金融審議会金融分科会第一部会(第20回)議事録

日時:平成16年9月28日

金融庁 総務企画局

○神田部会長

それでは、予定の時間になりましたので始めさせていただきます。本日は、金融審議会金融分科会第一部会の第20回目ということになります。これから開催させていただきます。いつも皆様方にはご多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

この部会ですが、皆様方ご存じのように、今年の6月に部会の報告として「外国為替証拠金取引に関する規制のあり方について」、そしてもう1つ、「外国会社等の我が国における開示書類に係る制度上の整備・改善について」という、この2つを取りまとめさせていただきました。そして、その後審議を一時お休みということにさせていただきましたけれども、また本日から秋のご審議ということで再開させていただきたいと思います。

これまでと同様、議事は公開とさせていただきますので、報道機関の方々のためなどに後ろの方の席を確保しております。

本日の予定ですが、再開後というか、秋の1回目ということもありまして、大きく分けて2つご議論いただければと思います。

1つ目の議題は、今後のこの第一部会の進め方についてであります。本日は事務局から今後のこの部会の進め方についてご説明をいただき、今後この部会で審議していくテーマ等につきまして、委員の皆様方からご自由にご意見をいただきたいと思っております。

2つ目の議題ですが、開示制度をめぐる論点項目ということであります。これはまた後ほどご説明していただきますけれども、開示制度、すなわちディスクロージャー制度をめぐる課題は非常に複雑でありまして、専門的、実務的な観点からの検討を行う必要があるため、従来からこの部会に設置しておりますディスクロージャー・ワーキング・グループにおいてご検討いただいてきました。今回もやり方としては同様の進め方でご審議していただいてはどうかと考えておりますが、いずれにしましても、その際、ディスクロージャー・ワーキング・グループにおいてご審議いただく論点項目の案を今日は作成させていただきましたので、この内容について、この部会の委員の皆様方からご意見をいただくということを考えております。そしてまた、この機会にそれぞれの論点について何かございましたらご指摘をいただければと思います。

そういうことで進めさせていただきたいと思いますので、お手元の議事次第に従いまして、まず、事務局の方から今後の金融審議会金融分科会第一部会の進め方についてということでご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○大森市場課長

制度を担当しております金融行政は、金融審議会で得られたコンセンサスに基づいて立法作業を行いまして国会での議論に供するわけですけれども、この投資サービス法という課題は、昨年の当部会で組合型の投資スキームに対する投資者保護の議論が発展していったものでございます。今春、当部会を再開しました際は、先ほど部会長からご紹介がございましたように、外国為替証拠金取引に急いで手を打つべきであるというおまとめをしていただきまして、現在までその作業をしておりました。来月の臨時国会に提出という運びになろうかと思います。

一方で、ここ数年の金融システムの一番大きな課題でございました銀行の不良債権処理というのがかなり目に見える形で進捗をしてまいりまして、金融行政としても銀行に不良債権処理を促すことから、金融システムの望ましい将来像を展望して、それにふさわしい制度的なインフラを整備するということに力点を置く段階に来ていると思います。「望ましい将来像」というのは自明で、再び不良債権問題を日本の桎梏にしないためには、実体経済のリスクが銀行だけに集中してしまう、金融システムのマネーフローを変えていく、「貯蓄から投資へ」ということになります。もちろん、そのための制度的なインフラというのは段階的に整備をしてきておりまして、この第一部会はそのためにあると言ってもいいぐらいですけれども、ただ、今回は部分的な手直しではなくて、恐らくやるべきことの集大成という様相を呈してくると思います。

どこから手をつければいいのでしょうかというのが今日の前半のテーマでございますが、事務局で何も用意しなくては議論もしにくいというぐらいの紙がお手元の資料1でございます。

基本的な考え方の最初に「資産形成ニーズの多様化」とありまして、アメリカでは、預かり資産運用ビジネスの残高が非常に大きく、日本でも団塊世代のリタイヤを控えて可能性の大きな分野だと思いますけれども、日本では、ご承知のとおり、アドバイスをするとか、資金を預かって一任運用するというのは投資顧問業者ということになっております。証券会社はなるべく顧客の注文を受け身で取り継ぐとか、一方で銀行で売れるのは投資信託までということになっていまして、各業態ともグループの中に資産運用会社を持っておりますけれども、これらが国民にとって存在感といいますか、十分ニーズに応えているという評価も余り聞かないような気もいたします。この春から証券会社が投資顧問一任業を兼業するのは容易になっておりますけれども、引き続き、この資産運用ビジネスの制度的な枠組みをどう考えるかという論点があると思います。

基本的な考え方のマル2は、これまで投資サービス法が必要ではないかとされてきた主な根拠でございます。いまだに私ども、「金融サービス法ではないんですか」というお問い合わせをかなりたくさんいただきますが、春にも申し上げましたけれども、繰り返し申し上げますと、業態は相当に融合してまいりましたが、依然として、銀行と保険会社と証券会社の業務というのは基本的な相違があって、その相違をそのままにして法律だけ一本化しても余り政策的に意味がないのではないかということでございます。投資という分野こそ、既に業法が林立しているだけではなくて、ある部分の規制が抜け落ちているとか、ある部分は過剰になっているとか、予想される将来の展開にも対応しにくいという状況にあるがゆえに、貯蓄から投資に向けた基本法として整備する政策的な意味があるということだろうと思います。銀行や保険会社も当然投資サービス法の業務を行う限りにおいて投資サービス業者でございます。

マル3は、現在の証券取引法が、有価証券であれば、発行体の開示義務と取扱業者と取引ルールの三点セットが画一的についてきてしまうのでカバレッジを広げにくい。逆に言いますと、広げるのであれば、神田先生のおっしゃる柔構造が必要だろうということでございます。現実にも投資サービスの融合化という現象は日々観察されておりまして、例えば商品ファンドの中にどれだけ有価証券を入れるともはや商品ファンドではなくなるのだろうかとか、あるいは商品取引所が、実質的には金融先物に法律的には該当するような商品を上場したがると、それは現行法を前提にすれば商品先物ではないでしょうというような現象があるわけです。

マル4は、会社法などの抜本改正と軌を一にして、有価証券概念といいますか、投資サービスの概念を開かれたものにするということ。

マル5は、現在の証券取引監視委員会の機能、体制を、日本版SECと呼ぶにふさわしい水準にどう引き上げていくかということでございます。

以上をやや実務的にブレイクダウンしたのが2の「主要な検討事項」です。

最初の投資サービスの範囲・定義方法というのは、もう既に申し上げました。矢印のマル1マル2マル3ですが、マル1が投資家保護の講じられていない投資商品、マル2が他の業法により規定されている投資商品で、ここでは金融先物、商品ファンド等々挙げておりますけれども、例えば信託受益権は今後大いに普及するでしょうし、抵当証券というのは証券という名前がついていながら証券取引法の対象ではありませんし、変額保険というのは保険と言いながら、実際は投資商品である、たくさんございます。

マル3は既に申し上げましたが、今後、例えば外為証拠金取引のような新たなものを規制するためにわざわざ法改正をしなくても済むような、投資サービスを幅広く定義しておくということが、この国で法技術的に可能かという論点でございます。

いずれにせよ、こういった投資サービスのカバレッジの次に来るのが(2)のこういうサービスを提供する業者のルールを機能別、横断的に整理をしていかねばならないということだろうと思います。次のページをごらんいただきますと、例えば現在は業法によって、自己資本比率規制とか、商号制限があったりなかったり、あるいは証取法にはない発行者の直接募集が規制されていたりということがございます。もちろんここに書いてありませんけれども、開示という極めて重要な論点がありまして、それは本日後半のセッションで扱うことになっております。

矢印が2つありますが、投資サービスに限らず、日本の金融業法というのは大抵本来業務をかなり細かく規定しておりまして、極力それに専念していただくという仕組みが多いです。別の業務を行って損をしたら利用者が迷惑する、利益相反の可能性もある。したがって、本来業務に付随する業務というのは一緒に行うことが効率的でしょうけれども、別の業務は禁止するとか、あるいは弊害が生じないか行政がチェックして兼業を認可するという仕組みを行っております。

ただ、何が本来業務で、何が付随業務で、何が別の業務かというのは、論理的な正解があるわけではなくて決め方の問題ですから、教科書には、セリング、ブローキング、ディーリング、アンダーライティングが証券業だと書いてあるわけですけれども、冒頭申し上げましたように、アドバイスとか一任運用が本来業務であってはいかんということでもないような気もします。

一方、投信の委託会社と投資顧問会社というのは非常に兼業していることが多いですけれども、それは組成したポートフォリオ、望ましい株式投資のポートフォリオを組成する業務と、そのポートフォリオを運用対象として提供する業務に親和性があるということだろうと思います。投信の委託会社は、そのポートフォリオを直接顧客に売ることもできるわけですけれども、売るのは証券会社に任せているというケースが実態としては圧倒的に多くなっているわけです。

いずれにせよ、こういう形で投資サービス業というのは何をすることなのかを整理しますと、単に商品を売るとか、サービスを提供して手数料を受け取るだけなのか、自らより多きリスクを取るのかといったことで、新規参入の要件とか行為規制も違ってくる、先ほどの柔構造になるという姿が自然だろうと思います。

2番目の矢印、その行為規制については、広報、プロ・アマの区別に応じた勧誘、書面交付、こういったところが入り口の部分で、マル3に非常に簡単に書いてありますけれども、禁止行為としては、損失補てんのように業者に対して禁止するものと、インサイダーのように市場参加者、何人に対しても禁止するものがございます。

こういう投資サービスや業者の概念を整理していくということは、当然ながら、現在投資対象の違いによって分立しております取引所の業務の整理にもなるということだろうと思います。

外証法をちょっと飛ばしてしまいましたけれども、これも外国の証券会社のためにいつまで別の法体系にしておくのかという気が私はしております。

(3)で投資サービスのカバレッジが広がりまして、そのサービスを担う業者の業務が整理されますと、次は、当然それを監視して、不正があれば事後的に摘発する投資サービスの監視委員会が必要になってまいります。日本版SECという議論は、日本にもアメリカ並みのSECをつくれという意味で言われることが多いですけれども、日本では、今後どういう機能を担うのか、どの程度の人材能力を備えるべきかということをあわせて検討していくということではないかと思います。

機能としては、現在、事実認定をして、刑事告発をする、あるいは行政処分勧告をするということですけれども、昨年この部会で議論をしていただいた課徴金というツールに加えて何が必要かということだと思います。

