあえず呼んでおきますけれども、そういうものについて取引所外で取引をするものを禁止しているわけではなくて、取引所外の金利・通貨スワップを、例えば金融機関同士で、それはスワップ取引と普通は呼んでいるのですけれども、行うことは規制を受けないのですね。例外として、取引所の相場を使ってやるとこれは規制を受けますけれども。そうでない限り、原則的にはこの法律の規制対象外なのですね。いずれにしても、取引所の相場を使わない以上、取引所外の取引について業者ルールとか何とかルールというのを設けているわけではないのです、現在の法律は。

したがって、先ほど原委員がおっしゃったように、ちょっと将来の投資サービス法とか金融サービス法の議論の中にどう整合的にいくかはともかくとして、今何かしようとするときに、仮に先物取引法を改正して対応しようとすると、金融先物取引法の基本的なところを変えなければ、つまり取引所取引についてのルール、法制が中心であるところを、広く取引所外の取引についても公益性とか業者ルールとかいうものを入れるのだというふうに組みかえる必要が恐らくあるように思います。

ほかの点も含めて、どの点でも結構ですので、いかがでしょうか。どなたからでも。

淵田委員、どうぞ。

○淵田委員

ご説明はありませんでしたが、資料3-1に「自由討議テーマ案」というのがございまして、今議論されていた投資サービス法のところは、この一番上の「投資サービスにおける投資者保護のあり方」というところに該当すると思いますが、この投資サービス法の議論というのは、私は投資者保護という観点だけではなくて、一番下にある「複線的金融システムに向けて」という、ビジョン懇でもやりました大きな方向性、これとも大きく絡む議論だと思います。

というのは、今重要とされていることは、銀行のバランスシートを使わない金融取引、金融商品というものをいかに拡大させていくかということだと思います。今、例えば地方の中小企業などでも、昔はお金が足りなければ銀行に借りに行くということだったのでしょうけども、だんだん最近はもうそれ以外のさまざまな調達手段というものを模索するようになっています。その場合も、必ずしも公募の証券発行ということにこだわらず、いろいろな手法というものが追求されています。

そういう方向でありまして、これは私は大変よい流れではないかと思っております。こういう流れを発展させるといいますか、銀行のバランスシートを使わない、銀行にリスクを負担させない形のさまざまな金融調達、運用のすそ野をいかに広げるかという、そういう方向性を考えていくため、そういう方向をしっかりさせていくためには、やはりこの投資サービス法という考え方が必要なのかなと思っております。

ですから、投資者保護ということを強調されるのは当然だと思いますけれども、同時にこうした非銀行的な金融調達、運用手段あるいは取引手法といいますか、それをいかに発展させるかという視点でも、この新しいアプローチというのを考えていったらどうかと思います。

現行の証取法でも、投資家保護というのを1つの柱としつつ同時に証券市場の健全な発展を目指すという、この2本柱があるわけですから、投資者保護ということを強調するのは、今の外為証拠金取引とはそういう問題が眼下にあるゆえに、そこは最も強調されるわけですが、同時にこの複線的金融システムに向けて前向きの方向性、こういうものをもっともっと発展させるという観点からも、この法律というのを考えていく必要があるかなと思います。

それから、それに関連してあと2点ほど、ちょっと手短かにと思いますけれども。

経済的実質は同じものは同じように規制しようというのがこの根本的な理念だと思うのですけれども、そのように考えていきますと、銀行と投資サービスと保険という区切りで、その中で投資サービスというところを今の証券から広げていこうという発想で、それは現実的だとは思うのですが、どうしてもやはりキャッシュフロー的には預金と債券をどう区別するのかという問題はすぐに起きてくる話です。

実際2年ぐらい前でしょうか、この第二部会のワーキングで、金融機能の強化に関するワーキングといった名前だったと思いますけれども、銀行が社債を出すときに通常の社債よりもディスクロージャー規制は緩くてもいいのではないかというな議論がなされていました。既にそういった議論はもう足もとで起きてきたわけです。

あるいは、貸出債権流動化とかシンジケートローンとかいろいろ出てきますと、貸し出しと社債の区別というところがあいまいになってくる面もありますし、変額年金保険といったものの中身を見たら投信が主体だったというようなことも生じています。ですから、投資サービスを議論していくと、おのずとその銀行、保険との境界も議論せざるを得なくなってくる、そこははっきり分かれるものではないなという気はしております。