最後の集団投資スキームという言葉は、これは元来多数の投資家から資金を集めて専門家が運用するスキームであって、特定の商品とか特定の業界に限ったものではないのですけれども、春にご紹介しました大蔵省時代の最後の金融審議会のセッションで、金融サービス法に向けて、その時点でできることとして、顧客との入り口部分の金融商品販売法と大蔵省が所管しておりました集団投資スキームである会社型を含む投資信託法、それから、資産流動化法の拡充ということになったので、こういった制度の対象にならないファンドとの扱いの違いが生じているということでございます。ですから、問題の構造は先ほどの投資サービスの範囲とか、投資サービス業者の業務の整理の話と同じでございまして、3ページ目にありますように、規制のないもの、既にあるものの仕組み規制、運用業者規制をどう整理していくかという論点だと思います。

投資者保護の範囲を法的に拡大していくという場合に、証取法の有価証券、投資サービスの概念を広げていくというアプローチもあれば、この集団投資スキームの対象を広げるというアプローチもありまして、これはアメリカやEUでも同様の論点がございます。

以上、非常に雑駁ですが、事務局として用意してみたものでございます。ほかにも議論すべき点があれば、よろしくお願いいたします。こういったことを個別に全部やっていきますと、基本方針だけでも来年の春ぐらいまでかかるのではないかということで、スケジュールの案を書かせていただきましたが、これについてもご意見がありましたら、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま大森課長からいただきましたご説明について、皆様方からご意見、ご質問、そしてまた、最後に言っていただきました今後この部会で審議を行っていく上で、こういう視点で審議してはどうか、こういう基本的な考え方がなお必要ではないかということ等、自由に皆様方からご意見をお出しいただければと思います。私の理解では、恐らく今回は、多少という言い方がいいかどうかわかりませんが、時間は限られておりますけれども、基本的なところをきちんと詰めませんと、投資サービス法といっても絵が描けないというところがあろうかと思います。これまで恐らくこういう審議会では基本的な議論をしながら、各論というか、具体的な議論もしてきたと思うのですけれども、どうしてもその時の世の流れというか、飛び入りみたいな、外為証拠金取引を初めとして、そういうものがあればそれに対応するという方を優先せざるを得ないと言うと変ですけれども、優先することになるためになかなか基本的な議論ができなかったと思います。このタイミングでどのくらい時間があるかわかりませんけれども、多少次元が高いと言うと適切でない表現だとは思いますけれども、きちんとした物事の整理をして、投資サービス法というものを構想していくという時点にいるのではないかというふうに、私などは感じます。

それでは、どなたからでも結構でございますので、ご自由にご意見をお出しいただければありがたいと思います。いかがでしょうか。

池尾先生、お願いします。

○池尾委員

市場型の金融を広げていくといっても、いわゆる直接金融ではなくて、市場型の間接金融が中心になるというふうに考えますと、委託関係といいますか、経済学の言葉で言うとエージェンシー関係が、従来以上に重層的なエージェンシー関係が生まれるということになります。そうしたときに、フィヂューシャリー(fiduciary)の問題といいますか、受託者責任とか、頼まれた人が頼んだ人の利益を誠実に受けとめて行動するということが極めて重要なポイントになると思うのですけれども、その辺の問題と市場法との関連みたいなことが私にはよくわからないところがあるので、そのあたりを法律家の先生とかはどうお考えなのか、お教えいただければと思うのです。

○神田部会長

法律家の先生方、いかがでしょうか。今の点はなかなか難しい点で、私も法律家の一人のつもりではあるのですけれども、今すぐご発言があればいただきますけれども、ほかの点も含めて論点をお出しいただいて……。今の池尾先生のご指摘は重要な点だと思います。私自身も意見はありますけれども、時間が余るようでしたらまた後で発言させていただきます。

ほかにいかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

いよいよ投資サービス法の議論が始まるのかということで大変わくわくしているところです。ただ、くどくて申しわけないのですが、私の考えなり、この第一部会でもこれまで議論されていたことだと思うのですけれども、いわゆる金融サービス法との関係は議論の最初の時点で一定の整理が必要かと思います。今日のペーパーは、そういう意味では最初の出発点ということだと思いますけれども、こういう切り口でいけば、投資サービス法も、さらに、場合によっては保険とか銀行業務が今までやっていたことまで含まれる金融サービス法と射程距離がそれほど大きく変わらないのではないか。投資サービスというものがどういうものなのかということについて定義をするということですけれども、これはある意味では金融サービス法まで視野に置けるし、逆にその一部分を切り取るということであれば、かえってやりにくいという面もあるのではないかと思います。そういう意味でどういうルールをつくるかにもよるのですけれども、これから日本の金融の流れがどういうルートを通ってあるべきかということとの関係で、その中間に入る、あるいはその仕組みをつくっていくということでもっと広く論じられるのではないかと一方で思いました。

2つ目は、先ほど池尾先生が言われた点と少しかかわるのかもわかりませんけれども、市場のルールといいますか、あらゆる人たちが公平に、あるいは開示された、あるいは公立的な市場の中でプレイができるという意味での市場の整備、これは今日の後半の開示制度が大きな役割を果たすのかもわかりませんが、その分野と、それからいわゆる資金の出し手と仲介機関との接点、インターフェイスの部分に当たる従来の勧誘規制の部分と大きく分けてあると思うのですけれども、最終的には受託者責任といいますか、仲介機関の中でも直接に顧客の意向を市場に伝えるのではなくて、一歩専門家あるいは裁量が間に入って、その人たちがどういうふうに動くのか、ここがある意味では顧客からいうと一番不信感の強い部分でもありますし、逆に言うと、顧客からいうと自分だけでは判断できないけれども、一定の専門家、しかし信頼できる専門家を利用できるというところが大きなポイントだろうと思うのです。

なかなか議論がまとまらないのですけれども、ぜひ早急に、それこそ春までにそのような大きな事柄を一定の整理をするという勢いで議論していかなければいけないのではないかと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。非常に難しい点ですけれども、いかがでしょうか。論点を出していただいても結構ですし、池尾委員、上柳委員からの問題提起についてのご意見をいただいてもありがたいのですけれども、高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

先ほどの大森課長のご説明のとおりだと思いますし、また、今いろいろな商品が出てくるときに、その都度対応するということでやっているわけですけれども、一定の共通のルールをつくっておくということは何よりも大事なことだと思います。特に今あるもの、あるいは出てくるものに対する対応というだけではなくて、いろいろな商品あるいはサービスの提供というのは技術的にもいろいろな工夫が可能になっているわけですから、そういう新しい商品を誘導するという意味では、それに対するルールというものがあらかじめ整備されているということで、こういう検討はぜひ必要だと思います。

そういうことでありますから、さらに言えば、そのルールというのは、非常に弾力的である必要があると思います。と同時に、弾力的でありながら、かつ予見可能性といいますか、誰が見てもこういうルールに従えばセーフなんだと、ここのところはいけないんだということがあらかじめわかり得るようなことが必要なのかなと思います。どこまで基本法に書くのか、あるいはセーフ・ハーバー・ルール、ガイドラインといったようないろいろな仕組みを含めて、予見可能性というものを確保しながら、かつ弾力的に対応できるようなルールの整備が必要ではないかと思います。

それから、既に論点として書かれておりますように、そういうルールにしましたときに、そのルールが遵守されるという体制をつくらなければいけない、エンフォースメントというものを確保しなければならないと思います。このことは、業者に対するルール確保だけではなくて、いわゆる何人においても守らなければいけない市場ルールといったようなものに対するエンフォースメントの確保というものも必要ではないかと思います。市場監視機能体制の強化ということで(3)のところに触れられておりますけれども、かなりの体制強化をして、そういうエンフォースメントの確保を図っていくということが必要ではないかと思います。

これと関連いたしまして、これは自主規制機関の側でも検討すべきことかと思いますけれども、自主規制機能というものが、こういう法体系にしていくときにどうあるべきかというのはやはり大事な観点の一つではないかと思います。現在は業者がつくっております自主規制機関、それに特別会員という形で広げていっているわけですけれども、そこに加入しない業者もいるわけでありまして、それに対しては政府が直接に社内規程等を作らせる、直接指導していくという法体系になっているわけであります。こういうふうに業者の広がりの中で一定のエンフォースメントを確保していくときに、そういうやり方で十分なのかどうかということにつきましても検討していく必要があるのではないかと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。西村先生、どうぞ。

○西村委員

ちょっとお伺いしたいのですけれども、投資サービスと言われる場合、これからだんだん決まってくることだと思いますが、どういうふうなところまでお考えになっているのか。有価証券という言葉が出てきますが、そういうところでとらえていくのか、それとも投資サービスという場合、例えばオールタナティブ投資、不動産投資のようなものもあるわけで、証券なのか証券でないのか微妙なところがあるようなものがあるわけです。そういったものを含めた形で考えていくのかで相当違いが出てくると思います。

それと絡みまして、先ほど部会長からご指摘もありましたけれども、重層化という場合、重層化のプリンシプルみたいなものがまた必要になってくるのではないかと思います。

今度の投資サービス法というのが、いわば投資サービスについてのある種の憲法みたいな形になるのか、それとも憲法ではなくて実際の規制なり何なりをかなり明確にした形になるのかでもまた見方が違ってくると思いますので、それはこれからの審議で決まってくることだと思いますが、事務局側で今どういうふうにお考えなのか、少しお聞きしたいと思います。

○神田部会長

お願いいたします。

○大森市場課長

一言で言うと、それをこの場で白地から議論をしていただきたいということでございます。最初の投資というものの範囲については、これは金融庁の審議会ですから、金融商品というふうに考えるのが通常は自然なのですけれども、原資産が何であっても、何度か議論しましたように、金であっても、石油であっても、卵であっても、不動産であっても金融商品化をしておりますし、国民にとっては原資産が何であるかというのは、それをどこの役所が担当しているのかというのは知ったことではないという時代にますますなってくる中でカバレッジをどう考えるか。もちろん金融審議会だけで決められる話ではないけれども、そこは余り対象を限定しないで議論をしていただいた方がよろしいのではないかと思っております。

憲法か、あるいはもう少し具体的なルールかということについては、先ほど部会長とお話ししていたのですけれども、日本の法律というのは、金融分野の業法に限った話ではないですが、すべからく細々とルールが書いてあるわけです。細々とルールを書いているがゆえに新しいものに対応しにくい。ルールが書いてあるというのは予見可能性はあるのですけれども、逆に、細々書いてあるから、かえって必要のないことまでやらなければいけない、インサイダー規制が典型的だと思いますけれども。ですから、憲法か細かいルールかというよりは、ルールとしては基本的なことを規定していく中で、もう少し柔軟な運用ができるような、これまでにないような法体系が考えられないかといったことも含めて議論していただけるとありがたいと事務方としては考えております。

○神田部会長

ありがとうございました。大変重要な点を幾つかご指摘いただいていると思うのですけれども、西村先生ご自身のご感触というのはおありでしょうか。

○西村委員

私は、まさに大森課長と同じで、できるだけ広くとらえなければいけないというふうに考えております。ただし、広くなればなるほど、先ほど予見可能性の話がありましたけれども、それとのコンフリクトが生じますので、そうすると、細々とした規制というのは非常に難しくなるだろう。そこのところのトレードオフというか、兼ね合いをどうするのかというのは、ここでこれから考えていかなければいけないところだろうと思います。ということは、逆に言えば、投資サービス法ですべてをとらえるということは恐らくできないと思いますので、また個別の金融サービス法みたいなものができるのかもしれませんが、そういった形で重層的に体系をつくっていくということを最初から頭に入れてつくらなければいけないのではないかと思っております。

○神田部会長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

奥野委員、どうぞ。

○奥野委員

ただいまの件に若干関連するのですが、いわゆる投資サービス法的な形で、横断的にいろいろ規制をかけるということは大変重要だと思いますが、もう一方でいわゆる個別の業者法ということで規制をかけた方が効率的なものも多々あると思います。そういった意味では、投資サービス法と個別の業者法との兼ね合いが大変重要ではないかと思います。私自身が投資サービス法の概念が固まっているわけではないので、なかなか言いづらいのですが、やや漠とした意見なのですが、投資サービス法が担うべきところと、個別業者法が担うべきところを分担しながらやっていくことが効率的ではないかと思います。

そういった意味で考えますと、投資サービス法的なものにつきましては、対象範囲が大変広い方がよろしいのではないかと思います。例えば、このレジュメですと、運用業者にかかわる規制は再検討という項目がございましたが、運用業者といいましても、単なる運用する業者ではなくて、例えば運用対象資産に対して、あるいは財産に対して指図権を有するような立場のものもあると思います。そういったものまで含めて、指図権者は実質的な形で投資家に対しての情報提供をした方が効率的というようなケースも考えられますので、そういった指図権者に対しても横断的な形で規制をかけるとか、そういう意味では、投資サービス法については対象を少し広げて考えていくということも重要ではないかと思います。

○神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

今日は事務局で用意していただいたメモ、具体的な点をマル1マル2マル3と、重要な点を幾つか挙げられているのですが、それを1つ1つご議論いただく時間はちょっとありませんので、したがって、この1つ1つ挙げていただいたものについて、あるいはもし今後の審議の進め方等についてご意見があれば、今出していただいても結構ですけれども、後日でも結構ですので、またお考えいただいてお寄せいただければと思います。

今かなり基本的な論点を池尾先生を初めとして出していただきましたので、ちょっと私の方でまとめさせていただくと、1つは、上柳委員がおっしゃったことで、この部会の考え方として、いわゆる金融サービス法と呼ばれている話と投資サービス法と呼ばれている話をどういうふうに整理するのかということが1つです。その上で、いわゆる投資サービス法をまず目指す議論をするということをもって国の政策と考えるということでいいのか、あるいはよくないのかということが1つあると思います。

もう1つは、それによってもちろん多少変わってくると思うのですけれども、西村先生のおっしゃった中の最初の話で、大きくとるとしてもどこかに線は当然引かれるわけで、投資サービスという言葉を使わせていただきますと、投資サービスとそうでないものの線はどのあたりに引かれるのかということがあろうかと思います。

それから、これは資料1にも出ていることですけれども、私は「柔構造化」という言葉を使わせていただきましたが、西村先生は「重層化」とおっしゃいました、同じ意味だと思いますけれども、柔構造化を図る際の物の考え方として、どういうロジックでそれが整理されるべきなのか。

そして、奥野委員からご指摘がありましたが、業者ルールといってもほかにもあるので、個別法との関係とでも言うのでしょうか、投資サービス法が仮に一般法だとしますと、そういったところをどう整理するのか。これは多少技術的な点だと思います。

そして、最初に池尾委員のおっしゃった、人に物を頼むというか、頼まれる方がプロフェッショナルとしての業者になるわけですが、その受託者責任みたいな考え方をコアに物事を整理していこうというときに、市場型間接金融との関係というんでしょうか、あるいは市場法という言葉を使う方もいらっしゃいますけれども、それはイコールではありませんけれども、そういったものとの関係をどういうふうに整理するのか。

その際に、重要な話として高橋委員から幾つかご指摘いただきましたけれども、2つだけ申し上げると、今よりも将来も見据えて対応できるような仕組みをつくる、そのときに予見可能性のような、不確実性ができるだけ低いということが大事であろうという点と、もう1点は、エンフォースメントの体制というか、ルールだけつくってもエンフォースされないのでは意味がありませんので、そこもきちんと押さえておく必要がある。大体そういうあたりが主要な論点として今までご指摘いただいたのではないかと思います。

いずれも非常に重要な点で、どういう順番に今後ご議論をしていただいていいのかよくわからないのですけれども、こういった点について追加的にご発言をいただけると大変ありがたいのですが、いかがでしょうか。難しいところかと思いますけれども。

太田委員、どうぞ。

○太田委員

今の先生のご質問には答えていないのかもしれませんが、これは春ごろまでに基本的考え方をまとめるというふうに書いてあるのですけれども、かなり高邁な議論を決めていくということですが、全体的なパシフィクティーとしてどのくらいの射程をこの法律の具体化に考えておられるのか。その後要綱に取り組むと書いてありますけれども、全体のスケジュールといいますか、どういう考えでいらっしゃるのか。次からと次といろいろな商品が出てきますし、抜本的な今のいろいろな規制の仕組みの概念も含めて変えるようなことになりますと、そういうものとも関連してくると思いますけれども、現実問題としてどのくらいのことをにらんで取り組んでいかれるおつもりなのかをちょっとお伺いしたいのですけれども。

○神田部会長

それもぜひここでご議論いただくということだと思います。

○大森市場課長

昔の仕事のやり方と言ったら何なんですけれども、まさにどのくらいマンパワーがあって、いつまでに何をやるのかということを縦・横・斜め検討した上で、さあお願いしますというのが昔の行政、事務方と審議会の関係だったのですけれども、今は、今日の議論を踏まえて次の審議会はどうしようかという、確たる青写真がなくてお恥ずかしい限りなのですけれども、裏も表もなくそんな実態でございます。ただ、構えが大きければ大きいほど実現には時間がかかるというのは当然のことですし、例えば証券決済法制一つとりましても、一番喫緊のニーズがありましたCPから始めて、次の年に社債、国債、2年間をあけて株式という形で、そのたびごとに電話帳のような法律をつくって4年かけて対応してきたわけです。ですから、当然射程範囲が広く、長くあればあるほど具体的な要綱なりというものは段階的に整備をしていくということにならざるを得ないのかもしれませんけれども、そういった作業量から考えるというよりは、まずこの国の金融システムにとってどういう基本的な仕組みが必要なのかということを白地で議論していただければよろしいのではないかと、私どもとしては考えておるところでございます。

○神田部会長

ありがとうございます。

岩原委員、お願いします。

○岩原委員

先ほどから皆様から大変有益なご指摘があって、特に金融サービス法との関係をどう理解するかというご指摘もあったわけですけれども、金融サービス法につきましては、先ほど大森課長からご指摘がありましたように、大蔵省の最後のときに、金融企画局のところで金融サービス法を最終的には目指して大変努力されて、いろいろな立法作業を行い、まさに金融商品販売法ですとか、あるいは投資信託法の改正、あるいはSPC法の改正、その他大変立派な仕事をしていただいたと思っております。ただ、それでもなお十分な時間がなく、その範囲にとどまった立法しかできなかったわけですけれども、ただ、その過程では大変な努力を行い、審議会の中でもいろいろな部会を使っていろいろな検討をしているわけです。

今ここにいらっしゃる細溝さん外多くの方がそのために大変な努力をされたわけでありますが、そのときの蓄積をぜひ生かしていただきたいと思います。せっかくあれだけ大変な努力をし、かつその過程で我々委員もプレゼンテーションをさせていただいたりして、いろいろな問題点の整理をしているわけでありまして、最初に池尾委員からご指摘のありましたような問題を含めてかなりのことがそこで検討されております。それを踏まえた上で、今回は投資サービス法という形で、その問題についてアプローチするとしても、かつての蓄積を踏まえた上での作業にしていただきたいと思います。

私の記憶では、そのときは金融サービス法ですから、今回のものよりもより広いアプローチをとろうとしたわけで、そういうふうにより広いアプローチをとったときにどういうふうな整理の仕方になるかということで、確か大きく取引ルール、市場ルール、業者ルールに分けて、それぞれについてどういった横断的なルールが可能かということを検討したわけであります。

最初の取引ルールについては、例えば最初に池尾委員から御指摘のあった受託者責任の問題、あるいは情報開示についての取引的な、法的なルールの検討がなされ、その中から情報開示についてはとりあえずできる範囲でということで、金融商品販売法というのができたわけですけれども、なお課題が残っていたわけでありますし、受託者責任につきましては、今回はまさに信託法の改正作業が行われているわけでありますけれども、それは信託法以外の問題を含めて一体どこまで取引法的なルールとして整備できるかということはなお問題として残っているかと思います。そのほかに、前に検討された問題としては、倒産法の問題を踏まえて分別管理の問題についても検討したわけでありまして、それについては現在信託法でも当然検討されていると思いますけれども、それ以外にもなお課題はあるかと思います。

次に、市場ルールにつきましては、開示のルール、これは当時既に横断的に検討しました金融商品についていえば、大きく分けて証券取引法的な開示ルールと、商品ファンド法ですとか、あるいは不動産特定共同事業法等のタイプの開示と大きく分けて2つの開示ルールのタイプがあり、それがある面でいえばアメリカ法的な、証券法的な開示ルールと、EUあるいはイギリスのFSAなどの開示ルールとある面対応しているところがあると思います。それをどういうふうに調整するかということが課題になっていたと思いますので、そういった問題があります。