それから3番目に、そうやっていろんな金融商品とか取引とか手法とかを取り込んでいく場合に、当然すべて同じように規制するわけにいきません。開示規制あるいは不公正取引規制、それから業者規制、取引所といったその取引の場の規制とか、それぞれやはり変えていかなくてはいけないということは、神田座長が、いわゆる柔構造という言葉をお使いになっておっしゃってる点でありますけども、その場合、何をどう変えていくのかと、どの部分をどう変えていくのかという、何か全体の体系的な哲学みたいなのが必要なのではないかなと思います。今、結構そのときそのとき、いろいろと対応されているような気がしておりまして、そうではなくてやはり体系が必要かなと思います。

これは、別に投資サービス法という今後の議論というよりも、例えば投資事業有限責任組合を証取法に持ってくる上で、昨年の議論でも、ちゃんと今までやってきた人を取り締まるわけではない、おかしな人を取り締まるために証取法の枠組みでやりましょうという話だったが、じゃあ今まで普通にやってきた人は何も今までと変わらないのかというと、そうでもないだろうという、いろいろ不安はあるのだと思います。

従ってこの柔構造の議論は、将来の投資サービス法の議論というよりも、足もとの問題としてある程度考えながらやっていかなくてはいけないのではないかと、ちょっと感想ですけれども、思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、田中委員、原委員の順番でよろしいでしょうか。

○田中委員

私のほうから2点申し上げたいと思います。

まず第1点目、この投資サービス法に関しまして、この投資者保護というのはこれは重要といいますか、それよりも前提条件で、この投資家が保護されないようなマーケットには安心して資金が入ってこない。そういう意味では前提ということで、重要なポイントだと思います。

ただ、その一方、この業者の立場から見た場合、ルールの明確性が欠如しているような場合、まっとうな業者といいますか、真剣に考えている業者からすると、このどこまでがよくて何が悪いのか、概念的にはわかるけれども実際に実務におろした場合どういうことなのかが明確でないというような場合だと、よくわからないから、これはなかなかビジネスがスタートできないなというような判断になる。その一方、いいかげんな、本来排除しなければいけないような業者はビジネスをスタートしてしまう。その結果として、本来の法の趣旨とは違って、いいかげんな業者が跋扈するようなことになってしまうので、ルールの決め方に関して明確性というものは確保しなければいけないというふうに考えます。

それから2点目は、この資料3-1のところで3番目に書いてあるインサイダー取引規制。公平な取引を確保するに当たっては、このインサイダー規制というのは極めて重要なポイントであるんですが、現在これに関して、上場企業の役職員の立場からいうと、このインサイダー規制のあり方が非常に不明確な部分もあり、自社株に対する投資がしたくても、何をどういう形でやるのが許されて、どういうことが許されないのかというのがなかなか判断しづらい状況になって、結局本来自社株投資を行うことにインセンティブを持たなければいけない人たちがなかなかできないような状況です。このインサイダー取引のところについての見直しというのも、その明確化というのが必要なのではないかなというふうに思います。

○神田部会長

ありがとうございました。

それでは、原委員、できるだけ簡潔にお願いします。

○原委員

簡潔に。度々ですみません。

1つは、金融商品販売法の限界をきちんと把握しておくということです。

それから、もう1つが、投資サービス法と金融サービス法でちょっと言葉の混乱があるかもしれないということで。

金融商品販売法の限界ということは、適合性の原則を勧誘方針の策定公表にゆだねましたけれども、やはりこの勧誘方針の策定公表がほとんど機能していない。それから、苦情とか裁判外の紛争処理を金融トラブル連絡調整協議会に委ねましたけれども、これも回数は重ねておりますけれども、根本的な解決のところに結びつけていく道筋になっていないというところですね。それから不招請勧誘も手をつけられていないということで、金融商品販売法の限界ということをきちんと把握しておく必要があるということが1つ。

それから、2つ目は、投資サービス法と金融サービス法とちょっと言葉が混乱しているかなというふうに思っておりまして、例えば3月19日の規制改革推進3カ年計画ですか、こちらに出ているのが、たしか金融サービス法とか投資サービス法とか両方の言葉が使われているような。