それから、不公正取引ルールにつきましてもこの2つのタイプがあった。ただ、こちらの方は比較的共通性が多かった記憶があります。

そして、価格形成に関するルール、これは証券取引法が特によく整備されたルールを持っていて、それ以外の法律は、商品取引所法などもルールを持っていますけれども、それと比べて、他の一部の金融商品の業法等については必ずしもそうではないというような問題があったかと思います。

最後に、業者ルールの整備、これは非常に難しい問題でもありますけれども、これがある面一番こういった横断的なルールをつくるときに問題になるわけでありまして、先ほどの池尾先生のご指摘と深く絡んでくると思いますけれども、かつての検討の際には、金融サービスの類型を横断的に幾つかに分けて、それに応じた業者規制のあり方、ある意味でいえば受託者責任の重さを分けて考えようということが検討されたと記憶しております。例えば金融サービスの中に、販売勧誘、それから売買、仲介(brokerage)、引き受け(underwriting)や売り出し(selling)、資産運用、カストディーサービス、そしてアドバイスサービス、そして仕組み行為といったような幾つかの金融サービスの類型を分けて、それごとに業者規制のあり方を考えていくべきではないか。逆に金融商品も縦割りではなくて、そういった金融サービスの類型に応じた業者ルールを考えてはどうかということが検討されたと記憶しております。

こういった問題について、現在の縦割りの業法では、それぞれ縦割りの商品ごとに免許を与えたり、あるいは資格等を定めているわけですけれども、そういったものを横断的な金融サービスの類型に応じてむしろ考えていくべきではないかということが検討されたと記憶しております。私としては相当立ち入った検討が既に行われていたと思っておりまして、そのようなかつての検討を十分踏まえた上で、今回可能な範囲でなるべくそれを取り入れて検討を進めていただければと思う次第であります。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

昔というか、今となっては昔なのかもしれませんけれども、その場にいた皆様方も、私、岩原先生を含めてここにいますけれども、それに参加しておられないで今委員をしていただいている方ももちろんいらっしゃいますので、一度どこかでそこをきちんと紹介して、そのときの議論の成果というのは当然踏まえた上でご議論をさせていただければありがたいというふうに今感じました。

島崎委員、どうぞ。

○島崎委員

証取法を改正して投資サービス法をつくっていくということについては、従来の流れからしてそういう方向なのだろうなという気がします。それをつくり上げていくときにいろいろなことを考えなければいけないという点についても、今先生方からいろいろご指摘されたので、本当にそのとおりだと思うのですけれども、私がちょっと気になるのは、レジュメの2ページの市場監視機能・体制の強化というところですが、いろいろルールをつくっても、そのルールが本当に有効に機能しているかどうかというモニタリングといいますか、そういう体制をきちんと考えていかなければいけないということです。ここに書いてありますが、いわゆる米国のSECと我が国の体制の人数、これだけの差があるのかと。実際にアップルとアップルで比べてみたらどうなのか。やっている業務だとか、いろいろなことにも差があるのだろうと思うのですが、これだけ見ると、とてもこの人数ではどうなのかなということがあって、これは議論しなければいけないことはわかるのですが、どうなのでしょう、もう少し説明していただければと思います。多分やっている業務が相当違うのかなという感じもするのですが、単に人数だけ見るとえらい差になっているのですが、ここのところをもう少し説明いただければと思います。議論すること自体は私全く異論はありません。

○神田部会長

ありがとうございます。それは今日というよりは回を改めてご説明いただく方がいいですか。

○大森市場課長

先ほども申し上げましたが、日本の監視委員会は、事実認定をして、刑事告発をする、あるいは監督行政当局に行政処分の勧告を行う、そういうやり方が事実認定の客観性を担保するであろうという過去の経験に基づいてそういう仕組みになっているわけですけれども、米国のSECは、もちろん自ら処分を行う、さらにはマーケットのルールメイキングを行う、銀行の不良債権の開示の基準すらSEC基準と言っておりますけれども、それは市場の重要な商品のディスクロのルールであるからSECが行うと。およそマーケットにかかわる行政を包括的にやっているのがアメリカのSECですから、カバーする範囲が相当に違うと言ってよろしいかと思います。

ただ、一方で、業態が非常に融合化して、コングロマリット化しておりますから、一体監督を受ける側がどこに行けばいいのか、OCCに行けばいいのか、SECなのか、FRBなのか、そういった監督を受ける側の混乱もございますし、そういう意味で日本では日本の金融システムにふさわしいSEC、監視委員会というものを考えていく必要があるのではないかと思っております。

ただ、事実認定をするだけにしても、やはり行政組織というのは一定の陣容がありませんと、難しい事案にチャレンジしようというような形に、これはおまわりさんの世界もそうだと思いますけれども、ならないということもありますので、その辺もまた一度きちんと整理をさせていただきますが、この場でもご議論いただきたいと思っているところでございます。

○島崎委員

ここで4,000人、SECの職員ということですけれども、これはすべて全員が国家公務員ですか。日本の場合には、公務員の定員制の問題云々とここに書かれていますけれども、これは少し議論していったらいいと思いますけれども、組織のありようとか、そういう問題も出てくるのかなと思って質問したのですが。

○大森市場課長

もちろんSECに所属している限りにおいて連邦の公務員ということになりますけれども、非常に特徴的なのは、この金融証券業務に精通したロイヤーであるとか、会計士であるとか、そういった人たちが大変多いということが特徴でございます。一方、私どもの方はもちろん金融庁の職員であったり、地方の財務局の職員であったり、税務署の職員であったりという人が証取法の訓練を受けてこういう仕事を始めるということなので、ちょっと質的な違いもあるというのが正直なところかなと思います。

○神田部会長

その辺はまたきちんと議論していただければ大変ありがたいと思います。

木村委員、どうぞ。

○木村委員

今のご意見に関係しまして、エンフォースメントの強化を担保する意味で人数問題が出ておりましたけれども、私もちょっと気になっておりまして、ここの書きぶりというのは、現状の体制はほとんど変わらないという前提で物を考えるのか、それとも、500人がいきなり1,000人とか2,000人になるというのは多分不可能だと思いますけれども、やはりある程度強化をしていただかないと、例えば機動的な立入検査なり監督業務なり、オフサイト・モニタリングなりできないと思いますので、そこら辺、現状一名も増員できないような感じでお考えになっているのか、それとも、やはりこれを実効的にしていくのにある程度、どこから引っ張ってくるのかわかりませんけれども、人員の強化なりは考えた上で、それを前提とした上で検討されていくのか、ちょっと教えていただければと思います。

○神田部会長

その点も本当は皆様方のご意見をもって世論は形成されていくのだと思いますけれども……。課長、どうぞ。

○大森市場課長

すみません、この文章は遠慮深く書かれ過ぎていると思います。金融庁そのものも監督庁という形で400人体制でスタートして6年間で3倍になっております。これは霞が関の常識では考えられないような膨張ぶりですけれども、そういう意味で、ここに書いてあるのは、500人が直ちに倍になるとかということはないけれども、という程度の意味だと思っております。もちろん現在やっております定員要求も、監視委員会の増員というのをトッププライオリティでやっておりますし、そういう要求を日本の金融システムが必要としているということを背景にそうしているということであって、そうは言っても、1年で倍になるということはなかなか難しいというぐらいの意味だとご理解いただければと思います。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、もう1つの議題に移るべき時間だと思うのですけれども、これは私の司会としての権限を逸脱しているかもしれませんけれども、今後お考えいただく上で、多少こういう点をお考えいただいたらどうかということを若干申し上げることをお許しいただければと思います。ちょっと感じましたので、若干発言をお許しいただければありがたいと思います。

順不同になりますけれども、島崎委員、木村委員のおっしゃったエンフォースメントの問題というのは、ここでは確かに人数問題というのは何となくすぐ具体的に議論になると思うのですけれども、私は2つに分けて考え方がいいのではないかと思っております。これは今後のご議論のご参考ということですが、1つは、ルールはあるけれども、それがエンフォースされないとか、あるいはもう少しありていな言い方をすると、証券取引法という法律に規定はあるけれども、数十年間一遍も使われていない。やはりそういうものは考え直す必要がある。規定の方が悪いのか、エンフォースメント体制が悪いのか、そういう問題が1つあって、これは従来からも議論してきた問題だと思います。

もう1つは、ルールというものがあって、それを具体的な事実に当てはめるというか、適用するというときにいろいろな問題があるわけです。これもありていに言えば、違反だという事実認定があって、それに法律を当てはめたときに、当然適用を受けた方からすれば不満があるかもしれないし、異論があるかもしれないわけです。したがって、抽象的にいえば、ルールがあって、具体的事実を当てはめるには、事実の存在を認定し、それに法律を適用するというステップを踏むわけですけれども、そこのところがきちんと納得感があり、かつ逆に言えばきちんとしたエンフォースメント体制になっているのかという問題があって、この両者をきちんと整理して議論した上で、初めてエンフォースメント体制という場合に、人の問題もどのくらい必要なのかということが出てくると思います。それとは全く別に、アメリカのSECは、誰が、何人どこにいるのかという島崎さんの最初のご質問についても、一応どこかの段階で皆さんで共通の認識を持ちたいと思います。

それから、非常に難しい話で、前の方にお話がありました、上柳委員が前からですけれども、私どもともご一緒して議論している金融サービス法との関係ですけれども、基本的には、大森課長が最初におっしゃったことに尽きるのかもしれません。およそ業者がリスクのあるものを販売勧誘するというときは、別にそれは銀行でも保険でも同じですよね。ですから、業者がリスクのある商品を顧客に販売勧誘するという局面を見れば、それは投資サービス法という枠組みよりも広い枠組みになるということは間違いないと思うのです。

ジレンマは、他方、市場型間接金融とか、あるいは貯蓄から投資へという政策で物事を整理するときに、そこで言う貯蓄から投資へという投資というのは、銀行とか、伝統的な掛け捨ての保険というのは含まれていないのです。したがって、市場型間接金融とか、貯蓄から投資へというときの物事の整理というのは、私の言葉で言えば、資本市場や証券を含めた金融分野の中で、簡単に言うと、銀行と保険を除いた分野ということになると思うのです。

そのほかにさらに抜け落ちている部分があるとか、課長のご説明があったとおりですけれども、したがって、これはどちらに着目してつくっていくかということで、仮に法律が一つにならなくても、販売勧誘については横断的な業者ルールが、中身が横断的であるべきことは恐らく疑いのないことだと思います。ただ、この一部会で今議論しようとしているのは、まず貯蓄から投資へというか、そこのまさに投資サービスというところをきちんと整備するときに、どういう考え方でコアの部分をつくるかということだというふうに思います。

もう1つ、アメリカ型か、イギリス型か、オーストラリア型かというのはよく議論になるところで、これも今後ぜひ皆様方からご意見をお出しいただきたいと思うのですけれども、お隣の韓国は、ご存じかもしれませんが、2007年までに法律を一本にするという検討をしています。イギリス型がいいかどうかということでよく日本も聞かれるのですけれども、イギリスはご存じのように、監督官庁も、俗な言い方で銀行、投資サービス、保険一本になりましたし、法律も一本にした。アメリカはバラバラと言うと失礼ですけれども、別々です。オーストラリアは2つです。

それでどうかということは大変な議論になるのですけれども、一つ日本で言われている議論ですけれども、例えばイギリスなどから言わせれば、アメリカのような仕組みというのは非常にコストがかかって、規制としてはレギュラトリー・イフィーシエンシーと言いますけれども、社会的なコストがかかっているという批判があります。先日、私もある国際会議でイギリスのFSA、オーストラリアの規制監督当局、アメリカと三つ巴になって議論した会議に出てかなり議論したのですけれども、アメリカはどういうふうに答えるかというと、アメリカから見れば、それは規制の目的が違うと。イギリスの金融サービス市場法には目的が書いてあるのですけれども、アメリカの目的は、インベスター・プロテクションということと、あと市場の維持発展ということです。したがって、レギュラトリー・イフィーシエンシーという角度から議論するのは必ずしも正しくなくて、レギュラトリー・インテンシティと彼らはよく言うのですけれども、そういう角度から議論すれば、そのルールの実効性、あるいはそのルールの詳細性、予見可能性、そしてエンフォースメントのレベルからいえば、明らかにアメリカが群を抜いて、ほかより優れているというわけです。したがって、どちらを取るかというときにはなかなか難しい。そういうことも勘案すると、レギュラトリー・イフィーシエンシーという角度から仮に議論するとしても、例えばどちらの仕組みが優れているか難しいという議論になります。

このことは、ありていに言えば、一本化すると、資本市場のところの日本版SECというか、市場の強力な番人とかという点からいうと、弱くなるのではないかという論点です。これは非常に難しくて、恐らく投資サービス法を構想するときも、今の考え方というのは、投資サービスというところについてきちんと整理しましょう、そこについてはきちんとエンフォースしましょうというときに、そこに市場型間接金融とか、貯蓄から投資へということとぴったり当てはまっていますので、そこを今の難しい、アメリカ型かイギリス型かというのを詰めて議論する必要まではないとも思いますけれども、いずれにしてもそういったような問題が絡んでいるということです。

あと、2点だけ簡単に申し上げますけれども、西村委員のおっしゃった投資サービスの範囲というのは、大きく金融とそうでない分野の線を引かなければいけない。金融の中に銀行、保険、投資サービスがあるということだと思いますけれども、それはどこかに線を引かなければいけませんので、不動産はどうかというのは難しいですけれども、不動産イコール金融というところまでは恐らく行かないと思います。何らかの形をとると不動産であっても金融に入り得る部分があるということだと思います。ご存じのように、イギリスなどはその適用対象は投資物件と訳していますが、不動産そのものは入りませんけれども、集団投資スキームになったときには何でもありでして、これは不動産に限らず、いつも申し上げていることですけれども、競走馬と言うんですか、レースホースというか、あるいは絵画など何でもありで、集団投資スキームになった場合には何でもありだけれども、そうでないスキームの場合には、不動産とか、今言いました絵とか馬とかは入らないという線引きをしています。これは一つの参考例にすぎませんけれども、どこかに線を引く必要があるということかと思います。

また、柔構造化といった場合も、柔構造化し過ぎると高橋委員のおっしゃった予見可能性が落ちますので、やはり基本的な類型は維持しながら、大森課長がおっしゃったように、日本ではルールのコアな部分は法律に書くというやり方なので、それをやらなければいけないという難問があるということだと思います。そこでも、例えばですけれども、では、業者になぜ財務規制があるのかといえば、自己資本規制がその例ですけれども、伝統的には市場リスクというものを非常に重視してきたわけです。もしそうだとすると、市場で非常に変動する商品、上場株などがいい例ですけれども、それを扱っているような業者と、そういうものを扱っていない業者とは多少区別して考えられるのかどうかとか、そういった切り口から整理していく必要があると思います。

すみません、もう1点、池尾先生のおっしゃった受託者責任というのは、人から物を頼まれた人が負う基本原則でありまして、伝統的には、岩原委員のご指摘になった分別管理義務を含めて注意義務、忠実義務、分別管理義務、そして、人に物をさらにゆだねた場合にどういう責任を負うかという4つから成り立っていますけれども、およそ人に物を頼むということ自体重層化するというのは市場型間接金融そのものです。まさに頼まれなければ市場型間接金融にならないというところがあります。

それから、業者が委託を受けたのではあるけれども、投資リスクは基本的には投資家に転嫁するというか、投資家に売るというか、投資家が負うというアレンジなのです。そういうアレンジで市場型間接金融は成り立っているわけですから、そういうときにおける受託者責任とは何かというものが、ありていに言えば、これも市場型間接金融でない場合のフィデューシャリーというか、受託者責任とは違ってくるわけでありまして、そこのところの整理をする必要があると思います。つまり市場型間接金融における受託者責任とは何かという根本論を整理する必要がある、こういうことになると思います。

ちょっと余計な発言が長くなって大変申しわけありませんけれども、今後ご審議をしていただく上で、また多少お考えいただく上でご参考になればと思いまして、あえて発言をお許しいただきました。

今の点を含めてもし若干あればご発言いただきますが、もしなければ次の議題に移らせていただきますけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございました。それでは、この問題については引き続きご議論をいただくことにしまして次に移らせていただきます。今日、大変貴重なご意見を多数出していただきましたので、進め方としては、次回までに私と事務局で、事務局に大きく頼ることになりますけれども、いただきましたご意見を集約させていただきまして、次回以降の審議項目に反映させていただきます。

なお、資料1につきましては、先ほども申し上げましたように、さらにお考えいただいてご意見等があろうかと思いますので、どうか事務局の方に、私でも結構ですけれども、後で個別にお出しいただければ大変ありがたく存じます。審議の時間が限られておりますので、できるだけ重点的に、重要な点をご議論いただければと思います。

それでは、次に移らせていただきます。

開示制度をめぐる論点項目につきまして、事務局からの説明をお願いします。

池田参事官、お願いします。

○池田企業開示参事官

それでは、お手元にお配りしております資料2「開示制度をめぐる論点項目(案)」、それから、資料3で関連します資料をとじておりますので、適宜この資料3をご参照いただきながら、基本的には資料2についてご説明をさせていただきたいと思います。

この資料2は、冒頭に部会長の方からご説明がありましたように、当第一部会及びその下に設けられておりますディスクロージャー・ワーキング・グループで今後開示をめぐる問題について議論していく際の論点項目として考えられるものを整理したものでございます。

それでは、資料2をごらんいただきたいと思います。まず初めに基本的な考え方を整理してございます。近年、開示制度は大幅に改善されてきている。この点については、資料3の1ページ目に最近における開示制度、これは会計基準、監査基準、こういったのを含めました総体としての開示をめぐる制度について主な変革を整理させていただきました。この整理は、左の方に年度がついておりますが、いろいろな制度の実施時期のベースで整理をしております。検討時期ということでいいますと、この会計基準の冒頭に出てまいります連結財務諸表原則の改訂、連結会計の本格的な見直しということが平成7年10月から企業会計審議会で検討を開始しておりまして、これがいわゆる会計ビッグバンと言われておりますもののスタートかと思いますが、平成7年10月ということですから、それから数えますとちょうど9年の月日をかけて大幅な整備が行われてきたということになろうかと思います。

論点項目の方に戻っていただきまして、そうしたことで開示制度は大幅に改善されてきているという認識をしておるのですが、一方で、開示制度が全体として真に体系的・合理的なものになっているか、開示に対する信頼が真に定着しているか、開示制度が真に使い勝手のよいものとなっているか、との指摘がある。そういった中で近年の歩みを点検し、今後の進むべき方向を幅広く検討していく必要があるのではないかというのが基本的な認識でございます。

これに沿いまして具体的論点を掲げてみますと、まず初めに、四半期開示の制度化の問題がございます。資料3の方では2ページ目、3ページ目に資料を掲げてありますが、ご案内のとおり、東京証券取引所等の証券取引所で四半期開示が始まっております。経緯的にいいますと、平成15年4月から四半期業績の概況の開示ということで売上高等の開示が義務づけられておりまして、また、今年の4月からは要約の貸借対照表、損益計算書を含みました四半期財務業績の概況といったものの開示が義務づけられております。この措置については経過措置がついておりまして、3年以内においてはこの売上高等の開示をもってかえることができるということになっておりまして、そういう意味では、貸借対照表、損益計算書を含んだ全面的な義務づけというのは、平成19年度からすべての上場会社に対して義務づけられるというスケジュールの中で制度が進んできているという状況でございます。

ということで、東証等において四半期開示が進んできている中、四半期開示を証券取引法上制度化することの是非についてどう考えるか。さらに、仮に制度化するとした場合、これにあわせて検討しておくべきことがあるか。逆に、仮に制度化しないとした場合、現行の開示について改善を検討しておくべきことがあるかということでございます。

この論点は、四半期開示をどうするかという個別論点でありますが、同時に有価証券報告書等を代表とします証券取引法上のいわゆる制度開示と、取引所ルールに基づく取引所の開示との役割分担をどう考えていくのかといった開示制度全体のあり方にかかわる問題でもあるというふうに認識をしております。

その関係で、資料の4ページ、5ページに四半期開示の諸外国、欧米とアジアの状況について整理をしておりますが、本日は2番目のところの開示根拠のところだけ簡単にご説明します。法律に基づく制度となっておりますのが、代表的にはアメリカあるいは韓国、ドイツといったようなところが法律に基づく制度になっております。一方、イギリス、シンガポール、香港、こういったようなところは取引所のルールに基づく制度という形で行っているというふうに理解をしているところでございます。