○神田部会長

「金融サービス(証券)」だったと思います。

○原委員

そうですね。ちょっと両方の表現が使われているかというふうに思いますけれども、一つは、証券概念を広げていって、すべて外為証拠金取引なども入れた形での全体的に業者ルール、市場ルールを統括したようなものを、一応その投資サービス法の概念というふうに思っています。私が発言している金融サービス法というのは、利用者側、消費者側から見ていって、その販売勧誘のルールというところから入っていくということで、ここになると、保険とか銀行とかもみんな入ってくるということです。両方でセットになる必要があると考えています。

その中で、ディスクロージャーの話ですとか不公正な取引方法みたいなことを、どちらでどう整理していくかというようなことは残ってくるだろうというふうに思っております。ちょっと言葉の混乱があるかなということと、それから哲学は、やはり大変必要だというふうに考えておりまして、金融庁発で世の中を変えていきたいと大森課長がおっしゃられましたけれども、確かにやはりそれぐらいの意気込みを持って望まないといけないというふうに考えております。

そういう意味では人手とか予算の話もよくおっしゃられるのですけれども、政府のレベルでぜひそういったところ、ここで言っても予算はおりないのかもしれませんけれども、手当てをしていただきたいというふうに考えております。

○神田部会長

岩原委員、お願いします。

○岩原委員

この投資サービス法の議論は、先ほどお話が出ましたように、蝋山先生が司会されておりました流れ懇に始まって、さらに言えばその前の平成4年の金融制度改革法等々非常に長年の宿題でありまして、私としては、やはり多くの方々がおっしゃったようにぜひこれを実現していただきたいと。神田座長がお書きになりました、この文章はそのとおりだと思いますので、最低限これをやっていただく必要があると思っております。

そしてまた、淵田委員がご指摘になりましたように、これをやっていきますと、やはり投資サービス法だけで済まなくなっていくことは確かだと思っておりまして、先ほどちょっとご紹介のありました金融トラブル連絡調整協議会、ここでは具体的ないろんな紛争がその問題として提起されておりまして、そこで見ていきますと、確かに大森課長がおっしゃったとおり、業態というものは厳然として存在することは存在するんですけれども、ただ、ではそれで完全に縦割りの形で問題が起きてくるかというと、そうではなくなっておりますし。特に、まさに証券代理店の問題が解禁され、そしてまた保険の銀行による窓販が広まっていくということになると、どうしてもこれはそういった証券というか投資に限らない、その問題の形が出てきますので、それに対してやはり統一的なルールをつくっていくことが、これはもう必然的に求められてくることになると思います。

それは、単に投資者保護だけでなくて、淵田さんもおっしゃったようなそれ以外の面、特に保険の銀行窓販のときに強く申し上げたんですけれども、銀行が保険商品を販売するということは、同時に銀行のほうにもある面、その保険商品を販売するに際してのリスクが発生してきますし、また保険の側にも銀行に販売してもらうことによるリスクも出てくる。そうすると、リスク管理という観点からも、統合的な業者ルール等がやはり必要になってきますので、そういう意味で、将来的にぜひ金融サービス法のほうに向かって少しでも努力していただきたいし、現に大蔵省の時代から現在の金融庁の皆さんもそれに向かって努力されてると私は理解しておりまして、ぜひその方向で努力していただきたいと思います。

それと同時に、ただこれは非常に難しいということも私もよくよく理解しておりまして、さっき大森課長がおっしゃいましたように、文化そのものを変えなきゃいけないのかもしれませんが、さらに技術的に、さっき田中浩委員がおっしゃいましたように、常に法規制の明確化ということとの衝突が問題になって、単にそういった業者間の問題あるいは役所間の問題というだけでなくて、法技術的に日本ではある程度、どうしても形式的な明確化を要求されるところがあって、それが大きい障害になってると思います。

特に、これは刑事罰で担保しているところが出てきますので、検察庁や警察が動きやすいようなルールをつくらないと、実際にそれをエンフォースすることができない。これは、昨日まさに保険ワーキンググループで議論したところでありますけれども、そういうことになりますので、そこの部分の配慮がぜひとも必要だと思います。