次の項目でありますけれども、証券取引法の開示規定の再編ということでございます。現在の開示制度は性質の異なる有価証券に対して、基本的には単一の枠組みを当てはめ、その中で生じてくる実務的な不都合等に個別に対応するという結果になっているというふうに考えられるかと思います。そういった中で、本日前半の議題でございました投資サービス法というような体系も展望してまいりますと、今後さらに有価証券範囲の拡大、多様化ということが進んでくるだろうと考えられるわけですが、そうした状況にかんがみて、有価証券をその性質や流通性等に応じて分類し、その分類ごとに開示手続、開示内容等のあり方を検討し、必要があれば改めて法的な整理を行っていくということの必要性を検討していく必要があるのではないかということでございまして、前半でご議論いただきました投資サービス法ということも展望した開示制度の取り組みという側面があろうかと思います。

資料の方は6ページに1枚だけ資料をつけさせていただきました。証券取引法に基づく有価証券の種類を掲げてございますが、この有価証券の種類の中で網かけをしてあります部分が、近年有価証券として開示の対象に加わってきたものでございます。多くはファンド型のもの、あるいはアセットバック型のものでございまして、株式とか社債とかいった伝統的な有価証券とはかなり性質、あるいは流通性の面で異なったものが近年入ってきておるということでございますが、そういった中で、開示の枠組みは従前と変わらない、基本的には当てはめていきますので、こういった新しい有価証券がふえているという中で新しい開示の枠組みを考えておく必要はないかという問題提起でございます。

次に、開示に対する信頼・実効性の確保ということで、1つは、内部統制の健全性確保と適切な会計監査という問題でございます。企業における内部統制の十分な健全性確保に向けてどのような具体的方策が考えられるか。さらに、内部統制リスクを含むリスクの的確な評価と監査手続、監査時間の適切な選択に向けてどのような具体的な方策が考えられるかということでございます。

資料の方は7ページ以下に関連するものをつけてございますが、証券取引法の世界で申しますと、いわゆるコーポレート・ガバナンスということに関しましては、本年の3月期決算以降、コーポレート・ガバナンスの状況について開示をするという制度が実施に移されております。それから、これは任意の制度でありますけれども、経営者による確認書の提出ができるという形になっておりまして、そこでは財務諸表等が適正に作成されるシステムが機能していたかどうかを確認して、その内容を記載するという制度が導入されております。

また、商法の方でも、平成13年12月、14年と商法改正が行われておりまして、ガバナンスの関係の規定の強化がされております。さらに、現在法制審議会の会社法部会の方で多岐にわたる検討が行われているという状況であろうかと思います。

8ページは米国の動きを1つだけご紹介しておりますが、米国の企業会計改革法、いわゆるSarbanes-Oxley Actのセクション404というところで内部統制報告書という制度が導入されております。この制度のもとでは、1番目のマルにありますように、会社の役員は、年次報告書の中で内部統制の有効性の評価を行って、その結果を記載するということが義務づけられておりまして、3番目のマルのところで、会社の会計監査人は内部統制報告書における有効性評価について監査を実施するということが義務づけられております。実際には、SEC登録企業は、本年の11月15日以降の決算期から、あるいはSECに登録している日本企業の場合でも、来年の7月1日以降の決算期から適用されるということで、関係する会社においてはこういった作業が進んでいるという状況にあると思っております。

9ページ目は、監査時間の関係で、最近日本公認会計士協会の方で調査結果を公表されておりますので、それを添付させていただきました。ポイントだけ申し上げますと、監査時間について海外と日本を比較すると、海外における監査時間というのは日本の監査時間のおおむね1.1倍から2.8倍になるということ。(2)のところで、その要因を見ていくと、監査計画と内部統制評価手続に費やす時間が海外に比べて日本では不足しているという分析がされております。

論点項目に戻っていただきまして、IR活動及びアナリスト機能の強化と公正な開示ということで、企業情報が専門化、複雑化する中、個人投資家等への適正な投資情報の提供等の観点から、IR活動やアナリスト機能の強化等についてどう考えるか。一方で、公正な開示を確保していく観点から、例えばアナリストの中立性確保や、米国で導入されているフェア・ディスクロージャー規制等についてどう考えるかという論点があるかと思います。

ここは有価証券報告書等を初めとします企業情報がどんどん専門化していくという状況でありますが、同時に、個人投資家がそれを読んで直ちに投資判断が可能かというと、それは直ちには難しいという部分があって、このような企業情報を分析して、投資情報として投資家に提供するという機能、広く言えばそういったアナリスト機能というものが重要になってくるという状況の中で、こういったことをどう考えていくかという問題意識でございます。

資料の10ページは、証券業協会の方でアナリストの中立性確保に向けて、本年の3月にルール改正をしております。その概要を整理したものであります。

11ページは、アメリカにおけるレギュレーションFD、いわゆるフェア・ディスクロージャー規制の概要を書いておりますが、このルールでは、証券の発行企業等が重要かつ非公開の情報を特定の情報事業者に対して開示したときは、同時あるいは速やかにその情報を投資家に開示をしなければいけないというルールがあるということでございます。

論点項目の(3)のところですが、「使い勝手のよい」開示制度ということで、1つは規制改革の推進ということでございます。これは毎年度規制改革委員会等からご指摘を受けて規制改革に取り組んでいるところでございますが、今後ともその投資判断に必要な情報を的確に投資家に提供することを前提としつつ、開示制度の利便性を高めるとの観点から、現行制度に改善・工夫の余地はないか、あるものについては積極的に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

最後に、開示手続の電子化の問題でございます。本年6月から有価証券届出書、有価証券報告書等の開示書類はEDINETによる提出が義務づけられているが、EDINETによる提供の義務づけ範囲の拡大、EDINETの今後の機能拡充についてどう考えるか。それから、財務情報を標準化し、作成・流通・利用を容易にするコンピュータ言語であるXBRLを将来的にEDINETにも導入することについてどう考えるか。これに向けて適切なタクソノミー(電子的ひな形)の策定など、XBRLの普及に向けた関係者の努力をどのように促していくかということでございます。

資料の方は12ページがEDINETの概念図でありまして、13ページに現在EDINETの適用で電子的な形での提出が義務づけられている書類としましては上の方で網かけをしているところですが、本年の6月以降、有価証券報告書あるいは有価証券届出書、そういったものについては電子的媒体による提供というのが義務づけられております。

他方、任意になっておりますのは、有価証券通知書等の書面、大量保有報告書等の書面、こういったものについては現在の制度では任意ということになっておりまして、すべてがEDINETという形で提出されていない状況にございます。

14ページはEDINETに対するアクセスの状況ですが、こういった形でEDINETによる提出が義務づけられた本年6月前後からアクセス件数が急速にふえております。EDINETの利用が進んできているという状況だと思います。

そういった中で、15ページですが、私どもに対してEDINETに対する要望も届いております。上位の3つだけご紹介しますと、まず、回線の増強ということで、利用者がふえてきていまして、回線を増強しないとアクセスしにくいというご批判でございました。下の備考の2に書いてありますが、この点については、本年9月1日に回線の増強を行いまして、要望に対応したという形に現在はなっております。それから、検索機能が劣っている、あるいは印刷機能が劣っているというあたりが要望の中では多く寄せられているところでございます。

最後に、論点項目で、今後の審議の進め方についてご提案をさせていただいておりますが、上記の論点については、専門的、実務的な観点からの検討が必要であると考えられることから、まず、ディスクロージャー・ワーキング・グループにおいて審議し、その結果を踏まえて第一部会で審議することとしてはどうか。審議は、年度内のできるだけ早い時期に取りまとめることを念頭に進めることとしてはどうかということでございます。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今池田参事官からご説明いただきました資料2の1と2、3の進め方については後ほどお諮りさせていただきますが、1と2につきましてご意見がございましたらご自由にお出しいただければと思います。個々の論点についてご意見があれば、それをこの際お出しいただいてももちろん結構ですし、取り上げるべき論点等についてご意見があれば、それもぜひお出しいただければと思います。若干技術的でわかりにくい点もあったかもしれませんが、いかがでしょうか。

原委員、お願いします。

○原委員

遅れてきまして申しわけありません。進め方についても最後に一言言わせていただきたいと思いますが、ディスクロージャーについて、ディスクロージャー・ワーキングにも去年、一昨年と参画させていただいておりますので、徐々にディスクロージャーの信頼性とか充実というところが進んできているという点では評価をしておりまして、四半期開示も昨年の問題だったのですけれども、今年度取り上げることということで、また参画をさせていただきたいと思っておりますが、ちょっと確認と盛り込まれていないというところを申し上げたいと思います。

1つは、信頼・実効性確保のところでアナリストの問題が取り上げられていて、これは去年か昨年もワーキングで取り上げた課題ですけれども、資料にもあるとおりですが、アナリストの協会としての自主ルールというところまで今来ているわけですが、これを一歩進めた形をとる検討をするということになるのかどうかというところを確認させていただきたいのと、ファイナンシャル・プランナー、FPの方たちがいらっしゃるのですが、こういった方たちのアドバイスといいますか、そういったものも大変世の中にあふれておりまして、このFPについては、国際標準化機構、ISOの方で規格化の作業が進められているということですけれども、ISOの方との連動ということはどのように考えられているのかというところが確認としての質問です。

それから、2点、ぜひお願いしたいと思っております。1つは、一番最初にあります開示制度の体系化、合理化ということを考えたときに、入り口のところはかなり整理してきたのですけれども、運用報告書が大変わかりにくい。途中段階での情報開示というのが非常に不十分といいますか、そういうことを考えておりまして、去年も問題意識としては提出したのですが、では、具体的にどういう項目がというところまで絞り込めなかったのですが、ぜひ検討をお願いしたいということがあります。

もう1点は報告です。目論見書については去年、一昨年と改善作業を少し進めましたけれども、取り残されているのが要約目論見書の扱いと、それから広告による情報提供の部分です。広告は、雑誌とか新聞広告、最近はネットでの情報提供が非常に盛んで、我が家にも毎日のように何らかの形でネットを通じてこういった関連の広告が入ってきているような状況がありますので、そのあたりも、今年度急にというわけにはいかないかもしれませんけれども、問題意識としては追加をしておいていただきたいと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

ご質問いただいた第1点の、アナリストについては皆様方のご意見をぜひいただきたいと思うのですけれども、一応事務局へ向けたご質問の部分もあったと思いますので、お願いします。