その意味で申しますと、もう1つインサイダー取引について、今日ご提出いただきました資料の中に、むしろその一般ルールに任せるべきだという意見と逆に、経団連からお出しいただいております包括条項は廃止して個別列挙だけにすべしというご意見と両方出ておりますけれども、証券取引法を改正して現在の規定をつくったといっても、まさにその両方の狭間で本当に苦労して、何とか検察にのんでもらえる条項として現在のものをつくったわけでありまして、それでいながら一方で、さっき大森課長がおっしゃった殴ってやりたいというようなやつが出てこないように、そういうものも押さえられるようにしようとして、この個別条項と包括条項のセットという規定が現在できてるわけでありまして。

確かに、その後の時代の変化や実務の変化に合わせて柔軟化していく必要があるところもあると思いますが、しかし大きい日本の司法のあり方等がすぐに変わるわけでもないこと等を考えますと、現在のインサイダー取引規制を拙速に改めることには慎重であるべきだと私は思っております。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。ほかに。

それでは、吉野委員、藤田委員の順番で。

○吉野委員

インサイダー規制について少し申し上げたいと思います。

実は、ご存じのように、私どもでは自主規制機関として、インサイダー規制を含む売買審査を行っているほかに、取引相談室というのをつくっておりまして、上場会社からよく相談を受けております。その中に、田中委員からも出たような自社株の取引についての相談も結構多いということもございまして、ぜひこれをテーマとして取り上げていただきたいと考えております。その際の1つの視点は、マーケットの実態にあった実効性の高いものにしていただきたいということであります。

実を言いますと、現在の重要事実の個別列挙事項であるとか軽微基準の内容については、投資者の投資者判断に与える影響という点において実態とそぐわないという面が出てきておりまして、先ほど大森市場課長からも話が出ていましたけれども、過剰規制であったり過小規制であったりという部分があるように感じております。岩原委員からは、規定の難しさというお話が出ましたけれども、バスケット条項のみへの規則改正ということも含めまして、インサイダー取引の構成要件そのものについて、再検討する必要があるのではなかろうかと思っております。

これが1点ですが、2点目は、国際的な規制の調和の観点でありまして。実を言いますと、私どもの取引実態は新聞などでも報道されておりますのでご存じかと思いますが、非居住者による売買というのが非常に多くなってきておりまして、総売買代金のおよそ30%という状況ににあり、日本市場はいわば国際的マーケットになりつつあります。このような面から、規制の国際的な調和という観点もぜひ欠かせない要件であろうと思っております。

3つ目は、冒頭言いましたが、上場会社の取引相談の中でインサイダー取引規制に関するものが、非常に件数が多いということであります。経団連のご意見もございますが、規制が非常にわかりにくいということも相談の中には多くございまして、規制の見直し行うに当たっては、法制度の見直しとともに、上場会社のコンプライアンスの実務に対する対応についてもあわせて検討する必要があるのではなかろうかと思っております。

以上、3点でございます。

○神田部会長

それでは、藤田委員、どうぞ。

○藤田委員

投資サービス法なり金融サービス法に結びつく議論をする際には、詐欺を行うための策略、計略、技巧を封ずるということに特に力点を置くべきではないかと思っております。といいますのも、実際に多くの消費者、市民が困ってることの多くは、まともな金融取引ではなくて、詐欺ではないかと思われるようなものに引っかかってる例が多いと思います。外国為替証拠金取引なんかも、これは本当に金融取引なのか、詐欺と理解したほうがわかりやすいんじゃないかといったような取引構造になっていると指摘されております。

最近では、そのほかに、外国の宝くじを買いませんかという商売が広がってまして、かなりの被害が出ております。一向に当たらない、あるいは当たったはずだが当選金が来ないといったようなことでありまして、たしか僕の知識では富くじというのは売ってはならないのが原則になってるかと思うんですが。したがって、そういうビジネスというのはないはずなのに、そういうビジネスを実際にやっていて、被害者がたくさん出てるといったようなことがあります。

そんなことを考えますと、消費者側にそういう法律知識もありませんし、特に高齢者がその被害に遭ってるというようなことを考えますと、やっぱり現在は十分行われてない、その詐欺を行うための策略、計略、技巧を封ずるということに力点を置くべきではないかと私は考えております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