○池田企業開示参事官

アナリストの問題について法制化が視野に入っているのかどうかということについて、法制化をもとから否定している考えはありませんが、そういうことも含めてご議論いただくべき事柄ではないかと思っております。アナリストについてはルールをつくるべきだという議論がある一方、余りルールでがんじがらめにすると、投資家のニーズに応じて柔軟に情報提供していくという役割もあるので、かえって市場のそういう動きをとめてしまうというご議論も多々あると思っておりますので、そういったことも含めて、規制の手段も含めて議論していただくのがよろしいのではないかと思います。

それから、運用報告書云々の議論がございましたが、検討テーマでいいますと、証取法の開示規定の再編という中でご説明しましたように、大きい問題意識は伝統的な株、社債のような有価証券と、最近有価証券の対象になってきたファンドのようなものとの開示制度が基本的には単一の制度になっていて、それはある意味で、同じものを当てはめることによってファンドにとって余り重要でないものを開示させているという面もあり得るし、逆にファンドという特性に応じてきめ細かく開示しなければいけないものが開示されていない可能性もありますので、その両面から議論していく中では、そういう運用報告書の問題等、ファンド特有の問題についてどう考えるかということは議論の対象になってくるのではないかと思っております。

それから、広告の問題については、単なる開示の問題ではなくて、場合によってはサービス法本体の問題かと思いますが、ご指摘も念頭に置きながら、それは部会の方でどういうふうに論点の調整をするかということも考えながらご相談したいと思っております。

○神田部会長

ありがとうございました。

最後の広告の点は、原さんご存じのように、先ほど岩原先生からご紹介があったのですが、昔の流れ懇談会ですとか、金融商品販売法をつくったときにも議論した課題で、私どもは、普通広告というのがあって、それから勧誘があって、販売と、こういうステップに行くところで、販売のところは取引ルールは金販法をつくったということがあるわけです。インターネットが普及しますと、何が広告で、何が勧誘かということがはっきりしなくなって、ご存じのように、参考として、イギリスでは広告概念と勧誘概念を一本化したわけです。「financial promotion」というふうに英語で呼んでいますけれども、日本では、ご存じのように、広告についてのルールというのは、こういう表現がいいかどうかわかりませんけれども、銀行、保険、証券ばらばらにやってきたという歴史がありまして、若干時間切れになっていて、これまで広告についての議論を十分にしていないわけです。そういった話は前半部分でご議論いただいた投資サービス法の方で整理をする。

他方、目論見書制度の裏側というか、目論見書に書いてない何をどう使っていいかというのはディスクロージャー制度に密接に関係することですので、このディスクロージャーの方でご整理をいただきたい。これはかなりこれまでも行われてきましたけれども、広告というものについてどういうふうに整理するかというのは多分前半の方の議論だと思います。

よろしいですか。

○原委員

後ほどまたお願いいたします。

○神田部会長

島崎委員、お願いします。

○島崎委員

意見とディスクロージャーのワーキング・グループでいろいろ検討してもらいたいということのお願いを2つほど申し上げたいと思います。

まず、四半期の業績の開示につきましては、東証のルールで開示しているわけですが、猶予期間というのがあって簡便的な開示というのが認められているわけですけれども、実際には、9割弱、86%の企業がフルの開示をしているということです。そういう流れにあって、なぜ法的な規制をしなければいけないのかというあたりについては、今の東証のルールでは何が問題かというあたりをよく詰めていく必要があるのではないかと思います。

企業の、我々実際につくっている立場からしますと、実際に四半期の業績の開示というのは、マーケットなり、あるいは我々のお取引先のステークホルダー等から要請がある。そういう企業側の必要性があるので、フルの四半期の業績も開示するし、開示のタイミングも年々決算期末から1カ月以内に開示する企業がふえてきているわけですから、企業が自主的にやっているという流れが一方であります。

それでは、今の四半期の業績開示で何が問題かというあたりはよく検討していただく必要がありますが、会計制度とか、監査のレベルだとか、開示している財務諸表の質にばらつきがあるので、均質性を求めるというのであれば、それはそれなりの監査のあり方、制度だとか、あるいは会計士制度のあり方だとか、四半期のときにはどういう監査をし、どういう会計制度、基準を適用するのかというあたりをきちんと整理していけば用が足るのか、もっと違うところに法的な強制力を働かせた方がいいのかというあたりを検討していただく必要があるのではないかというのが意見です。

要望としましては、現に東証で、四半期に限らず、中間決算なり期末の決算の開示を要請されている。一方では、有価証券報告書を証取法でも要請されている。東証の開示は決算短信と言って、短信ですから、短いはずなんです。ところが、非常に厚い、「決算短信」というより「決算長信」というようなぐらい年々ふえてきているということで、いわゆる決算の情報を即時性を重視して開示していくのであれば、もう少し簡素化する必要があるのではないかということがあります。

それと、実際に私どもが決算を行っているタイミングでは監査は終了していない。ですから、当然最終的な有価証券報告書を出す段階においては、決算の数字が変わってくることがあり得る。後発事象などを厳密に監査してくればこれからどんどんふえてくるのではないかといったときに、実際に決算短信で東証が要求している、あれだけのボリュームのものが本当にそのたびに要るのかどうかというあたりをひとつよく議論していただきたいというのが1つ目の要望です。

2つ目は、東証のルールでは、業績予想というのを企業に要求しているわけです。私どもも年間の予想を出しているわけです。業績予想から3割下回ると業績の修正をせいということになっていまして、四半期決算が定着していないときにはそういう必要もあったのかもしれません、投資家サイドからすれば。ただ、四半期決算というものが入ってきて、これだけ定着した場合に、そういう業績予想なるものが必要なのかどうか。これはアナリストの機能との関係にもなってくるでしょうけれども、その辺のところについても四半期業績との絡みでご検討いただければありがたいと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

何かございますか。

○池田企業開示参事官

ご説明の中でも言いましたが、この四半期開示の問題は、証取法の開示の制度と取引所の開示の制度の役割分担をどう考えるかという根本的な問題にもつながっていく問題ですので、ご指摘の点も含めて、そういう指摘が第一部会であったことをディスクロージャー・ワーキングにも伝えて議論をしていただくということでよろしいのではないかと思います。

○神田部会長

それでは、高橋委員、それから上柳委員、お願いします。

○高橋委員

今の島崎さんのご意見と関係があるのですけれども、四半期ディスクロージャーもかねて検討されてきたものでありまして、引き続きぜひ検討を進めていただきたいのですが、そのときに四半期ディスクロージャーに何が求められているか、今即時性と島崎委員からお話がありましたけれども、即時性というのがすごく大事だと思うのです。したがいまして、監査法人がどう関与するかということとか、今の決算短信をどうするか、あるいは業績予想はどうするかということも含めて検討すべきなのですが、基本的には、この四半期開示というのは、四半期が終了した後迅速に出るということが大事だと思います。したがいまして、その四半期開示によって業績の比較ができるような比較可能性というのが大事なので、一定のルールなりチェックは必要だと思いますけれども、ただ、それによって非常に提出がおそくなるということでは役に立たないことになってしまって、その辺難しい課題かと思いますけれども、両面見ていく必要があるのかなというふうに思います。

それから、技術的なことで、中身は言いませんけれども、2ページの(3)に「使い勝手のよい」開示制度というのがあって、規制改革の推進と開示手続の電子化と書いてあるのですが、これでいろいろなものが読み込めると思いますけれども、現場で、また使い勝手という面で、もちろん技術的に解決できることもあるだろうと思いますけれども、法律改正の検討に及ぶような事項もあるかと思います。必ずしも規制改革という切り口だけではなくて、役人的で申しわけありませんが、その他というものでもう少し広くこの「使い勝手のよい」ということについて拾い上げていただきたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

それでは、上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

(2)にあります内部統制とアナリストのところについては、ぜひ早急に実現していただきたいと思います。特に内部統制については、各企業でいろいろ努力されていると思いますので、その努力が外にわかるような形でぜひともきっちり開示していただいて、それが後の監査につながっていくのかもわかりませんけれども、ぜひ実現していただきたいと思います。

四半期開示の方についても一言だけですけれども、これも制度化、法律で決めるべきだと私は思っております。もちろん取引所できっちりやっておられるので、実態としてはそれでいいのかもわかりませんけれども、私の感じでは、取引所の指導のもとにせっかくやっているのですから、それを法律の形にして、世界じゅうにわかるような形で、日本はここまでやっているということをむしろ宣明するというのが大事なのではないかと思います。もちろん技術的な問題で、経過措置なり、猶予期間なりということはあるのかもわかりませんけれども、そんなふうに思います。

さらに、実情を知らないでとんちんかんなことを言っているのかもわかりませんけれども、行く行くはというか、方向性としては、リアルタイムへの開示につながっていくのだろうと思うのです。毎日1分ごとに開示しろというわけではないのですが、流れとしてはそちらの方に行くのではないかと思うのです。確かに、監査の問題とか、信頼性を確保するための時間がかかるということもよくわかると言えばわかるのですが、ただ、これもふだんから実際に企業の中で動いているお金の動きであるとか、あるいは新たな事象をどこかで集中管理、多分企業としてはやっておられるでしょうし、そこの情報の信頼性について、第三者といいますか、監査人の目が入っていれば、どんどん時間としては短縮できるのではないかと思うのです。ですから、短信と言っても、分量が短いというよりも、事象が発生してから開示までの時間が短いという意味での短信になっていくのではないかと、そういう方向性でぜひどんどん進めていくというのが正しいのではないかと思っております。

最後に、「使い勝手のよい」開示制度とか、あるいは論点の(1)の2つ目のマルのところにも掲げられていますように、開示制度全体を新しく見直そうというような趣旨のことが書いてあって、これも大変意欲的といいますか、表現は不適切かもしれませんけれども、わくわくするような記載があるような気がします。これも理想としては、一定の知識のある個人投資家も含めて、国民が企業なりファンドがどういう状態にあるのかということをインターネットその他を通じてなるべく早く、なるべくわかりやすく見られるというところが目標だということで、場合によっては、今の若干私にもわかりにくいような法律の体裁の見直しも含めてやるべきではないかというふうに思っています。

○神田部会長

それでは、東委員、どうぞ。

○東委員

先ほどの島崎委員のお話は実感として大変賛同できるのですが、現実に決算短信と有価証券報告書、どちらを利用しているかというと、圧倒的に短信なんです。有価証券報告書というのは、その数字が本当であったかどうかを事後的にチェックするという意味で最後頼るというのは使い方としてあります。短信は、数年前であれば数枚であったものが、今は参考資料を入れれば有価証券報告書の数倍の厚さになっております。したがって、これだけの情報の開示が要るのかということと、せっかくそこまでやっているものをもう少し有価証券報告書と共通化できないかというのは印象として感じます。

決算短信の中で、先ほどの予想については、私自身は四半期の開示が定着するならば、多分やめていいだろうというふうに考えています。ただ、アメリカなどを見ていますと、ガイダンスという格好で、逆にどんどん細かくなってきております。しかも、毎月ガイダンスを修正していくというように頻度も上がってきています。そういう動きとあわせて、日本としてどういう格好でつくっていくかという点を議論していただければと思います。

資料2の2の(2)の内部統制でありますけれども、ここは当然より経営者が責任を持つという形で強化すべきだろうと思います。ただ、一つ心配なのは、きちんとやっている企業ほど逆にコストがかかって、ルーズな会社はスッと行ってしまうというのが往々にして見られるケースですので、そこの公平性を考えないと、きちっとやっているところばかりコストがかかってくるという心配が一部出てくるのではないかということが懸念されます。

それから、四半期開示については速さと質の問題というのが当然出てくるわけであります。したがって、ここはワーキングでぜひ議論していただきたいと思いますのは、四半期開示後の業績修正をどういう形でルール化するのかという点であります。本決算のようなきちんとした監査を要求するのか、あるいは、ある種言いっ放しで終わってもそれを許容するのかという点を、どうルール化するかというところが必要かと思います。

それから、取引所でルールがあるものについて、改めて制度化する必要があるのかということですが、現状、取引所で私自身も問題ないだろうと思うのですが、将来取引所がどんどんできてくるといった場合に、取引所間でルールに差が出てくる可能性があります。その場合に、企業が厳しい方を自動的に選択すればいいのですが、そうでない可能性も出てくるという意味では、ある種制度的に四半期の最低限のルールを決めておく必要はあるのではないかという印象を受けています。

最後は質問ですが、参考資料の13ページで、EDINETの適用時期で任意になっている事柄で、例えば大量保有報告書ですが、任意というのは何か理由があってのものなのか、要するに、容量が足りなくてここまでやるとパンクしてしまうとか、どういう意図があるのかというのが質問でございます。

○池田企業開示参事官

大量保有報告書については、これまでの頭の整理は、大量保有報告書の場合は、有価証券届出書、有価証券報告書等とは違って、個人も大量に保有した場合には提出義務者になるということで、開示企業にとどまらないということで、個人も含めてこういう義務を課すのは時期尚早ではないかという頭の整理があったのだと思います。現状の制度がそうなっております。その点を基本的にどう考えるかというのは次の論点になると思います。

○神田部会長

ほかにいかがでしょうか。吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

論点の整理をしていただいて、これをワーキング・グループでやっていただくということは賛成でございます。大幅に開示制度が改善されているということについては、私どもマーケットサイドからいいますと、まさに情報がタイムリーに開示されているということで、貯蓄から投資へという政策課題を抱えている中で、大変重要なことなので、ぜひ大いに議論していただきたいと思っております。

東証の開示制度という中で私どもが重要視しておりますのは、「適時開示制度」というものであり、いわゆるタイムリーなものが必要だろうという観点から、常々発行会社さんにもお願いしているところであります。また、投資家のニーズもそういうところにあり、それがだんだん改善されてきて、半期報告書から四半期報告へという形で改善をされてきたと認識しております。適時開示を推進してきた立場としますと、まさにそれをさらに進める必要があるという認識でございます。

ただ今、四半期開示の法制化という議論がございましたけれども、当然これもワーキング・グループの中で議論していただく形になろうかと思いますが、例えば、いわゆる会計基準の整備の問題であるとか、財務諸表のレビューの問題であるとか、そういったところは工夫なり改善の余地があるのではないかという認識でございます。ワーキングにおいては、よりよい開示制度をつくり上げるために積極的な議論をしていただき、実効ある結論を導いていただきたいと思っております。

また、業績予想や決算短信について、委員からご発言がございました。実は、2年前から私もディスクロージャーワーキング・グループに参加させていただいておりましたが、そこでも発行会社さんからは、「決算長信」であるというご指摘をいただいておりました。おっしゃるとおり、昭和50年代ではわずか2枚の紙だった決算短信が、今は30ページ、40ページ、50ページとなっております。ただ、これは先ほども申し上げましたように、タイムリーなディスクロージャーという投資家サイドのニーズがあり、作成者側にもITの技術の進歩などがあり、その結果、これが可能になってきたと認識しています。発行会社さんには、ご負担をかけながらも、そういったものの中身が充実できてきたということは、一定の時点として評価すべきところではないかという意識を持っておりまして、その辺はご理解をいただきたいと思っております。

また、業績予想については、タイムリーなディスクロージャーで、開示のインターバルが狭くなればなるほど業績予想というのは要らないのではないかというご議論も前からあるのですけれども、これは全く別ものの問題であると認識しております。一定時点の静止した状態の開示である四半期開示と、将来情報である業績予想開示とは、全く別もののディスクロージャーであり、代替的な関係ではないと我々はとらえているので、これはワーキング・グループの中で当然議論が出てくるかもしれませんけれども、ご理解をいただきたい点であると思っております。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

そろそろ時間かと思いますが、よろしいでしょうか。もう1点、今後の進め方についてお決めいただく必要があります。法律で定めるか、取引所で定めるかというのはもともと難しい問題で、ディスクロージャーに限らないのかもしれませんけれども、これはどちらも一長一短があって、国も分かれているわけです。日本もこれまで日本の歴史があってやってこられたわけですから、なかなか難しい問題ですけれども、そういう問題とか、財務諸表の四半期にならなくてもある、修正というんですか、リステートというのはアメリカでも非常に難しい問題を起こしていますけれども、そういった難しい問題も含めて御議論をいただくことになろうかと思います。

原委員が発言をリザーブしておられた点ですけれども、論点項目について追加のご希望もあったのですが、ご発言が今の項目に含まれている面もあると思いますし、若干はみ出ている面もあろうかと思いますので、論点項目については、基本的には資料2でいきたいと思いますけれども、今日ご発言いただいた部分がもう少しわかるように、池田さんの方で微修正をしていただくということで、今後の審議の論点ということで決めさせていただいてよろしゅうございましょうか。

○原委員

はい。

○神田部会長

ありがとうございます。

そこで進め方ですが、できればこれまでのようにディスクロージャー・ワーキング・グループでご検討をいただき、その結果を踏まえてこの部会でご審議をいただくということで考えているわけですけれども、原委員、その点についてのご発言だと思いますが、どうぞ。

○原委員

遅れてきて申しわけありません。ただ、どうしても発言したかったのは、第一部会の進め方のところで、資料1で掲げられている点ですが、やはりこの方向で進めていただきたいと思っております。重複する意見になってしまいますので、簡単に1分だけ、3点お願いしますけれども、1つは、投資サービス法について検討を進めるということは、後段の議論でもいろいろと出ておりましたので、その方向に行くということですが、もう一歩進めて金融サービス法の制定の議論まで視野に入れていただきたいと思っております。投資サービス法は証券の概念を拡大することで、それからファンドを入れていくことである程度できると思うのですが、保険とか銀行業を含めて発想の大転換ということになると思いますけれども、業法の延長線上ではなく、市場のルールというところで消費者対事業者というところで検討をしていただきたいと思っております。

2つ目は、「消費者保護基本法」が36年ぶりに改正されまして、「消費者基本法」ということになってこの6月の通常国会で成立しております。ここで消費者基本計画というものを策定するという仕組みが講じられることになっておりまして、消費者基本計画の方でも、投資サービス法、金融サービス法の制定を盛り込んでいきたいというふうに提案をしていきたいと思っておりますので、ぜひ連携をしていただけたらと思っております。

それから、3点目ですけれども、金融庁も人手がなくて、これからどういう体制を組んでいこうかということのご苦労が書かれていたわけですけれども、「公益通報者保護法」も成立しておりますし、それから公正取引委員会がやっております競争政策との連携ということももう少し深めていただけたらいいのではないかというふうに思っております。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。私の方が資料1についてのご意見だと思っていなかったので、失礼しました。それでは、資料1の方についてのご意見ということで今の点も今後引き続き議論させていただくということでよろしいですか。

○原委員

ディスクロージャーの方はワーキングが10月7日からスタートするのですけれども、資料1に書かれている投資サービス法の検討については、ワーキングか何か設けられて来年春までの検討ということになるのでしょうか。

○神田部会長

私の進行が不手際で申しわけありませんが、ではまず、ディスクロージャーの方をワーキング・グループでご審議いただくということについて一応ここで御了解をいただきたいと思います。先ほど申し上げました資料2、今日いただいた論点でもし含まれていない部分があれば、それも基本的には含めていただくということにして、その上でディスクロージャーのワーキング・グループの方でご審議いただくということにさせていただきたいと思いますので、岩原座長には毎年大変恐縮ですけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。

そこで次に、資料1の方ですけれども、これはすぐワーキングというよりは、部会で基本的な議論を進めてはどうかというのが私の感じではありますけれども、大森課長、何かございますか。

○大森市場課長

それで結構でございます。

○神田部会長

では、部会で基本的な議論を積み重ねていくということで。今日前半の部分についても多数ご意見をいただきましたので、今の原委員からいただいたご意見も踏まえて、論点を整理して、次回以降この部会で議論を順次お願いできればと思います。それでよろしゅうございますでしょうか。

○大森市場課長

はい。

○神田部会長

私の進行の不手際で、最後のところ、資料1と2の処理が混乱して申しわけございませんでしたけれども、終了の時間を過ぎておりますので、本日の審議はこれまでとさせていただきたいと思います。この後記者会見を行いまして、本日の部会の模様について私の方から話をさせていただきます。

最後になりましたが、事務局からのご連絡がありましたら、よろしくお願いします。

○大森市場課長

今後多岐にわたるご審議をお願いすることになると思いますので、よろしくお願いいたします。事務局として、岩原先生おっしゃっておられましたように、これまでの蓄積も踏まえて効率的に議論の材料を提供させていただきたいと思っております。

次回の日程につきましては、部会長とご相談の上、改めてご連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。それではこれで散会します。

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