それでは田島委員、お願いします。

○田島委員

投資者保護のために投資サービス法の整備を速やかに行うべきだと思いますけれども、その手法として証券取引法の改組で対応するということになりますと、非常に大きな仕事になって時間がかかるのではないかということが気になるんですけれども、その辺は神田先生はどんなふうなお考えでいらっしゃいますでしょうか。

○神田部会長

ありがとうございます。よく考えてお答えしなければならないことだとは思いますが、今の証券取引法をそのままにして投資サービス法を作るとすると、ちょっと屋上屋を重ねることになるのではないかかというのが私の感覚なのです。

原委員のおっしゃった概念というか言葉の整理の問題ですとか、それは淵田委員がおっしゃった限界の問題ですとか、いろいろ難しい問題があるのですけど、非常にラフに言えば、金融サービスという日本語、多分、イギリスでファイナンシャルサービシーズアクトと呼ぶ法律が1986年にできたんですけども、それの日本語訳ではないかと思っています。それだけではないのかもしれませんけれども。

歴史的には、イギリスはもともとシティの自主ルールでやってましたので、銀行法とか保険業法という法律もなかったのですね、あの国は。法律は何もなしというそういう国が、制定法というか、法律を制定して、75年だと思いますが保険業法、保険会社法と直訳してますけども、そして79年に銀行法をつくって、86年に、私の言葉で言うそれ以外の分野というんでしょうか、投資サービス分野をカバーする金融サービス法を作ったわけです。

分野間の境界の話としては、藤田さんがおっしゃったとおりの問題があります。変額保険ですとか、いろいろとありますけど、とにかく、銀行と保険以外の分野をファイナンシャルサービシーズアクトという名前で法律にしたその対象は、インベストメントビジネスということで、直訳すると投資事業ということになるわけです。ですから、今投資サービス法と私が使ってる言葉というのは、とにかく銀行、保険についてはそれなりのルールがありますから。それはさておき、それ以外の分野を見ると、日本ではそもそも業者ルールが何もない領域があるということで、まずそこを横断的に埋める必要があるのではないか。それはイギリスの86年法の発想に近いわけです。

さらに進んで言えば、イギリスはそれを2000年に金融サービス市場法にしたときには、全部を横断的にしたわけで、そういう金融サービス法という考え方はまた次のステップとして、当然恐らくそういう発想は出てくるだろうと思うわけです。

投資サービスのところでとどまってよいと考えているわけではありませんが、しかし、日本の場合には、まずそれをやる必要があると思います。他方で、そうはいいましてもこれもそうすぐにできることではないと思います。したがって、ご指摘がありますように、外為証拠金などのように、目の前にあるものについては、やはりもぐらたたきを続けていかなければならないということは当然あると思います。

また、そういう投資サービス法というのも、藤田委員がおっしゃったように、投資家保護だけのためにあるのでは決してなくて、その投資家保護と市場の発展なり国の金融の構造を変えていくというのは、当然車の両輪ですから、そういう視点で制度整備をしていく必要があると思います。

もう1点、投資サービスという分野でまず線を引こうと考えることの裏には、エンフォースメントの議論があります。去年この部会でご審議いただきましたけれども、それを私は日本版SEC論という表現で呼んでいますけれども、これも、ちょっと銀行、保険とは違う、市場ルールとでも呼ぶべきもののエンフォースメントということが中心でありますから、一方ではそういう日本版SECみたいな議論を、人によって内容は違うものの、なされてますので、そういう意味での投資サービス法というところをまず作り上げるというのが現実的ではないかと思うのですけれども。そして、そういう投資サービス法は証券取引法とは別ですというのは、私の頭ではなかなかスッと来ないのです。

といいますのは、今申し上げましたような意味での投資サービスというのは、当然伝統的な証券、すなわち株式ですとか社債とか国債ですとかいうものも含まれると思うのです。したがって、それに加えて、新しいというか、いろいろなものが含まれてくる。そうなると、銀行、保険を除く分野というのが、わかりやすいと思いますので、そういう言い方をしています。伝統的な証券も含まれるということになります。

そうだとしますと、改組という言葉がいいかどうかはわかりませんけれども、次々に何本も法律をつくっていって、金融サービス法までつなぎましょうというよりは、ちょうど市場ルールというか市場型間接金融というか、いろんな言い方がありますけれども、その部分について、まずとにかく横断的な世界をつくることを目指してはどうかという感じを出しているわけです。その意味では、証券取引法の改組という言葉がふさわしいのではないかと思います。ただ、以上は私個人のおおざっぱな方向感でありまして、何か具体的なやり方にこだわっているわけでは決してありませんので、中身を実現させるほうが重要だとは思っています。そうした点につきましては、また皆様方、それぞれご意見がおありだと思いますので、ぜひこの部会でご議論いただければと思います。

長くしゃべり過ぎまして、申しわけありません。

○田島委員

ありがとうございました。

○神田部会長

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

インサイダー取引規制の改革については、今後議論が深められると思いますけれども、二、三発言させていただきたいと思います。

昨年の12月の部会の際に、インサイダー取引規制について、個別条項を削除して包括条項一本でいくべきではないかと言いまして、そのとき少し説明をしたのですが、わかりにくいと言われたものですから、文章の形で公表したものが、今日お配りいただいている資料であります。これについては、お読みいただければ理解していただけると思うので、それ以外のことについて、二、三発言させていただきます。

岩原委員がおっしゃられたように、個別条項と包括条項を、非常に苦労してつくられたというのは、もちろんそのとおりであります。ただ、当時インサイダー取引規制としては、明確なものがあったのはアメリカとイギリスぐらいでありまして、その後の国際的な法規制のあり方に変化が生じたことから、やはり見直しが必要になってくるのではないかと考えます。

私は、これをなくして、前の58条、現在の157条に戻せと言ってるわけではないのです。諸外国の例を見ても、内部者を定義するとか、包括的なレベルではありますけども内部情報を定義する、公表概念を定義する、禁止される行為を明確化する、そういう形で立法することは可能でありますので、詐欺を禁止する一般条項に戻れという話ではないのであります。

それから、インサイダー取引規制のあり方を変えるのは非常に大きな問題ですので、拙速にすべきでないのは当然ですが、実務のほうから、会社役員の方の自社株売買が極めて抑制されている、非常にやりにくい、それで株式取引が萎縮してしまっているという話を聞くのですけれども、そういったエピソードを並べるのではなくて、実証研究をきちんと示していただかなければ、法改正まではもっていけないのではないかと思います。

例えば、インサイダー取引について厳しい最高裁判決が出た、その後に会社役員の売買高が減っているとか、あるいは株価が下落したとか、そういう実証研究をきちんと示していただければそれなりに説得力があるのですが、何となく心理的にやりにくいというだけでは、なかなか法改正までいくのはむずかしい、それこそ拙速になるのではないかと考えています。今後、議論を進める際に、常にそういうことを念頭に置いていただきたいと思います。

以上です。

○神田部会長

はい、どうもありがとうございました。

そろそろ時間ですけど、若干は予定の時間があると思います。いかがでしょうか。

本日は非常に重要な点をいっぱいご指摘いただいたように思います。それらをどう今後仕切っていくかは大森課長以下、金融庁の方々の熱意と努力にもかなりかかわってくるようには思いますけれも、何か感想ありますか。

○大森市場課長

特にないです。

○神田部会長

それでは、本日はどうもいろいろと大変貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。

今日は再開後の第1回目ということですので、幅広くご意見をいただくということでありまして、その目的は達成できたと思います。ご協力いただきまして、ありがとうございました。

いろいろな意見を多数出していただきましたので、次回からこれを整理をしてやっていかなければいけないと思いますけれども、私と事務局のほうで、皆様方から今日いただきましたご意見、そしてこれまでのご議論を踏まえてそれを整理・集約させていただきまして、次回以降の審議項目に反映させ、できるものから順番にご審議をお願いできればと思っております。

それでは、本日の審議は以上とさせていただきます。

なお、この後記者レクを行いまして、本日の会合の模様等につきまして、簡単にご紹介させていただきます。

最後に、事務局からの連絡をお願いします。

○大森市場課長

では、次回の日程につきましては、部会長ともご相談の上、改めてご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○神田部会長

それでは、本日はこれで散会いたします。どうもありがとうございました。

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